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病とう

 ( プロ詩投稿城 )
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一輪車 ★I1wpISAuQ2_D9v

この病とうは
いつも
甘いインクの匂いがする

はめ殺しの窓にはクラシックが流れ
患者たちは
注意深く
空気の比重をはかっている

ときおり
天秤棒が傾く
すると
かれらの吐息が
ひそやかな跫音となって廊下に響き
各病室の
壁や
天井や
手すりをゆする

わたしは唖のふりをして横たわり
聞き耳をたてている
患者たちは目で会話しながら
難聴者のふりをしている

病とうにヤカンが持ち込まれると
ヤカンの品評会が開かれる
わたしは かれらに背を向けて
仮病がさとられないよう毛布をかぶっている
かれらがみているのはヤカンではなく
トンカチだとアドバイスしたいのだが
それを口に出すと
わたしもかれらも壊れてしまうだろう

入院患者の情報源はテレビだ
空気の比重が安定しているときは
いつもテレビを見ている
津波が病とうを襲ったときもテレビをみていて
ベッドごと流されても
流されているテレビをみていた

この病とうには 死がない

死体のない地下霊安室には
新型の輪転機が置かれ
終日
し烈な速さで回転している

かれらがあまりに朗かなので
ひょっとすると
病んでいるのはわたしだけかも知れないと
最近は思いはじめている

甘いインクの匂いは
ますます
強くなっている






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沙織 ★Tablet=xhvTUuQ3LZ

甘いインクの匂いがするという表現に焼き付いた気がした
明るく美しく優しい眼差し
やっぱりとても美しい

6ヶ月前 No.1

一輪車 ★I1wpISAuQ2_D9v

沙織さん、
お読み頂きありがとうございます。

6ヶ月前 No.2
ページ: 1

 
 
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