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Re:ココロの扉

 ( 小説投稿城 )
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東野 ★Smart=xwaNUGoqUr

三年振りに読み返していたら、もう一度しっかりと書き直してみたくなったので、勢いで立ててみる。

どうもこんにちは、久し振りってレベルじゃねえぞ!
東野ナリアと名乗っていた者です。
恐らく覚えている人は居ないんじゃないかと思います。
この三年間で成長したことと言えば、ネカマを卒業したことくらいです。(軟弱な脳で必死に喋り方真似たり頑張ってたんだって!)

ということで、三年の年月を経て、もう一度、この黒歴史だらけのメビウス掲示板でココロのトビラワールドを展開することにします。
目標は過去スレに行かないことです。
(思春期の男子学生は忙しいんや…仕方ないんや…)

というわけで、メビウスの神様、かつての読者様、何卒もう一度、宜しくお願いいたします。

メモ2017/02/04 16:37 : 東野 @higasikktb★Smart-Ym1H1zIpTv

http://mb2.jp/_sst/17026_1.html#S74

↑3〜4年前に書いた原作。

盛大なネタバレ&黒歴史の塊なので閲覧はお勧めできません。

原作が進んだところまで追いついたら違いを探すのもありかもしれない(数年はかかる気がする)


【現段階での登場人物、設定(ネタバレがあるので本文を読んでから閲覧下さい)】

2017/2/1 21:40現在


●ユリス

国立魔法学園の初等部六年。

何度も見ている不気味な夢に悩まされている。

基本無表情、無感情(こうなってしまったのには、何か理由があるらしい)。

サウリは唯一の友達。


●サウリ

同じく初等部六年。

友人のユリスとは寮が違うが、たびたび小鳥の姿になって迎えに来るらしい。

しかしその変身魔法には欠陥があり、名前を呼ばれると元の姿に戻ってしまう。

明るい性格で、誰とでもすぐ仲良くなれる。


●シャルロッテ

ユリス達のクラスの転入生。

小学生には見えないほど大人っぽい容姿をしている。

遠い国から来たらしく、片言。

クラスメイト達の事を「センパイ」と呼ぶ。

ユリスが受けている虐めに腹を立てている。

魔法が上手い


●カイ先生

保険医。老若男女問わず人気が高い。背が高く、強そう。

…続きを読む(19行)

切替: メイン記事(16) サブ記事 (29) ページ: 1


 
 

東野 ★Smart=xwaNUGoqUr

…ここは何処だろう。
ぽつん、と。
暗闇の中に一人、私は立っていた。
灯りは一筋も見えない。
虫の羽音も聞こえない。
その静かで孤独な空間で、私は自分の呼吸音と、跳ね上がる心臓の音と共に居た。
頭はぼんやりとしている。はっきりとしないその意識は、これが現実ではないことを薄っすらと告げている。
一体なぜ自分がここに居て、どうしていたのかは分からない。
知りたいことは山のようにあるが、それを教えてくれる相手は存在していなかった。

途方に暮れていたその時、微かにだが、人のもののような声が聞こえた。

「誰か、いるの…?」
そう問うてみる。が、応えは返ってこない。それらしい姿も見えない。
その声はどうやら、同じ言葉を何度も、何度も繰り返し言っているようだった。
同じような音の強弱が聞こえては消え、また聞こえては消え。
一度聞こえ出したその声は、黙る気配を見せなかった。
何と言っているかは、何故か分からない。しかしその声は、私の耳から入り込み、脳のなかをぐるぐると駆け巡り、脳味噌をすすずり、こびり付いた。それは意味の分からない魔法の呪文のようで、しかし何処か聞き覚えのあるような音。
これはなんだろう。
ああ、もう少し、あと少し考えれば、これが何なのか分かる気がする。
その言葉の意味が、喉奥まで出かかったその時。
私の頭に、突然激痛が走った。
例えるなら落雷、落石、鉄骨がいっぺんに頭の上に落ちてきたような、割れるような痛み。
私は、堪らず断末魔を上げた。
「うぐああああああああああああ!!!!!!!」

4ヶ月前 No.1

東野 ★Smart=xwaNUGoqUr

【第一章 心の鎖】
『リス………ユリス』


「!」

「____はあっ、はあっ、はあ…」
息は荒い。まるでサウナにでも入ったかのように、大量の汗をかいている。そして、ドクン、ドクン、ドクンと、警告のように激しく脈打つ心臓の音。
私は、恐る恐る、周りを見渡した。
…眩しい。窓からは、優しく暖かい陽の光が差し込んでいる。いつもの、私の部屋だ。
「夢…」
そう呟くと、安堵の溜息が漏れる。
良かった、あれは現実じゃなかったんだと思うと同時に、私は またか、と頭を押さえた。

