Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(26) >>

放課後恋愛教室

 ( 恋愛小説投稿城 )
- アクセス(236) - ●メイン記事(26) / サブ記事 (16) - いいね!(4)

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「俺さ、紗々のこと絶対振り向かせるから」

あたしは、いままでで一番、最悪な告白を受けた。

なぜか、毎日放追い詰められるハメに……。

「キス、どうだった? ドキドキした?」

「う、うわあああ!! な、な、な……なんで、こんなやつとファーストキスしちゃったのぉ〜!!」

毎日毎日、この人に困らされてるんです!

ほんと、いい加減にしてください!

「嫌だよ。紗々が俺のこと好きになるまで、ずっとつきまとうから」

ほんと、最悪……。

*

『恋のことで困っている人が、放課後北校舎4階の空き教室に行くと、そこにいるだれかに相談にのってもらえるらしい』

そんな嘘っぽい噂は信じないあたし。
ひょんなことから

“放課後恋愛教室”を見つけてしまった。

そこにいたのは、学校一モテる大柴海(おおしばかい)先輩。

「放課後恋愛教室の先生って、先輩だったんですか!? な、なん――」

「――ここに来たってことは、なにか相談したいんだよね?」

「え?」

「俺が、相談にのってあげるよ。もう、金森さんが恋愛未経験だってことは、わかってるから」

「はい?」

「……じゃあ、毎日放課後、ここにおいでよ。俺が、恋を教えてあげる。これからよろしく、紗々」

なぜか、毎日放課後に先輩のいる“恋愛教室”の生徒になることに!?


* * * * * *

「あ、あたしは、絶対好きになりません!」
無自覚天然美少女 2人の人から迫られるモテ王女 金森紗々(かなもり ささ)

×

「俺さ、絶対紗々のこと振り向かせるから」
紗々にグイグイ迫る 大柴先輩と幼なじみ 綿貫楓真(わたぬき ふうま)

×

「俺が紗々に恋を教えてあげる。よろしくね」
通称:学園の王子さま 紗々に恋を“教える”!? 大柴海(おおしば かい)

* * * * * *


いつも迫られ、甘い言葉をかけてくる2人。


「紗々。選んで」


「あ、あたしは――」


糖度100%の甘々ラブコメディ♪


*.。.*□*.。.*□*.。.*□*.。.*□*.。.*□*.。.*□

こんにちは、青星.です。
メモに書かれている注意事項などを守れる方は、どうぞ。
予告なしに、一時更新停止になる場合があります。

*.。.*□*.。.*□*.。.*□*.。.*□*.。.*□*.。.*□

メモ2017/09/10 17:52 : 青星. @aoboshi★bRSEhnuYIJ_m9i

クリック&タッチありがとうございます。


注意事項:

・無断転載、丸々コピーはおやめください。

・この小説はリレー小説ではありません。私以外の小説関係の書き込みはやめてください。

・感想、コメント、文章への指摘でしたら、サブへ書き込んでください。


登場人物:

金森紗々(かなもり ささ)

高2。恋愛未経験。通称:学園の天然美少女。

甘いモノに弱い。綿貫楓真と先輩にいつも困らされている。


大柴海(おおしば かい)

高3。学校一モテる先輩。通称:学園の王子さま。

恋愛教室の先生……? 楓真と幼なじみ。


名取牧(なとりまき)

高2。恋愛経験アリ。さばさばした性格。

多くのバイトをしている。紗々の親友。紗々が大好き。


綿貫楓真(わたぬき ふうま)

高2。紗々に告白し、フラれた。大柴先輩と幼なじみ。

二重人格を持っており、腹黒悪魔。


2017.9.2. Start〜


*素敵なコメントありがとうございます(サブ記事)*

♪みあん さん ♪りっぴー(りさ)さん

切替: メイン記事(26) サブ記事 (16) ページ: 1


 
 

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

2ヶ月前 No.1

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

牧ちゃんがガタッと席を立つ。

「わああっ……牧ちゃん、お、おお落ち着いて!」

「落ち着けるわけないでしょ! それに、先輩も先輩だよ! マナーを守りましょうとか、言えないわけ!?」

「ちょっと牧ちゃん、きっと、女の子たちが怖くて注意できないんだよっ、うん、きっとそう!」

「…………」

なぜか黙ってしまった牧ちゃん。牧ちゃんがあっちに行ったら、絶対悪者にされるに決まってる。
牧ちゃんは怒りが爆発すると、もうどうにもならないことになるから、1番近くにいるあたしが、止めてあげないと。

「そ、そうだ、牧ちゃん! 今度のバイト先は、どこにしたの?」

「……キャバクラ」

「え?」

「うっそー! 嘘に決まってるじゃん! ほんと、こんなの信じるなんて、やっぱ紗々は天才の天然だわ! ははっ」

なにがそんなにおもしろいの。と心の中でつぶやくけれど、あえて口には出さないことにする。
そしてお腹をかかえて笑った牧ちゃんは、笑いながら「またカフェだよ。給料多い高級カフェ」と言った。
また、カフェか。

「牧ちゃん、また遊びに行くね」

「ほんと? ありがとー! 私さ、紗々といるとすっごい癒されるんだよね〜!」

「なんで?」

「紗々、天然すぎて逆に癒しになってんのよ。だから、バイトで疲れた時も、紗々の写真見てるの。……いや、変態ではないけどね!? 信じてよ!? つまり、紗々は私にとってマスコットキャラなの!」

マスコットキャラ、とは。
く○モンとか、しま○っことか? ああいうもの、のこと? なぜ、あたしがマスコットキャラ。

「牧ちゃん、どういう――」

2ヶ月前 No.2

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「ごめん、落としたよ? 金森さん。はい」

「え」

そこに、いたのは。
通称:学園の王子さま―大柴海(おおしばかい)先輩。

お、落とした? 慌てて先輩の手を見ると、いつの間にか落としていたらしい、ハンカチ。
落とすようなこと、あったっけ……?

そう思いながらも、先輩からハンカチを受け取る。

「ありがとうございます。すみません」

「いーえ」

先輩はまた笑顔を残すと、何事もなかったかのようにもとの席へ戻っていった。

「だれ、あの子。見た目はそこそこ可愛いけど」

「えっ、知らないの!? 通称:学園の天然美少女の金森紗々だって! 学校では有名だよ?」

「ま、金森紗々だったら許せるかも」

まわりからそんな声が聞こえてくるけれど……。
牧ちゃんがその子たちを睨む。だから、牧ちゃん。危ないって……!

