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――evil.【本編開始】

 ( オリジナルなりきり )
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闇落魔法少女BEスレ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_c1Z

 これは、輝かしい世界の裏側の、破滅に向かう物語。

「世界を救うための正義の味方になる」
 誰もが一度は憧れる夢物語。子供が何度も自分の姿を当てはめる幻想。
 もしも空が飛べたなら、もしも魔法が使えたら、もしも怪物と戦って勝てるだけの力があったなら。
 空を駆け、現実では有り得ない力を駆使して、敵を倒す。美しい姿に、綺麗な衣装、魔法の呪文のオマケつき。
 まさにそれは、世界を救う天使の卵。
 けれどそれは、絵空事だからこそ許される異端。
 一度現実になってしまえば、愚かで滑稽で残酷な御伽噺以下でしかない。

 正義の味方(私たち)は死ぬ。遅かれ早かれ、敵か味方の餌になって死ぬ。
 彼等の正体も目的も分からない。何故私たちが選ばれたのかも、何故こんな同士討ちのような真似をさせられているのかも。

 けれどもう、真実なんてどうでもいい。

 権利には義務が、そして犠牲が付きまとうもの。現実は理想通りに行かないことなんて、ずっと前から解りきっていたことじゃない。
 それなのに、死を前にして希望という甘い密にすがり付いてしまった私たちは、きっと最初から間違っていたのだ。
 やり直したいなんて浅はかなことは考えない。ここまで来たら、足掻いて藻掻いて、朽ち果てるまで生きてやるだけ。何を犠牲にしても、一度は守ろうとした世界を敵に回しても、最期まで生きてやるだけ。

 私たちの絶望が、この世界を赤く染め上げるまで。

メモ2018/04/21 17:29 : スレ主☆NIljAHmRyhk @mistydark★Android-GaTaMXF8bf

2017/12/15 本編始動しました!


キャラクター一覧→http://mb2.jp/_subnro/15661.html-186#RES

現在赤銅、琥珀、紺碧のエンジェル・エッグを再募集しております。


T evil〜闇の子供たち〜 >>1-49

U egghunt〜操られ人形〜 >>50-96 >>99,100

V yell〜忘却の邂逅〜>>97,98 >>101-120

W memory〜希望の残響〜 >>121-158

X mischief〜禁じられた遊び〜【4/15〜5/14】

概要→http://mb2.jp/_subnro/15661.html-168#RES


『絡み状況』

・ムーン・ファントムランド

朝音、紗來良

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ふぁすね @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_Swk



【バニシング・ツイン/第三赤生ビルディング】



 咀嚼した深い紫の蝶をこくりと飲み込む。どことなく甘い味がしたように感じたのはその蝶に魔力が含まれていたからなのか。それとも蝶といえば花の蜜と連想したバニシング・ツインの錯覚だったのか。はんぶんこにした蝶を受け取った目の前の紫の衣装を着た魔法少女はバニシング・ツインの行動に戸惑いながらもバニシング・ツインと同じように蝶を口にした。今までとは違う、腐り落ちたもう一つの頭に。それにいったいどんな意味があるのか、バニシング・ツインには知る由もなかったが、バニシング・ツインもかつて双子だったからだろうか、目の前の魔法少女が"双子"であることは一目でわかった。


「ええ。いちばんのしあわせは、誰かと何かをわかちあって共有すること。そうでしょう? 双子ちゃん」


 空洞の眼窩に嵌まったアメシストのような深い紫色の義眼と目を合わせ、ゾンビ、と形容するのも生温いように見える干からびた片割れの頭をなでるように触れるとバニシング・ツインはやわらかく微笑んだ。紫の魔法少女の疑問に答えるその口調は子供を諭すようなふわりとした響きだったが、同時に有無を言わさぬような独善性を孕んでいた。

 蝶を半分にして分かち合う洋装の少女と和装の少女。絵本を切り取ったような、どこか不気味で長閑な光景。すぐそばで殺し合いが起こっているというのにバニシング・ツインは気にも留めていなかった。もちろん火の粉がこちらまでかかってくるならば振り払うつもりでいたが、魔法少女であることをやめたevilなどに興味はない。わざわざここに来たのは焦がれる星夜に出逢うため。紫の魔法少女と会話しながら心の片隅でここも外れか、とため息をついたバニシング・ツインだったが、ふいに聞こえた声に表情をぱぁっと明るくした。

 ステラ、と声を上げて現れた黒のエンジェル・エッグの元へと駆け寄る。そこでバニシング・ツインはようやく隣にいた魔法少女の名を知った。ヴィオレット。確か意味は菫。愛らしい双子ちゃんにはよく似合っている。


「いやだわ、ステラ。そういうのはふたりっきりだけのときにして」


 スカートのふちに触れるステラをたしなめ、ペストマスクを外し素顔をさらしたバニシング・ツインは珍しく頬を染める。ハロウィンのようなその衣装や、赤らむ頬を隠すように触れるその手に血の飛沫が散っていなければ、それはきっとじゃれあう恋人同士にも見えただろう。バニシング・ツインはさらに何かあまやかな言葉を口にしようとしたが、其れは近くの白き魔女の放った閃光と爆発によって阻まれた。


「ああもう、せっかくの逢瀬の邪魔をしちゃいやよ」


 ぐるり、とバニシング・ツインの首が壊れた機械じみて回り、遅れて体も回りその爆発の元凶とバニシング・ツインは正対した。ぶん、と手を振れば狂気の魔爪が周囲の看板や建物をはんぶんこに薙ぎ倒す。そしてバニシング・ツインはそれらを三人の周囲にバリケードのように組み上げた。全く異なる素材から作られたものであるにもかかわらず、数多の物体はがしゃがしゃと音を立てて精密なパズルのように組まれてゆく。



>>ヴィオレット、ステラ、ALL

1ヶ月前 No.116

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=HrDWQiclA0

【神之門 朝音 / 第三赤生ビルディング】

身の丈にあった然るべき判断、か。
今のイヴにはそれができるほどの力と覚悟がある。レディ・グレイの言葉と、イヴと自身の境に放たれた炎は自分の世界から目を覚まさせるには充分すぎるものだった。

その火炎に乗じてイヴの元から少し退いたものの、ダメージは無いと言わんばかりに涼しい表情で彼女は現れた。あれを喰らって無傷ってのは私の能力とは相性が悪いか、このファンネルだけを見ても物量差で大敗…なら特大の1発をお見舞いするぐらいしか私にできることはない。だが離れすぎた、さっきみたいに近づけるチャンスはもう訪れないかもしれない。

そう考えた次の瞬間、展開していたファンネル達が一斉に爆破を始める。あまりに咄嗟の出来事だったので左腕で身を庇うのがやっとだ。白く輝く閃光が辺りを覆い尽くし、その光が消えた瞬間に朝音の目に飛び込んできたのは、自身を庇っていた左腕が無くなっていた現実のみ。二の腕を少し残して後は血の滴れる無残な後しか残っていなかった。

中途半端に距離を取ったのは逆効果か…。
私の能力じゃ吸収しきれないほどの物量だと考えたけど、もしも吸収しようとしていたら身体の方が耐えれず吹っ飛んでいてもおかしくはなかった。左腕で済んだのは不幸中の幸い、とは言えこんなか細い腕じゃ致命傷をギリギリ避ける程度、ゲームで言えば今の状況は防御無視の一撃をモロに喰らったって所かな。それに近距離ほど爆破の威力が浅いのは当然の事だ、あの防御力なら向こうさんはピンピンしてるだろうね。

しかし先ほどまでいた場所にイヴの姿はない。辺りを見回し、ビルの屋上に目を向けると、そこにはイヴ…ルイン・ホワイトの正体たる少女が立っていた。その姿は先ほどまでの神々しさすら感じるものとは異なり、エンジェルですらない普通の人間の姿だった。とは言えレベル3にまで到達したとあってまだまだ殺気は感じる。そしてその華奢な足からは想像も付かないような速度でこちらへ向かってきた。あのデカい武器、恐らくレディ・グレイも御柱建も射程圏内か。

「結局、身の程すら知らないのアタシには然るべき判断もそんな強さもない、今この場面じゃ「やる」の一択しかないんだからね…」

自分でも気付かない内に彼女めがけて飛び出ていた、向かってくる彼女を迎え撃つような形になってしまったが無意識だったのはそこまで、そこから先は自分の意思で行動したと強く自信が持てる。クレイモアを右腕のみで一気に、なぎ払うように真白めがけ猛烈な速度で振るう。

爆破を使えばこちらの身体がもたない、自分の能力が使えないならアタシにできるのはこれだけだ。


≫周辺all様

1ヶ月前 No.117

灰祢 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【レディ・グレイ/第三赤生ビルディング】

「はぁ?  そんなんアリ?」
 全力の業火は、少なくともイヴを怯ませることには成功した。一度は退いた彼女を燃やすことにも多分至った。しかし彼女は未だ悠々自適にそこに立っている。その台詞から察するに、彼女は壊れた自分自身のパーツを創ってしまったらしい。
 そんな永遠にいたちごっこが続きかねない光景を目にして、思わず苦虫を噛み潰したような声が出た。この場合、はっきり言っていたちごっこでは済まない。いくら数で圧倒していようと、それでも戦力も魔力も彼方が上。ぐずぐずしていれば自動的に追い詰められるのはあたし達の方だ。
 それでも何とか周囲の何人かを奮起させることは出来たようで、建や朝音、優里が果敢にイヴへと挑んでいく。尤も、奮起させてしまったのは彼女にしても同じなようなので、全員の退路が断たれたからというのもあるのだろう。
 いつのまにか円形に隊列を組んだファンネルは外周から次々と爆発していく。遠目からでも、あれに巻き込まれたら一瞬で跡形もなく殲滅されるだろうことは想像に難くない。
 そして一番内側の、自分達に最も近いファンネルが爆発するまでの時間は、そう長くなかった。イヴの口から無慈悲に漏れる王手の言葉――真白の閃光が辺りを支配したその瞬間、地を蹴って全力で跳ぶ……否、墜ちる。
 上空で起こった爆発故に、逃れるなら上よりも下と判断し、ビルの屋上から空中へと躍り出る。火炎をジェット噴射がわりに加速して、自らの足を焼き焦がしながら移動する。肉を焦がす嫌な匂いは、実は本当に嫌いなのだけれど。
 イヴの攻撃から無傷で逃れようなどとは、始めから考えていない。それが出来るとも思っていない。ならば、足の一本位くれてやる。爆発に巻き込まれたのか、或いは燃え尽きたのか……それは分からないながらも一縷の望みにすがって、空を舞うその欠片をその手に掴んで。

 そして一秒にも満たない落下の衝撃は同じく火炎で殺し、地面を転がりながら見上げた屋上にはイヴが――いや、櫻井真白としか形容出来ない少女が立っていた。ビルそのものを巻き込んでもおかしくはなかった爆発は、思ったより呆気なく消えてしまっている。何事もなかったかのようにそのシルエットを照らし出す朝日を、これほどまでに憎たらしいと思ったことがあっただろうか。
 ガン、と地面に叩きつけたメイスを杖がわりに体を起こす。自分が爆発から逃れた代償は左の膝から先と掠り傷。けれど、可能ならば返して貰う。
「創っちゃえるほど便利じゃないけどね……あたしも一応、復活くらいは出来るんだよ?」
 燃やした灰から蘇生したのは左脚。誰かに奪われるくらいなら、自分で先に壊してしまえばいい。それならばまだ、納得出来るし治すことも出来るだろう。
 それでもまだ安定しない体を三点で支え、再び上空に向かって炎を放つ。
「……お願い、燃えて」
 燃やすのも蘇らせるのも操るのも、乱発し過ぎてもうこれが限界だから。

>イヴ・ホワイト様、周辺all

1ヶ月前 No.118

コア @koa11 ★Android=meFLmIws0b

【櫻井真白/第三赤生ビルディング】

 人である身を捨て、共に戦い一喜一憂した友を捨てた。真白にとって変わりようがない事実のそれらを“犠牲にした”なんて言葉に変えようとしても私見を通そうとする綺麗事に過ぎない。都合良く犠牲だと謳って対価を求めているだけであり、縋る資格さえも無かった。
 荒んでしまった白の少女を動かしているのは、全てを捨てたことで唯一手に入れた決意のみだった。

「後には退かないと決めた……。どんな方法であろうと変えると決めたんだ!」

 今や余裕など何処にも無いような切羽詰まった表情で声を上げる。
 同時に屋上の空気を震わせるのは、これまでの爆発とは対照的な金属音。鬼気迫る真白を正面から迎え撃ったのは神之門であり、右手に持つクレイモアを振るっていたのだった。対して踏み込んだ勢いを殺せずにいた真白は咄嗟にランスをガード代わりに使うも、反撃の隙と対応策を考える間すら与えられずに吹き飛ばされる。片腕でもその威力は絶大で体制を立て直すこともままならず、転落防止用の柵に背中を打ち付けると途端にその場に座り込んでしまう。

「あぁ、そうか……。これが……っ、運命で、もう抗う余地は無くて……」

 神之門から受けた一撃によりひしゃげたランスは、真白の腹部を貫いてワンピースドレスを真っ赤に染めていた。侵略者並のスペックを持っているとはいえ、魔法少女となっていなければその肉体は生身も同然。真白とっては致命傷になりえるものだった。
 走る激痛を堪えながら止血にもなっていたランスを引き抜くと、柵に捕まりながら残ったショートソードを杖にしてよろよろと立ち上がる。ただ、その目にあったはずの戦意はとっくに喪失していて、一筋の血が流れた口元が力無く微笑んでいるだけだった。
 自身はおろか世界の運命にまで著しく抗っても、爪痕一つ残せず終わった。何よりも残酷な現実を突き付けられて、受け止めることしか真白にはできなかった。

「なぜ、なんだろう……。私が、外の世界を、望もうと……っ、れば、決まって阻まれる。籠の中の鳥は、その宿命なのか……?」

 走馬灯のように景色が浮かんだのか、それとも痛みが酷似していたのか、真白が思い出したのはエンジェル・エッグとなったあの日のことだった。
 外へと手を伸ばした途端、禁忌を犯したかのように平和は終わりを告げた。自由を願うことがこんなにも罪なのか、と痛感して目を閉じようとした時に“その獣”は現れて外の世界へと連れていってくれたのだ。縛られたまま過ぎるはずだった運命に抗って得た物は、何よりも価値があるものだった。
 だから、同じように今回もそうした。この世界を変えたいと願った時に“その獣”が現れた。何度も迷った末に、また外へと連れていって貰えることを信じたのだった。だが、その結果は思い描いていたものとは異なっており、エンジェル・エッグとなったあの日のように阻まれて終わりを迎えようとしている。

「何が、間違い……だ。私が、自由を望むことが、変えたいと望むことが、そんなにも罪なのか? 何がいけないんだ!? 世界が私を拒む理由は何なんだ!? ……教えて、くれよ」

 誰にも向けたわけではない号哭が虚しく響き渡る。
 負担になる大声を張り上げたせいか、ついには立っていることさえままならなくなり、柵へ寄り掛かるようにして真白は話を続ける。

「もう、いい……。君たちに、教えてやる。世界の歯車は、もう止まらない。終わりを迎えるだけ……。それでも、抗うなら、私のようにありったけのコアを取ればいい。私と同じ道を歩めばいい。何も……っ、変わらないのが分かる」

 真白が大きくぶつかった衝撃と体重をかけて脆くなっているのか柵はミシミシと悲鳴を挙げる。

 血に染めずにいた綺麗な左手で、頭部の髪飾りを前方に投げ捨てる。ピースと呼ばれ、黄色とピンク色の薔薇によってあしらわれたそれは戦闘の最中でも散ることはしなかった。
 そのため、真白は残すことにした。名が名であるからに平和を望まなくなった者に着ける資格は無い。そして、共に消え去る必要も無いのだから。

「こんな世界、私から願い下げだ──」

 脆くなった柵に一気に身体を預けると仰向けのまま真白は宙に放たれる。

 真っ直ぐ落ちて、落ちて行こうとしたその身体を受け止めるのは、炎。

 地上に見えたレディ・グレイの姿に驚くこともなく、ゆっくりと目を閉じると真白の身体は粒子となって消えていくのだった。

>>周辺ALL



【これにて真白はオールアップとなります。お付き合いして下さった皆様ありがとうございました。同時に進行スケジュールの方でもご迷惑をおかけしていたかと思います。戦闘の余韻が残しにくい投稿と閉め方で申し訳ありませんでした。】

1ヶ月前 No.119

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★Tablet=iiKTVigSmi

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1ヶ月前 No.120

フォースイベント開始 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

W memory〜希望の残響〜 【3/15〜4/14】

 Humpty Dumpty sat on a wall,
 Humpty Dumpty had a great fall.
 All the king's horses and all the king's men.
 Couldn't put Humpty together again.
 白い卵は墜ちて割れた。何も遺さず、何も孵さず、もう、戻らない。
 ああ、またダメだった、と。
 遥か高みから見下ろす緑のうさぎ、弔いに似た嘲りの唄を。

 それから約一ヶ月半。桜の花舞う夕凪市の片隅で。

 綾崎灰祢は苛立っていた。思うように動かなくなった左足を引き摺りながら、雑踏を睨み付けるようにして無理矢理に歩く。
 櫻井真白――イヴ・ホワイトとの戦闘時に焼き払った左足を、全くの元通りに再生することは叶わなかった。直前に火炎放射を連発し過ぎたのがいけなかったのか、完璧に蘇らせるには魔力が足りなかったらしい。あの日以来、特に変身していないときは、やたらと足が痛む。
 今誰かに襲われたら致命的だな、と足を進めるのを諦めた彼は、ちょうど目の前にあったブライダルショップのショーウィンドウにもたれ掛かる。今はほんの少しだけ、ガラスケースに飾られた、純白の美しいドレスが忌々しかった。白はどうしても、彼女を思い起こさせる。

「……殺す」
 エンジェル・エッグの末路はセレス・コア。ただの石ころにならない為には、そのコアを食べてしまうのが一番早い。けれど、過剰摂取のその先にあるのは、 またしても人の姿を喪う蛇の道である――その境界が何処にあるのかははっきり言って分からないが、堕ちたと思っていたその先は、まだ奈落の入り口だったことだけははっきりしている。
 ここまでくると、星の使徒の狙いが全く分からない。解らないながらも、灰祢は日々自分達をこの地獄に引き摺り込んだ彼等に憎悪を募らせていた。
 ミューと名乗ったあのモルモット擬きは、今も何処かで何事もなかったかのように生きて動いているのかと思うと、死ぬほど腹立たしい。
 その憎悪は知らぬ間に灰祢の口からこぼれ落ちていたが、雑踏に飲み込まれて誰も気にする事はなかった。
 誰が生きても死んでも、この世界は変わらず続いていく。犠牲の上に成り立つ平和は、皆がそれを理解しながら知らない振りをする。変えられるものなら、きっとそれに越したことはないのだろうけれど……今になって少しだけ、灰祢は真白の凄絶な覚悟に触れられた気がした。
「でも……変わらないさ、結局、何も」
 今際の際で彼女が悟っていたことは、灰祢も痛いほど分かっている。だからこそ、彼は自分のやりたいように生きてきたのだ。どれだけ感傷を覚えようが、今更それを変えるつもりはない。変えてしまうのは、彼が愛した仲間達を裏切ることにも繋がるのだから。
 あれから一月以上が経ち、季節も春めいてきたというのに、一向に灰祢の気分は盛り上がらない。持て余した苛立ちを振り払うように頭を振って前を見た時には、足の違和感も消えていた。
 だから、歩き出そうとする。何も変わらない日常の皮を被った何かへと。死ねないなら、生きるしかない。このまま生き延びる術を見付けるしかない。そう、思っていた筈だった。

「……みつけた」

 雑踏から、いやにはっきりと聞こえた声に、思わず灰祢は振り返る。
 素早く人波に視線を走らせるが、敵意は感じない。しかし、周囲には今の仲間達も居なければ、知り合いも居な……――
 居た。
 通りの向こうから、真っ直ぐに灰祢を見詰めているのは、彼と同じ焦げ茶色の瞳。春の風に靡く同色の髪は、彼が染める前のそれと寸分違わない。身に纏う黒のセーラー服は見慣れた、けれどこの町の学生の誰とも違うもの。
 それが、近付いてくる。灰祢に向かって、ゆっくりと、確かな足取りで。
「……姉さん……どう、して」
 瞠目した灰祢の呟きに、彼女――綾崎戒音は微笑んだ。
 セーラー服のスカーフの奥に、斑模様の薔薇を象ったネックレスを……セレス・コアを輝かせて。

【以上を持ちましてフォースイベント開幕です。自分で相棒たる(?)正義のエンジェル・エッグを出すも、誰かの所に絡みに行くも、色々無視して後半の侵略者狩りに参加するもご自由にどうぞ。因みに、上記はあくまで〆文兼開始文ですので、宛先はありません。もっとフランクになった戒灰コンビは次レス以降で出しますので、もし絡んで戴けるのでしたらそちらにお願いしますm(__)m

 そして最後になりましたが、コア様素晴らしいラスボスをありがとうございました!】

1ヶ月前 No.121

灰祢 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【綾崎灰祢/桔梗記念公園・噴水前】

 あの日突然夕凪市に現れた実姉は、当然のように僕の隣に居着いた。と言っても四六時中傍に居るわけではないが……呼べば一時間以内にやってくるので、その辺に居ることは間違いないのだろう。順当にいけば大学生だろうに何してんだ。
 ずっと貴方を探していたの――開口一番にそう言い放ったくせに、その一言以外は近況も何も語らない。かと言ってこっちのことを問い詰める訳でもなく、ずっと自分も一緒にいましたよ? みたいな顔をして当たり障りのない話ばかりを続けている。ここのevil達のことさえ、「灰祢の新しいお友達?」とか言って気にも止めていない。
 本当に自分を探しにきて、本当に後はどうでも良いのだ、あの人は。
 しかし、その中途半端な無関心さが、何故か心地よく感じられていた。あの人はきっと僕を否定しない――何となくそう思えたから、不思議と苛立ちもマシになった。それが、血の繋がりという切り離したくても切り離せない関係性のせいなのか、あの人の性格のせいなのかは分からないけれど。

 ただ、一つ気になるとすれば、あの人もいつの間にか人間辞めていたことだろうか……地元のエンジェル・エッグは一度自分が一掃したと言っても過言ではない。その補充要員に家族が選ばれるというのも、皮肉だが可能性としてゼロではない。しかしそれにしては、あの忌々しいモルモット擬きの気配は何処にもないし、あの人もあの人でevil狩りに精を出せるようなキャラではない……となるとやはり、ただただ自分を探しに来ただけという結論に戻ってきてしまう。

 本当に? 目的は僕だけ? あの人がブラコンなのは正直昔から肌で感じていたけど、それだけなんてことがあるのか? エンジェル・エッグにまでなっておいて? 恐らくミューと契約して……死にかけて? 一体何処まであの人は知っている? evilのことは? セレス・コアのことは? 僕のことは……?

