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パラサイト・ワールド   __寄生される世界__

 ( 小説投稿城 )
- アクセス(321) - ●メイン記事(148) / サブ記事 (11) - いいね!(0)

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

「夏の大地に雨が必要なように、この国には指導者が必要です!」

白衣を着た男が演説をしている。


「全てにおいて日本はアメリカや中国に先を越され世界的に立場は低い。しかし彼らの進化は終わりを告げた。
進化無き国に繁栄はあり得ない! 今こそ立ち上がる時です!!」

そうだ そうだ  と同意するヤジが聞こえる


「偉大な国日本を取り戻し、国々の脳髄に日本という名の楔を打ち放て!!
世界に下克上を!日本に栄光なる永遠の繁栄を!!」

少年は息をするのも忘れ、テレビに釘付けになる


「同志諸君、時は満ちました。本当の革命を始めましょう!!」

憧れの眼差しでテレビの向こうのにいる男をみる少年は、この時はまだ知る由もなかった。
万雷の拍手の中で___世界の終わりが始まった事を___




『どうも〜皆さん初めましての方もそうじゃない方も、おはこんにちばんは〜
ちょっとした期待に巧く乗せられ、人生初小説に挑戦してま〜す。ですので粗が目立ったりするかもしませんが生暖かく見守って頂ければ幸いで〜す。
因にストーリーを説明しますと「寄生虫研究の第一人者となった近未来の日本」という設定です。そのためグロ系サスペンスな小説になる予定ですので
苦手な方はリターンする事をお勧めしますが、それでも見たいのであれば覚悟して拝見してくださ〜い。

記事メモにはキャラ紹介や、感想、質問、アドバイスや提案等を載せますのでよろしくお願いします。
因にモンスターやクリーチャー等の分かりづらい描写は絵を載せたいと考えている所です。
最後にコレだけ言って終わりましょう。
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには関係ありません。』

メモ2017/09/02 12:48 : MK マッチー @11777★i04XIsqV4q_VXf

第1話『寄生される日常』(>>1-4)   第2話『出会い』(>>5-8)     第3話『決断』(>>9-12)       第4話『死の町』(>>13-26

第5話『地下の世界』  (>>27-44)   第6話『突入』(>>45-60)     第7話『KS社』(>>61-76)      第8話『深淵』(>>77-99

第9話『悪魔の実験』  (>>100-124) 第10話『黒田総一郎』(>>125-131)第11話『最後の戦い』(>>132-140)  最終話『脱出』(>>141-148


・登場人物

主人公:山田 太郎(やまだ たろう)

ヒロイン:宮部 雅 (みやべ みやび)

ベルボーイ:落合 統治(おちあい とうじ)

フロント:竹林(落合の上司)死亡

池上 慎吾(いけがみ しんご)フリージャーナリスト 死亡


・KSコーポレーション(KS社)寄生虫研究で成功を収めた世界的大企業

黒田 総一郎(くろだ そういちろう)社長兼理事長

薬師 灰之介(やくし はいのすけ) 開発局部部長 死亡


・KS社 私設特殊部隊 BCSK(バスク)

隊長:三木 秀一(みき しゅういち) 大佐

兵長:高橋 守(たかはし まもる) 死亡


・政府

内閣総理大臣

森  総理補佐官

山田 官房長官

竹下 外務省外務大臣

沼淵 厚生労働省厚生労働大臣

中村 総務省総務大臣

鬼塚 防衛省防衛大臣


・クリーチャー

ノーミン:

…続きを読む(83行)

関連リンク: 小説の事で質問です。 
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MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

首を抑えるのを落合に任せて山田は立ち上がる。宮部は閉じそうになる目を、必死に開けようとし震える声で話しかける。


宮部:
「………太郎さん、……行かないで………。」
山田:
「雅さん。言いましたよね?貴女を失い無くないって。それにもう決めたんです、後悔したくないって。」
宮部:
「……どうして………私なんかの為に………。」
山田:
「……俺、妹が居るんですよ。貴女と似てないお転婆な妹が。」
落合:
「妹……。」
山田:
「でも貴女と似てるんですよ、放っておけない所が。だから失いたくない、守りたい。」
宮部:
「………太郎、さん………。」
山田:
「三人で必ずここから脱出しましょう。生きて必ずです。だから絶対死なせません。」

そう言って落合に「後よろしく」と頼み、出入り口へ向かい通路へ出る。
一人孤独を背負い地獄の中へ           ___8完___

6ヶ月前 No.99

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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6ヶ月前 No.100

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf




第9話

・6階B棟からC棟への連絡路

17:00

山田は走っていた。脇目も振らずにただひたすらに。通路の端に事切れた男女の遺体を見ても、無惨な屍になった研究員を見ても、走り続けた。
一分一秒でも時間が惜しい。宮部の体の中の寄生菌は、刻一刻と蝕み変異を促し続けるだろう。そう考えるとチンタラ歩くのは得策ではない、という考えは子供でも分かった。
動力室までのルートは、あらかじめ地図を見て頭に叩き込んである。C棟に到着してすぐ、左の通路を曲がれば動力室だ。それまでの道中で誰かが邪魔しようものなら、全力で排除する覚悟を決めていた。それがたとえ人間であっても、特殊部隊であっても邪魔はさせない。誰かを助けたいという想いは、恐怖を凌駕していた。
その時だった、前方からまたしても黒板を引っ掻く様な、不快音が轟いた。前を見ると案の定、ヴァリオスが山田に向かって来ていた。


ヴァリオス:「ギーー! ギー!!」
山田:
「お前と遊んでいる暇はないな。」

さらに加速し、足を引き裂かれる前に山田は跳んだ。ヴァリオスを飛び越し無視し、連絡路を進む。
走る時間ですら惜しいのに、戦いに割く時間はほとんど皆無だ。銃弾も無限ではない、出来る限り節約しなくてはならない。
そう思った直後。銃弾を使わざる得ない存在が、前方から現れた。ドス・カーラがフラフラとしながら、立ちはだかってきた。


ドス・カーラ:「……ァァ、アアア……タスケテー、タスケテー………ニンゲンダヨ〜……。」
山田:
「お前とお喋りしてる暇もない。」

6ヶ月前 No.101

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田を真っ二つにする為、ドス・カーラは槍の左手を、大きく振り回した。だがドス・カーラの意思を裏切り、槍は空中を斬った。山田は中腰になって避け、走って来た速度を利用して、ドス・カーラの足を引っかけた。足を掛けられ前のめりによろめいたドス・カーラの背に、間髪入れずに山田が飛び蹴りを食らわせた。蹴られたドス・カーラは頭から窓ガラスに突っ込み、そのまま外へ投げ出された。


ドス・カーラ:「………イヤァアアアダァアアアーーーー!!」
山田:
「嫌よ嫌よも好きの内さ」

真っ逆さまに落ちて行くドス・カーラの、断末魔を聞き終わらない内に、山田は再び走り出した。6階分の高さから落ちての結末は分かりきっていた。既に分かりきっている最後を、見る必要も無い。だからこそ走り始めた。走り続けた。バテそうになる体力に、アドレナリンを継ぎ足し走って行く。
C棟に着き曲がり角を左に曲がった。


・C棟動力室前通路

17:05

山田:
「……はぁ、はぁはぁ………。何だ、これは………。」

山田の眼前に飛び込んで来た景色は、地獄だった。
数十人の特殊部隊の折り重なった死体が、血の海に浮かんでいた。

6ヶ月前 No.102

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

注意深く辺りを見渡す。周りには脅威になる様な、怪物達はいなかった。だが重装備の特殊部隊を、全滅に追い込む程の脅威を持った何かが、近くに居るのかもしれない。
その事実だけは変わらず、気は抜けない。周囲を気にしながら死体達に近づいて行く。どれも皆酷い有様で、頭が拉げていたり、胸に大きな穴が空いていたり、両目が抉られた遺体達が、悲惨さを物語っていた。下半身が無いある遺体に近づいた時、その遺体が手帳の様なものを、握っている事に気付きつまみ上げてページを開く。

《特殊隊員の日記
1ページ目
上層部からの命令で関係者の指示を仰ぎながら重要物の回収を命じられた。
何の事は無い簡単な任務になる筈だった。

化け物がうろついていると報告を受けていたが、これほどとは思わなかった。
一人、また一人と仲間を失って行く。装備は充分な筈なのに隙を付かれ次々と化け物達の餌食になって行く。
何故こうも化け物達が我々の居場所を知りうるのかが分からない。黒田氏の道案内で安全な道筋を通っている筈なのだ。

不測の事態に黒田氏もパニクっているのか、それとも違うのか。
考えたくはないが黒田氏はまさか・・・


2ページ目
嫌な予感というべきか読みは当たっていたようだ。
黒田氏と少数で『バイオハザード室』へ向かった班から戦々恐々とした報告が次々と無線から聞こえて来る。

罠だったのだ。まんまと我々は彼らの罠にハマったのだ。
気付いた時にはもう既に遅い。全てが後手に回り対処は不能。成す術が無い。
腹を空かせた凶暴な獣達の前に放り出された赤子のよう。

全ては黒田氏の手の平の上だったのだ。

(あとは血で汚れて読めない)》


隊員:「………誰か………そこに、いるのか?………。」
山田:
「__!__大丈夫ですか?!」

物音がしたからなのかまだ息があった隊員が、誰に喋りかけるともなく呟く。山田は日記を閉じ駆け寄った。駆け寄って気付いた。両足が反対に曲がり、腹を抉られているこの隊員は、そう長くないという事を。

6ヶ月前 No.103

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

隊員:「ど、どこの………班だ?」
山田:
「……どこの班でもないですね。ただの一般市民です。」
隊員:「ハハ、冗談がうまいな。………ただの一般人が……こんな所に、来れるわけ……ないだろ………。」
山田:
「…………。」
隊員:「……誰だか知らないが、任務は放棄して……逃げろ。我々には………手に負えない。……奴が解放される前に……早く……。」
山田:
「奴?」

直後内側から何かしらの力が、込められてひしゃげていた動力室のドアが、大きな音と共にさらにひしゃげた。ドン ドンと中から凄い力で叩かれているものすごい音が反響する。


「な、何ですか?」
隊員:「………H-IN 01と呼ばれている怪物だ。………何とか閉じ込めたが……扉はそう長く保たない。……早く、逃げろ………。」
山田:
「でも、俺はこの動力室に用事が……。」
隊員:「……隊長の命令を………無視するとは……物好きな奴だ。………コレを、使え………。」

火炎放射器を手渡された直後、ドアがぶっ壊れ動力室から5m□くらいある化け物が現れた。全身灰色の触手にまみれた、巨大なノーミン。右手は触手で形成された鉤爪。
左手は人間の顔の、右目と鼻と口から触手が生えている。喋りもしなければ意思も最早皆無だ。触手の一つ一つに命があるかのように、ウネウネと蠢いている。
山田はこの圧倒的なビジュアルを前にして、後ずさり隊員に助けを乞おうと、話しかけようとした。しかし隊員は何も反応を示さなかった。

6ヶ月前 No.104

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

H-IN 01:「ギギャギャギャーーー!!」

触手で出来た鉤爪を、大きく横に振りかぶり山田を裂こうとする。山田は前屈みになって避け、マシンガンでノーミン本体を狙い撃った。
しかし銃弾が当たる前に、触手を伸ばして楯にして銃弾を防いだ。端から見ると蓑虫に見える。あっけにとられた山田を、人の名残がまだ残っている左手で、山田を殴り飛ばす。


山田:
「ぐあ!!」

背を床に叩き付けられ呻き声を上げる。咳き込み身を丸めようとしたが、大きな鉤爪が振り上がっているのを見て、身を丸める事を中断して、火炎放射器を浴びせる。
炎に包まれH-IN 01は苦痛の雄叫び上げ、ノーミンが熱かったのか、触手の楯から顔を出した。その隙を山田は見逃さなかった。
マシンガンで本体を撃ち続けた。悲鳴を上げた。ダメージを与えられている。山田はこれでなら倒せると悟った。


