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君色の世界。

 ( 恋愛小説投稿城 )
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lina ★iPhone=gv9WVVRjp2



君が教えてくれた世界は
とても大きくて とても輝いていて、

早く君の世界に染まりたくて、



ただ君の背中を夢中で追いかけた。





君の世界がある限り、
私の世界は動き出す。





君色の世界。 / lina






メモ2017/08/03 22:23 : lina @li721t★iPhone-gv9WVVRjp2

・藤咲 楓( ふじさき かえで )


・瀬川 奏多( せがわ そうた )


・長谷部 蓮( はせべ れん ) ハセ


・園田 ひかり( そのだ ひかり )


・笹野 夏菜子( ささの かなこ )


・瀬奈( せな ) 楓の妹


・野崎 侑李( のざき ゆうり )

切替: メイン記事(43) サブ記事 (13) ページ: 1


 
 

lina ★iPhone=gv9WVVRjp2


高校3年の6月半ば。

梅雨入りでじめじめした空気と
不定期に降る雨でどんよりした
気持ちがひたすら続いていた。



別に今の生活に不満があるわけじゃない。


ただ刺激が足りないというか、
ただ過ぎて行く毎日に飽き飽きしていた。




「 受験生という自覚を持つように! 」



決まり文句のように毎度聞かされる
受験生 というワード。

これもモチベーションの下がる言葉だ。




「 はぁ… 」



おまけに席は1番前。
幸いなのは窓側なことのみ。



「 藤咲って バレー部だよね?」

「 うん。そうだけど、なんで? 」


後ろの席から話しかけてきた男子は
長谷部と言い、通称ハセ。
最近よく他愛もない会話をする。



「 めっちゃ上手いって、
瀬川がずっと言っててさ〜」


「 せがわ? 」




このハセの一言から、
わたしの世界はゆっくりと動き出した。



2ヶ月前 No.1

lina ★iPhone=gv9WVVRjp2



瀬川は隣のクラスで部活仲間らしい。
ハセの親しい友人で一言でいうと
爽やかボーイとのこと。



「 でももう部活引退してるよ 」


そう、6月の頭にもうバレー部という
称号は卒業していた。



「 だから瀬川が残念がってたぞ 」

「 えっなんで? 」




「 めっちゃ格好良かったから! 」



私とハセの会話を遮る低い声。
突然の登場に驚きを隠さずいると、
ハセの表情が明るくなった。


「 よ!瀬川 」

「 はよーっす 」



挨拶を交わすと、
ニコッと私に笑顔を向ける。


その瞬間ハセの言葉の意味を理解した。

あぁ、この人が、


「 いつもハセがごめんな 」

「 なんでだよ! 」




鼓動が速くなる。

一言で言うと確かに爽やか。

笑うと目元にしわができて、
かすかな八重歯が見えて、




太陽みたいな人だと思った。

2ヶ月前 No.2

lina ★iPhone=gv9WVVRjp2



「 話すのは初めてだけど
俺のこと知ってる?」



笑顔が途切れることない瀬川。
そして、問いかけてくる瀬川に
妙に緊張してしまい、



「 う、うん 」



上手く話せず、



「 おっ!俺ってば有名人 」



その後も瀬川が会話を続けてくれた。


毎日ハセの所に話にやってくるから
顔は覚えていたけど、
こんな人がなんでバレーやってる時の
私を知ってるのか不思議で仕方なかった。



「 俺、仲良くなりたいから
楓って呼んでいい?」

「 え、うん 」



いきなり名前!
ドキドキするのが自分でもわかった。



「 俺の事は瀬川でも奏多でも
奏ちゃんでも!笑」



子供のように笑う貴方の顔が
この時とっても素敵で、




「 ま、奏ちゃんなんて誰かに
呼ばれた事ないんだけどな!笑 」

「 俺が呼んでやろうか?」

「 ハセから呼ばれるのは無理 」



私も仲良くなりたいって思えた。

フィーリングもあるかもしれいけど
きっとこの時点で彼に何か惹かれるものが
あったんだと思う。



「 俺は楓って呼ぶな! 」



さりげなく慣れた様子で名前を呼ぶ。
この人には私のドキドキなんて
分かるわけないんだろうな。



でもただ仲良くなれるなら、
彼に少しでも近付けるなら、




「 そ、奏ちゃん! 」



少し勇気を出してみようって思えたんだ。



2ヶ月前 No.3

lina ★iPhone=gv9WVVRjp2




正直自分でも驚いた。
私はこんなキャラだった!?


冗談を間に受けて勘違いしてる人、
なんて思われたらどうしよう。

名前を呼んだ後冷静に考えて恥ずかしくなり、
俯いてしまった。




すると、



「 おっ いいねぇ!よろしくな楓! 」




自分でもその言葉に表情が
和らいだのが分かった。


良かった。

ほっと胸を撫で下ろす。










奏ちゃん、

この瞬間から私の日常は変わり始めて、
私自身も変わっていったんだよ。










「 あー!居た!奏多!
ハセの所にくるなら言ってよ!」





突然、ドアの方から大きな声が聞こえ、
こちらに近づいてくる女の子。

少し頬を膨らませ、奏ちゃんの背中を
一発バシッと叩く。




ストレートで綺麗なロングの女の子。
目が大きくて華奢で可愛らしい子。


ちょっとキツそうな性格かなと思った。







「 あれ!もしかして藤咲さん!? 」

「 お前は気安く呼ぶな 」




ハセは見慣れてるかのように
少し呆れた顔をする。




「 あたし会いたかったのー!
わーい!蓮の前の席だったんだー!」




可愛い。

女の子っぽくて
素直に感情を人に伝えられる、


どこか羨ましくて、

そしてどこか奏ちゃんに似てる。



自分から歩み寄って来るところも
人から好かれやすそうな雰囲気も



だから2人が並んでいるのをみて


お似合いだなって思った。






「 あたしも仲良くなりたい!」

「 ひかりは関係ないだろ 」

「 4人で仲良くしよーよ! 」




ひかり。

ぴったりの名前だなって感じた。

ちょっとワガママっぽくてちょっと強気で
でも可愛くて、




「 よろしくね、ひかりちゃん 」

「 えへへ!嬉しい!よろしくね 」






私はひかりのこの笑顔に何度も救われた。

2ヶ月前 No.4

lina ★iPhone=gv9WVVRjp2

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2ヶ月前 No.5

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2




「 奏多まだ捕まってんのかな〜
もうお昼休みなのに〜 」



捕まってる という表現と 例の子 という謎の人物が
気になってしまうけれど深入りはしない。

気になって仕方ない時は奏ちゃん本人に聞こうって
そう決めたから。




「 あ、瀬川 」



ふと顔を上げる。
廊下をスタスタ歩く奏ちゃんの姿、
いつもの笑顔はなく、そして








「 え、笹野… 」



笹野と呼ばれる子が奏ちゃんの後ろを
ぴったりとついていく。

笹野さんは綺麗な横顔でこげ茶の髪をなびかせながら、











その光景がやけに忘れられなくて、
そしてハセとひかりの表情から悟った。



きっとあの子は
例の子、奏ちゃんが捕まってた子、











付き合ってるのかな、それとも好きな人?




