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お国の未来は君の手に!

 ( オリジナルなりきり )
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異色王位継承譚 @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=nMqLjsjQcP

━━━━昔と言うには言い切れない時代の、此処ではない何処かの世界の、あるひとつの国の噺。


その国は大陸を統べる大国であり、500年間もの長い年月、統治を続けてきた。ある時は名君、またある時は暗君を生み出しつつも国が続いてきたのは何故なのだろうか。
人々は云う。『それはかつてこの国が生まれた際に、五人の賢者様が全てをお決めになったからだ』と。
かつてこの国が創られた遥か古の時代、王のいない土地を王国へと作り替えた五人の賢者がいた。彼らはその慧眼で王たる人物を見定めて、長きに渡り繁栄を保ち続ける国を創り上げたのである。彼らの偉業は後世にも語り継がれ、建国神話として人々の心へと根付いた。

そして今、その国には王がいない。

それは果たして偶然か、それとも予期していたことだったのか。何も告げずに疾風の如く冥界へと旅立ってしまった先王はかつてこう言った。『もし自分が死んだ際には、建国の礎たる五人の賢者の子孫を呼びて王を定めよ』と。彼の言葉は早急に実行されることとなった。平民に混じり、長閑に暮らしていた五人の賢者の子孫を巻き込んだその王位継承の武器なき戦いが幕を開けようとしている。使いの鳩が各々に招待状を届けるために飛び立った。その招待状が与えるのは歓喜、決意、覚悟、そして驚愕。すべての手筈は整った。


さあ、お国の未来は君の手に。



【閲覧ありがとうございます!五人の王位継承者候補と五人の賢者の子孫とそれを取り巻く人々でわちゃわちゃしながら王様決めようぜ!なスレッドです。興味のある方はサブ記事まで……!】

メモ2018/03/25 21:21 : すずり☆uVgy9R1pZdc @suzuri0213★Android-ti0IvmfI1e

《第1幕:其は邂逅という名の幕開け》:>>1

詳細:http://mb2.jp/_subnro/15708.html-61#a


ルール:http://mb2.jp/_subnro/15708.html-1#a


世界観・用語:http://mb2.jp/_subnro/15708.html-2#a


プロフィールの書き方:http://mb2.jp/_subnro/15708.html-4#a


現在の募集状況:http://mb2.jp/_subnro/15708.html-86#a


たくさんのいいねありがとうございます……!まだまだキャラクター募集中ですので、少しでも興味をお持ちになられた方は是非サブ記事まで……!

切替: メイン記事(44) サブ記事 (90) ページ: 1


 
 

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

《第1幕:其は邂逅という名の幕開け》

【ライラ・アルフワード/ドーム:大広間】

絢爛豪華な装飾品に、市井では絶対に手を付けられないような食事。やたらと疲れた表情を浮かべていた宰相の話も終わり、食べたいものを好きなだけ食べて自由に席も移動して良いと言われたというのに、ライラ・アルフワードは浮かない表情で何をするでもなく大広間の隅で壁にもたれ掛かっていた。ちら、と視線を向けてみると楽しそうに宴に興じる官吏や忙しそうにしながらもそれなりに明るい顔つきの使用人が映る。立食形式ではあるが座って食事をしたい者のためにそれ用の席も用意されてはいるのだが、なんとなくライラは居心地が悪く自然と目立たない場所に移動していた。
ごく普通の一般人に過ぎないライラがエヌカ王宮にやって来てから1週間程が経つ。名君と名高い先王、イヴェルタが亡くなってから後継者の選定のために五人の賢者の子孫として王宮に呼ばれ、ライラは今まで自分の血脈について何も教えてくれなかった父親を恨んだ。父親いわく「機会があれば教えるつもりだった」とのことだが今となっては後の祭り。元来の人見知りと顔の良い人間への抵抗を拗らせたライラは王宮に呼ばれてからずっと人目を避けるようにして過ごしてきた。廊下ですれ違う者には不敬罪にならないように挨拶をしてきたがほぼ目を合わせず下手したら逃げているようにも見えなくはない。そのため歓迎と交流を目的にした宴が開かれると知ったときには自室で頭を抱えた。ここで欠席したら何をされるかわからないので出席したが。

「……無理……」

言いたいことはたくさんあるのに出てくる言葉はあまりにも少ない。緊張しているせいで腹も空かないから食事を取ろうという気にもなれず、ライラは溜め息を吐くことしかできなかった。せめて飲み物だけでももらおうと思ったが運悪く顔の良い宰相ことエレク・ツァドゥー・ティファレトが近くの使用人や官吏たちに心配されながら退出するところだったのでライラが動けるはずもなく飲み物を取りに行くのは先延ばしにされた。恐らくエレクはここ最近寝不足らしいから仮眠をとりに行くのだろう。彼の働きっぷりは民もよく知るところである。直視はできないがライラは心中で彼の安眠を邪魔するものがありませんようにと祈っておいた。先王に続いて宰相まで死んだとなっては国が傾きかねない。

「……どうしよう」

口にしたは良いが、本当にどうしようもない。自分から高貴な後継者候補様に声をかけることなんてできないし、他の賢者の子孫たちとも交遊など深めていない。もちろん此処に知り合いがいる訳でもないので、実質孤立無援状態である。一通り周りを見渡してはみたものの、ライラはただ隅っこでもじもじしていることしかできなかった。

>>周辺all様

【これよりメイン開始となります!至らないところもあるかと思いますが何卒よろしくお願いいたします……!】

3ヶ月前 No.1

ろずに @tamtg ★PnMbNaCcXY_M0e

【影追 空女/ドーム:大広間】

 場を彩る絢爛たる装飾品に目を奪われながら、エヌカに赴いて以降初の大きな催事に、空女は心なしか軽い足取りで広間を進んだ。
 先王イヴェルタの葬儀から一週間が経ったばかりで、本来は国中が未だ喪に服す時期である筈なのだが、今回ばかりは特別である。イヴェルタの遺言通り、それぞれの分家から次代の王を決めるべくして、後継者候補がエヌカに集められて早三日。しかし、それまでの間は後継者や賢者の子孫同士で関わりを持つ事も無く、精々すれ違う際に挨拶を交わす程度であった。この度開かれた宴は以上の経緯を踏まえて、お互いがより友好関係を築けるようにと催された物である。
 天穂之宮の後継者候補である雨月の付き人として随伴して来た空女は、今までに天穂之宮を出た事が無かった為、エヌカの地で目に映る多くの物に感嘆していた。無論、この宴も例外ではない。

「あそこにある鷹の彫刻のなんと精巧な事か!!エヌカには素晴らしき職人がいるようだ!!はっ、この壷……初めて見るが、特徴的な紋様である!!どうやらエヌカには、まだまだ影追が知らぬ物が沢山あるらしい!!」

 ハキハキと大きな声で、しかし真顔で感じた事をそのまま口に出す空女の様子に、すれ違う官吏達が時折ビクリと肩を揺らして空女の方を振り返る。しかし、特に官吏達を気にする事も無く、空女は宴の為に調えられたテーブルの一角に視線を下ろした。
 そこには王宮に勤める一流の料理人達が丹精込めて作った色とりどりの料理が完璧に計算された配置のもと、美しく並べられている。影追はその料理と己の主人のいる場所を交互に見た。
 影追の主人である雨月は、ただ単に後継者候補だけで無く、雨穂之宮を統べる王室の分家の長子でもある。他の後継者候補や賢者の子孫のみでは無く、エヌカの政に携わる役人とも談話を行うなどして忙しくなるかもしれない。そこまで考えた空女は、雨月が談話の合間に食事ができるように料理を持っていこうと、自らテーブルへと足を運んだのであった。少しばかり主のもとを離れてしまったが、先程から周囲の警戒は怠っておらず、参加者達の様子にも目を配ってはいる。加えて、雨月は昔から喧嘩で培った力がある為、何らかの問題に発展する可能性は低い。
 料理を前に足を止め、雨月がどのような料理を好みそうか、自分でも料理を口に運びながら逡巡する。それぞれ違う料理を口にする度に「美味である!」と声を出す故、静かに考える事は出来ていないのだが。そして暫くして可愛らしい動物を象った軽食や菓子を見つけると、その皿を取り出した。男気溢れる勇ましい言動に反して可愛い物が好きな雨月が気に入りそうだと判断したのである。

「主様は喜んで頂けるであろうか!!『カカ、さすが俺の見込んだ奴だ!』と言われたらどうするべきか!!この未熟者の影追、心の準備が整っていない……むっ、あの姿は!!」

 下心を胸に隠す事無く言葉にしながら、皿を手に主人のもとへと歩を進めていた空女であったが、突如ぴたりと足を止め、広間の片隅に所在無げに佇む少女の姿を見つめた。真っ直ぐとした美しい髪を持つその少女は、五人の賢者の子孫の一人・ライラだ。エヌカの生まれのようであるが、黒髪と彫りの浅い顔は天穂之宮の人間に通じるものがある。おまけにエヌカの基準で言えばやや背が低い空女よりも更に小さい彼女は、その儚げな見た目も相まって小動物のように映る。
 確か、ライラとは先日で挨拶を済ませたものの、それ以降は特に会話らしい会話をした記憶は無い。
 次代の王を選定する、賢者の子孫達――。ライラの姿を確認するなり、「主様の付き人として挨拶をしなくては!」と意気込んだ空女は、もじもじ立ち尽くす彼女に声をかけた。

「ライラ様であられますな!!天穂之宮の後継者候補・雨月様の付き人の影追 空女と申します!!不束者でありますが、どうぞ誼を結んで頂きたく存じます!!」

 言うが否や、バッと素早い動きで一礼する。それは、優雅な淑女というよりも武人のような動作であった。

≫ライラ様、ALL様【本編開始おめでとうございます!早速ライラちゃんにグイグイ絡ませて頂きました…!】

3ヶ月前 No.2

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_GwQ

【 アリアナ・ウォーターリリィ / ドーム:バルコニー→大広間 】

 人生を一変させる切っ掛けになったことは何か。人にそう訊ねれば、人の数だけ異なる答えが返ってくるだろう。アリアナ・ウォーターリリィの場合は「誘拐犯に両足を切り落とされたこと」と断言する。明日は近くの家のあの子とボール遊びをしようとか、向こうの小山の川で魚と戯れようとか。そういう思想が激痛や流血と共に一気に吹き飛んで。気を失って。目が覚めた時には、自身の在り方は望まぬ形に生まれ変わっていた。――生まれ変わらざるを、得なかった。
 さすがにその時の衝撃には及ばないが、今回、こうして次の国王を決める立場の一人として王宮に招かれたのもかなりの出来事ではある。自分があの世にも名高き『五人の賢者』の子孫であることは知っていたけれど……だからといって、まさか齢12の子供がここまで重要な役職として国政に関わることになろうとは思いもよらなんだ。というか、思っている者がいたならそれはよっぽど自意識が過剰か、はたまたエスパーのどちらかだ。
 予想だにしない出来事でも、実際に起こり得たならばそれは現実。……エヌカ王宮に何人もの候補者や護衛たちが招集された一週間後の今日。まだロクに会話もしていない面々の親睦を深める――あるいは腹を探り合い、器を見定めあう場として設けられたこの宴は、痛ましいほどに忙しそうな宰相の話も終わって今は自由時間。大広間にはたくさんの料理が並べられている。それこそ庶民なら思い描くのもやっとの、実物を見れば目玉を飛び出させそうな豪勢っぷりだ。食器も食材も使われているのは一流のものばかり。それらを手掛けたコックもお決まりのように一流に違いない。
 さりとてそれらの料理にほんの少しだけ手を出した後、アリアナはグラスに入った飲み物だけを持ってバルコニーへと移動した。ガラスの扉を一枚隔てただけで、大広間の上品な喧噪が遠のく。適当に選んだジュースの中身は新鮮な葡萄で、しぼりたてのそれは仄かに甘酸っぱく、濃厚な舌触りだった。これもまた一流の葡萄なのだろう。身体の火照りを、喉を通り抜ける心地良い冷たさが落ち着けてくれる。パーティは嫌いではない。嫌いではないが、初対面に近いたくさんの人々の中に放り込まれるのが苦手だ。この作り物の両足は、裾の長いドレスで隠れていたとしても人目を引く。ましてや事前に義足だという情報を知っているらしい使用人らからの、気遣うような視線の数々は悪意が無いゆえに居た堪れなかった。だからこうしてバルコニーに身を置いている。

「……とはいえ、後継者の方々や他の賢者の子孫らと交流して、次なる国王陛下となるべき御方を見定めるのもボクの使命だ。その使命は誰にも何にも邪魔されるべきではない。それが例え、ボクの心や命であろうとも」

 ゆえに、こうしてバルコニーで涼めるのは精々があと数分。それ以上の休みは自分で許せない。小さな呟きをこぼした唇にグラスを傾け、三分の一ほど残っていた葡萄の果実を飲み干す。大広間からタイミングを見計らっていたらしい使用人がするりとバルコニーに現れてそれを回収し、またすぐに大広間へと戻って行った。さりげない気遣い。よく教育された使用人だ。まさしくエヌカ王宮に相応しい。ついでに義足のアリアナを慮って椅子まで置いてくれたあたり百点満点である。あとちょっとしかバルコニーにいる予定は無いが、そのちょっとの時間はこの椅子にお世話になるとしよう。大広間に戻ったら、知行合一を実践すべく腹を決めて意見交換に繰り出さねば。それまでは僅かにでも外の空気に当たって英気を養うのみ。義足暮らしは常人の倍疲れやすいのだ、少しくらいは休みが多くても怠惰とまでは罵られまい。

「――――よし、もう充分だ。さあ、ボクの役目をボクなりに果たすとしよう」

 しばらく瞼を閉じて深呼吸をした後、おもむろに目を開けて椅子から立ち上がる。ちらりと垣間見えた大広間の中では、早速、五人の賢者の子孫の一人と天穂之宮の後継者候補の付き人が接触していた。自分はまず誰に話しかけようか。厭らしくない程度に視線を大広間中に巡らせながら、アリアナはバルコニーの扉を押しやり大広間へと入り直した。

>ALL様

【メイン解禁おめでとうございます!】

3ヶ月前 No.3

キープ @keep4603 ★nJ5qCxa7H9_8gk

【雨月/ドーム:大広間】


────カチャカチャ ハグッ! モニュモニュ ハシュッ チュッ モニュモニュモニュ カチャカチャカチャ バリッバリッ! バチュバチュ ソボボゾボボボボ! モチュモチュ ズズズズズズ!


 宴の一時、団欒に花を咲かせていると何処からともなく聞こえてくる快音。腹をすかせた腕白小僧がご馳走に齧り付いているような、いやようなではない。本当に齧り付いていた。300gほどの厚切りステーキは二口で無くなり、山のように積まれていた揚げ鶏はモノの数秒で姿を消し、カニやエビなどの甲殻類の蒸し焼きに至ってはご自慢の固い殻ごと食われる有様。部下であろうか、黒衣に身を包んだ屈強な男衆が三人がかりで料理を運んでやっとそのスピードに追い付けるほど。表向き今回の宴に際して庶民である賢者の子孫にも自由に楽しんでもらえるよう、会食ではなく立食という形を取ったりはしたが、それでも最低限のテーブルマナーは弁えるというのが暗黙の了解として浸透していたはずだ。それをまるで意に介さぬ品のない、もとい豪快な食べっぷり。本来ならばマナーも知らぬ田舎者と一笑に付されるか、低次元の様相に眉を顰めるなどされるはずだが。それらの気も起きぬほどに“彼女”の食べっぷりは見ているだけで胸がすくような気持ちよさがあった。様子を見に来た料理長がその姿を見て、満足げに顔を緩ませたのも頷ける。一通り食べ終えた彼女が近くにあった大ジョッキに手を伸ばすと、その視線は一気に集まった。


────ゴッゴッゴッゴゴゴ! ッダン!

「ッカァー! うんめぇえ!! さっすがエヌカ王宮宴の席! 料理も酒も一等賞だぜ!」

 大ジョッキ約600ml以上のビールがわずか四口で胃に消えていった。外聞も気にせず喉を鳴らして酒を飲み干す豪傑に感嘆のため息ととともに何処からか拍手が沸き起こる。その張本人である女性は拍手の意味が全く分からず、ただきょとんと周りを見渡していた。
 この女エヌカ王国分家、天穂之宮からの後継者候補、名を雨月という。大陸東部に位置する天穂之宮は他の都市とは違い、顔立ちから文化に至るまで独自の進化を遂げてきた。その社会風土は完全なる身分社会であり、生まれ落ちた瞬間に自分が歩むべき道のりが定まっている。また男尊女卑の風習が根強く残っており、暴論ではあるが『女は嫡男を産み育てるために存在する者』という考えが未だ天穂之宮の空気に纏わりついていた。『天穂之宮の女は常に男を立て、慎み深く清純であり操正しく厳かに生きるべし』という教えを疑わず守り通してきた天穂の女たちはいつしか“天穂撫子”と呼ばれその純真たる心身からエヌカを含め他の都市の男性にも密かな人気を博している。
 雨月はそんな天穂撫子の姿に唾吐くような性格だった。豪放磊落、その言葉に尽きる。まるで男のように、いや男以上の度量と胆力を誇り、世情なんてどこ吹く風で自らしたいことをしたいようにする。まさに天上天下唯我独尊。良家の生まれながらその家を飛び出し、破落戸どもと喧嘩に明け暮れチンピラどもと夜通し飲み歩き、女を軽視する天穂之宮に真っ向から対峙する。その破天荒な生きざまからついた渾名は「うつけ姫」。そのうつけの姫君を護衛する数人の男衆。しゃんと背筋を伸ばし、顎を引き締める姿はどこか軍人じみた威圧感を発していた。この者たちがかつて天穂之宮で鼻つまみ者として堕落した生活を送っていたと誰が思うだろうか。その一人が青ざめた表情で雨月に話しかける。

『お、お嬢……宴の席でそんなにがっつかなくても……』

「あぁん? バッカヤロウ! エヌカ王宮が用意した絶品料理の数々なんて、人生で味わう機会なんざさらさらねぇぞ? 腹いっぱい食って何が悪い。大体なんだおめぇら! おめぇらこそ全然食ってねぇじゃねぇか! 国の金で飯が食える貴重な体験だぞ? 食っとけ食っとけ!」

『いや、その……美味そうだってのはわかるんですがね……緊張しすぎて食欲が沸かねぇんですよ……その、なんつーか。俺らはここにいちゃいけないっつーか……』

 男の言い分を雨月は静かに聞いていた。路地裏の暗い道、ごみ袋から臭う生物の異臭、暴力と恐喝でしか明日生き残る術を知らなかった自分たち。そんな汚れきった自分たちがエヌカ王宮というよくわからないが凄い場所に今いるという現実に、頭が追い付いていないのだろう。豪華絢爛な装飾品、桃源郷のような料理の数々、そして今まで貧困という地獄を味わったことのない多くの“真っ当な”人間たち。自分たちは異質、異端なのだ。まるで次元の違う世界に足を踏み入れてしまったという、恐怖心を抱いてしまっている。
 雨月は軽くため息をつくと、自分の皿に残っていた揚げ鶏をフォークで突き刺し、男の目の前に差し出す。

『……お、お嬢?』

「あーん」

『へ?』

「へ? じゃねぇよ! さっさと口開けろドアホウ!」

 言われるがままに男は口を開けた。その中に無造作に鶏肉を突っ込む雨月。反射的に口を閉じてしまった男は、口腔内の揚げ鶏の美味さにしばし呆然としていた。こんな美味い鶏肉は初めてだ。弾力のある肉質に甘みのある脂が絡んで、噛めば噛むほどそのうまさを増していっている。無我夢中で食べる男を、優しい微笑みで雨月は見つめていた。

「お前らはあの時の破落戸じゃねぇ。今はこの雨月様の、エヌカ王国の時期国王候補の護衛役を任された男らだ。胸を張れ。お前らはここにいていい。飯も食っていい。楽しんでいい。お前らがここにいることを、俺が許す」

 その瞬間、一帯の緊張の糸がふっと緩んだ気配がした。若干22歳。そんな小娘の言葉に、大の男たちが感動してしまったのだ。雨月の特異な能力とはそのカリスマ性と統率力にあった。彼女の言葉には不思議な熱がある。その熱は心の奥底にまでストンと落ちてゆき、じわりと身に染みるのだ。この人のために働きたい。この人の背中を追い続けていきたい。この人とともに人生を歩んでいきたい。雨月は生まれ持って先導者、リーダーの才能があった。
 そんな折、聞きなれた大音量が雨月含め護衛衆の耳にも届く。

『ライラ様であられますな!!天穂之宮の後継者候補・雨月様の付き人の影追 空女と申します!!不束者でありますが、どうぞ誼を結んで頂きたく存じます!!』

 相変わらず一語一語に気合を練りこんでいる。あの小さな体からどうやってあの声量が出せるのか知りたいものだ。男衆は皆頭を抱えているが、当の雨月はというと面白そうにケラケラと笑うばかり。

『いかがいたしやす、止めに行きやすか?』

「いんや、ほっとけほっとけ。流石俺の妹分、俺が気になっていたライラにいきなり話しかけるとは、カカッ! 俺らみてぇなガラの悪いもんが行くよりあいつに任せた方が良好な関係が築けそうだ。それより、料理取りに行かなくていいのか? じゃねぇと俺が全部食っちまうぞ? あぁ行くなら俺の肉とビールも一緒によろ」

