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 深く溺れて _ (( 完結 ))

 ( 恋愛小説投稿城 )
- アクセス(1648) - ●メイン記事(37) / サブ記事 (18) - いいね!(42)

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE







私と君は

『 恋人 』 なんかじゃなくて。 『 友達 』 なんかでもない。



君は私の 『 親友の彼氏 』 で。




運命は、なんて残酷なんでしょうか ,

私は今日も君の思うがまま。



_




 七瀬 × 2015.08.17

// 深く溺れて





2年前 No.0
メモ2016/05/28 21:10 : 七瀬 @love1217★T7qbzAt4K5_mgE

 

((  浮気ものなので、苦手な人は戻ってください  ))



。 野々村 柊花 〈 nonomura syuuka 〉

. 中谷 優太 〈 nakatani yuuta 〉

。 相崎 菜々美 〈 aisaki nanami 〉

. 優木 嶺斗 〈 yuuki reito 〉


__


2015.09.08 × 『 深く溺れて _ 』 

 // 完結 >>20


特別編 ( 菜々美 side ) >>24

 // 完結 >>28


番外編 

1.敵わない。( 柊花side ) >>30

2.大事な人 , ( 嶺斗side ) >>31

3.君に出逢えて , ( 優太side ) 前編>>32 中編>>33 後編>>34


新作 ‘ 君に捧げる歌 _ ‘


→ 【 http://mb2.jp/_rs/30034.html


××

切替: メイン記事(37) サブ記事 (18) ページ: 1


 
 

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE








「 ねえねえ、優太。 今日、帰りどっか寄って帰ろ - ? 」


「 いいよ 」



そんなカップルの光景を見ていると、次の瞬間、メールが来て。


『  From : 優太  』

下の方を見ると、一言だけ。


『 今日、家来てよ 』



彼を見ると、彼はくすっと笑って。

「 じゃあ、そろそろ教室帰るな 」


彼女にそう言ってこっちに向かってきた。


「 待ってるから 」

すれ違いざまに、彼は笑いながらこそっとそう呟いた。



窓から入ってくる風がそっと私の頬を撫でるように吹く。





今日もまた、君との秘密の時間が始まる。








2年前 No.1

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE






_ 深く、溺れて _



「 ん ... 」

朝起きると、真ん前には気持ちよさそうに寝ている彼の顔が。
私の腰に手をまわしたまま寝ている。

カーテンの隙間から差し込む日差しがまぶしくて、目をそむけながら起きあがる。


すると、いきなりぐいっと手を引っ張られ、また寝転んでしまう。

「 … 何 … 」

「 おはよ 」


いつの間にか彼は起きていて。 私を見て、ふにゃ - と笑った。

「 私、そろそろ帰らなきゃいけないんだけど 」

「 え - 、いいじゃん。 土曜日だし、どうせ帰っても、家誰もいないでしょ。 ゆっくりしてってよ 」


私は小さいころに両親を亡くして、親戚の家にいた。
でもあまり居心地がよくなくて、高校になって一人暮らしをしたのだ。

彼もまた、小さいころに両親が離婚して父親について行ったのだが、父親が外国に転勤することになったので一人暮らしをしているそう。


「 …… 私、そろそろこんなことやめたいんだけど 」

「 そんなこと言って、嫌がらずに来るじゃん。 で、受け入れる、と 」

「 …… 別に好きで来てるわけじゃあ .. 」

「 そんなこと言って。 誘われるの、嬉しいくせに 」

「 なわけないでしょ、うるさい 」



だって彼は親友の彼氏。


親友は、相崎 菜々美。 いい子だと思うのだが、結構きつい性格でもある。でも、友達はすごく多い。

でも、多分それは全部うわべだけの付き合いで。 菜々美は私に 「 私たち、親友だよね - 」と言うが、私は正直そんなこと思っていない。



女子の世界は怖いんだ。


だからきっと、このことがばれたら大変なことになるだろう。 最悪、学校に居られなくなる。


「 何考えてんの、柊花 」

だからそうやって、優しい声で私の名前を呼ばないでよ。

「 … 別に、なんでも .. 」

「 あ、他の男のこと考えてんだ ? う - わ、俺といるのにひど - い 」


ひどいのはどっち ??
『 男の浮気は遊び、女の浮気は本気 』 って、よく言うでしょ。


「 柊花は、俺を見捨てたりしないよね ? 」


笑顔だったのに、突然真面目な顔でそう言う彼。 私の手に、自分の手を絡ませてきて。
ほら、またそうやって。


「 …… お茶飲んでくる 」

私はそう言って体を起こして、キッチンに行き、お茶をコップに注ぐ。


部屋もお茶の場所も全部わかるくらい、この家来てるんだな。
そんなことを思うと、罪悪感が生まれる。

「 ……… 離して、こぼれる。 ていうか飲めない 」


いきなり後ろから、彼がそっと抱きついてきて。
ぎゅっと抱きしめられる。

「 ん - ?  いいじゃん、 これから、菜々美とデート。 だから、ちょっとだけ充電 」


一瞬ドキッとする。 でも、行かないで、なんて言う資格私にはないから。

てか、この状態でしゃべるの耳に息がかかるからやめてほしい。


「 ふ - ん、知らなかった。 良かったね 」

うそ、知ってた。 菜々美から聞いてたもん。

「 やきもち妬く ?? 」

「 誰が。 そんなわけないでしょ 」

「 ん - 、でもドタキャンしよっかな。 やっぱ柊花といたいし 」

「 …… は ? 何言ってんの。 彼女でしょ ? ちゃんと行かないと 」

やっと離れてくれて、お茶を飲む。


「 クールだよね - 、柊花ちゃん 」

「 からかわないで 」


違うよ。


あなたに気づかれないように冷静を装ってるの、なんで気づかないの _?



今日も私は、あなたの思い通り。


「 じゃあ私そろそろ帰るから 」

「 あ、俺もそろそろ家出よっかな 」

鍵をかけて、外に出る。



「 じゃあな、気を付けて帰れよ、 ` 野々村 ` 」


「 有難うございます、 ` 中谷先輩 ` 」

外に出たら、私たちはただの ` 先輩と後輩 ` 。



帰り道の途中、メールが来て。


『  From : 菜々美   今どこにいる - ?! まだ起きてないかな ??  私はこれからデートなんだぁ ♪  』

いつもののろけメール。


『  家だよ。  そっか、よかったね  』

。と、だけのそっけない文をうって、送信ボタンを押す。




私はこうして、今日もうそをつく。










2年前 No.2

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





「 おはよ - 、しゅう !! 」

「 菜々美。 おはよう 」


月曜日になって、学校の生徒玄関で菜々美に声をかけられる。
しゅう、とは私の仇名。

隣には彼の姿があった。


「 おはよう。 え - っと .. 野々村 」

笑顔で私に笑いかける。
名前が出てこない、みたいな演技しちゃってさ。


「 おはようございます、先輩。 菜々美、私先に教室行ってるね 」

「 え、一緒行こうよ、しゅう 」

「 彼氏いるでしょ。 私はいいから。 教室で待ってる 」

「 うん、分かった 」

私は1人で早足で廊下を歩く。
チラッと後ろを見てみると、彼もこっちを見ていて目が合う。

「 やばい 」 なぜかそんな気がして、目をそむける。


でももう1回だけ見てみると、彼はからかうような笑みでふっと笑って。
ついカァッと顔が熱くなる。

気づかれると面倒だから、私は走って教室へ行った。





「 ねえ、野々村さん。 菜々美、浮気してるって本当 ?? 」

教室について鞄の整理をしていると、突然クラスの女の子3人にそう話しかけられ。
菜々美はどうやらまだ来ていないよう。


「 え .. そう、なの ? 」


「 野々村さんも知らないんじゃ、本当みたいだね 」

「 うんうん。 あの中谷先輩と付き合ってるって言うのにね 」

「 菜々美、ちょっと調子乗ってない ? 先輩可哀想 - 」

3人はそんなことを言いながら離れていく。


この子たち、よく菜々美と話してる子だ。 ... 陰でいろいろ言われてるんだな、菜々美も。

… 菜々美が浮気 .. ? そんなの、とっくに知ってる。
だってそれこそが、私と先輩の浮気の原因だから。




_





「 野々村さん。 今日、西高の男子と遊ぶんだけど1人人数足りなくなってさ。 よかったら来ない ? 」


2年生になる少しだけ前。 1年生の終わりの頃。


「 … ごめん、私そう言うの興味ないから 」

『 冷めてるよね 』 周りから、そう言われることも多かった。


帰り道、ノートを学校に忘れたことに気づき、校内に戻る。
運動部が部活してるくらいで、もう校内は先生たち以外ほとんどいないだろう。

すると、空き教室の前で呆然と立ち尽くしている男の人がいて。


よく見ると、かっこいいと有名の 『 中谷 優太先輩 』で。

別にその人に興味があったわけじゃないけど、菜々美の彼氏と言うことで知ってはいた。


何してるんだろう。 と思い、声をかけようとすると、教室の中から声が聞こえて。


「 ん ... ちょっ、駄目、だって .. こんなとこで .. 」

「 俺のこと好きじゃない ? 」

「 ん - ん、好き .. っ 」

菜々美の声がした。
軽く覗いてみると、知らない男子と菜々美がキスしているところで。


「 …… 浮気、か 」

「 …… そう、ですね。 … 入って殴りに行かなくていいんですか ? 」


「 行かねーよ 」

「 知ってます ?  『 男の浮気は遊び、女の浮気は本気 』 って言うんですよ ?? 」

私は少し微笑みながら教室の方を指さす。



で、そのあと気づいたら彼の家に連れて行かれて、押し倒されて。
でも私はそれを拒まなかった。

それで今に至る .. と。



『 ねえしゅう - 、優太ってばね、家に連れてってくれるどころかキスもてくれないんだよ。 私のこと、好きじゃないのかなぁ - ? 』

この前、菜々美に言われた言葉。


『 大切にしてくれてるんじゃない ? 』

私はそう答えたけど。 多分、そうだと思う。


浮気を目撃しても怒ったりしないこと、彼女がいるのに私を求め続けること、なのに彼女には手を出さないこと。
きっと全部彼女が大切だからだ。

好きだから、傷つけたくないから。


でも多分菜々美が彼と付き合っているのは、彼がモテるし目立つからだと私は思う。
そんな彼女の気持ちは知っていても、彼は菜々美と付き合い続ける。



おかしい。 そんなの。 彼も彼女も、みんなおかしい。

でも、おかしいのは私もだ。 「 やめて 」と言いながらも、拒めない。 結局受け入れる。
なんで私はいつも大人しくされるがままなんだろうか。


その前に、まず、なぜ私なんだろう。

私でなくてもいいじゃないか。






「 何考えてんの ? 柊花 」

「 … 別に 」


今日も彼の家に来てしまった。

「 また別の男のこと考えてる - ? 」

「 だから違うって言ってるでしょ 」

「 ん、ならいいや 」


時計を見ると、もう午後9時。

「 そろそろ帰る 」

「 泊まっていけばいいじゃん 」

「 平日だよ ? 」


「 いいじゃん、制服だしそのまま行けば。 寝る時の服なら貸すし 」

「 嫌だ 」

「 分かった。 今日は何もしない。 それならいいでしょ ?? 」

「 …… ご飯 」

「 はいはい、今作るから。 ちょっと待ってな 」


彼はそう言うと、近づいてきて私の唇にキスを落とす。
離れると同時にふっと笑ってぽんぽん、と頭を撫でられる。

「 …… 何もしないって言ったじゃない 」

「 キスは別 」

「 何それ、ずるい 」



眠って目が覚めるとまだ5時半で。

やっぱり私は、彼の腕の中。

「 ん ... あ、柊花。 起きた ? 」

「 優太 .. 抱きしめながら寝るの、いい加減やめてくれない ?? 」

「 ん - 、無理 」


昨日はめずらしく本当に何もしなくて。
まぁ、普通に考えれば泊まってること自体おかしいんだけれど。

「 まだこんな時間じゃん、もうちょっと寝よ - よ 」


彼はそう言うと、私を抱きしめ直しまぶたを閉じた。

…… こうやって見ると、本当にイケメンなんだよなぁ .. きれいな目に、整った顔。
モテるのも分かる気がする。


… だから菜々美は、彼と付き合ってるのかな ?



すっと手を伸ばし、彼の頬に触れる。
… なんだろう , この気持ち。


あほらしくなり、私は目を閉じたが暑苦しくて全く眠れなくて。

私は寝るのをやめてお昼ご飯のお弁当を作ることにした。



「 優太。 優太、そろそろ起きないと .. 時間 」

「 ん .. あ、おはよ - 柊花。 … 寝ぐせ。 可愛い 」

寝転んだまま、しゃがむ私の髪をふわっと撫でて笑う彼。


「 というか、昨日あんま見てなかってけど、その恰好やばいね 」

格好 .. ?
だぼっとした大きい優太のTシャツに、短いズボン。

こんな格好、めずらしいからだろうか。


「 うるさい、いいから起きて 」

「 ん - 、分かった分かった。… え、なにこれ 」

「 … お弁当。暇だったから作った。 ごめん、冷蔵庫の中の食材、勝手に借りて 」

「 このもう1つの、俺の ?? 」

「 うん。 … 菜々美にばれたらやばいと思って、中身同じにならないようにしといたから大丈夫 」


お弁当の箱を閉めながら私がそう話すと、優太は笑って。

「 うっわ、超嬉しい。 ありがとな - 」

そんな笑顔で言われると、こっちまで嬉しくなる。




__ ( 優太 side //




制服に着替えてリビングに行くと、柊花はもういなくて。

「 早 .. 」


つい笑ってしまう。
携帯を見るとメールが2件。

1件目は柊花から。

『  先、学校行くから。 借りた服は机の上。 』

そっけないメール。
2件目は、菜々美からきてて。


『  優太おはよう !!  40分に、家の前に迎えに行くね - ♪ 』

菜々美からのメールはいつも絵文字や顔文字がいっぱいでかわいくデコレーションされている。

なのに、なぜか柊花のそっけないメールの方が可愛いと思う俺は、重症なんだろうか。


知ってるよ。

「 俺が最低なことくらい 」


誰もいないのに、俺は小声でそう呟いて。





___ ( 柊花side //  戻ります ,



「 眠 .. 」

授業中、頭が痛いとうそをついて保健室に行く。
先生はいなかったので黙ってベッドに倒れこんだ。


「 疲れた .. 」


そうつぶやくと、ガラッとドアが開いて。

カーテンをしてるから誰かわからないけど、保健の先生かな、なんて思っていると、シャッとカーテンが開いた。

「 え 」


「 あ .. す、すみません、人がいたの知らなくて .. 」

かわいい。 え、かわいい。
女の子かと思ったけどどうやら背が低い男の子。 しかもどうやら3年生みたい。


「 あ、いえ ... 」

「 えっと .. 2年生 .. ? 」

「 はい 」


「 名前は ?? 」

「 え .. 野々村 柊花、です .. 」

「 俺は優木 嶺斗。 宜しくね ? 」


わ、かわいいのに俺って言うんだ .. 意外。
ていうか、『 優木 嶺斗 』って聞いたことある。 あ、そうだ、クラスの女子が騒いでたんだ。

3年生に超かわいくてイケメンな子がいるって。 中谷先輩の次に人気だって。


「 俺、よく保健室使ってるんだよね。 隣のベッドで寝てもいい ? 」

「 あ、はい、もちろん .. 」

「 柊花ちゃんはさぼり ? 」

「 ま、まぁそんな感じです .. 笑 」

「 そっかぁ 」


にこにこ笑う優木先輩。 なんか、ほわほわ ~ ってしてる。


そんな彼が、私を悩ます存在になること。

私は全然気づいてなくて。







2年前 No.3

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





____




(( 挨拶 ))


初めまして、作者の七瀬〈 嶺愛 〉です ,
更新じゃなくてすみません。笑

閲覧、いいね、コメント、本当に有難うございます !!


すごく嬉しいです。

この作品、結構すぐ終わっちゃいそうですね、()


今書いてるものがもうすぐ終わるのでこっちに集中すると思うので、ぜひこれからも読んでもらえると嬉しいです ,
宜しくお願いします。



_____





2年前 No.4

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





教室に帰って少しすると、もう授業終わって。
放課後になったと同時に廊下がざわざわしていた。

「 野々村さん、呼ばれてるよ - 」


なんだろう、と思っているとクラスの女の子に呼ばれて。

私を呼ぶ人 .. 誰 .. ??


「 あ、柊花ちゃん ! 」

「 え .. 優木先輩。 どうしたんですか ? 」


その人物はさっき保健室で知り合った優木先輩で。
ああ、だからざわついてたんだ、なんて納得する。

「 えっと .. 」

軽く顔を赤らめて、口ごもる先輩。


「 一緒に帰らない ?? 」

「 え。 私とですか ? 」

「 うん。 あ、他に一緒に帰る人とかいたら別にいいんだけど .. 」

「 や、いいですよ 」

どうせ菜々美は中谷先輩と帰るから1人だし、断る理由がない。




「 へ ー 、柊花ちゃんって、家こっちのほうなんだ - 」

「 はい。 あれ .. 優木先輩も ?? 」

「 うん、俺もこっち 」


「 柊花ちゃんは、彼氏とかいる .. ? 」

「 え .. 」

「 あ、ほら、もし彼氏いたら、俺と一緒に帰ったりしてもいいのかな - って .. 」

「 ああ、なるほど .. そういうことなら、いないので大丈夫です 」


うそはついていない。 彼氏なんていないもん。
それにしても、先輩はかわいい。 なんか本当に純粋って感じ。

私とは正反対で。


「 そっかぁ 」

そこからは他愛のない話ばっかりして。
気が付いたら家。

「 あ、私ここなので .. 」


「 あ、そうなんだ ! あの .. また、一緒に帰ってくれる ? 」

少しおどおどしながらそう聞く優木先輩。

「 もちろん 」

「 良かった - 」

… なんで、いちいちこんなに可愛いんだろう。


「 じゃあ、またね 」

「 はい 」

私は家のドアを開けようとしたのだが、あることに気づいて道に戻る。

「 ……… 家、こっちじゃないんじゃん .. 」


先輩は、今来た道を戻って帰っていて。
送ってくれたのか、優しいな、なんてそんなことを思う。

ひゅ - っと生暖かい風が頬を撫でて、もう夏だなぁ。なんて。


家に入って着替えていると、メールが来て。

『  From : 優太  今日保健室行ってたって聞いたんだけど、大丈夫 ?  』

なんで彼は、いつもこんなきゅんとさせるようなメールをいつも送ってくるんだろう。
こんな彼氏みたいなメール。



駄目だ。 絶対に、好きになっちゃ駄目。

中谷先輩だけは、絶対駄目。


私はただの 『 浮気相手 』 で、そこに愛なんてないんだから。







2年前 No.5

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





それから私と優木先輩はほぼ毎日のように一緒に帰るようになって。


「 ね。 優木先輩、じゃなくて、嶺斗、って呼んでよ 」

「 え .. いや、でも先輩ですし .. 」

それに、男の子は優太しか呼び捨てにしてない。
と言っても家だけでだけど ..


「 え - .. 駄目 ? 」

「 ……… じゃあ、嶺斗先輩、にします 」

「 やったぁ 」

つい先輩のかわいさに負けて、そう呼ぶことにもなって。


どうして先輩が私なんかと仲良くするのかわからなかったけど、それでも少し嬉しかった。



それから2週間くらい経って。


『 ごめん、ちょっと先生に呼ばれて、一緒に帰れなくなっちゃった .. 』

と嶺斗先輩からメールが来て。

「 暇だし生徒玄関で待っておきますよ。 一緒に帰りましょう ? 」


と返す。 どうせ家に帰っても1人で暇だし、今までは普通だったのに最近は1人で帰るのが少しだけ寂しい。
でもそれは帰るのに限ったことじゃなくて、家にいるのも、なにするのも。

どこか寂しいと感じるようになってしまって。


これも全部、中谷先輩と嶺斗先輩のせいだ .. って。



約束通り昇降口で本を読んで待っているが、遅い。 少し遅いなんてもんじゃない、大分遅い。
もう、校内に生徒は誰もいないんじゃないかって思うほど人気がない。

でも自分で言ったことだししょうがないか、なんて思っていると廊下から足音がして。


「 ………… あ 」

「 柊花 」

そこにいたのは中谷先輩で。
よっぽど驚いたのか、初めて家以外で名前呼ばれた。

「 何してんの ? 」

「 …… 友達待ってます 」


「 ふ - ん、友達 .. 最近家来ないじゃん、どうした ?? 」

「 .. あのさ、こんなとこで .. 」

「 もうほとんど人いないよ 」

「 ……… 私、もともと自分からは行こうなんて思わないし 」

「 ああ、なるほど。 俺に来いって言われたら来るんだ 」


………… どうしたんだろう。 口調や声はいつもと同じでも、表情と目は全然違う。
すごく不機嫌みたい。 こんな優太は初めて見る。


「 う、ん .. 」

「 俺に呼ばれるからしょうがなく ? 全部俺のせい ? …… ずるいね、柊花ちゃんは 」

「 ……… っ !! 」

涙が出そうになった。 なんで、どうして ??
言われてることが、図星だから ? それとも、彼が怖い ?


