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§ハウリング-響き渡る暁鐘-§

 ( 小説投稿城 )
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紅葉侍 小刃@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★C5N7VN1Yxxw

────物語の初まりは何処からだろうか…………。

其れは幾ら追想に浸っても、明確には辿り着く事は出来ないだろう……。

だが、そんなあやふやな思惑の中に、たった一つだけはっきりと、明確に覚えてるものがある。


物語の出発点、そう、物語の初まりを告げたのは、時計塔の鐘の音。


雲を突き抜ける、たった一つの時計塔。
 その鐘の音が、果てしない天空を響き渡った…………


ほら、目をゆっくりと瞑って、そして耳を研ぎ澄ましてごらん。
天空を響き渡る、初まり鐘の音が聴こえるから。

まだ目を開けないで、その手で探るんだ、二つの歯車を。

そして其の足で歩み始めてごらん、この果てしない物語を。

さぁ、閉じていた目を、ゆっくりと開けてごらん。

──物語はもう、初まっているから…………


§初めに,小説の紹介
‥このような中二病臭プンプンの小説クリック感謝です!!  
 改めて初めまして!! ハウリングの著者『小刃(コバ)』と申します!!
 それでは起承転結かつ明確に、サクサクと紹介を始めていきましょう。

 ジャンルはファンタジー……のはずの小説です。
 ただ私の気質上、気が付けばつまらんギャグを小説にぶち込んでます、中々多彩に(苦笑)
 そして更にその気質上、下ネタもちょろっと混じってます(´・ω・`)←
 15禁ギリギリのラインで汚い笑を取っていくので、どうかお許しを。
 
 だけども、シリアスシーンの時などは、しっかりとケジメをつけて物語の進行をするので悪しからず。
 
§物語の紹介
‥数え切れない人類の中から選抜された、導かれし三人
  三人はどこにでもいそうで、いなそうな仲良し組。
  其の平凡な日常から、一人の謎の男に出会う事で刹那の時の如く一変する。
  ──彼等の行く先で待つ者とはいかに……
 
 ──という物語です(わかるかッ

 そしてファンタジーには欠かせない、摩訶不思議な魔法。
 そんな魔法のようで、魔法ではない魔法←
 『精霊(エレメント)』という魔法ではない魔法があります←
 主にコレを主体に戦闘を繰り広げていくので、宜しくお願いします。

§この小説、物語の目標    
‥ここで、私のつまらないお話にお付き合いお願いします。
 ……え?? 嫌だって?? そんな事を言うなよ、泣いちゃうぞ。
 
 さて、突然ですが、私の夢、将来の夢は『漫画家』です(本当に突然)
 生半可な覚悟ではありません、真剣に目指してます。
 
 ですが、絵が好きというよりもこの物語を描きたい≠ニいう気持ちのほうが高いんです。
 どうしてもね、自分の中だけでこの物語を終わらせたくないんですよ。
 世の中に、この物語のキャラクター達を轟かせてやりたいんです。
         
          『No Story No Dream』
  
 この小説、物語の目標です、そう……物語で夢を与えたいんです。
 こいつ等なら出来るはず、そう信じてます、私は。いや……オレは。
 
 なんせ現に、このキャラクター達は、既に一人の少年に夢を与えました。
 ────漫画家という夢をね
 
§最後に
‥さて、長くなりました、最後です(全くだ)
 もうそろそろですよ、旅の支度は出来ましたか??
 ……え?? なんの旅かって?? それはお客様(読者様) 物語の旅ですよ。
 ほら、耳を澄ませて下さい。響いてるでしょう??
 
         ──時計塔の暁鐘が
 
 旅の出発の合図ですよ。最後にご質問は?? 
 ──いつ物語りが初まるかって?? 残念ですが、もう初まりませんよ。
 
     なんせ物語は既に初まっているのですから=@

 



 
著作者/紅葉侍 小刃

2010/03/06 15:47 No.0
切替: メイン記事(19) サブ記事 (367) ページ: 1


 
 

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★C5N7VN1Yxxw

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2010/03/06 15:47 No.1

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★C5N7VN1Yxxw

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2010/03/09 14:22 No.2

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★FucWGspn31w

「ったく……しゃーねぇな!! 行ってやるよ!!」
グレンは頭を掻きながらクライディに言う。
ライナもどうやら行く気になってくれたようだ。

「ありがとさん!! よっしゃ、そう決まったんならすぐ行こうぜ!!!!」
クライディは時計塔に向かってダッシュで走って行った。
ライナとグレンもクライディに続いて走って連いて行く。


時計塔はライガ村からそう離れていないので、10分も走れば到着する。
それにしても、いつ来てもこの時計塔は大きい……。

「よっしゃ、さっさと入ろうぜ!!」
クライディは鍵が開いている裏口へ向かう、二人もクライディに連いていく。
そして裏口へと回り、ドアに手を掛け様と思ったが、ここでドアに違和感を感じた。

────既に開いている…………??

そんな筈は無い……。毎回侵入した後は必ず最後まで閉じる。なのに何故少しだけ隙間が開いているんだ……??

「どうしたの?? クライディ」
ライナはクライディの顔を覗き込む。クライディはあまり見せない真剣な顔で、二人にこう言った。

「誰かが時計塔に忍び込んでいる……」

三人は顔を見合わせた、言葉を交わさなくてもわかる。
入り込んでいる阿呆をとっ捕まえるぞ。三人は目でそう言った。

静かに扉を開けて中に入り込む。
中はひんやりとしていて、小さな足音でもかなり響く。
壁側から螺旋状になっている階段は果てしない程上に続いている。

なるべく足音をたてないように、三人は無言で階段を上り始めた。
緊迫とした空気の中、息を殺し続けていると上の方から話し声が聞こえてくる……。

「本当に最上階に在るんですか?? また今日もハズレだったり」
「いや、今回は《コールド様》直々の情報だ」

──何だこの会話は。
最上階……今から三人で行く場所ではないか。それに後者の声は聞いた事が有る。
取り合えず、三人は黙って会話を聴く事にした。

「それなら期待できますね」
「あぁ、最上階まで行き『時計塔の針』を盗む。ちょろいもんよ」

──盗む??
時計塔の針を??
これからの希望でもある時計塔の針を盗む??
……無論そんな事はあってないならない。

「ところで《ゴドーさん》これ最上階までどの位掛かるんですか??」
「走って40分程度だとよ」
「マジですか〜!?」

複数の声が聞こえる。それに聞いたことの有る名前だ。

「ご……五朗君…………??」
小声で呟くクライディ。
「違ェよ、ゴドーだろ、ゴドー。昼間ウチの宿屋来たじゃねェか」
グレンも小声でつっこむ。

声の数からして、ゴドーを含み六人程度。
三人で撃退できるのか……??

「ってか何でゴドーが此処におんのよ」
「知らねーよ……。その前にゴドー事態が何者だよ……」

クライディとグレンは小声でやり取りする。
ライナは一人で縮こまっている。

途中からこの六人をどう対処するかと話し合った結果がこうなった。
「大人呼んでこよう」
決して逃げる訳ではない、冷静に対処する為に大人を呼ぶのだ。決して逃げる訳では…………

三人はラロン辺りの大人を呼ぶ為、階段を下ろうとした。その時。

「うぉあ!?!?」
クライディは階段を降りようとした時に足を滑らしてしまい、
その場で転倒してしまった。転んだ時の音が塔内を響く渡る。

「誰だ!?!?」
六人は一斉に下へ下りて来くる。
「やーばい!! 逃げろッッッ!!!!」
クライディは体勢を整え、三人で慌てて階段を下り逃げる。

「バッカ野朗!!!!」
下りながらグレンはクライディを怒鳴る。
クライディは気が動転した状態で、慌てながらこう言う。
「緊張してたんだ!! 結構地味に緊張してたんだー!!!!」
「クライディのバカ〜!!」
すたこら下へ逃げていく三人。

出口が少しずつ見せてきた、あともう少し……。
だが出口のドアは乱暴に開けられる。

────村の大人か……??

だが見たことの無い男性三人が時計塔内に入って来た。

「挟み撃ちにしろォ!!!!」
叫び入ってくる三人に指令する。
そう、入って来た男性三人はゴドーの仲間の一人であった。

クライディ達は反射的に一度上に階段を上ろうとする。
だが上からはゴドー達六人が猛スピードで下りて来る。

三人は其処で立ち止まってしまった…………。

男性三人とゴドー達六人はクライディ達を完全に挟んだ。
計九人の男性だ、どう逃げようか…………。

「テメェ等は……昼間の宿屋のガキ共じゃねぇか」
ゴドーは三人を見ながらそう言う。グレンは負けじとゴドーの睨みつけこう言う。
「何でアンタが此処に居るんだ、立ち入り禁止のはずだろ??」

「おいおい、立ち入り禁止などいいながらテメェ等も居るじゃねぇか」
笑い始めるゴドー。釣られて他の八人も笑い始める。

「──時計塔の針を盗むがどうのこうのってのは…………どういう事だ」
クライディは顔を引き締める。その表情で笑うのを止め、ゴドーは説明へと入った。

「上の命令でな、ここの針を盗んでこいって言われてんだよ」
スラッというゴドー。簡単に盗むなんていう言葉を言ってしまう……。そんな彼等は何者なのか。

「上のもんってのは何者なんだ……!!」
グレンが冷静な怒声を浴びさせる。そこでゴドーはため息をし話を続けた。

「いいだろう、どうせ『此処からは生きて出れない』からな。全てを話してやるよ。
 まず、俺等は《イルデン騎士団》に所属する《イルデン盗賊団》だ!!」
下っ端のわりには、大分誇らしげにモノをいうゴドー。どうやらイルデンという組織の下に付いているだけで、
大層な名誉らしい。

「イルデン……??」
クライディは聞いた事も無い名だったので、無意識に訊き返していた。

「なんだ、イルデン騎士団も知らねぇのか!! っはん、とんだ田舎だなここは!!」
再び盗賊達は笑い始めた。だが三人は冷静を保っている。

ここで一人が腰にある剣を抜き始めた。
どうやら処理を開始するらしい……。

「じゃぁな、こちらも時間が無ぇんでな。あの世で俺等の活躍を拝んどけよ」

だがその瞬間を見逃さなかった。

「オラァ!!!!」
グレンは剣を持つ盗賊の手に蹴りを入れる、
その反動で盗賊の手から剣が落ちる、それを見事にキャッチするクライディ。

グレンは蹴りを入れた盗賊の腹に、大きく踏み込み腹に掌底を入れる。
その衝動で盗賊は後ろへと吹っ飛び、後の二人の盗賊を巻き込んだ。

「やってくれるじゃねぇか!!」
入り口側に居た二人の盗賊が同時に剣を抜き、グレンへと飛び掛る、
だがそこでクライディが奪い取った剣でガードする。

ガキキン!! 刃がぶつかり合う。
同時に二つの攻撃をガードしても、状態が崩れないクライディ。
そのまま攻撃を押し戻すようにする、二人の盗賊は跳ね返されたような
反動で剣を上へと放ってしまう。その隙に浅く足のモモを斬る。

「ぐわぁあぁあ!!」
その場で転倒する二人の盗賊。
残りは六人。だがここで、一人の男が拳銃を懐から出し始める。

だがクライディ達の表情は曇るどころか、それを見て明るくなった。

ライナがすぐさま拳銃をもつ男の腕下に潜り込み、
巧みに拳銃を奪いさる。
そしてその拳銃で、残りの盗賊達の足元に弾を撃ち込み威嚇行為をする。

そう、この三人はただの村の少年達ではない。

クライディは剣武を嗜(たしな)んでいる、その腕はいつしか
何処か名の有る騎士団へとスカウトされるだろうと、村の住民全員が思う程だ。

グレンは実の父ラロンから、拳闘を叩き込まれている。

ライナは優れたその頭脳を使い、緻密な計算で狙撃などを嗜んでいる。
狙い撃ちなどに関してはずば抜けた実力だ。

「甘く見てもらっちゃ困るね」
三人はキリッと決める。盗賊達は、若干引き腰になっていた。

だがゴドーは違った、ずっと震えている。だがそれは怒りを抑えているようだ……。

「調子の乗るんじゃねぇえぇえぇえ!!」
構えたゴドーの右手から『火』が放出される。
少量ではあるが、直に浴びればただじゃすまない。

それ以前に、人間の右手から、火が出るという事に驚愕を隠せない三人。

「っはん!! こんな田舎じゃあよ、《精霊(エレメント)》なんてのも知らねぇだろうよ!!!!」
右手に小さな火を灯し、それをブンブンと目の前で振りまくる。

「これでテメェ等は終わりだ、死にやがれ」
先程まで倒れていた盗賊も立ち上がり、全員剣を抜く。
ゴドーも右手に火を灯したまま、左手に斧を構えた。

「死ねェエェエェエェエ!!!!」
盗賊全員が三人に襲い掛かった。

「──死ぬ!?」
三人は同時に死を過ぎった瞬間。聞いた事もない声が塔内に、イヤ。耳元でボソリと呟くように聞こえた……。


「──暗黙の処罰を下せ……【魔皇閻羅】(マオウエンラ)=v


盗賊九人とクライディ達三人の周りから、漆黒の闇が煙状にモクモクと現れた。
そのまま煙状の闇は全員を呑み込んだ。まるで暗黒に呑まれたかのように……。

「ぐわぁあぁあぁ!?」
盗賊達全員が叫び声を上げている。三人の視界も暗いので、何が起きているかまったく理解出来ない。

数秒経ち、闇は空気に溶ける様に消えていく。
気が付けば盗賊達は全員倒れていた。

「いったい誰が…………」
クライディは咄嗟に入り口を見た。
そこには外へ出て行く何かが……。

あれは……人なのか?? 顔も何も見えなかった。まるで影のように……。


取り敢えず三人は時計塔を出た。そのまま直行で、宿へと戻る。
この事をすぐにラロンに話したが、あまり本気にしていなかった。

「本当なんだって!! イルデン騎士団に所属している盗賊団が、時計塔の針を盗もうとしてオレ等を襲ったんだよ!!!!」
クライディは大声を張り上げて、ラロンに説明を何回もする。
確かに、ラロン事態もイルデン騎士団という言葉を耳にした事は有る。

「ん〜……。取り敢えず、『国家』にこの事を報告しに行く。お前等はここで待ってろ。ライナも今日はウチに泊まりな」
そういうと、ラロンは宿屋から出て、村を出た。

『国家とは、この国《グランバニア大帝界》の国の本部《真紅焔》(しんくえん)という大規模な組織である。
 グランバニア大帝界の清濁の観戒は真紅焔によって、この国の平和は守られている』

そして、国家の騎士として悪と戦うのがクライディの夢だ。


ラロンが宿屋を出て行った後、三人はクライディの部屋に集まった。
時刻は十八時。今日の暇を潰す為に何かをしようとする。

「なーんかする事ねぇかな」
クライディはベッドの上で胡座(あぐら)を掻き、Myマクラを抱きながらそう言う。

「何か今日は疲れたからなァ…………。何かねぇか?? ライナ」
ベッドの横の椅子に座り、煙草を吸い始めるグレン。
因みにこのグランバニアの世界では、飲酒喫煙は親の了承さえあれば、何歳からでもしてよい。

グレンに問われたライナは、クライディと同じくベッドの上でちょこんと座っている。
目を瞑り、腕を組み。何かを考えている。
そして何かを閃(ひらめ)いたのか、目をカッと開き、手を叩きながらこう言う。

「包丁ダーツ!!!!」
「帰れ」
見事に声をハモらすクライディとグレン。

結局やる事が見つからなく、最終的には必ず雑談会になるのがいつものパターンだ。

将来の夢や、最近有ったくだらない話。
そんな話を笑いながら語り合っていれば、自然と時間は過ぎていく。
今日は時計塔の一件が有った為、雑談は盛り上がった。



時刻は気が付けば二十一時。
目がウトウトとしてきて、今日はもう寝る事になった。

グレンは自室に戻ったが、ライナはクライディの部屋に残る。

クライディの部屋にはベッドが一つしかない。
しょうがないので一つのベッドで二人で寝る事になった。

枕の上の頭の下で手を組み、天井を見上げながら、少々溜め息を混ぜながらクライディはこう言う。
「ったく……。空いてる部屋があんだからそこで寝ろよ…………」
ライナは布団に潜り込みながらこう言う。
「だって一人とか怖いもん」