あの妙にリアルで、気持ちの悪い夢を見るのは、初めてじゃない。
今回で十回目だ。
見る度に寿命が縮みそうなあの夢は、回数を重ねるごとに、見る日の間隔が短くなっていた。
初めて見たのは一年前、次が半年前、その次は二ヶ月前、というように。
そのうち毎日があの夢になるのではと考えると、身が凍る思いだ。
(どうしたらあの夢、見なくなるんだろう…)
今度は安堵ではなく、不安な思いが沢山詰まった溜息をつく。
そう、私が考え込んでいると。

「ユリスー!朝だよ朝ー!遅刻しちゃうよー!」

4ヶ月前 No.2

東野 ★Smart=xwaNUGoqUr

その時、窓から銀色の綺麗な翼をした小鳥が入ってきた。
「…おはよう」
私は別に、小鳥と話せる特殊な能力を持っているわけではない。
サファイア色の小さな瞳を見つめて、私は単調な声で告げた。
「起こしに来てくれるのは有難いけれど、見つかったら怒られるわよ。…サウリ」
そう名前を呼んでやると、ポンッと音を立て、たちまち煙に包まれた小鳥は、少女の姿になった。
「えへへ、だって、待ち合わせの時間過ぎてもなかなか来ないんだもん、つい…」
そう照れながら言う、彼女の名はサウリ。この魔法学園での、私の唯一の友達だ。
「…校内で許可なく魔法を使うのは校則で禁じられているし、自分の所属していない寮への入室も基本厳禁。
そんな中で使った魔法も、真名を呼ばれたら元の姿に戻ってしまう欠陥魔法って…これが先生方にバレたらどうするのよ、私にまで責任がかかるんだけど」
そう冷たい声で言う私に、サウリはぷくーっと頬を膨らませて反論する。
「ちょ、ちょっとお!そんなリスクを背負ってまで迎えに来てあげたサウリちゃんに向かって!そこまでボロクソ言わなくても良くない!?」
「…声、大きいんだけど。先生方に気付かれるわよ」
私が慌てて通告すると、案の定、廊下から小走りでこちらに向かってくる音が聞こえた。
「わ、やっば…じゃあ、寮の入り口で待ってるから!できるだけ早く来てね!」
サウリは再び小鳥に変身すると、窓から飛び去ろうとする。
その後ろ姿に背を向けた私は、振り向いて小さく声をかける。
「ありがとね、サウリ」
「お〜っ、なになに、ユリスったら、もしかしてデレ…って、なに名前呼んでんのさああああぁああ〜………!」
魔法が解けたサウリは、盛大に音を立てて、芝生へと落ちていく。

その光景を見た私は、いつもの無表情のまま、口元だけ動かして微笑んだ。

「…さて、出かける用意、しようかな」

4ヶ月前 No.3

東野 ★Smart=xwaNUGoqUr

十分後。
支度を終え、待ち合わせ場所に着くと、サウリが待ってましたと言わんばかりの笑顔で、手を振って迎えてくれた。
どうやら、先生には見つからずにすんだようだ。
「もー、おっそいよー、ユリス!」
「ごめんなさいね、今日見た夢のこと考えてたら、手が止まっちゃって」
「夢って…もしかして、例の?」
私の顔を覗き込んできたサウリは、眉を潜めた。夢の内容は、既に話してある。
「ええ…取り敢えず、歩きながら話さない?授業始まっちゃうし」
「う、うん…」
腕時計を確認すると、朝のチャイムの時間まで、あと十分を切っていた。
寮から学園まで徒歩五分、七階にある教室に着くまで三分程度。
夢は勿論、遅刻の言い訳にはならない。
のんびりしている時間は無かった。
私達は小走りで歩きながら、話を続ける。
「ねえユリス、私、やっぱりあの夢、なんかおかしいと思うんだ…先生とかに聞いたら、何か分からないかな?」
「そんな質問したって、ここのお堅い先生方には、きっと鼻で笑われるだけよ。たかが夢なんだから、って」
心配そうな表情のサウリとは対照的に、私は淡々とした口調で告げた。
そう、たかが夢だ。現実じゃない。だから、何も心配することはない。
ただ、それだけだ。
「でも…でもさ、ユリス。もしもってことはあるかもしれないじゃん。呪いとか、予知夢とか…」
それでも、彼女は何処か引っかかるところがあるようだった。
「まあ、何かあったら、その時はその時じゃないかしら」
私は少し苛立ちを覚えた声でそう言って、歩く速度を速める。この話を続けるのが億劫だったからだ。あの夢は思い出していて、少しも心地いいものじゃない。
…それに、私は、自分がどうなろうと、どうでもよかった。

「ユリス、何かあった後じゃ、遅いんだよ…」
サウリがそう呟く。見ると、きゅっと唇を噛み締めている。白くて細い手が、小刻みに震えているのが分かった。
「私、私、ユリスに何かあったら…」