「牧ちゃん。もうそろそろ昼休み終わるし。行こ!」

「……うん」

あたしは大急ぎで購買のパンと飲んでいたフルーツスムージーのごみを取ると、牧ちゃんと学食を出た。
「紗々、あんなの、気にしなくていいからね。いじめられたら、私が助けるから」と牧ちゃんがボソッと言った。
いや、気にしているのは、牧ちゃんの方……。

もちろん、言わないけれど。

「牧ちゃん。今日はバイト初日だから、行かない方がいい?」

「うん。来ないでね。私のプライドが壊れるから」

牧ちゃんは、バイトに慣れてきちんとできるようになるまで、あたしが行くのを拒む。
あたしに、かっこ悪い自分を見られたくないかららしい。あたしは、どんな牧ちゃんもかっこいいと思うけど。

「わかったー」

「もうっ! 紗々は可愛いなぁ」

「うっ……。牧ちゃん、力強すぎ……」

「わああっ? ごめん、私のマスコットが壊れちゃう! そうなったら私、生きていけない!」

「……(マスコット……?)」

2ヶ月前 No.3

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「あのさ、金森。ちょっといい?」

突然べつの人の声が聞こえたから、思わず「わあっ!?」とびっくりしてしまった。
そこにいたのは、見知らぬ(?)男子。

牧ちゃんは、相変わらず睨んでいる。
その男子は怖がってるようで、一歩あとずさった。

「まっ牧ちゃん! だめだよ! 怖がらせちゃう……」

「あ、あの。すぐ、済むから。少しだけ。絶対に、遅刻はさせないから」

「ほんとにぃ〜?」

牧ちゃんが疑いぶりマックスの声で確かめる。
男子は「ほ、ほんとです!」と明らかに牧ちゃんを怖がっている……。

「い、行くよ! え、えっと〜……同じ、2年?」

「あ、うん」

「じゃあ、敬語はいらないから。牧ちゃん。先に帰っておいて」

「へいへーい。いい? なにかあったらすぐ連絡してね!」

「わかってるってば。ごめんね? どこに行けばいい?」

「あ、中庭……」

牧ちゃんが教室に戻っていくのを見届けると、あたしと男子は中庭へ向かった。
いろいろ話しかけてみるけれど、わかったのは綿貫楓真(わたぬきふうま)、この名前だけ。
なぜか、緊張しているらしい。

「着いたよ、中庭」

「あ」

「で? 話って?」

「あ、あのさ……俺、金森のことが好きなんだけど。もしよかったら、俺と付き合ってくれない?」

「へ?」

なに、まさか。告白? 最近、なんか多いような気がするんだけど……。
これで、何回目? えっと、確か……21回目?

なんで。

「あ……ごめん。あたし、いま、恋愛とかそういうの考えられないから……」

「そっか。ごめん。時間とらせて。じゃあね」

「うん」

2ヶ月前 No.4

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「あっ、金森! あのさ、ちょっと少しいい?」

「んー? なにー?」

「あのさ……金森って、他の女子と同じで大柴先輩が好きなの?」

「いやいや、まさか! あたしと関わることなんてないって! 先輩なんか」

「そ、うなんだ。いや、海に取られるのかなと思っただけで。幼なじみに取られるなんて、すごいムカつくなあ、なんて」

「そうなんだ〜! あっ。もう授業始まるから、いい?」

「うん。じゃあ」

……はい? いま、結構すごいこと言ったんじゃないの?
『幼なじみに取られるなんて、すごいムカつくなあ、なんて』って。
綿貫くん、“あの”先輩と幼なじみ!? は!? ○&▼◎”%$!?

綿貫くん、結構地味だなって思ってたら、あんなチャラチャラした先輩と一緒に育った幼なじみ!?
理解、できないんですけど!

「ちょ、ちょっと待って!」
「あのさ、もう少し話が……」

2人の声が重なる。あ、どっちも話があるのか。

「あのさ。金森。俺が海と幼なじみってことは、隠してもらえると嬉しい」

「なんで?」

「うわっ、そういうこと直で聞くかぁ〜。ま、そういうとこが好きなんだけど」

「え?」

待って。この人は。さっきまで地味で怖がりだった、綿貫くん?
なんか、キャラがちがう気がするんだけど。なに、まさか、二重人格!?

2ヶ月前 No.5

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「はっ、さすが“学園の天然美少女”だ。あ。そんな顔するなよ。なにもしてねぇだろ?」

「えっ? は……」

「とにかく、これだけは言っとく。

 俺、絶対金森―紗々のこと振り向かせるから」

「は!? な、なんで? い、いまフッたよね? え? し、しししかも『紗々』ってどういうこと!? ねえ、綿貫くん、綿貫くんは、綿貫くんだよね?に、二重人格なんかじゃ、ないよね? あ、えっと、」

「うるさい。黙れ。だいたい、そんなに無防備なのがいけねぇんだよ。いっつもいっつも可愛い笑顔ばらまいてさぁ、その一瞬でどれだけの男が恋に落ちてるか、知ってんの?」

あ、あたしがいけないんですか……(←ツッコむとこそこかよ)。

っていうか! わ、綿貫くんが二重人格って! 意味、わかんないんですけど。しかも、簡単に『うるさい。黙れ』とか言いましたよ? さらに、『可愛い』とまで! もう、なにがなんだかわかんない……。

「あ、あの〜、あたし、先に帰りますね」

「あ? ていうか、なんで紗々の方から敬語使ってんの」

「え? あ。そ、それは、綿貫くんが二重人格だって知って怖くなったから……」

「二重人格? ふーん。ま、好きな子のことは絶対手に入れないと気が済まないからさぁ。二重人格なのも仕方ないでしょ。あいつと一緒にいると比べられてムカつくから、いままで地味なフリしてきたんだから。無理もないよ、驚くのは」

怖い! 怖くてもう逃げ出しそう……ていうか、もう逃げちゃおう!!

