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パラサイト・ワールド   __寄生される世界__

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(200) - ●メイン記事(109) / サブ記事 (10) - いいね!(0)

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「夏の大地に雨が必要なように、この国には指導者が必要です!」

白衣を着た男が演説をしている。


「全てにおいて日本はアメリカや中国に先を越され世界的に立場は低い。しかし彼らの進化は終わりを告げた。
進化無き国に繁栄はあり得ない! 今こそ立ち上がる時です!!」

そうだ そうだ  と同意するヤジが聞こえる


「偉大な国日本を取り戻し、国々の脳髄に日本という名の楔を打ち放て!!
世界に下克上を!日本に栄光なる永遠の繁栄を!!」

少年は息をするのも忘れ、テレビに釘付けになる


「同志諸君、時は満ちました。本当の革命を始めましょう!!」

憧れの眼差しでテレビの向こうのにいる男をみる少年は、この時はまだ知る由もなかった。
万雷の拍手の中で___世界の終わりが始まった事を___




『どうも〜皆さん初めましての方もそうじゃない方も、おはこんにちばんは〜
ちょっとした期待に巧く乗せられ、人生初小説に挑戦してま〜す。ですので粗が目立ったりするかもしませんが生暖かく見守って頂ければ幸いで〜す。
因にストーリーを説明しますと「寄生虫研究の第一人者となった近未来の日本」という設定です。そのためグロ系サスペンスな小説になる予定ですので
苦手な方はリターンする事をお勧めしますが、それでも見たいのであれば覚悟して拝見してくださ〜い。

記事メモにはキャラ紹介や、感想、質問、アドバイスや提案等を載せますのでよろしくお願いします。
因にモンスターやクリーチャー等の分かりづらい描写は絵を載せたいと考えている所です。
最後にコレだけ言って終わりましょう。
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。』

メモ2017/03/25 16:57 : MK マッチー @11777★i04XIsqV4q_VXf

第1話『寄生される日常』(>>1-4)   第2話『出会い』(>>5-8)  第3話『決断』(>>9-12)  第4話『死の町』(>>13-26

第5話『地下の世界』  (>>27-44)   第6話『突入』(>>45-60)  第7話『KS社』(>>61-76)  第8話『深淵』(>>77-99

第9話『悪魔の実験』  (>>100-109


・登場人物

主人公:山田 太郎(やまだ たろう)

ヒロイン:宮部 雅 (みやべ みやび)

ベルボーイ:落合 統治(おちあい とうじ)

フロント:竹林(落合の上司)死亡

池上 慎吾(いけがみ しんご)フリージャーナリスト 生死不明


・KSコーポレーション(KS社)寄生虫研究で成功を収めた世界的大企業

黒田 総一郎(くろだ そういちろう)社長兼理事長

薬師 灰之介(やくし はいのすけ) 開発局部部長


・KS社 私設特殊部隊 BCSK(バスク)

隊長:三木 秀一(みき しゅういち) 大佐

兵長:高橋 守(たかはし まもる) 死亡


・政府

内閣総理大臣

森  総理補佐官

山田 官房長官

竹下 外務省外務大臣

沼淵 厚生労働省厚生労働大臣

中村 総務省総務大臣

鬼塚 防衛省防衛大臣


・クリーチャー

ノーミン:

…続きを読む(46行)

関連リンク: 小説の事で質問です。 
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MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

寄生犬:「ガウガウガウ!!」
山田:
「雅さん!!」

ショットガンで寄生犬の頭を吹っ飛ばし宮部を助ける。首無しになった寄生犬は走っている途中の車から外に投げ出される。


宮部:
「た、助かった……」
池上:
「あっぶなぁ〜…… 危うい所だったねぇ〜、君の可愛い顔が拝めなくなる所だったよぉ〜。」
落合:
「池上さん!前!前!!」
池上:
「うおおお!!」

落合が池上に前を向くよう促した瞬間、大量のカラスがフロントガラスに体当たりし張り付く。

カラス?:「カァ!カァ!カカァ!!」
山田:
「な!な、ななな、なん何ですかこれ?!!」
宮部:
「か、カラス?」
池上:
「……通称レイヴン、カラスの化け物だ!」
落合:
「最悪だぁああーーー!!」

大量に張り付いているため前が見えず蛇行運転になる、そればかりかカラス達が鋭い嘴でガラスを叩き始める。 このことにより所々のガラスにヒビが入る。
急いで池上はウィンカーを動かす。カラスを弾いても弾いても次から次へとカラスが張り付く。 ウィンカーを動かす力を最大にしやっとの想いでカラス達を退ける。
しかし退いた直後、目の前にKSコーポレーションの出入り口が目の前に迫る。

池上:
「うおおおおーーーー!!」
宮部:
「きゃああーーーー!!」
山田&落合:
「「いーーーやーーー!!」」

池上と宮部が叫び、山田と落合が抱き合ったまま車は止まらない。気付いても既に遅く、車のスピードを落とす事無くKS社の出入り口のガラスを突き破りそのまま突っ込む。

2ヶ月前 No.60

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

___混沌の微睡み___

・山田太郎

いつも雪が降ると、ふと思う事がある。

白い雪のように世界は本当は白いのではないかと。
誰もが絆や友情や仲間を信じるように、人は捨てたものじゃないと希望を持って支え合い笑い合う、そんな白い世界。

だが俺は黒い世界も知っている。
諍い 争い 競い 戦争 飢餓 政治家や警察の不正、汚職 性の乱れ 人種問題 友の裏切り 親戚同士の醜い喧嘩。
「歴史は繰り返す」という言葉があるように人間は学ばず、同じ事を永遠繰り返す混沌の輪廻。

信じていた事が裏切られ、期待していた事がまた裏切られ
希望を抱けば絶望を与え心を殺す。 そんな黒き世界。

そんな二つの世界を知っているが故に、俺は世界が灰色だと思うのだ。
だからこそ白い雪を見れば、その美しさに惹かれ世界が白い世界だと願わずにはいられないのかもしれない。

白とも黒ともはっきりとしない混沌とした世界でそんな事を願っても、触れれば溶ける雪のように手にした願いも想いも水蒸気のように消え失せる。

後に残るのは虚無感だけだ。
そして悟るのだ。 虚無こそが素晴らしい友人であると。

___今日もまた虚無の世界を生きて行く。___

2ヶ月前 No.61

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

第7話
・KSコーポレーション中央研究所
1階受付ロビー

プーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

山田:
「………… ……ぅ……むぅ………」

薄ぼけた微睡から山田が覚醒する。どうやら気絶していたらしく子供を包む母親に甘える子供のように、エアバックに突っ伏していた山田が体を起こす。
体中の痛みを気にしながらも、先ほどからクラクションを鳴らしている元に目をやった。 ファンファーレの如くクラクションを鳴らしていたのは気絶した池上だった。


山田:
「池上さん!! しっかりしてください池上さん!大丈夫ですか?!」
池上:
「……… ……ぅにゃ?……ママ?……」
山田:
「ママじゃないです、山田です。」

池上が目覚めたのを確認した後、山田は後ろの席へ声をかける。


山田:
「雅さん!落合さん!大丈夫ですか?!起きてください!!」
宮部:
「……… ……ん……お父さん?……」
山田:
「お父さんじゃありません、山田です。」
落合:
「……… ……く……ポチ?……」
山田:
「ポチじゃねぇよ馬鹿野郎。」
落合:
「ねぇ!僕の時だけツッコミが辛辣じゃない?!!」


落合の不平不満を無視して山田は車から降りる。 辺りを見渡し現状を確認する。 KS社の出入口をそのまま真っすぐ突っ込んで来たようで、半三日月型の受付机をなぎ倒す形で停車している。
受付机にあったからなのか複数のファイルが床に散らばり、時折宙を舞っている。 ロビーは結構広く高級そうなタイルで床が埋め尽くされているがどれも血がびっしりだ。
壁に面していたであろう室内植物は倒され、見るも無惨な姿となっている。 天井を見上げると大きなシャンデリアがあるが電気が付いていないばかりか何故か血がこびり付いている。

「ねぇねぇ!シカトなの?!さっき馬鹿って言ったからその仕返しなの?!」
宮部:
「馬鹿って言ったんですか?最低ですね。」
落合:
「いや、あの……えぇ〜………」

2人の漫才を軽く無視し山田はキョロキョロと辺りを見渡す。 車が突っ込んだ時何かを轢いたのを覚えているのだ。 何を轢いたにせよその痕跡は必ずある筈だが……
死体どころか何も無い。 見間違いだったのかと山田は不思議に首を傾げていると池上が運転席から出る。

2ヶ月前 No.62

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

池上:
「ふぃ〜、何とか助かった〜。車は壊れた〜……」
山田:
「命失うよりマシじゃないですか。」
池上:
「そうはいうけどね山ちゃん、この車結構高いのよ?」
山ちゃん:
「山ちゃん……」
落合:
「よろしく山ちゃん」
山ちゃん:
「黙れよ馬鹿」
落合:
「だからさっきからツッコミが辛辣なんだってば!!」
池上:
「まぁコレが無事なら車が大破してもいいんだけどね。」

大きな黒い手帳の様なものを懐から取り出し、得意げな顔で全員にチラつかせる。


山ちゃん:
「……それは?」
池上:
「ん?これ?あ、やっぱり気になっちゃう感じ〜?」
落合:
「気になっちゃう感じ」
池上:
「教えてほしい感じ〜?」
山ちゃん:
「ほしい感じ」
池上:
「ど〜しよっかな〜?教えちゃおうかな〜?結構重要なものだからな〜」
宮部:
「池上さんお願〜い、是非教えてほしいな〜」
池上:
「宮ちゃん欲しがるね〜♪ よし教えよう、コレがさっき言ってた池上ファイルだ。」
山ちゃん:
「(この人やっぱりチョロいな)……それそんなに重要なものですか?」
池上:
「ああ、とてもね」

煽る感じに話を振ると池上は真面目な顔つきをしその場の雰囲気が引き締まる。

2ヶ月前 No.63

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「KS社を訴えるために色々調べたからね、失うわけにはいかない。」
宮部:
「訴える?」
池上:
「ああそうだ。 KS社は表向き寄生虫を根絶するための研究をしているが、裏では非人道的実験を繰り返し生物兵器を開発している闇の商人だ。」
宮部:
「そ、そんなの信じられません!叔父の仕事は寄生虫に苦しむ人達を救う仕事だって………」
池上:
「じゃあ今日の事をどう説明する?」
宮部:
「そ、それは……事故とか……」
池上:
「いやこれは意図的だ。早く言えばテロだよ。」
落合:
「宮部さんだって黒田さんの私物から化け物の絵を見つけたって言ったじゃないですか。」
宮部:
「でも、でも、それは……」
山ちゃん:
「それは黒田さんが嵌められたという可能性もあるじゃないですか!」
池上:
「どちらにせよ決定的な証拠がある以上、この会社は終わり………ぐわああああ!!」

