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ひかやみっ!【外伝】

 ( 小説投稿城 )
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花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

こちらは『――光などなくまた闇もなし』( http://mb2.jp/_shousetu/31710.html )に登場するメンバーのー…
えっと…。

ようはアニメなどに見られる本編の後のおまけみたいな、
本編スレに出るメンバーのプチストーリーが展開される場所です。
注意は本編と変わらずのR18指定であるため、エロネタ満載、一話が短くト書きっぽくなっていること(ロールが短い)、そして本編と連動していない話が多い…くらいでしょうか。あとキャラを判別できるように「」の前にキャラの名前の頭文字が付きます。ギャグ思考なのでメタ発言やキャラ崩壊も含みます。主もたまにキャラとして、道化として参加します。(無論メタ発言のものは絶対に本編と連動しません)。

また、本編が進むごとに出るキャラも増えます。
(本編で募集したキャラも許可さえ貰えれば参加します。こっちに参加前提な場合は募集板のほうでこっち用のギャグ設定などを書いて構いません!※こっち単体でのキャラは募集していません。募集板はこちら→ http://mb2.jp/_gsd/1696.html )
本編の設定資料はこちら( http://mb2.jp/_sts/2817.html )。募集されたキャラや世界観が確定した場合こちらに設定を記載します。



――――


水、炎「…うわ〜、主の本編PRのために作られてる気しかしない。」

氷「そうだな…、本編での世界観が枯渇すると萎えて、何れは失踪するかもな。」


ル「でも、本編と関係無い話も書くということは、『本編ではできないようなこと』とかもできるんですかね??」

水、炎「なん…だと…?…つまり、姫たんとあんなことやこんなことがし放題ということか…。やったぜ。」

ル「何を…するんですか?」




城のメンバー一同「それでは、宜しくお願いします。」


一同は貴方に対して深々とお辞儀をする。
そんな茶番に満ち溢れたやり取りを終えて、本編よりほのぼのと、
そして殺伐とした断片的ストーリーが幕を上げるのであった……。

1年前 No.0
メモ2016/09/04 01:45 : 花月☆ZBkQks5N3Gm1 @runa43100★iPhone-VmDK5wfvOF
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花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

題名『つけてない』


「あっ…うぅンッ!水龍のッ…入れて下さぃ……。」


「姫たんがそこまで言うなら…入れるよ。」


「ッ…!すい…りゅ、そんな一気に入れちゃ…やァ……!」



Withe Roomにて、堪えきれず嬌声を絶やすことなく上げるルナマリアと水龍の情事が展開されていた――



ル「一人で何やってるんですか。」


水「あっ!姫たん。姫たんが言う通りナニをやってたんですよ。
ちょっと前には俺のナニを怯えるように恥ずかしがりながら触る姫たんを妄想してたのに。」



…というのは嘘で、実は水龍のハイレベルな声帯模写による一人芝居であり、
部屋に入ってきたルナマリアは自分ではないとはいえ、
彼のやり取りが恥ずかしかったのか水龍を見つめようとしない。
前回の行為によって、二人の間には隔たりができているようで、まだ機嫌を損ねているルナマリア。
実際、大して怒っている訳ではく、飽くまでコミュニケーションの一環である。
相変わらずの下ネタを気にすることなく、ルナマリアは水龍に言った。



ル「そんなことより、ちゃんとつけてくださいよ。はい。」


水「お、ゴムかな?…なにこれ。」



ルナマリアから手渡されたのは、水という字そのものが4つ。
水龍はこれが、何なのか、用途が全く不明なそれをひっくり返したりして見つめる。


ル「このスレッドで発言する時はちゃんとつけて下さい。」


水「はーい。」


要は決まりを守れということだったが、付け足すように言葉を繋いで。


ル「それと…。」


水「?」


ル「服もちゃんと着けて下さい。」



水龍は衣服を全て部屋中に放っていた。彼女が目を合わさなかったのはこのため。
合わしたくても目のやり場に困って合わせられなかったからだ。


水「…はーい。」

1年前 No.3

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
1年前 No.4

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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1年前 No.5

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

題名『年越しその2』


主「そういえば、本編の方アクセス数は200回越えたんだけど、感想が…ない。」


水、炎「そら、レス数40回以上あって本編が全然進まないんじゃ見る気失せるでしょ。」


主「せやな〜。でも、本編自体話の筋は大体しか設定してなくて、
細かい所は殆どその場で考えて書いてるからどうしようもない、自分で設定メモるのも面倒だし。」


水、炎「まだ姫たんが起きてから2、3時間しか経ってないんですけど〜。」


主「その姫たんのサービスシーンを考えたのはいったい誰でしょうかね〜……。」


水、炎「貴方様です!」



自分の考えたキャラクターに対して色々と思いながら話を進めていれば、年明けまであと僅か。
ルナマリアは色々な世界の人々、あるいは種族が集まり、会話している光景を微笑ましく思っていれば、
花龍とブレイドは年越しといえど仕事に務め、
主催者として城内のセッティングから催しものまでを最後まで管理をし、
風龍と幻龍、雷龍は増設されたカフェテリアで年越し蕎麦を啜っていたり、
地龍は外で、恋に落ちた女性数人と共にリアじゅ…
年の明けるまでのカウントダウンをしている電光掲示板の明かりを眺めていたり、
レヴァナスは年越しなど気にせず、チョコレートケーキを食べまくり、
闇龍とデスレヴァナスはそんな彼女の世話を…と、殆ど同じ姿でもやっていることはそれぞれ違う。


――そして、到るとこに置かれた時計の秒針が全て12という数字を指し、
城外の電光掲示板の数字は全て0になり、『HAPPY NEW YEAR!!』という文字に変わり、
盛大な花火が空を飾った。2015年から2016年へと変わった瞬間。






『明けましておめでとう。』





そんな声が種族や世界の垣根を越えて城中に温かく響いた。

1年前 No.6

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
1年前 No.7

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

地龍外伝『女神達の戦い』



『お前達が俺に尽くすと言うのなら、俺はお前達だけに尽くそう。』



――――――



「6万7千9十8、6万7千9十9…6万7千百…。」



様々な武器やトレーニング機材が置かれた部屋の中、無音の部屋に回数を数える渋く男らしい声だけが響いている。顔は美男でありながら顔にうっすらと顎髭を生やし、みっちり筋肉の塊が全身についているにも関わらず、芸術品のように美しい。
天井にある青く長い棒に太股と脹ら脛の溝を引っ掻けて、地龍は上体起こしをしていた。
軍人としての面があり龍の中では最弱故に、時間があるときにはいつも体を鍛えているのが彼。

数ある世界のトレーニング法でも、上体起こしや腹筋というのは場所も取らない上に、鍛えたい部位を集中的に鍛えられる、とても効果的なトレーニング法だ。なので、より鍛えるためにより力を使うために柔らかい棒に足を掛けて鍛えている。万回毎に往復するペースを変えており、今は人間でも余裕に目視できるくらい遅いペース。ゆっくり体をあげるというのはペースを速めるより、体に負担が掛かるので、遅い方がトレーニングになるのは殆どの世界で共通のようだ。

6万7千百1回目の時に体を起こしていると、誰かが部屋のドアをノックした音が耳に入る。部屋に入れることを許可すると、この城の主でありこの世界の創聖神、そして、自分の愛妻であるルナマリアと、兄共に彼女の身の回りの世話などをする執事であるブレイド、何故か、もう一人の愛妻のレヴァナスに仕える執事であり、夫の闇龍が部屋の中に入ってきた。



「どうした、あまり見ない顔ぶれだな。」


「写真を見せてもらいたくて来ました〜。」



度々水龍と炎龍の二人が撮った写真を、龍の面々の生み出せる金になりそうな価値のあるものと交換する交換会が開かれる。地龍の場合は純度100%の10カラットという特大ダイヤモンドや、純金よりも純度の高い高純金の延べ棒などと交換しており、今朝も交換会をしていたので高純金の延べ棒6本で交換した。だが、隠し撮り写真を形式上販売していたことが、彼女の耳に入ってしまったらしい…。


…それから暫く。トレーニングを中断して地面に降り、アンチウェポンライフルの弾を銃に込めるルナマリアに買った写真を一枚だけ彼女に見せた。どうやらセーフのようだが、ルナマリアはあろうことか突然ベッドの下に潜り込んで何かを取り出す。それは、成人男性向けの雑誌。地龍は使いもしない囮の本で、多少気が逸らせると思ったがそうはいかずに、ルナマリアはメインの写真がどこにあるのか特定済みのようだ。



「ふぅ…、ここに写真はなさそうですね。はい、どうぞ。」



それでもルナマリアは写真はないと言い銃をこちらに手渡せば、部屋を出ていこうとドアの方へ向かい。引き留めようとしても、聞こえている筈だが全く聞かずにこう告げて部屋から出ていく。



「それでは、お邪魔しました〜。
うっかり装填しちゃったので、暴発しないようどこかで撃って来て下さいね。」



地龍は彼女らが部屋を出て数秒。
ルナマリアが先ほど開けていたアンチウェポンライフル弾の入っている引き出しを開けて、弾をごっそり取り出すと弾の中に埋もれていた透明なファイルの中からルナマリアとレヴァナスの写真を出して見つめる。それは二人の意外な一面が窺える写真。今日、ルナマリアはどこにも出向かないが、地龍はトレーニングを終えてから異世界に出向くつもりでいた。ルナマリアはそれを予期していたのだろうか。
写真を見終えると地龍はてきぱきと手榴弾を軍服に詰め込んだり、革のホルダーに弾を込める。常備で胸に折り畳み式のナイフと速効性のある弾が込められた麻酔銃を持っているが、ハンドガンは現地調達することに決めているので武器庫にはあるものの持っていかない。武器庫にあるハンドガンはショットガン並の威力があるので、対人の際には必要以上に怪我を負わせる可能性があるからだ。


装備を整え準備を終えた地龍は、アンチウェポンライフル片手に部屋の灯りを消して部屋を出た。
色鮮やかな10色の薔薇が色ごとに集まる城の外に出る。空の色はルナマリアを思わせる淡いピンク色をしている。常に開け放たれている城の正式な出入口から茶色い薔薇を気にせず踏みつけて、茶色い薔薇が広がっている辺りで立ち止まり迷彩柄のグローブがされた手を前に片方差し出す。城の城壁と同じくらい純白な扉が現れた。地龍は無表情で丸いドアノブに手を掛け捻りながら扉を押し開く。



扉の奥は青々とした空が広がっており、扉の下を覗く。
下、つまり地面の方には赤茶色砂漠一帯が広がり、街のようなものが見える。

と、地龍の髪が上に引き上げられるようにみるみる短くなっていく。
最終的に地面に着きそうな長い茶髪は無くなり、
服と同じ常に背景に溶け込むことのできるデジタル式のカモフラフードを被ると、
全身は愚か、アンチウェポンライフルまでが幻想的な城の景色と扉の奥に広がる青空に溶け込み、
地龍の姿は見えなくなる。これが出発前の最後の仕上げ。



「軍人てのは、やっぱり坊主頭じゃねぇとな!!」


目は真剣そのものであるが、口元に笑みを浮かべてそう言い放つと地龍は扉の奥に飛び降りた。
が、我々の目に映るのは純白の扉が花びらのように風に舞って消える様子だけ。




ここから、彼の戦いは始まる。

1年前 No.8

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

ビュルビュルと鋭い風音が耳に入ってくる…ここは上空。地龍はアンチウェポンライフルを離さずに急降下していた。いつも高いところから飛び降りて、地面に着くまでの間に地形を把握するようにしている。普通の人間は落下傘を装着するのが当たり前だが、彼はそのようなものは一切着けていない。何しろ必要ないからだ。では、どうやって着地するのか。

