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Two Style Girl

 ( 小説投稿城 )
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'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N

序章□夏のある日の日記

 「おっと……イベントが」
 相変わらず眠い。昨日からずっと購入したばかりのエロゲー (全年齢対象)をやっているからだろうか。
 僕の部屋の時計は2時41分と、古風に言うと草木も眠る丑三つ時な時間を41分もオーバーしていた。

 ――自分の日記で自己紹介をする必要は皆無なのだが、作者がしろしろと五月蠅いので一応紹介だけはしておく。

 僕の名前は牧野美羽。普通の高校に通う、成績もそれなりな高校2年生だ。あ、そうそう。女だ。
 そりゃあ”僕”という一人称は佐々木さんのようなもので、ツイッターやミクシィでのオタク友達ぐらいにしか使っていない。
 「ちょっと解らないコマンドだな……2ちゃんねるで調べてみようかな」

 ちなみに今日は火曜日深夜である。明日も学校という憂鬱なものはある。
 それなりに友達と思っている人は多いが、学校の皆は”学校のあたし”しか知らない訳で、”ノーマル”の僕は知らない訳だ。

 どっちかというとあたしモードの方が作り性格なんだから、やっぱり僕には友達がいないのかも知れない。

 ――やはり僕には、理解者などいないのだろうか。


  2 :名無しさん@げいむますたあ:2010/07/06(火) 02:44:16.55 ID:VCfgS3iH7
   それなら、ナナコが告白するシーンでシフトキー7回連打

 いくらネットで僕を理解してくれている人がいても。
 現実に、僕の理解者はいない。




 ――――僕は、いつでも、孤独だ。



ご挨拶□by 作者
 こんにちは。作者の'自称です。
 まだまだ未熟な点もあるかと思いますが、
 ぜひ、最後までおつきあい頂けたら幸いに思います。

小説サイト
 堕天使の忘れ物。 - http://www.google.co.jp/search?hl=ja&rlz=1B3GGLL_jaJP364JP364&q=%E5%A0%95%E5%A4%A9%E4%BD%BF%E3%81%AE%E5%BF%98%E3%82%8C%E7%89%A9%E3%80%82&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=
  (環境によって、検索結果の先頭に来ない場合があります。)

2010/07/09 23:02 No.0
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'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_8T

一章□飛べない鳥

 朝だ。
 眠い中目をこすって、自分のスイッチを切り替える。
 ――モノローグはこのままでやらせてもらうよ。あたしなんて言いにくい。

 靴をしまっていると、玄関で声をかけられた。

 「おっはようっ、みうたん」
 ちなみに僕はみうたんとか言うあだ名が付いている。
 今声をかけてきたのはクラスメイトの神崎亜弥。

 「おはよう、あ〜ちゃん。今日も元気ね」
 「うん、もちろんっ」

 彼女はいつも元気だ。
 「あ、じゃあね」
 走って教室の方へ向かっていった。

 /

 教室に入る。
 「みうたん、おはよー」
 数人が僕に声をかけてきた。
 「おはよう、つぐ、瑠香」
 その後は特に特記すべき事態も無かった。

 ……じゃない、一つ忘れていた。


 2年A組に、転校生がやってきた。
 7月が始まったばかりのこの中途半端な時期に。


 「小澤慎一です。よろしくお願いします」
 そう自己紹介した彼は、敬語が似合いそうなイケメンだった。
 古泉君な感じを感じるが、彼に超能力なんて使えるわけがないだろう。
 これが特記すべき事項かって?



 結構重要な事なんだ。彼の存在は。

2010/07/06 21:31 No.1

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_8T


 彼が転校してきて2日目。体育で活躍し、それなりに勉強できてイケメンの彼の噂は、そこら中に
 広まっていた。僕は興味がないが、同級生の女子はあんなのがタイプなんだろう。

 「牧野って、あんなのに群がったりはしないよな」
 「ええ、別に利点ないし。……てかさ、北村君は彼女取られて悔しくないの?」
 「そりゃあ悔しい。2日連続で俺の天使は向こう側にいっちまってるしな」

 彼は北村翔。ツッコミ役というのが一番説明できる。
 作者が一番気に入っているキャラクターというのはやはり出演回数が多い。

 ――彼にだって、僕の本性が知れ渡ったら、話しかけてもらえなくなるだろう。

 そりゃあ趣味だし、オタク趣味を否定する気はないけれど。
 世間から隠しておきたい部類のモノだろうなあ、とは薄々思っている。

 /

 学級日誌をつける前に、化粧室に行く。
 昨日チャットで言われた通り、オタク友達から何か電話が来るだろうと思い、携帯の電源を入れ直す。
 ……オタク友達の着信音は思いっきりアニメのOPだから、結構危険なんだよね。
 放課後。H.Rの後に学級日誌をつけるという日直の責務のおかけで帰宅が遅くなった。

 「えっと、さぁ。小澤君」
 「なんでしょう、牧野さん」
 「帰らないの?」
 「いえ」

 ――――彼がまだ、教室に残っていた。テニス部の練習を頬杖をついて眺めている。

 「誰か、待っているの?」
 「あなたをです」
 「…………エイプリル・フールはと」
 「とっくに過ぎたけど? とでも言いたいのでしょうか。残念ながら、マジなんですよ」

 二人の間に、沈黙が訪れる。
 あまり話したことはないし、なぜ自分を彼が待っているのかは解らない。
 まあ、とっとと仕事を片付けてしまおう。そう思った。

 /

 話の流れで駅前の洒落た喫茶店に赴くことになる。
 彼は僕……じゃなかった。”あたし”と、何を話したいのだろう。

 「お茶はおごります。あ、僕はシナモンティーを」
 「じゃあ、あたしはアイスミルクティーで。あとショートケーキ」

 静かになる。話題を変えてみようかと、自ら話しかけた。

 「シナモンティー、好きなの?」
 「いえ、そんなに好きって訳でもないんですけどね。昨日別の方とお茶した時に、頼んでいたものですから」
 「ふうん」

 「重要な話をして、いいですか?」
 「え、あ、うん」
 「……思い違いかもしれませんが、あなたって、学校での自分を作ったりしてませんか?」

 一瞬、空気が止まったように思えた。
 なんで? どこで気づいた? 冷静になれ。手が震えているぞ、僕。

 「な、なんで……」
 しまった。冷静どころか、動揺しかしていないじゃないか。
 「いえ、何となく。愛想笑いといいますか。作られた性格って感じがして」
 「……気のせい……じゃ、ないかな」
 「そ、そうですかね」

