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透明の景色を収めて

 ( 小説投稿城 )
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アヤメ@空想爆裂ガール @stepbystep ★Smart=RjBS8XLyBn


『 四元はまたカメラ持ってきてるのか?いい加減没収するぞ! 』

『 ……没収、ですか。それは困りますね。ここには私たちの毎日の全てが記録されているので。 』

『 はぁ…なら持ってくるな。…俺はもう注意する気も失せたが、他の先生に見つかったら没収どころじゃないぞ。だいたい写真、勝手に撮ってるんだろ? 』

『 クラスのみんなには許可とってますから。問題ないかと。 』

『 おおありだ。四元、カメラを持ってきていることがバレたらお前の推薦取り消されるぞ?なんでそんなに写真を撮るんだ? 』

『 推薦、ですか。まあ取り消されたら一般で頑張るのでいいです。 』

『 四元お前なぁ… 』

『それより理由 …知りたいですか? 』

『 ん?ああ。知りたいな。それにデジカメでもスマホでもなく、アナログのカメラ使うなんて。 』

『たいした理由ではありません。先生。それはですね______ 』


『 ああ。 』





『 わたしは、“目に見えるもの”しか信用できないからです_____ 』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


わたしの中学校の三年間が記憶に埋もれて消えてしまう前に、中学校生活はこんなにも楽しかった!と、思い出せるように中学校生活を舞台にした小説を書こうと思います。
受験勉強の片手間の更新ですがお許しください。

文章力はクズです。

また、あくまでも中学校生活がベースになっているだけですので、実際の中学校の行事等とはいっさい関係ありません。
すべてフィクションです。


それでは、更新まちまちですが必ず完結させます!

(よければ書き捨て小説も!→→ http://mb2.jp/_ste/2471.html )





→→→→→→→Start!!

メモ2017/01/12 07:44 : アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111★Smart-OVSj4StEGs

[登場人物]


#海野 碧衣 (Umino Aoi)

町前中学校の3年生。明るく活発な性格で体育リーダーや学級委員に積極的になりたがる。

クラスでは貴重なツッコミ派の人間。


#四元 碧 (Yotsumoto Midori)

碧衣と正反対な静かな性格。いつもカメラを持ち歩いており、なにかあれば所構わずシャッターをきる。

たまにツッコミが足りないほどボケる。


#立松 陽呂 (Tatematsu Hiro)

碧衣と一緒に学級委員を勤める男子。性格はただただうるさいのとエンターテイメント性に溢れている。モテる颯斗のことがちょっと羨ましい。


#赤沢 颯斗 (Akazawa hayato)

“自称”クラス1のモテ男。陽呂の親友。


#菜月(Nazuki)

碧衣の親友。碧衣が陽呂のことが好きだと勘違いしている。


#諏訪部先生(Ms.Suwabe)

碧衣たち3 - 7組の担任の先生。どこかほんわかしていて生徒から慕われているがこれでもバリバリの数学教師。


#陽佐山先生(Mr.Hisayama)

熱血系体育教師。碧のカメラの存在に気づいてしまう。


[目次]

>>0 プロローグ

【フィルム1. -桜色-】

>>1>>9


…続きを読む(2行)

ページ: 1


 
 

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn


【フィルム1-桜色-】


「それじゃあみんな、机を後ろに下げて。椅子を丸く並べて座りなさい。はいっ。」


パンッと手をうつ音と同時に机や椅子をガタガタと引きずる音が教室中に響いた。

_____四月八日。

わたしたち、三年七組の結成日。
今日は記念日だ。


クラス発表、始業式、全校集会、と終えて今ようやく新たなクラスにやってきたところだ。
担任の先生は諏訪部しずく先生という数学科の先生。
どこかほんわかしていて笑顔がすてきで馴染みやすい。
生徒からも先生たちの間でも大人気だ。


