Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(617) >>

曉の彼は誰時

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(9299) - ●メイン記事(617) / サブ記事 (320) - いいね!(35)

ホラーゲーム風 / 和風 / 脱出 @sweetcatsx☆2/Tw0gYxHcQ ★iPhone=VHGaT7ZbKj

 ――――朱月≠ノは気をつけて。

 ――――貴方も、ああなってしまうよ?


【 八月上旬 / 山の麓の町 バス停留所 】

 がたがたと揺られ続けること一時間。止まったバスをおりてゆっくりと辺りを見渡す。辺りには田畑、そして山。この山の向こうに目指している場所はあった。


 その山には入ったらいかん。
 その山の奥には、曉町がある。
 あの町は住人全員が神隠しにあった。もう誰も残っとらん。

 ――――あんたも、神隠しされちまうぞ。


 幾度となくかけられた言葉を愛想笑いで逃げ切って、一歩、また一歩と山の奥へと足を踏み込んでいく。生い茂る木々が空を遮るようにして立ち並んでいるせいか薄暗く、より一層怪しげな雰囲気が立ち込める。深い深い山道をただひたすら、真っ直ぐ。


【 八月上旬 / 曉町高台広場 】

 山道を何時間歩いただろうか。目の前に巨大な朱塗りの鳥居が視界に入る。安堵からか思わず溜め息が零れた。やはり、やはり実在していた。浮き立つ気持ちを抑えつけ辺りを見渡せば黒のワンボックスカーが視界に入る。……もしかしたら、広めの道もあったのかもしれない。

(…………他にも人がいるのか)

 心に小さく浮かんだ疑問。それらを拭い去るためにはこの中に入らなければ。深く息を吸い、ゆっくりと鳥居の下を潜る。――――その時だった。


「――――――――もう、逃げられない」


 鼓膜を震わせた少女の声。辺りに少女はいない。気のせいだったのだろうか。首を捻りながらもふと、視界に映った空に目を見開く。何故、どうして、空はまだ青かったはずだ。それなのに――――


 何故、空は闇に染まっているのだろう。
 何故、月はあんなにも赤く染まっているのだろう。


 ――――これは、閉ざされた町曉町≠ノ足を踏み入れた彼等に待ち受ける怪異譚である。

( 鈴の音が、聞こえた気がした )



 ///

( 冬だけどホラースレッドです! 兎にも角にもサブ記事へ! )

1年前 No.0
メモ2019/08/05 22:02 : スレ主☆e0aRNqDUyEM @sweetcatsx★iPhone-8p27ODDVl8

要必読事項(EDについて) → http://mb2.jp/_subnro/15697.html-234,250#a

イベントについて → http://mb2.jp/_subnro/15697.html-296,307#a


第一章『曉町』>>1-186

第二章『蠶』>>187-354

第三章『朱月』>>355-536

第四章『月嫁』>>537-

最終章『曉の彼は誰時』


【 登場人物(四章時点) 】

▼ オカルトサークル

 八岳龍矢(芙愛さん)

 逢澤安玖(千羽さん)


▼ 曉町探し隊

 御子柴ゆらぎ/ふわりちゃん★(夕邑三日月さん)

 鑓ヶ岳烈/足軽其の壱(すずりさん)


▼ 取材勢

 都城京(冬野)


→→→ 一覧(http://mb2.jp/_subnro/15697.html-299#a

切替: メイン記事(617) サブ記事 (320) ページ: 1 2 3 4 5 6 7


 
 
↑前のページ (567件) | 最新ページ

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 客間→囲炉裏の間】

長机を調べていた烈が発見したもの。それは墨色の表紙をした冊子のようなものだった。探索にもだいぶ慣れてきた烈は、ははぁ、と顎に手を遣る。

「拙者にはわかるぞ。これは恐らく、曉町名物のばらばら日記帳にござるな」

どうしてこれまで見つけてきた日記帳が分割されているのかは烈にもわからないが、とりあえず彼女は“そういうもの”として受け入れている。大きすぎる食べ物を小分けにして保存しておくようなものなのだろう。烈は冊子を手に取ってから、その内容を確認する。

《2002年10月29日
 柚衣が流行り病を得て亡くなった。――は泣き喚いて手がつけられず、――――も大層気を落としていた。
 月舘の家からすれば我は余所者なのだろうが、柚衣は間違いなく我が娘。せめて毎月、墓には参らせて頂こう。》

てっきり烈はこれまで見てきた日記帳の内容はだいぶ昔に書かれたものかと予想していたが、この日記帳はそう古い時代に書かれたものではないらしい。2002年と言えば、烈も既に生まれている頃だ。さすがに鮮明な記憶はないが、それでもこの日記帳の持ち主と烈は同じ時を生きていたということになる。
しかし、所々読めない部分があるのが気になる。文脈からして、この部分には誰かの人名が入るのだろうか。出来ることなら読み取っておきたいと烈は目を凝らしていたが、どたどたと誰かの駆けていくような足音を聞いてはっと顔を上げた。また何か起こったのだろうか。何が起ころうと、大事になる前に自分のやれることをやらなければ。

「何事にござるかっ!?」

少々距離があったのと、気付いたのが若干遅かったこともあってか、烈が駆け付けた頃には既に全員集合していた。━━━━一瞬、一人足りないと烈は焦燥感を覚えたが、すぐに欠けている者が何処にいるのかを確認することが出来た。

「あ、逢澤殿!拙者も助太刀致しまする、女子一人で引き上げるのは辛かろう!」

ゆらぎ一人で床下にいる安玖を引き上げるのは容易ではないだろうと判断した烈は、彼女の手伝いに回ることにする。安玖くらいの男性ならば烈の力でも引き上げられるだろう。所属していた部活動が部活動なので、練習中に怪我をする部員も少なくはなかったのだ。歩けない部員のことを背負って保健室まで連れていったのが懐かしい。
━━━━ちなみに、烈も一瞬安玖が床下の穴に落ちるなんて珍しい、と思ってしまった。たしかにそういったアクシデントに遭いそうなのは龍矢のようにも思えるが、さすがに八岳殿も同じ轍を踏むことはなかろうと烈は考えた。とにもかくにも、今は安玖の救出を最優先にしなければならない。烈は床下の安玖をいつでも引き上げられるようにと彼の方を見据えた。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.568

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★0jNsxvmXp2_OlE

【逢澤安玖/町長邸 囲炉裏の間】

「いや本当に……何かゴメン」

 後輩に抱え上げられ、年下の女の子二人に引っ張り上げられる――という心霊現象&高所落下によるボロメンタルにまあまあな追い打ちとなる善意に、何だか恥ずかしさや居た堪れなさよりも申し訳なさが勝って謝る。投げ捨てていた落書きされたノートと自分のスマホは持ちあげられる寸前に回収して胸に抱えておいた。
 持ち上げられた先、適当に休めそうな場所に腰掛けると早速龍矢に貰った丸薬を飲む。そして手持ちの丸薬から半分の3粒を取りあえず詰めなおす。唯一とも言える回復手段を一人が大量に持っていても意味がない。

「そこの棚ふたつも一通り調べたけど、この村絡みで関係ありそうなものは無かったよ。だから穴を確認しようと思ったんだけど着物の男の子に腕掴まれてさあー……痛いし引きずり込まれるし、って思ってたら俺の顔見た途端『お前じゃないからいーらない』って手を離して消えちゃって」

 そのまま支えが無い上半身が実質宙に投げ出されの、さっきである。

「横暴。最悪。落ちるし、本当嫌。このカバン、誕生日に買ってもらったばっかなんだけどどうしてくれんのさ。土まみれだし解れてんじゃんじゃんもー……」

 状況的に仕方なかったとはいえ、かなり扱いがぞんざいになってしまっているメッセンジャーバッグは既に使いこまれたような雰囲気をまとっている。手に入れてから2週間も経っていないのに。かんなり高かったんだかんな、これ。とは誰に向けたかも分からない嘆きである。

「……でも何で囲炉裏跡の穴の中に隠れてたんだろう。かくれんぼっていうか、何かから隠れてたところを僕が近付いたから掴んだ、みたいな感じだった。その上でこっちを引きずりこもうと……いや、何処かに連れていこうと? 僕は違うから要らない、連れていかなかった、の逆は他の特定の誰か――もしくは条件を満たした誰かなら、要る、ないし連れていったって事で……」

 親指で下唇を拭う。膝上に乗せたままのノートは到底この状況には関係があると思えない。そうなると今まで“曉村”ないし“曉町”を条件として起きていた心霊現象や資料と照らし合わせるしかない。

「中に居なきゃいけない理由があるのか……中に居ざるを得ない理由があるか……あの男の子自体がまだ“そこ”に居るのか……例えば隠し部屋や隠し通路……例えば遺体遺棄現場……例えば事件現場……連れていく……必要……近くに居る気配がある……仮に僕と真逆の人が正解だと仮定するなら……子供で、女の子の、七ちゃん……いや、もっとシンプルに儀式の生贄か……?」

 ぶつぶつと散乱する思考を吐き捨てていく。今この状況でそこもう少し詳しく調べてーなんて言ったら後輩はビビり倒すだろうか、と自分を助けるために果敢にも飛び込んだ龍矢へと視線を向けた。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.569

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/囲炉裏の間】

龍矢を呼ぶか呼ばないか、その答えを安玖が紡ぐより先に、彼は自分からやってきた。ひらりと穴に飛び降りた龍矢が安玖を支え、ゆらぎと、慌てて駆け付けた烈も加わり即席レスキュー隊が完成する。
「はい、せーの」
 最早お馴染みになりつつある掛け声が必要だったかは別にして、そうして穴へと落下した安玖は無事に救出された。
「いやいや、困った時はお互い様でしょー、謝らなくて良いよ」
 安玖の羞恥心などつゆ知らず、ゆらぎはへにゃりとした笑みを浮かべる。先程床に置いた竹箒も回収し、改めて部屋を見渡せば、騒ぎを聞き付けた京も中にいた。早速全員集合である。

 この部屋の中は安玖が調べた、結果としてよく分からない子供に穴の中に引きずり込まれたらしい……今後は下を覗くのには注意した方が良さそうだ。
 バタバタしていたのでゆらぎも一瞬忘れていたが、物置で龍矢が日記がどうのと言っていた気もする。既に色々と集まっているようなので、一度情報共有しておくべきか。
「パパ、ついでにちょっと穴の中調べて貰ってもいーい? それからさっきも日記があったんだっけ……えーと紅いのはきっと図書館の続きでしょ、黒いのは見たことないからこの家の人のかな? 珍しく日付書いてあったんだっけ……あ、うんそうだわたしの誕生日。ホントにその日に生まれてるんなら完璧にわたしと同い年だよ。あと月舘柚衣って人のお墓はさっきの墓地にあった……と思う多分。その人が死んじゃったから陽子さんが後妻に来たってのもなくはないだろうけど、パパが言ってた通り月舘長男のお嫁さんなのかねー……結婚記念日とかどっかにないかな全員分」
 穴の中の龍矢を見詰める安玖の視線を勝手に解釈しつつ、ゆらぎは玄関で龍矢が喋っていた内容を反芻する。細かいことは現物を見てもらった方が早いと省略した一方で、彼女自身が見たものや数字の情報も付け足しておく。

 龍矢が拾った日記に書かれていたという、女の子が生まれた日。それは奇しくもゆらぎの誕生日と同じであった。とんだ偶然があったものである。
「月嫁って要は生け贄でしょ多分。平成の世に普通にそんなもんがあったんだと思うとぞっとするね……もしわたしの生まれがこの町だったら……今日まで生きてなかった、かも……知れない訳、だ」
 恐らくそれが原因の怪異に現在進行形で巻き込まれていることを思い出し、急に自分の言葉が現実味を帯びてきたのか、ゆらぎの声は尻すぼみ気味になる。

 身震いがした。夏の暑さなど忘れるような寒気が、今更ながらに走る。

「という訳で早いとこなっちゃん見つけてみんなでお家に帰りましょう。れっちゃんと編集長は何かあった?」

>all

3ヶ月前 No.570

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 囲炉裏の間→ 】

 無事に逢澤は救出されたようで都城は苦笑を滲ませつつも安堵の息を吐き出す。くるり、と辺りを見渡しゆっくりと部屋内を歩きながらも面々の言葉に耳を傾けた。

「いやこの町の人だいたい横暴そうやけど災難でしたねえ……うーん……あっ、御子柴さんは十九歳なんやねお姉さん十二月で二十六になってしまうから羨ましいわあ」

 へらりと笑みを零しながら囲炉裏の間の奥へと歩く。片方の扉は烈が開けたようで和室がちらりと視界に入る。その隣にももう一つ扉、真後ろにも扉、そして奥には二階へと続く階段が確認出来た。都城は進路を確認してからゆらぎの言葉にくるりと振り返り首を傾ける。

「脱衣所にはいつものお薬がありましたよぉ、硝子が割れて散らばっとったから入るんやったら気ぃつけてください。あとは普通に御手洗いと、お風呂やったわ。あー……お風呂の水やばそうやったから近寄らん方がええかもです」

 ゆらぎの問いかけに答えながらも浴室の状況と悪臭を思い出し眉を顰める。気を紛らわせるかのようにえい、と言いながら烈が開けた扉の横の扉を開ける。

「穴の中は八岳くんに任せますねえ。こっちも和室みたいや、鑓ヶ岳さんがおった方とほとんど一緒やから二間続きの客間がなんかやろか」

 部屋の中を懐中電灯で照らしながら都城は振り返って面々へとそう伝えた。

>> ALL

3ヶ月前 No.571

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 囲炉裏の間・床下】

おいおいおーい、なんだその目は。「えーっ、いかにも真っ先に落とし穴に引っかかりそうな八岳じゃなくて、逢澤くんが落ちちゃったのー!? 何かあったの!?」みたいな心の声が皆してダダ漏れだぞコラー。

逢澤くんじゃなくてお前が落ちればよかったのに、なんて、言われかねないよなぁ、キャラ的に。まあそこのところをへらへら適当に流してしまうから、俺はいつまでたっても舐められる下っ端になってしまってる。と、同時に、このキャラのお陰様で、「本当の被害者」になることだけは回避できている。処世術。無駄に打たれ強いんだ。正直に受け止めて傷付くような奴はダサいと思い続けて生き残ってきたから。

「おねえさん、名誉毀損ですよぉ! はい、いきますよ、せーの」

囲炉裏の上からこちらを覗き込む都城さんに俺への名誉毀損を代表して貰って冗談交じりにビシッと指さし、御子柴さんと鑓ヶ岳さんが逢澤先輩を引き上げられるように両側から腕を抱えたのを確認して下から押し上げられるように腕を回す。……細っ、と驚きのあまりつい正直な感想が口をついて出てしまった。すみません、すみません、今はしのごの言っていられない。御子柴さんの掛け声に合わせようと試みた若干遅れがちのテンポで声を合わせ、先輩を畳の上へと押し出す。
救出劇は成功したようで、「少し休んでてください」と言い残し、俺は引き続き床下の探索を言い渡される。先輩は囲炉裏の下に隠れていた着物姿の男の子に引きずり込まれたのだという。俺が飛び降りた時には、そんな子供はいなかった。今も、上から光が差しているこの場所以外は真っ暗で、少なくともかくれんぼする人影は見つからない。

「承知しましたー。先輩を引きずり込んだ犯人、ちょっと調べてみます! あ、これは物置に置かれてた日記です! 皆さんで読んでてください」

そう答えて、納戸から持ってきたままになっていた二冊の日記帳を、畳の上に投げた。穴の深さからして、荷物を先に放り上げて少し弾みをつければプールから上がる要領で自力で簡単に這い上がれそうだが、両手に日記帳を持っていては流石に邪魔でしかない。

「……え……御子柴さんって、その日記の子と同じ生年月日なんですか? ……御子柴さんにも双子の姉がいたりー、なんて、しません?」

逢澤先輩には双子の兄が、俺には双子の弟がいる。これで御子柴さんに生き別れの双子がいたりなんかしたら……双子率ハンパないな。まあ、世の中に同じ生年月日の人なんてそれなりの確率でいるだろうからそんなに驚くことでもないんだろうけど。

とりあえず、日記のことは後だ。囲炉裏の間の皆を見上げていた俺は、言いつけ通り床下を調べることにした。……ひんやりと埃っぽくて、真っ暗だ。
そういえば、あの日記には「この町に生まれた女子は等しく月嫁の資格を持つ」って書いてあったな。……七ちゃんが攫われたとき、あいつら、なんて言ってた?
ーー月嫁を、月嫁を捧げなければ。
……七ちゃんは、やっぱりこの町の人間だったってことなのだろうか。暁町の人間が、敵だとは言わない。でも、一人になってからその考えに思い至って、俺は少し落胆した。

角材がパズルかジャングルジムのように組み合わさって網目みたいに広がっている。懐中電灯を当てないと見えないそれを手伝いに、俺は先輩が男の子を見たという暗闇の奥底に目を凝らした。

「誰かぁー? 誰かいるのか?」

>all

3ヶ月前 No.572

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 囲炉裏の間】

ゆらぎと二人でせーの、と安玖を引っ張り上げる。運動部の男子を背負うこともあった烈としては、安玖は少々軽いように思えた。しかしこのようなところで逢澤殿はもっと食べた方が良うござりまするぞ、などと言うのはさすがにやめておいた。烈は空気が読めるタイプの武士である。…………いや、武士ではないのだが。
とにもかくにも、安玖の話によると彼は床下にいた少年によって引きずり込まれたのだという。たしかに横暴の一言に尽きるが、何も今に始まったことではない。むしろ話のわかる怪異の方が少なかったように思える。出来ることなら烈も怪異との戦闘は避けたいが、あちらから襲い掛かってくるのであれば致し方ない。正当防衛という奴である。

「あっ、ゆらぎ殿は拙者よりもひとつ歳上なのでござるな。拙者は18にござるよー」

てっきり同い年かと思うておりました、と付け加えながら烈も自分の年齢を告げる。今のところ伝えなければならないという情報でもないが、他人が話している話題には乗っかっておきたい質なのである。もしかしたら自分が一番年下なのかもしれませぬな、なんて思いながら烈も探索の結果を報告することにする。

「編集者殿の申した通り、拙者の調べた部屋は二間続きになってい申した。拙者が調べたのは長机のみにござるが、中には押し入れもありましたぞ。そちらも調べてみる価値がありそうでござる。……して、長机からは此方の日記を見つけましてござる。所々読めないところがござりまするが、内容を把握する分には支障はありませぬ」

此方でござる、と告げてから烈は見つけ出した墨色の日記を一同に見せる。念のため読めない部分を指の腹で軽く擦ってみるなどしたが、特に変わった様子は見受けられなかった。

「見たところ、この日記もかなり最近記されたようでござる。件の月館柚衣殿のことは此方にも記されており申した。読めない部分が見えればもっと鮮明になるのでござろうが━━━━まあ、見えぬものは致し方ありませぬな。とりあえず、この日記の書き手は曉町の生まれではないようにござる」

一通り日記に記されていることを伝え終えて、烈はふぅと息を吐く。この日記だけで手がかりを掴むのは難しそうだ。せめて他の日記から手がかりを繋ぎ合わせることは出来ないだろうか、と考えながら、烈は龍矢の見つけたという日記にも目を走らせた。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.573

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 囲炉裏の間】

 龍矢がぶん投げた日記を拾い上げ、穴の側に座り直した安玖は適当な相槌を上げた。

「ふうん……みんな思ってたのと微妙に年齢が違ったな。僕はこないだの1日で21になったから、この中では二番手か」

 何が、とは言わない。言わなくても周知の事実だが。
 日記は二冊。片方は紅色の、もう片方は墨色と呼んでも良いだろう表紙だった。後者は鑓ヶ岳さんが提示した物と続き物だろう。だとすると前者の紅色は──。

「……安、仁屋さんが持ってた日記の続き物か。たしかあっちは『神様におかえしすることしか覚えてない』『あの人は私に優しく色んな事を教えてくれる』って内容だったから……」

 彼の名を呼ぶ声が一瞬だけ裏返ったがそのまま流す。今そこを広げる必要はなかった。
 記憶を手繰り寄せたあの日記は、確かすべて平仮名で書かれていた。とするならば漢字の入り混じったこの文面は“あの人が色々教えてくれた”後に書かれた物──つまり時系列的にはこちらの方が後だ。

「『山に捨てられていたところを拾われた』『他の人は冷たいのにあの人だけは優しい』……『町の空はいつも暗いけど外の町の空は綺麗な色らしい』……つまりこれが書かれた時点では少なくとも町は常に赤い月を掲げた状態になっていた、と」

 日記を自分で読みながら同時進行で要約していく。にしてもあの人に貰ったお外の空色の色えんぴつか……空ねえ……。と今までに他で空に関係の有りそうな何かがなかったかと探りひとつ思い当たる。

「……そういえば、最初の家も二番目の家も月が描かれた掛け軸があったよね。この家には無いのか、それともあのふたつの家が深く関わりあるからかな」

 分からない。分かるはずなのにこれだと断言できるものがない。片っ端から思いつきを上げるしかないか……と一度、瞬きのように片眉を釣り上げた。
 もう片方の墨色の日記にはご丁寧に西暦から日記がつけられていた。うちの義母ですら日付しか書いてないのに……と妙な関心を浮かべながらまた声に出して要約していく。

「1998年4月5日……うん、概ね言われた通り──いや、待って。翔子の儀式?」

 翔子。翔子といえば式島さんの奥方である式島翔子な。成功を祈る、ということは98年の4月5日時点では“まだ”彼女の儀式は行われていない。それは遺体を使うでもない限り、この時点で式島翔子が生きていたことを意味する。式島さんは安玖の(少しばかり自信の失くなった)見立てからして行っても30半ば、若くても30は超えているだろう。つまり生まれたのは大体1987□81年ほど。となるとこの日記の書かれた98年の時は行っても17歳、自己申告による鑓ヶ岳さんの年齢よりも若い計算になる。
 ……え、もしかして式島夫妻って姉さん女房的な? と瞬きそしてはあっ? と声を上げた。

「ちょ、っと待って……12年前に式島夫妻がこの町に来た時は普通だった、んだよね? 今から12年前って、2005年……しかも亡くなったのは3年前、2014年? ならこの時の“儀式”はどうなったの」

 1998年-2014年という間には16年もの時が流れている。そうでなくともおかしくなるまでに7年も空いている。計算とか以前の問題だ。時系列か何かがおかしい。
 7年、神様、おかしくならなかった村。なのに突然、おかしくなった。いやおかしくなったかは分からない。が、確かに龍矢は式島夫妻が『町から逃げた』と言っていた。性格的に少しでも差異のある伝言ゲームから派生する責任を恐れて丸々と引用している筈だから、式島さん本人の認識からして逃げている。おかしくはなかったが、逃げる必要はあった。──何から?