モヤモヤするのが痛いほど分かった。



気になる、でも怖かった。




もし付き合ってたら、もし好きだったら、




普通に奏ちゃんに接する事ができるのだろうか。




聞きたくて、聞けなくて、
知りたくて、知りたくなくて、





この時私は自分の感情を扉の奥にしまおうと
必死だったのだろう。


2ヶ月前 No.6

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2


それから期末テスト前日まで奏ちゃんは
うちのクラスには来なくて、
ひかりとハセと3人で過ごす事が増えた。



勿論笹野さんの事は気になったけど
話題にする事はなく、私もあまり考えないようにしていた。





「 かえちゃん!今日まであたしとハセに勉強
教えてくれてありがとう!明日から頑張ろうね!」

「 ほんと助かった 」

「 ううん、役に立てて良かったよ」



3人で過ごす時間が増え、お互いに色々と知る事ができた。


例えば、ハセと奏ちゃんは中学からライバル校でサッカー試合してたとか、

ひかりと奏ちゃんは隣のクラスで席は前後だとか

ひかりはサッカー部のマネージャーで
ハセと奏ちゃんとよく遊んだりしてたとか


本当に3人は仲良いんだなって思った。


そこに私がいるのは不思議だったけど
心地良くて、手放したくない居場所だった。





「 かえちゃんのバレーやってる姿みて
あたしと奏多は思考停止したの!!」

「 思考停止?笑」

「 心奪われちゃったっていうか! 」

「 ふふ、いつ見たの?」




サッカー部は雨や雪が降ると室内で筋力トレーニングをする。

その時体育館でバレー部が練習しているのを
見かけたという。




「 そうそう、瀬川がずっと藤咲は普段
クールなのにバレーの時伸び伸びやってて
めっちゃ楽しそうでカッコ良いって言っててさ! 」




なんか照れ臭かった。
大好きな事に打ち込んでる姿を褒められて
素直に嬉しくてでもどこか恥ずかしくて。




「 だからあたし雨の日かえちゃん見れるから
結構楽しみだったんだー!バレーしてるかえちゃん
本当にキラキラしてて目が離せなかった! 」

「 瀬川もそれ言ってたな 」



頬が熱くなるのが分かる。
褒められる事ってこの歳になるとそんな多くないから
どういう反応していいか分からない。



それにしても奏ちゃんもひかりも思っている事を素直に
人に伝えててすごいと思った。



2ヶ月前 No.7

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2





私は考えや思いを言葉にする事が苦手で
奏ちゃんとひかりは私とは真逆だ。

ハセはどちらかというと私に似ている部類だと
私は勝手に思っている。


2人と一緒に玄関に行くと
見覚えのあるリュックがあった。


奏ちゃんのリュックだ。



そう気付くと辺りを見渡すが本人の姿がなく、
玄関にはリュックだけが置き去りだった。



2週間くらい話をしてないし
明日からテストだし
小さなきっかけでいいから話したいとそう思った。




「 お、みんなでこれから帰り? 」



後ろから久しぶりに聞く声に口角が上がる。



けれど、隣にはあの笹野さんが居た。




「 なんか4人で会うの久しぶりだな! 」



その笑顔に鼓動が速くなる。

いつもの奏ちゃんの笑顔にまた緊張する。




「 ほんと久しぶり 」

「 ひかりの勉強の面倒みてたんだって?
毎朝自慢されてたわ笑 俺も勉強しないとな 」

「 勉強って、明日テストだよ?遅くない? 」




こんな些細な話だけど
奏ちゃんの声が聞けて、笑顔がみれて、
すごく嬉しくなった。




「 それじゃ、カナはもう帰るね 」



私の方をチラッとみると、ニコッと微笑み
奏ちゃんの顔を見て話し出す。


ひかりとはまた別の可愛さで、なんか上品。
綺麗と呼ばれる類の人。



笹野さんが玄関から居なくなると
ひかりは眉間にシワを寄せながら



「 奏多どういうこと? 」



と問い出す。
続けてハセも



「 そろそろ話してくれても良いんじゃない?」



そう言うと奏ちゃんは黙って外を見ていた。


状況は飲み込めなかったけど笹野さんの話だと
察することはできた。

奏ちゃんと笹野さんの関係性が
話されると思うと恐怖心もあった。


でも気になっている自分もいて、
どうしていいか分からなかった。



「 うーん、ファミレスでも行くか〜 」



目は笑っていない奏ちゃんを初めて見た。

何を話すの?ここでは話せないの?
私も聞いてもいいの?


聞きたいことはあったが着いて行くのはやめようと思った。
そもそも私の立場は彼らからすると部外者だ。





「 それじゃまた明日ね 」





3人に手を振ると






「 え、かえちゃんも行くでしょ? 」




と、ひかりは目をまん丸くして驚いていた。


2ヶ月前 No.8

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2



緊張感が漂う。
ひかりもハセも奏ちゃんも真顔で
注文を終え、飲み物がなくなりかける。



な、なんだろうこの空気…
若干ピリッとしてて、みんな目を合わせない。




「 ふぅーっ… 」



深いため息をついたのは奏ちゃんだった。

そしてこの沈黙を破ったのはなんとひかりだった。



「 なんで笹野夏菜子と一緒にまたいるの? 」




また という言葉が引っかかる。
そして、一緒にいて何が駄目なのか、
ひかりのヤキモチなのか、それとも何か別の…





「 自分の事名前で呼ぶ女の子程
自分の事大好きだよ絶対! 」

「 なんだその理不尽は笑 」



ひかりの発言にハセは笑う。


でも奏ちゃんは、





「 夏菜子を放っとけない 」

「 また嘘だよ、絶対! 」

「 …分かってる 」

「 分かってない!だってこの前だって奏多の事… 」

「 ストップ 」




最後のハセの言葉で場は静まり返った。

ひかりがこんなに感情を剥き出しになるのも
初めて見るけれどこんな冷静に言い放つハセも
今にも泣き出しそうな奏ちゃんの顔も

みんな初めて見る顔だった。



私が何を言えるわけじゃないけれど
私もこういうのは経験ある。


部活の時意見がまとまらなくて
このままバラバラに崩壊していった姿達を
私は目の前で見ていただけだった。

そんな痛々しい過去が蘇る。









「 …奏ちゃん 」



1番苦しそうな顔してた。


奏ちゃんは俯いていた顔を上げて
ゆっくり私の顔を見上げた。




「 ひかり落ち着いて?奏ちゃん苦しそう。
私は何も分からないけど奏ちゃんも
考えてる事あるんじゃないかな、聞こう?」





ひかりも冷静さを取り戻し、
ごめんと言って椅子に深く座り直した。



また沈黙が続き、そして、
奏ちゃんが重たい口を開く。









「 夏菜子の腕と太ももに痣がまた出来てた。
見て見ぬフリなんて俺には出来ねえよ 」





2ヶ月前 No.9

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2









「 前回もそう言ってたよ! 」

「 うん… 」


声のボリュームが上がるひかりに対し
か細く弱々しく答える奏ちゃん、

ハセはただ2人の会話を聞いていた。




「 あたしはいまの奏多嫌い! 」



と言うとひかりは出て行った。
怒ってるけどひかりもどこか寂しげな表情で




「 ハセ、ひかり頼むな 」

「 あいつ瀬川と遊んでなくて寂しいんだよ 」




そう言うとハセは笑って、
そしてひかりを追いかけた。


奏ちゃんの笑顔は寂しげで。



会計を済ませ、駅までトボトボ歩く。
奏ちゃん家の方向どっちなんだろ。

それにしても大丈夫かな、
何て言えば良いのか正直分からない。


そして、奏ちゃんから衝撃の言葉を聞かされる。








「 俺さ、夏菜子と2年の夏まで付き合ってた 」



付き合ってた、

その言葉に複雑な気持ちなった。


過去形で良かったと思う、
それと同時にあんなに綺麗な可愛い子と…

胸が痛かった。






「 俺はサッカーやりたくて構ってやれなくて
別れたんだけど、あいつ交友関係広くないし
今も俺に助けてって連絡くる 」


「 助けて…? 」




「 イジメられてんだって。それで痣できたって 」


「 せ、先生に相談とか、 」



「 うん、でも前回イジメられてなかったんだ。
自作自演で、自分で自分の事傷付けてる 」

「 え、どういうこと…? 」





イジメはイジメじゃなくて、

あの痣は自分で…?