H-IN 01:「ギギギギャーー!!!」

天井を青いで雄叫びを上げたノーミンが、再び触手の楯に身を隠し、闘牛のように突進して来た。直感が動けと叫び、とっさに山田は体を横にした瞬間、彼がいた後ろの壁に突進し、壁一面に大きな穴が空いた。人間の山田だったなら、押し潰されていただろう。闘牛まがいの化け物の背に再び火炎放射器をぶっ込んだ。再び叫びながら本体である、ノーミンが楯から顔を出し、マシンガンで狙い撃った。そしてまたしても触手の楯に身を隠し、大きな鉤爪を振り下ろした。すんでの所で避け、山田がいた場所に穴が空く。
余程の力で振り下ろしたのか、床から爪が抜けずにいるH-IN 01に再び火炎放射を浴びせる。三たび顔を出し、雄叫びを上げる。
今度は武器を変えずに、そのままノーミン本体に放射し続けた。その行為が功を奏したのか、H-IN 01は雄叫びが弱々しくなっていき、ついに溶け始めた。


山田:
「……これでゆっくり眠れるな、先生。」

ドロドロの液状の何かになったH-IN 01を見下ろし、哀悼の言葉を口にした後、踵を返して動力室へ入って行く。

6ヶ月前 No.105

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・C棟 動力室

17:08


中は床も天井も壁も全て、冷たいコンクリートで出来ていた。左右の壁の上部には、横一列にプロペラが付いていた。換気扇なのだろう、とても大きく立派だが動いていない。
天井に付いている剥き出しの配管からは、少し水が漏れ出し、山田の頭に落ちる。水が落ちても反応を示さない。頭に落ちる不快感を気に知られない状況にあった。
なぜなら10匹程のブラックウィドーが、一斉に侵入者である山田の方を、向いたからである。彼に気付いたブラックウィドー達が、一斉に駆け寄って来る。山田のモテ期である。


ブラックウィドー:「ギチギチギ〜〜〜!!」
山田:
「人外にモテても困る……。」

前方にいたブラックウィドー達を、横一列にマシンガンで蜂の巣にする。死んだ仲間を楯にし、銃弾を防いだ一匹のブラックウィドーが、山田に急接近した。
大きく口を開け、牙を剥き出しにし、噛み付こうとさらに身を乗り出した。臆する事無く山田は、口を勢いよく踏み潰した。ブラックウィドーの頭を踏み台にして、跳躍した。


「うぉおおおおーーー!!」

山田を仰ぎ見るブラックウィドー達に、空中から銃弾の雨を降らす。情けない鳴き声を発し、彼らは死滅した。地面に着地した山田が、そう思いホッと息をついた。
ついた瞬間後ろから、踏み台にしたブラックウィドーが、勢いよく体当たりを食らわして来た。体当たりを食らった反動で、マシンガンが遠くへ吹っ飛んだ。
肩越しに地面を滑って行く、マシンガンを見てため息をつく。ブラックウィドーに向き直り、持っていたハンカチで闘牛よろしく、ひらひらと挑発をした。
再び体当たりをするために、突っ込んで来たブラックウィドーの頭に、渾身の力で刀を突き刺した。ぐりぐりと頭を動かし、逃げようとするのを、体重をかけ阻止する。
刀が貫通し床に突き刺さって、ようやくブラックウィドーは果てた。

やれやれと言わんばかりに山田は、額の汗を拭った。その直後、真横から何かに教われ、その何かと一緒に床に倒れる。よく見たらアイミンが、ギラ付いた目で山田を見つめていた。

6ヶ月前 No.106

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


アイミン:「あが、あがが、あが〜」
山田:
「ガン付けてんじゃ、ねぇよ!!」

右左と振り下ろされる鋭い鉤爪を、刀で防いだ後両手首を切り落とした。あっけにとられたアイミンの隙を付いて、刀を横にかっ捌き、アイミンの首を落とした。
アイミンの遺体をどかして立ち上がる。マシンガンを拾い、ひと際大きなレバーのついた装置の前に立ち止まった。下りている3本のレバーを全て上げた。


アナウンス:『セキュリティーシステムの再起動を確認。これより動力を復旧します。繰り返します。』
山田:
「よし、これで雅さんが救える。」

アナウンスが数回繰り返した後、辺りがとても明るくなった。見ると電気がついていた。電力が戻ったようだ。動力が復旧した証拠に、先ほどまで止まっていた換気扇のプロペラが動いているのが分かる。それを確認した山田がうなずき、踵を返して走り出した。動力室から出て、死んだ隊員達の銃の中身を、何個か貰い来た道を走り戻った。道中またブァリオスと遭遇したが、それを無視して飛び越え走り続けた。走り続けて走り続けて、息を切らして宮部達がいる、B棟の小実験室のドアの前に着いた。山田は息を整える事もせず、ドアを開いて中に入った。

6ヶ月前 No.107

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・6階B棟 小実験室(最深部)

17:15

数発の銃声が轟いた。 間に合わなかった。とっさにこの言葉が山田の脳内を駆け巡った。同時に走り出した。最深部の部屋へ向かうと、落合が死ねと何度も連呼していた。
どこからか湧いたのか、ブラックウィドー数匹を宮部を守る形で迎撃していた。最悪な展開を避けられた事を安堵した。


山田:
「落合さん!避けてください、こいつら燃やします!」
落合:
「山田さん!戻って来たんですね?! ………ん?燃やす? ……アチッ!!」

火炎放射器を勢いよく噴射する。炎に包まれブラックウィドー達は奇声を上げ、たちまち灰の塊になる。落合は熱気に当たるだけで済んだ。
他にて危害無いのを確認して、山田は火炎放射器を床に下ろして、落合達に近づく。


「なんか、武器がグレードアップしてません?」
山田:
「それよりも、雅さんにワクチンは?」
落合:
「あ、まだです。動力が戻った直後にダクトから襲撃して来たので……。」

ダクトの密閉を落合に頼み、山田は駆け足でワクチンのある棚に向かう。端末のディスプレイを操作し、パスワードであるM2O2CAを打ち込む。このパスワードに既視感を覚えたが、それが何なのかはっきりする前にガラス戸が開いた。ワクチンを掴み宮部の元へ駆け寄った。注射の経験は勿論無かったが、脈の大体の位置に感で注射する。


宮部:
「……ぅ……ん………。」
山田:
「雅さん……。」

宮部のおでこを優しく撫でる。触られて薄く目を開けか細い声で喋り始める。


宮部:
「………太郎、さん……。」
山田:
「もう大丈夫です。ワクチンを打ちました。ゆっくり休んでください。」
宮部:
「……助けて、くれたんですね。……さしずめあなたがベアトリーチェで、私がダンテ、みたいですね……。」
山田:
「ヘアートリートメントだか、ダテ男だか知らないですけど、俺は俺であなたはあなたですよ。」
宮部:
「フフフ、本当に、太郎さんって……面白い人。」
落合:
「山田さん、全てのダクトを密閉しました。」
山田:
「ありがとうございます。では俺達も、ワクチンを打ちましょう。」
落合:
「え?マジで言ってます?」
山田:
「マジです。何かあってからでは遅いので。」
落合:
「マジかぁ〜……。」

注射が苦手だったようで、ビビりながら注射する落合を、飽きれた顔で見ながら自身にも注射する山田。涙目になっている落合を励まして地図を開く。


「次どうします?電気が付いてるので電力室へは、行かなくてよくなりましたけど、宮部さんが休まなきゃいけないので、先へは進めません。」
山田:
「……気になる事があるので、C棟へ行って調べたい事があります。手伝ってくれますか?」
落合:
「お付き合いしましょう。」
山田:
「雅さん。俺達ちょっと行って来ます。ダクトは密閉されてますので大丈夫だと思います。無線を念のため置いて行きますね。」
宮部:
「……必ず、帰って来てくださいね。」
山田:
「ええ、戻ります。必ず。」

力強く頷いた後踵を返し落合と一緒に小実験室を出て行く。

6ヶ月前 No.108

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・6階B棟からC棟への連絡路


落合:
「バイオハザード室?」
山田:
「ええ。黒田さんがそこにいる可能性が出て来ました。だから調べたいんです。」
落合:
「なるほど……。宮部さんは休ませて正解ですね。……おっと、客が来やがった。」
山田:
「増えてる……。」

先ほど山田がスルーして来たヴァリオスが2人に立ちはだかった。しかし今度は2体に増えていた。しかし数が増えても火炎放射器の前では成す術が無く、瞬く間に塵と化した。
それからは化け物は出る事は無く、難なくとC棟に着き曲がり角を右に曲がった。その直後後ろから数十体のベビーマンが襲って来た。


落合:
「何て数だ!」
山田:
「さっきの隊員達か!」

一瞬驚いたが気を取り直して一斉に火炎放射を浴びせる。数十体の奇声に耳を塞ぎたくなったが、突如大爆発を起こした。隊員の一人の腰に手榴弾があったようだ。山田が全ての支流弾を回収し忘れたからだろう。爆発した事に驚いたが怪物の襲撃に対応出来た、という形になった為気にせず歩みを進める。道中通信室という部屋を素通りし、バイオハザード室と書かれたプレートの付いた部屋の前に立ち止まる。山田と落合がお互い冷や汗をかきながら頷き合う。意を決して自動ドアを開け中に入る。

6ヶ月前 No.109

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・C棟 バイオハザード室

17:20

重々しい機械、複数の何かの生物が入った実験用カプセル、散乱した檻の様なもの、コンクリートで出来た部屋では全てが、物悲しく冷たい空間が支配していた。
しかし目の前には惨劇が広がっていた。重装備の筈の特殊部隊員達の亡骸が、そこらかしこに転がっていた。人としての尊厳等無く、無惨な遺体となっている。
山田がふと死んだ隊員の手元を見ると何か握っている。つまみ上げると、神話に出て来るケルベロスの模様が掘られた銀色の、メダルがあった。残り一つ。


落合:
「……ここで散った兵士達に、憐れみを。」
山田:
「……と言いながら武器は回収するんですね。」
落合:
「それはそれ、これはこれです。それにこのM26手榴弾は、すごい戦力になるんですよ?さらっとあなたは回収したみたいですけど、どれぐらい頼りになるか分かってます?
 武器はあるに超した方がいいって言いましたよね?実にその通りで、そして武器が強ければ強い方がいいんです!生存確率も高くなるんです!」
山田:
「分かりました分かりました、落ち着いてください。暑苦しいモンスターになってます。退治しますよ?」
落合:
「退治しないで!?」
?:
「おやおや、騒がしいと思えば君達か。」

声のした方を振り返る。物陰から薬師がニヤけながら出て来た。山田と落合は地下一階での出来事を思い出し、怒りを露にする。


山田:
「薬師!」
落合:
「テメェジジィ!」
薬師:
「まさかあの暗闇でαを打ち破るとは思わなかったわい。沢山の自衛隊員が敗れたというのに。」
山田:
「俺達を殺そうとしたのも、隊員達を殺したのも、その他全部含めて罪を償ってもらおうか。」
落合:
「今からボコボコにしてやる!半殺しにされても文句ねぇよな?!」
薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ申し訳ないのう、相手をしたい所じゃが生憎今忙しくてな、前から試してみたかった実験の最終段階なんじゃ。
 じゃが君等と遊びたいという子達がいるから、遊んでくれるかの?」
山田:
「は?」

「お前達」と薬師が誰に言うのでもなくそう呼びかけた。すると物陰からぞろぞろと何かが出て来た。目だけが大きく肥大化し赤く光り、全身真っ黒の子供の身長くらいのある何かが、12体程出て来てブツブツ喋る。

