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恋なんてするはずが無かったのに

 ( 恋愛小説投稿城 )
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麗華 ★V7rtLKEZct_xKY

*櫛田 楓(くした かえで)
 1−1.端正な顔立ちと文武両道さで学年での人気は群を抜いている。
 無気力な性格だが、何事もそれなりに終わらせる。
 音楽を聴くことと読書をすることが趣味で、鞄の中には常に本一冊とヘッドホンが入っている。


*今咲 花楓(いまざき かえで)
 1−2.母親譲りの綺麗な顔立ち。運動は苦手だが勉強は得意。
 とてもおとなしく、静かなためクラスの中では『地味子』『空気』と呼んでいる人も。
 友達と呼べる人はあまりいない。音楽を聴くこと、読書、料理が趣味。


*鴫原 綾穂(たはら あやほ)
 1−2.花楓と小学校のころから仲が良い。
 明るく面倒見の良い性格からクラスの人気者。思った事は言わないと気が済まないタイプ。
 テニス部に所属していて、1年レギュラー。優しすぎる花楓を心配している。スポーツが好き。

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麗華 ★qYoO1XN5YG_xKY

花楓side

「……ん、……ん、……さん、…咲さん、今咲さん、今咲さん!」
「あぁゴメン!」
我に返ると、目の前には櫛田さんの顔。
うわっ、肌白すぎ。きれいな肌でニキビなんて一つもないし、大きな目。
とにかく……、モデルみたいなすごく整った顔だ。さっきから自分が受けてる視線に気づかないのかな。
「電車、もう来るよ」
「あぁ、うん…。」
ぎこちない答え方だったな…と、思った。私はもっと器用なほうだと思ったんだけど。
取り繕うのだって、簡単にできる様な感じがしてたんだけど。なんか、櫛田さんといると気が緩んじゃうな。
綾ちゃんといるときとは少し違う感じがする。



電車の中は休日と言えど、人は居て。座るところはもちろん、つり革すら握れそうになかった。
必然的にか、私と櫛田さんは端へと追いやられる。
「ごめん…、我慢して」
「大丈夫」
いわゆる壁ドン状態だ。外を向く私に、後ろから壁ドンしてくる櫛田さん。仕方ない、分かってはいるけど…。
息とか、ふんわりと漂う櫛田さんの匂いとか。全部がダメだ。なんか、ダメだ。
音楽を聴こう、そう思ってリュックからヘッドホンを取り出そうとする。
でも、動けないな…。隣にだって、人いるし。どうしよう…。
「取ろうか?」
「え?」
「ヘッドホン」
「何で…「聞こえてるよ、思ってることが」……ハイ、オネガイシマス。」
あぁ最悪。私って独り言を言っちゃうタイプだったか。よりにもよって、櫛田さんに聞かれるなんて…。

3ヶ月前 No.41

麗華 ★RTFb6fWLxI_xKY

花楓side

「はい」
「ありがと」
受け取ってすぐ、ヘッドホンをつけて音楽を流す。
こうやって私はいつも、自分と外とを切ってきた。遠すぎず、近すぎず、適切な距離で。
ふと、電車の窓に映る彼を見た。
すると、視線がバチッと合った。あ、櫛田さんもこっち見てたんだ…。
顔が火照って、恥ずかしくって、匂いがすごく気になりだして――。もうぐちゃぐちゃして、顔を俯けた。
見なきゃ良かった。何で、いつもしない事なんてしたんだろう…。

ダメだ、私が私じゃ無い。 おかしい、すごく。



「そういえば、綾ちゃんたちは?」
「え?」
会場に着いた時、ふと思い出して尋ねると彼は面白いくらい間抜けた顔をした。
「え…、綾ちゃんとか晃君とか」
「いや、来ない…けど」
「え?2人って事?」
「うん。2人が来るって、俺言ってないでしょ?」
「いや、でも普通2人はないでしょ?」
“2人きり”と言うと、余計にこのふいんきを強くしてしまいそうで、“2人”とだけしか言わなかった。
こんなところを、誰かに見られたらどうしよう。綾ちゃんの耳に届いたら。そんな不安でいっぱいだった。
応援してくれる?なんて言われて頷いたくせに、綾ちゃんの事が誰よりも好きなくせに。
どうしたらいいか分からなくて、でも帰っちゃうのも誘いを受けたのに申し訳ないから、試合会場に入った。

3ヶ月前 No.42

麗華 ★xaW6zyvfvY_xKY

花楓side

ぎこちないふいんきのまま、櫛田さんは会場へと入っていく。
“頑張ってね。”
その言葉は、喉もとで詰まって、外へ出すことはなかった。もちろん、彼の耳に届くことすらも。
私は結局、いつも弱虫なんだ。面倒事には巻き込まれたくなくて、息を止めるかのように毎日を過ごした。
目立たないように、波風を立てないように。
いつも“一番であり続けないよう”に。だから分からない。
こういう、恋愛絡みの事は。友達が絡む事は。
小説や映画や、物語の中でしかありえないと思ってた。こんなの、自分にある訳無いんだから って。



でもこうやって、心臓が飛び出そうなくらいドキドキしながら見てるのは……何でだろう。
櫛田さんだからだろうか、試合が好きだからだろうか、それとも……罪悪感と少しの善意からか。
「頑張って…」
本人が居ないと、いくらだって言えるのに。どうしていつも…、私って器用に生きられないんだろう。
不器用で、不細工で、不格好で、何もできなくて。
綾ちゃんに助けてもらって、やっとまともになれたと思ったのに――。
「頑張って…、頑張って…!!」
神に祈るような気持ちで、手を合わせて俯いて、願い続けた。
どうか――、勝ち進みますように。

3ヶ月前 No.43

麗華 ★GqCbcUELEg_xKY

楓side

いつもの試合よりも、何倍も鼓動が早くなった。
もう何年も来ているこの会場が、また違うふいんきに包まれている気がした。
観客席を見ると、彼女の…、今咲さんの姿があった。
良かった、まだ帰ってない。そんな安心感と一緒に、不安も溢れてきた。
もし失敗したら…、いつも通りできなかったら…。
悪い結末ばかりが頭を埋め尽くし、周りの騒音なんて一切聞こえてこなかった。
「大丈夫…、大丈夫」
そっと呟いて、心を落ち着かせる。
こんな弱いからダメなんだ俺は。こんなチャンスきっともうない。だったら……、思いっきりやってやろう。



12時少し前。午前の部が終わった。
何とか、勝ち残れた。あと2回勝てばベスト4。頑張らないと…。
「櫛田さん」
会場を出ると、今咲さんが居た。ホッと、心が落ち着いた。
「どうしたの?」
「お昼、どうする?」
「一応、パンとかおにぎりとか」
俺がそう言うと、今咲さんが少し俯いて、間が空いた。
「……ごめん、お弁当作ってきたんだけど要らなかったね」
「え?」
「ううん、何でもない」
何て言ったらいいか分からなかった。“食べるよ”そう言えば良い?
無理だ、分からない。どうすれば…。
悲しそうな顔がどんどん消えて笑顔に変わった。
「どこで食べる?」
笑いながら、今咲さんが、そう言った。
結局俺は、何もできなかった。悲しみを、自分で隠させてしまった。

