Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(40) >>

霧の都に葬送曲

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(1000) - ●メイン記事(40) / サブ記事 (69) - いいね!(12)

芙愛 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

煙る街は薄暗いまま、鈍色の空に輪郭を溶かしている。
片羽を切られた鴉達は、塒を恋いて啼けども飛べぬ。
そのまま街ごと夜霧に呑まれて、時計塔の鐘が鳴る。


「London Bridge is broken down,Broken down, broken down……」

齢七つほどの少年が一人、夜のテムズ河に向かってマザーグースを口遊む。
頭上には蝙蝠傘が揺れているのに、あの人に掛けてもらったフロックコートは霧雨に侵されて、重たい。
真夜中のタワーブリッジを跳ね上げる船は無い。闇夜に浮かぶ二つの塔を従えた橋梁の上で少年は、欄干に凭れたままいつまでも霧の都の夜を眺めていた。
河の向こうから、また大時鐘が深夜を告げる。

「みんな死んじゃった」

鐘の音が、血の匂いを連れて来る。
死神達の夜が来る。
濡羽色の傘の陰から、少年は寂しそうにぽつりと零した。夜に溶けてしまいそうな、儚い声だった。
けれど、もう死神も来ない。
雨と死の匂いに包まれたその街を、人は『霧の都』と呼んでいた。
霧の都には、嘗て恐ろしい殺人鬼達が住んでいて、夜な夜なこの街に怖ろしい血の雨を降らせていた。三年前に少年が彼等と出逢ったのも、こんな、今にも土砂降りに変わりそうな霖雨の夜だった。
少年にとって、霧の都を闊歩する死神達は皆、やさしい育ての親だった。
残酷で歪で優しい殺人鬼達は、雨と死ばかりのこの街で一人の親無し子を彼等なりのやり方で大切に育てて、それから彼を置いて一人残らず死んでしまった。

不気味に黒く沈んだ河の色を見ていた目を上げれば、霧のヴェールの向こうに、見知った背の高い黒いシルクハットの影が見えた気がした。少年はハッとして橋の向こうへと追い掛ける。けれど、靄の切れ間に足を止めれば、其処には誰の姿も無く、ただ青褪めた倫敦塔が処刑場の翳りをたたえて聳え立っているだけだった。
肩を落とし、傘を畳んで、降りしきる雨に身を任せたまま、石畳を踏む。刑場を通り過ぎM街を北上すれば、其処は彼の庭だった。
街に満つ夜霧の、遥か彼方。雨風が織り成す刹那の銀幕。映し出された遠い過去の幻想を恍惚と眺めて、もう傍には居ない彼等との思い出を振り返る。奇妙で幸福で残酷で猟奇的な、町中を恐怖に陥れていた悪人達≠ニの思い出を。

ーーLondon Bridge is broken down,My fair lady.

「嗚呼、それはですね、若いお嬢さんを人柱に埋めたそうですよ」ーー


【こんばんは。スレを建てさせていただきました芙愛と申します。当スレは殺人鬼企画≠ニして興した物語です。一文で紹介させていただくと、「なんか19世紀ロンドンっぽい街に殺人鬼達がいて、柄にもなく子育てなんかしていたが、まあ色々あってみんな死んだ」って感じの話です。興味と御縁がありましたら……注文はずいぶん多いでしょうが、どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。】

メモ2018/06/16 20:22 : 夕邑三日月☆NIljAHmRyhk @mistydark★Android-GaTaMXF8bf

此処までの人物相関のまとめです。

後ろに何も書いていないのは確定しているもの、(許可待)となっているのはサブ記事で申し出があったもの、(相談中)となっているのは相談しているのを見かけたけれど正式にはまだ決まっていないものです。

特に「相談中」は私の思い違いや取り零しなどが沢山あると思うので当事者さんはメモで訂正していただければと思います。

また、正式に双方理解で決まったよーという方は、(相談中)や(許可待)を消していただければと思います。他にもこんな関係を作ったよーという方も、追加してください。


味付けはどうぞ、皆様各自で御自由に!


◯シャーロックの

・内縁の妻→スワン

・元嫁→ルーツァン

・お店の常連さん→メロウ、ミカエル

◯ルーツァンの

・弟妹のように可愛がっている同胞→ルイス

・元旦那→シャーロック

・東国同盟?→白雨(相談中)

・水面下で対立している同胞→

・時々生徒→メロウ

◯白雨の

・別れた元旦那→

・アトリエによく来る友人?→ダニエラ(相談中)

・人形作りの弟子→ミリヤム

・東国同盟?→ルーツァン(相談中)

・食事に誘う→シャーロック

・仲が悪い→ルイス

◯エディの

・知り合いの医師(臓器移植仲介人)→シチダンカ

・可愛がっている年下→スワン(許可待)、ダニエラ(許可待)

・酒飲み仲間→メロウ、ルーツァン

◯スワンの

・一方的に尽くしている相手→シャーロック

…続きを読む(40行)

切替: メイン記事(40) サブ記事 (69) ページ: 1

 
 

第一幕プロローグ @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

10日前 No.1

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ジャック/6月13日/西洋料理店Wildcat】

ここに来てから、早くも一週間が過ぎていた。
その間一度も、まだ青空を見ていない。この土地は『霧の都』と呼ばれていて、滅多に晴れ間を仰げることは無いのだと教えてもらった。
今日はその養い親の一人も忙しいらしく厨房と店の表から出てこないし、執拗なハグや頬擦りもしてこない。

幼いジャックには、未だ自分の身の上に起こった出来事の全貌はほとんど理解できていなかった。ただ、自分が両親と離れてしまったらしいということはわかったようだった。それ以上のこと……二人が死んでしまったことも、もう会えないということも、元の家にはもう帰れないということも、自分を誘拐した賑やかな人達が悪党と呼ばれる存在だということも、幼子には明かされなかった。というより、死という概念を彼はまだ理解出来ていないらしかった。
意外にも、元の肉親から得体の知れない殺人鬼達のほうへとジャックの関心が移るのは早かった。
今日は閑散としている昼のサロンルームで、一人カウンター席で待ち惚けをくらわされて暇そうにしている。床には到底届かない短い足は宙ぶらりんで頼りなく揺れ、テーブルの上のプラスチックマグのアップルジュースは半分ぐらい残っていた。目の前に置かれた黒いラベルの酒瓶には、白い小さな提灯が鈴なりについた可憐な花が飾られている。
暇を持て余したジャックは、その瓶に手を伸ばして引き寄せ、深い緑の青々とした茎をそっと持ち上げて抜き取った。豊かな香りを放つその花に顔を近づけてしげしげと不思議そうに眺めている。
「……JACK=c…」
花弁のように小さな唇で、つい先日つけられた自分の名前を口ずさんでみる。やっと読めるようになってきたアルファベットを、昨日瓶のラベルにも見つけて読んだときの育て親の喜びようは実親に何倍も勝るもので、ジャックは誇らしく少し得意になった。
そうだね、これはジャックの酒です、と店主は輸入ウイスキーの残りをロックグラスに移し、空いた瓶に水を入れて美しい君影草を何気なく飾ってくれたのだった。
そんな昨晩の出来事を思い出しながら退屈を紛らわしている彼の耳には、ランチに賑わう表の洋食店の喧騒と、忙しそうにしているシャーロックの接客する声が聞こえるばかりで、ジャックは益々暇を持て余した。

>all様


【本編開始です! こちらで絡んでくださる方にはミッション:ジャックをお出かけに連れ出して遊んであげて≠ェ発生します(笑)
本編開始ですが、第一幕やっている間は、新規キャラさんも二役目さんも追加参加可能、もちろん関係の追加や複雑化もまだまだ可能です〜】

10日前 No.2

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【シャーロック/6月8日/西洋料理店Wildcat】

地下鉄を降りてから公園を背にしてオックスフォード大通りに向かう途中に、彼の西洋料理店はある。
蔦の絡む洋館は二階建てで、アーチ型の黒い扉にWildcat≠フ文字と猫の絵が描かれた看板が提がっている。この辺りのレストランや飲み屋にはよくあることだが、この店にも例に漏れず表と裏の二つの入り口があった。広い店内で二部屋は厨房で繋がっているのみで客の通り抜けはできないようになっている。中産階級用のサロンと労働者階級用のパブに分かれている一般的な構造はそのままに、この店は表の入り口から入れば普通の西洋料理店、裏の入り口から入れば殺人鬼達の溜まり場たるサロンルーム……と呼ぶには風紀の悪すぎるガストロパブになっているのだ。

目立たない裏の入り口から入ってみよう。真裏に立っているアパートの一室として西洋料理店Wildcatの入り口は隠されている。他の部屋となんら変わりなく並ぶ呼び鈴と表札付きの無愛想なドアの一つを開ければ、その扉だけはアパートの一室ではなく殺人鬼達の隠れ家へと秘密裏に繋がっている。

玄関にあたる部分には、傘立てとふわふわのタオルと、回収籠。
Dry off your body and shoes.=[ー今日も雨で濡れたでしょう、どうぞタオルでよく拭いてくださいね!

廊下の曲がり角には禁煙マークのポスターと灰皿。
Put out the cigarette,please.=[ー当店は禁煙です。煙草を消して美味しい料理を!

神経質な店主だな、と怪しくなってきたところで、また漫画調のポップなポスターと、鍵付きロッカー。
Put your weapon,please.=[ーレストランは御飯を食べるところです。私の店で抗争は御遠慮くださいね!

そろそろ何か店主の悪ふざけがデジャヴの間に見え隠れしてきて鬱陶しくなってきたところで、美しい陶器の洗面台と鏡が現れた。
Wash your hands before meals.=[ー食事の前には手を洗いましょうね!

子供扱いにいい加減嫌気が差すであろうこのタイミングで、急に目の前に重厚な扉が現れる。開けばそこには、古めかしいバーカウンターと幾つものダイニングテーブル、落とした照明の赤茶けた光、ずらりと並ぶ酒瓶、壁に掛けられた絵画……あのふざけたイントロからは想像し難い上質な空間が広がっていた。此処が、殺人鬼達が依頼を取る窓口や、彼等が公にできない取引をする現場になっている場所だ。

店主シャーロックが、カウンターのさらに奥にある厨房から顔を出した。
「おや、こんな時間に珍しいですね、いらっしゃい」
波打つ緑髪は此処のぼやけた照明下ではほとんど黒に見える。いつものように後ろで一つにまとめ、表向きの仕事用のエプロンを身に付けて手元を見もせずにジャガイモの皮を剥いている。晩の下拵えのようだ。

彼は世間的にはこの小さな洋食店の店長をしている。いかにも柔和そうな雰囲気を醸し出した容姿立居振舞であるが、その素性は殺人鬼である。それも、彼の場合は祖父の代から三代続く筋金入りの殺し屋の家系だ。
「私も歳をとったから早く殺人稼業を引退して、美食の国にでも留学に行って専業シェフになりたいのですけれどね」と彼は冗談か本気かわからない口調でよくぼやいているが、歳はまだ四十代程であるし、その真意はわからない。
そんな彼のトレードマークのシルクハットだが、今はカウンターの端でベタベタとシェパードパイを食べているジャックの頭の上に乗せられている。子供にはサイズが大きいに決まっていて、目深になりすぎてまるで帽子がシェパードパイを食べているかのような奇妙な光景になっている。
柔和そうな垂れ目の目元を更に細め、所謂デレデレとした表情で幼子を見守っている間も、手にしたナイフは着実にジャガイモを裸にしていく。
あっ、と気がついたように、仲間であり客人である相手に向き直り、カウンターの席を勧めた。

「おなかは空いていませんか?」

>all様


【こちらも絡み募集です。此方は……そうだなミッション:教育方針の相談或いはシェパードパイ≠ナも……(ノープラン)
このように、冒頭の現在地のところに日付(ジャックの来た6月6日から、翌年の5月30日までの範囲で指定可能)を付けて、時空の捩れを回避します。つまり、 >>2 のジャックと >>3 のシャーロックは同じ空間を舞台にしていますが日付が違うので別の絡みとなります。】

10日前 No.3

スマイル @smile390 ★Android=N8ewA5S8Mh

【アルト/6月10日/スイーツ専門店-happy apples-】

木々の生い茂る森の中にひっそりと佇む一件の家。草のつるが這った真っ白な壁に赤い屋根、正面には木でできた扉がある。そして丁度扉の上辺りには『-happy apples-』という文字。そう、ここはスイーツ専門店-happy apples-。こんな場所に建てられ、外側には柵もないのでパッと見では、此処がお店だとは誰も思わないだろう。しかし、常連客も多く実はそれなりに有名な店でもある。幸せの林檎__何故そのような名前になったのかは定かではないが、ここの店主が赤髪だというのも理由の一つなのかもしれない。店内は、外見からでは想像出来ないほどの広さでカウンター席からプライベート用の二人席、友達同士で盛り上がれるような四人席まである。勿論、隣の席と合体させてさらに大人数で座ることも可能。ベランダ席もあり森の景色を楽しみながらリラックスすることもできる。全体的にカジュアルな家具が多く、落ち着いた雰囲気を醸し出している。席の一つ一つには花の入れられた花瓶があり、シミ一つないテーブルクロスに天井には明るさの抑えられたシャンデリア。至る所にお洒落な置物も配置されており、この店の店主は相当のセンスの持ち主なのだろう。レジの横にはリボンの付けられた籠に様々な形、種類のクッキーや食べやすいサイズにカットされたバウンドケーキ、マカロンにドーナツなどが透明な袋に入って置かれている。お土産のための用意も万全なようだった。

「カランカラン」

唐突にドアベルが鳴り、今日最初の客が店内に入ってきた。

「いらっしゃ〜い」

まるでそれを予期していたかのようにタイミング良く、一人の少年が店の奥から現れる。そう、彼こそこの店の店主、アルトだった。真紅色の髪に瞼の閉ざされた瞳、薄く血管が見える程の白い肌。男物だが可愛らしいフリルの多い英国服に子供サイズの小さな茶ブーツ。アルトは目を閉じているとは思えない程のスムーズさで客の元へ駆けていくと、注文を尋ねる。

