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――Cake Cutting Ceremony.【募集空きあり】

 ( オリジナルなりきり )
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吸血鬼/恋愛/耽美/長文推奨 @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_aZs



  ×  ×  ×





 ――首筋をなみだのように伝う、紅い紅い雫。噎せ返るような甘い香りで脳を焼く其れを"きれいだ"と言ったら君はどんな顔をするだろうか。砕けた柘榴のように白磁の皮膚の上で膨らむ其の粒は、きっとこの世の何よりも甘美な味がするに違いない。舌先を痺れさせる甘い味に混ざる此れは君の血? それとも涙?


「さて問題です。ここにある極上のケェキ≪人間≫を分け隔てなく七つに分けるにはどうしたらいいでしょうか?」


 冬薔薇の吸血鬼は一つの地に集い、七つの頭で考える。十四の瞳で獲物を見据える。二十八の牙で其の首筋を捕らえる。偉大なる祖父、ノルベルト・ヴィンターローゼンの死後に残された七人の極上の血液を持つ人間たちをどうするか。一年の猶予を設けて思考/嗜好する。


「完全な七角形なんて描けないのにね。」





  ――――Cake Cutting Ceremony!!





  ×  ×  ×




【サブ記事へどうぞ。】

切替: メイン記事(46) サブ記事 (116) ページ: 1

 
 

スレ主 @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_ly4

【シシィ・トラウス/廊下・ノルベルトの部屋→廊下】



 日を厭う吸血鬼の館。時計を見れば外はおそらく午前中なのだがぴったりと閉じられたカーテンは日光の侵入を許さず、時間の感覚さえ狂わせる。ろうそくの明かりに照らされ麦の穂にも見える亜麻の髪を揺らす少女――シシィ・トラウスは緻密な装飾の掘られた扉の前に立っていた。その手に握られているのはささやかな花束。寒冷でやせた土地のこの国では肥えた土のほとんどは野菜や穀物に使われる。そのため観賞用の花は栽培においてもっとも優先順位が低く、それ故に希少価値が高い。彼女の手に握られていた水仙の花はつぼみも小さく、いまにもしおれてしまいそうなほど弱弱しいものだった。

 重いその扉を開くと、かすかに冬薔薇の匂いが漂う。いそいそとシシィは部屋に入り、花瓶に入っていたしおれかけの勿忘草を持っていた黄色い水仙とそっと交換した。なるべく彼の部屋の静謐な時間を乱さないように、足音さえ殺してシシィは部屋を出る。ぼんやりとろうそくの明かりがまばらについた廊下で、シシィは一度だけ扉のほうを振り返った。

 ――冬が彼を連れて行ってしまったというのなら。


「どうしてわたしも、つれていってくれなかったのかな」


 ちいさく、つぶやいた。そんなことわかっている。彼の隣にはすでに彼が一緒に旅立つことを決めた人がいたからだ。それはわかっている。ずっと前から、わかっていたはずだった。だけど、すこしだけ。さみしいな、なぁんて。


「――そうだ、ハーブティーを入れましょう」


 自分に言い聞かせるように声に出す。そうしてシシィはノルベルトの部屋の前からキッチンのほうへと足を向けた。


>>ALL





【本編開始となります! イベントに関しては http://mb2.jp/_subnro/15685.html-55#aを参照してください。】

8ヶ月前 No.1

ジョン・ドゥ @blize859☆wKMk21AYDk6 ★XfXF0jdJYf_qTF

【ジョン・ドゥ/玄関前】

トントントン…

うす暗い廊下に響く甲高い物音。
その物音は廊下から先の玄関から響いているものであった。
玄関の向こう側にはスーツをきた初老の人間がたっていた。
片手にはこのアデルの世界では珍しい「花」と呼ばれるものを持っている。

「失礼いたします。ジョン・ドゥ商会の者です。」

その人物はジョン・ドゥ商会からきたといってきた。
アデルにはいくつもの商会があるもののその中で最も有名なのがジョン・ドゥ商会。
ありとあらゆる品物が星の数のように揃えており、どんなものでも提供するという信念で運営をしている由緒正しき商会である。

そしてその玄関の前に立っているその人こそ創設者の「ジョン・ドゥ」である。
彼は笑顔を崩さず誰かが玄関のドアを開けてくれることをまっていたのであった。

≫シシィ ALL

【ロルの長さはこんな感じでよろしいでしょうか】

8ヶ月前 No.2

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/二階・図書館】


祖父、ノルベルト・ヴィンターローゼンの訃報を聞き、館に集まって数日後。遺産配分を滞り無く終え、残る問題はノルベルトが集めた七人の"コレクション"についてだった。考えても考えても答えが出ないので、絞り出した結論が一年の内に考える、といったものだった。お金関連の遺産を、自分は既に持っているしこれから増やそうと思えば増やせるから、といった理由で丁重に辞退した後、これで帰れると思っていた強欲の名を冠するグリードは大きな溜息を吐いた。
場所はヴィンターローゼン邸の二階にある図書館。グリードには只今興味を引かれるものが一つも無い。しかしそんなグリードにも知的好奇心というものは存在する。好き放題していた百年前も興味を引かれたものは片っ端から読み漁ったものだ。このヴィンターローゼン邸には己の読んだ事が無い本が有るのではと思いやってきたのだが、果たして。室内には分厚いカーテンが引かれ、照明も最低限しか灯されていないので薄暗い。吸血鬼でなければ本を読むには適さない暗さだ。

「客人か。……家主じゃ無い俺が出る必要も無いな」

玄関をノックする音が鼓膜を震わせる。吸血鬼の血は半分しかその体に流れてないとはいえ、五感はヒトより鋭い。そのままジョン・ドゥという尋ね人の正体も聞こえたが、首を振って聞かなかった事にした。自分は今は客人(客吸血鬼?)であるし、使用人が居るなら使用人が出た方が良いだろう。商会であればこの家の事を知っている者の方が良いのは尚更だ。
グリードは本棚へ視線を戻すと題名を確認するように指を滑らせる。読んだ事がある。読んだ事がある、読んだ事がある。読んだ事がある。読んだ事はないが題名からして興味が無い。読んだ事がある。興味が無い。読んだ事がある。……読んだ事がない。
思わず手を留めて本を取り出す。正確にはその題名に心当たりはあったが、読んだ事がない本だった。聞いた事のあるだけな、物語。それは母が昔、グリードの弱いが百にも五十にも満たぬ頃、寝物語として聞かせてくれた何て事は無い子供向けの童話だった。

「…………」

グリードの胸に、嬉しいような寂しいような感情が湧き上がる。何か言いたいのに何も言えず、ただその本を見下ろした。
母と人間であった父が自殺した事に何の文句も無い。楔を穿った吸血鬼の人間の末路にはよくある話だ。実際、ノルベルト・ヴィンターローゼンもその選択をしている。当時百歳であったグリードも、子供ではないので分かってはいた。理解していたし納得していた。死ぬ前に言ってくれていたし、承諾もした。別れも済ませた後だった。ただ、――もう少し一緒に居て欲しかったような気もする。
塞ぎ込みそうになった思考を払うかのように顔を上げると備え付けられていたチェアの方へ向かう。案外座り心地の良いそれに腰掛けるとセットにされている丸テーブルへ本を置く。手に取ったは良いものの、内容は知っているのだ。読もうかどうか、その表紙を開く事に戸惑った。



>>ALL様


【なんか最初から暗くてすみません! 気にせず絡んでいただければ嬉しいです】

8ヶ月前 No.3

ジョン・ドゥ @blize859☆wKMk21AYDk6 ★XfXF0jdJYf_qTF

【ジョン・ドゥ/ヴィンターローゼン邸玄関前】

トントントン…

うす暗い廊下に響く甲高い物音。
その物音は廊下から先の玄関から響いているものであった。
玄関の向こう側にはスーツをきた初老の人間がたっていた。
片手にはこのアデルの世界では珍しい「花」と呼ばれるものを集めた各種色々な花畑を持っていた。

「失礼いたします。ジョン・ドゥ商会の者です。」

その人物はジョン・ドゥ商会からきたといってきた。
アデルにはいくつもの商会があるもののその中で最も有名なのがジョン・ドゥ商会。
ありとあらゆる品物が星の数のように揃えており、どんなものでも提供するという信念で運営をしている由緒正しき商会である。

そしてその玄関の前に立っているその人こそ創設者の「ジョン・ドゥ」である。
彼は笑顔を崩さず誰かが玄関のドアを開けてくれることをまっていたのであった。

しかし4階にいる者にはノックの音が聞こえることもなく2階の図書館にいるものには聞こえているがだれかが出てくるであろうということで出るきはないらしい。
仕方なくもう一度扉をノックするのであった。

≫ALL

>>2 、スレ主様の指摘により一部内容を変更しております。貴重なレスを消費してしまってすみません】

8ヶ月前 No.4

@kasa3shi☆1hF4w8rWL3Q ★iPhone=wubEjuwW7M

【アリシア・ヴィンターローゼン/二階・廊下→二階・図書館】

カツカツカツ…… とヒールを鳴らしながら二階の図書館へと通じる廊下を歩く。祖父が亡くなったのだからといつものふりふりとしたドレスではなく、シンプルな黒いドレスを身につけ、胸には猫をモチーフにしたブローチ。髪はいつものように使用人に結わせ、ハーフアップにされた髪に黒く細いリボン。全く陽射しを通さない真っ暗な廊下は自分にとってはとても都合がよかった。アームカバーを外すことが出来るのは此処に来るまでは考えられなかったことだろう。しっかりとした足取りで廊下を歩いていく。

「あれ程お金を欲しがるあの方が辞退するなんて、珍しいこともあるものね…… 」

目的地である図書館の前まで来ると、軽く息を吸い扉を開く。扉の先には本を持ちただ立っている男がいた。それが自分の目当ての人物であることを確認すると足音をなるべく立てない様にそっと近づく。どうやら自分に気づいてはいないらしい。

「こちらにいらしたのね、グリード」

そう声をかければ、彼の隣に並ぶ。目の前にある本棚に目を向ければ、自分の屋敷にはない本ばかりであるようだった。ふと目に付いた赤い背表紙の本を手に取りパラパラとめくる。

「貴方がお金を欲しがらないなんて、どういう風の吹き回しかしら? 」

グリードの方に目を向けずに問いかける。前に夜会だかなんだかで会ったときにはあれ程お金を欲していたグリードが遺産のお金を辞退したことが気にかかる。祖父が残した"コレクション"の事もあるのだ。少しグリードとは話しておきたいと思っていた。ちらりと横目でグリードの方を見やる。

>>グリード・アモン・ヴィンターローゼン



【あまり慣れていないのでおかしいところなど多々あると思いますが、その都度ご指導いただければ幸いです…… ! 】

8ヶ月前 No.5

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/二階・図書館】


声を掛けられハッと顔を上げる。どうやら目の前の本の事に夢中で扉を開けて入ってきた人物に気付かなかったらしい。いや、人物と言うには可笑しいか。彼女はアリシア・ヴィンターローゼン、グリードと同じくノルベルト・ヴィンターローゼンの末裔で傲慢の吸血鬼である。

「アリシアか」

アリシアとは吸血鬼ばかりが集まる夜会でも、貴族が集まるパーティでもそう少なくない回数顔を合わせている。同じノルベルトの孫である事が気を合わせたのか、言葉を交わした際には多少なりとも盛り上がった会話をした記憶がある。
探していたような口振りから、どうやらグリードを目当てに此処まで来たのだろう。理由は――"コレクション"の事だろうか。

「……別に、金ならもう有り余る程有るからな」

と、思っていたのだが宛が外れたらしい。当然"コレクション"の事も有るだろうが、一番はこちらだったか。昔と性格が変わった自覚は有る。あれだけ好き放題していれば自分の悪評が嫌でも耳に入る。グリードの会社が大きくなったのもその悪評に恐れをなして言う通りにする者が多かったからでもある。だがここ百年の間で人間の中では悪い噂も無くなり、今では温厚な吸血鬼社長だ。
訝しむのも当然か、と本に視線を戻す。薄っぺらい絵本のようなそれは未だ開かれないままだ。