「……例えば、98年の儀式を拒んで町から逃げたのに7年の月日を経て帰ってきてしまったから」

「町の人は“何らかの事情”で儀式を改めてせざるを得なかった……ないし、夫妻──いや式島翔子の帰還がダメ押しになった」

 ──ならば何故7年もの間、この町は無事だった?

「……例えば、その7年間ほかの誰かが“肩代わり”していたから」

「俗世に染まった人間じゃ無理でも、女の赤子ならいけるかもしれない。7つまでは神の子で、ただの女よりも遥かに価値も意味もある。──ましてや、この町の生まれなら」

「人形だってそうだ。特に雛人形はうまく使えば女の子にとって忌避すべきことを“肩代わり”してくれる存在になる」

「そうやって空が元に戻らないながらも騙し騙し生き延びていたところを、“何か”がギリギリのバランスを壊した……?」

 どの日記もそうだ。人々は女の子にだけやたら口煩くしていた。この町で生まれた女の子にだけ。それは正しく、女の子達にとってこの町は無条件に危険だったから……?
 ──なら、何で。と顔を上げる。
 都城さん、御子柴さん、鑓ヶ岳さん。僕と龍矢。今この場にいない七を除けば、残ったメンバーはそれだけ。今集まっているメンバーも、それだけ。今までに出てきたキーアイテム……なんて言ったら罰が当たるかもしれないが、そう呼べるものは簪に雛人形に女の子が好みそうな和人形。狭山家の家族写真や母が自分に向けた懺悔の言葉を除けばすべて、すべて女の子に関わりのあるものばかり。

「……ねえ龍矢」

 女性陣に悟られないようにずっと抱えていたノートを下ろす。そして「それ、どう思う」と声を潜め、ただそれだけを投げかけた。
 相手がその言葉を、ノートを、どう受け取り、どう安玖に答えるのか。そのすべてを“見る”ために。


 ──なら、何で。女の子のための雛人形ではなく、男子のための五月人形が、ここにいる?

>>周辺ALL、龍矢

3ヶ月前 No.574

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 囲炉裏の間→客間(下) 】

「あらまあ、ちょっとしたジョークやから許してくださいよぉー、八岳くんも足元には気ぃつけてくださいねえ」

 名誉毀損、なんて言葉にへらりと笑いながら都城は囲炉裏穴の中へと消えていく八岳へと言葉を発する。いけないいけない、年下の子は大事にしないと、なんていう気持ちはあるものの軽口と冗談はもはや息を吐くように唇から紡がれてしまうのだ。

「ほんまやねえ、でも押入れって…………いやなんか、うーん、なんか嫌なかんじしてしまうわ」

 烈が入った客間でない方の客間へと足を踏み入れた都城はぐるり、と部屋の中を見回す。押入れと机、部屋の作りと物の配置はほぼほぼ同じなようだった。あちらの押入れもこちらの押入れもしっかりと閉じられてはいるが開ける気には到底ならなかった、だって怖いから。ひょっこりと囲炉裏のある部屋へと顔を出しながら逢澤の推理にぞわり、と背筋に冷たいものが走る、人身御供、やなんてそんな、そんなもの。

「やっぱ式島さんに話聞ければ良かったんやけどねえ、ほんまあの人どこに行ってしもたんやろ」


>> ALL

3ヶ月前 No.575

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/囲炉裏の間】

「うんそーだよー、ふわりちゃん★は19歳だけど、色々あって花のJKなのだ。こっちはコスプレじゃないからね」
 烈や京の言葉に、えっへん、とゆらぎは高校指定のセーラー服を強調するように胸を張る。三秒前のシリアスな雰囲気は完全に行方不明である。
 一応夏休み中の身の上にも関わらず制服を着替えとして持ってきたのは、近隣の人間に注意されるなどの緊急事態に「課外活動です、あっちは引率のお兄さんお姉さんです!」と言い訳をするためだったのだが、人気のなさすぎるこの町では完全に取り越し苦労と化している。閑話休題。

「ん〜? わたしは一人っ子……じゃないや、おにーちゃんがいるだけだよ、今もう家出ちゃったからいないけど。双子の姉も妹も居ません。だからその日記はわたしのことかわたしのことじゃないかの二択です」
 そして全員の報告を受けて、ゆらぎは改めて囲炉裏の間を物色し始めた。龍矢からの問い掛けに口を動かしてはいるが、いわゆる手持ち無沙汰というやつだ。恐らく既に安玖が確認したであろう棚をひっくり返しながら、彼の考察にも耳を傾ける。
「ワンチャン日記の翔子が式島翔子さんじゃない別の翔子さんとか? お巡りさんは曉町の人だって言ってたし年代的にはドンピシャだけどねぇ〜……それか書いた人がボケてて日記の日付が間違ってる……孫の誕生日は間違えたくないかな。もしくは儀式そのものは1998年じゃないってのもアリ。儀式って大体一定周期だろうから、あくまで次が翔子さんだった。翔子さんがいなくなって儀式がダメになったか、その次が失敗して町がこんなことになった、とか?」
 何だか悩んでいるらしい安玖に自らの考えを捕捉する。その間にも、部屋の中はゆらぎの手によって荒らされていく……完全に勝手知ったる人の家状態だ。
「パパはどう? そっち何かあったぁ? あと上がれる? 穴の中に何もなくて、安玖くんがもう大丈夫なら他の部屋もっと探した方がいいかもねぇ」

>all

2ヶ月前 No.576

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 囲炉裏の間】

「誰かいるのかー?」

 懐中電灯が作る月色の丸い光を彷徨わせながら暗闇に問う声は我ながらちょっと頼りなかった。身をかがめ一人でそう広くない床下を探索していたが、よく考えたらすぐ頭上には多数のギャラリーがいる。いけないいけない。半ばやけくそになって横隔膜を張り息を目一杯吸い込んで、
「誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! おい誰かそこにいるんだろぉぉぉぉぉぉぉぉお!」

 腹から声を出す。誰だ先輩に怪我させたヤツ。相手は武器を持っている訳でもなくやべぇグロ容姿をした怪物でもなく、子供らしいじゃないか。出てこられるもんなら出てきて見ろ、子供なら俺でも勝てるかもしれない。
 ……なんてセコい打算も虚しく、床下はしんと静まり返ったままで誰の姿も見えないし、なんの音も聞こえない。ただジメジメと何となく湿っているだけで、ここには何もないようだった。夏の晩の、日本家屋の床下は蒸し風呂みたいで、不快指数は爆上がりだ。

「も、もう限界です……暑いし、床下には誰もいませんし――」

 上がりますね、と言おうとした矢先、床の上から囲炉裏の淵を覗いている逢澤先輩と目が合った。「ねぇ龍矢。それ、どう思う」と潜めた声と共に、目の前に降りてくる一冊のノート。俺は最初、上に投げた二冊の日記帳が返ってきたのだと思った。それは違った。

「…………なんですか? これ」

 受け取った俺は首を捻る。そのノートには、表紙がなかった。破りとられた表紙切れ端が、縦罫線の紙束の横に申し訳程度にくっついている。縦書きのノートなんて久しく見てなかったな。国語の板書だって、いつの間にか横罫線ノートやルーズリーフを横置きに使って書くようになってたし。……あ。そっか、これは国語のノートだ。


「どう思うって言われてもな……見覚えはないですね」

 どうしてこれを現役高校生の御子柴さんと鑓ヶ岳さんじゃなくて俺に……? 本当に思い当たる節がなく先輩の意図を図りかねてパラパラと中をめくってみる。中をめくって、そこに書かれたあんまりにもあんまりな悪戯書きが視野に飛び込んできて、俺は思わず目をそらすように先輩を見上げた。

「知りませんこんなの!」

 なんだこれ。本当に見覚えはない。けど、こんな酷いものを、酷く不愉快なモノを、誰が一体何のために。驚きを通り過ぎると、無性に段々腹が立ってきた。
 嫌なら見なきゃ良いのに、何故か視線はもう一度ノートに落ちる。バカとかキモいとか、書き散らされた低俗すぎる暴言。けれどその下地にうっすらと鉛筆書きで残っているポエムだってなかなか言われるだけのことはある。なんなんだ。どっちも同じぐらい気持ち悪い。マジックでの黒塗りを逃れたページにはイラストまで描いてあった。こっちはまあみられるぐらいなかなか上手い。綺麗な制服姿の男の子がモノトーンの絵の中で頬杖をついて寝ている。縫い止められたみたいに、視線がそのページに釘付けになる。――これってどういうことだ?

 訳がわからない、ノートを閉じて先輩に突き返す。
「すみません、わかりません」
俗に言ういじめってやつだろ。よくある話だ。加害者にも被害者にもムカつくし、こんな汚いモノを転がして晒しておくイカレたこの町にも腹が立つ。じわりと得体の知れない恐怖が冷たい感触になって背筋を撫でた。


 先輩にノートを返し、背負っていた荷物を先に放り上げてから、僅かに助走を付けて、囲炉裏の縁に手をかける。床下の湿った土を蹴り、プールから上がる要領で腕に力を込めれば上体は簡単に囲炉裏の前の畳の上へと持ち上がった。

 「まったく都城さんも人が悪いですねぇ。……床下ですけど特にこれといったモノは何もありませんでしたし、誰もいませんでした」

部屋の中には御子柴さんと鑓ヶ岳さんと逢澤先輩が残っていて、彼等に調査の結果を報告しながら残りをよじ登る。畳の上に放り出した荷物を回収し、件の都城さんが隣の部屋を調べている後ろ姿を見やる。

「さっきの日記の翔子さんの話ですけど。図書館で話したときの感触だと、式島さんってきちんとした人なのに翔子さんのことになると記憶が混乱しているというか、年代とかも彼の中でぐちゃぐちゃになっているようなところがあって……だから本当に彼と翔子さんの足取りが記憶通りだったのか疑わしいところはありますね。儀式って何年に一回あったんでしょうね? 月館陽子さんの日記によれば、どうも翔子さんの儀式は失敗したみたいですけど……この、桜色の日記の『あんな気味の悪い子』ってのがそっちの紅い日記の著者なんでしょうか?」

それに、御子柴さんと生年月日がぴったり同じな月館柚衣の娘のこともわからないままだ。まさか本当にそうだと思って言ったわけでは勿論ないけれど御子柴さんにはやっぱり双子の姉妹はいないみたいだし……うーん……ていうか、俺より年上なのか……

>all

2ヶ月前 No.577

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 囲炉裏の間】

もしかしてもしかしなくても、烈はこの面子の中で最年少であった。運動部に所属していた身としては、年上の者には敬意をもって接せねばならない。なんだかんだでちゃんと「〜殿」と付けて話していたことを、烈は心の底から安堵した。年齢を早とちって呼び捨てにしたり馴れ馴れしい対応をしていた、なんて言語道断である。きっと気にしない人もいるのだろうが、烈にとっては重大な問題なのだ。
それはさておき、龍矢の調べてくれている床下には誰もいなかったらしい。いたらいたで困るのだが、情報が掴めないのは惜しいと思う。とりあえず今のところ危険要素はなさそうなので、烈は安玖の推理に耳を傾けることにした。烈の中で、安玖はすっかり名探偵扱いである。もしも曉町から無事に出ることが出来たのなら、安玖には眼鏡か蝶ネクタイを送ろう。そう烈はかなりどうでも良い決意をしたのだった。

「うーむ、所々腑に落ちない点もござりまするが……。これは拙者の憶測にござるが、このお屋敷を含む我等が訪れた家々は、どれも件の儀式に少なからず関わりがありそうでござるな。祭壇や掛け軸といったものもありまする。それに、“月館”、“神居”、“朱城”。この三つの姓に記されている最初の文字は、なんとなく儀式に関係していそうにござらぬか?…………いや、ござらぬやもしれぬが」

やはり烈は名探偵の気質を持っていなかったようだ。自分で言っておいて恥ずかしくなる程度の推理である。もっとちゃんと筋道立てて話すことが出来たのなら良かったのだが、残念ながらこれらはばらばらになっている意見を無理矢理繋ぎ合わせただけに過ぎなかった。次からはしっかりまとめてから話そう、と烈は自分に言い聞かせる。まとめる余裕があるかはわからないが、心掛けるくらいなら出来るだろう。

「拙者としては時系列がごちゃごちゃで混乱しておりまするが……。とにもかくにも、翔子殿か、彼女の後の儀式で予想外のことが起こったのは確かでござろう。これまで上手くいっていたはずの儀式が、何らかの理由によって狂ってしまった……。その、“何らかの理由”がわかれば儀式に関してもだいぶとわかってきましょうぞ。以前に拝見させていただいた日記の内容からいたしますと、月館家の女子が鍵を握っていそうな気がし申すな。もしも月館家の女子とその紅色の日記の著者が同じならば、の話にござるが。……それにしても、今のご時世捨て子など信じられぬ。そういった悪習も、つい最近までこの町には残っていたのでござろうか」

何にせよ、今ある情報だけでは憶測に頼る他ないのは事実である。他の面々はどうだかわからないが、烈は今のところお手上げ、といった状態だ。此処であれこれと考えているよりも、探索を進めて手掛かりを増やしていった方が良い。

「とりあえず、拙者は他のお部屋も調べに行きたく思うておりまする。一階でまだ調べていないお部屋はありまするか?このお屋敷は二階もあるようにござるし、まずはこの一階を調べ尽くしてしまいましょうぞ。取りこぼしがあったらまずうござりまする故」

これまで探索してきた場所も十分に広かったが、此処は町長邸ということもあってとりわけ広大だ。今から二階の探索をするよりも、一階をじっくり調べてしまった方が良いだろう。手分けをすることが良くない訳ではないが、また誰かとはぐれてしまったらそれこそ本末転倒というものだ。出来ることなら、もう誰も欠けることなく曉町から生還したい。

>>周辺all様

2ヶ月前 No.578

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/囲炉裏の間→客間(下)】

 ゆらぎが囲炉裏の間を物色しても、それ以上目新しいものは出てこなかった。龍矢が調べた穴の中も同様のようである。日記の内容について考察しようにも、いくらなんでも情報が足りなさすぎる。
「……今までのパターンからすると、黒い日記はこの家の人のじゃないかな、何か偉そうだし。此処って町長さんのお家なんでしょ? だったら孫娘がどうのってのと辻褄は合うし……町長の娘が嫁に来るくらいだから、れっちゃんの言うとおり月舘もまぁまぁの家柄なのかも。紅いのはあちこちにあるっぽいから分かんないけど……山から来たみたいなこと書いてあったし、わたし(仮)とは別人なんじゃ?」
 自分と同じ誕生日の少女をわたし(仮)と表現するゆらぎの感性たるや。
 とにもかくにもゆらぎは自分が今分かることを全て吐き出し、穴から這い出した龍矢が安玖とノートらしきものをめぐった議論を始めたのを見て、二人の無事を確認する。
 何だか不穏な単語も聞こえた気がするが、多分きっと恐らく大丈夫だろう。
「……じゃあ、わたしはもう行くね」
 次だ次ー、とひっくり返した棚を適当過ぎる手付きで元に戻し、ゆらぎは踵を返す。
 向かう先には、先程京が入っていった、手前の客間へと続く襖が鎮座していた。
「あ……でも、おねーちゃんは……いたの、かも?」
 遠い記憶の中では、誰かと一緒に遊んでいたような気もする。それが血の繋がった自分の姉であるということはきっとないが、それでもゆらぎは、思い出したようにポツリと呟きを残して歩きだした。

「やっほー編集長ー! そっちどう? あ、押し入れ? 開けとく?」
 ひょいと顔を覗かせると、ちょうど京が押し入れを眺めているところだった。彼女が全力で開けるのを躊躇していることも、月舘家の押し入れで酷い目に遭った仲間がいることも知らないゆらぎは、まるで19歳とは思えない無邪気さで微笑んだ。

>all

2ヶ月前 No.579

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

2ヶ月前 No.580

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 町長邸 客間(下) 】

 御子柴ゆらぎが押入れをゆっくりと開ける。鼻腔を擽るのは埃の匂い、そして鼓膜を震わせた幼い子どもの声音。

「――――見ぃつけた」

 押入れには布団が仕舞われていた。その布団の上に膝を抱え座り込む黒髪の薄汚れた着物を纏った少年。少年はゆらぎの顔を見ることなくばっと飛びつく。

 ――――ぼくといっしょに、あそぼうよ。

 ゆらぎの首に回した腕の力を、抱きつく力を強める。それはどう考えても子どもの力ではありえないような、そんな力だった。みし、と骨が軋む音が聞こえそうなほど強く強く、押入れへと引き寄せようとした、その時だ。
 俯いていた少年の顔があげられその視界がゆらぎの姿を捉えた、のだが。

「…………だれ?」

 ぽかん、と呆けたような表情。それは年相応のものであった。ぼう、とゆらぎの顔を見つめそして頬を膨らませ不満げに抱きついていたゆらぎを突き飛ばすように離す。

「きみじゃない! きみじゃない! なんで!? なんで生きてるの! きみじゃない! いらない! ちがう! いらない!」

 地団駄を踏む子どものように喚き倒し、ぷう、と頬を膨らませた少年はばぁーか、と叫びながら押入れの扉をぴしゃり、と閉めてしまったのだ。何とも身勝手な少年である。

 ――――そして、その押入れの戸はまるでつっかえ棒がささったかのように、もう開くことはなかった。


>> 都城、ゆらぎ


(押入れ開けちゃいましたね? 特殊レスですー! 確定ロル申し訳ありません……攻撃性はないやつですがたぶんちょこちょこ現れます!)