「隣、いいかな?」
ガタンと椅子をおく。
声をかけるとその子は顔をあげてにっこり笑った。
「もちろんです。よろしくね。」




今から、クラスで自己紹介を兼ねた『なんでもバスケット』をやるらしい。
なんでもバスケットはクラスのレクリエーションの代表格ともいえる遊びだ。

椅子を人数からひとつ抜いて丸く並べ、その中心で一人がお題を言う。
……例えば「髪を結んでいる人!」とか「今日の朝食パンだった人!」とかね。
座っている人たちは自分に当てはまってると思ったら真っ先に立ち上がってどこか空いている椅子にスライディング!
椅子は人数ピッタリじゃないから、誰かが座れない。
だから、その人が次の鬼ってことだ。
「遅刻したことがある人!」と自虐的なネタや「このクラスに好きな人がいる人!」と盛り上がるお題まで、バリエーション豊富!
クラスでやったらすごく楽しい。


「えっと、四元さん?は、二年なん組?」
わたしが名札をガン見して言うと彼女___四元さんは制服の名札を引っ張ってわたしによく見えるようにした。
「あっ」
彼女の名札は二年生のままだった。
二年五組。
彼女は五組だったらしい。

「付け替えるのが面倒だったんです。風紀検査の前に変えたらいいかと。」
「たしかに…そうかも」
三年生になるのだから心機一転!
名札も上靴も全て変えるぞ!
と意気込んでいた前日の自分とは大違いだ。
が、風紀検査前に変えたらいいというのも一理ある。

この瞬間、わたしは四元さんとは気が合いそうだと思った。


彼女はずれたメガネをそっと直す。
わたしはギャーギャー騒ぐのが好きだが、パッと見た感じ、四元さんは読書が好きそうな大人しめな印象だ。
遊びの趣味は反対だが、わたしはなぜか、この子と仲良くなりたい!と思うのだった。


「みんな椅子並べたー?じゃあ最初の鬼は……立松!!」
「俺っ!?」
「三年連続先生の生徒なんだから〜いいでしょう。ほら、さっさと!」

立松くん、というらしい。
彼は三年連続で諏訪部先生が担任のようだ。珍しい。

「んんっ。あー…ごほんっ。……初めまして、立松陽呂といいます。よろしく。」

クラス中の視線が彼に集中する。

「えーっとじゃあ、行きます。」

みんな、すぐに飛び出せる態勢をとる。


「こっ、このクラスでこれから、頑張っていきたい人!!!!」


立松くんはそう叫んだ。
一拍遅れてみんなが弾かれたように飛び出した。

もちろんわたしも動いた。

が、




わたしは視界の隅にとらえた。


椅子にしっかりと座ったまま微動だにしない四元さんを。

彼女は椅子から動こうとせず、制服の左側に手を突っ込むとプリーツを翻してなにかを取り出した。
わたしは目を見張る。

彼女は先生が見ていないのを確かめて、“取り出したカメラ”を構えた。

わたしの目には、二、三回シャッターをきったようにみえた。
そして何食わぬ顔でカメラをしまうのだ。



「…マジかよ」



彼女に気をとられていたわたしは、もう全ての席がうまっているのに気づく。

もちろん、みんな自分の移動に必死で、同じクラスになった女の子がなんでもバスケット中に写真を撮ったなんて気づいていなかった。____わたし以外は。














21日前 No.1

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



「あなたは海野碧衣さんね!はい、じゃあお題をどうぞ」

諏訪部先生がわたしにニッコリと笑いかけて言った。
「えーっと、えーっと…」

こういう時に限って、なかなか頭がまわらない。
それに今、衝撃的なものを見てしまったばかりだから混乱しているのも当たり前だ。
恐る恐る、四元さんの方に視線を向ける。

___もちろん彼女の手にカメラはなく、眠そうに目をこすって大きくあくびをしているだけだった。
それを見てピンときた。
「えーと、二年四組からきた海野碧衣です!お題いきます、……夜寝る時間が10:00よりも遅いひと!」

言いきった瞬間、みんながわっと飛び出す。
わたしは目の前の男子がどいた椅子に飛び込んだ。
「ふーっ。セーフセーフ。」
クラスの八割程の生徒が移動していた。

中三にもなれば寝る時間も遅くなるものだ。
わたしだって動画を見たり、友達とメールしたり、ピアノの練習をしたりでどうしても寝るのが遅くなってしまう時がある。


なんだか気になってしまって、もう一度四元さんの方を見た。

さすがに席、移動してるから変わってるよね、と思ったのだがあろうことか彼女はまた移動していなかったのだ。

(……10:00よりも早く寝てるってこと?)