>>アリシア・ヴィンターローゼン様、ALL様


【絡んで下さりありがとうございます!】

8ヶ月前 No.6

ロト @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ロト・ヴィンターローゼン/一階・バスルーム】

あまく、あおい、薔薇の香りが立ち込めている。
朦々と昇り立つ湯煙の中に溶け込んで、眩暈を覚えるほど濃密な芳香が紗羅(ヴェール)のように素肌に絡む。

つっと滑らす指先の冷感が、掌の温感が、メレンゲのような泡を転がし、ぬめりを伴いながら皮膚を滑って、数刻前に痴人が残した痕をなぞる。爪の跡、鬱血。打ち付けた果実がそこから熟れ傷んでいくように同心円状に広がっている首筋の紅黒い刻印。吸い付いた口唇が記した紲(きずな)は、肌が湯の温みに上気しても尚克明に浮かび上がる。そんなもので火遊びの御相手は精々ちっぽけな独占欲でも証ししたつもりなのかも知れないが、その程度、今更なんの枷にもなりはしない。
喉を抑えるように首筋を囲った手のひらが両鎖骨に沿って流れ僧帽筋の上から肩を抱く。上腕から肘それから手首の方へと身体を抱くようにしなやかに伸びながら辿ったあとで、今度は片腕ずつ指先からくるくると撫で洗いを始めた。
力強く引き締まったその背中には、四百年以上も生きてきた者にしてはあまりに化け物じみた若々しさと雄々しさが未だ息衝いている。あまくあおい香りを運ぶ手のひらが、するりと脇腹を滑る。過ぎる景色のように手の陰に掻き消えふたたび現れたのは、背面から腰を抱くように前面へと左脇腹を周り、水の流れか蛇の道の如くに腿へ這っていくような青黒い刻印。欲情の痕と違って消える事の無いその印は、長い年月のうちにすっかり身体の一部となって気兼ねなく緩々と白い雲に覆われていく。

蛇口をひねる音に続く温かな雨に遮られて、バスルームにはプラチナ色の幕が下りた。



ヴィンターローゼン家の血を継ぐ者の一人、ロト・ヴィンターローゼンは真綿のようなバスローブに火照る身を包み、大きな鏡のある洗面台で歯を磨いていた。鏡越しに今しがた自分が出てきた薄暗いバスルームが映っている。ペパーミントのほんのりと甘い薄荷の香りを延ばし、ギザギザと尖って磨きにくい歯を器用に一本ずつ磨いている。これで、昨夜の甘く苦い戯れの後味も彼の中では綺麗にさっぱりとリセットされる。

先代当主、ノルベルト・ヴィンターローゼンの訃報を受けてロトがこの邸に招集されてから数日が経過していた。相続の金品の分配も粗方片付き、残すは七人の『コレクション』と、あとは細かいものを除けば精々家督とこの屋敷ぐらいであろう。そこにきてヴィンターローゼン家の吸血鬼達の出した結論は、「一年間をこの邸で暮らしその間に決めよう」という実に穏便なものだった。はじめこそロトはこの案への賛成を渋った。奔放な自由人であり家族などと暮らす気もさらさら無い彼が、一年間も親戚や人間と共同生活をするなんて虫酸が走るに決まっていたからだった。しかしその考えは話し合いのうちに少しずつ改められ、最終的には彼もそれを飲み込むに至った。彼の気を変えたのは、優しさでも同胞意識でもない。七人の極上の血を持つ人間は、長いことこの邸で飼われたが為に、しのごの言えどもこの邸からは離れられない筈なのだ。これを蹂躙できる好機かもしれないとしたら、先代当主は何と良いものを遺してくれたのだろう。これは捉え方によっては枷では無いと、ロトは悪趣味な算段を立てては一人内心でほくそ笑んでいた。

しかし話し合おうと共同生活を始めても、色欲の吸血鬼ロト・ヴィンターローゼンは勝手気儘なもので、屋敷にはすぐに飽いてしまったようだ。夜な夜な屋敷から繰り出して、人間界にも魔の巣食うアデルの夜を闊歩しては艶に遊び回り、夜明け近くまで放蕩の限りを尽くして帰ってこない。そのため今朝も夜明け前に帰ってきて深酒をしたままベッドに倒れこみ、朝餉も放棄してこの時間まで眠り続け、ようやく起き出して風呂に入ったと思ったらまた寝不足解消の二度寝をしようとしている堕落の極みのような有様である。屋敷内はいつでも宵闇の刻のように薄暗く、いつ眠りいつ覚めても良いほど時間感覚を狂わせてくれるが、それにしても一族の者や人間達とあまりにも顔を合わせないのは如何なものか。
濡れたまま雫を垂らす銀の髪を肩に掛けたタオルで絞るように拭う。昨日の女はここ数日でも指折りの、面倒臭い女だった。歯磨剤を唾棄し漱いだ口から、思わず疲労の溜息も一緒に零れ落ちる。

>all


【こんにちはー。芙愛ですー。本編開始おめでとうございます! 遅ればせながら初投下させていただきます。拙い文章では御座いますがなるべく迷惑は掛けないように頑張ります。これからどうぞ宜しくお願い致します。】

8ヶ月前 No.7

@kasa3shi☆1hF4w8rWL3Q ★iPhone=wubEjuwW7M

【アリシア・ヴィンターローゼン/二階・図書館】

手に持つ赤い背表紙の本に視線を戻しぱたりと閉じた。大して興味を掻き立てられるような内容ではなかったようだ。元々あった場所に戻し、また別の、今度は少し褪せた桃色の本を手に取る。今度は開かずに、じっとその本を見つめていた。

「欲しいものを手に入れて、それで満足だなんて…… 一体何があるか、分かりませんわね。」

隣にいる男はどうやら見ないうちに随分と変わってしまっているようだ。夜会で会った時の彼とは全く違う。あの時は強欲の吸血鬼の名に相応しい、お金に魅入られた男だったのに。――自分と少し似ていて、気が合う男だと思っていたのに。この胸に渦巻くものはなんだろうか。言いようのない、落胆とも軽蔑とも違うこれは一体何なのだろうか。その答えを知ってしまってはいけないような気がした。

「長い時を生きていれば、こういうこともあるのかしら…… 」

本の表紙を撫でる。ザラザラとしていて、所々に傷があるようだ。この本がこの館に来てそれなりの年月が経っているのだろう。鼻腔を擽る古書の匂い。嫌いではないが、あまり嗅ぎたいとは思わない匂いだった。隣の男に今度はしっかりと目を向ける。するとどうしたことだろう。一冊の薄い本を持ち、それをどうするでも無くただ持っている。どうやらその本は絵本のようだ。彼が絵本を持っているという状況が異様に感じ、どことなく彼の様子がおかしい気がした。自分は誰かのために気を遣うような質でもないのだが、今の彼には自分にとってはなんとも言えない異様さがあった。

「そうだわ、グリード。貴方は知っているかしら。ここの地下にはワイン蔵があるそうよ。一緒に行きましょう」

これが彼のためなのか、彼のためと称した自分の我儘なのか。それはアリシア自身でさえも分からない。

>>グリード・マモン・ヴィンターローゼン様 ALL様


【遅くなって申し訳ありません!文才もなく申し訳ない限りです…… 】

8ヶ月前 No.8

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=nMqLjsjQcP

【ナーダ・アドラシオン/廊下】

早寝早起きは騎士たる者であれば当たり前のこと、と生前父親が言っていた。ただそれだけの理由で、ナーダ・アドラシオンは朝に弱いのにも関わらずに早朝に身を起こし、怠い体に鞭を打ってきっちりと服を着こなして背筋を伸ばし、自室を出る。若干顔色が優れないようにも見えるが、常に無機質な仏頂面を浮かべているという点からしてみれば普段とそう変わらないのかもしれない。朝食をがっつりと食べる気にはならないが、規則正しい生活を心がけていた父親がいた以上食事を抜くわけにもいかないので、軽めにしようかなどと考えながら足早に廊下を進む。

「……あら、あの子は」

ふと、ナーダの視線が移動する。其処に映されたのはまだ年端も行かなそうな、少し触れただけでも傷ついてしまいそうな、どことなく頼りなさげで華奢な少女の背中であった。その後ろ姿には見覚えがある。人の名前を覚えるのが早いわけではないナーダでも、なんとなく彼女のことは気になっていたから、自然とその名前を脳裏に刻み付けていた。

「━━━━シシィ」

とん、と軽く廊下の床を蹴ると、ナーダは常人からしてみれば走るほどの速さ……彼女からしてみれば早歩きの範疇で少女━━━━シシィ・トラウスへと近寄り、短く声をかけてから彼女の隣へと並ぶ。女性にしては背が高いナーダの目線の位置はシシィのそれよりもだいぶと高いもので、そのつもりがなくとも見下ろす形になってしまっていた。しかし彼女に人からどう見られているかを気にする心はないので特に其処に囚われることはなく話を続ける。

「おはよう。キッチンに向かうのなら、私も同伴していいかしら?軽く朝食を取ろうと考えていたのだけれど」

もちろんシシィがキッチンに向かっていると断定した訳ではない。しかし向かう方向がなんとなく同じだったのでもしかしたら、と仮定したのだ。シシィの行き先が違っても気にすることはないし、ナーダとしては朝の挨拶に付け加えた軽い質問に過ぎなかった。

>>シシィ・トラウス様、周辺all様

【遅ればせながらメイン解禁おめでとうございます……!拙い絡みで申し訳ないです……!】

8ヶ月前 No.9

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/二階・図書館】


本の題名をなぞるように指を這わせる。なんて事は無い薄くて子ども向けのただの絵本であるのに、その本自体に思い出など欠片も無いのに何故か酷く重いものに見えた。重くて硬くて、閉じられているから表紙を開く事が困難を極めているのだと思えば迷い続ける自分に言い訳が出来た。本当はただの、絵本であるのに。

「金がありゃあ手に入らないものなんてねェ。だったら欲しがる必要もねェだろ」

会社を立ち上げた理由なんて、ただ暇だったからだ。両親が居なくなって今まで以上に好き勝手出来ると思ってもグリードの強欲さは変わることは無かった。元々他よりあった金も、親が遺していった資産もあるから何もせずとも数百年は生きられただろうに、グリードは何故かすぐに会社を設立した。まるでやる事を探すかのように。五十年かけて会社が成長して、軌道に乗って今では子会社を幾つも持つ大企業だ。資産も気付いたら何十倍にも膨れ上がっていた。自由に使える金なんて吐き捨てる程あった。その金を使って欲しいと思ったものを片っ端から手に入れていった。知人でも知らない奴でも価格以上の金を出せば喜んで差し出してきた。そうして一人の城を欲しかったもので飾り付けて五十年。出来上がった城は誰もが羨み、欲しかったもので溢れた部屋は息を呑むほどのものだった。好奇心に任せてじっくり見たいのに入る事さえ憚られるような、輝かしいものだった。けれどグリードには、何処か色褪せて見えた。手に入れて手に入れて手に入れて、一頻り満足した後に出た言葉は「もういいや」だった。全てが金で賄えるのなら、欲しがったところですぐに手に入る。いつだって手に入れる事が出来る。ならば今でなくて良い。そしてグリードは、昔の彼を知る人が見れば驚く程に普通の吸血鬼へと変貌した。だからアリシアのこの反応も当然の事なのだろう。
はあ、と息を吐いてアリシアが話題を変える。曰く地下にワイン蔵があると。

「知ってっけどォ……なんで俺まで……」

ノルベルトの訃報を聞く前にもこのヴィンターローゼン邸には何度も足を運んでいる。だから邸内の事は大抵分かっているしキッチンの調理器具の在り処までばっちり知っている。だが何故グリードまで一緒に行かなくてはいけないのか小言を洩らそうとしたが、しかし。

「……わァったよ。お前は言い出したら利かねェもんな」

アリシアは傲慢と謳われる吸血鬼だ。何度も顔を合わせているのだからその性質位は知っている。仕方ないと云わんばかりに大きな溜息を吐いて机に――絵本に――手をついて立ち上がる。行くならさっさと行こうぜ、と言いながらアリシアを追い越し扉に手を掛けた。子供受けの良さそうな絵が描かれた本は机の上にぽつん、と居座っている。


>>アリシア・ヴィンターローゼン様、ALL様



【お気になさらず!】

8ヶ月前 No.10

リュカ・ヴィンターローゼン @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=gVxn3hDnp0

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8ヶ月前 No.11

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【リサリィ・ロマンシア/自室→廊下】

 彼女は旅が好きだった。
見知らぬ土地の日常を見るのが好きだった。見え方の違う空が好きだった。雄大な自然も眩しい都会も等しく愛していた。
 鬱蒼とした森に囲まれたこの屋敷に彼女の愛したものは無い。あるのはただ、空白の時間だけ。

