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ある小説家の物語。

 ( 恋愛小説投稿城 )
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麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

僕には、好きな小説家が居る。



でも小説家には……寿命がある。

いつか消えてしまうんだ。 当たり前だけれど。



『君の描く物語はデタラメだ。
こんな奇跡、起こる訳無い。起こるのなら、僕のこの気持ちをどうにかしてよ――』


今にも溢れてしまう、君への愛おしく想う気持ち。

メモ2017/03/07 10:32 : 麗華★6w5Zrp8Y83_xKY

水島 蛍(みずしま ほたる)

幼い頃から体が弱く、殆どを病院で過ごす。

家族や、週に一度だけ見舞いに来る幼馴染だけが蛍の楽しみ。

趣味で描いていた物語を出版社に応募して、小説家となった。


田路下 蒼(たじもと そう)

蛍の幼馴染。蛍の事が好き。

昔から週1のペースで必ず見舞いに来る。

蛍の描いた物語の応募を進め、いつも一番に物語を読む。

運動も勉強もでき、女子からの人気は抜群。

ページ: 1


 
 

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY



「蒼!一緒にあそぼ!」
夕焼けがバックになって、蛍の事を照らしていた。いつものように響いた言葉は、いつしか幻となっていた。
あんなに元気だったのに。あんなに明るかったのに。いつしかそれとも別れが来るものだ。
だから僕は“今”を大切にしようと決めた。



彼女を精いっぱい愛し抜こうと。

例えこの愛が報われなくとも――。




僕の中の一番は、いつでも君だ。

7ヶ月前 No.1

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

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7ヶ月前 No.2

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

「これ、次の話」
そう言って蛍は、僕にノートパソコンを向けてきた。そのパソコンに目を向ける。

蛍は昔から、絵とか話を描くのが好きだった。僕は昔からそれをよく知ってた。だから僕は蛍に
出版社主催のコンクールに応募してみないか と、言った。
根拠なんて、その時の僕には、なかったけれど、とにかく蛍なら賞を取れる。そう確信していた。
そして思った通り、蛍は最優秀賞をかっさらった。最優秀賞は、小説家としてのデビューが決まっていた。
つまり、小説家への道が拓けたのだ。僕の勘は当たっていた。
最優秀賞と分かった時、蛍は照れ臭そうに笑っていた。小説家何て無理!断る!
なんて、最初の頃は言ってたのに、今じゃ満更でもなさそうだ。結構、楽しんでやってるんじゃないかな…と、思う。



「まぁ…、いいんじゃない。」
僕はいつも、同じような感想しか言わないのに、なぜ蛍が僕に話を見せてくるのかよく解らない。
蛍の描いてる話は、闘病中の女の子のラブストーリー。“花と言葉”という題名だった気がする。
「いつもお見舞いに来る好きな子がね、お花を持ってくるの!すっごく綺麗な。
で、その花と彼の言葉でその女の子は元気になっていくから、花と言葉にしたの。結構簡単に決めたんだ。」
って、蛍は言ってたっけな…。
小説の話をするときの蛍は、本当に楽しそうで、瞳が輝いてる。
体全部が、楽しいって言ってるように感じる。
そんな蛍が、僕は大好きで、いつも見惚れている。

