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曉の彼は誰時

 ( オリジナルなりきり )
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ホラーゲーム風 / 和風 / 脱出 @sweetcatsx☆2/Tw0gYxHcQ ★iPhone=VHGaT7ZbKj

 ――――朱月≠ノは気をつけて。

 ――――貴方も、ああなってしまうよ?


【 八月上旬 / 山の麓の町 バス停留所 】

 がたがたと揺られ続けること一時間。止まったバスをおりてゆっくりと辺りを見渡す。辺りには田畑、そして山。この山の向こうに目指している場所はあった。


 その山には入ったらいかん。
 その山の奥には、曉町がある。
 あの町は住人全員が神隠しにあった。もう誰も残っとらん。

 ――――あんたも、神隠しされちまうぞ。


 幾度となくかけられた言葉を愛想笑いで逃げ切って、一歩、また一歩と山の奥へと足を踏み込んでいく。生い茂る木々が空を遮るようにして立ち並んでいるせいか薄暗く、より一層怪しげな雰囲気が立ち込める。深い深い山道をただひたすら、真っ直ぐ。


【 八月上旬 / 曉町高台広場 】

 山道を何時間歩いただろうか。目の前に巨大な朱塗りの鳥居が視界に入る。安堵からか思わず溜め息が零れた。やはり、やはり実在していた。浮き立つ気持ちを抑えつけ辺りを見渡せば黒のワンボックスカーが視界に入る。……もしかしたら、広めの道もあったのかもしれない。

(…………他にも人がいるのか)

 心に小さく浮かんだ疑問。それらを拭い去るためにはこの中に入らなければ。深く息を吸い、ゆっくりと鳥居の下を潜る。――――その時だった。


「――――――――もう、逃げられない」


 鼓膜を震わせた少女の声。辺りに少女はいない。気のせいだったのだろうか。首を捻りながらもふと、視界に映った空に目を見開く。何故、どうして、空はまだ青かったはずだ。それなのに――――


 何故、空は闇に染まっているのだろう。
 何故、月はあんなにも赤く染まっているのだろう。


 ――――これは、閉ざされた町曉町≠ノ足を踏み入れた彼等に待ち受ける怪異譚である。

( 鈴の音が、聞こえた気がした )



 ///

( 冬だけどホラースレッドです! 兎にも角にもサブ記事へ! )

1年前 No.0
メモ2019/08/05 22:02 : スレ主☆e0aRNqDUyEM @sweetcatsx★iPhone-8p27ODDVl8

要必読事項(EDについて) → http://mb2.jp/_subnro/15697.html-234,250#a

イベントについて → http://mb2.jp/_subnro/15697.html-296,307#a


第一章『曉町』>>1-186

第二章『蠶』>>187-354

第三章『朱月』>>355-536

第四章『月嫁』>>537-

最終章『曉の彼は誰時』


【 登場人物(四章時点) 】

▼ オカルトサークル

 八岳龍矢(芙愛さん)

 逢澤安玖(千羽さん)


▼ 曉町探し隊

 御子柴ゆらぎ/ふわりちゃん★(夕邑三日月さん)

 鑓ヶ岳烈/足軽其の壱(すずりさん)


▼ 取材勢

 都城京(冬野)


→→→ 一覧(http://mb2.jp/_subnro/15697.html-299#a

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八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/書庫→裏道→墓地】

都城さんの手が本棚に触れたその時、その活路はまるでRPGのギミックのように俺たちの前に現れた。

「……冗談だろ……」

ひとりでにズルズルとスライドする本棚の、奥から現れる重厚な鉄の扉。俺の脳内に、某勇者が剣と盾を携えダンジョンを進むゲームの気持ち良い効果音が鳴り響いた。現実にこんなことってあるのか。おいおいちょっと凝りすぎだろ……。なんだか俺以外の皆が割とこのおかしな町に慣れてきてるっつーか順応してきてる気がするけど、俺はまだだ、まだ全然驚く。ってかなんで皆そんなにすんなり受け入れられるんだよ、良く考えろよ、おかしいだろ……。口を閉じるのも忘れて半開きにぽかんと開けたままでいると、更に鉄扉は俺達を招き入れるようにゆっくりと開いた。
……外だ。外に通じている……! 助かった……!
やったぞ、助かった! と、新鮮な外気を胸一杯に吸い込みかけて、そのとんでもない饐えた臭いにむせ返り、咄嗟に鼻と口を押さえて咳き込む。

「うげっ、……っげほっ、けほっ、……っんだよこれ!! …………え……ここお墓じゃないですか……まさか本当に地下通路があって繋がっていたなんて…………」

前列について行くのに必死になって全然周りを見ていなかったが、ぐるりと周囲を見回せば、通ってきた通路には幾つもの横道があり、何処かに繋がっていそうだったが今は土砂崩れの後のトンネルのように殆どが潰れてしまっている。奇妙な村の下に張り巡らされた巨大地下迷宮は……あながち怪奇小説の中だけの世界ではなかったのかも知れない。たったひとつ正面に残された道を抜けた俺達は、墓地へと出てきてしまったというわけだ。これは別に名誉挽回の弁明ではないが、俺は別に、死体は大丈夫だ。……大丈夫だ。こう見えても医療従事者の卵だ。……大丈夫大丈夫。気持ち悪い解剖実習もしたし、……大丈夫大丈夫。落ち着け俺。上がるな心拍数。

「……日記……? また日記ですか。今度はキャンパスノート……あまり古さは感じませんね」

もしかしたら、ついさっき話題にしていた式島さんのものだったりしないだろうか? 或いは奥さんの……。そう思って懐中電灯の光と視線とを同時に鑓ヶ岳さんの手元に移す。

「…………これって…………」

答えはその、どちらでもなかった。
此処に来てから今までで一番、見てはいけない文章を見てしまった気がして、思わず懐中電灯のスイッチを切ってしまった。白々と照らされていたノートの頁が残像を残して黒闇に溶ける。何もスイッチまで切ることはなかったのに、と気付いて、点け直した電灯は何も無い地面を照らした。

「……誰のものなんでしょうね。内容から考えるに式島さんのではなさそうだ」

読んでしまった文面、思い返すだけで胸糞悪い。自殺未遂? ふざけるな。そんなに辛いなら黙って死ねば良いのに、それをわざわざ書き遺すなんて。周りの奴らを悪者にして、残された人達が巻き込まれてどれぐらい迷惑するか、どれくらい後味悪い思いをするか、考えたことも無いんだろう。そもそもそんな風だからーーーーーー。
その思考から抜け出せない俺がまた悪者だっていうんだろ。そう差し向けてくる名も知らぬあの日記の書き手に、また更にムカついた。
けれど行き場の無い苛立ちが、無関係の鑓ヶ岳さんに伝わってしまったら彼女に申し訳ない。だって俺達は、関係ないのだから。此処で空気を悪くするような失敗を俺は踏まない。表情を悟られないように、それから怖がらせないように、そっと鑓ヶ岳さんのそばを離れた。

「……同情はしかねますね……生きたくたって時間が無い人だっているのに、こんな逃げ方をする奴は……」

懐中電灯を手に墓石や足元を照らしながら、湿った地面を踏む。じめじめしていて空気が重い。臆する事なく墓石を覗き込む御子柴さんの肩越しに若干遠巻きながら墓石を見ていると、ふとあの音がまた聞こえ出した。あの音……暗闇の中で、きっと何者かが、地面を掘っている。此処にくる前に僅かに聞こえていたその音は、俺達が墓地に来てから次第に大きくなっているようだった。

「……静かに。……誰かが、穴を掘って…………暁町の人でしょうか? 墓穴を作っている…………でも、なんで……?」

既にだいぶ喋ってしまっている面々、そして自分自身に、「しっ」と人差し指を立て、声を潜めて墓石の陰に屈んで様子を見る。今更隠れたところで意味があるのかどうかは不明だけれど。

「……隠れながら、近づいて見ましょう」

俺は電灯を消し、朱色の月が落とす墓石の陰を縫うようにしてこそこそとその音のする方向へと向かった。勿論、一人で行くのは嫌だから、時々後ろを振り返り群れから離れすぎないように注意を払って。

>all


【ごめんなさい! 遅刻しました!!】

5ヶ月前 No.526

都城京、七 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 曉町 墓地 】


 八岳の言葉に都城はすん、と鼻を動かす。饐えたような嗅ぎ慣れない匂い。日記にばかり意識を向けていたせいで気づかなかった。目を瞬かせ眉を顰める。ちらりと七に視線を向ければ七はあまりぴんときていないらしく首を傾けている。

「あっちになんかあるんですかねえ。ちょっと七ちゃん此処におってください、動いたらめっ、ですよぉ」

 墓地の奥を指差しながら辺りを見回す。そして七にそう声を掛けて墓地の奥へと足を進めていく、そろり、そろりと慎重に辺りを見回しながら。そして一つの墓石の前で足を止める。こべりついた水苔のせいか、誰の墓なのかは分からないがその墓石の前だけ土が盛り上がっている、まるで誰かが掘ったかのように。

 ――――そして。

「なんやろ、こ――――ひぃぃっ」

 盛り上がった土から伸びるそれ、暗闇でよく見えないそれを懐中電灯で照らした瞬間、都城の唇から悲鳴が零れズザザ、と後退り倒れるように尻餅をつく、手から転げ落ちた懐中電灯が墓石を照らす。


 土からは白く細い腕が伸びていた。そう、それは神居家で見たようなよく出来た人形の腕なのではなく、確かに生身の女性の腕であった。


>> ALL


(色々な諸事情から進行ストップさせていただいてましたごめんなさいー!! ちょっと進行させてもらいます!)

3ヶ月前 No.527

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【御子柴ゆらぎ/曉町墓地】
 ゆらぎが覗き込んだ墓の向こうには、幸か不幸か何もなかった。至って普通の墓石に、かつて供えられていたのだろう何かの残骸が転がっている。長らく誰にも参られることのなかっただろうその墓石は濃緑の苔に覆われつつあったが、何とかそこに刻まれた名前を読み取ることは出来た。
 それによると、この場所に葬られた最も新しい住人の名は。
「月舘、柚衣」
 何故だかひどく、嫌な感じがした。あるものの名前をどうしても思い出せない焦燥感の逆、とでも言おうか。何処かで見たことのある名前だった気がした。月舘家に迷い込んだ時のことだろうか、しかしその時が、もう何年も前のことのように思われる。

 しかしその奇妙な感覚の正体を探るより先に、ゆらぎの思考は後ろから聞こえた悲鳴により強制的に中断させられた。
 反射的にゆらぎが振り向いた先には、尻餅をついた京がいる。
「ちょ、ちょっと編集長大じょ……」
 大丈夫、と言いかけたゆらぎの言葉は、途中で墓地に広がる闇に呑み込まれた。
 京の手から落ちた懐中電灯に照らされて闇夜に浮かび上がった白いもの。作り物には到底思えない、しかし生きとし生けるものでは決してあり得ない、血の気のない一本の……ウデ。腕、なのか?

「ああぁ、取り敢えずなっちゃん見ちゃ駄目よ、いや見えてないからいっか!?」
 もう何が何だか分かっていないのが丸出しの台詞を吐いて、取り敢えずゆらぎは倒れている京に駆け寄る。助け起こそうと腕を差し伸べつつも、その腕すら先程地面から延びたモノに重なって見える気がした。
 アレはなんだろうか? 人間の腕? だとしたら何故此処に……いや此処は墓地だ、人が埋まっているのが正しい場所だ。なら何故外に? まさか生埋め……いやそんな筈はない。だとしたらもっとこうもがくなり何なり……途中で力尽きた? いや力尽きるも何も、此処は人がいない廃村ならぬ廃町だ。いつから……アレは、何時の、何だ。
 ぐるぐると纏まる筈のない考えを右から左に流しながら、やがてゆらぎはあることを思い出す。それは即ち、先程柊平が話していた殺人犯の存在。
 ゆっくりと、ゆらぎは盛り上がった地面を振り返る。
「……翔子、……ん?」
 そして、いなくなった、殺されたと言う彼の妻の存在。
「マジで此処は……」
 今までの異形に対するものとは違う、もっとじっとりとした純粋な恐怖が、墓地に溢れ出したような気がした。

>all
【またまた遅くなりましてすみません、そして今回も大人の都合ぶっこんでますm(__)m】

3ヶ月前 No.528

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/暁町 墓地】

烈の視力は良い方に分類される。そのため、薄暗い中でもある程度ノートの内容を読むことは出来たが、龍矢が懐中電灯で照らしてくれたのは素直にありがたかった。これで先程よりもノートの内容もよりはっきり見えるようになった。……これを、良いことと言い切ってしまえるだけの思いきりはさすがの烈も持ち合わせていなかったが。
とにもかくにも、今は日記の内容にばかり気を取られている場合ではない。そう遠くない場所から、何やら穴を掘っているかのような音が聞こえる。最初にそれに気づいたのは龍矢で、どうやら京が音のする方向に向かったらしい。このノートどうしよう、と迷っていた烈は一歩遅れる形となる。━━━━それゆえに、京の悲鳴が聞こえてきた時に彼女の傍にいることは出来なかった。

「編集者殿っ!?如何なされた!?」

よくわからないが、尋常でないことが起こったのはわかる。とりあえずノートは持ったまま、烈は京のもとまで駆け寄った。そしてひゅっ、と息を飲み込む。

「こ、これは……」

何者かが掘り起こしたかのように土の盛り上がった墓石の前。その土からは、生気の全く感じられない、かといって作り物でもない“腕”が伸びていた。何の比喩でもなく、本当に腕が伸びているのである。可笑しいとかそういう次元の問題ではない。これには烈も一瞬体を強張らせた。

「な、何故……このようなものが……。た、たしかに此処は墓地にござるが、それにしたって……」

腕が伸びることなんてない、と烈は口にしようとしてやめた。此処で常識を持ち出すのは、何だか適切ではないと思ったのだ。しかし烈としてはこの現象を“あり得ない”と否定したい。これまで邂逅してきた異形は、皆話が通じた訳ではないが理由を持って行動していた……ように思える。だが、この場で生身の人間の腕を目撃するのは、異形との邂逅とはまた違う気がする。土葬するにしたってこれほどあからさまに腕が出てくるような状況には陥らないはずだ。もしかしたら━━━━。

「……編集者殿。此方は、貴殿のものにござりますな?」

脳裏を過った嫌な予感を、無理矢理首を振ることで一旦外に追い出してから、烈は京が落とした懐中電灯を拾った。落とした時についたと思われる土を払ってから、彼女に手渡す。落としただけで呪われた、なんてことはさすがにあるまい。

>>周辺all様

3ヶ月前 No.529

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★0jNsxvmXp2_T0f

【逢澤安玖/墓地】

 龍矢の発言に背後に立っていた安玖は静かに眉を寄せた。親や周りに飲まれたタイプか……そう思っていただけに、余計、眉の皺は深かった。

(元々頭が良いか、せめて努力すれば最低ラインは超えられる――それだって、才能だ)

 勉強の仕方を変えれば成績が上がる。もっと努力をすれば成績が上がる。そうなのだろうか。そうなのだろう。そうなのだ。塾や教材を使えばたって、金もなく。時間を掛ければ成績が上がるたって、親の代わりに家事を全て引き受けていれば時間もなく。授業を真面目に聞けばたって、虐めでそれすらも叶わない。そもそも、向き不向きだってある。才能とは、そういうものなのだ。持って生まれたもの。それが金だとか、時間だとか、そういう、類のもの。
 そしてふ、と眼前の後輩に考える。
 彼はいつも、しつこいように、生きたくても生きられない人、と言っていた。それこそ、安玖の心臓を抉るほどに、しつこく。それは執着といっても大袈裟だとは思えないほどで、生死の話になれば急に人が変わったような振る舞いになる。そしてその瞬間ばかりは――正直なところ――結構、かなり、面倒臭いと安玖は思ってしまう。100%、相容れないやつだ。

(まあ、言うつもりもないけれど)

 それこそ「聞かれなければ答えない」話だ。安玖はいつだって家族の話も、人の好き嫌いの話も、のらりくらりと躱してきた。当たり障りの無い言葉を並べ、嘘にならない範囲で取り繕って、それ以上は深くつつくなと暗に脅してきた。その代りの様に安玖もまた、他者の家族の話には無関心を示し続けた。促しはしても教えてとは強請らない。


 と、都城さんのあげた悲鳴に引きずられるように全員が移動しだした。何かもう移動する前から“そっち”でしょ……という投げやりな気分になってくる。これでシンプルにドブネズミだとは(あの人がネズミ相手に悲鳴を上げる気がしないという意味も含め)思えないし、とあまりにも失礼なことを考えつつ安玖は七ちゃんの隣へと移動する。皆が離れようとしていたから、何となしに、だ。
 ただ遠目に野次馬よろしく見た状況を言うならば、腕。である。そう、腕がひょっこりはん。この表現が正しいのかは分からないが、墓の朽ち果て具合に似合わないほどに肉付きの良い腕が、ひょっこりはん。ミイラと言うにも瑞々しい(?)しなあ、ともう何だか暢気になっていた。慣れたというより恐怖方面の感情が無になっただけなんだけれども。そもそも今回は間近で見ていないし。
 溜息になる筈の吐息を飲み込み視線を辿る。目的地は墓石に刻み込まれた名だ。その字をじぃと暫し見つめああ、と思い至る。突飛な発想にはなるが、今までの情報を照らし合わせれば誰もが察し付いているだろう。

「……式島家の墓。今現在、どんなに低く見積もっても眠っている可能性の高い人が居るね。
 それこそ、赤い月の元、愛する夫に手紙をわざわざ書き留め……その手紙を受け取った旦那自身がまた、死んだと言い切っている人が」

 式島………翔子? 口元だけでその名を呼ぶ。その音を拾えた人間がどれだけいたのかは分からない。
 殺された? そうなのかもしれない。殺した? そうなのかもしれない。ただ、こうなってくると“事件”の犯人を追うという行動は、妙に滑稽で馬鹿馬鹿しいように思えた。

「本格的に式島さんを探す必要があるかも。……いやでも、本人が既に見ている可能性もある……あるか? あんな錯乱した奴が、」

 これを、と吐き捨てながら腕へとその冷めた視線を戻した。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.530

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_tVR

【御子柴ゆらぎ/曉町墓地】

 皆が一様に、土から伸びた白い腕をみていた。それ以外のものなど目に入れる余裕がないのはゆらぎとて同じで、あまりじっと見詰めていたいようなものでもないが、目を逸らすことは出来なかった。白くて細い、生々しい腕だ。生気はない、けれど墓場から伸びていて違和感がない程死に絶えてもいない。一縷の希望の先に、きっと絶望が繋がっているであろう……しかし、触れて確かめずにはいられない、そんな腕。
 何処かで誰かが、ゆらぎが先程口に出したのと同じ名前を告げた気がする。

 式島翔子――柊平の妻。
 しょーこお姉ちゃん――優しくて綺麗で、まるで自分の運命に抗う事を諦めているかのように儚く微笑う人。けれどある日を境に、とても強い決意を星空のように瞳に湛えた人。「貴方達も大きくなって、好きな人が出来れば分かるわ」と二人の頭を優しく撫でて……そして、町からいなくなった人。
 嗚呼、だから。そんなの知らないって。
 けれど――その人は、こんな所で物言わぬ死体になっていていい筈がない。彼女は、愛する人と幸せになっていなければならない。