「今日はなぁに?」
「アップルパイといつものを頼む」
「りょーかーい♪」

簡単な会話を済ますとアルトはまた店の奥へぱたぱたと駆けていく。アルトにはだいぶ大きいサイズの大人用のエプロンを着用すると、早速調理に取りかかる。とは言っても、時間のかかるものは既に用意してあった。特にアップルパイはこの店の人気ナンバーワンのメニューでもあるので他のメニューよりは多めに用意してある。他にも日替わりスイーツや飲み物などメニューの種類は豊富だ。また、焼きたてが良ければ最初から作るなどサービス精神も良い。アップルパイは冷蔵庫から出すだけなのでアルトはもう一つの注文"いつもの"の用意を始める。と言ってもこっちも簡単。いつものというのはアイスコーヒーのことだ。慣れた手つきでコーヒーを作ると氷をいっぱいに入れたグラスに注ぐ。お盆にアイスコーヒーと冷蔵庫から出したアップルパイを乗せ、おまけにバニラアイスも添える。このお客さんはそんなに甘党でもないのでバニラアイスには苦めのチョコソースもかけた。こういうサービスをするのはこのお客さんが常連だからだ。初めてのお客さんなら勝手なことをすると怒る場合もあるので必ず確認を取るようにしている。

「おまたせ〜」

どーぞ、とアルトはアップルパイとアイスコーヒーをお客さんのいるテーブルに置く。そしていつの間にか用意していたらしいりんごジュースを前の席に置くと、当たり前のように同席すると

「そういえばあれどうなったのぉ?」

と、世間話に花を咲かせるのであった。

>>ALL様


【投稿の仕方がよく分からなかったのですが、こんな感じで大丈夫でしょうか?アルトには取り敢えず自分の店でのんびりさせていようと思います。余裕ができましたら別ロケーションで誰かに絡みに行くのもいいかなぁとも思っているので、そのときはよろしくお願い致します】

8日前 No.4

ミリヤム @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7日前 No.5

エディ @d0ap ★iPad=qTOmkAVEvD

【エディ/6月8日/フレグランス専門店Sweetie→西洋料理店Wildcat】

繁華街の一画にある上品なアンティーク調の店構えをした扉からは毎日違う香りが漂い、通りかかった人々を扉の内側へと誘い込む。カラン、とベルを鳴らしながら店内に入ると、扉にかけられた看板が小さく揺れた。『フレグランス専門店Sweetie=xと記された看板を提げるこの店は『商品は全て一点物』というこだわりを持ち、同じ品は二度と並ばない店内はこじんまりとした落ち着きのある雰囲気で客人をもてなす。ベルの音を聞きつけたのか、靴音を鳴らして店の奥から姿を現したのは、この店の店主であるエディだった。
何の変哲も無い店の店主とはエディの表向きの姿。その本性は殺人鬼として密かに霧の都に存在していた。

「お買い上げありがとうございます」

ハスキーボイスでお決まりの文言を口にして、店の前で客を見送るとそのまま看板をひっくり返して店を閉じた。開店も閉店も全てはエディの気まぐれである。その赤みがかった茶色のテールコートを翻し店の中へ入ると自室である二階へと上がる。途中、階段を上ったつき当たりにある更に上へと続く簡易的な階段を見上げたが、その上の屋根裏部屋から特に物音がしないところを確認すると自室へと入った。鼻歌交じりにワイシャツやベスト、スラックスの埃を払い、胸元で黒いリボンタイを結ぶと髪の編み込みが乱れていないかをチェックする。最後に明るめの赤い口紅を塗り直し、爽やかなシトラス系の香水を振ると満足そうに微笑んだ。少々派手な格好に身を包むエディだったが、うきうきとした様子でハンドバックを手に取ると「あっ!」と何か思いついた表情でバックに荷物を入れた。

軽やかな足取りで向かったのはWildcatという西洋料理店。但し、表の入り口からは入らず店の裏側にあるアパートの一室へと足を運ぶ。此処こそがこの店の裏口となっており、慣れた足取りで様々なポスターに書かれた文字を素通りすると店の中へと足を踏み入れた。そこは彼と同じ様に霧の都で暗躍する者達の溜まり場となっていた。

「はぁい、シャーロック。可愛い坊やと仲良くしてる?」

意気揚々と慣れたように店の店主であるシャーロックに声をかけると、これまた慣れたようにジャックの隣の席へと座りながら「アタシにもシェパードパイとオススメのお酒頂戴」と注文を口にした。隣を見れば大き過ぎるそのシルクハットはジャックの小さな頭をすっぽりと覆っておりその姿はとても可愛らしく、思わず柔らかな笑みが溢れた。

>シャーロック、all

【本編開始おめでとうございます!早速絡ませていただきます!】

7日前 No.6

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

7日前 No.7

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【シャーロック/6月13日/西洋料理店Wildcat】

愛しの幼少年から発せられた「パパ」という甘美な音声にまんまと釣られたか、厨房で魚を捌いていた包丁を手にしたままエプロン姿のシャーロックが飛び出してきたが、ジャックがわざわざミリヤムに訂正し言い直したのを見てわかりやすすぎるほど落胆している。この男、彼の大好きな幼児が絡まなければそれなりに素敵な紳士と言って差し支えないのだが……。
「あ、ああ、ミリヤム……いらっしゃいませ……来ていたんですね」
普段通りの物腰柔らかな口調と優しく細めた目だが、なんと言うか覇気がない。大好きな子供の純粋な言葉は時に殺人鬼をも突き刺す刃になるらしかった。
そんなことはつゆ知らず、ジャックはシャーロックの言葉に「えっ!?」と先日とはだいぶ違う容姿の彼女(彼)が誰なのかようやく分かったらしく、驚きに目を瞬いている。

「すみませんね、表でマダム達の女子会が入りまして……今日のランチタイムは貸切なのです」
魚臭い手を洗い流しながら、だいぶ平静を取り戻すとシャーロックは眉尻を下げて詫びた。
しかしこの男はいつだって、丁寧な低い姿勢を崩さないまま全く悪びれもなく、子供のお使いから無理難題まで注文してくるのだった。
「すみませんがミリヤム、ジャックを何処か遊びに連れて行ってはいただけませんか。……甘〜いベイリーズミルクのタダ酒が待っていますよ」
軽く頭を下げてからにっこりと首を傾げる。しかし気弱そうな態度でそうしながら、視界の端にジャックが寄越すりんごジュースのプラスチックカップを捉えるや否や、目にも止まらぬ速さでそれと花瓶代わりの酒瓶を摘まみ上げるように取り上げた。その動作に乱暴さは一切なく、まるで手品のようにジャックの手から凶器≠ヘ消えていた。平然と微笑を浮かべたまま、カップの中のジュースをシンクに流す。
「さ、ジャック。元気にお外で遊んでいらっしゃい」
そう言って店主シャーロックは一緒に遊べないのを名残惜しそうに激戦の厨房へと消えていった。

>ミリヤム

【絡みありがとうございます! ジャックを残してシャーロックは退散します。行ってらっしゃいませ〜!】

7日前 No.8

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【シャーロック/6月8日/西洋料理店Wildcat】

来客を告げる高いベルの音ともに、この店に入って来たのは、常連の一人であるエディと、爽やかな柑橘の香り。フレグランスの店を営む彼女……ここは、彼女でいこう、が入店すると、店内には大人の女性の華やかな香りがする。
「おや、今日はメロウは一緒ではないのですね」
シャーロックが名前を挙げたのは、此処によくエディと共にやってくる若い殺人鬼のことだ。彼女達……彼女£B? は、この店のあまり美味しくない料理をほぼ毎日のように文句も言わず食べてくれる貴重な存在だ。その有難味に肝心のシャーロックはあまり気付いていないようだが。
小さな耐熱皿に銘々に拵えてある生のシェパードパイをキッチンストーブにかけ、その間にカウンターに戻って来て、ズラリと並んだ酒瓶の前を行ったり来たりして何か考えている。やがて、菫色のリキュールとジンを手に取り、戻ってくる。

「畏まりました。シェパードパイが焼けるまで時間がかかりますから、どうぞ一杯飲んで待っていてください」
エディが纏うの香りにすっかり引き摺られたか、檸檬を絞り、シェイカーに氷を詰めながら伏していた目をそっとカウンターのほうへ流す。
手をベタベタにしながらシェパードパイを大きなスプーンで口に運んでいたジャックが、隣に座ってきた客を見ようとして無理矢理顎を上げ帽子の陰から覗いている。その仕草が、幼子を攫ってきたばかりの児童性愛者にはたまらなかったらしく、一瞬スマートに見えた紳士の雰囲気がだらしなく崩れ去る。

「ええ、それはもう、私も昨日と今日とでジャックとはだいぶ懇意になったと思います、ふふふっ…………というのは、冗談です。子供というのはいざ手に入れてしまうと思ったよりも大変です」

赤児ではないと思って連れてきたが、泣くし、如何していいかわからないことは多々あるし。だがこの子の親を殺したのは自分であり、幸いにしてこの子はそれをよく分かっていない。客人相手に惚気なのか苦労話なのかよくわからない心中を吐露して溜息をつく。
部屋には古い時計の音と、長い指がシェイカーを包み中身を氷ごと上下に打ち付ける忙しない音だけが暫く続いた。
中身を細身の背の高いグラスにあけ、ソーダを注いで混ぜれば、底に溜まった深い紫が熱帯魚のように水中に尾を引いて舞い上がりながら溶けた。レモンの輪切りを飾る。エディの前に差し出したヴァイオレットフィズは、爽やかなシトラスの香りを纏う紫髪の大人の女性の立ち姿のようだった。

>エディ、all


【絡みありがとうございますー!】

7日前 No.9

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

【ドールホーン/6月13日/聖アンダーソン教会】


霧と煤煙棚引くテムズ川近郊にその廃教会は建っている。小さいながらも重厚な石煉瓦積みの造りで、錆びてはいるが鐘楼や屋根の天辺に立つ十字架は健在だ。廃墟と言うには人の気があり、荒れてはいるが人の手の入っている痕跡もある。

前の神父が病死してから長らく放置されて居たのだが、数年前に教会を買った物好きな貴族の娘が暮らし始め、一応彼女が今の所有者と言うことになって居るが、彼女が教会を再開させる事はなかった。

元々教会だったので今も近所の人々からは『聖アンダーソン教会』と呼ばれている。しかし教会とは名ばかりでここに神はもう居ない。居るのは浮浪者や底辺労働者、そして孤児だけ。地元民以外にその事実を知る者は殆ど居ない。

荒れ放題の前庭。ひび割れた石畳。錆び朽ちた鉄の門。千切れた鎖と壊された錠前。黒くススに汚れた外壁に、ひび割れて色の燻んだステンドグラス。全てが退廃的なこの廃教会を囲う枯れた生垣の中に、女性が一人。

身に纏うシスター服の上に羽織ったカソックコートと長いサイドテールが特徴的だ。


ザンッ


彼女は手にした鉈を振るい、生垣から飛び出した余分な枝葉を切り落としていく。

細長いが幅広く厚い、真っ直ぐな長方形の片刃を持つ大鉈。切っ先のない段平にも見える。錆び掛けて刃も所々掛けているが、今尚鋭さを誇示するかの様に鈍く輝いていた。刃のある側に少し角度が付いた木製の柄には、滑り止めの為か白い布が巻かれている。


ザンッ


彼女の刃物の扱いは手慣れた物があった。一通り刈り込むと彼女は腰を伸ばして立ち、鉈を肩に預けて首を捻りポキポキと骨を鳴らす。ふぅ、と息を吐いて呟く。


「こんな感じで良いかしら……?まぁ見てくれは二の次ね……」


溝川で死んだ魚が豚を見下している様に陰鬱な目で生垣を見遣り、鉈を地面に突き立てる。踵を返して教会前に据えられた石造りのベンチへ向かい、上に被さる枯葉や砂埃を払って腰を下ろす。


___一週間程前、仕事仲間がビズの『おまけ』として一人の幼子を連れ帰って来た。あの時は驚愕のあまりどうにも取っ付きが悪く、自分も早々に依頼へと繰り出してしまったのでろくすっぽ話すことは出来なかった。

議員殺しもファミリーのドンも巧妙に雲隠れしていて今尚依頼は完遂とは言えない。特にファミリーのドンがそう簡単に尻尾を掴ませてくれるはずもなく、一週間経っても数人の影武者を始末するに至ったのみ。仕事のツテで方々を回ってアイデアを纏める傍情報収集をしているが、有益な情報はあっても確信には到らず仕舞い。

「……そういう訳で貴方を攫って来たのだけれど……。まぁ知るはずも無いわよねぇ、下っ端だし……」

「_____!」

教会横の小さな共同墓地の前に転がされた一人の男。手足を縛られ墓穴に詰められたまま自分を見上げるその顔は様々な体液でドロドロの状態だった。

「そう心配しなくても大丈夫よ……?此処には貴方みたいな輩が大勢安らかに眠ってるから。2日前に棺桶に詰めて埋めたあの男ももしかしたらまだ生きてるかも知れないし。寂しくは無いはずだわ……多分ね」

嗜虐的な笑みを浮かべ、嗜好を満たしていると教会内から自分を呼ぶ声が聞こえた。

「ドールホーンさん、パイが焼きあがりましたよ」

「ん。今行くわぁ……。お茶の準備をしていて頂戴」

声に応えて立ち上がると、傍に置いてあったシャベルを引っ掴み、怯え竦む男に近寄る。途中で鉈も拾い上げると、ゆっくりと節を付けて呟く様に歌う。


Hush a bye baby, on the tree top,
When the wind blows the cradle will rock.
When the bow breaks, the cradle will fall.
And down will come baby,
Cradle and all.