「 ん .. っ ! 」

壁にもたれていた私の頭の斜め上くらいにどんっと手をついて、私に深くキスをする彼。


いきなりのことにびっくりして。
人がいないと言っても、見られてるかもしれない。 こんなところ、誰かに見られたら大変だ。

「 ゆ、うた .. やめて .. 」


彼の胸を押すが、やっぱり男の子の力にかなうはずもなくびくともしなくて。 深く深くキスされる。

「 やめてってば .. ! 」

やっとの思いでどんっと彼を突き放しうつむく。


「 ……… ごめん。 謝るから、そんな顔すんなよ .. 」

彼はそう言いながら私の頬をふわっと撫でて。 私が顔を上げると、彼は悲しそうな顔をしていて。
そんな顔って .. そっちがしてんじゃん。

こんな彼を見るのは初めてで深く動揺する。


「 や .. わ、たしこそ .. ご、めん .. 」

「 ん .. じゃ、またな 」


ひらひら、と手を振って帰って行く優太。
私の脚は軽く震えていて。 その場にしゃがみ込んだ。

………… いきなりどうしたんだろう。 優太がこんなところでなんて、有りえない .. なにか、あったのかな、菜々美と .. 大丈夫かな。


なんて。 私が気にすることじゃない。






「 柊花ちゃん ! 」

「 あ、先輩 」


「 本っ当ごめんね、こんな長くなるとは思ってなくて。。帰っててもよかったのに .. 」

「 いえ、約束したのに、1人で先に帰れませんよ 」

「 ありがとう 」


今日もいつものように他愛もない話をして帰る .. そう思ってた。 だけど。

「 ねえ 」

「 ん ? なんですか ?? 」

「 今日 .. 俺んち来ない ? 」


少し照れたようにそう聞く嶺斗先輩。
驚いていると、焦って言葉を付け足して。

「 あのっ、この前柊花ちゃん、俺と同じアーティストさんが好きって話したでしょ ?  俺の部屋CDとかグッズとかあるから、見せたいな - って。 それであの、今日なら家に誰もいないし .. 」

そう、いうことか ..


でも、何気なく放った一言だろうけど、『 今日なら家に誰もいない 』 って .. いや、でも嶺斗先輩に限って何かされるはずはない。

「 いいですよ 」

「 やったぁ 」


そう言って笑う嶺斗先輩。
……… でもなんか、いつもと少し違う気がする。 優太や菜々美とは全然違うから、正直この人は何を考えてるか読めない。


でも私はさっきの優太の顔が頭から離れなくて。この後何かあるなんて全く考えてもなかった。




2年前 No.6

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





「 どうぞ、オレンジジュースでもいいかな ? 」

「 はい、有難うございます 」


わ - 、すごい。 ポスターだぁ .. というか、本当にきれいな部屋 .. なんて思っていると、何もしゃべらすだんまりの先輩。
どうしたんだろう。


すると、ぽん、と隣に座ってくる嶺斗先輩。 その行動に少し驚く。
いや自分の部屋にどこに座ってもいいんだけれど。

そしてどこか不安気な目で私を見つめて。 重い雰囲気が流れる。 なぜか、少し逃げ出したい気分。



「 ねえ柊花ちゃん 」

「 は、はい .. ? 」

「 本当に、彼氏いないんだよね ?? 」

「 いませんけど .. 」


「 じゃあ、中谷とはどういう関係 ? 」


「 え .... 」

一瞬、何を言われたか分からなくて。

「 俺中谷と去年同じクラスだったからさ、結構仲良くて 」


え、いや、そこ、じゃなくて ...


「 別に、なにも .. 」

「 うそ。 俺、さっき見たもん。 昇降口で .. 」

「 ………… !! 」

「 …… やっぱりあれ、中谷だよね ? 」

「 ………… 」


驚きのあまり体が硬直する。
すると、ぎゅっと抱きしめられた。

「 れ、嶺斗先輩 .. 」

「 キス以上も ? 」

「 …………… 別に、好きであんなことしてるわけじゃあ .. 」

「 なんで .. 中谷には、彼女いるでしょ .. ? 」


分かんない。 なんで、だなんて。 私が1番分かんない。
でも、さっき見た優太の顔が頭から離れない。 なんでなんだろうか。

その瞬間、先輩にキスされて。


「 ごめんね .. もっと、自分の体大事にしなきゃ駄目だよ ? .. って、言ってることとやってること、矛盾してるね、俺。 あ、安心して。中谷とのことは、絶対誰にも言わないから 」

そう言って笑う嶺斗先輩。


「 有難う、ございます .. 」




「 やっぱり送るよ、もう暗いし .. 」

「 大丈夫です。 じゃ、さようなら 」

「 あ、うん、また明日 」


私は先輩に微笑んで、家を出た。

先輩が言ってた通りもう大分暗くなってきていて。



中3の頃、付き合っていた男子に言われたことがある。

「 野々村って、キスしても無表情だよな。 何考えてるかわかんね - 」って。


私は曇った、澱んだ空。 嶺斗先輩は星空。 優太は、晴れた空。 そんな感じだなあ。
歩きながら空を見上げて、そんなことを思った。



「 柊花 」

耳を擽るような声で名前を呼ばれたかと思うと、突然後ろから体がぬくもりに包まれる。

「  .. どうして、ここにいるの .. 」

私は、後ろから回された手をぎゅっと握って。


「 それはこっちのセリフ。 友達は ? 」

きっと、彼はもう全部知っているんだろう。
知っていて私を惑わす。

「 …… 友達って、優木か。 家行ったんだ ? 」

ほら、全部。


「 何か問題ある ? 」

「 ありまくり 」

ぎゅっと抱き締める力が強くなって。
すると、くるっと体の向きを変えられ向き合う形に。


「 おまえはそうでもさ、優木はおまえのこと友達だなんて思ってないよ。男が女を家にあげるってことは .. わかるよね、柊花ちゃん ?  … キスくらいはした ?  」


「 ……… 優太、離して.. こんな道でさ、知り合いに見られたりしたらどうするの .. 」


「 いいの。もう暗いし。 … それに、今日も菜々美、空き教室で浮気してたし。 そっちから告白してきたくせにそれはどうなのって思うよね -  」

……… ああ、なるほど。 機嫌悪かったのは、それが理由か ..


「 … まぁ、俺もこんなことしてるから人のこと言えないんだけど 」

そう言う優太の顔を見上げると、彼は笑っていて。でもどこか悲しそうで寂しそうで儚げで。
やめてよ、あなたにそんな顔似合わないよ。

でもそんな太陽みたいな君がこんな顔するのは、菜々美のことでだけなんだと思う。


本当に菜々美のこと、好きなんだろう。
そんなに愛されてる彼女が羨ましいな、なんて思ったり。


私は、とん、と彼の胸に頭をおくようにしてぎゅうっと彼の服の裾を握りしめた。

「 何なに、どうしたの。 柊花からそんなことしてくるなんて珍し .. 柊花 ? 」

「  ... うぅ - .. っ 」


なぜか、涙が溢れてきて。 その理由は自分でもよく分からなくて。
優太は私が泣いていることに驚いているようで。 声だけでも焦っているが分かった。


「 柊花、柊花。 どうした、なんかあったか ?? 」

でもそりゃあそうだ。 いきなり泣かれて、困るに決まってる。

そう思うけど、頬を伝う涙はおさまるどころかどんどん溢れ出して。 今泣きたいのは、彼のはずなのに。


恥ずかしい、こんな子供みたいに泣いて。 私は泣き顔を隠すようにぎゅうっと強く彼を抱きしめて。
……… あれ ? 私、泣いたのいつぶりだっけ。 人前で泣いたのなんて、何年ぶりなんだろうか。


「 優木になにか嫌なことされた ? 」

ふるふる、と首を横に振る。

「 じゃあ俺が学校で柊花にひどいこと言ったのが理由 ?? 」

「 ちがう ... 」


駄目だ、完全に呆れられた。

「 ごめ .. っ、すぐ、泣き止むから ... 」

その瞬間、ぐっと頭を優太の体に寄せられて。 ぽんぽん、と頭を撫でられた。

「 大丈夫、大丈夫 」


その優しい声と言葉に安心して、ふっと力が抜ける。

「 柊花。 .. 帰ろっか 」

顔は見てないのに、彼が笑顔なことが分かった。

「 ... うん ... っ 」


おんぶしてもらって暗い道を帰る。
この際、どっちの家に向かっているかなんて今の私にはどうでもよくて。


「 ねえ  」

「 ん ? 何 ?? 」

「 迎えに、来てくれたの .. ? どうして、私があそこにいるって分かったの .. ? 」

「 ………… さぁね 」

彼はそう言って笑って。 そんな彼を見て、少し呆れたように笑う私。

「 さぁねって .... は ? 笑 」

「 .. 優木なんかに渡さないよ 」


彼はそうつぶやいたけど、何をなのか、それは私をなのか、果たして本気なのか。
何も教えてはくれなかった。 おんぶしてもらっているから、もちろん表情は分からない。


「 というか、柊花 ... 体重重くなった ? 」

「 はぁっ !?  うるさい。 そんなこと言うとか有りえない 」

べしっと彼の頭を叩く。
「 痛って ! 」そんなオーバーリアクションをする彼がおかしくて、つい笑ってしまう。

「 ……… 柊花ちゃんは、笑った顔の方がいいよ 」

「 ………… 」


彼はそう呟いて。 かぁ _ と、胸が熱くなる。
ば - か、心の中でそう呟いてぎゅうっと彼の背中にしがみつく。 すごくすごく、暖かくて。




そうか、私は ... いや、もしかしたら彼も。

ただただ、誰かに愛されたいだけなのかもしれない。



でも駄目。 この人だけは、絶対に駄目。 「 好き 」 なんて言ったら、おしまいだ。






2年前 No.7

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





それから数日後。



「 ね、かわいくない !?  このネックレス 」

「 本当だ。かわいいね、買ったの ? 」

「 昨日、彼氏に買ってもらったんだぁ 」


嬉しそうに首にかけたネックレスを私に見せる菜々美。
そっか、明日、デートだったんだ。


「 今日も一緒にお弁当食べる約束してるんだぁ - 」

菜々美はにこにこ笑って。 恋してる女の子、って感じでかわいいなぁ、なんて思った。
上手くいってるみたいで。良かったじゃん。


それから、毎日のように菜々美から「 彼氏がね - 」 と言う話を聞くことがすごく多くなって。

なら、私は必要ないじゃん、もういらないじゃん、って。
優太から来たメールは全部返信せずに削除して。 電話も全部無視した。


『 逢いたい 』 『 家来て 』 そんなことが書いてあるメールもたくさんあったけど。 菜々美がいるじゃん、って。

いっそ受信拒否、着信拒否にしようか。
休憩時間などは逢わないように他のクラスに行ったりして。だって、逢ったら気持ちが揺らいじゃうのは分かってるから。



反対に、嶺斗先輩とはもっと仲良くなって。 この前のことはどっちからも何も言わない。

まるであの日はなにもなかったように。
先輩から、優太の名前が出ることもなかった。


「 でさ、そしたらね、 .. 」

「 へ - 、そうなんですか - 」

数日後の帰り道。


いつものように他愛のない話で盛り上がっていると、自分の家が見えてきて。

「 今日も送ってくれてありがとうございます 」 そう言おうとしたら、家の前に人影があるのに気が付いた。
どくっと胸が激しくなる。


「 せ、んぱい .. すみません .. 」

「 ん ? .. あ 」

「 せ、先輩。 輩の家行きましょう !! 」

「 え ?  い、いいけど ... いいの ? 家の前に .. 「 大丈夫です ! も .. 早く行きましょう ! 」


大丈夫だ。 彼は携帯をつついていたから、私たちにはまだ気が付いていないはず。
こそっと嶺斗先輩と来た道を歩きだすと同時に、腕を後ろから思いっきり引っ張られて。

「 きゃっ .... 」

「 おまえ .. 何してんの .. 」

「 ゆ、うた ...  」


彼は、いつもと違う、真剣そうな顔で私を見つめてきて。 その目に思わず引き込まれそうになって、あわてて目をそらす。

「 優木。 こいつ俺のなんで 」

「 はぁ ... ばかじゃないの ?  おまえさ、柊花ちゃんの気持ち考えたことある ? 」

「 は ? おまえに言われたくねーし 」


………… 待って、何このピリピリした雰囲気。 2人、仲いいって言ってたじゃん。

「 せ、先輩 ... ごめん、なさい .. 送ってくれて、ありがとうございました .. 」


私がそう言うと、嶺斗先輩はため息をついて優太をキッと睨んで帰って行った。
なんか、悪いことしちゃったな ..


「 ………… ゆ、た .. 手、離して、痛い .. 」

「 嫌だ 」

やめて、そんな目で見つめないで。 そんなふうに思い、うつむいているとぐいっと引っ張られ、家の前の壁に追いつめられて。
手首を抑えられたまま深いキスをされる。

人があまり通らない道だけど、昼間だし見つかったらやばい。


彼は、離れたかと思うと私を見つめて。

「 避けてる ? 」

「 ……… 」


目を逸らすと、ぐっと顎をつかまれて。 力は強かったけど、なぜかどこか優しくて。 .. 彼はいつもそうだ。

「 答えて。 なんで避けてる ??  電話もつながんねーしメールも1つも返事ねーし家にも来ねーし 」

「 ……… 」

「 なんで ? 」

いつも、なぜかあなたには逆らえない。


「 だ、って .. 菜々美と、上手くいってるんでしょ .. っ ? なら、私は必要ないじゃない .. 」

「 えっ ? 」

うつむいていると、驚いたような声が聞こえてバッと顔を上げる。
すると彼は目を丸くしていて。


「 待って、上手くいってるって .. 誰から聞いたの ?  上手くいってるどころか、最近ほとんど逢ってねーんだけど 」

「 ………… え ?? 」


どういう、こと _ ? だって菜々美言ってた、「 彼氏と .. 」

「 ……… あ … 」

………… もしかして、「 彼氏 」 って、浮気相手のこと .. ?


だから、いつもみたいに 「 優太 」 って言わずに 「 彼氏 」 って ..


「 ……… ば - か 」

そのことに気が付いたのか、私を見て少し笑う彼。

「 ご、めん、私 ... 」

「 …… いいよ 」


優太は、くしゃっと私の頭を撫でる。
そんな優太の服の裾を、くいっと引っ張って。

「 ……… ねえ優太 」

「 ん ? 」

私は、優太に向かって微笑んで。 こんなふうにちゃんと優太を見て笑ったの、久しぶりかもしれない。



「 この関係、やめよう 」

「 ………… は .. ? 」

「 こんなのやっぱり駄目だよ。 お互いを傷つけるだけ。 だって、本来は私は優太の 『 彼女の親友 』だよ ? .. そうだよ、もっと早く気付けばよかった 」


「 ………… 奏菜 」

彼は私を呼んだかと思うとぎゅっと私を抱きしめて。
そんな彼を、どんっと押して。


「 ねえ優太。 ... 私は .. 菜々美じゃない 」

「 ………… 」

「 ね、今ならまだ間に合うよ。 優太の『 彼女の親友 』 に戻れる。 …… 「 男の浮気は遊び 」 なんでしょう ?  …… なら、そこに愛はないから .. もう遊ばれるのは御免 .. 」

「 違っ ... 俺は遊びとかじゃなくて .. 」

「 私に向けて 『 好き 』 って言ってるとき、心の中に私以外の人いたでしょ ? ……… もう、家来ないで。 連絡もしないで 」


そう言って家に入ろうとする。

「 奏菜 」

「 やめて !  … 名前 .. 呼ばないで 」


そんな目で私を見つめないで。
嫌い、嫌い。 大嫌い。 あなたに見つめられるの。 だって、あなたの瞳には私が写っているけど、私はあなたに見えてないもの。

「 なんで、今更 ... 俺は嫌だよ 」

「 …………… 好きな人ができたの 」

「 ………… 優木 ? 」

「 さぁね 」


いつかの彼の真似。 ねえ、気付いてよ。

「 ……… 分かった。 もういい。 ……… じゃあな。 ` 野々村 `。 今までありがとう 」

彼はそう言って帰って行って。 私はその場に泣き崩れた。今日は運よく全然人が通らない。



私、なにしてるんだろう。
色んな人 .. 大事な人を、みんな傷つけてまで。 どうして、こうなったんだろう。


「 ば - か ………… 」


本当にばかだ。 私も、優太も。

好きな人なんて、あなたに決まってるでしょ .. なんで気づかないの _ ?
勘違いして。 嶺斗先輩じゃないよ。



「 ………… すき .... 」

私はそう呟いたけど。 もう遅い。 もう彼とは一緒に入られないのに。 彼に届くことは、もうないのに。



ぽつん、と水が上から頭に降ってきて。

「 …… 雨 .. ? うそ、さっきまで晴れてたのに .. 」


それはまるで、私の涙のようだった。








2年前 No.8

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





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すっごく嬉しいです , b



__



あれから1か月くらい経って。
今日は、体育祭の日だ。

あれから優太とは連絡も取ってないし、1回も逢ってない。


正直、寂しい。 自分で突き放したくせに、私は何を考えているんだろう。

私の学校は全学年合同で、組ごとにチーム分けされる。


私と優太は、学年は違うけど組は一緒だから、チームは一緒のはず。

「 優太 - ! 」

「 よっ !  暑いな -  」

「 そうだね - 。 ね、優太はなにに出るの - ? 」


人混みの向こうに、話している菜々美と優太が見えた。
なんだ .. 仲良くやってるじゃん。 やっぱり、私は必要なかったんだ。

私が、2人の仲を妨げてたんだよ。


「 野々村さん、野々村さん !!  どこ - ? 」

私の名前が呼ばれてることに気が付いて、走ってその場に行く。


「 あ、野々村さん ! 」

「 ………… ? 何 ? 」

「 ねえ。 足、速かったよね .. ?? 」




「 どうして私が ... 」

鈴木さんは陸上部で足が速くて、クラスの女子のリレーの代表だった。
でも今日鈴木さんがさっき足を捻って、走れなくなったそう。

そこで、中学の頃陸上部だった私が頼まれたということだ。


といっても今は帰宅部だから勝てるはずもない。練習もしてないのに ...


「 野々村さ - ん 」

「 は - い 」




「 ………… え .. 」

「 ………… ! 」


場所に行って並んでいると、優太 .. 中谷先輩がいて。 私は、先輩からバトンを貰って走らなきゃいけないみたいで。

「 あ、柊花ちゃ - ん !  あれ。 そこ、他の女の子じゃなかったっけ ?? 」

中谷先輩の隣にいた嶺斗先輩が、ひょこっと顔を出して私に聞く。
あ .. そういえば、嶺斗先輩は野球部で足が速いから、リレー出るって言ってたっけ。


「 …… その子、さっき怪我して。 だから、その子の代わりなんです 」

「 あ - 、なるほど。 頑張ろうね 」

「 あ、はい 」


嶺斗先輩はにこにこと笑って。 その表情は、なぜか全部分かってるみたいな感じに見えた。

「 ………… 久しぶり 」

「 … お久しぶりです、先輩 」


「 足速かったんだ ? 初めて知った 」

「 ……… 悪いですが、そんな速いってほどじゃないので。 .. 抜かれても、怒んないでくださいね 」

「 ば - か、怒るなよ 」

彼はそう言って、私が大好きな笑顔で笑った。 そしていつものように私の頭をくしゃっと撫でて。


「 ………… あ、悪い 」

パッと手を引っ込めて気まずそうな顔をする彼。
彼が触れたところが、熱くて。

「 ... いえ 」

「 …… あれ。 おまえ、大丈夫 ? 」

「 え .. ?? 」


「 顔色悪い。 …… 無理すんなよ ?? 」

「 …… はい 」

意地悪なところもあるけど、本当はすごく優しくて。
それが私にだけだといいな、なんて変なことを考える。 … そんなはずない。 先輩は、誰にだって優しいんだから。



「 ふう .. 」

とりあえず走り終えて。 私の走ったチームは、2位だった。
疲れた、なんて思っていると、なぜかくらっとして。

視界が歪んで、私はその場に倒れた。



「 きゃ - ! 」

「 野々村さん、大丈夫 !?? 」


「 ‘ 柊花‘ !! 」

たくさんの人の声がする中、私の名前を呼ぶ愛しい人の声が。
その瞬間、私の体は宙に浮いて。 あぁ、私、今お姫様抱っこされてるんだ - なんて、他人事のように思う。

すると女の子の悲鳴のようなものが聞こえて。 そういえば、彼モテるんだ。


「 柊花、大丈夫 !? 」

「 あ、菜々美。 ごめん、俺野々村保健室連れて行ってくる 」

「 うん、分かった 」


彼は、自分の首にかけていたタオルを私の顔の上にバッとかけて。
気ぃ使ってくれたんだな、なんて思う。

「 ………… ゆ、うた ... 」


タオルの隙間から見えた彼の顔が、なぜかすっごくかっこよく見えた。



「 熱があるね - 、朝からしんどかったんじゃない ? ベッドで休んでなさい。 あ、でも先生、今ちょっと怪我した子がいるから出ないといけなくて .. 中谷くん、ついててあげてくれる ? 」

