Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(24) >>
★この記事にはショッキングな内容が含まれます。もし記事に問題がある場合は違反報告してください。

退廃都市―火砕流のアノミー―【本編開始】

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(570) - ●メイン記事(24) / サブ記事 (30) - いいね!(6)

ダークファンタジー/少人数制/六章完結 @syuginn ★HPzqP6MFXB_3Nj

     「――――輩よ。俺の復讐をヴァルハラにて見守るがいい」


 霊峰バランシャ――――死火山とも呼ばれるその高山の麓に、黎明都市エリプセの街は繁栄していた。

 しかし、800年ぶりに突如として大噴火した霊峰によって、風光明媚な街並みは全て呑み込まれた。
 黎明都市は、退廃都市へと姿を変えたのである。
 空を覆いつくす火砕流は重力に逆らって渦を巻き、赤黒い雷霆が地を穿った。
 未曾有の大災害によって、退廃都市から人々は姿を消した。

 ――かに思えた。

 肺を焼き、皮膚を爛れさせる邪悪な火山灰に、何故か適応する者が現れたのである。
 一人、また一人と火山灰に倒れてゆく同胞を見つめながら、彼らは――適応者は呪った。
 世界を。霊峰を。生き残ってしまった自分自身すらも。呪って呪って、呪いに溺れる中、彼らは発見した。
 “呪い”こそが、自分に与えられた新たなる力であると。

 また一つ、新たなる脅威。地から湧き出たるは、人とは異なる種族。
 魔族――そう称されるバケモノたちは、嬉々として適応者たちを襲い、蹂躙し、喰らい始めた。
 適応者として生き残ったものの、呪いの力を上手く扱えない者は、魔族の肥やしとなって無残に散った。
 だが、呪いの力を我が物に出来た者は、魔族すらも屠れる力を手にしたも同然。

 一体、何故?
 火山灰に適応できる人間が現れたのか?
 何が呪いの力を人間たちに授けたのか?
 800年もの間眠っていた霊峰が突如覚醒したのは偶然か?
 湧き出る魔族を根絶することは出来るのか?
 ――――かつての穏やかな日々を、奪還することは可能であるか?

 全ての謎を解き明かすべく、適応者は墓標の前で呪威(ノロイ)を握る。



【閲覧ありがとうございます。凄惨で絶望すら待ったなしの血腥い世界観であるため、15禁とさせて頂いております。
 当スレは、生き残ってしまった特殊な人間と、特異な魔族の愛憎混ざり合うストーリーを展開していく少人数制のスレッドです。
 ダークファンタジーに目がないよ!という方はぜひぜひサブ記事もご覧になってくださいませ。
 以降、メイン・サブ共に少々レス禁です。】

メモ2017/12/21 12:57 : 朱銀☆lXg/nRyFCsTU @syuginn★HPzqP6MFXB_3Nj

▼△▼ 第一章 ・ ≪ 脅 威 ≫ ▼△▼


 今日も今日とて魔は来る。靄と翅、双方腹を空かせた紛れもない強魔。

 紅蓮は朽木の森へ向かわねばならぬが、思わぬ足止めに辟易するだろう。

 劫火はひ弱な恋人を守るために炎の剣を取らざるをえまい。

 狂飆は待ち侘びたかのように嬉々として鎌を振るうだろう。

 雷霆は仇敵を求め槍を振るい、瀑布は気慰みに爪を振るうだろう。

 治癒は恐れ戦いて劫火の後ろに隠れ、叡智は美学に基づきほくそ笑む。

 ――エリプセの歴史を揺るがす第一歩を、適応者たちは歩み始めた。


   【募集枠】


◆ラルヴァ・フォーヤン……【http://mb2.jp/_subnro/15669.html-19#a

 @劫火の呪威      

  [ 男性 / 22 / 治癒の呪威を持つ女と恋人関係 ]


◆エヴァンジェリン・ネリー・ソーンダイク……【http://mb2.jp/_subnro/15669.html-17#RES

 A紅蓮の呪威

  [ 女性 / 28 / とある魔と恋に落ち、彼のために魔へ転生する方法を捜している ]


◆リヒト・ヒンメル……【http://mb2.jp/_subnro/15669.html-24#a

 B雷霆の呪威

  [ 男性 / 29 / 適応者である妻を喰った魔へ復讐を誓う ]


◆オリビア・ハルフォード……【http://mb2.jp/_subnro/15669.html-26#a

 C瀑布の呪威

  [ 女性 / 27 / 結婚を誓った恋人を噴火で失っている ]


◆アーロン・ヴェルヴェット……【http://mb2.jp/_subnro/15669.html-14#a

 D狂飆の呪威

…続きを読む(1行)

切替: メイン記事(24) サブ記事 (30) ページ: 1

 
 

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.1

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アーロン・ヴェルヴェット/旧市街・西南部】


今日も今日とて空から灰が降り注いでいる。息を吸う度に肺へと入っていくそれは、不快ではあったが身体に馴染むような気がした。多くの命を奪った火砕流は、しかしアーロンからしてみれば恵みの雨でもあった。
平和な世界だったあの頃は、死んだように生きていた。何にも興味が無く誰からも理解されない。周りでは喚き散らすように他人が居ることもあったが、全てアーロンの目には映らなかった。顔も知らない。名前も知らない。言っている事も分からない。いつしか彼の周りには誰も居なくなっていた。家族は見捨てずに居てくれたが、毎日顔を合わせるから顔を覚えているだけで時折名前も思い出せなくなるほど、他人と変わらない存在だった。世界が灰色に染まる前から、アーロンの世界はモノクロだった。

「暇だなァ」

大きな独り言が洩れる。娯楽の無い廃退した世界では寝る事しか暇潰しがない。しかし一時間ほど前まで寝ていたアーロンの脳は、もう休息を求めていない。他にする事といったら食事だろうが、適合者の体は栄養を必要とせず、ならば興味は無いとするつもりも無い。最終手段として誰かとゲームでもするか、と辺りを見渡すと、アーロンの他に四人の人物が見えた。珍しい。一日ごとに数を減らす適合者が五人も揃って同じ場所に居るなど、そう多くない。この人数ならゲームも捗るだろうと顔も知らない彼等に声を掛けようとした、その時。
爆発音が遠くない場所で響いた。反応して音の方を見るとその後も何度も音がする。これは、そうに違いない。アーロンは普段は浮かべない嬉しそうな表情をすると呪威によって形成された己の武器を発現させる。

「来た。きたきたきたきた――――!」

何も無かったアーロンに、唯一出来た楽しみ。興味を引きつけるもの。それが魔族との戦いだった。命をかけた戦闘はアーロンの心を酷く熱くさせる。まるで恋でもしてるかのように頬を上気させれば鎌を片手に走り出す。程なくして最初に目に映ったのは二メートルはある靄に包まれたような魔族だった。そのまま瓦礫も障害物も目もくれず足場の悪いそこを走り抜ければ片足で踏み込んで跳躍する。そんなアーロンの背中を押すように風が吹いた。他でもないアーロンの呪威の力だった。

「楽しんでこうぜ」

目を細め口角を釣り上げて薄く笑う。その顔は狂人じみて居たが酷く愉しそうだった。靄に包まれた身体はおよそ切れるとは思えなかったが、アーロンは振り上げた鎌を振り下ろして攻撃を試みる。


【本編開始おめでとうございます! 漸くアーロンくんを動かせるのだと思うとワクワクが止まりません! しかも行動が今後に繋がるとはドキドキです……アーロンくんならこう行動する、っていうのを念頭に書かせていただきますのでなるようになると思いますが!
それでは皆様、よろしくお願いします!】

>>ALL様

1ヶ月前 No.2

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 ???&エリ / 旧市街・西南部 】

 背後から聞こえる、規則的に地を蹴る音と、それに続いて一際大きく地へ踏み込んだ跳躍音。ゆっくりと振り返れば、曇天に重なるように鎌を構えて斬りかかってくる一人の男の姿を目にする。狂飆の振り下ろした鎌は、文字通り虚空を切り裂き、彼の予想通り何の手応えも与えない。靄の魔は一歩も動くことなく、どこに付いているかも判別できない眼でただただ狂飆を、アーロンを見遣る。

「随分張り切ってるっすねぇ。身体もそこそこ大きいし、食べ応えありそうっす」

 軽い声音に含まれているのは、嬉しい誤算。まさかこんなしらけた街で、尚も嬉々として魔に喧嘩を売る適応者がまだ残っていようとは。それも、なかなか見事な体躯。柔らかい脂肪よりも硬い筋肉を好む靄の魔にとって、アーロンはさながら、自らの身を食事に差し出しに来てくれたご馳走。

「遊びたいんすね? いっすよぉ、冥土の土産に付き合ってやるっす」

 靄の魔が零した含み笑いに呼応するように、魔の全身を包む靄が小刻みに震える。そして、先ほどまで二足歩行の形を成していた靄が、まるで蜘蛛の子を散らすように霧散する。文字通り、靄の魔の身体は肉眼では捉えることのできない、原子レベルにまで散らばった。そして、不可視の状態でまとわりつく――アーロンの口と、鼻腔を塞ぐように。このままでは彼は、陸に居ながらにして窒息死してしまうだろう。だがこんなものは魔にとっては小手調べ、先ほど述べたようにお遊びにすぎない。
 その様子を羨ましそうに眺めていた翅の魔は、ほど近い場所に一つの人影を発見する。その人影の正体は、治癒の呪威の使い手であり、劫火の呪威たるラルヴァの恋人であるエリ。

「あ、いいもん見っけー。ゴツゴツした肉より柔らかいほうが好きなんだよねー」

 翅の魔の顔に張り付くのは、アーロンのそれにも引けを取らない、愉悦に興じる邪悪な笑み。翅を動かしてふわりと宙に浮けば、イメージに反する猛スピードでエリに迫る。己に急接近する黒い影に気付いた頃には、もう手遅れ。エリは呪威を発動し、武器である独鈷の形を織りなそうとしたが、翅の魔のほうが一枚も二枚も速く。

「三枚に下ろすかなー」
「っ……ラル、ラル――!」

 翅の魔の手にいつの間にか握られていた刃は、人間界でいうフランベルジュに酷似していた。相違点と言えば、波打つ刀身が“本当に陽炎のように波打っている”こと。丸腰のエリに対して、翅の魔はその凶刃を振り上げる。エリは恐怖から目を固く瞑り、愛しい男の名を悲鳴のような声で呼んだ。

