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君のためなら特別な人になれる

 ( 恋愛小説投稿城 )
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杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

*


どうして君の相手が私でないんだろう


君があの子と手を握るたび、見つめ合うたび、口づけを交わすたび、
悲しみで胸が張り裂けそう
私は壊れてしまいそうだ


君の相手が私ならいいのに



君を守りたい

君の心を守りたい


私は君の一番にはなれない
だけど、君のためなら特別な人になれる


君を守るために



愛する君を、守るために…


*

6年前 No.0
切替: メイン記事(40) サブ記事 (50) ページ: 1


 
 

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

桜の木が色をつけ始める季節。
月日が経つのは早いもので、この高校に通いはじめてからもう1年が経とうとしている。

 *

私は高校入試で見事第一志望に合格できた。
その志望校は、公立高校の国際化。

中学の頃、テストで英語だけが毎回高点数でキープできていた。
更に、「英国に留学してみたい」と思うようになり、国際化に進んだ。


先輩の中には、留学をした人たちが大勢いて驚いた記憶がある。
なので、この学校の卒業生はみんな英語がペラペラで、ほかの国の言葉も話せるというちょっとしたエリート。

又、校舎はきれいで、修学旅行は海外に行く少し贅沢な学校なのだ。

 *

6年前 No.1

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

今日も長い授業が全て終了した。

国際化のほとんどの人が部活には所属していない。
そのため放課後は、山積みになった課題を終わらせるために学校の図書館へ行く人が多い。
それでも普通の高校生なので、友達と遊びに行ったりデートしたりという人もいる。

そんな中…


「咲桜っ!」


誰かが私の名前を呼んだ。

でも、誰かはすぐに分かった。


「樹っ!」


樹。私の彼氏、大好きな人。



6年前 No.2

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

樹とは、中学3年の春─受験が終わってから付き合い始めた。

樹は、顔立ちがよくて背が高くスラッとしていて、スポーツ万能。
「男の手本」といってもいいほど、格好良い。

そんな彼が何故私を好きになってくれたのかは、未だ秘密。


「咲桜、どうしたの?」
「何が?」
「ニヤニヤしてるから」
「それはー…秘密っ!」


どうやら樹のことを考えてたのがバレたみたい。


「言って欲しい?」
「別にー」
「そっ。じゃあいいや、教えてあーげない」
「嘘です。教えてください」
「んーとね、えっと…樹は格好良いなーって」
「なんだそれっ」
「照れる」
「自分で言ったんだよ」

6年前 No.3

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

最近は、周りから「バカップル」と言われる程になっている私たち。
それでも何だか嬉しいと思うのは、樹も同じなのかな。


「あ、そうだ。咲桜、このあと用事ある?」
「んー大丈夫だよ」
「帰り寄りたいとこあるんだけどいい?」
「うん。いいけど、私いて邪魔にならない?」
「ならないよ」
「そっか。なら良かった」
「じゃ、帰ろっか」
「うん」


実は今日、私の誕生日なんだ。
それをわかってて言ってるのかな。

樹の顔を見ても、いつもと変わらず微笑むだけだった。

6年前 No.4

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

─帰り道。


「咲桜!ハッピーバースデー」
「ありがとー」


すれ違う友達が、誕生日を祝ってくれる。

隣に樹はいるのに、さっきと変わらず微笑んでいた。

「おめでとう」の一言くらい言ってもらいたい。
それは、彼氏がいる人なら誰でも思うんじゃないだろうか。
それとも、私が我が儘なのだろうか。


私は、樹からのおめでとうが欲しいのに。

6年前 No.5

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「…ねぇ、樹?」
「ん?」
「今日、何の日か知ってる?」
「…今日?んー何かあったっけ。分かんねぇ」
「そっか」


…聞かなければよかった。本当に知らないんだ。

考えれば、樹に誕生日なんて教えたことなんてない。
だけど、それでも知ってて欲しかった。

期待、しすぎ?


ダメだ。マイナス思考。
きっと、きっと忘れてるだけ。

…だよ、ね?

6年前 No.6

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

モヤモヤした気持ちのまま、学校を出て、樹について行った。

その間は他愛もない会話をしていた。
勉強の話、友達の話、家の話…。
それでも樹は楽しそうに話すので、私もつられて笑顔になる。

私ね、樹のそういうところ、好きだよ。


それから3分くらい歩いただろうか。


「え、電車乗ってどこかいくの?」
「うん」
「そしたら家着いちゃうじゃん」
「途中で降りるよ」
「ふぅん」
「迷子にならないから大丈夫だよ」
「…馬鹿にしてるの?」
「さぁ?」