「 はい、分かりました 」


保健室に行くと、先生はすぐそう言って保健室を出て行って。
それと同時にそっと私をベッドに寝かせる彼。

「 大丈夫か ?? 」

「 ……… ん .. 本当、すみません ... 」


「 何言ってんだよ 」

「 … 菜々美、放っといていいんですか .. ?  私1人で大丈夫なので、先輩は戻ってください .. 」

「 はぁ .. 熱あるやつ1人にしておけるわけねーだろ。  保健室、あんま人来ないし .. いーからおまえは休んでろ 」

「 ん ... 」


目を瞑っていると、おでこにひやっとした感覚が。

「 あ、ごめん、起こした ? タオル濡らしてきたんだけど .. 」

「 いえ .. ありがとうございます .. 」


彼は私に微笑んで。

「 も - 、だから無理すんなっつったじゃん 」

「 あ .... 気づいて、たんだ .. ? 」


「 当たり前。というかおまえさ、前から人に甘えるってことを知らなすぎ。 .. お母さん達いないのも関係してるんだと思うけど .. もっと人に頼れよ 」

「 ………… 」

口調は強かったけど、声は優しくて。私のことを思って言ってくれてるんだって。


「 じゃあちょっと練習してみろよ。 ほら、甘えてみ 」

「 は .. っ ? 何それ .. ! 」

「 いいから早く - 。 なんかねーの ?? 」


「 …………… そばに、いて .. ? 」

そしたら私は、他にはもう何もいらない。

「 ………… 」

「 あ ... ご、めん、無理だよね , 体育祭中なのに .. 私、今熱でちょっとおかしくて .. 忘れて ? 」


自分の言ったことに顔が真っ赤になって。 見られたくなくて、タオルで顔を隠す。

「 … いいよ、分かった。 ずっとここいるから 」

「 …………… ごめん、ね .. 」

「 え、なんで ?? 」


「 色々、迷惑かけて ... それから、たくさん傷つけて .. 」

すると彼はふっと笑って。

「 ば - か。 つ - かさ、おまえさっき優太って呼んだろ。 名前で呼ばないでとか言ってたくせに 」


「 ……… そう、いえば .. え ? でも、そっちだって私が倒れたときみんなの前で 『 柊花 』 って呼んだよね ?? 」

「 .. そう、だっけ ? 」

「 そうだよ。 忘れたわけ ? 」

「 うそ、覚えてる。 ごめんね 」


「 .. い - よ 」

「 え ?? 」

「 柊花、で、いい。 … 2人でいるときは。 .. まぁ、2人でいる時がこの先あるか分からないけど 」

「 .. ん、了解。 … 柊花。 ごめんな 」


その 「 ごめん 」 は、なんの 「 ごめん 」 なのか。

お互い、言ってほしいこと、聞きたいこと、大事なことは何も言わなかった。




目を開けると見慣れない天井。
………… あぁ、保健室か。

「 おはよ 」

「 あ .... ゆ、うた 」


時計を見ると、もう私が倒れてから1 , 2時間たっていて。

「 体育祭は ? 」

「 もうちょうど終わるころじゃない ?? 」


「 …… ずっと、居てくれたの ? 」

「 え ? だって、言ったじゃん、そうやって。 熱は ? 」

そう言って、自分の額を私の額にこつん、と当てて。
その行動に驚いて顔が熱くなるのが自分でもわかった。 彼のこんな行動は、きっと何の意味もない。 彼は、誰にでも優しいんだから、期待しちゃ駄目だ。


「 ん、大分下がったかな。 おまえ朝から熱あったの ?? 」

「 … わ、分かんない .. でもちょっとだるかったかも。 私、昔から行事のときとかに熱出しやすいんだよね、なぜか 」

すると、ガラッとドアが開いて先生が入ってきて。


「 あ、野々村さん、起きたの。大丈夫 ?  放っといてごめんね。 熱測ろう。 今、ちょうど体育祭終わって片づけたり捨てるところだけど .. 」

「 あ .. じゃあ、俺は戻りますね 」


「 ありがとうね、中谷くん 」

「 いえ 」

彼は先生にそう言って保健室を出て行った。


「 … まだちょっと熱あるね。すごく高いわけじゃないけど .. どうする ? 1人で帰れる ?? 」

「 あ .. 大丈夫、です 」

「 そう。 じゃあ、家に帰って休みなさい。 … いい彼氏さんね - 」


保健室の先生はそう言ってくすっと笑って。

「 全然そんな .. 彼氏、とかじゃないです .. 」

「 あら、そうなの ?  じゃあ、幼馴染とか ?? 」

「 違います、けど .. なんでですか .. ? 」


「 だって彼、あなたが眠ってる間、ずっと手握って。 ず - っとあなたの頭撫でてたわよ ? 」

「 …… 」

何それ。 なんで、どうしてそんなこと ……
…… 私はそこでハッと気づく。



「 え、ちょっ .. 野々村さん !? 」


先生が止めるのも聞かず、私は走って保健室を飛び出した。



「 中谷先輩 ! 」

廊下であなたを見つける。
でも遠いから、呼んでも彼は気づかなくて。


「 .... 優太 !! 」

すると彼は驚いた顔で振り向いた。

「 バカッ .. おま、何してんだよ。 また倒れたりしたら .. 」

「 言い、忘れてたこと、あって ... 」


「 … 何 ? 」

私は、きょろきょろと周りに誰もいないことを確認して。
息を整えた。


「 その、ありがとう .. 今日、色々と .. 」

そうだ。 私、ちゃんとお礼言ってなかったんだ。

「 どういたしまして 」


彼は私の大好きな笑顔で笑って。

「 それから、改めて別れの挨拶をしようと思って 」

「 え ... 」

彼の顔が一瞬にして強ばったのが分かった。
私は彼に、こんな顔させてばっかりだ。


「 今までありがとう。 バイバイ。 ………… 大好きだったよ 」

私はそう言って、後ろを向いて走った。

自分がどこに向かっているかは分からない。 でもとにかく走って。
また倒れる、だなんてどうでもいい。


心の痛さに比べたら、そんなのどうってことない。

「 柊花 」 私の名前を呼ばれた気がしたけど。 彼は追ってはこなかった。
本当は、期待してた。


追いかけてきてくれる .. そう、心のどこかで。

でも追いかけては来なかったから。 あぁ、これが答えなんだなぁ - って。


「 ふ ... うう - .. 」

昔。もう泣かないって決めたのに。 あなたのことでならこんなにも涙が出る。



『 大好き ‘ だった‘ 』

そう、過去形。 これは私のけじめ。
…… もう、やめた。

叶わない恋をするのは。



「 あれ、柊花ちゃん .. こんなとこでどうしたの ?? 倒れたの、大丈夫 ?  … 柊花ちゃん ? どうしたの .. ?? 」

しゃがんで泣いている私に、おどおどしたような表情で手を差し出す彼。



「 嶺斗先輩 ... 」

「 俺、もう片付けとか終わったからさ。 大丈夫なら、一緒に帰ろ ? 」


先輩はにこ、と笑って。

「 … はい .. 」

「 … 何かあったらさ、俺のこと利用していいからね 」


そんなキラキラした目で、なんて残酷なことを言うのだろう。

でも、なぜか私は、そんな彼に甘えてしまいたくなった。









2年前 No.9

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





次の日。
薬を飲んで寝てもまだ熱があったので、学校は休んだ。

少ししんどいけど、病院に行くほどじゃない。


夕方。 学校が終わったような時間に、メールが来て。


『  From : 菜々美  柊花、大丈夫 ?  まだ熱下がらない ?? 柊花がいないと寂しかったよ - (>_<)  明日は学校来れるといいね ♪  』


なんだかんだ優しい菜々美。
ただ、たまに何を考えているのかわからなくなる時がある。 だから、本当は私と彼のことだって、気付いてたんじゃないかって、心のどこかで思ってしまう。


『  有難う、大丈夫。 学校お疲れ様  』

私は送信ボタンを押した。

お腹空いた。
…… お粥とか作るのめんどくさいし、いいや。


そんなことをベッドの中で思っていると、インターホンが鳴って。

一瞬、彼じゃないかと期待する。 忘れるって決めたはずなのに。


「 … ?  嶺斗先輩 .. ? 」






「 ごめんね、急に来て 」

「 いえ .. こんな格好ですみません、 」


来てくれたのは嶺斗先輩だった。 どうぞ、と家にあげる。

「 大丈夫 ? 風邪。 ひとり暮らしって、大変だね 」

「 あ - 、はい、なんとか .. あ。すみません、お茶入れますね 」


私は軽く咳をしながらマスクを着け、動こうとする。

「 いやいや、いいよ。 柊花ちゃんは寝てな。 まだしんどいんでしょ ? 」

「 …… すみません .. 」


「 あ、はい、これ。 ゼリーとか買ってきた 」

「 え .. いいんですか ?  有難うございます .. 」

「 いえいえ 」


そこから少し先輩と話して。 私は、気付いたら寝てしまっていた。
とんとんとん、という音で目が覚める。


見ると、キッチンの明かりがついていて。そこで先輩が何かを作っているのが見えた。


「 …… ふぅ ..  あ、柊花ちゃん、起きた ?  ごめん。勝手に冷蔵庫のものとお皿使ったけどよかったかな ?? 」

「 全然大丈夫です 」


「 はい、良かったら食べて 」

ぽん、とベッドの前に置かれたのは、ねぎがのった美味しそうな卵粥。

「 え .. 私に ?? 」

「 もちろん。 台所見たらさ、食べた形跡ないし。 なんか食べたほうが、早く治るよ。 ... って言っても、俺あんま料理しないから美味しいかどうかは分からないんだけど 」


スプーンを手に取って、口に運ぶ。

「 ………… 美味しい .. 」

「 本当 ? わ - 、良かった 」

本当に、美味しい。


「 有難うございます、先輩 」

ぱくぱくとたくさん食べる。
前にも一回だけ風邪をひいたときに、優太にお粥を作ってもらったことがある。

本当に寂しかった時だったから、余計に美味しく感じたのを覚えてる。



「 熱っ .. 」

ぽろぽろ、と溜めていた涙が零れ落ちる。

「 え、大丈夫 ?! わ、もうちょっと冷ませばよかったかな .. ごめんね ! えっと、どうしたら .. 」

「 違 .. そう、じゃなくて .. 温かいなって、思って .. ごめんなさ .. 人に作ってもらうの、久しぶりだったから .. 」

「 … そっか。 .. でも、それだけじゃないでしょ ?  昨日泣いてたのも、全部あいつのせい ?? 」


なぜ彼は、どうしてそんなになんでも分かってしまうんだろう。

「 ………… わ、かんない .. 」

「 言ったじゃん、俺。 …… 『 利用してもいいよ 』 って 」

「 … な、んで .. そんなこと ... 」


「 俺、柊花ちゃんのこと好きだよ 」

「 ………… ! うそ .. 」

「 本当。 気づいてたでしょ ?? 柊花ちゃんは 」


……… うん、気付いてた。 でも多分、自分で自分に違うって言い聞かせてたんだ。

「 でも駄目だよね。 柊花ちゃんには、中谷が .. 」

「 …… 中谷先輩とは、もう終わりました 」

「 え ? 」

「 もう全部、終わったんです 」

「 …………… 」


私は頬をゆっくりと伝う涙を拭いて、笑った。

「 ……… じゃあ、俺のこと好きになりなよ 」

またそんなこと言って - 。って、笑いたかった。でも、冗談じゃないことは、表情で分かったから。

「 先輩 .. 」


嶺斗先輩だったら、幸せになれるかな。 涙を流すこともなくなるかな。
… 最初から、出逢っていたのが嶺斗先輩だったらこんな想いしなくてよかったのかな。

「 あの、せんぱ .. 」

「 返事は今じゃなくていいよ。 いつでもいい。 弱ってる人にこんなこと言うなんて、ずるいよね、俺 」

「 ………… 」


「 あ、お粥 」

「 え ? 」

「 もういらない ?? 冷めちゃうよ。 あ、薬とか飲まなくて大丈夫 ? 」

先輩はそう言って。
やっと、いつものかわいい笑顔で笑った。 .. 私がかわいいって言うのも、おかしい話だけど。




「 じゃあ、俺はそろそろ帰るね 」

「 はい。 本当に、ありがとうございました 」

「 明日は学校来れそう ?? 」

「 多分 .. 」

「 良かった。 じゃあ、待ってるね 」


先輩はバイバーイ、と手を振って家を後にした。



ねえ。嶺斗先輩。

先輩が言う 『 利用 』 は、どういう意味での 『 利用 』 なの ? 自分を優太の代わりにってこと ? それとも、自分を使って優太とくっつけと ?  それとも、他の別の意味 ??


私には、分からない。

……… でも、何にしろ、そんなの残酷すぎる。




… 優太とは、こんな形じゃなく、普通に出逢いたかった。






2年前 No.10

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE







私は多分、ずっと前から彼が好きだったんだろう。

菜々美が彼と付き合い始めたような頃なんかじゃなく、もっともっと前から。



中学3年生の春。


「 わっ .... ! 」

一人で登校していると、段につまづいてこけて。

「 痛ぁ .. 」


膝や手をすりむいて、そばにあった道端の階段で軽くうずくまっていた。
私、ださいなぁ .. なんて冷めたように思いながら。


「 どうしたの、大丈夫 ? 」

目の前に、すっとハンカチが出されて。

「 こけたの ? 」

こくん、とうなづくとそのハンカチを渡された。

「 あっちの中学校だよね ?  その制服。 俺、そこの卒業生だからさ 」


彼は、にこ、と笑って。 ばかみたいって思うかもしれないけど、その顔は、まるで太陽みたいに暖かくて。
制服がすごくきれいだから、多分この人は1年生なんだろう。 …… それにしても、かっこいい ..

その顔に見とれていると、すっと今度はきれいな手が目の前に出されて。


「 立てる ? 大丈夫 ? 」

ぐっと手を引っ張って私を起こす彼。


「 スカート .. ちょっと汚れちゃったね。 そのハンカチで拭けばいいよ 」

「 え、でも、ハンカチ汚れちゃうし .. 」

「 いいよ、そのくらい。 あ、はい、絆創膏。 持ってるかな ?  良かったら使って ? 」

「 あ .. りがとう、ございます .. 」


ハンカチに絆創膏 .. 女子みたい。 なぜかそう思った。

「 あ、やべ、もうこんな時間。 じゃあ俺行くね。 学校行ける ?? 」

こくっとうなづくと、彼は 「 またね 」と言って走って行って。


「 ………… あ .. ハンカチ ... 」

私はハンカチを持ったままのことに気が付く。
… 返さなくて、いいのかな ..


「 またね 」 その声と笑顔が頭から離れない。
痛みなんて、もう飛んで行っていた。




それから1年。 私は高校生になった。


「 ねぇねぇ、知ってる ? 2年生に、めっちゃかっこいい人がいるんだって !!  中谷優太先輩っていうらしいんだけどさ !  あ、ほら、そこ !  今校庭にいる .. 」

「 え、あの線のところ立ってる人 ? うわ、かっこいい - ! 」

授業中に、席が後ろの女の子たちのそんな話が聞こえて。
チラッと窓から校庭を見てみると、男子の先輩たちが体育中で。


二人が言ってるの、あの人かな。なんて見ているとその人はくるっと振り向いて。

その人は、なんとあのときの人で。

「 えっ !? 」

つい少し大きな声を出してしまった。
少し喋り声が聞えるくらいで、静かな教室。私の声は響いて、恥ずかしくなる。


「 どうかした ? 野々村さん 」

若い担任の先生が不思議そうにこっちを見て。

「 …… いえ、すみません、何でもないです .. 」




それから私は、彼を目で追うようになった。
ただ単に目立つ存在だから .. それだけかもしれない。 でも、なぜか彼のことが気になった。


「 彼氏できたんだぁ。 昨日告白したらね、OKもらえたの !  なんとね、それが中谷優太先輩で !!  有名だから、柊花も知ってるでしょ ? 」

菜々美に満点の笑みでそう告げられたのは、1年の夏から秋に変わるころだっただろうか。
涼しくなってきた日だったから、多分そう。


「 そ、うなんだ .. 菜々美がその人のこと好きだなんて知らなかった。 よかったね 」

私はそう言って笑って。 …… ちゃんと笑えてるかな、私。そんなことを思う。


あの時貸してもらったハンカチを、ポケットの中で握りしめたまま。






私はその時のことを思い出しながら、自分の部屋のベッドでそのハンカチをポケットから取り出した。 いつの間にか、そのハンカチは自分の中でお守りみたいになっていた。

… いまだに持っているなんて、気持ち悪いと思われるだろうか。


返すタイミングがなかったのだ。

彼は人気者で友達もたくさんだったから、菜々美と彼が付き合う前はまず話しかけることもできなかった。
今となっては、彼はそのときのことなんてもう覚えてないだろう。


「 はぁ .. 」

菜々美は少し我儘で自分勝手なところもあるが、可愛くて背も低くて素直でよく笑う。The女の子って感じ。
だから、男子にはモテる。


菜々美が彼に告白する前に私が声をかけていたら。 何かが変わっていたのだろうか。




どうして、この感情をもう少し早くに気づくことができなかったんだろう。

どうして、たった二文字の言葉が口に出せなかったんだろう。




私はばかだ。 好きだった、もう諦めた、なんてうそじゃん。


「 好き .... 」

なんて。 あなたには、もう届かないのだろう。










2年前 No.11

七瀬 @love1217 ★qCH7c0UmMj_mgE





「 あ、柊花ちゃん !  おはよ ‐ 」

「 嶺斗先輩。 おはようございます 」


次の日の朝。 学校の前で、歩いて登校していた嶺斗先輩とばったり会って。

「 もう熱下がった ? 大丈夫 ?? 」

「 はい、おかげさまで。 昨日は本当に有難うございました 」

「 いえいえ。 良かった 」


「 柊花ぁ - !! 」

後ろから、どかっと抱きつかれる。 いや、ぶつかられる。

「 ……… ちょっと菜々美 .. 痛い 」

「 ごめん - .. ねぇ聞いてよ。 優太と喧嘩しちゃってさぁ - .. 」

「 喧嘩 ?? 」


「 うん。 今まで私に怒ったり言い返すことなんてなかったのに。 だから、私もムキになっちゃって .. 」

「 なんで怒ったの ? 」


「 ……… ごめん .. 実は私、やきもち妬いてたの。 体育祭で柊花が倒れたとき、優太、誰よりも早く反応して柊花抱きかかえてたでしょ ?  で、その姿にちょっと嫉妬しちゃったっていうか .. 」

恥ずかしそうにそう話す菜々美。
私の名前が出たことに、少しびっくりする。


「 それでね、柊花のことについて少しからかっちゃったの、その、悪い意味とかじゃなくてね ? そしたら、急に真面目な顔して怒り出すんだもん。 私も、言い返しちゃって、それで喧嘩になっちゃってさ .. 」

「 ………… 菜々美。 ごめん、じ、つは私 ... 」


「 柊花ちゃん 」

隣にいた嶺斗先輩の声でハッとする。
… 私 .. 今、話そうとしてた .. ?  中谷先輩とのこと ...


「 ん ? 何が ?? 」

「 あ .. ほら、私が原因みたいなもんでしょ ? 私が倒れちゃって .. 」

「 え - 、違うよ。 私こそごめんね 」






「 今日、確かに中谷いつもと違ったよ 」

放課後。 駅前のカフェに嶺斗先輩と来ていた。
先輩がいきなり、ケーキ食べたい、なんて言いだすから。 とか言って私も頼んだけど。


放課後デートなんてもんじゃない。

いきなり中谷先輩の名前を出すから、私はびっくりして。
持っていた水が入ったコップを落としてしまいそうになった。

「 .. え ? 」

「 あれ。 さっきから浮かない顔してるのは、そのことが気になるから、じゃないの ?? … あ、図星だ 」

彼はそう言って笑った。

周りを見渡すと、カップルらしき高校生2人組が多い。
同じ学校の人もいたが、私たちの座ってるところは窓側の離れたところだから、多分声は聞こえないだろう。


… それにしても、彼はどうしていつも私のことがそんなに分かるのだろうか。

「 … 喧嘩、ねぇ。。 しかも柊花ちゃんが関わってるとは。 でも、ばれてないみたいでよかったね 」

「 …… 」


どうして中谷先輩は、怒ったりしたのだろう。
菜々美のこと大切そうにしてたから、怒ったりなんてしないって思ってたのに。

…… 菜々美は浮気してるくせに、そう言われたのが悔しかったのだろうか。
… それとも、私とのことがばれると思ったから ??


ケーキのフォークを口にくわえたまま、そんなことを考える。

「 これ。 一口いる ? それにするかこれにするか、迷ってたじゃん 」

先輩は微笑みながら、自分の前に置いてあるショートケーキを指差す。

「 ……… 食べたい、です 」

「 了解。 はい、あーん。 」

「 ……… 美味しい .. 」

「 よね - !! 」


それにしても、ケーキが大好きとか食べたいとかって、本当に女の子みたい .. 笑、

「 やっぱりなにかあったらさ、甘いもの食べるのが1番だよね - 」


私のケーキを一口食べて、美味し - ,と言いながら笑う嶺斗先輩。
…… 「 ケーキ食べたいなぁ。 一緒に食べに行こうよ 」 あの言葉は、私のためにだったのか ..



「 有難うございます、先輩 」

「 ふふ、いえいえ 」


嶺斗先輩は、やっぱり本当に優しい。


帰り道。 暗くなってきたからって、また家まで送ってくれて。
家までの道。 私はずっと考えていた。


…… この人と付き合ったら、私は幸せになれるのだろうか。

この人と付き合ったら、私は ...