それには2つ選択肢があり、一つ目は砂の上に激突する手前で体と銃を砂に変える。地龍は砂も操ることができ、自身の一部でもある。もう一つは降下している時点で全身を砂に変えること。砂が集まって龍の姿を象るのが欠点だが、人間に見られたところで笑い話にしかならないだろう。地龍は下に落ちながらこの星に存在する土、砂、鉱石を把握しており土や砂に残った足跡を全て探ってみたが、皆見たことのある足跡しかないため、ドラゴンはいないということになる。それに、目立つのも高度な知的生命体の気を逸らすには持ってこいだ。



「龍の姿で着陸すっかな。」



地龍は風力を無視し地上にいるときと同じように喋り、さらりと軽く言ってのける。今回は後述した方の手段で着地する。逆さから見る地形でも、永年経験を積んできた地龍は頭の中ですぐ上下反転処理をして、暫くすると体や軍服、銃ごと赤茶色の砂に変えてしまった。その砂は翼の生えた龍の姿を象って風に乗り、輝城からちらっと見えた街の方へと向かう。地上にある街の方ではターバンを巻き紅と白の衣服を纏った褐色肌の男達と、現代的な他の国の観光客の男達が大勢砂になっている地龍を目撃し騒然としていた。



「おい、何だあの砂は!?」「西洋に伝わるドラゴンとかいう架空動物のみたいだ!」
「スッげぇな!写真写真っと!!」「あっちに向かってるぞ!」



注目の視線を集めたまま地龍は人気のない通りに降りれば、そこには凄まじい風が吹き荒れた。着地して直ぐに砂を銃や自身の姿を元に戻す。すると、砂の龍を追ってきた男がやって来た。目を凝らして何か異変がないか探しても、衣服全体の迷彩機能は勿論のこと、銃にも同じ機能があるため、彼らの目の前にいるにも関わらず男達にはいつもの街並みしか映らない。何もないことに男達はガッカリして暫くするとその場から離れていく。それから少しして、人気が無くなったことを確認して地龍は移動を開始する。まずは、この街を探るため、この街の住民達に溶け込む為の服装を手に入れなければならない。誰にも存在を気付かれることなく、地龍は市場あるいは大通りを探す。




「(ここがメイン通りか?)」



10分程歩いてこの街のメイン通りである市場についた。様々な露店が立ち並んでおり、少し疎らではあるものの人の波ができていて活気に溢れている。肉や野菜は勿論新鮮な魚が、冷やされることなくそのまま店頭に出されてはいるものの、砂漠地帯には非常に重要な飲み水や服屋などもあるため必要なものはここで揃うだろう。



「(しかし、妙だな…。女がどこにも見当たらない?)」



ここに来る道中から気になっていたのだが、どこを見ても男だらけで女が一人も歩いていないのだ。

1年前 No.9

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「(先ずは服だな。ちらほら服装の違う奴等も混じってるが、観光客なのか?)」



そんなことを頭の中で巡らせながら、でっかいライフルを堂々と持ち歩き誰とも接触しないように合間合間を縫って先に進む地龍は、この世界の人間に馴染めるよう衣服を調達することに。ルナマリア特製、言語文字翻訳ツールもいつもながらしっかり稼働しているので、一応覚えた流暢な外界語も使う必要はなさそうだ。
少し歩いたところに外国人向けの服を売っている店がある。大柄な地龍だが、外国なだけあり大きめのサイズもバッチリ揃っている。さて、この人混みの中で透明人間状態の彼が、行き交う人々やアサルトライフルを持った街を警護していると思われる軍人達をどうやって欺き、誰にも気づかれることなく服を購入するかだが、地龍は店の反対側にある店の方へ向かうと、その店の前で黄金で出来た立派な杯や硬貨、大きな宝石の埋め込まれたネックレスなどの金銀財宝を地面の上でそれらが見えるよう山程大量に造り上げて、服屋の方に戻る。



「おい、あそこからいきなり金が!」「金だ!それに高そうな宝石も沢山ある!」「あれは俺のもんだ!!」



すると、その財宝欲しさ近くにいた男、特に地元民と思われる紅白の衣服を纏っている褐色肌の男は奪い合いを始め、それを見た警備員は止めに入ろうとする傍ら、金に目が眩んだようで猫ババしている。服屋の店主も急いで金銀の奪い合いに参加しており、店にいた何人かの客や通行人の視線はその奪い合いの方に集中する。地龍の目論み通りだ。地龍は直ぐ様店にあった大きなサイズの服とズボンを手に取り、純正で大きな宝石をレジに入るだけ入れてその場を立ち去った。後は店主が戻って来る前にレジごと誰かに盗まれないよう祈るのみ。



「(ここらで着替えるか。)」



それから五分ほど歩いて降り立った場所とはまた違う人気のない小道に来た。地龍はステルスデジタル迷彩服を脱ぐことなく麻酔銃、折り畳み式ナイフ、そしてアンチマテリアルライフル共々この辺り一帯と同じ赤茶色な砂に変換する。砂にして持ち歩くのが一番安全で怪しまれず楽だ。そして、すぐに盗ってきた黒地に白いドクロのワンポイントがプリントされた安物の長袖を着て、迷彩のズボンも同様に履いたまま砂に変えて新しい明るい紺色のズボンを履く。靴は一々靴屋を探すのに時間が掛かりそうなので、そのままにすることにした。

これで、漸く堂々と街を歩ける。因みに言語、文字翻訳ツールは形はなく地龍個人に着いているので問題なくこちらの世界の住人とも話せるだろう。ただ、その国の母国語に合わせて話していることを翻訳するため、話す言語が違う人物が何人いても全て地龍の使用している言語(基本日本語)で翻訳されるが、地龍が母国語の違う人間と同時に話すには共有設定を入れねばならず、普段はOFFになっているので基本相手の話している言語か、法則世界において共通語であることが多い英語で相手に伝わるため、場合によっては伝わらないことがある。



「まずは時間合わせだな。」



漸く声を発する地龍。全身砂と鉱石と石でできている地龍には栄養を摂る必要がない。城で食事を摂るのはあくまでも人として味覚や嗅覚を使って食事という『行為』楽しむのと大家族の一部と会話するためなのだ。なので、本来は食べ物も水も一切必要ない。寝床にしても、かなり安全な土の中で寝るということでこちらも問題ない。そして時間合わせをするのだが、紅いターバンを巻いている地元民らしき人物は殆ど時計を持っていない。なので、時計を持っている平均的な体型をした、旅行客と思われる若いアメリカ人に話し掛けてみる。アメリカ人は案外親切である。



「そこの人、すまんが今の時刻を教えてくれないか?オンボロ時計なもんで、たまに狂っちまうんだよ。」



「ん?ああ、いいよ。えーっと、今は5時4分。こっちじゃ5時がお昼らしいから丁度お昼過ぎだね。
しっかし、あんた大きいね。一緒に写真いいかな?」



男は2m近い地龍を見ても怖がらず、嫌がりもせずに言われた通り親切に時刻を教えてくれた好青年だが、スマホ片手に写真撮影をねだられる。異世界の者との関わりを立証するものは残したくないのでそれは断るが、ズボンのポケットに手を突っ込んで宝石を持っていた振りをしてそれを彼に渡す。直径2.5cm程のイエローダイアモンドの原石。こちらの世界でもカットせずとも相応の価値があるだろうし、傷も入っておらず純度はお墨付きなので高く売れるだろう。まぁ、カットしたものをプレゼントしてもいいのだが。



「すまんが、それは仕事の事情でできない。その代わりと言っちゃ難だが、こいつをやるよ。
売るなり、彼女にプレゼントするなり好きにしてくれ。」



「…彼女?おじさんまさか、『奴隷』にこんな良い宝石あげてるの?」



だが、『彼女にプレゼント』と地龍が話すと、青年は普通であれば聞き慣れることのない言葉を、
まるで日常的に使っているかの如く軽々と口にて意外そうな顔をしている。


奴隷。


地龍は最初何故こんな場所に導かれたのか薄々疑問に感じていたが、目処が立つ。銃を持ったターバンと紅いマントをつけた軍人らしき者達が治安的な問題が絡んでいるのだろうが、大勢の人間が集まる中でどこにも女一人歩く姿が見当たらないのには理由があるようだ。時計を合わせ終えた地龍は、あることを彼に尋ねた。




「若い者(モン)に聞くのは難だが、この辺りで奴隷を売っている店はあるか?」

1年前 No.10

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「奴隷屋?そこを曲がって細い道を抜けた先。俺も奴隷を買いに来たんだ、良ければ案内するけど。」



「そうか…ああ、頼む。」



まだ、20歳にも満たないような若造が女を、奴隷を買いに来ているとは…この世界の男共はどんな思考回路をしてやがる。お偉方がその場にいたらたっぷりと奴隷以上に可愛がってやれるんだがな。

腹の綿が煮えくり返そうな気分だが、今は抑えなければならない。予定外だが女達を買って事情を訊いた方が素直に答えてくれるだろうし、何より女達の置かれている現状も良く把握できる。地龍は内に籠った感情を出さず到って自然に頼んで、青年と共に奴隷の売っているらしい店に向かって歩いていく。それにこの青年の奴隷思考も変えてやりたいところ。店に着くまでの間、少しばかし得ようと彼に話題を振ってみる。



「しっかし、砂漠の中にある割にデカイ街だな。何で栄えてんだか。
あー…そういや、なんて街だったか?」


「アドゥデ、ね。おじさん、何で栄えたかなんて歴史の教科書にも載ってるのにマジで知らないの?」


「るせぇな、子供時代のことなんて覚えてねぇんだ。それに俺は田舎モンなんだよ。」


「この街は奴隷で栄えたんだよ。今でも世界一の奴隷売買してる場所だってくらいは覚えてるでしょ。」



アドゥデ…世界一の奴隷売買街、か。教科書に載る程なら、世界共通の差別思考って話もあり得そうだな。
それともあくまで、裏の取引だったりするのか?…分からねぇ。だが、こんな若造が奴隷を買うどころか、
売っている店を知ってんのも俺からすりゃあ可笑しな話だ。女が男と同等の立場に置かれてないのもな。



「そういやおじさん、長袖で暑くないの?」



「あ?お前、こんな直射日光の当たる場所で半袖なんぞ来てたら、すぐ脱水症状起こしてぶっ倒れるぞ。」




―――――――



それから情報にならない話をしていると、小さな中東らしい音楽が聞こえ、歩みを進める度音は増して大きくなる。メイン通りから抜ける小道を10分程歩くと、道の両端に連なる民間らしきベージュ色の石造民家の上に、熱気を送る日 光を遮断するシートが辺りが道を覆うように張られ、昼間であるにも関わらずにピンク色のライトに照らされている大人向けの通りに着く。そこには、窮屈で簡素な篭に素足のまま入れられ、誰一人として助けも求めずに見世物にされる女子供の姿があった。しかも同じ人種の女だけでなくアメリカやロシア、中国や日本人なども見受けられ、幼い者だとまだ12、3才くらいの子供が膝も抱えず、通りを闊歩する男達の視線に怯えて座っているのだった。その瞳には生気の欠片もない。地龍の頭に一瞬破壊衝動が込み上げた。

1年前 No.11

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「うわー、スゲェ!世界一なだけあって本当にイイ体の奴隷しかいねぇ!どれを買おうかなぁ…。」



青年は地龍のことなど構わず、憧れていた光景に声を上げて興奮する。すると通りの少し奥にいた黒肌の少女の体が震え上がったのを地龍は見た。本能が恐怖心を感じているのだろうか。子供だけでない、成人を過ぎているであろう女性達も怯えている様子だが、体には出さない。一体どうすればこうなるのだろうか。

