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キミと奏でるラブソング ((性的

 ( 恋愛小説投稿城 )
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紫李 ★gsYQ8GDc69k

初めまして、紫李(しい)と申します。

イキナリですが、
★この作品には性的表現が含まれます。苦手な方はお戻り下さい★

では↓から本編です♪♪


☆登場人物紹介☆


仁科 詩亜(Nishina shia)

天真爛漫な高校1年生。
音楽部とチアリーダー部に所属中。
かなりモテる。詩矢の姉。
以外に天然??


仁科 詩矢(Nishina shiya)

元気いっぱい!の中学3年生。
サッカー部のエース兼部長。
かなりモテる。詩亜の弟。
好きな人がいるらしいが……!?


時雨 晴希(Shigure haruki)

一匹狼(?)の高校1年生。
サッカー部のエース兼部長。
詩亜と詩矢の幼なじみで、シスコン。
かなりモテる。空希の双子の兄。


時雨 空希(Shigure aki)

優しさいっぱい!の高校1年生。
音楽部とチアリーダー部に所属中。
詩亜と詩矢の幼なじみ。
普通にモテる。晴希の双子の妹。


今は、この辺にしておきます。
もっと登場人物が出てくると思うので、
そのときは追加します。

2008/02/04 17:18 No.0
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削除済み ★IxmSE7ILrZo_Jt

この投稿は ”ポンデリング” 削除されました】 BY 愛浦☆マスター ( 2010/05/23 21:36 )

2010/05/22 16:38 No.1014

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

*** 詩亜視点 ***




観覧車に乗ってから、数十秒。


あたしたちは向かい合いながら座っている。



――お互いに、一言も話さずに。





…早瀬くんは頬杖をついて窓の外の景色を眺めている。


確かに、この時間、かすかに見えるオレンジ色は綺麗だけど…。




…無言って、ちょっとキツい。




…どうしよう。 ……あたしから話しかけてみようかな…。


でも……。 景色を堪能してたら悪いし…。


だけど…。


………………。





悩んだ末、結局あたしは早瀬くんに話しかけてみることにした。




「……えっと…早瀬くん」


「…ん?」




さっきまで窓の外を眺めていた早瀬くんが、あたしの方を見る。




「……っき、綺麗だね、景色!」


「…ああ。そうだな」


「………………」


「………………」




…っや、やり取りが一瞬で終わっちゃったんだけど…。


……どうしたらいいの…。


…何か…っ、何か言わなくちゃ……。





「…早瀬くんは…、遊園地に来たのって、何回目くらいなの?」





とっさに出てきたこの質問。


……ちょっと在り来たりだったかな…?




「…俺はあまり来たことないけど…。 まぁ、最後に来たのは小学生のときかな」


「…そ、そっか…」


「……仁科は?」




またしてもすぐに会話が途絶えてしまうかと思いきや、以外にも早瀬くんがあたしに聞き返してきた。


あたしは少し嬉しくなり、笑顔で彼の問いに答えた。




「…えーっとね、最近はあまり来ないけど、昔はときどき来てたかな。 大抵、空希とか詩矢とか晴希くんと一緒に――……」





――と、そこまで言ってあたしは気づいた。




…今、詩矢とか晴希くんの名前を出すのはNGかも、と。






「……――へえ」


「………………」







――再び、沈黙になってしまった。



…ど、どうしよ…。



失言をしてしまった直後の早瀬くんの声が少し怖く聞こえたのは気のせいだったのかな…。


…そうならいいんだけど……。





…てゆーか、どうしよう…。




もう話題が思い浮かばないよ…。


もうすぐ半周すぎちゃうし…。




…ダブルとはいえ、せっかくの初デート…。


最後が少し気まずくなったままなんて嫌だよ……。






…もう…こうなったら……。





「…っ早瀬くん…っ!」





―“隣に座ってもいい?”と、言おうと立ち上がった瞬間。


少し強めの風が吹いたのか、観覧車は穏やかに揺れた。




…けれど、そこで立ってしまっていたあたしにとっては、バランスを保つことさえ容易ではなかった。











…ポスン…、と、故意ではないと言っても、結果的にあたしは彼の胸の中に身を委ねる形となった。







―― 一瞬、何が起こったのか分からなくなって、頭がくらくらした。

2010/06/05 18:56 No.1015

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

*** 詩亜視点 ***





……抱きしめられている肩。



さっきよりも、ずっと近くにある顔。



密着している身体。





あたしの鼓動が加速する中、早瀬くんが口を開いた。






「……危なっかしいな…、仁科は」


「…え…と、ごめんね…っ」


「…気にすんな。 …次からは気をつけろよ」



……優しい。


…無口だって、無愛想だって、考えていることがよく分からなくたって……




どうしても、好き。



付き合い始めたって、気持ちは全然衰えない。





好き。



好きなの……。









早瀬くんが、あたしの肩を抱きしめている手を放そうとしたとき。




…別に、そうしようと思ってしたわけじゃなかった。



頭よりも先に、身体が動いてしまった。





「…………仁科…?」





早瀬くんは、あたしの行動に驚いてしまっている。



……あたし自身、今、すごく驚いている。








…でも、自分のしていることを自覚してからも、あたしは手を放さなかった。




――とっさに早瀬くんに寄り添い、今度はあたしが抱きしめる形となるときに動かした、手を。






あたしの突然の行動に戸惑っていたらしい早瀬くんも、少ししてから、再びあたしを抱きしめた。






伝わる熱


絡み合う視線


加速する鼓動




……そして、少しずつ 互いの顔が近づく。











一緒に遊園地に来て、二人きりで観覧車に乗って、頂上付近で綺麗な景色をバックにキス。



――それはまるで、夢のシチュエーション。







けれど。



現実は、そう甘くはなかった。









<ピロリン♪>








あと数センチ、というところで、携帯が鳴った。








一瞬にして、再び気まずくなった空気。


着信音が鳴り終わるのを待とうとしたとき、早瀬くんが素っ気なく言った。







「…出ないの?」







離れゆく、身体。






「……でも…っ…」



「俺に気を使ってんなら、やめろよ。 …別に、出てもいいから」




「……うん……、分かった…。 出るよ…」



「ああ」




「……ごめんね…」








それだけ言って、あたしは自分のバッグの中から携帯を取り出す。






「今は着信よりも、早瀬くんの方が大切だよ」とか言えたら良かったのかもしれないけど…



さっきよりも少し冷たくなった感じだった早瀬くんの言葉に、逆らえなかった。







良かったはずの雰囲気をぶち壊して、あきれられちゃってるかも。 …そう思うだけで、泣きそうになってしまう。










不本意にも、携帯の着信に出なければならない状態となったあたしは、仕方なく携帯の画面を見た。



――ディスプレイに表示されている名前を見て、あたしは固まった。








【着信  晴希くん】…――。

2010/06/05 19:39 No.1016

美空 ★pKDjvZtDpp2_Nc

紫依>>すごいおもしろいです★
続きが早くみたいです
更新頑張ってください♪

2010/07/18 14:33 No.1017

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

***詩亜視点***




…どうしよう…。


ここで着信に出なかったら、早瀬くんはきっと不自然に思うよね…。


それに、晴希くんにも悪いし…。




……でも、早瀬くんの前で、しかもこんな時に晴希くんからの電話に出て、もっと気まずくなっちゃったらどうしよう…。





あたしが電話に出るのを躊躇していると、早瀬くんが声をかけてきた。




「……どうした?」


「…あ…えっと……、…やっぱり電話に出なくてもいいかなって…」




そう言ってすぐに、携帯はメロディを鳴らすのを止めた。


…きっと、晴希くんはまた後で掛けなおしてくるだろうけど。




「……仁科」




静かな観覧車の中、早瀬くんの声が響いた。




「…仁科は、何で俺に気を使うんだよ」


「……へ…?」


「気を使わなくて良いって言ってんのに」


「…ち、違うよ…。そうじゃない」




再び訪れる沈黙。


早瀬くんがあたしの言葉を待ってる。





「…………晴希くんからの…電話だったから……」




…言ってしまった。 晴希くんからの電話だったこと。




早瀬くんは、数秒黙って口を開く。





「……何それ」


「…へ」


「時雨からの電話だと出ないって…、やっぱり気を使ってんじゃん」


「…………っ」





言葉が、見つからない。



何も言わずにいるあたしに、早瀬くんは告げた。





「…悪い。変なこと言って。 ……もうすぐ下に着くから…行こう」








それから、観覧車を後にした後も、あたしたちはお互いにほとんど何も話さなかった。



空希たちからは、『ここからは別行動ね♪』とだけメールが来て、結局合流しなかった。



何にも乗らないまま、時間は過ぎていった。







そうして早瀬くんとあたしは遊園地を後にした。

2010/07/19 00:39 No.1018

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

○* 詩亜視点 *○





帰り道。



あたしは、早瀬くんの少し後ろを歩く。




辺りはもう暗くなっていて、今はあたしの家へと向かっている。





…こんな、気まずい状況になっても、ちゃんと家まで送ってくれる。



…やっぱり優しい。


…やっぱり、好き。




ずっと少し後ろを歩いているせいで、しばらく早瀬くんの顔を見ていない。


…今、どんな表情(かお)をしているの?




こんな近くにいるのに、あたしには何も分からない。






そんなことを心の中では思っていても、口に出すことは出来ないまま、次第にあたしの家までの距離を縮めていく。



家の門の前まで来た時、ずっと背中を向けてあたしの前を歩いていた早瀬くんが振り向いた。





「……じゃ、また明日」




そう言った早瀬くんは、笑っているけど、ちゃんとした笑顔じゃなかった。



…ねえ…。あたしのせいなの…?




「……うん。…送ってくれて…ありがとう」




早瀬くんは、再び背を向けて遠ざかっていく。






――あたしは、このままでいいの?



また…自分の気持ちをちゃんと言えずに、誤解を招いてしまうの?




