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新訳・龍堂フロンの日常

 ( 小説投稿城 )
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龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型T号機 @huron10 ★Tablet=guJhweCpsF

はて、充分に寝た感触が無いまま早く起きてしまうの何故だろうか。これ
なんて思いながらベッドから体を起こし、欠伸をひとつして、時計を見る。
時刻は午前5時である。
うーん、また寝るには微妙だな。
そう思い、どうせならそのまま起きていよう、と寝間着を脱いで学校の制服を着る。
親は二人とも出張して今はいない。
小学5年生の妹と弟を起こし、朝飯(といってもトーストと目玉焼きとかソーセージくらいである)を作る。
「兄さん、早いよ。まだ5時だぜ?」
「うるせぇ隆次。俺だってこの時間帯に起きちまったから仕方ねぇ。」
「へいへい」
朝飯を食ってさっさと支度を済ませ、俺は学校へ出発する。
しばらく歩くとコンビニが見える。
その前に二人の人影…、
そう、長峰と長海の二人だ。
いつものように待ち合わせているのだ。
ん?いつものように?

って、よく考えたら色々といつものことじゃねぇか!



どうも、フロンです。
実は色々、自分の体験談に基づいてこの作品を作っています。
基本的にネタ系ですが、ストーリーもあります。
その時は題名が多少変わるので、ご注意ください。
では、どうぞ!

2年前 No.0
メモ2016/03/01 14:04 : 龍崎高雄@ツッコミ炸裂ボーイ☆9mB61c9GWuE @huron10★Tablet-Z137Fy4ffw

日常〜


長編シリアスストーリー


・新訳・龍堂フロンの困惑(完)

・新訳・龍堂フロンの失踪(完)

・新訳・龍堂フロンの選択(完)

・新訳・龍堂フロンの未来改訂(始)

・新訳・龍堂フロンの過去崩壊

・新訳・龍堂フロンの驚愕

・新訳・龍堂フロンの不解

・新訳・龍堂フロンの安息

・新訳・龍堂フロンの悲愴

・新訳・龍堂フロンの嘆き

・新訳・龍堂フロンの烈震

・新訳・龍堂フロンの激突

・新訳・龍堂フロンの救済

・新訳・龍堂フロンの忘却

・新訳・龍堂フロンの哀悼

・新訳・龍堂フロンの疾走

・新訳・龍堂フロンの追想

・新訳・龍堂フロンの消失

・新訳・龍堂フロンの並走

・新訳・龍堂フロンの迷走

・新訳・龍堂フロンの激昂

・新訳・龍堂フロンの狂奏曲

・新訳・龍堂フロンの崩壊

・新訳・龍堂フロンの分裂

・新訳・龍堂フロンの並列

・新訳・龍堂フロンの休眠

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龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型U号機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第五十九話  新訳・龍堂フロンの選択 玖

「はあ…。」
溜め息をつき、白い息が背後へ流れると同時に、俺は首に巻いている黒いマフラーに目の辺りまで顔を埋めた。
今日は文学部はなしらしい。
だから俺はこうして真っ直ぐ家に帰っている。
孤独感。
そんな生易しいものではなかった。
その時だった。
「ジョーンくん!」
誰かが俺の肩を叩いた。
中村だった。
「なんだ、中村か。」
「最近どうしたのよ?なんかこの間、長峰さんとか、なんとか…」
「…錯乱してたのさ。」
「じゃあ最近文学部に出入りしているのは?」
「本が読みたいからさ」
「へぇ…」
怪しそうな目を俺に向ける。
「なんだよ。」
「ほんとにそうなの?考えられないわよ。あなたが本読んだり、小説書いたりするのを想像出来ないんだけど」
「あのな…俺はこう見えて、意外と文学が好きなんだぞ?」
実際、好きかと言われれば、本当はかなり微妙だ。
「ふーん」
色々言いたいが抑えよう。

この日、俺は何故か中村を家まで送って帰っていった。

1年前 No.59

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十話  新訳・龍堂フロンの選択 拾

12月18日。
朝。
学校へのいつもの道を歩く。
駅に着き、駅に着き、電車に乗り込み、席が埋まっているから立つ。
すると、誰かが俺の肩を叩いた。
振り向くと、中村だった。
「なんだよ。」
小声で喋りかける。
「たまたま同じ車両にいるから、ついつい来たの。」
「そうか、だがあいにく、今俺にはなんの題材もない。飼い猫の話ぐらいしかねぇぞ?」
「いいわよそれでも。私は本を忘れちゃったの。」
嘘だ。
後ろに組んだ手には、恐らく本を持っている。
鈍い俺は、その時はその意味を理解できなかった。
その時は、な。

_____俺と中村は、飼い猫の話をしながら、気付けば教室に居た。
「でよ、最近多摩がよく鳴くんだ。餌はたくさん___時間だな。」
チャイムが鳴った。
恐らく10秒あとには江崎が来る。
「おう!おはよう!じゃ始めようか!」
いきなり戸を開けたと思えば、次の瞬間には教壇に立っていた。


授業なんてのは頭に入らない。
面倒だ。
「ジョンくん、ちゃんと受けてるの?」
「全然。」
中村が長峰の代役みたいじゃねぇか。
長峰、お前はどこに…
「ジョンくん、最近様子がおかしいわよ?」
「そうか?」
「いつも伊勢崎くんや私、甲田くんに話し掛けてるじゃない?」
「そうだったな」
全然知らん。
「いつもいつも、快活なまでに話し掛けてたのに、どうしたの?」
「…わからん。少なくとも、常々からテンションが下がりっぱなしなのさ。」
言えねぇ。
言ったらそいつを巻き込んじまう。
それだけはしたくない。
「…そう…」
淋しい顔をし、静かに呟いた彼女は、次の授業の準備を始めた。

1年前 No.60

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十一話  新訳・龍堂フロンの選択 拾壹

放課後。
俺は流れるように文学部室へ行き、ドアの前に立つ。
コンコン、と右手中指でドアをノックし、
「フロンです。」
と言う。
中から、
「は、はい、どうぞ…」
と、少し緊張した声が返ってくる。
俺は遠慮なくドアノブを回し、部室に入る。
五条は机の前に座っている。
何か紙とにらめっこしている。
「それ、なんだ?」
と言って、つまみ上げると、
「部室でのクリスマスパーティー計画?」
五条の顔が赤い。
「そ、そうなの…」
「要は、この部室でクリスマスパーティーを開きたいんだな?」
「…」
首を縦に振る。
「どう、かな?」
駿巡を巡らせ、一瞬だけ考えた俺はこう言った。
「まあ、いいんじゃないかな?」
「…!」
「ただ問題もある」
「?」
「飲食物を持ち込むんだろ?」
「うん」
「学校が許可せん。」
「…!」
「…まあ、俺がなんとか掛け合ってみるよ。」
「…出来るの…?」
「…ああ。」
自信ない、とは言えんな。
「お互いに合点出来る主張が出来りゃ勝ちだ。」
少々、ドヤ顔をして見せる。
彼女はそれで勇気付けられたようだ。
「明日、掛け合ってくるよ。」
俺はそう言って、席についた。

1年前 No.61

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十二話  新訳・龍堂フロンの選択 拾貳

今日の部活の時間はクリスマスパーティー計画に貢いだ。


星が出ている寒空の下、俺と五条の二人は学校から帰る途中だった。
「寒いね…」
「ああ…。」
彼女は制服の上にカーディガンとコートを羽織っている。
恐らく寒がりなのだろう。
俺も同じように防寒しているが、俺が寒いと感じるのは、孤独感から来るものではないだろうか、と薄々ながら感じている。
『鍵』は見つからない。
キーワードは12155だけ。
俺にはわからねぇよ。
なんで暗号なんだよ、周防。
「どうしたの?」
「…ああ、考え事だ。」
俺は最近、物思いに耽る事が多い。
しかし、その分他からは気味が悪いだろう。
「…今夜も、来る?」
「…いいぜ。」
そう言って彼女の誘いを受けた。

五条の家に、中村がいた。
「あらジョンくん。…誘われたみたいね。」
少し皮肉ある口調だったが、取り敢えず無視だ。
「じゃ、ジョンくんは何が食べたい?」
「なんでもいい。」
「五条さんは?」
「私も、なんでもいい。」

一時間後、出されたのはちゃんこ鍋であった。
軍鶏はうまい。
「あ、それ食べようと思ったのに」
「早いもん勝ちだ。」
「じゃ、これを!」
「ああ!ちょ、これは!」
「早いもん勝ち!」
「くぅ、やりやがったな!」
「ま、まあまあ、二人とも…」
「あ、ご飯粒付いてる」
「え?どこどこ?」
「そこだぁ!」
「ああ!俺の肉!」
「フフフ…これが戦場よ!」
「2連敗かよ…」
「フフフ…アハハハ!」
「アハハハ!」
「ハハハハハハハハ!」
「うるさい」
怒られちゃったよ。
でも、この日は良かったな。
そう思えたのは、この世界に於いては、この日が最初で最後だったであろうか。

1年前 No.62

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十三話  新訳・龍堂フロンの選択 拾參

12月19日。

『鍵』について、12155というワードについて考えるうち、俺は四時限目の授業中寝てしまった。

いつしか四時限目の授業は終わり、給食が運ばれてくる頃となった。

伊勢崎が俺の肩を叩いた。
「ジョン」
「…んだよ」
うつ伏せになって寝ていた俺は、強引に起こされて機嫌を悪くした。
「お前最近様子がおかしいぞ?何があった?」
「全然…」
「いや、なんかあったんだろ?」
「なんも…」
「いいや、絶対になにかあった。」
「だからなんもねぇって。」
「嘘はいいから、なんかあったんだろ?言えよ。」
「だから…!なんもねぇってぇの…!」
「…なにキレてんだお前。どうかしてるぞ?長峰がどうだの、このあいだ喚いたじゃねぇか。」
「伊勢崎くん、やめて。」
中村が割って入る
「中村、お前もおかしいと思わねぇか?こいつはお前がその席に座った途端、血相変えて食い掛かっていったじゃねぇか。」
「あのな伊勢崎、俺は___」
「いい加減言えよ、お前に何があったかをよ!」
「だから!なんもねぇってつってんだろうが!」
「やめて二人とも!」
「お前な、いい加減にしやがれよ?なに隠してんのか、さっさと言えよ。」
「お前こそいい加減にしやがれ!俺はなんもねぇっつってんだよ!」
「伊勢崎くん、いい加減になさい!」
中村も俺を庇護する。
「…まあいい、いつかお前の隠し事を暴いてやるからな?」
そう言って、伊勢崎は自分の席へ戻った。


