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恋なんてするはずが無かったのに

 ( 恋愛小説投稿城 )
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麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

*櫛田 楓(くした かえで)
 1−1.端正な顔立ちと文武両道さで学年での人気は群を抜いている。
 無気力な性格だが、何事もそれなりに終わらせる。
 音楽を聴くことと読書をすることが趣味で、鞄の中には常に本一冊とヘッドホンが入っている。


*今咲 花楓(いまざき かえで)
 1−2.母親譲りの綺麗な顔立ち。運動は苦手だが勉強は得意。
 とてもおとなしく、静かなためクラスの中では『地味子』『空気』と呼んでいる人も。
 友達と呼べる人はあまりいない。音楽を聴くこと、読書、料理が趣味。


*鴫原 綾穂(たはら あやほ)
 1−2.花楓と小学校のころから仲が良い。
 明るく面倒見の良い性格からクラスの人気者。思った事は言わないと気が済まないタイプ。
 テニス部に所属していて、1年レギュラー。優しすぎる花楓を心配している。スポーツが好き。

切替: メイン記事(43) サブ記事 (4) ページ: 1


 
 

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

楓side

俺は正直言えば、人気がある。常に周りには人が居たし、一緒に居る人に困ることなんてなかった。
俺には縁がないという事も解っていた。
恋なんてした事が無い。彼女も居た事が無い。
告白してくる奴が居なかった訳じゃ無いけど、別に興味が無かった。


なのにある日、俺は目が離せなくなった。
“今咲 花楓”という地味子に。

3ヶ月前 No.1

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

花楓side

私は地味だ。自分が『地味子』とか『空気』とか、そうやって呼ばれていることも知ってる。
でも、良いの。私には、そんなこと気にせず、真っ向から向き合ってくれる“友達”が居る。
「花楓ー!」
「あ、おはよう」
鴫原 綾穂ちゃん。小学校から仲が良くて、よく遊んでいた。
「見て見て!」
そう言って綾ちゃんは、こめかみ辺りを指さした。
「うわぁすごい。きれいにできてるね」
そこには、綺麗に編み込みがしてあった。
そして、編み込みした髪を、他の紙と一緒に束ね、ポニーテールにしている。
「うん、今日は結構自信作!花楓もやればいいのに」
「ううん、私は綾ちゃんみたいに上手く出来ないし」
私がそういうと、綾ちゃんは 今度一緒にやろ! といって笑った。

3ヶ月前 No.2

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

花楓side

今まで私は、これといった恋をした事が無い。本当に人を好きになった事が無い。
憧れに似た恋なら、何回かあるけれど、多分今考えればそれは…恋じゃない。
ただの尊敬する気持ちや憧れが、なぜか好きに結びついてしまっただけで。


「でさー」
「あ、綾穂おはよー」
いつものように、上靴を取り出そうとしていたとき。私たちの横から、誰かが綾ちゃんに声をかけた。
「はよ」
綾ちゃんも挨拶を返した。
綾ちゃんは昔から人気者だった。みんなに好かれてて、綾ちゃんの事を嫌いな子はいなかったと思う。
明るくて優しくて、友達思いで。すごく強くて、信頼できて――。
前に一度、私をイジメから助けてくれた時。ポロリと言ってしまった。
『綾ちゃんは、何で私といるの。愛梨ちゃんたちのトコ、行けばいいじゃん』
言った後に後悔した。微塵も心にないことを、なぜ言ってしまったのかと。だけど綾ちゃんはどこにも行かずに、
優しく私を抱きしめて言ってくれた。
『綾はね、花楓が大好きなの。だから、ずっと一緒に居る』
抱きしめてくれた時の綾ちゃんの温度が、今でも私も暖かく包み込んでくれる。どうしようもなく不安で寂しいとき、
私はいつもその体温を求める。求めてしまう。
「…花楓?行くよ」
「あぁ、うん」
時折ふわっと頬をかすめる綾ちゃんの匂いが、とても懐かしく感じる。

3ヶ月前 No.3

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

楓side

「楓ー」
「おい、やめろって」
中学生の時からそれなりに仲の良かった渋谷 晃(しぶや ひかる)は、俺の事をやたらと“楓”と呼ぶ。
俺はそれがいやで、毎回本人に言うけど、一向に直す気配は感じ取れない。
「でも、楓って響き良いじゃん?」
「女みたいだろ。第一、楓なんて女でもいるし」
「まぁ、そりゃそうだけど」
晃は頭の後ろで手を組む。
こうやって変に気をつかわず俺に喋りかけてくれるのは、晃ぐらいだ。
あとは、一緒に居ても……家来と主人。みたいな感じしかしない。
だからまぁ、晃もそういう意味では結構大事な存在なのかもしれない。と、思う。
「そうだ!俺、4組の由希ちゃんと付き合うことになってさ〜。何とあっちからの告白だよ!」」
「またか…、早くない変えんの?」
「いいの、青春は楽しまきゃ!」
晃の言う青春がどんなものか疑問に思いつつも、そんな風に好きな人と付き合えるやつを
ほんの少しだけ羨ましく思う自分が居る。こんな時に、思い浮かべてしまう人も居る。
本当に数か月前までは、こんな事誰だって予想していなかった。いや、できるはずが無かった。
俺が誰かに焦がれるなんてこと。

3ヶ月前 No.4

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

花楓side

「そうだ花楓、今日の帰りちょっと待ってて。長くても10分で終わると思うから」
「うん。何かあるの?」
「紀野って奴、いるじゃん。同じクラスに」
右手の人差し指をなぜか立てて、綾ちゃんは話し始めた。
「あぁ、うん」
「なんか、何とか会の相談?みたいのをしたいらしく。教室に残っててって言われた」
「あぁ…うん、わかった」
告白だな…と、思った。
綾ちゃんは、ちょっと雑なところもあるけれどそれも含めて可愛い。
顔はもちろんだけど、少し怒りっぽいところとか何かに向かって一生懸命になってる姿とか。
いろんなところが、見ている人を惹きつける。私もその一人だった。
「でもさぁ、綾ちゃんモテるじゃん。彼氏つくらないの?」
「え?!」
綾ちゃんの顔が急に赤くなった。え、なんかスッゴイ貴重なところを見た気がする。
「いや、あたしは別に。そういうのは」
綾ちゃんが珍しく焦ってる。 あ、好きな子居るんだな。分かりやすいなぁ。
「好きな子、居るんだ」
「……花楓は?好きな奴いないの!!」
綾ちゃんに両肩を掴まれたと同時に、誰かに当たった。
「あ、すいません」
「あ、いえ。」
顔はよく見えなかったけれど、隣にもう一人男子が居て、すごく背が高かった。
無気力そうな声とふいんきが印象に残った。隣の男子は髪が茶色っぽかったし、なんかチャラい感じがした。
だけど、とくには気にせず私たちは教室に入った。