“怖いから”とか“こう言ったらどう思われるか”とか



そういうことはつい考えてしまうけど



でも





それよりも大切なものがあるのに






ちゃんと言葉にして ちゃんと真っ直ぐ伝えないと



自分の気持ちなんて 相手に伝わるわけないのに…――






「……早瀬くん…っ!」






あたしはそう叫び、遠ざかる早瀬くんを追いかけ、彼の手を掴んだ。





「……仁科…?」




早瀬くんはあたしの突然の行動に驚いている。


けど。


あたしはちゃんと目を合わせて言う。




「…あたし…、早瀬くんに言いたいことがあるの」

2010/07/19 01:37 No.1019

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

*** 詩亜視点 ***





「…あたし…、早瀬くんに言いたいことがあるの」




そんなあたしに応えてくれるかのように、早瀬くんもあたしの目をちゃんと見てくれた。





「……さっき…、晴希くんからの電話に出なかったのは…、早瀬くんと気まずくなりたくなかったからだよ…」



「……うん」



「…それと…、…要らない不安を抱いて欲しくなかったし…」



「……うん」




「…早瀬くんのこと…ちゃんを好きだって分かって欲しくて……」






早瀬くんは、優しい声で言う。






「……ごめん。 俺、自信とか全然なくて。仁科を悩ませて」



「…いいよ…」



「……きっと、これからも仁科のことを悩ませたりするかもしれない」



「…お互いさまだよ」







…早瀬くんは、穏やかに笑って言った。






「…………仁科」



「…ん?」



「……俺、どんなに悩ませたり 悩んだりしても、仁科のことがずっと好きだ」



「……うん…」



「絶対、嫌いになんてならない」



「……あたしもだよ」







…ふと、そう言ったあたしを早瀬くんが包み込んだ。






「……サンキュー」


「……えへへ…」





早瀬くんの温かい温度が嬉しくて、あたしは笑う。








「……なんか、放したくない」


「……へ…」




あたしを抱きしめる早瀬くんの力がかすかに微かに強まる。




「…早瀬くん」


「ん?」


「……あたしは、早瀬くんが思っているよりも、ずっと早瀬くんのことが好きだよ」


「…俺も」








見つめ合う、瞳と瞳。






少しずつ近づくお互いの吐息。








初めてのデート。








二度目のキス。







寒さなんか忘れてしまうほど 温かい早瀬くんの想い。










唇が離れると、再び彼はあたしを強く抱きしめた。










「…………詩亜…」













お互いまだまだ恋人という距離になれていなくて




戸惑ったり 不安になったりすることもあるけど





一つずつ乗り越えていこう






きっと、大丈夫。








あなたと二人 一緒なら。

2010/07/19 02:30 No.1020

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

*** 詩亜視点 ***




「……ふぅ…」



夜の七時を過ぎた頃、あたしは自分の部屋のベッドに横になって今日のことを思い出していた。






……ほんの数時間前まで、早瀬くんと一緒にいたんだよね…。


幸せな言葉を言ってくれたし…。


抱きしめられちゃったし…。




……キス…しちゃったし…。





いまでも火照りが無くならない。


思い出すだけで顔から火が出そう…。



どうしてこんなにも好きなんだろう…。



嫌いになる要素なんて全然ないし…。






…学校で会ったら、どんな顔をしていればいいんだろう…。


やっぱりいつも通り普通でいるべきなのかな?







…てゆーか、キスしたときに早瀬くん……、あたしのことを名前で呼んだんだよね…。



“詩亜”…って…。




……“詩亜”…って…。




……“詩亜”…って…!





「…はふぅー…」







…でも早瀬くん、あのあとは普通に“仁科”に戻ってたよね…。



…またいつか、名前で呼んでくれるのかな……。



それとも、あたしが先に早瀬くんのことを名前で呼んだほうがいいのかな?






…名前で呼んだら、早瀬くんはどんな反応をするんだろう?









……本当、…大好きだなぁ……。














「…はぁ……」







…………って、余韻に浸ってばかりもいられない。



帰ってきてすぐに、お母さんからの置手紙を見つけたのだ。




『空希ちゃんたちのお母さんと二人で、外食してくるから、帰りはちょっと遅くなるかも。
夕食は冷蔵庫に入っているので、電子レンジで温めて食べてね』――と。




つまり、今家にいるのはあたし一人。


…一人で食べる食事って、なんだか寂しいんだよね…。



…仕方ないけど。






横になっていた体を起こし、キッチンへと向かう。





と、そのとき。






<ピンポーン…>







玄関のベルが鳴った。

2010/08/15 09:31 No.1021

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

*** 詩亜視点 ***




「はーい」




玄関の戸を開けると、そこには学校の先生が立っていた。



……あれ…この先生は確か…。




…詩矢のクラスの担任の先生?