ダッと走り出した、その瞬間。

「おい、待てよ」

2ヶ月前 No.6

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

すぐそばにあった木に、追い詰められてしまった。
あたしの目の前に綿貫くんの手がある。そのことにまた、恐怖を感じる。

「あの、カエリマス。スイマセン」

「なあ、ちがうだろ? “これからよろしく”だろーが」

「はい?」

「だから! 俺に振り向くまで、紗々にずっとつきまとうから。覚悟しておいてね」

「えっ」

内容が理解できなくて、混乱する。
……だれか、夢だと言ってくれ。

えーっと、あたしはついさっき、綿貫くんに告白されて、断って。そしたら、綿貫くんがいきなり態度変えて二重人格ってことが判明して、それで。「俺に振り向くまで、紗々にずっとつきまとうから」。は? いやいや、つきまとうって、もはやストーカーじゃないですか。

ポツポツポツ……チーン。

「はあああ!?」

「おっ、意識戻ったな。なあ、言っとくけどさぁ、もう授業のチャイム鳴ったよ? 残念だね。気を失ってる時に」

「嘘。嘘嘘嘘!!!! 嘘でしょ。が、学校生活で、はじめてのサボリ……。牧ちゃん、助けて――むぐっ」

「うるせ。どうやったら、この口抑えられるかなぁ。……あ、そうか」

「なんですか」

2ヶ月前 No.7

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

――ふわっ。

なにか、生暖かいものが、あたしの唇に触れた。
一瞬、なにが起こったのか、わからなかった。

いま、あたしの唇に触れているのは。
それを理解した瞬間。あたしは、怒りモードに突入した。

……はずだった。

「は、離し……んっ」

「黙って、言う通りにしてればいい。お前は」

や。こんなの、ありえない。こんなのがあたしのファーストキスだなんて。
離れたい。いますぐに、離れたい。それなのに。

男の人の力は、想像以上に強く。振りほどけない。

「ん……っ。ふ、ふぁ……っ。は、離してっ!」

ぷはっ。

あたしはやっとの思いで綿貫くんを突き放した。
多分、いまのあたしの顔は、怒りで真っ赤になってると思う。

「な、なんで……なんで、こんな――」

「お前、なかなか黙らないのな。知らなかったわ」

「なんで、なんで! なんでこんなことしたの!」

なんで。綿貫くんは、いったいなにを考えてるの?
もう、わけがわからなくなって、涙が出そうになった。ひどい、こんな。

「あれ? 泣いてる? ごめん、ごめん。もしかして、そんなにキスがドキドキしたの?」

「す、するわけない! こんな、ひどいキスになんか――」

「はぁ。めんどくさ」

「な、なにが。――んっ! や、やだ……!」

再び触れる、温もり。もう理解できなくて、力も入らなかった。
なんで、こんなことになってしまったんだろう。

授業をサボって、男子とキスしてるなんて。
ありえない。もう、信じられない。綿貫くんに、ついてこなければよかった。

2ヶ月前 No.8

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「いい加減、黙れよ。お前は、俺が言う通りにしてればいいの」

「ん……っ。ふぁ、や、やだ、は、な……し」

「『離して』と『やだ』と『やめて』は言っちゃだめ。言ったら、もっと激しくするよ」

「……っ」

その言葉に、従ってしまったあたしがいた。
もちろん、そんな取引が嘘ってことは、最初からわかってた。

綿貫くんは一旦あたしから唇を離した。
そのことに安心感を抱いていると、すぐさま次の言葉が。

「紗々、可愛すぎ。従ってれば激しくしないって言ったけど、もう無理……」

「なに。また、キスする気? やめてよ! もういい加減にして! ――きゃっ」

キスされる、と思って近づいてきた綿貫くんの顔。
しかし、次に舞い降りてきたのは、唇ではなかった。

「……?」

その時。

――カシャ、カシャカシャ。

「うん、よく撮れた。よかったね、紗々。紗々の顔、すっごい可愛く写ってるよ」

「え? いま、なにしたの? まさか。しゃ、写真を……」

「うん、そうだねぇ。さすがにキスしながら撮るのは難しいからさぁ。ま、顔近づけときゃキスに見えるでしょ。紗々も怖がって目をつぶってるし、これじゃもうキスにしか見えないね」

「なにする気!? さっきから意味わかんないこといっぱいしてきて、いったいなんなの!?」

「紗々、カンタンなことだよ」

綿貫くんは、スマホを見ながらニッコリ微笑んで言った。
その笑顔は、まさに“悪魔の笑顔”と言ってもおかしくないくらい、ぞわっとした。

「この写真を全校生徒にバラまかれたくなかったら、俺と毎日を過ごして」

「はっ、なんだ、そんなこと? べつに、バラまかれてもなにも困らないけど? くだらない脅しだねぇ、そんなのに乗っかるはずないでしょ、このあたしが。バラまかれたら、綿貫くんは悪魔だってみんなに言うだけだし、この写真が嘘だってことも全部言う」

「……へぇ、面白いこと言ってくれるね。ま、紗々がそれを言おうとしたら、たとえどれだけの人が紗々を囲んでいたとしても、実際にキスして紗々の口をふさぐから。それと、どっちがいい?」

「…………」

2ヶ月前 No.9

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「嘘でしょ? どうせ、言う事聞かせたくて嘘ついてるだけでしょ?」

「そう? 俺は本気だけど。ていうか、もう何回もキスした仲じゃん。そうだ、もう一回しとく?」

「するわけないでしょ! ほんとは地味男のくせに! なにいまさらチャラチャラしちゃってんの? あんたなんかとキスなんてしたくない! さっきキスしたことも、あたしは全部なかったことにするから」

「……ふ。それは、キツイな。俺、海に比べられてそういうこと何回も言われてるから……、そっか。紗々も、その中の1人なんだね。ちょっと、悲しくなった。もういい。この写真も、全部消しとくから」

「え、あっ!」

しまった。綿貫くんが、手を顔にあてて、泣いてる……?
もしかして、あたしにすがろうとしてたのかな。あたしなら、『地味男』なんて言わないと思って……。

「ご、ごめん、綿貫くん。あたし、わかってなかったね――んっ!?」

次の瞬間、また唇が触れた。
けどこのキスは、すぐに離された。怒りでいっぱいになる。

「バーカ、単純すぎ。ほんとバーカバーカ」

「……っ。騙すなんて卑怯者! だったら何回でも言ってやる! 地味男、地味男、地味男地味男地味おと――」

「それ以上言うと、もう許さない」

「!」

やばい。綿貫くんの顔、ブラックだ……! 悪魔だ!
牧ちゃん、あの時助けに来てくれればよかったのに! なんて届かない牧ちゃんに心の中で文句を言ってみる。

「やばい。キスしたくてたまんない」

「やめ……っ。――んっ。や、やぁ……ふ、ふふぁっ……」

「可愛いね、紗々。そんな声出されると、もう理性飛ぶ」

「……っ! ふ、ぁ……。ま、きちゃ――」

「牧ちゃんじゃない。俺の名前を呼んで。ほら、楓真。言ってみて」

2ヶ月前 No.10

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「や、やだ……っ」

「だめ、言って。言わないと、次の授業もサボらせるよ?」

「……っ。ふ、ふ……う、ま……ふぁっ……」

「やっと、言った。離すよ」

「ふう……はぁ、はぁ……」

力が抜ける。ほ。よかった。一旦は。とたんに、肩が揺れる。
肩で息をするくらい、キスしてた。ってことは、どれくらい、綿貫くんとキスしてたんだろう。

「ねえ、紗々。キスせずに、俺のこと、呼んで……?」

「……ふ、楓真。こ、ここれでいいっ? これで、もうつきまとわない? もう、うんざりしてるの! なんなの、人のサボリをなんとも思ってないような綿貫くんとなんか、もう二度と関わりたくない!!」

「だめ。これから紗々と俺は、もっと仲良くなっていくつもりだよ。よろしくね〜」

「な、なんでよ? あ。そうだ! ねえ、最後に抱きしめてあげる。こ、これで許してくれるっ? もう、関わりたくない……」

いいことを、思いついた。さっきの写真を消せば、きっともうどうしようもないだろう。
あたしが「あっち向いて。後ろから抱きしめるから」と言うと、素直に向こうを向いてくれた。やった!