5ヶ月前 No.110

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

?:「……アソビ、タイ……アソ、アソ……遊び、たい……………」
落合:
「な、何だコイツらは。」
薬師:
「通称“キジムナー” 子供にノーミンの血を注入して、造った作品じゃ。」
山田:
「……子供……!」
薬師:
「しかし困った事に遊びたいという欲求しか無く、あまり言う事を聞いてくれないのじゃ。生物兵器としては失敗作じゃよ。」
落合:
「テメェ!!子供を一体なんだと思ってやがる!!」
薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ。子供と遊ぶのが大人の勤めじゃろ? だから一緒に遊んであげただけじゃよ。」
キジムナー2:「……アソ、ブ………遊ぶ?……。」
薬師:
「おうそうじゃ、あのお兄さん達がお前達と遊んでくれるそうだ。 遊んでおいで。」
キジムナー3:「……アソ、ボ……遊ぼ?……。」
キジムナー4:「……オ、お兄ちゃん……遊ぼう?……。」
キジムナー5:「………遊ぼう、ヨ……。」

ゆらゆらと動き、鋭い爪を動かし、ゆっくりとキジムナー達が近づいて来る。


落合:
「クソ、来やがった。12体だから一人6体。僕は左の6体を倒しますので、山田さんは右の6体をお願いします!」
山田:
「……出来ない……。」
落合:
「は?」
山田:
「……俺は、子供を殺せない。子供に………罪は無い………!!」

銃を落とし崩れ落ちる。視界に映る床が滲んで見える。 落合は山田の胸ぐらを激しく掴み上げた。


落合:
「山田!! テメェしっかりしやがれ!アレの何処が子供だ?! ただの哀れなモンスターだろ、子供に見えてる事の方が、よっぽど残酷だろうが!!」
山田:
「……落合さん………。」
落合:
「宮部さんを絶対死なせないって言ったよな?! あのままだと死ぬぞ!? 必ず戻ると、生きてここから脱出すると、そう言っただろうが!!」
キジムナー6:「……オニ、イ、チャン………遊んで……。」
落合:
「しまった……っ!!」

落合に覆い被さるように、キジムナーが襲いかかって来た。咄嗟に反応出来ず、顔を掴まれ死ぬ事を覚悟した。しかしショットガンがキジムナーの頭諸共吹っ飛ばした。
撃ったのは山田だ。 尻餅をついている落合に目を配る事をせず、立ち上がって覚悟のある目でキジムナー達を見る。


山田:
「ありがとうございます、落合さん。お陰で目が覚めました。」
落合:
「それは、よかったですね。……でも僕顔を掴まれたんですよね、大丈夫かな……。」
山田:
「大丈夫ですよ。……多分。」
落合:
「余計不安になったよ!!」
キジムナー7:「………アソボウ……お兄ちゃん、遊ぼう……。」
山田:
「……あの世で神様に遊んでもらいな………。」

跡形も無く頭を吹っ飛ばす。もう一体、もう一体と何かを噛み締めるようにショットガンで、一体ずつ殺して行く。反対に落合はマシンガンで、自分の分の数を一掃して行く。

5ヶ月前 No.111

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf


薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ。どうやらキジムナーだけじゃ、足らんようじゃのう。お前達も遊ぶがいい、出ろ“テケテケ”!」
落合:
「何だ?!」

スマホの様な端末を操作し、何かが入った実験用カプセルを開け、中の生物を解放する。外見はまるで真っ黒なクモ。しかしよく見ると、2体のキジムナーのブリッジの状態だ。

テケテケ:「………ぁ……ああ………ぁ……。」
薬師:
「通料テケテケ、キジムナーを下半身から繋ぎ合わせて強化したんじゃ。珍妙じゃろ?」
山田:
「どこまで命を愚弄すれば気が済むんだ!!」
薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ。ではまたの、わしは実験があるのでの。」

数十体のテケテケをカプセルから解放し、薬師は笑いながら奥の部屋へと消えて行く。山田と落合は背中合わせになり、キジムナーとテケテケを迎撃する。
しかし数が多く銃ではさばききれない。仕方なく山田は火炎放射器を使う事にした。燃え盛る炎に身を焦がしながら、あついとたすけてと、慈悲を懇願するキジムナー達。
悲痛な叫びを聞かずに済めればどんなに良かったか、灰塗れの床を見ながら、何度も何度も山田は心の中でそう思った。落合が肩に手を置いた。


落合:
「今までの分のお礼参りに行きましょう。」
山田:
「ええ、子供達の分も含めて。」

頷き合った後、薬師を追うため億の部屋へ。

5ヶ月前 No.112

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・C棟 バイオハザード室 (中央部)

薬師を追い、さらに奥の部屋へ辿り着く。太いパイプが天井に貼り巡り、実験を見守る為のものなのか、二階上部には座る為の椅子がある。
天井、壁、床全てコンクリで出来た部屋。その部屋の中心に薬師はいた。山田達に背を向け笑っていた。


山田:
「追い詰めたぞ薬師!」
落合:
「年貢の納め時だぞ!」
薬師:
「なんじゃ?もう来おったのか?案外早かったのう。一人は死ぬと思っておったのじゃが。」

喋りながら振り返る。体をずらしたその時、椅子に縛り付けられた池上が見えた。


山田:
「池上さん?! 池上さんをどうするつもりだ!」
薬師:
「こやつは知り合いか?これは面白いのう。」
落合:
「何かしたら只じゃおかねぇからな!!」
薬師:
「もう遅い。ノーミンの血を注入してしまったわい。」
山田:
「何だと?!」
薬師:
「言うたじゃろ?実験の最終段階じゃと。わしはず〜っとこの実験がしたかったんじゃよ、子供にノーミンの血を注入した事はあれど、大人には投与はしておらんかったからのう。
しかし今日わしの望みは叶った! 今日程素晴らしい日は無い、科学者冥利に尽きるとはまさにこの事じゃわい!」
池上:
「………ぅ、ぅぅ…………ぐぁ………ぅぅ……。」
落合:
「この悪魔!!」
薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ。悪魔はワシの素晴らしき友人じゃよ。」
池上:
「…………ぅぐ!………ぐわぁああああーーー!!!」

池上が悶え苦しみ始めた、口から大量に血を吐き出しながら。首から顔に掛けて青筋の、血管の様な細い筋が浮かぶ。縛られていた縄を引き千切り、変異して行く。
横で見ていた薬師はスマホの様な端末を操作し、耳に当て誰かと会話をする。


薬師:
「……はい。………分かりました博士、彼女を起こします。では……。……………実に残念じゃが、急用が出来た。実験の結果は君達が見届けておくれ。友人なのじゃろ?」
山田:
「何を…………っ!!」
落合:
「待てテメェ……!!」

手をひらひらさせ、奥の通路へと消えて行く薬師を追おうとした。しかし藻掻き苦しんで這いつくばった、池上が立ち塞がった。背は大きく曲がり老人のよう。
その背中からは大きな膿が、溜まった腫瘍のなような物が出来上がっていた。両目から血が噴き出したかと思えば、顔面が真ん中から真っ二つに裂け、数十本の触手と共に無数の歯が出現した。肌は焼き爛れたように赤黒く変色し、両手には鋭く大きな歪な鉤爪がある。


モンスター池上:「……ギギエエーーー!!」
落合:
「池上さん………。」
山田:
「……アレを池上さんだと認める方が、残酷だと思います。」
落合:
「山田さん……。そうですね、池上さんはロビーで死んだんですよね。」
山田:
「だから楽にしてやりましょう、この幻影を。俺達の友人の為に。」

2人で拳銃の銃口を池上だったものに向け、引き金を引く。


5ヶ月前 No.113

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池上は大きな鉤爪の付いた右腕を、大きく振り下ろす。山田達は間一髪の所でジャンプして避ける。抉られた床を見ながら2人は冷や汗をかいた。


山田:
「予想はしてましたけど、耐久力が半端無いです!拳銃じゃ駄目だ。」
落合:
「ならばショットガンで!」

顔面だった触手まみれの口に連射する。


モンスター池上:「ギエエエーーー!!」

効いたのかは分からない、しかし池上は鉤爪を器用に使い、自分が座っていた椅子を落合目掛けて放り投げた。落合は間一髪で避け、山田はマシンガンで腫瘍のようなものを撃つ。汁の様なものを飛ばし、雄叫びを上げる。山田の方を向き直り、池上は跳躍した。天井のパイプを数本壊し、山田目掛け鉤爪を振り下ろした。後ろへ避けた山田は転んだ。転んだ山田に襲いかかり、伸し掛ろうとした池上の腫瘍を落合がショットガンで撃った。撃たれた池上は悶えた後振り返り、凄い勢いで体当たりをかまして、落合を数メートル吹っ飛ばす。


落合:
「ぐぅうう、くっ!………山田さん!燃やせ!!」

落合の合図で池上は、火炎放射器の炎に包まれる。焼かれ苦しんでいた池上だったが、火炎放射器の炎が徐々に弱まり、ついには火が出なくなった。


山田:
「あれ?あれ、あれ?! 嘘ガス欠?!………ぁ。」

目の前に池上が迫っていた。

5ヶ月前 No.114

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落合:
「山田さん逃げて!」
山田:
「こっちにこないで!」

池上目掛けて火炎放射器を投げた。池上は火炎放射器を口で受け止め、かぶりつく。その間に山田は距離を取った。そしていつのまにかパイプを上り、天井に着いているパイプから落合が援護謝儀をする。背中に何度も銃弾を受け、目障りだったのか落合の方を向き直り、足場であるパイプを次々壊して行く。足場のパイプを次々壊されて行くたびに、落合はうしろへうしろへ下がって行く。


落合:
「ちょっ!まっ!やめ!ホント!!マジでっ!助け………!!」
山田:
「こっちを向け!化け物!!」
モンスター池上:「ギギギエエ〜?」

山田は栓を抜いた手榴弾を投げた。池上は一瞬首を傾げたが、何の迷いも無くかぶりついた。直後大爆発を起こした。
爆風で落合は二階上部まで吹っ飛び、椅子に荒々しく座る。山田は落ちているパイプと一緒に、床を滑り壁に当たる。
池上は下顎だけを残し立ちすくんでいた。数秒後地響きを鳴らしながら、崩れ落ちた。


「………ゆっくり眠ってくれ池上さん。………あ、落合さん!大丈夫ですか?!」
落合:
「…………ぁぁ、大丈夫だよ。空中散歩を楽しんでた、だけですから………。」

頭を抑えながら顔を出す。その姿を見て少しほっとする。二階上部から飛び降りた落合と合流する。頷く事も無く、薬師が向かった先へと急ぐ。

5ヶ月前 No.115

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・C棟 バイオハザード室  最深部

長い通路を抜け重々しい機材が、いっぱいある部屋に辿り着く。薬師は背を向け、実験用なのか緑色の液体が入った、大きなカプセルの前で端末を操作していた。


山田:
「追い詰めたぞ、薬師!!」
落合:
「いい加減に逃げるのを諦めろテメェ!!」
薬師:
「……しつこいぞ君達。しつこい男はおなごに、嫌われるって知っておるか?」
山田:
「あんたと恋バナしに、来たんじゃないんだよ、今までの礼たっぷりさせてもらう!」
薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ。飛んで火に入る夏の虫とはこの事じゃ。君達はここで死ぬのだ、しかしわしが直接手を下すまでもない。彼女にやってもらおう。」
落合:
「彼女?」

ふと気付いた。薬師の背後のカプセルの中身に。淡灰色で両腕と両股の内側の、筋肉の繊維が剥き出した、5メートルもある大男が入っていた。
鋭く大きく尖った鉤爪もそうだが、何より特徴的だったのが、赤黒い斑点のある心臓が、剥き出しになっていた事だろう。
目の錯覚なのだろうか、心臓が鼓動するたびに赤い斑点が動いているように見える。しかし白濁した目からは正気を感じられない。