7ヶ月前 No.3

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

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7ヶ月前 No.4

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

蛍の隣は、何をしていても楽しくて、嬉しい。フワフワしてる。



「蒼、今度さ一輝(いつき)君も呼んでよ。久しぶりに話したい」
一輝君…は、僕の兄ちゃんの事。蛍は、兄ちゃんの事をなぜかすごく慕ってる。
2.3ヵ月に1回は、呼んで と言ってくる。会わせるときもあるけれど、そうしない時の方が圧倒的に多い。
『忙しいらしいんだ』そう言って、曖昧に誤魔化す。実際会った時、蛍は兄ちゃんの仕事に触れたことは一切ない。
だから何となく、僕も、何の躊躇もせずその言葉を毎回選ぶんだと思う。
蛍との時間を、無駄にしたくない。
本当だったら、毎日でも会いに来たいくらいなのに。
でもそうすると、気持ちに気付かれそうだから、怪しいけれどそれでも……週1にした。
体が丈夫ではない蛍は、いつ病気になるかなんてわからない。だから、だから少しでも多く居たい。
「まぁ、聞いとくよ……」
適当に話を終わらす。この話の時は、いつも僕はこうだった。
「あ、そうだ私ね、友達できたんだ。」
「え…?」
「海翔(かいと)っていう子なんだけどね、すっごく優しいんだ」
また男だ…。何で、蛍はそんなに男とも友達になるのかな…。
「いつもその子と喋ってるんだけど、好きな音楽とか本とかピッタリ一緒でさ、すごい盛り上がんの!」
あぁ…、眩しい。小説以外で眩しく話す蛍を見るのは……、久しぶりかも。
誰なんだろ、その海翔って子。カッコいい人じゃないといいな…。
「その人が言ってたの、 この世界には汚い部分があるから美しい部分が際立つんだ って。そう思った海翔君の心がよっぽど
綺麗なんだろうな…って思ったんだけど。その子もね「何でその話なの…」……え?」
これ以上言ってはダメだ…。何でもないといって飛ばせ…。そう理性が言っているのに、僕はそれに従えなかった。
「その人が何なの……。そんなにその人が好きなら僕なんかと喋らずに、そいつと喋ればいいじゃんか」
いろんなものがブクブクと音を立てて、溢れてくるのが分かった。下を向いて息を吐いて、それを何とかやり過ごす。
言いすぎたな…、顔を上げなくたって、蛍の顔が想像できる。自分の今の顔だって…。
「ごめん、今日は帰る。」
そう言って下に置いた鞄をもって歩き出す。
蛍には、何も言われなかった。 悲しいな…なんか。僕だけじゃん、こんな気持ち。

7ヶ月前 No.5

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

喧嘩しようが何しようが、結局また一週間後にはあそこに行ってしまう。
あの温かさや蛍のふいんき、声の高さ、仕草、すべてを見ていたかった。必然的に、終わりは来るのだから。



〔次の日〕
靴箱を開けると、まるで漫画の中に様にラブレターが一通入っていた。
“田路下君へ”
とだけ書かれたものだった。
まただ…。どれだけの人から告白をされたって、
たった一人の人からの告白は…。
一番欲しい言葉は、いまだにもらえないまま。そうやって時間が過ぎて行って、何もできないままの今。
週1しか会えなくて、でも増やす勇気なんてないし何て言ったら良いか分からないし。
きっと蛍は、会いに行く回数が増えたって何も言わずに笑ってくれるだろう。だけどそれが逆に怖い。
何を思ってるか分からなくて。 自分が負担になっていそうで。

適当に鞄の中に手紙を入れて、教室へ向かった。
差し出してきた人は、あとで見よう。
ていうか、ココで見ると色々とめんどくさそう。

7ヶ月前 No.6

麗華 ★0ee0QmQj9v_xKY

蛍side

「はい…、はい、よろしくお願いします」
慎重に通話を切る。
相手は蒼じゃないし、家族でもない。だからそう易々と電話を切れない。
仕事ってそういうもんなのかな…と、まだ10代の会社で働いてる訳でも無い私が思うのもどうかと思うけど…。
ケータイをパソコンの隣に置くと、パソコンと見つめ合う。
さて、次の話はどうしようか…。
何にも考えずに書いた小説が、賞を取って小説家デビュー。
何てマンガみたいなことだろう。でも…、そうならせてくれた蒼には少なからず感謝してる。
「話のラストは決まってるんだけどなー」
キーボードを打つ手が止まって動かない。
動いても、書いては消して書いては消しての繰り返し。
なんか違う、思ってるのと。なんか違う、これじゃない…そう心が言ってる。