そして、綿貫くんの手に握られているスマホを取ろうとしたあたし。
けれど、あたしは考えが甘かった。カンタンに騙せると思っていた。

「甘いよ。紗々。スマホを取ろうなんて、最初から全部お見通しなんだから」

いきなり振り向いた綿貫くんに、スマホを取ろうとした右手がぎゅっと握られる。
綿貫くんは笑顔だけど、目が笑ってない。
もう、ほんとに小さい声しか出せない。なにもかもお見通しの綿貫くんが、とてつもなく怖い。

「あ、……ぁ」

怖い。怖い怖い怖い……! 今度こそ、殺されるぅ〜!

2ヶ月前 No.11

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

――キーンコーンカーンコーン♪

「ん?」

「あ、もう1時間終わったみたいだね。時間っていうものは早いねぇ」

「じゃ、あたし帰ります。もちろん、止めないでくださいよ? 授業終わったら、いい加減に離してください。では」

「ハイハイ。けどさ、俺のこと好きって言うまで、ずっとつきまとうからね? 覚悟しておきなよ?」

「ばいばい。さよーなら」

今度は、止めようとしないんだ。
だいたい、もう綿貫くんとなんか関わらないし。つきまとわれたって、所詮すぐあきらめるようなやつでしょ?

……待てよ。あたしいま、なにをされた?

『キス』。その言葉が、いまこの時間を過ごしたことで、もうこんなになじんでしまっている。
それは、あの悪魔―綿貫くんのせい。

「……っ。最低っ、バカバカ。あんなの、キスじゃない。キスなんかじゃ……」

自分で自分に言い聞かせるけど、どう考えたって、あれはキスだ。
あたしのファーストキスが、あんな風に終わってしまうなんて。最低。最悪。

いっそ、この記憶ごと消してしまいたい。



「まっ、牧ちゃあぁ〜ん。う、うわぁ〜ん! どうしよ〜!!」

「ちょっと、どうしたの!? ていうか、5時間目サボったよね? なに泣いてるの? なに、まさか。あいつのせい? あいつのせいで、泣いてるの? 大丈夫、紗々。ひどい顔だよ」

クラスのみんなが何事かとジロジロ見てくる。
もう、視線なんて気にならなかった。ただ、だれかに……この話を聞いてほしかった。

「牧ちゃんっ、あのね、あのね……」

2ヶ月前 No.12

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「名取、勘違いすんなよ。俺のせいじゃないからな」

「え?」

いつの間にか後ろにいたのは―綿貫くん。
嘘。綿貫くんって、同じクラスだったの――!?

しかも『俺のせいじゃない』って、どう考えたってあんたのせいでしょ!
あたしは牧ちゃんに訴えた。

「牧ちゃん。ちがうよ。綿貫くんが嘘ついてるの。ほんとは――」

「ちげーよ。俺さ、ちょっと用事があって呼んだんだけどさ。俺は先に帰ったんだぜ? サボったのは、お前だけ」

「ちっ、ちがう! あ。あたしは――むぐっ」

綿貫くんの手で口をふさがれる。
や、やばい。このままだと、あたしだけ反省文……!

「ち、ちっがーうっ!!」

「!?」

いきなりの大声に、みんながビクッとする。……もちろん、綿貫くんも。
「なに? 紗々、言ってごらん」と牧ちゃんが言う。もういい。全部全部……!


「あっあたしはっ! 綿貫くんに告白されて、断ったの! そ、そしたら、綿貫くんが、キ、キ……キキスしてきたの!」


「は?」「え?」「ぶっ!」「はぁ!?」「なんだって!?」「天然美少女・金森に!?」

そんな声が聞こえる。そんな中で、綿貫くんは平然としている。
なに。なんで、そんな態度でいられるの。その姿は、まるで開き直ったようにも見える。

「紗々……、それ、ほんと?」

「ほんとだよっ! それに、もう数えられないくらい! な、何十回もされたし、もう泣いたもん……。お願い、信じて牧ちゃん……」

「なにそれ。許せないんだけど。だいたい、数えきれないくらいだって!? あんた、紗々になにしたのよ! フラれた腹いせにキスでもして、突き放すつもり!? ねえ、なんとか言いなさいよ!」

「……そうだよ。俺は紗々にフラれた後、何回もキスした」

「なんで、なんでそんなことしたの? 紗々、泣いてるじゃん! 紗々のことが好きなら、考えてあげてよ! だいたい、紗々ってなに!? なれなれしく紗々の名前呼ぶんじゃないわよ!」

2ヶ月前 No.13

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

牧ちゃんと綿貫くんとの間でパチパチ音をたてる火花。
その時、綿貫くんが妙に笑顔を浮かべながら、あたしに言った。

「ねえ、紗々。覚えてる? “あのこと”」

「はあ? なによ、あたしたち、もう関わらないって言ったでしょ!」

「へえ〜? ほんとに覚えてないんだ? あれほど嫌がってたくせに、ここは拒否らないんだね」

んんん〜? なんだっけ? いろんなことが一気に起こりすぎて、覚えていない。
なんだったっけ?

『言ったら、実際にキスするから』

……あ。やばい。知らぬ間に、綿貫くんが近づいてきてる。
このままだと、みんなの前でキスされてしまう。しかも綿貫くん、ニヤニヤ笑っている。

あたしは後ずさりが始まったのを合図に、教室の端っこへ走った。
とにかく、逃げるが勝ち。授業が始まるまで、逃げまくるしかない!

「おい、待ちなよ。紗々。覚えてるでしょ? だから、逃げてるんだよね?」

「……お、覚えてないっ! ま、牧ちゃん! 綿貫くんがこっちに来ないようにして! お願い!」

「任せとけ! 私は元・陸上部なんだぜ?」

呆然としているクラスのみんなの間をすり抜け、綿貫くんから逃げる。
「なんだ?」「イェーイ! 金森が俺に一瞬触れたんすけど!」「ラッキー」なんて声が聞こえるけど、もうそんなの気にしない! とにかく、逃げる! 先生〜、早く来てよ! チャイム鳴ってよ!

