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When Doves Cry

 ( オリジナルなりきり )
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学園/異能力/戦闘/日常 @arthur ★iPhone=oSzqvVRNp1

鳩鳴学園って知ってるかい?

うん、名前くらいは聞いたことあるよね。能力者の子ばっかが通う学校だよ。

まぁ物凄い設備が良いから、ただ異能力に恵まれていれば入れるって訳じゃなくて、ちゃんと勉強した子しか入れないらしいんだけどさ。

その鳩鳴学園がなんと!不良の子たちを受け入れるって宣言しちゃったわけよ!

いや、あれじゃない?近年、異能力による青少年犯罪が増加の一途をたどって〜なんて、カタ苦しいニュースやってるでしょ?

そこで特に悪〜いことだったり、やばい能力持ってる子たちを入学させて、矯正しちまおうぜ!ってハラみたい。うん?大人しく少年院入れとけ?ごもっとも!けど、あそこの学園長はかなりのヘンジンらしくてさぁ、鶴の一声で決まっちゃったみたい。

それでもう校内はもうギスギス!不良くんたちを矯正する為に新しく生徒会が作られたものの、問題児たちが言うこと聞くワケないからね。日夜、喧嘩しまくってるって話なんだよ!

……え?なんだって?キミ、今日からあそこに通うの……?

……うん……その……ガンバ!!!

メモ2018/06/13 08:05 : 有栖川☆Mwp.W.uiBT6 @hananomi★5tuXai74if_d25

現在のイベント

Episode 2「in Bloom」

http://mb2.jp/_subnro/15735.html-158


概要・用語 http://mb2.jp/_subnro/15735.html-1

ルール http://mb2.jp/_subnro/15735.html-2

募集 http://mb2.jp/_subnro/15735.html-3

ロケーション http://mb2.jp/_subnro/15735.html-4

プロフィール http://mb2.jp/_subnro/15735.html-5,7


【各所絡み概況 6月13日8時現在】

・本校舎

 屋上 氏家弥

 空き教室 糸魚川途望志

 生徒会室 雨飾昌明、服部真


・一年校舎


・二年校舎

 空き教室 倉敷秋人、小桜莉緒


・三年校舎

 3-B教室 前桐柘榴、兵頭アキラ 


・正門

 駒澤昌史


・庭園


・庭園A

…続きを読む(35行)

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友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_yO9

【 グラウンド@ / 紫微星菘 】

 京弥は客にならない少年だったようでさっさと立ち去って行ったので商売相手から除外。女子生徒らは七人もいるのだからこれ以上に優位性を重ねるのは、と考えたのか、血液の購入を逡巡の末に断って来た。どちらも予想の範囲内の対応だ。一斗は間違いなく購入しないし、売れないのなら早いところ目当ての転校生がいる場所まで接触を果たしに行こう――と、考えていたのに。まさかの「むしろそっちが金を払え」という申し出に、菘より先に周囲のギャラリーたちがざわめいた。イかれてんのか、とさっき一斗に対して呟いていたのは確か琴音だが、今なら彼女以外の生徒たちでも同じ感想を一斗に対し抱くであろう。ふてぶてしさの塊。まさに不躾そのものの精神性。ヒソヒソと野次馬らの中で声が飛び交う。畏怖とも呆れともつかぬ感情のさざ波は至る所に伝播していた。グラウンドで繰り広げられている別の戦いとこちらのどちらを観戦しよう、と迷って真ん中で右往左往していた何人かの優柔不断な生徒たちが、一斗の宣言を耳にしすすっとこちらの人の輪に戻って来た。大口を叩く人間はそのエンターテイメント性により人の興味を引き付けるのだ。本人にその意思が無かったところで。

「わかりました、校倉琴音生徒会庶務。大丈夫ですよ。俺の商売は客が迷わなけりゃ早く終わります。それでもって、『彼』は迷わないでしょうから」

 戦闘の開始を急かす琴音に、ちらりと一斗へ視線を送りながらそう答える。浮かべる表情は、明るさと親しみやすさと軽薄さが泉のように湧き上がって尽きることのないいつも通りの笑顔。考え用によっては、常に笑っている人間など常に笑っていないのと同じだ。だからこそ、敏い人間は菘の表情を見て「心を許されている」などとは感じない。作り物である痕跡の一切見えない完璧な猫は、馬鹿と鈍感を騙せる反面、勘で物事を判断する相手には余計に警戒されるのが常。それを自覚した上で猫を被ることは辞めない。稀な壊れ方をした人間性のほんの表層だけを飾るように『ちょっとおちゃらけた好青年』の雰囲気を纏った彼は、ぴん、と人差し指と中指を二本立てて、それを己の口元にあてがった。握っていたはずの小瓶や青森土産は、いつの間にやら足元の鞄にしまい込まれている。

「強気と強情は別だぜ一斗くん。見誤らないほうが良い。――って意見もあるだろうけど。俺個人としては、こういう場面で強気でいられる性格は良い意味で結構クるんだよね。強者の基準は性格も込みだ。俺を侍らせるのを喜んでくれるタイプならもっと良かったんだけど、まあ君に対しちゃそこはもう望まないことにして。
 ……オッケー、二十万円払ってあげる。その代わり、一斗くんが負けたら倍にして返してね。勝ったら俺としちゃ良い宣伝になるし、そのまま持って帰ってくれて良いよ。人にリスクを要求するんだ、当然提案した時点で、自分も追加でリスクを背負う覚悟はあったんでしょ?」

 確認するような言い回しだが、実際のところは断れない状況を作り出した上でのリスクの押し付けだ。これだけの有象無象に取り囲まれた状況、そしてこの流れで一斗がよりにもよって『この手の提案』を断ってしまえば、生徒たちの中に確実に生まれて来ていたであろう“一斗のぶっ飛んだ人間性に驚きつつも惹かれ始めたシンパ予備軍”の熱がすっと冷めてしまう。アウトローのカリスマ性は諸刃の剣だ。悪いことをしても一定数の人々からの評価が下がることはなくとも、恰好悪いことをすれば今まで向けられていた好意が嘘のように見放されてしまう。これが秩序やモラルを司る側のカリスマ性なら一度や二度の恰好悪さで評価が百八十度変わったりはしない。あくまで一斗のようなタイプだけがこの制約を背負っている。
 スクールバッグの中から十万円ずつまとめて挟まったマネークリップを二つ取り出し、それをぴっと手裏剣さながらの動きで一斗の手元に飛ばす。自分の血液を売って稼いだ金はマネークリップには挟んでいない。こっちの金は、自分に亡き息子の面影を重ね何年も菘を菘ではない名前で呼び続けた、趣味で養護施設を営む金持ちの院長が毎月くれるお小遣いだ。菘も菘で院長の求める息子像を巧みに読み取りそれらしく振舞い続けた結果、ここまでの金と愛を完璧な息子の代替品として貢がれるようになったのだから、言い方は悪いが性的接触が無いだけのイメクラ業で稼いだようなもの。故にただで貰えた金だとは思っていない、こちらはちゃんとリスクを払った。

「じゃあ一斗くん、頑張ってね! 俺のご加護がありますよーにっ!」

 喰えなさと愛嬌に彩られたウインクと共にガラスの小瓶を一斗にプレゼントし、すれ違い様にハートマークを携えた甘ったるい声でエールも送っておく。一斗が買っても負けても、菘には得があり損がある。それは一斗にしても同じこと。運命共同体、と呼べるほどではなくとも、多少は同じ土俵に立つことになった二人。なのに熱く訴えかけてくる友情パワーとかをちっとも感じられないのは、そもそもこのやり取りが友情に由来するものではないから。
 歩いて来る菘を迎え入れるように、あるいは僅かに避けるようにスペースを空けた野次馬の生徒たち。そこに当たり前の顔をして入り込む菘。この学校の有名人はえてして多くのアンチを抱えているのは事実だが、同時に妙なファン層を抱えているのもまた事実。強者が大好きで侍るし媚びるけどもっと強い人が現れたら平気でそっちに付きますバイバイさようなら、を公言する菘のいっそ潔い奔放で自由な隷属体質は、響く人の性癖にはめちゃくちゃ響いて一部生徒には奇天烈な愛され方をしていた。その証拠に、どこからともなくやってきた女子生徒が変質者じみた息遣いと足取りで菘に近付いては、立っているのは辛いだろうから自分が椅子になろうと申し出ている。が、菘はそれをさくっと断った。――だってなんか気持ち悪いし……君が強者ならどんなプレイにもお付き合いするけど、弱っちいから食指も動かないもん。強くなってから俺を侍らせに来て? そしたら何でもしてあげる。――みたいなことをしれっと口にする菘に、女子生徒は「公式と解釈が合った」なる謎の言葉を残し興奮気味に頷き去って行った。
 これだけ個性豊かな生徒のいる学園なら、グラウンドで戦っているメンバーのみならず野次馬にだって妙なのは湧いて来る。今の女子生徒もその一人だ。

(ひょっとしたら、戦いに途中から飛び入り参加してくる子とかもいるかもねー)

 観戦のお供にフリスクを齧り、バトルの開始を待つ。一斗に渡した小瓶の中身、血液の総量は10cc。つまり十分の強化が彼には可能だ。その時間内で戦いが決まるか、あるいは延長戦にもつれこむのか――。

>グラウンド@ALL様

【厚かましい男も強けりゃ好きなのが菘です。強者ビッチの悪口は伊達じゃない()
 ちょっと戦いを観察したら今度こそ別の場所に移動するので、もう少しだけ居させてくだせぇ。具体的には一斗くんの勝ちか負けを確信したら場を離れる予定です】

3ヶ月前 No.249

雪鹿 @class ★Android=42zyboh5vZ

【三年校舎・3-B/前桐 柘榴】

にこにこと笑みを浮かべていた先輩は1個下だと思ってた、と言った。まぁ、体格的に言われ慣れてる。多少の幼さは感じられるような顔立ちでも、それ以上に若干悪い印象を与えてしまう目付きだとか取っ付きづらい雰囲気とか、そういう形で何かしらの要因が無ければ年上だと思われる事が多い。なので、そこに関しては特に悪印象を受ける事はなかった。どちらかと言えば、はっきりと言ってくる辺りに相手の素直さを感じられて好印象を抱いたくらいだ。少なくとも、黙って怪訝に見られるよりはずっといい。

「うん、よく言われる。……そうか、良かった。」

どことなくまごついた印象もあったし、内容自体は淡白な返事ではあったが、にこやかに笑って貰えてホッとしたのか、心なしか目付きも穏やかになって表情も多少緩んでいた。先程のような借りてきた猫みたいなぎこちなさも殆ど感じられない位には安心したのだろう。その表情やら雰囲気に不良らしさは欠片も無かったが、彼の素はこちらなのだろう。もちろん、彼の素に気だるさやら突拍子も無い事を言い出したりする辺りが含まれている事は大前提ではあるし、件のあれも彼の一面に他ならないが。そも、人を寄せ付けないような雰囲気の大元は彼の今見せている一面あってこそ、というやつだ。
ただ、その優しさは誰にも伝わる事はないし、理解された時点で意味は無くなってしまうのだが……それはまだ、先の話と言う他無いだろうか。

「そうか……!なら、アキラ先輩と呼びたい……と思ってる。そうなのか、困らせたならすまない。」

下の名前で呼ばれるとは思っていなくて一瞬目を丸くした後に、先程の流れを引き継いでいるために柔らかくなった表情のままに目を輝かせていた。そこに本人の意思とは関係のない気だるさは残っていたが、ここまであからさまに嬉しそうにする彼は……少なくとも、人生が大きく曲がった原因の一件から転校してくるまで、見せた事が無いのではなかろうか。なにせ、声にまでそれは波及して謝っている時ですら、声色は比較的明るかった。もっとも、ここまで嬉しさが高ぶったとしても彼の表情筋は割りと死んでいるので分かりづらい事に変わりはない。きっと彼が犬とかであれば、無表情でも尻尾とかで高ぶった感情も分かるのだろうに。
それにしても……見ず知らずなのに助けてくれた上に、下の名前を呼んでくれたのは家族以外だと久々だ。それに、敬語じゃなくても怒られてないし、今のところ嫌な思いはさせてない……多分。ちょっと俺は長くてリアリティのある夢を見てるんじゃないか?朝から良いことがありすぎて、自分でも少し引いているくらいなんだ。確かに転校前から普通の高校生活を送ってみたい、とは言ったが、ここまで望んだつもりは無かった。初日からいきなりアクセルをかけすぎでは無いだろうか、神様よ。

「……ん、好きな食べ物か?パフェとかホットケー……ええと、ハンバーグか?あ、ハンバーガーとかオムライスもいいよな。」

彼にとってはあまりに幸せな出来事が起こりすぎて頭がついていかなかったらしく、唐突に始まったクイズを質問とうっかり勘違いしてしまって、うっかりと自分の好きな食べ物を答えていた彼は言い終える直前で気付いて一瞬固まったが、何事も無かったように取り繕ってから、アキラ先輩の好きそうな食べ物を考えて答えてみた……とは言え、途中から彼もつられてお腹が空いたのか、自分の願望も混ざっている。帰ってから食べればいいか、と昼食は半分こにした事もあって男子高校生にしては少食の彼でもお腹は空いてしまったらしく、真似するような形でお腹に手を当ててさすり、確かにお腹空いたな、なんてぽつりと呟く。もう少し食べておけば良かったな、と今になってほんのりと後悔したのは秘密だ。

「あ、アキラ先輩さえ、良かったらなんだが……一緒に何か食べないか?ついでみたいで悪いんだが、助けてもらったお礼をさせてほしい。」

ふと、思い出した先程の恩の事を思い出して、それを口実に一歩だけ勇気を出して食事に誘ってみる。相変わらず名前を呼ぶのは少しだけ照れ臭くて詰まってしまったけれど、それでも呼べた事がちょっと嬉しくて口元は少し前から緩みっぱなしだ。それに本当なら、自分で誘ったりしたくないんだが……今日はなんだか上手くいきそうな、神様だって今日くらいは許してくれるような、そんな気がしたんだ。

>兵頭 アキラ様、all

3ヶ月前 No.250

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=m5g6z9GTc8

【食堂/久那 泣薇】

「なんだと?俺はそこまで破廉恥じゃないぞ、すぐにそんな事を考えるお前こそどうなんだ?」

つい数分前に自己紹介したばかりだと言うのに、見境のないその言動に対して笑いと共に言葉を投げ返した。能力に見惚れていただけだが、急にそんなこと言われても、別にそう言った方向のことは思いもしなかった。でもまぁ能力をフル活用すれば窓から浴槽を覗くなんて造作もないこと。そんなハイリスクローリターンな上にくだらな過ぎることはやったこともないが。

そうこうしてると彼女は複数に存在させていたゲートをぴたりと閉じた。恐らくは購買部に繋がっているであろう空間の穴だけがぽっかりとそこに開いている。

一瞬、嶺は何かをボソボソと呟いたような気がしたが、それを取り消すかのようにこちらを振り向き、食堂での昼を奢ってくれるなんて言い出した。もう昼を過ぎてバリバリの放課後だし腹も殆ど空いていないが、その御好意に甘えさせてもらおうかな。食べずとも付き添いぐらいなら気分を害させるような事にはならないだろう。ただ、変わり者同士、同じ匂いだと、まるで俺と同じ存在であるということを何度も確認するように言ってくるのは少し引っかかる。

そんな事を考える間も無く、嶺は笑いながら無理やりこの手が引っ張られ、いつの間にか彼女の開けたゲートをくぐっていた。というより半ば強引に連れ込まれたみたいだな。


かなり唐突な展開だが、校内を周回していたわりに購買部もとい食堂にはこの時間になって初めて入った。弁当も何も持ってきてはいなかったが、空腹感なんかは特に感じてもいなかった。だが見た感じだと嫌でも空腹を誘うようなメニューなんかも色々と確認できる、うわ、エクレアとか本当にあるんだ、なんか凄い本格的だな。

「生憎腹は空いてなくてな、お前の食いっぷりでも見させてもらおうかな」

静かに微笑んでから近くにあった適当な席を選んでからまた腰を下ろす。やはり石段と違って座り心地が違う、鉱石は尻を降ろすには些か冷た過ぎる。いや景観は良かったんだがな。こんな曇り空じゃなければもっと人がいたんだろうなぁ、それには少し助けられたけど。


≫黒羽嶺様 all様

3ヶ月前 No.251

猫先輩 @vtyjf ★4gCE4td3c0_QAg

【グラウンドA/桂朿場 真央】

>>宍戸豪、(四十万英雄)、(能登風黎)

状況への対応も早い、あるいはこういった状況へのイメージトレーニングでもしていたのだろうか。拳から感じた感触もエアーバッグを殴ったかのような不確かなもの、当然与えたダメージなど言わずもがなだろう。そして、そうなれば反撃も――

「――ッ゛」

咄嗟に回し蹴りのインパクトをずらす。彼の背中から、繰り出された蹴撃、その足の裏へ。暴れる風を踏みつけて、脚どころか全身を揺さぶる衝撃を歯を食いしばって根性で耐える。そのまま三角跳びの容量で後ろへ、自ら後ろへ退くことで衝撃を殺し切る。

「良いね、すごく良い」

くるりと宙返りを一回、片足で着地を決めて仕切り直し。五メートルほども飛ばされただろうか、痛む片足に気付かれないよう笑顔を浮かべて称賛の拍手を送る。能力の精度は勿論のことながら、能力を振るうのではなく能力を使いこなしている。自分流の戦闘スタイルとでも言えば良いのだろうか、彼の、彼にしか出来ない我流の戦闘方法。能力がきちんと彼の骨となり肉となっているのが実感できる。ここまで練り上げるには日常的に能力に触れ、訓練する必要もあっただろう。私が知っている以上に、きっとその努力は高く高く積み上げられ、その末に届いた境地に違いない。

強い、もはや私に大敗を喫した彼はいない。ならばこちらも、彼の努力に答えよう。

「――だから、ギアを上げるよ」

軋みの悲鳴として痛みを発していた片足から急速に痛みが引いていく。骨に罅くらいなら入っていたのかもしれないが、平時ならともかく今の私にとっては些末な傷だ。脳内麻薬が溢れ出る、否が応でもテンションが上っていく、こんなにも強く、激しい執着を、敵意を、信頼を、一心に浴びて楽しくならないわけがない。