 柔らかいベッドに腰掛けて紙束を捲る。今まで行った国々の景色が事細かに描かれていて、当時の思い出がリサリィの脳裏を色鮮やかに支配した。最後のページはアデルの街並み。日付は5年前で止まったまま。もうこんな時間をここで過ごしてきたのかと思うと目眩がした。
 冬薔薇の当主とその伴侶が眠りについた時、悲しくなかったといえば嘘になるだろう。冷えた空気が肺を満たすたびに空虚感に襲われた。しかしそれと同時に「やっと開放されるのか」なんて考えが頭をよぎったのもまた事実で、まさかヴィンターローゼンの一族が集うだなんて思いもしていなかった。少しだけ膨らんだ期待はしょんぼりと萎んでもう膨らむ元気もない。
 紙束を床に放り投げ、サイドテーブルに置かれた葡萄酒を空っぽの胃に流し込む。胃の粘膜からじわじわとアルコールが吸い込まれていく感覚が心地良かった。朝食の代わりが酒だなんて、あまりに自堕落で笑いすら零れる。家族へ送る手紙には「毎日楽しく生活しています」なんて書いているのに。

「おいしくない」

 無意識に口から落ちた葡萄酒への文句は誰に拾われるでもなく宙をさ迷い消えた。独りで飲む酒はこんなにも味がしないものなのか。
 ふら、と亡霊のように立ち上がる。右手には葡萄酒の瓶。あわよくば見知った人間と出会える事を祈って、部屋の扉を開けた。


>>ALL様


【すごく遅れてしまいましたが本編開始おめでとうございます……! やさぐれた女が朝っぱらから酒飲んで部屋から出ただけとかいう絡みづらい文章で大変申し訳ないです……。
皆様についていけるように頑張りますのでよろしくお願い致します】

8ヶ月前 No.12

@kasa3shi☆1hF4w8rWL3Q ★iPhone=wubEjuwW7M

【アリシア・ヴィンターローゼン/二階・図書館→廊下→一階】

手に持っていた本を棚に戻す。内容は少ししか見ていないが特に興味をそそられるような事はなかった。しかし表紙の色は少し褪せているとはいえ桃色で、自分の好きな色だ。きっとこの本が世に出た当初はもっと綺麗な桃色で可愛かったのだろう。その時にこの本に出会っていたならば手に入れていた。時間の流れとは何者も変えていくらしい。隣の男も時間の流れのせいで変わってしまったのだ。そう思うことにしておこう。

「ふふ…お爺様はどんなワインを持っていらっしゃったのかしら。楽しみね」

これから向かう地下にある、お爺様が残したワイン蔵。そこに自分の舌に合うものはあるのだろうか。心底楽しいというように彼女は笑う。例え隣の男がそれほど乗り気出なかったとしても、彼女が楽しければそれでいいのだ。彼女にとって重要なのは周りの者達ではなく、彼女自身が満たされているかどうかだけである。

真っ暗な屋敷を楽しそうに、スキップをしだしそうな程楽しそう歩いていく。此処には1年間いなければならないのだ。どうせなら楽しまなければ損というものだろう。一階まで降りたとき、誰かの存在を感じた。自分と同じ匂いが少なからずしているということは、彼らは自分と、隣にいる男とも同じ血が少なからず流れているということなのだろう。

「あら、あの方たちは…」

>>グリード・マモン・ヴィンターローゼン様、ロト・ヴィンターローゼン様、リュカ・ヴィンターローゼン様、ALL様


【遅くなって申し訳ありません!】

8ヶ月前 No.13

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/二階・図書館→廊下→一階】

廊下に出るとアリシアが後に続く。うきうきとしたその様子にグリードは気付かれないように溜息を吐いた。人を振り回すその性格も、自分が楽しければいいという自分勝手さも昔と何も変わらない。ここ百年程会っておらず、このヴィンターローゼン邸に集まった際が久しぶりの再会だったのだが、傲慢を冠する通り何一つ変わっていないようだ。彼女が訝しんだ通り百八十度変わったグリードとは大違いである。

「昼間っから飲む気かよ」

故人の遺品に関しては自由にしても良いだろうが、それにしては遠慮がなさすぎやしないだろうか。グリードもアリシアも遺族であるのだから咎める者は誰も居ないとは思うが、正直グリードはこんな早くから酒を飲む気は無かった。まあ、楽しそうにしているのなら何よりである。それ以上小言を介さず楽しげに歩く彼女に付いていくのみだった。

一階について、複数の気配を感じる。すん、と鼻につくのは薔薇のような香り。バスルームの方からだろう。そちらを見ると二つの影が見えた。隣のアリシアも気付いたようで呟く声が聞こえた。誰かを確認するためにもう少し近付いて中を覗く。

「リュカ、と……ロトだったか」

片方が昔から――とは言っても百年程前から――気にかけている親戚で思わず声を掛ける。二人居るのに片方だけに声を掛けるのは可笑しいかともう一人にも声を掛けるがヴィンターローゼン邸に集まって初めて顔を合わせた内の一人であるので正直名前も定かではない。朝風呂と、リュカは寝起きだろうか。おはよう、と朝の挨拶をしておいた。

>>アリシア・ヴィンターローゼン様、リュカ・ヴィンターローゼン様、ロト・ヴィンターローゼン様、ALL様

8ヶ月前 No.14

ロト @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ロト・ヴィンターローゼン/バスルーム】

歯磨きを終えた口を漱いでいると、誰かの近づいてくる気配がする。蛇口から流れる冷たい水を止めないまま手を洗いながら、鏡に向かって顔を上げると、其処に鏡越しに視線を共有する同居人の一人の姿がある。
雪のように白い青年がすぐ隣で身支度を整え始めた。重たそうな瞼を苦心しながら上げるようにして、冷たい水を転がす様子は大層気怠げで面倒くさそうに見えた。そんな寝起きの覚束ない手付きが、普段他人の事など気にしないロトにも流石に気に掛かり、というより半分近くは興味本位で、髪を乾かしながら横目に観察した。暮れかけた空の下の積雪のような、冷たいグレーの髪が寝癖付きでもさもさと肩に落ちている。自分からすれば数百歳も歳若い親戚が一つ屋根の下で日常動作をしているのが何と無く物珍しく、また何と無く滑稽に思えた。
それにしても、ーーリュカといったかーーこの若い吸血鬼、先程から目も合わせない。
「おい」
先日の話し合いの場でも物静かだったリュカという青年に興が湧くまでに時間はかからなかった。口の端が愉しげに釣り上がる。
「おはよう、青年。髪に隠れて誰だか判りかねたぞ。その顔は、貧血か? 低血糖か? 寝不足って訳じゃ無さそうだ」

リュカの鏡像の背後に、不敵な笑い声を低く響かせ、長身の影が陽炎のように立ち上る。
鏡の中のロトは、鏡の中から左右の反転したオッドアイの目の色を、その下の隈を、蒼白に透き通る顔の色を、パーソナルスペースの都合を無視して舐めるように眺めた。ふん、と鼻を鳴らして笑う。
幅の広い口が、スーッと切れ目を入れるように弧を描き、裂けて悪戯を思い付いた時の人の悪い笑みを浮かべた。背を丸めたリュカの少し前傾した肩に手を、こちらを向かせるように掛ける。立ち並ぶ洗面台とバスルームの扉との狭間で、向かい合うような位置関係になると、不意に右手を伸ばしてリュカの下顎頤(おとがい)を下から掬うように掴む。
「……口を開け」
唐突で理不尽な命令口調と共に、人工的な花の香りと温度を纏う大きな手の指先が、下顎骨の縁を辿るようになぞる。ロトは銀の口髭を蓄えた口元を意地悪く歪めた。

ところが、この男の或る意味善意とも取れるが絶対にそうではない悪ふざけは、思わぬ形で中断される。
廊下から聞こえる、他の同居人達の声。向こうから姿を現したのは、アリシアとグリードの二人組だった。各々癖の強いヴィンターローゼン家の面々、もちろん自分も含めて……この屋敷に集められてから未だ数日ではあるが、殆ど顔も合わせなかった親戚達だというのに、その印象はだいぶ掴めてきたつもりだった。尤も、此処で良い顔をして取り繕う気も無いのだが。
ロトは可愛い親戚の空腹を誤魔化してやる≠フを一時中断し、二人の方へと向き直った。

「お二人とも、おはよう。女性も居るのにすまんなこんな格好で」
バスローブに濡れた髪なのを示し口ではそう言いながら、全く「すまん」と思って居る気配がない。二人は一階に来て広間で朝食でもとりにきたのだろうか、まさか二人が朝からワイン探しをしているとは露ほども思っていないロトはそう考えた。そもそもこの邸に於いてはいつが朝でいつが夜という区切りは殆ど意味を成さず、かくいう自身も朝から寝る支度をしているぐらいなのだが。

>リュカ様、アリシア様、グリード様、周辺all


【絡んでいただきまして、ありがとうございます!】

8ヶ月前 No.15

夜の銃刀 @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

【ノックス・クラガミ/→廊下】


 使用人の朝というのは基本的に早い。主より先に起き、朝食等の準備をしたりするのが当たり前である。しかし自分の場合は前日の夜から起きており、夜間警護をしている。少し仮眠を取ったが、今はとても眠い。こう主達がいない場所で眠そうに欠伸してても、気は完全に抜けていない。昨日の夜も何も異常はなかったが、キッチンの裏で猫の鳴き声が聞こえたような気がする。猫は夜行性だから夜に結構活発にになると聞いた事がある。猫というほぼ無害な存在だが、ゴミとか漁るのはマズいか。屋敷の中で猫がいたら、即見つけて放り出しておくか。廊下から人の気配を感じて、背筋をピンと伸ばす。使用人がだらしない格好を見せるのはみっともないと師の教えでもあり、廊下を歩き始める。


「 おはようございます、シシィ様……ナーダ様。 」


 大きく一礼をし、この屋敷に住まう大切な【人間】達に挨拶をする。若干、ナーダに向けた挨拶だけ表情が曇り、間が空いた。この屋敷の遺産の相続とかでいる大切な七人の人間達の内の二人である。もちろん使用人として彼女達の事情も知っているし、どうなるかはわからないが、一生を吸血鬼達の飲む血液を提供する側にいるのか、正直奴隷みたいな感じになるのではと思っている。小さく可愛らしいシシィには親近感を感じる、彼女もかつては奴隷であったという。彼女の行動そのものが奴隷らしいく、たまに床で寝てるとかそんな噂を聞く。
そしてもう一人のナーダ、彼女の接し方に困っている。使用人なのに、何故かこっちがお世話を焼いてくる。対応が難しく、悪意がないのが断りづらい。嫌にならないが、まるで世話好きな姉みたいなものかと思う。血を分けた姉弟はいないが、弟とはこういうものなのかと度々思う。



>>シシィ、ナーダ


【人数的にこちらに絡ませて頂きます。よろしくお願い致します。】

8ヶ月前 No.16

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 ラザロ・テオドリック・ロシュフォール / 二階・自室→廊下 】

 昨晩のオペは、久しぶりに少し大掛かりなものだった。泥酔してベランダから転落した若者がカルミナ・クリニックに運び込まれた時には、既に日付変更を告げる鐘の音が鳴り響いた後で、カルテの整理を終えヴィンターローゼンの屋敷に帰ろうとしているまさにその矢先だった。聞けば、その事故現場から最も近かったのがこの診療所だったという。正直、自分という医師一人と、数人の看護師を雇って細々と経営しているこの病院に手に余る患者だった。しかしそれは、患者を受け入れ拒否する理由にはならない。患者が脳挫傷に至っていなかったのは不幸中の幸いだった。注視すべき怪我は、両足の粉砕骨折と、内臓の損傷に伴う大量の喀血、ひいては出血多量の疑いであった。患者と一致する血液型は、奇しくもその場では自分だけ。執刀前に自分の血を患者に分け与える経験なんて、滅多に出来るものではない。患者の恋人を名乗る女性に、貧血によってオペに支障が出るのでは、と顔面蒼白で訴えられたが、輸血パックも併用する旨を伝えれば幾分か安堵した顔でへなへなと座り込んでしまった。
 無機質なゴム手袋に包まれた自分の両手は、ヌルヌルとした生温かい液体にまみれていた。その赤色を、いつしか特別なものと思わなくなった自分がいる。職業柄だろうか。だが、高級な果実酒を彷彿させると評価された己の血と、どこかの誰かの輸血パックと、血液不足に喘ぐ若者の血、それら三つが混ざり合った血は一体どんな風味になるのだろう――そんなことには未だ興味が湧く。