今日の給食は、うどんっぽい麺料理だった。

給食を食しながら、俺は長峰に話し掛ける。
「さっきはスマン」
中村は、少し驚いたような顔を見せて食っている麺を飲み込み、俺に返答する。
「…いいのよ。」
彼女はそう言って牛乳を飲み、呼吸を整える。
「私の前の席で喧嘩が起こったら、私も被害を受けるもの。」
「だよなぁ。スマン。」
そう言って、俺は一気に麺を啜り、噛んで飲み込み、外を見る。
「それに…」
中村が何かを言おうと呟いた。
「ん?」
なにか行き詰まったような顔をした中村。
「…何でもないわ!」
そう言って、彼女は少し微笑んで残りを一気に食べた。
鈍感な俺は、それでも気がつかなかった。

1年前 No.63

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十三話  新訳・龍堂フロンの選択 拾肆

放課後。
俺は部室で計画書を受け取り、そ職員室へ向かった。

「田所先生はいらっしゃいますか?」
「あ、私です。」
「文学部のことなんですが」
「新入り?」
「ああはい、まだ仮入部の身ですが。これに少し、目を通していただけませんか?」
計画書を手渡す。
田所美依先生はそれのページをめくりながらスラーっと目を通しているようだ。
「他の部活動には、一切の迷惑をかけないよう、尽力します、なのでどうかおね_____」
「いいわよ。」
「!?…今なんと…!?今なんと仰いました!?」
「だから、いいわよ、って」
「ありがとうございます…!」
俺を腰を曲げて深々とお辞儀した。
「いや、そんな、頭上げて上げて!…部長さん…いえ、五条さん、いつもいつも1人で…彼女のために、盛大にやってあげて!」
この先生、きっと大物になる。
俺はそう思った。

1年前 No.64

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十五話  新訳・龍堂フロンの選択 拾伍

部室に戻るとき、俺は思った。

五条を少し驚かせよう。


部室に悲壮な雰囲気を漂わせ、申し訳ない、という仕草で入る俺。

五条は早速それを察し、残念そうな表情を浮かべる。
「五条…」
少し刑事ドラマの刑事のような口調で話し掛ける。
「ダメだった…?」
「……。」
「……。」
「おめでとー!クリスマスパーティーは許可が出たぞ!」
「!?」
「本当はクラッカーを持ってきたいとこだったけど_______」
やりすぎた…
五条泣いてる…!
「あ、ごめん、ちょ、許して!」
「うえーーーーーーーん!」
大号泣。
そんなに嬉しいのか。


「というわけで、できるんだよ…ね?」
「ああ。田所先生に感謝だ。」
「あ、ありがとね。私がこんな弱気なせいで…」
「別にいいさ。どうせ俺は______」
あれ?
「?」
「俺は…」
「どうしたの?」
俺は、なんでここにいるんだっけ?

1年前 No.65

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十六話  新訳・龍堂フロンの選択 拾陸

俺は、なんでここにいるんだっけ?
忘れている。
俺は何かを忘れてしまっている。
なんだ…?この違和感…。

俺はその胸に残る違和感を残し、1人家路に就いた。

晩飯を食い、風呂に入り、ベッドに横たわる。
思いの外、早く眠気が俺を襲う。
すると、いきなり俺の部屋のPCが起動した。

「なんだ?」
俺は暗闇の中、そう呟いた。
すると…
Windows8.1の画面らしからぬ、まるでコマンド式PCの画面が映し出された。

なんだ…?
俺はそう疑問を胸に抱き、机に座る。

すると、いきなり画面に文字が出た。
キーボードは打っていない。

「綾瀬駅へ行け」
と、無機質で、なんの感情も感じさせない文字。
それでも、俺はこの文字を信じ、外出の支度をし、家を出た。

1年前 No.66

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十七話  新訳・龍堂フロンの選択 拾漆

深夜11時18分。
俺はやっと綾瀬駅へ着いた。
ホームにいれば良いのか?
なにもわからない。
やっと思い出したのは、俺はいわゆる異世界人であること。
そして、俺はいるべき世界へ帰る。
その意思を持っていることだった。

「間もなく、11時19分 我孫子行き 我孫子行きの列車が参ります。黄色い線の内側に お下がりください。」

アナウンスが流れる。
適当にホームを見回した俺は、20メートル程度離れたところに、一人の少女を見つけた。
こんな時間に、なにを…。
いや、よく考えれば俺もか。
こんな時間に、普通に起きている俺もおかしいな。
心中でほくそ笑んだ俺は、しばらく彼女を見つめる。
さらりとした長い髪、身長、肩幅、体格とかが、長峰によく似ている。
そう思いながら、駅の天井を見る。
白い息が俺の口から天井へ向かって昇っていく。
「はあ…」
溜め息を吐く。
何で俺はこんな目に…。

列車の車輪駆動音特有の音が近づいてくるのを感じた俺は、その方へ顔を向ける。
彼女もその方に立っている。
他に人影はない。
電車のライトがこちらを照らした。
その時だった。
彼女は、悲壮なオーラを漂わせ、線路の方へ歩みを進めようとしたのが見えた俺は、思わず走り出していた。

自殺する気だ…!

俺は全力疾走する。
間に合うか…?間に合え!頼む!
俺は自分の足と思考に神経を集中する。
彼女はもう黄線の外側に立っている。
間に合え!頼む、間に合え!

彼女がホームの縁に足を掛け、列車のクラクションの中、最後の一歩を踏み出そうとした瞬間、俺は彼女の右腕を掴み、ホームに引っ張り戻す。
引っ張った拍子に倒れ込んだ彼女を俺は支え、俺は怒り気味な口調で言う。
「何死のうとしてんだ…!てめぇが死ぬことで、誰が悲しむか、考えたことあるのか!?死ぬんじゃねぇ、生きろ!」
そう言って、彼女の顔を見た俺は面食らった。

長峰桜その人であったからだ

1年前 No.67

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第六十八話  新訳・龍堂フロンの選択 拾捌

俺は驚きのあまり、目を見開き彼女の顔を見つめていた。
「長峰…!」
言ってから気づいた。
この長峰は俺を知らないはずだったが、
「ジョンくん…!」
彼女はそう言って、俺に抱きつく。
「俺を、知ってるのか?」
「当たり前じゃない…!私とジョンくん、小学校以来じゃない…!」
そうか、つまりこの世界にいたとされる俺は、長峰と同じ学校にいたが、中学からは別々の学校にいる、ということなのだろう。

俺は何故か、長峰の家にいた。
北千住の方にあるようだ。
俺と長峰はこたつに向かい合って座る。
お茶が暖かい。
「聞こうか、お前が自殺しようとした理由を。」
長峰が俯きながら言う。
「辛かった…」
「…何が」
「虐めを、受けてたの…」
「何でだ?」
「…学級委員とか、生徒会書記とかやってたの。」
「…」
「それで、妬まれて…」
「誰かに相談は?」
長峰が首を横に振る。
「できなかった…だって___」
「言わなくて良い。大体わかった。」
できなかったのは、恐らくその役職の問題だろう。
そしてその虐めというのも、恐らくクラスぐるみ。
「今後、何かあったら、俺に相談してくれ。力になる。どうせなら、そいつら全員殴り飛ばしてやるから。」
「うん…」
泣き始めた長峰。
辛かったんだな、悲しかったんだな、そう思わずにはいられない涙であった。

1年前 No.68

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第六十九話 新訳・龍堂フロンの選択 拾玖

話が一段落し、なんとも言えない静寂が訪れる。
俺は口を開く。
「長峰、聞いてくれ。」
「なに?」
俺は息を深く吸い、意を決して言った。
「…俺は異世界人だ。」
一瞬、長峰の顔が強張る。
「なに…言ってんの?」
「そのままの意味だ。信じられないと思うけどな。」
「…話を聞かせて」
「…俺は、こことは別の世界から来た。」
「…」
「とは言っても、意図的に来た訳じゃない。」
「…」
「知らないうちに誰かに飛ばされてきた、というのが正しいらしい。」
「…」
「俺は元の世界に帰るために色々やっている、というわけだ。」
「…」
「俺が元いた世界では、お前は俺の学校にいて、長海、伊勢崎、草香、大崎、そして中村舞と周防早苗という女子二人がいる」
「…」
「周防は、いわゆる超能力者で、今まで俺を何度か助けてくれた。」
実際、俺は二度ほど助けられているが、それはなんと言うか、ほぼ俺が首を突っ込んだせいでもあるが。
「大体わかったわ」
長峰が突然口を開いた。
「い、いいのか?」
「信じるわ。」
彼女のその一言に、俺は救われた気がしたのであった。

1年前 No.69

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第七十話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾

12月21日。
日曜日だ。
あと5日でクリスマス。
世間は大にぎわいだが、俺の心境はそういうドンチャン騒ぎとは、ほど遠いものだった。

長峰を見つけた。
だが、「鍵」はわからない。
「鍵」?
やっぱり暗号のようなものなのか?
あのページを見ても、答えは出ない。
そばの携帯を見る。
何も起こらない。
「はあ…」
俺は何となく、本当に何となく、外に出た。
いつの間にか日が落ち、外は暗い。
街はもうクリスマス一色。
家々はクリスマスイルミネーションや、装飾が施されている。
俺の気分とは裏腹の光景だ。
適当に歩いて、俺は家に戻った。

1年前 No.70

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第七十一話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾壹

12月22日。
教室。
憂鬱な面持ちの俺は、学校の教室に入っても変わらない。
「よ、ジョン。」
「おお、伊勢崎か。」
気だるい俺は、だらしのない声で応対した。
「眠そうだなー」
「ああ。」
「この間の授業、どうだった?面倒だったよな」
「ああ。」
「そういえば宿題は?」
「ああ。」
「お前聞いてないだろ?」
「ああ。」
「おっはよ〜ジョンくん!」
中村だ。
「なんだよ」
めんどくさそうに顔をあげる俺。
「調子はどう?」
「最悪だ」
「即答ね」
「当たり前だ。」
「おいジョン、お前俺の質問には____」
「生憎だが、俺にとってはめんどくさい」
「…お前、怖い」
こんな風な会話が、俺の日常となっていた。

1年前 No.71

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第七十二話 新訳・龍堂フロンの選択  貮拾貮

放課後、俺は非常に能動的な動きで、文学部室にいた。
「失礼しま〜す」
「あ、ジョンさん」
お前もそう呼ぶのか、五条。
「そういえば、クリスマスパーティーの案、まとまったか?」
「うん、大体。」
「大体ということは、まだ終わってないのか?」
「細かい部分がまだ…」
「手伝おうか?」
「ありがとう。」
俺は五条からクリスマスパーティー計画書を半分貰い、その細かい部分の設定を手伝った。
そのなかで、ひとつ気が付いたことがあった。
「友達とか、呼ばないのか?」
「う、うん…私、友達いないから…」
「なるほど」
一瞬の沈黙。
そりゃそうだ。
友達がいないということを知らないうちに聞き出していたのだから。
「…俺の友人を連れてこようか?」
「…いいの!?」
「ああ、もちろん!」
伊勢崎や中村は喜ぶだろう。
「んじゃ、明日紹介しておくよ。」
「じゃ、じゃあ、今日これから私の家で、この料理とか、作って試食する?」
「それ、いいね。行こう行こう!」
そして、早々に文学部室から出て五条の家に行った。

1年前 No.72

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第七十三話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾參

学校を出ると、既に日が傾いていた。
夕日は綺麗で、壮大なまでに眩い。
「きれいだな。」
「うん」
俺はそう言って、五条と歩き出した。

いつの間にか、俺と五条は五条宅にいた。
キッチンでは五条がクリスマスパーティーの料理を作り、それを俺が補佐している。

「できた…!」
「やっとだな。」
「うん」
「じゃあ、早速。」
「そーだね」
「いただきます!」
「いただきます。」
最初はターキー。
…焼き具合がイマイチだな。
でも中身はうまい。

フライドポテト!
…ふにゃふにゃじゃん。

チキンカツ!
…油っぽい

みたいな感じで、試作品は微妙だった。
だがそれなりに改良点も見つかったからいい。
大事なのは本番さ。
俺は五条にありがとう、と言って帰った。

1年前 No.73

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型壹號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第七十四話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾肆

12月22日。
いつも通り気だるい俺は、非常に能動的な動きで学校へ登校していた。
無論、今はその登校中のはなしである。
駅のホームで電車を待つ俺。
ただ寒さだけが吹き抜ける。
それと同時に、ケータイが鳴った。
俺はケータイを手に取り、開く。
メールか。
内容は?

『聖夜の夜10時までに_____
あなたが知っている世界の人間を集めれば_____
全ては終わるだろう』

周防から…だな。
俺の帰還法を教えてくれたのか?
『鍵』って、もしかして…あいつらのことか?
とにかく、俺は急がなければいけない。
それだけは確かであった。

1年前 No.74

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第七十五話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾伍

「…、…、……き…お…て」
なんだ?
怠い。
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
聞き覚えはある。
でも怠さが先立っている。
「起きて!」
「うあッ!」
背筋に痛みを感じ、俺は飛び起きた。
飛び起きた、ということは、俺は寝ていたらしい。
「…へ?」
俺は寝惚けているらしい。
周りを見回した。
…放課後の教室か。
「…中村か。」
「もう、いきなり寝ちゃって。」
「いきなり?」
「うん。いきなり教室に入ってきたと思ったら、いきなり寝込んで。」
「…?」
「記憶にないの?」
「…みたいだな。」
全くないと言えば、そうでもない。
文学部…今日はクリスマスパーティーに伊勢崎と中村を誘おうとしたのだ。
そのために、今日は五条に頼んで俺は休部している、というわけだが、俺はまだ文学部に正規入部していない。
まだ仮入部しているに過ぎない。
なんでここまで協力するのかと言えば、やっぱり元の世界のこともある。
「どうしたの?」
「うん?ああ、なんでもない。そういえば、俺今、文学部に仮入部してるって、言わなかったっけ?」
「それらしいことは聞いたわよ?」
「そうか。それについてなんだが。」
「うんうん。」
「クリスマス、予定はあるか?」
「なにもないわよ?」
「ならよかった。文学部で、クリスマスパーティーやるんだが、参加してくれないか?」
「いいわよ。別に私も暇だしね。」
「よかった。じゃあ、じゃあ、また明日!」
「うん、じゃあね。」
そう言って、俺は教室を後にした。

1年前 No.75

龍堂風雷炎@ツッコミ炸裂ボーイ特型零號機 @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=guJhweCpsF

第七十六話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾陸

12月24日。
俺はまったくわからないことだらけであった。
「…俺は、どうするべきなんだろうか」
教室で1人ごちる俺は、迷いに迷っていた。
「どうしたの?」
「…ああ、うん、まあ。」
「最近、なんだか調子が悪そうね」
「まあな」
言えない。
中村まで巻き込みたくない。
俺と長峰だけで解決したい。
だが…あと一日しかない。
俺は何をすればいい…?

俺はなにも頭に入らない。
いつのまにか文学部室にいた。
その時間も終わり、俺は帰り道に着こうとしていた。
校舎を出ると、中村がいた。
「…どうした?クリスマスパーティーの事なら決まったよ?」
「ううん、あなたと帰りたかったの。」
「お、おう、別にいいけど。」
「ありがとう」
俺と中村は帰り道を歩き出した。
夕焼けが美しい。
壮大な風景。
「きれいだな。」
「ええ。私、こんな風景は初めてよ。」
「そうか?」
中村、俺は____どうすりゃいい…?
「あなたの好きなようにすればいいわ。」
「…え?」
「ジョンくんの心を読んだの。」
「…?」
中村、お前…まさか…
「ひとつ、聞いていいかしら?」
「…お、おう、いいぜ?」
「私は、ジョンくんが好き。あなたはどう?」
それは、大胆な告白だった。

1年前 No.76

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第七十七話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾漆

「私は、ジョンくんが好き。あなたはどう?」
大胆な告白だった。
「…」
俺は沈黙を続ける。
自分でもわかるぐらい、俺は目が泳いでいた。
中村は俺に抱き付く。
しっかりと抱き締めてくる。
何故かはわからない。
俺も彼女を抱き締める。
彼女は少ししてやっと離れた。
「…」
俺の答えは定まらない。
「いいのよ。忘れて。」
「お、おう。」
皮肉すら言えない。
「私は周防早苗を観察するために、周防さんの『機関』が探している人物から派遣されたの。でもね…」
彼女は一言一言、噛み締めるかのように話す。
「ジョンくん…いや、フロンくんに、憧れたの。」
その一言は、俺にとっては大きい一言だった。
「だから私は、この世界にあなたを飛ばした。私はあなたに好きになってほしかった。」
俺は絶句した。
「これが今回の全容よ。」
返す言葉が見つからない。
「…久しぶりに、名前で呼ばれたな。」
とりあえず、俺は言った。
事実、俺は約2年ぶりに他人に実名で呼ばれた。
「少し虚しいコメントね。」
「しょうがないさ。普通ならなにも言えないしな。」
「そうね。」
「んで、お前は俺に、何を望んでいるんだ?」
「…私と一緒に、来てほしい…それだけよ。」
「…それは、恋愛の意味でか?」
「そうよ」
即答だった。
「…」
「…無理だ」
「どうして?」
「俺は、お前が嫌いなわけでもない。でも好きでもない。今まで通りの、友達のままがいい。」
「…そう…」
「…」
中村は、少し寂しそうな面持ちで周りを見た。
「…そう…じゃあ、死んで。」
中村は目を見開き、俺をその瞳に入れたかと思えば、ポケットからナイフを取り出し、俺に向けた。
「ま、待て!」
「待たないッ!」
彼女はそう言って、俺に飛びかかった。
俺は避けるまもなく刺されると思った。
その時だった。
目の前に黒い影が降り立ち、中村の行く手を遮った。
「逃げて」
周防の声だった。
彼女は中村の突き出したナイフを拳で受け止め、それ以上の攻撃を許していなかった。
俺は迷わず逃げた。
中村と周防の実力差はわからなかった。
だが俺が逃げない限り、周防が持ちこたえる意味がないことぐらい、わかっていた。

1年前 No.77

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第七十八話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾捌

逃げろ、と言われてもどこへいけばいい?
俺は走る。
そのうち、足がつって転んだ。
俺のケータイが音を立てて転がる。
俺は立ち上がり、中腰でケータイ手に取る。
その瞬間、俺は気がついた。
暗号_____12155を、思い出した。
簡単なパズルだった。
ガラケーのキー、1、2、3、4、5、6、7、8、9、0のキーは、それぞれの平仮名のキーでもある。
1は伊勢崎の「い」と大崎の「お」、2は草香の「く」、5は長峰、長海の「な」だ。
ようやく、ようやく俺は気がついた。
なにかが起きた。
俺の頭に、なにかが流れ込む。
「これは…」
俺はそれをすべて見た。
『ジョン、そういえば大崎は?』
伊勢崎の声?
『さあな?確かあいつ、飛天中学に行ったらしいぜ?』
『飛天?あの飛天か?』
『そうそう。やんちゃなあいつも、頭はいいらしい。』
これ、もしや…
『あ、そういえば、草香も長海もその中学らしい。長峰はどこかは知らんが。』
『へー。つまり、前の学校からの友達は俺とお前だけってことか。』
『らしいな。』
『…まあ、気が楽でいいや』
『嘘こけ』
これは…俺の…この世界の、俺の記憶…!?