山田:
「な、何だ……これは……。」
薬師:
「KS社最高傑作にして我らの女神! “アイリス”様じゃ!人間の次なる進化の架け橋となる存在。
このお方の御前では、君達等存在する価値もなく、わしでさえ謁見などおこがましい。」
山田:
「……女神? つまりこれの元は女性………?」
薬師:
「黒田博士の奥様じゃ。心臓に直接ノーミンを寄生させ、低温生命維持チューブを媒体とし、長期保持を実現したのじゃ。つまり長期間のコールドスリープをさせながら、不安定な寄生を完全適合するようにしたのじゃよ。これこそがこの姿こそが、人間が次に進化するべき姿なのじゃよ!」
山田:
「どいつもこいつも狂ってやがる!」
落合:
「ケッ、アイリスだか不思議の国のアリスだか、アイマスだか知らねーが、そんな化けもんに殺されてたまるかよ!!」
薬師:
「いいや君達はここで死ぬんじゃ、彼女に裁かれてのう! 目覚めなされ我等が女神、栄光の女神よ!!」

端末の何かの操作をして、勝ち誇った顔をする薬師。


アナウンス:『実験体アイリス放出受諾、培養液を排出、酸素受給、覚醒剤投与、アイリス排出!』

5ヶ月前 No.116

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カプセルの中にいたモンスターが目覚め、中からカプセルを拳で何度も殴りつける
殴られるたびにカプセルのガラスにひびが入って行く。ガシャーンとガラスを割り、ついに実験用カプセルが割れアイリスがのっそりと出て来る。
あまりの迫力に2人は腰を抜かし、唖然とした表情を浮かべ、アイリスを見る。


薬師:
「ヒョ〜ッヒョッヒョッヒョ。今こそ!! 女神の手によって栄光の修正が施され…………グフッ……。」

喋り終わらない内に、体に衝撃が走った。何事か分からず視線を落とした。血に濡れた大きな鉤爪が、薬師の体を背中から貫いていた。アイリスは何事も無く薬師を持ち上げる。


「……な、ぜじゃ………何故じゃ……アイリス様。何故?………全ては………貴女の、為……に……アイリス、様ぁぁあああああーーーーーー!!!」


アイリスは両手の鉤爪を使い、事も無げに薬師を真っ二つにした。大量の鮮血が宙を舞い、床を朱色に彩った。


落合:
「………うわぁ、目の前で衝撃のグロ映像を見てしまった…………夢に出るわ〜コレ………。」
山田:
「……その前に眠らせてもらえるかどうか、そっちの心配をした方がいいと思う…………。」

5ヶ月前 No.117

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のそのそとアイリスは、山田達の方へと歩いて来る。生気のない白濁とした目を、ただただ一点を見つめながら。何故アイリスは2人に近づいてくるのか、歓迎のハグをしてくれるのでないのであれば、考えられる最悪なシナリオはたった一つだ。2人の末路は第二の薬師になるだろう。そう察した落合は、持っていた手榴弾を投げた。大爆発を起こし、土煙が辺りを支配した。


落合:
「やったか?!」


たった一言に込められた、希望の言葉は虚しく叶わなかった。土煙の中から平然とアイリスは、無傷で突っ立っていた。

アイリス:「ゥォォォ……。」
落合:
「…………嘘だろ……。手榴弾だぞ? ……耐久力高いってレベルじゃねぇぞ……。」
山田:
「撃て!!撃ち続けろ!!」

2人はショットガンで応戦した。蜂の巣にされているにも関わらず、アイリスは2人の目の前まで歩き、大きな鉤爪を高々と上げた。咄嗟の所で2人は振り下ろされた鉤爪の、餌食にならずに左右に避けた。山田はアイリスの筋肉質な背中に集中砲火を浴びせた。しかし鬱陶しいハエを払いのけるかのように、裏拳で山田を殴り飛ばした。飛ばされた山田は床を滑り、機材に頭を打ち痛みに悶絶する。
それを観た落合は怒りの咆哮を上げ、アイリスの頭を中心に銃弾を浴びせた。しかし体当たりを食らい、壁に激突して虚しく床に這いつくばる。


落合:
「………くそ……。何だ、この化け物………今までのとは桁違いの強さだ………。」
山田:
「……俺達は………このまま死ぬのか………?」

アイリスはやはりのそのそとした動きで、落合に近づき片手で首を掴んだ。首を絞められながら持ち上げられた、落合は苦しさに喘いだ。山田はまだ痛む頭を抑えながら、アイリスの元へ走って背に飛び乗った。スリーパーホールドを決めていたが、頭を掴まれ振るい落とされる。体勢を立て直し起き上がろうとした瞬間、投げ捨てられた落合と衝突した。


落合:
「……ゴホゴホ! ………僕達もしかして、勝ち目無いんじゃ………。」
山田:
「………はぁはぁ、……例え勝ち目が無くても………死ぬかもしれないとしても……。……もう、諦める事をしない! うぉおおおおーー!!」

5ヶ月前 No.118

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

雄叫びを上げながら、アイリスに向かって走って行く。しかし横から大きな鉤爪が、振り回された。大量の鮮血が宙を舞い、床に飛び散った。


落合:
「山田さーーん!!」

山田は刀で鉤爪を受け止めた。手の平から貫通した刀から、赤黒い血が流れた。


山田:
「……女神の血が赤いとは、知らなかったよ。」
アイリス:「ウォオオオ!」

山田を引き裂く為に、高々と鉤爪を振り上げた。しかし落合のマシンガンが、振り下ろす事を許さなかった。顔面に集中砲火を浴び、よろめいた。その隙を山田は見逃さなかった。
アイリスの筋肉質な胸に、飛び蹴りを食らわせ床に倒す。倒れたと同時に落合が数個の手榴弾を、投げつけ連鎖爆発させた。危うく爆発に巻き込まれそうになったが、山田は難なく落合と合流する。


落合:
「どうだマッチョマン!僕達のコンビネーションは刺激的だろ?!」
アイリス:「ウォオオオオーーー!!!」

土煙から顔を出しながら、怒り哮る最強のモンスター。少しは効いているらしく、口から血を吐き出しながら、のっそりとした重鈍な動きで立ち上がる。


落合:
「チッ! まだ刺激が足りないらしい。我が儘な女神はどうやら、僕達ともっと刺激的なデートをご所望のようだ。」
山田:
「紳士的にエスコートしましょうか。」

5ヶ月前 No.119

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アイリスが小走りで2人に寄って来た。殺気立った唸りを発しながら、小走りするたび床のタイルをめくる。助走を付けた山田が中腰で通り過ぎる。通り過ぎ際にアイリスの太もも辺りを渾身の力でたたっ斬る。体勢が崩れよろめくアイリスの顔面に、落合がマシンガンでありったけの銃弾を浴びせる。フラついた拍子に数発の弾丸が、剥き出しの心臓に直撃した。血がほとばしったかと思えば、アイリスが今までに聞いた事の無い雄叫びを上げた。コレは効いている。落合は確信した。銃口を顔から心臓に狙いをつけた。しかし大きな鉤爪が撃たれる事を防いだ。あっけにとられた隙を狙われ、落合は後方へ蹴り飛ばされる。背中の痛みに耐え体勢を立て直した落合の目に映ったのは、心臓を防いでいる腕を刀で弾き、心臓に銃弾を浴びせる山田だった。咆哮しながら勢いよく山田に鉤爪が振り下ろされるが、山田は後ろへ跳躍して叫んだ。


山田:
「落合さん、顔面!!」

合図だと悟った落合がアイリスの顔面に、雨霰の弾丸を降らせた。再びフラついた隙に、山田が心臓を真一文に斬った。大量の鮮血と共にアイリスは真後ろへ倒れた。息を切らしながら山田は落合と見合わせ、ホッと胸を撫で下ろす。コレでここでの悪夢は去った。お互いの健闘を称えハイタッチをしようとした。しかし飛んで来た瓦礫に阻まれた。間一髪で避け振り返る。床を破壊しながらアイリスが立ち上がっていた。傷口からなのか心臓から、灰色の触手が数本出現し蠢いている。


落合:
「……流石女神、イソギンチャクのブローチを付けてるとは、オシャレだね。」

アイリスは再び咆哮した。褒められてはしゃぐ女の子のように、床を破壊しながら落合の方へと走って来る。両手を広げて迫って来る。落合はショットガンに持ち替えて、山田が斬ったアイリスの太ももに狙いをつけた。指が動き続ける限り連射した。血しぶきを上げガクンと足から崩れ落ち、アイリスは片膝立ちになる。それでもなお落合を引き裂こうと、腕を上げ鉤爪を振ろうとするが、ショットガンの散弾によって、両腕が弾かれる。その直後体に衝撃が走った。アイリスは視線を落とした。心臓から刀の切っ先が出ている。山田が後ろへ回り、アイリスの体を背中から刀で貫いていた。


アイリス:「ゥゥウオオオオーーーー!!!」

最後の抵抗かの如く雄叫びを上げた。しかしそれはただの断末魔に成り下がった。奇妙な音がして心臓が破裂し、大量の血が床を彩った。アイリスは力なく倒れた。今度こそ終わったのを2人は確認した。山田は刀を引き抜き言った。


山田:
「女神なんてお高くまとってるより、そうやってお姫様として眠りな。」
落合:
「まぁ、眠りから覚ましてくれる王子様は、永遠に現れねぇけどな。」

4ヶ月前 No.120

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

最高傑作と称された、最強の怪物を倒し周囲を見渡す。何か有益な情報を得られないか、山田は乱雑に置かれている、機材の元へ向かう。
落合は真っ二つになった、薬師の上半身の元に向かった。吐き気を催しそうになるので傷口を見ず、不自然に膨らんでいる白衣のポケットを探る。
出て来たのは神話の怪物、オルトロスが刻まれたプラチナ色のメダル。直通エレベーターの扉を開ける為のメダルは全て揃った。


落合:
「……女神とか神話とかダンテとか、好きすぎだろ。 いい年したおっさん達が何してんだよ。」


落合が失礼なツッコミを入れている間に、山田は機材を動かし大型モニターに映像を映させる。
そこには写真付きのレポートが映し出され、写真にはノーミンに似ているが頭の形が、冠の様な形をした灰色の寄生虫が映し出されていた。


《・クイーン・ノーミンについてのレポート
当初は何気なしに生み出されたプロトタイプ・ノーミンは日の光を浴びてはいなかった。
しかし秘めたる凶暴性と寄生能力に目をつけた一部の上層部によって生物兵器として注目された。
一気にスポットライトを浴びる事になったノーミンだが大きな問題にぶち当たる。生物兵器としては力が足りないと判明した。
力が無ければ兵器ではない。とするならば強化せざる得ないのは必然だ。ではどのようにして?