 意を決したように、ゆらぎは京の下から一歩足を踏み出す。ザクザクと土を踏みしめながら、懐中電灯の明かりに照らされた腕へと近づいていく。土を踏みしめる度に嫌な臭いがするような気がして、けれどそれを否定するように、ゆらぎは腕と目線を合わせる。
 左腕だった。薬指には、くっきりと指輪の痕が残っている。
「えーと、ごめんなさい」
 手を合わせて謝罪をして、えいやとゆらぎはその腕を掴んだ。握手するような形で手の平に触れても、それは全く形を変えることなく、そして真夏の夜だというのに此方まで底冷えしてしまいそうなほど、氷のように冷たかった。腐敗してこそいなかったが、到底、生きてなどいられない温度だった。
 地下道の先、死体、墓地、殺人事件。此処まで来たら、今更倫理観などには構っていられない。
「……掘り返そうか」
 そっと手を離して、地面を見詰めるゆらぎの瞳は、酷く虚ろだった。

【大遅刻ぶちかまして、尚且つぶっとんだことさせててすいません。大人の都合連発した三章もクライマックスです、宜しくお願いします!】

>周辺ALL

1ヶ月前 No.531

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 曉町 墓地】

 全員が式島翔子だと思わしき死体に意識を向けているその時、ただ一人、その死体を瞳に映す事の出来ない七だけは隣にいた安玖に気付くことなく静かに足を墓地でなく古井戸へと向かわせていた。図書館に貼っていた井戸に近づいてはいけない、というあのポスター。それを律儀に読み上げた都城の言葉を忘れたわけではなかった。だがしかし、七はまるで誰かに導かれるようにふらり、ふらりと足を古井戸へと向けて進ませる。

「ここ――――……から…………逃――――……」

 右手で竹箒を握りしめ、左手で古井戸の縁に手を掛け中を覗き込むように古井戸の中へと顔を向ける。古井戸には梯子が掛けられていて底まで続いているようである。だが底は真っ暗で何も見えない。ぐ、と前のめりになったその時であった。


 ――――月嫁を、月嫁を捧げなければ。


「っ、ひ、……いや、あぁぁぁぁ!」

 突如響き渡った低音と、辺りを劈くような悲鳴。どこからともなく現れたのは複数の松明、ゆらゆらと辺りを照らす炎。そして全員の視界に入ったのは松明を持つ男達に取り押さえられる七の姿だった。

「っ、や、やだ! はなして! こわい、やめて!」

 竹箒を握りしめぶんぶんともがくように手を振るう。泣き叫ぶ七の悲痛な声音が辺りに響く。


 ――――もう一度、朱月を鎮めなければ。

 ――――もう一度、月嫁を捧げなければ。

 ――――町長の元へ、もう一度、沈めなければ。


「やだ、たすけて、――――……さ、――――たすけて、やつた――――……!!」

 悲痛な、縋るような悲鳴だけが墓地に残る。悲鳴が途切れた時、もう其処には松明の炎も、七の姿もなくなっていた。


 三章『朱月(アカツキ)』 終

>> ALL



(運営の都合上少し進行を変更させていただきました!みなさま本当に毎度毎度申し訳ありません……。というわけで三章が終了し四章に入らせていただきます! そしてここで七は退場させていただきました!それではみなさま、四章もよろしくお願いします〜〜! いよいよ物語はクライマックスに近づいていております、そしてこの四章では本編と並行して主人公の一人のサブイベントが開催されます! では、四章もよろしくお願いします!

 四章ですが、今からついったーに投下させていただく分岐アンケートを元に皆様には三章〆レス?を投下していただくこととなります! 全員のレスを確認後、アンケート結果を元に四章開始文を投下しますのでよろしくお願いします!

 分からないこと、ご質問などあればいつでもお声かけください!)

1ヶ月前 No.532

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 曉町 墓地 】

 落ち着け、落ち着くんだ。都城京、二十五歳。この中では最年長、社会人のお姉さんなんだ、自分は。誰よりもしっかりしないと、誰よりも落ち着かないと、誰よりも、誰よりも。ばくばくと打ち鳴らす心臓の音が鼓膜を刺激する。それ以外の音は遠く、ちゃんと聞こえない。どこかでしきしましょうこ、という名前を呟く声が聞こえる。式島翔子。あの警察官、式島柊平さんの奥さんで、そんな人がなんでこんなところに埋まってるん、言葉にしようとしても声がでない。

 そんな状態の都城京の意識が引き戻されたのは自身の横を通り過ぎるセーラー服が視界に入ったからだった。黒髪のその少女が視界に映る、その動きが、伸びた腕に触れようとするその動きが視界に入った途端、あかん、と都城は制止の言葉をあげる。触れてはいけない、見なかったことにすべきだ。まるでそれは、パンドラの箱のようだと思ったから。掘り返そう、そう言うゆらぎの言葉に息を飲む。

「さすがに、それは――――ッ!?」

 止めた方がええと思います、そう言おうとした言葉が途中で途切れる。切り裂くような悲鳴、それはこの町に入ってから幾度か聞いた中でも一層高く、悲痛な叫び声だった。そして都城は思い出す。しっかりと握っていた七の手を離していること、その行動が自身の視界の外であること、そして、七はふらふらとすぐに動き出してしまうこと。

「なつちゃ――――」

 ばっと振り返る。井戸には近づいてはいけません、そう図書館に貼っていたポスターに書いてあったこと、幼い子供の日記、危ないから駄目だと、確かに言い聞かせたはずなのに。目の見えない七の姿は井戸のそばにあり、その周りを松明を持つ着物姿の男達が囲んでいた。男達が繰り返す言葉は理解出来なかった、七を掴む男達はどう見ても自分達とは違う存在だということは明らかで。

 都城京は動く事が出来なかった。
 縋るような悲痛な叫び声に答える事が出来なかった。
 消えていく七を、見ていることしか出来なかった。


「ど……どないしましょ…………なつちゃ、連れていかれてしもた……」

 七が消えた。忽然とその姿を消した。男達とともに。立ち尽くす都城は震える声音でそう繰り返す。どうしよう、どうしたらいいのか、と。七は井戸のそばにいた、井戸の底へ下りようとしていたのか、七の行動はいつも曖昧だったが何かあるのかもしれない。けれど、消えてしまった七を探しにいくのが先決ではないか、今まてずっと一緒にいた、怪しくとも大切な、仲間なのに。

「七ちゃん、探しに行かんと……」

 小さく呟く。それが、都城京の決断だった。立ち尽くすことしか出来なかった弱い自分を奮い立たせるように腕に爪を立て、息を吐き周りを見回した。

>> ALL(〆)


(ということで見本?も兼ねて都城の〆レス投下します!)

1ヶ月前 No.533

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/暁町 墓地】

「うわ、腕だ!? うわ、ウソ!? せんぱぁい! 腕だ!!」

俺は情けなくも、俺を追い越していった皆より遥かに遅れて後をついて行った。そのくせに、口々に驚きの声が上がる対象を一番最後に覗き込んでおきながら、見りゃあ分かると言われそうな頭の悪い反応を大声で上げてしまった。なんて知性の欠片も無いリアクション! しかもこれ二番煎じだ!

只今、一同の視線を一身に集めているのは、鬼さんこちらと幽かな手招きをする格好で、ぬるく湿った地中より生え出でてたまま時を止めたる、白くひんやりとした女人の手であった。夏の夜に似つかわしくもない粉雪を纏うようにさらりとした女の肌は、屍と呼んでしまうには未だ瑞々しい。それなのに、硬直した節々から土色の風に乾き、桜貝色の爪先から生の気は零れ落ちていく。繋ぎ止める環を失くした薬指は細く、うつし世への最後の糸を掴もうと空を掻いたままーーーー……違う、そーゆーやつでもねぇよ。ともかく今回は人形じゃない。これは、生きていた人間の腕、つまりリアル死体だ。皆の口々に呟くその名を信じるのであれば、身元は式島翔子……警察の式島さんが真相を探していた、奥さんの死体ということになる。
……って、いやいやいやいや、やばいだろ。遂に、本当に、殺人事件じゃないか。なんて。
いかにも、いつもの癖で悲鳴を上げそうな場面だ。

「……そうですね、掘り起こしてみましょう」

うわぁぁぁぁぁぁぁ! し、しししし死んでる! ……とでもやると思ったか? 式島さんから奥さんが殺されたという話を聞いていたお陰だろう。いつもの不意打ちよりは驚かなかった。それに、此処は墓だ。墓に死体があるのは全く理に適っている。筋が通れば、何も怖くは無い。……と、思って俺は今、自分自身を勇気付けている。

「カスパーの法則です。空気中と水中と地中での腐敗の進行速度は8対2対1……地中での死体の腐敗は、空気に晒されている場合の8分の1しか進みません。地上に出ている手でさえこんなにちゃんと残っているなら、地面に埋まっている他の部分からはかなりちゃんとした手掛かりが得られる筈です……たとえば、翔子さんの死因とか、暁町の人に彼女が何をされたのかとか、そもそも本当に翔子さんなのかとか、式島さんが探していた翔子さんの仇とか」

……って、法医学の先生が特別講義で言ってたのを思い出した。ふん、怪奇現象神隠し村も、時代錯誤儀式に消えた花嫁も、明快な説明さえつけてしまえば怖いもの無いんだからな!

「ですから、掘り起こしたほうが良いと俺も…………」

流石に素手で触るのも気が引けたので、図書館で拾った縄を代わりに手首に巻きつけようとループにしながら…………その時…………突然響き渡った闇夜劈く悲鳴に俺の注意力は一瞬にして攫われた。

ーーーー七ちゃんっ!?

それは一瞬の出来事だった。
揺らめく松明の灯りに目が眩む。七ちゃんの悲鳴に身が竦む。

「……七ちゃんっ……!!!!」

どういう事だ、何で誰もいなくなったはずの町に住民らしき人が居る? 何で七ちゃんを連れて行く? 何処に連れて行く? 誰なんだよあれは? 何で連れて行くんだよ? 七ちゃんが近づいては行けない井戸に近付いたから? それとも七ちゃんの記憶に無いだけで本当はこの町の人だから? なんで、なんで、月嫁って何だよ、図書館の古い文書に出てきた儀式のことなのか? そうだとしても、どんな理由だとしても、なんであんなに嫌がってる子を大勢で寄ってたかって…………。…………。

声が出せない。怖くて声が出せない。あんなに無駄吠えばかりしていた癖に、金縛りにあったみたいに声が出ない。相手が超常的なものではないと分かれば怖くないとか、そもそも人間様と科学の前に不思議なものなんて無いとか言っていた嘘吐きは何処のどいつだ。めちゃくちゃ怖ぇじゃんかよ。声を上げて前に飛び出して、孤立無援の小さな一人を取り返す事も出来ないぐらい、人間ってめちゃくちゃ凶悪でめちゃくちゃ怖ぇじゃんかよ。

「あっ、まっ……て…………七ちゃ、…………」

蚊の鳴くような声は、火の粉の爆ぜる音にさえ掻き消される。あの数じゃ、俺たちが出て行ったって無理だ。無理だ無理だ無理だ。どうせ無理だ! それに、俺たちは七ちゃんの一体何を知っているっていうんだ? 七ちゃんはやっぱり、この町の人で、この町に取り返されるべき子で、この町の何か俺たちの知らない掟の中に帰って行くべき子で、本人がそれを忘れていただけで、結局俺たちとは違くて、結局あの子のこと何にもわからなくて、月嫁?かなんかよく知らないけど、こうやって結局遠くに行ってしまうのが本来の彼女のあるべきところだったり…………

ーー「――――たすけて、やつた――――……」

だったり…………
「…………っ…………!」
だったりするわけが、ないだろ!!!!

「おい待てよ!! その子を離せ!!」

もう遅い。俺は怒鳴りながら松明の灯り目掛けて駆け出していた。
今自分が何をしているのか、ちょっと確かでは無い。多分相当に頭がおかしい事はわかる。頭が悪い事をしている自覚はある。でも此処で足を止めたら、声を上げなかったら、七ちゃんが居なくなるばかりか、俺を追いかけて波のように迫りくる巨大な影に飲み込まれてしまう気がした。

「離せっつってんだろ!! 嫌がってるだろ、聞こえねぇのかよ!!!! 通報するぞ、このっ!!! 離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

七ちゃんを取り囲み掲げられた焔の群れ。そこに突っ込んでいくのは、夏の虫にでもなったみたいに馬鹿な気分だ。

「おい゛待てよ!!!! 待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!! クソ野郎ふっっっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 理不尽過ぎんだろがよ馬ぁぁぁぁぁぁぁぁ鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


駄目だ、返せ。返せよ。俺等のじゃないけど、あんたらのでもねぇだろ。ちゃんと話し聞いてやれよ。ちゃんと俺たちにも七ちゃんにもわかるように説明しろよ。駄目だッつってんだろ……。
鉄砲玉のように飛び出し全速力で追いかけたのに、あいつらとの距離はそんなに無かったはずなのに。「七ちゃん!」と伸ばした手が僅かに触れそうに近付いたのを最後に、奴等は信じられない速さで遠ざかり、
まるで幻のように消えてしまった。
叫びながら走るなんて、息が切れるに決まっている。鴉よりも酷い悪声が、罵詈雑言を並べ立てて墓地に響き渡る。

なんなんだよ。
あいつらも意味わかんねぇし、この町もわけわかんねぇ。俺だってなんでこんな事をして、なんでこんなに空振りして、報われなくて、なんでこんななんの足しにもならないのか、まるで分からない。
うずくまり、呼吸を整え、地を叩いて立ち上がる。

「…………っハァ……なにが、月嫁だよ、何が儀式だよ、……っハッ……何がしずめるだよ、……ほんと、今の時代に何言っちゃってんの……ッ……ウケる……マジ馬鹿みたいなんですけど。……っッハハ、本人の意思は無視ですかぁー? みたいな。……俺にはやっぱオカルトは向いてないみたいです。現実的にこんなのフツーに許されるわけがないです。…………七ちゃんを探さないと」

朱月とか、儀式とか、月嫁とか、故人の想いとか、怪異とか、そんな不確かなものに、これ以上誰かを取られたく無い。七ちゃんだけじゃ無い。皆んなで一緒に来たはずだったのに、美崎先輩や佐々山先輩や鷸先輩だって怪異に巻き込まれてはぐれてしまった。俺を助けてくれた早乙女さんや、潜竜ヶ滝さん達もこの町の闇の何処かに呑まれてしまった。それに、狩谷さんは……この妙な気に当てられて、目の前で死んだじゃないか。この町で会った人じゃない人たちも、殆ど皆んな暁町や朱月とやらに人生をめちゃめちゃにされた人ばかりじゃないか。これ以上誰かが理不尽に消えてしまったら嫌だ。怖い。誰が消えても嫌だと思うのは当然だろう。特に……特に逢澤先輩は嫌だ。勿論七ちゃんだって嫌だ。死んでほしくない死にたくない。

七ちゃんは、俺に助けを求めていたんだろうか。

はっきりとは分からないけれど、そんな気がしてしまった事が、俺を退けなくなってしまった引き金だ。どうか俺を名指ししないでくれといつだって思いながら生きてきた。不特定多数の中で、誰かが名乗り出るのをいつだって待っていた、サイテーな、でもそのわりに何処にでもよくいるクズだ。その重さと怖さに耐えられるほど強くないから。そんなもの預かる資格も度胸も持って無いから。
もし聞き間違いじゃなかったとしたら、あんまりな御指名だ。さらに、俺なんかを信頼して呼んでいたのだとしたら、それは俺にとってどんなホラー小説よりも、
……怖い話だ。

傲慢に燃える紅色が過ぎ去った深い夜空の、昏い水底のほうから、ぼんやりと歪む朱い月が誘う。


「…………七ちゃんを探しましょう」


>〆



【三章でもお世話になりました!
どっちが正解なんだ……?と本体はだいぶ悩みましたが、八岳の選択肢回答は「七ちゃんを探す」でお願いします。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します!】

1ヶ月前 No.534

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/暁町 墓地】

不謹慎だと叱責されるかもしれないが、あまり生々しくなくて良かった、と烈は思う。いくら怪異を蹴り飛ばすだけの度胸を持ち合わせている烈だって、それが怪異だとわかるからそう出来るだけなのだ。目の前にグロテスクな代物が出現したら、腹の中に入っていた食事を戻したって可笑しくはない。一部を除いて皆不気味なくらい落ち着いている(ように烈には見える)中で、一人だけパニックになるというのはなかなかに耐え難い。周りにだって迷惑をかけるだろう。ぐっと拳を握り締めて、烈は地につけた足を踏ん張る。幸い━━━━と言えるかはわからないが、相手は勝手に動いたり襲い掛かってきたりする怪異ではなさそうだ。ならば少し調べたって問題はないだろう。━━━━というか、あって欲しくはない。
とにもかくにも、いつまでも突っ立っている訳にもいかないので、烈もそっとゆらぎの後ろから顔を出す。どうやらこの腕を調べるために、墓を掘り返すつもりでいるようだ。

「……い、一応、手を合わせてからの方が……」

手を合わせてからの方が良いのではありませぬか、と烈にしてはおずおず皆に告げよう━━━━としたところで事態は転換する。皆の賛同を得ようとしてきょろきょろと辺りを見回した際に、烈はあることに気づいた。

━━━━七がいない。

はっとして、烈は身を翻す。また何処かに落ちそうになるなんてことが起こったら大変だ。加えてこの墓地には古井戸があった。もしも七が古井戸に近づいて、誤って其処に転落してしまうようなことがあったらと思うと、地面から伸びている腕なんて後回しにしたって問題ないように思えてくる。

「七殿?」

何処にいるのか。そう遠くへは行っていないでくれ。そう願って呼び掛けた矢先に、墓地の中に低く呻くような声と、甲高い少女の悲鳴が響き渡った。間違いない、間違えるはずもない。後者は七の声だ。

「七殿っ!」

何が起こっているのかを確認する前に、烈は反射的に叫んでいた。そして数秒遅れてその目が七の姿を捉える。古井戸に向かっていたのであろう七を取り囲む得体の知れない男たち。彼らは嫌がる七を取り押さえて、何処かに連れていこうとしているらしい。そう、冷静に判断する余裕なんて烈にはなかった。ただ、弾け飛ぶように七のいる方向へと駆け出していた。

「やめろ、七殿から離れ━━━━っ!?」

いきなり走り出したからだろうか。それとも、外部による何かしらの力が働いたからだろうか。理由なんてわからない。今、わかるはずもない。詰まるところ、烈は彼女にしては珍しく思いっきり転倒した。あまりにも突然のことだったので、受け身を取る暇もなかった。同じように七を連れ戻そうとしてくれているらしい龍矢の声が聞こえたが、久しぶりに転ぶなんて事態に陥った烈には全ての音が何処か遠くの、自分とは薄い壁を隔てた向こう側で響いているようにしか思えなかった。
痛い、痛い、痛い。転ぶなんていつぶりだろうか。あの時だって、何が起こったのかわからなくて、体が痛くて仕方がなくて、動くことなんて出来なかった。戸惑っている間に、“自分の背中を押した人”は走り去ってしまって、そのまま何もわからないで、全てを諦めたように意識を手放して━━━━。

「……っ、七殿ぉ!」

━━━━そんなの、認められない。認められる訳がないではないか。此処で逃げたらいけないと、烈は体についた土を払うこともなく立ち上がった。膝は痛いが七の抱く恐怖に比べればどうということはない。あの子は、きっと暗闇の中で、誰とも知れない者たちに連れていかれそうになっているのだから。

「何処の誰だかとんと知らぬが、貴様らには道理を弁える頭もないのか!八岳殿……其処の御仁も、それに七殿自身も離せと言っている!我等は、我等は己の足で此処までたどり着いたのだぞ!貴様らのように、こそこそ隠れていた訳ではないわ!」