「 構って欲しいんだよ、かなり度が過ぎてるけど。
でも放っておいたらあいつは自信を傷付ける 」




それで奏ちゃんが…





「 ひかりは相当怒ってたけどなぁー 」



下を見ながらまた寂しげに笑って、





「 嫌いって仲良い俺に言うかよ普通 」




悲しそうだった。


きっと奏ちゃんも迷ってるんだ。



笹野さんの嘘だと気付きながらも
これ以上、体の傷を増やさないように、
自分自身で傷付けないように、




「 奏ちゃんは笹野さんを守ってるんだね 」



2ヶ月前 No.10

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2




「 楓 」




スッと奏ちゃんから笑顔が消える。

夕日のオレンジ色が奏ちゃんを照らし出す。





「 俺、間違ってんのかな? 」



私より1メートルくらい先を歩く奏ちゃん、




「 ひかりは間違ってるって言うんだけどな
ハセは応援するって言ってくれてる」





ハセらしいって思った。




「 楓は優しいからひかりみたいに
思ってる事あんな風に言えないか 」




笑って、振り返る奏ちゃんの顔は夕日の影で
あまり見えなかった。








「 奏ちゃん…奏ちゃんのその優しいところは
ハセもひかりも、私もすごく好きなところだよ 」



「 …楓 」






「 笹野さんの事を無視したら
奏ちゃんらしくないなって思う。
身近な人を守ってろうとする奏ちゃんは
奏ちゃんらしいよ! 」





私はここ1ヶ月、3人の性格も考えも見てきた。
だから、私が伝えられる事は、












「 けどね、奏ちゃんを騙したり苦しめたり
傷付ける事があったら私はきっと許せない 」




きっとこれはひかりもハセも同じことを思っている事。

だからひかりは怒ってるんだ。





「 無理しないで?苦しい時は頼って?
私もひかりもハセもちゃんといるよ 」



「 …っ」




奏ちゃんの隣に並ぶと夕日に照らされて、
泣きそうな顔をしてるのが見えた。

つられて私も泣きそうになる。






奏ちゃん、






「 私も奏ちゃんを守るよ 」





絶対に。



2ヶ月前 No.11

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2







奏ちゃんは私の言葉に何も言わなかった。

自分でも守るなんてどうやって?って思う。
でも放っておけなくて、
このまま見過ごすわけにはいかない。

奏ちゃんは私やハセ、ひかりの大事な友人なのだから。






「 夏菜子と別れてその後に彼女出来て、
でも夏菜子の事放っておけなくて、
そしたら呆気なくフラれてさ! 」





奏ちゃんの話を黙って聞いていた。
きっと奏ちゃんも私の返事を待ってはいない。






「 なんで他の女の子と一緒に居るのを
受け入れなきゃいけないの?って
泣きながら言われてさ、
その時は心の底から反省した 」




笑いながら先を歩く彼の背中はどこか寂しげだった。






「 そこから恋愛は休憩中!まぁ、カッコ良く言えば
誰ももう傷付けたくないってやつね 」



「 …カッコ悪く言えば? 」








クルッとこっちを向いて、
また表情が影で隠れる。








「 逃げてるだけだな、 」







そしてまた前を向いて歩き出す。







2ヶ月前 No.12

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2





それからただ静かにお互い駅を目指して歩いた。
話さなきゃとか、話題探しとか、
そんなことは考えられなくて。


ただ歩く私達の姿を影が追いかけてきた。




駅に着き、改札まで送ったくれた奏ちゃんに
お礼を言うと、







「 テスト勉強頑張ろうな! 」






と、いつもみたいに笑ってくれて、
小さな八重歯がみえた。





「 分かんないところあったらいつでも連絡して 」






そう言うと、彼は笑いながら、







「 開始5分で楓に電話する事になるわ! 」







と、目が無くなるくらい笑ってくれた。


この笑顔を見るとホッとする。



思ったより元気なんじゃないかって錯覚させるくらい
奏ちゃんの笑顔は素敵だった。











そして、次の日からテストが始まり、
1週間が経ち、夏休み前日となった。




その間、奏ちゃんの姿を見かけることはなく
帰りも一緒に帰ることは無かった。






会えなくて寂しい気持ちと
もしかして笹野さんと何かあったのではないかと
心配する面もあったが、

ひかりが毎日学校には来てるのを毎日教えてくれて
それだけでもすごく安心した。









「 やっとテストから解放〜 」

「 ハセ〜お疲れ〜 」




わたしとハセはテストが終わると机に顔を伏せていた。





「 藤咲バイトの予定ある? 」





話しかけてくるハセに後ろを向くと
少しやつれたハセに笑いが込み上がる。





「 してみたいけどなんか探すのも面倒くさくて 」



「 お、じゃぁ 一緒にバイトやる? 」


「 えっ ハセ何かバイトするの? 」






ハセの親は洋食店の料理長で、
夏休み限定で高校生を雇ってくれるらしい。


まだ募集人数が足りなかったようで私もハセと
同じところでアルバイトをする事になった。






「 ありがとハセ 」







夏休みはアルバイト三昧の覚悟で、
そしてご褒美に自分に何か買おう。








「 あ。あと瀬川の誕生日会もそこでやる。
そして俺らが料理担当だから! 」

「 料理つくるの? 」



「 毎回俺の親が作るんだけど今回は藤咲もいるし
俺らで作ろうぜ!ひかりには会場を飾ってもらう 」





奏ちゃんの誕生日かぁ。


考えただけでもわくわくした。
奏ちゃんきっと喜ぶんだろうな。


アルバイトするし、プレゼントも渡そう。










なんて、浮かれていた。












奏ちゃんが、


















笹野さんと付き合うまでは。










2ヶ月前 No.13

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2







「 あつーっ 」





うちわでパタパタ扇ぐハセの横に座る。
バイトの休憩はハセと同じタイミング。


流石は8月。
店内とはいえ、動くと暑くて汗が出る。



奏ちゃんのプレゼントをあれこれ考えてから
バイトの方もなかなか慣れてきた。







「 藤咲、飲食店で働けば?接客とか向いてる 」

「 ほんとー? ハセはここで働くの? 」

「 その予定だけど、専門学校行ってからだな 」





ハセは進路が明確で正直羨ましいなって思った。
私は自分が何やりたいのかを探してる途中で
まだ迷っている段階だ。

高校三年生、そろそろ進路先を明確にして
突き進みたいところだけど…







「 まぁ瀬川もまだ悩んでたから
焦んなくていいと思うよ」





察したようにハセが言う。
ハセは人の気持ちを瞬時に察する事ができる優しさを持つ。



奏ちゃんも進路悩んでるんだ。






「 瀬川はオムライス好きでさ 」

「 私も好き 」

「 あとハンバーグとエビフライ 」

「 お子様ランチじゃん 」





2人で笑った。
奏ちゃんが食べてる光景が目に浮かぶ。


それがあまりにも可愛くて、
想像しただけで口元が緩む。







「 お子様ランチ風に作るか 」






奏ちゃんは喜んでくれる気がした。


ハセと2人でメニューを考えて、
バイト終わりに2人で買い出しに出かけた。



久しぶりの男の人と出かけるプチデート
みたいなものに緊張もした。





「 こんなもんかな 」






カゴの中身と買い出しのメニューを見比べて
デザートのアイスを最後に買って買い物を終えた。



奏ちゃんが喜んだ姿を考えただけで買い物が
ものすごく楽しかった。







1ヶ月前 No.14

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2







誕生日会当日はひかりとハセと2時間前に集合して
料理をつくったり、風船を膨らませたり会場を着飾った。

何でもない話をしたり、奏ちゃんが喜ぶ姿を想像
したりするだけで楽しかった。



予定時間に間に合い、奏ちゃんが来るのを待った。
みんなそれぞれクラッカーを持ってスタンバイした。









「 そろそろ着くだろうからみんな隠れよ 」





子供のように悪戯な笑みを浮かべるハセは
トイレの角に身を隠した。


ひかりもはしゃぎなら一番奥の見えにくいテーブルの下に姿を消した。







「 藤咲も隠れて!これ毎年恒例だから! 」





と言われ、慌てて探し、
会計を行うレジの下に隠れた。

それから5分くらい経って勢い良くドアを開ける音と
元気な奏ちゃんの声が聞こえた。









「 おお、すげー! 」






彼の顔は見えないが、どうやら会場に喜んでくれたみたいだ。

思わず口元が緩む。






「 こういうのはテーブルの下にいる奴が多いんだよなー 」





と独り言を交えながら、奏ちゃんは私達の姿を探した。

子供の頃に戻ったような気分でドキドキと
わくわくが入り混じって楽しかった。






「 はい、ひかりみつけた 」


「 わ!奏多おめでとー! 」




バンっと大きな音が鳴った。






「 うるせ!笑 」





クラッカーの音と二人の笑い声がお店に響き渡った。

あの二人喧嘩してたけどテスト期間中に
仲直りして本当に良かった。



クラッカーの火薬の匂いがした。
思わずクラッカーを握りしめ直す。








「 え、てかハセ見えてるけど… 」

「 やばい、蓮見えてる!! 」




とひかりと奏ちゃんは大笑い。

ハセらしくて私も笑ってしまった。
声に出さずに笑うのは腹筋がやられる。






「 瀬川おめでとう 」





続けてハセも鳴らす。

私も鳴らしたい、そう思うとソワソワしてしまう。








そして、段々靴音が近づいてきて鼓動が早まった。

目をギュッと閉じると、







「 ハハッ! 楓みーっけ 」




レジ下を覗き込む明るい笑顔の奏ちゃん。