3ヶ月前 No.5

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

楓side

他愛もない話をしながら廊下を歩いていた。
すると、向こうから1組のやつが来た。
…何で俺が一組のやつなんて知ってるのか。
「楓の想い人じゃん」
晃が指さして言った。おい、ばれたらどうすんだよ!
俺の心配はいらなかったようで、指さした奴は俺たちの事に気づいていなかった。
「うっせ、指下ろせ」
「楓ってさ、変な所をさ…なんかさ、うまく言えないけど…うん」
言葉にできず晃がもごもごと口詰まる。俺はそれに、変なもどかしさを感じる。
何一人で納得してんだよ。
「花楓は?好きな奴いないの?!」
胸が詰まった。体が勝手に、その言葉に反応してしまう。
鼓動が急に速くなって、息が詰まる。こんな事になるのは、初めてだった。
だから俺自身もどうしたら良いのかわからなかった。
近づいてく度に顔がだんだん鮮明に見えて来て、やっぱり可愛いななんて思ったり、
ばれちゃいけないと思ったり。俺の心の中は忙しい。誰かを“好き”になると、こんな風になるのか。
認めたくないけれど、俺は恋をしてしまった。“今咲 花楓”に。

3ヶ月前 No.6

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

花楓side

1時間目は体育で、スポーツテスト。男女合同だ…、最悪。
「体育やだ…どうしよ」
体育館に向かう途中、綾ちゃんに愚痴をこぼす。
運動が得意な綾ちゃんに比べ、私は大の運動音痴。自分でもあきれるくらいに。
「良いじゃん、別に。頑張ろ!」
背中をバシッと叩かれる。昔から私がくよくよしてると、綾ちゃんがやってくれること。
その度に私の体には力が沸き上がる。何でもできちゃうような、そんな感じがする。


シャトルラン
もちろん男子には、100に行った子やそれに近い子が数名いて、誰が最後まで残るのか。
と、注目の的だった。女子の最高は90で、その記録保持者は綾ちゃん。
男子は、櫛田と言う子だった。長身で顔がすごく整ってた、人気者らしい子。
「すごいね綾ちゃん。私なんか40だよ。」
「別に大したことないって。てか、あたしはこれしかできないからさ。でも、櫛田すごいね」
「知ってるの?」
私がそう尋ねると、綾ちゃんは頬の赤みが、増した気がする。気のせいかな…?
「うん、まぁ知り合い位」
「はぁ」
こういう時、綾ちゃんは顔が広いなぁとか人脈があるなぁとつくづく思う。
私も見習わなくては…と考えるけど、多分、うまくいきっこない。
「花楓ってさ、50m早いよね。7秒でしょ?」
「うん、7秒6」
「えっ、はやっ!」

3ヶ月前 No.7

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

楓side

今日のスポーツテスト俺は柄にもなく、気合を入れていた。
何となく。本当に、なんとなく。
「楓、今日すごかったじゃん」
「別に、お前だって俺と殆ど変わんないじゃん」
「いや、10回の差は大きいよー!でも、今日やけに頑張ってたよね」
晃がそう言った。その言葉の実意が分かってしまている。だけど俺は何も答えない。
「別に、そうでもない。どっかの馬鹿みたいに学年1は目指してないけど、
クラスでは1取りたいなと思っただけ」
「ふーん」
晃は意外にもただそれだけだった。少し拍子抜けしつつも、安心した。
「あ、女子の1番鴫原じゃん?アイツの親友知ってる?」
「…は?」
いきなりの話題に、俺は付いていけず最初、何が聞きたいのかと戸惑った。
「だから鴫原の親友?みたいな、いつも一緒に居る」
「…わざと言ってる?」
俺のその言葉に、晃が声を上げて笑った。
「別に、今度鴫原と一緒に遊ぼうって言われたんだよ。だったら、3人で行くわ」
「…はぁっ!?!」
「声が大きいよ楓君?」
にやにやと笑いながら、立てた人差し指を口に当てる晃を見た。
「…悪かった、俺も…「え?聞こえないなー」…悪かった!俺も一緒に行く!」
そう言い放った後、顔から湯を吹き出しそうな位の恥ずかしさが出た。
でも…3人でっていうのは、ちょっと妬く。

3ヶ月前 No.8

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

花楓side

突然、綾ちゃんから言われた。
「あのさぁ、突然でアレだけど…。今週の土曜、空いてる?」
「え、うん」
「隣のクラスのさ、櫛田と渋谷って奴とまぁ仲良くて。で、4人で遊ぼー!って事になったんだけど…」
「あぁ、良いよ。土曜ね」
私がそう言った瞬間、綾ちゃんの顔がパァッと晴れた。可愛いな、綾ちゃん。
「じゃ、場所とかは決まったら連絡するね」
「うん」



渋谷と櫛田って誰だ…?
家に帰り、くつろいでいた時にふと、疑問に思った。
そもそも、まったく面識もない相手と一緒に遊ぶって…。どうなんだろう、普通の事かな?
でも喋ったこともないしなぁ。もしなんかで綾ちゃんいなくなったり、2人きりになったりしたら…
無言は怖いよね、うん。ネタ考えておこう。

3ヶ月前 No.9

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

花楓side 〔土曜〕

皆と集まった瞬間。もっとおしゃれしてくればよかった…
と、後悔した。
3人ともすごくおしゃれだ。なのに私ときたら…
「ホント馬鹿だ私」
「花楓〜行くよ!」
綾ちゃんが少し離れたところから手を振ってくる。
「あぁうん。」