走る気力などない。だから叫ぶしかなかった。しかし烈の声など届かない。あれだけ全力疾走して、男たちに叫んでいる龍矢の声すらあの男たちは意に介していないのだ。揺らめく松明の灯りはあり得ないくらいの速度で遠ざかっていき、七の泣き叫ぶ声もあっという間に聞こえなくなってしまった。

「っ、あ……七、殿……」

ずるずると、烈は膝から地面に崩れ落ちる。何も出来なかった。七の傍にいたのに、何も。ただ、見ていることしか出来なかった。

「……っそ、くそ、くそ、くそ、くそ!!何だあの卑怯者共、女の子に寄って集って!儀式ィ?月嫁ェ?そんなの自分たちの中でどうにかするものでしょ!?あんな、あんなに嫌がってる子を!抵抗してる子を!無理矢理連れていくなんて……!やっぱりあいつら頭可笑しいよ、この空気に流されてるとか以前の問題だよ……!ああ、本当に腹が立つ、苛つく、胸糞悪い、むかつく!!勝手に先導になった気になって、引っ張ってきたつもりになってた馬鹿野郎が、一番気に入らない……!」

手が汚れるのも気にせずに、烈はひたすらに地面を殴り続ける。其処にあるのは、七を無理矢理に連れていった者たちへの怒りだけではない。近くにいながら七のことを助けられなかった自分のことを、責めて責めて責め続けていた。
やがて烈は顔を上げる。眉間に深い皺を刻みながら、唇をこれでもかと噛み締めながら。彼女はやっと服に付いた土を払って口を開く。

「……拙者も、七殿を探しとうございまする。少なくとも彼女をこのまま放っておく訳にはいきませぬ。儀式だか何だか知りはせぬが、何も知らされぬままでは腹の虫が収まりませぬ故」

静かな怒りを滲ませながら、烈は松明の群れが消えていった方向を睨み付ける。きゅ、と刺又を握る手に力がこもった。

>>周辺all様(〆)

【いつもお世話になっております……!三章終了とのことで、どきどきしながら〆レスを書かせていただきました。烈は七ちゃんを探す方向でいこうと思います。四章の方も何卒よろしくお願いいたします……!】

1ヶ月前 No.535

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/曉町墓地】

 じっと、手を見ていた。指輪の痕の残る、細くて白い指。痩せ細って冷たい腕、けれどきっと……優しかったであろう手。
 それを見詰めたまま、土へと手を伸ばしたこと――それを、ゆらぎは永遠に後悔することになる。
 まだ温もりを残す指先が生ぬるく湿った土に触れる刹那、背後で七の悲鳴がした。びくりと腕を引っ込め、その勢いで振り返った先では七が必死に男たちから逃れようともがき、泣き叫んでいる。
 先程まで影も形もなかった村人達に、七が連れ去られようとしている。
 それだけでも一大事だと言うのに、彼等は言った……月嫁と。

 月嫁、それは曉町に生まれた女にとっての誉れ、そして呪い。

「駄目、駄目よ! 待って、違う、編集長……なっちゃん! おね――……っパパッ!」
 最早誰を呼んでいるのか、近くにいる人の名を手当たり次第に口に出しながら、ゆらぎは手を伸ばす。しかし、腕の方に限界まで近寄っていた彼女の目の前には、全力で駆け寄っても到底埋められぬ距離が七との間に横たわり、結局それは、何にも触れることなく空を掻いた。
 だらり、と落ちた腕は、何処か墓から伸びる腕に似て。
 そのままぺたりと地面に座り込んだゆらぎは、ただ、七の消えた井戸を――慟哭する仲間たちを見ていた。
 やがて。
「……探さなきゃ、なっちゃんを……手遅れになる前に」
 井戸ではない遠くを見詰めながら、ぽつりとゆらぎは呟いた。

>all

【滑り込みかつ短文ですみませんm(__)m ゆらぎも七ちゃんを探しに行きます!】

1ヶ月前 No.536

四章開始 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8


 ――――こわいこわいこわいこわい。いやだやめていきたくないまだだめなのおねがい。ちがうだれなのわたしになにをいいたいのわからないこわいちがうあかつきやめていやだたすけてくらくてちがうみんなみんなたすけてしんでしまえ。

 腕を掴まれる感覚、地に足がつかない。引き摺られるままにどこかに連れて行かれている。あかつき、つきよめ、ぎしき、鼓膜を震わせる色んな人の声に混ざるなにかの声。

「――――っ、あ、待っ、駄目……!」

 手から何かが滑り落ちる。からん、と音を立てて地面に落ちたであろう何か。わたしの手の中から消えた大切な大切なもの。振り返ろうとしてもわたしの腕を掴む知らない人たちはそれを許してくれなくて。いやだそれはたいせつな、たいせつなものなのに、失くしてはいけない、あれがないとわたしは、わたしは――――

 たすけて、叫ぶ声はもうだれにも届かない。




【 都城京 / 曉町 墓地 】

「――――じゃあ、んーっと……どこに探しに行ったらええんやろか……」

 七ちゃんを探しに行く、そう決めたはいいが彼女がどこに連れて行かれたのかそれが分からなければ探しようがない。この恐ろしいものがまだまだいるであろうこの町をくまなく探さねばならないのか、そう思うと眉が下がるし溜め息が零れる。おっといけない、ちゃんと考えなければ。だって私は年長者、お姉ちゃんなんだなから。

「地図を見た感じとさっきの明らかにヤバめな人等の言っとった話の感じやと、神社か町長さんとかいう人のお家っぽいですけど……皆さんはどっちやと思いますぅ?」

 思い出すように首を捻りながら周りを見回す。空には変わらず赤色の月が私達を照らしている。赤色の月、朱月、月嫁、儀式、何でこんなことになってしもたんかな、そんな泣き言を心の中で零しながら鉄パイプをぎゅ、と握りしめる。



 ――――どこかで鈴の音が聞こえた、ような気がした。


 第四章『月嫁』

>> ALL


(四章はっじまっりまーす! 夏ですね! ホラーな季節! ホラゲスレの季節! それではではでははじめていきたいと思います! と、まずここでお知らせ! この四章では七を探しに行く、という本編ストーリーと同時進行でサブイベントが開催されます! サブイベの主役は〜〜〜〜? ホラゲスレの悲鳴担当、我らがチワワくんです! サブイベは一章の安玖くんイベ同様アイテム入手→特殊レスで解放されていきますのでとりあえずガンガンあちこち探索してくださいね!

 それでは! 四章スタートです! ……とりあえず行き先決めて進んでください!)

1ヶ月前 No.537

推古 @iwing ★pWVUx1kquL_H3N

【安仁屋右叉兎/???】

井戸に掛かった梯子を下りた。
下を見下ろすと真っ暗な暗闇がヘドロのように沈殿している。
怖くないと言えば嘘になる。何もないのを確認すれば直ぐに引き返すつもりだった。
恐怖で思わず足を滑らせた。
ドスンという音とともに尻餅をつく。湿り気を帯びた土がクッションとなり衝撃を和らげたのが不幸中の幸いだった。
服に付いた泥を払った。見上げれば悪魔のような朱色をした口がぽっかりと開かれていた。
遠くの方から鈴の音が聞こた。
音がした方へは一本の通路が伸びている。
(もしかしてそこにいるっスか……?)
七の頭飾りに付いていた鈴を思い出し、注意深く耳を澄まして聞き耳を立てた。
人の気配が感ぜられなかったが、なおも鈴の音は鳴り続けている。
(どうしようか……皆を呼びにいくべきっスかね……?)
再び頭上を仰いだ。しかし、今は時間が惜しい。後の事は意に介さずに勇を鼓して足を踏み出した。
先へ進むと今度は滴り落ちるような水音が耳朶を打った。
鈴の音はこちらを誘うかのように鳴り続く。雫の音は、何故だか孤独の夜にすすり泣く女性の涙を連想させた。
暗闇が視界を覆っている。壁伝いに手をつき歩きながら音の正体を探ろうとしていた。ここまで来るともう後には引き戻れなかった。
ぱっ、と視界の先に僅かな明かりが差した。それは外へ通じる出口か……。
その光を目指して尚も歩を進めていると、その道中【白無垢を纏うずぶ濡れの女】が姿を現す。
(あ……あれは……)
しかし、その目にはもはや女の姿を捉えることは叶わなかった。
(兄さん……俺だよ、右叉兎だよ……)
目にいっぱいの涙を溜めながら女へと手を伸ばした。
(今度は俺が……兄さんを守る番だから……)
優しく微笑み、一歩一歩、だが着実に女へと近づいて行った。
寸前。その手が女に触れるか触れないかのところで……。

【みんなみんな、死んでしまえ】

【もう誰も逃げられない】

右叉兎の意識は断絶した。

>> BAD END

1ヶ月前 No.538

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/墓地】

 皆が方針を決めるまで黙りこくっていた安玖は小さな逡巡の後、井戸の傍に立っていた。というか人の偏りからしてそこに行かざるを得なかった。

「気になることは、沢山ある。民謡では神である男が舞を見せて求婚し、嫁を貰っていったのに……御子柴さんの見つけたものには『月嫁が踊れ』と書いてあった。伝承も、民謡集も、月嫁之書も、どれもが部分的にしか重なってなくて……本当に同じ話をしているのか不思議になる」

「最初のお姫様が村長ないし豪族の娘なら、行くべき先は村長の家になるけれど……単純に儀式についてなら、土地神を崇め情報を保管し宰る神社になる。……あの彼がわざわざ鍵まで落としたのも気になるし……」

 けれど伝承の寄せ集めはそんなものだ。民謡集は良い部分しか書き出さないし、伝承は怪異が何と恐ろしいかということに集中する。
 暁町はいつだって合理的だ。理不尽ではあるし此方を生きているものとして扱ってくれはしないけれど、町そのものが願う目的を果たさせるためならば、恐ろしいまでに的確な道を示す。解釈する此方が間違えたりしなければ、概ね“思うがまま”なのだ。
 と、そこで安玖の脇を安仁屋さんが通り過ぎた。井戸を確認するつもりなのだろう、既に梯子に足が掛けられている。

「もう暗いから、踏み外さないでくださいね」

 それは四割私情の注意だった。女性陣を降ろすよりは男性陣の中から誰かが降りなければならない。が、龍矢は見ている此方が不安になるほど動転するのが目に見えているし、安玖は──高いという一点が割と難点だ。情けないが龍矢以上に足の竦む自信がある。
 もしものために、と梯子の少し脇で井戸を覗き込む。落ちないように、手元のスマホで彼の目を刺激しないように照らして。それでも見えない底は直視しないように、安仁屋さんの足元を見続ける。

 ──その時だった。

 ずるりと足が滑った。安仁屋さんの小柄な体は悲鳴を上げる隙もなく闇に飲み込まれていく。思わず伸ばした自分の掌越しに、群青の髪が瞳の奥で黒と混ざるように爆ぜる。

「安仁屋さん!!!!」

 悲鳴だった。何だと聞かれたならば、確かに安玖の悲鳴だった。がくんと膝から力が抜け井戸に縋り付くように座り込む。その拍子に奥底を覗き込むようになった上半身にひゅう、と喉が鳴り腕が震える。
 ──掴めなかった? また? 七ちゃんも、安仁屋さん、も? また、伸ばそうと思えば届いた筈なのに? 掴もうとすら、しなかった?

「っ、ぁ……」

 目が回る。深い。底が見えない。足がつかない。力が入らない。落ちる。深い。高い。高い。──怖い。恐い。こわい。たかい。おちる。こわい。さむい。いたい。しんじゃう。しんで。しん、しんで! しんで!!
 違う。と喘ぐように言葉を吐き出した。震える腕を無理くり突っ張っては、は、は、と荒くなる呼吸を無視して吐き続ける。

「考えろ……考え、ろ。っ、は、ぅ、井戸なら、流石に、そ……深く、な……音も深く、なかった」

「古井戸、水、底、時代的、に……底、は、土……石じゃ、ない」

「死なない。死には、しない。やっ……はしご、も、底までな、てもっ……上がれる高さは、ある、から」

「それ、に、声は届く、はず。け、ど……ひ、きこ、え……っない、か……だからっ」

 高い。怖い。嫌だ。いや。やだ。無理。
 呼吸が浅い。見えない井戸の底から目が離せない。逸らせない。怖い。体がふわふわする。浮く。落ちる。

「あが、れなっ……ゆう、が、あ、ある、と……し、したら、ここ、なつ、ちゃ、あかつき、かあさ、しぶき、おかーさ、きぃくん、かなた、かのじょ、まゆ、だから」

「のみこまれた」

 安玖の声は幼子の様に引きつり上擦っていた。

>>ALL

1ヶ月前 No.539

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/暁町 墓地】

七ちゃんはどこへ連れてかれてしまったのか。
七ちゃんを探す事にした俺たちだが、行き先を見定めることが出来ずにいる。町長の家か、それとも神社か、と都城さんが問いかけてきた。
あの子を目の前で連れ去られてしまった瞬間のことをよくよく思い返す。暁町立図書館で見た文献の数々や、地下から墓地に出るまでのことをよくよく思い返す。ただでさえ人数がこんなにも減ってしまった。この上更に二手に分かれて……という訳にも行かなさそうだ。けれど、もしも選択を間違えたらその間に七ちゃんが……かといって此処でモタモタしていてもその間に…………くそっ、どっちに行けばいいのか全然分からない。

七ちゃんが消えた暗闇の向こうを睨み、歯軋りするように奥歯を噛み締めていると、良く知った声の只ならぬ叫びが聞こえた。安仁屋さん! と、悲鳴に近い叫び声。振り返れば、井戸を覗き込むようにして逢澤先輩が大声を上げている。
「どうしたんですか!」と身を翻し井戸に駆け寄ったのと、先輩の身体がぐらりと傾くのとほぼ同時だった。

「先輩!」
膝から崩れて井戸に縋るようにしている先輩の上体を抱き、その視線の先を辿って今何が起きたのかを全速力で推察する。ーー安仁屋さんが、井戸に落ちた?
さっきまで確かに此処にいたはずの安仁屋さんの姿が無い。けれど、先輩の空中分解しかけた目撃情報から判断するに、落ちたというより途中まで降りていてそう高く無いところから落下したのか?
「安仁屋さーん!」
目を凝らしても井戸の中には暗闇が広がるばかりで、何も見えない。そこを覗き込んだ時だけ一瞬盲目になったかの様に、一切の光もない。俺の投げかけた声は井戸の壁を反響するばかりで返事は無かった。
谺の残響が消えてなお、暫くの間、耳をすます。

先輩の証言が正しいのなら死にはしない高さ、そして彼の時代考証通り底が土で自由落下のエネルギーが衝突にぶつけられる際にクッション代わりになってくれているのならば、どうにかしたほうがいいのは先輩のほうだろう。
井戸から顔を背けさせ俺と向き合わせるように引っ張ってみた。いつも冷静沈着な先輩がこんなに狼狽しているのを見るのは、月舘家の二階で先輩のお母さんと遭遇してしまった時ぐらいだった。いやもしかしたら今回のほうが酷いか。呼吸が浅く速く、手が震えている。……過呼吸か。

「先輩!! なにしてんですか! 逢澤先輩!!!!」

腕を掴み声を掛ける。

「俺です、八岳です。大丈夫、落ちてないから。安仁屋さん死んでないから。……落ち着いてください。大丈夫です、俺のほう見て。呼吸を合わせて。そんなに頑張らなくても息は吸えてます」

っていう救急対処方法を、夏休み前の実習で丁度やった。呼気を吸わせる丁度良い紙袋でも持ってれば良かったのかもしれないがそんなに都合良くはいかないし第一いきなり口を塞がれたらそれこそパニックになられそうだったから、やめておいたほうが無難か。代わりに目を見て黙らせる時に立てる人差し指を失礼ながら先輩の口の前にあてさせて貰い、遅く深い呼吸を指示した。まあ、日頃の行い的に誰より一番呼吸を乱し息切れしている俺が言っても、説得力皆無な気がしないでもないんだけど。

「……泥濘みを移動する水音が井戸の底から聞こえます。安仁屋さんは歩いて移動できているってことですよ……そう」

そう願うしかねーだろ。嘘だよそんなの聞こえたなんて。でも聞こえて欲しかったし、そう思っていたから幻聴なのか俺の耳にも確かに聞こえたんだ。井戸の底を這いずる様に移動していく息づく者の気配と足音が。

「…………先輩、さっき俺に言いましたよね。死を悲観して助けられなかった自分に嘆いて蹲っているなら、何するんでしたっけ? 安仁屋さんは転落死なんてしていない………………歩けそうですか? 先輩」

勿論、言葉の続きは本当に忘れたわけでは無かった。
井戸端に屈み込んだまま、都城さんと槍ヶ岳さんと御子柴さんのほうを振り返る。時間は無くなるばかりだ。早く行き先を決めて、七ちゃんを追いかけなくては。絶対に、今度は追いかけなくては。でも、一体何処へ?

「……あの男達は、七ちゃんを連れ去る時に『町長の元へ、もう一度、沈めなければ』って言っていました。その言葉通りだとしたら町長の家ですが、神社で町長が待っている可能性も……」

無くはない。

「でも儀式は神社で行うものと書いてあった文献はありましたっけ? 僕の記憶が正しければ、月嫁を捧げる儀式の話が書いてあったのは図書館地下の祭壇でした……まあそれならその祭壇で儀式が行われたのかというとそうも言い切れませんけど。賭けにはなりますが、町長が自宅にいる可能性を取るか、儀式が本当に神社で行われている可能性を取るか」

そういえば七ちゃんはあの祭壇に立った時、朱月への怖さとかそういうものを何も感じないと言っていた。あれはどういうことなんだろう?

「……自信がありません。七ちゃんが持っていた箒とか引き摺った跡なんかがあれば良かったのですが……」

とにかく何か行動は起こさなくては。間に合わなくなることだけは避けたい。俺を呼んだ七ちゃんを助けなくてはならない。もう誰にも俺のせいで死んで欲しくない。

>all様


【うーん、一応「町長の家」寄り派でしたが、正直全然自信がないです……誰かこれぞという確信あります……?
安仁屋さん、お疲れ様でした!!安仁屋さんが生きていると信じたいチワワでした!】

1ヶ月前 No.540

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/曉町墓地→町長邸(移動)】

 へたりこんだままのゆらぎの目線の前で、右叉兎が井戸を降りていく。一人は危ないとか、その先は駄目だとか、忠告めいた言葉は出てこなかった。
 確かに、その先に七が居るかも知れない――違ウ、未ダソコジャナイ。
 その先には、出口があるのかも知れない――モウ、逃ゲラレナイ。誰モ、逃ガサナイ。
 井戸を確かめることは必要だ。たとえその先で……朱月に呑マれテモ?