 一応家族と言えど他人の考えていることなど推測でしかない。このままモヤモヤした感情とリスクを抱え続けるくらいなら……と、僕はあの人をこの公園に呼び出した。物事は早い段階ではっきりさせておくに限る。
 花吹雪が視界を薄紅色に染める公園は、それでも人が多かった。花弁が舞っているということは散りかけだろうに、未だ花見客は多いらしい。
 当然、待ち合わせの定番スポットたる噴水前には、自分以外にも沢山の人がいる。そんなこと、来る前から分かりきっていたことだ。それなのに。

「……何でもう此処に居るかな、僕は」

 園内の時計を見上げ、あの人に指定した時間まで暫くあることを確認するのも、何度目だろうか。噴水の縁に腰掛けて頭を抱える様は、傍から見れば滑稽だろう。
 自分が何故こんなことをしているのかは、自分でも分からない。思い当たる節があるとすればそう――不安、なのだろうか?

>all

1ヶ月前 No.122

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_Swk

【御柱 建/とある繁華街】

 あの事件、イブ・ホワイトとの戦闘から一か月半。御柱建は繁華街の雑多な街並みの中を歩いていた。特に目的があったわけではない。ただ、あの日以来どうにも落ち着かない気分が抜けないというのが実情だった。
 イブ・ホワイト。人を捨て、エンジェル・エッグを捨て、そしてEVILとしての自分さえも捨てて彼女が達した先は侵略者としての姿だった。
 それについては深く考えるのはやめておいた。たとえどのようなことが真実だったとしても彼の目的には関係ないからだった。

『「もう、いい……。君たちに、教えてやる。世界の歯車は、もう止まらない。終わりを迎えるだけ……。それでも、抗うなら、私のようにありったけのコアを取ればいい。私と同じ道を歩めばいい。何も……っ、変わらないのが分かる」』

 それよりも彼が気にしていたのは、彼女が残した言葉。世界の歯車とは、そして終わりとは……

「情報が少なすぎるな……都合よく星の使徒でも落ちていないものか。」

 小さく呟くと、建はあたりを見回す。侵略者が闊歩する現代にも相応の平和というのはありふれているもので、休日の繁華街には腕を組んだ恋人たちや家族連れ、暇そうな学生などが人生を謳歌していた。彼らを見ていると、自分の過去を思い出す。かつて人であったころを、いや、エンジェル・エッグになってすらも彼には仲間がいてそれなりに楽しい日常を過ごしていた。その楽しさと、それを失った時の絶望は今の頭と心に残っている。

「俺に……それを同じことを皆に押し付ける権利があるのか。」

 小さなつぶやきは、雑踏の音にまみれて誰にも聞こえなかっただろう。どちらにしろ、だれに聞かせたかったものでもない。ただ、彼らの幸せそうな様子を見ると、自分のしようとしていることが正しいのか、分からなくなることがあるのだ。

>>ALL様

1ヶ月前 No.123

実加 @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【誘衣実加/自宅→桔梗記念公園沿いの歩道】

 チャペルの祭壇に横たわっているのはかつて幸せの絶頂で消えた姉。美しい純白のドレスに身を包んではいるが、その姿は変わり果てていた。
 細い四肢には粘液を纏った気色悪い触手が絡みつき、粘液に触れた皮膚はどろどろと溶けている。眼孔からも口からもその触手が伸びており、厭らしく蠢いていた。絶えず耳に飛び込んでくるのは不快な機械音が混じりの逆再生した人の声のような音。耳を塞ぎたくても身体が言うことを聞かない。歪んだウェディングベルが鳴る。頭が痛くて気持ち悪くて今にも吐きそうなのに、縫い止められたみたいに動けなかった。
 きゅるきゅるきゅる、とテープを巻き戻す時に似た音がして、気待ち悪い音が全て止む。止んだ次の瞬間には姉の声で「それでいいの?」と聞こえてきた。何度も何度も、繰り返し。
 思わずその場にへたりこむ。ここ最近頻繁に見る変な夢の中でも気持ち悪さはトップレベルだ。早く覚めろと願っても覚めないところが本当にタチが悪い。

「おれ、は」

 なにかを言おうとしたところで目が覚めた。スマホを見るとバイト先の社員から5件のメッセージと2件の着信が来ていて、始業時間に間に合わなかったことを悟る。

「……今日はお散歩する日にしよう」

 具合が悪くて寝込んでました、なんて出鱈目を打ち込んで送信し、溜息をつきながらぽつりとこぼして着替えに手を掛けた。


 ルイン・ホワイトが死んだ。そんな話を聞いたのは、ほんの数週間前。何も思わなかったと言えば嘘になるだろう。彼女は自由で美しい少女だった。この世界から退場させるにはあまりにも惜しい存在だったのに。
 歩きながら飲んでいたメロンソーダはすっかり炭酸も抜け切り、飲めたものではなくなっていた。2口程度中身の入ったペットボトルを道に投げ捨てる。カランカランと軽快な音を立てて車道に転がっていくそれを見ていた子連れの女が怪訝そうな顔で実加を見るが、自分より一回り年下の舌打ち1つで視線を逸らした。ああ、弱いな。なんて当たり前に思いながら、なんとなく空を見上げる。

「俺ちゃんが気持ち良く殺してあげたかったなァ。――ま、来世で
はどうか」

 幸せな人に。呟いた言葉はあの白に届くことは無いけれど。ニンゲンモドキの害獣を卒業出来た彼女には心の底からの祝福を送った。

>>ALL様


【全然参加出来なくてすいませんでした……!フォースイベントこそは参加したいと思っておりますので、よろしくお願い致しますきゅる!】

1ヶ月前 No.124

推古 @iwing ★VGOHrBEzXD_8gk

【四ツ岡 睦/とある繁華街】

「evilになっても、君は何だかあまり変わらないよね。でも今の君はとても悩んでいるように見える」

 彼の隣を並んで歩くのは何年ぶりだろう。

 彼の背後から、できるだけ音を立てずに近付いて声をかけたのは、彼の驚く顔が見たかったからだ。絶縁状態だったはずの女の子がとつぜん目の前に現れる。なかなかミステリアスなシチュエーションだ。

 彼と最後の言葉を交わしたあの日から幾日かを経て、頭の冷めた私はずっと彼を探し続けていた。そうして漸く彼を探り当てられた時、彼はどこか気が立っているように見えた。
 少なくとも私の目には、あの時に言い争ったのとは違う印象を受けた。私の知らぬ間に彼の身に何が起こったのかを知る術はない。あの日以来、彼とは一度も連絡を取り合っていなかったのだ。
 彼がevilに身を置いていることを知ったのはつい最近のこと。ここ夕凪市に移り住んでいるという風の噂を信じて、他のエンジェル・エッグたちには内緒でやって来たのは、嘗ての仲間に会うためだった。そう、今ではevilへと身を落とした御柱建に会うために。

 気付けば他のエンジェル・エッグの仲間に接するような態度のまま彼に話し掛けていた。別に悪気があったわけではない。それが彼への意趣返しになるだろうとも思ってさえいない。
 むかしの私だったら彼を許さなかっただろうし、とうぜん許してはいけなかった相手であろう。彼は理由もなく仲間であったはずのエンジェル・エッグたちを殺した。それなのに私は彼を自分と同じエンジェル・エッグとして同列に扱おうとしている。
 いや、それはもしかしたら表現的には正しくないのかもしれない。だって私は今から、普段通りの私のまま彼に近付こうとしているのだから。喧嘩別れをし、立場の上では対立関係にあることも忘れた様に話しかけて来る相手に、当事者である彼は何を思うだろう。
 私と彼は違う。彼は今でもあの時の事を覚えているのだろうか。今ではそれだけが気掛かりだった。そしてやはり、そんな風だから私は彼の気持ちや感情を無視して一方的に話し掛ける。
 人当たりの良い笑みを浮かべながら、軽い足取りでどこか余裕のある素振りを見せつつ、横を並んで行く彼に訊ねる。かと思えば、とつぜん思い出したように両手の手の平を合わせ、パチッと可愛らしい音を鳴らしたのであった。

「もしよかったらお姉さんに話してくれないかな? そうすれば少しは気が晴れるのかもしれないよ? あ、そうだ、私たちは今からデートをしましょう。これから少し落ち着いた感じのカフェに入って、そこでじっくりお話をして、私たちのこれからのことについて話し合いましょうよ」

>> 御柱 建

1ヶ月前 No.125

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★Tablet=iiKTVigSmi

【夜縋みかる/夕凪第一高等学校 屋上】

 緩やかに、春先独特の生温い風が通り抜ける。短く無造作に切られた髪が穏やかに揺れるのが鬱陶しくて、払うように首を降った。かつて通っていた学校の屋上、下界までの道を阻むように建てられた柵に腰かけ、今はエンジェル・エッグとしてではなく、一人の少女として街を見下ろす。退屈そうに蠢く唇の中では何時だかに狩ったセレス・コアが縦横無尽に転がり、舌にピアスとして鎮座する自らのセレス・コアとぶつかり合ってかちかちと音を立てていた。

 陽はもう落ちかけ、闇が辺りを染めそうとしている。迫るような暗闇に急かされた、まだ校内に残っていた生徒たちが足早に校門から去っていくのを見届け、郷愁にも似た感情に襲われる。かつては自分も同じように下校時刻ギリギリまで友達と学校で過ごしていたり……はしていなかった。終業のチャイムと共に大人しく帰路についていた記憶しかない。寄り道なんてもってのほか。思えば味気ない学生時代だったと苦笑しか出ない。本来ならばその学生生活も、もう少し続くはずだったのだけど。

 そんな考え事に引き摺られるように思い起こされたのは過去の記憶。思い出したくないと思う程、嫌な記憶は簡単には消えてくれないのだと、深いため息が反射的に零れ出た。

 生まれた時から私は社長の娘だった。泣いてはいけない。過度に笑ってもいけない。常に品行方正で、誰もが憧れる存在でなければならない。気を抜いてはいけない。いつ誰が何処で見ているのか分からないのだから。耳にタコが出来そうな程言い聞かせられた教えの数々。例え目の前に誰が居ようと吐かれていたその言葉達が途端に数を減らしたのは、妹が生まれた時からだった。私への「指導」は彼女に見えない場所で行われるようになった。だからしょうがないと言えばそうなのだけど、それでも、何も知らずに笑うあの子が殺したい程憎くて、でもこの世の何よりも純粋で綺麗な彼女が、可愛くて仕方がなかった。私は演じ続けた。両親の前では【理想通りの令嬢】を、妹の前では【優しく完璧な姉】を。学校のクラスメイトすら、私の本当の顔を知らないまま全ては終わりを迎えた。私があの世界に戻ることはきっともう二度とないだろう。もうクラスメイトの名前も、両親の声すらも思い出せない。星が降ったあの日から、私の時間は止まったままだ。

「なんだか、つまんないねぇ」

 感傷に浸りそうになった頭を誤魔化すように呟かれたその言葉は誰の耳に届くこともなく宙に消えていく。今にも屋上から飛び降りてしまいそうな背中を急かすように、虚しく下校時刻を告げるチャイムが鳴り響いた。

ALL様>>

【参加遅くなってしまい申し訳ありません!みかるの妹であるスーパー可愛いるのんちゃんをひなしろいと様にお願い致しました!みかるの壊れていく様を見てやるよ!という方は絡んで下さると嬉しいです……!】

1ヶ月前 No.126

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_iR4

【御柱 建/カフェ】

 自分の呟きに呼応するかのような声に、建は一瞬驚くと後ろを振り返る。
 その動作をしながら、やはり今日の自分はおかしいのだと実感する。今の自分の立場で後ろから声を掛けられるということは、次の瞬間、刃が迫ってきていてもおかしくない。そう、自分が他のエンジェル・エッグにしたように。それを考えれば、背後へと振り返るのではなく前方へと跳躍するのが正解だったはずだ。だが、振り返った彼を迎えたのは狂気に満ちた白刃ではなく、見慣れた顔だった。

「変わらない……か……」

 自分に声を掛けてきた女性、四ツ岡睦の言葉に複雑な表情を浮かべる。それはうれしかったのか、あるいは悲しかったのか。おそらく彼自身にも分からなかったのだろう。
 青紫色の短髪に同じ色の瞳、表情も仕草も彼女は何も変わらないように見えた。そう、その生気のない瞳を含めて。かつては、彼女のその瞳が気がかりだった時もあり、励ましたりしたときもあった。だが、それも昔の話だった。もはや地に堕ちた自分が彼女を気にかけてりしないし、ましてや彼女へと相談することなどない。
 だから、次に出た言葉は本当に気の迷いだったのだろう。

「デートね……楽しそうだ。年上の美人とお茶するのは吝かじゃないよ。」

 そう同意を意志を返すと、彼女を導くように繁華街の一角にあるカフェへと歩き出した。
 二人が再開した場所から徒歩で5分程度の奥まった路地にあるカフェは、紅茶とスィーツが上手い建のお気に入りの店である。さすがに、EVILのたむろしているコキュトスに彼女を連れていくことはしなかった。

(なぜだろうな。そうすれば、おそらく彼女のセレスコアも楽に奪えるだろうに。今日の僕はどこかおかしい)

 そう考えながら、睦のためにカフェのドアを開けて先に通すと、自分も後から入る。なじみの店長に軽く会釈して奥の角席に睦を座らせると、自分はその向かい側に陣取った。

「ここは、紅茶とチーズケーキがおすすめだけど。一応珈琲や他のもあるんだ」

 そういいながらメニューを睦に手渡す。自分の注文はメニューを見るまでもなく決まっているので、彼女がメニューに目を通している間に、なんでもないことのように質問した。

「さて……それで、さきほど『僕たち』のこれからのことと言っていたけど、偶然会ったってわけじゃないだろ? 何のために来たんだい。僕を罰しに来たのかな」

 彼女の身に着けている十字架を見ながら


>>四ツ岡 睦様

1ヶ月前 No.127

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=HrDWQiclA0

【神之門 朝音 / 桔梗記念公園】

公園の端にあった石造りのベンチに、彼女だけが時間から隔離されたかのように静かに座っている。身体が石色であればその佇まいは仏像と言われても違和感がないハズだ。しかしその心境とは仏のような穏やかさとは程遠いところにあった。


「…」


先日起きたレベル3襲来の件を経てから、自身の心が曇ったような、掴み所のない気持ち悪さが続いていた。レベル3へと変貌し、儚く散って行った真白の言葉が未だに理解できない。一体なぜあんな姿になったのか、ありったけのコアを摂取するとあぁなってしまうのか?それとも他に別の要因があったのか? どちらにしてもまだまだ闇は深い…ここから更に上の絶望があることだけはこんなちっぼけな頭でも分かった。

しかしその絶望に釣り合うほどの圧倒的な力を存分に見せつけられたのは事実。援護がなければ数秒でチリになっていた。戦う事と自分が誰よりも強いと証明する事が、evilへと成り果てた今でも生きている理由と言ってもいい、だがレベル3と化した真白に対して単独では手も足も出ない力の差だった。確かに悔しかったが、それ以上に、まだこの力すら発展途上であることを考慮すれば、人知れず野望が出来上がるのもまた必然だった。

それでも今のままではまだ弱い、そんな夢のようなチカラを手にする前に死に絶えてしまいそうな程度だ。侵略者や他のエンジェル達が強くなるのに置いていかれるのは癪だし、第四段階の出番が徐々に近づいてるのも好ましくないけど、これ以上に強くならなきゃやってられない。


「…そんなに言うならずっと覚えといてやる、アタシが生き続ける限りその生き様が消えることはない、だから築いたものを踏み台にしてでも生き抜いてやる」


他人から見れば急な独り言と捉えられただろうが、それでも御構い無しに喋った。幻燈館で聞いたあの言葉が今もまだ脳裏を過り続ける、彼女らのような覚悟がアタシにはあるのか、それはこれから測れる。かつては体力が殆ど残っていないピンチで使った故に反動で死にかけた第四段階のコントロールをこれからは行いたい。
どんな物だったのかは全く覚えていないが、とにかくコイツをモノにして生き抜くための下地にしておくべきなのは間違いない。

さっきの暗雲はどこへやら、勝手に考え込んで勝手に開き直る、いつもの事だった。心地よい春風が制服と身体の隙間を通り抜け、腕がなく支えの無い左の袖をなびかせる。そろそろ左腕を治す頃かなとまた一人で呟いた。


≫all様
【プロフに書いておきながら未回収でくたばりそうなので一応投下させていただきます。】

29日前 No.128

推古 @iwing ★VGOHrBEzXD_8gk

【四ツ岡 睦/カフェ】

「ん、ありがと」

 建からメニューを受け取ったが、それを受け取る前から、この店のおススメだという紅茶とチーズケーキを頼もうと考えていた。
 しかしそれでは味気ないだろうと思い直し、結局は彼の手からメニューを受け取った。それを流し見にしながら別の事を考えていた。

 私は彼を断罪しに来たわけではない。
 しかし傍目から見ればそうなのだろう。そういえばアニメやラノベなんかでもよく使われるようなシチュエーションだ。
 あの場で彼が私から逃げ出そうものなら、確かに私はエンジェル・エッグとして彼に裁きを加えるつもりだったのかもしれない。
 でも彼はそうしなかった。つまりは未だ対話の余地が残されているということだ。彼を試したつもりはなかったのだけれど、言葉を交わせられる内はそれに縋りたいと思ってしまう。

