Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(5) >>

拝啓、婚約者様へ。

 ( 恋愛小説投稿城 )
- アクセス(281) - ●メイン記事(5) / サブ記事 - いいね!(4)

白き箱庭 ★Android=W2tzw3VSSy

私が15の誕生日。
それは突然起きました。


ニコニコと不気味なぐらいの笑顔を浮かべながら、両親は私に告げた。


「朱莉ちゃんに、婚約者がいるって言ったら怒る?」



……は?
どういうことですか。





どうやら私が生まれる前に、先方の両親と約束をしていたらしい。
互いの子供が異性だったなら、婚約させよう。と。





15歳で会ったこともない婚約者を持つことになり、私はその顔も知らない相手に手紙を書いた。



拝啓、婚約者様へ。


貴方と結婚する気はないので、解消してください。





短い文面。


数週間後に私の前に現れたのは……。

メモ2017/11/15 14:02 : 白き箱庭★Android-W2tzw3VSSy

宮本朱莉(みやもとあかり)

15歳中学三年生

主人公。自分の意見はしっかり持っており、嫌なものは嫌だとハッキリと言える。また面倒見もよく、お人好しのところもある。今回の婚約の話は納得できていない。むしろ破棄したい。マイペースな両親に不満たっぷり。


宇佐海陽樹(うさみはるき)

27歳社会人

朱莉の婚約者。外面は好青年だが、腹黒。利用できるものはなんであろうとも利用する利己的主義。自分のなかでの筋書き通りにいかないと不機嫌になる面倒臭いタイプ。


大前夏生(おおまえなつき)

17歳高校三年生

朱莉の幼馴染み。朱莉に好意を抱いているも態度に示せないヘタレ。そんななかで陽樹の登場で気が気でない。


伴佳奈子(ばんかなこ)

25歳OL

陽樹の後輩。陽樹に好意を抱きいろいろアピールをしているが伝わった様子は今のところはない。朱莉の存在を知り、どうにかして排除しようと画策中。陽樹の本性には気づいていない。

関連リンク: カウントダウン 
ページ: 1


 
 

白き箱庭 ★Android=W2tzw3VSSy

【1】

 朱莉は目の前に立つ長身の男を見上げた。
 ビシッとしたスーツを身に纏い、銀フレームの眼鏡をかけた大人の男性。彼の名は宇佐海陽樹。御年27歳のサラリーマン。


ーーて、おっさんじゃん!


 朱莉と一回り年の離れたこの男が例の婚約者だという。先日両親から告げられた婚約者の存在に、朱莉はその日に相手に向けて便箋、俗に言う茶封筒を送りつけた。


《貴方と結婚する気はないので、解消してください》


 ごくごくシンプルな一行で済まされた文面。



 その数週間後に彼は朱莉の家にやってきたのである。
 突然の来訪に謝罪をした彼は、手土産を持参してきた。紙袋の店の名前を見るかぎり、かなり有名な並ばないと買えないような洋菓子店。めったに家では買わないような高級菓子に気分を良くした両親は、あっさりと家にあげたのである。


 そしてなにを考えたのか両親は、二人で話したいこともあるだろうと言い出して、婚約者である見知らぬ男と一緒に自室に押し込められた。



ーー気まずい、めっちゃ気まずいんですけど!



 二人で突っ立ったままの状態で、微妙な空気が流れる。そんな空気を最初にぶった切ったのは、陽樹のほうだった。


「突然押し掛けてごめんね、朱莉ちゃん」


 眼鏡の奥の瞳が申し訳なさそうにしているのを見て、朱莉はキッと相手を睨み付けた。


「朱莉ちゃんとか馴れ馴れしすぎだし、気持ち悪いからやめて。てか、なんで来んの。意味分かんない。あんたもこんなガキと婚約なんかしたくないはずでしょ。さっさと婚約解消したら済む話じゃん」


 思ったことを全部ぶちまけてみたものの、相手は大人。朱莉よりも一回りも年上である。しかも密室での二人きり、なにかされようものなら朱莉に勝ち目はない。


「そうだけど、一度はやっぱりどんな子なのか見てみたかったから……」


 陽樹は視線を逸らしてそう言った。その瞬間、部屋の外の廊下で物音が聞こえて、瞬時に両親が聞き耳立てていることに気づく。怒り肩で移動する朱莉に道を譲るように彼は少し移動し、朱莉は力一杯に部屋のドアを開けた。