地龍は怒りを隠して適当な店の店主に話し掛けた。



「この店の女は幾らだ?」



「へぃ!この様になっております。」



紅いターバンを巻いた地元の人間らしい、ボサボサの顎髭を蓄えた男は慣れた手つきで一枚の紙をスッと差し出した。そこには様々な国の単位での彼女らの値段が書かれてる。ILSが大きく表示されておりドルは勿論、円、£、元。まだある。年齢別で値段が分けられており、日本円の単位では15才未満1万から、18歳3万から、20歳5万〜となっている。


安い。女子供の命がこうも安値で売られているとは。





「…この通りで一番安く子供を売ってる店はあるかああああァ!!」





それが今の地龍にできる精一杯のこと。怒りと葛藤の籠った叫び。その叫び声は通りを歩く男達に響くことはなく、色眼鏡で此方を見つめる。…この世界は一体どうなっている。




「ちょっとちょっと!おじさん、何馬鹿みたいに大声出してんの!?一番安い店はあそこだから!
奴隷見て興奮するのは分かるけど、落ち着いて!」



彼を連れてきた青年はずんずんと店を見て回っていたが、地龍の声を聞いて戻って来てしまった。そして、一番安値で子供がいるという店に向かってずかずかと歩いていけば、もう一度ポケット大量に手を入れて宝石を取り出す振りをし、握り締めた拳を店主の前に出した。予想外な客に驚きを隠せずにいる店主。



「…この店の女は在庫も含めて全員俺が貰い受ける。これで十分だろ。」



大きな拳を開けばボトボトと宝石が落ちた。店主は破格で仕入れた女が高価な宝石で買われることに更に驚くと、どうぞどうぞと店頭に並んでいた女達と在庫の女性達に付いていた手錠を次々外す。その数9人で、うち2人は12才前後の黒髪の中国人系とブロンドのロシア系。地龍の行動を見た青年や、通りを行き交う男達はその光景に言葉を失った。日本円でも僅か2000円程の子供の小遣いで買えてしまう程の値段の奴隷に対して高価な宝石を、体に傷の付いたり青アザのある奴隷に対して使うなどこの世界の一般人からして見れば異常でしかない。

奴隷となっていた女性達は安上がりなだけあって、皆汚れた無地のみすぼらしい格好をしており靴など履いておらず、奴隷として飼われることに皆体を震わせて怯えている。地龍が2mもある筋肉質な体型なのが彼女らの恐怖心を余計に強めているのもあろう。情報を集めるにはまだ足りないと思ったのか、地龍はもう一店の女を買い占めることにした。



「とりあえず、ついてこい。…ん?どうした。」



奴隷と言うだけあって多少買い手に決定権があっても可笑しくはないだろう。寧ろ、こんな場所では従って貰わないと困る。地龍に買われた女達は怯えたまま、逆らおうとはせず、彼についていこうとするのだが中国人系の子供がついてこようとしない。命令に歯向かってしまったことに怯えている少女だが、歩こうとはせず。よく見ると彼女が座っていた辺りの地面に片方だけ血の跡が。それもどちらの足か分かる程度にくっきりしているので、急いで彼女の左足の裏を見る。

…思った以上に出血している。それも消毒されていないのか、傷口の周りが膿んでおり何もしなければ細菌感染で足を切るところまで侵攻するのも時間の問題。地龍は女の一人に彼女が倒れないよう抑えてもらいながら、宝石を出したポケットではない右のポケットから使い切りの小さい消毒液とガーゼと包帯を出す。



「滲みると思うが、我慢しろ。」


「ひぃっ…!許して下さい……!」



「おじさん…そんなチビ棄てちゃえって。代わりはいくらでも売ってるんだしさー。」



青年は地龍を奴隷購入の素人だと思い、助言のつもりで笑い飛ばしながらそう言ったのだが、消毒を命令に背いた罰だと思い込んでいる少女は涙を流して赦しを乞う後に易々と言っただけあり、地龍の眼の色が変わった。



「お前…俺の女に文句あんのか?」



青年に放つ声は咆哮を轟かせ、睨み付けるその眼は牙を向く虎のように怒りに満ちている。女性が奴隷にされる世界を見てきたことがない訳ではない彼も我慢出来ないことはある。彼女を庇ってもいるが、この世界では子供でも女である以上地龍の女であることに変わりはない。

1年前 No.12

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「痛…い?」


「消毒してるだけだ。女に体罰なんぞ馬鹿共のすることだと覚えとけ。」


消毒液をかけられて一瞬痛がるが、想像していたよりもずっと痛みを感じないことを女の子は不思議に思っている。傷口を軽く拭き、使い切りのルナマリア特製軟膏を右ポケットから2つ出して傷口に塗り。傷口の自然治癒力を塗っている人物に合わせて負担が掛からない程度に大きく高めるので、通常なら2日もすれば完全に傷口は塞がる。そしてガーゼを当て、その上に包帯を足首の辺りまで慣れた手つきで巻いて、包帯についている2本のフックで包帯を固定した。応急処置はこれでいいだろう。地龍の行動に周りの男達だけでなく、奴隷として躾を施された彼女達も動揺している様子が見られる。


「他に怪我してる奴はいるか。痣のあるもな。服の下に痣があるやつは後で名乗り出てくれ。」


「おいおい、スゲー周りに注目されてるよ…。」


「うるせぇ。もう用は済んだんだ、どっか行け。
それと…さっき好きにしろと言ったが、俺のやったダイヤで奴隷だけは絶対買うんじゃねぇぞ。」


奴隷市場に送り届けて貰ったので悪気がないとはいえ、自分を一々イラつかせるこの青年には付きまとわれたくない。しかし、青年の方は地龍を金持ちであると思っており、着いていけばまた宝石が貰えるものと考え暫くは離れる気はない。はいはい、と軽く払い除けただけ。こんな奴隷に宝石で支払うなど、絶対に金のある大富豪しかやらないことを彼はやっているのだ。かなり変わり者だがついていく価値はある。好青年といえども、目の前にある大金につい目が眩んでしまう。


「次はどの店にするかな…。」


「俺の店にはいい子供がいるぞ!!女もな!」「いいや、俺の店のがいい!こっち来て見てみろ!!」
「安くするから買ってってくれ!!買ってくれんなら一人タダでつける!」


地龍の荒い金(宝石)使いを見た商人達は一斉に彼に商品を買ってもらおうと騒ぎ出す。ここからでは見えない奥に続く奴隷店にも非常に極稀な金づるが現れたことがすぐ伝わり、奴隷市場全体に活気が流れ始めた。変人とはいえ顔や体、値段に関わらずにお釣りが出せないほどのものを、釣り銭要らずでポンと出すのだから商人である彼らにとっては金のなる木。盛り上がり始めたところで、地龍は怪我をしている少女を左腕で抱き上げた。


「分かったから、女を怯えさせんな。品定めしづれェんだよ。」


女の怯える姿は見たくないので、男達にはそう言っておけば女達と何故か青年も連れて歩く地龍。通りの長さは未知数だが、値段はピンキリだ。だが、大体18歳未満は安くて10万、30歳までの値幅が広く、20万〜今のところ最大2000万。これは馬の競りか何かかと目を疑うものがある。それでもどの店も奴隷として売られている男はどこにも見当たらない。やはり、この世界は女性だけが……。


「…お前、買うんじゃなかったのか?」


「買うよ。まだちゃんと見たいだけ。」


自分の隣にいる青年に対してキツい視線を送る地龍。青年はそう言い飛ばすだけで、辺りの奴隷を見ている。何が狙いかも検討はついていたが、金さえあれば靡きそうだ。どこまでついて来るのかが気掛かりだが。

1年前 No.13

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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1年前 No.14

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「で、金はどうするんだい?」


「とりあえず、凶暴な方の女も見せてくれ。金は後から持ってくる。
どうせ、買ったら返品できねぇんだろ。変な女を掴まされるわけにゃいかねぇ。」


「…随分変わった客だ。持ってくる間、盗られないよう見張っといてくれ。」


「構わんが、こんな大男がド真ん前に立ってる店のモノを盗む勇気がある奴なんぞ、
ここにゃあいねぇだろ。」


…何しろ周りからは異常だと見られているからな。
寧ろ、店よりも高値の宝石を持っている俺目当てで狙う方があり得そうだが。

そんなことを思っていたが、店主の男もいないので戻ってくるまでの間、地龍は目が合う位置までしゃがみルナマリアの分身と先程うやむやに終わった話の続きをして。それに、彼女には本体のような特殊な力があるのかも気になる。異世界に能力も合わせて彼女らを派遣するので、全員が本人同等の力を持っているとは限らず、中には人間と変わりない者もいる。この世界は特に超能力を扱える類いの者はおらず、科学によって栄えている法則世界ということで、このルナマリアも何一つ力を持っていない可能性が高い。


「で、お前の名前は?幾つだ?」


「私には名前などありません。個体番号はKRSEHGFT806です。年は現在10歳でございます。」


「…そうか。じゃあ、買った後に名前つけてやる。もう一人の女は双子の妹か?」


「はい。強要されるのを嫌い、ずっと調教師様や商人様に対し反抗的な態度を取って参りましたが、
私のことを心配してくれたり、収容所にいた他の方々のことも気遣っている優しい子なのです。」


彼女の話を聞いて地龍は安心した。輝城にいるレヴァナスと変わりない性格だ。すぐには懐いてくれないだろうが、他の女性達と同じく打ち解けていくだろう。男の手を煩わせるなど、レヴァナスはどれくらいの強さなのだろうか。
それにしても、このルナマリアは城にいる本体と同じで常に自然に穏やかにしている表情であるが、本人と比べて物腰が硬い。話にあった収容所とやらで、その様な振る舞いをするよう教育でもされてきたのだろうか。地龍には彼女の振る舞いがまるで、感情のあるロボットにしか見えず、ロボットのルナマリアと会話しているような気がしてたまらない。


「おじさん、9000億5000万なんて大金どうやって払うの!」


「金は腐るほどある。問題は俺の期待通りのイイ女か、だ。」


青年は奴隷の話など全く聞いておらず、慌てた様子で地龍に小さな声でボソボソと訊ねるもそう軽く返す地龍。思わず呆れる青年。地龍が一体何の仕事をしているのか気になり始めている。…彼はどう見てもズボンに巻いてある茶色いケース以外は手ぶらで、足を負傷した少女しか抱えているものはない。そもそもあの馬鹿げた大金は店主が売らずに、寧ろ見世物にして客寄せ目的で買わせないようにしていたのではないだろうか。だが、9000億など現在の史上最高額の値段を本当に支払ってくれるのであれば、店側として売らないわけにはいかないだろう。それに地龍の金使いを噂で聞いているのであれば一応信用できる。

少しして、首輪に足枷と、両手を後ろに回された状態で手錠を掛けられた、重々しい雰囲気を放つ黒髪の少女が地龍の前に出される。この世のものとは思えないほどの黒を纏う柔らかな髪に、血のような赤い眼。正しくレヴァナスだ。彼女は暴れ出さないよう厳重に捕縛されており、鮮血のような瞳は此方を威嚇するように睨んでいる。一応姉とセットで売ることを考えていたのか、彼女も黒いベリーダンス衣装を着させられている。が、その衣装でも暴れていたのか所々穴が空いていたり、破けている。


「いいだろう、両方買うぜ。今代金変わりのモン持ってくるから二人共キープしといてくれ。」


彼女の顔を見た地龍はそう店主に伝えると、地龍は自身の買った奴隷を引き連れて一度市場を離れる。
相変わらず青年は彼にくっついていくのであった。

1年前 No.15

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「ついてくるついでに、デカいリュックの売ってる店知らねぇか?
柄は…あるなら迷彩がいいが、なければなんでもいい。」


「ええ…おじさん、何でリュックの一つも持ってないの。」


「訊いてることに答えてから自分の話をしろ。」


地龍を自分と同じく観光客と思い込んでおり、手荷物を一つも持っていない彼に思わず苦笑。そして、地龍は自分の問いかけに答えない青年に不機嫌な表情を見せる。異世界から来たと言って歓迎してもらえるならどれほど楽だろうか。科学が発達しているとはいえ、次元レベルで世界を渡航できるようになるには当分先の話だろう。そもそも、この世界には異世界を渡航できる原理が存在し得るかどうかが鍵だ。