2ヶ月前 No.581

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/囲炉裏の間→客間(下)】

……そうだな、俺もまずは探索に戻るか。

日記の書き手のこと、失敗した儀式のこと、御子柴さんと同じ誕生日の女の子のこと、国語のノートの罵詈雑言のこと、翔子さんのこと……正直想像憶測を掻き立てられるばかりで、解らない事だらけだ。
鑓ヶ岳さんの言うように、まずは徹底的な家宅捜査を続けるしかないのだろう。日記の続きでも見つかれば、儀式の内容や、儀式が失敗した理由も見えてくるかもしれない。

さて、俺は何処を調べることにしよう。

逢澤先輩は、俺と喋った後そのまま囲炉裏の間を突っ切って向こうの部屋の探索を始めた。御子柴さんと都城さんは、入って左手側の部屋。鑓ヶ岳さんはもう一つの奥の部屋の探索をしていたが囲炉裏の騒動で戻ってきていたところだった。
誰かの手伝いをすべきか、それとも、今までの浴室の類は空っぽだったのに、今回だけは水が張ってあったと都城さんが言っていた風呂場を調べてみるべきか。
……でもな、一人だけであの冷たい玄関を通るのは、なんとなく怖い。

そう考えていた時、御子柴さんがぽつりと、気になることを言ってきた。

『あ……でも、おねーちゃんは……いたの、かも?』
え? だって、さっきはいないって……。

まただ。記憶の混同。今日出会った人たちは、七ちゃんといい、御子柴さんといい、式島さんといい……人はそんなに、簡単に記憶を無くしてしまうものなのだろうか。自分が何者であるかとか、自分のきょうだいのことや、自分の奥さんのことなのに? 普通忘れるか? 人の記憶ってのはそんなに曖昧なのだろうか。それともこの暁町が、或いは朱月や儀式の内容が、人の記憶をどうにかしてしまうものなのだろうか。たとえば自分の大切な人を記憶ごと抹消してしまうような。記憶ごと改竄しなければやっていられないような。つまり、

……なんてことを考えているんだ。俺は。

首を横に振り、考え直して、やっぱり玄関に引き返そうとしたその時だった。左手客間のほうから、とんでもない物音がした。

「御子柴さんっ! 都城さんっ!」

とって返せば客間では、押入れの中へ引っ張り込まれそうになっている御子柴さんと、薄汚れた着物を纏った少年。

「おいっ、何してるんだ離せ…………っ!」

御子柴は抵抗しているが、このままでは引き摺り込まれてしまう。慌てて座敷に飛び込み子供から御子柴を引き剥がそうとすると、その前に少年の方から意味不明な文句を喚き散らし御子柴さんを突き飛ばして自ら押入れの中に閉じこもってしまった。

「大丈夫ですか!?」

突き飛ばされた御子柴さんを支えるように駆けつけ、子供の消えた押入れを睨みつけるが、もう扉は微動だにしなかった。

「もしかして、囲炉裏の間で先輩が引きずられた着物の子っていうのもーーーーあいつなのか?」

>客間(下)all

2ヶ月前 No.582

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 客間(下) 】

 囲炉裏のある部屋での面々の会話をぼんやりと聞きながら都城は目の前の押入れを見上げる。確か押入れというと記憶に濃く残るのは神居家の作業場の押入れだった。瞼の裏に焼き付く押入れから這い出たあの人形の女の姿を思い浮かべてはぶるり、と身体を震わせた。

「っ、うわっ、びっくりした。御子柴さん……ってちょ、ま、もっとは躊躇わんと……!」

 ひょっこり、と都城の背後から現れたのは囲炉裏のある部屋に居たゆらぎであった。突然の声に驚いたように肩を跳ねさせ振り返る。そしてゆらぎが手を伸ばした押入れの戸にそれを止めようと唇を開く。がしかしデジャヴ。いつぞやと同じくその制止の声が間に合うわけもなく、開いてしまった押入れ。無邪気な笑顔とともに開かれた押入れの中から飛び出してきたそれ≠ノ都城は目を見開いた。

「ぁっ、え、御子柴さ……!?」

 押入れから飛び出してきた薄汚れた着物を纏った少年。咄嗟に鉄パイプを振り上げようとして止まる。このまま振りかざしてしまえばゆらぎにも当たってしまう。一瞬躊躇ったそのとき、背後から聞こえきた八岳の声、そして叫び散らしながらゆらぎを突き飛ばしぴしゃん、と音を立てて少年は押入れに引きこもってしまった。

「な……なんやったん…… あ、八岳くんありがとうございます、ほんま助かったし、頼もしいわぁ。御子柴さんも大丈夫です……?」

 がたがたと押入れの戸を揺らすも戸はまるでびくともしない。ふう、と息を吐き出しくるりと振り返ればゆらぎと八岳へそう声を掛けた。

>> 客間(下)ALL

2ヶ月前 No.583

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 囲炉裏の間→仏間】

とりあえず、囲炉裏の間の探索は一通り終わったということで良さそうだ。烈もその後何か隠しておけそうな場所を覗いてみたり手を突っ込んでみたりしたが、目ぼしいものは見付けられなかった。此処は別の部屋に移動するのが得策だろう。既に他の面々も移動し始めている。
見たところ、ゆらぎと龍矢と京が客間の方に移動したらしいので、烈は安玖が向かった仏間へ行くことにした。本音を言うと、押し入れの中を調べるのが怖かったのである。また怪異が突然現れたら。目の前で仲間が連れ去られたら。そう思うと、烈の二の腕には鳥肌が立つ。あのような場面には、もう二度と遭遇したくない。心霊スポットに探索に来ておいて何を言っているんだ、とどやされてしまいそうだが、怖いものは怖いのだ。

「御免っ!」

既に開かれていた襖の前でご丁寧に一礼してから、烈は仏間に入る。中では安玖が探索している最中だった。烈はぐるりと室内を見回す。

「む、これは祭壇にござりまするな。先程も似たようなものをお見受け致しましたが……。しかし、仏像が置いてあることは意外ですなぁ」

どうやら安玖は祭壇の上にある仏像を調べているようだった。烈も彼の隣に移動すると、しげしげと仏像を眺める。自分の力が割りと強いことを知っているので、さすがに手は触れないでおく。触れた拍子に仏像が壊れた、なんて洒落にならない。怪異以前に罰が当たる。

「拙者としては、曉町は孤立した地域であるが故に、独特の精霊信仰……というか、宗教観を有しているものかと思っておりました。この祭壇も、曉町特有の信仰において用いられるものという認識でござる。しかし、此処には仏像がありまする。拙者は生憎と仏教に詳しくはありませぬが、これは見た限り仏像以外には見えませぬ。天草や島原などの隠れキリシタンが信仰を露呈せぬようにと聖人の像を“それらしく”造ったという話もありまするが、そういった風でもない。斯様に使い古されておられる故、表向きは仏教を……という訳にもいかぬであろう。そもそも、閉鎖的な地域の長がわざわざ異端とされるであろう宗教に傾くことはないと思われまする。……むぅ、拙者、頭が沸騰してしまいそうでござる」

話しながら考えていたせいか、烈の中では考えがしっちゃかめっちゃかになっていた。とにもかくにも、この祭壇が曉町の儀式において重要な役割を担っていることは間違いなさそうだ。烈はしゃがみこんで、祭壇の周辺を目視で調べてみる。下手に手を出して何か壊した、なんてことだけは避けたい。

「そういえば逢澤殿、先程八岳殿と何かお話ししておられたようにござるが、何を話しておられたのでござるか?あっ、疚しい気持ちは皆無にござるよ。ただ、お二人とも浮かない顔をなさられていた故、気になった次第にござる」

しゃがんだ姿勢のまま、烈は安玖に問いかける。彼に発言を強要するつもりはない。本当に、二人が浮かない顔をしていたのが気になっただけなのだ。もし安玖が望まないのであれば、烈とて聞き出そうとは思わない。何か気になる情報があったのなら、出来る限り共有しておきたい。それくらいの気持ちであった。

>>逢澤安玖様、周辺all様

2ヶ月前 No.584

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 町長邸 仏間 】

 祭壇の上に置かれていた、一冊の古い書物。目視で祭壇を調べていた烈の視界に書物が映ったそのとき、どこからともなく吹いた風が書物の表紙を捲る。そこに書かれた文字を確認すればその内容はどうやら図書館で拾ったものと似たようなもののようだ。その書物、曉村民謡集(2)を読んでいた。のだがしかし。


 ぴちょん、ぴちゃん、

 それは、何かが滴り落ちる音に似ていた。
 ぽたり、ぽたり、という音は烈や安玖の背後から聞こえてきている。


「 ね ぇ 」

 それは、地を這うような声音。
 もしかしたら聞き覚えがあったかもしれない。
 もしかしたら忘れていたかもしれない。
 その声は、図書館の地下で、かけがえのない仲間の一人が命を放棄したあの場所で、聞こえた声音にとてもよく似ていた。


「――――あなたも、いっしょに、おちて?」


 二人の背後にべったりと張り付くように、それは其処にいた。長い黒髪から水滴ぐ床へと滴り落ち水溜りをつくる。髪の隙間から覗く黒の眼はどんよりと黒く濁り生気が感じられない。濡れて肌に張り付く真白の着物、白無垢と呼ばれる花嫁装束を纏った女は、苦しそうに、悲しそうに、縋るように、強請るように、そう二人へと囁いたのだ。

>> 仏間ALL


(ぱんぱかぱーん、こんにちはこんばんは特殊レスのお時間です(?) というわけで外玄関でも会いましたね白無垢の女の登場です。さほど長居はしませんので張り切ってどうぞ!)

2ヶ月前 No.585

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/仏間】

 結論から言うと、ただの仏像だった。びっくりするくらい、ただの仏像だった。こんなにも如何にもな空気出してるくせに。隣の鑓ヶ岳さんだって怪しんでるのに。

「ああでも、仏像と神道の神が融合した習合神って可能性も無くはない、か。そんな可愛いものじゃない気もするし」

 元の場所に丁寧に仏像を戻し、一呼吸おいて再度手を合わせる。数秒の間のあとに顔を上げると安玖は鑓ヶ岳さんに向かって微笑んでみせた。知っておいて得があるから分からないが損はないちょっとした豆知識、というやつだ。ちなみに安玖の義母は神道の家系で、母と義父の家系はキリスト系だったりする。当人は神道が気持ちいいなあ、程度だが。
 沸騰しそうなりに考えを話してくれる鑓ヶ岳さんに相槌を打つ。彼女の考えにはまったくもって同意する。

「ひとつ。あくまでも僕の思う可能性としたら、身代わり地蔵かなあ。大悲を以て罪人の苦を肩代わりしてくれる……なんて。如何にも犠牲にしたくない人を抱えた人間が手を出しそうなことじゃない?」

 実際に効果があったのかは置いておくにしても、祭壇がある時点で何かしらの期待はしていたのだろう。
 そこまで考えたところで鑓ヶ岳さんに違う話題を振られた。龍矢と何を話していたのか。ふたりとも浮かない顔をしていた、と。どうもノートのことを話しているところだけを見られていたらしい。見られる分には想定内だとして、なら話すかと言われるとさてそれはどうしたものかというところだ。

「まあ……別に隠す必要もないんだけどね。俺一人の憶測だけで全員を不確定な何かに怯えさせるわけには行かないから、今は外堀から攻めようとしてる途中ってだけ。たまたま龍矢が一番大外に居たから巻き込んじゃったけど、当たらずとも遠からずみたいな反応だったし……」

 あれ、いじめそのものは知らないけど全く無反応というわけでも無かったしなあ。と唇を撫でる。文字とは違うところに引っ掛かりを覚えていたように見えたが、安玖には何が何だかというしかない。あのノート、町の子の物だという可能性も捨てないでいるべきか。
 ううん。とひとつ唸る。別に一人で考えなければならない話でもないのだが、いじめのノートというだけで何だかそれを渋ってしまう自分が居るのも事実だ。

「っ……」

 また唸ろうとした息を詰める。背後で畳に落ちる水音と、広がった水溜りに落ちる水音が重なっている。鑓ヶ岳さん以外がこの部屋にやってきた気配なんてなかったのに。自分たちの後ろに確かにいる誰かが、しなだれかかるような距離にいる。
 音を立てないように息を吐く。そしてゆっくりと振り向いてから鋭く叫ぶまで、そう時間はなかった。

「下がって!」

 体を捻った安玖は左足を高く蹴り上げ、白無垢の女と距離を取るために勢いのまま振り抜く。頬か首かに命中した感触があった。実質しゃがんだままの上段回し蹴りだ。
 貴方も一緒に落ちて、なんて。この女は中々な殺し文句(ガチ)を放ってくるもんだ。

「俺は…………“僕”は、落ちるのなんざ御免だね」

 さながら威嚇する猟犬のような体勢で顎を引く。いつぞやの家で手に入れた棒をいつでも振り抜けるよう、手を掛け半立ちのまま相手を正面に見据えた。
 花嫁衣装。濡れそぼった体。わざわざ祭壇のあるこの部屋に出てきた理由。一気にまた動き始めた安玖の脳は、嫌すぎる仮説を早々に投げつけていた。

「……コイツ、いつかの生贄か」

 ──落ちる、とか。水の音、とか。放たれるにおい、とか。
 そのどれもが狩谷さんが命を立ったあの場所や、安仁屋さんの消えた井戸に似ている気がする、なんて憶測を小脇に抱えて。

>>鑓ヶ岳烈、仏間ALL

1ヶ月前 No.586

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/客間(下)】

 意気揚々と押し入れを開けたゆらぎ。襖が柱にあたる小気味のいい音が鳴り終わるか否かというところで、彼女はそれを見付けてしまった。
 押し入れの布団に膝を抱えて座る、小さな男の子。自分の顔よりも僅かに高い位置から伸ばされる腕。それはあっという間に首へと絡み付く。
「ふ、ふわりちゃん★にショタ趣味はな……ひっ」
 突然の見知らぬ少年の登場に混乱しているせいか、ゆらぎの口から漏れたのは誰も求めていない否定だった。それすらも最後までは紡がせて貰えず、腕に込められた力が強すぎるせいで中途半端な呻き声だけが漏れる。
 遠慮のえの字もない力でグイグイと引っ張られた身体は押し入れに向かって傾き、空気を求めるゆらぎの腕がバタバタと振り回されて尚、その力は揺るがない。
 背後で聞こえた気がする声から龍矢と京が慌てて飛んできてくれたのは分かったが、それでもゆらぎは、あ、無理だ……と死を覚悟した。
 しかし。

「ふぎゃっ!」
 不意に、ゆらぎはまたしても遠慮のえの字もない力で逆方向に突き飛ばされた。抱き止めてくれた誰かに背中から突っ込み、その体に沿ってズルズルと座り込む。何か物凄く理不尽なことを言われたような気がするが、酸素を取り込むのが先だとばかりにゆらぎの脳は少年の言葉を理解することを放棄して、けほけほとひたすらに咳き込む。
「あ、ありがと龍矢くん……」
 ようやく呼吸が落ち着くと、背中を支えてくれていた龍矢を見上げて礼を言う。にへら、と笑うゆらぎの顔が再び前を向いて閉ざされた押し入れを捉えた刹那、それは般若のような形相に変わっていたが。
「人違いですむか!! ちゃんと確認しなさい! ってか子供だからっていきなり他人様に抱き付くんじゃありません! そもそも首絞めるな!!」
 もっともなお説教だが、如何せんそれを聞く相手はとっくの昔に居なくなっている。それでも遅れてやって来た恐怖と怒りと苛立ちのままにゆらぎは暫く怒鳴り続け、しまいには京がガタガタと揺らす押し入れの扉に向かって、「何で押し入れのくせに開かないの!?」と癇癪を起こしていた。

「……もしかしてゆきひとさん?」
 再びゼイゼイと肩で息をするようになってしまったゆらぎだが、一瞬人が変わったように誰かの名を呟いて……そして、ひとしきり文句を言って落ち着いたのか、何とか一人で立ち上がった。
「京さんもありがとー……取り敢えずわたしは無事です。安玖くんが落っこちたのもあの子のせいだ、絶対そうだ……! 私はここであの子の手掛かり見付けるから、パパたちはそっちお願い!」
 ぶつぶつと文句を垂れるゆらぎは、腹いせに部屋の中、特に押し入れ周辺を空き巣もびっくりの勢いで荒らし……もとい捜索を開始する。私怨により、机やら隣の部屋やらの調査は、残る二人にぶん投げた。

>龍矢くん、京さん

1ヶ月前 No.587

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 白無垢の女(特殊レス) / 町長邸 仏間 】

「いやあぁァァァァァ!!!!!!!!」

 烈の首へ腕を伸ばそうとした、その時だった。白無垢の女に気がついた安玖の振り上げた左足が女の左頬に命中すれば甲高い悲鳴をあげながら女が後方へと吹き飛び仏間の壁にぶつかる。へたり込むように座ったまま女の髪を伝い水滴が床へと染み込んでいく。ゆっくり、ゆっくり、と。

「どうして、どおして…………わたしは、きちんと御役目を――――」

 ぐす、と鼻を啜る音が水音に混ざり女の啜り泣く声が仏間へと響く。さみしい、くるしい、いたい、つらい、どうして、どうして。

「ひとりにしないで、いっしょにおちてよ」

 昏い色をした瞳が烈と安玖を見つめ、そしてゆっくりと唇を開く。


 ――――みんなみんな、死んでしまえ。


 もうそこに、白無垢の女はいなかった。
 ただ、濡れた床だけが女がたしかに居たことを、示していた。


>> 仏間ALL


(蹴っていただきありがとうございます!!!!() ここで一度白無垢退場ですので探索にお戻りください!!!!!!!!)

1ヶ月前 No.588

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/客間(下)】

 なんだったんだ、さっきの無礼な子供は。腕の中にかかった御子柴さんの軽やかな重さは、嵐の前の静けさという言葉がよく似合うふんわりとした笑みを残して離れていく。たったいま都城さんが開けようとトライして諦めた押し入れの引き戸を、代わって御子柴さんがガタガタとやっている。あの着物の少年の姿は押し入れの中に消えたきり、もう出てこない。

「おまえッ、よくも先輩と御子柴さんを――――っ!」と、いつもだったら、喚き詰り追い打ちを掛けて扉をガタガタ蹴る殴るやっていたのは俺の役目だっただろう。でも今回はそうするまでもなく、既に御子柴さんが血眼で齧り付いている。無理もないか。それは怒るに決まっている。それに、そうやって騒ぎでもしなければ、怖かったであろうその感触は黙っていればいるだけ体腔の中に増幅し膨れ上がっていくのを知っている。癇癪を起こし怒鳴り続ける御子柴さんの首に残る、まだ生々しい指の痕が目に入る。なんだかそれで却って冷静になってしまって、気が済むまで見守っておくことにした。

 程なくして燃えさかる火も収まってきたか、怒る肩を燻らせ、息も荒く御子柴さんが何かつぶやく。
「ゆきひとさん、って誰?」
 ゆきひと。聞いたことのない名前だった。御子柴さんの口からも、暁町の探索の中でも。
――しかも、子供にさん付け?
 彼女とは今日ここに来てあったばかりだ。そりゃあ、俺の知らない事の方が多いだろう。けれど、この状況で、何だろう? あんな小さな子供と、偶然の再会というやつか? こんなところで……知り合いに遭遇する、なんてことあるだろうか。……俺だったら、あってほしくはないな。ふと脳裏に浮かんだのは、月館家で会った逢澤先輩のお母さんのこと。それから、先輩が見せてきたあのノートの頁のことだった。この町には、人々の強い思いが澱んでいる。水底の、しがらむ汚泥みたいに。

 さっきの子供が、御子柴さんの知り合いの「ゆきひとさん」だと仮定する。「もしかして」、ということは、二人は長いこと合っていなかったということになる。すぐに見て分からないぐらいとなると、数年ぶりの再会か。そうすると「ゆきひとさん」がかなり小さい頃に会ってることになるけど……何故にさんづけ? それにそうだとしたらあの子供からの異様な拒絶反応は一体何だ? きみじゃないとか、なんで生きてるのとか。

「なんで生きてるのって、なんだよ。そんな失礼なこと言って許されるわけがない」
 あれ、なんだろう? こんな感じの台詞、前にも、どこかで――
 ――そうだ、双子≠フ話だ。

「普通初対面の人間に、なんで生きてるの、とは言いませんよね。あの子は勝手に御子柴さんのこと……」
 御子柴さんのことを過去に死んでいると認識していた? 例えば、さっき彼女が言っていたおねえちゃんがいたかもというのが真実だとしたら、彼が探しているのは御子柴さんのお姉さんで、そのお姉さんにそっくりな御子柴さんは暁町の人間からしたら「死んでいなくてはならない」もしくは「死んでいる」ことにされて、本人にはそんな記憶もなく町の外の世界で今日まで生きていた、なんてことは無いだろうか。

「……了解しました。俺はこの部屋のこっち側を探してみます。もしさっきの子見つけたら教えてくださいね、俺も先輩の分、一言いってやりたいので」

 囲炉裏の間を挟んで向こうの部屋で、何やらどすんばたんと騒がしい音がする。あっちには逢澤先輩と鑓ヶ岳さんが向かったはずだけど……何かひっくり返したんだろうか?
 畳敷きの客間をぐるりと見回し、手近にあった長机を調べ、まずは机の上をひとさらい、次いで身をかがめてその下をのぞき込んだ。

