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透明の景色を収めて

 ( 小説投稿城 )
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アヤメ@空想爆裂ガール @stepbystep ★Smart=RjBS8XLyBn


『 四元はまたカメラ持ってきてるのか?いい加減没収するぞ! 』

『 ……没収、ですか。それは困りますね。ここには私たちの毎日の全てが記録されているので。 』

『 はぁ…なら持ってくるな。…俺はもう注意する気も失せたが、他の先生に見つかったら没収どころじゃないぞ。だいたい写真、勝手に撮ってるんだろ? 』

『 クラスのみんなには許可とってますから。問題ないかと。 』

『 おおありだ。四元、カメラを持ってきていることがバレたらお前の推薦取り消されるぞ?なんでそんなに写真を撮るんだ? 』

『 推薦、ですか。まあ取り消されたら一般で頑張るのでいいです。 』

『 四元お前なぁ… 』

『それより理由 …知りたいですか? 』

『 ん?ああ。知りたいな。それにデジカメでもスマホでもなく、アナログのカメラ使うなんて。 』

『たいした理由ではありません。先生。それはですね______ 』


『 ああ。 』





『 わたしは、“目に見えるもの”しか信用できないからです_____ 』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


わたしの中学校の三年間が記憶に埋もれて消えてしまう前に、中学校生活はこんなにも楽しかった!と、思い出せるように中学校生活を舞台にした小説を書こうと思います。
受験勉強の片手間の更新ですがお許しください。

文章力はクズです。

また、あくまでも中学校生活がベースになっているだけですので、実際の中学校の行事等とはいっさい関係ありません。
すべてフィクションです。


それでは、更新まちまちですが必ず完結させます!

(よければ書き捨て小説も!→→ http://mb2.jp/_ste/2471.html )





→→→→→→→Start!!

メモ2017/02/18 00:25 : アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111★Smart-OVSj4StEGs

[登場人物]


#海野 碧衣 (Umino Aoi)

町前中学校の3年生。明るく活発な性格で体育リーダーや学級委員に積極的になりたがる。

クラスでは貴重なツッコミ派の人間。


#四元 碧 (Yotsumoto Midori)

天才とバカすれすれの性格。いつもカメラを持ち歩いており、なにかあれば所構わずシャッターをきる。

たまにツッコミが足りないほどボケる。


#立松 陽呂 (Tatematsu Hiro)

碧衣と一緒に学級委員を勤める男子。性格はただただうるさいのとエンターテイメント性に溢れている。モテる颯斗のことがちょっと羨ましい。


#赤沢 颯斗 (Akazawa hayato)

“自称”クラス1のモテ男。陽呂の親友。


#菜月(Nazuki)

碧衣の親友。碧衣が陽呂のことが好きだと勘違いしている。


#諏訪部先生(Ms.Suwabe)

碧衣たち3 - 7組の担任の先生。どこかほんわかしていて生徒から慕われているがこれでもバリバリの数学教師。


#陽佐山先生(Mr.Hisayama)

熱血系体育教師。碧のカメラの存在に気づいてしまう。


#茅野くん(kayano)

黄ブロックの団長。碧衣は団長さんと呼んでいる。


[目次]

>>0 プロローグ

…続きを読む(8行)

ページ: 1


 
 

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn


【フィルム1-桜色-】


「それじゃあみんな、机を後ろに下げて。椅子を丸く並べて座りなさい。はいっ。」


パンッと手をうつ音と同時に机や椅子をガタガタと引きずる音が教室中に響いた。

_____四月八日。

わたしたち、三年七組の結成日。
今日は記念日だ。


クラス発表、始業式、全校集会、と終えて今ようやく新たなクラスにやってきたところだ。
担任の先生は諏訪部しずく先生という数学科の先生。
どこかほんわかしていて笑顔がすてきで馴染みやすい。
生徒からも先生たちの間でも大人気だ。


「隣、いいかな?」
ガタンと椅子をおく。
声をかけるとその子は顔をあげてにっこり笑った。
「もちろんです。よろしくね。」




今から、クラスで自己紹介を兼ねた『なんでもバスケット』をやるらしい。
なんでもバスケットはクラスのレクリエーションの代表格ともいえる遊びだ。

椅子を人数からひとつ抜いて丸く並べ、その中心で一人がお題を言う。
……例えば「髪を結んでいる人!」とか「今日の朝食パンだった人!」とかね。
座っている人たちは自分に当てはまってると思ったら真っ先に立ち上がってどこか空いている椅子にスライディング!
椅子は人数ピッタリじゃないから、誰かが座れない。
だから、その人が次の鬼ってことだ。
「遅刻したことがある人!」と自虐的なネタや「このクラスに好きな人がいる人!」と盛り上がるお題まで、バリエーション豊富!
クラスでやったらすごく楽しい。


「えっと、四元さん?は、二年なん組?」
わたしが名札をガン見して言うと彼女___四元さんは制服の名札を引っ張ってわたしによく見えるようにした。
「あっ」
彼女の名札は二年生のままだった。
二年五組。
彼女は五組だったらしい。

「付け替えるのが面倒だったんです。風紀検査の前に変えたらいいかと。」
「たしかに…そうかも」
三年生になるのだから心機一転!
名札も上靴も全て変えるぞ!
と意気込んでいた前日の自分とは大違いだ。
が、風紀検査前に変えたらいいというのも一理ある。

この瞬間、わたしは四元さんとは気が合いそうだと思った。


彼女はずれたメガネをそっと直す。
わたしはギャーギャー騒ぐのが好きだが、パッと見た感じ、四元さんは読書が好きそうな大人しめな印象だ。
遊びの趣味は反対だが、わたしはなぜか、この子と仲良くなりたい!と思うのだった。


「みんな椅子並べたー?じゃあ最初の鬼は……立松!!」
「俺っ!?」
「三年連続先生の生徒なんだから〜いいでしょう。ほら、さっさと!」

立松くん、というらしい。
彼は三年連続で諏訪部先生が担任のようだ。珍しい。

「んんっ。あー…ごほんっ。……初めまして、立松陽呂といいます。よろしく。」

クラス中の視線が彼に集中する。

「えーっとじゃあ、行きます。」

みんな、すぐに飛び出せる態勢をとる。


「こっ、このクラスでこれから、頑張っていきたい人!!!!」


立松くんはそう叫んだ。
一拍遅れてみんなが弾かれたように飛び出した。

もちろんわたしも動いた。

が、




わたしは視界の隅にとらえた。


椅子にしっかりと座ったまま微動だにしない四元さんを。

彼女は椅子から動こうとせず、制服の左側に手を突っ込むとプリーツを翻してなにかを取り出した。
わたしは目を見張る。

彼女は先生が見ていないのを確かめて、“取り出したカメラ”を構えた。

わたしの目には、二、三回シャッターをきったようにみえた。
そして何食わぬ顔でカメラをしまうのだ。



「…マジかよ」



彼女に気をとられていたわたしは、もう全ての席がうまっているのに気づく。

もちろん、みんな自分の移動に必死で、同じクラスになった女の子がなんでもバスケット中に写真を撮ったなんて気づいていなかった。____わたし以外は。














3ヶ月前 No.1

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



「あなたは海野碧衣さんね!はい、じゃあお題をどうぞ」

諏訪部先生がわたしにニッコリと笑いかけて言った。
「えーっと、えーっと…」

こういう時に限って、なかなか頭がまわらない。
それに今、衝撃的なものを見てしまったばかりだから混乱しているのも当たり前だ。
恐る恐る、四元さんの方に視線を向ける。