『へい! 失礼しやっす!』

 男たちは意気揚々と皿をもって料理が盛り付けられているテーブルへと駆けていった。そんな光景を微笑ましく思いながら雨月は残っていたフライドポテトを口に加えしばし得られた情報を頭の中で整理整頓していた。一体誰と仲良くなれば効率的且つ利潤の上でも自分もとい天穂之原の民を幸せにできるか。まるでタバコを吸うようにポテトを食べながら雨月は一人感慨に耽っていた。

>>ALL様



【メイン解禁おめでとうございます】

3ヶ月前 No.4

五十鈴 @isuzu0☆LocDP0eky2k ★NbQEF8QrNY_mgE


【 シャーロット / ドーム:大広場→中庭 】


 はぁ、と小さく溜め息を吐いたアイボリーカラーのプリンセスラインのドレスを身に纏ったオヴェリアからの後継者候補、シャーロットは芝生の上でぺたりと足を延ばして座っていた。
 先王イヴェルタの葬儀は1週間程前に国を挙げて行われた。其処に自分も参列していた。本来、母が葬儀に参列するはずだったが病に倒れ、代わりと言っちゃ悪いが自分が参加した。先王とは母を通して言葉は交わさなかったものの何度か拝見していたが、まさかの早すぎる死に思考が追いつかず言葉を失った。母に告げると気を落とされたように弱々しく短く返事をし、そして母の代わりに葬儀に参列してほしいと頼まれたのが冒頭に繋がる。
 葬儀に参列して一度オヴェリアに戻ると、一通の手紙が自分宛に届いていた。内容は、イヴェルタの遺言である『 各地を治めるエヌカ王室の分家の長子を集め、5人の賢者の子孫に誰が最も後継者に相応しいか決めさせるように 』という文であった。一人ではどうにも考えが纏まらず、また病に臥っしている母に相談を持ちかけてしまった。どうすればいい、なんて自分らしくもない弱気な声にも母は頷きながら自分の話を全て聞き、優しくゆっくりと助言してくれた。


 *


 ぱふっという効果音を出しながら支えていた腕を自分の鳩尾部分で両手を重ね、仰向けになる形で寝そべる。汚いとか知ったこっちゃない。
 母の助言は『 あなたらしく、やってきて頂戴 』の一言だけ。それを聞いた時は思わず目を丸くしたが、少し肩の力が抜けた気がする。それほど気が動転していたのだろうか。――全く、まだまだ子供ですわね。
 それぞれの分家の長子、その付き人、さらには5人の賢者の子孫を集めて次期後継者を決める。このエヌカ王宮に集められて早3日。歓迎と交流を深めた宴を大広場で催しているようで、その宴の賑やかさが離れた中庭に居る自分の耳にも聞こえてくる。宴は嫌いでもないし好きでもないが、男が居る。名前も顔も知らない男が沢山居る。決して本当に知らない、と言う人も居るかもしれないが殆ど顔は見たことある人ばかりだ。名前まで覚えている人が居るかどうかは分からないが。そう思って大広場まで来たのはいいが、中には入らず逃げてしまった。
 宴に男が居るという理由で逃げてきた彼女は今、こうして暇つぶしがてら中庭に居る。交流を深めろと言われても男嫌いな彼女からにすれば、そこはもう地獄みたいなもので到底長居できる場所ではないのは明白。そんな状態で再び足を運ぶのも気が引ける。


「 ……あんなところ、行けませんわ。 」


 誰も居ない中庭に寝そべって独りの後継者候補が宴にも参加しないでこんな場所で時間を食ってていいのか、と思うかもしれないが到底動く気配すら見せない辺りは何とも言えない。動く雲でも見つめるように空を見ながらぽつりと呟いた。綺麗な青空に真っ白な雲。ぽかぽかした暖かな太陽に少し眠気に誘われてしまう。すると、1羽の小さな白い小鳥が自分の手の届く右隣で着地し、此方を見ているので「 ……あなたも来る? 」と小鳥に問いかけてみる。まるでその小鳥は彼女の言葉が理解できたみたいに可愛らしい足取りで彼女に歩み寄り目と鼻の先までやって来た。その光景にふふふっ、と笑ってみせた。先程まで暗そうな影を映していたいた表情は一変し、穏やかな笑みを浮かべるのであった。


>ALL様



【 メイン開始おめでとうございます! そして宴に乗り気じゃないシャーロットが中庭に出向いてしまい申し訳ありません!!!(土下座)。シャーロット共々よろしくお願い致します!! 】

3ヶ月前 No.5

レシェク @arthur ★iPhone=jrWuKYlW8J

【レシェク・イブン・ザキサディーク/ドーム:大広間】

 国王イヴェルタの葬儀から間もなく開かれた親睦会。国王の崩御をすぐあとにして、盛大な宴という訳にはいかないだろうが、テーブルに並べられた料理の数々は馥郁たる香りを放ち、華やかな列席者たちの口に入るに相応しい逸品が並んでいる。
 出席者の一人であるレシェク・イブン・ザキサディークはその美食の数々を口に運んではいたが、楽しんではいなかった。親睦会などと銘打ってはいるが、あからさまと言って良いほどには政治的な会食であり、イブラヒームと共に野営慣れでもしていなければ、口に運ぶことも難しかっただろう。事実、賢者の子孫の一人だというライラ・アルフワードなどは、いかにも居心地悪そうにしている。まだ年端もいかぬ少女には酷な場に違いない。
 水面下での駆け引きをだらだらと続けさせるのではなく、さっさと展開を進めてしまうおつもりだろうか。現宰相であるエレク・ツァドゥー・ティファレトの心内を想像していると、太々しくも健啖を発揮する音が耳に入ってきた。
 音の出所に視線を向けると、野性味すら感じさせる女性が料理の数々を貪っている。天穂之宮の後継者候補の雨月である。ハナから腹の探り合いを放棄しているのか、それとも政治的な駆け引きに疎い、いわゆる暗愚に分類される人間なのか。レシェクは多少の興味を惹かれた。

 「我らが王も舌鼓を打っていました。遠慮なさらず、楽しんで頂ければ何よりです」

 品の良い笑顔を雨月と緊張している様子の従者たちに向ける。
 先王とは言わなかった。まだ王は決まっておらず、建前の上では少なくともイヴェルタ王を悼む時期に当たるはずなのだ。
 それにも関わらず、誰はばかることなく彼女は振舞っている。さりげない質問ではあるが、イヴェルタの話題を出すことで、彼女がどういうつもりでいるのか。歪曲的な問いの意図を理解するか否かでも、知性は推し量れるだろう。
 端麗な顔貌の下に、ささやかな駆け引きを秘めて、レシェクは東方の姫君に問いかけた。

【初めまして、絡ませて頂きます。先王がどうの〜だの言ってますが、どれだけ葬式ムードなのかも本体がまだ量れていないところもあるので、臨機応変に相手して頂ければ幸いです!】

>>雨月 ALL

3ヶ月前 No.6

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

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3ヶ月前 No.7

真庭 @toukun22 ★Android=TVnkjESwdP

【ザカラ・サティーフ/ドーム:大広間】

「クソ、帰りてぇ……」

 思わず、といった様子で、そんな心の底からの小さな本音が口から零れ落ちた。幸いにも、夢中で話に華を咲かせる周囲の官吏達に彼の言葉が拾われることはない。まぁだからこそ、安心して地へ落としたのだが。
 ……本来なら、今自分はフォルターレの地を踏んでいるはずだった。荷馬車で運搬してきた商品を市である程度さばいたら、ラテンジョークがどうのこうのと喧しい友人の顔を見に行って……。それが、今や嫌味なほど絢爛豪華な王宮で、通常であれば決して顔を合わせることはなかっただろう偉大なる官吏達と楽しく談笑である。いっそ、全ては自分の見ている悪い夢なのではないかとすら思えた。ああ、なんたる場違い。なんたる不幸!

 ──まったく、一体何だってこんなことに……。

 ザカラ・サティーフという極々凡庸な行商人が突然王宮に招集されてから早一週間。自身に建国の賢者の血が流れていることは知らされていたが、よもやそんな五百年も前の賢者の話を持ち出され、王位継承問題などという大事に巻き込まれることになろうとは夢にも思っていなかった。昔から運だけは異様に悪く、命にすら関わる散々なトラブルに見舞われ続けて来たが、今回のはさすがに飛び抜けている。あまりにもその程度が酷すぎて、そもそもこの現実を受け入れるのにもそれなりに時間を要した。──ああ、せめて荷馬車に持ちの悪い商品を積んでいなくて良かった、なんて下らない幸運を拾い上げて自身を慰める程度には。

 そういった事情で、華々しい宴に臨むというのにも関わらず、ザカラの顔色は決して良くはない。……そう、良くない、はずなのだ。少なくとも自身の認識ではそれなりに疲弊した酷い顔をしているものだと思っていた。事実、体は鉛でも埋められたかのように重く、心は今にも責任感という見えない怪物に食い荒らされそうになるのを必死に抵抗している有様だった。他方で、何やらゾクゾクと背筋を沸き立たせる不明瞭な感覚こそあるものの、まさかこんな状態で顔色ばかりが血色良く健康的な道理はない。
 しかし、賢者の子孫に興味を抱いたのか次々と話しかけてくる官吏に応対する度、何故かやたらと『随分とご機嫌ですね、何か良い事でもあったんですか?』だとか、『ザカラさんはよく笑う朗らかな方なんですね』などと意味不明な文言を述べられる。……何だろう、確かに客商売に従事している自分にとって、愛想を振りまくのはそれほど難しいことではない。当然今回の宴でも商人としてのビジネススマイルで対応していたが、それは常ほど出来の良い代物ではなかったはずなのに。

 俺の接客技術が知らぬ間に上がっていた、ということだろうか……?

 密かに首を捻り不思議がるザカラには──精神的苦痛を受けることによって、快楽を感じる真性のマゾヒストという自覚のない彼には──その真相を知るすべはない。




 ようやく官吏達の話が一段落つき、挨拶もそこそこに話の輪から抜け出す。そこでつい、やれやれと重苦しいため息が漏れた。少し、休憩でも取るか……。そう思い、バルコニーにでも逃げ込むかとそちらへ目をやった時──一人、先客を見つけた。

 否、先客というのは些か語弊がある。何故なら彼女は今まさにバルコニーから大広間へ戻ったところだったからだ。
 随分と大人びた印象の少女だった。青藤色の長い髪に、落ち着き払った紫水晶の瞳……そして、どうしても目を引くその無骨な義足。話したことは無い。しかし、その外見的特徴と名前だけは知っている。何年も前から話だけは聞き及んでいた。
 九年前、たちまちエヌカ全土に知れ渡った異常さの際立つ凄惨な事件。狂人に両足を切断された、哀れな幼き被害者。そう、彼女は、同じ賢者の子孫の……。

「……今、話せるか?」

 自然、気を遣うような柔らかな声音になってしまった。こんな、自分よりも年下の、今にも折れてしまいそうな儚げな少女が、自分と同じ重圧を背負っている。それだけでも彼が動くには十分以上だった。
 賢者の子孫。その忌み名がかつては彼女の両足を奪い、そして今、国王の選定という途方もなく重い役目と責任を彼女の細く柔い双肩へ担わせることとなった。……一体、彼女の今の心境はいかばかりか。同じ賢者の子孫として、同じ重圧を知る者として、自分が少しでも彼女の心労を減らす一助となることが出来ればいいのだが。

「もう知っているかもしれないが──俺は賢者の子孫の一人、ザカラ・サティーフだ。普段は行商人をやっている」

 元より自分の顔が、女子供に好かれるような優しげな造形ではないことは自覚している。警戒されぬよう、ひとまずはそう名乗ってから、困ったような笑みを口元に浮かべた。

「その、なんだ。……大変だな、お互い」



【 ボクっ娘可愛いアリアナちゃんに絡ませていただきます! 駄文のくせに無駄に長くなってしまって申し訳ないです……! 本編開始おめでとうございます!】

>>アリアナ 周囲ALL

3ヶ月前 No.8

天象儀 @bontubu10 ★Android=zJTQcLJQbw

【ジレゴ/ドーム:大広間】

「ふあぁあぁあぁあぁあぁ…………っと」

 ビブラートを効かせた壮大な欠伸が一つ、金髪の青年の締まりがない口から発せられた。

 もしここが一週間前に執り行われた先王イヴェルタの葬儀会場であったならば、この行いは途端に参列者全員の目を引き、同時に音源である彼に対して少なからず反感が募っていたことだろう。

「……………ねっむ」

 しかし、生憎と彼の所在は宴の場。

 王の空席を埋めるために方々から集められた五人の後継者候補とその付き人、そして次期後継者の選定の権利を保持する賢者の子孫達といった、なんとも豪華絢爛な面々が一堂に会して催されるという、実に“平和的”な親睦会。

 高潮した雰囲気に包まれたこの空間において彼……ジレゴの欠伸などは何らの影響ももたらすことなく、宴の殷賑さに揉み消されてしまった。

 溜まった涙をぐしぐしと拭い、二三のまばたきをした後、そこかしこに見えるきらびやかな装飾品に怪訝そうな表情を浮かべてキュッと目を細めた。

「確かに人が多い所も酒の席もキライじゃねぇし、可愛い女の子もたくさんいるけど……ねぇ?一言に“仲良くしましょーね”って言って素直にお友達になれるメンツじゃねぇような気がするんだがな、こりゃ………」

 興奮冷めやらぬ宴の会場の隅、塵一つない荘厳華麗な壁にもたれかかり、ヒザに頬杖をついてしゃがみながら、会場全体をジットリとした眼で観察する。

 大好物の酒の匂いがツンと鼻を刺激した際、美しい少女が目の前を横切った際、欲に負けて何度か思わず立ち上がりそうになったが、瀬戸際で誘惑を捩じ伏せてきた。

 感情に任せて動くのは、まだ早い。


 戦いは、すでに始まっているのだから。


 エヌカを訪れたのは、これで三度目。

 前回はイヴェルタ王の葬儀だった。水葬という、フォルターレ出身のジレゴからすれば至極奇妙な風習に驚愕した記憶が、今でもまだ鮮明に残っている。一度目からは随分と時を経た訪問であった。

 初めてエヌカを来訪した際、まだ彼は母に手を取ってもらえなければならないほどの、年端も行かぬ一人の無邪気な少年だった。それまではエヌカという単語には何らの馴染みもなく、実在するのかさえ疑っていた。

 この地で母を失うことになるという残酷な未来など、当時の彼の爛々と輝く瞳には、決して映し出されてはいなかっただろう。

 ジレゴの瞳の輝きは、母が見知らぬ男達によって命を落とすのを見たあの瞬間から、一度たりとも取り戻されることはなかった。キラキラとした金色の瞳に底知れぬ闇が深く刻み込まれ、どんよりと濁りを帯びてしまった彼の目は、もはやかつて母親に見せていたような無垢な喜びを表現することもできぬ不良品に成り下がってしまった。


 変えなければならない。


 なんの罪を持たない人間が命を落とす社会なんて、誰も望んじゃいない。あってはならない。

 他の後継者候補なんて信用できない。自分が王になって、変えてみせる。


 そして平和になった国で、命の危機に瀕していた自分を助けてくれた“あの人”と再会を果たす。


 辺りが暗かったこと、死の恐怖に冷静さを欠いていたことにより、顔も、声も、何も覚えちゃいない。分かっているのは、自分とそう年齢差のなさそうな男性であったということ。

“あの人”が手を引いてくれなかったら、きっと今の自分はここにはいない。

 会わなければならない。会って心より礼を言わなければならない。王になって平和な国を作り上げれば、きっと彼は目の前に現れてくれる。

 固く決心し、首を二、三度横に振り、気合いを入れる意味も込めて顔をパチンと叩いた。


……とはいえ、今は動くつもりはない。作戦が練られていないのもそうだが、何より“キケン”だからだ。

 この会場には顔見知りなどほとんどいない。ここ数日、ろくに言葉も交わしてこなかった、素性の知れぬ者ばかり。ポイントを荒稼ぎしようと迂闊に動いたり、変な動きをして悪目立ちしてしまえば、後できっと後悔する。

 後継者争いの相手は強者ぞろい。そう何度も自らにチャンスが舞い降りるほど甘くはない。がっつかず、皆とは少し離れた所で待ちに徹するのが最善手だろう。そこまで考えてのポジショニング。


 だったのだが。


「にしても難儀なこった。ここぞっていう絶好の機会が来るまで、ひたすら待ちに徹するだなんて魚釣りみてぇなことを延々と、なんて……………んぐっ………んぐっ………ぷはぁ……………はっ!?」

 自分の手元を見た。空っぽになったグラスがシャンデリアの灯りに照らされ、キラキラと宝石のように輝いている。

 喉の奥を満たす爽快感。次第に火照っていく己の体。後悔しようにも、もう頭が働かなかった。

 昔話に意識を集中させていたうちに、欲望に駆られた両足が、文字通り愛する酒の元まで一人歩きを行っていたらしい。隅にいたはずの青年は、いつの間にやら近くのテーブルで兵士たちと同席してしまっていた。あれだけ“駄目だ”と言い聞かせてきたのに……。

 本能が理性に完封勝利をおさめた歴史的瞬間である。

 ぽかんとした顔でグラスを見つめること数十秒。ジレゴの肩がプルプルと痙攣を始める。やがて溜まったものを放出するかのように、大きくのけぞってバッと両手を広げた。


「くっ…………だははははははぁ!!今日は無礼講だぁ!!何杯でも持ってこぉぉぉい!!」


 自称“酒には強い”彼は、実際には雀の涙ほどのアルコールでも出来上がってしまう、限りなく下戸に近い軟弱飲酒者である。

 このように普段の面影をぶん投げてハイテンションになることもあれば、退行して泣きじゃくることもある。日によって様々な状態異常を起こすのがジレゴという男であるが、今日は実質上のライバルたちとの親睦会という緊張が変な方向に暴走してしまったらしく、天にも届くような高笑いをパーティー会場であげ始めた。

“変な動きをして悪目立ちしてしまえば、後できっと後悔する”

……悪目立ちもいいところである。


 どのくらい笑っていただろうか。視界がぼやけ始めた。気分の高揚の次に泥酔した者に起こりうる現象と言えば、一つしかあるまい。

 限界を迎えたのか、一匹のへべれけ男はなりふりかまわず机の上、しかも料理が乗った皿の上に勢いよく突っ伏した。肉料理にまんべんなくかけられた甘辛いソースがべっちょりと顔面を覆いつくした時、彼は一言だけ発して眠りに落ちた。


「なははは…………うまい…………ぐぅ………」


>>ALL様

【出遅れたぁぁぁぁ!!!
ワイワイガヤガヤなパーティー会場で居眠りかますという、初手から掟破りのジレゴくんが通りますよっと。
えと、メイン解禁、心よりお祝い申し上げます!待ちわびておりました!開始早々、見苦しい文章とジレゴの言動でお目汚ししてしまい申し訳ございませぬっ……!もう頭蹴っ飛ばしても酒ぶっかけてもいいので構ってください……!(((
ご覧の通りの変なキャラと本体ですが、皆様の素敵なお子様と精いっぱい楽しみたいと思います!!なにとぞ宜しくお願い致します!】

3ヶ月前 No.9

ジョン湿地王 @ferudhires ★Mcag7Tw3Rv_Swk

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3ヶ月前 No.10

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_YD6

【 アリアナ・ウォーターリリィ / ドーム:大広間 】

 バルコニーという安らぎの空間から大広間という現実に引き戻される。否。自分で帰って来たのだ。それをさも誰かの手によるものであるかのように表現するのは、あまりにも不格好すぎる。軽く息を吸って、静かに吐いて。まずは五人の賢者の子孫でも、次期国王の候補でもない面々に話しかけてみるもの良いかもしれない――と考えたところで。明らかに男のものと分かる落ち着いた印象の声がアリアナの肩口にかかった。咄嗟に視線をそちらへ向ける。
 成人男性だ。犬か猫かでいうとどちらでもなく、狼が近い鋭利な印象の顔立ち。悪っぽいのが堪らない、という女性にはかなりウケるだろう。けれど容貌に反して声色に気遣いが滲み出ている辺り、中身は決して悪党や外道の部類ではあるまい。身長はアリアナより軽く10cm以上は上なので、当然、彼と目を合わせようと思えばこちらは顔を上げることになる。黒髪黒目のシックな色合いの中、右耳で揺れるイヤリングの赤さとデザインが鮮烈だ。どこの国のものなのだろう。たくさんの本を読んで色々な国の文化を頭に叩き込んできたアリアナが、それでもなお「××の品である」と明言できない程度には珍しい造形の品だ。ひょっとしたら店物ではなく個人の作品なのかもしれない。でなければ、文化の内容が本にも記されていない未開の土地の逸品か。なんにせよ特徴的だ。
 話せるか、という問いかけに、仄かな笑みを浮かべて頷き返す。ザカラ・サティーフ――そう名乗った彼もまた、五人の賢者の子孫だ。普段は行商人をやっているという情報は初めて耳にした。相変わらず、自分は本で手に入れられない知識に弱い。やはり人のことを知ろうと思えば、こうして実際に語り合うのが一番手っ取り早そうだ。今まで廊下ですれ違う程度にしか交流が無かった相手。自分が相手の名前を知っているように、相手も自分の名前を知っているだろうけれど。それでも向こうが名乗ってくれた以上は、こちらも名乗り返すのが礼儀というもの。アリアナの常識では少なくともそうなっている。

