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今宵、月はどこを照らす

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(1273) - ●メイン記事(13) / サブ記事 (61) - いいね!(17)

吸血鬼モノ/戦闘スレ @aien☆YLfhcBAgmpE ★iPhone=5X7uVNyIPI

ーー都内某所

夜でも煌々と輝くネオンに、行き交う人々。盛んに行われる店の呼び込み、数人で連れ立って覚束ない足取りで歩く酔っ払いサラリーマン、おそらくこれから出勤するのであろう夜の華達。
眠らない街、不夜城と呼ばれたこの街は真夜中を過ぎても依然変わらぬ賑わいを見せていた。雑踏の中、人々は不思議とぶつからずに歩いていく。
話し声、漏れ聞こえる音楽、どこかで始まった酔っ払い同士の喧嘩、遠くで聞こえるパトカーのサイレン。誰かが嘔吐する音が聞こえる。

全てが渾然一体となり、この街の混沌を作り上げていた。

ただ、賑やかなのは表通りのみ。一歩路地に入れば表の喧騒が嘘のように静かだった。動くものといえば、ゴミを漁るカラスや野良猫くらいのものだ。ゴミに埋もれて泥酔したサラリーマンが爆睡していた。
表通りはあんなにたくさん人が通るのに、誰もこちらには目もくれない。ネオンの光も届かず、ここだけが夜の暗闇に沈んでいた。

そんな中、黄金色の輝きが翻る。ネオンや街灯の光ではない。先程ゴミ箱を漁っていた野良猫の瞳か? 似ているが違う。だって、さっきあの猫はーー

噎せ返るような鉄錆の臭いが否が応でも現実を突きつけてくる。この臭いはなんだ? 散らばる赤い液体は? その中に沈む三色の毛皮の持ち主は誰だ? 寝ていたサラリーマンは一体どこにーー?

黄金色の煌めきがニンマリと三日月型に歪む。クス、クスクスクス。楽しそうに、心底可笑しそうにそれは嗤った。鈴を転がすような可愛らしい声だ。鉄錆の臭いに混じって胸焼けしそうなむっとする甘ったるい匂いが漂ってくる。

「ねぇーー、気づいてるんでしょ?」

雲が徐々に晴れていき、曇り空で隠れていた月が顔を出す。青白い月明かりによって、夜の暗闇が解けていく。

紅い口紅を塗った唇がニンマリと弧を描く。いや、口紅ではない。これは。

「逃げられないって」

囁くような声に身体中が総毛立つのを感じた。背中に氷柱を差し込まれたような気分だ。冷や汗が額を伝う。それなのに黄金色の瞳から目が離せない。脳内にちらつくのは先程みたパトカーのランプのイメージだ。逃げろ、本能は確かに全力でそう告げている。でも、逃げられない。身体が動かない。まるで金縛りにあったかのようだ。頭の芯がじん、と痺れるような感覚に陥る。

ピタ、と驚くほど冷たい、まるで死人のような体温の手が頬に触れる。それ、は益々愉しげに口角を上げた。かぱ、と口を開いたその中にはヒトではあり得ないほど発達した犬歯がーー

ブチリ。

頭の中で火花が散る。あり得ない勢いで血が失われていく。生暖かい血が首筋を伝う。生きるための熱がーー失われていく。急速に奪われる体温に体はガタガタ震え出す。それでもなお、脳はその行為に快楽すら感じていた。頭の芯のじんじんとした痺れがどんどん広がっていく。夢と現の狭間ーー最期に見えたのは、この世のものとは思えないほど美しい、黄金色の輝きだった。


【人の上に立ち、人を支配しようとする吸血鬼集団「ノーライフキング」とその計画を阻止のために暗躍する集団「レイヴン」の夜の東京を舞台にしたバトルものです。許可が下りるまでサブ、メイン共にレス禁となっております。久しぶりのスレ立てですが何卒よろしくお願いいたします】

切替: メイン記事(13) サブ記事 (61) ページ: 1

 
 

サブ記事解禁/絶賛募集中 @aien☆YLfhcBAgmpE ★iPhone=5X7uVNyIPI

【只今よりサブ記事解禁でございます。絶賛募集中ですので、予約やプロフィール投稿お待ちしております】

3ヶ月前 No.1

本編開始 @aien☆YLfhcBAgmpE ★iPhone=5X7uVNyIPI

【百鬼六花/学校→新宿区歌舞伎町バー「クロウ」】

学校終わり、やや日が傾き街中がほんのりとオレンジ色に染まる中、百鬼六花は帰宅の途につく大勢の学生達に紛れて歩いていく。賑やかで楽しげな会話が交わされる中、参考書を見ながら一人黙々と歩いていた。
やがて大通りに出ると、それまで固まっていた学生達はめいめい好きな方向へと散らばっていく。六花はその流れに紛れてなんでもないようなフリをしながら目的地を目指していた。
カモフラージュのために参考書を読んでいるが、目線が上滑りするだけで内容なんかちっとも入ってこない。
なんだか悪い事をしているような罪悪感に囚われ、心なしかぬき足差し足になりながらなんとかたどり着いたのは眠らない街ーー歌舞伎町。制服姿の学生が歩いていたら補導されること間違いなしだ。近隣の高校では先生が見回りしているという話も聞く。それに見つかったら一巻の終わりだ。今日も先生や同級生に見つかることなくたどり着けたと胸を撫で下ろす。

ーーメインの通りからは一本外れた場所にそれはひっそりとあった。「Claw」とおしゃれな筆記体で描かれた店名の下には「close」のプレートがかかっていたが構わず店内へと入る。
落ち着いた照明の中、棚には所狭しと様々な酒の瓶がインテリアのように並べられていた。