「君はもう決まってるんだよね?」

 メニューに視線を落としながら尋ねる。私は彼のこれからの事について尋ねたつもりだったし、また、最後の方にかすかに聞こえてきた「罰する」という言葉に反応して返事を返したつもっりだったが、もしかしたら先方は違う意味で取ったのかもしれない。
 彼はエンジェル・エッグの仲間を殺し、かつて住んでいたあの街から姿を消して夕凪市へと移り住んでいる。それはつい最近になって知ったことだ。私は彼が目的なく仲間のエンジェル・エッグを殺したり、その責任を取ることなく逃げ続けるような男の子だとはとうてい思えないでいる。
 何か事情があるのは確かなはずなのだけれども、それでも当時の私にはそれを聞き出せるだけの余裕がなかった。あの時の私は一方的に意見をぶつけるだけで相手の都合を考えようともしなかった。当時を思い起こせば、その時の絶望に満ちた悲愴な表情から、何らかの事情は察せたはずなのに。

「やっぱりせっかくだからその紅茶とチーズケーキを頼もうかな? ここに来るのは初めてだし、何だかここにはもう来ないような気がするし……」

 本当は用事が済めばこの街から去るつもりだった。
 元より御柱建と話し合いをすることだけが目的だった。
 そうしてメニューから視線を外して再び彼と向き合った。

「ま、君の元気そうな顔が見られてよかったよ。あ、いや違うか、いま君は何かについて悩んでいるんだったね? よかったら先ずはそれについて教えてよ」

 やや強引な気もするが今の彼なら口を割ってくれるだろうという予感めいたものがあった。

>> 御柱 建

29日前 No.129

ひなしろいと @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=xzNlTkId5q



【 夜縋 るのん / 夕凪第一高等学校 】



 春風は紺色のポニーテールだけでなく、浮ついた心を掠めて駆けていく。とても柔らかく、追いかけたら掴めてしまうくらいに。だからこそ、余裕がありげで穏やかだと感じてしまう。近くに誰もいないことをいいことにして風に誘われて軽はずみに廻る。口から楽しげな声が出てしまわぬように気をつけながら輪舞曲を繰り返した。廻っている間は何も考えずに済む気がしたからだ。風が止むと揺らいだ身体と心は止まる。いきなり闇の世界にぽつりと独り取り残されてしまったような感覚に頭を垂れて、脱力した。
 あの日。みんなが居なくなってしまった日。全てが変わった日。夜縋家は夜空へと散った。幸い自分は魔法がかけられたようで、契約のもと生命を繋いでいる。けれど待っていたのは酷い孤独。誰かと一緒にいても独りなのは変わらない。それ以来ずっと、捜している。闇夜を照らしてくれる自分だけの太陽を。きっとわたしが生きれたならみかるも生きているだろう。るのんだけの、お姉ちゃん。

 夕刻というには陽は落ちすぎていて、もう辺りは暗い。父さまと母さまが心配するから早く帰らなければとみかると手を繋いで走った日常のワンシーンを思い出した。
 「会いたいよ」
 呟いた声は元気な人の声で掻き消された。いつの間にか夕凪第一高等学校の前まで歩いていたらしい。校門からぞろぞろとでてくる人の群れは、アマゾンで水を求めて彷徨う動物を彷彿させた。いかにも仲が良さそうに腕を組みながら歩く彼等を少し離れたところから見つめる。しばらくの間そうしていて、すると静寂がまた戻って来た。どうやら、生徒は皆家に帰ったらしい。普段なら絶対に入れない高等学校に少しの好奇心で忍び込む。この身では自分は高校生になれないことは知っているので、せめていま楽しみたいと思った。校門に足を踏み入れると一瞬呼吸が止まりかけた。

 鼓動が早る。みかるの匂い。嘘だ……、けれども間違いではない、この雰囲気は知っている。近い、すぐそばに居るのが分かった。辺りを見渡してみかるを探す。校庭を駆け回る。春風との輪舞曲とは比べ物にならないくらいの速さで、息が切れるまでかつ全力で。ねぇ、どこにいるの。るのん、ずっとずっと探していたの!声にならないように押し込めながら漏れそうな嗚咽を、堪えることに慣れすぎた嗚咽をまた飲み込む。そのときに、涙が零れてしまわないように見上げた空に黒い影が見えた。
 居た。…みかるだ。見えるはずがないのに、確信した。愛おしい暗闇に溶けた影に向かって叫ぶ。お姉ちゃんと言いかけて、母さまと父さまにお姉ちゃんではなく名前で呼ぶようにと言われたことを思い出した。そこで、幾度となく呼び続けた幼い頃の言葉を辿ることにする。やっと、太陽に会えた。

「みかるお姉さま!」

 下校のチャイムがタイミング悪くなるけれども大丈夫。今度はきっと届いた。また、泣きそうになってしまう。今度は、上は向かずにくしゃくしゃな笑顔で涙をしまった。




>>夜縋 みかる、その他周辺Allさま



【 ご紹介に預かりました。夜縋みかるさまの妹に今回抜擢していただきましたひなしろいとと申すものです。素敵な物語のなかにお邪魔できることたいへん光栄に思います。どうかお付き合いくださいませ!よろしくお願い致します 】


28日前 No.130

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/高坂百貨店】

「やっぱりいいねぇ……見てて落ち着くよ」
お洒落なカフェからコアなお店まであらゆる趣味の人が満足できる高坂百貨店。
その中にあるアンティークショップに足立優里はいた。
今は店に並んでいる骨董品を眺めている。

「これ買おっと!」
その中の一つを手に取りレジに駆け込み、買い物を済ませた優里。
店を出たところに聞きなれた声が聞こえてきた。

「優里ちゃん!」
「ん?」
声のほうを見ると見知った人物がこちらに向かってきていた。
乳白色のショートボブをした「夜桜 美里」だ。

「やっぱりいると思ったよ!」
「そんなに慌てて、何かあったの?」
「あのね、何か知ってるなら教えてほしいの!共有すべきだと思うし……」
「またそれ? あたしがあんたの邪魔してるのは、そういう事じゃないよ」
「そんなのわかってるよ……何回も言ってたよね」

徒歩で喫茶店に向かいつつ駄弁る。
これ以前にも真実を探っていた美里を優里はたびたび妨害していた。
その理由は美里に対する気遣いであり、それ以外の仲は良好であることを裏付ける。

>周辺all

27日前 No.131

灰祢/戒音 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【綾崎灰祢・来栖戒音/桔梗記念公園・噴水前→端のベンチ】

 悩んでいた、確かに僕は悩んでいた。姉の動向について、エンジェル・エッグ達の行く末について。
 けれどいい加減、待合せスポットで人々の好奇の目に自分を晒し続けるのにも飽きてきた。
 ゆるゆると頭を上げて、園内の時計を見遣る。待合せの時間まで、まだあと少し。
「……歩くか」
 目的地なんてないけれど、公園内を適当にぶらぶらしてみることにした。足さえ痛まなければ、体を動かしていたほうが気が紛れる。公園の端まで行って戻ってくる位の時間はあるだろうし、少し遅れた所であの人が怒り出すとは到底思えない。
 立ち上り、その場を後にする。左足は、踏み出した瞬間だけ僅かに痛んだ。

 そうして端までまっすぐ来てみれば、ベンチに見た顔がいた。腰掛けたまま微動だにしないその様はまるで彫像のようだったが、彼女が生きて呼吸をしているのは間違いない。ひらひらと風にシャツの袖が揺れているのもその証拠である。
 あるべきはずのものがそこにはない。それは痛々しくもあるが、何処か頽廃的で美しかった。
「……やぁ、君もお散歩かい?」
 彼女――神之門朝音は物思いに耽っている様子だったので、少し遠巻きに声をかけてみる。無視されたらそれまでだが、特別な用があって話し掛けた訳ではないので、それならそれで構わない。
「腕の調子はどうかな、良かったら今度治してあげようか?」
 ……燃えるけど。既に灰も残さず消失してしまったものを、その先から蘇らせることが出来るかどうかは未知数だけど。
 一応地元でも治療・修復担当は僕だったけれど、その時だけはみんな余り良い顔をしなかったなぁ、なんて。
 最早冗談どころか自嘲めいた言葉が漏れたのは、イヴ・ホワイトの驚異的な再生を目の当たりにしてしまったからだろうか。彼女もそれは目にしたはずで、そもそもその腕を消し飛ばしたのもイヴ・ホワイトで、何かしらの反応は返ってくるだろうと思ってのことだった。

「駄目よ」

 けれど、僕の言葉に反応したのは、彼女とはまた違った所で聞きなれた声で。
「駄目よ灰祢、あなたまだ本調子じゃないでしょう。やるならもうちょっと侵略者でも倒してからにしなさいな」
 いつの間にか背後に立って、柔らかく微笑みながらやんわりと魔法の行使を止めたのは。

「……やぁ、姉さん」
 自分の姉に他ならない。何でここに居るんだと問い掛けるよりも先に、彼女はすっと僕が歩いてきたのとは別の道を指差した。
「向こうにも入り口があるのよ、小さな門だったけれど」
 どうやら僕が入ってきた所とは別の所から入ると、ちょうど此処に繋がるらしい。時計に目を落とせば、待合せ時間の10分前だった。
「こんにちは、初めましてかしら? 灰祢の姉の来栖戒音です。いつも弟と仲良くしてくれてありがとう」
 そして気付けば彼女は、朝音に自己紹介を始めている。別に僕らはそこまで仲良くしてないんだけどな、ということは胸にしまっておくことにした。

>朝音様、周辺all

26日前 No.132

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_iR4

【御柱 建/カフェ】

「紅茶とチーズケーキを二人分お願いします。……そうか、気に入ったらまた来るといいよ。ここは、静かで落ち着いてた店だから一人で考え事をするのにも友人と語らうのにもちょうどいい」

 前半はウェイターに注文を、後半は睦の言葉をへの返答である。
 そして、睦の最後の問いかけに対してどのように答えようかとしばし頤に手を当てて思案する。
 考えていたのはどれほどだったか……、注文した紅茶とケーキが届いたころであることを考えると彼自身が思ったより長く思案していたのだろう。
 テーブルに注文した品が並べられ、ウェイターが一礼して去っていくのを確認してから建は口を開いた。

「そうだな……たとえ話になってしまうが。たとえば、僕がこの紅茶の味が気に食わなかったとしようか。」

 そういいつつ、カップを口に運ぶ。芳醇な香りと暖かい湯気が鼻腔を満たす満足感に目を細めながら、建は紅茶を口に含んだ。その味と香りは彼を満足させるに足るものだった。しかし、彼はそのまま話を続ける。

「人によっては我慢してそのまま飲むこともできる。あるいは、店員に言って淹れなおすことも、さっさとこの店を出て二度と来ないこともできるだろう。」

 そう言うと、建はまたカップを口に運ぶ。
 温度も、時間も、蒸らし具合も申し分ない。フレーバーティーでない純粋なダージリンの香りが口の中に広がる。その香りを堪能してから再び、建は彼女へ告げた。

「だが、僕はそのどれとも違うことをしようとしている。もう二度と、この店でまずい紅茶を飲む不幸な人が現れないようにこの店自体を消す選択をしようとしている。」

 そして、指を鳴らした。
 無論、それは彼の能力を発動させたのではない。というか、厳密にいえば彼の能力に指を鳴らすことは必要ではないのだ。
 鳴らされた指の音を聞いてウェイターがテーブルに近づくと、建はいつもの笑顔で、

「いえ、何でもありません。いつも通り美味しいですよ」

 怪訝な顔をしながらも礼儀正しく一礼して去っていくウェイターを見送ると、建は睦の方を向いて告げた。

「さて……悩みっていうのは、要するにそれが正しかどうか迷っているのさ。この店を消すんじゃなくて、我慢して飲んでもいいし、代わりを持ってきてもらってもいいかもしれない。実際、そうしようとした同胞がこの前いてね。」

 >>四ツ岡 睦様

26日前 No.133

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=HrDWQiclA0

【神之門 朝音 / 桔梗記念公園・端のベンチ】

呟き終えてから、一人ただボーッとしてるだけで周りだけ加速したかのように時間がどんどん過ぎてゆく。それが何故か無性に面白くて、やがて、もうしばらくここに居座ってやろうかとさえ考えたが、それは顔見知り登場で脳内から掻き消された。

声をかけられて初めて灰弥を認識し、そちらへゆっくり顔を動かした。しかし彼の方からいざ散歩かと問われると、その返答に少し困ってしまった。実際ここに来たのは気まぐれ以外の何物でもないし、今は見ての通りベンチに腰掛けてるし…。まぁ、最初は気分転換のつもりで散歩してだったんだろうねと自分の中で勝手に決めてしまった。実際、今はもう気分転換どころではなく別の野望さえ芽生えていた。

続けざまに彼は自身の腕の様子を問う。今度治そうと気の利いたことも言ってくれたが、治す以前に元のパーツとなる左腕は存在しないんだが…。 いや、やっぱりこいつは自分で治さなきゃ、自分の受けた痛みを他人に消させるのはダメだよな。

「いや、いいよ…これは…」

と、言いかけた所を遮るようにまた一人の人物が登場した。出てくるや否やこちらから見れば完全に初対面なハズの灰弥と親しげな会話を繰り広げ始めた。挙句は彼自身の口から、急に出て来た彼女は姉であるという事実も出て来た。
彼女は後ろの方を指し、そこから来たのだと灰弥に対して説明する。そっち側にも門があったのは知らなかった。帰りはあちら側を通ってみるか。

にしても姉ねぇ…。私と同じで身寄りなんて存在しないのばかりだと思ってたけど、evilの中にも他の居場所を持つことを許された人間がいたんだなぁ、魔法使いだろうと悪魔だろうと、家族は暖かく迎えてくれて…って、もしかして姉の方もエンジェルだったりするの?


そう思っていたタイミングで彼女は自己紹介を始めた。と言っても別に大したことはない、当然といえば当然だがやはり自分がエンジェルだとは一言も名乗らなかった。それにしても、仲良くしている…のか? まぁ何度も死にかけたのを助けてくれたし、私の方から尊敬している部分はある。

「神之門朝音です、こちらこそ…いつも弟さんに助けていただいて感謝しています」

ベンチに腰掛けたまま、彼女に向けて言葉を投げかけた。エンジェルとは無縁な存在なのだろうと位置付けて喋ったせいでついつい出てしまった。敬語を使うなんていつ以来だっけ。

にしても何故姉弟揃ってここにいるんだ?
偶然じゃないのは間違いない、待ち合わせか何かだろうが、見ず知らずの私はさっさと退散した方が良いんじゃないのか?

「折角姉弟が揃ってるんだし、アタシは消えましょうか?」

とりあえずそれだけ切り出してみた。

≫灰弥様、all様

25日前 No.134

推古 @iwing ★VGOHrBEzXD_8gk

【四ツ岡 睦/繁華街の一角にあるカフェ】

「そう……」

 彼の考えが上手く呑み込めない。
 再び彼は同じ事を繰り返そうとしているのか。仲間のエンジェル・エッグたちにそうしたように。
 それと同じか、あるいは別の何かを消し去ろうと考えているのではないか。不幸な人間を二度と生み出させないように。
 それは彼の口から聞いた初めての言葉だった。しかしそれが直接の動機ではないだろうとは分かっていた。
 これは単なる例え話なのだ。私と彼が考えている事はとうぜん違ってしかるべきだ。何もかもを過去に結び付けてはならない。

「でも、私はこの紅茶、けっこう気に入ってるのよ。このチーズケーキも、君が勧めるだけの事はあると思う。本当はチーズケーキなんてあまり好きじゃなかったんだけど、いま食べてみて初めて好きに思えてきたかも。……っていうのは冗談で、このチーズケーキのことは本当の本当に美味しいと思ってる。このお店が出す紅茶も、もちろん好きだよ。でもでも、誰かがそれで不幸になっているからって理由でお店ごと消しちゃえーってのは、私の中にはない考え方だな」

 お店を潰した余波で誰かが不幸になれば、再び彼はその不幸になる要因を排除するつもりなのだろうか。でも、それでは不幸の連鎖が続くだけだ。どこかでそれを断ち切らなければならない。
 そういう意味で言えば、我慢して飲んだか、代わりを持ってきてもらったというそのお友達の意見には賛同できる。もちろん私もそうしただろうし、何だったら飲まずに店から出ていってしまっても好かった。
 けれども彼はそれが間違っているのだと断じた。私たちは根本から違っているのだろう。いや、私たちは違うのだ。だからこそ互いが互いに別々の道を歩んだのではなかったか。

「君はその選択が正しいかどうかが分からないんだよね……? なら他にもし、例えばだけど、今まで誰も選んでいなかった全く新しい選択肢が現れたとして、君はどちらを選ぶ気なのかな……? 君は君自身がそうしようと決意した事を簡単に諦められる?」

 この質問に意味などない。
 彼は自分の選択が正しいかどうかについてだけを悩んでいる。なら最初から間違いだとは考えてはいないはずだ。
 私は悪い人間だ。また彼を試そうとしている。きょう彼に近付いたのは、本当に言葉を交わすことだけが目的のはずなのに。
 彼が今もなお変わらないまま、い続けていてくれるのを確認するだけで良かったはずなのに、こうしていちいち物を試すような口振りになってしまう。
 実を言えばチーズケーキは苦手だ。なのに私は好きだと嘯く。彼の好みに合わせて好きだと嘘をついていた。
 紅茶を口に含むと、残っていたチーズの風味を一気に流し込んだ。この店が出す紅茶だけは嘘偽りなく美味しいと思える。
 他の誰かが喜んでくれるのなら、私は自分の意見を簡単に覆してしまえる。他の誰かが幸せなら、私は私自身の不都合な部分を切り放せられる。

「……いま思えばここでするような話じゃなかったね。お店の人に聞かれたらあまり良い思いはさせないだろうし」

 何だか酷く回りくどい言い方をしてこの店の商品を褒めてしまったものだ。あとで店の人にはフォローを入れておかねば。

>> 御柱 建様

24日前 No.135

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_8aC

【夜縋みかる→ステラ/夕凪第一高等学校 屋上】

 妙な感覚だった。いっそこのまま飛び降りてしまいたいと思うほどの焦燥感に背中を押され、腰かけていた柵から降りようとした。どうせ落ちたって死にやしない。私は、バケモノなのだから。乾いた笑いを口に含んで、ふと真下の校庭を見下ろせば、人影が視界に入る。学校の生徒とは少し違ったシルエットに違和感を覚え、目を凝らそうとしたその時、チャイムは鳴る。それは今思えば、絶望の終焉を告げる音色だったのだ。耳に入ったのは、もう一生聞くことはないと思っていた声。自分を「お姉さま」と呪いのように口走る唇を、塞いでしまいたくて仕方がなかった。

「…………るのん?」

何故、なんで、ナゼ?思考回路が一気にパンクを起こす。私の妹、柔らかな繭に包まれた無知のお姫様。あの日、確かに家族は全員死んだ。哀れにも夜空に呑み込まれ、私は呪縛から解放された。そう、思っていたのに。仮に生き残っていたとしても、こんなに長い年月を幼い彼女が独りで生きていけるはずもない。そこまで考えて、ふと思い当たる。まさか。急速に、冷えた何かが背筋を駆け巡った。固まった身体を無理に動かして、今度こそ柵から降り立ち、もう一歩で地上へ真っ逆さまという場所に佇む。柄にもなく緊張しているのか、呼吸を忘れそうになる。地上に居る彼女の表情は窺えない。それでも、どんな表情をしているかなんて予想がついた。私はどんな顔をすればいいい?「優秀な姉」としての顔?それとも、既に変わり果てた「悪」としての顔?全てを図りかねた私の表情はまるで動くことはなく、ただ無表情に彼女を見詰めた。

口の中に未だ残っていたセレス・コアを噛み砕いて、それと同時に黒い煙が自らの身体を包む。しかしそれは一瞬の霞であり、さあ、と次の風が吹いたその時には、きっと彼女の記憶に残っているであろう「みかる」とは裏腹な、闇に染まった怪物としての【ステラ】が其処に居た。これは賭けだった。彼女が万が一普通の人間として今まで生きてきたのだとしたら、この姿は驚愕に値するものだろう。しかし、彼女がエンジェル・エッグとして生きている場合は、私は明らかな彼女の敵。彼女にとって私は滅ぼさなくてはいけない存在であり、私にとって彼女は何も知らない哀れな邪魔者だ。