「…」
私はその手をそっと握ってやる。
「…大丈夫だから」
と、小さく呟き返して。
友達思いの彼女は、頷くと、強く握り返してきた。

そうして無言のまま、私達は昇降口に入って行った。

4ヶ月前 No.4

東野 ★Smart=Ym1H1zIpTv

【番外編 ゆく年くる年(前編)】
※前回の更新の内容とは全く繋がっていません。パラレルワールドとして楽しんでいただけたら幸いです。


「…さむ」
凍えるような寒さで、目が覚めた。
周りを確認する。いつも通り。寮にある、私…ユリスの部屋だ。
次に、掛け時計を見る。長針は11を、短針は2を指していた。外の暗さからして、恐らく午後の方だろう。
どうやら私は夕食の後、少しうとうとしてしまっていたらしい。
(良かった…今年は起きて迎えられそう)
安堵した私はベッドから立ち上がって、そのままになっていた、机の上にある食器類を片付け始めた。

今日は、この年最後の日。
とは言っても、夜間は部屋から出ちゃいけない決まりがあるから、毎年一人ぼっちで寂しく、静かに迎えることになるんだけど。
だから、多分年が変わることをそこまで重要視してなくて、いつも通り朝まで寝ちゃう人も多いんじゃないかな。
私も、去年までそうだった。
でも、今年こそは、来年を起きたまま迎え入れようって思ったんだ。
…なんとなくだけど、来年は良い事ありそうな気がしてるから。


そんな事を考えていると、窓の外から小さく、コンコンとノックする音。
(もしかして…)
そこに居たのは、銀色の翼の小鳥。
私は、黙って窓を開ける。
小鳥はなんの躊躇いもなく、スッと部屋に入ってきた。
「また校則違反?…サウリ。」
半端呆れながら、その鳥の真名を言ってやる。
「えへへ…お邪魔しまーす…」
たちまち人間の姿に戻った小鳥…サウリは、恥ずかしそうに頭を掻いた。
しかしその数秒後には、まるで自分の部屋のように寝そべってくつろぎ始めた。…いくら寮の部屋はほとんど間取りが一緒だからと言って、この慣れっぷりはどうなんだろうか。
「本当にもう…分かってるの?大人でも難しい変身魔法、貴女がなんで使えるかは知らないけど、これがバレたら私だって罪を被せられるんだから…」
私は簡易キッチンでお湯を沸かしながら、そうたしなめる。本当に、彼女があの上級魔法を使えるのは不思議だ。
幾ら名前を呼んだら元に戻ってしまう欠陥魔法とはいえ、ここまで精密に変身できるのは少し、いや、かなり尊敬する。
「だって、新年一人で迎えるのってなんか味気ないじゃーん?
一応去年の今日もこっち見に来たけど、ユリス寝てたし」
「悪かったわね、ぐっすり寝てて…はい、どうぞ」
クマのぬいぐるみを抱えて頬を膨らませている彼女の前に、ホットミルクを置いた。
「わっ、ホットミルク!ありがと!」
一変して満面の笑みになったサウリは、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み始める。
「静かにしてよ、バレたらどうすんのよ…それに、私の分だけ淹れようとしたら多く作っちゃっただけだし」
目を逸らしながら、私もマグカップに口を付ける。彼女の笑顔が太陽みたいで、眩しくて、直視できなかった。
「ごめん、つい嬉しくて…でもさでもさ、この、ちょっと蜂蜜入ってるの。私が好きなやつ」
そう言われて、ドキンとする。
「前に話してたの、覚えててくれたんだね」
微笑みかけてくる太陽が、より一層眩しさを強めた。
私の心臓も、更に高鳴りを見せる。
「…たまたまよ。たまたま覚えてただけ」
この感情が、嬉しいのか、悲しいのか、楽しいのか、私には分からない。
ただ、鼓動だけが何かを語りかけてくる。
その何かが、どんなものなのかも分からないけど。
「…こういうのが、『嬉しい』ってことなのかしらね」
私は、ホットミルクをあおって、ボソッとそう呟く。
蜂蜜なんか淹れてないはずなのに、ミルクとはまた違った、甘い味がした。

3ヶ月前 No.5

東野 ★Smart=Ym1H1zIpTv

【番外編 ゆく年くる年(後編)】


ボーン、ボーン…
ハッとして、音の聞こえた方向に目をやる。
音の主は掛け時計。そして、重なり合った、針と針。
「…年、明けちゃった…」
しまった。
つい時間をわすれて、お喋りに夢中になってしまっていた。
二人で顔を見合わせる。
サウリは、驚いたような、悲しいような、そんな複雑な表情をしていた。
「…ふふ」
口から、無意識に声が漏れる。私の固まった表情筋が、ピクリと動いた。
「…あはは」
彼女も、そんな私の顔がおかしかったらしく、小さく笑い声をあげた。
先生にバレないように、小さく、暫く、私達は笑い合った。
と言っても、私は軽く口角を上げる程度しかできないから、大半はサウリの声なんだけど。
「あっはは…何の為に校則違反犯したんだよって感じだよねぇ!」
「本当よ…でも、こういうの、私達らしくて、なんかいいんじゃないかしら」
そう呟いて、私は窓の外を見る。
真っ暗な空には、沢山の星たちが輝いていた。
「気が付いたら…って感じ?うん、なんか分かるなあ…」
言いながら伸ばしてきた彼女の手を、私はそっと握ってやる。