「誰か居ますかー……?」

しかし店内はしんと静まり返っている。場所を提供しているマスターも姿が見えない。どうやら自分が一番乗りらしい。

>>all


【これより本編解禁でございます!】

2ヶ月前 No.2

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_wDx

【 九石靱負 / 通学路→新宿区歌舞伎町バー「クロウ」 】

 一人屈託のない笑いをこぼし、道のり半ばの鯛焼き屋で買った1000円分の商品が入った紙袋を小脇に抱え、九石靱負は通学路もとい下校路を歩いていた。軽やかなステップに鼻歌混じり。左脚を前にだすやスカートを翻らせ、右脚を前に出すやたっぷりとした袖を揺らし。すれ違うお婆ちゃんが「あらあらまあまあ」と微笑ましげな視線を向けてしまうのも已む無しな上機嫌ぶりで軽々とアスファルトの路上を散策すること数分後、今度はコンビニに立ち寄りそこで人気のタピオカミルクティーフラッペなんぞを購入してから、店を出ると駆け足で目的地へと向かった。この程好くシャリシャリしたタピオカミルクティーフラッペを、冷え冷えの内にバーの席で座って飲みたいと思ったからだ。ついでにお土産にと購入した鯛焼きもホカホカの内に皆に食べて貰いたい。

 いくら歌舞伎町とはいえ靭負の容姿はファッションやカラーリングも相まってかなり目立つ。が、何度もここを通っている内に歌舞伎町を根城とする人々には存在が周知されたのか、意外なほどにジロジロと好奇の目を向けられることはなくストレスフリーでバー『クロウ』の前までたどり着けた。
 まだ早い時間帯だし自分が一番乗りかもしれない。いや、寄り道したから他の学生勢のほうが早く来ているだろうか。どちらにせよそう遅くはないはずだ。コンコンコンコンと執拗に四回ノックをして、返事も待たずに「しっつれーい!」と元気良く声を張り上げ扉を開ける。ほぼノータイムで入室したからノックの意味はあまり無い。

「あ、先に来てたんッスね六花ちゃん! クロワッサン鯛焼きどうッスか? 中身カスタードのやつしか買ってないッスけど」

 店に踏み込むや否や発見した百鬼六花の眼前に鯛焼き入りの紙袋を掲げて見せ、お一つどうぞとばかりにガサガサ揺らす。平時の彼女は野に楚々と咲く控え目な花のような娘だから、コミュニケーションをとろうと思えばこれくらい勢いがあったほうが良い。通っているのが同じ高校でもっと心の距離が近ければテンションで押さなくてももう少し気軽に雑談が成立したのかもしれないが、制服から分かる通りに彼女は靭負と別の高校に通っているからそれはIFの話止まりだ。靭負の通う高校の制服はもっとこう、校長になれたことで精神的に舞い上がってしまったオタクがこれ幸いにと生徒らに自分好みの格好をさせるため多分に趣味を盛り込んでデザインと発注をしたようなコスプレ衣装っぽい造りをしている。

「にしても、ちょい来んの早すぎたッスかねぇ? まだ全然メンバー居ないじゃないッスか」

 これならマクドナルドでポテト買う時間も捻出できたかも、と後の祭りなことを今更ぶつくさ言いつつ適当な椅子に腰掛ける。鯛焼きの入った紙袋はマジックペンで「お土産!!!!」と書き殴って入口近くのテーブルに置いておいた。これで後から入って来た人が欲しければ手に取って食べるだろう。
 自身はズズズーと音をたててタピオカミルクティーフラッペを口にしつつ、出入り口を凝視して後続の面々が来るのを待つ。そういえば学校に水筒を忘れて来たのを今になって思い出した。まあ良い。中身は麦茶だし一日放置した程度では腐るまい。明日まとめて持って帰る。

>百鬼六花様&ALL様

【メイン解禁おめでとうございます!】

2ヶ月前 No.3

ライブラ @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_khx

【自宅→新宿歌舞伎町 バー「クロウ」/九頭 龍次】

「さて……そろそろ行くか」

金髪の青年がとあるアパートの一室でそう呟いてPCの作業机から立ち上がる。
さっきまでPCでやっていたのは、簡単に言えば事務作業である。
今週使った弾薬の計上に、レイヴンから頼まれた武器弾薬の発注、それにメンテの予定表作りなど多岐に渡る。
この作業が無ければ非常勤の塾講師ではなく本格的に教師を目指すことも可能だが、現実はそう甘くはない。
なにせ生まれが極道一家で、それも一つの組織の頂点に位置する者の息子だ、そう易々と教職になど付けはすまい。
仮に教師になったとしても今度は武器商人やレイヴンの構成員としての生活が送れなくなる、だからこの現状に落ち着いているのである。
頭にオレンジのバンダナを巻いて、耳にはイヤホンを付けて音楽を聴きながら自宅を出る。
流している音楽のジャンルは日によって様々だが、今回はロックである。

背負った鞄に入れているのは愛用の銃器と弾丸、そして聖別済みの短刀二振りだ。
警察に職務質問でもされたら確実にアウトなラインナップだが、そこは腐っても極道の息子だ、警察の巡回ルートは頭に叩き込んでいるし非常時の対策もぬかりない。
眠らない街、新宿歌舞伎町。その一角にあるバーを目指して龍次は歩く。
時折来るスマホの通知は立ち止まって確認しつつ、時には高速で文字を撃ち込み返信を送る、言うまでもなく商売関係のものである。
何度か今のような行動を繰り返しつつ、チンピラに絡まれそうになりつつも華麗にスルーして目的地にたどり着く。

「こんちゃーす、アレ? まだ二人だけッスか六花サンに靱負サン、てか制服姿で歌舞伎町に来るとか中々のチャレンジャーッスね」

軽薄に笑いながらも先に来ていた百鬼六花と九石靱負に挨拶をしつつ制服で歌舞伎町に来たことにツッコミを入れる。
自分は警察の巡回ルートと時間を把握しているからいいが、彼女らはそうじゃないだろう、最悪補導もありうる。
とりあえずカウンターの隅の方の席に座りスマホをいじりはじめる。この会話の間に来た仕事の続きを片付けるために。