男は愈々恐慌状態に陥り、ドールホーンは益々嗜虐の笑みを強くする。相手の泣く顔が愛おしく、慟哭する表情が堪らない。

シャベルを穴の横に突き刺すと男は声にならない悲鳴を上げ、出来る限りの精一杯な命乞いをする。まだ死にたく無い、殺さないでくれ、と哭き叫び喚かんばかりの男の目が最後に見たのは、

曇天の空に翻る鉈の刃が放つ鈍光と、煤煙の中に聳える十字架だった___。


>>周辺ALL

【やっとこ投下!絡む際のドールホーンは穴をシャベルで埋めて居る体でお願いします】

6日前 No.10

狼谷 @anima1997☆PMqTzZiUwVg ★iPhone=tU8wj1dqI7

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

6日前 No.11

みんと @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=WsHBgyg92L

【 白雨 / 6月13日 / 西洋料理店Wildcat 】

 からころからころ、と軽やかな高下駄の音を響かせながら霧の都の路地裏を歩く人影。艶やかな紫陽花が描かれた紫色の着物に京紫色の帯を前で結んだ深い闇夜さえ思わせる黒髪の女性。真っ赤な唐傘を差しながら歩くその容貌はこの霧の都には、この国には似つかわしくない異国の顔立ちで。

「うふふ、ほんまに今日もええ天気どすなぁ」

 歌うような口振りで歩くのは白雨。この霧の都で剥製師として小さな工房で営む日の本の国から来た女性であった。だがしかし彼女が剥製にするのは熊や鳥などではなく、人間である。屍体をこよなく愛する屍体愛好者うだあるが故に彼女は剥製にし自身のコレクションや時に裏のオークションなどで売買を繰り返していた。

 今日は仕事はお休みで馴染みの店へと向かう最中のようで辿り着いた西洋料理店Wildcatの裏の入り口、その扉を開きながら唐傘を閉じる。

「こんにちはぁ、ってあら、ええと――――ジャックはん、って言わはりましたっけ」

 どうやら店主であるシャーロックは昼の仕事で忙しいのだろう、と納得しながらカウンター席で一人暇を持て余している少年、ジャックに声をかける。若干うろ覚えではあるものの白雨はシャーロックが誘拐してきたこの少年を嫌ってはいなかった。ただ生者の扱いには不慣れなようでからころと下駄を鳴らしつつもジャックに近寄り目線を合わせるようにしゃがみ込む。

「お暇そうどすなぁ、ちょうどわっちも退屈で此処に来させてもろたんどすけど…………そうや、ジャックはんがええんやったらわっちとお散歩でもいかが?」


>> ジャックくん


(ということでジャックくんをお誘いさせていただきました…!!よろしくお願いいたします〜〜!)

6日前 No.12

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★Tablet=iiKTVigSmi

【ミカエル/7月2日/ベイカーストリート路地裏】

 沢山の人間に取り囲まれて、ざわざわと、耳障りな音を立てる。ひそひそ、ぶつぶつ。うるさくて仕方がない。手が向かってくる。数多の悪意を持った幽霊のように白い手は、優しく優しくぼくの頬へ伸ばされた。おかあさんの手だ、そう思った次の瞬間、ぼくは赤くなった頬を抑えて蹲っていた。痛い。ずきずきがんがん、頭に響いているのは鼓動の音だと気が付くまで大分時間がかかった。ふと顔を上げれば、周囲のヒトのようなバケモノはクスクスと笑っていた。にこにこ、楽しそうに。ならば、ぼくも楽しいのだろう。一緒に、にこにこ。あれ、頬が引き攣るのは何でだろうか。

「あ」

次に瞳を開いた時、暗闇の中には沢山の血溜まりと、手が散らばっていた。自分を囲うように立っていた人間は一人残らずただの手だけの存在になって床に落ちていた。まるでゴミ屑のように。

それはおとうさんの手だった。
それはおかあさんの手だった。
それは、それは──

ぼくの手だった。





 勢いよく起き上がる。整わない呼吸が喉に詰まり溺れていたかのように激しく咳き込んだ。取り込まれた酸素が脳に回り、次第に現状が掴めてくる。此処は自宅兼研究室。細菌や薬の研究をする場所にも関わらず何の為に置かれているのかも分からない手術台の上で死んだように眠っていたのだ。しかし見たのは紛れも無い悪夢。未だに肩を大きく揺らしてしか出来ない息に警鐘を鳴らし始めた心臓がどくどくと激しく音を出した。その音色に危機感を感じ、一気に頭がパニックに陥る。

 かは、と乾いた吐息が漏れる。転がり落ちるように手術台から降りて、デスクの引き出しを引っくり返す勢いで開いていく。何段目かに乱雑に放置してあった瓶を取り出し、数を数えることもせずこの小さな手に収まるだけの錠剤を飲み込んだ。デスクにあった水差しから直に水を含み薬を流し込む。部屋の隅に隠れるようにガタガタと震えていれば、ゆっくりと、それでも確かに緩やかな呼吸が戻ってくるのを感じた。自らを安心させるようにわざと大きく深呼吸をして、肩をさする。次第にぼんやりとし始めた思考を置き去りに、周りを見渡せば目に入ったのはホルマリン漬けにされて、沢山の瓶に詰められた数々の手。しばらく其れに目を奪われたのち、弾かれたように立ち上がる。

「こ、ころさなきゃ。ぼくをいじめてくれるひとを殺して殺してころしてコロシテ…………ぼくに、触れる手、ぜんぶぜぇんぶ、ホシイ、な」

何処を見ているのかも分からない虚ろな瞳でぶつぶつと言葉を呟きながらマントを被り、いつものようにペストマスクを装着した。こうして今日も小さな、だけど凶悪で狂った殺人鬼は街に繰り出す。







 断末魔さえも響かない路地裏。夜に溶けるような漆黒のマントに身を包んだ小さな影は、霧と、両目に色の異なった光を纒い、その姿を現す。足元に幾つもの死体を携えたその光景はあまりにも異様で、日常からかけ離れていた。

「いーち、にい、さん、よん、ご……五人かぁ」

つまらなさそうにそう零した手の中には特殊に開発した即死性の臓器を侵食する細菌をスプレーにして散布出来る機械が収まっている。一度酸素に触れてしまえば殺傷能力を忽ち失うが、それを直接かけられた人間は叫びを上げる暇無く命を奪われる。まさに殺人兵器とも言える細菌を扱えるのは、自分が一応政府公認の殺人者であるからだろう。今さっき殺した人間も、きちんと政府の依頼に沿った人物だった。しかし指定されていたのは一人だけだったのだが、気が付けばそれ以外の周囲に居た四人も殺してしまっている。悪い癖だとは思っているが、だってぼくを数人で囲んだのがいけないのだ。お腹を蹴ったりするからいけないのだ。うっかり興奮で涎が出ちゃいそうだったけど、それより前に胃液がせり上がっていた。

 顔を叩かれたことで路地裏の端に飛んで行ったペストマスクを眺めながら、先程の出来事を思い返す。あんなにぼくを支配した気になって、心の底から加虐を楽しんでいたのに、ひとたびスイッチを押してしまえばこの通りだ。あぁ、なんて儚くて脆くて可哀想。鼻歌でも歌い出しそうな程愉快な気持ちで懐から背丈に合わないような大きな鋸を取り出す。それをおもむろに死体の右手首に当てたと思えば、明確な切断の意志を持って鋸を前後に動かした。

「ふふ、ひ、ひひひっ……なぁんだ、たった五人……ごにんかぁ。足りないたりないタリナイな。でもでもきみが悪いんだよ? ぼくを叩くから蹴るから罵るから。とってもキモチイイけどとっても怖いの知ってる?ねぇ。だからぼくはきょうも眠れないじゃない……でもきみがその手をくれたらいいの許してあげるのだからちょうだいはやくはやくハヤク」

支離滅裂な言葉を呪いのように路地裏に木霊させ、焦れる心情を表すように鋸を動かす手は早まったが、体力も筋力もそこまである訳ではない。大人の男の手を骨ごと切断するなんてそう簡単に出来ないのだ。

「このままじゃあぼく、ねむれないよぉ……」

疲労に慣れない身体はいとも簡単にエネルギー切れを起こす。重なり合った幾つもの死体の上に座り込み、ぼんやりと蕩け、薬の影響で焦点の合わない瞳で途方に暮れたように雲に隠れた月を見上げた。

(シャーロック様、シチダンカ様)、周辺ALL様>>

【本編開始おめでとうございます!事前に打ち合わせをさせていただいた通り、絡み待機のレスを投下致します。どうぞこれからよろしくお願いします!サブ記事の方のお返事も少々お待ちいただけると幸いです。】

6日前 No.13

スワン @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=rp39lsupOA

【スワン/11月1日/ベイカーストリート】

 秋の日の昼下がり。スワンはベイカーストリートを歩いていた。灰色のロングワンピースに柔らかな白の羽織物。小ぶりな編みかごを片手にゆったりと歩く姿は淑やかに映るが、鮮やかな桃色の巻き髪は嫌でも人目を引いた。

 今日のお夕飯は何にしようかしら。
 右手に下げたかごに視線を落とす。中に入っているのはさっき気まぐれで買った焼き菓子の紙袋だけ。夫であるシャーロックは私がお土産に買っていったものは何でも食べてくれる。けれど彼がさほど甘いものを好まないことも知っていた。だから、今日は彼の好物を作ろうかしら。料理は彼の本業だけれど、それとこれとは別。少しでも良い奥さんでいたいじゃない。

「……あら?」

 数軒先のアンティークショップから出てきた一人の人物に、スワンは目を留めた。緑色のショートヘアの"女"学生。厳密に言えば実際はそうではないが、スワンにとってはそんなことは大した問題ではない。彼女――メロウが女学生だと言うなら、女学生なのだ。

「メロウちゃーん」

 大きくはないが、よく通る声でメロウに呼びかけ、ぱたぱたと小走りで駆け寄る。と言ってもロングワンピース姿にパンプスを履いたスワンが走れるわけもなく、"駆けている"雰囲気を出すのが精一杯だ。後ろに流れた髪を肩の前に戻しつつ、メロウに柔らかく微笑みかける。

「偶然ねぇ、学校はもう終わりました? お買い物かしら?」

>メロウ、all
【メロウくんに突撃させていただきました!よろしくお願いします……!】

5日前 No.14

シチダンカ @caim ★Vxqs1Pnm4y_mgE

【シチダンカ/8月31日/シチダンカ宅、二階診療所→外】

 未だ、霧が晴れない。

 普段、診療所として使っている一室の奥、開け放った窓からは湿度の高い薄ら寒い風が尚も侵入を止めなかった。窓枠を人差し指でそっとなぞる。これから起こる事柄に、換気が必要だった。窓硝子に薄く残る数字、二十四。あと一時間もしない内に、これが二十三に書き換わる、筈だった。


 すっかり色褪せた数枚の封筒の一番上、今朝になって漸く自宅ポストから救出された“それ”が鎮座している。それは、全貌すら掴めない政府とやらからの御達しだった。あたしが前に殺した患者の中に、都を脅かしていた殺し屋が混ざっていたらしい。それがいつの誰のことなのかなんて、どうでも良かった。患者の過去にも興味は無い。出会った時が始まりなの。それから、苦しみから救われた時が終わりなの。
 ――ただ、手口を見られたというのなら、挨拶にでも伺う必要がありそうね。

 窓を背に、室内を振り返る。中央に小さな丸テーブルと猫足の赤いソファーだけの簡素な部屋。丸テーブルの上には、ワイングラスが二つ。一つは空に、もう一つはワインを半分ほど残したままで結露を起こしている。そして、そのテーブルと窓の間、ブルーシートの真上。かつての患者の若い男が仰向けになって転がっている。食事制限を言いつけておいて良かった。運ぶ時、ひどく軽かったもの。
 片方の髪を耳にかけて、乱暴に黒のハイヒールをその場で脱ぎ捨てた。キスの位置が合わないと、最期の挨拶の時に困るもの。裸足に外気の冷たさを覚えながら、ブルーシートを踏みつける。そうして、床に寝そべるかつての患者に、あたしは両の掌を彼の肩越しのブルーシートに押し付けながら、ゆっくりと覆いかぶさるようにして肘を曲げていく。整った寝息が乱れるのは、恐らくあと少しのこと。

「あなたのことは、よく覚えてるわ。出会ったあの夜のこと、あたしの髪を褒めてくれたこと、初めてのキス」

 唇を重ねると、彼が小さく目を開いた。愛しいアンバーブラウンの瞳が、ゆっくりとあたしを捉えていく。唇を二度三度と重ねる中、あたしが思うのはたった一つだった。――薬の量、間違えたわ。

「ねえ、さっき言ったこと、本当なの?」

 あたしを連れて、この都を出て、どこか遠い場所で一緒に暮らす、って。
 小さく吐息を漏らしながら、彼があたしの髪を撫でる。その手に重ねるようにして手を伸ばしながら、垂れる髪を耳にかけた。そろそろ頃合いね。身体まで覚醒されると、後々面倒だし。もう一度深く口付けながら、右手でソファーの下を探る。――垂れたままの片方の髪に気配を隠しながら、牛刀を彼の右腕へ振り上げた。
 ブルーシートが小さく悲鳴を上げた。

 噛まれた唇を、拭う。あなたに与えた痛みに比べたら、随分と可愛い反撃ね。離れ離れになったその右腕をなぞりながら、骨ばった彼の指に絡めるようにして手を握る。ぽき。骨が折れる音がした。だってあたし、昔から力だけは強かったから。
 口から血の泡を吹きだすその右腕の持ち主が、後退りをしながらあたしを見上げる。

「やめなさいよ、ブルーシートずれちゃうじゃない」

 けたけた笑うあたしに、彼は狂気のように鋭く尖った言葉を投げつける。血が床に染み込むと、後々大変なのよね。溜息を吐く間、彼の姿が一瞬にして消えた。否、窓の向こうへと引きずり込まれていった。

「あ」

 窓開けたままにしておいたの、忘れてたわ。

「……それ、とっても燃える展開ね」

 牛刀の柄を口に咥えながら、ハイヒールをゆったりとした動作で履いていく。横目で窓の向こうを見ると、霧の向こうで地を這う彼の姿が見えた。自ら苦しみの中に飛び込むなんて駄目じゃないの、折角あたしが苦しみから救ってあげたのに。一息吐いた後、窓枠に両足を掛けて、彼を追うようにしてそのまま真下へ身を投げた。


【本編開始おめでとうございます!
 シチダンカの殺しの現場を目撃されたい欲からALL文を投下させていただきました……! 余裕が出来次第どなたかのALL文にも絡みに行きたいと思います、よろしくお願いします!】
>ALL

