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明日、転校する彼女。 −シンの物語ー

 ( 小説投稿城 )
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rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

天使族の小鳥として生まれたシン。
パーマのかかった白髪が特徴の心優しい娘で、貧しくも幸せな生活を送っていた。
16歳になり結婚の話もちらほら出てきた頃、事件は起きた。


家族や親戚、知り合いの人から結婚の話が出ると、胸がチクチクとした。
天使族の娘だから同族の方と結ばれるのが好ましいのだけれど、わたしにはもう既に愛しい恋人がいた。
悪魔と人間の間に生まれた悪魔族の青年、イーゼ。
孤独な過去を持ち人と関わるのを苦手とするが、実はとても心配性な可愛い子なのだ。
家に引きこもってばかりいるので、会うときはいつもわたしから会いに行く。
今日は手作りの菓子と一緒に。
常に落ちている枯葉や枝をパキパキと踏みしめ歩く。
イーゼのいる大きなお屋敷に着き、扉をノックするが反応がない。
気のせいだろうか。
いつもと雰囲気が違うと感じるのは。
辺りを見回しイーゼの名を呼ぶ。
しかし、何の反応もない。
その時、後ろの木陰から小枝を踏む高い音が聞こえた。
「!」
「お前がイーゼの女か」

関連リンク: 明日、転校する彼女。 
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rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

三人の青年。イーゼの知り合い?あの人に知り合いなんていただろうか。
「このお屋敷にいた方を知っているの?イーゼはどこ?」
「やっぱりな」
「きゃあっ!」
髪を引っ張られ、殴られ、蹴られ…
全身の激痛に耐えられず呻く。
(イーゼ、イーゼ、何処に行ったの?助けて・・・)
「天使族なんかの奴に手ぇ出さなきゃ、あんな目に遭わなくて済んだのにな。あいつもこいつも」
「!イーゼに何かしたの?」
「さあな。「彼女にだけは手を出すな」とは言ってたけど、な!」
「うっ…ぅ…誰か…っ」

9ヶ月前 No.1

rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

「おい、お前たち!何やってるんだ!」
地面がわずかに揺れている。だんだん近づいてくる音。
この声は、確か・・・騎士団の・・・
そこで意識が途絶えた。
「マララ、この娘を連れて先に帰っていてくれ」
「はい!」


「シン!起きて、何があったの?シン・・・」
「・・・ん・・・ママ・・・」
「シン!良かったぁ!」
母が涙を流している。わたし…助かった?
まだ体がズキズキ痛む。
意識を失う前の事を思い出し、イーゼがまだ助かっていないと気付く。
「ママ・・・」
「何?何があったの?こんなにボロボロになって…」
「ごめんなさい…わたし、他族の方を好きになってしまって…あの森の中へ行ってたの。それで、今日、会いに行ったら、イーゼが…っ」
申し訳ない気持ち、心配な気持ち、どうしよう。涙が止まらない。
「どうしたの?言ってみなさい。ママは誰を好きになっても、止めたりはしないよ?ほら、落ち着いて」
「ひっ…う、死んじゃったかも…あいつらが、「わたしと仲よくしなきゃ、イーゼがあんな目に遭わなくて済んだ」って…ううぅ、うぁ、どうしよう…」
一瞬、母の顔が強張った。
コンコン ガラッ
「失礼します。気が付いた?・・・」
「団長さんを呼んで頂戴」
「・・・ええ」

9ヶ月前 No.2

rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

母は騎士団の団長・アキさんが来ると、部屋の外に出て数分間会話をしていた。
内容は聞こえない。それでも声のトーンからして深刻そうな会話をしていることが分かった。
母とアキさん以外にも、病院の先生が混ざっている。
このあと何を聞かされるのかとても怖かった。今にもイーゼが苦しんでいるかもしれない。早く、助けてあげないと…!
痛む体を無視して病室の窓から外へ出る。
「イーゼ、待っててね…すぐに…」
「シンさん?」
自分の名前を呼ぶ声に振り返る。
「シンさんですよね。ダメですよ、安静にしてなくちゃ」
銀色の鎧を纏った穏やかな男性。
(騎士団の方かしら。わたしの名前も知っているみたいだし)
「ごめんなさい…でも、イーゼを探しに行かないと…っ」
「シン!?」
「あっ、ママ…イーゼは?」