「ボクはアリアナ・ウォーターリリィ。貴殿と同じく、五人の賢者の子孫の一人です。……ふふ、そうですね。次なる国王陛下の選定にこうも直接的な形で携わるなんて、ボクは考えてもおりませんでしたし、貴殿も想像だにしていらっしゃらなかったでしょう。なのに現実、ここでこうしてそのような立場に立っている。これは大変なことですし、大事なことです。――お互い、潰れてしまわないよう心掛けつつ、されど気を抜くことなくお勤めを果たすと致しましょう。改めてよろしくお願い致します、サガラ・サティーフ殿」

 人の警戒心や猜疑心を削ぎ落すような効果のある笑みと共に話しかけてきたサガラに、こちらも悪意や害意を含めないさっぱりとした笑顔を返す。とはいえ口数が不自然に多くなってしまったのは許して欲しい。大人びているとはいえ子供なのだ、こんな状況で100%素面を保つのはさすがに無理がある。数日中に王様(※ご遺体)やら宰相やらのお偉い方々に御目文字したばかりなのだから余計に。
 握手を願い出ようと、こちらは足と違ってちゃんと血の通った本物である右手を差し出した……差し出そうとした刹那、凄まじく狼狽した様子のライラに話しかけられた。楽しんでいるかと聞かれたら、そりゃあ満面の笑みで「はい!」と答えられるほど純粋に楽しんではいないけれど。それでも目の前の彼女に比べれば楽しめているほうである。どこからどう見たって平常心を保てていないライラの挙動は、お見合いで目の前の旦那候補ではなく同性の仲人にばかり話を振ってしまう緊張が極まって混乱気味の令嬢のようだ。対して、空女には戸惑いの欠片も無い。まっすぐな人間性から繰り出されるまっすぐな言動の数々。なるほど。人見知りや緊張しいの気があるならば、この手の女性を相手につい挙動不審になってしまうのも已む無い。――ここは期待されている通り、緩衝剤としての役目を買って出るとしよう。

「そういう貴嬢はライラ・アルフワード嬢。ええ、楽しんでおりますよ。お気遣い有り難く頂戴いたします。――そちらの御方は、天穂之宮からの後継者候補たる雨月様の付き人、影追空女嬢で御間違いありませんか? ボクはアルフワード嬢と同じ『五人の賢者』の子孫が一人、アリアナ・ウォーターリリィと申します。こちらは同じ立場のザカラ・サティーフ殿。よろしければ、お話にご一緒しても?」

 絵画の中の女性の口元によく刻まれている、派手すぎず地味すぎずの程よい微笑み。それを表情に装備してライラと空女に順に視線を送り、最後にはサガラの紹介まで交える。もしもサガラが話し合いに乗り気でないなら申し訳ない。その場合は、それっぽい素振りが見え次第なんとか彼がこの場から自然に離れられる口実を用意しよう。
 ――それにしても。これで影追空女の周囲には、次期国王を決める立場にある『五人の賢者の子孫』が三人も揃い踏んだことになる。初っ端からこの状況に持ち込めるなんて、この空女という女性はよほど運が良いか策士かのどちらかに違いない。惜しむらくは、彼女がいくら己の主を宣伝したところで、彼女の主ご自身に玉座への興味が無いことか。お国の王様よりお山の大将が性に合っていると、負け惜しみや虚言ではなく本気でそう感じていそうな女傑。カリスマの使いどころを既に別に見つけている者。あの手の人間が玉座を狙う素振りを見せていない時は、ブラフでも何でもなく本当に狙っていないのだ。そのスタンスを変えさせるには、何かよほどの出来事が起こらない限り難しい。彼女が大人しくエヌカ王宮まで出向いた理由はきっと別にある。……本ばかり読んでいて対人関係の経験値がちょっと不足気味なアリアナの考えなので、まるっきり見当違いなら申し訳ない。卓見のつもりの間違った考察ほど恥ずかしものは中々ないから、そのパターンだと後で一人になったあかつきには部屋のクッションに顔を埋めて足をジタバタさせよう。

>ライラ・アルフワード様&影追空女様&ザカラ・サティーフ様&ALL様

【サブ記事の件、承知いたしました! ご丁寧にありがとうございます! 無駄に長くなるのは私もそうなので、どうかお気になさらず……! こちらこそ、読み辛かったらすみません】

3ヶ月前 No.11

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_pp5

【 サラ・キルスティナ / ドーム / (大広場→)中庭 】
 先王イヴェルタの葬儀から一週間が経ち、悲しみに沈んでいた王宮は平静を取り戻しつつあり、今日の宴の為か、平時の華やかさもまた少しづつ戻ってきているようにも見受けられる。
 よもや一週間という短期間で王宮にとんぼ返りすることになるなどとは予想だにしていなかったものの、その理由がイヴェルタの遺言に依る物である以上、主であるシャーロットがその命に従う決断をした事も頷ける話であった。彼女に付き従う形で、サラ・キルスティナもまた、やや慌ただしく王宮へと戻る事となっていた。
 そして現在。サラはシャーロットを追う形で、宴の最中ではあるが、中庭を訪れている。自らの主の邪魔をせぬように少し離れた位置で待機しつつ、彼女の様子を眺めていた。中庭で鳥と戯れるシャーロットの姿は、身内の贔屓目を差し引いても、吟遊詩人や童話に語られるような姫そのものだと言ってしまっていいだろう。これが宴の最中でなければ素直に見惚れてもいられるのだが、残念ながら今はそうもいかない。あの宴は、シャーロットがどう身を振るにせよ、今後も付き合っていかねばならない面々が顔をそろえている場なのだから、何とかお戻りいただけないものだろうか、と考えてはいるものの、残念ながら上手い説得も浮かばない。
 一応素直に主が大広間に姿を現した場合に備えて準備もしてあったものの、大広間の男性の、特に彼女が今日初めて会う男性の数の多さによって、それも無駄になってしまうであろう。そうであったとしても、彼女に文句などない。10年前に比べれば、一歩ずつの進歩でも、かなりの改善を見せてはいるのだから。

「……ご機嫌麗しゅうございます、宰相様。お嬢様は少々お疲れで、お休みになっているだけでございますので」

 シャーロットの傍に跪くエレクに対し、つつと近寄って一礼したうえでそう告げ、お気遣いありがとうございます、と付け加える。
 完全に言い訳となってしまうが、エレクがそもそも中庭で寝ていることにほとんど気が付いておらず、また彼が余り足音を立てなかったことでシャーロットの傍に跪くような頃まで彼が居た事を認識できずにいたのである。対応が遅れたことは後でシャーロットから小言を言われるだろうけれど、それは甘んじて受けるしかあるまい。

>>シャーロット、エレク、周囲all

【絡みますー、よろしくお願いいたします】

2ヶ月前 No.12

ろずに @tamtg ★PnMbNaCcXY_M0e

【影追 空女/ドーム:大広間】

 大人しそうなライラが思わず竦み上がりそうなほどの声量とキレのある所作は、案の定彼女を戸惑わせる結果に至った。「ふおっ!?」と変わった声をあげるライラに対して、馬鹿正直に「面白い声でありますな!!」と告げる。無論、大声で。
 そして次に聞かれた彼女の言葉は、空女や天穂之宮の者達への不敬がみられなかったか、と不安そうに尋ねるものであった。

「むっ!?気に障る事!?そのような事はありますまい!!この影追、折角開かれた宴にて、皆様方と交流を持ちたいと思った所存であります!!」

 あくまで友好関係を望んでいる事を伝えたのだが、如何せん大声と真顔のせいで気軽に話しかけ難い雰囲気を放っている。おまけに、空女の属する天穂之宮の者達は雨月を筆頭に、一見すると堅気には見えない人間も多い。一般的な家庭で育ってきたライラにとっては、さぞかし恐ろしく映るだろう。
 そして空女が握手の為に手を差し出すのと、ライラが縋るような声色でアリアナの名を呼ぶのは同時であった。

「あ、あああ、アリアナ殿!アリアナ・ウォーターリリィ殿ではありませんか!たっ、楽しんでますか!?」
「なんと!アリアナ様ですと!!それに、ザカラ様までいらっしゃるとは!!」

 空女とライラの位置からやや距離のある大広間の一角には、彼女と同じく賢者の子孫であるアリアナとザカラが二人で会話をしているようであった。ライラの声を聞き、視線を目の前の黒髪の少女からアリアナとザカラに向ける。それは二人も同じで、不意に名前を呼ばれたアリアナとザカラがこちらを振り向いた。
 まさか、賢者の子孫の三人と話す機会が持てるなんて――――。願っても無い僥倖に、思わず空女の胸が躍った。三人とも、貴族階級では無いが次の王を選定する者達であるため、我先にと堂々と彼らに向かっていく剛の者は少なかったのだ。降って湧いた幸運に、元・忍びの落伍者は主人達の方をちらりと見やる。そこには、正面切って賢者の子孫へと突っ走った空女に頭を抱える組の者と、周囲に健啖ぶりを披露していた雨月に、そんな彼女と会話をするレシェクの姿があった。状況が読めずに頭上にクエスチョンマークを浮かべたが(男衆の悩みの種が己であるとは露ほども思っていない)、アリアナがザカラ共々自己紹介を始めた為、空女もそれに倣った。

「如何にも!改めて挨拶をさせて頂きたい!後継者候補が一人、雨月様の付き人の影追空女と申します!どうぞよしなに!この宴にて皆様とお話させて頂ける事、誠に嬉しく存じます!!」

 先程ライラにも見せた、ブンと音が聞こえそうな程の素早い所作で一礼する。そして頭を上げると、アリアナとザカラの両者の様子を失礼にならない程度に垣間見た。
 美しいグラデーションのドレスが、持ち主であるアリアナが動く拍子にそよりと揺れる。どこか物憂げなさまを感じさせる眼差しや、指先一つ一つの動きが艶かしく、こちらを見守る一部の官吏達が落ち着か無さ気に、彼女にちらちらと視線を送っている。加えて、生身の身体ではない両の足が一層彼女を彫刻たらしめていた。
 一方のザカラはと言うと、鋭い目つきや顔立ち、無駄の無い引き締まった身体が力強さと気難しい印象を受ける。しかし、宴が始まって以来何故か嬉しそうな表情を浮かべている為、空女はとりわけ彼が宴を楽しんでいるように思えた。実際は、出会って間もない彼女に、彼の隠れた部分を早々に感じ取るのは困難であっただけなのだが。三人にそれぞれ「夜を切り取ったかのような美しい御髪である!!」「神話の花の精のような妖艶さがある!!」「素敵な笑顔である!影追も見習いたいものだ!」と言われた相手が恥ずかしくなる程の直球すぎる賛辞を送った。基本的に感激屋で正直な性格故に思った事を言ったまでだが、一部の者達からは賢者の子孫相手に露骨におべっかを使っていると思われても不思議ではない程に。
 ポンコツ従者たる空女であったが、自己紹介をする傍ら、彼女達と雨月が会話できる機会を作れないかと思い巡らせた。雨月がエヌカへ来た本当の狙いは山狗組の宣伝と亡き先王の弔いだ。己の主人が本気で王冠を欲していない事は空女も理解しており、その意向を尊重しているつもりだ。しかし、こうして彼女達と雨月を引き合わせようとする行動には、空女自身が雨月に王位に就いて欲しいと言う無自覚な願望の表れでもあるのかもしれない。尤も、卓越した知識を持ち、人との会話を求めるアリアナにはそれが見抜かれているようであったが。
 兎にも角にも、彼女達を雨月に繋げるべく会話を広げようと思い立った空女は、エヌカの出身である三人にこの地の生活や文化について尋ねてみた。

「この影追、これまで天穂之宮を出た事がありませんでした!!故に浅学でお恥ずかしいばかりであるが、エヌカの文化や暮らしについて知らない事が多くあります!!宜しければ、皆様からエヌカでの生活についてお聞かせ願いたい!!」

 迫り来る大声と真顔。どこぞの戦士かと思わせる素早い所作。本人は全くの無意識であるものの、対面する相手によっては「逃がさないぞ」と言わんばかりの気迫を感じても仕方の無いものであった。

≫ライラ様、アリアナ様、ザカラ様、ALL様【いえいえ、ライラちゃんが良い反応をしてくれてニヤニヤしております!笑 びくびく怖がるライラちゃんプライスレス…】

2ヶ月前 No.13

琉綺 @rua12 ★Android=OhowgRleiW

【シャリファ・ハーシム / ドーム:大広間】


親睦会と銘打って行われている今宵の宴。
テーブルに並べられた料理よりも、きらびやかな装飾品に目がいくのはデザイナーである母親の血なのだと思う。だが、テーブルから離れた場所で壁に背中を預け大広間を見回している辺りはシャムトに仕える父親の血だな。と自分自身の行動に両親を思い出し苦笑いを浮かべた。それと同時に家族の顔を思い出しグラスに半分ほど残っていた酒を一気に飲み干した。家族を憎んでいる訳では無いがどうしても許しきれないところがある、なぜならシャリファの生き方は産まれる前から決まっていたのだから。


シャリファは産まれる前から父と同じようにシャムトに仕える人生が決められていた。その決められた人生は幸せなことなのだと小さい頃から父の周りの大人に言われてきた。幼い頃はその言葉を信じていたが、その生き方は自由がないのだと気づいたのはいつの事だったかハッキリとは覚えていない。ただ、主の付き人として学ばなければならないことを全て学び、身につけた後だったことは記憶している。シャリファが変わったのはその頃からだった。父に忠実に従っていた何も知らない小娘から父にも自分の将来にも反抗するようになった。「ちゃんとしなさい」幼い頃から幾度となく父に言われたその言葉に従うのがめんどくさかった。その反動で今では何をするにもめんどくさいと言い、間延びした独特の口調の付き人として周りからは大丈夫か?と問いたくなる様な行動をとるようになったのだ。


そんなめんどくさいが口癖のシャリファにとってはこの宴に参加しているだけでも褒めて欲しいくらいなのだが。
特に食欲がない訳でも料理が口に合わない訳でもないが、シャリファはテーブルに並べられた料理に手を付けてはいなかった。というのもこのテーブルから離れた場所から周りに人が多くいる場所へ料理をとりに行くのもめんどくさいというのが1番の理由なのだが。それに何せシャリファに1番近いテーブルは天穂之宮の後継者候補が占領している。あまりにも気持ちのいい彼女の食べっぷりに拍手をしてしまったのだが、天穂之宮の女性はもっとおしとやかだと聞いていたのは何かの間違いなのではないか?大広間に時折響く天穂之宮の付き人のハキハキとした大声と相まって天穂撫子とはなんだったかを見失ってしまった。


そんな天穂之宮の後継者候補に興味を持ったのだがシャリファは話しかけに行こうとはしなかった。なぜならエヌカに行く際に父からさんざん言われた「他の国の方に失礼のないように!」「シャムトのイメージを悪くするような行いはするな!」との言いつけを守っているからだ。


「あーめんどくさい。」


空になったグラスを見つめ1人静かにそう呟いた。

>>周辺all


【メイン開始おめでとうございます!
出遅れたくせに完全受け身ですみません!
よろしくお願いします!】

2ヶ月前 No.14

五十鈴 @isuzu0☆LocDP0eky2k ★NbQEF8QrNY_mgE


【 シャーロット / ドーム:中庭 】


 小鳥と戯れる彼女は今、大広場で宴がなされていることを全く知らないといった空気が漂う。あわよくば森に迷い込んで無防備に寝そべっている女と間違われても仕方ない光景。そんな危機感も感じさせない程目の前の小鳥に夢中なのである。
 目と鼻の先に留まった小鳥に笑みを浮かべながら、おそるおそるその小さな身体に触れようとした。もう少しで触れられる――と思った時、ふと控えめな足音が耳に入る。触れようとした手を一度止めて誰かを予想してみる。大きな足音ではなく、なるべく音を立てないように配慮した足音。自分の付き人か他の者かと思い、止めていた手を再びゆっくり動かす。あと少し、もう5mmぐらい。あっ、触れる。と、確信に塗れた表情で触ろうとした。―――が、自分の顔に影がかかり自分のすぐ上でしゃがんだ者が『 そのような場所で寝そべっていたら服が汚れるぞ。 』と声をかけた。その声に驚いた小鳥は瞬時に羽を広げ、空に向けて力強く羽ばたいてしまった。もう少しで触れたかもしれない小鳥を逃がした彼女は呆気に取られた表情を浮かべたが、その顔はみるみると青ざめていく。ぎぎぎ、なんてネジを巻くように首を声がした方へたどたどしく向ける。そこには紛れもなく男。しかもエヌカの宰相、エレク・ツァドゥー・ティファレトだった。


「 ひっ……!! なっ、なななな、何ですの!? 」


 男嫌いのシャーロットにとって彼は天敵のようなものだ。青ざめる顔のまま短く恐怖染みた声を上げると、先程まで寝転がっていた者がいきなり立ち上がったので少し足を掬われよろけてしまい尻餅をつく。まさか付き人ではない者が話しかけてくるとは、しかも男という予想外の出来事だったため脳がパンクし理解が追いつかなかった。そして続けて宴のことを問いかけてきたので目線を地面に向けながら「 お、男が苦手だから無理よ! 」 と簡潔明瞭に早口で答える。声色は自分を咎めるものではないと整理のつかない脳が教えてくれるが、今の彼女はそこまでの余裕が無かった。

 尻餅をついたのはいいが、力を入れて立ち上がろうとしても驚いた衝撃で腰が抜けてしまったのであろう立つにも立てない。しかも前には宰相。男に頼るなど言語道断な彼女にとって早く付き人が来るのを祈るばかりだった。そう思っていた最中、もう一人此方による足音に顔を向けるとそこには自分が付き人の中で最も信頼を寄せているサラ・キルスティナの姿が目に入る。サラは宰相に一礼してこの現状を説明するように告げた。サラの言葉に間違いはないが、自分の後を追って来てくれた彼女には主従関係があるものの頭が上がらない。


「 ……ありがとう、サラ。――……も、申し訳ありませんわ。 」


 青ざめた表情から少し顔色が戻り、小さく礼を告げる。そして宰相に向けて彼女自身悪気は無かったとはいえ随分と失礼な態度を取ってしまっため、ぺこりと首を縦に動かして謝る。続けて「 サラもごめんなさい……。 」と付け加える。サラについては自分の代わりに言い訳をさせてしまったことに罪悪感を感じたためである。とりあえずサラが来てくれたため緊張の糸が解れ、一先ず深呼吸をして自分を落ち着かせる。

 繰り返し深呼吸をしてるとパンクしていた脳も少しずつ冷静さを取り戻した。異性に関して10年前よりかは耐久がついたように思えたが、やっぱりまだまだ完全とは言えず小さく溜め息を吐くのであった。


>エレク・ツァドゥー・ティファレト様、サラ・キルスティナ様、周辺ALL様



【 絡んで下さりありがとうございます! エレク様には大変失礼な態度ですし、サラ様には言い訳をさせてしまい申し訳ありませんんん!!! 】

2ヶ月前 No.15

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

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2ヶ月前 No.16

キープ @keep4603 ★nJ5qCxa7H9_8gk

【雨月/ドーム:大広間】

 どうしてこうも腹に何か隠し持っている人間の顔というのは、どれもこれも似たり寄ったりなのか。自分たちに話しかけてきたレシェクの上品な笑顔を一瞥しただけで、雨月は彼の言葉はそのままの意味ではないことを悟った。笑顔というものは便利なもので、千差万別の感情を内に包み隠してしまう。たとえ目の前に殺してやりたいほど憎んでいる人間が現れても、人は笑っていられるのだ。生々しい本心を悟らせないために。
 “人足屋”という人間を商品にする生業のためか、雨月は人間の目利きに長じていた。レシェクという男は、理性も知性も兼ね備えているが利に対する執着心が少ない。謀略を持って他人を陥れようとするタイプではなさそうだ。だが利口者の性なのか、他人との腹の探り合いや駆け引きを純粋に楽しむ遊び心も持ち合わせている。売られた喧嘩は買う主義だ。まぁこの場合、喧嘩というよりダンスのお誘いと言い換えた方が無難だが。部下の一人に酒をもって来させて、レシェクに渡す。

「じゃあ“乾杯”しようじゃねぇか。新しい時代の幕開けに」

 雨月の言葉に、周りの空気がグンっと冷え切った。男衆の顔には緊張の色が戻り、強張った表情から冷や汗が噴き出している。。あの豪快な食べっぷりを見咎めなかった官吏や使用人も、眉を顰め明らかに不快感を示すものもいた。そんな張り詰めた空気の中、雨月だけが飄々とレシェクのグラスにジョッキを合わせ喉を鳴らしながら酒を飲んでいた。
 名君イヴェルタ王が亡くなって一週間。大々的な葬儀が執り行われ、多くのエヌカ国民がその早すぎる死に嘆き悲しんだ。市井は徐々に日常を取り戻しつつ見えるが、いまだ王が死んだという実感が湧かないまま移ろう時に流されているようにも見える。イヴェルタ王の死を悼むのであれば自然と“献杯”という言葉が出てくるはずだ。雨月の発言は、まるでイヴェルタ王の死に対してなんとも思っておらず、むしろ喜ばしいことのように聞こえる。しかし雨月の胸中では別の思いがあった。
 『王が死んで一週間が過ぎた』この意味をあまりにも楽観的に捉えてはいないだろうか。総人口数十億を超える大国の長が死んですでに七日が過ぎたのだ。その間多くの政が停滞を余儀なくされている。国政の停滞は国力の低下。その余波は必ず国民の生活にも悪影響を及ぼすだろう。また名君と名高いイヴェルタ王であったが、反対勢力がいなかったわけではない。蛇の道は蛇。悪党を名乗る雨月は薄暗い世界にも精通している。反政府組織による国家転覆の噂なんて昨日今日のことではない。このままズルズルと王位選抜が長引けばその分、そういった輩に力をつける時間を与えているようなもの。この国は、死者の影に縋りついている時ではない。