再度の合成は安易では無いかと思ったがそれにしか強化は出来ないと結論に至った。再び合成を開始する。
プロトタイプ2匹の合成は失敗に終わる。3匹失敗。5匹失敗。6匹失敗。10匹でダニの様なものが誕生。しかし寄生能力に欠けこれも失敗。
プロジェクトは暗礁に乗り上げ当初は誰もが失敗するだろうと思われていた。

だが成功した。
私の子である赤ん坊とノーミン10匹そして私の血を培養液合成をして成し遂げた。
新たに生まれた我が子をクイーンと名付ける。クイーンは全てのノーミンの親となる。

病弱だった我が子に繁栄あれ》

山田は青ざめた表情で顔を伏せた。その拍子に手元に資料を見つけページを開く。

《寄生虫について 〜黒田博士の研究レポートより〜
・寄生虫:ノーミンについての記述
合成として使った顔ダニもそうだが人間の体には30万匹程の寄生虫に寄生されている。
つまり人間は寄生虫と共に共存しながら生きて来た事になる。

人間にとって寄生虫は共存の出来る友と言える。

であるならば一緒に手を取り力を携えるのは必然だ。
寄生虫は人間への活性化を促すのだから。 それは即ち死すらも活性化するという事だ。
人間には次の進化が必要だ。寄生虫ならその進化を促してくれる。友とならこの世界を共存出来る。

私の夢である死を迎える事の無い永遠の繁栄も叶うだろう。》

4ヶ月前 No.121

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田は後ずさっていた。書かれていた内容にノックアウトされ、めまいがした。このまま自分は倒れるんだと思ったその時だった。
落合に体を支えられた。どうしたのかと聞かれたがその質問には答えず、落合の持っているものに目がいった。


落合:
「このボイスレコーダー、アイリスが入っていたカプセルの底で見つけました。」
山田:
「……聞いてみましょう、何か聞けるかもしれない。」
ボイスレコーダー:
『我思う 故に我あり この言葉から論理的思考を推測するに、『感じるな、考えろ』という言葉に至る。』
山田:
「この声、黒田博士……。でも声質からしてもう少し若い時の感じがします。」
落合:
「そこまで分かるんですか?流石ファンですね。と言いたい所ですがそこまで分かると引きますよ……。」

わざとらしい咳をした後、山田はリピートボタンを押した。最後まで聞く為に耳を澄ませた。


ボイスレコーダー:
『国の頂きに上り全てを変えろ。我想う 故に我あり よって我は我にして我らなり』
落合:
「これは……。中二感満載な………犯行声明………と言った所、ですか……?」
山田:
「……………。」

笑いそうになるのを我慢して話す落合とは対照的に、山田は深刻な顔をしてボイスレコーダーを見つめていた。


落合:
「あ、失礼。どんな人物であれあなたは尊敬してましたものね。」
山田:
「いいえ。声を聞いてこれではっきりと分かりました。黒田さんは尊敬に値する人物ではなく、今回の事件の主犯である事が……。」
落合:
「いいんですか?」
山田:
「いいんですよ。きっちりと割り切る為に、けじめをつけます。」
落合:
「……後問題なのは宮部さんですね。叔父の犯行だということを割り切れますかね?」
山田:
「ええ、出来ると思いますよ。確証はありませんが。……時間がありません戻りましょう。」

そう言って踵を返し、部屋を後にする。

4ヶ月前 No.122

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・C棟6階通路

17:30

B棟にいる宮部と合流する為に、駆け足で急いでいた。しかしふと山田が立ち止まる。落合が名前を呼ぶが山田は、通信室と書かれた部屋に入って行く。


・通信室

入った直後一匹のキジムナーが襲いかかろうとした。しかし事も無げに山田はショットガンで頭を吹っ飛ばした。大きな窓に大量の血潮が彩る。
その場面を見た落合は青ざめた表情で山田を見つめる。キジムナーの死骸の傍に立ったまま、山田は落合を呼んだ。呼ばれた落合はうわずった声で返事をした。


山田:
「落合さん、通信機器には詳しいですか?」
落合:
「え、ええ…… それなりにですけど。」
山田:
「じゃあ周波数の操作を頼みます。」
落合:
「いいですけど、どれぐらいのレベルで?」
山田:
「狩矢崎市全域に、です。」
落合:
「電波ジャックですね?! オーケイ、任せなリーダー! 」

様々な通信機器を弄っている間山田は、窓から沈んで行く夕日を眺めていた。この夕日が沈めばこの町で見る夕日は最後となる。つかの間の最後の展望を心ゆくまで堪能する。
準備が終わったとして落合が合図を送る。山田はマイクを掴みスイッチを入れ、深呼吸を入れた後喋り始める。


山田:
『まだ生き残っている生存者の皆さん、聞いてください。俺達の住んでるこの町の、我々のシンボルは死にました。
死が地上を覆い尽くし、絶望が町を浸食し、闇が希望諸共全て飲み込む。俺達の日常は、我々の町は今日死にました。抗い難き敵の絶対的力によって……。
この町はもうすぐ滅びます。政府がこの町の完全抹消を決めました。午後6時、後30分足らずで全てが滅びます。滅びた後残るのは虚無だけです…………。』

外の惨劇を見た後目をつむる。一呼吸置いて目を空け再び喋り出す。

『……でも決して希望を捨てないでください。我々に出来る事は、唯一の反撃はコレだけです。
陽はまた昇る。陽が沈んだらまた昇るだけです。何度も、何度でも。明けない夜はありません!
生きてさえいれば必ず希望は胸に宿ります。望みさえすれば生きる為の活路を見出せます。皆さん死なないでください。この町から逃げて生き抜いてください。
明日を生きる為に、明日の陽を見る為に、明日を目指して生きてください……。』


スイッチを切りマイクを置く。情けなく泣く落合にため息をつきながら、一緒に通信室を後にする。

4ヶ月前 No.123

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・6階B棟 小実験室(最深部)

17:35

小実験室に戻って来た山田と落合。2人は驚き立ちすくんでいた。宮部が立っていたからだ。


山田:
「雅さん。もう立って大丈夫なんですか?」
宮部:
「あ、はい。ワクチンのお陰で体力が戻りました。あと、コレ。ジャケットありがとうございます。……血で汚れちゃいましたけど……。」
山田:
「いいですよ血くらい、あなたが無事ならそれでいい。」
宮部:
「太郎さん……。」
落合:
「いや〜それにしてもワクチンは凄いですね。もう立てる程体力が戻る何て。」
宮部:
「……生きる気力を、太郎さんに貰いました。 無線から聞こえて来た言葉で、生きなきゃって思いまして。………何かあったんですか?」
山田:
「それが………。」


バイオハザード室での出来事、黒田博士のノーミンについての研究やレポート、ボイスレコーダーを聞かせた。話を聞いている最中宮部は、ずっと俯いていた。
山田が話終えても俯いたまま、宮部は口を開く。


宮部:
「……太郎さん。」
山田:
「はい。」
宮部:
「コレを聞いてどう思いましたか?」
山田:
「……今まで俺が見て来た人は幻想だったんだなって思いました。裏では恐ろしい事をやってのける、マッドサイエンティストだったのかと。………残念です。」
宮部:
「………結局その程度だったんですね。」
山田:
「え?」
宮部:
「あなたの叔父さんに対する気持ちは、改竄された数々のデーターで簡単に覆るような、その程度の気持ちだったって事です。」
そのボイスレコーダーは音声合成ソフトを、使った可能性だってあるじゃないですか!」
山田:
「それは……。」
宮部:
「太郎さんは……いえ山田さんは結局他人だったんです。結局叔父さんを理解出来るのは、身内の私だけみたいですね。
どれだけ改竄された証拠を突き付けられても、私は叔父さんの言う事を信じます。……山田さん、命を救って頂いた事だけは感謝します。」

軽蔑の眼差しを山田に向けた後、宮部は小実験室から出て行く。


落合:
「はぁ〜あ、結局こうりなりましたか………。 頭の固い女性はムキになると話になりませんよね、本当に厄介この上ない。」
山田:
「そう言わないでください。身内や親戚のことを悪く言われれば、誰だってああなりますよ。行きましょう彼女を一人にしては置けません。」

ため息をつきながら落合は山田の後に付く。2人は小実験室を後にする。
交差するすれ違いの重き空気を背負いながら。            ___9完___

4ヶ月前 No.124

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

___老獪の詩___

・黒田総一郎:

永遠の雨が呪われて、冷えきって重い。

降り方も降る物も決して変わらない。

巨大な雹が、黒い水と雪が 闇に満ちた大気に注がれ、

これを受ける大地には異臭が漂う。          ___ダンテ 神曲 地獄編 (第6歌)___

4ヶ月前 No.125

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

第10話
・KSコーポレーション中央研究所

1階直通エレベーター前

17:40

辺りを気にしながら階段を、駆け下りて1階に辿り着く。エレベーター横のレリーフにメダルを埋め込んで行く。


山田:
「『汝一切の望みを棄てよ さすれば地獄の門は開かれん』か。」

呟いた直後ひと際大きな機械音がした。今まで閉まっていた開かずの扉が開かれた。中は少しゴージャスな造りになっていて、煌びやかな装飾が施されている。
3人は中に入り最上階のボタンを押し、エレベーターを起動させる。天井以外はガラス張りで、外の景色を羨望できる造りになっていた。
しかし外は絶景とは程遠く、絶望を眺める他無かった。日が暮れているにも関わらず、町は赤々としている。炎の勢いが増し町中が火の海と化していた。
目の前に立っていたビルも中から炎上し、みるみる脆く崩れ去っていく。見ると人らしきものが次々外に放り投げ出されている。
宮部は顔を逸らした。悲痛そうな顔をしている宮部に気を使い、山田が話しかけようとした瞬間。エレベーターが激しく縦に振動した。


山田:
「うわっ! く!何だ?!」
宮部:
「……地震?」

ガラスが割れエレベーターを揺らす主が顔を出す。

山田:
「……な、何だよアレ……。」
宮部:
「ウソ、あれは………」

薬師がいた。 厳密に言えばアイリスに殺された事によって寄生菌に感染し、クリーチャーに変異した薬師の姿がそこにあった。全身にひび割れのような亀裂が生じており、ひびの隙間から所々触手が蠢いている。しかし何より特筆すべき点は、赤黒い血に寄って染まった脊髄だ。ムチのように撓らせ自由自在に動かしている。


アンデット薬師:「………ヒ………ヒ……ヒ………ヒョォ……………ヒョ〜……。」
落合:
「しつけぇジジィだな!!」

4ヶ月前 No.126

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

落合は瞬時に銃を数発ぶっ放した。しかし薬師に当たる事無く外へ放出された。薬師は素早い動きで右へ左へと、エレベーターの淵を利用して移動する。移動するたびにエレベーターが激しく揺れ、何かに掴まっていないと立っていられない。その所為で銃口で狙いをつけても当たらないのだ。しびれを切らした山田が広範囲の広いショットガンに持ち替え、躊躇する事無くぶっ放した。
散弾に当たった薬師はボロボロの白衣のポケットから、ダガーナイフを落としエレベーターの地面に落ちる。続けて散弾を食らわせようとしたその瞬間、脊髄がムチのように弧を描き山田の左肩を貫いた。


山田:
「ぐわぁあ!!」
宮部:
「あっ……。きゃあ!」

尻餅をついた山田に駆け寄ろうとした宮部は、体に脊髄が巻き付きドアに叩き付けられる。落合は銃からショットガンに変え狙いを定めた。その瞬間薬師は蛇のように動き、トリガーを引くよりも前に落合の左腹部を引っ掻いた。倒れた落合にとどめを刺そうと右手を上げた。しかし山田のタックルにより落合は死なずに済んだ。


アンデット薬師:「……ヒョヒョ、ギョォォオオ〜!!」

タックルに寄って壁に叩き付けられた薬師は雄叫びを上げ、脊髄を天井に突き刺しそれを軸にして山田に裏拳を食らわせた。裏拳を食らった山田は勢いよく倒れ、薬師が覆い被さり両手を封じた。成す術の無い山田の眼前に、鋭く尖った脊髄が振り下ろされる______ 前に薬師の口から血が噴き出した。ダガーナイフを拾った宮部が薬師の後頭部を突き刺し、口に貫通させたのだ。
仰け反って悶え苦しむ薬師の顔面を、臆する事無く蹴っ飛ばした。


宮部:
「そろそろ寝る時間よ、おじいちゃん。」

外に蹴っ飛ばされ奇声を上げながら、落ちて行く薬師を見下ろしそう言った。2人に振り返り一応大丈夫かと聞く。


山田:
「え、ええ。血は出ましたけど、もう止まりました。ワクチンのお陰かと思います……。」
落合:
「でもすごい痛みが、残ってるんですよね。なんとかならないんですかねぇ……。」

2人の無事を確認した宮部はそれ以上喋る事は無く、そうこうしているうちに最上階に着いた。

4ヶ月前 No.127

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・KSコーポレーション 中央研究所最上階

17:45

エレベーターから下りた3人は、酷い臭いに顔をしかめた。下階とは比べ物にならない程、この階の状態が酷かった。床に転がっている遺体の腐敗がさらに進んでいた。
腐臭の所為で気分を害したものの、前より腹がよじれたりはしなかった。慣れてしまったという事だろうか。複雑な心境で通路を見渡す。
遺体の腐敗具合ならびに傷み具合からして、ここから始まったのだろうと推測出来る。遺体達が起き上がって来ない事を祈りながら、通路を進んだ。
通路の突き当たりに、大実験室と書かれた部屋に辿り着く。3人はそのまま入って行った。