だが彼女はまた、ふわーっとだるそうにあくびをもらす。

確実に睡眠時間の足りていない顔だった。



…なんでもバスケットがつまらないのだろうか。
だから動かない……とか?






「スマホ持ってるひと!」

「カラオケが好きな子!」

「メガネかけてる人〜!」

「ジャニーズファン!」

「土曜ドラマ、お掃除探偵☆ルンバを見てる人!」

「ピアノが弾けるひとー」

ドカッと椅子に座る。

はじかれたのは……立松くんだ。

「え、また俺かよー!!」
おおげさに崩れる彼をみんなが指を指して笑う。
わたしはひとり眉をひそめた。

四元さんは一回も席を移動することなく、姿勢よく、しかしあくびを交えながら同じ席に座り続けていたのだ。

「おーし、じゃあ行くぜ!」



次こそは動くか…!?



わたしは前傾姿勢をとった。






「写真を撮るのが好きなひと!」


立松くんの口元にはかすかに笑みが浮かんでいた。
目付きはどこか挑発的な感じで。

わたしはすかさず四元さんの方を見る。


彼女はもう一度大きくあくびをすると「よっこらしょういち」といいながら立ち上がった。
そして立松くんの前までゆったりと歩み寄ると今自分が座っていた席に手のひらを向けた。

「写真が趣味な子…わたししかいないようなので、お座りください。」


19日前 No.2

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



「立松くん!!」


「ん?」


あれから無事に(?)なんでもバスケットは終わった。
そして、最後は立松くんがまた取り残されて、諏訪部先生がいきなり作った『三回座れなかった人は罰ゲーム』というルールに屈し、彼は一発芸をやった。
教室は凍えた。

午前中授業のためなんでもバスケットのあとはすぐに帰りのホームルーム。
今、みんな絶賛帰宅中だ。

去年も同じクラスだった菜月に一緒に帰ろうと誘われたが、「気になった人がいるから」と丁重にお断りした。
菜月は「マジかよ、一目惚れかよ」とつぶやいて、頑張ってねと帰っていった。

勘違いされているけれど、気になったのは事実だから。



「お前、えーっと、海野だったっけ?」
「そ。一度座れなかった海野碧衣。」
「一回ぐらいいいじゃねーか。俺なんて三回だぞ?しかも一発芸をやって超しけたんだぞ!?」
立松くんはまたおおげさに崩れる。
そしてすぐ起き上がるとズボンについたほこりを払った。
「で、何の用?一目惚れ?」
「まっさか」
わたしは即座に否定した。
こんなお調子者くん、わたしのタイプじゃない。
「…さっきのなんでもバスケット。よく分かったなって思ったの」

彼は急に真剣な顔になると、
「四元のことか」
とだけ言った。

そして自分のカバンを肩にかけるとスタスタと教室を出ていこうとする。
「え、待ってよ立松くん…!」
「ついてこい。帰るぞ」
「え」

彼は左右を見渡して少し声のボリュームを落としてから言った。

「ここじゃ話しにくい。」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「やっぱり海野も見えたんだ」

「うん。」

わたしたしは人気の少ない住宅街を歩いていた。
地区は違えど、わたしと立松くんは方向が同じだ。
周りに人もいないし、一緒に帰ってもとくに問題はない。
菜月に少し申し訳ない、くらいだ。


「四元さん、一回目のとき席動かなかったの。おかしいなって思ってたらそのままカメラ取り出してパシャっと……」
「…俺が見たのもそんな感じだ」

立松くんも“見た”というのだ。

わたしの他にも気づいてた人がいたとは…

「でも諏訪部先生なんも言ってなかったろ?」
「きっと先生の目を盗んで撮ったんだよ。」
「やっぱりそうなるかぁ。だから俺はカマをかけたんだけどね。写真撮るのが好きな子!って。…でも四元、隠そうともしなかった。」
「うん。普通に『写真が趣味な子はわたししかいないようなので』って言ってたよね」
「俺びびったわー。あんな堂々としてる子。初めて見た。」