「……なにやってんの?」


 娘の出現に両親は誤魔化すように空笑いをして、そそくさと一階へと移動して行った。その姿を確認してから部屋に戻ると、陽樹が困ったような笑みを浮かべていた。「キミも大変だね」そう言っているように見えた。


「とにかく、もうこうして顔も見て満足したでしょ。さっさと婚約解消してよ」


 ハッキリと言い切ると、その瞬間ドンッと音を立てて何かが朱莉の横を通った。部屋のドアを背にした朱莉の真横に伸びたのは、紛れもなくサラリーマンの男の右手。



ーーえ?



 朱莉が状況を把握するよりも前に、頭一つ分高いはずの婚約者の顔が目の前にあった。眼鏡の奥から覗く瞳は、先程のような申し訳なさは一切なく、冷ややかな色に染められていた。


「人が下手に出ていれば、なに偉そうに語ってんだよ。まだ中学生のクソガキのくせに、大人相手に敬語も使えねーのか。あ?」



ーーこの人、誰。



 朱莉の婚約者は、思っていたよりも二面性があったようです。

2ヶ月前 No.1

白き箱庭 ★Android=W2tzw3VSSy



 朱莉が状況を掴めずに硬直をしていると、目の前の男は気だるげな顔をして離れて、おもむろに締めていたネクタイを緩めた。そして無遠慮にベッドに腰を掛けると、固まっている朱莉を見る。


「こっちだって自分よりも一回りも下の中学生と婚約者だとか言われて腹が立ってたところに、ガキから解消しろという可愛げも面白味もない手紙を送りつけられて、はいそうですかって頷けるわけねーだろ。なんで俺が婚約者を受け入れている流れになってんだよ」


 男はベラベラと文句を長々と続けてから舌打ちをする。


「いや、だから解消すればいいんじゃ……」


 思わず朱莉はツッコミを入れてしまった。わざわざ相手方の家に来なくても問題はなかったはずなのでは。


「さっきの俺の話聞いてたか? ガキンチョ」


ーーガキンチョ言うな、おっさん。


「俺が、断りを入れるならまだしも、なんでガキンチョに断られなきゃならねーんだ」


ーーようは何。私から断りを入れたから拗ねてんの? このおっさん。ガキはどっちよ。

1ヶ月前 No.2

白き箱庭 ★Android=W2tzw3VSSy



 朱莉は小さくため息をついて、ドアから離れると自分の机に腰かけた。中身スッカスカの子供みたいな大人に、一瞬でも怖いと思った自分が腹立たしい。


「だったら、婚約の話聞いたときにさっさと断ればよかったじゃ…………ないですか」


 今この場でため口をしようものなら首絞められそうな気がして、朱莉は控えめに敬語を入れてみた。こんな子供大人に敬語を使うのすら憚(はばか)られるが、自分の身が可愛いので、長いものに巻かれることにする。


「そこな。ちょっとした事情がこっちにあってな、お前が手紙を寄越してくるまでは、なにもできなかったんだよ」
「どんな事情だよ……」


 思わずツッコミが口に出てしまい慌てて朱莉は口を手で覆う。


「そこは聞いてくれるな」


 また啖呵でも切られるのかと思って身構えてみたが、予想外の反応に朱莉は改めて男を見た。なにやら込み入った事情があるらしいのか、さっきまでの勢いはなんだったのかと疑問を抱いてしまいそうなほど、男ーー宇佐海陽樹は言葉を濁して視線を逸らしていた。


ーーなんなの、この人。意味分かんない。


「とにかく、互いの両親の顔に泥を塗るわけにもいかないし、折を見て破談の話をするから、勝手なことはすんなよ」
「なによ、偉そうに」
「実際にお前よりは偉いから」
「ぐっ……」


 余裕綽々な笑顔で返されて、朱莉はなにも言えず押し黙るしかなかった。

1ヶ月前 No.3

白き箱庭 ★Android=W2tzw3VSSy

【2】


 翌日、朱莉は不貞腐れた子供のような顔をしたまま授業を受けていた。休み時間になってもその表情は固定されていて、友人たちになにがあったのかと聞かれる度に、なんでもないと曖昧な返事で済ましていた。