「ついてきてね、後輩くん?」

当然だよね?と、問いかけるように首を傾げる。にっこりと浮かべた蕩ける笑みは、薄闇の中で彼の眼にどう写っているのだろうか。私は、彼にとっての超えるべき壁という役割をきちんと果てせているだろうか。

そんな他愛のない思考も、すぐに白熱した脳裏に消え失せる。

宣言のとおりにギアを上げる。肉体のスペックはそのままに、限界までその性能を引き出し――そのまま限界を超える。一説には人間の肉体は平常時には三割の力しか出せないらしい。それは、常に十割の力を出した場合疲労と肉体への損耗が激しすぎるため、ほんの僅かな時間しか活動できないからだ。即ち、三割というのは肉体のセーフティであり、それ以上の出力は極僅かな時間しか出すことが出来ない。

というのが、常識の話。

「じゅあ今度は――こっちから!!」

右の脚で踏み込み一つ、それだけで五メートルの距離を一瞬で踏破する。同時に右脚で弾けた痛みは、しかし瞬きほどのタイムラグもなく消え失せる。ただの踏み込みで五メートル、それは、研鑽し、努力し、積み重ねた肉体を使い潰すような暴力的な行為。だが、もしも肉体を使い潰したとしても即座に新しい肉体に乗り換えることが出来るならば――単純な話、それはもはや人間の常識を遥かに超える力を発揮する。

最初の交錯とは真逆、飛び込むのは私で待ち受けるのが彼。そのまま彼の顔目掛けて振り抜くは右のストレート、風を切り放たれるはこれまでのどの一撃よりも速く重い拳――そして、その一撃すら陽動にした左のボディブローと飛び出した勢いをそのままに乗せた飛び膝蹴り。それぞれ肝臓と鳩尾目掛けて放たれる二撃は、一瞬でも眼前に迫る拳に意識を傾けてしまえば回避するのも防御するのも困難だろう。

そして、その三発全てに砲弾の如き踏み込みの速度が追加されている。もしもただの素人が受けてしまえば致命傷にすら届く暴力的な一撃。だが、そこに乗せられているのは殺意でもなければ敵意でもない、純粋な好奇心と信頼のみ。

ゆっくりと、タガが外れかけようとしているのを自覚しながら、しかしもはや止まれない。止まるつもりすら、もう消えかけている。彼が、後輩くんが、宍戸豪が、その内に秘めた想いの大きさを感じたいと、そう願うほどに私の身体はアクセルを踏み込んでいく。

3ヶ月前 No.252

ライブラ @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_DBE

【グラウンド→グラウンドA/四十万 英雄】

「そうか、確かそういう力だったなお前さん」

よく水を操るのを見ていたが、そういえば流体を操る力だったなと思いだす。
じゃあこれはまだ要らねえかと幻影の傘を消す、雨に濡れたいわけではないが、降り出してからでも遅くはないと考えたからだ。
それにしても、あのラッシュを受けてもピンピンしてるとは中々見かけ通りにタフな奴だな。

「真央はな、本気も全力も出したことないんじゃねぇかな? これは俺の憶測に過ぎないが……」

風黎にのみ聞こえるように英雄はつぶやいた。英雄は薄っすらと気づきかけていた真央の持つ危うさの一端を。真央の力は自分が望むものに体を作り変える、だったか?
これだけ強くても真央は公式戦にもアリーナ戦にもあまり関心を示さない、それどころか避けている節すらある。
もし真央が本気を出せば、力だけを望んで体を最適化させてしまったらアイツ自身はどうなってしまうのか?
英雄は時々そのことを危惧する時がある、本来人間の身体は戦いに最適ではない、武器も持たない状態なら動物の方がずっと強い。
だからいつか力を求めすぎてヒトじゃなくなってしまうのではないか? という疑問が、頭を過ることがあるその時に俺は――必ず見つけて止めてやる。
俺も現状に満足せずに鍛錬積まなきゃな、そう思いながらも戦いを見逃すまいと視線を逸らさない。

「いや、俺らの出番は絶対必要になるぜ。真央の奴ギアを上げ続けてやがる。あの速さで動く真央は中々見ない。アイツは戦績が少ないから自身の本気に慣れてない可能性もある。
 それのあの表情、ちょっと”タガ”が外れかけてる、下手すりゃ宍戸は病院送りだ、それを避けるために俺も呼ばれてんだ」

”何かあっても俺が居れば大丈夫”そういう信頼を二人から受けて英雄は此処に立っている。早過ぎても遅すぎてもだめだ。
止めるなら宍戸が決定的な一撃を食らう直前に止めなければならない、加減が非常に難しい。
二人とも身体能力、主に近接格闘能力向上型だけあって止めるのは結構難しいだろう、止めるには10m以内に近づいて最大密度の幻影壁を作り出すしかなさそうだ。

>能登風黎、(形束場真央、宍戸豪)、ALL

3ヶ月前 No.253

犬後輩 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【グラウンドA/宍戸豪】

>真央(、英雄、風黎、グラウンドall)

 やはり技巧、技術は対敵に分がある。蹴り砕くつもりで叩きつけた圧縮エネルギーは直撃には至らなかった。後方へ跳んだ真央は豪にしてみれば健在そのもので、故に反撃を不発と見なした。

「……耐えたか」

 タフネスでは勝るという前提を胸中で撤回する。受ける攻撃を取捨選択して耐える豪と回避と受け流しを使い分ける真央、どちらが有利かは語るまでもない。
 小さく深呼吸をして、頭を冷やす。そうすることで畳み掛けようとする己を押し留めた。
 単純に打撃ならば避けられる。圧縮したエネルギー塊をぶつければ逸らされる。ならば次の一手は――

 高速で巡りだした思考を遮る声。
 抑えきれない興奮と隠そうともしない喜悦を含んだ声。
 あどけない顔は、いやに艶のある笑みを浮かべていた。なにか本能的なものを擽られる、そんな表情。理解し得えない、あるいはしたくない感情……その正体に気がつくのにそう時間はかからなかった。

 初手の焼き回し、否、明確な超越。刹那に満たない速さで眼前に現れた真央を前に、不可解な感情の正体を悟る。
 ――肉食獣を前にした獣。捕食者に対峙した、被食者の感情。
 恐怖などとはあえて言うまい。本能に拠る感情はより根深く、奥深いものだ。
 一方で、真央の異能は事ここに至って冒涜の限りを尽くしていた。
 至高の剽窃など序の口。死にながら生まれ、生きながらに死んでいく。それは蹂躙であり凌辱だった。生命という稀少価値、掛け替えのない只一つであるという神話を踏み躙る化外の所業。
 狂おしく呪わしい。カタチこそ人間を維持してはいるが、今の彼女は果たして桂朿場真央の怖れる人間である自分の喪失≠ナはないと誰が言えるだろう。

 僅か一秒、立ち竦む。致命的な隙が生じ、右ストレートを躱しきれない。頬骨が破砕しなかったのが奇跡のような痛烈な一撃。背後に大きく仰け反った身体を支えるべく、背後に爆発的な追い風を発生させる。
 なんという悪手。なんという愚行。追撃に自ら身を差し出す自殺行為。
 ――否。真央の背後、無風空間に運動が生じる。豪に向かって解放されたエネルギーは向かい風となって、豪から押し寄せる追い風と反発し、両者の間で爆ぜた。
 放射状に拡散される無炎の爆発に押され、豪の体が大きく後退した。

「っ……!」

 足の力で後退を止めた状態から、膝をつく。こめかみに一筋の汗が流れた。底冷えするような感覚に、先刻どれほどの窮地に晒されていたのかを再認識する。
 ……不敗神話が終焉を迎えたあの日から、鍛錬を欠かしたことはなかった。強く、もっと強く――全てを費やし、積み上げ、高みへ向けて手を伸ばしてきた。そこに甘えも弛みも一切なかったと断言できる。
 だがそれでも足りない、まだ足りない。
 遥かなる隔絶、近づくほどに遠ざかる実力差。

「ッア、ハ、――ぁ、かはっ! は、はは……ははははは……!」

 歓喜に喉が震え、気がつけば豪は笑っていた。
 足りないことが楽しい。届かないことが嬉しい。臓腑が煮える怒り、悔しさよりも喜びが溢れて止まらない。

(俺はもっと強くなれるし、先輩は俺よりずっと強い……!)

 奮い起つ。熱り立つ。勇み発つ。
 身体の奥底から力が溢れて止まらない。脳髄に薄刃を刺しこまれたような頭痛がして、相手の拳も砕けかねない勢いの右ストレートを受けた頬は痛みのあまり感覚が失せているのに。
 こんなにも力が溢れてくる。
 だから――ああ、大丈夫だ。宍戸豪はまだ戦える。まだ追いすがれる。ついてきてねと、人懐っこいようで案外一線引いてる先輩の、甘えるような言葉に全力で応えてやれる。

「どこまでだってついていってやる……そして、いつか俺があんたの先を往く! あんたが人間の頂点を再現しようが限界を越えようが関係ない! 俺は――俺は……!」

 手を天にかざす。もう片方の手と腰を落とし、かざした手に意識を集中。手を浅く開き、爪を立てるように指を曲げる。
 その内側で空間が歪曲する。不可視、不合理、不定形に渦巻き、螺旋し、渦動する架空元素。それは担い手の昂りに呼応して、甲高い劈きを響かせる。

 さあ、いざ奮い起つがいい人類叡智の剽窃者。
 これなるは何人にも視えざる嵐、風にありて風ならざるもの。
 人地征服、天の災いなれば……!

「あんたを超える――――!!!!」

 天空から虚空へ、掲げた手を掌底のように振りかざす。
 瞬間、解き放たれる極圧縮の暴嵐。それは一続きの柱のように、あるいは螺旋を描く透明な槍のように、真央めがけて直進――投擲された。

3ヶ月前 No.254

スマイル @smile390 ★iPhone=DYOJd3dXQ9

【二年校舎・空き教室/小桜莉緒】

素直、明るい、積極的……秋人にとって莉緒はそんなを印象を持たれているようだ。莉緒自身、自分がどのような性格なのか自覚しておらず、そのときにやりたいことをやりたいようにしてきただけだ。楽しいことがあれば笑うし、悲しいことがあれば泣くことだってある。今だって転校生に会えたのが嬉しくてまだ興奮気味だし、まだまだ聞きたいことだって沢山ある。あ、こういうところを素直と言うのか。自分の気持ちに正直に行動する……莉緒にとっては当たり前のことだし、これからもそうしていくつもりだ。だって自分の気持ちに嘘をついたっていい事なんかないじゃないか。いや、あるかもしれない。他人を思いやってこその自分の気持ちへの嘘ならそれはいい嘘だと思う。だからと言って他人に合わせすぎるのもどうかと思うが、少なくとも莉緒は他人を思いやっての行動に悪いことなんて一つもないと思っている。まあこの話はさておき、自分のことをそんな風に言われるのは悪い気はしなかった。自分でもそうしようと心がけている部分もあったので、他人からもそのように見えているのなら純粋に嬉しい。
しかし、その後に続いた"転校生だからね"という秋人の言葉に莉緒は引っかかった。転校生……普通なら莉緒のようにほとんどの人がどんな子がやってくるのかと気になるだろうし、楽しみにしているものだろう。しかし、この学園ではそうはならなかった。ほとんどの生徒が転校生を恐れ、避けるどころか関わろうとすらしない。それは今回、この鳩鳴学園に転入してきた生徒たちが元の学校で警察沙汰になる程の大事をやらかしていたり一歩間違うと人の命を奪ってしまう程の危険な能力を持っていたりするからだろう。秋人もそんな転入生の一人であり、簡単には人に言えないような過去があるのかもしれない。だからこそ、そんな転入生に明るく話しかけるなんて珍しい、と秋人は言っているのだろう。そう思った途端、莉緒は無意識に呟いていた。

「そんなの……」

関係ない__。
最後のは声になる前に途中で口を噤んだ。悲しげにも怒りを含んでいるようにも聞こえる声音だった。だって、だっておかしいだろう。例え過去にどんなことがあったとしてもそれが今の彼らを避ける理由にはならない。すごい怖そうな形相のおじさんが話してみたらとっても優しい人だった、なんてこともあるじゃないか。話してみれば気の合う友達にだってなれるかもしれない。もしそれでもこいつとは気が合わないとなるのであればそれは仕方ないかもしれないが、でも、外見や噂だけで人を判断するのはよくないと思う。少なくとも莉緒は今日転入生が来るのをとても楽しみにしていたし、今もやっと話すことができて嬉しいのだ。なんだかそんな莉緒の気持ちも否定されているようで莉緒は少しむっとしてしまった。それに、秋人だってこんなに優しい人じゃないか。今も片付けかけていたのに莉緒にマジックを見せてくれようとしてくれているのだ。そんな秋人を転入生だからといって避けたりする人がいると思うと、莉緒は自分のことのように悲しかった……。

莉緒は一度頭を冷やそうとふるふると軽く首を振る。らしくないことを考えてしまった。いや、莉緒も人間なのだからどんなに他人の意見を理解しようと思ってもどうしても譲れないときだってある。しかし、改めて考えてみたら転入生を避ける生徒たちだってただ誤解しているだけかもしれないし、もっと深読みすれば転入生の能力によって自分の家族を殺されていたりするのかもしれない。だとしたら転入生をよく思わない理由も頷ける……流石にそれはないと思いたいが。いやでもそれだって不本意で殺してしまったのかもしれないし……考えていたらキリがないので、莉緒は切り替えて秋人のマジックに集中することにした。秋人もそこまで深く考えずに転校生だからねと言ったのかもしれないので、今は気にしないでおこう。

秋人はコインを使ったマジックを見せてくれると言う。トランプの方は本番用だったようでもしそれも見たいのならあとで場所を教えてくれるらしい。莉緒はやった!とさっきまで考えていたことが嘘のように明るい表情に戻ると、嬉々として言った。早速マジックが始まるようで秋人はマジックを始める前の決まり文句を言ったあと、客の注意を引く完璧な動作で右掌に載せていたコインを人差し指と親指に持つ。瞬きをしてはいけないと言う秋人に莉緒はこくこくと頷くと、言われた通りにコインをじっと見つめる。このコインを今から"消す"、そう言った秋人は軽く微笑みかけてから持っていたコインを左手に握った。コインを消すとはどういうことなのだろうか。いや、そのままの意味なのは分かっているがどうやって消すと言うのか。高速移動?ワープ?多分どれも違うだろう。超能力でも何でもない。客の目の引き付け方で実際に消えてしまったかのように見せる、それがマジックというものだ。しかしそんなことは考えもしていない莉緒。これから起こることに期待を膨らませ、わくわくとも真剣とも取れるような瞳でコインから目を離すまいとコインの動きを目で追うと、今度はコインが握られているはずの秋人の左手をじっと見つめる。秋人は右手の人差し指で左手を軽く小突く。そして開かれた左手には……

「ない!!」

莉緒は驚きつつも期待通りの結果で嬉しさの滲む声を上げる。開かれた秋人の左手にコインは握られていなかったのだ。では右手に持っているのか、そう思って右手に目を向ける。しかし、それを予期していたかのように開かれた秋人の右手にもコインは握られていなかった。莉緒は左手と右手を何度も交互に見るが、やはりどちらにもコインは見当たらない。それだけでもすごいのにマジックはまだ終わりではなかった。秋人はもうコインの握られていない左手をまた握りしめると、右手と打ち合わせる動作をする。そして再び開かれた左手には……

「ある!!」

なんと、消えたはずのコインが握られていたのだ。莉緒は「なんでなんで!?」と若干腰を浮かせながらコインを見る。莉緒は一瞬も秋人の手から目を離したつもりはない。しかし、一度開かれた左手にコインはなくなり、再度閉じてから開かれた左手にコインは現れた。小突いたり打ち合わせたりしたときにコインを持ち直していたとも思えない。一体どうなっているというのか。

「すごいすごい!!なんで!?どうなったの!?」

どうだった?と尋ねる秋人に莉緒は拍手を送りながら興奮気味に言った。あまり感想にはなっていないが莉緒には驚きのほうが大きかったので許してほしい。会った時とはまた違う意味で瞳を輝かせながら莉緒は秋人を見つめる。そんな莉緒の様子は秋人が子供たちにマジックを見せたときの子供たちの反応とほとんど変わらないだろう。莉緒はこう素直に喜んだり驚いたりするところが子供っぽいのかもしれない。しかし、このマジックの仕組みを分からない人から見れば、誰だって驚くと思う。

>>倉敷秋人様


【マジックってすごいですね…私自身マジックには詳しくないのでなんでそうなったのか分からなくて驚いてます(笑)】

3ヶ月前 No.255

蟻宮 @arimiya ★y7VU2lOjOV_QAg

【 グラウンド / 校倉琴音 】

琴音の本心を剥き身のまま相手にぶつけるかのように放たれる攻撃的な言葉に対して、転校生が見せた表情はまったく予想外のものだった。自分の正直すぎる口が決して褒められたものではなく、その対象になった人間の反応が大方わかっているので、まるで少年のそれを思わせるような笑みを浮かべた顔を訝って少し眉を潜める。今までにされてきた反応とは全く逆の、琴音が予想だにしていなかったそれに内心で若干動揺してしまう。きっと表に出る程では無かったが、ドクン、と一つ心臓が大きく脈動するのを感じる。彼の自信と不遜に満ちた態度は紛い物などでは無いらしく、多少煽られようとも物ともせずに毅然とするだけの余裕があるらしい。驚きは驚いてしまったことに対する羞恥を経て、その原因となった彼への憎悪へと徐々に捻じれ変わる。
更に観察を続けていれば返ってきたのは、そんなに見つめられると好きになるぞと、そんな言葉だった。ゆっくり渦巻き始めた感情を抑え無表情に徹していたのがまたも崩れる。今度は先程とは違い、呆れと若干の敵意の篭った目で、普段よりも一層鋭い眼光を向けた。