5日前 No.15

ミリヤム @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【ミリヤム/6月13日/西洋料理店Wildcat】

 店の入口に佇むミリヤムを見付けて、ジャックは逆さまの瞳を文字通り輝かせた。危険人物その幾つかの来訪にここまで喜んでしまうなんて、余程退屈だったに違いない。まぁ、ミリヤムやシャーロックをはじめとするWildcatに集う人間達を殺人鬼と思って居ないだけの可能性が高いが。
 さて、ミリヤムは人形好きの屍体性愛者である。それは即ち、生きて動いているものはそこまで好んではいないということだ。しかしそのミリヤムの感性をもってしても、幼いジャックの無邪気な言動は心の奥底を擽られるものがある。だからそれは、ジャックを、ひいては幼児達を溺愛している店の店主には堪らないものだったのだろう。
 パパ!? と叫んで扉から飛び出してきたのは、平和的な魚の生臭さを携えたシャーロックである。尤も次の瞬間には、ジャックにパパ呼ばわりされたいという彼の希望は脆くも儚く崩れ去ったようだが。
「ジャック……あなた……!」
 そしてその一方で、甘いものが飲みたいという自身の希望を聞いたジャックからリンゴジュースの花瓶水割りを差し出されたミリヤムも、彼を直視出来なくなりテーブルの影に踞った。

 不覚にも可愛いと思ってしまった。何だこの生き物は。可愛い。人形にして手元に置いておきたい。でもそんなことをしようものなら間違いなくシャーロックに殺される。それ以外の殺人鬼達に殺される可能性すらある。まだ自分の身を危険に晒す気にはなれない、オーケー。

「……タダ酒、ねぇ」
 物騒な思考を押さえ付けながら、未だテーブルの影からシャーロックの提案を吟味する。
 ジャックとお散歩をしたら、ベイリーズミルクが待っている。悪くない提案だった。どうせなら洋品店にでも連れていって、ジャックに服でも買ってあげようか。請求書はシャーロックに押し付ければ良いのだし。
「えぇ、良いわよ。ジャックがそれで構わないのならね」
 自分がジャックを連れて出掛ける分には構わないと結論付けたミリヤムはゆっくりと立ち上がる。その頃には彼女に差し出された筈のリンゴジュース(以下略)は魔法のように消え失せていた、そして。
「ハァイ、おねぇさーん、ししょー? 一応アタシも居るのよねー」
 店内には人が一人増えていた。

 この国のものではない綺麗な衣装に身を包んだ妖艶な女性・白雨は、殺人鬼で屍体性愛者で剥製師としての類稀なる腕を持つ、正真正銘ミリヤムの同族同類である。ミリヤムは彼女の腕に惚れ込んでよく工房に押し掛けているが、それはまた別のお話。
 そんな白雨は、今まさにミリヤムがシャーロックから頼まれたことを実行に移そうとしていた。
「どうするベイビー。そっちのエキゾチックなお姉様か、こっちの千変万化のお姉さんか、どっちとお散歩したい? あ、両方でも全然構わないわよ」

>ジャックくん、(シャーロックさん、)白雨さん

【僭越ながら、白雨さんとジャック君の間に割って入ることにしますm(__)m】

5日前 No.16

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ジャック/6月13日/西洋料理店Wildcat→】

再び扉が開いて、雨の匂いが僅かに流れ込む。ジャックはカウンターの椅子ごと反動をつけてぐるりとドアの方を振り返っては、目を輝かせる。あのドアが開くと、お客さん達がやってくる。みんな「ジャック」と声を掛けてくれる優しいお客さん達だ。此処に来て一週間もすればそろそろ学習し始めていた。まだ子供の彼の脳は、オペラント条件付けに染まりやすい動物達とそう変わらないらしかった。
「あーっ!」
ミリヤムに続いて現れた人影に、ジャックは笑顔を輝かせた。霧の都の空には久しく見ない晴れ間のような笑顔。どうやらミリヤムの時も白雨の時も上げたこの奇声は、見知った人が現れた時の彼なりの行為を表す挨拶のようだった。

「シラサメ・ネエサン!」
艶やかな原色の風変わりな衣服、東洋人特有の顔立ち、振り撒かれる色香と柔らかく上品な物腰。この店に集っていた者の中に彼女を「姐さん」と呼ぶものがあったのを覚えていたのだろう。ジャックは何か呪文のようにその名を唱えて背の高いスツールから飛び降りた。
「シラサメ・シショー……?」
身の丈よりも大きく聳え立つテーブル席の合間を縫って、白雨に近寄る途中で、ミリヤムの口から発せられた言葉に不思議そうに振り返る。シショー、師匠。それはまだ幼子にはまだ未知の呼称だった。シショーってなんだ? と言わんばかりに真ん丸い目を更に大きくして二人の大人を見比べている。

「ミリヤム! シショー! おさんぽ、いこ! おさんぽ!」

散歩という言葉が聞こえた瞬間の、ジャックの行動は早かった。一目散に扉の前へ駆け寄る。短い足で、左右にまだ少し揺れているような少し鈍臭い走り方で。背伸びをしてドアノブを掴む。が、しかし、重くて動かない。振り返って急かすように二人の方向へそれぞれ右手と左手とを差し出した。

>ミリヤム、白雨、all


【御二方ともありがとうございます! 囚われた宇宙人みたいに霧の都をお散歩しましょう!笑 行き先はお任せしますよ!】

5日前 No.17

エディ @d0ap ★iPad=qTOmkAVEvD

【エディ/6月8日/西洋料理店Wildcat】

「誘おうか迷ったんだけど、部屋から物音がしなかったから休んでいるのか、出掛けているのか……まぁ、アタシが行くとこなんて限られてるから何処にいるかすぐ分かるでしょうけどね」

シャーロックの口から飛び出した名前にふふっと笑みを浮かべながら同居人であるメロウの姿を思い浮かべる。可憐な女学生……は、良くエディの晩酌を付き合ってくれ、このWildcatにも幾度となく共に足を運んでいる。美味しいお酒に弾む会話で此処で過ごす時間はとても楽しいもので気がつくと、常連と呼ばれるほど通っていた。
隣では手を汚しながらも一生懸命食べているジャックがこちらを見上げようと帽子の隙間から目線を向けているのがわかり、シャーロック同様エディもだらしなく頬が緩んだ。

「もう、なにこの可愛い生き物は!坊や、シャーロックに飽きたらいつでもオネエさんのおうちに来ていいからねぇ」

その細い体を思わず抱き締めシルクハットの上から少々乱暴にジャックの頭を撫でると猫なで声でその女性より低いハスキーボイスを響かせた。そしてシャーロックに向かって「アタシもどこからか連れて来ちゃおうかしら」と悪戯気に楽しそうに微笑んだ。エディにとってジャックくらいの年頃の子供は堪らなく愛おしく心を激しく揺さぶる存在。専らエディは少女の方が好きなのだが、少年も悪くないとジャックを見て内心で呟いた。

「あら、子供って結構大変なのね」

暫くジャックの子供特有の柔らかさを堪能するとそっと離れ、シャーロックの言葉に頬杖をついて話を聞く。実際子供がいないエディにはその大変さは想像しきれなかったが、シャーロックの言葉の端々からそこそこ苦労しているのを見て取れた。
シェイカーの心地良い音の後、注がれたグラスの中身のその綺麗な紫にエディは目を細めると、グラスを手に取り一口含んだ。そして、ふっと満足気に笑みを浮かべると「此処のお酒はいつも最高よね」と賛辞を口にした。

>ジャック、シャーロック

5日前 No.18

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

【ドールホーン/6月13日/聖アンダーソン教会】


ある程度まで穴を埋めた後、そろそろ紅茶も淹れた頃かとスコップを地面に突き刺す。

火照る顔に風を通す為にさらりと掻き上げられた前髪の向こう側に碧く生気のない半目が覗く。その右目には縦に一本大きな傷痕が在り、黒い眼帯で綴じられていた。

身体を軽く伸ばして踵を返し教会内へ。
荒れ放題で薄暗く、嘗ては列べられていたであろう長椅子は端の方に追いやられているか、孤児達が寝床にしている場所の間仕切りとして積み上げられているか。まともな位置にあるのはほんの二、三脚程度だ。

先程ドールホーンを呼んだのも此処を寝床としている浮浪孤児である。礼拝堂の隅にあるテーブルと椅子だけは整えられ、赤い蝋燭の光が銀の燭台に反射して煌めいている。湯気の立つティーカップとすでに何人かが取り分けた後らしいコテージパイの盆。誰かが表で摘んで来たらしい白い花が飾られていた。

「ま、平和なのはいい事だわ……」

椅子に座り、傍の移動式本棚に手を伸ばす。数冊の書物が収まっているがこの内殆どはドールホーン自身が出版した本である。


『墓場で嗤うな少女達 〜Girl's Grave Garden〜』
『良い子の為の童謡・童話』
『百合薔薇 シャーロック』
『銀水晶帝國紀行』
『私は御主人様の犬であります』
『蠍の灯』
『聖書』
『死人の箱には15人のインディアン』


適当な本を一冊取って開き、紅茶のカップに口を付ける。穏やかな1日だ。


>>ALL

【ジャック君がここにある本を読んで純粋で居られる確率は四分の一】
【更に二つはクリティカルで更に二つはファンブルです】

4日前 No.19

狼谷 @anima1997☆PMqTzZiUwVg ★iPhone=tU8wj1dqI7

【メロウ/8月31日/シチダンカ宅前】

 酒が入って火照った頬を撫でる風が、八月の終わりを感じさせた。酔い醒ましにと、自宅へは遠回りとなる道を選んで、少し頼りない足取りで歩いていた。酷く酔っているわけではないけれど、少々浮つく程度には嗜んできたのだった。

 鼻歌交じりに見慣れない景色を眺めていたら、何かの音がした。重量のある何かが高い所から落ちる音、だろうか。昔、献体に向かない屍を自室の窓から突き落とした時に聞いた鈍い音に似ている。あの時は確か、マンホールの下に棄てたのだっけ。幸いにも下水道の住人達が掃除してくれたのか、次の日も、翌週も、新聞で取り上げられることは無かった。
 身投げかな。
 なんて、特に気にも留めず、歩みを進めていたのだが、霧で隠されていた前方が明らかになり、視線はそれに釘付けになる。這いずり□くそれは、確かに人ではあったが、右腕はなく、代わりに血が滴り地面に赤い跡を作っていた。
 生きた人間から流れる血を見る機会のないメロウは、引き攣った短い悲鳴にも興奮混じりの感嘆の声にも聞こえる、言葉にならない声を上げた。もっと近くで見てみたい。こんな機会滅多にない。死に損ないならこのままもっと切り開いて、蠢く心臓を触ってみたい。観察したい。隅々まで。だって死にたかった人間なんでしょ、ぼくの役に立ってから死ねよ。
 血の巡りが早くなる。熱を持った指先で、唇をなぞる。体の奥から抑えきれない欲が湧いてきて、うずうずが止まらない。酔いは醒めきっていた。どうしようもない探求欲と好奇心で支配されていた所に、追撃するように、何かが、いいや誰かが降ってきた。丸い目をさらに丸く、大きく開いて、新たな興味の対象を見つめる。揺れる長い髪にハイヒールの後ろ姿から察するに、女性か。それも大柄の。メロウの金と橙の眼が、今日一番の輝きを持って揺れた。

「すてきー……」

 不意に口をついた呟きは、霧の中に消えた。
 無理心中には到底見えなかった。痴話喧嘩、にしては物騒だ。ただただ両手を胸の前で組んだ状態で突っ立って、目の前で繰り広げられるであろう、既に始まっている出来事に遭遇した幸運に感謝するのだった。逃げ去ったほうがいいだとか、危機感だとかは微塵もなかった。だって、とっても、面白そうじゃない。

【こんな感じでいいのかな、と思いつつ、シチダンカさんの現場を目撃しに来ました!】

>>シチダンカ、ALL

4日前 No.20

狼谷 @anima1997☆PMqTzZiUwVg ★iPhone=tU8wj1dqI7

【メロウ/11月1日/ベイカーストリート】

 メロウちゃーんと、自分を呼ぶ声がして、声のする方へと顔を向けた。鮮やかで可憐な桃色の髪を揺らしてこちらに駆けてくる女性の姿があった。顔にかかった、透明感のある緑の髪を耳にかけて、彼女がやって来るのを待った。

「ごきげんようー! そうなの、さっき終わったばかりなの。」

 えへえへと笑いながら会釈する。この、おっとりしていて且つ気品溢れる女性は、メロウが常連客となっている西洋料理店Wildcatの店主の奥さんだ。店主を通じて面識がある他、高台にある彼女の家で星を観測したり、アフタヌーンティを楽しむような仲である。

「スワンさんもお買い物?」

 彼女の横に並んで、その片手にある小ぶりな編みかごの中を覗き込む。一つ紙袋が入っているだけで、他は何も入っていなかった。せっかく会えたのだから、一緒に店を見て回れたらいいなと思う。男性との買い物も勿論楽しいのだが、女性とのウィンドウショッピングはそれに勝る魅力がある。色々なお店を見て回って、他愛のないおしゃべりをして、偶然見つけたカフェで一休み、なんていうのが大好きだ。

 あ、そうだ。と呟いて、抱いていた紙袋からおもむろに中身を取り出した。落としたら大変なので、そうっと、だ。割れないように丁寧に、幾十にも包装されている物を箱から取り出し、さらに包装紙を剥がしていく。先程ショーウィンドウの前にへばりついていた時と同じように目を輝かせ、口元を緩ませ、やっと現れたストームグラスをスワンに見せた。

「じゃじゃーん。これね、ぼくの新しい宝物! 今買ってきたところだから、見せたのはスワンさんが一人目だよー。あとでジャックやシャーロックにも見せようと思って!」

 いつもより語尾が跳ねる。嬉しくてたまらないといった様子で、首を左右に小さく揺らし、口角を上げる。丸底フラスコのような形状のガラス管は、底が斜め置きできるようになっており、その中にはまるで雪の結晶のような沈殿物が上の方まで積もっている。浮遊する結晶も見られる。ストームグラスは頻繁に見ることの出来るものではなかったが、天文学者であるスワンなら、天文に近い気象に関する物なのでこの品物のことも知っているかもしれない。それにストームグラスについて説明をすると熱弁してしまう自信があったので、ここではあえて説明はせずに、彼女の反応を待った。