1年前 No.78

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第七十九話 新訳・龍堂フロンの選択 貮拾玖

全て、わかった。
誰がどこにいるか、全て。
俺は走りながら大崎についての記憶を探る。

《記憶》
夜10時、俺はクリスマスの買い出しのついでに公園に立ち寄った
ベンチに誰かがいる。
「大崎、なにやってんだ?」
「うん?なんだただのジョンじゃない。」
「ただのジョンと言われたことはいいとして、」
「あ、いいんだ」
「小学6年生がこんな時間にこんなとこにいたら危ないぞ?」
「大丈夫よ。私は嫌なことがあったら、絶対にここに来るの。」
「へー。寒くねーか?」
「全然。」
「震えてんじゃねーか。これ着ろ。」
俺は着ていたコートを脱いで大崎に被せた。
「え?でも_」
「いいのいいの。どうせ家近いし。」
「…ありがとう。」
そのとき、目の前を白い粉が降りていった。
俺は上を見上げる。
「雪か…」
「…そうね。」
しばらくの沈黙。
「んじゃ、気を付けて帰れよ。」
俺は買い物袋を引っ提げてそのまま帰った。


あの公園だ。
もしかすれば、あの公園に行けば、大崎に会えるんじゃ…?
俺は走る。
公園へ向けて。

1年前 No.79

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第八十話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾

公園へ着くと、もう日は落ち、誰もいなくなっていた。
「…いないか?」
俺は呟く。
辺りを見回しながら俺は歩く。
少し歩くと、誰かがいた。
艶のあるロングへア、不満げなむくれ顔と頬杖、スラッと長い足首…
大崎だ。
「大崎。」
俺は歩み寄った。
「…!」
大崎は驚いた顔で俺を見る。
「覚えてるよな、俺を。」
「当たり前よ。ジョン。」
「そのあだ名を覚えている限り、俺は忘れられていないみたいだな。」
「まあね。」
「早速だが、ちょっと来てくれないか?」
「いいけど?」
「俺の中学に来てほしい」
「いいけど、なんでそんなとこに?」
俺と大崎は歩き始める。
「…。」
俺は言うべきかを迷った。
「ジョン?」
俺は意を決し、大崎に向き直る。
「俺は…異世界人ってやつだ」
「?」
「突然で悪いな…俺はある人物の我儘でこの世界に飛ばされた、別世界の俺だ。」
「…うん?」
「まあ、わからなくても当然だ。俺が元いた世界では、お前は俺の学校にいて、長海、伊勢崎、草香、大崎、そして中村舞と周防早苗という女子二人がいる」
「う、うん?」
「周防は、いわゆる超能力者で、今まで俺を何度か助けてくれた。」
長峰の時と同じことを言った。
「その周防はこの世界には存在していないらしい。」
「…」
「そんでもって、俺はさっき中村に殺されかけた。」
「え?」
「そして俺は周防に助けられた。多分別世界から飛んできてくれたんだろう。」
「…」
「それで___」
「大体わかったわ。」
「お、おう、わかってくれたか。」
「誰だと思ってるの?」
「ただの暴れん坊」
「失礼ね。」
「そりゃどーも。」
「んで、来てほしいのね?」
「そうだ。」
「んじゃ、案内しなさい。草香も夕美も呼んであげるわ!」
「あ、ありがとう!」
「いいのよいいのよ。私は別世界の友達でも友達だと思うしね」
この言葉は、俺を救った。

1年前 No.80

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第八十一話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾壹

ケータイを取りだし、長峰と伊勢崎を呼び出した。
「今すぐ俺の学校の文学部室に来てくれ。」
そう言って、すぐに切る。
大崎はメールでの呼び出しだ。
電車に揺られ、駅を出て、俺と大崎はすぐに走り出す。
バスに乗り、30分後に終点、つまり学校に降り、校舎に入る。
教師に見つからずに俺の文学部室に着いた。
そこには、伊勢崎、長峰、草香、長海がいた。
「長峰、こいつらに俺のことを話したか?」
「ある程度ね。」
「そうか。」
教室には12155、つまり伊勢崎、大崎、草香、長峰、長海がいる。
「まあ、ジョン、なんとなくわかったが、集まってなにになるんだ?」
今の時刻は午後10時。
あと一日遅ければ、アウトだった。
すると…
俺の目の前の机に、PCが現れた。
画面が光り黒く映り変わる。
画面にはこう書いてあった。

《このプログラムがあるということは、そこには草香、長海、長峰、大崎、伊勢崎がいるということだろう》

いるぜ。ちゃんとな。

《これより、脱出プログラムを起動する。なお、脱出の保証はできないため、そこは了承願いたい。》

帰れるならそれでもいい。

《脱出を選ぶなら、Aキーを、留まることを選ぶなら、Bキーを。どちらも選択は一度のみである。》

選択は一度きり…後戻りはできない。
じゃあ俺はどっちを選ぶ?

1年前 No.81

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第八十二話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾貮

俺は周りの人間を見る。
長海は少し怯えたような表情を俺に向けている。
草香はいつも通りの微笑み、伊勢崎は至って普通、長峰も微笑みの表情、を浮かべている。
俺は最後に大崎の顔を見た。
「あんたの好きにしなさいよ。」

俺が今、このキーを押せば、五条との約束を破ることになる。
彼女の純粋な、俺とクリスマスを過ごしたいという思いを裏切ることになる。
俺はそこまでして、帰らなければいけないのか?
答えはノーだ。
だが俺は、帰りたい。
あの日々を壊してまで、俺は五条との約束を守るのか?
だったら俺は破ってまで自分の世界を守る方を選ぶ。
すまない五条、俺は、強い人間じゃないのさ。

俺は、意を決してAキーを押した。
目の前の光景がブラックアウト、いや黒く塗りつぶされたかのように消失した。

1年前 No.82

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第八十三話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾參

意識を取り戻すと、そこはさっきのあの公園だった。
暑い…暑い!
俺は制服のワイシャツやネクタイ、コートを脱いだ。
ケータイを取り出し、時刻を確認すると、8月17日、つまりあの日のことだった。
俺が現実世界から切り離された、コピー世界に閉じ込められたときの事であった。
何でこの日に…
「随分遅かったわね。」
中村の声だった。
「な、中村…」
服装…そう、あの冬服だったのだ。
「よくわかったわね」
「そりゃわかるよ」
「…もう一度聞くわ。私と一緒に来てくれないかしら?もちろん、恋愛方面で。」
「無理だ。」
俺は即答する。
「そう…」
中村は寂しそうな面持ちで俺を見つめる。
「じゃあ…しょうがないわね。」
ナイフを構える中村。
俺は…何も持っていない。
周防、いねぇのか?
彼女はその間にも、ナイフを俺に突き刺さんと駆け寄る。
俺は仕方なく肉弾戦を決めた。

1年前 No.83

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第八十四話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾肆

中村が右手のナイフを突き出す。
俺はそれを避け、右手を掴み、ナイフを抑える。
だが彼女は左足で俺の脇腹を膝で蹴る。
俺は激痛に耐え、左手で中村の鳩尾に拳を叩き込む。
中村は顔をしかめるが、それも一瞬で、ナイフを捨てた右拳で俺の顎を打つ。
俺は反動で顔を跳ね上げ、全身を仰け反らせる。
後ろに倒れそうになるのを抑え、なんとか踏みとどまる。
中村は右拳を俺に叩き込むが、俺は左肘でガード。
俺は右拳を中村の頬に叩き込む。
顔を歪める中村。
それでもすぐに気を取り直し、左足を俺の腹に叩き込む。
俺は激痛に顔をしかめ、腹を抑えて少し後ろに下がる。
中村は攻撃を緩めない。
右左の拳を瞬時に、交互に叩き込んでくる。
俺はそれをすべて受ける。
顔、腹、胸、肩に次々と拳が食い込み、悲鳴を上げる。
拳が体に食い込む度に俺は後ろに下がる。
俺は意識が朦朧としていた。
頭から出血しているのが自分でもわかった。
だが痛みの感覚は消え、ただ衝撃だけが脳を打ち揺るがす。
中村は俺に左拳を顔面に叩き込き、少し力を溜めてから右ストレートを放つ体勢に入ったのを見た。
その瞬間俺は反撃した。

1年前 No.84

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第八十五話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾伍

俺は中村の右ストレートを見切り、右拳を左手で掴む。
その刹那、右拳を中村の顎に叩き込み、次いで中村の右腕を螺上げる。
苦痛に顔を歪める中村。
だが俺は容赦はしない。右肘で中村の左頬を打つ。
次いで左拳を中村の腹に叩き込み、すぐに左拳を引く。
その一瞬後、右足で中村を蹴り飛ばす。
中村は公園の倉庫の壁にぶつかる。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、…」
「フー、フー、フー、フー…」
肩で息をする俺と中村。
よく見たら俺は顔面血塗れ、中村は全外傷が見られない。
頑丈な野郎だ。
だがな中村、俺はお前の我儘に付き合わされる気はねぇぞ。
俺は朦朧としていた意識を引き戻し、目を見開く。
中村も目を見開く。
俺と中村は同時に走り出し、同時に全力の右ストレートを放った。
肉がぶつかり合う音が聞こえる。
俺の右拳は中村の頬を、中村の右拳は俺の顎を打つ。
俺は気絶し掛けたが、意識をなんとか保つ。
中村は一瞬後に、静かに倒れた。
…勝ったの、か?
俺は、勝ったのか?
その時、背後から空気を切り裂いてなにかが俺の方へ飛んできた。
後ろを振り向く。
ナイフだった。

1年前 No.85

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第八十六話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾陸

ナイフは俺の右脇腹を抉り、深く突き刺さる。
激痛が脳天を貫く。
それと同時に俺は傷口を押さえながら倒れ込む。
痛ぇ…痛ぇ…!
鮮血が溢れる。
意識が朦朧とする。
「あ…ぐ…ぅう…あ…!」
俺は呻き声を上げる。
俺は激痛の最中、ナイフが飛んできた方向に目を向けると、そこには九藤がいた。
「やあ、久しぶりだね。まあ、僕からすればさっき別れたばかりなんだけどね。」
淡々とした口調で喋る。
「でも君すごいよ。中村を殴り倒すなんて。」
俺は血反吐を吐く。
「君の強さは尋常だね。褒めてやりたいくらいだよ。」
「へへ…そりゃどうも…」
「おや?減らず口を叩けるほどの余力があるのかい?」
「当たり前だ馬鹿野郎」
「じゃあこれでどうかな?」
九藤は俺の襟首を掴み上げ、俺を立たせると、鳩尾を右拳をで殴る。
俺は血反吐を吐く。
俺の身体から力が抜ける。
そのまま意識が薄れていく。
目の前の景色は消失していき、視界が狭まっていく。
俺はそのまま、意識を失った。

1年前 No.86

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第八十七話 新訳・龍堂フロンの選択 參拾漆

目が覚めると、そこは俺の部屋だった。
ケータイを見ると、2015年12月12日午前0時40分だった。
帰った、のか?
俺はナイフが刺さった部分や、出血した頭部を触る。
痛みも血もない。
そのとき、ケータイが鳴った。
俺はケータイを開き、ダイヤルボタンを押す。
「もしもし」
「あなたはもとの世界に帰れた。」
「みたいだな。お前、あのあとどうしたんだ?」
「私は中村舞に敗北し、彼女を取り逃がした。」
「負けたのか」
「そう。中村舞はすぐに2015年8月17日の時間軸へ転移。あなたを待ち構えた。」
「それがあいつだったわけか」
「そう。あなたは彼女に勝利した。けれど、同時間軸に居た九藤の奇襲を受けた。」
「ああ。ナイフが刺さった。ざっくりとな」
「九藤はあなたに止めを刺さずに帰った。」
「それはわかる。」
「中村舞は行方不明。」
「…は?」
「中村舞の回収に失敗した。中村舞は向こうにもいないし、こちらにもいない。」
「それって…」
「彼女は、脱走した。」
「…そうか。」
俺は安心感とともに、脱力感、無力感を覚えた。
俺は友を一人も失うまいと戦った。
けれども、中村舞という人間、大切な友を失った。
文学部が寂しくなるな…

これが俺と中村と、その親玉との宿命の戦いの始まりでもあった。

1年前 No.87

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1年前 No.88

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第八十九話  眠気覚ましのクリスマスイブ 壹

文学部室。
いつものように部室で本を読んでいると、なんとなく胸騒ぎがしないでもないような…
なんだか大崎が吠えそうな気がした。
いや、吠えた。
「ジョン!」
「うるさい」
「ちょっと来なさい!」
俺は本をもつ手を掴まれ、強引に部室の外へ放り出される。
「なんだよ!」
寒いなおい。
今は12月だぞ!
「クリスマスパーティーのスケジュールを考えなさい!」
「いやどう考えても無理だろ!」
今日は12月24日。
クリスマスイブなのに何故だかまだ学校が終わらない。
「はやく考えなさい!」
「え?無理だって。明日だろ?」
「だからよ!」
「なにがだよ!?」
「文学部でやりたいのよ!」
「今からか?準備は」
「そうよ!」
「…話が遅すぎるだろ…?」
「じゃ、よろしく〜♪」
「お前も手伝えよ!」
「あ、任せたわよ〜」

地獄の一日が始まった。

1年前 No.89

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第九十話 眠気覚ましのクリスマスイブ 貮

俺はまず職員室へ行った。
「失礼します!文学部のフロンです。棚橋先生いらっしゃいますか?」
「棚橋俺だけど。」
棚橋勉…文学部の顧問だが、顧問とは言い難いほど顔を出さない、いや、出したことがない。
いや、今初めて顔を知った。
「棚橋先生、文学部室でクリスマスパーティを開きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ん、まあ、全部お前らに任せてるから、俺としては別にいいけど、校長にあとで話を通せ。俺じゃ決めらんない。」
「わかりました。じゃあ、校長先生に話を通しておきます。」
「うむ。」
俺は職員室を後にして、一度文学部室に戻る。
ドアを開ける。
「なんとかなりそうだぜ。俺は許可取るから、みんなクリスマスパーティの準備よろしく!」
そう言ってまたドアを開け、部室を出る。
部室を後にし、俺は校長室を目指す。

校長室に着き、ドアをノックする。
「失礼します。文学部のフロンです」
「どーぞー」
中からやる気のない声が返ってくる。
「では」
ドアを開ける。
「校長先生、早速ですが、頼み事があります」
「うん」
「部室でクリスマスパーティを開きたいのですが、よろしいでしょうか?」
さっきと同じ文句。
「いーよー」
だらっとしてるなぁ〜
「よろしいですね?ありがとうございました。では」
「うん…え?」
「え?いいんですよね?」
「い、いや、ダメだって!」
「今更そんなことは許しませんよ?」
俺は右ポケットからプラスチックのケースのような物を取り出した。
それに付いてるスイッチを切り、再びスイッチを切ると、音声が再生された。
『失礼します。文学部のフロンです』
『どーぞー』
『では。校長先生、早速ですが、頼み事があります』
『うん』
『部室でクリスマスパーティを開きたいのですが、よろしいでしょうか?』
『いーよー』
『よろしいですね?では』
スイッチを切ると、音声が停止した。
「ま、一度認めたものを曲げるのは困りますね」
「う、ぐ…」
校長は息を詰まらせる。
「では、いいですね?」
「わ、わかった、うん、行っていいよ?」
俺は校長室を後にした。

文学部室に戻り、俺はこう言った。
「なんとかなったぜ!」
「できたの!?」
「やれと言われれば実行するぜ?」
「んじゃ、今日は終わりね。」
大崎が言う。
「お、大崎さん、何ができたって?」
長峰が訊く。
「あれ、まだ聞いてないか?クリスマスパーティーだよ。部室で開くのさ」
「え?開くの?」
「マジかよ…!」
「え、ええ…」
一同(草香以外)が驚愕していた。
「ま、そーゆーこと。」
「ああ。多分、俺の弟や妹も来るだろうな。」
「あ、隆次くんと、美華ちゃん?」
「そうだよ。」
「大歓迎!」
長峰とあいつら、結構仲いいんだよね。

そんなこんなで、クリスマスパーティーの準備は整っていた。

1年前 No.90

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第九十一話 クリスマスパーティーにはハプニングが付き物

12月25日!クリスマス!
いつもは気怠く、煩く、なによりカビ臭い学校と言う空間が楽しくなる日が来るとは、俺には到底信じられなかった。
だが、実際、目の前の現実はと言うと…
「ジョン!これどうよ!?かわいいでしょ〜?」
文学部女子の…サンタコスチューム!
眩しい…眩しすぎる…
「お、大崎さん、は、恥ずかしい…」
長海は真っ赤だった。
「大崎さん、胸の辺りがキツいんだけど…」
お前の胸が大きいからだ。
「…全体的にキツい」
まあ、お前は全体的に筋肉質だし、簡単に言えば豊満な体だしな。
中村…いないんだったな。
「ジョン〜これ着なよ〜」
サンタコスチュームの大崎が、サンタの服を持ってジリジリと近寄ってくる。
「伊勢崎と草香の分は?」
「あるわよ!」
「じゃあ、そいつらに着せてやればいいじゃないか」
「あんたじゃないと面白くないの」
マジかよ…!
「よ、よし、じゃあ草香と伊勢崎にも着せろよ?いいな?」
「いいわよ〜」
「よし、着よう。」
俺はそう言って、サンタ服を着る。
「あら?意外と似合ってんじゃん」
「そうか?」
「うん、似合ってるわ」
長峰も言う。
「ま、伊勢崎はどうだ?」
「まあ俺は…鼻眼鏡付きじゃん。うん。」
「アハハハハハハハハ!!!!」
長峰、俺、長海、大崎、大爆笑!
長海の笑いはすっごく些細だったがね。
多分あれがあいつの大爆笑だろう。
「こ、こんな眼鏡、外してやる!」
「草香、どうだ?」
「全体的に、少しキツいですかね。」
「まあ、ちょっとサイズ間違えてる感あるよね。」
「うんうん」
「んで、隆次と美華の分は?」
「あ、忘れてた」
「マジか…!」
忘れていたかこいつ!
まあいいか。

1年前 No.91

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第九十二話 クリスマスの夜は騒がしい

クリスマス。
俺はサンタコスチュームに身を包み楽しんでいる。

七面鳥がとにかくうまい!
ケーキ、まだ食ってない!
んで、長峰のサンタコスチュームが異常なまでにかわいい!
そして、飯が多い…。
文学部メンバー(+2)で食える量じゃない…。
大崎や長峰はワイワイやってるねぇ。
長海…あれ、ボッチ?
輪に入ってないな。
俺は長海に歩み寄る。
「長海、こっち来いよ」
「え?いや、でも」
「いいからいいから。一人だけ寂しく隅っこなんて、こっちが寂しくなる」
「そーよ長海さん。さ、こっちっ来なさい」
長峰も声をかけた。
「うん」
長海はそう答え、こっちに来る。
「さて、ジョンくん」
「?」
「ちょっと散歩に付き合ってくれないかしら?」
「ん?あーいいけど。どうして?」
「あれよ、外の空気が吸いたいのよ。」
「おう、まあなんとなくわかった。んじゃ、行くか?」
「うん」
俺は隆次と美華にその場を任せて部室の外へ出た。