なお、地龍の手持のものは対兵器ライフルだけである。落ちた場所が戦地のど真ん中であると非常に邪魔になるため、必要なものは全て服の至る所にあるポケットに入るサイズのものであり、手榴弾や応急薬なども全て砂に変換出来るようになっているので、着ていた迷彩服と同じで常に地龍を追尾しついてきているため、入れ物など不必要なのだ。(折り畳み可能なものを持ってこようとしても、自分の世界のものを異世界に持ち込むと色々問題になるのであまり持ち込まないようにしており、ステルス迷彩式折り畳み可能リュックは未だルナマリアに提案していないため存在しない)

それにしても、奴隷を9人も引き連れて歩くというのは目立つ(特に地龍の抱いている少女に対して視線が注がれている)ようで、街行く男性が此方に注目している。奴隷といえど、主人のいる者に対して危害を加えることなどあるのだろうか。若しくは男の私『物』扱いとなるため、身の安全を守れる法律はあるのだろうか。


「おっ。…お前に訊くまでもなかったな。」


丁度くだらない会話をしていたところにリュックサックを売っている店が。輸入品を実際の値段よりも高めで売りさばいているようだが、今の地龍には大きなリュックサックさえあればいい。輸入品とはいえ、安物であることに変わりはなく、それなりの値段で売っているので私生活で細かいことは気にしない地龍にとってはどうでもいいこと。
…奴隷達を店の外に立たさせておくのは何かしら問題になるだろう。特に購入している奴隷に対して何か特別な印を付ける訳でもないのだから、嫌がらせや誘拐される可能性も十分ある。会計もスピーディーに終わらせなければならないので、その離れる間この青年にでも見張りを頼もうか。


「お前、コイツらにハイエナが手ぇ出さないよう見張っとけ。」


「え!?なんで俺が?やだよ。第一、こんな汚い奴隷に手を出す奴なんていないよ。」


「そうか。じゃあ、もしコイツらに何かあったらお前、責任取れるんだな?
ちゃんと見張ってりゃ、礼をやるつもりでいたんだが。
第一、軍隊が見張ってる前で人の奴隷に何か手が出せるかよ。」


見張りをすることを拒もうとする青年に、対価があれば靡くだろうと見抜いているため地龍は業とらしい口振りでそう話す。襲われようが襲われなかろうが払うものに変わりはないのだから。

1年前 No.16

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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1年前 No.17

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「…どれくらい気性が荒いんだか。」


「収容所時代に調教師を素手で殺し掛けたぐらいだ。
それにこいつのせいでうちの働き手が何人やられたと思う?」


「俺には関係ねぇ話だ。ほら、早く外せよ。こっちは準備できてんだぞ。」


店主の男はレヴァナスの分身を地龍の方に向けてまず足枷の鍵を解錠し、そして手錠を鍵で解錠する。手錠が外れたと同時に、レヴァナスの分身が素足で地面を蹴って地龍の顔目掛け、左の拳で殴り掛かってきた。流石創聖神の妹だ。異世界でも類い稀な身体能力を持っているようだ。
…が、人間と同じステータスであることに変わりのない彼女など、最弱とはいえ、疾うの昔に人間の領域を越えた地龍の前では赤子同然。凄い勢いで迫る左の拳を、ポンと自身の左手で軽く受け止めて澄まし顔をして見せた。彼に抱き抱えられている足を怪我している少女は地龍が殴られると感じて、すぐに顔を背けて目を閉じたが、ゆっくりと顔の位置を元あったところに戻すとその光景を唖然として見つめる。
それ以上に唖然としていたのは店主と、通りすがりのギャラリーだったがギャラリーの方からはすぐに歓声が沸き上がる。


「!?お前…人間か?」


「じゃあ、おっさん。貰ってくぜ。」


レヴァナスの問い掛けを無視し、拳をぎゅっと握ったままで地龍は空のリュックサックを背負えば、年を重ねた女が多く売られている店を探して歩いていく。本来の目的にやっと戻すことができた。それにしても、やはりルナマリアはどの世界でも色んな形で愛されているようだ。例えそれが奴隷であっても目に見える形でそれが表されている。拳を受け取られたままのレヴァナスの分身は、右腕に激痛が走るもので「放せー!」と大声を周囲に撒き散らしては、ドカドカと地龍の体を蹴って降ろさせようとするが、地龍は全く痛がりもせずに店を探すことを続ける。だが、妹が手荒く扱われているように見えたルナマリアの分身は、地龍に止めてもらうように説得しようとする。


「あの…御主人様。その娘は私の唯一無二の妹なのです。
奴隷である私めが御主人様にこのようなことを申し上げるなど、
無礼極まりないことであることは重々理解しております。
ですが、どうか妹を放してやってはいただけないでしょうか?」


「おいおい…お前みたいなチビ奴隷が、主人様に指図できると思ってんの?」


地龍を御主人様と敬い、歩きながら頭を下げる話をするルナマリア、そして完全に奴隷である彼女を馬鹿にしている青年であるが、地龍は指図されているなどと曲がった考え方はしておらず。ひたすら不等な扱いを受けている女が、主人である男に対して、主人に言われてもいない自分の要望を伝えるのは、やはり無礼なのだろうか。悲しく、実に滑稽な世界である。力で好きな女を手に入れることの何が面白い、それほどまでして女を道具扱いする意味とはなんだ。


「このままだと俺も他の女も躾のなってねぇ男共に狙われる格好の的だ。
お前がしっかり面倒見れるなら放していい。俺も腕が疲れてんだ、そろそろ降ろしたい。

…それとお前。一々、俺の女に指図すんじゃねぇよ。何様のつもりだ?」


「おじさんさぁ、もしかして奴隷主義者?」


…奴隷主義?馬鹿馬鹿しい。子供までにこの様な考えを植え付けるなど、この世の男共は殆どが女を同じ人間であることを認識していないのか?

茶化す青年に対して地龍は地面の砂を素手で掬うと、それを少年に容赦せずぶちまけた。勿論少年は避けられる訳もなく砂を顔に浴びる。しかも、他の通行人には一切掛からないように砂の流れを調節しているので何も言われることはないだろう。青年は冗談を言っただけなのに砂を浴びせられたため、激怒する。地龍も当然冗談であることは分かっているが、外国人(特に自分のような大柄な男)相手に言う冗談ではない。今までの(この世界の住人にとって)異常な行動でどういう性格なのか理解できないのだろうか。


「ぶわっ、何すんだよ!?ペッペッ!口に入っただろ!」

1年前 No.18

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1年前 No.19

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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1年前 No.20

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「奴隷め、大人しくしろ!」


「放せ!放せッ!!」


街民(ちょうみん)の一人が少女の片手をグッと掴んだ。少女は振りほどこうともがくがろくに食事を与えられておらず、幼い体故に力を出せずまともな抵抗は出来ない。それでも、容赦せずに他の街民がもう片方の手を持ち上げた。これでもう逃げ場がない。そんな中に、また別の街民に連れられて赤いマントに金の甲冑を着け、黒髭を蓄えた目付きの鋭く、逞しい肉体を持った中世的な男。すると、男達からわっと歓声が上がる。


「ベンジャミン隊長!?」


「何故隊長が奴隷の回収を?」


少なくとも街民の間では有名人のようだ。地龍はまだ動かず深々と様子を見ている。
するとベンジャミンと呼ばれた男は自分の顎髭を撫でながら、野太く大きな声で気前よく笑いながら話をし。


「あぁ、最近キャロラインによる暴動がないので、我々実動部隊も警備隊と同じ務めをしているのだよ。
戦場に赴けないのは残念だが、たまにはこのように街を見て回るのも皆の顔が見れて良いな。」


「そうでしたか、いつもお務めお疲れ様です。この奴隷はどうさないましょう?」


「この者は店から脱走したため、我々が市場に連れていく。貴君らの協力に感謝する。」


隊長というだけあり、器の大きい男のように地龍は思えた。話の通じない人物ではなさそうである。少女の片手を初めに掴んだ街民の男が彼に何事もなくそう尋ねていると、分かれた兵達も合流した。ベンジャミンは少女を捕まえた男二人に礼をすれば、二人の男は照れている様子だ。すると街民に変わって、彼の部下である男二人が彼女の両腕を掴みあげた。少女は少し体力が戻り、息も少し整ったために再び暴れ出す。


「男が触るな!」


「では、市場へ戻るぞ。」


「…待った。」


出てもいい頃合いだ。彼らの前に少女を抱いた地龍が入り、彼らの前に堂々と歩いていく。その待ったの声で周りにいた街民達が一瞬静かになると、周りの街民や地龍に買われた女達もすぐにどよめき始めた。男が奴隷を抱き抱える姿など、この世界では奴隷を奴隷として扱わないことは暗黙の了解の一つであって、恥の一つである。それは紛れもなく普段の生活の中では有り得ない行動。
女達の方は歩いていく地龍の後ろからゾロゾロとついては行くものの、行動が下手に打てばこちらを巻き込む可能性があったため姉妹の分身以外不安があるようで、少女達は特に落ち着ついていない。それには部下達は勿論、彼ら程ではないが隊長も目を開いて眉を歪ませる程度に驚いている。そして、捕らえられた少女は割り行ってきた地龍を、何なんだとじっと見つめ静かになった。

すると、ベンジャミンの後ろにいた部下の一人が彼に対して、持っていたアサルトライフルを構え、何者だと警戒し。女を抱える者など彼らからして見れば明らかな不審者なのである。地龍はアサルトライフルを向けられようが、たじろぎもせずに自分の右腕を上げて、彼女のいる左腕は手のひらを開けばその子にも持っているものを落として両手をあげることを指示し。言われた通りに少女は持っていたカップ麺と特別に買ってもらった飴をポトッと落として手を上に上げた。それをライフルを構えていた男が回収しようとするものの、あの隊長が引き留める。


「大丈夫だ、銃を下ろせ。君達も楽な姿勢で構わない…それで、我々に何か用かな?」


「ああ。あんたがどれ程有名人か知らなくて申し訳ないが、部下が捕まえたその女を買い取りたくてな。
代わりにこれを持っていって欲しい。釣りも要らねぇから、一人でも楽に運べる。」


「!?」


「おい!ベンジャミン隊長の職務を邪魔する気か!」
「奴隷も態々男に対して、あのベンジャミンさんに拾わせておきながら礼の一つもない!」
「ベンジャミン隊長を知らないだと!?侮辱にも程があるぞ!」
「…奴隷を大衆の面前で奴隷を抱くなんて、恥知らずにも程がある。」「あの奴隷は全部あいつのか?」


ベンジャミンは地面に落ちた飴を前に出て拾い、怯える少女に手渡して用件を尋ねると、臆することはなく目の前の彼に地龍は左ポケットに入っていた大きな宝石を差し出す。彼の言葉に兵士に両腕を抑えられている少女が何も言わずに驚く中で様々な声が入り乱れる。なんとベンジャミンは大きく笑い出した。


「ッハッハッハ!!実に面白い!分かった、その者は君に渡そう。
仕事を楽にしてくれた礼に、この高価な代金と共に商人に話をつけておく。
よし、その者を解放しろ。…後ろの奴隷達は君のか?」


「あぁ。皆、俺の女達だ。…こいつもな。」

1年前 No.21

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1年前 No.22

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

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※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
1年前 No.23

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「私は助けを求めた訳じゃない。こいつが勝手にしゃしゃり出てきたんだろ!」


