Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(700) >>

曉の彼は誰時

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(11087) - ●メイン記事(700) / サブ記事 (336) - いいね!(41)

ホラーゲーム風 / 和風 / 脱出 @sweetcatsx☆2/Tw0gYxHcQ ★iPhone=VHGaT7ZbKj

 ――――朱月≠ノは気をつけて。

 ――――貴方も、ああなってしまうよ?


【 八月上旬 / 山の麓の町 バス停留所 】

 がたがたと揺られ続けること一時間。止まったバスをおりてゆっくりと辺りを見渡す。辺りには田畑、そして山。この山の向こうに目指している場所はあった。


 その山には入ったらいかん。
 その山の奥には、曉町がある。
 あの町は住人全員が神隠しにあった。もう誰も残っとらん。

 ――――あんたも、神隠しされちまうぞ。


 幾度となくかけられた言葉を愛想笑いで逃げ切って、一歩、また一歩と山の奥へと足を踏み込んでいく。生い茂る木々が空を遮るようにして立ち並んでいるせいか薄暗く、より一層怪しげな雰囲気が立ち込める。深い深い山道をただひたすら、真っ直ぐ。


【 八月上旬 / 曉町高台広場 】

 山道を何時間歩いただろうか。目の前に巨大な朱塗りの鳥居が視界に入る。安堵からか思わず溜め息が零れた。やはり、やはり実在していた。浮き立つ気持ちを抑えつけ辺りを見渡せば黒のワンボックスカーが視界に入る。……もしかしたら、広めの道もあったのかもしれない。

(…………他にも人がいるのか)

 心に小さく浮かんだ疑問。それらを拭い去るためにはこの中に入らなければ。深く息を吸い、ゆっくりと鳥居の下を潜る。――――その時だった。


「――――――――もう、逃げられない」


 鼓膜を震わせた少女の声。辺りに少女はいない。気のせいだったのだろうか。首を捻りながらもふと、視界に映った空に目を見開く。何故、どうして、空はまだ青かったはずだ。それなのに――――


 何故、空は闇に染まっているのだろう。
 何故、月はあんなにも赤く染まっているのだろう。


 ――――これは、閉ざされた町曉町≠ノ足を踏み入れた彼等に待ち受ける怪異譚である。

( 鈴の音が、聞こえた気がした )



 ///

( 冬だけどホラースレッドです! 兎にも角にもサブ記事へ! )

2年前 No.0
メモ2020/05/07 01:20 : スレ主☆woNfuP/Psag @milkywayy★iPhone-XZTOObmi5Y

ホラゲスレ第二弾告知 → http://sns.mb2.jp/milkywayy/d-10

最終章について → http://mb2.jp/_subnro/15697.html-330#a

(期間は5月下旬〜6月中旬辺りまでを予定しております)


第一章『曉町』>>1-186

第二章『蠶』>>187-354

第三章『朱月』>>355-536

第四章『月嫁』>>537-668

最終章『曉の彼は誰時』>>669-


【 登場人物(四章時点) 】

▼ オカルトサークル

 八岳龍矢(芙愛さん)

 逢澤安玖(千羽さん)


▼ 曉町探し隊

 御子柴ゆらぎ/ふわりちゃん★(夕邑三日月さん)

 鑓ヶ岳烈/足軽其の壱(すずりさん)


▼ 取材勢

 都城京(眠人)


▼ その他

 七(眠人)


→→→ 一覧(http://mb2.jp/_subnro/15697.html-299#a

切替: メイン記事(700) サブ記事 (336) ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8


 
 
↑前のページ (650件) | 最新ページ

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/大広間】

 火の玉を見やった安玖は素早く一番上に着ていた白いカットソーを脱ぐと、それを振るい旗包みの要領で叩き落とす。
 ──熱はあるけど引火はしない、か。

「待ってせめて何か守るもの巻いてからにして!」

 慌てて突撃しようとしている御子柴さんに声をかける。遠目に見ても明らかな火傷痕に構う様子のない彼女は頼もしいことこの上ないが、見掛け倒しだからはい突撃はいくらか早計にも思えたのだ。

『未練を残させてはならぬ、月嫁となるべき人間を違えてはならぬ。あれは優しすぎる……あれで良かったのだ……そうだと、言うのに』

 ばさりと服を振り抜き、言葉の意味を考える。生贄は違えるべきではない……それは安玖とて同意する。この手の儀式において間違いというものは赦されるべきではない。……が、しかし。

「それは……七ちゃんが白い髪に赤い瞳だから……それとも……拾われた孤児だから……?」

 ぽつりと溢れた言葉は鬼にの空を切る音に馴染む。
 違えるべきではないというのなら、手筈通り、順序通り、捧げるべきはかの敷島翔子であって然るべきだろう。それを順番も今までの流れも無視して彼女でなければならぬと言うのなら、それ相応の理由が彼の中にあるはずだ。

「事実がどうあれ、彼女は『神は神の元へ』という体に都合が良い。本人に記憶もない、明確な素性も分からない、見目も通常の人からはいくらか遠い……それが正解なのか、はたまたただの思い込みに過ぎないのかは僕には分かりかねるけど」

 また鬼火を払う。まるで熱を持った油に手をかざすような感覚だ。
 手の動きを止めないまま町長を見やる。そして根本的な疑問が降って湧いた。


 ──そもそも、この状況に陥ったのは“儀式が行われる前”と“儀式が行われた後”のどちらなんだ?

>>ALL

4ヶ月前 No.651

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京 / 町長邸 二階 大広間 】

 振り下ろされた杖を無事鉄パイプで止めることに成功した都城、そのまま殴り飛ばそう、と鉄パイプをしっかりと握り直したその時、鼓膜を震わせた掛け声とともに烈の華麗かつ鮮やかな飛び蹴りが町長にヒットしそのまま吹き飛ばされる。痛そう、なんて思ったものの口に出す余裕など都城の頭にはなく、縄を携え町長へと迫る八岳のその言葉に、僅かに眉を顰める。

(あの子は、七ちゃんはこの町の子なんやろか。月嫁と呼ばれる、生贄みたいなもんなんやろか)

 たすけて、こわい、という幼い声音が鼓膜にこびりつく。泣き叫ぶあの盲目の少女の姿が。その一瞬、都城は思考に耽ってしまった。だからこそ。

「っ、あっつ! は!?」

 振るわれた杖から飛び出た火の玉を、思わず鉄パイプを握っていない左手で払ってしまった。驚いたように手を引っ込め同じように触れてしまったらしいゆらぎの言葉に手を見つめる。焼けてない、大丈夫。

「あっ、御子柴さんあんまつっこんだら!」

 何故彼女は毎度バッグを投げるのか、なんてつっこみはさすがに今はでなかった。鉄パイプで脳天カチ割ろう、という勢いで助走をつけ駆け出せば右足に力を込めながら鉄パイプを振りあげた。


>> ALL

4ヶ月前 No.652

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 二階 大広間】

手応えあり。
町長らしき老人を蹴り飛ばした烈は、そのまま体勢を崩すことなく着地する。この期に及んで町長が透けていた、なんてことがあったら烈の蹴りは空振りに終わっていただろうが、今回も物理的に攻撃することは可能だったようだ。
出来ることなら、この町長にはありったけの情報を吐いて欲しい。━━いや、何としてでも吐かせなければならない。
烈はもう一撃食らわせてやろうかと構えを解かずにいたが、まずは町長の様子を見守ることにする。丁度良いことに、尋問の方は八岳が行ってくれていた。語彙力やこれまでの情報をまとめる力は彼の方が上だろう。烈が町長の尋問を行うとなれば、七にしたことへの怒りで懐かしのスポ根漫画よろしく平手を食らわせてしまいかねない。
━━が、案の定事は上手く進んではくれなかった。首が歪曲したまま立ち上がった町長は、どのような仕掛けか一同に向けて火の玉を放つ。

「ぬうっ!? まやかしとは卑怯な……!」

突然の非科学的な現象に、さすがの烈も一瞬怯む。
しかし、いつまでも退いたままではいられない。見たところあの火の玉はそれほどの大きさではない。当たったとしても軽傷で済むだろう。多少の傷であれば、丸薬で何とかなるはずだ。

「皆の者ぉ! 拙者も加勢致しまするぞ!」

おおよそ女子高生が言わないであろう台詞を大音量で叫びながら、烈は町長目掛けて低姿勢で駆ける。飛んで来る火の玉が当たらないようにするための行動らしい。それでも全くスピードが落ちない辺り、やはり運動部の体力は伊達ではない。
町長の放つ火の玉が烈の腕や足を掠める。熱を感じはするが、衣服が焦げることはない。
━━これならいける。烈は確信する。たかが幻術に怯んでなどいられるものか。此方は物理攻撃を得手としている。距離さえ詰めてしまえばどうとでもなる。

「ぺらぺらと、よくもまあ御託ばかりを並べられるものだ……! どのような理由があろうと、嫌がる盲目の女子を拉致した者、それを指示した者に与える慈悲は皆無! 文句があるならば、己が身でかかって参れ!」

朱月の儀式や、この町に根付く風習を烈は知らない。それゆえに、町長の言葉に文句を付けるのは、はっきり言って無粋である。
だが、それでも。それでも烈は許せなかった。泣き叫びながら連行されていった七の姿が、脳裏から離れなかった。彼女の意思を無視し、儀式に用いようとする輩に怒りを覚えずにはいられなかった。
七がどのような存在であれ、烈はこの怒りを発散させなければ気が済まなかった。自己中心的だとわかっていても、それを取り繕うだけの余裕などなかったのだ。

「いい加減にっ、観念せんかぁ!!」

町長の前まで駆け付けた烈は、深く息を吸って一喝する。そして、最早一切の加減も容赦もなく、右手に力を込めて町長へと渾身のストレートを放った。

>>周辺all様

4ヶ月前 No.653

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸二階 大広間】

「……未練? 月嫁になった女の子たちは、やっぱり死ぬ前提なんだな? 許せない、そんなの儀式でも何でもないただの殺人じゃないか!」

 こっちか下手に出りゃ化け物の、しかもジジイのくせに調子に乗りやがって。どうやら話が通じる相手ではなさそうだ。会話を試みるだけ無駄。尋問で吐く見込みがないならさっさと退散して自力で七ちゃんを探しに行くだけだ。しかし、『同情無用』か……同情したら駄目、何だろうこの感じ何か引っかかる。ジジイのやつ、俺の大嫌いな生物学的にあり得ない角度に首をねじ曲げたまま、死体みたいな顔で此方を見つめている。

「答える気はないみたいだな……話す価値もない相手ってことで。しばいていいですか。くそぼけ耄碌じじい」
聞こえないということは、つまりこちらの暴言も何言われてるかなんてわかりやしないわけで。ああ、くそ腹が立つ! その目! じっとこちらを見るその目! 言葉以上のメッセージをもって、とか気持ち悪いんだよそういうのマジで!! 言え! すぐに言え今すぐ言え! そういう目を見ていると、もう目を潰したくて仕方ない衝動に駆られそうだ。相手が自分の思い通りに屈しないときに、こんなに激しく苛立ちを覚えるたちだったとは自分でもちょっと意外だったかも。
 見てんじゃねぇよ、なんてヤンキーみたいな言葉を口の中で低く呟いたとき、老人の姿が消えた。
「は? 消え…………………………」
…………うなじを這い上がる冷たい感覚に、俺は言葉を切った。
 何が起きている? 動けない、振り返れない。後ろに何かが忍び寄る。その気配だけあるのに、体が動かない。「何故、戻った」 と、耳元で囁かれたような気がした。何故って、何のことだ。俺は本当に知らない。戻ったも何も、曉町へは今日初めて来たんだぞ。誰が行くかよこんなオカルトスポット! 首にそわりとした感覚が伝う。触れる間際の、熱の放射みたいに十本の蠢く指の近づいて来るのが。
 息を呑み身を竦めたそのとき、『パパの背後に立つなぁ!』 叫び声とともに、すっかりおなじみのボストンバッグが老人を吹っ飛ばした。

「御子柴さん……! 助かりました!」
 金縛りが解けたように、ふっと身体が軽くなる。や、まって、さっきあなた大事な証拠品を武器にするなって俺に言ってましたよねぇ!?……ま、いいかこのさい。
 さて、反撃だ。武器を取り上げてしまおうという目論見は残念ながら失敗に終わり、しかもあの杖は映画に出てくる偉大な魔法使いのステッキみたいに火を噴いた。

「御子……っ――!!!! ――――駄目ッ」
 目の前に飛び出した御子柴さんの後ろ姿が、一斉に襲いかかる火の玉の閃光でフラッシュでもたかれたみたいに一瞬白む。目が眩む中で御子柴さんを引き戻そうとしたがそれも虚しく、突っ込んできた火の玉の熱さに悲鳴が上がる。

「御子柴さん、怪我は!? 危ない、無謀ですってそんなの! え、火がついたのに燃えない!? そんな非科学的な超常現象あり得な…………くもないのか。そうだ、わかったぞ。旅館の夕食で紙皿の鍋が燃えないのだってそうだ、中に水が入っていると熱は伝わってしゃぶしゃぶ肉は煮えても紙皿は燃えない。つまり御子柴さんの服の中には水が……? いや違うな、炎の温度が発火点に満たない場合それがやけどする温度であっても火はつかない。木綿の発火点が500度近いのに、人は100度ぐらいでも火傷はする! つまりその火は超常現象でも何でもなく! 普通の火よりも700度近く低いつまり、見かけ倒しだ! 問題ない! 皆さん大丈夫ですよ怖くなんか――――うわっ熱っ!!! 熱っっっ!!!! あっっっっっっつ!!!! おい!!!! 何すんだよ!!!!」

 仮説から実証に移してよくわかったのは、怖いのとヤバいのは別問題ということだ。
此方にまで降りかかってきた火の玉と火の粉に跳ね回り、なんとかしてあの魔法使いジジイとの間合いを詰める方法はないかと考えを巡らす。飛び出していった都城さんと鑓ヶ岳さんが攻撃の届きそうなところまで飛び込む。おいおいおいおい危なすぎる。怖くないの!? 熱くないの!? 視界に入った先輩が上着を振り回し火の玉を防いでいる。俺はといえば先輩の真似をしてリネンシャツを脱ぎ、バサバサやって火を防ぎながらなんとか本棚にたどり着いた。これは本棚じゃない、武器庫だ。ちょうどいい写真立てや本が沢山並んでいる。ひっつかんではそれを、例によって例のごとく手当たり次第に投げつけた。

「死んどけジジイ゛ぃぃぃぃぃ! 嫁入り前の女の子たちに!! 火傷の痕が残ったら゛!!どうすんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

本が、写真立てが、舞う。回る。飛散する。落下する。バラバラと下手くそ投擲のそれらが四方八方床に散らかる幕切れの間に、鑓ヶ岳さんの見事なストレートが真っ直ぐに放たれるのが見えた。

>ALL

4ヶ月前 No.654

特殊レス @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【町長邸 二階・大広間】

 部屋の奥にゆらりと立つ着物の男。彼に向かって鞄が、本が、写真立てが、その部屋にあったありとあらゆるものが飛来する。それと同じか、もしかするとそれ以上に沢山の疑問符を身に浴びながら、彼は手にした杖で本だの何だのを叩き落とした。その度に生まれる新たな鬼火はしかし、龍矢が手当たり次第に投げ付けた様々な物によって、半数近くは一行の体に届く前に消え失せた。

「……儀式を仕損じれば村は滅びる……早く、巫女を泉へ……」
 それは、誰かの問いに答えた訳ではなく、きっと譫言のようなものだろう。男に一行の言葉など聞こえていない、届かない。ただ、月舘の家に現れた夫婦と同じように“その日”に囚われ、大きすぎる未練と責任に押し潰されながら、機械的に邪魔者を排除しようと力を振るう。
 それが止まったのは、ほんの刹那。
 ちょうど男の目の前に飛んできたのは一枚の写真――まだ年若い女性の、けれど遺影のようにも見えるその人物と目があった時に、ふと悪夢から醒めたかのように男の手は止まった。