「ハッ、ニヤけ顔で粗末な口説き文句吐く奴はタイプじゃねーな」

にぃ、と口元を歪ませてそう返す。その笑みは決して何かが面白いからとかの理由で作られたモノではなく、きっとぎらりと光る犬歯を剥き出して相手を威嚇する獣のそれに近かった。加えて煌々と輝く琥珀の瞳も、体に纏った揺らめく陽炎も、一瞬爆ぜるかの様に膨らみ、人間らしさを離れた威圧感を齎す。飄々としていて自分を強く持っている一斗にその威圧は感じる事は出来ても、それを恐れ慄くことはしないのだろうが。それ以上彼を見ていては何を言われるかと思い、最後にふん、と鼻を鳴らしてわざとらしく目線を逸らし、女子生徒たちの方を見やる。
そうこうしている内に菘の商談は進んでいたらしい。どうやら女子生徒たちの方は彼の持ちかけた話を蹴ったようだ。理由は数の有利にかまけた驕りか、はたまたその余裕を捨てる徹底を恥と思ったか。こちらの反応に関しては琴音の予想していた範囲だった。琴音も一対一なら敗北の可能性になるものを潰す事も勝利に繋がる可能性を上げる事も悉皆行うだろうが、仮にこの人数ではそれらをする事があるだろうか。状況に自身を重ねてそう考え、彼女たちの判断は何のおかしなところの無い物だと納得する。菘は『彼』との話に移るらしく、その前に琴音に対して言葉を返した。

「あー、あー、そうだろうな。勝負が面白くなるなら何でもやってくれ」

食い気味にそう言いながら、もういいと言わんばかりに片手をひらひらとさせる。彼の笑顔の仮面を貼り付けたような態度は、はっきりと感じられるものではないが、どこまで続いているか見えない深い深い穴を覗いているかのような、底知れない不気味さを感じる。恐らく彼が本心で笑っているわけでは無いのはなんとなく感じ取れるし、ここまで表情筋を自由に操られるとアンドロイドか何かと会話しているようにも思えてくる。ともかくして、先の一斗の笑顔とはまた異質の笑顔に、琴音は疎ましさを覚えた。
彼は一斗と会話をした後に彼の手元にマネークリップに纏まった金を投げ、そしてガラス製の小瓶を渡す――これがいわゆるドーピング薬、彼、紫微星菘の血だ。そのまま人ごみに歩いていき、観衆の一部と化した。一般人並みの財布しか持ち合わせていない琴音にとって、目の前で束単位に投げやられる紙幣は現実から若干乖離しているようだし、それにより更に菘に対する奇妙な不信感が募ったように感じる。学園公認という事実、自らの血を使う能力、何処かに本心を隠している底の無い不気味さ、あと一年ある学園生活ではどうにも彼を理解しきる事はできなさそうだ。
呟いた言葉に一斗が返す。悪いと口では言っているものの、その態度は全くもって悪びれていない。

「カッパ……わりーけど、アタシそういうの持ち歩かない主義なんだわ。センセーにでも言えば貸してもらえんじゃねーの」

この男は。そんな純粋な呆れの気持ちに、もはや半笑いだった。この期に及んで心配するのは勝負の結果よりも自分が雨に降られて濡れるかどうかか。思わず一斗の放った言葉を復唱してしまう。いっそすがすがしい程のふてぶてしさに、むしろ感動すら覚えそうな勢いだ。だが、残念ながら雨具はもちろん、体育用のジャージや、酷いときは筆記用具すら家に放っておく怠惰な人間はその期待には沿えなさそうだった。持ち歩かない主義なんていうものを掲げた覚えはないが、普段から持っていないのだと強調するためにそんな風に言ってみる。忘れ物の常習犯なりに物を借りる相手が決まっているらしい琴音は、教師が貸してくれるかなど全く確証もないままにそう続けた。カッパでなくとも傘で良い気もするが――なんて考え、もしかしたら彼が今朝風黎が聞いたらしいバイクのエンジン音の主なのではないかという考えに行きついたが、どうせ戦闘が終わったら彼らを拘束して尋問――もとい名前の控えと騒ぎの原因調査をする必要があるだろうから、その時にでも聞けばいいかと思い口には出さずにいた。

「さぁて、もう言っとく事はねーな?」

そう言って、ぽんと一つ手を叩く。

「ま、あっても聞かねーけど」

野次馬のざわめきは伝播するように納まっていき、あちこちから息を呑む音が聞こえる。

「じゃあ――開始」

短く合図を告げると、待ってましたと言わんばかりの歓声が沸き起こった。琴音はすぐに数歩下がって対峙する両者から距離を取り、勝負の行方を見守る傍観者の一人と化す。

>>神武一斗、紫微星菘、周辺All

3ヶ月前 No.256

猫先輩 @vtyjf ★4gCE4td3c0_QAg

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3ヶ月前 No.257

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_d25

【 グラウンドA / 能登風黎 】
「……残念だけど、そのようね」

 出番は絶対に必要になる。そう返す英雄に、状況を静観していた風黎は静かに頷いた。
 容姿を明らかに人のそれから変貌させた真央によって、目の前の戦いは、人と人との戦いから、獣と獣との殺し合いへと変貌していく。それは最早、先程真央が英雄に助力を頼み、そうなることを危惧して審判として風黎を呼ばせた理由たる状況に他ならないと言えよう。
 それが如何にレベルの高い戦いであろうとも、それがどれだけ両者が望んだ戦いであろうとも。それが、高校生の教育として認められている範疇を超えれば、一個人の感情を捨て、学園の秩序を司る生徒会役員の一人として介入せざるを得ない。

「公式戦審判として、継戦の中止を命じます。
 私はね、桂束場さん。理性を捨てた殺し合いを認めたわけじゃないのよ」

 風黎にとって幸いだったのは、雨が降ったり止んだりを繰り返したせいで、地上地下を問わずに空間に水気が満ちていること。それ故に、そうしなければいけないと考えて異能力を発動させたとしても僅かな時間も置かずに攻撃態勢へと移れるという事。
 二人の間に壁か何かお願い、と英雄に呟き。風黎は、言って聞くであろう豪の方ではなく、言葉すら最早届かないであろう真央に向けて、彼ら二人からやや離れた地点から自らの手掌を起点とした高圧放水を開始する。地下から水を吸い上げているために、校舎の屋上辺りから俯瞰すれば、白く乾いた土の色が風黎の足元から徐々に広がっていくのが分かるであろう。
 それは消防車のホースから放たれるものに近い、高圧ではあるが、鉄を切るような水圧カッターの威力とまではいかないもの。一般の人間ならば直撃すればどこかに怪我を負うし、仮にゼロ距離でそれを受ければ10mほど吹き飛ぶなどという話もあるような威力ではあるけれど、彼女の頭を冷やさせるにはそれくらいの威力がないと響かないであろう。

>>四十万英雄 、桂束場真央、宍戸豪(、神武一斗、校倉琴音、紫微星菘)、グラウンドall

【短文申し訳ありません、介入します】

3ヶ月前 No.258

犬後輩 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

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3ヶ月前 No.259

倉敷秋人 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_QAg

【 二年校舎・空き教室/倉敷秋人 】

 興奮気味に送られた盛大な拍手が、今回の小さな舞台が大成功であったことを表していた。

(ほっ……)

 どうだっただろうかと反応を伺っていたが、秋人の予想以上に彼女は反応してくれていた。
 視線誘導にも上手く乗ってくれた。
 一つ一つの所作に対して、子供のようにリアクションを取ってはしゃいでくれていた。
 ふわふわとサイドテールを跳ねさせながら驚くも莉緒の表情は常に、次に何が起こるのかという期待に満ちていた。
 マジックが終わる頃には腰を浮かせるほどの勢いで興奮しながらなんでなんで、と問いかける。
 彼女の表情は先ほどとはまた違う意味で輝いていた。

 真剣なまなざしの中にきらきらとした感動を込めながら眺めていた莉緒。
 彼女からすれば見るものすべてが宝石のように映っているのではないか。

(子供に混じってても違和感ないくらいだな。……や、流石に失礼か)

 ともあれ。
 流石に初対面というのもあり、驚いてくれるかやや不安であったが一安心だ。
 舞台でこそ人が変わったように振舞っていれど、根っ子は"ただの人間"である秋人は内心で安堵の一息を吐いた。
 ……彼女の表情と反応につられたのか、口元が緩んでいたような気もする。

「――見にきたい? ……って、言うまでもなさそうだね。はい、これ」

 鞄からルーズリーフを取り出し、シャープペンシルを走らせる。それから彼女に手渡した。
 其処に書かれていたのは学園近くの公園。時刻と、小学校が休みである土曜日に行うことも記されている。
 こんな風に誘うのも何時以来だろうか。……あの世界から離れて久しいのもあり、新鮮な気持ちだった。

「あと……」

 しばらくは感動と疑問と興奮が収まる気配はないであろう莉緒。
 少し考えて、熱がこもった瞳で見つめる彼女にコインを見せながら問いかけた。

「やってみる? ――コツさえ掴めばキミにも出来るよ」

 曇り空を吹き飛ばすような笑顔へ、"みんなには内緒だよ?"と言外に込めて。

 ――それにしても、だ。

 小桜莉緒は元気で明るく喜怒哀楽がハッキリとしている。
 短い間だが、倉敷秋人はそう彼女を捉えた。
 『見たい』という感情を包み隠すことをしなかったように、己を偽ることがない。
 故に感情の変化が読み取りやすい。それこそ、子供のように。
 だからこそ――。

(……なんだったんだろう、あれ)

 マジックをねだられた時の視線とは違う意味で印象的であった。
 秋人が"転校生だからね"、と付け加えた時に見せた表情と声音が。
 唇を震わせて何かを言おうとしていた彼女に宿っていたのは、怒りと悲しみが入り混じった感情。

>小桜莉緒

3ヶ月前 No.260

狼谷 @anima1997☆PMqTzZiUwVg ★iPhone=tU8wj1dqI7

【 三年校舎・3-B / 兵頭アキラ 】

 アキラ先輩、と呼ばれて顔をほころばせて笑った。答えは勿論「おっけー」だ。人が嬉しそうな様子でいると自分まで嬉しくなってしまうのは当然のことだろう。
 会話を交わす度に感じていたぎこちなさはだいぶなくなっていて、まだ出会って一時間も経っていないわけだが、大分打ち解けられたように思った。柘榴のように初めは素っ気ないというか不慣れな様子が伺えるのが普通で、アキラのように初対面の相手でも誰構わずいつも通りに接する性分なのが珍しい方なのだが、こういった分け隔てない接し方ゆえに人の懐に上がり込むのが得意である。勿論意図的ではなく無意識のうちにやっているので、そこにやらしさだとかわざとらしさはなく、至って自然体だ。そして上がり込んでも無駄には干渉しないのもアキラの特徴である。

 パフェとホットケーキ、最初に挙げられた二つのスイーツの名に目を輝かせる。あとに続いたハンバーグとの間に若干のタイムラグがあったのは、きっとスイーツもガッツリ系も網羅するためのシンキングタイムだったのだろう。なんて勘違いして一人で納得する。
 ハンバーグやオムライスよりはお腹が膨れないけれど、美味しいのでパフェもホットケーキも大好きだ。甘党辛党論争だと、どちらかというと辛党なのだが甘いものにも目がない。自分と同じようにお腹に手を当てる相手を見て微笑む。

「いーよー! 今年初の寄り道だ、やった! お礼のじゃなくて、友達と放課後遊びに行く、でいいんだよー。」

 ぱあっと表情を明るくさせ、両腕を使って大きく丸を作って相手の提案に賛成する。年度初めの記念すべき寄り道第一号は柘榴に決定である。普段あまり友達と寄り道をしないため、こういう放課後も新鮮でいいな、なんて。何を食べるか考えながら、床においていたリュックサックを背負って、向き直る。

「何が食べたい? 晩ご飯替わりにガッツリ食べてもいいし、晩ご飯前に軽く甘いもの食べるのでもいいよー!」

 うきうきしてしまい、つい体を左右に揺らしながら返答を待った。運動した後は、普段でも美味しい食べ物がさらに美味しくなるから嬉しい。こればかりは、先程のチューリップ三人組に感謝すべきか。もし廊下で鉢合わせたら、そのときは彼等も誘おうか、なんて実際はそんなのできないだろうけれど、髪色鮮やかな五人で一緒のお店で食べている光景を思い浮かべては、ふふと小さく笑った。

>>前桐柘榴、ALL

3ヶ月前 No.261

スマイル @smile390 ★iPhone=DYOJd3dXQ9

【二年校舎・空き教室/小桜莉緒】

秋人は鞄からルーズリーフを取り出し、何かを記すと莉緒に手渡した。見ると、本番のマジックを行う場所と日付、それから時間が書かれていた。

「わぁー!ありがとう!楽しみにしてるね!」

莉緒はまるでプレゼントでも貰ったかのように嬉しそうにしながらそう言うと、なくさないようにバッグにしまう。
トランプのマジックはどんなことをするのだろう。今見せてくれたコインのマジックも驚いたし、本当にすごかった。トランプも消えたりするのだろうか。トランプのマジックと聞くと、いろんな種類があった気がする。トランプを別の場所に移動させたりトランプの数字を言い当てたり……一体どれをやってくれるのだろうか。
莉緒は次また見れるマジックがどんなものなのか想像し、期待を胸に膨らます。莉緒はトランプのマジックをテレビで見たことはあっても仕組みまでは知らない。だからきっと知っているマジックだったとしても文句なしの反応をすることだろう。

あと、と言う秋人に莉緒は「?」と首を傾げる。そして続いた秋人の言葉にぱああと顔を輝かせた。

「やれるの!?」

秋人はたった今秋人が見せてくれたコインのマジックを莉緒にもできると言う。一瞬でコインを消したり出したりしたアレを莉緒にもできるというのか。

「やる!やりたい!教えて!」

莉緒は身を乗り出すどころか立ち上がって言った。今日何度目かも分からないきらきらとした瞳で秋人を見る。さっきのマジックを莉緒もできる……考えただけでわくわくしてしまう。

>>倉敷秋人

【バイト前に急いで書きました!短くてすいません…】

3ヶ月前 No.262

神武一斗 @arthur ★iPhone=9rzEuLZJgT

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3ヶ月前 No.263

雪鹿 @class ★Android=42zyboh5vZ

【三年校舎・3-B/前桐 柘榴】

表情を明るくして快諾してくれたアキラ先輩は手で大きく丸を作っていていて、少しだけ微笑ましく思ったのも束の間。その後に続けられた言葉に思わず、目を真ん丸にして驚いた柘榴はそのまま数秒ほど固まった。例えるなら、処理が間に合わずに固まってしまったパソコンだとか、そんな感じでピタリとも動けなかった。それがようやく動き出したかと思うと力なくふらっと倒れかけたが、後ろにあった扉に頭をぶつけた後にもたれ掛かるような形になってギリギリで倒れずに済んだ。多少頭が痛かったが、それが気にならない位で正にそれどころじゃないんだ。

「友達、本当に俺も友達で良いのか?きっと迷惑を掛けるし、良いこと無いかもしれないから……その、オススメはしない。」

腕と袖でほころんだ口元を抑えて目線をアキラから逸らした彼の顔は照れも嬉しさも入り混じってほんのりと朱に染めあがっていて、何時もの無気力とは違って弱々しく紡がれた言葉は、負い目を感じていると言うか、どこかで一線を引かれていて何かを怖がってるように感じられるだろう。それでも強引に線の中から押し出す感じでは無くて、そっと腕押しする程度の少し頑張れば押し返せそうな程の細やかで優しすぎる位の彼らしいものであった。それも普通の「友達」という言葉の重みがそこまで無いことを知っているからこそ、その程度で済んでいる、という面も確かにあるのだが。
だって、本当はそうなったら良いのに、って心の中で思ってしまってるんだ。きっと、責任ある立場なら尚更に俺は迷惑になるって事は分かってる。それなのに「あと少しだけ」が続いて「今だけでも」とか思ってしまいそうになってて……自分でも、その感情が抑えきれてないのが分かるし、友達になれるなら是非ともなりたい――――勿論、それが良くない事はよく分かってる。でも、アキラ先輩ならあの時のオレに勝てるかもしれないし、一年俺が耐える事ができれば、きっと良い思い出になる。

「ええと、そうだな。本当は作れたら良かったんだが……その、クレープとか食べたい。」

顔の赤みを若干残して相変わらず口元を腕で隠したままに声だけは1つ咳をして戻した彼は、材料と場所さえあれば何でも作れるのに、と家庭科室を閉めてきてしまった事を思い出して何を選ぼうか、悩んだ末に甘い物も塩辛い物もあるクレープを思い出して口にしながら、口元を袖口で隠したままにちょっぴり照れ臭そうに笑う。こんな風に笑ったのは久し振りだから、とてもじゃないけどこんな顔恥ずかしくて見せられない。いつもはこんな位じゃ表情がどうこうしないんだが……友達をどうにもまだ引き摺ってるらしい。流石に俺には衝撃が強すぎるんだ、それは。
もうすぐ外に出る事になるから、と壁にもたれ掛かるのを止めて自分の足でしっかりと立ち上がった。一応、まだ近くにチューリップ組が居るかもしれないので、ついでに耳を澄ませて外の音を拾おうとしたが、それらしい声も音も聞こえなかった。また鬼ごっこするのも楽しいかもしれないけど、腹ごしらえを先に済ませてからでもいいと思う。それくらいは待ってくれる……だろう、多分。でも、街では上手く逃げられるだろうか?袋小路になってる所とか、後で確認しておこう。

「あ、その……この辺よく分からなくてな。良かったら、オススメの場所教えてくれないか?」

鬼ごっこする時のために、と考えを巡らせている内にふと、引っ越してきたばかりで土地勘が無い事に気付いた彼は申し訳なさそうに目を伏せて苦笑いを浮かべていた。流石に口元の妙な緩みも収まったと思ったのか、顔を隠していた手は所在なさげに首の後ろ辺りを抑えている。とは言え、彼も結構乗り気な辺り、放課後に友達と寄り道が余程楽しみなのだろう。なにせ、彼の中では友達と何処かに寄り道をするだなんて、昨日までは絵空事だったのだから。

>兵頭 アキラ様、all

3ヶ月前 No.264

倉敷秋人 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_QAg

【 二年校舎・空き教室/倉敷秋人 】

「ん、楽しみにしてて」

 さて――莉緒のはしゃぎぶりは相変わらずだ。
 秋人が手渡した紙を丁寧に折り畳んでバッグにしまった彼女の胸は、期待でいっぱいに膨らんでいることだろう。
 そんな彼女の姿に、やはり口元は緩みっぱなしだ。
 しかし、そこには何かを懐かしむような感情も含まれている。しかし、もう取り戻すことは出来ないものを見る目で。
 子供のように笑って感動を体いっぱいに示す彼女に重なるのは、亡くしてきた己の姿なのかもしれない。

