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Xx.:アパタイトの日常。

 ( 小説投稿城 )
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ひまこんぶ ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔プロローグ。


俺は毎日、今日はどんな日だったかを記録している。
始めたのは小学三年生の頃からだった。
それを現在、高校一年までに書き続けた結果、何と二百冊以上もあった。

ここまでよく飽きずに書けたものだ。
自分でも賞賛してしまうほどたくさん日誌が溜まっていた。


勿論これからも、書き続けていくと思う。
毎日が続く限り、何かがある限り、生きている限り。


俺、灰野燐は奇妙な高校生活を淡々と書いていくとしよう。
それが自分の少なくとも三年の決まりの様に。



       Xx.:アパタイトの日常。

5年前 No.0
切替: メイン記事(26) サブ記事 (6) ページ: 1


 
 

ひまこんぶ ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔自己紹介には魅力がない。


突然だが俺は入学式が嫌いだ。長くて面倒くさい。

どうでもいい説明とか学校の紹介とか、正直興味ないのだ。
ずっと座ってどうでもいい話を聞くこっちの身にもなってほしい。

生徒会長も少しは美人だったが、惚れた訳でもないし。
校長は中身の無い話を延々と続けてくるし。

大概、終わる頃にはあくびが出ている。
出来損ないの子守歌の様な話をされる事もあった。


次に嫌いなのが自己紹介。これは厄介にも程がある。

別に名乗っても親しくなるとは限らないし、親しくなりたいなら名前を聞けばいい。
俺は自分の名前をあまり良いとは思っていない。

灰野燐なんていかにもネガティブな名前だ。

灰野という名字に生まれてきた時点でそう決まっていたのだろうか。
どうせなら光とか明とか名前だけでも明るくしてほしかった。


「――――次、灰野君」

「……………はい」


まあ、名前を名乗って適当によろしくとでも言っておけばその場は大丈夫だ。


「灰野燐、です。よろしく」


だが、俺は名乗ることが一番嫌いなのだ。
それほど気に入ってもない、魅力のない名前をなぜ公に晒さなければいけないのだろう。

誰が自己紹介なんて面倒な物を作ったんだ。
作った奴には小一時間文句を言ってやりたい。

5年前 No.1

ひまこんぶ ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔初恋の相手は人じゃない。


「真代碧、です。友達はいりませんので気は遣わないでください」


変わった奴もいるものだな。
どこぞのライトノベルの様な展開だ。

友達なんていらない、一人が良い。
そんなに一人が好きなら学校なんて来なければいいのに。


ただ授業を受けに登校して、授業が終われば帰る。

それを繰り返して何が起こる?
何も起こらない。ただ、無意味なだけだ。


俺は物思いに耽りながら、真代碧とやらを眺めていた。
細くて白いすぐにでも壊れそうな足。
小さくて華奢な所謂守ってやりたい系の身体。
長く艶やかに光る腰までの黒髪。