>百鬼六花、九石靱負、ALL

2ヶ月前 No.4

仮面之吸血鬼 @kaizelkai ★xYj0Urapfy_mgE

【 →都内公園/松笠  俊菊 】



 都内にあるとある公園。人気のない夜の公園に、一人の若い女性が追われていた。女性はソレから逃げる、その女性を追う者はどこにでもいる男性であった。姿形だけなら普通の男性にしか見えないだろう。しかし、口元がはみ出るくらいに伸びた牙、獣のように飢えた目、この男性は吸血鬼であった。強靭な身体能力を持つこの吸血鬼は楽しんでいる、怯える女性の姿を追い詰め、最後にその血と肉も食べるという楽しみを繰り返してきた。彼は巷でニュースになっている吸血鬼とは違うが、大して変わらない。彼も欲望と本能のままに生きる吸血鬼なのだから。

逃げ場を無くすように誘導し、ついに終わりを迎える。逃げ場を亡くし、恐怖と絶望に染め上がった女性はその場に座り込み、涙目を浮かべ、助けを乞う。吸血鬼刈りも来ない千載一遇のチャンスに、吸血鬼は女性に飛びかかった。口を開け、よだれを撒き散らしながら。







 ザシュ、という音が聞こえた。その異音が聞こえた時、襲いかかった吸血鬼は、女性に届く事がなかった。腹部に異変を感じ、恐る恐る下を見ると、赤い剣が腹部に刺さってた。赤い剣が自分の腹部を貫き、空中に支えられていた。
痛い痛い痛い、熱した熱い鉄棒を腹に突かれるような激痛に襲われる。剣を抜こうとしてもびくともせず、なら逆に身体を抜こうとした時、背中から二本目の赤い剣が逃がさないように刺してきた。女性は何が起きているのかわからず、混乱している。
どうする事も出来ない吸血鬼は必死に抗い、赤い剣を抜こうとした時、自分の目の前に宙に浮く4本の赤い剣が切っ先を向けていた。自分はどうする事も出来ない恐怖に襲われ、逃げる事も出来ない。いったい誰がこんな事をするのかと空を見上げると、誰かが見下ろしていた。



 黒髪、紅い鉄仮面、紅い甲殻のような手甲と脛当て、左肩には大型の実体剣があり、そして黒いコートの青年。
間違いなかった、人間を襲った吸血鬼を殺す吸血鬼の外見情報と一致した。まるで汚物でも見るかのように冷たい眼差しを向けられている。




『 お、お前は……仮面n―――』




 その吸血鬼が言い終わる前に、その吸血鬼の身体は六つの赤い剣による縦横無尽による動きにより、バラバラに切り刻まれた。肉片となり、襲われていた女性の前に転がり落ちた。そして、女性の前に降り立つ。血で濡れた六つの赤い剣は彼の背後に戻り、女性に振り向き、ゆっくりと近づいた。安心した女性は彼に向かって縋るように走り、抱きつく。そして泣きじゃくった顔で彼の紅い瞳を見た。
急に意識がぼんやりとしてきた。体温が熱く、まるで恋でもしたかのような感覚。彼になら今何されてもいいと思ってしまうくらいに。



「 ―――ごめんね。」



 急に彼から抱き寄せられ、助けてくれた彼がそんな事を呟くと、首元に痛みを感じる。何だか力が抜けて眠くなる、そしてその女性の意識は手放された。







―――







「 あービックリした。まさか抱きついてくるなんて……けど特に目立った怪我はないか。」



 意識を失った女性を抱き抱え、その辺りにあるベンチに座らせた。可愛い寝顔を浮かべる女性に微笑を浮かべ、さっきの事を思い出していた。まさか魅了した瞬間に抱きつかれたのは予想外である。抱きつかれた時に、女性特有のちょっといい匂いがしたのは幸運だと思っておこう。



「 それにしてもこんな夜中に歩いているなんて、襲われて下さいと言ってるものだけどなぁ。最近もニュースで観るようになったし……母さんに連絡しておこう。」



 ポケットから赤いスマホを取り出し、無料コミュニケーションアプリを起動し、母宛に夜は出歩かないようにとメッセージを送った。すぐに既読がつき、母からの返事に小さく笑い、スマホをしまう。
今日の夜空を眺める、今の世の中はまだまだ物騒だと思う




>>対象者無し



【本編開始おめでとうございます。】

2ヶ月前 No.5

フェリクス・ツー・バルシュミーデ @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【開幕おめでとうございます!天使で悪魔なおこちゃま吸血鬼ですがよろしくお願いいたします】