 店員が、お待たせしましたといいながら、シナモンティーとアイスミルクティー、ショートケーキを運んできた。
 僕と小澤君を一度ずつ見たあと、僕に微笑んだ。何を言いたいんだろう。

 その時、誰かが図ったんじゃないかと思うくらいに丁度良く携帯電話が鳴った。

 着信メロディは聞き覚えのある……ああ。そういえば、電源を入れたままだったっけ。
 僕は冷や汗が止まらない。


 ――オタク友達からの着信が、けたたましく響いた。

2010/07/06 20:46 No.2

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_8T


 「えっと、あの……電話、しないんですか?」
 「え、あ、えっと……いいの。別に」
 とっさに僕は電話を切ってしまった。ごめんなさい。

 「えーっと……あの、そういうモノが好きなんですか?」
 「え? 何が」
 もう解っている。

 「その……アニメ、とか」
 「…………絶対、誰にも言わないでよ」
 「ハイ。絶対、言いません。言いませんから、フォークを僕に向けるの止めて下さい」
 「解ったならいい」
 フォークをしまう。まだ手をつけていなかったショートケーキを食べ始める。

 てか、なんでアニメのOPだって解ったんだろう。小澤君。
 「え? あ、よくインターネットとかでそんなのを聞いたことがあるので」

 ……モノローグとしたつもりだったのに、口から発せられていたようだ。

 「……やっぱり、みんなあたしを嫌うかなぁって」
 苦笑いした。彼も、苦笑い。

 この趣味を理解してくれる人がいるのだろうか。
 とりあえず、中学にはいなかった。

 //

 『ちょっとカナぁ、こいつ動かなくなったよぉ?』
 『大丈夫よ。死んだら死んだでどうにかなるわ』

 中学時代は、3年間資産家の娘・葛城佳奈に虐められていた。
 あいつは人気者のせいか、クラスの大半があいつに従うだけ。
 僕はずっと、殴られて、蹴られて。

 だから、区外の学校まで来たんだ。
 桃崎中の卒業生が1人もいない、この地で。

 彼女は、そのまま桜東高校に進学したらしい。地元のね。

 //

 「そんなことはないと思いますよ。趣味が多いあなたもなかなか魅力的だと」
 「お世辞なんて求めてないんだよ? ただ、あたしは優しさが欲しいだけ」
 「……誰も、本当のあなたを理解できていない、ですか」
 「…………なんで解ったの」

 「あなたは自分を偽っている。虐めの対象にならない為に、必死に”偽の自分”を創り上げている」
 僕のことなんて、誰も理解していないと思っていた。

 「そんなことしなくても、あなたはあなた。……じゃないですか?」


 初めて、本当の自分を理解してくれる人が現れた。


 ――決して、僕は強くない。
 誰かが理解してくれないと、いつまでもそこを動けない。自分で、立ち上がれない。


 ――だからいつも、涙を流していた。
 孤独でいい訳じゃない。自分を隠すだけで、こんなにも辛いなんて思っていなかった。


 ――ただ、隠さなければいけないと思った。
 本当の自分は、誰も理解なんてしてくれないと思っていたから。

 「……牧野さん、大丈夫ですか」
 小澤君の言葉で我に返る。

 僕は、涙を流していた。
 やっぱり、嬉しいんだな。

 ――本当の自分を理解してくれた人が、いたから。

2010/07/07 21:26 No.3

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_8T

二章□トビラ

 「ただいま」
 あの後しばらく小澤君と話し、家に帰ってきたのは7時すぎ。
 ちなみに僕の母と父は現在旅行中。
 僕の幸いというのは、両親がこういうアニメやゲームに対して寛大だった所だ。
 『成績が安定しているから別にいい』という許可ももらえたことは嬉しい。

 「おかえりぃ」
 リビングルームの方から姉が飛び出してきた。
 牧野つばさ。僕の姉だ。
 ちなみに羽とか翼とか空を飛ぶ系の名前なのは父親が航空会社のパイロットだからかも知れない。
 「遅かったね。とらのあなにでも行ってたの?」
 「ううん、クラスメイトとカフェで一息ついてた」
 「何か、あったの? ……あんた、クラスメイトと放課後まで接触すること嫌ってたじゃない」
 「嫌ってた訳じゃないんだけどね。カラオケとかなら行ったし」
 姉は当然僕の趣味も知っている訳で。家では”僕”としか一人称は使わない。
 クラスメイトが家に来た時は一時的に姉の部屋にDVDとかを避難させてもらっている。
 「とりあえず、ご飯出来てるよ。食べる?」
 「うん」

 /

 いつものように、僕は掲示板サイトへアクセスした。
 このメビウスリングで、アカウントを持ってもう数ヶ月になる。
 最近初代にログイン出来なくなって、新しくアカウントを作ってしまったが。
 僕は、自分のアカウント"wagnaria"にアクセスして、日記を書いた。
 ちなみにアカウント名は好きなアニメからとっている。

 すぐにコメントが来て、それに返信をする。
 「友達に打ち明けてしまえ」……ごもっともな意見ばっかり、だな。

 「いつまでも悩んでいても仕方ないか……。よし、ゲームやろう」
 僕は、2ちゃんの攻略スレッドを読みながらゲームを起動した。
 自分で自分が好きな数少ないポイントは、ポジティブな点だろうか。

2010/07/07 20:37 No.4

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_8T

 朝だ。
 木曜日という微妙すぎる曜日は僕にとって一番嫌いな曜日だ。
 いつものように家を出ると、小澤君が待っていた。

 「……おはよう」
 「おはようございます」
 「なんでいるのかな」
 「いえ、姫君は迎えに来た方がよいかと思いまして」
 「姫君、ねえ……」
 結構苦手だ。
 「で、僕に用事?」
 「……僕には、本来のあなたとして接してくれるのですね。嬉しいです」
 「お世辞は別にいいよ」
 「……いえ、学校に行きましょう」
 「言われなくてもね、行くつもりだよ」
 僕と小澤君は、ゆったりとスローペースで歩き出した。