そして、真っ直ぐと前を見つめる大きな瞳。


彼女に恋をしてしまったのだろうか。
いや、俺は彼女の瞳と性格に恋をしたのだ。

嘘やお世辞は通じないし言わない、正直者。
一人でも生きていけるような自立心。



初恋の相手は人じゃなかった。
まあ、ある意味人と呼べるのかも知れないが。

人の性格、………そう、人の中身に恋をしたのだ。

5年前 No.2

ひまこんぶ ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔友達になりましょうか。


勿論休み時間は彼女の席に人だかりが出来た。
色々質問攻めにされながらも、彼女は何も言わなかった。


それどころか、うるさいと一言呟いてしまった。
周りにできていた人だかりは徐々に崩れていった。


クラスでの孤立。

今の彼女の状態を一言で言うとそんなところだ。
自ら人を切り捨てて、一人を好む。


「――――なあ、灰野」

「……………何だ。えっと……」


ろくに名前なんて聞いていなかった。
こういう時には自己紹介も役に立つのだがな。


「猫塚慎太郎。ちゃんと覚えろよな」


にぃっ、と鋭い八重歯を見せながら猫塚は笑った。

ああ、こいつの様な奴がモテるのだろう。
名字はさて置き、名前がちゃんとしている。

しかも、明るく人を引き付ける様な笑顔。

俺とは似ても似つかない奴だな。


「それで? こんなしがない俺に何の用だ」

「お前と友達になりたいんだよ、俺」


人気のある奴の決まり文句の様だな。
『お前と友達になりたい』、なんて。

こんなイケメン…なのかは定かではないが顔の良い奴に友達になりたいと言われれば、
根暗や人見知りの純粋乙女は間違いなく恋に落ちるだろう。


「………どうせクラス全員に言ったんだろ」

「違う違う、本当だって! お前が良いの、俺は」


本当かどうだかはどうでもいいのだが。
まあ、断っても時間の無駄。その場しのぎで承諾しておこう。


「わかったよ。まあ、俺のどこがいいのかは知らないがな」


すると猫塚は表情をより一層明るくした。
つくづく変な奴だ。俺なんかと友達になって何を得する。

5年前 No.3

ひまこんぶ ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔変人たちの集う屋上。


昼休みは中学生の頃から暇だった。

一緒に食べたいと思う奴もいないし。
猫塚は何処かへ行ってしまったし。


「…ねえ、灰野って猫塚の友達なんだろ?」

「それがどうした。悪いか? えぇ?」

「え、い、いや。猫塚って小学校から友達作らないからさ…」


あいつが、小学生の頃から友達を作らない。
そんな法螺話の様な事を俺が信じると思っているのか。
冗談も大概にしてほしい。さすがに気分が悪いぞ。


「………俺が変わりすぎてたんだよ、きっと」


俺は適当にそう答え、購買で買った菓子パンを持って教室を出た。





この高校は屋上の立ち入りは基本的に自由だ。
ただ、自殺防止のために柵が高く作られている。

風当たりも日当たりも良好で、心地良い。
誰もいないと思っていたが、どうやら先客の様だ。


「猫塚……と、真代?」


一番右端のフェンスに寄りかかって、真代は独りで弁当を食べている。
そしてドアを開けてすぐの壁には、猫塚が暇そうにオレンジジュースを吸っていた。

多分この二人はお互い興味すら無いと思うが、何故ここにいるのだろう。
猫塚が後に来ても、真代が出て行ったはずだ。一人が好きらしいし。
逆に真代が後に来ても、真代は回れ右で戻っていくはずだ。


「よっ、来ると思ってたよ」


何かを見透かした様に、猫塚は目を閉じた。
ストローの先は齧られてぺちゃんこに潰れている。


「………この屋上に来るのはね、変人だけなんだってさ」


変人だけ? 俺もこいつらと同類にされてしまうのか?
一人が好きとか、友達を作らないとかそういう類にされるのか?