クライディは溜め息しか出なかった。
三人共今年で『十六歳』

一人で寝れる年齢ではあるだろう……。

「うー……。さびーよー…………」
そう言いながら、ライナはクライディに寄り添う。
ライナは体を震わしていた。本当に寒いようだ……。

クライディは再び溜め息を吐きながら、ライナを布団の中で抱え込んだ。
「これで暖けーだろ」
「……ポカポカしてきたゼィ」

そういいながらも、ライナの顔は真っ赤だった。
いくら生まれた頃からの幼馴染とはいえ、飽くまでも異性の仲。
クライディは特にどうも思っていないが、ライナは心臓をバクバク鳴らしていた。

ライナは瞳を閉じながら、心の中でずっとこう思い続けた。
「────いつまでも三人で居たい……。参バカで居たい…………」
絶対に崩れる事は無いだろう。何があっても離れる事は無いだろう。
ライナはそう願い続けていた。


もう眠りにつけそうだ……。
そう思った時。外から男性特有の、低い怒鳴り声が響いた。

「昼間のガキ共ォ!!!! 出て来やがれぇえぇえ!!!!!!!」

クライディとライナはすぐさま起き上がった。
窓を開け外を見ると、松明を持った男達五十人が村の入り口に立ち止まっていた。

グレンもクライディの部屋に駆けつけ、ドアを激しく開けてクライディの部屋に入る。

「おい!!!! 外の連中はなんだ!?!?」
グレンも先ほどの怒鳴り声で起きたようだ。

あの男は「昼間のガキ共」と言っていた……。
もしかして…………。

三人はすぐさま外へ出た。
すると出口に立つ五十人の、先頭の男がこう言い放つ。

「昼間のお礼参りだ、クソガキ共……!!!!」
────そう……。《ゴドー》率いる盗賊団であった…………。

§-ハウリング序章:【起】End-§

2010/04/02 21:59 No.3

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★FucWGspn31w_aR

§-ハウリング序章:【承】響き渡るの暁鐘「初まりの暁朝」-§

 月と星が綺麗な夜空。
そんな透き通った空の下では、ライガ村は危機に陥っていた。

 入り口付近に溜まる、松明を持った百人の盗賊達。
その盗賊達の標的にされているクライディ達三人。

 百人の盗賊達の先頭に立つゴドーは、三人にこう言った。
「イルデン騎士団所属の盗賊の恐ろしさを教えてやるよ…………」
 そういうと、火が灯っている松明を地面に火を移すように振り払う。
すると予(あらかじ)めオイルか何かを撒いていたのだろうか、
『村全体を炎が囲んだ』逃げ場は無くなり。炎を放っておけば炎が家に燃え移り、村もタダじゃ済まない。

「止めろォォ!!!! テメェ等が要あるのはオレ等だろうが!! 村に手ェ出すんじゃねェ!!!!」
 クライディは怒鳴り声を唸り上げた。ゴドー以上に声を張り上げている……。

 グレンも大声でこう叫ぶ
「そうだ!! オレ等は此処に居る!! 村に手を出すんじゃねェ!!!!」

 だがクライディ達の願いとは裏腹に、
ゴドーは嘲(あざ)笑いながらこう言い返す。
「俺達の存在を知っていればこんな事にはならなかっただろうよ……。
 それだっていうのによ、なんだ?? この田舎村は。在っても意味が無ぇっての!! ガハハハハハ!!」
他の盗賊達もつられて笑い始める。

 それを聞いたクライディは歯軋りを立てながら、低い唸り声で呟くようにこう言い放つ。

「────取り消せ…………!!」

 その表情は、いつものクライディのだるそうな顔では無く、
眉間にシワが寄り、死んだ魚の眼と呼ばれた眼は瞳孔が開いている。

 遊ぶ時以外は常備している愛刀の和刀を鞘から抜く。
そして我流の構えをし、盗賊達にこう言った。

「在っても意味が無ェのはテメェ等だ……!!!!」

 その殺気を感じたのか、盗賊達は笑わなくなる。
ゴドーも冷や汗を垂らし、盗賊達にこう指示をした。

「テ……テメェ等ァ!! やっちまえぇえぇ!!」
持っていたサーベルで、指揮を執るように三人に向ける。

二十人の盗賊達が、一斉にサーベルを構え、クライディ達目掛け走って行く。

「絶対ぇ村には手ぇ出させねェ……!!」
 クライディも盗賊達目掛け走って行く。
「あぁ!!」
 グレンもクライディに続いた。

 だがライナは、唐突の出来事でどうする事も出来なかった。
武器は八連式のリボルバーがある。
でも弾を人に当てる事なんてした事が無い…………。

 今はただ、クライディとグレンの背中を見守る事しか出来なかった、その大きな瞳で……。


 クライディの正面から、サーベルを上に構えながら走ってくる盗賊。
盗賊は雄叫びをあげながらサーベルを勢い良く上から下に振る。

 それをクライディは物ともせずに、盗賊のサーベルの軌道を読み右横に避ける、
避けたと同時に、和刀で盗賊の腹部を斬り付けた。
盗賊は声も出さずにその場でバタリと倒れる。
だが盗賊はこれだけではない、次々とクライディへ飛び掛る盗賊達。


 走りながらグローブをはめるグレン。
すぐさまに盗賊はグレン目掛け、サーベルを単純に横に振る。
見え見えの軌道だった為、軽く伏せて、足を伸ばす反動をバネに利用し、
拳に回転を掛けながら盗賊の腹へ打ち込む。

「ぐはッ!!」
 盗賊は腹を抱えながら前から倒れこむ。
グレンは急いでクライディの背中へと回った。

 互いの背中を護りながら戦う。
それは互いを信頼しきっているからこそ出来る事だ。


 二人を囲む盗賊十八人。
クライディの方へ飛び掛る盗賊は全員、
サーベルを和刀で弾かれて斬られる。

 それ程クライディの剣武は甘いものではない。

 グレンの方へ飛び掛っても、剣先を読みながら避けたり、拳でサーベルの
表面を叩き付けられたり。など、此方も攻撃を与える事が出来ていない。


 囲む人数が少なくなり、二人を囲んでいた十八人が気づけば
クライディの正面に三人、グレンの正面に二人。合計で五人になっていた。
数が少なくなったので、二人は同時に背を離し、自ら攻撃を仕掛けた。

 グレンは踏み込みと同時に顎に一発、そしてもう一人には回りながら裏拳をかます。


 クライディは剣先だけで軽く敵の太ももを斬り付ける、
そして後ろ蹴りで背後に居る盗賊を蹴り上げる。

 そのまま蹴りを入れた方向に、状態を動かしながら方向転換し、足が地に着地した瞬間
飛ぶようにもう一人の盗賊へ突っ込む。そしてすれ違うかのように斬り放った。


「はぁ……はぁ…………。ふー……」
 膝に手をつき、呼吸を整えるクライディ。
グレンも少々息を切らしていた。

「ぐ……。なんなんだコイツ等……」
 クライディとグレンを臆するゴドー。


「あと……七十人くれーか??」
 クライディに問うグレン。
クライディは横目で数を数える。
「だな……。まだ先は長ぇーぞ……」

「ひ……怯むなぁ!! 行けぇえぇ!!!!」
 ゴドーは再び二十人程の盗賊達を指示する、
盗賊達も雄叫びをあげながら此方に走ってくる。
「──いざとなったらコイツを……」
 懐にある拳銃を確認するゴドー。拳中は黒光りに怪しく輝いた。


「来たぞ……!!」
 構えるクライディ。カウンターを狙う為に、一度防御の体制に入る。
グレンは既に攻撃する準備をしていた。

 すれ違う瞬間、二人が同時にクライディを攻撃する。
クライディは二つのサーベルを上手く防ぎ、一人は腹下に蹴りを入れ、
もう一人は柄でコメカミに打撃を与える。

 だがこの時、二十人全員がクライディとグレンを囲んでいなかった……。
盗賊一人がクライディとグレンを囲まずにすれ違った。

 クライディは慌てて後ろに目をくばった。
そこでハッとする。
「ラ……ライナ!!」

 一人固まっているライナ目指し走って行く盗賊。
クライディはグレンに「ちょいと任せるぞ!!」と一言掛け、
盗賊を追い抜くかのようなスピードで走り出す。


「あ……あ…………」
 盗賊が此方に向かって来る。ライナは体が硬直して、逃げる事が出来なかった。
もう寸前で、サーベルを構えているというのに体が動かない……。

「オラァ!!」
「きゃっっ!!」
 反射的にしゃがみ込むライナ。奇跡的に盗賊の攻撃を免れる事が出来た。
だが次は外さないだろう……。

「くたばれェ!!」
 ライナは無意識に、ぎゅっと目を瞑った。
盗賊はサーベルを勢い良く振り下ろす、だが刃がぶつかり合う音がライナの耳に響いた。
「……え??」
 恐る恐る目を開いた。そこにはクライディが盗賊の攻撃を防いでいた。

「馬鹿野朗……家ん中逃げておけ…………よ!!」
 語尾に力を入れ、一気に盗賊を押し込み斬り込む。
盗賊はその場に倒れた。

「あ……ありがとう…………ごめんね……」
 珍しく、ライナの眼は涙を溜める。光が反射しウルウルしている。

「安全な所に移動しておけ。オレ等は……ぐっ!?」
 背後から響く銃声。その音と共に、クライディは左胸を両手で抑え膝を突く。
胸を抑えている両手から綺麗な血が、ドクドクと溢れてくる。

「う…………そ……」
 ライナは目の前で起きた事が理解出来ていなかった。
クライディはゆっくりと前に倒れ、ピクリとも動かなくなった。

「ク……クライディー!!!!」
 ライナはクライディの両肩を掴み、懸命に上体を揺らす。
クライディは吐血をするが、とても話せる上体ではなかった。

 ライナは懸命にクライディと呼び掛ける。
その声に気付いたのか、グレンが此方を振り向く。

「ど……どうしたんだ!?」
 事の重大差にすぐさま気付くグレン。敵を無我夢中に振り払い、クライディとライナの方へ走っていく。

「ク……クライディ!! どうした!?」
 グレンもクライディの上体を揺らす。そして視線をクライディの胸部に移す。
左の胸部からは鮮やかな色の血がドクドクと溢れている。

「────嘘だろオイ……」
 グレンも現実を受け入れる事が出来なかった。
「クソ……!! こ……こんな事が…………!! こんな事があってたまるかよ!!!!」

 ライナに言葉を掛けようと、ライナに視線を移すが、ライナは息を殺しながら泣いていた。
涙の粒がクライディの頬に落ちる。
まるでクライディが泣いているかのように…………。

 ────この絶望を音に例えるのであれば、時計が止まる音だろう……。

          *

 呼吸が……しずれぇ…………。
クソ……喋れねぇ…………オレは死んじまうのか??
──畜生……まだ死にたくねぇよ……。

 まだ、この三人でずっと居てぇ……。ずっとバカやっていてぇよ…………。


 段々回想も回らなくなるクライディ。
痛みも感じない。そして五月蝿かった周りの音も、消えていくように静かになっていった。
まるで自分が遠ざかっているようだ。

 最後に力を振り絞り、クライディは口を頑張って動かす。
見えはしないが、ライナとグレンが間近に居るのが分かる……。

 クライディは途切れ途切れにこう言った。
「わ……悪ぃ……な…………」

 この言葉に反応してくれている気配がするが、もう何も聴こえない……。

 一気に力が抜ける。それと同時に時間が戻らないだろうかと願うクライディ。

          *

「う……撃っちまった…………」
両手で強く握り締めた拳銃を、プルプルと震わせながら身からだを震わすゴドー。
歯がガチガチと鳴っている。
残りの盗賊達はジリジリと三人へ近寄る

「っふん……これでいいんだろ??」
 身は震えているが、薄気味悪い悪党笑いをするゴドー。
「テ……テメェ等!! 他の二人のガキも殺っちまえ!!」

 一斉にサーベルを構える残りの盗賊達。
だがライナとグレンはそれどころではない。

 盗賊達が三人にへ走り出した。もう駄目だ……。とても戦う気力にはなれない…………。


 だが、その時であった。


 村を囲んでいた炎は突然一瞬にして止む。それに驚く盗賊達。
そして同時にライナとグレンをすれ違う三つの影。暗くて明確には分からないが、自分と同じ年代の少年達が通り過ぎた。
三つの影は盗賊達と正面からぶつかり、三人を援護するかのように、盗賊達を妨げていった。

 だが人数に差があり、押され掛けたその時。
もう一つの影が三人をすれ違い、三つの影の方へ吸い込まれるように走っていく。
そして一瞬にして盗賊の残党が宙を舞った。


 ゴドーの怖気付いた声が聴こえる。
「ヒ……ヒィ!! な…………何者なんだテメェ等は!!」

「────テメェみてぇな田舎者は、知らなくていい事さ」


 ──クライディ??
今の声は…………確かにクライディだった……。
だがそんなはずがない……。

 計四つの影は一瞬にして姿を消す。やられた盗賊達はそこ等じゅうでくたばっていた。


 いくら経ってもクライディは起きやしない。
どうしても現実を受け入れる事が出来ないグレンとライナ。
ライナは再び泣き始めてしまった。

「じ……時間が…………戻ればな……」
 歯を食い縛りながら、懸命に泣き声を潰しながら唸らすグレン。

「チ………チクショウ!! 何でだよ!? 何でなんだよ!!」
 地を殴り始めるグレン。やがて拳からは血が滲んで来る。悔やんでも悔やみきれない……。
目の前は涙で潤んで見えなくなった。

 突然の神友との哀別……。後悔と憎悪が湧き出てくる。それと同時に運命というモノを泣訴(きゅうそ)し怨んだ。
ただただ……二人は哀悼し続ける…………。


 ────っざっざっざっざ……。
ライナとグレンは気配を感じた。ゆっくりと見上げると、黒いローブに身を包んだ一人の男が立っていた。
顔はローブのフードで見えない……。全体的に黒く、空の暗黒の空とマッチしていた。


「──時は万物を運び去る。心までも。魂までも……。だが、それと反対に万物を運び出す。運命、出会い。そして導き……」


 男は呟くように言い放つ。二人は脳では理解出来ないが、状況と心で理解出来た。
男は再び呟き言い放つ。


「過ぎ去った過去は創り直せない。だが未来は我々人間で創る事が出来る。そう、未来とは『今』だ。────未来を変えたいか??=v


 男の言葉の中には、クライディをどうにかしてやろう。という言葉が混ざっているように聞こえた。
グレンは思った事を、頭の中で整理せずに口にする。

「ク……クライディが生き返るって事か…………??」
「…………我々と共に、運命を変えると祈願するならな…………」

 我々?? 運命を変える?? 唐突すぎて、意味の解らない事ばかりであった。
だがそんな事を考えている暇はない、クライディが生き返るなら……。
ライナとグレンは眼を合わせ、声を揃えて言い放つ。

「オレ(私)達は…………未来を変える事を誓い、願う!!」

 男は二人の眼を見、本気である事を確認すると。
「良い返事だ……着いて来い…………」
 そういいながらクライディを担ぎ込む。そして町を出、歩き始めた。

 ここでライナは、男と出会い、一番最初に疑問になった事を訊く。
「と……ところでアナタは誰なの……??」

 男は立ち止まらす、振り返らずにこう言った。


「オレの名は《デスト・アイル》…………『導く者』だ……」

§-ハウリング序章:【承】End-§

2010/05/01 17:35 No.4

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★FucWGspn31w_aR

§-ハウリング序章:【転】響き渡るの暁鐘「初まりの暁朝」-§




 突如現れた漆黒のローブに身をつつむ謎の男、《デスト・アイル》という者は、
今は亡きクライディを肩で背負い込み、ライナとグレンを連れ、何処かへ歩み向かった。

 当然この男からは怪しさしか感じない。
 何せローブのフードで顔が見えない故に、それに加えた冷静沈着な雰囲気。
 だが今はこの男に、クライディの生死を賭けた希望を託すしかなかった。

 夜道を歩み続ける三人。ライナはふと、デストにこう問いた。
「アナタは一体…………何者なの……??」
 そういえば全く持って解かってない。だが男は自分の正体を明かす事は
「いずれわかる……」
 と、言うだけで明かされる事は無かった。


 歩き続けて数分経った今、二人は歩いている道に覚えがある事が発覚してきた。
 この道のり……ふっと顔を上げると、そこには聳(そび)え立つ雲を突き抜けた時計塔。
「何故此処に来たのだろう??」という疑問が表情に出るライナとグレン。

 デストは正面扉がバリケードで遮られているを見、二人にこう問う。
「この扉は破壊していいのか??」
「い……いや、裏から入れる」
 グレンは慌ててデストを裏口へと案内する。デストは裏口のドアを開け、
クライディを背負い込んでいるため深くしゃがんでくぐるように中へと入る。

 続いてグレン、ライナと入った。最後に入ったライナは一応の為戸を閉める。
 デストは時計塔内の中心部分まで行くと、そのすぐ端にクライディを寝かせる。
 そして地に右手をヒタリと突ける。

「個人の判断、タイミングで目を瞑れ」

 とは言われるが、その行動といい意味がまったくもって分からないライナとグレン。
 だが突如、地に突いたデストの右手からは、漆黒の空気。
 というよりは煙のようなモノが溢れてくる。まるで闇そのもの。

 唖然として言葉も出なかった。その刹那、時計塔は大きく揺れ始める。足元がふらつく程だ。
 自然と思った事が言葉として出てくる。

「な……何が起きるんだ!?」
 ライナとグレンは柱に捕まり足元を安定させる。揺れはどんどん激しくなる。
 それに連れて、デストの右手から溢れてくる漆黒の闇の量も増えてくる。

「そろそろ……目を瞑る準備をしておけ」
 そう言うと、デストが放出している漆黒の闇は拡散するように時計塔ないへと充満する。

 辺りは闇により何も見えない。そんな視界が暗黙の中。デストの声が時計塔内へと響き渡った。


「────時よ……我時空を超越する闇なり。暗闇の契約に基づき、我等を時空の扉へと導かん────=v


 次の瞬間、闇は爆発するかのように、白き閃光の光にのまれる。塔内から漏れる程の神々しい光。
 二人はぎゅっと目を瞑った。すると身体がフワリと浮かんだ間隔へと陥る。

「う……うわァーー!!!」
 光は ブシュン という音と共に一気に止む。そして塔内に四人の姿は無かった…………。


          *


 ────此処は何処だ…………??
 いつものあの夢と同じ場所だ……。っていう事はコレも夢か…………??
 ……イヤ、違うな…………。

 『オレは死んじまったのか……』

 って事ぁ、オレはもうそろそろ天に召されるって事か……。
 チクショウ……、未練しか残って無ぇよ……。

「安心しろ、お前はまだ死ねる運命(さだめ)じゃねぇよ」
 ……!? だ……誰だ!? ど…………どこに!!