・中央研究所最上階 最深部

実験室は広く、天井部が高い部屋だった。壁一面に様々な機材が置いてあり、中央部には四角形の窓が複数ある、巨大な筒状の培養液カプセルがその存在を放っていた。
そのカプセルから視線を感じた。よく見ると人間の赤ちゃんくらいの、大きさのある寄生虫が3人を、じ〜っと見つめていた。
落合は床に散らばっている書類を踏みながらその寄生虫を凝視した。


落合:
「……何だ、あれは………。」
山田:
「………アレが、ノーミンを生み出したクイーン・ノーミン……?」
?:
「ご名答。」

何処からとも無く声がした。3人が身構えた直後、培養液カプセルの影から声の主が姿を現す。
白髪をオールバックにし、紫のネクタイを締め、黒のジャケットの上に白衣を着込んだオシャレな、初老の男性が立っていた。


落合:
「……あんたは……。」
山田:
「………黒田、総一郎………。」
黒田:
「如何にも、私が黒田総一郎だ。」


そう答えた男は、いたずらがバレた時の様ないたずらっ子の、薄ら笑みを浮かべる。

4ヶ月前 No.128

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「叔父さん!」
黒田:
「おお、誰かと思えば我が姪雅か。久しいな待っていたぞ。」
宮部:
「え?待っていた?……私を、ですか?」
黒田:
「そうだ。黒田家の血を引いているのだから、どんな危機的状況に陥ろうとも乗り越えられる筈だ。そして聡明なお前の事だ自ずと答えを探しに私を求め、
ここに来るだろうと推測した。しかしお前の様な高貴な出であるにも関わらず下賎の者とつるみ、一人で来なかった事は落胆の評価を禁じ得ないな………。」

チラッと山田達の方を見て、見下す様な視線を向ける。その視線に気付いた山田達は黒田を睨み返す。


宮部:
「お、叔父さん。今回の事叔父さんは悪くないですよね?」
黒田:
「悪いと思う点は露程も見当たらんが?」
山田:
「じゃああなたは何の罪も無いと、そう言うんですか?」
黒田:
「罪?何故そんな事を感じなければならないのか、理解に苦しむな。何をもって罪とする?」
落合:
「何をってとぼけんじゃねぇ! 外の惨状、研究所内の実験生物達、その他諸々全部あんたの仕業じゃないのか?!」
黒田:
「無論全て私がやった事だ、この日の革命の為に。」
宮部:
「えっ………?」
山田:
「革命……。どこが………外の地獄を見てどこが革命なんですか?! みんなあなたの革命ごっこの犠牲者なんですよ!」
黒田:
「革命に犠牲はつきものだ。」
山田:
「だったらあなたが犠牲になれば良かったんだ!!」
黒田:
「私はもう犠牲を払ったぞ。」

そこでハッとした。黒田の後ろの培養液カプセルの中にいる、クイーン・ノーミンと目が合った。赤い丸い目からは生気を感じられない、黒田の元実子。「家族を犠牲に」と呟いて、改めてこの男の異常性を再確認した。再確認して怒りが混み上がった。


落合:
「……そういえばあんたの奥さんに会ったよ。とんでもねぇ鬼嫁だ。」
黒田:
「ほぅ、我が妻に会ったか。どうだった、美しかっただろう?」
落合:
「はぁ?美的センス狂ってんじゃねぇのか?あんな化け物を美しいって言うくらいなら、ブスを褒め称えた方がマシだ!」
宮部:
「ブスの風評被害ですよ………。」
黒田:
「やれやれ、やはり凡俗には理解できんか。人としての進化は美しいというのに、嘆かわしい。」
山田:
「……結局あなたは何がしたかったんですか? この町を壊したかっただけですか?」
黒田:
「この町の破壊は進化の成長過程においての経緯に過ぎない、つまりは大いなる計画の一部分でしかない。
この日本に寄生虫の力が浸透すれば国としての武器となる、その武器を使い次に世界を包括する。」
落合:
「ケッ!結局世界征服かよ、悪の組織も真っ青な回りくどいやり方だぜ。」
黒田:
「はぁ、これだから短絡的な思考を持つ単細胞生物は哀れだ。」
落合:
「た、単細胞ぉ……。何、この………ッ!!」

怒りのまま黒田に襲いかかろうとした落合を、山田が手で制止させる。落ち着いた声で再び黒田に向き合う。

3ヶ月前 No.129

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

山田:
「……じゃあ俺達の様な頭でも理解出来るように説明してくださいよ。世界征服でないのなら、世界を包括するってどういうことですか?」
黒田:
「そこの単細胞アメーバー質性ヒト科より、貴様の方がいくらか物わかりが良いようだな。」
落合:
「ク、クソォ〜………。 ど、どこまで僕を愚弄すれば………。」
黒田:
「……世界は何故未だに本物の平和を、享受出来ないと思う?それは人が愚かだからだ。愚かな人は醜く言い合い、争い戦争をし飢餓を起こす。
一部の政治家や警察は私腹を肥やし、人種の違いで諍い、性を乱し、他人や物に依存し、殺し合い、そして何度もその歴史を繰り返す。人は学ばない地球の汚点だ。
人は何故そんなにも愚かだと思う?心がある故だからだ。心があるからこそ感情があり、主義主張をのたまい感情で動く。人は心に従って堕落する。
そしてその堕落を正すには、次元上昇によって高次元の存在へと昇位する他ないのだ。」
落合:
「……じげん、じょう…………しょうい……しょうゆ………え?何て……?」
宮部:
「……つまり、さらなる高みへの進化……。」
黒田:
「そう進化なのだ。堕落を正すには進化するしか道はない。寄生虫との変異変化で、感情の無い心の無い新たな進化した人類が誕生し、繁栄を極めるだろう。
差異無き同一個体となった人にもはや争いは無くなり、世界は包括されるという事だ。この私が寄生虫で世界に平和を成そうというのだよ。
しかし私とて計画が全て成功するとは思ってない、世界の規模に確証を得るには検証が必要だ。だから手始めにこの町から始めた。その次がこの国だ。
その二つの成功を手にして初めて、世界に我が子達を放とう。」

黒田はただ冷ややかに淡々と言葉を発した。山田はその言葉の意味をより深く考えようとした。しかし考えるより前に憎しみと尊敬に近い感情が交じった声で言った。


山田:
「平和の為に心を無くし、人を捨てるくらいなら、平和なんか無くていい! 醜い感情を残して人とぶつかり合いながら、それでも人として生きてやるよ!!」
黒田:
「ならば愚者として死んでゆけ、愚か者。」

3ヶ月前 No.130

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

宮部:
「や、やめてください叔父さん! こんなの、こんなの間違っています!」
黒田:
「まだ分からんのか?我が姪雅よ。私が演説をしたあの日お前と喧嘩をして、何故ふて寝をしたのか忘れたのか?」
宮部:
「あれは………確か……。」
黒田:
「学校のクラスの男共に酷い苛めを受け、泣いて私に相談をしただろう。で、提案をした。『よければ私が皆殺しにしようか?』とな。」
宮部:
「………非人道的だからそんな解決は駄目だ、って喧嘩をした………。」
黒田:
「お前は優しすぎるのだ。人の人権を無視し虐める様な愚か者は、人権無く殺されれば良い。それが世の中の為だ。だがお前はそれを良しとせず、幾度も地獄を味わった。
女として生まれるというリスク、男のステータスの為のトロフィー的扱い、性差別、未だ終わらぬ男尊女卑。それらの地獄を私の手で、無くそうというのだよ。」
落合:
「え?何?激しい姪っ子萌え?」
宮部:
「叔父さん……。」
山田:
「雅さん揺らいじゃ駄目です、気をしっかり!」
黒田:
「男女関係なく性差無き人の高みへ登るのだ。 差異無き国に繁栄を! 既存する世界に破滅を!!
鳴らせよ雷鳴! 吹けよ強風!! 世々に轟け私の覇道!!! 何者にもこの進化を妨げはしない!!束縛はされぬ!!」

その時だった。室内に強烈な光が注ぎ込んだかと思えば、轟音が轟いた。窓の外を見た。天は曇天に支配され雷雨が、狩矢崎市を支配していた。
窓を打ち付ける激しい雨音。今にもガラスを割り、雨が入ってくるのではないという勢いだ。この男は天候すらも操るというのか。山田と落合は恐怖した。


「さぁさ足下をご覧、其処には何がある?」

人差し指で下を見ろとジェスチャーをして、宮部は足下を見る。


「其処には、己に害為した男共の死骸(しかばね)。 そのまま踏み歩け! 人の高みへと登る山は愚者共の死屍累々の山で出来ている煉獄山!!」

足下をずっと凝視したままの宮部。彼女には何か見えているのだろうか。そんな宮部に黒田は片手を伸ばし話しかける。


「私はベアトリーチェ。煉獄山の頂上にてお前の手を引き、飛び立とう。希望亡きこの地獄から、苛む事無き人の高みへ……。
さぁ行こう、我が姪雅よ。」

虚ろな表情で顔を上げた宮部は、一歩、一歩と黒田の方へ歩き出す。


山田:
「み、雅さん!!」
落合:
「チッ………!」


山田はその場から一歩も動けず、手を伸ばして宮部の背中に語りかけ、落合は銃口を宮部の背中に向ける。緊迫の空気がその場を支配する。
                            ___10完___


3ヶ月前 No.131

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

___老獪の詩2___

・黒田総一郎:

日が落ちていき、黄昏の暗い大気は

地上にいる生きとし生けるものを

その営みから解放していった。

ただ一人、 私だけは   ___ダンテ 神曲 地獄編 (第2歌)___

3ヶ月前 No.132

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

第11話

銃声が轟いた。

黒田:
「よせッ! 何をする!!」

叫び半狂乱になりながら、散弾によってヒビが入った培養液カプセルを庇う。的確な意志を持ってクイーン・ノーミンを狙い撃ったのは、ショットガンを持った宮部だ。


「……何故だ、何故!! 何故お前はあの苦しみに戻るのだ! 何故心を満たす山を登らぬのだ!! それこそが完全な喜びの始まりであり、その理でもあると言うのに!!!」
宮部:
「………私からすれば今のおじさんは、私を虐めていたクラスメイト達と大差ないんですよ。あなたこそ人の人権を無視し虐める様な愚か者です。
もうこれ以上罪も無い人達を巻き込まないでください。…………世の中の為に、何よりもあなたの為に楽になってください……。」

黒田に銃口を向ける宮部の目は決意した想いと、悲しみの想いを交錯していた。


落合:
「宮部さん……。」
山田:
「止めは俺が……。これ以上貴女に悲しみを背負わせません。」
宮部:
「……太郎、さん………。」

宮部にショットガンを下ろさせ、拳銃を黒田に向ける。黒田は尚も三人を見下し続けるが、その眼差しには怒りが込められているように見受けられた。
引き金を飛行とした瞬間、何かがぶつかる音がした。黒田の真後ろからだ。培養液カプセルのガラスにヒビが入り、それに動転したのであろうクイーン・ノーミンが、ガラスに頭突きを何度も当てる。その度にヒビが大きくなっていく。黒田が慌ててクイーン・ノーミンに向き直る。

3ヶ月前 No.133

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黒田:
「ああ、我が子よ落ち着いてくれ。すぐにコイツらを排除するから、大人しくしててくれ。これ以上は頭が傷付いてしまう!」

さらに身を乗り出したその直後、クイーン・ノーミンがガラスを割り黒田の首に絡み付いた。


「ぐわあああーーー!」

血しぶきを撒き散らし断末魔を上げながら、黒田は機材の後ろへ倒れる。機材の隙間から大量の血が流れ広がる。


山田:
「………因果応報、自業自得とは皮肉だな………。」
宮部:
「これが、あなたの終わり方なんですか?……叔父さん………。」
落合:
「まぁ、何ともあっけない終わりですけど、終わりよければ全て良し! ここから脱出しましょか?」