喋り終わらない内に何か槍の様な鋭く尖った物に、背中から貫かれ腹へと貫通する。 悲鳴を上げながら池上の体が宙へと浮き数メートル先の床へ投げ捨てられる。
宙へ浮いた拍子に持っていた手帳が山田達の足下にページが開いた状態で落ちる。

2ヶ月前 No.64

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「池上さん!!」
宮部:
「い、池上さん!」
落合:
「な、何だよコイツ……!!」
謎の化け物:「…タスケテー……ァァタスケテー……タスケテー……」

落合にコイツと呼ばれた謎の化け物は醜く醜悪な容姿をしていた。上半身全体を中心にノーミンの様な頭部が二つ肥大化し、右腕は大きく発達し鋭い爪の付いた鉤爪があり、左腕は鋭い槍のように変異した灰色の巨漢の化け物がそこに居た。 僅かに人間だと分かるのは胸辺りに半ば埋没している顔の様なものだけで、虚ろながら言葉を発するものの会話等は不可能のようだ。
山田がふと足下に落ちた池上ファイルを見ると、ちょうどこの化け物の写真付き説明文があり名前もあった。どうやらこの化け物の名前は「ドス・カーラ」というらしい。


ドス・カーラ:「タス、タスケテー……オレ、ニンゲン……タスケテー」
落合:
「どこが人間だよ!!」
宮部:
「よくも池上さんを!」

宮部は銃を放ち落合はショットガンをぶっ放す。山田は手帳を急いで拾い、後ずさりしながらショットガンをぶっ放す。


ドス・カーラ:「イタイー、イタイー、ヤメロー……ニンゲンダー……」

フラフラとしながらも大きな鉤爪の付いた右腕を振るい床を大きく抉る。抉られた床の破片が細かな破片と鳴って全員に落ちて来る。

2ヶ月前 No.65

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「破片がっ!!」
山田:
「雅さん!ここに楯が!」
宮部:
「助かりました!……ふぅ〜」
落合:
「痛い痛い痛い痛い!僕は楯じゃありません!!」

落合を楯にして2人で落ちてくる床の破片から身を守る。落合は振り返って叱る。


「いくらなんでも酷くないですか?!自分で言うのもなんですけどイケメンだった顔がボロボロですよ!!」
山田:
「いや〜すいません、つい」
落合:
「宮部さん貴女もですよ!何このノリに乗ってるんですか!!」
宮部:
「あはは……ごめんなさい、つい」
ドス・カーラ:「コワイヨー……コワイヨー……タス、タスケテー……ヨー……」

落合の舞う色に来たドス・カーラは槍を大きく振り下ろす。山田達は間一髪の所でジャンプして避ける。槍に貫かれた床は大きくヒビが入り信じられないくらいの空洞が出来る。


落合:
「あっぶな!あっぶな!!怖いのはお前だよ!! ……うは〜危うく貫かれる所だった〜!!ただでさえ仲間2人に心抉られてるのに!!」
宮部:
「でもどうします?あの化け物撃っても撃っても倒れませんよ?手応えが全然感じられません。」
山田:
「確かに、銃弾も無駄に出来ないし……一体どうすれば……」
落合:
「やっぱり無視?!そろそろ怒りを爆発してもいいかな?僕怒っちゃうよ?!」
山田:
「爆発………それだ!!」
落合:
「どれだ?!」

山田は乗って来た車を指差す、宮部はその意図に気付き車のタンクに銃を撃つ。それに気付いた落合は山田に続き車に銃弾の雨を降らす。撃たれまくった車はついに大爆発を起こす。
爆風と爆煙に山田達はたじろいだがドス・カーラは炎に巻き込まれながら床に倒れる。即死こそしていないものの体が、ぐつぐつ煮えたぎる魔女のスープが如く溶け始める。
溶け始めても尚立ち上がろうとするドス・カーラに山田達は近づいて銃口を向ける。


ドス・カーラ:「……ァァ、アツイヨー……アツイヨー……イタイナー………タスケテー、ヨー………」
山田:
「……あなたを助けます。」
宮部:
「せめて、コレが救いになると信じて……。」
落合:
「ゆっくり眠れ……。」

頭を中心に全員で撃ち続ける。銃弾の雨霰を受け成す術の無いドス・カーラは、立ち上がる事ナは無くそのままドロドロに溶け果てた。
ドス・カーラの最後を見届けた山田達は踵を返し、倒れている池上の所へ駆け寄る。

2ヶ月前 No.66

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf



山田:
「池上さん!!」
宮部:
「しっかりしてください!」
池上:
「……はぁ、はぁ……流石、ここまで生き延びただけはあるね……。」
宮部:
「喋らないでください、今救急道具とか探しますから!だから……。」
池上:
「君達は……ぜぇ、ぜぇ……早く行け……。」
落合:
「何を……!!」
池上:
「……ぜぇはぁ、はぁ……もう………手遅れだ……。」
山田:
「そ、そんなことないですよ。」
池上:
「………どうなるかは、知ってる……はぁはぁ………俺の友達や仲間が、深手を負って……その後同じように化け物になった……傷口から寄生虫の特有の寄生菌、というものが体に入り
人間の体を細胞単位で、破壊し……変異させる。……俺も、いずれそうなる……。」
落合:
「そんな……。」
宮部:
「い、池上さんがそうなるのは嫌です!そんなの嫌です!! 何か、何か治す方法無いんですか?!」

宮部は目から涙を流し、多い縋るように池上の体を揺さぶる。


山田:
「雅さん……」
池上:
「………あるにはある……俺の池上ファイルに作り方を書いた……。」
山田:
「だったら!」
池上:
「……ごほっごほ!………問題は……それを作る為の機械が必要なんだ……この建物のどこかにあるだろうが………間に合わない……だから俺が君達を襲う前に……
だからどうか………先に行ってくれ……。」
山田:
「池上、さん……。」
落合:
「くそ!くそ!くそぉ〜!!」
宮部:
「そんな、そんな……。」
池上:
「………宮ちゃん、何て顔をしているんだい。 可愛い女の子には涙は似合わない………やっぱり笑顔でないと。 ………笑ってくれるかい?」
宮部:
「池上さん……」

涙の溜まった目で池上を見つめながら微笑む、池上は満足そうな顔を作る。


山田:
「……あんたの事は忘れません。」
池上:
「………伝えたい事………あったのに………ざん……ね………だ………。」

池上はぼそぼそと喋ると目を瞑った。
山田は頭を振った後宮部の肩に手を置き、立ち上がる事を促すと全員立ち上がりその場を後にした。

2ヶ月前 No.67

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

肩を落として悲しげに進む宮部達を尻目に山田は、ふと受付机の傍に落ちていた薄紫色の手帳に目がいき何気なしに拾い上げる。

《受付嬢の日記
3月12日
もう、マジ最悪。 彼氏と別れた〜テンションマジ萎え〜。
浮気とかホント最低。 ろくな男しか居ない訳?
イライラが収まんないから『B棟3階の休憩室』の電話線にイタズラして内線できなくしてやった。
只の嫌がらせだけど少し収まった。 どこかにマシな男いないかな〜。

3月15日
仕事の帰り道の路地裏で奇妙な生き物を見つけた。
何と言うか手のひらサイズのノミみたいな感じ?
男と別れて癒しが欲しかったし、何かちょっと可愛かったから家に連れて帰って飼う事にした。

3月16日
手始めに私の血をあげてみた。ノミっぽいしね。
小さな容器に入れて飲ませるとごくごく飲む。
それが何だか愛おしい。大きくなれよのんちゃん。

3月18日
マジで悲しい。のんちゃんが居なくなった。
男だけじゃなくペットにまで居なくなられるなんて、私の人生マジ最悪。
こんなテンションじゃ仕事にならないから連絡して休んだ。 本当に熱っぽいし今日は寝よう。

3月22日?
のんちゃん、いた。 私のうで にくっついていた。 うれしいけど、今日も 気分が優れない。
のんちゃんちょっと、大きくなってる?

4月?
あたま ぼーっと、する  はらへた

月?
妹きた  何 うるさい
指かんだ  おいしかた  まだたべ い


おんな  うまい》

背筋をいい知れない寒気に襲われた山田は震えながら日記を閉じる。一人で居る事に不安と恐怖を覚えた自覚すると急いで宮部達の後を追う。

1ヶ月前 No.68

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部達2人は大きな鉄製の扉の前に立ち止まっていて山田は追いつけた。


山田:
「あれ?どうしたんですこんな所で。」
宮部:
「あの、これ。エレベーターみたいなんですけど……。」
落合:
「電気が来てないので動かないみたいです。」
山田:
「『直通エレベーター』?電力治さないといけませんね。電力室へ行った方がいいでしょうから、ここの地図とかあるといいんですけど……。」
宮部:
「あ、それならここに。さっき落ちてるのを拾いました。」
山田:
「ありがとうございます。 ……この地図によると電力室は『中央棟3階』にありますね。」
落合:
「中央棟は今僕達が居るこの建物みたいですね。階段が見当たらないので隣りの建物を迂回するしか無いようです。」
山田:
「そうするしかないですね。………しかしコレは一体なんです?」

山田はエレベーターの端に書かれた文字を見つけ首を傾げる。


『エレベーターの一文
我を過ぐれば憂ひの都あり、
我を過ぐれば永遠の苦患あり、
我を過ぐれば滅亡の民あり

永遠の物他に物として我より先に造られし物は無し
しかして我先に永遠の前に立つ
汝ここに入るもの一切の望みを棄てよ

さすれば地獄の門は開かれん』

山田:
「……地獄の門?何ですかこの物騒なメッセージは。」
落合:
「山田さん、こんな事も知らないんですか? これはですね、え〜と…… 何でしたっけ?」
宮部:
「……『地獄の門』です。これもまたダンテの神曲ですね……。」
山田:
「またダンテ……。 今おじさま達の間でダンテが流行ってるんですか?」
落合:
「そんな訳無いでしょう……。」
宮部:
「分かりません。でも何か関係があるかもしれません。」
落合:
「関係ついでにこの開閉スイッチの下にある窪みは一体なんでしょう?」
山田:
「さあ?窪みが3つあるのを見ると何か嵌め込む必要があるみたいですね。」
宮部:
「それがエレベーターを開く鍵になる、ってことですかね?」
落合:
「ん〜どうなんでしょう?そう思いたい所ですね。」
山田:
「それじゃ取りあえず電力室へ向かいましょう、進めば自ずと道は開かれると思いますので。」