>客間(下)all

1ヶ月前 No.589

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 客間(下)→客間(上) 】

 何度揺らしても押入れが開くことはなく、都城の隣では先ほど少年に飛びかかられた被害者であるゆらぎがわあわあと叫んでいるのを都城は少し困ったような笑みを浮かべながら見つめる。どうもあの少年は引きこもってしまったようだ。

「まあまあ、とりあえず御子柴さんが無事で良かったわぁ…………あの子、ゆきひとくん、言わはるん?」

 ゆきひとくん、そうゆらぎが言った言葉にかくん、と首を傾ける。それは八岳も同じのようで、まだ押入れに向かって文句を言い続けるゆらぎに不思議に思いつつも都城は言葉を発するのを控えた。なんとなく、触れないことを良しとすることにしたというか、とにかく今は七探しを先決しよう、と決めたのだ。あの時、あの墓地でもし、もし自分が七の手を離さなければ、その後悔がずっと都城の中で広がり続けている、今度こそ、今度こそ自分は守らなければ、だって自分は。

「――――……お姉さんなんやから」

 ぽつり、と呟いた言葉は空に消える。一頻り押入れに怒りをぶつけていたゆらぎが落ち着いたのか立ち上がる。そして振り返り自分や八岳への言葉にこくりと頷く。

「ええと、じゃあ私は隣の部屋見てきますぅ」

 机の方へ向かった八岳、押入れ周辺を調べるゆらぎにそう声を掛け都城は隣の客間へと足を踏み込む。とはいえあるものはほとんど変わらない、机と、押入れ。また押入れか、小さく溜め息を吐き出しながら都城は押入れへと近づきその戸に手を掛ける。あ、こっちはすんなり開いた、そんなひとりごとを発しながら。

>> 客間ALL

1ヶ月前 No.590

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 仏間】

安玖の意見に、烈はほう、と目を見開く。身代わり地蔵なるものは彼女も知っている。二番目の兄が大学で民俗学を履修しており、彼の参考書を覗いた際にそういった類いのものを見かけたのだ。曉町を探索するにあたってこっそり兄の参考書を読んでおいて良かった、と今更ながら烈は思う。ちなみに勝手に参考書を持ち出したことは1日も経たずに露見した。怒られることはなく、むしろあれもこれも読むと良いとどっさり参考書を手渡された。正直なところ、烈が読みたかった参考書は最初の一冊だけなので、それらは今も烈の部屋に積んである。帰ったら読もう。……出来る限りで。

「たしかに、こういった閉鎖的な集落にはお地蔵様がいらっしゃることが多くござりますものな。古来よりの言い伝えや伝承を今まで継承してきた町であれば、その線も大いにあり得そうでござる」

閉鎖的な集落では、信仰が人々の心の拠り所になることも多い。この仏像は、そういった人間がすがることの出来る存在だったのではないか━━━━。そう思うと、烈はこの仏像をより一層無下には扱えないと思った。本当に、軽々しく手を触れていなくて良かった。
そして、安玖は烈の問いかけに対して、彼にしては珍しく話の内容を濁すような口振りで答えた。安玖としてはまだ憶測の域を出ない、はっきりと確信を持つことの出来ない出来事らしい。

「左様にござるか。ならば、拙者も追及は致しませぬ。いずれ説明出来るようになり申したら、その時は是非ともお聞かせくだされ」

話したくないのならば無理強いするつもりはない。烈はにかっと歯を見せて安玖に微笑みかけてから、再び祭壇周りの探索を再開する。しばらく祭壇の周りを調べていると、何やら一冊の本のようなものが見えた。重要な資料になるかもしれない、と烈はそれに手を伸ばす。


「 ね ぇ 」


滴る雫。底冷えするような声。“それ”はいつの間にか、烈と安玖の背後に張り付くようにして立っていた。


「――――あなたも、いっしょに、おちて?」


落ちて。堕ちて。墜ちて。彼女━━━━白無垢の怪異は淀んだ瞳で此方を見る。生気のない、濡れそぼった手が烈の首へと伸びる。
避けなければならないと思った。反撃しなければならないと思った。しかし、どうしてか体は動いてくれない。転んだ訳でも、押さえ付けられている訳でもないというのに。おちて、と一言かけられただけで、烈の体は硬直していた。

『下がって!』
「……っ!」

まさに間一髪、といったところだろうか。側にいた安玖が、怪異に向けて鋭い蹴りを放つ。彼の声で金縛りに遭っていた烈の体は咄嗟に動き、ごろりと横に転がる形となった。
蹴りを入れられた怪異は、甲高い声を上げる。暗く濁った瞳は再び烈と安玖の姿を捉える。

「ひとりにしないで、いっしょにおちてよ」

――――みんなみんな、死んでしまえ。
湿った唇から呪詛のようにそう紡いでから、怪異はふっとその姿を消した。怪異が立っていた床だけが、雨漏りにでも遭ったかのようにじっとりと濡れている。

「……誰が、お前などと」

おちるものか。おちてなどなるものか。もう二度と、おちるようなことがあってはならない。
よろよろと、烈は立ち上がる。そのまま、先程見つけた本のもとへと歩いていった。まだ震えの収まらない手で本を取り上げると、ぱらぱらと頁を捲る。

《【 曉村民謡集2 】

弐 泉の守人
 曉村の何処かには、誰も知らない泉がありました。未だかつて一度も濁ったことのないそれはそれは綺麗な泉でしたが、誰もそこには近付けません。
 泉には、何人たりともそこに近付くことを許さない、一人の守人が居たからです。
 彼は泉の噂を聞き付けた村人も旅人も等しく打ち払いましたが、ある時病気の母親の為に水を探していた女の子だけは、どうしてもそうすることができませんでした。
 そこで彼は、女の子と一つの約束をしました。
「大きくなったら、僕のお嫁さんになって下さい。約束してくれるなら、泉の水をあげましょう」
 女の子は喜んで彼と指切りをして、水を持って帰りました。その水を飲んだお母さんはたちどころに元気になりました。
 しかし、大きくなった女の子は、いつしかそんな約束のことは忘れて、別の男の人と結婚してしまいました。
 ある晩、曉村の空に真っ赤な月が昇りました。その日から村の夜は明けなくなり、おかしな病が村を襲いました。
 そしてそれは、大人になった女の子があの日の約束を思い出すまで続いたということです。
 皆さんも大切な約束は、決して忘れないようにしましょうね。》

開いた頁を見た烈の喉がひゅっ、と鳴る。こんなにタイミングが良いと、むしろ仕組まれているかのような気さえしてきた。おちて、と呟いたあの白無垢の怪異を思い出す。

「……故に、あの怪異は花嫁の姿をしていたのか」

まだ真相がはっきりとわかった訳ではない。烈には物事を推察し、上手くまとめ上げる頭はない。だが、今は、今だけは、己の憶測を唇から漏らさずにはいられなかった。

>>逢澤安玖様、周辺all様

1ヶ月前 No.591

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/仏間→客間(上)】

『ひとりにしないで』

 その言葉に背筋が冷えた。

『いっしょにおちて』

 その言葉に目の奥が熱くなった。

 その気持ちだけは分からなくもない、と安玖は思う。分からなくもないだけで、どうしようもないことも知っていたから手を差し伸べようとも思わなかった。
 誰かが自分のところへ落ちてくることを望んだら、どう転んだとしてもその先にあるものに誰かが救われることはない。いま自分がいる場所が底に近ければ近いほどそれは強く、最終的には落ちてきた隣の人に勝手に絶望して勝手に責任を押し付けて、挙句の果てには自分を助けようとしてくれた人すらも見捨て見放し自分だけが醜く更に落ちていくだけだ。自分の代わりに死んでいった兄や、その兄を探してあんな末路に至った母に対して自分が抱いていた感情がそうだったように。

(だから例え死んでも──殺されても、君たちのところに落ちてたまるか)

 首を振って立ち上がる。今までの経験則からいって、もう警戒する必要もないだろう。
 隣で同じように立ち上がった鑓ヶ岳さんは特に怪我もないらしく、女が現れる直前に見つけていた冊子を手にとっていた。自分の口元のあたりに頭のある彼女の後ろから本を覗き込み、同じように一通り目を通して出たのは呆れたようなため息だった。

「人間にしてみれば幼い昔の話でも、神や精霊にしてみれば些細な時の流れでしかない。……それにしても、同じ話をしてる割に一章とは妙に違うと思うんだけど」

 そう感じるのは安玖だけだろうか。じい、と文章を何度も読み直して、やがて、ああと声を上げる。
 これ、視点が違うのか。それこそすっかり忘れ大人になった人間サイドの話が一章で、すべてを覚え知っている神様サイドの話がこの二章なのだ。そう考えると一章での神の言動が随分と違って見える。

「そうか……その人じゃないといけなかったのか……その、神と契りを交わした本人じゃないと……」

 あくまでもこの史料の中で、だが、そうなると解釈そのものを変えないといけない可能性がある。
 どうしよう、と親指を唇に押し当てる。何度も押し当てては滑らせ、滑らせ、押し当て、唇を軽く潰し、そして滑らせる。

(そもそも……そもそも。これって本当に危ない儀式なのか? 今の時代としては喜ばれも歓迎されもしないとして、さっきの女が嘆いていたとしても、それでも、そんな……身代わり地蔵なんて忌み嫌う物を押し付けるような行動を取っていいような、穢れたものなのか?)

 どうしよう。七ちゃんを連れて行かれる様を全員が目撃し、七ちゃんに随分と感情を入れている龍矢や女性三人を前にそんなことは到底言えない。下手に不信感や苛立ちを煽ってしまったら、安玖が把握できない場所で何かが起こった時にせめてもの抵抗すらもできなくなってしまう。
 どうしよう。百歩譲って誰かに聞くとしても、誰に。それぞれが具体性が今ひとつつかめないこの村の儀式とやらにどんな感情や解釈を下しているのか、そこを間違えるわけにはいかない。

(別に全員の考えを統一させる必要なんてない。そんなの愚行だ。オカルティズムに一方的な視点は危険すぎる)

 どうしよう。どのタイミングで情報を共有しよう。元々こういう仕切ってどうかしないといけない場面は苦手だ。どんな形で話を切り出せばいいのかが分からない。
 ああ、どうしよう。どうしよう。分からない、じゃ駄目なのだ。考えても仕方ないことと、分からないでは意味が違う。

「っ……クソ」

 結局、この月に住むという神は何なんだ。邪神なのか、善神なのか。情報が足りないなんて振り出しに戻ってしまう。
 時間を念入りになんて掛けてられない。けれど、もうまとめてドンと情報を共有できるような内容でもない。でも、迂闊にホイホイと全員に晒せる情報ばかりでもない。

「あと見てない場所があるとしたら、あの人達が入ってない方の部屋か」

 ほぼ押し当てた親指に吐き捨てるような勢いだった。行きましょうと読み終えた鑓ヶ岳さんに声を掛け、踵を帰す。確か、と記憶を頼りに自分が落っこちた囲炉裏の間に戻り、階段脇の襖を開ける。そこには既に都城さんの姿があった。

「あれ、二人は……ああ、隣か」

 何がどうしてそうなったのか察せなくはないから詳しくは流し、演舞でも行ってるのかというレベルで騒がしい隣室に視線だけを送る。龍矢の静止する声が無く都城さんも特に何も言わないあたり、全員が腹に据えかねているようだから。触らぬ神に祟りなし、なんてこの状況下では笑えない慣用句だが。
 もう一度部屋の中を見渡す。ただの客間だった。フリー素材で見たことあるな、と大学のあれやこれやの最中に見かけた「サンプル」の薄文字が踊る写真を思い出しながら、手のつけられた形跡のない長机に向かう。上も、下もと、確認出来得る限りを躊躇いなく探し始めるのだった。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.592

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 町長邸 客間(上) 】

 安玖が客間の机の下を調べると、畳と長机の間にコロンとした白い卵型の物体が転がっている。
 近頃はあまり見かけないそれは、すべすべしていて手のひらにすっぽりと収まるサイズだった。
 どうやらこれは真ん中で二つに折れる旧式の子供用携帯のようだ。上半分の卵型には真っ黒い液晶画面が、下半分の卵型にはテンキー式の押しボタンと簡単操作用の大きめのボタンがついている。綺麗に使われているほうではあるが、このモデルは現代のものではないだろう。だいぶ古さを感じる。

 パカパカと開いたり閉じたりする子供用携帯を手にしていたその時、突然そのガラケーが鳴り出した。曉町に足を踏み入れた時には圏外であった筈なのに。着信を告げ知らせる上面ライトが七色に点滅し、四畳半ほどの慎ましやかな和室に着メロのクラシック音楽が流れる。最近ではあまり聞くことも無くなった、16和音。不気味に静まり返っていた古屋敷に、唐突に響き渡るチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番。壮大なオーケストラで奏でられるべきロ短調の、古めかしい電子音化で、かえって不気味な雰囲気を醸し出している。

 出るべきか、出ないべきか。

 その間に50秒足らずの着信音は一巡目が終わり、安玖が電話に応答するのを急かしているかのように、ループしてもう一度金管楽器の歌い出しを奏で始める。

 電話を取るべきか、取らないべきか。

>> 安玖くん

(ありがとうございます〜〜! てことで! 特殊レス発動です。電話を取る or 取らない を選択してもらえればな、と!)

1ヶ月前 No.593

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖(反応レス)/客間(上)】

 安玖が手にしたのは最近ではなかなか見かけないガラパゴスの子供用ケータイだった。白くって卵型で、幼い頃に様々なカラーバリーエーションを友人達が持っていて自慢するようにメアドを交換しあっていた覚えがある。──お世辞にも裕福どころか普通とも言えない家庭で双子だった安玖にはかなり縁遠い話だったが。
 ふむ、と幼い頃の記憶を頼りに確認していく。ぞんざいな扱いは受けてないという点では新しいが、年代という意味では中々に古い。

(ここの子たちの物? それとも……前に巻き込まれた誰かの置き土産か)

 どっちにしたってあまり縁起の良いものではないだろう。そう確認しきって閉じようとした時だった。

「えっ」

 懐かしい電子音。女子生徒は好きなアイドルの、男子生徒は何だかよくわからないけれどやたらかっこよくて壮大なものにしていた着メロが鳴り響く。第一声に「うわチャイコフスキー」と言いかけて閉口した。選曲が渋いとか今は心底どうでもいい話だ。
 鳥居をくぐったばかりの頃、七ちゃんをどうするかという話の流れで安玖自身がスマホの圏外表示を確認していた。災害時だとスマホが回線落ちしていてもガラパゴスは意外と使える、なんて聞いたこともあるがこれはどう考えてもそういう問題ではない。

(……よし、)

 音楽が一周したのを確認して、すぐに通話ボタンを押し込む。
 別に考えなしに出たわけではなかった。ただひとつでも情報が欲しかったことと、全員が視界に入る位置に居ること。何よりこの中では安玖が比較的、動じないだろうという判断からとった行動だ。

『ぼくたちは、トモダチなの?』

 か細く、幼い、とても寂しげな、こちらが途方に暮れてしまいそうな、そんな声だった。声色を除けば子供用ケータイから聞こえてくるには概ね意外性のないものだ。意外性のない、と感じたのは掛かってきた時点で人間じゃねえなという察しがついていたからでしかない。
 トモダチ、友達。そう反芻しながら知らず顎を引いて眉を寄せる。語間に「本当に」の言葉が入りそうな言い様が引っかかった。

(まるで電話の相手が信用できないみたいな……信用できないってより、なんか……)

 残念? 失望? 嫌悪? 不信感? 不快感? どう言えばいいのだろう。安玖としても覚えのあるこの感覚は、そのどれでもなくって、そのどれもを混ぜ合わせて薄く流したような、そんな、幼さが故に抱くもののような氣がした。
 ぎゅう、と電源ごと切れツーツーという無機質な音すらも落としてしまった端末を握りしめる。

「友達かあ……」

 漏れ出た声はなんだか、電話口の子供と同じように幼く力のないものになってしまった。

1ヶ月前 No.594

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/客間(下)→階段】

 客間でどったんばったん大騒ぎを繰り広げ、あっという間に全くウェルカム出来ない惨状を作り上げたゆらぎ。しかしその労力に反して収穫はゼロで、先程の少年に関する手掛かりもそう簡単には落ちてきてくれなかった。
「ダメ〜、こっち何にもない!」
 文字通りお手上げ状態のゆらぎは、押し入れに背中を預けてしゃがみこむ。先程の少年が再登場すれば今度こそ間違いなく引きずり込まれるポジショニングだが、あれだけ全力で否定されたのだ、流石にもうゆらぎに向かってくることはないだろう……多分。逆に、お目当ての人物を見付けるまで延々と手当たり次第に飛び掛かっては来るかも知れないが。
 そうしてゆらぎは、龍矢と京が続けざまに口にした「ゆきひと」という名前について考え始め、そもそもそれを最初に言ったのは自分であると思い出す。

 何故、あの子を見てゆきひとなどと呼んでしまったのか。何故、あの子を“ゆきひとさん”だと思ったのか。今思い出せる限りでは、自分の知り合いに、そんな名前の人はいない。
「誰と言われても……なんとなくそう思っちゃったんだよなぁ……誰かがそう、呼んでいた気がして」
 霞がかったような頭の中で、鈴の音が、困ったような少女の声が、あの少年らしき人をそう呼んだ。自分はその背中を、少し離れた所から見ている……そんな感覚。
「何で生きてるのってのも失礼な話だよねぇ……わたし別にこの町以外で死にかけたことはないんだけどなぁ……人違い第二弾? それともわたしって実は死んでる?」
 尤もこの町に入ってから、そういう訳の分からない感覚にも現象にも、ゆらぎは慣れっこになってしまっていた。龍矢の問い掛けに対して、洒落にならないブラックジョークをぶちかます余裕さえある。当然、ゆらぎは今この瞬間を生きている生身の人間だ。

 一つ溜め息を吐いて、ゆらぎはおもむろに立ち上がる。制服のスカートの埃を払い、ひらりと翻して入ってきた扉を目指す。
 龍矢は空振り、京は隣の部屋へ向かっている。ゆらぎがこれだけ荒らしても外ればかりなのだから、もうこの部屋には大したものは残っていないと考えるべきだろう。
「あっちは安玖くんとれっちゃんがいたみたいだし、あとは二階、かな? あ、お風呂見てないんだっけ?」
 囲炉裏の間から二階に続く階段を見上げ、ゆらぎは後ろの部屋にいるであろう面々に向かって問い掛けた。

>周辺all

1ヶ月前 No.595

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 仏間→客間(上)】

烈は自分の頭に自信がある訳ではない。そのため、情けない話だが安玖の憶測を密かに待っていた。彼が後ろから自分の持っている本を覗き込み、ぶつぶつと呟きながら思案する姿を一瞥してから、烈は再び開いた頁に視線を落とす。

「……なるほど。神の、視点」

烈とて何も考えずに本を読んでいた訳ではなかった。物事を推理することは苦手だが、暗記はそうでもない。むしろ得意な方である。そのため、この曉村民謡集の一章と比較した際の違和感は安玖と同様に覚えていた。ただ、その違和感の正体になかなか気付けなかったのである。
烈は頁とにらめっこする。何度も、何度も、同じ文章を読み直す。一文字も見落としがないようにと心掛けながら。

(これが神の視点だと言うならば……この書物の著者は神の声を聞いた……というか、それまで口承で語り継がれてきたということか?それとも、この地の民は神たる存在と頻繁に関わる機会があったのか?それとも、誰か当事者が……)

考えれば考える程烈の脳内は混乱を極めていく。下手したら夢物語と笑われそうな、それこそファンタスティックな結論に至ってしまいそうで怖い。もう少し語彙力というか、知識を溜め込んでおけば良かった。
行きましょう、という安玖の呼び掛けに、烈は慌てて立ち上がる。立ち止まってはいられない。こうしている間にも、七は恐ろしい思いをしているかもしれないのだ。一刻も早く助けに向かうことの出来るよう、準備を整えねば。そのためには、より多くの手掛かりを集めなくてはならない。
安玖に続いて客間へ向かう。其処には先に調査をしていたらしい京の姿があった。

