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霧の都に葬送曲No.34 だけを表示しています。

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

【ドールホーン/6月13日/聖アンダーソン教会】


「雨はまだ続きそうね……」

つたつたと教会の屋根を雨が叩く音がする。本を閉じて紅茶を飲み干したドールホーンは椅子をガタリと下げて立ち上がる。

土が柔く湿らない内に穴を埋め切らないと行けないだろう。


Rain rain go away, Come again another day.
Etticoat wants to play.
Rain, rain, go to Grave garden, Never show your face again!


雨よ雨よとマザーグースの替え歌を唄いながら表に出ると、雨粒が石畳を打つ漣めいた音が耳を洗う。
中程まで埋まった墓穴からは恨めしげに突き出た右手が黒雲を掴むように伸びていた。

シャベルを掴んで土を掬い、穴の上に振り落とす。土を掬い、振り落とす。叩いて均してまた土を被せ、小雨の降る中行われた作業は最後に粗末な十字架を土の山の上に挿して終わった。

奴等の墓に書く事は何も無い。故に白無垢の木の板を組んで縛っただけの簡素な物だ。形式上最後に十字を切っておき、使い終わったシャベルを納屋に仕舞いに行く。

教会の裏手はそこそこに広い墓園になっているが、埋まっているのは自身が手に掛けた者達の骨とか遺品とか、仲間が処分に困って持って来たあれこれだけなので此処に来る人は殆ど居らず、荒れに荒れている。その一角に納屋があり、『仕事』に使う物品が置かれていて、シャベルは壁に掛ける。

他にはノコギリだとか枝切り鋏だとか、鉈にツルハシ、先の戦争での使われた物ではあるが槍や剣やメイスなんかが置いてある。コールタールの樽、農機具なんかは隅の方に山になっていて、壁に据えられた棚の上には雑多な我楽多に混じり頭蓋骨が五つ。


My mother has killed me,
My father is eating me,
My brothers and sisters sit under the table,
Picking up bury them under the cold marble stones.


初めの一人は物の弾みで。悪戯で薪割り斧の頭に細工して置いたのが忘れた頃に吹っ飛んだ。
百人目は首に縄を括り付けて目隠ししたまま梁の上を渡らせた。布の間から伝う涙は美しかった。
二百人目は死体の処理も手慣れて来た頃。じっくり煮込めば骨も蕩けて柔らかくなる。小説のトリックが役に立った。
三百人目はビズの依頼主。自分を騙して口封じしようとしたけれど逆に鉈を脳天に叩き込んでやった。許しを乞うて哭き叫ぶ顔は滑稽だった。
四百人目は孤児の少女だった。趣向を凝らし、持てる技術を全て使って出来るだけ長く活かすよう務め、その際の全ての記録を取った。思い返すと未だに下腹部が熱くなる。

納屋を締めて鍵を掛け教会に戻る。一度だけ空を仰ぎ見て、孤児に本でも読み聞かせようかと思案しながら濡れたカソックコートを服掛けに投げかけて、髪を乾かす為に暖炉に薪を焚べる。
そうしてまた椅子に座り、小説を開くのだった。

>>ALL

2018/06/17 02:32 No.34

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