宮部は頷き落合はため息をついて山田に賛同する。 エレベーターの左側に通路がありそこに向かって歩き出す。 右側の通路は瓦礫で立ち塞がってしまったからだ。

1ヶ月前 No.69

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・B棟1階連絡通路

最初の印象は静寂だった。
無惨な姿を晒している研究所の通路を歩く3人には静寂に包まれていた。とても静かで薄暗く最初から、音など無かったかのようにすべてが無音だった。
辺り一面の壁に付いてる手形の血、床に散らばっている血の付いた書類の数々、何かの肉が焼き焦げた臭いに満ちた脂染みた空気を除けば、無音の世界を楽しめる素敵な場所だっただろう。
白衣を着た男女の死体に出くわし宮部はあまりの無惨さに目を背ける。山田は気を使い背中を撫でるが声をかける事は無かった。あまりに酷い状態に心が萎えていた。

今日だけで一体いくつの、何人の死を見て来ただろう。今まで死を見て来なかったかと言えば嘘になる、非現実つまりドラマやアニメやゲームや映画での死は沢山見て来た筈だ。
しかしリアルである現実世界ではそうそうない。人に与えられる死は、もっと穏やかなものだとばかり思って生きて来た。それが今日この様な形で根底から覆された。
穏やかな死等はなく地獄が現実に降り注ぎ、平等に人は惨たらしく死を迎える。そう思うと3人の心の中の希望がしぼんで消えた。

しかし地獄と化したこの町が荒涼たる墓場に変わっても生き延びた3人は、この廃墟を満たす静けさにほっとするべきだろう。
「何も起きない」という事がどれだけの至福かを学んでいるのと同時に、深い静寂は虚しさを増すだけだからだ。それを理解してながらも3人は一向に口を開こうとしない。

静寂よりも深い悲しみに3人は包まれていたから、自分達が歩くべき方向すらもぼんやりとしか認識していなかった。だから静寂を破る音に反応するのに少し遅れた。
それはうなり、空気に噛み付きながら獲物で腹を満たそうと、唇の無い剥き出しの歯茎をガチガチちらつかせながらそいつらは現れた。3匹の血塗れの犬、寄生犬ケロベロスだ。


ケロベロス:「ガルルルルル」

獲物を見つけたと言わんばかりのギラ付いた目で山田達を睨み、一斉に駆け寄る。大きく口を開け食おうと迫ったが、また死は山田達を選ばなかったようだ。
たとえ僅かな希望でもそれに縋り付き、生きようと決心した山田達の銃弾の豪雨に濡れた。
おぞましい怪物という名の死に直面して、山田達は今まで自分達の為に死んで逝った人達に顔向けできないような最後を、迎える事は本意ではないと悟ったのだ。


落合:
「……伏せ。」

もう静寂には耐えられなかったのか最初に落合が口を開いた。屍となった元犬に向けて。 次に宮部が口を開いた。


宮部:
「………あの、太郎さん。ここ……」

何かに気付き指を指す。そこには『監視室』とプレートに書かれた部屋があった。 そして山田が口を開いた。


山田:
「………監視室?……入りましょうか、何か分かるかもしれません。」

3人で顔を見合わせ頷く。決定的な死が迎えにくるまで生に縋り付いて、必ず生き抜くと目で誓い合って監視室へ入って行く。

1ヶ月前 No.70

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


・B棟1階監視室

武器を構え恐る恐る中へ入る。何が出て来ても可笑しくないので化け物を気にして辺りを見渡す。
良かった事に化け物は居なかった。ただ銃弾に倒れたであろう数人の死体が横たわっていただけだが、それが良かったと思うべきかは一考するべきだろう。


山田:
「………何でここの人達は撃たれて死んでいるんでしょうか?錯乱して撃ち合ったとか?」
落合:
「……そしたら手元に銃を握ってないと可笑しいですよ。無い所を見ると第3者に撃たれて殺されたと思う方が自然かと。そしてその第3者はマシンガンを持ってる。」
山田:
「どうしてマシンガンだと?」
落合:
「遺体と壁やテレビ画面にある銃弾の後が、マシンガンそのものだからです。」

落合の言った通り死体を含め壁や監視用のテレビ画面には、無数の銃弾で穴が空いていた。その所為で画面からは時折 バチバチ と電気がショートして火花が散り煙を上げている。
男2人の会話を片耳で聞きながら、宮部は机の上に置いてあった書類に目を通し始める。

《監視員の日報
3月12日
受付の姉ちゃんが何故か分からないが『B棟3階の休憩室』に入って行った。
仕事上問い詰めなければならないだろうが、個人的にはいつもいいケツを拝ませてもらってるから、何も見なかった事にしよう。

3月17日
さっき開発部の副部長が直接来やがった。
何でも『B棟3階の休憩室』の内線が使えなくなったとの事。
急ぎの用事があるから急いで直してくれとのお達しだ。あの受付の姉ちゃんを思い出したが何も言わなかった。
開発部の連中はいけ好かないどころか気味悪いからいい気味だ。

3月26日
『例の怪物』が実験室から逃げたと聞いたときは肝を冷やしたが、『C棟地下区画1』になんとか閉じ込められた。
何人かの犠牲が出たが開発部の自業自得だ。ざまあみやがれ。

___数ページ破り捨てられた後殴り書き___

ガスマスクを付けた奴が『C棟地下区画1』を開け『例の怪物』を解き放ったかと思えば、銃を持った集団に銃弾を浴びせられた。
生き残ったのは俺だけだが僅かだろう。コレを読んだ同志が居るなら、どうか敵討ちを……》

宮部:
「………B棟3階の休憩室?」
山田:
「そこに何があるんです?」

いつの間にか覗き込んでいた山田にビクついた宮部は体を少し反らし、横目で山田を見て喋る。


宮部:
「さ、さあ?私も分かりませんけど、そこに行けば何か手がかりが掴めるかと思いまして……。」
山田:
「そうですね、そこに行きますか。実験室から逃げたという、例の怪物がいるC棟地下区画1は危険そうですしね。」
落合:
「では急いだ方がいいですね。」

時計を見ると午後16時。滅菌作戦まで2時間を切っている。3人は急いで監視室を後にする。

1ヶ月前 No.71

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・B棟3階休憩室
16:10

階段を上るということすらも彼らは惜しんだ。一段抜きをして階段を駆け急いだ。道中5羽のレイブンに遭遇したが、生きる覚悟と武器を手にした彼らの前にあえなく散って行った。
3階に着き休憩室の前にいたヒューミン2体も懸命に襲おうとしたが、その頑張りは虚しく弾丸の雨霰に塗れ、自らの血の海に溺れた。靴に血が付くのを構わず3人は休憩室へ入った。
部屋の中は研究所内とさほど変わらなかったが、付け加えるとしたら臭いの中に硝煙の臭いが混じっていた。それは銃を使ったという証拠であり、その銃を使い怪物達に抗ったという事を示していた。しかし奇妙な事に化け物の遺体は見つからなかった。いや見つかった。ちゃんと語るなら人間の遺体が見つかった。
同士討ちで撃たれ果てたのだろう、部屋の中心にある小さな机をボーダラインに、4人の遺体が対峙する形で見つかった。


宮部:
「……特殊部隊?」

白衣を着た初老の男性を除き、残りの遺体はボディーアーマーを着たいかにもな特殊部隊だった。一人はひっくり返った高級そうなソファーに、一人は大きなシャンデリアの下敷きに、
もう一人は脳漿を壁一面にデコレーションをして倒れていた。手で顔を覆う宮部を余所に落合は、マシンガンを拾い弾数を確認する。
厳密に言えば拾ったのではなく、遺体からひったくったと言う方が正しいが。


落合:
「………僕達の命を狙っていたのも、色々と妨害して来たのも多分コイツらでしょう。」
山田:
「何故そうだと?」
落合:
「言いましたよね?自らの戦力を削ぐとは考えにくいので、大佐達の部隊ではない、別の部隊の可能性があると。コレがその証拠です。
 大佐達とは違うボディーアーマー、違う銃や装備……。」
山田:
「……確かに違う……。じゃあ何で俺達を?」
落合:
「それは分かりません。襲った本人達に聞きたい所ですが、生憎お喋り出来そうにないですしね。まぁこのAUGは貰っちゃいましょう、武器はあるに超した事は無い。」
宮部:
「な、なんか落合さん楽しそうですね………。」
落合:
「忘れました?僕、武器コレクターですよ?」

ウキウキ顔で話す落合に憐れみとの表情と、飽きれたため息を漏らした山田は白衣を着た男の傍に落ちていた手帳を拾う。

《開発部副長の手帳
時折黒田博士と部長に付いて行けない時がある。確かに私は善良な人間ではないが彼らと比べたらマシな方だと感じるくらいだ。
この会社に取って弊害となる者不要な者不必要な者裏切り者等は消して叱るべきだが、わざわざ子供や老人果てはホームレスまで手にかける必要があるだろうか?
この会社に疑問を思う事ばかりだが黒田博士自身、妻子を実験材料にしてる時点で疑問に思う事がバカらしくなる。思考停止の方が楽だ。

___最後のページに挟まっていたメモ___
ノーミン2匹を合成→失敗
ノーミン3匹を合成→失敗
ノーミン5匹を合成→失敗
ノーミン6匹を合成→失敗
ノーミン10匹を合成→失敗

黒田博士はノーミン10匹の合成で『クイーン』を造り出したと聞いたが、どのようにして造ったというのか?やはり天才か。》

1ヶ月前 No.72

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「………な、何だよコレ……。子供?老人にホームレス?黒田さんが?嘘だろ………。」
宮部:
「し、信じられません……。こ、こんなの……こんなの………。」
落合:
「……黒田さんに妻子はいたんですか?」
宮部:
「あ、はい。プライベートな事なのでマスコミには伏せてましたけど、居たと聞きました。愛してたとも………。 だ、だからこんなのあり得ません!
 叔父さんを陥れる為の罠です!!」
山田:
「そ、そうです!きっとそうです、日本をよくしようとした人が壊す筈がありません!」
落合:
「………あなた方は何だったら信じるんです?」
山田:
「直接本人の声を聞かないと信じません!」
宮部:
「そうです!本人に説明してもらえないと信じません!」
落合:
「……分かりました。いいでしょう、全て明るみに出るまでお付き合いします。でもどこに居るのか……」
山田:
「C棟地下区画1………。危険かもしれませんけど何か分かるかも……。」

