Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼ページ下 >>
切替: メイン記事(90) サブ記事 (81) ページ: 1 2

 
 
霧の都に葬送曲No.53 だけを表示しています。

七角羊 @nnir749☆A3LxctuN3d2 ★nXNfBmBWZd_m9i

【ダニエラ/7月4日/メリルボーンハイストリート裏路地】

ぼさぼさの髪を整えて、バッチリセットして、鏡の前でお化粧を施すの。唇にはお気に入りの紫色のルージュを乗せて、お化粧が済んだら好きな服に着替えて、この間買ったばかりのハイヒールを履いて、街へ繰り出すの。お仕事と、イイ獲物がいないかどうかをチェックしにね!

数々のブティックが並ぶメリルボーンハイストリートの裏側、裏路地の入り組んだ道の先の先。歩いて行くと迷路みたいに二手に分かれているポイントがあり、片方は行き止まり。もう片方は別の路地への道が広がっている。剥がれ掛けのところどころ破れたビラが数枚貼られている灰色の壁に、霧が充満した密室の空間。行き止まりになっている方の場所に一人の男の男が倒れており、もう一人、女が別の男に壁に押し付けられていた。午後の昼下がりにしては、あまりにも物騒な光景であった。

「貴女、綺麗ね。ここの人間じゃないの?どこから来たの?」

ギリギリと強く押さえつけられた痛みと恐怖で震えている女に向けて問いかける。震えた声で告げられたこの"霧の都"ではない地名に、笑みが深まる。

「やっぱり!異邦人の目は久しぶりだわ、ここでは見ない色で綺麗ね。」

うん、うんうん、気に入ったわ、とさらに食い入るように女の目を見つめる。女は何が何だかわからない様子で、震えた声で倒れている男に助けを求める。地面に血を垂れ流し、倒れている男は青ざめた顔で女と男を見上げ、彼女を離せと叫ぶ。叫ぶ気力はあるが、脇腹と右足に突き刺さった針のようなものによりうまく体が動かず、床に這いつくばりじたばたと我武者羅に動くことしかできない。獲物の銃も、いつの間にか奪われてしまった。
淡い紫色の短い髪を撫でつけられており、顔には女性と同じように化粧が施されており濃い紫色のルージュが特徴的。大きく胸元が開けられた黒いシャツと同色のパンツを身に纏った男。靴は真っ赤なハイヒール、首には細いネックレスが光り輝いていた。男、のはずだが口調は女だ。だが女を難なく押さえつけて抵抗を許さないあたり、どう見ても男だ。
這いつくばる男の声に思わず、女の手を一纏めにして壁に押し付け動けないようにしている女のような男が振り向く。

「ちょっとうるさいわねェ。抵抗されるのは悪くないけど、今からワタシがイイもの見せてあげるから黙ってて頂戴」

"貴女のそれ、貰うわ"という一言と共に男の片手に現れた針。あの針で、突然襲われたのだ。彼女とショッピングのあとに散歩をしていた時、後ろから声をかけられた。名前を呼ばれた。男が振り返った頃にはもうすでに右足だけではなく身体の様々な場所に刺され、殺されると感じたのだ。しかし針が刺さった男の顔をジッと見た後、隣にいる女の姿が目に入った瞬間に、突然襲ってきた男の標的は彼から彼女へ変わった。
男の手に再び針が握り直され、女の顔の、目のあたりに近づいていく。何をしようとしたのか気づいた瞬間、男の顔はさらに青ざめ、女の口からは悲鳴があがり、刺した男の顔には恍惚の表情が浮かび上がっていた。深い裏路地の底に女の悲鳴は鈍く飲み込まれ、もっと鳴いて、という言葉と共に鋭いそれが奥へと進んだ。


女の身に起きた恐ろしい光景に気絶するほど血の気が引いてしまい、もう女の悲鳴以外のことはよく覚えていない。あれからどれぐらい経ったのかもわからない。ダニエラのそれは通常行われる殺人と比べると時間が長くかかるが、メインディッシュを食べ始めれば進むのは早い。二つの宝石を奪った後は、宝石が入っていた箱の奥深くに針を突き立てて、かき混ぜて終わり。それで宝石の入れ物は事切れる。女はもう、遊び尽されて飽きられてしまったおもちゃの様に動かない。

「嗚呼良かった。彼女、とっても素敵ね」

これからの生活が楽しみよ、と文字通り血の涙を流す女を見下ろすながらダニエラが這いつくばる男に声をかけるように言う。手の中に納められた液体が入った小瓶の中には、先ほどまで彼女の顔に収まっていたものが入っていた。彼女が入った小瓶を嬉しそうに撫でるダニエラの姿は、男の目には狂っているように映った。どうしてこうなったのだ。人を殺すことを生業としていた自分は殺される覚悟ができていたが、まさか無関係の想い人が殺されるなんて。たまたま偶然一緒にいた時に、こんなことが起こるなんて。

「本当はね、彼女は標的ではないんだけど、まさか貴方がこんなにイイモノを持っているなんて!まさに幸運だわ。」

感謝するわミスター、という言葉と共に投げキスを贈られる。ダニエラの言動が理解できず、男は呆然と見上げることしかできない。ダニエラの言葉の意味も自分ではなく女が手にかかった理由もわからないが、こうしている間にも己の体からは血が流れ、自分も遅かれ早かれ彼女の元へ行くことになることは分かる。もういっそのこと、早く殺してくれとすら思う。そんな男の考えを知ってか否か、ダニエラは「だからね」という言葉と共に、

「貴方を殺すのはこれを吸い終わってからにしてあげる」

残酷に笑ったそう続けた。ちょうど一休みしたかったの、と呟いたダニエラの手に握られていたのは、女が愛用していた煙草とライター。彼女のポケットにいつも入っていたものだ。いつの間に、という考える間もなく、ダニエラの言葉がじわじわと絶望となり、男の頭の中を侵食していく。路地の隅に丁度置いてあった木箱に腰をかけ、足を組んで煙を吐き出す。あまり煙草を好まないダニエラだが、小瓶の中の彼女の手向けにと煙草に手を伸ばした。片方の手で絶え間なく小瓶をいじっては、まるで恋人の様に愛おしそうに目を細めて眺めていた。ここは昼間とは思えないほど暗い、霧がかかった街。充満する霧とダニエラの口から吐き出された煙が混じり、男の慟哭する声さえも飲み込んだ。

>>ALL


【本編への投稿が遅くなってしまって申し訳ございません……!血みどろの殺人現場ですが、よければ一部始終の目撃やまだお仕事中なのにひと休み中で気がゆるゆるのオネエへのお説教等絡んでいただけると嬉しいです……!よろしくお願い致します。】

2018/07/01 08:06 No.53

霧の都に葬送曲No.53 だけを表示しています。
切替: メイン記事(90) サブ記事 (81) ページ: 1 2

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。