「…あけましておめでとう、サウリ」
「あけましておめでとう、ユリス!」


…うん。今年は、いい年になりそうだ。

(番外編 完)

3ヶ月前 No.6

東野 ★Smart=Ym1H1zIpTv

( >>4 の本編の続きです)

昇降口に入って、自分の下駄箱の場所に向かう。
朝礼ギリギリの時間のせいか、他の生徒の姿は見えない。
私は、ゴミと紙くずだらけの下駄入れに、脱いだ靴をしまう。
そして、上履きに入っていた画鋲を、近くのゴミ箱に捨て、履いた。
「行きましょう、サウリ……どうしたの?」
私が視線を向けると、立ち止まった彼女は心配そうな顔でこちらを見てくる。
「…大丈夫?」
「何が?」
私がそう問い返すと、サウリは俯いて、何でもない、と呟いた。





教室のある七階を目指し、私達は階段を上り続ける。
その間、会話は無い。
そして何事もなく、私達は七階に辿り着いた。
六年の教室からは、耳をすませなくても聞こえるくらい、ギャアギャアと大きな騒ぎ声が漏れていた。
ドアを開ける。
入ってきた私の姿を見た生徒達は、途端にシン…と静まり返った。
その中を通り、窓側の一番後ろにある、自分の席に向かう。
クスクスと、其処彼処から小さく笑い声が聞こえた。
隣の席のサウリも、慌てた様子で私の後ろを付いてくる。
…机には今日も、汚くマジックペンで文字が書いてあった。

『人形』『孤児』『気持ち悪い』『バーカ』『能面』『生き恥晒し』『学校来るな』『地獄に堕ちろ』『親無し子』『ぼっち』『存在価値0』『何の為に生まれてきたの?』『ゴキブリ以下、あ、ゴキブリに失礼か(笑)』『早く飛び降りでも首吊りでもしたら?塵なんだから』

おびただしい数の罵詈雑言。
破かれた、私の教科書を添えて。
「…ユリス、」
それを見たサウリの顔は、何故か真っ青になっていた。
「油性は消すの面倒臭いから水性にしてって、言ってるのになあ…」
そう呟き、私は雑巾を片手に水面台に向かう。破かれた教科書は、後でセロハンテープか何かでくっ付けておけばいいだろう。
「ねえ、ユリス…?」
サウリがまるでお化けでも見たかのような表情で、私に走り寄ってくる。
「どうしたの、サウリ。大丈夫?」
水に濡らした雑巾を絞りながら、そう声をかけてやる。
「だ、大丈夫って…ユリスの方が…」
「私のことはいいから。先生来ちゃうわよ、早く座ってなさい」
私が言うと、サウリはより一層青い顔をしながら、ふらふらと席に戻っていった。

『…大丈夫?』
先程のサウリのその言葉が、ふと脳裏に浮かぶ。
大丈夫?大丈夫。
私は大丈夫。
…本当に?

…違う、大丈夫なんじゃない。なんとも思わないんだ。
感情を持たない私は、大丈夫とも、駄目とも思わない。
それでも、他から見れば?