『――――助けてください!』

 脳裏に響いた、甲高い悲鳴のような女性の声に、半強制的に意識が覚醒した。明け方屋敷に戻ってきて、簡単にシャワーを浴びた後自室のソファーに腰掛けたまま、術後の疲れに任せて髪も乾かさないままに意識が落ちていたようだ。窓の外から差し込む柔らかい光に、長く尾を引く溜息を吐く。夢の残像を振り払うように首を左右にゴキゴキと鳴らし、立ち上がる。朝の寒さに、わずかに体が震えた。否、感じた寒気は朝の冷気によるものだけではない。寝る前にドライヤーをしなかったことが祟ったのだろうか。医者である自分が体調管理も出来ないなど、お笑い草だ。

 ガウンを脱ぎ捨て、いつもの服装に着替える。素肌が直に冷たい空気に晒され、生理的にくしゃみが一つ零れた。上着代わりに白衣を羽織り、少し熱っぽくどこか冴え切らない頭でこれからの行動を思考する。朝食をとるべきだが、どうにもあまり食欲がわかない。となれば、軽く散歩でもして体を動かせば少しは腹も減るだろう。寝起きでまとまりがなかった髪を、無造作にかきあげる。もともとゆるやかなパーマがかかっている己の髪は、ただそれだけの動作でいつものヘアスタイルへと落ち着いた。かきあげられた前髪が、はらりと一房目にかかり、鬱陶しそうに顔を一度だけ横に振りつつ、がちゃりと自室のドアを開けた。
 ふと、その先に佇む、よく見知った人影。

「…………リサ」

 寝起きだからか、どうにも本調子でないからか。彼女の名を呼ぶ声は、どこか茫洋としていて、いつものような覇気を失っていた。それでも、彼女の右手に握られた葡萄酒の瓶に視線を落とすと、思わず表情が緩んだ。

「……お前らしいな。今日はクリニックは休みだ、よければ付き合おうか」

 言い終わる頃には、いつものラザロに戻っていた。この屋敷の住人たちとは概ね悪くない関係を築けていると自負しているが、その中でもたまに2人で晩酌を嗜むほどには気心の知れた人物との邂逅が、ラザロの脳を冴えさせた。……自分が弱っているところなど、誰にも見せたくはない。

>>リサリィ、周辺ALL


【本編開始おめでとうございます!ぜひぜひよろしくお願いいたします……!ひとまずリサさんに絡ませて頂きました。ラザロの体調が優れないことに気付くでも気付かないでも、どちらでも構いません。今後ともよろしくお願いします!】

7ヶ月前 No.17

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=G1lEVbFO5C

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7ヶ月前 No.18

リュカ・ヴィンターローゼン @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=gVxn3hDnp0

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7ヶ月前 No.19

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=nMqLjsjQcP

【ナーダ・アドラシオン/廊下】

他方から掛かった声にナーダはくるりと振り返る。そこにいたのはこのヴィンターローゼンの屋敷で使用人として働いている青年、ノックスであった。基本的に自分からお喋りをしたり雑談に興じたりすることはないナーダだが、そんな彼女にも例外は存在する。これも父の教えなのだが、「困っている人間を助けよ」という信条に則ってナーダは日々(彼女にとっての)人助けを行うこととしている。端的に言えば一日一善。自分よりも僅かではあるが年下で、何かと忙しそうなノックスは格好の獲物だった。立場を気にすることもなく、ナーダは彼にナーダなりの世話を焼いており、それもあってかあちらはどことなくたじたじになりかけている。しかしそんな相手の様子を伺うような配慮は残念ながらナーダ・アドラシオンには皆無だった。そのため彼に対して世話を焼くのをやめるつもりはない。

「おはようノックス。挨拶をするのは良いことだけど、後半の声が小さくなるのはいただけないわね。朝方だから無理強いはしないけれど、できるだけはっきりと腹から声を出すべきよ」

小さく嘆息してから、ナーダは普通誰もそんなところ突っ込まないだろ、と突っ込まれそうな指摘を繰り出した。まるで何かの訓練である。ナーダに悪意はなく、むしろこれが彼女なりの善意の表し方だった。使用人たるもの快適な環境作りをしなければならず、そんなノックスのためにナーダからしてみればアドバイスをしているつもりなのだ。余計なお世話なこと甚だしいが、それに勘づかないナーダはある意味幸せなのかもしれない。
そうしていると、これまた違う方向からこちらに挨拶をする声が聞こえた。声の主はこの屋敷に集められた七人の吸血鬼の一人であり、幼げな姿をしたノア・ヴィンターローゼンだった。直接話したことはこれが初めてなのだが、ナーダは名前と顔を合致させることができるくらいには彼を覚えていたので、特に驚くこともなくぺこりと一礼し、空腹からかお腹を鳴らしてしまい、切なそうな表情を浮かべる彼にしゃがみこんで視線を合わせる。

「では、いっしょに朝食を摂りますか?既に知っているかもしれませんが、私はナーダ・アドラシオンという者です。以後お見知りおきを、ノア・ヴィンターローゼン様。━━━━ところで、少し衣服が乱れているようですので、私でよろしければお直ししてもよろしいでしょうか?」

軽く自己紹介をしてから、彼の可愛らしいおねだりに自分なりの提案を差し出してみる。そしてずっと気になっていたのだろうか、ノアの身なりを整えても良いかと彼に問いかけた。実年齢はノアの方がずっと年上とは言え彼のあどけなくどこか危なっかしい仕草はナーダの世話心をがっちり掴んだらしい。ほぼ初対面であるにも関わらず早速世話を焼こうとしていた。

>>ノックス・クラガミ様、ノア・ヴィンターローゼン様、シシィ・トラウス様、周辺all様

【絡みありがとうございます……!全体的にナーダがグイグイ来てしまっていますがご容赦ください……!】

7ヶ月前 No.20

独楽 @sbluexxx☆rx3sEFPR6z6 ★rqRPsSgCf7_PHR

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7ヶ月前 No.21

スレ主 @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_FXK



【シシィ・トラウス/廊下】


 ハーブティーを入れましょう。そう呟いてシシィは踵を返そうとしたが、自分よりはるかに背の高い人物が歩いてこちらへ来る様子にびくりと肩を震わせた。自分より背の高い人はあまり得意ではない。奴隷時代の主人を思い出してしまうから。しかし近づいてくるその人物が自分と同じくヴィンターローゼン邸で暮らし、それなりに懇意にしている女性であるナーダ・アドラシオンだと気づくとシシィはかすかにその表情を綻ばせた。


「おはよう、ナーダさん。わたしもちょうどキッチンでハーブティーを入れようと思っていたの。冷蔵庫のフルーツタルトと一緒に食べたらきっとおいしいわ」


 タルトは二日目のほうがおいしいものね、とシシィはナーダとともにキッチンへ向かおうとしたシシィだったが、こちらへ向かってくるふたつの影を目にしその足は止まった。一人はノックス・クラガミ。聞き覚えのない名字を持つその人は確か東洋かどこかの生まれだったはずだ。背筋をぴんと伸ばした彼は恭しく自分たちに朝の挨拶をした。ただの人間といえど吸血鬼にコレクションとしてここに置かれているシシィやナーダのような人間は扱いシシィとしては正直もっとフランクに接してくれたほうがこちらとしても気が楽なのにと思うのだが、使用人という立場である以上そういうわけにもいかないのだろう。

 そしてもう一人はこの屋敷にしばらく暮らすこととなった冬薔薇の吸血鬼の一人、ノア・ヴィンターローゼンだった。"暴食の吸血鬼"という二つ名の通り、彼はいつもおなかをすかせている。それがシシィのノアに対する印象だった。吸血鬼は人間や吸血鬼の血液だけではなく普通の食事をとることもある。極論を言ってしまえば吸血鬼は血さえあれば食事をとらずとも生きていけるのだが、どうやら彼らにとっては食事は娯楽のような扱いらしい。柔らかく微笑む彼は自分よりはるかに年下に見えるが、吸血鬼の外見の容姿と実年齢が合致することはほとんどない。きっと彼も自分よりずっと年上なのだろう。

 シシィはやってきた二人にぺこりと礼をすると、先ほど話していた内容を今一度復唱した。


「おはようございます、クラガミさん、ノア様。いまからキッチンで軽食をとろうと思っていたのですが、いかがかしら?」




>>ノックス・クラガミ様、ノア・ヴィンターローゼン様、ナーダ・アドラシオン様、ALL

7ヶ月前 No.22

@kasa3shi☆1hF4w8rWL3Q ★iPhone=wubEjuwW7M

【アリシア・ヴィンターローゼン/一階】

「あらまあ……構いませんわ。おはようございます、ロト様、リュカ様」

誰かと思えば遺産相続で集まった親戚であった。銀髪に銀色の顎髭と口髭に褐色の肌をしたロトは確かに色欲の吸血鬼らしい雰囲気がある。バスローブからちらりと傷跡が覗くが、あれはなんだろうか。少し気になったようだが、聞くほどの興味を示さなかったらしくすぐに頭の隅へと追いやられてしまったようだ。ロトの隣にいる気だるげな雰囲気の男は怠惰の吸血鬼であるリュカであろう。猫背であまり身長は高くない印象を受けるが、自分よりはきっと高いのだろう。各々個性が強く、顔を覚えるのが楽であった。

「こんな時間に湯浴みですか。」

どうやらロトは湯浴みをしていたらしい。所々に鬱血痕や噛み跡が見えたが、そこには触れないことにした。踏み込んでは無粋というものだ。自分もそれなりの年数を生きているのだからそれなりに距離感というものは分かっているつもりだ。しかし朝から湯浴みとは。自分も朝からワインを飲もうとしていることは棚に上げて呆れてしまう。とは言っても、此処には朝も昼も夜も大した差は無いのだが。

「それでは行きましょうか、グリード」

挨拶を終え、もう二人には用がないと言わんばかりに踵を返しその場を後にしようとする。グリードに言葉を投げかけてはいるものの、そこには疑問など一切なく。自分が行くと言うのだから相手も行くのだと決めつけ、気持ちなど全く考てはいない。それが彼女なのである。


>>グリード・マモン・ヴィンターローゼン様、ロト・ヴィンターローゼン様、リュカ・ヴィンターローゼン様、ALL様

7ヶ月前 No.23

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/一階】

声を掛けた直後、とんでもないものを見せられた気がして思わず閉口する。ロトとリュカの一部始終を正面から思い切り目撃してしまったグリードはチラリと横のアリシアを見遣った。どうやら先に覗いたグリードだけが目撃しただけで、アリシアは見ていなかったようだ。いや、見ていたが何とも思っていないだけだろうか。何方にしろ彼女が気に留めていないのなら自分も見なかったことにしようと気を取り直した。

「いや、コッチこそ邪魔して悪ィな」

朝支度の最中だった彼等に一言謝罪をする。間違っても二人の関係を勘違いして言っているのではないが、少々言葉足らずな事にグリードは気付いていない。ただアリシアに謝るつもりが無さそうだったので代わりに口を開いただけである。
二人の様子を確認して、ロトの体から情事の欠片が見えた事にアリシア同様口を挟まなかったが、リュカの顔にありありと浮かぶ寝不足には気付く前に言葉が出た。

「あまり眠れてねェみてェだが、……辛くねェか」

大丈夫か、と言おうとしたが大丈夫でないのは分かりきっていると言葉を選び直す。グリードも不眠症では無いが眠りが浅く、原因の分からない隈が目の下に常日頃から蔓延っている。気持ち良く眠っていて意味も無く目が覚める感覚は良いものでは決して無い。前々から気にかけているリュカの事ともあって表情こそ変えないものの心配そうにじっと見つめた。
しかし返事を待つ前にアリシアがグリードへ声を掛け先へと向かう。ロトとリュカには様付けをしているのにグリードに対しては呼び捨てな事に何も思わないでもないが言ったところで無駄なのだろう。相変わらず自分勝手な彼女に溜息を吐く。