「……済まない、柚衣」

 ガシャン――けたたましい音を立てて写真立てが割れる。硝子の破片がキラキラと落ちる。男の額からは朱くて紅い血が滴り、僅かな静寂が訪れる。
 その全てを掻い潜り、そして切り裂く烈の拳は、この上がないほど真っ直ぐに男の頬を捉えていた。
 呆気なく吹き飛んだ男の体は、その背後にあった襖を破壊して落ちる。既に枯れ木のような体が、今度こそバラバラになるのではないかという衝撃と共に床に叩き付けられた男は、そのまま薄墨が水に滲むように消えていく。
 断末魔の一つもなく。幸せに、と酷く場違いな願いだけを遺して。
 男がその姿を現すことは、二度となかった。

>all

【だいぶ巻いてますが町長戦はこれにて終了です、烈ちゃん素晴らしいストレートをありがとうございました!】

3ヶ月前 No.655

都城京(推理パート導入レス) @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京(推理パート導入レス) / 町長邸二階 大広間 】


 八岳の叫び声とともに本が、写真立てが、あらゆるものが空を裂く。そして烈の華麗なる右ストレートが町長に炸裂したとき、町長の体が宙を舞うように吹き飛び、そして、どこか穏やかなように、憑物が落ちたかのように、そっと消えていく。まるでそこに何もなかったように、いなかったかのように。その場に残されたのは四人と、散らばる物々だけ。


 「――――あの、ぉ……一回、情報整理した方がええかもしれへんなぁ」

 不意に都城が呟いた言葉。情報が色々混ざり合ってそろそろ頭がパンクしそうだった。ゆっくりと血がこべりついた壁に背中を預けるかのように凭れかかり両腕を胸の前に組み、深く息を吐き出す。

「なんでこの曉町は廃村になったんか、とか、あの赤い月、朱月がなんなんか、とか分からんことだらけやないですか。結構大事なことっぽいし」

 視線を天井に向けて都城はそう誰に言うでもなく、ひとりごとのように、ただ呟く。

 曉町、ある日突然忽然と町人が消え失せ廃村となった町。
 空に昇る、真っ赤な月。その赤い月と、朱月という言葉。


 ふう、と息を吐き出す。そしてその視線をゆっくりとある一人へと向ける。竹箒を握りしめる、この町で出会った、ゴシックロリィタを纏った(今はセーラー服だが)御子柴ゆらぎへと。目を細め、言い淀む。そのかわり、というかのように都城は唇を開いた。

「あと、七ちゃん。ええ子やとは思うんやけど……ほんま、あの子なんなんやろ、か」

 白髪、包帯で覆い隠した双眸、巫女装束、記憶喪失。あまりにも怪しすぎる少女。自分達が追い求め、探し求めている少女。



「分からんことばっかで、ほんま叶わんわ。みなさんは、どうおもいます?」


>> ALL


(てなわけで町長戦おつかれさま!でし!た!!これよりいよいよ最終推理パートへと移させていただきます!都城は中の人がスレ主ですので推理でなく導入担当とさせていただきます!サブ記事でも記載した、四つの項目を推理していただきレスとして投下していただきます!よろしくお願いいたし!まーす!わりとかなり無理矢理ですいません!もはやお馴染みの大人の事情です!ごめんなさい!!)

3ヶ月前 No.656

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/大広間】

 カットソーをまた被り、整える仕草をしてみせた安玖はゆるりと首を振った。落ちていた町長の遺書を手に取り、ゆったりとした彼らしい口調で内容を読み上げ、丁寧に折り戻す。

「──……なぜ誰もいないのか……例えば、集団神隠しにあったから……例えば、生きている人間に殺されて遺体をすべて遺棄したから……不思議とこの場合は後者の方が無理あるけど……」

 どれかと聞かれれば自分は前者を推すだろう。科学的にだなんて証明できないから、これはもう勘だとしか言えないけれど。

「赤い月は……神様の象徴……? 約束を違える限り昇り続ける……突飛な言い方をしたら神域みたいな……月嫁は……体良く言うなら生贄……もしくは」

 そこまで告げてふと思い出すのは図書館での七ちゃんとの会話。そういえば、あの時のことは誰にも話していない。話せる内容でも無かったといえばそれだけで、話すタイミングも無かったといえばそれもまたそれだけだ。

「……七ちゃんと図書館で話した時、僕、『町の入口にある赤い鳥居が嫌いだ』って言ったんだよね」

「だって、そうじゃない。土地神の力を高めて厄災を鎮めて、あの世とこの世を隔てる門の役割を担う赤い鳥居を町の入口に据えるだなんて……まるで、町そのものを神社に見立てて何かを町の外に出さないように囲ってるみたい。だから嫌だし気持ち悪いって」

「──そしたら七ちゃん、『ここは怖い場所だ。何かこわいものがこちらを追って、町にくるすべての人を飲み込もうとしてるみたい』って」

 ぼんやりとあの時の流れを思い出す。それ以外で気になること。
 あれと、これと、と口から紡がれるのは彼の思考内容そのものだった。

「……聞こえてくる声はどれも何かに苦しんでいたり心残りがある……。あと普段は真っ暗で何も見えないけどたまにぽつぽつとした明かりが見える、とか……自分自身も何かをやらなければっていう使命感に似た何かに急かされることもある、七ちゃんはそう言ってた」

 はくりと吐息を漏らし、自身のカバンに入っていた書籍を床に撒くような勢いで並べていく。
 指先だけを絡めて唇に押し当てる。タコやイカのように指先をゆらゆらと揺らし、すぅっと目を閉じ変わらず小さな声で喋り続ける。傍目に見れば何かに祈るような(もしくは何かに呪いを掛けようとしているような)絵面だ。

「七ちゃんは……巫女服を着た彼女は、確実に儀式に関わってる……」

「……今までの月嫁=生贄っていう前提を否定したら……ただただ本当に嫁か……いや、でも……そんなの解釈次第でどうとでも言える……姿がなくならなくとも生贄だと言えるし……姿がなくなっても生贄じゃないと言える……そんなの言ったもの勝ち……」

「約束を忘れるな……としか、本には書かれていない……儀式を間違えるなとも、そもそも儀式とも……それに僕が見たのは完全に結婚装束を着た人で……」

「……僕は、七ちゃんが月嫁なんじゃないか、って思ってた。もしくはそれ絡みで重要な立場にいた人……さっきも言ったけど、あの身なりで僕達みたく外から来ましたは不自然すぎる。だから彼女はスケープゴートで、って……」

「それと……これは……話の流れに関係ないし……僕が、勝手に、そう感じただけで……本当に、断言とまで言えるような根拠という根拠は挙げられないけど……御子柴さんはこの町に元々住んでいた人なんじゃないか、って」

 閉じられた目をゆったりと開け、ひとつひとつ指先を解いて御子柴さんを見上げる。

「記憶の混濁、フラッシュバック……御子柴さんが覚えているかは分からないけど、定期的に『お兄ちゃんは居ない』だとか『お姉ちゃんと遊んだ』って口走っていたし……月舘結衣さんの娘さんの誕生日が自分と全く同じだって言ってたから……それって、さ」

 珍しく歯切れの悪い物言いだった。今までで一番突拍子もないことを口にしている自覚があっただけに、目を逸らさずとも口元は何かを手繰るように拙い。

「同じどころか、御子柴さん自身……ってことは、ない?」


>>周辺ALL

3ヶ月前 No.657

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 二階 大広間】

烈の渾身のストレートは、町長の矮躯をいとも容易く吹き飛ばした。
肩で息をしながら、烈は思考を落ち着かせようと努める。今になって、火の玉が掠めた箇所がひりひりと痛み始めた。もっと酷いものかと思っていたが、大したことはなさそうだ。後であのとてつもなく苦い丸薬を服用すればどうとでもなるだろう。
安玖の言葉を、烈は黙って聞いていた。彼が全ての言葉を紡ぎ終えるまで、烈は聞き役に徹する。そして、彼が口を閉じたところで、やっと彼女は唇を動かした。

「……拙者も、七殿はこの地の関係者と考えておりまする」

それは掠れた、喉の奥から絞り出すような声だった。先程までの威勢など、烈の声からはすっかり消え去っていた。

「彼女を信じられるか信じられないかはともかく、七殿が外部から此処へやって来ることは極めて困難にござる。盲目の少女がたった一人で曉町までの道のりを歩くのは至難の業にござりまする。七殿の風采であれば目立たぬとは言えませぬし、道中で噂になる可能性が高かろう。何か乗り物を用いたのだとしても、七殿に運転は不可能にござるし、第三者の関与も考えにくい。だとすれば、七殿は最初からこの地にいたと考えるのが妥当にござる」

烈は自分の頭に自信がある訳ではない。今まで肉弾戦ばかりで、推理らしい推理をしてこなかったのは烈自身もよく理解している。
だからといって、此処で全てを丸投げする訳にはいかない。たとえ拙くとも、たどたどしいものだったとしても、烈は話す。幼稚な憶測だとしても、黙っているよりはずっと良い。

「加えて、七殿の服装は明らかに巫女を思わせる意匠のものであった。逢澤のおっしゃった通り、儀式に関わっているという可能性は高い。━━しかし、仮に儀式に用いられる生贄であるならば、七殿はもっと曉町の方々に狙われて然るべきだと思いまする。月嫁の取り違えによって儀式が失敗したのであれば、町人の憎悪や怨念は月嫁に向かいましょう。しかし、それにしては七殿を執拗に狙う怪異が少なかった。もともとこの地にいた訳ではない怪異の思惑は知りませぬが、七殿が重要な立ち位置を担っておるのならば最初から彼女だけを狙えば良かっただけの話にござる。最悪、我等のことはまとめて適当に始末すれば解決したことでしょう」

だが、怪異たちは自分たちの前に平等に立ち塞がった。怪異に遭遇した回数まで数えている訳ではないので、本当に平等なのかはわからない。しかし烈が違和感を覚えたのは確かである。
ふぅぅ、と烈は深く息を吐く。こんがらがりそうな脳内をまとめながら、彼女は続ける。

「図書館で邂逅した怪異。あれは白無垢を纏っていた。月嫁と言うのならば、それは神に嫁ぐということになるのでしょう。七殿が月嫁だとするならば、彼女が巫女の格好をしているのは違和感がござりまする。そもそも、巫女とは基本的に清らかな生娘がなるとされるもの。曉町での基準がどのようなものかはわかりませぬが、古くからの慣習を重んじているのならば、何処かに嫁ぐ少女に巫女の仕事や真似事をさせるのは明らかに可笑しい。それがたとえカモフラージュだとしても、保守的な者から批判される可能性がござりまする」

つい、と烈は視線を動かす。一瞬目を伏せてから、彼女は再び前を見据えた。

「……拙者は、出来るだけ誰かを疑うような真似をしたくはありませぬ。しかし、この状態のまま立ち止まることはもっと嫌だ」

このメンバーには、烈も愛着を抱いている。住んでいるところも環境も、そしてこれまでの境遇も知らない者たち。彼らを信頼出来たのは、単に共に行動してきたからという理由だけではないだろう。
だが、それでも。目を逸らしてはいけない。龍矢に叱咤した自分が、見て見ぬふりをすることだけは決してならない。

「もし、もしもの話でござる。これはただの、拙者の憶測に過ぎませぬが━━神の供物となるべき存在、またはその役目を担うに値する血を引いた人間は、我等の中にいるのではありませぬか」

あまりにも不安げな、信じたくないとでも言いたげな瞳で。鑓ヶ岳烈は、御子柴ゆらぎをの姿を見据えていた。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.658

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸二階 大広間】

曉町は何故滅びたのか、朱月とは何か、七ちゃんの正体は。ここで一度纏めないと、意見を求められて順に自論を展開していく仲間達。先輩の話と、鑓ヶ岳さんの話を黙って聞いてから、次は俺の番か、と少し逡巡はしたのちに口を開く。

「伝承の本によれば、朱月というのが来ると夜が明けなくなり空には赤い月だけが光る時が続く。俺には天文学や気象学の知識は無いので、それ自体が皆既日蝕の類なのかとか空気中の粒子による偏光みたいなものなのか大気圏に降り注ぐ宇宙線的なものなのか磁場の乱れなのかとかはさっぱりわかりませんけど。とにかく、その朱月という現象が起きている時に月を見た曉村の人或いは曉町の人たちは、みんなおかしく≠ネってしまう。……これは鈴の簪を無くした月舘家の妹さんの証言、『おにいちゃんおねえちゃんもおかしくなって、町がおかしくなって』という言葉や、人形師の男が書いていた『私が私である内に』という言葉、そして伝承の中の『朱い月を見た途端村人が他の村人を殺害した』という話ーーそれらから、町の人達が恐れた朱月とは、人を催眠状態あるいは錯乱状態に陥らせるものだと思うんです。催眠術や洗脳に使われるような特殊な波動、或いは『朱月』を怖れるあまりにかかる過度のストレス、異様に閉鎖されたコミュニティ内での集団での信仰……それらの重なった追い込まれた心理状態は自らの脳にかける『呪い』とも認めるべきなんでしょうね」

科学的に証明され得ない超常現象や怪談奇譚なんて、信じないスタンスだった。けれどこの状況に追い込まれては、観念して多少なりとも許容しろということなのだろう。悔しいが仕方ない。

「儀式に失敗したことで『朱月』を防ぎきれなかった町の人達はもちろん集団パニック、言い伝え通り錯乱状態に陥った。前後不覚で別人格にでもなってしまったかのような。記憶や人格の破綻。月舘夫妻のように混乱によって殺害される人や、発狂して死んでしまう人、全員が殺し合ったり殺人事件に遭ったわけではなく失踪した者が多かったのは、記憶喪失や人格破綻の方向に作用して町を出て行った人や恐れをなして逃げて行った人もいたから、でしょうか。……儀式を失敗したのは、町長が言っていたように、生贄となる月嫁を選び間違えたから。或いはやり方を間違えたから。七ちゃんは巫女服を着ているだけのことはあって、託宣というか口寄というか、死者の声や未練を語ることができる。『月嫁には未練があってはならない』、生贄を送り出す人々には情けがあってはならない。この町で出会った女の子たちには皆、何かしらの未練があった。そのほとんどが、大切な人に纏わるモノ。気付けば俺達はその捜し物に付き合ってばっかりでしたね。ーーその月嫁に選ばれた子にも、何か心残りになるモノがあったんだ」

朱月とはなにか、何故曉町は滅びたのか。
月嫁とは何か。
それから、ーーその先はあまり考えたくはなかった。次々と揃う遺留品から、何となく考えざるを得ないことは分かっていたけれど、避けていた。

「さて、月嫁に選ばれていたのは誰だったのか。町長のものと思われる日記よれば、『この町に生まれた女子には等しく月嫁の資格を持つ』、翔子さんも、柚衣さんも、その娘さんも、小梅さんも、藤乃ちゃんも、みんなだ。唯一資格がないとすれば、『山で拾われた』というーー貰われ子だな。儀式の内容は、あのジジイの言葉から察するに、『情けは要らぬ』ということは、逆に身内ならば同情を禁じ得ないものだということでしょう。実に馬鹿馬鹿しい話ですけど。『選ばれた少女は舞を踊って月に捧げられる、還される』それは、月に住む神と異種婚姻譚だかなんだかをやってのけたお姫様の話や、月嫁之書から推論します。儀式の場所は『泉』だ。泉の水面にはきっと朱い月が映るのでしょうね。それを月嫁はしずめる=B場所が泉であることは、町長の言葉と、あとは『泉の番人と、約束を違えた女の話』から考えた事です。曉町の儀式の敗因は月嫁の取り違い。ってかまぁ、今どき昔話なんか信じて儀式なんて時代錯誤なことを言っちゃってる事こそが敗因だと正直俺は思いますけどね。第一の候補者、翔子さんは儀式の前に式島さんと逃げてしまった。あとほかに候補者になりそうな柚衣さんは病で亡くなっているが、柚衣さんには娘が二人いた。正確には、月舘の嫡子である松真さんとの間にできた一人の実娘と、一人の娘のように育てた拾い子がいた。二人は本当の姉妹のように仲良く育ったが、片割れが翔子さんが逃げたことで次の月嫁に選ばれた。次男嫁である月舘陽子さんが『気味の悪い子』と恨んでいたのは、血の繋がらない拾い子つまり、『山で拾われた子』のほうだ。二人の姉妹の絆こそが、月嫁の取り違いを呼び、儀式の失敗を呼んでしまった。町を出て行った二人は、月舘松真さんとその娘でしょう」

