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【VS】幽幻堂出版社の副業Days【骸骨武者】

 ( オリジナルなりきり )
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語り手 @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

幽幻堂出版社

それは、幽霊や心霊現象についての雑誌を発売している会社である

定期的な出版物は『月刊 裏の世界』、『ちまたで人気の心霊スポット100選』など

内容は、日本各地の心霊スポットの写真や、妖怪の解説など、その手の内容満載。リアリティーのある写真や、斬新な解釈等で、コアな層に人気の雑誌を発売している

まぁ、そのコアな層の人数も多いはずは無く、経営は火の車なのだが

そんな、会社ではあるが、雑誌の編集とは別に、とある副業があったりする…

〜とある廃校舎にて〜

薄く月明りが照らす、朽ちた廃校舎。その中に三つの人影が写る。その人影は物陰に身を隠すようにしゃがむと、教室内の様子を廊下側の窓から覗いていた。

一人は、ヨレヨレの白衣にボサボサの頭、不精髭の細身の男。歳の頃は20前半であろうか。

その横にしゃがんでいるのは、低い身長の吊り目で三つ編みの女の子だ。きっちりと制服を着こなしたその女の子は、さっきまで背負っていた動物型のリュックの中身をゴソゴソと漁ると、カメラを取り出す。

そして、その後ろで震えているのは小柄な老人である。立派な口ひげを蓄えた、そのスーツ姿の老人は、おどおどしながら二人の後にピッタリと寄り添うのだった。

その三人の視線の向かう先。教室の中には、異形の姿の者が5匹ほどたむろっている。その異形の者は、姿は人間のであるが、全身は黒く、瞳の部分だけが、らんらんと紅く輝いていた。

「おい、じーさん。その幽霊とやらは、こいつらでいいのか?」

視線を幽霊から外さぬまま白衣の男は老人に問いかける。その手はポケットに伸び、煙草の箱を掴むと、器用に一本だけ振り出して口に咥えた。
その様子に横から、女の子の小声の怒声が飛んでくる。

「じーさんって……社長!!依頼主に何て口を聴いているんですか!!それに、こんな時に煙草って、緊張感が無さすぎです!!」

女の子の吊り目気味の目が、さらに上がり、掴みかからんとする勢いなのを、老人が気にしないと慌てて宥めた。

「ほ〜れ、じーさんは気にしないって言ってるぞ、理子。それに、この程度なら、余裕だろ」

軽口をたたき、煙草を吹かす社長に、理子と呼ばれた女の子はギリリと歯ぎしりをして悔しがる。それを老人が苦笑して眺めるのだった。


「社長、一応写真は撮りましたよ。ただ、私の腕前では、使えるかどうか……」

「それは仕方ねぇよ。俺が撮っても一緒だ」

「分かりました。じゃあ私も準備してきますね」

そう言いバックを抱き物陰に行く理子に、社長は了解の意で軽く手を上げる。
心霊写真を撮るのには技術がいる。不思議な物で本物をはっきり撮っても、誰も信じてくれない。だから、若干ぶれたり、ぼかしたり、そういう技術がいる。理不尽な話だ。不幸にも今日はカメラマンは用事があり、来れなかった。撮れていれば一週間ぐらいの煙草と酒代にはなったものを……

口惜し気に、ギリギリまで短くなった煙草の火を携帯灰皿に押し付けて鎮火する。辺りに再び暗黒が訪れた。一瞬の静寂。

「さてと、じいさん、最終確認だが……」

携帯灰皿の口をパチンと閉じると、社長は頭を掻きながら、バツの悪そうな表情をする。今から行う仕事が、自分にとって一番嫌な仕事だという事が分かっているからだ。

「この世に未練はねぇな?」

ぶっきらぼうな言葉。それでも彼は、老人の目を真っ直ぐ見つめ問いかけた。

「ええ、大丈夫ですよ。私と子供達の思いが積もったこの学び舎も、老朽化で取り壊しが決定しておりますし、一度は死んだ身ですから……。それまでの安全が保障出来るなら未練なぞ、ありませんな」

真っ直ぐな眼差しに、老人は気にするなとばかりに、やはり笑顔で返答した。
某県某村の小学校だった、この建物。少子化という事もあり、昔は大勢の子供達が通っていたのが、一人二人と減っていき、最終的にはこの地区の学校は一つに統合され、この校舎は使われなくなったそうだ。
この御老人はこの村の出身であり、学び舎の最後の校長だった。残念ながら、退職後すぐに病気で鬼籍に入られたが、守護霊として、この学校に赴き、雑霊を追い払っていたそうだ。
しかし、何時の頃からか、この校舎は心霊スポットとして、注目を集め始めた。人の欲のエネルギーというのはあまりよろしく無く、案の定、悪霊を呼び寄せてしまった。最初は頑張って追い払っていた物の、その悪霊は力を強め、肝試しに来た若者を襲うという事態にまで発展したのだった。
そこで、一週間前に幽霊からの依頼を専門に行う、幽幻堂出版社に声が掛かり、今に至るという訳だ。

「そうか、分かった」

命の確認作業というのは、何度やっても慣れるものではない。一週間も一緒に居れば多少は情が移る。もっとも、慣れる事もないであろう。それだけ言うと、首にかけていた銀の十字架を老人にかざし、社長は目の前で十字を切る。そして祈りの言葉を奉げると老人の体が淡い緑色の光で包まれる。

「お待たせしました!!」

そのタイミングで、物陰で準備をしていた理子が戻って来た。紅い袴の巫女装束に身を包み、両手首には緑色の数珠。手には、六角鉄杖が携えられている。そして、光に包まれた老人を見ると、状況を察して駆け寄った。最期の時が近いのだ。
理子の目は涙を湛えている。

「御免なさい、泣かない様に、いままで我慢してたんですけど、やっぱり駄目……。短い間でしたが、ありがとうございました……。おじいちゃんが、返ってきたようで……楽しかったです……」

手を握り、嗚咽の声を出さずに涙を流す理子。

「私の方こそ、ありがとう……。小学校の校長に戻った様で楽しかったですよ……」

老人は、その頭を撫でる。まるで幼子をあやすように。

社長も、何時もだったら、「高校生なのに、小学生に間違われてやんの!!」と突っ込んで、理子に殴られるまでがテンプレートだが、流石に空気を読んで何も言わない。
社長は教室の中を注視しながら、腰のホルダーに入れた2丁のマスケット銃を取り出す。十字架が彫られ年代物のマスケット銃。型式こそ古がそれは所々改造され、リボルビング式になっている。社長は白衣の内側から、弾丸を取り出すと、手慣れた様子で詰めていく。
やがて、中の一匹がこちらに気づき、視線が合う。こちらに体を向けると、低い獣の様な唸り声を上げ始めた。それに、釣られる様に、2匹、3匹とこちらに警戒の威嚇を始める。

「では、そろそろ行きますね!!あちらの世界でも、お元気で!!」

涙も拭かぬまま、それでも満面の笑顔で、名残惜しそうに手を離すと理子は合掌し呪文を唱え始める。すると、理子のすぐ脇に白い煙が現れ、徐々に形をなしていく。やがて、それが狐の型になる。

「天狐様、我に力を!!」

そして、最後の念で煙の狐が、理子に飛び込み憑依した。
狐の耳や尻尾が生え、顔には6本の髭が生ずる。両の拳は炎で包まれ、その炎は六角杖にも伝わる。先程の涙も熱で蒸発した。
ぴょんと飛び、社長の傍に来ると、鼻息を荒くし両手で槍の型の様に杖を構える。

「気合いが入ってんな」

「もちろんです!!塵すら残しません!!」

「久しぶりに意見が合ったな、俺もそんな気分だ。じゃあな、じーさん、あっちの世界でも達者に暮らせよ!!」

社長は老人の方向を見ずに、それでも珍しく声を張り上げ、老人に最期の挨拶をする。

目線と水平に合わせたマスケット銃から、廊下のガラス越しに銃弾が放たれる。
ガラスはけたたましい音を上げ割れると、弾丸が一匹の額に吸い込まれた。
そして、ガラスの割れた音を合図に理子も、焔を上げながら低い姿勢で一直線に教室内に飛び込むのであった。



幽幻堂出版社

その副業は幽霊からの依頼を専門に請け負う、ゴーストハンター達の集まりだ

行き場の無い霊、この世に強い思いを残した霊

そんな霊達の声を聴き、心安らかに天に召される様に問題を解決する

これは、そんな奴らの物語

霊達の届かぬ願いを叶える、ちょっと変わった奴らの物語である

【目を通して頂きありがとうございます!!よろしければ、サブの方も覗いていって下さいませ〜】

メモ2019/01/27 22:12 : ユンボ @yumbo★9YegwOCpFV_8By

【幽幻堂の愉快な社員達】


http://mb2.jp/_subnro/15793.html-6

六港譲(ろっこう じょう 通称:ジョー)

【ケミカルブレット】

社長 25 男


http://mb2.jp/_subnro/15793.html-7

稲荷理子(いなり りこ)

【稲荷神社の狐憑き】

秘書 17 女


http://mb2.jp/_subnro/15793.html-49

永代橋岐(えいだいばし ちまた)

【聖蝶姫】

アルバイト(素人枠) 17 女


http://mb2.jp/_subnro/15793.html-48

虎杖浜唸(こじょうはま うなり)

【猫の威を借る虎】

カメラマン 19 女


http://mb2.jp/_subnro/15793.html-18

寧々庭奈布(ねねにわ なぬの)

【な行の罠王】

ライター 25 男


http://mb2.jp/_subnro/15793.html-19

旅籠宗助(はたご そうすけ)

【神通の錬金術師】

…続きを読む(25行)

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@kw1 ★iPhone=WeLdY42O45

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5ヶ月前 No.28

緑酢 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_lXe

【旅籠宗助/路地裏→幽幻堂前】

「ふむ、折角の雪なのだから上手く錬金術を施して戦闘用に使える武器や普段使いに役立つ道具を製作するべく化学反応を起こしていたのだが、残念ながらこれ以上は不可能の様だ」

そう人間一人分しか通らなそうなかなり狭い路地裏でビニール傘を刺したロングコートの男性が一人、落書きだらけの壁に平気で寄りかかって何やら独り言を無表情で呟いていた。

「だが丁度良かった。長らくこの寒さで風邪を引きかけ、さらに私の魔力も少し消費して疲れていたのだから」

しかしそんな不審者にしか見えない彼だが、実はその正体は神の所業かと思う程の錬金術を扱える事から通称、神通の錬金術師と呼ばれている幽幻堂出版社経理、そして幽霊退治を副業として活躍している元詐欺師、旅籠宗助であった。
ちなみに神通の錬金術師と言う異名は当時、詐欺を行っていた時に使っており適当に名付けていた異名。勿論、名付けの理由も全て詐欺師時代の嘘である。

そんな現在はちゃんと錬金術の使い手であるはずの彼であったが現在、ある理由でその錬金術を扱えないでいた。何故なら、この状況を午前中の授業があったのだろうか、近所に在る高校の生徒達に見られてしまった為。特にいくら幽霊退治がある程度人々に知れ渡っているとはいえ、掌で雪の化学反応をひたすら無表情で起こしている大人を見れば事情を知らない限り、誰でも怯えてしまうであろう。

「だが錬金術を使用する事で雪の移動と言う観点では非常に利便性が効いている。これなある程度の雪かきを行わなくても楽に周囲が片付くだろう。するとどうだ。私の同僚や社員、社長達が楽に出勤や退勤が出来る。まあ、私の魔力が尽きればそれで終わりなのだが」

ちなみにやけに旅籠が異様とも言える程、独り言の数が多いのはちゃんと常に高潔である自分を演じられる様にする為の練習。それはいくら自らを高潔に仕立て上げても飽く迄も彼の性格は詐欺師時代から変わらない私欲に塗れた薄汚いクズに過ぎないと彼自身が考えている為。

「さて、錬金術実験に夢中になり過ぎて本業である幽幻堂の仕事を疎かにしてしまったな。一応、雑誌における売上のチェックでも行っておこう。後はそれによる利益や損失を簡単に計算すれば……」

そう言いながら旅籠は見た目の厳格そうな雰囲気に反し、若干いい加減な勤務態度でその場をゆっくり徒歩で後にして職場である霊幻堂へと身体を向ける――





――しかしもうすぐ職場へ辿り着くと言う距離まで歩いた所で、その職場である霊幻堂が幽霊らしき大鷹に襲われている事に気付く。

「ほう、今回の依頼者は随分と威勢が良いな。だが彼等は上手く切り抜けながら対応しているのだろうか。なるべくどの様な生命体であろうが最期の瞬間は私も立ち会いたいものだが、今、考えるべき事は同僚や上司、そして社長の安否だ」

そう言って意外にも社員について心配する旅籠はとりあえず、霊幻堂の割れてしまった窓ガラスの前まで向かって行く。

「成程。これは一体、どうやって損害賠償の請求書を書いておけば良いのかな? 全く、余計な出費はこの企業の首を絞めるだけだと言うのに。とにかく亡霊が窓ガラスを割ってしまった場合において窓ガラスの保険が適用されるかどうか確認しないと」

そう言って亡霊であろう大鷹に嫌味を言い放ちながら、事前に身体の中で霊力化しておいていた短刀を完全に掌で再現させ、所持する事にした。

「遅れてすまない。錬金術における実験を行っていた為、事務の仕事を遅刻してしまった。まあ、どうやらそれどころでは無いらしいがな。とりあえず、霊力が尽きそうな社員は私が回復させておこう。しかし残念だが怪我等と言った霊力とは関係ないのは回復させる事は不可能だ、すまない。せめて怪我をさせた者に対して私が一発、軽くだが文句でも言っておこう」

>>周辺ALL様

【何とも遅れてしまいましたが、これから宜しくお願い致します!】

5ヶ月前 No.29

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=IABzHrSWjz

【仰扇 / 外→幽玄堂】


「あぁ、すまない」

岐から渡されたカイロをポケットへ、ドリンクを傘とは逆の手に持って礼を言った。正直カイロはともかく栄養ドリンクまでもらえるとは思っていなかった、年下にまで気を使われるぐらいには弱っているのが丸わかりのようだ。もう少し健康に振る舞う努力はしておいた方がいいかもしれない。

帰っていく彼女を見て、鳴の方も幽幻堂へと戻ると言い、あちらへと向かう素振りを見せた。その直後のタイミングで彼に電話がかかって来た、相手は大体分かる。呑気そうに話していて仕事終わりは羨ましいと一瞬妬んだが、そこから彼の様子は一変した。何やら会社が襲われているらしく、社長も応戦しているとのこと。さっきまでの陽気さはどこへやら、こちらが返事する暇も岐からもらったビニール傘を使う暇もなく、幽幻堂の方へと戻っていった。


「何の理由もなく襲われるわけがあるまい、大方幽霊化した依頼人絡みなのは分かる、俺にはどうでもいいことだが…」

まるで興味のなさそうな口ぶりで誰もいない虚空へ言い放つ。金にならない仕事は絶対にしない、その主義は今も昔も変わらない。こちらも現場へ向かおうと足を動かそうとした瞬間、携帯を入れていたポケットが震えた。誰かからの電話だ。相手は、丁度これから向かう場所に住まう人間、急にどうしたんだ。

「あぁ、俺だ…」

電話越しに語られた相手の言葉に、返す言葉はなかった。「あぁ、そうか」と最後に相槌を打っただけで電話も向こうから切られた。内容は至極簡単、除霊が完了したからもう大丈夫、だと。俺以外にも依頼していたのは、それはまぁ確実性を求めるなら当然のこと。だが俺が夜型なのが災いし、同業の人間が既に仕事を終えていた。最後にかかってきたのはせめてもの情けと言わんばかりの謝罪電話。向こうに着いて知るよりかはまだマシなのかもしれない。にしてもこんなあっさりと仕事が取られるなんて、お笑い沙汰だ、全く。



「ア”ア”ア”ア”ア”ァァァーッ!」

大きな唸り声をあげ、発狂しながら幽幻堂へと一目散に駆け抜けた。会社前にたむろする腐敗した鷹軍団とこの面を着けた男、どちらが敵なのかと今問われたら自分でも疑問に思ってしまいそうな勢いだ。だがそこには哀しみも笑いもない、あるのは純粋な怒りと仕事を奪った相手への激しい殺意、その衝動が具現化したかのように、ドリンクをポーチへと収納し空となった方の掌に小さな正方形が産まれた。といっても本当に具現化されたのではなく、彼が生業とする結界術の一つ。

幽幻堂は窓ガラスが割れているのが確認できる他に、社員達が外での対応に追われている。恐らくは社内も同じ状況になっている。他の社員がいないのはそのためだろう。自己最高記録の速さが出たおかげですぐに襲われている本社は見えた。そこまできても止まらない、まだ豆粒ほどしかない結界を上空の鷹めがけてぶん投げた。蝶の影響が出ておらず、まだまだ凶暴な輩の方へと狙い通りに飛んでいく。やはり腐っても鷹だ、その小さなカケラに反応し5匹ほどが集まる、鳥類の目は反則級の性能だが、その凶暴性と鳥の目がこの結界に対してはアダとなる。集まった5匹の鷹を覆うように結界が展開、瞬きほどの時間で大きくなった結界に反応できず、見事に閉じ込められた。本来ならここから色々派生させるが、今回はこのまま消す。

伸ばした手を強く握ると、今度は結界があっという間に収縮する。鷹も逃げようと羽をばたつかせたが、健闘むなしく結界に押し込まれて行き、やがて結界と共に点のような小ささとなって消滅した。しかしそれでも全体から見れば雀の涙ほど、まだまだ鷹は沢山いる。