>>ALL様



【戦闘では一切役に立たない治癒の呪威を引っ張り出しました。第一章から、適応者の皆さまには大いに苦戦して頂きます。僭越ながらダークファンタジーを冠するこのスレで、楽な戦いはないと思って頂いた方が気が楽かもしれません。どんなに大怪我を負っても治癒の呪威たるNPCがいますので、その点はご安心を。参加者たる5名の皆さまが存分に苦戦し、魔の脅威を身に染みて理解してくださったかな、とこちらが判断し次第、次の展開に移りますので、それまではチュートリアルよろしく、呪威をたくさん使って戦闘を繰り広げてくださいませ!また、この本体文を読んだ旨を、皆さまの次レスで教えて下されば幸いです。共通認識が出来ているかと確認させて頂ければ大丈夫なので、「本体文確認しました」だけで構いません、よろしくお願いいたします。】

30日前 No.3

参加希望(F) @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

【 ラルヴァ・フォーヤン / 旧市街・西南部 】


 今日も世界を奪った火山灰が降っている。朝も夜も関係なく、寂しげで、寒く、薄暗い。そればかりか、触れたもの全ての命を奪い、自分の知る日常は既に崩れて、どれくらい経ったか。降り注ぐ灰を眺め、あの日の事を思い出す。両親との突然の別れ、突然の別れにあの時は悲しみに暮れ、色鮮やかな日常は灰色で塗りつぶされた。生き残った人々を脅かす魔族という存在から守るため、この力で抗っていこうと思う。だが灰色の日常になったあの日、自分に大切なものが出来た。あの日がなかったら、きっと僕は彼女と出会う事もなかったし、今のような関係になることはなかったと思う。生きていれば、両親にもちゃんと紹介はしたかった。


「 ……爆発? 」


 自分の耳に何かが壊れる音が聞こえる。音がする方へ振り向き、駆け出す。無意識に自分の背中に燃える炎のように紅く、立派な長剣が出現していた。あの日から突然得たこの力も最初の時に比べて、慣れた。手馴れた手つきで長剣を抜き、前につき出すと剣全身から炎が発せられる。包丁を握ってた時間より、それと同じくらいに認めたくはないが、馴染む。
爆発した音が聞こえた所、昔の市街があった場所だが今は凄惨な状態になっている。敵は何処にと周囲に幾分の炎を散らかせ、見渡す。自分の視界に、最愛の恋人が昆虫の羽の生えた小柄の魔族の凶刃に襲われている光景が映った時、手に握っていた長剣から凄まじい爆炎が噴いた。愛しい恋人の名を叫ばず、勇ましく吠える事もしなかった。ただ届くため。長剣から発する凄まじい炎はまるで噴炎、自分の身体は低空に噴炎によって飛び、恋人の元に向かっていた。


「 無事か、エリ。ちょっと危ないから、下がってて。 」


 炎を纏う弾丸のように颯爽と恋人の前に立ち、翅の魔の手に持っていた波状の剣を受け止めていた。少し後ろを向き、笑顔を浮かべ、彼女の状態を確かめる。目に見える怪我は特にしておらず、まずか彼女が無事であった事に安堵した。そして前を向き、笑顔から一変する。太陽のような優しい笑顔は、まるで静かに燃える瞳に変え、相手が少女のような可愛らしい者でも容赦のない顔をに変わっていた。



「 君……――」


 とても静かな一声。それは嵐の前の静けさ。まるで仮面でも被ったかのように、冷たい印象を与える。


「 僕の大切な者を殺そうとしたなぁッ!! 」


 そして次の瞬間、荒れ狂う炎のように怒鳴り上げた。今の自分は自分の恋人を殺そうとした目の前の魔族に怒りを覚えている。その怒りの感情や長剣から更に炎が強く燃え上がらせる。目の前の敵を吹き飛ばす、その怒りの感情から刀身から前方向のみの爆炎が放たれる。見た目が少女とかそんな事を気にする事もなく、ただ目の前の敵を殺す事と彼女を守るために、今の自分は非情という仮面を被った化物になる事に決めてる。


>>エリ、翅の魔


【本体文確認しました】

29日前 No.4

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

27日前 No.5

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【 エヴァンジェリン・ネリー・ソーンダイク / 旧市街・西南部 】

 紅蓮の呪威を持つ女・エヴァことエヴァンジェリンは走っていた。それはもう全速力で、荒廃しきった辺りの景色も晴れることのない曇り空も何一つ気にせずに、持ち得る全ての力を出し切らんばかりに走っていた。
 昨日を何とか生き延び眠りに就こうとしていたその刹那、彼女の耳に届いたのは狼の遠吠えのような、けれど決してそうではない声。最早聞き慣れたそれは、愛しい背の君からの恋文に等しい。
――明日の日中に朽木の森で待つ。
 半ば一方的ではあっても違えることなど許されない、というかエヴァ自身が違えることを許さない約束は、彼女にとって唯一無二の生きる理由なのである。
 たとえその相手が、ヒトとは根本的に異なる魔と呼ばれる存在であったとしても。エヴァの胸に宿った激情に嘘偽りは欠片とてなく、彼……魔族であるアルヴィオンのためなら文字通り何だってできた。
 今だってエヴァは、黎明都市から退廃都市と呼ばれるまでに荒れ果てた故郷に、何の感慨も抱かず駆け抜けていた。きっと今この瞬間にも何処かで生き残りの適応者が魔族に襲われているのだろうが、それすらも彼女は対岸の火事として無視してしまうだろう。
 それが本当に、対岸であったのなら。

「……あらら」
 全速力で駆け抜けていた筈のエヴァが思わず足を止めたのは、というか止めざるを得なかったのは、進行方向真っ直ぐ目の前で、魔族と適応者との戦いが繰り広げられていたからだ。一瞬無視して通り過ぎるか迂回しようかという考えが脳裏を過ったが、どちらも現実的ではない。腹を空かせた魔族が餌を見逃してくれる筈はなく、来た道を戻っていたら日が暮れてしまう。ならばそう……戦って蹴散らして進むしかない。今も自分を待っているであろう、愛しい恋人の為に。
 幸か不幸か、今魔族と戦っているらしい男性二人とその恋人には、顔見知り程度の認識はある。加勢しても、まさかエヴァがただ此処を通りたいだけだとは思われまい。
 一つ大きく息を吐く。次の瞬間、手の中には武骨な斧の感触がある。此方だって愛しい人との数少ない逢瀬を邪魔されているのだ、その苛立ちを存分にぶつけさせて貰うとしよう。

「こんにちはお嬢さん。ちょっとそこ通して頂けると助かるのだけれど、通してくれなさそうだから勝手にやらせて貰うわね」
 わざわざ宣戦布告をしたのは、魔族に対してフェアに挑もうなどと余裕ぶって考えていた訳ではない。どちらかと言えば、既にそこにいる三人に、攻撃するから頑張って避けてくれと伝える意味あいの方が大きかった。
 まだそこまで近付いていないうちから、エヴァは空気中の水分を凍らせて氷柱を作り出し、それを少女の形をした魔に向かって投擲する。何という事もなく姿が見えている方に攻撃したまでで、そこに分子レベルにまで霧散した魔がもう一体居ることには気付いていなかった。

>翅の魔、周辺all

【投稿遅くなりまして申し訳ありません、本編開始おめでとうございます。これから宜しくお願いします。本体文確認しました。】

24日前 No.6

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 ???&エリ / 旧市街・西南部 】

 翅の魔が振り落ろした陽炎の剣は、エリの身体を両断するに至らず。ジェット噴射の如く爆炎を蒸かし、猛スピードで飛び入ってきた男の持つ硬質な金属に、阻まれ受け止められたのである。だがその際、金属と金属がかち合う甲高い音が響かなかったことは、ラルヴァに違和感を覚えさせるだろう。翅の魔の剣、それは人間が金属を加工して造り出すものでは決して受け止められない。ラルヴァの呪威によって生み出された剣だったからこそ、翅の魔の剣を受け止めることが出来た。
 そして、怒りという名の呪威が、その使い手の怒号と共に燃え猛った。翅の魔のみを狙って噴出したその劫火の質量は膨大で、体躯の小さな翅の魔は完全にその炎の中に呑まれて姿を消した。――かに思えた。

「うっさいなぁ。当たり前じゃん、君らは餌でメルは腹ペコなんだからさ」

 あからさまに不機嫌そうなその声音には、微かな嘲笑すら含まれていた。“大切な者を殺そうとした”? それは人間が持つ価値観であり、生粋の魔である彼女には一笑に付す戯言でしかない。餌が同じ餌同士で庇い合おうが、それは滑稽な喜劇に過ぎない。無論、ラルヴァの行動や想いは、人間界では美しい。だが心せよ、今対峙しているのはどんな悪人ですら赤子の手をひねるように貪り殺してしまう、正真正銘の魔族なのである。
 その証拠に、翅の魔のピンピンした声は炎の中から聞こえる。次に目の当たりにする光景は、文字通り目を疑うものだろう。翅の魔を消し炭にせんと燃え盛る炎が、彼女の握る陽炎の剣に吸い込まれている。――否、喰っているのだ。何を、どのような仕組みで、というのは人知を超えた話であるため、理解できるのはその剣の使い手である翅の魔か、叡智の呪威が発動した状態のアケハぐらいなものだろう。

「ヒトにしちゃ巧く使いこなせてるみたいじゃん、その火。……さ、それじゃあ君がその雑魚守りながらどこまで戦えるか、見せてもらおーじゃん?」

 人の目には見えない速度で背中の翅を羽搏かせて空中にホバリングしながら、陽炎の剣の切っ先を天に掲げ、手首をスナップさせる。さながらそれは指揮棒を振るっているかのような優雅ささえ醸し出す所作。途端に、剣の切っ先から藍色の炎が出現する。そしてその昏い炎を鞭のようにしならせて襲う標的は、ラルヴァではなく、彼の背に隠れたエリ。

「うわ、また美味しそうなのがきた! 今日は良い日になりそーじゃん」

 ふと、新しい女の声が聴こえてそちらを向けば、そこには翅の魔好みの肉を纏った人間が立っている。目を輝かせて己の幸運に酔いしれていれば、飛来する氷柱。だがなんのこともなく、剣を握る手をゆるりと一回振るえば、藍色の炎がその動作に従うかのように唸り、氷柱を呑み込んだ。炎に氷、相性は抜群に悪いだろう。楽な狩りになりそうだ、と翅の魔は鼻歌さえ歌い始める始末。
 一方で靄の魔は、不可視レベルで霧散したまま、これで己の狩りは終わったか、とぼんやり思考していた。だが、それは些か早合点が過ぎたようだ。アーロンの持つ狂飆の呪威では、せいぜい肉体運動の補助か、風を流動させて身を切り裂く刃を作り出す程度の芸当しか出来ないだろう、という推測が邪推であったことを靄の魔は身を以って思い知ることとなった。