落合が頷きそれを了承する。次の目的地が決まったのならここに長居は無用だ、思考する歩みは止めない。急いでドアを開け休憩室を過去の歩みへと変える。

1ヶ月前 No.73

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

16:25

B棟とC棟との間にある連絡路を渡る間、アイミンを数体引き連れたヒューミン達に出くわしたが、山田のマシンガンによって一掃された。
それを見た落合は弾は温存した方がいいと注意する。山田は説教をされてテンションが下がったままC棟3階の通路に着く。階段へ向かう為通路を左へ曲がる。

・C棟3階階段前通路


落合:
「もう山田さん機嫌直してくださいよ。手帳で顔を隠すなんてどんだけですか?ちょっと注意したくらいで、不機嫌になる女の宮部さんじゃないんですから……」
宮部:
「何でそこで私が出てくるんですか?!舐めてるんですか?私が女だからですか?!」
落合:
「いや、あの、あなたのヒステリーが……」
宮部:
「ヒステリーは女が言いたい事が言える最大の武器ですよ!女を馬鹿にしてる落合さんには必要ないものですけどね!!」
落合:
「いや、馬鹿には……」
山田:
「不機嫌じゃなくて、この手帳に何か挟まってたんですよ。ほらコレ……。」
落合:
「メダル?」

神話に出て来るキメラの模様が掘られた金色の、手のひらくらいの大きさのある丸いメダルがそこにはあった。


山田:
「このメダルの大きさ、1階の受付ロビーにあった直通エレベーターの、窪みに嵌め込むんじゃないですか?」
落合:
「なるほど……。そう考えるとこの大きさに納得出来ますね。」
山田:
「となるとあと2つ集める必要があります。探しましょう!」
落合:
「でもどこにあるのやら……。」
宮部:
「2人とも静かに!」
山田:
「どうしました?」

宮部は屈み込み前方を指差す。階段前の通路の窓にボロボロの白衣を着たヒューミンが、背を向けて窓の外の方を見ていた。どうやら山田達には気付いていない。

1ヶ月前 No.74

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

おかしなヒューミン:「………」
落合:
「……どうやら、僕達には気付いてないっぽいですね……。」
宮部:
「このまま物音立てずに階段を下りれば、やり過ごせるんじゃ無いですか?」
落合:
「それが妙案かと。」
山田:
「いや、撃ちたいんだけど。」
宮部:
「え?」
山田:
「何だか無性に撃ちたい衝動に駆られてるんだけど……。」
落合:
「何故に?!いやいやいや弾の無駄ですから余計な事は……。」
山田:
「いや、撃つ。」
落合:
「だから何で?!」

落合達の静止を聞かず山田は後頭部に向け数発撃つ。白衣を着たヒューミンは事切れた人形のように床に落ちた。傍までやって来た山田が、ヒューミンが握りしめていた紙切れに気付きその紙をつまみ上げる。

《研究員からの手紙
君に電話した事を後悔しているよ。半年前に別れて今更なんだって思うだろう。
数分前俺は気が動転していたんだろう、当たり前だこんな地獄になってしまったのだから。

でも君の事だ、文句言いながらここに来るだろう。只の自意識過剰で来ないかもしれないが来てしまったら、この地獄に呼んでしまった俺の責任だ。
君が傷つくのは嫌だ。もし傷ついてしまったら『小実験室』にあるワクチンを使って治癒してくれ。
もし、セキュリティシステムが正常に機能していれば、そこにある端末を使ってワクチンを取り出してくれ。
セキュリティシステムが動いてなければ『動力室』で動かせる。

『制御室』も『小実験室』もそこある端末からパスワードを入力すれば、アクセスできるようにしておいた。
パスワードは『M2O2CA』、君の名だ。

もし君が来て、もし俺を見かけたら、それでもし叶うなら、君の手で楽にしてくれ。》

1ヶ月前 No.75

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「………ラブレター?」
宮部:
「もしそうならこんなに一人の女性を一途に想うって、素敵です……。」

少しうっとりとした表情で山田を見るが、とうの山田は果てたヒューミンを凝視したままだ。何故撃ちたくなったのか自分でも分からないようだ。


落合:
「小実験室はB棟6階、動力室はこの棟の6階………。このまま下りてって地下区画1へ行った方が早いですね。」
宮部:
「そうですね。じゃあ早く下りましょう。行きましょうか太郎さん!」
山田:
「え、ええ。行きますか。」

階段を駆け下りる。1階を通り過ぎ地下1階。開け放たれた剛鉄の金庫の扉の様な所で立ち止まる。

・C棟地下区画1前通路


落合:
「………お二人共、覚悟出来てます?」
宮部:
「……か、覚悟も何も……。い、行かなきゃ駄目なので……か、覚悟します!」
山田:
「………では、行きましょうか。地獄の底へ。」

引きつった笑顔で生唾を飲み込み、覚悟を決めいざ足を一歩踏み出す。
暗き闇の深淵へ。   ___7完___

1ヶ月前 No.76

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

___誰かのボイスレコーダー(3)___

?:
「『闇の中を歩く民は、大いなる光を見 死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。』 私が迷える子羊共を導く、転ばぬ先の杖ならぬ救いの光となろう。
それは子供の背を押し尻を叩き、先導を促す親の如く。親バカと罵られようとも、子の行き着く進化の道を用意するは親の勤め。
新たな道を拓きし我が子を、愛でぬ親がどこにいるだろうか? 生きては愛で、死して尚愛でるが親という存在だ。

優れた遺伝子のみを選り分け進化を促す力。即ち『“黒田家”の血を受け継いだ我が子』を使い『私』が、革命を起こしこの国を、永遠の繁栄を促す指導者となる。
新たな力を手にした者共は、一つの共同体となり国の園、国の頂きに上り詰めるだろう。希望無きこの地獄から遥なる国の高みへ。

残る問題は『いつ』だが、さほど気にする問題では無いだろう。時が経てば自ずと勝機が顔を覗かせる、その時にこの手に掴むまでの事だ。
その時が来れば世界は、驚天動地の思いをするだろう。世界が日本を知る日だ。

しかし物事の本質が全てうまくいかない事が起きるのが世の常。もし私に何かあればその時は、コレを聞いている我が同志に、私の志と力の全てを託そう。
世界に下克上を、日本に永遠の繁栄を。 国の頂きに上り全てを変えろ。

我想う 故に我あり よって我は我にして我らなり」

1ヶ月前 No.77

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

第8話
・C棟地下区画1通路
16:30

カン カン カンと3人が歩くたびに、金属の床から音が反響する。壁、天井、何かを運ぶ為のカートですら全てが鉄で出来ていた。それならば金属音がするのは当たり前だ。
しかし3人は音がする事に少し驚きを隠せなかった。何故なら床一面錆び付いていたからだ。錆びているから音が出ないとまでは、思っていなかったがこんなに心地よく、音が出るとは思いもしなかった。よっぽど使われていた鉄の純度が良かったのか、はたまた只の偶然か。どちらにしろ血によって錆びた鉄の上を、歩いている事実は変わらないのだ。

あまりの酷い臭いに腹がよじれ、吐き気を催す程気分を害しているが、原因は他にもある。春の陽気な暖かさと、地下である事が起因している。
地下ならば空気を供給する、装置が作動して然るべきだ。だが電力が無く、空気が流れていないため、体から汗が滴り落ち、息をするたび熱い砂を吸い込んでいる様な状態だ。
さしずめ気分を害する、悪因のフルコースだとしか言いようが無い。

ここで一体何があったのだろう。何があったにせよ進むしか方法は無い。彼らは道中で拾った懐中電灯で、辺りを照らしながら進んでいた。
その懐中電灯は軍用と書かれていて、特殊部隊が用いていたものだったのだろう。ここら辺に落ちてた事を踏まえると、持ち主に何かトラプルが起こったのは想像するに難くない。
辺りを注意深く照らしながら、実験室と思われるガラス張りの部屋を次々と通過する。すると突如全貌の通路から、何かが落ちる音がした。

物音がする部屋の前まで来て、C実験室5というネームプレートを確認する。薄暗い部屋からは何かしらの光が点滅している。


宮部:
「そこにいるのは、誰?!」
?:
「ヒッ!」

1ヶ月前 No.78

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

光に照らし出されたのは、瓶底眼鏡を掛け、白髪のもじゃもじゃ頭をした、白衣の老人が居た。


山田:
「あ、生存者ですか?!」
?:
「……何じゃい、そっちだって部外者の生存者じゃろ。あ〜驚いたわい、脅かさんでくれ心臓に悪いの〜。」
山田:
「あ、すいません驚かせて。でも大丈夫ですか?どこか怪我は無いですかおじいちゃん。」
?:
「見ての通りピンピンじゃ。後お年寄り扱いするんでねぇ!まだまだ若いもんには負けんわい!!」
落合:
「うわ〜いるわ〜、こういう面倒くさいお年……… 人……。」
?:
「それにアッチの方もまだピンピンじゃ。その証拠にその可愛い子ちゃんに反応しとる。」
宮部:
「驚かせてなんですけど、何を言っているんですか!! 冗談は寝て言ってください!永遠の眠りにつかせますよ?!」
落合:
「ちょ、ちょっと宮部さ〜ん?ツッコミが激しすぎ……」
?:
「何じゃ信じられんか?じゃあ見せてやろうか?」
山田:
「おじいちゃん、本当にいい加減にしようか?」
?:
「だからお年寄り扱いするんでねぇ!!ワシにだって名前はあるぞい!」
山田:
「何て呼べばいいんです?」
?:
「おや?まだ名乗ってなかったかの? 薬師 灰之介(やくし はいのすけ)じゃ。」