私の描いてる話は、簡単に言えばラブストーリー。それもかなり王道的なものだと思う。……多分ね。
主人公の女の子はアオイにした。男の子の名前はケイ。
2人は幼馴染で、すごく仲がいい……とかまぁ色々と設定がある訳です。
こんな大雑把な私が書く本でも、毎回最低でも10万部は売れているらしい…。
なんか、今人気急上昇中の作家1位とかだってさ。
まぁ、興味ないけど。
テレビなんて、面白くないし。

7ヶ月前 No.7

麗華 ★qYoO1XN5YG_xKY

「あのさっ、田路下君。手紙の返事なんだけど…」
「え?」
朝。洋室でボーっと音楽を聴いていると呼び出された。
何かと思えばコレだ。まぁ、大体見当はついてたけど。でも、手紙読んでないな。
「私と、付き合ってくれないかな。あの「ごめん。無理」……そっか」
涙ぐみながら、彼女は去って行った。そうだ、そもそも名前すら知らない。
ていうか、よく告白できるよね。そんな相手に。
僕なんて…。あぁ、ダサい。でも、幼馴染だからってのもあるのかな。正直、蛍から告白してくれないかな。
なんて、毎日のように考えてる。だって、振られたら…。きっと僕は、立てない。立ち直れない。
結局自分が一番なんだ。それは解ってる。だけど、無理に決まってる。
たった3文字で、関係は簡単に絶てる。2文字で、絆す事が出来る。
どっちかなんて…、そんな可能性にかけられるほどの勇気は、残念ながら僕は持っていない。
いつも、それなりで生きてきたんだから。導いてくれたのはいつだって蛍で、笑いかけてくれたのも蛍。全部……、蛍だ。
「はぁ、僕も行くか」
重くダルい足取りで教室に戻った。
早く…蛍に会いたいな。気まずいふいんきがなくなってるといいな。どうか…、神様。


この想いを叶えて下さい。
永遠は望みません。だけどわずかな間だけでも……

蛍の一番で在りたいです。

6ヶ月前 No.8

麗華 ★KdVrKmXfcX_xKY

「行くか…」
授業中、窓の外を見てそう思った。本当に何となくだけど。
多分、気まずいふいんきがそう簡単になおる訳無いと思う。だけど…。



電車に乗って何十分かすれば、、病院がすぐ目の前に。
「ふぅーーはぁ」
深く息を吸って、吐いた。もう、どうにでもなれ。
幼馴染であるのに、何十年の付き合いであるのに、たった一度の喧嘩でこの関係が切れるなら、それまでだったっていう事。その時はもう、諦めよう。
覚悟を決めて、病院に入った。そして部屋へ――。
扉を開けた瞬間、蛍と目が合った。そして隣には、例の男の子だろうか。座っていた。
「蒼…」
「久しぶり」
いつもとは少し違うぎこちない会話で始まった。
それは、前のふいんきの終わり方のせいか、彼が居るからなのか。どっちなのか、よくわからない。
「あ、この人は私の幼馴染。蒼、田路下 蒼っていうの」
「へー」
明るいオーラを醸し出す彼に、じっと見つめられた。…見つめられたっておかしいな、見られた、かな。
「俺、成味 海翔(なるみ かいと)っていいます。よろしくお願いします!」
「海翔君と同級生だよ」
「嘘!マジで?年上に見える…」
「まぁ、背高いし、落ち着いてるし、クールだしね」
2人の会話を聞きながら、本当に仲良いんだな… なんて呑気に考えていた。
すると、蛍が彼を越して僕を見て。そして言った。
「蒼は‥どうしよ、ベッド座っていいよ」
笑いながら手招きしてくる蛍の隣に、迷いながらも行った。
こんな事、きっとこの先無い。断言できる。