その顔にドキッとしてしまい、思考が停止した。





久々の奏ちゃんの笑顔。
それと微かな香水の香り。


少し夏休みの間、顔と腕が焼けたのが分かった。




慌てて隠れていた所が出て、立ち上がり







「 奏ちゃん18歳おめでとう 」





と伝え、クラッカーを鳴らした。









目がなくなるくらいに笑って






「 サンキュー! 」





とピースサインを私に向けた。



その笑顔が私は忘れられなくて眩しくて
この笑顔が私は好きで、



ふと よぎる奏ちゃんの泣きそうなあの顔より
今いる奏ちゃんはいつもより笑ってて
それが何より嬉しかった。



今日だけでも、今だけでも、
何も考えずに楽しんでほしい。









奏ちゃんが笑えばみんなも笑顔になる。



奏ちゃんは周りを明るくさせてくれる、

太陽みたいな存在だ。








1ヶ月前 No.15

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2









「 はい、どうぞ 」






みんなが椅子に座っているところにハセの料理が
運ばれてきた。
私も手伝いはしたけどハセの料理の腕前には驚かされた。


絶対奏ちゃん喜ぶだろうな










「 お子様ランチ? 」

「 ぷっ!奏多にぴったりだね!可愛い! 」






ひかりは笑って写真を撮っていた。
オムライスはひよこの形をしていて
本当に女の子向けというか、子供向けなんだけど
奏ちゃんは本当に嬉しそうに







「 わざわざありがとな!ハセの料理まじ美味い!」







と幸せそうに食べていた。



ハセも微笑んでいて、みんな幸せそうだった。



私もこの4人でいる時がとにかく好きで
だからこの先もずっと続くのが当たり前だと思ってて












「 カナは奏多の事、手放すつもりないから 」









笹野さんのこの言葉を聞くまでは
ずっとずーっと4人で楽しく、平和に
過ごせると思ってた。






1ヶ月前 No.16

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2








それからプレゼントをそれぞれ渡して、
奏ちゃんは子供見たいに喜んでてて
それの姿を見て私も嬉しくなった。



奏ちゃんには悩みに悩んでタンブラーを渡した。
キンキンに冷やしても使えるし
保温効果もあるからオールシーズン使える。

奏ちゃんがサッカー部というところから考えた品だ。
部活してる身だから分かるけど冷えた飲み物が欲しくなるからね。

使って貰えたらいいなって考えながら選んだ物。









「 まさか楓からプレゼント貰える日が来るなんてな〜 」







ニヤニヤする奏ちゃんに笑みが溢れる。

本当、私もまさか奏ちゃんにプレゼント渡す日が
来るなんて思ってなかった。










「 そうだよね〜 奏多はかえちゃんと仲良くなり
たがってたもんね、ずっと 」



「 え? 」







ひかりの言葉に驚いた。
わ、わたしと!?



奏ちゃんをみると、
奏ちゃんの耳が微かに赤くなるのが分かった。


そ、そうだったの?
嬉しくもあり照れてしまう。


でもなんで私なんかと…










「 あ、ごめんつい言っちゃった 」








手を口に当てて、意地悪そうに笑うひかりに
奏ちゃんはキッと睨んだ。

そして、奏ちゃんもひかりをみて意地悪そうに微笑んで







「 そういやひかりはハセの事を最近、
蓮って呼ぶようになったよな?
前はハセハセ言ってたのにな〜 」








ドヤ顔の奏ちゃん。

してやったぜ みたいな表情の奏ちゃんに対して
ひかりは顔が赤くなってしまった。








そういや蓮って呼んでるかも。
考えればクラスのみんなや部活でもハセと呼ばれてるし
蓮って呼んでるのひかりだけなんじゃ…











「 蓮は蓮なの!!! 」







と強く言い返すひかり。
それから2人は言い合ってた。


ハセは笑いながら見守ってて、
私もなんかいつも通りの光景に笑みが溢れる。



平和で、微笑ましくて。









1ヶ月前 No.17

lina @li721t ★iPhone=gv9WVVRjp2







それから楽しい時間はあっという間で
誕生日会を終えた。


誕生日を迎えた本人は終始笑顔でなんだか安心した。









「 みんなサンキュー、今日楽しかった 」







くしゃっと笑う奏ちゃんを見て
私達も口角が上がる。




よかった、喜んでくれて。


そしてハセだけ家が反対方面で
ここでハセとはお別れ。



誕生日会の会場も料理も企画もいろいろ
提供してくれたハセには感謝だ。











「 それじゃあハセまたね。
明日もバイトよろしくね 」



「 おう、頑張ろうな 」











と手を上に大きく突き出す姿を見送ってから
ひかりと奏ちゃんと3人で歩いた。



時刻は18時を指していた。




3人で歩いて、コンビニに寄った。
すると花火が売っていて目に止まる。



気付けば8月下旬。
夏休みもあっという間だ。

バイトと課題生活だったなーなんて振り返る。








「 花火したいの? 」

「 いや…夏らしい事してないなぁーと思って 」








花火に視線がいく私に奏ちゃんは
不思議そうな顔をしていた。

奏ちゃんは、日焼けした姿から夏を満喫
してるのかなって予想出来る。






コンビニを出てから、
勢いよくプシュッと炭酸飲料の蓋を開ける。



奏ちゃんは半袖を肩まで捲って涼しげ。
ひかりはアイスを頬張り、幸せそうに食べる。




こうやって見るとこの2人は本当に美男美女で
すっごくお似合いだなぁと思う。


笹野さんも美人だし、
なんだか最近、顔面偏差値が高い女の子が多い。



それからゆっくり歩いていると、
急にひかりが立ち止まる。

わたしも奏ちゃんも首を傾げると、








「 あの、かえちゃんには
話しておきたいことがあってね…」







と、私の顔をジッと見る。

そのひかりの目力に圧倒される。

心臓の音が高鳴り、変に緊張感が漂う。










「 な、なに? 」







ちょっと眉間にシワが寄る。

ひかりにさっきまでの笑みはない。


















「 あたし、蓮が好きなの 」










1ヶ月前 No.18

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ひかりは頬を赤く染めていた。


私は突然の衝撃に開いた口が塞がらず、
瞬きが多くなってしまった。











「 えっ…と、 」






「 で、でもかえちゃんが蓮を好きなら
それはそれで良いっていうか!
むしろ大好きなライバル? みたいな?」








シドロモドロに言うひかりがなんだか可愛くて、



私がハセを好きだと思って、
それで告白してきたのか。


そう思うとどこか可愛くて、
笑っちゃいそうになるのを堪えた。





まぁ隣の男子は笑ってますけどね。





「 急過ぎて何かと思ったわ!笑 」


「 だってかえちゃんには隠したく無いし!」


「 俺がいるところで言わなくても笑」


「 奏多は空気みたいなもんでしょ!」









またこの2人は言い合いを重ねる。


なんだ、ひかりは奏ちゃんのこと、
本当に友達としてみてるんだ。




どこかホッとしている自分がいた。











「 ひかりありがとう! ちゃんと応援するね 」


「 か、かえちゃん、蓮のこと… 」






「 私はハセの事は大事な友達だと思ってるよ 」










心配そうにおどおど聞いてくるひかりが
本当に可愛くて、

つい、頭を撫でてしまう。


きっと、私が好きだと思って悩んじゃったかな?











「 楓、ハセの事好きじゃないんだ? 」









何故か奏ちゃんまで聞いてくる。

驚いた様子の彼と、少し泣きそうなひかり。


2人の様子に少し笑ってしまう。









「 かえちゃん好き!! 」











抱き着くひかりに、











「 私が一緒にバイトしてるのは
その場にたまたま私が居たからだよ 」









頭をポンポン撫でた。



可愛い妹みたいなひかり。

ひかりは安心した顔で笑って、


良かった と小さく呟いた。






それにしても、素直に思いをぶつけてくる
ひかりは本当に偉いと思う。





私なら友達と好きな人被ったらきっと





気持ちを押し殺す。







そして、何度も好きじゃないと言い聞かせる。











だから、ひかりと同じ人を好きになってなくて







すごくすごく、安心した。












1ヶ月前 No.19

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1ヶ月前 No.20

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それからlineを通知オフにし、
視界に入らないようにした。



正直、女子のこういう陰湿なところは面倒くさい。

こちらは巻き込まれた身ではないか。


そもそも誕生日をみんなでお祝いしてるのに
私だけ強気でくるのもどうなのかと疑問に思う。



そう考えると理不尽極まりない。









奏ちゃんには…
言えないな。





言ったら彼は悩んでしまう。

私が我慢すれば良いだけの話だ。
それにlineだけで直接くるわけじゃないし、



面と向かって何か言うのなら
こちらも黙ってハイハイと言うわけにはいかない。






明日ハセに相談しよう。
こんなの抱えてても後から抱えきれなくなる。


どうにかしようとかしたいとかじゃなく、
ただ現状を伝えれば充分だ。






あれこれベッドに入ったまま考えていると
いつの間にか眠りについていた。



この日は携帯画面をもう見なかった。












1ヶ月前 No.21

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気合いを入れ直して、バイト先に早めに着き、
勢いよくドアを開ける。