ぺこりと少し頭を下げ、メガネを光らせて山田達を、ギラ付いた目で見つめニヤける。


薬師:
「以後よろしくの………。」

1ヶ月前 No.79

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「それで薬師さん、貴方はここで何していたんですか?」
薬師:
「そうじゃのう、実験の準備を少々……」
宮部:
「実験?」
薬師:
「あ、いや……。何ぶん科学者のもんでの、何か疑問があると確かめたくなるんじゃ。科学者の性というものかの。」
山田:
「……科学者なら何か知ってますか?例えばクイーンとか。」
薬師:
「『クイーン・ノーミン』の事かの?全てのノーミンの生みの親と言えば簡単じゃのう。」
落合:
「クイーン・ノーミン?そいつがノーミンとか言う、寄生虫を生み出した元凶。」
山田:
「……そのクイーンを造ったのが、黒田博士?」
薬師:
「いかにも。」
宮部:
「……… ………」
落合:
「……でもクイーンってノーミン達の合成じゃないんですか?クイーンがノーミンを造ったというなら、話が矛盾するんじゃ……。」
山田:
「それを確かめる為に、黒田さんの所へ連れて行って頂けます?ただの感ですけど生きてますよね?」
薬師:
「……生きておるが、連れて行く前にどうか、科学者仲間を助けてくれ。この部屋を出て向こう側の通路に、身動き出来ない者がおるんじゃ。」
山田:
「では一緒に行きましょうか。」
薬師:
「何をいうておる、この老体じゃぞ?ちょっとここで休ませてもらう。」
宮部:
「じゃあ私が付き添います。」
薬師:
「ヒョ〜、いいのかいの〜?薄暗い部屋で男女2人きり、こりゃわしも頑張らないといかんのかの〜?」
宮部:
「私も行って来ます。」

1ヶ月前 No.80

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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1ヶ月前 No.81

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

落合:
「ぐわあ!!」

怪物は落合に体当たりをかまし、懐中電灯を落とし闇の中へと消える。次に宮部に狙いを定めた怪物は、カミソリのように鋭い鉤爪をブーツの端に引っ掻け、宮部を転倒させる。
悲鳴を上げる宮部を引っ張り闇に消えようとする怪物に、銃をショットガンに変えた山田が頭部を中心に狙いを定め、引き金を絞り続けた。
体の痛みからくる山田の苦痛のうめきと怪物のうめきが共鳴する。やはり頭が弱点なのか。それを察した直後怪物は高々とジャンプをし、闇の中に姿を消した。


山田:
「くそ!一体何処に_____」

怪物を捜して通路中を照らした直後、それは闇の中から突進して来て、山田を地面に倒させ重く伸し掛る。あまりの重さと鼻孔を刺激する腐臭に山田は喘いだ。
何が腐ったらこんな臭いがするのか。一瞬思いながら目の前に振り下ろされる、鉤爪を見て死を悟った。しかしありったけの力を込めた宮部の体当たりを食らった怪物は、その衝撃で横に逸れ、またしても闇に消えた。尻餅をついている宮部を見て一瞬顔がほころんだ山田は、戦慄の表情に戻る。
闇からぬっと顔を出し、とっさの出来事に何も反応出来ない宮部の顔に、よだれをたらし大きく縦に口を開けた怪物が、宮部の眼前に居た。
そのまま宮部の首ごと噛み裂く______ 前に落合がマシンガンの雨霰を、横から浴びせる。


落合:
「おらおらーー!!これでどっ____」

半回転した怪物によってマシンガンは吹き飛ばされ、落合は怪物に伸しかけられた。大きな口で顔面を抉られそうになった瞬間、後頭部にショットガンが投げつけられる。
よほど気に入らなかったのか怪物は、投げた山田に再び歯を剥き出し、飛びかかって来た。跳躍した怪物は山田と倒れ、床を滑って行った。
宮部と落合が駆け寄ると、怪物の下から山田が這い出て来た。持っていた刀を突き立て口に刺し、後頭部まで貫いた。そこまでしてようやく怪物は果てた。
宮部は涙を流しながら山田に抱き付き、落合は胸を撫で下ろす。

1ヶ月前 No.82

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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1ヶ月前 No.83

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

C実験室5
16:33

落合:
「薬師ーー!!ジジィテメェオラーーー!!」
宮部:
「……いませんね。」
山田:
「はぁはぁ、やっぱり罠だったか……。ん?これは……。」

急いで戻って来たもののやはり実験室はもぬけの殻で、薬師が漁っていた薬品棚にあったであろう、試験瓶が数個無くなっていた。
その棚の隣り、つまり薬師が居た場所に紙が落ちている。山田はそれを拾う。

《誰かからのFAX
・開発部部長 薬師殿へ
黒田博士のバカな行為で狩矢崎市は壊滅するのも時間の問題だ。
それを危惧した日本国政府は滅菌作戦を決定し、狩矢崎市は見すてられた。
国会やマスコミへの作戦遅延工作は、すでに限界を超えている。 速やかに脱出せよ。
午後6時に軍は決行する。 町は日が暮れると同時に消滅する。  ミスターOより》


「……薬師が開発部の、部長………。」
落合:
「くそーーー!!騙された!あの野郎!!」
宮部:
「探しましょう!きっとそう遠くない所に居る筈です。」
山田:
「いいえ、探すのは止めましょう。地の利は向こうにあるので俺達が不利です。」
宮部:
「確かに………。」
山田:
「それよりもここを調べた方がいいでしょう。何か分かるかもしれません。」

1ヶ月前 No.84

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

3人は手分けして実験室内を調べる。落合は薬師が何かを探していた棚を半ば破壊しながら調べている。宮部は研究員用のロッカーを探る。山田は割れたガラスがある個室を覗いた。
中は3人程の研究員が腹を抉られたり、真っ二つにされたりと無惨な姿を晒していた。山田は顔を伏せた。伏せて足元に何かあるに気がついた。

《特殊実験体報告書
被験者は成人男性。職業医師(黒田博士の主治医だった男)。
拘束した後生きたまま腹を裂き、腹の中に直接ノーミンを投入し閉腹。(麻酔を使えば実験に支障がある言われたが、果たしてそうだろうか?)

投入1時間経過
全ての高速器具を壊し床をのたうち回る。人間の力を超えた結果を有に見せつけた。

投入2時間経過
体に変化が見られた。体中の至る所から触手のようなものが出現し始める。その際骨が割れる様な音が聞こえた。(内部から食破られているのだろうか。)

投入4時間経過
元々あった人としての原型は止めておらず、腹の中に居たノーミンは腹を引き裂く形で出て来ている。その際触手と共に肥大化している。
人間だと分かるのは僅かに残った形だけの頭部である。しかしそれも触手に埋もれていて理性は皆無。我々はコイツを“H-IN01”(えいちーあいえぬぜろわん)と命名する

___破り捨てられた後殴り書き___

“H-IN01”は我々の想像を遥かに超えた凶暴性を秘めていたようだ。
防弾ガラスを突き破ったかと思えば、鉄製のドアをへし曲げた。そう逃げたのだ。
実験体の逃走により研究員の何人かが犠牲になった。そこまではまだよくあることだが問題はこの地下区画が完全に閉鎖された事だ。
制御の効かない怪物が閉じ込められない、となると閉鎖するのは当然の事だが、我々は見捨てられたと考えていいだろう。
皆殺しになるのは時間の問題。仲間達の悲鳴を聞きながら死を待つ他に無い。死んだ振りをしてみようと思うが効果どうだろう。》

報告書をそっと閉じた山田は、報告書を拾った後に気付いた冷たくなった手の上に乗せる。

1ヶ月前 No.85

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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1ヶ月前 No.86

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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1ヶ月前 No.87

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

地下区画の出入り口に辿り着いた宮部と落合は、急いで階段を駆け上がる。後を追おうとした山田はふと足下に落ちている紙を見つけ拾い上げる。

《何者かによる指示書
KS社侵入後、可及的速やかに任務行動に移ること。

目的はノーミンの奪取。
本作戦をし損じることは許されない。冷静な判断と行動を求む。

1.脱出路の確保
先ずは安全を確認し移動、見つからないことを前提に。

社内は未知の化け物の巣窟であると予想される。
奴らに見つからぬよう周囲には十分に気を配れ。

2.偽装工作の準備
事前に渡したものは攪乱のための偽装工作に使用する。
同入の手引書に従い、速やかに設置せよ。
第3者の存在を悟られるな。

※痕跡は絶対に残すな!

本作戦は主目的となるノーミンの奪取のみである。
自衛隊の例の部隊は気にするな。任務の邪魔になるなら殺しても構わない。》

コレを呼んで第3者の介入があったということだけが分かった。この地下区画1を開けたというガスマスクの人物、これが何を意味するか今はまだ分からない。
まだ分からない以上考えても仕方ない。そう思った山田は2人の後を追いかけ階段を駆け上がる。

1ヶ月前 No.88

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「…………無我夢中で気がつかなかったんですけど、私達今何処に向かってるんでしたっけ?」
落合:
「そ、そういえば……。がむしゃらに階段を上ってるだけな気が……。」
山田:
「今C棟にいるのでこのまま6階にある、動力室へ直行しましょう。セキュリティーシステムが正常かどうか確かめた方がいいかと。」

そう言って階段を駆け上がりC棟3階。しかし運命は残酷を極めているようで、炎が立ち塞がりこれ以上は上れない。仕方ないので階段の踊り場から出て通路を進む。

・連絡路前通路
16:40

C棟とB棟との間にある、連絡路を渡る為通路を走る。もう少しで連絡路に辿り着くかと思った矢先、ギ〜 っと黒板を引っ掻く様な耳障りのする音が前方から聞こえた。
その不快な音は定期的に一定の時間を空けながら、音を大きくして行く。つまり音を発している何かが近づいているのだ。暗闇ではないものの懐中電灯の光は必要で、照らさなければはっきりと見えない。しかしその何かは、薄暗いにも関わらずもぞもぞ動いているのが影でも分かる。不協和音の主が暗がりから姿を現す。

落合:
「……なんだ、あいつは……?」

皆視線を床に落としていた。それもそのはずで、そいつは床を這いつくばっていた。赤い斑点の付いた灰色の大きなまんじゅう、というのが第一印象というべきだろう。
不確かな形のそいつは無数のノーミンで成り立っていた。暗がりでもぞもぞと動いたいたのは、何かに寄生して体を乗っ取ったノーミン達が、所狭しと動いていた所為だ。
不快な音は大きな鉤爪で、床を引っ掻きながら移動していた故に、出ていた音だと分かった。しかし不快な音はそれだけではなかった。
無数の小鳥が鳴いているかのように、地鳴きにも似た耳を塞ぎたくなる程の、騒音を体中から鳴らしていた。

28日前 No.89

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


《池上ファイル
・実験体達による遭遇A
不快なオーケストラに出くわした。
そいつは赤い目玉が体中に無数にある特徴的な化け物だ。
関係者の話によると、一匹のノーミンに対する実験はやり尽されており、それに飽きた研究員の好奇心の果てだったという。
「複数のノーミンに寄生させたらどうなるだろう」という狂った好奇心が、悪魔の実験を勧めた。

一人の人間に対して複数寄生させた結果、ノーミン達の重さに耐えかね自立が出来なくなった、不出来な作品が出来上がったという。
失敗作に値する為、一回だけの試みだったのだが、どういう訳だか分からないが奴は増えたというのだ。
繁殖なのか、偶発的なのか不明で、不気味なこの化け物は“ブァリオス”と研究員達に名付けられたという。》