 /

 僕の家は清蘭高校から8分弱という好立地に面している為か、
 学校に行くのに苦を感じたことはない。
 あ、でも駅は学校の向こうだからかなり遠いけど。
 「昨日の課題は終わらせましたか?」
 「課題? そんなのあったっけ」
 「あったじゃないですか。英語と現代国語のプリント」
 「……そうだっけ」
 「ええ。バッグに入ってます?」
 バッグの中をひたすら探してみる。……あ。
 「ええ、それです」
 「……写させて?」
 涙声。
 「ええ」
 ああ、もう死にたい。成績良くないとアニメ見られなくなる。
 現国の先生は提出物に厳しいからなぁ。

 /

 教室に行くと、何故か驚いた表情でこちらを見ていた。
 「これはいったい何なのかな」
 「さあ」

 女子ほぼ全員が睨んでくる中、僕は華麗にそれをスルーしつつ自席に座り、
 先ほど小澤君から借りたプリントを写していた。

 小澤君はどうやら逃げ切れなかったようで、
 男子からも (なぜ?)尋問という名の地獄が体育館裏で極秘裏に行われたそうで。

 /

 「えー、次。このマセルファイツの定理を使うと、このxは何になるか。……えー、牧野」
 「はい。4891です」
 おおっ、という声と共に、先生が悔しそうに
 「ここは授業でやっていないのにな。自習でもしているのか?」
 なんて聞いてくる。こいつ、僕に嫉妬してるのか?
 「ええ。まあ、簡単ですよね」
 と、先ほど僕を睨んだ女子群を見ながらそう答えた。
 命? 知ったこっちゃない。きっと小澤君がどうにかしてくれるさ。

 /

 「遅かったね」
 放課後。誰もいない教室で小澤君を待っていて、彼がやっと来た。
 「ええ、そりゃあもう遅いに決まってますよね。男子に睨まれて、女子もペットボトルで殴るんですよ」
 「そいつはお気の毒に」
 「しかも2リットルの奴にちゃんと水が入っているんですよ? 重すぎます」
 「あららw」
 「笑い事じゃありませんし、なんとなく"w"付けないで下さい」

 風の音を聞いた後、
 「……僕達さ、結構仲良くなったよね」と彼に言う。
 「ええ。あなたはとても魅力的ですね」
 「…………帰ろうか」
 「ええ」
 教室を出ようとして、振り向いて言う。
 「あ、そうだ。僕を理解するなら、アニメぐらい見たら?」

 ――小悪魔的表情は僕には似合わないと解っているが、彼に向かって笑ってみた。

 /

 翌日。
 朝に小澤君を見ることなく登校してしまった。
 風邪で休みかと思っていて教室に入る。
 「おはようございます」
 「おはよう……って、どうしたの?」
 目にクマがあった。
 「いえ……昨日のあなたのアドバイス通り……3本ぐらい見てみたんですが……寝不足で」
 アホだ。
 「明らかにアホだね」
 まあ、そこがいいんだけどさ。

2010/07/07 21:06 No.5

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_8T

番外□月曜日の週末

 「小澤君。今日は月曜日だけど、学校は休みだよ? どうしてそこに立っているのかな」
 「いえいえ。どうしても逢いたくて」
 恋人じゃあるまいし。

 月曜日。うちの学校は私立だから土曜日は毎週あるはずなんだが、
 今年からなんか改革プロジェクトかなんかで土曜日は隔週になり、2週に1回は休みになっていた。

 ……月曜日が休みな事に対して全く説明になっていないね。
 先生が隣町の鷺月高校の授業を全員で見に行くとかで休みだ。
 僕はせっかくの休日だから、大量に出された古文・物理・歴史の宿題を一気に終わらせた。
 全部終わったのは3時すぎ。一度仮眠を取って、5時に起床。ずっとゲーム見てた。

 そして10時すぎ。アニメイトに本日発売のDVDの限定版があるという情報を思い出し、
 僕はアニメイトへ急ごうとしていた。
 勝手に名前を使って申し訳ないが、宣伝になるだろうか。うん、それ無理。

 「どこかへ出かけるんですか? ご一緒しますよ」
 「いいよ別に、今日はアニメイトだから」
 「ぜひ行かせて下さい」
 彼は、笑顔を崩さないまま言った。

 /

 「ここがあの伝説のアニメ専門店……かなり、広いですね」
 どうせ行くのだからと小澤君の言うがままに池袋本店に連れてこられた。
 僕達の住む場所の沿線は微妙に都心地区から外れている。
 「入るよ? あ、そうそう。単独行動は禁止。はぐれるから」
 「解りました」
 本当に解ったのだろうか。微笑みを崩さない。いつもはこんな微笑んでないのに。
 「てか、何か買うのでもあるの?」
 「ライトノベルを少々購入しようかと」
 意外だ。まあ昨日はアニメ見て寝不足とか言っていたが。
 「何を買うの?」
 「涼宮ハル○の憂鬱でも購入してみます。超能力者で爽やかなイケメンの彼が妙に親近感を感じて」
 「キミは超能力なんか使えないじゃないか。使えるの?」
 「ははは」
 彼は僕の質問には答えずに、店を進んだ。

 「ここがDVDコーナー。これ買うから、付いてくるんだよ?」
 「ええ、もちろん」
 レジには若者の青年から真面目そうな女子高生が並んでいた。
 ……あの女子高生の制服をどこかで見たような気がするが、気にしない。

 「……牧野さん。あの制服、清蘭のですよね? スカートの線の学年カラーが僕等と同じ青なんですが」

 嘘だ!! と思いながら、その彼女を見る。
 凝視してみる。
 制服でアニメイトに行くという自殺行為をしている彼女は……


 ――久保さん、だ。
 久保眞美さん。どこかの財閥のお嬢様で、成績もかなり良いがコギャル。
 僕に仲良くしてくれる一人。あ、”あたし”の方だけどさ。

 なんでこんな所にいるんだろう。
 彼女とアニメの話をした覚えはない……ってか僕は興味ないように振る舞っているからね。
 自分をさらけ出すといつか嫌われるって解っているし。

 「久保さん、だね」
 「久保眞美さんですか? あの」
 なんでフルネーム。”あの”って何。
 「いえ、鷺月に彼女の妹さんが在籍していまして。同級生でした」
 「妹なんていたんだっけ?」
 「異母姉妹ですね。久保沙紀さん」
 「ふうん」
 そんな衝撃の事実があったなんて。

 僕の2つ前。変装なんてしていないし、振り向かれたら完璧にバレる。
 振り向くな、振り向くなと必死に神にお願いする。マジでお願いします、キリスト。僕は仏教だけどね。