「どうして此処に居るのかなぁ……るのん」

唸るように投げかけられた声は想像よりも低く、地を這うような声色をしていた。あぁ駄目だ。前のように優しく笑い掛けようとしても、上手くいかない。それでも無意識に吊り上げられた口角は恐ろしいほど愉快そうに弧を描いていて、背負った落ちかけの夕陽が陰らせた表情は、かくも不気味なものになった。

 あぁ、こんな所で、出会いたくなかった。もう二度と、会いたくなかった。だってきみは、私の中のあらゆる【悪】の根源。嫉妬、羨望、ちっぽけにも思える様々な負の感情との出会いは、きみがこの世に産まれ落ちてから始まった。いつだって、私の背中を追うその足を切り落としたくて堪らなかった。私と手を繋ぐその指をへし折りたくて仕方がなかった。それをしなかったのは、私がまだ光の中に居たから。いつかきっと救いはあると、心から彼女を愛せる日が来ると、信じていたから。だけどもう、そんな日は永遠にやって来ない。闇に堕ちた私には、きみは眩しすぎる。ならば──

「……ねぇ、きみを私のモノにすれば、私は愛されると思う?」

 小さく小さく誰にも聞こえないように呟かれたのは、いつかの本音の残滓。愛されたいと、そんな渇望を零すには遅すぎたし、犯した罪は多すぎた。混乱を極めた思考回路の中で何かがカチリと嵌まった音がする。その音を人は、諦めと呼ぶんだ。私に救いの手は必要ない。だってその腕は、ずっと前からボロボロにしてやりたいと願っていた腕だったのだから。闇は既に自分と同化して、立派な帰るべき場所へとなっていた。突如、その場に膝から崩れ落ちる。わざとらしいほどに震えて顔を両手で覆うその仕草は、姿だけ見れば感動の再会に歓喜の涙を流すようにも見えたかもしれない。

指の隙間から僅かに覗く、光を失った瞳さえ無ければ。


るのん様、周辺ALL様>>

22日前 No.136

灰祢/戒音 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【綾崎灰祢・来栖戒音/桔梗記念公園・ベンチ】

 いつも助けて貰っている。そんな朝音の評価に驚いたのはむしろこっちだった。まぁ、感謝されて悪い気はしないけれど、今更しっくりは来ない。
 思わぬ高評価に若干照れ臭くなったのと、このまま姉弟で喋っていては朝音に気を遣わせるだろうと――事実彼女は何処かに行こうかと言っている――、いったん姉を遠ざけようかと考える。
「……来栖って、母さんの」
 しかし次の瞬間自分の口から漏れたのは、何故か姉の話を掘り下げてしまうものだった。あの人はあの人でこういう場面に他人の目を気にするタイプではないので、目線だけで朝音に謝る。気にしなくて良いから、君は自由にしててください……。

 さて、余りにもナチュラルに名乗るものだから反応が遅れたが、あの人が名乗った苗字は僕のそれとは違った。全く聞き覚えのないものでこそないが、記憶の中の僕の家は、間違いなく綾崎だ。
「嗚呼、別れたのよ。あなたが居なくなって、もう駄目だったみたい」
 さらりと、何でもないことのように両親の離婚を告げられた。子供が行方不明になって両親が別れるなんてよくある話だが、その元凶当事者としてはなかなか複雑な気分だ。
「まぁでも、遅かれ早かれあの人達は別れていたんじゃないかしら……灰祢のせいじゃないわ」
 いっそ僕のせいだと怨み言を言いに来てくれたのならまだ良かったんだけど。思いっきり溜め息を吐きながら、改めてあの人に向き直る。
「別に近況報告に来たんじゃないよね……そろそろ姉さんの目的、教えてくれないかな?」
「あら、決まってるじゃない、あなたを迎えに来たのよ」
 結構な覚悟を持って問い掛けたのに、当たり前だと言わんばかりに返された。
「やっぱり家族だからっていうのが一番だけど……ミューを殺しちゃったから、地元が圧倒的な人手不足でね、流石に一人で侵略者は捌ききれないかな、って。どうせなら姉弟で一緒に戦ってみたいじゃない? あ、お友達も良かったらご一緒に」
 しれっと朝音を勧誘するな。
 いや、問題はそこもだけどそこじゃなくて。
「……ミューを、殺した?」
 何言ってるんだこの人。ミューってあれだろ、あのモルモットだろ、星の使徒のことだろ。それを、殺しちゃったじゃないですよちょっと。姉さんまさかこっち側の人間? いや、そんな。
「えぇ、だってアレは、あなた達の仇でしょう?」
 でも、間違いない。この人の目は、口調は、話の内容は、真実を知っているから出来るものに他ならない。星の使徒のことも……僕等のことも。

「わたしはね、ずっとあなたを探していたの。あなたが消えてしまったその理由が、真実が知りたかった……そのために契約もしたわ、もう一度あなたに会うために。そうしてわたしは辿り着いたの……エンジェル・エッグの末路と、あなたが何故あんなことをしたのかを」
「……知って、た?」
「えぇ、わたしは知っている……その上であなたに戻ってきて欲しいの。あなたの……あなた達の罪はわたしも一緒に背負うから、だから……戻ってきてちょうだい」
 知っていて、僕が何をしたか知っていて、evilが何たるかまで知っていて。この人は、僕を、僕等を、受け止めると言うのか。
 そんなの、信じられる訳がない。いや、たとえ血縁たる僕が信じたとしても、そんな荒唐無稽な話を目の前で展開された、赤の他人の朝音はどうする? いや、この際今それはどうでもいい。僕は――僕は、姉さんを……――?

>朝音様、周辺all

22日前 No.137

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_iR4

【御柱 建/カフェ】

「新しい選択肢……か。魅力的だね。」

 睦の言葉を御柱は微笑む。確かにそう、だれもが憂いなく笑える安全な選択があるというのなら、それがベストなのだろう。もし、そんな方法があれが、

「失望されるかもしれないがね。その場合は僕はあっさり方法を切り替えるよ。僕にとって選択は手段でしかない。大切なのは僕自身の目的が達成されることさ。」

 そういってまた一口紅茶を含む。

「だが悲しいかな、現実は非常さ。そんなベストな方法などありはしない。いや、あるのかもしれないが僕には思いつかないし実行する手段もない。だからこそ、僕はベターな方法を。最善ではないかもしれないが、よりましな方法を取ろうとしているのさ。」

 そう、このままなら不幸の連鎖が続くだけだ。だれかがそれを断ち切らなくてはならない。知るはずもないが、御柱の考えも睦と一致していた。ただ、その考えの終着が異なるだけである。自分以外の何もかもを諦めないために諦めることを選んだ彼女と自分の目的を諦められないために何もかもを諦めようとしている御柱。
 二人はあるいは同質の存在ではあるのかもしれない。だがその視線は、ベクトルの向く先は完全に真逆だった。そういう意味で二人は異なる存在だ。
 だから、

「そういう意味では君と再会できたことは僕にとってチャンスかもしれないね。自分では考えられないこと、自分ではできないことが君とならできるかもしれない。」

 だから御柱も彼女を試す。彼女が彼を試すように。それは、鏡に映った像を相手に踊る舞踏にも似て。

「そうだね。僕がうかつだった。だが、こうして君と考えを打ち明けられたことは僕にとって僥倖だったよ。」

 嘘の笑顔に下にわずかな本音をのぞかせて建はいった。

>>四ツ岡 睦様

21日前 No.138

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=GdbDfc7Ggr

【神之門 朝音 / 桔梗記念公園・ベンチ】

こちらに向けられた灰弥の視線は、なんというか申し訳なさそうなものだった。ここから消えようかと数秒前に聞いてみたが、それに返ってきた答えは全く関連のないものだった。母さん、来栖、と彼の口調からして相当重要な言葉であるのは間違いないようだ。こっから消えても別に特訓以外やることはないし、聞いていくのも一興か。


にしてもこの姉弟の会話には全く入る隙がない、完全な傍観者だった。この2人からすれば赤の他人だしそれはしょうがないが、別れたとかもうダメとか恋愛話を割と躊躇なく人前で話せる姉なのだなと感じた。それとも両親が離婚したのか? それはそれでなんか暗い話しだな。

と、ここまで来てようやく彼女がエンジェルだと分かった。薄々予想はしていたから別に特段驚きはしなかったが、ミューをぶっ殺しただとか地元が人手不足だとか、灰弥(おまけに私)を誘うだとか、理解し難い内容が怒涛の勢いで語られた。

っていうかミューって誰だよ、仇っていうぐらいだからやっぱりエンジェルか? それとも星の使徒なのか?
どちらにせよ、相手がエンジェルなら敬語は使わないで済むな、丁寧語ってなんか堅苦しいから嫌いなんだよね。


どうやら彼女、相当奥の部分まで知り尽くしているらしい。灰弥を見つけるために使徒と契約してエンジェルとなり、どこで知ったかは分からないがそれらが辿る末路さえ理解しつつも、姉は灰弥を迎えに来たそうだ。その罪すらも共に背負ってくれるという心強い言葉を持って。

血縁者の愛情はとことん深いのだなと感心する一方、肉親はおろか育てられた場所さえ存在しない私にはどうでもいいことだった。淡々と無表情で聞いていた自分自身のその姿が何よりの証拠だ。


「生憎、そっちに戻ってもアタシが得することなんてこれっぽっちもないんでね」


当人の弟である灰弥を差し置いて、目を瞑りそう答えた。エンジェル、evil、侵略者、いつでもどこでもバケモノと戦えるこの環境は私にとっては唯一無二の場所だった。今更戻って受け止めてもらう必要はない、というか戻れる場所さえない。だが彼には目の前に自分を追いかけて来た実姉がいる。他人のことをとやかく言う気はない、同じ血を分けた姉弟の事情に首を突っ込むなんてのはおこがましいだろうし。

とりあえずここまで聞いたのだから、灰弥の答えを確かめてからここを去っても遅くはないだろう。閉じていた目をゆっくり開き、彼らの方へと向けた。


≫灰弥様、all様

20日前 No.139

推古 @iwing ★gBSwv0JJyH_APy

【四ツ岡 睦/繁華街の一角にあるカフェ→桔梗記念公園】

「別に失望したりはしないよ。ただ、君は意外と合理的な性格をしてるんだなと思っただけ」

 御柱建は決して諦められない。
 本当に大事なことだけは諦めない。少なくとも私はそう信じている。
 しかし、それを分かっていながら彼を試したのだ。私は心から悪い子だと思う。
 私は彼をどうしたいのだろう。彼に対する怒りや憎しみを捨て去ったいま、この場に相応しい、適した感情があるとすればそれは憐憫か、あるいは冷笑か。
 表面上では微笑みを浮かべながらその実、御柱建が諦められないもののために、彼が堕落することを心のどこかで期待していた。本当に私は悪い子だ。

「……そう、それは良かった。最初は不安しかなかったけれども、こうして君と言葉を交わせられる時間が無駄にならなくて私も嬉しいよ。お互い立場は違うけれど、もし良かったらこれからも懇意にしてもらえると嬉しい……かな。虫が良すぎるのは分かってるつもりだけど、二人のこれからのために手を取り合っていくのは悪くない考えだと思う」

 彼は何も変わっちゃいない。これまで言葉を交わしてきてそれを確信した。
 御柱建は何かを諦める度にその重荷を背負っていくことになる。彼自身が諦められないものの為に、それが足枷となって彼の自由を奪う。
 それはもう呪いのようなものだ。彼はまだそれには気付いていないようだが、私はそれを呪詛のように、彼に対して告げることだってできたし、罪深き罪人を処刑するように彼を断罪することだってできた。
 しかし、私はどこかで彼が彼自身の意志で懺悔をして自らの罪を告白するのを望んでいた。

 それから御柱建が犯した──仲間殺しの──罪について触れることのないまま、他愛ない雑談を交わした後に私たちは、何んとなしに近くの(桔梗記念)公園へと足を運んでいた。

>> 御柱建様

19日前 No.140

ひなしろいと @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=M0yl2dn7WY

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17日前 No.141

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_8aC

【ステラ/夕凪第一高等学校 屋上】

 地上から此方へ向かうことを試みる姿を指の隙間から覗き見て、冴えるような純白に思わず目を見開いた。るのんがエンジェル・エッグとして生きていたことは予想の範疇だった。しかし、その姿は残酷なほどに自分とは正反対の色合い。自分が闇に浮かぶ星だとすれば、彼女は白夜に佇む明星だ。清廉でいて可憐。現実をまざまざと魅せ付けられた気がした。どう足掻いたって彼女の無垢は手に入らない。るのんを所有物にしたところで、私が愛される訳もない。そんなこと、始めから分かっていた。

 タン、とるのんがすぐ傍に降り立つ音がして、演技ではなく身体が震える。心の奥底の劣等感が、ぐちゃぐちゃと掻き混ぜられているかのような不快感。いっそ逃げ出してしまいたいと脳が警鐘を鳴らす。このまま此処に居れば、もう取り返しがつかないことは明白だった。しかしそれに反比例して、表情は自ずと愉悦を描く。ずっと前からとっくに取り返しなんてつかない。ひらひらと自らの胸に舞い落ちた花弁は微弱な魔力を纏っていて、清らかな色をした其れさえも、眩しくて、憎くて、羨ましくて、壊してしまいたくて堪らなかった。ぐしゃりと、花弁を握り潰す。腕の中に伏せた顔で確認したその花弁は、自分の魔力に押し潰されて醜くひしゃげていた。あーあ、残念。欲しかったのに。じゃあもっと大きな、簡単に壊れないものが、欲しい。例えそれが手にすることで光を失うと知っていても、全てが無駄で愚かな行為だと分かっていても。既に私の心身は、奪うことに魅入られすぎていた。

『帰ろう』そう言葉が落とされた。救うように、許すように。その慈悲の心も、優しさも、私には無いものだった。だったら、奪えばいい。きみのパーツをひとつずつ、私のものにして。いつかきっと完全体になれる。皆に愛される、完璧な自分に。夜空だけなんて肩身の狭い場所じゃなくて、宇宙を丸ごと自分のものに出来るような、全てを見通せるような【ステラ】に。

帰る?何処に?家族に?正義に?

────冗談じゃない。

 此方を覗き込んだ彼女の碧色の瞳とばちりと目が合った瞬間、目の前が真っ赤に染まる。星さえも消えた真っ暗闇の夜空の瞳から、流星のように一粒だけ、涙が零れた。突如、爆発したような高らかな笑い声が周囲に響き渡る。地を震わすような絶唱は狂気を交えて何処までも飛んで行く。次の瞬間には、腰元のリボンである”影”が鋭く変形し、刃物として目の前のるのんの腹部を貫いていた。黒に染まった刃が彼女に突き刺さる光景がスローモーションのように流れ、白藍の衣装が鮮やかな深紅に染まるのを嬉々として見送った。

「あははっ……るのん!ごめんね、ごめんなさい!愛してるよ、だぁいすき!ぜんぶ、私のものにしちゃいたい、くらいに!」

両手で覆っていた顔を勢い良く上げて、貫かれたまま宙に浮く彼女を見据え、興奮のままに叫び散らす。その表情は確かに愉快そうに笑みを象っているはずのに、瞳の奥に蟠った怒りや悲しみのせいで、様々な感情が混じり合った得体の知れないものになっていた。大嫌いだった、とそう言えないのは僅かに残った姉心か。否、もう分からないのだ。本当に彼女が憎かったのか、消えてしまえと思っていたのか。肥大した嫉妬心は巡り巡って、いっそ異様なまでの執着心になっているようにも思えた。どれが正解なのかなんて分かりはしない。好意か悪意か、そんなことも判別出来ないほど、人間としての心の機能は死滅していた。

 ”影”に串刺しにされ、ぶら下げるような状態になっていたるのんを柵の内側に放り投げる。屋上のコンクリートに打ち付けられた彼女からはびしゃ、と小気味良い粘着質な血の音が聞こえた。後を追うように柵を飛び越え、るのんの傍に降り立つ。倒れ伏したその姿をまじまじと見詰め、湧き上がるのは悲哀、後悔、歓喜。妙に覚えのある感情だと思った。嗚呼これは、絶望だ。ふと、身体の内が満たされていくのを感じた。狂乱に陥りそうなほどの高揚感に頭を抱えながら顔を愉快そうに歪める。どくどくと、脈打つ鼓動が鮮明に感じられて、ここ最近では滅多になかった激しい生命感が脳内をアドレナリンで埋める。情動に揺すられる、生きていると感じる、逃げ場のない感情が喚く。

もしかすると私は、ずっと絶望が欲しかったのかもしれない。

「ねぇ、これで御終いじゃないでしょ?私を、傷つけてよ……それがるのんには出来るんだからさぁ!」

挑発するように言葉を投げ掛ける。自らを小さくしていた魔法を解いて、本来の身長へ戻る。銀髪が落ちかけの陽を反射して靡いたその時、”影”が右腕を包み込み、瞬時に霧散する。闇から解放された右手には月を模った身長よりも大きな杖が収まっていた。其れを彼女に向ければ、しゃらん、と場違いなほどに軽やかな音色を装飾の星が奏でる。杖の先に存在する三日月のオブジェに囲われるように浮く自身のセレス・コアを連想させる黒い宝石が鈍く光を放ち始めたと思えば、忽ち先端にはバチバチと火花を上げる惑星のような魔力エネルギーから為る球体が出来上がった。安らかな夢さえ塗り潰す、悪夢でさえも敵わない絶対的な暗黒。今すぐ其れを放ってしまいたい衝動を抑え付けながら、最後の忠告を紡いだ。

「じゃないと私……きみのぜぇんぶ、奪っちゃうよ?」

そう告げたステラの表情は、恐らく今までで一番純粋で楽し気で、偽りのない笑顔だった。



るのん様、周辺ALL様>>


16日前 No.142

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_iR4

【御柱 建/桔梗記念公園】

 日々の生活に危険が混じると人々は享楽的な刺激を求めるのだろうか。澄んだ美しい湖や派手ではないが健気に咲いている花に彩られて公園にはほとんど人の姿はなかった。わずかにいるのは散歩の途中であろう老人と一組の男女。
 これが逢引きならば良いムードなのだろうが生憎とそういう気分ではない、空を軽く見上げながら建はぼんやりと考える。
 そういえば、昼間の空を見上げるのはいつ以来だろう? いつからか、彼にとって空を見上げるのは夜が定番になっていた。無限の闇に煌めく星星、そして大きな月。彼が見上げるのはそうした空だった。日陰の身の自分としていわゆるお天道様に顔向けできないというやつなのか。
 などと考えて少し皮肉げに唇を歪めてしまう建。そして、そんな彼に睦の暖かな言葉がかけられる。

『「……そう、それは良かった。最初は不安しかなかったけれども、こうして君と言葉を交わせられる時間が無駄にならなくて私も嬉しいよ。お互い立場は違うけれど、もし良かったらこれからも懇意にしてもらえると嬉しい……かな。虫が良すぎるのは分かってるつもりだけど、二人のこれからのために手を取り合っていくのは悪くない考えだと思う」』

 その言葉のなんと暖かなことか、まるで極寒の身に差し出される一杯のスープ。あるいは、乾ききった喉を潤す水の一滴か。それは、堕ちた身でありながら、己の罪を自覚するものが恋焦がれるもの……許しであった。

「そうだね、そうすることもできるだろう。君と手を取り合い正しい道に、日の当たる道にできる選択も僕にはできたかもしれない。いや、今からだって遅くないのだろうね。」

 仮に自分が罪を告白し、許しを請うたとしたらどうだろう。彼女は建を軽蔑するかもしれない。彼に恐怖するかもしれない。だが、それでも長いときはかかるだろうが彼女は彼を許してくれるだろう。

「僕はね……咎人なんだよ。かつての仲間を裏切り、消し去った。それだけじゃない、名も知らないエンジェル・エッグをそしてevil達を葬り去ってきた。自分の目的のためにね……」