「……今からワイン蔵に行くんだが、お前等も来るかァ? 聞いた話じゃ秘蔵のワインが有るらしいぜ。アイツの目的がそれかは知らねェけどよ」

二人へと向き直って事情を簡潔に説明する。グリードはもつ慣れたが殆ど初対面の二人にはアリシアの行動に不思議に思うのでは、と考えての事だ。

「ま、気が向いたら来いよ」

さっさと地下へ向かう彼女を見てグリードも足を其方へと向ける。ちゃんと付いて行かなければまた文句を言い出しかねない。肩を竦めてバスルームの二人へ軽く手を振った。

>>アリシア・ヴィンターローゼン様、ロト・ヴィンターローゼン様、リュカ・ヴィンターローゼン様、ALL様

7ヶ月前 No.24

夜の銃刀 @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

【ノックス・クラガミ/廊下】


 「 ……ご忠告ありがとうございます、ナーダ様。 」


 自分の挨拶に不備があったところを指摘され、言い訳する事無く頭を下げる。ナーダからの意識が苦手と感じて、さっきの挨拶も確かに言いよどんだような気がしてた。声のトーンで気づかれるとはこの人の前では本当に気が抜けない。何かいつもと違う事をしたら真っ先に気づきそうな、そんな感じがする。他の吸血鬼やそれ以外の人間には違いの分からない事でも気づかれそうで逆に怖い。どうしたものかと考えながら、まだぎこちない笑顔を見せるのが自分の限界であった。自分にポーカーフェイスにはまだまだ未熟のようである。一瞬、人ではない気配を感じて振り向くとそこに一人の可愛らしい吸血鬼が姿を現した




 「 おはようございます、ノア様、それにシシィ様。朝食ですか?私は大丈夫ですが、使用人ですので、皆様と一緒に朝食を召し上がるのは出来ませんので。 」


 現れたのは冬薔薇の吸血鬼の一人、ノア・ヴィンターローゼンだった。"暴食の吸血鬼"という二つ名の通り、彼はいつもおなかをすかせているらしい。外見はとても幼く可愛らしいが、自分よりも遥かに年上である。彼が現れる瞬間つい気配を研ぎ澄ませてしまったが、今は落ち着いている。ぐぅと腹の虫を鳴らし、可愛いが自分達の血が欲しいのではないかと疑心の渦が自分の中で大きくなっている。人間の食べ物を食べたいというのも暴食による感情が引き起こした行動かもしれない。シシィがフルーツタルトとハーブティーを朝食に取ろうとしているが、自分は食べるつもりはないと一応忠告する。使用人が彼ら吸血鬼のコレクションと一緒に食事をするのは、どう見ても立場が違うと思っている。使用人として彼女達を給仕するのが本来の仕事である。


>>ノア、ナーダ、シシィ

7ヶ月前 No.25

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【リサリィ・ロマンシア/廊下】

 扉を開ければ望み通り、慣れ親しんだヒトの声がリサリィを呼んだ。ゆるりと振り返りその姿を左目で捉える。声の主は間違いなくリサリィがラザロ先生と呼び慕っている彼ではあったが、その声色にいつものような覇気が無い。
 訝しげに片眉を上げて、なにかおかしいと言わんばかりに首を傾げる。おかしい。リサリィが知っている彼の声は、凛として芯の通ったものであったから。

「ラザロ先生?」

 確かめるように彼の名を呼んで歩み寄る。その間に彼はいつもと変わらない調子でリサリィの酒に付き合ってやると言った。調子が悪そうに聞こえたのはリサリィの考えすぎで、もしかしたら寝起きで声の調子が悪かったとかそんな程度なのかもしれない。それくらいいつも通り。変わらない声で、仕草で、表情で。小骨のように引っ掛かった違和感はうっかり流れてしまいそうになった。

「……ふふ、午前中から寂しい女に付き合ってくれるだなんて、お優しくていらっしゃる」

 たぽん、と。瓶の中身を揺らしてみせる。彼は優しい。リサリィの目を診てくれるし、晩酌にだって付き合ってくれる。多分突然癇癪を起こしても責めたりしない。とにかく優しいひとだ。けれどその優しさはきっと自分には向かないのだろう。出会ったばかりでもあるまいし、それくらいは分かっているつもりだった。ほんの少しだけ踵を浮かして、リサリィよりも随分高い位置にある双眸を覗き込む。見定めるように、じっくりと。
 瞳を見つめながら彼の耳の下あたりにそっと手をやる。色気のある関係だったならばここでキスの1つでもしていたのだろうが、生憎医師と患者、もしくは屋敷の人間仲間という間柄なので勿論そんな事はしない。それは脈をはかる真似事のようで、しかしリサリィには医学の知識がないためにこの鼓動が正常なのかも分からなかった。手に伝わる体温がいつもより高い気がして、「先生」と不安げに零した。


>>ラザロさん、周辺ALL様


【絡んでいただいたのにお返事めちゃめちゃ遅くなってしまってごめんなさい;;これからよろしくお願いします!】

7ヶ月前 No.26

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_gi9

【 ラザロ・テオドリック・ロシュフォール / 二階・廊下 】

 名を呼ばれ、振り返った彼女の目は蒼い。どこか鮫肌を思わせるようなスモークブルーの虹彩は温度もなく無機質に見えるが、わずかに目線を下げれば熟れた唇が目に入る。シンプルな美形とはまた一線を画した、独特の色香を持つリサリィの顔をじっと見つめている間、少しだけ意識がぼうっとしてしまっていたようだ。怪訝そうに己の名を呼ぶ彼女の声に、はっと我に返る。まさか、自分の体調を、ちょっとした声音の変化だけでは見破られないだろうという希望的観測と、否、見破られてはいけない、という使命感と共に。

「あ……あぁ。今日も鮮やかなルージュがよく映えるな」

 挨拶代わりの賛美の言葉は、決して社交辞令などではなかった。奇抜な化粧は、許された顔の造形を持つ者にしか適合しない。よく、小躯で短足の者が似合わないスーツを着ることは“スーツに着られている”と表現されるが、リサリィの化粧は、まさにそれとは真逆。よくもまあ主張の強いアイテムをそこまで使いこなせるものだ、と感心する。自分が女性だったのなら、こんなに上手く化粧出来るビジョンが一切浮かばない。ヘアスタイル一つとっても、女性はセットのために早起きしなければならない人が多いと聞く。寝起きゆえに軽く手で撫でつけただけの自分の髪を指先で一度だけふわりとかき上げ、男に生まれてよかった、とぼんやりと思った。

「……寂しい? お前がか? なんだ、晩酌の相手が俺では不服か……?」

 瓶の中で踊る葡萄酒に一瞬視線を盗まれたが、すぐにきょとんとした表情でリサリィの目に視線を戻した。きっと彼女は深い意味もなく自分を“寂しい”と形容したのだろうが、例え冗談であってもそれは聞き捨てならなかった。ふと思い出した――寂しさゆえに、自身が運営するクリニックへ訪れ、軽い診察だけをしては長々と世間話をしてゆく老婆の患者がいる。身体などどこも悪くないのに、会話が目的なのだろう。聞けばその老女は、夫に先立たれ、愛犬も天寿を全うし、子供たちもみな自立してアデルを出て行ったために、本当に孤独なのだという。それこそ、たまの楽しみの晩酌相手すらいないくらいに。
 だが、そんな“寂しい”人間のことを、ラザロは可哀想だとは思わない。むしろ、愛おしいと思う。それは、自分も無意識のうちに寂しがり屋だからなのだろうか。そうぐるぐると考えを巡らせていれば、首筋に柔らかな感触を感じてまたもや我に返る。さきほどより幾分か2人の顔の距離は縮まっており、こちらの表情を不安げに覗き込むリサリィの目に、自分の翡翠の瞳孔が交差した。

「…………指先が少し冷たいな。まだまだ酔いは回っていないらしい」

 ふ、と零れるように微笑む。どこか不安げなリサリィを少しでも安心させるためであったが、微笑みとともに少しだけ漏れた吐息は、生理的に熱を帯びていた。首筋に軽く添えられた彼女の手を、自身の片手で不意に握る。壊れ物を扱うかのような丁寧な動きではないが、かといって乱雑に扱う動きでもなく。果たして彼女の指先が冷たかったのか、自身の掌が熱すぎたのか。どちらにせよ、握った手を解きながら、挑戦的とも取れる発言をする。彼女が下戸ではないのは重々承知のうえだ。もちろん自分も。


>>リサリィ、周辺ALL


【いえいえ、こちらも投稿ペースにはムラがありますのでお気になさらずー!】

7ヶ月前 No.27

ロト @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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7ヶ月前 No.28

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=CCwdGSw2eI



【 ノア・ヴィンターローゼン / 廊下 】



 可愛らしいオネダリの効果もあってか、そのお願いは思っていたよりもすんなりと承諾される。が、ノアはなんという違和感も懐くことなかった。例え吸血鬼と人間であることの立場の違いや、吸血鬼たちの人生でいう年齢と人間たちの人生でいう年齢の差だったり、種族によって様々な価値観や概念の違いなどはノアにとってみれば大した問題ではないのだから違和感を覚えること自体が不自然であるかのようで。そんなことを考えていたら眠たげに閉ざされがちだった瞼は先ほどよりもハッキリと見開かれていた。


「わあい、ありがとう! みんなであさごはんだっ、ボクとってもうれしい!」



 承諾してくれたナーダ、シシィ、ノックスに向かってお礼の気持ちを伝えつつ、これから共に人間の食事を取れるのだということをこれでもかとばかりに賑やかしく喜んで見せる。実は先程、シシィとナーダがタルトのことを話していることを小耳に挟んだノアは既に少しだけ浮き足立っているような状態だった。空腹に苦しんでいた身としては聞き逃すことは出来ない。あわよくば自分にも分けてもらえたらいいなあ、なんて思うだけで柔らかそうな頬が蕩けてしまいそうになる。見るからに嬉しそうにしていたノアだったが、あることが気になってその喜びを一旦抑えながら、ねえ、とその人物の方を見据える。


「……んー、じょあノックスもいっしょにキッチンにいこ? なにもたべなくても、おなじばしょにいて、おはなししたりするのはいいでしょう? ね?」


 そして、自分たちとは一緒に食事は取らないというノックスの言葉にうーん、と唸り声をあげた末にこれまた子供のようなことを囀る。ノアはあくまで此処に居る全員が円満に、尚且つ笑顔で共に朝食を取れればいいと思っていたがそれが出来ないというのなら、せめて同じ空間に居てくれたらなと思ったのだ。ゆえにノアはそんなことを提示した。それを良しとするか、否とするかは彼の自由に決められるようにあくまで疑問形にしておいた。が、最後の一押しと言わんばかりに純粋そうな眼差しでノックスを見詰めて、「ダメかなあ?」と小さく囁いた。





「わ、わわ、ボクってばひどいかっこうしてたんだね。……うん、おねがいしていーい?」


 衣服が乱れていたことをナーダに指摘され、なんていうこともなく自分の身なりを見ると乱雑になっていることに気付く。普段から寝起きはこうなってしまうことは多々あったが人が今は自分以外の人が大勢居る空間に居るのだということを改めて実感し、恥ずかしそうに笑いを零す。それからノアの目線の高さに合わせてくれているナーダが差し出した提案を快諾した。でも一応、本当に頼んでも良いのか、という確認も含めながらこてん、と首を傾げながらナーダの顔を覗いた。

>>ナーダ様、シシィ様、ノックス様、周囲おーる



【お返事が遅くなってしまい、申し訳ありません……!】

7ヶ月前 No.29

リュカ・ヴィンターローゼン @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=gVxn3hDnp0



【 リュカ・ヴィンターローゼン / バスルーム 】


 口を閉じたあとにロトの顔を見るとどこか弾かれたような顔をしていて作戦通りに行ったことに満足する。少し名残惜しそうに唇から暖かな手が離れていく。まだ、少し骨張っている男の指の感覚を確かめるように口許を舌で追った。