「あ…こ、こんばんは」




思わず挨拶してしまった。


その言葉に先生もこんばんは、と返してくれた。




そして話は本題へと入った。




「…親御さん、いらっしゃるか?」


「えっと…今出掛けていて…。帰りは夜遅くなると申しておりましたけど…」


「…そっか。 …実は、スキー合宿先で仁科が風邪で倒れてな…。熱が結構高いから、家まで送りに来たんだが…」


「え…、詩矢が風邪!?」


「ああ。一応来る前に電話したんだが、留守電だったから、そのまま来たんだ」


「あ…」




そういえば、お母さんはまだ暗くならないうちに出掛けたっぽいし、あたしは帰ってきてからずっと部屋でボーっとしてたから電話に気づかなかったんだ…。




そんなことを考えているうちに、先生は一度車に戻り、詩矢を連れてきた。





「仁科、部屋まで運ぶの手伝ったほうがいいか?」


「あ、大丈夫です。ここまで詩矢を送って下さって、ありがとうございます」


「いや。 じゃあ、仁科。ゆっくり休んで、元気に学校に来いよ」




先生のその言葉に、詩矢は「はい」と答えて、小さくお辞儀した。



先生を玄関先で見送った後、あたしは詩矢に声をかけた。





「…じゃあ、部屋に行こっか」


「……ああ」






…詩矢、先生が仰(おっしゃ)っていた通り、結構熱高そうだな…。



お粥(かゆ)でも作ろう。

2010/08/22 10:00 No.1022

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

*** 詩矢視点 ***





……不覚、だった…。



本当は、数日前から少し風邪気味だった。


でも、俺は休まなかった。




……アイツと付き合いだした詩亜を毎日のように目にして、いつも傍にいたら……


俺はきっと、自分を保てなくなってしまう。




少しでもいいから、少し離れたかった。


少し離れて、頭を冷やしたかった。






そう思い、俺は日に日に悪くなる体調を無視して、スキー合宿へと臨んだ。








……なのに。



何で俺は今、詩亜と二人きりで家にいて、詩亜の看護を受けているんだ。






…すべてが裏目に出てしまった。




ここ数日、次郎に『お前、無理すんなよ?』と、何度も言われていた。


そう言われた時に、もう少し安静にしておくべきだったか…。



いや。でも、体調不良が原因の気分の悪さより、いつもより優しい口調で俺を気遣う次郎のほうが、俺には害だった。






「詩矢ー?熱、下がった?」


「……ん」


「…あ、さっきよりは下がったみたいだけど、まだちょっと高いね」




俺が先ほどまで体温を測っていた体温計を手に持って、詩亜はそう言った。




「……詩亜」


「……ん?」




俺の声に反応し、可愛らしく優しい笑顔を見せてくれる彼女。




…もし、俺が今、熱なんか無くて、……仮に詩亜の弟じゃなかったとしたら……。






……間違いなく、襲ってる。



…いちいちヤベェな、コイツは。






「…もう、俺平気だから。 早く寝ろよ。詩亜は明日も学校があるんだろ?」


「何言ってんの! 風邪を引いてる詩矢を放っておけるわけないでしょ!」




…詩亜の宿題とか予習の邪魔をしたくないと思いつつも、やはりそんな彼女の気持ちを嬉しく思ってしまう。






――と、そのとき。





<ピロリン♪>





俺の部屋の中で、何かが鳴ったのが聞こえた。



…恐らく詩亜の服のポケットの中に入っている携帯だろう。




詩亜もその音に気づき、ちょっと待っててね、とだけ言って部屋を出て行った。






俺の部屋をすぐ出たあたりに、きっと詩亜はいるのだろう。


誰かからの電話だったのか、詩亜が誰かと話しているのが、かすかに聞こえる。





「空希?どうしたの?」






詩亜が放ったその言葉で、俺は電話の向こうにいる人物を把握した。

2010/10/04 16:52 No.1023

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

☆** 詩矢視点 **☆




暖房の音だけが響く部屋の中で、俺はただただボーっとしているだけだった。


そんな中、詩亜の声が聞こえた。




「え、あの後?……別に…何も…」



空希が何か言ったのか、詩亜は少し戸惑った様子で言う。



「そっ、そんなことしてないよ!」



一体何の話をしているのかは分からなかったが、俺はなんとなく耳を澄ましていた。




「……あの後…、二人で観覧車に乗って…ちょっと気まずくなったけど…家まで送ってもらって………それで…………」




詩亜がその言葉を発して、少しの間沈黙が漂った。



…いや、空希が何かを話していたのかもしれない。




だけど俺にその声が聞こえるわけも無かった。



詩亜も俺も何も話さず、家の中は静まり返った。







……詩亜が空希に対して話していることを聞く限り、どうやら早瀬のことを言っているらしいと思った。



…そして、今日はデートをしてきたらしいということも。




話の内容が大体分かった俺は、さっきよりも注意深く耳を傾ける。



…趣味が悪い行動だと分かっていても、どうしようもなく気になってしまう。





「……それで………………………キス…したの…」






その瞬間、俺は何ともいえない気持ちになった。




……分かっていたことだろ。


詩亜はもう早瀬と付き合っているんだから。




キスだってするだろ。 抱き合いもするだろ。



……分かっていた、はずだった。




だから、離れたかったんだ。


頭を冷やして冷静にでもならないと、俺は狂ってしまう。






俺の知らないところで詩亜は大人になっていく。


俺の知らない日々を詩亜は歩いていく。






俺がどんなに近づこうとしても



……詩亜は、遠ざかっていく。
















――そのあとの詩亜の声を聞く余裕なんか、俺には無かった。



通話が終わったのか、少し経って詩亜は俺の部屋へと入ってきた。





俺の部屋を出て行く前と変わらない様子で、大丈夫?と優しく聞いてくる。





詩亜の優しさは昔から変わらないけど、昔の詩亜と今の詩亜は違う。



成長して、大人になっている。





……今も、これからも。










……詩亜は、遠ざかっていく。









この日、俺は決めたんだ。





詩亜から、離れようと。

2010/10/09 09:46 No.1024

紫依 ★FYELC.Wgvzk_az

○*** 詩亜視点 ***○





詩矢の部屋を出て、あたしは空希からの電話に出た。




「空希?どうしたの?」


『あ、詩亜ー? ……で、あの後、早瀬くんと何かあった?』




突然何を聞いてくるのかと思ったら、早瀬くん関連のことだった。



……でも、キスした…とか、名前を呼ばれた…とか……。


まだ感覚が残っているだけに、言葉にするとなると恥ずかしさも倍増しちゃうし……。





「え、あの後?……別に…何も…」



後で会った時に直接言えばいいや、と思ってあたしはそう言った。


……けど、何故か空希は嘘だと見抜いている。



『嘘でしょ! …観覧車の中とかで良い雰囲気になって、押し倒されちゃったりしたー? あ、もしくはそれ以上とか!』



「そっ、そんなことしてないよ!」



『んー…。 まあ、そうだよね。詩亜と早瀬くんだもんね』




……何故かあっさりと納得された。




『…じゃあ、何も無かったの? てゆーか、あの後何してたの?」




「……あの後…、二人で観覧車に乗って…ちょっと気まずくなったけど…家まで送ってもらって………それで…………」




そこまで話して、急に恥ずかしくなってしまった。


一緒にいるだけでもドキドキしちゃうのに……。





あたしは未だに思いっきり余韻に浸っている。




けれど、言葉の続きを早く聞きたいのか、空希は あたしが言葉の続きを話すのを促す。





『……詩亜ー?そのあとは?』





ここまで言ったら全部言ってしまおうと思い、あたしは少し火照りながら言った。






「……それで………………………キス…したの…」



『マジで!?やったじゃん! 早瀬くんってわりと奥手なのかと思ってたけど、結構そうでもないのかもねー』



「……うん。 …あ、あと、……一度だけ…名前、呼んでくれた…かな…」



『……詩亜、今惚気(のろけ)てるでしょー!?』



「えっ、…そ、そんなつもりじゃなかったんだけど……」



『もうっ! ……まぁいいや。 今度はちゃんと二人だけでデートするんだよー?』






……あ…。



…もしかして、あたしたちのために…今日、遊びに行くのを計画してくれたのかな…。





早瀬くんとあたしだけじゃ、なかなかデートとかしなさそうだから……?



…遊園地で途中で別行動になったのも……。




空希と凪砂くんが、全部……。








「……ありがとう、空希」



『え?何がー?』





…空希…、あたしはいつも支えてもらってばっかりだね。



空希が困ったり支えを必要としているときは、今度はあたしがたくさん恩返しするからね。





……いつも、ありがとう。














――それから少しだけ話して、電話を切った。




詩矢の部屋に戻った時、詩矢がどんな気持ちだったのかなんて知らずに。








ただ、これからは幸せな日々が来るんだと、信じていた…――。

2010/10/09 10:28 No.1025

紫依 ★Lgt0XWnY6z_Xox

*** 詩矢視点 ***




とある決意をした日から、一週間が過ぎた。


まだ多少咳はするものの、俺の風邪は大体治り、今までどおりの日常が続いている。



……変わったことも、あるけど。





「仁科ー!もうすぐ次の授業始まるよー?どこ行くの」




…そして、今俺に声をかけてきた女は、俺のクラスの委員長。



須藤 美咲(Sudo Misaki)。



授業をサボろうとしている俺を邪魔する厄介な奴。





「……俺、ちょっと腹痛いから保健室に……」




当然嘘をつく。


でも。




「嘘!そんな嘘信じるとでも思ってんの?」




…こいつとのこんな会話は、高校入学初期から、もはや今では毎日のように続いている。


毎回似たり寄ったりなやり取りだ。



だからなかなか騙せないわけで。




「……だって次は現代社会だろ?絶対寝る。サボらずにはいられないんだよ」


「何開き直ってんの!成績に影響するよ!?」


「落ち着け。大丈夫だよ。俺いつも二位以下にならないから」


「なんて遠まわしな嫌味!」


「じゃあな。……授業中、寝るなよ」


「ムカつく!」





性格は結構はっきりしている。


ルックスは中の中と言ったところだろうか。


わりと雑なくせに、妙に真面目なやつ。




授業をサボっていたり、授業中よく居眠りをしている俺や次郎は、すっかり委員長に目を付けられてしまっている。





「……仁科っ!」




須藤との言い合いも終わり、アイツに背中を向けて屋上へと歩き出したとき、俺は再び名前を呼ばれた。


振り向くとほぼ同時に、目の前に飴が飛んできた。


俺は咄嗟にそれをキャッチする。




「……のど飴?……何これ」


「…あげる」




それだけ言って、須藤は教室の自分の席へと戻っていった。







……俺の風邪がまだ治っていないのに気づいていたのか…。








――委員長、須藤 美咲。




性格は結構はっきりしている。


ルックスは中の中と言ったところだろうか。


わりと雑なくせに、妙に真面目なやつ。




それから。





お節介で 素直じゃない奴。

7年前 No.1026

紫依 ★Lgt0XWnY6z_Xox

*** 詩亜視点 ***





「うわっ、あたし一番前の席なんだけどっ!」


「ホントだ…。 …で、でも窓側だからまだマシじゃない?」


「…確かに先生からは死角だけど…」





1月下旬、今日は珍しく席替えです。



くじ引きで一番前の席を引き当ててしまった空希は、見るからに落ち込んじゃってるけど……。





「…でも空希、たまにはいいんじゃない?」


「何でよ」


「だって空希、いつも後ろの方の席だったじゃん。新鮮かもよ」


「え〜…。 ……そういう詩亜はどうだったの?席」


「えーっとね……」





実はまだ見ていなかった四つ折にされた小さな紙を開く。


……正直、真ん中の列の一番前じゃなきゃどこでもいいんだけど…。




……欲を言うなら、空希とか凪砂くんとか……


…………早瀬くんと近い席になれたらいいな……。





「二人は席どこだったー?」




あたしが紙を開こうとしていると、早瀬くんと凪砂くんが傍へやって来た。




「そういうアンタはどこだったの、席」


「俺?俺は窓側の前から二番目。最悪だろ〜?」


「え、嘘。あたしの後ろの席じゃん」


「マジ!? うわ、俺たち運命じゃん!」


「何バカ言ってんの」





空希と凪砂くんがじゃれ合う中、あたしは早瀬くんに聞いてみた。





「…早瀬くんは席どこだったの?」


「…ああ…。 真ん中の列の一番後ろ」


「……そ、そっか…」





……やっぱり…近くの席になりたい。


早瀬くんの、隣の席になりたい…!






あたしは勢い任せにくじ引きの紙を開いた。








「……あ、真ん中の列の後ろから二番目の席だ」






……つまり。





「…ああ。俺の前の席か。 よろしく」


「……う、うん…」








……神様。



隣の席にはなれなかったけど…




早瀬くんの前の席だなんて……。







嬉しいけど……


幸せだけど……







あたしの心臓、持つんでしょうか?