ふいに立松くんが立ち止まった。

「俺んちここなんだ。…海野、もしよかったら明日四元に聞いてみない?」



わたしは即座に首をカクンと下ろした。








三年七組ははじまったばかりだ_____



19日前 No.3

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



翌朝。



起きるのが苦手なわたしが七時ピッタリに起きれるなんて滅多にないことだった。

いつもはわたしを起こそうと必死に声を荒げるスマホも、今日は叫びだした瞬間に止めてあげた。

「なに?碧衣?もう起きてるの?」
「うん。やべーよお母さん。昨日は初日から学校楽しすぎた。」
「あらぁー良かったじゃないの!じゃあとっとと顔洗いなさい」

自室から洗面所へと向かう階段をおりながらふと考えた。

学校が楽しすぎるのは嘘ではないが、今日早起きできた理由はそれではない。
___理由は他にない、立松くんと一緒に四元さんに事情聴取をするためだ。
実を言うと昨晩は、今日のことが気になって気になってなかなか寝付けなかったり……なーんて…。

冷水で冷たくなった頬にそっとタオルを当てる。
いつもよりも柔軟剤のいい香りがする気がした。


「おぉ!おいしそー!いただきます!」

目玉焼き。
コーンスープ。
サンドイッチをかじる。
コーンスープ。
サンドイッチをかじる。
コーンスープ。
目玉焼き。
コーンスープを飲み干す。
目玉焼きの黄身を割る。
サンドイッチをかじる。
目玉焼きをたいらげる。
サンドイッチも頬張る。

「おふぃふぉーはまえした!」
パチンと手をあわせてそう言ってサンドイッチを飲み下しながら二階へもどる。
今日も記念日。
今日は『はじめて朝食を五分で食べましたね記念日』だ。

「……碧衣ったら、そんなに学校に行きたいのね」
ドアを閉める直前、お母さんの不思議そうな声が聞こえた。













「おはよっ!四元さんは?」
教室のドアを開けながら声をかける。
開けながら言ったものだから、おはようといいながら誰もいない可能性だってあった。
けれども、彼はちゃんと教室に来ていた。
「まだ来てねえ。ま、待ち伏せって感じじゃねーの?」
「待ち伏せかぁ…」
荷物を棚にしまう。
しまいながら「なんだか刑事の張り込みみたいでかっこいいね!」というと立松くんは首をかしげながら「そうだな」と言った。
行動と言動がミスマッチだった。
彼には張り込みのかっこ良さが伝わらなかったらしい。

そこから十分たつと菜月が登校してきた。
教室に一歩足を踏み入れて、わたしと立松くんが二人で話してるのを見ると、光のはやさで教室を出ていった。
「お♪あの子空気読めるねえ」
「変なジョークはおやめください。…あとで誤解ないようにしとくよ」
「おう。そうしてくれるとありがたい」

そこからさらに五分。

ちらほらと生徒が教室に登校しだした。

「陽呂おはよー。」
「おー颯斗か。なんだお前昨日寝てないのか?」
颯斗と呼ばれた男子はへらへらと笑いながら力なく立松くんの身体を叩いた。
「えー?へへー?なんのことー?俺はちゃーんと寝てるってー」
「いや確実にやべーよ。酔っぱらいみたいだぞ。」
「仕方ないだろー。数学の課題終わらなかったんだからさあー」
そのとき、立松くんの動きが止まった。
「す、う、がくの…課題?」


そして止まった時は動き出した。


「うっ、海野!すまん、俺には数学の課題という使命ができた!四元は頼んだぞ!」
「お前、マジかよ!」
「本当ごめん!」

「分かったよ…」


彼は再び合掌して頭を下げると自分の机に座り、わしゃわしゃと引き出しを書き回してプリントを引っ張り出して解きはじめた。





18日前 No.4

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn







わたしは瞬きすらせずにじっと壁にかけられた時計を見つめていた。
教室はざわついている。

昨日結成されたばかりのクラスなのに、みんなもう半年以上たったみたいに馴染んでいる。

遠慮がちに振り返り後ろの席の子に話しかける者、去年と同じクラスの子どうしで固まって楽しそうにおしゃべりする者、そしてそのグループに声をかけて一緒にしゃべりだす者…