ぽたん。雑巾から一滴の雫が溢れ、水面台を跳ねた。

3ヶ月前 No.7

東野 ★fMPoDBJznc_m9i

「皆さん座りなさい!ホームルームを始めます!」
そう強い口調で教室に入ってきた担任、アンディ先生の声で、はっと我に帰る。
私は絞りかけの雑巾を片手に、席に座った。
なんだか私いま、変なことを考えていた気がする。
そんなことを幾ら考えたって、何も変わらないだろうに。
「えー、早速ですが、このクラスに転入生が来ます」
教室が途端に騒めき始める。
今の季節は10月。この時期に転入生が来るなんて、珍しい。
「静かに!」
アンディ先生の冷たく大きな声が、教室内に響き渡った。
さっきまで馬鹿みたいに煩かったのに、何もなかったかのように しん…と静まり返る生徒たち。
満足そうに頷いた先生は、教室のドアに向かって手招きをした。
「どうぞ、入ってきて下さい」
「…シツレイ、シマス」
声の聞こえた方に視線を向ける。
その姿を一目見た私の、雑巾で机を拭く手が止まった。
その声の主は、一人の少女だった。
いや、女性といった方が良いのかもしれない。
それ位に、彼女は綺麗な人だった。
本当に同じ小学生かと疑うほどの大人っぽい外見、艶やかなブロンドの髪。
その凛とした瞳の碧眼は、ずっと見つめていたくなる、不思議な魅力があった。
彼女は黒板に、『シャルロッテ』と書き込み、こちらに振り向く。
「ハジメマシテ、コンニチハ。アー、名前、シャルロッテ、言イマス。
アー、遠イ国カラ、来マシタ。
アー、コノ国ノ言葉、アマリ、上手ナイデス。
デモ、魔法、少シ、自信アリマス。
宜シク、デス、『センパイ』!」
辿々しいその喋り方に、周りが更に騒めく中、私は納得した。
この国で金髪は珍しい。国民の大抵が黒や茶色など、濃い髪色をしている。
こんなに綺麗なのも、外国の人だからなのかな。
「あの!シャルロッテさん!『センパイ』って…?」
一人の男子が立ち上がり、手を挙げながら聞く。
彼女…シャルロッテは、キョトンとした顔の後、にっこりと微笑んだ。
「アー、皆サン、ココ、先、イマス。ダカラ、皆サン、シャル ノ、『センパイ』、デス」
「か、可愛い…」「天使かよ…」
一人一人が漏らす感嘆の言葉により、更に騒めきはヒートアップする。
「静かに!静かに!」と顔を真っ赤にして注意する先生の声もお構いなしだ。
私はボーッとシャルロッテの顔を見つめる。
本当に綺麗だ。非の打ち所がない。
そう、つい見とれてしまっていた、その時だった。
一瞬だけ、私とシャルロッテの視線が合わさった。
それはほんとうに一瞬で、私はすぐ目を逸らしたのだけれど。
シャルロッテは、パッと満面の笑みを浮かべ、あろうことか、こちらに走り寄ってきた。
再び静まり返る教室。
冷たい視線が四方八方から私に刺さる。
「…なんのつもり?」
私の机のすぐ横に立ち、にっこりと微笑むシャルロッテ。
そう聞いても、シャルロッテは答えない。
「おい、シャルロッテさん、そいつに近づかない方がいいよ?」
隣の席の男子が、そっとシャルロッテに声をかける。
「何デ、デスカ?」
「だってそいつ人形みてえなんだもん。泣かないし、笑わないし、怒んないし、気持ち悪いからやめとけって」
その言葉を皮切りに、くすくすと笑い声が聞こえてくる。
「…だって。シャルロッテさん、戻った方がいいんじゃない」
そう告げた私はシャルロッテから目を離し、次の授業の用意を始めた。
次は国語だったよね。…そう、人形の私が、いちいちこんなことに突っかかる必要なんてない。だから、この話はこれで終わりだ。これで…

ゴトン。

何か物が落ちたような音がしたかと思った瞬間、其処彼処から叫び声が上がった。
「キャアアアア!!!ロビン君が!!」
ロビン君、というのは、さっきの隣の席の奴だ。
私は騒がしいな、と思い目線を上げる。
…さっきまで奴が居た椅子には、ロビンそっくりの人形が置かれていた。
一体何が起こったのか分からない。
ただ、今ここにあるのは、叫び声と、人形と、そして、不機嫌そうに頬を膨らませたシャルロッテ。

「センパイ。シャル、ソウイウノ、ヨクナイ思イマス。1日経テバ戻リマス、頭、冷ヤスガイイデス」

そう言い放った彼女は、阿鼻叫喚の中を足早に通り、教室から出て行った。

ビリビリに破かれた国語の教科書が、私の手から落ちる。

授業開始のチャイムが、冷たく鳴り響いた。

お絵かき画像
2ヶ月前 No.8

東野 ★Smart=Ym1H1zIpTv

その後。
アンディーヌ先生が何度やっても何故か、ロビンにかけられた魔法を解くことは出来なかった。
勿論、予定されていた授業がまともに進行するわけもなく。
魔力の使いすぎで明らかに疲れた顔の先生は、「シャルロッテさんを探しに行くので自習にします」と言い残し、教室を去っていった。
私は溜め息を一つしてから、国語の教科書に向き直る。
いつも先生が居ない時は、毎回誰かが私の席に来て、何かしらしてくるのに、今日は誰も寄ってこない。
周りは騒がしいけれど、幾分かマシだ。久しぶりに勉強に集中できる…
「ねえ、ユリス!ユリスってば!!」
…と、思っていたのだけど。
「何かしら、サウリ。今は自習の時間のはずだけど」
私は、破れたページをセロハンテープで止めながら言う。
「この状況で自習!?ユリスってホント、真面目過ぎるっていうか、バカ真面目というか…
そんなことよりさ、外行かない?ここ居ても埒あかないし、いろいろ話したいし」
「相変わらずね、サウリは…まあいいわ、付き合ってあげる」
私は仕方なく、そのサウリの誘いに乗ってやることにした。
ただの気まぐれだ。それに、セロハンテープを貼っても、ビリビリに破かれた教科書の文字は、けして読めたものじゃなかったから。

「はーっ、清々したね!」
廊下に出ると、サウリが万歳をしながらそう言ってきた。
顔には満面の笑みを浮かべている。
「そうかしら」
淡々とした表情で告げてやると、サウリは頬を膨らませ、私を指さしてきた。
「もう!ユリス、本当にブレないんだから!私はスッキリしたよ?あんなこと、よっぽど勇気無いとやれないじゃん?」
「人を指さしちゃいけないって教えられなかったかしら」
私はその手を払いのける。
「え、そこ!?…いや、それはごめんけど…」
途端にしょぼくれた顔になるサウリ。
…彼女は豊かだ。感情も、表情も。
だからこそ、私の分も喜び、驚き、悲しんでくれる。
まるで自分のことのように喜べる彼女が、少し羨ましい。
私は、何も感じないから。