【ありがとうございます!よろしくお願いします!】

>>スワン、ALL

4日前 No.21

ミリヤム @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【ミリヤム(ウィリアム)/9月5日/ロンドン橋付近、テムズ河の畔】

 ミリヤムというのは、“彼”が“彼女”に付けた名前のことである。だから“彼”を指して“ミリヤム”と呼ぶことは、多分正解ではない。“彼”を正確に形容できる言葉は、産まれた時からこの世界に存在してはいなかったが、それでも今の彼を呼ぶとすればそれは“ウィリアム”以外になかった。
 曲がりくねり渦を巻くテムズ河の暗い水面とそこに映る橋の影を見詰めながら、それでも、とウィリアムは考える。やはり、ミリヤムで来た方が良かったかも知れないと。
 今彼が男物のグレーのスーツを身に纏っているのは、今日のターゲットが女性で、更に言うなら娼婦だったからだ。それ以外の訳などない。別に彼女の油断を誘うつもりも、ましてや彼女を買う演技をするつもりもなかった。ミリヤムでない方が都合が良かったのも間違いないが、それでも。

――俺は、ミリヤムより余程弱いから。

  ウィリアムはそっと、唯一つミリヤムと変わらない金色の瞳を伏せる。そこには真っ青の草の海の中で真っ赤な花を咲かせている一人の女が居た。大きく開いた安物のドレスの胸元からは、真っ直ぐにサバイバルナイフが伸びている。白い手袋に覆われた手でそれを引き抜くと、華奢な躰がびくんと跳ねた。だがそれでも、アイスブルーの瞳に最早光はなかった。

 今の形になるまでに、幾度となく崩れ流され焼け落ちたというロンドン橋。その下には人柱の少女だか青年だか、罪人だか聖人だかが埋まっているという。
 同じように橋の袂で死んだ彼女の魂は安らかに眠れるのだろうか、或いは永遠に眠ることも許されず、彼等に囚われてしまうのだろうか。

「……ごめん」
 ただ、依頼があったから。身体を売る傍ら手に入れたスキャンダルで小銭を稼いでいた彼女は、知りすぎてしまったから。それだけの理由でその命を散らしてしまったことに、ウィリアムは身勝手な罪悪感を覚える。しかし此処には彼の謝罪を聞き入れる相手も、彼の懺悔を受け入れる神もない。そんなこと分かりきっているのに、我ながら何と女々しいことか、と二三度頭を振った。
 彼女を殺したのがミリヤムであれば、何の感慨もなく自分の趣味に走っただろう……何の感慨もなく、“彼女”は彼女の死を背負い、消化し、生きていけるのだろう。
「ごめん」
 根本も意識も結局の所全く同じ人間なのに、服装だけで思考の浮き沈みが恐ろしく変わる自分に心底から辟易しながら、ウィリアムはもう一度ナイフを振りかぶった。二人は一人の人間であればこそ、譬え過程が異なろうとも、行き着く先は変わらない。
 即ちウィリアムは、今し方その命を奪ったことに後悔のようなものを抱いた彼女を、自分の手で美しく作り替えるべく解体しようとしていた。

 ざくりとわざとらしく音を立てて頸動脈を切り裂くと、鼓動が止まっているため飛沫こそ上がらないものの、まるで生きているかのような鮮血が溢れ出してくる。手首、足首と目に見える太い血管を次々に切り裂き、まだ温かかった彼女の躯は、あっという間に白く冷たくなっていく。
 死んでいるのだからそれが当たり前の、血の気の失せた白い顔。ただ一点を見詰めて動かない虚ろな瞳。投げ出された肢体に、それらを彩るアカ。
「あぁ」
 感極まったように、知らず、ウィリアムの口から溜息が漏れる。
 自らの体が汚れるのも厭わず、まるで慾望の塊を押し付けるかのように死した彼女へと覆い被さる。まだ柔らかい半開きの唇に自分のそれを重ねて、またほぅと息を吐いた。
 深紅のルージュが塗りたくられた唇は、三日月のような弧を描いた。
「……今のアンタの方が、さっきよりよっぽど綺麗だよ」
 口調はまるで、恋人に愛を囁く男のもの。それは誰の耳にも届かず、夜霧の闇へと消えていった。

>all

【色々やってしまいました……もし絡んで下さる方がいらっしゃればその頃には落ち着いていますのでご安心下さい。】

4日前 No.22

凍雨 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=Ht37eDoIdS



【 ルイス / 6月30日 / ベイカーストリート 】


 穏やかな日々が崩れゆく音が好きだった。
 霧の街に夜が訪れる頃、顔に白いマスクを着けた男はまだ仕事をしている従業員が幾らか残っている工場に忍び込む。窓枠に嵌められた硝子なんて鈍器で叩き割ってしまえば自分のような素人にも簡単に侵入することが出来る現状に対し、なんて不用心なんだろうか等と心にもないことを思う。滑稽で、愉快で笑えてくる。まさか、マスクの中身が巷を賑わせている俳優――ルイスだとは誰も思うまい。そっと物陰に身を潜めながら先程から抱えていた麻布袋の中に手を入れた。


 そこから取り出したものはルイスの拳一つ分ほどの大きさの爆弾だった。麻布袋からはそれがゴロゴロと次から次に出てくる。凡そ両手で持つには少し多いかな、と思うような量の爆弾を抱えながら一つずつ丁寧に各所へ置いてゆく。これは火力も威力も十分なものだけれどやはりやるのならもっとド派手にやった方がいい。何時、如何なる時に自分の行いによって自らの命が絶たれようとも構わないと胸を張って言えるようなものにしたい。そんな傲慢さを孕みながらルイスは満足そうに微笑みつつ、配置を終えた爆弾の一つに近付いて行く。ズボンのポケットから取り出したマッチに火をつけ、それを目の前に置かれた爆弾の導火線に近付けるとすぐに火は燃え移った。ルイスはその行為を手際良く繰り返し、全爆弾へ火を灯し終えると入ってきた窓から逃げ出すようにその場を後にした。


 工場を背後にルイスは全力で走る。途中で息苦しさを感じてマスクを外してしまったが急ぐ足を止めることなく、工場から距離を取る事だけに意識を集中した。けれどその表情は宛ら鬼から捕まらないように必死で逃げ回る子供のように無邪気だった。血走った目も、笑いが耐えない顔も、バクバクと五月蝿く音を鳴らす心臓も、全てが心地好くて仕方がない。そんなことが頭の中を埋め尽くす。嗚呼一生この時間が続けばいいのに、にやけながらそう囁きかけた時、背後では大きな爆発音と爆風が辺りを襲った。


**


「は、っ……はぁ、も、……はしれな、……っ」


 全力疾走の後、ベイカーストリートの一角で床に腰を下ろしたルイスは肩で息をする。肺に新鮮な空気を送り込みたいのに上手く出来ない。呼吸の仕方が下手くそになってしまったのだろうか。その時、どこかの誰かに教わったことを思い出す。


『こういう時は焦らずに息を吐く事を意識すればいい』


 もう声も覚えていない朧気な記憶がルイスに言葉の意味を諭しているかのようで気味が悪かった。けれど、それはどこか懐かしくて、恐ろしくて、ルイスはその言葉を否定することなく、従順に従って大きく息を吐いた。


 呼吸が落ち着いて行えるようになった時には辺りを見渡せる余裕も生まれていたルイスは、どうしたものかと思考と視線を巡らせた。辺りが賑やかになるのは時間の問題。それに此処に留まるのも色々と不都合な事が多い。さて、何処へ行こうか。そんな事を考えながら重たい腰を上げた。

>>オール様



【こんばんは。今回はルイスの犯行現場並びにその後をちょっぴり描かせて頂きました。通りすがりでも、故意的に着いて来るでも構いませんので絡んで貰えたら嬉しいです!】

4日前 No.23

@xxxri0 ★iPhone=jRTGQCns6m

【 Lily / 6月30日 / ベイカーストリート / 路地裏の奥、廃れた彫刻屋「 L 」】

路地裏周辺に立ち込める濃霧の中、掻き分ける様にして奥へ奥へと進んだ角の隅に、其の廃れた彫刻屋は、異様な不気味さと惹かれる何かを放って、其処に在った。

『 welcome 』

まるで、貴方の来店を喜んではいないかの様な取れ掛けたボロっちい黒い看板に、そう拙い文字で書かれている扉を開ければ、四肢が組み替えられた気味の悪い彫刻やら、首だけが無い男性の裸体の彫刻やら何やらが飾られている空間へと、足を踏み入れる事になるだろう。

「 彫る事だって、嫌いじゃないけれど 」

半分以上出来上がった新しい彫刻を眺めながら、物を彫る手は止まった。土葬 火葬 水葬 … この女の様な男にとっては何だって良い、そう、ただ屍に合った埋葬をする事さえ出来れば。ボーっと遠くを見る様な眼差しで、何とも見晴らしの悪い窓から、外を見詰める。カタン と小さな音を立てながら彫刻刀を置けば、ゆっくり窓の方へと近付いて行こうか。

「 -- 雨、ねえ。 濡れない、濡れないわよ、雨如きじゃ私は。彫って削って、完成した私の作品を見ていたって、屍ちゃんを埋葬した時の、あの快感と興奮には勝る事なんて無いもの。」

数日前に土葬したあの瞬間が脳裏に過ぎっては、手が、足が、身体全体が震える感覚に、彼女は酔う。

『 死体が欲しい 』

血液が滾る、最早自らの手で殺して仕舞おうか、なんて。
そう、昔の様に。

「 … ? 」

彼女の鼓膜を震わせるは、突然の爆発音。振動が伝わらず、音も微かな所を見ると、どうやら少し遠いらしい。「 物騒ねえ 」なんて身を竦めてはいるが、口許は弧を描き、眼は卑しく細められた。遠方で灰色の煙りが上がるのを暫く見詰めていれば、店の付近を、脚を引きずって歩く様な音が届く。彼女は平然とした顔で入口の方へと、ヒールの コツコツ という心地の良い音を鳴らしながら向かって行こう。ギィィ … と鈍い音をたてながら開かれた先に居るのは


「 Hello。 … 御機嫌、如何? 」


>>ルイス様


( ベイカーストリートの一角に居らっしゃる という事で、早速絡みに行かせて頂きましたっ。ちょっと無理矢理かな…? とも思いますが、ご愛嬌で( ) 皆様もどうぞ、宜しく御願い致します!

4日前 No.24

みんと @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=WsHBgyg92L

【 白雨 / 6月13日 / 西洋料理店Wildcat→ 】

 無邪気な声音だと思った。ジャックの声に微笑みを浮かべていた白雨だが突如聞こえた声にゆるりと目を瞬かせ首を傾ける。

「あらまぁ、ミリヤムはんいはったんどすねぇ。全然気付かへんかったわ。うふふ、ジャックはんまで師匠、やなんて……わっちはそんな偉うないんやけどねぇ」

 ミリヤム。彼女は白雨とある意味において同族であり同類だった。白雨を師匠、と呼ぶ事に苦笑を浮かべつつもそれを真似するジャックに淡い微笑を零した。

「ほな、三人で散歩やねぇ。おんな二人侍らすやなんて、ジャックはんは罪作りなおとこどすなぁ」

 うふふ、と笑いながら差し出されたジャックの左手を握る。この小さな美少年がいつの日か大きく美しく育つのだろうか、そうなれば自分の手で美しく作りかえられたら、なんて邪推な思考を一瞬浮かべ、あの英国紳士に殺されてしまうやろなぁ、とただ一人心の中で笑みを零した。

>> ジャックくん、ミリヤムさん


(わーミリヤムさんのレスを見落として申し訳ないですー! 三人で仲良くお散歩しましょ〜〜!)

3日前 No.25

真白蝶々 @papillon☆0uO5mlUpCUns ★sAbT0rwP1n_mgE

【ルーツァン/7月2日/ベイカーストリート路地裏】


 美しくなければ生きるイミが無い。美しくないモノには存在しているカチが無い。美しい事コソが至高にしてシフク。ウツクシサだけが世の救済。

 深く暗く重い、霧の都の夜に雨が降る。煙るように細かな、けれど確かに世界を包んで濡らす紅い雨が。

 美しいものダケが欲しかった。美しいものだけに囲マレテ生きたかった。美しい小さなハコニワの楽園で、美しいだけの作り物のテンゴクで、美しいセカイで息絶えたかった。

 断末魔は品が無い、雨音のみの柔らかな静寂を劈くその響きはまるで冒涜そのものだ。だから手短に済まそう、索敵必滅。

 なのに、ナノニ、なのに何故、何故ドウシテ。美しき世界の中で、私だけがミニクイのだろう。こんなハズでは、コレデハ、こんな様デハ。あア、アあ、マッタクモッテこの世は。


「嗚呼、諸行無常」


 湿った重々しい水音が路地裏の静けさを破ると共に、その直前まで木霊していた捌かれる豚の叫びに似た悲鳴はぴたりと止んだ。近くの高層建築の屋上から降ってきただろう肉塊は最早微かにも動きはせず、音も無く降る霧雨に湿らされて熱を失っていく。生命から立ち昇っていた真っ白な湯気もすぐに冷め、後には雨の香にも掻き消される事無く漂う独特な臭気だけが残された。

 生温かく、鉄の匂いを孕んだ生臭い風が吹き抜けた、その直後。かつん、こつんと、高く澄んだ靴音が薄暗がりの奥から迫ってくる。
 それは、まるで黄泉平坂に落ちた影が人の形を持って彷徨い出てきたような、黒尽くめの女だった。目元を隠す何処か爬虫類じみた模様の描かれた黒の仮面、この国では珍しい異国の衣――巷ではチャイナドレスなどと呼ばれていた――には、黒地に白い頭蓋骨が一つ、ぽつんと縫い込まれている。だが風に靡いてめくれたその裏地には、金や朱や銀で麗しい程に鮮やかな地獄絵図が染め抜かれているのがはっきりと見えた。遥か遠い大陸を思わせる装いに似合わないのは、短く刈って乱れ一つ無いように整え撫でつけた銀髪と、冷え冷えとした光を放つ黒いエナメルのピンヒール。
 漆黒の女の手には何やら奇妙なものが揺れていた。歪な楕円形の果実に似ていた、金色の細く長い蔦のようなものが無数に伸びており、女はそれを片手に絡めて握っていた。