【港区六本木/高級マンション・自室/フェリクス・ツー・バルシュミーデ】

 がちゃん、がちゃんと金属が擦れ合う音が響き渡る。
 この部屋に置かれているのは年期が入ったグランドピアノ、柔らかそうな純白のソファーとガラスのコップと砂糖瓶だけが置かれた食器棚の三つだけだった。
 コップはあるのにそれ以外の食器はないのが余計、生活感のなさを演出している。
 鼻歌混じりにソファーに仰向けになって寛いでいるのは、人形のような風貌の少年だった。
 色素は薄いが白髪が多い傾向がある吸血鬼と比べれば、濃い金髪であり髪を揺らすと豊穣の麦畑が風になびく音が聞こえてくるような色だった。
 飴玉のようなころころとした青い目が映るのは心酔者から借りた、ノートパソコンの液晶画面であり、そこには連続変死事件かという題名で綴られたニュース記事だった。
「……んーぜったいこれ、ぼくらがやったよね」
 血も一滴も残さない殺し方ができるのは吸血鬼しかいないのを、知能が12歳のまま止まっている少年すらも分かる事件だった。
「けど、なんで殺しちゃうんだろう? ぼくならお腹いっぱいになったら召使いにしちゃうけどな」
 首を傾げて、目を伏せて殺害が理解できない少年だが、着目点がやはり超越たる存在である事を物語っている。
 がちゃん、がちゃんとぎこちなく少年の元にやって来たのは、真っ赤な血液が注がれたコップと透明な水らしきものが注がれたコップが乗った盆を持つ、メイド服の女性ブリキ人形だった。
 これが少年の言う召使いである。
 気に入った人間をブリキ人形に変え、生け捕りにして召使いとして世話をしてもらっているのだ。
 何故、彼がこういう事をしているのかというと遊び相手が欲しいからである。
 それは、召使いに囲まれて育てられた過去にも影響しているのかも知れない。
 差し出された二つの液体はメイドの手によって、一つの液体にさせてくるくるとガラス棒でかき混ぜられると、少年は屈託のない笑顔を見せてコップを取り、パソコン画面を悲しそうに見つめる。
「また殺されちゃうのかな? ぼくたち」
 きっと無差別に殺そうとする人間が出てくるのだろうと、胸中不安を抱きながら、砂糖水と鮮血が混ざりあったコップを眺めて、一口飲むとすぐに美味しそうな表情になった。

 この少年の名前はフェリクス・ツー・バルシュミーデ。
 19世紀の貴族の子として生まれ、ある病気に罹り、始祖によって病気を治され、まるで聖書に出てくる話だと感じ、始祖を教会で十字を切っていた神様だと思い込み、極東の島国までついてきた、幹部の吸血鬼であった。
>ALL

2ヶ月前 No.6

初見 @izuma☆VNvX9naPtFo ★XdmdoCx531_spV

【????→下水道→新宿歌舞伎町 バー「クロウ」/ニシザキ】

耳の裏から聞こえてくる規則的な音、何処か埃っぽい迷路染みた繁華街の路地裏の一路にて

盛大に鼾をかいて寝ていた一人の年老いた浮浪者(ホームレス)謹製のみすぼらしいダンボールの寝床の、つんと黴臭く湿り気が強い劣化した床の代替物の一角が僅かな物音と共に開く。床の代替物の下には数年前の再開発目的の区画工事の折に図面上は取り壊され埋め立てられた事になっている旧い下水道へ続く一つのマンホールが存在していた。

寝ぼけまなこで薄目を開いた浮浪者は、“前述”の合図として決められた打音が控え目に鳴らされた後、僅かな金属音を軋ませて下から開かれるマンホールを見て、(此処から出て来る)のは凡そ数ヶ月振りだな。と限り無く他人事の如き意識でマンホールの下から自身の寝床の隅に立ち上がる(男)の姿を見据え、そのまま生欠伸をしながら再び惰眠を貪らんとまどろみの中へ意識を手放した。

奇妙な間と、両者の(暗黙の了解)

片や馬鹿に出来ない額の金銭を、片や隠密と利便性を維持した“移動ルート”の一つを得て

互いが事情の深追いをせず。それで成立するウィンウィンの酷く味気ない関係という訳である。

(男)の方もまた雑魚寝している浮浪者の方には一切気を向けること無くマンホールを閉じ、何事も無かったかの様にその箇所を床の代替物で覆うとそのまま無造作に掛けられた衣類やら何やらを掻き分けて浮浪者の即席ダンボールハウスから路地裏へと音も無く紛れ込んで行った。

――――



夕暮れが徐々に迫る中でも寧ろ猥雑で炯々とした賑わいは勢いを増して行く繁華街――例え仮にこの世が永久の常夜になろうと恐らくは変わる事の無い照明が始まりつつあるネオンと多種多様な人の行き交いの中、(男)は黙々と目的地へと歩を進める。―客引きや因縁を吹っ掛ける無頼連中が反応する間も無く、その肩の間を擦り抜けて、まるで生気の無い(影)が如く存在感を殺した(男)は、小洒落たBARへと辿り着く、既に営業時間外かもしくは休店日である事を示す様に掛けられた(close)のプレート、しかし中からは割かし明確な複数人の声が聞こえてくる。

闇夜の中で蠢く蝙蝠共を狩る鴉(Claw)の集い。ある意味店名はまんまソレに相応しいのかも知れない。

がちゃり

(調達)を主として請け負っている(レイヴン)構成員の金髪の青年(九頭)が、大人し目で控え目な一人(百鬼)と、対照的に快活でマイペースなもう一人(九石)に声を掛けている丁度その時に入店した(男)、スキンヘッドに黒ずくめ、目にはサングラス、欠けた左耳には代わりの円形のオーグメンテーション(拡張型)の補聴器を取り付けてある、と言った出で立ちの素性も知れぬ(レイヴン)新規構成員は先に到着していた三名に挨拶する様子も無くズカズカと店内の壁際まで移動しそのまま壁に背を預けて腕組み状態のまま頭を前に傾げて、沈黙を貫く。