来たのは、遊園地。何でか、うん。
「花楓何乗ろー!!めっちゃ楽しそう」
園内に入ると綾ちゃんは地図を見ながらキラキラと目を輝かせていた。
まぁ、綾ちゃんがそんなに楽しんでるならいいか。
「私は何でも良いよ、大体のは大丈夫だし」
「ホント!やったー!」
綾ちゃんは私に抱き付いてきた。そして、後ろに居る男子2人に私の事を紹介した。
「この子はあたしの親友、今咲花楓! で、この2人は2組で右が渋谷晃、左が櫛田楓」
「え、楓さんですか?」
自分と同じ名前だという事に、なぜか嬉しくなり親近感がわいてくる。
「あぁ、うん。一緒…だね」
「何て呼ぼう…。渋谷さんと櫛田さん?」
「俺は晃でいいよー」
後ろからヒョイと出てきたチャラそうな子。あ、この前廊下で見た人だ。
「じゃ、晃君?」
「君かぁ…うん、OK。俺はかえちゃんにしよっかな」
「え…はぁ」
普通、男子がちゃん付で呼ぶのか…とちゃん付の呼ばれ方がいやだな…と思った。
だけど初対面から変な印象与えたくないし。
「花楓ちゃんっていうのちょっと長いしさ、花楓だとコイツもだから」
「あぁ、確かに」

3ヶ月前 No.10

麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

その後、初対面だなんて思わないほど楽しめた。
まるで昔からの友達といるかのように。
「ねぇかえちゃんどうする?」
「え?」
園内マップを見ていた視線を晃君に移す。
「お昼。もう1時だしさ」
「あぁ…、皆はどうするの?」
「鴫原はホットドックとポテトで、楓はカレー、俺はオムレツ」
マップの中に載っているメニューを指さしながら教えてくれた。
「私は……ハンバーガー!」
「おっ、意外に食べるね」
晃君が笑いながら言ってきた。
「え、普通でしょ?おかしい…?」
「ううん、ただ華奢な体つきなのになーと思って」



2ヶ月前 No.11

麗華 ★5BqVLQe7Ra_xKY

花楓side

晃君は、第一印象こそ良くはなかったものの色々な気遣いや優しさが、意外で驚いた。
「午後はどこ行く?俺、ジェットコースター乗りたいんだよね。」
晃君が机の上に置いてあるマップを覗き込んだ。
トロトロで輝くオムレツを口に運ぶ。
「私も乗りたい。ジェットコースター」
私がそういうと、晃君は だよね!! と笑顔で答えてくれた。
その反応に、ホッとした。良かった…
「櫛田はどうすんの?」
綾ちゃんがホッとドックにかぶりつく。ちょっと、その食べ方は…
「俺は………別に」
しばらく考えた後、そう言った。
綾ちゃんは はぁ? と少し拍子抜けした様な声を発して、晃君はそんな2人を見て笑ってた。
長い前髪から見える瞳が、すごく綺麗だった。
「櫛田さんって大人ですね」
そんな言葉がさらりと流れ出た。
何だろう、すごく不思議な感覚がした。

2ヶ月前 No.12

麗華 ★5BqVLQe7Ra_xKY

楓side

昼食を食べ終わった後、晃が2人ずつで別れようと、訳の解らない提案をしてきた。
しかも鴫原が賛成したせいで…。結局、やることになった。


最初は今咲さんとで……。
「……」
「……」
気まずい。どうしよう、話さなきゃ…
そう思えば思うほど、話題が出てこない。でて来ても、深く考えすぎて…。
「…何、乗る?」
ぎこちなく、話しかけてくれた。手に持っていたマップを、俺の前へと広げる。
それを覗き込んで、何がいいか… と考えた。2人で居るのは2時間。
2時間たったら、昼食を食べていた時の場所に‥‥、となっている。
「じゃあ、まぁ乗りたいの乗ってこっか」
俺がマップとにらめっこをしていると、今咲さんがクスッと笑って言った。




「はぁ…」
好きな人の前であると、こんなにも疲れるものなのか…。自分が自分じゃなくて、
よく見られようとしていて、もう色々…。一緒に居るのは嫌じゃない、全然。だけどなんて言うか、
自分でもよくわからないんだけど疲れる。というか、緊張する。
「大丈夫?飲み物買ってくるけど、何が良い?」
「あぁ良いよ。俺が行く」
「ううん、休んでて。すぐそこだし」
「…じゃあサイダー」
「あ、私も一緒!」
ニコッと笑うと、販売機の方へ歩いて行った。俺はその後ろ姿を少しの間見て、
そのあと周りの子供たちを見ていた。
気が付けば俺は、こんなにも笑わなくなっていた。いや、笑っているけど笑ってないみたいな。
正確に言うんなら作った笑顔で心は笑ってない。…みたいな?

2ヶ月前 No.13

麗華 ★5BqVLQe7Ra_xKY

楓side

あっという間……に、時間は終わって次は鴫原とになった。
鴫原とは気兼ねなく過ごす事が出来た。
「次どこ行くか……。あの船?」
俺がマップを見ていると、鴫原が少し間が空いた後、言った。
「観覧車は?」
「何でお前と2人なんだよ」
俺がそういうと、鴫原は気まずそうに眼をそらして 良いじゃんか… といった。
でも…今咲さんと乗れなかった観覧車に乗るのはなぁ。
そう思ったけど、あまりにもおかしい位に暗くなってる鴫原を見て、突き放せなかった。
こういうとこ、ダメだなぁ。ホントさ…
「分かったよ。乗りゃあいいんだろ」
「……うん」
俯いたまま、そう言われた。
何でこんな暗くなってんだよ、お前…

そんな時ふと、晃達の事が気になった。
もしかして、楽しんで…。

2ヶ月前 No.14

麗華 ★ygHF2H5z0d_xKY

花楓side

「あぁー、楽しかったぁ」
6時30分。閉園を知らす音楽とともに、私たちは遊園地を出た。
人混みからの解放感からか、小さな籠の様なものの中から出た嬉しさか、
はたまた違うか解らないけれど、うーんと大きくのびをした。
隣に居た晃君が、また優しく笑った。
「楽しかったね、一日」
「うん、思いっきり遊んだの、久しぶりかも」
「そうなの?俺は結構フラフラ遊んでるよ。そのせいで、テスト何て赤点ギリギリだしさ」
楽観的にそう言う晃君が、少し心配になる。
赤点ギリギリって…、どんな点数取ってるのよ…?
今度、勉強一緒にしてあげようかな。
綾ちゃんといつもやってるし、そのついでに――。