「ほぉ〜。なら、市場に戻る?」


分身の言葉に青い瞳の少女は地龍を指差せば、少しばかり声を荒げてそう話す。男に助けられたなど、彼女にとっては恥じるべきことである。が、助けられなければあのまま市場に戻されていたのは間違いないだろう。ここまで来て市場になど戻る気は更々ない。それを知ってかレヴァナスの分身は冗談ではない冗談を見下すように故意に言って。奴隷という屈辱的な立場に立たされているせいか、相手を見下すことによって生まれる優越感の気持ち良さに浸っているようだ。本体もよく他人を見下す言動をしているが、優越感に浸っている訳でなくあくまででしゃばりたいだけ。本体と性格は同じままではあるが、異世界に適応できるようになっているので違いが現れる。普段と違う面のある妻達を見ることも、地龍の異世界を救う数少ない楽しみの一つ。そんな地龍は青い瞳の少女に指を差されていることは気にせず、分身の頭を土のついていない左足首で叩いてから、


「それくらいにしとけ。3食寝床付きだが、お前が嫌なら来なくていい。お前さん次第ってヤツだ。
…じゃあ靴屋に行くぞ、全員ついてこい遅れるなよ。」


そう言って青い瞳の少女は置き去りにして、女達を引き入れて靴屋に向かって歩き出す。


「おっ、おい!自分で買っておいて置いて行くなんて、お前クズだな!?」


脱走するにしても、一人でこの街から逃げ出すことなどまず不可能だった。あの時に買われていなかったら、あのまま市場に戻され、間違いなく男に買われていた。変人ではあるが、女に甘く食住の保証がある辺りそこまで害はないだろう。信用している訳ではないが、今は彼と行動した方が安全と判断すると、少女は胸元から何かを取り出しぎゅっと握り締めた後に自身の美しい金色の絹糸のように滑らかな髪を後ろに束ねると、それを使って髪を結う。それは銀メッキの矧げ、装飾品としての価値はないようなチェーンのネックレス。


それから、彼女は地龍達についていき、漏れ無く彼女も靴を買ってもらった。衣装と違ってあまり女性らしさを感じない無骨なデザインのものばかりだが、丈夫で軽く靴としての機能は十分ある。男が作っているのだから致し方ない。


「よし、全員分買ったな?」


「ありがとうございます、ご主人様…!なんと、なんとお礼をしたらよいのでしょうか…!」


「礼を言われるほどのことはしてねぇぞ。」


地龍の抱いている少女も含め、女性達は皆靴を(もちろん対価は宝石で)買ってもらった。すると20歳前後のロシア人奴隷の一人が感激している様子で頭を下げる。相当足が辛かったのだろうか。地龍は大きなことではないため、彼女の話を流す形でそう言って。

1年前 No.24

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1年前 No.25

花月 @runa43100 ★PSVita=qpg7RLCAlP

「…冷え切らない内に着いたな。」


「大きな石ですね〜。」


「姉さんの体…あったかいぃ……。」


地龍達は暫く砂漠を歩き砂漠の中に聳え立つ、砂と同じ赤茶色でゴツゴツとした大岩の前に立ち止まった。腕時計を見れば時刻は10時20分過ぎ、日本の時刻であれば午後5時過ぎになる。西の空はほんのりと赤みを帯びているが、東の空には星々が顔を出していた。予想していたよりもかなり遅く着いた。ずっと籠の中にいたせいで運動ができなかったせいか、子供も大人も体力がなかったようであった。街を出る前に比べてぐっと冷え込み、地龍の体感的には17℃といったところか。皆薄着なため女達は一ヶ所に集まってなるべく密集して押しくらまんじゅう状態だ。姉の分身は岩というものを知らないようで、大岩を見上げながら小さく感動している様子だが、すぐ隣にいる妹の分身は密着できて嬉しいそうな笑みを浮かべるもののどこか危なげな雰囲気を醸し出してる。足を怪我している少女は背中に背負っていたリュックサックを風避け変わりになって彼女を覆い隠しているものの唯一暖を取れる地龍の肌にぴったりとくっついていた。その中相変わらず不服と不満を溜め込んだ面持ちのあの少女が密集した女達の中から、寒さで少々凍えながらも出てきて。


「おい、これだけ歩かせたといてこんなところで野宿させる気か!
頭まで筋肉でできてんのかよ!?さてはうちらを殺すつもりなんだろ!」


「本当にねちねちうるせえなぁ。顔も似てんだから少し位は性格も似とけってんだ。
ほれ、誰でもいいからこの取っ手を押して開けてみろ。」


少女のことはあまり気にせずに、地龍は岩肌に取って付けたような明らか怪しいレバータイプの鈍い鉄色のドアノブに目をやって。怖いもの知らずなレヴァナスの分身が姉の体温を感じ取りたいがために姉と共にドアノブの前に立ち、左手を手を掛けて何となく押してみた。すると、特にドアの境もなかったのにきっかりと岩でできたドアが現れた。そして奥には空間が広がっており、その奥に下に繋がる階段が暗闇の中うっすらと見える。どうやら野外で寝ることはないようだ。地龍は予め持ってきたライトで暗闇を照らす。そこは部屋が一面鋼鉄で覆われている防御に特化した部屋。それは通常なら彼女らのいた収容所を連想させるものだが、赤と黄色の鋼鉄のタイルで覆われている壁と床により小洒落たものになっているので、彼女らのトラウマを刺激することはなかった。

ライトを壁に設置されたランプのような無色透明の鉱石に光を当てると点灯してそれが屈折、次々と奥に続くランプに光が灯った。その光景にルナマリアは興味津々だ。この10年間ろくなものを見ていなかったので、これにはとても感動している。きっと彼女には魔法のように見えたのだろう。


「お前さん達は先に行って部屋を見ておけ。俺は外でやることがある。
あと、これも一緒に持っていってくれ。それから、布団は一番デカい部屋に敷いとけ。」


「はいっ、ご主人様!」


地龍はずっと抱いていた少女を下ろしてルナマリアの分身にそう話す。彼女は満面の笑みで地龍に答えた。どうやら心を開いてくれたようで、言われた通り他の女達を率いて階段を降りていく。そして、地龍はタンク片手にそのまま外に出てきた。周りには辺り一面砂漠。遠くにアドゥデの街の光がぼんやり見える。そのまま地龍はドアの前で一人、誰かに声を掛けた。


「俺らの後をつけ回して何を探ってんだ?こそこそ隠れてねぇで出てこいよ。」

1年前 No.26

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=qpg7RLCAlP

地龍は門番の如くドアの前でタンク片手に鎮座する。すると左後ろの岩肌から、恐怖と驚きに満ちた少年の声。


「どっ、どうして分かったの……!?」


その声がして直ぐ、赤いターバン布を腰に巻いた少年がのそのそと現れる。この少年、地龍達をつけていたときと一切服装が変わっておらず薄着。まだ10歳にも満たない通常な人間の少年にこんな真似が出来るようには地龍も思わない。訓練を受けているのはまず間違いない。あれだけ目立った行動をすれば、何かしら目をつけられるだろうと思っていた地龍には都合がいい。


「背が高けりゃ、お前に見えねぇものも見えるんだ。で、何が狙いでつけてきた。」


「いやー、面白そうなことやってたから、ついて来ちゃった。」


「…俺に気付かれないように尾行しながらついてくるガキなんぞ、いると思うか?
どうせここのままじゃ凍死は免れられない、取り敢えず詳しい事情は中で、だ。」


如何にも嘘のようだが、この少年が面白半分でついてきたことは事実だったりするもそこが問題ではない。彼が何かしらの訓練を受けている以上何らかの軍隊や組織にいる可能性が高いのは確かで、奴隷として育て上げられた女達と違いこの世界の女性達の扱いは勿論男としての女に対する振る舞いなどの常識も知っていようから、すなわち多くの情報を持っているということ。彼を逃がす訳には行かない。有無を言わせず彼を突然担げば、無理矢理アジトの中へと連れ込んで。勿論少年の微々たる抵抗など意味もなく、タンク片手に階段を下へ下へと降りていく。


「あっ、お帰りなさいませ御主人様!お客様ですか?」


「おっ、お帰りなさいませ…ご主人…様……。」


「おう。お前さん達、二人掛かりで厨房の下の棚にあるやかんで湯を沸かせ。ちゃっちいが夕飯にするぞ。」


階段を降りると長い廊下でルナマリアの分身が忙しなく部屋を行ったり来たり。地龍が帰ってくると、彼女は元気にそう挨拶とお辞儀をして。相変わらず活発且つ貢献的に働いてくれているようで、ベリーダンスの衣装を身に付けたメイドにしか見えない。丁度彼女と一緒にずっと地龍が抱いていた怪我をした少女。安く売っていただけあり、良くも悪くも奴隷としてのノウハウがないのか分身の言葉や行動を真似ている。そして、片手に持っていたタンクを漸く放せば彼女達の目の前に置いた。かしこまりました!と、了解してから分身は足を怪我した彼女と一緒に厨房へタンクを運んでいく。他の女達は何をしているかと、地龍は各部屋を覗いてみることにした。


「こらぁ、放せぇ〜!」


尚、この少年は何をし出すかわからないので、下ろさずそのまま持ち運ぶ。

1年前 No.27

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

地龍が外へ出て直ぐ。奴隷であることから既に解き放たれていることを知らない女達は階段を降りてアジトの中を歩き回っていた。外の世界を全く知らない彼女達はこの場所が、科学の力や自然の摂理を無視して造られていることなど気づかない。全面鋼鉄の要塞を色や質感を変え、内部を木製の家に見せることができるのは色や触った際の質感を木に近づけることができるのは地龍だからできることで、懐中電灯などで外部の光を与えることで内部に光を通さず表面のみで反射、吸収を繰り返す鉱石。この世には存在せず、人工的に造り出すことなどでない唯一のもの。そんな未知の技術で出来ている部屋をそうとは知らずに部屋を探索する。


「まずは一番広い部屋を探してお布団を部屋に置きましょう。
もう少しなので、布団を持っている方は頑張って下さい。」


「男の言うことなんかあっさり信用するなよ。」


階段を全て降りると幾つかのドアが見え、女達が全員並んでも余裕のある長い廊下に皆足をつける。10歳という若さでありながら皆を纏める分身。年齢も離れている女性達を上手く従えている。10人以上の旦那を持つ本人と同じで案外リーダー気質がある点も変わりない。青い瞳の少女は傲慢な面構えで見据えながら、再度アドバイスを兼ねて話す。が、それに関して分身は疑問を感じているのか相手の青い瞳を純粋な眼差しで見つめて言葉も発せず何故と訴えているが、彼女は口を開いた。


「仰る通りです。ですが、現在私はあの方を我々の知っている男性とは違う男性と認識しています。
御主人様は、本来ない筈の名前を私めに授けると買う前から口にしておりました。
そして市場で最高金額の私と妹を買い占め、男性と同じものを口にできる以上感謝は必要でしょう。」


そう話して軽く一礼し、相手の元を離れると布団を敷く部屋を探す。男を信用するなんて馬鹿げている、愚の骨頂だ。頑なにその考えは変えず、表情も不服そうに嫌悪しているようにも見えるが、心は彼女の話を聞き入れており合点する部分と疑心で揺れている。そんなところへ会話を聞いていたレヴァナスの分身が近寄れば、澄まし顔で口を開く。


「あんな恥を堂々と晒して尚強いなんて、馬鹿の証。馬鹿だから多少派手にやっても許されるだろ。
あのノリじゃあ、全員名前つけられそうだなー。」


「!ふざけるな、私はお前と違ってちゃんと名前がある。」


強がった彼女が名前があると言い張ると、分身とはいえレヴァナス。悪戯心に火が灯ったようで、にたにたと気味が悪い笑顔を浮かべながら、うっすらと上から見下しつつ小馬鹿につつ彼女に指図して。


「ふーん、じゃあ名乗ってみ。」


だが、相手は何か考えているようで、僅かに俯けば押し黙る。そこまではレヴァナスの予想図と同じで、何処と無く満足そうだ。このまま黙っているだろうと思い、レヴァナスは声を発しようとした。