ギュッ・・・

「…マ、マ…?」

9ヶ月前 No.3

rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

何て告げられるかぐらい、分かった。
わたしの望むような回答は待っていない。
ここで泣いたら、母はまた悲しい思いをする。だから、必死に涙をこらえる。
それでも、笑顔を作ろうとすると胸の中から気持ちが溢れだす。
情けない。
窓から身を乗り出してわたしを強く抱きしめる母の後ろから、アキさんが、
「明日、彼のいる所に行ってみよう」
と言った。

9ヶ月前 No.4

rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

夜はすぐに眠れなくて、部屋の窓から空を眺めた。
綺麗なんかじゃない。雲は一つもないのに、星も月も見えない。
ただ、真っ暗に濁っていた。
ポタ、ポタ、ポタ・・・
静かに頬を伝う滴を拭い、鼻をすすった。
「っ!ぅ…」
気持ち悪い。込み上げてくる。
口を押えすぐさまお手洗いへかけ込む。
夜中にドタバタして起こしてしまったのか、母がドアをノックした。
「シン?大丈夫なの?具合でも悪い?」
「…はぁ、けほっ、おぇ…はぁはぁ、大丈夫。起こしちゃって、ごめんなさい」
少し楽になり洗浄レバーをひねって外へ出る。
母はとても心配そうな表情をしていて、なんだか申し訳ない。

9ヶ月前 No.5

rrrr ★2wEkr8Zp7b_M0e

一度は眠りについたがやっぱりシンのことが心配になって部屋のドアをゆっくりと開きかけた。
明かりの点いていない部屋、窓の前で静かに涙を流す娘の姿。
救ってあげたいけど、シンの求めている彼はもう亡くなっているとアキさんが言っていた。
シンとその彼に暴行を加えた青年らは全てを暴露し、青少年寮で治療をする予定らしい。
と、「ぅ…」と小さく呻き突然口を押えてこちらに小走りでやってくるシン。
音をたてないように急いで階段を下りて寝室に入る。
苦しそうに吐き出すような物音。
ドア越しに声をかける。
辛い自分自身にかまわず人のことを気にするシンは、昔から変わらない。

9ヶ月前 No.6

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

昨日から体の調子が悪い。精神的な問題と、睡眠不足、朝食を抜いたのも関係すると思うけど、もっと前から違和感を感じていた。
ふと、あることが脳裏を過ぎる。
(まさか、ね…)
「お腹でも痛い?」
「ううん。少し気になることがあって。大丈夫だよ」
「そう。少しでも具合悪くなったら言うのよ」
「心配性ね、ママは」
イーゼのお屋敷を通り過ぎ、さらに奥深くへと進む。
先頭にいたアキさんが立ち止まり、前にいた騎士団の人たちがわたしのために道をあけてくれる。
アキさんの足元には、チリヂリになった衣服の切れ端と黒くドロリとした液体が散らばっている。
「…ひっ、く、イーゼ…イーゼ!」
拾い上げた布はボロボロなうえ、液体で黒く汚れていた。
それを抱きしめ、感情のまま泣きわめく。
もう一度、もう一度だけ、あの人のことを抱きしめたい。抱きしめてあげたい。
「独りじゃないよ」って、隣にいてあげたい。
ベタリと付く黒い液体さえ愛しくて。