「細けぇ事ぁ気にするな」
 イヤ、気にすんだろ!! 大体ほぼ脳内じゃねぇか!! 周り見渡しても果てしない空白だし……あるぇ??
 な……なんでだ?? さっきまで何も無かったっていうのに……『ライガ村か?? 此処は…………』

「ご名答。我等が故郷ライガ村だ」
 我等?? ってこたぁお前さんも村の住民なのか??

「まーな。大分古参な住民になるが」
 おーおー、オレのご先祖ってヤツなのかよ。笑っちまうぜ。

「んまぁそういう事になるな」
 ッブ。……本当に先祖なのかよ!!
 …………にしても、このライガ村、なんだか違和感がある……。

「あぁ、そりゃな、此処は現代のライガ村じゃぁない」
 ……って事ぁお前さんが居た頃のライガ村って事か??

「そういうこった」
 なんでこんな所に居るんだよ…………ん??
 あれ、この噴水の手前に、何か置いてなかったか?? ……えーっと…………。
 あ!! 村を……いや、このグランバニア大帝界を救ったっていう英雄の石造が無ぇ。

「そりゃそーだろ。なんせオレがまだ生きていた時代だぜ??」
 …………!? んじゃお前さんが…………!!

「おっと、そろそろ時間だ」
 ぐ……ぐあ!! なんだこれ!! 風が…………。風がオレを飛ばし……いや、村が遠ざかっているのか!?
 ま……待て!! お前さんは一体!!!!

「なーに、そのうち分かるさ」
 待てッ……!? あ……あの額にあるゴーグル……、英雄の石造の額にあるゴーグルと同じじゃねぇか……!!
 って事はやっぱ、お前さんが!!

「さぁな、そこらへんはお前さんの思想に任せんよ、んじゃ。もう二度と死ぬんじゃねぇぞ、クライディ」

 待ってくれ!! まだ訊きた……い…………事……が………………。


          *


 小鳥の囀(さえず)りが聞こえる。時間帯は明朝。
 目覚めが悪いのか、起きた瞬間、多少の眩暈(めまい)がした。
 まぶたを擦り、よく眼を凝らす。すると目の前には自分の手がはっきりと見える。
 その手で自分の顔を触り、形を確認するかのように何回も触れる。

「オ……オレは…………」
「……気が付いたか…………」
「!?」

 漆黒のローブ、そして顔を覆い隠すフード。顔を確認する事が出来ない謎だらけの男、
デストは目覚めた少年にこう言った。

「お前が死亡した時間より一日と半日、『時を戻した』」
「な……なんだって…………??」

 いきなりの出来事に困惑する赤髪の少年。そう、
『死したクライディを時を戻す事によって、生きていた時間帯へと戻り、生き返ったのであった』


「お前はまだ死ねない。まだやらなければいけない宿命が数え切れない程ある。
それがお前の背負われた運命(さだめ)だ」


「……よ…………よかっ……た……」
 言葉篭るクライディ。
 言葉ひとつひとつをかみ締めるようにし、自分が生きているという証明を、自分の中で示した。
 自然と……瞳からは一筋の涙がツゥっと垂れる……。

2010/05/03 07:45 No.5

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★FucWGspn31w_gp

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2010/05/26 22:23 No.6

紅葉侍 小刃@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★FucWGspn31w_dQ

 デストは指パッチンをする。
 するとデストの両側からどこからともなく、デストとは少し違った黒いローブで顔を隠した人間が二人現る。
 片方は男性で、もう片方は煙草を吸っている女性だ。

 この人達は誰だろう、という疑問を抱くと共に、デストはこう言う。
「先程も説明したように、違ったエレメントの継承は認められない。その為この二人に精霊継承を手伝って貰う」
 そう言うと、ローブで顔を隠した二人組みは、男性はライナを手招きし女性はグレンを手招きした。
 ライナとグレンはそれぞれ別々になり、其処にはクライディとデストだけが残った。

          *

 女性に着いて行くグレンは、ふと女性にこう問う。
「んで、そこの姉ちゃんがオレの精霊継承をするって事は、雷の精霊の持ち主なのか?」
 女性は立ち止まり、グレンにこう返す。
「あぁ、そういう事だな」
「…………?」
 その声にはとても聞き覚えがあった。
 直後、女性は顔を隠しているローブを外す。

「!? お前は……ア!!」
 グレンの言葉を遮るように、女性はグレンの腹に雷を纏(まと)わした右手で掌低を入れる。
 その瞬間グレンの全身に雷がはしり、グレンは気絶しその場で倒れる。
「ふぃ〜、いっちょ上がり」
 女性は煙草の煙を肺に入れ、副流煙として大気へと浮かべる。

          *

「ここで‥‥いいか‥‥な……」
 男性はボソリと呟く。その喋り方はとても特殊だ。
 男性はクルリと振り返り、ライナに右の手平を向ける。

「……手相?」
 ボケるライナ。だが男性はそれに答えずこう言った。
「ど〜ん」
 その瞬間、男性の右手からは大量の暴風。
 だが不思議とライナは吹っ飛びはしない。ただ前髪がオールバックに踊った。
 風が吹き終えると、ライナはゆっくりと倒れるように気絶した。

          *

「オレ等もさっさと精霊継承を行うぞ」
 デストはサッとローブの中から左手を出す。
 だがココでクライディは一つ疑問が出来た。

「デストのエレメントって闇なんだよな? オレは炎だろ、なら継承は出来ないんじゃ……」
「……………………」
 無言の間が流れる。デストは左手を空へと掲げこう言い放つ。
「いずれわかる……」
 その瞬間、左手からは巨大な黒炎の豪球が放出された。
 デストは黒炎を容赦なくクライディへと投げつける。

「うぎゃぁあぁあぁあぁ!?」
 黒炎に呑まれるクライディ。だが、何故か衣服が燃えたり、火傷を負わなかった。
 ただその場で気絶をし倒れこむ。

          *

 気絶した三人を時計塔から少し離れたヘルネス大草原へと運ぶ。
 ヘルネス大草原には色々な花や草が生えている。
 中には薬草に使われる草や、香水に使われる花など。
 更に有害物を含む花や草がない為とても安全だ。子供達にとっては最高の遊び場なのだ。
 そして大草原なだけ、かなりの広さだ。恐らく一日では周りきれないだろう。

「これで精霊継承は終わりだな。後は目覚めるのを待つだけだ……。二人共、今回は助かったぞ」
 デストは腕を組みながらも二人に軽く頭を下げる。

「気にすんな、それよりコイツ等はこれからが本番だろ」
 女性は右手の人差し指と中指に煙草を挟み、三人を指す。
「そうだ‥‥ね……。精霊継承は誰にで‥‥も出来る。本当に難しいの‥‥は、《精霊開放》……」
 男性はマジマジと三人を見据える。

 デストは軽い溜息を吐き。少々面倒くさそうな仕草を出す。
「あぁ、分かっている。それにしても、本当にこの三人のエレメントが思惑通りだとはな……。
流石それぞれ『名のある血統』を持っているだけの事はあるな…………」
 『名のある血統』……。果たしてこの三人とは本当に何者なのだろうか……。

「っま、今回こそが帝界を救う鍵になるだろうな。んじゃっ私達は先に本部へと戻ってるぞ」
「了解だ。《アサルト副騎士団長》にも伝言を頼む」
「ほい‥‥さ〜、っじゃデスト、後は頑張って‥‥ね〜」
 男女の二人組みはその場を後にした。


「ねぇねぇ《エリン》、デスト‥‥はあの三人を何時(いつ)頃に連れて来るかな」
 男性は歩きながら女性のエリンに問う。
「なぁに、デストの事だ、三日もしねぇうちに連れて来るだろーよ。
それより《ロイ》、腹減ってねぇか?」
 エリンは男性のロイにそう返すと、ロイはお腹をさすりながらこう言う。

「そうだ‥‥ね、お腹すいた〜」
「うっし、『故郷』も近い事だし、いっちょ飯食ってくか」
「わ〜‥‥い。リンゴ食べたいリンゴ」

 二人の影はライガ村へと消えていった…………。

          *

「──っく……熱ぃ……」
 頭蓋(ずがい)の奥で炎が揺らいでいるような刺激に目が覚め、ムクリと起き上がるクライディ。
「やっと起きたか……」
 デストは和菓子を一人、むしゃむしゃ食べていた。

 クライディが目覚めると同時に、ライナとグレンも体を起こす。
 三人の意識が完璧に戻ったと共に、デストはこう言った。
「自分の右手の甲を見てみろ」
 三人は言われた通りに自分の右手の甲を見る、するとクライディの甲には『炎の勲章』ライナの甲には『風の勲章』グレンの甲には『雷の勲章』が描かれていた。

「コイツは……」
 グレンは自分の右手の甲に出来た雷の勲章を擦ってみる。
 だがペイントされたものでもなかった。
 完璧に肌と一体化している。

「それが精霊を宿した者のみに与えられる勲章、《精霊勲章(エンブレン)》だ。
エンブレンは手袋等を装着していたとしても、必ず右手の甲に表記され、隠す事は出来ない」
 クライディは一度外した指だし篭手を装着する、すると炎のエンブレンがすうっと浮かび上がった。
「うおっ、本当だっ」

「それよりさ……これだけで精霊継承は終わり?」
 デストに問うライナ、ライナの質問にクライディとグレンもデストの返答を待った。
「あぁ、精霊継承は終わりだ」
 三人は声を合わせこう訊き返す。
「精霊継承『は』?」
「あぁ、精霊継承は簡単だ。だがエレメントを自由自在に操るようには、精霊開放をしなければならない」
「せ……精霊開放?」
 再び声を合わせる三人。
「言葉の通りだ、継承されるだけは使えない、エレメントを発動する為には精霊開放を行わなければならない」

 クライディは本当に発動出来ないのかと疑問に思い、右手を前に出し、言葉にだし念じた。
「炎でろ〜炎でろ〜炎でろ〜」
 だが炎のエレメントは発動されなかった。だが諦めずに念じ続けるクライディ。
 そんなクライディを放っておいて、グレンはデストに問う。
「その精霊開放ってのはどうすりゃいいんだ?」
「簡単な話だ、自体に合った開放方法を行えば良い」
 なんの事かはちんぷんかんぷんのグレン。
 ライナも様子からしてわかってい無そうだ、そしてクライディは聞いていないで未だ念じ続けている。

「例を挙げてみればだな、グレン、お前は拳武を嗜んでいる、なら拳を作り只管突き続ければ良い」
「只管……突きの練習? …………っていうかよ、名前もそうだが、何故オレが拳武を嗜んでいる事をデストが知っているんだ?」
 だんまりとするデスト、そしてフードを深く被り直しこう言った。
「いずれわかる……。あ、いや、国家本部のデータに記されていた」
 いい加減呆れたグレン。
「あぁ……そう…………?」

「私達はどうすればいいの?」
 ライナは未だに炎が出るように念じ続けているクライディの頭をつかむ。
「狙撃のお前は、集中という言葉集中しろ」
 一見意味の分からないような事だが、やれと言われれば出来るような気がする。
「は〜い、頑張ってみる〜」
 そういうとライナはさっそうと座り込み、ボソボソと集中と繰り返し目を瞑る。
 グレンはすでにそこ等に生えていた木に拳を作り、突きを打ち込んでいた。

「ん〜と……剣武を嗜んでいるオレは素振りでもしてりゃいいのか? ってそれじゃバッターの開放じゃねぇか」
 一人で突っ込むクライディ。
「違う、剣武を嗜んでいるなら『無』の世界を頭の中で広げろ、明鏡止水の如くだ」
「……それって効果あるのか……?」
 デストはマントをめくり、腰にささっている和刀を見せる。
「オレも剣を使っている、因みにオレもその方法で精霊開放を行った」
 というと、デストは三人に背を向け、何処かへ歩いていく。
「ん、どこに行くんだ?」
 当然問うクライディ、デストは歩きながら答えた。
「食料を調達してくる」
 返事は返せなかったクライディ。

 クライディは早速その場に座り込み、目を瞑り瞑想を始める。脳内は明鏡止水の無という言葉でいっぱいだった。
 だんだんと落ち着いてくる、呼吸が整っているのが分かる。
 脳内の風景は何も無い、ただ果てしない空間……だがすぐに集中が乱れる。
 どうしても上手くいかない事に気が散ってくるクライディ。
「だー! チクショウ……。そんなん簡単にできるかっつーの……」
 愚痴をこぼすなりに、ふとライナとグレンを見、素朴な質問を出す。

「な……なぁ、本当に良かったのか? オレの為にお前さん達まで巻き込んじまって……」
「何を今更くだらねぇ事を点店」
 木を突きながら答えるグレン。
「……だってオレの為だけにお前さん達の人生、未来までガラリと変えちまったじゃねぇか……。
いいのかよ、たかがオレの為に人生の道を変えちまって……」
 それを聞いたグレンは一度突きを中断し、クライディまで立ち寄り、胸倉を掴みクライディに怒声を飛ばした。

「『たかだ』っつぅ存在だったらお前ぇ何か放っておくさ、だがな! 自分(テメー)の人生変えてでもオレ達はお前と一緒に居てぇからオレはここに居る! 今更の後悔なんてのもしちゃいねぇよ!!」
 胸倉をパッとはなし、クライディに背を向け。

「だから……寂しい事言うじゃねぇよ……。オレ等はお前の為であれば何でもする……。
オレ等は三人で一人だ、三人揃って初めて三バカだ。一人でも居なくなっちゃ意味が無ぇ=v

 そういうと再び突きの練習へと戻るグレン。
 今の会話をちゃっかり聴いていたライナはこう呟く。
「マブダチってこういう事を言うんだよねぇ〜、まぁ私もグレンに全部同感だけどねー……。
って事は私もマブダチィ?」


 背後からクライディを包むかのように風が吹く。とても心地よい、優しい微風だ。
 真紅の如くの赤髪は、ユラユラと踊り、クライディは温もりを感じた。

 ────オレは……一人じゃない…………。

 死して気付いた神友との友情の深さ。
 クライディはそっとその場でしゃがみ込んだ。
 そして瞑想をするふりをし、『涙を隠しながらひっそりと泣いていた……』

2010/07/27 22:42 No.7

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★f1puVs.zVS6_vL

* * * * * * * * * *

 精霊開放を始めて3時間が経った。
 ライナはしゃがみこんで、両手の人差し指を両コメカミに添えクルクルと弧を描きながら「集中〜、集中〜」と呟き続けている。
 グレンは只管(ひたすら)木に打ち込みを入れてた。
 クライディはピタリとも動かず、胡坐を組みながら無の世界へと溶け込んでいる。