町を追放になったという松真さんが曉町を去る時に、もう一人を伴っていたという。妻の柚衣さんは亡くなっているので娘さんと考えるのが妥当だろう。もしも、万が一、そもそもこれが父親が自分の実の娘を生贄にしたくないがために仕組んだ事だったとしたら……人情としては納得できなくはない分、怖い話だ。

「町を出た姉妹の片割れからは、曉町の事は抜け落ちて、自分がそこに住んでいたことも、朱月のことも、本当の親のことも、月嫁のことも、身代わりのようになった姉の事も、忘れてしまったまま。……新しい家族に溶け込みそのまま外の世界で年を重ねていれば、1998年4月5日生まれのその子は19歳」

言い淀んで、溜息が出る。

「回りくどい言い方はやめましょうか。御子柴さん。俺も貴女はこの町の生まれの人間ではないかと思います。貴女のお父さんは当たり前だけど俺じゃなくて、月舘松真さん、お母さんは月舘柚衣さん。お兄さんとは血の繋がりはなく曉町を出た後に兄妹になったのではないかと。それから、昔いたような気がする貴女の姉妹、いや姉妹のように育ったもう一人の女の子がーー此処で時を止めたまま彷徨っていた七ちゃんなんだと思います。敵だとか味方だとかそういう話じゃなくて。……証拠はありません、町長の書き残しとゆきひとさんの言動、それから御子柴さんや七ちゃんに時々現れるフラッシュバックのような症状から考えただけです。ここを出たら……大学病院にでも来ればDNA鑑定もできると思いますが。いずれにしても、七ちゃんを見つけることができればわかるかもしれません。…………皆さんがどうであるかはともかく、俺は、七ちゃんを今でも助けに行こうと思っていますよ」

>ALL

3ヶ月前 No.659

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/二階大広間】

 男は消えた。烈の右ストレートを食らって、それはもう綺麗にぶっ飛んで居なくなった。そんな彼の、直ぐにでも掻き消える筈だった最期の言葉は、何故かいつまでもゆらぎの耳に残っていた。
 そして、ぽつりぽつりと語られる一同の推測。この町のおかしな儀式とか、七についてとか……“御子柴ゆらぎ”という人間についてとか。
 八つの瞳がいつの間にか自分に向いていることに気付いて、ゆらぎはきゅっと、ここまで自分が持っていた竹箒を握り締める。
 これは、大切な物。大切な人からもらったたいせつなもの。だから、自分が守らなければと思った、自分の手で返さなければと思った。これはわたしの……
「……お姉ちゃん」
 違う、七の大切なもの。遠くで、鈴の音が聞こえる。

「みんなに……言っておかないといけないことがあるの」
 瞳を閉じて、一つ大きく息を吐く。ゆらぎが目蓋を押し上げた後も、そこに光があるとは言い難かったけれど。
「わたしね、ちっちゃい頃のこと殆ど何も覚えてないの。わたしの記憶の中には、この町も、ママもお姉ちゃんもいない。だから、もし本当にわたしが此処に住んでいた事があって、その時はお姉ちゃんや、お姉ちゃんみたいな人がいたとしても、今のわたし自身はそうだとは言い切れない。それになっちゃんのことは……お姉ちゃんっていうか、妹みたいだし」
 それは否定。ゆらぎが自らの記憶という、酷く曖昧なものに頼った時の。
「でも……わたしのパパは御子柴松真……図書館にいた子のお兄ちゃんと一緒。パパとママとは再婚同士で、お兄ちゃんとわたしに血の繋がりはないのも本当。御子柴はママの……えっと、お兄ちゃんのママの夏子さんの苗字で、パパの旧姓も出身も何も知らない……わたしはおじいちゃんにもおばあちゃんにも会ったことないし、本当のママが今何処で何してるのかも分からない。いや多分戸籍とか見れば分かるんだろうけど、パパもママもあんまりそういう話したがらなかったから、わたしもずっと気にしないようにしてたの……何か事情があったんだって、わたしが何もかも忘れちゃうくらい嫌なことがあったんだって」
 それは肯定。変えようのない現実と、これまでに明らかになった真実を照らし合わせたときに浮かび上がるもの。

 安玖はゆらぎを月舘柚衣の娘だという、烈はゆらぎを巫女になり得る血を引いているという。そして龍矢は……七こそが、ゆらぎの姉だという。
「状況から考えるなら、きっとそうなの……わたしはこの町で生まれて、その事を忘れて生きてきた。もしかしたら本当に、お姉ちゃんを身代わりにして、町も滅ぼして、のうのうと生き延びてしまったのかも知れない……言われても、見ても、思い出せないけど。でも……忘れたからって、無くなるものでは、ないと思うの」
 ふらり、覚束ない足取りでゆらぎは一歩踏み出した。血塗れの大広間の奥、烈に吹っ飛ばされる直前まで男が――祖父が立っていた場所。散らばるガラスの破片に臆することなく手を伸ばした彼女が拾い上げたのは、何処かの鍵と、最期に彼が見ていた写真。その中で微笑う女性は……ゆらぎに似ていた。

「……さぁ、なっちゃんを……迎えに行こう」
 この部屋に足を踏み入れた時と同じように、ゆらぎはこの家の中で唯一閉ざされていた部屋を指差した。

>all

【皆さん推理お疲れ様でした!ゆらぎに関しては皆様大正解です! これでエンディングもほぼ確定しましたので、このまま突っ走って下さい!】

3ヶ月前 No.660

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京 / 町長邸二階 大広間→廊下→控えの間 】

 都城京は逢澤の推測を、烈の推測を、八岳の推測を、そしてゆらぎの曖昧な記憶を、ただ聞いていた。ゆるり、と目を瞬かせそして言葉を選ぶようにもごもごと口を動かし、そして飲み込む。

「うーん、まあ、とりあえず? 七ちゃん見つけなやっぱあきまへんね」

 なるべく明るい声を、不穏なる空気を切り裂くような、気の抜けたような緩やかな声で都城はそう言ってゆっくりと壁につけていた背を離し歩き出す。

「うち、よう分からんし上手いこと言われへんけど、御子柴さんのこと大好きですよぉ、頼りになるし、頼りになるし、頼りになるし……」

 それが、精一杯の都城の言葉だった。たとえ彼女がこの町の生まれだとしても、月嫁になるはずだったとしても、誰かを身代わりにして生き延びていたんだとしても、この町で出会いともに危機を乗り越えた仲間だったから、だと思うから、ぱちり、と歳に似つかわぬウインクを落としゆらぎが拾った鍵をするり、と抜き取れば指差した方へと足を向ける。手遅れになってしまう前に。

「鍵かかってたんは、たしか、このへや……?」

 大広間を出て廊下へ、先程鍵がかかっていて開かなかった扉、その前に立てばゆっくりと息を吐く。拐われてしまった七は、ここにいるのだろうか。微かな不安を残しながら鍵穴に鍵を差し込みゆっくりと回す。がちゃん、と音を立てて鍵が開錠する音を聞けば深く息を吐き出し、微かに震える手を押さえながら扉を開ける。鼻腔を擽る埃の匂い、鉄の匂いはしなかった。

「普通の、部屋やねぇ」

 開けた扉の先、そこは物の少ない、簡素な部屋だった。机が一つと、部屋の奥に赤色の月が描かれた屏風が一つあるだけの、空間で。部屋を懐中電灯で照らした都城は入口に立ちながらぽつり、と呟いた。

>> ALL


(みなさま推理ありがとうございます!あんどゆらぎちゃんもレスをありがとうございます!!というわけで余韻をぶっとばして四章終了のため先に進ませていただきます!最後の探索、よろしくお願いいたします…!)

3ヶ月前 No.661

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/大広間→控えの間】

「普通、ねえ……」

 そりゃあ見てくれは普通だろう。この流れから鍵を開けてまで入る必要があるという点を除けば。
 都城さんを避け滑り込むようにして室内へ入る。屏風、机。ラインナップでいえばそれだけで、簡素といえば簡素だけれど調度品の質の高さはやっぱりそういうもののような気がした。

「……」

 ちらり、屏風に視線をくれてやると安玖の足は迷わず机へと向かう。
 七ちゃんが心配ではないのか、と聞かれると確かにそうだ。だけれど安玖にとって重要なのは彼女を見つけた先のことだった。安玖のポケットには変わらず曉神社の鍵があって、そこには未だ向かっていない。その前に手に入れられる情報があるのなら、砂漠の砂を浚うような作業になったとしても手に入れたかった。

(自分の意志で踏み込んだからには、記憶があるかないかに限らず責任を果たすべき……だとは思うんだけど)

 それを決める権利は自分にはない。だから、と本格的に調べ始めるのだった。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.662

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 二階 大広間→控えの間】

ゆらぎの言葉を、烈は黙って聞いていた。そして、彼女が唇を閉じてから、もとの快活な笑みを浮かべる。

「うむ! ゆらぎ殿、話していただき、誠にかたじけない。拙者はゆらぎ殿がどのような境遇にあろうと、今までの関係を白紙に戻すつもりはありませぬ。編集者殿と同じく、拙者もゆらぎ殿が大好きでござる!」

ゆらぎの問題はこれで解決した。━━少なくとも、烈はそう解釈した。これ以上彼女に問うべきことはない。ゆらぎの言うとおり、七の捜索を再開しなければ。
京の背中を追いかけてたどり着いた先は、何の変哲もない普通の部屋だった。これまで捜索してきた部屋と比べると、些か拍子抜けしてしまう。
だが、施錠されていたということは、施錠しておくだけの何かがあるということなのだろう。見てくれだけで全てを判断してはいけない。烈は自分に言い聞かせながら室内を見回す。

「鍵をかけておくくらいの部屋でござる、何か重要な手掛かりが見つかれば良うござるが……」

まさか何もない、なんてことはないだろう。烈はきょろきょろとめぼしいものがないか視線を動かす。
やはり怪しいのは屏風だろう。この部屋の中でも最も目を引くそれに、烈はそろりそろりと近付く。まさか屏風の後ろに何かが隠れている、などということは━━いや、何が起こるかわからないのがこの町だ。油断は禁物である。
烈は恐る恐る、屏風の後ろを覗き込む。何が出て来ても良いようにと、身体中の神経を研ぎ澄ませながら。

「……うわぁ……」

しかし、烈の口から漏れたのはそんな情けない言葉だった。
怪異が飛び出てくることはなかった。それは幸いと言えよう。しかし、屏風の後ろには如何にも怪しげな布団が敷かれている。
見なかったふり━━はさすがに弱虫が過ぎるだろう。烈は数秒間黙って立ち尽くしていたが、やがて覚悟を決めたのか顔を引き締める。そして、後方で調査をしているであろう面々に向かって声をかけた。

「屏風の後ろに布団があり申した! 何もないことを祈りまするが、万が一何かあれば皆様は全力でお逃げくだされ!」

そう声をかけ終わるや否や、烈はええいままよとばかりに勢い良く掛け布団を捲った。この際、躊躇などしてはいられない。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.663

特殊レス @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 特殊レス / 町長邸 二階 控えの間 】

 烈が屏風の裏を調べると其処にあったのは一組の布団だった。勢いよく捲られたその布団の中に横たわる、巫女装束を見に纏う少女。長い白髪に、両目を覆うような包帯、それはあの墓地で町人等に連れ去られた七であった。

「――――……、さ…………」

 譫言のような、呟き。苦しそうに、唇が幾度となくその言葉を呟く。ただその言葉は途切れ途切れで、聞き取ることは出来なかった。

>> ALL


(七を見つけてくださりありがとうございます!ということで誰でもいいので七を起こしてください……)

3ヶ月前 No.664

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 二階大広間→控えの間】

 息を止めて、呼吸を忘れて、声を殺して、答えを待っていた。御子柴さんにフォーカスされた視線は俺のだけじゃない。誰もが皆、固唾を飲んで彼女を見守り彼女の返答を緊張の面持ちで待っていた。無限のような一拍の間を置いて、御子柴さんは“真実”を語り出す。彼女は――曉町の生き残り、なのかもしれない。いや、おそらくは、そうだろう。
 それが、解ったからといって。すべてを聞いた後で、思い出したように息をつく。鑓ヶ岳さんの言うとおりだ。それが分かったからといって、御子柴さんに対する何かを変えようとは思わない。

「全く同感ですね。別に顔色を伺わなくたって、記憶になかったんだから仕方ありませんよ」
 熱い友情めいた台詞は若くてかわいい女の子が言うから良いのであって、俺みたいなのが言っても小恥ずかしいだけだから、同じ気持ちでも右に倣って鑓ヶ岳さんに続くのは遠慮しておいた。でもまあ、たとえもし御子柴さんの記憶がないという言葉や知らなかったという言葉が嘘だったとしても、俺は、今まで黙っていたことや彼女の握っていた秘密を責めることはしないだろう。人には、一つや二つくらい踏み込んで欲しくない秘密があるものだから。
 さて、御子柴さんが曉町の人間であるらしい、そして月嫁の候補者だった可能性はかなり高いと言う仮説はこれで捨てずに済みそうだ。そうすると、さっき俺達がぶちのめしたクソジジイは、御子柴さんのお祖父さんということになるが……これはまずった。俺は幽霊とはいえ、逢澤先輩のお母さんにさえ「親しい人の親御さんへの礼儀」という理由で手を上げなかったのに。やっちまったぁぁぁ……。しかも御子柴さんのお母さんの遺影をぶん投げたってことだよな、マジサイテーだ、俺。マジで礼節弁えないクズだ……。皆の後に続いて大広間を出て行く前に、 町長が消えたあたりの畳に向かってこっそりと手を合わせた。


 手に入れた鍵は、残す最後の一部屋の解錠に使われた。部屋に設えられた意味ありげな屏風。鑓ヶ岳さんの後ろに続いてその裏へ回り込むと、彼女の言う“万一” に備えて臨戦態勢に構える。といっても戦う構えではなく、いつでも踏み込み一つで鑓ヶ岳さんを掴んで引っ込めてダッシュで逃げられるように……っていう構えだけど。

「――――!!」

けれど、布団を捲った先に俺達が見たのは、飛びかかってくる化け物でも、妙なトラップ発動でもなく、探し続けていた七ちゃんの姿だった。
「……七ちゃんっ………………………!!」
 転がり込むように膝をついて、布団の傍に座した。七ちゃん!
よかった、無事でよかった! いやまてよ無事なのか!? 元気そう……には間違っても見えない。ぐったりしている。

「七ちゃん! 七ちゃん七ちゃん!」
 頭のてっぺんから足の先まで容態をざっと観察し、外傷がないかを確かめる。よくうるさがられる俺の大声を以てしても反応がない。七ちゃんを見つけたという安堵感と、彼女の様子がおかしい事への不安感が混戦状態に錯綜する。割と一大事だしテンパってるしドラマなシーンなのに、頭の中では妙に冷静に『意識レベルJCS U-20?』なんて期末試験の一文が点滅する。大声や身体を揺さぶることで目を開けるかどうか? そんな分類わかったところで、目の前の女の子が一人助かるかどうかには1ミリも役になんか立たねぇってのに!