教室内は仲良しであたたかい感じがした。

が、四元さんが来ない。

待てど待てど、扉を開けて入ってくるのは別の生徒だ。
「立松くん、遅くない?」
「にーエックスたすろくエックスではちエックス……え?なんて?……ワイひくじゅう…」
「春休みあんなにあったのに課題終わらなかったとかお前それでも中三か!?受験生か!?」
彼は首をコクコクと動かして「アンダースタンド!」と叫んだ。
右手は止めずに。
わたしはため息をついて肩をすくめた。

と、その時チャイムが鳴った。
クラス中の視線が時計に集まる。
そして「またね〜」などと声をかけあって席につくのだ。

チャイムが鳴りおわる。

同時に扉が開いた。


「初遅刻しました」
わたしは唖然とした。
あんなに会いたかった四元さんが来たのにただただただただ唖然としていた。
「四元、さん…」
わたしが呼ぶと彼女は「あ、昨日の。海野さんおはようございます」とのんびり答えた。

彼女は遅刻したと言っていた。

ものすごく真面目できちっとしてそう、という四元さんのイメージは音をたてて崩れてしまった。

せっかくカメラのことを聞こうと思っていたのに、チャイムギリギリに来たせいでそんな時間も音をたてて崩れてしまった。









14日前 No.5

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn

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12日前 No.6

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★CjDjf0pcRt_hgs



そして四元さんは続ける。

「写真はただの趣味のようなものです。初めてカメラを手にしたのは四歳のときでした。誕生日に父にニコンカメラをいただいたんです」

「四歳でニコンって…おもちゃのカメラあげときゃいいじゃねーかよ」
「四歳!わたしもそのときにピアノ始めたんだよ!」

四元さんは立松くんの言葉はスルーしてわたしの言葉に「おなじですね」と答えてくれた。
スルーされた彼は平然な(…引きつった)顔をした。

「それからはどこへ行くのもカメラと一緒でした。楽しかったんです、自分が一度見た景色を一枚の紙に焼きつけてとっておくことができる。一発で写真の魅力にとりつかれました」
そういいながらカメラを撫でた。
たぶん、今もっているものは二代目、あるいは三代目だろう。
きっと彼女の家にはたくさんのカメラが陳列してあるに違いない。

「中学生になって学校にもカメラを持ち込むようなったんです。学校での写真、撮るの楽しいんですよ。先生にバレないようにやるのもスリルがあっていいんですよ」
「スリルって…」

四元さんはほほ笑んだ。

「話すことはそれぐらいです。楽しいから、なんでもバスケットのときもカシャっとやった、それだけです。」



わたしと立松くんは顔を見合わせてため息をついた。

脱力した。


スリルがあって楽しい?思い出を紙に焼きつけたい……。

ただのヤンキーじゃねえか!
と心の中でツッコみを入れた。

「わかった四元。諏訪部先生にはバレないようにしとけよ。あの先生、自分のクラスの生徒のことけっこう信頼するから…」

「…はい」

11日前 No.7

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



あれから、自然とわたし達は一緒に帰る流れになった。

道の途中、立松くんは同じ部活のメンバーを見かけたらしく、そっちの方に走っていった。
ラケットを背にかけていたからテニス部だ。

しばらく何か話してから、『こいつらと帰る』といったジェスチャーをしてきたのでわたし達も両手で大きく丸をつくって答えた。



…これで四元さんとふたりきり。

それからは本当に普通の話をした。

「海野さん、『碧衣』で『あおい』なんですね。わたしの名前、『碧』で『みどり』って読みます」

四元さん__碧は、生徒手帳に歩きながらもきれいな字で書きながら言った。

「へえ〜、碧って、“あお”とも“みどり”とも読むんだ!」
「紺碧、“こんぺき”とも言いますしね」

遅刻したり名札を変えなかったりと優等生イメージはかなり崩れ落ちたが、やはり彼女の頭は良さそうだ。
わたしは漢字が苦手だから尊敬する…

ひとつの漢字に多数の読みがながあるなんて、まず概念が理解できないのに。

「じゃあ改めて、四元さんじゃなくて碧!よろしくね、碧!」
「ここちらこそ碧衣。」
わたしはなんだか照れくさくなってえへへと笑ったが、碧は難しい顔をして地面を見ていた。
「…どうしたの?」
「いえ、少し考えていたんです。もしこれが小説かなにかだったら読んでいる方はそうとう見にくいでしょうね…と」
「しょ、小説!?」
「碧と碧衣、碧の漢字ばかり溢れて読む気失せません?」
「いや…よ、よく分からないです」