1ヶ月前 No.15

麗華 ★ygHF2H5z0d_xKY

楓side

正直、来てよかったという気持ちよりも、来なきゃ良かったという後悔の気持ちの方が大きかった。
晃と今咲さんが楽しそうに喋っている姿、
2人で並んで歩く姿、今にも触れてしまいそうなその距離、
すべてが俺には無かったもので。できなかったもので。
あぁやっぱり、無理なんだ――。と、ただただ自覚した日だった。




「櫛田さん」
鴫原の解散の言葉で分かれた俺の所に、今咲さんが来た。夕日に照らされた顔が、
凄く綺麗で丁度、映画のワンシーンの様に、髪を横に靡かす風が吹いた。その姿に、見惚れずに居られる訳が無かった。
「あの、櫛田さんって萌果(もえか)ちゃんの事、好きなんですか?」
「え…?」
突拍子もない質問に、何を聞かれてるのかすらわからなくなった。
「ごめ、え…?あの」
「萌果ちゃんの事、好きなんですか?」
ゆっくり、ゆっくり、俺の目を見て言ってきた。幻聴じゃ、無かった。
「萌果って‥‥」
「田中さんです」
「…いや、違うけど…」
あんな奴、好きなわけない。あんな、顔だけ女。てか、化粧してるだけだし。
「そうですか…」
気まずそうな蒼くなった顔で、そう言った。なんか、まずいこと言ったか?
「ありがとうございました。じゃ、また月曜」
そういうと今咲さんは、足早に帰って行った。

1ヶ月前 No.16

麗華 ★ygHF2H5z0d_xKY

楓side

今咲さんとの接し方が分からない。…いや、好きな人との接し方が分からない。
今まで恋なんていうものをした事が無いからかもしれない。
晃の様に、かる〜く好きになって付き合うみたいなことも、やった事ないし。
つまりだ。俺は、女子との接し方すらわからないという事になる。
だけど、確かに変わったことが1つある。




「おはよう」
今までお互い何となく見たことがあるだけで話した事すらなかったのに、
今では挨拶を交わすまでになった。大きな進展。
それだけで、俺の足取りは、背中に羽が生えたかのように軽かった。こんな事、あるんだ。
しかし、もう一つ。
『俺、かえちゃんの事好き。ホンキで。』
登校中。唐突に告げられたそれに、返す言葉が見つからなかった。
何となく解ってはいた。話している時、今咲さんしか映さないその瞳。
最近、女子の話をしなくなったその言動。きっと…そうなんだろう、と思っていた。
ふと、あの日の遊園地の光景が脳裏をよぎった。楽しそうに喋る2人の後ろ姿。
俺は、楽しく思わせるどころか、会話すらまともに出来なかった。そんな俺に、勝ち目がないのは
分かり切っている事。それに、それを押し返す権限は…。俺にない。

1ヶ月前 No.17

麗華 ★W4M3w3rskR_xKY

花楓side

変化は突然に起こって、4人で帰るようにになったりとか、挨拶を交わす様になったりとか。
数えれば両手では足りないだろう。
でも何よりも変わったのは、綾ちゃん。

『あたし、櫛田が好きなんだ…。応援、してくれる?』

そう告げられた時、ストンと落ちることはなかった。何かが突っかかって、うまく返事をできなかった。
多分、できていても表情は硬かっただろう。
別に、特別な想いがあるとかじゃない。逆に、何とも思ってない。
なのに…どうしても、快く思う事が出来ない。何でだろう…。



「あ、かえちゃん」
晃君だった。珍しく、隣には櫛田さんが居ない。私にも、綾ちゃんが居ない。
「どうしたの?」
「今度さ、一緒に勉強しない?」
晃君とは、遊園地に行った日から少しずつ仲良くなって、よく一緒に勉強をしてた。
大体は図書館。たま〜に、ファミレスとかに行く。
「うん、どこにする?図書か「俺んちは?」…え?」
「俺んち、どう?」
「あぁ…でも、分かんない「いつも別れるとこで、待っててくれればいい。」…あぁ、うん。
じゃ、綾ちゃんも「2人が良い」………」
真剣な声と眼差しに、結局、晃君ちで2人で勉強をすることになった。

1ヶ月前 No.18

麗華 ★W4M3w3rskR_xKY

花楓side

私は、そうやっていろんなことで押し切られてきた。
今の晃君の事もそうだけど、昔からそう。だから私は、いつも弱いまんまなんだ。



少し蒸し暑い日だった。
夏が近づいてきて、夜が、短くなった。星が、見えづらくなってきた。
「ごめん、待った?」
「ううん、全然」
恋人みたいだな…、この会話。部活の後じゃないから、ジャージじゃないんだ。
なんて、変なことを考えながら少し間をあけて隣を歩く。何となく、2人きりは…。
「やっぱ、他のトコの方が良かった?」
「ううん、別に私はどこでも気にしないし」
フォローで言ったつもりなのに、晃君は微妙な顔をしていた。
「男んちはさ…、うん。」
「あぁ…え、うん。なんかゴメン。」

29日前 No.19

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

晃side

かえちゃんを好きになってから、俺は、遊ぶのを辞めた。
今までずっと遊びとして付き合ってた子とはみんな別れた。怒鳴られたし、叩かれたし、散々だった。
だけど、それでも、それでもかえちゃんを手に入れたいと思った。


家に着いた。
本当に好きな人が自分の家に居るというのは、なかなか現実味が無くて、夢の様な儚さがあった。
「晃〜」
兄ちゃんの声が、上から聞こえてきた。
その声に、かえちゃんも俺も反射的に聞こえたほうを見る。
足音を立てながら、階段を降りて来て、かえちゃんを見た。あ、ヤバイかも…。
「え、晃の彼女?めっちゃ可愛いじゃん」
違うよ。 普段だったら、そう言ってすぐに否定した。
だけど、この時ばかりは……、かえちゃんの反応をみて見たいと思った。
「いや、違いますよ。そんなわけないじゃないですか。」
当然のことなのに、傷ついている自分に驚いた。何だ、こんな気持ち、持ってたんだ…。
「ふ〜ん、そっかぁ。可愛いね、君。名前は?」
「えっと…今咲です。今に咲く。」
2人のやり取りを見てると、無性に腹立たしくなって、焦りが出て来て、不安が出てきた。
ぐちゃぐちゃと、醜い感情が渦まいた。だめだ、これを、俺は知らない。
「ううん、下の名前」
「花楓です。花に、楓で。」
「あぁ、じゃあ…何だっけ、櫛田?と名前一緒じゃん。」
「あ、知ってます。晃君の友達の「うんうん、櫛田楓。めっちゃイケメンだよねー」あぁ…はい」

