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 君が好き。(短編集)

 ( 恋愛小説投稿城 )
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千染。 @nuit00 ★iPad=vv7CQPK3zX





 「 君が好き。ただそれだけなんだ。 」


 ↓↓↓


 こんにちは。千染と申します。
 小説を書くのは久し振りです!昔はよく書いてたんですけどね、笑

 私は飽き性で小説を書くのを長くは続けられないので、一つの物語につき1から10以下のレスで完結する短編を沢山書いていこうと思います。

 成就した恋。その反対で叶えられなかった恋。身近な相手から手の届かない遠い相手への想い。

 自分のペースでゆったりゆったりいきます。暇つぶしにでも読んでいただけたらなーと思います!!
 よろしくお願いします。



メモ2017/05/28 11:24 : 千染。##history-off @nuit00★Android-bYEkenmub7

   *


 「 君が好き。ただそれだけなんだ。 」

 ▽ 私は脇役/>>1-8( 早見 瑞穂 )


   *

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千染。 @nuit00 ★iPad=vv7CQPK3zX





 ▽ 私は脇役 / 一話目


 character :
 早見 瑞穂 / はやみ みずほ
 井野 宗紀 / いの そうき
 花木 かおり / はなき ***


 ↓↓↓


 「 そーき! 」


 澄んだ高い声。この声の持ち主は 花木かおり。名前と同じように容姿も整っていて、クラスの人気者。明るくて素直で少し天然なところ、そしてそれが素だということも人気な理由の一つだろう。
 映画のヒロインみたいな、本当に本当に可愛い子。

 そしてうちのクラスにはもう一人 花木さんと同じように、容姿端麗で映画の登場人物みたいな人気者がいる。
 それは………、


 「 なに?かおり 」


 黒髪で長身のイケメン。優しくて落ち着いていて、周りの男子よりも大人っぽくて。周りに人がいないときはない。
 映画の登場人物みたいなモテ男。誰にでも優しい、女子の理想。

 そして、私の好きな人。

 それがもう一人の人気者、井野宗紀。


 「 ね。今日 一緒に帰れる? 」
 「 帰れるよ 」
 「 やったー!クレープ食べに行こう? 」
 「 うん 」


 クラスの人気者二人の声が、教室に響く。二人をちら、と見るけど花木さんと井田くんは放課後どうするかという話を続けてる。

 ( …仲良いよなあ、羨ましい。 )

 会話からも分かるとおり、クラスの人気者二人は絶賛お付き合い中だ。
 周りからは 美男美女でお似合いだと言われているし、私もそう思う。本当に本当に映画の中から飛び出てきたような二人。

 私みたいな地味子とは 全然違う。告白も諦めることもできない臆病者。
 いつになったら諦められる?
 彼の横顔を見ながら 何度そう思ったことだろう。

 ( 何か行動しなきゃ、諦めることも出来ないんだろうな。 )

 ちらりと視界の端にうつったカレンダーを見る。今は 2/10。金曜日。
 あと4日でバレンタイン。

 ( …バレンタイン。告白して当たって砕けるのもありだよね。 )

 思うのは簡単だ。でも行動に移すのは難しいだろう。

 ( でも… )

 いつまでも叶わない恋を続けてずっと辛い思いをするのも、やりたいことをやれない弱気な自分も、もう卒業したい。きっぱり諦めて、次に進みたい。

 まだ話してる二人を見て、いつものように 胸がちくり、と痛んだ。
 その痛みと共に私はこっそりと決意した。

 ( バレンタイン。告白して、砕ける! )



4ヶ月前 No.1

千染。 @nuit00 ★Android=bvfIDtteXu





 ▽ 私は脇役 / 二話目


 ↓↓↓


 日曜日のお昼。

 ( 買い物もしたしレシピもちゃんとコピーしたし準備万端! )


 「 …頑張ろう。 」


 一人で ふんっ、とガッツポーズをして、レシピを手に取り 眺める。そこには「生チョコレシピ!」の文字。
 色々と検索して見つけたものだ。

 ( …受け取ってもらえるかも分からないけど。 )