5年前 No.4

ひまこんぶ ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔変人たちの集う屋上。


「ねえ、変人同士、仲良くしましょうよ」

それは意外な事だった。
一人が好きな真代が突然俺に手を差し伸べたから。
何があったのか知らないが、とりあえず握手。


真代の手は割と暖かかった。
いや、俺の手が無駄に冷たいだけかもしれない。


「私、部活作ろうと思ってるんだけど………。
 二人に、協力して欲しいのよね、どう?」


どう、と言われましても、どうなんでしょう。
二人と一緒に居ても、変人と思われるだけだ。

俺がそうごちゃごちゃと考えていると、猫塚が言った。


「いいよ、何か面白そうだし、な?」

「……………俺もか」

「ええ、できれば君もお願いしたいんだけど」


そんな瞳で見られると、断りずらい。
まあ、入りたい部活もなかったし別に構わない。

俺はこっくりと頷いた。


真代は嬉しそうに微笑み、猫塚の顔を見た。
……なんだかただならぬ関係がありそうな気がする。


「じゃあ、放課後」


少し風が強くなった屋上に真代の姿はなくなっていた。

5年前 No.5

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


これはどこかのライトノベルに酷似している。
そんな気は俺自身も自覚しているほどだ。

まあ、ヒロインが大人しいだけマシだろう。


「さようなら」

生徒の声が揃い、一斉に教室から出て行った。


当たり前だが俺は言われた通り教室に残った。
俺と、真代と、猫塚は不自然な斑を教室に描く。


窓際に座る俺、その前に座る猫塚、廊下側から二列目に座る真代。
中心の列には誰もいないため、机と椅子だけを蛍光灯が照らしていた。


「もう、部室と顧問は確保しているから」


真代はただそれをいい残し、スクールバックを持って席を立った。
猫塚と俺も後ろに続き、教室の電気を消して教室を出た。





この高校では、一・二年生と三年生の校舎が分かれている。
そして、三年生の校舎の二階の一部と三階全ての部屋に殆どの部活が集まっている。


「…開いていたのよ、三部屋」


振り向かないまま真代が言った。
三部屋、二階と三階の部活用の部屋の数は総合して二十部屋弱。

随分とバリエーションが多いのだろうか、三部屋しか余っていないなんて。
インドア系も結構流行りになっているのかも知れない。


「それで、日当たりのいいこの部屋にしたの」


薄茶色のスライド式のドアを開け、俺達に部屋を見せた。

中は電気が点いていないのにも関わらず、夕陽で明るかった。
会議室にあるような大きな机を囲むように、七つの椅子が置かれていた。

他にも、何も入っていない本棚や、段ボール、使わない椅子が積まれている。


「ここが、私達の部室になるのよ」


※コメントなどがありましたら、サブ記事まで。※

5年前 No.6

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


部室の掃除。俺は濡れ雑巾で机の埃をふき取った。
思っていたよりも汚れは少なく、広い部室だ。


「手、止まってるわよ。灰野君」


真代は無表情のまま、俺に言った。
猫塚の方を見ると、楽しそうにはたきを振るっている。



「よし、このくらいでいいと思うけれど…」


ポケットからメモ帳を取り出し、真代はメモを始めた。

ポスター、パソコン一台、役立ちそうな本、その他。
内容が薄いただのメモだが、流麗な字のせいで凄い物に見える。


「猫塚君、美術得意だったわね?」

「ああ、中学は美術部だったんだぜ!」


嬉しそうに猫塚は真代に笑いかけた。
何故そんなに真代は猫塚に詳しいのだろう。

屋上で会った時から、変な関係だとは思っていたが。


今思い出したことだが、前に妹が抽選で当てたものの、使っていないパソコンがある。
結構最新型だったと記憶しているが、まあ日誌を見ればわかるな。


「………猫塚君、ポスターお願いね。
 解散する前に、電話番号交換しましょう」


真代は携帯を取り出した。ポケットに一体どれくらい入っているのだろう。
メモやら携帯やら、入れ過ぎじゃないのか。


5年前 No.7

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成


――今日は一日、色々ありすぎた。


俺は愛用しているシャープペンシルを握った。
いつもならすらすらと書き終わるはずの日誌。

真代と猫塚のせいで全く手が進んでいない。


「………はぁ」


深い溜息を残し、仕方なく俺は席を立った。
時刻は十一時。そろそろ寝なくてはいけない。

いつもなら十時に寝ているところだ。

俺の起床は五時半なのだからな。
寝不足でまともに授業が受けられなくなる。


別に、授業のために今まで早寝早起きだったわけじゃない。
なんとなく馴染んでしまっただけだから、俺の意志でもない。


♪〜 ♪〜

携帯が鳴った。我ながら趣味の悪い着信メロディだ。
作った奴も作った奴だとも思うのだが。


「はい」


ろくに誰だか確認もせず、俺は電話に出た。

相手はしばらく黙ったまま、何も話しかけてこない。
無言電話か、悪戯電話か、間違い電話か。

まあどれでも、俺には全くもって関係ない。
電話をかけられたただの一般人だから。


「…あの、切りますよ?」

『あ、ちょ、待って!!!』


電話の相手はいきなり声を出して必死に俺を止めた。


『あの……、私……真代碧』

「………真代か、どうした」


何故こんな夜遅くに恐らく肌を大切にしてるであろう女子高生が俺に電話をかけてきた。
結果が悪戯電話の類じゃないだけマシだったのだろうか。


『あのね、新しい部員見つけたから…それだけ伝えたくて』


それを何で今、この俺にしたんだ。


『猫塚君にも話はしたんだよ……一応』


電話に慣れていないのだろうか。まあ友達いないしな。
寧ろ携帯を持っていなくても不思議じゃない位だ。


『明日、紹介するから。放課後に』


やっと慣れたのか、彼女の声は段々と穏やかになっていった。

5年前 No.8

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


『……女の子だから。
 じゃあ、また明日学校でね』