 ――振り向いた。


 神様のバカヤロウ。




 「あ、牧野さん。こんなところで、どうしたんですか?」
 「いや、小澤君がここに興味があるらしいの。ただの付き添いよ、付き添い。久保さんは?」
 必死に”あたし”口調にしながらウソっぱちを言う。
 後ろで「え? ちょ、なんでですか」という声が聞こえる。空耳だな。
 「好きなアニメDVDが発売されたんで、買いに来たんです」

 ――あれ、そんな趣味あったの?
 ということを本気で問いたいが、後でもしバレた時にやっかいになりそうだ。
 「へえ、そうなんだ。あ、小澤君。キミの欲しいのも、これよね?」
 僕は久保さんにバレないように小澤君をぐいぐい押しながら、そう言った。
 「え、ええ、はい。そう、それなんです。その…………えーと、そのDVDは」
 ごまかしながら言っている。ぐっじょぶ。

 /

 「たくさん……買いましたね」
 「荷物持ち (笑)がいるからね」
 「僕荷物持ちですか!?」
 「うん」
 「……はぁ」
 大きな溜息。
 「ま、楽しかったよ。ありがとね」
 「こちらこそ」

 今日はとっても充実していた。
 こんな月曜日の週末なら、いつでも来て欲しいな。

2010/07/08 20:56 No.6

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N

三章□センチメンタル

 「『それってやっぱり2日後じゃねw』と」
 私は、今日もメビウスリングに繋ぎ、2ちゃんねるを読みあさり、
 アニメを見ながら、ほのぼのとPCの前に向かっています。

 「お嬢様。シナモンティーをどうぞ」
 「ありがとうございます、富田」
 私の名前は久保眞美。普通の女子高生です。
 私の父は大事業に成功し、今では知らない人間はいない程の大企業の社長に上り詰めました。
 そのせいか、この家はやけに広く、執事の富田やメイドの三枝が雇われています。
 5月頃、私はあるツンデレ少女と穏やかな少年と友人になり、それからはずっと楽しい日々を
 過ごしています。

 最近はほぼ全員のクラスメイトと話したり、リア充な日々を過ごし続けています。

 そんな私の最近の日課は、メビウスリングのユーザー・Cloudyさんのアカウントにコメントすること。
 このメビウスリングのサイトは、随分前から小説書いたりいろいろ活動しているのですが、
 最近になってアニメの話が合うこの人とよく話しています。
 ばざーう゛という筆名で、いろいろな所に書いていたり。

 「あっ、と……コメントだ」
 Cloudyさんのコメントに返信、返信、返信。
 ネットでも楽しい日々が過ごせて、私はきっと幸せ者です。


 この人は、学校では素の自分を隠しているらしいです。
 自分がオタクである事で前の中学校で虐められていたと、私にすべて話してくれました。
 時々センチメンタルな感じになって、私も涙を流してしまいますが。

 自分を隠して、いいことなんて……ないんです。

 それは、高校に入学して変わろうと思って挫折した私が、一番知っている事ですから。
 2年まであのままのペースで行って、結局私はあの2人と弱いまま闘って、負けた。


 ――自分なんて、さらけ出さないと意味はないんです。

 /

 またばざーう゛からコメントが来ていた。
 僕は"wagnaria"のアカウントでCloudyとして活動している。
 前のアカウントはパスワードを忘れちゃって放棄しちゃったけど。
 ちなみにばざーう゛というのはネット上での親友。
 僕の悩みを打ち明けられる唯一の人だ。
 彼女は一時期仮卒していたらしいが、また復帰している。
 七夕の日に、帰ってきた。

 ――私は、ここにいる。
 そう叫んで。
 いや、シリアス調に言ったけど、まあ普通に帰ってきた。

2010/07/09 20:24 No.7

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N


 とりあえず清蘭にメビウスリングで活動している人がいないのはいつか調べたことだし、
 僕は本性をバラすことなく気軽に活動出来るって訳なんだよね。

 /

 我が清蘭高校は、この東京都でそれなりに有名な高校で、
 名門の霞ヶ関高校や白鷲高校なんかと並ぶ学力を誇っている。

 どんぐらいすごいかっていうと、たとえば小学校の頃から塾に通い詰めな子供の親なんかが
 「ほら、あんた清蘭目指すんでしょ! そのまんまじゃ入れないのよっ」と言うほど。

 霞ヶ関や白鷲は中高一貫で高校からは入学不可になっているが、清蘭はそもそも附属中学校がない。
 というか、近年の少子化の影響で昨年度卒業生を持って廃校してしまったのだ。
 このクラスで言うと、あ〜ちゃん (神崎亜弥。たよれる学級委員)は付属中学校出身。

 で、なんでそんな学校の解説をしなければいけなかったのかと言うと。

 「そんなにレベルが高いんですね、清蘭って」
 「うん。って、キミも受けたんじゃないの? 転入試験」
 「…………簡単でしたよ? 実際僕は満点取りましたし」

 フリーズ。
 ちなみに、転入したばかりの小澤君に学校のことを説明している。 by喫茶店。
 ていうか、Wikipediaに載ってるんじゃないのかな。
 てか。

 「ま、満点……?」
 「ええ」
 「じゃ、じゃあ……来週にある期末テストは?」
 本来であれば期末は9月になるんだけど、学校行事の都合かなんかで、今年は
 中間と期末の間に3週間しかないと言う、ある意味ラッキーなスケジュールになっていた。

 ほぼ中間とでる問題は相違無いとは思うが、物理だけは駄目な僕にとってそれは悪魔の呼び声のような物だった。
 てか悪魔だ。ふざけんな。

 「小澤君」
 「ハイ?」
 余裕の笑顔。ブッ殺――!!