26日前 No.20

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

晃side

「もういいよ兄ちゃん。上行くからさ」
2人の会話を無理やり絶った。このままじゃ、俺だけ置いて行かれそうで、ずっと続いていそうだった。
胸が、ヒリヒリと痛んだ。これは、何の痛みなんだろう…。
「え、何すんの?もっと花楓ちゃんと喋りたいんだけど、俺」
「は?勉強だよ。」
俺のその言葉に、兄ちゃんは心底驚いたような顔をした。そして
「どうしたの…、今日で世界終るかな。」
何て、おかしなことまで言い出した。確かに、前の俺からは想像できないだろうけど…。
「終わる訳無いじゃん。行こ」
「あぁ、うん」
無理やり、かえちゃんと2階の自分の部屋へと連れて行った。



「じゃ、はじめよっか」
部屋に入った時の沈黙を破ってくれたのは、かえちゃんだった。
はぁ…、俺ってこんなできない奴だったっけか。……情けないなぁ、ホントさ。
どうしよう、でも、他の奴に譲るのはヤダ。

23日前 No.21

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

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21日前 No.22

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

晃side

「じゃあね、今日はありがと」
送っていくよ。そう言ったけど、かえちゃんに断られた。いや、拒まれたっていうのかな。
「うん。あ、そうだ。4人で遊びに行こうね。いつか」
「え?あぁ、うん。行こ行こ!」
夕日が、丁度かえちゃんの後ろに下った。悲しいほどきれいに、かえちゃんの姿が照らされる。
やっぱり綺麗だな…、可愛いな…、モテるだろうな。そんな事を思った。
きっと、俺のあの言葉だって、好きな奴だったら拒むことはなかったんだろう。
そう思うと、行き場のない醜い妬みと、胸の痛みが沸々と出てくる。
こんな気持ちの静め方を、知らないんだけど、俺。

21日前 No.23

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

晃side

「じゃ、また月曜。バイバイ」
そう言うと、かえちゃんは俺から離れていく。その姿を、見届けずにはいられなかった。
だって、好きな奴じゃん。何かあったら心配だし、一番に駆けつけたいと思うし。
……でも、いつから俺、こんな風になったんだろう。


家の中に入ると、さっそく兄ちゃんに問いただされた。
「ねぇ晃!あのかわいい子だれ?!!?!?!?」
家中に木霊する様なでかい声を耳元で出されても…。めっちゃ耳が痛いんですケド…。
「クラスの子だよ。友達」
「……嘘つけ!!お前今ままで、友達って言う女子を家に連れてきたかっ?!」
「……」
正論だった。位置づけは友達だ。でも、俺の中では友達プラス好きな人で…。
だから、2人だけになりたくて、家に呼んだわけで…。
「本当に、友達だし…」
「……ふーん。まっ、もういいけどさ。奪われるぞ、あの子」
兄ちゃんは踵を返して、自分の部屋に戻って行った。

20日前 No.24

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side

夏が近づいてきた。
蝉の声とか、青い草木とか。なんか、夏って感じがする。 ワクワクする。
でも、運動音痴な私にとって大変な行事……。体育祭がある。
「どうしよ、綾ちゃん…」
「まぁ、頑張ろーぜっ!!」
私の背中をドンッと叩いて、二カッと笑う。
いつもなら勇気づけられるそれも、この悩みばかりはダメっぽいです。


「かえちゃーん」
歩き始めようとすると、呼ばれた。振り返ると、隣には櫛田さんが居た。
「おはよ」
「この前話してた遊園地だけどさ、夏休み行こうよ!!」
晃君のその言葉に、二人が不思議そうな顔をする。あぁ、なんか勘違いされたくない!!
「えっとね、この前廊下で会って…。で、喋ってたの。遊園地、また4人で行きたいねって」
私のその言葉に、二人とも納得したようだった。
笑顔で、そうだねー と頷いてくれた。ただ、晃君は、少し曇った顔をしていた。
ちょっとダメだったかな…、嘘つくの……?

19日前 No.25

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side〔数日後〕

さっそく、体育祭の練習が始まった。部活に入らず、毎日ゴロゴロの私にとっては拷問です…。
50メートル走だって、ぎりぎり最下位いじゃないかどうか。
もう嫌…、何でこんな行事あるんだ!!
こんなの、運動神経の良さを見せつけるための行事じゃん。こっち側になってみれば、辛さが解るわ。



やっとの休憩中。
水筒の中のお茶を勢いよく飲む。それを見て、綾穂ちゃんが滅茶苦茶驚いた。
花楓が汗かいてる! すごい勢いで飲み物飲んでる!! って。
「あっ」
水筒を口から話して前を見ると、櫛田さんが居た。何人かの男女に囲まれている。綾ちゃん、平気かな…。
心配になったけど、横を向くことはできなかった。見たら多分、無理して強がるから。
綾ちゃんは強いから。優しすぎちゃうから。人の事を、考え過ぎちゃうから。
「かえちゃーん」
「あ、お疲れ」
何て言ったけど、私の方が実際疲れてる。汗ダクダクだし…。
晃君なんて、サラサラだよ。前髪がおでこにくっつくなんてこと、なってない。羨ましい…、代わってよ、私と。
「大丈夫? 結構キツめだったよね、練習。」
そう言って私の隣に座る。ふわっと、いい香りがした。
シャンプーとか、そういう系の爽やかな匂いだった。どうしよ、私くさいよね…。