正体の知らない化け物を、相手にするのを恐れた山田は急いでファイルを開き、中を確かめた。名前と正体が判明してもやはり、きみが悪い生物に変わりはなかった。
宮部は銃で、他男2人はショットガンでヴァリオスを撃って行く。撃つたびにノーミン達が空中に霧散して行く。その様は不気味そのものだ。


ブァリオス:「ギー! ギーーー!!」

抵抗を見せたブァリオスは、片腕だけの大きな鉤爪を振り回す。しかし山田達との距離があり、空中を虚しく切るだけだ。
抵抗はしているもののほぼ成す術が無いブァリオスは、ひと際大きな奇声を発した後、ドロドロに溶けて果てる。


落合:
「最後まで気色悪ぃ……。」

ブァリオスだった死骸に唾を吐き捨てながら、落合は連絡路へ向かう。山田と宮部はお互いを見合い、同情の視線を交わす。死骸を避け連絡路へ歩く。

28日前 No.90

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・3階C棟からB棟への連絡路
16:43

床以外全面ガラス張りの連絡路を渡っていると、前方からヒューミンαが、奇声を上げながら高々とジャンプして襲って来た。


ヒューミンα:「グガァアアーー!!」
落合:
「真っ暗闇じゃなけりゃ、お前何か怖くねぇんだよ!」

空中でショットガンを撃ち床に落とす、床を数秒のたうち回っていたヒューミンαは、怒りの咆哮を上げ体勢を整える。
即座に山田が反撃をさせまいとして、かんま入れずにショットガンで連射する。仰け反って後ずさりしたヒューミンαは、ガラスを突き破り外へ落ちる。

山田:
「空中散歩を楽しみな。」
宮部:
「た、太郎さん。太郎さん。あれ……。」

悲鳴を上げながら落ちて行くのを眺めていた山田を、宮部が青ざめながら今来た道を指差す。数匹のブラックウィドーを潰しながら、数十体のヒューミンαが向かってくる。


山田:
「……あの数は流石に無理です。」
落合:
「確かに対処しきれない。こりゃ逃げるが勝ちって奴だな……。」
宮部:
「走って!!」

宮部の合図で一斉に走り出す。宮部が逃げながら銃を撃った。


落合:
「弾を無駄にするな!」

銃弾が頭に当たってもやはり即死はしない。所々壊死した部分から赤い筋の肉と白い骨がのぞき、血の混じったよだれを垂らして、獲物を求めるギラ付いた咆哮を聞けば、誰でも撃ちたくなるだろう。山田は分かっていたつもりだが、血飛沫と脳味噌を床に巻き散らかして尚、襲って来る怪物を見て、優先事項は違うと声に出した。


山田:
「走れ!走り続けろ!」
宮部:
「でも!それだと追付かれます!」

その時だった。どこか遠くで爆発音が聞こえた。嫌な予感がして山田が頭上を見上げた。上階から只の瓦礫と化した連絡路が落ちて来る。瓦礫のハルマゲドンというべきか。
「危ない!!」山田は叫び、落合と宮部の背中を思いっきり押した。
轟音が轟き、ヒューミンα達を巻き込みながら、落ちて来た瓦礫と一緒に連絡路が下へ落ちていった。
床に腹這いになった山田がチラッと足下を見る。靴のつま先から向こうは何も無かった。数センチズレていたら、足ごと持って行かれていただろう。
その現実に気付いた山田は、大量の脂汗をかき、引きつった笑顔で宮部と落合に顔を向け、うわずった声で言った。


山田:
「B棟に着きましたね……。」

28日前 No.91

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・B棟6階通路
16:50

上階に進むごとに、室内の被害は酷くなっている気がした。歩くたびに出くわす、特殊部隊員や職員の遺体が、より惨たらしく凄惨な姿で見つかる。
その度に宮部は小さな悲鳴を上げ、山田の後ろに隠れ、落合は揚々と遺体から銃弾を奪う。それを見て山田はため息をつく。
床に散乱している遺体や瓦礫を避け、着き次ぎ通過する部屋のネームプレートを、注意深く見ながら進む。


山田:
「あった。」

小実験室というネームプレートを確認する。目的地に着いた。うまくいけばワクチンを手に入れられるだろう。
観音開きの自動ドアを開け、中に入る。

・小実験室

中は非常灯で付いているらしく、薄赤い光が部屋を照らしている。様々な端末があり、それのどももがパソコンに繋がっている。しかし何者かに壊されたのか、使えそうなものは無い。
血の付いたガラス張りの薬品棚を見つけた。薬品ラベルを見ると、英語でワクチンと書かれていた。早速取り出したいが、小さな端末が付いており、操作してもうんともすんともいわない。


「駄目か……。動いてない。」
宮部:
「つまり、隣りの棟へ行って動力を動かして、セキュリティーシステムを起動させる必要がるんですね。」
落合:
「めんどくせー。」
山田:
「まぁ取りあえずここを調べてみましょう。向こうへ行かなくていい方法があるかも。」

そう言って各自各々で探索を始める。落合は何かの拍子に壊れたのだろう、カートの上にある書類を見つける。

24日前 No.92

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


《医療薬品(ワクチン)に関する備考
知っての通りワクチンは社外秘であるため、厳重に保管され公にはしてはならない代物だ。
そのため徹底した管理体制が敷かれている。この研究所の動力を使ったセキュリティーで管理され維持される。
そんな事は無いだろうがもしも動力室に何か異変が起き、動力の受給が止まるようなことがあれば、セキュリティーシステムは機能を停止し、ワクチンは誰であろうと取り出せない。
火事場泥棒を防ぐ為だと説明されたが、果たしてワクチンの管理をセキュリティーのシステムと一緒に任せていいのか、疑問は残る。

ワクチンの作り方もまた疑問だ。
寄生虫の血と寄生された者の血、そして黒田博士の血を使って培養液合成されたのがワクチンなのだ。
その作り方でワクチンとしての効果はあるのか、自分は試した事が無いためいかんせん不明だ。ワクチン担当なら分かるだろう。
作り方だけは疑問というより奇妙というべきだろう。》

読んだ落合は薬品棚の上を漁っていた山田に見せる。読んだ山田は複雑な顔をして、見つけた別のファイルを落合に見せる。

《プロトタイプについて 〜研究員のノートより〜
・“プロトタイプ・ノーミン”についての記述
ノミとダニ(厳密に言えば顔ダニだが)の合成によって生まれた最初の寄生生物は、手のひらサイズの手乗りのノミ。
容姿の可愛らしさから“ベビー・ノーミン”と名付ける者が後を絶たない。
だが姿に似合わず凶暴性を秘めている。触って来た研究員の手に寄生し変異を促した。寄生虫としての特異点は変わらないようだ。

しかし弱点もあるようで火に弱いという事が判明している。火に近づかないどころか、わざと避けて行動しているように見えた。
試しに火を持った研究員をけしかけたが、寄生をする事は無かった。やはり動物としての本能がそうさせるのだろう。

本能ついでにノーミンに付いて分かった事を記述する。
ノミの本能であるのか、寄生した宿主が死ねばノーミンは逃げようとアクションを起こす。しかし寄生して変異を催促してしまった為にコブようのにまで収縮。
そのため一心同体になってしまったノーミンは、宿主と一緒に死んでしまう。宿主の傍にノーミンのコブが落ち、僅かに動きすぐに萎れる。
この特性を後に造られたノーミンに受け継がれているかどうかは定かではない。》

落合:
「…………えぇ〜………。」
山田:
「もうやだこの研究所……。」

24日前 No.93

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「あの、お2人共。こっちに部屋が……。」

山田と落合がお互いに辟易していると、もっと奥にさらに部屋を見つけた宮部が呼ぶ。お互いに疲れきった顔を見合わせる。どうする?どうしようか?とテレパシー混じりのアイコンタクト。
これ以上行けば只でさえ疲れきった心に、さらに疲れる様な要素を見つけるかもしれない。しかし行かなければならない。もう後戻りは出来ないのだから。
テレパシーが通じてか通じないか、行くしか無いと覚悟を決め、ため息を混ぜながら頷く。

・小実験室 最深部

その部屋はこじんまりとした小さめな部屋だった。厳重にその部屋を守っていたであろうガラス戸は、粉々に床に散らばっていた。誰かが壊したのが明白だった。
そしてそれが特殊部隊員である事も分かった。部屋の隅に横たわっている隊員で、全てを推察した。山田は倒れている隊員が、何かを握っているのを気付き、近づいて取り出す。

《重要物回収による注意事項
警告!
この取扱説明書には、重要物ならびに危険物の取り扱いに関する重要な説明が書かれています。
・ここに書かれた方法以外で取り扱った場合、あなたの生命を危険に晒す可能性があります。
・ここに書かれた方法以外で取り扱った場合、あなた以外の周りの方の生命にも危険が及ぶ可能性があります。
・この本書の指示に従い、正しく使用してください。

回収する対象物は凶暴であり、襲われる可能性があります。
その為睡眠薬剤を投与してから、接触してください。

接触し回収する際、素手で行わない事。沈静化しても襲う可能性があります。
別途配布された特殊な手袋と器具を使用してください。随時関係者の指示に従ってください。》

20日前 No.94

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

落合:
「………何だ?ノミか?」
宮部:
「でも何だか少し可愛らしいですね。」

商品棚の様な複数の四角形のガラスケースを覗き込む落合と宮部。ほとんどのガラスが割れ、中身が無い中、一つだけ中身が何かの液に満たされ、何かが居るのを見つけた。
灰色模様の手のひらに乗るサイズのノミが居た。落合は頭をかしげながら上体を反らす。宮部は深々と覗き込む。


山田:
「えっと、あまり深く見ない方が……。」

言った直後、ガラスを突き破り、宮部の首目掛けて飛びついた。


ベビー・ノーミン:「ピーー!」
宮部:
「きゃあああ!!」
山田:
「雅さん!!」

倒れた宮部に急いで駆け寄り、首にくっついたベビーノーミンを掴む。激しく抵抗するベビーノーミンを、剥がそうと苦戦するも渾身の力で、引っこ抜き壁に叩き付ける。
床に落ちたベビーノーミンは体勢を整え、山田を威嚇する。そして再度襲おうとした瞬間、落合の放ったマシンガンで粛正される。襲われる事が回避され安堵した後、宮部を見やる。