 ……よそう。
 思い出を振り返ったところで、楽しい気分に水を差すだけだ。

「うん、――もう一度やるから見ててね」

 マジックの種明かしをするというと、再び莉緒の表情に花が咲いた。
 ぱぁっと笑顔を輝かせ、身を乗りだすあまり、椅子から立ち上がる莉緒。
 「危ないから落ち着いて」となだめてから、先ほどのコインマジックを再演してみせる。

 左手を握り、右手でこづき、コインを"消し"、つつき、出現させる。
 一連の工程をなぞったところで、右手でこづく段階に持ってきた。

「ほら、ここ」

 視線だけで、人差し指を立てた右手を示す。それから手首の角度を変えてみせた。
 その場所、中指の第一関節と第二関節の間にコインがしっかりと挟まっている。
 蓋を開ければ何てことはない。種明かしとはこれであり――小手先の技、とでもいうべきだろう。

「横から見ると見えちゃうんだけど、正面から見ると――ほら、コインが"無い"ように見えるんだ。
 ウィルソンパームって言うんだけどね。これを素早くやると、一瞬で消えて一瞬で現れたように"見せかける"ことが出来る」
「裏から見える位置に来て。まずはゆっくり一緒にやってみようか」

 はい、と莉緒にコインを手渡し、彼女に見える位置でゆっくりとやってみせる。
 一つ一つの工程を確認するようにしながら。

>小桜莉緒

3ヶ月前 No.265

ライブラ @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_DBE

【グラウンド→グラウンドA/四十万 英雄】

「あいよ」

熱を上げ続ける戦いの中で風黎が下した判断は戦いの中止だった。
英雄としてはその決定に異論はない、むしろ止め時を窺っていたほどだ。
自分が濡れるのもかまわずに英雄は猛然と駆け出して二人の間に割って入った。

「”幻影壁”」

二人の間に縦横5mほどの壁を作り出して二人が見える位置に移動する、この壁は英雄が使える全ての密度を詰め込んでいる。
本気の真央でも豪でも破れないと確信できるほどの強度だ、問題は真央の方だが、宍戸の怪我も結構きつそうだ。

「熱くなってるところ悪いな二人とも、これ以上は流石に俺も看過できねえ」

ここいらが潮時だ、と付け加えて英雄は壁の維持に努める、この状況では宍戸の方に向かって肩でも貸してやりたいところだがまだ真央が止まっている所を確認できていない。
考えたくないが壁を越えて追い打ちにでも向かわれた場合は何が何でも英雄が止めなければならない。

「ナイスファイトだったぜ宍戸。つらいだろうがもう少しだけ待ってろ、直ぐに保健室に連れて行ってやるからな」

豪を保健室に連れて行くのは完全に安全が約束された後だ、英雄としては宍戸豪がここまで真央を熱くさせることができる程に力を付けていたことが驚きだった。
一年の中でも屈指の実力者だろうと英雄は彼に関する評価を改めた、油断なく真央の方を向きながらも英雄はこの戦いの後の事を考え始めていた。

>能登風黎、形束場真央、宍戸豪、ALL

3ヶ月前 No.266

@siromi ★M4WUxX33bd_Twa

【図書室→移動中/五木部 理恵子】

『これで……これで!』

皆さんこんにちは、初めまして。五木部理恵子です。転校して来て、早くも玄武戦と言うモノを耳にしました。それは所謂タイトル戦、と言うモノらしく。その詳細から、運が良ければ自分に有利な設定なのかもしれません。と言う事で、先程まで図書室へ訪れていた自分は、画像や写真の少ない書物を委員会の方にお願いし、貸していただきました。ゴ〇ブリを知る事はいわば己を知る事。浅はかな知識だけではこの力は活かしきれないのです!心の声と連動した片手は、ギュッと空気を鷲掴み、その眼光は些か猛々しく。しかし未来の自分が勝利する様に期待し煌めき揺れた。

ふんすっと気合に鼻を鳴らそうと空気を勢いよく吸えば、女子生徒や女教師の香水の残り香や男性特有の男臭さ。そして様々な柔軟剤の匂いや歯磨き粉の匂い、通り過ぎてゆく先生のキツイ口臭が交わり、とてつもなくカオスな香りが脳内を汚染し、鼻を鳴らす代わりに喉から咳と吐き気が込み上げさせられる。空けた片手で口元を力強く鷲掴み、潤んだ目を皺が寄るほどに硬く閉じた。青く染まった顔からは冷や汗が滲み、げほっ、げほっ。ぉえ゛。お゛ぉ゛え゛。しかし嘔吐物を出す事はありません。出すわけにはいきません。1年C組のゴ〇ブリ、それ以上の汚名を重ねるわけにはいかないのです!主に自分のメンタルが耐えてくれるとは思えませんから…。せめて汚名を返上…いえ!玄武のゴ〇ブリにランクアップしたいのです!2億年以上生き抜いた地球最強の生物の力、とくと見せてさしあげなければ!しかしそれは、あくまで自分が自分の異能力を100%熟知し、その100%を発揮できるかにかかっているわけで…。勢いづいた使命感と決意は、1つの大きな不安により一瞬にして崩れ去った。先程まで若干強張るほどに張りきりを見せていた表情からは一転し、眉や口元は不安に歪み、瞳は不安定に揺れ動く。意欲に満ちた心の隅には不安に濁った色が溜まり、時折表情として滴り落ちた。

幾多のアニメや漫画を見てきた。そのような正念場では大きなプレッシャーが付き物であると言う事は、知識としてだけだが知っている。自分は、本当にそのプレッシャーすら乗り越えられる主人公になれるのだろうか?そんな逞しい精神力が自分にあるとは、到底思えなかったのだ。


にしても…息を沢山吸っただけでこの有様では、優勝なんて程遠いでしょう。此処からはあくまで自分の考察ですが、これほど沢山の異能力者を受け入れる上、異能力を駆使し問題を起こしたとされる人物まで請け負う学園です。きっとそれは、異能力者たちをいざと言う時押し潰す自信がある。きっとそれ程の財力と武力を持っているのでしょう。自分はそう思います。もしそれが現実であったなら、嗅覚と味覚を調整できる装置が欲しいものです。
まるで工業地帯のような悍ましいマスクから、女児向けアニメのようなファンシーなマスク、少年が喜びそうなライダー系マスクなどを脳内に浮かべてはまた次のデザインを浮かばせる。自分はこのひとときが大好きだ。だって、自分だけの「特別」なモノは、誰だってワクワクするでしょう?
まぁ…自分は異能力が発覚した時煌めきもワクワクも有りませんでしたが…。

何はともあれ、早く自分は自分について知らねばなりません。
さてさてさーて、これはいったい何処で読むとしましょうか。この、「ゴ〇ブリ大辞典(文章のみVer)」を!!

>>ALLさん

【許可を下していただき有難うございます。皆様、これから本体共々仲良くしていただければ幸いです。宜しくお願い致します】

3ヶ月前 No.267

猫先輩 @vtyjf ★4gCE4td3c0_08J

【グラウンドA/桂朿場 真央】

>>宍戸豪、四十万英雄、能登風黎

瞳を覗き込む。そこに写り込んだ己と、そこに過る綯い交ぜになった感情。視線が交錯し、直後捉えた肉を断つ感触に意識が引き戻される。舞い上がる水が雨模様の空より一足先に雨を降らし、同時に後輩くんが吹き飛んでいく。

割り込む影、投げかけられる言葉。壁により遮られた視界。それが意味することは理解している――だが、

「ウウゥゥゥゥゥ――ッ!!」

半透明を通り過ぎて白い不透明な壁。その中心に飛び込むように右腕を突き立てる。爪が中ほどまでめり込み、しかしその壁はしっかりと爪を咥え込み決して砕けようとはしない。

「――ッ」

ならば、とばかりに爪を支えに身体を上へ――同時に右の手が人型に戻れば、残るのは上へと向かうエネルギーだけだ。そのまま登頂、壁を乗り越えるように右腕で壁の頂上へと手をかけ、そのまま向こう側へ。

「グ、ゥ……」

五メートルの高さを飛び降りて、着地の勢いを前転の受け身で殺して立ち上がる。着地する瞬間、獣のソレはただの人の脚へ。右手も、左手も、もはや力ない少女のものへと変化している。

「――後輩くんっ!!」

全身が痛み、発熱している。目眩も酷い、駆ける脚が重くてもどかしい、一歩ごとに倦怠感が身体を支配する。だが、伝えねばならない、どうしても、この想いを。

その執念にも似た想いが、倦怠感を振り払う。一刻も早くと身体に鞭打ち、そして、ついに倒れ伏す彼のもとへとたどり着く。

彼の言葉に、応えなければ――

「――犬キャラの自覚あったんだ!?」

盛大にツッコんだ。それはもう、盛大に。決して浅くない傷を負っているのにもかかわらず、律儀にしゃがみ込んで軽く後輩くんの頭をはたきながらツッコんだ。

「いやいや、今結構冷静じゃないよ、だって夢中になってたらお気に入りのスニーカー破れちゃってるし制服もワイルドノースリーブだし生脚魅惑の先輩ちゃんになってるしで」

まくしたてるように、あるいは何かを隠すように答えながら乱暴に後輩くんの頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。火照った頬を打つ雨が心地良い、この熱は決して戦闘の興奮によるものだけ、ではないだろう。あるいは、まくしたてているのもそれを遠ざける為であるのかもしれない。

――だって、後輩くんに素直にお礼を言うなんてなんだか恥ずかしいし。

今胸中を答えが過ったような気がしたが、努めて無視(スルー)する。

「それにしても後輩くんも強くなったねぇ、これは先輩合格点あげちゃおうかなぁ!!いやー、私は後輩くんが成長してくれて嬉しい、これも全部私のおかげだね、うんうん」

というか、と言葉を区切って、傷口を覗き込む。

「うわー、結構えぐい傷だねぇ……これは早く保健室に行かないと――そろそろ気絶した?もう気絶したよね?」

ぐったりと、意識が朦朧としかけている後輩くんに確かめるように首を傾げ、そのまま顔を近づける。

「気絶してると思うし、これは独り言だからね――ありがと、豪」

後輩くんの耳に口を寄せ、呟く。こんなにも私に構ってくれて、信じてくれて、挑んでくれて、ありがとう、と。

後輩くんの意識の有無も確かめず、そのまま弾かれたように立ち上がり、背後の二人へ振り返る。

「いやー、面倒かけてごめんねぇ。ヒデ君もかざりんも、心配させちゃったみたいだし」

てへへ、と無事な左の手で頭を掻く。未だ見るのも恐ろしい傷を負った右腕からはなんだか意識したくないほどの激痛の信号が脳みそへと届いているが、必死に完璧綺麗で健常な右腕をイメージしながらやり過ごす。右腕南庭痛くない、痛くない、痛くない、と、自己暗示をかけていなければやっていけないし、私の場合傷を意識しないのが一番の治療だ。

「面倒ついでに、後輩くん運ぶの手伝ってくれる?私もねー、結構疲れてると言うか、正直このまま大の字になって寝転がりたいくらいなんだよね」

久々に本気になりかけちゃった……てへっ、ともじもじしながら舌を出す。二人にはテンションが上った姿を見られていただろうし、妙に気恥ずかしい。興奮のまま妙に格好を付けたことをしてしまった事を両親に目撃されたときのような感覚だろうか、兎も角色々とごまかしたい気分だった。

【この次に各自レスを行って頂き、保健室へ行ったのち解散したという流れでよろしいでしょうか?>>犬後輩様、ライブラ様、有栖川様】

3ヶ月前 No.268

蟻宮 @arimiya ★y7VU2lOjOV_08J

【 グラウンド / 校倉琴音 】

「それこそ月並みだっつの。転校初日でそんなツテあんのか? 言っとくけど、色んな意味でアタシの部屋はパスだかんな」

捻った口説き文句として著名な文学家の言葉を引用してくる辺りに、彼が単なる「よくいる不良像」をなぞっている訳ではなく、むしろそこからかけ離れている事を改めて思い知る。善悪と賢愚には何の関係も無い、とは誰の言葉だったか。少なくともこの分類に彼を当て嵌めるならば悪でありそして賢なのだろう。琴音が喧嘩に明け暮れていた時も、戦う相手として一番面倒で苦手なのは知恵のある相手だった。用意周到で、小賢しく、油断しているとすぐに足元を掬われる。生徒会に敵対する可能性を考えればそれだけで重く警戒する理由になるだろう。改めて彼の顔は脳裏に刻んでおく事に決める。後で生徒会にもこの騒動を詳細に報告する必要もあるだろう。
琴音はその有名な台詞をありふれていると一蹴し、見えない月を見て項垂れた彼に追い打ちの様に言って笑ってみせる。実際月など毫も出ていないどころか悪天極まる空の下でそんな事を言われてみたところで、彼が呟かなければそれと同じ事を言っていただろう。
付け加えて、学生寮に上がり込むという台詞にも一言返す。転校早々そんな事を言うくらいだから、彼の何処からか溢れるカリスマ性に惹かれた同族が集まってでもきたのだろうか。しかし彼の性格的にはそんな事が確実にあるとは考えにくいので、苦笑交じりに率直にそう聞いてみた。何を思ったのか自分の部屋――正確には同棲しているので琴音一人の物ではなく、更にそれも「色んな意味」に含まれているのだが――に招き入れる事は出来ないと断る。流石に初対面の女子生徒の部屋に上がり込もうなんて気は起こさないだろうと考えた上で茶化して言っているのだろうが、その割には据わった眼で彼を凝視している辺り、本気の釘刺しの意も含まれているのだろうか。

「……へぇ、やるじゃねーの」

彼が開始の合図と同時に女子生徒の取り巻きの一人に鋭く肉薄して拳を叩き込んだのを見て、余裕綽々に不敵な笑みを浮かべていたものの、戦闘が目まぐるしく進むのに合わせて琴音の顔から笑顔は消え、睨みつけるような真顔ともまた違う真剣な表情になっていく。女子生徒が異能力で形成した氷の壁が一瞬にして砕け散ったのを見て、更に眉間にしわが寄る。
琴音が自分の顔の険しさに気づく頃には、既に残る生徒が投降した後だった。琴音は一瞬状況が呑み込めなかったのか呆然としたものの、ハッとしてすぐに止めの合図を出す。

「――それまで、だな。おい、保健委員か誰かコイツらを運んで治療してやれ。怪我してねーアンタ達三人、それに転校生。アンタにもちょっと付き合ってもらう。当事者の口から事の顛末を確認して、後はクラスと名前を控えないといけねーからな」

周囲の生徒に素早く指示を飛ばすと、既に騒ぎを聞きつけて待機していたらしい保健委員の生徒が怪我人に近寄り、数人の助けを借りながら女子生徒たちを保健室へ連れて行った。回復能力を持った養護教諭の手にかかれば、安静にすればあの程度の怪我なら傷跡も残さずに治癒できるだろう。多分風黎が見に行った方も怪我一つなく終わりましたなんて事も無いだろうし、今日は保健室は大忙しだな、なんてクスリと独り笑う。
降参して青い顔で俯いている三人の生徒と転校生に声をかけた後、三人の内一人を少し引き離してこの騒ぎの経緯を説明させる。先に聞いていた事実と相違が無いかを確認し、ついでに七人全員のクラスと名前を言わせた。念のために同じ作業をもう一人にも行い、特に口裏合わせだとかも無さそうだと判断して三人を解放した。
さて、と言わんばかりに彼の方に向き直る。

「じゃあアンタの番だ、テンコーセー。名前とクラスと、こんな騒ぎ起こした理由を言ってもらおうか。ったく、多少有名な奴相手に一対七で勝っちまうわ、学園一の『人気者』の紫微星菘に金出させちまうわ……あークソ、余裕こいて風黎に任せろなんて言ったのは間違いだったな……」

きっと明日にはもう彼の名は全校に広がり、良くも悪くも学園の著名人の輪に仲間入りするだろう。転校生に派手な動きをさせたくない生徒会としては非常に望ましくない結果だ。特に彼の様に味方を作るタイプ、それも此処のビッグネームとまで親しくしているとなると、仮に彼が生徒会に真っ向から対立した時に非常に大きな脅威となりうる。監督をした自分に後で生徒会長からの尋問タイムがあると思うと胃が痛い。
すっかり体から熱は抜け、瞳の黄金の輝きも纏う陽炎も消え去ってしまっている。熱を帯びた大きなため息を吐き、彼の返答を書き取ろうとメモ帳とペンを構えた。

>>神武一斗、紫微星菘、周辺All

3ヶ月前 No.269

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_yO9

【 グラウンド@→グラウンドの端っこ / 紫微星菘 】

 途中から飛び入り参加して来る子がいるかも。そう考えたのは数十秒前の自分。しかし杞憂だった。あまりにも決着がつくのが早すぎて、こんあ戦いには誰だって飛び入りなんぞできやしない。あまりにも鮮やかな一斗の勝利に驚愕と興奮が飛び交う。大観衆の心を一瞬にして鷲掴んだ不良少年の闘争。それが華やかであればあるほど、恰好良ければ良いほど、自然と菘の血液の評価にも繋がる。菘の血を飲んだからといって、誰だってあそこまでの戦いができるわけではないけれど。それでも人々は考える。原因の一端は紫微星菘の血液にある、と。摂取すれば自分も彼のように戦えるかもしれないと。遥か高みではない、手の届く範囲にある『憧れ』。それがすぐさま手に入るかもしれないという『誘惑』を湛えた血液。当然、この流れならば菘の商売は繁盛に繁盛した。戦の興奮冷めやらぬ内に菘の元には数多の生徒が殺到し、皆こぞって財布を開く。この機に乗じて血液の値段をさらっと上げたというのに、それを気にした様子もなく、何人もの生徒たちが満足げな顔で血液の満ちた小瓶を持ち帰る。この余波が、熱気が、話題性が。もっともっとたくさんの生徒にこれから広まっていく。どうやら払った二十万円は、思ったより早くにそれを上回る額として回収できそうだ。
 琴音が勝負の終了を宣言する声をBGMに、菘は真緑の目をすっと細める。唇には笑み。心には歓喜と落胆。ああ、勿体無い。とっても自分好みの強さを持った男だというのに、どうして人を侍らせて喜んでくれるタイプではないのだろう。そこさえクリアしてくれていれば、もっともっと媚び諂って阿り傅き跪いたというのに。本当に惜しくて堪らない。批判を買ったって気にせず我が道を歩めるし図にも乗れる精神的タフネス、それを邪魔する者が現れたとて返り討ちにできるだけの実力。この二つが揃っていたとしても、菘を侍らせて庇護下においてくれる人物でなければ、『紫微星菘』は彼に下れないのだ。性能はめちゃくちゃ良いけど自分のスマホのメーカーでは使えない充電器でも見るような名残惜しげな眼差しを一斗に向けつつ、その他の大勢には相変わらず妙な色気と表裏一体の軽薄さで接客を続ける。嗚呼、もう、本当に惜しいなあ!