7ヶ月前 No.7

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

「シン・・・」
握った手は冷たく、顔色が悪い。
本人は無理しているようだけど、やっぱり調子が悪いのだろう。
食欲がなくて朝も食べていなかったし、それなのに昨日みたいに嘔吐して…。
倒れかけたのを近くのこの屋敷まで運び寝かせた。少々埃っぽいけど、大きく立派な屋敷だ。
軽く手入れもしてあって、まるで最近まで人が住んでいたみたい。
「…この屋敷、もしかして」
アキさんの話によると、シンはこの屋敷の前で襲われていた。シンの亡き恋人であるイーゼも、屋敷近くの場所で襲われた。
なるべく失礼のないようあたりを物色する。
予想通り、次々シンが関係する物が見つかる。
家でこっそり作っていたぬいぐるみ、『花を摘んで来ます。すぐ戻るので、少し待っていてください。シン』とシンの文字で書かれたメッセージの紙、可愛らしい動物の絵と高クオリティなシンの絵が描いてあるノート。
確認するだけだったのが、どんどん色んな所まで探ってしまった。
「!」
引き出しにしまわれていた一つの写真。
淡い黒髪の青年と一緒に写る笑顔のシン。
「可哀想に…こんな幸せそうに笑ってるのに…」
一緒に写る青年がイーゼかどうかは分からないが、きっとそうだろう。
もっと早く気付いて、娘を、二人を幸せに導いてあげるべきだった。
結婚の話をするたびに、シンは苦しんでいたに違いない。
「ごめんね、ママなのに…母親失格ね…」

7ヶ月前 No.8

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

コーヒーのいい香りが漂う。
瞼を開くと、目の前のテーブルにコーヒーが置かれた。
目線を上げると、馴染みのある淡い黒髪の青年と目が合った。
「少しは眠って、楽になったか」
「・・・」
何か大事なことを忘れている。気がした。
でも、とても落ち着く。体調もいつもより優れていると感じた。
「うん。すごく気分がいい。ありがとう」
「…そうか」
静かで穏やかな時間。二人でいるこの時間が、わたしは好きだ。
今日持ってきたはちみつ飴とぶどうのタルトもなかなかの出来だし。
なんとなく、向かいに座る彼の顔を見つめる。
いつみても綺麗に整った顔。少し前までは健康状態が悪くて、死人のような顔をしていたけれど。
ふと、昔の出来事を思い出す。そういえば・・・

わたしが小さい頃。確か、5、6歳くらいの時。
一人で遊んでいて、気が付いたら知らない森の中で迷子になっていた。
そこまで奥深くじゃないのか、木々の隙間から日の光が差し込んでいて、家に帰ろうとしていた。
しばらく歩いた所で何かにつまずき、バシャリと湖に落ちてしまい、冬になりかけの時期の水を浴びた。
突然不安になったわたしは立ち上がろうとしても上手く立ち上がれず、今にも泣きそうになったその時。
「何しているんだ?そんな所で」
どこからやって来たのか、突然現れた身形の整った少年が。
「遊んでたら、迷子になっちゃって…」
「そのままだと風邪引くぞ。ほら」
腕を引かれ湖から出るが、全身ビチョビチョ。
今日は温かかったため半袖の薄着で来ていた。薄暗い森の中じゃ、体が冷える。
「とりあえずこれで体を拭け」
差し出された純白のハンカチ。手触りも今まで触ったことのないような触り心地の良さだ。
わたしなんかが体を拭くためだけに使っていいとは思えない。
「何だ?具合でも悪いのか?」
ふるふると首を横に振る。
「こんな高価そうなもの、使えない」
「いいから使え。俺はその色が嫌いなんだ。家に帰りたくないのなら使わなくてもいいけど」
「・・・」