「こっちも増援到着だ、約1名な」


≫all様

5ヶ月前 No.30

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_Qi5

【 永代橋岐 / 幽玄堂前→幽玄堂 】

 一人お外であくせく鷹を浄化している内に、所長から連絡を受けた鳴が猛ダッシュで帰って来た。さすが成人男性なだけあって岐なんかの全力疾走よりよっぽど早い。自らの能力を駆使して颯爽と鷹を駆逐していく姿も堂に入っている。岐にはああいった芸当ができない。あくまで浄化だけが能なのだ。しかし半人前だからこそ、一人前の相手を羨み立ち止まっている暇などない。まして嫉妬する余裕など。そんなものにわき目を振らず、新人はただただ努力と邁進あるのみ。劣等感と向上心は別物だ。実力の及ばざる者こそ、下手な感情に足を引っ張られず色々なことを精力的に頑張らねばならない。
 伏せてと言われた通りに伏せ、ついでに蝶々たちも巻き込まれぬようちょいちょい手招きして自分の周囲に低空飛行させる。鷹は空高く飛んでいたせいで雷が直撃して何羽も黒焦げになつていた。さすがの攻撃力。あんなのが蝶々たちに直撃していれば跡形も残らず消滅していただろう。なにせ人間相手だろうと幽霊相手だろうと触れた瞬間に取り込まれる防御力ゼロの蝶々たちだ。耐久性でいうとそこいらの野鼠のほうが上回っている。

「身に余るお言葉、かたじけのうございます。ひとえに鳴様のお力で御座いましょう」

 鳴から投げられた感謝の言葉に、こちらも感謝の意を示しつつ相手の力量を慎ましやかに賞賛する。実際、あれだけの威力の雷が落とせるなら岐の浄化が無くともほとんどの鷹を仕留められたに違いあるまい。が、多少であれど岐の力が目上の人物のお役に立てたのも事実は事実。それは素直に有り難く頂戴しよう。
 伏せていた岐や低空飛行していた蝶々たちが元の体勢に戻ると同時、どこかで何かをしていたらしい旅籠宗助が独り言を呟きながら空飛ぶ鷹をスルーして平然と幽玄堂に入っていくのが視界に入った。彼はいつもあんな感じなので今さらそのことに関して戸惑ったりはしない。鳴が人を悪口に近いあだ名で呼ぶのと同じく、ああいう点は彼のもはや変えられぬ性質なのだから。言ってしまえば岐の蝶々ムーヴもそんな感じだ。

 怪我人の手当てはもうそれに相応しい人物が担当している。ならばそれは人様のお仕事、己の務めではない。できることが浄化しかないなら、できる浄化をひたすらに頑張る。それが今の岐の義務。
 鷹たちが凄まじい勢いで駆けて来た扇に気を取られた一瞬の隙を突き、割れた窓から蝶々らと共に身を滑り込ませ幽玄堂の中へと入る。小さな硝子の破片にまみれて着物の袖がキラキラと輝いて見えるのが、宝石みたいで綺麗だななんてこんな状況なのに呑気に思ってしまった。しかしこの感想を父に漏らせば「じゃあ今後は君のために仕立てる蝶々の振袖の表面にスワロフスキーをまぶそう!」と言ってスキップでも踏みながら呉服屋へ赴いてくれるだろうから、これ以上人目を惹く派手な格好をする破目にならぬよう沈黙を金と口を噤む。自分の発言がどこから父の耳に入るか分からない。

「遅ればせながら。多少なりともお力添えになれれば嬉しゅう御座います」

 建物内に転がり込むと同時、ぶわりと蝶々を袖口から立ち昇らせてオーロラのように波状で揺らめかす。半透明だから向こうの景色は見えるし、これだけ広範囲に蝶々を飛ばせばどんな鷹だって窓から入り込んでくる時に蝶々に触れざるを得ない。それ即ち浄化の影響に晒されるということで。
 霊力の消費が多くなってしまうのが難点だが、これで鷹たちの攻撃性を軒並み少しずつ減少させられるはず。仮に自分がヘバってしまっても、ここには実力派の先輩がたくさんいるのだ。多少無茶したってどん詰まりにゃあならぬ。

>八月一日鳴様&ALL様

5ヶ月前 No.31

@purple3ru ★iPhone=5uXDFiflht

【 虎杖浜唸 / 幽幻堂 】

車掌さんが応接間の方へ行くのを確認して、苺大福を食べ進める。うん、やっぱりおいしい。和花の手が伸びてくるのを視界に捉え、静かに遠ざける。あげませんからね、オレが責任もって最後まで食べきります。そんな緩い攻防を終え、モグモグと咀嚼していると――

「きゃあっ!?」

窓が派手な音を鳴らして割れた。危うく大福を喉につまらせるところだった。正月の老人みたいな死に方をするところだった。
硝子を割ったのは鷹。(ガラスとかけて烏が来たらちょっとだけ面白かったのに!)歩く死体――否、飛ぶ死体? フライングデッド? とにかく、あちこち破損し腐っている死体みたいな鷹が襲ってきた。おばけ全般苦手な唸は当然ゾンビも無理である。涙の量が増した。
ややパニックになっていると、社長から指示が出る。依頼人の安全が最優先、鷹に後悔させる。それを踏まえて、自分のすべきことを把握するべく、まずは周りを見渡す。
岐ちゃんはいつも通り蝶で浄化。鳴さんは攻撃。和花さんは侵入阻止。奈布さんは車掌さん援護。あっ……鳴さんが回復に行った。宗助さんが帰ってきた。仰扇さんも来たみたい。……まあ、

「アタッカーのオレは、殴るしかないんですけどねっ!」

ぐし、と涙を拭うと、苺大福をそっと開けた袋の中へ戻し、首から下げた大事なカメラを机の上へ置いてから、デスクの下にこっそり置いてあるバットを取り出す。殴れば殴るほど攻撃力が当たる。そんな後半戦どんとこい系能力の唸には、鷹をぶん殴り続ける以外の選択肢が無かったのだった。

「えぇぇーいっ!! よくも理子ちゃんをやってくれちゃいましたねっ、絶対許しませんからぁー!!」

怖さを吹き飛ばすように大声を上げながら、両手で握りしめたバットで、鷹の身体を殴打する。身長が割と高めで良かった。空飛ぶ的に届かないなんてことが無いから。

>>幽幻堂allさま


【完全に遅れをとった!!そして私は戦闘ロルが死ぬほど苦手な上 状況が把握しきれていないので指摘しながら温かい目で見守ってください(死)】

5ヶ月前 No.32

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【稲荷理子/幽幻堂】

「な、奈布さん、依頼者なんだから、もっとお手柔らかに。乱暴にしてすみません!!」

痛む傷を抑えながら、アワアワと依頼者に謝る理子。だが、緊急事態だけあって強くは言えない。中腰姿勢でこっそりと近づいた奈布が、車掌を隅に飛ばしワイヤーを張る。触れるなと言っている事からも、おそらくは何か仕込んであるのだろう。罠王の異名をとる奈布。食玩を集めたり、罠に必殺技の様な名前を付ける子供っぽいなと思う所もあれば、今回の様に機転を利かせる大人の様な面も持つ。まだ、人生経験の浅い理子にとって、よく分からい部分は多い。だが今は、自分より一回りも大きい、その猫背が頼もしい。

「すいません、奈布さん、助かります……」

奈布が理子の傷を見ると応急処置を行う。消毒液が染み一瞬顔をしかめるも声は出さない。消毒液を塗り、ガーゼを当て包帯を巻く。見方が戦っている間に、自分が何もできないのがもどかしい。傷の具合が思ったよりも酷いと見たのか、深草兎歩の構えで外へとこっそりと向かう。理子は思う。深草兎歩なんて、そんな技術どこで身に着けたんだろう。やはりライターだから知識が豊富なのだろうか。謎な人だと。

理子は鷹共を目でけん制しながら、左腕を抑える。思ったより傷が深い。それに毒性もあったのかピリピリと痺れて来た。そんな折、紫電一閃の声と、雷を携え、赤みがかった茶髪の男が理子に駆け寄って来た。八月一日鳴である。「化け狐」、そう呼ばれた渾名。何度も自分の名前は理子である事を言い、由来まで長々説明しても、変わらぬその名。訂正する事を諦め、今ではもう慣れっこになっている。

『なに無茶なことしてんのさ。さっさと治すから傷見せて、ボクの血が止まっちゃう前に』

へらへら言う鳴に、理子は左腕を差し出す。包帯はガーゼを当てたにも関わらず、血が薄っすらと滲んでいた。

「無茶なんて!!……すいません」

無茶などしていないと言いかけ、その言葉は謝罪に代わり尻すぼみになる。咄嗟だったとは言え、傷を負ったのは事実だ。不可抗力かもしれない。だが、その考えは理子が否定する。
この、すみませんには二つの意味がある。一つは心配をかけてすみません。治療に関してのすみませんだ。正直に言えば、理子は鳴に治療されるのは、好まない。鳴の治療は、治す為に自らの血を奉げる必要がある。そういう能力だと知っていても、鳴が血を流す度に罪悪感に囚われるのだ。だが、依頼者が居て、敵が襲ってくる状況。自分も早く戦列に並ばねばならない。

「鳴さん、治療をお願いします!!」

早口気味に言い左腕を差し出す。そして、残った右手で数珠を取り出し、「化け狐」になるべく、呪文を唱えるのだった。

>>奈布、鳴、周辺ALL

5ヶ月前 No.33

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【ジョー/幽玄堂】

蝶が舞い

雷が乱舞し

狸が絶叫しながら、駆け寄って来る

「すげー、絵面だな、おい」

銃で鷹を迎撃しながらジョーは呟く。ただでさえ、幽霊が出ると噂のこの物件に、新たな伝説が加わった瞬間である。蝶、雷はともかく、狸は確実に人の為、一般人にも見えるはず。理子が一撃食らった物の、依頼者を確保し、後は的確に敵を裁いていく。

まずは、窓の外に飛び出したのは、和花だった。忍者を思わせるような、軽やかな身のこなしで、宙返りで蹴りを食らわせ叩き落とす。以前からの知り合いである和花。協力し、時には争った事もある。紆余曲折あったが、今では社員の一人である。背が高くスラリとしたその容姿から繰り出される技には魅了されそうだ。そんな、彼女は後ろ振り返って人差し指を立てて一言。

『あんた達社内なんだから静かに処理しなさいよっ? あと、あたしの机だけは兎にも角にも万が一にも死守すること! カップもね!』

ジョーは思うのだ。これで、喋らなければなぁ……と。

「銃使いに、静かにとか無茶言うなよ。まぁ、机だけは守ってやるよ、仕事にも関わるしな。ただ、一番はあいつに言った方がいいぞ」

そう言いいながら、ジョーは唸の方を親指で指し示す。ジョーも冷や汗気味である。バットで懸命に殴り続ける唸。唸の能力は殴れば殴るほど威力があがる。その内勢い余って、床や柱を壊しそうで見てて恐ろしい物がある。大声で一心不乱に振っているから尚更だ。

「おい唸、頼むから、会社を壊さないでくれよ」

皮肉でも何でもなく、本心で注意するのだった。

ジョーはジョーで銃で鷹を牽制し始める。鷹スレスレにフェイクの弾を放ち、一ヶ所に誘導。机や備品の無い部分で鷹を落とす。その亡骸は積み上がり、強烈な腐臭を放つ。

「流石にこれはキツイな……。あっ、やべっ」

匂いに気を取られたのか僅かに手元が狂い、弾丸は鷹の眉間からちょっと逸れ眼球付近に着弾。血しぶきと共に飛び出す眼球。そしてそれは、和花のマグカップにホールインワンする。しばしの無言。

「まぁ、壊してないからいいな。洗えば大丈夫だろう」

そう、呟くと再度鷹を撃ち始めるのだった。

やがて、室内に飛んでいた蝶が数を増やしオーロラの様に辺りを覆う。窓から入って来た、鷹がオーロラに触れると、動きが緩慢になっていく。岐の蝶ではあるのは理解できるが、数が多い。霊力の消費も激しいはずだ。そう思い視線を外に向けると、我が会社の経理担当でもある。旅籠宗助の姿も見える。あの見事な白髪は見間違えるはずもない。

「岐、聞こえるか!!あんまり無理すんなよ!!やばかったら、宗助に霊力補給してもらえ!!」

ジョーは室内から、外に向かって叫ぶ。岐に倒れられては困る。勿論心配なのもあるが、敵を倒し切った惨状を修復するには岐の力が必要である。自分も含めて、この会社の連中はそういうのが、苦手な奴が多い。

「宗助!!霊力切れた奴のフォローは任せる!!後、結構物を壊されてるんだわ、被害額の計算もな……」

後半の方は、深刻な問題である。考えたくもない。

「仰扇も、フォロー頼むわ!!後、建物に被害がいかない様守ってくれ!!崩れられたら叶わん!!」

ジョーは、一応社長らしく外の面子にも支持を出す。そして、皆の頑張りによって鷹の数が徐々に減って来るのであった。

>>和花、唸、岐、宗助、仰扇、周辺ALL

5ヶ月前 No.34

奈布 @ganma24 ★Android=vN4FlsE806

【寧々庭奈布/幽幻堂前】

 鳴から陽気なウインクをされたので彼もウインクし返し手を振った。面倒臭そうに立ち上がり彼は大鷹を睨みつけた。大鷹はバサバサと飛び、とてつもない眼光で奈布の顔をにらみつけている。奈布は何故かにへらぁと笑い、頭を下げた。

「やぁ、鷹ちゃん初めましてだね。俺は寧々庭奈布だ……って!喋ってる時に攻撃するなよ!」

 悠長に自己紹介を始めると鷹は案の定襲いかかった。嘴を先にして投げナイフの如く襲いかかる鷹を、奈布は間一髪で避けると、何を思ったか鷹の足を掴もうと手を伸ばした。奈布は鷹の足を運良く掴めた。
 本当ににまぐれだったのだろう。驚いた顔をしながら彼はポーチをまさぐりスイッチと爆弾を取り出した。スイッチに書かれた番号に、爆弾に着いたダイヤルを合わせる。
 爆弾を抜け出そうと蠢く鷹に括り付けると再び羽ばたかせた。

「やっぱり今日は吉日だぜい」

 何度も襲い来る鷹を間一髪避けながらもほかの鷹に爆弾持ちが近付いた瞬間に、ボタンに親指をかけた。

ドカアアァン!!

 とんでもない轟音と共に一匹の鷹が爆発四散し、それに巻き込まれた二匹の鷹が地に落ちる。彼は鮮血飛び散るその場を見てニンマリと笑った。

「いやあ!楽しいねぇ!!空飛ぶ何かが目まぐるしく破裂する音は!!」

 地に落ちた鷹を掴み上げそれにワイヤーを括りつける。彼は鷹の付いたワイヤーを冒険家のようにグルグルと回し、電線めがけ鷹を投げ飛ばした。
 電線にワイヤーが絡みつくと、彼はより嬉しそうにニンマリと笑った。ポーチから絶縁体の手袋を取り出し、手袋の上に重ねるように付ける。
 その手袋でワイヤーを掴むとそれをスペツナズナイフの刀身に括り付けた。

「ナイフ捌きはド三流、しかし飛び道具は一流でさぁ!!」

 引き金を引くと共に刀身がバネの力により飛ばされる。バネの力がとてつもなく強いが故に、飛べば飛ぶほど加速していき、とてつもない威力を帯びていく。
 そしてそれが最高潮に達した時に、見事に鷹に命中し感電した。痙攣しながら鷹は電気を受け、黒焦げになり地に落ちる。
 残った柄を丁寧にポーチにしまうと中をまさぐり始めた。

「まずは4匹。さあて、な行の罠王と言われたる所以を見せてやろうかね」

 両手に華。否、爆弾を持ちケラケラと笑う。彼は爛々と光る青みがかった瞳を鷹共に向け、景気づけに爆弾を上空に打ち上げた。物騒な花火が鳴り響く。

>鳴様、幽幻堂all様

5ヶ月前 No.35

@kw1 ★iPhone=WeLdY42O45

【 八月一日 鳴 / 幽幻堂 】

いつもは自分のお巫山戯にまんまと(そう思っているのは鳴だけであり、本当は想定の上あしらっているかもしれないが)引っ掛かってはポコスカと怒る理子だが、今回ばかりはしゅんと頭を垂れていた。まあそうなるよなあと思いながらも彼女の謝罪に目を向けることなく黙々と治癒にあたる。極力彼女の視界に入らないよう(それでも視界に入ってしまうことに変わりはないが)自分の腰元辺りで予め用意しておいた紙に自らの血を垂らした刹那、小さくも眩い光が紙面から溢れる。まるで液体の様に零れだす光を理子の患部に流せば、20秒程で光は収まり、そこにはうっすらと傷跡が残るだけで先程の痛々しさは完全になくなった。

「応急処置で傷塞いだだけで完全に治ったわけじゃないよ。まだちっこいんだから、また無茶なんかしたらすーぐ傷開くからね」

次は知らないよーだ、なんて、どっちが「ちっこい」のか理解に苦しむような子供っぽい台詞を残しては、彼女の邪魔をしないよう窓際に避ける。そこでやっと今回の依頼者でありこの騒ぎの原因であろう人物と目が合った。嗚呼、この人か。なんて考えては口元に弧を描きながらヒラヒラと手を振る。と、外から何やら発狂したような声と大きな爆発音がした。一人の声は...まさかとは思うがデカタヌキ...否、仰扇だろうか。あの彼がこんな声を出すか...?と疑問に思うのは鳴の彼へのイメージが「寡黙」だからである。彼の開いた結界が鷹達を包み、文字通り収縮して――消えた。どこに行ったのかわからないが、消滅してしまった以上攻撃はしてこないだろう。そしてあの豪快な爆発音。これは間違いなく先程入れ違いした奈布である。やはり屋内よりも屋外の方が彼は思い切り暴れられるようだ。窓から見えた鷹は、見るも無残に(まあ最初から無残な見た目してたけど)血飛沫をあげ地に倒れ、またある鷹は先程鳴が食らわせた疾風迅雷よりも強力な雷撃を受けたのだろう、プスプスと焼け焦げていた。