「――いやあ、お疲れ様! これでその二十万円は一斗くんのモノだ。飲む買う打つでもその他の何でも、どうぞお好きなように使っちゃって。……校倉琴音生徒会庶務もお疲れ様です。先輩も、ご入り用の際には是非とも俺のことを使って下さいね? 紫微星菘の身体は、お金を払ってくれる人と俺が媚びるに値する強者の物ですから」

 直前までの惜しむような眼差しを一気に切り上げ、一斗と琴音にそれぞれ声だけ掛けた後、「それではまた今度!」の挨拶と共にグラウンドから歩きで離れていく菘。ついでに彼の血液を買い求める数多の客たちを引きつれて。身体が血液を指すのはいつものことで、麝香の匂いでも漂って来そうな妙な妖しさのある流し目なんて振り返りざまに残して行くのもいつものことだ。思わせぶりと意味深はこいつの常套手段。脳に抜ける魅惑のアルトは、そういう風になるようにと意識して出せば麻薬にも似た中毒性でするりと人の体内に侵入し根付く。惜しむらくは、そんな小手先のハニートラップ未満など一斗にも琴音にも意味を成さないこと。効かないことを承知の上で繰り出すテンプテーションは、言うなれば別れの挨拶代わりのジョークだ。そこに悪意は無い。込められているのは彼と彼女への好意と、そして彼も彼女も『強者』であれど『自分を安堵させてくれる強者』でないことへの失意。少々複雑な感情を込めた挙動には、強かさと弱々しさがごっちゃになった妙な艶があった。

「さて、遅くなったけど当初の予定通りに次の転校生に会いに行こう。……その前に、お客さん捌いちゃわないとね」

 砂糖菓子にたかるアリのようにぞろぞろと周囲を取り囲む客たちを見回し、人差し指を唇に当ててうっそり微笑む。傾げた小首と同時に揺れた髪は、曇天の下でも月明かりを受けたような金色に輝いた。ミルクチョコレートを思わせる甘ったるい声で「そこに並んで」と゛お願い/命令”すれば、精神的にも一斗や琴音ほど強者でない彼ら彼女らは言った通りに動いてくれる。五分。それでこの人数の客を捌き切り、それから数え歌で決めた次に会う予定の転校生に青森土産を手渡し、有益な情報を交換するなり顔を売るなりする。その予定を敢行するために、菘はグラウンドの端で群衆に取り囲まれながら威勢良く身売りならぬ血売りの第二ラウンドをおっ始めるのだった。

>グラウンド@ALL様

【本当はここから再び他の転校生に絡みに行く予定でしたが、第三章の内容が発表されたということはそろそろ場面転換っぽいので今章での書き込みはこれで切り上げます。皆さま絡みありがとうございました!】

3ヶ月前 No.270

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_GOx

【 グラウンドA / 能登風黎 】
 真央に向けてはなった水流は、しかし彼女に届くことは無く。それは本来ならば彼女と戦っている筈の豪の異能によって、遥か上空へと逸らされた。敢えて反省点を述べるとするならば、彼の異能力の事を一切計算に入れていなかったという事だ。彼が妨害とも受け取れるようなことをすると思っていなかったというのが、風黎としては正直なところだ。ただ、それを想定していたとしても、彼の妨害を全く受けずに彼女を止められたかといわれると怪しい。
 巻き上げられた水がまるで雨のように降りしきる中、風黎は黙してその場にいる他の三人のやり取りを聞いていた。その理由は一つ、恐らく真央と豪の置かれている状況が初めての物ではないらしいという事を直感として悟っていたからである。彼らの関係性も決して他人事ではないし、その必要が出てくるまでは二人の世界をそのままにしておくのもありだろう、という理由で、真央から声を掛けられるまでは特に言葉を発することはなかった。

「お安い御用、とはいかなかったけどね。また呼ばれたら行くから、気軽に呼んでよ」

 面倒をかけた、と謝罪する真央に対し、そう答える。仕事だから、とか、当然のことをしたまで、とか、そういう受け答えでもよかったのだろうけれど、こういう時もそうでは何となく機械的に思われる。生徒会役員としての返答よりはクラスメートとしての答えの方がこの場合は良いだろう、という意図で、かなりフランクな言い方をしてみた。

「んー、となると担架の類があると助かるかな?」

 豪を抱え上げるよりは担架に寝かせて運ぶ方がよいだろうと考えた風黎は、そういうの作れるっけ、と、英雄に問いかける。先ほど傘を作って見せた彼であったが、より形が単純だとは言え大きさが人の身体のそれを超えるものまで作れるのか・またそれに人一人を載せた状態でずっと維持できるのかという事を知らず、出来るのならば彼に頼りたいと思っての事である。

>>四十万英雄 、桂束場真央、宍戸豪(、神武一斗、校倉琴音、紫微星菘)、グラウンドall


【自分はその流れで問題ありませんー】
>>猫先輩様

3ヶ月前 No.271

スマイル @smile390 ★iPhone=DYOJd3dXQ9

【二年校舎・空き教室/小桜莉緒】

 莉緒を見る秋人の表情は、心なしか最初に会ったときよりも和らいでいるように見える。いや、別に最初の秋人の表情が険しかったとかそういうわけではないのだが、莉緒ばかりが楽しんでいるのではなく、秋人も少しでもこの放課後の時間を楽しいと思っていてくれていたらいいな、なんて。しかし、その表情には何か別の感情も含まれているような気がした。まるでずっと遠くを見ているような、過去を思い出しているような、そんな表情だ。莉緒は、やはり秋人は過去に何かあったのかもしれないと思った。それが何なのか莉緒には分からない。分からないけれど、莉緒でも力になれることがあるなら話を聞き、助けになりたい……そう思う。しかし、そう簡単に話せる内容でもないのかもしれない。それに莉緒だって過去のことをあまり積極的に話したいとは思わない。聞かれたら場合によっては話すだろうが、楽しい気分にはなれないだろう。莉緒の場合、それを知られることで周りの人が自分を避けるようになるのではないか、とかそういうのではない。ただ、あまりいい思い出ではないのでできるだけ思い出したくないのだ。普段明るい莉緒だが、過去にあったことを完全に乗り越えたわけではない。今だってときどき思う。どうしてあんなことをしてしまったのだろう、と。幸い死人は出なかったものの、相手に大怪我をさせてしまったことに変わりはない。一歩間違えれば、殺していたということも。しかし、その記憶を忘れたいとは思っていない。自分でやってしまったことだ。これからもちゃんと過去に向き合い、背負って生きていかなければならないと莉緒は思う。

「はーい!」

 もう一度やるから見ててね、そう言う秋人に莉緒はなるべく明るく聞こえるように意識して返事をして着席した。秋人が何を考えていたかは分からないが、莉緒につられて元気になってくれたらと思ったのだ。先程から明るく話しているのであまり変わりがないかもしれないが。
 莉緒は秋人のマジックを見ながら考えていた。秋人の過去に何があったのかは分からない。しかし秋人は秋人だ。過去に何があったのだろうと莉緒は気にしない。莉緒にとって今目の前にいる秋人が今の秋人、莉緒の知っている秋人なのだからそれでいいと思う。でもいつか……いつか話してくれる日がきたらいいな……そう思った。

 秋人は先程と同じ工程でマジックを行う。一度見たにも関わらず消えたり現れたりするたびに莉緒はいちいち「なんでーっ?」とか「やっぱりある…!」とか呟いていた。そして秋人は右手でコインがあるはずの左手を小突く段階まで戻ると、右手首の角度を変える。莉緒は「あ!」と声を上げた。さっきの角度からでは見えなかったが、右手の中指にコインが挟まれていたのだ。つまり左手に入れたように見せかけて、実は右手に持ったままだったということ。こういうのをウィルソンパームというらしい。
 見える位置に来て、と言われたので莉緒は椅子を秋人の正面から横隣りに移動させて座ると、秋人の手元を覗き込んだ。相手との顔の距離は身長差のおかげでそこまで近くはないが肩などは密着してしまっているので、恋愛経験のない男子ならときめくのではないだろうか。勿論莉緒は全く意識せずの行動だが。
 莉緒は秋人からコインを受け取るとゆっくりとやって見せる秋人の手元を真剣に見る。そして莉緒もやってみようと試みるが実際やろうとするとなかなか上手くいかない。左手に入れたように見せかけて右手に持ったままというのが簡単そうで意外と難しいのだ。それでも何度かコインを落としながらも練習を重ねるうちに中指の間に挟むことはできるようになった。

「見て!できた!」

 莉緒は自慢げにしっかりとコインを中指に挟んだ右手を掲げて言った。

 それからも練習を続け、莉緒は一応一通りできるようになった。とは言っても秋人の速さと比べると何倍も遅く、だいぶ不自然なのだが。それでも莉緒はとても嬉しそうで「できたー!!」と大喜び。「今度会長にも見せてあげよ〜♪」とか言っている。なぜ生徒会長が出てきたのかというと莉緒にとって会長は割と何でもできるイメージがあったので、会長のできないことをやって見せてぎゃふんと言わせてみたい、という理由だ。しかし、やって見せたとしても莉緒のことなのでほぼ確実に隙間からコインが見えていたりしてコインの場所がバレバレになってしまうというのがオチだろう。それに会長がマジックまで得意、という可能性もある。まあそこは会長の優しさに期待するしかない。もし会長が隙間から覗くコインを見なかったフリをしてくれていたとしても莉緒は「すごいでしょー!」と、ドヤ顔していることだろう。

>>倉敷秋人様


【Episode3の話も出てきたようなので練習過程は飛ばしておきました!あとは様子を見ながら絡みを切るタイミングを考えていようと思います!】

3ヶ月前 No.272

倉敷秋人 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_08J

【 二年校舎・空き教室/倉敷秋人 】

 将来を期待されていた。

 普通だけど、少し他の人には出来ない得意なことが出来る両親の下に生まれた。
 そして、両親のしていることに憧れた、両親の仕事に憧れた。
 そして憧れたからこそ練習と研鑽を積み重ね、小学校に上がる頃には皆の注目を集める存在となっていた。
 中学校に上がれば、知らない人達の前でも披露できるほどの腕が身についていた。
 舞台に立った時に聞こえた大歓声は、まるで昨日のことのように思い出せる。

 ずっと、平凡だと思っていた。
 昨日と同じ今日が続き、明日も今日と同じだと思っていた。

 ■■切断マ■■クの■演の際に■た血と■■を目の当たりにするまでは。
 自分に■■があって、■■は齎しても■■は齎さないことに気■■までは。

「……ん、上手いじゃないか」

 莉緒が練習を始めて十分ほど経過したくらいには、工程の基礎が固まっていた。
 自慢げにしっかりと中指の間に挟んだコインを掲げ、大喜びでアピールする彼女。
 此処まで到達できたなら、後は反復すればいい。

 ……鼻をくすぐる、洗い立ての服のような爽やかな香りは柔軟剤だろう。
 それに混じって、キツくもなくしかし確かに感じられる匂いがする。
 俗にいう「いい匂い」は――シャンプーの香りだ。
 ふわりとそれらの香りが香ってきてから気付いた。

 彼女との距離が近い。
 最初に押し倒さんが勢いで目の前に迫って来たのとほぼ同じくらいの距離感だった。
 というかくっついてる。肩くっついてる。ほんのりと温かい、人の体温。

 秋人も真剣に教えて、莉緒も真剣に学んでいる。なのでお互いに気にする余地はなかった。
 無かったのだが……だからこそ、いざ意識すると流石に気恥しい。
 童顔かつ低い身長が子供っぽさを際立たせているとはいえ、莉緒はどちらかといえば美人の部類だろう。

 本人の感情を表すように、可愛らしくふわふわと跳ねるサイドテール。
 健康的な白さの肌に、しっかりとした体格。
 明るく元気いっぱいの花のような笑顔は――やはり見立て通りというべきか、人気者になれる。

 男子学生としてはごく普通であるし、加えて秋人は一年は世俗から離れていた。
 それに、教えてるからこそそういう感情を抱くのは失礼だ。
 だからこれは普通の感情……たぶん。

「――こほん。ここまできたらあとは練習あるのみ、かな」
「大丈夫、君なら出来るよ」

 一旦そう感じてしまうと、視線を合わせるのも気恥しくなってくる。
 聞き逃してはならない言葉――"会長にも"が聞こえて来たような気もするが。

(まさか……ね)

 思い浮かべたのは、転校生ならいやというほど知っている鋼鉄の男。
 雨飾昌明。底冷えするような、危うい正義感を抱く生徒会長。
 あの人が笑うところなど想像も付かないが――そもそもマジックを見せよう!でいけるのか。
 いや、いけるんだろうな。彼女のことだし。生徒会役員でなくとも、いずれは実行していたと思う。

 練習を続けるうちに、一通りのことが出来るようになった莉緒。
 まだぎこちなく、不自然な挙動が目立つがこの調子でいけば出来るようになるだろう。
 咳払いしつつ、視線を彼女からやや逸らし気味にそう言ってから、別の事を考えようと窓の外を見た。

 陽が沈み、焼けた空が黒く染まり始めていた。
 星の光は見えず、黒い雲が空を覆っている。今日は確か、夜には雷を伴う雨が降る――とあった。

「莉緒さん、時間は大丈夫?」
「そうでなくても、今日は大雨らしいし――そろそろ帰った方がいいかも。僕も帰るからさ」

>小桜莉緒

3ヶ月前 No.273

狼谷 @anima1997☆PMqTzZiUwVg ★iPhone=5ZILxJngmw

【 三年校舎・3-B / 兵頭アキラ 】

 いきなり動かなくなったかと思えば、次は扉に頭をぶつける様子を見て、こちらもあわあわと右往左往して。行き場を失った両手が何度か宙を掴んだ。何か変なことでも言ってしまったのだろうか、と先程の自分の発言を思い返してみるが、どうにもこうにも答えが見つからなくて眉を下げる。そして両腕を組んで首を傾げた。まあ人によって驚くポイントというのは違うのだから、こういうこともあり得るのだろう。自分だったら、RPGで力に振らずに魔力や賢さを上げる人を見たら絶対驚くし、筋トレめんどくさいとか思ってる運動部員を見たら卒倒するかもしれないから。
 柘榴の様子が急におかしくなった理由は、次に発せられた言葉から明らかになった。なんだ、そんなことか、とホッとして胸を撫で下ろす。友達になることに理由だとか、損得勘定はない。失敗したら助けを求めるし、困っていたら声を掛けるのが友達だと思っている。もっと気楽でもいいのにな、というのがアキラの今まで歩んだ人生で出た、とりあえずの結論である。頬を染めて目を逸らす相手の視線の先にひょいっと顔を出して、はにかんだような笑みを浮かべる。

「じゃあおれも迷惑かけちゃお。これでおあいこだからいいでしょー?」

 迷惑ってどんなことだろうか。無理やりランニングに付き合わせたり、宿題を手伝ってもらったり、とかだろうか。柘榴が何処か怯えるような、なんというか、形容しきれないけれど何だか違和感のある様子でいる理由は、今のアキラには分からなかった。だけども、彼に無理やり話させることもないし、けれど、話してくれたその時はしっかり目を見て話を聞いてあげたいと思ったのだった。

「作……もしかして料理得意なの!? わー!」

 作れたら、という言葉に敏感に反応する。おれにもなんか作ってほしい!っていうのはさすがに厚かましいかな、と思ってその先を口に出すことはしなかったのだが、自分と違って料理が出来る人というのは魅力的だった。前もって予約しておいたら、何かご飯を作ってもらうことも可能だろうか。今度弁当でも作ってもらおっかなあなんて考えて目を輝かせる。もちろん何かお礼はするつもりである。

「……あ、クレープね! うーんと、駅前のお店が美味しいって聞いたことある! おれもまだ食べたことなくて、一回行ってみたいと思ってたんだよねー。行こっか!」

 柘榴の想定外の特技に感動していたが、オススメの場所について聞かれて、美味しいクレープ屋さんがないか記憶を辿る。クラスメイト達からよく美味しかったお店の話とか、彼らのSNSでその写真を見たりするのだが、いざどこがいいか考えてみると中々思いつかないもので。やっとのことで、駅前のクレープ屋さんを思い出して、手を合わせた。
 ちなみに、クレープ屋さんといえばタピオカも販売している。もちもちの不思議な食感のタピオカは結構好きだったりする。スイーツ系のクレープと、今日は奮発してタピオカも食べようかなんて考えては、微笑んで教室の扉を開けた。一応、扉の外の様子を伺ってから、だ。今日はついでに学校近辺の案内も出来たらいいだろう。まだ一年生で、知らないことが多すぎるだろうから。

 教室を出て、ちらりと窓の外を見るとグラウンドに人だかりが出来ていた。目を凝らすと、見慣れない生徒もいるし、生徒会役員も数名いた。風黎と琴音だろうか。あの様子だと、転校生を見つけたのだろうか。自分は後輩と鬼ごっこをしてから、今からクレープを食べに……。一応人助けだし、生徒と親睦を深めるということで、大目に見てもらえたらいいな、とそれ以上特に気に止めずに、視線を戻した。
 まさか今隣にいる柘榴が転校生だとは知らずに。

【あとは後日談になるのかなあと思いながら書きました!柘榴くんとお話出来て良かったです、ありがとうございます!】

>>前桐柘榴、ALL

3ヶ月前 No.274

雪鹿 @class ★Android=42zyboh5vZ

【三年校舎・3-B/前桐 柘榴】

不意に俺の顔を覗き込んだアキラ先輩は、ニカッとはにかんで笑うその顔は今の俺には眩しかった。例えるなら、イカロスが思い焦がれた太陽のようで、近付きすぎたら何かが無くなってしまいそうな気がする……それは少し違うか。だって、焦がれてるのも傷付けるのも、きっと俺だから。未来が見えるわけでも無いけど、俺にだってそのくらいは分かる。少なくとも今までは皆、そうだったから。
その口が開かれて出てきた言葉はちょっとだけびっくりしたけど、それでも心の何処かで期待してたアキラ先輩らしい言葉だったから口元がまた緩んでしまいそうになる。まだ傷付けずに済むような適切な距離なんて分からないけど、今はその言葉に甘えさせてもらおうかな。なんて、俺も本当につくづく悪い子になったもんだ。