7ヶ月前 No.9

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

少年は森の中を一緒に歩いてくれて、村までの道を教えてくれた。
あの子はきっと貴族なのだろう。あの頃は分からなかったけど、身形も整ってるし、この辺りの道を知っている。
それにしても、綺麗な子だったな。イーゼのように淡い黒髪で、たれ目で、(元)貴族で、大人っぽいけど優しくて。
とても可愛い・・・
「あれ…」
「?どうした」
もしかして、と、記憶の中の少年とイーゼを重ねてみる。
「ふふっ、なんか、小さい頃出会った男の子とすごく似てるなって」
「・・・今頃気付いたか」
「え?」
「俺は初めから気付いてたぞ。あの時のドジ娘だとな」
「気付いてたって、本当にあの子なの!?」
「ああ」
「どうして言わないのよ、意地悪!イーゼの昔の写真見ても気付かなかったのにぃ…」
クスリと小さく笑うイーゼ。
そうか。あの時はまだ安定した貴族の息子という立場にいて、ご両親の抱えている問題を知らないんだ。全てを失う悲しみを。
今ではだいぶ笑うようになったけど、小さい頃に比べれば、自分の感情に不器用になっている。
少なくとも、イーゼは変わったんだ。
「シン」
「何?」
「またいつか会いに行く」
「ううん、わたしがあなたに会いに行くわよ」
「…思い出すんだ。俺のことはいいから、自分とその子だけは守ってくれ」
「イーゼ、何の話?」
儚げな表情でよく解らない話をするイーゼになぜか怖くなる。
今思えば、今日のイーゼは口数が多い。それって何か関係するのかな。
「ねえ、思い出すって、何を・・・」


『…ひっ、く、イーゼ…イーゼ!』

7ヶ月前 No.10

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

「はっ…ぁ…」
見覚えのある天井。重なって見える儚げなイーゼの顔。脳内で繰り返される自分自身の悲痛な声。
「夢…?どうしてここに…」

『思い出すんだ。俺のことはいいから、自分とその子だけは守ってくれ』

思い出した。イーゼはもう、この世に存在しない。あの夢は、何事もなく進んだ昨日。何事もなければ、あんな風に穏やかに過ごせていた。
それをイーゼが見せてくれた。あれでもう、心残りはないのかな。優しく、腹を撫でる。
「わたしとイーゼの宝物、ここにいたんだ…」
寂しさを含んだ温かい涙が、頬を伝う。
「シン、起きてたのね。調子はどう?」
「ママ…わたしのお腹に、あの人との子が出来たの」
「……!!」
「イーゼが教えてくれた。『守ってくれ』って」

7ヶ月前 No.11

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

悪魔は死んでも蘇る。
現世で存在を消されたとしても、また来世で生まれ変わる。

愛しき人と、まだ見ぬ宝を探し続け、再び姿を現すと約束しよう。
そして、同じ時間を共に過ごそう。シン。

6ヶ月前 No.12

rrrr ★htjInmQRCR_M0e

季節は秋になり、だいぶ肌寒くなってきた。
体調が悪い日も増え、子供をお腹に宿している実感が湧いてくる。
冬の終わり頃に生まれる予定だ。
「ママ、出産ってどんな感じ?」
少し不安になって、洗濯物を干す母に訊いてみた。
「出産はね、とっても痛い人もいれば、少しの我慢で産める人もいるから、断言はできないけど、痛くて苦しいわね」
やっぱり、と少々怖気づいた。
「でも、子供のために必死になることは、誇らしいのよ。無事に産んであげたいし、早く会いたいから、頑張って頑張って、やっとの思いであなたに会うの」
母は手を動かしながら、懐かしむように微笑んだ。
「出産も大変だけど、大きくなるまで育てるのも大変なのよ?親は死んでも親なんだから。絶対に見捨てちゃいけないからね」
「うん」

6ヶ月前 No.13

rrrr @potechi40 ★htjInmQRCR_M0e

1月。産まれた赤子は、男の子だった。
父によく似た黒髪に、綺麗な赤い瞳。大人っぽさを感じさせる落ち着いた目つき。
母はもちろんのこと、村中の人が祝ってくれた。
名は何としよう。そうだ。

カナタ

なんてどうだろうか。
遥か彼方から来てくれた愛しい我が息子。

2ヶ月前 No.14
ページ: 1

 
 
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