 彼は自分の罪を懺悔する。誇るでもなく、淡々とそれはまさに神に懺悔する罪人にも似ていて。しかし、

「だが僕は君に、いや誰にも許しは請わない。……別に罪人が許されていいはずがないなんて話じゃないよ? 僕はね、僕のために罪を犯した。自分自身のために人を傷つけたのさ、それは僕の決断であり意志だ。それに対して許しを請うことは、自分自身を否定することだ。僕は別の手段があればあっさり乗り換えるような見境のない男だけどね……自分の過去をなかったことにするほど女々しくはないよ。」

 その表情は、すべてを睥睨する魔王のようでもあった。

>> 四ツ岡 睦

15日前 No.143

灰祢・戒音 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_iR4

【綾崎灰祢・来栖戒音/桔梗記念公園・ベンチ→裏門】

「僕、は」
 姉からの問い掛け、戻ってきて欲しいという懇願。何もかも知って尚、あの人は僕を受け容れると言う。みんなを殺した僕を、他にも沢山の命を奪ってきた僕を。本当に全てを知っているのか何て確かめようがないけれど、それでも構わないと、彼女は言う。
 僕は、許されたいだなんて思ってないのに。赦して欲しいと願うことは、それが罪だと受け入れることなのに。みんなを殺したのは悪い事だと、僕自身が認めることなんて、決して出来ないというのに。たとえあの時、逃げるように街を去ったのが事実だとしても。
「姉さん……僕はね。別に姉さんが僕のことを受け容れてくれなくたって構わないよ。許さないと詰ってくれて構わないし、軽蔑してくれてもいい。ふざけるなって怒ってくれてもいい。僕は僕の大切な仲間たちが汚されずに、一緒に居れたらそれだけで良かったんだ……それは、何処に居たって変わらないよ。この街でも、あの場所でも、姉さんの隣でも、そうじゃなくても。だから姉さんが、僕のためを思ってそんな世迷言を言っているのなら、今すぐ止めて欲しい。星の使途は間違いなく害悪だから、ミューを殺したのは正しい選択だと思う。それを咎めるつもりは欠片もないしむしろ賞賛したいけど、僕の為だなんて言わないで欲しい」
 それは拒絶に聞こえただろうか。事実としてはあの人はそんなこと一言も言っていないから、憶測と自惚れでしかない言葉の羅列を、肯定してそう捉えるならそれまでだ。

 嗚呼、けれど。あの人は変わらず微笑っている。

 チラリと朝音の顔を見遣る。他人からの勧誘にあっさり乗るような少女ではないことは十分承知の上だが、断った上で尚ここにとどまっているのは、きっと僕の答えを待っているのだろう。
 一つ、息を吐く。あの人がそれを、否定すると言うのなら。
「けれど……これが単なる姉さんからの頼みだって言うのなら……別に僕に断る理由はないよ」
 地元が人手不足だから手伝えと、要はそういうことなんだろう、と。どだい弟なんて言う存在は、姉の命令には逆らえないようにできているものだ。それくらいの気軽さなら、別に戻ったって構わない。さっきも言ったように、基本的に僕のスタンスは何処に居たって変わることはないのだから。
「そうね……有り難う。朝音さんも……今日は突然ご免なさいね、近いうちに、お礼はさせて頂くわ」
「悪いね、変な茶番に付き合わせて」
 偶々そこに居合わせただけの朝音を巻き込んでしまったのは正直申し訳なかったと思う。だから最後に謝って、一旦僕らはその場を離れることにした。

 そうして足の向くままに歩いて、辿り着いたのは人気のない公園の裏門だった。辺りには僕達二人しかいない、と思う。少なくとも、見える範囲に人影はない。だからか、あの人は突然、結構大胆なことを言い出した。
「ねぇ灰祢……私、あなたが変身するとどうなるのか見てみたいのだけれど駄目かしら? 知ってはいるけれど見たことが無いから気になってたのよ」
「……これから嫌って言う程見れる気がするけど……別に良いけどさ」
 あの姿も嫌いじゃないし。
 一瞬、辺りに銀灰色の光が満ちる。それが消えた時、そこに在るのはよくいる男子高生の僕ではなくて、童話のお姫様のようなあたし。
「……やっぱり今でも好きなのね、シンデレラ」
 綾崎灰祢の闘病生活を知る家族は、合点が言ったように呟く。そして。

「……そう、最期くらい、理想の……あなたの大好きな、綺麗な姿で」
 刹那、もう一度世界が光に埋め尽くされる。見慣れた焦げ茶の髪もセーラー服も消えて、銀色の髪とミントグリーンのスカートが風に揺れていて。
「ご免なさい。こうするしか……こうするしか、なかったのよ」
 謝罪と同時に響く鈍い音、遅れてやって来る鋭い痛み。
「姉、さ……ん?」
 姉の手に握られたレイピアは、一瞬で体を貫いて。白いドレスが、赤く、染まった。

【朝音様絡み有難うございました。無理矢理ぶった切った感満載で申し訳ありません……そして綾崎姉弟の一人芝居も佳境に入っております……まだ灰祢は死んでません。特に公園組からの反応がなければ14日に改めて〆レスを上げますのでよろしくお願いします。】

>朝音さま、周辺ALL

15日前 No.144

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/高坂百貨店内のカフェ】

「近くにカフェあるんだけど、行かない? そこでゆっくり話そう!」
「わかったよ、あそこのカフェも結構好きだからねぇ……」
美里の誘いに乗った優里はともにカフェへと向かうことになる。
だからカフェに向かっていったのだ。

――――――
――――
――

「あたしはこれにするわ! あんたは?」
「シフォンケーキでいいかな〜」
テーブル席に座り、カフェでメニューを見ながら商品を選ぶ二人。
ここだけ見ると何気ない女子中学生同士の会話である。実際はもっと切実なのだが。

「んじゃ決まり! 注文してくるね!」
「じゃあ私、トイレ行ってくるね……」
商品をカウンターへと駆け出していく優里と『トイレに行く』と言った美里。
優里がこちらを見ていないことを確認した美里はトイレのほうに歩いていく。しかし本当にトイレに行くわけではなかった。

(やるしか……ないのかな……)
夜桜美里の本当の目的は『足立優里の殺害』
しかし二人は仲の良い友人同士であり。殺すことはとてもできないだろう。
ならば何故やろうとするのか? それについては人目のつかない場所に隠れた美里の口ぶりから、恐らく何かあったのだと推測される。

「……!!」
「! ……なに!?」
声を殺しつつ、カウンター前にいる足立優里の横に斧を生成し、飛ばす。
優里はすぐに気づき、身を翻して避けた。店内はもう大騒ぎだ。

(今の……やったのは美里?)
優里は考えた。
この飛んできた斧は恐らく魔術によるもの。しかしそれだけでは美里だと決めることはできない、他にも同様の能力者がいる可能性があるからだ。
しかし、速度があまりにも『遅すぎた』
相手が本気で自分を殺す気なら、もっと勢いよく飛ばしてきたはずだ。
そうなると、これをやったのは知っている限りでは夜桜美里ただ一人しかいない――――

「取っといて! 後で食べるから……」
店員にそう言って、美里を探す優里。
見つけたら事情を聞こうと考えていた。

「ねぇ、あれやったのあんたでしょ? 『殺そうとしたけどできませんでした』って感じだったよ」
「うん…… でも、『知りたいことがある』からそこは本気だよ」
「わかったよ。じゃ、屋上行こう? ここじゃみんなに迷惑かかっちゃうからね」
美里を見つけ、問い詰める優里。
そして二人は屋上に行き、戦いを始めようとしていた――――

>周辺all

15日前 No.145

ひなしろいと @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=M0yl2dn7WY

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14日前 No.146

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=E6eAzvh41c



【 氷毬翠晶 → 翡翠 / 夕凪高等学校付近→屋上 】





 近頃は安息の日々に肩を撫で下ろしていた。同胞の激変と別れだって人伝いに聞く程度で自分自身はその場に居合わせて居ながらもなんの活躍も出来ない毎日が続く。が、それでも構わないと翠晶は思う。エンジェル・エッグとしての翡翠≠ナはなく、氷毬翠晶≠ニして、何ともない平穏な街の中をぼんやりと道なりに沿って歩みを進めていれば、高い位置で括られた黒髪とスカートのプリーツが爽やかな風に靡く姿が見えた。彼女等は甘酸っぱい思い出と、青春を抱えながらいつも通りといった様子で学門をくぐり抜ける。何も知らずに、笑顔で日常生活を謳歌出来る。それが出来ない身にしてみればその姿を見ることすら酷で仕方がないのだ。エンジェル・エッグとしての姿とは対照的なまでに黒々とした長い髪の合間から覗いていた羨望の眼差しをそっと逸らし、歯で下唇を噛み締める。あの子との記憶が過ぎる度に吐き捨てきれない何かが体内を巡ってどうしようもない気分にさせられる。その一環としてこうして唇を噛んでしまうことがいつの間にか癖になってしまった、なんて恥ずかしい話だ。


「はやく治るといいな」


 舌に伝う鉄の味は毎度のように吐き気を催す。それをぐっと堪えて、生唾を飲む。この行為に意味なんてない。癖なんてものも実は自分がそう思っているだけで実際にはそんなに気にすることでもないのかもしれない。が、それを判断することも自分一人では叶わない状態にある限りは決して治ることもないだろう。そう理解していながらも口先では思ってもみない言葉が意図も容易く言えてしまう。嗚呼なんて馬鹿らしい。そう思いながら翠晶が他人事のような口調で呟いた言葉は突如として響き渡った笑い声によって掻き消された。
 はじめは何事かと驚いたが、その声にはよく聞き覚えがあるものと似ている気がする。





「………………ステラ?」


 否、まさかそんな訳がない。自分の口から零れ落ちた名前に自分自身でも信じられないが、あの声音は確かに闇夜を統べる彼女のもので違いないという根拠のない確信も僅かにあった。ゆえに、その答えを明らかにすべく翠晶は笑い声の聞こえた方向へと急いだ。


 暫くして辿り着いたのは良く見覚えのある建物だった。一応確認の為に札を覗けばご丁寧な文字で夕凪高等学校と書かれていて、思わず溜め息が漏れる。偶然か、必然か。此処は翠晶の通っている高校だったのだ。とは言ってもこの学校自体には何の思い入れもないただの箱に過ぎない為、そこまで大きな動揺はなかった。それよりももっと翠晶を驚かせたのは何故この場所に二人のもエンジェル・エッグが存在しているのかということだ。微量ではあるが変身していなくても感じ取ることの出来る魔力の根源は二つ。一つは翠晶の予想があっていれば恐らくステラのもの。あとの一つは、今までに感じ取ったことはないものだ。その二つが目と鼻の先に存在しているのならば間違いなくお互いの存在に気付いて、何かしらのアクションを起こしているはず――。そう考えた時に合点がいったのが先程、聞こえてきた笑い声だった。
 何だか嫌な予感がしてきた翠晶は念の為にと自身の太腿に巻き付けられた包帯を解き、そこへ嵌め込まれている翡翠色のセレス・コアに触れる。これが氷毬翠晶≠ゥら翡翠≠ノ変身する時の合図。頭上から降り注がれる優しい雨は次第に翠晶の身体を包む。水中で舞うように身体を動かすとそこに植物が絡みつき、光を放ちながら植物は衣服へ変化する。堂々と靡かせた長い髪は漆黒から銀色へと変貌し終えたら緑のエンジェル・エッグ、翡翠の完成だ。変身を終えると静かに校門を潜り抜け、建物の内部へと歩みを進める。最中、校庭に見えた真っ白な少女と対峙するかのように屋上に佇むステラの様子を見えると一層駆け足になる。その背景では二人のエンジェル・エッグのいざこざが起こっていることを肌で感じ取る。多分、自分がその場に居合わせても何も出来ないかもしれない。もしかしたら、ステラのお遊びかなにかかも。今はただそう信じたくて、魔法に頼ることすらも忘れて息を切らしながらステラの居る屋上を目指し、必死に階段を駆け上がる。



 あとすこしのところまでやってきた時に翡翠はあることに気付かされ、屋上へ続くドアノブに掛けた手が動きを止める。大量にあったはずの魔力が弱まっている。それも、ステラのものではなく、あの白い衣を纏ったエンジェル・エッグのものだろう。それで何となく察しがついた。嗚呼彼女も又、ステラの敵に過ぎなかったのだろうと。それだけなら良かった。前にもこんな現場は嫌という程居合わせて来たし、翡翠がそうすることもあったから驚くこと何もない。だが、今回は違った。翡翠には確かに聞こえたのだ。小さく、か細い声で微かにではあったがステラのものではない声が『お姉ちゃん』と呼んでいるのを。


 彼女には翡翠やほかのevilたちとは別に、大事なものがあったのだろうか。唯一無二で絶対的な力を持って堕ちたエンジェル・エッグを統べる王(リーダー)――ステラ。その存在は宇宙のように広大で、美しいけれど時に予想がつかない言動が酷く恐ろしい。そんな貴女は何を『大事』に思い、何にそれほど『心惹かれ』、何を最も『恐れる』のか。エンジェル・エッグの中でも翡翠はステラの傍に居る時間が長い方だけれどこの疑問に正解が得られることはなかった。否、きっとこれからも変わることはない。我々のリーダーはこれからも壮大な宇宙のように謎だらけな存在のまま、誰にもそれを明かすことはないのだろう、と。
 そう信じていたのに。



「……だめだよ、そんなの」


 ドアノブを捻り、扉を開いて見えたは血に染まりかけた真っ白なエンジェル・エッグを抱えるステラの姿で。それを拒絶するかのような一言を誰にも聞こえないほど小さく囁かれる。伏せ目がちな瞳に光は宿っていない。仄暗い視界の中心に恋焦がれる黒色があるのに今は少しも心が踊らない。ときめくことが、ないなんて。一度壊れかけて、貴女に治してもらったはずの心にまた小さな罅が入った音がした。冷たくて、耳障りで不愉快な音だ。翡翠は一瞬だけ下を向き、再び下唇を噛みそうになる衝動を抑えつけてからステラと真っ白なエンジェル・エッグの方を見遣る。その内情は嫉妬や怒りなんてものでは片付けられないものへと肥大し始めたことなんて知らん振りをして、よりリアルに『心配』している表情を貼り付け、固唾を飲んで見守ってる風を装う。これならステラにだって見抜かれることはないであろう。そう踏んだ翡翠は少し離れた場所から二人を見守った。

>>ステラ様、ティアー・ドリーム様、周囲おーる




【こんばんは。終盤ですが夜縋姉妹が可愛くて可愛くて仕方がなくって少しですが絡ませて頂きました。無論、邪魔はしないように黙ってその場に居合わせているだけなので拾いようがなければ空気のように扱って頂いて構いません。
 極僅かな期間となりましたが絡んで頂けたら嬉しいです。宜しくお願い致します!】

14日前 No.147

軽トラ @bondance☆.KYUGAZIaLG5 ★iPhone=56DCpCRd5M

【占部いとし・祥鳳優/空き家→桔梗記念公園沿いの歩道】

 埃と時間だけが無意味に積層した空間。
家具や食器などはそのままに在りながら、茶褐色に変色して枯れた観葉植物が、この空間の空虚さを表している。カウンターに生気なく伏しているのは住人である占部いとし。上体を半分ほど預けて、あとはくたりとぶらさがるように高いスツールに腰掛けていた。どろりと濁った眼は中空を見つめ、足りない頭を巡らせてルイン──もとい、イヴ・ホワイトと化した彼女の事を考えていた。
(あのとき確かに、セレスコアの消失した反応があった。ならば、いずれ、きっとわたしも。)
 表情に生気は一欠片も無く、光の入る隙もない頭の中でぐるぐると自分の末路を思っていた。
(怖い? 今更、わたしは──わたしは、)
 考え込むのもあまり良くないとでも思ったのか、短いため息の後に瞼を閉じたその時、からんからんとドアベルが鳴る。この空き家に来客とは珍しい、と対応のため気怠げに体を起こす。
──さて、過去に囚われ、悪夢のような罪悪感に常に苛まれている人間が、

「──やっと、会えたね!」

数年前に自分が殺した筈の人間─こいびと─の姿を見て、果たして正気でいられるだろうか。
 ふわりとほほ笑む姿は確かに見たことがあって、吹く風に揺れる髪はいつかの日を思い出す。心臓が早鐘を打ち、瞳孔が開く、口はぽかんとあいて「あ……あ、あ。」などと嗚咽にも、喃語にも聞こえる意味のない音が漏れる。
 祥鳳優、ここ元喫茶店の店長である彼女こそ、ドロシーがevilと呼ばれるようになった最大の理由。聞きたいことはいくらでもあるのに、しかし口はまともな音を出さず、こみ上げる疑問を押し退けて涙が溢れていく。

「てん、ちょう……?」

────────────────────

 いとしは泣き腫らして真っ赤になった目を濡れタオルで冷やし、その傍らで優はあやすように背中を撫でている。

「ふふ、落ち着いた? 気分転換にちょっと外でも歩きに行こうか。」

 いとしの表情は完全に恋する乙女のそれであった。勢いよくこくこくと頷いて、じゃあ、と二人で空き家を後にする。

──積もる話は有り余りすぎて、「この辺も変わったね」だとか「みんな元気にしてます」だとか、そんなたわいない会話ばかり。しかしそれでさえ愛しいと顔を綻ばせる二人。幸せの空気、のどかな季節は、凍てついた少女の心を薄紅に色づかせる。そして少女は思う、これが夢なら覚めないで、と。使い古された陳腐な願いを。

 不意に前方から発した乾いた音に、二人の注意が向く。優は「ちょっと待ってて」とだけ言って車道に落ちたペットボトルを拾って、

「そこのお兄さん! 落とし物してますよー?」

 などと冗談めかして言う。笑顔こそ爽やかだが、優はそういった行為を看過できない生来の性質のために何度かトラブルに巻き込まれることもあった。一方のいとしと言えば、ほとんど知り合いなどいないはずであるのに男性に見覚えを感じるので、訝しげな視線を向けていた。

>誘衣実加様、周辺ALL様

【フォースも終盤ですが突然の絡み失礼いたします……!】

13日前 No.148

推古 @iwing ★gBSwv0JJyH_APy

【四ツ岡 睦/桔梗記念公園】


 涙が頬を伝って流れる。
 その涙は私を驚かせた。

「いいじゃん、別に。『ごめんなさい』って謝れば済む話なんだから──……」

 知らずに語気が強くなる。
 かつての私も本来なら"御柱建が諦められないもの"を持ち続けているはずだった。
 でも、過去に一度だけ、エンジェル・エッグになるのと引き替えに、その"大事なもの"を捨ててしまった。
 それは、たった一度のことだけど、絶対に捨ててはいけないもの──私の場合、それは両親からの深い愛情だった。

 仲間のエンジェル・エッグを亡くした時にだって、彼ら彼女らの面影を記憶から消し去らせている。

 私は本当に守るべきもののためになら"諦めてはいけないもの"を簡単に捨てられた。

 自分とはまるで正反対の、諦められないものの為に抗い続ける彼の在り様が胸に突き刺さる。
 だからこそ今ここで私は決意をした。

「本当はもう少し楽しむ予定だったのだけれど、思いのほかオモシロいものじゃなかったから」

 エンジェル・エッグへと変身を遂げる。

「話と違うって思ったでしょ? でも私は"エンジェル・エッグとして"君に協力するとはひとことも言った覚えはないよ」

 シスター風のコスチュームを身に纏い、セイブルが現界を果たす。

「"星の使徒様"の名においてアナタを裁きます」

 瞳を潤わせながら──彼にとって禁断のワードを出していることも気付かずに──武器を構えて彼と対峙した。
 これは彼がエンジェル・エッグに変身しなければ意味のないものだ。だから私は彼を待った。


>> 御柱建様


【急いでいるとは言え話が前後してしまって本当に済みません──もしスレ主様に怒られるようなことがあれば全ては私の責任です──。ともあれ時間も時間ですし次で終わらせちゃって下さい。確レスで大丈夫です。短い期間ながらも思ったより濃密なやり取りができて個人的には良かったです。次のレスから他の人に絡みに行くか、そのまま〆とするかは弘樹様のご判断にお任せします。ちなみに睦はこのレスで最後になると思います】