 ちりん、鈴の音が鳴った……ような、気がした。
 ゆらぎはゆっくりと井戸から目を逸らし、その音が聞こえた方を向く。そこには一行がやって来た地下道とは別の道が、井戸の左手に延びている。
 ちりん、また、誘うような音が。
 遠く、近く。耳元で聞こえたようにも、風に乗ってくるだけにも聞こえる。
 ちりん、ちりん、ちりん。
 耳鳴りのように、それは止むことがない。まるで鈴のついた髪飾りを振り乱しているようだ……あの時の七のように。
「……行かなきゃ」
 真横で地面から突き出している腕のことも、スカートについた泥を払うことも忘れて立ち上がったゆらぎは、そのままふらりと一歩踏み出した。
「……懐中電灯一つと、ロープと、丸薬も幾つか置いていこう……うん、何ならぶん投げても良いけど……多分、右叉兎くんの役に立つから」
 言葉だけは右叉兎を心配するように、けれど彼を飲み込んだ井戸にも、その横で喘ぐ安玖にも、慌てて駆け寄ってきた龍矢にさえも一瞥もくれることなく、ゆらぎはその横を通り過ぎる。
 鈴の音に導かれてフラフラと歩くゆらぎは、その音が他の誰にも“聞こえていない"ことに気付かない。

 時折伸び放題の木の枝にぶつかり、小石に躓き、雑草に引っ掛かりながら、獣道を歩く。やがてゆらぎが辿り着いたのは、高台にある広場だった。
 反対側に続く小道、それは数時間前に皆で面白半分に足を踏み入れた道。
 下り坂の先にある一軒家、それも数時間前に初めて閉じ込められた家。
 曉町を訪れて最初に辿り着いた御園に、何故かまた立っていた。あの時とは違う、たった一人で。
 何人も何人も、この町で消えた。初めて会ったばかりの人も、ネット上とは言えずっと仲良くしてきた人も、勝手に姉妹のように思っていたあの子も。
 だからこれ以上、喪いたくはなかった。
 まだ間に合うと、ゆらぎは確信していた。何故ならまだ夜は明けていない、朱月は去っていない。
 村人達は朱月を鎮める為には儀式が必要だと、きっと信じていた。文献の記述や、先程現れた村人の言葉からもそれが窺える。そして何だかよく分からないけれど、その儀式に七が必要だった。
 ならば逆説的に、朱月がそこにある以上、儀式は行われていないと考えるべきではないか?
「……行かなきゃ、わたしは……」
 高台から見下ろした先、図書館を越えた辺りに、町の中でも一際大きな屋敷が見える。地図と照らし合わせても、あの家が町長邸で間違いないだろう。

 ちりん。
 正解、とでも言うように、鈴が、鳴って。
「……帰らなきゃ」
 ゆらぎは、月舘家へと続く坂を下り始めた。

>all

【四章よりフラフラ枠を七ちゃんから引き継ぎましたクイーンオブマイペースことゆらぎです。Twitterでの多数決により四章の行き先は町長邸となりましたので、追いかけても無視しても構いませんが、皆様ぼちぼち移動をお願いします、墓地だけにm(__)m】

1ヶ月前 No.541

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/暁町 墓地→町長邸(移動)】

冷静になるとこれまで忘れかけていた痛覚も戻ってくるというもので、先程強かに打ち付けた膝がじんじんと痛み始めた。血が出る程の怪我ではないようだったが、やはりそれなりに痛い。後から青痣になる奴だろう、と烈は予想した。武道をやっていると自分の負った怪我もある程度把握出来るようになる。
痛みで歩くことが出来ない訳ではなかったが、何が起こるかわからないこの地で手負いのままなのは些か用心に欠ける。烈は背負っていたリュックサックをごそごそと漁り、まだ残っていた丸薬を口に含んだ。飲み薬が怪我に効くかはわからないが、なんとなくこの丸薬がいちばん効きそうな気がしたので気にせずに服用することにした。

「……不味い……」

きっとこの苦さに慣れる日は来ないだろう。顔をしかめながら、改めて烈はそう感じた。怪異にはだいぶ慣れてきたのに丸薬の苦味には慣れられないのか、と突っ込んではいけない。効き目はあるのでプラマイゼロ、という奴である。
丸薬も飲んだので烈はリュックサックを背負って気合いを入れ直す。絶対に七を見つけ出し、あの怪しげな集団から助ける。これまでに幾つもの怪異と相対してきたのだ。今更怖がってなどいられない。怪異に物理攻撃が効いたのだから、あの集団にも効くはずだ。いや効く。効かせてみせる。そう考えながら烈が一歩踏み出した、まさにその瞬間であった。

その場に響き渡ったのは、明らかに尋常ではない悲鳴。

その声を烈は知っている。先程まで“彼”の声を聞いていた。共に行動することも、探索の最中に何気ない会話をすることもあった。だからわかっている。彼の名前は━━━━。

「……逢澤殿?」

烈が振り返った時、目に入ってきたのはただならぬ様子の安玖と、彼を落ち着かせようと声をかけている龍矢の姿だった。きっと、安玖は“見るべきではないもの”を見てしまったのだろう。彼が何を目にしたのかはわからない。ただ、先程までいっしょにいたはずの右叉兎の姿がなく、安玖の視線が向かう先には例の古井戸がある。此処までお膳立てされていれば、いくら脳筋の烈でも何が起こったのか理解することが出来た。

「ま……まさか、シシO殿が……」

その先を言葉として放つことは出来なかった。言葉にすべきではないと、烈の本能が告げていた。わかっていても、口に出してはいけない。きっとこの場の面々を追い詰めることしか出来ないから、と。
しかし妙だと思う気持ちはあった。これまでずっと冷静沈着で、普通は信じられない怪異との邂逅や、仲間との別れに際しても落ち着いていた安玖があのように取り乱すなんて明らかに可笑しい。まるで忘れられない程衝撃的だった過去のトラウマでも掘り起こされたかのような反応だ。烈はつぅ、と流れる冷や汗を拭うこともせずに安玖を見つめる。

(……もしかして、あの人も)

━━━━余計なことを考えてしまった。烈はぶんぶんと首を横に振る。今はこんなところで立ち尽くしている場合ではない。七を救うために、自分たちに出来ることをしなければ。
とにもかくにも今後どのように動くか、皆で話し合わなければならない。其処で烈は、恐らくこの中でいちばん落ち着いている、またの名をマイペースなゆらぎに確認を取ることにした。ゆらぎ殿、と声をかけようとして、烈は彼女の異変に気づく。

「ゆ、ゆらぎ殿!?何処へ向かわれるのでござるか、ゆらぎ殿!」

ふらふらと、何かに取り憑かれたように歩き出しているゆらぎ。彼女と烈の間にはそれなりの距離が開いてしまっていた。このまま彼女を放っておく訳にはいかない。烈は今度は転ばないようにと気を付けながら、ゆらぎの後を追いかける。きっと他の面々もそのうち付いてきてくれるだろう、と信じて。

(ゆらぎ殿は、何処を目指しておられるのだろうか)

ゆらぎの足取りはしっかりとしている。その様子から、烈は彼女が確固とした目的を持って歩いているのだと認識した。不安でない……という訳ではないが、夢遊病のように行き先もわからず彷徨するよりはずっと良い。目的があるのならば、消えてしまった面々のような行動を取る可能性は低い……ように思える。あくまでも憶測なので油断は禁物だが。
しばらくゆらぎの後を追いかけているうちに、烈は彼女が何処へ向かわんとしているのかなんとなくわかってきた。なんとなく、本当になんとなく、である。ただ、坂を下るゆらぎの目が、その方向を見つめていたから、烈はそう思ったに過ぎない。

「……ああ、彼処か」

外に出た際に度々目に入ってきた大きな建物。すなわちこの曉町を治める長の住まいであった。

>>周辺all様

【四章開始おめでとうございます!そしてシシO殿こと安仁屋さん、お疲れ様でした……!】

1ヶ月前 No.542

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 曉町 墓地→移動(町長邸) 】

 井戸は気になるが今は七を探しに行こう、と決めた矢先のことだった。一人井戸の中へと下りようとする人物がいるではないか。

「あかんて、危ないですって、ちょ、安仁屋くん!」

 一人でなんて危ない、何があるかなんか分からないのに、そう掛けた声も彼には届かなかったのか、それとも灯台下暗し、井戸の底に七ちゃんが居るかもだし、手掛かりがあるかもしれない、そう考えたのか彼は一人梯子を下りて行ってしまった。暗いから踏み外さないでくださいね、と声を掛ける安玖の言葉、大丈夫だ、きっと大丈夫。きっとすぐに上がってくる。だから待ってよう、都城はそう思った。だがしかし。都城の鼓膜を震わせた安玖の悲鳴に、駆け寄る八岳の姿に、都城は息を飲み井戸を呆然と見つめる。

 また一人、また一人と消えていく。残されていく。また、また、自分は大切な人を失うのだろうか。


「あかん、しっかりせな、だって私はおねえさんなんやもん。おねえさんなんやから、しっかりせんと……」

 ぶつぶつと呟く。まるで自分に言い聞かせるみたいに。そうこうしていれば背後に居たはずのゆらぎがすう、と都城達が来た地下への道とは違う、小道へと一人行ってしまう、一人で、たった一人で。

「っ、ちょ、待って、御子柴さん一人で行かんといてください! ……とにかく、今は七ちゃんを探しに行きましょ……きっと、安仁屋くんやったら大丈夫、大丈夫やから」

 井戸のそばに座り込んだままの安玖等にそう声を掛けていれば烈はゆらぎの背を追って駆け出す。自分達も行かなくては、都城はもう一度井戸の方を振り向き「行きましょ」と笑みを零す、大丈夫なのだ、と安心させようとするが如く、自分を奮い立たせるが如く。
 都城も小道を進むゆらぎや烈の背を追って歩き出す。道とすら呼べないほどに鬱蒼と生い茂る草木を踏み付けながら追うその背はそう遠くないはずなのに酷く遠く感じた。

 小道を出た其処は一番最初に足を踏み入れたあの高台広場で、ゆらぎ達は其処から町の中心部に下りて行っているようだった、町の中心部、つまり町長邸。其処に七ちゃんは居るのだろうか。不安感が全身を支配するのを押し殺し都城は歩く。時折後ろを振り返り安玖や八岳の様子を伺いながら。

「――――ここが町長さんの家…………ひっ」

 全員が町長邸前へと辿り着いたその時だった。聳えるような巨大な門が不意にひとりでにゆっくりと開いていく。誰も門になど触れていないのに、だ。まるで都城達を迎えいれるかのように。

>> ALL


(みなさんめちゃくちゃお早いレスありがとうございます……そしてゆらぎちゃん先導ありがとうございます〜〜頼りにしてます! というわけで四章の舞台、町長邸の中へと皆さまお進みください。見取り図は役場ツイッターに、施設内説明はサブ記事に投下させていただきますね!)

1ヶ月前 No.543

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

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1ヶ月前 No.544

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/暁町 墓地→町長邸(外玄関)】

……よかった。先輩が我に返ってくれた。
呼び声に応じて目の焦点があってくると、速かった呼吸が落ち着いてくる。
だがそうしている間にも今度は御子柴さんが一人で先に左手側の道に歩み出てしまう。あの足取り、大丈夫か!? まるで何かに憑かれたみたいに……いや、此処で憑かれたという表現は些か現実味に欠ける。……まるで七ちゃんがそうするみたいに、ふらふらといなくなる。
ちょっと待ってください御子柴さん! それでは危険回避のために皆で行動している意味がない! と止めようとするより早く、槍ヶ岳さんが彼女を追いかけて行ってくれて、その後を更に、開きすぎた列を縫い留めるように都城さんが続く。振り返る都城さんに、逢澤先輩の傍で屈んだまま俺は大きく頷いた。槍ヶ岳さんと都城さんのお陰で、この感じなら見失わずに付いていけそうだ。
呼吸音が整ってくると過換気症候群による手足のこわばりも和らいできたようで、先輩は汗を拭き立ち上がる。流石だ、人としてのベースが落ち着いていて大人げがある。強がっているようにも見えるが、今そこを否定したら多分何かを崩してしまうことになる。
まだ油断はできないと先輩を気にしながらも、早く御子柴さん達を追いかけなくてはならないと逸る気持ちに煽られて、俺も立ち上がる。

「…………そう、だったんですね。それで高い所が」

高い所がトラウマだった。双子のお兄さんが亡くなった原因であり、先輩はその瞬間を目の当たりにしたから。怖いものが無さそうな逢澤先輩が意外にも高所恐怖症であることは聞いた事があった。サークルメンバーがどんな怖い怪談をしようとも又どんな怪奇現象に出くわそうとも殆ど怖がる様子を見せない彼が実は高い所が苦手だなんて変わってるよねー……と言われているのを別の先輩達から何度か聞いたことがある。別に笑い話とまでは思ったことは無いが、みんな世間話ぐらいのノリで。ほんとなのかな? ぐらいには思ってた。龍矢君の好きなタイプってマドンナ的な歳上のお姉さんなんだってー……ぐらいの。ちなみに後者は、別に必ずしもそういうわけでは無いと言いたい。
けれどそれが、この状況をご覧の通りの真実で、しかもそんな、ただならぬ背景が原因だったなんて。そりゃあトラウマにもなるに決まってる。辛すぎる。先輩は月舘邸で実の母親から「なんでアンタが落ちなかったの」と言われていた。先輩の代わりに、兄の「きぃ」……シブキさんは何処かから転落し亡くなって、それを先輩は上から全て見てしまっていた。悲惨だ。その恐怖が、安仁屋さんの入って行った井戸を覗き込んだ時に蘇ったのだろう。それは高い所が怖くなるに決まっている。そして誰にもそんな理由を説明できないのもわかる。
でもなんで先輩は今、そんな話を俺に打ち明けたのだろう。俺なんか、うまい言葉や気の利いた返事をしてあげることもできない。共感することはできても、その重みに聞き役のほうが押し潰されてしまう、どうしようもない気が利かない奴なのに。
それ以上、深いことは聞けなかった。先輩が話そうと決めて話す以外、俺から聞いてはいけないような気がして。

「誰にでも怖いものはありますよ。まあ俺には有りすぎるのかもしれませんが。先輩を蹴り飛ばさずに済んでほっとしました。………………先輩が貴方で良かった」

その空気に耐えかね少し茶化すように軽口を叩いた後で(もちろん俺は、先輩に蹴られたこととかぜーんぜんっ根に持ってなんかいねーから! ぜんぜん痛くなんてなかったし! べつに!)、少しマジになって付け足したのは、とりあえず正気に戻ってマジで良かったって事と、双子で生き残ったのが逢澤安玖であることを肯定する奴も多分一定数いるってことだったんだけど。ちょっと微妙でやっぱり俺文才ないわと諦めたから、まだちょっとふらついている先輩をあんまり助けもせず無情に急かして山道を歩いた。
高台広場を通り抜け、数時間前に皆で見下ろした景色を随分寂しい気持ちで眺めた。でも此処で「みんないなくなってしまった」なんてボヤこうもんなら怒られそうだから、黙って一人で寂しい気持ちになっていた。
坂を下り、月舘家の前を過ぎ、町の中心部を通れば、一際大きな屋敷の門の前で御子柴さん、槍ヶ岳さん、都城さんと合流できた。
一同がそこに会したとき、眼を瞠るほどの巨大な門が俺達を迎え入れるかの如く勝手に開いた。
ふん、もうこれぐらいのことでは驚かないぞ、とか思ってるそばから、口からは「うわぁぁ……」とだらし無い半開きの感嘆がそれこそ勝手に零れた。
ぞろぞろと、中に足を踏み入れる。

「…………大きな木がありますね…………」

門の中はなかなか立派な庭になっていて、石灯篭や大きな桜の木がある。流石町の長の御屋敷といったところか。俺は桜の木を見上げた後、防犯カメラやさっきの誘拐犯達が潜んでやしないかと疑って、あるいは七ちゃんの姿が無いか期待してぐるりと辺りを見回した。

>all

1ヶ月前 No.545

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/町長邸】

 坂を下る、一心不乱に。後ろから追いかけてきた烈や京に空返事をしながら歩くゆらぎの足取りは、相変わらず覚束無いくせに確固とした目的地がある奇妙なものだった。
 月舘家を通り過ぎ、神居家の人形をスルーして、図書館を越える。その間、アイスピックの少女や日本人形に追いかけられることも、村人らしき人影が現れることもなかった。先程までとは打って変わった静けさの中、一行の足音と鈴の音だけが響く。
 やがてそれらが全て止まったのは一際大きな屋敷の前。ゆらぎがじっと睨み付けるように見詰める先には、「朱城」と書かれた立派な表札が掲げられている。
「……此処が」
 町長邸、七が連れていかれたと思われる場所。
 ぺたり、と手を伸ばして門扉に触れても、重厚な木の感触が返ってくるだけで、力を込めてもぴくりとも動かない。

 しかし、後からやってきた龍矢と安玖の姿を見咎めた刹那、全員が揃うのを待っていたと言わんばかりに、重たい音を立てて扉がひとりでに開いた。
「わっ」
 それはもう、扉に全体重を掛けていたゆらぎがずっこけるほど簡単に。
 地面にへばりつきながらも何とか無傷で済んだゆらぎは、そのまま這いつくばった姿勢で前を見る。

 その権力を誇示するかのように大きな門扉を抜けた先は、これまでの家とは異なり広い庭のようになっていた。桜の木やら、石灯籠やらが両脇に並んでおり、門から玄関まで一本の道が続いている。
 ちょうどその道の上に倒れたゆらぎの視線の先、これまた大きくて立派な町長邸の玄関の前に、ソレは落ちていた。少しの間に見慣れてしまった竹箒――七の大切なもの。
「ッ……!」
 思わずクラウチングスタートで駆け寄り、竹箒を拾い上げる。七がしていたように、或いは再会した七の代わりのように、きゅっとそれを抱き締めた。
「……しょうまさん……」
 これは、七の大切なもの。ならばそれは、――の大切なひと。

「やっぱり……なっちゃんは此処に居るんだ。早く探さないと……手遅れになる前に」
 竹箒を握り締めたまま、ゆらぎは他のメンバーを振り返った。

>all

【皆様ご移動ありがとうございました、ここから本格的な探索を始めて行きましょう!】

1ヶ月前 No.546

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 町長邸 外玄関 】

 ひとりでに開いた門の中、他の家よりも広い屋敷への入口のその前にあったのは大きな桜の木を生やした庭であった。一同が門の中へと足を踏み出した、そのときだ。不意に木が揺れ、視界を散る桜の花弁――――が見えた気がした。そんな訳はない、桜の木は既に枯れその枝には葉すら付いていないのだから。

「あかつきが」

 桜の木の下には死体が埋まっている、なんて。そんな言葉がふと都城の脳裏によぎった。桜の木の下、其処に居たのは七でなく、七を連れ去った町人でもない。真白の打掛と掛下、角隠しを被った黒髪の女性が桜の木を見上げるようにして立っていた。

「もうだれもにげられない」

 雨など降っていないのに全身を濡らした女はただ桜を、赤色の月を見上げている。どうやら門をくぐった一同には気が付いていないのか。

 だがしかし、ゆらぎが玄関前に落ちていた竹箒を拾った、その時だった。不意に、唐突に、女の首が一同の方へと向いた。体はそのままに、首だけが、ぐるりと、後ろを向いたのだ。


 ――――みんな、みんな、死んでしまえ。

 唇が声なく動く。それは憎悪、それは呪詛。生気のない虚ろな黒の眼がじっとりと一同を見つめ、そして、消えた。


>> ALL


(外玄関へようこそ! ということで特殊レスです。戦闘ではないのでそのまま屋敷内へお進みくださーい!)