2ヶ月前 No.9

東野 ★Smart=Ym1H1zIpTv

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2ヶ月前 No.10

東野 @higasikktb ★Smart=Ym1H1zIpTv

「…ユリス!ユリスってば!どうしたの、ボーッとして!」
「あ…ごめんなさい、貴方のこと、少し思い出していて」
サウリの声で、私はハッと我に帰った。
「私のこと?なんで?なにを?」
不思議そうに首をかしげるサウリ。
何が何だか分からないというような表情だ。
「とにかく、行きたいところがあるから…付いてきて」
私はスタスタと廊下を歩き、とある場所へと向かって、歩を進めた。
「え、あ、ちょっと!待ってってば!ユリスーっ!?」



「ここ…」
サウリが小さく呟く。
目的地に到着した私たちは、顔を見合わせる。
「二人で来るの…この子の今年の命日以来だね」
「…ええ」
ここは、あの猫のお墓だ。
私たちはあの後、裏庭の端に小さくお墓を作った。
猫が安らかに天国へ行けるようにと、願いを込めて。
最初は私も毎日のように来ていたけれど、月日が経つに連れて来る回数は減り、今では命日の日に行くきりになっていた。
それは決して猫のことを忘れたわけじゃない。
この場所が私をいじめている人達に見つかったら、何をされるか分からなかったから。
だから、二人では命日の日にこっそり行って、他の日のお参りや墓の手入れなどは大抵サウリが行っていた。
「さっき、ふと思い出して、ね」
私はお墓の前に座る。
お墓、と言っても、そんなに大それたものではないけれど。
墓石だって文字を彫るのだって、あの時の私たちが作ったものだから、大分不恰好だ。
「相変わらず酷い字よね…ここ、サウリ綴り間違えてるし」
「な、なにおぅ!そう言うユリスだって、ここ、間違ったのを無理やり消した痕あるじゃん!」
サウリも文句を言いながら、私の隣に座りこむ。
「….でも、久しぶりにゆっくり居られるね。いつも、誰かに見つかるかも!って、ヒヤヒヤしながらだったし」
「…そうね」
墓石をそっと触る。ひんやりと冷たい。あの頃の温もりはもう感じられないけれど、でもあの猫は、今も私たちの中で生き続けている。
「…ユリス。また来ようね、この子に会いに、二人で」
「…ええ、そうね」
繋がれたサウリの手は、とても温かかった。

2ヶ月前 No.11

東野 @higasikktb ★fMPoDBJznc_m9i

( >>10 がフィルタかけられて見えない!という方は、上にあるメモで簡潔にまとめましたので、そちらを確認していただければと思いますm(_ _)m)


「…別にこれくらい、大丈夫よ」
「駄目だって!ユリスとさっき手繋いだ後、私の手に血痕が付いててめっちゃびっくりしたんだから!」
墓参りが済んだあと、私たちは、保健室に向かっていた。いや、向かわされていた。
実は私は先程、紙で指を切ってしまっていたのだけれど。
それをサウリに気づかれ、今、無理矢理強制連行されているという訳だ。
「別に痛くないし…」
「痛い痛くないの問題じゃないって!ばい菌が入っちゃったら一大事だよ!」
そういや、サウリは今、保険委員長なんだったっけ。心配性の彼女にお似合いだ。
あっという間に保健室前に着いた私たちだったが、サウリがそこでピタッと立ち止まった。
「…どうしたの、サウリ」「しーっ!静かに!」
私の声の3倍くらいの大きさで注意してくるサウリ。訳が分からない。
とりあえず口を閉ざし、耳を澄ませてみる。
「…んせい…あいかわ…」
「しゃ…めても…でない…」
二人組だろうか、途切れ途切れだけれど、話し声らしきものが微かに聞こえてきた。
「…何言っているか全然わからないんだけど」
私が言うと、サウリが腕を組んでうーんと唸る。何か考えているのだろうか。
「…サウリ?」
「ユリス…も、もしかしたらこれ、アレじゃない?アレ…」
「アレ?」
「アレだよアレ!やばいって!スクープよスクープ!やばい!まずい!」
青ざめているのか頬を紅潮させているのかよく分からない表情を浮かべるサウリ。…埒があかない。
私は、保健室の扉に手をかけ、勢いよく開けた。
「あわわ、何やってんのユリスぅ!?」
サウリは両手で目を覆う。指の隙間からしっかりと覗いているのは、突っ込むべきなのだろうか。
「…六年のユリスです。紙で指を切ってしまったのですが」
私は部屋に足を踏み入れる。床はキシキシと音を立て、少し薄暗い。
「先生?居ますか?」
「あ、ああ、ごめんごめん!少し待ってくれたまえ!…お前は寝てろよ!!」
奥からドタバタと何か格闘しているかのような音が聞こえたかと思うと、暗闇からヌッと大きな人影が出てきた。