「綿貫ぃ〜! 待てコラァ〜!!」

牧ちゃんが鬼のような顔をして綿貫くんをあたしから遠ざけてくれる。
と、その時。あたしが待ち望んでいた音が。

――キーンコーンカーンコーン♪

先生はまだ入ってきていないけれど、チャイムは鳴った。
やった! あたしの勝ち!

「牧ちゃん! ありがと! もういいよ。チャイム鳴ったし。綿貫くんも、席に着くでしょ」

「ていうかさぁ、紗々。“あのこと”ってなに?」

「あ、あとで話すから。とりあえず、席に着こう?」

「そうだね! よかったぁ〜。マスコット紗々がけがれなくて」

「あはは」

2ヶ月前 No.14

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

クラスはざわざわしているけど、安心感が広がっていった教室。
ふと見ると、綿貫くんは、どんどんこっちに歩いてきてる。

いままでおしゃべりしていた人たちも、なにが起こるのかとあたしたちを見てる。

『言ったら、実際にキスするから』

いやいや、まさか、ね? もう授業始まってるんだし。
先生は来ていないけど、基本くらい綿貫くんだって、わかってるだろうし。

けれど、そんなあたしの願いもむなしく。

「甘いよ、紗々」

そんな声が耳元で聞こえた次の瞬間。


さっきと同じ温もりが、あたしの唇に触れた。


嘘。嘘。嘘。嘘。嘘ー!!!!!

「キャー!! マジでキスしてる!!」

「おい、どういうことなんだよ!? 綿貫!!」

「紗々……」

呆気に取られて、なにも言えない牧ちゃんが、視界の端に映る。
もちろん、あたしの視界のほとんどを埋め尽くしているのは、綿貫くん。

「ん……っ。は、離して! 離してってば!!」

――ドンッ!

突き放したけれど、もう遅い。最低!! 最低すぎる!
ひどい。ひどいよ。勝手にキスした挙句、今度は大勢の人の前でなんて。ひどい!!

「最低っ! バカッ! 変態!! なにすんの! みんなの前で」

「なにって。さっき、約束した通りだよ。“紗々が俺にキスされたことみんなに言ったら、たとえどんなに大勢の人が紗々を囲んでいても、実際にキスする”って。そうでしょ? 紗々」

「もう二度と口きかないから! なによ! 授業サボらせておいて勝手にキスして! 挙句の果てにみんなの前でキスするとか、最低! 最低すぎる! さっきのことだって、あたし納得したわけじゃない! 自分で勝手に決めたことを無理やりあたしに押し付けな――んっ。や、やめ……」

「黙って」

2ヶ月前 No.15

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「オイオイ、この後授業あるのわかってんのかぁ〜?」「そうだそうだ! 先生、もうすぐ来るぜ?」「ねえ、ああやって見るとさ、綿貫って結構かっこよくない?」「ああ〜それ、わたしも思った」「金森サンうらやましいな〜!」

いやいや、助けてくださいよ? あたし、被害者になってるんですけど!
突き放そうとしていても、綿貫くんが手をぎゅっと握っていて離すことができない。やばい。

「――んっ。やめて。ま、牧ちゃんっ……! た、助け――」

自分の名前を呼ばれたからなのか、はっと我に返った牧ちゃん。
「いま助けるからね! ちょっと綿貫! どきなさいよ!」と牧ちゃんが綿貫くんを突き放した。

「紗々。大丈夫!? 生きてる!? 息できる!?」

「あ、あありがと……牧ちゃん。――う、うわぁ〜ん!」

牧ちゃんに抱きしめられるとほっとして、涙が出た。
いつの間にか来ていた先生は、教科書で真っ赤な顔を隠していた。まさか。あたしたちのキスを見た?
理解できないでいると、先生は「金森。ちょっと保健室で休んできなさい。綿貫も」とニヤニヤしながら言った。

「な、なんで綿貫くんもなんですかっ? わ、綿貫くんはべつに、悪いことしてただけじゃない!」

「だって綿貫、名取にお腹殴られてただろう? 今回はまあ、その……見なかったことにするから。早く保健室行ってきなさい」

「「「先生、完全に見てましたよね?」」」

あたしと牧ちゃんと綿貫くんの声が重なる。
先生は「い、いやぁ〜。べつになにも見てないから。そ、それでは他のやつ。授業始めるぞ。名取、席に着きなさい」とごまかすように言うと、さっさと授業を始めてしまった。

牧ちゃんは席に着く時、「なにかあったら言ってよ?」と言ってくれた。

やばい、綿貫くんから黒いオーラが見える。
あたしは我先にと、教室を飛び出した。後ろから、当然のように追いかけてくる綿貫くん。

「こ、来ないでよ!」

「俺だって、保健室行くのに?」

「だ、だから! 走ってついてこないでよ」

「べつにいいじゃん」

う。早く行かないと、またなんかされる!
き、キスとか……。ていうか、キスしかありえない!

保健室に、先生はいなかった。

あたしはベッドの中で落ち着こうと思い、カーテンを素早く閉め、ベッドに寝ころんだ。

2ヶ月前 No.16

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

あれ、保健室のベッドって、こんなに硬いの?
いままで保健室なんて行ったことなかったから、ちょっと新鮮。

と、その時。ドアの開く音がした。……綿貫くんだ。

「紗々。わかってるんだからさ。早く出ておいでよ」

「い、嫌です! だいたい、なんであたしなんかに構うんですかっ! もうほっといてよ」

「えええ〜? ま、いいや。俺だって、カーテン閉めてるベッドをのぞくほど常識はずれじゃないし。ちょっと休んだら帰るから」

「それはどうもありがとうございます」

「……あのさ、敬語ヤメテ。俺が嫌われてるみたいで嫌なんですけど」

は? 嫌ってるから敬語使ってんじゃん。どうなってんだ、綿貫の脳みそ。
解剖して見てやりたい。

「お〜い。紗々」

「…………」

もう、返事しない! 返事したら、永久に会話がつづいてしまう。
あたしは固く心に決めると、布団を頭からすっぽりかぶった。綿貫くんはあきらめたようにため息をつくと、あたしのベッドに近いイスに座って休み始めた。……なんだろう、なんか気まずい。