「竜巻っすか。なかなかやるっすね、家畜のくせに。ヒトの言う呪いの力、面白いっすねぇ」

 強力な風にあおられたのか、アーロンの鼻と口を塞いでいたものはいつの間にか剥がれていた。だが、靄の魔の姿は未だに視認は出来ない。にもかかわらず、彼の声は空気を震わせて音としてアーロンの耳に届く。その声色には、微かな驚きと、たっぷりの余裕と、興味をそそられた好奇心が表れていた。

「つうか、なんか顔赤くないっすか? そういう類の変態さんっすかぁ?」

 靄の魔の口は減らない。――否、無駄口をたたいて時間稼ぎをしているかのような話しかけっぷりには、何か違和感すらも感じさせるやもしれぬ。それにアーロンが気付くかは彼次第だが、靄の魔の狩りは着々と準備段階を終えつつあった。


>>周辺ALL



【ラルくん本体様、白鷺様、夕邑様、確認ありがとうございます!にしても2匹の魔、名乗るタイミングを完全に失った……!】

24日前 No.7

キープ @keep10 ★Tablet=CBeB5ByG4P

【オリビア・ハルフォード / 旧市街地 西南部】

 ――――幼い頃、父にひどく叱られたことがあります。薬棚から勝手に薬品を持ち出し、近所の猫に与えようとしているのを見つかったためです。医者である両親の真似をしてみたかっただけと母は庇ってくれましたが、父も母も気づいていたはずです。私が持ち出したのは薬ではなく正真正銘の毒であること。そして私の内に存在する忌むべき魂のこと。


 世界から色が失われてどれぐらい経っただろうか。青々と茂る草木も、凛と誇らしく咲いていた花々も、笑い声と幸せを内包していた家々も、みんな灰色で塗りつぶされている。今が昼なのか夜なのか、その判別もできなくなるほど空にも灰の着色が施されていた。まるで精神病患者が描いた絵のようだ。きっと神様は心を病んでいらっしゃるのだろう。診察と薬をやるからお代としてユギンを生き返らせてほしい。

「・・・・・・あぁ、ユギン」

 今は亡き想い人を思い出し、ギュッと自らを抱きしめる。ユギンを失ったあの日から、自分の世界は崩壊した。ユギンがいないからこの世界は灰色なのだ。ユギンがそばにいてくれたら、微笑んでくれたなら、抱きしめてくれたなら、たとえ地獄にいようとも生きていける。

 ここから遠くない場所で何かが破壊された音が聞こえた。きっといつもの彼らの仕業だろう。あの日この黎明都市エリプセが地獄となった日、悪魔とも形容できるモノがこの街で猛威を振るっていた。人ならざる彼らは強靭な肉体とずば抜けた生命力、そして魔法のような不可思議な能力を持つ。そして、彼らの主食はどうやら我々人間のようだ。ある者は巨大な口で一飲みにされ、ある者は生きたまま腹を破られ臓物を食われ。中には人間のように調理して食べるという個体も存在した。個体差はあるが知能や自我を持ち、時折彼ら同士で会話している場面も見受けられる。知性も理性もあるが話し合いは不可能のようで、こちらをまるっきり家畜か何かと思っているようだ。

 その音がするほうへ足を運ぶ。ゆっくりとまるで散歩でもしているような足取りで。踏み抜かれた火山灰を見るに、自分と同じようにあのモノらへ向かう人たちがいるようだ。対峙すれば殺され喰われる連中に向かうなど狂気の沙汰。この場合逃げる選択が一番賢明なはず。だが人は時に目的のために命すら投げ出す愚を犯す。明日をもしれぬ命、いや本来ならばあの噴火の日に死ぬべきだった命。天国へも逝けず地獄にも堕ちず、この灰色の煉獄で戦い続けなければならない。


 両の手に携えるのは肉食獣をも思わせる黒金の鉤爪。それに装飾はなく、殺意と暴力を象った武器があるのみ。全体は濡れているためかしっとりと黒ずんでおり、爪の先からはホタホタと水滴がこぼれていた。あの噴火で生き残った者たちが得た力。いや、狂った神により強引に押し付けられた力。こんなものを手にするために支払った代償は余りにも大きい。ならばこの力を持って神に釣り銭を請求するぐらいしても罰は当たらないだろう。




「ねぇあなた、ユギンを生き返らせる方法知りませんか?」

 銀髪というより灰色に近い髪、その瞳はあの日の岩漿をそのまま透過したように赤黒い。まるでこの灰の中から生まれ落ちたような女は翅の魔に問う。オリビア・ハルフォード。出会った魔族を残虐に拷問し嗤いながらいたぶる様子に一部の魔族からは『魔族以上の魔』と忌み嫌われている存在である。しかし今回の相手は一筋縄ではいかないと、彼女の勘が囁いていた。


>>翅の魔 周辺ALL



【レス投下遅れたこと大変申し訳なく思っております。本体文確認しました】

24日前 No.8

劫火の仮面 @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

23日前 No.9

リヒト @sibamura ★o0W3VsenYO_xmq

【リヒト・ヒンメル / 旧市街・西南部 】

 爆炎と豪風、そして凍てつく紅蓮が吹き荒れるエリプセにあるとある廃墟。レンガ造りの廃墟の石造りの床に胡坐をかき、壁に背を預けるようにして目を瞑っている男性が一人いた。
 年のころは20台後半から30前半、大柄で筋肉質な体躯の上に胸甲とガントレットを着け、自分の身長よりも長い漆黒の槍を抱えて座っている様子は瞑想しているようにも、あるいはすでに息絶えているようにも見える。
 否、

「敵か……」

 かの男が小さく呟くと、目を開ける。そのまま足の力だけで器用に立ち上がると彼は廃墟を出て戦況を一瞥した。
 この地に集った5人の適応者のうちの4人がすでに戦闘に参加しているようで、敵は霧のような魔と妖精のような魔だった。それを見定めるとリヒトは歩き出す。

「あの霧の魔物は、俺には不得手だな。」

 向かうのは妖精のような魔の方角。確かに、物理攻撃が主体の彼にとって霧の魔物は苦手な相手だろう。だからその選択の理由もあながち間違いではない。
 だが、それ以上に彼が見たのは愛する人を守って戦うラルヴァの姿。かつて自分ができなかったことを若者がやっている。だからといって自分の過去が変わるわけではないがあるいは彼がそちらに加勢した理由の一端になっているのかもしれない。

「はぁぁ!」

 そんな内心の葛藤を力に変えると、彼の呪威が力を表す。彼の全身に流れる生体電気を操作し、本来の人間ならばあり得ないほどの筋力を発揮するのだ。甲冑を着た身では本来ありえない速度に彼の身体が加速してゆく。増幅された彼の筋力の力を受け、石畳はひしゃげ、土ぼこりが舞い上がる。
 怒涛の勢いで加速しながら、リヒトは槍を右手に持ち替えて石突の部分を強く握りしめた。そして、彼の体の加速が最高に達っするかどうかの瞬間に右手を大きく振りかぶる。

「ふんっ」

 そして、ひときわ大きく踏み込むと同時に振りかぶった槍を妖精のような魔に向けて投擲した。十分な加速を伝えられた槍は、風を切って矢のように一直線に敵に殺到する。

>>翅の魔さま ALL様


【遅くなって申し訳ございません。本編開始おめでとうございます。本文確認しましたので、よろしくお願いいたします】

21日前 No.10

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アーロン・ヴェルヴェット/旧市街・西南部】


楽になった息に、勢い良く呼吸をする。そのせいで噎せ返ると同時に、この靄の魔族には風が有効なのかと理解する。それなら自分にも勝利の見込みは有るだろうか。

「――――はあ、っげほ、」

グルグルと勢いを強くしていく竜巻はそのままに姿の見えない魔を目を彷徨わせて探す。見えないものは見えない。己が同じ魔族であれば見えたのだろうか。この竜巻が相手に効くとしても、この鎌で攻撃を与えられないのであれば苦戦する事は間違いないだろう。渦巻く竜巻のように思考が回る。死にたくはないが死の危険が身の前に有るという事実に吐く息が熱くなる。
ふと気付けば、もう一体の翅の魔の元に五人の人間が集まっている。アーロンが相手にしている魔族の形状が靄だという事で実態のある翅の魔の方に集ったのだろう。全員で攻撃しようとしている姿に、此方は一人で魔族を相手にしているという孤独感が募り始める。興奮するとはいっても死の恐怖は負の感情に入るのか、また段々と竜巻が大きくなっていき、もう一つ旋風が起き始める。最終的に二つになる竜巻はやがて周りを巻き込むように旋回し始めるだろう。その前にアーロンは巻き起こる風に意識を集中させると二つの竜巻の動きを操り、風の行方を一点でぶつかるように調整する。風で靄の魔が煽られるならそこに集められやしないかと考えての事だった。霧散しているから姿が見えないのなら、集めてしまおうと。

「うるせェな。遊ぼうつってんだろ」

靄の魔の声は直接耳の中に響くようにして聞こえてくる。変態さんかと挑発されるようだが、生憎と他人からの評価などアーロンには興味が無かった。どうでも良かった。ただ身を削るような思いをして、死にそうな思いをして自分がたった一つ好きな事を楽しみたかった。


>>靄の魔族、ALL様


【遅くなりまして申し訳ありません! 一人で相手取る事になってもしやアーロンくん死ぬんじゃないかとドキドキしておりますが頑張ります! そしてあけましておめでとうございます、何卒今年も宜しくお願いします。短くて申し訳ないです……】

17日前 No.11

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 ???&エリ / 旧市街・西南部 】

 嗚呼、お腹空いた。――複数の殺意を持った適応者に囲まれていながら、翅の魔の思考を埋め尽くすのはただ空腹だけだった。それもそのはず、魔と戦うことが日常の彼らと同じで、獲物たる人間と片手間に遊ぶことは、魔にとって取るに足らない日常茶飯事。例え相手たる人間たちが命を懸けていようとも、彼らを殺して喰うことが当然の魔にとっては、彼らの覚悟すら児戯に等しい。男性の硬い肉より女性の柔らかい肉を好む翅の魔は、男より優先して女を狙っている。エリがその良い例――最も、エリを攻撃することで、彼女の恋人である劫火の呪威を焚きつけ、それを見て楽しむという目的もあるが。ラルヴァが炎の防壁を展開し続けるのを見て、こちらに反撃する余裕はなさそうだ、と判断する。

「センスないねぇ。伴侶にするなら、ちゃぁんと自分の背中くらい預けられるメス選ばなきゃダメじゃん」

 翅の魔の顔に張り付くのは、禍々しさすら感じさせる嘲笑の微笑み。無力なエリを守るために防戦一方を強いられるラルヴァを、さらに挑発するように言葉を紡ぐ。適応者の命綱とも呼べる呪威の力は、感情によって発現するというのは魔族にとって既知の事実。無意味な挑発はラルヴァを怒らせ、その怒りでより強力な炎を生み出させてしまうことに繋がるのだが、それすら承知の上で性悪の魔の口は減らない。例えラルヴァの炎が勢いを増そうと、翅の魔を相手取ればその相性は最悪。ゆえに余裕綽々の態度は崩さぬまま、翅の魔は“その場で”片手間に剣を振るった。