 「え、ちょ、牧野さん、腕が、やば、死ぬ、死にますって」
 「二回……死ねぇ――――っ!!」

 ここが喫茶店だという事も忘れて、小澤君を半殺ししていた自分を止めたい。
 後に店長が出てきて、「店で暴れたんだからお金ぐらい」と言われ、小澤君のポケットマネーが消えたのは
 言うまでもない。

 なんか……ごめんね。

2010/07/09 21:57 No.8

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N


 僕はメールアドレスなんかを使い分けている。
 厳密に言うと、あれだな。携帯とPC。
 携帯が”あたし”、PCが僕、というように。

 僕は、ベッドに寝ころんで、携帯電話をいじっていた。

 電話だ。相手は久保さん。

 「久保さんは、インターネットとかやるの?」
 『はい。それはもう毎日ですね。掲示板サイトとか』
 「2ちゃんねる、とか?」
 『そこもですけど、最近はメビウスリングでしょうか』




 ――耳がおかしくなったかな。




 「メビウス……リング?」
 『ええ。結構いいですよ。日記書いたり、つぶやいたり。牧野さんもそういうのやればいいのに』
 ごめん。やってる。

 「アカウントとかもあるの?」
 探ってみる。好奇心は止まらない。何気なくマイメビ申請しておこう。
 『ええ。…………ばざーう゛っていうハンドルネームで書いてます。"placeworld"って意味不明なアカウントですが』






 ――――ちょっと……ちょっと、待て。
 何でだ。

 何で……僕の秘密を知っている人が、クラスメイトだったんだよ。

2010/07/10 22:50 No.9

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N


 「そ、そうなんだ、あはは」
 明らかに挙動不審だ。僕の弱点って、予想外の事にキョドることじゃないのかな。
 思えば小澤君のときもそうだっけ。
 『……? あの、どうか……しましたか』
 「い、いや」
 『…………牧野さんもやってるんですか?』
 「………………」
 下手に答えると負けだ、という意思を作者は完璧に無視したようだ。

 『……アカウント名、は……』
 「…………」
 『あの、牧野さん……? 正直に、言ってくれませんか?』
 ここで嘘をついても僕に利点はない。すぐにバレるから。

 『……あの……牧野、さん』
 「……筆名で、いい?」
 『あ、はい』

 もう”あたし”の栄光は終わりにしよう。


 /


 「あの、倉沢さん。なんであなたは教室で着替えて……」
 「………………みんな帰ったかなーって思ったんだもん」

 どうも。小澤慎一です。
 先生に「レポートが未提出」だと呼び出され、2、3時間ほど教育相談室で尋問を受け職員室に戻り、
 「お前が持ってないって言っても俺も持ってないんだよ!」と先生が勢いよく引き出しを開けると……

 ……僕のレポートがくしゃくしゃになって入っていました。
 そんな茶番は前、クラスメイトの北村君も同様の被害を受けたようです。

 今日は元々遅い日なのですが、時計を見ると既に7時を軽く超えていました。
 教室にある鞄を取りに行こうと、教室のドアを開けると……。

 クラスメイトの女子・倉沢飛鳥さんが上半身裸で (後ろを向いていたので胸は見ていません。安心)、
 今スカートに手をかけて脱ごうとしている場面でした。

 一回ドアを勢いよくすぐ閉め、もう一回開けその状況を確認します。

 そして冒頭へ。


 「いや、なんで学校にいるんですか?」
 「……いろいろあってね」

 ただ、僕が驚愕していることがもう一つ。


 「あの……何で、その……下着を身につけていない……ん、でしょうか」
 エロスです。完璧に。
 作者も同じような体験はしています。

 ……ただ。
 この質問によって、何故か僕はダブルで災難に巻き込まれる事になるようです。

2010/07/11 17:02 No.10

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N

四章□アゲイン

 前回のおさらい。
 教室のドアを開けると半裸のクラスメイト。終わり。

 いや、終わりじゃないですよ。

 とりあえず質問。
 「あの……何で、その……下着を身につけていない……ん、でしょうか」
 「……何で、解ったの? あたしが、男だってこと」


 いや、何も解ってないです。落ち着いて下さい。そのカミングアウトしなくていいです!!

 「へ? な、何がですか?」
 倉沢さん (半裸クラスメイト)は顔どころか全身を真っ赤にして。
 「……あたし、今自分でカミングアウトしちゃった?」
 「ええ……残念ながら。……てか、男!?」


 お願いします、作者さん。
 こんなギャルゲー的展開は僕は求めてません。
 頼みますから牧野さんと久保さんの話を執筆してくださいよ!
 ……うん、それ無理とか言っている場合じゃないですよ!!

 「……お茶」
 「へ?」
 間抜けな声が出ちゃいました。
 「……この姿の報酬よ。安くて助かったんじゃない?」
 ああ、ようするに……。

 「おごれ、と」
 「ごまかしたのにはっきり言うな!」

 /

 「でも、本当に男なんですか? 声だってそれなりに高いじゃないですか」
 倉沢さんはツインテール。つまりそれぐらい髪が長い。
 「声? もしよければ戻すけど?」
 「いいです。で、何で女装なんかしてるんですか? ……あ、僕はシナモンティーを」
 「あたしはオレンジジュース」
 店員が去っていった後に、
 「……子供っぽいですね」なんて言ってみる。

 「うっさいわよ」
 「で、本題ですが」
 「うん。家は代々続く歌舞伎役者の家系なんだけど、歌舞伎が嫌いでね、絶対継がないって親父に言ったんだ」
 「それで?」
 「『だったら高校3年間で女装しろ。出来たらOK』て言われた」
 「……何故?」
 「役に入り込むんだって。歌舞伎じゃなくていいからまず演劇を理解しろってさ」
 「はぁ……」

 「お待たせしました。シナモンティーと、オレンジジュースでございます」
 店員が飲み物を運んできて、テーブルに置いた。

 「とりあえず、秘密にしてよね」
 「ああ、ハイ」

 僕って、秘密を抱えた女性何人と触れあうのでしょうか。

2010/07/11 22:25 No.11

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N


 「……Cloudy、だよ」
 僕は、久保さんの質問にこう答えた。
 『………………』
 久保さんは何も言わない。

 そりゃそうだ。軽蔑するよな。
 クラスメイトがこんな趣味持ってるんだし。

 しかも興味ないように、自分を偽っていたし。

 『牧野さん……いえ、くらうでぃ』
 「え?」
 彼女は突然喋り出した。

 『自分を隠していいことなんて、何もないんだよ。
 人は、弱いままじゃ、次のステップに進めないんだから。
 いくらあなたが虐められるのが嫌だとしても。

 ――人は、独りじゃ飛べないんだから』
 「……そうだね、ばざーう゛」
 彼女の敬語じゃない喋り方は初めてだ。

 『この学校に、あなたを拒絶する人間なんて、いないんだよ。
 私も、あなたを受け入れるから。

 ね? 』

 僕の寝ころんでいたベッドに、雫が一滴こぼれ落ちた。




 ――泣いてる?
 僕が?