7年前 No.1027

紫依 ★Lgt0XWnY6z_Xox

*** 詩矢視点 ***





「仁科!」


「……またお前かよ」




放課後、またまた絡んでくる須藤。


また何か言われんのかなーと思いながら、俺は言う。




「……眉間にしわ寄せて、何か用?」


「なっ…!眉間にしわなんか寄ってないし!」


「あ、ごめん。もともと寄ってたんだっけ」


「ちょっと!ケンカ売ってんの!?」




さすがにこれ以上は怒らせないほうがいいと思い、俺は本題に切り替える。




「……で、結局何の用?」


「……えっと……」



須藤がなかなか言おうとしないので、俺は若干不思議に思いながらも須藤の言葉を待つ。



「……仁科、今日サボってた授業のノートって、誰かに見せてもらったりした?」


「…見せてもらってないけど」


「……あ、…あ、…あたしのノートを見せて欲しいって言うのなら、見せてあげないこともないと思うけどっ」


「……いや、いいよ別に」




そう言って、俺は帰る準備を進める。



……ま、人の好意を無碍(むげ)にするのはどうかと思うけど…。


模試が近いし、その後には学年末テストもあるし。



ノートを借りたら大なり小なり須藤の勉強の妨げになるだろうし。




迷惑かけたら駄目だろ。





「…べっ、別に!あんたのために言ってるんじゃないから!」


「……え」




須藤との会話が終わっていたと思っていた俺は、須藤の突然の発言に少し驚いた。




「……あ、あたしは委員長だから…クラスメイトが授業をサボってるなんて……あたしの責任になっちゃうし!」



…いや、クラスメイトがたとえ赤点をとったり留年したりしても、それは委員長の責任問題とかじゃないだろ。



「…そ、それに…!…先生が抜き打ちでノート提出させるかもしれないしっ」



…いや、入学してから現代社会はまだ一度もノート提出になんてなっていないけど。



…多少心の中でツッコミつつも、俺は黙って須藤の話を聞き続けた。




「…に、仁科がこれ以上先生に悪く思われたら困るしっ…」


「……ぷっ」


「……え?」


「…お前、それ結局俺のためだろ」


「なっ…」





本当素直じゃねーな、コイツ。





俺は須藤が片手に持っていたノートを手に取って言う。





「もっと素直になれよ」


「だっ、だからっ!別に仁科のためじゃ……」


「はいはい」



「ちょっ…、信じてないでしょ!」


「信じてる信じてる」

7年前 No.1028

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

。。。詩矢視点。。。





「…あ」



朝、学校に来たら下駄箱の中に手紙が入っていた。


「またか」と思いながらも、手紙を取り出して、手紙の封筒を見回す。



「詩矢ー!おーっす!」


「ああ…次郎か」


「何だお前、朝からリアクション薄いな!」


「朝だからっつーか……お前だからだけどな」


「酷っ! …って、お前また女の子からの手紙かよ!」




…正直、女子から告白されたり手紙を貰ったりということは、俺にとっては日常茶飯事だ。


この手紙が女子からのものなのかは分からない。


けれど、多分そうだろう。




封筒には名前はない。


俺はその場で開封する。




「おい、お前もう少し場所考えてやれよ…」




次郎が呆れながら言ってくる。


が、俺は行為を止めずに手紙を開いた。





「……あー…」





手紙には“今日の放課後 5時に自転車置き場に来てください”とだけ書いてあった。




……誰からだよ、これ。


名前くらい書いておけよ。





「やっぱり女の子からだったろ?」


「……さぁ?何か呼び出されたけど…」


「何、行かねーの?」


「……さぁ?」


「って、お前行かなきゃ失礼だろー!?」





呼び出されているのに行かなければ、確かに相手に失礼だ。



でも、誰からの呼び出しかさえ分からないのに、ほいほい行けるかよ。

7年前 No.1029

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

*** 詩矢視点 ***





「あれ、今村は?」


「……小テストの追試」




昼休み。屋上で昼食を食べている俺のところに、またもや須藤がやって来た。




「え、アイツが?珍しいね…」


「あー…。 …解答欄がずれてたらしい」


「……頭良いんだかバカなんだか…」


「本当にな」




俺は少し笑い、須藤も笑った。


…――次郎をバカにして。





――と、そのとき。



屋上の扉が開き、誰かが屋上へ上がってきた。






「…あれ…?」


「……あ」


「あ、やっぱり詩矢だー」





目に入ったのは、4人の上級生。





「に、仁科先輩!時雨先輩!は…早瀬先輩までっ!!」




俺の代わりに須藤が何やら興奮した状態で言う。




「え、俺は?」




千葉先輩…、別名ナルシスト先輩が悲しそうな声で言うが、誰一人として見向きもせず、話を進める。




「偶然だねー、詩矢くん!」


「ああ。そういえば、空希とは最近会ってなかったな」


「そうだよー」


「私も最近詩矢とあまり話してなかったなぁー…。同じ家にいるのに」




詩亜は少し俯きながらそう言った。



…でも、まぁ当然だ。



俺が詩亜を避けているんだから。




「あれ、ってゆーか、その子…詩矢くんの友達?」


「…へー、女友達とか少なそうだけどなー?」




「女友達がいたなんて以外」とでも言うような口調で、空希とナルシスト先輩は言う。



…だけど、この話題の方向性……。


なんか嫌な予感がする。





「…あ!もしかして彼女!?」





嫌な予感がする。



そう感じた矢先、ナルシスト先輩が言い放った。






詩亜と早瀬がいる、目の前で。

7年前 No.1030

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

*** 詩亜視点 ***





「…あ!もしかして彼女!?」




昼休み。


凪砂くんが詩矢と見知らぬ女生徒に言った。





…でも、言われてみれば……。



最近、詩矢はあたしを避けてたし。


詩矢が女の子と一緒にいるのなんて珍しいし。




……あたしのことが好きっていうのは……


…勘違いとかだったのかも。




詩矢もそれに気づいて、ちゃんと他の女の子と付き合ってる……って感じかな?






見知らぬ女生徒のほうを見ると、なんだか顔を赤らめて全力で否定してる。



詩矢のほうを見ると、無言で俯いていて表情が分からない。




……でも、詩矢とこの子が付き合ってるってことが誤解だったら…


詩矢をまた怒らせちゃうことになるし…

また傷つけることになっちゃうし…



………………。



……どっちだとしても、事実を確かめてからのほうがいいよね。





「…詩矢」


「…ん?」


「……あの…、今…凪砂くんが言ったのって、本当?」


「……は?」


「…えっと……だから、詩矢とその子が付き合ってるってこと……」


「………………」





詩矢が俯いて無言になってしまった。



……どうしよう…。





「……悪いけど俺、担任に呼ばれてたんだった」


「…え」


「……じゃあ」





そう言って、詩矢は屋上を出て行った。



残ったのは、あたしたち4人と、詩矢と一緒にいた女生徒。


その女生徒も、そのあとすぐに屋上を出て行った。





……結局、聞きそびれちゃったな…。



…家に帰ったら、また聞いてみようかな……。

7年前 No.1031

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

*** 詩矢視点 ***




放課後。


気分は最悪。


原因は当然昼休みのことだ。





…つーか、何であのタイミングで詩亜たちが来るんだよ…。


せめて次郎がいたらあんな誤解をされることは無かっただろうに。




…昼休みのときは適当に理由をつけてあの場を去ったけど……。


家に帰って詩亜に会ったらまた訊かれるかもな…。


…はぁ〜…。


マジ憂鬱。




「おーい?詩矢ー。帰らねーの?」



次郎がのん気な調子で声をかけてくる。


……正直返事をするのもダルい。



「…おーい?もうこの教室に残ってんのって、お前だけだぞー」



無視してもしつこく話しかけてくるので、俺は渋々返事をした。



「……家に帰りたくないんだよ」


「……詩亜さんがいるから?」



……コイツは時々妙に鋭いな……。



「……別に」


「……。 …てゆーかさ、お前今日呼び出されてなかった?」


「誰に」


「誰って……。今朝ラブレター貰ってたじゃん」




……あー…。そういえば。




「……忘れてた」


「酷いなお前!ちゃんと行かなきゃ駄目だろ!」




…いや、普段なら まぁ呼び出されたら行くけど。




「…でも今日のは誰からの手紙か分からねーし」


「いや、それでも! ほら、もしかしたら運命の出逢いかもしれねーじゃん!」




運命の出逢いって…。


言葉のチョイスが妙に乙女チックだな、次郎。





「行かなかったら超可哀相じゃん!その女の子!」


「…………」


「すっぽかされたらすげぇ傷つくし!泣いちゃったらどうするんだよ!」


「…………」









「それに……。…そろそろ詩亜さん以外の女の子たちにも視野を広げてみてもいいんじゃねーの?」


「………………」





俺が黙っていると、次郎は自分の席に座っていた俺を無理やり立たせた。



そして、テンション高く背中を押して言った。






「ほら!行った行った!」






……まぁ確かに、行こうと思えばまだ間に合う。


もうすぐ5時になるってくらいの時間だ。





「……はぁ…。…仕方ねぇな……」




俺はボソッとひとり言を言って、教室を出た。


次郎がなんとなく満足そうなのがちょっと癪(しゃく)だけど。


















……自転車置き場に行く途中、俺の頭の中では次郎の言葉がかすかに響いていた。





――『そろそろ詩亜さん以外の女の子たちにも視野を広げてみてもいいんじゃねーの?』――





……分かってるよ。


…本当は。






詩亜を諦めて 視野を広げなくちゃいけないって。



詩亜が幸せになった今 俺の気持ちは詩亜の幸せの邪魔にしかならないって。



俺が詩亜以外の誰かを好きになることがベストだって。





分かってる。


本当は。






……でも。



それが出来たら





詩亜を好きじゃなくなれるのなら



もっと早く この気持ちを消してるよ。

7年前 No.1032

由宇 ★V4Ybzh3Keu_EP8

初めまして!由宇という者ですぅ((うざっ
隠れ(?)ファンですっ!紫依の小説とても大好きです!
また迷惑でなければコメしにきます!これからも沢山小説を書いてくださいね。                                                      楽しみにしてます!!

7年前 No.1033

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

..... 詩矢視点 .....





自転車置き場に着くと、そこには女生徒が一人立っていた。


見たところ見覚えはない。


同学年かどうかは分からないが、少なくとも同じクラスではない。



「良かった。ちゃんと来てくれたんだね」



女生徒はニコッと笑って言った。


それに対して、俺は無愛想に返す。



「……一応。 …でも名前くらい書いておけよ」


「あ、ごめん。 手紙を出してから名前を書き忘れたってことに気づいたから……」


「…まぁいいけど」


「ちょっと遅れちゃったけど、自己紹介するね。 あたし、野辺 眞由美(Nobe Mayumi)。クラスは1年4組。よろしくね」


「…ああ。 …で、要件は?」


「あ、そうだった! …あの、ちょっと訊いてもいいかな?」


「…いいけど」


「…仁科くんって、好きな人とかいないの?」




……何この女。



何でそんなこと訊いてくるわけ?


それを知ったところで何になるんだよ。


つーか、この女に関係ないだろ。




いろいろと心の中で思うことはあったけど、正直今はこの質問に対して何て答えて良いか分からない。


……原因は数分前の次郎の言葉だ。




なので、ここは適当に答えておくことにした。





「……は?」


「だから!仁科くんって、好きな人とかいないの?」


「…………。 …何でそんなこと訊くんだよ」


「だって知りたいもん!仁科くんって、モテるのに誰とも付き合わないでしょ?」


「……で?」


「だから…好きな人がいるのかなぁ…と思って」






……いや、まあ、確かにそうだ。


詩亜以外のほとんどの女には正直興味がない。


だから、誰に告白されようと今まで誰とも付き合っていない。





「……別に。アンタに関係ないだろ」


「…まぁ、確かに関係ないけど…。 …ってゆーか、『アンタ』って呼ばないでよ。ちゃんと名乗ったんだから」




…………。


いちいち細かい女だな、とか内心思いながらも、俺はさっき聞いた名前を思い出しながら言った。




「……えーと…野木さん」


「野辺です」



…………。




「……えーと…野辺さん」


「はい」


「俺に好きな人がいるかどうかとか、関係ないだろ」


「…じゃあ、どうして誰とも付き合わないの?」


「興味ないから」


「女の子に?」


「…………」




なんなんだこの女。


何でこんなに質問攻めしてくるわけ?



別に女に興味が無いわけじゃない。


ただ、俺の興味は詩亜限定ってだけで…。






俺が答えに迷っていると、野辺さんは“女に興味がないわけではない”という俺の気持ちを見抜いたかのように言った。




「……仁科くんが、誰とも付き合わないのは…どうして?」


「…………」




俺は、このとき思った。


この女は、俺に好きな奴がいることを分かってる、って。


なんとなく、そんな感じがしたんだ。




「……好きな奴がいたら、なんだよ」




開き直って俺がそう言うと、野辺さんは少し笑って言った。




「……でも、それじゃあまだ片想いなんだよね?」


「……だったら何」


「……じゃあ、提案があるんだけど」


「……ん?」




「あたしたち、付き合おうよ」







………………は?

7年前 No.1034

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

*** 詩矢視点 ***





――『付き合おうよ』って……。



いきなり何を言い出すんだ、コイツは。


さっきまで妙な質問ばかりしてきていたくせに。





「……付き合わねぇよ。 大体なんでさっきの会話の流れでそんな話になるんだよ」


「いいじゃん。どうせ片想いなんでしょ?」




うるせぇ女だな。 二度も『片想い』とか言わせるんじゃねぇよ。




「……。てゆーか……、…野辺さん。何で俺なの?」


「…………」





…まぁ、多分「好きだから」とかそんな理由だろ。


むしろそれ以外の理由とか思い浮かばねぇし。





「…面白そうだからに決まってるでしょ」


「…………」




……は?




