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霧の都に葬送曲No.59 だけを表示しています。

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ジャック/7月4日/リージェンツパーク→メリルボーンハイストリート裏路地】

親代わりであるシャーロックが熱を出して寝込んでしまったため西洋料理店は休業。ジャックは感染らないようにという愛の計らいで店から放り出される羽目に遭っていた。しかし、霧の都にやってきて一ヶ月ばかりが過ぎようとしているジャックには、今や親代わりは幾らでもいる。今日も店から程近い大きな公園、リージェンツパークで仕事の合間で代わる代わる顔を覗かせる知り合いに遊んでもらっていた。

穏やかな昼下がり。曇りがちな霧の都の空も、今日は僅かに夏の太陽を覗かせる瞬間すらあった。
初夏のリージェンツパークの薔薇園は花盛りで、このところシャーロックと散歩に出れば、園芸と家庭菜園が趣味だという彼は毎度必ず此処を通る。そのたびにジャックに花の名前を教えるものだから、咲き乱れる薔薇の香りごと小さな身体に染み付いていくようだった。
けれど今日は、引率が違えば行先も違う。午後は同じパーク内の動物園に連れて行ってもらえると聞いてジャックは浮足立っていた。いつかエディが連れてきた蛙のときもそうであったが、子供というのは大人が思っている以上に動物が好きなのかもしれない。ジャックはうきうきと園内マップを広げては、まだあまり流暢には読めない字を拾い読みし、飽きると畳んでそれをもったまま芝生を駆けた。

カフェテリアで昼ご飯を食べた後仕事に戻っていく親代わりの代わり≠見送り、次のお迎えまでまだ少しある。待ち合わせの動物園ゲートに向かって、ジャックはすっかり歩き慣れた遊歩道をスキップで進んだ。

「……あ、あれ…………?」

しかし、想定外の出来事はその直後に起きた。
あろうことかジャックは、いつもの遊び場であったはずの公園内を目的の方向とは真逆に進み、反対側の出口から外に出てしまったのである。つまりは迷子だ。相手は未だ弱冠四歳児、無理もない。
目の前を車の往来する道路が横切っていて、一人彷徨うジャックは狼狽え立ち止まる。暫く往来にきょろきょろと首を振っていたが、やがて心細げに待ち合わせの相手の名前を繰り返し繰り返し呼びながら、危うげに道路を渡る。待ち合わせのゲートからはどんどん離れて行っていることを、ジャックは知らない。
道路沿いの蝋人形館の丸いドーム屋根には見覚えがある気がして、迷いながらフラフラと近寄れば、四輪自動車のクラクションが鳴る。はじめて一人で歩く大通りの音に驚いて逃げた先は、もう幼子ジャックにとって全く見知らぬ裏路地だった。

「……ここ…………」

どこなんだろう。大人の目からすれば、そこは賑やかなメリルボーンハイストリートから一本裏に入っただけの小径。しかし、子供の目からすれば、通り一本挟んだだけでもう全くの異次元世界に迷い込んだような感覚だった。ジャックは心許なげに辺りを見回すが、普通の子供ならば引き返しそうなところを決して引き返しはせずにずんずんと灰色の迷宮に自ら飲み込まれていった。せっかく晴れかけていた空がまた翳りを帯び始め、辺りにはまた霧とも煙ともつかぬ白濁の色が立ち込めてくる。
その時、無機質な壁に反響しながら聞き覚えのある声がこちらに向かってくる。ジャックの晴れた空色の目がハッと上げられた。

「ーーーーどこ? どこにいるの?」

その声だけを道標に、小さな身体は鼠のように灰色の迷宮を迷いなく進んだ。幸か不幸か、運命の悪戯なのだろうか、ジャックは呆気なく其処に辿り着いてしまった。

「…………」

朽ちてずり落ちた看板の影から顔を覗かせた瞬間に出くわしたのは、犯行現場と呼ぶ以外に言いようもない決定的瞬間だった。押さえ付けられた女の人の、地面と同じ高さになった視線が、ジャックのそれと偶然にぶつかり合う。誰でもいいから助けてと、懇願するような、視線。その目が急に、グンと持ち上げられ、それきり、もう二度とジャックの視線とは合わなくなる。
女の絶叫が響いた。見なくても良かった景色が、晴れ過ぎた天の色を忽ちに汚していく。
再び見える高さに戻ってきた横たわる女の顔は、ジャックの方を向いているが、変わり果てていた。物言いたげな宝石のような眼球は手品のように忽然と消え失せて、ただ伽藍堂の穴だけが開いている。

「…………」

ジャックは声を上げることも泣くこともなく、ただそこに流れる映像をぽぉっと見つめていた。怯えても驚いてもいない。白昼夢か或いは映画か何かを見るかの如く、まるで現実味の無い表情で。理解が追いついていないのだろう。地面の血、顔の穴、真っ赤なヒールの足元、慟哭、笑い声、煌めく小瓶、煙草、立ち昇る紫煙。それらを銀幕を流れるエンドロールのように、少年はただただ見つめていた。

>ダニエラさん、all


【ダニエラさん、霧の都へようこそ! 予告通りはじめてのお仕事見学〜をしてみましたが、だ、大丈夫だったでしょうかこんな感じで……(汗)】

2018/07/04 22:49 No.59

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