 ――やっぱり、僕は……誰にも理解されていなかったんだ。
 彼だって、本当に僕を理解しているかなんて解らないんだ。



 「ありがとう、ばざーう゛」
 『ううん、元気だしなよ、くらうでぃ』


 電話が切れた。



 ――強くなろう。

2010/07/12 21:55 No.12

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 「おはようございます」
 「おはようです」

 朝。
 眠い目をなんとかこすりながら、家のドアを開ける。

 「朝、久保さんと逢いまして」
 「ええ。……ところで、牧野さん」
 「うん?」
 「…………私の事を、名前で呼んでくれませんか」

 「え?」
 何があったんだろう。

 「私、決めたんです。あなたを支えるって」


 ふふっ、と笑ってしまう。
 僕は恵まれているんだな。

 たとえクラス全員に言ったところで、彼らのように僕を全員が理解してくれるわけじゃないもんな。





 ――そりゃあ、今の趣味を捨ててしまえばいいんじゃないかって、何度も考えたさ。
 でも、そんなの”僕”じゃないだろう?


 ――僕は、また一歩踏み出していくんだ。
 この世界から、勇気を出して飛び立つ。








 僕は、もう弱くない。






 「ありがとう、眞美」

2010/07/13 19:50 No.13

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2010/07/14 19:00 No.14

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五章□向日葵ガ咲ク時

 カフェでの倉沢さんとの話です。

 今までの流れでもザッと説明しておきましょう。
 教室に戻ったらクラスメイトが着替えていた。実はそのクラスメイトは男だった。

 意味不明なのは承知してますよ。

 「演劇は得意なんですか?」
 「親父に嫌っていうほど叩き込まれたんだよね。アハハ」
 「とりあえず、男だっていう証拠を見せてくれません?」
 「胸、触って良いよ」
 「端から見ると僕が完全に変態なんで」
 彼女は……彼より、彼女がいいですよね。彼女はフッ、と微笑んで、
 「いいじゃん。君はイケメンなんだから同性愛の方が似合ってるし。女に興味あるって事にすればいいんだよ」

 「あはは。元々男には興味ありませんよ?」
 僕は笑う。



 ……そう。


 僕はまだ。


 このときには。


 何にも気づいてなんか、いやしなかった。







 ――本当の事件は、まだ起こっていない。

 そうなのに。


2010/07/14 21:22 No.15

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 翌朝。
 クラスに入る。
 牧野さんはどうやら、風邪でダウンしてしまったらしい。
 僕に朝電話で「大丈夫だよ。ちょーっと熱が39度ぐらいあるだけだからサ」と言っていたが。

 今日は牧野さんのいない1日か、なんて考えながら、教室のドアを開けようと――


 「……ちょっとぉ、黙ってないで何かいいなよぉ」
 クラスメイトの声が聞こえた。

 ちなみに、いつも牧野さんと結構早く来る。一般的な生徒の登校時間より30分ぐらいは早いだろうか。

 「ねえレナぁ、そろそろ殺しちゃおうよ」
 「殺しはだめだよ、くるみん。ま、男だったなんて驚きだよ。倉沢さん」



 ――嫌な予感がした。
 購買前の自動販売機で買ったミルクティーの缶を廊下に置く。まだ半分くらい残ってるんだけどなあ。

 ゆっくりとドアを少しずつ開けて、様子を確認する。

 「……ウソ……だ…………」

 倉沢さんが虐められていた。男だとバレたのかもしれない。

 倉沢さんを虐めている奴は……赤井さん、木田さん、渡部さん。僕に近寄ってきた女子3人。





 牧野さんならどうするだろう。

 ――先生に助けを求めるか?

 ――勇敢に立ち向かっていくのか?



 ――見て見ぬフリをして、逃げる……のか?






 僕は、まだ弱いのだろうか。

 彼女だって、自分を強くすると決めて、強くなった。



 ――僕が逃げて、どうする?

 彼女に偉そうな事を言った僕が。
 そんなの、人間としても、男としても……最低じゃないか。


 決めた。



 僕はもう、逃げない。









 「……何をしているのですか? 3人共」

2010/07/15 22:07 No.16

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 「お、小澤くん……なの?」
 「何を、しているんですか?」
 いつかのために常備しておいたブラックな笑み。

 「こ、こ、こいつ男なのよ! キモいから制裁を加え……ひうっ」
 僕が壁をドン、と叩くとひっ、と渡部さんが震えた。

 「ご、ごめんくるみ、麗奈。あ、あ、あたし帰るっ」
 僕は渡部さんの腕をグッ、と掴んで、

 「……逃がすとでも、思ってます?」
 とりあえず、僕は鞄を廊下に置く。


 「……遊びはここで終わりです。ね? …………皆さん」
 「い、いやああああああああああっ!!」


 学校全体に、誰かさんの断末魔。知ったこっちゃない。

 /

 「すごいな、小澤」
 「ちょっと怪我はしちゃいましたけどね」
 その後。赤井さんによって投げられた椅子で頭を軽く負傷した僕。
 「でも、あの3人。すぐ帰ったぞ?」
 「そりゃあ、それなりに制裁は加えましたけどね。本当はレディーファーストなんですけど。僕の心情」
 放課後。友人の北村君と話している。

 「なーにがレディーファーストだよ、女子をたぶらかしてるくせに」
 「あはは、好きでやってる訳じゃないんですよ?」
 笑う。相手も、笑っている。

 /

 担任・小門先生から教育相談室で拷問を受けさせられたものの、
 倉沢さんを守った事は先生も理解してくれていたようだ。

 「先生は知ってたんじゃないんですか? 学校に嘘の性別で登録するわけにはいきませんから」
 「ああ。”特別措置”として許している」
 「……でも彼女は継がなくちゃいけないんでしょうね、歌舞伎」
 「俺にはよく解らないがな」

 /

 家路につく途中、なんかこの章は牧野さんの出番が偉く少ないなぁなんて思っていると、
 不意にポケットの携帯電話が鳴る。

 ――倉沢さん?

