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霧の都に葬送曲No.39 だけを表示しています。

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【シャーロック/7月2日/ベイカーストリート裏路地】

真夜中のベイカーストリート。赤煉瓦の壁に、黒く巨大な影法師が現れる。霧の都の夜を行く怪物の影。
背の高いシルクハットに、たっぷりと夜風に翻る蝙蝠のようなコート。畳まれたままの傘と、枯れ木か或いは蜘蛛のような細く長い脚。巨大な影法師は煉瓦模様の凹凸の上を滑るように、殺人犯の少女の背後から這って迫ってくる。

「…………またですか、ミカエル」

咎めるような厳しい声が、凛と辺りの空気を震わせる。ふっと、月が翳ると、壁沿いに追いかけてきていた漆黒の化物が姿を消した。代わりに山の如き影はしゅるりと沙羅の音すら立てそうな鮮やかさで収束して、声の主の足元に集まって、本物が濃霧の中より現われ出でた。
血生臭い夜霧を襟に裾に絡ませて、迷惑そうにポケットの中の依頼書を握り潰している。彼はあの恐ろしい影がそのまま凝集したかのように真黒で、冬の大樹か鋭利な刃物のように冷たく佇んでいた。

「ミカエル」
彼……殺人鬼・シャーロックは目の前の惨状を一瞥し、状況を理解したようだった。一瞬言葉を切った後に、もう一度彼女の名前を呼ぶ。小柄なミカエルとの間には、50cm近い身長差がある。壁のようにぬっと立ちはだかり、ハットの翳り差す目元が視線だけで彼女と屍の小山を見下ろし、傍のルーツァンを冷え冷えとした眼差しで一瞥する。
シャーロックはつかつかと二人の間に割って入ると、不意にミカエルの前に身を屈めた。まるで平手打ちにでもしそうな所作と形相ながら、一変してルーツァンから彼女が掛けようとして辞めたペストマスクを奪い取り、ミカエルの顔に装着した。

「君が感染してはいけない」

蟠る静かな怒りを、理性で押さえ込んだような顔をする。血の匂いがする。眉を潜めた。手を、切り落としたのか。
直接吸わされなければ死には至らない毒であっても、それを使うミカエルの曝露量は一般人の何倍にも及び蓄積されるだろう。況して、子供の体躯である彼女には……。

「ルーツァンも甘やかしすぎだ」

自分のことは棚に上げ、背後のルーツァンをキッと見上げてチクリと棘のある言葉を刺す。彼女が手にした武器のスコップ、屍から離れて転がった手首。ミカエルの恒例行事を、ルーツァンが手伝ってやったらしいのは一目瞭然だ。溜息をつく。子供好きのシャーロックが、ミカエルの母親のようであるルーツァンにこうして腹を立てるのは一度めではなかった。
ペストマスク越しに見えるミカエルの、焦点の合わない目を見つめ、僅かに目を眇める。
ーー薬か。
彼はさっと立ち上がる。

「依頼書にあったのは、この御客様一人のはずでしたが? 殺しすぎです」

淡々と、しかしねちねちと、慇懃無礼とも取れる丁寧な説教が始まる。しかしルーツァンと違って彼は薬には気付いていても言及はしなかった。
コートの中で握り潰している依頼書の標的は、余分な命を道連れに既に足元で息絶えていた。無論、手柄を取られたことを怒っているのではない。もう少し自分が早く来れば、という自責の念もあったのだ。ただしそこはシャーロックも殺人鬼。余計に四人もの尊い命を奪った≠ニは微塵も考えていない。余計に四人分も女児の手を汚させてしまった≠ニ親心に思うのみである。此れでは、彼女のような殺しすぎた殺人鬼や、自分のようなならず者の殺人鬼を達が極刑に処されぬように、政府に殺し屋の誇りを売った意味がない。

「ミカエルは若いのに有能な殺し屋です。私よりも余程ーーいや、その歳でその業績は仲間内でも一二を争う腕前と言っていい。ですが、毎回毎回こんなに余分に殺してきて事を大きくしては、目を付けられますよ。何処に行く先々で何倍も余分に殺し華々しい業績をアピールする暗殺者がいますか。我々は軍人ではなくて殺し屋です。貴女の若く逸る気持ちもわかりますが、気付かれないよう忍ぶということも覚えるべきでは」

小煩い説教は、まだまだ続く。
ルーツァンの視線もお構いなく、肌に纏わり付いていた夏の夜が冷えて行くのもお構いなく。

「……ミカエル。貴女の身体も心配です。私は、貴女の為を思って言っているのですよ」

普段なら甘く幽かに震える囁きのような声音が、冷徹になって機関銃のように一息に喋ってしまうと、それから少し疲れたような哀しそうなしおらしい声になった。
ルーツァンとミカエルの間に転がり落ちた、切断された手首を、空き瓶でも拾い上げるように回収する。骨の見える輪切りの断面から冷めた血が、生者の勢いを失くしずるずると流れ出る。自分の犯行では殆ど汚すことのない純白の手袋が、闇夜にも尚黒く見える程迄に赤黒く濡れていくのをただ黙って見つめていた。
折角ルーツァンが切断してくれた戦利品≠目の前で取り上げてしまうと、シャーロックは踵を返した。本当はこんな煮ても焼いても食えないもの、欲しくもないのだが。

「これは預かっておこう。手首はもう一つ付いているようですが、私は何処かの優しいお母さんと違って子供≠フ悪い遊びには加担いたしませんからね。……ルーツァン」

行きましょう、と、嘗ての相方≠フこれ以上の叱責を抑止するように声をかけ、一足先にミカエルの殺人現場をそのまま後にした。

>ミカエル、ルーツァン、all


【鉢合わせokだったようなので、追いレスで合流させていただきました! 1レスでお説教し掃けた結果、長くなってしまいました、読みにくくてごめんなさい(汗)】

2018/06/18 22:40 No.39

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