 そこまで考えてそれ以上の想像をやめる。今からネガティヴになっても何も起きない。
 せめて、良い生チョコができるように。そして、チョコに想いを込めれるように。精一杯心を込めよう。

 ( …あー、なんか好きになったときのこと思い出すな。 )

 あれは去年の春頃。入学式に心踊らせていた日のことだった。


 ***


 『 これで、平成27年度、桜道高校卒業式をおわりにします。生徒は… 』


 ( あーっ。やっと終わった! )

 伸びをしてクラスの人達を見る。みんな新しい制服を着て、新しい校舎を見て、近くの人と話して。
 これからの生活が待ち遠しい。そんな表情をしている。

 ( 友達つくれるかな? )

 人見知りで少しだけ暗い面がある自分。
 少しでも変わって友達を一人でも多く作れれば良いな…と前を見た瞬間だった。


 『 お前ら!どけや! 』
 『 待ちなさい!校則違反です!いい加減にまもりなさい! 』

 『 えっ!? 』


 何やらTHE・不良の先輩…らしき人と見た目からして厳しそうな先生が追いかけっこをしている。
 しかもその二人は私がいる場所めがけて走ってくるではないか!

 ( このままじゃ、ぶつかっちゃうっ。こんなに全力で走ってる人とぶつかったら… )

 不良の先輩の必死な顔と、厳しそうな先生の鬼の形相と、二人のその早さにびっくりして動けないまま衝撃を覚悟してぎゅっと目を閉じた。

 そのとき。


 『 大丈夫? 』


 耳元でそう声がしたと思うと、自分の身体が後ろにふわっと動いた。

 ( え、何?何!? )

 唖然としている間にも先輩と先生は、自分がさっきまでいたところを通り過ぎ そのまま体育館の外まで走っていってしまった。

 ( 誰かが助けてくれた? )

 肩に誰かの手の感触を感じて、くるりと後ろを振り向くと そこには黒髪長身のイケメンが立っていた。


 『 ええあ、あの、ご、ごめんなさい!ありがとうございます〜〜っ… 』


 ぺこり、とお辞儀をすると どういたしまして、という声が上から聞こえてきた。
 助けたくれた彼を見ると 笑いながらこちらを見て『 大丈夫? 』と心配してくれている。


 『 あっ。は、はい!おかげさまで全然大丈夫です。本当にありがとうございます。 』
 『 そっか。良かった、すごい固まってたから…助けなきゃと思って。 』


 そして、その彼が優しく微笑んだその瞬間、心が今までにないふわふわとした気持ちになった。そして、

 とくん―――…。

 心臓が急にどきどきと脈を打ち始めて。

 ( なにこれ…。この人がかっこいいから?それとも緊張してるから? )

 どちらもあるかもしれないけれど、このどきどきはそれらとは何か違った。


 それから少し後になって、私はこの気持ちが「恋」というのだと知った。



4ヶ月前 No.2

千染。 @nuit00 ★Android=bvfIDtteXu






 ▽ 私は脇役 / 三話目


 ↓↓↓


 「 出来上がった!完成! 」


 ふう、とひとつ息を吐くと 出来上がった生チョコを見て よし、と微笑む。

 ( レシピ通りにできてるし!味見したけど味も良かったし!あとは、渡せる勇気があるかどうか、だよね )

 今から緊張で胸が痛い。もしかしたら渡すときに泣いてしまうかもしれない。
 ―――…でも 後悔はしたくないから。


 ***


 → バレンタイン当日。


 月曜日は特になにも無く、いつも通り井野くんを遠くから眺めて終わった。

 井野くんとは、あっちが話しかけてくれたら話せるけど、こっちから話しかけることなんて殆ど無い。ある、と言っても係の用事があるときだし。
 つまり、私からちゃんと話しかけるのは今日が初めてだ。

 ( えっと、放課後になったら昇降口で待って渡してそのまま… )

 さっきから頭のなかでそれを繰り返している。先生の話も全く聞こえない。


 「 えーでは、バレンタインだからといってはしゃぎすぎて帰りが遅くならないように!! 」


 先生が生徒達に注意する声も遠くに聞こえる。
 このあと、先生がさよならの挨拶をしたら 昇降口にいって井野くんを待つ!