 ああ、なんと悍ましい事だろう。女が手にしていたのは、苦悶と絶望の表情を浮かべた〈それ〉は。

「――――ウフフ、ココはなぁんて不思議な場所なのでしょうねエ。掃き溜めのナカに五つの肉細工、そしてハネを失くした堕天使……さぁテ、此処はワタクシにとって酒池肉林の極楽でしょうカ、それとも亡者も慄く無間地獄かしラ?」

 赤茶けた埃っぽい土の上に転がっていたペストマスクを空いた片手でそっと拾い上げると、黒い女は手にしていた恐ろしいものを足元に置いた。びちゃり、と聞き苦しい音を立てるそれを放ったままマスクの汚れを空いた指先で払うと、女はすでに息をするのを止めた亡者達の上に放心した様子で座っている少女のような姿の女性でゆっくりと近付いて行く。

「さっき手に入れた首(コレ)よりモ、ソノママ恐怖に凍り付いて綺麗な宝石(イシ)になった眼球よりモ、ワタクシにはアナタの方がずっと魅力的なのですワ……ねエ、ワタクシの可愛い堕天使サン?」

 座り込んだまま黒いマントの女性、ミカエルと目線を合わせる為に軽く身を屈めて。漆黒の瞳を持つ女――ルーツァン――は、ペストマスクをミカエルの顔に戻してやろうとしながら、ふと何かに気付いて自身の黒い仮面を外してすうっと目を細めた。それは苦々しげで、そして忌々しげな、静かな怒りを押し殺した表情。
 ミカエルの顎に指を当て、強引に己の方を見させると、ルーツァンはじっと彼女の目を見詰める。

「吐き気がする程滑稽だワ、またオクスリを飲んだのデスネ?」

 ルーツァンの常夜の闇を思わせる瞳はあくまで凪いだ海のごとく穏やかに見えた、だがそれは嵐の海のようなもの。水底は激しく渦巻き唸りを上げて、それでも激流となりそうな感情を押し殺している。

 ルーツァンは薬物を嫌っていた、否、憎悪していた。ミカエルとルーツァンは奇妙な縁により結ばれ、まるで母の子のような、もしくは姉と妹のような、血の絆さえ軽々と超えた歪な愛情と執着の糸で雁字搦めになっていた。だからこそ、ルーツァンは精神の安定の為に時に薬物を乱用するミカエルに、表には出さずとも言葉では言い表せぬ感情を抱いていたのだ。
 なにせルーツァンの故郷は、とある国から運ばれてきた薬物によって滅びかけたのだから。そして、彼女の本当の血筋は、もうこの世には存在していないのだ。全ては快楽に見せかけた悪意を孕んだ甘い毒によって。
 それは、〈この国〉からやってきた。それは、国を傾かせ、人を人で無くする、汚染の毒物。

 貴殿は、阿片という名の戦争の種をご存じだろうか。

「ネエ、羽根を失くした天使サン? 毒に溺れ血に酔っテ、屑籠の底で見る胡蝶の夢ハ」

 指をミカエルの顎に添えたまま、ルーツァンはペストマスクを彼女の膝の上に置くと、背後に腕を回した。それを頭上へ掲げると、そこにはいつの間にか銀色をした短い棒のような物が握られている。次の瞬間、それはあちこちから真っ白な蒸気を吹き出し、みるみる形状を変えていく。先端で翼を広げるように刃が開き、するすると全体が伸びるとそれは一瞬で何処か禍々しいスコップらしき物になっていた。確かに形はスコップなのだが、明らかにその用途は通常とは断るだろう、何せその刃先には未だにべっとりと真っ赤な液体がこびりついていたのだから。

 この国では蒸気機関の原理を活用した擬似科学のような技術が異常に発達しており、このような機械仕掛けの凶器を生み出せる職人も裏世界には存在している。
 この霧の都はまさしく魔都、魑魅魍魎も裸足に逃げ出す、人を殺める鬼を更に喰らう鬼が潜んでいるのだ。

「本当ニ美シイモノナノデスカ?」

 己の髪と同じ、銀色のスコップを素早く地面に突き立てると、ミカエルの目の前に転がっていた骸の手首が真っ二つに刎ねられて、びくりと跳ねて落ちた。

 血生臭い風はひょうひょうと吹いて、修羅道に落ちた二人の鬼を見る屍の瞳は相変わらず濁ったままで。


>>ミカエル、周辺ALL


【遅ればせながら、本編開始おめでとうございます! そして初めから長々と失礼致します、つい書き過ぎましたごめんなさい。絡繰様、この後の流れについては把握しておりますので、数レス後には移動しますからどうぞお許しを。短い間ですが、宜しければお相手をお願い致します】

3日前 No.26

スワン @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=rp39lsupOA

【スワン/11月1日/ベイカーストリート】

 こちらに気づいたメロウは、足を止めて待っていてくれた。あどけなく笑いながら私の持つかごの中を覗く彼女に、小さく首を傾げて笑みを返す。

「ええ、そうなの。お夕飯の食材を買わなくちゃいけないのに、さっきあんまり良い香りがしてたものだからついマドレーヌを買っちゃったの」

 そう言って困ったように眉を下げてみせるが、スワンの表情にはご機嫌さが滲んでいた。理由だって品物だって何でもいいのだけれど、大切な人と一緒に美味しいものを食べる、その予定があるだけでつい顔がほころんでしまう。

 あ、そうだ、と口にしたメロウは、紙袋の中身を開け始めた。厳重に包まれた品の包装が解かれていく。何が始まるのだろうと、スワンは目を円くしてそれを見ていた。
 得意気なメロウの声と共に包装紙の中から現れたのは、透明なガラス管。中は液体で満たされ、白い結晶が沈殿している。ちらちらと浮遊しているものも見えた。

「わあ、ストームグラスね、すごいわ!」

 そう言って、メロウに追いつかんばかりの勢いでぱっと顔を輝かせた。ショーケースの中に展示されているものは見たことがあったが、手の届く距離で見るのは初めてだった。思わず触れてしまいそうになるのをなんとか抑え、代わりに自分の口の近くで両手を合わせる。しばしの間目をきらきらと輝かせながら至近距離でそれを見つめたあと、メロウに視線を戻す。

「きれいねえ、ほんとにきれい。これからはお天気のことはメロウちゃんに聞けばいいのね」

 星の観測に天候の把握は欠かせない。普通の人よりは空模様から予想するのは得意だけれど、それがいつも完璧なはずもなく。学問に長けた彼女なら、ストームグラスの状態から気象の変化を教えてくれるだろう。スワンは嬉しいそうに目を細めた。

>メロウ、all

2日前 No.27

スワン @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=rp39lsupOA

【スワン/9月5日/ロンドン橋付近、テムズ河の畔】

 まだ夏の香りが残る時期とはいえ、夜の風はひんやりとしていた。月明かりの下、両腕で己の体を抱きしめるようにしながら橋を歩く。
 ジムと名乗った可愛らしい坊やは、お家に帰りたいと泣いてしまった。私と星を見るよりも、やっぱりママのところに帰りたいと。愛しくて愛しくてたまらなくて、私のものにしたかったけれど、泣き始めた坊やを見たら何かがすうっと引いていった。泣きじゃくる坊やの手を引いて家の前まで送り届けた帰り道。今日はもう星を見る気にはなれない。シャーロックさんの待つ家に帰ろう。

 ロンドン橋を渡りきったところで、ふわりと血の香りがした。嗅ぎ慣れた臭いのはずだったが、自分の愛しい子どもから発せられるものとは訳が違う。背筋がぞわりとして、思わず足が止まった。
 何の気もなくふと顔を横に向けると、河の畔に人影があった。はじめは一人に見えたが、違った。横たわったもう一人に、誰かが刃物を突き立てていた。横たわっている方の人間は既に息絶えているようだった。

「……きゃっ」

 口を手で抑え、息を呑む。人殺し。怖い。私も、殺される?
 逃げなくちゃ、通報しなくちゃ。そう思ったが、足が固まって動かない。衝撃のあまり、目線も釘付けにされたまま逸らせなかった。不本意なまま死体を見つめる。月明かりに照らされた真っ白な顔。これほど白い人間の肌を見たことはなかった。

「…………なんだか、きれい」

 無意識にそう呟いていた。無垢な愛しい子どもたちの骨を飾ったら、とても映えそうだと思った。いつしか恐怖心ではなく、魅入られていた。足を摺るようにして、静かに、少しずつ近付いていく。
 近づくにつれ、刃物を手にした人物の姿も明瞭になっていく。紅い髪のスーツ姿の男性だった。傍に行って何をしようというつもりがあるわけでもない。男性の背中まで数メートル、というところで、つま先が小石を蹴飛ばした。カツン、という小さくも尖った音が、夜の闇にこだました。

>ミリヤム、all
【殺人現場にお邪魔します……!よろしければお相手お願いします。】

2日前 No.28

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【シャーロック/6月8日/西洋料理店Wildcat】

エディと話しているうちに、厨房の方からはそこはかとなく良い香りが漂ってきたようだ。
カウンターで紫苑色のカクテルを口にしては最高と褒めてくれる紫髪の彼女にシャーロックは心底嬉しそうに頬を緩めた。
「ありがとうございます」

彼はいつでもそうだった。代々続く殺し屋の家系に育ちながら、人殺しよりも料理と子供の方が好きな妙な殺人鬼である。表向き用の仕事として始めた洋食店の飯は、御世辞にもあまり美味しいという評判は立たなかった。暗殺の腕は一流でも、好きでやっている料理の腕前は今ひとつ。良いのは手際と見た目だけで……つまり、料理人が味覚音痴なのだ。
キッチンストーブの扉を開けて、美味しそうな匂いが溢れ出す。取り出したシェパードパイは表面がグツグツと泡立ち狐色になって濛々とほかほかの湯気を立ちのぼらせ流涎を誘う。シェパードパイは、ラムの挽肉と細かく切った野菜をミートソース状にし、その上からマッシュポテトを敷き詰めてオーブンで焼いたパイ生地を使わないパイ料理である。表面のチーズが蕩け、中の柔らかなマッシュポテトが煮え立ち、その奥から昇り立つ肉の焼ける匂いと共に良い香りが鼻をくすぐる。いかにも、いかにも美味しそうだ。初めて見る人であれば一気に食欲を駆り立てられ生唾を飲み込むところだろう。
「お待たせしました」
口を開ける猫のパペットのような鍋つかみで、グラタン皿を取り出し、そのままエディの待つカウンターへと戻ってくる。鍋敷きの上にシェパードパイを置き、カトラリーを添えて出す。そしてその横に、塩、胡椒、砂糖、シナモン、豆板醤、オイスターソース、醤油、ビネガー、七味唐辛子、オリーブオイル、ケチャップ、マスタード、山葵……ありとあらゆる調味料が入った籠が擦り寄せられた。……そういう事だ。此処の店主の作る料理は、とにかく味が無い。これはシャーロックの悪戯などではなく、彼は自分の料理をそれなりに美味しいと思っている。もっとも、彼の場合どこで何を食べても……内縁の妻スワンの手料理だろうと、賞味期限を少し過ぎて乾涸びたパンであろうと、多少鮮度の悪い魚だろうと、「美味しいね」の一言で片付ける強靭な味覚の持ち主だ。最近の最近まで気がつかなかったが、どうやらもっと違う味が良いという客が多いのを知って、そんなにダメかな? と首を傾げながらも「味付けは各自で御自由に!」の精神で快く今のシステムになったのだった。

エディにシェパードパイを出すと、丁度エディがジャックを思い切り抱きしめ帽子の上から頭を撫で回し、勧誘の声を掛けているところだった。

「シェパードパイで……すって、あっ! 私の!」

私のジャック! 何を勝手に勧誘しているんだ……と、ジャックとエディの間に割って入りそうだったが、すぐにジャックが解放されたので、むっと口を噤み引き下がる。別にジャックはシャーロックの所有物でないのだが。シルクハット頭のジャックはしばらくゆらんゆらんと首を動かして一人で揺れている。

「まったく、油断も隙もない」

子供はこういうところが大変だ。ジャックは揺れるのを止めると、やっと解決法に気付いたのか、鼻のあたりまで被ってしまっていたシルクハットを両手で外し、「あっ!」と叫ぶ。まだ此処にきて二日、一度にたくさんの人物に会ったためか、ジャックは目の前にいる彼女の名前を思い出すのに暫し「んーーー」と考え込む。「エリィ……エミリー……」……捻り出す。閃く。「エディ、オネエサン!」

「…………」
こんな風だから、ジャックは容易に誘拐されてきたのだ。親を殺害されたというのに、その犯人と共に何の疑問もなく暮らし始め、まだ正体を知らないとはいえ恐ろしい殺人鬼集団の中に当たり前のようにどんどん溶け込んでいく。その危うさを孕む純粋さを、シャーロックは複雑な面持ちで見つめ、エディから繰り返された「子供って大変」という言葉に、カウンターに並ぶ彼女とジャックの肩越しに、自分が為した一昨日の汚れた仕事を追憶として眺めていた。

>エディ、all

2日前 No.29

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

2日前 No.30

ミリヤム @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【ミリヤム/6月13日/西洋料理店Wildcat】

 白雨を見付けたジャックは、奇声とともにおかしなイントネーションで彼女の名を呼んだ。ネエサンは姐さんだろうか、此処に集まる殺人鬼達が彼女をそう形容するのを、ミリヤムも聞いたことがある。しかも、ミリヤムの言動のせいか、ネエサンはシショーに上書きされてしまった。ちらりと覗き見た白雨の様子は別に不満そうではなかったので、ミリヤムも特に訂正はしないでおくことにする。
「うふふ、師匠っていうのはね大切なことを教えてくれる人のことよ。先生でも良いわ。ジャックもいつか素敵な師匠を見付けるのよー?」
 何の、とは言わないけれど。