「そっか……ありがとな。俺に出来る事なら、何でも言ってくれ。」

どこか安心したように、それでいて不器用な微笑みを浮かべた彼は照れ臭そうに首の後ろへ手を置いて、ようやく掴んで受け入れられたそれをそっと噛み締めるのだった。アキラ先輩の『迷惑』と俺の『迷惑』は違いすぎるから、どうやったって釣り合わないけど、出来るだけ恩は返せたら良いな。あと、どんな迷惑を掛けてくれるのか……実はちょっと楽しみだったりする。大抵の事はアキラ先輩と一緒なら楽しい気がするから、多分迷惑なんて思わないんだろうな。それに、アキラ先輩は人の嫌な事をするのは向いてなさそうだから、余計にそう思ってしまうのだ。

「ん?料理なら大体は出来ると思う。」

突然に驚いて目を輝かせたアキラを見て、不思議そうに首を傾けた彼は平然とそう答えた。あまりに感動と言うか、嬉しそうと言うか……さっきの好きな食べ物の話題もそうだったが、もしかすると食べる事が好きなのかな、と勝手ながらに思ってしまった。いや、食べる事が嫌いな人間なんてそうそう居ないけれども。
だとしたら、今度何か作ったら喜んでもらえるかもしれない。あとでさりげなく、好きな食べ物か嫌いな食べ物でも聞いてみようかな……万が一にでも、嫌いな食べ物だらけになってしまったら悲惨すぎる。人に作るなら笑ってもらいたいから、そこはしっかりしないと。

「駅前か、俺もその辺は行ったことが無いから楽しみだ。」

外に出るという事も相成って見せていた表情に何時もの気だるさが戻ってきた。ようやく彼のデフォルトになった訳だが、それでも何処かで嬉しそうな様子がちらほらと垣間見える。甘党だから、って事もあるけれど、それ以上に友達と初めての寄り道が嬉しかったんだ。いつも一人で人気の少ないゲーセンとかだったし、昔に一度だけ弟と駄菓子屋に行ったくらいだろうか。それでもお母さんは少し心配性だったから怒られたけど、今となっては数少ない思い出だったりする。もちろん、今日も忘れられない1日に変わりないけどな。

アキラ先輩に続いて足取り軽く教室を出ていく。既に校舎内には喧しいような足音も怒声も罵声も消え去っていて、そんな中でアキラ先輩が窓の外を見ていたので気になって俺もちらっと外を見ることにした。様子を見る限りでは理由は分からないけれど、何か戦いでもあったようで……しかし誰も見知った顔が居ないので素知らぬ振りをすれば、アキラ先輩に倣って視線をそっと前に戻した。ほんの少し、トラブルを起こしたのであろう転校生と同じ身分という事もあって罪悪感を感じないわけでは無かったけど、出来るだけトラブルを避けるために生徒会にも転校生達にも関わりたくない、と言うのが本音だ。
とにかく、今はそんな殆ど関係の無い事を気にするよりも隣を歩くアキラ先輩との寄り道を精一杯楽しもう。

そう、兵頭 アキラが彼を転校生と知らないように、彼もまたアキラが生徒会役員である事を知らなかった。

>兵頭 アキラ様、all

【いえいえ、こちらこそありがとうございました。私もアキラ君とお話出来て、とても楽しかったです!】

3ヶ月前 No.275

ライブラ @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_drm

【グラウンドA/四十万 英雄】

「ちっ!」

幻影の壁は真央の攻撃を阻んだが真央は食い込んだ爪を支えに上に飛んだ。
獣染みた唸り声がしている、まだ戻ってきていないと判断した英雄は次の行動に移る。
こうなったらもう壁は意味を成さない、壁を消して幻影で警棒を作り出すと真央を止めるべく駆ける、が。

「いやそこかよ!! つか、”戻ってきてる”なら大人しくしとけバカ!」

犬キャラの自覚あったんだ、という言葉にツッコミを入れつつ左手で真央の頭を軽く叩いた。
獣としての本能に飲まれてとどめを刺しに来たのかと気が気じゃなかったというのに、俺の心配を返せ。
真央も少なからず消耗しているのだ、ただボケた発言をするためにわざわざ壁を飛び越えてきたのかと思うと頭が痛くなってくる。
そう思ったが真央は真央なりに後輩に称賛の言葉を投げる、ったく、それが言いたいなら壁を飛び越えるなんて無茶しなきゃよかったんだ。
能登に声を掛けられて「ちょっと待ってろ」と返すと、質量のある幻影の形を色々と変えて試行錯誤をしだす。
実は幻影で担架を作ったことはないのだ、細かい形もよく覚えていない。特に豪は体が大きいので作り出すのに苦労している様子である。

「よし、出来た。このデカさなら宍戸でも大丈夫だろ」

試行錯誤の末に作り出した担架は割と大きいことを覗けばごく普通の者だった。
担架の維持はイメージが固まった今なら余裕である。消すときは消えろと念じればいいだけだしな。

「さて、ちょっと動かすぞ宍戸、痛かったら言ってくれ」

地面に置いた幻影の担架に慎重に豪の身体を載せる、補足しておくがこの担架は車輪が付いたストレッチャータイプではない。
出来なくはないのだが、流石に車輪など細かいところまで再現すると余計に時間が掛かるし維持も格段に難しくなる。この能力はそこまで万能じゃない。
中央に体を載せて前後から持ち上げるタイプの担架なので能登か真央に手伝ってもらう必要がある。

「能登、保健室まで運ぶの手伝ってくれ。真央もベッドが空いてたら休んでろ、いいな?」

>能登風黎、形束場真央、宍戸豪、ALL

【自分もそれで大丈夫です】

3ヶ月前 No.276

犬後輩 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【グラウンドA/宍戸豪】

>真央、英雄、風黎、グラウンドall

「恩に着ま、す……ッ、ぐ」

 真央と豪との間に立ちはだかり、励ましの声をかける英雄。仰向けに転がったまま、せめて頭を下げようとして激痛に喘ぐ。
 致命ではないにせよ重傷であることに変わりはない。骨と臓器の無事を祈りながら、事の顛末を見守る。

 真央は止まらない。転ぶように駆けて、がむしゃらに地を蹴って――壁を超えたとき、獣の手足は少女の四肢に戻っていた。
 あまりに必死な形相に、なんだか笑ってしまう。同時に少しだけ悔しかった。戦っているときはそんな顔してもくれないのに。

 軽く頭を叩かれて「痛え」と豪は笑った。深手を負った敗者とは思えないほど、その表情は晴れがましい。

「仕方ないだろ? みんな俺のことあんたの番犬だの忠犬だの好き勝手言いやがるんだ、嫌でも自覚する」

 肩を竦めようとしたが、うまく身体が動かない。それならそれでと諦めて、頭をもみくちゃにされるがままにしておく。
 細い指が髪を掻く感触は案外悪くない。むしろ心地良くさえあって、飼い主に構われる犬の気持ちを思い起こさせた。

「……うるせ」

 真央があまりにも捲し立ててくるものだから、口を挟む隙がない。知らず溢れた苦笑があまりにも楽しそうで、豪は自分の表情が緩んでいることを自覚した。
 いいかげん頭を持ち上げるのにも疲れて、ごつんと後頭部を地面に落とす。瞼は釣られるように閉じた。
 視界が遮断されたことで意識はぐんと遠ざかる。抗えない急降下のイメージ。深海に引きずられるのにも似て、意思の介在しえない感覚。

 ――――『ありがと、豪』。

 落下の寸前、とんでもない爆弾を落とし込まれた。だがもう遅い。豪の身体はとっくに休眠モードへ移行していて、あとは意識もそれに倣うだけ。どんなに言いたいことがあっても、今すぐに伝えることができない。

 ……あのバカ。こんなの、お礼なんて言うことじゃないのに。

 その感情はどこか怒りにも似て、胸の奥をひどく焦がした。燻るように心の中で文句を言って、今度こそ意識は途絶えた。

 直前――風黎と英雄の声を薄ぼんやりと聞いた。別に脚でも掴んで引きずってくれたら十分だが、真面目で親切な彼らはそれを許容しないだろう。
 ともあれ、宍戸豪の長い放課後はこれにて終幕。次の目覚めは恐らく保健室か病院のベッドだろう。

【まとめるのに手間取って遅くなってしまいました、申し訳ないですー。豪は保健室に運ばれて応急処置を受けたあと病院に搬送される感じかなー、とふんわり考えていたり。ともあれ二章絡みありがとうございました!】

3ヶ月前 No.277

スマイル @smile390 ★iPhone=DYOJd3dXQ9

【二年校舎・空き教室/小桜莉緒】

 秋人の褒め言葉に莉緒はえへへと嬉しそうに照れ笑いを浮かべる。教えてくれた本人にそう言ってもらえるのは嬉しかった。これなら会長も驚いてくれるだろうか。

「うん!もっと練習する!」

 意気込むようにそう言ってから「あ、10円玉返すね!」と秋人にコインを手渡す。渡しながら莉緒は「?」と首を傾げた。秋人が莉緒と目を合わせないようにしている気がしたからだ。莉緒はどうかしたのかなぁと思っていたが、秋人はそのまま視線を窓の外へと向けたので莉緒もその視線を追うようにして窓の外を見た。
 外は相変わらずの曇り空で今にも雨が降り出しそうな天気だった。莉緒は帰りは土砂降りかなぁと考える。そういえば今朝、天気予報を見るのを忘れていた。一応折りたたみ傘は常にバッグに入れてあるので雨に打たれながら帰るということはないだろうが、風が強くなれば強度の低い折りたたみ傘では裏返ってしまうかもしれない。莉緒はそろそろ帰った方がいいかなぁと思ったが、まあいっかと思い直す。仮に傘が裏返ったとしても雨に打たれながら帰るのもいいかなぁと思ったのだ。なんかカエルさんになったみたいで楽しそうだなぁと。あ、でも流石に大雨の中は寒そうかな。やっぱり早めに帰ろうか。

「時間は大丈夫だよ!でもそうだねー、いっぱい降ってくる前には帰ろうかな」

 どうせ寮に帰っても一人なので、帰ったら夜ご飯を作って食べて宿題やら明日の準備やらを済ませてお風呂に入って歯を磨いて寝るだけだ。あ、今日は寝る前にもう一度コインマジックの練習でもしようかな。そう考えてから莉緒は分かりやすくしょぼんとした様子を見せる。帰る、ということは秋人とさよならをする、ということだ。口ではそう言ってはいても本当はまだもっともっと秋人とお喋りしていたかった。マジックも楽しかったけど、好きな食べ物とか趣味とか聞きたいこともたくさんある。

「……」

 莉緒は少し不服そうにしながらも元の場所に椅子を片付けてバッグを手に持つ。あとはさよならをして帰るだけだというところでむぅと口を尖らせるのだった。

>>倉敷秋人様

3ヶ月前 No.278

倉敷秋人 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_08J

【 二年校舎・空き教室/倉敷秋人 】

 ――僕も帰らなきゃな。

 すっかり忘れていたが、豪雨ということは教科書や書類も濡れてしまうかもしれない。
 いいや、自分も濡れてしまうことだって十分にありうる。
 秋人は傘は持ってきているが、それでも裏返ったり、あるいは強い雨が零れることもあるかもしれない。

 窓の外から見える空の色は、ため込んだ雨を吐き出すときを、今か今かと待ちわびるような黒色だった。
 教室の壁かけ時計の時刻を見ても、既に五時を回っており、部活や補修の無い生徒は既に家に帰っている時間帯だ。
 財布を開けると、莉緒から受け取ったコインをその中に入れる。
 落としたものも、忘れ物もないな。
 テーブルや床などに視線をやって、バッグの中身を確かめてからそう判断した秋人。

「そっか。――じゃあ、僕は帰、る……」

 バッグを持ち上げて席を立った拍子に目に入ってきた彼女の表情は、何処か落胆しているようにも見えた。
 自分を見つめる視線がころころと変わるのはもう慣れたことなのだが、これの意味はなんだ、なんだろう、と考える秋人。

 もっと話したかった? いやまさか。彼女だって自分の時間があるはずだ。あまり長く拘束するのも申し訳が無い。
 いや、決して女子と話し慣れていないわけでもなければ、二人きりで話しているという事実に意識しているわけでもない。
 また会えるよ、だなどと気の利いたセリフ。
 いやいやあまりにもギザったらしすぎる。
 それに、明日も学校だから否応なしに顔を合わせるだろうし。
 またおいでよだなどというのも――舞台の上ならまだしも――これも露骨に誘っているような気がして、ないないと首を振った。
 第一そうだと決まったわけじゃあないだろう。
 何を考えているんだ、僕は。

 気まずい沈黙が流れる。
 バッグを手に持ったままこちらを見つめてくる莉緒に、たどたどしく、顔色をうかがうように言ってみた。

「……い、一緒に帰る? あ、いや、帰ります?」

>小桜莉緒

3ヶ月前 No.279

十二辰 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_08J

【学生寮・四辰人の部屋/八木間四辰人】

「へいへい、毎度ありィー。レンタル期限は明日の夕方まで、あんまり汚すんじゃねェぞ」

 面倒臭げにぷらぷらと手を振って、商品の入った袋を抱えて出る『客』を見送る。
 売り物は好評の、巷の人気女子生徒の抱き枕カバー。
 普通なら売れないだろうが、コイツは肌の触感から匂いまでホンモノという曰く付き。中にはコイツが病みつきになってやめられない屑の教師もいるぐらいだ。
 まあ、それもそのはず、生きてる人間から剥いだ『皮(スキン)』、外界から認識される『要素』のみを剥がしたモノを使用しているのだから。
 視覚、触覚、味覚、嗅覚。聴覚はわからないが、およそ五感すべてを完全に再現している。
 ここは、そうした『皮(スキン)』のレンタルが主となる八木間四辰人の便利屋である。部屋の中はまるで薄暗いライブハウスのような……というより完全にライブハウスのそれに改造されている。
 これらはすべて自らの能力によって改造したものだ。それに似つかわしい場所からスキンを奪い、それを利用させてもらっている。

「さて」

 だらん、とソファーに深く凭れ掛かり、組んだ足を机の上に乗せる。台の横に据えた小箱から、ダーツの矢を徐に取り出した。
 気が付けば彼の眼前には、標準的なダーツの的が出現している。
 かつて剥がした『ダーツ』のテクスチャを張り付けたのだ。直接触れずとも、『モノの外観』を張り付けることで、例えばこのような疑似的な的を作ることもできる。
 事務所……自室を事務所代わりにしている……に一人でいるとき、彼は暇潰しにこうしてダーツに興じている。元々戦闘で得物を投げることも多く、そのちょっとしたトレーニングとしても最適なのだ。
 弛緩した状態でダーツを投げながら、彼は眠そうな顔で思案にふける。

 思案するのは、次に始まる玄武祭についてのことだ。サバイバル形式で行われる、試合形式のいつものモノとは異なるスタイルの競技のようだが
 それ自体は良い。何を考えてか知らないが、よほど追い詰められていない限りあんなモノ本気で狙いに行く人物は少なかろう。
 下手を打てば全治数か月の怪我で単位を落とすとか、最悪死に至るような『監獄の死合(デスマッチ)』なんぞを進んでやるようなアホはこの学園にそう多くはない。
 それが『普通』だ。学生のうちはやんちゃをしていいなどと教師連中は思っているやもしれないが、実際のところ将来の不安で自由どころの騒ぎではない。波を立たないような、気に入られるような行動をとる方が、よほど賢いとわかっているのだ。
 餓鬼は、大人の縮小図である。大人が保守に回りがちなら、学生も当然のように保守に回りがちである、と――そんな基本的なことがイマイチわかってないのだ、企画者は。

「ま、本題はそっちじゃねェんだが」

 そんなイベントは、実際どうでもいい。寧ろ、その準備期間の方が一生徒にとっては重要だ。
 今年も例年通り、一般生徒から生徒会にタイトル戦設営の協力を募るという。生徒会の人間にゴマをする機会と、一部の人間はねらい目とばかりに集まっているという。己としてもそちらの流れに乗っておきたい。
 問題のある生徒だとマークされているのは理解しているが、かといってこちらが『恭順』の意思を見せている限り大きく取り締まることは出来ない、というのがこちらの判断だ。
 生徒会とて所詮は教師の代理に過ぎず。教師とて所詮は教育委員会の監視の目に縛られた単なる公務員だ。
 法を私物化するような行為に及べば、必然的に立場を危うくする。スキャンダルという奴を恐れねばならぬのは、組織に就くものの宿痾 というものだ。
 尤も、それはあくまで建前であり。

「なんか強請れるネタあったっけぇ、っと。ンー……
 ああクソ、まだ素材も足りてねェ。しゃらくせェな、適当に生徒会の奴らハメてネタ作るか。とりま暴れられても騒ぎがなくて、あと大人しくて責任感あって問題勝手に抱え込むカモがネギしょったみてェな奴とか……
 いねェかなー、いねェよなァ、早々簡単に見つからねェよなあダリぃなァー」

 ダーツを投げながら、空いた手で脇に置いた顧客リスト……スキン貸与の取引を交わした人々の書類をめくる。
 本当の狙いはこちら。生徒会に『強請る』ネタを確保しておく、ということ。
 当然ながらあの組織丸々を強請りにかかるのは賢い選択ではないし、順当にもみ消され始末されるのが関の山だろう。正確には『生徒会に属する誰か一人』ということになる。
 秘密を共有し、組織にとって都合の悪い事実を抱え込み、イエスマンとならざるをえない人間。そういうサポーターは、こちらが好きに動くためにも一人ぐらいは欲しいわけだ。
 お得意様自体はいるにはいるが、それは向こうが主導権を握っている点で保険としては弱い。
 なので、今回の玄武祭という舞台を利用して、不祥事を連中に押し付けられれば御の字。出来ずとも、真面目にこなせば順当な見返りがある。本戦はともかく、その準備は参加して損のないイベントというわけだ。