 「 ではーさよなら!女子は先生にチョコくれても良いんだぞー? 」


 ( …よし! )

 鞄をぱっと掴んで全速力で階段をかけ降りると、昇降口に待機する。

 胸が痛いし泣きそうだ。緊張しすぎだなあ、と苦笑しそうになる。
 井野くんは今日は部活休みだと花木さんに言ってた気がするから昇降口で良いだろう。

 ( 遅いな…まさか部活あった!? )

 そう思って教室に戻ろうとしたときだった。


 「 ねえ、美味しい? 」
 「 ん。めっちゃ美味い、ありがとう 」


 クラスのお似合いカップル、花木さんと井野くんの声がした。
 その瞬間、私は何故か反射的に隠れてしまった。

 ( え、ど、どうしよう声かけなきゃ… )

 そう思うのに身体は言うことを聞いてくれない。


 「 … 」


 今になって迷惑じゃないかな、とか 私のチョコなんて要らないよね、なんてネガティヴな感情が湧き上がる。
 そんなことをしている間にも二人は靴を履いて、帰ってしまった。


 「 ………相変わらずお似合いだ 」


 二人の後ろ姿を見ていると自然と涙が出てきた。

 結局渡せなかった。
 私は弱いままだ。


 「 …うー 」


 泣くなと自分に言い聞かせる度に涙は溢れてくる。

 ( …とにかく帰ろ )

 そう思い、下駄箱の扉を開けたのと同じタイミングで誰かに肩を掴まれた。


 「 えっ!? 」


 突然のことで思わず声が出てしまう。くるり、と振り返るとそこには…


 「 …に、入学式の……… 」


 入学式で私の場所に突っ込んできた不良の先輩が立っていた。





4ヶ月前 No.3

千染。 @nuit00 ★Android=bvfIDtteXu






 ▽ 私は脇役 / 四話目


 ↓↓↓


 「 あの………な、何か? 」


 何かしてしまっただろうか。考えを巡らせるも思いあたることはない。
 入学式で不快にすることをしたかと考えるが、もし していたとしても二年前の話だ。

 びくびく、と震えるが相手は押し黙っている。

 ( 何もないなら早く離して〜っっ )

 もう力任せに肩を離してそのまま帰ってしまおうか、なんて考えに至ったときだった。


 「 …な、泣いとったから 」


 どうしたのかと思って、と不良の先輩が言った。
 入学式のときとは打って変わって、ごにゃごにょとした やけに覇気のない声だ。

 ( え?それって… )


 「 し、心配してくれた…んですか? 」


 首を傾げて訊ねると、その先輩は何故か一回「 うっ 」と声を出してから こくり、と頷き「 そうや 」と答えた。

 ( ………見かけで怖い人だと思ってたけど、優しい人なんだな )

 そう思うと、口許が自然と緩んだ。


 「 ありがとうございますっ 」


 ぺこりとお辞儀をすると、何やら相手は慌てたようで「 えっ 」だの「 いやっ 」だのと言っている。

 その様子がなんだかおかしくてくすくす笑っていると、安堵したように息を吐く音が聞こえた。


 「 元気になったなら 良かったわ 」


 そう言われ 咄嗟に何て言えば良いか判断できずに狼狽えていると、先輩は昇降口の壁にかかっている時計を見て「 あ 」と呟いた。


 「 そろそろバイトの時間や、ほな、またな 」


 そう言うと 手を一回ひらりとあげて、そのまま玄関から出ていってしまった。

 ( ………良い人だった… )

 今まで怖い怖いと思ってきたけれど、実際には泣いてる人を心配して声をかけれる、優しい人だ。そして同時に強い人だな、とも思った。

 ( 私は泣いてる人を見ても、声なんか かけれないよ… )