6ヶ月前 No.9

麗華 ★KdVrKmXfcX_xKY

「じゃあ俺、もう行くわ。なんか2人の邪魔しちゃ悪いし」
「そんなの気にしなくていいよ。蒼ならまた来てくれるしさ。ね、蒼。」
本当は、そのままどこかへ行かせたかった。2人だけの時間にしたかった。2人だけで、話していたかった。
だけど…、僕にそんな事をする筋合いは、きっと無い。
「まぁ」
だから曖昧な返事で誤魔化した。
「うーん…。田路下は、いつ帰るの?」
「は?」
驚いた。まだ会って、間もないっていうのに呼び捨て?
いや、いくら同級生でもそれはないだろ。ていうか、僕がやめてほしい。
「知らない」
「蒼、どうしたの?」
「……まぁいいや、じゃここに居よっかな。」
空気読めないのかなコイツ…。
イライラしながら、いや言えない僕は悪い。と、心の中で自分を鎮める。
「ごめん、やっぱり今日は…」
「え?」
蛍が、そう言った。苦笑して、困った様子で。
彼も、一回笑って そうだな、また今度。 と言って、部屋を出て行った。

6ヶ月前 No.10

麗華 ★KdVrKmXfcX_xKY

「蛍、何「嫌だったんでしょ、成味君」……」
僕が何も言えないまま黙っていると、蛍が肩をポンッと叩いてきた。
「幼馴染、騙せると思うなよ?」
「……ふっ」
蛍の笑顔に、心の底が温かくなって、僕も思わず笑みが零れた。
やっぱり、2人だと落ち着く。
「蛍、そういえばあの小説ってさ、どうやって終わるの?」
「アオイが元気になるんだよ、って前も言ったよね?」
「そうだっけ」
「うん」
「そう」
こうやって何も気にせず会話できるのは、蛍だけだ。
蛍の隣はいつでも温かくて落ち着く。陽だまりのような場所だ。

6ヶ月前 No.11

麗華 ★cClct891op_xKY

「あといくつぐらいで終わるの?」
「うーん、分かんないんだよね。無計画。その方がなんか良い話しかけるし。まぁ、ずれる事あるけど…」
困ったように、苦笑する。何度も見てきたその笑顔に、今更ながら綺麗だな…と、思う。
「でも、もう3冊分ぐらいかいたよ。手直しいっぱいだろうけど…。」
「ふーん。」
「だから次一冊かけばおわりにしようかなーと思ってる。
「話違うじゃん。」
「へへへ」
にたーっと、口をみかづきの形にして笑う。いたずらっ子みたいな、ごまかすような笑み。
「まぁ良いけどさ」
「そう言えばさ、蒼って私の本かってくれてたりする?」
ドクンと、心臓がなった気がした。どうしよう、なんて答えれば…。
聞かれた瞬間、僅かな焦りと、困惑があった。
「……そんなわけ、ないだろ」
僕はいつだって嘘をつく。
だって、いつだって明日この人が元気かなんて、みんながみんな考えてないだろ、僕だって一緒。
蛍はいつだって結局元気で、笑顔で笑っててくれるんだと思ってた――。

5ヶ月前 No.12

麗華 ★IOcF9M3d1s_xKY

「ふーん、そっか。まぁいいや、最後の話だけは買ってよね、蒼」
「まぁ、それまで君が売れ続ければね」
「ふふっ、約束だよ」
夕日に照らされて笑う顔には、今にも壊れてしまいそうな儚さがあった。
大丈夫だよね……、蛍――?



あの見舞いの日から、あれから1ヶ月が経とうとしていた。
僕にとっては見舞いを1ヶ月も行かないなんて、今まで一度もなかったことだ。
どんな時でも無理やりにでも時間を作って、病院に言っていた。
だけど聞いてくれ。僕にだって事情がある。
というと、僕はここ1ヶ月どうしようもないくらい忙しい。何がって、色々だ。
学校の事もあるし、家の事とかもあるし。とにかく色んな事が重なり過ぎて、蛍のところに行くまでの時間が確保できてない。
やっぱ好きな人に会えないのは……、辛いな。
「田路下君大丈夫?最近顔が暗い…」
「もとから僕暗いし」
「えっ?!」