2ヶ月前 No.44

麗華 ★KdVrKmXfcX_xKY

楓side

心地よく頬を撫でる風が吹いていた。
もう夏間近だというのに、随分と爽やかな日。木陰のベンチに座って、食べることにした。
そうだ、隣に座ったのは“あの日”が初めてだった。そしてそれが…、これをつくった。
「…楓君」
「え?」
聞き間違いなのかと思った。今、名前を呼ばなかった…?
俺の、名前を。今咲さんが。
「楓君って、呼んでいい?」
俺の俯けた顔を見るために、首を少し傾けて聞く姿に、胸の鼓動が加速した。
サラサラと風で髪が靡くと、シャンプーの匂いが微かに、その場に名残惜しそうに残った。
「…あぁ、うん」
情けない返事だな、と思う。もっと、シャキッとできないかな…なんて。
「よかったぁ。断られたらどうしようかと思った」
呟くようにそっと言ったその言葉に、そんな事しないよ と心の中で呟きながら、フッと笑った。
実際、口に出すわけ、無いんだからさ。
「じゃあ俺は何て呼ぼう…花楓…さん、花楓…。」
やばい、なんか言ってるだけで恥ずかしくなってきた。視線、分かるし。
「今咲さんは、皆にどう呼ばれてる?男子とかに」
「晃君はかえちゃんでしょ、数人の男子は今咲で、あとは今咲さんかな。仲良くなった男子とかは花楓だけど」
え、選択多すぎるだろ…。花楓?花楓さん?今咲?今咲さん?
いやでも、呼び捨てってなぁ。でも、えぇ………。





「花楓でいいよ。」
「え?」
「同じ名前同士だし、なんか特別感あるじゃん?」
二カッと笑う今咲さんの顔を見て、やっぱり優しいな…と、ひしひしと思う。
俺が選択に迷う時、困ったとき、必ず今までそっと一つの答えに導いてくれた。それも本当にさりげなく。
「うん…、じゃあ花楓」
「楓君」
「うん」
少しの沈黙の後、名前で呼ぶのがなんだか急におかしく思えて、笑った。
なんだか、体がフワフワと浮き上がるような嬉しさと温かさがあった。

2ヶ月前 No.45

麗華 ★KdVrKmXfcX_xKY

楓side

昼食が終わって、試合が始まる10分前。中のソファーに座って、2人で話していた。
「誰かに試合を見て貰うなんて、いつぶりだろ」
自分に心の中で尋ねたつもりだったのに、声に出してしまっていた。
「え?」
「あぁ、いや…」
「何か意外だな、楓君」
顔を上げた先のしっとりとしたその眼差しに、目が離せなくなった。
言葉が、出てこなかった。浮かんでこなかった。
「え…」
「何か、もっと華やかな人かと思った。まぁ、十分華やかなんだけど」
「華やか?」
「うん、沢山の人に囲まれてて私とはまるっきり違う人間…みたいな。」
言葉を優しく包んでくれているのが分かった。何となく、直感的に。
女子と遊びまくってそうな奴、そんなところだろうな。だって、散々言われてきたし。周りから。
「でもね、ううん、だからかな、なんか嬉しいの。こうやって一緒にどっか行ったり、食べたり。あ、2人はちょっとまずいけどね。なんか、何て言うんだろうな。ちょっと近い存在になった気がする、みたいな」
微笑みながらそう言った彼女の顔は、恥ずかしさからなのか頬が赤くなっていた。

2ヶ月前 No.46

麗華 ★JRKATUNbcC_xKY

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2ヶ月前 No.47

麗華 ★JRKATUNbcC_xKY

花楓side

その後、来た電車に乗って、家に帰った。
家まで送るといわれたけれど、断った。
「じゃあ、また月曜」
駅から歩いてしばらくたった私と楓君の家の分かれ道。
「うん」
「あ、このこと。綾ちゃんたちには言わない。約束、守ってよね?」
「解ってるって」
「不安なんだよ、絶対!言わないでね。いったらそうだなぁ……、きるから」
私がそう言うと、楓君は難しいのか顔をゆがめながら尋ねてきた。
「何を?」
「関係を」
「あぁ、うん。大丈夫だよ。話したりなんかしないから」
夕日が斜めから差す、楓君の顔。整った顔立ちで、余計に映える。
「じゃあ、またね。今日はありがと、楽しかったよ。今度は“4人で”行こうね」
「そうだね、考えとく。花楓も考えていてよ」
「うん」

2ヶ月前 No.48

麗華 ★ZapAgD9OOv_xKY

花楓side〔月曜〕

「おっはよー花楓っ!」
背中をポンッと叩いて、笑う。いつもの綾ちゃん。
だけど今日はなんか、フワフワしてた。笑顔がピンクで、羽が生えているようだった。


「おはよーかえちゃん」
「あ、おはよう」
制服のポケットに手を突っ込みながら歩いて来る晃君と、その隣を歩く楓君。
周りの視線は、2人に集まっていた。
「おい、あたしへの挨拶は!!」
「はいはい、おはよー」
棒読みの晃君に向かって、綾ちゃんがバンッと叩く。
「痛っ!!馬鹿力だな…」
そんな2人を見て、楓君と私は笑った。
「あ、かえ……今咲さん」
あぁそうだ。急に名前呼びになっても、おかしいのか…。
瞬間、少しの怒りはあったけれど、その意味を知ってすごいな…と思った。
「何?」
「この前さ、4人でどこかいくとこ探そうって言ってたじゃん?水族館、どう?」
「私はプラネタリウムかな」
「あたし水族館に一票!」
「俺はかえちゃんに一票!」
隣でじゃれあっていた2人が言ってきた。
「どうしよっか……」
私がそう言うと、楓君が不思議そうな顔で言った。
「両方行くんじゃないの?」

2ヶ月前 No.49

麗華 ★ZapAgD9OOv_xKY

花楓side

結局、両方行くことになった。
水族館が来週の日曜。プラネタリウムが再来週の日曜。


「かえちゃ〜ん」
授業が終わってすぐ、晃君に呼ばれた。
「何?」
「楓がさ、話があるんだってさ」
「あ、ほんとだ…」
気付かなかった。後ろに居たの。
楓君って、気配消すの上手過ぎない? いつもはあんなに目立ってるのにさ。
人気のすくないところに行くと、楓君は周りをキョロキョロとみて言った。
「あのさ、水族館行った後……2人で、どこか行けないかな?」
「はぁ……」
なんて答えたらいいのか分からなくて、間抜けな答え方になった。
「どこでもいいんだ。だから「私の家にする?」……え?」
「見られると私、困るんだ。色々と事情があるんでね。」
別に嬉しがるようなことは何も言ってないはずだ。
なのに楓君は………満面の笑みで、頬まで赤くして、とにかく嬉しそうだった。
「分かった。じゃあ、また」
「あぁ、うん」
え、何? 私このためだけに、ココに呼ばれたの?
いや確かにみられると困るんだけどさ、だからって……。