 それを傍から見れば、グレンが一人うるさい人。としてしか見えない。
 それはそうだ、クライディとライナは無音の方が進みやすいのに関わらず、グレンが木を打ち込む度に「ドスッ! バキッ!」と騒音にも近い音を響かせているからだ。

「……っちょ、グレン本当うっさい! やっと集中できたのに!」
 ライナは立ち上がりグレンに野次を飛ばす。
「何度も言うけどな、オレだって好きでうるさくしてる訳じゃ無ぇよ!」
 だんだん手に痛みを感じてきたグレンもピリピリしてるせいか、一旦打ち込みを止めてライナに言う。

 このような事が何度も続いていた。
 デストが言うには半日休まずに精霊開放に励んで、精霊開放が出来なくても可笑しく無いらしい。

「出来るだけ音小さめにね〜」
 ライナは渋々と座って再び集中し始める。
 細かい事をネチネチ言わないのは、ライナの長所だ。
「集中〜、しゅうちゅう〜、シュウチュウ〜、SYUUTYUU〜」
 ぶつくさ集中と言いながら、頭の中で集中という言葉に集中する。
 するとライナは自分の体に異変が起きた事を感じ取った。
「……ぬ? 何だ今の……。ね〜クライディー、ちょっとこっち来て〜」
 ライナはクライディを呼びかけるが、クライディはそれに気付いていない。
「あの野朗、瞑想しているふりして私の事スルーしてるな……」
 ライナはそう思い、手元にあった小石を全力でクライディの頭にヒットさせる。

「ほげっ!?」
 上半身の体勢が大きく崩れ、クライディの明鏡止水の如く広げた無の世界が、たった一つの小石でパーとなった。
「…………にゃぁあぁあぁあぁああぁあぁ!!」
 クライディは一人、三時間黙り続けていたのだ。ショックは大きすぎる。
 自分の髪を掻き毟りながら愕然とする。

「あ〜……、ガチな方向で瞑想してたのね、サーセン」
 ライナは羽のような軽さで謝る。
 クライディは落ち込みすぎて怒る気にもならなかった。
 そんな落ち込んでいるクライディのもとへトコトコ歩み寄り、こう言う。
「まぁまぁ、取り敢えず顔上げてみなさいよ」
 クライディは無言でゆっくりと顔を上げた。
 そこにはライナの右手が添われている、そして……。
「どっか〜ん」
 ブォオォオオ!!
 ライナの右手から大量の風が放出され吹き飛ぶクライディ。
 流石に吹き飛ばされたクライディは驚きの顔に満ちている。叫び声を上げながら宙を舞った。
 そう、ライナはこのくだらない一言で開放したのだ。


《風の精霊》を……。


「やったぁ! 案外簡単だったね〜」
 語尾に音符が付きそうな陽気さ、クライディは結構な高さを尻から落下する。
「痛ってぇえ! 超痛てぇえぇえ! ねぇケツ割れてない? 今ので絶対ぇ割れちゃったって……。ケツが割れてる!? オレのケツが二つになっとるぅうぅ!!」
 騒ぐクライディ。それに対しグレンは再び打ち込みを止めて、こう呟く。
「元からだってのバカ野郎……」


 その後、ライナは開放した風のエレメントを使って遊んびまくった。
 汗を垂らしながら木を打ち込むグレンを飛ばしたり、再びやる気を取り返した瞑想中のクライディもやはりエレメントで吹っ飛ばしたり……。
 取り敢えず遊んでいた、二人からはクレームが飛びまくるばかり。

 そしてライナは満足したのか、フサフサな原っぱの上で大の字になり、スヤスヤと眠りについた。
「はー……。やっと静かになったか……」
 クライディは安堵の息を吐きながら、再び瞑想に入った。グレンも打ち込みに入り始め、黙々と打ち込み続ける。


* * * * * * * * * *


 空は茜色。日は夕日となった。
 あれから2時間は飲まず食わずで精霊開放に励み続けている。
 クライディは精神的に疲労が堪り、グレンは疲労は勿論、拳には所々血が滲んでいた。

「はぁ……はぁ……。イツになったら開放するんだ……」
 一度突きを中断して、荒くなっている息を整えている。
 そして自分の拳を見、もうそろそろ限界に達するだろうと感じた。
「クソッ!」
 苛つきに耐えられなくなったグレンは、全身全霊の突きを木に繰り出す。
 すると拳が木に触れた瞬間、落雷が落ちたかのような音と共に木は丸焦げになる。
 その異変に驚くグレン。右手にはバチバチと小さい雷が纏われていた。
 そう……ライナに続きグレンも開放したのだ……。


《雷の精霊》を……。


「や……やった…………」
 そのまま木に寄り掛かるように倒れるグレン。体力疲労度はグレンが一番大きいだろ。
 クライディも先程の落雷音と、グレンの突きの音が止んだ事を感じ取った時、グレンが精霊開放をしたと認知した。
 それが焦りとなり、さらに焦りが仇となり再び無の世界が消えてしまった。

「クソっ……。──まだだ……、冷静になれ……。音も何も感じ取らない世界までのめり込むんだ……無へ……」
 根気良く再び瞑想に入る。クライディはまるで空気と同化しているように無へと溶け込む。
 音は風の音と、静かなクライディの呼吸の音だけ。


* * * * * * * * * *


 空は漆黒、日は月へと変わっていた。

 ライナとグレンは精霊開放をしてから寝たきりだし、デストはまだ帰って来てない。
 ただ目を瞑り、頭の中を真っ白にするように瞑想をし続けていたが、流石に集中力が切れてしまった。
 昨日から晩から口に何も運んでいない為、体力的にも苦痛であった。
 一度気分展開をしようと、クライディは少し離れた川辺へとフラフラと歩いていく。

 流れている川は、とても綺麗で透き通ってる。
 夜になれば水面に月が顔をだし、とても幻想的な風景となる。
 川の水で口を漱(すす)ぎ、顔を川の冷たい水で何度もバシャバシャと洗った。
 川辺の澄んだ空気を大きく深呼吸し、ふと川辺の向こう側を見る。
 すると少し離れた所に、刀を抜いていたデストが居た。
 クライディは声を掛けようとしたが、ここでこう思う、「デストの刀の実力を確かめてみたい……」
 そう思い、川辺の石を上手く利用し、三つほどの石を足場にして向こう岸へと渡る。
 そして木の物陰に息を殺してデストを覗いた。

 デストはピタリとも動かない。
 見ていると、段々と気配が感じられなくなってくる。
 そしてゆっくりと刀を鞘の中へと納めた。
 クライディは終わりなのかと思ったが、デストは近くの木へと歩み寄り、抜刀の構えをした。
 クライディは木から顔を出し、デストの背中を見続ける。
 すると……静かな夜空の下に、──チン……と鍔が鳴った。
 その直後、目の前にあった木は斜めに綺麗に斬れていった。

「速すぎる……」
 クライディの目では何も見えなかった、ただ鍔の音が鳴るだけ……。
「クライディ、こっちへ来い。稽古をつけてやる」
 クライディが居る事を気付いていたのか、振り向かずに、背を見せながらクライディを呼ぶデスト。
 クライディはビクッと驚き、木の物陰からゆっくりと出てきて、デストの所まで立ち寄る。

「刀を抜け」
 言われたとおり、クライディは鞘から刀を抜く。だがデストは刀を抜いていない。
「お前さんは刀を抜かないのか?」
 クライディはゆっくりと我流の構えをしながら問う。
 するとデストも構えに入り、こう言った。
「刀を抜けば、お前は死ぬぞ?」
「──っち、なめやがって……」
 二人を急かすように風が吹く。先に相手が動くか、それとも先手を打つか……。
 この二つだけを考え、あとは相手から目を離さない。といっても、デストはローブで顔が隠れている為とてもやり辛い……。
 一向に動く気配が無い二人。だがクライディは先手を打った。

 横に大きく振りデストの刀に護りを誘う、これはいつものクライディの先手の取り方だ。
 これで相手が剣で護った時相手は必ずひるむ、そして防御に持ち構えた手も複雑な為すぐには剣を立て直せない。
 この隙でとどめをさす。というのがクライディの先手だ。

 いつも通りに早い先手。そこらの剣士では追いつけないだろう。
 ここでデストが護り、そしてガードが崩れるかどうかだ。
 ……だが、クライディが思った行動とデストはまったく違う行動を取る。
 ついていくだけでもやっとな速さの斬撃をしゃがんで避けるデスト。
 そして一気に至近距離へ潜り込み、柄でクライディの腹を突く。
「ガハッ!」
 膝をつくクライディ。

「まだまだ未熟だ。先手を仕掛ける前から、呼吸が荒くなっている」
「なん……だって!?」
 自分でも意識していなかった事に気付いていたデスト。何故だろう……、自分は風の音しか聞えなかったのに……。
「明鏡止水の如く……。いかなる状況でも無へと入り込まなければ、エレメントも開放出来ん。そして真の剣士にも成れない」
「チクショウ……」
 手元の草を握り締めるクライディ。村では腕が立っていたのに、まさかここまでの差があるとは……。

「他の二人が居るところへ戻るぞ。ところで二人は精霊解放を成せたのか?」
 二人が居る所へ歩きながら、デストはクライディに問う。
「あぁ……ライナに到っては3時間ぐれーで開放しやがった……」
「3時間……!?」
 クライディの一言に耳を疑ったデスト。
「あぁ、その次にグレン。アイツは……夕暮れくらいだったな」
「そうか……」
 デストは心境でこう呟く「やはりこの3人で間違え無い」と……。
 精霊開放を3時間で行うなどという話は、デストでも聞いた事がない。
 となれば……、ライナは三人の中で一番エレメントを器用に操れる者となるだろう……。

2010/08/17 05:04 No.8

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★f1puVs.zVS6_aR

 暫(しば)く歩くと、そこにはライナとグレンがヘルネス大草原のフサフサとして優しい風の吹く草原で寝ていた。
 2人は既に精霊開放を成している。
 改めて焦りが増すクライディ。
「ところで、お前等は朝から何も食べてないだろ」
 デストはマントの中から紙袋を出す、なんという四次元マントだろう……。
 紙袋を受け取ったクライディは中身を漁った、するとパンと水が沢山入っている。
 唾を呑むクライディ。早速座り込んで、パンと水を片手に持ち、どんどん口に詰めて行く。
 案外デストって気の利く所があるんだな。と、クライディは思いながらペースを落とさずに食べていく。

「それで、お前の精霊開放の調子はどうなんだ?」
「ブッ」
 一番訊かれたくなかった事を訊かれて、思わず吹き掛けてしまいそうになるクライディは口をモゴモゴさせながら、こう言った。
「順調っちゃー順調だけど、不調っちゃー不調」
「そうか……」
 デストは只管(ひたすら)食べ続けるクライディを見下ろし、夜空に薄く輝いている月を見る。
 するとクライディは一旦食べるのを止め、デストにこう問う。
「なぁ……、この先、オレは戦いに死んだりしたら……どうなるんだ? やっぱりオレが死んじまうと帝界は……」
「お前が死んでも何も変わらない」
 クライディの問いを遮(さえぎ)るように即答するデスト。
 デストはクライディと目を合わせず、まだ月を眺めている。
 勿論、クライディはデストに答えには驚いた。思わず再びこう問う。
「でも……オレ等は未来の重要人物って…………」
 デストはやっと月から目を離し、クライディを見た。
 と、いってもフードを被っているため、目同士は合っていないが、気配で目が合っているとクライディも感じる。
 そしてデストはゆっくりと口を開き、こう言い放つ。

「お前が死んでも何も変わらない。だが、お前が生きて大きく変わるモノがある=v

 クライディはただ唖然とするしか出来なかった。
 どう返せばいいのか分からなかったが、取り敢えずこう返した。
「わ……分かった」
 デストは「そういう事だ」というと、クライディに背を向け歩き出す。
 クライディは「何処に行くんだ?」とは問う。
「いずれわかる」
 クライディは返答に呆れてるうちに、デストはどんどん遠のけていった。


 クライディは3分ほど空を見上げ、ボーっとし、再びパンを口へ放り込む。
 水でパンを胃へと流し込み、少々満腹には近づいた。
 だが満腹にな到るまでは食べていない。それは今度は睡魔が襲われてしまうだろうと悟了(ごりょう)していたのだ。

 大きく深呼吸をし、座禅を組みなおして再び無の世界へと入り込む。
「無だ……。何も考えるな、それだけの事……」
 目を瞑り、静かに心臓の音を鳴らす。
 だがどうしても草原の夜風が耳に入ってしまう。
 ついにプツリと集中力が切れ、思わず目を開けてしまった。
 やはり疲れきっているが故に、無にも入りこめないのうだろうか……。
 大きく溜息を吐き、両頬を軽く両手で叩(はた)いて引き締める。

 更に一度リラックスして、再び無へと入り込もうとした時、先程のデストの言葉を思い出す。
「『お前が生きて、大きく変わるモノがある』か……」
 何故かその言葉に大きく励まされ、心の中で大きく渇を入れる。
 ゆっくりと目を瞑り、呼吸を整えながら無へと入り込もうとする。
 だが脳内で再びデストが自分に言った言葉を思い出す。
『先手を仕掛ける前から、呼吸が荒くなっている』という言葉を。

 何故だろうか、あのような戦闘状態でのでデストの落ち着きさは尋常では無い。
 相手の呼吸音を読む程だ、きっと音は聞こうと思えば相手の心臓の鼓動も聞えるのではないだろうか……。
 ……!? そうか、それなら……!

 クライディは周囲の音には耳を貸さず、自分の心臓の鼓動を聞き取るように集中した。
 すると自然に周りの音は何も聞えなくなる。先程まで耳障りだった夜風の音も、今ではまるで聞えない。
 集中力がグングンと増していく。今までは無い程に無へと入り込めた気がしたクライディ。
 聞える音は、風の音でも、呼吸音でも無い。自分の心臓の鼓動のみ……。
 そう、明鏡止水の如く……。

 そしてクライディは虚無の世界へと入り込んだ……。

 ──自分は浮かんでいた。此処が何処だかは全く分からない。
 周りを見ても、何にも無い。ただ果てしない真っ白な世界が広がっている。
 ……これが無の世界?
 ただ浮いている状態のまま居ると、此方に向かって来る灯火が視界に入る。

 あれは……いつもの夢に出てくる炎か?
 良く考えてみれば、この果てしない空白の世界も、夢に見ているあの場所とまったく同じ気がする……。
 いや、全く同じだ。

 そう考えている矢先には、灯火は目と鼻の先まで向かって来ていた。
 いつもなら此処で夢が覚めたが、今回はまだ覚める気配がしない……。
 気が付けば灯火は手が届く範囲で止まっている。クライディは右手でその灯火を乗せるように持つ。
 熱さも何も無い……。
 そのまま灯火を自分の胸に当てた。その瞬間、灯火は……炎はクライディの体内へと入っていった。

「──ハッ!?」
 目が開くと、現実の世界に戻っていた。……今のは?
 何も分からない……、夢でも無さそうだ、鮮明に記憶に残っている。

「ん……!?」
 自分の右手を見るクライディ。
 何故かとても熱篭(ごも)っている。そう、自分でも体に異変がある事に気付いた。
 座禅を崩し、その場で立ち上がる。
 そして右手を空に掲げ、念じて、言い放った。

「炎よ……。──解き放て……!!」
 その瞬間、クライディの右手からは大量の炎が放出される。それは火炎放射そのものだ。
 雲にも届きそうだった炎は止み、クライディは右手を握り締める。
「──やった……やったぞ! 終わった……ぞ…………」
 その場でバタリと倒れる。
 疲労の溜まりがピークへと達したのか、彼は小さく息を立てながら眠りに入っていた。