2ヶ月前 No.13

麗華 ★IOcF9M3d1s_xKY

「はぁ、疲れた」
ジリジリと射し続ける太陽に、無性に腹立つ。
暑いし、シャツがべたべたと体に付く。
リュックと背中の間がヤバイ…。背中、ビチョビチョだ…。
やっとの思いで家へと帰って、玄関に座る。
リビングのクーラーの冷気が、玄関まで届く。
「はぁ、涼しい」
「蒼っ?!?!」
「え、何‥」
いつも穏やかで焦らない母さんが、珍しく慌てている。いつもの様子じゃない…。
背中に悪寒が走った。ヤダ、言わないでくれ…。きっと――
「蛍ちゃんが――」
聞いた瞬間、居ても立ってもいられなくなって、病院に向かおうと立ち上がり、ドアを開けようとした。
「まって蒼、母さんが病院まで送る。その方が、長く居れるでしょ」
「‥‥」
冷静じゃ無かった。だって、あんなこと聞いて、冷静で居られる方がおかしい。


『蛍ちゃんの体調が今日急変したの』


母さんは財布と鍵だけをもって、家を出てきた。
急いでエンジンをかけ、母さんにしては珍しく飛ばして病院へと向かった。
普段なら40分はかかるであろう病院までが、今日は30分ぐらいでついた。
自然と早足になる。だけど走ることはしなかった。
走るとどうしても、蛍との残りの時間を縮めてしまいそうで、怖かった。

2ヶ月前 No.14

麗華 ★E28Sy2UUPH_xKY

「蛍…?」
名前を呼びながらドアを開けた。正直言えばこの瞬間、恐怖がどれだけあったか。
彼女のその姿を見るのが怖かった。もし――。
「あら、蒼君」
蛍のお母さんだった。苦笑していたその顔は、少し青白い。無理もないか…。
「蛍は…?」
「あぁ、大丈夫よ」
「なぁに蒼、私の事心配してくれたの?」
聞き覚えのある、少し懐かしいあの声が聞こえた。
「えっ」
驚いて覗き込むと、蛍はピンピンしてた。
「君、体調「あぁ、さっきまではやばかったよ。だけど今は安定した」…そう」
なんか、心配した僕がバカみたいだな。
さっきまでの自分に恥ずかしくなる。
「ねぇねぇ、何でずっと来てくれなかったの?」
輝くあの目で見つめられた。身を乗り出して、俯いてた僕の視線の中に入ろうとする。
こいつ、こんな人が居る中でも恥ずかしくないんだな…。
「忙しかったんだよ、しょうが無いだろ」
僕の言葉に、蛍はしゅん…となった。ちょっと、言い過ぎたかな。

2ヶ月前 No.15

麗華 ★j08ut8XFp2_xKY

「ねぇちょっと!もうちょっと顔こっち」
浸るに手招きされるまま、顔を蛍に近づけた。
すると蛍は僕の首に抱き付いて、耳元で言った。
「これからは毎日来てよ」
と、囁く様に言われた。
なんだこいつ、自由過ぎないか。こんな親がいるまで。
親を見ると、微笑ましそうな顔をしていた。母さんと目が合うと、母さんは穏やかに笑った。
その時、僕らがしていることのおかしさに気付いて、蛍を引き離した。
「わっ、わかったよ。……ちょっとトイレ行ってくる」
取りあえずこの時間的な問題の恥ずかしさをどうにかしたくて、廊下に出た。

2ヶ月前 No.16

麗華 ★Tablet=Wt7Pr6gNjD

まぁ、なんか嘘をつくのも気が引けて、結局言った通りにした。
「あれ、田路下?」
聞いたことがある様な声がした。
「久しぶりじゃん!いつぶりだろー」
なんでこんな犬みたいな…。
「また背伸びたかー、お前ホントに高校生かよ?!」
「何なの」
僕の何かに成味が、ビクッとする。
「田路下、お前余計に声低くなった…」
「なに、話はそれだけ?僕は戻るよ」
「俺も一緒にいい?」
最初、何を言ってるのかわからなかった。
だけど少しして分かった。
「嫌だよ。ていうか、昼行けばいいでしょ。なんで、君と一緒にわざわざ話さなきゃならないわけ?」
あ、滑った…
「分かった。じゃあ明日5時に行くから。お前、来いよ。じゃっ!」
なんかもう済んだらしく、走っていなくなった。