2ヶ月前 No.50

麗華 ★ZapAgD9OOv_xKY

楓side

朝、また4人で出かける場所を離してて水族館とプラネタリウムになった。
なんか、Theデートスポットって感じがする…。
また2人で会いたいな…。でも、1人じゃ会いに行けないし…。
「あのさ、晃――」
「はぁ…。何でこんな奴がモテんだろ」
呆れた苦笑でそういうと、席から立ち上がり花楓を呼んでくれた。
「ありがと」
そういうと、晃は『頑張れ』と言ってくれた。
何も言ってなかったのに、分かるんだな…。やっぱり、さすがだな。
あんまり人が来ない場所に行った。
なんか2人だけみたいで、世界が切離されたみたいで……緊張が。


遊びに誘うと、すんなりOK(多分…)がもらえた。なんと、花楓の家で。
相手から2人きりの状況を作ってもらえるなんて、すごいラッキーでしょ。
何しようかな…。
今から想像するだけで、顔がニヤケそうで。手で、口を隠した。

2ヶ月前 No.51

麗華 ★0kvFxNH4RZ_xKY

綾穂side

ここ数日、花楓と櫛田の距離が近くなった気がする。
元々櫛田は花楓が好きで、でも花楓は鈍感で気付いてなくて…、そんな煩わしそうな関係だった。
でも今は……、少なからず花楓はまだ、櫛田の気持ちに気付いてないけど、気付いたらどうするんだろう…?
告白するのかな、付き合うのかな、応援してくれるかな、あたしが振られるのかな……。
色んな可能性が出て来て、不安と焦りが積もっていくばかりだった。
花楓は、あたしとは違う側の人間。無意識に人を惹きつけて、決して離さない。魅せるものが、溢れんばかりに有る。視線はいつも……花楓にある。どこへ行ってもあたしは、その次だった。



「綾ちゃん、行こ」
「…うん」
いつだってあたしは…、どうやったって“花楓には敵わない”んだ。
でもどうしようかな、櫛田の事はどうしても好きで諦められないな。奪ってでも、欲しい。
いつも諦めてるんだもん、良いよね………?

2ヶ月前 No.52

麗華 ★0kvFxNH4RZ_xKY

花楓side〔日曜〕

いつも通りのジーパンと、シャツにカーディガン。
少し、肌寒い日だった。
「おはよ、かえちゃん」
「おはよ」
あいさつを返し、晃君の隣に立って2人を待つ。
「俺さぁ、好きな子居るんだ」
「えっ?!」
突然、呟くように言われたその言葉に、驚かないはずが無い。晃君を見ると、どこか遠くを見ていた。
「……え、誰なの…?」
私がそう言うと、ふっと笑って言った。
「かえちゃんだよ、気付かなかった?」
何も言葉が出なかった。頭が真っ白って、このことかな。
何て言ったらいいか分からなくて、だからって無視なんて、もっとしちゃいけなくて…。
「あり‥‥がと」
声はあからさまに震えていて、でもそれをどうする事も出来なかった。どうすれば、良かったの?
「ごめんね、かえちゃん。本当は、ずっと好きだった。」
悲しみが浮かぶ笑顔と少し焼けた肌。
「何で…?」
「え?」
「泣かないでよ、泣いてほしくない」
私のその言葉を受け、晃君は自分の顔に手を当てた。次の瞬間、ハッとした。
「ホントだ、ダサいな俺…」
「………返事は、しっかり考えて返すから…。待ってて」
「優しいね、かえちゃんは」
優しくなんてない。その日を乗り切るための、虚言に似た……言葉。
自分に都合のいい、言葉。

2ヶ月前 No.53

麗華 ★0kvFxNH4RZ_xKY

花楓side

沈黙になって数分後、2人が来た。良かった、見られなくて。
晃君はさっきまでの事が嘘のように、元に戻った。いつもの晃君に戻った。
「じゃ行くぞ!!」
楓君が調べてくれた道に沿って、私たちは進んでいった。


「よし!じゃ今回も別れよ!」
綾ちゃんが期待が満載の笑顔で私たちの方を向く。
楓君と晃君は少し考えてから、微かに頷いた。
「じゃあ……2時間後、ここ集合ね。お昼食べよ!!」
その言葉を合図に、私たちは散った。最初は、晃君と。
あぁなんか……、色々と気まずい。
「どこ行く?」
優しく微笑みかけてくれた。意外にも、大丈夫なのかな…。
心配しなくていいのか。
「じゃあまわってこ!順番に」
私がそう言うと、晃君はパンフレットを開いた。
「そうだね、それがいいかも」

2ヶ月前 No.54

麗華 ★0kvFxNH4RZ_xKY

晃side

「みてみてあれ!」
「どれ?」
かえちゃんが指さしたのを見ようと、顔を横に並べた。
横目でかえちゃんを見たけど、悲しい。
まったく気にしてないみたいだった、この状況に。
「楓だったら…」
「ん?なんか言った?」
「ううん、で、どれ?」
「ほらアレだって。上に一匹でいるやつ」
ほら、やっぱり気にしてない。視線は上にしかなくて、心は俺にない。
じゃあ誰だ…? 楓…? それともほかに?
考えてしまうほど、終わりのないこの話は俺を暗くさせるばかりだた。
最初は喋ってくれていたかえちゃんも、何かを察したのかほとんどしゃべらなくなった。
無言のまま、時間は過ぎた。

2ヶ月前 No.55

麗華 ★GcpyEBRzsA_xKY

楓side

「何するか…」
「買い物行こうよ!」
鴫原に腕を引っ張られて、強引に連れていかれた。


「何買うの?」
「おそろいのストラップ!」
「はぁっ?!」
驚いて、大声を上げてしまった。いや、無理だって、おそろいなんて。
「いいじゃん!買おうよ」
「無理」
笑顔でストラップを差し出してくる鴫原の手を押しのける。
すると、今日に静かになった。今までぎゃあぎゃあ騒いでたのに。
「……花楓だったら、買うんでしょ」
「え?」
最初、聞き間違いかと思った。でも、顔を見て分かった。確信している顔だ。
何となく、俺と似ている顔だ。
「これわね、友達同士のお揃いのやつなの。恋人同士は、また別にある。………だめ?」
「…………」
情けないけれど、何も言えなかった。まさか、鴫原って――。
「好きだったんだ、櫛田の事。」
そう言われた瞬間、色んな感情が、言葉では言い表せない感情が渦巻いた。
息が苦しくて、吐き気がする。こんなにも誰かの告白が辛かったのは、いつ振りだろう。
「わかった……」
吐息と共に、吐き出したたったそれだけの言葉で、鴫原はうるんだ眼を細くした。
「ありがと、頑張ってね、花楓の事。きっと、渋谷も好きだからさ」
「…うん、ありがと。」
「じゃ、これからは友達って事で!!」
鴫原がにこりと笑った。さっき差し出されたストラップを、俺は手に取った。
「よろしく」

2ヶ月前 No.56

麗華 ★cClct891op_xKY

綾穂side

今日、家を出るとき決めた。
櫛田を諦めようって。え、何で急に?って、思うかもしれないけど…。とにかく決めた。
「櫛田は、今日で諦める。」
ドアを開ける直前、胸に手を置いてそう言って、家を出た。