 今度会ったら再度お礼を言おう、と決めて 私は帰り道へと歩を進み始めた。





3ヶ月前 No.4

千染。 @nuit00 ★Android=bvfIDtteXu







 ▽ 私は脇役 / 五話目


 次の日。今日も何も変わらず、友達と話しながら合間合間に井野くんをちらりと見る。
 臆病なわたしにはそれくらいしかできない。


 「 みーずっほちゃーん、先行っちゃうよ〜? 」


 友達が私を呼ぶ声に 待って、と言いながら小走りで追いつき、他愛もない話をし始めた。

 ( 次は音楽で、音楽室は3年生の階だから階段を降りて… )

 と階段を降りているときに、見覚えのある人がいた。いつの日かと同じように また先生に怒られている。
 その光景に思わず くすり、と笑みが溢れた。

 友達が どうしたの?と目で問いかけてきたので、なんでもないよ、と同じく目で伝える。

 先輩の横を通り過ぎようとしたとき、やっと説教を終えた先輩と ぱちり、と目があった。どうしていいか分からず、とにかく会釈だけしようかな、と思っていると先輩が声をかけてきた。


 「 今日は大丈夫そうやな 」
 「 お陰様で…。昨日は本当にありがとうございました 」
 「 そんなにお礼言われると照れるやん 」


 先輩と話していると、友達が何やら慌てたように「 先行ってるね 」と足早に歩き出してしまった。
 近くの教室の時計を見るけど、授業が始まるまでまだ時間はあるはずだ。何をそんなに急いでいるのだろう、と不思議に思う。

 ( …お手洗いにでも行きたかったのかな )

 なんて考えていると先輩との会話が唐突に止まってしまったので、何かしてしまったのかと焦って先輩の顔を見る。

 先輩は何か言いたそうに、けれども言いにくそうに口を開けては閉じて、と動かしていた。

 それを数回続けてやっと「 あ、あの… 」とだけ声を発したけれど、やっぱりその先が続かない。それに心なしか顔が赤い。

 心配になってきて 大丈夫ですか、と疑問を投げかけようとしたそのとき、階段の方から私を呼ぶ声がした。


 「 早見さん 」
 「 ………井野くん? 」





3ヶ月前 No.5

千染。 @nuit00 ★Android=bvfIDtteXu







 ▽ 私は脇役 / 六話目


 彼から声をかけてくれた、と嬉しく思う反面 その顔が険しいのが気になる。何?と私が訊ねるより前に 井野くんは先輩を軽く一睨みした。


 「 早見さんに絡まないでください 」
 「 えっ?井野くん… 」


 突然のことに先輩も唖然としてしまっている。
 井野くんは そんなこと気にせずに「 行こ 」と私の手を取ると すたすたと歩き始める。

 ( 待って!待って!!手繋いでるっっ )

 こんなときなのに顔が火照っていくのが分かる。

 ちらり、と先輩を見ると 何やら悔しそうな顔で自分の拳を見つめていた。

 何を言えば良いか分からず、でもこのまま去っていくのもなんだと思ったので「 先輩、また! 」とだけ声をかけた。先輩は ぱっとこっちを向いて軽く手を振ってくれたけれど、その顔はなんだか浮かなかった。


 ***


 「 井野くん、どうしたの?変なことって…? 」


 私の手を引いたまま無言で音楽室に向かう井野くんに慌てて訊ねる。
 音楽室の前まで行くと、さっき慌てて私を置いていってしまった友達がいた。様子を見るにまだ音楽室にもトイレにも入っていない様子で。


 「 あ。さっきどしたの?お腹痛かったりした?気付かなくてごめ―――… 」
 「 ごめん!みずほ!助けてあげられなくて! 」


 私が言い終わる前に友達は手をぱんっと合わせて謝ってきた。井野くんも「 遅くてごめん 」と謝る。


 「 えっ、二人とも…どうしたの、助けるって何? 」


 私のその言葉に二人とも苦笑し、「 あの人を庇ったりしなくていいんだよ 」と言う。本当に分からない私は首を傾げるしかない。


 「 あの先輩、不良で怖そうだし わたし、逃げちゃったんだよ。だから、ごめん 」


 眉を寄せ友達が謝る。そういうことか、と納得する。
 確かに見た目じゃ怖いし、私も最初そんな風に思ってたから仕方ない。

 ( でも、誤解とかなきゃ。本当はいい人なんだよって… )