握りしめた手を見つめ、僅かに震える七ちゃんの綺麗な口唇を見遣り、見比べ、躊躇ったのは一瞬だった。思い出すのは、数時間前、七ちゃんが町の奴らに連れて行かれたとき。助けを求めて伸ばされた手を掴めなかった後悔だ。呼んでいた。俺を呼んでいた。怖いぐらいの重圧に俺はまた逃げかけて、でも逃げないでその手を掴もうとしたのに、覚悟を決めるのが遅くて掴めなかった。
 手渡しも握手もそもそもあんまり好きじゃない。子供と手をつなぐのも、まして女の子の手を取るのも抵抗があった。況して七ちゃんみたいな、得体が知れなくて手を引いてもらわなきゃ歩けなさそうで“普通じゃなさそう”な人種なんて――悪いけどそう思いながら、何度心の中でその手を振り払ってきたことだろう。そんなクズの手はまだ七ちゃんを捕まえられるのか? 躊躇う時間は、一瞬しか残されていなかった。
「七ちゃん! 聞こえますか! 俺です! 七ちゃん!!」
 白い袖口から覗く花びらみたいな小さな手のひらを今更やっと捕まえた。ハジメが去り際に返してくれた鈴の髪飾りがポケットの中でチリンと音を立てる。
「意識はない、呼吸はある。それからええと、脈拍? 脈……」
 思わず掴んだ手のひらから、あたふたと手首に持ち直し、橈骨動脈(とおぼしきところだが実は慌てすぎててあやしい) に触れる。………………。
………………。
 いや、だめだだめだテンパりすぎて心配すぎて冷静じゃなさ過ぎて、自分の心臓の音が聞こえてしまう。七ちゃんが大丈夫なのかぜんっぜん触知できない!! まるで脈無し! いやそういう意味じゃなくてもわからん! さっぱりわからん!! うわーもう静かにしろよ俺! 息の根止めるぞ!!
七ちゃんを助けろ、捕まえたんだ、その手でその声で呼び戻せ!!
 結局、頭の良い方法は諦めて、小さな手を両手で握りしめ揺さぶるようにとにかく振り回した。

「脈は! 分かりませんけど!! そんなことはいいから気合いでしっかりしてください!! 七ちゃんっっっっ!!!!」

>ALL

3ヶ月前 No.665

@milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 七 / 町長邸 二階 控えの間 】


 声が、声が、聞こえた気がした。優しいこえ、あたたかいこえ、このこえを、わたしは、しっている気がした。こわいこえじゃない、わたしをよぶ、わたしをつれていく、ちがう、このこえは、ずっと、ずっと、ずっと。

「――――ぁ、しょ………ま、さ――……?」

 手に触れた温もりに、七の唇がゆっくりと動く。弱々しく、消えそうな、儚げな声音は確かに一つの名を呼んだ。ゆっくりと醒めていく意識、その呼び声に、不意に、唐突に、布団に横たわったままの身体が跳ねるように飛び起き、そのまま自身の手を握った彼≠ノとびつく。

「っ、やっぱり、きてくれ――! ずっと、まってて、ずっと、あいたくて、ずっと、ずっと、――――松真さん、」

 その声が、今にも泣き出しそうな、幼い声が紡いだ名前。それは目の前にいる、たった今自分自身を起こした八岳龍矢でなく、もちろん七を発見した鑓ヶ岳烈でも、少し離れた机の元にいる逢澤安玖でも、誰でもない。ここには居ない人の名前。ほんの少し前に、全員が聞かされたであろう、その名前。

「わたし、ずっと――――――……あれ、しょ、まさ…………ちがう、やつたけさん、あれ、ちがう、え、あ、ぁ…………やつたけさん、たすけて、ちがう、しょうまさん、どうして、わたし、ずっと、ひとりで、こわくて、みんながわたしを、いや、こわくて――――わからない」

 醒めたての意識は混乱しているのか、ぶつぶつと呟くその言葉はだれに向けた言葉でもなくて。繋がれた手と反対側の手で八岳の服をぎゅう、と握りしめその腹部あたりに頭を寄せながらかたかたと震える身体、わからない、こわい、いやだ、ちがう、たすけて、そうただ繰り返して。やつたけさん、と。しょうまさん、と。

>> ALL


(ありがとうございます!!!!そしてごめんなさーーーーい!!!!!!)

3ヶ月前 No.666

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 二階控えの間】

「は――――――――?」
 安堵よりも、驚きの方が遥かに勝った。張り上げた声に呼応するかのように、と言うには些か勢いが良すぎるぐらいの勢いで、七ちゃんは跳ね起きた。バネ仕掛けの人形みたいに身を起こして、俺のほうに跳ねっ返ってくる。間抜けな声を上げている間に、白い大きな布が視界いっぱいに広がって翻る。赤と白がめまぐるしく渦巻きせめぎ合って、洗濯機に放り込まれたのかとさえ思うぐらいに天地がひっくり返る。翻る布地に遮られ何にも見えない中うちに、肩から胸、腹に正面からのベクトルで急な力がかかる。

「なになになに!?」
 障害物の去った視界に、和室の天井が見えている。飛びついてきた勢いと体重に圧されて、自分の重心が後ろに持って行かれる。虚を突かれた俺は、片膝に座っていたはずの姿勢からバランスを崩し、半ば七ちゃんに押し倒される形で背面に転げた。シャツの僅かに捲れた隙間から背中がぎゅうと畳に型押しされているのがわかる。
「ちょっ、待って! 待って七ちゃん!」
痛いし重いし訳が分からない。俺は松真さんじゃない! 人違いだしそれに、七ちゃんの“松真さん(偽)”へのこの反応は一体何だ? 松真さんは御子柴さんのお父さんなんだよな? 七ちゃんにとっては? 俺の仮説では七ちゃんは拾われ子で幼き日の御子柴さんと姉妹のように育った関係つまりそれが正しければ松真さんは養父のような存在ということになる。
「待って落ち着いてください七ちゃん! 俺は“しょうまさん”じゃない!」
 頭部をぎゅっと押しつけられて鳩尾のあたりが熱いし痛い。これ以上酷い構図になる前になんとか誤解を解いて七ちゃんを引き剥がそうと試みる。けれど彼女が酷く震えているのに気づいて観念した。

「…………まぁ、やっぱり別にいいですよ、このさい誰の代わりに“みえて”いても。その目を幸せなように欺けるんなら」

 多分八岳龍矢がいるよりも、嘘であっても松真さんがいてくれると思った方が良いんだろう。すぐに醒める夢まぼろしと分かっているなら尚更だ。
 引き剥がすのを諦めされるがまま、けれど半崩れだった体勢は立て直し、七ちゃんを掴んだまま一緒に立ち上がらせようと促す。
「立てる?」と聞いたあとで、「大丈夫。みんなで助けに来たんですよ」 と音声で情報を伝える。そうしなければ皆がここまで七ちゃんを迎えに来たことも、もう大丈夫であることも伝わらないだろうから。さあ、あとは子供の扱いに向いていそうな鑓ヶ岳さんや御子柴さんに任せて、皆で此処を出よう。……それにしても、だ。

「……御子柴さん、ひとつ伺ってもいいですか。――俺ってそんなに御子柴さんのお父さんに似てるの?」

 だって、御子柴さんには今日初対面なのにパパって呼ばれるし。七ちゃんにも寝ぼけた勢いで間違えられるし。あのゆきひとさんって子も俺を誰かと勘違いしてたみたいだけど今思えば月舘松真だったって可能性もあったわけだし。俺って、そんなティーンエイジャーの娘がいるようにみえるのかよ……俺だってまだ十八だぜ? なのに……いや、そりゃあ犬よりは人間なだけ数倍いいけどさ。
 駄目だ、やっぱり、夏休み明けたら絶対退部届出そう。オカルトサークル辞めよう。こんな苦労してたら間違いなくもっと老ける。ほら、マリーアントワネットなんか革命で引っ捕らえられて一晩で全部白髪になったって言うじゃないか。いや俺フランス王族じゃないけど。とか、なんかの探偵小説だとなんかヤバい孤島の巨大迷宮鍾乳洞に本題の悪役よりもヤベぇ相方と一緒に閉じ込められて彷徨った結果、やっぱり老人みたいな白髪になる話が……なんだ、読後感思い出したら寒気とともに蕁麻疹出てきたぞ。この話はやめだ。ともかく、こんな苦労は終いにしてやる。絶対ここから出て、オカサー辞めて、もっと青春謳歌で若返りそうなもっとモテそうで良い友達ができそうなサークルに入るんだ。絶対!

>ALL

3ヶ月前 No.667

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/二階・控えの間】

 自らの出自について、もしくはそう思われるものについて。ぽつりぽつりと語り終えたゆらぎを、否定する者はその場に誰もいなかった。あまつさえ、彼女は彼女だと、生まれや記憶の有無など些末なことだと、大好きだと、京や烈は言ってくれた。
「……ありがとう、みんな」
 “御子柴ゆらぎ”という存在の不確定さに、文字通り何時も揺らいでいた。自分が結局誰なのか分からなくなって、精神を病んだことさえあった。自分だけの個性が欲しくて、コスプレに勤しんでみたりもした。
 それでも満たされなかったものが、ずっと胸につかえていたものが、やっとなくなった気がした。
 加えて、この町に入ってから起こる、常に誰かに引っ張られているかのような感覚に、奇妙なフラッシュバック。その全てにも、やっと説明がついた。
「……ありがとう」
 実の母とおぼしき人の写真を見て、そして何よりも仲間たちに受け入れられて、目頭が熱くなる。こみ上げてくるものを見られたくなくてへたりこんでいるうちに、先程拾い上げた筈の鍵は京の手に移っていた。

 空っぽになった手のひらを開いて、閉じて。先程自分が指差した部屋に次々と向かう仲間たちの背中を見送る。
 何故自分は、あそこに七がいると思ったのだろう。それは消去法なのか、予感めいた何かだったのか、呼び声だったのか。そのどれでも構わないが、自分は七に……姉と慕っていたかも知れない人に、もし仮にそうだとすると、どう考えても今その姿で存在出来る筈のない人に、どんな顔で会いに行けば良いというのか。
 ちりん。
 鈴の音が聞こえた気がした。続く、烈の威勢の良い掛け声に、龍矢の悲痛な叫び声。
 ほらもう、行かないと。
 ゆらり、と足を踏み出して。随分と長い間、遠く開いていたその距離を零にして。
 聞こえた、最早懐かしい少女の声。
――松真さん、と。

「……嗚呼、やっぱり……そうだったんだね」
 それは、諦めにも似た微笑。みんなが自分を受け入れてくれたのならば、自分もまた、彼女を受け止めなければならない。
 まるで、長年離れ離れになっていた愛しい人と再会したかのような勢いで、龍矢に飛び付いた七。彼を、誰かと間違えている少女。そんな二人の直ぐ傍に、ゆらぎもそっと跪く。。
「……龍矢くんはパパじゃないよ、雰囲気は……ちょっと似てるけど」
 七が探し求めるたいせつなひと、しょうまさん――それはきっと御子柴……否、月舘松真のことで。
「これ、なっちゃんの落とし物でしょう? 大切なものなら、もう二度と放しちゃ駄目だよ……それから、女の子に竹箒プレゼントするようなセンスのないパパでごめん……これは本気で心の底から謝りたい、ごめん」
 何処か混乱している様子の七の手を取り、此処までずっとゆらぎが持っていた竹箒を握らせる。
 そして。
「……お帰りなさい、お姉ちゃん」
 今度は、ゆらぎが七を抱き締めた。もう、彼女が一人で何処かに行かないように。強く、強く、彼女の息が止まるくらい。
 触れた肌は、温かくて。けれど。

「……ねぇ、みんな」
 抱きすくめた七の背中越しに、部屋の中にいる一同の顔を見渡す。
「わたしは……真実を、探しに行きたいよ」
 この町の、七の、自分の、すべてを。

>all(四章〆)

【これにて第四章〆レスとさせて頂きます、皆様お疲れ様でした!】

3ヶ月前 No.668

最終章開始 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 町長邸 門前 】


 しょうまさん、やさしかったひと、やさしいひと。ずっとまってたひと、わからない、ひと。
 やつたけさん、たすけてほしかったひと、はじめて、てをのばしたひと。いつもたすけてくれる、やさしいひと。

 しょうまさん、だれなのか、わからない。かんがえても、かんがえても、あたまがいたい、こえがする、こえ、よぶこえ、わたし、なつ、わたし、わたしは、わたしは、わたし、わたし?


「――――あかつきを、しずめる。もういちど、まいを、舞を、って……」


 町長邸の外に出れば、やはり空には赤色の月が一同を照らす。気のせいかは分からないが赤みを増したような、そんな気もしなくもない月の下、無事一同の元へと戻った七は未だ混乱しているのかじっと空へとその包帯で覆われた双眸を向け、そう呟く。


「うーん…………まだ七ちゃんちょっとぼう、っとしてますねぇ。いや元々? まあええわ、どないしましょ。どこ行きます?」

 都城は七へと視線を向けてそう言いながら一同へと言葉を投げかける。次に行くべき場所、見落としはないか、どうやったらこの町から出られるのか、そんな気持ちを込めながら都城はかくり、と首を傾けた。


 全ての始まり、全ての終わり。
 朱月、月嫁、曉町。
 物語の最後は、いったい、どんな最後を迎えるのだろう。

 最終章『曉の彼は誰時』


>> ALL


(と、いうわけで!最終章です!!ゲームクリアももう目前、さてこれからどう進むかはみなさまにお任せいたします!ので!よろしくお願いします。どうか最後までともに物語を紡いでください、みなさまが楽しんで怖がって、そしてラストを迎えられるよう運営陣もいっそうがんばりたと思います!では、最終章スタートですっ!)(冒頭の七のやつその前のレスに入れ忘れたからここでぶちこませてもらいました!)

3ヶ月前 No.669

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 門前】

「……七ちゃん、図書館やトンネルでの忠告を忘れちゃ駄目だよ」

 成し遂げたいことがあるのなら、自分を殴ってでも精神をきちんと持って。それを自分の言葉で、曖昧に濁したりせずに、きちんと伝えて。
 そこで初めて発見してから七ちゃんに声をかけた安玖。けれど掛けた言葉は忠告を忘れるなと、それきりで、すぐに話を転換させた。

「ひとつは明確に行くべきと分かっている暁神社にこのまま向かう。もうひとつは今まで行った場所や、通りはしたけどきちんと調べたわけじゃない場所を探索しなおす……ぐらいかな、多分」

 指折りそう述べた安玖は、残りの指を唇に押し当てる。
 自分にこれを渡した彼氏(確か名前はカナタだった)は、暁神社に向かったのだろうか。それ以外で向かった先は──もはや今となっては関係ないことだろうが。

「ただ、時間制限があるかもしれないから……回るとしてもすべて回れるかはわからない。どこか行くにしてもある程度の目星か、条件は付けるべきかも」

 さてどうする? と全員の顔を見渡す。最後の最後。大詰め。誰かが提案してじゃあそうしましょうとするよりも、全員の意見を突き合わせて決める方が良いと、そう思ったのだ。

>>ALL

3ヶ月前 No.670

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 二階 控えの間→門前】

烈が勢い良く捲り上げた掛け布団の下にいたのは、紛れもなく一同が捜索していた七であった。
動かず、言葉を発しない七を見て、烈は一瞬怯んでしまった。もしかしたら、七はもう二度と体を起こすことはないのではないか、と。もう二度と、彼女と話すことは出来ないのではないか、と。
詰まるところ、烈は軽いパニック状態に陥っていた。こういった時にどうすれば良いかかんて、烈にはわからなかった。それゆえに、沈黙したまま硬直している他出来なかったのだ。
幸い、七は龍矢の尽力によって意識を取り戻した。口振りは覚束ないが、見たところ何処か負傷している訳ではなさそうだ。彼女がぼんやりとしているのは珍しいことではないので、烈はほっと一安心する。一先ず、七の身に何かあった訳ではなさそうだ。
これ以上この場所に留まっている訳にもいかないので、一行は屋敷の門前まで移動した。移動している間にも七に変わった点は特に見受けられなかった。

「……拙者は、神社に向かうべきだと思いまする。もしも何処か気になる場所があれば、其処に立ち寄っても良いでござろう。しかし、拙者としては一刻も早くこの町の真相を知りたいでござる。……七殿のことも、心配にござるし」

京からの問いかけに、烈は声の震えをなるべく隠せるようにと努めながら答える。
神社の鍵は、図書館を訪れた際に安玖が受け取っていたはずだ。せっかく向かったのに入ることが出来なかった、という最悪の事態だけは避けられるだろう。……他に施錠されている場所があれば話は別だが。
加えて、七の身の安全が確定した訳ではないということも烈を駆り立てる一因だった。町長の手の者たちからはもう狙われることはなさそうだが、その他の怪異が七を見逃すとは限らない。もしかしたら、これまでと比較にならないくらいの強行手段に出てくるかもしれない。再び七を守れないとなれば、今度こそ烈は深い後悔に苛まれることだろう。

「あ、然れど、これまで入手した手掛かりを再確認するのは良さそうだと思いまする。情報をひとつでも多く頭に叩き込んでおくに越したことはありませぬ故」

そう付け加えてから、烈は「拙者の手に入れた手掛かりであればいつでもお貸し致しまするぞ!」と胸を叩いてみせた。私物でもないのにお貸しも何もないとは思うが、その辺りは突っ込まないでおこう。