みんなの笑顔に私もつられて笑顔になる。


忙しいと携帯の事に意識がいかなくて済む。











それからその日はバイトを終え、
着替えてハセを待った。



バイトしてる時は夢中になるから忘れてたけど
lineをみると200件近く届いていた。









「 暇かよ… 」








1人小さく呟く。
あぁ、面倒くさい。




この感情を久々に思い出す。




奏ちゃんやひかりに出会う前、
いつも前の席で外をぼんやり見ていた
あの憂鬱だった事が蘇る。



あの時は梅雨で雨が降ってて、
学校も生活も毎日つまらなかったな。





奏ちゃんとひかりとハセと4人で過ごすようになったり
関わるようになってから私の世界は少しずつ
変わっていってたんだ。











「 どうしたん? 難しい顔してるけど」


「 あぁ、ハセ。 お疲れ様 」











そして、ハセに笹野さんの事を打ち明けた。

画面を見てもらうと、ハセも目つきが変わる。










「 瀬川に言おう 」


「 え、でも… 」


「 この笹野は異常だよ 」











分かってるけど、でも、
でも言ったらどうなる?



自分のせいだって思い悩むんじゃない?
巻き込んでごめんって彼の笑顔を奪っちゃうんじゃない?


そう思うと本人に伝える気にはならない。











「 いつかは私の口から言うから今はまだ… 」








ハセは私の顔をみて、頷いて、











「 わかった 」








と言ってくれた。













「 ただ何かあってからじゃ遅いからな? 」


「 うん… 」


「 瀬川はともかく、俺には相談して 」









頭をぐしゃっ と優しく雑に撫でてくるハセ。

ハセはいつもどんな時も優しい。
私も口元が緩む。











「 これ半分ストーカーだよな笑 」








苦笑いするハセの横をトコトコ着いていく。










「 何かあっても困るから駅まで送ってく 」









優しく微笑むハセのその優しさに
私はつい甘えてしまった。



面倒くさいとかlineだけで直接こないとか、
思ってはいるけど、どこか本当は怖かった。



ハセの言う通り、笹野さんはちょっと異常だ。




だから急に目の前に現れるとか
現に想像できてしまうから、
だからハセの言葉も行動もすごく嬉しかった。









1ヶ月前 No.22

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「 じゃぁ、気を付けて帰ってな! 」


「 わざわざありがとう 」









小さく手を振ると、ハセは手を優しく振り返してくれた。

ハセはモテるんだろうな、優し過ぎる。
友達として、ハセの優しさが好きだ。






電車に揺られ窓を眺めると、
時折自分の顔が反射される。


あぁー、こんなにも笑っていないのか。
目が死んでるよ…



自覚出来るほどの表情だ。
こんな顔じゃ何か悩みがあるって思われて、
みんなに気を遣わせてしまう。











家に着いてソファに座り込む。
妹は母親と夕飯を作ってくれてて、
私はボーッとテレビを見ていた。



バイトの疲れより精神的にくる。
一度面倒くさいと思うとなかなか抜け出せない
ループにはまり込んでいた。










「 楓のオムライスに瀬奈ケチャップで書いて 」






と、母親に頼まれた妹の瀬奈。

ニコニコ楽しそうに集中しながら書いていた。
ソファからじゃ見えないけれど、
どうやら上手に書けたみたいで写真を撮っていた。


自己満足やん。笑









「 お姉ちゃん!バイトお疲れさま〜 」

「 ありがとう 」








ニコニコする妹が妙に気になって、
オムライスに近付くと 、

" Fight " という文字が書かれていた。



我が妹よ、可愛いではないか。



思わず口角も上がる。









「 いただきます 」








家族には私の少しの変化もお見通しってわけだ。
さすが17年間、藤咲家で過ごしただけあるなー
なーんて考えながら食べた。




そして、今日の夕飯はいつも通り美味しくて、
なんだか心が温まった気がした。










1ヶ月前 No.23

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「 楓、明日でバイト終わりだよね?
帰りにケーキでも買っておいで? 」







と、母からお金を渡された。

なんで?と不思議に思ってたのが伝わったのか、







「 バイトお疲れ様のご褒美 」









お母さんはニッコリ優しく笑う。
この笑顔に救われるのだ。










「 瀬奈も行く!ケーキ選びたい! 」









中学2年生の瀬奈は、子供みたいだ。











そんなこんなでバイト最終日を迎えた。

ハセのお父さんから給料の入った封筒を受け取ると
達成感に満ち溢れた。



お店が混むと大変だったけど楽しかったなー
なんて振り返りながら。









「 ハセ、バイト誘ってくれてありがとう 」


「 こっちも助かったよ。
父さんが藤咲のこと褒めてたし 」









ハセの言葉に気を良くした。








「 これから送ってくけど何か予定ある? 」


「 妹がくるから大丈夫だよ。
一緒にケーキ買って帰るから 」









笹野さんの件からハセはバイト終わりいつも
駅まで送ってくれるようになった。







「 あ、俺もケーキ買って帰ろっかな 」








それからすぐ妹と合流した。








「 こんにちは。ハセって呼んでな 」

「 ハセ君! 」

「 そうそう!ハセ君。笑 」






中学生相手にも優しいハセ。
面倒見がとにかく良いから瀬奈もすぐ懐いた。



ケーキ屋さんに着くと、瀬奈はあれこれ指差し
ケーキのおねだりをしてきた。


本当に子供みたい…笑









「 すみません、チーズケーキ2つと
あとチョコケーキ3つで 」






沢山注文するハセ。
そんなに食べるのかと驚いた私に
気付いたみたいで、







「 兄ちゃんと弟がいてさ 」






と、理由を述べた。

会計を済ませ、包装されるの待つ。

3人兄弟でハセは真ん中か。
それで面倒見が良いんだ と納得していた。






「 藤咲、姉感出てるよな笑 」


「 ほんと?ひかりといるからかな?」







ひかりは言うまでもなく末っ子だ。
お姉ちゃんがいて、それがまた美人で。








「 瀬川は弟が2人いる 」


「 そうなんだ!でもなんか分かる 」









我慢強いところとか、優しいところとか
長男ならではって感じがした。






「 瀬奈、ハセにケーキ選んで 」


「 瀬奈のオススメはね、フルーツタルト! 」










両親と自分と瀬奈の分のケーキを選び、
フルーツタルトを個別で選んで買った。







ハセにはバイトでお世話になったし
毎回駅まで送ってくれたしケーキじゃ
物足りないくらいだよね。






「 え、藤咲? 」


「 ハセにはお世話になったからね 」







そう言うとハセは笑って







「 さんきゅ! 」









と、笑顔を見せてくれた。







1ヶ月前 No.24

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ハセはなんだかんだ駅まで送ってくれた。
もしかしたら、それが目的でケーキは
食べる予定なかったんじゃないかって
思ってきた。



意外とハセは心配性なんじゃ…





とか色々考えてると家の最寄駅に着いた。










「 ハセ君いい人だね! 」


「 そうだね。私の席の後ろの席なの 」


「 彼氏? 」



「 違うよ笑 」









ハセはすごく魅力的だし波長も合うけど
ひかりの彼氏になってくれたら嬉しいからなぁ










「 たっだいまー! 」








勢いよく駆け上がる瀬奈。
この子に反抗期というものはないのだろうか。



お母さんにべったりで、
私にも甘えてくるし、
お父さんは瀬奈に激甘だし。

反抗する事もないか…。







「 お母さん!お姉ちゃんの友達のハセ君ね!
すっごい優しくてかっこよかった! 」





チラッと私の方をみるお母さんは微笑んだ。
瀬奈は何故か興奮気味で楽しそうだった。









「 ハセ君、うちに連れてきたら? 」


「 え、なんでよ 」


「 お母さんもハセ君に会いたい 」






と、ニコニコする母。


面白がってるだけでしょ!