「おー怖、あの二人は敵に回したくないよね、オジサン」

ひえ〜なんて効果音を呟きながら依頼人に声を掛け、どうせ奈布にされたのだろう、ワイヤーに触れないよう固まっているのを見てはケタケタと笑った。
窓際では虫螻ちゃん――岐が一際大きな蝶をはためかせ社内に入ってくる鷹を次々と浄化してゆく。なんて画期的なのだろうかと思う。彼女の負担は大きいが、間違いなく力になっているだろう。攻撃手は屋内外共に十分ある。鷹の数も減ってきた。そろそろボク要らなさそうだななんて思えば、ぽけーっと皆を見守るのだった。

>理子、奈布、仰扇、岐、幽幻堂ALL

5ヶ月前 No.36

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_Qi5

【 永代橋岐 / 幽玄堂 】

 狙った獲物は逃さない獰猛な猛禽類とて、浄化して気勢を削いでやれば多少は動きも鈍る。その代償は強烈な倦怠感。岐は一気に霊力を使い過ぎて既に肉体的疲れを感じ始めていた。しかし限界はまだ先にある。マラソンだって疲れるのは早くても、疲れてから本当にヘバるまでは根性さえあればしぶとく走り切れるものだ。戦いだって意志の力でそれくらいのことは出来る筈。頑張れ己。無邪気に野を駆ける幼子のように、自分には果てが無いと思い込め。
 セルフ鼓舞で疲れを振り切って蝶々を波状に展開させ続けること数分。他の面々もそれぞれの能力を駆使して善戦するさなか、所長から声がかかる。やばかったら宗助に霊力補給……嗚呼、そうだ。そういえば彼はそのような能力を持っている。ざっくばらんに説明すると物を霊力に変換して自分に蓄えたり人に移したりできる御仁。それが彼。具体的には他にも色々とできるらしいが、基本は霊力の回復役職という認識をされている。
 そろそろアフター6に駅構内で出没するお疲れのサラリーマンみたいな顔色になってきた自覚はある。ここは一つ、所長の言う通り彼のお世話になるのが賢明だ。

「承知いたしました。てふてふの霊力に変わる物が、人様の物では申し訳ありませぬ故。只今、私物を取って参ります」

 ぺこりと所長に一礼し、あくまで蝶々で弾幕を張ることは怠らぬまま本人だけが移動。建物の片隅に置いてある風呂敷包みに駆け寄り、中から小物入れとして使っている巾着を取り出した。そのさらに中を漁り、探り当てたるは歯が三本だけ折れた半月型のつげ櫛。小学生の時、父と京都旅行をして『十三や』でプレゼントされたものの一つだ。蝶々は花が好きだから、とわざわざ花の彫りが入ったものを何本も買ってくれ、未だに何本かはまだ自室の引き出しの中に眠っている。しかしこの櫛は小学校から高校入学までの期間使用したもの。椿油に何度も漬け込んだので、元のあっさりした木色ではなく独特の飴色に艶めいている。教室の机に置いていたところ窓ガラスを野球部のボールが突き破り櫛を直撃、なんて憂き目にあってこんな風に破損しなければ、きっとまだまだ何十年と使い込めたことだろう。
 それだけに捨てがたくこうして手荷物の中で役目もなくただただ場所をとっていたつげ櫛。だが、廃棄するのではなく霊力として自分の内側に取り込まれるなら踏ん切りはつく。これを手にして宗助に小走りで駆け寄る。
 最初は自分が霊力を使い果たしても他にも頼れる仲間がたくさんいる、と思っていた岐だが、よくよく考えるとその頼れる仲間たちは『荒れた部屋を綺麗に片付ける』ような作業においてはあんまり頼れる仲間たちではないのだ。だから自分は戦いでスタミナを枯らさず、むしろ後始末のほうで活躍するくらいの気持ちで居なければならないことに遅まきながら気付いた。そのためにも回復は必須。腐った鷹のせいでちょっと臭くなっている部屋の消臭とか、ガラス片の片付けとか、新しい窓ガラスの手配とか、倒れて散らばった棚の中身を元通りの配置に戻すとか、そういうのは全部自分がやるのだ。戦いで疲労してはいられない。真の戦場は敵を倒し終えた後に待っている――。

「もし、宗助様。こちらでお願いしても宜しいでしょうか?」

 瑕を負ってなお古都の風情ある十三やのつげ櫛を恭しく両手で差し出し、花にとまった蝶が羽をたたむ姿のイノセントとエレガンスを以て腰を折る。
 蝶々が人の形を取って地上に舞い降りたのだ、と頭のおかしい父に信じ込まれるだけの“それらしさ”は、疲労が骨身を侵したとて損なわれぬ。命ある限りそう振る舞うよう躾けられ、乞われ、強いられ、願われてきたのだから。
 もっともそんなもの、異臭のする鷹が部屋のあっちこっちで特徴的な鳴き声を反響させている現場では振り撒く意味も無い美しさなのだが。

>ALL様

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
5ヶ月前 No.37

霧灯 @sunsuncat ★o08FOtq5xo_Tbw

【志麻 和花 / 幽幻堂】

『銃使いに、静かにとか無茶言うなよ。まぁ、机だけは守ってやるよ、仕事にも関わるしな。ただ、一番はあいつに言った方がいいぞ』

 ジョーに言われてバットを持つ唸を見て、

「……し、死守で!!」

 ドジスキルが発動しないことを遠くから祈る。

***

「あのねぇ、あんた達今一体何時だと思ってんのよ。もう15時よ? 遅刻するなんて善良な社員の風上にも置けないわね!」

 腰に手を当てて指を立ててズビシと指摘する。学生である訳でも外出予定があった訳でも無い仰扇と宗助の2人に対してここぞとマウントを取っておく和花。印象的に上に立っておくことはいざコミュニティ内で意見を通す事態が起こった時には色々と役に立つ。色々と。但しこの女自分も遅刻している。

 理子の怪我は鳴に任せておけば良いし、車掌の霊は奈布が窓から引き離し、窓は岐が蝶で障壁らしきものを張ったのなら万が一鷹が侵入したとしてもまぁすぐ処理出来るだろう。なら自分は鳴が抜けた分、残りの鷹の処理にでも移ろうか。数もある程度揃ったし律儀に守り続けるより減らした方が良いだろう。仰扇だけに押し付けておくわけにもいかない。そう思うと改めて眼鏡を外しコートの内側へ仕舞い込む。

 和花は高く跳躍した。幽幻社の最上部ほどの高さまで一跳びで体を運び、再び一回転して社の壁を蹴って方向転換し更に高く斜めに向かって舞い上がると、滞空する鷹を一度に2匹分蹴落とす。
 和花の体はそのまま宙を落下していく。だが、まだ終わらない。落下中更に足元に力を込めると、足場も無い空でまるで地面を踏みしめたように和花の体はもう一度跳躍し、更に別の鷹を蹴り払った。
 そのまま一度正面の電信柱の上に着地する。

「よっと。さーてあと何匹かな?」

 振り返って空中を見渡す。

 志麻和花。女性。21歳。独身。職業「退魔士」。かつては忍びと呼び恐れられたこともある一族であり、人の世を悪鬼羅刹から守ることを生業とした闇を生きる者。財布の残りは少なく、まともな退魔仕事からも会社都合により向こう3ヶ月遠ざかっている身ではあるが、この道8年のベテランの技はまだまだ腐ってはいない。

 そして並の人間の脚力を大きく上回る特異な能力の名は「天翔脚」。彼女の家に伝わる秘伝の技の一つである。体内で増幅した霊力により高い身体能力と速度を獲得し、放出した霊力によって足下に力場を形成することにより、例え空中であろうと彼女の足場とならぬ場所は無い。

「終わったらココアを飲もう。運動後の糖分補給で至福を味わおう。あのカップ保温カップでスーパーの百均コーナーで新春初売りの癖に100円どころか200円もしたんだもの。でもお陰でただのお茶ですら至福の味がした気がしたわ、ふふ」

 鷹が減って来たことを確認すると、ご機嫌にこの後の夢を馳せていた。打ち上がった奈布の爆弾も祝砲のようだ。

>>幽幻社ALL ジョー 仰扇 旅籠宗助

5ヶ月前 No.38

@purple3ru ★iPhone=5uXDFiflht

【 虎杖浜唸 / 幽幻堂 】

唸の能力の詳細をそれでも簡潔に言うのなら、『触れたものに霊力を宿し、一定の条件でそのものから霊力が消えない限りアタックすればするほど与えられるダメージが増えていく』だ。その『ダメージ』は、自分の能力を把握しきれておらず情けない限りだが、どうやら霊的なものだけでなく現実の無機物にも通ずるようだ。なので、ジョーからも和花からも建造物の一部やデスクの私物を破壊しないか心配されている。ちょっと心外だ。

「しっ……つれいですね! 大丈夫ですよっ、この鳥さん達以外には当たらないように気をつけて振ってるんでっ……おっとっと」

言ってるそばからバットの当たった鷹が潰れていき、そのままバットが床に触れかけた。あぶないあぶない。床にかっこいいヒビが入っちゃうとこでしたぁ。
唸の振るうバットの方だが、初めは当たってもツンと指で突かれた程度の優しさだったのに、今ではこの通り触れただけで鷹をぺちゃんこにしてしまうところまで来ている。もちろん、他のメンバーの力も加わって、あっという間に此処まで簡単に倒せる状態だ。当たった鷹から死体になっていく――あ、元からデッドしてたんだっけ。どっちにしろ、死んだまま動いてても完全に死んでも怖いもんは怖い。

「ジョーさーん! オレ、運動神経悪いし戦況とかよくわからないので、もし何か指示があったら言ってくださいねー」

これは本心である。なにか裏があるわけではなく、自分がするべき行動を把握しきれないから、積極的に指示を出して欲しい。怖いの我慢して、その通りに動くから。

>>ジョーさま、和花さま、allさま

5ヶ月前 No.39

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=IABzHrSWjz

【仰扇 / 幽幻堂前】


「倒壊しても金は出さんぞ」

社長の言葉に応じて出た返答がこれ。金にがめついゆえについついそんな反応をしてしまったが、ある程度数も減ってきた今ならこれ以上外観が傷つくことはあるまい。むしろ心配すべきなのは内部の方ではないのか。あの場所で暴れられるのかはともかく。


奈布の道具を使った連携攻撃で鷹が落ちまくる。まさに狩りを彷彿とさせる、と言っても相手はもう既に死んでいるのだが。こちらも先ほどから淡々と結界をぶち込んでは鷹を消し飛ばす作業が続く。相手は接近せざるを得ないのに対し、こちらは遠くからでも一方的に狙える。始めの投球モーションで結界を打ち込む必要はないので、隙を晒す時間もない。最初の1発同様、周囲の敵から削り取っていくようにしているので、奈布と攻撃範囲が被るということがないようには努めている。そこから少し距離を取ろうとして、身を引いたタイミングである女の声が聞こえてきた。

「なんだ、仕事をドタキャンされて発狂しながら戻って来てやったのに、随分辛辣な言われようだな」

和花の指摘に反論、とまではいかないまでも不満をぼやいた。俺より少し前に着いていた神通の錬金術師こと宗助が何を思うかは分からないが、俺にだって事情くらいはある。というか本当ならここにはいない、今頃は現場の下見を済ませて作戦を練っている時間帯だろう。その仕事をまあいけしゃあしゃあと奪われてのこのこ帰ってきた、目先で金を稼ぎ損ねたんだ、抱え込んだ怒りは尋常じゃない。思い出したらまたイライラしてきたな。

空を舞い鷹を落とす彼女は相変わらず人間離れした跳躍だが、それを横目に結界を発動、その先にあるのは幽幻堂。外観に突き刺さるようにして出現した正方形の物体、こいつで会社が全壊するという最悪の事態はさけられるかもしれない。ある程度大きな結界は空間に固定されてしまう、その特性を利用すればこんな風に建物を固定することにだって使える。手を振り払う動作を続けて徐々に建物の至る所へ結界が現れた。


「固定はしてやった、これである程度の衝撃には耐えられるが、唸の攻撃力上昇には注意しておくんだな」

指示を出すジョーに遅れて言葉を投げかける。自分の能力が守護を重視したものだと改めて実感するが、やはり人一人分ほどの大きさでは強度にも限界がある。ここ空への攻撃を和花と奈布の2人に任せて、こっちは結界の維持に少し力を割くとするか。


≫ジョー様、和花様、奈布様、all様

5ヶ月前 No.40

@sm1109 ★cJYfvsviGZ_Tbw

【罸詠罸/高校→幽幻堂前】

制服姿に学生鞄を持って自分が通っている高校から幽幻堂へと続く道を歩いていると、校舎を出た時点で感じていた"なんとなく嫌な感じがする"、という虫の知らせ程度のあやふやだった感覚がどんどん強くなっていく。

「うわぁ行きたくないなぁ……」

自分にしか聞こえないくらいの小さな声で呟く。
こういう霊的な方面で感じる嫌な感覚はほぼ間違いなく霊的な方面で好ましくない状況が起こっている予感なのだ。
だが、だからといって引き返す訳にも行かず、寧ろ先程よりも足早になって幽幻堂の方面へと向かっていく。

因みになぜ罸が休日に学校へと行っていたかというと単に補習を受けていたのだ。例え勉強していたとしても大して良くはなりはしない成績だろうが、幽幻堂の表の仕事である出版業と裏稼業である幽霊方面の仕事、表の方ではそれぞれ担当を持っている人達の雑用、裏の方では戦力の一つとして働いている。そのため忙しい時は普通に忙しく、家に帰って勉強する量が減るどころか溜まった疲れからか授業中に居眠りしてしまうこともあった。
そんな成績と授業態度を見咎められ補習を受けさせられていた。

サボってしまおうかと全く思わないでもなかったが、身寄りのない罸は国の補助で学校に通っており、留年でもしてしまえばそれが打ち切られてしまう可能性がある。もしそうならなかったとしても全額免除されるわけではないので、多く通うことになればそれだけ払わなければいけない額が多くなることになる。そうした事態はどうしても避けなければいけないので、こうして休日に真面目に学校に通っていた。

高校くらいは卒業しておきたい、とも思う。
幽玄堂の社員の条件も高卒以上って言われているし……。選ぶのは向こうだがこのまま高校を卒業したら幽幻堂出版社に入社するのも悪くないとも思っている。
出版業の方の業務成績は著しいわけではないが、幽霊関連の方は扱うものが半永久的なエネルギー源という割ととんでもないもので、そうなれば商売相手も然るべき大物相手となる。こちらも安定しているわけではないが、実入りが多いいときは多いい。
そんな訳で学生と二足のわらじのアルバイトの罸でも、なんとか一人で暮らしていけるだけのお給金は頂いている。
"もしだめそうなときは理子ちゃんに泣きつこう。きっとなんとかしてくれる"。そんなことを考えながら幽幻堂へと続く道を進んでいく。

本来なら今日はお昼前に幽幻堂に着いていたはずだったが、もうお昼もだいぶ過ぎている。
幽幻堂に近づくに連れて強くなっていく嫌な感覚が、上空で放たれている閃光を見ていよいよ確信に変わった。それは自分が身を置く幽幻堂の社長である所のジョーさんが打ち出す"緊急"のサインだった。

「うわこれ確定だよもう。何が起こってるんだよもう」

と今度は近くにいればはっきり聞こえるくらいの声で発する。
今まで早歩き程度だったのが、今度こそ駆け足になって目的の場所へと向かっていく。

幽幻堂に向かう途中で嫌な感覚が濃くなっていくのと同時に減っていく感覚もあった。
同時に感じる様々な気配、やっぱりみんな集まっているんだ、と思う。
ああ、今のは鳴さんの『疾風迅雷』と、派手な技で霊的な感覚に近いものであれば、目視できないほどの遠くからでもそれが何かと感じ取る。
罸の使う八天鋲鎖搦首は精密な霊気のコントロールをしつつ扱わないといけないため、こうして霊気やそういった類の力を感じ取るのに、敏感な節があった。

そういったことを感じながら幽幻堂前まで着くとそれはもう

「うわぁ……うわぁ……」

と言う他ない光景が広がっていた。

ただでさえガタがきてる幽幻堂の建物の窓ガラスがめちゃくちゃになっており、その頭上では気持ち悪く変色し、所々肉が削げ落ちているグロテスクな大鷲が腐臭を撒き散らしながら飛び回り、その下では焦げていたり燃えていたり大半がなくなっていたり不自然な角度に折れ曲げっている鷲が何羽も積み重なっている。
まあ皆がいる本社に攻め入ってくればこうもなるだろうが、ある種廃退的な芸術めいたその光景に軽く立ちくらみのようなものを覚えずにはいられなかった。

だが、ただその光景を見ているわけにもいかないので実際には一瞥しただけで幽幻堂社屋の中へと駆け込んでいく。機動力のある和花さん、広範囲に効果を及ぼす術を持っている仰扇さんと奈布さん。制圧力の高い三人が外を張ってくれているおかげですんなりと中へ入ることが出来た。

まずは八天鋲鎖を確保しなくては。それありきの力なので無ければ霊力をもっていてもそれを扱うすべがない。
あんな馬鹿長い刀を常々持ち歩くわけには行かないので建物の一階の壁に立てかけてある。そして同時に中の確認もしなければ。いくら本来窓という遮蔽物があった箇所が悲惨なことになっていても、急いで駆け込んでしまったので中の状況はあまり確認できなかった。
来る途中に感じ取っていた気配も先に確認した御三方以外のものもあっため、中に留まっているとなれば、動きづらい理由でもあるのかもしれないと思えた。