「それと、先程の戦闘でお怪我をなさった方は丸薬をお召しになるがよろしかろう。もしかすれば、神社で洒落にならないくらいの怪異に遭遇するやもしれませぬ。まあ、どのような怪異が現れたところで、皆様のことは拙者が守りまする故ご安心めされよ!」

リュックサックから丸薬を取り出して、烈は一同を見渡す。町長との戦闘で負傷した者は少なからずいるだろう。火傷にはならなかったとは言え、例の火の玉の攻撃は防ぎにくかった。万が一のことを考えて、此処で回復しておくのもひとつの手だろう。
烈は七に向き直る。彼女のところまで歩いていくと、その小さな手を取って優しく握った。

「七殿。何かあれば、遠慮なく拙者を頼って欲しく思いまする。勿論、拙者で頼りないと思うならば、他の方でも構いませぬ。少なくとも拙者は、あなたをこれ以上危険な目に遭わせたくはない。もしもどうすれば良いのかわからなくて、五里霧中の状況に陥ったのならば、拙者のことを呼んでくだされ。その時は、拙者があなたの手を引こう。だから、拙者のことを信じて欲しい。……身勝手なことを言ってるのはわかってるけど━━でも、それくらいはさせて欲しいな」

かつて七に出会った後も引いた、彼女の小さく、儚い掌。それに柔らかく力を込めて、烈は視覚の封じられた少女に向かってぎこちなく微笑んだ。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.671

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸門前】

 一行の一番後ろに続いて町長邸から出た。空の色は相変わらず。煌煌と光る赤い月を仰ぎ見る。最初に見たときはあんなに恐れ慄いたのに、人間の順応力ってのは或る意味で厄介だ。こんなこと、慣れて良い訳がないのに。

「どうでしょうね……」

 誘拐されていた七ちゃんを無事に奪還保護した今、俺達は次の目的地を決めるべく月の下に円陣のようになって顔を合わせていた。次に向かうべきはどこか?
 七ちゃんは帰ってきた、閉じ込められてはいない、随分減ってしまったが仲間もいる、どうやらここにいては危険らしい――ここまで条件がそろえば、そりゃあもう『高台広場に戻って鳥居をくぐって帰る!』といつもの俺なら言っただろう。月舘家からやっとの思いで出られたときだって、神居家から命辛々出てきた時だって、俺だけはずっとずっとそう思っていた。一択だ。絶対コールすべきじゃない、ドロップに決まってる。ドロップだドロップ。負ければ死ぬんだぞ逃げるに決まってる。そう思って毎回逃げることしか考えてなかったのに、一回目では千枚通し女から追いかけ回され、二回目では五月人形に……今思えばあれは彼奴だったんだけど、退路を阻まれて、結局渋々長いものに巻かれる形で無茶な勝負のコールに付き合ってきた。ここでやっと逃げられるかもしれない。みんな揃って、ではないけれどこれ以上の被害を生まずに恐怖の舞台を降りられるかもしれない。
 ほんとうに?

 そうじゃないことは、何となくもう分かっている。多分逃げることはできない。七ちゃんと御子柴さんがいる限り、多分俺達は問題事をスルーしてこの町から出ることは叶わない。だからって彼女たちを切り離して自分達だけ先に脱出を試みようとは今はもう思わない。生きて皆で此処を出るんだ。生きていれば命さえあれば、きっと良いことがある――あったはずだと俺は未だ信じている。
 解決すれば皆で生きて出られる、とは限らない。けれどここで賭に出なければ、可能性すらも発生しない。勝負に出ない者に、勝利の女神は微笑まない。
 御子柴さんは、真実と向き合いたいという。七ちゃんは、……朱月をしずめるという。姉妹のような二人の再会に抱き合った姿が、未だ脳裏に鮮明に焼き付いている。彼女たちが逃げないのだから、俺達も――俺も、見届けないといけないと思う。

「神社以外で気になるとすれば、先輩達……。月舘家に閉じ込められたときに外に取り残された佐々山先輩に、月舘家ではぐれた美崎先輩、それから図書館に着いたら居なくなってた鷸先輩も。早乙女さんと作家の先生と、掲示板から来てたあの人もそうだ。神社に行かないといけないのは俺も分かります。でも俺、佐々山先輩達のことも…………」

 探しに行きたい。行かなくちゃいられない。そう思っていることを、風見鶏の八岳龍矢にしては快進撃でやっといえたのに、最後の歯切れが悪くなってしまったのは、俺にも最悪の予感が過らないではなかったからだ。勿論諦めたくはない。けれどもしかしたら彼女たちはもう――――。首を横に振る。

「探したいんです。お、俺一人だって探せます……やろうと、思えば。朱月がもしこの町ごと飲み込む脅威なら、彼女たちが一人で震えてるかもしれないなら、その前に合流、しないと」

 自分の言っていることは、果たして正気の沙汰なのだろうか。希望があるように言いながら、みえているビジョンは薄暗い。見ての通り、自信はない。ポケットの中で鈴が鳴って、思いだし取り出してみるとそれは七ちゃんの鈴だった。数秒間、手のひらにのせた鈴と七ちゃんの白い髪とを見比べたが、無理だ、女の子やお人形さんの髪を触ったり結ったりして遊んだことなんかないから全く構造も扱い方も見当もつかない。

「御子柴さん、これ……七ちゃんに。……すみません」

 お手上げである意を表して、御子柴さんに鈴のついた髪飾りを差し出した。記憶はないにしても、女の子でありコスプレにまで精通している御子柴さんなら俺よりは絶対上手く七ちゃんの髪に飾れるだろうし、七ちゃんも俺に触られるよりは今手を繋いでいる鑓ヶ岳さんやどうやら本当に仮初めの姉妹の関係だったかもしれない御子柴さんに髪を整えてもらった方が良いだろう。


>ALL
【ついに最終章!おめでとうございます。最後までよろしくお願いいたします!】

3ヶ月前 No.672

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

3ヶ月前 No.673

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 町長邸 門前 】


「――――ぁ、……まちから、出るために、神社、舞を、です」

 ゆっくりと息を吐く。深く深く、ぎゅ、とつよく右手で握りしめたのは先程ゆらぎから受け取った、自分が墓地で落としてしまった大切な、大切な、松真さんにもらった竹箒。なぜ竹箒をもらったのだったか、それを思い出すことは七にはまだできなかったが、ゆっくりと息を吐いて気持ちを落ち着かせんとする。成し遂げたいこと、なんだろうか。七は一瞬言葉に詰まり、そして言葉を選ぶようにそっとそう発し、そしてぎゅ、と左手を握られる感覚に目を瞬かせる。

「あ、りがとう、ございます……やりがたけ、さんも、みこしばさん、も、やつたけさんも……あいざわさんも、みやこのじょう、さんも――――ありがとうございます」

 それは、笑みだった。緩く、七の口元が綻ぶ。柔らかい、小さな笑み。そしてちりん、という鈴の音に顔をあげればいつのまにか失くしてしまった髪飾りが八岳の手からゆらぎへ、そして自分の髪へと戻されればもう一度深く、頭を下げた。


「んー、まあ八岳くんの言うこともめっちゃ分かるし、私も早乙女さんとか先生のこと心配やし、御子柴さんが実家? が気になるんも分かるし……でもまあ鑓ヶ岳さんのはよ神社行かなあかん、ってのも一理ありますし? いつまた七ちゃん攫いに来るか分からんしなあ」

 町長が消えた、とはいえ危険が消えたわけではないだろう。焦る気持ちも、消えた仲間を思う気持ちも、分かる。都城は首を捻りうーん、と唸り声をあげ、そして一同を見回す。

「うちと、逢澤くんと、御子柴さん、八岳くん、鑓ヶ岳さん、で、七ちゃん。ちょうど六人おるし、御子柴さんの実家で、美崎さん、もぐらくんが消えてしもた月館家、そんで、鷸さん、早乙女さんが消えた神居家に二手に分かれ探しに行くんはどないやろ? 三人三人に分かれて、危ないことは絶対にしーひん、さっと調べたら戻る、って決めて、先生と佐々山さんは月館家に入る前にはぐれてしもたから神社行く間に探せますし、狩谷くんは――――まあ、あんなことになってしもた、わけで」

 それは提案。全員の考えをまとめ、その中での最適案を模索した結果だった。二手に別れれば探索も早く済むしさっと見るだけならさほど時間はかからないだろう、という。都城は一同の答えを待つようにぐるり、と見回した。

>>ALL


(こんなかんじで提案レスをあげさせていただきました!よろしくお願いします!あっ、髪飾りありがとうございます!!)

3ヶ月前 No.674

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 門前】

 鑓ヶ岳さん、龍矢、御子柴さん。三人の思い思いの──といっても考えていることは概ね全員同じようだが──意見を聞き終え、うん、と相槌を打つ。同意というよりもただ会話の間を取るための頷きだった。
 三人の思いも分からなくはない。安玖だって先輩に懐いていたし後輩を可愛がっていた。……つもりである。周りからそう思われていたかはかなり怪しいが。そして神社にも早く行くべきだろう。
 さてどうしようかと目を細めたところで都城さんがひとつの提案をあげた。それは三人と三人の二手に分かれること。

「但し三人組から更に別れたりはしないこと、行くのは今まで行った場所だけ、何か必要なものがあれば揃えるとはいえあくまでも探すのは人だってこと、仮に見つけたとしても深追いはしないこと。これは絶対に譲れないよ」

 ただでさえ人数が減っている今、リスクはできるだけ分散させるべきだ。徘徊者が居なくなったのかも分からない以上いざとなった時に互いを助けられる状況にする必要がある。

「それと男女比を揃えて別れて、合流地点も決めようか。俺と龍矢は別のチームになるとして、女性陣は希望ある?」

 ガッと龍矢の肩を掴み、割に龍矢に一瞬の視線すらくれなかった安玖はそう首を傾げた。

 ちなみに、龍矢の肩を掴んだことに深い意味はないのであった。

>>ALL

3ヶ月前 No.675

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 門前】

伝えるべきことは伝えた。嬉しそうに口許を綻ばせる七に、烈の表情も和らぐ。やはり七は明るい表情をしていた方が佳い。
烈はもう一度だけ七に微笑みかけてから、すっくと立ち上がった。━━尤も、七にどのような表情を向けたところで彼女の視覚は烈の顔を捉えない訳だが、烈としては雰囲気だけでも伝えられたら幸いである。もとより、無表情でいることはあまり得意ではないのだ。
さて、一同の意見は二手に分かれて行方がわからなくなったメンバーを探す、という方向に決まったらしい。
一刻も早く神社に向かわなければならないという意見は烈の中で消えていなかったが、はぐれたメンバーの捜索に関して異論はないので反論はしなかった。心の中で蟠りを残しておくのはよろしくない。
烈とてはぐれた面々のことは心配である。もしかしたら、今頃独りで怯えているかもしれない。道に迷っているかもしれない。自分たちを探してさ迷っているかもしれない。もしもの可能性を考えたらきりがなかった。
詰まるところ、烈ははぐれたメンバーのことを放置してはおけなかった。彼らには少なからず世話になったし、どうしても過ぎたこととして扱うことが出来なかった。

「では、拙者は月館家に向かうことに致しまする! 特に、月館家ではぐれたもぐら殿は広きインターネットの海で奇跡的に出会った間柄。此処は探し隊の一員として、拙者が捜索したく思いまする!」

びしっ、とお手本のように挙手をして、烈ははきはきと告げる。普段授業では頻繁に挙手発言をする方ではないが、こういった時は意思表示をしっかりしておきたい。前の席の生徒がとても綺麗な挙手をするので、真似して挙手の練習をしておいて良かった。どうでも良いが、烈の日頃の努力(?)が実った瞬間であった。本当にどうでも良いが。

「合流地点、にござるか……。むぅ、これはなかなかの悩みどころにござりまするな。神社との距離から言えば、例の井戸とか━━━」

如何でござろう、と口にしようとして、烈ははっと口を両手で押さえる。
井戸には良い思い出がない━━というか、探索メンバーの一人であるシシOこと安仁屋右叉兎と、別れることになった場所である。烈が顔を赤くさせたり青くさせたりするのも無理はない。

「あー!!! ししし失礼致しましてござりまする!! や、やはり建物の方が良うござるな、うん! 別の、別の場所にしましょうぞ! 勿論、拙者は団体行動を乱すつもりはありませぬ! 其処はご安心めされよッ!!」

誤魔化すということが苦手な烈は、この状況では場違いな程の声量で訂正する。焦りすぎているのか、盛大過ぎるボディーランゲージと共に。
とにかく烈はわざとらしさを通り越して最早勇ましさすら感じさせる身ぶり手振りで自分の発言をなかったことにしようとした。何だか逢澤殿から不穏な圧を感じるが気にしてはならぬ気にしてはならぬと自分に言い聞かせる。━━無論、安玖の圧は決して烈に向けたものではないのだろうが、今の烈は自らの失言を抹消することに忙しかったので彼と龍矢の間柄に突っ込む余地など皆無であった。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.676

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸前】

「す……すみませんでしたね、そこは」

自分には到底手に負えないと観念して御子柴さんに髪飾りを預けた俺は、彼女の不服そうな言葉にムッと口を尖らせた。ふっと明後日の方を向いてから、やっぱり思い直してその手元をもう一度見遣る。春の白雨のように綺麗なあの長い髪を、彼女達は一体どうやって扱っているのか。本当は気になって仕方なかったんだ。ツーステップだとかツインルームだとか言いながら、御子柴さんが慣れた手つきで七ちゃんの頭部に触れる。しなやかな十本の指が、長い髪を絡め梳いている。そのほんのりと桜色差す華奢な指の間から真っ直ぐな白銀の髪束がするすると溢れてくる様子を、飴細工を伸ばすみたいだとぼんやりと思いながら眺めていた。甘くて美味しそう。なんて、あまりにも馴染みがない凄技を見せられると馬鹿みたいな感想しか浮かばないものだ。
……いや待てよ?
今更ながらに御子柴さんのさっきの言葉を脳内で反芻し、ハッとして顔を上げる。
「………………いま、カッコ良かった……って……?」

いや、なんかノリでスルーしてたけど、聞き間違いじゃなかったよな!? 思わず復唱してしまってちょっと後悔した。素直に喜んでいいのか謙虚に照れたほうがいいのかスマートに社交辞令と取って躱したほうがいいのか聞かなかったことにしたほうが良かったのか、分からないし。条件反射で口元を隠した手のやり場に困る。ここで湧くかもしれない反論や訂正を聞くのも怖いので、咄嗟に視線を逸らしたまま返事を待たずに二人に背を向けた。でもまあ実は嬉しかったのは本当で、俺はニヤニヤするのを堪える代わりに、行き場を無くした手を小さく拳に握りしめた。

さて、七ちゃんの頭に鈴の髪飾りが収まる頃には、一同の間でも次の行動目標が決まり始めていた。てっきり俺は、皆から神社へ急ごうと諭されるか行きたい者が寄り道して後で追いついて合流しようとでも言われるかと思っていた。けれど意外にも賛同を得ることが出来て、内心ホッとした。そりゃあまぁ、カッコつけた訳じゃないけど……ああは言ったけどさ、出来ることなら一人で月舘家とか神居家とかなんか行きたくなかったから。
要約すると、三人三人に別れてーーそれぞれのチームが男子一人女子二人になるように別れて、月舘家と神居家で探索する。但しあくまで目的は逸れたメンバーの救出に留めること。そして、神社に向かう前に一度全員で集合してから行こうと。月舘家では美崎先輩と掲示板メンバーのもぐらさんが、神居家では鷸先輩と取材チームの早乙女さんが行方不明になってしまっている。月舘家に入る前に逸れてしまった佐々山先輩と作家の先生は屋外で見つけられるかもしれない。
俺はどちらの探索でも構わないけれど、
「賛成です……俺は、」
そう言いかけた時、不意打ちで肩を強く掴まれて思わずビクッと身体が跳ねた。「う ぁ゛っ゛!?」とビビり倒した間抜けな声を上げてしまい、思考と回想が一瞬真っ白にぶっ飛んだ。すぐにそれが逢澤先輩の仕業と分かって、何するんですかビックリするじゃないですか勘弁してくださいよもう!ーーと苦情の一つや二つや三つでも言おうと恨みがましい視線を向けるも、先輩は全然こっちを見ちゃいない。なっ……なんなんだ!?
嗚呼、びっくりしたぁ……こう、神経を張り詰めている状況でこれは良くない。ほんと驚くから不用意に触らないでって。実はまだちょっと心拍数が上がっている。