見方によってはまるでそういうオブジェクトめいた物にも見えなくは無いだろう。


≫九頭 龍次、百鬼六花、九石靱負、ALL

【早速置物化(殴 よろしくお願い致します。】

2ヶ月前 No.7

みっちゃん/サンクティス @altomare☆bTbpChSv7Og ★E1Xx3WCT5Z_wDx

【歌舞伎町(路地裏)/エヴァンジェリスタ・ディ・サンクティス】

 黒死病。
 其れはヨーロッパの人間の多くを死に至らしめた人類史上最悪の流行病である。近代に至るまで治療法は確立されず、感染経路でさえも特定されず、其の病に侵された人間は万に一つとして助かる事はなかった。14世紀の人間はまさに恐怖の権化とも云うべき黒死病に怯えて暮らしていた。ある者は鞭で己を痛めつけ贖罪すれば救済されると信じ──又、ある者は患者と目を合わせただけでも感染すると恐れた。根も葉もない虚言が世に渦巻き、社会をパニックに陥れた。勿論、そんな秩序も危うくなった状況で、患者の為に手を尽くそうとする者は居た。彼の男──サンクティスも其の一人だった。併し其の熱意も黒死病の前では無力で無意味だった。
 罹患したが最後、子供だろうと赤子だろうと放置し隔離する。死亡したとしても埋葬する事もせず、野に放り捨てるか或いは其の家に置き捨てた。当然、家族の抵抗など許されない。黒死病は其のまま死であり、14世紀の欧州は何処からも分からない死が蔓延した世界だった。黒死病の症状が現れようものなら其れはイコール抗いようもない死の訪れに他ならない。場所によっては感染が確認された段階で生き埋めにする事もあったと云う。正しく地獄だった。サンクティスはペスト医師として数々の患者を──死を見てきた。そして其の果てに自らの限界を見た。実に無念極まりない結果だった。多年を閲し光を見出しても未だ尚あの光景が脳裏から離れない。

 >時間が溶ける。追懐を心象する。

 嗚呼、そうとも。所詮は力がなくては人は救えない。患者はサンクティスのようなペスト医師に助けを求めた。併し黒死病専属の医師など名ばかりの集団に過ぎない。黒死病を根治する知識はなく、医師の免許でさえも持っていない。行うのは一笑に付してしまうような胡散臭い民間療法とせめてもの死体処理である。当然、善意でやっている者など一握りだった。多くは国に強制されて患者を診ていた。併しサンクティスは力は無くとも紛れも無く善意でやっていた。助けを求め死のカウントダウンを前にする患者に出来うる限りの事は尽くした。結果は報われなかったが其れでも命尽きるまで挫ける事はなかった。だが吸血鬼へと変性し死を経験して漸く悟ってしまった。

 >時間が溶ける。追懐を心象する。

 我が名は黒死病。人間を苦しめる死の概念が病として形となった存在。恐怖こそが我が糧であり、殺戮こそ生き甲斐である。欲無き欲は留まる事を知らず。我が躯は欧州を蹂躙した。高熱の症状こそ我が熱意、黒き斑点こそ我が接吻。死に愛され死に魅入られた力なき生き物よ。今こそ汝の死を告ぐ。追憶せよ有情の生を。体験せよ非情の死を。
 我が名は吸血鬼。人間を苦しめる黒死病が意思を持った存在。ただ人を死に至らしめ、其処から恐怖を生み出し、吸い上げ続ける。欲するは万斛の血。生み出すは無尽蔵の死体。世界を駆ける流行病の如く。西から東へ、北から南へ。人間を殺し、力をつけ、己を拡大させる為、己が意思で旅をする。我は黒死の悪魔にして告死の天使。今こそ汝の死を告ぐ。恐懼せよ我が姿に。戦慄せよ我が力に。

 >時間が溶ける。追懐を心象する。

 終わらない悪夢の中でサンクティスは覚醒した。もはや魂の拠り所は失われ、赦免の道は断たれていたが──併し砂より軽い死の累計が彼の男を蘇らした。吸血鬼となった事で人間としての正気を失ったが其の対価のおかげで彼の男はこうして生きている。

 「…」

 朱色の帳に宵の折を曳いた黄昏時。
 歌舞伎町の路地裏にてサンクティスは右手に握る小型ラジオから巷を賑わす例のニュースを聞きながら壁に凭れていた。足元にはなよついた色小姓の如きホストの死体が仰向けに倒れている。

>>ALL


【本編開始おめでとうございます!みっちゃんの方は後程】

2ヶ月前 No.8

オデット @rune1109 ★iPhone=UeQfQtu4fA

【 ルチア・メイナード / 港区六本木の高級マンション、自室→廊下 】


「 ふんふんふーん 」

 柔らかなソプラノを弾ませて戸棚を開け、規則正しく並んだ色とりどりの袋を眺める女性。
( 今日はどのフレーバーの紅茶にしようかなぁ )
 色とりどりの袋の背をなぞる仕草はまるで、清らかな魔法使いがネズミに魔法の粉をかけるようで、白に身を包んだお姫様がさえずる小鳥たちと会話しているようでもあった。

「 やっぱりアールグレイかなぁ、 」

 橙色の包装を、透き通るような人差し指と親指でつまんで抜き取る。包装をぴりり、と裂いてティーバックを取り出し、お気に入りの白いティーカップの中へ。
 たちまち背後からボコボコと音がして電気ケトルのスイッチをパチンと切った。
 熱湯がはねないように気をつけながら注ぎ、すぐにカップとお揃いのソーサーでフタをして蒸らす。
 待つこと一分。
 最後にティーバックを少し揺らしてフタを開けると、ぶわぁっと茶葉の香りが広がる。
 たかが近所の雑貨屋で見つけたティーバックといえども馬鹿にはできない。
 やや小走り気味にイスに座って膝に手を置き、まずは深呼吸。

 そして、お待ちかねの。
 テーブルの上に置かれた、ピンクの四角い箱。
 その箱を飾る黒のリボンをしゅるり、と解いて。
 ドキドキしながら箱のフタを開けてみると、

「 はわぁぁぁ……! 」

 中には4つの可愛らしくまぁるいお菓子__シュークリームがちょこん、と顔を出していた。
 うっすら小麦色のシュー生地の間には、それぞれカスタード、ショコラ、ストロベリー、マスカルポーネのクリームがたっぷり。みんな頭には雪のような粉砂糖を被っている。
 六本木のあるデパートで見つけた、このシュークリームのセット。
 一ヶ月前から並んで予約して、ようやく今日買うことができた自分へのご褒美であった。
( 今回はぜぇったいドジしないようにって、いっぱい、いーっぱい確認したもんっ )
 うんうんっと激しく上下に頷いて涙ぐむ。
 今までの不幸も、今このときの為のものだと思えば報われるものだ。
 そんなこんなで、目を惹かれながらどれを食べようか迷うこと3分。
 胸の下で腕を組んで首を傾げ、唸り続けてついに出した答えは、
「 あ、せっかくだからみなさんにもおすそ分けしよう! 」
 このまま一人でいればきっとずっと悩み続けていることだろう。
 誰かと食べれば選択肢は一つ減るし、何よりこのかわいさと美味しさ(まだ食べていないが)を共有したい。
 うん、我ながら名案だ。
 そうと決まればと、紅茶をグビっと飲んで立ち上がる。
 生ぬるいけれど、……まぁ仕方ない。
 ピンクのフタを戻し、ついでにリボンまでご丁寧に結び直す。思わず顔が緩んでしまって、フタをトントンと人差し指で叩いた。