 「はい」
 『今日、ありがとう』
 「いえ。助けるのは当然ですよ」
 『なんか……あたし情けないよね。みんなにバレちゃったし、何も出来なかった……』
 「倉沢さんはよく頑張りましたよ」
 『……ごめん』
 「謝らないで下さい。ね?」

 電話ごしに、僕はいつまでも彼女を慰めていた。

2010/07/18 17:42 No.17

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六章□午前九時の独り言

 「そうだ、アキバに行こう」
 学校。……の隅、僕の席。
 僕は、この間の病気からすっかり回復して、なんやかんやで仲良くなった倉沢さん、そして眞美・小澤くんの前で、
 高らかにこう宣言した。
 一時限目が始まる直前のH.R明けの教室は、やっぱりうるさい。

 「……美羽ちゃん、そんな京都行く的なノリで言われても」
 「いいと思わない? 眞美もさ、アキバ」
 僕・眞美の会話、エンド。
 「……アキバって……」
 「今度の土曜日、『ハレ晴○ユカイ』を大人数で踊るオフ会があるんだぁ」
 僕・小澤くんの会話、エンド。
 「……行こう!」、と倉沢さん。
 「「ええっ!?」」
 小澤君と眞美が絶叫している。

 「……まあ、踊れますし、問題ないですねっ」
 「踊れないの僕だけ!?」
 「とりあえずオフには4人でエントリーしたよ」
 「勝手にしないでください!」
 僕のケータイには[ご登録ありがとうございます。オフ会の参加をお待ちしております]という、
 管理人からのメールが届いている。

 「ま、とりあえず」と僕。
 「小澤君!」と倉沢さん。
 「特訓しますよ!」と眞美。

 小澤君、こんな時こそあの台詞だよ。
 「……やれやれ」

 あんたはキョンか、というツッコミを腹の中に必死にしまった。
 ……てか、作者の文字色が地味に変わっているところをツッコむべきなのかな? (※ 後日修正されました。)

 /

 オフ会前日。
 「……牧野さーん……さすがに放課後4時間のダンス練習はきついっすー……」
 「もう完璧じゃないのかな。それに、僕の部屋に入ってるんだよ? もうちょっと興奮しなよ」
 「いえ別にそんな……。てか、もう20時ですよ?」
 「ご飯食べたじゃないか。しかもちゃんとお泊まりセット持ってきてるんだろう?」
 「僕に今日はここに宿泊しろと!?」
 「うん。僕の部屋でいいよね」
 無言。ひたすら無言。何か問題でも?」
 「いえ、別の部屋をお借りしたいです」
 「この2階の部屋はあとみんな物置と両親の寝室だし、1階は私的な意味で駄目だから」
 「この家には客間ってもんが存在しないって言うんですか!?」
 「うん」
 ……別に僕は構わないんだけどなあ。
 「わかり……ました」
 すっげえ困った顔で僕にそう言った小澤君が哀れだ。哀れ過ぎて泣けてくるね。

2010/07/18 20:42 No.18

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 「こ、ここが……秋葉原……」
 僕達は、ハルヒ的なコスプレで秋葉原に来ている。

 ……てか、この小説って”シリアス”じゃないの?

 「既に作者がこの章は駄目って感じで書いてますよね」、と小澤君。
 「ごもっともですよ。まったく」、と眞美。

 「えー、今回の主催者こと”ユータ”です」
 いかにもなファッションで(セーラー服で検索しよう!)登場してきた男性の主催者。

 「では、ひとまず踊りましょう」とカセットが入ったCDプレイヤーをリュックサックから出す。


 ――いつの時代?

 /

 「ヒロアキとアキバ来るなんてはじめてぇ」
 「俺だって最近までエロゲーとかはまってなかったもんな。てか、ミホもそんなのすきなんだな」
 「えー、ヒロアキが勧めてくるんだもぉん」
 「ははっ……あれ? あれって……」
 ヒロアキ、と呼ばれる若い男性は、隣のミホと呼ばれる女性と繋いでいた手をとっさに話した。

 「ハレ晴レユカイ踊ってるね。どうしたの?」
 「……牧野、だよな?」
 ヒロアキが驚いたように言うと、横のミホがオーバーリアクションで、
 「え? あ、ホントだ! ウッソー、小澤君とかもいるじゃん。てか、ヲタクだったの?」
 と笑いと驚きを交えて呟いた。

 「とりあえず写メ撮っておこうぜ。あいつムカつくからな。これで脅せるな」
 「キャッ、ヒロアキ格好いいっ」
 ヒロアキは携帯電話を取り出し、コスプレをして踊っている美羽の写真を1枚撮影した。

 「これじゃあわかんねーな。ムービーもとるか。ミホ、紙袋持ってて」
 「ん」
 ヒロアキは、大きく「LAOCS」と書かれた紙袋をミホに差し出した。

 丁度流れている曲はサビに差し掛かる。
 踊っていた皆が歌い出す中、ヒロアキは美羽と慎一が踊る映像を必死にとり続けていた。

 「……ミホ、俺に協力してくれるか?」
 「何をぉ?」
 「…………あいつらを堕落させるようにさ」
 ヒロアキは、邪悪な笑みを浮かべながらミホの方に向いた。
 「………………いいよぉ」
 ミホも笑う。

 この二人の行動が、クラスを巻き込む大騒動になったのは言うまでもない。

2010/07/18 17:43 No.19

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七章□からっぽ

 家。
 一昨日の秋葉原での疲れがまだ取れていない僕は、眠い目をこすりながら家を出る。
 いつものように眞美と小澤君が待っていた。

 「おはようございます。一昨日はありがとうございます」
 「私も楽しかったです」
 「ううん、僕も楽しかったから」

 教室に入る。
 「おはよー……」
 いつもある女子の返事はない。どうしたんだろう。
 「おはよう、綾乃」
 「さわんないでっ」
 肩を叩こうとすると壮絶に拒絶された。何?
 「……美結? 麻和?」
 誰も僕に挨拶してくれない。何で。

 「……お、来てたんだな、オタク野郎」
 後ろから声がした。振り返る。
 「……高濱? 野村さん? ……何」
 「お前はこの写真と映像で嫌われちまったぜ」
 彼が携帯を差し出す。

 「……これって!」、と眞美。
 「…………何考えているんですか? 二人とも」、と小澤君。


 まあ、予想してなかったもん。僕も、たぶん眞美も、小澤君も。






 ――アキバで踊ってた一昨日の写真が携帯のディスプレイに表示されてる、なんてさ。






 僕はもう、弱くならないと誓った。
 ただ、何となく隠し続けていた。



 ――やっぱり、今の関係が壊れるのが……怖かった。



 「……あたしをどうしたいのよ」

 二人の答えは、こうだ。
 「お前最近ムカつくんだよ」
 「制裁ーっ、ていうかァ、アハハ」




 やっぱり、僕は何も出来ないまま、高校でもこうやって……。

 /

 ふざけるな。
 何が”制裁”だ。
 何が”ムカつく”だ。

 ――なぜ二人は動かない?

 久保さんだって、牧野さんだって。
 嫌じゃないんですか?