いつもどこか行くと言ったら学校の近所か、家の近所。
樹が途中で降りるといったのは、今日が初めてだった。

6年前 No.7

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「──まもなく3番線に……」


電車がホームに入ると、朝の通勤通学ラッシュとまではいかないが、予想以上に混雑しているようだった。


「座れるかな?」
「んーどうだろう」
「でも少しだもんね。乗車時間」
「立ってても平気?」
「うん」


中に入るとやっぱり混んでいて、座席は空いてなかった。
乗車口付近の手すりに樹と私で掴まった。


「混んでるねー」
「押されてない?」
「んー大丈夫、かな」


本当は大丈夫じゃないけど…ね。

6年前 No.8

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「咲桜、嘘はよくないよ」
「えっ?」


樹がそう言った瞬間に、ドアの方に樹の腕が伸びてきた。

そっか。私のほうがドア側にいたから、ほかの人から守ってくれてるんだね。
樹は隠れた紳士だ。

改めて樹の手を見ると、白くて綺麗で指が長い。
私なんかより樹の方が女らしいのでは…とたまに思ってしまう。


「樹、ありがとね」
「ん」


今日の樹は、いつもよりちょっとだけ、格好良い。

もう、おめでとうなんて言ってもらわなくてもいいのかもな、私。

6年前 No.9

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「咲桜、降りるよ」
「あ、うん」


ここの駅、初めて来た。
なんかよくわからないけど、懐かしい感じがした。

ここだけ時間がゆっくり流れているような、不思議な感覚。


ホームから出ると、夕方の太陽が街を照らしていた。


「ねぇ、樹」
「何?」
「私、この街好き」
「…俺より?」
「…そこでヤキモチ焼かないでください」

6年前 No.10

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

そこからは、二人で恋人らしく手をつないで歩いた。
道に映る影には、私と樹の影が、仲良く並んでいた。


「あと5分くらいで着くと思うよ」
「うん。っていうか、どこ行くの?」
「それは着いてからのお楽しみ」
「意地悪ー」
「はいはい」


樹の用事なのに、私には場所を教えてくれない。
何を秘密にしてるんだろう。


「あ、咲桜はここから目瞑っててね」
「へ?」
「俺がいいよって言うまで開けちゃダメだよ」
「…う、ん?」


目瞑るとか、いろんな意味で怖いよ…。

6年前 No.11

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

樹の手をしっかり握り、少し後ろを歩く私。

目を瞑ったけれど、何が何だか分からない。
単なる遊び?
だけど、それにしては樹の様子が少し変。

…何が起こるの?


「咲桜、着いた」
「ん。目開けていい?」
「じゃあねー…」


そう言った樹は私の目を手で隠した。

触れた樹の手は少し温かかった。

6年前 No.12

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「樹?」
「行くよ。せーのっ!」


……。

樹の温もりが残った私の目に映ったもの。

綺麗な桃色の花びらをつけた、大きな木。
それは、桜の木だった。


「この桜、他のよりも少し早く咲くんだって」


ねぇ樹。
私は、樹に期待をしてもいいのかな?

6年前 No.13

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「咲桜」
「……」
「誕生日、おめでとう」


…反則だ。


「これ、大したものじゃないんだけど…咲桜が喜んでくれたらと思って」


そう言った樹の手には、有名ブランドのショッパー。


「開けても、いい?」
「もちろん」


私は綺麗にラッピングされたリボンを解き、箱を開けた。


6年前 No.14

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「……っ」


ハートのワンポイントの、ネックレス。

前、クラスの女の子と雑誌読んでて「これ可愛いな」と小さい声で呟いたものだった。
それ聞いてた?


「どう?俺のセンス」
「……最高だよっ」


視界が揺らぐ。


「それは嬉し涙ですか咲桜さん?」

6年前 No.15

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「っ、当たり前、じゃん?」


ふわり…。


「咲桜、好きだよ」
「…うん。私も好きだよ」


樹の身体に包まれた。

樹が声を発するたび、くすぐったかった。


「なんで、この場所かっていうと…」
「私の名前」
「…そう。咲桜。桜が咲く」
「ね。嬉しいね」


この時は、幸せに満ち溢れていた。

─この時…は。

6年前 No.16

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

*

樹のサプライズがあった誕生日から、数日経った。

いつもの学校。いつもの朝。
何も変わらない「日常」ができていた。


「咲桜おはよー」
「おはよ、詩羽」


友達と笑って話すことも、樹と一緒にいることも、日常だと思っていた。

…それがいつか非・日常になることなんて、考えてもいなかった。

6年前 No.17

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

私は、つい数日前の桜を思い出し、携帯を手に取り写真を見た。

「ねぇ、詩羽」
「なに?」
「この桜、綺麗だよねー」
「うん。もうすぐ咲くねー、この学校の桜も」
「ね、楽しみ」


詩羽はクラスが一緒で、私のくだらない話にもしっかり対応してくれる。
最近ロングヘアからボブに変えた髪型には驚いたけど、詩羽の愛らしい顔立ちには似合っている。


「その桜、どこの?」
「えっとー…分かりません」
「え?咲桜が撮ったんじゃないの?」
「うん。そうなんだけど、私も樹に連れられていったから分かんないの」
「樹くんかぁー」
「そ。誕生日だからーって」
「いいね、ラブラブだね!」