「 バイト先、ハセ君のお父さんがいたんでしょ?
バイト出来たのハセ君のおかげじゃない 」



「 そうだけど… いきなり呼ぶのは… 」




「 お友達も誘ったら? 」









瀬奈は、うんうん と頷く。


となると、呼べる相手は…。








「 瀬奈もハセ君にまた会いたーい! 」


「 お母さん、手料理頑張っちゃおっかなー 」









勝手に2人で盛り上がっていた。


これは呼ばざるを得ない状況。




ハセと奏ちゃんとひかりに連絡しないと。

でもどこか、わくわくしてる自分もいた。


みんな来てくれるかな…









1ヶ月前 No.25

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「 「 お邪魔しまーす! 」」








数日後、なんだかんだみんな集まってくれた。


みんなの顔を見るとホッとするけど
家に来てくれた事で慣れない環境に
変に緊張してしまう。







「 ハセ君ハセ君! 」





妹が階段を勢いよく降りてくる。
めっちゃ笑顔でハセの元に近寄る。






「 おおっ!瀬奈ちゃん 」





瀬奈のテンションが高いのが伝わる。
いつもよりニコニコしている。







「 楓の妹、ハセに懐いてんのな! 」


「 うーん、そうみたい 」





そう言う奏ちゃんの手には花火がみえた。
ハセも大きな袋に花火をぶら下げていた。







「 夜、花火しようぜ! 」









ハニカム笑顔に私もつられて笑顔になる。

花火とか今年初めてで、嬉しくなった。








「 こんにちは。今日はゆっくりしていってね 」





お母さんも登場して、家族の顔モロバレ。

なんで私以外の家族は、人前に出たがるのだろう…。






「 めっちゃ美人… 」






ひかりはポカーンと見ていた。







「 えぇ、褒め上手! ひかりちゃん、楓と
仲良くしてあげてね! 」


「 勿論です!ていうか あたしが仲良くさせて
もらっている感じです! 」






と2人でキャピキャピ楽しげに話していた。



いろんな状況を見て、緊張感もほぐれ、
いつも通りわいわい楽しんだ。




夜ご飯はお母さんが気合い入れて、入れまくり、
唐揚げとかパスタとかお寿司とか
もうオールジャンルで、どこかの食べ放題
みたいになっていた。

みんなは感激してたけど
私はどこか照れくさくて。



すごく賑やかに食べる夕飯。
楽しくて楽しくて、笑いが絶えなかった。








夜8時頃になると、蝉も鳴くのをやめ、
別の虫が鳴いていた。


そして、花火を持って外に出る。







「 この間 楓さ、 夏っぽいことしてないって
言ってたの思い出して買ってきたんだ 」





手持ち花火にライターで火をつける奏ちゃん。
本当に嬉しかった。


何気なく言った事を覚えてて、
それを実行してくれる彼に魅力を感じる。








「 お、ついた! 」







奏ちゃんの手持ち花火から火を受け取る。
私が持っていた花火も綺麗に輝いていた。








「 綺麗… 」








花火の煙の匂いと、時々奏ちゃんの香水の香り。


虫の鳴き声と、日中より涼んだ気温。




みんなといるのに、
なんだか奏ちゃんと2人だけの世界に
いるような感覚に陥った。










1ヶ月前 No.26

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「 線香花火でおしまい 」







4人で向かい合って一斉に火をつける。
線香花火特有の匂いが鼻を刺激する。

花火はどこか切なく感じさせる。



線香花火はゆっくり少しずつ大きくなり、
落ちて終わるのは一瞬だ。

花火の匂いと煙が漂う。




花火の後始末をし、みんな解散となった。
楽しい時間もあっという間だ。


みんなから感謝の連絡がきていたが、
返信の前に部屋の片づけをしていると、











「 奏多くんは彼氏? 」







と、お母さんは笑いながら問いかけてくる。









「 違うよ 」


「 じゃぁ、好きな人だ? 」


「 なんでそう思うの? 」





「 顔にそう書いてあったよ 」








とからかうように微笑むお母さん。
ドキッとしつつも、そんな訳ないと
自分に言い聞かせる。



私が奏ちゃんを…?



そりゃぁ、好きだけど、
友達としてっていう意味で、

付き合いたいとかよく分かんないし、








「 お母さんと瀬奈はハセ君派かな〜 」








楽しそうにお皿を棚に片付ける。
そんな姿を見て、面白がってるのがよく伝わる。



そんな、ハセハセ言わなくても、
奏ちゃんだってもっと素敵な所あるのに。



なんて心の中では反抗していた。









1ヶ月前 No.27

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1ヶ月前 No.28

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飲み物を買いに自販機に向かうと、
奏ちゃんが男子と戯れていた。


いつみても周りに人がいるなあ。




楽しそうな表情をみていると、目が合った。
男子の群れから一人、私に近づいてくる。









「 おっ 楓!何か飲む? 」

「 ミルクティーがいいな 」

「 仕方ねぇな〜 」






奏ちゃんは得意げに笑った。
ミルクティーのボタンを押して
笑顔で渡してくれた。







「 瀬川、優しいなー? 」

「 女子に自分から絡みにいくのは
園田と笹野くらいだもんな 」







園田は光のことか。
光と笹野さん…



久々に笹野さんを思い出してしまった。





学校のためか、朝から送ってきていたのに
今日はlineが途絶えた。

毎日50件くらい送られてきてた嫌がらせは
ぴったりと止まったのだ。



内容を見ずに削除するため、
既読がつかないことに諦めたのかな。










「 あいつら… 。楓さ、放課後暇?」


「 うん、特に予定は無いかな 」


「 あ、じゃぁ放課後に行きたい店あるんだけど… 」


「 そーうたっ 」










奏ちゃんの言葉を遮る、可愛らしい女の子の声。
声の主を見ると、笹野さんがいた。
一瞬心臓が飛び上がる。


鼓動が早まり、緊張が走る。

本当にこの人が私にlineを送ってきてるのかと
思わせるくらいにニコニコしている。

でも私の方は一切見ることはなかった。









「 カナはイチゴミルクが飲みたい 」

「 はいはい 」






甘え上手な笹野さん。
私と奏ちゃんが話しているのが嫌なのか、
2人の世界を作ろうとしている雰囲気が伝わる。
奏ちゃんにしか話しかけない。

イチゴミルクを手に取るとか可愛く喜んでいる。











でも、私が話していたのに
無理やり話に入ってくるのはどうかと思う。


こんな風に思ってしまう自分も嫌になる。












「 それでね!侑李から新しくパンケーキの
お店ができたって聞いたから放課後、2人で
行かないかな?って 」


「 夏菜子、悪い 」









一方的に話す笹野さんに謝る奏ちゃん。












「 俺、放課後は楓と予定あるから 」












1ヶ月前 No.29

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一瞬、笹野さんは私をみて睨みつける。
そして、奏ちゃんはニッコリ笑って











「 そのうち行こうな? 」


「 うん。わかった。 」









明らかにテンションが下がる笹野さんを慰める。





それより、放課後暇とは言ったけど
まさか奏ちゃんと出掛けることになるなんて!