___もちろん彼女の手にカメラはなく、眠そうに目をこすって大きくあくびをしているだけだった。
それを見てピンときた。
「えーと、二年四組からきた海野碧衣です!お題いきます、……夜寝る時間が10:00よりも遅いひと!」

言いきった瞬間、みんながわっと飛び出す。
わたしは目の前の男子がどいた椅子に飛び込んだ。
「ふーっ。セーフセーフ。」
クラスの八割程の生徒が移動していた。

中三にもなれば寝る時間も遅くなるものだ。
わたしだって動画を見たり、友達とメールしたり、ピアノの練習をしたりでどうしても寝るのが遅くなってしまう時がある。


なんだか気になってしまって、もう一度四元さんの方を見た。

さすがに席、移動してるから変わってるよね、と思ったのだがあろうことか彼女はまた移動していなかったのだ。

(……10:00よりも早く寝てるってこと?)

だが彼女はまた、ふわーっとだるそうにあくびをもらす。

確実に睡眠時間の足りていない顔だった。



…なんでもバスケットがつまらないのだろうか。
だから動かない……とか?






「スマホ持ってるひと!」

「カラオケが好きな子!」

「メガネかけてる人〜!」

「ジャニーズファン!」

「土曜ドラマ、お掃除探偵☆ルンバを見てる人!」

「ピアノが弾けるひとー」

ドカッと椅子に座る。

はじかれたのは……立松くんだ。

「え、また俺かよー!!」
おおげさに崩れる彼をみんなが指を指して笑う。
わたしはひとり眉をひそめた。

四元さんは一回も席を移動することなく、姿勢よく、しかしあくびを交えながら同じ席に座り続けていたのだ。

「おーし、じゃあ行くぜ!」



次こそは動くか…!?



わたしは前傾姿勢をとった。






「写真を撮るのが好きなひと!」


立松くんの口元にはかすかに笑みが浮かんでいた。
目付きはどこか挑発的な感じで。

わたしはすかさず四元さんの方を見る。


彼女はもう一度大きくあくびをすると「よっこらしょういち」といいながら立ち上がった。
そして立松くんの前までゆったりと歩み寄ると今自分が座っていた席に手のひらを向けた。

「写真が趣味な子…わたししかいないようなので、お座りください。」


3ヶ月前 No.2

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



「立松くん!!」


「ん?」


あれから無事に(?)なんでもバスケットは終わった。
そして、最後は立松くんがまた取り残されて、諏訪部先生がいきなり作った『三回座れなかった人は罰ゲーム』というルールに屈し、彼は一発芸をやった。
教室は凍えた。

午前中授業のためなんでもバスケットのあとはすぐに帰りのホームルーム。
今、みんな絶賛帰宅中だ。

去年も同じクラスだった菜月に一緒に帰ろうと誘われたが、「気になった人がいるから」と丁重にお断りした。
菜月は「マジかよ、一目惚れかよ」とつぶやいて、頑張ってねと帰っていった。

勘違いされているけれど、気になったのは事実だから。



「お前、えーっと、海野だったっけ?」
「そ。一度座れなかった海野碧衣。」
「一回ぐらいいいじゃねーか。俺なんて三回だぞ?しかも一発芸をやって超しけたんだぞ!?」
立松くんはまたおおげさに崩れる。
そしてすぐ起き上がるとズボンについたほこりを払った。
「で、何の用?一目惚れ?」
「まっさか」
わたしは即座に否定した。
こんなお調子者くん、わたしのタイプじゃない。
「…さっきのなんでもバスケット。よく分かったなって思ったの」

彼は急に真剣な顔になると、
「四元のことか」
とだけ言った。

そして自分のカバンを肩にかけるとスタスタと教室を出ていこうとする。
「え、待ってよ立松くん…!」
「ついてこい。帰るぞ」
「え」

彼は左右を見渡して少し声のボリュームを落としてから言った。

「ここじゃ話しにくい。」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「やっぱり海野も見えたんだ」

「うん。」

わたしたしは人気の少ない住宅街を歩いていた。
地区は違えど、わたしと立松くんは方向が同じだ。
周りに人もいないし、一緒に帰ってもとくに問題はない。
菜月に少し申し訳ない、くらいだ。


「四元さん、一回目のとき席動かなかったの。おかしいなって思ってたらそのままカメラ取り出してパシャっと……」
「…俺が見たのもそんな感じだ」

立松くんも“見た”というのだ。

わたしの他にも気づいてた人がいたとは…

「でも諏訪部先生なんも言ってなかったろ?」
「きっと先生の目を盗んで撮ったんだよ。」
「やっぱりそうなるかぁ。だから俺はカマをかけたんだけどね。写真撮るのが好きな子!って。…でも四元、隠そうともしなかった。」
「うん。普通に『写真が趣味な子はわたししかいないようなので』って言ってたよね」
「俺びびったわー。あんな堂々としてる子。初めて見た。」


ふいに立松くんが立ち止まった。

「俺んちここなんだ。…海野、もしよかったら明日四元に聞いてみない?」



わたしは即座に首をカクンと下ろした。








三年七組ははじまったばかりだ_____



3ヶ月前 No.3

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



翌朝。



起きるのが苦手なわたしが七時ピッタリに起きれるなんて滅多にないことだった。

いつもはわたしを起こそうと必死に声を荒げるスマホも、今日は叫びだした瞬間に止めてあげた。

「なに?碧衣?もう起きてるの?」
「うん。やべーよお母さん。昨日は初日から学校楽しすぎた。」
「あらぁー良かったじゃないの!じゃあとっとと顔洗いなさい」

自室から洗面所へと向かう階段をおりながらふと考えた。

学校が楽しすぎるのは嘘ではないが、今日早起きできた理由はそれではない。
___理由は他にない、立松くんと一緒に四元さんに事情聴取をするためだ。
実を言うと昨晩は、今日のことが気になって気になってなかなか寝付けなかったり……なーんて…。

冷水で冷たくなった頬にそっとタオルを当てる。
いつもよりも柔軟剤のいい香りがする気がした。


「おぉ!おいしそー!いただきます!」

目玉焼き。
コーンスープ。
サンドイッチをかじる。
コーンスープ。
サンドイッチをかじる。
コーンスープ。
目玉焼き。
コーンスープを飲み干す。
目玉焼きの黄身を割る。
サンドイッチをかじる。
目玉焼きをたいらげる。
サンドイッチも頬張る。

「おふぃふぉーはまえした!」
パチンと手をあわせてそう言ってサンドイッチを飲み下しながら二階へもどる。
今日も記念日。
今日は『はじめて朝食を五分で食べましたね記念日』だ。