中に入るとジョーさんや唸さんが中に侵入した鷲を片付けていた。鳴さんはやはリ能力を使ったようで出血しているのが見えた。その姿を見ればやはり痛ましく思う。理子ちゃんは憑依途中だったが治療した跡が見えて、なるべく負担を減らしたい、というかできるなら鳴さん共々今日は戦闘や術を使うのは控えてほしいと思ったが、それは言ってみれば私情で、それを押し付けることは出来ない。
なれば自分にやれることをより速く多く達成するのが結果的に目的を果たすことになる。

一羽でも多くさっさと鷲を片付けるべく、壁に掛けられていた八天鋲鎖を掴むと鞘とベルトがまるで刀身に飲み込まれていくように、それ自体が刀身を構成していくように、馬鹿長い刃が形成されていく。
室内や狭い場所で使うことを端から度外視したような斬馬刀さながらの白い長刀。その途中で部屋の隅のワイヤーで仕切られた狭いスペースで縮こまっているおじさんと目が合った。
早く鷲共をなんとかしなければ。

逡巡したがすぐさまその場から駆け出す。鷲共の目的はこのおじさんであろう。であればその側に付いているべきなのかもしれないが、奈布さんが張ったこのワイヤーがあればそう簡単には手出しできないだろうし、ジョーさんと唸さんが片っ端から打ち落としているので簡単に近づけさせることもないだろう。

ジョーさんの射線に入らないことといつ攻めてくるかわからない鷲の気配に気を配りながら、中に入って来たときとは逆方向に建物内を進んでいく、目的は宗助さんと岐ちゃんのいるところ。
霊力補充中で多少は無防備になっているかもしれない二人に万が一もないだろうが、少しでも気が散る対象が減ればそれだけ施術も早く進むというものだ。
二人の前に壁になるように鷲との間に割って立つ、といっても鷲は飛び回っているのだからあまり意味はないだろうが。

滞空してこちらを見下ろしてくる鷲と、刀を自身の顔の横に持ってきて水平に切っ先を相手に向ける霞構えで対峙する。この構えは切っ先を相手の眉間に向けてそれ自体をプレッシャーとする構えなので、相手が高い位置にいれば自然と切っ先も高くなる。そのため霞構えだが変形の蜻蛉構えの様にもなった。この対峙を罸の死角にいた鷲が好機とでも思ったのか背後から急降下を仕掛けた。
風切り音、鷲の動く気配、罸はすぐさま後方へと斬撃を仕掛ける動作に入った。

罸は斬撃の技術に於いてそれほど高いものを持っているわけではない、重さは同サイズの刀に比べれば軽いがやはり重量はあり、何よりその長い刃が武器として有用性を引き出すのに、熟達した技術を必要とさせてしまうのだ。
罸にそんな技術はない、ないが――

パッと切っ先の峰あたりでなにかが破裂すると急加速で切っ先が空を切り裂いていき、その円を描く軌道上にあった急降下で背後から迫っていた鷲の首を正確に斬り飛ばした。
そしてまたも切っ先の刃の方からパッと破裂するとその斬撃の威力を落とし、即座に刃が返されると再び切っ先峰部分から破裂が生じ、剣速が急加速する。
その刃は背後の鷲へと斬撃を放った罸に僅かな時間差攻撃を仕掛けた鷲の首元に正確に吸い込まれていき、結果勢いよくその首を撥ね飛ばした。
宙を舞った首が勢いよく飛んでいき"ゴンッ!"と鈍い音を立てて壁にぶつかったので近くに立っているおじさんをびっくりさせてしまったかもしれない。
首を飛ばされた鷲は急降下の勢いが止まらず床に激突した後もなおもその上をスライドしていき、ディスクにガシャンッ!と派手な音を立てて突っ込んで止まった。

熟達者のように長刀で一呼吸の間で正確な二連の斬撃。これを剣の腕がない罸が精密な霊気のコントロールとそれに合わせる体動作で実現してみせた。

「鷲返しとでも名付けようかな……いや、語呂が悪いか……」

頭上に舞う鷲に向けられたものなのか、罸が小さく呟いた。

5ヶ月前 No.41

@sm1109 ★cJYfvsviGZ_Tbw

>>41

>>幽幻堂周辺ALL


【ごめんなさい。書き忘れです】

5ヶ月前 No.42

緑酢 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_lXe

【旅籠宗助/幽幻堂】

基本的にこの様な亡霊等に限らず戦闘と言う類における旅籠の立ち位置は、物質から取りこんだ自身の霊力を味方の霊力として送り込む霊力回復が主な役割。
とはいえそれしか彼には役立つ事が出来ない為、あまり積極的に表立って戦う事は無く、むしろ自分の実力では迷惑をかけてしまうので正面から亡霊と戦ってくれている味方のサポートに徹している。それでも一応、護身用としてある程度の武器は霊力化していつでも取り出せる様にしているが、飽く迄も自分の身を守る為で相手を倒す事は一切考えていない。まさに彼は霊力回復係なのである。

「……さて、味方の安否については問題無い様だな。うむ、いつも通り賑やかで何よりだ。では私は、亡霊の終わる美しい瞬間をゆっくり見ているとしよう」

ちなみに彼は戦闘中でも大鷹が成仏してしまう瞬間を逃さない様に常に彼等の方向を一匹残らず順に眺めていた。故に自己申告してくれないと、ほとんどこちらから勝手に霊力回復を行う事は少ない。
そんな指示待ち人間と言っても良い彼は恐らく誰かに不審に思われない限りはずっと路地裏で大事な経理や事務と言った仕事を忘れてしまい、霊力実験に勤しんでいたのであろう。
すると、天翔ける羽ばたきと呼ばれている志麻和花から今回の遅刻についてかなり厳しい注意を受けてしまう。

「まあまあそんなに怒らなくともちゃんと仕事はこれから行う予定だ。それより今はこの霊幻堂の器物損害をなるべく減らす方が重要じゃないか?」

そんな随分と落ち着きながらも甘い態度を取っているとさらに社長の指示により、どうやら霊力不足に陥っていた聖蝶姫と言う二つ名を持つ永代橋岐が霊力回復の為に一度、社長等と言った大鷹と戦っている前線から離脱する模様であった。
そして旅籠は、確か彼女が霊力を蝶の形に模した浄化作用のある式神の様な存在を自由に飛ばす事が出来ると聞いた事があるのを思い出す。その効果は絶大らしく先程見た時は暴れていた大鷹も気づけば、大分大人しくなっている気がしていた。そんな現在の戦況について考えていると永代橋はわざわざ気を使って自身の私物である、少しだけ壊れていながらも何とも風情のある櫛を用意してくれていた。

「ああ、特に構わない。ではこの櫛を霊力に変えて確かに君の元に返そう」

そう言って旅籠は永代橋が持っていた櫛に触れてみると、それは瞬時に魂の様な壮大ながら儚く美しいオーラの如く旅籠の霊力へとその重量分が形成されていく。そしてその霊力は、旅籠が意図的に彼女の身体の元へ供給を開始していた。

>>志麻和花様、永代橋岐様、周辺ALL様

5ヶ月前 No.43

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【ジョー/幽幻堂】

「へいへい、愛社精神に溢れた社員に恵まれて、俺は幸せな社長ですよっと」

仰扇の金出さない発言に、皮肉を言いながら、ジョーは弾を撃つ。金は出さぬが、手は出してくれる仰扇。その結界は社を覆い、最悪の事態は回避出来そうである。ジョーもホッと胸を撫でおろす。

『固定はしてやった、これである程度の衝撃には耐えられるが、唸の攻撃力上昇には注意しておくんだな』

だが、仰扇の忠告にギョッとする。見ると唸がかなり怪しい動きをしている。今地面スレスレじゃなかったか?そんな、唸がこちらに支持を仰いでくる。

「じゃあ、俺はサボるから後の敵は倒しておいてくれ。そろそろ弾のストックも切れそうだしな」

会社を壊さぬように言葉を付けたし、冗談半分、本気半分で伝える。自分の攻撃方法は回数制限があり、それなりに資金も必要とする。殲滅できそうな今、自分が戦う意味はさほどない。ただでさえ、お金が必要な状況になりそうなのだから。
敵が減って来た今、ジョーは白衣の内ポケットから、一つの弾丸を取り出す。それは、形は銀製の普通の弾丸である。ただ一点違うのは、弾丸の先で小さな光が点滅している点だ。それを、銃のシリンダーに詰めると、手を伸ばし視線と並行に構える。何時もだらしない表情か、皮肉混じりの笑いのジョーの表情。それが真剣な物になり、窓の外へと銃口を向けた。
狙うのは、自分から一番遠くの鷹。その距離はおよそ200M程。そして、呼吸を止めると狙いを定め弾丸を発射する。空を切った弾丸は鷹の鉤爪の付近に命中した。その鷹は、その場で大きく旋回し来た道を、逃げ帰っていく。

「一応、発信機を仕込んだから、一匹逃がしてくれ」

幽霊など霊力を持つ物に対応する発信機。これもジョー作である。撃ち込んだ幽霊の霊力を探知し追尾するのだ。性能は優秀で範囲は日本全域にも及ぶ。先程、唸に話した様に、動物を使役するケースというのはよくある事だ。この鷹も使役されている可能性が大きい。その場合の事を考え、黒幕の位置を知る事は大切である。
ジョーは机の引き出しを開けると、タブレットを取り出し追跡アプリを開く。先程の点が高速で会社から遠ざかっていく。結構な距離を動くも止まる様子は無い。それにジョーは顔をしかめ、舌打ちをする。車掌という標的があったにしろ、この数の鷹をかなりの遠距離から襲わせたとすれば、かなりの霊力を必要とするだろう。

「まじか……。こりゃ、やばい奴じゃねーの?」

頭を掻きながら、ぼそりと、呟くのだった。

>>仰扇、唸、周辺ALL

5ヶ月前 No.44

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【稲荷理子/幽玄堂】

「ちっこいは余計です!!大丈夫です、もう無茶はしませんから!!」

元気が出て来たのか、頭の切り替えが成功したのか、理子は鳴の言葉に反論する。無茶しませんからと言いながら、その瞳は鷹を睨み付け、今にも飛びかかりそうな雰囲気だ。鳴の光が理子の左腕を流れる。その光は優しく癒し薄っすらと傷跡が残る程度になっていた。理子は左手を何度か握ったり開いたりする。先程の痛みと痺れが嘘のように消えている。
それと同時に理子の憑依も成功する。頭には狐の耳、お尻には尻尾が生え、顔には小さい髭が生じる。それと同時に理子の周辺の温度が上昇し、姿が陽炎の様に揺らめいた。

「ありがとうございます、鳴さん!!私も行きます!!」

言ったのが速いか、動いたのが速いか。怒りに身を任せて、這う様な低姿勢のまま玄関の方へと向かうと、傘立てに立ててある鉄杖を抜き取る。そして、そのままの姿勢で鷹に近づくと、アッパースイングで打ち上げた。その衝撃で鳴くことも出来ず天井に叩きつけられる鷹。

「そっちに撃ち出すから避けて下さい!!」

そして仲間が居るか一切確認せず、落下してきた鷹をフルスイングで屋外に撃ち返す。炎上し、高速の炎の弾丸となってはじき出された鷹。さながらこっちはロケット花火である。その花火は2、3羽を巻き込み、プスプスと燃え尽きる。案の定、理子の左腕からは、薄くだが出血している。
一匹を倒した所で満足したのか、冷静になり理子は辺りを見回した。

爆発四散し肉片をまき散らす鷹

バットでサクサクと潰れていく鷹

断末魔の悲鳴に、立ち込める腐臭。どこのB級ホラー映画だろうか?

刎ねられた鷹の首が、依頼者の近くに軽やかに舞う。その方向を見ると、罸が正確に鷹の首を刎ねた所だった。
同い年の罸は、長刀使いである為、前線で一緒になる事も多い。最初は、無口であったが徐々に会話が増えてきて、今では普通に話す様になっている。色々と問題ある家庭だが、金銭面での不自由の無い自分や岐と違い、安アパートで暮らす苦労人である。その生活力は素直に凄いと思える尊敬している。

「罸ちゃん、刎ねた首危ないよ!!」

理子は慌てて注意をする。何とも物騒な発言である。

鳴が何時もの軽い調子で話しかけているも、車掌は固まって目を白黒させている。

「み、皆さん、依頼者もいるので、お手柔らかに!!」

自分の事を棚に上げ、理子は叫ぶ。そして、理子は依頼者の前に立った。明らかに怯えた表情の依頼者。だが、まるで何事も無かったかの様に満面の笑みを見せた。

「このように、当社には優秀なスタッフが揃っております。お客様の意に添えると思いますので、依頼をお願いいたします!!」

色々と、手遅れ感満載であった。

>>鳴、罸、周辺ALL

5ヶ月前 No.45

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_Qi5

【 永代橋岐 / 幽玄堂 】

 つげ櫛を片手に願い出れば、宗助は二つ返事でそれを霊力に変えて岐の身体へ流し込んでくれた。相も変わらず見事な手際。霊力を蝶々にして飛ばす岐も器用なほうではあるが、物を霊力に変えた後またそれを物に戻せる宗助には適わない。さすが錬金術師を自称し他称されるだけのことはある御仁だ。一人で密かに自己鍛錬も積んでいると聞くし、自分も頑張らねば彼には一生涯追いつけそうにない。とりあえずこの仕事が済んだら休日を利用してプリ山籠もりでもしてみようか。澄んだ空気の霊峰で二日瞑想でもして過ごせばちょっとは霊能力に好影響がありそうな気がする。あるいはもっと気合を入れて、長期の休みに日本全国の霊験あらたかなパワースポットでも巡ってみようか。
 なんてことを考えるのは事態を収束させてからにしよう。意識を切り替え、霊力の回復してゆく感覚に静かに身を任せる。櫛は古事記にも載るほど古くから伝えられている魔除けの一つであり、かのイザナギノミコトが黄泉平坂での騒動を切り抜けるのにも使ったとされる神聖なものだ。もちろん神社に飾られるご神体ほどのパワーは無くとも、それが櫛というだけで一定の魔になら効果を発揮する。だからだろうか。つげ櫛の体積の割に供給される霊力は潤沢で、北国の原住民みたいに青白い色をしていた岐の顔色はすっかり血の気を取り戻した。

「誠にありがとうございます。宗助様。お力を頂いた分、しっかりと皆々様のお役に立って参りまする」

 温泉旅館で金持ちを接客中の女将さんと同じくらいしっかりと頭を下げてお礼を言い、それから宗助の傍を離れる。これで今日人様に頭を下げた回数は何度目か。岐は一日に平均して百回以上は誰かに腰を折る女なので、この年にして既に会釈や礼が熟練のメイドくらいの恭しさを自然と醸し出すようになっていた。
 霊力を回復して貰っている間、既存のメンバーが活躍したり新規のメンバーが参入して乱舞したりと動き回った結果、目に見えて鷹の数は減ってきている。特に所長はサボるなんて言っておきながら遠方の鷹に狙撃で発信器を打ち込む早業を見せ、それを見ていた岐は思わず手をパチパチと叩いてしまった。人間、自分にできないことができる相手はどうしたって尊敬せずにいられないのだ。まして岐は性根が性根なので嫉妬心の入り込む余地も無い。

「嗚呼、依頼人様。どうかそう堅くなられずに。どうか無害な蝶々でも見て、心を落ち着けて下さいまし」

 目の前の光景に面食らっている様子の依頼人に楚々と近付き、彼の周囲にたくさんの蝶々を舞わせる。視界一面にやべー殺され方をしたやべー鷹のやべー死体が転がりまくっているよりは、半透明でキラキラした燐光を放っていていかにも普通ではないが、それでも綺麗で見応えのある蝶々を視界に入れていたほうが精神的に安らげるはずだ。……でも、今さらだとちょっと遅いかもしれない。視界を塞いで心を癒しにかかるなら数分前にしておくべきだった。理子も同じことを考えているのか、満面の笑みの裏に焦りを感じる。それでもやって無駄なことなどこの世には一つも無いのだと信じたい。

>ALL様

5ヶ月前 No.46

霧灯 @sunsuncat ★o08FOtq5xo_Tbw

【志麻 和花 / 幽幻堂】

『なんだ、仕事をドタキャンされて発狂しながら戻って来てやったのに、随分辛辣な言われようだな』
『まあまあそんなに怒らなくともちゃんと仕事はこれから行う予定だ。それより今はこの霊幻堂の器物損害をなるべく減らす方が重要じゃないか?』

 そんな仰扇、宗助の2人にまじまじと真向かっては、

「ふっ、もう、いいのよ?」

 にっこりと笑い、今度は打って変わって彼らを許す。菩薩のような神々しい金色の後光が背後から照り輝くイメージ。
 飴と鞭。それは時に厳しさを見せつけしっかりとした印象を与えつつも、許しを与えることによって自分への心の扉を開く志麻流裏秘伝・人心掌握術。彼らの中の和花に対する印象は印象の前に好きと書いて好印象となったに違いない。
 こうしてより盤石となった好印象から導き出される結論、それは分かち合いの未来。ぶっちゃけこれで「今後金を借り易くなる(筈)」。会社の経理を務め一個人が持つよりもバカでかい大金を扱える立場にいる宗助は勿論、貯めるだけ貯め込んでいるくせにやたらとケチ臭い守銭奴の仰扇であっても、「ふっ、しょうがない奴め」チャリーン! こうなることは最早空飛ぶ鷹を射る光景を世の中の都会生まれのシティボーイ達が直に目にする機会に恵まれるよりも容易い。
 我ながら恐ろしい術を使う。和花は己の才能に恐れおののいていた。
 因みに、ケチ臭いことは知っていたので仰扇に借りる案は今回一旦棄却していた。今回はタイミングを見計らいさえすればどうにか貸してくれそうなイメージの相手に。尤も、今回は依頼が入ったのでお世話になるとしても幾らか先の話になるだろうが今後の布石として。備えあれば憂いなし。素晴らしい言葉を生み出してくれた故人の皆さんへ、ありがとう。

