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霧の都に葬送曲No.52 だけを表示しています。

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

【ドールホーン/8月16日/聖アンダーソン教会】

近くにピクニックに来て、いざ帰るとした所で雨に降られたと悄気るジャック。テーブルについたのを確認してから自身もテーブルに向く。

「それで……ここに来たのね……うん、良いわよ……」

ジャックが付き添いを置いて来たのか付き添いがジャックを置いて来たのか、まあそれは置き。
彼の前にコップと小皿を用意し、簡単な紙ナプキンを折り込んで前掛けにする。

「十五人のインディアン……、前のおさらいで良いかしら。元にした二つのマザーグースと歌からね……」

手慣れた動作でペティナイフを取り出して彼の前の皿に食べやすい大きさに切り分けたコテージパイを取り置き、返す手でカップにレモネードを注ぐ。

「はい、どうぞ召し上がりなさいな……」

移動本棚から自著の本を一つ引き出して開く。金の装飾文字の刷られた、茶色い皮の本だ。


《Fifteen Indians in Dead man's Chest.》

『死人の箱には15人のインディアン』
『著:Flarlia-“Dollhorn”-Scarvillese』


この本の内容はまぁ簡単に言うと推理小説と伝記を組み合わせたものだ。
アイデア元はマザーグースとその歌を二種類ほど組み合わせて、其処に海賊の船乗り歌の内容を盛り込んで捻った作りにしてある。

「うん、良いわねぇ。まずは元になった……"Ten Little Indians (10人の小さいインディアン)"の歌は教えた通りね……」

題名は同じだが歌とマザーグースで内容は異なる。先ずはジャックに教えた事のある歌の方から、簡単に節を付け手遊びを加えて歌い始めた。


One little, two little, three little Indians,
Four little, five little, six little Indians.
Seven little, eight little, nine little Indians,
Ten little Indian boys.

(一人 二人 三人のインディアン)
(四人 五人 六人のインディアン)
(七人 八人 九人のインディアン)
(十人のインディアンボーイ)

歌詞に合わせて指を拡げ、

Ten little, nine little, eight little Indians,
Seven little, six little, five little Indians.
Four little, three little, two little Indians,
One little Indian boy.

(十人 九人 八人のインディアン)
(七人 六人 五人のインディアン)
(四人 三人 二人のインディアン)
(一人のインディアンボーイ)


そして折りたたんで行く。
最後の一本の人差し指を見て、少し思案した後、マザーグースの方も教える事にした。幼い彼に全てを理解する事は出来ないかも知れないが、その内『此方側の色』に染まる様な事になった時にはわかる様になっているかもしれない。

「これは覚えても、覚えなくても良いわ……。食べながらでも良いからね」

朗々と語りかけ、彼に言い聞かせる様に。
密々と囁きかけ、自身に重ね合せる様に。


Ten little Indian boys went out to dine,
One choked his little self and then there were nine.

Nine little Indian boys sat up very late,
One overslept himself and then there were eight.

Eight little Indian boys traveling in Devon,
One said he'd stay there and then there were seven.

Seven little Indian boys chopping up sticks,
One chopped himself in halves and then there were six.

Six little Indian boys playing with a hive,
A bumblebee stung one and then there were five.

Five little Indian boys going in for law,
One got into Chancery and then there were four.

Four little Indian boys going out to sea,
A red herring swallowed one and then there were three.

Three little Indian boys walking in the zoo,
A big bear hugged one and then there were two.

Two Little Indian boys sitting in the sun,
One got frizzled up and then there was one.

One little Indian boy left all alone,
He went out and hanged himself and then there were none.


___10人のインディアンの男の子が食事に出かけた。
一人が咽喉を詰まらせて9人が残った。

9人のインディアンの男の子が夜更かしをした。
一人が朝寝坊をして8人が残った。

8人のインディアンの男の子がデヴォンに旅した。
一人がそこに留まって7人が残った。

7人のインディアンの男の子が薪を割った。
一人が真っ二つになって6人が残った。

6人のインディアンの男の子が蜂の巣で遊んだ。
一人が蜂に刺されて5人が残った。

5人のインディアンの男の子が訴訟を起こした。
一人が裁判所に行って4人が残った。

4人のインディアンの男の子が海に出かけた。
一人がニシンに飲まれて3人が残った。

3人のインディアンの男の子が動物園に行った。
一人が熊に抱きつかれて2人が残った。

2人のインディアンの男の子が日光浴をした。
一人が熱で焦げて一人が残った。

一人のインディアンの男の子は一人ぼっちになった。
自分で首を括って、そして誰も居なくなった___。


一小節が終わる度にドールホーンの顔は陰鬱な、嗜虐的な笑みを湛えて行く。長い前髪の隙間から教会のステンドグラスを見上げる、濁りかけた目。喪った方の目が最後に写した光景が今でも尚こびり付いて剥がれない。

脳髄に刻み込まれたあの表情。
涙と血と体液でぐちゃぐちゃになったあの顔が忘れられない。苦痛に歪み慟哭するあの涙が。

「くふ、くふふふふ、ふふふふふふっ」

不意に笑いが込み上げて来る。同時に目頭が灼けるように熱くなった。
ぽたぽたと床に雫が落ちる。笑いながらドールホーンは泣いていた。愉悦の表情で、蕩けたままの顔で涙を流す。ジャックが目の前に居ようが御構い無しだ。

「くふふ、……グズっ、くっ……ふふふふ……っ……」

嗚咽と嗤いを混濁させ、流れる涙を拭う事も無くドールホーンは椅子に腰を落とした。本のページを捲り、次なる『歌』をジャックに聴かせるために。


>>ジャック

【いきなり泣き笑いする変人】

2018/06/30 02:54 No.52

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