「ああ。じゃあな」


向こうが先に電話を切った。
とりあえず俺は日誌に電話の事だけを書き、就寝した。





「…おはよう」


いつもよりも物足りない目覚めだった。
一時間ちょっと寝る時間が遅かったからか。

キッチンでは妹が朝飯を作っていた。

俺達の両親は気まぐれで、現在は二十四回目の新婚旅行中だ。
地球の反対側のブラジルまで行くといい、俺達を置いて行ったのはほんの数日前。


勿論、俺の入学式には来ることもなかった。
代わりに伯父が来てくれたからまだよかったが。


「おはよ、お兄ちゃん。朝ご飯、私いつも以上に頑張ったよ!」


フレンチトーストとスクランブルエッグの乗った皿を持ちながら妹が駆け寄ってきた。
いつもは和食しか作らないのに、なんで今日に限って洋食なんだ。


「あのねぇ、百合姉が教えてくれたんだ」


百合姉。その単語を聞くのは二週間ぶり程だろうか。
近所にすんでいる俺と同い年の女子で、現在は私立の女子高に通っている。

妹もそいつに随分懐いて、今では俺が帰ってきたらすぐに百合姉の家に行くと
言って、家から飛び出していくほどの仲になっているようだ。


「百合姉料理とっても上手で、しかもすっごく美味しいの!!
 あ、お兄ちゃんのお弁当も作ってみたよ!! はい!」


青い無地の布に包まれた弁当箱らしきものを渡される。


「それとね、百合姉が紅茶くれたから、これも」


弁当箱と共に、水筒を渡された。
紅茶、と言うと俺は断然ダージリン派だ。


「百合姉が、だーじりんっていうの淹れてくれたの」


さすが幼馴染。俺の紅茶の好みまで知っているのか。


「じゃあ、早く食べてね。私学校行く準備するから」


エプロンを外しながら妹は急いで階段を上がって行った。
時刻は7時。小鳥の鳴き声と、少し強い風の音が聞こえている。

5年前 No.9

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


妹は中学三年生、俺の一つ下だ。
俺が妹に対して悩んでいる事、それは…。


――家事全般以外、つまり、見た目や中身が小学生レベルなのだ。
声も俗にいうアニメ声で、身長も小さく、中学生に見えたとしても一年だ。

まあ、俺の面倒をよく見てくれる優秀な妹だからな。
成績良し、運動神経良し、家事良し。良い嫁になるだろう。


…ああ、断っておくが、俺はシスコンではない。


「お兄ちゃん、ごちそーさま、は?」

「……ご馳走様、皿洗いは俺が帰ってきてからやるから」


妹は俺の皿と自分の皿をシンクに置いた。
もしも妹が高校生だったら確実に真代にスカウトされていたな。


「もう45分か。そろそろ行くから」

「待って、今週から一緒って言ったでしょ!」


近頃この地域近辺で変質者が多数目撃されている。
俺の妹は用心深い、かつ心配性なので、俺が送ることになった。

帰りは大丈夫らしいが、帰りの方が普通は心配になるだろう。


「…よし、っと」


妹が靴を履くのを待ち、履き終えたのを確認すると俺は家から出た。
そして妹も出たのを確認して、ドアの鍵を閉める。


「お兄ちゃん、昨日の夜、誰と喋ってたの?」

「…………聞こえてたのか」


無理はない、向かいの部屋だし、着メロもかなり音量が大きかった。
妹に聞こえてもそれは全く不思議ではない。


「…部長、だよ。クラスメートだけどな」

「女の人なの?」

「そうだけど。お前には別に関係ないだろ」


俺がそう言うと、妹は少し表情を強張らせ、少し先を歩いた。
何か俺はいけないことでも言ってしまったか?

5年前 No.10

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


それから妹は一回も振り向かず、何も喋らないまま中学に着いた。


「………じゃあ、ね」

「あ、ああ」


不穏な空気が流れ、俺達の会話はどことなくギクシャクしていた。
俺は何も悪いことをした覚えはないのだけどな。


「……………灰野、君よね?」


突然、俺の後ろで声がした。しかも聞き覚えがある。
百合でも、その他の女子でもない。

俺が振り向くと、案の定そこに立っていたのは真代だった。

昨日と何も変わらない容姿で、腰までの黒髪を風に靡かせていた。
少し強い風のせいで、制服のスカートは少々乱れている。


妹は俺を挟んで真代をキッと睨んだ。
真代はそれに驚いたように、一歩後方へ下がった。


「真代。お前もこっちだったのか」

「えぇ…まあ、そうだけど」


俺と妹を真代はキョロキョロと交互に見つめた。


「……そちらは、妹さん?」

「まあ、そうだ。灰野莉菜、こう見えて中三」

「…………どうも」


妹は不機嫌そうに真代に頭を下げ、校舎の方へ歩いて行った。
何故あんなに不機嫌なのかは、俺にも真代にもわからない。

5年前 No.11

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


何だったのかわからないまま、俺は真代と共に登校した。
真代と俺は友達ではない。それほど親しいと言うわけでもない。

そして、あれからほとんど何も喋っていない。
多分、真代もそう思っているだろうよ、多分だけどな。


なのに何故、『あの二人付き合ってんのかなぁ』とか言われなきゃならない。
俺が真代と付き合うなんて事は、天変地異でもない限りあり得ない。


「…………な、なあ真代」


ずっと下を向いて歩いていた真代が、俺の顔を見上げた。
不覚にも、美人だと思ってしまった。美人なのは事実なんだが。


「新しい部員、とは…クラスメートか?」

「それは半分正解で半分外れ」

「…………は?」


真代は唾を飲むほどの間を開け、俺に告げた。


「今日、私達のクラスに転校してくる子。
 ……………それ以上は、放課後に話す」


それだけ言って、再び真代は前を向いた。
少し歩調を速め、高校の校門を潜った。


四人目の部員とは、どんな奴なのか。
入学から大体一か月しか経っていない。

こんな時期に転校なんざ、一体何があったんだ。
親の転勤、………これが一番可能性があるな。

5年前 No.12

ひまこんぶ @sintaro430 ★rNSbHVUwmW_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「……丹葉幽香です。宜しくお願いします……」