「何するか…」
そう言って櫛田が迷った時、チャンスだと思った。
腕を無理やり引っ張って、お店の中に入った。
そして、あらかじめ下調べしておいたお揃いのストラップをもって、櫛田の前に差し出す。さぁこれで――。
これで、嫌な顔をされたら諦める――。
思った通り、櫛田は顔をゆがめた。そして、断れた。
よし、これで諦めよう、そう思ったのにさ…。妬いて、言っちゃった。
花楓だったら買うんでしょ、って。そしたら櫛田は否定しなかった。やっぱ負けだね。
もしこれがOKされたら告ろうと思ってたのにな。


関係が進むかもなんて、ほんの少しでも、微かでも、期待した私がバカだった。
花楓、頑張ってね。花楓は、だれを選ぶのか知らないけどさ。
あたしは、櫛田とくっついてほしいかな……。

2ヶ月前 No.57

麗華 ★cClct891op_xKY

花楓side

「どうする…?」
緊張した面持ちでそう尋ねられたけど、一通りまわっちゃったしな…。
「楓君はどうしたい?私、晃君ともう全部まわっちゃって…」
私がそう言うと、数秒の間の後に言った。
「なんか、お店で買おうよ」




「そうだ、どうせだったら色違い買おうよ!このイルカの」
そう言って指さした何種類かのイルカを見て、いいね、と言ってくれた。
「じゃ私はピンクで、楓君青色ね。」
「うん。」

2ヶ月前 No.58

麗華 ★cClct891op_xKY

楓side

帰りの時間は、あっという間に来た。
空はもうオレンジから紫へと、綺麗なグラデーションが出来ていた。
「あー楽しかったぁ。」
花楓が空に向かって手のひらを伸ばす。
「来週はプラネタリウムかー」
鴫原が意味が含まれていそうな言い方で言う。
なんか、気になるんだけど。
「そう言えばさ、花楓ってさ、何でプラネタリウムにしたの?どっちかと一緒に見たかった?」
「え?」
空を眺めていた花楓が振り返る。
何ていう質問してるんだ、こいつ……。
と、思いながらも気になって聞くのをやめることはできない。
「別に、そういう訳じゃ無いよ。それに、私結構好きなんだ、プラネタリウム。なんか、あの静かで穏やかな。」
何だ、そうなんだ。……てか、何期待してんだ俺。
恥ずかしさと情けなさが溢れる。ヤバイ、絶対顔赤くなってそう。

2ヶ月前 No.59

麗華 ★LibfCb0XbN_xKY

楓side〔次の日〕

「楓ぇー」
晃は、大きなあくびをして、とぼとぼと歩いて来る。
「はよ」
電柱にもたれかかりながら立っていた俺は、挨拶をした。
「眠い……」
目元に涙を浮かべながら、もう一度大あくび。黙って歩き始めた。
晃はそれについて来る。
「今俺が眠い理由、聞きたい?」
「………」
何だろ、これは。何か深い理由があるのか、からかいや気分なのか…。
黙っていると、晃は一方的に話し始めた。
「昨日さ、考えてたんだよ。あれから。」
「何を?」
「かえちゃん」
何にも抵抗せず出てきたその言葉に胸が高鳴り始めた。何だろう、何を考えた…?
「でさ、今日、告ろうと思うんだ。」
「……」
言葉が出なくて、喉が渇いて、頭が真っ白になった。え、告白…?
「振られたら、もう諦めようと思って。」
ゆっくりと隣に並ぶ晃を見た。ずいぶんと大人びた顔をしていた。
いつからこんなに大人びた、綺麗な顔をするようになったんだろう‥‥。

2ヶ月前 No.60

麗華 ★i6iEkGMkKt_xKY

花楓side〔次の日〕

「おはよー花楓」
「おはよう」
綾ちゃんは大きなあくびをして、その場で一回うーんと伸びをした。
その後、大きく息を吸って、急に真剣な眼差しになって言った。
「あたし、今日櫛田に告ろうと思う。昨日、似たような……似すぎてることは言ったんだけど、
やっぱりしっかり振られようと思って」
「えっ……!!…あぁ、うん。待ってるね」
「ありがと」
凄く綺麗な清々しい顔をしていた。
朝日がキラキラと輝いていて、綾ちゃんを応援しているようだった。



「おはようかえちゃん」
「おはよう」
晃君たちとあいさつを交わして、教室に入った。
そして前の席の蒼汰君にも挨拶をした。
「おはよ、蒼汰君」
「あぁ、おはよう。あのさ、体育祭なんだけどさ、二週間後だから毎日昼休み集まってって。」
「あぁ、うん。わかった」
最初こそ女子からの視線が痛いたしく怖かったものの、今では何となくなれた。

2ヶ月前 No.61

麗華 ★i6iEkGMkKt_xKY

楓side

昼休み、いつの間にか一緒に弁当を食べるという事が習慣化し、『男子が迎えに来るべきだろ』
という鴫原の言葉に押し切られ、いつもの様に弁当片手に2人で隣のクラスへ行った。
珍しく鴫原しかいなくて、花楓はどこをみても居なかった。
「おぉ」
鴫原がこっちに気付いて歩いてきた。数人のクラスメートに手を振って。
「かえちゃんは?」
晃が教室や廊下を見回しながら聞いた。
「あぁ、体育祭の実行委員だから集まり。2週間ずっと。まぁ、10分前には終わるらしいけどさ。」
「ふーん、誰と一緒なの?」
「成澤」
成澤…、蒼汰か。アイツモテるよな、カッコいいし。優しいし。
「まぁけっこういい感じなんだよね。」
「何が?」
俺が聞くと、鴫原はにやにやしていった。
「成澤と花楓。二人とも好きなの一緒らしいしさ。」
“好きなものが一緒”なんて、羨ましいよな…。一緒に立てるなんて、羨ましい。
俺なんか、多分いくつも背伸びしないと並べない。隣には。

2ヶ月前 No.62

麗華 ★i6iEkGMkKt_xKY

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2ヶ月前 No.63

麗華 ★i6iEkGMkKt_xKY

花楓side〔放課後〕

やっぱり私は体育祭の集まりがあって、綾ちゃんは部活がある。
「最初のスタートは―――、で、その役は山梨さんに――」
ボーっと頬杖を突きながら、窓の外の夕焼けを見ていた。
別に、私が参加しなくたって、話し合いは進んでいく。ただ、それだけの話。
「これ、今咲さんと成澤さんでお願します」
「はいっ!!」
ボーっとしていたのに突然名前を呼ばれ、反射的に大きな声が出た。
皆、驚いて私の方を見た。隣の席の蒼汰君も。
「すみません……」
小声でそう言って、縮こまる。
……あぁ、めっちゃ恥ずかしいんだけど。
「ここだよ、仕事」
蒼汰君がそっと小声で言った。
差し出されたプリントには、ところどころにはメモとラインが引かれていた。
「ありがと」
プリントを受け取って、さっと目を通す。
「当日、一緒に仕事やるんだって。頑張ろーね」
二カッと笑ったその顔が、窓から注ぐ夕日に照らされたせいだ。妙に輝いて、カッコよく見えたのは。
「あぁ、あ、うん」
もじょもじょと返事をして、顔を俯けた。もう最悪だ、何なの今日。恥ずかしいこと起こり過ぎ……!!