13日前 No.149

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=GdbDfc7Ggr

【神之門 朝音/桔梗記念公園・ベンチ】

灰弥の答え、evilと呼ばれる組織に属している同族とは言え、彼の言葉に対して私が一々口出しの出来る身分ではないのは確かだろう。姉弟だから、家族だから、人手が足りないとか、良くある理由かも知れないけど、同じ血を分けた姉弟ならそれぐらいの気軽さで向こうへ行ってしまったとしても普通の事なんじゃないかな。

彼の答えに耳を貸し続けた後、そう…と簡単に掻き消されそうなほどの声で呟いた。後日お礼をさせてもらうという言葉と、謝罪の意を残してそのまま彼ら2人は消えた。公園の裏口へと足を運ぶ彼らの後ろ姿に向け、見送るように小さく手を振った。

「お礼、ねぇ…」

菓子とかお金のような形だけのお礼なんか必要はないだろうし、どうせ向こうに付いたのなら、あの2人とも戦ってみたいもんだ、今度会ったらそうやって言ってみるのも悪くないね。いや、強いエンジェルの情報ってのも良いかもしれない。いや、人手が足りないって言うぐらいだしそっちの情報を持っているとは限らないかも。
いつの間にかベンチに横たわり、仰向けで空を見上げながらそう考えていた。


少し時間が経ったところでようやく起き上がり、ついでにベンチへ沈み切っていた重い腰をよっこいしょと老人の様な合いの手を入れつつ持ち上げ、ゆっくりと立ち上がった。

「…って、最近のこと引き摺ってばかりでもしょうがないし、切り替えついでにそろそろ左腕の魔力を補給しとかないとね、第四段階に到達するのなら万全の状態に越したことはないだろうし」

この時間帯になると人気も少なくなってきているようで、彼女のおかしな独り言を怪訝な顔して聞く者誰1人としていなかった。左の袖だけが優しい風を浴びて揺れる、本来の人間ならこの揺らめきと一生面を向いて歩まなければならないのだろうが、お生憎様だ。時間はかかるが左腕が戻ってしまう所は常人離れしているエンジェル・エッグの特権だ。

だが、これよりも更に先がある。この絶望の更に果てにまだ強大なチカラがある。常人離れなんて言葉じゃ片付けられないものが。と、そこで一息ついて、公園の正門へと歩き出した。道中ふと後ろを振り向いたが、もうどこにも灰弥達はいなかった。

≫all様

【こちらこそ、姉弟がどうなるのかという一端に触れる事ができてとても感謝しています、絡みの文ありがとうございました。】

12日前 No.150

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/高坂百貨店屋上】

「……さぁ、始めるよ!」
「うっ……!」
足立優里がぐっ、と踏み込み、そして一気に駆け出す。
それを見た美里もあまりの速さに一瞬たじろぐが、動きを読めていたためなんとか回避することが出来た。
屋上で始まった二人の戦い、それは秘密をめぐってのことだった。
お互いに全力だ。少しでも油断していればすぐ負けてしまうだろう――――

攻撃を回避した美里は、そのまま距離をとり無数の斧を生成する。
そしてそれを勢いよく飛ばす。飛ばされた斧は地面に鋭く突き刺さっていく。

「爆速! はぁっ!」
能力でそれをかいくぐり、美里に急接近し回し蹴りをお見舞いする優里。
ここからは近接戦だ。美里も斧を振り回して迎え撃つ。
斧と剣の応酬だ。

「今日はいつも以上気合入ってるわね……!」
「秘密もあるけど、あなたを倒さないと、パパやママが殺されちゃう……!!」
「えっ……!? じゃああたしと戦ってる場合じゃないでしょ!? 早く助けないと……」
(今だ!)「でやぁぁぁ!!」
「うわあああっ!」

近接戦のさなか優里が不意につぶやいた言葉に美里が反応。
その言葉に一瞬たじろぐ優里。そこを美里に突かれてしまった。
鋭いパンチにより、優里は大きく吹っ飛ばされる。

「……無理だったよ。結界壊せなかった」
そして美里が優里に声をかけた。

>周辺all

12日前 No.151

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★Tablet=iiKTVigSmi

【ステラ/夕凪第一高等学校 屋上】

 倒れ伏したるのんから投げ掛けられた言葉にぴたりと動きが止まった。『愛してる』明らかに自分の歪んだものとは違う意味で放たれたその言葉に、脳が茹だつような感覚がする。愛してた?父も母も、私のことを?【愛】、あれが、今までのあれらが全て、愛だと言うの?理解が、できない。ショートを起こす脳回路で思い起こされるのは苦々しい記憶。ひたすらに【理想】を求めて奮闘していた。

ある日、子供が母親からお人形を貰い、それを大切そうに抱き抱えたのを見た。可愛らしい人形は、誰からも愛されるように造られていて、ふとそれが欲しいと思った。衝動のままその子に近付き、人形へ手を伸ばす。次の瞬間私の頬は赤く腫れ上がっていたことだけが鮮烈に記憶に残っている。あの時私は欲してはいけないのだと知った。それが両親の【理想】なのだと錯覚した。それは、間違いだったのだろうか。それを確かめる術すらも、もう残ってない。乾いた笑いばかりがこみ上げるのが何だか虚しくて、口を噤む。真紅の花を腹に携えて、るのんは縋るように、まだ私を救えると信じて、必死になって言葉を紡いでいた。嗚呼、なんて健気なんだろう。昔からこれが羨ましくて妬ましくて、この子が存在するだけで、私は自分のことを惨めだと自覚するようになった。

「なにそれ……あは、今更すぎて笑っちゃう……」

胸に蔓延る焦燥感が忙しく鼓動を打ち鳴らす。ぎり、と杖を握る手に無意識に力が篭った。それで、そんなもので私を救えると思っているのがいっそ憎い程に腹立たしい。本当に無知で愚かな私の妹。もうとっくに分かっているはずなのに。自分が救うに値にしない人間にまで堕ちているいるということ、もう彼女が知っている"姉"ではないということを。そんな残酷なまでの優しさが、私に牙を剥く前に摘み取ってあげよう。すべて奪ってやろう。そうすればぜんぶ、終わるんだから。

 そう考え構えた杖を持ち直し、踏み止まる足を動かそうとしたその時、ふらふらと覚束無い足取りで彼女が立ち上がる。今まで向けられたことなどない強い眼差しに目を見開くと同時、自分の腕は白に包まれた手に引かれていた。その手は、杖を持つ方の手で。暗黒は白藍を心の臓から侵食し、驚くほど静かに取り込まれていく。

「るのん……?」

ゆっくりと、後ろに倒れていく身体が見えたと思えば、反射的に腕が伸びていた。がしゃんと放られた杖がコンクリートに叩きつけられ、煩い音を立てる。酷く驚いた表情を浮かべる彼女の顔が目の前にあった。苦しそうに荒く呼吸をする彼女を目の前にして、言葉が出てこない。ガチガチと歯の根が噛み合わないのを感じながら、なんで、と小さく唇だけで呟いた。しばらくして、これが彼女の慈悲なのだと察した。闇に落ちた愚かな姉にこれ以上罪を重ねさせまいという、正義感と慈愛に満ち溢れた行為。こんな罪ひとつで移ろうことはないほど、もう自分は罪を犯し過ぎているというのに。最後の最期まで、人の劣等感を掻き回してくれると、彼女の背に回した手を握りしめた。

 手を伸ばすのは、彼女のセレス・コア。自分とは真反対の綺麗な白藍色をした其れは、持ち主の生命力が弱まった今、鈍く光を発していた。反射的に握り潰そうとして、その手を止める。数秒のようで数時間のような一瞬、俯き唇を噛んだ。そして決意したように顔を上げ、生死を彷徨い虚ろな瞳をした彼女を見詰め、ゆっくりと微笑んだ。それは、以前と変わらない"姉"としての、"夜縋みかる"としての笑顔。きっとるのんが待ち望んだ、彼女の【理想】としての私。彼女が私に与えた慈悲には、とびっきりの偽りで返してやろうと思った。これが、夜の支配者が見せる、最初で最後の夢だ。そっと口を開く。

「おやすみなさい、るのん。起きたらまた遊ぼう? 大丈夫。姉さんが、側に居るからね」

「────ゆっくり、お休み」

血に染まった頬を優しく撫でて、繊細な壊れ物を扱うように抱き締める。そのまま崩れ落ちるようにその腕の中に彼女を抱え、座り込んだ。

 唐突に響いた急いた足音にふと顔を上げれば、少し離れた場所に見覚えのある、しかしこの場にて一番出会いたくなかった人物が佇んでいた。心配そうな表情で此方を伺う彼女を呆然と見詰め、いつものようにへらりと笑おうとするも、出来ずにくしゃりと顔が歪む。

翡翠が望むのは【ステラ】だ。掴み所なく、飄々としている、無慈悲な救世主。その【理想】を叶えてあげられなければ、彼女は壊れてしまう。崇拝していた対象が、こんなにもちっぽけで無力な嫉妬と羨望の成れ果てだと知ったら、失望するに決まっている。完全にならなきゃ。完璧に、ならなきゃいけない。それが【ステラ】なのだから。

そう自分を奮い立たせ、もう一度いつものステラとして笑かけようとした。しかし、ぎゅっと握り込んだ硬い感触に一瞬意識を奪われる。それは握り締めたるのんのセレス・コアで。途端に膝の上に乗った重さを自覚する。項垂れかかるるのんにゆっくりと視線を向けた時、自分の中の何かがぱきりと折れた音がした。

「ひ、すいちゃ…………」

彼女の名前すらも言い終わらぬ内に、ぽろり、と涙がひとつ落ちる。一度落ちてしまえば追うように次々と溢れる涙が止まらなかった。それは恐らく、翡翠にとって初めて見るであろう、"みかる"としての涙。るのんが憎かった。大嫌いだった。でも羨ましくて、欲しくてしょうがなかった。彼女と同じように愛されてみたかった。スポットライトの力を借りなくても、自ら輝ける星になりたかった。そんな穢い欲望で、この純白を殺めてしまった。きっと彼女は最期まで、『みかるのため』に存在していたのに。

私に最初から必要だったのは、お人形を奪う強い力でも、自分で人形を買う財力でもなくて、ただ一言「貸して」と優しく声を掛ける勇気だけだったのだ。

耐え切れず、両手で顔を覆う。醜い今の自分を、翡翠に見られたくなかったから。支配者でも悪のリーダーでもない、ただの16歳の少女が、小さくその背中を震わせながらすすり泣いていた。

るのん様、翡翠様>>

10日前 No.152

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_iR4

【御柱 建/桔梗記念公園】

 彼の言葉に涙を流す睦を、建は穏やかな目で見ていた。
 自分と彼女、どこが違うのか、あるいは二人の道はどこで違えてしまったのか。
 仮に、あのイブ・ホワイトによる時間の巻き戻しという提案が実行されたなら、自分と彼女は道を違えることなく手を取り合って進んでいくことができたのだろうか。
 否、そうはならないだろう。結局のところ、彼と彼女がこうなってしまうのは避けられない必然。なんどやり直そうと、なんど時計の針を戻そうと同じ結果に収束してしまうだろう。だからこそ、時計の針を巻き戻すのではなく時計そのものを破壊しなくてはならないのだ。

「残念ながら、謝れないんだ。僕は謝罪しなきゃいけない人々はもうこの世にはいない。そして、もっとも謝罪したいのが自分自身に対してだから……僕自身が自分の謝罪を受け入れられないのさ。知っていると思うが、僕は傲慢な男だからね。」

 結局彼にできたのは、皮肉気に双眸をゆがめて彼女を見ることだけだった。
 純白のシスター服のようなコスチュームは彼女の静謐な雰囲気に似合ってはいた。ミステリアスな青紫色の髪、その口もとに浮かぶ微笑み、そして何よりその瞳。うるませた瞳の中に宿るその空虚こそ、まさに神に仕える身にふさわしい。
 不遜なことを考えつつ、建もその身を変える。もっとも、彼女と違って彼は武器を構えることをしなかった。いや、その両腕を振り上げさえしない。建は彼女を真っ向から見つめると、口を開いた。

「そうか、君と手を組むの言うのは魅力的な話だったんだけれど残念だ。掛け値なしに本音でね。一応言っておくと、僕は楽しかったよ。ありがとう。」

 これはあるいは彼の漏らした数少ない本音なのかもしれない。だからこそ、これほど長くの間彼女と語らっていたのだろう。だが、今の彼は必要とあればその楽しい時間さえ切り捨てることができる。そして、同様に彼にとって星の使徒という名も単なる事象にすぎないのだった。

「星の使徒か。彼らは何者なのだろうね……、僕たちの星に来て僕たちをエンジェル・エッグに変え、そしておそらく侵略者たちを手引きする存在。まぁ、おそらく彼らには彼らの事情があるんだろうが、僕たちには僕たちの事情があるからね。精々抵抗させてもらうさ。」

 肩を竦めて言うと、彼は最後に彼女の瞳を覗き込むようにして視線を合わせた。建の両腕も姿勢も全く動かず、およそ戦う姿には見えない。

「……我ながら未練たらしいね。そろそろお別れの時間だ。四ツ岡睦、いや、セイブルさん、さようなら。そして…………また会おう。」

 だが、彼にとっては相手を見るだけで攻撃の予備動作になりうる。
 次の瞬間、彼女にも教えていない彼の真の能力のが発言すると同時に彼女の目の前に反物質が生成される。おそらく、睦はそのことにさえ気が付かなかっただろう。反物質はコンマ以下の時間で対消滅を起こし、彼女の視界をそして彼女の体そのものを熱と閃光で塗りつぶしたのだから。
 真昼の公園に突如上がった轟音と激しい閃光、そして熱と衝撃波に静寂の世界は突如として地獄の坩堝に突き落とされる。その爆発のなか、建はただ黙って立っていた。衝撃波が彼を撃ち、熱が彼の体表を焦がす。エンジェル・エッグの耐久力をもってしてもその余波はかなりの激痛であるはずだった。だが、建は身じろぎもせぬままかつて睦が存在した空間を見つめていた。それが自分の義務であるかのように。
 数秒の後、爆発は嘘のように掻き消えた。もともとこの世に存在しない物質を媒介にした爆発だ、連鎖を起こすこともなく。ただ巨大なクレーターがその爆発の名残を残す。そして、発生した熱によって上昇気流が巻き起こり、それは雲となり雨となる。公園に雨が降り注ぎ、クレーターに水が流れ込む中でも建はただ立っていた。
 その頬を伝う水滴は、雨なのか涙なのか、それはおそらく建自身にもわからなかっただろう。

>>四ツ岡 睦

10日前 No.153

ひなしろいと @brillante☆VD5xV0CAcdU ★iPhone=M0yl2dn7WY

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10日前 No.154

灰祢・戒音 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【レディ・グレイ、ピュアネス/桔梗記念公園・裏門】

 なんで。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
 声ならぬ声と瞳で訴える灰祢、基レディ・グレイに、その姉の変身した姿たるピュアネスは壊れた機械のように謝罪の言葉を紡ぎ続ける。その手に握った細いレイピアを、最愛の存在である筈の弟の血で濡らしながらも、全身全霊からの謝罪と後悔と、固すぎる決意が秘められた言葉だった。
「ごめんなさい灰祢……私には、あなたの罪を共に背負える方法は……あなたを助ける方法は、これしか思い付かなかったの」
 深く突き刺したレイピアを引き抜き、間髪いれずに胸へも刺突を加える。腹部だけでなく肺と心臓まで傷つけられ、レディ・グレイの唇からはごぼりと血が溢れた。
 もう言葉を発することも出来ず、ただただ非難と驚愕の瞳を向けながら崩れ落ちる家族の体を、ピュアネスは優しく抱き止める。
「ごめんなさい……本当は私、こうしてあなたに触れる資格なんてない。私はきっと、あなたよりももうずっと汚れて穢れてしまった……あなたを取り戻したかったのは本当だけれど、真実なんて求めなければ良かったと思ってる……でも……でもね。知ってしまったから、あなたをこのままにしておくなんて出来なかった。最期にあなたを止められるのは、お姉ちゃんの私しか居ないから」
 レディ・グレイにとっては意味のわからない言葉を、言い訳のように、子守唄のようにピュアネスは告げる。ぼんやりと霞みゆく頭でも唯一理解出来たのは、彼女は本気で弟の為を思って彼を殺そうとしているということ。嘗てレディ・グレイ自信が仲間を殺めたときとは違い、ただ純粋に、弟を救うためにはそれしかないと盲信している。
 それはきっと、間違いではないのだろうけれど。

「大丈夫。あなたは誰にも渡さない。あなたを奴等の目的になんか使わせない……私がずっと、一緒にいるから」
 血塗れの手でレディ・グレイの髪を撫でながら、歌うようにピュアネスは呟く。彼女が辿り着いた真実もまた、一つの命と同じように闇に葬られようとしていた。
 嗚呼、あたしは、僕は、結局こうして終わるんだ。本当はもう少し、みんなと生きていたかったけれど……あの日死ぬ運命だった僕には、そんなの過ぎた願いだったんだ。
「……姉、さん……ぼく、は」
 今でもそれなりに幸せだったのに、一体何から救おうと言うの?