「……碧衣ったら、そんなに学校に行きたいのね」
ドアを閉める直前、お母さんの不思議そうな声が聞こえた。













「おはよっ!四元さんは?」
教室のドアを開けながら声をかける。
開けながら言ったものだから、おはようといいながら誰もいない可能性だってあった。
けれども、彼はちゃんと教室に来ていた。
「まだ来てねえ。ま、待ち伏せって感じじゃねーの?」
「待ち伏せかぁ…」
荷物を棚にしまう。
しまいながら「なんだか刑事の張り込みみたいでかっこいいね!」というと立松くんは首をかしげながら「そうだな」と言った。
行動と言動がミスマッチだった。
彼には張り込みのかっこ良さが伝わらなかったらしい。

そこから十分たつと菜月が登校してきた。
教室に一歩足を踏み入れて、わたしと立松くんが二人で話してるのを見ると、光のはやさで教室を出ていった。
「お♪あの子空気読めるねえ」
「変なジョークはおやめください。…あとで誤解ないようにしとくよ」
「おう。そうしてくれるとありがたい」

そこからさらに五分。

ちらほらと生徒が教室に登校しだした。

「陽呂おはよー。」
「おー颯斗か。なんだお前昨日寝てないのか?」
颯斗と呼ばれた男子はへらへらと笑いながら力なく立松くんの身体を叩いた。
「えー?へへー?なんのことー?俺はちゃーんと寝てるってー」
「いや確実にやべーよ。酔っぱらいみたいだぞ。」
「仕方ないだろー。数学の課題終わらなかったんだからさあー」
そのとき、立松くんの動きが止まった。
「す、う、がくの…課題?」


そして止まった時は動き出した。


「うっ、海野!すまん、俺には数学の課題という使命ができた!四元は頼んだぞ!」
「お前、マジかよ!」
「本当ごめん!」

「分かったよ…」


彼は再び合掌して頭を下げると自分の机に座り、わしゃわしゃと引き出しを書き回してプリントを引っ張り出して解きはじめた。





3ヶ月前 No.4

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn







わたしは瞬きすらせずにじっと壁にかけられた時計を見つめていた。
教室はざわついている。

昨日結成されたばかりのクラスなのに、みんなもう半年以上たったみたいに馴染んでいる。

遠慮がちに振り返り後ろの席の子に話しかける者、去年と同じクラスの子どうしで固まって楽しそうにおしゃべりする者、そしてそのグループに声をかけて一緒にしゃべりだす者…

教室内は仲良しであたたかい感じがした。

が、四元さんが来ない。

待てど待てど、扉を開けて入ってくるのは別の生徒だ。
「立松くん、遅くない?」
「にーエックスたすろくエックスではちエックス……え?なんて?……ワイひくじゅう…」
「春休みあんなにあったのに課題終わらなかったとかお前それでも中三か!?受験生か!?」
彼は首をコクコクと動かして「アンダースタンド!」と叫んだ。
右手は止めずに。
わたしはため息をついて肩をすくめた。

と、その時チャイムが鳴った。
クラス中の視線が時計に集まる。
そして「またね〜」などと声をかけあって席につくのだ。

チャイムが鳴りおわる。

同時に扉が開いた。


「初遅刻しました」
わたしは唖然とした。
あんなに会いたかった四元さんが来たのにただただただただ唖然としていた。
「四元、さん…」
わたしが呼ぶと彼女は「あ、昨日の。海野さんおはようございます」とのんびり答えた。

彼女は遅刻したと言っていた。

ものすごく真面目できちっとしてそう、という四元さんのイメージは音をたてて崩れてしまった。

せっかくカメラのことを聞こうと思っていたのに、チャイムギリギリに来たせいでそんな時間も音をたてて崩れてしまった。









3ヶ月前 No.5

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn

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3ヶ月前 No.6

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★CjDjf0pcRt_hgs



そして四元さんは続ける。

「写真はただの趣味のようなものです。初めてカメラを手にしたのは四歳のときでした。誕生日に父にニコンカメラをいただいたんです」

「四歳でニコンって…おもちゃのカメラあげときゃいいじゃねーかよ」
「四歳!わたしもそのときにピアノ始めたんだよ!」

四元さんは立松くんの言葉はスルーしてわたしの言葉に「おなじですね」と答えてくれた。
スルーされた彼は平然な(…引きつった)顔をした。

「それからはどこへ行くのもカメラと一緒でした。楽しかったんです、自分が一度見た景色を一枚の紙に焼きつけてとっておくことができる。一発で写真の魅力にとりつかれました」
そういいながらカメラを撫でた。
たぶん、今もっているものは二代目、あるいは三代目だろう。
きっと彼女の家にはたくさんのカメラが陳列してあるに違いない。

「中学生になって学校にもカメラを持ち込むようなったんです。学校での写真、撮るの楽しいんですよ。先生にバレないようにやるのもスリルがあっていいんですよ」
「スリルって…」

四元さんはほほ笑んだ。

「話すことはそれぐらいです。楽しいから、なんでもバスケットのときもカシャっとやった、それだけです。」



わたしと立松くんは顔を見合わせてため息をついた。

脱力した。


スリルがあって楽しい?思い出を紙に焼きつけたい……。

ただのヤンキーじゃねえか!
と心の中でツッコみを入れた。

「わかった四元。諏訪部先生にはバレないようにしとけよ。あの先生、自分のクラスの生徒のことけっこう信頼するから…」

「…はい」

3ヶ月前 No.7

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



あれから、自然とわたし達は一緒に帰る流れになった。

道の途中、立松くんは同じ部活のメンバーを見かけたらしく、そっちの方に走っていった。
ラケットを背にかけていたからテニス部だ。

しばらく何か話してから、『こいつらと帰る』といったジェスチャーをしてきたのでわたし達も両手で大きく丸をつくって答えた。



…これで四元さんとふたりきり。

それからは本当に普通の話をした。

「海野さん、『碧衣』で『あおい』なんですね。わたしの名前、『碧』で『みどり』って読みます」

四元さん__碧は、生徒手帳に歩きながらもきれいな字で書きながら言った。

「へえ〜、碧って、“あお”とも“みどり”とも読むんだ!」
「紺碧、“こんぺき”とも言いますしね」

遅刻したり名札を変えなかったりと優等生イメージはかなり崩れ落ちたが、やはり彼女の頭は良さそうだ。
わたしは漢字が苦手だから尊敬する…

ひとつの漢字に多数の読みがながあるなんて、まず概念が理解できないのに。

「じゃあ改めて、四元さんじゃなくて碧!よろしくね、碧!」
「ここちらこそ碧衣。」
わたしはなんだか照れくさくなってえへへと笑ったが、碧は難しい顔をして地面を見ていた。
「…どうしたの?」
「いえ、少し考えていたんです。もしこれが小説かなにかだったら読んでいる方はそうとう見にくいでしょうね…と」
「しょ、小説!?」
「碧と碧衣、碧の漢字ばかり溢れて読む気失せません?」
「いや…よ、よく分からないです」