深々と頭を下げた転校生、丹葉は、何処か暗そうだった。
喋り方、噛んだようにがたがたした爪、目の下の隈。

こいつと同じ部活になるのは、少々抵抗がある。
まあ、真代にそんな事言っても聞く耳を持たないだろうが。





「クラスメートだから知ってると思うけど丹葉幽香ちゃん」


いつも通り、放課後に俺達は部室に集まった。
既に全員知っている新入部員の名前を聞かされる。

そこら辺は省いてもよかった気がするが。


「この子は、ちょっとした秘密があるのよね」

「へぇ、秘密かぁ」


にこにこといつもの笑みを崩さない猫塚。
猫の様に細めた目から少し瞳が見える。

………目が笑っていない。


「この子は今、一万九千八百三十二回目の丹葉幽香の人生を歩んでいるの」


一万九千八百三十二回目の丹葉幽香の人生?
ついに真代も厨二病の道に走ってしまったか。

ただ、猫塚は何も言わなかった。
にこにこと、じっと、丹葉を見つめて。


俺以外の奴らは、俺と違う意味で“変人”の様だ。
こいつらからしたら、俺はただの一般人、凡人に過ぎない。


「輪廻転生、知ってるわよね」

「ああ、死んだ者がこの世に何度も生まれ変わる事だろ」

「そうよ。現在の丹葉幽香、は一万九千八百三十一回目の丹葉幽香の生まれ変わり。
 普通なら、全く他の人物、生物に生まれてくるはずなんだけど、何故かこの子は
 何度生まれ変わっても一回目の丹葉幽香と同じデータを受け継ぐのよね。
 それと、丹葉幽香って名前は、一回目とは違う名前よ。一回目の名前が分からないから
 一万回目を迎えてから丹葉幽香と言う仮名を付けられたの」


何故こいつがそんな事を知っているのだろうか。
こいつも輪廻転生をしているのか…?

それとも、真代は神かなんかで、それを知っている。
まあ、そんな非科学的な事が起こったら大変な事だが。

全国の科学者たちを敵に回すことになる。


5年前 No.13

ひまこんぶ@スランプ中 @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「……普通に接してくれて構いません……」


普通、と言われてもどう接したらいいんだ。
何百年、何千年も地球にいるであろうこいつに、俺は。
ある意味俺より年上のこいつと、友達になれとでも?

冗談じゃない。俺は科学を信じるのだから。


「信じてないだろ、灰野」

「………はっ…?」


突然猫塚が俺に声をかけた。
いつもよりもトーンが低い声で。

目だけ笑っていない笑顔で猫塚は俺を見つめた。
十秒、二十秒と時間が過ぎている。


視界の片隅に見える真代は、少しオドオドしている様に見えた。


「………輪廻転生の事、信じてないだろ?」


それは図星なのだが、本人がいる前でそんな事を言ったらお終いだ。
俺の人生はある種、終わった事になってしまうじゃないか。



「…いや、信じてる…ぞ?」


さすがにこんなに見つめられると目を合わせ辛いので、俺は視線を猫塚の後ろの窓に移した。
それでも猫塚は見つめ続けてくる。しつこいな。

こいつはいつも、俺の考えている事を当てる。超能力でも使うのか。
毎度の事ながら、甚だ不思議な奴だ。本当に人間なのか?