「っていうかドタキャン? ぷっ、何それ、あはははは!」

 そして思い出したようにわざわざ反応する。自ら台無しとしていく布石。彼が金持ちであるが故の嫉妬半分、素半分。

「あー、そうそう。あいつらね。何とかしなきゃね」

 笑った後で、聞こえてきた宗助に対するジョーの声で漸く防衛に意識を向け直す。中を覗いてみればいつの間にかやって来ていた罸の姿も見つける。……罸が取りに向かった長刀を見て、唸のバットが可愛らしく思えた。
 その後、和花は空中の鷹を蹴り落とし始めた。

***

『そっちに撃ち出すから避けて下さい!!』
「ハイ、パース!」

 理子が窓の外に向かってすっ飛ばしてきた火達磨の鷹にタイミングを合わせて上に向かって蹴り飛ばし、トドメを誰かに振る。
 その後ジョーが発信機を撃ち込んだらしい鷹が逃げて行くのを地面から見上げた。

「ふう。終わったみたいね。お疲れー」

 まずは周囲に労いの言葉を投げ、近くにいた奈布にハイタッチを求めてみる。
 そして懐から眼鏡を取り出して掛け直し、ガラス塗れの屋内へ戻って中のメンツにもお疲れと声を掛けた。


>>幽幻堂ALL 仰扇 旅籠宗助 寧々庭奈布


【前半は、前回 >>38 の和花の攻撃開始までの間の短時間の差し込みです】

5ヶ月前 No.47

@sm1109 ★cJYfvsviGZ_Tbw

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5ヶ月前 No.48

奈布 @ganma24 ★Android=vN4FlsE806

【寧々庭奈布/幽玄堂前】

 爆弾を中心として思いつく限りの罠を使役し終えた奈布は一度息をつき辺りに散らばった、気味の悪い鷹の死体……死体と呼ぶのが正しいかはわからないが、それをマジマジと見つめた。
 集中していたからこそ気にはならなかったが、こうマジマジと見つめると来るものがあるのか喉の奥から何やらこみあげてくるものがあった。口まで到達した時、ぐっと顔を上にあげ飲み込んだ。口の中が酸の味で満ちる。

「げぇ、すっぺ。」

 行儀悪く地面に唾を吐き捨てると、両手を上にあげ伸びをした。「あぁー」という情けないと共に腰がポキポキとなる。それまで伸びていた背を丸める。
 暫くボケーっと立っていると、和花からハイタッチを求められた。彼は脊髄反射的に「いえーい」とハイタッチを返した。
 電線にかかったワイヤーや死骸に着いたナイフの刀身などを回収していく。興味本位で黒焦げになった鷹を足でちょいと転がすと裏はもっと悲惨な状況になっており、思わずゲロが口から垂れた。再び飲み込む。

「あ、和花ちゃんパチ屋に居ましたけど出ました?」

 彼は和花に質問を振ると答えを聞かずにフラフラと社内へと入っていった。
 部屋の角の方に押し込んだ車掌の前に行き、車掌が律儀にワイヤーに触れて昇天していない事をを確認すると、杭を抜き取り、ワイヤーを巻くように回収する。手に充ちた罠達をポーチの中に収納し、手袋を取りポッケに突っ込んだ。
 汚れのない手を払う。

「回収完了っと、おじちゃん、動いていですぜ」

 車掌を逃がすと、死体を見ないように上を向きながら感覚で自分の席まで向かった。自分の席の前に立ち顔を下ろすと、ソフビと共に原稿用紙が見るも無惨に落ちてることを認識し大きなため息をついた。
 番号に沿うように並べ替えると、端を整えた。パソコンを立ち上げ、再び仕事を始める。この惨状の中でのうのうと、この惨状の中でのうのうと……


>和花様、幽幻堂all様

5ヶ月前 No.49

@kw1 ★VT8P8ydYB2_Xy1

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5ヶ月前 No.50

@purple3ru ★iPhone=5uXDFiflht

【 虎杖浜唸 / 幽幻堂 】

「えっ? サボっ……えぇ!? ダメですよ!? ジョーさんだけサボるのはずるいですー!!」

口ではそう言いつつ、表情でも反抗はしておきつつも、相手に攻撃手段と自分の攻撃手段を考えてきちんと心の中では了承する唸。そのまま近くの鷹を次々と叩き落としていく。その度に血が少量飛び散ってなかなかグロテスクだ。怖いのもグロいのも苦手なので、正直さっきからできるだけ目を逸らしてバットを振り回しているのだけれど、目を逸らしても逸らしてもどこもかしこも動く動かない関係なく鷹しかいないので、あんまり意味はなかったりするのだけれど。

「あっ、了解ですー!」

発信機を仕込んだから1匹逃がせ、という命令に返事をして、作業に戻る。タブレットとにらめっこするジョーを見るに、どうやら敵は手強そうだ。まあどんな敵だって何度も攻撃を重ねたオレにかかれば一発なんですけどね!
一瞬だけ、鷹の生首(もう既に死体みたいな風貌だから生というには保存状態が劣悪)が視界に入り、そちらを見ると、いつのまにか罸が来ていた。「あ、罸ちゃん! 学校お疲れさまですー!」と軽く挨拶していると、理子からお説教(?)をくらい、「はぁ〜い」と間延びした返事をしておく。だって、今更じゃないですかぁ。
そうしているうちに、どうやら終わったようだった。あ、血がついてる。結構気に入ってる服だったんだけど……ま、いっか。服なんてそんなに興味ないし。髪もそろそろ染め直そうと思ってたし。

「おっつかれさまでしたぁ! いやー、みなさんやっぱり強いですよねっ! あ、依頼人さん、こんな感じでオレたちはとーっても強いんで、怖がらなくって大丈夫です!」

パッと手を離して、バットを地面に落とす。すると、バットに宿っていた霊力は消え、攻撃力はゼロとなった。もう一発じゃ敵を倒せないバットを拾い上げ、車掌さんに近付いてにっこり笑っておく。もちろん怖いのを我慢して。
それにしても、と。社内を見渡してみる。飛び散ったガラスの破片と血と羽と鷹の死体。蔓延する腐敗臭。とてもじゃないが、おやつタイムを再開しようとは思えない。こんな状態のしたのは自分だが、こんな状態はすごく苦手なので依頼人の方に再び目を向ける。生々しい死体と怯えていてちょっと親近感を覚えた幽霊なら後者がマシという判断だ。そうやってそっちを見ていると、奈布さんが車掌さんを縛りつけていたワイヤーを外し、解放される。なんだろう、こういう使いが手が良い能力がオレも欲しかった。でも、あーやってこの中で再び仕事を再開できる精神はいらない。いやちょっと羨ましいけど……少なくともオレには無理。

「あっ、はいはーい! 気持ち悪くならない範囲ならオレも手伝いますよー、鳴さん!」

理子と岐を名指しする鳴に対し、バットで塞がっていない方の手を挙げて立候補する唸。割とそういう雑用は嫌いじゃない。だらだらおしゃべりしながら何かするのは楽しいからね。ただ本当に、怖くなくて気持ち悪くない範囲に限るけど……。

>>ジョーさま、罸詠罸さま、稲荷理子さま、八月一日鳴さま、allさま

5ヶ月前 No.51

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【ジョー/幽幻堂】

「うい〜、お疲れー。こいつらの処理は俺がやるからいいぞ〜」

タブレットを持ち、頭を掻きながら、戦闘などまるで無かったかの様に、気の抜けた声掛けを行うジョー。ジョーの白衣も返り血で微かに紅く染め上げられている。
辺りを見回すと、鷹の腐乱死体が散乱して、まさに地獄絵図を彷彿させている。今が冬で良かった。これが夏なら匂いがどうなっていた事か。鳴から、亡骸の処置を聞かれると、ジョーはおもむろに、机の引き出しから、大き目のフラスコを取り出す。中には淡く輝く青の液体。それを、室内に振りまいた。

「だるいな……。これ戦闘よりも疲れるんだけどな……」

小さくぼやくと、首から掛けられている銀の十字架を眼前に構え、聖書の一節を唱え始める。見た目とは裏腹に、これでも一応教会の家系である。すると、鷹の亡骸が先ほどの液体と同じ、薄青い光包まれる。それは徐々に強くなっていき、最後に一瞬だけ眩い光となると、黒い石へと変化するのだった。
ゴーストライト。それは、霊力の結晶。幽霊が天に召される時に発する力を結晶化したものである。
ジョーは結晶を一つ摘みあげると、凝視する。透明度は無く、どこか煤けた雰囲気のある黒。石の力は低い為、仮にこれを売っても二束三文にしかなるまい。一瞬、雑誌の付録につけても、いいかとも思ったが、信じる者もいないだろう。何より混乱を避けるために、戒厳令がしかれている。

「ゴーストライト欲しいやつは、持ってっていいぞ〜。仰扇も少しは金の足しにはなるだろ。宗助も実験に使っていいぞ」

興味なさそうに摘まんでた石を一個をポケットに入れると皆に言うのだった。

傍らを見ると奈布がすでに自分の仕事に取り掛かっている。

「おう、奈布。仕事熱心だな。インスピレーションでも刺激されたか?いい記事頼むぞ」

物書きという人種は、どこか思考回路が我々と違うらしい。芸術家というか、何と言うか。頭のネジが一本飛び、代わりに違う物で代用している様な脳内なんだなと思う。まあ、科学者と五十歩百歩だと思うが。

「ところでだ、唸」

我社のライターから目を離し、今度はカメラマンに視線を移す。

「一応、聞くが写真一枚ぐらいとったか?」

聞いてはいるが、確信はある。おそらく撮ってないないと。
バットを振り回していた印象は強いが、そこにカメラは無かった気がする。からかい半分、本気半分で唸に聞くのだった。

「和花も、お疲れさん。一応、机もコップも守ってやったぞ」

眼鏡を掛け社内に戻ってきた和花に、軽く手を上げ労う。キャリアだけなら、自分や理子と為を張る和花。傷つく様子など無く、仕事に関しては信用を置いている。私生活については、知らない。
現に机の上は羽などは散乱している物の、備品に関して傷はない。コップにも傷は無い。うむ、我ながら完璧だな。

「じゃ、俺は依頼者と相談があるから……」

そう言うと、そそくさと和花の元から離れるのだった。

>>鳴、仰扇、宗助、奈布、唸、和花、ALL

5ヶ月前 No.52

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【稲荷理子/幽幻堂】

「ふぅ……。皆さんお疲れ様でした。それにしても酷い状況になりましたね」

理子は軽く息を吐くと、鉄杖をトンと地面つく。理子の熱量が下がり姿が通常通りに戻っていく。それと同時に微かに発する陽炎も消えていた。理子は周りを見回すとげんなりする。辺りには腐臭が立ち込め、鷹の死骸がズラリ。死骸はゴーストライトになるからいいとして、この壁にこびりついた血や、壊れた会社用品はどうにもならない。他にもご近所の目を誤魔化したりと頭が痛い。誤魔化すのは、ガス爆発ぐらいの理由をつけるとし、お詫びの菓子折りぐらいも用意した方がいいかな、など頭の中で算段をつけるのだった。
そんな、理子に鳴が茶々を入れる。

「誰がって皆でやるに決まってるじゃないですか!!今は男女平等の時代です!!ねぇ、岐ちゃん」

そんな鳴のからかい半分の発言に引っかかり、こめかみをひくつかせて注意すると、同じく名指しされた岐に同意を求める。
本来ならば、もっと畳みかけたい所だが、腕の出血を見て口をつぐむ。あの傷の原因には、自分も入っている訳で、これ以上は強くは言いたくない。

「鳴さん、先程はありがとうございました。腕、大丈夫ですか?」

理子は言い返した時と比べ、トーンを落とし鳴にお礼を言うのだった。

「罸ちゃんもお疲れ様!!さっきはキツイ言い方になっちゃってゴメンね」

先程の戦闘中に罸した注意。気が立っていた事もあり、言い方がきつくなってしまった。勿論そういう配慮が必要な事も事実だが、不可抗力という物もあろう。しかし、罸の方も流石で一度注意すれば、それ以後そういう事も無くなった。同い年であるが、立場としては自分の方が上である。ダメな部分はどうしても言わなくてはならない。そこが難しい所でもあるし、悩ましい所でもある。
だが、キツイ言い方をしても、あまり気にならない社員が多いのは救いか。……いや、全く救われていない。

理子は現状を見る。現状を見るに、片付けなければどうしようも無いわけで。やるべき事が目の前にあると躊躇なく行動に移れるのは理子の長所、時々欠点になる。

「とりあえず、ガラスは私がやるので」

それを皆に伝えると、部屋の片隅の掃除ロッカーから、箒を取り出す。そして散らばったガラスを掃いて一ヶ所に集めるのだった。

>>鳴、岐、罸、ALL


【車掌/幽幻堂】

少女に突き飛ばされ、地面を転げたのち、大鷹が今自分の居た場所に突っ込んでくる。
それからは、意識が定かではない。逆にそれが幸いだったか。男に壁際に寄せられ、遮る様に鉄線で区切られる。
大鷹の悲鳴が耳をつんざき、血や羽が舞う凄惨な現場。気が付くと目の前には美しい蝶が乱舞していた。

「私は死んだのだろうか……?」

その幻想的な光景に、自分がもうこの世の者では無い事を忘れ、車掌は呟いた。

『嗚呼、依頼人様。どうかそう堅くなられずに。どうか無害な蝶々でも見て、心を落ち着けて下さいまし』

目の前には蝶の着物を着た、可憐な少女。自分が生きていた時代を彷彿させる。祭りや祝い事などの日はめかし込んだ、子供達で溢れたものだ。

「ありがとう、大丈夫だよ……」

正直、動転はしている。しかし、幼子の前でそのような姿を見せる訳にはいくまい。気を張り、笑顔で返す。

ここの社員だろうか。先程から、温かい声掛けを頂いている。時代は変ろうとも、人の心は変らない。こんな時だと言うのに、嬉しくなり目を細める。三つ編みの少女からは、優秀なスタッフが揃っていると言っていた。それは、誇張でもなんでもない。実際に自分を襲う鷹はこうして退治され、自分も五体満足である。

『回収完了っと、おじちゃん、動いていですぜ』

先程、自分の目の前に鉄線を張った男が、それを回収し机に座る。それを確認して、立ち上がり壁の隅から中央の方へ歩みを進めるのだった。

5ヶ月前 No.53

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

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5ヶ月前 No.54

@kw1 ★VT8P8ydYB2_Xy1

【 八月一日 鳴 / 幽幻堂 】

手をぴょいぴょいと上げながら「はいはい!」と明瞭な声で立候補するのは幽幻堂のカメラマンである「虎杖浜 唸」。生物学上の性別は女性であるが、その一人称は可愛らしい見た目に到底そぐわない「オレ」。これで口調も岐や理子の様に礼儀正しく、一人称もお淑やかな「私」とかにして挙動も大人しくすれば相当に可愛らしいだろうに、素材が完璧なだけにもったいないと鳴は常々思っていた。あともう少し美容に気をつけて欲しいかな、女の子だし。とも。そんな皮肉を込めて彼女への渾名は「猫小判」である。猫に小判、彼女の素材はピカイチなのに本当にもったいない。故の渾名である。彼女の立候補を聞いては「あ、ホント。じゃあ宜しく〜、猫小判」なんて、あっけらかんと言ってのけた。やはり掃除は面倒臭いようである。
ジョーが唸に話し掛けるのを確認すると興味がなくなったように顔を背け、理子からのいちゃもんに「ハイハイ」なんて面倒臭そうに答えては、掃除用具入れから適当に雑巾(雑巾用にあしらった布切れだが)を水場で濡らしては幽幻堂入り口から先ほどまで自分が突っ立っていた窓際までの床を適当に拭く。自らの技故の血が点々とついていたからだ。入り口から順に床にしゃがみ込んで拭き取る。少々時間が経過した所為か、床にこびりついてしまい、中々拭き取りにくいようだ。ようやく窓際辺りまで来て格闘していると、つい先ほどよりも随分と落ち込んだような声色で理子にお礼を言われる。

「大丈夫だってバ。申し訳なく思うなら次はあんなヘマしないでよね」

ぶっきらぼうにそう答えるが、その言葉は正真正銘、彼の本心であった。どんなに小さな怪我でも、幽幻堂のメンバーが傷つくのは嫌だ。かつての家族よりもこのメンバーが彼は好きだったし、大切にしたいなんて稚拙な言葉ではあるが、全くもってその通りであった。少し怒ったような、ムスっとした様子を見せるのは彼の不器用さ故か。
あらかた綺麗になったかな、と一息つけば手に持っていた布切れをゴミ箱に投げ入れる。血の付いた雑巾など誰が使うか。自分でも御免だ。念入りに手を洗っては血を洗い直しては奈布のワイヤーから解放された車掌を横目で見送る。備え付けのタオルで水気を拭き取っては腕を組みながら近くの壁際にもたれかかり、車掌とジョーのやり取りを神妙な面持ちで見守る。ジョーの顔が顰められたかと思いきや好奇心に染まり、最後には覚悟を決めたような、心から納得したようなすっきりした顔で依頼を承諾し、車掌と固い握手を交わすのだった。彼らの一部始終を見守っては、目を伏せて ふ、と一人ほくそ笑む。こういうの、社長弱いんだよなあ。なんて思いながら、これからさらに面倒なことになるのだろうと心の中で覚悟を決めるのであった。なお掃除は以降手伝わない様子である。