「はぁ。……俺は、どちらのチームでも構いませんが。あの、鑓ヶ岳さん言いたいことはわかりますから、大丈夫、そんなに気に病まなくて大丈夫です……探索後の合流は月舘家の前でどうでしょうか? 通り道になりますし、人が集まっていたらその辺りで逸れた佐々山先輩や作家の先生からも見つけやすいかも……」

そう言いながら、一同の様子を伺う。今のところ、月舘家に行きたいという人のほうが多いだろうか。オカルトサークルの先輩達は残念ながらどちらの家でも一人ずつ行方不明になっているから手分けして探すしかない。まぁ御子柴さんは記憶から抹消されていた実家な訳だし、本人が嫌じゃないならもう一度見て確かめておくべきだろう。鑓ヶ岳さんが同じオカルト掲示板からの付き合いであるオフ会メンバーを探しに行きたいというのも分かる。そうすると都城さんは同僚の早乙女さんが行方不明になった神居家に行くというだろうか。早乙女さんには俺も助けて貰った借りを返せていないままだ。
逢澤先輩はどうなんだろう。月舘家は先輩にとって亡きお母さんと邂逅した場所であり、永訣した場所でもあるわけで。その場所を訪れるのは辛いから避けたいだろうか、それとももう一度見て確かめたいと思うのだろうか? 俺がどちらでも構わないと言ったのは、先輩の繊細な神経を図りかねたからだ。回避するのも探究するのも、間違いだとは思わないし。正しさなんて決める権限は俺には無い。出来ることはといえば。

「逢澤先輩は、どうしたいですか」

俺は合わせられますよ、と付け足したのはなにもどちらを捜索したいか≠ニいう問題提起では無い。

>all

3ヶ月前 No.677

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/町長邸門前】

 手触りのよい七の髪を指で梳いて、紅いリボンを飾る。彼女の白い髪に、それはとてもよく映えた。
「よし、できた!」
 すっかり元通りになった七の見た目にうんうんと頷いていると、彼女は一同に向かってぺこりと頭を下げて、柔らかく微笑んだ。
 安玖は安定のリーダーシップを発揮し、京も最年長者として周りを見渡している。龍矢はなんだかガッツポーズを決めているようにも見えるし、烈はオーバーアクションで周りを和ませた。当人たちにその気があるかどうかは別にして、そこには本調子を取り戻したとおぼしき六人がいて。
 とにもかくにも、これで現状のパーティメンバー復活である。

「うーん、つまりみんなの話を統合すると、わたしとれっちゃんが月舘家、京さんとなっちゃんが神居家、男子はそれぞれお好きな方をどうぞ? んでもって軽く探索したら月舘家前集合で、みんなで神社に向かう、危ないことや単独行動禁止……と。時間も決めといた方がいいかな、30分経って戻って来なかったらもう一方が確認しに行くとか。異論は今なら受け付けます。安玖くんと龍矢くん、行くとこどっちでもいいならコイントスで決めるからね、急ぐに越したことはないだろうし」
 集まった六人をそれぞれ指差しながら、ゆらぎは勝手に場を取り仕切り始める。その手には、久方ぶりに本来の用途を全うしているボストンバッグの中から取り出した百円玉が握られていた。

>all

2ヶ月前 No.678

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 門前】

「それなら俺は月舘家にしようかな」

 うん、とひとつ頷いた安玖は龍矢の問にそう答える。本当は少しばかり背が冷えるが、曉神社への鍵を持っている安玖が遠い場所に向かうよりも近い月舘家に向かう方が良いだろうと判断したのだ。
 腕時計を確認した後にスマホを取り出して、一寸考える素振りを見せた。そしてタイマーアプリを呼び出し余裕を持たせた時間をセットしてカバンの中へとしまい込む。

「再三言うけど、最優先は今ここにいる六人の命だ」

「皆は、家族に会いたいんだろう。やりたいこともある。やると決めたことがある。……だったら、例え卑怯でも、最低でも、残酷でも、それを貫くしかない」

 それは自分への言い聞かせのようなものだった。
 もし、もしも。無事にこの六人で町を出た、その先の話。それは酷く恐ろしい世界なのだろう。きっと此処よりも屈辱的で、きっと此処よりも地獄絵図で。でも、それ以上に家族に会いたいと帰りたいと願っているのなら、それがきっとすべてなのだ。少なくとも安玖は今ここにいる全員の味方で居続ける覚悟も腹もある。そして安玖を笑顔で見送ってくれた“家族”は、そんな安玖の味方で居続けてくれる。それが、すべてなのだ。

「負け犬で良い。生きているから情けなく吠えられる。生きているから無様に尻尾巻いて逃げられる。生きているからダサく這いつくばって命乞いができる」

「いいんだよ、それで。強い者に決定権があるわけじゃない。弱い者に責任がないわけじゃない。でも、そのどれもが、生きている人間にしか与えられない。得られない」

 だから。

「やりたい事をやるために、生きるんだ。生きて帰るために、やるんだ。今までだってそうだった。何があっても、それだけは絶対に譲っちゃいけない。──譲ってたまるか」

>>ALL

2ヶ月前 No.679

都城京 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 町長邸 門前→神居家前 】

 ゆらぎ、烈、そして逢澤は月館家へ。
 都城、七、八岳は神居家へ。
 合流場所やなんや、と決まっていく内容を聞きながら都城はそっと烈から離れた七の左手をぎゅ、と握る。もはや見慣れた光景でもある。

「……あいざわくんめっちゃええこと言わはるから涙出てきたやん…………じゃあ、30分後、月館家前集合、ってことで」

 ぐず、と鼻を啜りながら眼鏡を外し目元を擦る。六人が無事に脱出する、それが自分達の今の最大の目的だ。いなくなった仲間を探し見つけること、それも大事と分かっているが、都城は息を吸いゆっくりと吐き出せばこくり、と頷く。

「そしたら、八岳くん、七ちゃん。よろしゅうお願いしますねぇ」
「――――おねがい、します。みなさん、また……あとで……」

 都城はもう一度ぐるり、と一同を見回しにっこりと笑う。そして八岳と七に向けてそう言葉を落とす。正直頼り甲斐がありそうな人がみんな月館家に……なんてほんの少し思っているがそれは決して口にはしなかった。なにより、あの町長邸の一件で頼もしかった八岳龍矢という人物を見ているから。自分も頑張らなくては、そう心の中でもう一度呟き足を前へと踏み出す。

 向かうのは神居家。早乙女さんを、鷸さんを見失った、あの人形師とその娘、そしてあの人形の女と対峙したあの家へと、足を進めるのだった。

>> ALL


(安玖くんありがとうございました!!てなわけでこれより別行動タイム入ります!今までの探索と違い、このターンはあくまで振り返り、のようなものを兼ねていますので本棚やらなんやらと詳しい場所を探索せずとも部屋に入るだけでアイテムを発見できたり、と少し簡単な探索ターンとなっています。ので!まあ思い出振り返りターンのようなものと考えてくだされば、と。お楽しみいただければ幸いですのでよろしくお願いします〜〜!)

2ヶ月前 No.680

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/町長邸 門前→月館家 玄関】

どうやらグループ分けはすんなりとまとまったようだ。月館家にはゆらぎと安玖が向かうことになったらしい。
ゆらぎは烈と同じオカルト掲示板関係者、そして安玖は月館家での出来事が彼にとってのひとつの分岐点となった━━と烈は思う。今更ながら、自分たちは数え切れない程の非日常に遭遇してきたものだ、と烈はまだ月舘家に着いていないうちからしんみりしてしまった。
安玖の言葉を噛み締めるように聞いてから、烈はよし、と気合いを入れる。彼の言う通り、まずは自分たちが無事に脱出しなければならない。それを念頭に置きながら探索をしなければ。

「それでは、各々方! 三十分後にまたお会い致しましょう!」

神居家に向かう者たちに元気良く別れを告げてから、烈は月館家に向けて歩を進める。余談だが、集合場所は月館家ということになったので五分前に探索をやめる、といった風で大丈夫だろう。フォローをしてくれた龍矢には感謝感激雨霰である。機会があれば何かしらのお礼をしたいものだ。
とにもかくにも、まず初めにやるべきは月館家の探索である。無事に帰れたら、の話は全ての事が収まってから考えることにしよう。でなければ良からぬフラグになる━━と烈は掲示板で学んだ。無論何が立とうとも薙ぎ倒して前に進むつもりではいるが。
そんなこんなで、烈は再び月館家の玄関口に立った。静寂に支配された室内をぐるり、と見渡してから、烈はすぅぅ、と深く息を吸う。

「蘭嘉殿!! もぐら殿!! 拙者でござる、鑓ヶ岳烈にござりまする! もしもこの建物の何処かにいらっしゃって、拙者の声が聞こえるのならば、お返事をくださらぬか!!」

━━そして、ありったけの声でこの屋敷の中ではぐれてしまった者の名前を呼んだ。声量で月館家が揺れてしまいそうだったが、幸い烈は人間なのでそのような現象は起きなかった。
一秒、二秒、三秒。
烈が声を張り上げてから、それに対する返答が戻ってくることはなかった。沈黙が十秒を越えようとした辺りで、烈はふぅと息を吐く。

「むぅ、これは拙者の声が聞こえていないか、何処かへ移動してしまった可能性が高うござりまするな。如何致しましょう、お二方は何処から探索すべきと思いまするか? 拙者はまず蘭嘉殿の隠れておられた押し入れのあるお部屋に行きたく存じまするが、後回しでも構いませぬ。もし何かご意見があるのならば、拙者はお二方のご意見に従いまする」

ゆらぎと安玖を交互に見てから、烈は己が意見と方針を述べる。
まず探すとしたら一階からだろう。二階は床が脆く危険なので、なるべくリスクは避けたい。此方には足元が寂しいことになっている安玖がいるのだ。これ以上足に損傷を受けるのは、いくら丸薬があっても辛いことに変わりはないだろう。

>>御子柴ゆらぎ様、逢澤安玖様

2ヶ月前 No.681

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸前→神居家玄関】


朱城家の邸の前で暫くたむろしていた六人は、ようやく二手に別れてばらばらと散っていった。逢澤先輩と鑓ヶ岳さんと御子柴さんは月舘家へ、俺と都城さんと七ちゃんは神居家へ向かう事になった。

「……変わりましたよね、逢澤先輩」
隣で鼻をぐずぐずやっている都城さんを横目に、俺は図書館の地下の廊下で先輩と口論になった時の事を思い出していた。それから、ついさっきの事なのにまるで遠い昔の追憶のような、ハジメとの対決の事を思い出していた。
命あればこそ。生きていれば、きっといつか良いことがある。
死とはやっぱり、人類が克服すべき最後にして最強の敵だと未だ俺は思っている。
だから、一度は命を投げ出そうとした事さえあると明かしてきた逢澤先輩が、あんな事を言ったのは意外だったし嬉しかった。まあ彼にしてみれば元々そう思っていたのに変わりないのかもしれないが(俺の事を足手纏いと踏みつけたりするあたり)、それを皆の前であんな風に口に出したのはやっぱり、意外な一面を見た気がした。敵の敵は、戦友である。

元気よく「それでは三十分後!」と去っていく鑓ヶ岳さんに倣って、俺達三人も神居家へと歩みを進めることにした。

「……都城さん、……泣くほど感動します? ……ほら、行きますよ。ちょっと面子が心許ないですけど仕方ないか。危なくなったら俺は卑怯でも一人逃げますんで、各々自分の事は自分で頑張ってくださいよ、っと」

もうどうしようもねぇクズな本性はもうこの数時間でバレているんだから諦めて頂くより仕方ない。振り返って都城さんが七ちゃんの手をしっかり引いているのを確認してから、暫くぶりの神居家の木戸を開けた。

開かれた玄関。あの女が暴れた跡がそのままに残っていて、木片や布切れ、人形のパーツなんかもそのままに飛散していた。
「まさかとは思うけど、もういない、よな……?」
固唾を呑む。
ふじのちゃんの事ではない。思い返して震えるのは、あの恐ろしい女のような怪物の事だ。
まだ玄関から覗き込んでいる姿勢だというのに、否応無しに思い出してしまう。化物に追いかけられて皆で逃げるように駆け抜けた、人形のパーツだらけの広い作業場の光景が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
その後に上書き更新された有象無象の情報過多のお陰で折角忘れ始めていたのに、今やそれは手に取れそうなほど鮮やかにリアルな質感を帯びで海馬から甦った。
……そういや俺、人形苦手なんだよなぁ。なんでいつもの癖で先輩に先に選ばせちゃったんだろ。

ここでこうしていても仕方ない、こんなところにもし、鷸先輩や早乙女さんが取り残されていたらそれこそ可哀想だ。開いた口唇の間から、目一杯に食らえるだけの空気を肺に取り込んだ。その一息を全量一気に声に変え、腹の底から叩き出す。

「鷸・先・輩ぁぁぁぁぁぁぁああああい!!!! 早・乙・女さぁぁぁぁぁぁぁああああん!!!! きこえますかぁぁぁぁぁっ!! き゛こ゛え゛て゛く゛た゛さ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい゛!!!!!!」

それこそ、屋敷中に響き渡り屋根裏にいたって聞こえそうなぐらいに。

>都城さん、七ちゃん

2ヶ月前 No.682

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/町長邸門前→月舘家】

「よぉし、みんなで生きて帰って同窓会するぞ! 焼き肉だカラオケだ、とにかくみんなで楽しく過ごすんだ!」
 最早突っ込む余地すらないフラグを全力で乱立させて、しかし立てたフラグを全力で叩き折る勢いで、ゆらぎは拳を高く掲げる。
 そうして意気揚々と、朱城家の門に背を向けて歩き出す。

 来た道を戻ってみても、そこには今日見たもの意外の既視感などなくて。月舘家までの長いようで短い道中にも、その家構えもやっぱり見覚えなんてなくて。
 この、目の前にある朽ちた廃墟が自分の実家かも知れないなんて、しかもそうだとすれば、恐らく叔父夫婦にあたる人達が無惨に殺された現場であるかも知れないなんて、矢張り悪い夢にしか思えない。
 父と今の母が再婚したのは、小学校に上がる前後のことだ。それより前のことは今でも思い出せない……強いて言えば、「月舘ゆらぎ」という名前の響きは、しっくりこないこともない。
 そんな何とも言えない感傷にゆらぎが浸っている、そのすぐ横で。
 烈がありったけの声量で、蘭嘉と為初の名を叫んだ。それはもう、家が揺れるとか窓ガラスが割れるとか、某黒くて小さな生き物達がわんさかと飛び出してくるのではないかと思えるほどだ。
「れ、れっちゃんさすが体育会系……」
 軽く耳鳴りを覚えた右耳を押さえながら、ゆらぎは烈を讃え、そして中からの反応を待つ。
 一秒、二秒、烈の莫大な声量の反響が消えてしまえば、そこはひどく静かなものだった。待ち焦がれる仲間たちからの返答もなければ、元住人達が襲い掛かってくることもない。
 その静寂の中で、烈は蘭嘉の消えた押し入れを見に行こうと言う。ゆらぎには他に宛もないので、うんうんと頷いた。
「わたしはれっちゃんの意見に賛成。私個人のことは本当にオマケで良いし、正直あんまり収穫はないだろうし」
 口ではそう言いながらも、ゆらぎは安玖と烈に先んじて、月舘家の内部に一歩踏み出そうとする。しかし次の瞬間彼女の足が踏みつけたのは、土間の固いコンクリートではなくて、群青色のメッセンジャーバッグだった。
 先程月舘家に入った時は勿論、出た時には絶対になかった鞄。それは。
「……これ、もぐらくんのだ」