「 何考えてるの ? 柊花ちゃん 」

私の顔を覗き込みながらそう言う嶺斗先輩。

その姿が、彼と重なった。



『 何考えてんの、柊花 』

優しい声と甘い表情でそう言う彼。 そんな声で、私の名前を呼ばないでよって。 いつも思ってた。


ベッドでも笑ってるときも不機嫌なときも。
彼の私を呼ぶ声は、いつもすごく甘くて優しくて、耳を擽った。

愛があるんじゃないかって、期待しちゃうくらい。


… そんなわけないのにね。



「 ……… ばか優太 ... 」

気づいたら、私はそう呟いていて。

「 ん ? 何か言った ?? 」


先輩は、きょとん、とした顔で歩きながら私を見るけど。
多分聞こえてた。 何て言ったか、きっと気付いてるだろう。 それでいて、聞こえてないふりしてるんだ。

「 ………… 先輩 」

「 ん ? 」

「 この前の返事 .. 決まりました 」











2年前 No.12

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE






「 ………… はい 」

いいよ、言って。と立ち止まって私の方を向く先輩。



「 ………… ごめんなさい .. !! 」

私はガバッと頭を下げて。 謝るっていうのもあるけど、顔を見るのが、怖かったからっていうのもある。


「 …… 顔上げて ? 」

ゆっくりと顔を上げると、なぜか先輩は微笑んでいて。
分かってた、とでも言うような顔で。

「 … 私、このまま先輩とは付き合えない .. 」


私みたいな人に、嶺斗先輩はあわない。
嶺斗先輩みたいに、心がすっごくきれいで純粋な人。

私みたいな人が、汚しちゃいけない気がする。


… それに、私はやっぱり。

「 ……… 優太が好き、です ... 」

「 … 彼女がいても、諦められないって ? 」

こくっと頷く。


「 …… 分かった 」

「 … でも私、自分の気持ちを伝える気はありません 」

「 え .. なんでっ .. 」

「 最初は ... 」


最初は、先輩からの告白、OKしようと思ってた。
自分の気持ちをみんなに知られたら、中谷先輩や菜々美、嶺斗先輩を傷つけるから。

それなら自分の感情は無くそうって思ってた。


でも、この気持ちを知ってる嶺斗先輩と付き合うっていうのはもう無理だ。
これ以上、彼を傷つけたくない、そんなのずるいって。



「 でも、今2人喧嘩してて、今ならチャンスかもって思わないの ? … 俺、せめて柊花ちゃんには幸せになってほしいよ .. 」

「 …… 私だって。 .. 優太に、幸せになってほしいです .. 」

好きだから。 好きだからこそ、相手の幸せを願うんだ。
本音を言うと、一緒に幸せになりたい。

でも無理だってわかってるから。 菜々美と優太の幸せを。 私が崩すわけにはいかない。


「 先輩 」

私が声をかけると、うつむいていた嶺斗先輩は顔を上げて。

「 … 有難うございます。 気持ち、すごく嬉しかったです 」

私がそう言ったら彼はいつもの笑顔で笑った。






先輩は、次の日から何事もなかったように接してくれて。

すごく嬉しかったし、助かった。
気まずくなったり避けられたりするんじゃないか、心配だったから。



それから平凡な日々が過ぎて行って。

…… そう思ってたのに。 数週間後。


「 聞いて聞いて !  これ、彼氏なんだけどさ、恰好よくない - ?? 」

菜々美がそう言って携帯を見せてきた。
そこに映っていたのは、菜々美の浮気相手の人。


「 ……… え ??  ゆ .. 中谷、先輩は .. ? 」

「 あれ。 言ってなかったっけ。 … 別れたんだよね、実は 」

何を言われたのか分かんないくらいの頭に衝撃を受けて。

「 な、なんで .. !? 」


「 ……… 色々あってさ。 喧嘩してからどちからともなく別れたって感じ、 」

「 そ、う、なんだ ... 」




その日の夜。
私は誰にも言わず、1人で家に向かった。 彼の、家に。 学校で逢うのは無理だったし、メールアドレスなどは消しちゃったから。

「 ピーンポーン 」


ここで 「 帰れ 」 って拒否されたら。完全に、諦めるつもりだった。

…… 自分でさようならって言ったのに。
私は今、何をしているんだろう。

ガチャッとドアが開くと、心底驚いたような顔をする彼。


幽霊でも見たような顔で固まって。

「 なん、で 」

「 逢いたくなって 」


ケジメのつもりだった。 もう、これで最後にしよう。 新しい恋を見つけようって。

意外にも彼は、私を家の中に入れて。



「 … 何しに来たの ? 」

とん、とベッドの上に座っている私の前の机にお茶が入ったコップを置く彼。


「 言ったじゃないですか、逢いたくなったからって 」

「 柊花ちゃんは、自分で言った約束破るような子じゃないよね ?  ... 聞いたんだね、菜々美から。 それで俺が落ち込んでるんじゃないかって心配になって来た、と 」

「 ……… 本当なの ? 別れたって 」

「 うん。 でも、別に来なくてよかったのに。 俺は大丈夫だから 」

「 うそつかないで。 … 私には分かるよ 」


彼の表情はいつもとまるで違って。

「 それに、嶺斗先輩も言ってた。 元気ない、とか変だ、って 」

「 あいつと仲良くやってんだ ?  好きなんだもんな、おまえ、優木のこと。 あ、もしかして付き合ってるとか。 へー、良かったじゃん 」


…… ばかじゃないの。 いつまで、勘違いしてんの。
そうだったら、わざわざ来るわけないじゃん ..


「 違う。 私は。 優太が好きだよ 」

彼の驚いた顔を見てハッとする。 気持ち、伝えないって決めてたのに。やばい。


「 …… 励ましてくれてんだ ?  優しいねえ、柊花ちゃん。 … でも、俺と柊花ちゃんは合わないよ 」

そう言うと、彼は私の隣に座って私の頭を撫でる。
……… 何、それ。 信じてくれないどころか、そんなこと言っちゃうんだ。


「 …… どうして別れたの 」

「 関係ないよ、柊花ちゃんには 」

あぁ、突き放されてるんだって。


「 ………… 関係ないなら .. どうして私を求めたりした ? 関係なくなんてない。 それに、いいの ? 菜々美、彼氏だってあの浮気相手のこと見せてきた。 悔しくないの ?? 」

言ってから、ハッとする。 傷ついてる彼に、私は何てことを。
バッと、いきなりベッドに押し倒されて。 馬乗りされる。

… やばい。 この顔は、完全に怒ってる。


「 あのさ。 わざと俺が怒るようなこと言ってる ? 」

「 違っ .. 私は、 」

すると、強く唇を重ねられて。 いつもとは全然違う。
いつもは強引でも、どこかに優しさがあった。 でも、全然違くて。

優しさなんてどこにもない。


「 んっ .. ちょ、やめっ .. 」

胸を押しても、びくともしなくて。
ツー .. と涙が流れる。


「 ……… や .. 嫌 ... 優太 .. 」

私の涙を見て、ハッとする優太。

「 …… ごめん 」

そう言って立って。


「 ……… 俺ら .. 出逢わないほうがよかったのかもな 」

「 ………… っ 」

何それ ... どうしてそんなこと言うの .. ? ひどいよ。 今更そんなこと言うなんて、ずるい。

私は涙を流しながら体を起こして。
バッと鞄を持って、家を飛び出した。


「 ちょっ .. 待っ、柊花 !! 」

家から3歩くらい行ったところで、後ろから手首を引っ張られて。

「 …… もう暗いから .. 送らせて 」

「 いらない。 離して。 ……… 来なきゃよかった .. 」


これ以上彼を傷つけちゃ駄目だって分かってるのに。 後で、絶対こんなこと言ったの後悔するのに。
涙を流しながら私が呟くと、手首を掴んでる手が弱まって。

その瞬間、私は走って逃げた。







「 え、何してんの !? ありえない ! 」

「 … 何、してるんでしょうね .. 」

次の日の朝。 昨日あったことを玲と先輩に話すと、先輩は驚いて。


先輩の言うとおりだ。 ……… なんてことしたんだろう、私。
自分で行って自爆して、彼のこともっと傷つけただけじゃないか。


「 違うよ。そうじゃなくて、中谷が。 も - 、何してんだよ、あいつ 」

「 え ? 」

「 大丈夫、柊花ちゃんは悪くないよ。 … で、諦めるために行ったんでしょ ? どうでしたか ?? 」

「 …… なんかもう、それどころじゃなくて ... 罪悪感が今になってすごくて .. 」


「 … ずっと思ってたんだけどさ、諦める必要なくない ? 」

「 え .. ? 」

「 柊花ちゃん、別にフラれたわけじゃないじゃん。 諦めなくてもいいと思うよ、俺は別に 」

「 ………… 」


諦めなくて、いいの .. ??

私は、ポケットの中のあのハンカチを握りしめ ... ん ?


「 ない 」

「 え ? 」

「 ハンカチが、なくて .. 」

ない、ない。 あのハンカチがない。 いつもスカートのポケットに入れてるのに。 なんで .. どっかで落とした ?


「 ハンカチ ? 」

「 あれは .. 大事な、ものなんです .. 」

焦って鞄の中を探すも、やっぱりない。
……… どうしよう。

家に置いてきた ??  でもなかったらどうしよう。 1回、家に帰ろうか ?


「 俺も、後で一緒に探すよ。 とりあえず、学校行こう ? 」

「 …… ハイ、有難うございます 」



とりあえず学校に向かって。 すると、校門の前に優太 ... いや、中谷先輩がいた。


「 … よっ 」

「 おはよー、中谷ー 」

「 ……… 」

嶺斗先輩は挨拶をしたが、私は完全に聞こえないふり。
どんな顔したらいいのか分からなくて。


「 野々村 」

「 ……… 何ですか .. 」

「 ちょっと話あるんだけど。 いい ? 」

「 ……… 」

「 行ってきなよ、柊花ちゃん 」


嶺斗先輩がそう言うから。
私は仕方なく、中谷先輩について行った。










2年前 No.13

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE





「 なん、ですか .. 」


連れてこられたのは屋上。
……… 屋上、入れないんじゃないの ? なんで鍵なんて持ってるの ?

頭が混乱する。 私、彼のことよく


すると彼は、いすに座って。

「 はい 」

すっと私の前に手を差し出した。 見てみると、その手の上にはあのハンカチが。

「 …… !?  これ、どうして .. 」

「 座りなよ 」

彼は微笑んで、自分の隣を、ぽんぽん、と叩く。
私は大人しくそこに座って。


「 昨日家に来たときに忘れてたよ、それ 」

あぁ、なるほど。 なかった理由が分かった。 でも彼は、これをただのハンカチだと思っているのだろうか。

「 …… どうも有り難うございます。 用、それだけならもう行きますね 」

「 … ずっと持っててくれたんだ ?  捨ててもよかったのに 」

教室に帰ろうと立つと、斜め後ろからそう言われて。
驚きで体が固まる。


「 ………… え ? 」

「 あれ ? それ、俺のだよね ??  あ、もしかして気づいてない ? 俺、高1のときにおまえに逢ったことあるんだけど .. 」

「 … なんで ? 」


なんで、どうして覚えてるの。 意味わかんない。

「 え ? なんでって .. 俺は野々村が入学してすぐ気付いたけど 」

「 ……… ! 」

同じだったんだって。
やっとここで気づいて。



「 ねえ。 ……… 胸、貸してあげてもいいよ。 .. 今だけなら .. 」

違うのに。 「 頼っていいよ 」って。 「 もっと甘えていいよ 」 って言いたかったのに。 私はやっぱり素直になれない。
でも、彼はいつも一枚上手で。

全部わかってるようにふ、と微笑んだかと思うと私を抱きしめた。



「 ……… 野々村 」

「 … ん ? 」

「 ………… ごめんな .. 」

彼は弱々しい声でそうつぶやいた。

… なんで謝るの ? あなたは私に、よく 「 ごめん 」って言う。
関係をやめる前から、私は「 何が ? 」って聞くけど。 あなたは絶対に言ってはくれない。


それは、なんの 「 ごめん 」なの .. ?

私が言ってほしいのは、そんな言葉じゃないんだよ。



「 好き 」とか「 愛してる 」とか 「 一緒に居て 」とか、そんな高望みはしない。

でもせめて、「 ありがとう 」って。 「 柊花 」って呼んでほしい。



ねえ、菜々美じゃない。 私を見てよ。





「 本当は。 喧嘩したとかじゃなくて、その日に別れたんだ 」

「 えっ .. ?  じゃあ、もう別れて結構経ってるってこと ? 」


「 そういうこと。 言っちゃったんだよね、俺。 1番言っちゃいけないこと。 おまえのことで嫉妬したみたいでいろいろ言われて。 『 菜々美はずっと浮気してるくせに 』 って。 …… 何言ってるんだろ、俺もなのにね 」

抱き締められてるから表情分からないけど。
私は、彼が無理して笑ってるように見えて。 背中に腕をまわして抱き締めかえす。


「 でもよかったよ、酷いこと言っちゃったって思ってたからさ。 もう新しい彼氏できたんなら。 野々村から聞いて、ちょっとだけ安心した 」

「 違う、かもしれない .. 」

「 え ? 」

「 菜々美、うそついたかもしれない。 私のために 」

「 …… どういうこと ?? 」


「 … 私たちのこと、気付いてたんだと思う 」

だから彼氏できたってうそついて、私と彼が上手くいくように仕向けたのだと思う。

「 …… いや、まさか ... ! 」


「 … 私、聞いたことあるんだ。 菜々美の浮気相手にも彼女いるって。 学校でも見たことある 」


『 男の浮気は遊び、女の浮気は本気 』って、言うでしょ ?
それに菜々美が見せてくれた写真。 ツーショットとか正面とかじゃなかった。

隠し撮りしたみたいな、目線が合ってない写真。

「 これは私の予想だけど、菜々美の浮気相手の人は、証拠を残したくないから写真撮らせてくれなかったんだと思う。 … 私たちも、撮ったことないじゃん 」


私がそう言うと、彼は信じられないみたいな顔をして固まって。
私はすっと彼から離れて、笑いかけた。


「 …… 菜々美、まだ中谷先輩のこと好きなんじゃない ? … ほら、行ってきなよ。 もうすぐ授業始まっちゃうよ ??  今なら、まだ間に合うって 」

「 ……… ごめんな、ありがとう、柊花。 … 戻ってくるから、ここで待ってて 」

彼は私にそう言うと走って屋上から飛び出した。



「 ふぅ ... 」


ため息をつく。 それとほぼ同時に、視界が歪んだ。
……… あれ、おかしいな。

目からこぼれた涙が、頬をつーっと伝った。


あ - あ、失恋しちゃった。
でもこれで悔いはないから。 菜々美に、お礼言わなきゃな。

それから謝らなきゃ。 「 親友じゃない 」なんて思ったりして。


もう完全に親友じゃんね。
もしかして、菜々美が私を 「 しゅう 」じゃなくて 「 柊花 」 って呼び始めたのは、全て気づいたから ??


……… なんて。 全部、私の勘違いだろうか。


……… 優太、ちゃんと菜々美と話せてるかな。
好きだからこそ、幸せになってほしいんだよ。


そう思うと涙は自然と止まって。


「 学校、さぼっちゃおっかな 」

学校さぼるなんて昔の私ではありえない。 無駄に真面目だったからなぁ。
私が教室に行くと、菜々美はいなくて。 良かったって、なぜか思った。


授業が始まったころだったけど、「 すみません、保健室行ってました。 体調悪いので、帰ってもいいですか 」そう告げて、学校を出た。





歩いていると明るくなったので空を見てみると、雲の隙間から太陽が覗いて。 その光景を見て、なぜか彼みたい、なんて思う。

彼の笑顔は雲から覗く太陽みたいに輝いて見えるから。


「 .. いい天気 」


晴れているけどあまり暑くはなくて、お散歩日和だ。
ひゅうっと吹く風が髪を撫でて、それが心地よくて。

「 あれ .. 」


隅で、かわいい薄ぴんくのお花を見つけた。 でもそのお花は少し弱っているみたいで。

こんなところにあったっけ。 なんて思っていると、そこが日陰なことに気づいて。
暗めだし端っこにあるから、気付かなかったんだなって思う。


こんなところで精一杯頑張ってお花を咲かせているんだなって。

私は近くの自動販売機でミネラルウォーターを買って、お花の前でしゃがみ込む。

「 .. 元気になりますように 」


そう呟いて、ペットボトルの水をお花にしみ込ませる。
前だったら絶対こんなことしないだろうなぁ、なんて。 多分冷めたような目で見ながら、通り過ぎていたと思う。

こんな風になったのも、全部彼のせいだ。なんて。


花屋に行ったらもっときれいでかわいいお花はたくさんあるのに。



その花からは太陽の光を反射する水滴がぽたぽた垂れた。 その光景がすごく綺麗で美しくて。

軽くため息をついて、公園のベンチに座る。


眩しい太陽を手で隠しながら空を見上げる。
失恋したはずなのに、なぜか気持ちはさっぱりしていて少し清々しい。




『 ありがとう、柊花 』



優太。 私は、さっきの笑顔とその言葉だけで充分だから。


もう、全て終わりにしよう。 全て、忘れてしまおう。



いつの間にか空には雲がなくなっていて。
きれいな青い空を見ながら、私はそう決めた。







2年前 No.14

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【記事主より削除】 ( 2015/09/01 22:44 )

2年前 No.15

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2年前 No.16

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2年前 No.17

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それからあっという間に一週間。


もう、あと数日で夏休みも終わりだ。 ……… 早かったなぁ。
海も楽しかった。

あれから何事もなく楽しく終わって。


今日は、菜々美の家に来て、一緒に勉強しようってことになった。
私もまだ課題などが終わってなくて。


「 はい、紅茶でいいよね - 」

「 うん。 ありがとう 」

「 ねえ、柊花頭いいじゃん。 教えてもらいたいところあるんだけどさー 」

「 そんなことないし。 … どこ ? これ ?? 」

「 そうそう ! 」



「 で、こうなるの。 分かった ? 」

「 おー!  すごい、分かった !!  ありがとう ! ……… ねえ 」

「 ん ? 」


「 柊花、私のこと嫌いでしょ ?? 」


にこにこ、とあがっていた頬の口からそんな言葉が飛び出て。

「 ……… え .. なに、それ。 なんで !? 」

「 否定も肯定もしないのは、柊花の悪いとこ。 私が聞いてるんだから、質問で返しちゃ駄 - 目 」


そう言って笑う菜々美。 どうして、笑ってそんなことが言えるのか。私には分からなかった。
でも、隠してるわけにはいかない。  彼女はやっぱり、全て気が付いているんだ。

「 ……… 前は、はっきり言ってそうだった。 でもね、それは菜々美のことよく知らなかったからで。 今は、大好きだよ 」


私がそう言うと、なぜか菜々美は笑って。

「 本当素直だよね、柊花って。 なんだけど、ツンデレでもある .. って、何それ。笑  … で。 それだけじゃ、ないでしょ ?  …… 優太 ? 」


小さい声だったけど。 震えて聞こえたけど。
その言葉は、はっきりと聞こえた。

「 ………… やっぱり、ばれてた ? 」

「 当たり前。 2人と、どんだけ一緒に居ると思ってんの。 優太も柊花も、2人とも分かりやすすぎ。笑   ……… 柊花が優太のこと好きだっていうのも、1年生のころから気付いてた。 付き合って、すぐくらいかな。 …… あんたのことだから、知ってるんでしょ ?  私が浮気してたのも、全部 」


「 ………… 私たち、話し足りなかったかもね。 いろいろと。 もっとたくさん話してれば良かった 」

「 そうだね。 ごめんね、私、卑怯だったね 」

「 や ... そ、れは、私の台詞で .... 」


「 なんで ? 柊花、1つも悪いことしてないじゃん。 柊花にも優太にも、悪いことしたと思ってる。 本当にごめんなさい 」

私。 菜々美って、もっとチャラい感じの子だと勘違いしてた。
私は、彼女の何を見ていたんだろう。


「 だから、柊花。 幸せになってね、絶対。 優太と 」

「 ………… え ?  菜々美、付き合ってるんじゃないの ?? 」


「 え、今 ? まさか。 もうつきあってないよ 」

「 え ...... 」

なんで ? だって、彼は彼女が好きで彼女は彼が好きで。 これ以上の付き合う理由なんてないじゃん。
それに、屋上にいたとき、彼は彼女に言いに行ったはず。 「 ヨリ戻そう 」って。

私がそうさせたんだから。



「 ああ、あれ ?  優太から全部聞いたよ。 …… あれはね、ちゃんとフラれた 」

「 フラれ .. え ? 」

衝撃発言の連発に、私は頭がついていけない。

「 なんだろう .. 別れの挨拶的な ? 笑  『 今までありがとう。 菜々美と付き合えてよかったよ。 こんな俺で、ごめんな 』 って。 あんな顔でそう言われたら、もう頷くしかないじゃん ? 笑  ……… ちゃんと、好きだったんだけどなぁ。 私、なんてことしちゃったんだろう 」

「 ………… 」


「 でもね、私、後悔してないよ。 付き合ったことも別れたことも。 優太と付き合ってる間、すっごく幸せだったもん。 ……… だからね、柊花。 次はあんたが幸せになる番。 優太、そのあとに言ってたよ ?  『 ごめん、俺行くな。 大事な人待たせてるんだ 』 って。あのキラキラした笑顔で 」