「っきゃ…………!」

 瞬間、エリの背後に一瞬だけ黒い影が躍動してはすぐに消えた。人の目で捉えきれる範囲ではないほどのスピード。それに数瞬遅れて上がった甲高く短い悲鳴は、ラルヴァのすぐ背後から発されていた。翅の魔からエリを守るために、彼女の前に立ちはだかるラルヴァのすぐ後ろで、エリはざっくりと背中を切り裂かれていた。翅の魔が剣を振るったその動きに連動するように。大きく縦一線に刻まれた裂傷からはドクドクと血が流れ出ている。翅の魔の剣の波状の刃が、傷口をより深く抉り、出血量を格段に向上させている。

「ご、めん……ラル……っ。こんな、の、すぐ治せ……っるから、」

 エリは、背中から発せられる熱を伴った激痛に耐えながら、ラルを見上げて心底申し訳なさそうに眉をハの字に歪める。彼に不安感を与えないために、口元に無理な微笑みを浮かべながら。翅の魔から受けた侮辱による自分への無力感、愛する人の足手まといになってしまった不甲斐なさ、それらを呪威の力に変えて背中の傷の修復に取り掛かる。

「ほらぁ、言わんこっちゃなーい。……ん、そのメス治癒持ちぃ? じゃあまず最初に殺さなきゃじゃん。――ユギンん? 誰それ。死んだ奴に会いに行きたいなら、簡単な方法が一個あるじゃん。ほら、手伝ってあげるからさぁ」

 きゃらきゃらと楽しそうに笑いながら、エリとラルヴァのやり取りをさも滑稽そうに見遣る。ふと、エリの背中の傷が少しずつ塞がりつつあるのを視認すれば、次の一撃をエリに加えようと動作に入る――直前で見知らぬ女に話しかけられ、翅の魔の意識は一時的にそちらに移った。健康そうな見た目ではないが、女である以上喰えばそれなりに旨いことは織り込み済みだろう。彼女が縋るように口にした名前には覚えなど微塵もなかったが、口振りからユギンとやらは既にこの世から退場しているのだろうと汲み取る。死者に会うには、自分も死ねばいい。短絡的かつ簡潔な答えを出した翅の魔は、エリにしたのと同じようにオリビアに対して剣を振るった。その斬撃は、視界で捉えた場所からは飛んでこない。平たく言えば、この剣による攻撃には、“斬られてから気付く”のだ。オリビアの頸動脈に、一瞬の黒い影と、不可視の斬撃が閃いた。

「――――っとぉ。不意打ちはいいけどさぁ、殺気隠せてないのはダメじゃん。……あれ、君。もしかしてウルのお気に入りぃ? ここでさくっとメルが横取りしたらぁ、ウルってば悔しがるかもじゃぁん」

 ふと、風切り音すら発生させるほどの速度で飛来する破魔の槍を、上体を逸らせることで紙一重で躱す。そして、余裕たっぷりの憎らしい声音で言葉を紡ぎつつ槍の飛んできた方向を一瞥すれば、そこにいたのは一人の男。五人の適応者を同時に相手取ることになっても、翅の魔の余裕の態度は崩れない。そして、雷霆たるリヒトの顔をじっと見れば、ここにきて初めて見覚えのある顔だ、と記憶を辿る。そして浮かんだのは、何度もウルスラに挑んでは返り討ちにされているとある男の姿で。ふと、悪戯を思いついた子供のような含みのある笑みを翅の魔は浮かべた。そしてふわりと剣を振るう。さきほどオリビアへ向けたのと同じ手法の斬撃。遠く離れた場所にいるリヒトに翅の魔の刃など届くはずもない――普通に考えれば。リヒトの右側に閃く黒い影、そして次の瞬間には彼の右腕を切断するほど深々とした斬撃が閃いて。

 一方靄の魔は、勢いを増し続ける暴風に甘んじて身を任せる。もっともこの魔の身体は人間の目には見えないレベルまで小さく霧散しているため、靄の魔の身体の欠片一つ一つがアーロンの風に翻弄されている様など彼には視認できないだろうが。その状況が、彼にさらなる焦りを与えるだろうか。自分の最たる武器である呪威が、魔族相手に通用しているかどうか定かではないという状況は、人間にとって気が気ではないだろう。尤も、死線に身を置くことを好むアーロンにとって、その不確定要素は、さらに彼を興奮させる材料になるやもしれないが。

「悪いけど、こちとら腹減ってんすよ。つか誰もこっち来ないっすねぇ……もしかしてアンタ、嫌われてるんすかぁ? っクク、ドンマイっす」

 遊ぼう、と主張するアーロンの言葉を聞くが、靄の魔のそれに対する返答はつれないもので。ふと翅の魔の方へ五人もの餌が集まっているのを見て、それを羨ましそうにぼやく。アーロンが苦戦しているというのに誰も彼を手助けに来ない。その状況を煽ることで、彼の負の感情をも煽り、さらなる呪威を見ようと靄の魔は軽口を叩き続ける。どれだけアーロンの呪威の力が向上しようとも、所詮はヒトの振るう力。生粋の魔たる己に、ヒトがタイマンで勝てるはずがないのだ。そうこうしているうちに、靄の魔の“準備”は整った。

「――ん。見つけったすよ、アンタの核。へぇ、左胸部にあるんすねぇ」

 軽々と並べられる靄の魔の言葉が終わるが早いか、アーロンの心臓に鋭い痛みが奔っただろう。まるで、無数の砂粒が心臓の薄い膜を無遠慮に突き破っているかのような、経験したことのない激痛が彼を襲ったはずだ。靄の魔が最初にアーロンの口や鼻腔を塞いだ時、魔の身体の一部は粒子レベルとなってアーロンの体内に侵入していたのである。アーロンにしてみれば、呪威の力で起こした風にあおられて鼻と口を塞いでいたものが取れたように感じただろうが、その認識は誤り。それらは、風によって剥がれたのではなく、アーロンの体内へ入り込んだだけ。靄の魔は、言葉を紡ぎ続けることで、時間を稼いでいたにすぎない。――ヒトという未知の体内で、心臓という核の位置を探り当てるための。

「文字通り、アンタの心臓はオレが握ってるっす。どんな気持ちっすか? やっぱり興奮っす?」

 靄の魔はクツクツと笑いながら、なおもつらつらと軽口を叩く。自分の身体がいくら風に流されようが、そんなことは構わない。今やアーロンの体内に入り込んだ自分の身体の一部を輩出する術など、アーロンには残されていないのだから。否、もしかしたらヒト特有の奇抜な発想でこの窮地を切り抜けるかもしれない。だがその可能性は限りなくゼロに近いだろう。

>>ALL


【新年あけましておめでとうございます!今年も何卒宜しくお願い申し上げます。皆さんに“苦戦”していただくことがチャプター終了条件なので、翅の魔を少し張り切らせました。彼女の斬撃は勿論確定ロルではないですが、「仕組みを全て看破しなければ防ぎきることは出来ない」攻撃です。恐らく現段階でその仕組みを完璧に見破ることは不可能ですので、彼女に翻弄されながらアケハの登場を待って頂ければ……!
 そしてアーロンくん、新年早々煽り散らかして本当にごめんなさい……!一応現段階では≪アーロンくんのみチャプター終了条件完了≫とさせて頂きます!】

17日前 No.12

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【 エヴァンジェリン・ネリー・ソーンダイク / 旧市街・西南部 】

 エヴァの放った氷柱は、呆気なく魔によって掻き消された。此方とて小手調べだと格好つけたい所だが、如何せんエヴァの呪威は炎と死ぬほど相性が悪い。しかも、先客の一人は炎の呪威の使い手であるラルヴァだったようだ。とことん分が悪いが、こればかりは自分の運の悪さを嘆くしかない。

「あら、敵の敵は味方という言葉ご存知ない? そこのお嬢さんを守りたい貴方と此処を通りたい私の利害は一致しているのだから、この場は協力しましょうよ」
 助けに来たわけではないのかと嘆くような素振りを見せるラルヴァに軽快に返したものの、内心は舌打ちせんばかりである。
 ああもう本当に、無視してさっさと通り過ぎれば良かった。こんなところで時間を無駄にするわけにはいかないのに。
 後悔先に立たずとはこの事だが、どうやらもう一体いるらしい魔族の正体も知れぬ今、適材適所の振り分けも出来そうにない。矢張りこのまま押し通すしかないようだ、幸か不幸か加勢も二人増えたようだし、翅の魔――メルとか言ったか――はエヴァに対しては油断しきって鼻歌まで歌っている。その隙をつけない、ついても無駄だと分かってしまうのが口惜しいことこの上ないが。
 チラリとエヴァは背後を見遣る。遅れてやってきたのは瀑布のオリビアと雷霆のリヒト……二人の呪威を考えると、エヴァはサポートに回った方が無難そうである。
 そう悟ったエヴァは、膝を落とし地面に両手をついた。絶望して膝を折ったかのような体勢だが、その瞳からは当然輝きは失われていない。
 そして次の瞬間、エヴァを囲うように氷の壁が出現する。それは何時襲い来るとも知れない翅の魔の炎や斬撃に対する防御策……とまではいかないだろうから時間稼ぎであり、そして。
「さぁ、氷なら幾らでも作れるから、溶かして好きに使ってちょうだい」
 どうせ溶けるのなら、溶かしてしまえばいい。
 オリビアの呪威は水を必要とするはずだし、水にしろ氷にしろ電気を通すだろうから後は何とかして欲しい。

>翅の魔、周辺all

【あけましておめでとうございます、今年も宜しくお願いします。エヴァが大量生産中の氷は壊すも利用するも皆様好きにあしらって下さい……苦戦するパートとのことなのでメルちゃんにぶっ壊されるのが先かもですが。】

17日前 No.13

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アーロン・ヴェルヴェット/旧市街・西南部】


暴風が吹き荒れる。その風が翅の魔族との戦況に影響しているのか定かでは無いが、独り善がりなアーロンには興味の無い話だった。
肉眼には見えない靄の魔の身体がアーロンの起こした風に煽られているのか分からない。風の集中する一点を見つめるが相手が見えなければ戦況が一切分からない。だがそう来なくては。魔族との戦闘はこれだから楽しい。死が間近に迫っている感覚。何時死んでも可笑しくない状況。自然と口角が上がる。
しかし魔からの言葉に次の瞬間には顔を顰める事になる。