 シショーって何だと言わんばかりの顔をしていたジャックに適当な説明をし、店の出入り口へと駆け出した彼を追い掛けるようにミリヤムも歩き出す。そこには既に準備万端で手を繋ぐ白雨とジャックが居り、一瞬の逡巡を経て、ミリヤムは空いているジャックの右手をそっと掴んだ。僅かな申し訳なさはあったが、手袋はそのままだ。
 そうして改めて、反対側にいる白雨にも声をかける。
「こんにちは白雨姐さん、この間は助かったわ、ありがとう」
 いつぞやに人形作りのアドバイスを貰った時のことを引き合いに出して笑う。そして、ジャックを罪作りと言った彼女の言葉にうんうんと頷いた。
「ほんとにねぇ、この二人を侍らせられるなんて霧の都中探してもベイビーだけよこの色男。さて、おねえさん二人に囲まれて王子様は何をご所望かしら? おもちゃでもお菓子でもお洋服でも、シャーロックが買ってくれるわよ」
 そして取り敢えず、ミリヤムの中では散歩とはウィンドウショッピングのことを指すらしかった。遊びに行くと言うより買い物に行くと言う勢いで、店の扉に手を掛けた。

>ジャックくん、白雨さん

2日前 No.31

ミリヤム @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【ミリヤム(ウィリアム)/9月5日/ロンドン橋付近、テムズ河の畔】

 ウィリアムは、噎せ返る鉄錆の匂いに溺れながら、今し方殺めた女の体から流れる血をじっと見詰めていた。彼には血液性愛の気はなかったが、人間の体から出ていく血の量に比例して、蒼白く透き通っていく肌の様子が堪らなく愛しくて眺めているのだった。

 白い肌は陶器に似ている。虚ろな瞳はガラス玉のよう。もう二度と自分の意思では動かせない体は、球体関節のマリオネット――死体とは最早、至上の人形と呼べるのではないだろうか。それと二人きりで戯れるのは、此の世で最も美しく残酷で悍ましい。

 その光景を想像するだけで、ウィリアムの気持ちは昂り、その顔に凄絶な笑みが刻まれる。
 ナイフを振り下ろすのを止め、ウィリアムは彼女の完成図を思い描いた。血抜きは終わった、後は防腐処理と傷口の縫合と……彼女に映える衣装と装飾品。流石にこれ以上此処で作業は続けられないので、一度バラすなり何なりして運ぶ必要もあるか……。
 そうして少し冷静に今後の段取りを考えだしたウィリアムの耳に、僅かな音が届いた。小石が蹴飛ばされるようなその音に、今度は彼自身が血の気を引かせ、鼓動と脳髄がこれでもかと警鐘を鳴らす。彼女の姿に夢中になりすぎていて、何者かに接近を許してしまったらしい。手の中のナイフを見遣り、ごくりと生唾を飲み込んだウィリアムは、決死の覚悟で振り返る。
 しかし次の瞬間、ばくばくと五月蠅い位に早鐘を打っていた心臓はすっと治まった。

「なんだ……アンタ確かシャーロックさんとこの……」

 丈の長いワンピースを纏ったピンクの髪の女性の姿を闇の中に何とか見据え、ウィリアムはほっと胸を撫で下ろした。そこにいたのが一般人なら死体が一つ増える所だが、彼女は――スワンはかのシャーロックの妻である。人殺しの現場を見られても特にこれと言った問題はない。強いて言えば、スワンの方が僅かに怯えているように見えることくらいか。
 にしても、とウィリアムは死体とスワンとを交互に見て、およその距離を測れば溜め息を吐いた。幾ら彼女に夢中になっていたとは言え、またスワンの立場もあるとは言え、此処まで近付かれても気が付かないとは、とても二百人近くの人間を葬ってきた殺人鬼とは思えない。次からはもう少し自重しようと、彼はこっそりと心に決めた。
 そうして改めて、ウィリアムはスワンの視線が自分が殺した女へと熱心に注がれているのに気付く。
「ああ、これ……綺麗でしょう? 俺は彼女を、これからもっともっと綺麗にして見せますよ……生きてた時の何倍も綺麗に。俺、人形作って売ってんですけど、良かったらお一つ如何です?」
 先程までの狼狽っぷりは何処へやら、ウィリアムは死体を見て明らかに恍惚としながらセールストークを始めた。サービスしますよ、何て冗談めいて聞こえる言葉も、決してスワンへ取り入ろうとしているのではなく彼のプライドに由来するものだった。

>スワンさん

【わぁい、お待ちしておりました! 目撃ありがとうございます。】

2日前 No.32

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ジャック/6月13日/おさんぽ】

ふぅん、とジャックは解ったような解らなかったような顔で口を尖らせた。師匠は大切なことを教えてくれる人。白雨はミリヤムに大切なことを教えてくれるという事。たいせつ、ってどんな事だろう?

「ジャックも、ししょー ほしいな、いいないいな」

なんの、とは、よく解っていないようだった。しかし、幼心にも二人を繋ぐ絆のような何かは言外にも気配のように感じ取れたようだ。ふと、ジャックの左手にさらりと滑らかな細い指が絡みつく。ひんやりしているが、しっかり握ると芯の温かい手だ。

「つみつくり って、えすこーと のこと?」

罪作りはエスコートではない。エスコートは、女性を侍らせることでは絶対にない筈だ。自分の置かれた贅沢すぎるこの状況の有り難みをちっとも理解しないまま、ジャックはされるがままに空いていた右手も預けてしまう。右手に繋がる手は、少し大きく指は細く長いながらしっかりして、さらさらとした手袋越しに体温が伝わってきた。こんな風に両手を繋がれて出掛けるのは生まれて初めてのことで、ジャックはわくわくして目を輝かせた。
両手を万歳したような格好で、濡れた石畳の街を歩く。雨はしとしとといまにも止まりそうな小雨のまま降り続いていた。ジャックは時折、白雨の差す異国の傘を物珍しそうに見上げて、それからまた嬉しそうに小さな口で弧を描いては白雨とミリヤムを交互に見比べた。お喋りをしながら、霧の都の街を行く。
「おもちゃ! おかし!」
ジャックは水たまりの上をスキップした。二人の腕に吊り下げられるようにして、大きな水溜りを飛び越え、着地する。その先にある小さな水溜りが、ピチャンと音を立て刹那に飛沫を上げた。
やや歩いて着いたのは、まだ来たことがないエリアだった。若者の通りが多く、傘の花が行ったり来たりしている。目に飛び込んでくる看板やショーウィンドウ、全てが目新しくて、それだけでも楽しそうに、ジャックはキョロキョロと落ち着きなく辺りを見回した。

>白雨、ミリヤム

2日前 No.33

洗濯蟻 @arinohito ★iPhone=n7Rebp7mCv

【ドールホーン/6月13日/聖アンダーソン教会】


「雨はまだ続きそうね……」

つたつたと教会の屋根を雨が叩く音がする。本を閉じて紅茶を飲み干したドールホーンは椅子をガタリと下げて立ち上がる。

土が柔く湿らない内に穴を埋め切らないと行けないだろう。


Rain rain go away, Come again another day.
Etticoat wants to play.
Rain, rain, go to Grave garden, Never show your face again!


雨よ雨よとマザーグースの替え歌を唄いながら表に出ると、雨粒が石畳を打つ漣めいた音が耳を洗う。
中程まで埋まった墓穴からは恨めしげに突き出た右手が黒雲を掴むように伸びていた。

シャベルを掴んで土を掬い、穴の上に振り落とす。土を掬い、振り落とす。叩いて均してまた土を被せ、小雨の降る中行われた作業は最後に粗末な十字架を土の山の上に挿して終わった。

奴等の墓に書く事は何も無い。故に白無垢の木の板を組んで縛っただけの簡素な物だ。形式上最後に十字を切っておき、使い終わったシャベルを納屋に仕舞いに行く。

教会の裏手はそこそこに広い墓園になっているが、埋まっているのは自身が手に掛けた者達の骨とか遺品とか、仲間が処分に困って持って来たあれこれだけなので此処に来る人は殆ど居らず、荒れに荒れている。その一角に納屋があり、『仕事』に使う物品が置かれていて、シャベルは壁に掛ける。

他にはノコギリだとか枝切り鋏だとか、鉈にツルハシ、先の戦争での使われた物ではあるが槍や剣やメイスなんかが置いてある。コールタールの樽、農機具なんかは隅の方に山になっていて、壁に据えられた棚の上には雑多な我楽多に混じり頭蓋骨が五つ。


My mother has killed me,
My father is eating me,
My brothers and sisters sit under the table,
Picking up bury them under the cold marble stones.


初めの一人は物の弾みで。悪戯で薪割り斧の頭に細工して置いたのが忘れた頃に吹っ飛んだ。
百人目は首に縄を括り付けて目隠ししたまま梁の上を渡らせた。布の間から伝う涙は美しかった。
二百人目は死体の処理も手慣れて来た頃。じっくり煮込めば骨も蕩けて柔らかくなる。小説のトリックが役に立った。
三百人目はビズの依頼主。自分を騙して口封じしようとしたけれど逆に鉈を脳天に叩き込んでやった。許しを乞うて哭き叫ぶ顔は滑稽だった。
四百人目は孤児の少女だった。趣向を凝らし、持てる技術を全て使って出来るだけ長く活かすよう務め、その際の全ての記録を取った。思い返すと未だに下腹部が熱くなる。

納屋を締めて鍵を掛け教会に戻る。一度だけ空を仰ぎ見て、孤児に本でも読み聞かせようかと思案しながら濡れたカソックコートを服掛けに投げかけて、髪を乾かす為に暖炉に薪を焚べる。
そうしてまた椅子に座り、小説を開くのだった。

>>ALL

2日前 No.34

凍雨 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=wo7ubgUPjt



【 ルイス / 6月30日 / ベイカーストリート 】


 ベイカーストリートの一角で建物に背を預けながらルイスは目を凝らした。が、闇夜に立ち込める霧が邪魔をして前がよく見えない。どれだけ探しても先程までルイスが居た工場は姿を表さない。夜霧が全てを覆い隠してしまったらオレのせっかくのショーが台無しになってしまうではないか。そう腹を立てながら口許を卑しく歪ませ、今はひとまずそれでいいと自らを宥めた。だって、ルイスの本当の楽しみはもう少し後に控えているのだから。ゆえに今は焦らず、ゆっくりと、『俳優であるルイス』に成り代わる為に何処へ身を潜めておく必要がある。


 さて、どうするか。考えていた最中、すぐ側の店の扉が鈍い音を鳴らした。――不味い。ルイスの脳内では瞬時に逃げ出すか、近場へ立ち寄った者の振りをするか、はたまた店から出てきた者によっては襲ってしまえば等と思考を巡らせていたがそれはヒールの音を連れて、若葉色の長い髪を揺らしながら現れた者――リリィから訊ねられた台詞によって遮断される。
 一瞬キョトンとした顔をしながらも突然、吹き出したかのような笑い声を上げ、ルイスが愉快そうに嗤う。そうして気が済むまで嗤ったら一呼吸置いて生意気そうな顔をして口を開く。


「――そんなの、最高に決まってるじゃん」


 自信満々に胸を張るルイスは俳優の仮面を被ることにしたらしい。殺人鬼としての仮面は脇に据え、役者ルイスは気紛れに辺りを見渡した。そしてリリィが出てきた建物をマジマジと舐め回すように眺めつつ、ねえ、と声を掛けた。


「ココ、アンタの店なの?」


 随分廃れてるけど、なんて小言を挟みながらリリィに問うて。

>>リリィ様、周囲おーる



【絡みありがとうございます! すっかり生意気ぶってるルイスですが宜しくお願い致します〜!】

1日前 No.35

みんと @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=WsHBgyg92L

【 白雨 / 6月13日 / おさんぽ 】

 師匠、大切なことを教えてくれる人。ミリヤムがジャックに説明しているのをぼんやりと聞きながらも口許に弧を描かせる。この幼く無垢な少年が羨ましがるような、そんな美しいものではないんやけどなぁ、なんてことを口に出すことはなくて。

「うふふ、ジャックはんもいつか出来るかもしれまへんなぁ」

 握られた手にゆるりと目を瞬かせ微笑を零す。人間というのは温かいものだな、と久々の生きた人間との触れ合いに少し緊張しているのは秘密だ。ふと、ミリヤムからかけられた言葉に嗚呼、と呟き唇を開く。

「気にせんといてください。わっちがお力になれるんどしたらいつでも」

 いつのことだったか、と少し思考を巡らせるがなんとなく察したようで首を横に振る。その横で罪作り、という言葉にちょっと変わった解釈をしたジャックに微笑を零しながらくるくると唐傘を回す。

「エスコートとはちょっと違うんやけど、こんな美人二人連れて歩けるジャックはんは幸せどすなぁ、うふふ、王子様はお買い物をご所望みたいやし、後でシャーロックはんに請求しまひょか」

 くすくすと笑いつつも楽しげに歩くジャックを見つめながら自身は着物の裾が濡れないよう、水溜りを跨いで歩く。賑やかなこのエリアを白雨も詳しくはしらなかったが様々な店々を見流してから「ジャックはんが入りたい店行きまひょ。どこがええ?」と小さな少年を見つめ首を傾けた。

>> ミリヤムさん、ジャックくん

1日前 No.36

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ジャック/6月10日/スイーツ専門店-happy apples-】

この日のジャックは丁度、新しい家族と買い物に出掛けた帰り道だった。天気は優しい曇り空。穏やかな風の吹き抜ける森の小径を、団栗を拾ったり野花を摘んだりしながらジャックは愉しげに進んだ。
背後から「おおーい、ジャックちゃん、泥濘(ぬかるみ)に気を付けてくださいよ、新しいお洋服でスリップしないで」と草臥れたような中年男性のなさけない声が息を切らして追いかけてくる。彼の保護者は、両腕に山のような紙袋を提げ、更に胸の前には塔のようにうず高く積んだプレゼントボックスを抱えている。紙袋にもリボン飾りの箱にも、霧の都の百貨店に看板を連ねる子供服店や子供用品店のロゴが入っていた。自分の店のホールで培った給仕の腕前も大して活きなかったらしく(そもそもあの洋食店で、盆の上に溢れかえる料理を曲芸のように運ばなければならぬほどの盛況は見たことがなかった)、溢れかえる愛情の塔は今にも倒壊寸前だった。品の良いスーツも台無しで、僅か三、四歳ばかりの子供に振り回される中年紳士を、一体誰が殺人鬼を仕留める殺人鬼の古株と思うだろう。