「それにしてもよぅ、アンタこの後継者選出のやり方どう思うね? 俺ァぶっちゃけイヴェルタの親父殿が何考えてるかわからん。建国の礎を担った賢者様の子孫だかなんだか知らねぇが、今じゃただの一般市民それもどいつもこいつもガキときたもんだ。そんな連中にエヌカの次期国王を選ばせるとはねぇ……カカッ! 俺だったら連中の親兄弟拉致って脅迫するだとか、それとも他の後継者候補を事故に見せかけてあの世に送るか。なぁんて物騒で手っ取り早い方法も思いついちゃうけどなカカッ!」

 緊張がさらに高まる。イヴェルタ王の遺言の批判に始まり、五賢者の子孫の未熟さを指摘、果ては反社会的な方法による王座獲得を匂わせる発言。酩酊による軽口では済まされない。天穂之宮の後継者候補という立場で無かったならば、即座に衛兵を呼ばれ処罰されてもおかしくない言動の数々。官吏の中には不快を通り越して嫌悪感を滲ませ雨月を睨みつける者も。周りの男衆も気が気ではない。雨月がハナからエヌカ王位に興味がないとは重々わかっていたが、このままでは生きて天穂之宮に帰れるかどうかも危うい。しかし自分たちが意見できる立場にないこともわかっている。かつて怖いもの知らずを自称していた男たちは、人生一番の恐怖と緊張を体験していた。
 だが確かに今回の後継者選抜方法に欠陥が多くみられるのは事実。雨月の言葉一つ一つにもキチンと理合が伴っていた。だがそれは何を隠そうイヴェルタ王の遺言。一体だれが異を唱えることができようか。それができるのは、愚直なまでに正直な者か。もしくはあらゆる強権に盾突く悪党に他ならない。

 そんな一触即発の空気の中雨月はある人物を見つける。退屈そうに目を細め、空のグラスを弄ばせながら宴の席を眺める褐色の美女。シャムト後継者候補の付き人であるシャリファ・ハーシム。数回ほど王宮の廊下ですれ違い声をかけた程度だが、その人となりは雨月をもってして『面白い』と思わせる逸材だった。現在自分に仕えている空女の反物質と言っていいほど、その言動は怠惰の念に塗れている。一言目から「面倒くさい」とのたまう姿は王族の付き人らしからぬが、その世界に対する反抗的な態度は嫌いではない。雨月が『動』の反抗であるなら、シャリファは『静』の反抗と勝手に位置付けていた。

「よう、面倒屋! こっち来て飲まねぇか?」

 付き人とは言え、他の都市の重役に随分な物言いである。男衆の胃痛が徐々に臨界点に達しようとしていた。


>>レシェク様 シャリファ様 ALL様


【さすが雨月! おれたちにできない事を平然とやってのけ(( 言いたい放題のうつけ姫。失礼に当たらないか男衆ばりに緊張してます】

2ヶ月前 No.17

真庭 @toukun22 ★Android=TVnkjESwdP

【ザカラ・サティーフ/ドーム:大広間】

「あ、……ああ、こちらこそ宜しく。……ところで、十二歳と聞いていたんだが、本当、だよな?」

 あまりにもしっかりとした理知的な語り口調に、思わず呆気に取られてしまっていた。はたして自分が十二歳の頃はどうだったろうかと思わず回想して、天と地ほどあるその落差に瞠目する。
 やけに大人びた外見とはいえ、中身は所詮子供。国王選定などという大義を担うことになり、きっと自分以上に不安がっているはずだという推測はどうも過小評価以外の何者でもなかったらしい。少しの饒舌から彼女もやはり気を張っている、もしくは疲労を感じているようだと推察されたものの、それを差し引いて考えてもやはりいささか卓越し過ぎている。もしや、これぞ噂に聞く神童という奴だろうか。こんなしっかりした子が同じ賢者の子孫なら随分と心強……いやいや、自分より十も年下の少女に心の荷を軽くしてもらってどうする。逆だろ普通。

 ザカラがつい自分に突っ込みを入れていると、握手でも提案するつもりだったのだろうか、アリアナの右手が持ち上がる気配を感じたその時、やけに狼狽の色の強い声がかかった。驚きと共にそちらを見れば、そこに佇むは同じ賢者の子孫、ライラ・アルフワード、そして、天穂之宮の後継者候補の付き人、影追空女だった。
 ライラの方は何やら挙動不審な様子だったが、しかしその理由には容易く察しがつき、(……あぁ、そうだよな)とそんな彼女の姿に強い共感と同情の眼差しを向ける。アリアナの悠然たる態度に少し錯覚しかけていたが、ちょっと特殊な血を引くだけの一般人がこんな高貴な宴に足を運べば狼狽も疲弊も至って当然だ。自分だって少し取り繕うのが上手いだけで、その実煌びやかな部屋内の人間を目にするだけでくらくらと目眩を覚え、格の違いと場違いさをまざまざと思い知らされ続けている。たとえ王族本人ではなくその付き人であろうと、真正面から相対すれば過度に緊張を覚えてしまってもそれはもう仕方がない。しかも、その付き人がこれほど迫力ある人物であれば尚更である。
 ──影追空女。彼女が例の、そして、"あの"姫君の付き人か。……今も豪快に食事を取っているのだろうか……? 情けない話だが、恐ろしすぎて遠くから視線をやるのすら躊躇いを覚えてしまい、あまり雨月の様子を伺えずにいる。
 ザカラは幾度も行商の関係で天穂之宮に足を運んだ事がある為、当然『うつけ姫』の凄まじく恐ろしい噂の数々も耳に入っていた。そんな彼女の付き人もさすが個性的と言うべきかなんと言うか。愚直なまでに真っ直ぐ、裏表のない人柄は見ているだけで清々しく好感を覚えるが、しかし如何せん圧が強すぎる。真顔なのが更にそれに拍車をかけていた。「こ、こちらこそ、宜しくお願いします」案の定、影追の怒涛の勢いに面食らい、ザカラの返答は戸惑いの滲むぎこちないものになってしまう。
 とはいえ、ザカラにとって彼女ら三人と会話を交わすのは全くもってやぶさかではない。これが後継者候補当人となればそれはそれは臆する気持ちも湧くのだが、相手は同じ賢者の子孫と付き人だ。今後の為にも、交遊を深めておいて損は無いだろう。

「は、はぁ。その、……お褒めに預かり、恐縮です」

 その後影追のこれまたやけに勢いのある謎の賛辞が始まった訳だが、そこでまたもザカラの笑顔が話題に登った。本当に今日はよく笑顔を褒められる……よもやこれほどまでに明朗快活な人物がお世辞を言うとは思えないので、そろそろ本気で自身の接客スキルの向上を認めてもいいのかも知れない、と見当外れの事を内心考えるも、影追に応える今現在のザカラの笑みは依然彼女のペースに呑まれている為にひどく引きつっているのだからお笑い草である。

「えっ……と……エヌカの文化に暮らし、ですか……。わ、私は五人の賢者様の血を引くと言えども市井の生まれですので、そういったことはお二方にお聞きした方が得策かと……」

 次いで、話が各々のエヌカでの暮らしに移ると、すぐに話題から退いたライラにザカラは不可解そうに眉を寄せ口を開いた。

「……? 俺もただの一般庶民だぞ。……ああ、何だ。俺を貴族か、もしくは何か特別な才人だとでも勘違いしてんのか。はは、アリアナさんはともかく、あいにくと俺はただの卑賎な行商人だよ」

 ライラが影追だけではなくアリアナや自分へまで畏怖の視線を向けているのが内心不思議でしょうがなかったが、なるほどそういうことか。話している内に抱いていた疑問が氷解し、そのあまりに可笑しな誤解にザカラの口元が緩み、笑みが零れる。聡明で美しいアリアナならともかく、よもやこの如何にも凡庸で下賎な俺にそんな誤解を抱こうとは。この不釣り合いな場に必死に馴染もうとする自分はさぞや傍目から見て滑稽だろうとばかり思っていたが、案外と捨てたものでもなかったのかもしれない。
 笑うことで少し肩の力が抜けたのか、ザカラはやっと自分のペースを取り戻し、影追へと顔を向けると、商人らしく滑らかに言葉を紡いだ。

「まぁそういった職業柄、私は普段あまりエヌカには滞在しておりません。しかし、ここは首都だけあって人や物が多く流れ、その割に外観や治安も良い、非常に住み良い都市ですよ。街では頻繁に市も開かれていますので、興味がおありなら足を運んでみては如何でしょう。……あぁ、何でしたら、私の荷馬車にもエヌカの品が幾つかあったかと思いますので、もしよろしければ後でお部屋にお届け致しますよ。ただ、あいにく平民向けの商品ですので、あまり上等な物はありませんが……」


>>アリアナ様 影追様 ライラ様 周辺ALL様


【お優しいお言葉をありがとうございます……! いえ!友禅様の文章は表現が豊かでとても読みやすいですよ! クッションに顔を埋めて足ジタバタさせるアリアナちゃんを想像して無事萌え死にました……!】

2ヶ月前 No.18

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_pp5

【 サラ・キルスティナ / ドーム:中庭 】
「いえ、お嬢様、これも私の務めでございますから。お立ちになられますか、お嬢様」

 ありがとう、と、ごめんなさいの二つの言葉どちらにも、自らの感情を抑えて、それが仕事であるからと、ややそっけないとすら見える言葉を返し。尻もちをついたままのシャーロットに対して、そっと手を差し伸べる。手を握ったのならばそのまま引っ張り上げて、彼女が立つための手伝いをするし、まだ立てないのならば彼女が立てるようになるのを待つのみだ。

「御心遣い有難うございます、宰相様。……如何いたしましょう、お嬢様? お申し付けいただければ、何か持って参りますが」

 口調はさておき、彼なりに即座にかつ色々考えたうえでの物と思われるエレクの提案に、彼女なりに感謝の言葉を口にする。シャーロットの現状を鑑みて今この時に彼が出来る精いっぱいの譲歩というところなのだろうという事が伺えるその提案は、最低限彼が今開かれている宴の目的も果たしつつシャーロットの精神に負荷もかかりにくいという点で良いもののように思われる。しかし、物事の決定権は自分にではなく主にある。サラとてその事実を忘れているわけではなく、そうシャーロットに対して問いかけた。恐らくエレクもシャーロットの言葉で動いてくれるようだし、また実際にどういう事を言われるかはさておき一応サラ自身も動くことはできるため、付け加えるようにして下命を待つ。

>>シャーロット、エレク、周囲all


【いえいえ、お気になさらないでくださいませー】
>>五十鈴様

2ヶ月前 No.19

レシェク @arthur ★iPhone=wKPorZj4kO

【レシェク・イブン・ザキサディーク/ドーム:大広間】

 雨月の放った『乾杯』の一語と、その対象が場の空気を剣呑としたものに塗り替えた。エヌカの官吏たちは不愉快の色を隠しきれず、天穂之宮の男衆は巨人の手に掴まれたかのように竦んでしまった。

「なるほど。いかな美酒といえども、王への手向けには足りませんか」

 そんな中、レシェクもまた微笑を崩しもせずにそう答える。
 張り詰めていた空気がいくらか弛緩する。雨月の発言は弔意を欠き、それどころかイヴェルタの死すらも歓迎しているかのようにすら捉えられたが、物は言いようである。言葉を付け足してしまえば、この酒杯ごときではイヴェルタ王を弔うには相応しくないと捉えることも出来る。その真意はともかくとして、少なくともそう言われてしまっては、エヌカの者たちも引き下がるを得ないだろう。
 では、酒杯で足りぬなら何をお望みでしょうか?そうした意味も含んではみたが、別に返答に期待している訳ではない。こんなやり取りは遊びのようなものである。遊びで済まないことを吐くようであれば、それこそ噂通りのうつけ姫であったというだけの話だった。
 酒を注いでくれた男に礼を言うと、それを口に含む。火遊びの最中に飲む酒も悪くはない。

「陛下のお心積もりは私如きには想像もつきませんが……賢者の子孫とはいえ、市井の、それも若者が王を選ぶという事柄は、この国のみならず政そのものに対する大きな問い掛けのように思えます」

 無論、この世界に選挙の歴史がなかった訳では無かろうが、このエヌカという国においては国家の代表を血筋によって定めている。
 今回もまた候補者は血脈の内から選ばれてはいるが、その候補者たちを選ぶのはいわば民衆なのである。これまで続けられた王位継承の歴史において、転換点となりうる出来事ではあった。

「それをさせぬ為の我々です。いくらお美しい姫君と言えども容赦は出来ません」

 整った口元に不敵な笑みを浮かべながらも、茶目っ気を出してウインクする。
 最も物騒な謀略を述べた雨月ではあるが、それらを実行に移すことは無いだろう。そもそも、投票者の生死に関わる事件の中で戴冠などしようものなら、自分が下手人だと諸手を挙げて答えているようなものだ。まともに玉座を狙うのであれば、賢者の子孫に上手く飴を与えてやる方が現実的だろう。
 雨月が乱しては、レシェクが治める。多くの同席者は自身の感情の高低差に疲弊しているでろうが、比較的彼女らの近くにいた、シャリファ・ハーシムはただ気怠げな様子で佇んでいた。
 そこに惹かれたのだろうか。周囲が未だ心中穏やかならぬ状況の中で、雨月はシャリファに声を掛けた。それが小さなさざ波となるか、あるいは潮となってこの場を巻き込むか。レシェクもまた興味深そうにシャリファの様子を伺う。

【いえいえ、やっぱイヴェルタ王ってクソだわとか言い出さない限りは大丈夫です。しかしレシェクが回りくどい喋り方をしてるせいで、一歩間違うとアンジャッシュになりそうですねこれ!】

>>雨月 シャリファ

2ヶ月前 No.20

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_YD6

【 アリアナ・ウォーターリリィ / ドーム:大広間 】

 まっすぐな挨拶と共に頭を下げる空女の姿を見ていると、なんだかこちらが年上のような気分になってくる。素直を装った紛い物ではなく、純粋な意見として向けられる容姿への賞賛。少しむず痒いが、嬉しくないと言えば嘘になる。神話、花の妖精、妖艶、三拍子揃い踏みだ。ここまでの賛辞を受けたならば、こちらとしても言葉で返したくなる。虚言やおべっかでなく言祝(ことほ)ぎとして口にしたならば、多少飾った言葉も悪くは思われまい。長年の読書で培った語彙力をしまいこんだ脳内収納スペースにちょっとお邪魔して、この気持ちの良い女性に向けるに相応しい単語の数々を用意する。準備は二秒で済んだ。

「ありがとうございます。影追嬢こそ、天穂之宮の女性は皆こうも素晴らしいのかと思いを馳せずにはいられないお美しさですね。世にも深き夜の闇で作られたような黒髪と黒瞳をお持ちでありながら、貴嬢の浮かべる笑みは天の光輝のごとく眩い。世の中には太陽から落ちて来たのだと言い伝わる宝石も幾つか存在いたしますが――空から石が飛来するならば、こうして天女が降りてくることもあるのでしょう。五体を覆う決して華美ではない装束も、貴嬢の世界を照らさんとする妙なる煌めきを翳らせはしません。見た者全てに陽性の美の魅力を噛みしめさせる、燦然たる乙女。天穂之宮の宝の一人とこうしてエヌカの地で出会えたこと、心から嬉しく存じます。ボクは幸せ者です」

 これでアリアナが男だったなら、真剣に口説いている者なのか女性全てにこういう言葉を掛ける者なのかで大論争が巻き起こりそうだ。だがここにいるアリアナ・ウォーターリリィは正真正銘の女、かつ本人的には口説きではなく言祝ぎのつもりの内容なのでセーフったらセーフなのである。今の発言を耳にしてしまった近くの使用人がちょっと肩を震わせたのにアリアナは気付いていない。たぶん歯が浮くを通り越して空高くに飛んでいきそうな台詞を聞いて、衝撃のあまり吹き出しそうになったのを腹筋に力を入れてぐっと堪えたのだろう。やはりエヌカ王宮の使用人は教育が行き届いている。
 バレンタインデーに貰ったプレゼントのお返しはホワイトデーに三倍で用意――というわけではないけれど、そのレベルに言葉を盛って感謝の意を表明したアリアナ。こんな娘なので、ザカラが12歳という年齢の真偽について確認をとってしまうのも已む無しである。彼からの問いかけには「はい、今年で12歳になりました」と真実を返す形で肯定しておく。何か月か前まではまだ11歳だった。誕生日に両親が用意してくれていたサプライズのバースデーパーティが、わかりやすすぎて全然サプライズになっていなかったことまで含めて記憶に新しい。そりゃ毎年同じ言い訳で夜のために飾り付けをしている最中のリビングへの道を通せんぼされればアリアナでなくても気付く。

「ボクもエヌカからは出たことが無い……どころか、エヌカの中ですらそう出歩いた経験がございませんので、お役に立てるかは分かりません。披露するとしても、本で得ただけの知識となってしまいますが……よろしいでしょうか? ――それと、ボクも『一般家庭よりは裕福な一般家庭』という枠組みの生まれですから、アルフワード嬢やサティーフ殿と同じく市井の人間です。申し訳ありません」

 ブルジョワなお嬢様との誤解を受けているのかと、念のために訂正の言葉も挟んでおいた。両親が気合を入れてデザインから縫製に至るまで共同制作してくれたこのドレスか、あるいは一度記憶した知識を絶対に忘れない脳味噌の持ち主ゆえにマナー本を読んだだけで実行可能な上品っぽい挙措の数々のいずれかが、周りに身分を勘違いさせてしまったのかもしれない。とはいえ、「なんだコイツ教育を受けていないのか!?」と思われるくらいなら、「良い所の生まれだからちゃんと教育されてるんだなー」と思われたほうがよっぽど有り難い。そういう意味では、この誤認は喜ばしい誤認だ。自分が礼を失してはいないという安心感にも繋がる。

>ライラ・アルフワード様&影追空女様&ザカラ・サティーフ様&ALL様

【そのお言葉こそお優しい&お優しいです、ありがとうございます……!! 実際アリアナがそれをやると義足の堅さにベッドマットかシーツが負けて穴が空きかねないので、エヌカ王宮の使用人さんたちにかける手間を思えば羞恥パターンでなくて良かったです。鉄と石の塊ですから何度も振り降ろされれば実質鈍器ですよ()】

2ヶ月前 No.21

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アトゥム/ドーム:大広間】

偉大なる名君、イヴェルタの訃報。それを知らされた時のアトゥムの絶望は他の誰よりも大きかっただろう。いや、その親族を除けばだが。誰かが死んで一番悲しいのはその家族だという事は正しく理解している。だが、その遺族と同じ位に悲しみに暮れ、枕を涙で幾つも駄目にした自信が有る。それ程迄にイヴェルタ王の死はアトゥムの心に大きな影を落とした。断っておくが、生前のイヴェルタ王にアトゥムはお会いした事が無く、遠くからその姿を見るのみで終ぞ言葉を交わす事も無かった。それなのにアトゥムがこれ程迄にイヴェルタの死を悲しんでいるというのだから、その忠義心は推して知るべしだろう。盲目的な迄のその愛は、何処から如何見ても異常で有ると言わざるを得ない。そしてその異常な忠義心は現シャムト統治者であるアトゥムの父のその又父から受け継がれる遺伝と英才教育の賜物であるのだから、シャムトの将来は決まったようなものである。エヌカ万歳。
シャムトの統治はさておき、アトゥムがエヌカ王国へ呼び出されて三日が経った。つまりはイヴェルタ王の訃報に耐えきれず与えられた部屋でアトゥムが大泣きしてから三日三晩過ぎたという事だ。初めて見る水葬と川を流れるイヴェルタ王の入った棺桶の美しさに密かにまた涙を流して三日。正直に言うのであればあと一ヶ月は喪に臥したい気持ちで有るし、何なら未だに毎夜毎夜枕を交換する羽目になっているのだが、そんな暗いアトゥムの心とは裏腹にエヌカの大きなドームの中では煌びやかな宴が催されていた。何故偉大なる王が亡くなったというのにこんな宴に参加せねばならないのかと部屋に戻ってまた枕を涙で濡らしたい気分ではあったが、これでもシャムトの時期統治者、つまりは王子である。このような交流を育む場を欠席する訳にはいかないだろうと誇りとプライドを持って立っている。

(後継者候補の歓迎と交流、か──)

立食式のパーティーである為、料理を少量乗せた皿とシャンパンの入ったグラスを器用に左手で持ち、他の参加者へ挨拶をして回る。とはいっても殆どがアトゥムより身分の低い相手であるので挨拶に来られる側なのだが。基本的に王子然とした態度を崩さぬまま、表情も一定して変わらず挨拶を受け取り他愛無い世間話や世情を喋り十分弱で離れていく。粗方の波が終わったのを見て、気取られ無いよう息を吐く。
何故、エヌカに集められたのか。イヴェルタ王が亡くなった事がそもそもの原因だろうが、アトゥムはイヴェルタ王の訃報をエヌカで聞いた。つまりはイヴェルタ王の葬式をするから来い、と言われた訳では無いのだ。アトゥムが呼ばれた理由は他に有る。現にイヴェルタ王の葬式の旨は父へと伝わっていた。それはそうだ。シャムトを治めるのはアトゥムの父であるのだから、現当主では無いアトゥムに訃報の報せが来る筈が無い。それでは何故、アトゥムがエヌカへと招かれたのか。
────後継者候補。
そう、アトゥムは後継者候補なのだ。シャムトの、では無い。シャムトの後継者であれば候補だのの前に一人息子であるアトゥムしか居ない。後継者候補とは、エヌカ王国の次代国王。
何を巫山戯た事を、と素直に思う。後継者候補も何も、次の国王はイヴェルタ王の嫡子、イブラヒーム様その人しか居るまいに。相応しい者を決めろと言われているらしいが、イブラヒーム様が一番相応しいに決まっている。分家が出しゃばる等烏滸がましいにも程が有ると思っているのに何故アトゥムがエヌカに身を置き続けるのかといえば、それが他ならぬイヴェルタ王の遺言だからである。イヴェルタ王が生前に言い遺した言葉。その意思に従わねばならない。心の内は決まっているのに未だにエヌカに居るのはその所為だ。