「あァ? 別に興味ねェな」

もう一体の魔族の方に人が集まっているから何なのだろう。誰も此方に助けに来ないからといって、それが自分に関係有るのだろうか。向こうで共闘というものをしている適合者達はそうしないと魔族と勝てないと分かっているからそうしているのだろう。世間一般から見てそれは正しい事だ。アーロンには一切理解出来ないが、彼らはアーロンとは違う人種だという事だけは分かる。それに誰かが助けに来たとしても楽しみを奪われるだけなのではないだろうか。一体一の勝負の方が死を覚悟出来る。一寸先に死が迫って来ている感覚を存分に味わう事が出来る。誰かが此方に来たら、それだけ死が遠くに行ってしまうのだ。それは我慢ならない。だからアーロンにとっては、自分一人で戦う方が都合が良かった。
それでも無意識下で自分は一人だと思い知らされるのか、常駐する竜巻に力が増した様に感じる。激しい風がアーロンのざんばらな髪を揺らしている。

「――――ッ、が、あ……!?」

また、魔の声が脳に響くと同時に心臓に激しい痛みが走る。思わず胸を抑えて体制を崩す。それをどうにか右手に持つ大鎌を杖にして支えるが、ズルズルと落ちていき終いには地面に膝をついてしまう。一瞬で過ぎ去ったかと勘違いしていた胸の痛みは、まるで無数の針で刺されているように断続的に襲い掛かる。
何が起こったのか、アーロンは瞬時に理解出来なかった。突然の痛みで起こしていた竜巻は消え去り、今ではアーロンの呪威では無い自然が巻き起こす風がただ靡いているばかりである。冷や汗が滲む。鎌の柄を持つ右手が僅かに震えている。軽口を叩く魔に何か言い返そうとするが痛みで声が出ない。アーロンは今正に心臓を掴まれていた。
この状況を如何にして打破しようか考えるも、アーロンには何も思い浮かばない。自分に使えるのは風のみ。口内や鼻腔に風を送る事は出来ても体内にまでは不可能だろう。肺や胃の中なら未だしも掴まれているのは心臓だ。血管内に空気を送れれば良いのかもしれないが、血液に空気が入ればそのせいで先に死んでしまうやもしれない。
そこで、ふと思い付く。アーロンは誰かの心情を答える設問ではその全てが不正解であったが、その他に関しては普通の成績であった。勉強にも興味は無かったがやらねばならぬと思っていたので学校にはキチンと通っていた。理科の授業で、空気には酸素が混じっており、吸い込んだ酸素は血液によって運ばれると習った記憶がある。自分が操るのが風であるならば、酸素だけを操る事が出来るのでは無いかと思ったのだ。思い付いたのは今が初めてで、勿論やってみたことも無い。一種の賭けの様な選択だがやらないよりはマシだろう。
アーロンは地に足を付けたまま風を巻き起こす。死への恐怖と魔族に対しての劣等感から、糧となる負の感情については申し分ない。意識を集中させて空気中の酸素だけを操るように目を閉じる。傍から見れば諦めて死を受け入れたと見られるだろうか。だが他人からの目等アーロンは気にならなかった。
血液中を滑走するように酸素にだけ意識を持っていく。上手く心臓に辿り着いたらその周りで悪さをする魔の一部をどうにか外に追い出したい。外に出すには二酸化炭素を操れば良いのだろうが、何分初めての試みであるので望みは薄そうだった。


>>靄の魔族、ALL様



【書いてて訳分からなくなりましたが、成功する前に助けが来れば良いなーなんて思います……】

14日前 No.14

劫火の仮面 @kaizelkai ★PEQrslXdTV_mgE

【 ラルヴァ・フォーヤン / 旧市街・西南部 】


「 いや、別にエヴァンジェリンさんの敵だなんて……そうですね、今は協力しましょう。と言っても自分とあれじゃ、どうも相性が悪い。炎が全然効かないみたいで…… 」


 彼女が軽快そうな笑みを浮べて、この場の協力に応じてくれた。此処を通りたいという利害の一致だが、協力してくれるのはありがたいので素直に答える。しかし相手も炎を操り、炎を無効化に出来る能力を持っている。自分との相性が悪すぎる。しかもあちらは自由に動き、自分は恋人を守るために行動を制限されている。大切な者がいるから、自分は戦えるのだと思っているが、それは同時に弱点でもある。だがそんな理不尽な状況でも、まだこうして彼女は無事でいる。そう、無事で。

 だが、現実は甘くはない。何かが斬った音と恋人の短い悲鳴が聞こえた。そう、自分の背後から。何故だかわからない、恋人の背中からおびただしい血が流れている。理解が追いつかなかった、何故彼女が斬られたのか。纏っていた長剣の刀身の炎が消え、彼女の手を取る。


「 え、え……エリィッ!!しっかりしてッ! 」


 エリは無理に笑顔を浮かべている。背中から大きく斬られている。目の前の間が剣を振ったと同時に恋人から悲鳴が上がった。剣を振るうだけで届かない相手を斬る事が出来るのか、だがそんな事はどうでもいい。相手はいつでも斬る事が出来たのだ、それも自分ではなく後ろにいた彼女に。許せなかった、戦えない者を斬った事、そして人が選んだ恋人を嘲笑い、ただ治せる力があるだけで一番先に殺すといったあの魔族の事。

そしてなにより恋人を守ると決めておきながら、あっけなく恋人を傷つかせ、守る事が出来なかった自分が許せなかった。自分の中に溶岩のような怒りが湧き上がる。止まらない、全ての感情が怒りに染まる。


「 ア ア アアァァァ―――ッ!!!」


 火山が火を噴くかのような、憤激の雄たけびを上げる。溜め込まれた感情を全て爆発させる。彼の握られていた長剣もそれに呼応するかのように、真っ赤な火炎が、灰色の地面を茜色に染め上げる。そして、稲妻のような炎を出すと長剣が二つに別れた。両刃の長剣は二つの片刃の柳葉刀へ、姿を変える。その刀身からも絶えず、真赤な炎は噴き荒れている。周囲の空気は熱く熱せられる中、彼の表情はまるで凍りついた表情を浮べて、翅の魔を見上げる。



「 …… 」


 右手に持っていた柳葉刀を逆手に持ち直し、立ち昇っていた火炎が羽虫のように一箇所に、刀の刀身に集まっていく。もっと、もっとだと自分の感情をあの魔を滅ぼすために。そして、上から下へと腕を振り下ろすと、柳葉刀が使い手の一人の手中を爆炎と共に離れて、風を切って飛んで行く。自分の腕力では当然飛んでいる翅の魔には届かない。だが投げられた柳葉刀の柄からロケットのような噴炎によって、加速し、弾丸のように飛んでいた。刀全体が炎に包み込まれており、翅の魔を殺す、凶悪な投擲を放った。


>>エリ、、エヴァンジェリン、翅の魔


【あけましておめでとうございます。】

13日前 No.15

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 ???&エリ&アケハ&棺の男 / 旧市街・西南部 】

 氷を扱う呪威を持つ女は、どうやら早々に援護に回ると決め込んだらしい。攻勢を捨て、此方に攻めようとしない意思を表すかのような氷の防壁の布陣を見遣って、メルは退屈そうに短い欠伸を漏らした。けれど、彼女の、エヴァの目を見れば解る。それは決して、諦めの意思ではないと。戦意喪失したわけではない、と。

「――アォォォ――――……」

 ふと、遠くから。響き渡るのはイヌ科の遠吠え。翅と靄、二体の魔族の襲撃によって、気付けばエヴァとアルヴィオンの待ち合わせの時刻は当に超過していた。“大丈夫か。今どこにいる”――遠吠えに含まれたこの意味を知ることが出来るのは、この咆哮の主と愛し合い心を通わせたたった一人の人間、エヴァだけ。だが、翅も靄も、この魔力を帯びた遠吠えが、単なる四足動物が発したものではないことは瞬時に理解していた。
 翅の魔は、この遠吠えを、「腹を空かせ、餌を捜してうろつく他の魔族のもの」であると考えた。魔とヒトが心を許し合い、果ては男女の関係になることなど、およそ魔族の常識からは大きく逸しているため、最初から勘案に入れていない。アルヴィオンは、エヴァが思っている以上に、異端の魔族である。
 だが、今そのこと以上に翅の魔の興味を引いているのは、紅蓮ではなく劫火。翅の一挙一動に心を大きく翻弄させ、されるがままに呪威を猛らせるラルヴァは、翅にとって滑稽このうえない喜劇を演じてくれる役者である。ラルヴァに手を握られたエリも、弱弱しい微笑を返すことしかできない。呪威によって傷口は徐々に塞がりつつあるが、それでも失った血液が戻るわけではない。大量出血によって引き起こされた貧血と、まだ治し切れていない部分から発せられる激痛が、エリから言葉を奪った。

「アハハ、いいね。もっと怒れ怒れぇ」

 ラルヴァの憤怒と殺意を体現するかのように、彼が手にしていた武器の形状が変化していくのを観察し、翅の魔は手を叩いて面白がった。怒りに脳髄を染め上げられたラルヴァは、きっと気付いていないだろう。怒りによって呪威をパワーアップさせることに成功したことすら、翅のシナリオ通りであったことに。ジェット噴射もさながらに、爆炎を纏って飛来する刃に向けて、翅の魔は一直線にフランベルジュを構えた。ちょうど柳葉刀とフランベルジュの切っ先が触れ合った瞬間、轟々と唸るような音を立てて、刀を包み込んでいた火炎がフランベルジュの先端から熱エネルギーごと瞬く間に吸収され、残された抜身の刀は、投擲の勢いをそのままに翅の魔の腹部を貫いた。

「ふーん、こんなもんかぁ。所詮は人間だねぇ。これじゃあその力の方が可哀想じゃん」

 呪威の力をまとわないただの物質に貫かれても、それは魔族の致命傷とはなりえない。翅の魔の腹に開いた風穴は、ぐじゅぐじゅと音を立てて独りでに修復されてゆく。むしろ、翅の魔の防御力は魔族の中でも断然低い方であり、人間が放ったただの刃で身体を貫けるような魔族の方が珍しい。人間がいくら武器を手にして魔族に立ち向かおうとも、人間の産物では魔族の皮膚一枚を切り裂くことすら敵わない。ゆえに、人知を超えた謎の力である呪威を使いこなせる適応者だけが、今もなお生き残っているのである。