落合に賛同して歩みを進めようとしたその時、機材の影から何かが飛んで、三人の目の前に着地した。


黒田?:
「まだ、終わっていないぞ……。」
落合:
「な、何だ?!」
宮部:
「叔父さん………。」
山田:
「ウソだろ、おい……。」


そこにはボロボロになった白衣を着た黒田がいた。首にはクイーン・ノーミンであろう大きな、コブが出来ていた。そのコブを軸にして顔の右半分に、赤黒い血管の様なものが浮き出ていた。
そして右目は大きく丸くなり、赤く光るように、右手には大きな鉤爪、右足はノミの足、口にはノミの注射器の様なものが出来始めていた。
灰色の肌になった黒田が、憎しみの目を向け哮った。


ノーミン黒田:
「終わらぬ終焉を見せてやろう。」

3ヶ月前 No.134

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

喉が大きく膨らんだかと思えば、口から白濁した何かを勢いよく吐き出した。山田達は咄嗟に避け、吐き出された何かは壁に叩き付けられた。
山田は肩越しに壁に叩き付けられた、何かを見てギョッとする。それは無数のベビー・ノーミンで蠢いていた。


落合:
「気色悪い化け物め! 大人しくしてりゃ今すぐに、あの世にいる奥さんの所に送ってやるよ!」
ノーミン黒田:
「ガハハハハハハ! 我妻が死んだと言うのか? 死んではおらん、蘇るさ。何度でも蘇るさ!! その為の寄生虫なのだぁぁあああーー!!」

黒田は跳躍する。ノミの寄生虫だけあってそのジャンプ力は、人間の能力の限界を超えていた。黒田が山田の真上に落ちて来る。山田は前へと身を投げた。その瞬間黒田が彼がいた場所に鉤爪を下ろした。激しい動きをして左肩に痛みが走った。だが気にしては埒があかない、傷みを無視し山田は黒田に向き直り、銃口を向ける。
しかしそれよりも早く黒田は、床に刺さった鉤爪を掬い上げ、床の破片を山田に投げた。瓦礫に当たり後方へ倒れる。

追撃しようとした黒田に落合がショットガンを連射した。背中を撃たれていた黒田は降り返り際に、近くにあった機材を振り投げた。
落合はそれに当たり、壁に叩き付けられる。もう一つ機材を投げようと、手に触れた瞬間、後頭部に数発の銃弾が貫いた。
振り返り撃った宮部に、寄生虫入りの弾を吐き出す。それに当たった宮部はベビー・ノーミンに塗れて床に倒れる。


宮部:
「きゃああ!!」
ノーミン黒田:
「貴様には失望した、そのまま果てるが良い下女が!」
山田:
「その言葉を訂正しろ、老害が!」

拳銃で黒田の側頭部に連射する。さらに引き金を引こうとした瞬間、鉤爪を振り回し銃を弾いた。そして鉤爪を大きく振り上げ、真横に振り下ろした。が、空間を切り裂いただけで山田には当たらず。山田は後退しながらショットガンに持ち替え、胴体を撃ち続けた。


ノーミン黒田:
「おのれぇ、ちょこまかと鬱陶しい。……下等生物が!!」

再び喉を膨らませ寄生虫の弾を吐き出そうとしたが、落合が黒田にスリーパーホールドを決めた。しかし数秒で黒田の肘打を食らい、スリーパーホールドから解放してしまう。
山田に向き直った黒田が鉤爪を、下から掬い上げて山田の持っていたショットガンを、バラバラに破壊した。
すかさず山田が黒田の顔面に、右ストレートを入れた後左フックを食らわせた。だが効く筈も無く山田は黒田の裏拳によって、地に伏してしまう。
倒れた山田の胸を踏みつけながら言った。


「何か言い残す事はあるか?」
山田:
「……あんたへの恨み節しか無いな。」

鉤爪を振り下ろそうとしたその瞬間、プチッと奇妙な音がした。

3ヶ月前 No.135

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

黒田が肩越しに振り向いた。落合が何かを踏んでしたり顔をしている。良く確認すると、先ほど黒田が吐き出したベビー・ノーミンの一匹だ。


落合:
「おっとすまない、これあんたの次男坊か? じゃあこっちが長女かな?」

そう言って次々とベビー・ノーミンをプチッ、プチッ、と踏みつぶしていく。


「次女に三女に三男かな? しっかし大家族だな〜、誰が誰だか分かりゃしねぇ。 それぞれ名前がついてんのか?教えてくれよお義父さん。」

怒りの形相で落合を睨み、傍まで近づき目の前に立つ。鉤爪を大きく振り上げ落合を引き裂こうとした。
振り下ろそうとしたその瞬間、黒田の首に刃が貫いた。背後から山田が首に寄生した、クイーン・ノーミン目掛けて刀を突き刺したのだ。
クイーン・ノーミンだったコブから大量に血潮が舞い、黒田が悶え苦しんだ。苦しみながら勢いよく振り返り、山田を引き裂こうとした。しかし目の前に銃口が見えた。


宮部:
「さよなら、叔父さん。」

宮部は引き金を絞った。


ノーミン黒田:
「ぐぉぉぉおおおおーーー!!!」

右目を撃抜かれ空間が揺れる程の断末魔を上げた後、黒田は仰向けに倒れる。宮部は倒れた叔父を数秒凝視した後、目を逸らした。
山田が宮部の方に手を置き、宮部は山田を無言で悲しそうな表情で見つめた。すると警報音が鳴り響き、室内が赤く点滅する。


アナウンス:「汚染レベルが限界に達しました。これより10分後に爆破します。所員は速やかに避難してください。繰り返します___」
山田:
「………本当に潮時のようです、ここから出ましょう。」
落合:
「そうですね、もう邪魔して来る奴はいないでしょうし、もうここに用はありません。行きますか。」
宮部:
「はい……。」

培養液カプセルの裏にあった、屋上用と書かれた扉を開け三人は階段を駆け上がった。 黒田の指が僅かに動いたと気付かずに。

3ヶ月前 No.136

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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3ヶ月前 No.137

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

怒りと憎しみに狂った獣が咆哮した。それは空間を揺らし、豪雨の闇夜を切り裂いた。
マシンガンの引き金を絞った。狙いは特に決めず、体のどこかに当たれば僥倖だと思った。しかし黒田は、いや黒田だったものは跳躍した。
ヘリの底スレスレまで飛び、下降して来る。降って来るという表現が正しいか。降って来る雨粒より速い速度で、地面に激突する。
山田達は大きくスライディングして避けた。三人がいた場所に、大きな鉤爪が深々と突き刺さる。山田と宮部は事なきを得たが、落合は右足に傷みを覚え顔をしかめた。
ふくらはぎからの出血を一瞥し、腹這いの体勢のままショットガンを連射した。


赤い大きな右目を中心にした、数個の小さな目玉達が落合を睨む。肩の肉片を散らし咆哮した後、ライトの外側の闇へと消える。
三人は目を凝らし、辺りを注意深く見渡す。闇に潜むものを選別出来る目を、養っていたなら三人に取っては、何の事も無い単純な動作だっただろう。
しかし三人にはそういう類いの目を持っていなかった。だから何かが蠢いていると、認識した時には既に遅かった。
闇から出現して山田の背中を、通りすがりに引っ掻いた。半回転しながら地に伏した山田は、目の前に大きな槍が掲げられているのが見えた。
貫かれる事を覚悟したが、銃弾に弾かれ胸に数発被弾。苦しみの呻きを上げた後、再び闇へ消える。感謝を目に宿して宮部とアイコンタクトを取る。


落合:
「……クソ! どこにいやがる、暗すぎて見えやしねぇ!」
山田:
「……大佐!ちゃんと照らしてください! 何も見えなければ対処のしようがありません。目隠しプレイは趣味じゃないんですよ!」
無線(三木):
『この豪雨で操縦が難しい状況で、無茶ぶりも良い所だが何とかしてみよう。』
無線:
『操縦してるの大佐じゃありませんけどね!!』
無線(三木):
『細かい事は良いんだよ!』

3ヶ月前 No.138

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

再びライトの光によって、照らされた黒田。余程眩しかったのか、左右に顔を振る。その隙を三人は見逃さなかった。
銃、ショットガン、マシンガンの集中砲火を黒田に浴びせる。肉片や血しぶきを散らしながら、黒田は再度闇に消える。
闇に身を隠し数秒、また光に照らされ銃弾の的となる。しかしまたしても跳躍し、三人のいた場所に降って来る。
間一髪の所で避けたものの、山田は背中の痛みに悶絶した。蓄積されたダメージは、着々と山田の体を蝕んでいる。
短期で決着をつけなければならない、と一瞬焦った。それが原因だったのか。目を瞑ってしまった山田は、槍で横一文字に斬られる。


傷はそんなに深くはなく、浅いが出血と共に激痛が走る。顔をしかめた山田にノミの足で、蹴っ飛ばされ地面を滑っていく。
黒田の頭を中心にショットガンを連射していた落合は、落ちていた瓦礫を大量に投げられ気絶する。
雄叫びを上げながら銃を撃ってくる宮部に気付いた黒田は、臆する事無く槍で宮部の右肩を貫き、階段室の壁に串刺しにする。
悲鳴を上げ苦痛の表情に歪む宮部の顔を覗き込む。まるで命乞いを聞きたいがために、止めを刺さないように。 宮部は黒田の顔に唾を吐き捨てる。


宮部:
「………もう男に媚びへつらう事に飽きたのよ。」


鉤爪を上げ振り下ろそうとした。しかし先に左手の槍が地面に落ちた。
山田が渾身の力で刀で叩き斬った。


ノーミン黒田:「グガォォオオオーーー!!!」


叫び、振り向き際に裏拳で山田を後ろへ吹っ飛ばす。倒れた山田に追撃しようとしたその瞬間、落ちた筈の槍が自身の胴体を貫いた。
宮部がなけなしの力を振り絞り、黒田に一矢報いた。振り返ろうとした黒田の頭に、瓦礫が投げつけられ視界が揺れる。落合に寄る咄嗟の判断だ。

3ヶ月前 No.139

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

無線(三木):
『山田君!今からそちらにマグナムを投げる、それでケリを付けろ!!』


再び天を仰いだ。暗闇から落ちて来る銀色に輝く、何かに手を伸ばす。
黒田が無線に気付いたのか、自身に取って次の脅威を察知し、素早く動いた。鉤爪を突き立てるために、右手を伸ばした。

デザートイーグルを両手でキャッチし、そのまま向かって来る黒田に放った。
右目諸共右側頭部から頭頂骨にかけて、大きく抉られる。小さな呻きを上げ、黒田は地に伏した。


宮部:
「……やった……やった!」
落合:
「……よっしゃー!ついに倒れたー!!」
山田:
「……はぁはぁ、大佐何とか倒せました……。」
無線(三木):
『よくやった。今からヘリを下ろす。あまり時間がない、すぐに乗ってくれ。』


ヘリが徐々に下降していく。三人は歩み寄りほっと安堵する。     ___11完___

3ヶ月前 No.140

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

___老獪の詩3___

・黒田総一郎:

息子よ、お前にも運命の女神に委ねられた栄華の罠。

すぐに露見する虚栄のカラクリが分かるだろう

人類はそれを欲しがり髪まで掴み合って争う。

「愚かなる創造物、人類よ、お前達を蝕むはなんたる無知か。

人の知恵が逆らおうとも、定めに従い虚しい栄華を民から民へ

血族から血族へと移り行く。」               ___ダンテ 神曲 地獄編 (第7歌)___

3ヶ月前 No.141

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最終話

17:55

ヘリが着陸し三人は急いで乗り込む。コックピットの助手席から三木大佐が顔を出す。


三木:
「三人とも、無事で何よりだ。」
宮部:
「ええ、お陰で助かりました。………でも大佐、他の隊員達はどうしたんです?もっといましたよね?」
三木:
「……彼らは、彼らの職務を全うして殉じたよ。」