 箱を紙袋に入れて自室を出る。
 誰と、とは決まっていないが、まぁ最初に出会った人と一緒に食べよう。うん、そうしよう。
「 ふふ、えへへぇ…… 」
 長い廊下の中を、満面の笑顔を溢れさせて歩くルチア。傍から見たら不気味だが、今の彼女にはそんなことを考える余地はない。
 その足取りは、羽の生えた天使が雲と雲の間を飛び越えるほどに軽やかで、軽やかで軽やかで、着いたつま先はどこか変なところに力が加わっていて。
 グラリ、と横に揺れる身体。

「 あ、あれれれれ……? 」

 その直後、「 ぎゃんっ 」という小さな悲鳴と鈍い音。
 きれいにおでこを床に打ちつけ、倒れたままピクピクと身体を震わせていた。

 __彼女が倒れている地点からわずか1m先には、横になった紙袋が。


>>周辺ALLさま

2ヶ月前 No.9

空澄 東雲 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【空澄 東雲/新宿駅→新宿区歌舞伎町バー「クロウ」】

 まだ、地上では麗らかな日差しが尾を引いているとある日の午後。新宿駅の名前が覚えられない改札の近くで柱に凭れた男が一人、呆れたように呟いた。
「相っ変わらずごちゃごちゃしてんねぇ、此処は」
 行き交う人々の余りの多さに思わず漏れた言葉は、誰の耳にも届かず消える。雑踏はいつだって雑踏であり、たとえ午前と午後の表記が逆でも人が溢れているのが正常だ。人波に気圧されるのはせいぜい田舎者か、長き時を生きすぎて変化に追い付けない者だけである。此処から人が居なくなるとしたら、それこそ目の前で人が死んだ時くらいだろう。
 以前この場所を通過した時の記憶を必死に呼び起こし、意を決して男・東雲は歩きだす――目指す出口以外に宛もなく。正確には行く先こそあるが、時間を潰す場所がなかった。

 何処からどう見ても大和男子の顔に金髪をのせ、着物に帽子に手袋にと、見た目は和装を勘違いしたホストのような東雲だが、その中身は吸血鬼であり、そのくせ対吸血鬼組織のレイヴンに属しているという大層な肩書きを持っている。そんな彼の目的地はレイヴンの構成員が集まるとあるバーだが、今から行っても誰もいないのは明白だった。
 一つ、真っ昼間から店を開けるバーは少ない。
 一つ、レイヴンの構成員には意外と学生組がいる。吸血鬼狩りなんぞより優先すべき学業(あくまで東雲の価値観に基づく)の時間はまだ終わっておらず、東雲のようにちゃらんぽらんに過ごせる者は少数派だったりする。
 それら諸々の理由から、今向かっても誰にも会えないと判断した東雲は、適当な商店を冷やかしながら進む。
 色とりどりのドーナツや行列の出来るタピオカドリンク店にこっそり目移りしながらも、結局のところ東雲が考えているのは一つ。先日起こった殺人事件のことだった。
 全身の血を抜き取られた死体がありました、なんて分かりやすすぎる同胞の仕業だ。よっぽどの阿呆か模倣犯か、剥製師辺りの犯行に違いない。誰が言い出すでもなくレイヴンはその事件について調べることとなり、東雲もまたレイヴンの拠点を目指していた。
 かれこれ一時間ほどリアルダンジョンと称される駅構内をさ迷い、歌舞伎町へと続く出口に辿り着く。そこから先は通い慣れた裏道、迷うことも、これ以上寄り道をすることもない。

「こーんにちはー、いや今晩はかな? みんな来てるかい?」
 カラン、というドアベルに合わせて声をかけると、返事の代わりに何故か香ばしく焼けた生地とカスタードの香りが鼻をついた。お土産、と書かれた鯛焼き屋の袋の向こうに、現役女子高生が二人と、塾講師と、何か経歴は謎だが凄そうな人がいる。
「ここも相っ変わらずむちゃくちゃな面子だねぇ」
 駅にいたときと同じような、しかし幾分か親しげな呟きを漏らす東雲に答えてくれる人は……今度は一人くらいいるかも知れない。

>クロウ内all

【遅くなりましてすみません、本編開始おめでとうございます。】

2ヶ月前 No.10

まりしろ @marisiro☆R6pOfpQmCLI ★EnYBKvgeSr_n3h

【ロゼッタ/歌舞伎町バー「クロウ」】

星一つない夜空の下で、ロゼッタは一人立ち尽くしていた。
緑色さえ分からない芝は荒涼とした風に吹かれ、恐怖をあおぐようにざわめいている。
彼女の立つ丘の随分先では濛々とした煙が立ち込め、熱を孕んだ赤色が街を飲み込んでいた。
優れた視力や聴力をもってしても、こう離れていては火の動きも熱の熱さも人々の慟哭も何も聞こえはしない。