 朱莉が不機嫌なのは昨日の婚約者のせいである。



 部屋で二人きりの時は、憮然とした態度をしていた子供のような大人こと、婚約者こと宇佐海陽樹は、帰り際両親を前にすると再び好青年の皮を被っていた。外面が良いとは、まさにこのことである。又の名を内弁慶。



 礼儀正しい好青年の皮を被った、中身大人げない男。これが朱莉が宇佐海陽樹に抱いた印象である。



「……」


 朱莉はスマホの電話帳を開くと、あ行で一番最初に現れた名前を見て忌々しげに舌打ちした。



 あの婚約者が無理矢理スマホを奪い取り、己の連絡先を登録したのである。朱莉に拒否権は一切なかった。いっそ今から登録されているものを消してやろうかとも思ったが、後が怖い気がしたので諦めるしかなかった。



 放課後一人教室に残って、物思いに耽(ふけ)るとか柄ではないのだが、昨日今日で何事もなかったように帰宅する気にはなれなかった。



 不意にスマホからメールが届いたことを知らせる河合らしいメロディーが流れる。反射的にメールを開くと、件名に「いまどこ?」という文面が並べられていた。相手は三歳年上の幼馴染み大前夏生だ。


「なっちゃんか」


 朱莉はとりあえず、まだ学校にいることを返信してから、のんびりと席を立つ。いつもよりゆっくり歩けば、もう少しは帰宅を遅らせられるかもしれない。なんて安易な判断をして朱莉は教室を後にするのだった。

1ヶ月前 No.4

白き箱庭 ★Android=W2tzw3VSSy


「あ、朱莉!」


 学校の正門を出たところで聞き慣れた声に名前を呼ばれた。やや億劫そうに視線を動かした朱莉の視界に映ったのは、人懐っこそうな茶髪の制服を身に纏う男。先日の宇佐海に比べれば明らかに外見は若い。まぁ、当然だろう。なんせ相手は。


「なっちゃん」


 先程メールしてきた三歳離れた幼馴染みなのだから。嬉しそうに駆け寄ってくるその姿はまるで犬のようだと朱莉はなんとなく微笑ましくも見えた。初対面で俺様と外面を切り替える大人げない男のことなんて馬鹿らしくも感じて、朱莉は静かに笑みを浮かべる。


「良かった、間に合って」


 自分が通う学校から走ってきたのだろうか、夏生は弾む呼吸を整えながら笑顔を浮かべた。


ーーなっちゃんはやっぱり可愛いなぁ。


 なんてことをしみじみ思いながら、わざわざ幼馴染みの学校まで走って迎えに来る夏生の優しさに内心感心する。


「私になにか用でもあったの?」


 相手は大学受験を控えたお忙しい受験生だ。もちろん朱莉とて高校受験なのだが。ハードルの高さでは夏生のほうが遥かに上だろうと思う。


「いや、用というかなんというか」
「歯切れ悪いなぁ、ハッキリと言ってよ」


 ごもごもと落ち着きを見せない幼馴染みに朱莉はやや呆れた顔をして先を促す。すると夏生は少し俊巡したあと意を決したようにまっすぐに朱莉を見た。


「単刀直入に言う。昨日、例の婚約者が来たんだろ?」
「あー……、お母さん経由で聞いたんだね」


 せっかく忘れられそうだったのに、癒しの幼馴染みのせいで蒸し返されてしまった。


「どんなやつなんだ? おばさんは好青年だって言ってたけど」
「そうね」


ーー外面はね。


 本性知ったら、あのほんわか平和MAX夫婦なら卒倒しかねない。


「いったいなに考えてんだろうな、その婚約者とかいうやつ」


 なぜか全く関係ないはずの幼馴染みが怒っている。


「一回りも年下の女を婚約者にとか、変態かよ」


 どうやら詳細は伺っていないようだ。変な誤解が幼馴染みの中で起きているのだけは朱莉には分かった。が、昨日の奴の態度を思い出すと、否定するのもつまらないので、このまま誤解されてもらうことにする。


「よし、今度来たら俺が追い返してやるからな! 安心しろよ、朱莉」


 拳を握ってやる気満々の幼馴染みに、朱莉は笑顔で返すことしかしなかった。

28日前 No.5
ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)