「 ……… ! 」


「 ごめん、私、勉強するために柊花を呼んだんじゃないんだ。 この話がしたかったの。 柊花に悪いことしちゃったから、少しでもお詫びしたくて 」

私の頬に涙が伝う。
菜々美は、そんな私を見て笑って。


「 『 話があるから、明日優太の家行くね 』 昨日、優太にそう言ったの。 私、勉強終わらせなきゃいけないからさ。 柊花。 代わりに行ってきてくれない ?? 」

ぱちんっと手を合わせて私にお願いする菜々美。

「 ……… 有難う !  あ、ねえ菜々美 」

「 ん 、何 ?? 」


「 私も、今までごめん。 今は菜々美のこと、本気で親友だと思ってるから 」


私は鞄を持って。 急いで菜々美の家を出て、走った。




行く先なんて1つしかない。 私には、そこしか見えてなかった。








2年前 No.18

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE





「 ………… え 」


ガチャッとドアが開くと、彼が出てきた。
前に来たときみたいなすっごく驚いたような顔をして。

「 はぁ .. はぁ .. と、つぜん、ごめ .. 」

私は走りすぎて荒くなった息を整えながら。


「 いや、いいけど ... え、どうしたの ?  菜々美は ?? 」

「 行けなくなったから .. 代わりに、行ってって言われて ... 」


「 …………… 折角来たんだし、上がる ? 」

私は彼の着ているTシャツの袖をぎゅっと掴んで、うつむいていた顔を上げた。

「 ………… 泊めて 」

「 … え ? 」

「 今日 .... 駄目 ?? 」

「 え、いや、いい、けど .... なんで ..... 」


たじたじとしながら、少し困ったような顔をしてそう言う彼。

「 そう、だ、菜々美からの伝言。 『 逃げるなよ、バーカ 』 って。 .... なんのこと ?? 」

すると、彼はなぜか笑い出して。

「 どうぞ。 上がって 」




「 はい、ど - ぞ 」

「 有難う ... 」

ソファに座っている私の前の机に置かれたお茶をごくごくと一気飲みする私。


「 そんな、急いで来なくても良かったのに。 疲れたっしょ 」

「 …… 大丈夫。 ねえ 」

「 ん、何 ? 」

「 どうして言ってくれなかったの ? 菜々美と付き合ってないって 」


「 …… 何回も言おうとしたよ。 でも、おまえ聞いてくれなかっただろ ? 」

「 あ ……… ご、めん .. 」

彼が言おうとしていたのは。 そのことだったのか。

「 大丈夫。 .. 俺こそ、色々ごめんね 」

「 え ? 」

「 『 出逢わないほうが良かったかもな 』 とか。 ずっと、言ったこと気にしてて。 あと、いっぱい傷つけたよな、御免 」


「 ………… ん - ん .. 全然、いいよ 」

「 … 柊花。 おいで 」

彼は、立って手を広げて。

「 …… 調子にのらないで 」


私はそう言いながらも、言葉とは反対に彼の胸の中に入っていって。
すると後ろに手をまわされ、そっと抱き締められる。

「 久しぶり。 柊花ちゃんの匂い 」

「 はっ ?! 煩い、変態か 」

「 ふは、ごめんごめん。笑 」

彼は私の頭に頭を乗せて。


「 あれ。 なんかおまえ、気付かないうちに背伸びた ? 」

「 … 中谷先輩が縮んだんじゃないですか 」

「 うっわ、俺伸びてますけど - 」

「 嘘。 全然気づかなかったけど 」

「 は !? 絶対伸びてる - 。 てか、優太って呼べよ。 中谷先輩って嫌だ。 優木より下じゃん 」

「 …… やきもち ? 」


「 …… そうですけど、なにか ?? 」

その言い方に笑いがこぼれる。


「 何それ .. 笑  」

「 ………… ずっとこうしたかった。 俺、自分で最低だって分かってたけど。 でも、柊花はだれにも渡したくない 」

「 ………… 」


私はばかで、単純だ。
やっぱりいつも、彼の思い通り。

私は彼の背中に手をまわして。


「 来てくれて、ありがとう。 俺さ、やっぱ柊花がいないと駄目だわ 」

彼の表情は分からないけど。
そんなことを言われたら、もう、戻れないじゃないか。


「 で、も、『 男の浮気は遊び 』 って .. 」

「 俺は違う。 …… 本気 」

彼はすっと離れて、私の目を見た。
その瞳に吸い込まれてしまいそうで。


「 ………… 後悔しても、知らないよ ? 」

「 大丈夫 」


私は、ぎゅっと自分から彼に抱きついた。
彼は驚いた顔で固まって。

「 好き 」

「 ………… 俺も 」


そして私たちは。 気持ちが通じ合ってから、初めてキスをした。





「 優しすぎるんだよ、柊花はさ。 前に 『 この関係やめよう 』 っていきなり言ってきたのも、菜々美を傷つかせたくなかったからと、俺を守ろうとして、だろ ?  全部分かってる 」


「 …… 違うよ。 そんな綺麗なもんじゃない。 自分のためで .. 」

「 もういいって 」

ソファに2人で座って。 私は、優太の少し離れたところに。 なんか、ちょっと恥ずかしくて。

「 好きなんだよ、俺は。 単純に、柊花のこと 」

「 ……… ばか ……… 」


「 でも、俺と菜々美が付き合ってたことはみんな知ってるわけだし、俺と柊花がってなったら、色々言われたりすると思う。 だから、柊花が噂されて傷つくようだったら。 関係は切ろう ? 柊花が俺のことで苦しむのは、耐えられない 」

「 ………… 優太は、大丈夫なの ? 」


「 俺は大丈夫だよ。 周りに何か言われても、柊花ちゃんがいればいい 」

「 ……… !! 」


いつも思う。 どうして彼は、そんなセリフを照れずに言えるのだろうか。
ぽろっと、目から涙がこぼれた。

「 ふは、柊花、最近泣きすぎ。笑 」

彼は笑いながら、長い指で私の頬を伝う涙を拭いて。


「 優太のせいじゃん ... というか、これは嬉し泣きだからいいの ... っ 」

「 可愛いね、柊花ちゃんは 」

そう言って、頭をポンポン、と叩く優太。

「 …… からかわないで 」


まさか。 さっきの言葉も、からかってるだけ ??
すると、彼は私の心が分かったかのように言った。

「 あ。 さっきの言葉は、本当だからね ? 」

「 え ……… 」



おかしいな。

あんなに、キスされるの嫌いだったのに。 触れられるの、嫌だったのに。
あんなに、彼に見つめられるの大っ嫌いだったのに。



今ではもっともっと私を見てほしいって思ってしまう。

私は、いつからこんなに欲張りになったんだろう。








2年前 No.19

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  ((  最終話  ))




「 ん .... 」

朝。 目覚めると、息苦しい。
目をゆっくりあけると、その理由はすぐわかって。 私は軽くため息をついた。


「 抱き締めがら寝るの、やめてって言ったじゃん、も - .. 」

当の本人は、目の前で気持ちよさそうに寝ている。


あまりに久しぶりだったから、一瞬ここがどこか分からなかった。
彼の手をどかして起き上がる。 すると、ほぼ同時に声がして。

「 ん - .. おはよ - 、柊花 」


いつもの甘い声で、太陽みたいな笑顔で。

私だけを見つめてそう言う彼。 カーテンの隙間から差し込む光が彼に当たって余計にキラキラして見えた。


「 … おはよう。 ごめん、起こした ? 」

「 ん - ん。 今何時 - ?? 」

「 もうすぐ8時 」

「 そっか。 ん - .. もう帰る ? 」

「 ………… 嫌 ... 」


恥ずかしくて。小声でそう言った。
せっかく久しぶりに来れたのに、もう帰るなんて寂しい。

「 ん ? 何 ?? 」

「 …… もうちょっと、一緒いたい、し .... 」

すると彼は笑って。 ……… また、からかわれた ..


「 分かった。 ごめんごめん、冗談。笑  明日から学校始まっちゃうし、ゆっくりしてって 」

ぐっと手を引っ張られ、またベッドに寝転んでしまう。

「 ん .. 暑い ... くっつかないで 」

「 嫌だ - 。 柊花、俺と同じ匂いする 」

「 も - 、 シャンプーが同じなんだから、当たり前でしょ ? 」


私がそう言うと、彼の腕が回って。 強く抱き締められる。

「 他の男の匂いさせんなよ 」

彼なりの軽い束縛なのか。 でも、彼にだったらいいや。
そんなことを思ってしまう私は、重傷なんだろうか。





「 送って行くよ。 ……… え、何その顔 」

結局帰るのは昼過ぎになって。 彼がいきなりそんなことを言い出すから、びっくりして。

「 大丈夫 」

「 違くて。 俺が少しでも一緒に居たいの 」

「 ……… 好きにすれば ? 」

あぁやっぱり。 私は、この人の前じゃ素直になれない。
2人で、家を出て。 歩きながら話す。

「 もう秋か - 」

「 まだまだ暑いけどね。 ……… あ 」

「 ん、どうした ? 」

「 このお花 .... 」


あの日、屋上で彼と話をした後、帰り道に見つけて水をあげたあの薄ぴんくの花があった。
そのお花は、太陽に向かって綺麗に咲いていて。 すごく可愛かった。


「 あれ。 その花 」

「 え ? 」

「 ここさ、たまにしか太陽の光当たんなくて。 前に、この花に水あげたんだよね 」

うそ ....


「 私も .. 」

「 え、まじで ? 」

私が頷くと、彼は笑って。

「 うわ、□みたい。 … 綺麗に咲いて、良かったな。 なんかさ、前にこの花見つけたとき、俺、柊花みたいって思ったんだよね。 1人で寂しく隅にいて、しおれてて 」

「 ちょっと待って、それどういうこと 」


「 1人で強がってるってこと。 寂しいくせに、強がってだれにも頼らないで1人で頑張って。 だから放っておけなかったんだよ 」

彼はそう言って笑って。
… 彼は、もともと甘い人だけれど。 彼氏、彼女と言う関係になると、こんなにも甘くなるものなんでしょうか。


私が立って再び歩き出すと同時に、いきなり手を取られて。 指と指を絡められる。

「 ……… え 」

「 え、何、駄目 ? 」


…… あぁそうか。 もう、バレてもいいんだ。 隠す必要なんて、もうなくなったんだ。
普段触れられたりはしてるけど、こうして手をつないで歩くのは初めてで。

なぜか少し、恥ずかしかった。



でも彼の手は暖かくて。
このまま、ずっと繋いでいられたらいいのに。 そう思った。


するとひゅーっと風が吹いて。

その瞬間、なぜか、太陽の匂いがした。 太陽の匂いなんて、分かんないけど。 太陽に、匂いなんてないのかもしれないけど。 暖かい温もりのような希望のような。 なぜか、そんな匂いがした。




昨日、ちゃんと言えなかったけど。


『  俺は大丈夫だよ。 周りに何か言われても、柊花ちゃんがいればいい  』

私だってそうだ。
貴方がいれば、もう、それだけでいい。 他にはもうなんにも要らない。



「 あ - あ .... 」

私は歩きながら、くすっと笑った。


「 ん ? どうした ?? 」


悔しいけど。 私はやっぱり、彼がいないと駄目だな , なんて。

「 ん - ん、なんでもない 」

そう言う私に、‘ なんだよ、それ - ‘ と嘆く彼。
私はそんな彼を見て笑って。


小さな子供みたいに、繋いでいる手を前や後ろに揺らした。


「 あ、そうだ。 あの時言えなかったけど。 海での水着の柊花ちゃん、すっごい可愛かったよ 」

「 は !?  うっさい。 優太嫌い 」

「 え - ? 本当に - ?? 」

にやにやしながら私を見る彼。

「 …… うそ、好き ... 」


頑張って小さな声でそう言ったのに。
彼は、無責任なことに聞いていないみたいで。 私とは反対の方向の景色を眺めていた。 かぁっと顔が熱くなる。

はぁ ?  自分で言ったくせに、聞いてないとか ... ふざけんなっ ...


私は軽く怒りながら、下を向いて歩く。

空は太陽の光で眩しくて。





「 柊花 」


「 俺も好きだよ 」



そう言って笑う彼に。 私はどんどん、深く溺れていく。









  //  深く溺れて _ × 七瀬  ( 完結 )








2年前 No.20

七瀬 @love1217 ★Tablet=AbRP0hJwLg








______




作者の七瀬 ( 嶺愛 ) です ,

閲覧、いいね、こめんと等、本当に有難うございます !
誤字脱字が多くて申し訳ないです ...


特に、途中主人公の名前間違ってるところありましたね。

前作の名前です、本当にすみません , (汗



これで 『 深く溺れて _ 』 は完結になります。

本当は、もっと書こうと思っていたのですが、読んででくださっているかたがいるのかどうかも分からないし、飽きられたら困るので、一応これで終わりにしました、()



「 続編書いて 」って言ってくださっている方もいるんですが、たくさん要望があったら考えてみようかと思います、笑

この作品には、ちょっと想いいれがあるので .. ()



以上、七瀬でした ,
ここまで読んでくださって本当に有難うございました !!

本当駄作ですみません .. 笑





_________

2年前 No.21

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE









[   http://mb2.jp/_rs/29581.html   ]


新作です !
今回も駄作ですが ... というか、まだどうやって終わるかも決めてないんですけど .. (←


良かったら見てみてください (♪)








2年前 No.22

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE




______




>>22 に載せた新作ですが、更新を停止させてもらいます ,

読んでくださっていた方には本当に申し訳なく思っています、ごめんなさい !!



1番の理由は、私の出現率低下、ですね。 最近あまり来れなくなって、もう少ししたら仮卒するかもなので初めの方で停止しといたほうが、と思ったからです。

本当にすみません (汗



______

2年前 No.23

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE




要望があったのと、自分が少し書きたいなと思ったので、菜々美sideのお話を書こうと思います ,

多分4回の更新くらいで終わると思うし、今までの物語を沿って書いていくのでほぼ自己満足で書くだけです。笑
駄作ですが是非暖かい目で読んでいただけると幸いです 、




______


 深く溺れて _ 『 本当の好き 』



 ((  菜々美side  ))




「 好きです、 あの .. 私と付き合ってください ! 」


「 ありがとう。 … でも、御免。 俺、君のことあんまり知らないし ... 」

「 じゃあ、お試しでもいいです ! 私のこと好きじゃなくてもいいから ... 付き合ってほしいです ... 」


「 … 君、1年生だよね ? 名前は ?? 」

「 …… はい、えっと .. 相崎 菜々美です .... 」


フラれる、そう思った。
分かっていたはずなのに今更怖くなって、ぎゅっと目を瞑る。 ばれないように、俯いて。

「 菜々美ちゃんね。 じゃあ、宜しく 」

「 えっ !? 」


思いがけない言葉に、ついバッと顔を上げる私。

その瞬間ひゅうっと風が吹いた。 ついこの間まで暑かったのに。 もうこんなにも肌寒くなったのか、なんて他人事のように冷静に思う。
彼の顔を見ると、彼は優しそうに笑っていた。


「 ………… 宜しくお願いします ! 」

彼が私のこと好きじゃないのなんて、どうでもよかった。

彼女になれるという事実が嬉しくて嬉しくて。 それくらい、彼のことが好きだった。




「 ねえ、聞いて !  私、彼氏できたんだぁ。 昨日告白したらね、OKもらえたの !  なんとね、それが中谷優太先輩で !!  有名だから、柊花も知ってるでしょ ? 」


OKを貰ってすぐ。 私は、親友のしゅうにそう告げた。

その瞬間、ふっとしゅうの顔が曇ったのが分かった。 でもその顔はパッと変わって。


「 そうなんだ .. 菜々美がその人のこと好きだなんて知らなかった。 よかったね 」

しゅうが私のこと親友だと思っていないことなんて気づいてた。 それにいつもサバサバしてるけど、いつもよりそっけなくて。
私はふと気づいた。


ああ、彼女も。 彼のこと、好きだったのか。

しゅうには悪いけど。 私だって好きなんだから、彼女になれたんだから、譲る気はない。
だから絶対優太先輩と幸せになる。




そう決めたのに。 私は今、何をしているんだろう。


「 ちょっ .... 駄目だって、こんなところで .... 誰かに見つかったりしたら .... 」

「 俺のこと、嫌い ? 」

「 ん - ん、好きだよ .... っ 」

そう言うと再び重なる唇。 薄く目を開けると、そこに映っていたのは彼ではない、別の人で。


その人の名前は怜。 1個上で、小さいころは仲が良かった所謂幼馴染だ。

怜にも彼女はいるのだが、優太と付き合い始めて3か月後、彼女と喧嘩したと落ち込んでいたところを励まして、どことなくそういう関係になってしまったのだ。

彼はいつも不安なようで、『 好き 』そう言わないと、不機嫌になる。 最初は、優太以外の人に『 好き 』なんて言いたくなかったけど。


彼女と仲直りしてからも怜と私の関係は続いていて。

だんだん、怜のことが好きになって行ったのもあるけれど。 きっと私は、怒られたかったんだと思う。


優太に、『 おまえ、俺じゃない男と何やってんだよ 』って。
彼が付き合い始めた当初、私のこと好きじゃないのは知っていた。 でも、そろそろ好きになってくれたかな、なんて少し期待しちゃって。 優太とは付き合って結構経つのにキスもしてくれないし。 だから試すようなことをしたのだ。

最低なことをしているのは分かっている。 これは裏切り行為だって。


でも、彼はなにも言ってはくれなかった。 彼が私の浮気に気づいているのは知っている。でも、怒るどころかなにも言わず、いつも通り笑っていた。

そこから私は、私のこと好きじゃないならまあいっか、なんて思い始めてしまって。



「 ねえ、野々村さん。 菜々美、浮気してるって本当 ?? 」

結構仲が良いクラスの女の子三人組がしゅうにそう聞いたのは、びっくりした。
まさかばれてるなんて思わなくて。 しゅうに知られてしまった、そう、ショックだった。

でも私は知ってるんだ。 優太としゅうもそういう関係なんだって。


2年生になったばかりのような頃、校舎の窓から外を見下ろしている優太の姿を見つけた。 すると彼はなぜか一人で笑って。

「 …… ぼっち飯かよ 」


小さな声だったけど、確かにそうつぶやいた。

なんだろうと思い下を見てみると、そこには中庭でお弁当を1人で食べてるしゅうの姿があって。


しゅう ... ?? どうして ? 2人って、仲良くないはず ... そう思いバッと優太の方を見ると、優太は優しそうに微笑んでいた。

「 なに、 あれ .... 」

私は来た道を走って戻っていて。 彼のあんな顔、初めて見た。 大事な人を見つめるようなあんな優しい顔。
どうして、なんで ? 優太が、しゅうを .... ??


「 菜々美。 どうかしたの。そんなに走って、急いでるの ? 」

気づいたら、目の前で驚いているしゅうの姿があった。 食べ終わって教室に戻るところみたい。

「 あ .... ううん、全然 .... 」

「 …… ? 大丈夫 ?? 」


不思議そうに私を見つめるしゅう。 気のせいかもしれないけど、その瞳は、なにもかも知っているように見えて。
なぜか少し、怖くなった。






2年前 No.24

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE





「 優太、どうしたの ? なんか今日元気なくない ?? 」

「 いや、別に .. なんでもないよ。 ちょっと疲れただけ 」



「 ……… しゅう、しゅう。 大丈夫 ? 」

「 あ .... ごめん、ボーっとしてた 」

「 珍しいね 」


優太がどこかおかしいときは、決まってしゅうもそうだった。

だから、2人何かあったのかな - なんて他人事のように思う。 自分でも、自分がおかしいと思う。 そう、私たちはいるからかおかしくなっているんだ。


「 で、ごめん、なんて言った ? 」

「 ……… 柊花って呼んでもいい ? 」

「 え ? なに、今更 」

しゅうは笑ってそう言って。 私がそんなことを言った理由は、しゅうと何でも言い合える仲になりたかったからだ。

呼び捨てにしたところで何も変わらないのかもしれない。 でも、しゅうが私のこと好きじゃないのは気づいている。


だから、しゅうにも私のこと親友って思ってほしい。なんてね。

「 駄目 ?? 」

「 駄目じゃないけど ... 普通、そう言うのって聞くものなの ? 」

「 え - 、だって突然呼び捨てにしたら、ん? ってならない ? いいの、これで ! 」

「 そう ? 」


彼女はそう言って笑った。
ああ、やっぱり可愛いなあ。 真顔の時とかは、綺麗って感じだけど、笑うと子供みたいに無邪気で。

頭もいいし、サバサバしてクールだけどどこか優しい。


私はそんな柊花にいつも憧れていた。 彼女と仲がいいのが自慢だった。



優太と柊花の関係のことが自分の中で決定的になったのは、2年生の春から夏に変わる頃だっただろうか。
涼しい風が蒸し暑くなってきたような頃だった。

優太の家の近くを偶然通ったとき、家に寄って行こうと思った。


すると突然ドアが開いて、私は咄嗟に隠れる。 すると、聞こえてきたのは信じられない声だった。

「 ごめんな、本当は送ってやりたいんだけど .... 気を付けて帰れよ 」

「 ん .... ありがと 」

「 じゃあまたな、 ` 柊花 ` 」


覗いてみると、そこにいたのはやっぱり柊花と優太で。
分かってはいたはずなのに、驚きで体が固まってしまった。

「 あ、待って 」

すると彼は彼女の手首をぐっと引っ張ったのが見えて。 2人が重なった影が。 どうやら、キスをしたようで。

「 ちょっ ... 外で何やってんの .... 誰かに見られたら .. 」

「 大丈夫だって。 ここ、俺んちの敷地内だし 」


そう言って幸せそうに笑う優太を見て、私は涙が出そうになった。 私だって同じようなことをしてるくせに。
その顔は、あのとき窓から見下ろしてた時と同じ顔で。 きゅうっと胸が苦しくなる。

「 … バイバイ 」

「 おう、またメールするな、柊花 」

「 ん ... 了解 」


彼女はそう言うと、歩いて去って行った。 そしてドアが閉まったのが分かった。 私のことは気づかれていないよう。

足が震える。 なに、今の .... 完全に仲良いカップルの会話じゃないか。 私はそこで思い出した。


あの、優太の顔。 私よく知ってる。 あの優しく微笑む顔を見て、私は彼を好きになったんだ。
あの顔が柊花に向けられていたものだとしたら _ ?

そしたらもしかして、2人は ...