宮部:
「……太郎、さん………。」
山田:
「雅さん気をしっかり!……クソ、血が止まらない!」

自分の着ていたジャケットを脱ぎ、宮部の首に巻き強く抑える。


「落合さん、抑えるのを手伝ってください!」
落合:
「……質問いいかな?」
山田:
「こんな時に何ですか?!」
落合:
「あなたが近づいた時、隊員は死んでました?」
山田:
「亡くなってましたよ!それが何?!……!」

イラつきながら山田が振り返る。部屋の隅に目がいき、言葉を失う。死んでいた筈の隊員がそこに立っていた。

20日前 No.95

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

隊員はモゾモゾと動いていた。その理由は注意深く見れば分かった。隊員は隊員だった何かに変貌していた。正確に言えば、無数のベビーノーミンによって形を成していた。
人間の手のように見えていた手も、目出し帽から見える目も、所狭しとウジャウジャひしめき合うベビーノーミン達で出来ていた。
ウネウネ動きピーピーと騒音を鳴らしながら、山田達に近づいて来る。


落合:
「うわっ、来た!」
山田:
「あのベビーマンを倒さなきゃ、こっちもやられます!!」
ベビーマン:「ピーピーピー!!!」

山田は片手で宮部の首を、押さえながらショットガンで、落合はマシンガンで応戦する。銃弾が当たるたびに、ベビーノーミンの亡骸が宙を飛び霧散する。
頭に何発か当たり、奇声を上げながら、バラバラに床に砕け散る。


落合:
「やったか?!」

バラバラになって数秒、再びベビーノーミン立ちが集まり、隊員に形作られて行く。


「気持ち悪い!本当に気持ち悪い!!」
山田:
「撃ち続けろ!!」

再び向かって来たベビーマンに銃弾を浴びせる。また床に散らばり、再度復活する。しかし少し小さくなっている。

20日前 No.96

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

ベビーマン:「ピーピー!!」
山田:
「こいつら……。落合さん!」
落合:
「分かってます!撃ち続ける!!」

銃弾を浴びせられまたしてもバラバラになる。山田はショットガンからマシンガンに持ち替えた。その直後、子供くらいの大きさになったベビーマンが、復活して襲って来た。
山田は固まった。即座に休む事無く、撃ち続けた落合によってベビーマンがバラバラになった。


「どうしたんですか?山田さん。」
山田:
「……えっと、すいませんつい……。子供のように見えたので、撃つのを迷って……。」
落合:
「大きさはそうでしょうけど、子供じゃないですからね?」
山田:
「ええ、分かってます。分かってるんですけど……。」

直後、大きな手の形になったベビーマンが2人に襲いかかった。が、ショットガンの露と消えた。


「しつこいよ。」

20日前 No.97

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「………太郎さん……。」
山田:
「雅さん。大丈夫です、この場は安全です。」
宮部:
「……ごめんなさい、私………。」
山田:
「喋らないで、ゆっくり休んで。」
落合:
「……山田さん、彼女は多分もう寄生菌に……。」
山田:
「感染してませんよ、させませんよ。」
落合:
「でもワクチンは……。」
山田:
「……俺が動力室へ行って、動力を復活させます。電力が戻ったら、パスワードを入れてワクチンを取り出してください。」
落合:
「一人で行くんですか?」
山田:
「落合さんは彼女を看ておいてください。」
落合:
「それはいいですけど。もし変異しちゃったら、どうすれば?」
山田:
「その時はその時です。」
落合:
「作戦が大雑把だな!」

20日前 No.98

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

首を抑えるのを落合に任せて山田は立ち上がる。宮部は閉じそうになる目を、必死に開けようとし震える声で話しかける。


宮部:
「………太郎さん、……行かないで………。」
山田:
「雅さん。言いましたよね?貴女を失い無くないって。それにもう決めたんです、後悔したくないって。」
宮部:
「……どうして………私なんかの為に………。」
山田:
「……俺、妹が居るんですよ。貴女と似てないお転婆な妹が。」
落合:
「妹……。」
山田:
「でも貴女と似てるんですよ、放っておけない所が。だから失いたくない、守りたい。」
宮部:
「………太郎、さん………。」
山田:
「三人で必ずここから脱出しましょう。生きて必ずです。だから絶対死なせません。」

そう言って落合に「後よろしく」と頼み、出入り口へ向かい通路へ出る。
一人孤独を背負い地獄の中へ           ___8完___

20日前 No.99

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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15日前 No.100

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf




第9話

・6階B棟からC棟への連絡路

17:00

山田は走っていた。脇目も振らずにただひたすらに。通路の端に事切れた男女の遺体を見ても、無惨な屍になった研究員を見ても、走り続けた。
一分一秒でも時間が惜しい。宮部の体の中の寄生菌は、刻一刻と蝕み変異を促し続けるだろう。そう考えるとチンタラ歩くのは得策ではない、という考えは子供でも分かった。
動力室までのルートは、あらかじめ地図を見て頭に叩き込んである。C棟に到着してすぐ、左の通路を曲がれば動力室だ。それまでの道中で誰かが邪魔しようものなら、全力で排除する覚悟を決めていた。それがたとえ人間であっても、特殊部隊であっても邪魔はさせない。誰かを助けたいという想いは、恐怖を凌駕していた。
その時だった、前方からまたしても黒板を引っ掻く様な、不快音が轟いた。前を見ると案の定、ヴァリオスが山田に向かって来ていた。


ヴァリオス:「ギーー! ギー!!」
山田:
「お前と遊んでいる暇はないな。」

さらに加速し、足を引き裂かれる前に山田は跳んだ。ヴァリオスを飛び越し無視し、連絡路を進む。
走る時間ですら惜しいのに、戦いに割く時間はほとんど皆無だ。銃弾も無限ではない、出来る限り節約しなくてはならない。
そう思った直後。銃弾を使わざる得ない存在が、前方から現れた。ドス・カーラがフラフラとしながら、立ちはだかってきた。


ドス・カーラ:「……ァァ、アアア……タスケテー、タスケテー………ニンゲンダヨ〜……。」
山田:
「お前とお喋りしてる暇もない。」

15日前 No.101

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田を真っ二つにする為、ドス・カーラは槍の左手を、大きく振り回した。だがドス・カーラの意思を裏切り、槍は空中を斬った。山田は中腰になって避け、走って来た速度を利用して、ドス・カーラの足を引っかけた。足を掛けられ前のめりによろめいたドス・カーラの背に、間髪入れずに山田が飛び蹴りを食らわせた。蹴られたドス・カーラは頭から窓ガラスに突っ込み、そのまま外へ投げ出された。


ドス・カーラ:「………イヤァアアアダァアアアーーーー!!」
山田:
「嫌よ嫌よも好きの内さ」

真っ逆さまに落ちて行くドス・カーラの、断末魔を聞き終わらない内に、山田は再び走り出した。6階分の高さから落ちての結末は分かりきっていた。既に分かりきっている最後を、見る必要も無い。だからこそ走り始めた。走り続けた。バテそうになる体力に、アドレナリンを継ぎ足し走って行く。
C棟に着き曲がり角を左に曲がった。


・C棟動力室前通路

17:05

山田:
「……はぁ、はぁはぁ………。何だ、これは………。」

山田の眼前に飛び込んで来た景色は、地獄だった。
数十人の特殊部隊の折り重なった死体が、血の海に浮かんでいた。

15日前 No.102

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

注意深く辺りを見渡す。周りには脅威になる様な、怪物達はいなかった。だが重装備の特殊部隊を、全滅に追い込む程の脅威を持った何かが、近くに居るのかもしれない。
その事実だけは変わらず、気は抜けない。周囲を気にしながら死体達に近づいて行く。どれも皆酷い有様で、頭が拉げていたり、胸に大きな穴が空いていたり、両目が抉られた遺体達が、悲惨さを物語っていた。下半身が無いある遺体に近づいた時、その遺体が手帳の様なものを、握っている事に気付きつまみ上げてページを開く。

《特殊隊員の日記
1ページ目
上層部からの命令で関係者の指示を仰ぎながら重要物の回収を命じられた。
何の事は無い簡単な任務になる筈だった。

化け物がうろついていると報告を受けていたが、これほどとは思わなかった。
一人、また一人と仲間を失って行く。装備は充分な筈なのに隙を付かれ次々と化け物達の餌食になって行く。
何故こうも化け物達が我々の居場所を知りうるのかが分からない。黒田氏の道案内で安全な道筋を通っている筈なのだ。

不測の事態に黒田氏もパニクっているのか、それとも違うのか。
考えたくはないが黒田氏はまさか・・・


2ページ目
嫌な予感というべきか読みは当たっていたようだ。
黒田氏と少数で『バイオハザード室』へ向かった班から戦々恐々とした報告が次々と無線から聞こえて来る。

罠だったのだ。まんまと我々は彼らの罠にハマったのだ。
気付いた時にはもう既に遅い。全てが後手に回り対処は不能。成す術が無い。
腹を空かせた凶暴な獣達の前に放り出された赤子のよう。

全ては黒田氏の手の平の上だったのだ。

(あとは血で汚れて読めない)》


隊員:「………誰か………そこに、いるのか?………。」
山田:
「__!__大丈夫ですか?!」

物音がしたからなのかまだ息があった隊員が、誰に喋りかけるともなく呟く。山田は日記を閉じ駆け寄った。駆け寄って気付いた。両足が反対に曲がり、腹を抉られているこの隊員は、そう長くないという事を。

13日前 No.103

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

隊員:「ど、どこの………班だ?」
山田:
「……どこの班でもないですね。ただの一般市民です。」
隊員:「ハハ、冗談がうまいな。………ただの一般人が……こんな所に、来れるわけ……ないだろ………。」
山田:
「…………。」
隊員:「……誰だか知らないが、任務は放棄して……逃げろ。我々には………手に負えない。……奴が解放される前に……早く……。」
山田:
「奴?」

直後内側から何かしらの力が、込められてひしゃげていた動力室のドアが、大きな音と共にさらにひしゃげた。ドン ドンと中から凄い力で叩かれているものすごい音が反響する。


「な、何ですか?」
隊員:「………H-IN 01と呼ばれている怪物だ。………何とか閉じ込めたが……扉はそう長く保たない。……早く、逃げろ………。」
山田:
「でも、俺はこの動力室に用事が……。」
隊員:「……隊長の命令を………無視するとは……物好きな奴だ。………コレを、使え………。」