 未遂に終わったが朝にしては随分刺激が強かった。目を覚ますには充分であくびはもうでなくなっており、誤魔化すことも容易くないので仕方なくそれぞれの挨拶に応じる。わざわざ顔を合わせるたびになにか言葉を交わさなければならないのはまどろっこしくて好きではない。WおはようWもWおやすみWも需要があるように思えず、社交辞令のように飛び交う上辺だけの言葉に興味を持つことは難しかった。ただ、最低限は自分だってするし、この場合はその最低限に値するものなので口を開く。
 「…ん」
 アリシアには特になにか挨拶以外での発言をされた訳では無いため話を聞いていたということの意思表示のために少し喉の奥からくぐもった声を出すことだけで辞める。無駄に口を開くとボロが出るしアリシアによく喋るヤツだと思われてしまうのはこれからもそれを続けなければならないということで些か面倒だからだ。
 さて、グリードの言葉に対してはなんと返すのが正しいのか。明らかに鏡越しに目が合ったことは間違いない。だからといってわざわざこちらから地雷を踏みに行くこともないだろう。そう思っていた矢先に意地の悪い笑みを浮かべたロトが流暢に語り出した。
 「いや、こっちは気にするな。なあ、リュカ?」
 俺に話を振るな。しかもわざとグリードがスルーしようとしてくれたのにも関わらず掘り返して、だ。思わず微かに眉間にしわが寄り目をそらす。だから人と話すのは面倒くさい。思い通りにいかないことばかりだし逐一相手の顔色を伺ってしまう自分にも納得がいかないからだ。自由奔放に生活できたのならどんなに楽しいだろうか。そんなことを考えていてもこの状況が打開されるわけもなく廻らない頭で思考を巡らす。
 まず、状況を整理しておこう。朝起きて一階のバスルームに来た。ここまではいい、狂っていたことといえ随分と早い時間に起きていることだけ。次に歯を磨いた、そしてロトのお節介を拒否した。あの一場面だけを切り取れば確かに俺に非があったようにも見えるが過程を見やるとお節介が、いやその前に朝早くに俺を起こした物音が一番の諸悪の根源だろう。
 なんだ、簡単なことではないか。出すべき答えはあまりにも単調すぎて折角考えたのに、と落胆した。
 「栄養補給、を断っただけだ。…そこのお節介のな」
 今度はわざと見せびらかすかのように唇から舌を出して相手を挑発するかのような表情をつくる。勿論、瞳はいつも通り死んだ魚のようで精気は感じられないとは思うが。そのおかげで過ぎた悪戯をした子供のようには捉えられないはずだ。



 アリシア達にワインに誘われればかぶりを振ってやんわりと断る。口は開かないほうが誘ってくれたことへの感謝は伝わる気がした。先程久しぶりにヒトのご飯を栄養のために食べると誓ったばかりだ。やらなければならないことははやく、手短に。だから、自分もこの場所から抜け出そうと思い先ほどの環境に戻ったバスルームでロトを見据える。
 「……栄養取りに行くつもりだから、用がなければ俺は行く」
 いいだろ?と確認をとるように上目で話した。一応一族の中ではまだ年齢が低いので気を使ってみたつもりだ。


>> ロト・ヴィンターローゼン、グリード・マモン・ヴィンターローゼン、アリシア・ヴィンターローゼン、その他周辺Allさま



7ヶ月前 No.30

ロト @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ロト・ヴィンターローゼン】

そうだ、その顔だ。リュカの端正な顔立ちの上で柳眉が怪訝に顰められたのを、ロトは満足の表情で眺めた。してやられた借りは、此処で返したと言わんばかりに。
しかし健気にも若者はまだ反撃を試みる。
『栄養補給、を断っただけだ。…そこのお節介のな』
面白い。その挑発は、誘っているのか。挑むような表情から線の細い体躯へと無言のまま視線を移し、ロトはフッと笑った。自分よりも小さきものへの愛しさが増した、という言葉がこんなにも物騒な意味を帯びる事は少ないだろう。

アリシアとグリードが仲良く連れ立ってワイン蔵へ向かうと、バスルームはまた静かになってしまった。立ち込めていた薔薇の香りも露結びそうな湿気も気付けばだいぶ薄れている。
部屋に戻って寝るか。そう思っていた時に、今しがた災難から逃れられた筈のリュカが律儀にも退出の許可を取ろうと見上げてくる。
いいだろ? だと? 実のところは自分も帰ろうとしていたとしても、許可を請われれば却下したくなるし、逃げようとされれば閉じ込めたくなるのがロトという男の性(さが)だった。
「……いや、許さん」
濡れた銀髪の雫を吸って肩にかけていたタオルを自ら取り去り放り、離れようとするリュカの上体に巻きつけるようにして引き寄せた。くぐもった笑い声を立てると、自らの右下犬歯に人差し指の腹を充てがい、そのまま押し込んで小さな傷をつけた。捕らえて向かい合わせたリュカの前に人差し指を差し出すと、その瞳の色と同じヘリオトロープの赤褐色は艶やかなドーム状の半球を成し、ふるふると表面張力で形を持ち堪えながら震えている。
ノルベルト・ヴィンターローゼンが遺した七人の人間達とは真逆の性質を持つ、酷く不味くて灼けるように痛覚神経を刺激する悪しき血液。ロトはこの血で何人もの吸血鬼の子を泣かせ愉しんできた。

つい数分前に未遂に終わらせた行動のデジャヴのように、薔薇の残香を纏う大きな手が、下顎骨の縁をなぞる。ただ先ほどと違うのは、此方から頤(オトガイ)を押し下げ口を開かせながら、尚閉じている唇の間を押し広げるように人差し指を滑り込ませていく攻めの姿勢だ。
「さあ……人の親切は、受け取っておくものだ。歯は立てるなよ」
血の滴る人差し指で、元より赤い花のようなリュカの唇を塗りたくるように玩ぶ。熱く濡れた口腔内に深紅の雫を置くようにして、一個の生き物のように自在にくねる指先を侵入させる。血の香りが味がしてくる頃だろうと、最悪な朝餉への反応を楽しみにロトは表情をまた意地悪く歪めて笑った。
相手の一番嫌がることをしてみたい。泣かせてみたい。壊してみたい。そんな欲望に正直に生き続け、これからもきっと何にも縛られることなく奔放に生を謳歌し続ける。色欲の吸血鬼には爛れていくであろうこの屋敷での生活が、面倒臭いだけでなく少し楽しみにも思えてきた。

>リュカ様、(アリシア様、グリード様)


【もうすぐ一章終わってしまうということだったので、暫くあいていたロトのレスを先に返させていただきました。アリシア様グリード様絡んでいただきありがとうございました。そしてリュカ様、以前相談させていただいてた部分に関しては尺の都合で確定ロルさせていただきましたが、だだっだっだ大丈夫でしょうか……!? もしも不快に思われましたら全力で謝罪&書き換えさせていただきますので!】

7ヶ月前 No.31

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【リサリィ・ロマンシア/廊下】

 挨拶代わりに贈られた言葉には「そうでしょう」なんて言わんばかりの笑みで返す。ラザロに褒められたルージュの色はパステルブルー。主張の強い色ではあるが、リサリィのお気に入りなのか最近は専らこの色だ。冒険好きな身体や心は化粧1つにすら冒険をしてしまうらしく、屋敷に住まう数年の間にも幾度化粧を変えてきたか分からない。
 ふとラザロの顔を見やる。濡れたような黒髪や翡翠の瞳を持つ彼は、何気なく髪をかきあげるその姿すら1枚の絵になるほどに美しい。異性として意識したならばうっかり恋に落ちてしまいそうな、彼の放つ色香にうっかり落ちてしまうような。そんな男が医者をやっているのだから、リサリィとしてはストーキング被害に遭っていないかだとかそんなような事が心配になってしまう。

「やだ、そういう意味で言ったわけじゃあ無いですよ。不服だなんて、そんなこと。私、ラザロ先生のこと大好きですもの」

 困ったように眉を下げてラザロの言葉を否定する。事実、ラザロに対して不服だなんて思った事は1度も無い。飲むペースだとかに気を遣わなくて良いし、色々な事を話すことが出来る。医者としても飲み仲間としても友人としても大好きだった。だからこそ恥ずかしげもなくさらりとその感情を伝えられたのだろう。

「あっ。……もう、先生が酔うまで付き合わせてしまいますよ。――まァ廊下で長話するのもなんですし、座れる場所にでも移動します?」

 不意にリサリィの手を握るラザロの片手はいつも診察してくれるものよりも幾分か熱いような気がして、しかし解かれてしまった後ではそれすらも分からなくなってしまった。
 それならば、と。挑戦的な言葉に対抗するかのように放った言葉は、ラザロよりも飲めると言わんばかり。青い唇は自信ありげに孤を描いた。


>>ラザロさん、周辺ALL様



【お返事に悩んでいたらとんでもなく間が……一章終了前に滑り込むかたちになってしまってすいません……!】

7ヶ月前 No.32

@kasa3shi☆1hF4w8rWL3Q ★iPhone=wubEjuwW7M

【アリシア・ヴィンターローゼン/地下1階・ワイン蔵】

「ここかしら、お爺様の秘蔵のワイン蔵……」

重厚感のある木製の扉。レンガを積んでできた大きな蔵。蔵の大きさから、この中にあるワインへの期待が高まる。自分の屋敷にもワイン蔵はあるのだが、アリシア自身進んで嗜もうとはしない為、お父様とお母様が亡くなって以来足を運ぶことなどなくなってしまった。小さい頃は飲めもしないのにお父様について行ってはたくさんのワインに目を輝かせ少しだけとせがんでいたものだ。その度にお父様は困った顔をして大きくなったら一緒に飲もうと頭をくしゃりと撫でてくれていた。結局、一緒に飲む未来など来なかったのだが。

扉に手をあて、ぐっと力をこめる。見た目よりも簡単に開いた扉の先には何百という数え切れない程のワインが貯蔵されていた。一足中へ踏み入れるとひんやりとした空気が肌を指す。ワインの品質を保つための温度なのだろう。しかし、思ったよりも肌寒い。なにか羽織ってくるべきだっただろうか。二の腕を軽く摩ると鳥肌が立っていた。まあすぐに出れば何ともないだろうと更に中へと進んでいく。

「少し肌寒いわね……選んだら早く出た方が良さそうだわ」

小さく呟いてこつりこつりと足音を響かせながら歩いていく。ここの管理を任されている人が几帳面なのか、それともお爺様自らが管理しているのかは分からないが、それぞれのワインが生産地別で分けられ、更に年代順に区別されていた。さすが秘蔵というだけあってか有名なものも、高価な年代物のワインも数多く揃えられていた。各ブロック毎に眺めながら歩いていると、ふととある地名のブロックを見つけた。そのブロックは私の母ーーノルベルトの娘にあたるーーのいた場所であった。お爺様が特に有名でもない生産地であるところからわざわざ取り寄せたのか、はたまた、たまたま手に入れただけなのかはこれから先知ることはないだろう。しかし、もしもお爺様が母のことを思ってこれらのワインを取り寄せていたなら、それはきっと、母のことを愛していたということになるのではないか。今となっては真相など分かるわけもないが、お爺様が母を愛していたと信じるぐらいは許されるであろう。

「ワインはあまり詳しくないのよね……これは美味しいのかしら」

結局、母のいた場所のブロックから適当なものを選びだして眺める。残念ながらワインには明るくなく、食事に合えば良いと全て使用人に選ばせていたためどれが美味しいのかはさっぱり分からなかった。けれど、美味しくなければそれまで。一度飲んでから決めることだ。さあ、早くここを出てこのワインを飲んでみることにしよう。


>>グリード・マモン・ヴィンターローゼン様、ALL様


【遅くなって本当に申し訳ありません……!リュカ本体様、ロト本体様、絡んでいただきありがとうございます!もうすぐ2章が始まるということでアリシアにはワイン蔵を出て貰おうと思っているのですが……白鷺様はこれでよろしかったでしょうか……もし不都合ありましたらおっしゃってください!】

7ヶ月前 No.33

リュカ・ヴィンターローゼン @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=gVxn3hDnp0

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7ヶ月前 No.34

ロト @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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7ヶ月前 No.35

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

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7ヶ月前 No.36

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=nMqLjsjQcP

【ナーダ・アドラシオン/廊下】

こちらの声に気づいたシシィは、ナーダを見つけるとふわりと表情を綻ばせた。年頃の少女の、野に咲く花のような笑顔。ナーダもそんな表情を向けられれば自然とつられてしまう。にこやかな表情を作ることは苦手だが、自然に浮かぶものなら問題ない。

「ふぅん、ハーブティーにタルトね。いいんじゃないかしら、私は賛成よ。食べ物は美味しい時期に食べた方が良いに決まっているものね」

僅かに表情を緩めながら、次いでナーダはノックスへと向き直る。彼はナーダの指摘に、言い訳をすることもなく素直に頭を下げた。ナーダも特段彼に怒っているわけではないので「次からは気を付けなさい」と平生の物言いで返す。まだ出会って間もないからか、ノックスの笑顔は何処と無くぎこちない。しかしナーダは其処を言及はしなかった。彼女もわかっているのだ。笑顔を作ることがどれだけ簡単ではないかを。残念ながらナーダはそれを諦めてしまった口なので、このように何もないときには無表情を貫くに至っている。それ故にノックスに何かを忠告することはない。しかしシシィからの誘いを彼がやんわりと断ったことに対してはそうでもいかないらしく、腕を組みながら彼を見据えた。