>安玖くん、烈ちゃん

【大遅刻ぶちかましました申し訳ありませんm(__)m】

2ヶ月前 No.683

都城京、七 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 神居家玄関 】

「……いやなんか、ほら、あれやないですか。ねえ、七ちゃん」
「……?」

 冷静で、どこか達観視しているような、冷たいような、冷酷のような、そんなイメージを逢澤に多少抱いていた都城だったが故に、だがしかしそれを口に出すのは憚られたのか、にへら、と笑い言葉を濁し、そして手を握った先できょろきょろと辺りを見回す七に同意を求める。が、そんなことは彼女に伝わるわけもなく、七は首を傾けるだけだった。

「まあ危なそうなったらとりあえず八岳くんが七ちゃん担いで逃げてもらえれば、おねえさんが頑張ったりますしぃ、安心安全、第一でいきましょうねえ」

 全く頼り甲斐の感じさせない言葉だった。だが年下を守ろうとする心は存在したらしい。神居家の玄関扉を開けた八岳の後ろを追って都城もまた数時間振り(かどうかは時間が分からないから分からないが)の神居家へと視線を向けた。

「っ…………」
「ちょ、ちょっと大声出すんやったら先にひとこと――――あ、」

 懐中電灯で扉の中の玄関を照らす都城だったが突然鼓膜を震わせた、劈くような八岳の声に七はびくりと肩を跳ねさせ後退り都城は思わず耳を塞ぐ。思わず苦言を漏らそうとした都城は懐中電灯が照らす先、玄関から玄関廊下への扉へと続く上がり框にぽつん、と置かれたそれを視界に映すと目を見開き、咄嗟に七の手を離し八岳と扉の隙間を潜りそれへと駆け寄る。それは、

「これ…………早乙女さんの、カメラや……」

 カメラマンの命ともいえるカメラがそこにはあった。震えそうになる手に、指先に力を込めそっとそれを手に取る。中のデータを確認すればやはりそれは同じ職場で、共にこの地に足を踏み入れた早乙女和紀のカメラに間違いはなかった。


>> 八岳くん

2ヶ月前 No.684

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/月舘家】

 もぐら、と言われ誰だったかと思案した安玖は漸う「潜竜ヶ滝さんだっけ」と呟く。大真面目にそこまで交流が無かったからか、本気で記憶になかった。
 すり、と喉をさすりその指先を顎元へと滑らせる。汗で心做しかベタついて、砂煙で何とはなしにザラついている。その生々しい指先の感触だけが己に馴染んだ感覚で、そういえば夏なんだよな、と忘れていたことを思い出させる。

「……少なくとも、彼もここまでは辿り着いたんだ。僕達と別れたあとも生きている時間はあったんだ」

 まだ無事だとしても、そうではないのだとしても。彼もまた一人になった後に彷徨い、そしてここまで辿り着き──そこからは定かではない。
 群青色のメッセンジャーバッグは彼がここに来た証だ。だから失ってはいけない。

「他の部屋も確認しよう。彼の鞄がここにある以上、他にも見つかるはずだ」

 そう言葉を続け、女性二人の意見に頷く。

「なら右手から反時計回りに確認しよう。確か、この家はぐるりと一周するように部屋が繋がっていたから」

 玄関から見て右手にある扉──閉じ込められたと分かった時に先輩が飛び出した方向だ──を指差し、反時計回りに円を描くよう回しながらそう告げる。ここに三人の相違はないだろう。
 よし、と心の中でまた頷き、安玖は廊下に繋がる扉に手をかけ躊躇いなく開いてみせた──。

>>鑓ヶ岳さん、御子柴さん

1ヶ月前 No.685

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/月館家】

烈の呼び掛けに対する返答はなかった。━━が、この場所にかつて行動を共にしていた仲間がいたという痕跡までは消えていなかった。

「た、たしかに、もぐら殿はそのお鞄を身に付けていた……と思いまする!」

ゆらぎが見つけたもの。それは、先程烈が呼び掛けたうちの一人━━もぐらこと、潜竜ヶ滝為初の身に付けていたメッセンジャーバッグだった。
確実にそうだと言い切れるだけの自信がある、という訳ではないが、烈の記憶の中では、為初の側に群青色があった。それがこのメッセンジャーバッグなのだろう。
為初はたしかに此処に、月館家にいた。━━いや、過去形とは限らない。まだ、為初は月館家にいるかもしれないのだ。
常に冷静沈着で落ち着いていた印象のあった為初がメッセンジャーバッグを放り出していく、という光景はなかなか想像出来なかったが、それだけの事態が起こらないとは言い切れない。まだこの家には怪異が蔓延っているかもしれない。だとすれば、此処で立ち止まっている理由は皆無というものだ。

「では、逢澤殿のおっしゃる通り、一階は時計回りにぐるりと一周して探索を致しましょう! あっ、もうご存じとは思いまするが、足下にはくれぐれもお気をつけくだされ!」

自分の意見が通ったことに感謝しつつ、烈は探索を開始する。無論、床板を踏み抜いて怪我をする━━などということがないように、足下に注意を払いながら。
安玖によって廊下へと続く扉が開かれる。かつて此処で怪異と邂逅したが、今回は誰もいなかった。何か出てくるのではないか、と気を張っていた烈としては、虚を突かれたような形である。
いや、そもそも此処に誰か━━はぐれた二人以外の人物がいること自体が可笑しいのだ。長らく怪異の相手をしてきたからか、烈の感覚は狂いに狂ってしまった。改めて考えると、何だか悲しくなってくる。

「……この先が、蘭嘉殿のお隠れになったお部屋にござるな」

廊下を慎重に歩みながら、烈はごくりと唾を飲み込む。間もなく、例の押し入れの部屋に到着する。

「何もないことを祈りまするが、いつ何処から怪異が現れるかわかりませぬ。前方は拙者が対応します故、後方はお二方にお任せ致しまする」

刺又を構えながら、烈は後方にいる安玖とゆらぎにそう声をかける。
いざという時は二人を先に逃がすことも算段に入れている。勿論、二人のうちどちらかを抱える必要があっても対応出来るつもりだ。ゆらぎのことは一度抱えて移動しているし、安玖くらいの体格の男性であれば抱えられないこともないだろう。自分にはこういったことしか出来ない━━と烈は考えているため、力仕事に関しては抜かりがない。
すぅ、はぁ、と呼吸してから、烈は扉に手をかける。生物以外が出てこないことを祈りつつ、彼女はかつて足を踏み入れた間を再び開いた。

>>御子柴ゆらぎ様、逢澤安玖様

1ヶ月前 No.686

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/神居家玄関】

 叫んだ名前に対する返事は、無かった。
玄関もその奥も暗闇に沈んだままで、そこを動く影もない。そうそう、最初にここに入ったときには人形の首が事件現場みたいに転がってきたんだっけ。まったく、あのときは驚かせやがって。

「あっ、すいませんつい……」

 代わりに返ってきたのは、予告なしに大声を張り上げたことに対する苦情だった。確かに今のは俺に非が有る。素直に一言詫びを入れて都城さんと七ちゃんを振り返ると、都城さんが急に何かに駆け寄るように前に出る。「何か落ちていましたか」と何かを拾ったその手元を懐中電灯で照らして、ハッと息を呑む。

「それ……」
早乙女さんの、と言い終わるより早く、同僚であった都城さんが「早乙女さんのカメラ」と言った。俺にも、それはよくよく見覚えがあった。仕事熱心なカメラマンである早乙女さんが道中ずっと手にしていたものだ。あの人がその仕事道具を手放すなんて……何か余程の……、その続きを言えるほど俺は無神経ではなかった。嫌な予感がする、いや、嫌な予感しかしない。きっとここに居る誰もが思い始めている。もしかして、早乙女さんはもう……

「データの、一番最近のには何が写っていますか。早乙女さんの足取りが解るかもしれない」

 さいごには何が写っていますか、という言い方は敢えて避けた。けれど、何処に行っても絶え間なくシャッターを切っていた早乙女さんの残したカメラだ、彼が見たもの、そして消えた直接的原因となったものが動かぬ証拠として記録されているかもしれない。カメラの映像データから手掛かりを得ようと、都城さんの肩越しに背後から覗き込む。

>都城さん、七ちゃん

1ヶ月前 No.687

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/月舘家】

「うん、そうだね。もぐらくんもみんなも……此処にいたんだ」
 皆が為初のものだと認めた鞄を抱き締めるようにしながらも、ゆらぎはしっかりと前を向く。そして、自身のボストンバッグから手帳とペンを取り出し、適当なページを引き裂いた。そこにサラサラと文字をかきつけて、玄関の上がり框に置いていく。
『もぐらくんへ、みんなで曉神社に向かいます。ふわりちゃん★より』
 為初に届く保証はないが、もしかしたら彼が見付けて合流できるかもしれない。そうでなくても、誰かの手助けになるかもしれない。
 一縷の希望を紙切れに託して、ゆらぎは探索に向かう安玖と烈の背中を慌てて追いかけた。

 改めて月舘家の中を歩いてみれば、そこかしこに見覚えはあった。恐らく数時間前にも見て回っているのだから当然かもしれないが、幼い自分がそこに居たのだという実感は、まるでなくもないような曖昧なものだ。
 それが突然確かなものに変わったのは、蘭嘉が隠れたという押し入れを、烈の背中越しに目にした時だった。
 目の前にある荒れ果てた景色を覆い隠すようにして、古めかしくてもまだ綺麗な、生活感もある押し入れで遊ぶ二人の少女の姿が見えた、気がした。それが自分と、彼女であるということは、何ら疑いようがなかった。
「……だからあの子は、押し入れに居たんだ」
 妙なところが府に落ちたが、今重要なのはそんな事ではない。刹那に思考を切り替えたゆらぎは、大きく息を吸い。

「蘭嘉ちゃぁぁあーん!」

 廊下から、(烈には負けるが)大声で叫んだ。玄関からの声は、万に一つとはいえ壁に遮られて聞こえないこともあるだろう。
 しかしというかやはりというか、ゆらぎの声にも返答はなく、不気味な静寂が広がるばかり。
「……駄目か。さて、押し入れ開けてみよう。わたし反射神経には自信あるからね」
 先程廊下の扉を率先して開いてくれた安玖や、この部屋に先陣を切って飛び込んでくれた烈に報いるべく、今度はゆらぎが押し入れの襖に手を掛けて……相変わらずの思いきりの良さで、そこを開け放った。一応、何かあれば飛び退れるような体勢で。

>安玖くん、烈ちゃん

1ヶ月前 No.688

都城京、七 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 神居家玄関→玄関廊下→囲炉裏の間 】

 無意識的にカメラを強く握りしめる。彼と仕事をともにしたことは少ないが彼の仕事熱心さはよく分かっているつもりだった。ぼう、とカメラを見つめていた都城の鼓膜を震わせる八岳の言葉にびくり、と肩を跳ねさせた。

「あ、あ、そうですね……カメラマンにとってカメラは命みたいなもんで、それを手放すときは――――あ、これ」

 ぽつり、と呟いたその言葉は同じ職場で働くあるカメラマンの発言だったような、だがしかし言葉を言い終わるより先に調べていたカメラに残ったデータに目を止める。膨大な写真の量、あの朱塗り鳥居、月館家、人形、この町に足を踏み入れた証となる写真の一番最後、最新の写真に目を瞬かせそれを八岳に見えるように少し顔を動かした。

「これ、あの納屋とちゃいます? 葛籠が並んでるし……でもうち等が納屋に行ったときにはもう早乙女さんとははぐれとるしなぁ」

 見覚えのあるその場所は都城とオカルトサークルの一人である鷸風華があの哀しい女性に襲われた、都城達があの少女が隠してしまったバラバラ人形を組み立てたあの場所だった。そこに早乙女が足を踏み入れていた記憶は都城にはなく、首を傾ける。

「――――……もしかしたら、わたしたちがでてから……はいった、とか……」

 写真を確認できない、二人の話を聞いていた七がぽつり、とそう呟く。くい、と都城の服の裾を引き「とりあえず、なや、行ってみては……」とそう提案したかと思うといつものように握りしめた竹箒で障害物を確かめながら上がり框をあがり扉を開く。そしてそのまますたすたと扉を開け囲炉裏のある部屋の方へと向かってしまった。

>> 八岳くん、

1ヶ月前 No.689

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/月舘家】

 押入れはスカか……。
 瞬き確認を終えた安玖は次の扉を見据える。女性陣の声に耳がわんわんしているが、それに文句を言える状況ではないのは承知している。……とはいえ安玖も同じように叫ぼうとも思えないが。

「……じゃあ、次の部屋を開けますね」

 今度もまた自分が先頭になるように手をかける。それぞれが順番に先頭に立つという形で安定してきたようだ。
 この先は奥座敷。安玖が鑓ヶ岳さんの腕を掴んで逃げたその先だったように思う。そして、あの、女性と初めて対峙した場所だった、ような。

「……先輩、いますか……?」

 それは、あの時の声よりもずっと頼りなく。だけどあの時よりも確かな芯を持って、安玖は問いかけと共に奥座敷の扉を開けた。

>鑓ヶ岳さん、御子柴さん

1ヶ月前 No.690

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/月館家】

ゆらぎの呼び掛けが室内に響き渡ったが、残念ながらそれに対して返ってくる言葉はなかった。
何となく予想は出来ていたことではあるが、こうも静かだとやはり虚しいものがある。希望を抱けば抱く程、期待が外れた喪失感というものは大きくなる。
思わず溜め息を吐きたくなる烈だが、喉元までせり上がってきたそれを慌てて飲み下す。
蘭嘉も為初も、まだ見つからないと決まった訳ではない。もしかしたら別の部屋にいるかもしれないし、此方の呼び掛ける声が聞こえていないだけかもしれない。為初に関しては、先に神社まで向かっている可能性だってある。故に、まだ全てを諦めるには早すぎる。
気を取り直して、烈は顔を上げる。安玖の言う通り、次は奥座敷を調べるのが無難だろう。

「逢澤殿、承知つかまつった! あの時は多少取り乱してしまい申したが、今や怪異など恐るるに足らず! さすがに龍だの獅子だのが出て来たならばどうにもなりませぬが、大体の怪異は物理で解決出来るはず。鬼が出ようと蛇が出ようと、拙者が退治してくれようぞ!」

己が胸を叩きながら、烈は何とか湿っぽい空気を長続きさせまいと笑顔を見せる。まだまだ気落ちしてはいられない。
安玖が扉を開ける。薄暗い室内に向かって、彼がそっと呼び掛ける。

「らっ━━━こほん。蘭嘉殿、いらっしゃいまするか?」

つい腹の底から声を出しそう━━になったが、烈は済んでのところで声量を抑えた。安玖やゆらぎとの距離感を考えて、遠慮したのである。
多少の間合いが空いていればまだ良いが、彼らとの距離はそう遠くない。密か離かと言われたら間違いなく密である。ならば、大声を出すのは適切ではない。
しばらくの間、烈は奥座敷からの反応を待っていた。しかし、其処からは返答どころか物音ひとつ返ってくることはない。

「…………誰も、いない?」

あまり後ろ向きなことを言うべきではないというのは、烈もよくわかっている。
しかし、いつまでもこの重たい静寂に耐えることは難しい。烈は安玖の後ろから、ひょこりと顔を出して奥座敷を覗き見た。

>>御子柴ゆらぎ様、逢澤安玖様

1ヶ月前 No.691

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/神居家 玄関→囲炉裏の間】

人の気配がまるで無い玄関で、俺と都城さんは小さなカメラの液晶を注視した。液晶画面の光はこの暗闇では眩く、昇り立つような青白い光が、都城さんの白い頬や額や鼻を更に照らしていた。

『カメラマンにとってカメラは命みたいなもんで、それを手放すときは』

「……都城さん」

彼女が何を言おうとしたのか、わからない俺ではなかった。本当は俺だって、同じヤな予感が胸を過ってしまったから。その続きを都城さんが言うのを制止する為に、俺は堪らず名前を呼んだ。ただ、その不吉な予感を最後まで口にして欲しくなかっただけで声を掛けてしまったので、続く言葉なんて勿論考えちゃいなかった。「えっと」と、少しまごついてしまったが、それは杞憂だったようだ。何か見つけたか、都城さんの意識はすぐにチェックしていたカメラのデータの方に持っていかれたようで、気まずい沈黙が流れる前に彼女の方から声が上がる。