1ヶ月前 No.547

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 外玄関→玄関 】

「立派なお屋敷ですねえ…………って、御子柴さん?」

 門をくぐった都城はきょろきょろと辺りを見回すがそこに七の姿はなく、それどころか町の住人も、人が住んでいる気配もない。確かに墓地でたくさんの住人を見たのに、だ。桜の木がある、という八岳の言葉にそちらに視線を向けていれば視界の端に映ったのは何かに駆け寄るゆらぎの姿だった。ばっとそちらに首を向ければ何かを大切そうに抱くゆらぎの姿がある。その何か、それは、見慣れた竹箒だった。そう、ただの竹箒だ。だがしかしそれを大切そうに抱いていた少女を、都城は知っている。それ七ちゃんの、そう言おうと唇を開き、止まる。

「ひいっ!」

 桜の木の下に佇む白無垢姿の女に思わず悲鳴が零れた。その虚ろな瞳に、普段ならば何も出来ずただ立ち尽くすのが都城だ。だが今は年下の彼らを守らなければ、いなくなった七を見つけなければ、そう強く自分に暗示する都城は鉄パイプをぎゅ、と握りしめ振りかざす。ぶん投げるつもりだった。だがしかし。

「…………消えてもうた」

 みんなみんな死んでしまえ、どこか聞き覚えのある言葉を残し白無垢姿の女は忽然と姿を消した。気のせいだったのか、とさえ思うほどに。だが女が立っていた桜の木の下だけは地面が濡れていて、気のせいでないことを強く物語っていた。


「……こほん、とりあえず中に入りましょか」

 ここにおってもしかたありませんし、そう言いながら歩みを進めた都城は玄関扉に手を掛ける。ぎぎぎ、と音を立てながら開いていった扉の先、鼻腔を擽る埃の匂いの中、微かに鉄の匂いが混じっていたような、そんな気がした。


>> ALL


(そろそろ中入っちゃいますね〜〜! いつもの通りあちこち探索しまくっちゃってくださいませ)

1ヶ月前 No.548

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 外玄関】

花の終わった木を見上げていた。
庭の様子をぐるりと観察終わって再び、灰色の幹の一際目立つ大きな木を眺めていると、御子柴さんの声が上がった。……ずっこけてる。

「大丈夫ですか、御子柴さん。……………………それ、七ちゃんの箒だ…………」

七ちゃんがとても大事なものだと言って握り締めていた箒。つまりやっぱり七ちゃんはここに連れて来られたのは間違いないってことだろう。
けれど、肝心の七ちゃんの姿は此処には無くて、今その箒を大事そうに抱きしめているのは何故か御子柴さんだった。おかしい。箒なんて大事にしてるのは七ちゃんぐらいだと思ってた。変な奴だな、ぐらいに思ってた。それともあれか? 暁町の女子の間では頭に鈴をつけるだけじゃ無くて箒も流行ってるのか? ……いやまてよそれにしたってーー七ちゃんはともかく御子柴さんはそもそも暁町の人間じゃないだろ?

「…………しょうまさんって、だれ?」

記憶が正しければ、その名前を俺達は図書館で拾った日記の中に見つけている。いなくなってしまったしょうまおにいちゃん

「なんでその名前を今日俺達とはじめて暁町に来た御子柴さんが…………」

それは、昔の、前に朱月が来たってときの話だろ。なんで昔話の登場人物を、俺たち側だったはずの御子柴さんが知り合いみたいに……。考えたくはないけれど、御子柴さんが暁町側の人間ってことは、ないよな……?
やっぱり、考えたくはない。況してや、この状況で。

そんな事を考えた時、俺は今まで気づいていなかったけど、直ぐ隣にーーーー明らかに普通じゃない白無垢の花嫁が立っていて、まるで一緒に桜の木を見上げるみたいな形になっていて、あとちょっと遅かったら姿も見ずにうっかり世間話でもしてたかもしれない。おいコラ何溶け込んでやがる!!
「ひぇ」と俺のじゃないみたいな情けない悲鳴が零れるのと丁度同時に、白無垢の女の首がグルンと90°回ってこっちを見て、通り過ぎ、更に90°回って、門の前にいる皆のほうを…………っておいおいおいおい、おかしいだろ! いいか、人の首の回転っていうのは第一頸椎の環椎が第二頸椎の軸椎に輪投げみたいに嵌ってるのがぐるぐる回って動くわけだけど、いやでもやっぱ全然解剖学的に説明つかないから!! 環椎の形とか靭帯の制限とかで可動域ってもんがあるからな!! そんなぐるぐる回らないからな!!

ーー「もうだれも逃げられ

「そんなに! 首を! 回すなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

俺は手にした石の花瓶と懐中電灯を投げつけようと振りかぶりながらも、とびずさるようにして8mぐらい後退し距離を取った。ほ、ほら飛び道具だからあんまり近すぎてもあれだし。

「気持ち悪いだろ! 俺たちは急いでるんだ!!」

かなり離れたところから威嚇しているうちに、白無垢は恐れをなしたか(多分違うけれど)消えてしまった。
みんなみんな消えてしまえ、か……それまで無我夢中だっただけに、女が消えてからの方が後味悪くゾッと薄ら寒い心地がする。

向こうで都城さんが玄関扉に手を掛けているのが見えて、俺も邸の中にいるであろう七ちゃんを探すべく、後を追いかけることにした。

>all


【ちょっと都合により先に返させていただきますね】

1ヶ月前 No.549

特殊レス @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【???/ 町長邸 玄関】

都城京が開いた戸の先。
秘匿と沈黙を破り扉を開けた向こうは、只々ひたすらに漆色の闇が広がるばかりだった。奇怪であるのは、懐中電灯を当ててみてもその黒光りする闇が打ち払えぬということ。まるで視覚を瞬時に奪われてしまったかのように、彼女等はその続きを視ることが出来なかった。首を傾げながら目を凝らせど、何も見えず。代わりに何やら、油の足りていない機材が軋むときのような、物哀しい悲鳴に似た音がする。
それは、何も無いかに見えた、光を屠る、偽りの虚無の隙間から聞こえてくる。目の前に横たわる暗闇の所々から聞こえてくる。光射さぬ黒色のーーーー人体で言うなれば、関節から。
人体で言うなれば……そうだ、其れは、視界を覆い尽くす程に近すぎる、人の体であった。漆黒の鎧に、漆黒の兜。光を当てても古びた甲冑が鈍く光るだけ。
何も無いのでは無い。何も見えないのでは無い。彼女達は既に、一面の黒を視ていた。
そのとき既に、ゼロ距離に構えた鎧武者と対峙していたのである。

軋む音が、間隔を狭めていく。高く不愉快な音が絶え間なく、大きな影が蠢く気配を伝えてくる。
彷徨っていた懐中電灯の光が俄かに上向き加減になり、其奴の「目」を捕捉した。眩さに眇められた目の他は全て、黒い頬当に隠されている上に、奇妙な陰影がついて顔の判別には適わない。硝子玉のような目が一同を見返した瞬間、

「ーーーーーーガサ、ガサガサガガ、…………ガガガ……ガサ…………」

電波障害に遭ったラジオか壊れたロボットのような、ざらつく機械音が発せられる。面具の中で籠もって、それは嵐の晩の雨音にも聞こえた。
そのまま、眼光よりも遥かに鋭く光るモノが、懐中電灯に強く反射する。

都城京の鼻先へと突き付けられているのは、銀色に煌めく長い刀身だった。

>all



【はい、今章はサブイベント担当させていただきます、御来場ありがとうございます、戦闘入りまぁーす!】

1ヶ月前 No.550

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/暁町 町長邸 外玄関】

ゆらぎを追いかけてたどり着いたのは、やはり予想していた通り今まで見てきた中でも一二を争う大きさの屋敷であった。道中で怪異に襲われでもしたらどうしようかと懸念していた烈だが、不思議なことに無事に目的地までたどり着くことが出来た。怪異に襲われなかったことを不思議と感じられるようになったのはなかなか複雑であるが。
気を取り直して目の前の屋敷を注視する。見つめた先には『朱城』と記された古めかしい表札があった。月舘、神居、朱城。これまで目にしてきた屋敷の持ち主の名字に、烈は首を傾げる。

(……まるで、重要な言葉がばらばらにされているみたいだ)

あくまでも、あくまでも憶測である。しかし、此処までたどり着いた時点で月、神、朱という三つの漢字を出されたら、何か繋がるものでもあるのではないかとついつい勘繰ってしまう。これが杞憂であってくれれば良い、と烈は内心でひっそり祈った。
そうこうしているうちに、またしても屋敷の扉が自動開閉したようだった。最初の頃は忍者屋敷のように何か仕掛けがあるものではないかと思っていた烈だが、今となっては考えることすら野暮に感じてくる。やはり慣れとは恐ろしい。突然のことに扉に体重をかけていたゆらぎが転んでしまったようで、烈は慌てて彼女に駆け寄る。

「ゆらぎ殿、ご無事にござるか?もしもお怪我があるのならば、例の丸薬を……」

丸薬を飲むがよろしかろう、と口にしようとした烈だったが、眼前に広がった景色を目にしてはその言葉を引っ込める他なかった。
まずはじめに目に入ってきたのは、立派な桜の木。一瞬だけ舞い散る花弁が見えたように感じたのは、ただの気のせいだろうか。はっと気づいた時にはもう花弁など見えず、其処には枯れ木があるだけであった。
ごしごしと烈が目を擦っている間に、肝心のゆらぎはその桜の木へと近付いていく。どうやらその近くで何かを見つけたらしい。京や龍矢に続いて、烈もゆらぎの拾ったものを目にする。

「それは、七殿の……」

ゆらぎが手にしていたのは、七が大切そうに持っていた箒だった。もしかしたら七のものではないのかもしれないが、何故か烈はそれが七のものだと確信出来た。間違いない。七はきっとこの場所を訪れた。ならばこの屋敷を調査することは、七を助け出す上で徒労にはならないはずだ。
よし、と改めて気合いを入れて、烈はむふーと鼻息荒く握り拳を作る。今からだって間に合う。間に合わせてみせる。待っていてくだされ七殿、もう暫しの辛抱にござりまする━━━━と何処にいるのかわからない七に心の中で呼び掛けようとした矢先、烈はある人物の様子が可笑しいことに気づく。

「……ゆらぎ殿?」

まるで七のように箒を大切そうに握り締め、かつて見た日記に記されていた人物の名前を“さも以前から知っていたかのように”呟くゆらぎ。いつもマイペースな彼女だったが、このような雰囲気をかもし出すことはなかったはずだ。烈の心に一抹の不安が生まれる。まさかゆらぎも、この地の空気に当てられてしまったのではなかろうか。言い様のない不安感に苛まれて、烈は助けを求めるようにゆらぎから視線を外して、数歩後ずさったところで振り返る。


その先に、生気を全く感じさせない白無垢の花嫁が立っていた。


ひゅっ、と烈の喉が鳴る。いつの間に、と彼女が身構える前に、花嫁の首はあり得ない程に回り、その唇からは憎悪の入り交じった声が響く━━━━が、その途中で龍矢の叫び声が入ったので烈は二重の意味で驚いた。実際に驚いて「ぬおっ!!」と悲鳴を上げただけではなく、びょんと飛び上がってしまった。いわゆる垂直跳びという奴である。一同が驚いたり威嚇したりしている間に、件の花嫁はお約束とばかりに音もなく消えてしまった。

「な、ななな━━━━何でござるか、あの女人は……!司馬仲達もかくやといった首の曲がり様……いきなりああいうことをされると、流石の拙者も心臓が跳ね上がるでござるよ……」

ああ吃驚した、と烈は心臓のある部分を押さえて深呼吸を繰り返す。慣れてきたと思っていたがまだまだであった。とりあえずあの花嫁は消えてしまったので、此処は屋敷の調査に出るべきだろう。そう考えて、烈は一歩を踏み出そうとし━━━━直後に自分たちに向けられた視線を感じ取った。

「……!編集者殿!」

それは、斬撃による風圧。ノイズのような不愉快な音が響き、気づいた時には“それ”がもうすぐ其処に迫っている。明確な殺意、定められた照準。誰もが「来る」、と思った時、“それ”は間合いを詰めきっていた。
烈が動いたのはその直感故であった。動かなければ、必ず“斬られる”。それが自分であれ自分以外の人物であれ烈にはそう変わりのないことだった。それゆえに、その視線を感じ取った瞬間に烈は動いた。相手が何者かもわからぬまま、ただ止めなければならないという気持ちに駆り立てられて地を蹴った。

「此方だ、妖異━━━━!」

今までにないくらいの力で地を蹴ったためか、烈の体は高く飛び上がる。近くにあった石灯籠を踏み台にして、更に高いところまで飛んだ。其処から烈は一寸の躊躇いもなく京にその刃を向ける鎧武者に向かって刺又を振り下ろした。

>>周辺all様

1ヶ月前 No.551

特殊レス @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【??? / 町長邸 玄関】

漆黒の鎧兜が、都城京に刃を向けまま静止した。
背の丈は六尺に少し足りない。五月人形にしては大きすぎるが本物の鎧甲冑にしては経年劣化も感じられない。戦絵巻のプラモデルの箱か或いはガラスケースから飛び出してきたかのような、それはまるで幼き少年達が新緑したたる立夏の日に想像し憧れた、剣と戦に生きる紋切型の日本男児英雄像。但し色だけは、朱赤中白でも紫裾濃でもなく、総てが不吉の翳りの黒に塗りつぶされている。
鑓ヶ岳烈の鋭い叫び声に、鎧の武者はのろのろと重たげな頭を擡げた。注視していた都城京から、怪異の意識は完全に逸れた。都城京へと突きつけられていた鋒が動く。高く掲げられた刺又に対し、日本刀は中段の構えを取った。僅かに、剣先が傾く。

「…………ガサガサガサガサ……ハ、イラ…………イ?」

首を傾げるような仕草だった。長い飾りの前立てが、ふらふらと揺れる。刹那に振り下ろされる刺又。
兜の目庇の下で、空虚な目が僅かに笑ったように見えた。鎧の武者が動く。
上方より打ち来る敵刃を半回転の内に迎え込み、転身ながらに打ち落す。もしも日本刀同士で戦っていたならば、その刃は鑓ヶ岳烈の頬をも横面打ちに捉えていたであろう。しかし二人の獲物の攻撃範囲の圧倒的な差が、それを許さなかった。刺又の軌道を逸らすのみに留まり、崩れた姿勢の安定と間合いとを取り直す。先ほどの緩慢な動作に見てとれた鎧の重さも、日本刀の重さも、今の瑞々しい一連の動きからはもう感じられなくなっていた。

「……ウ…………シイ…………ガサガサガサガサーーーーキキキキキ、……モ…………シシシシシシテシテシテ……ーーザザーッ…………ネ……」

耳障りな、砂嵐のようなあの機械音が興奮したように音量を上げる。半紙に垂らした墨汁のように真っ黒な鎧武者が、キイキイと甲高く嘶くノイズを上げながら淡く半透明に光りだす。夜空の中に透き通りながら揺蕩う天の川のように、あるいは夜半に舞う六花のように。その身はまるで銀河の乳白色に溶けて別の形をした鋳型に流される間際。精彩を放ちながらも心胆を寒からしめる古の戦人は、徐に日本刀を構え直し再び鑓ヶ岳烈との間合いを詰め始める。外見に合わずふらふらと情けなく崩れていた背筋がぐんと伸び、星雲纏う鎧武者は気勢の声を上げる。
柄元を両手で握り、氷のように冷たい切っ先を烈の目に向ける。またしても中段の構え。そしてまた、僅かに剣先が傾いた。

背後の庭から追いかけてきていた八岳龍矢が、ハッと息を飲む。
「さがって!」
鋭い声が響くと、遠くから鑓ヶ岳烈の肩越しに鈍器が飛ぶ。
投球の腕が余り宜しくないのか、それとも冷静さを欠いているためか、投げ付けた石の花瓶は回転しながら、とても命中とはいかなさそうな軌跡を描く。にも拘らず鎧武者がそこから突きに踏み込んできたが為に、花瓶は鈍い音を立てて鎧兜の吹き返しにぶつかって落ちた。
「今だ!! ……!」
卑怯卑劣な加勢によって突き技を仕損じ、腹を立てたかそれとも。鎧武者は体勢も立て直さぬまま鑓ヶ岳烈の首筋に向かって精緻性のない斬り払いをかける。

>all


【描写のヒントに:敵が持っているこの刀、実は模造刀です。掠ったり触ったり少し当たったりしても斬れ味は殆ど無いです。ただ、勢いを付けて振り回している時に当たると流石に怪我するし当たり方によっては致命傷になる凶器です。】

29日前 No.552

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 玄関 】

「あれ、なんや暗い……っていうか、くろ……ひいっ!」

 扉を開け玄関内へと入った都城の視界にまず映ったのは黒色だった。懐中電灯で照らしても黒色が消えることはなく首を傾けながらゆっくりと都城は視線を上へとずらしていき、そしてそれ≠瞳に映せば目を見開き悲鳴をあげる。

「よっ、よ、よ、ろい…………」

 視界に映る鎧武者が握る鈍く光る刃が自分へと向けられている、鼓膜を震わせる歪なノイズ音のようなものに息を飲む。死ぬ、ここで? まだ七ちゃんを見つけられていないのに、まだあの子に、居るかもしれないあの子にも謝っていないのに、だがしかし。不意に背後から聞こえた烈の声音に鎧武者の視線がそちらへとずれる。そして視界の端に見えた刺叉に飛び退くように体を横へとずらす、勢いよすぎて壁に激突してしまったけれど。

「鑓ヶ岳さん、ありがとうございます! って、うわっ!」

 壁にぶつけた左肩が痛い、痛みで少々顔を歪めつつも感謝の言葉を述べる、鎧武者はまだ消えていない、安堵するのはまだ早い、と都城は鉄パイプを強く握りなおし鎧武者へと視線を戻す、不意に背後から聞こえた八岳の言葉に反応するより先にすぐそばを通り鎧武者の兜にぶつかった花瓶に肩を跳ねさせる。

「や、やつたけくんすご……ちょっと見直し――――っ、あかん!」

 頼もしいやん八岳くん、そんな言葉を吐こうとした都城が見たのは烈の首元へと向けられた刃だった、咄嗟に都城が手にした鉄パイプを鎧武者の兜目掛け振り下ろす、年下のみんなを守らなければ、ただそんなことだけを思いながら。

>> ALL


(烈ちゃんも八岳くんもかっこいい〜〜! 都城を助けていたたきありがとうございます!)