「──……飲み物が無くなったか」

傾けたグラスに何も入っていない事に気付き、近くを通った給仕にそのグラスと序でに食べる気が失せた皿を片付けさせる。別の給仕からシュワシュワと泡立つアルコールを受け取れば、さて、何をしようかと立ち止まる。シャムトは砂漠の地であるから余りこういった社交パーティーは行われない。何をするべきか、立ち振る舞いは、等といった知識は入っていても参加するのはこれで数度目だ。挨拶回りが終わってしまえば何もする事が無くなってしまう。此度の宴は歓迎と交流が目的だと言っていたが、恐らく本当の目的は別に有るのだろう。それこそ後継者に相応しい候補者を見極める為、だとか。
グラスを仰いで喉を潤すと、周りを見渡した。同じ後継者候補の所には既に幾名かが話し込んでいる。出遅れたか、と思いつつも話す事は無い。後継者候補云々について話すにも既にアトゥムの心は決まっているし、それを覆す心算も無い。世間話をしようにも育った環境が丸っきり違うのだから噛み合う話題等少ないだろう。そもそもそこまで話し込める程の友好関係が無い。
どうしたものか、と思うがそれ程深刻に悩む事でも無いだろうとグラスを持ったまま近くの長椅子に腰掛け脚を組むと華やかな宴の席を眺め、壁の華と洒落込む事にした。


>>ALL様


【完っ全に出遅れたくせに受身です、男が壁の華て(笑)】

2ヶ月前 No.22

五十鈴 @isuzu0☆LocDP0eky2k ★NbQEF8QrNY_mgE


【 シャーロット / ドーム:中庭 】


 宰相の顔を見るなり取り乱して、挙句の果てには尻餅をつく始末で自分でも何をやっているのか分からなくなる。男が苦手だから、というそれだけのことだが、彼女にとってのそれだけは大変大きなもので理解を得るのは難しい。そんな一部始終を見ていたエレクがぽかんとした表情で見ていたとは気付かず、冷静さを取り戻しつつあるシャーロットはやってしまった、と内心絶望するのであった。これは何か言われる、絶対言われる、と覚悟していたがその覚悟はすぐに水の泡になって消えた。宰相ともあろう人が謝り、手が届かないぎりぎりのところまで移動してくれたのだ。


「 い、いえ、私(わたくし)が驚いたばかりに……。 」


 まさかの事に次は此方がぽかんとしてしまったが、元はと言えば自分のせいであって宰相が謝る理由がない。如何にも消えかかりそうな声で告げれば、また顔を下に向けて謝る形にする。
 尻餅をついて立ち上がれない自分にサラは『 これも私の務めでございますから。 』と素っ気ない言葉であったが自然と心が軽くなった。そして彼女がそっと手を差し伸べてくれたのでそれに応じるように自分の手を伸ばして身体に力を入れる。サラに引っ張り上げてもらうとドレスの裾を持ち上げて、ドレスについた花弁や砂など軽く払う。生憎、下が芝生だったため目立った汚れなどはなく安心する。

 すると宰相が宴に出れぬ自分に数々の提案を持ちかけた。確かに今は交流を深める宴であり、後継者候補や賢者の子孫が揃う中自分だけ欠席とはどういうものか。自分一人のために宰相があらゆる手段で対応をしてくれるのは気が引ける。サラは自分が言えば料理などを持ってきてくれると言う。二人の視線が向けられ、少し考え込む。宴に出るか此処で食事だけでもとるか賢者の子孫とお話するか。どちらが最善の選択、とは言い難いが覚悟を決めたように二人に視線を交える。


「 ―――宴に参加するわ。私(わたくし)だけが不参加というのはオヴェリアの恥ですもの。……数々の提案、感謝致しますわ。 」


 宰相に悪いという気持ちだけでなく、これは自分の問題という気持ちの方が強く加えて一度は逃げ出したもののもう一度立ち上がってみせる。そうだ、さっきはまだ心の準備というものができていないだけだ、と自分に言い聞かせる。一度言ったことはもう後には引けないがそれでも強い眼差しで見つめる。そして宰相と向い合せになり、ドレスの両裾を摘まんで足を引き頭を下げて可憐にお辞儀をする。そしてサラの方を見て「 と、隣に居て頂戴よ? 」と命令する。


>エレク・ツァドゥー・ティファレト様、サラ・キルスティナ様、周辺ALL様



【 サラ様には確定ロル気味になってしまい申し訳ありません! 上記のようにシャーロットを引っ張って立たせた、ということでお願いします……! 】

2ヶ月前 No.23

琉綺 @rua12 ★Android=OhowgRleiW

【シャリファ・ハーシム / ドーム:大広間】


何をするのもめんどくさくてこのまま抜け出してしまおうかなどとと考えているとどこからか視線を感じて顔を上げた。その視線の主は賢者の子孫であるライラという名の少女だったと記憶している。主がイヴェルタ王の死を悲しむあまり大泣きをしたのを彼女は見ていた。見ていたというよりもこちらとしては見られた。彼女としても遭遇してしまった。というお互いに不本意な形ではあったが主が大泣きしている場面を目撃したことに変わりはない。

彼女がその現場に遭遇した直後、私と入れ違いになるようにして何やら慌てた様子で走りさって行ったのを見た。やや青ざめていたため不敬罪を恐れていたのだろう。まあ、大泣きしていた主に「こんなとこで大声で泣いてたら私以外の人に見られちゃうわよー」と声をかけたのだが泣いていた主に声が届いたかどうかは分からない……

彼女はぼーっとしていて意図的に私を見ているのか、ぼーっと見ている視界に私がたまたま入っていたのか分からなかった。それに彼女の周りにはたくさんの人がいる。だからシャリファは彼女に向かって微笑むだけに止めておいた。


そうしていると、さほど遠くない場所から「面倒屋!」と声が聞こえてきた。まあ、この場所で面倒屋と呼ばれるに値するのはシャリファだけだろうとは思うが、面倒屋とはなんとも面白いネーミングセンスだと少し笑った。確かに面倒屋と呼ばれるような行動をとった覚えはある。覚えがあるというか面倒屋と呼ばれることのない行動をとった覚えがないほどには心当たりがあった。最初は父親に言われた様にちゃんとやろうとしてはいたのだが、それすらも途中でめんどくさくなり、それまでの堅苦しい口調をかなぐり捨て「めんどくさい」とのたまうようになった。だからまあ、面倒屋と呼ばれるのも仕方ない。それに声をかけてきたのは先程から気になっていた天穂之宮の後継者候補である雨月だったのでシャリファは壁から離れテーブルの方へと歩みを進めた。


「雨月様。面倒屋ってのは私のことかい?」


様と呼んではいるものの王族に話しかけるには砕けすぎた口調でそう話しかけた。近づいたことで雨月の近くにレシェクがいることに気づいたシャリファは少しだけ顔を顰めた。正直 レシェクのようなタイプはめんどくさい。言葉通りに物事を受け取ってはいけない。腹の探り合いや駆け引きはめんどくさくて嫌いだ。だからシャリファはレシェクが視界に入ったところで全てを考えることを放棄した。

「これは、レシェク様。出来れば私と話す時は心のうちを素直に話してくれるとありがたいわ。なにせ私は考えることもめんどくさい面倒屋だからね。」

微塵も嫌味が入ってないと言えば嘘になるがこの言葉はありのままシャリファの素直な言葉だ。

>>ライラ様・雨月様・レシェク様


【絡んでいただきありがとうございます!
いきなり突っかかってしまいすみません。】

2ヶ月前 No.24

天象儀 @bontubu10 ★Android=zJTQcLJQbw

【ジレゴ/ドーム:大広間】

『ねえ、母さんと二人でエヌカに行こっか!』
『えぬか?』
『エヌカっていうのは……パパのお父さん、つまりあなたのおじいちゃんが王さまをやってる国のこと!母さんちょっとそこに用事があってね!パパも遅くまでお仕事だし、あなたを一人にするのは不安だから……』


“誰だ?”


『おじいちゃん、おうさまなの!?すごいすごい!おれもいく!!おじいちゃんのくにー!かあさんとふったりっで、おじいちゃんのくにー!!はやくはやく!』


“このガキはいったい、誰なんだ?”


『ふふ……急がなくてもおじいちゃんは逃げないってば!ちょっと待っててね!えっと、ペンダントペンダント……あった!』
『それじゃ、しゅっばつしんこー!おー!』
『こらこら、あんまり走ると転ぶわよ…………ジレゴ!』


“ジレゴだと?”


“冗談、よせよ”


“オレが……そんな幸せそうなツラして笑うかよ”




「――――っ!!」


 青年の目がカッと見開いた。

 登場人物は皆、幸せそうな顔をしていたというのに。

 見る者は悲しい気持ちにさせる、そんな不思議な夢が、唐突に終わりを告げた。

 酒は未だ抜けず、脳の機能は良好ではない。それでも机に伏した自らの頬を、何者かがペチペチと叩いている感覚だけは、しっかりと掴めた。

 倒れた時と同じように、勢いをつけて体を起こす。顔全体がヒリヒリする。手で触れてみると、ベッチョリとした感触が指先で遊び回る。さらに、近くのグラスに移ったソースまみれの己の顔面を目にした時、ジレゴは戦慄した。


「わーお………やっちまったねぇ、こりゃ…………」


 間延びした口調とは裏腹に、近くに置いてあった手拭きを乱暴に掴み取り、火がつきそうな力強さで顔を磨いていく。

 真っ赤になった布をポイと机の上に乗せ、ジレゴは傍にいる、自らを起こした人物に向き直る。と同時に、給仕係と思しき人物から水が運ばれてきた。一旦視線を外し、冷たいグラスに手をかける。

「よぉ、脅かしちまって悪かったな。起こしてくれてありがとさん。いかにも俺ぁフォルターレの…………ってアンタ、イヴェルタのじいさんのっ………うっ、ゴホッゴホゲホッ!!」

 グラス内の澄んだ水を一口で飲み干し、改めて相手に視線を戻すと同時に驚愕した。緊張感に肺がキュッと閉まり、口に入れた水の進行を阻んだことで、激しく咳き込むジレゴ。

 翠色の瞳に短い黒髪。一欠片のだらしなさも感じられぬ、毅然とした姿から“勇猛公”として知られる人物、イブラヒーム。亡き先王イヴェルタの、嫡子。

 言わずもがな、王位を継承するにあたって、最も自然かつ反対意見が少ないと思われる人物。だが、そう円滑に話が進めが誰も苦労はしない。

 というのもこの男、王位に最も近いはずのこの男が、その地位に対する執着が皆無であるからに他ならない。

 彼が一言“王位を継ぐ”と言えば、そもそも“後継者候補”なる言葉すらも生まれなかった。しかし王宮から離れ自由気ままに隠遁を行うというイブラヒームの意志により、ジレゴたちは集められた。


 チャンスだと思った。


 イブラヒームは王位継承に対する欲を、少なくとも現時点では全く持っていない。

 少しだけでもいい。ここで彼にジレゴという人間についての何らかのプラスイメージを抱かせることは、この先のことを考えても決して毒にはならないはず。使えるものは使う。

 いきなり醜態を晒してしまったが、まだ取り返せるはず。

 酒気が残り本調子ではない頭を必死に回し、場に最適な言葉を選んでゆく。そして自らの拳を固く握りしめ、ジレゴはイブラヒームに話し掛ける。

「なぁ………イブラヒームさん、だよな?アンタ、王の座に興味ねぇんだってね?ちょいと相談事があるんだが、良かったらオレを……………うおっ!!」

 周りに誰もいないことを確認してから切り出したつもりだった。


 甘かった。


 すぐ近くにいた“後継者候補”の一人に気付いてから、急ブレーキを踏んでセリフを止めるまでは、多少の時間を要した。

 限りなく白に近い銀色の髪を伸ばした、ジレゴとほぼ変わらぬ身長だが彼とは違い圧倒的な威厳を孕んだ端正な顔つき。三日ほど前にここに着いてからも、何度か軽く挨拶を交わしたことがある。言葉はなかったが、その身分相応の余裕が溢れた挙動の一つ一つからすぐに分かった。

 この人は後継者候補の一人で、間違いなく強敵になる、と。

「やっべ……あぁ、えっと、アンタは確かシャムトの……アトゥムさん、だったかね?ムリな話とは思うが、今のは聞かなかったことにしてくれないかい?酔っぱらいの戯れ言が出かかっちまっただけだし、大したことは言うつもりなかったからよ。いやホントにホントに」

 己の軽率さを今になって呪った。急ぎすぎた。

 下手な動きはしてはならないと決めたそばから、ライバルの視界で先王の嫡子に詰め寄る姿を見られてしまった。

 慌てて言い訳をするも、吐き出される言葉には全て重みがなく、信憑性を感じさせない、ただの薄っぺらい文字の羅列が出来上がったにすぎなかった。

 先王の嫡子に継ぎ、後継者候補の一人と顔を合わせ、頬に冷や汗がつたる。普段はこんなにも取り乱すことはないのだが、酔いのために普段通りのスタンスで立ち回ることができないのに加え、おかしな夢を見てしまった影響で、うまく平常心を保てない。


 それにもう一つ……アトゥムという男性を初めて見たとき、ジレゴは一瞬だけ、何かの違和感を覚えていた。

 うまく言い表せないが、三日前にこの茶褐色肌の男性の顔を正面から目にした際、何か心に靄(もや)がかかったような、そんな感覚に、ジレゴは瞬間的に襲われた。

 何の根拠もない。この男性とそれ以前に出会った記憶もない。

 ただの気のせい、で片付けたつもりだった。

 だが改めて、この不安定な精神状況下でいきなりアトゥムを目にしてしまったことで、ジレゴの緊張は何倍にも膨れ上がった。


「まぁ、なんだ……とりあえずアンタら二人も、一杯どうだい?楽しもうぜ、せっかくの宴なんだしさ」


 口調はできるだけ冷静にしたつもりだったが、無策の男からの苦しまぎれの提案と言われればそこまでだった。程よい量のワインを注ぎ、グラスを両名に手渡す。

 なーんか、この人たち苦手だな………その言葉をジレゴはグラスに入った液体とともに流し込んだ。酒ではなく、水とともに。

>>10 イブラヒーム様、
>>22 アトゥム様


【ぐあああ返信が遅くなってしまい申し訳ございませんジョン湿地王さま!!このような変人に絡んで下さり本当にありがとうございます!!そして近年まれに見るムリヤリな絡みで申し訳ございません白鷺さま!!
なんかもう、本当に色々とごめんなさいお二人とも!!ちなみに私めはお二人のキャラ苦手どころか大好きですよ!!自称、出遅れた三人組(殴)で仲良くしてくだされば幸いにございますっ!!】

2ヶ月前 No.25

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【ライラ・アルフワード/ドーム:大広間】

自分が会話に参加していた訳ではないが、耳に入ってきた“アリアナ・ウォーターリリィは12才”という情報にライラはわかりやすく驚きの色を瞳に映した。彼女の上背や顔立ち、そして胸元まで視線を巡らせてライラは自らのそれを確認する。にわかには信じられないがアリアナは嘘を吐いているようには見えない。「やば……」と衝撃のあまりあれほどまでに恐れていた不敬罪に値するのではないかと思わせる俗な言葉が口から飛び出してしまった。小声だったので聞こえるか聞こえないか程度であったし、この呟きでライラが処せられることもないのだろうが。

「……え……い、一般市民?」

そして口許を緩ませたザカラの言葉に、ライラは目を見開いた。一般市民。自分と同じ。少しの間双眼をぱちぱち瞬かせていたライラだったが、彼の言葉の意味と続くアリアナの言葉の意味を理解し気恥ずかしさからか目を伏せてはにかんだ。これまで相手のことを誤解していた自分が、なんだか急に馬鹿らしく思えてきてしまったのである。

「そ、そうだった、んですか……。あ、あはは……ごめんなさい、その、勘違いしてて……。わ、私の母も青果店を営んでて、その、商人の端くれといいますか……。まあその、同じようなものです」

なんとなく親近感のようなものを抱いたためであろうか、ライラの口ぶりは先程よりも明るいものへと変わっていた。緊張が解けてしまえばライラも年頃の娘、多少吃りはすれどもそれなりに口は回る。自分も何かエヌカの魅力を、と思い少し考えた後、ライラは思い出すように目線を上に遣りながら口を開く。

「私も、生まれてこの方エヌカから出たことはないのですが……そうですね、西の市場なんかは、色々なものが揃っていて面白いですよ。朝市も開かれていたりして、何時赴いても目移りするものばかりです」

店じまい間近に行くとたまに余った果物をもらえたりするんですよ、と続けようとしたところで、ライラの視界の端に先程のシャムトの女性が映る。こちらに気づいたのか、はたまた自分に向けられたものではないのかわからなかったが、緩やかに微笑む彼女にライラは会釈をした。気持ちに余裕ができた分、緊張していない訳ではないが少しばかり落ち着きを得たらしい。

>>ザカラ・サティーフ様、アリアナ・ウォーターリリィ様、影追空女様、シャリファ・ハーシム様、周辺all様


【エレク・ツァドゥー・ティファレト/ドーム:中庭】

かつては気に入った女性に対して「面白い女だ!気に入った、俺のものになれ!!」とか言っていたエレクではあるが、20年という歳月は彼の性格をだいぶ丸くしてくれた。そのためエレクは最低限の礼儀と紳士的な振る舞いを身に付け、先程のように迅速な対応ができたという訳である。そのため申し訳なさそうにうつむくシャーロットに対して責める気持ちも何もエレクにはない。男性が苦手だというのなら無理に近づくのは得策ではない。わざわざ遠いところから此処までやって来てくださった方に対して粗相があるなど、エレクとしてはあってはならないことなのだ。

「突然声をかけた私にも非はある。此処はおあいこということで手を打とうではないか。怪我がないようで良かった」

僅かに表情を緩めてから、エレクはシャーロットを怯えさせぬようにとできるだけ柔らかな口調を心がける。自分にその気はないのだが、どうやら自らの物言いは相手からしてみれば高圧的に聞こえるのだという。周囲から指摘されてきてなんとか直そうとはしているのだが、あまり進展らしい進展はない。それゆえにエレクは密かに自分の物言いを気にしていた。

「……ふむ、そうか。賢明な判断だ。助けになるかはわからないが、もし男性が此方に話しかけてきた際には私が緩衝材となろう。他にも何か気になることがあるのなら私に聞くと良い。微力ではあるが一応この国の宰相だ、出来る限りのことはしてみせよう」

宴に戻る、という判断を下したシャーロットに、何様だと言われかねないが感心したかのようにエレクは頷く。国のために懸命に動こうとする人間にどうこう言うほどエレクも冷徹ではない。無理を押してでも自分なりに先王の遺言、そしてエヌカからの命に専念しようとするその姿はエレクに好感を抱かせた。

>>シャーロット様、サラ・キルスティナ様、周辺all様

【返信を待たずに投稿してしまった上に短めで申し訳ありません……!個人的にザカラ君の笑顔とアリアナちゃんの素晴らしい言祝ぎが好きです……!】

2ヶ月前 No.26

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アトゥム/ドーム:大広間】

ガヤガヤとした人の話し声を聞きながら、アトゥムは何をするでも無く黙って腰掛けていた。時折思い出したようにグラスを傾けて。

エヌカに来るのは、これで何度目だろうか。二十歳になると共に政治へも少しずつ足を入れる事になり、シャムトの統治で忙しい父に代わって他の都市へ赴くようになった。以前は父の付き人兼補佐官がやっていた地方への視察だが、還暦をとうに過ぎた父の身体の事もあって出来るだけ傍で支える事になったのだ。だからいずれはシャムトを治める事になるアトゥムの教育も兼ねてと他都市の治世や特色を見て回る役割を貰った。父の意向でシャムトの王子としての立場では無く、身分を隠しての視察であったが、確かにその方が学ぶ事も多かった。見て感じてきた事を踏まえて意見や提案をしてみれば、幾つか採用される事もあってアトゥムは遣り甲斐を感じていた。
他の都市は勿論、エヌカへと足を踏み入れた事もあった。視察というよりは、素晴らしいイヴェルタ王の統治を見て来いといった意味合いの方が強かったが、運が良ければイヴェルタ王の御姿を拝見出来る事もあって、アトゥムは一番嬉しそうに訪問していた。だからまた、浮き足立つような気持ちで訪れると思っていたのに──。未だ訃報を聞いてから父に会っていないが、恐らく父であれば自身より若くして亡くなったイヴェルタ王の不幸を全力で嘆いている事だろう。表に出す事はないだろうが、母の前でアトゥムより激しく号泣しているに違いない。それを受けてシャムトの現状も御通夜状態だろう。アトゥムは今迄イヴェルタ王と言葉を交わした事は無かったが、シャムトの長を継いだ暁には挨拶に向かおうと思っていた。それが、それが──。