微妙な空気が流れた。

「実はわたしもよく分かっていないんです。」

碧は首を傾けた。

わたしは首を前に傾けた。



さっきからずっと思ってたことだが、彼女は会話のペースを掴むのがプロだった。
立松くんも持ち前の明るさと声のでかさとエンターテイメント性で話術には長けているが、碧の会話のペースを持っていくのはプロだった。
彼女は確実にプロだった。
なんというか、ツッコミが追いつかない感じで……。


「じゃ、碧衣わたしこっちなんで」
碧は敬礼をして角を曲がっていった。

カーブミラーにうつった彼女の姿が小さくなっていき、そしてフレームアウトした。

これも言い忘れたが、彼女のキャラも未だにつかめないままであった。










3ヶ月前 No.8

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=RjBS8XLyBn



始業式も終わり、わたしの最後の中学校生活がスタートした。

はじめから波乱の展開。

新しい友達。

受験生になるという自覚。

それでいて、少しのワクワク感。


家の前の公園に、取り囲むように並んでいる桜はもう散りかけている。

夏へ向けて、勇ましい葉を生い茂らせるためには可愛らしい花びらを振り落とさなければいけないのだ。

でも、うすいピンク色の花びらは枝からは離れても地面で生きていた。

わたしは家に入らず、公園へと入った。

「 わあ… 」

ベタな表現だとピンク色の絨毯…だろうか。

上から花びらは舞い、下も一面桜色。

そっと手を前に差し出すだけで、まばたきを一度すれば手のひらに春の雪がのっていた。

ただ、それはとけない。

とけないでわたしの手のひらの上にずっととどまる。

風に飛ばされないようにそっと手を握った。

その時、このうすいピンク色に既視感を覚えた。








ああ、碧のメガネクリーナーか…!




無意識に「 ふふっ… 」と笑みがこぼれた。

春の少しだけ眠たい気温。

来年、この気温を感じる頃にわたしは泣いてるのだろうか?それとも笑顔でいるだろうか?
















___考えてもそれは、まだ分からなかった。

3ヶ月前 No.9

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

【フィルム2 -白藍色- 】



「じゃあ二人からそれぞれ一言どうぞ」


始業式から二日目。
今日は学活の時間をつかって、学級組織づくりが行われた。

まず始めに、各クラス男女二名の学級委員を決めたんだけど…

男子の学級委員はお察しの通り立松くんが。
そして女子の学級委員がこれでもか!?ってほど決まらないの。
みんな少しうつむいて、諏訪部先生と目を合わせないようにするばっかり。
立松くんが困ったみたいに笑ってて、諏訪部先生はため息つくし、男子のなかには話し合いに参加しないで喋りだす人たちまで出てくるから……だから仕方なく手をあげた。


「し」

クラス中の視線がいっせいにわたしに集まる。


「…します、学級委員!」












そんなわけで、わたし達が学級委員となった。

なにか一言といわれ、必死になって文章を考える。
しどろもどろに、「えーっと、えーっと」を繰り返していると立松くんが小声で「しょうがねえなあ」と言って一歩前にでた。


___わたしはその時彼の横顔をはじめてまじまじと見た気がした。
彼は授業中や字を書くときや部活のときにしかメガネをかけない。
今がまさにその時。
なぜかわたしは、メガネを押し上げて一歩前に出た彼を瞳に焼きつけてしまった。

「んんっ。ごほん。えー、すっかり七組でお馴染みの立松陽呂です。この通り学級委員になりました。クラスの雰囲気が少しでも明るくなるよう、僕も持ち前のギャグセンスでどうにかしようと考えています。
ですが僕の欠点は、こうして喋りだすと止まらないことです。そんなときは……」

わたしを見た。


「あっ、わたしが立松くんを止めます!二人で中和させながら頑張るので、どうかよろしくお願いします…!」


頭を下げる。
ちらほら拍手がおこった。

「頑張ってー!二人ともお似合いだよー!」
昨日から事情を勘違いしている菜月がはやしたてる。

立松くんが調子こいて照れたふりして頭をかくもんだから、教室中が勘違いした。


「だぁかぁらぁあああぁ!違いますってばあぁああぁぁあ!」



そう叫ぶわたしを、

碧が、







またフレームに納めているのが、視界の隅に見えた___

3ヶ月前 No.10

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

碧はまた、なにくわぬ顔でカメラを制服の下にしまった。
今日も、彼女の制服の下には茶色のカメラケースが吊り下げてあるのだろう。

ちらりと隣を見る。

メガネの彼も気づいていたらしく「いいんじゃねーの?」と、肩をすくめた。

諏訪部先生はというと、学級委員の抱負も聞かずに自分の机に座り、自作のマスコットキャラクター『しずくちゃん』の絵を描いていた。
二頭身のしずくちゃんもなかなかのデザインだ。
それに落書きにしてはうまい。

…彼女は数学の先生だ。



「えー、聞いていただきたい」
立松くんの言葉がわたしを正気に戻す。
学級活動の時間に落書きして遊ぶ先生を感心の眼差しで見るなんて、正気を失っていたようだ。


「先生も…いいですか?」

「どうぞー」

先生の色鉛筆は止まらなかった。

「んんっごほん。実は早いことに、再来週から体育大会の練習が始まります。そこで来週に各競技の選手決めを行います。俺ら学級委員を中心に決めるんだけど」

わたしを見る。

「わっ、わたしたちだけじゃ決めるの大変だから、ある程度家で考えてきてほしい、です。競技は去年までと変わらないから…」

わたしも彼を見た。

「ってことなんで、よろしく頼んだ!」


みんなは了解の代わりに、再び拍手して答えてくれた。


再来週から、体育大会の練習がスタートする。

再来週はもう___五月だった___。
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「 お母さんどうしようわたし、学級委員になっちゃった! 」

「 まずは、ただいまでしょう? 」

「 ただいま、でね!立松くんって子と一緒なんだけどそいつがもうただのうるさいだけのバカ男子なの! 」

「 へーそーなの、ふーん。わかったわ、碧衣、まずは手を洗いなさい? 」

「 ばしゃばしゃ…わたし体育大会の応援リーダーもしたいのに、学級委員もするからどうしようかなって。」

「 そんないっぱいやるの?目立ち過ぎじゃない? 」

「 やっぱり? 」

「 目立ち過ぎると苦労するわよ。お母さんみたいにね。 」

「 うん…わかってるよ 」

「 出る杭は打たれる。頑張ってる子をよく思わない人たちも教室にはいるものよ 」

「 ……うん 」

「 さ!夕飯食べちゃおっか!今日はピーマンのピーマン詰めよ〜お母さん張り切って作っちゃった! 」


全然嬉しくなかった。

3ヶ月前 No.11

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs




体育大会の競技種目は大きく分けて三つだ。
○リレー、長距離走
○学年対抗種目
○ダンスと組体操

に分かれている。
学校全体が赤、青、黄の三つのブロックにわかれ、得点を競いあうオーソドックスな大会だ。


学年種目はそれぞれの学年ごとに違う競技をするものだ。
学年の先生が勝手に決めるので、変な競技になることもしばしばある。
わたし達は、
一年生のときに騎馬戦を、
二年生で馬跳びリレーをした。
今年は何をするかはまだ決まっていないらしい。