19日前 No.26

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side

「あのさ、私くさい…?」
「「え?」」
私の言葉に、2人が同時に反応した。
少しの沈黙の後、それが可笑しくって3人で笑った。
また少しして笑いが収まると、今度は私の質問へと入った。
「どういうこと?くさいって」
綾ちゃんが聞いてきた。どういう事って……、そのままなんだけどな。
「私、汗臭くない?」
「嘘!あたしなんかめっちゃ臭いよ?花楓いい匂いするじゃん。何だろ…夏にいい匂い!
なんか、じめっとして無くて爽やかな感じ?」
「え?」
「要するに、水色とかの匂いって訳だ。」
晃君が言った。なんか、理解してるらしい。
私だけ? 意味わかんないの? え、私の方が一緒に居る時間長いのに…?!?!?
「え??」
「ミント系な?シャンプー?」
「え???」
聞けば聞くほど、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「とにかく、汗臭くはないの?」
「「うん」」
「良かったぁ」
ホッと胸をなでおろす。くさいなんて思われてたらどうしようかと思った。
「楓ー」
晃君の声が、耳の、体のすぐ近くで響いた。
一瞬、自分を呼ばれたのかと思って、ドキリとした。どうかしてる…。
誤魔化すためにか、右耳に髪をかけた。沈まれ、よく解らないやつ。ざわざわするやつ。

19日前 No.27

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

楓side

今咲さんを好きになって、自分がこんなにも情けないんだ…と言う事に気付いた。
散々人を振っといて、自分は降られる勇気……告白する勇気すらない。今まで告白しに来た人達の、勇気に胸が苦しくなった。
何で、あんなひどい事をしてしまったんだろう……。
俺は、振られることが解ってるから、だから告白が出来ないんだ。結局、自分が一番なんだ。



「楓ー」
体育祭の休憩中。晃が俺の事を呼んできた。
隣には、今咲さんと鴫原。羨ましい、あんなふうに、行動できるのが。
俺は…何なんだろう。言い訳ばっかして、何もしないで…。なのに今咲さんが誰かに取られるのは嫌で…。



何かしないと…。
後から後悔する前に。

16日前 No.28

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

綾穂side

花楓は、昔からすごく人気があった。
表立ってすごかった訳じゃ無い。花楓自身も引っ込み思案で人見知りで、すごくおとなしかったから。
でも、男子からのモテようと、女子からの羨望の眼差しは凄かった。
花楓はあたしが人気者だったとか言うけど、実際は誰よりも花楓が注目を受けていた。それは紛れもない事実だった。
「綾ちゃん」
そうやって、羨望の眼差しを受ける花楓から呼んでもらえることで、優越感に浸っていた。
あたしは特別なんだ。皆と花楓の関係とは違う、親友なんだって。だからあたしの方が何倍も…、花楓に依存してる。
花楓なしじゃ…、あたしはただの明るい馬鹿でしかない…。皆、花楓がそばに居るからあたしの所に来るんだよ…?
櫛田と渋谷だって、最初は違ったかもだけど、今は絶対花楓の事、好きなんだから。

そんなの、馬鹿なあたしだってわかる。

16日前 No.29

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side

なぜか、超が付くほど運動音痴な私が『体育祭実行委員』に推薦された。
クラス1のイケメン、成澤 蒼汰(なりざわ そうた)君と。
選ばれた時の私を見る女子の視線ときたら…。
少なからず私を選んだであろう子だっているはずなのに、刺々してて痛々しい視線ばかりで…。
こっちは迷惑なだけですよ…。


委員の仕事はさっそく、信任された日から始まった。
「1年2組、今咲 花楓です。よろしくおねがいします」
「1年2組、成澤 蒼汰です。よろしくおねがいします」
1〜3年まで、一通り自己紹介を終えると、働きの大まかな説明と詳しく書かれているというプリントを渡された。
「仕事は、同じクラスの男女をペアとし、やってもらいます。なので、書かれている仕事を見て、2人で相談して決めて下さい。」
委員長の言葉に、数秒動けなくなった。
嘘…、それじゃ本当に私…………クラスの女子の餌食になる?!?!?
仕事だけはせめて、一緒にならないようにしようと思ったのに…。あぁ、皆の視線が目に浮かぶ。

16日前 No.30

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side

会議が終わると、急いで玄関へ向かった。
綾ちゃんが、待ってるから。 待たせちゃ悪いし。
「ごめんね綾ちゃん、待ってもらって。」
「ううん、お疲れ。てか、あたしも今部活終ったばっかだし」
そうやって、二カッと笑った。綾ちゃんは、いつも私に優しい言葉をかけてくれる。
いつだってそう、昔から。昔から綾ちゃんは変わらず、優しいまま。

帰ろうと、歩き始めたとき。
「今咲さん」
後ろから、呼び止められた。振り返ると、成澤さんだった。
少し息が切れてる、走って追いかけてきたんだろうか…。
「どうしたの…?」
「これ、忘れてた。」
そう言って手渡されたのは、本だった。
「あぁ、ありがとうわざわざ」
本を受け取ると、成澤さんが言った。
「今咲さんもさ、夜星 聖、好きなの?」
「えっ、あぁ、うん」
かなりマイナーな作家なのに…、そう思った。何で、知ってるんだろう…。
好きなのかな、成澤さんも。
「ホント!俺も好きなんだ、夜星 聖。」
「そうなの!」
「うん。デビュー作の、可憐で好きになって」
「私も!!今度また話そ!!」

16日前 No.31

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side〔次の日〕

すごくウキウキしながら学校に来た。
成澤さんと話すのがすごく楽しみ!! どんな本知ってるかな。
「ホント楽しそうだね、花楓」
「うん、だって初めて話しが合う子見つけたんだもん」
私がそういうと、綾ちゃんはフッと静かにほほ笑んだ。
その笑顔につられて、私もへへと笑う。


「おはよう、成澤さん」
ラッキーなことに、成澤さんの席は、私の前。
やった、思い切り喋れる!
「うん…」
え? 私の思いとは裏腹に、拍子抜けする返し方だった。
え、うん…って。挨拶、苦手なのかな?
私も結構そうだし。
仲いい子にしかできないし。

15日前 No.32

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side

「かえちゃ〜ん」
教科書を片付け終わって、読書を始めようとしたとき。
廊下の晃君から呼ばれた。痛い痛い、皆の視線が…!!
かえちゃんって呼ぶのやめてもらいたいわ…、ホント。皆の視線、信じられないくらい痛い。
足早に教室を出た。
晃君は私の気持ちには気づきもせず、私の顔を見て、ん?なんかあった? なんて言ってきた。
晃君の腕を引っ張って、人目のない方へと言った。
「何?」
「え?どうしたの怒って」
「別に怒ってはないけどさ…」
嘘だ、少なからず腹が立ってる。私は静かに生活をしていたかったのに。
実行委員に選ばれたり、人気者の人たちが近くに居たり。何でだろ、私の周りはいつしか視線だらけだった。
「ノート、見せてくんない?」
「え?何で私?」
危ない、言葉を荒げるとこだった。
何でそんな事で私を呼ぶの…。あんな視線の数、受けなくたって済んだじゃん。
ホント、無神経だよね、晃君って。
「進学クラスじゃん?かえちゃん。だからさ、借りたくて」
「なんで櫛田さんじゃダメなの?」
「別にダメじゃないけどさ、汚いんだよね、字がさ」
「そんなの、ノート取らなかった自分のせいでしょ」
あぁダメだ…。話せば話すほど、イライラしちゃう。早く貸して離れよう。
うん、それが一番良い。
「…貸すよ、来て」
「ありがと!」
ニカニカと笑っている晃君に、もう怒りすら沸かなくなった。