 先程解き放たれた炎。
 そう……、やっと、やっと開放を成したのだ。


《炎の精霊》を……。


* * * * * * * * * *


 空は快晴。
 雲一つ無い空には、太陽が煌いている。

 ポカポカとした太陽の下で、クライディは草原の上で大の字になり、鼾(いじき)を掻きながら昨晩から爆睡していた。
 だが太陽の光が瞼越しに目に射さったのか、途端に目が覚めた。
「んん……あふ……」
 ゆっくりと上体を起き上げ、目元を擦り目覚める。
 大きく欠伸(あくび)をして、体を伸ばしきる。
 ふと自分の右手の甲を見ると、そこには《炎の勲章(エンブレン)》がちゃんと浮かんでいた。
「夢じゃ……なかったんだな」
 再び大きく欠伸をしながら立ち上がる。
 辺りを見回すと、ライナとグレンが居ない事に気付く。
「……お?」
 よく耳を澄ましていると、川辺から声が聞える。
 行ってみよう。

 気だるそうに川辺まで踏みよると、其処にはライナとグレンがお互いに距離を取って向き合っている。
「何やってるんだアイツ等……」
 ボソリと呟くと同時に、空気的にこの中に割り込まない方がいいと悟った。だまって座って見る事にする。


「行くぞ!」
 グレンは右拳に雷を充電するように溜めていく。
 そして充電完了したのか、大きな轟音を響かせると、右拳に雷が纏う。
 ライナは愛銃のリボルバー(愛称:リボちゃん)をカチャリと構える。
「おいおい、銃って大丈夫なのかよ……」
 冷や汗を掻くをクライディ。

 グレンは勢い良くライナに突っ込んでいく。
 ライナは後ろに下がりながら、バン! バン! バン! と、間を開けて三発打ち込む。
 グレンは1発目、2発目は運良く避けたが、3発目を顔面で受け止めてしまう。
「お……おい!」
 いくら何でも危険すぎる状況に思わず大声を張り上げて、その場から立ち上がってしまうクライディ。
 グレンはゆっくりと倒れる……。と、予想していたクライディであったが違った。
 グレンはその場から吹き飛んだのだ。
 豪快に吹き飛んだグレンはそのまま川にジャボン。
 クライディは慌ててグレンが落ちた川へと走っていく。が、その最中。
「あ、クライディ! ねぇねぇ、これ見てよっ、すんごいよ!」
 後ろからライナが呼び止めてきたので、振り向く、するとライナはニッコリと笑いながら此方に銃を向けている。
 そして引き金を引いた。銃声と共に、胸の辺りに何かがあたった感触を感じた。
 それは体を突き抜ける事も無い、だが風のエレメントに飛ばされたかのように、宙を舞う。
「ぬぉっ!?」
 吹き飛ばされたクライディは、グレンが落ちた川にそのままジャボン。

…………
……
「それでね〜、風のエレメントを小さくして、銃弾代わりにしてみろ。ってデストに言われてさ〜」
 クライディとグレンは、川から上がり、ビショビショな状態で震えながら体育座りをしている。
 ライナはさっきからの自分の銃弾の話に夢中だ。

「う〜……、さぶぃ……」
 その後ヘクチッ! とクシャミをするクライディ。
 グレンも続いてクシャミをして震え続けている。

「ほらそこ〜、人の話聞いてるのかねチミ達はー」
 ライナはプリプリと怒り始めたが、2人は聞いちゃいない。
 取り敢えず「あぁ聞いてる聞いてる、がっつり聞いてる」とでも言えば、ライナは話を一人でもくもくと進めてくれる。

「っつぅかオメェ等は朝っぱらから何やってるんだよ……」
 グレンに問うクライディ。
「朝っぱらだぁ? もう昼過ぎてんぞ、今は……3時くらいだぞ?」
「まじかっ、また寝過ごしたな……」
 無理もない、クライディは昨日、夜遅くまで精霊開放に励み続けていたのだ。

「それで、風のエレメントをギュンッ! って圧縮するように、銃弾の代わりにしてさ」
 まだ一人で話しているライナは置いておく。

「そういやぁお前、精霊開放できたのか?」
「おぉっ、いい質問だねグレン君」
 クライディは自慢げに右手の平を手前に出す。そして手の平から小さな炎をポワッとだす。とても暖かい。
 ライナはまだ話し続け居たが、クライディの小さな炎を見て、「きゃー! なにそれ可愛い!」といいながら炎に近づき、3人で和んでいた。

 昼から3人でキャッキャと遊んでいる中、デストは一人、時計塔に向かっていた……。


§-ハウリング序章:【転】End-§

2010/08/16 07:40 No.9

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★f1puVs.zVS6_vL


§-ハウリング序章:【結】響き渡るの暁鐘「初まりの暁朝」-§

 昼時のライガ村付近の時計塔。
 怪しき漆黒のフード付きのローブで顔を隠し、全体も漆黒のマントで身を包んだ男《デスト・アイル》が現る。
 時計塔内では、微かではあるが、何やら騒音が耳に入る。
 表口から進入出来ない為、裏口に回り時計塔内への進入を計るデスト。
 ゆっくりと錆付いた扉を開けると、騒音があらわになった。
 何やら争っている場に目を付ける、そこは螺旋階段の下段辺りだろうか『クライディ達3人と、ゴドー率いる盗賊達9人が争っている』

 そう、時間帯的にはクライディ達を率いたデストは、この日の夜に時空間転移(タイムスリップ)を行い、昨日の昼頃までと時間の空間を戻ったのだ。
 故にこの争いが再び起きているのだ。

 クライディ達3人は、若干盗賊達に圧され気味だ。
 そんな紛争風景を眺めながら、デストは呟いた。
「思えば此処から始まっていたのか……。いや、物語の歯車は既に動いているのか……=v
 そしてクライディ達がピンチに陥った時、デストは地にゆっくりと右手を着け、精霊詠唱を詠い始める。
「暗黙の処罰を下せ……【魔王閻羅(まおうえんら)】」
 デストの右手を中心に、紫色の精霊陣が広がる。
 そして右手からは漆黒の闇が煙状がモクモクと現れていく。
 そのまま煙状の止みは盗賊達9人を呑み込む。それはまるで暗黒に呑まれたかのように……。
 盗賊達が倒れたのを確認したデストはすぐに時計塔を後にする。
 その去って行くデストの姿をクライディは目撃していたのだ……。


 デストはその後、3人達が居るヘルネス大草原へと移動した。
 其処(そこ)には、精霊開放で発動できるようになった精霊(エレメント)を互いに使いあって、遊んでいるのか修行をしているのか、分からないがとにかく精霊(エレメント)を発動し合っていた。
 デストが来た事に気付いたクライディは声を掛けた。
「あ、デスト! 聴いてくれよ、オレも精霊開放出来たぜ!!」
 そんな熱い掛け声に対し、デストはさらりとこう言う。
「あぁ、知っている」
 疑問しか感じなかったクライディだが、さらに質問を追求してもどうせ「いずれわかる」で返ってくるのだろうと予想した為、これ以上は何も言わなかった。
 何故か落ち込むクライディ。だがそんなクライディにデストはこう伝えた。
「現在の時刻は16時、21時にはライガ村に来い。それと……よくやった」
 初めてデストに褒められたかクライディ。だが遠まわしすぎて褒められたどうかは不明だが……。
 伝え終わるとすぐさまその場を後にする。
 クライディは「あ……あぁ」としか言えなかった。

 帰って来たと思えばすぐに居なくなったデスト。
 そんなデストの伝言をライナとグレンに伝えた。
「21時って……今はまだ16時ぐらいだろ? あと5時間どうしろって……」
 グレンは頭を悩ませる。
「取り敢えずまぁ……精霊(エレメント)でも使い慣れておいた方が良くねぇか?」
 クライディは2人に提案を出す。
 他に案が出なかった為、これに決まる。
 だが各々どのように精霊(エレメント)を使い慣れるかが疑問だった。

「まぁ私は才能があったみたいだすぃ〜? もう精霊(エレメント)は普通よりは使いこなせる〜」
 右手平から風の精霊(エレメント)を圧縮し、丸い固体化にして自慢するライナ。
「オレは……まだ雷を纏わすくらいしか出来ねぇな……」
 グレンは右拳を手前に出し、力をグッと入れて雷をバチバチと纏わす。
「オ……オレは寒くなったら暖炉になります……」
 右手の人差し指からポッと小さな炎をだす。とても可愛らしい。
「相変わらず可愛いな……、でもお前らなもっと凄ぇ炎が出るんじゃねぇか?」
 グレンはそう問う、クライディは不安そうな顔をしながらも、
「出るか……な」
 といいながら右手を天向け構える。
「無……」
 そう心の中で呟く。周囲の音は消し、自分の心臓の鼓動へと集中する。
 すると体内にフツフツとした熱いものが沸いてくる。
 呼吸を整え、目をカッっと開き声を張り上げた。
「おらぁぁ!!」
 構えた右手からは、昨日の炎とは比べ物にならない程の量の炎が発動される。
 それは雲にも届いてるように見えた。
 自分でも驚くクライディ。勿論ライナとグレンはそれ以上に驚いている。
「す……すげ〜」
 ライナは呆然としている。
「スゲェよクライディ!!」
 グレンはクライディの炎を見て若干興奮気味だ。
「昨日はあんなに苦労したってのに……」
 不思議そうに自分の右手を見つめるクライディ。
 それと同時に、自分が成長している事に喜びを感じた。

「自分の長所を伸ばすってのはどうだ?」
 右手をだらんと下げ、いつもの無気力状態で再び提案を出す。
「となると?」
 グレンは提案に対し追求する。
「ライナの場合はもっと風の精霊(エレメント)を凝縮するとか、グレンは右拳に精霊(エレメント)を纏わして、突きの修行とか……。オレの場合はもっと瞬時に炎の精霊(エレメント)を出せるようにする。ってのはどうだ?」
 自分でもスイスイと修行内容を述べられたと思うクライディ。
 どうやらその提案には2人とも大満足のようだ。
「よ〜し、じゃー次デストに会ったら驚かせるくらい修行しておこう!」
 ライナは気合を十分に溜める。
 そんなライナに乗せられ、クライディとグレンも気合十分となった。

* * * * * * * * * *

 コツ……コツ……。
 《飛行艇》の中、純白の壁を辿り進み続けるデスト。
 足場は鉄製、歩く度に響きの良い足音が響き渡る。
 壁を辿ると一つの金縁の扉がデストを招いた。
 扉をノックし、中へと入る際にこう言う。
「失礼します、《アサルト副騎士団長》」
 部屋は全体的に白一色。唯一色や彩っているのは巨大な本棚に収納されてる大量の本だろうか。
 大理石の足場も白く、天井からぶら下がっているシャンデリアも白色だ。
 そんな洒落た部屋の中央辺りに、黒色のデスクが置かれている。
 その黒色デスクで書類を片しているのは、
《レイ・ロック・アサルト》
 腰までサラリと伸びた蒼き綺麗な髪。
 顔立ちはとても爽やかだ。瞳は輝かしい黄色。
 青色のトレンチコートを纏い、左肩には黒色のショルダーが装備されている。
 とても若い年齢に見えるが、実年齢は28歳だ。

 レイは書類を纏めて、机の上でトントンと整え引き出しの中にしまう。
 そして新たな書類を出す。
 デストに眼は合わせず、こう問う。
「着きましたか、デスト。《未来への鍵》は例の3人で間違え無かったのですか?」
 デストはデスクの前に立ちこみ、珍しい丁寧な言葉でこう言い放つ。
「はい、──彼等で間違え有りません。今すぐに我等《共鳴(ハウリング)騎士団》への入団許可を=v
「分かりました。《本部》には連絡しておきます」
 レイに対し、デストは「了解」というと部屋を出た。

 レイが先程発した『本部への連絡』そうなると、《共鳴(ハウリング)騎士団》とは本部と関係性があるという事だろうか。
 それは後々明らかになる……。

* * * * * * * * * *

 日は暮れて夜空が広がる。星も一粒一粒煌いていてとても綺麗だ。
 汗を拭いながらも必死に精霊(エレメント)の修行をするのは3人。
 ──未来を変えるんだ
 そう心がけている。
 それにそんな重要な役を持っている以上、中途半端な気持ちではやっていけないのは初めから承知の上だ。
 責任感は強い三バカではあったが、集中しすぎて時間を忘れてしまったのが仇となった……。

 時刻はまもなく21時10分。
 集合の時間10分送れているにもいるにも関わらず、未だにヘルネス大草原で修行をし続けていた。
 しっかり者のグレンが時刻に気付いたときには時既に遅しというモノだ。
「やっべぇぇえ! 時間ががっつり過ぎてるぞ!」
 携帯時計を見て声を荒がせるグレン。
 クライディとライナも流石に慌て始め、3人は猛ダッシュでライガ村へと向かった。
「やべぇよ〜、デストって絶対ぇ時間とかにキッチリうるせぇよ、デートとかで相手が1分でも遅れたら返りそうなタイプだよアイツ……」
 ぶつくさ言いながら走り続けるクライディ。
「いや、実はアイツも時間にルーズだったりするかもしんねぇぞ」
 グレンはクライディに対しそう言う。するとライナはグレンの小話に追加した。
「遅れても、理由を訊かれたら『いずれわかる』って言って返しそうだよね」
 走りながら談笑をしていると、ライガ村が見えてきた。
 だが……様子が可笑しい。

 到着した時にはその恐ろしい風景にぎょっとした3人。
 ──村が炎に包まれている……。
 そしてこの光景には……見覚えがある。
 3人は記憶を辿った、そしてすぐに思い出す。何故なら遠くもない記憶だからだ。
 いや、むしろ近い。それは……。
『クライディが一度死した日……』
 そう、3人からすれば2日前の話だ。
 となると、ゴドー率いる盗賊段が村の襲撃に来ている。
 このまま特攻を考えた3人。
 だが冷静に考えてみれば今3人が特攻しにいっても二の舞だ……。
 勝てる訳がない……。
 3人の表情は曇っていった。
 互いに掛け合う声も見つからない。

 クライディはふと故郷であるライガ村を包む炎を見る。
 とても心が痛んだ。勿論、ライナとグレンもだ。
 自分の生まれ育った村が、炎に呑み込まれ今にも炎上寸前なのだ、当たり前だろう……。
 だが心に痛みを覚えると共に、ある事がクライディの頭に浮かぶ。

 ──あの炎を、オレの精霊(エレメント)で呑み込む事は出来ねぇのか?
 すぐさま行動に移る。
 右手をライガ村に向け、準備に入った。
 ライナとグレンは、クライディの行動が読めずに戸惑う。
「ク……クライディ!?」
 だが今は答える暇も無い、一気に力を居れ、炎の精霊(エレメント)を再び大量に発動させた。
 するとどうだろう、クライディの炎は、村を包み込む炎を取り込んだように呑み込む。
 村に炎が移るその前に精霊(エレメント)を止めるクライディ。
 その瞬間、ライガ村を包んでいた炎は静かに、そして一気に収まった。
 どうやら計画通りにいったようだ。
 そこでクライディは気付く。

「──昨日……いや! 今までオレ等じゃ無ぇんだ!!」

 クライディを意を決し、毅然と紛争するライガ村を前を仁王立ちし、ライナとグレンにこう言う。
「行くぞ、オレ等が生まれ育った村だ。オレ等が護って当たり前ぇだろ!!」
 クライディの一言で2人の表情は曇りから快晴へと変わった。
 考えてみれば、こんな不安など、未来を変えるという決意に比べれば小さすぎるものだ。
「あぁ……その通りだな、行くか!」
 フッと笑うグレン。
「うん! 私達もパワーアップしてるしね!」
 3人は互いに型を寄せ合って円陣を組み、そして中央に《精霊勲章(エンブレン)》が甲に表記された右手を寄せ合う。

「未来を救って世界を変えるんだろ、こんなちっぽけな盗賊団にびびってしゃしょうがねぇだろ」
「グレンの言う通りだねっ、五郎君だっけ? ゴドーだっけ? どっちでもいいけど、アイツの炎の精霊(エレメント)なんて、クライディの炎の精霊(エレメント)と比べればちっちゃいちっちゃい! ねっ、クライディ!」
 クライディは緩く笑い、こう言い放った。
「あぁ、あんなん楽勝だっての! よっしゃ、いくぞ……、死ぬ覚悟なんざオレはしている、オレがのたれ死んだところで何も変わらねぇが、オレ等が生きて変わるモンがある。その変わるモノの為、今は生きるぞ……、生きて……生きて村はオレ等が護る、ただこんだけの話だ……! ──行くぜ、神友(しんゆう)!!=v
 クライディの一渇に合わせ、3人は寄せ集めた右拳を強くぶつけ合う。

 そして紛争するライガ村へと乗り込んだ……。

2010/08/20 13:44 No.10

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★f1puVs.zVS6_aR

 辺りは暗く、月明かりのみが頼りとなる。
 詳細にそのものが何か分からなく、その形と影程度しかハッキリと見えない。
 村内に乗り込み、盗賊達の元へ走って行く途中、3人はある人物達を見かけた。