「何?それ以外に何があるの?まさか、自分のこと好きなんじゃねーの?とか思ってたんじゃないでしょーね?やめてよね、気持ち悪い」


「……は」


「モテるくせに誰とも付き合わない、しかも片想いの相手には告白されない仁科くんに、ちょっと興味が沸いたっていうか」


「……は」


「あ、その片想いの相手が振り向いてくれるまででいいからさ」




……何言ってんだこの女。


そんなバカバカしい理由で付き合うわけねぇだろうが。



もうマジで面倒臭い。





「……帰る」


「あ、じゃあ一緒に帰ろうっか!」




…はぁ?




「…俺がいつOKしたんだよ」


「いいじゃん、別に。ケチ」


「ケチじゃねぇよ!理不尽なことばっか言ってんじゃねーよ!」


「大きな声出さないでよ、うるっさいなぁ」




……っ!



コイツっ…!




「…………」


「ん?どうしたの、急に大人しくなって……。やっと承諾した?」




……はぁー…。



話が全然通じねぇ。




……何かマジで疲れた。







もう相手にしないで帰ろうとした時、……ふと目に映った。



視線の遥か数十メートル先。




優しく笑いながら、友達と帰る、アイツ。





……詩亜。




空希と、ナルシスト先輩。 ……それから、早瀬。





幸せそうな、アイツ。






邪魔なのは、俺。









頭の中で次郎の言葉が何度も響く。








――『そろそろ詩亜さん以外の女の子たちにも視野を広げてみてもいいんじゃねーの?』――








響く。 …響く。





……何度も、何度も。

7年前 No.1035

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

。。。詩矢視点。。。







分かってるよ。



十分すぎるほど分かってる。






……視野を…広げるべきだって。






詩亜を……忘れられるかは分からない。


……いや、多分無理だ。



詩亜を好きじゃない自分なんて 想像できない。





……でも。


完全に忘れることはできなくても、忘れるための一歩になるかもしれない。






…俺は別に、詩亜を困らせたいわけじゃない。


泣かせたいわけでも、傷つけたいわけでもない。




それでも、俺の気持ちはきっと詩亜を傷つけることしかできない。



詩亜は優しいから……



俺を傷つけまいとして、困るだろう。 傷つくだろう。






……だから。






『一歩』でも良いんだ。


詩亜を忘れられる日が来るなら。



今は、『一歩』でいい。






出来るかわからないけど。



それでも。







詩亜が好きだから 俺はこの気持ちを忘れる。









――『そろそろ詩亜さん以外の女の子たちにも視野を広げてみてもいいんじゃねーの?』――






確かに俺は、今まで詩亜しか見ていなかった。



だからこそ、絶望の中に かすかな光が見える。












「……仁科くん?急に黙っちゃって、どうかしたの?」


「……あ」


「…?」









……野辺さん。



…俺のことは別に好きじゃないって言っていたよな……。




…………。



…………。





……逆に、……丁度いいかもしれない。



俺のことを好きな女だと、なんだか単に利用しているみたいで嫌だけど。





コイツなら、別にお互いに好きじゃないし。



お互いの目的のためってことで成立する。










……そして、俺は、野辺さんに言った。














「……いいよ、付き合っても」



「……え」



「……ただし、一つ条件がある」



「……何?」









……詩亜。



どうしようもなく好きだ。






……だからこそ、忘れる。









「…俺と本物の恋人になれるように努力して」



「……え? …仁科くんのことを好きになる努力をしろってこと?」



「ああ。…………俺も、努力する」



「……ん…。…まぁ、…別に…いいけど……」













――『そろそろ詩亜さん以外の女の子たちにも視野を広げてみてもいいんじゃねーの?』――






…俺は間違っているかもしれない。




本当は、こんなやり方は良くないのかもしれない。






……でも。





自然に忘れられるわけないんだ。


時間が解決してくれる問題でもない。





何もせずにいたら、きっと俺は ずっと詩亜を好きでい続ける。




詩亜を傷つけ続ける。


詩亜の笑顔を奪ってしまう。








だから忘れるんだ。






詩亜が好きになった、アイツは……



…あの時、自分の気持ちを犠牲にして詩亜を守ろうとした。










本当に、『一歩』。



その『一歩』が、きっとこれからの俺を変える。









『一歩』、踏み出せるように。

7年前 No.1036

紫依 ★mt9cRQ04S4_Xox

*** 詩矢視点 ***





野辺さんと付き合うと決めた次の日。



4限目の授業が終わり、校内にチャイムが鳴り響く。






「詩矢ー。今日どこで食べる?」


「……ああ。俺、今日はお前と昼飯食べねぇから」


「…え?何で?」


「いや、何か誘われたから」





昨日あれから、野辺さんとアドレスを交換して、とりあえず今日一緒に昼食を食べる約束をした。




次郎にはまだ野辺さんとのことを話していない。


てゆーか、まだ誰にも話していない。




だから、次郎が戸惑うのも無理はない。






「さ、誘われたって……女子に?」


「ああ」


「えぇ!?どうしたんだよ!熱でもあるんじゃねーの!?」


「熱なんてねぇよ」


「何、まさか彼女ができたとかじゃ……、って、それは無いか。お前詩亜さん一筋だからな」





そういうこと普通に大きな声で言うなよ。


分かってないやつだな。







「……できたんだよ」


「……え?…彼女が!?」


「ああ」


「……もしかして、須藤?」


「…違うけど。つーか、何でここでアイツが出て来るんだよ」


「……いや」





少し動揺している次郎を放って教室を出ようとしたとき。





「仁科くーん!」





大声で俺の名前を呼びながら教室に入ってきた、俺のカノジョ。





「…お前、もう少し静かに入って来られねぇのかよ」


「いいじゃんいいじゃん!それより、仁科くんってお弁当?」


「いや。これから購買に行って買う予定だけど」


「なら丁度良かった! ちょっと仁科くんのためにお弁当を作ってみたんだけど」


「へー。……意外と器用なのか?」


「意外って失礼だなぁ」






教室で野辺さんとそんな会話を交わしていたら、次郎が俺に訊いて来た。





「……彼女って、もしかしてその子?」


「…ああ。まぁ」


「…仁科くんの友達?」


「…んーまぁそんな感じ」


「こんにちは!4組の野辺 眞由美です。よろしくね」


「…ああ。俺は、今村 次郎って言います。…よろしく」




自己紹介を終えると、野辺さんは俺に昼飯を食べに行くように促した。




「どこで食べんの?」


「んーとね、中庭がいいな!」


「りょーかい」






そうして、俺は教室を出て中庭へと向かった。









俺がいなくなった教室に残る次郎は、とある女生徒に視線を向けていた。



その視線の先にいるのは、須藤 美咲。






須藤は、俯いていて元気が無かった。





次郎だけが知っていた。



須藤が、さっきの俺と野辺さんの様子を見ていたこと。









そんなこと、俺は知る由も無かった。

7年前 No.1037

紫依 ★mt9cRQ04S4_ums

*** 詩亜視点 ***





「ね、空希!早瀬くん どこにいるか分かる?」


「早瀬くん?…さぁ?凪砂、知ってる?」


「あー…。保健室で昼寝するとか言ってたかな?」


「そっか!ありがとう、凪砂くん!」





…保健室って…、具合悪いのかな?


先生に早瀬くんを呼んで来るように言われたんだけど…


後でにしたほうがいいかな?



……んー…。




…でも、急な用事だったら大変だし…。






少し悩みつつも、あたしは保健室の扉の前に着いた。




「…失礼します…」





……保健の先生はいないみたい。



…早瀬くんは寝てるのかな?







あたしはあまり音を立てないようにベッドのほうへ近づく。





「……早瀬くん…?いる…?」


「……ん…、…仁科…?」


「あ、ごめん…っ、起こしちゃった?」


「いや。さっき目が覚めたところ」


「そ、そっか…」




……寝起きの早瀬くん…。



…やっぱり何しててもカッコいいなぁ…。



絵になるっていうか。




「…で、どうした?」


「あ、えっと、先生が早瀬くんのこと探してたよ。職員室に来なさいって」


「…あー…。そういえば今日、二者面談だったような……」


「…………」




…だ、大丈夫かな…。


早瀬くん…。





「じゃ、行ってくるよ。わざわざ呼びに来てくれて、サンキューな」


「ううん。…早瀬くん、具合…平気?」


「…ああ。眠かっただけだから」


「そっか。…良かった」


「…………優しいな」


「……え…」






小さな声で言った早瀬くんの最後の言葉は、よく聞こえなくて。



何を言ったのかな、なんて考える間もなく



次の瞬間には、何かを考える余裕なんて無くなっていた。







誰もいない保健室。



目の前には大好きな人。




くらくらする。




……唇が熱い。




そして、少ししてから唇が離れる。






その後すぐに、彼は優しくて、温かくて、だけど少しイジワルな顔をして保健室を後にした。








一度目は、海辺の宿で。



二度目は、家の前で。






…これから、何度もこういうことをして。



いつかは何度目なのか分からなくなって…


早瀬くんとのキスに慣れていくのかな…。






……たとえ、そうだとしても



早瀬くんが傍にいるっていうことを“当たり前”だなんて思わずに


早瀬くんに想われることを“当然”だなんて思わずに




ずっと一緒にいたい。




……ずっと、一緒に。














――この時、あたしは分かっていなかった。





幸せの真っ只中にいたあたしは








これから何が起こるのか



あたしのせいで変わろうとしているあの人の気持ちも





……そして、そのせいで誰がどんな思いをするのかも…







何も、分かっていなかった。

7年前 No.1038

紫依 ★mt9cRQ04S4_iGt

*** 詩矢視点 ***





「仁科くーん?」




……ん?