 問い掛ける代わりに伸ばした腕は、ピュアネスの髪に触れるより先に、幻のように掻き消えた。そこにはもう、レディ・グレイの姿も綾崎灰祢の姿もない。地面へと転がり落ちた彼の化身を、彼女は迷うこともなく飲み込んで。
「大丈夫……私も一緒に逝くから」
 ピュアネスもまた、自らの刃でその胸を貫いた。
 二人の人間が消えた惨劇の跡など微塵も残さず、只一つそこに輝いているのは、薄墨色の歪な宝石だけ。
 誰の目にも止まることなく、その姉弟は消えてしまった。

 それから、暫くして。
「灰のおにいさまも……おねえさまも、きえちゃった」
 公園に現れた一人の少女は、その遺物を大切に大切に、名残惜しそうに抱き締めた。

【これにて綾崎姉弟は退場となります。これまで灰祢と絡んで下さった皆様、ありがとうございましたm(__)m 戒音の台詞は基本的に捨てネタですのでお気になさらず。】

>all

10日前 No.155

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/高坂百貨店屋上】

「そう……じゃあ、殺していいよ」
美里の言葉に反応する優里。
『結界を破れなかった』ということは、自力では助けられなかったと言う事だ。
そうなれば、あたしを殺すしかない。そのことを優里はすでに悟っていた。

「……その前に」
倒れた足立優里を見つめ、歩み寄る美里。
しばらく黙った後、冷静にこう言い放った。

「私の勝ちだね……何か知ってるなら、早く教えてよ」
「……本当にいいの?」
「……いいよ」
美里の言葉に反応する優里。
優里はあくまで美里を絶望させないために、秘密を隠していた。
だから、本当にいいのかと念押しをした。
美里もそれに応え、うなずく。

「じゃあ、教えるよ」
「うん……」
よろよろと起き上がり、話そうとする優里。
しかし、その時だった。

『何をやっている!? 秘密を知るつもりなら両親も、お前も殺すぞ!』
「「!?」」
突如声が響いた。二人は驚いたが、周りはとくにざわついていなかった。
どうやらこの声はエンジェルエッグにしか聞こえないようだ。

「……!!」
それに反応した美里は斧を振り上げ、優里にとどめを刺そうとするも、

「――――やっぱり、できないよ」
斧を落とし、膝を突いた。
美里は両親も優里も殺したくなかった。だが、どちらかを取らなければいけないのだ。
美里の心はすでに、折れかけていた。

(……せめて、家族みんなで)
今の美里に秘密を教えてもいいのか迷う優里。
しばらくしてせめて家族と離れ離れにだけはさせまいと、真相を話すことにした。

「こんなときになんだけど、よく聞いて……」
「……そう、薄々気づいていたよ。なんか変だったもの」
うなだれている美里に耳打ちし、自分の知っていることを全て話す。
しかし美里はうすうす感づいていたようだった、そして美里はこう続ける

「でも絶望しないって決めたよ。みんな乗り越えられそうだもの……優里ちゃんも私も、一人じゃない」
「……!!」(そうか、あたしは……!)
美里の一言に驚いた優里。
『絶望は乗り越えられる』とも言わんばかりの言葉。あたしは仲間を信じていなかったのか。
自分の間違いを確信した優里の懐が赤く輝きだした。

「ん?」(……今なら、いける気がする)
『……秘密を知ってしまったか。ならば、死ね!!』
懐からもう一つのセレスコアを取り出し、それを見つめる。
そして変身できることを確信し、思い切り念じた。
両親を人質に取った存在(=レヴィア)が放った結界弾から美里を守りつつ。

「……!?」
「すごい……すごいよ、優里ちゃん! これなら……」
真っ赤に輝く自分の姿。優里は驚きつつそれを見つめた。
美里も無事で、優里をほめていた。そしてこれなら両親を助けられると確信していた。
赤と青の交差。奇跡の形態がここに誕生した。

「……紅蓮、爆速!」
そして強化された能力を用いて結界を叩き壊して両親を救出。
レヴィアも捕まったのであったが、変身を解除したときによろめき、左腕を地面についてしまったため、美里に魔力消費量が大きくなっていることを確信させた。
つまりこの形態を乱用すると優里は死ぬので、美里はふたたび苦悩する羽目になる(超駆け足)

>周辺all

【サブが絶望する結果に】

10日前 No.156

有香里 苑花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里 苑花・菫花/夕凪高等学校付近→朝霞駅】

ただ一人の自分になりたかった。
心は二つ、体は一つ。二人で一つは、幸せなんかじゃなかった。分かち合ったって、幸せになんかなれないでしょう。だって、この世界は、平等に半分こにしてなんかしてくれない。比べられ、秤にかけられ、贔屓され、姉が九でわたしは壱。持っている者は更に与えられ、持っていない者は持っているものまでも取り上げられる。弱肉強食かと思って努力をすれば判官贔屓に蹟かされる。
其れでも、あの日橙色のあの子が分け合ってくれた蝶々は、嬉しかった。なのに、あの子も同じステラ様の配下であると知った時、また今度はあの子と自分を比べ始めた苑花が居た。やっと双子の姉・菫花を黙らせその呪縛から解き放たれたのも束の間、今度は自分と似た立場にあるバニシングツインという魔法少女が気になって仕方が無くなった。最早これは、呪縛であり、病であり、人を狂わす毒だ。
姉の事だって片付いてはいない。自分の朽ちた顔の横に姉の美貌をぶら下げて、紫苑は当て所無き虚しい狩を続けた。

-

幾度この首を斬り捨てようとしたか知れない。干からびた左の首も、元は姉の顔であった瑞々しい右の首も、何方も苑花の意のままになる今、要らぬ左の首を切り落とし、力づくで唯の一人≠ノなることを何度も夢に見た。この頭さへ一つであれば、菫花を追い出し乗っ取った上で苑花の朽ちた顔を切り捨ててしまえば、苑花はシャム双生児の片割れでは無く普通の女の子になれるかも知れないと。しかしそうできないのは、彼女達のセレスコアが腐った左の頭部に義眼のように嵌まり込んでいるからだ。それを取り出すのは、本来の契約者である有香里菫花でなければ、奪われたのと同じ事になって、姉諸共に死んではしまわないか。第一、姉を肉体的に殺せば、即ち身体が繋がっている自分への自殺行為となるのではないだろうか。
「どこまでいっても、化け物」と誰かの揶揄する声が聞こえた気がした。或いは自分自身の心の声であったのかも知れない。
双子の片割れを殺したい。ただ一人の自分になりたい。

-

苑花にとっての決定打となったのは、偶然にも目撃してしまった、ステラとその妹の戦いだった。

「ス……テラ……様……」

立ち込める魔力と主君ステラの気配を辿り、魔法少女ヴィオレットの姿でそこに駆け付けた苑花は、其処から近付き二人の間に入ることなど出来ないことを悟った。逢う魔が時の高校の屋上。仄暗い宵闇の空の下ぶつかり合う二つの明星。上空に垂れ込める紫雲に混ざってふわりふわりと漂う紫の蝶に乗り、気取られぬ距離を保ちながら、ヴィオレットは二人の行く末をじっと見守った。
ステラには、妹がいた。その姉妹は純白な心と純粋な好意でステラを傷付け続けた。ステラも自分と同じく、血を分けた姉妹を憎んでいたのだった。
付き合いはまだ深くないといえど、あの「ステラ様」が、あんな顔をするなんて思ってもみなかった。妬(ねた)みが見える。嫉(そね)みが見える。あの「ステラ様」が、自分と同じ……。
様なんて付けなくて良い、と言われてもその呼称を止めなかった苑花だ。その気持ちは困惑し乱れた。
校舎の周りに植えられた桜の樹々が、一陣の風に吹き誘われて劇場の幕のように視界を閉ざす。
白桜色の幕が再び上がった時、舞台の真ん中では、黒く燃ゆる苑花の星が、純白の星を貫くところだった。
ヴィオレットはハッとしたように顔を上げる。覚悟を決めたように、その目付きが急に険しくなった。姉・菫花の壊し方に、気付いたのだ。
彼女を載せた蝶がくるりと旋回する。濃紫の蝶は夜空を舞い上がり、そのまま夜に溶け込んで見えなくなった。

-

朝霞駅。
すっかり日の暮れた夜のプラットホーム。ただでさえ寂しい小さな駅は、各駅電車が客を根刮ぎ乗せて走り去ったばかりで、他の人影は一つもない。
ホームからすぐに降りて行けそうな踏切は、遮断機を上げたまま黙り込んでいる。
その踏切の真ん中で、彼女達はぽつんと空を仰いでいた。線路の溝の上に小さな草履の足を並べ、立ち瞬く星を数えるように微動だにしない。頭から外套のような大きな布を被り、世界から身を隠すようにして彼女は月光と桜吹雪を浴びていた。変身を解いた彼女達は、年の頃十二の子供だった。世間では中学生。ヴィオレットの時に比べると随分と幼いが、相変わらずその様子は現代の小中学生に相応しくない。彼女達は其の姿の為に、中学校はおろか学校というものに行ったことが無かったのだ。妖しい出で立ちで月下に佇むその容貌、魔法少女に変身すらしていないのに人というよりも矢張り妖怪異形の類に近かった。

「ーーーー苑花」

紫の空に咲いた月の花。
春風に、駅舎横の枝垂桜が啜り哭く。

「久しぶりね。菫花姉さん」

桜舞う桃源郷のような夜、一つの身体に繋ぎとめられた二つの首が、ぽつりぽつりと…………会話をし始めた。

「苑花、会いたかった。わたしのかわいい、いもうと」

-

姉の菫花が目を覚ました。
苑花が克ち、閉じ込めていた本物のヴィオレット……有香里菫花の魂魄。それが醒めて、美しい顔と醜い顔、二人で一つの結合性双生児は、嘗てのように話し始めた。

「ああ……うれしい。うれしい。また苑花とおはなし、できるのね」

さっきまで苑花の意識が通っていた筈の、二人の右手が動いて、苑花の額に貼り付けられた奇怪な呪符をはらりと捲り上がる。苑花はまだ自分の自由になる左手を動かして、それを阻もうとする。幼い頃から、二人はそうだった。けれど菫花は構いもせず、苑花の乾からび果てた醜い顔を見ても愛おしそうに目を細めるばかりだった。「かわいい苑花」……そう言われて、やっぱり此奴の目は相変わらず狂っている、と苑花は思った。

「姉さん」
木乃伊の首から、苑花はもう右の首に呼びかけた。
「なぁに?」
少女の首から、菫花が左の首に答える。
苑花は左手を操って、右手を搦め取る。菫花は驚いた顔をしたが、袂を併せた両の手を苑花に委ねた。二人で動かす一組の両手が、苑花≠フ眼窩に嵌った紫のセレスコアに触れる。
刹那に、木乃伊の頬が嘔吐(えず)くように膨らみ、ぱかりと開いた顎門から、黒紫の蝶が迸るように無数に溢れ出た。煌めく金の鱗粉を振り撒き、胡蝶の群れは旋風に煽られた花弁のように彼女達を囲む渦を為す。花街の灯りを映す川瀬の、金銀を散りばめた紫の水鏡。艶な夜の色に染め上げられて、少女を取り囲んでいた蝶がその肌に溶けるように消えていく。弧を描く唇が、紅い三日月のように闇に灯った。
夜霧の如く晴れていく胡蝶の群れの中からは、遊女のような派手な和服に身を包んだ魔法少女・ヴィオレットの姿があった。しかし常時と異なるのは、肩の上に二つ生えている女の首が、乙女と死体ではなく、相似形の生きた双子の顔≠ノなっていた事である。今や、菫花も苑花も瓜二つで、何方も齢十八頃の美しい女の顔になっていた。それが却って、骸をぶら下げていた頃よりも更に悪趣味で蠱惑的で不気味な気配を呈していた。

「苑花、ヴィオレットを知っているの?」
右の首ーー姉の菫花は、大人の顔に変身しても無邪気な儘で、パッと嬉しげに顔を輝かせた。

「ええ。だって菫花が居ない間はわたしがヴィオレットをしていたんだもの」
左の首ーー妹の苑花は、今や見違えるように綺麗に蘇った顔から狐の面を外して慇懃に笑いかける。
苑花に言わせれば、姉の菫花は白痴に近い大莫迦である。菫花は苑花の意図にも気付かず、破顔した。

「うれしい! わたしね、ずっとずぅっと、まってたの。苑花といっしょに、こうやってまた生きられる日を」
「菫花……」
わたしも、ずっと待ってた。こうやって菫花を屠れる日を。だけど、そのやり方が今日まで思い付かなくて、そうしなかっただけだ。そう思いながら、苑花は冷めた目で菫花を見返す。菫花は御構い無しに無邪気な笑顔で続けた。こうしてみると、遊女めいたヴィオレットの姿は何方かといえば苑花の方に似合いのようだった。
「ヴィオレットはね、エンジェルエッグっていう正義の魔法少女なんだよ。悪い魔物をたおして、みんなを守るの」
菫花は胸を張る。一瞬の隙を突かれて苑花に取って代わられた菫花は、自分が妹に裏切られていた記憶も、知らぬ間にヴィオレットがevilに堕とされていた事も、全く知らないのだった。
「みんなって、誰」
莫迦な奴め、と苑花は内心でせせら嗤う。
事情も知らない菫花はまだ正義ごっこに真剣だった。

「ねえ、苑花。わたしたちは、外の世界を知らずにきたよ。だから、今度こそみんなの役に立ちたいの。あなたと、わたしは二人で一人の魔法少女ヴィオレット。いっしょに来てくれるでしょ? それからね、ヴィオレットには仲間もいるのよ。ヒーローみたいでしょ? でも同じ魔法少女でもね、evilって悪い魔法少女もいるの。それからね……」
「知ってる」

真紅に塗られた口角を上げ、話を遮った。
なんとまぁおめでたい頭だ。聞いているこっちが恥ずかしくなるような。

「ね、苑花。いっしょに居てくれるよね? これからは二人で、エンジェルエッグ・ヴィオレットだよ。新しい世界のために頑張ろうね? 」

……ねえ?
……くどい。

自分のものであった筈の右手が、自分の意に反して苑花の左頬に添えられる。そっぽを向いていた顔を無理に菫花の方を向くように仕向けられて、眉を顰める。苑花は返事の代わりに、未だ自由になる左手を姉の右頬に添えて強く引き寄せた。
「「…………」」
桜降りしきる夜の踏切。朝霞駅のホームには、まばらな人影が現れていた。
答えを口にする代わりに、相手を黙らせる代わりに、赤く紅に濡れた唇を触れさせた。
刹那に、枝垂桜の下で踏切の警報音がカンカンカンカンと高く騒ぎ出す。二人で一つの双子を囲う、縞模様の遮断機が降り始める。

「……そうね、姉さん……」

姉さん。ーー菫花姉さん。
貴女を、殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて、殺してこの身体から引き剥がしたくて堪らなかった。だけど、幾ら考えても、貴女を殺してしまったら、わたしも死んでしまう事実に行き着くのです。二人で一つの因果な身の上、わたしまで死んでしまったら、わたしの自由は手に入らない。だからわたしは。

「ヴィオレットは良い魔法少女なのね。これからは姉さんとわたし、二人で一緒にしようね」
「ありがとう! 苑花!」

貴女の心を殺す事にした。
ただ一人の自分になりたい。

>宛先無し、ソロール


【音沙汰もなくすみません。サブ記事にキャラクター纏めを出したきり消えていましたが、イベント終了時刻が近い為、投稿させていただきます。本来主様の許可を待たずの投稿はまずいかな、と様子を見ておりましたので、もし法度に触れることがあれば、投稿諸共消していただければと思います。】

10日前 No.157

有香里 苑花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里 苑花&菫花/朝霞駅】


点滅する赤いランプ、高らかな警告音が早く退け早く退けと急かしてくる。春の月が誘う眠りはあんなにも穏やかでゆっくりなのに、その微睡みと夢見心地の逢瀬を叱りつけるように、踏切の音は忙しく耳障りだった。
苑花は言った。
これからは姉妹二人で一つの正義の魔法少女。
相変わらず片目だけは紫水晶(アメジスト)色の義眼のままだったが、それ以外鏡写しである双頭の少女。
菫花は胸がいっぱいになり、もっと妹とこうしていたかったけれど、名残惜しみながらも先ずは遮断機が降りきる前に踏切の外に出ようとした。しかし、身体が動かない。

「待ってーー悪者が居るわ。姉さん」

まるで、縛り付けられたように、ヴィオレットの身体は菫花の思うようには動かなかった。代わりに、苑花が、線路の彼方を眺めてにんまりと笑っている。
線路は桜の絨毯の上をまっすぐに伸び、果ては闇に呑まれている。まるで星空の彼方まで届く銀河特急の小説にでも出てきそうな夜の線路の向こうに、眩い光が二つ見えた。電車のライトが、初めは小さな点であったのが、ぐんぐんと大きくなる。パァァァァァア! と威嚇するように、危機を知らす警笛音が夜空を裂いた。
轢かれる……!! ーー菫花がぎゅっと目を瞑った時、ヴィオレットの身体はふわりと宙に浮いた。彼女達は、魔法の絨毯のように巨大な蝶々に掬い上げられていたのである。
「苑花、ありがとう! 助けてくれたのね!」
しかし、蝶を召喚し難を逃れても尚、苑花はまだ眼下の列車を見据えて袖を振りかざした。

「ふふっ…………」

和服の袂をはためかせ、袖口からは鴉のように黒く艶々と光る無数の蝶が放たれた。「えっ」と目を丸くする菫花の目の前で、彼女の意図ではなく妹の意図によって飛び出した蝶の群舞は、列車の運転席の窓を覆い尽くした。あの気狂いのような警笛が、さっきよりも酷く長鳴りする。視界を奪われパニックに陥った運転手は操作を誤ったのだろう、朝霞駅を通過する特急は、線路を脱して駅のホームへと突っ込み横転した。穏やかな日常風景は、一瞬にして阿鼻叫喚の事故現場へと早変わりした。

「そん、な……苑花……どうしてこんなこと……」
「あの電車には、悪者が乗っている」
「ひどいよ、なんで、どうして……」
「塾帰りの女子高生に痴漢する変質者、席を譲らない妊婦にキレるジジイ、あの電車に乗って浮気相手のもとに帰るサラリーマン」
「…………」
顔色ひとつ変えず淡々と説明する妹に、姉は絶句した。正義どころか、事故に見せかけたただの殺人犯だ。どうしてそんな酷いことを、信頼していた妹が。
困惑し嘆く姉をよそに、苑花は益々嬉々として御託を並べる。
「前の駅で誰かをホームに突き落としてきたキチガイ青年、酒に呑まれて殴り合ってる酔っ払いオヤジ、見て見ぬ振りをしていた車掌…………そんなもんの詰め合わせよ、どうせ」
「正義、は……」
たった今、一緒に正義の魔法少女になろうと誓ったばかりなのに。菫花が目に涙を溜めて咎めても、目の前の妹はへらりと妖艶な笑みをたたえるだけだ。

「ヴィオレットは、悪者を倒す正義の魔法少女なんでしょ? 悪を倒して何が悪いの?」
「でも、人間は駄目!」
暫く見ぬ間に双子の妹・苑花は狂ってしまった。そうは思っても、菫花は未だ、自分が長年の怨みを買っていることも、苑花が復讐のために自分を裏切っていることも、考えてもみなかった。
さっきから身体が、全く菫花の言うことを聞かない。
ここ暫く苑花によってevilとしての狩のために使われていたヴィオレットの身体は、苑花の魂のほうになじむようになっていたのかもしれない。
「忘れたの? 人間の方が怪物じゃない? さあ、いくわよ、魔法少女ヴィオレット」
「まって」
菫花の制止も聞かず、ヴィオレットは電車に張り付いていた蝶達を指差し、その指先をスッと混戦状態のホームへと動かす。
儚げな指先の描く軌跡に沿って、半透明の蝶達が宙を泳ぐ。電車から逃げ惑う人々に取り憑くように吸い込まれると、パタリ、パタリと人が倒れていく。
「どう? これだけ困った人がいたら貴女のヴィオレットに活躍の場があるわよ」
「やめて! 苑花! やめて!」
「困った人や苦しい人や悲しい人がいないと、正義の味方は活躍できないでしょ?」
本当は、魔力を節約している蝶に殺生能力なんてない。姉に復讐すること以外特に興味がない苑花に、大量殺戮の趣味は無いし、列車事故以外の人為的な事件として騒ぎになっても困るから命は取らない。しかし、それでも純粋で頭の弱い菫花への効果は覿面だった。
「やめて!」
菫花は自分の身体が、自分の手が、自分の魔法少女が悪役のように人に仇なす度、激しく喚き、叫び、涙した。
「いやだ! こんなこと、したくないよぉ!」
正義の魔法少女、エンジェルエッグへの理想もあったのだろう。この甘くて莫迦な姉には、真実など何も見えていないのだから。

「ヴィオレットに活躍の場があって満足なんじゃない? 貴女が正義で居られるのは、誰かが悲しい思いをしているからなのよ。正義は悪がいなくちゃ正義にならない」
ヴィオレットを動かそうとする菫花の意思を、精神力で抑えつける。殺したい。殺したいけれどそれが出来ないから、唯一別々の、心を殺したい。崇高な志を引き裂きたい。天使のような純朴さを汚したい。

また菫花の手から放たれた蝶が、罪なき人一人の意識を奪った。

「もういやだ……どうしちゃったのよ、ひどいよ苑花……ひどい、急に、苑花へんだよ…………」
互いの体を枷とした双子の魔法少女は、一つの頭は高く笑い、一つの頭は咽び泣いて、それは奇妙な有様だった。人から見えぬ上空の、蝶の羽の陰に隠れて。
菫花の打ちひしがれた様子が悦に入ったか、苑花は陰険な笑みを浮かべた。

「急にじゃない。わたしは、菫花が嫌い。ずっと前から嫌いだった。嫌い。嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。姉さんを見ているとねぇ、本当は殺したいけど……できないから我慢する。その代わり貴女が知らないような汚いものでその目を汚そうと思うの。菫花と苑花は二人で一つ、そうでしょ? そしたらあれは、貴女が殺した人達。ヴィオレットの正義が裁いた悪。良い子ぶってても菫花も同罪よ。ーーふふふっ正義の味方って、大変だこと」
「おねがい、もうやめて」

双子の片割れを殺したい。
肉体的に殺せないと言うのなら、其の心を完膚無きまでに引き裂きたい。
わたしが、姉と同じ正義の味方になどなるものか。
本当は、正義だって悪だって別にどっちだって良かった。けれど、片割れが必ず正義を選ぶと知っているから、対立したいがためだけに悪になっただけ。
貴女の賭けるヴィオレットの手を汚すためだけに、こんな悪事を働いただけ。
わたしはヴィオレットの腕で菫花の頭を乱暴に掴み、空を舞う蝶の上から乱暴に下を覗き込ませた。
素敵な景色は、仲良く共有したほうがいい。だってわたしたち双子だもの。目下の朝霞駅の凄惨な事故現場≠ヘ彼女に突きつける絵画に相応しかった。