(ああ、考えるとまた、泣きそうに……)

歪みそうになる視界に、此処はまだ人目が有る、シャムトの王子としてしっかりとしなければと一度目を閉じて体裁を保つ。今は別の事を考えよう、と思考を切り替えようと目を開けるも矢張り考えてしまうのはエヌカの事だ。
そういえば、任された時事以外でもエヌカに出向いた事があったか。あれはアトゥムが十にも満たない頃だった筈。母から「一人で、お父様へのプレゼントを買って来てちょうだいね」と送り出された地がエヌカだった。あの時は父様へ何を買おうか与えられたお金で考えるのが楽しかったのと、一人だという不安が混ぜこぜになっていた事を覚えている。後から知ったのだが、一人だと知らされていたにも関わらず、こっそり後ろから従者が着いて来ていたらしい。父へ贈り物を届けた後で「素晴らしい勇姿だったっス!」と母に仕えていた当時の従者に云われ発覚した。お喋り好きの従者の口によってアトゥムがはじめてのおつかいを成し遂げた事はシャムト中に広まった。人の口に戸を立てられないとはこの事だ。あの時は、何を買ったんだっただろうか。あの時は、あの時は──。

ふと騒がしい事に気付いて顔を上げる。思ったよりも近くにあったその姿は、確か同じ後継者候補であるフォルターレのジレゴだったか。何時もは足音や気配で気付くのにこんなに近くで声を上げられる迄気付かないとは、随分と考え込んでいたようだ。相手は後継者候補、つまりアトゥムと対等な立場である。ならば此方だけ座っているのは失礼に当たるか、と立ち上がれば口を開く。

「そうだ。俺様はシャムトのアトゥム。貴様はフォルターレのジレゴか。──……何の話だ?」

挨拶を交わす程度の交流しかしていないが、名前と大まかな人となりは知っている心算だ。即ち、王位継承の意志が有るか否か。だがこの飄々とした男の真意は未だに図りかねていた。半々といった所か。何方にせよ御子息様が王位を継承する事を信じて疑っていないし、もし別の誰かが王位を継承してもそれはイヴェルタ王の言葉に従って決められたものであるのだから文句を言う心算は無い。
ジレゴはアトゥムに向かって何か言い訳めいたものを並び立てているが、完全に聞いていなかったアトゥムには何の事か分からず首を傾げずとも不思議そうに眉を顰める。先程周りを見渡した時に見たジレゴは酒に酔って眠っていたようだったから、まだ酔っているのだろうか。その所為で正気では無いのだろう、と自己完結していれば呑まないかとワインの入ったグラスを差し出される。

「──……まあ、確かにシャンパンばかりでは味気無かろう。戴くとしよう。……? ──!」

矢張り酔っているのだろう。アトゥムの右手には未だグラスが握られているのだが、ジレゴはそれに気付かずに差し出してきた。だが言葉通り、アルコールの種類を変えるのも良いかと思ったアトゥムは良いように解釈して少し残っていたシャンパンを飲み干しワインの入ったグラスを受け取った。空のグラスは傍を通った給仕に渡し片付けてもらう。アトゥムは普段からそれ程飲まないが、酒には弱くも強くも無く、人並みには飲める方だ。度数の低いシャンパンではまだ酔っていない。
中身は恐らく水だろう、透明の液体が入ったグラスを煽ったジレゴに倣い、自らも呑もうとグラスを持ち上げた時である。ジレゴの言葉に違和感を覚え動きを止めた。──アンタら二人。二人とは、ジレゴを除いた人数だろう。問い掛けているのだから当たり前だ。ではもう一人は誰に向かって……。視線をずらした先に居る人物に向けて息を呑む。そこには、前王イヴェルタの嫡子であり正当な王位継承権を持つイブラヒーム様の姿があった。ジレゴと他でも無いイブラヒーム様の手前、下手な真似は出来ないと体裁を保ってはいるが、正直叫びながら逃げ出したい気持ちで一杯だった。
そもそも、分家の子孫であるアトゥムは本家のイブラヒーム様に真っ先に挨拶に行くべきである。それは分かっているのだが、如何にも緊張してしまい近付く事すら出来ずに居たのだ。顔は汚れていないだろうか。服に解れは? ヨレや皺は? 失礼の無いようにと考える余りズルズルと先延ばしにし、果てには無意識に考えないようにしていた。とんでもない失態をしてしまった己の不甲斐なさと心の準備も儘ならぬ内に顔を合わせた驚きに、エヌカに着いて嫡子様と会えると気付いた時のように奇声を上げそうになるのを寸での所で飲み込む。

「──これはイブラヒーム様、御挨拶が遅れ申し訳有りません。シャムトから参りましたアトゥムと申します」

グラスを左手に持ち替え空いた右手を胸に当てると頭を下げる。本当は膝を付いて平伏したいのだが、此処は社交場、正式な謁見でないのだから相応しく無いだろう。
普段と堂々たる態度からは想像出来ない程身を低くし、まるで忠誠を誓う臣下のようだ。慌てふためく内心は表に出さないようにしながら、同じように喜びで胸が一杯になる。仁義に溢れたその勇姿はシャムトにも伝えられており、初めて交わす言葉に今夜は別の意味で枕がびしょ濡れになりそうだ。
少しして体勢を戻すと自然な動作でジレゴの近くへと身を寄せる。

「……おい貴様。俺様に可笑しな所は無いか。服に汚れは、解れや皺は無いか。顔に汚れは。髪は乱れておらぬだろうな」

イブラヒーム様には聞こえぬように声を潜めてジレゴに問う。問うとはいっても疑問符等一切付かない語気だが、これでもアトゥムにとっては死活問題だ。近くにシャリファでも居れば即座に確認させたのだが、生憎と今は居ない。アトゥムは自身の付き人に対して非常に甘い部分が有る為好きにさせているツケが此処に来て回ってしまったか。だが付き人が居ないのならば傍に居るジレゴに聞けば良いと、無視を許さぬような鋭い視線で彼を見詰め返答を待った。


>>ジレゴ様、イブラヒーム様、ALL様



【ひゃー!!! 絡みありがとうございます!!! イブラヒーム様も居るという体で話を進めています。問題があれば仰って下さい……!】

2ヶ月前 No.27

ろずに @tamtg ★PnMbNaCcXY_M0e

【影追 空女/ドーム:大広間】

 自分と対面してからと言うもの、顔を赤らめたり呼吸が乱れがちになっているライラを見て、『熱でもあるのだろうか、後で熱さましの薬を送ろう』と親切心を沸き立たせた空女であったが、その原因が自分にあるとは思っていない。今はシャリファの事が気になっているらしい彼女の控えめ且つ楚々とした態度は、天穂之宮で暮らす女達が日頃躍起になって習得しようとするものだ。小柄な体格や不安げな様子は、男女問わず庇護欲を掻き立てる。しかし、はじめこそ堅くなっていたライラは、ザカラやアリアナと言葉を交わすうちに、緊張が少しずつほぐれてぽつぽつとエヌカに関する話を教えてくれた。
 ザカラのほうはと言えば、ライラ程ではないが目の前にいるやたら声の大きい天穂之宮人に笑顔も引きつり気味である。だがすぐさま気を取り直し、空女に己が扱う商品についてすらすらと言葉を紡いでいくさまは、流石商人と言ったところだろうか。
 先程の二人の言葉を振り返る。ライラもザカラも、二人とも市について話をしていた。確かに、多くの人々が利用する市場は、エヌカの雰囲気や文化に触れやすいものだろう。今度、雨月の予定が空いていたら誘ってみよう、とちゃっかり主人と出かける口実を見つけた空女は、気分も良くなり更に意気揚々とした声で感謝の言葉を述べた。

「なるほど!!現地の人々が利用する市場ならば、エヌカを学ぶのには適していると言える!!恥ずかしながら全くの盲点であった!感謝申し上げる!!そしてザカラ様の御心、誠に有難い!もし宜しければ、貴殿の取り扱う品を後で拝見させて頂きたい!!」

 そして親切にも商品を部屋に届けると提案してくれたザカラに対しても、相変わらず天穂撫子には程遠い所作で礼をした。一見取っ付き難そうな鋭い容貌をしているが、対照的に終始にこやか(理由は不明だが)であるし、周りが思うより朗らかな人物かもしれない。年長者としてアリアナやライラへの細やかな気遣いも出来ている。

 懐から取り出した手帳に、「市場、商品」と謎のメモをして再びしまい込む。さて、アリアナの方はどのような話をしてくれるだろうか。心なしかきらきらとした瞳をアリアナに向けると、彼女の口から紡がれた言葉は圧の強い空女に戸惑うものでは無く、空女が贈った賛辞よりも何倍も顔が赤くなるような台詞であった。
 「天の光輝」「天女」「燦然たる乙女」……。周囲の使用人が僅かに肩を震わせていたが、空女もいつもの真顔が崩れ、驚きが表情に滲んでいた(とは言っても、初対面の人間から見れば間違い探しレベルの違いである)。生まれ育った里では落ちこぼれ扱い、山狗組では生真面目な問題児という扱いをされていた空女は、褒められる事に慣れていない。読書で培われたアリアナの表現力に脱帽しながらも、彼女にも感謝の意を述べた。

「この不束者には勿体無いお言葉、感謝致す!!『とらぶるめーかー』と呼ばれる事はあっても、乙女と呼ばれた事は初めてである!!」

 「組の者にも伝えねば!」と伝えて何になるのか分からないが堅い意思を胸に、アリアナから貰った言葉を胸に落とし込む。
 それにしても、ライラのみでなく、ザカラやアリアナからも言葉の端から市井の生まれとの事で遠慮するような声が聞かれる。これまで町でごく一般的な暮らしをしていた彼女達からすれば、いきなり王宮に呼ばれて王家や分家の面々と交流する事になったのだから無理はないが。だが、気にするなと言わんばかりに空女は三人に告げた。

「そのように遠慮される必要はありません!!市井でも上流階級でも、エヌカと共に生きている事には変わりますまい!!それに主様は王家の分家のお生まれでありますが、影追の属する山狗組はもとは日雇いの仕事で銭を得ていた者達ばかりです!!かくいう影追も、ごく平凡な忍の里の生まれであります!!」

 その発言は、人を身分の分け隔てなく心根で評価する雨月が主人だからこそ言える言葉であった。尤も、それが付き人として相応しい言葉なのかは判断しかねるが。

≫ライラ様、アリアナ様、ザカラ様

2ヶ月前 No.28

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_sgs

【 サラ・キルスティナ / ドーム:中庭 】
 侍女の手を借りてではあったものの、自らの足で立ち上がった主の出した答えは、宴へと出るというものであった。それはつまり、シャーロットが自らの苦手とする事へと向き合うという意思表示に他ならない。自らが彼女に惚れ込んだ理由を幾つか考えるとすれば、やはり彼女が今見せたような《逆境にも負けまいとする意思の強さ》がその一つなのだろう、と、サラは今更のように考えていた。
 とはいえ、今回出席する宴は、出席者の円滑なコミュニケーションを推し進めるために、酒席が設けられているという事も聞き及んでいる。それはつまり、そういう場に行くことによって、また泥酔している男性を見ることで、普段男性と謁見するときの比ではなく、シャーロットのトラウマを刺激することが予測された。そのことを彼女自身が自覚しているにせよいないにせよ、シャーロットがサラに対して下した命令は、彼女が今も抱える男性不信、あるいは男性への恐怖に打ち勝つために、やはり必要なものである、とサラには考えられた。一人でこらえきれない場合でも、二人いれば何とかなるという事だってよくあるもので、自らの主が、自分がいてくれれば何とかできると考えてくれているのであれば、付き人たる侍女としても、また一人のメイドとしても、それ以上の事は無い。まさしくメイド冥利に尽きるというやつである。

「無論でございます。私は、サラはお嬢様のメイドでございますから、お嬢様に厭と言われるまでは隣に控えておりますわ」

 『隣に居て頂戴よ』という主の命令に、喜色を抑えた、普段通りの涼しい顔で答える。言葉の内に込めるは、やはり何時もと変わらない主に対する敬意と、僅かばかりの誇り。こういったときに頼られるのは、サラとて嬉しくもなるのである。もしもこの場にいるのが二人だけだったならば、あるいは彼女も素直に頼られたことを喜んだのであろうが、ここにいるのは二人だけではなく、またさらに人が増える可能性だって十分に存在している。であれば、公の場に相応しく、従者は従者らしくせねばならない。

>>シャーロット、エレク、周囲all


【問題ありませんよー、元からそのつもりでレス書いてましたし((】
>>五十鈴様

2ヶ月前 No.29

ジョン湿地王 @ferudhires ★Mcag7Tw3Rv_Swk

【イブラヒーム/ドーム:大広間】

酔いつぶれて眠っていた青年は、イブラヒームが呼びかけると、照れくさそうに眼を覚まし、給仕が持ってきた水をあおる。
そのさなか、何かに気づいたように咳き込み、ほんの少しの間沈黙が流れた。
無理もない。自身を助け起こした相手が、この王位継承戦の台風の目であったのだから。

冷静さを取り戻した男――反応を見るにおそらくはフォルターレの後継者候補――は、言葉を選びつつ、イブラヒームに何かを伝えようとした。
しかし、その言葉を全て告げることはなかった。すぐ傍に、もう一人後継者候補が居たからだ。

誤魔化すように、フォルターレの男がワインを差し出してきた。

「いただこう。」

それだけ言って、ワインを一息に飲み切る。ほのかな果実の風味と、ワイン樽からくる特有の香りが退屈で停滞していた頭の回転を呼び起こした。
彼らはそれぞれ、フォルターレのジレゴとシャムトのアトゥムと名乗った。どちらもエヌカ王室の分家。つまり、後継者候補だ。であるならば、丁度良い。

「フォルターレのジレゴと、シャムトのアトゥムか。余のことはもう既に聞き及んでいるとおもう。エヌカ王太子、イブラヒームだ。よろしく頼むぞ。」

社交儀礼としてそう自己紹介をすると、イブラヒームは、空になったワイングラスをテーブルに置き、いたずらっぽい笑みを浮かべながら問いかけた。

「さて、折角後継者候補が三人も集まっているのだ。余は回りくどいのは好かぬからな、単刀直入に聞こう。お前たち、余の代わりに王になる気はないか?」

ここは宴の席だ。もちろん本気で王位を狙っているものが簡単にそれを明かすとは思えないが、これからの継承戦の彼らの基本的なスタンスを知ると同時に、これを自身が問うことで改めて己が王位に興味が無いことを周知しておく。
どのような答えが返ってこようとも、レシェクには良い土産話ができた。そんなことを考えていた。

【少々返レスが遅くなってしまいました。。。申し訳ねぇ。。。】

>>ジレゴ様、アトゥム様、周辺ALL

2ヶ月前 No.30

キープ @keep4603 ★nJ5qCxa7H9_8gk

【雨月/ドーム:大広間】

「いくら酒を手向けても、もう親父は飲んじゃくれねぇよ……注がれた酒を飲み干すのも、死者を弔うのも、国を動かすのも、全部生者の特権さ。国は王一人のものじゃない。王が死んでも国民は生きてかなきゃいけない。死んだ人間が唯一出来ることと言ったら、とっとと自分の存在を生きてる奴らから手放させるぐらいだな」

 雨月の瞳にその豪快な性格にはそぐわない哀愁の色が見て取れた。悲しくないわけがない。最愛の母親が亡くなり自暴自棄のまま荒れた生活を送り、国元を離れここエヌカに来てまで騒動を起こしていたどうしようもない自分を、イヴェルタ王は拾い育ててくれた。とめどなく溢れる憎しみと怒りと、何より悲しみをその身で受け止めてくれた。母と同じ優しさと慈しみを携え、母にはなかった威厳と強さを持って。これが父親というものなのかと、当時の自分は胸の温かさに戸惑いながらも、彼の背中を追い続けていた。『国は王のためにあるのではない。何千万、何億といる国民のためにある。彼らに支えられて余は生きている。故に彼らを守るのが余の義務だ』イヴェルタ王が生前口癖のように呟いていた言葉。雨月の言葉にもその引用が使われており、長年エヌカ王宮に仕えている家臣や官吏はハッと顔を上げた。雨月の言動は確かに粗暴であるが、その根底には恩義あるイヴェルタ王への愛情と彼が愛したこの国と国民を守らねばならないという責任が感じられる。『王は死んだ。しかし我々は前に進み続けなければならない』それが“乾杯”という言葉の裏に隠された真実だった。彼女もまた、天穂之宮の王族の者。王位継承の素質は十全にあるのだ。

「そういや親父も良く言ってたなぁ。『余以上に優れた人間はこのエヌカにもごまんといるはずだ。余が王になれたのは、ただただ運が良かっただけなのだ。願わくば、後の世はそういった陰日向に咲く花に陽光が照らされる時代になればよいな』ってな。血や生まれや信ずる宗教に関係なく、全ての人間が平等の下その才能を評価される時代なんて、まったくワクワクすること考えるぜ。親父殿はよぉ」

 懐かし気に自分と王との過去を語る雨月の顔には、普段の刃のような煌めきは陰に潜み、女性らしい微笑みを浮かんでいた。先ほどまで雨月に対し反感の意を表していた場の空気はすでに和らぎ、彼女が紡ぐかつての王の話にすっかり聞きこんでしまっている。本当に不思議な人だと、男衆の一人は感慨にふけていた。雨月はいつだって人の輪の中心にいる。彼女の言動一つで周囲が緊張したり、逆に和んだり。彼女は人を動かすために重要なカリスマ性を持っている。雨月自身国王の座に消極的なのが何より悔やむべきことだ。

「そ、そりゃそうだろうよ! そんな野良犬みてぇな奴王様にしちまったらエヌカ王宮の官吏全員クビだぜ! それと、下手なおべっか使ってんじゃねぇよ……このやろう」

 突然のトーンダウン。見れば雨月の顔は桜色に紅潮し、強い意志を放つ瞳は移ろうように右往左往していた。強きを挫き男を侍らせ毎晩のように大酒を飲み交わす、まさに豪傑を絵にかいたような雨月。さぞかし性生活も豪快そのものなのだろうと思われるが、意外や意外その実そういった男女の営みはおろか口づけや手を繋いだこともない生娘同様の存在なのだ。第二次性徴を迎える時期にはすでに男や男尊女卑の世界に対する強い反感と敵意を抱いており、また自分の性格もまったく女らしくないことを自覚して生きてきたため“異性”に対する抗体はまるで無い。女性として扱われることも稀なため、こういった軽いリップサービスにもドギマギしてしまうレベル。山狗組の頭領として多くの男衆を束ねる雨月であるが、若干22歳。女心を捨て去るにはまだまだ早すぎる。
 ビールを一気に飲み干せば鋭いのどごしとともに冷えたアルコールが火照った顔と頭を静めてくれた。ちょうどシャリファもこちらの誘いに乗ってくれたようで、砕けた口調でこちらに近づいてきた。話を転換させるいい機会だ。

「カカッ! 自覚がねぇとは言わせねぇぜ。あぁそれと俺に関しちゃ敬語は不要だ。お互い“面倒くせぇ”からな」

 同席しているレシェクに対する嫌味の言葉も、悪戯な視線を向けるだけで肯定も否定もしなかった。腹と頭でごちゃごちゃ考えて喋るのは確かに肩がこる。生憎自分はレシェクのように言葉遊びに興じるほど学はないようで。むしろシャリファのように歯に衣着せぬ物言いの方が分かりやすくて好感が持てた。

>>レシェク様 シャリファ様 ALL様


【返信遅れました、申し訳ありません。しかし可愛いウツキンを書けて余は満足じゃ((】

2ヶ月前 No.31

真庭 @toukun22 ★Android=TVnkjESwdP

【ザカラ・サティーフ/ドーム:大広間】

「……! ……、っ…………〜ッゲフンゲフン! し、失礼」

 最初はどうにか乗り越えたのだが、天女のくだりでもう駄目だった。歯の浮くどころではない、聞いているこちらの顔が赤くなるような気恥ずかしい台詞の数々に吹き出すのを咳払いで誤魔化す。
 アリアナ・ウォーターリリィ……やはり才知に優れた者は少々変わった一面も併せ持つ宿命なのだろうか。恐ろしくずば抜けた商才の持ち主でありながら、王族とは思えない振る舞いの多い友人を脳裏に浮かべながらそんなことを思った。先程、彼の酩酊した高笑いがザカラの鼓膜を揺るがした際なども、『あ、あのアホ……っ!!』と胆の冷える心地がすると同時に、こんな場でも変わらぬ彼の豪胆さに舌を巻いたものだ。いつも酒で潰れる彼を介抱している癖でつい駆けつけかけたが、冷静に考えてみれば使用人も付き人も控えているこの場で自分の世話など不要だろう。少し離れたテーブルで他の後継者候補と話始めた友人の様子をちらりと見やり、また眼前の女性陣へと視線を戻した。

「……へぇ、青果店を。つまりお互い商売が身近と……存外、俺達は感性が合うのかもしれないな」

 賢者の子孫に対して抱いていたらしい誤解を解いてやれば、同時に緊張も少しほぐれたようでライラの口数が目に見えて増える。その純朴な振る舞いや話し振りから、彼女はアリアナとは違い、至って普通の娘なのだと改めて悟らされた。
 しかし、それは即ちこのような極々平凡な少女が、これから次期国王の選定という大事に携わっていくという事実を示す。それはザカラも全く同様の状況なのだが、年下の少女というだけあって、心労は彼女の方が勝るだろう。ザカラは笑みを消すと、真剣な面持ちでおもむろに口を開き、続けて言葉を継いだ。