「 なぁんだ ...... 」


なぜだか笑みが零れてきて。 私は誰にも気づかれないように小さくつぶやいた。

『 先帰るね、菜々美 』『 え、しゅうも一緒に帰ろうよ - 』『 彼氏いるじゃん。 私がいても邪魔でしょ ? 』
あの時笑っていた彼女は、一体どんな気持ちだったのだろうか。


ごめんね、柊花、優太 ,


「 … 最初から、邪魔だったのは私なんじゃん ..... 」



頬を流れた滴はアスファルトの地面に落ち、太陽の光できらきらして見えた。

でも、それも一瞬だけで。 染み込むように、すうっと見えなくなった。






2年前 No.25

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE




___



私は、2人の関係を気づいていないフリをした。
それが自分なりの償い、そう自分に言い聞かせて。 そんなはずもないのに。


「 ね、かわいくない !?  このネックレス 」

「 本当だ。 かわいいね、菜々美が好きそう。 買ったの ? 」

「 昨日、彼氏に買ってもらったんだぁ 」

「 へ - 、いいね 」

いつものように 『 優太 』ではなく『 彼氏 』と言ったのは、優太とじゃないよってことを気づいてほしかったから。

もちろん、浮気相手に買ってもらったわけではない。 これは自分で買ったものだ。


遠回しに『 私に構わないで優太と ... 』って伝えたかった。 柊花だって、絶対私が浮気してること気づいてるもん。
でも、優太のことも確かに好きだった。

だから別れたくなかった。 すっごく最低だってわかってる。 でも、好きな人には幸せになってほしいんだ。 優太も、柊花も。



そう思って言ったのに、なぜかそれからしばらくして2人は関係を辞めたように見えた。

いつも2人ともどこかおかしくて。
2人とも、お互いのことを考えているようだった。 いや、ようだったというか、きっとそうだったんだろう。


体育祭で、柊花が倒れたとき。

「 ` 柊花 ` !! 」

そう、彼が呼んだのが分かった。 隣にいて柊花を見ていた私よりも、誰よりも早く駆け出して。 彼女を抱き起こした。
ああ , やっぱり。 そうなんだなあって。

そのとき、私の中で何かがすっと消えたような気がした。




「 ね、なんであの柊花が倒れたとき、優太があんなことしたの ? 柊花と何かあった ?  」

私は、帰り道に歩きながらそう聞いた。


「 …… 何言ってんだよ、たまたま近くにいたからだろ 」

少し怒っているように見えた。 動揺してるのが分かる。

「 もしかして、私の知らないところで逢ったりしてるの ? … 酷いよ、有りえない ... 私のこと、やっぱり好きじゃないん ..「 じゃあおまえは ! 」


いきなり大きな声出すから、びっくりして。 彼が怒るところなんて見たこともなかったから。
でも、すべて計画通りだった。 こうして、別れるつもりだった。 喧嘩別れでいい、自分が悪者でいい。

「 おまえは .... 菜々美は、ずっと浮気してるくせに .... 」

それはすごくすごく弱々しい声で。 私、ずっと彼にそんな想いさせてたんだ、そう思うと胸が痛んだ。


「 …… やっぱり気づいてたんだ …… ごめん、別れよ、私達 」

「 ……… おまえにも、そんなこと言われるのかよ ... 」

すっごくすっごく小声だったけど、確かにそう聞こえた。
そこで私は気づく。 柊花にもきっと『 関係辞めよう 』って言われたんだって。


「 …… ごめんね ... 本当 」

「 …… や ... 」

「 じゃあ、ね。 今までありがとう 」


私はそれだけ告げて走って自分の家に入った。 彼は追いかけては来ない。

私は、なんて酷いことをしたんだろう。 あんなに、あんなにやさしい彼に、なんて顔をさせてしまったんだろう。


「 ふ .. ううっ ... 」

家の中のドアの前で、私はしゃがみこんだ。 計画通り。これも全て計画通り ... のはずなのに。
涙が止まらなかった。

泣きたいのは彼の方のはずなのに。


どうして、こんなことになってしまったんだろう。 全て、私のせいだ。



『 喧嘩しちゃった 』 柊花にはそう言った。

私にこんなこと言える資格はないけど、私から言うより自分の脚で進んでほしくて。

というのは建前というかカッコつけで。 本当は、2人が仲直りして優太から別れたって聞いて、それで2人がくっつけばなって思ってた。 卑怯だって分かってるけど、自分からは告げたくなかった。




「 菜々美ちゃん 」

その日の放課後、私は声をかけられた。
『 放課後、空いてる ? デートしようよ 』 デートと言うのは冗談だろうが、そう、にっこり笑って言われて。


「 嶺斗先輩。 どうかしたんですか ? 柊花じゃなくて私誘うなんて、なにかあ ..「 別れたんだ ? あいつと 」

驚きで、一瞬声が出なかった。

「 なんで .... どうしてわかったんですか ?? 私、喧嘩したとしか言ってないのに ... 」

「 意外と意地悪だねえ、菜々美ちゃんも 」

「 え ? 」


「 すぐに2人がくっつくのが悔しくて嫌だったから、わざと別れたって言わなかったんでしょ ? 」

「 違 .. そんなんじゃ .. っ 」

「 まあ、そんなの俺にはどうでもいいけど 」

「 ……… 」


「 菜々美ちゃんさ - 、本当は全部気づいてるんだよね ?? 」

「 ………… !!  も - ... どうしてそんなに分かっちゃうんですか ? まさか、私のこと .. 笑  」

「 は ? まさか。 んな訳ないじゃん 」

冗談で言ったはずが、すごくバッサリ言われ崩れ落ちそうになる。 なんで私がフラれたみたいになってんの ...
というか、なんなんだろうこの人 ……… 柊花といる時、こんな感じじゃないのに … まさか、二重人格 ? 本当によく分からない人だ .....


「 私、全部気が付く前、嶺斗先輩と柊花は付き合うと思ってました 」

「 ふふ。 フラれちゃったよ 」

「 ……… 私もです 」

「 じゃあ、失恋した者同士付き合う ? 笑 」

「 や、それは遠慮しときます。笑 」

つい笑みが零れる。


「 …… でも、本当にこれで良かったの ?? まだ好きなんでしょ 」

「 …… 良いんです。 というか、こうしないと駄目だと思うんです。 自分への罰って言うのもあるけど .... 」

これ以上、彼の隣に居てはいけないって気づいたから。

「 そっか。 柊花ちゃんさ、中学生のころからずっとあいつのこと好きだったらしいよ 」

「 …… そんな、前から ..... 」


「 仕方ないよ。 今回は、誰も悪くない。 だからあんま自分のこと責めないほうがいいよ。 柊花ちゃんも悲しむから 」

「 ………… 嶺斗先輩って、いい人なのか怖い人なのかよく分かんないですね 」

「 は ? 失礼な - , 笑 」

「 あはは、いや、でも本当優しいと思います 」

「 よね、なんでフラれたか分かんないくらい。笑 」

「 ちょ ... それ、自分で言います ? 普通。笑 」

「 冗談だって、もう。笑  俺、そんな優しいとかいい人とか言われるような人間じゃないよ 」


「 ………でも、有難うございます 」


私がそう言って笑うと、嶺斗先輩も笑った。


自分の中で一気に何かが吹っ切れた気がした。 私は、決めた。 ちゃんと言おうって。

どんな反応されるかなんてわからない。 怒られるかもしれない、泣かれるかもしれない。 でも、やっぱり柊花とは親友になりたいから。


なんて、全て綺麗事なんだろうか ,




2年前 No.26

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE






「 聞いて聞いて !  これ、新しい彼氏なんだけどさ、恰好よくない - ?? 」

私はそう言って、柊花に浮気相手の写真を見せた。
彼にも彼女はいるから写真なんてもちろん撮らせてもらえなくて、こっそり撮った写真。


「 ……… え ??  ゆ .. 中谷、先輩は .. ? 」

「 あれ。 言ってなかったっけ。 … 別れたんだよね、実は 」

いつも冷静でクールな柊花の瞳が揺れたのが、明らかに分かった。


「 な、なんで .. !? 」

「 ……… 色々あってさ。 喧嘩してからどちからともなく別れたって感じ、 」

「 そ、う、なんだ ... 」


柊花はそれ以降は全く喋らなかった。
ずっとどこか深刻そうな表情で唇をかみしめて。

そんな彼女の姿を見ながら、胸が痛くなった。 ごめんね、って、言いそうになった。


柊花は結局、怒ってもくれなかった。 馬鹿みたいって思われるかもしれないけど、少し寂しかった。

でも柊花はこの後彼の元へ行くだろうって分かってたから。 私は敢えて何も言わなかった。 いや、言えなかった。


「 …… 私だって、柊花のこと、少しは分かってるんだから .. 」

ずっと一緒に、いたんだから。 柊花は何て思っていようが、それだけは事実なんだから。


「 …… え ? なにか言った ?? 」

「 ん - 、なんでもないよ 」




その次の日。


「 え ? どうしたの、優太 .. 」

もうすぐ授業が始まるような頃、私たちの教室に優太が来た。

「 え、と .. 柊花なら今いなくて .. 」

「 菜々美に用があるの 」

「 え。私 ? 」

「 ああ、ちょっといい ?? 」



「 … なに ? 」

連れてこられたのは校舎裏。 予想外、だった。

「 ここ、菜々美が俺に告白してくれたところだよな 」

「 …… そうだね .. 」

この場所から。 全部、始まったんだ。


「 ちゃんと言ってなかったなあって思って。 .... 今まで、ごめんな 」

「 どうして優太が謝るの .. 」

「 色々、考えたんだけど .. 俺が、やっぱり悪かったんだと思う。 こんな俺で、本当にごめ「 ふざけんな 」


私がそう言うと、彼はびっくりしたような顔で固まって。

「 なんでそんなこと言うの ? … 全部私が悪者で、それで良かったのに .. 」

視界が歪んでくる。
ああ、私今泣いてるんだ。


「 菜々美 」

彼はすっと私に手を伸ばしてきて。

「 触らないで !  」

そう言うと、その手はびくっと震えて行き場をなくしたように下された。

「 …… 期待、しちゃうから ... 」

「 …… ごめ ..「 ねえ優太 」


「 そんなこと、言わないでよ。 ごめん、なんて、もう言わないで ? 」

私はそう言って、涙を拭いて笑った。

「 …… 有難う。 菜々美と付き合えた良かった 」

彼はそう言って笑って。 もう。 そんなこと言われたら、頷くしかないじゃないか。
… 幸せになんなきゃ、許さないから。 そんなふうに思いながら、私は笑った。


「 こちらこそ、有難う 」




教室に帰ると、柊花はいなかった。
もしかしたら優太が誘ったのかも。そう思ったけど、どうやら早退したそうで。

そのまま、気付いたら夏休みになっていた。


そして柊花と嶺斗先輩と、海に行くことになって。

「 でも、女子2人と男子1人って、結構中途半端 ..「 〜♪ 」 …… 電話 ? もしもし 」

「 あ - 、菜々美ちゃん ? 」

「 嶺斗先輩 」


「 海、中谷も誘ってやってよ 」

「 え .... 」

「 行きたいんだってさ。 駄目 ? 」




「 は、なんでまだ告白してないの ?! 」

「 ちょ、菜々美声でけーよ ! 」

海で彼と2人きりになったとき、彼にまだ伝えていないことを聞いた。
なんとなく予想はしていたけど。


「 ああ、ごめんごめん。 でもあの子さ、絶対分かってないよね 」

「 … やっぱそう思う ?  でも、言えねーだろ普通 .. 」

「 素直にならないと駄目だよ ?? ちゃんと言わなきゃ、絶対伝わんない。 柊花、意外と馬鹿だから。笑 」

「 … お - 、有難う 」


「 もう、本当優太の恋愛相談乗る時が来るなんて思ってもなかったよ - 笑 」

「 俺も。笑 」


「 逃げんなよ、ば - か。笑 」

「 … おまえさ、俺仮にも先輩なんだけど .. 笑 」

なんでだろう。 付き合っているときよりも、優太と話すのが楽しかった。 いや、楽しかったって言うのはちょっと違う。
すごく気が楽だった。


私は、少し先に嶺斗先輩の姿を見つける。 どうやら1人だ。

「 ってことで、行ってきなよ 」

「 え ? ってことでって、何 」

「 いいから !  ほら早く - 」

トンッと彼の背中を押すと、彼は気づいたように走って行った。


「 お疲れ様 」

「 … 嶺斗先輩 」

「 よく頑張りました 」

先輩は微笑んでぽんぽん、と私の頭を軽く叩くように撫でる。
その優しさに、自分から行動したくせに少し涙が出そうになって。

でも、ここで泣きたくなくて。 ぐっと涙をこらえた。



走って見えなくなっていく彼の姿を眺めながら。




_____


予想より長くなってしまいました ...
次の更新で終わると思います、良ければご閲覧よろしくお願いします ,








2年前 No.27

七瀬 @love1217 ★Eo5VyAtEEF_mgE




   ((  最終話  ))




どれだけ叫んでも手を伸ばしても、届かないことを知った。

嗚呼、どうして .. いつから、こうなってしまったんだろう。



『  Please do not forget me.  』





//



しばらくして、気まずそうに帰ってくる2人。

2人は少し離れて歩いていて。 あれ。何かあったのかな、なんて。


でも、2人がくっついたんじゃないことは雰囲気や表情で一瞬で分かったから。 だから私は、夏休みが終わる前、彼女を家に呼び出した。


「 はい、紅茶でいいよね - 」

「 うん。 ありがとう 」

「 ねえ、柊花頭いいじゃん。 勉強の教えてもらいたいところあるんだけどさー 」

「 そんなことないし。 … どこ ? これ ?? 」

「 そうそう ! 」

「 あ、これ私も難しいなって思った。 これはこの方程式を使って求めるんだけど .. 」


私にそう話しかける柊花。
教科書を見る、うつむく彼女の横顔は窓から差す日差しが当たってすごく綺麗で。 思わず見とれてしまった。

でも彼女はそんなこと知りもせずに一生懸命教え方を考えてくれて。


モテるのも分かるなぁって。 柊花は知らないと思うんだけど、柊花って結構人気なんだよ。 そう言ったら、彼女はどんな顔をするのだろうか。 きっと、「 うそだぁ - 」って笑うんだろう。

「 … 菜々美。 聞いてる ?  も - 、折角教えてるのに ‐ 」

「 ごめんごめん、もう1回お願い 」




「 で、こうなるの。 分かった ? 」

「 お ー !  すごい、分かった !!  ありがとう ! ……… ねえ 」

「 ん ? 」


「 柊花、私のこと嫌いでしょ ?? 」


何故今のこのタイミングで、自分がそんなことを言ったのか。
自分でも分からなかった。

気づいたら、そう言っちゃっていたのだ。 でも、言ってしまったのなら仕方がない。 最後まで、言うしかない。


「 ……… え .. なに、それ。 なんで !? 」

「 否定も肯定もしないのは、柊花の悪いとこ。 私が聞いてるんだから、質問で返しちゃ駄 - 目 」

困っている風の彼女とは反対に、私は笑っていた。
笑っていないと、涙が零れ落ちそうな気がして。

でもそれと同時に明らかに動揺している彼女を見て、やっぱり私のこと好きじゃないんだなぁ - って。


「 ……… 前は、はっきり言ってそうだった。 でもね、それは菜々美のことよく知らなかったからで。 今は、大好きだよ 」

… 予想外の返答に私はびっくりして。 思いっきり笑ってしまった。


「 本っ当素直だよね、柊花って。 なんだけど、ツンデレでもある .. って、何それ。笑  … で ? それだけじゃ、ないでしょ ? 」

彼女はきっと、この先の言葉が分かっている。


「 ` 優太 ` ? 」


あぁ駄目だ。 声、震えちゃった。 小さかったし .. 柊花、聞こえたかな。
そう思ったのも一瞬で。 聞こえたんだって、彼女の顔を見てすぐわかった。

柊花はクールだけど、分かりやすい。 自分では隠せているつもりかもしれないけれど。


「 ………… やっぱり、ばれてた ? 」

「 当たり前。 2人と、どんだけ一緒に居ると思ってんの。 優太も柊花も、2人とも分かりやすすぎなんだって。笑   ……… 柊花が優太のこと好きだっていうのも、1年生のころから気付いてた。 付き合って、すぐくらいかな。 …… あんたのことだから、知ってるんでしょ ?  私が浮気してたのも、全部 」


私だって。 全部全部、知ってるんだから。

柊花と優太のこと、今までどんだけ見てきたと思ってるの ?  2人と一番一緒に居たのは私。 それだけは、事実だから。


「 ………… 私たち、話し足りなかったかもね。 いろいろと。 もっとたくさん話してれば良かった .. 」

「 そうだね。 ごめんね、私。 卑怯だったね 」

「 や ... そ、れは、私の台詞で .... 」


「 なんで ? 柊花、1つも悪いことしてないじゃん。 柊花にも優太にも、悪いことしたと思ってる。 本当にごめんなさい 」

「 菜々美 .... 」

私はバッと頭を下げて謝って。 柊花の、泣きそうな声が頭に響いた。


「 だから、柊花。 幸せになってね、絶対。 優太と 」

「 ………… え ?  菜々美、中谷先 .. 優太と、付き合ってるんじゃないの ?? 」

「 え ? 」


私は、言葉を失った。 どうしてどうなったら、そういう解釈になるんだろう …
私わざわざ別れたって言ったんだよ ? 新しい彼だって、写真見せたんだよ ?

「 まさか。 もうつきあってないよ 」

「 え ...... 」


「 じゃあ、あの時は .. ? 」そう俯きながら呟く彼女。 私は、気が付いて。

「 ああ、あれ ??  優太から全部聞いたよ。 …… あれはね、ちゃんとフラれたの 」

「 フラれ .. え ? 」


「 なんだろう .. 別れの挨拶的な ? 笑  『 今までありがとう。 菜々美と付き合えてよかったよ。 こんな俺で、ごめんな 』 って。 あんな顔でそう言われたら、もう頷くしかないじゃん ? 笑  ……… ちゃんと、好きだったんだけどなぁ。 私、なんてことしちゃったんだろう 」

「 ………… 」


私は笑った。 下を向いて。今柊花の顔見たら、つい泣いてしまいそうだから。

私だって、優太が教室に来て私を呼んだ時、少し嬉しかった。 心のどこかで期待してしまった。


「 でもね、私、後悔してないよ。 付き合ったことも、別れたことも。 優太と付き合ってる間、すっごく幸せだったもん。 ……… だからね、柊花。 次はあんたが幸せになる番。 優太、そのあとに言ってたよ ?  『 ごめん、俺行くな。 大事な人待たせてるんだ 』 って。あのキラキラした笑顔で 」

「 ……… ! 」


「 ごめん、私、勉強するために柊花を呼んだんじゃないんだ。 この話がしたかったの。 柊花に悪いことしちゃったから、少しでもお詫びしたくて 」

私がそう言うと、柊花の目からは涙が溢れだして。 彼女は、小さく声を漏らしながら泣いた。
そんな姿も可愛く見えて、つい笑ってしまう。



「 『 話があるから、明日優太の家行くね 』」

「 ……… へ .. ? 」


「 昨日、私優太にそう言ったの。 ほら、私、勉強終わらせなきゃいけないからさ。 柊花。 代わりに行ってきてくれない ?? 」

ぱちんっと手のひらを合わせて、お願いするようにぎゅーっと目を瞑る私。
お願いだから、うんって言って、って。

すると彼女は全部察したようで、鞄を纏め始めて。


「 分かった、 … 有難う !  あ、ねえ菜々美 」

「 ん 、何 ?? 」


「 私も、今までごめん。 今は菜々美のこと、本気で親友だと思ってるから 」


彼女はそう言って笑った。
そして、走って私の家から出て行って。 ばたん、と玄関のドアが閉まったのが分かった。

体がそれを察したかのように、ツーッと堪えていた涙が頬を伝った。 もういいかな、って。



「 もう、なにそれ ... ずるいよぉ ..... 」

さっきの彼女の笑顔は、きらきらしていて。 彼にそっくりだった。 いつも、太陽みたいに笑う彼に。


今までそんな顔したことなかったのに。
やっぱり彼女は、彼に出逢ってから変わった。 それが、少しだけ悔しいなぁって思ったり。


でもそれと同時に。 やっぱり、柊花には彼しかいないんだって。 彼じゃないと駄目なんだって、気付いた。 それはきっと優太も同じだ。

「 最初っから、私の負けだったんだよ ... 」


『 〜♪ 』 すると、電話が鳴って。


「 ……… もしもし、怜 」

少し、声が震えてしまった。

「 菜々美 ? 今、家来れない ?? 」


「 怜 .. もう、そういうのやめよ ? 」

「 え ... なんだよ、いきなり .. 俺なんかした ?? 」

「 ううん、そういうのじゃないけど ... 」


「 じゃあいいじゃん。 来いよ 」

「 私がもうやめたいの。 お願い、終わりにして 」

都合のいい女なんて、もう御免だ。


「 ちょ .. 菜々美 」

「 ああいう関係ではもう逢わない。 … 御免。 今までありがとう 」

「 ……… 菜々美 .. 泣いてる ? 」

「 …… え - 、そんなんじゃないよ - ! ちょっと ... 風邪引いてるだけ 」

「 … そっか .. 俺こそ、御免な 」

「 ううん。 ……… さようなら 」


私は、電話を切って。
携帯の画面をスクロールして。 その中の、2人の連絡先を消した。 決定のボタンを押すとき、手が震えたけど。 でも、迷いはなかった。


もう、これで全部 .,, 全部、終わったんだ ,


どうしてだろう。 いつもより心が清々しい感じがした。

色々あったけど、これでようやく一歩進めた気がした。



『 本当の好き 』なんて、分からなかった。 全部一緒だって思ってた。
でもこれでやっと気づけたんだ。



私はぐっと涙を拭いて。


カーテンの隙間から見える太陽の日差しに向かって微笑んだ。






_____________


深く溺れて _ 『 本当の好き 』

 菜々美編 //  完結、





2年前 No.28

七瀬 @love1217 ★nEqYP5UPX2_mgE





_________




閲覧、有難うございます。 こんな駄作を見て頂いて ..

えっと .. これで完結しました !! 笑  ご要望がある限り、自分から続きを書くことはないです、というか書かないほうがいいんじゃないかと。 ()


アクセス数、いいねの数に驚きました、本当に有難うございます ,

感想などをくださった方もいて、ものすごく嬉しかったです。
是非コメント等よろしくお願いします 、


ここまでご閲覧、有難うございました !