「ノックス、可愛い方々からのお誘いは素直に受け取っておくべきよ。それに使用人だからというのは私たちと共に朝食を食べられない理由にはならないわ。有能な使用人が全員住人と別で食事をするわけではないのだから」

要するに誘われたからには遠慮とか無しに受け取っておけと言いたいらしい。相手の立場を全く気にしていないナーダは平気でこういうことを言ってのける。自分が同じ立場だったらどうしていただろうか、なんて彼女が考えることはまずない。そういう人間なのだ、ナーダ・アドラシオンは。

「ええ、もちろん。断る理由はありませんよ。……それでは、少し失礼します」

こてん、と可愛らしく首をかしげたノアに、ナーダはできるだけ怖がらせないように優しい声音でそう答えた。そしてす、と腰を落とすとまずは乱雑に結ばれていたネクタイをしゅるりとほどき、かけ違えていたボタンをひとつずつ丁寧に留めていった。もともとナーダの手先は器用な方なので丁寧でありながらその所作は素早い。すべてのボタンを留め終えたのを確認してから、ナーダは再びネクタイを結んだ。そして「くすぐったかったならごめんなさいね」と苦笑して柔く謝罪をする。幼子と接したことはほとんどないためだろうか、ノアに話しかける彼女の姿はなんとなくだが不器用なものだった。

>>シシィ・トラウス様、ノックス・クラガミ様、ノア・ヴィンターローゼン様、周辺all様

【返信遅くなってしまって本当に申し訳ございません……!一同で朝食を食べに行ったところで1章の〆にしたいと考えているのですが、皆様どのようにお考えでしょうか……?任せるような形になって申し訳ないです……!】

6ヶ月前 No.37

スレ主/2ndイベント開始 @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_Swk



【シシィ・トラウス/アデル南地区・カフェ「エルフリーデ」】



 外の身を切るような寒さから隔絶された空間。洒落たジャズのレコード。時折ぱちぱちと音を立てる暖炉の薪。ふわりと漂うチョコレートの香り。やわらかなフロアランプの明かりが店内をやさしく照らし出す。窓ガラスには緻密な装飾の施されたステンドグラスがあてがわれていたが、めったに晴れることのないこの季節、外からの日光が其れを煌めかせることはなかった。

 亜麻色の髪の少女――シシィ・トラウスはあたたかいふかふかの椅子に少々居心地の悪さを感じながら、店員によって運ばれてきたホットミルクをぐるりとスプーンでかき回した。つい数年前までは床に座るのが常だったのでこういった"人間らしい"扱いはまだ慣れない。しかし冬薔薇の一族に飼われている立場である人間が安い喫茶店に出入りしていることが知れるのもあまりよくないことなのだろう。おでかけという名目で人間たちも自由に外へ出してもらっているが、監視のためか街のところどころに冬薔薇の一族の息のかかった者が散っていた。

 銀の薔薇の装飾が施されたガラス製のマドラーを手に取る。マドラーの先にはハートの形に固められたチョコレートがくっついていた。とぷんとホットミルクの中にマドラーを入れれば、ミルクはじわじわとチョコレートの香りを纏う。奴隷時代にキッチンからこっそりチョコレートを一粒失敬してショコラショーを作ったことを思い出し、シシィは珍しく表情を綻ばせた。


>>ALL





【レス蹴り失礼いたします。これよりセカンドイベントを始めます!!! どちゃくそ遅れてしまい申し訳ありません……!】

6ヶ月前 No.38

ジョン・ドゥ @blize859☆wKMk21AYDk6 ★XfXF0jdJYf_Keq

【ジョン・ドゥ/アデル西地区奴隷市場→アデル南地区カフェ「エルフリーデ」】

様々な欲望がうずめくここ西地区の奴隷市場は珍しくざわめていていた。
最上級な血液を持つ奴隷でも現れたかと思えばそうでもなかった。
どうやらあのヴィンターローゼン邸の極上の血液をもつ人間達が外出しているらしい。奴隷商人たちは実に焦った表情でかけめぐっていた。

『今日はやけに騒がしいですな。そんなにすごいものなんですか?』
「そうでなければこんなに慌ただしい空気にはならんよ。」

新米商人の1人が初老の人物に話しかけてきた。
この人物こそ、ジョン・ドゥ商会の創設者「ジョン・ドゥ」。
商品は星の数程存在しどんな要望にもこたえるため絶大な信頼を寄せている。
その創設者がなぜここにきたのはいつも通り仕入れにきたのであった。
冷静にこの雰囲気を観察して答える。

「さてと私もそろそろ次の場所へ向かおうか。」
『どちらへ行かれるのですか?』
「南地区へ。ちょっと忠告に。」

笑顔で目的地を伝えた後、鞄とお気に入りの杖を手に取り、南地区へ向かうのであった。


――――移動中――――

「これはこれはシシィ様。こんなところでお会いするとは偶然ですね。」

ジョン・ドゥがたどり着いた場所にはヴィンターローゼン邸に住まい人間の1人
「シシィ・トラウス」と出会ったのであった。
実に偶然を装っているがあらかじめサーチしての接触であったのは知る由もない。
軽くお辞儀をしてはゆっくりと近づいていき「となりよろしいですか?」とたずねるのであった。

≫シシィ ALL

6ヶ月前 No.39

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/アデル南地区・商店街】

鬱々とした曇り空は吸血鬼にとっては僥倖ともいえる。分厚い雲に隠れた青空は今日一日、顔を見せないだろう事が窺える。いつもの服装で大丈夫な程の気温だが、吐く息は白い。それをさも面白くなさそうに眺めて、グリードは甘い匂いが漂う商店街へと歩いた。人通りは大きな道故ごった返す程では無いが、すれ違う人が時折頭を下げてくる。

「……」

その中に見覚えのある顔がチラホラとあり、ヴィンターローゼンの配下に当たる奴等かと合点がいく。祖父の訃報で呼び寄せられる前から邸へ出入りしていたとはいえ、顔も知らない相手に頭を下げられるのは――此方を一方的に知られているというのは余り良い気がしないものだ。青白い顔に大きな隈、黒づくめの服装を見た人間に気味悪そうな顔をされる方がまだマシだ。とは言っても偉大な吸血鬼が住まっていた街、大きな偏見を持つ人間等片手で数える程しか居ないか。
さて、と気を取り直して乱立する店を見る。時期柄か飲食店や食べ物を扱う店の殆どにチョコレートが陳列されている。グリードの目当てはこれだった。邸まで漂ってくるような甘い匂いに脳の何処かを刺激されたのか、無性に甘いものを食べたくなったのだ。だが邸に居るのは吸血を好む鬼と極上の血を持つ人間、それ等を世話する使用人が少数。別に人見知りをする訳では無いのだが、知り合って間も無い誰かに甘味を作れと云うのは気が引けた。それに何より既製品が良い。買って来いと言って好みに合わない物を買われるよりは自分で出向いた方がマシだとこうして久方振りに外へ出た訳なのだが、こうも沢山並んでいるとどれが良いのか悩んでしまう。
どれにしようか、とショーウィンドウから中を覗きつつ歩いていると、街頭でチョコレートを売っている店の前で年端もいかないような少女がそれをじっと見ている事に気が付いた。店内から飛び出るように設置されたそれは高い位置にあり、大きな声で呼び掛けている笑顔の店員は少女の存在に気が付いていないようだ。近くに親がいれば手助けしてやれば良いものの、どうやら少女一人のようだ。時折声を掛けようとしているが店員の声と喧騒により掻き消されてしまっている。その状況に、グリードは一瞬迷ったが仕方が無いと近くまで行き少女の傍にしゃがみ込んだ。

「こんにちは、お嬢さん。どうかしたか」

気を付けたつもりだが、矢張り急に話し掛けられて驚いたのだろう、少女はビクリと肩を震わせて此方を振り向いた。余り得意では無いが怖がらせるのは偲びないと弱く笑顔を作れば、ホッとしたように肩を下げてくれた。

「あのね、パパにチョコレートを買うの。お使いなの。でもね、気付いてくれなくて……」
「へえ……一人でお使いなんて、偉いなァ。少しだけ手伝わせてくれよ」

小さく微笑んでくれた少女にそう言うと、少女は首を傾げて見つめて来た。それに、失礼、と一言断ってから少女を抱き上げる。横向きに腕に乗せ前が見えやすいようにしてやると立ち上がった。

「わっ!」
「これで買えるな?」

悪戯に成功したみたいにニッと笑えば少女も嬉しそうに破顔する。該当販売の前まで連れて行けば店員は邪気の無い笑顔でいらっしゃいませと少女に告げた。最初から決めていたのだろう、直ぐにこれとこれ、と欲しい物を指差し告げて少女は買い求めた。可愛らしくラッピングされたチョコレートと僅かばかりのお釣りを受け取ってありがとうございますと高い声で礼を言う。

「一人で買えて、やるじゃねェか」
「うん! ……あのね」
「?」

少女を下ろしてやり、後は帰るだけだな、と多少ぎこち無く頭を撫でてやると、少女は顔を赤らめて恥ずかしそうに俯いた。モジモジと何かを言おうとしているのでしゃがんで黙って待っていると、買ったばかりの二つのチョコレートを片方差し出して来た。

「あげる!」
「……? パパにやるんじゃねェのか」
「パパにはこっちをあげるからいいの! ありがと、黒のおにーちゃん。ばいばい!」
「あ、おい、……」

押し付けてそのまま走り去る少女に、支えを無くして落ちそうになるチョコレートを咄嗟に受け取る。目を上げた時には少女はもう遠くへ行っていて、声も届かない。グリードは赤い包装紙とピンクのリボンで飾られたチョコレートの包みを見下ろした。ショーウィンドウの見本によれば、アーモンドの入ったハート型のチョコレートが六つ程入っているやつだ。確かにパパにやると言って二つ買って居たので疑問に思ってはいた。二つ買える程度のお金を持っていたので特に深追いはしなかったが、本来であれば残ったお金で好きな物でも買いなさいと言われていたのだろう。チョコレートを二つ買ってしまったおかげで後はもう飴玉位しか買えないだろうに。一部始終を見ていた店員がグリードの後ろでニヤニヤと微笑ましいものを見るような笑顔を浮かべていたが、グリードは気付く由も無かった。


>>ALL様


【2章開始おめでとうございます! 暫く絡みが無いようでしたらこのまま邸に帰りますー】

6ヶ月前 No.40

すずり @suzuri0213☆uVgy9R1pZdc ★Android=nMqLjsjQcP

【ナーダ・アドラシオン/アデル南地区・商店街】

どんよりと重く垂れこめる灰色の雲に、ナーダ・アドラシオンはわかりやすく不機嫌そうな視線を向けた。寒い季節は得意ではない。そのため紺色のダッフルコートに加えて手袋とマフラーまで着用している徹底した防寒っぷりである。そうまでして何故わざわざナーダが外出しているかというと、本人は口にしないがチョコレート、もしくは分けることが可能な菓子を見にこの商店街に立ち寄ったというわけだ。変なところで義理堅く律儀な気性のナーダは、屋敷の者たちに向けて何かしらの菓子を送るつもりでいる。もちろん本命なんていないが、普段付き合いのある者には義理で送ろうというわけだ。お返しを求めている訳ではない。あくまでナーダ本人がそうしたいからそうするだけの自己満足である。

「……どうしようかしら」

だがしかし滅多にこういった浮わついた場所を訪れることのないナーダはどのような店に行けば良いのか、そしてどのような種類のチョコレートや菓子があるのかを全く把握できていなかった。そういえば皆の好物を聞き忘れていたと思い出したナーダだったが、こういうのは事前に察されてはいけないからと自分に言い聞かせる。一先ずショーウィンドウや店の入り口から物色してみるもどれを買えば良いのか見当もつかない。困っていても基本的に人に頼ろうとしないナーダは完全に詰んでいた。とりあえず立ちっぱなしでいるわけにもいかないので適当にぶらぶらと歩きながら店先を見て回っていると、その中によく見知った顔を見つけた。