「まー半分ぐらい物見遊山、十中八九収穫なしで終わりそうだけどよォ」

 などと愚痴りながら、一本、また一本とダーツを投げる。
 向こうから声をかけてくれたなら、それなりに色々強請るネタを作れそうだが、この数週間で生徒会の眼鏡にかなうような功績は挙げておらず。どういうルートで取り入るかもはっきりと決まっていないので、行動に移れず。
 結果、彼はこうして事務所で店番を続けている。
>ALL

【2.5章が始まったとのことで初投稿させていただきます。よろしくお願いします】

3ヶ月前 No.280

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_Twa

【 紫微星菘 / 庭園 】

 サイコトリア・ペッピギアーナ。別名『娼婦の唇』『ホット・リップス・プラント』『ジャングルのキス』。真っ赤なルージュを塗りたくったぽってりと分厚い唇――にしか見えない妖艶な花。中南米諸国に咲き誇る魅惑の植物。本来日本にあるはずもない、こんな花が当たり前に居座っているのも異能力者が集う学園ならではの光景だ。庭園のど真ん中にレジャーシートを敷いてごろりと寝ころび、目に映る花々を見ながらそんなことを考える。
 色々と慌ただしい問題児の一斉転校デーから一週間たった今日、学園はまたしても玄武祭という一大イベントを控えにわかに浮き足立っていた。菘にとってはまたまた商売の好機で喜ばしい出来事ではあるものの、ここ数日はあまりにも血の売れ行きが好調すぎてさすがに貧血気味だ。こういう時のためにストックしていた血液も『売るための分』はごっそり売りつくしてしまった。あとは媚びるべき相手にバラ撒くようや学校に納める用なので、迂闊に手を出せない。だから「もっと売ってくれ」とせがむ客たちをすげなく振り払い、彼ら彼女らから避難するべくこうして庭園に間借りしている。そんな事情でもなければ来ない。紫微星菘は花を観賞する趣味を所持していないのだから。

「あー、もう血ぃ抜きすぎてふらっふら。身体の売り過ぎは良くないねー……」

 良識ある人間がこの場に入れば「そもそも身体を売るのが良くないことなのでは?」でファイナル・アンサーである。焼けつくような痛みとはまた別の、寒いのに暑いという異常な状態に見舞われている肉体。これは完全に貧血の症状。指先がぴりぴりと痺れる。
 花に囲われた空間でしどけなく寝そべる青白い顔の少年、と書けば中々お耽美な風情だが、貧血の当人としてはたまったものではない。目に映る花々の鮮やかさも、心身が健康でなければ吐き気のある時に目にする食べ物のように煩わしいだけだ。だが、ここを避難場所と選んだのは自分自身。文句は言うまい。

「そういえば、玄武祭どうしよっかな。俺としてはお金を稼げて媚を売れればそれで良くて、評価とかわりとどうでも良いんだけどぉ」

 倦怠感を覚えた身体をごろりと寝返らせ、サイコトリア・ペッピギアーナの反対側にあったマンドラゴラじみた謎植物を見ながら相変わらずの独り言を続ける。体調の悪い時は完全に黙りこくって眠ってしまうか、そうでなければ適当に何か喋っていたほうが気が紛れて楽だ。本格的な思考回路の稼動を今するつもりはない。考え事は心身が万全の状態にするに限る。心であれ体であれ、病んでいる時にひねり出したものは大抵の場合お役に立たない無用の長物なのだ。
 ……いつまでもこうしているのもなんだし、あと三十分も休めば自室に帰るか保健室にでも行こう。

>ALL様

【エピソード2.5、とりあえず菘からロル落とします。敦賀はまた後日。明日仕事だからと急ぎで書いたので誤字脱字があったらすみません】

3ヶ月前 No.281

サムライ @samurai07 ★iPhone=QCAUNJ3bTK

【イーグル・ダッドリー/駐車場→移動中】

学園の駐車場に1台の黒塗りのスポーツカーが停車する。そこから降りてきたのは西部劇のガンマンのような格好をした金髪の男性。彼はイーグル・ダッドリー。鳩鳴学園で英語を担当する教師である。しかし、彼の楽しみは生徒に英語を教えることではない。異能力者同士の血湧き肉躍る戦いを見ること。それがこの学園に来た理由でもあった。

「Good morning!いやー、しばらく休暇を取ってたけど『玄武祭』までには戻って来れて良かった。こんな面白そうなFestivalを逃しちゃったら自殺したくなるよ。」

まだ誰もいない駐車場で伸びをしながらも興奮が抑えきれない様子のつぶやきをみせる。すると、イーグルの目の前を1匹のハエが横切る。イーグルは無言でハエに人差し指を突き出し、手で銃のような形を作ると…一言小声でつぶやく。

「Ban。」

次の瞬間、飛んでいたハエは見えない何かに弾かれたように落ちていった。そう、これこそがイーグルの異能力。「空気の弾丸を指から発射する能力」である。空気弾は殺傷力は低いが相手を吹き飛ばしたりする力がある。イーグルはこれを駆使して戦闘するのである。

「うん。どうやらcomicsやgameにありがちな『ある日突然、能力に変化が起きる』とかいう現象は起きてないみたいだねぇ。そんなことがあったら面白いけどどうやら異能力が変化することなんてあり得ない話みたいだ。少なくとも…能力値がカンスト寸前の僕は。」

まるで芝居がかったような独り言だが、独特のきな臭さも相まって意味深に聞こえるのは仕様なのだろう。

「さてと、そろそろ僕の可愛い生徒の皆の様子を見に行こうか。まずは体育館かアリーナに行けば誰かいるかな?早く行かなきゃ。Action is eloquence…行動は雄弁である。だからね…」

自らが尊敬するとうたっているシェイクスピアの名言をつぶやき、意気揚々と学内へ足を踏み入れるのであった。

>>ALL


【とりあえずプロローグ的に投下してみました。誰かが話しかけるか、もしくは何かミニイベントが起きたら乱入しに行きますのでよろしくお願いします。まあ、何をされるかわかりませんがね…】

3ヶ月前 No.282

@siromi ★M4WUxX33bd_Twa

【移動中→体育館/五木部 理恵子】

玄武際を前に、各部活動は休止でもしているのだろうか?思っていたより簡単に使用許可が下りた事に少し驚いたけど、何はともあれ、これで心置きなく練習が出来る。体育館の隅っこでぽつりと立つ私は本を広げると同時に背に生えた、きっと自然に消える事の無いであろう。黒々しくも天井のライトをそのまま反射したギトギトの羽を大きく広げた。内側に潜む半透明な羽を不器用に揺らめかせながら、視線は文章をなぞり、口は小さくその文章を唱えた。

『…元から飛行能力があると言うわけではありません…か…。飛行は身体的「能力」と言うよりかは、飛行「技術」って事なんかな…?』

陸は最も優位に立てるかもしれないフィールドであるとして、海は人間として泳げば少なくとも生存出来る可能性は僅かながらあるかもしれない。陸、海とくれば残りは「空」。能力が「本格的に」形となって間もないであろう自分に、1つの術を一点特化させる程の時間は無い。ならば、粗削りでも生存への道筋に必要となる術を多様化していくべきだと判断していた。だけど習得したところでそれは最後の手段。粗削りだからこそ穴だらけ隙だらけで、もし見せつけたいが為に行ったならきっと其処を突いてこられるのだろうから。それなら、最も慣れた単純な移動と壁を這う事。そして自分の身に宿った新たな生物の本能、習性に任せて逃げ隠れるのみ。見えないけれど、必ず自分たちと共に、自分たちの傍で生きる者達のように。
羽にまで神経が回っているのだろうか、今自分がそれらを「動かしている」と言う感覚はあった。だけど左手を使っている時のように動作は想像よりも小さく、そして覚束ない。恐らくはこの半透明な羽、計4枚で体を浮かせ、黒く最も大きな羽で軌道を修正する、と言ったところだろう。現にテ〇フォー〇ーズの敵キャラは見たところそのようにして飛んでいた。だがそれを現実に出来るかはまた別の話しなわけで…。でもいつかは出来るようになるしかないんだと、肉体越しに心臓をドンドンと強く叩き深く息を吐いた。一度強く閉じていた瞼を開ければ、鋭い眼光が覗き前だけを見据える。

だが端から見れば、それはとてつもなく珍妙な行動だ。何せ勢い任せに叫びながら走り、一度跳ねては止まって、そしてまた走るの繰り返し。時には加減を忘れたか、勢いよく時速320qの速さで壁に激突する始末。だが彼女の能力がゴ〇ブ〇に等しいそれであるからだろうか、本来感じるはずの激痛より痛みは和らいでいる。けれど所詮基は人間であるが故、彼女は床にどさりと倒れ鼻を両手で押さえて悶絶した。押し殺された声は漏れ出し、天井に向かって放たれる。涙で覆われた視界にはまるで別世界のように歪みに歪んだ景色が映った。
そうして眼鏡と本は、虚しくも鈍い音を立てて自分の背後で落下したのだった。


>>ALL様

3ヶ月前 No.283

サムライ @samurai07 ★iPhone=QCAUNJ3bTK

【イーグル・ダッドリー/体育館】

「さあさあ、第一生徒はだーれかな?」

スキップでもするような軽快な足取りで体育館の前に差し掛かる。その時、体育館から何かが激突するような音が聞こえた。イーグルはその音が気になり、足早に体育館の中に入る。すると、昆虫のような羽を生やした少女の姿があった。しかも、何かアクシデントが起きているようだ。

「Oh!大丈夫かい?君は確か…五木部 理恵子くんだったかな?Hello!僕のことは知ってるかな?イーグル・ダッドリー先生だよ。」

理恵子にそっと手を差し伸べる。ついでに片手には眼鏡と本も拾ってあげていた。

「君は自主トレーニングしてたのかな?まあ、もうすぐ玄武祭だもんね。そうやって一所懸命やってるのは僕、すごく感心するよ。」

ニコニコ笑顔のイーグルだが、やはり腹に一物ある雰囲気は否めない。そして、理恵子の姿を見てこう言った。

「それにしても君は面白い異能力を持ってるね。これはかなり応用が利きそうな可能性を秘めた能力な気がするよ…いろいろな意味でね。」

理恵子に本と眼鏡を差し出しながらイーグルは彼女に歩み寄る。その後、イーグルはメモとボールペンをズボンのポケットから取り出した。

「ちなみに五木部くん。玄武祭への意気込みを教えてほしいんだけどいいかな?」

まるでインタビュアーよろしくマイクのつもりのボールペンを理恵子の口元に向けるイーグル。一見、ひょうきんな行動に見えるが彼の真意はいかに。

>>五木部 理恵子様、周辺ALL


【ちょうど行こうと思ってた体育館にいらっしゃいましたので絡んでみました。しかし、胡散臭い奴で、すみませんね…】

3ヶ月前 No.284

狼谷 @anima1997☆PMqTzZiUwVg ★iPhone=5ZILxJngmw

【 移動中→食堂 / 兵頭アキラ 】

「ふふーん」

 『玄武祭の実行委員 絶賛募集中!』とデカデカと書かれた看板を首からぶら下げ、足取り軽く校舎内を移動していた。鼻歌なんかも歌ったりして。その姿はさながらご機嫌な看板犬、と言ったところだろうか。道行く生徒達に声を掛けても、大体の生徒は断るか、写真を撮るかだった。こうやって校舎をただ歩くだけの仕事でも別に苦じゃなかったのだが、皆の食い付きが悪くてもやる気十分な理由は、実はこの看板、ダンボールや木ではなく、金属のプレートで出来ているからなのだ。つまり、首から下げているだけで筋トレになる、ということなのだった。新手の筋トレ器具を提供してくれたことに感謝する始末である。

 特に目的地を設定せずに練り歩いていたが、丁度食堂に差し掛かったので、寄っていくことに決めた。腹が減っては戦ができぬ、なんて言うし。購買に並ぶ菓子パンなどを物色していると、クレープを見つけて立ち止まる。一週間前、ひょんなことから仲良くなった男子生徒の前桐柘榴と食べに行ったクレープだが、噂通りとても美味しかった。自分は人気商品のチョコバナナとバニラアイスの入った甘いクレープを食べたのだが、次はブリュレクレープというものを食べてみたいと思っている。また誰かと寄り道する機会があれば、是非クレープ屋さんを提案したいな、と思うくらいにはクレープにハマってしまったアキラであった。
 商品棚と数分間にらめっこして悩んだ挙句、購買で購入するのをやめて、食堂の方へ移動する。メニューは見なくても覚えるくらいには利用していた。丁度厨房から出てきていた、見慣れた食堂のおばちゃんに向かって、にこにこ笑みを浮かべながら注文する。

「温玉うどんのつめたいやつ、ひとつくださーい。」

 お釣りが出ないように、丁度を差し出す。そして注文したうどんが作られるのを待っている間に席を確保し、看板を机に立てかける形で下ろした。ちなみにこの看板の字は、ムダにでかい割に、教科書の字のようにとても整っている。明朝体チックな筆跡はアキラの特徴である。だいぶ身軽になったので、この新しい筋トレ法は結構効果があるかもしれないな、なんて上機嫌で席について、呼ばれるのを待った。手持ち無沙汰なときに足をぶらぶら動かしてしまうのは小さい頃からの癖だ。

【とりあえずALL文を投稿しておきます!どなたでも、絡んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。】

>>ALL

3ヶ月前 No.285

@siromi ★M4WUxX33bd_Twa

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3ヶ月前 No.286

スマイル @smile390 ★iPhone=DYOJd3dXQ9

【二年校舎・空き教室/小桜莉緒】

(もうばいばいしなきゃいけないのかぁ……)

 莉緒はしゅんとして俯いた。楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。楽しくない時間だったらたった数秒でも長く感じるというのに楽しいとなぜこうも早く感じてしまうのだろうか。ちらりと教室の時計に目をやると、時刻はとっくに5時を回っていた。今の季節ならまだ外は明るい時間だが、今日は灰色の雲に覆われているせいで外も薄暗い。湿気も多くじめじめしているのもあってか莉緒は余計に寂しく思った。でも仕方ない。秋人も帰ると言っているのだから我儘を言って引き止めるのも申し訳ないし、とうとう雨が降ってきて莉緒のせいで秋人は雨の中帰ることになっただなんてことになっしまったらどう詫びれば良いのか。
 莉緒はそう考えて諦めることにすると、教室を出るため扉の方を向きかけた。しかし莉緒は途中でぴたとその動きを止めると、秋人を見た。

(一緒に帰る……?)

 秋人と別れるのが悲しすぎてそんなこと思いもつかなかった莉緒は数秒きょとんとする。しかしみるみる表情を明るくすると、

「うん!!」

と、嬉しそうに笑顔で頷いた。今日一番の笑顔だったかもしれない。莉緒はついさっきまで落ち込んでいたとは思えないほどの明るさで「じゃあ行こ!」と一声かけると、上機嫌で扉を開けて教室を出る。そして、秋人も教室を出るのを待ってから歩き出した。


 莉緒はやることを全て済ませ、ベッドに横になると今日のことを思い出していた。

「楽しかったなぁ」

 今日あったことで一番印象に残っているのは勿論秋人とお喋りしたことだ。マジックを教えてもらい、帰りは途中まで一緒に帰った。すごく、本当にすごく楽しかった。
 莉緒は布団の中でふふっと笑みをこぼす。

……また会えたらいいなぁ。

>>倉敷秋人様


【お待たせしたうえに短くて申し訳ありません!今週はリアルが忙しくてですね…(言い訳)それとEpisode3が始まったということで会話しながら途中まで一緒に帰ったという流れにしました!都合の悪い部分等ありましたら変えてしまって大丈夫です!絡んで下さってありがとうございました!莉緒の我儘にたくさん付き合ってくれて本当にありがとうございます!秋人君はまだ莉緒が生徒会役員だとはっきりとは知らないと思うのでそれを知ったときにどう思うのか密かに楽しみだったり……ではではまた絡む機会があったらよろしくお願いしますね!本当にありがとうございました!】

3ヶ月前 No.287

事象の用務員 @kaizelkai ★2P17A3cjY2_M0e

【 庭園/平賀 拓海 】


 用務員としての仕事は主に校舎の修復や校舎全体を管理することが自分の仕事である。不審者や不審物もないかというパトロールもあるが、この学校にそんな輩が潜り込む目的は、自分にはわからない。それよりも学んだ母校くらいは綺麗でいる方が結構大変なわけで、こうして庭園にあるゴミを掃除している。もちろん、普通のやり方では掃除はしない。片手を前に向けて、対象を庭園に散らばるゴミと指定、独り言のようにある言葉を呟いた、


「 ―――【集塵】。」


 手の平からこちらに集まるような、気流が生まれる。地面に落ちている葉や塵が、掃除機にでも吸われているかのように一気に集まっていく。一つの塵やゴミの山が出来上がる。あとは手持ちのゴミ袋に詰めて、粗方の掃除は終わる。あとは手に箒を持ち、吸い取れなかった細かい所を掃いては、ゴミ袋に詰める。決して自分の異能力は万能ではない。異能力で出来ないところは、自身の手でやらなければならない。


「 あとは、水でも撒いておくか。―――【散水】」

 庭園を飾る様々な植物達を一見し、今度は植物達の方へて向けて、呟く。手のひらから広い範囲に水が放水された。植物にとって水は生きる上で必要な事である。ざっと撒き終えると、空を見上げる。その日は雲間から日光が差し込んでおり、やや曇っているといったところだ。そういえば、そろそろ玄武祭が始めることを思い出す。


「 そいえば、あれが始めるんだよな。今年も忙しくなりそうだ。 」


 会場の設営等の手伝いは任されるだろうし、今年も何か色々と壊しそうな気がする。終わったら全て直せればいいのだが、最近の生徒は限度を知らない。仕事がいつも通りだが、この日だけはちょっとだけ憂鬱な気持ちになる。



>>ALL


【遅くなりましたが、待機してます。】

3ヶ月前 No.288

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_Twa

【 紫微星菘 / 庭園 】

 まず、この庭園の植物たちには背の高いものも多い。そしてかなりの数が密集して咲いているゾーンもある。敷地はかなり広い。こうした情報を踏まえて判断すると、いきなり自分の身体にシャワーが降って来たのも故意の嫌がらせとは断じられまい。後から来た人が花々の中央にレジャーシートを敷いて寝そべる菘に気付かす植物への水やりタイムを開始してしまっただけ、と考えたほうが自然だ。それにしても誰の仕業だろう。別に怒っちゃいないが、なんとなく気になって上半身をのそりと起こしてみる。――目の前にいるのは一人だけ。となると、突然の散水は彼の所業と見て良い。見覚えのあるルックスをした彼は、今日も今日とて人生の何かに疲れたような目つきをしている。平賀拓海。それが眼前の男の名だ。