「いやあ、すまないすまない!少し病人と色々話していてね!とりあえず、其処のソファに座って待っていてくれ!」
藍色の短髪を掻きながら笑いかけてくるこの大男は、保険医のカイ先生。この学校の卒業生らしい。
元々は高等部だけの担当だったのだけれど、小中の保険医の女性が二人とも産休になったため、
代わりの先生が来るまで一人で小中高の生徒を診ている。
男性の保険の先生はとても珍しいのだけれど、その古風な喋り方とフレンドリーな性格で老若男女問わず人気が高い。
…私は苦手なタイプだけれど。

2ヶ月前 No.12

東野 @higasikktb ★Smart=Ym1H1zIpTv

「…ユリス、なんかカイ先生、様子変だったよね…やっぱスキャンダルかな…」
「…あなたは何が言いたいのよ」
私たちはソファに腰掛けて先生を待っていた。先生は、バタバタと小中高三つに仕切られた大きな保健室を駆け回っている。
「さっきのは粗方、問題児の応対でもしてたんじゃない?」
私はそう言いながら、ベッドスペースの方に目を向ける。
初等部のベッドは二つ、カーテンが締められていた。
「…いやあ、すまないすまない!指を切ったんだったよな?傷口を見せてくれないか?」
カイ先生が駆け寄ってきたと思うと、私の前に座り込んで声をかけてくる。
私は、黙って手を差し出した。
「…結構深いな…痛くないかね?」
首を横に振る。
「そうか…消毒するな、染みるぞー」
幾ら魔法使いと言っても、こういう軽い怪我では魔法は使わない。下手に何度も使うと抗体ができて、魔法の効き目が弱くなる可能性があるからだ。
傷口に消毒液が入り、ピリリと痛みを感じる。
でもその間も、私はベッドから目が離せなかった。
カーテンに映る影に、見覚えがある気がしたから。
それに、時々聞こえる声にも、何処か聞き覚えが…

「ユリス?ソコニイル、ユリス、デスカ?」

2ヶ月前 No.13

東野 @higasikktb ★Smart=Ym1H1zIpTv

この声。この口調。やっぱり、と私は思った。
___カーテンをシャッと開けて出てきたその姿は、紛れもなく例の転校生、シャルロッテだった。
こちらに歩みよってきて、ぽすんと私の隣に座る。
「ユリス、ダイジョブ、デスカ?指、怪我シタデスカ?」
「別に…」
じっと見つめられ、私は目を逸らす。面と向かって来られると、なんだか話しづらい。
「まったく、お前は…匿ってくれというからベッドに寝かせてやったのに、何故自分から出てくるのかね…」
溜め息をついたカイ先生が、シャルロッテの頭をコツンと叩く。「アイター…!」と小さく声を漏らすシャルロッテ。
「まあまあ、カイ先生…でもありがとう、シャルロッテさん!私一人じゃ、ユリスを助けられなかったから…」
サウリがシャルロッテの手を取って、にっこりと微笑んだ。相変わらず、太陽みたいに綺麗な笑顔。でもその中には、何処か悔しさが滲み出ているようで。
「ソンナコト、ナイデスヨ。アナタ、トテモ、ステキデス。ユリスノコト、ダイジ思ッテル、ワカリマス」
シャルロッテがぽんぽんと優しく頭を撫でる。
「…うん…ありがとう…」
そう呟いたサウリの目から一粒、大きな水滴が落ちてきた。
私はその水が彼女の制服の上に落ちて、徐々に吸収されて行く様を、ただ見つめていた。

「シャン…じゃない、シャルロッテ。しんみりムードのところ申し訳ないんだが、学園長からお呼び出しだ」
その雰囲気を断ち切るかのように、カイ先生が口を開いた。
「オウ…モシカシテ、ワタシ、退学デスカ…?」
目をうるうるさせるシャルロッテ。
「まあ…それも視野に入れといてくれたまえ」
「そ、そんな!シャルロッテさんは私達のために怒ってくれたんですよ!?それなのに、退学なんて、そんなの…」
そんなのってないよ、と目を伏せるサウリ。
…私も、そう思った。幾ら感情を持てない私でも、シャルロッテがおこなった行動は私の為にやってくれた事なのだということくらいは分かる。それが良いか悪いかは別として、相手側にも充分問題があった。
「ううむ…そうだな…それなら君達もシャルロッテと一緒に行ってはくれないか。そこで説明してくれれば、幾らか罪も軽くなるかもしれん」
「…!はい!」

「アリガトゴザマス、頼モシイ、デスネ!
…デハ、ユリス達、行キマショウ!アノ頑固者、倒シマショウ!」
「うん!…ほら、ユリス、行こ!」
「…分かったわ」
私は大人しくサウリに従うことにした。わざとらしく溜め息をついて。