微妙な空気が流れた。

「実はわたしもよく分かっていないんです。」

碧は首を傾けた。

わたしは首を前に傾けた。



さっきからずっと思ってたことだが、彼女は会話のペースを掴むのがプロだった。
立松くんも持ち前の明るさと声のでかさとエンターテイメント性で話術には長けているが、碧の会話のペースを持っていくのはプロだった。
彼女は確実にプロだった。
なんというか、ツッコミが追いつかない感じで……。


「じゃ、碧衣わたしこっちなんで」
碧は敬礼をして角を曲がっていった。

カーブミラーにうつった彼女の姿が小さくなっていき、そしてフレームアウトした。

これも言い忘れたが、彼女のキャラも未だにつかめないままであった。










10日前 No.8

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



始業式も終わり、わたしの最後の中学校生活がスタートした。

はじめから波乱の展開。

新しい友達。

受験生になるという自覚。

それでいて、少しのワクワク感。


家の前の公園に、取り囲むように並んでいる桜はもう散りかけている。

夏へ向けて、勇ましい葉を生い茂らせるためには可愛らしい花びらを振り落とさなければいけないのだ。

でも、うすいピンク色の花びらは枝からは離れても地面で生きていた。

わたしは家に入らず、公園へと入った。

「 わあ… 」

ベタな表現だとピンク色の絨毯…だろうか。

上から花びらは舞い、下も一面桜色。

そっと手を前に差し出すだけで、まばたきを一度すれば手のひらに春の雪がのっていた。

ただ、それはとけない。

とけないでわたしの手のひらの上にずっととどまる。

風に飛ばされないようにそっと手を握った。

その時、このうすいピンク色に既視感を覚えた。








ああ、碧のメガネクリーナーか…!




無意識に「 ふふっ… 」と笑みがこぼれた。

春の少しだけ眠たい気温。

来年、この気温を感じる頃にわたしは泣いてるのだろうか?それとも笑顔でいるだろうか?
















___考えてもそれは、まだ分からなかった。

8日前 No.9

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

【フィルム2 -白藍色- 】



「じゃあ二人からそれぞれ一言どうぞ」


始業式から二日目。
今日は学活の時間をつかって、学級組織づくりが行われた。

まず始めに、各クラス男女二名の学級委員を決めたんだけど…

男子の学級委員はお察しの通り立松くんが。
そして女子の学級委員がこれでもか!?ってほど決まらないの。
みんな少しうつむいて、諏訪部先生と目を合わせないようにするばっかり。
立松くんが困ったみたいに笑ってて、諏訪部先生はため息つくし、男子のなかには話し合いに参加しないで喋りだす人たちまで出てくるから……だから仕方なく手をあげた。


「し」

クラス中の視線がいっせいにわたしに集まる。


「…します、学級委員!」












そんなわけで、わたし達が学級委員となった。

なにか一言といわれ、必死になって文章を考える。
しどろもどろに、「えーっと、えーっと」を繰り返していると立松くんが小声で「しょうがねえなあ」と言って一歩前にでた。


___わたしはその時彼の横顔をはじめてまじまじと見た気がした。
彼は授業中や字を書くときや部活のときにしかメガネをかけない。
今がまさにその時。
なぜかわたしは、メガネを押し上げて一歩前に出た彼を瞳に焼きつけてしまった。

「んんっ。ごほん。えー、すっかり七組でお馴染みの立松陽呂です。この通り学級委員になりました。クラスの雰囲気が少しでも明るくなるよう、僕も持ち前のギャグセンスでどうにかしようと考えています。
ですが僕の欠点は、こうして喋りだすと止まらないことです。そんなときは……」