「はい、今日5時間目にあるからそれまでに返して」
「うんOK。5時間目までね」

15日前 No.33

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side〔昼休み〕

人がまばらな校庭の、後者の目にある日の当たりが良いベンチで、綾ちゃんのお弁当を隣に置いて
私は一人でお弁当を食べていた。いつもなら綾ちゃんも一緒だけど、今日は部活の集まりがあるから遅れるらしい。
数十メートル先で楽しそうに笑い声をあげて遊ぶ男子を見ながら、独り黙々と食べ進める。
なんか、つまらない。寂しい。綾ちゃん、早く来て…。
昔は独りでも寂しいなんて思わなかったのに。綾ちゃんと関わるようになってから、変わった。
好きな人といる事の楽しさ、嬉しさ、喜びを教えられた。
「今咲さん」
「あぁ、どうも…」
横から呼ばれ見ると、櫛田さんが居た。片手にはビニール袋がぶら下げられている。
隣に晃君は……居ない。
「良い?隣」
「え?」
よいしょ、と私の隣に何の躊躇もなく座ってきた。
見られたら…とか、無いのかな。私は視線が痛いから嫌だけど…。
「今、晃居なくてさ。鴫原も居ないんだよね?」
「あぁ、うん。」
いつもなら多分、ココに座らせなかった。
だけど何でだろう、綾ちゃんが居ないから……寂しくて、人の温かさが欲しかった。
「あのさぁ」
しばらくの間をあけて、櫛田さんが喋り始めた。
私は何も言わず、横を向く。櫛田さんは少し緊張しているような面持ちで、ゆっくりと喋り始めた。
「俺、今週の日曜に試合あるんだ。で、応援……来てくれないかな」
「え?」
まさかそんな話だったとは…。いろんな感情がぐちゃぐちゃして、うまく喋れなかった。
驚きとか、意外だ…!!とか、少しの嬉しさとか。
「無理だったらいいんだ、場所だって「何やってるの?」……弓道」
「へぇ……、えぇ、意外!」
おかしさがこみあげてきた。弓道か…。
サッカーとかバスケとか、テニスとか、そっち方面かと思ってた。まさか弓道とは…。いや、カッコいいけどね。
「変…かな…?」
心配そうな顔で言ってくるから、 そんな事ないよ、カッコいいよ と言って笑った。
「でさ、どこなの場所」
「朝戸…」
「まぁまぁだね、距離」
「だから別に、無理だったら「どっちなのよ。来てほしいの、欲しくないの?」……欲しいです」
曖昧な櫛田さんに、意地悪だと思ったけど聞いてしまった。少し照れて赤くなった顔が、意外にも可愛い。
「じゃ、また時間とか送って。」
「うん、わかった。じゃ、晃来たから行くね、ありがと。今咲さん」
「いいえー」

13日前 No.34

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

楓side

「晃居ないしなぁ…」
取りあえずいつもの場所に向かって歩いていると、校庭のベンチに今咲さんが一人で座っていた。
珍しい、いつもなら隣には鴫原が居て…、喋ってる時なのに。
集まりとかかな…。
今しかない、そう思って、一生分くらいの勇気を出して歩いて行って、声をかけた。
「今咲さん」
「あぁ…どうも」
自分を映す大きな瞳、自分に向けられた視線に、微かに聞こえる生徒の声。
なんか、ダメだ。緊張する。勢いで隣何て座ったけど…。



「――応援……来てくれないかな」
一世一代の告白とは、こういう時のことだろうと思った。恥ずかしさやら色んなものがこみあげてきた。
大丈夫だ、今咲さんはこの言葉の意味を解っているわけはないだろう…。
高鳴って止まらない胸を鎮めるために、深呼吸をして自分に言い聞かせた。

10日前 No.35

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side〔放課後〕

自分の部屋へ行き、ベッドに座る。制服を脱いで代わりに服を着る。
そしてケータイを見ると、櫛田さんから連絡が来てた。

Re:今日の昼話していた事です。

日時:日曜日の朝8時から5時ぐらいまで
場所:朝戸ホール

もし送るのが無理そうだったら、俺と一緒に行きませんか?
俺、いつも一人で電車で行くんで。
あと、昼食も持ってきておいたほうが良いかもしれないです。
俺の誘いを受けてくれて、ありがとうございます

櫛田

9日前 No.36

麗華 ★6w5Zrp8Y83_xKY

花楓side

見た目よりも真面目な内容に、少し可笑しさがあった。
だってあんなチャラそうな晃君が隣に居て、あんなにキラキラしてて。
そんな櫛田さんが、こんなにも畏まった文章を送ってくるなんて。

わかりました。
連絡ありがとうございます、親に聞いてみます(o^―^o)

花楓


そう送って、ケータイをその場において下におりた。
応援って言ったって、別に何か特別なものじゃあるまいし適当に何か着ていこう。

9日前 No.37

麗華 ★0ee0QmQj9v_xKY

楓side

家に帰る途中、今咲さんに連絡をしようとケータイの電源をつけた。
が、打とうとしても文が浮かばない。打っても変な文で消す。
何回電源が落ちたか。
「はぁ…、分かんない」
家に帰って何をしていても結局、文は浮かばず、一時間かそれ以上考え抜いた末辿り着いたのは“手紙を丸写しする”こと。
あとは何か適当に‥‥…って無理だ。
それを悩んでたんだよな。でもまぁ…、男だ、決めろ!!
勢いで、送信した。
返信が怖くて、ケータイを机の上に置いてベットにあおむけで寝る。
「折角2人きりなんだし……、頑張らなきゃ、大会。いいとこ見せなきゃ」
壁に掛けられたカレンダーを見る。
あと数日。何とか入賞はしたい。
今まで一度も入賞したことのない県大会……。いつも、4.5位でおわる。
どうしてもあと1つが遠い。あと一戦が、一勝が、難しい。