「……アナスタシア。」


彼女は静かな声で名を口に出した。

1年前 No.28

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

「ふーん…名前付きに所有物ありか…。お前、収容所育ちじゃないな?」


「…は?」


名乗らせたにも関わらずに名前については一切触れず、相槌だけ打って驚きも興味も一切なくただ無表情と全く関心がなかったが、突然回路が繋がったように自信に満々(みちみち)溢れた得意気な、所謂ドヤ顔というものをアナスタシアに向けて。その予想はズバリ的中。収容所にいる奴隷に与えられた自由の権利など何一つなく、所有を許されているものなど当然なく、殺傷力を極限まで減らした衣服のみ着用を許されているのだ。
こんな常識外れの言葉がぴったりで凶暴かつ年下の女に、その様なことを暴かれる前提すら全く考えておらず、図星でありながら間の抜けた顔をしていたが正気に戻れば、取り敢えず


「名前についてはアイツに言うなよ?いいな……。」


と、彼女を逃がさんばかりに見つめて真面目顔で口止めをする。


「うぃー。おっ、帰ってきたな…よしよし。」


と、生返事を返したところに丁度地龍が客人を帰ってくれば、彼女そっちのけで深紅の眸を光らせ、柔らかい下唇を舌なめずりし明らかに何か目論み始める。普段はそこまで頭を使って行動しないので、大掛かりなことはしないだろう。


「お帰りなさいませご主人様ァー!」


市場で懲りずに地龍を発見次第、挨拶は欠かさないものの彼の元へ飛ぶように駆け寄るかと思いきや、飛び蹴りを見舞おうとするレヴァナスの分身。地龍に対しては本人より血の気が多いようだが、地龍は女達の様子を見るべく自ら彼女に近づいたものの一切歩みを止めたり緩めることなく、顔目掛けて飛んできた足を顔を反らして良ければ、そのまま流れるような動きで左足の側面に触れる形で速度を少し落としてやり、相手にもせず受け流す。連行されて地龍のた少年は彼の達人めいた動きに鳥肌が立ち、今になって身の危険を感じ始める。

部屋は地下倉庫式冷蔵庫付き、水も使い放題の水道付きリビングに砂敷き布団と砂枕付きの大きな寝室、バスルームや洋式の水洗トイレなども完備されており、本当に砂漠の地下であることを忘れさせる程立派で、砂漠暮らしの少年は一切喋らずに目を疑っている。こんな設備が元より砂漠のど真ん中にある筈はなく、水の確保に到っては砂を変換して水道を作って近くの海から水を通し、そこから微細な砂で濾過しているので安全だ。風呂場から大勢の女達の声が聞こえてくる。


「一番人気は風呂…女の本能ってやつか?」


顔や口には出さなかったが、安値で売られていた女達は砂漠の暑さによって汗臭さがより際立っていたので、何日も風呂に入れられなかったのだろう。彼女らが体臭をどれくらいにしていたかは知らないが、本能ではなく男に買われる以上清潔さを保つような教育は受けているのかもしれない。そもそも、奴隷が社交的な場面に出るのか分からないので予想でしかないのだが。

1年前 No.29

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1年前 No.30

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1年前 No.31

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1年前 No.32

花月 @runa43100☆S5C8UVw84Kg ★PSVita=HAw8Ong5UW

「ところでコレ…本当に食い物なのか?」


「はい、それは『カンメン』という食料でしょう。本来は御主人様方が召し上がるもので、
お湯を掛けて数分待つだけで食べることができ、乾燥させているため賞味期限も長く、
味も良いことから非常食や急ぎの朝食としても人気と記憶しています。」


「なんだこの床…外のと違って柔らかくて変…たまらない…うふ……。」


「あ…うぅ……。」


ここはリビング。洋風な他の部屋と違い、ここだけは我々も易く想像できるような一般的な造りのTHE和室とも呼べる部屋だが、大人数用のために宴会場に近く銀白色(ここではシルバーではなく若葉色のような色)と乳白色(仄かに淡い薄黄色)の畳が交互に並べられおり、一般的な和室よりは洒落ていて爽やかな印象を受けるが暖かで柔らかい白黄色の灯りがオブラートに包まれ、畳の上には足の低い焦茶のテーブルが3台奥までずうっと続き、等間隔に砂で出来た色鮮やかな砂座布団が人数分敷かれている。
地龍の指示を受けてアナスタシアとルナマリア姉妹の分身、足を怪我した少女と共に和の雰囲気にはあまり合わないカップ麺を持って靴を脱ぎ、入ってきた。そして、皆隣り合わせではあるが適当に右側テーブルの中央に座る。まだ、彼女達以外には誰も来ていない。其々違うことを考えているようで、入り口に一番近い所へ座っているアナスタシアは、見慣れないカップ麺の容器をまじまじと見つめながらそんなことを呟いていると、収容所時代に僅かに教わったことを引っ張り出して隣にいるルナマリアの分身が説明する。その隣ではレヴァナスの分身が、砂座布団の感触を気に入ったか、あるいは癖になってしまったか砂座布団の上に座りながらぴょんぴょんと跳ねたり、(砂座布団に)臀部をつければ上げるを繰り返し子供染みた行動をしながら、実年齢と釣り合わない変態のようなじめっとした声を出して歓喜し、そして彼女の隣では見知らぬ部屋に対して警戒をする足に怪我をしている少女。その手には汗と外の熱で溶け掛けた飴が握られていた。


「しっかし、なんちゅーご主人様だこと。化け物に加えてこんな豪邸に住んでるとは。」


生まれて初めて寛ぐレヴァナスの分身は彼が豪勢な暮らしぶりをしているように思えたのか、はたまた尋常ではない力を羨ましがっているのかそんなことを口にした。すると、一つ奥に座っていたアナスタシアが躊躇っていたことを吐き出したように静かに呟く。


「…そういえば、アンタ達はアイツについていくのか?」


「当たり前だ。あれは一生に一度しか遭遇できないモンスターだぞ、絶対。」


レヴァナス本人らしい常識や周りを頑として気にしない答え。それはアナスタシアも予想していたようで、期待通りのことがそっくりそのまま返してきたため、気が抜けたように一つ息をついてから自身の隣に座る彼女に其れを問う。これでも、一番最初に自分が収容所育ちではないことを見抜いた相手なのだが。


「はー…アンタは想像ついてたからいい。で、アンタはどうなんだ。」


今まで主人に対して忠実に仕えていた姉だが、その心底ではどの様に彼を捉えているのかが分からない。あれを信頼しているのか、それともヘマをすれば殺される恐怖に怯えているのか。嬉しそうに仕えていても、心中では死と隣合わせの現状に震えているポーカーフェイスのような女も少ない訳でないため、自分の眼で見たものが自分の考えと正しいとは全く判断できない。今話の渦中にいる地龍は自分で女達をリビングに誘導しているので、直ぐここには来られないため、彼のいない貴重な合間を縫っての問いかけだった。

11ヶ月前 No.33

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★PSVita=HAw8Ong5UW

質問が此方に回ってくると、おどおどと自信無さげに答える。


「私ですか?…私は…少しばかり悩んでいるので、答えはまだ出そうにないです。」


相手の問い掛けにちゃんと答えられないことが納得いかず、後ろめたげな様子。訊かれたことには必ずはっきり答えなければならない、そう収容所で教え込まれた。これが出来ないと他の女は冷たい鉄の檻中で冷たい床に座らされ、必ず棒で殴られていたり、蹴られる。泣いたり叫ぼうとすれば更に暴行が加えられ、日が進む毎に泣き事を言わなくなり、最終的には虚ろな瞳で申し訳ございませんでしたと調教師に聞こえない小さな声で念仏を唱えるように呟いて殴られ続ける女達の末路を、中には耐えきれず息絶えた者も多く、隔離された檻の中で特別に敷かれていた茶色い砂埃がついたままの薄汚れたカーペットの上で、そんな惨い光景を毎日のように妹と眺めていた記憶が鮮明に蘇る。自分達は非常に珍しい髪と虹彩の色をしていたため、殆ど暴力を振るわれることなく売りに出された。アナスタシアとはまた別の形で特別だったのだ。
…本体ならば、質問に曖昧な返しをしたとしてもたじろぐことなく、相も変わらずの自信はあるだろう。しかし、性格自体は一切弄らず本体をそのまま移しただけなのだが。


「はぁ?何で悩む。」


アナスタシアには悩む謂われが理解できず、渋い茶を飲んだようなどぎつい表情で分身を見つめる。彼女には男を恐れてこれが運命だのと受け入れるか、男を拒絶し抗うかという両剣のように極端、且つ主観的な二択しかない。…それ以外あってたまるか。


「それは…私があの方を男だと割り切れていないからでしょうか……。」


「バケモノであることは確かですよ、姉さん!」


真剣に悩んでいる姉を隣にしても流れる様に、姉とは正反対でまんべんなく笑みを浮かべそんなことを言って退ける妹。茶化している様だが、これは彼女なりの励まし方である。が、他人のアナスタシアにはそうだとは分からずにバッサリ切り捨て、軽く背伸びをしながらそのまま話を戻したかと思えば、悪戯に彼女を見下げる。


「お前は黙ってろ。…男だと割り切れない?どう見たってありゃ男だ。
それともあれか、お前はあんなゴリラみたいな女見たことあるってか?」


すると弱気だった彼女が、一転攻勢と言わんばかりに口を開いた。


「『男は神聖な絶対の存在であった。が、女は男を惑わし堕落させる穢れに満ちた存在である。
女の体内から産まれることによって男は穢された。本来男を脅かすものとして存在は許されない。
だが、男はその存在を心から自らに恭順することを条件とし、寛大な心を以て女の存在をここに許す。
如何なる理由があろうとも主によって仰せ付ったことを拒むことも、逆うことも許されず、
もし忠誠心が欠けていると判断されれば罰せられる。罰する手段は自らの主に委ねられる。
女に情を抱いてはならず、これに伴い情を抱く可能性がある行為を禁じ、
女に対して名前、愛称をつける行為は禁じ、個体番号のみを呼称すること。』
…W2.C.Rの前文、第一条一項と二項。貴方が御存知かは定かではありませんが、私達は喋ることを確認次第、真っ先にこれを覚えさせられ、起床時と就寝時間前にこれを言うように無理強いされるのが日常です。」

「…本来名を与えられることを禁じられた存在である我々に対し名を授けると言い、足を怪我した低価格の子供に自ら応急措置を施し、男にしか食す権限のないものを誰一人漏れなく買い与えて下さりました。
あの収容所いた調教師や監視人や市場を行き交い、自らの所有物になった途端乱雑に扱うような男であれば、当然着いていく気になどなれません。しかし、あの方は其処らの男とは違うように思えるのです。」


スラスラと長文を噛まずに読み上げてもそのまま会話を続けた分身。つい数分前のことが嘘だったかのように言いたいことを口に出して伝えている。W2.C.R(World Woman Common Rule,世界女共通法)とは、世界共通で人種問わず女を奴隷として認める決まりごと。日本では世女通連盟と略される連盟が出した決まり。殆どの国は、このルールによって女を好き勝手扱うことができる。しかも男に同じ行為をすることはどの国も禁止されている。…受け入れ難い性差別、迫害の成れの果て。こんな決まりを地龍が聞いた暁には半ばテロ行為も辞さずに実行、最終的にはとてつもない巨大地震が、ありとあらゆる世界女共通法連盟加入国を襲うことになるだろう。

11ヶ月前 No.34

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★PSVita=HAw8Ong5UW

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10ヶ月前 No.35

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10ヶ月前 No.36

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10ヶ月前 No.37

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「なもん、覚えてたまるかよッ!」


地龍に怯みもせず、怒鳴りつけるアナスタシア。男によって付けられた商品番号など彼女が覚える訳もなく、収容所に来て早々売り出された彼女には、調教がしっかり行き届いてはいない。地龍の考えはどんぴしゃり、彼女は識別番号を覚えておらず。彼女の葛藤に無理もない、と十分納得してはいるものの地龍はそのまま彼女の名を告げた。


