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One More Chance

 ( 恋愛小説投稿城 )
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rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「……間もなく、3番線に電車が到着いたします。危険ですので、黄色い線の内側でお待ちください……」

朝。
大学を卒業して、都内の中小企業に就職した俺。

こんな憂鬱な朝を迎えるのは、一体何度目だろうか。

毎日毎日同じことの繰り返しだ。

ため息をつく。子どものころ描いていた大人の自分は、こんな暗い顔をしていたっけ。


ふと、視線の端にフラフラとした足取りで歩く、中年の男性が目にうつった。
平日の朝。そんな足取りの人は異質で、なぜか視線が奪われる。


その男性のことをジッと見つめる。

……。目の焦点が合っていない。おかしい。

「あっ……」

男性の近くにいた女性が口元を手でおさえた。

男性はフラフラとした足取りのまま、線路に落ちてしまった。

「えっ!?」「やばい!」「駅員よべ!」

その様子を見ていた人が、慌てる。

俺も線路のギリギリまで身を乗り出し、様子を確認する。

男性の顔は青白く、気を完全に失っていた。

右を見る。電車はもうすぐそこまで来ている。
駅員を待っている時間なんてない。いますぐこの人を助けないと、死んでしまう。

そう考えるより先に、俺は線路に飛び降り、男性を抱える。

肥満気味の男性の体は重く、1人では持ち上げられない。

「だれか!」

ホームで俺と男性の様子を見ている人たちに、助けを求める。

すると、俺と同じくらいの年のサラリーマンの男性が1人、ホームに飛び降りた。

2人で力をあわせて男性をホームに上げる。

サラリーマンの男性がホームに上がる。

電車はすぐそこまできている。

「君も早く、上がって!」

わかってる! 早く上がらないと!



「……あれ?」

ホームに手をかけ、上半身を上げようとした瞬間。

運動不足だった俺の体は、自分より体重の重いものを持ち上げたことになれていなかったらしく。

そのままバランスを崩して線路に倒れ込んだ。

4日前 No.0
ページ: 1


 
 

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「ハヤト! 早く起きなさい! いつまで寝てるの!? 遅刻するわよ!」

大きな声が聞こえてきて、目を覚ました。

俺はビックリした上半身を起こし、目を開く。
周りをキョロキョロと見る。

あれ? 俺、会社に向かう途中で、あの男の人を助けたんじゃなかった……?

夢だったのか。……。それにしてはリアルな夢だな。
まだ男の人の肩を担いだ時の感触が残っている。

「ハヤト!? 早く起きなさ……って。起きてるなら、返事しなさいよ」

え? 母さん?
母さんとは大学進学と同時に1人暮らしをしていたから、一緒に住んでるはずはないんだけど。
なんでここにいるんだ?

「え、母さん。来るなら言ってよ。ご飯買ってないよ」

「はぁ? あんた何言ってんの? 寝ぼけすぎ。早く制服着ちゃいなさい」

母さんは呆れたような顔をして、部屋から出た。

そういえば今日の母さん、かなり若いな。
茶髪の母さんなんて、まるで高校生に戻ったみたい……。

あれ?

この部屋、1人暮らししてる部屋じゃない。

高校生まで暮らしてた、実家だ。

……まさか。

ベッドから立ち上がり、走って洗面所に向かう。

「顔が……若い」


俺、過去に戻った?