>唸、理子、ジョー、幽幻堂ALL

5ヶ月前 No.55

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_Qi5

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5ヶ月前 No.56

霧灯 @sunsuncat ★o08FOtq5xo_Tbw

【志麻 和花 / 幽幻堂】

『和花ちゃんパチ屋に居ましたけど出ました?』

 朗らかな笑顔を浮かべる和花。
 小気味良い音を鳴らしたハイタッチの後にとんだ流れ弾。
 ガクゥ……! その場で両手両膝を着いて項垂れ、ブツブツと一時何かを呟き続けた。

***

 (どうにか)気を取り直して社内に入り屋内メンバーに声を掛けた。見た感じ特に負傷なども無さそうだ。社内はあちこち酷い有様だが。見るからに大変そうで面倒で仕方がないが、これでは片付けしない訳にはいかない。やる気になっている理子達を他所に和花は深く溜息を吐く。
 そんな中ジョーが「例の作業」を始めると、あちこちにゴーストライトが生成されていった。

「ナイス!」

 指を鳴らして反応する。こんな雑魚でもきっちりゴーストライトになるらしい。想定外の報酬に食いつき、掃除より先にあちこちに転がってる石を我先にとシュバシュバ手を出して拾い集めていく。
 幾つか集めて両手で抱え込むとにんまりした表情で満足そうに立ち上がる。これで食費くらいはどうにかなるかも知れない。不運の後には運が来るって本当ねー。

『和花も、お疲れさん。一応、机もコップも守ってやったぞ』
「サーンキュ。って一応って何よ。あ、ゴーストライト、表のもきっちり頼むわよ?」

 社長らしくジョーが各々に声を掛けていき、最後に和花へと声が掛かる。それを和花は小慣れた軽い感謝で返す。言うだけ言ってそそくさと立ち去っていくジョーの姿に特に疑問も抱かずにあとで表の鷹も処理するよう抜け目なく指摘しておくと、自分も待ちかねたようにカップの下へ向かう。

「さーて、ココア飲もうっと――」

 糖分補給タイム。運動後にあのカップで飲むココアは今の気分的にいちご大福の美味さにも勝るとも劣らない。ついでにココアもそれに入れる牛乳も会社で買っていて自分の身銭を切る必要が無いというのが素晴らしい。会社の福利厚生に感謝。使える物は使ってなんぼ程度の感謝。考えながら自分の机の上を片付けスペースを開ける。
 そして中に中途半端に残っているお茶は冷めたし埃が入ってるだろうから飲まずに捨ててココアを入れよう、そう考えてカップの取っ手を持って持ち上げた時だった。

 ゴロリ。

「?」

 カップの中に、目玉(鷹の)。

 投げつけられたカップが割れた音が社内に響く。掃除の対象も増えた。

>>寧々庭奈布 ジョー 幽幻堂ALL

5ヶ月前 No.57

緑酢 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_lXe

【旅籠宗助/幽幻堂】

「さあ、その身体までも腐りきった彼等がどんな最期を迎えてみせるか。楽しみだ」

どんなに腐敗した命でも最期は美しいのだと信じていたい思いを天井に羽ばたく大鷹に対して密かに呟きながら旅籠は、永代橋に彼女自身のつげ櫛で創り上げた霊力を与えて回復させていく。しかも元の物体における霊力の質が良かったのか、重量分以上の働きをつげ櫛は行ってくれておりあんなにも顔色が悪かった永代橋が今は、随分と元気な状態へと戻っていた。

「うむ……新しく霊力を送りこまなくとも十分、回復出来た様だな。それではまた回復したい時はいつでも言って来ると良い」

だがその一方で雷に打たれ、花火を打ち上げられ、首を斬られ、バットで殴られると言う幽幻堂の洗礼を存分に受けまくった多くの大鷹達における、まるで現実で見た死に様の如く何も成仏せずに倒れてしまう姿に彼はクリーニング業者の事も忘れて素直に少しショックをもろに受けてしまう。

「……成程、やはりそうだとは思っていたが……しかし、実際に見ると悲しいものだな」

いずれは窓ガラスを割ったこの大鷹よりも大罪を犯してしまった自分もこんな風に死んで行くのだと、やっぱり考え始めていた。とはいえこの霊幻堂の居心地はすこぶるいい故に、特に今まで通り経理としてそして回復役としてこれからも社長達をサポートするのは何も変わらない。其処が昔の自分と今の自分で大きく変わった点である。ちなみに大鷹の清掃を行う気はとある理由で意外とあったりする。

「せめてこの床くらいはとびっきり綺麗にしてあげないと。それにこの死体も物質として扱える事が出来れば恐らくだが霊力に出来る……かもしれない。まあ、物は試しだ。成功すれば簡単に肉片は片付けられ、この清掃時間が大幅に短縮される。そうなれば俺や部下、同僚、上司、社長の有意義な時間を削らずに済むんだ」

そんな独り言を呟きながら早速、まずは大鷹の死体を片付けるべく半ば実験的にその腐敗した身体に触れて、霊力化しようと試みる。しかしその直後、社長があんなにも醜く死んで行った大鷹をなんということでしょう、見事に儚さを感じるゴーストライトへと変貌させていた。それを見て彼は大事な事をすっかり忘れていた事に気付く。

「そうだったな……。亡霊は最期にこんなにも美しいゴーストライトを残すんだった」

ゴーストライトは物質を霊力として扱う旅籠には非常に興味深く、研究し甲斐のある材料。ただしちゃんと仰扇と言った他のゴーストライトが欲しい者達の為に社長と同じく一個だけ持っていく。
それにしても旅籠はあまりの死体の酷さにゴーストライトの存在をド忘れしていた。ゴーストライトを管理しているのも実験しているのも自分自身だと言うのに。

「こんな風にゴーストライトを残すのもまた美しい……」

そしてゴーストライトをどう扱うかを考えている間に社長が依頼人らしき車掌と話して、何やら仕事を引き受けていた。個人的に彼も車掌については霊力について色々話したい事があるが、まずは自身の仕事を優先する。

「それでは俺は一応、この周囲の店舗におけるクリーニング代を計算しておこう。後は……窓ガラスか。勿論、俺の考えとしてはこのまま窓ガラスが無い状態で過ごすのは皆が酷だ。俺もちょっと風邪気味だからな。そう考えると、隣町にある業者に修理を直ぐにでも手配して貰った方が良いと思うが……最終的な判断は社長とお金の方に相談するか」

>>周辺ALL様

5ヶ月前 No.58

@purple3ru ★iPhone=5uXDFiflht

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5ヶ月前 No.59

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【稲荷理子/幽幻堂】

『大丈夫だってバ。申し訳なく思うなら次はあんなヘマしないでよね』

その鳴の一言に、理子は苦虫を噛み潰したような表情になる。鳴がこういう言い方をするのは、分かっている。分かってはいるが、腹が立たないかと言われるとそれは別問題な訳で。箒を持つ手が震えてる。

「分かってます!!今度は何かあったら私が鳴さんの事を助けますから!!」

理子は吠える様に鳴に言い返す。狐って吠えるのだろうか?
だが、鳴にとっては、こういう風に言い返すのも織り込み済みなのかなとも思う。それでも、言い返すのだった。

そんな、やり取りをしていると岐が菓子折りを持って挨拶に行くという。

「岐ちゃん、すでにお菓子用意してたの……。すごいね……」

理子は素直にそれに感心する。戦力という部分では、余り頼りにはならないが、岐が居なかったら幽幻堂はどうなっていたかと思う。掃除も自分、菓子折り持って謝りに行くのも自分。考えただけでもぞっとする。大人達にはもっとしっかりして欲しい。
挨拶には、本来であれば、秘書の自分が行くべきだろう。因みにジョーが行くのも筋だが、任せる訳程無謀ではない。ここは素直に甘えておく。

「本当に岐ちゃんが居てくれて助かるよ、居なかったらどうなってた事か……。挨拶お願いね!!」

鳴にかけた唸り声とは、真逆の溌剌とした声でお願いするのだった。

ガラスをあらかた掃き、一ヶ所に集めると、理子は塵取りを使ってガラスを救い上げる。塵取りの中では、散ったガラス達が、輝いている。

「ふぅ、これでガラスはひとまず終わ……」

ガチャン!!

投げつけられたカップが割れた音が社内に響く。派手に散ったカップは、その破片を飛び散らせる。そのカップを投げた人物は、我社の駄目大人代表、和花である。理子のこめかみに血管が浮かびそうになる。

「ちょ!!和花さん!!何やってるんですか!!」

和花については、ジョーの除けば、他の面子よりも長い付き合いになる。対立した事もあったが、今はこうして一緒に働く事となった。経歴も長いし、そっち方面では非常に頼りになる。しかし、それ以外の方面はお察しの通りである。

「あー、もう、少しは手伝って下さいよ!!岐ちゃんの爪の垢でも煎じて飲んだらいいんじゃないですか!!」

長い付き合いなだけに、遠慮なく言い放つのだった。

和花のマグカップ片付けていると、唸にやる事は無いかと尋ねられる。それを受け、理子は周りを見回す。すると、切り裂かれたり、バネが飛び出たりと、無残な姿になった応接用の立派な椅子が一つ。元は茶色の革張りの立派な物だった。疲れた時は、ちょっと横になって休んだ事もある。惜しいが、修復は無理であろう。涙を飲んで廃棄するしかない。

「じゃあ、唸さんは、あの壊れた椅子をゴミに出しやすい様に、小さくして貰っていいですか?」

小さくするという表現はマイルドであって、要は木っ端微塵に粉砕して欲しいという事である。

「あの椅子、結構高かったんですけどね……」

ため息を付きながら唸にお願いするのだった。

>>鳴、岐、和花、唸、ALL

4ヶ月前 No.60

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【ジョー/幽幻堂】

「まぁ、咄嗟の事だったからな。俺もすっかり忘れてたしな」

写真を撮っていないと謝る唸に、ジョーは声を掛ける。

「ただ、何がスクープになるか分からんからな。頭の片隅には置いてくれ」

一応これでも、自分がダメ人間である事は自覚している。だが、一応社長というポジションについている以上は、小言も言わなくてはならない。じゃあ、自分はどうなのかと問われると、そんなの知らんと、開き直るしかないが。

傍らでは、割れたカップについて理子が和花に詰め寄っている。ジョーは視線を、そこから誤魔化す様に視線逸らす。絶対に視線は合わせない。絶対にだ。

一方、岐と宗助はガラスの事について意見を言っている。

「ガラスは早急に直したいな。雪も入って来るし、風邪ひいてはかなわん。それに、このままだと心霊スポットにもなりかねんしな。隣町の業者に頼もうぜ」

窓枠にいい感じに残るガラス片。血がこびりついたボロボロのカーテン。いかにも、何か出そうな雰囲気だ。むしろ、事故物件として、大家に値引きをふっかけるという手もあるが、流石にそこまではやりたくは無かった。

「宗助、そこら辺の計算を頼めるか?事情が事情なだけに、多少足が出ても仕方が無いな、こりゃ……。まぁ、車掌さんに期待するとしよう」

そう言うと、寒さを防ぐように腕組みして、震えるのだった。

>>唸、和花(?)、岐、宗助、ALL

4ヶ月前 No.61

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_Qi5

【 永代橋岐 / 幽玄堂 】

 同僚らの中には掃除を手伝うどころかカップを割って掃除対象を増やしてしまう者までいたが、それはそれで職場の通常運転なので岐は気にせず注意もせずせっせと羽根拾いを続けた。何、彼女とて割りたくて割ったわけではないのだ。きっとコップの中に鷹の肉片とか目玉とかが混入していて驚いたに違いない。悪気が無いのであれば、こちらが後で破片を新聞紙でくるみごみ袋に捨てて差し上げればそれで済む。

「爪の垢、でございますか……」

 理子から和花への発言を聞き、自身の両手の爪先をまじまじと凝視する岐。自分で言うのもなんだが、爪は綺麗な形に整えられた上ネイルオイルとベースコートで艶々の状態をキープしてある。欠けも瑕も無く、清潔感と透明感を保ちながらあくまで清楚で女性的な爪である。垢がもちろん喩え話だと分かっておれど、これでは煎じて差し上げられる爪の垢も取れないなと僅かに肩を落とした。彼女の気遣いはたまにどこかズレている。そも、育ちが世間とズレているのが悪い。
 閑話休題。唸たちも掃除を手伝ってくれることだし、ガラスの修理は社長の鶴の一声で隣町の店に今日中に頼むと決まった。ならばと岐は拾いきった羽根の詰まった袋を邪魔にならぬ場所へと押し固め、電話線の切られていない固定電話へと手を伸ばした。もう片方の手では自分のスマートフォンをいじり、隣町の業者の電話番号を調べている。ピ、ポ、パ、ポ。固定電話からはレトロな音色が鳴って、回線はすぐさま遠方の声と声とを繋ぐ。

「もし、失礼いたします。以前にもお世話になりました、隣町の幽玄堂の者でございます――」

 宗助が修理にいくらかかるかを計算しようにも、肝心の代金のほうが分からねばどうにもなるまい。公式サイトは更新が去年からされておらずそれが最新の情報か不安だったので、今現在の料金表はどうなっているのかと電話のほうで聞くことにした。
 細かい料金までは実際に足を運んで見積もりをしなければ確約できないが、今からの急ぎの作業で嵌めるのが普通の窓ガラスとなると2万を超えて3万を超えない程度のお値段になる可能性が高いと電話の向こうの業者さんは口にする。明日以降で良ければもう少し安くなるらしい。が、社長もガラスは早急に直したいと言っていることだし背に腹は代えられない。ここは一つ財布の紐を緩めるしかなさそうだ。
 他には椅子やカーテンも買い換える必要があり、最終的には福沢さん家の諭吉くんともう一度か二度はサヨナラバイバイする破目になる予感がする。しかし買い換えねば職場がいつまで経ってもみすぼらしいまま。そんな有様では客が来ても「ここ本当に大丈夫な所なのか?」と不安になり業績は右肩下がり、収入も減る一方で結果的に幽玄堂は大参事。“一文吝みの百知らず”のことわざに倣い、この出費は惜しまざるを得ない。きっと他の皆も同じ意見だ。

>ALL様

4ヶ月前 No.62

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

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4ヶ月前 No.63

@kw1 ★VT8P8ydYB2_Iyz

【 八月一日 鳴 / 幽霊列車 】

「あ゛ー......さッむ......」

あの大鷹の群れによる襲撃から一週間後の金曜日、二十二時過ぎ。最後に外の空気に触れたのは果たして何時間前だろうか。今朝起きて準備をして、丁度今から十二時間程前だろうか、おおよそその辺りにデコトラ1号(こんな単語、馬鹿げていて絶対に口にしたくはないが)に乗り込んだ気がする。途中トイレ休憩やら何やらで駐車した時間もあったが、何となく億劫でデコトラ1号から出てこなかった鳴にとってはしっかり十二時間、この中で身を縮こませていた計算になる。移動中したことといえば、携帯弄って、寝て、携帯弄って、寝て、......後は何かしただろうか。うたた寝? 景色を楽しむような術を鳴が持っているはずもなく、器用に乗り物酔いもせず移動時間を耐え切った。もう少し便利な移動手段はないのだろうか、例えばそう、キャンピングカーとか、それに、キャンピングカー、嗚呼あと、キャンピングカーなんてのもあるよね。なんて、こういった長距離移動を伴う仕事が入った場合、鳴は社長であるジョーに対して念仏のようにそう唱えていた。
ふと携帯から目を離してみれば、デコトラ1号のライトに照らされた少し薄暗い雪景色。そこには雪が積もった古びたレールが敷かれている。もう随分と長い間このレールが使われていないということは一目瞭然であった。ジョーが声を上げながらドアを開ける。途端に、内部の暖房が外部へと逃げて行き、代わりには言わずもがな冷たい冷たい凍てつく空気が中を駆け巡った。思わず眉間にしわを寄せては上記の台詞を呟く。その姿はまるで、冬休み明け始業式の小学生が母親に強引に起こされた時のような......伝われ。 心地よいまどろみに身を任せていた鳴は、ジョーによって無理矢理現実に引き戻されたことに多少の不快感を露わにする。そんなことをしたってこれは仕事なのだから、責任者の然るべき対応なのだが。
ジョーは髪を後ろで一つに結うと、神妙な面持ちで社員たちを見遣った。彼が髪を結ぶ時は、それすなわち本気の戦闘モードに入る時である。我々一人ひとりの命を預かっている彼は、相応の言葉を投げかける。

「はいはい、こんなんじゃボクらは死なないよ。ま、誰かさんが走行中にすっ転んで車外に飛び出してポックリ〜なんてことは無きにしも非ずだけどね、誰とは言わないけど。んはは」

相変わらずおちゃらけた声色でそう述べては、「誰」とは言わずにしっかりと唸を見てニヤリと口角を上げるのであった。
自身の胸ポケットにはしっかりとメモ帳、そしてペンも刺さっている。右腕には先週末の大鷹との戦いによる傷跡が少し残っていたが、もう痛みもあまり感じない程度にまで回復してきた。――俗に言う「万全」ってヤツである。余裕ブッこいたような台詞を行っているが、決して油断をしているわけではない。いつ敵襲が来てもいいように準備は整っている。鳴の漆黒に染まる瞳は、明らかな「闘志」を写していた。