1年前 No.92

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第九十三話 散歩

校舎を出た俺と長峰は、なんとなく歩きだした。
日が落ちていた。
街灯は寒そうな青色に光っていた。
静かな街道に、足音が響く。
白い息は後ろに流れていく。
「寒いな…」
「意外とね」
サンタコスチュームと言えど、寒いものは寒いんだよ!
なんて、読者諸兄に言いたいね。
自販機が見える。
「ちょっくら、暖かいもん買ってくるよ。ちょっとそこに座ってて」
俺は近くのベンチを指差す。
「あ、うん、ありがと。」
まずは俺の…
…なかなかいいのがないが、緑茶でいいか。
長峰も緑茶でいいか。
暖かい緑茶を買い、座っている長峰の元へ歩み寄る。
「ほい。」
緑茶を差し出す。
「ありがと。」
彼女はそう言って緑茶を受けとる。
俺は立ったまま緑茶のペットボトルの蓋を開け、飲み始める。
暖かい物が喉を潤し、腹を温める。
ふぅ、と吐いた息は白い水蒸気のように吹き上がる。
「座らないの?」
「ああ、座った方がいいか?」
「どっちでもいいけど、座ってちょうだい。出来れば隣で」
「お、おう。」
たまに変なアピールすんだよなあこの人。
俺は渋々、長峰の隣へ座る。
また緑茶を飲む。
長峰も緑茶を飲む。
空を見上げると、星の出た夜空だった。
「綺麗だな」
「…そうね」
「…」
「ジョンくん」
「うん?」
「少しだけ、いいかしら」
俺の頭にクエスチョンマークが浮かぶ間もなく、長峰は俺の至近距離にに急接近した。
長峰はそのまま、頭を俺の右肩に乗せた。
「…」
「…」
俺はなにかを言うことは不謹慎と判断し、何も言わなかった。
その内、長峰は寝息を立てて寝てしまった。
そのとき、長峰は肩からずり落ちて、俺の膝の上に寝ていた。
俺は長峰の寝顔を一瞬見やって、もう一度空を眺めた。

白いなにかが、ふわりふわりと舞い降りてきた。
「雪…か…」
手を空に向けて開くと、雪の結晶が手の平に舞い落ち、一瞬で溶け、水になる。
「はっくしょん」
長峰が嚔をした。
溜め息をつく俺。
「こんなとこで寝るなよ」
そう言って俺は、着ているサンタコートを脱ぎ、長峰にかけた。
寒いが、しょうがない。
「しょうがない、か」
俺は空を見上げ、また溜め息をついて、
「楽しい、最高だ」
と一言言った。

1年前 No.93

龍堂高雄@ツッコミ炸裂ボーイ @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=Z137Fy4ffw

第九十四話 冬休みは常に怠い

待望の冬休み!
雪=冬=正月=お年玉の冬休み!
さあ、何をしよう!



なんて、冬休み編突入はあるわけなくて、じゃあ何をするかと言えば、また大崎に振り回される日々が始まるのか、という訳でもなく、どうなるかと言えば、なんとも平凡で静かな冬休みだ。
なーんて、今はの俺は自分の部屋のベッドから起きずに丸くなってる、言わば、炬燵の猫状態。
ああ、暇すぎる。
ちょっと伊勢崎の部屋にでも行くか。
俺はベッドから起き上がり、寝間着から私服に着替え、冷蔵庫のつまみ物や烏龍茶の2リットルのペットボトルを二本をバッグに詰めて担ぐ。

「行ってくるわー」
気怠く玄関から隆次と美華の居る和室に向かって言う。
「兄貴、どこいくのー」
「伊勢崎の家」
「え、ちょっと待って、私も行くー」
美華も隆次も、相変わらず物好きだ。
何をすることもないというのに。

10分後、ようやく支度を終えた二人は、並走して玄関に来た。
そして10分間、特に意味もなく俺は玄関に立たされていたわけだ。
つまり、足が寒い。
どうしてくれるんだ、という目で二人を見るが、そこにはいつもの、腹に一物隠している純情な目だけで、こんな目で見詰められると困る。

俺と美華と隆次が道を歩く。
少しすると、伊勢崎の家が見える。
伊勢崎の家、一軒家で結構大きい家なのだが、何故だか重厚なイメージがある。
さもすると、城郭のような様相だ。

二階に設けられている玄関。
石で出来た外階段を登り、インターホンを鳴らす。
ピンポーンというインターホン特有の重厚そうで軽快な音が聞こえる。
すると、伊勢崎本人がドアを開けて俺達三人を迎えた。
「なんか来るような気がしたんだ。」
「そうかい」
「暇だろ?ま、入れや」
「お、ありがと」
さっさと入れろよボケ。


靴を脱ぎ、靴を揃えて置き、そして部屋の奥へ進んでいく。
奥へ行くと、少し広い和室があり、その中央には炬燵があった。
「遠慮なく入らせてもらうぞー」
そのまま俺達三人は炬燵にスライディング。
「遠慮がないな」
「寒いんだよ」
「眠いんだよ」
「猫だにゃ」
美華、その台詞恥ずかしくないのか?

「んで、伊勢崎。」
「んー?」
「暇。」
「だなぁ」
「失礼ー」
この声は…!
「お、長峰ー。長海もか。」
「私もよ!」
大崎か。
「ほぼ揃ったな」
「まだいるわよ?」
「どうも僕です」
大崎、やけにデカいバッグを担いでいると思ったら、草香入ってるし…!
「おい草香、少し登場の仕方間違えてるよな」
「はて、ドM設定が追加されてしまった以上、こーゆー感じに登場するのがよろしいかと思いまして」
「いや違う。お前はドM通り越してただの変態。」
「オーッホッホッホッホッ!私はドS姫よ!」
「長峰やめろその格好!」
「鎖じゃもう興奮しないので、鞭お願いします。」
「もうそのままお前は鞭で昇天しろ!」
「私はドS設定を追加されたんで、いっそのことよく見るSMプレイをやろうとおm」
「いや、今のはお姫様通り越して異世界人!」


閑話休題


「ふぅー」
「ふー」
「ひゅー」
「ぜー」
「あー」
「ぐー」
「ひょ〜」
「うー」
「えー」
「おー」
「…なにこれ」
「お茶飲んでるから、そのときの吐息のあれよ」
「いやなんかおかしい。なにかがおかしい」
「というわけで、今日は伊勢崎くんの家でグータラするわよー」
(5人)「おー」
「あ、居座るんだ」

まあ、おかしな1日始まったわけです。

1年前 No.94

龍堂高雄@ツッコミ炸裂ボーイ @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=Z137Fy4ffw

第九十五話 アホが何人集まってもただのアホ

「うーい」
「おーう」
「あーう」
「うーい」
「…なんの連呼?」
「…さあ?」
前回の続きだぜぇ〜。
え?ああ、伊勢崎の家だよ。
面倒だから全部省略。
「んで、伊勢崎。」
「お?」
「周防がいない」
「うん」
「揃ってないぞ。」
「うん」
「いやうんじゃなくて」
「周防ってさ、」
「おう」
「日常パート入り込めてなくね?」
「メタい!」
「それに中村も、パート的にあんまり接点なかったよな」
「ちょ、おま、」
「作者ちょっとそこ甘くね?2ちゃんねるに入り浸り過ぎてダメになったか?」
「やめろー!やめるんだ伊勢崎ィー!」
「しかも選択編、30以上使ってるけどアクションシーンも何もかも中途半端だy」
「ちったぁ黙れェ!」
伊勢崎が俺に殴られて炬燵から吹っ飛んで壁にぶつかる…いや刺さる。
「あれ…刺さった。おーい伊勢崎」
反応なし。
(え、これ本格的に死んでね?ヤバイぞ、今なら誰も…)
み ん な 見 て ま し た 。
(え、あ、うん、ああ…ヤバい)
「あー、うん、見ての通りだね!」
(全員)「じゃねーだろォォォォォォォ!!!!!!」
物投げるな痛いぞ!

閑話休題。

「で、このパートはなんだったの?」
「さあ?」

1年前 No.95

龍崎高雄@ツッコミ炸裂ボーイ @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=Z137Fy4ffw

第九十六話 新学期

さあ、なんと理由あって元旦飛ばしていきなり新学期!
中学一年生という称号の付く時期もあと僅かかと思うと、やはり寂しいものがあるなぁ。

さて、寒い通学路を長峰と長海の二人と歩く俺。
考えてみると、女子二人と並んで歩くというのは、普通に考えれば特異な光景なのだろう。
いや、断じていやらしい事は考えてないぞ?
いや本当だぞ?





長い。
朝礼とか、そういうのが長い。
校長、訓示はもう少し手短にするもんだぜ。
眠いんだが。


教室に着くと、早速宿題の提出だった。
ここで一つ、俺はミスに気付く。
冬休みの宿題、持ってきてない!
ああ…なんということだろう。
家まで取りに帰らねば!
俺は担任に取りに帰る事を告げて学校出た。


この時、着実に色々おかしくなっているのに、俺はまったく気付かなかった。
いや、気がつかないのが当たり前な物だったが、俺は色々な違和感を覚えることがあった。
それがまさか、あんなことに繋がるとは思いもしなかった…

1年前 No.96

龍崎高雄@ツッコミ炸裂ボーイ @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=Z137Fy4ffw

第九十七話 転校生

転校生。
教壇に立ち、チョークで黒板に自分の名前を書いているのは、その転校生だ。
彼女の名は黒月アカメ。
「黒月アカメと言います。どこにでもいる、普通の女子です。これからどうぞよろしくお願いします!」
元気よく言い放つ彼女は、フレンドリーな性格で、早速クラスの人気者となっている彼女は、最初は体育会系の様に見えたが、なんと言うべきか、文系でもあり理系でもある、なんと万能だったのだ。
だが一つ、不思議だったのが、彼女からは生活感というのがまったく感じられなかった。


そんなことはどうでもよく、いつものように部室でダラダラと時間を潰す俺達文学部員一同。
いつもの通り、静寂に包まれていたが、それを打ち破ったのは、何と言っても…

ドンッ!と重苦しい音がドアから響いた。
次いで、普通のノックの音がした。
「ジョ〜ン、応た〜い。」
「へいへい。」
俺は椅子から立ち上がり、ダルそうな足取りでドアまで歩き、ドアノブを回し、手前に引き、開ける。
その瞬間、ドアの前にいた人物がぬっと近寄った。
「文学部室はここですか!?」
アカメだった。
「そうですがなにか?」
「ちょっといいですか!?」
「え、ちょ、あ!」
俺の脇をすり抜けて部室に入る。
「あ、こんな本があるんですか!」
本棚を物色。
「あ、これは零戦!もしや誰かが持ち込んだんですか!?」
個人棚を物色。
「あ、ゲーム!」
「おい誰かつまみ出せ!」
「色々あるんですね!」
「その前に礼儀を知ろうか!」