「……納屋だ。俺たちが藤乃ちゃんの人形を組み立てたあの納屋……」

俺によく見えるように向けてくれた事で、それまでの写真は覗き込むような格好でみていたものが、件の納屋の写真はよく見る事が出来た。カメラは都城さんの手に預けたまま、俺は背後から腕を伸ばしてズームボタンだけを操作し並んだ葛籠を操作し拡大して確認する。間違いない、人形のパーツを入れたあの葛籠だし、この場所は記憶にある納屋と一致する。

「俺も、そう思います。早乙女さんは俺たちを追いかけて来ていて、少なくとも納屋まではやってきた……カメラがここにあると言うことは、納屋で写真を撮って玄関まで引き返したのかな……行ってみましょう。少なくともこの写真にとんでもないモノや手がかりになりそうな物体は写っていないように見えます。……納屋で、或いは納屋から此処に引き返す途中に何があったのか……って! 七ちゃん!」

聞いてたか俺の話!? 今の理論だと、納屋と言うより、納屋と玄関を結ぶこの囲炉裏の間と廊下にこそ早乙女さんを巻き込んだ何かがあるかもしれない説が濃厚じゃないか!
「ちょっと、待ってくださいよ!」
俺は先に行ってしまった七ちゃんを追いかけて慌てて囲炉裏の間へと駆け込んだ。

>都城さん、七ちゃん

29日前 No.692

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/月舘家奥座敷→納屋】

 押し入れは空振りだったので、三人はとっとと次の部屋へと向かう。人気が無いのは不幸にして幸いだ、血塗れで倒れている仲間にも青ざめた怪異にも出会わずに済む。まだ仲間達の無事を信じていられるし、三人しかいない今この状況で襲われるのは正直避けたいところだった。
 恐らく、月舘家に為初の鞄が落ちていたように、神居家や図書館など、町の至るところに自分達の痕跡は残されているのだろう。龍矢達も今頃何かを見付けているに違いない。そしてまだきっと、曉町の……朱月の脅威は去っていない。一秒でも早く手掛かりなり生存者なりを見付けて、彼等と合流するべきだ。

 奥座敷に呼び掛けた安玖と烈の声に応える者はない。二人の背中から部屋の中を覗き込んだゆらぎの瞳にも、当然、荒れ果てた部屋の調度品以外は映ってはくれない。
「この部屋も誰もいないみたいだね……よし、次行こう次!」
 空っぽの部屋に何時までも拘ってはいられない。
 先程は二人の後を追いかけていく形となったゆらぎが、結果として出口に一番近い位置をキープしていたため、そのまま回れ右して納屋へと向かう。
 そうしてまた躊躇いのたの字もなく扉を開け放つと、部屋の中とは少し違った、埃っぽくも湿った空気が流れ込んだ。

>安玖くん、烈ちゃん

24日前 No.693

特殊レス @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 特殊レス / 月館家 一階 納屋 】


「――――なつ、どこ?」


 納屋。二階へ上がる階段に座る少年は今にも泣き出しそうな顔で、声で、そう呟く。


「どうして、いないの」


 ずっとずっと、彼はずっとさがしていた。
 町長邸で、彼はずっと会えない少女を探していた。
 月館家で、ずっと彼は少女を待っていた。


「――――――おまえ≠ェ、よめさまなのに」


 ゆっくりと俯いていた少年の顔が開かれた扉の方へと向く。冷たい瞳、薄暗い色を宿した瞳。そして、少年は、ゆきひとと呼ばれた少年はそっと消えていった。その場に、一冊の日記を残して。


>> 月館家ALL


(納屋へようこそ!戦闘はありません!代わりに日記をどうぞ!そして先へお進みください!)

24日前 No.694

都城京、七 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 神居家 囲炉裏の間→廊下 】

「いやん、八岳くんめっちゃ頼もしいやん、お姉さんときめいちゃうわぁ」

 先ほどの自分の、不吉な予感を想像させてしまう発言を誤魔化すようにちゃらけた口調でそう言いながらへらりと笑っていた、のだがしかし。すたすたと先に行ってしまった七と、それを追って行ってしまった八岳を追ってあたふたと都城も玄関廊下から囲炉裏の間へと飛び込む。ひとりぼっちにせんといて、なんてひぃひぃと悲鳴にも似た言葉を発しながら。

「――――いやなかんじ、はしません……けど、すこし、かなしいような……?」

 囲炉裏のそばを通り納屋の方へと続く廊下の扉の前で立ち止まった七はくるりと振り返り八岳を見上げながらそう言う、竹箒の先で扉を確かめるようにつつきながら。

「七ちゃんあのねぇ、ほんま先々行かへんってお姉さんと約束してくださいよぉ……うち若ないんやから急に走ったら、息が、できへんなる……」

 なんかあったら八岳くんにおぶってもらお、なんて言いながらもしっかりと七の手を握りそして扉へと手を伸ばす。大丈夫、もうあの女は居ないんだ、そう自分に言い聞かせながら、あの悪夢にも近かった納屋のある廊下の扉を、開いた。

>> 八岳くん、

23日前 No.695

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/月舘家】

 ここもまた、人気がなかった。が、違うことと言えば見覚えのない日記があったくらいか。拾い上げ内容を簡潔に読み上げる。

「──ここに来ていよいよ二人の名前が出てきたね」

 それだけを言い捨て、首を振る。明確な形で身内陣営から名が挙がると、いよいよ本質に近付いたような心持ちになる。実際問題、根幹に触れて入るのだが。

「月嫁の二度に渡る変更。最終的なその先が七ちゃんだった、だけの話。そりゃあ確かに御子柴さんが戻ってきたなら順番が狂うだろうね……そうでなくとも、」

 その先は言わなかった。少なくともあのゆきひとという少年が嫌う相手が明確になった辺り良しと出来るレベルだろう。それ以上の収穫もある。なら、この納屋にはもう用がないわけだ。
 となるともう後は二階と納屋の奥にあり、入口から見ると真っ直ぐに突き進んだ位置に当たる囲炉裏の間のみだ。戸を見据えた安玖は日記をバッグにしまうと囲炉裏の間へと続く扉に手をかけ、開け放った。

>>鑓ヶ岳さん、御子柴さん

14日前 No.696

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=PD7u2EDlCB

【鑓ヶ岳烈/月館家】

納屋は無人──かと思われたが、此処に来て第三者と邂逅することとなった。
蘭嘉ではない。となれば、怪異の類いか。
烈は直ぐ様臨戦態勢に入るが、そうこうしている間に少年はふつりとその姿を消してしまった。たしかに、この狭い室内で刺又を振り回すのはだいぶと危険だが、烈としては納得がいかない。どうしても戦いたかった、という訳ではないが。

「──む。また日記帳にござるか」

後に残されたのは一冊の日記帳。恐らくは何らかの情報が記されたものなのだろう。とりあえず害を与えられるようなことはなかったので、烈は特に追及しないことにした。細かいことを気にしていては探索などやっていられない。
とにもかくにも、今は囲炉裏の間に行くことが先決だろう。烈は安玖とゆらぎの背中をぱたぱたと追いかける。
安玖が開け放った扉の向こう。其処を彼の後ろから背伸びをして覗き込んでいた烈だが、はっとして両の瞳を大きく見開いた。

「あれは……!」

そのまま安玖の横を駆け抜け、烈は囲炉裏の間へと踏み込んだ。そして、急停止してからしゃがみこみ、ある一点に手を伸ばす。

「各々方、これを! これは、蘭嘉殿の学生証でござる!」

烈が見つけたもの。それは、美崎蘭嘉のものと思われる学生証であった。
まただ。また、所持品だけが落ちていた。烈はやるせなさに歯を食い縛る。
恐らく、蘭嘉はこの場を訪れたのだろう。そして、どういった訳か学生証を落としてしまった。どうか不注意で落としてしまい、そのまま気付かずに出ていった──と思いたい。
為初のように、荷物のほとんどが落ちていたという訳ではない。蘭嘉と行き違いになった可能性も十分にあり得る。だというのに、烈の中には底知れない不安感がこびりついた。

(い、いかん。後ろ向きなことばかり考えていては皆に迷惑をかけてしまうというに)

ふるふる、と顔を横に振ってから、烈は改めて安玖とゆらぎに向き直る。其処にネガティブな表情は浮かんでおらず、いつもの明朗快活な鑓ヶ岳烈がいた。

「お二方共、この後はどのように致しまするか? ああいや、そろそろ約束の時間が迫っているようでござりました故、他に気になる場所がないのか聞いてみただけにござる。決して急かすつもりはござりませぬ。ただ、時間に追い立てられるようでは、精神的にも疲れてしまうと思いました故。拙者としては、二階は足下のこともござりまする故、危険を冒してまで探索に向かうのはどうかと考えまする。あくまで拙者の意見でござるが」

同行者二人に向けて、烈は相変わらずはきはきとしてはいるが受動的でもある意見を述べる。これから神社で何が起こるかわからない以上、リスクを冒したくないというのが烈の本音であった。

>>御子柴ゆらぎ様、逢澤安玖様

12日前 No.697

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/囲炉裏の間→納屋】


前に来た時と変わらず、その部屋には囲炉裏と薬棚があるだけだった。殺風景。何度となく見たような気がする薬棚と、囲炉裏にかけられたままの蓋のない鍋。

「特に変わったものはありませんね……」

いや、あっても困るけど。
擦り歩けば埃と畳の匂いがする。七ちゃんが囲炉裏に落ちやしないかと目を離さなかったけれど、そんな俺の取り越し苦労は無用とばかりに七ちゃんは器用にその横をすり抜けて振り返る。
「かなしい=H」
この囲炉裏の間で、何かあったっけ。暫し首を捻る俺の脳裏に、何故か蘇ったのは安仁屋さんの声だった。あれは皆で手分けして集めた情報を共有していた時の。

ーー『向かって左の方に囲炉裏がある部屋があって、そこで人形の頭も見つけました。その──囲炉裏のある──部屋の奥には扉があって、廊下へと出られるんですが、突き当りに扉が一枚あって、それで、その途中にも納屋があって、俺は先に納屋の方を調べようとしたんですが。』

……だよな。やばいのはこの部屋じゃない。納屋だ。納屋で彼等は先に恐ろしいものに遭遇している。まあ結果的にはそのあとで恐ろしいもの≠ノは俺たち皆でめでたくエンカウントしたわけだけと。……扉の向こうの小さな廊下を抜けた先が納屋だった。
七ちゃんが怖いもの知らずかずんずん先に進んでしまうので俺も怖いとかなんとか言ってる場合ではなく追いかけるより他ない。

「そうですよ、七ちゃん。ちょっと待ってって……都城さんのいう通り……っあッ! 違いますそういう意味じゃないです!!」

七ちゃんの後を追いかけて囲炉裏の間を足早に通過し、その肩近くに追いついてそう口走ってから自分の失言に気づきあっと口に手を当てる。

「違います違います、都城さん! 俺は都城さんがもう若くないとかそういう同意をしたわけじゃないですから!! ついでにいざとなっても都城さんを背負う気は微塵もありませんから!! ……ん? いやその、違いますってすみませんって! あ、いやいや、ちがいます、このすみませんは、その、別にやましい意図を含んでいたわけでは……!」

……やばい、保身自己防衛フォローを入れたつもりが、これは逆に墓穴を掘ってやしないか……言葉を重ねれば重ねるほど白々しくなってくる。実際、七ちゃんを急いで追いかけたぐらいじゃ息はまだ上がらない。
さて。閑話休題。俺は着けていた腕時計の画面ライトをつけて時刻を見た。此処に来てから時刻は狂っていたが、先輩たちと町長邸前で御子柴さんと逢澤先輩と鑓ヶ岳さんと別れた時に、約束の刻限に合わせてタイマーを設定していた。

「先輩達との約束の時間が迫っていますね……。早乙女さんのカメラの画像が途切れている納屋か……何か早いところ手がかりが見つかると良いのですが……」

腕時計の画面ライトを消し、代わりに懐中電灯の光を掲げて、都城さんの開けた扉から俺たちは再び納屋へと足を踏み入れた。


>都城さん、七ちゃん

8日前 No.698

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/月舘家納屋→囲炉裏の間】

 納屋の中に居たのは一人の少年。これまで安玖を、龍矢を、そしてゆらぎを半ば無差別に襲った怪異・ゆきひと。嗚呼、けれど、彼は。
「……それは逆恨み……と言い切れないかも知れないところが辛くはあるんですけれども」
 おまえ、と名指しされたゆらぎは、やれやれとばかりに息を吐く。
 ゆきひとは七を待っていた、探していた。だから、彼女を置いて消えた育ての親と血の繋がらない妹の事を恨んでいた……そういうことだろう。
 ゆらぎの後ろを通り過ぎた安玖が、彼の遺した日記を拾い上げ、読み上げる。
 ああもう、しっかりがっつり自分の名前が残されている。もう否定できる要素なんて何処にもない。
「……まぁ、強いて言えば一応順番は逆なんだけどね。選ばれたのが妹の方だったら、外に出ていたのはお姉ちゃんだったよ、きっと」
 その選択が恣意的なものでなかったのか否かは、今となっては分からないけれど。今更そんなことを言っても、言い訳にすらならないけれど。
 それに今は、過去を懺悔している余裕などなくて。
「もぐらくん! 蘭嘉ちゃん! 上に居るなら返事してぇぇえ!!」
 本日何度目かの絶叫は、またしても虚空に消えた。

 返事を待つことを諦めたゆらぎ達がゆきひとの消えた階段に背を向けて、最後に辿り着いた囲炉裏の間には、蘭嘉の学生証が落ちていた。
「……これは……持ってってあげようか。外に出たときないと困るよねきっと」
 今は烈の手の中にあるそれを、ゆらぎは全力で単なる落とし物として取り扱った。それ以上ても以下でもないし、それ以外のことを此処で思い悩んでいても仕方がない。
 そしてそうこうしているうちに、約束の刻限も迫ってきているようである。
「れっちゃんの言うとおり、また二階の廊下踏み抜くのも洒落になんないし……そろそろ戻ろうか。場合によっては人形の家に突撃しないといけないかもだし、早く出る分には問題ないかな」
 月舘家には何もない。そう判断したゆらぎは、外に出ることを提案した。

>安玖くん、烈ちゃん

8日前 No.699

都城京、七 @milkywayy☆woNfuP/Psag ★iPhone=XZTOObmi5Y

【 都城京、七 / 神居家 納屋 】

「酷いわぁ、そりゃうちは八岳くんよりちょぉーっとお姉さんやけど……ぐすんぐすん」

 七を追いかけながらも慌てるように自身の発言のフォローを繰り返す八岳に都城はけらけらと笑いながら泣き真似をする。背負ってもらう気はとりあえずはないがいざとなったら七ぐらいは背負ってもらおう、なんて内心で決めつつ必死な八岳のフォローを聞きながらもあの、安仁屋とともにあれ≠ノ遭遇した納屋へと入っていく七の後に続く。

「――――かなしくて、くらくて、つめたくて…………ここには、もう、だれも…………いない」
「早乙女さんも、鷸さんも居てはりませんねぇ……あ、これ、鷸さんがしとったペンダント……?」

 五つ並んだ葛籠に触れた七がそう呟く。目の見えない彼女は人影を認識出来ないだけかもしれない、なんて僅かな願望を抱きながら都城が辺りを見回すも、其処にはやはり誰もいない。あの人形も、あの親子も、あの西洋人形も、あの女も、やはりいない。八岳の懐中電灯を頼りにきょろきょろとしていた都城がふと床へと目線をやればそこにあったのは楓華が首から下げていた十字架のペンダントで、それを拾いあげ、もう一度早乙女のカメラを確かめる。

「やっぱり、他に手掛かりになりそうなもんはないですねぇ、ほんま……何処行ってしもたんやろ……」
「…………たぶん、もうこの家には誰もいません。……そろそろ、月館家に行ったみなさんが、心配です……」

 ――――だって、あっちには、あの子が、あの子、って、誰?

 困り果てた都城の服の裾を七が引く。そして顔を上げ八岳へと向けながらそう提案する。先ほどの八岳の言葉通り、たしかにそろそろタイムリミットだ。長居は禁物、都城も頷き釣られるように八岳へと視線を投げた。


>> 八岳くん、

6日前 No.700
切替: メイン記事(700) サブ記事 (336) ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。