>ジョー、唸、周辺ALL

4ヶ月前 No.64

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★YRuDhSwQ0p_Qi5

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4ヶ月前 No.65

スサ男くん @kodai4370 ★iPhone=Ju3pbQxF36

【仰扇 / 幽霊列車】


結構な山奥に差し掛かった時点で不安を感じていたが、灯りが車のライトだけになった時点で覚悟はしていた。暗いところに一点の光、目の前に広がるあの光景、全てが焼失する様を延々と眺めながら痛みに耐えるだけの時間、こじつけレベルだがその様が脳内をよぎってしまう。後悔はしてないはずなんだがなぁ、というかその元凶を顔面に乗せている時点で後悔もクソもない。別に恨みはないが、何故このクソ狸はこんなふざけた面に固執するのか、その理由を打ち明けてくれる日は果たして来るのだろうか。


ジョーの催促と共にデコトラ一号の扉が開く、代わり映えしない景色をずーっと傍観していたので眠気もなければ特段激しい寒さも感じない。元々夜型なので、むしろこの時間帯から本格的にエンジンがかかり始める。鼻水が出ても面のせいで拭えないことを除けば、良好のコンディションってやつだ。逆に車の方のエンジンは止まったようなので、数時間ぶりに足を地につけた。
しばらくは依頼人との会話を聞き続けた。この幽霊列車を築くのに一体どれほどの気苦労があったか、成仏しない死人は嫌いだが、この努力だけは認めざるを得ない。

「フン…」

社長の本気の言葉には鼻を鳴らす程度の応答しか見せなかった。なぜ死人、それも赤の他人のために命を賭けられるのか、理解ができない。幽霊のために死ぬなんてアホらしい、酒の肴にもならねぇ事態に、一歩間違えればなってしまうというのに。まぁ、この会社のそういう部分は嫌いじゃない。だから選んだ。

「…霊気を込められそうな物は辺りにない、何よりこの汽車を護れるほどのサイズの結界は動かすことができん。 今回、俺の陰陽術はアテにならんぞ」

車掌の力で現れた汽車に近づきながらそう言い放つ。鷹狩りの時にもお披露目したいつもの五行結界術こそ使えるが、対象が動く以上、メインの守護能力ともいえる陰陽道での結界は使い物にならない。この手の結界術は張れば最後、解くまで動かせないという唯一にして最大の弱点がある。安全な場所はないと思ってもらいたいが、それを言ったところで怖気付くような連中でもないはず。

「結界師とは名ばかりでお前の執念の賜物を護ることすら俺にはできん、すまないな」

車掌に向けて律儀に謝った。死人は嫌いだ、何度も言った、だがこの男も成仏するために努力している。申し訳なさは微塵もない、この汽車すら完璧に護れないことがただ悔しいだけだ。


≫all様

4ヶ月前 No.66

@purple3ru ★iPhone=5uXDFiflht

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4ヶ月前 No.67

緑酢 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_lXe

【旅籠宗助/幽霊列車】

今回の依頼における主役であろう幽霊列車が置かれているであろう鶯山駅に着くまで、デコトラ1号と言う改造トラックの移動手段で半日、即ち最低は十二時間の間、旅籠は揺られていた。
しかしただ揺られていた訳では無く、彼は他の眠っている同僚等を起こさない程度に錬金術の実験を僅かな明かりの中で行っていた。勿論、こんなにも寒そうで居心地悪そうに時間を過ごす同僚達の為にとても身体が温かくなるであろうストーブや、暇潰しのオリジナルトレーディングカードゲームでも自身の霊力をある程度犠牲にしながらも何とか巻き起こそうと考える。

「最初から霊力化して持って来ても良かったが、やはりこんなに実験出来る時間があれば最初から造った方が良い時間潰しになると思ったのだが……」

誰も何も聞いてないのに、一人で実験について小声で呟く旅籠。ちなみに彼は三半規管が強く、乗り物酔いに困る事は無い。また霊力の消費する実験についても物質さえあれば彼自身も霊力を回復させる事が可能の為、問題は無い。ただし限度がある故に、そんなに乱発出来ないが。

「そうだ、乗り物酔いに困る同僚の為に乗り物酔いが防止出来る何かを錬金術で作れるかもしれない。そうだ、そうすればこの移動も非常に楽になるかもしれないな」

だがその何かはまだVRの様に頭に付ける装置なのか、体内に飲み込む薬なのか、決まっていない。だがこう言う実験のアイディアを考えるのは良い時間潰しだと彼自身は考えており、なるべく他の同僚とも話してみたいが流石に眠っている所で騒ぐ訳にも行かない。

そんな事を考えているとトラックは停止。遂に目的地である鶯山駅に到着したらしく、社長がトラックの荷台の扉を開ける。そして見えるのはもう草臥れた線路にただ百年間、此処で自身が動く事を待っている汽車であった。これを見て少なくとも旅籠は、十二時間揺られ続けた疲れは少しだけ吹き飛んだ気がした。

そして社長から改めて依頼について、また幽幻堂を襲撃したあの大鷹との関連、そして死の危険性を示唆した。

「特に俺はサポートとして前線で動く同僚や上司、社長達を絶対に死なせない様に自分の使命を全うするだけだからな……」

しかし今回も迷惑はかけたくないので、一応護身用としてあらかじめ霊力化しておいた小刀を用意しておくのであった。

>>周辺ALL様

4ヶ月前 No.68

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_8By

【稲荷理子/幽霊列車】

『はいはい、こんなんじゃボクらは死なないよ。ま、誰かさんが走行中にすっ転んで車外に飛び出してポックリ〜なんてことは無きにしも非ずだけどね、誰とは言わないけど。んはは』

「ちょっと鳴さん、そんな言い方、唸さんに失礼ですよ!!ポックリなんて縁起が悪い!!」

【断定】物事にはっきりした判断をくだすこと。また、その判断。

鳴は誰かについて言及してはいない。痛恨のミスをしている事に気づかず、理子は鳴の言い方に腹を立て、怒りの形相で反論する。この子狐様は、喜怒哀楽がハッキリ表情に出る上、沸点も低い。

『その『誰』って、オレのこと言ってません? 鳴さんってほんと失礼ですよね。流石のオレもそんなドジはかましませんって〜……たぶん』

「そうですよね、唸さん。もっと、言ってやって下さい!!いくら唸さんだって、そんなドジは……、ドジは……」

そして、その言葉に唸も反論し、理子は更なる反論を促す。そこで理子は、はっとした表情になる。自分も唸の事をドジっ子認定していた事に気づく。語尾は言い終わる前に小さくなっていった。

「だ、大丈夫ですよ、唸さん!!たとえドジってもフォローします!!」

理子、戦闘のフォローは得意でも、言葉のフォローは苦手である。微妙に的を外す。言葉も、しどろもどろになるのであった。

>>鳴、唸、ALL


【ジョー/幽霊列車】

「仰扇が霊に謝罪すんのは珍しいな……」

だから、雪が降ったとは言い過ぎか。仰扇がドライな性格であり、霊本人の前でもきっぱり物を言う事をジョーは知っている。
ジョーは思う。仰扇が心変わりして……、って、流石に無いか。ただ、車掌の努力を前にして思う所があったのだろう。

「確かに、仰扇の力がフルで使えないのは痛えな……。まあ、かと言ってやらない理由にはならんな、こっちもピンチだし。頑張ってくれたら金一封とはいかないが、飯ぐらい奢るぜ」

ジョーは親指と人差し指で丸を作りお金を示し、冗談めいて笑う。今回の鷹の襲来で、会社は火の車。何としても依頼は成功させなければならない。ただ、これは建前である。
ジョー自身この車掌の願いを叶えたいと強く願っている。一週間の間に、お互いの霊的技術の知識を交換し、議論を交わした。中々、そういう会話が出来る人間はおらず、ジョーにとっても有意義で楽しい時間だった。本人が望むのであれば、幽幻堂に留まって貰い、研究に付き合ってもらいたいぐらいだ。
ジョーは天を仰ぐ。闇夜から雪の粒が現れ、地面に落ち積もっていく。この雪も珍しく感傷に浸る自分のせいかもと心の中で皮肉る。

『特に俺はサポートとして前線で動く同僚や上司、社長達を絶対に死なせない様に自分の使命を全うするだけだからな……』

すると、傍らで呟く宗助の声が聞こえる。その言葉にジョーは肩をポンと叩いた。

「サポート頼りにしてるぜ。特にあっちのメンツを頼むわ……」

そう言いながら、ジョーは理子、鳴、唸の方を肩越しに親指で指す。
理子が熱くなりやすいのは周知の上だが、鳴も情に厚く、以外とムキになる時がある。
唸については普通に心配である。

「能力のサポートもそうだが、あいつらが熱くなり過ぎたら少し冷ましてやってくれ」

仰扇は、金が絡むと良くも悪くも人が変わる。割と冷静沈着なのは宗助であろう。
そう宗助に頼むと、肩を2回たたくのであった。

>>仰扇、宗助、ALL

【段々、唸様の扱いが酷くなっていくw。気になる様でしたら言ってください>>紫様】

4ヶ月前 No.69

ユンボ @yumbo ★9YegwOCpFV_zZL

【幽霊列車出発】

幽霊列車は幽幻堂社員と車掌を乗せ走り出す。

黒煙を立てて雪を先走り出す列車。

この先、鬼が出るか蛇が出るか。仏が出ないのは確実である。

「へー、内装も結構凝っているんですね。テレビで見た事あるのそのままです」

理子は客車の中を見回すと感嘆の声を上げた。その光景は、いつぞや見た時代物のドラマの汽車のイメージとそのまま一致する。木製の薄汚れた椅子に、くすんだ天井。床も何と木製である。歩くとギリりと床が音を立てる。外を眺めると、雪まみれの木々が後ろ方に流れていくのが見えた。
一行は、機関部のすぐ後ろの客車にのっている。機関部では車掌が一人で運転し、全員で客車に待機していた。最初は機関部にも人員を配置する予定だったが、その部分は特に頑丈に作っているので大丈夫との車掌の言葉により、敵の襲撃に備えているのだ。

5分ぐらい経つと、汽車が森林部を抜け崖の際を走り出す。

「敵さんも、なかなか来ねぇな……」

壁に背を預け、ジョーは呟く。

「このまま、来ないで駅まで着くのが、一番いいですが……。そうはいかなですよね」

既に着替え、狐の耳をはやした理子が、その呟きを拾う。

そんな時だった、理子の聴力が上がった耳に微かに羽ばたきの音が聞こえる。そして、弓の弦をひく音も。その音が聞こえたと同時に理子は条件反射で叫んだ。

「伏せて!!」

細かい事を説明する余裕は無かった。窓の外、崖側の方向から無数の矢が放たれ汽車の側面に命中する。矢は激しい音を立て窓ガラスを突き破り、逆側の壁に刺さる。ジョーは割れた窓側の壁に背を付け外をうかがうと、以前見た鷹が無数羽ばたいていた。
だが以前とは決定的に違う部分がある。その背には、骸骨が乗っている。大昔の所々朽ちた具足を着たそれは、二の矢をつがえ、こちらに放ってくる。

「露骨に戦国時代の落ち武者じゃねーか、捻りも何もねーな!!」

悪態をつき、応戦するジョー。弾丸の一発が鷹に命中し谷底へと消えて行った。

「ジョーさん、後ろの方!!来ます!!」

理子が叫び、指した方を見ると、ジョーは舌打ちした。後方の客車に鷹が近づき骸骨が乗り込んで来るのが見えた。ガチャガチャと具足の音が近づきてくる。

「落としきれねえ!!そっちは任せる!!」

日頃は、言い合いをする、ジョーと理子。もっとも理子が一方的に言ってはいるが……。だが、長い付き合いなだけ、コンビネーションはバッチリだ。ジョーが言い終わる前に理子は扉付近に駆け寄った。
音が近づいて来ると、扉に刃が突き立てられる。どうやら大人しく扉を開けて入って来る程穏やかでは無い様だ。そして、扉を破壊し一匹の骸骨が中に侵入してきた。ボロボロの具足を着ている事は外の奴らと変わらない。しかし、得物が違う。それは弓では無く、所々掛けながらも鈍く輝く日本刀だ。
理子は低い姿勢から、日本刀を持つ手を狙いそれを弾き飛ばす。手首ごと外れた日本刀は回転すると、近くの椅子に突き刺さった。どうやら、切れ味もそれなりらしい。
理子は低い姿勢のまま足を薙ぎ、両脛を粉砕する。そしてバランスを崩し倒れた骸骨の頭に垂直に突きを入れた。骸骨の黒ずんだ瞳が透明になり、ただの頭蓋骨になる。そうしている間にも、客車には2匹、3匹と中に侵入してきた。

落ち武者の集団と、幽幻堂社員との戦いの火蓋が切って落とされるのだった。

>>ALL

4ヶ月前 No.70

@kw1 ★VT8P8ydYB2_Iyz

【 八月一日 鳴 / 幽霊列車 】

まずは順調に走り出した列車に一息ついては窓の外を見る。夜空と、一面の銀世界。薄暗い森林の中を走る列車は月明かりと列車の明かりだけが頼りであり、辺りにそれ以外の光源は見当たらない。しばらく走らせると、ぱあ、と視界がひらける。崖の方へ繋がったのか、反対側の窓から見える景色は一面の星空。さながら銀河鉄道のようだとぼんやり考えていると、月明かりに反射した何かがきらりと輝くとともに、理子の叫び声。激しい音とともに割れたガラスがこちら側へ飛んでくる。理子の声に驚いて身を屈めたが、一片の大きな破片が鳴の右腕に刺さった。

「ッ、?!」

痛みが声に現れないようにどうにか必死に小さな呻き声までにとどめる。鋭い痛みと、生温い温かさ。深緑色のシャツがじわじわと薄黒く染められる。痛みに顔をしかめてはガラスの破片を引き抜き攻撃の主を探す。先日幽幻堂を襲撃した鷹と同じもの、しかしその上には骸骨が乗っている。一体どこぞのファンタジーゲームかと思うが、奇しくもこれは現実であった。空中戦ならボクの疾風迅雷で――刹那、車両の扉が破壊され複数の骸骨が現れる。先ほどの骸骨と同じだが手に持っているのは弓ではなく日本刀のようなもの。嗚呼、あれはボクダメだ。接近戦は向かない。というか、接近戦に対応できる術が彼にはなかった。ッチ、と低く舌を打てばメモを取り立ち上がった。

「ゴメンけどボク近接は無理だから、ソイツ寄せ付けないでよね」

腕の怪我のことは一切言わずに早口でそう捲し立てる。こちらに目を向けず声だけ聞けば鳴が腕を負傷したことは気づかないだろう。血に染まったYシャツを見れば怪我をしたことは一目瞭然であるが。この非常事態、しかもこんな序盤に怪我をしたなど言えるわけがない。そんなのはただの足手まといだ。鳴のプライドがそれを断固として許さなかった。そのままメモの空いたページに「鎧袖一触」と書き込めば先ほど負傷した腕にそのメモを押し付ける。じわ、と血に染まったのを確認すると同時に、インクの色である濃い青色の塊がメモから召喚され、みるみるうちに堅い鎧を纏った大きな濃い青色のゴーレムが具現化される。「鎧袖一触」、鳴の技の一つであり、発動すると鎧騎士が召喚される。大きさは2メートル程だろうか。剣を構えたソレは突きの姿勢で扉であった場所から出て来た骸骨を突き刺す。呻き声のような断末魔をあげたソイツはただの骨と化し膝から崩れ落ちる。続けて次の骸骨と鍔ぜりあった。

>幽霊列車ALL
【早速怪我しましたクソザコナメクジ鳴くんです!!】

4ヶ月前 No.71

緑酢 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_lXe

【旅籠宗助/幽霊列車】

雪上の凍える線路を軋ませながら、霊幻堂の面々と車掌の思いを無事に届けるべく幽霊列車は走って行く。

それにしても雪と月、そして夜の列車が流れるこの光景は、さぞかし雰囲気的に素晴らしい絵になっているだろうと呑気に席に座りながら旅籠は考えていた。さらに稲荷の狐火、寧々庭の華麗な罠捌き、仰扇の結界術、八月一日の十もの具現化、罸詠の美しい刀の舞いが見えれば霊幻堂の面々だけが見れる、霊力と個性だけで描いた美しい雪景色が見れるなんて、これから死ぬかもしれないのに嬉しく思えてしまう。
さらにもうすぐで訪れるであろうその華麗な光景をカメラマンの虎杖浜が列車内ながらもきっと切り取ってくれるのだから、これまた勝手に喜んでしまう。

「そうだ、折角だからこちらもド派手に打ち上げ花火でも窓から打ち上げて、この幽霊列車のパレードを盛大に盛り上げよう。きっと社長や同僚、部下達もこの美しさに大喜びであろう」

そんな相手に居場所を知らせる様な馬鹿な真似を本気で行おうと錬金術でありったけの大砲と花火を用意するべく、まずは事前に霊力化しておいた火薬を掌に乗せようとする。

「だが待て。もしも稲荷が狐火を駆使する場合、この火薬は危険ではないか?」

流石に掌の火薬が引火されると、この木製の列車ごと社長達が冗談抜きで終わりを告げてしまう。それでは無事にこの列車を届けると言う任務は遂行されない。そう考えた彼は最初に普段はゴーストライトを入れる為に使用しているジェラルミンケースを出現させる。

「まずは火薬をこのケースの中に保管しておけば……」

だがそんな彼の前に訪れたのは、窓ガラスから突っ込んで来た無数の矢。それに旅籠は何とかケースを用いて防御しながら座っていた体勢を建て直すが、頬に軽く矢が掠ってしまい、切り傷の様な横の傷が出来てしまった。