 一瞬、だった。



 自分が、何をしたのかも解らない。



 僕は、なにをしたんだろう。







 ――目の前に、血まみれになった高濱君が倒れていた。


 僕の制服や手のひらには、真っ赤な血が付着している。







 「きゃあああああっ!!」、という女子の悲鳴。



 ――思えば、誰もがパニックになっている。

 「お、おい敦、急いで先生呼べ!」


 「お、お……小澤を捕まえろ!」


 「ねえミホ! 泣いてないで早く救急車呼んでよっ」




 牧野さんは……




 ――泣いている。


 「なんで……? なんで小澤君は、僕の為にそこまで……」





 僕は、彼女をまた泣かせてしまったのか。





 ――サイテーな男だ。

2010/07/18 17:43 No.20

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 「とりあえず、牧野と野村の説明で解った。小澤、お前は牧野が脅されていたから、とっさに殴った。……そうだな」
 「――はい」



 ――教育相談室。



 「僕って……サイテーな男なんですよ……また、牧野さんを泣かせてしまった……」
 「お前は悪くない。牧野の秘密とやらで牧野を脅した高濱と野村が悪い。今回はお前は”厳重注意”だけだ」
 「…………本当に、すみません」
 2年A組の担任・小門は、吸っていた煙草を手で持ち、こう言った。

 「……俺に、謝るな。牧野に謝ってくれ。……いってこい」
 「……はい」

 小門は、慎一を教育相談室から教室に向かわせた。

 「次は、お前だ。な? ……高濱」
 小門は高濱の肩をポンと叩いた。
 「……喰うか? カツ丼」
 高濱は無言で頷いた。
 刑事ドラマか。





 /





 「……牧野さん!」
 暗い暗い廊下。例の事件で生徒は全員帰宅する事になったが、僕は先生に止められて教室で待っていた。
 どれだけ尋問を受けていたのだろうか。もう午後5時だ。
 「小澤君……」
 「あ、あの……今日は、本当に……ごめんなさい」
 「……どうしてキミが謝るの?」
 「え?」
 「あの後ね、みんな僕に謝ってくれたんだよ。さっきはゴメンって。あいつらに言われて嫌ってるフリしただけだって」
 「……」
 僕の目からは涙が出ていた。

 「……み、みん……な……小澤君の……おかげ、なんだよ……ここまで、これ……たのも……お礼を言うのは……」
 こっちなんだよ、と言おうとした僕の唇は遮られた。

 彼が唇をそっと離す。
 「僕だって……あなたと出会わなければ……この高校での生活はつまらないままでした」
 彼のいつもの微笑みは、無かった。


 笑ってよ。そんな、真面目な顔……しないでよ。
 「あなたが、いたから……僕は、頑張れたんです。何もかも。あなたが……大好き、ですから」
 「……………………僕、もうダメだよ。キミしか……愛せない。キミしか…………好きになれない」

 嬉しい。
 すごく……嬉しい。
 なのに……何故だろう。




 ――さっきより、涙が出ている。



 小澤君を抱きしめる。


 手が、震えている。


 「……だい……すき、です。牧野さん」
 「…………嬉しいな」


 また、彼のまえで泣いてしまった。
 ゴメンネ。

2010/07/18 17:43 No.21

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2010/07/18 22:31 No.22

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あとがき□

 こんにちは。作者の'自称です。
 長編は計4作目になりますが、過去3作は文章力が愕然とする程のものなので割愛させて頂きます。

 今回の「Two Style Girl」は、他の数作品と合わせ「お騒がせせーらんがくいんっ!!」シリーズとして、
 非日常やほんのりした日常について書く第1作目として執筆致しました。

 アニメネタが多数登場するのはやはり自分がオタクだからでしょうか。
 まあ自分がそういう趣味を持ち合わせているからこのような作品を執筆させて頂いた訳ですけれども。

 主人公の美羽については、テンプレートな”僕っ子”として書き上げていく中で、乙女としての純粋さも残そうと考えたキャラクターです。
 そして慎一ですが、正直大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 いや、どう考えてもまんま古泉君じゃないですか、と。

 そして一章の進みの早さも後から読み返すと、転校してきたばかりの慎一がなんで美羽の隠された性格まで読み取れるんだと、
 ツッコミどころが満載になっております。
 小説サイトにも掲載する際は、大幅な修正でも加えようかと思っています。

 そして、女装少年・飛鳥ですが、全くこのくだりはいりませんよね。
 ”だから何だ”としか言えないこの惨状。何でしょうか。

 基本的にギャグ小説ばかり書いていたものですから、シリアスを書くという事については上手くできないだろうな、と。
 人を泣かせる小説は自分には書けないだろう、と考えていましたが。
 サブ記事に泣いてくれたような趣旨のコメントを頂き、本当に嬉しく思います。
 まさかこんなツッコミどころが多すぎる小説で泣いて頂けるなんて思ってもいなかったものですから。

 裏話です。
 実は、この終章ですが、2作の序章と繋がっています。
 2作目が投下された際は、こちらと見比べてみてはいかがでしょうか。

 最後に。
 サブ記事にコメントや拍手をして頂いた読者の方々。本当にこの小説を読んで頂きありがとうございました。
 自分の小説で感動して頂いたり、笑って頂ける事が何より嬉しいです。

 次は自分のデビュー作としても執筆した「ボディ≫≪チェンジ!」(黒歴史なんです)を全面改稿します。
 というか新キャラが出ます。設定も大幅に変更されています。

 例のアレ(黒歴史)と読み比べ……ては欲しくないです。
 例のアレとは別のものと考えて読んで頂けると嬉しいです。

 では、皆さん。本当にありがとうございました!


                                                         2010年 7月 18日 '自称

2010/07/18 22:44 No.23

'自称@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N

次作□

入れ替わったフタリとそれを見守る人達。 / http://aurasoul.mb2.jp/_shousetu/25776.html

 俺こと北村翔は、極めて平凡な、普通の高校生活を満喫していた。
 幼馴染みや友人と笑い会う毎日が貴重だなんて思った事もなかったのだが。
 とりあえず、今の状況をまとめてみよう。
 ”クラスのマドンナ”の身体になっている。そして目の前には俺がいる。
 ――やっぱり、日常って大事だな。

2010/07/19 17:46 No.24

Leaf.@haruhists ★kfNVrSYUDXM_/N

設定■

http://aurasoul.mb2.jp/_sts/1876.html

2010/07/24 17:44 No.25
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