ちなみに先ほど変な競技になることもある、と言ったが去年の先輩方は縄跳びをしながらトラックを走るという地獄の競技をしていた。

違う競技であることを祈る。


ダンスと組体操は男女に別れて行う。
振り付けやフォーメーションも全部生徒が行うから地域の方々から大人気だ。


そしてそして、昼食時間のあとにある応援合戦、部活動対抗リレーも見所だ。

わたしは帰宅部だから応援しかできないけど、意外な部活動が一位になったりとすごくおもしろい。

応援合戦は、各ブロックから選出された応援リーダーが演舞やダンスで盛り上げる。

わたしはこれに立候補したいと思う。

……お母さんには反対されたけれども。



諏訪部先生によると、わたしたち七組は黄ブロックになるらしい。

再来週の練習から、はちまきが配布されるそうだ。

黄色のはちまき。

きっと向日葵のようにキラキラするんだろうな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


3ヶ月前 No.12

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs


あくる日の体育の授業のことだ。


グランドに並んで体育座りさせられたわたし達は、黙って先生の顔を見つめていた。

「…やりたいやつおらんとや?体育大会の応援リーダー。最後の体育大会だしやりがいあると思うんだけどなあ。」

腕を組んでそういうのは保健体育科の陽佐山先生だ。
先生は、がたいのいい体つきで高身長で、いかにも体育の先生らしかった。
熱血で、一見怖そうな印象だがいつも爽やかにニコニコ笑っていて生徒達ともよく馴染んでいる。

先生が本当は優しいというのは、最初の授業で学んだ。


言うならば、諏訪部先生を性転換した感じだろうか。
…失敬、おねえっぽいとかそういう訳ではない。
彼は実に男らしい先生だ。


「本当におらん?運動神経は関係ないぞ。やる気だけでいいんだ。やる気。」

先生の表情に焦りが浮かぶのが見える。

それもそのはず。
授業が始まって、応援リーダーが決まらないまま十五分が経過しているのだ。

「んーと…立候補が無理なら、仕方がない。多数決か全会一致で___ 」

わたしは、今にも天に突き上げそうになる手を必死に左手でおさえた。
ギュッと体育座りからさらに縮こまる。
もうすぐ五月なのに、腕にはふつふつと鳥肌が立った。








本当は、やりたい。








実は、
去年、一昨年と先輩方の応援合戦を見てきて、『自分が三年生になったら絶対応援リーダーなろう』と決めていたのだ。

しかし___


学級委員になったのに加えて応援リーダーなんて図々しいとか思われないだろうか。

出しゃばってる、と思われないだろうか。

点数稼ぎ、などと言われないだろうか。


わたしはそれが怖くて、どうしてもこの右手を挙げることが出来なかった。
お母さんに『出る杭は打たれる』といつも言われる。

下手に目立つことなく、かといってクラスにはきちんと貢献し、消えてしまわないように…

それこそがベストポジションだといつも教えてくれた。
それは、お母さんにもれっきとした経験があるからなんだと。
わたしはいつも自分の胸に言い聞かせていた。



挙げられない。

…挙げられない、挙げたい、挙げられない挙げられない挙げられない挙げられない挙げられない挙げたい挙げられない挙げられない挙げられない挙げたい挙げたい___!

向かいの校舎から、よく通る女の人の声がかすかに聞こえていた。

「 ここ……ぁ…プラス……で、…ぃ…たします。…と… 」


諏訪部先生の数学だ。









こんなわずかな音も聞こえるぐらい静かななかで、勇気をもって手を挙げるなんて。







わたしには出来なかった。



3ヶ月前 No.13

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

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(すみません、インフルエンザに侵されて更新できていませんでした。布団の中でさんざんネタを考えたのでこれからはきちんとします!)

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結局、その日の体育は、そのまま終わった。

陽佐山先生が困ったように苦笑いして「じゃ、気が向いたやつはいつでも俺のとこに来て」といい放ったのだ。

応援リーダーの立候補の締め切りは明日。
先生もこのクラスから誰かが立候補するなんて思っていないだろう。

…このクラスから誰も出なかったら、どうなんのだろうか?

隣のクラスから二人、出るのだろうか?


そんな疑問を抱えたまま、その後はみんなでバスケットボールをした。
その間も、陽佐山先生は難しい顔をして、三年七組の出席簿を眺めていた。


なんとなく、胸が痛んだ。











「碧衣、なんで手挙げなかったんですか?」
着替え中、体操服をたたみながら碧がそう問いかけてきた。
「え?」
「だって明らかにやりたそうにしてたじゃないですか。碧衣がしなかったら誰がするの?立松はできないんですよ」
「……でも」

こういうのは本当、立松くんが適任なんだけど男子学級委員は各ブロックの点数の集計係やスターターや審判などの仕事も兼ねているらしく、男子学級委員は応援リーダーに立候補できない決まりになっていた。
女子の学級委員は、怪我人の救護程度で、立松くんたちのような仕事はないから、応援リーダーに立候補するのも止められたりはしない。

「でも、」
「でも、何ですか?」

わたしは首をふって「やっぱり無理だよ…」とつぶやいた。

制服に頭から突っ込み、ズボッと腕を出す。


「…わたしのお母さんね、中学生の頃生徒会長してたの。」

碧は突然話しだしたわたしに、着替える動きを止めて向き直った。
腕だけ制服に突っ込んだ、真っ白い下着がわたしの目の前に現れた。
いや、制服着てほしい。
目のやり場に困る。
碧はもぞもぞと制服を着た。

「女の生徒会長ですか。珍しいですね」

バチバチという静電気とともに碧が顔を出す。


「…うん。そう。ただでさえ珍しいのにお母さんすごく仕事できる生徒だったみたいなの。他の人がてこずってる間に仕事を十個片付ける、そう言われてたって」

「…ヤリ手の女社長みたいですね」

「だから余計目立っちゃって。クラスでも、話し合いの場では気がついたら司会みたいになってて、よく発言もするほうだったって。先生たちからも期待されてて、後輩からは憧れられて同級生とも仲良くしてた。自分のお母さんをこんな言うのは変だろうけど、模範生みたいな人だと思う。
でも、でもね、そういう人がみんなから好かれるかって、そうじゃないみたいなの」

「わたしはちょっと嫌いですね、その“何でもデキル女”って」

「そうなの。碧の考えは正常だよ。お母さんのクラスの人たちもねあんまりよく思わなかったみたい。
『先生の前でだけ』『点数稼ぎ』『いい子ぶってる』『真面目は面白くない』『出たがり』『目立ちたがり』『女なのに出じゃばってる』『欠点ないのもつまらない』って、嫌でも耳に入ってくるって。だからお母さん、いつもわたしにしつこく言うの。
『出る杭は打たれる』ってね。
わたしためらっちゃうんだ。学級委員もしてるのに応援リーダーも立候補して…みんなに何て思われるか____」