4日前 No.1

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

どうやら、本当に過去に戻ったみたいだ。

携帯で時刻を確認すると、2018年の4月。
俺が高校2年生だった時だった。

テレビのニュースも、新聞も、家の様子も、全て当時のものだ。

制服に身を包み、突然の出来事に混乱しながら家を出る。

俺が通っていた高校は、私立 三ツ葉 高校。
家から自転車で10分という魅力的な立地に引き込まれて、頑張って勉強して、合格したんだったっけ。

朝、自転車に乗るなんて、新鮮だ。
過去に戻る前は歩いて駅に向かって、満員電車に揺られて会社に向かっていた。

周りを見ると、三ツ葉高校……、通称三高の制服に身を包んだ高校生たちがたくさんいる。

友だちと歩いている高校生たちは、キャッキャと騒ぎながら、笑って歩いている。
朝からこのテンション。高校生はやっぱり元気だな。

俺も今は高校生なんだっけ。

まだ慣れないな。


三高の駐輪場の自転車を止め、靴箱で上履きという名のスリッパに履き替える。

あれから何年も経っているのに、まだあの頃のことが体に染みついていた。

4日前 No.2

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「あ、ねぇ。俺の席ってどこだっけ」

教室に着いたものの、さすがに自分の席がどこだったかなんていうことは覚えておらず。
教室に入ってすぐの席に座っている女子にたずねる。

「え? 窓際の1番後ろでしょ? 昨日席替えで超喜んでたじゃん」

「あっ、そ、そうだよね。ははは。そうそう」

何やってんだよ、高2の俺。席替えでいい席になって喜ぶとか、ガキ丸出しじゃねーかよ。

教えてもらった通り、窓際の1番後ろの席に腰を下ろす。



その瞬間、色々なことを思い出した。

この教室でたくさんバカなことをしたこと。くだらない話をしたこと。腹を抱えて笑い合ったこと。


……アイツと出会ったこと。


「ウィーーッス! 遅刻ギリギリでいっつも来るハヤトが今日は早いな! なんで!?」

背中に大きな衝撃を感じ、その驚きが整理できていないまま、マシンガントークを繰り広げられる。

衝撃の方向に顔を向けると、満面の笑みで俺のことを見る、男子。

茶色くて長めの髪。制服のシャツをザックリ開けて、ネックレスを見せている。そんなチャラい高校生。

「愁平か! うわぁ、久しぶりだなぁ!」

風間 愁平(カザマ シュウヘイ)。高校生からの親友で、卒業してからもよく会っていた大親友。
お互いが働き始めてからは、会うことも少なくなっていた。

4日前 No.3

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「ばか、昨日会ったばっかりだろ」

あ、そうか。今俺は高校2年生なんだった。

頭でも打ったか? と冗談交じりに俺のことを心配する愁平の言葉をうまくかわして、あの頃と同じようなバカな話に
花を咲かせる。

『 キーンコーンカーンコーン…… 』

HR開始のチャイムが鳴り、愁平と別れる。
といっても、愁平も俺も同じクラスなんだから別れるといっても精々数メートルなんだけど。

「はーい。おはよー」

無精ひげとボサボサの髪を掻きながら、だるそうに教室に入ってくる男性。
この人は担任の志藤先生。

真面目さが全くなくて、HRに遅刻してくることもよくある。そんな姿勢が逆に生徒に受けて、すごく人気のある先生だ。

「せんせー、今日は間に合ったんだね!」

愁平が志藤先生をいじる。

「おー。お前は朝から一々いじってくんな。数学の宿題お前だけ倍な」

「えっ!?」

『風間、数学 倍』と黒板に志藤先生が書き、クラス中に笑いが起きる。
俺も自然と声を出して笑っていた。
なんかこの、透き通るほどの爽やかさ、久しぶりだなぁ。

「まぁ今日は遅刻できねぇ理由があったんだよ。俺も本当はもっと朝ゆっくりしたかったのが本音だ」

「教師がそれいっちゃ駄目でしょ!」

愁平がすかさず突っ込む。これは正論。志藤先生もフッと軽く笑って頷く。

「実は今日転校生がきてる」

おー! と盛り上がる教室。
それもそうだ、学生時代の転校生が来る、なんてことは大きすぎるイベントに他ならない。

口々にどんな子だろう、とか、この時期に珍しいね、と言うクラスのみんな。

しかし、俺はその言葉を聞いて、上手く笑えずにいた。いや、笑うどころか、多分、真剣な顔になっていただろう。


そうか、この日に俺は戻ってきたのか。

3日前 No.4

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「はーいうるさいうるさい。一回静かにしろー。静かにしねーと転校生入ってこれねーだろー」

頭をポリポリとかく、お決まりのポーズをしながら志藤先生がクラスを落ち着かせる。

「……おし、静かになったな。んじゃー、転校生入ってこーい」

教室の外に待機していたのであろう、転校生は、志藤先生のその言葉を聞くと、教室の扉を遠慮がちにガラッと開いた。

胸が大きく高鳴るのを感じた。自然に俺は自分の左胸を抑えていて、落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせていた。

時がゆっくり、ゆっくりと流れている気がした。

一歩、二歩と教室に足を踏み入れる、転校生。
歩くたびに三高の紺色のスカートが揺れる。

スラッとした長い手足。小さな顔。長い髪。透き通るほどに白い肌。大きな知性を感じる瞳。

世の中の人は、こんな人を見たら、『美少女』というのだろう。


このクラスのみんなは、まだこの人のことを知らない。

だけど、俺だけは知っている。

この人の名前は。

「中田 桜(ナカダ サクラ)です。よろしくお願いします」

中田が軽く頭を下げる。


そして、チラッと俺の方に、偶然顔を向ける。

目が合った。



中田 桜。

俺が一生忘れられない、大切な人。

3日前 No.5

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

転校生といえば、恒例行事がある。

休み時間の質問攻めだ。
小学生、中学生の時も、転校生が来たことがある。

その転校生はもれなく質問攻めにあっていた。
机の周りにクラスの生徒が集まって、『どこから来たの?』とか、そういう質問をするアレだ。

普通の転校生でも、そういうことになる。

中田 桜はルックスが抜群に良かった。

だから中田 桜の周りの人だかりは凄かった。

クラスの中だけじゃなくて、他クラスからも中田を見るために生徒が集まっていた。

中田を見た全ての生徒が『可愛い!』『綺麗!』といった声を出して、大きなリアクションをしていた。


当時の俺……過去に戻る前の俺も、例に漏れず、中田に質問攻めしに行っていた。
同じクラスという環境を存分に生かして、愁平と一緒に率先して中田に質問しに行っていたっけ。