「もうすぐ昼休み終わっちゃうよー?起きなくていいのー?」




……ん…。




「……野辺さん…?」




どうやら昼食を食べ終わった後、寝てしまっていたようだった。




「もうっ!なかなか起きないんだから。寝不足?」


「いや。寝不足ってわけでもないんだけど…」


「…あ!膝枕してあげよっか!?」


「結構です」





冗談なのにー、と言いながら野辺さんは頬を膨らませる。






野辺さんと話したりしていくうちに、だんだん彼女の性格が分かってきた。



もちろん、まだ断片的なことだけだけれど。





最初は変わり者かと思っていたけど、実は結構無邪気。


よく笑う。気さく。




俺とはまるで違うタイプだな、と思った。






「…ね、仁科くん」


「ん?」


「…一応付き合ってるんだし、呼び方変えない?」


「……名前で呼べってこと?」


「うん!こういう小さなことも努力のひとつかなって!」





……確かに、本物の恋人になれるように努力してとは言ったけど。



女子の名前を呼び捨てにするなんて、ほとんどしたことねーし。




………………。






「……お前の名前って、……なんだっけ?」


「ひっ、酷いっ!あたしの名前覚えてないの!?」


「…嘘だよ。覚えてるけど……」


「……もしかして、照れてるの?」


「照れてねぇよ」


「嘘!じゃあ呼んでみてよっ!」


「嫌だよ」


「えー!?」





恥ずかしくないけど。


別に恥ずかしくないけど。



だけど躊躇(ためら)うっつーか…。






横で野辺さんが少し拗ねてしまっている。



…うん。



まぁ、「努力して」とか言っておいて、自分は努力しないのかよ、みたいな感じだよな。



………………。





「……気が向いたらな」


「! うん!」








…2月初旬。




こうしている間にも、春が近づいている。







あの、春が。

7年前 No.1039

澪奈($・・)/~~~ ★X2ZJ3eoTgO_Ff1

こんにちゎ♪

澪奈です((顔文字ゎはブラかせていただきます←☆

実ゎ・・・・・隠れファンでした!!

なんかごめんなさい・・・><

とっても面白いです><

めっちゃ続きが気になります〜〜

更新がんばってください!!

7年前 No.1040

羽琉 ★SOFTBANK=gH939KMLNs

ファンです!!!!
すごいです!!!!!
ホントに尊敬します´ω`


続き頑張ってください☆
ずっと応援しています★

6年前 No.1041

紫依 ★mt9cRQ04S4_iGt

○** お知らせ **○


私ごとき者の未熟な小説を読んで下さっている方々、
なかなか更新出来ず、ストーリーが進まず、
本当に申し訳ありません。

実は私、今年受験生です。
いくつか受けるのですが、
一番早い入試まで、あと一ヶ月切ってます。
そのあとも模試や入試が続きます。
なので、更新がほとんど出来なくなるかもしれません。
もしかしたら、3ヶ月に1回とか、4ヶ月に一回とか…
もしくはそれ以上……。

でも、物語は完結させたいと思っているので、
できるだけ頑張ります。

まだまだ未熟な小説を読んで下さっている方々には申し訳ありませんが、
気長に待っていて下さると嬉しいです。
ご迷惑をお掛けして、申し訳ありません。

6年前 No.1042

○* ゆ あ *○ ★8LVcqvA5qa_aab

すごく面白いです!!

早瀬がかっこよくてかっこよくて・・・。

早瀬って、基本的完璧ですよね!←

かっこよくて、かしこくて、運動神経よくて・・・

しかも優しいって最高じゃないですか!!((黙/ぇ

これからも応援しています!がんばってください!!

6年前 No.1043

杏琉@tiamo10 ★1fL1hPQWpr_Aet

この話好きです!!

あげておきますね^^

これからも頑張ってください





6年前 No.1044

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

。。。詩矢視点。。。





放課後。


二者面談が終わり、俺は教室へ戻った。




みんな部活やら帰宅やら、あるいは図書室やらへ向かい、廊下に人影は無かった。


だからきっと教室もそうだろうと思った。




けれど、教室のドアが開いていたのでまだ誰かが残っていることはすぐに分かった。


その見慣れた人物が誰なのかも。





「…須藤。…大丈夫か?」


「…うん、大丈夫」





…須藤と次郎だった。


俺はなんとなく教室には入らず、入口付近で様子を見ていた。





「…でも、お前…元気ねぇじゃん…」


「…本当に大丈夫! …アイツはすごくモテるし…いつこういうことになってもおかしくなかったし…。むしろ、今まで誰とも付き合っていなかったのが不思議なくらいで…」


「……あきらめられんの?」


「あはは、どうだろう? ……あきらめられるっていうか…あきらめなくちゃ駄目でしょ、もう…」





…どうやら須藤が失恋したらしい。


それだけは分かったが、俺は引き続き様子を見ることにした。





「…奪おうとか思わないの?」


「……無理でしょ。あたし、女として認識されてなさそうだし」


「……でも、好きなんだろ? ……詩矢のことが」




…………。




「…好きだからって……奪えないよ…。今まで誰とも付き合わなかった仁科が付き合うって決めた子だもん…。きっとすごく好きなんだろうし…。仁科が幸せなら……もう、いい…」


「……もういいんなら…なんで泣いてんの?」


「……っ!」


「……本当に…いいのかよ…」


「……せめて、友達として傍にいられれば……それでいい」







……そう言った須藤の声が、震えているのが分かった。



俺は、そのまま教室に入れるわけもなく、二人が帰るまでどこかで時間を潰すことにした。








廊下の空気が、いつもより冷たく感じた。

6年前 No.1045

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

*** 詩亜視点 ***





「はぁー。もうすぐ2年も終わりかぁー…」


「速かったよねー…」




放課後。空希の家にて4人で学年末テストの勉強をしています。




「…クラス替えとかもあるんだよねー…」


「ん…。また4人一緒ならいいんだけどね」


「それは難しいんじゃない?」


「あっ!じゃあさ、春休みは4人でどこか遊びにでも行かねぇ?」




今日は勉強をするために集まったはず――なのに、結局お喋りをし始めてしまっている。


うん…、まあ、4人で勉強しようって集まってちゃんと勉強したことはほとんど無いけどね。




「凪砂、どこか行きたいところあるの?」


「俺?んー…そうだなぁ…。…あ、少し遠出してまた泊まりに行きてぇかも!」


「あ、いいね!詩亜と早瀬くんはどこか行きたいところある?」


「私は…まったり出来るところがいいかなあ…。早瀬くんは?」


「…俺はのんびり出来るところがいい」





…クラスが変わったら、こういう風に4人で集まる回数も減っちゃうのかな…。


きっとクラスが変わっても、それはそれで楽しく過ごせると思うけど…



それでも、やっぱり寂しい…。




空希とも凪砂くんとも…早瀬くんとも…。


それから晴希くんやマリン、それと三原さん、藤村さん、島田さんたち…。





クラスが違うからって仲良く出来ないわけないし、新しい友達も良いんだろうって思うけど…




やっぱり、みんなと同じクラスになりたいと思ってしまう。






「……あれ…?」


「どうしたの、空希?」




空希が窓の外を見ている。…が、様子が少しおかしい。




「…いや、あれ…」




と言いながら、窓の外を指で指し示す。



私を含め、空希以外のメンバーは不思議そうに窓辺に寄って行った。





「……へ…」





窓の外。



そこに見えたのは、あたしの家の玄関前。



それから……





詩矢と、見知らぬ女の子。


見たところあたしと同じ学校の制服を着ている。





「え、詩亜…あの子のこと知ってる?」


「ううん…知らない…」




この前屋上で詩矢と一緒にいた子じゃない…。


クラスメイト…かな…? それとも同級生?




「ああ、俺知ってる」




と、凪砂くんが言った。




「なんか、詩亜ちゃんの弟に告ったらしいよ。この前。名前は確か……野辺 眞由美。俺、中学が一緒だったんだ」


「…そうなんだ…」





詩矢に告白した子…、で、今一緒にいるってことは……





「…付き合ってるのかな?」


「うーん、そうじゃね?詩亜ちゃんの弟も一緒にいて嫌そうでもないし…」


「そっか…」





て、いうことは…詩矢のことは本当に解決したってことでいいのかな…。


詩矢にもあたしにもそれぞれ好きな人がいて、付き合っていて…。




もしそうなら…嬉しい。



あたしじゃ詩矢の気持ちに応えることは出来なかったけど…




でもこれで、詩矢がやっと幸せになれるんだもん。

6年前 No.1046

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

。。。詩矢視点。。。






「ありがとう、詩矢くん。詩矢くんの家、見てみたかったから…嬉しい」


「いや、でも今日は家の中には入れられないけど…」


「いいよ、別に。今日はもう十分」




「詩矢くんの住んでいる家を見てみたい」と言い出した野辺さんを家の前まで連れてきたわけだが…


なんかこの会話、本当に付き合ってるみたいだな…。



いや、本当に付き合ってはいるんだけども。




「…じゃ、行こう。お前の家まで、俺送るから」


「あは、ありがとう」


「…………」






……須藤、次郎と話していた時、声が震えていた。



…泣いてたのか?



いつも気が強くて弱音なんて全然吐かないアイツが?





そもそもいつから俺のことが好きだったんだ?


最近? それとももっと前から?


次郎は須藤の気持ちを知っていたのか?


知らなかったのって俺だけ?





いや、だって…



アイツ、今まで全然そんな素振りを見せなかった。


いつも不真面目な俺を注意したり、突っかかってきたり…



でものど飴くれたり、ノート見せてくれたり…





あれは委員長としてやっているのかと思っていた。


真面目な委員長からすると、サボり常習犯の俺の面倒をみなければ、という気持ちが働いているんだと。



…あれは好きだったからなのか?





いや、でも分かりづらいだろ。


いつもサバサバしてるし、俺のこと男として見てない感じだったし。



つーか俺に媚を売ってこない女って、野辺さんと須藤くらいじゃねーか?


詩亜とか空希は別として。



だからこそお互い恋愛抜きの関係が続いていたわけで。




……いや、単に俺が気づいていなかっただけ…?







…って、明日からどうやって接すればいいんだ…?!



須藤たちは俺が話を聞いていたことを知らないわけだから、何にもなかったフリが一番無難だろうけど…。



須藤自身、「友達として傍に」って言ってたし…。





………………。





……まいったな……。





ただの見知らぬ女子からの告白とかなら、別になんともないけど…



それなりに関わりのある女子からの告白ってのは慣れない。




空希からの告白の時も、他の女子からの告白とは違ったけど……。



まあ、『関わりのある女子』自体俺にとっては少ないから仕方ないだろう。








…ふとした時、確かに「須藤は俺のこと好きなのか?」とか思ったことあったけど、



でもすぐに「ま、気のせいかな」とか思ってしまっていた。




須藤は鬱陶(うっとう)しい時もあるけど、やっぱり良い奴だと思うし、俺の数少ない女友達だと思っていたから、余計。







……はあ…。




…………何やってんだ、俺は。
















その日の帰り道、野辺さんは俺にいろいろと話題を振ってきていたようだった。



けれど、俺は何一つ話の内容を覚えていなかった。

6年前 No.1047

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

。。。凪砂視点。。。




休み時間。


俺はいつものように空希に話しかける。



ちなみに降と詩亜ちゃんは用事があって席を外している。




「空希ー。今日なんかいつもと違うけど何かあった?」


「え?いや、別に何も…」


「……ふーん…」





…いや、でも確かにいつもと違う。


いつもだったらもっと元気だし、口数も多い。



けれど今日はやたら静かだし、ずーっと俯いて何か考え込んでいるという印象だ。





……心当たりが、無い、というわけではない。


むしろあると言えばある。



……が。





もし、『あのこと』で空希がこんならしくない状態になっているとしたら…


ちょっと、ヤバイのかもしれない。


ヤバイというより、俺が不安になるというか……。




……少し、嫌な予感がする。


でも頭の中でアレコレと思いめぐらすのは俺の性に合わないようで、俺は思い切って聞いてみることにした。





「…空希」


「…ん?」


「……もしかして…、昨日のアレのこと考えてんの?」


「…アレって何」


「…だから…その…、し…詩亜ちゃんの弟とその彼女のこと……とか…」




…っ頼む!俺の勘違いであってくれ……!