「お前はアスタナだ。それとも、ここは思い切ってジェーン・ドゥがいいか?」


「アナスタ!?」


自分の名前とよく似た名前に驚きを隠せずに聞き間違えるアナスタシアだが、地龍は彼女が驚くことなどには気にも留めずに、面倒くさそうに訂正し直す。


「アスタナだ。で、お前は中国系の名前にしたぞ、流星(ルウシン)。」


アナスタシアから足を怪我している少女へと視線を移せば、名を言う間だけ翻訳ツールを切り、本場の中国語で彼女に名前を与える。永い年月を過ごしていれば、外界語などは幾つも覚えられてしまうのだ。彼女は聞き慣れない中国語に戸惑うがまま、おぼつかないうちにそれを復唱する。実際の発音はルとリの中程の発音で、無論英語とは随分違ったイントネーションであるから、まともに中国語を聞いたことがない流星には辛いものがある。


「るうしん…いいにくい……。」


「本場の発音だからな。練習しておいたほうがいいぞ、流星。」


彼女の名前を呼ぶ度に、翻訳ツールのオンオフを切り替えて喋るのがやや手間が掛かるが、外見のみの判断とはいえ母国語を知らないのも後々支障が出ない様、せめて名前だけはきちっと中国人にも伝わる様教えておく。女達を呼びに行く手前、また地を探って中国や中国人、中国語の確認も行ったので困る事はないだろう。
流星に名前を教え終わったところで、ルナ姉妹が茶色くて無骨なデザインの大きなポットを一つずつ抱えて持ってきて、大量の湯が入っており重い筈のポッドを、せっせと運んで地龍の立っている近くのテーブルの上にそれを置けば、一息もつかずに全くポットの重さを感じさせないスマイルを見せ、地龍に報告する。尚、喧嘩で腕っ節には自信のあるルミナスは姉程苦労せず運搬できた様で、ポッドを置けば言われたことは完遂できたと言うことで報告もせずにそのまま元の座布団へと戻り、あの感触が気に入ったのかバフバフと何度も何度も砂座布団の上で繰り返し跳ねている。


「お待たせしました、ご主人様!」


「よし。全員カップ麺の蓋を半分開けておくんだ。…重かったろ、お前さんも座って麺の蓋を開けて待っとけ。湯は名前を教える手前俺が注ぐ。」

10ヶ月前 No.38

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9ヶ月前 No.39

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9ヶ月前 No.40

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8ヶ月前 No.41

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8ヶ月前 No.42

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7ヶ月前 No.43

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7ヶ月前 No.44

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廊下には夕食を食べ終わったのか、5人程20代後半から30前半の女が屯しているが、特に変わった様子はない。すると、ルナがとてとてと忙しくこちらに向かって来る。地龍とばったり会ったルナは少し驚いた様子だ。


「あ、地龍さん。短いご入浴でしたが、ゆるりと身体を伸ばされましたか?
もしどこか凝っておられましたら、マッサージを致しますが…」


地龍が入浴している間に、彼の召し物を畳もうと浴室に向かっている最中だったのだが、軍人の地龍は風呂場でリラックスせず、体を清潔に保つ行為しか行わない上、無駄は一切省くので烏よりも早い行水である。
すると、いつもと特に変わった所もなく謙虚な姿勢で話し掛けているルナなのだが、永年の勘という奴で、ルナが何か隠し事をしていることに気づく。彼女は何かに迷い、焦っている。地龍は自然に訊ねた。


「不安げだな、どうした?」


その言葉を耳にし、背筋が震え上がって目が右往左往するも、脳をフル回転させ直ぐに話をする。地龍はそれを見逃すことはなかったが、知らん顔で話を聞いていた。


「自由にしろ、というご命令を受けた場合、
如何なる行動を起こすことが相応しいのか錯誤しておりました」


初々しくそう話した彼女の言葉に嘘は無いことは地龍にも伝わると、彼は自分なりの考えを述べる事で、それに応えるのだった。


「自由っつうモンに正解はねえ。お前がしたいと思うことをしろ。
それが奴隷としての振る舞いなら俺は止めねえが、
さっき伝えた通り俺は普段、お前やあいつらに奴隷として接することは決してない。覚えとけ」


少しの間難しい顔をしていたが、ルナは地龍との短い対話の中に答えを見つけたようで、うんうんと頷けば深々と頭を下げ、彼に感謝の気持ちを口にして。


「この様な事に時間を掛けさせてしまい、申し訳ございませんでした。
これからは地龍さんの忠実な女として、誠意を胸に尽力致します。
早速なのですが、御夕飯は何時頃お持ちしましょう?」


謙っているのか、実際そう思っているのか分かり辛い、感謝の言葉を受け取った地龍は彼女の女というものが、自分が解釈しているそれと全く異なるものと思做しつつ、夕食を摂らないことを簡潔に伝え、部屋を見回ろうとしたところに彼女から声が掛かった。


「失礼しました。地龍さん、勝手ながらご一緒させていただくことは許されますか?」


突然自棄に遠慮がちに、いつにも増して緊張してそう申し出たルナ。ベリーダンスの装束と奴隷という立場さえなければ、控えめに媚びる仕草がより愛らしく見えただろう。遅かれ早かれこちらに恋愛感情を抱くようになっているため、既に彼女にとって自分は特別な関係になっているのではないか、と疑念を抱きつつも、共に行動した所でいざこざを起こすこともなく、何よりそれを彼女が望むことであれば、許さない訳がない。


「俺は構わねえが、無理はするなよ」


人間と身体能力は殆ど変わらず、10才ともなると本来あの砂漠地帯を、疲れを感じさせないで休まず歩くなど信じられないことであって、疲労していていないことはないだろうが、その判断を本人に委ねた以上きっぱりとものを言わずに気遣うだけの地龍。


「お心遣い痛み入ります。それでは、何処に向かいましょう」


会釈をすれば、嬉しそうにルナは地龍に尋ねた。

6ヶ月前 No.45

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5ヶ月前 No.46

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「どこでやるんだ?」


「見回りが終わったらだ。それまで、大人しくしてろ」


部屋を出て廊下を歩きながら、ルミナスは期待に胸を膨らませつつ、そんな事を口にするのだが、あっさりと返されて拗ねるものの、がっちり後について行く。今度はリビングを覗いてみると、室内には何人かが残っていて、その中に流星がぽつんと飴を眺めてぼーっと座っていた。女達の畏怖が篭った視線も気にせずに彼女の元に近づけば、呆けた顔でこちらを見つめるだけの流星のすぐ隣で胡座を掻く。


「よう、名前の発音には慣れたか?教えてやれねぇで悪かったな。ほれ」


胡座をした際の股下にできるスペースに、有無を言わさず彼女の身体を直接持ち上げて座らせると、途端に体を縮こませ顔全面に恐怖の色が張り付いた。後ろからでも背があるのでその表情を目視した地龍は、謝りながら頭を柔らかく撫でる。


「すまん、怖がらせちまったか。食べ方を教えるだけだからな、まずは肩の力を抜くんだ」


彼女の小さく繊細な指を巨大で骨太な自分の指を重ね、器用に流星の手を操って飴を落とさずに、袋を剥いて見せる。予告なしに身体を持ち上げられた時には、恐怖の色が顔にはっきり表に出ていた流星だが、頭を撫でられてから少し落ち着いたが、真ん丸の青い飴玉を摘んだまま、何もしない。そんな流星に地龍は笑い掛け、父親のように指示をする。


「お前のものだ。許可なんて待ってないで、好きな時に食っちまえ。
食うっても飴は舐めて徐々に溶かすもんだ、最初から噛み砕くんじゃねえぞ?」


流星は何も言わずに飴を口に含んで舌先で転がす。そうすれば、じんわりと優しい甘さが口の中ですぐに広がっていき、すぐ消えずに留まっている。その小さな一粒は、さっき食べた麺よりもずっと美味しいように思えた。それは顔色からも窺える。彼女は初めて口にした飴を、どの様に記憶しただろうと、つい愚鈍なことを思い詰めそうになるが、結局馬鹿丸出しで直接、単純な言葉を使って訊いたのだった。


「美味いか?」


うんと一回頷いただけだが、口元から溢れる笑みが語っていた。子供に飴を食べさせるだけで安堵することなど、滅多にない機会だ。ふと後ろを向くと、ルナやルミナスが羨ましそうに流星を見詰めている。いや、二人だけでない。他の成人した女性も、美味しそうに飴を舐める流星に視線を向けている。


「そりゃあ、よかった。お前さんらの分も、少ししたら買ってやるから辛抱してくれ。
より良いものを用意しよう。お前達はチョコレートの方が良いだろう?」


「申し訳ありません、地龍さん。
名前は存じ上げておりますが、口にしたことはないため解りかねます」

5ヶ月前 No.47

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「そうか。まぁ、そっちの方が気にいるだろうがな」


「食いものより決闘だ、決闘!」


本体だったなら絶対にチョコレートを取ったことだろうが、中身は丸々変わりないので、そのうち彼女もそうなるだろう。…この世界のチョコレートが自分の知っている味であれば、だが。


「あいつ以上の脳筋とは…全く、恐れ入るもんだ」


「どうしたの、ご主人様」


決闘というものが何であるか分からず、流星は何やら感慨深そうに小言を言っている地龍へ、見上げながら訊く。この世界での奴隷と主人の知識量の差は天と地だ。癖が抜けないようで、地龍に誤った呼称をしたものの、まだそれに気づけてはいない。言わずもがなそう呼ばれた地龍は気づいており、怒りもせず彼女の額を中指で軽く触れる程度に弾いた。俗にいうデコピンというやつだ。痛みは全くなかったため、何をされたのか分からず、読んで字の如く小首を傾げている。


「その呼び方は止めろと言った。地龍さんと呼べ、次そう呼んだら痛くする、いいな。
それと歯ブラシはねえから、舐め終わったらしっかりうがいして寝ろ。
晩安流星、做一个好梦。今夜はよく休め」


彼女は何を言っているか理解できないだろうが、おやすみ流星、良い夢を。と中国語で告げて、彼女の体を少し持ち上げて足から降ろし、腰を上げると瞬く間に二人を連れてリビングを立ち去った。流星は目を丸くしておやすみなさいませと頭を下げ、一礼した後にはぼーっとして、暫く目の前の光景を意味なく見つめていた。


「大半が風呂場か。こりゃあ、覗きたくても覗けねえな」


「決闘!けーっとうっ!」


木目調の床と壁、黄色の灯りがより引き立てるムーディな装いの廊下を歩きながら、そんな冗談を口にするのだが、ルナも何も言ってはくれず、しかも心内でそれを本音だと誤認識してしまう。何を考えているのか、今話したことを聞いているのかも分からないが、血気盛んに決闘を所望しているだけのルミナスに、態々相手をする必要はないだろうと地龍も何一つ口にしないまま、三人の間だけ静寂が訪れている。
地龍が丁度寝室の前を通ったその時にドアが勢い良く開いて、中からアナスタシアが出て来た。地龍は歩みを一瞬止めたものの直ぐに足を進め、出会いざま一瞬動揺したが、離れていく地龍の背中をムッと睨みつけただけ。