二人は、ハンデのありすぎる鬼ごっこを繰り返しながら、赤い屋根の可愛らしい家の前に辿りついた。
森の中に突如現れたドールハウスのような可愛い家は、まるで絵本の世界から飛び出してきたよう。その門前に立ち止まったジャックを、シャーロックがようやく捕まえた。
ゆらりと立ち昇る黒煙のような、高い影が少年の隣に並び、しかし柄に似合わず優しい笑みを向ける。付いてくるように促すと、塞がった手を差し伸べられずともジャックはその背後に続いて甘い甘い世界への扉をくぐった。カランカランと、陽気なベルが鳴る。

ジャックの鼻孔を擽るのは、焼きたてのお菓子の、今まで嗅いだこともないような甘くて美味しい匂い。丁度目の前を通り過ぎて行ったアップルパイとコーヒーを、背伸びをして覗き込もうとし、鮮やかなアクアマリンの目はすっかり未知の食べ物に釘付けだった。

「此処は、私の知り合いがやっているスイーツのお店です」
「すいーつ?」
「甘くて美味しいもののことです。スワンの買い物が終わるまで少し待っていましょう…………ああ、こんにちは。アル」

ジャックを四人がけテーブルの、窓の外がよく見える席に座らせながら優しく教えてやるシャーロックの眼差しは、まるで父親のようだ。突然増えた家族の為に必要な物資を買いに、妻スワンとジャックと三人で出掛けていた。傍目にはまるで家族のように映った事だろう。だがその実は、殺人鬼と、妻のように暮らす仮初の恋人と、全く別の家族から誘拐してきた他所の子供が仲良くショッピングをして帰りにお洒落なスイーツ店に寄っている図だ。そんな事情を知る由も無いジャックは、大人しく座ってなどおらず、ショーケースに張り付くようにしてケーキを不思議そうに見つめている。そしてそんな事情を深く考える気も無いのかシャーロックは、日頃から懇意にしている若い店主の姿を見つけると、にこにことして帽子を取りながら挨拶をした。何せ、妻やジャックには悪いが、このhappy appleの店主アルこと、アルトは、シャーロックの大の大の大のお気に入り殺人鬼なのである。つまりは、ショタコン的な意味合いで。目の中に入れても痛く無い、と言わんばかりの緩みようで、ジャックが来る前からアルトのことは甘やかし続けている。彼の店に来るのも、果たしてスイーツが目的なのか、アルトを応援するのが目的なのか、わかったものではない。

>アルトさん、all


【ジャックでアルトさんに絡ませていただきました。スイーツ店までの足はシャーロックで……。宜しければお願い致します。ジャックとはこの時が初対面という設定でも、最初の夜に一度会っている設定でも構いませんよ〜】

1日前 No.37

ジャック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ジャック/8月16日/ロンドン橋→聖アンダーソン教会】

ジャックが霧の都に誘拐されてきて、二ヶ月半近く過ぎた。霧の都の短い夏が、終わろうとしている。
此処での生活に慣れてきたジャックは、自宅付近でなら一人で遊ぶこともあった。この日は保護者たち≠ェ同伴で、ダニエラのところの美味しいパンを使ってシャーロックが作った、あまり美味しくないサンドイッチ≠手にテムズ河の畔でピクニックをするはずだった。
珍しく、霧の都に僅かな晴れ間が見えた。川は水底に今まで宝石を隠していたかのようにきらきらと輝いている。しかし遠くには、既に厚い鉛色の雨雲が迫っており、この天気もそう長くは続かないことを暗示している。大人達が雨雲に追いつかれる前にいそいそと帰り支度を始めると、ジャックは暇になってしまって、橋の上からテムズ河に石を投げて遊び始めた。

「London Bridge is broken down,Broken down, broken down……」

殺人鬼の一人が教えてくれたマザーグースの歌を、ジャックはあまり意味も知らずに口遊む。手元の石は次々にロンドン橋の上から身投げして、テムズ河の底へと沈んでいった。

「あっ」

それにも飽きてきたのであろうジャックは、思い出したように顔を上げた。ポツーーーーと降り出した雨が、袖に淡いシミを作り、ついで、欄干へ、肩の上へ、頭の上へ。河から立ち上る霧の向こう、古びた教会のとんがり屋根が見えた。

「ドールホーンの きょうかい」

今迄に何度か訪れた事のある、シスター服の彼女の家を、如何やらジャックはちゃんと教会と認識しているようだった。ジャックが誘拐されてきたばかりの頃はなかなか顔を合わすことがなく(もちろん彼はその時の彼女の心境など知る由も無い)、出会ったのは最近のこと。けれど、おはなしを かく おしごと≠しているという彼女の部屋には沢山の本というものと、沢山の歌と、美味しいお茶とコテージパイがあった。ジャックは相手が子供好きであろうとそうでなかろうと、顧みず、興味を持ったものや楽しいものがあるところには直ぐに駆け足で向かうのだった。この日も。

ひび割れた石畳を踏み、雑草だらけの庭を通って、色褪せたステンドグラスを臨む錆びた鉄の門の前にジャックは立って声を上げた。手をメガホンのようにあて、身体をくの字に折り曲げて。

「おーい」

>ドールホーン、周辺all


【予告(?)の待ち合わせレスです。宜しければ絡みましょう! 初対面がどんな風だったかは御想像にお任せし、何度か会ったことがある設定で日常を切り取ってみました。ピクニック引率の大人の方、どなたかやってくだされば迎えにきてくださるのも美味しい……】

1日前 No.38

シャーロック @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【シャーロック/7月2日/ベイカーストリート裏路地】

真夜中のベイカーストリート。赤煉瓦の壁に、黒く巨大な影法師が現れる。霧の都の夜を行く怪物の影。
背の高いシルクハットに、たっぷりと夜風に翻る蝙蝠のようなコート。畳まれたままの傘と、枯れ木か或いは蜘蛛のような細く長い脚。巨大な影法師は煉瓦模様の凹凸の上を滑るように、殺人犯の少女の背後から這って迫ってくる。

「…………またですか、ミカエル」

咎めるような厳しい声が、凛と辺りの空気を震わせる。ふっと、月が翳ると、壁沿いに追いかけてきていた漆黒の化物が姿を消した。代わりに山の如き影はしゅるりと沙羅の音すら立てそうな鮮やかさで収束して、声の主の足元に集まって、本物が濃霧の中より現われ出でた。
血生臭い夜霧を襟に裾に絡ませて、迷惑そうにポケットの中の依頼書を握り潰している。彼はあの恐ろしい影がそのまま凝集したかのように真黒で、冬の大樹か鋭利な刃物のように冷たく佇んでいた。

「ミカエル」
彼……殺人鬼・シャーロックは目の前の惨状を一瞥し、状況を理解したようだった。一瞬言葉を切った後に、もう一度彼女の名前を呼ぶ。小柄なミカエルとの間には、50cm近い身長差がある。壁のようにぬっと立ちはだかり、ハットの翳り差す目元が視線だけで彼女と屍の小山を見下ろし、傍のルーツァンを冷え冷えとした眼差しで一瞥する。
シャーロックはつかつかと二人の間に割って入ると、不意にミカエルの前に身を屈めた。まるで平手打ちにでもしそうな所作と形相ながら、一変してルーツァンから彼女が掛けようとして辞めたペストマスクを奪い取り、ミカエルの顔に装着した。

「君が感染してはいけない」

蟠る静かな怒りを、理性で押さえ込んだような顔をする。血の匂いがする。眉を潜めた。手を、切り落としたのか。
直接吸わされなければ死には至らない毒であっても、それを使うミカエルの曝露量は一般人の何倍にも及び蓄積されるだろう。況して、子供の体躯である彼女には……。

「ルーツァンも甘やかしすぎだ」

自分のことは棚に上げ、背後のルーツァンをキッと見上げてチクリと棘のある言葉を刺す。彼女が手にした武器のスコップ、屍から離れて転がった手首。ミカエルの恒例行事を、ルーツァンが手伝ってやったらしいのは一目瞭然だ。溜息をつく。子供好きのシャーロックが、ミカエルの母親のようであるルーツァンにこうして腹を立てるのは一度めではなかった。
ペストマスク越しに見えるミカエルの、焦点の合わない目を見つめ、僅かに目を眇める。
ーー薬か。
彼はさっと立ち上がる。

「依頼書にあったのは、この御客様一人のはずでしたが? 殺しすぎです」

淡々と、しかしねちねちと、慇懃無礼とも取れる丁寧な説教が始まる。しかしルーツァンと違って彼は薬には気付いていても言及はしなかった。
コートの中で握り潰している依頼書の標的は、余分な命を道連れに既に足元で息絶えていた。無論、手柄を取られたことを怒っているのではない。もう少し自分が早く来れば、という自責の念もあったのだ。ただしそこはシャーロックも殺人鬼。余計に四人もの尊い命を奪った≠ニは微塵も考えていない。余計に四人分も女児の手を汚させてしまった≠ニ親心に思うのみである。此れでは、彼女のような殺しすぎた殺人鬼や、自分のようなならず者の殺人鬼を達が極刑に処されぬように、政府に殺し屋の誇りを売った意味がない。

「ミカエルは若いのに有能な殺し屋です。私よりも余程ーーいや、その歳でその業績は仲間内でも一二を争う腕前と言っていい。ですが、毎回毎回こんなに余分に殺してきて事を大きくしては、目を付けられますよ。何処に行く先々で何倍も余分に殺し華々しい業績をアピールする暗殺者がいますか。我々は軍人ではなくて殺し屋です。貴女の若く逸る気持ちもわかりますが、気付かれないよう忍ぶということも覚えるべきでは」

小煩い説教は、まだまだ続く。
ルーツァンの視線もお構いなく、肌に纏わり付いていた夏の夜が冷えて行くのもお構いなく。

「……ミカエル。貴女の身体も心配です。私は、貴女の為を思って言っているのですよ」

普段なら甘く幽かに震える囁きのような声音が、冷徹になって機関銃のように一息に喋ってしまうと、それから少し疲れたような哀しそうなしおらしい声になった。
ルーツァンとミカエルの間に転がり落ちた、切断された手首を、空き瓶でも拾い上げるように回収する。骨の見える輪切りの断面から冷めた血が、生者の勢いを失くしずるずると流れ出る。自分の犯行では殆ど汚すことのない純白の手袋が、闇夜にも尚黒く見える程迄に赤黒く濡れていくのをただ黙って見つめていた。
折角ルーツァンが切断してくれた戦利品≠目の前で取り上げてしまうと、シャーロックは踵を返した。本当はこんな煮ても焼いても食えないもの、欲しくもないのだが。

「これは預かっておこう。手首はもう一つ付いているようですが、私は何処かの優しいお母さんと違って子供≠フ悪い遊びには加担いたしませんからね。……ルーツァン」

行きましょう、と、嘗ての相方≠フこれ以上の叱責を抑止するように声をかけ、一足先にミカエルの殺人現場をそのまま後にした。

>ミカエル、ルーツァン、all


【鉢合わせokだったようなので、追いレスで合流させていただきました! 1レスでお説教し掃けた結果、長くなってしまいました、読みにくくてごめんなさい(汗)】

11時間前 No.39

シチダンカ @caim ★Vxqs1Pnm4y_mgE

【シチダンカ/8月31日/シチダンカ宅前】

 彼の後を追う。
 爪先で降り立ち、無意識に膝を曲げて衝撃を受け流した。髪が重力に従い直してやや遅れてから、霧雨が皮膚上に纏わりつくのを再開する。それにしても髪、縛ってこればよかったわ。霧を喜ぶなんて、逃走者以外にはいないのに。頬にへばりつく前に、前髪をかき上げて後ろ髪までをまとめて流した。霧に目が慣れるまでの僅かな間、ふと視界の端で影が動く。霧に隠れて三重にもぼやけるそのシルエットには、案の定一部が歪に欠けていた。

「未だ生きててくれてよかった」

 ヒールの足音にかき消しながら、勿体付けるようにゆったりとした一定の歩幅で間合いを詰めていく。これは狩りではなく、救いなのだから。目の前で芋虫のように地を這うその血の染みついたシャツの、彼の背中をヒールで撫で付けた。びくりと、彼の肩が跳ねる。あたしへの恐怖心だとか、そんな次元ではなく、きっと動物的な本能なのだろうけれど。芋虫のあなたを、此処で蝶にしてあげたいのよ。――さて。牛刀を持ち直した。

「ごめんなさいね。お喋りしたいのは山々なんだけど、先に仕事片付けちゃうわね」

 後方の気配に向かって、それだけを伝える。果たしてどちらに用事があるのかは知らないけれど、――もう優先順位は決まってるの。しゃがみ込んで、彼の首に手を回す。左腕に狙いを付けて、一振り。ぎゃ、と喉を引っ掻くような悲鳴が一つ。

「あたしいつも詰めが甘いのよね」

 右太腿に狙いを付けて、一振り。鑢のように攻撃的な悲鳴が一つ。

「だからいつも」

 右太腿に、もう一振り。

「力任せにやっちゃって」

 次は、左太腿。彼の声はもう、二度と聞こえない。黒マントの裾が、広がる血液を染み込ませていく。

「……服汚しちゃうのよね。これ、仕立ててもらったばかりなのに」

 乱暴に宙で血振りを行って、牛刀をポーチに仕舞い込む。それから、ゆっくりともう一つの気配に向き合った。霧の中に浮かぶシルエットは小柄だった。辛うじて霧に透けて見えたその姿から、小さく感じた親近感に僅かに口角を緩める。誰にだってヒミツはあるもの。

「あたしに用かしら、お嬢ちゃん?」

>メロウ、ALL
【絡んでくださってありがとうございます!!】

11時間前 No.40
切替: メイン記事(40) サブ記事 (69) ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。