「…うん。そう。よく分かったね、凪砂」




…………。


いや…、まあ、そんなことだろうと思ってたけど。


……、……別にショック受けてなんかないし。



空希が前好きだった奴とその彼女のことを考えていたからって、別に気にしてないしっ!





「…なんかさ、詩矢くんのこと…。昨日は半信半疑だったんだけど、…今日学校に来たら、みんな結構その話知っててさ」



べ、別に…



「まあ、詩矢くんも校内じゃ結構有名だしね。そりゃ彼女出来たらすぐに話広まるよね」



別に気にしてなんか…



「……でもさ、本当にあの彼女のこと、好きなのかな…って。だって詩矢くんはずっと……」



…………。




いやっ…、そりゃ気にするだろ…!


自分の彼女が前好きだった奴のことを考えてこんなしっとりとしてんのに。



気にしないわけないだろ…!





「……好きなのかよ」


「へ?」


「詩亜ちゃんの弟のことだよ! 本当は好きなんじゃねーの?」


「ちょ、凪砂、何言ってんの?今アンタと付き合ってるのは誰だと思ってんの!」




……今の俺、ちょーカッコ悪い…。


いや、分かってるんだけど。外見自体は超カッコいいって。



カッコ悪いってのは、今の俺の内面的なものが、ってことで。




「……だ、だって空希…、さっきから詩矢くん詩矢くんって…。今空希と付き合ってんのは俺なのに…」


「…何、ヤキモチ?」


「…! …だったらなんだよ!」


「…っ、別に…なんでもないけど…」





そう言って、空希はまた少し俯いた。


今度は悩んでいるという感じではなくて…



少し、頬を赤らめている感じ。




こんな何気ない表情一つ一つに、俺は未だにキュンとさせられてしまう。







…本当は、分かってるんだ。


詩亜ちゃんの弟は、空希がすごく好きだった奴だって。


恋愛感情を抜きにしても、とても大切な奴だって。


きっと空希や詩亜ちゃん、そして詩亜ちゃんの弟や時雨くんは、お互いに大切に思い合っている仲だって。


好きだ嫌いだという以前に、あの4人にはあの4人の絆があるんだろうなって。とても他には代え難い存在なんだろうなって。


空希の世界に入れても、4人の世界に入ることはきっと出来ない。





……分かりきっているんだ。 そんなことは。



…でも、だからこそ不安になってしまう時がある。







もうすぐ、俺がそのことを本当に思い知る時が来る。






俺は知る由もない。



――けれど、俺の勘も、強ち「間違い」とは言えない。

6年前 No.1048

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

*** 詩矢視点 ***





人生そう上手くはいかないものだ。




肝心な時に会いたい奴に会えなかったり


ほんの少しのタイミングのズレだったり




……何となく気まずくなっている時に限って、そいつと同じ仕事を任されたり。




いや、俺は決してタイミングのいい男じゃない。


むしろ逆だ。


運だって悪いほうだと思う。




それは分かってはいるけど。






「……須藤、これとこれは捨てていい?」


「ん?ああ、いいよ」





……あの時うっかり職員室前の廊下を通っていなければ、教室で須藤と二人でプリント類の整理をすることもなかっただろう。


よりによって今。




なんとなく気まずいってのに。





「あ、仁科。そっちの資料は取っておいてね。ホッチキスでとめてあるやつ」


「あ、ああ…」





というより、気まずいと思っているのは俺だけらしいけど。


昨日の今日だってのに、須藤は超普通に接してくる。



…まるで昨日の須藤が嘘のようだ。


ここまでいつも通りだと、本当に俺のことが好きなのかと疑ってしまう。




「ちょっと!さっきから手動いてないじゃん!ちゃんとやってよね!」


「…ああ…」


「…って、ちょっと!聞いてんの!?」


「え、ああ…。悪い…」


「…なっ…、どうしたの、素直に謝るなんて…。 …さっきからボーッとしてるし」


「いや、別に何も」


「……ふーん…」





コイツ、結構鋭いんだよな…。


基本的に何でもこなせるタイプだし。




……でもやっぱり信じられない。


本当に俺のこと好きなのか?


これが好きな男に対する態度なのか?


これが普通なのか?




今まで女子と関わったことがあまり無かったから、よく分からない。





それに詩亜や空希は好きな男に対してこんな態度ではない気がする。



空希は少し近いかもしれない。


けど、アイツはもう少しデレるだろう。





…でも須藤はデレている感じが全く無い。



…………。



…もう、このことに関してはあまり気にしないほうがいいのかもしれない。





須藤自身、いつも通りなわけだし。


俺も自然体でいれば、恐らく少しずつでも普段通りになっていくだろう。







「…ねえ、仁科…」






自然体、自然体……




「ん?」




自然体、自然体……







「…その、か…彼女出来たんだってね!!」








………………。

6年前 No.1049

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

。。。詩矢視点。。。






「彼女出来たんだってね!!」




折角自然体、自然体と言い聞かせている時に、なんなんだコイツは。


まさに不意をつかれた、という感じだ。



俺は何となく須藤の顔を見て答えるのはやりづらかったので、手に持っていたプリントの内容を確認しているフリをしながら答えた。




「……まあな」


「…この前、うちのクラスに来てたよね」


「…ああ」


「……可愛い子だったじゃん!」


「…んー、多分」


「……多分って…。だって好きなんでしょ?」




……好き…。



…正直、まだ『好き』まではいっていない気がする。


いや、まあ別に嫌いではないし。


どちらかというと『好き』の部類には入ると思うけど。



でも、愛とか恋とか…そういう恋愛感情ではない。





…だからと言って。



俺、ここで何て言えばいいんだ?




…………。



……「好きだ」って言わなくちゃ変だよな。 うん。






「…好きだよ。野辺さんのこと」


「……そっ…か!」


「…………」


「…………」





気まずい沈黙が漂う。


……どうすりゃいいんだよ。





俺は黙々と作業を続ける。





「……仁科」


「…ん?」


「…良かったね!あの子良い子そうだし! …ちゃんと仲良くやるんだよ?」


「…ああ」





……驚いた。


あまりにも…




あまりにも明るい声で言うものだから。


あまりにも明るい笑顔を見せるから。







「…あ、私、ちょっと先生のところに行ってくるね!」


「…え…」


「このプリント、どうすればいいか分からなくて」


「ああ…」


「じゃ…」





そう言って、須藤はプリント1枚を持って教室から出て行った。



ドアを閉める音がやけに教室に響いた。





……それにしても…




「…アイツ、本当に俺のこと好きなのか…?」




未だ信じきれない。




…って…。


俺もどうすればいいか分からなくて後で聞きに行こうと思っていた資料があったんだった…。



……ついでに須藤に聞いてきてもらうか。





そう思い、俺は教室を出た。



須藤の姿はもう見えなくなっていて、俺は少し走った。




廊下の角を曲がって、階段を駆け上がる。






……すると。




少し先の廊下の端で、須藤がうずくまっていた。



疑問に思い、駆け寄ろうとした瞬間、



…俺は須藤の異変に気づいた。





声を必死に抑え、それでも抑えきれず、漏れた鳴き声。


小さく揺れる肩。







……須藤。





俺は馬鹿だ。





目に見えるものしか見えていなかった。


須藤のいつも通りの態度や様子に、惑わされていた。




須藤の優しさや強さ故の虚像に 俺は完全に騙されていた。





俺の前では涙を我慢して 影では泣いて。


今までもそうだったのか?



