第一章 : >>1 〜
アラームの音を全力で無視した結果学校に遅刻。いつの時代だよ、とツッコミせざるを得ない状況に置かされている私、芽栗まおは一人で廊下に立っていた。
ハゲげている先生曰く(以降:禿先) 廊下に立って頭を冷やしてこいとの事。
でもこんな糞みたいな状況や感情を一変にひっくり返してくれるヒーローが私にはいた。それは私の幼馴染、山田玲八である。
山田も芽栗と同じく遅刻でお怒りの言葉を喰らい廊下に来たらしく、芽栗の姿に気づいた途端曇った顔色を一変させ躊躇なく彼女の頭を撫でまわした。
やばいやばいやばい!!なんでこいつこんな可愛い笑顔で私の頭撫でてんもう本当に好き…そう、私はこの幼馴染みの事が恋愛感情として好きなのだ。
山田の登場により私の内心は面白い位に晴マーク。先程抱いていた禿先への怒りなど一瞬で蒸発し、瞬時に山田で脳内が埋めつくされる。そして私も可愛く甘えられたら良いんだろうけど…
「急に触んなし、お前も遅刻?」
素直になれない私は真顔でこんな事しか言えないのだった。
「アンタいい加減に告れば?」
親友、柊綾歌の言葉が私の胸にダイレクトに刺さる。
いやでもしょうがなくない?逆に何年私と山田が幼馴染みやってると思ってんのよ…10年くらい?恋愛映画や漫画じゃ幼馴染みと恋人になんのが王道かもしれないけど実際そんな訳あるか、逆に恋愛にもっていけねえっつーの。
「うるさいなあ…柊こそ対してモテないんだから自分の心配をしては?」
友達の心配を仇で返す様な返答を済ませチラりと購買でご飯を選ぶ山田に目線を移す。ああ〜先輩と話してる山田まじで可愛いんだけど好き…
………………あれ?
「なあ柊…ってうわ、お前なんつう顔してんの怖いわ。」
「あーはい、んでなに?」
「……あのさ…」
まじで柊の顔に殺意って書いてたから何話そうか忘れかける所だった。
山田が好きだと知ってからついつい目で追いかけちゃうんだけど、昨日も一昨日もその前もあの先輩と山田、楽しく話してたと思うんだよね…
「…これってヤバイやつだよね?」
柊はとてもいい笑顔で頷いていた。
山田と楽しそうに話している一個年上の先輩は結構有名だった。何故かといえば簡単で、ルックスが可愛らし過ぎる上に性格まで上等、まさに非の打ち所が無い理想的な女の子なのだ。そうなれば有名になるのも不思議ではない。
「柊どうしよ…こんなの無理じゃん」
流石に同情したのか柊が私に100円を無言でくれた、いや要らねえよ。
「 おい山田っ 」
先輩と山田の関係について気になり初めてから一週間、私が疑っている関係は誤解かもしれないし確認しようと決心するまでの時間はそう長くはなかった。
「 お前っていつも食堂で話してる先輩の事好きなの?…噂で聞いた 」
「 え?桧山香織先輩のこと? 」
私は勢いにまかせて小さな嘘をついたあと小さく頷く。山田の表情は呆気にとられて口が半開き状態…もしかして、本当にそういうことなの…?
「 別に好きじゃねえよ、」
思わず出だ溜め息と共に一瞬にして肩の重みがとれた気がした。ああ、よかったなんだよ違うかったのかよ!
…ここまでハラハラしたのは大袈裟とかじゃなく初めてで。
「なんだ嘘かよ。」
「先輩に協力してもらってんだよね」
…え?