「…………」

「なあ、紗々」

「…………」

「おーい、紗々。……仕方ないな。返事してくれたら、なにもしないのに。ま、それが紗々の意見ってことで。俺、ほんとはこんなことしたくないけど。ごめんね、紗々」

「は!? なにが……」

その言葉に嫌な予感を察し、あたしは思わずカーテンを開けた。
しまった、と思った時には、もう綿貫くんは立ち上がっていた。

「紗々ってさ、単純だよね、ほんと。すぐ騙されるし、変なとこで天然出すし」

「なに、」

「紗々。牧ちゃんが来たよ。紗々のことが心配で授業抜け出したんじゃない?」

――パタパタッ。

保健室のドアの向こうから、足音が聞こえる。
これは、嘘ではなさそうだ。あたしは立ち上がって、牧ちゃんを迎えようとした。

2ヶ月前 No.17

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

――なんて、信じたあたしがバカだった。

「紗々、騙されすぎ。いまの足音だって、知らないだれかが走ってただけだよ?」

あたしはすでに、カーテンを開けて綿貫くんの目の前にいる。
あと1cmで、もう彼の白いシャツに顔を埋めてしまうくらい。やばい。これは、やばい。

「紗々、好きだよ」

――ギュッ。

綿貫くんに、ぎゅっと抱きしめられる。
綿貫くんの白いシャツからは、ほんのりレモンの香りがした。
甘い。けど、時々苦くなる。レモン味。

「は、離して」

「やだ」

「なんで」

「紗々が好きだから。だめ?」

「それ、理由になってない! 早く離して! いい加減にしてよ!」

――ドサッ……。

あたしは、ベッドに押し倒されていた。
そして、綿貫くんは、優しく唇をあたしの唇に重ねた。

「んっ。や、や……」

「可愛い。紗々。好き、大好き」

「や、ぁ……やめ、て。ふぁぁ……っ」

その瞬間。ガラッとドアが開く音がした。
コツコツとヒールの音がする。……保健室の先生だ。やばい。見られたら――。

それでも、綿貫くんはキスをやめない。どうしよう!
「黙ってキスされとけばいいんだって」と普通に言う。なに、反抗しちゃだめっていうの?
やだやだやだ……このままおとなしく、キスされてたまるかっ!

さっきと同じように突き放そうとする。それを察したのか、綿貫くんは強い力であたしの手を掴んだ。
そして、反抗できないように両手をあたしの頭の上に上げた。

どうしようかとオロオロしていると、綿貫くんが耳元で言った。
それはまるで、狼みたいな低い声。

「離さないよ」

その声に反応してしまって、思わず体がビクッと震えた。
ゾクゾクする、男の声。なぜか、心臓の音がどんどん派手になってくる。

2ヶ月前 No.18

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

嫌い……こんなやつ、大っ嫌い!!

「あら? だれかいるの? カーテン閉まってるけど」

「!?」

やばい。やばい。保健の先生にまで誤解されたくない!
でも、逃げ道はない。ヒールの音が、カツカツと近づいて来る。

と、その時、あたしの上に白い布団がかぶさった。
どうやら、綿貫くんだけ顔を出し、綿貫くんだけが寝ているという設定にするらしい。
あたしはそれには素直に従い、静かに息を殺した。

シャッ……。

「あれ? 綿貫くんじゃない。どうしたの?」

「いえ、ちょっとお腹痛くて」

「名簿に名前書いておいてよ。保健室に来たらまずは名簿を書く! 基本でしょう?」

「すみません。ものすごい痛くて。痛みがなくなったら、帰ると同時に名前書いとくんで。気にしないでください」

「そう? それならごめんなさいね。先生これからまたしばらく保健室にいないけど、大丈夫?」

「はい。全然大丈夫です。帰りのHRまでには帰ります」

「わかったわ。じゃあね」

――ガラガラ、ピシャン。

保健室のドアが閉まった音がした。と同時に、あたしは布団から顔を出した。
……って、これじゃまるで、ただのサボリに来た密会カップルじゃんか……!

「は、離してってば! このバカ!」

「バカで結構。それより紗々。キスされて、ドキドキしなかったの? もしかして、なにも思わなかった? さっすが、天然ちゃんだね」

「当ったり前でしょ! あんたなんかのキスに、なにも感じるわけないでしょ! それより、さっさと離してよ。あと、あたしのこと“紗々”って呼ぶのやめて。腹立つ」

「……まだ、足りないか」

「え――」

言葉尻を失われた。それは、当たり前のような綿貫くんの顔が目の前に。
もちろん、なにをされているのかはわかっている。

「――んっ! ふぁ……んぁ……や、やだ!」

「楓真。ほら、呼んで?」

「……ふ、ふ、うま……」

「紗々。可愛いよ。大好きだよ、紗々」

――もう、あたしに抵抗する力はなかった。

両手は人質になっているし、足は綿貫くんの足と絡まって思うように動かせないし。
もう、どうでもいいって、思った。いつか、この時間が終わるまで。

ただ、待とうと思った。

2ヶ月前 No.19

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i



どれくらいの時間がたっただろう。

俺の目の前でのんきに寝てるのは、金森紗々。
どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。って、危機感を感じてないのか、こいつは。
寝顔が無造作で、もっと愛しくなってくる。

学校イチモテる紗々を狙っているのは、俺だけじゃない。
でも、俺みたいな大胆なことをするやつなんて、たぶんいないだろう。だとしたら、俺の勝利?

けど――俺には、やっかいな敵がいる。

大柴 海(おおしば かい)。俺の、幼なじみだ。

俺は、紗々のことが好きじゃなかった。最初は。
ただ、あいつに好きなやつができるなんてめずらしいから、ちょっと奪ってやろうと思っただけだった。

まず、地味男のフリして紗々に告白した。あっさりと断られたけど、俺の弱みにズカズカと入りこんできた。
は? なんだ、こいつ。人のプライバシーを考えられねえのか。
そこからは、もうおとぎ話のように展開が進んでいって。正直、俺も自分自身、わからなくなっている。

最初にこみ上げてきたのは、怒り、だった。

俺のことも知らないで、よく心の中にズカズカと入って来れるな。っていう、単なる怒り。
そこで、俺の本性が思わず出てしまった。ほんとは、負けず嫌いで、大胆で、少しチャラいかもしれない俺の姿を。

でも紗々は、なんか……他の女子とはちがった。

なんかこう、普通の女子だったら「え〜? どうしたの、綿貫くん」って、甘い声で言ってくるもんが常識じゃね?
でも、紗々は、混乱して頭がまわらないみたいだった。学校イチモテる天然美少女のくせに、女子としての常識はほぼ0%に近い紗々に、なんか惹かれるものがあったんだ。

その時、本気で思った。

――こいつのこと、絶対振り向かせて見せる。

遊びじゃない。本気で。
海から奪いたいわけでも、他の男子に見せつけてやりたいわけでもない。

ただ単純に、好きだと思ったんだ。

『俺さぁ、最近金森紗々ちゃんが気になるんだよね。あの学校イチモテる女の子』

その言葉を聞いた時は、これからおもしろいゲームが始まると思ってた。

けど、いまは。



――押さえ切れないほどに、君が好きだ。

2ヶ月前 No.20

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「……お、さ……おき――」

んんん? なんだ? なにか――。

「う、うわああああっ!!」

「おっ? やっと起きた。おはよう、紗々。もう、牧ちゃんも帰っちゃったみたいだよ? ていうか、みんな帰ってるし」

う、嘘……。えっ? いまの綿貫くんの言葉で、引っかかるものがあった。
牧ちゃんは、来てくれなかったの? もしかして、綿貫くんがなにか言った?
どうしよう! 牧ちゃんにまで誤解されちゃったら……!