3日前 No.14

東野 @higasikktb ★Smart=Ym1H1zIpTv

私たちは長い長い廊下を歩いていた。
右足を出し、左足を出し、進む、進む、進む。
もう彼此10分は同じ動作を繰り返している。
こういうところこそ魔法でなんとかして欲しいものだが、どうやら学園長が居る部屋は、間違って入ってこないように隔離されているらしい。かくいう私も、こんな遠くに部屋があるなんて全く知らなかった。
「うう、足が棒になりそう…」
サウリが ぜえぜえと息を切らしながら私に寄りかかってきた。
「モウ少シ、デスヨ!ファイト、デスネ」
そんなサウリとは裏腹に、シャルロッテは大分余裕そうだった。ニコニコと微笑みながら、スキップするようにどんどん歩いている。
「シャルロッテさん、恐るべし……あ、ユリス、ちょっといい?」
突然サウリが眉をひそめ、私の耳元で囁く。
「シャルロッテさんさ…なんか、おかしくない?」
「おかしいって…随分と失礼なこと言うのね」
私は肩をすくめてみせる。
「いや、なんていうか…こう、違和感?っていうか…ほら、学園長の部屋も、カイ先生に聞いた素ぶりないのに、場所わかってるっぽいし…あ、それに、聞いた素ぶりないと言えば、もう一つ…」
「ココ、デスネ!着キマシタヨ!」
もう一つ?と私が問いかけようとした時、シャルロッテが声をかけてきた。
サウリが慌てた様子で私から離れる。
「? ドウシタデスカ?」
「あっ、ううん、なんでもない!ちょっと疲れちゃっただけ!あはは…」
「ソウデスカ…」
……二人が話している間に、私はすこし考えてみた。
確かに、シャルロッテは不思議な人だ。
初めて会ったであろうカイ先生とも親しげだったし、昔から在籍している私もサウリも知らなかったこの場所に一発で辿り着けているのも妙だ。
そして、一番気になるのは、サウリが言っていた「聞いた素ぶりがないはずのもう一つのこと」。
それさえ思い出せれば、何かしら分かりそうなはずなのに…どうしてもその答えにモヤがかかって、頭に浮かばない。
一体何なんだろう、もう一つ、もう一つのこと…
「…ユリス?ドウカシマシタ?」
「おーい、ユリス、大丈夫?行くよ?」
「あ…ごめんなさい、今行くわ」
あれ、今何か…
いや、考えても仕方ないか。私は走り、二人の背中を追った。

3日前 No.15

東野 @higasikktb ★Smart=Ym1H1zIpTv

二人が立っていたそこには、大きな扉があった。
3mはあるだろうか。厳重そうに固く閉ざされている。
「これ、どうしたらいいのかな…」
サウリがキョロキョロと周りを見渡してそう呟いた、その時。
ウウーウウー。ウウーウウーー。
『扉前に侵入シャ。扉前に侵入シャ。名を名乗りなサイ。名を名乗りなサイ。』
けたたましいサイレン音とともに、響き渡る機械的な声。あまりの騒々しさに、私は耳を塞ぐ。
「アーモウ、ウルサイナァ…シャルロッテ、デスヨ。開ケナサイ、デス」
「うぇえ!?シャ、シャルロッテさん、そんな言い方で大丈夫なの!?…あ、えっと、サウリです!サウリ・エヴレーリカです」
「…ユリス。ユリス・ドレイシア」
サウリと私も、シャルロッテに続けて名乗る。
『名前を確ニン。名前を確ニン。………認証完リョウ。認証完リョウ。扉を開けマス。扉を開けマス…』
サイレンが止まり、扉がゆっくり開いていく。
「あ、いいんだ…」とポツリと漏らすサウリ。
扉の奥には、赤いカーペットが敷かれてあった。無数に壁に掛けられた蝋燭の光がチラチラと揺れ、光の道を作り出している。
…先ほどまでの薄暗く、淡白な色彩の廊下とは大違いだ。
私たちはその道を縦に並んで歩いていく。
先頭はシャルロッテ。次に私。そして、私の後ろで引っ付くように歩くサウリ。

「うう、なんか空気が重い…今日一人で眠れないかも」
「あなた、もう子供じゃないでしょう」
「えー、私たちまだ小6だよ、充分子供だって!」
ぷく、と頬を膨らませるサウリ。
「12年も生きといて何を言っているの?」
「だ、だってぇ…
「二人トモ、オ静カ、願イマス。着キマシタ」
…シャルロッテの淡々とした声が反響し、響き渡った。
私たちは口をつぐむ。
そこには『立入厳禁』と書かれたネームプレートが掛かった木製のドアがあった。
どうやら、ここが目的地のようだ。
「…頑張ッテ、退学ルート、回避シマショウ」
私たちは顔を見合わせ、コクリと頷く。
深呼吸を数回したシャルロッテが、ドアをノックした。
コン、コン、コン。
サウリの顔を、汗が伝っているのが見えた。


「…どうぞ」

3日前 No.16
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