「……今後、王位継承にあたり色々とあるだろうが……俺は、もしも他の賢者の子孫に何かあれば出来る限り手を貸すつもりだ。矢面に立って、泥を被る覚悟もある。だから、何かあれば気軽に頼ってくれ」

 そこまで告げた後、『……まあ、高貴な方々を相手どって、俺ごときに何が出来るという話だけどな』と自嘲的な笑みを口元に閃かせる。なにせザカラは商人故に並以上の知性や話術こそあるものの、それは決して突出したそれではないのだ。とてもではないが、これから起こりえる王位継承を巡る策謀や卑劣な恫喝の数々に対応出来るとは思えなかった。むしろザカラの人を見る目にいたっては、容易に絆され金銭を騙し取られてきた数多の経験が証明するに壊滅的なので、いっそ他の賢者の子孫に相談を持ちかけた方が適切であるとすら言えるかもしれない。
 ……しかし、それでも。

「──それでも、同じ立場にある者として、俺は俺なりに全力を尽くす。……あまり、一人で抱え込むなよ」

 ……アリアナには、初対面時こちらより先に向こうから言われてしまったのだが。改めてザカラは同じ賢者の子孫である彼女達へ、冷淡な容貌とは裏腹に強い情のこもった言葉を紡いだ。


「承知致しました、ではそのように。その際には、より詳細なエヌカの文化につきましても、商品を交えてご説明致します」

 影追に配慮し、賢者の子孫としての話は短く切り上げて商談に移れば、ザカラの表情や口調がさっと接客用のそれへと一変する。同様の立場にある少女達との会話で若干紛れたものの、依然次期国王の選定という重圧に晒されているので、相も変わらずその微笑のクオリティは異様に高い。彼が現状をどうにか受け止めきり、落ち着くまで──少なくとも今日一杯はこの調子だろう。先程ライラやアリアナにはああ言ったものの、責任感の強さ故一人で抱え込んでしまっているのはザカラの方なのかもしれなかった。
 さて、こうして折り良く金を持っていそうな顧客を獲得した訳だが、ザカラは影追相手に利益など望んではいない。いくら普段は金儲けに並々ならぬ熱を上げる彼といえど、さすがに今は行商人ではなく賢者の子孫として振る舞わなければなるまいと判じたのである。雨月の付き人である彼女との今後の交流を少しでも円滑にする為に、商品は格安で提供する腹積もりだった。

「えっ……そうでしたか。忍の里の……」

 山狗組。ならず者を集め結成されたというその組織の存在は以前より耳にしていた。しかし、仮にも後継者候補の付き人なのだから、いくら一風変わった人柄とはいえ名家の出身であるのだろうとばかり思っていたが、どうやら見当違いだったらしい。
 しかし、忍……? さすがに失礼にあたるので表情には出さなかったが、この驚く程快活な少女が静かに息を殺し忍んでいる所を微塵も想像出来ず、ザカラは内心首を捻った。いや、だからこそ今は忍者ではなく付き人をやっているのかもしれないが。まあたとえ彼女に忍としての適正はないにしろ、天穂之宮の重役という高位の立場にあるにも関わらず、こうして自分達を気遣い、身分など関係ないといとも簡単に言ってのけるとは。一片の曇りもないその黒曜石のような瞳に、賢者の子孫に媚を売ろうという意図は微塵も伺えない。心の底からそう思って言っているのだ。やけにハキハキとした喋りと押しの強い振る舞いには戸惑わされたが、やはり実直な良い子なんだな、とザカラは思った。そうやって簡単に気を許して絆されるから、彼の商売はあがったりなのだが。

 何はともあれ、この話の流れは使える。今すぐあの悪名・美名共に高い雨月へ突貫する気概は未だないが、影追から彼女の情報を得ることが出来るかもしれない。よもや付き人が主人にとって不利な情報を漏らすとは思えないが、それでも雨月に近しい人物からの情報は重宝するだろう。これから先も雨月と一切接触せず次期王の選定を済ます訳にはいかない以上、彼女の踏んではならない虎の尾などについて聞き出せれば助かるのだが……。

「お気遣い痛み入ります。……ところで、既にご存知の通り、我々は次期国王の選定に携わる身。貴方様の主はあまり玉座に興味はないようですが、良ければもう少し、雨月様についてお話を伺わせてはいただけませんか?」


【えっアリアナちゃんの義足って結構鈍器なんですね強い!羞恥で足バタバタさせてベッドマットに穴開けちゃうアリアナちゃん愛しや〜!私も言祝ぎ文句とても好きです、すごすぎて笑ってしまった……!(笑)
奴の笑みはしばらく無駄にハイクオリティでしょう……(笑)私はライラちゃんの素の「ふぉっ!?」「やば……」が狂おしく好きです……!
影追ちゃんは真顔大声が大好きです!ずっと思っていましたが本編で動くと一層魅力的ですね何なんですかこの子かわええええ!(発狂)】

>>アリアナ様 影追様 ライラ様 周辺ALL様

2ヶ月前 No.32

五十鈴 @isuzu0☆LocDP0eky2k ★NbQEF8QrNY_mgE


【 シャーロット / ドーム:中庭→ 】


 どちらが悪いとか悪くないとか永遠と続ける訳にもいかないため、宰相の方から切ってくれたことは有難い。下げていた頭を上げると僅かに表情を緩めて、自分を気遣ってか柔らかい口調のように聞こえるためつくづく申し訳ないが、此処はぐっと堪えてみせる。

 宴に参加するという判断は間違っていないと思いたい。判断を下した後、宰相からは仲立ちになってくれるようでシャーロットの気持ちが少しではあるが楽になった。サラは元よりそのようだったので心強い。宰相を振り回すなんて何事かと少し考えてしまうが此処は宰相に甘えてしまおう。素直に受け取るのも悪くない。


「 御協力ありがとうございますわ。この御恩は何時しか。 」


 もう一度ドレスの両端を持ち軽くお辞儀をしながら告げる。恩と返すなんて言うと宰相は軽く断ってしまう。今の自分に返せるものと言えば何だろうかと考えると、後継者に成り立つことかそれともまた違ったもので返すしかない。まだ答えは出ずとも何れ出す時が来る。それまで何が相応しいか考えていよう。
 隣に居て頂戴、なんて子供っぽいことを命令してもサラは普段通りの涼しい顔で返事してみせる。そして自分が厭と言うまで隣に控えていると言ってくれた。この言葉がどれくらい自分を救ってくれたか、彼女は知っているのだろうか。多分、全部知っているのだろう。


「 何年私(わたくし)に仕えてると思ってますの? ……サラは私の命尽きるまで隣に居るのよ。 」


 口角を上げて自信有り気でサラに問いかけ、彼女に背を向けてぽつりと呟く。それはまるで先に命を絶つことを許さないような我が儘極まりない言葉だがそれ程彼女のことを信頼していると窺える言葉。
 宴には嫌いな男も居るが酒を含んだ男も当然居る訳で、なかなかハードルの高い場所に心なしか不安が波打つが静かに収まるまで瞳を閉じで落ち着こう。今は一人ではない。宰相やサラも居る、大丈夫。と何度か自己暗示をかけ、ざわついていた心を宥め小さく息を吐く。そしてゆっくりと瞳を開ける。もう迷いはない、覚悟を決めた眼差しで。


「 お待たせしましたわ。―――さぁ、行きましょう。 」


 二人の方へ振り返り準備ができたと告げると、自分が先頭と言わんばかりに宴会場の大広間へと足を踏み出した。


>エレク・ツァドゥー・ティファレト様、サラ・キルスティナ様、周辺ALL様



【 もうシャーロットが自分勝手すぎて御二人方を振り回して本当に申し訳ないです……!!(スライディング土下座)。次のレスで大広間まで行ってもらって構いません……! 】

2ヶ月前 No.33

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_YD6

【 アリアナ・ウォーターリリィ / ドーム:大広間 】

 案の定ライラには良い所のお嬢様と思われていたみたいだし、ザカラには即興の褒め言葉返しを笑われた。いや、こう書くと彼の名誉に関わる。彼はちょっと吹き出しそうになっていたが、それをしてしまうと失礼になることを知っていたから咳払いで誤魔化してくれたのだ。つまり笑った笑わなかったで言うと、アリアナ判定では彼は笑わなかった。いやまあ、我ながらそれなりに言葉を飾りたてすぎた自覚があるので、もっとあからさまに吹き出されていたところでそれに対し失礼だとぷりぷり怒るような狭量はしないが。
 ともあれ、当の空女には好評だったのでそれで良し。言葉を捧げた相手にドン引きされては、さすがのアリアナも12歳の子供らしく落ち込んでいたところだ。……全体的に大人びたアリアナとて、意気消沈する時には意気消沈するのである。例えば自分の両足が切り落とされてからの一週間は常に湖へと投げ込まれた赤子のような心地だったし、幻肢痛に悩まされる夜にはいっそこのまま頭がおかしくなって痛みさえ分からなくなれと己が身を呪った。それでも腐らず勉学に邁進してきたのは、それが縋れるものだと本能的に察していたからだ。溺れる者は藁をも掴む。けれど、掴んだ時には藁だったものを編んで束ねて大きくしてきたのは自分だ。ただ縋っただけではないと思っているからこそ、アリアナは自分の知識量にはちゃんとそれなりの自負を持っている。途中から連想ゲーム方式で思考内容が脱線した。いつものことなので気にしない。

「――ご厚意、痛み入ります。ですが、同じ境遇に身を置く御方に泥を被らせたとあってはボクの先祖と子孫に恥ずかしい。そのような状況にならないよう、若輩なりに精一杯努めると致しましょう。……ふふ。彼氏もいないのに子孫だなんて、気が早い。ボクは案外、生まれる前から子供の名前を考えるタイプかもしれません」

 真剣な表情でザカラに対し真面目な言葉を吐いた後、自分の言葉に自分で冗談を付け足して自分で笑う。切り替えが早い。エヌカの女は天穂之宮の女に比べれば奔放な部類だが、それでも12歳で彼氏がいるほうが稀である。当然、アリアナにも彼氏なんぞはいやしない。そもそも男友達もゼロだ。否、こんな言い方をすればまるで女友達ならいるみたいになってしまう。訂正しよう。男友達も女友達もゼロだ。アリアナ・ウォーターリリィはボッチである。年を明かして初めて同年代と認識されるルックスゆえ、子供に話しかけるとまず「なんか知らない年上の女が近付いてきた」と警戒されがちなのも原因の一つだけれども。それ以上に、脚が“こう”だと遠くに外出できなくて出会いの場が無い。お見合いの友達バージョンみたいなイベントとか、家の近くで開催されないものか。

「影追嬢の故郷のお話も、後ほど是非ともお聞かせ下さい。忍者の存在は書物で知っておりましたが、実際その肩書きを持つ方とお会いするのは初めてですもの。でも今は……サティーフ殿の仰る通り、雨月様のお話も伺いたいです。女傑と名高い才媛の武勇伝や人となり、どうぞお聞かせ願います」

 五車の術や五色米、変わり衣に手裏剣。忍者と聞いて思い浮かぶものはたくさんあって、そのどれもがアリアナの知的好奇心を刺激するもの。後ほど是非ともお聞かせ願いたい、という言葉に嘘偽りは含まれていない。けれど彼女は、影追空女は王位継承の候補者ではないのだ。ならば腹の探り合いや品の定め合いが期待されている宴の場において、優先すべきは彼女自身ではなく彼女の主人の話題。すなわち雨月の話だ。

>ライラ・アルフワード様&影追空女様&ザカラ・サティーフ様&ALL様

【花粉症を抑えるための薬を飲んだら壮絶な眠気に襲われ、その眠気と戦いながら急いで書き上げた文章なので短め&恐らく誤字脱字まみれです! ご容赦を!】

2ヶ月前 No.34

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

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2ヶ月前 No.35

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_sgs

【 サラ・キルスティナ / ドーム:中庭→ 】
「承りました。数々の御心遣い、誠に有難う御座います」

 先ほど対策を考えてもらったことも含めて、エレクへと一礼と共に謝意を表す。
 本来は他の後継者候補に対しても平等にあらねばならないであろうに、こうまでシャーロットの事を考えて骨を折ってもらえるというのは、正直に言えば彼女も想定していない事態であった。主の男性への苦手さを王宮でどう対処するかという点が降ってわいた悩みの一つだっただけに、非常にありがたい展開であると言えている。

「お嬢様の年齢から2年半を引きますから、かれこれ17、そろそろ18年となりましょうか。今後とも、願わくは末永く、宜しくお願いいたしますわ。……身体はお嬢様が亡くなるまで、魂はお嬢様が亡くなろうとも、お嬢様にお供させていただくつもりでございます」

 主の問いに対し、素直に年数を計算して応えてみせる。実際の所本当にそれを求められているとは考えにくく、それだけの期間一緒に居るのだから自分の事も判るだろう、という信頼なのだろう、と解釈した。
 こちらへ背を向けた自らの主に対して、言葉と共に一礼する。自分が死ぬまで隣にいろ、という、どちらかの性別が違っていたならば告白として使われるあろうその言葉に対しても、特に最後だけはやや声を落として彼女にだけ聞こえるように、従者として、同じように告白紛いの言葉を返す。主のそれが従者に対する我儘であるというならば、従者のそれは、主の後を追って自殺するなどともとれるという点において、主に対する狂信であると言ってしまっても過言ではないだろう。
 主の宴に出るという言葉に従い、シャーロットとエレクの二歩半ほど後ろを歩きはじめる。従者として過度に前に出るわけにもいかないが、主に万一の事があった場合の控えとして、彼女にすぐ手を伸ばせる位置に常にいる。その為の位置取りである。

【 サラ・キルスティナ / ドーム:→大広間 】
「四年半ぶり、でございますね。この華麗な大広間に入るのも」

 大広間へ入りその盛況さを目にして、誰に言うでもなく、サラは一人呟いた。
 王宮の大広間は、かつて先王が健在であった頃、メイドとしての修行の際に給仕担当として他の下女たちと入った時と同じような煌びやかさで彩られていた。一瞬先王の葬儀がつい先日行われていたことも、ともすればなかったことのようにも思われてしまう。しかし、そもそもこの宴が開かれた理由を考えれば、それは直ぐに思い出されることであった。最も上座となる位置、大広間で宴会が行われる際に普段イヴェルタ王が座っていた辺りに向けて、黙して跪礼した。
 エレクについて行った先は、天穂之宮の後継者候補・雨月がいる場所であった。彼女がシャーロットの知り合いであることまで彼が把握しているとは思えず、雨月がただ単に女性であるという事と、彼が彼女の人となりを把握しているらしいことが理由なのかもしれない。
横にいる男性は見覚えがある、確か王太子イブラーヒムの御友人だ。もう一人の女性は見覚えがないが、その容姿や服装からシャムトからの人間で、後継者候補は男性だと聞いているから、恐らく彼女は後継者候補の付き人であろうか、と、内心で状況を確認する。

「ご機嫌麗しゅうございます、皆様。遅参の非礼、どうかお許しくださいませ」

 エレクに続く形で、その場にいた三人に対して挨拶と共に一礼する。
 彼女の位置取りは主のすぐ横、先ほど言われたとおりの場所である。レシェクの存在だけでなく、雨月の部下の男衆もシャーロットを怯えさせかねない。すぐに対応するためにも、彼女は言われずともやはりこの場所に陣取っていたであろう。

>>シャーロット、エレク、雨月、レシェク、シャリファ、周囲all


【絡ませていただきますね、よろしくお願いいたしますー】
>>キープ様、レシェク本体様、琉綺様

2ヶ月前 No.36

五十鈴 @isuzu0☆LocDP0eky2k ★8dXnLGpsYk_mgE


【 シャーロット / ドーム:→大広間 】


 大広間へ近づくにつれ、また逃げ出したい衝動に襲われつつも歩みを止めない。遅れて二人の足音も聞こえるため自然と落ち着くことができた。感謝しなければ。
 シャーロットの問いにサラは真面目に年数を数えてそろそろ18年と応えた。幼い頃からずっと隣に居たサラは年齢は近いと言えど年上のため、お姉ちゃんみたく接してくれた。歳を重ねればお姉ちゃん、とは言えない立場になってしまったが自分によく尽くしてくれる従者になった。少し寂しいというか悲しいというか、どちらの感情でもとれる気持ちになった。だが、サラの言葉に安心感を覚える。どうやらサラが居ないと自分は何もできない人みたいだ。


「 18年ね……、そう思うと年月が早く感じられるわ。……うふふ。サラに見届けられるなんて幸福よ。……でも、私(わたくし)の後を追う真似はしないように。あと、先に逝くことは絶対許さないから肝に銘じておきなさい。 」


 過去を慈しむように呟く。早いようで遅いような不思議な感じだ。最後は声を落として告白紛いの言葉が返ってくると同時に小さく微笑む。自分が死んだらきと誰よりも悲しんでくれるだろう。願わくばサラの悲しんだ顔は見たくないのだが、死は避けられない運命なのだ。よく仕えてくれることは心の底から嬉しいことだが、少々過剰なところがあるため自分が死んで後を追って自殺をしないとは断言できない。ただ主より従者が先に逝ってしまうのは何としてでも避けたいところだ。サラだけにだけ聞こえるようにと此方も声を落とし告げる。


 *


 大広間の前で足を止める。目の前には沢山の男に女、見るからに10代の人も居る。中庭に居た時より、中の賑わいが思いの他すごくて圧倒されてしまう。おまけに温度も高い気もする。先程はこの中に入れずに逃げてしまったが、宰相という心強い方とサラという信頼のおける従者が居る。宰相が一通り周囲を見回し、誰かに狙いを定めたみたいで歩き出した。それを見たシャーロットは深く深呼吸をして後を追いかける。
 テーブルに並べられた豪勢な立食形式の食事に場を彩る装飾品。流石は親睦会と言うだけのことはある。余りきょろきょろと首を動かすのは品がないため、真っ直ぐ宰相の斜め後ろをキープして顔を上げる。そして宰相が声をかけた人物は、天穂之宮からの後継者候補・雨月だった。天穂之宮へ出向いている時、暴漢に襲われそうになったところを助けてもらった命の恩人とは言い過ぎかもしれないが、それ程の恩がある。そこからは何度か会っては話をしたりして、シャーロットにとっては初めて友達と呼べる人になった。雨月の傍にはイブラヒーム様の盟友、レシェク・イブン・ザキサディーク。そして恐らく肌の褐色からしてシャムトの女性。シャムトの後継者はシャーロットが苦手としているアトゥムだからその付き人だろう。


「 ……お、お久しぶりですわ。雨月様。 」


 なんとか絞り出した声はあまり声量はなく弱々しくなってしまった。表情筋が固まってしまい上手く笑えず、自分らしくもなく恥ずかしい。雨月の付き人とレシェクを見るなり隣に居るサラの袖をきゅっと少し力を入れて掴んでしまう。今すぐにでもサラの背に隠れてしまいたいがそれはそれで相手に失礼で。でもどうしていいのか分からず、視線を床に落としてしまう。隣のサラが一礼をするのでシャーロットも続けて三人に対し一礼する。


>エレク・ツァドゥー・ティファレト様、サラ・キルスティナ様、雨月様、レシェク・イブン・ザキサディーク様、シャリファ・ハーシム様、周辺ALL様



【 後から来たくせにたどたどしい態度でお詫びします、申し訳ありません……! レシェク様や雨月様の男衆には御無礼な態度を取るかもしれませんがご容赦を……! シャーロット共々よろしくお願い致します。 】


>キープ様、レシェク本体様、琉綺様

2ヶ月前 No.37

レシェク @arthur ★iPhone=lkgUwKLGtg

【レシェク・イブン・ザキサディーク/ドーム:大広間】

 「それもまた生者にしか成し得ない事である、と私は思います。その為に皆、あなたのおっしゃるところの生者の特権を行使するのではないでしょうか」

 霊的な存在を信仰するのであれば話は別だが、死者は生者に働きかける事は叶わない。生前の行いを遺すのみで、それに何らかの感情を抱き、また整理していくのは遺された生者がするものである。
 だが、荷分けをするように感情は分別が出来るものでもない。そこで葬儀やこうした哀悼を交えた会話が行われるのである。そうして時をかけて次第に落ち着いていくものだ。暴論ではあるが、葬儀や墓参りといったものは、死者への手向けという建前を借りて、生者が自身の為に行うものであるとレシェクは思っている。
 雨月の言うように、死者への遺憾を超えて執着を続けている事は危険な状態である。しかしながら、それを捨てさせるにはあまりにも速過ぎはしないか。
 彼女は頭の回転が早ければ、精神的にも打たれ強い。だが、それ故に常人の速さに合わせる事は不得手のように見えた。彼女をよく理解しているはずの従者の男たちですら何度も冷や汗をかいていた様子であったし、人心の掌握という点において、レシェクは雨月という後継者候補に一抹の不安を拭いされなかった。乱世においては稀有な才能だが、この治世に選んでも良いものなのか。
 表情にはおくびにも出さないが、そんなところを思ったところで、雨月が酷く動揺した。どうやら賛辞の言葉を受けて、照れ臭くなったようである。