わたしを見た。


「あっ、わたしが立松くんを止めます!二人で中和させながら頑張るので、どうかよろしくお願いします…!」


頭を下げる。
ちらほら拍手がおこった。

「頑張ってー!二人ともお似合いだよー!」
昨日から事情を勘違いしている菜月がはやしたてる。

立松くんが調子こいて照れたふりして頭をかくもんだから、教室中が勘違いした。


「だぁかぁらぁあああぁ!違いますってばあぁああぁぁあ!」



そう叫ぶわたしを、

碧が、







またフレームに納めているのが、視界の隅に見えた___

5日前 No.10

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

碧はまた、なにくわぬ顔でカメラを制服の下にしまった。
今日も、彼女の制服の下には茶色のカメラケースが吊り下げてあるのだろう。

ちらりと隣を見る。

メガネの彼も気づいていたらしく「いいんじゃねーの?」と、肩をすくめた。

諏訪部先生はというと、学級委員の抱負も聞かずに自分の机に座り、自作のマスコットキャラクター『しずくちゃん』の絵を描いていた。
二頭身のしずくちゃんもなかなかのデザインだ。
それに落書きにしてはうまい。

…彼女は数学の先生だ。



「えー、聞いていただきたい」
立松くんの言葉がわたしを正気に戻す。
学級活動の時間に落書きして遊ぶ先生を感心の眼差しで見るなんて、正気を失っていたようだ。


「先生も…いいですか?」

「どうぞー」

先生の色鉛筆は止まらなかった。

「んんっごほん。実は早いことに、再来週から体育大会の練習が始まります。そこで来週に各競技の選手決めを行います。俺ら学級委員を中心に決めるんだけど」

わたしを見る。

「わっ、わたしたちだけじゃ決めるの大変だから、ある程度家で考えてきてほしい、です。競技は去年までと変わらないから…」

わたしも彼を見た。

「ってことなんで、よろしく頼んだ!」


みんなは了解の代わりに、再び拍手して答えてくれた。


再来週から、体育大会の練習がスタートする。

再来週はもう___五月だった___。
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「 お母さんどうしようわたし、学級委員になっちゃった! 」

「 まずは、ただいまでしょう? 」

「 ただいま、でね!立松くんって子と一緒なんだけどそいつがもうただのうるさいだけのバカ男子なの! 」

「 へーそーなの、ふーん。わかったわ、碧衣、まずは手を洗いなさい? 」

「 ばしゃばしゃ…わたし体育大会の応援リーダーもしたいのに、学級委員もするからどうしようかなって。」

「 そんないっぱいやるの?目立ち過ぎじゃない? 」

「 やっぱり? 」

「 目立ち過ぎると苦労するわよ。お母さんみたいにね。 」

「 うん…わかってるよ 」

「 出る杭は打たれる。頑張ってる子をよく思わない人たちも教室にはいるものよ 」

「 ……うん 」

「 さ!夕飯食べちゃおっか!今日はピーマンのピーマン詰めよ〜お母さん張り切って作っちゃった! 」


全然嬉しくなかった。

3日前 No.11

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs




体育大会の競技種目は大きく分けて三つだ。
○リレー、長距離走
○学年対抗種目
○ダンスと組体操

に分かれている。
学校全体が赤、青、黄の三つのブロックにわかれ、得点を競いあうオーソドックスな大会だ。


学年種目はそれぞれの学年ごとに違う競技をするものだ。
学年の先生が勝手に決めるので、変な競技になることもしばしばある。
わたし達は、
一年生のときに騎馬戦を、
二年生で馬跳びリレーをした。
今年は何をするかはまだ決まっていないらしい。

ちなみに先ほど変な競技になることもある、と言ったが去年の先輩方は縄跳びをしながらトラックを走るという地獄の競技をしていた。

違う競技であることを祈る。


ダンスと組体操は男女に別れて行う。
振り付けやフォーメーションも全部生徒が行うから地域の方々から大人気だ。


そしてそして、昼食時間のあとにある応援合戦、部活動対抗リレーも見所だ。

わたしは帰宅部だから応援しかできないけど、意外な部活動が一位になったりとすごくおもしろい。

応援合戦は、各ブロックから選出された応援リーダーが演舞やダンスで盛り上げる。

わたしはこれに立候補したいと思う。

……お母さんには反対されたけれども。



諏訪部先生によると、わたしたち七組は黄ブロックになるらしい。

再来週の練習から、はちまきが配布されるそうだ。

黄色のはちまき。

きっと向日葵のようにキラキラするんだろうな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1日前 No.12
ページ: 1

 
 
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