8日前 No.38

麗華 ★UTEJSE4tLm_xKY

花楓side〔大会当日〕

結局、2人で電車で行くという事になった。
実を言うと、私は親に友達と遊びに行くとしか言ってない。
だって、櫛田さん(男)となんて言ったら……ね。


待ち合わせは、駅の改札口。
七分丈のジーパンと、赤のギンガムチェックの半袖。
応援だし、そんなに着なくても大丈夫だろ…?とおもって。
それに櫛田さんは、あんまりそういうの気にしなさそうだしさ。
「おはよ」
「おはよ」
先に挨拶をしてくれたのは櫛田さんだった。珍しい、先に挨拶をしてくるなんて。
無造作な髪と整った顔立ち、高身長。どれもこれも、学校と変わらないはずなのに…。
制服じゃないだけで、なぜか印象がグッと変わった。

5日前 No.39

麗華 ★mcQAICBXB2_xKY

花楓side

「じゃ、行こっか」
そういうと、私の鞄を 持つよ と言ってくれた。意外に優しいところがある…。
でもこれ、お弁当入ってるし崩されるとなぁ。でも、断れないし。
「ありがとう」
微妙に心の中が曇りつつも、断れない私はそれを渡す。
大丈夫かな…、そのお弁当は――。


駅のホームには独特の話す声と、幾千もの人の声、扉が開く音に地面を打ちながら歩く音。
とにかく音であふれかえっている。なぜかここに居ると、不思議な安心感に包まれる。

5日前 No.40

麗華 ★qYoO1XN5YG_xKY

花楓side

「……ん、……ん、……さん、…咲さん、今咲さん、今咲さん!」
「あぁゴメン!」
我に返ると、目の前には櫛田さんの顔。
うわっ、肌白すぎ。きれいな肌でニキビなんて一つもないし、大きな目。
とにかく……、モデルみたいなすごく整った顔だ。さっきから自分が受けてる視線に気づかないのかな。
「電車、もう来るよ」
「あぁ、うん…。」
ぎこちない答え方だったな…と、思った。私はもっと器用なほうだと思ったんだけど。
取り繕うのだって、簡単にできる様な感じがしてたんだけど。なんか、櫛田さんといると気が緩んじゃうな。
綾ちゃんといるときとは少し違う感じがする。



電車の中は休日と言えど、人は居て。座るところはもちろん、つり革すら握れそうになかった。
必然的にか、私と櫛田さんは端へと追いやられる。
「ごめん…、我慢して」
「大丈夫」
いわゆる壁ドン状態だ。外を向く私に、後ろから壁ドンしてくる櫛田さん。仕方ない、分かってはいるけど…。
息とか、ふんわりと漂う櫛田さんの匂いとか。全部がダメだ。なんか、ダメだ。
音楽を聴こう、そう思ってリュックからヘッドホンを取り出そうとする。
でも、動けないな…。隣にだって、人いるし。どうしよう…。
「取ろうか?」
「え?」
「ヘッドホン」
「何で…「聞こえてるよ、思ってることが」……ハイ、オネガイシマス。」
あぁ最悪。私って独り言を言っちゃうタイプだったか。よりにもよって、櫛田さんに聞かれるなんて…。

3日前 No.41

麗華 ★RTFb6fWLxI_xKY

花楓side

「はい」
「ありがと」
受け取ってすぐ、ヘッドホンをつけて音楽を流す。
こうやって私はいつも、自分と外とを切ってきた。遠すぎず、近すぎず、適切な距離で。
ふと、電車の窓に映る彼を見た。
すると、視線がバチッと合った。あ、櫛田さんもこっち見てたんだ…。
顔が火照って、恥ずかしくって、匂いがすごく気になりだして――。もうぐちゃぐちゃして、顔を俯けた。
見なきゃ良かった。何で、いつもしない事なんてしたんだろう…。

ダメだ、私が私じゃ無い。 おかしい、すごく。



「そういえば、綾ちゃんたちは?」
「え?」
会場に着いた時、ふと思い出して尋ねると彼は面白いくらい間抜けた顔をした。
「え…、綾ちゃんとか晃君とか」
「いや、来ない…けど」
「え?2人って事?」
「うん。2人が来るって、俺言ってないでしょ?」
「いや、でも普通2人はないでしょ?」
“2人きり”と言うと、余計にこのふいんきを強くしてしまいそうで、“2人”とだけしか言わなかった。
こんなところを、誰かに見られたらどうしよう。綾ちゃんの耳に届いたら。そんな不安でいっぱいだった。
応援してくれる?なんて言われて頷いたくせに、綾ちゃんの事が誰よりも好きなくせに。
どうしたらいいか分からなくて、でも帰っちゃうのも誘いを受けたのに申し訳ないから、試合会場に入った。

2日前 No.42

麗華 ★xaW6zyvfvY_xKY

花楓side

ぎこちないふいんきのまま、櫛田さんは会場へと入っていく。
“頑張ってね。”
その言葉は、喉もとで詰まって、外へ出すことはなかった。もちろん、彼の耳に届くことすらも。
私は結局、いつも弱虫なんだ。面倒事には巻き込まれたくなくて、息を止めるかのように毎日を過ごした。
目立たないように、波風を立てないように。
いつも“一番であり続けないよう”に。だから分からない。
こういう、恋愛絡みの事は。友達が絡む事は。
小説や映画や、物語の中でしかありえないと思ってた。こんなの、自分にある訳無いんだから って。



でもこうやって、心臓が飛び出そうなくらいドキドキしながら見てるのは……何でだろう。
櫛田さんだからだろうか、試合が好きだからだろうか、それとも……罪悪感と少しの善意からか。
「頑張って…」
本人が居ないと、いくらだって言えるのに。どうしていつも…、私って器用に生きられないんだろう。
不器用で、不細工で、不格好で、何もできなくて。
綾ちゃんに助けてもらって、やっとまともになれたと思ったのに――。
「頑張って…、頑張って…!!」
神に祈るような気持ちで、手を合わせて俯いて、願い続けた。
どうか――、勝ち進みますように。

2日前 No.43
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