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霧の都に葬送曲No.32 だけを表示しています。

ミリヤム @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【ミリヤム(ウィリアム)/9月5日/ロンドン橋付近、テムズ河の畔】

 ウィリアムは、噎せ返る鉄錆の匂いに溺れながら、今し方殺めた女の体から流れる血をじっと見詰めていた。彼には血液性愛の気はなかったが、人間の体から出ていく血の量に比例して、蒼白く透き通っていく肌の様子が堪らなく愛しくて眺めているのだった。

 白い肌は陶器に似ている。虚ろな瞳はガラス玉のよう。もう二度と自分の意思では動かせない体は、球体関節のマリオネット――死体とは最早、至上の人形と呼べるのではないだろうか。それと二人きりで戯れるのは、此の世で最も美しく残酷で悍ましい。

 その光景を想像するだけで、ウィリアムの気持ちは昂り、その顔に凄絶な笑みが刻まれる。
 ナイフを振り下ろすのを止め、ウィリアムは彼女の完成図を思い描いた。血抜きは終わった、後は防腐処理と傷口の縫合と……彼女に映える衣装と装飾品。流石にこれ以上此処で作業は続けられないので、一度バラすなり何なりして運ぶ必要もあるか……。
 そうして少し冷静に今後の段取りを考えだしたウィリアムの耳に、僅かな音が届いた。小石が蹴飛ばされるようなその音に、今度は彼自身が血の気を引かせ、鼓動と脳髄がこれでもかと警鐘を鳴らす。彼女の姿に夢中になりすぎていて、何者かに接近を許してしまったらしい。手の中のナイフを見遣り、ごくりと生唾を飲み込んだウィリアムは、決死の覚悟で振り返る。
 しかし次の瞬間、ばくばくと五月蠅い位に早鐘を打っていた心臓はすっと治まった。

「なんだ……アンタ確かシャーロックさんとこの……」

 丈の長いワンピースを纏ったピンクの髪の女性の姿を闇の中に何とか見据え、ウィリアムはほっと胸を撫で下ろした。そこにいたのが一般人なら死体が一つ増える所だが、彼女は――スワンはかのシャーロックの妻である。人殺しの現場を見られても特にこれと言った問題はない。強いて言えば、スワンの方が僅かに怯えているように見えることくらいか。
 にしても、とウィリアムは死体とスワンとを交互に見て、およその距離を測れば溜め息を吐いた。幾ら彼女に夢中になっていたとは言え、またスワンの立場もあるとは言え、此処まで近付かれても気が付かないとは、とても二百人近くの人間を葬ってきた殺人鬼とは思えない。次からはもう少し自重しようと、彼はこっそりと心に決めた。
 そうして改めて、ウィリアムはスワンの視線が自分が殺した女へと熱心に注がれているのに気付く。
「ああ、これ……綺麗でしょう? 俺は彼女を、これからもっともっと綺麗にして見せますよ……生きてた時の何倍も綺麗に。俺、人形作って売ってんですけど、良かったらお一つ如何です?」
 先程までの狼狽っぷりは何処へやら、ウィリアムは死体を見て明らかに恍惚としながらセールストークを始めた。サービスしますよ、何て冗談めいて聞こえる言葉も、決してスワンへ取り入ろうとしているのではなく彼のプライドに由来するものだった。

>スワンさん

【わぁい、お待ちしておりました! 目撃ありがとうございます。】

2018/06/16 21:14 No.32

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