 誤解を解こうと口を開く前に井野くんが「 早見さんは優しいよね 」と言ってきた。
 「 え!? 」と思わず可愛いげのない声をあげてしまった。恥ずかしさで ぼんっと顔が赤くなる。


 「 あの先輩のこと、怖いとか言わずに普通に話しててさ。あーいう人とは話さずにすぐ逃げた方が良いと思う。怖いでしょ? 」


 ( …それは、違う! )

 思うよりも先に口が動いていた。


 「 それ、誤解だから!! 」


 思った以上に大きな声で言ってしまって廊下にいる人や、音楽室にいるクラスメイトの視線が集まる。
 それでも私の口は勝手に動き始める。


 「 あの先輩、本当は優しくて良い人だから! 」


 必死に言う私を見て二人は唖然としていたけど、はっと我に帰ってごめんね、と謝ってくれた。


 「 あはは。私も昨日までそう思ってたから偉いこと言えないんだけど 」


 少し悪くなってしまった場の雰囲気を取り繕うため あはは、と笑いながら私は頭の片隅で考えていた。




 ( なんで私、昨日会ったばかりで名前も知らない先輩をこんなに庇ってるんだろ? )





3ヶ月前 No.6

千染。 @nuit00 ★Android=bvfIDtteXu







 ▽ 私は脇役 / 七話目



 「「 ありがとうございました 」」


 音楽の時間が終わり、友達と一緒に教室に帰ろうとすると 近くに先輩の姿があった。

 ( 声、かけたほうがいい…よね?さっきのこと謝らなきゃいけないし。でも、友達放置しておくのもなあ…さっき怖がってたし )

 友達のほうをちら、と見ると 同じく彼女もこちらを向いていて、「 どうすればいい? 」と目で問いかけてきた。
 「 先に行ってて良いよ 」と小声で話すと彼女は頷いて教室へと駆けていった。

 ( それで…どうやって話しかけよう… )

 いつもは先輩から話しかけてくれるから、話しかけ方というものが分からないし、よくよく考えてみればお互いの名前も知らない。
 と先輩の近くで迷っていると先輩と目があった。
 話しかけてくれるかな、と待ってみるけど なぜだか話しかけてこない。

 でも、よく考えてみれば話しかけづらいだろう。
 さっき井野くんが先輩に向かって「 絡まないでください 」と言ってたし。

 ( これは、勇気出さなきゃ! )

 そう思い、ふんっと気合をいれると先輩に向かって「 あの 」と声をかけた。
 何を言うか全く考えてなかったのと緊張のせいで頭が真っ白になってしまい、軽くパニックになってしまう。
 すると、先輩が「 さっきはありがとな 」とお礼を言ってきた。


 「 な、何がですか? 」
 「 ほら。誤解とこうとしてくれてたやろ?そのことや 」


 ああ、なるほど、と一人で納得してみる。

 ( あのときは無我夢中であまり周りのことまで気にかけられなかったけど、先輩の耳にまで聞こえてたんだ )

 そう思うとなんだか照れくさくて、あのーとかそのーとか言っていると、音楽室のほうから井野くんの声が聞こえてきた。
 そちらを向くと井野くんがこちらを見ていて、目があったけど すぐに逸らされてしまった。

 ( …まあ、ただのクラスメイトだしなあ )

 と、少し悲しい気持ちになっていると、唐突に先輩が「 好きなんやな 」と一言呟いた。
 私はその一言を聞いて思わず「 え 」と声に出してしまう。私はそんなに分かりやすいのだろうか。

 その驚きから漏れた私の声に先輩はなぜだか急に「 あっ、今のはそのっ、なんや!? 」などと焦り始めた。焦りたいのはこっちだ。

 お互い焦って焦って焦ってから 一息つく。

 ( …き、聞かなきゃ!そんなに分かりやすいですかって )