火炎放射器を手渡された直後、ドアがぶっ壊れ動力室から5m□くらいある化け物が現れた。全身灰色の触手にまみれた、巨大なノーミン。右手は触手で形成された鉤爪。
左手は人間の顔の、右目と鼻と口から触手が生えている。喋りもしなければ意思も最早皆無だ。触手の一つ一つに命があるかのように、ウネウネと蠢いている。
山田はこの圧倒的なビジュアルを前にして、後ずさり隊員に助けを乞おうと、話しかけようとした。しかし隊員は何も反応を示さなかった。

13日前 No.104

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

H-IN 01:「ギギャギャギャーーー!!」

触手で出来た鉤爪を、大きく横に振りかぶり山田を裂こうとする。山田は前屈みになって避け、マシンガンでノーミン本体を狙い撃った。
しかし銃弾が当たる前に、触手を伸ばして楯にして銃弾を防いだ。端から見ると蓑虫に見える。あっけにとられた山田を、人の名残がまだ残っている左手で、山田を殴り飛ばす。


山田:
「ぐあ!!」

背を床に叩き付けられ呻き声を上げる。咳き込み身を丸めようとしたが、大きな鉤爪が振り上がっているのを見て、身を丸める事を中断して、火炎放射器を浴びせる。
炎に包まれH-IN 01は苦痛の雄叫び上げ、ノーミンが熱かったのか、触手の楯から顔を出した。その隙を山田は見逃さなかった。
マシンガンで本体を撃ち続けた。悲鳴を上げた。ダメージを与えられている。山田はこれでなら倒せると悟った。


H-IN 01:「ギギギギャーー!!!」

天井を青いで雄叫びを上げたノーミンが、再び触手の楯に身を隠し、闘牛のように突進して来た。直感が動けと叫び、とっさに山田は体を横にした瞬間、彼がいた後ろの壁に突進し、壁一面に大きな穴が空いた。人間の山田だったなら、押し潰されていただろう。闘牛まがいの化け物の背に再び火炎放射器をぶっ込んだ。再び叫びながら本体である、ノーミンが楯から顔を出し、マシンガンで狙い撃った。そしてまたしても触手の楯に身を隠し、大きな鉤爪を振り下ろした。すんでの所で避け、山田がいた場所に穴が空く。
余程の力で振り下ろしたのか、床から爪が抜けずにいるH-IN 01に再び火炎放射を浴びせる。三たび顔を出し、雄叫びを上げる。
今度は武器を変えずに、そのままノーミン本体に放射し続けた。その行為が功を奏したのか、H-IN 01は雄叫びが弱々しくなっていき、ついに溶け始めた。


山田:
「……これでゆっくり眠れるな、先生。」

ドロドロの液状の何かになったH-IN 01を見下ろし、哀悼の言葉を口にした後、踵を返して動力室へ入って行く。

13日前 No.105

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・C棟 動力室

17:08


中は床も天井も壁も全て、冷たいコンクリートで出来ていた。左右の壁の上部には、横一列にプロペラが付いていた。換気扇なのだろう、とても大きく立派だが動いていない。
天井に付いている剥き出しの配管からは、少し水が漏れ出し、山田の頭に落ちる。水が落ちても反応を示さない。頭に落ちる不快感を気に知られない状況にあった。
なぜなら10匹程のブラックウィドーが、一斉に侵入者である山田の方を、向いたからである。彼に気付いたブラックウィドー達が、一斉に駆け寄って来る。山田のモテ期である。


ブラックウィドー:「ギチギチギ〜〜〜!!」
山田:
「人外にモテても困る……。」

前方にいたブラックウィドー達を、横一列にマシンガンで蜂の巣にする。死んだ仲間を楯にし、銃弾を防いだ一匹のブラックウィドーが、山田に急接近した。
大きく口を開け、牙を剥き出しにし、噛み付こうとさらに身を乗り出した。臆する事無く山田は、口を勢いよく踏み潰した。ブラックウィドーの頭を踏み台にして、跳躍した。


「うぉおおおおーーー!!」

山田を仰ぎ見るブラックウィドー達に、空中から銃弾の雨を降らす。情けない鳴き声を発し、彼らは死滅した。地面に着地した山田が、そう思いホッと息をついた。
ついた瞬間後ろから、踏み台にしたブラックウィドーが、勢いよく体当たりを食らわして来た。体当たりを食らった反動で、マシンガンが遠くへ吹っ飛んだ。
肩越しに地面を滑って行く、マシンガンを見てため息をつく。ブラックウィドーに向き直り、持っていたハンカチで闘牛よろしく、ひらひらと挑発をした。
再び体当たりをするために、突っ込んで来たブラックウィドーの頭に、渾身の力で刀を突き刺した。ぐりぐりと頭を動かし、逃げようとするのを、体重をかけ阻止する。
刀が貫通し床に突き刺さって、ようやくブラックウィドーは果てた。

やれやれと言わんばかりに山田は、額の汗を拭った。その直後、真横から何かに教われ、その何かと一緒に床に倒れる。よく見たらアイミンが、ギラ付いた目で山田を見つめていた。

10日前 No.106

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


アイミン:「あが、あがが、あが〜」
山田:
「ガン付けてんじゃ、ねぇよ!!」

右左と振り下ろされる鋭い鉤爪を、刀で防いだ後両手首を切り落とした。あっけにとられたアイミンの隙を付いて、刀を横にかっ捌き、アイミンの首を落とした。
アイミンの遺体をどかして立ち上がる。マシンガンを拾い、ひと際大きなレバーのついた装置の前に立ち止まった。下りている3本のレバーを全て上げた。


アナウンス:『セキュリティーシステムの再起動を確認。これより動力を復旧します。繰り返します。』
山田:
「よし、これで雅さんが救える。」

アナウンスが数回繰り返した後、辺りがとても明るくなった。見ると電気がついていた。電力が戻ったようだ。動力が復旧した証拠に、先ほどまで止まっていた換気扇のプロペラが動いているのが分かる。それを確認した山田がうなずき、踵を返して走り出した。動力室から出て、死んだ隊員達の銃の中身を、何個か貰い来た道を走り戻った。道中またブァリオスと遭遇したが、それを無視して飛び越え走り続けた。走り続けて走り続けて、息を切らして宮部達がいる、B棟の小実験室のドアの前に着いた。山田は息を整える事もせず、ドアを開いて中に入った。

10日前 No.107

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・6階B棟 小実験室(最深部)

17:15

数発の銃声が轟いた。 間に合わなかった。とっさにこの言葉が山田の脳内を駆け巡った。同時に走り出した。最深部の部屋へ向かうと、落合が死ねと何度も連呼していた。
どこからか湧いたのか、ブラックウィドー数匹を宮部を守る形で迎撃していた。最悪な展開を避けられた事を安堵した。


山田:
「落合さん!避けてください、こいつら燃やします!」
落合:
「山田さん!戻って来たんですね?! ………ん?燃やす? ……アチッ!!」

火炎放射器を勢いよく噴射する。炎に包まれブラックウィドー達は奇声を上げ、たちまち灰の塊になる。落合は熱気に当たるだけで済んだ。
他にて危害無いのを確認して、山田は火炎放射器を床に下ろして、落合達に近づく。


「なんか、武器がグレードアップしてません?」
山田:
「それよりも、雅さんにワクチンは?」
落合:
「あ、まだです。動力が戻った直後にダクトから襲撃して来たので……。」

ダクトの密閉を落合に頼み、山田は駆け足でワクチンのある棚に向かう。端末のディスプレイを操作し、パスワードであるM2O2CAを打ち込む。このパスワードに既視感を覚えたが、それが何なのかはっきりする前にガラス戸が開いた。ワクチンを掴み宮部の元へ駆け寄った。注射の経験は勿論無かったが、脈の大体の位置に感で注射する。


宮部:
「……ぅ……ん………。」
山田:
「雅さん……。」

宮部のおでこを優しく撫でる。触られて薄く目を開けか細い声で喋り始める。


宮部:
「………太郎、さん……。」
山田:
「もう大丈夫です。ワクチンを打ちました。ゆっくり休んでください。」
宮部:
「……助けて、くれたんですね。……さしずめあなたがベアトリーチェで、私がダンテ、みたいですね……。」
山田:
「ヘアートリートメントだか、ダテ男だか知らないですけど、俺は俺であなたはあなたですよ。」
宮部:
「フフフ、本当に、太郎さんって……面白い人。」
落合:
「山田さん、全てのダクトを密閉しました。」
山田:
「ありがとうございます。では俺達も、ワクチンを打ちましょう。」
落合:
「え?マジで言ってます?」
山田:
「マジです。何かあってからでは遅いので。」
落合:
「マジかぁ〜……。」

注射が苦手だったようで、ビビりながら注射する落合を、飽きれた顔で見ながら自身にも注射する山田。涙目になっている落合を励まして地図を開く。


「次どうします?電気が付いてるので電力室へは、行かなくてよくなりましたけど、宮部さんが休まなきゃいけないので、先へは進めません。」
山田:
「……気になる事があるので、C棟へ行って調べたい事があります。手伝ってくれますか?」
落合:
「お付き合いしましょう。」
山田:
「雅さん。俺達ちょっと行って来ます。ダクトは密閉されてますので大丈夫だと思います。無線を念のため置いて行きますね。」
宮部:
「……必ず、帰って来てくださいね。」
山田:
「ええ、戻ります。必ず。」

力強く頷いた後踵を返し落合と一緒に小実験室を出て行く。

3日前 No.108

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・6階B棟からC棟への連絡路


落合:
「バイオハザード室?」
山田:
「ええ。黒田さんがそこにいる可能性が出て来ました。だから調べたいんです。」
落合:
「なるほど……。宮部さんは休ませて正解ですね。……おっと、客が来やがった。」
山田:
「増えてる……。」

先ほど山田がスルーして来たヴァリオスが2人に立ちはだかった。しかし今度は2体に増えていた。しかし数が増えても火炎放射器の前では成す術が無く、瞬く間に塵と化した。
それからは化け物は出る事は無く、難なくとC棟に着き曲がり角を右に曲がった。その直後後ろから数十体のベビーマンが襲って来た。


落合:
「何て数だ!」
山田:
「さっきの隊員達か!」

一瞬驚いたが気を取り直して一斉に火炎放射を浴びせる。数十体の奇声に耳を塞ぎたくなったが、突如大爆発を起こした。隊員の一人の腰に手榴弾があったようだ。山田が全ての支流弾を回収し忘れたからだろう。爆発した事に驚いたが怪物の襲撃に対応出来た、という形になった為気にせず歩みを進める。道中通信室という部屋を素通りし、バイオハザード室と書かれたプレートの付いた部屋の前に立ち止まる。山田と落合がお互い冷や汗をかきながら頷き合う。意を決して自動ドアを開け中に入る。

3日前 No.109
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