その言葉で察した。これ以上の言葉は不要で、大佐には慰めにもならなければ、隊員達の供養にもならない。


パイロット:「全員乗ったな?では離陸する!」

機体が持ち上がり地面が遠ざかっていく。重苦しい空気が機内を支配し、気まずい雰囲気が流れ続けるかと思われたが、落合がその空気をぶち壊した。


落合:
「……ところで、脱出した後病院的な所行きたいんだけど……。ワクチン打ってても傷が痛くて痛くて、そろそろ限界。」
三木:
「安心したまえ。軍用の医療所が設けてある、そこで治療しよう。」
山田:
「…………。」
宮部:
「よかったぁ〜。これで本当に終わったんですね……。太郎さん、私達助かったんですね。」
山田:
「……そのようです、本当に良かったですね。ところで大佐、ちょっと聞きたい事が……。」
?:「グギャァァアアアーーー!!!」
落合:
「な、何だ?!」
山田:
「まさか!!」

全員で窓の外を覗き込む。倒れた筈の黒田が再び立っていた。
顔の右半分の抉られた部分から、ウジャウジャと無数のベビー・ノーミンが蠢き、犇めき合っていた。その隙間からは時折、赤黒い触手が出現している。


パイロット:「クソ!まだ生きていたのかあの化け物。即刻ここから離脱する!」
山田:
「待ってください!アレをこのままにはしておけません。逃がしてくれるとも到底思えない。」
宮部:
「それにそのままだと町の外へ、逃げてしまう可能性だってあります。ここで倒しましょう!」
落合:
「え?嘘?マジで?満身創痍なのに戦うの?老体に鞭打ちとかまさにこの事だよ!!」
三木:
「……仕方ない。ではその固定銃座を使いたまえ。今度こそ止めを刺せ。」
落合:
「うっひょひょ〜!!M134のガトリング銃〜!!生でお目にかかれるとは思いもしなかったーー! 生生生、生が一番!!!」
山田:
「……現金な奴。」
宮部:
「太郎さん、倒しましょう。あの人を……。」
山田:
「雅さん……。ええ!終止符を打ちましょう。あの人に!」

2人で肩を並べ、ガトリング銃を黒田に向ける。

3ヶ月前 No.142

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

・KS社上空

一緒に引き金を引き、雨霰の銃弾を黒田に降らせる。
人なら即ミンチになる筈だった。しかし人を捨て、人を超え、人を超越した者。肉片と血しぶき、ベビー・ノーミンを散らしながら尚、倒れず立ち続けている。


ノーミン完全体:「グウォォオオオ!!」

吼えた直後跳躍した。ヘリを飛び越え隣りのB棟の、屋上へと着地しヘリを見据える。


三木:
「跳んだ!! ……何てジャンプ力だ。」
山田:
「追いかけて!」
パイロット:
「何が悲しくて大の大人が、春休みに化け物と、おいかけっこをしなきゃいけないんだ!」

ヘリは急旋回をし再び黒田に銃口を向ける。しかし向けたより早く、黒田から吐き出された寄生虫弾が、ヘリの側面に当たり大きく揺れた。


宮部:
「きゃあ!」
山田:
「う!くっ!」
落合:
「痛い!痛い痛い! この揺れ傷に響く!!」
三木:
「空の上で地震に合うとは、思いもしなかった……。」
パイロット:「おい!あの変な弾の処理も頼む。当たり続けたらヘリが保たない!!」

宮部が飛んで来る寄生虫弾を、銃弾で相殺し、山田は黒田本体を蜂の巣にする。度重なるダメージにより黒田が片膝を付いた。
B棟の屋上がボロボロになってきた頃、再び黒田が跳躍、ヘリを飛び越えC棟の屋上に着地する。


山田:
「追って!」
パイロット:
「一般人なのに人使いの荒さ、半端無いな!!」


ヘリが大きく旋回し、3度ガトリング銃の銃口を黒田に向ける。

3ヶ月前 No.143

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

黒田が高速で寄生虫弾を、吐き飛ばして来た。宮部が何弾か処理するも、数弾ヘリの側面に当たり、ヘリが大きく揺れる。
それでも山田は攻撃の手を緩める事をせず、黒田を蜂の巣にし続ける。そうしてやっと黒田が両膝を付き、頭(こうべ)を垂れた。
これを勝機と見た落合が、積んであったロケットランチャーを担いで、黒田に狙いを定めた。


三木:
「おい、勝手に使うな!」
落合:
「汚物は消毒だぁぁあーー!!」

引き金を引きロケット弾が、真っすぐ黒田に飛んでいく。黒田に着弾し霧散するかと思われた。
黒田は顔を上げたかと思えば、跳躍した。すれ違い様にロケット弾が黒田がいた場所に着弾し、C棟の屋上が木っ端みじんになる。
そして黒田はヘリに体当たりを食らわし、ヘリを激しく揺さぶった。三人は衝撃で後方へと投げ出される形となり、スライドドアにぶつかった。


ノーミン完全体:「グギャァァアア!!」

黒田はキャビンスライドドアに、鉤爪をこじり付け体勢を保った。大きなノミの足で、ガトリング銃を破壊していく。
山田達は絶望の眼差しを向け、諦めの言葉を口にした。


宮部:
「そんな……。私達は、ここまでなの………?」
落合:
「ぎゃああーー!!僕達は死ぬんだー!ここで死ぬんだーー!!」
パイロット:「死なせるかよぉ!!」

パイロットは操縦桿を渾身の力で捻り、ヘリを高速で回転し始めた。遠心力で壁の隅に山田達が追いやられる。


三木:
「機内は満員のため、お下りください!」


コルトパイソンを懐から出し、黒田に連射した。黒田は限界が来たのか、力尽きた様な形でぶら下がり始めた。山田はその隙を見逃さなかった。


山田:
「憧れを超える!! うぉおおおーーーー!!」

僅かに残った人間の左側の頬を、ストレートパンチを食らわす。遠心力も手伝ってか、黒田が弾き飛ばされ中央研究所の屋上に落下していった。


パイロット:「時間が限界だ、ここから離れるぞ!」

そう言ってヘリは体勢を整え、KS社から離れていく。離れた直後、KS社の地下から爆発が起きた。予告された自爆が始まったのだろう。
地下区画は広かったようでKS社の周りの、道路が爆破し事故車両を巻き込んでいく。そして一階で爆発が起き、連鎖爆発が上階に上る。
C棟とB棟の建物が崩れ始め、中央研究所に寄りかかる形で激突する。そして中央研究所の屋上が爆発し、黒田が炎に包まれた。


ノーミン完全体:「グォォオオーーー!!!」

黒田の断末魔が爆煙に轟いた。

2ヶ月前 No.144

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

18:00

ミサイルがヘリの横を素通りした。
三人はミサイルを目で追った。

炎に包まれ体が溶け始めた黒田は、天を仰いだ。雷雨が止み分厚い曇天の隙間から、妖しい月光を放ちながら月が顔を出す。


黒田?:
「…………ワ……ガ、子タチ、ニ……栄光ヲ…………。 …………我ガ子ニ、永遠ノ………繁栄アレェェエエエエーーーーー!!!」

ドロドロに溶けていく右手の鉤爪を、月に伸ばした。

ミサイルが遮った。

2ヶ月前 No.145

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

三木:
「目を瞑って何かに掴まれ!!」

昼のように明るくなった。直後ヘリを揺らす程の衝撃波が襲う。ヘリが墜落するのを覚悟したが、それは杞憂に終わる。
激しい揺れが収まったのを、確認して振り返る。狩矢崎市は大きなキノコ雲に、成り果てていた。三人はへたり込んだ。


三木:
「……こちらウォーカー、どうした? …………任務を放棄して君も脱出しろ。通信を終える。」


無線で誰かとやり取りをしている三木を、ぼーっと見ていた山田の隣りに宮部が座る。


宮部:
「……終わったんですね、全部………。」
山田:
「……ええ、終わったんです。……全部。」

何気なしに宮部が見つめてると、感じた山田は宮部を見つめる。2人にそう言う空気が流れ始めた矢先、落合が話を振った。


落合:
「……いや〜一時はどうなるかと思いましたが、案外どうにかなりましたね〜。」
山田:
「そうですね。がむしゃらに生きた。………必死に生きようとしたのは、人生を振り返っても多分今日ぐらいでしょう。」
宮部:
「何かに必死になるっていうのは、改めて素敵だなって思い知らされました。」
落合:
「確かに素晴らしいと思いますけど、気付き方というか、その過程がどうかしてると思うんですよね…。」
山田:
「確かに。」

三人で吹き出し、一斉に笑う。


宮部:
「……あの、太郎さん。これからどうするんですか? 住む場所ごと故郷が無くなって、何もかも失いました。これからどうします?」
山田:
「どうしましょうか。 今のところ何も考えられないので、取りあえずは治療ですね。その後風呂入って、寝て、明日起きるのが目標です。」
落合:
「普通ですね〜。まぁ普通が一番か……。」
山田:
「そして一緒に生きましょう。」
宮部:
「えっ………。」

真っすぐ宮部の目を見据える山田。宮部はただただ赤面する。しかし落合が話に入る。


落合:
「その『一緒に』って僕も入ってますよね?」
山田:
「…え?ええ、まぁそうですね。」

宮部は少し不機嫌な顔で落合を睨む。落合はわざとらしい口笛を吹く。怒った宮部に体を揺らされ、傷みに悲鳴を上げる落合。
2人のやり取りを微笑みながら見た後、山田は窓の外を頬杖を付き眺めた。


「生きてるって、幸せだな。」


ヘリは山々と空の地平線を飛んでいく。どこまでも自由に。   ___了___


2ヶ月前 No.146

MK マッチー @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

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2ヶ月前 No.147

完結 @11777 ★i04XIsqV4q_VXf

                                   事件報告書
                              (狩矢崎市寄生虫事件と仮名称)

■発生
 4月1日
■場所
 群馬県狩矢崎市
■概要
 寄生虫研究所から寄生虫の流失、それによるバイオハザードの発生
■対応
 内閣総理大臣を始めとした、内閣閣僚の閣議会議の決定につき、核弾頭を使用しての一掃


■報告概要
 事件は4月1日の早朝5時に発生したと思われる。(研究所内で異常を探知したためであるが、発見を意図的に遅らせた可能性もある)
そこからどのように寄生虫がバラまかれ、バイオハザードが起きたのかは定かではない。(内部の記録某体を回収するも、データーを消去され不明である)
被害規模は25万人。内バイオハザード発生時に封鎖部隊に、救助された市民は100人に満たない。(救助中に寄生を確認したため救助を中断している)
それ以降救助された報告は上がっていない為、数字は前後するが25万人全員が死亡したと思われる。

 マニュアルによって編成された特殊部隊についてだが、交通封鎖部隊以外の部隊(通信工作部隊、施設処理部隊)は、
途中通信不能となった為全滅したと思われる。
因に交通封鎖部隊は市民救助の任務中、数名が殉職。内一人一般女性と内通し裏切りが発覚したと報告が上ったが、その後報告者と通信不能。
裏切り者とスパイであろう一般女性の身元を現在調査中である。(全滅した特殊部隊の事情も類似していたかどうかは不明)

 本件の首謀者は黒田総一郎だと断定。被疑者死亡で書類送検。
本件の事件の動機は不明。ただし、事件発生時の関係者との会話の録音が残っている。 (以下その会話の一部である

「この力はあらゆる国家から獣を狩り立てるが如く、追い求め続けるだろう。妬みが獣を放ち地獄の中に再び封じるまでは。
地獄の底で絶望の叫びを聞く事になる。死後の死により無になる事とを望む程。苦しみ続ける太古の霊を見る事になる。」

意味不明。関係者の洗い出しを急ぐ。

因に本件の副犯格を薬師灰之介だと断定。しかし生死不明の為行方を追っている。

追記:
一研究員兼社長でしかない黒田に、バイオテロを起こす程の力と財力があったとは思えない。
他に協力者がいたと加味するべきだろう。(研究費に影響を与えられる事の出来る程の財力をもった人物、政府内部特に財務省に内通者の可能性か?)

疑問が残る事件の為引き続き調査を続ける。
                                                           記載者:  森  総理補佐

2ヶ月前 No.148
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