閑話休題。

「というわけで、入部希望です。」
「紛わしい。」
「ですよねぇ〜」
「大崎、どうすんの?」
まあ、聞いたところで…
「入れるわよ!」
「だろうな」

こうして、アカメは文学部に入った。

1年前 No.97

龍崎高雄@ツッコミ炸裂ボーイ @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=Z137Fy4ffw

第九十八話 龍堂フロンの未来改訂 壹

1月29日。
なにもない、普通の1日に終始するはずだった。

しかし、それは起こった。



五時限目は体育だった。
ジャージに着替え、体育館に向かう。

やはりと言うべきか、なんと言うべきか、アカメは文学部ではなく運動部に入った方がよかったのではないかと、いつも思うのだ。
足も早い、跳躍力も高い。
やはり、文学部で腐らせるより運動部の方がいいだろう。
しかし、彼女からは本当の意味で生活感がない。
ボーッと彼女を見ていると、彼女がこっちを向いた。
その瞬間だった。
空気が固まった。
いや、時間軸そのものが止まったとでも言うべきか。
とにかく、全てが動かない。
時計の針を見ると、2時21分。
秒針や分針、時針も動かない。
しかし俺だけは動ける。
理由は理解できる。
しかし説明するには時間が足りない。
周りを見回すが、黒月も大崎も長峰も長海も伊勢崎も動かない。
そして俺を更に驚かせたのが、周防まで動かないことだった。

1年前 No.98

龍崎高雄@ツッコミ炸裂ボーイ @huron10☆9mB61c9GWuE ★Tablet=Z137Fy4ffw

第九十九話 龍堂フロンの未来改訂 貳

体育館の中を見回しても、硬直した人間がいるだけだった。
しかし、周防まで影響を受けるとは…
しかめ面をした俺は、体育館の入り口から殺気を感じた。
入り口は閉じている。
だがその殺気は入り口を開けない。
俺は音を立てないように体育館倉庫へ向かった。
倉庫の入り口は生徒が開けた状態でそのまま硬直してしまっている。
それのお陰で音を立てずに倉庫内へ入れた。
倉庫には、何故かよく木刀があるのを俺は知っている。

あった。
黒光りするそれは、所々塗装が剥がれているが、木の質感はそのまま、木刀という威風を残している。
木刀を持ち、体育館の入り口前へ行く。
重々しい鉄扉に右手を掛け、右腕に一気に力を込める。
鉄扉が軌条の上を回る車輪の重苦しい音ともに横に行き、同時に殺気の正体が現れる。
ゴツい顔、筋肉質な体格の男。
目は明らかな殺気を発し、両腕には刀を持っている。
敵わない。
木刀一本と鉄刀日本。
しかも中学一年生とどう考えても30は越えてそうな男。
明らかに劣勢であるのは間違いない。
だが、勝機はある。
俺は口の中で舌先を噛んだ。
口中が不快な感触と温度を持った液体で満たされる以外はなにも感じないが、これだけでも俺の身体能力は全て底上げされたはずだ。
顔を引き締めた瞬間だった。
男は右足を少し引いたかと思えば、斬りかかってきた。
猛烈な勢いで振り下ろされる右の刀を避け、空いた左脇腹へ左の刀で突くが、俺は微妙に体を捻り、ジャージの一部を抉られながらも間一髪で避けたところで反撃に出た。
左拳で男の右脇腹を殴り、間髪入れずに右手に持った木刀を一直線に男の胸に突き立てる。
男は反動で吹っ飛び、鉄扉に打ち付けられる。
ゴン、と鈍い音が響く。
頭を打った男は、しばらく全身を痙攣させていた。
男が少し意識を取り戻しそうになった瞬間、俺はその頭に木刀を思いきり振り下ろした。

1年前 No.99

龍崎高雄@漆黒の黒猫 @huron☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=HsFpk7hsda

第百話 龍堂フロンの未来改訂 參

男が再起不能なダメージを負ったのを見届け、俺は体育館を出た。

校庭に出ると、空一面が真っ青…いや、凍ったような色をしていると言った方が正しいか。
とにかく、寒空どころではない色をしていた。

時間凍結下の世界では当たり前だ。

しかし、俺は何をすればいいのだろう?
原因も、犯人も、なにもわからないのだ。

こんなときはまず、彼の元へ行った方が良い。
そう判断し、俺は学校を出ようとしたが、
「一応、制服に着替えておくか」
そう言って、木刀を片手に、校舎の中へ入っていった。



校舎の中は、いつもと変わらない。
違うのは、異様なまでに静か、ということぐらいだ。

自分の教室に着くと、そこには意外な人物が一人、俺の机の上に腰掛けていた。
「待ったわよ、ジョン君」
「え?なんで、お前が…」
「なんでってそりゃ…周防さんと同じ存在だからよ」
「…どういう事だ?お前と周防が、同じ存在?いや、でもそれ以前に、お前は…」
「ま、困るのもしょうがないかな〜」
「中村、ちゃんと説明してくれ」
そこに居たのは、冬の騒動の切っ掛けとなった彼女、中村舞だった。
「そこら辺についてはまだ言えないな〜」
「わかった、では何故お前がここに?返答次第では攻撃する」
俺は木刀を構えた。
「物騒ねぇ…正月の間に何があったんだか…」
「そんなことはどうだっていい、早く答えろ!」
叫びが教室内に響く。
「安心して、ジョン君を攻撃するつもりじゃないから」
「…」
「私がここに居るのは、ジョン君、君を助ける為なのよ」

1年前 No.100

龍崎高雄@漆黒の猫 @huron6☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=rP7gpI7OFW

第百一話 龍堂フロンの未来改訂 肆

「…信じられるかよ、そんな言葉」
「…」
沈黙が流れる。
「一ヶ月前の事をもう忘れたのか?」
「」
なんとか言えよ、という言葉が、思わず喉から出掛かったが、俺はそれを呑み込んだ。
「お前はどこからどこまで知っている?」
「…!」
確信した。
彼女は全てを知っている。
元凶が誰であるかも、目的がなんであるかも。
「取り引きをしよう」
中村が口ごもったのを見逃がさず、間髪入れずに持ち掛けた。
「お前は俺に全てを教え、俺と共闘する。その代わり、お前はZ機関の保護下に置かれる。常に身を追われているお前にとって、悪い話じゃないだろう?」
「…確かにこの1ヶ月間、私にとって良いことは何一つ無かったわ…。いいわ、乗りましょう。」
「取り引き成立だな。ついてこい」
「…Z機関の本部ね…」
「あぁ。行くぞ」

こうして、俺と中村の共闘作戦が開始された。

1年前 No.101

龍崎高雄@漆黒の猫 @huron6☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=JA7M5qFf8E

第百二話 龍堂フロンの未来改訂 伍

「…」
「…」

沈黙と冷気の漂う世界を、俺と中村はひたすら歩く。
Z機関の本部は意外と遠い。

「…」
「…」

足音だけがこの世界の唯一の音だろうか。
違和感は大きい。
いつも見る普通の世界なのに、時間が止まっただけでこんなに変わってくるとは…。
まるで別世界に送り込まれたときの気分だ。

「…なあ」
「…なに?」
そろそろことの全容を聞き出そうと声を掛けたのは、亀有の町を抜けた後だった。
「そろそろ教えてくれ」
「…そうね。教えるわ」
「嘘は言うなよ?」
「この状況で嘘を言って、得にならないじゃない」
「…」
彼女はそう言って、歩きながら話始めた。
それは、衝撃の内容だった。

1年前 No.102

龍崎高雄@漆黒の猫 @huron6☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=iaa5O0oKDL

第百二話 龍堂フロンの未来改訂 陸

「全ては1カ月前に起因するわ。周防さんも、ジョン君も、私も気付かなかった。
私はあなたを『別世界』に送り込んだはずなのよ。
でも、その世界は『別世界』ではなく、『この世界』だったのよ」
「…え?じゃあ、なんでクリスマスが2回も…」
「映像とかで、『編集』ってあるじゃない?あれと同じことが、人為的に起こったの。
殆どの人間は、世界が『物語』という概念であると考えている。けれど、実際はそれすらも『映像』という概念に限りなく近い。

息を呑んだ。
俺は一瞬立ち止まって、「まさか」と思った。
「な、なあ…まさか…まさかだが、俺は正確には『別世界』ではなく『編集されたこの世界のコピー版』に飛ばされた、ということか?」
「…勘が鋭いわね。そう、そういうこと。
いつの間にかこの世界のコピーが作られ、いつの間にかそれが『別世界』という概念に置き換わった。そして、『この世界』からあなたが私によって『別世界』へ送られ、誰も気づかない内に『別世界』に元から居たあなたは概念が消失し、その記憶は一時的にあなたに受け継がれ、『別世界』で負った傷により、あなたは死にかけた。
いや、実際死んだ。
けれど、今あなたが生きているのは、概念消失した『別世界』のあなたの肉体に、魂が移植され、肉体は死んだけど魂は生き永らえた。
あなたが今持っているその力。
それの受け皿になった理由。
解決できたでしょ?
しかし、矛盾は消えてない。『別世界』は再び元の『コピー版』に戻り、そしてこの世界と融合した。
マスターですら出来ないことよ。」

つまり、目的は不明だが、今俺たちが生きている世界をコピー・編集した世界が生成された。
最初こそ『コピー版』という概念だったその世界は、いつの間にか『別世界』という概念に置き換わっていた。
そして俺は1カ月前にその『別世界』に飛ばされ、『同じ時間』を2度過ごした。
なんとか解決し、脱出したは良いが、『別世界』に元から居た俺は、概念が消えた。
同時に、九藤から受けたダメージが元で、今まで俺が俺として生きてきた肉体は死んだ。
だが何者かに概念が消失した『別世界』の俺の肉体に俺の魂が移植された。

そして、時間が融合し、止まった。

1年前 No.103

龍崎高雄@漆黒の猫 @huron6☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=iaa5O0oKDL