…いや、ハセとひかりもいるな、きっと










「 奏多、カナとパンケーキ必ず行こうね! 」


「 わかった、わかった 」









強く言う笹野さんは、私達の前から居なくなった。
いつも通り笑っている奏ちゃん。







「 ごめんな。楓、行ってくれるって
言ってないのに勝手に言って。
でも楓なら断らないの俺は知ってるからさ 」









と、また笑う奏ちゃんを眺めて居た。

確かに断る理由がない。
それに行きたいと私も思っている。



それにしても、初対面の笹野さんに睨まれたり
奏ちゃんにしか話しかけない様子をみると、
迷惑lineを送信しているのは
多分、彼女で間違いなさそう。


奏ちゃんの方が好きだから一緒にいる
私が気に入らなくてlineしてくるのだろう。


でもなんで連絡先知ってるのか、
そこが妙に引っかかる。










「 じゃぁ、放課後 教室まで迎えに行くよ 」


「 うん、ハセにも伝えとく 」








「 あー、いや、楓が嫌じゃなければ
俺ら2人で海とか行ってみない?」








1ヶ月前 No.30

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「 海行くまでの道に行きたい店があってさ 」


「 あー。うん、いいよ 」









素っ気なく返してしまって、
ハッと我に返る。


内心わくわくドキドキしてるのに
どうしてこう 楽しみ!ていう感情を
うまく出せないのだろう…。


そんな悩みをよそに、奏ちゃんはとびきりの笑顔で









「 よっしゃ! 放課後めっちゃ楽しみしてるわ! 」









小さくガッツポーズをする。

彼の方が私の何倍も可愛らしい。













それから放課後の事を考えてると
あっという間に奏ちゃんが迎えに来た。










「 かえでー! 行くぞー! 」









子供のように先頭を切って歩く奏ちゃんの後を
追いかけた。

遠足と勘違いしてるんじゃ…










電車に揺られながら隣に座る奏ちゃんを
何故か直視出来なくて、会話も目線を外してしまう。


変に緊張するなぁ。




そんなことお構いなしの奏ちゃんは
沢山話題を提供してくれた。



終始笑顔が絶えない彼をたまに見ながら
海へと向かった。









1ヶ月前 No.31

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「 海だー! 」










視界には青い海と砂浜が映っている。
それを目の当たりにすると、
突然奏ちゃんは走り出す。



子供っぽい姿にクスッと笑うと









「 楓も走るぞ! 」










と言って先に駆けていく彼を追いかけた。





学校帰りの海はどこか新鮮。
海風は涼しくて、でも太陽はジリジリ照らす。




しばらく2人で無言になりながら
砂浜を歩いた。


時々後ろを振り返ると、
足跡が私達を追いかけているようだった。










「 夏らしいこと第2弾! 」









微笑む彼。
私が夏らしい事したいって言っていたのを
まだ覚えていてくれたんだ。



前回は花火をやって、今度は海。
すごくすごく嬉しかった。








「 ありがとう 奏ちゃん 」










彼の行動力には驚く。
でもそれはちゃんと意図がある。










そしてだいぶあるいてから
近くの階段に座りながら海を眺めた。












「 奏ちゃんは人を元気付ける天才だね 」








斜め上に座る奏ちゃんを見上げると
ニッコリ笑って










「 なら元気ない時、俺んとこ来ればいいよ 」









と答えてくれた。








1ヶ月前 No.32

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深い意味がない言葉なのも分かってはいるけれど
どこかもどかしくて、どこか期待してしまって、











「 俺の行きたい店があるっていうのは
ちなみに嘘。 ごめんな? 」


「 うそ? 」




「 楓を海に連れて行きたかっただけ 」











横顔がいつになく逞しくて
頬が少し熱くなるのがわかる。









「 そろそろ帰るか 」









立ち上がってお尻の砂を振り払うと
来た道を歩いた。



日も沈み始め、夏とはいえ海にいると
肌寒さを感じる。







来る時よりも歩くスピードはゆっくりで
私に合わせてくれているのがなんとなく分かった。







少し緊張するせいか無言でいる私に
奏ちゃんは何度も話しかけてくれたり
微笑んでくれた。







1ヶ月前 No.33

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次の日、教室に着くとハセが手招きをしてきた。

不思議に思ってハセの元に行くと、












「 昨日瀬川とどこ行った? 」









と小声で訪ねてきて、慌ててハセから離れた。

な、なんで知ってるの…



別に知られて困るとかそういうのはないけれど
ハセとひかりを誘わずに2人でどこか出かけた
ということが変に気を使うというか、
妙に意識してしまうというか…










「 …海 」


「 まじで?瀬川からの誘いだろ? 」



「 うーん、まぁ 」









「 で、それ以降進展は? 」









ハセの変な問いかけに顔が熱くなった。

楽しそうに頬杖をつきながらニヤニヤするハセを
軽く頭を殴るとケラケラ笑っていた。










「 なにその質問 」









冷静に言ったけど内心はドキドキした。

進展ってなに、



なんでハセがそういうことをしかも私に聞いてくるの








16日前 No.34

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「 かえちゃん!放課後パンケーキ食べ行かない?」









ひかりが楽しそうに誘ってくれた。












「 うん!行こう 」


「 え、俺は誘わない感じ? 」










と、ハセは笑いながらひかりに問いかける。


それに対してひかりは真顔で、












「 だって奏太も誘ったのに断られたから
ハセも誘うのやめよーって思って 」



「 瀬川は瀬川だろ!俺は俺!笑 」










2人の会話に笑みが溢れる。
それと同時に奏ちゃんが来ないことに
少し寂しさもあったりする。



昨日は海行けたしまぁいいか。

















それから放課後、ひかりが案内してくれた
可愛いパンケーキ屋さんにハセと3人で訪れた。




ひかり曰く、新しく出来たお店で
女子高生やカップルが多くいた。













「 わ、ママから電話だ 」










と言うと、ひかりは外に電話をしに出た。
ハセとメニューを見ながら話をしたり
お店をキョロキョロして雰囲気を楽しんだり、
ひかりが戻ってくるのを待った。










「 これ美味そう〜 」


「 こっちも美味しそう 」










ハセとメニューを指しながら会話していると
トントンっと肩を叩かれた。



振り返ると、














「 え、奏ちゃん 」














と、笹野さんの姿があった。









14日前 No.35

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笹野さんはいつになくニコニコしてて
それがまた恐怖で…。



奏ちゃんはなんか疲れてるような顔してて、
なんかあったのかな、
そう言おうとした途端、











「 奏太、邪魔しちゃ悪いよ〜 」











と笹野さんは、奏ちゃんの腕を引っ張って
私達より遠くの席に座った。





ご、強引。
私の事嫌いなのは分かるけども…。








あ、そう言えば販売機のところで奏ちゃんを
誘ってたのって新しくできたパンケーキ屋さん
だったような!




まさかこのお店で、
同じ日に来る事になるとは…








そして私達とパンケーキ行くのを断って、
笹野さんと行く方を選んだのかなとか
私のこと嫌いになったりしたのかなとか、
変なことを考えてしまう。



なんか心配になってなんか悲しくて、













「 あっれー?奏太あたしの誘いは断ったのに
他の子とは行くんだね〜 」


「 …先に夏菜子と約束してた 」











ひかりは嫌味ったらしく奏ちゃんに言った後、
私達の席に戻ってきて深いため息をついた。



たまにひかりの言動には驚かされる。
そして目が笑ってなくて、怒ってるのが一目瞭然。


席にストンと座ると、








「 奏太ムカつく 」










と言うと、ハセは頭をポンポンと
ひかりの頭を撫でた。









「 笹野夏菜子より、あたしの方が仲良しだもん 」









と、頬を膨らませていた。




なんだ、ヤキモチか、




それもまたひかりらしくて、可愛らしかった。









それより奏ちゃん、大丈夫かな
顔が疲れてるような気がして、
それがどうしても気になってしまう。

















14日前 No.36

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私たち3人で他愛もない話をして笑って
適度に盛り上がって、
パンケーキを美味しく食べた。

その間も奏ちゃんが離れたところにいるのに
同じ空間にいると思うと気になって
目線がそっちにいってしまった。











「 じゃぁそろそろ帰る? 」







ミルクティーを飲みながらひかりが問いかけてくる。











「 そうだなぁ、明日も学校で会えるしな 」

「 明日はどこ行くー? 」

「 それは明日決める 」









2人の会話を聞きながら私は財布を手にして、
みんなで会計へと向かった。










「 あ、いいよ!俺夏バイトしたし 」









とハセは会計を済ませてしまった。


お、男前…。










「 え!いいよ私もバイトしたし 」


「 あたしがパンケーキ誘ったしみんなで
割り勘で良くない?」








ひかりも焦ってハセを止める。

でもハセは、











「 まぁまぁ、瀬川がいたら奢らないから
たまにはいいだろ? 」









とハニカんだ。


ハセにはなんかどこか敵わないっていうか、
本当にサラッとそういうことができるから
すごいなあって感心させられる。











「 ハセ君イケメン! 」

「 お前は黙ってパンケーキ食べてろ 」









遠くから奏ちゃんの声が聞こえた。

そして近寄ってきてハセの肩に手を置く。






笑ってるけど、どこか笑ってないような、
さっきから違和感が消えない。




ひかりはプクッと頬を膨らませて
奏ちゃんを見ていた。








すると奏ちゃんは小声で、


















「 明日の放課後は俺行きたいところあるから
一緒に行こう、4人で 」

















と、小さく言うと元の席に戻った。





笹野さんに聞こえないように
言ってきた気がした。


11日前 No.37

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色々思っていることはそれぞれあって、
でも笹野さんが現れてから私はなんだか…