29日前 No.553

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/町長邸】

「しょうまさん……パパ、ん? パパ? しょうまってあれ、簪の人のお兄ちゃん? だよね、きっと」
 七の竹箒を握り締めて、ぼーっと朱城家の玄関を見ていたゆらぎだが、龍矢に声を掛けられてやっと我に返ったようだった。簪の人とは、勿論図書館で探し物をしていた女性のことである。自分が知らずその名を口にしていたなどとは夢にも思っていない表情で、ゆらぎは龍矢の問い掛けに答える。
 しょうまおにいちゃん、と確かにあの女性は呼んでいた。それはゆらぎが目にした日記にもあった文言である。ならばそれは、嘗てこの曉町にいた人間のことである筈なのだ。罷り間違ってもゆらぎの知り合いである訳がない。
 そう自分にも言い聞かせるように思いながら、ゆらぎは再び竹箒に視線を落とす。
 これは、七が大切に持っていたものだ。ならば、無傷のまま彼女に返さなければならない。この箒を汚したり壊したりしたら、きっと彼女は悲しむ。だから、守らなければならない。
 そう、思ったのに……

 再び視線を前に向けた時、思わずゆらぎは手にした竹箒をぶん投げそうになった。
「編集長! パパ! れっちゃん!」
 ゆらぎが呆けている間にいつの間にか朱城家の扉が開き、そこからいかつい鎧武者がこんにちはしていた。日本刀まで構えて闖入者を迎え撃つなんて、AL●OKもびっくりのセキュリティである。不審者対策に一家に一体導入したいくらいだが、刀を向けられているのが大事な仲間とあっては、悠長なことも言っていられない。
「歓迎するにしろ撃退するにしろもうちょいやり方あるでしょうが、この動く五月人形!!」
 竹箒を振りかぶる直前で我に返ったゆらぎは、悪態を吐きながらボストンバッグを漁る。とにかく夢中で最初に触れたものを全力投球したが、果たしてそれは一本だけペンケースから飛び出していたシャープペンシルだった。
 日本刀を構えた鉄の塊相手にそれがどの程度効を奏すかは分からないが、それでもシャープペンシルはダーツの矢のごとき勢いで真っ直ぐ鎧に向かって飛んで行った。

>all

23日前 No.554

特殊レス @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【???/町長邸 玄関】

突きが決まらず既に崩れかけた姿勢のままで切り払いを繰り出していた鎧武者の守りは甘かった。防御の構えを取るより早く、振り下ろされた鉄パイプは、前立て鍬形諸共に正中矢状面に断つようにして兜鉢の脳天へと命中した。酷い音を立てて、呆気なく飛んだ鍬形が床に哀しく落ちて転がる。薄い金属の板は威厳も地に落ちた風態で、踏みつけられた虫も同然に床に延びた。
前立ての飾りを無くしても、兜の硬さが反作用を振動としてその手に伝えるだろう。普通の人間であれば頭骸骨を損傷して死んでいたような勢いで殴られても、二、三歩ふらふらと後退して首を横に振る。刺又、飛んでくる花瓶、鉄パイプ、矢継ぎ早に出鱈目の攻撃を受けて怯んだのか、それとも。まだ形勢不利とまでは傾いていない筈なのに、五月人形はその後も緩やかに後退を続ける。

ーー「……ナン…………ガサガサガサガサザザーーーーッ…………クレナイノ?」

目庇の下に光る目が、次なる敵を捕捉する。一同の間から現れた御子柴ゆらぎの姿を見るや、竹箒の柄を握っているのを目視ののちに自らももう一度刀を構え直した。遠間を保ち様子を伺うように、足を運ぶ。相手が隙でも見せれば直ぐにでも喉笛に喰らいつきそうな、虎視眈々と狙う駆け引きの摺足。しかし直ぐには攻めてこない。彼は御子柴ゆらぎの何かを待っているようだった。その静けさが、却って気味が悪い。かと思えば唐突に、漆黒の武者が気合の声を発した。再び張り詰めた緊迫の空気はしかし、御子柴ゆらぎの次の行動で中断される。
まず彼女は、鎧武者を声高に詰った。そして手にした箒で殴るのではなく……鞄に手を突っ込んだかと思えば取り出した筆記用具を投げつけてきたのだった。細く鋭利な、とはいえ、本来武器ではなく筆記用具に過ぎないシャープペンシルは鎧の肩部分である大袖に命中はしたものの擦り傷すら与えず虚しく転がり落ちるのみに終わった。
だがしかしその効果は、彼女達或いは彼等の想像を遥かに凌ぐものがあったらしい。

五月人形の顔の大半を覆う面頬の奥から、あの禍々しい壊れた時代遅れの機械音がした。

ーー「ズズ……ザザザザザザザ……ミン……タッ……ザザザザ……ト……ヨシ…………ガサガサガサガサガサガサ………………ズズズズズズ……ウラ……シイ」

喧しいノイズの間から聞こえるのは、まだうら若い子供の声のようだった。怨めしい、そんな典型的幽霊の台詞が似合う落ち武者のような容貌になってしまった。前立てを無くし肩を落とした五月人形は、床に転がったシャープペンシルと花瓶、都城京と鑓ヶ岳烈がまだ構えている鉄パイプと刺又を順に見廻すと、刀の鋒を下げて俯いたまま消えていった。

「御子柴さん凄い! や、鉄パイプとか刺又振り回せる二人も凄いですけども……シャーペン強過ぎ……もしかして投擲か何かやっていたんですか!? ……あーもう、っにしても驚いたぁ……でも、やりましたね俺達!」

分かりやすく気が大きくなった八岳龍矢の嬉しそうな声が弾んでいる。何も分かっていない、何も気にしていない陽気で無神経な声だった。視界が開けてがらんとした玄関には、今は懐中電灯の光も届くようになっていた。

>all


【イベント戦お相手してくださってありがとうございますー。五月人形は一旦撤退しますね】

23日前 No.555

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 玄関】


「……やりましたね俺達!」

ああ、もうしっかしなんなんだよ……
玄関開けた瞬間にバーン! は反則だろ、オバケ屋敷のバイトかよ。別に怖がってる訳じゃないけどびっくりするからほんとやめてほしい。……いや嘘、めっちゃ怖かった。今度こそ誰か斬られるかと思った。
あの五月人形、なんであんなに俺達の事追いかけて来るんだ? 神居家で刀を向けてきて、出た後引き返して帰ろうとしたら彼奴がこっち見てた所為で帰れなかった。図書館から式島さんを追って出た時は追いかけられた。で、今度は通せんぼときた。町長に雇われた用心棒か何かで、俺達を見張り町のセキュリティをAL●OKしてるのか?
俺達の中にも流石に、落ち武者様の祟りを買いそうな年代(戦国時代? 鎌倉時代? 江戸時代?)の人は居ないはずだし、実は先祖が落ち武者とか、実は落ち武者の隠した埋蔵金の継承者とか…………とか……

「…………」

俺は無意識に鑓ヶ岳さんのほうを見ていた。いやいや、それはないな。確かに時代劇みたいな口調だし、なんか歴戦の勇将みたいなかっこよさはあるけど、普通の女の子な一面も見たし、違うだろう。たぶん。俺にも勿論、落ち武者の知り合いはいない。祖父母の家には五月人形があったけど、あんなにでかくなかったし真っ黒じゃなくてもうちょっと明るい色だった気がする。別に悪戯したり壊したりもしてない……多分。うちの先祖が何だったかとか興味なさ過ぎて親に聞いたこともないけど、この通り平凡極まりない俺の実家だ、きっと室町時代も江戸時代もずーっと平凡な八岳家の一族だったんだろうなと思う。うん、やっぱAL●OKだな。見掛け倒しだし。オーケー大丈夫、みんなで向かえば怖くない。
俺は神居家でビビり倒した事とか、子供の頃みたいな馬鹿げた空想とか、目の前の怪異が去ったのを良い機会にひとまず忘れる事にした。そんなことより、邪魔者がいなくなったおかげで、みんな七ちゃんを探せる。早く先に進もう。

「植物が……随分と長いこと放置されているようですね。枯れてる。本当に此処、町長は住んでるのかな……」

投げつけて床に転がっている花瓶を拾い回収してから、懐中電灯に照らし出した観葉植物の鉢植えを調べる。葉は薄茶色に干からびて、茎も紐みたいにしなしなに萎れている。屈んだ姿勢のまま、俺は首を傾げた。

>玄関all

23日前 No.556

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/暁町 町長邸 外玄関】

鎧武者の狙いは京から逸れた。彼女が傷つけられることは避けられたので、烈はまず一安心する。しかし烈の攻撃によって鎧武者の狙いは烈に移った形になる。ならばおちおち油断してもいられない。
ふぅ、と烈は息を吐く。そして真っ直ぐに鋒を向けてくる鎧武者のことを睨み返した。怯むものかと、怖じ気づくものかと。むしろ此方から目を逸らすなとでも言うように、烈は鎧武者を凝視した。いつ切り込んできても構わないと言うように、眼力だけで鎧武者を射竦める心積もりで刺又を構える。

『さがって!』
「━━━━!」

響いた声。それが誰のものか、烈はよく理解している。それゆえに、後ろを振り返ることもせずに体を少しだけ捻った。案の定飛んで来たのは鎧武者への攻撃たる花瓶であり、それによって鎧武者の動きが鈍る。其処から立て続けに京の鉄パイプ、そして極めつけはゆらぎによって投擲されたシャープペンシル。突き刺さりこそしなかったものの、一同による攻撃に何か思うことがあったのか、鎧武者は再びノイズ音を鳴らしながら空気に溶けるようにして消えていった。
鎧武者が消えてからも数秒間、烈は何が来ても良いようにと構えを解かなかった。しかし龍矢の声によって、しばらくはあの鎧武者が出ることはないだろうと判断して烈は緊張を解いた。

「いやぁ、あれは吃驚にございましたな!拙者、幼き頃に行った遊園地のお化け屋敷を思い出し申した。…………八岳殿、如何なされた?」

張り詰めていた空気を和ませるかのようにからからと笑ってから、烈はふと自分に向けられた龍矢の視線に気づいて首を傾げた。ちなみに余談だが、鑓ヶ岳家は別に士族の出ではない……と思う。自家の家系を生憎と烈は知らないが、少なくとも著名な武士の家ではないはずだ。今後烈の家からそれらしいものが見つかったのなら話は別だが。
閑話休題。とにもかくにも怪異は消えた。ならば探索をするのが無難だろう。この地において用心しないことには始まらないが、いつまでも戦々恐々としてはいられない。烈はきょろきょろと辺りを見回す。

「……あ、先程は踏みつけて申し訳ござらぬ。さすがに拙者も人様のお家のものを壊しては寝覚めが悪い故、無傷で何よりでござる」

━━━━そして、あろうことか先程自身が踏み台にした石灯籠に話しかけ始めた。烈に他意はないのだろう。しかし話し方も相まってなかなかシュールな光景である。周りからどう見られても恐らく気にしないであろう烈は、ついでと言わんばかりに石灯籠の穴の中や周りに何か落ちていないか探し始めた。

>>周辺all様

17日前 No.557

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_n3h

【御子柴ゆらぎ/町長邸玄関】

 無我夢中だった、自分が何を投擲したかなんて、正直分かっていなかった。兎に角、何が何でもあの五月人形モドキを撃退しなければならない――
 そう息巻いていたゆらぎだからこそ、自分がやったことの結果に一番驚いていた。ポカーン、という効果音が似合いそうな顔立ちで、自分の腕と鎧の肩に当たって転がるシャープペンシルを見詰めている。
 なんで? 何であんないかつそうな見た目のALSO●Kが、シャーペン一本でどっか行っちゃうの? え、警備員失格じゃん?
「……いや、わたしは何も……あれも多分、ただのシャーペン……なんだろ、あの人先端恐怖症か何かなのかなぁ……?」
 大袈裟に自分を褒め称える龍矢に怪訝そうな返答をし、取り敢えずゆらぎは自分が投げたシャープペンシルの回収に向かう。家の入口を守っていた(?)鎧に向かって投擲したシャープペンシルは、当然玄関の脇に転がっている。拾い上げてみてもそれは矢張り何の変哲もない、ゆらぎ自身が家の近くの本屋で500円くらいで買ったものだ。別に受験対策で神社で祈祷して貰ったとか、そういう訳でもない。ついでに玄関付近の地面も確認してみる……これまでの異形たちのように、斃したらヒントでも落としていってくれないものか。

 あらかた地面の確認を終え、ゆらぎが振り返ると、龍矢や烈も庭の捜索を始めているようだった。烈などは何故か、石燈篭と会話している。
「昔よく猫が入ってたなぁ、そこ。やっぱり石だから冷たいのかな」
 田舎では偶に見られる、嘗ての曉町にもきっとあったのであろう情景を思い出しながらも、ゆらぎは再び前を向く。悲しいかな、今この町にはそんな微笑ましさは欠片もない、幽霊も鎧も、下手をすれば殺人犯だってうろつく町だ。そんなところに一人連れていかれてしまった七は、今どれほど心細い思いをしているのだろうか。心細いだけならまだいいが、その身に危険が迫っていやしないか。
「お邪魔しまーす」
 そう思えば、ゆらぎの足は自然と踏み出されていた。庭の探索は他のメンバーに任せ、独断専行で開けっ放しになっていた朱城家の玄関をくぐる。

 そこはやはり、町長邸らしく、これまでの家とは一線を画す豪奢な造りになっていた。まずもってして玄関が広い。柱や梁も太いし、高そうな壺も沢山並んでいる。観葉植物の残骸らしきものも、今は枯れ果てて見る影もないが、嘗ては立派な佇まいだったのだろう。
 ……既視感。あの柱の裏で、誰かと背比べをしたような。あれは、兄か……いや、お姉……
「わたしは御子柴ゆらぎ。家族はパパとママとお兄ちゃん、おっけー」
 誰のものかもわからない記憶を打ち払うように呟いて、ゆらぎは取り敢えず手近な鉢植えの中身を覗き込んだ。

>ALL

【相変らずマイペースで済みません、皆さま屋内の探索の方もよろしくお願いします】

15日前 No.558

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 玄関 】

 目の前を横切る鋭利な刃物――――などではないただのシャープペンシルが鎧武者の大袖に当たった、と思ったら鎧武者は何やらノイズを発しながら消えて行ってしまった。は、え、あ、なんて情けない、呆気にとられたような声を零した都城はゆるり、と目を瞬かせ、投げたゆらぎへと視線を向ける。

「すご! 御子柴さんのシャーペンどうなっとるんやろ……とにかくすごいやん!」

 無敵のシャープペンシルの誕生である。なんて、八岳の弾んだような声音に釣られるみたいに都城もきゃっきゃと騒ぐ。ふう、と息を吐き出し都城は改めて辺りを懐中電灯で照らしてみる。進むべき扉は三つ、前に一つ、両横に一つずつ、だ。外から見てもこの家は他の家より広そうで、そして自分達は悲しいことに半数の仲間を失っている状態。さくさく探索して行こう、と気を引き締めるように鉄パイプを握りしめて辺りを見渡す。

「……? ……じゃあ、私はこの扉開けてみますねえ」

 柱を見つめたかと思うとよく分からない呟きを落としているゆらぎに首を傾けつつも都城は外玄関を背にして左側にある扉に近寄りながらそう言う。とりあえずどこを開けるにしてもまず自分から、そんな気持ちを抱きながら扉を押し開く。

「……ここはあれやね、脱衣所みたいやわぁ、ということは奥の扉はトイレとお風呂やろか。鏡割れてて破片散らばってるから逢澤くんは入らん方がええと思います」

 都城が開いた扉の中は脱衣場であった。中には扉が二つだが多分その中は都城が言った通りだろう。懐中電灯で中を照らしてみれば脱衣所に置かれた大きな鏡台(洗面台のようだった)の鏡が割れて床に破片が散らばってしまっている。靴を履いていない逢澤へとそんな言葉を掛けながら都城は中へと足を踏み出しあちこちを懐中電灯で照らしながら割れた鏡台へと近づき辺りを探索し始めるのだった。

>> ALL


(ひとまずおつかれさまでした〜〜 じゃあとりあえず都城は脱衣場を探索しまーす!)

14日前 No.559

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 玄関→納戸】

如何なされた?
その声が聞こえたことで、鑓ヶ岳さんが此方を見てちょんと首を傾げていることに気がついた。ああ、いけない。じろじろ見すぎた。

「あ……すみません、その、鑓ヶ岳さんって、頼りになるというか、あの、いつも日常的にそういう感じの喋り方なのかなぁって。その、あんまり見かけないからさ、何かきっかけとかあるのかなぁ……って……思ってただけ……」

素直に詫びた後で、不快にさせてしまったら悪いなと、俺は言葉を選びながら勇気を出して問いかけてみる。ここで、「鑓ヶ岳さんって落ち武者の知り合いとかいますー?」なんて言おうものならマイナス1000点ものだ。高い身体能力に、武道に通じそうな鮮やかな身のこなし、「儂の背後を取るでない」とか似合いそうな強キャラ感、そして古風すぎるほど古風な言葉遣い。誉れ高い武士の末裔ですと言われても彼女になら全力で頷けそうだと思った。
手近にある壺を覗いては置く作業を繰り返しながら、なんだか妙にドキドキ……小心者らしく緊張してきた。少し詮索しすぎたか。よくない。一応今は運命共同体とはいえ、誰しも知られたくないことはある。触れられたくないものはある。

「すみません、気にしないでください。きっと御子柴さんの言うように、先端恐怖症なんだ! きっとそうですよ! 負かした敵に用は無い、さっさと七ちゃんを探しましょう」

そう言って鼓舞したいのは他でも無い自分自身だ。元気にそう言って、最後の壺を床に下ろす。なんだなRPGの勇者みたいだ。まあ俺は、光の剣を構える勇者よりも、その後ろについている交換要員で、後方支援武器を持った射手か魔道士あたりでいいんだけど。
壺を照らしていた懐中電灯を周囲の壁に向けた。扉は左右正面の三つ。都城さんは左に行ったので、俺は手近にあった右の扉を引いてみる。

左の扉は脱衣所だったという声が聞こえてくる。こっちは……? 懐中電灯で照らした先は、あまり奥行きのない小さな空間だった。

「こっちは物置みたいですね……」
埃っぽい空間の中には、日用品や大小の葛籠が置かれている。子供の頃に社会科見学した、昔の住居のモデルルームみたいだ。床や壁や置かれているものを照らしながら観察する。こういう葛籠って、昔話でも大抵ろくなもんが入ってないんだよな……と独りごちりながら、屈んでそっと開けてみる。もちろん、背後の玄関に続く扉は開けて退路は確保しておくことを忘れない。

>all

14日前 No.560

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 玄関→囲炉裏の間】

(五月人形といえば男児のお祝い……もし仮に俺らについて来てるとしたら、俺か龍矢かのどっちかか……でも龍矢は思い当たる節が無さそうだし……僕もないし……。ていうか、)

 確か前もカッターを投げつけていなかったか。そう唖然としていた安玖は他の面々よりも幾らか遅れて探索を始めた。左と右は既に都城さんと龍矢が捜索し始めてるから、探すとすれば残りの正面の扉だ。一瞬、二人を手伝うかと思ったが都城さんには来ない方が良いと言われたし、龍矢の方は物置らしいから大丈夫だろう。少しばかり建付けの悪くなった扉を開け放ち、お邪魔しますと上がり込む。
 本来ならば囲炉裏のある一家団欒の場であったのだろうそこは、部屋の中央がポッカリと空いたがらんどうな、それでいて家具はそのまま残され雑然としたような、そんな奇妙な場所だった。壁際には棚がふたつ。そして隕石でも落ちたのかというクレーターばりの大穴。気になるのはそこらへんくらいか。と目星をつける。

(こっちは本棚……で、こっちは薬をしまっておく棚かな……)

 本棚をガサゴソと一通り漁り、隣の棚へと移動する。薬棚であれば自分よりはまだ龍矢の方が専門だろう、とは思うがそう投げてられるほど人手はない。だから棚を覗き込んではまた一通り手にとって確認していく。
 それすらも終われば今度は穴だ。床下すらもこの距離から覗ける異質さは他の家とも質が違う。というか壊れ方が酷い。

(壊れた、か、撤去した……? もしくは、下に何かを埋めるために剥がしたきりか……)

 穴の側に膝を付き、スマホのライトを手に穴の中──床下を覗き込んだ。

>all

12日前 No.561

特殊レス @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 特殊レス / 町長邸 囲炉裏の間 】

 ――――スマホを持つ腕を、不意に何かが掴んだ。ぎり、と音がしそうなほどに、強く。


「――――きみじゃない」


 囲炉裏の間に足を踏み入れた逢澤が覗き込んだかつては囲炉裏があったであろう穴の中、ぽっかりと空いた空洞の中にあったのは薄汚れた着物を纏った黒髪の少年だった。まるでかくれんぼをするかのようにしゃがみこみ息を潜めていた少年はスマホを持つ逢澤の腕を掴みその顔を見つめ、そう呟く。


「――――じゃないから、いーらない」


 ぽつり、そう呟いた少年はぱっと、姿を消した。もう穴の中には誰もいない、何もない。そこはただの、穴だった。

>> 安玖くん


(穴の探索ありがとうございます〜〜! ってことで特殊レスでしたとさ!)