2ヶ月前 No.64

麗華 ★i6iEkGMkKt_xKY

花楓side

「ではこれで終わります。また明日、昼と放課後。」
その言葉を合図に、皆、一斉に散らばった。待ちかねていたように。
「蒼汰君、帰る子いる?」
「え、いや、今日はひとりかな」
「一緒に帰っていい?私も一人でさ」
何でこんな事言ったのか、全然わからない。でも、気付けば口走ってて。
ひとりなのは嫌だから、そう言い訳をしておこう。



「今咲さんが一人なんて、驚きだな」
靴を履こうとしゃがみこんだ時、隣で立っていた蒼汰君が言った。
「そうかな、私そんな人気者でもないし。それに仲いい子だって、3人ぐらいだし。」
「誰?」
「え?」
「仲いい子。」
え、何でそんな事…。って、思ったけど、揺らいでいたその瞳に、吸い込まれる様に言った。
「楓君と、晃君と綾穂ちゃん……」
「そっかぁ」
ふっきったように、上を見て苦笑した。
「どうしたの?」
「ん?別に。そっか、楓と晃かぁ。」

1ヶ月前 No.65

麗華 ★gb95pUANvA_xKY

花楓side

「楓と晃ってさ、モテるよね。」
遠くを見つめながら、そう言った。
「確かにね、すれ違うと絶対、女子振り返るし。」
「個人的にさ……「うん」どっちがいいの?」
真っ直ぐな瞳が、私を射抜いて離さなかった。どうしよ、目離せない。
「どういう…こと?」
「どっちが好きなの、楓?晃?」
「え……、別に、え?……どっちも…友達だよ??」
頭の中がぐちゃぐちゃに混乱して、何を言ってるのかわからなかった。
何で混乱してるのかさえも、自分で分からなかった。
ただただ、誤解されてる…と、思うばかりだった。

1ヶ月前 No.66

麗華 ★IEfcT0X4L3_xKY

蒼汰side

俺は、一緒だった中学の頃から今咲さんの事が、好きだった――。
同じクラスでもなく、同じ委員会になったことがあるだけという、
喋ったことも殆どない俺なんかのことを、今咲さんは覚えてくれていた。
そして、高校で同じクラスになった時。言ってくれた。
「放送委員一緒だった、蒼汰君だよね。よろしくね!」
せっかく、諦めようとしてたのに…。
そう後悔しながらも、一緒の高校になったという嬉しさが自然とこみあげて、心の中を満たしていった。


『櫛田と晃、今咲さんの事好きらしい』
どこかの男子が、そんな話をしているのを聞いてしまった。
多分、男子が言うんだから間違いはないんだろうな…。
晃と楓は、同じ塾だから中学の時から知ってるけど、モテてたなんて知らなかった。
だから、それを後から知ったとき、もう勝ち目はないな…と、我ながらも情けなく諦めようとした。
なのに――、
体育祭の実行委員を一緒にすることになって、席は前後、好きな作家が一緒…なんて。
なんでこんなに重なるんだよ…。

1ヶ月前 No.67

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楓side〔放課後〕

晃と2人で廊下を歩いていると、見慣れた後ろ姿が遠くに見えた。
「あ、かえちゃんだ」
隣にいた晃が言った。俺は、無言でうなずいた。その時ふと、隣にいた人物に気付いた。
「誰だ…、あれ」
「……成澤じゃない?」
「え…、あぁ、確かに。何となくそんな感じも」
成澤って……成澤蒼汰だっけ。たしか塾が一緒だった気がする。
こうやって見ると、やっぱり花楓は細くて綺麗…。
「明日、かえちゃんに告る。」
「え」
突然思いついたかのように、口走った。
「仕方ねぇじゃん、もうやり切ったし。」
「………」
瞳が大きく揺れていて、まだ決めきれていない決意なのだろうと思った。
それから帰りは、花楓の話題は一切出さなかった。晃も。
「じゃあな」
「頑張れよ、明日」
「いや、頑張るとかじゃないだろ」
苦笑した。俺もそれにつられて、少し緩む。
「でもすごいよ、俺にはそんなの……無理だし」
「俺だって、怖いよ。振られるって分かってて、それでも告りに行くなんてさ」
晃の言葉に驚いて、少し俯けていたか顔を上げた。すると目が合って、ふっと笑いながら言った。
「今までは振る側だったじゃんか、自分で言うのもどうかと思うけどさ。彼女なんて困らなかったし、作ろうと思えば作れた。本気にだってなったことも無かったし。」
悲しそうに笑った。すごく辛そうな笑顔に、返す言葉も見つからず目を背けてしまった。
「‥‥‥」
「お前もさ、やった方がいい。…って、俺は思うよ。じゃあ」

1ヶ月前 No.68

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花楓side

家に帰って、制服を脱いで私服に着替える。
ケータイの着信を確認すると、lineが晃君から来てた。

『明日、一緒に勉強できないかな? どーしても解んない所あってさ(´-ω-`)』

珍しいな…、晃君が直接誘ってこないなんて。
「まぁいいや」

『いいよ、帰り玄関で待ってればいい?』

送ると、ほんの数秒でケータイが鳴る。まだ机の上においてすらなかった。
驚きつつ、電源をつけてみた。

『うん、それでいいや。明日、よろしくね』

絵文字も何も使われていない、久しぶりに見た晃君の真面目な文。少し驚きかも。
ケータイをポケットにしまって、下へ降りた。

1ヶ月前 No.69

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晃side

楓に告白をするなんて言ったけど……、今更ながら後悔してる。 かなり。
やっぱ言わなきゃ良かったな…って。自分の気持ちを言うなんて恥ずかしくね?
ましてや好きな相手に。
「はぁーー」
大きく息を吐いて、目の前の画面を見つめる。こんな事、もうどれくらいしているだろうか。
気付けば、オレンジに包まれ明るかった部屋が外と見分けがつかなくなりそうなくらいの藍色に染まっていた。
今まで、告白してるやつらの事なんて馬鹿にしてた。
どうせ振られんのにとか、好きな人とか馬鹿だろ…って。青春ぶりてぇかって。
でも、解った。
……募っていってどうしようもなくなる。
怖いけど、どうしようもないくらい苦しくて、同じ気持ちなら良いのにって思ってしまう。
相手の気持ちなんてとうに解っていたって、考えずにいられず募る。考えててほしい、自分の事を……って。
悩んで悩んで出した口実は、本当に情けなかった。

『明日、一緒に勉強できないかな? どーしても解んない所あってさ(´-ω-`)』

意を決して送るも、なかなか返事が来ないし、既読すらつかなかった。

ピロン♪

心臓を落ち着かせながら、電源をつけ画面を開く。

『いいよ、帰り玄関で待ってればいい?』

踊り出しそうな気分になった。こんなにうれしい事なんて、いつ以来だろう。

『うん、それでいいや。明日、よろしくね』

あ、秒で送ったな、返信…。
時間が気になってみれば、俺が送ってからかえちゃんの返信が届くまでの時間はたったの5分だった。
その5分が、さっきは途方もなく遠い時間に感じていた。