「ちょ、ちょっと! 牧ちゃん来なかった?」

「んー? ああ、来たよ、1回。でも、俺と眠ってる紗々がキスしてるとこ見たら“もうだめだ”みたいな顔して帰ってったよ。なに、なんか気に食わないことでもあった? べつにいいじゃん、紗々は寝てたんだし」

「ね、寝てる時もキスしたのっ? さ、最低! 冷血人間の中の冷え冷え男!!」

自分の言葉がおかしいことにも気づかず、とにかく言いまくるあたし。
まあ、もういいや……。これ以上、悪口なんて、浮かばないや。
あたしはカバンを取りに、教室へ帰ろうとした。

当然のように綿貫くんもついて来るけど、あえてそこは無視した。

「あれ? カバンがない!」

「あ〜……、もしかして、」

「なにいっ!? まさか、またあんたがどっかに隠したのかっ! 早く白状しろぉ!」

「ちがうって。俺じゃなくて、クラスの女子じゃねえの。ほら、よくあるじゃん。モテてるやつに嫉妬してそこからいじめ勃発! みたいな? とにかく、俺のせいじゃないからな」

「……はい? あたしが? モテ? なに意味わかんないこと言ってんの?」

「……(こいつ、マジの天然だわ。自分への視線にさえ気づいてないとか。ありえるのか?)」

綿貫くんは、笑いをこらえているように見えた。
あたしはそんな綿貫くんをいない人間かのようにスルーすると、カバンを探した。
あ! あった! あったところは、廊下のゴミ箱の、中。だれが……。

「紗々。帰ろう? 見つかったんでしょ? 俺、紗々と帰り道一緒だから」

「やだし。では、さようなら」

「待てよ」

「ちょっ……」

綿貫くんの大きな腕に、ぎゅっと抱きしめられる。
やっぱり、レモンの香りがする。あたしは正直言うと、レモンが好き。でも、このレモンは。このレモンだけは。

――好きに、ならない。

2ヶ月前 No.21

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「……離してって言ってるのが、わかんないかな」

「離さないって言ってんのがわかんないかな」

「…………」

「…………」

お互いに、お互いを確かめてる。
どんなにひどいことをされたって、どんなに甘い声で囁かれたって。
あたしは、このレモンは好きにならない。

「……レモン」

「え? 紗々、なんか言った?」

「アイス。レモンアイスおごってくれるんなら。一緒に帰ってあげてもいいけど。べつに」

「レモンアイスって、ここら辺にあったっけ?」

「あそこの、『32アイス』。あそこ知らないの? レモンアイス。あるでしょ? そんなことも知らないで、よく一緒に帰ろうなんて言えるね? バカじゃないの? とにかく! レモンアイス。おごって」

「いいよ。ていうか、レモン好きなの?」

どう、答えればいいんだろう。
レモンは、好き。でも、いま、ここで。レモンを好きかと聞かれたら。それは。
あたしの脳内には、意味がわからない言葉しか浮かばない。

「……好きだけど、好きじゃない」

「は。なにそれ。結局どっちだよ」

「知らない! 好きだけど、好きじゃないの! 早く帰る!」

「ハイハイ。わかりましたよ、お嬢さま。言う通りにいたしますよ」

バカにされてるのはわかったけれど、無視して『32アイス』に向かった。
レモンは、好きだけど、好きじゃない。綿貫くんからする甘い香りのレモン。このレモンは、好きにならない。なれない。
一定のレモンだけ、好き。



「ありがとうございました〜!」

あたしの手には、レモンアイス。綿貫くんの手には、バニラアイス。
あたしたちは近くにあったカフェスペースの2人席に着く。
綿貫くんは「おいしいね」と言いながらも、ゆっくりゆっくり食べていた。

「紗々のやつ、おいしそう。ちょっとちょうだい?」

「やだ」

バカじゃないのか。

「じゃあ、勝手にいただきますよっと」

「わあっ!?」

手に持っていたアイスに、綿貫くんが近づく。
そしてレモンアイスを一口頬ばると、満足そうに「おいしい!」と言った。

これじゃあ、もうリア充カップル……。

「じゃ、帰ろ。紗々。もう食べ終わったでしょ? ゴミ捨ててきなよ」

2ヶ月前 No.22

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「うん」

あたしはカップとスプーンのゴミをゴミ箱に投げ入れた。
ストレス発散? 的な。

「紗々、家まで送ろうか?」

「はあ!? ふざけないでよ! あたしの家まで知りたいのっ? どうせ、毎日インターホン鳴らす気なんでしょ! ぜーったいっ! 教えないからね! どんなに脅されたって!」

「……ハイハイ。じゃ、今日はここで解散してあげる」

「ばいばい!」

綿貫くんに背を向け、あたしは店の出口へ向かった。と同時に、また……。

「んっ」

「じゃあね、紗々。明日もまた会おうね」

軽いキス。じょ、冗談じゃないっ!
ここここんな、人通りの多い店の中でっ! まわりの人も、チラチラこっちを見てる。
「まあ、最近の高校生は」「人がいるのを考えられないのかしら」「そんなこと考えてないわよ。みんな自分の恋愛に夢中なんだから」「オイオイ、ここでイチャつくなよな〜!」
みたいな声が聞こえる。

だから、あたしはなにも悪くないんだってば!