________//

2年前 No.29

七瀬 @love1217 ★nEqYP5UPX2_mgE




一か月ぶりですが ...
ご要望があったのとふと思いついたので、すごく短い短編をいくつか書こうかと ..

日常の一コマみたいな、本当に短い感じです。


つまらないと思うので全然見なくても大丈夫なので .. 笑
また、本編を見なくてもこのお話だけでも楽しめるかなと思うので、面倒な方は本編はとばして頂ければ(←




// _____ 敵わない。




 (  柊花side  )


優太とちゃんと付き合い始めてもう2週間くらい経ったのだろうか。
普通、付き合い始めて2週間ってすごくラブラブだと思うのね。

今日は優太の家に泊まりに来て。 別に何かを期待していたわけではないけど、長く一緒に居たいって普通思うじゃん。


「 なのに何なの、これ !! 」

「 柊花ちゃん、うるさい .... 」

そう呟いた彼はベッドに倒れこんでいて。 今すぐにでも寝てしまいそうなほど。

受験生だし仕方ない。そう思うけれど。


「 久々に泊まりに来たんだよ ? 話したいとか長い間一緒に居たいとか思わないの - ?! 」

「 ごめんごめん、忙しくてさ 」

「 …… 私も入る 」


私はそう言ってベッドに入り込んで。
逆方向を向いて横に寝ている彼の背中に抱きつくようにすり寄る。

私からこんなことするなんて、滅多にないことなのに。


「 ゆうたー 」

「 はいはいはい。 もう、そんなにくっつくと暑苦しいから 」

「 良いじゃん。 ねえねえー 」

「 もー、しつこいからー 」

私を軽く引っぺがすように軽く押されて。

「 ゆうたくーん 」

もう、返事すら返ってこなくなる。 顔は見えないけど、きっと瞼は閉じているんだろう。


「 ちぇっ、いいよもう 」

優太なんて知らない。 小さくそう呟いてごろんと反対側を向く。 ベッドから出ようと立とうと思うと、後ろから温もりが。
前に手が回ってきて、抱き締められているのだと気が付く。


「 いやいやいや、言ってることと違うじゃ .... 」

振り返ると、気持ちよさそうに寝ている彼。 完全に瞼は閉じている。

「 … しゅ、うか .... 」


…… まさか寝ぼけてる ... ?

いやいや、何それ。 可愛すぎか。
そう思ってさっきのことはすべて許せてしまう自分は、もう手遅れなのだと思う。


彼は、一体どんな夢を見ているのだろう。 起きて覚えていたら教えてもらおう。

「 おやすみ、優太 」

軽く彼の頭を撫でて。 もとの方向を向き彼の近くに顔を埋め、ゆっくりと瞼を閉じる私。



そんな私は、優太がうっすら目を開けていたことなんて知るはずもなくて。

私はきっと彼にだけは一生敵わないのだろう。





___


意味、分かりました .. ?笑
簡単に言うと本当は起きていたということです。

こんな感じで少しだけ書けたらな、と。





2年前 No.30

七瀬 @love1217 ★nEqYP5UPX2_mgE




初の嶺斗sideです。



//______ 大事な人 ,


 (  嶺斗side  )


「 嶺斗くんだ ! おはよ - 」

「 あ、おはよ - 」

にこ、と笑ってそう返す僕。 制服のポケットに手を入れ、顎までマフラーに入れて。
でも今日はいつもよりは暖かい。 きっと太陽が出ているからだろう。

これは俺の、高校2年生からの物語。


「 ..... で、今の誰だっけ ? 蒼、分かる ?? 」

「 おまえ、知らずにあんなにこやかに挨拶してたのかよ ... 佐々木だよ、2組の佐々木。 学年で一番可愛いって言われてる子 」

「 あ - 、俺そういうの興味ないから 」

「 嶺斗のその二重人格なところ、なんとかならねーの ?笑 」

「 なんとかなってたらとっくに治ってるよ 」

「 まぁそうか 」

そう言って隣で笑うのは、中学から仲の良い蒼だ。
中2からで今高2だから .. なんだかんだ、もう3年も一緒に居るのか。


「 ていうか、おまえ好きな子とかいねーの ? モテるのに誰とも付き合わないから片想いしてる相手がいるんだって女子が噂してたけど 」

「 さあ。 女子ってそういう噂とか好きだよねー本当。 ...... あ 」

どうでも良いみたいな顔をした俺の瞳に、1人の女の子が映った。 自分で一気に落ち着きがなくなるのが分かって。
シンプルなマフラーと手袋を付けて颯爽と校舎に向かって歩いている女の子。

この間、名前を知った。 『 野々村 柊花 』一個下の1年生だ。この間クラスの奴等が可愛いと話していたのを聞いた。


クールでさばさばしていて、普通の女の子とは全然違う雰囲気。
年齢に似合わない大人っぽい性格に容姿。 ある時、彼女と友達らしき子が話しているところを見た。 すると彼女は、見たことのないような子供みたいな表情で笑って。

ああ、もっと知りたい。 いつしかそう思うようになった。



でも見てたからこそ知りたくないことまで知ってしまって。
それは、彼女には好きな人がいる事。

「 優木ー、担任呼んでたぞー 」

「 あ .. そうなんだ、ありがと 」

「 どういたしまして 」


そう言って笑う彼は、男から見ても普通にかっこよくて。 でも俺は知ってるんだ。

「 ねえ、中谷って1年生の子と付き合い始めたって本当 ?? 」

「 ああ。 『 相崎 菜々美 』っていうんだけど .. 知ってる ? 」

「 聞いたことあるよ 」


『 相崎 菜々美 』ちゃん。 柊花ちゃんとよく一緒に居る女の子。
柊花ちゃんも、可哀想だなあ。 好きな人が親友の彼氏だなんて、残酷だけどきっと叶わない恋だろう。

だから、チャンスだって。 そう思って俺は保健室のドアを開けた。 此処から全て、始まったんだ。( >>3 )




「 え ........ !? 」

昇降口で中谷と柊花ちゃんがキスをしているのを見たときは、本当にびっくりした。
何が起こっているのか理解できなかった。

だって、え ? 中谷には彼女がいて、中谷にとって柊花ちゃんはただの『 彼女の親友 』で。


しばらくすると柊花ちゃんは中谷のことを突き飛ばして。
遠いから聞えなかったけど、何かを話していることは分かった。 そして中谷は去って行って。

その瞬間彼女はその場に崩れ落ちた。 その時の彼女は、見たこともないくらい傷ついた顔をしていて。

「 柊花ちゃん !!  遅くなって御免ね -  」


だから俺は、何も知らないふりをして彼女の前に現れた。

俺ならそんな顔させないのに。 絶対幸せにするのに。
そう思ったけど。 今は、そんなことどうでも良かった。 ただただ、君に笑ってほしくて。










「 あれからもう2年も経ったんだもんなぁ ...... 」

そう呟きながら、お洒落なこじんまりとしたカフェで甘めのカプチーノが入ったカップをお皿の上に置く。
……… 甘っ .... 甘いのが好きな俺でも、これは結構 ...

「 ん ? 嶺斗、なんか言った ?? 」

椅子を引きながらそう言うキミ。 どうやら、お手洗いから戻ってきたようで。

「 いや、なんでもないよ 」

もう2年も経って。俺は大学生になった。
柊花ちゃんには悪いけど、俺にはもう他に大事な人ができたから。


でも俺は柊花ちゃんのことを一生忘れることはないだろう。 なんたって、俺の初恋の人だし。

「 あ - ! もしかして他の女の子のこと見てた ??  デート中に ? うわぁありえない 」

「 違うって !!  怒らないでよ、 .. 俺にはキミだけだよ 」

「 .... もう、そういうこと言ったら許されると思ってるんでしょ - 」

キミはそう言いながら頬を膨らませる。 でもその頬も、照れたように赤く染まっていて。
そんなところも愛しいな、と思ったり。

…… なんて、そんなこと言うキャラじゃないから本人には絶対言わないけど。


あの2人が卒業してからどうなったかは知らない。 でも、きっと前を向いているんだろう。

「 あ。 映画始まっちゃう。 早く行こ 」

俺はキミの手を引いて、歩き出した。



『 嶺斗先輩 』

そう言って笑いかけてくれたあの顔を、俺はずっと忘れないだろう。




________



最後の 「 キミ 」が誰かを書かなかったのはわざとです。
出てきた人物なのか、全く違う子か ... ご想像にお任せします、笑

次は優太sideで書けたらなあと。



2年前 No.31

七瀬 @love1217 ★nEqYP5UPX2_mgE





いいねとアクセスが徐々に増えてる ...
本当にびっくりしました、ありがとうございます !!

良ければコメントやアドバイスなどもよろしくお願いします ,





//_____ 君に出逢えて , 前編


 (  優太side  )



「 私と付き合ってください !! 」

「 …… 御免、気持ちは嬉しいんだけど … 」

告白する方も相当勇気がいるだろう。
でも、フる方も結構勇気がいるんだ。 好意を抱いてくれるのは嬉しいけど、それに応えることができない罪悪感からだろうか。


「 好きです、 あの .. 私と付き合ってください ! 」

ある日。 一人の女の子に呼び出されて、そう言われた。 あれ .. ? この子、見たことあるような .. でも。

「 ありがとう。 … でも、御免。 俺、君のことあんまり知らないし ... 」

「 じゃあ、お試しでもいいです ! 私のこと好きじゃなくてもいいから ... 付き合ってほしいです ... 」

そんなことを言われたのは初めてで。
……… あ、思い出した。

「 … 君、1年生だよね ? 名前は ?? 」

「 …… はい、えっと .. 相崎 菜々美です .... 」


やっぱり。 『 あの子 』とよく一緒に居る子だ。

「 菜々美ちゃんね。 じゃあ、宜しく 」

「 えっ !? 」

菜々美ちゃんが、信じられないような顔で驚いて。

「 本当ですか !?  やった .. 嬉しい ! 」

両手を頬に当ててこれ以上ないような笑顔で笑った。 そんな彼女を見て、心が痛くなった。
ああ、俺はなんて最低なんだろう。






高校に入学して数か月。 クラスも纏まってきた頃だっただろうか。

「 やっべ 、遅刻する ! 」

「 わっ .. !!  痛ぁ .. 」

急いで学校に向かっていると、前の方から小さい悲鳴が聞こえた。
中学生らしき女の子が転んでしまったようで。 傍にあった階段のところにしゃがみ込んだ。

俺が数か月前まで通ってた学校の制服だ。


「 どうしたの、大丈夫 ? 」

俺は持っていたハンカチを、小さくかがんで差し出した。

「 こけたの ? 」

すると彼女は、驚いたようにこっちを見上げた。
………… え 。。その子は、よく見るとすごく綺麗で。 中学生には見えなかった。

太陽の光が彼女の漆黒の髪に当たって美しい。 俺は明らかに動揺して。

「 あ .. えっと、あっちの中学校だよね ?  その制服。 俺、そこの卒業生でさ 」

彼女はボーっと俺の方を見て。 やば、俺なんか変なこと言ったかな。


「 立てる ? 大丈夫 ? 」

すっと手を差し出すと、彼女は俺の手に掴まって立った。

「 スカート .. ちょっと汚れちゃったね。 そのハンカチで拭けばいいよ 」

「 え、でも、ハンカチ汚れちゃうし .. 」

「 いいよ、そのくらい。 あ、はい、絆創膏。 持ってるかな ?  良かったら使って ? 」

「 あ .. はい .. 」

表情を崩さない彼女は、きっとクールなんだろうな。 いや、きっと、強がっちゃう子なんだろうな。
出逢ったばかりの子に何故かそんなことを思った。


「 あ、やべ、もうこんな時間。 じゃあ俺行くね。 学校行ける ?? 」

彼女はこくっと頷くと「 有難う、ございます 」小さくそう微笑んで言った。
その大人っぽい表情についドキッとしてしまう。 年下になにドキドキしてんだ、俺は。

顔が赤くなるのがばれないように、俺は「 またね 」そう言って学校の方へ走った。


【 またね 】 それは、ふと出た言葉だった。 もしかしたら俺の願望だったのだろうか。

「 あ、ハンカチ  」

俺はそう気づいて立ち止まって。
…… いいや、やっぱり。 彼女に持っていてほしい。 何故かそう思った。

1分程の出来事だった。 なのに、彼女のことが頭から離れなかったんだ。

「 また、逢えるかな 」

俺は青空を見ながらそんなことを考えた。




「 ………… え !? 」

いやいやいや、なんでいるんだ ? え ??

校内で彼女を見つけたときは、本当に驚いた。今考えてみたら市内に高校は多くなかったしここは人数も多い。 それにあの中学から1番近いんだから全然ありえないことではない。

でも、運命だなんて。 その時の俺は、そんなおかしなことを考えた。


それにしてもやっぱり彼女は綺麗で。

制服を着崩したりしていないところが、彼女らしかった。 なんて、彼女のことなんてなんにも知らないのだけれど。
廊下などですれ違う時は何故か緊張した。

でも、彼女は俺のことなんて全く覚えてもいないようで。 悲しくなった。



彼女とどうにかして接点を持ちたい。だんだんそう考えるようになった。

でもだからって、いつも一緒に居る菜々美ちゃんを利用しようと考えるなんて、本当に俺は酷い奴だ。
『 利用 』なんて人聞きが悪いけど、彼女の想いを利用しようとしているのは事実で。


「 菜々美がいつも一緒に居る女の子って、誰 ?? 」

「 柊花のこと ? え、なんで ?? 」

「 あの .. 俺の友達がさ、気になってるらしくて。 どんな子なのかなって .... 」

うそをついた罪悪感で、胸が少し痛くなった。

「 あ - 、なるほど。 柊花可愛いからモテるもんね - .. なのに一向に誰とも付き合おうとしないんだもん。 …… 好きな人聞いても、教えてくれないし ... 」

「 そうなんだ ... 」

「 あ、えっと野々村 柊花って言うんだけど、柊花ってばめちゃくちゃサバサバしててクールでかっこいいんだよ。 柊花は思ってないかもだけど、私は親友だと思ってて ... 」

「 きっとその子もそう思ってるよ 」

「 … ううん、柊花はきっと、私のこと好きじゃないから 」


そう言って切なそうに笑う菜々美にもきっとなにかあるんだろう。
俺はそう察した。

でもだからって、彼女が浮気してるだなんて思いもしなくて。




あの子とあんなことになるなんて想像もつかなかった。

カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しくてうっすら目を開けると、気持ち良さそうに寝ている君。
いけないことだと分かっているけど、その瞬間がすごく幸せで。

「 柊花は、俺を見捨てたりしないよね ? 」

俺がそう言うと彼女は戸惑ったような困ったような顔をした。
御免ね、困らせたりして。




「 好きだよ、柊花ちゃん ..... 」




そして俺は、言ってはいけないはずの一言を発してしまった。






_____ 前編 終了。



2年前 No.32

七瀬 @love1217 ★nEqYP5UPX2_mgE






え、前回の更新からアクセスといいねがすごく増えてる ... !?
すごくびっくりです , 本当にありがとうございます 。



//____ 君に出逢えて , 中編



「 じゃあ帰るね、優太 」

「 ああ。 家まで送ってやれなくて御免な 」

「 別に .. そんなのいいよ。 バイバイ 」

そう言って立ち去って行く彼女に手を振り、微笑みながら後ろ姿を見守る俺。
『 これが最後じゃないといいな 』いつもそんなことを思ってしまう自分がやっぱり最低だと思う。

このままじゃ絶対いけないって分かってる。 でも菜々美の笑顔を見ていたら、そんなこと口に出せるはずもなくて。


でも優木 ( 嶺斗 ) が現れて、さすがにやばいとは思った。 優木と柊花はいつも一緒に帰っているようで、それを見て少しムカついて。

そんな中、また、空き教室で菜々美が浮気相手といちゃいちゃしていたのを見てしまって。
もやもやがたまっていたときに、昇降口で柊花ちゃんに逢ってしまった。


「 ………… あ 」

「 柊花 」

もう遅いから、周りに人はいなくて。
学校で2人きりになるのなんて関係を持つ前以来だから驚いてつい名前で呼んでしまう。


「 何してんの ? 」

「 …… 友達待ってます 」

「 ふ - ん、友達 .. あ、最近家来ないじゃん、どうした ?? 」

「 .. あのさ、こんなとこで .. 」

「 もうほとんど人いないよ 」

「 ……… 私、もともと自分からは行こうなんて思わないし 」

「 ああ、なるほど。 俺に来いって言われたら来るんだ 」

なんだろう。 今日の俺は、やっぱりイライラしている。

「 う、ん .. 」

「 俺に呼ばれるからしょうがなく ? 全部俺のせい ? …… ずるいね、柊花ちゃんは 」

「 ……… っ !! 」

彼女が泣きそうになっているのが分かる。 あれ、俺はなにを言っているんだろう。
でもなぜかイライラだけは止まらなくて。 彼女のもたれていた壁に強く手をつき、深く口づける。

「 ゆ、うた .. やめて .. ! 」

「 やめてってば .. ! 」

どんっと押され、ハッと我に返る。


「 ……… ごめん。 謝るから、そんな顔すんなよ .. 」

俺はそう言いながら、傷つけた彼女の頬と頭をそっと撫でる。

「 や .. わ、たしこそ .. ご、めん .. 」

「 ん .. じゃ、またな 」

軽く手を振って昇降口を後にする俺。 後ろは全く振り返らずに。 だって、振り向いたら今すぐ抱き締めてしまいそうで。
少し歩いて学校が見えなくなるくらいまで来ると、俺は空を見上げて。

「 なにしてんだろ、俺 .. 」

菜々美の浮気しているところをまた見たからっていうのもあるけど、柊花が待ってるって言ってた友達。 それはきっと優木なんだろう。

もしかして柊花は、彼奴のことが好きなんだろうか。


そう思うとついあんなことをしてしまった。 嫉妬なんてできる立場じゃないのは分かってるけれど。





夕方、もう外が暗くなった頃。
俺はコンビニに行こうとした。 でもなんとなくもしかしてっていう気持ちがあって、遠回りして優木の家の近くのコンビニに行った。

そしたら案の定、彼女が1人で歩いていて。 馬鹿か、こんな暗くなってから一人で歩いてんじゃねーよ。


「 柊花 」

そう言って後ろからそっと抱き締める。

「  .. どうして、ここにいるの .. 」

彼女は声だけで誰かわかったようで、振り向かなかった。 対して驚いてもいない。 まるで、俺が来るのが分かっていたかのように。

「 それはこっちのセリフ。 友達は ? 」

無言の彼女にそう問い詰める。

「 …… 友達って、優木か。 家行ったんだ ? 」

「 何か問題ある ? 」

「 ありまくり 」

くるっと体の向きを変えて、向き合う形に。


「 おまえはそうでもさ、優木はおまえのこと友達だなんて思ってないよ。男が女を家にあげるってことは .. わかるよね、柊花ちゃん ?  …… キスくらいはした ?  」

「 ……… 優太、離して.. こんな道でさ、知り合いに見られたりしたらどうするの .. 」

キスのことを否定しない柊花に少しイラついて。

「 もう暗いしいいんだよ。 … それに、今日も菜々美、空き教室で浮気してたし。 そっちから告白してきたくせにそれはどうなのって思うよね -  」

彼女は察したように気まずそうな顔をする。 前から思ってはいたけど、俺は、その柊花ちゃんの空気が読めすぎるところが嫌いだ。 全て知られているような感覚に陥るから。

「 … まぁ、俺もこんなことしてるから人のこと言えないんだけど 」


俺はそう言って笑った。
すると彼女は、とん、と俺の胸に頭をおくようにしてぎゅうっと俺の服の裾を握りしめた。

突然の行動に動揺する。

「 何なに、どうしたの。 柊花ちゃんからそんなことしてくるなんて珍し .... 柊花 ? 」

「  ... うぅ - .. っ 」

俺は、彼女がどうして泣いているのか全く分からなくて。

「 柊花、柊花。 どうした、なんかあったか ?? 優木になにか嫌なことされた ? 」

ふるふる、と首を横に振る君。

「 じゃあ俺が学校で柊花にひどいこと言ったのが理由 ?? 」

「 ちがう ... 」

なんて弱々しい声。 きっとこんなふうにさせているのは、俺だ。

「 ごめ .. っ、すぐ、泣き止むから ... 」

強がっている彼女を引きよせて頭を優しく撫でる。

「 大丈夫、大丈夫 ..... 柊花。 .. 帰ろっか 」

「 ... うん ... っ 」

彼女をおんぶして家に向かう。


「 ねえ  」

「 ん ? 何 ?? 」

「 迎えに、来てくれたの .. ? どうして、私があそこにいるって分かったの .. ? 」

「 ………… さぁね 」

「 さぁねって .... 笑 」



「 .. 優木なんかに、渡さないよ 」



「 ………… 」

君は何も聞かなかった。
『 渡さない 』それは、 ただの俺の我儘で。

君を失いたくない。 彼女を背負いながら、そんなことを考えた。

「 柊花ちゃん 」

「 ん ? 」

「 御免な ..... 」

「 ……………… ばぁか ..... 」

柊花は小さくそう呟いた。 本当に小さい声だったけど、確かにそう言って。
俺の背中に顔を埋めた。  彼女がどんな表情をしているかは、後ろにいるから分からない。

けれど、君が小刻みに震えていたのは分かった。




それから数日後。 >>8
何故か、君は俺のことを避けた。 やっぱりあの昇降口のことで俺が嫌いになった .. ?そんなことも考えて。

だからあの日 , 俺は彼女の家の前で待っていて。


そしたら優木と帰ってきたから、俺は尚更ムカついて。

でも君が俺を避けていた理由は分かったから。 だから、笑って彼女の頭を撫でた。それなのに君は。

「 ……… ねえ優太 」

「 ん ? 」


「 この関係、やめよう 」


「 ………… は .. ? 」

「 こんなのやっぱり駄目だよ。 お互いを傷つけるだけ。 だって、本来は私は優太の 『 彼女の親友 』だよ ? .. そうだよ、もっと早く気付けばよかった 」

俺の周りに雷が落ちたんじゃないかと思うくらいの衝撃が走って。

「 ………… 柊花 」

そう君の名前を呼んで、君を抱きしめることしかできなくて。
でも君はそんな俺を突き放した。


「 ねえ優太。 ... 私は .. 菜々美じゃない 」

「 ………… 」

「 ね、今ならまだ間に合うよ。 優太の『 彼女の親友 』 に戻れる。 …… 「 男の浮気は遊び 」 なんでしょう ?  …… なら、そこに愛はないから .. もう遊ばれるのは御免だって .. 」

「 違っ ... 俺は遊びとかじゃなくて .. 」

「 私に向けて 『 好き 』 って言ってるとき、心の中に私以外の人いたでしょ ? ……… もう、家来ないで。 連絡もしないで 」

そう言って家の中に入ろうとする彼女の腕を掴んで。 ええと、なんて言おう。言いたいことは山ほどあるのに頭がごちゃごちゃになって。


違う。 違うんだよ。 そうじゃなくて。 俺は、君が。 柊花が ..