「……………へぇ。ならいいけど」


わざとだろう、こいつには分かっている筈だ。俺が嘘を吐いた事を。
輪廻転生なんて、信じれる方がどうかと思うのだがな。

5年前 No.14

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「あ、ちょ、ちょっと俺屋上行ってくる」


猫塚から逃げるため、俺は部室から走り去った。
廊下を走り終え、階段を登っている間も走る。

とりあえずあの部室からできるだけ遠くへ行きたかった。


あそこには変な奴が多すぎる。勿論俺も含まれると思うが。
俺以上に奇妙な、奇奇怪怪な奴等に付き合ってられるか。

そもそもあの部活に入ることを認めてしまった自分が悪い。

できればあいつ等とは一生関わりたくないところだが、クラスメートな限りそれは無理だ。
いや、クラスが違っても追いかけまわしてくるだろうな。





「―――はぁっ」

屋上のドアを開け、すぐさま四つん這いになるように倒れ込んだ。
微量の汗が額に滲んでいた。息もかなり荒い。

随分と面倒なことをしてしまった。

心臓が物凄いスピードで鳴る。
手を当ててみると、ドクン、ドクンと数秒ずつ動いていた。


どうやら猫塚達は追いかけて来ない様だ。
それはこちらにとって好都合な事なのでこれ以上の指摘はしない。


火照った体を冷やすように、冷たい風が吹いた。

5年前 No.15

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


――――ガチャ


背後でドアの開く音がした。
ゆっくりと顔を後ろへ向けると、不思議そうに首を傾げた見たことのない女子生徒が立っていた。

大和撫子と言う表現にぴったりな、艶やかに光る黒髪。
それを引き立たせるすらりとしたモデル体型が魅力的だ。
前髪は桜をあしらったピンクの髪留めで留めている。


「先客がいらっしゃいましたか。…ここに居ても宜しいですか?」

か細く、透き通った声が俺の耳に届いた。
薄く微笑んでその生徒はこちらへ歩み寄ってくる。


「あ、どうぞ」

「失礼致します」

スカートを抑えつつ、彼女は俺の隣に正座になって座った。
石鹸の様な淡い香りで何故か鼓動が早まる。

こんな素敵な女子に会えたのは何年振りだろう。
百合と最初に会ったときはこんな感じだった。
まあ、あいつが口を開いた瞬間からもうだめだと確信したが。


「確か……灰野燐さん、でしたでしょうか?」

「良く知ってますね」

こんな美少女に名前を覚えてもらえてるなんて、俺は幸せ者だな。


「ええ。慎太郎君がいつも話してくれるものですから」

慎太郎……?


俺の知り合いに慎太郎なんて名前の奴は居ただろうか。
どんどんと記憶を遡っていく。


「――あ」

「……どうか致しましたか?」

「貴方は、猫塚の……?」


「はい。私は桜ノ宮五十鈴と申します。
 慎太郎君とは家族ぐるみの付き合いでして…」


桜ノ宮……。ん?
今、俺が聞いた彼女の苗字が聞き間違いじゃなかったら、桜ノ宮か?

桜ノ宮家。それはこの町一番の貴族と言っていいほどの家系だ。
菊田崎家、桃瓦家、桐ヶ嶌家、そしてこの桜ノ宮家。


一般人は近寄ることの出来ない、立派な貴族達。
その桜ノ宮家のお嬢様が何故、猫塚と知り合いなんだ…?

5年前 No.16

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「――……かーいの君。あれ、五十鈴?」

こんなタイミングで猫塚が現れた。
もっと桜ノ宮さんに聞きたいことがあったのだが。


「慎太郎君。今日は家にいらっしゃいますか?」

「うん、行く行く」

そんな軽いノリで桜ノ宮家に行けるなんて羨ましい。
しかもこんな美人で優しそうな美少女のお嬢様と仲良いなんて。

仲睦まじそうに会話をする二人を残し、俺は屋上を去った。





「ったく、高校生活薔薇色だな。あいつらは」

別に嫉妬ではない。そんな色恋沙汰には興味はないし。

騒がしい廊下を歩く。
窓から差し込む橙色の夕陽が頬を温める。


――どんっ


「あ、すみませ……ん……」

全く、俺としたことが先輩にぶつかってしまった。
ここからなんと謝ればいいのだろうか。

すみませんっした! と、土下座すればいいのか?
それとも、焼きそばパン買ってきます! と言えば?