 自分達だ。

 二日前、クライディは此処でゴドーに銃殺され、一度死に到った。
 そのクライディとの哀別に涙を流しているライナとグレン。
 クライディは、こんなにも自分の死に悲しんでくれたライナとグレンに、改めて感謝の気持ちが沸いて来る。
 だが、今はこの二日前の3人を構ってはいられない。
 それにこの後はデストが来て、今の自分達のようにどうにかしてくる。
 そう言い聞かせ、3人は『自分達』とすれ違った。

 盗賊達との間合いは狭くなってきた。
 距離は近い、クライディは抜刀と同時に、居合い斬りで先手を決める。
 斬撃を喰らった盗賊一人は出血を抑えながら倒れる。だが死には至っていない。
「誰だ!?」
 一斉に盗賊達は3人を注目する。勿論ゴドーもだ。
 ゴドーは怯え声を混ぜながら、3人を指差しこう言う。
「テ……テメェ等が何故此処に……、それに加えて赤髪のお前がテメェ生きている!? テメェはさっき撃ち殺されたはずだろ!!」
「そーいやぁそーだったな。んじゃぁお礼参りっつぅ事で」
 ゆらりと我流の構えに入るクライディ。
 ライナもリボルバーを構え、グレンは右拳に雷の精霊(エレメント)を溜め始める。
「お……おいオマエ等! このガキ共をやりやがれ!」
 ゴドーは数歩下がり、盗賊達を一斉に襲わせる。
 3人は背中合わせになり、固まって同時に声を掛け合う。

『死ぬなよ!』

 早速ライナは銃口から風の精霊(エレメント)を圧縮し、固体化とした弾を撃ちだす。
 撃たれた盗賊は次々と宙を舞っていった。
 それを掻い潜って向かってくる盗賊達を、クライディが斬り続け、遠距離にいる盗賊には炎の精霊(エレメント)で焼き付ける。
 グレンはライナを護衛するかのように、ライナに襲い掛かかろうとする盗賊達を次々と殴り倒していく。
「オラァァ!」
 3人の盗賊が、クライディ目掛け一気に襲い掛かってくる。3人とも棍棒を持っていた。
 危機を薄く察知したクライディは、無意識に無の世界を広げる。

 それはまるでスローモーションの世界だ。
 ゆっくりと襲い掛かってくる盗賊達、そして呼吸の音もかすかに聞える。
 相手の呼吸が緩んだ瞬間…………今だ!!
 ズバッと斬り込んだクライディは、盗賊達の背後に回っていた。
 自分の背後には既に倒れている盗賊達。
「き……聞えた……!?」
 喜びに溢れるクライディ。これで、ほんの僅(わず)かでもデストに近づいたはずだ。
 だがそんな気を緩めてはられない、次々と盗賊が襲ってくる。
「っち、休んでる暇も無ぇって……か!」
 語尾に力を居れ、襲い掛かってきた盗賊を斬り込む。

 クライディが前線で戦ってる中、グレンも必死に喰らい付いていた。
 だがグレンの攻撃を避け、掻い潜った1人の盗賊はライナ目掛け棍棒を振り下ろす
「──きゃっ!!」
 ライナは盗賊の攻撃を避けたが、避ける際に足が絡まり転等してしまった。
「死ねぇぇ!」
 棍棒を大きく振り被り、勢い良く振り下ろす盗賊。思わずライナは目を瞑る。
 ドゴッッ!!
 鈍い音が耳に響き渡る。だがライナは痛みを感じなかった。

 ゆっくりと瞼を上げると、グレンが棍棒を左腕で受け止めていた。
 そして頭に掠れたのか、頭部からは血が一滴垂れ流れる。
「グ……グレン!」
 そのまま左手で棍棒を握りしめ、右拳に雷を纏わしこう言った。
「お前は女にゃ手をあげちゃなんねぇって、オヤジから教わって無ぇのか?」
 歯を食い縛り、盗賊の顔面目掛け右拳で強烈な一撃を入れる。
 盗賊は酷い悲鳴を上げながら倒れた。
「グ……グレン……、頭から血が出ちゃってるけど大丈夫なの!?」
「あぁ、気にするな」
 頬に垂れていた血を右腕で拭い落とす。

 3人は一度体制を整える為、再び背中を合わせて固まる。
「はぁ……はぁ……。チクショウ、斬っても斬っても減らねぇな……」
 荒がっている呼吸を整えながら呟くクライディ。
 盗賊達は30人近く束になってじりじりと近づいてくる。
 一斉に襲われたら勝機は無い……。
 クライディはどうするべき只管考えた、だが何も浮かんでこない。
 一度落ち着こうとゆっくりと目を瞑る。……駄目だ、何も思いつかない……。
 ゆっくりと瞼を上げるクライディ。
 だがその光景にクライディは驚愕した。

 そこには盗賊達の姿ではなく、精霊開放時に見たあの虚無の世界。
 この世界の風景は相変わらず何も無い。
 そしてこの中をいつまでも浮かび続ける自分。
 どうすれば現実の世界に戻れるだろう。それ以前に何故この世界に来たんだ?
 疑問しか浮かばない中、やはりこの世界に訪れると必ず現れるモノが現れた。
 そう、炎がクライディに近づいてくる。

 音も気配も何も聞えない空白の空間。ただ炎か近づいてくる。
 クライディは何も考えていないうちに、体が勝手に炎を右手で軽く握り締めた。
 そしてそれを一気に握り締める。
 そこでクライディは問う、「この炎をオレに送るのは誰なんだ」と。
「────」
 だが返事は返ってこなかった。
 未だに謎が多すぎる。クライディは軽い溜息をした。

「────ハッ……!?」
 軽い瞬きの拍子で元の世界に戻ってきているクライディ。
 先程の炎を握り締めた効果なのか、一度も聞いた事も無い『言葉』が何故か頭に入っている。
 それに動作も全て、頭に入っていた。
 クライディは無意識に右手を盗賊達に向け、こう言い放ったのだ。

「喰らいやがれ!【絶焔豪(ぜつえんごう)】!!」

 右手から今までとは比べ物にならない炎が放出された。
 範囲もまた広く、まだまだ炎を出し続けられるという自信がどこからか生まれる。
 逃げまといながら盗賊はこう言った。
「こ……これはゴドー団長と同じ精霊(エレメント)っていうヤツじゃねぇのか!?」
「ぐぁあぁ!!」
 次々と炎に呑まれる盗賊達。
 30人近い盗賊達を一気に一掃出来たクライディ。
 だが、想像以上に疲労が大きい。
「やっべぇ……、今にもぶっ倒れそうだ……」
 苦笑いしながら、刀を支え杖のようにして、なんとか立っている。

 今の攻撃で敵は大きく一掃できたが、まだ半分以上は残っている。
 それに一番面倒なゴドーも生きている。
 だがゴドーはクライディの先程の攻撃を見、冷や汗を滝のように掻いている。
「てっテメェ……、今のはもしかして……《精霊技術(エレメンタルスキル)》か!?」
 ゴドーは声を震わしながら、大いに驚いている。
「オレでもまだ出来ねぇっていうモノを……」
 ゴドーはクライディの存在に、恐ろしさを感じ取った。
 今殺さなければ、必ず厄介な敵に回る……。

「テ……テメェ等! 怯むんじゃねぇ、一気に畳み掛けろ!!」
 一斉攻撃を執るゴドー。盗賊達もクライディを恐れたが、恐れを狂気でかき消し、一斉に攻撃を仕掛ける。
 ライナを庇い、クライディとグレンは打ち向かう体勢を取る。
 だがこのままでは確実に危ない……。

 だ……誰か!!
 そう3人が願った時だ。

 漆黒に身を包んだ男が、闇と共に3人の目の前に突如現る。
「──悪い。遅くなった……」

 3人は声を合わせてこう言った。
「デ……デスト!!」
 盗賊達は突如現れたデストに驚き、一旦足を止めた。
 ゴドーはデストという名を耳にした時、大量の焦りの汗が垂れる。
「ハ……《共鳴(ハウリング)騎士団》の《黒騎士デスト》か!? な……何故此処に居るんだ!?!?」
 目が飛び出そうなくらいに大きく目を見開くゴドー。

「う……うぉらぁあぁあ!!」
 盗賊達は再び突っ込んでいく。
 それに対しデストは刀を抜く、だが構えはしない。
 ただ……鍔の音を小さく鳴り響かせただけ……。

 ──チン。

 先程まで、耳が痛くなるほどうるさかった盗賊達の騒音が一気に止む。
 そして一度動きが止まったかと思えば、無言のままバタバタと倒れていった。
 初めて見るデストの実力に、ライナとグレンは唖然としている。

 盗賊達が全員倒れた中、1人だけ立っていたゴドーの目の前まで、クライディは黙って踏みよる。
「ヒイィイ!!」
 ゴドーは甲高い声で恐れをなし、思わずシリモチをつく。
「な……なんなんだテメェ等は! ば……化け物かっ!?」
 クライディはゆっくりと刀をゴドーに向け、言い放つ。

「お前さんみてぇな田舎者は、知らなくていい事さ」

 ゴドーの顔面の真横目掛け、刀を勢いよく突き立てる。
 ゴドーは悲鳴と共に気絶した。
 それと同時に、デストは3人に声を掛けた。
「引き上げるぞ」
 デストはそう言うと、右手で身の周りに弧を描き、黒紫色の《精霊陣》を浮き出さす。
 そして精霊技術(エレメンタルスキル)を唱える。

「空間転移へ身を委ねん……【ヘイスト】」

 精霊陣からは煙のように闇が湧き上がり、4人の姿を隠した。
 そして闇が消えた時には4人の姿はきえていた……。

 クライディ達4人も、内側から見た闇が消えた時には、ライガ村とは別の場所に居た。
 そこはライガ村に近くに在る港《コルア港》へと移動している。
 そしてデストを抜いた3人の目に入ったのは《飛行艇》だ。
 だがそれ以前に、クライディとグレンは戦闘に疲れたのか、その場で座り込んだ。
「大丈夫!?」
 ライナは心配し、2人の様子を伺う。

「治療ならこの飛行艇内で出来る」
 デストはそう言うと、飛行艇に乗船する為の梯子に手を掛ける。
「って事はオレ等はこの飛行艇に乗るのか?」
 グレンはデストに問う。
「その通りだ、この飛行艇が我等の本部となっている」
 3人は我等という事場に疑問を持った。ライナは口に出しそれを問う。
「我等って……?」
 デストはそういえば言っていなかったなという仕草を出し、こう言い放つ。

「お前等にはまだ教えていなかったな。我等は《真紅焔第一騎士団-共鳴(ハウリング)》だ。さっさと飛行艇に乗れ、もう始まっているのだ=v
 そういうとデストは先に梯子を上っていく。
 ライナとグレンも、デストに釣られて急いで梯子を上りにいく。
 そして、クライディも梯子を上ろうと思ったその時だ。

 ────ゴーン……ゴーン……ゴーン……。

 ──確かに聴こえた……。
 天空を響き渡る、鐘の音(ね)が……。
 それはまるで、3人の始まりを知らせるような鐘の音。
 まさに暁鐘が響き渡ったのだ。

 クライディは思わずここからも見える、天を突き抜ける時計塔を見上げる。
 時計塔はとうの昔から一切起動していない。勿論鐘を鳴らす事も出来ない。
 だが……時計塔は確かに暁鐘を天空に響き渡らした

 ボケッとしているように見えたクライディを、ライナは一度振り向き声を掛けた。
「クライディ〜、早く来なよ」
「あ……あぁ」
 クライディも3人と共に飛行艇に踏みより始める。
 そして梯子に手を掛けた際に、もう一度時計塔を見上げ、こう呟いた。


「──物語は……今始まったのか…………=v


§-ハウリング序章:End-§


──本編とは関係ありません──

序章がやっと終了しました!!
いやー、長かったです←
どうだったでしょうか、お楽しみ頂けましたでしょうか。

ここでサブ記事にてのご感想についてですが。

もし良ければ、貴方が好きにったキャラクターを1人挙げて欲しいです!!
今のキャラクター達の印象なども兼ねまして調べたいのでbb
いわゆる投票です^^

ではでは、ご感想をお待ちしております!!

これからは物語の始まり、一章へと入りますので、どうぞご期待をお願いします^^

by紅葉侍 小刃

2010/08/31 03:25 No.11

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★f1puVs.zVS6_aR

§-ハウリング一章:真紅焔第一騎士団-共鳴(ハウリング)-§

 この世界全体となる《グランバニア大帝界》
 帝界では幾つもの大陸で貿易が行われている。
 そして《ライガ村》が在する《クローズ大陸》にも港町が勿論在る。
 その港町は帝界の本部とも言える《真紅焔(しんくえん)総本山》がよく利用している為、名高い港町である。
 そんな名高い大港町……《コルア港》にクライディ達が入団とする《共鳴(ハウリング)騎士団》の飛行艇が停まっていた。

 コルア港は貿易がとても盛んだ。
 海岸側に建てられている港町は全体的に白色の建築が多く、明るく陽気さが絶えない。
 宝石のように透き通った海は、睡眠を誘われそうな静かでリズムの良い波を鳴らしている。

 飛行艇も緩やかな波に少し揺れていた。


 コツコツコツコツ……。
 響きの良い足音が鳴り響く飛行艇内。床は鉄製の為歩く度に足音が鳴る。
 壁は一面純白で雰囲気はお城に居るかのようだ。
「なぁデスト……。やけに静かじゃねぇか? この艇内……」
 クライディは馴れない場所にソワソワして、落ち着きを保てない。
 それはグレンも同じだ。
 だがライナは至ってぽけーっとしている。
「今は殆どの団員が《任務(ミッション)》に出ているからな。人が居なければ勿論静かだ」
「ミ……任務(ミッション) ?」
 クライディとグレンは声を揃えて問う。
 デストは「また面倒な事を口に出してしまった……」と語りかけているような溜息を吐き、こう言った。
「いずれわかる……」
 …………。2人は「またそれか……」という飽きれた表情をし黙ってデストに連いて行った。


 暫(しば)らく歩くと気が付けば艇内の一番奥の部屋まで辿り着いていた。
 そこで立ち止まる4人。デストは「この部屋だ」と言うと、金縁の白い扉をノックし、ドアノブを掴み扉を開けた。
 デストは顎で3人を中に入れと誘導する。
 緊張しながら黙って室内に入ってく3人。
 すると室内からは歓喜の声が上がった。

「おっ!? 《レイ》! デストと例の3人が来たぞ!!」
「おや? 随分と早かったですね」
 室内には2人の男性が待って居た。

 1人は黙々と黒色のデスクで書類を片していた模様の男性《レイ・ロック・アサルト》
 腰までサラリと伸びた蒼き綺麗な髪。
 顔立ちはとても爽やかだ。瞳は輝かしい黄色。
 青色のトレンチコートを纏い、左肩には黒色のショルダーが装備されている。
 漂う雰囲気がとても爽やかだ。

 もう1人は椅子の背もたれを前にし、上半身の重心をその背もたれに乗せて楽そうな格好で待っていた。
 その男性の名は《キール・ジェント》
 常に紳士が被っていそうな茶色いハットを深くかぶっている。
 その為目が此方からでは見えない。髪の色は白色だ。
 貴族が着る様なキッチリした長袖の茶色いジャンバーを纏っている。

「さてと」
 レイはゆっくりと椅子から立ち上がる。
「初めまして。我が共鳴(ハウリング)騎士団-飛行艇本部《ラロウス》へようこそ」
 レイは頭を軽く下げてお辞儀をする。釣られてクライディとグレンも軽くお辞儀をする。
 ライナは1人ボケッとしていた為、クライディはライナの頭を掴んで、無理やり頭を下げさせお辞儀させる。
「それでは自己紹介を。私は《共鳴(ハウリング)騎士団所属-アサルト副騎士団長》こと《レイ・ロック・アサルト》と言います。私の事はどうぞお好きに呼んで下さい」
 ニッコリと笑うレイ。その笑顔は爽やかすぎる……。
 だが若さをキープしているその実年齢は驚愕の28歳だ……。