6年前 No.18

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「あ、噂をすればー」
「どーもー」
「高梨くん移動教室?」
「え、あー…うん」
「あ、帰り図書館行く?樹」
「ごめん、今日は一緒に帰れない」
「そっか。じゃあまたね」


最近樹と帰ることが減った。
理由は聞かないけど、何かあるのだろうか。

樹のことだから、心配することはないと思うけど…。


女絡み、ではないよね?

6年前 No.19

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「また明日ねー」
「ばいばーい」


今日は樹がいない。

一人で図書館に行こうかと思った。
だけど今日は親が不在のため、夕食は自分で作る。
なので早めに帰ることにした。

スーパーで買い物しないとな…。

6年前 No.20

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

学校帰り、家の近所のスーパーに寄った。

夕食の材料が入った袋を持ち、家に向かう。

その時、背中に鋭い視線を感じた。

──…誰かいる

スーパーを出たあたりから、薄々気付いてはいたけど、信号待ちの時に確信した。


それからは早歩きしているけど、まだ後ろからの足音は遠ざからない。

だんだん住宅街に入り、光がなくなっていく。



怖い、怖い、怖い──


「樹っ」

6年前 No.21

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

携帯を取り出し、迷うことなく樹のアドレス帳を開き電話をかけた。


お願い、お願い出て──!


PLLL...


「もしもし」
「…っ樹!」
「咲桜?どうした?」
「樹ぃ!樹ぃ!」
「咲桜?」
「怖いよぉ…っ」


涙が溢れた。

誕生日の時とは違う、恐怖の涙が頬をつたう。

6年前 No.22

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

そのあと、樹が来てくれて家まで送ってくれた。

後ろにいた人は、樹が来て私と一緒に歩き出すと、どこかに消えていった。


「ごめん咲桜。一緒に帰ってれば怖い思いしなくて済んだ」
「ううん、樹だって毎日一緒に帰れるわけじゃないし、樹のせいじゃないよ」
「でも……」
「本当に大丈夫だよ。用事あったのにごめんね、来てもらっちゃって」
「全然」
「じゃあ、また明日」
「うん。何かあったら連絡して」


予想通り。

樹に電話したら、樹が責任を感じる。

本当に違うのに不安にさせる。私の行動が、樹を不安にさせたんだ。

6年前 No.23

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

中学の頃にも同じようなことがあった。


*

中学時代─


帰り道、大体部活のメンバー男女数人で帰っていた。

でも最後一人になるのは私だった。
みんな途中に家がある。

唯一家が近いのは、樹だけだった。

だけど、樹はいつも二人きりになると先に帰っていってしまう。


嫌われてるんだな、
思うのはそれだけだった。

6年前 No.24

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「じゃあねーっ!」
「ばいばーい」


いつも通り友達と別れて、樹が先に行ってしまう。

いつも通りだった、筈なのに。


──「最近不審者が出てるから気をつけて帰ってくださいねー」

帰りのホームルームで先生が言っていた。
その時は聞き流していたけれど、まさか本当になるとは思ってもいなかったんだ。

6年前 No.25

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

帽子をかぶってマスクをしてる人が、私の肩を叩いてきた。

「ねぇ、この辺に薬局ってあるかなー?」
「…ごめんなさい。知りません」
「そっかぁー。じゃあスーパーは?」
「知らないです……!」


怖くて何もできなかった。
学校で教わった対処法も、パニックで思い出せない。

──声が出ない、足が震える…


やっとの思いで出した声それは、


「……助けてっ」


私は涙を目に溜めて、掠れた声で当てにならない助けを呼んだ。

6年前 No.26

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

偶然だった。


「咲桜、お待たせ。行こうか」
「…高梨、くん?」
「……失礼します」


立ち止まった場所が樹の家の前だったんだ。


樹は玄関から出てきて早々私の手を強く強く握り、走り出した。

6年前 No.27

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

近所の公園に二人で入った。


安心からか、膝に力が入らなくなり、ストンと崩れ落ちた。


「こわ、かった…よぉ……っ!」
「うん」
「…っひくっ」


私の目の前には、立ったままの樹の膝。
私はその膝に安心を求めた。

涙が止まらなくて、息もまともに出来なくて、ただただ樹の膝にしがみついていた。

6年前 No.29

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

樹も腰を下ろした。


「…もう、ひとりになりたくないよぉっ……!」
「……うん。ごめん」


樹は何も悪くないのに、樹が謝る。
そんな樹に対して何も言葉が出ず、首を横に振っていた。


「怖かったね。ごめん、俺が一緒に帰ってればよかった」


そう言った樹は、いつしか私を抱き寄せていた。

6年前 No.30

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「本当にごめん」
「…樹のせいじゃないよ……?」
「でも二人で帰ってればこんなことにはならなかった」
「……」
「俺ね、咲桜と一緒に帰るの、恥ずかしかった」
「え?」
「咲桜といたら、自分がどっか行っちゃいそうで……俺、咲桜が好きなんだ」