1ヶ月前 No.70

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花楓side〔次の日〕

「おはよー綾穂」
いつものように、何人もの子が綾ちゃんに挨拶をして通り過ぎてく。
その光景を、私は息をひそめて見ている。
「今咲さん、おはよう」
「あぁ、蒼汰君。‥‥おはよう」
立ち止まって、挨拶をしてくれた。あぁ、周りが輝いて見える…。
「あのさ、今日放課後空いてるかな…?勉強教えてほしいんだけどさ」
「あー、うーんと…‥」
どうしよう、何て言って断ろう。
晃君ともう先に約束してるから、……なんて言うのもな。
「ごめん、用事あるんだ。明日とかならいいけど」
「あ、明日かぁ。うん、じゃあ明日。教室でいいかな?放課後、20分もいらないからさ」
「良いよ、どうせ私明日は帰り一人だしさ」
私がそう言うと、蒼汰君はありがと、といって笑った。
その笑顔に見惚れたのは、少なからず私だけじゃないはず。周りに居た女子だって――。



蒼汰君が先に教室へ向かうと、綾ちゃんがわき腹をつついてきた。
「良いじゃん、成澤。ほんと花楓、最近モテモテじゃん」
「そういうんじゃないって、蒼汰君は」
「そうかなぁ。あたしは成澤良いと思うけど。そんなクセもないし、優しそうだし」
「そうってあくまで予想でしょ?本当かは分からない。」
「うわっ、すごいな‥」
私の言葉に綾ちゃんはおなかを抱えて笑った。
周りの人が少し不思議そうな目で見ていたのは言うまでもない。

1ヶ月前 No.71

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1ヶ月前 No.72

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楓side

何となく、今日は晃の様子がおかしい。
うん、何となくじゃないな、絶対。
今日は涼しかったから、外で食べようって事になって2人で木陰のベンチに腰掛けた。
いつもなら騒がしくて迷惑な位の晃が、今日はただ黙々と、チビチビと食べ物を口に運ぶだけだった。
「涼しいよな、今日」
珍しく俺が話題を振るっていうのに、晃は あぁ とか、 うん とか適当な返事しかしてこない。
いや、適当なんかじゃないんだろうけど…。
多分、晃じゃ無かったら俺は適当に理由をつけてこんな場、立ち去るにきまってる。
だけど晃だから……、応援したいと思う。色々とフクザツだけどさ…。
花楓がお互い好きって言ったって、やっぱ親友だし。一番近くに居てくれる奴だし。
「やっぱやめときゃよかったなって…「え?」…今更だけど思う」
空っぽになったサンドイッチの包み紙と、へこんだオレンジジュースを眺めていた。
まるで何かが逃げてしまったかのように、何かをなくしてしまったかのように……透明だった。
「考えたんだよ、もう一回。夜。」
「……」
ポツリポツリとつぶやかれるその言葉を、拾うだけで精一杯だった。
周りの騒音が邪魔だ。セミの鳴き声がうるさい、車の音がうるさい、周りのやつらの笑い声が嫌になる。
「やっぱり俺、振られんの怖いんだよな、立ち直れなくなりそうで。
……いつかできる彼氏に、嫉妬しまくるんだろうなって、今も思うよ」

1ヶ月前 No.73

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楓side

「櫛田ー」
晃が言い終わったのとほぼ同時に、どこからか俺を呼ぶ声がした。多分この声は…
「鴫原」
見るとやっぱり、鴫原と花楓だった。 あ、花楓…。
瞬間的に晃を見ると、やっぱり固まった顔をしていた。
さっきでこれじゃあ、なるよな……。どうしようか迷った。断るか、一緒に食べるか。
「どうする?」
鴫原たちと俺まであと数十メートル。晃に言った。
晃は地面を見たまま、言った。
「……食べる、一緒に」
確かに、言った。その覚悟を、俺はサポートしようと、思った。
複雑だけど、やっぱり晃の恋だって実ってほしいと思う。
親友の不幸を願う奴なんて、居ないだろ…?
きれいごとって、言われるかもしれないけどさ。

1ヶ月前 No.74

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花楓side

「じゃあまた明日ね、綾ちゃん」
「ん?あぁ、うん。じゃあね」
元気いっぱいの笑顔で走って行った綾ちゃんを見送り、玄関の前で晃君を待った。
「ねぇ知ってる?櫛田君、また振ったらしいよ」
「えっ、誰を?!」
「北条先輩」
えっ?!
前を通り過ぎていく2人の会話に、驚いた。北条先輩って…超モテモテの先輩だよね…?
北条先輩を振った…?断ったって事?告白を?あの北条先輩の?
「かえちゃん、待った?」
「えっ、あぁ、ううん」
ボーっとし すぎてて気付かなかった、前に人が居たの。
「じゃあ、どこでやるの…?」
「俺んちで良い?」
「うん」
「あとさ」
「うん」
「ちょっと寄りたいところあるんだよね。」

1ヶ月前 No.75

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花楓side

晃君に連れてこられたのは、“どこにでもありそうな”いたって普通の公園。
コンビネーション遊具の上で、数人の子供が楽しそうな笑い声をあげて遊んでいて、その近くに数人のお母さん。
住宅街の中にある、本当にいたって普通な、誰かにわざわざ寄りたいなんて言わないような場所。
「ごめん俺今日家の鍵忘れちゃっててさ。だから数十分ぐらい、ココで待ってもらって良い?」
「あぁ…、うん。そういう事ね。」
2人で隅っこのベンチに腰掛けた。あ、別にここで勉強やればいいんじゃない…?
「え、晃君。解らないやつどこ?よければここで教えるよ。」
「いいの?」
「うん」
私がそう言うと、晃君はリュックを開けて数学の本を出してきた。
そして付箋の着いたページを私の前に広げる。
幸いベンチの前に机があったから、そこに広げて勉強を始めた。
「ここなんだけどさぁ――」
「………あぁ、そうそう。それを――」
あっという間に時間は過ぎていて、もう一時間を過ぎようとしていた。
「うん、ありがとう。やっぱかえちゃんに教わると良いね。解りやすいし」
「そう?ありがと。私はいつでも暇だし、またよかったら言ってくれればいいし」
「うん。…あのさぁ」
リュックを肩にかけて立ち上がると、私に向かい合うようにして晃君も立った。そして、言った。
「かえちゃんの事、好きなんだ。……こんな俺で良ければ、付き合ってほしい。」

1ヶ月前 No.76

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花楓side

「え…?」
ゆるぎない真っ直ぐなその瞳に見つめられ、どうする事も出来なかった。
嘘でしょ…? どうしたら良いの…? わかんないよ。
そもそも、これって本気…? いや、でも目を見たらわかる…。
数秒の間に、いくつもの可能性が頭の中をよぎっては、迷いへと変わった。
「……返事は、いつかしてくれればいいから」
“いつか”と、晃君は言った。
じゃあ、もう会わなくなる時に……卒業式の日に言っても良いという事なのだろうか。
別の世界に行ったときに、伝えても良いという事だろうか。


気付けば、公園に背を向けて走り出していた。
遠くから公園に居る子供たちの笑い声が聞こえる。晃君は、多分、私の背中を見てる。
思えば思うほど、考えれば考えるほど、今更どうしたら良いのかわからなくなって、足が止まらない。
気付けば、大きく肩で息をしながら、額に前髪をくっつけて、家の前に立っていた。