2ヶ月前 No.17

麗華 ★Tablet=Wt7Pr6gNjD

あの飼いならされた犬みたいな、可愛がられた犬みたいな、
そういうアイツの視線が、凄く嫌いだ。
なんか、体中に感じる、そんな雰囲気。
「はぁ…ほんと、カッコ悪いな」
蛍の前では、こんな姿見せたくない。


「あれー蒼、もう帰ってきたんだ」
病室に戻ると、居たのは蛍だけだった。
みんな、どこ行ったんだろう。

2ヶ月前 No.18

麗華 ★aqUx3U8nnS_xKY

「母さんたち、どこ行ったの?」
「うーんとね、売店?だったかな。なんか、2人で待っててって」
この独特な喋り方。喋る時の輝いて、見開く目。
「ん、蒼」
見れば、蛍があの時の様にベッドの上をポンポンとする。
これは…座れって事だよね‥。間違えてたら恥ずかしいし。
「座って。喋ろーよ」
「……はいはい」
めんどくさそうな演技をして、蛍のベッドの上に軽く腰掛ける。
「蒼。あの最終話の小説だけどさ、もう出版社の人に渡しちゃった」
「は?」
一番気になってた最終話。それを渡した?

1ヶ月前 No.19

麗華 ★0q5qBurwTi_xKY

僕たちの数少ないつながりの、そのうちの一つの区切りが、曖昧なまま終わった。
それが何を意味するのか、僕には聞けるはずもなかった。
そうしたら本当に、そのつながりが消えてしまいそうで。
「――でね……聞いてる?蒼」
「え、あぁ、ううん」
僕の返事に、蛍の機嫌が少し傾く。
あ、まずかったかな。とにかくこのきまづさから逃げたい。臆病な僕はそう思った。
「さっきからさ……「ごめん、飲み物買ってくるよ」…」
僕の今の会話の逸らし方は、明らかだった。だけど蛍は――
「じゃあ私、コーラね」
悪戯っぽい笑みで、蛍は笑った。
まるでさっきまでの体調は吹き飛ばしたかのように。
「無理に決まってんでしょ。水にしといてよ」
「えー」
蛍の声を背中に受けて、部屋を出る。あと何回こうして、こんな僕らの関係が続くだろう。

1ヶ月前 No.20

麗華 ★nsbifpqDkc_xKY

売店の近くに行かないと、販売機が無い。
面倒だな…と思いながらも、手ぶらのまま行くとさらにカッコ悪いだろうと思い、
一階まで降りて、販売機に行くまでの間に、300円を財布から出す。
「えーと、とりあえず蛍は水。僕は……」
さっきのあの声と、あの瞳が、どうしても脳裏によぎって仕方なかった。
あの声と瞳に魅せられてしまった。



「やったー!蒼、優しいねー」
僕が持つペットボトルを見て、蛍が笑った。どうせ、分かってたくせに。
「一口ね。どんだけ健康とはいえ、そんなジュースバカバカ飲んでいいわけないだろうし」
「はいはい。いただきまーす!」
美味しそうな顔で、どんどん飲み進めていく―――あっ!?!?
「ちょっと蛍!もうやめっ………ごめん」
無理やり取ろうとして、ジュースを少し、蛍にこぼしてしまった…。
束の間の、沈黙の時間。
「ごめん、今拭く」
ポケットからハンカチを出して、蛍の服を拭いた。
今日はそんなに使ってないし、濡れてないし、大丈夫なはず。
「あのさ…蒼」
「何」
「私もさぁ………一応、女子なわけで」
俯いて、言ってきた。何を言いたいわけ? 拭きながら、しばらく考えていると――
「あっ」
意味が分かった。顔が赤くなるのを抑えられなかった。もう少し、考えるべきだった。
「ごめん。もっと「ううん、良いんだけどさ…。やっぱ、もう少し意識してもらえるように女子力上げないとな〜」…え?」
「ううん、何でもないよ」
ハンカチを蛍に渡して、僕は丸椅子に座る。
「――よし、これでOK。ありがとね蒼。洗って返すから」
「いいよ、僕が悪いし」
「いいの!また明日、来てくれるんでしょ?」
優しくて暖かい、綿の様な笑顔だった。
「……うん」