「 柊花 .. 」

「 やめて !  … 名前 .. 呼ばないで 」

君の傷ついたような目を見て。 俺の掴んでいた手の力が次第に弱くなる。

「 なんで、今更 ... 俺は嫌だよ。 俺のこと嫌いになった ? 」

「 …………… も、元々 .. 好きなんて言ってないじゃない ...... 他に好きな人ができたの 」

君の声は震えていた。
もしかしたら、好きな人がいるって言うのは嘘かもしれない。 でも、□が嫌いな君がうそをついてしまうくらい ... それくらい俺のこと好きじゃないんだね。

「 ………… 優木 ? 」

「 さぁね 」


いつかの俺みたいに君は軽く笑って。 でもその笑ってる顔も、傷ついてる顔のようにしか見えなくて。

「 ……… 分かった。 もういい。 ……… じゃあな。 ` 野々村 `。 今までありがとう 」

俺はそう言って来た道を戻って。


君の家が見えなくなった頃、ポツ .. と頭に雨が降ってきた。 その雨は少しずつ少しずつ強くなってきて。
ああ、ちょうどいい。 これで泣いても誰にもばれない。

俺はそう思って立ち止まり、こらえていた涙を一粒だけ流した。



君が好きだって、守るって、そう誓ったばかりなのに。 神様、貴方はなんて意地悪なのでしょう。


…… なんて、俺らしくないこと考えちゃったな。
柊花ちゃんと出会ってから俺は変わったと思う。 自分が自分じゃなくなった。

いや、違う。 本当の自分が隠し切れなくなった。


でもそれくらい。



 愛してるんだよ、柊花。

俺は雨が降ってることなんて気にせずに上を向いて目を瞑った。 雨でこの気持ちも流れてくれたら良いのに .. なんて。





「 御免ね 」






____





2015年最後の更新。 早いですね。 2015年この作品を見てくださった方、有難うございました


あと1,2回で終わりになります。



2年前 No.33

七瀬 @love1217 ★nEqYP5UPX2_mgE






 明けましておめでとうございます。
 すみません、思いのほか長くなったのでこの次に完結編を書こうと思います , 笑




//____ 君に出逢えて , 後編



今日は校内がガヤガヤと騒がしい。 そのわけは、今日が体育祭だからだ。

あれからもう、一か月は経ったんだろうか。
柊花とは目も合わせてない。 でも俺は、いつも心のどこかで君を探していて。

君に好きな人がいるのは知っているのに、逢いたくてしょうがなかった。


校舎の二階を歩いていると外を歩いている彼女を見つけた。

その隣には、優木の姿。 何かを話しているかと思ったら彼女は満天の笑みで笑って。


「 なんだ。 上手くやってんじゃん ... 」

あいつには、俺なんていなくても大丈夫なんだ。
そう思うと胸が痛くて。 俺ってなんて女々しいんだろ、なんて考える。

「 優太 - 早く行くぞ - !! 」

「 あ .. もうそんな時間 ? 」

俺は慌てながら、呼んだ友達の元へ駆け寄った。



外に出ると俺と同じ色の鉢巻を巻いた彼女の姿があった。 鉢巻から出た綺麗な漆黒の髪が風になびいて綺麗で。

「 優太ー 」

名前を呼ばれたかと思うと、駆け寄ってきた菜々美。

「 よっ !  暑いな -  」

「 そうだね - 。 ね、優太はなにに出るの - ? 」

「 何故かクラスのリレーの代表。 そんな足速いわけでもねーのにさー 」

「 みんなが嫌がるから引き受けたんだ ?? やっぱり優しいねえ、優太は 」


そう笑う彼女。 少し茶色ががったツインテールの髪が揺れて。
菜々美は可愛い。 でも、やっぱり柊花が一番かわいいと思ってしまう俺は多分重症だ。

「 あ、もう行かなきゃいけないんじゃない ? ほら、あそこならんでる 」

「 本当だ。 じゃあ行ってくるよ 」




「 ………… え .. 」

「 ………… ! 」

場所に行くと、何故か柊花がいて。 俺の前に走るらしい。

「 あ、柊花ちゃ - ん !  あれ。 そこ、他の女の子じゃなかったっけ ?? 」

隣にいた優木が、ひょこっと顔を出して彼女に聞く。

「 …… その子、さっき怪我して。 だから、その子の代わりなんです 」

「 あ - 、なるほど。 頑張ろうね 」

「 あ、はい 」

嬉しそうに話す2人を見て、何故かいらっとして。
俺は君に話しかけた。


「 ………… 久しぶり 」

「 … お久しぶりです、先輩 」

「 足速かったんだ ? 初めて知った 」

「 ……… 悪いですが、そんな速いってほどじゃないので。 .. 抜かれても、怒んないでくださいね 」

「 ば - か、怒るかよ 」

俺は笑って君の頭をくしゃっと撫でた。

「 ………… あ、悪い 」

やばい。そう思ってバッと手を引っ込める。

「 ... いえ 」


「 …… あれ。 おまえ、大丈夫 ? 」

「 え .. ?? 」

彼女がいつもより体調が悪そうに見えて。 少し心配になった。
余計なお世話かな、とか少し思いながらも。

「 顔色悪い。 …… 無理すんなよ ?? 」

「 …… はい 」



「 はー、疲れた 」

「 やった、勝ったぁ。 でも中谷早かったね - 、帰宅部のくせに 」

優木が笑いながら俺にそう言って。
あ - あ、此処でも負けんのかよ、なんてガキっぽく思いながら悔しくなる。

「 きゃ - ! 」

どこかでそんな悲鳴が聞こえて。周囲が騒然とする。

「 野々村さん、大丈夫 !?? 」

… 柊花 ?


「 ‘ 柊花‘ !! 」

やばい、みんなの前で呼び捨てしてしまった。 そんなの今はどうでも良くて。
俺は駆け寄って君を抱き上げる。

「 柊花、大丈夫 !? 」

「 あ、菜々美。 ごめん、俺野々村保健室連れて行ってくる 」

「 うん、分かった 」

心配そうな目で菜々美が柊花を見る。
俺は周りの女子たちの悲鳴が聞こえて、ハッとして。

顔を隠すように、お姫様抱っこをしている彼女の顔に首にかけていたタオルを掛ける。

「 ………… ゆ、うた ... 」

切ないような悲しいような .. そんな消えるような声で、君がそう呟いた。



保健室に2人きり。
彼女は眠ったようなので、濡らしてきたタオルを彼女の額にのせると、彼女の体がびくっとなって。


「 あ、ごめん、起こした ? タオル濡らしてきたんだけど .. 冷たすぎたかな 」

「 いえ .. ありがとうございます .. 」

「 も - 、だから無理すんなっつったじゃん 」

「 あ .... 気づいて、たんだ .. ? 」

「 当たり前。というかおまえさ、前から人に甘えるってことを知らなすぎ。 .. お母さん達いないのも関係してるんだと思うけど .. もっと人に頼れよ 」

「 ………… 」

「 じゃあちょっと練習してみろよ。 ほら、甘えてみ 」

「 は .. っ ? 何それ .. ! 」

「 いいから早く - 。 なんかねーの ?? 」


「 …………… そばに、いて .. ? 」


顔の目のところまで布団をかぶり、顔を真っ赤にしてそう呟く君。 その目には、うっすらと涙が見えた気がして。
俺は君がうそをついているようには見えなかった。

「 ………… 」

「 あ ... ご、めん、無理だよね , 体育祭中なのに .. 私、今熱でちょっとおかしくて .. 忘れて ? 」

「 … いいよ、分かった。 ずっとここいるから 」

今は、誰でもいいからそばにいてほしいのかもしれない。 そう自分に言い聞かせるけど、嬉しくて高鳴った胸の鼓動はおさまらなくて。


「 …………… ごめん、ね .. 」

「 え ... なんで ?? 」

「 色々、迷惑かけて ... それから、たくさん傷つけて .. 」

俺はふっと笑って。 そんなこと、考えてたんだって。

「 ば - か。 つ - かさ、おまえさっき優太って呼んだろ。 名前で呼ばないでとか言ってたくせに 」

「 ……… そう、いえば .. え ? でも、そっちだって私が倒れたときみんなの前で 『 柊花 』 って呼んだよね ?? 」

「 .. そうだっけ ? 」

「 そうだよ。 忘れたわけ ? 」

「 うそ、覚えてる。 ごめんね 」

「 .. い - よ 」

「 え ?? 」

「 柊花、で、いい。 … 2人でいるときは。 .. まぁ、2人でいる時がこの先あるか分からないけど 」

「 .. ん、了解。 … 柊花。 ごめんな 」


「 ごめん 」俺には、それしか言えなかった。
ああきっと彼女は強くなんかない。 俺と一緒で、弱いんだ。 どうしてもっと早くに気付かなかったんだろう。

俺は眠った彼女の手を握って。彼女の目が覚めるまでずっと頭を撫で続けた。


すると彼女はふふっと笑って。 びっくりして見ると、どうやら夢を見ているみたい。
…… 君はどんな夢を見ているんだろう。 優木が出てきてるのかな。

多分これが、君の寝顔を見る最後になるだろう。 なんて言ったって、こいつは優木のことが好きなんだから。


そうわかっていても。 気持ちよさそうに眠っている彼女がすごくすごく愛おしかった。
君の見ている夢に俺が出ることは、もうないんだろう。





「 .... 優太 !! 」

君が起きてから先生が戻ってきたので校庭に戻ろうとすると、後ろから俺を呼ぶ声が。
ああやっぱり。

俺は、君の仕草にも香りにも声にも全部参ってしまってる。 きっともう手遅れなんだ。


「 バカッ .. おまえ、何してんだよ。 また倒れたりしたら .. 」

「 言い、忘れてたこと、あって ... 」

肩を上下させながらそう言う君。 こんなに走って俺のところに来てくれたことが、嬉しくて。

「 … 何 ? 」

「 その、ありがとう .. 今日、色々と .. 」

「 どういたしまして 」

俺は笑って。


「 それから、改めて別れの挨拶をしようと思って 」

「 え ... 」

自分の表情が一瞬にして強ばったのが分かった。

「 今までありがとう。 バイバイ。 ………… 大好きだったよ 」

君はそれだけ言って、走って元の方へ戻って行った。


ああ、一瞬期待してしまったじゃないか。
君の前みたいなやわらかい笑顔に。

でも君は言ったから。 大好き『 だった 』って。


もう答えは出たじゃないか、分かっていたことじゃないか。

これで何もなかったかのように菜々美と付き合い続ければ、これで俺たちの関係はなかったことになるから ....


なのにどうして、こんなに胸が痛いんだろう。


俺は携帯のロックを外して、君の笑顔を撮った待ち受けを見た。
御免、実は数か月前に内緒で撮ってたんだ。 公園に咲いていた花を見ている君が風が吹いた瞬間に微笑んで .. その瞬間がすっごく綺麗で。

なのに俺はどうしたんだろう。


「 お - い優太 ! おまえどこ行ってたんだよ。 おまえも片づけ手伝えよ - 」

「 あ - 御免、すぐ行くすぐ行く 」



携帯の待ち受けの中で笑っている君が、俺をあざ笑っているかのように見えた。






2年前 No.34

七瀬 @love1217 ★pFJosCB9VV_mgE




長くなってしまい、申し訳ないです ...
コメント本当に有難うございます !!



//____ 君に出逢えて , 完結編



「 優太、遅かったね。 柊花 .. 大丈夫そ ? 」

校庭に戻ると片づけはほとんど終わっていて。
菜々美がそう言いながら、心配そうに俺に駆け寄ってきた。


「 ああ、眠ってから顔色良くなったしもう大丈夫そうだよ 」

菜々美の心配を和らげようと髪をくしゃっと撫でると、彼女はふわっと笑って。 その嬉しそうな笑みに心が痛くなる。


「 ねえ優太 」

「 ん、何 ? 」

「 今日一緒に帰ろうよ。 ………… 聞きたいことがあるんだ 」

気づけばこの時から、嫌な予感はしていた。
でもそれがまさか的中するなんて。



「 ね、なんであの柊花が倒れたとき、優太があんなことしたの ? 柊花と何かあった ?  」

帰り道。 俺は菜々美にそう聞かれた。
まさか、ばれた .. ?? なんてそんなわけないか。 ただの嫉妬 .. ? いや、でも。。

「 …… 何言ってんだよ、たまたま近くにいたからだろ 」

「 もしかして、私の知らないところで逢ったりしてるの ? … 酷いよ、有りえない ... 私のこと、やっぱり好きじゃないん ..「 じゃあおまえは ! 」

彼女を遮って、俺はそう怒鳴って。


「 おまえは .... 菜々美は、ずっと浮気してるくせに .... 」

言い終わってハッとする。 俺今、一番酷いことしてる。
ばれそうだったからって今みたいなこと言うなんて ...... どうしよう、俺はまた彼女を傷つけてしまった。

「 …… やっぱり気づいてたんだ …… ごめん、別れよ、私達 」

やっぱ俺じゃなくて、そっち選ぶんだって。

「 ……… おまえにも、そんなこと言われるのかよ ... 」


ぼそっと吐き捨てるように呟いた俺。 きっと彼女には聞こえていないだろう、小さな小さな声。

「 …… ごめんね ... 本当 」

「 …… や ... 」

「 じゃあ、ね。 今までありがとう 」

彼女はそう告げて家の中に入って行った。
ああ、俺は、本当に何してるんだろう。

「 ふ .. ううっ ... 」


家の方から彼女の泣き声が聞こえた気がしたのは、気のせいなんだろうか。

好き、ただそれだけなのに。 どうしてこんなにも傷つき傷つけあわなきゃならないのだろう。


「 御免な、 」

自分のことばかりで、君や菜々美の気持ちなんて考えていなくて。
きっとこれはその罰だ。



それから数週間後。 もう目も合わせてくれないだろうと思っていた君が、何故か俺の家にいて。 >>13-14

「 なん、で 」

「 逢いたくなって 」

は、え、だって ... え ? 頭が追いつかなくて。
でもしばらくたって、彼女の意図が分かった。

ああ励ましに来てくれたんだなって。 それなのに俺は、言われたことがグサッと胸に刺さったからって酷いことをしてしまって。


「 来なきゃよかった 」

その言葉に辛くなった。 ああ、俺はそこまで君を傷つけていたのか。 この前、気付いたはずだったのに。


「 …………… 柊花 …… 」

…… あれ ? 部屋に戻ってあったのは、見覚えがあるハンカチ。
これ ..... ずっと持っておいてくれたんだ .....


それは、あの時の俺が渡したハンカチで。 次の日聞いてみたら、彼女も覚えてくれていたみたいで。

たったそれだけのことなのにすごく嬉しくなった。
そして柊花から菜々美の話を聞いて。 授業が始まる前、俺は菜々美に逢いに行った。

やっぱり菜々美は、全部知っていて。 俺は何て馬鹿なことをしたんだろうって。


菜々美も知らない処で苦しんでいたんだろうなって。

「 有難う。 菜々美と付き合えてよかった 」

それは本当に本音だから。 俺がそう言った後の菜々美の笑顔は、今まで見た中で一番輝いていた。
ていうか柊花、待ってろって言ったのにいないし。

ちゃんと言おうと思っていたのに。 今度こそ、君が好きだよって。



だからこそ気持ちが通じ合った時は嬉しくて嬉しくて。

「 好きだよ、柊花 」

思いっきり抱きしめて耳元でそう囁くと、かの耳が赤くなっていくのが分かってつい笑みが零れる。

「 ば - か .. 」

そう言いながらも背中に回す腕を強くする彼女はやっぱりずるくて。
いつも振り回されてるのは俺な気がして、ちょっと悔しくなる。





「 優太、優太。 起きて、もうこんな時間 」

「 良いじゃん休みの日なんだから。 ゆっくりしよ〜 」

「 そうだけど - ... わっ 」

ぶつぶつと文句を言っている彼女の腕を引っ張って、ベッドに引きずり込む。

「 まだ眠い - 」

「 どんだけ寝るの。笑 ... まぁいいや、私ももうちょっと寝よ 」


そう呟いてごろんと俺の方を向いて寝転ぶ柊花。
とその瞬間、軽く体を起こしてちゅ、と軽く俺にキスをしてきて。

「 え 」

「 ふふ、いつも不意打ちでされるから仕返し - 」

君はそう言うと悪戯っぽい笑みで笑った。

「 え ? ちょ、なんでそっち向くの。 … 嫌だった ?? 」

俺がくるっと君に背を向けるように向こうを向いたからか、心配そうな君の声が聞こえて。 くい、くい、と服の裾を引っ張られる。 駄目だ、今そっちを向いたら、顔が赤くなっているのがばれるじゃないか。


「 そういうのするの駄目 」

「 え - なんで - ? そんなに嫌だった ?? じゃあ良いもん、もうしないから 」

声だけで拗ねているのが分かって。
ごろんと君の方を向くと、案の定唇を尖らせている。 俺は体を起こし、そんな君に唇を落として。


「 俺からするからいいの。 あ、でもさっきの前言撤回ね。 やっぱたまには柊花ちゃんからもしてきてよ  」

「 なっ ..... 」

かあっと君の頬が真っ赤に染まるのが分かって。 それだけのことで、君がすっごく愛おしくなる。

「 うっさい馬鹿 」

くるっと向こうを向いてしまった彼女。

「 御免御免、こっち向いて 」

「 嫌だ 」


「 御免ってば(笑)  好きだよ、柊花 」

「 …………… 朝からうざい !! もう、寝るなら寝る ! 」

そう言いながらもこっちを向いて顔をうずめる君は本物のツンデレだと思う。
でもそんな君が可愛くて仕方がなくて。

すると、少しして小さな寝息が聞こえて。 柊花を見ると、知らない間に眠っている。


え、寝るの早。

「 … 結局柊花も寝たかったんじゃん。笑 」

でもこうして君の寝顔が見れるのも、幸せなことなんだって今になって分かる。

保健室で、あの時最後だって思ってたから。
俺は無意識に優しい君を傷つけてしまっていたのかもしれない。





「 あ、言いたいこと、忘れてた 」

君が家に帰って行った後、俺はハッとして。 伝えたいこと、伝えられてなかったや。

『 有難う 』『 愛してる 』『 ずっと一緒に居るから 』『 俺の中で君は世界一可愛いよ 』
いつも、君の笑顔に癒されて助けられていて。
俺ばっかり好きで悔しいけど、やっぱり俺は君がいないと駄目なんだなぁって。


「 ねえ、優太 」

そう笑う君が大好きで大好きで。 愛し方も分からない、こんな俺を許してくれて。


でもやっぱり、こんな言葉たちより大切なものがあるかなって気づいたから。

それに良いんだ。


俺らの時間は、まだ始まったばかりなんだから ....
俺は雲の隙間から差し込む太陽を見ながら、そんなことを考えた。





_______



終わり方変ですみません(汗
優太は、柊花にとって雲の隙間から差し込む太陽の光のような人ってことです。笑 簡単に言うと、闇の中を照らす光のような存在だと。

これで一応優太編は完結となりますが、要望があったり書きたいなと思ったらまた番外編を書く可能性もなくはないです、(


読んでくださった方、有難うございました ,





2年前 No.35

七瀬 @love1217 ★pFJosCB9VV_mgE





 ‘ 君に溺れて _ ‘

『   http://mb2.jp/_rs/29871.html  』


 新作です 。 駄作の予感しかない ... 笑

題名を似せたのはわざとですが、「優太」という名前が同じなのは全く関係ないです。 ただ名前が思いつかなかっただけです .. ()

‘ 深く溺れて ‘ アクセス800超え … 本当にびっくり、ものすごく嬉しいです 。


応援してくださった方、本当に有難うございます !!

新作、なんとか完結できるように頑張ります .... これからもよろしくお願い致します ,

2年前 No.36

七瀬 @love1217 ★pFJosCB9VV_mgE



____



どうも、お久しぶりです。

一時期メビに来ていなくて更新できなかったので、 >>36 の 『 君に溺れて _ 』 は更新を辞めさせていただくことにしました .. 御免なさい(汗


その代わり .. といってはなんですが、新しい小説を書き始めました !!
「 君の音で、歌で、世界が変わった 」というテーマで書いています。

既に駄作の予感しかしませんが ... 笑

良ければ読んでみてください。 宜しくお願いします、◎


‘ 君に捧げた歌 _ ‘


→(  http://mb2.jp/_rs/30034.html  )




××

1年前 No.37
切替: メイン記事(37) サブ記事 (18) ページ: 1

 
 
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