「 奏ちゃん大丈夫だったかなぁ 」













奏ちゃんが余計に気になり始めた。

私に嫌がらせのlineをしつこく送ってくる子、
会うと睨んでくる子、


私には笹野さんの印象は、とてもじゃないけど
良い人とは思えない。



奏ちゃんが一緒に居て、
何もなければ良いんだけど…












「 …まぁ瀬川は瀬川なりに考えてる事あるだろうし。あいつもそんな弱くないよ 」











ハセがそう言うと、確かに、と思えた。


彼は弱くない。そうだ。

ただ彼の優しさに漬け込んで、
また前回のように奏ちゃんを巻き込むというか
傷付けるのはちょっとそれは違うと思うから

そこだけが心配で…。













「 何かあったら俺らに言ってくるっしょ 」










ハセはニコッと笑った。




あぁ、ハセは信頼しているんだ。

こんなに優しくて人のことを考えられるハセが
そう言うと納得させられた。













「 明日はあたしが欲しいぬいぐるみとってもらおーっと 」










ひかりは怒っていたのに笑ってて
すごく機嫌が良さそうだった。







また4人で楽しく遊べる。









そう思っていたのに、








10日前 No.38

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次の日の朝、4人で遊ぶってことと
暑さ対策のため、気合いを入れて
髪型をお団子にした。












「 なんか珍しいね、髪 」













とハセはお団子をツンツンとペンで刺してきた。












「 遊ばないで下さい 」



「 ハハッ なんか瀬川のためかと思ってさー 」












昨日からハセは妙に奏ちゃんの名前を出してくる。


そして決まってニヤニヤする。













「 暑いから! 」












と伝えると、ハイハイと笑っていた。





ハセはいつも通り片手で頬杖をつきながら。










ひかりは元気よく挨拶してくるのも




本当にいつも通りで、










だから、


















「 カナは奏太の事、手放すつもりないから 」















そう言われるまでただ浮かれてて










楽しかった日常生活が、少しずつ変わり始めた。













10日前 No.39

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「 カナは奏太の事、手放すつもりないから 」















そう言われたのは、
購買にお昼ご飯を買いに来た時で、

私とひかりにそう告げてきた。


















私は衝撃が大き過ぎて、何も言えなくて。


笹野さんの目が真っ直ぐで、
それが怖くて何も言えなかった。













「 それで? どうしてほしいわけ? 」











ひかりも堂々と答えた。

そして、いつものように怒るのではなく、
溜息をついて、呆れているようだった。





廊下でたまたますれ違っただけで、
喧嘩越しに言ってくるこの感じも、
私は苦手で仕方なかった。















「 近寄らないでほしいんだよね 」



「 遊ぶのを辞めろってこと? 」












ひかりも強気に答える。


それに対して笹野さんは、
フッと鼻で笑った。


それが気に入らなかったのか
今度はひかりから話しかける。














「 大体なんで貴方が
あたし達にそんな事を言うの? 」













その問いかけに笹野さんは
ニコッと口元だけ笑った。


















「 奏太と付き合ってるから 」


















その言葉に何も言えなかった。





ひかりも口に手を当てて驚いていた。










嘘でしょ、




なんて疑っている反面、


笹野さんの言動から、
現実を突きつけられた気がして、



状況を飲み込むのがやっとだった。












全然、知らなかった。









奏ちゃん、




笹野さんのこと好きなの?


いつから付き合ってたの?


だから昨日デートしてたの?







いろんな思いがあるものの、
頭が一向に追いつかなくて、

















「 その証拠に、放課後はカナとの予定を優先するよ。貴方達は断られる 」












と、勝ち誇ったような笑みを浮かべると
笹野さんは私たちの横を通り過ぎて行った。








私は動けなくて、
込み上げてくるものがあって、
目頭が熱くなるのが分かった。


ただそれを堪えるのに必死だった。







10日前 No.40

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「 かえちゃん、行こう。
奏太の口から何か聞いたわけじゃないし… 」










と、ひかりは私の背中をさすりながら
階段を登って教室を目指した。












鼓動が早かった。

手が少し震えてて、
それを隠すようにギュッと拳を握った。





もし、奏ちゃんがいたら
どんな顔して会おう…




そう思っていたけど、


教室に入る前に
ハセだけに偶然にも出会って、













「 おー、遅かったな! 購買混んでた? 」















奏ちゃんより先にハセに会えたことにホッとした。


それからハセの質問には、
なかなか口が開かず、




私もひかりも黙ったままで、
















「 え、どうした? 」











ハセの問いかけに答えようとも上手く
言葉にできなくて、












「 あ、えっと、」













奏ちゃんが笹野さんと付き合ってた、



奏ちゃん彼女できたらしい、



奏ちゃんとはもう遊べないかも、








奏ちゃんは、









奏ちゃんはもう、
















その瞬間、涙が溢れてきた。








10日前 No.41

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堪えようのない涙を流す私に
ひかりが抱きしめてくれた。











「 奏ちゃん、言ってくれても良いのにね 」












そう言って、笑ってみせた。

胸が締め付けられるように苦しくて、
静かに声を殺して泣いた。






ハセは心配そうにみてて、



だめだ、学校で急に泣き出すとか
私らしくないや。


そう思い、大きく息を吸って吐いた。


そして、何事もなかったかのように










「 よし、大丈夫 」










と、抱きしめてくれたひかりの頭を撫でた。


今は頭の中で整理しよう。











「 ちょっと待ってて 」









と言うと、ハセは小走りで階段を
降りて行ってしまった。


ひかりの、








「 え、このタイミングでいなくなる? 」







という台詞がどこかおかしくて、また笑った。



ひかりも笑っていた。







大丈夫、私は笑えるくらいには元気だ。
















それから、息を切らしてハセが戻ってきたのは
3分後だった。



私は鏡を見て泣いた痕跡がないかチェックしてて












「 藤咲、ひかり 」










ハセの両手には、
私がいつも飲んでいるミルクティーと
いつも食べてる焼きそばパン、
サンドウィッチ、プリンがあって、












「 ハァ、ハァ、階段いつぶりに、走ったかな」








お昼を食べていない私たちへ。
というメッセージを読み取った。


わざわざ無言で買いにいくところが
本当に気が利くというか人の事を考えられるな
って感心してしまう。











「 …蓮、すごいけどさ、
かえちゃん泣いてたのにご飯の心配!? 」



「 いや、だって、腹減ったら元気でなくね!? 」











二人でギャーギャー言い争ってるのをみて、
自然と笑みが溢れる。



なんだかんだハセは不器用で、
でも不器用な優しさが心に染みる。













「 ありがとハセ。遠慮なくいただきます 」










8日前 No.42

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ハセとひかりのおかけで、
あまり色々考えずに過ごせた。






そういえば、ハセは何も知らないのに
何も聞いてこなかったな。

口数は少ないけど行動派だし
優しいし、人の事を考えられるし…



ハセをチラッとみると、
日直の仕事として、黒板を消していた。


そんなハセを頬杖をついて眺めていると
ハセと目が合った。









「 ん? 」











と、優しくて微笑むハセ。
ガン見してたのバレたかな。


私の後ろの席に向かって来るハセに、











「 ハセはさ、好きな子とかいないの? 」


「 え?急に? 」











座ろうとするハセに問いかける。
ハセは笑いながら、うーん、と答えた。














「 藤咲は? 」


「 うーん 」


「 俺の真似かい 」











と、二人で笑った。





ハセにはちゃんと話さなきゃな。
笹野さんのlineの件から相談していたんだから。


















「 私はさ、多分、奏ちゃんが好きだったんだ 」









小さくハセにだけ聞こえるように伝えた。


教室ではそれぞれがまとまってて、
ワーワー騒いでいる。

その中で言い放った言葉が、
一瞬、誰もいなくなったかのように、
私だけに響いた気がした。













「 過去形なの? 」



「 思ったよりも驚いてないねハセ君 」











ハセは優しく笑っていた。









「 見てれば分かるっていうか、
気付いてるの俺だけだと思うけど 」










そう笑うハセは机に頬杖をつく。
ハセのいつものクセだ。





後ろの席のハセに向かって
椅子の向きを変え、話を続けた。










「 でも…、奏ちゃんは… 」









ハセは真っ直ぐ私を見ていて、
その視線を背けるように目線を外した。












「 笹野さんと付き合ってるみたい 」











言葉にした途端、
ギューっと胸が苦しくなる。



そして私が言った言葉にハセは、













「 … 」











何も言わなかった。

驚いているような、驚いていないような、
表情からは読み取れなかった。















「 さっき言われたの、笹野さんに 」









何も言わないハセをよそに、話を続けた。








「 笹野さんに 付き合ってるって言われて
もう奏ちゃんと遊べない、会えないんだって
そう思ったらなんか… 」












「 後から好きだって気付いたんだ? 」












ハセの言葉に、コクッと頷いた。








8日前 No.43
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