――行こう、

そっと、ロゼッタの小さな手を誰かがつかむ。
悲しくなんてなかった。
ただ少しだけ後ろ髪を引かれたのは、もうあの居場所が何処にも無くなってしまったからに違いない。


「しっつれーい!」

暗闇を引き裂く大声に、ロゼッタはぱっと目を見開いた。
夕暮れ色の瞳の瞳孔が狭まり、一瞬緊張が走る。しかし、すぐに此処がレイブン拠点の「クロウ」であることを知り
自分の馬鹿馬鹿しさに呆れた。
バーの奥、入り口からは死角になるテーブル席のソファで体を横にしていたロゼッタは気だるげに体を起こす。絹糸のような煉瓦色の髪が
白い肌を流れていく。
時間は――、まだ開店時間ではない。
緊張で覚醒したはずの頭は再び朦朧としてきたが、甘く香ばしい匂いに連れられて立ち上がると、裸足のままタイルの上を歩く。
ひんやりとした冷たさが染みるように心地よい。

「ん、うまい」

入り口付近に「土産」とかかれた袋から無造作気に一匹わしづかみにすれば、頭からもぐり。もぐもぐ。
食べていると意識が形をおびていく。あたりを見て、数名の人と吸血鬼がいることに今更に気づいた。

「今日も集まりがいいのねえ」

3匹目の鯛焼きを食べ終わると、指先についた餡子を朱色の舌で舐めとる。
それから、手近なウィスキーボトルを掴むとロックグラスに流し込んで一気に飲み干した。

>>クロウ内ALL


【最初から酒キメててすみません。。。どうぞよろしくお願いいたします。】

1ヶ月前 No.11

無頼無慙 @mggjt984 ★Android=k0HfCcMoF4


【練馬区某所/???】


────はぁ、はぁ、はぁ。


荒い呼吸音と鼓動が耳の内を木霊する。前後不覚となった意識を繋ぎ止め無我夢中で闇夜の中を掛けていく。僅かに灯る電灯の明かりを頼りに歩道を抜ければ雑木林の影に潜む様に佇む古びた工場へとまさに駆け込む様に扉をぶち開ければ急いで鍵を掛ける。
薄暗い工場を奥へと進み寝床の一角へと歩む。
乱雑に散らかった雑貨類や財布や鞄、ガード類や野晒しにされた金銭類、そしてまるで獣が食い散らかした後の様に床に染み込んだ夥しい量の乾いた血痕、そして骨片。
それを越えて奥へと進み壁に凭れる、決して疲れている訳ではない。そも"あの程度"の全力疾走で疲れる筈がない。何故なら"吸血鬼"なのだから、血を貪り夜の闇を駆ける不死の化物。
何者をも恐れぬ不死種、しかし今の己が姿はどうだろうか。動悸で息は荒げ呼吸すらままならず全身に震えが広がっている。震える体を押さえつけ、早く時が過ぎ去って欲しいと切に切に願っている。それはまるで恐怖に怯える子供の有り様に良く似ていた。
そう、恐怖───化物たる己が恐怖に怯えている。その事実を自覚した時にその恐怖の根元たる記憶が脳裏に再生される。


何時も通り、何時も通りの日常。腹が減れば仲間と共に狩りに出掛ける────人間狩り。幸い獲物には困らない、何せこの街には腐るほど人間が生きている。選り好みさえしなければ人間の一匹か二匹位を狩れば腹は暫くは持つ。
老若男女問わず、適当に人気のない所に人間が居たら仲間と共に襲い、寝床に持ち帰り、そしてかっ喰らう。
血だけではなく肉ごと、余さずに残らず喰らい尽くす。食人鬼染みているが肉も貴重な栄養源であり、同時に死体の後始末が楽になる。この地区に吸血鬼狩り共が目を光らせている以上、死体という最大の証拠を残すというのは余程の馬鹿か、或いは吸血鬼狩り共に喧嘩を売る過激な連中のどちらかだけ。そもそも人間一匹の血を訳あったらどう考えても量が足りない、かと言って一度に多くの人間を狩れば吸血鬼狩りにすぐに嗅ぎ付けられてしまう。
よってどうしようとも必然的にこうなるのだ、金持ちの吸血鬼は金で人間を買い優雅にワイン代わりに血を啜るなんていう噂を聞いた事はあるが、その噂の真偽がどうであれ自分には関係のない話だ。
こうして仲間と共に何時も通り、馬鹿をして遊んで暮らしていければ御の字、それが自分の望み───だった。