「編集者殿、お疲れ様にございまする!そちらで何か目ぼしいものは━━━━」

目ぼしいものはありませなんだか。そう問いかけようとした烈の耳朶を打ったのは古めかしい電子音。静謐としていた室内に響き渡ったオーケストラに、烈は思わず「ひっ」と身を竦ませた。
どうやら電子音の発信源は安玖が手にした携帯電話らしい。彼は勇敢にも通話ボタンを押したらしく、少しの間携帯電話を耳に押し当てていた。彼に何が聞こえていたのかはわからない。ただ、安玖は何か思うところがあるのか、しばらく携帯電話を強く握り締めていた。

「……っ、吃驚、しましたな……。それに、古めかしい造形とは言え携帯電話があるとは……。拙者、驚きにござる」

その場に戻ってきた不気味な静寂に耐えられなかったのだろう。二の腕を擦りながら、烈は誰にでもなく口を開く。此処で誰かが声を上げねば、この静寂がずっと続くような気がして怖かったのだ。
烈が気まずさを感じていた矢先、隣の部屋からゆらぎの声が聞こえてくる。烈は場の雰囲気を何とか怖そうと、無理に声を張った。

「左様!拙者も逢澤殿も此方に居まする!二階の調査をするのであれば、拙者も同行致しますぞ!……あっ、誰ぞお風呂場を見た方は居まするか!?」

空元気でも声を出していかねばやっていられない。烈はまだ調査がされていないかもしれないという風呂場に行ったことのある者はいないかと、ぐるりとその場を見回した。

>>周辺all様

1ヶ月前 No.596

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/客間(下)→浴室】

どうやらこっちの客間の探索は空振りに終わりそうだ。俺は少し動かした机を元に戻しながら、

「御子柴さん、やめてくださいよもー、縁起でもないな」

実は死んでいたなんて考えたくもない説にあなたが率先して乗ってどうするんですか。と、わざと軽い調子で否定する。「わからないけれど、そんな気がする」なんて、なんだかこの人まで七ちゃんみたいなことを言うんだな。まるで七ちゃんと御子柴さんが姉妹にでもなったみたいだ。
七ちゃん……。七ちゃんのことまで考え至った時、目頭と眉間に力が入っていくのが自分でもわかった。七ちゃん、今どうしているんだろう。この邸の何処かに幽閉されているのだろうか。どんな目に遭っていることか。早く見つけてあげないと。

脳裏をよぎった一抹の不穏を遮ったのは、何処か遠くから聞こえるなんだか古めかしい電子音だった。ああいう音質、どっかで聞いたことがある。でもなんだっけ? オルゴール?ーー違うな。館内放送?ーーこれも違う。
曲もなんか聞いたことある。聞いたことはあるけどあんまり知らない曲だ。クラシックのなんか、ベートーベンとかモーツァルトとかの仲間だろうな。壮大さがこの状況ではなんだか不気味に感じる。なんの曲だったか、思い出す前に電子音は止まる。やれやれ、一件落着。なんだよもう。
「…………あ」
その時になってやっと、その古めかしいサウンドが何の音に似ていたのかと思い出した。一昔前の携帯電話の着メロだ。子供の頃、俺もみんなも親に持たされてた、メールもネットもできないやつ。
なんだよもう脅かしやがって。…………。いや、まてよ? ここって電話は繋がらないんじゃなかったのか? 圏外だったことは、この町に来て直ぐに確認した筈。
急いでポケットからスマホを取り出して画面を点灯する。ーー圏外。一体、何の音だったのだろう。

再び静かになった座敷では、御子柴さんが立ち上がり囲炉裏の間へと引き返す。俺もそれに続いた。

「…………なんですか、御子柴さんその顔は。……はいはい、分かりましたよ。俺に見てこいって言うんですね」

階段を見上げてから振り返る御子柴さんと、真後ろにいた俺はバッチリと目が合ってしまった。
口よりもの言う目線は、逃げ回り誤魔化してばかりの俺でも流石にのがれようがない。だって、彼女が振り返った先に今いるのは俺一人だから。先輩も鑓ヶ岳さんも都城さんもみんなそれぞれ隣り合った別の部屋にいる。全く、どーしてこうなるかな……。
正直に言うと、一人で来た道を引き返し奥まった風呂場に行くのは怖い。いや、その、別に水回りのオバケが怖いとかじゃないんだけど、風呂場ってまず間違いなく袋小路じゃないか。何かあった時に逃げ場がないし、声が届かないかもしれない。
それでも、無言の指名と受け取れば仕方ない。一応、他に不特定多数の対象者はいないかと一縷の望みと共に後ろを振り返る。……はい、俺一人。本当にありがとうございました。
折しも向こうの部屋から聞こえてきた鑓ヶ岳さんの声に、

「あっ、はい! 俺と御子柴さんで風呂場はちょっと見てきます!!」

と大声で返事をしておいた。許可もなく勝手に御子柴さんを巻き込んだのはちょっとした仕返し……というか、一人で行くのが怖かったから言い出しっぺを道連れにしただけだ。我ながら名案。声のトーンを戻し、御子柴さんに向き直ると少し口角を上げた。随分セコいことを言っているのは認めよう。こっちだって生き残りが掛かってるんだ。とりあえず二人いるなら話は違う。

「そういうわけです、調べに行きましょう」


囲炉裏の間から来た道を引き返し、ひんやりと湿った玄関を通り抜ける。さっきみたいに落武者みたいなのが襲ってきたらどうしようかと内心ビクビクしながら通り過ぎたが、何も出てこなかった。囲炉裏の間から向かって右の扉を開ければ、そこは脱衣所だった。割れた鏡が飛散している。そういえば都城さんが「危ないから靴がない逢澤先輩は来ない方がいい」というようなことを言っていたのを思い出す。今のところ何もやってこないし、ここに来たのが俺だったのは正解だったのかもしれない。

「特に変わったものはありませんね……。何で鏡を割ったんだろう」

言いながら、二つ並んだ扉の左側を恐る恐る開けた。扉を開けて直ぐに入室すべきでない事は今日一日で嫌という程学んだ。扉を開けて直ぐに、背後を庇うように一歩下がって身構える。

「うわっ…………」

扉の向こうから俺たちに襲い掛かってきたのは、幽霊でも化け物でもなく、思わず口鼻を覆わずにいられない猛烈な異臭だった。何だこれ! 戸惑い、狼狽えて、逡巡の後やっと意を決する。
げほげほと噎せながら、左手で鼻と口を押さえ、右手の懐中電灯で浴室内を照らし、大きく一歩身を乗り出す。身体が全力で嫌がっているのを、無理矢理瞼をこじ開けて、丸い光に照らし出された浴槽の中へ視線を向けた。

>all


【というわけで、本当にゆらぎちゃん誘っちゃいました笑】

1ヶ月前 No.597

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 町長邸 浴室 】

 八岳とゆらぎが浴室へと足を踏み入れる。其処は先ほど都城が覗いた時と変わった様子はない。そして、彼が浴槽に張られた濁った水を覗きこんだ、その時だ。

 浴槽の中から伸びる、一本の腕。


「 な ン で 」

 八岳の腕を掴む手、細く小さな手はまるで幼い子どものもののようだった。だがしかし、その力は強くぎりぎりと骨が軋む音が聞こえそうなほどだ。ゆっくり吐き出される声には憎悪や憤怒といった感情が強く込められていて、水の中から腕に続き黒髪が、真っ黒な瞳が、じっと八岳を見つめていた。ゆらぎには目もくれず、ただ八岳を睨みつけていた。

「なんで、おまえが、ここに、いるの?」

 ぐ、と掴む腕に力が籠る。そう、それは、その少年は、囲炉裏の間で囲炉裏後の下へと安玖を引き込んだ、客間(下)でゆらぎを突き飛ばした、あの少年だった。

「はやく、はやく、出ていけ!!!!」

 少年は叫ぶ。憎悪、憎悪、憎悪。声に込められた怒りの感情。そして不意に手がぱっと離れる。ごぽり、と浴室内に響く水音、そして。

「 早 く 消 え ち ゃ え 」

 ばぁか、そう残して、少年は水の中へと消えて行った。

>> 八岳くん、ゆらぎちゃん


(浴室へようこそ! 確定ロルごめんなさい! そして少年はまた消えます!! 死体じゃなくておばけでした!!!!)

1ヶ月前 No.598

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/浴室】

懐中電灯の光が、暗闇から色付きの景色を切り取って、室内の様子を順番に俺たちに見せてくる。壁、天井、床、浴槽。いかにも腐ってぬるぬるしていそうな、嫌な光りかたをする浴槽には、どれ程前から放置されていたかわからない濁った水が貯められていた。臭いの原因はおそらくこれだろう。中に何か沈めているのか……。饐えた匂いに苛立ちに似た感覚が湧き上がってくるのを抑えながら、必死に我慢して覗き見た。

完全に逃げ腰の視線の先で、其奴は動いた。

ぱしゃん、とかすかな水音が弾けて、油汚れのような澱がマーブル状に渦巻く水面が突き上げられた。右腕に、痛いほどの強い力がかかる。

「うわぁぁぁぁぁぁあっ!?」

死体とか、死骸とか、何か良からぬものを見つけてしまうのではと身構え心構えしていた俺だったが、まさか物理的力を持った者が現れて引っ張り込まれるとは思っていなかった。心臓止まる。心臓止まるって! 右手首に絡みつく小さな五本指の一本一本が食い込むように強く、逃げ腰で重心は後ろ寄りに預けていた俺でさえ浴槽の真近くまで引き寄せられる。元から浴槽の縁に手をかけて覗き込みでもしていたらどうなっていたことかと思うとゾッとする。

「やめろ! やめろやめろやめろやめてください!!!! 待って、俺は関係ないっ!! 関係ないんだって!! なんでここにいるかなんて、こっちが聞きてぇよぉ!!!!」

強い力で引っ張り込もうとする手を振り払おうとしながら闇雲に随分卑怯な事を叫んだような気もする。が、なりふり構っている場合ではない。俺の手より一回りも二回りも小さい子供の手なのに、全然剥がれる気配が無い。なんだよこれ。勢いに負け、一歩二歩と浴槽に身体が近付く。腐敗臭が一層強くなる。駄目だ、駄目だ、この中には絶対に落ちたく無い! 落ちたらなんか社会的に俺は死ぬ気がする!
ーー人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ=[ーって、なんだっけ、そうだあれは高校の時に受けた模試の現代文、なんで受験生にこんなもん読ますんだよってみんな大ブーイングで怒ってたっけ。……いやいやそんなこと思い出してる場合じゃなくて。走馬灯かよ! 嫌だ、俺は堕ちない!! 絶対落ちない!!

「俺は違う! 堕ちるわけないだろ!!!!」

痛いほど締め付けてくる指の束縛から腕を引き抜こうと藻掻いたその時に、水面から覗いた犯人と目があった。その見覚えのある姿形に、一瞬だけ動きを止めた。

「お、おまえさっきの…………!」
それは、おそらく先輩が囲炉裏の中に引きずり落としたという少年。そして御子柴さんを押入れの中に引っ張りこもうとしていた少年ではないか。
そう気づくと、怖さよりも怒りと正義感のほうが遥かに勝ってきた。ふつふつと込み上げる苛立ちのままに、俺の右手を掴んで離さなかった少年の手首を左手で取った。一捻りにしてしまえそうな細い腕。それを仕返しとばかりに掴み、全力でこっちに引っ張り返した。浴槽の中から得体の知れない何かを釣り上げ引き摺り出そうとするように。

「さっぎはよくも゛ぉぉぉーーーーぉぉぉぉっ! 」

ただじゃおかねぇぞ。引き摺り出して先輩と御子柴さんの仇をとってやる。皆を呼んで七ちゃんの居場所を吐かせるし、ゆきひとさん≠ニの関係を吐くまで追い詰めてやる。だってそうだろ、それぐらい当然。だってこっちには、被害者が二人もいるのだから。真当な正当防衛。当然の因果応報。
ぐぐぐ、と歯をくいしばり、あらん限りの力でめちゃくちゃに少年の腕を引っ張る。

「こンのクソ餓鬼がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 二人の分の落とし前ーーーーーー」

……俺は、子供の頃から握力と腕力にはまあそこそこの自信がある。こんな子供ごとき脱臼させてでも簡単に引っ張り上げられると思っていた。筈だったのだが。
『はやく、はやく、出ていけ!!!!』
という言葉とともに、パッと手を離される。小さくて恐ろしい手は、するりと俺の拳を抜け出して、引く力をかけていた俺は勢い余って後ろに蹌踉めく。

「てめぇ!! おいコラ待て!!!!」

吸い込まれるように消えていくクソ餓鬼を追いかけるように、浴槽へと駆け寄るが、理不尽な罵倒の捨て台詞と水に空気を送り込んだような音を残してクソ餓鬼は消えてしまった。水音さえ聞こえた浴室に、舌打ちが大きく響く。

「んだとバぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーカぁ!!!!」

浴槽の中に吼えるように叫ぶと、あまりにムカつくので視界に入った鎖を掴んで栓を引っこ抜いてやった。
流石に大人気なかっただろうか……。背後に御子柴さんがいたことを思い出し、咳払いをした。ぞくりと身震いする。……なんだか、今更になってちょっと怖くなってきた。

>(特殊レス).all


【とりあえず特殊レスへの反応を追いレスしときますー! いつものことながらありがとうございますーリアクションし甲斐がありますね!】

1ヶ月前 No.599

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 客間(上)→二階廊下 】

 押入れから見つけたのは紅色の表紙の日記だった。それは図書館で安仁屋が見つけたものと同じで、この町長邸で八岳が見つけたものと同じだった。ぱらぱらと捲った日記に書かれていたのはたった二行。

「あのひとがくれたたいせつなたからもの。だいじにしなければ、なくさないように。…………大切な宝物? ってなんなんやろ……」

 都城は首を傾ける。そこに書かれた内容はあまり理解できなかったようで、ただこの日記の持ち主には大切な宝物があったんだなあ、程度の考えしか浮かばなかった。ぼんやりと日記を眺めていればふと背後から聞こえた声に振り返ればそこには先ほど囲炉裏のあった部屋にいた安玖がいて、ぽつりと呟いた彼の言葉に苦笑を滲ませる。すると安玖に続き烈もやってきてかけられた言葉に都城は手にしていた日記を目線の高さまで持ち上げた。

「えーっとぉ、なんや誰かからもろた大切な宝物があったみたいですねぇ、私がみつけたんはそれぐらいですぅ」

 へらりと笑いながら自分の収穫を伝えていたその時だ。鼓膜を震わせる音にびくんと肩を跳ねさせる。それは、聞き覚えのある音色だった。きょろきょろとその音の先を辿ればそれは安玖が手にした白いガラパゴス携帯が出どころのようだ。とっさに都城は自身のポケットにいれたスマートフォンを取り出し視線を向ける。圏外だ、やはり圏外。鳴るはずのない携帯。安玖の行動をじっと見つめ、そして唇を開く。

「ほんまびっくりしたわ……なんやったんやろか……」

 烈の言葉に同意するように都城も頷く。電話を見つけた当の安玖はじっと携帯を見つめ何かを考えているようだった。都城の彼への評価は高い。名探偵だ、と心の中で賞賛しているほどで、故に都城は安玖に声を掛けることはせず、隣の部屋から聞こえてきたゆらぎの言葉、そして烈の言葉に視線を部屋の外へと向ける。

「あー、お風呂場は私パスですわぁ、ちょっと匂いが無理……ってわけでそっちは任せるんで私とりあえず先二階あがらせてもらいますぅ」

 お風呂場、その言葉に思い出すのは先ほど自身が足を踏み入れた浴室の状態。鼻の奥に残る腐敗臭に都城は眉を顰めそう言って逃げるように客間を出た。隣の部屋から出てきた八岳とゆらぎが浴室に向かうのを心の中で謝罪しつつも都城の足は囲炉裏のある部屋の奥にある二階へと伸びる階段へと向かっていた。

 都城が階段を上り始めたその時、鼓膜を震わせたのはもはや聞き慣れたともいえる八岳の叫び声だった。匂いだろうなあ、と思いながら数段上ったがしかし、何やら騒がしいことに気づき振り返る。

「やつたけくーん! 御子柴さーん! いけますかぁー?」

 とりあえず声を張り上げ声を掛けてみた。だがしかしもちろん返答はなく、ただよくよく聞いてみればどうやら彼らが遭遇したのは先ほど安玖を囲炉裏跡に引きずり込もうとした、ゆらぎに飛びかかったあの少年らしい。都城はしばし考える。助けに行くべきか、と。だがしかし八岳の声から察し、触らぬ神に祟りなし、とにかく自分は進行ルートの確保だ、と階段をまた上り始めたのだった。

>>ALL


(八岳くんゆらぎちゃん浴室確認ありがとうございますー! 都城は一足先に二階にあがらせていただきます!)

1ヶ月前 No.600

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/客間(上)→二階 大広間】

 都城さんに続いて二階へ上がろうとした安玖もまた、龍矢の悲鳴に動きを止めた。しかし今までのように走りかけようとはしない。だって知っている。龍矢がなけなしの罵詈雑言を投げて喧嘩を売ってる時は大丈夫な時だ。駄目なら謝罪を泣き叫んでいる。
 うん、大丈夫だ。そう確信し改めて二階へ上がる。短めのただの廊下の先、上がり口から正面の位置に扉がひとつだけあった。なんにしても此処しか行き先はないらしい。

「……」

 少し考え、一歩踏み出す。女性陣よりも自分が先頭に立った方が、と手を掛けて躊躇いなく開け放った。……しかし、踏み出そうとした足は既のところで宙に留まり後退る。

「こっ……れ、は……」

 びくり。体が跳ね、身が仰け反る。目を見開いて上擦った声を飲み込んだ。
 血塗られた、という言葉が相応しい大広間。その広さに対して異常なほど──そもそも血塗られている時点で異常だが──に床や壁が血に染まっている。今までよりも遥かに見た目に危険と嫌悪感を感じさせる状況にさすがの安玖も面食らうしかなかった。
 最初に思い浮かんだのは七ちゃんの血。そこでハッと息を吐いてしゃがみ込んだ。膝を中につかないように気をつけて、爪先でカリカリと床の血を少しだけ削り取る。層のようにしっかりと付いている血液の下は元の色が分からないほどに黒ずんでいた。

「臭いもないし、色素沈着を起こしてる……変色の具合からして、ここ数年前の物では無い、か」

 つまり七ちゃんのものである可能性はない。龍矢の意見も欲しいところだが、概ね同じ回答が得られそうだし、そもそもビビってそれどころじゃなくなりそうだ。
 それなら、と立ち上がる。爪に入り込んだ血を何とか削り出しパラパラと粉になって落ちていくのを確認して、室内に視線を向ける。本棚。と、上にある写真立て。

 ──躊躇ってる時間はない、か。

 ふー、と息を吐く。さすがにこの中に入るのには勇気がいる。古いものであまりにも量が過ぎるからこそ産まれる現実味の薄さのおかげで冷静でいられるだけで、怖いものは怖い。
 他のものには視線を向けず足を踏み入れる。止まらないように足を動かし続け、本棚の前に立つ。そして安玖は上にある写真立てへと手を伸ばし確認するのだった。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.601

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/階段→浴室】

「さっすがパパ! 頼りになるぅ〜!! パパとわたしで行ってくるから、れっちゃん達は先に二階行ってて! すぐ追い付くからね」
 階段の前で立ち止まったゆらぎの視線にばっちり応えてくれたのは、矢張り真後ろの龍矢だった。彼が渋々探索を承知したのも、しれっと自分を巻き込んだとも露知らず――或いは完全スルーして――ゆらぎは龍矢と共に来た道を玄関まで引き返す。
 最初にゆらぎが足を踏み入れた囲炉裏の間や、龍矢が調べていた納戸の反対側。その扉を開けた龍矢から、小さな悲鳴が上がる。その肩越しにひょいと中を覗き込めば、洗面台の鏡が割れて、破片が床中に散乱していた。
「これは……安玖くん危ないねやっぱり。わたしの靴じゃ駄目だったし、後で靴箱漁ろうか。何で割ったのかは誰が割ったのかによって変わってくるけど……廃墟のものが壊れてるのって、基本は人為的なものだと思うよ。暴風雨とかに晒されて割れたならもっと色んなものが荒れ狂ってる筈だし……一番分かりやすいのはわたし等みたいな肝試しメンバーのイタズラ、若気の至り。そうじゃなければこの家の人の仕業……この派手な割り方は事故じゃないだろうね。死んだ柚依さんが化けて出たとか、映っちゃいけないものでも見えたとか? それか朱月が来たーってパニック起こしちゃったとか」
 龍矢の疑問を割と大真面目に考察しているゆらぎだが、当の龍矢はさっさと隣の浴室の扉を開けている。刹那、変な臭いが鼻をついて、思わずゆらぎも手で鼻と口を覆う。
「はんはのにょほれは」
 何なのよこれは! という悪態も、何処か間抜けなものになった。それでも何とか龍矢の背中を追いかけて、浴槽の方へと近付いた、その瞬間だった。