「メルが見せてあげる。炎で何かを壊すときはね、こうするんだよぉ」

 邪悪で無邪気な笑みを浮かべながら、ラルヴァの爆炎をたっぷりと吸い込んだフランベルジュを指揮棒のように何度か振るう。たちまち翅の魔の頭上に、藍色の禍々しい魔力が集約してゆき、その昏い塊は直径5m以上はある巨大な球体を成してゆく。そして、ひと際大きくフランベルジュで虚空を一閃した瞬間、その塊から地面に降り注ぐのは、サッカーボール大の質量を持った炎の塊だった。さながら燃える小隕石のようなそれは、防ぎきれるようなちゃちな代物ではない。水によって表面の炎を消すことに成功したとて、その下には重厚な魔力のエネルギー結晶体が待ち構えている。紅蓮のエヴァ、劫火のラル、治癒のエリ、雷霆のリヒト、瀑布のオリビア、その五人に平等に降り注ぐ魔の暴力の数は、一人当たり5個は下らない。万が一全てを躱すことに成功しても、地面に落下した時点でこのエネルギー体は爆裂し、破片と熱風が襲い来る。翅の魔の計算では、この攻撃で上記の五名全員を捕食できる状態にすることができると踏んでいた。

 翅の魔による圧倒的な暴力の標的にならなかった適応者は、この場ではアーロンだけだった。けれどもそれは幸運とは言い難く、すでに彼は靄の魔に命を握られていた。ふとその場に、リン――と澄んだ鈴の音が響き渡った。アーロンも、この冴えるような音色は何度も聴いたことがあるだろう。

「――アーロン様? そのやり方は、お奨め致し兼ねまする」

 死の香りの蔓延する戦場に不釣り合いな、裏表のない笑みをにっこりと湛えながら、叡智の呪威は姿を現した。一歩彼女が歩みを進めるたびに、結い上げられた髪留めに括りつけられている鈴が小さくリンと鳴る。そして彼女の後ろには、何やら棺を背負った筋骨隆々の男も連れられている。その頑強な体つきに加え、付け入る隙を感じさせない不愛想な表情から、その棺の男もまた、歴戦の適応者なのだろうということは想像に難くなかった。

「狂飆とは風の呪威――操れるのは気体ではなく風にござりまする。ゆえに、このままその無茶を続けますれば、空気塞栓で絶命するのが関の山でありまする。……と、アケハめの呪威は申しておりまする」

 厳しい内容を口にしているが、顔に張り付けられているのは依然とした優し気な微笑み。一方で靄の魔はと言えば、突如追加された二匹の餌に嬉しい驚きを感じ、アケハの意味深な物言いと呪威に興をそそられ、甘んじて彼女の好きにさせている。飛び入りゲストの登場によるこの新しいショーが、どのような顛末を迎えるかを見届けてから、ゆっくり捕食する気なのだろう。“上手い飯にありつけると思えば、食前の喜劇まで見られるなんて、ツイてるっすねえ”とでも呟きながら。

「負の力で活性化するのは、呪威だけではありませぬ。先ずはアーロン様の体内に巣食う魔の一部の動きを止めねばなりませぬ」

 アーロンにとっては、何を言っているか分からないだろうし、アケハも深い所まで理解させる気などきっと無いのだろう。言うより行うが易しと言わんばかりに、アケハはふわりと両腕をアーロンに伸ばし、そのまま倒れ込むようにして彼に抱き着いて身を預けた。そして彼に密着したままそっと顔を上げ、背伸びをした――アーロンが拒まぬ限り、アケハと彼の唇が重なるように。

>>周辺ALL



【アーロンくんのみ一足先に次の展開へ移行させて頂きました。他の方々も、次レスか次々レスには移行出来たらいいな、と思っております。アケハのキス、拒む拒まないは勿論アーロン君の自由ですが、大事な選択肢になっております。】

12日前 No.16

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アーロン・ヴェルヴェット/旧市街・西南部】


ツキツキと、ズキズキと痛む胸にアーロンの額には冷や汗が滲む。止まない激痛にアーロンの企みは、集中力が途切れる事で失敗に終わる。ズルリと崩れ落ちそうになる身体を鎌の柄を両手で掴む事で何とか保つ。今にも死にそうなこの状況に、正直興奮しない訳では無い。だが死に目に遭う事が好きなだけで痛い思いをしたい訳では無いのだ。今は痛みに耐えるだけで精一杯だった。
その時、リンっと鈴のなる音が聞こえた。全てを雑音だと捉えるアーロンの耳でも、最近聞く事が増えたその音を鈴の音としてキチンと認識していた。その音色の持ち主の事も。
声を掛けられ、顔を上げる。やはり見覚えのある顔だ。生憎と名前までは覚えていなかったが、やたらと話し掛けてくるため顔だけは漸く覚えていた。彼女に名前を呼ばれ、自分はそんな名前だったかと思い出す。大噴火により家族が居なくなった今、自分の名前を呼ぶのは僅かしか居ない。というより、一人しかいない。自分の事にも無頓着なアーロンは彼女に名前を呼ばれる事で自分の名前を記憶していた。

「――ハッ、だろうな」

そのやり方では死ぬ、と宣う彼女に自嘲気味に笑う。風と気体では大分違う。それに含まれているからといって操れる訳では無い事はアーロンも薄々気付いていた。だから失敗した後も続けて試そうとは思わなかった。
アーロンがやろうとした事を簡単に見抜いた彼女の呪威は、そういった知識に関する事なのだろう――名前をはじめ他人の事に全く興味の無いアーロンは彼女から何か言われる度にそう思っていた――しかし何を伝えたいのかいまいち掴み所の無い物言いに、ではどうすれば良いのかと口を開くも痛みに顔を歪めるだけで何も出て来なかった。

「……?」

そうこうしている内に凭れ掛かるように倒れて来た彼女を受け止める。近付いてくる顔も拒む事は無い。女というもの以前に人間に興味の無いアーロンは女性経験が全く無い。物好きな女が近付いて来た事もあったかもしれないが、すぐにアーロンの異常性に気付いて離れていった。だからキスはおろか異性と手を繋ぐ事さえした事の無いアーロンは彼女が何をしようとしているのか一ミリも分からなかったのである。尤も、そういった行為をされたところでアーロンは何の感情も湧かないのだが。


>>靄の魔族、アケハ、ALL様


【拒むわけがなかった。ファーストキッスを捧げます。
思ったのですが30で未経験ってアーロンくん魔法使い……】

10日前 No.17

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 ???&アケハ&棺の男 / 旧市街・西南部 】

 アーロンとアケハ、二人がお互いの吐息を感じられるほどの距離で見つめ合っても、そこに熱量が生まれることはなかった。まるで爬虫類かのような無機質な視線が重なり、唇と唇が触れ合う。常人であるならば、顔見知りの女にいきなり口付けをされれば、必ず何かしらの突発的な感情を抱かざるを得ないだろう。嫌悪然り、動揺然り、興奮然り。しかしアーロンは、もはや常人の枠に当てはまる器ではない。殺し合いを好み、死線を好み、果てには己を脅かす魔と同類になることを望む男。そんな男が、女一人風情に今更簡単に興味を抱くわけではない。それを承知の上で、アケハは今回の奇行に打って出た。それが、彼女の持つ叡智の呪威によるお告げだったのか、彼女自身がアーロンの性質を理解したうえで選んだ行動なのかは、彼女のみぞ知るところ。

「…………成程、そういうことっすか」

 キス、というのが人間同士の愛情表現ということを知らない靄の魔は、アケハの行動をもはや空中のどこに霧散しているかわからない眼でじっと観察し、その意図を探る。アーロンの唇にアケハの唇が重なる直前と直後、アーロンが抱いていた感情は“無”。今までアーロンの体内で渦巻いていた負の感情のベクトルが、アケハの行動によって無へ帰したのである。そして靄の魔が抱く違和感。――アーロンの体内に侵入させた身体の一部が、巧く遠隔操作出来ない。その理屈がどういうことか何となく直感で理解した靄の魔は、興味深そうに一人合点した。

「――、ン。アーロン様、どうでござりましょう? もう苦しくはござりませんか?」

 アケハは、アーロンの感情が凍り付くように無になったこと、それに伴ってアーロンの体内で暴れていた魔の一部が沈静したことを感じ取れば、小さく上ずった声を上げて唇を離した。そしてアーロンの顔を見上げ、何事もなかったかのような顔でふわりと微笑んだ。ふと、その背後に靄が渦巻く。それは、先ほどまで分子レベルにまで分解させていた靄の魔の体組織が、人間の目にも可視化するような高密度に結集している証拠で。

「さて、まどろっこしい狩りは終わりっす。そこの雄2匹を喰った後で、あんたには色々聞きたいことが出来たっす」

 禍々しいほどの魔力を渦の中心に湛えた靄の魔は、アーロンと、アケハが引き連れてきた棺の男を捕食したうえで、アケハに“尋問”する意思を表した。体内に自身の身体の一部を入れることで心臓を破壊するという狩りへの対策を取られた今、靄の魔は臨戦態勢へと移行する。無論身体は気体のままなので物理的な攻撃はあまり意味を成さないだろうが、それでも正面から堂々と戦うのはアーロンの得意分野だろう。
 アケハは、靄の魔の敵意を微笑で受け止め、そっとアーロンに耳打ちした。

「――魔になりたいのでござりましょう? 見事あの魔を打ち破りますれば、一つヒントを差し上げまする」


>>アーロン、周辺ALL



【大変遅くなりました、申し訳ございません……!やったねアーロン君のファーストキッス頂きだぜ!】

3日前 No.18

リヒト @sibamura ★o0W3VsenYO_ly4

【リヒト・ヒンメル / 旧市街・西南部 】


リヒトが放った弾丸のごとき槍の投擲はしかし、紙一重の翅の魔には届かない。

「ちぃっ!」

自らの攻撃が避けられたことに舌打ちすると、リヒトは右手を掲げた。呪威によって発生した磁力により鋼鉄の槍が彼の手元に戻り、再びの投擲を仕掛けようとする。しかし、

「だまれ! 俺の前でその汚れた名を口にするな。」

翅の魔の言葉に彼の動きが止める。魔族の口から出た名。それは彼の最愛の妻を貪り食った彼の復讐の対象なのだった。
その名を聞いてたけり狂うリヒトに、翅の魔が剣を振るう。
普通なら届くはずのない距離である。だが、

「がぁっ……くはっ」

どのような仕掛けな、不可視の斬撃はリヒトの右手を斬りつける。ガントレットごと切り裂かれたその傷口は、腕の切断とまではいかないまでも、骨に達していて、無理に動かせば本当に腕が取れてしまうように見える。
あまりの激痛、そして神経が切断されたことにより、右手に持つ槍を取り落としてリヒトは呻く。