12日前 No.562

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/暁町 町長邸 外玄関→客間】

石灯籠の中や周辺を調べてはみたものの、特に目ぼしいものを見つけることは出来なかった。まあ、入ったばかりで重要なものを見つける方が珍しゅうござるか、と烈は区切りをつける。いちいち落ち込んでいては前に進むことさえも儘ならない。ならば過ぎたことは過ぎたこととして割りきるしかないだろう。
町長邸に入ろうとしたところで、龍矢から烈の物言いに関しての問いかけを受けた。烈はその大きな目をぱちくりとさせてから、にかっと快活な笑みを浮かべて問いに答える。

「いやはや、今となってはだいぶ昔の話にござりまするが、拙者が初めて足を踏み入れた掲示板の先達が斯様な話し方をしていたのでござる。それゆえ拙者、掲示板では皆このように話すものかと勘違いをしてしもうてな。正直に言えば、これは拙者の勘違いから染み付いてしまったものにござるよ。決して武家の生まれではござりませぬ」

初めは一人称を拙者にするか某にするかで非常に迷ったのでござるよ、なんて付け加えながら、烈は歩を進めていく。根っからの体育会系である烈だが、インターネットの掲示板で顔も知らない人間とコミュニケーションを図るのは楽しいと思えた。始めたての頃は何から何までわからなかったが、その手の先達は烈にひとつひとつ用語や掲示板の使い方をレクチャーしてくれた。烈としては迷惑をかけてしまった、という気持ちが強かったが、彼方はあまり気にしてないようで、その関係性が崩れることはなかった。むしろ皆気さくに接してくれて、だからこそ烈はこうして探索に赴こうと思えたのだ。

(顔が見えないからこそ、こうして気を許せたのやもしれぬな)

さて、町長邸に入ったところで、烈も他の面々と同じように探索に勤しむことにする。彼女が目をつけたのは真ん中が襖で仕切られている客間であった。若干の埃っぽさにけほっ、と咳き込んでから、烈は律儀に「失礼致しまする」と挨拶してから中に入る。

「押し入れ……は後にした方が良さそうでござるな……。またあのようなことがあっては堪らぬ)

月館家での出来事がまだ尾を引いているのか、烈は押し入れを一瞥しただけで後回しにすることにした。途中ではぐれてしまった者たちは無事だろうか。━━━━そうあって欲しい、と烈は思う。いくらその可能性が低くったって、無事を願うことは許されるはずだ。思い出すだけでも、あの時自分に出来ることはなかったのだろうかと煩悶してしまう。もしあの時、自分がもう少し早くあの部屋に入ることが出来ていたのなら。無理矢理にでも、蘭嘉の手を引っ張っていたのなら。彼女を救い出すことが、出来ていたのではないか。

「…………いかんいかん!こうも湿気ていては探索に精を出すことも出来ぬぞ鑓ヶ岳烈っ!」

ぱちんっ、と自らの両頬を軽く叩いて、烈は気持ちを半ば無理矢理に切り替える。今はしんみりしている場合ではない。七を助け出すための手がかりを探さなくてはならないのだ。彼女をこれまでいなくなっていった者たちのような目に遭わせないために烈たちは今動いている。その手を止めるなんて言語道断である。
一刻も早く七を助け出そう。そう改めて己に言い聞かせながら、烈は部屋に置いてあった長机を調べることにした。

>>all様

11日前 No.563

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 囲炉裏の間】

 汚されたノートを読んでどうするか悩んだ上で手に持つことを選んでいた安玖は、それ故に咄嗟に抵抗ができなかった。明らかにいじめだと分かるノートに少しばかり意識を取られていたこともある。
 体重を支えながらノートを掴んでいる左手。スマホを持って伸ばしている右手。上半身も穴の中に伸ばしていたから、踏ん張りそこねたのだ。

「い、った……!」

 右手を掴んだ男の子。黒い髪に薄汚れた和服が印象的な男の子。ギリギリと強まっていく腕力は子供のものとは思えない。が、が、と何度も引いたところで彼はびくともせず、むしろグイと勢いよく引き込まれる。

「――――きみじゃない」

「――――じゃないから、いーらない」

「は、はあ……?」

 呟いた少年は安玖の疑問の声を無視して姿を消す。──そう、姿を消した。ほとんど支えられていた形の安玖を置いて。

「う、わあっ?!!!」

 掴まれていた腕は宙を掻き、そのまま悲鳴と共に顔面から滑り落ちる。元は囲炉裏だった大きな穴は174cmある安玖の体すらすっぽりと飲み込み、物音を上げながら土煙を派手に巻き上げた。
 痛い。本気で、痛い。星が散るというより視界がスパークした。滑り落ちる拍子に床板の端で引きずった足も痛いが、スライディングをかました顔と地面に叩きつけられた上半身がマジで痛い。

「ゲホッ……ゲホッゲホッ!!」

 ──消えるなら押し戻してから消えろよ!
 ──ていうか勝手に引っ張っておいて「いらない」とか、どういう思考回路してんだーーっ?!
 なんて文句も噎せて言えるわけがなかった。とりあえず手に入れたばかりのノートを傍らに置いたまま、痛みを逃がそうとのたうち回ることに専念するのだった。

>>特殊レス、周辺ALL

11日前 No.564

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/町長邸玄関→囲炉裏の間】

ゆらぎが覗き込んだ鉢植えの中には、白く乾いた土がこびりついているばかりで、めぼしいものは何もなかった。他の鉢植えも同様で、そうこうしている間に彼女の背後を仲間達が通り過ぎていく。
 玄関から続く扉は三つ。右手に龍矢、左手に京、正面に安玖と烈……よりどりみどり状態のゆらぎは、ぐるりと視線を一周させる。龍矢と京が進んだ扉からはそれぞれ物置と脱衣場、と報告が上がったので、ゆらぎは正面の扉に進むことにした。
「玄関には何もなさそうだから先行くね〜」
 しっかり扉を開けたまま葛籠を漁る龍矢にそう声をかけ、上がり框を乗り越える。

 襖の先には烈の姿はなく、彼女は更に奥の別の部屋に向かったようだった。部屋の中には一人、ほぼ真ん中に空いた大穴を覗く安玖が居て……その姿が、悲鳴と共に消えた。

「え、ちょ、安玖くん!?」
 続く派手な音と土煙、ゲホゲホと咳き込む声。
 一瞬、安玖もまた怪異に引きずり込まれて消えてしまったのではないかと物騒な考えが頭を過ったが、どうやらそれは違うようである。しかし、見事に穴に転がり落ちていった彼が無事であるとも限らない。
 慌てて穴まで駆け寄ったゆらぎは、竹箒を横に置いて、這いつくばるように穴の中に手を伸ばす。
「だ、大丈夫です、かぁ?」
 思わず敬語になってしまったが、多分驚いているだけで他意はない。
「起きれる? 上がれる? ってかわたしで引き上げれそうな感じ? パパ呼んだ方がいい? あ、薬とかロープ貰ってこようか?」
 そして矢継ぎ早に質問を投げ掛けるのだが、盛大に噎せている安玖から答えが返ってくるのは、まだ少し先になりそうだった。

>安玖くん、all

11日前 No.565

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/納戸→玄関→囲炉裏の間】

若干逃げ腰気味の姿勢のまま、恐る恐る覗き込んだ葛籠の中には、二冊の古びた日記帳が入っていた。一冊は図書館で見かけたものと同じ紅色。もう一冊はほとんど黒に近い濃い灰色だった。

「なになに……? わたしはお山にすてら……ああもう、平仮名ばかりだと読みにくいな!」

わたしはお山にすてられていたのだという。
 それをあのひとがひろってくださった。
 他のひとはわたしにつめたい。
 でもあのひとだけはちがった。うれしかった。

 この町のお空はいつもくらい色。でもお外の町のお空はきれいな色なのだという。
 こんな色だよ、とあのひとがくれた色えんぴつ。
 とてもきれいだった、――――ちゃんと、ご本で読んだ、お空をとぶおはなし。
 わたしもお空を飛んであのきれいなお空を見に行きたい。
 あのひとはやさしいお顔でわらってくれた。うれしかった。

「またバラマキ日記帳がありましたよ!」

もう一度納戸の中を見回してから、俺は玄関の方に向き直る。赤い表紙の日記帳は、拾われ子の日記。使っている漢字から見るに小学校1年生か2年生ぐらいだろうか。

この子は誰で、この子を拾った養い親も誰なんだろうか? ここは町長さんのお邸だから町長? と考えるのはあまりにも短絡的か。月舘陽子が日記の最後に書いていた気味の悪い子って、もしかしてこの子のこと……?
この文面だけではまだわからない。

「もう一つの日記は……」

紅い表紙の日記帳を読みながら戻ってきた俺は、墨色の表紙の日記帳は玄関で開くことになった。

「1998年4月5日……こっちは随分とマメに日付を書くなぁ…………あれ……?」

そこで俺は、見覚えのある二つの名前に動きを止めた。もう一度文字列の頭に視線を戻し、一人で読むには抑えきれない逸る気持ちに、ゆっくりと声に出して読んでみた。

1998年4月5日
 月舘家に嫁いだ柚衣から、娘が生まれたという報せが届いた。喜ばしい事だが、娘とは難儀な事でもある。
 この町に生まれた女子は等しく月嫁の資格を持つ、それは我が孫娘とて例外には出来ぬ。
 我に出来るのは、翔子の儀式の成功を祈ることのみ。
 願わくばあの子らの未来に幸多からんことを。

「……月舘……柚衣って、さっきどっかで聞いたな……それに、翔子さん。翔子さんは式島さんの奥さんじゃないですか! 翔子さんの儀式って、なに、何でこんなところに名前が……?」

手持ち無沙汰にライトでさっき調べた壺をチカチカ忙しなくと照らしながら、玄関を行ったり来たりした。

「柚衣さんが嫁いだのは、きっと月舘竹彦の失踪したお兄さん、月舘しょうまさんだと思います。簪を失くした月舘小梅の言っていたしょうまおにいちゃん≠焉Bそうするとこの日記の書き手は誰だろう……我が孫娘とて例外には出来ぬ≠ニいう一文が気になります。月嫁という生贄からは縁遠そうな家系……? 」

そう思ったのは、月舘竹彦、月舘小梅の名前を聞いて松竹梅≠フ三文字が頭をよぎったからだ。昔母が好きな探偵物のドラマで、松子竹子梅子みたいな名前の三婆が陰惨な一族の家督争いをしているのを見たのを思い出した。竹彦さんには陽子さんという夫大好きすぎる奥さんがいたから、残っているのは松マさん≠セろう。松マお兄ちゃん、柚衣お義姉ちゃん、竹彦お兄ちゃん、陽子お義姉ちゃん……月舘小梅の日記の、おにいちゃんやおねえちゃんがおかしくなっていく場面の読めない文字は、そういうことなのだろうか。気になるのは、この日記の書き手が残した日付だ。今までの日記や書物の類には、それが何年前に起きたことなのかを示すものが全然なかった。だから俺は、朱月だの儀式だの住民失踪だの神隠しだの、そんなの大昔の話なんだと思っていた。けれど意外とそうでもなかった。

「1998年4月5日……って、この月舘柚衣の娘がもしまだ生きていたら、俺達と同じぐらいですよ……19歳? 俺は1999年3月生まれだから、学年的には一緒だ」

こんな古めかしい手記に残された登場人物がまさかのタメだなんて……。ものすごく、ものすっごく変な感じだ。急に身近になられても困る。

この中だと鑓ヶ岳さんや御子柴さんが俺と同じぐらいの歳だろうか。確か二人とも高校生かな? 逢澤先輩は俺の二学年上、都城さんのような大人の人にまさか年齢を聞くわけにもいかないから、向こうの扉の方を調べているのをいいことに、触れないでおこう。
探索に向かい正面扉から座敷のほうに上がっていった鑓ヶ岳さんを横目に、両手に一つずつ持った日記の表紙を見比べる。鑓ヶ岳さんは別に現代にタイムスリップしてきた武家の生まれとか大変な由緒正しい旧家の生まれとかそういうわけではなくて、そういう風に話すネットの掲示板があるとのことだった。なるほど、そういうのには全然のめり込んだことがなかったけれど、まだまだ俺の知らない世界がある。ともあれ、それを笑って話す彼女の様子から察するに、それは明るく良い思い出のようだった。良かった。人の地雷を踏み抜いていないことに心底ほっとする。……礼儀正しくて、良い子だな。なんて思いながら、鑓ヶ岳さんの上がっていった後ろ姿を見やってから、ふと視線を戻して、ゾッとした。
ーー地面から、足が生えているッ!!!!

それは玄関に立ったまま身を乗り出せばここからでも見える、開け放たれた正面扉の向こう。囲炉裏らしき設備がある座敷の真ん中だった。畳敷きの真ん中にポッカリと穴が開いていてそこから裸足の二本の足が逆さまに生えていた。一体何をやっているんだ? ……ああ、これも知ってるぞ、母さんが昔見てた探偵物のドラマで……あっ! えっ嘘!? 落ちたぁぁっ!!
足は何かに引き摺り込まれる力から抵抗するように暫くバタバタと動いた後で、穴の中に完全に落ちてしまった。俄かには信じがたい光景すぎて悠長な事を言っている場合ではない。

よく知った声の聞き慣れない悲鳴と、「安玖くん!」と駆けつける御子柴さんの声でハッとした俺も遅ればせながら囲炉裏の座敷に駆け込む。

「先輩!?」

逢澤先輩は高所恐怖症だ。落ちて大丈夫だろうか、助けないと。床下を覗き込み手を伸ばしている御子柴さんの隣から、囲炉裏の穴の中、先輩の隣へと飛び降りて踵から着地した。流石に女の子の力で怪我人を引っ張りあげるのは難しいだろう。ポケットから丸薬を取り出して先輩に差し出しつつ、御子柴さんを見上げ合図を送る。

「こっちから抱え上げるので御子柴さん引っ張ってくださーい。俺はその後登るんで!」

>囲炉裏の間all

11日前 No.566

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 脱衣場→囲炉裏の間 】

「あー……これあれやねえ、あのマズいらしいお薬やわ。こんなとこに置きっぱやなんて整理整頓が出来てへんねえ」

 脱衣場にあった鏡台の上にぽつん、と置かれた丸薬を手に取りながらそう言葉を落とす。まあとりあえず貰っておこう、とポケットにいれた都城は手近な扉を開け中を確認する。

「うん、トイレやわ。まだ水流れんのかな……いや行きたいわくやないけど」

 ひょこり、と覗いた扉の中にあったのは洋式のトイレであった。ぼんやりとそんなことを呟きながら懐中電灯を照らし特に何もないと分かると扉を閉める。となると、もう一つの扉は確実にあれだろうな、などと思いながらも都城はもう一つの扉に手を掛けその扉を開く。鼻腔を擽る匂いに眉を顰め咄嗟に口元や鼻を手で覆ったものの、けほけほと咳こんでしまった。

「っ、けほっ、うえ、なんやろこの匂い……うわあ…………」

 少し距離を取りながらも部屋の中を懐中電灯で照らす。そこは風呂場だった。水の張られていない風呂場――――ではなく水は張られていた。何が混ざっているのか濁り赤黒ささえ感じられる風呂の水に顔を顰めながらゆっくりと後退り玄関へと戻った、その時である。何やら物音が鼓膜を震わせ納戸を調べていた八岳と玄関にいたゆらぎが奥の部屋へと駆けていく。なに、なに、なにごと、なんて都城もその後を追って囲炉裏のある部屋へと足を踏み込んだ、のだが。

「………………えっ!? 落ちてしもたん逢澤くん!? 八岳くんやなくて逢澤くん!?」

 何とも失礼なツッコミだった。八岳とゆらぎが救出しようとしているので都城は見ていることにしたのだがあの冷静な逢澤が落ちるなんて何があったんやろか、なんてぼんやりと考えてしまうのであった。

>> ALL


(八岳くんごめんなさーい!)

11日前 No.567

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 客間→囲炉裏の間】

長机を調べていた烈が発見したもの。それは墨色の表紙をした冊子のようなものだった。探索にもだいぶ慣れてきた烈は、ははぁ、と顎に手を遣る。

「拙者にはわかるぞ。これは恐らく、曉町名物のばらばら日記帳にござるな」

どうしてこれまで見つけてきた日記帳が分割されているのかは烈にもわからないが、とりあえず彼女は“そういうもの”として受け入れている。大きすぎる食べ物を小分けにして保存しておくようなものなのだろう。烈は冊子を手に取ってから、その内容を確認する。

《2002年10月29日
 柚衣が流行り病を得て亡くなった。――は泣き喚いて手がつけられず、――――も大層気を落としていた。
 月舘の家からすれば我は余所者なのだろうが、柚衣は間違いなく我が娘。せめて毎月、墓には参らせて頂こう。》

てっきり烈はこれまで見てきた日記帳の内容はだいぶ昔に書かれたものかと予想していたが、この日記帳はそう古い時代に書かれたものではないらしい。2002年と言えば、烈も既に生まれている頃だ。さすがに鮮明な記憶はないが、それでもこの日記帳の持ち主と烈は同じ時を生きていたということになる。
しかし、所々読めない部分があるのが気になる。文脈からして、この部分には誰かの人名が入るのだろうか。出来ることなら読み取っておきたいと烈は目を凝らしていたが、どたどたと誰かの駆けていくような足音を聞いてはっと顔を上げた。また何か起こったのだろうか。何が起ころうと、大事になる前に自分のやれることをやらなければ。

「何事にござるかっ!?」

少々距離があったのと、気付いたのが若干遅かったこともあってか、烈が駆け付けた頃には既に全員集合していた。━━━━一瞬、一人足りないと烈は焦燥感を覚えたが、すぐに欠けている者が何処にいるのかを確認することが出来た。

「あ、逢澤殿!拙者も助太刀致しまする、女子一人で引き上げるのは辛かろう!」

ゆらぎ一人で床下にいる安玖を引き上げるのは容易ではないだろうと判断した烈は、彼女の手伝いに回ることにする。安玖くらいの男性ならば烈の力でも引き上げられるだろう。所属していた部活動が部活動なので、練習中に怪我をする部員も少なくはなかったのだ。歩けない部員のことを背負って保健室まで連れていったのが懐かしい。
━━━━ちなみに、烈も一瞬安玖が床下の穴に落ちるなんて珍しい、と思ってしまった。たしかにそういったアクシデントに遭いそうなのは龍矢のようにも思えるが、さすがに八岳殿も同じ轍を踏むことはなかろうと烈は考えた。とにもかくにも、今は安玖の救出を最優先にしなければならない。烈は床下の安玖をいつでも引き上げられるようにと彼の方を見据えた。

>>周辺all様

9日前 No.568

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★0jNsxvmXp2_OlE

【逢澤安玖/町長邸 囲炉裏の間】

「いや本当に……何かゴメン」

 後輩に抱え上げられ、年下の女の子二人に引っ張り上げられる――という心霊現象&高所落下によるボロメンタルにまあまあな追い打ちとなる善意に、何だか恥ずかしさや居た堪れなさよりも申し訳なさが勝って謝る。投げ捨てていた落書きされたノートと自分のスマホは持ちあげられる寸前に回収して胸に抱えておいた。
 持ち上げられた先、適当に休めそうな場所に腰掛けると早速龍矢に貰った丸薬を飲む。そして手持ちの丸薬から半分の3粒を取りあえず詰めなおす。唯一とも言える回復手段を一人が大量に持っていても意味がない。