「鷹に骸骨。随分、亡霊にしてはアクティブなんだな。そのやる気を美しい善意に尽くせば良いと言うのに」

しかしそんな軽口を叩く暇は存在しておらず、その直後、車両の扉から日本刀を振り回す骸骨が出現する。正直、前線で活躍するつもりは無いが、一関係的に霊力も威力も微塵も感じられない空のジュラルミンケースと脅し専用の小刀で応戦するしか無い距離に立っていた。

「俺は皆の迷惑にならない様に少し下がる」

だがその場合、旅籠自身が骸骨を誘導してしまい結果、戦況を余計にややこしくしてしまうのではないかと言う事を考え、少し前線から避けた座席の方へと向かいながら、日本刀を持つ骸骨を相手する事に決めた。

「だが相手すると言っても……」

直ぐに無数の矢や日本刀の斬撃が来ないかを気にしながら、彼は防御の体勢を取りながらジュラルミンケースで骸骨の頭を思いっきりまだ何とか割れていない窓ガラスに叩き付ける。

「流石にこれで死にはしないだろうが……怯ませるくらいなら出来るかもしれないな」

そう言って旅籠は殴った衝撃で車両の廊下まで後退しながら本来、彼自身が行うべき前線へのサポートに徹する事にした。

>>周辺ALL様

【幽霊列車で戦うと言われてからずっと何故か、ジュラルミンケースで闘う旅籠を考えてました……!】

4ヶ月前 No.72

スサ男くん @kodai4370 ★iPhone=Ju3pbQxF36

【仰扇 / 幽霊列車】


「おぉ、本当に動いた…」

あの車掌の努力にケチを付けるつもりはない、しかし本当に機能するかどうかはまた話が別。正直な所、本当に走れるのかと疑っていた。何せ幽霊が作ったものなんだ、普通は眉唾物とか言われて切り捨てられる。だがこうして実際に走っている、窓から見える景色がそれを事実だと認識させる。雪の降る中、数人の乗客と共に延々闇を駆ける汽車、なんか芸術的だ。

「ん、なんか飛んでるぞ」

妙な気配を感じた、これは怨霊の類い。昔は戦場だったと聞いていたので、それらが出てくることに疑問は持たなかったが、それとほぼ同時に窓の外を何かが飛んでいるのが見えた。気のせいで済ませるには少しはっきりとし過ぎていた、ということで確かめるために窓際へと身体を寄越した。その直後だろうか、理子の声が聞こえてきたのは。

「え?」と気が抜けたような返事をして窓を見返した時にはもう遅かった。完全に反射神経だけが頼りのその状況、後ろへと仰け反って致命傷を避けたつもりだったが、窓枠に当たった3本の矢が運悪くバウンドし、顔に付けられていた狸の面を貫いた。その矢が持った勢いには流石に勝てず、鈍い音を立て後ろへと倒れ込んだ。


自分でも死んだと思ったが、目を開くと汽車の天井が悠然と広がっている。なんだ、まだ生きてるのか、無駄に運が良いのはあの時と同じだな。どうやら面の厚みと矢の勢いが失われていたことが相まって顔面に届かなかったようだ。いやー、たまには恩恵をもたらしてくれるものなんだな。何事もなかったように立ち上がると、「借りは返してやる」といつもの口調で軽く言い放つ。

矢がぶっ刺さったままの面をつけているせいでこっちも悪霊みたいな風格を見せ始めたが、その矢に手をつけることもなく、向かった先は車両の出入り口。窓が割れた方の壁にあった扉を思いっきり開いて、そこから全身が汽車の外へ晒された。風は強いが、刺さった矢が飛んで行ってくれるほどではない、意外と強く刺さっているみたいだ。

空に舞う鷹軍団、それらが乗せているのは弓を構えた骸骨。後方車両から乗ってきたやつと同類か、死人のわりに連携が効いている。しかしあの数、矢を放った犯人を捜すのにも骨が折れそうだ、敵の方は骨しかないが代わりになってくれるほど丈夫では無さそうだ。それはともかく、外からの攻撃を貰わないためには丸ごと消してしまう他にない。

「さて、こっちも始めるか…」

対空を続けるジョーに加勢するために来た形となったが、他にも理由はある。あんな物騒な刀を持ったやつと殴り合いをしても、負けはせずとも怪我をしてしまう。痛いのは流石に嫌だ。そんな子供っぽい理由で戦線放棄したと思われないよう、少しは本腰を入れてやることにした。両手を合わせて合掌の構えを取ると、自分でもよく理解していない呪文をボソボソと唱え始めた。


≫all様

【面着けててよかったです(小並感)】

4ヶ月前 No.73

@kw1 ★VT8P8ydYB2_Iyz

【 八月一日 鳴 / 幽霊列車 】

「デカタヌキッ!!」

骨鷹に乗った骸骨の放った矢が窓枠に当たったことで進行方向を変え、そのまま仰扇の面を貫く。目の前で後ろへと倒れ鈍音を立てた姿に見開いたその目には絶望と怒りが映った。悲痛な叫びの如く彼の渾名を呼ぶと同時に、鳴の召喚した鎧騎士との鍔迫り合いに勝ったのだろう、大きく鎧騎士の剣を弾いた骸骨がこちらへと刀を振りかざす。その太刀を受け止める術を持っていない鳴は大きく舌打ちをしてどうにか横へ避けた。随分と不恰好ではあるが、この非常事態、そんなことは言っていられない。(そもそもボク、中距離専門なんですけど! せめてボクも武器の一つや二つ...)と心の中で後悔するも今ではもう遅い。
骸骨と間合いを取りながら、眉間にしわを寄せたまま仰扇の方を見やると、まるで今までのことなど何もなかったかのように仰扇は立ち上がり、その姿に再び目を見開く。矢が刺さったまま歩く様はさながら落ち武者のようだ。

ひとしきり驚いた後はすぐに呆れたような表情になり、心配して損した!なんて考えては骸骨から一気に距離を作った。弾かれた鎧騎士は鳴の前に立ち、あたかも守護神のように骸骨へと剣先を向ける。負傷していない左腕を前方に向けると、それを合図にして鎧騎士が骸骨の心臓部を目掛けて剣先を突き立てた。
肋骨を砕き、肩甲骨をも貫く。
前方に向けた左腕を薙ぎ払うように左下へと振り下ろせば、連動した動きで鎧騎士が突き刺した剣で左下へ切り裂く。どうやら鳴の腕の動きと鎧騎士の動きが連動しているようだ。気色悪い音を立てて崩れ落ちた骸骨を見てはホッ、と胸を撫で下ろす。近距離戦は全くもって苦手だ。こんな狭い車両じゃあ戦えない。立ち上がった仰扇が窓際へ向かって詠唱をするのを確認しては一度下がり、今度は宗助の近くへと寄った。

それと同時に鳴が召喚した、先ほどまで実体を持っていたはずの鎧騎士がどろり、と溶け出してはただのインクとなって床に垂れた。唯一実体として残っていた剣は持たれる力を失い大きな音を立てて床へと落ちた。どうやら鎧騎士を動かすだけの霊力が残っていないようだ。現時点で鳴が使える技のうち六個目の「鎧袖一触」。さすがに自らと動きを連動させる技は長い時間使っていられないようだった。


当社の経理である旅籠宗助。彼の元へ向かった理由は「霊力の回復」であった。基本的に戦闘時はサポート側へ徹する彼を守るためでもあったが、そのためにはそもそもの霊力を回復する必要がある。鎧騎士が遺した剣を重たそうに持ち上げては、ジュラルミンケースを持った宗助に見せる。

「蜘蛛糸、これ、霊力に変えられたりする? 元はボクのインクと霊力からできたものだけど実体はある。触ってみて」

「蜘蛛糸」と呼ばれているのはもちろん宗助である。彼への渾名であれば「錬金術師」が一番ふさわしいだろうが、長いという理由で鳴の中では却下された。代わりに蜘蛛の糸のように細く白い彼の髪を見て「蜘蛛糸」と鳴は呼んでいた。彼の能力は正直鳴の中では曖昧であった。しかし現時点で霊力と交換できそうなものがこれくらいしかなかったので、ダメ元でのお願いでもあった。

>仰扇、宗助、幽霊列車ALL

【ジュラルミンケースが何かわからずggった後もう一度読み返して笑いました。ジュラルミンケースで戦う宗助と面に矢が刺さった状態で戦う仰扇...。カオスです】

4ヶ月前 No.74

@purple3ru ★iPhone=5uXDFiflht

【 虎杖浜唸 / 幽霊列車 】

テレビ等ではよく聞いた音を立てて、汽車は動き出した。
内装は、古くさくもなかなか味があって、(コレはSNS映えするんじゃないですかぁ!? すっごいレトロな感じで……!)レトロの意味は知らないけど、そんなことを考えながらカメラを構え、窓の外もパシャパシャとおさめた。
カラコンの入った橙色の目を輝かせて撮り続けていると、突然の理子の叫びに、一瞬反応は遅れる。声にびっくりして、瞠目してしまったけれど、驚いている暇はない。すぐに胸元のカメラを庇うように地面に突っ伏し、自分の真上を通っていく矢に思わず「ひっ」と悲鳴をあげる。肺の奥から振り絞ったみたいな悲鳴を。胸が無くて良かった、こうやって地面に水平になれるから……とか。そういう冗談、言ってる場合じゃないんですけどね。

「仰扇さんッ!?」

あたりを見渡すと、仰扇のお面に矢が刺さっていて、そのまま倒れ込んだ。鳴に続いて、自分も叫び声を上げる。心配したが、杞憂のようで、本当に刺さっているのかと不思議になるくらい、自然な動きで、刺したまんま出入り口の方へ行ってしまった。自分が無傷なのは、本当にただのラッキーだ。
それから、そっと割れた窓の方に目を向けると、無数の鳥に乗った骨の武士がいて、再び「ひえっ」と甲高い呻き声が漏れた。

「空飛び鳥の絨毯とは、とっても優雅で羨ましい限りですよ! 超怖いしお前バットとか効くんですかぁ!?」

骸骨落ち武者とかいう露骨におばけっぽい敵にやや涙目になりつつも、なんとか立ち上がり1枚パチリとしてから、バットを構え、ソレに霊力を宿す。2対の大きい敵もとい的(小さいのは数え切れません!)は、どちらもとても遠距離戦を得意としているようには思えない。ので、このバットで真っ向から攻撃を受け止めながら戦うことになりそうだ。そのためには、とりあえずこの貧弱な武器を、強化しないと。さて、どうしたものか。

とりあえず……と、「おりゃあああぁぁ!!」んて頭の悪そうな雄叫びとともに、矢の落ち武者の方へ近づき、鷹を叩く。最初は本当に弱々しい自分の能力だ。コレはもう回数を重ねるしかないので、れんだぁ〜〜と太鼓のキャラクターの声を脳内で再生しながら、何度も何度も叩きつける……両手でもっとけば良かったな。
乗り物である鷹だけを攻撃しようにも、そうはいかない。上に乗った落ち武者が攻撃しようとしてくるたび「わわっ」と後ろに退いて、避けて、頃合いを見てまた殴って。うーん、いつまで経っても戦闘は苦手だ。唯の19歳の女には難しい。

>>allさま

【本体が相変わらず戦闘ロル苦手すぎて正直状況の把握がぜんぜんできてませんしどういう感じで負傷させればいいのか攻撃すればいいのか敵を動かせばいいのか全くわかりません!!一応戦闘ゲームしたことあるんですけど距離とカードのタイミングとスキルのタイミングだけ操るみたいなのしかやってないおバカなのでマジマジのマジでバトルがわかりません…だれか共闘して唸をリードしてください(他力本願)
 そして、長らく書き込みせずすみませんでした!!上記が理由です!!!長い!!!!】

4ヶ月前 No.75

緑酢 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_o01

【旅籠宗助/幽霊列車】

骸骨の容姿をした醜い屍共が自分の手柄を競いながら、雪と闇で軋む線路で渡ろうとする幽霊列車に襲撃する中、ほとんど丸腰と同じ状況である為に何とか前線から逃亡して、骸骨が出た車両と距離を取っていたのは旅籠であった。

「何とか、相手を怯ませる事は出来たが予想以上に強敵だな。これでは同僚達が討伐に手こずるかもしれない。上手く私が錬金術でサポートしなくては」

そうまずは骸骨の頭を殴った事で簡単に高ぶった気持ちを何とか落ち着かせようとすると、どうやら仰扇が狸のお面に骸骨の矢がクリーンヒットするのを見てしまう。だが恐らく怯んでいない様子を見ると、顔面には刺さっていないと思われた。

「いずれにせよ、残念だが俺の能力では同僚達の体力を癒す事が出来ない。せめて上手く錬金術で栄養ドリンクを提供出来ればこの仕事も頑張れるものなのだが」

正直に言うと止血の為に包帯の方がまだよっぽど役に立つのだが旅籠はそれに気付く事は無く、今度は他の同僚が闘っている中、錬金術を戦闘に役立つ方法を考えていた。何故なら残念ながら誰かが霊力が空っぽになるまでは役目の無い旅籠の存在と言うのは、小刀とジュラルミンケースで身を守るしかない足手纏いに過ぎない事を知っていた為であった。

「せめて次回からは傷が再生する錬金術でも開発してみるか。……いや、まずは錬金術が戦闘に役立つ様にするのもありだな」

そんな事を呑気に考えていると先程まで鎧騎士を召喚していた八月一日が今はインクとなって溶けた鎧騎士の重量感たっぷりの剣を持ちながら、此方の方角に向かって来る。

「蜘蛛糸、これ、霊力に変えられたりする? 元はボクのインクと霊力からできたものだけど実体はある。触ってみて」

よく渾名を他の同僚に名付けている八月一日から、恐らく旅籠の白髪から蜘蛛糸と呼ばれた彼は直ぐにその渾名の由来が自身の髪から来ている事に気付く。ちなみに髪はよく手入れしているつもりなので、こうして意図的なのかは不明だが褒めて貰えれていると勝手に嬉しく旅籠は感じていた。

「俺の能力は重量が存在する物体さえあれば霊力化は可能だ。それではこの剣を霊力に変えて返すとしよう」

そう言って重々しく沢山の霊力に変えられそうな剣に吸い取る様に触れた後、強大な美しいオーラの如く霊力として形成していく。そしてその霊力を彼の体内へと送ろうとしていた。

>>八月一日鳴様、(仰扇)様、ALL

【二つ名が蜘蛛糸の錬金術師でも良かった気がします。そして、遅れてしまい申し訳ありませんでした】

4ヶ月前 No.76

@kw1 ★iPhone=WeLdY42O45

【 八月一日 鳴 / 幽霊列車 】

宗助は二つ返事の後、鳴が召喚した鎧騎士が持っていた剣に手を添える。みるみるうちに質量分なのであろう霊力が目に見える形で漂い始めては、鳴の体内へと入っていく。最期、吸い尽くされたように剣は消滅した。やはり彼の能力は不可解であった。世俗的に錬金術と呼ばれるようなそれは、いざ目の前で起こるとあまりにもファンタジーすぎて本当に現実かどうかを疑ってしまうほどである。「久々に見たけど、やっぱすごいよねー、それ」。霊力を補充している間、まじまじと一部始終を見ていた鳴はぽつりと呟く。宗介に霊力を回復してもらうことは初めてではない。むしろ回数としては幽幻堂メンバーの中でも多い方だと自覚している。しかしやはり、彼の能力はいつ見ても特殊であった。

「ありがと、これでやっと戦えるよ」

自らの左手を握っては開き、握っては開きを数回繰り返しては霊力が戻ってきたのを確認する。宗助に礼を告げれば踵を返して再び敵と向かい合った。

実は先ほどからどこかしらから奇声が聞こえていた。どこかしらと言うか、正直声の主はだいたい検討がついている。唸がバット片手に逃げ惑いながら連打撃を繰り出していた。彼女は文字通り、焦っている。
はあ、と呆れたようにため息をついてはメモ帳に「疾風迅雷」と書き殴りながら彼女の元へ向かう。

いつ攻撃を喰らうかわからない程にぎこちなく戦う彼女にいささか不安を感じながら、「猫小判!」と(渾)名を呼ぶと同時にメモ帳を右腕の患部へと押し当てる。すると彼女の周りを取り囲む鷹達に今度こそ鳴の「疾風迅雷」、いくつもの雷が落とされる。醜い断末魔と共に地に落ちた鷹を踏み潰すように前に出ては唸の側へ立った。

「加勢するよ、猫小判」

彼女に有無を言わさずに雷は列車の外にいる鷹数体にも命中する。列車内へ入ることなく崖の下へと落ちていくのを見送ってはまた別の敵を構えた。未だ痛む右腕に顔をしかめる。まともにメモ帳に字を書こうとすると右腕がズキズキと痛みだし腕を上げることが出来ない。だらりと垂れた右腕でどうにかメモを持ち、左手で低い位置で字を書く。傍から見れば不格好であるが、この非常事態にそんなことは言っていられなかった。むしろ、左利きでよかったと思う程に。

鎧騎士を召喚した先程の「鎧袖一触」はあまりにも霊力の消費が激しすぎる。一向に減らない奴らには攻撃対象の多い「疾風迅雷」か「硝煙弾雨」が効果的か。やはりボクも、近接戦で使う武器のひとつやふたつ持っておくべきだった。と小さく後悔した。

「キミは目の前の敵に集中して。外の敵はボクがやる」

少し早口気味に捲し立てるようにしてはなおも鷹に雷を落とし続ける。背中は完全に唸に任せて、間近な敵には攻撃をかわすだけで応戦しない。彼女を鍛えさせるつもりで、少しくらいプレッシャーがあったほうが彼女の戦う意思もなお強くなるだろうという考えだった。

>宗助、唸、幽霊列車ALL

4ヶ月前 No.77
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