「……グリード様?」

青白い顔色に目の下にはっきりと見える隈の持ち主であるグリード・マモン・ヴィンターローゼンはナーダが置かれているヴィンターローゼン家の吸血鬼である。見るからに不健康そうだという相手からしてみれば理不尽極まりない理由でナーダは彼に声をかけることが少なくなかった。そんなグリードが何やらチョコレートや菓子を売っている店で年端もいかない少女と話している。見たところによると少女に何かしらの手伝いをしたというわけか。少女はグリードにチョコレートを渡すとすぐに遠くへ行ってしまった。少女の後ろ姿を少し眺めてから、ナーダはブーツの音を立てながらグリードへと近づく。

「こんにちは、グリード様。お外で会うとは奇遇なこともあるものですね。あの少女のお手伝いをしていらっしゃったようですが……。……嗚呼、決して責めている訳ではないのですよ。むしろ善きことです」

一日一善を座右の銘としているナーダは普段のしかめっ面に比べたらだいぶ穏やかな表情でそうグリードに声を掛けた。そして「あなたは何かご購入なさったのですか?」と問いかける。あわよくばグリードと買い物を共にして色々と参考にさせていただこうという魂胆である。

>>グリード・マモン・ヴィンターローゼン様、周辺all様

【遅ればせながら二章開始おめでとうございますー!僭越ながらグリードさんに絡ませていただきました……!】

6ヶ月前 No.41

夜の銃刀 @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

【ノックス・クラガミ/アデル東地区/古びた壁】


 アデルの冬は雪が降る。しんしんと降り注ぐ雪を掴み、そして溶けて消えて無くなる。冬の時期は日光がほぼ絶え、この時期は吸血鬼たちにとって絶好のお出かけ日和ともなるらしい。じゃあ夏の場合は逆に出る事が難しくなるのだろうかとそんな事を考えていた。なので早速町へ出かけることになった冬薔薇の一族。そんな理由で簡単に出てもいいのだろうか、お守りするのも自分の仕事なのだが、吸血鬼の方が実際に強いと思う。守られる必要もないか、実際に。そして街中から外れて、ひっそりと人気のない方へ進む。今日はいつもの使用人の格好の上からロングコートを着ている。今日の街中はバレンタインデー一色で、甘い匂いが濃い。ああいうイベントには独身一人でいたくはない。実際には逃げるかのように、此処まできた。そしてふと一角に何かが書かれた壁を見つける。何だろうと思い、近寄って、文字を読んでみた。そして思い出した、とある古びた壁に願い事を書くと願いが叶う噂を。


「 これが噂の壁か。まあ何で壁に書いただけでこんな噂が出来るんだか……。 」


 どれもこれも見ていて、恥ずかしいものばかりで呆れるしかない。特に自分と同じ独身男性が書いた願いは、共感出来る以上にこんな事してる暇あったらとっとと見つけろよ、恋人をっと内心ツッコミを入れた。東の国の方では夏にはそういう願いを叶えう文化もあると師匠に聞いた事はあるが、あっちの方がご利益がありそうだ。しかし、願いか。


「 ……しかし、いざ考えてみると願いってそう浮かばないな。 」


 自分の叶いたい願いはなにかについて考えてみる。色々ありすぎて、一つに絞るのが難しい。腕を組んで思考を繰り返す。その姿はどんな願いを書こうか迷っている使用人の姿でしか見えないだろう。



>>ALL


【第二章開始おめでとうございます。こちらで待機してます。】

6ヶ月前 No.42

ロト @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ロト・ヴィンターローゼン/中央区→北地区】

鉛色の天の下に渦巻く陰気を帯びた冬の風。壮麗な教会の立つ中央地区表通りから離れた人気のない路地。
指先から地表へとはらり零れ落ちた一通の書簡に、パタパタと血の雫が滴る。じわりと滲むように忽ちに広がって、封蝋のように紅く艶々と潤んだ溜まりを作った。
黒い影法師のような出で立ちの二人が差し向かう。緊張の面持ちである人間とそれを見下ろす壮年の吸血鬼との間に、木枯らしが吹き抜ける。

銀の髭を蓄えた口が、幅の広い弧を描いた。薄い唇が上下に裂けると、何処か悪魔めいた歯牙が覗く。
「ふん……神に仕える人間が騙し討ちとは、情緒も無いことだ」
吸血鬼は傷付くのも厭わずに、突き付けられた銀のナイフの切っ先を指先でふにゃりと圧し折った。煌めく薄刃が皮膚にのめり込み、じくりとした感触を伴って其処が熱く火照る。他人の庭先の花でも風流のうちに盗むような優雅さで、敵意に満ちた男の凶器を摘み取った。呆気にとられた痴れ者の眼前にて、弱点であるはずの銀のナイフを書簡の上に放り落とす。鋭く研ぎ澄まされた深紅の鋲が紙を地面に縫い付けた。
男は蒼白になって、山影のようにゆらりと立ちはだかる不屈の吸血鬼を見上げた。
先駈け逸ったハンターが仕掛けた罠は、今や地面で萎(しお)れている。分かりやすく悪者めいた満面の笑みを浮かべ、ぐりぐりと靴底で踏み潰す。巧妙な手紙の筈だった。偽の書簡に騙されて相手がまんまとやってきたと思い込んでいた。血気盛んなハンターは羞恥と後悔に満ちた苦い顔をして、それが却ってこの悪趣味な男をぞくぞくと悦ばせた。
「情緒も無ければ頭も足りない。なぁ? 神父?」

吸血鬼を見れば何でもかんでも悪者だと思い否応無く襲いかかる非道のハンターもいる。その一方で、そのハンターに騙されたふりをしながら更に返り討ちにして叩き落とすのを道楽にしている非道の吸血鬼もいるものだ。この非道の吸血鬼は非道のハンターに膝蹴りを食らわし利き手を捻りあげ今まさに悪趣味な笑みを浮かべている。
「牧師だっ!」
十字架にも説法にも興味の無い吸血鬼にとってはそんな違いは至極どうでもいい。教会に出入りしていれば猫も杓子もハンターも皆一概に神父≠セ。吸血鬼は人間の主張を無視して続けた。
「……今日はアデルの人々にとって愛と感謝を伝える聖バレンタインの祭日と聞いたが。その日に欺瞞を仕掛けるとは、人間貴様随分野蛮だな。正義の味方より空き巣か何かの方がまだ向いてるのでは」
「うるせえ! 黙れ吸血鬼」

誰も此の男からだけは愛だの感謝だのを説かれたく無いだろう。返り討ちに合わせて愉しむためだけにわざと釣られて来たくせに。ハンターも例外ではなく、正義役の立ち位置も忘れて唾棄しながら喚いた。そうだ、その顔だ。あられもなく歪む感情を裸にしたような表情に、色欲の吸血鬼ロト・ヴィンターローゼンの狂気の血が騒ぐ。深紅の虹彩の中でどす黒い瞳が血澱の揺蕩うが如く鈍く煌る。徐に大きな手が人間の脆弱な身体を石造りの壁に叩きつけると、脳が震盪して星が飛ぶ。途端、人間の動きが鈍磨になる。ぐったりと崩れ傾く堕ちた鴉のような力無い細身の身体を横たえると、獲物を押さえつけるようにその腹に覆い被さり、胸から肩、腕へと長くしなやかな骨格筋を辿る。手首を重ね合わせ首筋に歯を立てようと顔を近づけると、哀れにもまだ意識のあった人間は激しく叫び抵抗した。馬鹿め。抵抗されればされるほど、其の血の味は美味く感じるというもの。ロトは傷を負った左拳を、声を上げさせぬために男の口の中へ無理に突めこんだ。当然狂犬のように噛んでくる。途端、予定通りにその血の驚くべき不味さにのたうち回るほどの苦痛を感じたか、男は益々足掻く。その苦痛の絶頂のうちに、その汗ばみドクドクと脈打つ青い首筋に向かって歯を立てるのだ。くぐもって響くことのない悲鳴が、ロトだけのものとなる。



返り討ちに合わせただけだ。正当防衛。だが当然、合意の上でない吸血行為は合法では無い。……今に始まった事ではないが。
殺してはいない。結局、あの策士策に溺れる無鉄砲な詐欺師まがいのハンターの血は、不味くて飲めたものでは無かったのだ。違う、探している味は覚えている味は此れではない。
ロトは屋敷への帰路につくところだった。中央地区を抜け、北地区に差し掛かる。此処から入る森の奥にヴィンターローゼン邸はある。左手につけた傷は剃刀で切った程度の小さく浅いものだったが、吸血鬼の弱点が銀であることは間違い無く、周囲が僅かに赤く腫れて痛む。
街はバレンタイン。南地区のあたりは賑やかなことだろう。世間が愛だ恋だに色めき立っていると、日頃は熱病的なまでにそれを謳歌している筈の此の男は却って面倒ごとに巻き込まれそうな気がして、火遊びは程々に屋敷に帰って寝ることに決めた。

>all様


【二章開始おめでとうございます! 登場させ方でかなり迷ったのですが、ちょうど屋敷から森を抜けたあたりにいますので、屋敷から遊びに出てこようとしている方がいらっしゃいましたらちょっと元気がない彼を街へ誘ってくださると嬉しいです。おじさんとデートしてー() モブハンターとのくだりはヨシュカ君との話の伏線にでもなればな、と……!】

6ヶ月前 No.43

@kasa3shi☆1hF4w8rWL3Q ★iPhone=wubEjuwW7M

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6ヶ月前 No.44

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【グリード・マモン・ヴィンターローゼン/アデル南地区・商店街】

既に見えなくなった少女の後ろ姿だが、吸血鬼の嗅覚を持ってすれば追えない事は無い。半分人間の血が流れているとはいえ、グリードは由緒正しきヴィンターローゼン家の末裔だ。現に細い糸が導くように少女の残り香が行き先を示している。──だが、果たして、少女を追い掛けて貰ったチョコレートを返すのが正しい事なのだろうか。欲しい物を全て手に入れ、長い時を経て丸くなったグリードは、少女の好意を無碍に出来なかった。

「……まさか人間の少女にチョコレートを貰うとはな」

バレンタインデーという行事が、菓子屋による商業利用がされてから大分経った世にグリードは生まれた。であるから、ヴィンターローゼン家の配下や起業して成功してからは得意先や胡麻擂りをする連中、玉の輿を狙う女から手渡しなり配送なりされて毎年貰っている。手作りは容赦無く捨て、市販の物は適度に食べつつ全てを一緒芥に溶かして作り直す等していた。今年は仕事も全て放り出して──というか放り出さざるを得なくて──ヴィンターローゼン邸へ来ているので代理に立てた彼奴や家に残して来た使用人が勝手知ったる手際で消費している事だろう。そう言い含めても有る。だが、あんなに幼い少女から好意だけのまっさらな感情でチョコレートを貰う等、誰が想像出来ただろうか。有難く貰い受ける事にし、黒いコートの内ポケットへ仕舞った。未だ寒いこの季節、体温も低いグリードならば溶ける心配は無いだろう。

「──……見てたのか」

聞き覚えの有る歩き方が靴音と共に聞こえると思えば名を呼ばれ、振り返ると予想通りナーダが居た。彼女はノルベルト・ヴィンターローゼンが集めた"コレクション"の内の一人である。吸血より人間の食事派、だと公言している、集められた七人の吸血鬼の中では一番人間寄りであるグリードは、その血が美味だからといって人間を"コレクション"等と称するのは如何なものかと思っているが、倫理を説いた所で他の吸血鬼達は聞く耳を持たない所か何処吹く風だろう。
それは兎も角として、ナーダ・アドラシオンという女は世話好きらしい。彼女とは祖父の訃報を聞いて邸に来た時に初めて会ったのだが、大きな隈と顔色の悪さから体調が悪いと勘違いされてから何かと世話を焼かれている。見掛ければ何かと声を掛けて来る程に。自分の見た目が不健康そうだとはグリードも自覚しているが、実際にはそんな事は無いので気にしなくて良いと言っているのだが聞いてくれた様子は今の所無い。何だ彼んだグリードも世話を焼かれる事には慣れているので強く言う気も無いのだが。

「いや、未だ何も買ってねェな。……それが如何かしたか」

悪い事をした訳で無いのに、寧ろ良い事をしたのにグリードは見られていた事に居心地の悪さを感じて目を逸らしながら問い掛けに答える。

>>ナーダ・アドラシオン様、ALL様


【たいっへん! 遅くなって申し訳ありません!! 絡んで下さり有難う御座います!】

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6ヶ月前 No.45

夜の銃刀 @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

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6ヶ月前 No.46
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