 次は茶色いハットを深く被っているキールに手を差し伸ばせるようにし、3人の視線をキールに集める。
 そしてレイがこのキールの説明を済ませようとした時、キールは話を割って入ってきた。
「自分の自己紹介くらい自分でやるっての。オレは《キール・ジェント》だ。オレの事も好きによんでくれ」
 そう言いながら椅子から立ち上がるキール。
「本当はもうちょい人数が居るはずなんだが、今は殆どが《任務(ミッション) 》に出ていてな」
 キールはレイの黒色のデスクに腰を掛ける。

「まぁそう出口に固まらず、室内に腰を掛けて下さい」
 レイは再び椅子に座る。確かに室内には大きい円状になっている机に椅子が並んでいる。
 会議などに使いそうな机の形だ。
 適当な場所に固まって座る3人。デストは腕を組んで出口を背もたれにし立って居る。

「貴方達の事は聴いています。勿論此処にいらした理由も存じ上げています。ですが、貴方達は此処に来た理由が分かりませんよね?」
 3人は黙って首を縦に振った。
「それでは此処に来た理由と、貴方達の知らない世界をご説明しましょう」
 レイの顔の表情は引き締まる。そして「キール」と呼びかけた。
 キールはふてぶてしくデスクに掛けていた腰を上げ、奥のキッチンのような場所へと向かう。

「早速ですが、貴方達は《真紅焔》をご存知ですか?」
 3人は黙って顔を見合わせた、するとクライディは「あぁ……知っている」という。
 グレンは「タメ口かよ……」と心境で溜息を吐く。

 《真紅焔》とはこのグランバニア大帝界の平和を治安している武装護衛隊。所謂(いわゆる)軍隊のようなものである。
 またの名は、《帝界本部》とも言う。
「では話が早い。その真紅焔には《真紅焔三大騎士団》という3つの騎士団を帝界の平和と治安の為に動かしています。その3つのうちの騎士団が我等《真紅焔第一騎士団-共鳴(ハウリング)》となっているのです」
 まさかと思っていたがその通りだった。
 という事は、3人は帝界本部に入団したといっても過言では無い。

「でも家の人とかに何も言わないで来ちゃったよ?」
 ライナはキョトンと言う。
「その点は、事前にうちの騎士が話をつけているから大丈夫です」
 安堵の息を吐く3人。

「それでは次に、貴方達と争った盗賊は《イルデン》とほざいてませんでしたか?」
 ほざ……以外に黒い言葉を使うんだなと思ったクライディとグレン。
 ライナはレイに対しこう言う。
「はい、ほざきやがってました」
 レイは軽く頷く。
「やはり……。そのイルデンとは簡単に言えば私達と帝界本部の《反逆軍》そのものなのです……。」
 反逆軍……という事は帝界の敵? そんなに大きい組織だったとは……。
 3人は唾を呑む。
「まぁ尤(もっと)も、貴方達が相手した盗賊達など三下の屑に過ぎません。だがイルデンの幹部となると、私達でも太刀打ちが難易なのです……」
 レイは溜息を吐く。クライディ達が相手した盗賊達が三下……。
 確かに各々自体はひ弱であったが、あれだけの人数で三下となると……。
 イルデン自体の人数が何人だろうか、到底想像出来ない……。

 クライディはふと、疑問が浮かんだ。
「イルデンってのは何で敵になっちまってるんだ? やっば悪ぃ奴等とかそういう理由なのか?」
 レイは即答する。
「良い質問ですね。実はイルデンとは反逆軍そのもの意。帝界本部に逆らう輩が集まった固まり、『ある野望』を成す為に組織となっています……。残念ながら、その野望というモノが明確に判明していません」
 レイは視線を下へとずらす。
「それに、最近の情報では敵とは『イルデンだけではない』んです……。ですがイルデン以外の敵はハウリングとは別の騎士団が担当している為助かりますが……。今の時期ではね……」
 突然黙り込むレイ。瞼を閉じて、それは何かを回想している様子に見えた。
 回想から帰ってきたように、レイはハッと瞼を上げる。
「すいません、少し昔を思い出してしまい……。それでです、今は昔。イルデンとは決着がついてはいました。ですが……」
「……ですが?」
 3人は声を揃えて返す。

「まだ……5年前の話です。《騎士団長》が居た自体ですね……」
 ──騎士団長……。そういえばレイは副騎士団長である。
 当然のようにクライディは問う。
「共鳴(ハウリング)の騎士団長ってのは……誰なんだ……?」


「彼は……彼の名は《鬼神(きしん)》──《赤髪(あかがみ)の鬼神》として私達……いや、帝界の民から称えられている英雄です……=v


 赤髪の鬼神。本名を知る者は帝界でも少ない。
 少なくともレイは本名を知る1人の人間だ。だが、決して本名は教えないらしい。

「鬼神騎士団長が居た時代のハウリングとイルデンは一度決着が付いていました。勿論我々ハウリングの勝利で終わりました。イルデンの大総長の者も鬼神の手によって『死よりも重い闇次元』へと追放したのです。全てが終わったと思った一年後。鬼神は突如姿を消しました……」
「何も……言わずにか……?」
 クライディがそう問うと、キールは奥のキッチンから銀のトレーを片手にもち、トレーの上に白色のグラスを乗せて此方に歩み寄る。
 その際に、歩きながら溜息を吐きながらこう言う。
「いいや、あの人はある言葉を残してオレ等の目の前から姿を消した……」
 それに続くかのように、レイはこう言う。
「新たな戦いが始まる前に、終止符を打ってくる>氛氓ニ……」
 レイの一言で、場は一瞬沈黙の空気となる。
 この静かな空気の中、銀のトレーに乗せた白色のグラスを3人とレイの前に一つずつ置く。
 中には紅茶のようなものが入っていた。

 ここでキールは話を戻した。
「そんでよ、《闇次元(ダンテ)》に追放したはずのイルデン大総長が、イルデン幹部によって再びこの世に帰って来たんだよ。一年前にな」
「そしてどういう訳か、イルデン大総長は姿を消した鬼神を追っているんです……。それで一向に奴等は此方を襲ってきません。恐らく、イルデン大総長自体の力が戻ってきていないだけだとは思いますが……」
 グレンは疑問を挟んだ。
「イルデンってのはそんなにでっけーもんなんすか?」
「あぁ、奴等の幹部自体が1つの砦に団隊を持っているからな。そうとうでけーぞ」
 団隊1つ分……。そんな組織を一度は倒した事が考えられない……。

「そしてイルデンの幹部は全員で3人居ます。彼等の総称は《イルデン三神影(さんじんえい)》」
 レイはそこ言い止めると、手前にある白色のグラスを右手に持ちこう言う。
「現在の彼等の力は計り知れません。ですが、貴方達3人も、この強大な敵に立ち向かわなければなりません。3人とも、グラスの中を見てください」
 3人はレイと同じように右手にグラスを持ち中身を覗く。
 グラスの中は一見紅茶のようだが、良く見れば粉のようなモノが入っている。
「この紅茶の中には共鳴(ハウリング)騎士団に入団する為の《志》そのものが形として入っています……。──心から帝界に身を捧げ、我等共鳴(ハウリング)騎士団に入団する覚悟があるなら、誓いとしてこれを飲んで下さい=v
 レイが言い終えた直後だ、クライディは躊躇無く一気に紅茶を飲み乾す。
 それに続きライナとグレンも戸惑い無く紅茶を飲み乾した。
 クライディは一息を吐き、レイにこう言い放った。

「──迷夢なんざ今更無ぇさ、オレに課され、背負わされた運命(さだめ)がどんなにでけェモンだろうが関係無ェ……、今はソイツを成してやるさ≠、あと紅茶めっちゃうめぇ」

 クライディの眼は本物だ。
 迷いというモノを捨てた本物の眼であった。
 それはライナとグレンも同じだ。

 レイは此処までも戸惑い無く、入団を軽いようで固く重く受け止めた3人に少し驚きの表情を見せる。
 だがそれはすぐに微笑みと変わった。
「貴方達なら……本当に変える事が出来るかもしれませんね……=v
 笑いかけるレイ。キールも満足そうな顔をしている。

「それでは話を戻します。この三神影の中で、唯一情報が掴めているのは……〈ゴトン!!〉……?」
 レイの言葉を遮り、何かが飛行艇ラロウスに乗り込んだ音がした。
「侵入者だ……」
 デストはボソリと呟く。


──本編とは関係ありません──

さてさて始まりました一章!!
今回の内容は、今後のハウリングの世界観としてもかなり重要なので、出来れば何度も読み返して貰いたい所です←
やっとファンタジーっぽくなってきて、私自身も続きを書きたくてウズウズしてます!!

ではお読み有難う御座いました!!
次回をお楽しみください^^

by紅葉侍 小刃

2010/09/06 22:16 No.12

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★f1puVs.zVS6_aR

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2010/10/16 17:42 No.13

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★MDlVSRl4A7_V0I

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6年前 No.14

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★MDlVSRl4A7_XYN

§-第二章:天空の覇者ラロウス-§

「──熱ぃ……」
 ぼやけている視界。
 目を擦る事は無く、瞬きを繰り返して視界を取り戻す。
 辺りを見渡しても壁というモノも、地というモノも存在しない。
 真っ白なあの虚無の世界。
 そう、クライディはまた夢の中で浮上していた。
「あぁ……またこの夢か…………」
 またいつもと同じ、焔がだんだんと近づいてくる。
 分かっている事ではあるが、それまでが過酷である。
 容赦の無い熾烈な暑さ。
 扇ぎたくても扇げず、滝のように溢れる汗を拭いたくても拭えない。
 ただ耐え続けなければならない。

 焔に嫌悪感を抱きたくなるが、この焔はクライディを一度救った。
 敵に囲まれ、絶命の窮地にこの焔にクライディは救われた。
 気が付けば、その焔が目の前までに近づいている。
「またテメェかよ……。さっさとオレを現実に返してくれ……」
 言わんばかりに、焔は肌に触れる近さまで近づいてきている。
 すると、今までには見なかった奇怪な動きを見せた。

 頭上から足元まで、クライディの周りをグルグルと弧を描く。
 そして胸部の前でゆっくりと人型へと化す。
 クライディより一回り大きい人型の焔は、そのままクライディと重なるように入り込んでいく。
 完全にクライディの中に焔が入った時には、クライディの意識はこの世界から遠ざかっていった。


「う……」
 目が覚めるクライディ。
 触れなくても分かるほど、額には汗がベットリと張り付いている。
 上体を起こし、手の甲で額の汗を拭う。
 最近からいつもの夢が大きく変わっている。
 共鳴(ハウリング)騎士団に入団した事、それは自分の人生を大きく変えるのではないかとふと思うクライディであった。

「おらーっ、起きろー」
 ドア越しから聞こえたのはキールの声だ。
 ガチャリとドアが開き、キールは顔を出す。
「お、起きてたか。んじゃ他の二人も起こして、昨日と同じ部屋に来てくれ」
「はいよ〜。ふぁああ……」
 手を振って返事をするクライディ。
 口を開けた拍子に思わず欠伸をする。
 キールは「んじゃさっさと来いよ」と言い残してからドアを閉め、足音と共に遠ざかっていった。

 クライディはまず先に洗面所で顔を洗い、汗を綺麗サッパリ洗い流す。
 壁に掛かっていた純白のタオルで顔を拭き、そのタオルに水を含ませた。
 タオルからポタポタと垂れる水を手で器を作りながら、グレンのベッドまで早歩きで向かう。
 そして気持良さそうに寝ているグレンの顔面の真上に、タオルをセット。
「オレがいつも毎回夢で魘(うな)されてるっつーのにお前は気持良さそうに寝やがって」
 ポタポタと滴る水ではグレンは起きる気配を出さない。
 クライディはタオルを雑巾を絞るようにし、一気に水をグレンの顔面に浴びさせる。
 それは小さな滝が如く、グレンは咳き込みながら目を覚ました。
「ゴホッゴホッ! な……なんだっ!?」
「おはようグレン君。目覚めの良い朝だな」
 布団で顔を拭いながら、一息吐き、呼吸をするようにグレンはこう言う。
「クソッタレ……」

6年前 No.15

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★MDlVSRl4A7_XYN

 クライディはライナのベッドの前に立ち、左手を右肘に、右手を顎に当てまさに考える人のポーズを取る。
「さて、あとは我等が眠り姫をどう起こしてやろうか。へへっ……」
 語尾の汚い発言は、決して下心では無い。
 どう驚かし起こすかがクライディを刺激しているのだ。
 だが、グレンにやったような水浴びや、枕で顔面を思い切り叩くなどすると後が怖い。
「うーん……。どうしてくれようか小娘」
 無意識にライナの柔らかい頬をプニプニと人差し指でつつく。
 ライナは起きる様子も無く、寝息を立て続けている。
 だが…………。
「くかー……ガブッ」
 頬をつつくクライディの人差し指に勢い良く噛み付くライナ。
「いだだだだだだだだだ!!!」
 引っ張って取ろうとしても、噛み付くライナの歯で引っ張りだせない。
 何よりも痛い。

「グ……グレエエン!! コイツのちょんまげを引っ張ってくれえぇええ!!」
 奇声を上げながらのSOS。
 必死に引っ張り続けるが、とてつもなく痛い。
 我慢しなければ涙がこぼれる程の痛みだ。
「はぁ……そのまんま指を食い千切られちまえばいいのに」
 グレンは溜息を吐きながら、ライナのちょんまげを軽く引っ張る。
 すると意識が返ったように、目をカッと開くライナ。
 ちょんまげを引っ張れば一発で起きるライナであった。
「っは!?」
 それと同時に、口がわずかに空いたので、その隙に人差し指を引っ込めるクライディ。
 人差し指には、ライナの歯跡がしっかりと刻まれている。
「おっ、やーやー諸君お目覚めかね。むにゃむにゃ」
 多少寝ぼけているのか……。
 いや、ライナに関してはいつも寝ぼけていそうだ……。
「くそっ。オレの人差し指を美味かったかえぇ!?」
 ライナの両頬を片手で掴む。
 口元がアヒルのようになった。
「甘かった」
 正直、クライディの人差し指を食べた覚えなど無い。
 取り敢えずいつもチョコレートを持っているクライディの指は甘いと考え、適当に答えるライナ。
「……そうか、ならいい」
 ならいいのかよ。
 と、グレンは心の中でつっこみながら煙草を吸い始める。
 朝に一服しなければ今一調子が出ない。
 重度なヘビースモーカーの症状だ。

「さて、目覚めたところで何するか」
 グレンは煙草を片手に挟みつつ背伸びし、腰を回しながら腰の骨を鳴らす。
「あぁ、そういやあキールが昨日の部屋に来てくれって言ってたぞ」
 思い出すクライディ。
 恐らく、グレンの一言が無ければ忘れていて二度寝していただろう。
「ならさっさと行こうぜ」
 グレンはそう言いながら、煙草を加えながら上着を羽織る。
 そして帽子をいつものように帽子のツバで右目が隠れるよう被った。
「わぁあああぁあ!?」
 意味不明な叫び声が部屋を満たす。
 グレンは振り返ると、ライナが窓のカーテンを開けて口をあんぐりと空けていた。
「どうした。空に天空の城でも……うぉぉぉぉおおぉぉぉ!?」
 窓の外を見、クライディも意味不明な叫びを部屋に満たす。
 グレンも2人に釣られて窓の外を覗く。
 すると言葉を無くした…………。

 下から見た空の色は青色。
 だが上から見た空の色はまさに蒼色であった。
 果てしない青色の空間に、純白の雲が地平線を作っている。
 何処を見ても、蒼色は続く。
 見ているだけで心が澄んでいくような景色だ。
 普段見慣れていたはずの空が、こんなにも綺麗だったとは…………。
 飛行艇など乗ったことの無い3人にとって、この景色はとても貴重であった。

「しゅ……しゅげー…………」
「あぁ……綺麗だ……」
 ライナに続き、思い浮かんだ言葉を発するクライディ。
 ただ見惚れてしまう景色。

「スゲー……けど、さっさとキールの所に行かねぇと」
 グレンは出来れば目を離したくないが、今はしょうがない。
 また次の朝も見れるだろうと思い、振り返ってドアへ体を向ける。
 だが、クライディとライナは動く気配が無い。
「おい、飛行艇の中に居る限りいつでも見れんだから行くぞ」
「嫌じゃ」
 目線は窓の外のまま、断るライナ。
「はぁ……クライディ、ライナ引っ張って行くから手伝え」
「いやなんかさぁ……もういいよだるい」
 クライディも目線は窓の外のままだ。
 グレンは深く溜息を吐く。
「いつでも見れるじゃねぇか! ほら行くぞ!」
 ライナとクライディの襟を掴み、引っ張るグレン。
 だが2人は窓縁を掴み離れようとしない。
「嫌だああ!! オレはこの瞬間の空と恋をしたいんだああ!」
 拒絶するクライディに、続きライナもこう言う。
「恋空がしたいんじゃああ!!」
「それっぽい事言ってねぇで行くぞアホ共!!」
 更に力を入れるグレン。
 細マッチョで筋肉質なグレンに敵うはずもなく、クライディとライナは掴んでいた窓縁から手が離れてしまう。
「うわああ! 行かないでくれぇええぇ!」
 叫ぶクライディ。
 ライナはジタバタしている。
「(イってるのはお前の頭だ……)」
 グレンはそのままドアを蹴り開け、2人を引きずりなら昨日の部屋へと向かった。