「おい、アスタナ。少しは加減しやがれ、人ん家のもん壊す気か?」


アナスタシアは何も言わず応えないまま、ドアが音を立てる程荒く閉めて、風呂場に向かっていく。あの程度で壊れるものなのかと思ったルミナスは、珍しく不安が募った。


「家の中で本当に決闘していいのか?」


「お前が暴れなきゃ済むだろうが」

5ヶ月前 No.48

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真っ当な言い分を返してから廊下を歩き出すと、大浴場に行く予定だったアナスタシアが三人の元へ近寄り、地龍の目の前でぴたりと静止した。地龍とルミナスは一切反応しなかったのだが、ルナは首を傾げる。地龍の足元で話し掛けた時と差して変わりない形相、暗雲のように陰湿な視線を向けてくる。嵐の前の静けさなのだろうか。普通の人間なら近寄り難い不快なものだ。まともな返事が返ってこないことを視野に入れ、簡潔に尋ねた。


「 なんか用か」


こんな表情をレヴァナスも偶にする、三十四年に一回くらいの割合で。殺気が籠っているものは、あの煩い双子モドキさえいれば、三日四日のうちに目にかかるだろう。一日中付き合うなら、毎日見るのではないか。と、奇跡の領域に入る程二人にそっくりな別人の顔を見て、そんな感触を憶え、地龍はレヴァナスの行動パターンを目安に判断を下している。


「お前ら、決闘決闘ってなに騒いでるんだ」


幸い、まともな返事は返ってきたが、その相手は地龍ではなく、ルミナスにだった。数える秒もない内に視線はルミナスの方に移っている。


「決闘は決闘だ」


ルミナスは意味も必要なく、まるで彼女に見せびらかすように、大きな胸を大きく張って喋る。小学校低学年がするような会話のやり取りだが、姉と産まれた時期に変わりなければ、この世界のレヴァナスはまだ10才なので、無理もないところ。ちょっとばかし背の高いアナスタシアもいると、年の差がちょっと離れた姉妹のよう。本当の姉よりも姉妹っぽい。


「だから、決闘って何をするんだ」


「そりゃー、殴る蹴るよ」


"どの様な決闘の方法なのか"ではなく、"決闘がどの様なものなのか"を訊いていると解釈したルミナスは、シンプルに説明してやった。そう聞いてアナスタシアは、くじ引きで外れくじを引いたような残念顔をして言う。


「なんだ、ホントにただの喧嘩だったのか」


「あぁ?お前、決闘がどんなモンか知らないで言ってたのか」


何とも意外な話だ。地龍も少しは驚いたが、今まで彼女は決闘をどのようなものと考えていたのだろうか?好奇心からの疑問が生まれた。


「さっき、自分で殴り合いと言ってただろう。なにすると思ってた」


「あれは、雰囲気がそんな感じだったから言っただけだ。
そいつもいるし、あたしらに隠れて美味いもんでも食うのかと思ったが、ハズレた」


質問に答えても、アナスタシアはルミナスに視線を合わせて話せば、ルナを指差した。ルナは自分がいるだけでそうなるのか理由が分からず、どういうことかとアナスタシアに聞き返す。男だけが食することを許される、至って平凡な味付けの食事がとても気に入ったようだ。と、地龍は解釈した。が、こちらもルナと同様の疑問が生じたので答えるのを待つ。なお、ルミナスは喧嘩したさに決闘の素晴らしさを、偉人を讃えるように一応聞き耳は立てているが、どうでもいい話なので構わない地龍含め、一人として興味のある聞き手がいない中、望んでもいない饒舌で語り始める。

4ヶ月前 No.49

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=h6EwOXHZXP

「俺がお前に接するのと、こいつらに接するのでは何が違うんだ?」

「決闘というのはだな、果し合いとも言われ恨みつらみを相手に晴らす際に、
決められたルールに沿って戦う、命を賭けたギャンブルだ。
私は果し合いと混同してるから…」


「他の奴らより扱いがいいじゃないか。
珍しい肉付きで、顔もそれなりに整ってて、今まで見たことない髪と目の色で、
調教も行き届いてる感じもするし、黄色い髪のやつはかなり高値のガキなんだろ?
そっちの分け分かんねぇ喧嘩女はどうだか知らないけどな。
男って金が掛かるものは大切に扱うらしいし、おまえもそうに決まってる」

「だからこそ、一対一での決闘は堪らない!奴隷制度の壁もない!
決闘目的に今まで何人の収容所の屈強と云われた調教師共を襲ったことだろう。
しかし、どいつもこいつも根性なしばかりで、手を出せば、取り抑えられてリンチで終わり。
これの何が…」


彼への不服と一緒に、アナスタシアはそうこぼす。的を射てはいるものの、的の中央からは若干外れているのが惜しいところ。地龍は、他の女は分身達と変わりなく接していると思っていたのだが、思い入れのある顔だからと、自分の気付かぬうちに二人を贔屓してしまっている面があるのだろうか。それともアナスタシアの思い込みか、と地龍は捉える。その話を聞いてルナも、自分達姉妹と他の奴隷達との処遇の違いが分からない。
二人の会話に被せるように、いつまでも決闘について熱く語るルミナスなど、この場にいないように、三人は話を進めようとする。


「…聞いてる?」


やっと話を聞いていないことに勘づいたルミナスは、話を一時中断するとあどけなく首を傾げて、三人に訊く。すると、すぐに返答がわっと帰って来た。

「あぁ。一応、聞いている」「ルミナス、しーっ」
「さっきから何訳分かんないこと言ってんだ、煩くて聞き取りづらい、黙っとけお前は」


言った通り話を聞いている地龍は、何にも思っていないため表情の変化はない。話に割り込んで来たルミナスに、ルナは人差し指立てたジェスチャーで、静かにするよう要求。アナスタシアは図々しい彼女に、口は悪いが、ルナと変わりない要求をする。


「そうかそうか!なぁ、ご主人様。そんな話なんかしてないで、決闘しに行こ」


「地龍と呼べ。さもないと、決闘を受けてやんねぇぞ。いいのか」


ついご主人様呼ばわりをしたルミナスに、怒る表情もなくただ咎めれば、話はこの辺にして決闘を行う部屋へ向かおうとルナとルミナスに指示を出す。


「そんな話より、早く決闘にケリを着けようじゃねえか。続きは明日でもいいだろ。行くぞ」


「あたしも、その決闘とかいうのを見届けてやるよ」

3ヶ月前 No.50

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★PSVita=HAw8Ong5UW

決闘を見たがる少女。親がいたら、発言してすぐ叱られたろう。国ごとの文化で、左右されることがあったとしても、世間体を気にしないと生きていけないように成り立っている人間から見て、躾のなっていない世間知らずな子供として映れば、平和ボケにも思えてくるのが、日課のように異世界を渡り歩いた先々で救世の手伝いをしている中、幻想のような現実と過酷な現実を双方見据えてきた、地龍の氷柱のような感性だ。妻に似ていたとしても、アナスタシアは妻とは何ら関係ない酷似しているだけの少女なだけ。だが、それでも少女には変わりない。彼女の言動は、性別が天獄を分ける世界で、一体どう捉えられるのだろうか。



「やっぱり、決闘に観客(やじうま)はつきものだな!もっと呼んだら、それっぽくなるか?」


アナスタシア以上に無礼で一度喧嘩の話を持ち出すだけで、目を輝かせるルミナスについては、レヴァナスの性格そのままを引き継ぐため、これが正常である。


「ナイスアイデアだ、頓珍女(とんちんめ)。大勢の女の前で、赤っ恥掻かせてやろうぜ」


こちらが喋っていない間に、子供だからかはたまた意図的か、好き勝手に話を進めていく二人。そろそろ声を出さなければ。本人が聞くか知ったことではないが、真っ当な性格のルナがいることで、いざというとき証言はしてくれるだろう。


「…あいつらが見ようが見まいが、俺にはどうでもいい話だ。ただ、無理矢理引っ張ってくんじゃねぇぞ。
特にアスタナ。立会人気取りはいいが、こいつがどうなろうとも、お前がワーワー喚くのは許さねえ」


普段と変わらず、冷静で暫しざらついた粗砂のような言葉遣いのまま喋る地龍だが、アナスタシアの発言でちょっとばかし驚いたことがある。それは、彼女の発言を、言語翻訳ツールが頓珍女と訳したことだ。通常通り稼働しているなら、まず間違いなく頓珍漢と訳しただろう。このツールは高度な知能により、訳される言語を発した際に話し手の心情を読み取り、かつ翻訳を聞く聞き手が誤解を受けないよう、聞き手に合わせた言葉を選択しているのは地龍も知っていたが、この世界に合わせた翻訳まで行うとは。…会話の内容を記憶、解釈までしているのだろうか。
OKが貰えたことに、ルミナスはうぇーいなどと、女の子らしからぬ歓声をあげてガッツポーズしている一方、名指しで釘を刺されたアナスタシアは、舌打ちしながらそっぽを向く。


「ち、地龍さん。妹を乱暴されるのは、困ります……」


そんな地龍の思考を読み取れる訳もなく、一層不安で余裕のない声で名前を呼んだルナ。その不安の根底にあるものは、先程の地龍の発言であり、地龍自身もこうなるだろうとは想定していたので、驚きもしない。彼もまた平常通りであった。

2ヶ月前 No.51

花月 @runa43100☆ZBkQks5N3Gm1 ★iPhone=CGZ2sAXCwm

「やれやれ。気持ちが分からねえ訳じゃないが、心配性な奴だな、"お前は"。
おい、見物人を集めるならさっさと集めてこい。明日は早えんだよ。
トロトロしてんなら、俺らぁもう寝んぞ?」


形だけの欠伸をしつつ、含みのある言い方をしても、ルナにはそれが何を意味しているのかを読み取ることは、当然できない。エスパーといった超能力や、脳波を読み取るような人間離れした技の持ち主であれば、別の話だが。周りがそうなので、それに合わせている。
ただ、それでもルナマリアなので、侮ってはいけない。歪な教育を受けているにも関わらず、見た目相応の若さでこの精神(メンタル)とあれば、一人で寝かせつけるのも一苦労だろう。


「ほいさほいさ!今のうちに、首を洗っとけよ〜!
よし、野次馬を捕らえに行くぞ。着いてこいアナスなんとか」


見た目相応の子供じみた振る舞いで、地龍を煽っているつもりだが、全くの無反応。彼女はそうと思っておらず、野次馬と称した他の女達を、半ば強制的に連れて行こうと目論んでいる。


「たった四文字も覚えられないのか、この馬鹿女!私はアスタナだ!二度と言い間違えるな。いいな!?」


精神的に興奮していたせいか、また本名とよく似た名前をつけられたからか、或いは故意か。ルミナスは名前を言い間違えた。すると、本名を晒したくないアナスタシアが焦るような素ぶりを一瞬見せてから、ルミナスに怒り散らして、釘を打つように圧を掛ける。


「あー、うるさい。分かった分かったアスタナシア」


今のは間違いなく故意でやった。アナスタシアは、殴り掛かりたくても実力差を知っているため、そのようなことはできずに、ヒステリーを起こして、これでもかと言う程声を張り上げている。ルミナスの挑発には引っ掛からなかったが、あまりにも耳障りだったので、機嫌は損ねた。


「良かったな、ルナ。今日決闘するつもりはない、とさ。明日は早えから、今日はさっさと寝ろよ」


一向に呼んでくる方に進まないので、地龍は手短に済むよう、先程進んでいた方とは逆に歩き出した。その言葉でルナは落ち着いたようで、ほっと一息つく。


「あっ、待てい!すぐ呼んでくるから、呼んでくるから、中止はするな!」


その言葉にルナの表情が固まった。どうしても決闘がしたいルミナスは、必死に地龍の腕を掴んで止めようとするが、地龍は止まらず、そのままルミナスを引き摺り、歩調を乱さずに歩みを進める。


「しがみ付く暇があんなら、さっさとやれ。俺が外に出るまでに呼んで来なけりゃ、今日はナシだ」


それを聞いてぱっと手を離し、アナスタシアを置いてその場から離れ、騒がしい足音を立てて、近くの部屋全てを見て回るつもりで、片っ端から訪ねて行く。

7日前 No.52
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