 浴槽から、白い腕が生えた。墓の中から伸びていたそれを思わせる、しかしいくばくか小さい子供の腕。その下に続く黒髪と、憎悪に燃える瞳。
 安玖を穴に落とし、ゆらぎを押し入れに引きずり込もうとしていた少年が、今度は龍矢の腕を確と掴んでいた。龍矢は闇雲に暴れたり釣り上げようと力を込めたりしているようだが、あの矢鱈と力の強い子供はびくともしない。
「止めなさい! このパパと安玖くんとわたしの仇!!」
 ゆらぎは咄嗟に、手近にあった手桶を全力投球する。しかしそれは少年に当たることもなく、浴槽の角に当たって耳障りな音を立てるだけだった。
 先程と同じ、ばぁかという稚拙な罵りを残して、少年は消えていた。
「パパ、大丈夫? ケガしてない? 首絞められてない!?」
 同じような罵詈雑言とともに浴槽の栓を抜いた龍矢に駆け寄る。ゴボゴボという水音とともに浴槽の中が露になるが、そこには少年の姿はおろか、ゴミ一つ残っていない。彼も綺麗に流されてくれた訳では、決してないのだろうが。
「全く、何なのよあの子は! 馬鹿って言った方が馬鹿だっていつも言ってるでしょうが……この家の子かなぁ? さっきから変なとこにばっか入ってるし、かくれんぼでもしてるの? あ、それで鬼の子に見付けて欲しいのにわたし等が出てきたから違う違うって怒ってる……? いやでも明らかに何か勘違いというか人違いしてるんだよなぁ……龍矢くんもあの子知らないよね? でもあの子は龍矢くん、もしくは龍矢くんに似た人に出てって欲しいみたいだったしさぁ……恋敵?」

>龍矢くん

1ヶ月前 No.602

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 客間(上)→二階 大広間】

自分の叫び声が大きすぎる自覚はあった。しかし、一人だけぎゃあぎゃあと騒ぐのは、後になってからの恥ずかしさが凄まじい。そのため、京が発した同情するような言葉に烈は内心ほっとした。驚いたのは自分だけではなかったのだ、と気付けたことによる安堵である。
とにもかくにも、浴室は龍矢とゆらぎが見てくれるらしいので、烈も京や安玖に続いて二階に向かうことにした。京いわく浴室からは異臭がするらしい。浴槽に何かよろしくないものが入っているのでは、と厭な想像が脳裏を過ってしまい、烈はふるふると首を横に振ってそれを振り払う。きっとシャンプーとかボディーソープが腐ってしまったのだ。果たしてそれらが腐るのかはわからないが、腐るということにしておこう。逞しすぎる想像力は時に心臓に負担をかける。
二人に続いて二階に上る。何やら龍矢とゆらぎの声が聞こえてきたが、階段を上りながら後ろを振り返るのは怖いので、きっと二人は大丈夫だと烈は信じることにした。
そんなこんなで一行は無事に二階までたどり着いた。どうやら安玖が先頭に立ってくれるようなので、烈はその厚意に甘えて彼の後ろをとことこと歩いていった。

「……? 逢澤殿……?」

突然硬直した安玖を見て、烈は怪訝そうに彼の背中から顔を出す。━━━━そして、彼女はさっと顔を青くさせた。

「なっ……これは……!?」

室内の至るところにこびりついた血痕。大広間はかつて血の海だったらしい。例え飛び散った血液が過去のものだったとしても、何処と無く鉄の臭いがしそうな空間である。
まさか七殿が、と最悪の事態を考えた烈だったが、安玖の言葉によって何とか自分を落ち着かせる。━━━━大丈夫、大丈夫だ。七は絶対に助け出す。いちいち悲観するなど愚の骨頂。びくびくと怯えている暇があるのならば、疾く探索に取りかかれ。自分に檄を飛ばしながら、烈は出来る限り血痕を踏まないようにと抜き足差し足で大広間を進んでいく。

「これまでの流れからして、手掛かりとなる書物がある可能性は大にござるな。次は誰の日記にござろうか」

今回もそうと決まった訳ではないが、手掛かりとなりそうな書物がある可能性は低いとは言えない。安玖が写真立てを調べてくれているようなので、烈はその付近の本棚を調べることにする。この状況で余裕ぶった風な発言をするのは烈自身でも少しどうかと思った。しかし前向きになっていなければやっていられない。だいぶ暗がりに慣れてきた目を凝らしながら、烈は本棚を見て回った。

>>周辺all様

1ヶ月前 No.603

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/風呂場→洗面所】

少年が風呂の淀みに沈んで消えた後も、罵詈雑言は暫く続いた。先輩の仇そして御子柴さんの仇という大義名分を笠に着れば、そして相手は非現実的存在とはいえ小さな子供の姿と分かればこっちのもの、とまでは言い難いがそれでもだいぶやりやすい。御子柴さんもこっちの味方。投げた桶はまぁ見事に空振りしたけど、彼女の加勢が大いに心強かった。
詰り倒し、文句苦言を吐き尽くし、そうしている間に浴槽は空っぽになった。

「大丈夫です、ありがとうございます……俺はあの子には全く見覚えがありません…………そうか……」

あの子供が現れた時、御子柴さんは最初は「あそぼう」と言われて首を絞められ人違いと分かると「きみじゃない、なんで生きてるの、いらない」と言われた。でも俺の場合は最初から少年は怒っていて「なんでここにいる早く出て行け、消えちゃえ」と始めから敵意むき出しだった。この差はなんだ? つまり少年の知り合いの曉町住民には俺に似た奴と御子柴に似た奴が居て、御子柴さんに似た奴のことは少年は気に入っていて、俺に似た奴のことは少年は目の敵にしていた?

「恋敵……ですかねぇ……?」

御子柴さんの憶測に俺は首を傾げる。今まで彼女だって出来たことないのに……くそっ、いまになって本当は可愛いカノジョ作ってパリピになる筈だった俺の夏休みが曉町というよくわかんないオカルトスポットの所為で台無しになりつつある事を思い出して腹が立ってきた! 俺の夏を、俺のモテ期を、俺のカノジョを返せぇぇぇ…………。
論点がずれてしまった。とにかく御子柴さんの推測が正しいとすれば、あのクソ餓鬼には仲の良い女の子がいてその子とかくれんぼをしているつもりだった。けれどその女の子はなんらかの事情で少年と遊べなくなってしまった。その事情というのは、……嫁入り≠ニか?

「あの子が探しているのは、……七ちゃんだったりして……?」

先輩の時はなんて言われたのだろう? 後で聞いてみなくては。そんなことを考えていると俺と御子柴さんを階上から呼ぶ声がする。
とりあえず声を張り「はーいっ」と応えると、顔を見合わせたのちに俺たちは、傍迷惑な少年を深追いするのはやめて風呂場を後にする。割れた鏡の欠片を避けながら洗面所を引き返す。風呂場に向かう道すがら御子柴さんが俺の疑問に答えて仮説を並べていたことを思い出す。鏡に映ったものは何か? 自分の後ろに見えてはいけない人が映ったとか、自分の変わり果てた姿が映った、とか。前者は科学の信者の端くれとしてはあまり肯定したくない話だが、後者ならまあ有り得なくはない。精神的に病んでる人とか。

洗面所を出る扉を押し開けた。
玄関を横切って囲炉裏の間に戻り、階段に向かった皆と合流するーーーー筈だった。

しかし、扉を押し開けた姿勢のまま俺は硬直した。
「な……っ、なんで…………!」
冷たい玄関を塗り潰す暗闇から、目をそらすこともできずに。

>御子柴さん、all

1ヶ月前 No.604

特殊レス @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB


【???(+八岳)/洗面所・玄関】

仲間達のいる場所と繋ぐ、たった一つの帰路。避けては通れないその行く手に、さっきまでは居なかった筈の鎧武者が再び立ち塞がっていた。ただでさえ暗い玄関の、暗澹たる翳りだけを凝らせたような、漆黒の鎧甲冑。

「なんで…………」
恐怖に足を竦ませる八岳龍矢の、落胆と動揺の入り混じる声。五月人形が頤を上げる。落武者のように寂しくしなだれていた壊れた兜が、再起の光明を見るように顔を上げた。斜めに首を傾けるように振り返る。真っ黒な面頬の為に、顔の部分にはぽっかりと空虚な風穴があいているようにさえ見えた。ふらりと大きな人影が動く。

いま開けた扉をバタンと閉めた。いま見たものをなかった事にしようとして、恐ろしい怪異の姿と自分の恐怖心とを蓋するように。
「……さっきまでいなくなってたのに……っ、なんで倒しても倒しても復活するんだよぉ……」
洗面所に立てこもらざるを得ない形で、八岳龍矢は扉を抑えながら譫言のようになんでなんでと繰り返す。
割れた鏡の欠片が、キラキラと頼りなく反射光を揺らめかせている。
このままこうしていても仕方ないのは分かっている。皆と合流するには、あの五月人形の前を通り玄関を通り抜けなくてはならない。恐怖心を振り切って強行突破の決意を固める迄に顰めっ面になっていると、不意にその沈黙を破って背後に打ち付ける衝撃が走る。

ダンダンッ! 「うわぁっ!」 ガタガタガタ!!

抑えている扉に、外からこじ開けようとする力がかかる。力任せの執念が、扉を叩き割らんばかりの振動を与えてくる。月舘家に閉じ込められた時の八岳の抗い方よりも酷い。
扉ごと揺られ悲鳴を上げ、しがみつくように耐えている八岳が、「どうしましょう」と泣きそうな目を御子柴ゆらぎに向ける。なけなしの決意なんて瞬時に折れた。その時だった。

ーー「ガガガガガガ…………ザザザザザザザ……ガサ……ガサ……ねぇドウ……テ…………ガガガガガガガガガガガガ……ルノ?」

鬼気迫る打音と共に、耳障りな機械音が扉一枚を隔てて囁きかけてくる。電波障害のようにガサつくノイズ、追い詰められる恐怖。振動が、音が、声が、大きく、近くなってくる。

八岳は堪らずぎゅっと目を瞑る。恐怖が、紙一重の向こうの怒りに変わる。半開きに座った眼を開けて、チッと苛立たしげに舌打ちした。

「……ガーガーガーガーうっせぇんだよ。ぶっ壊れたラジオみてぇに…………それで要求が通るわけねぇだろ!! 言い分があんなら分かるように言いやがれ!!!!」

ミシ、と扉が限界を知らすように鳴いて、それを合図のように八岳が自分の方から瓦解しかけの扉を開け放つ。二人を待ち伏せていた鎧武者と対峙する。黒い籠手が、刀の柄を握っている。一触即発、抜き放つタイミングを伺っているようだ。対する八岳に、こんな勝ち目のない勝負を正面から受ける気なんて全く無い。飛び道具にしていた花瓶にロープを括り付け、流星錘のように遠心力をつけて回し構えている。勝つ気もなければ立ち回る気もない。相手を怯ませ隙をついて脇を抜けたい。五月人形を睨みつけながら、空いている左手を後ろ手に御子柴ゆらぎに向けた。
そのときだった。


二階にいる逢澤安玖が拾って所持している子供用携帯電話が、階上で再び鳴り出した。チャイコフスキーの、ピアノ協奏曲第1番。血塗られた二階広間に響く変ロ短調。客間で拾った時と明らかに違うのは、この家の中にいる全員の持っていた携帯およびスマートフォンが、呼応するようにバイブレーション振動を始めた事だった。曉町に足を踏み入れてから圏外で、一切の着信も受けなかった五人分の端末が、それぞれの部屋で一斉に光を灯し設定した覚えもない震え方で誰からともわからない着信を告げしらす。
「な、なんだ……?」
八岳龍矢の所持していたスマートフォンも、御子柴ゆらぎの所持していたスマートフォンも例に漏れず、八岳は臨戦態勢を崩されて恐る恐るポケットを探る。
しかし着信は長くは続かずに、八小節分も奏でないところで、優雅なバイオリンの旋律が幾分も聞けないうちに勝手に止んだ。通話ボタンも押していないのに、五つの端末と一つのガラケーは勝手に通話を繋いでこの世のものではない発信者の声を届けた。五人のポケットの中で、一斉に同じ電話口の声が喋り出す。

ーー「……きちゃだめっていったのに。…………ねぇ、どうして? どうして無視するの?」
ーー「ガガガガガガ…………ザザザザザザザ……ガサ……ガサ……ねぇドウ……テ…………ガガガガガガガガガガガガ……ルノ?」

それは、目の前の鎧武者の発する音声から、分かるように喋れと龍矢が詰った雑音だらけの音声から、ノイズを取り除いた声だった。
逢澤安玖が最初に電話に出た時の子供の声と同じ。若く青臭い、変声期前の少年のような声だった。
執拗に追いかけてきて立ちはだかり、行く手を阻んでは日本刀を振りかざす漆黒の鎧武者の正体は、屈強な戦国武将でも怨讐の落武者でもなく、恐らく年端もいかないか弱そうな男の子。
常時であれば八岳がその事実を知った途端に強気に出ていたことだろう。さっきの風呂場の少年に対峙したときのように分かりやすく気が大きくなり悪態を加速させて大きく出ていたに違いない。しかしその声を聞いた今の八岳龍矢はみるみるうちに青褪めて、崩れそうなほど頼りなく後退りした。

「…………おまえ………そうなのか…………うそだ…………」

驚きと憔悴に見開いた目で五月人形を凝視したまま、呟きにも満たない掠れた声が喉をやっと通るだけの息と共に漏れる。
今になって、不気味な程真っ黒なあの五月人形をどこで見たのか思い出した。あれは自分の祖父母が自分達兄弟のために買って田舎の家に置いてくれていた五月人形では確かに無い。自分には戦国武将の先祖も、落武者様の知り合いも、鎧甲冑姿で屍蝋化した怪奇殺人の関係者も、おそらくいない。でも、子供の頃にあの鎧武者の人形を見たことがあった。博物館や自分の祖父母の実家ではない、どうして忘れていたんだろう、あれは道場の掛け軸の隣に不動の姿勢で鎮座していた鎧兜じゃないか。子供だった日々に、皆がカッコイイナと仰いでいた、強くて渋くて逞しくて男らしい、大和男児の手本のようなーーーーあいつのじっちゃんの家にあった五月人形じゃないか。

この町には、亡くなった人の未練が滞り蟠る。
人の強い想い、と七が言っていたのを思い出す。亡くなった人の未練が、それに深く関わるものをこの町に残す。こんなところにあるわけがないと、そう思うものであっても。例えば、式島の妻翔子の残した手紙やロケットペンダントがそうだ。例えば、逢澤安玖の母親が残した写真もそうだ。例えば、ある人のキャンパスノートに書かれた日記がそうだ。あのノートに見覚えがないのは、自分のものでは無かったから当然だが、その法則で故人に関与深いモノがこの町にばら撒かれているとすれば、今となっては思い当たる節に辿り着く。

「おまえ、おれを…………おれをころしにきたのか」

それらの持ち主の怨霊亡霊がどうなったか、何をしてきたか。それを思い返せば当然、結論は其処にしか辿り着かなかった。
震える手から失速した簡易流星錘が滑り落ちる。指先が氷のように冷たくなり、呼吸が速くなる。目の焦点が合わなかった。目元にかかる兜の縁が揺らいで二重にも三重にもブレて見える。

「いや……いやだ!!」

蹌踉めき自滅的に後ろ向きに崩れながら、八岳の手はもがくように床を攫いロープを拾う。

「いやだぁぁぁぁぁぁぁ死にたくない! なんで俺なんだよ!! 俺じゃない、俺じゃなかっただろ!!!! 俺じゃなくたって! 他にも!!!!!! 俺じゃない!! 謝る! 謝るから!! 」

自分の非を否定しながら対象の無い謝罪を夢中で唱える。それは唱える、であって何を謝っているのか自分でもよくわからない始末だった。とにかく今この場を乗り切る為だけの謝罪と弁明と反論を矛盾したままごちゃ混ぜにして乱暴に投げつけ、廊下にひれ伏す。安く下げすぎの頭は、今やパニックで空っぽだった。

「なんで俺なのかぜんっぜんわかんないけど本当にごめんってばぁぁぁぁぁ!!」

その恐怖は、後ろめたさを持つ本人にしか分からない恐怖なのだろう。復讐される。そうされるだけの身に覚えがある。そうしながら一方で、なぜ自分なんだと喚き立てる。矛盾を抱えたまま自分自信でも処理できずに八岳は情けなく這い蹲って半分泣きながら命乞いをしていた。

ーー「ねぇ」

まただ。
鎧武者の声は、あの電気端末を通してでないと聞きとれない。ゆっくりと顔を上げる八岳の目の前に、何度目かの日本刀の切っ先が突き付けられていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

弾かれたように八岳は立ち上がる。
窮地に陥った者の咄嗟の行動とはいえ、それはさっきまで平伏して泣きながら平謝りしていた男の行動にしては鮮やかな身のこなしだった。刀が振り下ろされるのを予期したように身体を捻って左に床を転がる。仰向けになりながら自然と外に開く右腕の力で、手にした石の花瓶で日本刀を下から防ぐ。余力のまま一回転、うつ伏せに背を丸めた状態から一気に起き上がり、背筋から右腕を引き上げた。振り向きざまに鋭く高い音を響かせて、花瓶の底が日本刀を斜め上方向に勢いよく跳ね上げる。弾き飛ばされた銀色の刃が、回転しながら宙を舞う。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ殺される!!!! 殺される殺される殺される!!!!!!」

ここにくるまで卑怯にも飛び道具以外使わなかった男が、あれだけ鮮やかに流れるような受身を取っておきながら。やっぱり八岳は八岳で、追い詰められた小動物のように挙動不審に慌てふためき「御子柴さん! たすけてぇぇぇ!」と恥も外聞も無い声を上げる。刀を弾き飛ばされ失った鎧武者は怯んだからか、両手を柄を握っていた形に固めたまま、八岳の方を見て微動だにしない。その隙に八岳龍矢は大型犬に吠えられた散歩中の仔犬のように御子柴ゆらぎの手を取って、それもちゃんと手を繋ぐのではなく手首を掴んで、引っ張るように逃げ出した。虚をついた鎧武者の横をすり抜け、囲炉裏の間に転がり込む。そしてぴしゃりと戸を閉めて脅威を締め出すと、「早く早く! 逃げて!!」と御子柴ゆらぎを後ろから追い立てながら階段を転げ落ちそうなほど慌てて駆け上がる。

>all

【サブイベント、ちょっと難しいようだったので、これは追加したヒント用の特殊レスです。大ヒントです。あとはそのタイミングが来た時の推理と行動次第ですね……。あ、あとこのレスで八岳を二階階段まで移動させています。ゆらぎちゃん最後の方進行の事情確定ロルごめんなさい、不都合があれば訂正お願い致します!】

1ヶ月前 No.605

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京 / 町長邸二階廊下→大広間 】

 二階にあがった都城の横をすり抜けるようにたった一つしかない先へと続く扉を開け入って行ってしまった安玖の後ろに続く烈とともに都城も扉の中へと足を踏み入れる。

「逢澤くんどないし――――ひっ!」

 足を止めた安玖に疑問を浮かべながらそう問いかけた都城もまた大広間の残状に息を呑みずざざ、と思わず後ろへと後ずさる。視界に映るのは赤、紅、赫。赤色の部屋。室内の至る所が赤く染まっていた。都城は腰を抜かしたのかぺたり、と廊下に座り込んだ。

「いまの、じゃない。なつちゃんと、ちがう。っ、は、あはは、さすがに、びっくりしたわぁ」

 こういう時冷静な安玖の存在に都城は安心させられていた。安玖の見解を鸚鵡返しのように呟き息を吐く。すでに安玖も烈も部屋の中へと足を踏み入れている。一番年長者の自分が立ち止まっているわけには行かない。自分が手を離してしまったから、だからあの子は連れ去られてしまったのだから。自分に言い聞かせ立ち上がれば震える足に力を込め一歩、足を踏み出す。

「ひええ、この部屋で虐殺でもあったんやろか、凄まじいわぁ。あっ、扉は二個あるんやね。うーん」

 写真立てを調べる安玖、本棚を調べる烈を横目に都城は部屋を見て回る。扉は二つ、入ってきた扉のすぐそばに一つと真反対に一つ。都城は首を傾けながら「どこ調べたらええやろ」と呟く。まだ足は少し震えていて扉に近づく勇気はでなかった。変わりにどたばたという一階から聞こえてきた足音にばっと開けたままの扉に視界を向ける。