「お、おのれぇぇぇぇ!」

そして、怒りと憎しみの眼光を翅の魔へと向けると、無事な方の左手でどうにか槍を拾いなおすと、再び投擲を行う


「ぐぁぁっぁあ」

だが、右手も使えず、助走も十分でないその投擲は先ほどより明らかに勢いがない。当然、避けられるまでもなく翅の魔に到達するより先に失速して地に落ちてしまった。

>> スレ主様 ALL様

2日前 No.19

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アーロン・ヴェルヴェット/旧市街・西南部】


彼女の唇とアーロンの唇が重なった。しかしだからといって何か変化が起きた訳では無い。軽いボディタッチで相手の事を好きになるティーンエイジャーのようにアーロンが彼女に恋心を抱いた訳でも、よく知らない人物に突然キスをされて嫌悪感が沸いた訳でも無い。未だにアーロンは顔を合わせる数だけは有るので顔だけは覚えたが彼女の名前さえも知らないし、教えられた所で覚えられないだろう。彼女に限らずアーロンの世界には自分しか居らず他は全て雑踏の中の概念に過ぎない。正直アーロンにはこの唇を重ね合うという行為に何か意味が有るのか理解出来ない。ただ顔を近付けて来たから受け入れた。まるでテレビでつまらないドラマのワンシーンを観てるかのように無感動で見ていただけだ。だから動揺も無いし困惑も無い。此処が戦場真っ只中でも無く災害が起こる前であれば「で?」と真顔で宣う位には何の意味も無い行為だった。しかし。

「――ああ」

女に問われるがまま、胸に手をやる。確かに、先程まで感じていた痛みも死が迫ってくる感覚も、何も無い。息をする度に引き攣るように走る痛みも、死を感じ取って興奮していた熱も、魔族には敵わないという劣等感も、一人で戦っているという孤独感も何も無く、正しくアーロンは今無に帰していた。それが女の狙いだったのかは定かでは無いが、これでまだ戦えるならアーロンにはどうでも良い事だ。
そんなアーロンの願いが通じたかのように背後で渦巻く音がする。振り返れば靄の魔が集結しており可視化出来るレベルにまで密集している。狩りは終わりだと言う靄の魔の言葉からも、臨戦態勢に移っている事は容易に想像出来た。立ち上がろって迎え撃とうとした矢先、女から耳打ちをされる。――魔になりたいのなら、あの魔を倒せばヒントをやる、と。何故魔になるヒントをこの女が知っているのか疑問に思わないでもないが、だが教えてくれると言うのならそれでいい。死闘のコンディションは完璧だ。いつも魔族を前にして見せる歪んだ笑顔では無く、久々に綺麗な笑みをその顔に浮かべて魔と正面から対峙する。

「その言葉、忘れんじゃねえぞ」

返事も聞かず走り出す。目指すのは勿論靄の魔だ。普通に斬り掛かっても効かないのは既に分かっている。だが自分には真っ向勝負しか出来ない。闘いへの小細工は出来ても元来考えるのは得意では無い。だったら、だったら矢張り大振りの斬り掛かりしかない。
ぶおん、と音がする程鎌を大きく振れば風が生じる。その風はアーロンの思い通りだ。斬撃による風圧は通常よりも数倍に威力を増し、靄の魔を吹き飛ばそうと襲い掛かる。勝負の鉄板、まずは何が効くのか効かないのか、様子見だ。


>>靄の魔、アケハ、ALL様

2日前 No.20

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【 エヴァンジェリン・ネリー・ソーンダイク / 旧市街・西南部 】

 その“声”が聞こえたとき、思わずエヴァは瞳だけで辺りの様子を見渡していた。それが単に時刻を確認する為のものなのか、或いは声の主の姿を求めての事だったのかは、当人にも分からない。ただ、それで彼女が理解したのは、愛する者との約束は果たされなかったという事だけで。
(ごめん、全然大丈夫じゃない。)
 思わず口をついて出そうになった返答を飲み込めたのは奇跡に近い。
 周囲の人間はともかくとして、もしかすると同じ魔である者の中には、彼の遠吠えの意味を解してしまう輩が居るかもしれない。況してや交戦中の相手の目の前で、唐突に彼の問い掛けに答えるのは愚の骨頂だ――死ぬほど歯痒くはあったが、何とかそこまで頭を回すだけの余裕がエヴァにはあった。正確には、愛するアルヴィオンとの未来を死守するために無理矢理思考する時間を作り出した。
 そして同時に、盛大に道を塞いでくれている妖精モドキをぶっ飛ばす――そんな決意を新たにした。

「申し訳ないけど私も相性は悪いわね。でもまだ炎の方が効きそうだし、あなたが私のこと信用してくれるっていうのならお嬢さん引き受け……て」
 一応協力関係を取り付けたラルヴァと負傷したその連れ合いの様子を見咎め、攻防の役割分担を提案しようとしたエヴァの言葉は途中で止まった。
 その瞳に写るのは、魔族の頭上で見る間に大きさを増していく藍色の球体……はっきり言って嫌な予感しかしない。
 先程の後ろ暗い決意を力に変えて、エヴァが氷の防壁を強化したのは考えるより先に体が動いた結果だった。

 そして次の瞬間、球体から降り注いだ幾つもの火球が辺りを襲う。ほんの少しだけ、氷が緩衝材となって勢いを殺せたかもしれない。多少であれば、氷により炎が弱まったかもしれない。けれどそれは気休め程度のものであり、実際には氷を溶かし、破壊し、火球はエヴァに突っ込んでくる。おまけとばかりに氷の一番分厚い部分にあたった火球は、その場で大爆発を起こした。
「きゃあっ!」
 爆発により敢えなく吹っ飛ばされたエヴァは、後方の地面に強かに体を打ち付ける。痛みに息が詰まったところに火の粉やら自分が作り出した筈の氷の破片やらが追い掛けてきて、あっという間に彼女の体は打ち身と火傷と裂傷でボロボロになる。むしろ、辛うじて五体満足でいるだけ幸運だったのだろうとさえ思えるほどだった。

>ラルヴァ、翅の魔、周辺all

【返信遅くなりまして申し訳ありません。】

2日前 No.21

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_3Nj

【 メリエル&ジズ&アルヴィオン&アケハ / 旧市街・西南部 】

 適応者たちを襲った翅の魔のエネルギー結晶体は、生み出された分は全て問題なく炸裂し、概ね思った通りのダメージを彼らに与えることに成功した。翅の魔は喜びに満ちた顔でまたしても鼻歌を口ずさむ。攻撃が成功した喜びではない。ようやく食事にありつける喜びだ。

「治癒持ちのメスは気ぃ失ってるのかあ。じゃあ起きてる方から踊り食いしちゃお」

 目の前の惨状――翅の魔からすれば心躍る光景だが――を見渡し、自身が好む女体の肉を物色する。この中に雌は三体、すなわち紅蓮と治癒と瀑布である。治癒が最もうっとうしい存在ではあるが、彼女に目を向ければ、ボロボロの身体で突っ伏したまま動かない。呼吸によって微かに律動しているので死んではいないが、気絶しているならこれ以上呪威を発動することも出来ない。となれば、捕食対象は必然的にエヴァかオリビアになる。ふよふよと二人に近寄り、吟味するように視線をくれる。

「どっちにしよっかなあ。……銀髪の方は味薄そうだなあ。――決ーめた。まずは」

 がぱぁ、と音を立てながら、顎関節の概念を無視して妖精の口が大きく開く。人間の頭くらいなら丸々口に含めそうなほど、それはそれは大きく。無論伊達でも比喩でもない。首から下は妖精然とした少女の姿のままだが、その頭部はまさに魔族。人間の骨など容易に噛み砕くであろう頑強で鋭利な牙がびっしりと生えそろった禍々しい口で、唱えるのは死刑宣告。

「――氷のメス。良い声で鳴いてよ」

 刹那、旋風。次いで、どがこん、と凄まじい音。

「イーファ」

 バスの利いた、力強く、洗練された低い声が空気を震わす。

「――――俺の、イーファ。よく頑張ったな」

 狼の魔、名をアルヴィオン。遠く離れていても追えるほどに何度も嗅いで覚えたエヴァの体臭と、彼女の扱う呪威の気配を探って現れた、愛を知る異端の魔。エヴァを庇うように彼女の前に立ちはだかりながら、前方に突き出したままの拳からはしゅうしゅうと煙が上がっている。その拳の遠く先には、瓦礫の中に埋もれる翅の魔の姿。――間一髪だった。
 アルヴィオンは、後ろを振り向いてエヴァの顔を見んとしたが、次の瞬間こちらに飛来した大きな瓦礫を砕くために素早く前へ向き直り、翅の魔が投擲したその瓦礫を殴打一発で粉砕する。3mを超えるその巨躯がまさしく盾となって、飛び散った破片からエヴァを守った。

「…………意味、わかんない」

 瓦礫の中から、翅の魔がゆらりと再び姿を現す。俯いているために表情は窺い知れないが、まとう雰囲気は修羅のそれ。

「アルヴィオン。なんで君がヒトを守るの……? 何回狩りに誘っても、来てくれなかったのはそういうこと……?」
「ヒトじゃねえ。イーファだ。俺が守るのはイーファだけだ。狩りなんざ一匹で出来る。わざわざてめえと組む必要がねえ」
「わかんない……わかんないわかんないわかんないよっ!!」

 先ほどまで鼻歌を歌うほど余裕綽々の態度だった翅の魔が、アルヴィオンの登場と彼のとった行動に対してあからさまな怒りをあらわに暴れ狂う。そこから先は、一方的な展開だった。想定外の出来事に感情を爆発させ暴れる翅の魔以上に、アルヴィオンの怒りは燃え盛っていた。適応者5人が苦戦を強いられた翅の魔を、アルヴィオンという魔一体が文字通り滅多打ちにしてゆく。彼の大きな拳を何度も叩きつけられ、ぐちゃぐちゃになってゆく翅の魔は、人間の目からしても哀れに映るやもしれない。

「ゎ……かん、な…………ぃ、よ」
「分からなくていい。どうせてめえはすぐに死ぬ」
「っ……たすけて、ジズ――――」

 ひと際大きな破裂音。翅の魔の顔に風穴が開き、その躯がサラサラと黒い砂と化して崩れ去ってゆく。カラン、と音を立てて翅の魔が握っていたフランベルジュが地面に落ちた。彼女の脳天をぶち抜いたアルヴィオンの拳には、彼女のものである魔核が握られていた。それを片手間に口に放り込み、バキバキと咀嚼しながらアルヴィオンはエヴァに歩み寄る。

「イーファ、遅くなって悪い。……どこもかしこも傷だらけだな。…………この中に炎を使う適応者はいたか?」

 エヴァのそばに寄り添い、彼女の右腕をそっと手に取る。鋭い爪で傷つけてしまわないように、壊れ物を扱うように、それはそれは丁寧に。そしてその腕に刻まれた切り傷や火傷を見遣れば、ぐっと眉間にしわを寄せながら苦々しく呟き、傷口をべろりと舐めた。獣が傷を舐めるあれであるが、魔の獣であるアルヴィオンの唾液に含まれる治癒作用はただの獣の比ではない。すぐに完治させるほど強くはないが、舐めた瞬間に痛みが引くくらいの効果はある。ふと、痛々しい火傷の傷をじっと見つめながら、エヴァには意図が分からないであろう質問を投げかけた。