1ヶ月前 No.77

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花楓side

「花楓?」
後ろからふいに呼ばれ、心臓が止まるかと思った。
振り返ると、コンビニの袋を持った、楓君が居た。自転車に乗ってた。黒の。
「………コンビに行ったの?」
明らかにおかしいと解っているだろうけれど、繕って笑顔を見せて、押し通してしまおうかと思った。
「なんか‥‥あった?」
「え…」
まるで何かを察しているかの様な目をしていた。誤魔化すべきなのか、正直に言ってしまうべきなのか。
私の中で葛藤していたけど、結局答えは出なかった。

「晃に…告白された?」
落ち着いた、静かな波の様な声で私に向かって言った。
「え、何で知って…」
「晃が昨日言ってた。」
この言葉を聞いた瞬間、もう言ってしまおうと思った。
でも、できれば知られたくなかったのにな…と、どこかで思った。
その感情の根が、どこから来ているのかはわからないけれど…
「どうしたらいいか、分かんないんだよね。」
自分でも驚くくらいに、震えた情けない声だった。 私って、こんな弱かったっけな。

1ヶ月前 No.78

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花楓side

「晃はさ、どっちでも受け止めてくれると思うよ。受けても、受け入れなくても。」
ゆっくりと私に言い聞かせてくるような声で言った。
「言ってた。“振られてくる”って。……これ以上ないくらいの覚悟があったんだと思う。
だから、よく考えて。曖昧な事は、絶対に言わないでほしい。それこそ、関係を崩すと思う。」
確かにな…。そうだよね…。楓君に頭を冷やされた感じがする。
そうだ、相手は振られる覚悟も、受け入れられる覚悟も、両方あってきてるんだ。
「私がこんなんじゃだめだよね…。うん、ありがとう」
心が少しずつだけれど晴れてきた気がした。
うん、決めなきゃな。甘えてちゃだめだよね。
「じゃあ行くわ、また明日」
「うん。本当にありがと」

1ヶ月前 No.79

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楓side

居てもたってもいられなくなって、コンビニに行った。
普段、滅多に外に出ない俺が。理由なんて、単純だ。花楓に会いたいから。
会って、告白がどんな感じだったのか知りたいから。だからわざわざ遠回りしてコンビに行った。
『いらっしゃいませー』
幾度と重なる声を小耳にはさみながら、飲み物とチョコレート、グミをもってレジに並ぶ。




『ありがとうございましたー』
コンビニを出ると、手首に袋をぶら下げたまんま自転車をこぎ始めた。
わさわさと音を立てて揺れて、自転車をこぐ度に当たるけど、今はなんか落ち着かないからこのほうが良い。
数メートルずつ、花楓の家に近づいていく。会えなかったら聞かない事にする。
最初からそう決めていた俺にとって、あと数メートルは心臓が爆発しそうなくらいに早く動いて落ち着かない。
「あっ」
丁度花楓の家の前あたりに、人が立ってた。
「………花楓だ」

1ヶ月前 No.80

麗華 ★IEfcT0X4L3_xKY

楓side

心臓がドクンと音を立てて飛び跳ねた。
「花楓」
「…コンビニ行ったの?」
俺の事を無視して、手にかけられたビニール袋を見て言った。
「なんか…あった?」
「え…」
俺の言葉に、花楓が大きく目を見開いた。
やっぱり…。何かあったんだ。
「晃に…告白された?」
「え…何で知って」
「晃が昨日言ってた」
俺のその言葉に、目をそらして微かに頷いた。
「どうしたらいいか、わかんないんだよね」
震えた声で、そう言った。でも、どうしたらいいか分からない。
こういう時、どうやって言ったら良いんだろう……?
「晃はさ、どっちでも受け止めてくれると思うよ。受けても、受けなくても。
……言ってた“振られてくる”って。……これ以上ないくらいの覚悟があったんだと思う。
だから、よく考えて。曖昧な事は絶対に言わないでほしい。それこそ、関係を崩すと思う。」
あ、言い過ぎたかな…。すべてを言い終わった後に、そう思った。
「私がこんなんじゃだめだよね…。うん、ありがとう」
想像とは違って、スッキリとしたような顔をしていた。
その顔を見て、ホッとした。良かった、傷つけたりしなくて。
「じゃあ行くわ、また明日」
俺がそう言うと、いつもの微笑みで
「うん。本当にありがとう」
そう言って笑った。
「本当に、ありがと。楓君」
ささやかれる様にして言われた。顔がカッと熱くなった。
ならないはずが無い。本当に、綺麗だったんだ。

18日前 No.81

麗華 ★7Cgqvlm4eS_xKY

晃side

……言ってしまった。行ってしまった。
かえちゃんに…言ってしまった。そしてかえちゃんは、行ってしまった。
遠くなっていく背中をただただ見ている事しか出来なかった。
すぐ走って行けば追いつくかもしれない。
だけど…“もう一度振り払われらとして、その手を幾度と握る勇気は……俺にはない”。
「やっぱ、辛いわ」
ふと、言葉が零れた。
今まで追われるだけだったのに。追う側って、こんな感じなんだな。
あふれる涙を、誤魔化そうと手で拭う。
それでもとどまることなく流れてくる涙を止められず、景色がゆがむ。
「はぁ……どうすればいいんだろ、明日から」
気が付けば家に居た。
その日は何もせず、風呂に入って夕飯を食べて、9時前に寝た。
もう、何も考えられなかった。今日の、疲れきった頭では。

17日前 No.82

麗華 ★q1ojd7H3q9_xKY

花楓side〔数日後〕

綾ちゃんや楓君に沢山迷惑かけたな。晃君にも、きっと辛い思いさせちゃっただろうし。
今日、返事、しっかりしよう。
そう思って、朝家を出る前に晃君に連絡をした。


勝手な都合ですが今日、告白の返事をしたいです。
もし今日予定があるなら連絡ください。
17:00に、あの公園で待っています。

花楓

「よし」
もう告白の返事は決めた。“曖昧な事は絶対に言わないでほしい”
“どっちでも受け止めてくれると思うよ”
あの時の楓君の言葉のおかげで、決心がついたんだ。感謝しないといけない。

16日前 No.83

麗華 ★q1ojd7H3q9_xKY

花楓side

陽が傾いて教室の中に差し込む。
いつもと同じ景色なはずなのに、無性に緊張する。
「花楓、大丈夫だから」
綾ちゃんが、教室を出る前にそう言ってくれた。
誰にも聞こえないような、ささやくような声で。肩を優しく叩いてくれた。
「ありがとう」
そう言って笑うと綾ちゃんはその倍くらいの二カッと輝く笑みを返してきた。
「じゃあね、また明日」
「うん」


16:40
学校から寄り道したはずなのに、思ったよりも早くついてしまった。
「コンビニで買ったラテ、温くなっちゃうな…。」
真夏ではないから、そこまですぐにはならないけど、やっぱり冷えているのを飲んでほしいなと思った。
晃君には。何で買ったのかとか、何でそう思うのかとかはよく分かんないけど、直感ていうか……。
あの日みたいに公園で遊んでいる子供たちを、ベンチで静かに見ながら、晃君を待った。