1ヶ月前 No.21

麗華 ★8cZxcO2iFm_xKY

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1ヶ月前 No.22

麗華 ★HszGKekoLI_xKY



「蛍は光ると黄色になるから黄色のクマ。僕の名前は蒼で、水色のクマ。……違う?」
「さっすが。ピンポンピンポーン」
ホント、こういう時に自分の親はどれ程マイペース何だろうと思う。
蛍の親だっているっていうのに。
まぁ、蛍の家族の前だからこそできるのかもしれないけど。
「あぁ、そういう事か。え、じゃあ私たちのクマ、交換しないと「ううん、いいのよこれで」…そうなんですか」
蛍はきっと納得してないだろう(意味が解ってないだろう)。
多分、母さんに押されてる。

1ヶ月前 No.23

麗華 ★C8w9vvfvoV_xKY

「蒼、そろそろ帰らないと」
腕時計を見て、母さんが言った。壁にかけられた時計を見ると、7時30分だった。
「うん…」
「じゃあ、私たちも帰りましょう」
「えー、お母さんたちも帰るのー……」
蛍が不満そうに口を膨らます。ふと、僕と目が合った。
「まぁいいや!蒼、また明日も来るよね!!」
「え…」
僕の戸惑いに、蛍のお母さんがさっとフォローしてくれた。
「何言ってんの、蒼君だってそんな暇じゃないし。疲れるわよ、こんなところまで来たら」
「だってさっき約束したじゃん、明日もくるって」
「来るよ分かった」
僕がそう言うと、蛍が満面の笑みを浮かべた。本当に単純だな。




「あ、ごめん忘れ物した」
母さんが鞄を覗いて、そう言った。
「先行ってて。多分5分は遅れないと思う」
何も答えず、黙って歩き続けた。

1ヶ月前 No.24

麗華 ★Tablet=Wt7Pr6gNjD

(目線変わります)

「あれ、おばさん。どうしたんですか?」
さっき帰ったはずのおばさんが、もう一度病室に来た。
「あのね、あたししょっちゅう来れるわけじゃないから。それにあの子がいる前じゃ喋れないし、戻ってきたの。忘れ物って」
いたずらっ子のような笑みを浮かべたおばさんは、
いつもの幾分か幼く見えた。
あの子とは多分、蒼だろう。
「あの子はね、これから何回も蛍ちゃんのこと傷つけると思うの。だけどそれでもどうか、側に…ううん、幼馴染としてでもいいから蒼のこと、見ててほしいの。あの子はね、強がりなの。一人ぼっちでもいれちゃうの。だから――。お願い」
真剣な、すがられるような瞳のずっと奥に、返事なんてもう最初からとっくに決まっている私がいた。

1ヶ月前 No.25

麗華 ★LYVEqKoG5o_xKY

「もちろん、私はこれからも蒼に頼りまくりますよ」
「……ありがとう、蛍ちゃん。これで私、心残りは何もない」
おばさんの目元が、一瞬、キラッと光って見えた。…気のせいだったかな。
「でも、多分、ただ……」
自分でもおかしいのは分かった。だから余計焦って、言葉がぐちゃぐちゃになる。
「ただ…蒼が私の事を……嫌いだと思うので」
「…そんな事ないわ。蒼は、あなたのこと大好きよ。…本当に」
「え?」
私が聞き返すと、おばさんはにっこりと私の顔を見て笑って、言った。
「じゃあね、また今度。会いに来るから。このお願、蒼にはないしょでね」

1ヶ月前 No.26
ページ: 1

 
 
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