カチリッッ




ジージーーーー



カチリッッカシッ



古いカメラのシャッターをきり、フィルムを回したような音が聞こえた。

ような音というより、そのままの音だ。


「…碧!?」
「今のしょんぼりとした顔面白いんで撮っちゃいました。あ、これ一代目のカメラです。父にもらった」



消せ!
わたしのしょんぼりした顔消せ!
と怒鳴ったが碧は平然と「これデジタルじゃないんで」と言った。
怒る気にもなれなかった。

「現像するんで、お楽しみに」


2ヶ月前 No.14

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★CjDjf0pcRt_hgs


碧は首をかしげて言った。
その顔は純粋無垢そのもので、裏があるような気がしなかかった。


「したいなら、したらいいじゃないですか。」

と。

だからわたしは、はじかれたように教室を飛び出した。
教室を出る直前に、菜月が「チャック!チャック!チャァァァックー!」と叫んでいたので階段を下りながら手さぐりでチャックを止めた。
止まらなかった。
ジタバタしながらチャックを止めていると、階段の上から「どうしたんだ?」と声が降ってきた。
陽佐山先生だった。

「見てのとおり、チャックが……」
「…そうか」
「はい」

先生は「俺手伝ったらセクハラだからな。がんばれよ」と言ってわたしの横を通り過ぎた。


そこからさらに一分かけてようやくチャックを止め終えたわたしは階段を再び上って_________

違う!!!



「陽佐山先生ーっ!!」

職員室の扉を振るえる手でノックする。
ノックは三回だ。

「三年七組の海野です……!」

三年教員の机でパソコンを叩いていた諏訪部先生が顔を上げる。
そして自分を指さして「?」と首を傾げた。
わたしは胸の前に手をあげて首を横に振った。
諏訪部先生は次は陽佐山先生を指さして首を傾げた。

わたしはひとつ息を吸って大きくうなずいた。


諏訪部先生が陽佐山先生の肩を叩く。
先生が振り向く。
わたしを指さす。


ひとつひとつのその動作の間、わたしはずっと緊張していた。

足が、震えていた。


2ヶ月前 No.15

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs



陽佐山先生はわたしの元に小走りでやってきた。
後ろ手に扉を閉めた。
諏訪部先生の姿が見えなくなる。

「どうした、海野?」

わたしは制服のプリーツをキュッと握った。
尋常じゃないほどの手汗だ。

「あ…わ、わたし…」
「ん…?なんだ?」

長身の先生が、かがんでわたしの顔をのぞきこむ。

ちらりと顔を上げると目があった。
あわてて視線を左下にそらす。



  “応援リーダーになりたいです”



それだけなのに、その一言がなかなか言えなかった。


『したいなら、したらいいじゃないですか。』という碧の言葉がもう一度聞こえる。
でも、そんな簡単にできることじゃなかった。

ここまでなんだろうか…

結局わたしは、弱虫なんだろうか。

先生は何も言わずにわたしを目を見ていた。
先生も応援リーダーの話だ、と勘づいているはすだ。
それなのに何も言わないのは、黙っているのは、わたしの口から言葉が出るのを待っているからではないか?
そう思った。

そうだ。

わたしが自分の口で言わないといけないのだ。

もうわたしは、三年生なのだ。

成長した心と身体には、十四年分の勇気が備わっているはずだから。

いけ、碧衣_____!
チャンスは今のみだから!




「わたし…三年七組の応援リーダーになりたいです___!」















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「えー、んんっごほんっ。聞いていただきたい」
立松くんの言葉に、教室が静まる。
怖い顔をした裁判官が「静粛に」と言ったときみたいだ。
リーガルハイでしか裁判を見たことはないが、たぶん、こんな感じなんだろう。

帰りのホームルーム。
今日のホームルームは、先日の学級委員会で発表された内容をクラスのみんなに伝える時間に当てられた。
内容とはズバリ、体育大会の学年種目のことだ。

「皆さん知ってのとおり、今年の学年種目はーっ……!」

彼は軽快に、チョークをガガガッと走らせた。
黒板には、男にしてはきれいな達筆な字で「大縄跳び」と書かれている。

これが、今年の三年生の学年種目だ。


突然の発表にみんな「えー」とか「あー」とか「うー」とか言っている。
「えー」以外は賛同ということだろう。



ちなみに諏訪部先生はすっかりはまってしまった自身の二頭身イメージキャラクター
、しずくちゃんを描いていた。


【学級委員のお話】<【しずくちゃん】
のようだった。

これはあってはいけないことだ。
早急に教育委員会に訴えなければ。



2ヶ月前 No.16

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs


立松くんはそんな先生を一瞥すると、かすかに肩をすくめた。そして続ける。

「みんな知ってると思うけど、明日からもう五月に入ります。体育大会まで数週間です。」

みんな、真剣に彼の話を聞いていた。
その瞳には「本気」という文字が見えた。

「黄ブロックの僕たちは、隣の六組と協力することになります。」

立松くんの説明にも自然と熱が入る。

わたしは、彼の隣に立って黙っていた。
今の主役は彼だった。
そして、つくづく思う。

____そうだ。
みんな「本気」なんだ。

これは、最後。最後の、体育大会だから…。

「ですが!!覚えておいてほしいのは、同じブロックとしてはお隣の六組は仲間かもしれない。でも、本当の仲間は俺たち、七組だけだってことだ!!リレーで六組に抜かれたらどう思う!?同じブロックだから点数は入る。仲間だから!でも!それでいいのか!?」

みんなは拳を突き上げて「ダメ!」と叫んだ。
女子も、男子も。

「そう!ダメ!六組が一位でゴールしたら、そりゃヒューヒュー言って拍手するよ。だって仲間だから。でも、俺は七組のみんなに点数を入れてほしい。これはリレーに限らず大繩でもだ。」

彼はそこで一息ついて、いきなり頭を下げた。

みんなの視線は、完璧に立松くんに向いていた。
諏訪部先生ですら、色鉛筆を置いて彼をみていた。
教室は静かだった。

「だから、みんなで協力しあいましょう。よろしくお願いします」

教室は、まだ静かだった。


わたしは手をそっと胸に当てた。
尊敬する。
クラスのみんなを前に堂々と話す彼は、演説台で堂々とふるまうヒトラーかオバマ大統領のようだった。

応援リーダーに立候補するのに戸惑っていたわたしとは大違いだった。

その時、ちらりと彼がこちらを見た。
ドキリとした。

でも、応援リーダーに立候補したわたしは、少しだけ変わっていた。
十四年分の勇気にほんの少しだけ利息がついていた。

わたしも習って頭を下げる。

「わたしも。応援リーダーとして、学級委員としてみんなを支えます。がんばりましょう…!」


一瞬の間の後。

拍手と歓声と笑顔で教室は包まれた。

これは、イス取りゲームのときから思っていたことだが____
このクラスの団結力は並大抵のものではないなとつくづく思う。

このクラスなら。

成功すると、


このクラスなら。

卒業するときも後悔しないなと、

つくづく思う。







体育大会まで、ほんの数週間だ。



いま、わたしの目に映る世界は、おおげさなほど、カラフルに色づいている______ 。





2ヶ月前 No.17

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs


それからの日々は瞬く間に去っていった。







体育の授業は全て体育大会の練習になった。
放課後は応援リーダーの練習で潰れた。
否、潰れたというのは適当な表現ではない。___応援リーダーの練習に励んだ、だ。
六組の応援リーダーの人と仲良くなれるかが少し不安だったが、すぐに打ち解けられた。