第百四羽 龍堂フロンの未来改訂 漆

衝撃を受けつつ、歩き続けた。

「ねえ、どこまで行くの?」
「…」
喋るわけには行かない。
「交通機関が使えればすぐなんだが…」
「そんなに遠いの?」
「ああ。」
顔色1つ変えず、素っ気なく返す。
俺としても、本当は普通に、以前のように喋りたいのが本音だ。
だが、もうそうは行かない。
変わったのだ、お互い。
もう元には戻れない。
互いに責め苦を負い、運命を負い、戦いの中へ、自ら身を投じた。
もう既に、引き返す地点は過ぎ、後には戻れない。

俺達は、似た者同士だ。

なのに、互いに寄り添って歩いていってはいけない。

悲しく、苦しい運命。

俺はそれを、この瞬間も痛感した。

「待ってたよ、フロン君」
歩いていると、目の前に一人の男が現れた。
「倉田、お前ここにいて大丈夫か?」
「なに、時間が止まってしまったから、あの場所に居る意味がなくなってしまっただけさ」
「へぇ、あそこ、時間停止有効なんだな」
「意外と不便だねぇ」
「改良の余地アリ、だな」
適当に喋っていると、倉田と俺が呼んだ男が俺の後ろの中村を見た。
「…コードナンバー・MC0029…ミュータント・チルドレンの27号か…人間の呼称では、『中村舞』と言うんだっけ?そう呼ばせてもらうよ、良いかな?」
「良いわよ」
倉田はなにかを確信したような顔をした。
するとこちらを向いた。
「…なるほどね」
「わかったようだな」
「君は今回の元凶に対し、中村さんと共闘するつもりだね?」
「あぁ。今回のは並大抵じゃなさそうだ。」
「どうしてそう思うんだい?」
「時間停止の直後、刺客が来た。これは周到な準備があるはずだ」
ケータイを取り出し、刺客の顔写真と倒れている写真を見せた。
彼はそれをまじまじと見て、目を細めて言った。
「ふむ…これはかなり面倒だね」
「…これの絡みで面倒じゃないものは無いはずだぞ」
刺客の額に描かれている『紋章』…
間違いない、ヤツらだ…
「まあ、とりあえず君が無事ならまだなんとかなりそうだ」
「周防も止まっちまったぞ」
「だろうな。彼女は所詮『初期型』だ。総合的な面で君を上回っても、所詮『力』を持つ君とはの存在だ。『人でありながら死人であり死人でありながら神であり神でありながら人である』君よりかは、特殊世界に対する耐性は低いよ。それに…」
そう言ったきり、倉田は黙ってしまった。
「それに?」
「なんでもない。今のは聞かなかったことで」
「ああ、良いよ」
「じゃ、こっち来てくれ」
倉田がこちらに背を向け、歩きだし、俺と中村も歩き出した。

1年前 No.104

龍崎高雄@漆黒の猫 @huron6☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=iaa5O0oKDL

第百五話 龍堂フロンの未来改訂 捌

街中へまた入っていく。

人も、鳥も、猫も、犬も、すべてが凍りついたかのように動かない。

虚しく響く3つの足音。


狭い路地裏に入った。
人一人がようやく入れる程度のスペースだ。
右側のビルのドアを開け、中に入る。
中は真っ暗だったが、センサーが反応したらしく、電灯が点いた。

明かりが灯り、西洋風の部屋がよく見える。

「ま、座りなよ」
倉田が椅子に腰掛け、俺と中村にも着席を勧めた。
無論、俺は倉田を信用しているので、即座に座ったが、中村は一瞬躊躇った。
「中村、はよ座れ」
俺が着席を促し、ようやく座ったが、緊張と警戒の顔色は消えない。
だが、倉田にとってはそれはどうでも良く、話し始めた。
「犯人は特定できてるよ」
「もう出来たのか!?早いなおい」
「なに、こんなことが出来るのは、S機関の中で、アイツしかいない」
「…」
悪夢の正月。
あの男の顔が、脳裏をよぎる。
「…H29…いや、ハヴカニヤ・シュワルツェスキー…」
「正解だよ。ま、君にとっては二度と思い出したくない名前だろうけどね」
「…」
冷や汗が全身から吹き出るのを感じた。
圧倒的な力量の差、絶対的な絶望感、屈辱的な敗北、己の弱さに呑み込まれそうになった瞬間…
その全てを思い出し、俺は頭を抱えた。
息が荒くなり、肩を上下させながら、呼吸一つ一つが深呼吸になっているのがわかった。
額から玉のような冷や汗が流れ落ち、床に滴る。
「フロン君!」
強く呼び掛けられ、俺はようやく我に帰った。
「引き返すなら今だよ」
固唾を呑み、迷った。
だが、引き返しても、残るのは停止世界だけで、なにも変わらない。
仮に引き返して、倉田がZ機関の工作員全員を使って、あの化物と戦う?
いいや、勝てるわけがない。
あの化物に抗する力を持つのは、俺だけなのだ。
「…やってやろうじゃねぇか」
「その意気だよ、フロン君。」

1年前 No.105

龍崎高雄@漆黒の猫 @kgb☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=vw97GJMZ6M

第百六話 龍堂フロンの未来改訂 玖

倉田が地図をタンスから取り出し、テーブルの上に広げると
「シュワルツェスキーの居所はここだ」
と指示棒である場所を指した。
…あの公園だった。
「やっぱそこか…」
「予見していた通りだったようだね」
「んで、奴を倒せば…殺せば勝ちなんだな?」
「そうだよ。問題は、君が『力』を使いこなせているかどうかだ」
「俺の持つ力が、俺の意思とは無関係に、独り歩きするかもしれない、ということか」
「実際、正月のときもそうだったろ?」
「…あぁ…危うく、暴走しかけたな」
「まあ、その時のために、これを渡しておくよ」
倉田がどこからともなく手鏡を取り出し、俺に手渡した。
「何故手鏡?」
「まあ、一度自分の目を見てみなよ」
手鏡の蓋を開け、俺の顔を見る。
すると…
「瞳の色が変わってる…?」
「ようやく気づいたね」
再び椅子に座って、倉田は言う。
「君が『力』を発揮しているとき、瞳の色が変色しているのに気付いたんだよ。『力』を得たときは緑、シュワルツェスキーとの戦いの時には青、暴走状態になったときが赤、っていう風にね。」
そこまで言うと、紅茶を一杯啜り、再び話始めた。
「ちょっと調べてみると、瞳の色は『力』とのシンクロ率を表しているようでね、普通じゃ有り得ないのさ。」
「どういうことだ?」
「君は気に入られたんだよ」
「…?」
怪訝な表情で倉田を見るが、彼は全く動じない。
「まあ、そこら辺の説明はさておき、続きと行こう。『青』は君が完全に『力』を支配している時だ。君が一番戦いやすい状態だが、力の発揮が難しい時だ。
『緑』は君と『力』の意思が均衡状態になっているとき、つまり力を一番発揮しやすくもあるし、君が呑み込まれやすくもなる時だ。感状を高ぶらせちゃいけないよ。
『赤』は言わずもがなだとは思うが、『力』に君が支配されてるときだ。
その手鏡は、君が今どのような状態にいるかを検知する『定規』にもなる。戦闘の際は、それをちょくちょく見るように心がけよう。」


1年前 No.106

龍崎高雄@調教師 @kgb☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=Z137Fy4ffw

第百七話 龍堂フロンの未来改訂 拾

「おい、この間そんな事は一言も」
「言ってないよ。当たり前じゃん。使う前にそれを言ったら、普通は怖じ気づいて戦うことをしなくなってしまう」
「…」
確かにそうだ。
暴走するなんて言われて、それでもなにかを守りたいと願う者なんて、居るわけが無い。
だけど、もう遅い。
俺は責任を負ってしまっている。
後にも先にも退けない、そんなぐらいに重い責任を。

「まあ、ともかく、君達二人でシュワルツェスキーを倒せばいい。ある一定のダメージを負うと、時間停止状態を維持できなくなるからね。正月の時よりかは遥かに楽だと思うよ。」
簡単に言うな。
奴の強さは半端じゃない。
現に足が震えを止めない。逃げ出したくなる気分だ。
だが俺は…決めた。
「わかったよ…行くよ…」
「…」
「アイツを絶対に倒さないとダメなんだろ?じゃあ行ってやる。正月の時よりかは遥かにマシだ」

1年前 No.107

龍崎高雄@調教師 @kgb☆YV/LbxVUS0Pr ★Tablet=Z137Fy4ffw

第百八話 龍堂フロンの未来改訂 拾壹

気がつけば、既にシュワルツェスキーの居るその公園__12月の事件で、大崎と再開した、あの公園である__の目の前に居た。
「ジョンくん?」
中村の一声で、ようやく我に返った俺は、手鏡を見る。
俺の目は、今は緑だ。

「…勝てるのかな、俺。」
「私もいるから大丈夫でしょ」
「いや、そうじゃなくてさ、俺がこの力を、本当にうまく制御できるかどうかが心配で…」
俺がそう言うと、彼女はこう言った。
「そんな心配をするくらいなら、あの水晶玉を取り込まなきゃ良かったじゃん」
「全部守りたい。そう願った結果が、これだったんだ。間違っていたのか、正しかったのか、今となってはもう全然わからない。」
「じゃあもし、正月の時のようか危機が訪れたとして、その時既にあばたはその力を捨て、ただの人間になっていました、としましょう。ジョンくんは、またその力を手に取るの?」
「…さあな…」
恐らく俺は、手に取るだろう。
多分、それに伴うリスクを知っていて、自分がそのあと、どんな損を被るかを知っていたとしても、俺は守る為に力を取るだろう。
だけど、それが俺だ。
バカで、愚直で、優柔不断で、それでも何かを託されて、精一杯努力する。
それしか俺には出来ない。


「ジョンくん、あなたは…」
「?」
中村は、何かを言おうとしたが、途中で口ごもってしまった。
「ううん、なんでもない。私はジョンくんの…その曖昧な態度とか、私は好きよ」
また告白か…。
「だから俺はなにも決められないんだ…」
「ん?」
「うん?あ、いや、なんでもない。」
「うん、そう。」
中村は視線を前に移し、公園の敷地内へ入っていった。

1年前 No.108
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