樹の声は震えていて、すぐ横で聞こえてくる樹の声が、くすぐったかった。

6年前 No.31

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「もしよければ、俺と付き合って」
「………うん、私も高梨君のこと、好きだよ」
「ありがとう」
「こちらこそ」


嬉しくて。私を愛してくれる人がいることが嬉しかった。


「あんね、もう苗字で呼ばないで」
「樹、くん……?」
「樹でいいよ。俺も咲桜のこと呼び捨てだし」
「うん」

*

6年前 No.32

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

気が重くなって、今夜はご飯を作る気も食べる気もしなかった。


「樹にお礼しないとな……」


メールを作成することにした。
ただ「ありがとう」と伝えるために。

本当は直接言いたいけど、朝からテンションが下がるのもおもしろくない。

なので、「また今度お礼するね」という決まり文句をメールに添えて送信した。
改めて見返すと、やっぱりありきたりの感謝メールだった。

6年前 No.33

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「……あ、れ?」

来ない。メールの返信が。
樹からのメールの返信が...

いつもなら10分以内には返してくれた。
今日なら尚更私のことを気にかけると思うし。


──何か、変だ。


その日の夜は、冷たい風が、私の心を通り抜けた。

6年前 No.34

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

翌日の朝。

やはり食欲もなく、お弁当も作る気もなかった。
唯一口にしたのは大好きなフルーツジュースだけ。


「…学校、行こ」


足取りが重たい。

行きたくない、けど樹には会いたい。
会いたくないけど、会わなければいけない気がする。

…昨日は、どうしたんだろう。

6年前 No.35

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「さーおっ!」
「あー、詩羽おはよう」
「…元気ないね。何かあった?」


嬉しかった。
詩羽はしっかり私を見てくれていて。
何かあったことを察してくれて。


「んー...」
「言えないなら、咲桜が言えるまで待つよ?」
「…ごめんね」


でも、私は言えなかった。
些細なことだから、笑ってれば済む話だけど、違うんだ。

胸が、ざわつくの。

6年前 No.36

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「咲桜、高梨くんだよ」
「…あ、ほんと」

昨日のお礼、言わないと…。

「いつ、き……?」
「え、咲桜?」
「だぁれー?」

誰?隣にいる、女の人。

「ねぇ樹」
「咲桜、違う!これはっ……」
「なにが違うの?朝は一緒に行けないってわざわざ断って」
「……ごめん」
「……もう、行くね」

ねぇ、樹。その「ごめん」には、どんな意味があった?
本当に悪いと思っていたなら、今も私は笑っていられたのかな。

でも、違うでしょ?

だって、私が行ったあと、隣にいた女の人と手をつないでた。

‘恋人繋ぎ’をして。

6年前 No.37

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「ねぇ、詩羽。私って樹の彼女なの?」
「…咲桜」
「だって、あんな綺麗な人が隣にいたら自分惨めになるよね、ハハ…」
「そんなことないよ」
「もう、やだ…」


頭がおかしくなりそう。
樹のこと、悪く思いたくないのに思ってしまう。
浮気されたのかなって、そう感じる。
私は樹にとってなんだったの?

樹はもう、私のこと嫌いなのかな。

そう思ったのが失敗だったと思うことは、もう少しあとのこと。

6年前 No.38

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

私って何なんだろう。

たった一通のメールの返信がこなかっただけ。
朝はたまたま女の人といただけ。

そう考えればいいのに、考えられない。
重く感じる。

いや。

重たいのは、私だ。

重たい女って、私のことなんだ。

6年前 No.39

杏理 ★gMNA5IXogQ_KMC

「嫉妬深…」

ため息混じりで言った。

その言葉を隣で聞いた詩羽も同じようにため息をついた。
でもそれは、同じ想いなんじゃなくて、私に対してだと思う。

「分かってるならどうにかすれば?
 ため息ばっかついて解決するならそれでいいよ。
 けど違うでしょ?
 高梨くんも何か訳があったのかもしれないじゃない。
 話聞かないで逃げたの、咲桜なんだよ?」

厳しかった。
詩羽の真剣な目は、私の自分に対して甘い心を突き刺した。

6年前 No.40
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