六組の応援リーダーである彼の名は、茅野くんといった。

彼は六組の応援リーダーにして、黄ブロックの団長を務めるらしかった。
身長が高くて短髪の彼はニコッと微笑んだだけでそのへんの女子を「オトシソウ」な勢いだった。
つまりかっこいいのだ。
……わたしのタイプではないが。





「茅野?すっげーいいやつだよ。男でも惚れるぐらい。」
クラスの男共はみんな口を揃えてそう言う。
まあ納得した。
いや、わたしのタイプではない。

立松くんは、
「茅野?俺と同じテニス部だよ。颯斗には負けるけどかっこいいし頭もいいんだよなあいつ。ただ、テニスは少し下手。」
と言っていた。
ちなみにクラス、学年でも一位のイケメン赤沢颯斗くんは、
「茅野かっこいいよなぁ。俺もああなりたい、憧れるよ」
とつぶやいた。
謙遜の気持ちは恐ろしいと思った。




そんなこんなで、一、二年の黄ブロック応援リーダーの人とも協力しながら演舞やダンスといった練習を続けた。

茅野くんともとても仲良くなった。




そして先日、学校からクラス宛に黄色いはちまきが配られた。
諏訪部先生が、とても上手な英語の筆記体でひとりひとりに名前を書いて渡してくれた。
(何度もいうが先生は数学科)
真新しい黄色いはちまきは、思った通り、太陽の光を受ける向日葵みたいだった。


教室にある日めくりカレンダーはどんどん落ちてゆく。

数字がどんどん大きくなる。

教室にある室温計の示す数字もどんどん大きくなっていった。






気がつけばもう、五月三十一日は目の前にせまっていた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



体育大会の前日は全部活動生が総出で準備を行う。
そのため、給食を食べたら帰宅部の生徒は下校となる。
わたしは帰宅部なので、申し訳ない申し訳ないと口でいいながら笑顔で帰る支度を進めていた。

その時チャイムがなる。
帰りのホームルームだ。

諏訪部先生の「いよいよ明日が待ちに待った体育大会ですね!」というお話を聞き流し、ぼんやりと外を見ていた。
明日、か。
みんな言うことだが、本当にあっという間だったと思う。
そう考えるとやはり卒業もあっという間に、
「なので四元にお願いしませんか?」
ん?
「いいねー」
「プロみたい!」
「かっこいい〜」
「写真部入ればいいのにね。」
「あれとかもろプロやん!アングルとか」

突如ざわつきだした教室に、わたしは窓から視線をはずしクラスへと視線を戻す。




口が開いた。





教卓の前に、立松くんと碧がいたからだ。
しかもなんか、はにかんだ顔の。

口がさらに開いた。

黒板には、今まで碧が隠し撮りしてきた写真がずらりと貼ってあったのだ。

勘のいいわたしはとっさに『なので四元にお願いしませんか?』の意味を理解した。

だから慌てて諏訪部先生の方をみた。
先生は微笑んで人差し指を薄い唇にそっとあてて言った。

「このクラスだけの秘密ですよ?」

と。

先生も、理解していた。
先生はとても空気の読める先生だった。
わたしは全身の力が抜けた。


……ほっとしたからだ。
先生に怒られたらどうするつもりだったのか、立松くんの度胸には感心して呆れる。

教卓に目を向けると碧と目があった。
彼女はニヤリと笑ってガッツポーズをとった。
わたしも同じことをした。

そして碧は隠す必要のなくなったカメラを堂々と掲げた。
そして言うのだった。

「全ての思い出はここに記録します…!」

と。

2ヶ月前 No.18

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★CjDjf0pcRt_hgs



こうして、碧のカメラの存在は三年七組の中だけで認められたのだ_____。





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五月三十一日。
快晴。




吹奏楽部の素敵なファンファーレとともに、体育大会が幕を開けた。

選手宣誓では鼓膜を激しく震わす各ブロックの団長たちの声が響いた。

茅野くんの声が一番大きかったと誇りに思う。

ラジオ体操。

ラジオ体操のピアノが上手すぎて、わたしはいつもピアノだけを気にしてしまう。
わたしもいつか弾けるようになりたいな、と思うのだが、発表会でラジオ体操第一を演奏する自分を想像するとかなり萎えるのでやめた。

校長先生のお話。

行事ごと大好きな校長先生はいつもと違って手短にお話をすませた。
早く競技にうつってほしい、とのことだった。

陽佐山先生から競技上の注意があって、そしていよいよ競技だ。


最初の競技は「男女混合リレー」だった。
いわゆる普通のリレーのことなんだけど。

わたしは応援席に座ってひたすら叫んだ。
わたしが一度「がんばれー!」をいうのと同じくらいのペースで、碧はシャッターをきった。
それも巧みな技術で、ハンドタオルを上手に使って先生の目を盗んで撮りまくってるようだった。
尊敬する。
いや、しない。

次の競技は長距離走。

これには、バスケ部である菜月が出た。
一キロを走り終えて彼女は、呼吸を整えながら「立松に…アピールしろよ…、応援したら、いいよ…」と。
いつまで勘違いするつもりだろうか。
立松くんはわたしのタイプじゃないって言ったらタイプじゃないんだ!!

そして、一、二年生女子のダンス男子の組体操、学年種目、障害物走と続いて、
お昼休憩となった。

教室でお弁当。
いつもは給食だから新鮮だった。

菜月が「立松の隣にいけよ〜」とか言っていた。
もちろん、ていねいにお断りした。







パチン、とおはしをしまってここまでのことを思い返す。
校長先生のお話から、三分しかたっていないように感じる。
あっというまだった。

この後は、部活動対抗リレー、そして応援合戦だ。
昨日家で、演舞の確認をしたし喉のコンディションもバッチリだ。
あとは、時間が来れば、黄ブロックが優勝する時間が来れば、それで完璧なのだ。

「碧衣〜、見ます?写真。立松のもありますよ」
「いらん!見らん!」
「菜月さんが碧衣に見せてやれというので。」
「あいつっ」
「ほらほら、このゴール瞬間のけっこういい感じに撮れてます」

わたしはため息をついた。

2ヶ月前 No.19

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs




「ただいまより、閉会式を始めます。…気をつけ、礼。」

放送部の大人びた声が運動場中にこだました。
合わせて気をつけ、礼をする。


____わたしたち黄ブロックの応援合戦は大成功した。
とくに来賓の方のうけがよく、これは間違いなく優勝だろう。
部活動対抗リレーは、男子運動部のブロックで立松くんたちテニス部が一位だった。
碧は立松くんが走るところを逃さず撮っていた。
わたしは「撮っても見ないからね」とできるだけ冷たく突き放しておいた。