「八岳くんも御子柴さんもどないしたんですー?」

>> ALL

1ヶ月前 No.606

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_vZE

【御子柴ゆらぎ/浴室→二階階段】

 矢張りというか当然というか、龍矢もあの少年の事は知らないようである。となると無論、少年の恋敵は龍矢たりえない訳で……ゆらぎ達にしてみれば、勘違い人違いオンパレードの傍迷惑ボーイということになる。
「なっちゃんか……確かに歳は近そうかも。でも、わたしも安玖くんも勿論パパも、なっちゃんには似てないような……いや、顔半分隠れてるから分っかんないけどさぁ」
 龍矢の少年が探しているのは七では? という指摘に、ゆらぎは少年の背格好から年齢を推測し、思わず納得しかけた。
 少年は着物姿だったから、今までのパターンからするとこの町の住人だったのだろう。ということは、享年十だと仮定して生きていれば二十歳……ほぼ同年代だ。いやでもそうなると七の年齢と合わない……どう考えても時空が歪んでいる曉町のことだ、そんなことは些末な問題なのかも知れないが。
「……パパ?」
 とか何とか考えている間に、ゆらぎはまた龍矢に置いていかれた……と思ったら戻ってきた。
 何故か今開けたばかりの扉を閉めて、洗面所の入り口で龍矢は立ち尽くしている。何か居たの? とゆらぎが問い掛けるまでもなく、それは向こうからやって来て……そこから先は、本気でゆらぎを置いてけぼりにした大騒ぎだった。

 強行突破目前で開かれた扉の向こう。神居家から現れては消えてを繰り返していた五月人業がそこに居て、携帯が鳴って、龍矢が慄いて、立ち回って。
 その尋常ではない怯えっぷりと命乞いは、これまでの彼とはまた一線を画すものがあった。
「龍矢くん落ち着いて、龍矢くん!!」
 半狂乱の龍矢に呼びかけるも聞こえてなどいない様子で、彼はただ殺されると泣き叫んでいる。その割に彼の動きは機敏で、そして意外と五月人形に隙が多くて、今回に限ってはゆらぎがその辺のものをぶん投げることはなかった。
 あれは龍矢の知り合いだったのだろうか。だからあんなに怯えているのだろうか……何か、怯えなければならない理由があるのだろうか。
 そんなことを今日出会ったばかりのゆらぎが考えても、答えなんて出る筈もなく。
「良いよ、早く行こう。今は逃げよう!!」
 呑気に考察している余裕もなさそうだった。龍矢が五月人業の日本刀を弾き飛ばした隙をついて、二人は一気に二階まで駆け抜ける。
 ……あの子もきっと、誰かを探している。

 バタバタと転がり落ちそうになりながら階段を駆け上ると、京の二人を心配する声が降ってくる。
「あ、へんしゅーちょー……お風呂にはまたさっきの子がいたんだけど……五月人形もいた……」
 全力疾走しすぎて言葉は途切れ途切れだったが、何とか彼女に状況説明しつつ息を整える。
 そしてゆらぎは、背後で扉を押さえつける龍矢を振り返った。
「龍矢くん……あの子は、知り合い?」

>ALL

【芙愛さん大ヒント有難うございました〜】

1ヶ月前 No.607

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/二階大広間】

 不意に鳴り響いた女性の歌声と電子的なチャイコフスキーに写真をまじまじと見ていた安玖の肩が震えた。えっと喉を鳴らし慌てて自分のスマホとガラケーを取り出す。
 宇宙の目が冴えるような青白い星雲のスマホカバー。同じ星屑を孕んだ伸びをする猫のストラップがついた手帳型のそれを開くと、確かに白いスマホが青い光を曲に合わせて点滅させながら電話の着信を知らせている。非通知という表示すらもなく、電話番号の文字だけがない着信画面は勝手に通話を繋げた。それはすっかり電源が落ちていたはずのガラケーも同じで、開いただけの画面は一方的に喋りかけてくる。

『……きちゃだめっていったのに。…………ねぇ、どうして? どうして無視するの?』

「この声……」

 同じ子だとすぐに気が付いた。か細くて幼い、変声期前特有の声。
 無視するの、なんて安玖に言われても困る。だって答える前に切ったじゃん。僕、ガラケーなんて一度も使ったことないから折り返せなんて言われてもできないよ。……と白々しく言うのも面倒くさい。明らかに自分宛てじゃないことぐらいは察しが付いていた。主に階下からの絶叫で。

『──俺じゃなかっただろ!!!!───────他にも!!!!!!────』

(何、今の言い回し……)

 漏れ聞こえる声は今までの訳のわからない(多分だが本人にとっても)喚きではなく、しっかりと理解した上での弁明。の一部だと思う。多分。
 ぴしゃりと襖が叩きつけるように閉じられる音が聞こえる。そしてドタドタと駆け上がってくる足音を耳にして、鎧武者が現れ逃げてきたのだろうと憶測を建てる。案の定、御子柴さんがあの五月人形とは知り合いなのかと詰め寄っていた。龍矢は怯えて騒ぎ倒している。そのすべてを眺めて、安玖は自分の唇を潰すように撫でた。

 狩谷さんが自分で命を断ったあの時、龍矢は確かに言っていた。

──「工夫をし損ねた不器用な負け組に、今更狡いだ正しくないだ文句を言われたって、寒いだけですよ」

 安玖が最初にとった電話の向こうで、誰かも分からない主は問うていた。

──「ぼくたちは、トモダチなの?」

 今更思う。それって、本人達にとってどういう意味だったんだろう。
 龍矢はよく自分を卑下する。詰るように自分を見下して、けれど絶対に一定ラインから下には行こうとしない。まるで「そこは俺の世界じゃない」と周囲に宣言しているようにも見えるそれは、別に問題視するようなことではなかった。

(知らない分かんないって言ってるけどさ、本当は全部気付いてるんでしょ)

(知ってたことを、思い出したでしょう)

 それらしい情報は龍矢と安玖しか持っていない。──そうなるように、“安玖が差し向けた”から。鑓ヶ岳さんは察しがついていて流してくれたけれど、良かったのかもしれない。自分以外が知っていると理解できたら、龍矢は弁明だけを口にして本当に言わなきゃいけないことを隠してしまう。自分にとって不都合なことは徹底的に排除しようとする質だから、その場しのぎで言葉を並べ立てて逃げようともがいてしまう。
 本当に狡い生き方をしてるだけなら、煽りはすれど否定はしない。安玖は好きじゃないけど、それを理由に違う人生を強要するようなものでもない。でも、なんだろうな。最初から、安玖は八岳龍矢という人間が好きだけど嫌いで苦手だった。安玖にとって自分を率先して傷付けてきた彼よりも嫌だった存在と、何となしに似てると一方的に感じていたからかもしれない。

「僕は龍矢が僕の大嫌いな人種じゃないって、信じてるけど」

 一通りの会話が途切れたタイミングを狙って、わざとあの言葉をなぞるように安玖は切り出す。寒空の下に放置された鉄のように冷たいその声は、妙な響きでもって紡がれていく。

「僕だって僕が龍矢の嫌う負け組じゃないと良いなって、思ってるけど」

 嫌われたくなんてないし、と口角を上げる。目を細めて腕を組んで重心を傾けて首を傾げる。安玖はあまりしない尊大な素振りで瞳を揺らすと、その笑顔に対して変わらず低いままの声を押し付けた。

「龍矢の言う『負け組』って、何なの」

「龍矢にとってさ、“あの鎧武者”はどっち」

>>八岳龍矢、ALL

1ヶ月前 No.608

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 二階 大広間】

本棚を探索していた烈が見つけたもの。それは、以前にも見たような墨色の表紙の日記帳だった。今更他人の日記帳を読むことに抵抗が起こることもないので、烈は遠慮なく頁を捲っていく。

《2004年2月14日
 翔子が外の男と逃げた。宮月の家には相応の罰を受けて貰わねばならぬ。また、次の月嫁を選ばねばならぬ。
 しかし、誰に問うまでもない。次は彼女だろう。
 神の遣いは、神にお返しせねばならぬ。―――は反対するだろうが仕方ない。
 柚衣が死んだのも、翔子が逃げたのも、或いは……》

翔子。その名前を烈はこれまで何度も耳にし、そして目にした。はぐれてしまった式島という警察官の妻にして、この曉町に伝わる儀式の鍵を握る人物。
何となく予想は付いていたが、翔子は儀式の関係者であった。しかも、この文面から推測するに、彼女は人柱となる予定であったと見て間違いなさそうだ。そんな翔子という女性が、村の外に逃げた。恐らく外の男というのは、式島のことなのだろう。

(人柱━━━月嫁は、神の妻となる。そのような女性が他の男性と逃げたとなれば、神への背徳に値する)

儀式から逃げたということも大問題だが、何よりも危惧すべきは神に捧げられるはずの生娘が他の男と通じていたという事実である。これはもしかしなくても神の怒りを買うだろう。そのような神話だか民話だかを何処かで聞いたことがある。
故に、この日記の書き手は代わりとなる人物を神に捧げようとしている。次は、と言われているのだから、大方翔子の次の月嫁として見立てられていたのかもしれない。月嫁となる人物が一人繰り上がるということか。

(……だとすれば、この代わりとなるお方に何かあったのか、それとも儀式に間に合わなかったのか……。もしも前者であったのならば、この代わりとなるお方というのは……)

しばらく無言で考え込んでいた烈だったが、その思考は再び鳴り響いたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番によって途切れることとなった。日記帳を直ぐ様閉じると、烈は自身のポケットに入れていたガラケーを取り出す。今まで圏外になっていたというのに、此処にいる全員の携帯電話が一斉に鳴っている。
恐る恐る通話ボタンを押して、烈はガラケーを耳に宛がう。ガラケーを持つ手が、小さく震える。

━━『……きちゃだめっていったのに。…………ねぇ、どうして? どうして無視するの?』
「……っ!? な、貴殿は、何を━━!?」

聞こえてきたのは、まだ声変わりをしていない少年の声。烈はそれに問い返そうとしたが、一階から響き渡った絶叫によって烈の言葉は途中で引っ込んだ。今の声は怪異のものではない。これは、この声は、ずっと共に探索をしてきた━━━━。

「八岳殿っ!」

龍矢に何かあったのだろうか。ガラケーを耳から離して烈が振り返った瞬間、タイミングが良いのか悪いのか大広間に龍矢とゆらぎが駆け込んできた。
まずは二人に大きな怪我がないことに烈は安堵する。しかし、ずっと安心してもいられなかった。ゆらぎはともかく、龍矢の様子が可笑しい。まるで何かに酷く怯えているような、何かを必死に拒んでいるような。今までも龍矢は襲い来る怪異を怖がっていたが、今はその比ではない。例えるならば、瘡蓋になっていた古傷を抉られたかのような素振りである。
ゆらぎによれば、浴室で子供の怪異と玄関先で邂逅した鎧武者に遭遇したらしい。龍矢がどちらを恐れているのかはわからないが、このままにしておいてはいけないと烈は判断する。

「……八岳殿。我等は……いや、拙者は貴殿のことを何も知りませぬ。深追いするつもりもございませぬ。ですが、貴殿が一人で傷を隠すというのならば、拙者は貴殿を放ってはおかない。この探索は、貴殿一人で行っているものではありませぬ。もう誰も欠けぬためにも、七殿を救うためにも。可能な限り、お話ししてはいただけませぬか。拙者に聞かれたくないのであれば、拙者は耳を塞ぎ目を閉じております故。……八岳殿、何卒」

案じるような京とゆらぎ。龍矢を試すかのような素振りの安玖。
烈はそのどちらの対応が正しく、適切なのかわからない。恐らくどちらも正しくはないし、間違ってもいないのだろう。烈が口出し出来る隙間なんてあるはずがなかった。
故にこそ、烈は龍矢に頼む。自分に話す必要はない。この中の、信頼出来る誰かにだけでも、己が恐怖の理由を告げてはくれないかと。

>>周辺all様

28日前 No.609

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/二階階段廊下】

殺される。殺される。殺される。次は俺だ。

人から恨まれ命を狙われる日が来るなんて、そんな道外れた生き方を、俺は絶対するわけがないと思っていたのに。あいつのせいだ。彼奴が余計な事をしたせいだ。彼奴が勝手に、死んだせいだ。確かに死なれたのは痛手だったし後味が悪いなんて言葉で言い尽くせるもんじゃ無かった。そういう意味で悲しかった。けれどそんなことより腹が立った。俺の必死の努力で築き上げてきた平穏で平凡な日常が、めちゃくちゃに壊されてしまったから。嫌がらせもいいところだ。俺の視界から消えて欲しいとはずっと思ってた。でも死ねと思った事は一回もない。死ぬのは卑怯だ。あれは彼奴から俺らへの復讐だったに違いない。
頼むから余計な波風を立てないでくれと、俺の願い事はそう難しい注文でも無かった筈なのに。どうしてそんなことも叶わないんだろう。
俺が何をしたっていうんだ。

「御子柴さん! 早く! 急いで! 逃げて!」

俺は差し迫る危機に我を忘れて御子柴さんの手を取り玄関を駆け抜けた。囲炉裏の間の扉で鎧兜姿の敵を閉め出すことに成功すると、御子柴さんを階段の上へ追い立て自分は直ぐ後ろから追い立てるように二階へ駆け込んだ。

「……殺される、早く! 逃げて!!」

転がり込むようにして俺と御子柴さんは二階への階段を上りきった。都城さん、逢澤先輩、鑓ヶ岳さんが驚いたように次々と隣の部屋から顔を覗かせる。
幸いにも、洗面所での一戦からまた呆然と立ち尽くしてしまった薄鈍がそれ以上追ってくる事は無く、階段の途中で振り返ってみても扉が再び開く事はなかった。

合流できた三人と、一緒に逃げてくれてこちらを振り返る御子柴さんの顔を見たら急に安心感とまだ生きている実感がこみ上げてきて、反動で今まで予感としてしか感じなかった恐怖心がリアルな体験として蘇ってきて涙腺が少し弛んだ。上がった呼吸と共に鳴咽が込み上げそうになるのをぐっと堪える。

「……俺……っ、追われてたみたいです……すみません。心配をお掛けしたみたいで……あの皆さんを襲った五月人形みたいな鎧武者……今まで気付かなかったけど……俺の知り合いだったみたいで…………すみません、俺、多分そいつに恨みを買っていて……っ」

先ずは巻き込んでしまっていた事を詫びないといけない。俺が今まで気付かなかったせいで、御子柴さんや鑓ヶ岳さんや都城さんや先輩まで訳の分からない黒い鎧武者に行く手を阻まれたり刃を向けられたりしてきたのだから。身内のことは本来自分でカタをつけないといけないんだろう。……あんなやつ、身内とも思うつもりないけど。でも彼女達には謝るべきである。でも、それを言うことは、即ち、俺が「人から恨みを買うような過去を持っているような人間」であるということを白状するということに等しいわけで。
俺は欺き誤魔化し偽り続けて生きてきたような男だ。別に人を傷付けたり不幸にしたりするような嘘は吐かないし、殆どは自分を守る為、時々は人の為だ。でもこんな状況になってしまっては、そして、そうまで言われてしまっては、ある程度白状するしかない。
白状した上で、弁明させて貰うしかあるまい。

「大丈夫、俺からお話しできます……曉町は死人が俺達生者に復讐できるイカれた空間です。それで……彼奴が殺そうとしているのは、……っ、……俺です。あの五月人形の正体は俺の昔の幼稚園小学校中学校と一緒だった同級生」

流石に仲間達に自分の口から、次に殺されるのは自分だと思うと告げるのは言い出しづらかった。鑓ヶ岳さんの優しい気遣いに、話せるとはいってみたものの。特に俺は最後まで怪異だの超常現象だのを信じないスタンスを貫いてきた立ち位置だったから。でも正直に話して協力を仰いでおかないと、本当に次には消されてしまうかもしれないから。
この町は、普通なら絶対に存在する筈がない死者が喋る口を持ち、俺たち人間に手を挙げる術を持っている。この曉町でなら、死人さえ生者に復讐が可能なようだ。その事を知った時、そいつの影がよぎらない訳では無かった。そうだとしたら恐ろしいとも思った。後ろめたさはある。其奴が余計な事をしたせいで植え付けられた後ろめたさだ。けれど其奴が恨むべき人間なんて、他にいくらでも居るだろうともその時は思ったんだ。

これで御子柴さんと都城さんと鑓ヶ岳からの問いかけの答えにはなっただろうか。その先は言いづらくて無意識に有耶無耶に言葉を切った。でもそれでは話の要が伝わらないと自分でも分かっていて言葉を選んでいると、もう既にそれを見透かしたような逢澤先輩の視線が俺を捉えている。誤魔化しが効かないな、苦手なんだよなぁこういう状況は。まったく、やめましょうよそういうのは。俺達は今や数少ない味方です。仲良くやりましょう、ねぇ先輩。

「あの鎧武者ーー俺の同級生は、中学の時にいじめに遭って三年生の途中で転校、高校に入ってすぐの頃、自殺したらしいと噂で聞きました。……これは自己防衛と言われようと、どうしても譲れない真実ですから、天命にかけて言わせてもらいますけど、俺はいじめに加担なんてしていませんよ。俺は何にもしていないのに」

ほら、そういう空気だよ。だからあんまり言いたく無かったんだって。視線があまりに辛いので、俺は一番肝心の弁明を付け足す。俺は何にも悪いことはしていない。本当に責められるような人に危害を加えるような悪いことは一切していない。こうして復讐の鬼に追い回されてる時点で皆に信じてもらえる確率は低いけど、これは本当なんだ! 信じて! と縋る思いだ。
相手に死なれると、10-0(ジュウゼロ)でこっちが悪いみたいになるじゃん、その風潮、本当にやめたほうがいい。残った方だけが本当に加害者なのかよ。俺たちは加害者に仕立てられて長年傷を残されて怯えて、向こうは飛んでハイサヨナラと逃げる訳だろ。どっちが被害者だよ。

「生きにくいと言いながらそれは結局自分で生きやすいように調整する事が足りてない。普通にしていればいいのに。要領が悪くて不器用で、周りに合わせられない。不平ばかり言って。結局我儘なんですよ。みんながしてる努力を其奴はしない、みんなが我慢している事を其奴だけ行動する。その我の強さを孤高に貫き通せるのならそれは強さかもしれない。でも大抵はそうじゃない、弱者に成り下がる敗者です。先輩の問いに答えるなら、彼奴は負け組≠セと思いますね。死んだら全て終わりですよ。死んで逃げたんです、死ねば被害者。どっちもどっちなのに、汚れ役を押し付ける。被害者にでもなったつもりで、周りを恨んで非難して犯罪者みたいにするんです。周りには後味の悪い爪痕を残して。とんだ迷惑でしょう」

聞かれなければ、別にそこまで言うつもりはなかった。でも欺くのも誤魔化すのもこれ以上は俺の力量的に無理そうだと悟って。まぁそれに、先輩はともかく皆さん今日此処で出会ったばかりの初対面の方々。いつもなら嫌われないかと慎重に思慮深く行くところだけど、よく考えたらギャップも何も無いんだよね、この本心。最初から俺のことなんて分からなかったわけだから、そしてこれきりかもしれないのだから。だからこその安心感だったのかもしれない。一連托生、旅は道連れ、一期一会、死なば諸共、毒喰らわば皿まで。俺は間違った事を言っているつもりは別に無いけど、反感を持つ人がいるのはわかってるし、だからこうして命を狙われてるわけだし。でも今ぐらいは正直に、もっと早く気付けばよかったかな。

「……大学生になってから、医療従事者を目指してから特に、世の中には生きたくたって生きられない人、悪い事をしていないのに病気でこの世を去らなくてはいけなかった人達の事を目にします。そんな人がいる一方で、与えられた生を自分の技量と過失で台無しにして、上手くいかなかったからって逃げる為に周りに責任転換して傷付けながら強制終了するなんて。ーー俺は許せないんです」

>all


【皆さんが優しく迎えてくださってチワワ震える……! サブイベヒント後編・質問に答えるのコーナーでした!】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
27日前 No.610

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

27日前 No.611

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京 / 町長邸 二階 大広間 】

 開けたままの扉から転がるように飛び込んできたゆらぎの話によれば先程玄関で対峙した五月人形が再び襲ってきたらしい。五月人形の侵入を防ぐように扉を押さえる八岳とその彼へと言葉を投げかける安玖の様子に都城は扉の方へと向けかけた足をゆっくりと下げる。

 先程の、圏外のはずのスマートフォンから響いた声の主はその五月人形であるらしい、そしてその人形の中身は八岳の知り合いだという。都城はゆっくりと息を吐く。不穏な空気が血濡れたこの場に流れる感覚、ぴりぴりと刺すような、そんな感覚。

「あー……んー……うーん……」

 歯切れの悪い言葉のなり損ないのようなものが唇から滑り落ちる。俺は加担していない、俺は悪くない、負け組、鼓膜を震わせる八岳の語りに都城は緩く笑みを零す。ほんままだまだお子さまやねえ、なんて、ぼそりと呟いた言葉は安玖の言葉によって掻き消され虚空に消えた。明らかに様子が異なる安玖に都城は数度瞬きを繰り出し唇を開こうとして、

 恨み続ける、その言葉がまるで自分の頭を殴られたみたいに響く。あの子も、自分を恨んでいるのだろうか、恨んで、恨んで、恨んで。ぐるぐると頭の中に回る言葉に足がその場から離れようと近場の扉に手を掛ける。ここは彼らに任せて、そう思いかけてふと思い出したのは月館家の二階でのことだった。様子のおかしかった安玖から逃げたこと、ゆっくりと思い返し、そして息を吐く。

「……おねーさんは、まあうまく言えへんし、人のことなんか言われへんのやけどねえ」

 出来うるかぎり軽く、明るく、困ったようにへらりと笑いながら安玖を、八岳を、ゆっくりと見つめ。

「うちは勝ち負けとか分からへんのやけどね、関係ないとか、で逃げ続けることなんか出来へんの、ずっとずっと、纏わりついて、離れへんなって、どうしようもなくなるんやから」

 なぁんて、こんな話今は関係あらへんねえ、堪忍ね。とわざとらしく片目をぱちん、と閉じウインクしてみせる。うちは逢澤くんも八岳くんもかいらしくて好きですよぉ、なんておどけた言葉を残し都城は触れたままの扉に背中を付け唇を閉じた。

>> ALL


(うまくレスができない!ごめんなさい!)