 「失礼致しました。美しいの一語では足りませんでしたか」

 意外な可愛らしさに思わず、レシェクもまた口元を綻ばせて冗談を飛ばす。エヌカの官吏たちから低く笑い声が上がった。
 最も、おべっかのつもりでもなかった。人によって美的感性の違いはあるであろうが、少なくとも万人の共通認識に照らし合わせれば、美しいと形容されてしかるべき容姿をしているように思える。立ち振る舞いの為もあってか、あまり言われ慣れていないのだろうか。
 時間をかけて探っていこう。もともとたった一度の会食で判断するつもりはないが、風雲児の意外な一面を垣間見たところで、レシェクはそう思った。
 続けて近付いてきたシャリファが、怠惰的な要求をレシェクに投げつける。

 「おや、心外ですね。私は誠実であることを心掛けているつもりですが」

 眉を踊らせて、彼女にそう反応する。事実、言葉に二重の意味を持たせてはいるが、どちらも偽らざる本心だ。
 ちなみにレシェクは誰彼構わず、先のような問答をする訳ではない。どうにも測りかねる人物に対してや直接的な表現が憚れる時のみ、言葉に二重の意味を持たせるようなやり方を使う。その点、シャリファという人物に対してはひとまずは「面倒くさがり屋」として認識しており、彼女に対して駆け引きを仕掛けたことはない。そもそもイヴェルタの葬儀からまだ一週間しか経過しておらず、まともに話した事すらあっただろうか。従者という身分もあり、彼女に対して意識を割く余裕はまだなかったのである。
 最もシャリファの精神構造は単に面倒くさがり屋という要素のみで構成されている訳ではないのだが、彼女がレシェクを掴みかねているのと同様に、レシェクもまた彼女という人間を深くは理解出来ていない。
 話しているうちに、宰相のエレク・ツァドゥー・ティファレトとオヴェリアの後継者候補たるシャーロットが女性従者を引き連れて挨拶をする。気掛かりだったのは、彼女が自分を見て強張った様子になった点だった。

 「レシェク・イブン・ザキサディークと申します。以後、お見知り置きを」

 とはいえ、挨拶を返さない訳にもいかない。オヴェリア人の祖母を持つレシェクは、オヴェリアの作法にも通じており、エヌカのものとはまた違った所作で、シャーロットに簡潔な自己紹介をした。

【シャリファとレシェクがすでに面識あるように見えたものの、状況的にお互いの事はよく知らないだろうなぁ・・・と思ったので、こんな感じに落ち着きました。イメージと違ったら申し訳ないです】

>>雨月 シャリファ

2ヶ月前 No.38

琉綺 @rua12 ★Android=OhowgRleiW

【シャリファ・ハーシム / ドーム:大広間】

「あら、それはありがたい。」

敬語は不要という雨月の言葉に素直に感謝の言葉を述べる。後継者候補相手にめんどくさいからと敬語を使わないのは如何なものか。と言う常識はなんでもめんどくさいで片付けるシャリファもさすがに持ち合わせている。付き人に甘いシャリファの主は敬語を使わなくても怒らないからなのか、気を抜くといつもの口調に戻ってしまう。それほどまでに最近は堅苦しいことが苦手になってしまったシャリファには非常にありがたい言葉だった。

「自覚はあるけど面倒屋なんて呼び方したのは雨月様がはじめてだからねー 一応、確認しておこうと思ったの」

まあ、この場でシャリファ以外に面倒屋と呼ばれるような者がいるはずもないが、これからも雨月にはそう呼ばれるのだろうし慣れるためにも一応、確認しておいたのだ。この短い日数のなかでも面倒屋などという渾名が付けられるというのに、今まで1度も面倒屋に類似する渾名が付けられなかったのは何故だ?そう少し考えてそれすらもめんどくさくなり頭の隅に追いやった。

「それはすまなかったね。アンタが話してるのを見てると、どうも、本心は話さない食えないやつって感じがしてね。」

話したことはないものの先程から少しだけ聞こえてきていたの雨月との会話やその他見かけた会話のなかでの印象は食えないやつだったのだが、どうやらシャリファの感じたそのイメージはどうやら違ったようだった。そのことに素直に謝罪はしたものの言わなくてもいいことまでくっついているのは思ったことがすぐ口に出るシャリファの悪いところだ。

そんな話をしていると宰相がオヴェリアの後継者候補とその付き人の女性を引き連れてこちらへとやってきた。どうやら宰相とオヴェリアの後継者候補は主とはしたしい間柄らしい。どちらとも面と向かって話したことがないというかオヴェリアの後継者候補には避けられている気がしなくもないのだが、レシェクや雨月の付き人の男衆を見て強ばったところを見るとどうやら避けられているのは私ではなく主らしい。

「私は、シャムトの後継者候補の付き人のシャリファ・ハーシムと申します。」

先程の会話とは全く違いきちんと敬語で返す。雨月は敬語は不要だと言ったが、さすがに宰相やオヴェリアの後継者候補をまえで付き人が敬語を使わないとなるといろいろと言われるのは目に見えている。先程のレシェクとの会話のなかでも官吏からの冷たい視線は感じていたし、冷たいどころか睨まれたため流石に自重しようと思った結果こうなったのだ。

>>雨月様・レシェク様・エレク様・サラ様・シャーロット様


【私的にも雨月様と話しているのを聞いた(聞こえてきた)感じだと面倒くさいことが嫌いなシャリファならそう考えるだろうな……と思って書いたので全然OKです!紛らわしいというか分かりにくい書き方になってしまいすみません。】

2ヶ月前 No.39

キープ @keep4603 ★nJ5qCxa7H9_8gk

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2ヶ月前 No.40

有栖川 @hananomi☆Mwp.W.uiBT6 ★5tuXai74if_sgs

【 サラ・キルスティナ / ドーム:大広間 】
 人は誰であれ、いつかは死ぬものなのだ、という、言葉にすれば至極当たり前なことを、サラは大広間へと足を踏み入れてから改めて考えていた。その原因が老衰だったり、落馬だったり、あるいは病だったりという差はあれども、自分自身も、横にいる自らの主も、この大広間にいる人間の全てが、時期はさておきいつかは死ぬのが定めなのだ。ただ、その時が明日か、一年後か、それとも何十年も後かなどという事は、それこそ神のみぞ知る、というものでしかない。故に、先程のシャーロットの『後を追う事は許さない』、『先に逝くことは絶対許さない』という言葉に、サラは『承りました』としか答えられなかった。将来の事を考えれば、絶対に先には参りません、とは、口が裂けても言えなかったのである。サラはシャーロットよりも3歳年上である以上、年齢順に死ぬならばサラの方が先に逝くことになる。そうでなくとも、例え今すぐにはその可能性がなくとも、女性として妊娠し出産する際に命を落とす妊婦が多い以上、そういった要因で命を落とす可能性を考慮しないわけにもいかない。何より、不確定なことに対して、軽率に無責任な断言をする事が主に対する裏切りであるようにも思われたのであった。
 主の亡き後に教会か修道院に入り、主のために神へと祈りを捧げて残りの人生を過ごす、というのが、恐らくは仕える主を亡くした従者のあるべき姿なのかもしれない。しかしサラには、いざそうなった時にそういう『冷静な』行動を取れるのか、衝動的に主を追わずにいられるのかという事も、わからずにいた。一度そうだった時期があるのにもかかわらず、自分の横に主がいないという事を、将来起こるかもしれない事象を、最早想像する事さえもできないのだ。まして、主が亡くなった後のことなど、どうして想像できようか……とは、まさか周囲に漏らすわけにもいかない。ここはそういう場ではなく、次期国王を選ぶための集まりの第一歩。オヴェリアの領内どころか、隣に居る主との間だけで完結するような暗い話など、するわけにはいかないのだ。
 エヌカの王宮とオヴェリアの宮殿の双方で仕込んだポーカーフェイスで以って、メイドは周囲に対して、自分の内外共に平静を保っていると見せかけている。彼女の盾ともいえる無表情の仮面の裏側を見抜けるとすれば、余程他人の事を読むのに長けている者か、彼女と共に過ごし彼女の内に抱える感情の機微を実際に見てきた者のみであろう。
 横から袖を引かれ、サラは自らの横に僅かに顔を向けて主の方を見る。何か粗相をしたために袖を引かれたのか、とも思ったが、彼女はただ単に周囲の男性の存在に圧されて、つい袖を掴んでしまっただけらしい。周囲の人たちに気取られないようにさりげなく、更に15cm程主の方へと身を寄せ、彼女が自分の腕をつかむなりなんなりしやすいように位置取りを変える。
 主が縋る相手が数居る従者の中でも自分であるという事実によって自らの存在理由が満たされる充足感を得つつも、主が自らの苦手なものから逃げたい気持ちに抗ってこの場におられるのだから自分も出来る限りのことをして精一杯お仕えしなければ、と、サラは瞬時に頭を切り替えた。

「ご機嫌麗しゅうございます、雨月様。お変わりないようで何よりでございますわ」

 名前呼びで声をかけてきた雨月に、再び頭を下げる。ここ数年来の主同士の親交によって顔と名前を憶えられているらしい。思えば最初から―――時期として4年ほど前、エヌカ王宮での出仕を終えて半年ほど経ったような辺りだっただろうか、オヴェリアの従者としてはあの時天穂之宮で主と共に彼女に救われてからの顔見知りで、おまけにそれ以降の主の訪宮にくっついている従者もだいたい自分が含まれているのだから、それはもう覚えられていてもおかしくはないというものだろう。
 ふと気が付くと、雨月の周囲に付き従う男衆の数が明らかに減っていた。視線を軽く周囲に漂わせれば、明らかにそうだという顔が先ほどよりもやや遠い位置にいるのが見えた。男性が苦手なシャーロットの事を案じて、彼女に付き従う男衆の大半を下げさせてくれたようだ。今彼女が主へと差し出した酒も、そこまで度数が高く無い部類の物であるらしい。そのさりげない気遣いの数々に対して、再び黙礼した。

「お初にお目にかかります。オヴェリアより参りました、シャーロットお嬢様付きのメイドのサラ・キルスティナと申します。以後お見知りおきいただけますと幸いです」

 残りの二人、レシェクとシャリファとは、先週の葬儀以来であるにしてもほぼ初対面のはずであったため、向き直って改めて自己紹介を行う。
 このエヌカ後継者の選定がどう転ぼうとも、この場にいるのが各都市の次期指導者とその従者がほとんどであることは覆らない。であれば、今後の為にも顔を売り、互いを知り、将来必要となるであろう周囲との連携を円滑に進められるようにしておくべきであろう。

>>シャーロット、エレク、雨月、レシェク、シャリファ、周囲all

2ヶ月前 No.41

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【エレク・ツァドゥー・ティファレト/ドーム:大広間】

いくら女性比率の方が高いと言えど、この場に男性がいない訳ではない。少々強張っているようにも聞こえるシャーロットの口振りに、エレクは「大丈夫か」とでも言いたげな視線をちらと彼女に向けた。いざとなれば自分が何かしらのフォローを入れるつもりではあるが、できることならシャーロットにはあまり無理をしてほしくはない。とにもかくにも彼女にとって不利な状況に陥ったら多少体も張ろうとエレクは決意する。シャーロットの身辺はサラに任せるとしても、周りの人払いや状況の打破は自分の役目だ。

「……その呼び名で呼ばれるのは久しぶりだな。一応仮眠は取ったからその点については案ずるな」

懐かしげに微笑む雨月に、エレクもつられたかのように表情を和らげる。かつてエヌカに滞在していた雨月のお目付け役として働いていた身としては生徒にも近しい存在である彼女が成長した姿を見るのはなんとなくではあるが感慨深いものがある。まるで昔の自分を見ているようでけっこうな頻度で頭を抱えたこともあったが、今となっては良い思い出だ。それにしたって雨月の逃げ足には王宮の衛兵たちも舌を巻いていた。盗賊紛いの行為に身を落としていたことのあるエレクからしてみれば彼女の居場所の目処は大体ついているのだが、衛兵たちにはそれが難しく結局はエレク自らが探しに出ることが多かった。罰としてエヌカ王宮の兵士相手に組手を命じられた雨月が57人抜きという偉業を達成したのはよく覚えている。寝不足な上に危機感を覚えたエレクがこれは自分が出るしかないと腕捲りをして「宰相はお願いだから寝てください」と官吏たちに止められたこともあったものだ。

「嗚呼、ならば此方も名乗らねばなるまいな。既に知っているところかとは思うが、このエヌカにて宰相を務めているエレク・ツァドゥー・ティファレトという者だ。お二方だけに限らず客人殿とは今後も付き合うこととなろう、以後よろしく頼む」

丁寧にも自己紹介をしたレシェクとシャリファに倣い、エレクも先程したはずの自己紹介に多少の言葉を加えて一礼した。その対象はレシェクとシャリファだけではなく、後ろに控えている雨月の男衆にも向けられている。風貌こそ破落戸のようではあるが彼らは王宮に入ってからも特に問題となりそうな行動は起こしていないようであるし、今後とも友好的な関係を築いていきたいものである。万が一のことがあればかつてイヴェルタからの彼に仕えないかという提案を突っぱねて脱出を試み、エヌカ王宮の兵士100人抜きをしたことがあるエレクなので自らの手でとっちめてから裁くことも念頭に置いている。ちなみに100人の兵士を撃破したエレクだがイヴェルタ本人から綺麗な投げ技を食らい気絶するという結果に終わった。彼の記録を塗り替える者は未だに現れないが、できることなら現れないでほしい。

「ところで、皆賢者の子孫たちには会ったか?まだなら挨拶程度はしておくと良い、顔合わせのための宴なのだからそれくらいはしてもらわねば困る」

私の睡眠時間も奪われるからな、と苦笑しながらエレクはそんな風に話を切り出した。今回の宴は後継者候補と賢者の子孫の親睦を深めることが最大の目的である。まだ顔合わせもしていないなら挨拶程度はしておいてほしいというのがエレクの本心だった。斯く言うエレクも賢者の子孫とは本当に挨拶をしただけであり、特にライラ・アルフワードとかいう少女からは「ひぇぇ顔が良い……」と言いながら土下座されかけるという憂き目に遭った。咄嗟に彼女の肩を掴んで年端もゆかない少女に土下座されるのは回避したが、あれから自分の顔が怖くなりすぎないか地味に気にしているのだ。かつて我が物顔で女性を侍らせていたこともあるエレクだが、現在は円滑な関係を築けるように精一杯努力している。賢者の子孫に怖がられて避けられるという事態には陥りたくなかった。

>>シャーロット様、サラ・キルスティナ様、雨月様、レシェク・イブン・ザキサディーク様、シャリファ・ハーシム様、周辺all様

【恩師設定の方、了解致しました!雨月さんに兵士100人ガチンコバトル()を言い渡したのはエレクの体験に基づいたものです……それにしたって57人抜きって強すぎる……そんな雨月さんが好きです←】
>>キープ様

2ヶ月前 No.42

真庭 @toukun22 ★Android=TVnkjESwdP

【ザカラ・サティーフ/ドーム:大広間】

 この中では自分が年長者だから、というのも勿論理由の一つにあった。しかし何より、哀れにも次期国王の選定における重要人物に祭り上げられる羽目となった人間が、成人も済ませていないような年若い少女だったことが主要因だろう。……せめて、同じ立場の自分が守らなければなんて、そんな力もないのに身の程知らずなことを思ってしまったのは。だからこそ、「ザカラ殿も、無理はし過ぎないでくださいね」というライラの返答にはドキリとし、思わず目を見開く。その言葉があまりにも図星だったからだ。
 実際、彼女ら同様国の命運を握る立場に置かれたザカラは、その責任と使命を極めて重く受け止めてしまったが故に、決して良好な精神状態では無かった(彼の変質的な性癖を考えれば、逆に最上の気分とすら言えるのかもしれないが、あいにく無自覚である)。それでも何とか彼女らの一助になれないものかと無闇に背負い込んだ己を見透かされたのかと思い、その動揺がわずかに顔へ現れる。「……あぁ」案の定、何と言えばいいやら挨拶に困り、急場しのぎとして口の端を上げ、少し苦く笑むことによってその答えとした。同時に、どうやらライラは随分と人の心の機微に聡い少女らしい、と彼女への認識を新たにする。
 一方、アリアナはといえば流石の一言だ。子供と言えど侮れないという初対面時の印象はやはり変わらない。こちらは年長者として可能な限り手助けをする腹積もりだという旨を示せば、彼女はザカラの発言で少し緊張してしまった空気を軽口によって弛緩させてみせた。意図したものかどうかまでは分からないが、その大人顔負けの手腕と悠然とした態度には、本当に本当に十二歳か? としつこく年齢を確認したい衝動に駆られてしまう。そこでザカラは年齢を再度問う代わりに、ふっとその頬を弛緩させた。

「……そんな冗談が言えるなら、あまり心配はいらなさそうだな」

 しかし、やけに大人びた振る舞いと惜しみなく発揮される知性に惑わされそうになるが、やはりどうしたって年齢的に未熟な面もあるだろう。ライラの言う通り、同じ賢者の子孫という立場にある者同士、互いに支えとなり得ればいいのだが。

「……ところで、ここに来てからもう一週間だろ。二人は後継者候補様方と会話は交わしたのか?」

 後継者候補とその付き人に先王の嫡子の盟友、遂には国の宰相までもが集う、二つの高貴すぎるテーブルをそれぞれ離れた位置から一瞥すると、ふとそんな疑問を口に乗せる。それは現状の確認に過ぎない単なる雑談の一種だったが、もし二人が彼らと接触しているのなら、上手くいけば彼女らから何かしら事前に情報を仕入れられるかもしれないという期待もわずかに孕んでいた。
 ちなみにザカラはといえば、この一週間、政治書や歴史書、理想の指導者とは何か、などという類の専門書を部屋でずっと読み漁っていた。自分なりの理想の王像を定めるという雑な目的の下、半ば現実逃避も兼ねての行動である。しかし、いかに部屋で読書に励んでいたとはいっても、時折廊下へくり出した際に一部の後継者候補とすれ違うこともあり。そしてすれ違うとなれば、まさか挨拶もなしに素通りという訳にもいかず……。情けないことに、そのどれもが天と地ほど開いた身分格差に基づく緊張と恐怖のあまり、挨拶もそこそこに逃げ出してしまっている。よって、当然ながら彼らの人柄に関する伝聞以外の情報はほとんど得られていない。まぁ、王宮に招集される以前から交流のあったフォルターレの後継者候補だけは話が別だが。
 しかし事ここに至っては、いい加減絶大な権力や不敬罪に怯えてばかりではいられまい。今宵の宴の目的から考えて、間違いなく賢者の子孫であるザカラ達は後継者候補と本格的な挨拶や雑談を交わすことになるだろう。

 ──その時は、もう少しまともに話せねぇとまずいな……。

 ザカラはあいにく、リーダーシップなどを好んで取りたがるタイプではない。むしろ保守的かつ堅実思考の持ち主であり、リーダーに唯々諾々とついて行くメンバーの内の一人、もしくはその補佐でもしている方が遥かに性に合っている。しかし、守るべき対象が傍らにあるなら話は別だ。場合によっては、仮にも年長者である自分が無理にでも前に出て、彼女らの盾にならねばならない。その有用性が如何程かまでは保証しかねるが、まぁないよりはマシだろ……とザカラは内心密かに覚悟を固めた。


【無理矢理感がありますが、ロルを返させて頂きます。お返事を待たず申し訳ない……!】

>>アリアナ様 影追様 ライラ様 周辺ALL様



【ええええ後ろに隠れるライラちゃん!?萌えの塊ですか可愛すぎる……!だだだ騙されてはいけませんよ!頑張りはするでしょうが、奴も王族に対しては過剰にビビってるのですぐどもったり「ひっ」とか言い始めますから……!】

>>スレ主様

2ヶ月前 No.43

レシェク @arthur ★iPhone=0p9q4wdV6q

【レシェク・イブン・ザキサディーク/ドーム:大広間】

 大人数になってしまったこともあり、レシェクは密かに王族とその従者たちの輪から外れた。人の集まる場所が苦手というわけではないが、宰相のエレクと天穂之宮の雨月は久闊を叙していたし、オヴェリアのシャーロットはどうにも様子がおかしかった。後者に関しては雨月がすぐに従者の男たちを下がらせた事もあって、少なくとも男性に良くない縁があったことは十分に想像出来たので、彼女の為にも早々に抜けたのである。幸いエレクが賢者の子孫に会うように促した事もあって、輪から抜けることは容易だった。
 とはいえ、会食で壁の花を気取っている訳にもいかない。レシェクは名声や金銭の為に権力を欲するタイプの人間ではなかったが、この国の政治に対して関心が薄い訳でもなかったので、少なくとも正しい方向へ権力を使う人間を見定める必要があったのである。投票権はあらずとも、権利のある人間を誘導することは出来るかも知れない。

 「(これまでに接触したのは、天穂之宮の雨月、オヴェリアのシャーロット……)」

 シャーロットに関しては、表面的なものしか伺えなかったが、雨月については人となりと言えるものは理解出来た。
 そうなると残る二国の後継者候補の顔を拝みたくなる。シャムトとフォルターレからはそれぞれ王子が選出されていたが、まだ表面上の儀礼的なやり取りしかしていない。後継する意思はどれほどのものか、その決意の上にどんな国の未来を思い描いているのか。そこまで引き出せれば、僥倖というものである。
 一方で賢者の子孫ともきちんと話している訳ではないので、彼らとの接触も測りたいところではあった。賢者の子孫とは言うものの、そのほとんどは市井の民に過ぎない。いわば国民の代表とも言うべき彼らは王に何を求めているのか。宰相を志望する者としては、彼らの声は決して無視して良いものではないのだ。
 大広間を遠巻きに眺めつつ、レシェクは手元のワインを口に含んだ。

【新たに絡みを投下させて頂きました】

>>ALL

2ヶ月前 No.44
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