「プログラム一番、成績発表。教頭先生お願いします。____姿勢、礼。」

白い朝礼台に、教頭先生が上がられる。
わたしたちの背筋も伸びた。
ふいに風が吹き、みんなのはちまきがパタパタとはためいた。

「…えー皆さん、今日はよく頑張りました!各ブロック団長を中心としてよくまとまり協力していたと思います。……それでは、結果を発表します…」

わたしはうつむいた。
下を見て、グランドの砂にうつる自分の黒い影を見つめた。

「第三十九回体育大会総合優勝は____!」















ものすごい歓声がすぐ隣で聞こえた。


視界の右端で、青色のはちまきが跳び跳ねているのがうつった。








結果として、わたしたち黄ブロックは総合優勝を、逃した。
応援合戦は優勝した。
実質、二位ということだ。

わたしは二位でも充分だと思ったがみんな目に涙をうかべて、それでも無理矢理笑顔をつくっているように見えた。


それを見ると涙が出そうになった。
でも、一人だけ泣くのは恥ずかしかった。
だからわたしは顔を上げた。
ありがちな表現だと、雲ひとつ空は絵の具で色をつけたように鮮やかだった。
こうゆう色をなんと言っただろうか。
白に近い、微かな水色。

白藍、と言ったっけ。


白藍色の空は今の黄ブロックの雰囲気に似合わぬほど美しかった。


「お疲れ様。」
立松くんが歩いてきて微笑んだ。
碧も菜月もこちらを見ていたがなにもしなかった。
わたしは涙を見られたくなくて、はちまきを目隠しみたいにした。
「立松くんこそ、お疲れ。男子学級委員だし忙しかったでしょ?…っ!!」
瞬きをした瞬間に、溢れてしまった。
はちまきの隙間からポトリと涙がこぼれた。
「…海野?」
「………。」

そのとき、彼は無遠慮にもはちまきをそっと取り上げた。
衝撃で涙がぼろぼろこぼれた。
「やっ、やめて…」
反射的に顔を隠す。
泣いている顔を見られる時ほど恥ずかしいことはない。

立松くんは、ふっと目を細めてわたしの体操服の裾を引っ張った。
そして今自分が来た道を引き返しはじめた。

「…っ、え!?」
「見て」
トンと背中を押される。


そこからは技術科倉庫の裏のわずかな隙間が見えた。
「…茅野くん?」

彼は体操帽子と黄色いはちまきを地面に投げ捨てると、そのままコンクリートの壁を叩いた。

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!ちくしょう!!!なんで、負けなんだよっっ!あああああぁ!」

その大声に圧倒されて思わず退いた。

そんな大声でも、技術科倉庫のまわりはコンクリートで囲われているためその声は校舎には届かないだろう。

茅野くんは、その場に座り込んで、地面を拳で一度殴ってから泣き喚いた。

わたしの頬にもまた涙が伝った。


二位でも充分と思った自分を恥じた。





きっと、二位じゃダメなのだ。
一位じゃないかぎり、“敗け”なのだ。




後ろから立松くんがそっと肩を叩いた。

「あいつでも泣くんだ。あんなに強い男でも。最後の大会なんだから、泣けよ」



彼は「じゃ」と言って去っていった。

泣けといっておきながら、泣いてるところを見ないように去っていったのだろう。

わたしも、もう一度茅野くんの背中を見て、涙を体操服で乱雑にぬぐって走った。







2ヶ月前 No.20

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

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2ヶ月前 No.21

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs

【フィルム3. ー若葉色ー】






むわっとする春の気候は過ぎ去り、夏がすぐそこに来ていた。
体育の授業のあとなんかには、たまに扇風機が回っている。

三年七組の教室の壁には、
『応援合戦優勝ーー黄ブロック』
と書かれた金色の賞状と、碧が死ぬ気で撮りまくった写真が並べて貼ってあった。
この教室を訪れる他のクラスの先生はここの壁を見て、「誰が撮ったんですか?上手ですね」と問いかけていた。
諏訪部先生は全く表情を乱さず、微笑んで「わたしが撮ったんです」と言っていた。
碧は悔しそうに地団駄を踏んだ。

他の先生にばれる訳にはいかないから、仕方がないでしょう。
そう言っても碧は、「わたしが撮ったんですよ?わたしですよ?」と地団駄を踏み続けた。
じきに床が抜けそう。








「…なあ海野?」
突然隣から声がした。
六月に入って席替えをして隣にいる立松だ。
(立松くん立松くんと言っていたが彼のために六文字の労力を使うのがもったいなく感じたため立松になった。)
「なに?」
「テストって何のためにするの?」
「はっ?」
「テストっているの?」
「……。」
確かに考えたことはなかった。



体育大会が終わると、先生たちはすぐに期末テストへと切り替えてきた。
生徒たちがダラダラ大会を引きずる間に問題を作成し、受験生という自覚を持たせ始めたのだ。
地獄だった。

期末テストは来週。
さすがに受験生なので、一週間前となれば昼休みも教室で勉強する人がほとんどだ。
ちなみに碧は、「最近中庭にニャンコが来てるんですよ〜」とカメラをポケットに入れて出ていった。
彼女はアホだけど天才なのできっと勉強しなくても大丈夫なのだろう。
…大丈夫だと信じたい。

立松はさっきから連立方程式と格闘していた。
わたしは数学が得意____ではないので、とりあえず彼を励ましておいた。
「なんで!?代金がマイナス円になるんだけど!これじゃあクーポンもらえるやん!」
とか言っていた。
そのギャグセンスを勉強に生かしてほしいと思った。


わたしは社会の問題集をといていた。
何気なく前のページを見た。

ロルマントン号事件、と書いてあった。

あ、立松のことバカにできないな。と思う。

そして隣をちらちらと見ながら、ノルマントン号と書き直した。

2ヶ月前 No.22

アヤメ@空想爆裂ガール @2001010111 ★Smart=OVSj4StEGs




「…で、テストの出来はどんな感じなんですか?」

期末テストを終えた帰り道。
テスト期間中封印されていた部活動が解禁され、グラウンドが賑わい、校舎には吹奏楽部の音楽が響き、体育館から威勢のいいホイッスルが聞こえだした。
わたしと碧は帰宅部なので、活気のもどった学校をそろって後にした。

「まあまあ、かな。社会が外れたんだよ、勉強したところ全く出なかったの」
「部分的に勉強するからでしょう。全部覚えてしまえばよいのです。」
「無理っす」
全部ってなんや、全部って。
昼休みはずっとニャンコを撮りにいっていたくせに碧はだいぶ自信があるようだった。
こうゆう奴を天才というのだろう。

「碧いつ勉強してるの?わたしが見てる範囲では全然してないよね?」

碧は歩き続ける自分の足を見て、少し考えてから答えた。

「…確かに。いつしてるんでしょうか。」


わたしは彼女の頭を叩いた。

「いたい、いたいですよー碧衣。脳細胞が悲鳴をあげています」
「このやろっ!このやろっ!このやろぉ!」

彼女の脳細胞が少しでも死んでほしくて、ポカポカ叩いた。

「いて、いてて、だいたい授業聞いてたら勉強なんていらないですよね?……あれ?碧衣?どうしてそんな目をしてるんです?」




そこからまたわたしのポカポカ攻撃がはじまったことは、言うまでもないだろう。

1ヶ月前 No.23
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