 そう思う前に口が勝手に動いていた。


 「 な、わ、わたし、そんなに表に出てますか!?その…あの人のことが好きだって! 」


 まだ焦りが残っているのか、あわあわとしてしまっていたけど質問は聞こえただろう。
 先輩のほうを見ると 一瞬不思議そうな顔をして、それから「 あー、そか 」と独り言を呟いた。
 私は訳がわからずに 黙っていることしかできない。

 それから数秒くらい経ち、先輩はやっと前を向いてくれた。


 「 うん、まあ、見てたら分かるで 」


 その一言で私は頭を抱えたくなった。
 それなら相手にもバレてるんじゃないか、と謎の緊張までしてきた。

 ( あああああ、何言ったら良いの?もうパニックだよう )

 声をかけたときよりも更に頭が真っ白で、もう何をしたら良いのかが分からない。
 しどろもどろになっている私を見て先輩が何を感じたのかは分からないけど、きっと馬鹿なやつだなとでも思われてるのだろう。

 それもそれでショックだな、などと思っていると先輩が質問を投げかけてきた。


 「 あー、告白はしたんか? 」


 と。その質問に私は首を横に振り、


 「 先輩と初めてあった日にしようと思ったんです。でも、勇気がなくてできなくて。…彼女といたし 」


 我ながら情けないな、と自虐の笑みを浮かべると 先輩は先輩らしく ひとつアドバイスをしてくれた。


 「 あのな、告白しないよりもしたほうがええで。なんて人のこと言えへんけどな?………後悔の重さは、するのとしないのとでは全然ちゃうぞ 」


 その言葉で、なぜだか私は妙に勇気が出た。
 先輩がそう言ってるからだろうか、それとも後悔はしたくないと思ったのだろうか。

 私は一言「 ありがとうございます 」とお礼を言い、それから「 もうすぐ授業なので 失礼します 」とその場を去った。

 先輩は私の気持ちに気付いたのか「 頑張りや 」と笑ってくれた。


 ( …私、決めた )



 放課後、井野くんに告白する!





2ヶ月前 No.7

千染。 @nuit00 ★Android=9aesetLpUM







 ▽ 私は脇役 / 八話目


 ( ど、どうしよう。決めたは良いけど、緊張で全然授業に集中できない…! )

 今は六時間目で数学の時間だ。元から数学が苦手なのに放課後の告白のことで頭が一杯でいつも以上に授業が理解できない。ノートをとるふりをして私は考えを巡らせる。

 ( あーあ。こんなことになるならチョコレート持ってくれば良かったな )
 ( 直接がいい?紙に書いたほうが良いかな? )
 ( 直前になって怖じ気ついたらどうしよう )

 心臓が今までにないくらいに脈をうっている。今でもこんなにドキドキしているのに、と不安になって時計を見る。授業はあと十分。

 ( 大丈夫、大丈夫 )

 ふーと深呼吸して先輩に言われたことを思い出す。


 『 あのな、告白しないよりもしたほうがええで。なんて人のこと言えへんけどな?………後悔の重さは、するのとしないのとでは全然ちゃうぞ 』


 先輩の言葉はわたしに勇気をくれた。そういえばまだわたしは先輩の名前を知らない。

 ( …この告白がしっかりとできたら教えてもらおう、先輩の名前 )

 ちら、と井野くんのことを見る。大丈夫。先程のお礼をする、みたいな感じで近付いて離れた場所で好きって言ってフラれれば。

 もう一度自分に大丈夫と念じて時計を見た瞬間に授業終了のチャイムが鳴った。


 ***


 ( 作者から )

 すごい久しぶりの更新でごめんなさい。なんて見てくださってる方なんていないとは思うんですけど一応。
 次の更新でこの物語( 私は脇役 )は終わる予定です。次はこの物語に出てきた「 先輩 」のお話を書こうと思っています。
 もし見てくださっている方がいたら、次も読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします。





1ヶ月前 No.8
切替: メイン記事(8) サブ記事 (7) ページ: 1

 
 
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