「ええっと――こんにちは、用務員さん。水も滴る良い男です」

 貧血のせいでふわふわと不安定極まりない視線。それを拓海に向けて、ついでに冗談も織り交ぜておく。ウケるかスベるかは半々の確率だ。とはいえ、噂に聞こえる彼の性格を勘定に入れれば、例えウケなかったところで乾いた笑いくらいはくれるだろう。
 下半身はレジャーシートの上に放り出したまま、後ろ手をついて相手の返事および反応を待つ。花を潰して寝ていたならともかく、芝生しかないところで転がっていたくらいなら教師にも注意はされまい。ましてこちらは彼の手から放たれた水でビッチョビチョなのだ。この状態の生徒に怒鳴り散らしてくる教師など――いや、そういうことをしてくる手合いとして思い浮かぶ相手がいないと言えば嘘になるけれど――少なくとも平賀拓海ではない。

(お、モンシロチョウが飛んでる。珍しいな)

 視界の隅を舞う蝶々に目を引かれている辺りからも、コイツが水をかけられたことに別に怒りを抱いていないのがよく分かる。そもそも衣服や身体が濡れたくらいでストレスを溜める輩なら、紫微星菘は強者ビッチと揶揄される特異な生き方なぞしていない。だからまあ、これもある意味当然の反応だ。
 数秒だけうっかり目を逸らしてしまったけれど、あまりよそ見をするのも失礼なので改めて拓海に眼差しを注ぐ。数年前に採用されてからの数日間は生徒や教師の話題を呼んだという強面に、その印象を和らげる垂れ気味の目。光源氏のような華々しいイケメンではないが、こういう男性は女性に安心感やら庇護欲やら親しみ易さやらを感じさせるので結果としてわりとモテる。菘はそう判断した。事実、情報通の彼の元には「平賀先生、いいよね」「いい」な女子生徒の情報だって入り込んでくるのだ。

>平賀拓海様&ALL様

>>281 の時点で庭園にいる描写をしていたので、とりあえず反応してみました。短い間で構いませんのでよろしくお願い致します!】

3ヶ月前 No.289

ライブラ @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_drm

【運動場/四十万 英雄】

「…………」

運動場をジャージ姿で黙々と走り続ける男が一人いた、英雄は日課であるトレーニング中だった。
先程は能力制御のトレーニングとストレッチと筋トレをしていた、今度は持久力を付けるためのランニングだ。
真央と宍戸の公式戦から早二週間、転校生に一度だけ喧嘩を売られて公式戦という形で買い取って適当に叩きのめしたことが一回あった程度で他に変わったことはない。
真央も宍戸も能登と一緒に纏めて保健室に叩き込んでおいたので今頃はピンピンしてるはずだ。あれから宍戸と腰を据えて話そうとしているがなかなか機会がない。
他に変わったことを強いて挙げるとすれば転校生から転校生仲間と思われて声を掛けられたくらいか、理由は言わずもがな、このスカーフェイスである。
現時点で大凡10kmほど走っている、体力はまだまだ持つとはいえ少々退屈である。

「次の玄武祭、絶対荒れるよな〜。むしろ荒れなかった試しがないけど通常の三倍は荒れそうだな」

走りながらそう呟く英雄、額には汗の球が浮かんでおり、少しだけ喉が渇いてきた。
あと3週は知ったら休憩を入れるか、そう思いながら英雄は走る足を止めない、アレだけやっておいてまだ訓練を続けるのかと突っ込まれそうなものだが今は玄武祭を控えている。
勉強の成績は理系が悪いことを除けば常に平均点以上を確保している、将来のことを考えると実技の方でも好成績を残したいと考えるのはおかしな話ではないだろう。
他の三年生も気合を入れて訓練していることだろうし、なにより負けず嫌いの気がある英雄である、勝ちたいと思うのは当然のことだ。
だから鍛錬を怠らないのだ、一日怠れば遅れを取り戻すのに三日はかかると聞いたことがある、少なくとも英雄の能力はその類のものだ。
スタミナと集中力が切れればあとはもう剣やメイスなどをもって泥仕合に持ち込むしかないのだから必死にもなるというものだ。

「そろそろ一息入れるか……それにしてもただ走るだけじゃ退屈だな、誰か誘えばよかったか?」

3週グラウンドを奔り終えてカバンと一緒に置いておいたスポーツドリンクを半分ほど飲み干す。
よく洋画とかで軍隊がやっている掛け声、アレなんだっけ? カデンツコールだったっけ? あれをやれば気分が少し持ち上がるのではないかと思いはしたが掛け声の内容が思い浮かばないので却下。
タオルで汗を拭うと10分程度休憩を入れてまた走ろう、そう考えると運動場の隅の木陰に座り込んで休憩し始めた。

>ALL

【形束場真央様と宍戸豪様の公式戦から時間軸を進めさせていただきました】

3ヶ月前 No.290

事象の用務員 @kaizelkai ★pkikHqe3nq_mgE

【 庭園/平賀 拓海 】


 手から放っている綺麗な水は出し続けて、辺りの植物達に振りまく。手から出る水や吸引する風ははどういう原理で発生するかは自分にもわからない。無機質や漢字で表現出来るものはある程度出せる。流石に生き物は出せないし、【牛肉】と言って、精肉されたものは出ず、何も出なかった。発動条件や回数は異能力を使ってから経験から知り得た事である。昔はこれで多くのものを傷つき、壊してきた。今じゃ植物に水を与えたり、ゴミを集めるといった手軽な道具感覚で使っている。あの頃の自分じゃこんな事はしないなとつくづく思う。植物に与えている水の音の中に、いつもと違う音が聞こえる。まるで敷かれたピニールシートに当たっているような音だと思い浮かべていると、レジャーシートでくつろいでたと思われる男子生徒がそこにいた。制服等が濡れており、その原因は間違いなく自分の手から出てる水。蛇口を閉めるように、手からの放水が止まり、彼に近寄った。


「 あー、ごめんな。すぐに乾かすから。―――【乾燥】。 」


 よく分からない冗談を言ってたが、スルーし、彼の制服の一部に触れて、一言。その時、変わった事が起こった。濡れていた彼の制服だけが水気が急激に乾燥し、濡れる前の状態に戻す。そして、彼の後ろに回って濡れた頭髪を乾かすため、手のひらを髪に向けて、呟く。


「 【熱風】―――本当にごめんな。まさか寝ているとは思わなくて……水に濡れなくても君、充分カッコいいと思うぞ。 」


 手から出るのはドライヤーのような熱い風。本物のドライヤーのように調節し、熱風が彼の濡れた頭髪を乾かしていく。髪に対して【乾燥】と使えば、パッと乾くと思うが、同じ漢字は連続には使えないルールがある。それに髪を【乾燥】したら、元々の水分を飛ばして髪質を変化させる恐れがある。安全に乾かすにもこれが一番のやり方である。よく見ると、自分よ身長が高く、カッコいい生徒である。水になんか濡れなくてもカッコいいと苦笑混じりに答える。


>>紫微星菘


【絡みありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します】

3ヶ月前 No.291

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_Twa

【 紫微星菘 / 庭園 】

 渾身でもない冗談は不発に終わった。拓海は手の平から水を出すのを辞めると即座に近付き、衣服から水分を除去したり頭髪を温風で乾かしたりしてくれる。噂に聞く通り便利な能力だ。高級ドライヤーみたく「マイナスイオンでウルウルサラツヤ!」な性能は加わっていないだろうが、それが無くったって冷たい髪に温かい風が当たるだけで気持ち良い。服も乾かしてくれて助かった。裾だけならともかく、下着も含めてぐっしょり濡れたまま帰るのはさすがに違和感がえげつないし。プールの授業がある日に服の下に水着を履いて行ったらパンツのほうを持って来るのを忘れ、仕方なく授業が終わってからもパンツ代わりにビショビショの水着を履いて過ごした経験がある者ならこの気色悪さを理解してくれるはずだ。なお菘にそんな経験は無い。同じ養護施設の子がそう言っていたのを思いだし引き合いにしたまでだ。

「いえいえー。貧血でボーッとしていたので、ちょうど良い気付けになりました。あー……そういうこと言っちゃうんだ用務員さん。駄目ですよー、そんなんだから一部の女子生徒からおじさん萌えされちゃってるんですってー」

 髪を乾かして貰いながらへらりと男に笑いかける。やはり貧血の所為で平素よりも幾分挙動が幼げだ。ついでに顔色がクッソ悪い。言葉にもフランクさ――というより、体調に余裕が無いがゆえの緩さを感じさせる。普段のコイツはもうちょっと妖しげだ。そうでなければ情報屋紛いと身(血液)売りとコウモリ従者の三重ムーヴなどできまい。

(なんか眠たくなってきたな……体調が悪い時に人に頭を乾かして貰うとか、完全に眠気に襲われるに決まってるよね……)

 後頭部に仄かなぬくもりを感じつつウトウト。頭が船を漕ぎそうになる。冷や水のショックは温風の心地よさで上書きされてしまった。しかし向こうにとっては殆ど初対面の男子生徒にいきなり眠られても困るだけだろうから、やむを得ず眠気を掻き消すために手の平へ爪を立てる。それでも刺激が足りなくて、相変わらず夢の国からのお誘いは脳味噌の中を駆け回り続けていた。こういうケースだと漫画なら手にナイフや剣でもぶっ刺して強烈な痛みを己に与えるものだが、別に戦時中でも非常事態でもない日常生活の範囲でそこまでやっては変人を通り越し気狂いだ。そもそもナイフなんて持ち歩いていない。中二病を拗らせた刃物コレクターでもあるまいに。

>平賀拓海様&ALL様

【ご丁寧にどうも! ところで、このまま庭園で絡みます? それとも場所を変えますか? あっさり別れてそれぞれ別の相手に絡みに行くのもアリですよね。私はどれでも大歓迎ですので、相手方のご意見が聞ければ嬉しいです。特に何も決めないで流れのままに、っていうのも好きですけれど】

3ヶ月前 No.292

サムライ @samurai07 ★iPhone=QCAUNJ3bTK

【イーグル・ダッドリー/体育館】

「ふむふむ、君はまだ能力を得て日が浅いから自信がないと…それならmotivationを上げる方法を考えればいいのさ!」

最初は理恵子の言葉をメモしていたイーグルだが、理恵子が話を終えるや否やメモを放り投げるような勢いのテンションで理恵子を励ますような素振りを見せる。

「それに勘違いだったら悪いけど、さっき僕の手を触るのを遠慮しなかったかな?ふふ、奥ゆかしさがあるのはJapanese 大和撫子って感じで好きだけど、そんなに卑屈にならなくていいんだよ。僕は君を軽蔑したりなんてしないから。むしろ、こんな面白い能力を見せてくれたことに感謝したい気分だ!」

実際、イーグルはいくつか身体が変化する能力を見てきたが、ゴ○ブリのようになる能力など見たことはなかった。初めて目の当たりにした珍しい能力にわかりやすく興奮している。

「それに僕はゴ○ブリを素手で捕まえられるしね。ウエスタンの男なら当たり前なのさ。なんてね。」

ちょっとしたジョークも挟みつつ、今度は体育館の扉に目を見やる。

「まあでも、今の君の様子じゃ、保健室に行くのが先かな。ちょっと怪我が目立つしねぇ。立てるかい?」

理恵子に気遣いを見せるが、その直後に一瞬、ニヤリと笑い、こうつぶやいた。

「もしも、君が本気で勝ちたいならばその能力で使えそうな作戦を教えてあげよう。きっと君のmotivation UPにも繋がるかもね。知りたいならまた体育館かアリーナかグラウンドにでもおいで。」

理恵子の異能力を見て、作戦…いや、悪巧みが思いついたのか。おそらくイーグルの本領は「生徒を戦いへ誘うこと」…もしこの世界がゲームならば理恵子にイーグルの魔の手を取るか取らないかの選択肢が表示されていることだろう。

>>五木部 理恵子様、周辺ALL

3ヶ月前 No.293

@siromi ★M4WUxX33bd_Twa

【体育館/五木部 理恵子】

『モチベーション…ですか…。モチベーション…』

身体能力の限界を決めるのは体では無く、脳だと言う。もしその脳が刺激され、テンションがハイになった時。モチベーションが上がった結果、極端なほどに上がってしまった場合。謂わば脳や体のストッパーが外れるような物。現在の自身の体に未だ慣れていない自分に、今そんなことが起これば自滅しかねない。
けれど、自信が欲しくないと言ったら嘘になる。
玄武祭。それは今まで汚いと、ゴ〇ブ〇だと嫌悪の眼差しを向けてきた一部の生徒に一泡吹かせられるかもしれない絶好の機械であり、上手く行けば今の自分を認められるかもしれない、今の自分は凄いんだ!と、受け入れるきっかけになってくれるかもしれない。普通には戻れないけれど、人並みに自分にまた納得できるかもしれない。
下向きに考えれば自滅、上向きに考えれば人生観に関わるきっかけ。
その時だけ自分は、「一時的に」彼の提案を下向きの考えで捉える事にした。

後に来た貴方の明るい言葉、今の自分には素直な言葉と言うよりは励ましの言葉にしか聞こえなかった。この羽を、尻尾を、力を。自分自身が賞賛出来ないのだから当然だ。
ある教師は言った。「君は自己評価が低い。もっと自分をほめても良いんじゃないかな」
違う…!自分は自分を褒めていないわけじゃない、自分自身が嫌いなわけじゃない。この羽が、尻尾が、力が嫌いで、認めたくなくて。故に卑屈に、故に日陰者に堕ちてゆく。全部が全部、能力の所為だとは言わない。けれど自分はもっと明るかったはずなんだ、普通に居られたはずなんだと、どうしても思ってしまう。
その教師の言葉が脳裏を過れば貴方へ向けていた眼を伏せ、スカートの側面にぐしゃりと皺を作った。

『それは…お気遣いどうも…。…どうにか立てては居ますよ。…怪我と言っても打撲でしょうし…冷やせばどうにかなるかと…』

制服やスカートを軽く叩きながら、抓んだ鼻を軽く啜った。打った部分は次第に腫れるようなジンジンとした痛みを放ち、それに眉を顰める。
そんな中、唐突に来た貴方の申し出に自分は「は?」と、表情で物語った。貴方が自分の能力について、ゴ〇ブ〇について何を知っているのか?何を根拠にそう自信ありげに言い放てるのか?自分には分からなかった。
しかし考える事が疎かな自分が、飛びつかないわけが無かったのだ。が、考える事の苦手な自分でも、疑う事は出来る。
本当に信じても良いのか?この胡散臭い教師を名乗る男を。本当にその手を取って良いのか?自滅へ導かれるかもしれないと言うのに。
今此処に、「はい」と「いいえ」のコマンドが設けられているなら、自分は………

『……分かりました…。…聞くだけ聞いときますけど…でも…せめて、場所を1つに絞ってもらわないと…困ります』

一旦は、「はい」を取る事にした。

>>イーグル・ダッドリー様、周辺ALL様

3ヶ月前 No.294

雪鹿 @class ★Android=42zyboh5vZ

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3ヶ月前 No.295

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=QaqN9zaUD6

【本校舎 屋上/久那 泣薇】

「玄武祭、ねぇ…」

哀愁を漂わせる1人の根暗男がそうボヤく。黒羽嶺との会合を経てからしばらく月日が流れた。まあ特にそれらしいこともしてはいないが、友達というのにはなれたんじゃないのか、そう思っている。あんなイタズラを仕掛けられて、しかも似たような過去を持っていることを匂わせていたのだし。まぁ、向こうにそういう意思がないのならもうイタズラを仕掛けてくることもないだろう。そうなったら、また次のターゲットでも吟味するんじゃないだろうか。

それはそうと、近々玄武祭なるイベントがこの学園で開催されるという情報を小耳に挟んだ。能力を用いた戦いなんかはこの前、公式戦が行われたという情報を聞いて大方把握していたつもりだったが、まさかガチの戦闘大会が開かれるとは考えもしなかったね。しかも予選形式とかまた面倒な手順踏まなきゃならないようだし、当日はもう適当に休んじゃおうかな…。

いや、優勝すれば土産話ぐらいにはなるんじゃないのか。やる気が無くなったらさっさとリタイアしちまえば手痛い怪我を負う事態にはならないだろうし、参加してみるぐらいの価値はあるかもな。面白そうだし。で、参加するにあたって問題になってくるのは俺がどれぐらいの実力を持っているのか、ということかな。それらしい戦いなんてあの時に施設で喧嘩売られたぐらいだし、もうブランクなんて言葉じゃ隠し切れないぐらい雑魚野郎にまで落ちぶれてる気がするな。

「…どうしようかね」

当日を想定した実戦練習なんかでも良い、喧嘩を売れば買ってくれるヤツも何人かいるだろうし。とは言っても加減し損ねて怪我をさせてしまうのも忍びない、そういう所でもこの能力は融通が効かない、やっぱめちゃくちゃ不便だな。

以前のような荒れた空模様ではない、今日に限って雲の隙間から光が漏れている。晴れを予感させる良い天気なんだろうが、この玄武祭とやらの情報を知ると、どうも嵐の前の静けさって感じがしてならない。転入してきた不良にとっては願ったり叶ったりなイベント、好きなだけ戦えるんだからな。当然、教師陣も生徒会も用意周到に準備しているわけなんでそう上手く行くはずがない。下手をすれば不良達を餌に自分らの組織としての強さをアピールできるんだからな。

「…ま、出るだけ出てみるか…」


≫all様
【黒羽嶺様との絡み文は一旦切らせていただいて、また新しい投稿をさせていただきました】

2ヶ月前 No.296

削除済み ★Tablet=z0xojwwJWy

【記事主より削除】 ( 2018/06/26 19:31 )

2ヶ月前 No.297

削除済み ★Tablet=z0xojwwJWy

【記事主より削除】 ( 2018/06/26 21:34 )

2ヶ月前 No.298
切替: メイン記事(298) サブ記事 (296) ページ: 1 2 3 4

 
 
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