そんな自分のささやかな望みは呆気なく砕かれた。何時も通り、何時も通りだった。
腹が空いて仲間と共に狩りに出掛け丁度程近い"狩場"にて今夜の獲物を見定めた。
ざっくばらんに整えられた黒髪に妙に小汚ないコートを羽織った中肉中背の男性が一人。
獲物を観察し、頃合になった瞬間に合図で先ずは仲間の二人が前後から男を押さえ込み、最後に自分が得物である金属バットで獲物の頭を叩き砕いてそれでお仕舞い。これが自分達の狩りの必勝法であり今までしくじった事は一度もなかった。また今日も何時もの様に晩飯が一匹手に入る筈、だった。
事が起こったのは一瞬だった、男の背後から迫った仲間の一人、そいつの四肢が斬り飛ばされ間髪入れずに首が血飛沫を撒き散らしながら宙を舞っていた。
その光景を目の当たりにしたもう一人の仲間がすぐさま襲い掛かるが瞬きをする間に全身の急所を穿かれボロ雑巾の様に外壁に磔にされた無惨な姿に成り果てていた。
二桁を越えぬ秒の合間、たったそれだけの間に仲間の二人がまるでボロクズの様に嬲り殺しにされた。
訳が分からない、どういう事だ、余りにも不条理な光景に考えが思考が纏まらず半ば恐慌状態に陥っている最中にその男と視線が交わる。
表情までは読み取れなかったが発せられる視線のみでその男の感情を感じ取るには十分だった。
殺気、殺す、殺意、ただそれだけが滲み出た眼差し。余りの濃い殺意を感じ取り思考は恐怖に塗り変わる。武器を放り捨て、踵を返してその場から逃げ出す。
男が吸血鬼狩りだったとか、何故自分達の存在がバレていたのか、仲間を仇を取る…その事への考えは回らなかった、いや回す余裕が無かった。
この場から逃げ出さなければ確実に首を斬り飛ばされる、その光景を確かな映像で幻視してしまった、逃げなければ殺される。嫌だ、嫌だ、嫌だ、死にたくない。
ひたすら走り、走り、走り抜けて、そして今の有り様だ。世界が終わった様な心地だ、もし夢ならば覚めて欲しい、目が覚めたらまた何時も通り、寝食を共にした仲間が出迎えてくれる、人間を狩って、食らって飲んで、盗んだ金で女を引っ掻けて抱いて、そんな毎日がまた訪れる、そんな希望を抱かせてくれ。
そんな願いすら砕く様に先程閉めていた扉がまるで何かが激突したかの様に弾き飛ばされ、派手に舞い上がりアスファルトの床に横倒しになる。
反射的に手が口を押えその場で像の如く硬直し息を潜める。一歩、一歩と歩み寄る足音が工場内に反響する。次第に足音の響きが近場から聞こえてくる様になる。
此方に近付いてくる、心拍音がまるで地鳴りの様に響き、体の震えが更に激しくなる。
正常な思考は働かない、恐慌状態に陥った思考は最早自身が何を考えているかすら判別が出来ていない。ただ確かな事は恐怖を軸として殺意がその内に芽生え、体を動かしていた。


─────殺さなければ、殺される


手近にあって鉄パイプを握り締め、影の中を這うように歩んでいく。機敏化した感覚が視界に頼らずとも物の位置や配置を本能によって把握し最も気付きづらい最適な道を選択し、己が恐怖の根元の下へと向かう。
気配が強まる、足音は間近で歩いているのかと思うくらいに強くなる。動きからして此方の存在を未だに気付いてない。殺せる、そう確信が持てた、相手は所詮は人間だ、人間なのだ。ならば殺せる、殺せる筈だ。今までも殺してきた、簡単な事だ、そうだ絶対に殺せるのだ。
理論すらないまるで子供染みた確信が虚勢の自信となり体を突き動かす。
息を潜め、気配を殺し、背後に迫る。
その距離、約15m。吸血鬼の身体能力を持ってすれば瞬きする間に彼我の距離を詰められる。
未だに相手は此方に気付いていない。殺すならば今、そう確信しそして行動に移す。
込めた力にアスファルトの床が耐えきれず陥没する事も構わず、渾身の力を以て蹴り上げる。
二歩、三歩と更に蹴り上げ加速を付け、距離を詰める。
最早この速度では回避出来まい、一息にその頭を砕いて殴り殺してやる。
しかし距離を詰める間際、その男の視線が此方を捉え瞬時にして身を後ろへと捩ると同時に振り切った腕が空を切る。
その行動の理解を挟む間もなく、両の肩口に一瞬だけ刺す様な痛みと熱が走り、そして血と肉片が弾けていた。
何が起こった、と脳の思考が今ある状況を理解できないでいる。確かに言える事はその血はたった今、自身が殺そうとしていた男の物でないということ。ではこの血は誰のものなのか?。
しかしその答えは嫌でも理解する事になる。自身の視界に、千切れた己の腕と肉片、骨が血飛沫と共に宙を舞っている。自身の視界内で爆ぜ血の正体は自分自身の両腕であったのだ
理解した瞬間に発狂する様な痛みが肉体全体に走りその場に転がる様に。
痛い痛い痛い痛い痛い、嗚咽と悲鳴を上げながら涙を垂らしのたうち回る。溢れ出る多量の血液がアスファルトを濡らし朱に染め上げていく。
今にも激痛により掻き回された意識を繋ぎ止め、何とかして立ち上がり逃げようともするも再び突き刺さる様な痛みと熱が両脚に広がる。脚を見る暇もなく破裂音と共に両脚の膝から下が消し飛び、足の残骸である肉片や骨、そして血液が辺りにぶち撒けられる。
再度悲鳴を上がるがそれがもはや自身の悲鳴であったことすら理解出来ず芋虫の様に地を這いながらも何とか逃げる事だけは止めようとしない。
執念の域とも言える試みだがしかし、全くの無駄に終わる。
這い回る体の重みが増し途端に動けなくなる、いや重みが増したのではなく体を押さえ付けられているのだ。
誰に押さえ付けられているのか自ずと知れた。
そしてその先に何が起こるかも容易に予想が付くと筆舌にし難い恐怖に蝕まれ殊更、一層暴れ狂う。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、死にたくない死にたくない、助けて助けて助けてください、まるで駄々を捏ねる子供の懇願染みた訴えは虚しく工場内に木霊するのみ、誰の耳に届く事はなく闇夜に溶けて行く。
暴れる頭を後頭部から掴み上げられればそのまま固定されて、最早藻掻く自由すらも奪い去られ、許されるのはただただ咽び泣きながら虚しく訴えを続ける事だけ。
月光に照らされ一条の光が影よりその姿を露にし、淡い蒼色の燐光を発しながら刃が首に宛がわれる。
迫る断頭の瞬間を肌身で味わえば子供の様に泣き喚き、更に許しを懇願する。


─────ご免なさいご免なさい、許して下さい。許して許して許して、もうしません。何もしません、だから許してください。許してください。許してください。


しかしその懇願は遂に届く事はなかった。何故なら元よりその願いは許されないのだから。
今際の際にそれを理解した断末魔の叫びを最後に再び闇夜は静寂へと包まれ、夜は過ぎていった。

→→

28日前 No.12

無頼無慙 @mggjt984 ★Android=k0HfCcMoF4

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28日前 No.13
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