何故パシリ方向へ奔ってしまうだ。俺の思考は。


「うむ? 下校放送はとっくに鳴り終わったが?」

この人何処かで………生徒会の腕章をしている。
しかも先輩、どこかで見たことがある…。

俺が先輩を見るのは入学式かパンフレット位だ。
入学式はたくさん先輩がいるのでいちいち顔なんて覚えられない。


――だが、一人だけ、覚えられる可能性のある人物がいる。


「せ、せ、せせせ、生徒会ちょっ!!?」

思わず驚いて指さしてしまった。
昔皆習ったはずだ、『人を指さしちゃいけません!』と。


「――――ああ。俺が生徒会長の一番ヶ瀬九十郎だが?」

「すみませんでした。一番ヶ瀬会長」

「それは構わんが、早く下校しないといけないぞ」

「はい。帰ります。今すぐ帰ります。星の速さで帰ります」


若干苦笑いを浮かべて会長は俺の横を通り過ぎて行った。

何故伸ばしているのかわからない長い黒髪ポニーテールを靡かせる。
甘い様な香りが暫く溜まり、まるで女子がいた後の様だ。

5年前 No.17

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「ただいま」

「お帰り、燐君」


燐君…? 俺をそう呼んでいるのはそう、百合だけだ。
なんで百合が家にいるんだ? 莉菜は部活があって今日は帰るのが遅いはず。


「どうやって鍵開けた?」

「じゃーん、あ・い・か・ぎ★」

百合はポケットから鍵を出した。
それは紛れもなく、俺の家のドアの鍵の形をしたものだった。


「肉じゃが作ってきたんだ。冷めないうちに食べてね?」

ピンクのエプロンを脱ぎ、百合は台所から肉じゃがを持ってきた。
見た目も悪くなく、匂いも普通の肉じゃがだ。


「なんだか新婚さんみたいだねー」

「どこがだよ」


こいつと結婚したことになってしまう。それは回避したい。
百合と結婚するくらいなら真代と結婚した方がマシだ。

最高は勿論桜ノ宮さんなんだがな。


「………綺麗だよなぁ、ほんと」

「え、私が?」

「違う。お前なんかじゃない。桜ノ宮さんだ」

「へぇー。桜ノ宮さんって燐君と同じ学校なんだ」

「まあ、運のいいことにな」


確かに、桜ノ宮さんは何故この高校に通っているのだろう。
良いところのお嬢様なら、私立とか女子高とか行けたはずだ。

まさか、猫塚を追ってきた…とかか? いや、百合でもあるまいし。
さすがにそれはないと思う。

5年前 No.18

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「ん、美味い」

これを桜ノ宮さんが作ってくれたら更に美味しく感じるだろう。
猫塚は恐らく桜ノ宮さんの手料理を食べたことがある。

あいつに生まれてくれば幸せだったのだろうな。


「――ただい、ま…? 百合姉!? どうしたの?」

「あ、莉菜ちゃん。肉じゃが食べる?」

「さっさと帰りやがってください、百合さん」


莉菜と百合を放置すると、延々と喋り続けるはずだ。
こういう場合はさっさと帰らせるという対処が最善と、今までの事から学ぶ。


「ちぇっ。また来るね、ばいばい莉菜ちゃん!」

「うん。今度肉じゃがの作り方教えてね!」

別れ際にまでよく奴等だ。
俺だったら、『じゃあな』だけで済ませている。





今日も日誌を書くとしよう。


「ここ、開けてくれませんかね」

心を落ち着かせ、日誌を開いた俺の邪魔をするのは誰だ。
開けてくれ、だと? 自分で開ければいいものを。


「どこを開ければいいんだ?」

「押入れです」


渋々押入れを開けると、雪崩の様に布団と一人の男性が落ちてきた。


ドスンッ

重々しい音が響き、『お兄ちゃん五月蠅い!!』と莉菜が叫んだ。


「だ、大丈夫か……?」

「いったたた…、ああ、お気になさらず。私、座敷童の白夜と申します」


着物姿に白よりも銀髪に近い髪。
百歩譲ってこれが本当に座敷童だったとすると、何故狐耳が生えている?