どうして俺は少しも気づかなかったんだ。







…須藤。



……俺は…――― 「…仁科」






…一瞬、後ろに俺がいることに気づいたのかと思ったが、それは須藤の独り言だった。



須藤は涙を拭いながら、一言、小さく零した。















「……好きだよ…。 仁科…。」




………………。





その、言葉に、俺は……




何も出来なかった。




声をかけることも、その気持ちに応えることも、




何も出来ずに。







ただ、そのまま、教室へと一人戻っていった。

6年前 No.1050

fay ★vAP9tu6B7W_g80


はじめまして

本当にお話の作り方が上手で
尊敬しました^^
これからも、
がんばってください。

6年前 No.1051

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

○* 人物別色分け *○


詩亜>>花2

詩矢>>泉2

空希>>火2

晴希>>雲2

降>>>黒金

鈴>>>雷2

凪砂>>光2

須藤>>海3

その他&お知らせ>>雷5



須藤さんを追加しました。
変更などがありましたら、また書き込みします。^^*

6年前 No.1052

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

*** 須藤視点 ***





――最初は気に入らなかった。





ちょっと外見が良くて、女子にモテて、


何でもサラッと人並み以上にこなしてしまうところとか…




基本、不真面目なくせに


成績は上位常連だとか…




男子高生らしからぬ あの“人生悟ってます”的なクールぶった感じだとか…





とにかく気に入らなかった。






でもあたしは、授業をサボろうとするクラスメイトを放っておける性格じゃなかった。


クラスの委員長、ってこともあったけど。




それで、なんだかんだで結構 話したりする機会が増えて






そうしているうちに、そんな嫌な奴じゃないってことも 分かってきて



結構、「カッコいいから」って理由で騒いでる子が多いけど、それだけじゃないんだって思った。




仁科は普段から、女子とあまり連まない。


そもそも男子ともあまり絡まない。


特に仲のいい友達といえば、今村くらいしか思いつかない。




どんな形であれ、外見や能力以外の仁科の長所を知っている女子は、多分少ない。


そう思うとなんだか嬉しかった。




今までは“仕方ない”で話しかけていたような内容でも、


仁科に声をかけるのが楽しみだった。




一見 他人に無関心で冷たいように見えるけど


本当は全然違う。



本当は優しくて まっすぐで 思いやりがあって




どんな人よりも 素敵な人。






だけど



仁科には仲のいい女子とかいなかったから



好きだって分かっていたのに



私は何もしなかった。




今の距離感を保てなくなるのが怖かった。


仁科に拒絶されるのが怖かった。


このままでもいいかなって少し思ってもいた。




ずっと臆病だったんだから 当然なのかもしれないね。



何もしないままで 恋が叶うはずない。




…分かってた。


分かってる。




でも、もう手遅れだから




仁科はもう、心に決めた人がいるんだから。


今はその人が仁科のそばにいるんだから。


仁科のことを想うなら、応援するのが当たり前なんだから。




あたしは、もう仁科のことをあきらめなくちゃいけないんだから。







「仁科ー!ごめんっ、遅くなって」



「……いや。別に」



「あ、でも、ちゃんと先生に聞いてきたから!」



「……ああ、サンキュ」



「このプリントは取っておいてって」



「……ああ、うん」







…大丈夫だよね。


教室に戻ってくる前に、鏡でチェックしたし。



目はもう赤くないはず。


ちゃんといつも通りに振る舞えてたはず。







これからは、ちゃんと仁科を応援しなきゃ。



あたしは友達としてそばにいられればいい。



…もう、それだけで十分だから。








仁科への気持ちは、もう忘れなくちゃ。

6年前 No.1053

鈴菜=∀=〜〜♪ ★3DS=jGwNTNrkYq

初めまして〜


ずぅぅぅっと
読ませてもらってました☆

めちゃくちゃ面白いし泣けるし感動しまっっす〃〃〃

これからも楽しみにしてるんで

更新ファイトです☆☆

6年前 No.1054

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

*** 須藤視点 ***





――仁科への気持ちは、もう忘れなくちゃ――










「詩矢くん、一緒に帰ろー!」



「ああ」





仁科と野辺さんが付き合い始めてから、二人が一緒に帰るのが日課になっていた。


その他にも、一緒にお弁当を食べたり、休み時間に話していたり…。



それはすでに学年中の噂になっていた。


そもそも、仁科は目立っていたし、女子からも人気があったから、そうなるのは当然だと思う。






「あーあ。今日も一緒に帰るんだねー」


「仁科くんに憧れてた女の子っていっぱいいたのに…。 彼女できちゃってショック〜」


「まあ、もともと仁科くんって、高嶺の花?って感じだったしね」






仁科たちが教室を出て行ったあと、クラスの女子たちがそんなことを話す。


ここ数日、そんなことが毎日続いている。






「おーい。須藤ー?」


「…何?今村」


「お前、まだ帰らねーの?」


「あー…うん、何か…帰るの面倒くさくて」


「おいおい、大丈夫か?」


「うーん…」





今村は、普段は不真面目なところもあるけど、根は優しい。


一見近寄りがたい仁科とも、上手く付き合ってるし。


良いやつだと思う。 うん。





「…みんな続々と帰っていくなー。 部活かな」


「…かもね。あとは図書室とか自習室で勉強する人とかかな」


「あと塾とかだな」




それと、放課後デートするカップルたち…――とは、あえて言わなかった。


きっと、今村も気を使って言葉にしなかったのだろう。





「…………」


「…………」





妙に続く沈黙。


いつの間にか二人だけになった教室。




オレンジ色の夕陽が、あたりを照らす。



あたしは、窓の外を見ながら、ぽつんと言った。






「……辛いもんなんだね、恋って」



「…………」



「きっと、あたしより辛い恋をしている人なんて数え切れないほどいるんだろうけど、それでも…辛い」



「……うん」



「仁科が遠くなってく…。 …きっと、今まで通りでいられない…。 …友達って距離でさえ保てなくなってく…」



「……うん」



「……きっと…」





どうしてあたしは、忘れなきゃいけない状況になるまで、何もしなかったんだろう。


どうして、友達ってだけで満足できるなんて思ったんだろう。



日に日に仲良くなっていくように見える、あの二人。


日に日に距離が開いていくように感じる、仁科とあたしの関係。





「……きっと、…気づかないうちに、他人と同じくらい、遠い場所にいるんだ…」








後悔が、心残りが、仁科への未練が、あの子への嫉妬が、あたしを襲う。



‘いい子’を演じ続けようとするあたしを、見透かされてるみたい。









…こんな姿、仁科にだけは見られたくない…――。

6年前 No.1055

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

*** 須藤視点 ***





…――きっと、…気づかないうちに、他人と同じくらい、遠い場所にいるんだ…。






「……須藤は、今までずっと、詩矢の傍にいたじゃん」



「………………」



「…もちろん、言い合ったりしてることが一番多かったと思うけど、それでも須藤は、詩矢の数少ない女友達だっただろ」



「……それは…そうだけど…」



「…多分、詩矢にとっても、須藤は結構大切なやつなんじゃねーの?」





無言のまま、少し俯きがちなあたしに、今村は言葉を続ける。





「……彼女が出来たからって、そう簡単に今までの関係が壊れるなんてことはないよ」



「…………」



「ほら、元気出せよ」



「……うん。 ……ありがと」





今村の言葉を素直に受け入れられたのは、きっと、仁科とあたしと、ずっと一緒にいたから。


同じ距離感で、仁科と接してきたから。






「……なーんか……、…最近、恥ずかしいところばっか見られてるな」


「最近特にな」


「…弱いところとか、あんまり人に見られたくないんだけどね」


「お前、詩矢絡みのことだと途端に女子っぽくなるよな」


「普段は女子っぽくないんかい」





いつも通り、いつものように、自然に話せている。


いつの間にか。




やっぱり、恋とか愛とかで悩んでいるより、友達と話して、楽しんでいる方があたしらしいと思う。





「……須藤」


「んー?」


「新しい恋とか、する気はないの?」


「あー…、うーん、どうなんだろうね」


「…やっぱり、まだそんな気分にはなれない?」





…仁科のことを忘れるには、やっぱり新しい恋をするのが最善の策だと思う。


その方法が一番仁科たちにも迷惑かけないし、あたしもこれ以上辛くならずに済む。



……でも…






「…好きな人がいるほうが、何かと楽しいんだろうなとは思う……けど…」


「…けど?」


「そんなすぐに心変わりできるのかなー…とか」


「…………」


「あとは…そんなに出会いないしね。 共学っていっても、クラス替えとかももう少し先だし…」


「……近くにいるかもよ」


「ははっ、そういうもんなのかなー」




そう、少し笑って言いながら、あたしは今村の方を見た。



夕陽に背を向けるあたしに、今村はまっすぐあたしを見た。



今村の顔が、オレンジ色に照らされている。








「…いるよ。 すぐ近くに」




真剣な顔で、今村が言った。


いつもと違う雰囲気に、こちらの表情も締まる。





「……え?」






窓の外から、下校する生徒たちの声が聞こえる。


さっきまでたくさんいたのに、今はもう、あまりいないみたいだ。




でも、なぜか、そんなことを考える余裕が無かった。



いつもと違う表情に、雰囲気に、声に、あたしは飲まれた。







「……俺がいるじゃん」







その言葉がどういう意味なのか、あたしは、しばらく理解できなかった。

6年前 No.1056

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

。。。須藤視点。。。





「……俺がいるじゃん」




今村の言っていることが、その言葉の意味が、状況が、あたしは理解できなかった。





「…………へ?」




ぽろりと間抜けな声を出してしまった。



今村は真剣な顔で、言葉を続ける。





「……須藤の、次の恋の相手、俺じゃ駄目?」



「………………」





…………へ?



……突然どうしたんだろう。




だって、今村とあたしは、ずっとただのクラスメイトで



むしろ、普段から言い合ったりしている仲で





そもそも今村は、ずっとあたしの気持ちを知っていた。



あたしから特に打ち明けたわけじゃないけど、今村は気づいていた。





……なのに、……なんで?



……どういうこと? …どうして?






「……っ…、え…と…」





どうしよう…



何て言ったらいいんだろう……。




こういう時、どんな言葉が適切なの?



口が動かない。



言葉が見つからない。



鼓動が速くなる。






「……困らせたなら、ごめん。 ……でも俺、須藤ならいいよ」



「……へ…?」



「須藤なら、ちょっと意地っ張りだけどいいやつだし、俺普通に好きだよ」



「……ふ、普通…って…」



「ああ、語弊があった。 結構好き。 少なくとも、付き合うくらいには」



「……そ、そんな理由で付き合ったりしていいものなの…?」





今村の言葉の意味が分からない。


今村は、あたしのことを好きってわけじゃないけど、結構好きだから付き合うのに支障はない?



分からない…。


そんなものなの…?



そういう感じで付き合っていいものなの……?





「……お前がいいなら、いいんじゃん?」



「………………」



「……とりあえず、考えてみて。 返事はすぐじゃなくてもいいからさ」







そう言って、今村はすぐに帰り支度を始め、何事もなかったかのように、いつも通りの今村に戻った。




「あ、今日、帰りになんか食ってかねー?」


「……えっ、…あ、うん…」







……完全にいつも通り、というわけではないようだけれど。

6年前 No.1057

紫依 ★G1LQUDdwe9_KMC

咲様>>
コメントありがとうございます。
返信遅れてしまってすみません(><;)
色々ストーリーを考えて、いくつか候補があるといえばあるのですが、
どれにしようか迷ったり…。
結末は決まってはいるものの、それまでの展開をどうするかを考えているうちに
月日がどんどん経ってしまいました。
更新できるくらいに頭の中で構想が出来たら、更新したいと思います。
楽しみにしてくださっているのに、全然更新できなくてすみませんm(_ _)m

5年前 No.1060

★DhvXrNvMWo_M6Y

いいですよ♪

お話がまとまったらぜひ書いてください!

待ってますから♪

5年前 No.1062

*。-カノン-。*♪" @yyayk05sp ★3DS=iqVPZWaJ50

このお話、めっちゃ大好き!!!

一番好きっ☆☆

早瀬くん、かっこいいよぉっ!!!!!!!!

ヤバイ....

惚れた...(*//∀//)

現実に、いてほしいなぁ__...♪

なぁーんて、読んでからずっと考えてた☆☆

続き、気になる___@@.

頑張ってください!!!

5年前 No.1063
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