あたしは綿貫くんにあっかんべーをすると、猛ダッシュで逃げた。
うざい! うるさい! チャラ男! ばぁーっかっ! ボケ! アホッ!
思いつく限りの悪口を言っても、なにも変わらない。明日から、学校休もうかな……。



「やあ、楓真。お邪魔してまーす」

「……うるせーよ」

「なに、今日は帰り遅かったじゃん。彼女とかとデート?」とか言ってニマニマしてる海。俺が帰って来たら、当たり前のようにソファにゴロンと寝転がってスマホをいじっている。
俺ん家は、これが当たり前、のはず。

だけど。

「……金森紗々と、デート」

その言葉で、その場が凍り付く。
海は、信じられないと言っているような顔をしている。ま、自分の好きなやつに幼なじみに手を出されたらだれもが驚くか。
ちょっぴりそのマヌケ面を見下していた、その時。

――ヴヴヴッ。

相手は、紗々。気づくの早いな、こいつ。おまえが寝てる間に電話とメールとLINEを交換しておいたの、バレたか。
いまのは、電話だ。俺はさっそうと出る。とたんに、紗々の金切り声が聞こえてきた。

「もしも――」

『あんった! なんっつうことしてんのよ! なに勝手に登録されてんのっ!? 必要ないじゃん!』

「うるせーよ。少しは黙れねえのかよ、おまえは。だいたい、いまこうやって電話かけてきてるじゃん。必要だろ?」

『それは、こうなってたらの話でしょぉっ!』

海は、真剣な様子で俺の電話を見ている。
そうだ。“紗々”って言葉を連呼してみよ。海、どんな顔するかな〜。

「紗々。ちょいと黙れよ。ちゃあんと説明してやっから。紗々。落ち着け。紗々」

『説明なんていらないっ! わかってるもん、全部! 保健室で寝てる時に交換したんでしょ? わかってるっつの! とにかく! あたしはこれからあんたの登録したやつ全部消すからね!』

「おい、ちょいと待て、紗々、紗々っ」

『なによ』

2ヶ月前 No.23

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

よし。ここで、全部話してみるか。

「落ち着けよ。たとえ紗々が連絡先消したって、また紗々を保健室に連れ込んでキスして、眠ったら連絡先また入れとくから。あ。もしかして、もう一回キスされたいの? 紗々ってば、かわいいね」

『はあ!? ……あっ、うん! すぐ行く〜。と、とにかく! あたしはあんたに二度と近づかないからね! 連絡先入れられたら、また消す! ばいばい!』

――プツッ。

「ふっ」

思わず、笑みがこぼれる。
紗々の大声に笑えてきたのもあるし、紗々の家族へ対する口調への変化にもおもしろくて笑ったし。
そして、なにより、海のマヌケ顔。

「……いつから、紗々ちゃんとそういうことになってんの。おまえ、べつに興味なさそうだったじゃん。イコール、協力してくれるってことじゃねえの? しかも、保健室に連れ込んでキスしただって? 紗々ちゃんがかわいそうだろ」

「べつに。紗々の顔がかわいくって、何十回もキスしただけだし。いや、何百回か。数えきれないくらい、な。おまえに負けるわけねえだろ。俺は、もう紗々の気持ちを動かしかけてるんだ」

「……いつまで、そういうことが言えるかな。一応俺だって、計画はたててるんだぜ? ほら」

「!」

海が笑みを浮かべてヒラヒラと見せてきたのは、一枚の紙。
海の、紗々を振り向かせる計画表。どれもこれも、俺とほぼ一緒の攻め方。俺の方が、まだ足りないくらい。
これじゃあ、俺、負けるかもしんねえじゃん……。

「スキありっ!」

「はあ? ちょっと返せよ!」

俺がその計画表に見入っている間に、ポケットからスマホを引き抜かれた。
そして、なにやら操作をしている。

「返せよ!」

――ポコンッ。

LINEの音。「はい、どうぞ」と言われて渡されたスマホのLINE画面には、紗々とのトーク。
俺……いや、正しくは海が送ったLINEは、これだった。

『俺さぁ、もう紗々に興味なくなった。明日からは、なにもしないし、いないやつのように扱うから。じゃな』

という、冷たい文章。
とたんに、怒りがこみ上げてくる。なにしてくれてんだよ。これじゃあ。

2ヶ月前 No.24

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

「これで、紗々ちゃんに誤解が伝わったでしょ? ま、明後日(あさって)になったら、誤解を解いてもいいよ」

「なんで明後日なんだよ」

「明日くらい、俺に紗々ちゃん譲ってくれない? その後は、もう完全のバトルっつうことで。じゃ、俺帰るわ。明日はおとなしくしとけよ、じゃないと。紗々ちゃんに、おまえとおんなじようなことしちゃうから」

「…………」

なにも、言い返せない自分が悔しい。
紗々を奪われて、1番嫌なのは俺なのに。海に渡してたまるかっ! そう思ったけど。
俺と同じことを紗々にされたら、絶対、海を好きになるに決まってる。

「あら、海くん、もう帰るの? 夕飯食べて行かない?」

「あ、いえ――」

ヴヴヴッ。

海のスマホの音が鳴った。
海は、スマホの画面を見る。それは、いつものことだった。そして海は「じゃ、いただきます」と言ったのだった。

俺と海が出会ったのは、小学1年生に入る直前のことだった。
俺は入学前に『隣に引っ越してきた大柴海くんよ、ひとつ年上。仲良くね』と紹介され、まあ普通に幼なじみという関係が築かれた。とくにケンカもなく、派手ななにかもなく、平々凡々に過ぎてゆく毎日。

その時だった。海が、モテるようになったのは。

『あのっ! 大柴先輩。ちょっと、いいですか……?』

中学3年の頃。俺と海が一緒に帰っていると、後ろから女の声がした。
振り向くと、ちまちました後輩―俺にとっては同級生がうつむきながら一生懸命に話しかけてきた。
ふと見ると、女たちの手には、紙袋。そうか、今日はバレンタインか。

『じゃ、俺先行ってる』

その後、とくに報告もなく、フッたんだとわかった。
そして、翌日。俺ん家に、海がやってきて、困り顔で頼んできた。

『頼むっ、楓真! 俺、バレンタインにチョコ30個もらったんだけど、多くて食べられなくてさ。『早く食べてね』って言われるから。頼む、食べるの一緒に手伝ってくれっ! おまえ、チョコ嫌いじゃないだろ?』

『それは、そうだけど――』

『なら、よかった! 俺、もう食べ過ぎで気持ち悪いんだ。食べろ、食べろ』

ドサドサッ。

大量のチョコ。やべえな、こいつ。モテやがった。
手渡された後、俺は何個ものチョコを食べた。ほとんどが店の物で、正直ほっとした。手作りでまずかったら、捨てるしかないし。

2ヶ月前 No.25

青星. @aoboshi ★bRSEhnuYIJ_m9i

申し訳ありません。

サブ記事の通り、更新中止となりました。

詳しくは、サブ記事をご覧くださいませ。

2ヶ月前 No.26
切替: メイン記事(26) サブ記事 (16) ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…感想・コメントはこの記事ではなく、サブ記事に書き込んでください。(小説カテゴリでは必須です)