16日前 No.84

麗華 ★q1ojd7H3q9_xKY

晃side

あの、かえちゃんからの連絡に驚かないはずが無かった。
“17:00に、あの公園で待っています”
振られるなんてこと、とうに分かっているのに凄く嬉しくて、希望が見えた気がした。
だって、この数日間ずっと気まずくて喋れなくて、何度も告白なんてしなきゃ良かったと後悔した。
だから、これで終れるかもしれないと思ったんだ。前の様に、戻れると思ったんだ。


「かえちゃん」
ベンチに座るかえちゃんを呼ぶ。
かえちゃんはベンチに座ってて、俺は歩いて近づいている。
一歩、一歩と近づいて、どんどんとかえちゃんの顔が鮮明に見えてくる。
何とも言えない感情が、こみ上げて来て、抑えられなくなりそうになる。
「返事、聞いても良いかな」
「………うん」
俺がそう言うと、かえちゃんはベンチから立ち上がって、リュックとビニール袋をベンチ置いたまま
一歩、俺の方に踏み出した。間、2.5mぐらい。
「気持ち、すっごく嬉しい。ありがとう。でも、これからも晃君とは友達として一緒に居たい。……ごめんなさい」
真っ直ぐな答えだった。
どこまで優しいんだ、一体。振る時まで気を遣うとかさ。
「うん。解った。良かったよ、また戻れて」
「うん。良かった。はい、これ買ったんだ」
そう言ってかえちゃんから渡されたのは、ラテ。
俺の好きな、チョコ味の。
「前、好きって言ってたでしょ?だから、買ったの。ここ来る前に」
「……そっか、ありがと」
自分でも話したかどうか覚えてない位の話なのに…。

16日前 No.85

麗華 ★q1ojd7H3q9_xKY

花楓side〔次の日〕

「おはよっ、花楓」
「おはよう」
「どうだった昨日?聞いても良い?」
綾ちゃんの低姿勢に、笑うのを少し堪えながら頷いた。
「うん」
「じゃあ、大丈夫だったんだね」
綾ちゃんの声が、すこし溶けた。何だろう、安心したからかな。



「綾ーおはよう」
「おっ、はよ!」
手を振りながら、綾ちゃんに挨拶をした子は去っていく。
「何その挨拶‥!!」
聞き覚えのある声で、振り返る。
晃君と楓君だった。多分、笑ったのは晃君の方だろうな。
「何だよ、 おっ、はよ って…!!」
もう一度、そう言うと綾ちゃんは少し顔を赤くさせて言った。
「何よ、悪い?!」
「別に」
「ふふっ」
私の笑った声に、3人の視線が急に集まった。
「え?…なに…」

16日前 No.86

麗華 ★q1ojd7H3q9_xKY

花楓side

「はぁ…やだなぁ」
また、体育際の練習。もう日がかなり照る頃になってきた。
ただ外で突っ立てるだけだって、数十分後くらいには汗がじんわりと浮かぶくらい。
綾ちゃんは先に仕事でもう行っちゃってるから、友達がいない私は独りで歩いている。
「あ、かえちゃん」
聞き慣れた声が、大勢の中の空気である私を指す。
その声に、反応しない女子は多分…。私のほかにはほとんど居ない。
「晃君だ」
近くの誰かがそう言ったのが聞こえた。
「あや、話しかけちゃいなよ」
「無理だよ、恥ずかしいもん。それにあたしなんか…」
あや…か、可愛い名前だな。そんな風に呑気に考えてた。
向かって歩いて来る2人を見ながら。
「あんな空気、何で晃君たちと一緒に居るんだろ。」
「綾でしょ。綾、あの2人と仲良さそうだったもん」
何人かの子が、そう呟いたのが聞こえた。嫌なくらい鮮明に。
「そうそう、あたしさぁ綾とあの2人のどっちかが付き合うって聞いたよ、噂だけど」
関係ない、こんな会話。そう言い聞かせてはみるけど、もう立ちくらみがしそうだった。
暑いせいかな…。休んだほうが良いかな…。
「かえちゃん?行こうよ」
不思議そうにのぞき込んできた晃君の顔に、笑い返す。
「うん…。そうだね」
大丈夫、演じればいいんだ。それで、気配を消せばいい。
空気に…、地味子になればいいんだ。そうすれば、きっと何も起こったりしない。

11日前 No.87

麗華 ★q1ojd7H3q9_xKY

花楓side〔数日後〕

綾ちゃんが今日、学校を休んだ。
珍しいな…と思いつつ、この前のあの子たちの会話が脳裏をよぎる。
「大丈夫。うん」



教室に入ると、まだ数少ない人の視線が私に突き刺さった。
いつもとは少し違う、とげの様な目線。異物を見るかのような、確かめる様な目線。
「今日、綾は?」
いつも綾ちゃんに玄関で挨拶をする、藍花ちゃんが私の元へ歩いてきた。
おもしろがっているような、不気味な笑顔で。
「いないよ、今日休むらしいの」
「ふ〜ん。」
そう言って、くるっと回り私に背を向けた後、その場で止まった。
そして言った。
「あんた、自分の身分解ってる?」
今までに聞いたことのないくらい黒くて低い、恐ろしい声だった。
私が何も言えずに立ち尽くしていると、面白そうに、そして言い聞かせるように言った。
「いつものあんたは、綾が隣に居るからそんな風にしてられんの。
綾が隣に居なきゃ、あんたはどれいの分際でしかないんだから。」
あざ笑うような視線の向け方だった。あぁ、私と同じだった子だ。直感的にそう分かった。

11日前 No.88

麗華 ★LAI8G3p3dQ_xKY

花楓side〔昼休み〕

別に、綾ちゃんが居ないしどこで食べようが良かった。
だけど教室で食べようとしたら、藍花ちゃんたちが陣取ったから、いつもの場所へ来た。
校庭の隅の木陰の、人気が無いところ。


ふと、誰かが近づいて来る足音がした。嫌だな、藍花ちゃんたちかな…。
「花楓」
「あぁ…なんだ」
言い方はまずかったかな…。でも、安心して出てしまった。
「一人?」
「あぁ、うん。綾ちゃんいないから」
そう尋ねてきた楓君の隣にも晃君の姿はない。
風がさわさわと私たちの間をかすめた。心地いい。風が。
「隣、いいかな?」
「……やめたほうが、良いとは思うよ」
私の言葉に、楓君の笑顔が曇っていく。見る見るうちに、黒くなっていく。
「ごめ、これは言葉の間違いで…!!」
「いや、ごめん。いいんだ。じゃあ、また」
目さえ合わせず、楓君は去って行ってしまった。私は力なく、それを見送ることしかできなかった。
「だめだ私…、何やってんの」

4日前 No.89

麗華 ★0L96ZvH2WU_xKY

花楓side

どれだけ自分を責めたって、楓君は戻ってくるはずが無い。
“自分と同じだ。”あの時そう思った私は馬鹿だ。
確かに“昔はこちら側”だった。だけれど“今はあちら側”だ。
いつまでも変わらないのは、私だけ…。
楓君も晃君も綾ちゃんも、みんなあちら側だ。
気付いてたけど……。
「近くに居ちゃだめだ。私は、皆と違うんだから。」
言い聞かせながら、涙が出てきた。



本当に弱くてダメだ、私は。

2日前 No.90
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