19日前 No.612

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/二階 大広間】

 どうやらゆらぎは、華麗に地雷を踏み抜いたらしい。地雷そのものは最初からそこら中に転がっていたようなので誰かが踏むのは時間の問題だっただろうが、完全に誘爆を起こしている現状に、ゆらぎはひっそりとこめかみを押さえた。
 曉町の異形には三種類ある。一つは元住人、一つは何らかの理由で町に囚われた人間、そして最後に迷い込んだ生者の関係者。
 龍矢の慌てように思わず知り合い? なんて聞いてしまうのは仕方のないことだろう、わたしのせいじゃない……なんて、この場では口が裂けても言えないし、思えもしないが。
「よしよし、安玖くん頑張ったね。細かいことはわたしには勿論分かんないけど、少なくとも頑張ったから今ここにいるんだもんね、お疲れ様」
 そして取り敢えず、ゆらぎは誘爆して泣きじゃくり始めてしまった安玖を宥めにかかる。過去の嫌なことなんて、本来であれば他人にとやかく言われたいものではないだろう。それに、どんなに言葉を尽くしたって、その時の気持ちなど本人以外に分かる筈もない。だから敢えて、ゆらぎは死ぬほど薄っぺらい言葉を並べ立て、そっと安玖の頭を撫でる。

 まあせっかくなので(?)泣きたいだけ泣いてくれと思いながら、龍矢の言葉も反芻する。
 やはりあの五月人形だか鎧武者だかは龍矢の知り合いのようだった。顔は見えないから声で分かったということか。
 いじめがあった、何もしなかった、自殺した、後味の悪さだけが残った……言ってしまえばよくある話なのかもしれない。世の中には生きたくても生きられない人がいる、自殺は良くない。当たり前の話だ。曉町では人の未練が凝る、死者が生者に復讐出来る――お互いに物理攻撃が通じるのでそうなのかもしれない……でも、本当に、そうか? 復讐が未練となって化けて出るくらいなら、とっくの昔に龍矢の周りで死人が出ていそうだ……彼が此処に来たのだって、奇跡のような確率だろうに。
「いやまぁ五月人形君の気持ちもわたしには分かんないけど……わたしなら自分が死んでそれが原因で苦しんでくれるなら、わざわざ殺さなくても復讐としては充分かな。逆に殺すにしたってここまで引っ張らないか、もしくは仲間全滅させてから最後に……これ以上は止めとこう。取り敢えず、何か復讐にしては変な気がする……遺された方は堪ったもんじゃないのは本当だけどね。龍矢くんも大変だったね」
 話が物騒な方向に向かったのを半ば手遅れながら軌道修正し、今度は龍矢の頭にも手を伸ばす。頭ポンポンは万能……無事に帰ったら、サークル男子にセクハラで訴えられないことを祈る。

「あと……自殺が良いとか悪いとかは言えないけど……わたしは……わたしがまだわたしでいられるうちに、わたしがわたしを見失わないうちに、消えてしまいたいとは思ったよ」
 そしてそれは、唯一ゆらぎの経験から来る言葉だった。

>周辺all

19日前 No.613

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 二階 大広間】

人には誰しも触れられたくない、心の内に秘めておきたい部分がある。それは烈もよくわかっていたし、そういった部分は出来るだけ触れないようにと心掛けてきた。
自分とは違う人間に、自分の思考を押し付けるのはあまりにも傲慢だと、彼女はそう考えている。辛い人生を歩んできた人に、心に一生癒えることのない傷を負った人に、自分ごときが口出しして良いはずがない。それゆえに、烈は基本的に他人の過去を詮索しようとはしなかった。
しかし、今はそうもいかない。五月人形は龍矢の、龍矢は安玖の傷に塩を塗り込んだ。

「あ……お、お二人とも、落ち着かれよ……」

まるで此処にいない誰かに弁明するかのように捲し立てる龍矢と、憤怒に震えながら涙を流す安玖。その二人に向けて絞り出されたのは、烈にしてはあまりにも頼りない声であった。
龍矢の気持ちはわかる。加害者の側に荷担しなければ、自分が傷つけられるということ。浅ましいとわかっていながらも、自己保身に走ってしまう気持ち。
安玖の気持ちもわかる。自分を傷付けた人間が、何事もなかったかのように日常を過ごしていることに対する怒り。散々此方に傷を付け、嘲笑っておきながら、あたかも自分は普通なのだ、何も罪を犯してはいないと軽率に笑う者たちへの恨み。
わかる。どちらの気持ちもわかる。だから烈はどう言って良いのかわからない。
しかし、無言を貫くのは尤も無礼である。烈は唾を飲み込むと、ふぅぅ、と深く息を吐いて一同に向き直る。見れば、ゆらぎが相変わらずのマイペースっぷりでサークルの男性二人の頭を撫でるというファインプレーをしてくれていた。胸中で、烈はゆらぎに多大な感謝の言葉を送る。

「逢澤殿。部外者の拙者が貴殿に口出しするのは烏滸がましいことにござる。しかし、拙者は苦難の日々を送りながらも、今この時まで生きてきた貴殿を誇りに思いまする。死してしまえばすぐに終わる苦渋よりも、この世で生きることを選んだ貴殿が、この俗世に蔓延る理不尽に怒るのは尤もなこと。その涙は、決して流してならぬものではない」

烈は安玖に歩み寄ると、その手に自身の私物である手拭いを握り込ませた。そして、次は龍矢へと向き直る。

「八岳殿。貴殿の行動が、一人の人間を傷付けたことは変えようのない事実でござろう。その点を擁護するつもりは拙者にもありませぬ。……だが、己の醜く、汚れた、他人に知られたくないと思うところを貴殿は我等にお話ししてくださった。己を隠し、保身することも貴殿には出来たはずだ。しかし貴殿は己が咎を吐露なされた。そんな貴殿を、拙者は責めたくありませぬ」

正直、このメンバーのことに関してはまだ知らないことばかりだ。自分勝手なことを言っているのだってわかっている。
だが、烈は上手く言葉に出来ずとも、言葉をかけてやらねばならないと思った。そうすることで、何かが変わるとは言えないかもしれない。ただ、無言でいるよりもずっと良いというだけだ。

「汚点のない人間などおりませぬ。そして、美点のない人間もおりませぬ。七殿を襲った理不尽に怒り、そして彼女を捜そうと腐心する貴殿を拙者は知っている。貴殿がどれだけ汚点を持とうと、拙者は貴殿の優しさを忘れはしませぬ。故に、どうか。どうか、再び顔を上げてはくれませぬか。悔いながら、恥じながら。それでも前に進むことは、可能にござりまする故」

何と言うことが最善なのか、烈にはわからない。もしかしたら二人の逆鱗に触れるようなことを言ってしまったかもしれない。
しかし、烈は少なくとも偽りを語ったつもりはない。唇から溢れ落ちたまとまりのない本心は、美辞麗句で飾られることもなくその場の空気に乗せられた。

>>周辺all様

16日前 No.614

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/二階大広間】

 え……?
 想定外の先輩の反応に、俺は言葉を失った。
逢澤先輩が過去にいじめを受けて自殺未遂をしていた……? あの逢澤先輩が?
先輩との付き合いは浅い。入部してから四ヶ月そこそこの間の先輩のことしか見ていなかったが、今の彼からは全く想像が出来なかった。そんな風には、見えない。
「そんな――」
 俺から見た逢澤先輩は、きちんとしていて、理知的で、博識で、大人で、冷静で……。だから、俺の大嫌いな被害者面して理不尽を嘆くような、命を粗末に死に逃げたがるような弱者≠ノは全く見えなかった。図書館で喧嘩になってしまったときもそうだ。先輩は俺に何と言って叱咤し奮い立たせてくれたのか。
でも気がつかなかったにせよ、人の古傷を抉り泣かせたのは俺のミスだ。

「先輩、すみません……俺、知らなくて。……無神経でした。ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったんです。……泣かないでください」

 率直な意見を述べるときには、特に怒りや嫌悪の感情の吐露には、気をつけた方が良い。どんな人が聞いているか、分からないから。目の前の思いがけない人物に飛び火してしまうかもしれないから。
 時間を巻き戻せるなら、直ぐさま数分前に戻って先輩の質問にまた嘘をつくルートに戻りたい。

「ごめんなさい、泣かないで……泣かないで」

 如何すれば良かったのかと尋ねられた。戦って生き抜けばいつか良いことがあるだろう、殴り返すことだけが戦うことじゃない。回避すること、偽ること、誤魔化すこと、適度に同調すること、真に受けないこと。いじめられたのは成績学力が情報不足や家庭の事情で劣っていた事だけが原因とは思えない。だって先輩は現にこの大学には入れているし、成績が悪いとも聞いたことないし、同じ環境で育った双子のお兄さんはいじめられていない。成績や何が出来るかだけが全てじゃない。成績が不良でも友人に囲まれている子や他の分野で一目置かれている子もいる。別に何が得意でなくても俺みたいにそれなりのところをそれなりに漂えている生徒が大半だろう。逆に優秀すぎて攻撃されたりすることもあるんだし。じゃあ何かって、そりゃあ本人の性格とかキャラクターだろう…………なんて、そんなこと言えるわけがない。先輩には恩がある。ちょっと尊敬もしている。基本頼りになるけど、年上なのに弟みたいに思う瞬間もある。できれば今の逢澤先輩だけを見ておきたかった。双子のお兄さんが亡くなってから辛かっただろうとは思うけど、そこから今までに生きといて良かったと思う瞬間はきっと少しぐらいはあっただろうと信じたい。
 俺は本当に、先輩と争いたくはなかった。これは打算じゃなくて、先輩に限らず出来れば誰とも戦いたくないし此方から傷つけたくはない。
幽霊?異形? あれは人間じゃないからいいんだよ。――ともかく、ここは議論を交わしている場合じゃない、先輩に謝って許して貰わないと。とはいっても俺が優しい声で励ましたって頭を撫でたりハンカチを渡してあげたりしたって、どう考えても気持ち悪いだけだろ。困り果て途方に暮れていると、都城さん、御子柴さん、鑓ヶ岳さんがそれぞれフォローを入れてくれる。頭が下がる思いだった。というか、頭を下げる事しかできなかった。俺が余計な事を言ってしまったせいで……

「すみません、皆さん。俺ほんとに余計な事言いました……」

 人の和を乱さない、なんて、日頃一番に心がけていることなのに。深く反省して謝っていると、頭上に慣れない妙な感触が走った。それが御子柴さんの手が先輩だけじゃなく何故か俺の頭にも伸ばされているからだと気付くのにしばらく時間を要した。ぽんぽんと、宥めるように柔らかく跳ねる手のひらの感触はいつ以来だろう。どこか懐かしい感覚に被さるように、鑓ヶ岳さんの声が顔を上げろと言ってくれる。もっと誰からも頭ごなしに否定されるかと思っていた。先輩の反応も想定外以外の何物でも無かったが、彼女たちに引かれず石も投げられなかった事も救われる意味で想定外だった。美点のない人間なんていない、その言葉はとても嬉しかった。でも俺は、多分優しくなんか無い。七ちゃんの事だって、最初は見捨てようとした。中学のときあいつを見捨てたのと殆ど同じような理由で。怖かったし責任なんか持てないし持つ気も無いし、俺は強くないから優しくない。でも鑓ヶ岳さんがそう言ってくれたお陰で、俺の中にもまだ善意は残っているように思う。
 皆を守るためになら。

 頭を撫でられる犬みたいにボケッとされるがままになっていたが、懐かしさと同時に恥ずかしさが湧いてくる。我に返ると本当に自分が喧嘩を仲裁される餓鬼みたいで、気付いてしまうと頬がどうにもならない熱を帯びる。暗がりだからきっと気付かれない、今のうちにさっと頭ポンポンから脱出して顔を上げた。

「俺は大丈夫です……皆さん、その、ありがとうございます。なるべく皆さんを巻き込みたくはないので助けてとはもう言いませんが、都城さんが仰るように多分何処まで逃げても奴はやって来る。出来ることなら身に覚えのない恨みから逃げたいとこなんですけど、御子柴さんの言うようにもしも……もしも仲間を一人ずつ、なんてことだったら俺は絶対そんなことさせない」

 また借りが出来た。こんな良くしてくれた人達を、過去にわけの分からん理由で個人的に買った怨恨の為に失うなんて絶対に許されない。死にたかった奴は死んでおけ。どうして死んでまで人の人生に干渉し縛り付けるんだ。

「戦いましょう。……それで、鎧武者の正体が俺の同級生の彼奴だとすると、見かけ倒しなところや飛び道具に弱いのも納得できるんです。刺叉は怖がらなかったのに、皆で攻撃を仕掛けた時の、文具や手近な物を皆で投げつける行為は多分生前のトラウマにクリティカルヒットして効果的だったんです。もしも襲われたときはきっと数で押すに限る。助けを呼んでください」

 そこまで言うと、俺は顔を上げたまま辺りを見回した。必死で二階に来てから周囲の様子など目に入らなかったが、この部屋は一面血塗れだった。殺人事件現場か何かか。勿論驚いて一瞬足が竦んだが、今更だ、とういう気持ちが勝り、案外冷静でいられた。一体何があったのか。七ちゃんは無事なのか。次に殺されるのが俺かもしれないなんて、怖すぎて居ても立ってもいられないが、俺には汚点のほぼ全てを白状した人々がいる。友達と呼んでは図々しいかもしれないが、信用は出来そうだ。その友人を……七ちゃんも含めて、今度は自分が助けなければならないと思うと、恐怖心も少し薄らいでいく気がした。

「……お手数をおかけいたしてすみません。探索に戻りましょう。七ちゃんを見つけることと此処から脱出することの方が大事だ」

>ALL

14日前 No.615

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/二階大広間】

 ──「頑張ったね」というそういう意味合いを含んだ言葉は、どんなに薄っぺらくとも、あの日の自分が欲しかった言葉に違いなかった。頑張ったね、辛かったね、と誰かに慰めてもらいたかったのだ。それが、こんな形で貰えるとは思ってもいなかったけれど。

「うぅー……」

 めちゃくちゃ丁寧に慰められて唸る。泣かないでと後輩に言われまた唸る。泣いたことによって冷静になってきた頭は、途轍もなく恥ずかしい状況に陥っていることまで見事に分析した。見たまんまだろうと言われたらそうなのだが。
 取り敢えず御子柴さんに大人しく頭を撫でられて、槍ヶ岳さんに渡されたハンカチでありがたく涙を拭う。鼻水が出ていなかったのは幸いだ。ずず、と音がなる割に奥に溜まって出てくる気配はない。

「眼球がいたいあついぃ……」

 情けない泣き言だった。泣きすぎたんだからそりゃそうだろうという話だが、なまじ泣くのがド下手(経験不足という意味で)な安玖は、今までで一番のダメージを受けていた。泣いたことでうまれる目の腫れって丸薬効くのかな。試さないけど。
 数十秒、ダメ押しのように長く息を吐いて漸う顔を上げる。腫れてはいないと思いたい。明らかに熱は持っている自覚はあるが、まあ、大丈夫……だといいなあ。

「僕も……も、大丈夫。ごめん、一人でもりあがって泣いて……」

 その後に何を続ければ良いのか悩んで、結局、また二手に別れますか、という探索に対する提案だった。ここでさあ仕切りますとは出れなかった。

 皆がどうするのかざっくりながら決めている間、常温になったペットボトルを目元に押し当てる。それすら冷たいと感じるあたり熱を持っている気がしたのは間違いじゃなかったらしい。
 聞きたかった、知りたかった、のかもしれない。その後に来る回答が何であれどうしたいのかなんて分からないけれど、それでも。
 本当に友達なんだよね? 本当にまだ、友達でいいんだよね。そんな言葉、あの地獄に居ると言えるわけがない。そのたった一言で目の前の人までこちら側に引きずり込んでしまうかもしれないから。友達であることを信じたいと思うくらいには大切な人に、安玖がそう聞けず終いだったように。
 そうだよ、と肯定されて救われるタイミングもある。その言葉で耐えられる時期も、あるにはある。違う、と否定されて救われるタイミングもある。全員が敵なのだと認識することで立ち上がれる時期だってある。けれど──けれど。知らない、と質問そのものを無視され否定されるのはどんなタイミングであれ良い方向にはならない、気がする。上手くは言えないけれど、否定よりも遥かに拒絶された気がしてしまうのだ。

(まあ別に彼は僕じゃないから、そう考えても意味がないんだけどさ)

 次にアレと対峙したとき、安玖はどうするのか。すっかり迷い困ってしまっていた。

>>ALL

9日前 No.616

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京 / 町長邸 二階 大広間→廊下 】

 ゆらぎが安玖の頭を撫で烈がハンカチを渡す。その様子を扉に体を預けたまま眺めていた都城はにっこりと微笑む。彼が泣いてしまったことと同じようにゆらぎに撫でられたことであたふたとする八岳の様子、その言葉に都城はゆるりと目を瞬かせそしてほんの僅かに首を傾ける。はたして、それで、良いのだろうか。

「うーん…………まあ、せやねぇ。とりあえず七ちゃん探すのが先決やね。扉は二つあることやし、いつも通り二手に分かれるのが一番やろか」

 言葉は飲み込んだ。これは彼の問題だから。そのかわりとばかりに八岳の言葉に、涙を拭う安玖に、そして女子陣を見回しそう唇を開き提案する。指差したのは自分たちが入ってきた扉の横を指差しそして自分が凭れかかっていた扉へと視線を向けた。

「とりあえず私はこっち行ってみるんで、ええ感じに分かれてくださいねえ」

 にっこりと微笑み扉から背を離せば扉へと手を掛ける。ここまでまだ敵といった敵はあの鎧武者以外出てきていない。都城はそっと息を吐き気を引き締めなおすように鉄パイプを強く握り扉を開いた。


「あー、こっちは廊下みたいやわ。扉は二つ、どっちから入ればええんやろか」

 足を踏み出し開け放った扉を潜る。両側に扉が一つずつ。少し悩むように都城は首を傾けながら廊下を進みとりあえず自分から見て右手側の扉へと手を掛ける。ぐ、と力を込め、そして大広間へと振り返った。

「あかんわ、こっちの扉は開かへんみたい」

>> ALL


(てなわけで探索にもどりましょー、ラストスパートよろしくお願いします〜!)

7日前 No.617
切替: メイン記事(617) サブ記事 (320) ページ: 1 2 3 4 5 6 7

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。