「不思議ですか。狐耳が」

「あぁ、そりゃもうな」


「私もよくわからないんですよね。元々こんな感じで」

そう言いながら白夜は頭から生えた耳を撫でた。

5年前 No.19

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

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5年前 No.20

ひまこんぶ @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

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5年前 No.21

糾哭((元:ひまこんぶ)) @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

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5年前 No.22

糾哭 @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


長い廊下を歩き始めて数分、応接室はどの部屋なのだろうか。
一体いくつ部屋を作ればこの家の家主は気が済むんだ。


「――こちらです。歩き疲れたでしょう、紅茶を御用意させております」

「すみません」

ドアを開け、俺と桜ノ宮さんは応接室に入った。
想像していた通り重厚な気質を感じるその部屋には、空気に合わない絵が飾られていた。


狐の仮面を持った青年と思われる人物が、こちらに嗤いかけている。
そしてその青年の足元には九本の尾を持った狐が。

何本もの鳥居が背景となっており、何処か不気味さを感じられた。


「これは…………?」

「『祀りのあとに』という作品らしいです。慎太郎君の高祖父様が私の高祖父へ贈られた物らしいです」


作品名さえも妖しいその絵の中の青年は、誰かに似ている気がした。

――――…猫塚、か? いや。これは猫塚の高祖父が贈ったものだ。
年代的に猫塚は存在していないか、こんなに年はなっていない筈。


「この狐…………まさか、白夜…?」

「あら。よく名前知っていましたね。有名な狐なのですか?」

「え。この狐の名前って白夜と言うんですか?」

「ええ、御爺様が言ってました」


もう俺の人生が奇妙すぎてついていけない。
誰か代わってくれればいいが、それは勿論無理なのでなるべく関わることを避けるしかない。

5年前 No.23

糾哭 @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


俺達は暫く話をしていた。
これは後に必ず話すことになるので今は省いておこう。

それよりもこの家のハーブティーは美味い。
一体何処の国で作られた茶葉で淹れているのか少し興味がある。


「そろそろ登校する時間ですね、行きましょうか」

ティーカップを口から離し、桜ノ宮さんは呟いた。


「え、もうそんな時間でしたか」

「遅れてしまいますよ」

悪戯そうに微笑み、そのまま席を立った桜ノ宮さんは奥の部屋へ消えていった。
俺も残りのハーブティーを飲み込み、荷物を持って席を立った。





「朝の空気は気持ちいですね。とても心が穏やかになります」

長い髪を微風に靡かせ、俺の先を歩く桜ノ宮さんが言った。
その言葉には俺も同意する。

寝ている時間の次に心地良いと感じる人も少なくはないだろう。


「――猫塚君、あの木の下に居るんですよ。毎朝」

坂道を登り終える所で上の方まで見えた桜の木を指さした。
桜ノ宮家付近に桜の木。その下に猫塚、か。

駄洒落の様だと感じるのは俺だけなのか。

「毎朝って、休日も?」

「ええ。雨天時も居るんです。ずっと神社の方を眺めていて」


神社、と言えばこの街で一番有名な狐猫神社……うん?
狐と猫って、あの絵画に似ているような気がするのだが……考え過ぎか。


「ほら、今日も居ましたよ」


台詞通り、猫塚は桜の木の下で立ち尽くしていた。

5年前 No.24

糾哭 @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


「慎太郎君!」

「……………ああ、五十鈴か」

手に握っていた何かをポケットに突っ込み、猫塚は微笑を浮かべた。


――こいつも、こんな笑い方をするのか。
いつも明るくて爽やかな、少しうざったい笑い方ばかりしていた猫塚からは想像できなかった笑み。

まるで、何か大切な人を思い出す様な、優しい笑顔。
別に俺は男が好きな訳ではないが、不思議とそれを綺麗だと思った。


猫塚を知る度に謎は深まっていく。
それと同時に、俺の知らない猫塚がどんどんと顔を出していって。

でも、それを追ったとしてもそれから先の事は何も分からなくて。



「――――…なあ、猫塚」

「ん?」

「単刀直入に聞くが、お前は…………――――――」


これを聞いたら、俺の人生は狂ってしまうのだろうか。
少なくとも何も起こらないなんて事はないと思う。

多分前の自分だったら平凡に執着しているから聞く事を拒んでいた。
だが、今はこれを知らなければいけないという思いの方が強かった。





「お前は――――――――――――……一体何者なんだ?」



一瞬、音が失われた様な感覚が俺の身体を奔った。

5年前 No.25

糾哭 @sintaro430 ★MT8oe8AdLG_Tl2

⇔誇り高き変人同盟部の結成。


ふぅ、と一回猫塚は溜息を吐き、俺に視線を合わせた。
いつもの目とは違う、ハイライトの入らない瞳。

まるでいつもの猫塚とは別人の様なその瞳を俺は、吸い込まれるように見ていた。



「――――…アメリカのオハイオ州クリーブランドにある噴水」

「は?」

「アムリタ、メソポタミアのギルガメシュ叙事詩、北欧神話のアース神族、
 竹取物語の最後に登場する秘薬、錬金術の霊薬エリクサー」

「お前、何を言って……」


「これらの共通点、何だか分かるか?」


そんな事、分かるわけないじゃないか。
俺はただの平凡で並大抵な生活を送っていた“はず”の高校生だ。

おかしいのは周りだけで、俺自体がおかしいのではない。



「分からないよな。…………正解は、不老不死」

「なんで今そんな事を…―――――あ」

「やっと気付いたんだ。鈍感にも程があるよ、灰野」


前触れなんて物もなく、それは唐突にやってきた。

俺の考えが合っているのならば、こいつは。
こいつの正体は………。



「お前、不老不死……なのか?」

猫塚は、何も言わずにただ薄い笑みを浮かべた。

5年前 No.26
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