6年前 No.16

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★MDlVSRl4A7_XYN

 騒ぐ二人を、グレンは黙りながら引きずり続ける。
 だんだん抵抗すらせず、釣られてもう諦めた魚のように脱力としていた。
 昨日の部屋に到着し、そこで初めて2人の襟から手を離した。
 2人とも引きずられて汚れた尻を叩き、溜息を一つ吐く。

 グレンはドアをゆっくりと開け、中へと入っていった。
 クライディとライナも、ほぼ仕方無しにという感じで入っていく。
 が、一瞬で2人のふてくされた表情が晴れた。

 大きな円状の机に彩られた料理。
 まるでパレットの上に並べられた、絵の具のように鮮やかで綺麗だ。
 量自体は朝食というより夕食のような豪華料理が並ぶ。
 そして本当に凄いのは、これを1人で作るキールの腕前である。
 流石はハウリングの母と言ったところだろう。

「お……おぉぉおお」
 田舎育ちの3人にとって、こんな豪勢料理は初めて見る為、感動と驚きが入り混じった可笑しな声を上げる。
「さあ腰をお掛けになってください。貴方達をお待ちしていたのですから」
 両手を組みながら、机に肘を付くレイは3人にそう言う。
 どうやら席には全員集まっていて、残るはこの3人だけだったらしい。

 息を飲み込み、急いで着席する3人。
 全員が着席したのを改めて確認したレイは、グラスに入ったワインを右手に持ち、こう言う。
「改めて、3人の入団に……乾杯」
 お洒落にグラスを掲げるハウリング一同。
 3人も釣られて、グラスを掲げる。
「さぁ、冷めないうちに頂きましょうか」
 レイがそう言うと、全員フォークを片手に持ち食べ始める。
 だが3人は、どれから手をつければ良いのか分からなかった。
 ライナはサラダとスープを食べ始め、グレンは肉を食べ始める。
 クライディはと言うと、トーストに手を伸ばし、何を付けようか見漁る。
 すると最高の物を見つけた。
「うぉー。チョコレートとは分かってるじゃないか」
「あぁ、お前がチョコレート愛食者って聞いてな」
 クライディに対し答えるキール。
 どうやらその為に高級なチョコレートを用意したらしい。
 クライディは早速、チョコレートをトーストに塗りたくる。
 普通の人では甘過ぎて食べれないだろう、という量のチョコレートを塗りたくる。

 静かなようで、割と陽気に食べている中、ある2人はゲッソリとした表情で食を進めていた。
 昨晩、書類の片付けを罰付けられた2人……。
 そう、エリンとロイだ。
 どうやら徹夜で書類を片付けたらしい。
 そんな2人には気付かず、3人はガツガツと食べ続ける。
 その勢いは朝食と言うより、待ちかねた夕食を食べる勢いだ。

 ものの20分程度で、机に並べられた料理は皿だけとなる。
 その皿を、キールが大きな銀のタライに乗せいき厨房へと持っていく。
 あの量の皿を1人で洗うのだろうか……。
 一先ず皿を全て厨房へと持っていったキールは、机の上を綺麗な布巾で拭き始める。
 おかげで机はベタつかないサラサラとした手触りの机へと戻った。
「いやー。こんな美味ぇもんは初めて食ったぜ」
 腹を擦りながら、食後のチョコレートを食べるクライディ。
「いやあ料理美味いねチミ」
 ライナも同じく、椅子の背もたれに寄り掛かりながらキールにそう言う。
「そりゃどーも」
 帽子で目元の見えないキールの表情だが、ニッコリと微笑んだと口元で分かる。
「はぁ……。席外すぜ、一服して来る」
 エリンはそう言うと、ゆっくりと椅子から立ち上がり、部屋から外へと出て行く。
 愛煙家にとって、食後の一服とは欠かせないのだろう。
「姉貴は何処行ったんだ?」
 それはグレンも同じようだ。
「エリ‥‥ンはいつも、朝ご飯食べ終わった後甲板……屋上に行‥‥って、プカプカしてるよ」
 グレンに問いを答えたのはロイだ。
 ロイもエリン同様書類を片付けていた為、目下に隈が出来ている。
 グレンはロイに礼を言うと、エリンを追い駆け甲板へと行った。
 甲板とは船の一番上。
 いわゆる屋上と行った所。
 風の澄むその場所での一服は最高とエリンが言う。
 飛行艇は3Fあり、3F甲板の為2Fから3Fまでは梯子を上っていく。

 グレンは梯子を登り、甲板へと上がった。
 そこには朝の日光と、風を浴びながら、煙草を吸っているエリンの姿。
 どうにも、ゲッソリとしてやつれているように見える。
 エリンはグレンに気付き、こう言う。
「おぉ、お前か。何だ?」
「い、いや。オレも一服しようと……」
 そう言いながら懐から煙草を出す。
「おっ。お前も吸い始めたのか」
 弟が煙草を吸っている事に驚きもしない、むしろ平然としているエリン。
 流石自分の弟。
 とでも思っているのだろうか。
「あぁ、親父の影響でな」
 そうは言うものの、本当は2年前にエリンが旅立ったのが理由だ。
 とても寂しかったグレンは、エリンの吸っていた煙草を見るだけでエリンを思い出していた。
 次第に、エリンと同じ煙草を吸い始める。
 煙草の副流煙の香りで、姉のエリンが近くに居るようで……。
 なんて恥ずかしい事は口が裂けても言えないグレンであった。

「なぁ。何で姉貴は家を出て行ったんだ?」
 ポケットに手を入れながら、エリンに問うグレン。
 エリンは甲板の鉄格子に肘をかけ、何処か遠くを見つめながらこう言う。
「ただ暇だったからだ。っま、私の拳が何処まで通用するかってのもあったな」
「そうか……。んで、行き着いたのが真紅焔(ココ)なのか?」
 再び問い詰めるグレン。
 どうやら、姉が何か危険な目に合ってないかと、遠まわしに促そうとしている。
「そうだな、1年前にココに来たよ」
「1年前? 2年前に家から出てったのに、1年間何してたんだ?」
「旅出て1年間は、精霊闘技場で実力付けつつ金を稼いで1人暮らしって感じだったなぁ」
 懐かしいあの頃を思い出すように、空の上辺を見ながら微笑んでいる。

 精霊闘技場とは、精霊(エレメント)を持つ《精霊士(エレメンター)》達が実力を競い合う闘技場である。
 トーナメント戦となっていて、それなりに上り詰めれば報酬が出る。
 また、当然参加費は必要だ。
「そんで確か……。あぁそうだ、何かすげぇ事件に対面して、その事件に来た本部の人間がロイだったんだ」
 1年前の記憶。
 出合ったあの頃が懐かしい。
「私はその事件を起こした連中がどうも気に食わなくてね。ロイと2人で連中を潰したっけな……」
 事件とはある街で起きた大罪テロ。
 割と悪名高い盗賊達が、金目当てに市民を脅し一つの城に閉じ込め、身代金などを求めた事件だ。
 本部側の人間も、下手に動けば人質の市民が危ないと判断した。
 だが、エリンとロイは盗賊達に人質として囚われる事に成功し、内部から壊滅させたのだ。
「そんなこんなだ。それでロイに真紅焔に来ないかって誘われて、私は真紅焔に入団した」
 ニッと笑い、煙草の火種を消す。
 そしてエリン専用に作られた灰皿に吸殻を捨てた。
 グレンも納得と安堵を心に残し、煙草を消して灰皿に捨てる。

 2人同時に下へ戻ろうし始める。
 その時、エリンがグレンをヘッドロックし、帽子越しに頭を乱雑に撫でながらこう言う。
「つーか何だぁ? お前は私が心配でわざわざ聞いてきたのか?」
 笑いながらちょっかいを出し続けるエリン。
「そ、そんな訳無ぇだろ! ただ真紅焔に入った理由が知りたかっただけだ!」
 図星のグレンは、口篭りながら抵抗するが、姉のヘッドロックから逃れられない弟。

 エリンは自らヘッドロックからグレンを開放し、先に梯子から下りようとする。
 その際に、グレンにこう言った、
「っま、元気そうになによりだな。またお前に会えて嬉しいぜ姉貴は」
 フッと笑い、梯子を下って行き途中地点から飛び降りる。
 グレンは嬉しそうに溜息を尽き、こう呟く。
「そりゃオレの台詞だクソ姉貴」
 グレンも梯子を下って行った。

6年前 No.17

小刃さん@kobasan☆yaVqqyMy6Do ★MDlVSRl4A7_9A8

グレンは下へと戻り、先程食事を取った部屋に戻ったがクライディとライナは居なかった。
 どうやら飛行艇内を探険しているらしい。
 デストとレイは、操縦室に居るとの事。
 グレンは更に、皿洗いをしているキールにクライディとライナが何処を探索しているか問う。
「で……何処に行ったんだ?」
「さぁなあ。お前も探しがてら飛行艇内を探索したらどうだ?」
 キールの目線は手元の皿のままそう言う。
「あぁ、そうだ。アイツ等には良い忘れてたけど、1Fのダストシュートには気を付けろって言ってくれ」
 初めてグレンと目線を合わせようとしたキール。
 だが顔を上げた時には、グレンも部屋から飛び出ていた。
 やっぱ似ている3人だな。
 と、キールはフッと笑い皿洗いに戻る。

「うおー、思った以上に広いんだな」
 小走りで飛行艇内を周るグレン。
 飛行艇内の1Fはドアがたくさんある。
 どうやら各自の部屋があるようだ。
 2Fは先程食事を取った部屋や、操縦席。
 3Fは甲板といった感じだ。
 1Fを走り回っているグレンは、ある事に気付く。
 それは聞いた事の無い名前が書いてある部屋が沢山ある事だ。
「誰だこれ……。げ……っか? げっか(月華)って読むのか?」
 その部屋は周りに書いてある名前は違く、漢字で書いてあった。
 他にも知らない名前が書いてある表札がある部屋がある。
 どうやら、まだハウリング騎士団はまだ知らない人が沢山居るようだ。
「名前が……書いてない?」
 並ぶ部屋の扉の中には、表札の無い部屋があった。
 誰かが入団した時の為だろうか。
 という事は自分にも後輩が出来るのだろうか。
 グレンは期待を秘めていた。

「うぉぉぉおおぉぉおぉ!!」
「──!?」
 何処からか、クライディの叫び声が聞こえる。
 その声はそう遠く無い、グレンは声がした方へと走って行く。

 声はこの鉄の扉の奥から聞こえる。
 扉には注意と縦に書かれている。
 そして扉に面する壁にはダストシュートと表記していた。
 重みのある扉をゆっくりと空けるグレン。
 扉を開けると、突風が隙間から溢れてくる。
 そしてクライディの叫び声が直に聞こえた。
「うおぉぉおおぉおおグレンうおぉおぉぉおお!!!」
 恐らく、ココは飛行艇の一番後ろの部位。
 大きく開いた出口は、ゴミを捨てる為なのだろうか。
 普段は着陸や着水している時にしか時にしか開かない故、飛行中に開くととんでもない事になる。
 クライディとライナは、今にも放り出されそうな身を、出口扉に付いてある鉄棒に捕まり耐えている。
「何やってんだ……お前等」
 呆れながらクライディとライナに問う。
 だが、2人はそれ所では無い。
「好奇心で、好奇心でボタンを押しただけなんだぁああぁあああ!」
 クライディは赤色のボタンを顎で指差す。
「赤ボタンは押せって昔からクライディがあぁああぁ!!」
 ライナもクライディに続いて叫ぶ。
 グレンはツッコミ気すら失せ、静かに赤色のボタンを押した。
 すると飛行艇は機械音を鳴らしながら、ゆっくりと出口を閉じた。

「ぜひー……ぜひゅー……。いやあ、良い運動になった」
 冷や汗を、まるで運動後に掻いた青春後の汗を拭うように気持ち良く振るう。
「うん、惜しかったけどね……」
 まるで試合で惜しくも点数が敵わなかったように振るうライナ。
「何がだよ! お前等は何と戦ったんだよ!」
 我慢の限界だったのか、ついにグレンは渾身のツッコミを投球した。
「にしてもよぉ……、凄くねぇか1Fの部屋の数」
「飽くまでもスルーかよ!」
 絶え間なくツッコムグレン。
「こんだけ部屋が多いなら、オレ等1人1人に部屋渡してくれてもいいのにな」
「そこかよ……」
 いい加減ツッコミに疲れたグレン。
 溜息を吐き、1人扉を開けて部屋から出て行こうとする。
 だがその時。
「──ヴーヴーヴー!!」
 飛行艇ラロウスに警報が鳴り響いた。
 3人とも驚いた表情で警報がなる元を見つめている。

「──12時の方向から戦艦4機を確認。直ちに甲板に集まれ。繰り返す、直ちに甲板に集まれ」
 デストからの放送だ。
 という事は、操縦室からの放送だろう。
「──デスト、戦艦ナンバーの確認をお願いします」
 レイの声だ。
 恐らく、放送を切り忘れているのだろうか。
「──いずれわか──ブツン──」
 ココで放送が切れる。
 相変わらずというか、なんというか。
 取り敢えずデストは適当なヤツなんだなと3人は改めて確認した。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 甲板に繋がる梯子を上りきる3人。
 甲板にはエリン、ロイ、キールの3人が待機していた。
「お、来たか」
 キールが3人に気付く。
「敵戦艦が近づいているっつーのに、なんでわざわざ甲板に出るんだ? バカじゃね危なくね」
 クライディは北の方向から向かって来る、戦艦らしき影を見ながらそう言う。
「アレだね、撃って来た弾をバッドで打ち返すんだね」
 ライナが暢気なボケを放った時、敵戦艦側から発砲音らしき物が轟く。
 それと同時に、あからさまに敵戦艦から風を切りながら何かが此方に向かって来る。
「うぉおおぉ完璧に攻撃して来てるじゃねぇか!」
 グレンはその場に伏せる。
「ラロウスでの迎撃なんてのは容易い。それほど優勢な力を持っている戦艦だ。だが、こんな空賊程度に貴重な弾は使えないんだ」
 キールは決して慌てず、甲板の鉄格子に肘を付きながら敵戦艦を眺める。
 それはエリンとロイも同じだ。
「ロイ、頼んだ」
「ほ〜‥‥い」
 キールの一言で、ロイが鉄格子の上に立ち乗る。
 そして拳銃を2丁持ち、無数の弾丸を放った。
 ロイの銃弾はただの弾丸では無く、何か風を宿しているようだ。
 銃弾は敵船の弾と見事に相殺。
 敵の攻撃を全て打ち落としたのだ……。
「しゅ……しゅげぇええ!!」
 同じ拳銃を使うライナは大興奮している。
「いっちょあが‥‥り」
 拳銃の先端をフッと吹き、さながらガンマンを気取るロイ。
「よっしゃ、そろそろ反撃と行こうじゃねぇか」
 エリンは口角を挙げ、両手の指をポキポキと鳴らす。
「へ、反撃って?」
 クライディはポカンとエリンを見た。
「さっきも言ったろ、貴重な弾は使えない。だからこの戦艦で反撃するのでは無く」
 キールに続き、エリンがこう言い放つ。
「私達が、敵戦艦に乗り込むんだよ」
 2人の発言を、3人はあまり意味を分かっていなかった。
 捻らずに言葉そのものを受け取ると、人間が敵戦艦まで飛んで乗り込み、中から潰すという事だ。

 キールは懐にある2つの鞘から、剣を2つ抜いた。
 どうやらキールは両手剣使いのようだ。
「そろそろ距離も丁度良いだろう。行くぞ」
 キールの一言で、エリンとロイは鉄格子に足をかけ、大きく屈伸する。
 そして一瞬にしてその場から姿を消す3人。
 だが、良く見てみれば敵戦艦へと向かって3人が飛翔していた。

6年前 No.18
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