だけど、今回の俺はそれができずにいた。

教室の端っこの一番後ろで、質問攻めに愛想よく返事する中田の様子を、机に頬杖をついて眺めていた。
愁平が大きなリアクションをして、周りが笑っている。


あの頃から、俺は中田のあの様子に違和感を覚えていた。

質問したことには愛想よく返すし、『好きな食べ物は?』なんていうくだらない質問にも、笑顔で返事をしていた。

だけど、目の奥が笑っていない気がしていた。

愛想よく返しながらも、周りと壁を隔てて会話をしているような、そんな感覚。

緊張しているとか、こうやって周りに注目されているから、とかそんなことじゃない。

あの頃から少しだけ年を取って、いろんな経験をしたからこそ、その様子が明確に感じ取れた。

2日前 No.6

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

中田 桜が転校してきてから1週間が経った。

彼女は瞬く間に学年どころか学校で1番人気の女子の座を獲得していた。

後輩も先輩も、『2年に超かわいい女子がいる』という認識をしている。
事実、お調子者の先輩がニヤけ顔で中田のことを見に来たことが何回かあった。

「中田さんってさぁ」

「うん」

まだ夏には少し時間があるが、やはり日向は暑い。
不真面目な俺と愁平は適当に体調が悪いと理由をつけて、日陰でクラスメートが体育でグラウンドを走り回っているのを眺めていた。

その様子を見て、愁平がボソッと独り言のように話しかけてくる。

「何食ってんだろうなぁ」

「は?」

わけのわからない問いかけに顔をしかめる。

「いやさ。あんな綺麗な人見たことある? 何食ったらあんな綺麗になるのかなって」

「あー……。多分あんま変わんねぇよ」

生産性のないくだらない会話のやり取り。
体育の授業を休むのは楽だけど、それ以上に暇だ。

「中田さんと付き合おっかな」

女子の友だちと笑い合っている中田を見つめながら、愁平が言う。

「多分付き合えねーよ」

「わかんねーだろ、それは」

「いや無理だって」

「なんでそんなこと分かるんだよ」

「だって……」

『だって、中田さんはお前みたいなタイプは苦手だから』。
そう言いかけて言葉を飲み込む。

そうだ。中田と俺はまだ過去に戻ってきてからは一度も会話してないんだった。

そんなことを言ったら、なんでお前がそんなこと知ってるんだよ、ってなって、めんどくさくなることは目に見えてる。

「……中田さんは清楚系だろ。お前はチャラいじゃん。系統が違うから」

「あーね。確かに。俺も中田さんじゃなかったらああいう清楚な感じの子、あんま好きじゃねーかも」

「だろ」

そう言ってグラウンドに再び視線を向ける。

中田は体育の時はいつもは下ろしている髪をポニーテールにしている。
その姿がまた、あまりにも綺麗で、男子の間で噂になっていたのを覚えている。

俺はその姿を見て、胸がズキンと痛むのを感じた。

……いや、その姿を見るだけじゃない。

教室で、廊下で、食堂で。

中田の姿を見るたびに俺の胸はきつく締め付けられていた。

過去に戻る前の、中田との記憶を思い出して。

1日前 No.7

rope @water0 ★SKhHm1cSFv_8gk

「ハヤトー。今日暇?」

放課後になり、机の中の教科書をスクールバッグに詰めている最中。
綺麗な茶色の髪をした、派手目の女子に声をかけられた。

こいつの名前は道下 穂香(ミチシタ ホノカ)。
派手な髪色や化粧をしていて、俺のタイプじゃないけど美人な女子。

派手目な見た目のわりに、誰とでも仲良く接することができるし、正義感が強い。そして頭も良い。

見た目を除けばかなり優等生な穂香は、その人望を買われて学級委員長を任されていた。

穂香がこういう風に放課後、不自然に笑顔で話しかけてくるときは、何らかの頼みごとをするときだ。

「んー……。忙しい」

「嘘でしょ。さっき愁平と『帰ったら溜めてたドラマ見よーん』って話してたじゃん」

「そんなバカみてーな喋り方じゃねーだろ」

何か頼みごとがあるなら、愁平に……。

そう言おうとして愁平の姿を探すと、愁平はその様子を察してそそくさと教室から出て行ってしまった。

ずるい。あいつはこういう時は凄く空気が読める。

「実は頼みたいことがあってね」

「だと思ったよ。なに?」

はぁ、と軽くため息をついて、机の上に軽く腰をかける。

さすが! と穂香は悪びれもなく笑った。

1日前 No.8
ページ: 1

 
 
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