 一方靄の魔・ジズは、翅の魔・メリエルの元へ現れたアルヴィオンに注意を逸らされていた。否、アルヴィオンではなく、ボロボロになってゆくメリエルの姿に。加勢にいかねば、と思った瞬間、迫り来るアーロンの斬撃。それはジズにとって脅威ではないが、一時的に体組織をバラバラに霧散させられる。無論、すぐに集結してしまうのだが。

「…………メリエル」

 ジズがぽつりと呟く。翅の魔の名だろうか。

「アルヴィオン、っすか……変わり者だとは思ってたっすよ。まあこの際それはいいっす。狩りはツーマンセルが一番効率よかったのに……やってくれたっすねえ。あんた喰って憂さ晴らしっすねこりゃ」

 どこに目がついているか分からないので定かではないが、きっとジズはアーロンではなくアルヴィオンたちの方を見遣っていたのだろう。だが、今はアーロンに向き直ったはず。ざわざわと音を立てて、ジズの魔力が増幅してゆく。大きく、広く、魔力が壁のようにジズを、ひいてはアーロンを包み込んでゆく、まさにその真っ只中で。
 ざく、という音と共に、アーロンの足元には一振りの剣が突き刺さっていた。先ほどまでメリエルが使用していたフランベルジュである。

「さあ、アーロン様。魔になるための小手調べでござりまする。あなたにそれが使いこなせまするか?」
「――! 待て!!」

 どうやらアケハが、棺の男に命じてフランベルジュを回収させ、アーロンの元へ投げ渡させたようだ。先ほどアーロンが浮かべた綺麗な笑みと同じように、何の含みもない微笑みを顔に張り付けてアケハは言う。そして、ジズがここにきて初めて声を荒げた。動揺する素振りなど一切見せなかった、あの靄の魔が。


>>ALL様



【アーロンくんに続いてリヒトくん、エヴァさんも条件完了とさせて頂きました。過半数がチャプタークリアしましたので、強制的に次のチャプターへ移らせて頂きます。オリビアさん、ラルくんごめんなさい……!エヴァさんはアルと絡んで頂いて、あとの皆さまはエリを叩き起こして治癒を受けてくだされば幸いです!】

>>白鷺様


【さて、いよいよジズとの決着も近づいてきたので、少々ヒントをば。メリエルの剣はただの剣ではありません。メリエルサイドのロルをもし読んで頂けていれば分かると思いますが、この魔剣の力は「斬る」ことに加えて「吸収」が出来ます。もはや「斬る」ことはジズには通用しないことは重々承知していらっしゃると思います。ということは……?前レスでアケハが言っていた「負の力で活性化するのは、呪威だけではありませぬ」の言葉も実はヒントになっています。レッツ魔剣解放!】

>>夕邑三日月様


【いえいえ!リアルのご都合や、スレ運営の忙しさの中、レスして下さってありがとうございます。ちょうどアルも登場したことですし、どうか無理のない範囲で構いませんので、当スレでは楽しんでくださいね!!】

>>リヒトくん本体様


【遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします! >>12 のスレ主レスに返答してくださった >>19 のレスについてなのですが、リヒトさん宛て(厳密には翅の魔と交戦している皆様宛て)のスレ主レスは >>12 に加えて >>16 もあります。最新の状況が >>16 ですので、次からは一番新しいレスへの返答も含めて投稿して頂ければ……!本当は同じ絡みの中にいる皆様全員のレスを待ってから私が返答するのがベストの形なのですが、リアルの都合上レス出来る時にしておかないと次に来れるのがいつかはっきりしていないので、本編の流れを滞らせないためにも、今回のようにお返事を待つ前にレスを投下させて頂く場合が今後もあると思います。その時にはぜひ前述のような対応をよろしくお願いいたします、お手数かけまして申し訳ないです;;
 余談ですが、「スレ主レス」って字面だけ見たら回文ですね……!wow!】

1日前 No.22

劫火の仮面 @kaizelkai ★2P17A3cjY2_M0e

【 ラルヴァ・フォーヤン / 旧市街・西南部 】


 投げ飛ばした片方の柳葉刀はあっけなく炎を吸われ、投擲の勢いをそのままに翅の魔の腹部を貫いても、その傷は修復される。烈火の如く空にいる魔を仕留めない無力感に、いっそう腹立たしく感じる。投擲された柳葉刀を回収するために、手元にある武器を一度消した。そして、もう一度背中に顕現させ、抜くと同時に炎を帯びた二振りの柳葉刀へと変わる。怒りに全て飲み込まれたように見えるが、まだ微かに自我が残っている。自分の力で大切な者を燃やさないという思いなのか、それとも料理人としての道具の扱いからきてるのか、その劫火は荒れ狂う獣のようではなく、間違いなくヒトのために燃え盛る炎である。
邪悪で無邪気な笑みを浮かべながら、サッカーボール大の質量を持ったいくつもの炎の塊がこちらに振ってくる。自分だけではなく、ほぼこの場にいる全員に対してだ。

「 ……モット、もっとだ……ッ! 」

 相手が炎で何かを壊すなら、自分はこの炎で守ると決める。文字通り襲い掛かる火の粉は全て追い払う。二つの柳葉刀を交差させ、後ろにいるエリの方へ振り向く。自分の背中には大切な者がいる、自分の前には大切な者を傷つける相手がいる。自分の中にある怒りを、全て出すという思いが、自分の周囲にいくつかの炎の竜巻を生み出した。炎の竜巻は大きく、鋭く、エリだけを守るように動く。地面に激突した炎の塊は爆裂し、破片と熱風が襲い来ても、その双刀を振るい、叩き落す。細かい破片が自分に当たっても、エリだけには当てさせない。エリを守るという強い欲望もこの劫火を生み出す、薪のようでもあった。


 全ての攻撃を守ったが、その代償は大きかった。体が重く、酷く疲れている。破片による傷、そして熱風による火傷もしていた。二振りの柳葉刀も彼の怒りが静まった時、一本の長剣に姿を戻していた。気が付いたとき、自身を飲み込みそうになった怒りは薄まり、理性が徐々に働いていく。あれほど苦戦していた魔が別の魔によって、一方的にやられていたのだ。魔にも色々あるのかと思いつつ、翅の魔の顔に風穴が開き、その躯がサラサラと黒い砂と化して崩れ去ってゆくのを見る。翅の魔を倒した新たな魔は意図のわからない質問をしてくる。


「 ハァ……ハァ……僕が、使えますけど……炎……その前に、貴方は誰ですか? 」


 傷ついたエヴァンジェリンを優しく介抱する彼の事を怪訝そうに見つつ、背後にいるエリを守るように立つ。疲れていようとも、剣を握り締めた手を緩めず、だがその切っ先は地面には向けている。翅の魔と比べたら悪そうには見えないが、気を許したわけではない。


>>エリ、アルヴィオンall


【遅くなりすみません。】

1日前 No.23

白鷺 @keiunuiek☆mQLLuNXADKnU ★Android=hn2HASXm05

【アーロン・ヴェルヴェット/旧市街・西南部】


遠くか、それとも案外近くでか。立て続けに起こった衝撃も、身を焦がすような熱量も、魔族の狼のような遠吠えも。聞こえた気がしたし、見た気がしたし、感じた気がした。けれどアーロンには有って無いようなものだ。男が女を必死こいて守ろうとする様も、種族を超えた理解されない恋も、アーロンには一切興味が無かった。理解が出来なかった。だから、目の前の靄の魔が余所見をしたその事実だけがアーロンを不可解な思いにさせた。

「何怒ってんだテメェ」

名前のようなものを呟いて、恨み辛みを吐き出して、囲むようにアーロン達を魔力で取り囲んで。その様子が、アーロンには怒っているように見えた。アーロンは他人以前に自分にも興味が無いが、別に他人の気持ちが分からない訳では無い。何と無く表情や態度で察せる事が出来たが、何故その感情を抱いているのか、過程から結果に至るまで何一つ理解出来ない。ただそれだけだった。向こうで起こっていた蹂躙から救出劇まで、何一つ知らない、知っていた所でただの映画を観るように素通りするアーロンには靄の魔が怒っている意味が分からず顔を顰めて見上げた。
面倒になって無駄だと分かっていてももう一度斬り掛かってやろうかと鎌を持ち上げた時、足元に何かが刺さった。波を打つような特異な形状をしたそれは剣のように見えたが、それが何のいう名称の武器なのかは分からなかった。だが、背後の女はこれを使いこなして見せろと言う。それで魔へと近付くのならばやってやろうではないか。しかし柄を掴み地面から引き抜いても、何も起こりはしない。これを一体どうしろというのか。

「――……」

ふと、女が現れた時に言っていた言葉を思い出す。――負の感情によって活性化するのは、呪威だけでは無い。自覚があるかは別として、他より魔族と戦った数は多いアーロンだが、その言葉の意味が全く分からない。呪威だけでは無い。ならば他に活性化するのはなんだ。身体能力? 思考の処理の速さ? 五感? ――――武器?
適合者には呪威という能力が授けられる。アーロンの狂飆然り、劫火然り、紅蓮然り、雷霆然り、瀑布然り
治癒然り、叡智然り。だがそれと同時にもう一つ彼等は手にした筈だ。不思議と手によく馴染む、武器を。
正直言って、これが彼女の言葉の意味の正解なのかは分からない。分からないが、やるしかない。魔へと成る、その為に。

「――楽しんでこうぜ、なァ」

考えていた時間は数分か、数秒か。相手に攻撃の余地を与えた事に何か思わないでも無いが、それでもアーロンは寄越された剣を構えれば靄の魔へと突っ込む。大鎌は手の内から消し、それでもいつでも出せるように油断はしない。柄を痛い程に握り締める。思い出せ、理解されなかった自分を。思い出せ、一人で過ごした時間を。思い出せ、手も足も出なかった悔しさを。思い出せ、好き放題やられた無力さを。思い出せ、今の自分と魔族との圧倒的な差を。思い出せ、死への恐怖を。
負の感情を思い起こして、剣を突き刺すように腕を押し出しそのまま上へ振り上げる。この時初めて、アーロンは笑顔を浮かべず攻撃を仕掛けた。


>>靄の魔、アケハ、ALL様



【ヒントありがてえですひええ! 正解がわかりませんが、取り敢えずアルヴィオンかっこよすぎ……】

1日前 No.24
切替: メイン記事(24) サブ記事 (30) ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。