「そこの棚ふたつも一通り調べたけど、この村絡みで関係ありそうなものは無かったよ。だから穴を確認しようと思ったんだけど着物の男の子に腕掴まれてさあー……痛いし引きずり込まれるし、って思ってたら俺の顔見た途端『お前じゃないからいーらない』って手を離して消えちゃって」

 そのまま支えが無い上半身が実質宙に投げ出されの、さっきである。

「横暴。最悪。落ちるし、本当嫌。このカバン、誕生日に買ってもらったばっかなんだけどどうしてくれんのさ。土まみれだし解れてんじゃんじゃんもー……」

 状況的に仕方なかったとはいえ、かなり扱いがぞんざいになってしまっているメッセンジャーバッグは既に使いこまれたような雰囲気をまとっている。手に入れてから2週間も経っていないのに。かんなり高かったんだかんな、これ。とは誰に向けたかも分からない嘆きである。

「……でも何で囲炉裏跡の穴の中に隠れてたんだろう。かくれんぼっていうか、何かから隠れてたところを僕が近付いたから掴んだ、みたいな感じだった。その上でこっちを引きずりこもうと……いや、何処かに連れていこうと? 僕は違うから要らない、連れていかなかった、の逆は他の特定の誰か――もしくは条件を満たした誰かなら、要る、ないし連れていったって事で……」

 親指で下唇を拭う。膝上に乗せたままのノートは到底この状況には関係があると思えない。そうなると今まで“曉村”ないし“曉町”を条件として起きていた心霊現象や資料と照らし合わせるしかない。

「中に居なきゃいけない理由があるのか……中に居ざるを得ない理由があるか……あの男の子自体がまだ“そこ”に居るのか……例えば隠し部屋や隠し通路……例えば遺体遺棄現場……例えば事件現場……連れていく……必要……近くに居る気配がある……仮に僕と真逆の人が正解だと仮定するなら……子供で、女の子の、七ちゃん……いや、もっとシンプルに儀式の生贄か……?」

 ぶつぶつと散乱する思考を吐き捨てていく。今この状況でそこもう少し詳しく調べてーなんて言ったら後輩はビビり倒すだろうか、と自分を助けるために果敢にも飛び込んだ龍矢へと視線を向けた。

>>周辺ALL

9日前 No.569

御子柴 ゆらぎ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=kqUFI6Uq1u

【御子柴ゆらぎ/囲炉裏の間】

龍矢を呼ぶか呼ばないか、その答えを安玖が紡ぐより先に、彼は自分からやってきた。ひらりと穴に飛び降りた龍矢が安玖を支え、ゆらぎと、慌てて駆け付けた烈も加わり即席レスキュー隊が完成する。
「はい、せーの」
 最早お馴染みになりつつある掛け声が必要だったかは別にして、そうして穴へと落下した安玖は無事に救出された。
「いやいや、困った時はお互い様でしょー、謝らなくて良いよ」
 安玖の羞恥心などつゆ知らず、ゆらぎはへにゃりとした笑みを浮かべる。先程床に置いた竹箒も回収し、改めて部屋を見渡せば、騒ぎを聞き付けた京も中にいた。早速全員集合である。

 この部屋の中は安玖が調べた、結果としてよく分からない子供に穴の中に引きずり込まれたらしい……今後は下を覗くのには注意した方が良さそうだ。
 バタバタしていたのでゆらぎも一瞬忘れていたが、物置で龍矢が日記がどうのと言っていた気もする。既に色々と集まっているようなので、一度情報共有しておくべきか。
「パパ、ついでにちょっと穴の中調べて貰ってもいーい? それからさっきも日記があったんだっけ……えーと紅いのはきっと図書館の続きでしょ、黒いのは見たことないからこの家の人のかな? 珍しく日付書いてあったんだっけ……あ、うんそうだわたしの誕生日。ホントにその日に生まれてるんなら完璧にわたしと同い年だよ。あと月舘柚衣って人のお墓はさっきの墓地にあった……と思う多分。その人が死んじゃったから陽子さんが後妻に来たってのもなくはないだろうけど、パパが言ってた通り月舘長男のお嫁さんなのかねー……結婚記念日とかどっかにないかな全員分」
 穴の中の龍矢を見詰める安玖の視線を勝手に解釈しつつ、ゆらぎは玄関で龍矢が喋っていた内容を反芻する。細かいことは現物を見てもらった方が早いと省略した一方で、彼女自身が見たものや数字の情報も付け足しておく。

 龍矢が拾った日記に書かれていたという、女の子が生まれた日。それは奇しくもゆらぎの誕生日と同じであった。とんだ偶然があったものである。
「月嫁って要は生け贄でしょ多分。平成の世に普通にそんなもんがあったんだと思うとぞっとするね……もしわたしの生まれがこの町だったら……今日まで生きてなかった、かも……知れない訳、だ」
 恐らくそれが原因の怪異に現在進行形で巻き込まれていることを思い出し、急に自分の言葉が現実味を帯びてきたのか、ゆらぎの声は尻すぼみ気味になる。

 身震いがした。夏の暑さなど忘れるような寒気が、今更ながらに走る。

「という訳で早いとこなっちゃん見つけてみんなでお家に帰りましょう。れっちゃんと編集長は何かあった?」

>all

7日前 No.570

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 囲炉裏の間→ 】

 無事に逢澤は救出されたようで都城は苦笑を滲ませつつも安堵の息を吐き出す。くるり、と辺りを見渡しゆっくりと部屋内を歩きながらも面々の言葉に耳を傾けた。

「いやこの町の人だいたい横暴そうやけど災難でしたねえ……うーん……あっ、御子柴さんは十九歳なんやねお姉さん十二月で二十六になってしまうから羨ましいわあ」

 へらりと笑みを零しながら囲炉裏の間の奥へと歩く。片方の扉は烈が開けたようで和室がちらりと視界に入る。その隣にももう一つ扉、真後ろにも扉、そして奥には二階へと続く階段が確認出来た。都城は進路を確認してからゆらぎの言葉にくるりと振り返り首を傾ける。

「脱衣所にはいつものお薬がありましたよぉ、硝子が割れて散らばっとったから入るんやったら気ぃつけてください。あとは普通に御手洗いと、お風呂やったわ。あー……お風呂の水やばそうやったから近寄らん方がええかもです」

 ゆらぎの問いかけに答えながらも浴室の状況と悪臭を思い出し眉を顰める。気を紛らわせるかのようにえい、と言いながら烈が開けた扉の横の扉を開ける。

「穴の中は八岳くんに任せますねえ。こっちも和室みたいや、鑓ヶ岳さんがおった方とほとんど一緒やから二間続きの客間がなんかやろか」

 部屋の中を懐中電灯で照らしながら都城は振り返って面々へとそう伝えた。

>> ALL

6日前 No.571

八岳龍矢 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【八岳龍矢/町長邸 囲炉裏の間・床下】

おいおいおーい、なんだその目は。「えーっ、いかにも真っ先に落とし穴に引っかかりそうな八岳じゃなくて、逢澤くんが落ちちゃったのー!? 何かあったの!?」みたいな心の声が皆してダダ漏れだぞコラー。

逢澤くんじゃなくてお前が落ちればよかったのに、なんて、言われかねないよなぁ、キャラ的に。まあそこのところをへらへら適当に流してしまうから、俺はいつまでたっても舐められる下っ端になってしまってる。と、同時に、このキャラのお陰様で、「本当の被害者」になることだけは回避できている。処世術。無駄に打たれ強いんだ。正直に受け止めて傷付くような奴はダサいと思い続けて生き残ってきたから。

「おねえさん、名誉毀損ですよぉ! はい、いきますよ、せーの」

囲炉裏の上からこちらを覗き込む都城さんに俺への名誉毀損を代表して貰って冗談交じりにビシッと指さし、御子柴さんと鑓ヶ岳さんが逢澤先輩を引き上げられるように両側から腕を抱えたのを確認して下から押し上げられるように腕を回す。……細っ、と驚きのあまりつい正直な感想が口をついて出てしまった。すみません、すみません、今はしのごの言っていられない。御子柴さんの掛け声に合わせようと試みた若干遅れがちのテンポで声を合わせ、先輩を畳の上へと押し出す。
救出劇は成功したようで、「少し休んでてください」と言い残し、俺は引き続き床下の探索を言い渡される。先輩は囲炉裏の下に隠れていた着物姿の男の子に引きずり込まれたのだという。俺が飛び降りた時には、そんな子供はいなかった。今も、上から光が差しているこの場所以外は真っ暗で、少なくともかくれんぼする人影は見つからない。

「承知しましたー。先輩を引きずり込んだ犯人、ちょっと調べてみます! あ、これは物置に置かれてた日記です! 皆さんで読んでてください」

そう答えて、納戸から持ってきたままになっていた二冊の日記帳を、畳の上に投げた。穴の深さからして、荷物を先に放り上げて少し弾みをつければプールから上がる要領で自力で簡単に這い上がれそうだが、両手に日記帳を持っていては流石に邪魔でしかない。

「……え……御子柴さんって、その日記の子と同じ生年月日なんですか? ……御子柴さんにも双子の姉がいたりー、なんて、しません?」

逢澤先輩には双子の兄が、俺には双子の弟がいる。これで御子柴さんに生き別れの双子がいたりなんかしたら……双子率ハンパないな。まあ、世の中に同じ生年月日の人なんてそれなりの確率でいるだろうからそんなに驚くことでもないんだろうけど。

とりあえず、日記のことは後だ。囲炉裏の間の皆を見上げていた俺は、言いつけ通り床下を調べることにした。……ひんやりと埃っぽくて、真っ暗だ。
そういえば、あの日記には「この町に生まれた女子は等しく月嫁の資格を持つ」って書いてあったな。……七ちゃんが攫われたとき、あいつら、なんて言ってた?
ーー月嫁を、月嫁を捧げなければ。
……七ちゃんは、やっぱりこの町の人間だったってことなのだろうか。暁町の人間が、敵だとは言わない。でも、一人になってからその考えに思い至って、俺は少し落胆した。

角材がパズルかジャングルジムのように組み合わさって網目みたいに広がっている。懐中電灯を当てないと見えないそれを手伝いに、俺は先輩が男の子を見たという暗闇の奥底に目を凝らした。

「誰かぁー? 誰かいるのか?」

>all

5日前 No.572

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=ti0IvmfI1e

【鑓ヶ岳烈/町長邸 囲炉裏の間】

ゆらぎと二人でせーの、と安玖を引っ張り上げる。運動部の男子を背負うこともあった烈としては、安玖は少々軽いように思えた。しかしこのようなところで逢澤殿はもっと食べた方が良うござりまするぞ、などと言うのはさすがにやめておいた。烈は空気が読めるタイプの武士である。…………いや、武士ではないのだが。
とにもかくにも、安玖の話によると彼は床下にいた少年によって引きずり込まれたのだという。たしかに横暴の一言に尽きるが、何も今に始まったことではない。むしろ話のわかる怪異の方が少なかったように思える。出来ることなら烈も怪異との戦闘は避けたいが、あちらから襲い掛かってくるのであれば致し方ない。正当防衛という奴である。

「あっ、ゆらぎ殿は拙者よりもひとつ歳上なのでござるな。拙者は18にござるよー」

てっきり同い年かと思うておりました、と付け加えながら烈も自分の年齢を告げる。今のところ伝えなければならないという情報でもないが、他人が話している話題には乗っかっておきたい質なのである。もしかしたら自分が一番年下なのかもしれませぬな、なんて思いながら烈も探索の結果を報告することにする。

「編集者殿の申した通り、拙者の調べた部屋は二間続きになってい申した。拙者が調べたのは長机のみにござるが、中には押し入れもありましたぞ。そちらも調べてみる価値がありそうでござる。……して、長机からは此方の日記を見つけましてござる。所々読めないところがござりまするが、内容を把握する分には支障はありませぬ」

此方でござる、と告げてから烈は見つけ出した墨色の日記を一同に見せる。念のため読めない部分を指の腹で軽く擦ってみるなどしたが、特に変わった様子は見受けられなかった。

「見たところ、この日記もかなり最近記されたようでござる。件の月館柚衣殿のことは此方にも記されており申した。読めない部分が見えればもっと鮮明になるのでござろうが━━━━まあ、見えぬものは致し方ありませぬな。とりあえず、この日記の書き手は曉町の生まれではないようにござる」

一通り日記に記されていることを伝え終えて、烈はふぅと息を吐く。この日記だけで手がかりを掴むのは難しそうだ。せめて他の日記から手がかりを繋ぎ合わせることは出来ないだろうか、と考えながら、烈は龍矢の見つけたという日記にも目を走らせた。

>>周辺all様

4日前 No.573

千羽 @hina0126☆cC6IJvcXXi01 ★Android=Rn06dh4ATk

【逢澤安玖/町長邸 囲炉裏の間】

 龍矢がぶん投げた日記を拾い上げ、穴の側に座り直した安玖は適当な相槌を上げた。

「ふうん……みんな思ってたのと微妙に年齢が違ったな。僕はこないだの1日で21になったから、この中では二番手か」

 何が、とは言わない。言わなくても周知の事実だが。
 日記は二冊。片方は紅色の、もう片方は墨色と呼んでも良いだろう表紙だった。後者は鑓ヶ岳さんが提示した物と続き物だろう。だとすると前者の紅色は──。

「……安、仁屋さんが持ってた日記の続き物か。たしかあっちは『神様におかえしすることしか覚えてない』『あの人は私に優しく色んな事を教えてくれる』って内容だったから……」

 彼の名を呼ぶ声が一瞬だけ裏返ったがそのまま流す。今そこを広げる必要はなかった。
 記憶を手繰り寄せたあの日記は、確かすべて平仮名で書かれていた。とするならば漢字の入り混じったこの文面は“あの人が色々教えてくれた”後に書かれた物──つまり時系列的にはこちらの方が後だ。

「『山に捨てられていたところを拾われた』『他の人は冷たいのにあの人だけは優しい』……『町の空はいつも暗いけど外の町の空は綺麗な色らしい』……つまりこれが書かれた時点では少なくとも町は常に赤い月を掲げた状態になっていた、と」

 日記を自分で読みながら同時進行で要約していく。にしてもあの人に貰ったお外の空色の色えんぴつか……空ねえ……。と今までに他で空に関係の有りそうな何かがなかったかと探りひとつ思い当たる。

「……そういえば、最初の家も二番目の家も月が描かれた掛け軸があったよね。この家には無いのか、それともあのふたつの家が深く関わりあるからかな」

 分からない。分かるはずなのにこれだと断言できるものがない。片っ端から思いつきを上げるしかないか……と一度、瞬きのように片眉を釣り上げた。
 もう片方の墨色の日記にはご丁寧に西暦から日記がつけられていた。うちの義母ですら日付しか書いてないのに……と妙な関心を浮かべながらまた声に出して要約していく。

「1998年4月5日……うん、概ね言われた通り──いや、待って。翔子の儀式?」

 翔子。翔子といえば式島さんの奥方である式島翔子な。成功を祈る、ということは98年の4月5日時点では“まだ”彼女の儀式は行われていない。それは遺体を使うでもない限り、この時点で式島翔子が生きていたことを意味する。式島さんは安玖の(少しばかり自信の失くなった)見立てからして行っても30半ば、若くても30は超えているだろう。つまり生まれたのは大体1987□81年ほど。となるとこの日記の書かれた98年の時は行っても17歳、自己申告による鑓ヶ岳さんの年齢よりも若い計算になる。
 ……え、もしかして式島夫妻って姉さん女房的な? と瞬きそしてはあっ? と声を上げた。

「ちょ、っと待って……12年前に式島夫妻がこの町に来た時は普通だった、んだよね? 今から12年前って、2005年……しかも亡くなったのは3年前、2014年? ならこの時の“儀式”はどうなったの」

 1998年-2014年という間には16年もの時が流れている。そうでなくともおかしくなるまでに7年も空いている。計算とか以前の問題だ。時系列か何かがおかしい。
 7年、神様、おかしくならなかった村。なのに突然、おかしくなった。いやおかしくなったかは分からない。が、確かに龍矢は式島夫妻が『町から逃げた』と言っていた。性格的に少しでも差異のある伝言ゲームから派生する責任を恐れて丸々と引用している筈だから、式島さん本人の認識からして逃げている。おかしくはなかったが、逃げる必要はあった。──何から?

「……例えば、98年の儀式を拒んで町から逃げたのに7年の月日を経て帰ってきてしまったから」

「町の人は“何らかの事情”で儀式を改めてせざるを得なかった……ないし、夫妻──いや式島翔子の帰還がダメ押しになった」

 ──ならば何故7年もの間、この町は無事だった?

「……例えば、その7年間ほかの誰かが“肩代わり”していたから」

「俗世に染まった人間じゃ無理でも、女の赤子ならいけるかもしれない。7つまでは神の子で、ただの女よりも遥かに価値も意味もある。──ましてや、この町の生まれなら」

「人形だってそうだ。特に雛人形はうまく使えば女の子にとって忌避すべきことを“肩代わり”してくれる存在になる」

「そうやって空が元に戻らないながらも騙し騙し生き延びていたところを、“何か”がギリギリのバランスを壊した……?」

 どの日記もそうだ。人々は女の子にだけやたら口煩くしていた。この町で生まれた女の子にだけ。それは正しく、女の子達にとってこの町は無条件に危険だったから……?
 ──なら、何で。と顔を上げる。
 都城さん、御子柴さん、鑓ヶ岳さん。僕と龍矢。今この場にいない七を除けば、残ったメンバーはそれだけ。今集まっているメンバーも、それだけ。今までに出てきたキーアイテム……なんて言ったら罰が当たるかもしれないが、そう呼べるものは簪に雛人形に女の子が好みそうな和人形。狭山家の家族写真や母が自分に向けた懺悔の言葉を除けばすべて、すべて女の子に関わりのあるものばかり。

「……ねえ龍矢」

 女性陣に悟られないようにずっと抱えていたノートを下ろす。そして「それ、どう思う」と声を潜め、ただそれだけを投げかけた。
 相手がその言葉を、ノートを、どう受け取り、どう安玖に答えるのか。そのすべてを“見る”ために。


 ──なら、何で。女の子のための雛人形ではなく、男子のための五月人形が、ここにいる?

>>周辺ALL、龍矢

4日前 No.574

都城京 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=8p27ODDVl8

【 都城京 / 町長邸 囲炉裏の間→客間(下) 】

「あらまあ、ちょっとしたジョークやから許してくださいよぉー、八岳くんも足元には気ぃつけてくださいねえ」

 名誉毀損、なんて言葉にへらりと笑いながら都城は囲炉裏穴の中へと消えていく八岳へと言葉を発する。いけないいけない、年下の子は大事にしないと、なんていう気持ちはあるものの軽口と冗談はもはや息を吐くように唇から紡がれてしまうのだ。

「ほんまやねえ、でも押入れって…………いやなんか、うーん、なんか嫌なかんじしてしまうわ」

 烈が入った客間でない方の客間へと足を踏み入れた都城はぐるり、と部屋の中を見回す。押入れと机、部屋の作りと物の配置はほぼほぼ同じなようだった。あちらの押入れもこちらの押入れもしっかりと閉じられてはいるが開ける気には到底ならなかった、だって怖いから。ひょっこりと囲炉裏のある部屋へと顔を出しながら逢澤の推理にぞわり、と背筋に冷たいものが走る、人身御供、やなんてそんな、そんなもの。

「やっぱ式島さんに話聞ければ良かったんやけどねえ、ほんまあの人どこに行ってしもたんやろ」


>> ALL

1日前 No.575
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