「貴女の好きな、綺麗事のハリボテ。正義の味方らしいんじゃなぁい?」

菫花の首から、遂に壊れた精神の、断末魔のような絶叫が上がった。



>宛先無し、ソロール(〆)

10日前 No.158

フィフスイベント開始 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

X mischief〜禁じられた遊び〜【4/15〜5/14】

 これは、少女達が終わりを迎えるまでの、ほんの僅かな、穏やかな時間。
 空は青く澄み渡り、青葉が風にそよいでいる。街路樹から落ちる木漏れ日は、石畳に水面に似た模様を描く。
 世間はゴールデンウィークで、大型連休に羽を伸ばす家族や恋人達が、和気藹々と歩いていく。

「……今日は、何処へ行こうか?」
「何処へでも。貴方の好きなところへ」

 そんな、夕凪市のとある場所で、彼女達は囁き合う。秘密を共有するように、小さく、儚く、美しく。
 それはきっと、心の内に巣食い続ける絶望に、打ち克つ為の神聖な儀式。
 ただ、幸せを願うだけの終わりが、逃避行だと呼ばれたとしても。

【以上を持ちましてフィフスイベント開始となります。心中する人以外は最初で最後の日常編です、思う存分お楽しみ下さい! そして、フォースでは皆様素敵な絡みと絶望をありがとうございましたm(__)m】

10日前 No.159

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=8Gme4Rx1Re



【 翡翠 / 夕凪高等学校屋上 】


 目の前で繰り出される姉妹の愛憎劇。その唯一の観客となった翡翠の心情は驚くほど静かだった。際程まで胸の奥を犇めいていた醜い思いが彼女等の姿を見て萎んでいくのが分かる。実に見事な姉妹愛だと思う。が、称賛の声は聞こえない。客席にたった一人でとり残された翡翠色の少女は静かに舞台を見詰めることしか出来なかった。


 ステラ≠フことをみかる≠ニ呼ぶ白藍のエンジェル・エッグことるのんはステラへ必死の愛を叫ぶ。自らが伏してしまいそうな手前でもそれを止めようとしない彼女は、ある種とても強い人なのだろうと思った。ステラと対峙する柔らかで眩しい白藍は、翡翠達にはもう失いかけている『優しさ』を持っていて。それは、闇の世界には到底存在し得ないものだからこそ、その思いは理解が出来なかった。どれだけ分かろうとしても堕ちた瞬間から定められた運命に抗うことは叶わない。
 そんなことを淡々と思っていた最中、灰色の瞳がこちらを見ているのに気が付く。既にエンジェル・エッグとしての姿を保てずに人間の身なりに戻ったるのんの瞳が翡翠に何かを訴え掛けている。ステラの腕の中で時期に死を迎えようとしていた彼女の表情が微笑んでいるように見えた。何故そこまでして笑うのか。何故、わざわざ邪魔者である翡翠に向かって笑うことが出来るのか。さっぱり理解不能だ。だから無性に苛立ってしまう。


「……随分と、幸せそうね」


 凍てつくような冷たい声でぽつりと呟く。ステラの腕の中で死ねる貴女だからこそ、そんなに幸福そうなのでしょう? 歪みきった翡翠の心がそう叫びそうになるのを抑えつけた。馬鹿みたいな醜態を晒したくはなかったからだ。この醜く淀んだ心情を言葉にしない代わりに翡翠色の瞳が憧憬と憤怒を訴える。内心は大人しくなったとしてもそこにあるのは底無しの嫉妬だけだ。





 そして、『生きて』という声と共にるのんは消えた。エンジェル・エッグとしての役目を果たし終えた者は石に還る。その言葉通りにるのんは白藍のセレス・コアとなった。手の中に残されたそれを握り締めながらこちらを見たステラの表情がぐにゃりと歪んだ。何時もなら笑いかけるのに、今日に限ってそうしない。なぜ? どうして? 疑問ばかりが膨らんで頭が破裂してしまいそう。
 ――翡翠の救世主(ステラ)ならそうはならないはずなのに。心底腹を立てながら舌打ちを零した翡翠は何を言うこともなくステラの元へ近付いていき、泣きじゃくる彼女の傍にしゃがむ。両手で顔を隠してしまったステラの腕を掴む。とてもか細く、真っ白な肌に触れた時に翡翠の心臓が再び高鳴っていることに気が付く。ステラを見ているとドキドキと鼓動が鳴って、胸がキュッと苦しくなる。忘れてはいけない感覚が翡翠の中に舞い戻って来た。嗚呼、よかった! 心から嬉々として微笑みを浮かべながらも死んだ魚のような目は変わることがないまま掴んだ彼女の腕を優しく、傷付けないように引き剥がす。やっと涙に濡れたステラの顔が見えた。が、同時にあることが不思議で仕方がなくて笑むことをやめて首を傾げる。


「どうして泣くの? なにがそんなに悲しいの? 嗚呼、本当に可哀想……」


 宥めるような声音と共に、翡翠はステラに身を寄せた。泣いている子供をあやす親は何時も我が子を抱き締めていた。それを参考にして、翡翠もステラの小さな身体を包む。彼女との二度目の抱擁はなるべく優しくしてあげたい。一度目は無理やりだったもの、次はお互いの体温や体の柔らかさを味わうようにしなくちゃ。それから、ステラの手に自らの手を絡めてゆく。清らかで聖なるものを不純な邪気がじわりじわりと蝕むような感覚に思わず頬が緩みそうになるが必死に堪え、更に指を絡ませる。


 そして見つけた。許し難い悪の根源を。翡翠の救世主(ステラ)を壊そうとした、白藍の石塊を。


「……ふふふ、ねえステラ。貴女が泣く必要なんてどこにもないわ。ましてや悲しむことなんて、絶っ対に、あってはならない」


 ステラの持つ白藍のセレス・コアを左手で奪ったと思った束の間、翡翠はありったけの力を込めてそれを握り潰した。見た目は綺麗な宝石でも力を込めれば飴細工のように容易く壊れてしまうセレス・コアに構っている暇はない。立ち上がり、フェンスの側まで歩いていくと粉になったそれを適当な場所へ投げ捨て、その行方を見送ることもなくステラの元へ嬉しそうに帰っていく。腰を下ろし、甘やかな微笑みを顔に貼り付けた翡翠はステラへ手を伸ばす。


「もう暗いわ。はやく帰りましょう?」


 もし、ステラが翡翠の手を取らないのなら翡翠がその手を掴んであげる。頼まれなくても翡翠がそうしたいからするの。貴女の意見も勿論聞くわ。だって、翡翠は貴女の従順な下僕なんだから。貴女が望むことは何だって叶えてあげる。その代わり、翡翠の願いも叶えてくださいな。
 そう思いながら「ね?」と首を傾げて見せた。




 頭上に輝く星々が私達を見詰めている気がする。大きな月は二人を見張っているかのようで気味が悪い。でも、それが翡翠に罪の意識を抱かせる為だと言うのなら今はそれで構わない。寧ろそれが心地良くて、未だかつて無いほどの満面の笑みが溢れた。



 ねえ、ステラ。貴女は翡翠の救世主なの。それをどうか、忘れないで頂戴




>>るのん(ティアー・ドリーム)様、ステラ様(〆)


【滑り込みアウトなのは百も承知です、申し訳ありません……!
 るのんちゃんのセレス・コアを壊す行為、ステラちゃんへの決定ロルも使用してしまいました。お叱りは後ほど受けますのでお許しください……本当に申し訳ありません……!(土下座)
 最後となりましたが夜縋姉妹の本体様方、途中参加にも関わらずお付き合い下さり、本当にありがとうございました。】

9日前 No.160

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=JVhp0NNz0G

【神之門 朝音 / ムーン・ファントムランド】

かつて苦い経験を味わった場所、わざわざ金を使って目立たずここまで来たのにめぼしい収穫がゼロだったという悲しい出来事が過去にあったりもした。今回はそのリベンジで出現した侵略者を滅ぼしに、なんてワケが無かった。昨日までは第四段階を目指すために特訓していたが、途中からイメージが湧かなくなってしまった。というのも、第三段階の花崩しをさらに強力にした爆破攻撃なのか、それともまた別ベクトルの攻撃なのかは全く分からないのだ。過去に一度使ったが、あまりに身体へ負担をかけ過ぎたために記憶も朦朧としており、無茶苦茶な爆発を行なった記憶はあるが、大部分は虚空に消えてしまった。

一度頭をリセットするために、このテーマパークまで足を運んでみたが、これが1人でも楽しくに遊べるほどよくできている。はした金でスリルを味わえるのだから中々じゃないか、できるなら友達やら家族やらと来るのが理想なんだろうけど、まぁ私が誘っても警戒されたり無下にされたりするだけだしね。

「ヒャァァッホーーッ!」

猛烈な速度でレールを滑走するジェットコースターで、まるで男が発するような奇声を上げた。前後に座る客達も「キャーー!」と声になってないほどのボリュームで叫んでいるお陰で全く目立っていなかった。どこかにあったもしもの世界、両親がいてそこそこの生活を営み、友達や家族と休日に遊んでいる自分の姿が浮かび上がったが、似合わないなとすぐに捨てた。しかしたまにはこんな日常を謳歌するのも悪くはない、柄にもなく久々にそう思えた。



「次はどれにしようかな」

コースターを降りると、新しい目的となる遊具を探すべく彷徨い始めた。エンジェルになって目まぐるしく戦闘の日々を送っているせいか、流石に3回乗っても全く酔いを覚える気配はない。スリルがあって激しいのも感性を刺激して面白いが、ここらでメリーゴーランドみたいなメルヘンチックなヤツにも乗ってみたいなぁ。いやでも1人で乗るのは流石に気が引けるかな…。なんて考えつつ、遊園地を1人の女が駆け巡る。


≫all様

【フィフスイベント開始おめでとうございます!】

5日前 No.161

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【根木 紗來良/ムーン・ファントムランド】

 家族や友人、恋人たちの楽しそうな声が絶え間なく響く遊園地で、少女は何処か虚ろな瞳でフラフラと歩いていた。まるで迷子のように覚束無い足取りに心配そうな、或いは怪訝そうな視線を送る客も一人や二人ではなかったが、少なくとも少女の見てくれは高校生以上、迷子センターに連れていく程でもない。
 しかし、彼女は、アトラクションに並ぶこともショップやパレードに足を止めることもなく、ただ無為に、そうとしか形容できない足取りで歩き続けていた。実際には目的が無いわけではなく、ただ、目的地が動き回るタイプのそれだったので、虱潰しに歩を進めて居たわけだが。
「……みつけた」
 そうして、園内をたっぷり二周はした後、計三度目のエントランスで彼女――根木紗來良はその目的地に辿り着いた。

「……こんにちは、薔薇のおねえさま」
 紗來良の視線の先には、背の低い彼女より頭一つはゆうに大きな、茶髪の少女がいる。園内の何処かにいる彼女――朝音を探して彷徨っていた紗來良は、無事に目的の人物に辿り着くことができて、ほっと胸を撫で下ろし、後ろから小さく声を掛けた。
 尤も紗來良は、朝音と何か約束をしていた訳でも、ましてや一緒に遊んで居たわけでもない。朝音の方からしたら、一人でストレス発散していた所に突然声を掛けられたことになる。
 勿論紗來良とて、朝音の邪魔がしたくてわざわざ探していた訳ではないので、さっさと用件を済ませて立ち去ろうとは思っていた。
 それに、紗來良が約束していたのは寧ろ。
「今日は……薔薇のおねえさまにわたしたいものがあってきたの。これ、灰のおにいさまとおねえさまから、おれい」
 そうして、紗來良は、カーディガンのポケットから、ハンカチに包まれた何かを取り出す。一枚ずつ花弁を剥がすように解かれたその中心には、薄墨色に鈍い光を放つ石がある。
 灰祢と、そして戒音の遺したセレス・コアが。
「これをつかえば、薔薇のおねえさまはきっともっとつよくなれるよ」
 まるで朝音の悩みを見透かしているかのような言葉だったが、紗來良自身に他意はない。ただ、セレス・コアを摂取すればエンジェル・エッグが強くなるという、当たり前の事実を述べているだけに過ぎない。

 そうして朝音にセレス・コアを差し出すと、用は済んだとばかりに紗來良は踵を返す。
 何処に行くかは決まっていないが、最後の仕事を終えた以上、やるべきことは決まっていた。

【一瞬絡んで去っていきます、このコアはご自由にお使い下さいませ】

>朝音さま、all

3日前 No.162

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=vvYeOc8nPv



【 翡翠 / とある路地裏 】


 修羅と化した路地裏に断末魔が響く。
 目に涙を浮かべて赦しを乞うて執行人に縋り付いたエンジェル・エッグの行く末は既に決まっている。そう言わんばかりに黒色のエンジェル・エッグは最後の呪文を唱えた。
 同時に仄暗い路地裏の全貌を顕にするかのような夕陽が差し込む。燃えるようなオレンジ色の光によって見えてきた哀れな魂は美しい石塊へと変わり果てた。その石塊をぼんやりと眺めている黒色のエンジェル・エッグ――ステラの元に寄り添った翡翠は無表情のまま、ステラの頬に手を伸ばす。今や石塊となったエンジェル・エッグとの交戦の際に浴びた返り血か、もしくは相手の攻撃によってステラ自身が傷付いてしまったのか。どちらにせよ可哀想だと思ってやまなかった翡翠は自らの素手で拭ってあげなければ、と思ったのだ。これはあくまで翡翠がしてあげたいというだけのことだからステラが嫌だと思うのなら振りほどかれてしまうかもしれない。それならそれで構わない。それがステラの意思ならばどんなことだって従うのが当たり前なのだから。そう言い聞かせながらそっと、でも遠慮する気なんて更々ない翡翠の手がステラの方へ伸ばされた。




 ――この頃、ステラの様子が可笑しい。こう一言で言ってしまうのはあまりに淡白である気もするが、まさに言葉通りの意味である。あの日、白藍のエンジェル・エッグを殺めた時からステラは壊れてしまった。どう壊れてしまったかは上手く言えないのだけれどあの日を境にステラの外れてはならない螺のようなものが外れて、彼女は狂ってしまったのだと思う。その問題の日から数日後、ステラと再開を果たし、喜びに浮かれていた翡翠を他所に、淡々と「魔法少女狩りに行こう」と言ったステラ。勿論断る理由もないから二つ返事で了承した翡翠だったがその心中は得体の知れない不安感と胸いっぱいに膨らんだ嬉々とした気持ちによって支配される。ゆえに、何を咎めることもなく、ステラの心が赴くままに魔法少女を狩り続けた。時には残虐的に、別の時には跡形もなく、善も悪も見境なく駆除してゆく。今の彼女の目に留まったら最期。ステラの愛らしい唇から呪文が零れ落ちたらそれで終わり――ご愁傷様。心にもない台詞を音にすることもなく口を動し、せめてもの追悼の意を屍へ贈る。裏腹にこれっぽっちも貴女のことなんか知らないのだけれどね、なんて内心毒づくこともあるけれどそれ以上に羨ましいと思った。だって、貴女はステラの手によって死を迎えることが出来たんだから。それはきっと素敵なことなのだろう。これを思う度に白藍のエンジェル・エッグの顔が目に浮かぶ。それが堪らなく腹ただしくて、憎たらしくて仕方がなくて思い出す度に下唇を噛んでしまう。今だって、静かな外見に相反した内面は様々な感情が混在していて時折吐き気がする。
 気持ちが悪い。でも、気分はそこまで悪くはない。それもその筈だ。だって、愛する人が翡翠の傍に居てくれているのだから。愛しげな眼差しでステラの方を見遣る。




 言わずもがなステラの言動が奇想天外なのは今に始まったことではない、のだけれど。ちらっとステラの表情を覗く。そこには飄々とした様子も、自信満々な笑顔もなくなっていた。そこにあるのは一体何なのか。正体不明の不安感と怖いもの見たさの気持ちが翡翠の中でせめぎ合う。
 お願い。もっと良く貴女のお顔を見せて。今、どんなことを思いながら、どんな顔で嘗ての同胞を殺めているの? 次は誰を葬るつもりなの? 明日は? 明後日は? これから、貴女は何をして、何を望み、何を手に入れようというの? 貴女は一体、どこに向かい、何になろうとしているのかしら?
 疑問は尽きることなく湧き続ける。だから全てをぶつけるような野暮な真似はしない。



「ねえ、ステラ。この翡翠に貴女のすべてを見せて頂戴?」


 たったひとつだけ。どうしても伝えておきたいことだけを口に出す。
 貼り付けた微笑みを浮かべ、物欲しそうでありながらも否定されることを恐れない真っ直ぐな視線をステラへ注いだ。

>>ステラ様、周囲おーる



【新イベント開始、おめでとうございます。
 事前打ち合わせの通り、ステラちゃんへの絡み文としてあげさせていただきます。ステラちゃん本体様は前回に引き続き、お相手を宜しくお願い致します。】

1日前 No.163

ふぁすね @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_iR4



【バニシング・ツイン/古びた教会】



 きらきらと割れたステンドグラス越しにカラフルな光が差し込む。そこでは凄惨な争いがあったのか、さまざまな物品が"はんぶんこ"に分断され、いたるところにぶつけられたかのような痕跡があった。シャンデリアは鎖の中心からはんぶんこにされて地に落ち、聖者を磔にした十字架はまっぷたつにされてそのシャンデリアに押しつぶされていた"なにか"に左右対称に突き刺さっていた。きらびやかなろうそくや宝石飾りに埋もれているためシャンデリアの下がどうなっているかうかがい知ることはできないが、足元に水溜りのように広がる血痕がすべてを物語っていた。

 一つの影がぱしゃん、と血だまりの中に足を踏み入れる。激闘の末に乱雑に散らばった聖書に手を伸ばし、ぺらぺらとめくったのちにつまらなさそうに放り棄てる。シャンデリアの上に慎重に上り、分断された十字架に器用に腰かけると、ぐじゅり、という音とともに血だまりがさらに広がった。


「いずもちゃん。ぼくの心臓はぼくのものよ。高鳴るのもそれをとめるのも、ぜんぶぼくがやることよ。もちろん右側だってあげない。もうぼくのものなんだから。」


 身をかがめて血だまりにそっと唇を寄せ、くすくすと小さな笑みをこぼしながらバニシング・ツインはそうつぶやく。彼女の左手にはバニシング・ツインと同じ、サンストーンのようなきらきらとした煌めきを持つセレス・コアが握られていた。バニシング・ツインはそれに口付けをし、先ほどの激闘を思い返す。

 ――いつものように暇を持て余し、いつものように殺戮を繰り返し、いつものようにあいする影を追い求めるバニシング・ツインの前に現れたその魔法少女は、自らを"ミッシング"――"行方不明者"と称した。黒と橙を基調とした衣装。ツインテールにまとめられた、橙のインナーカラーの入った白髪。オッドアイの左右の違い。纏うマスクがペストマスクではなくガスマスクであること。細かなディティールの違いを除けば、その魔法少女は生き写しのようにバニシング・ツインにそっくりだった。


「逢いに来てくれてうれしかったわ。だけど残念。ぼくはもういずもちゃんに興味がないの。ぼくが追いかけるのは昏さを喰らう星灯りだけ。」


 その襲撃者をバニシング・ツインは即座に自らの血を分けた姉・愛隔いずもだと理解した。理解して、殺した。あの火事から生き残っているとは思わなかったが、あの夜ちずむがいずもから奪った半分を取り返しに来たということは容易に想像ができた。愛がない、とバニシング・ツインは嘆息したのだ。どうして自分がいずもから半分を奪ったのか、まるで理解できていないのだ。ちずむがいずもから半分を奪ったのは、生き残りたかったからでも、いずもに恨みがあるからでもなく、ただあいしていたから。それだけだというのに。いずもにはどうやらそれが理解できなかったようだった。


「ステラのはんぶんがほしいな」


 ほこりがきらきらと妖精の粉のように舞う中、ぽつりと呟いてみた。ぼくのあいを理解できないこの肉の器に何の意味があるのだろうか。あの一等星を喰らい、自らの肉体の一部とすることがどんなに素晴らしいだろうか。きらきらと輝く星流≪ミルキィウェイ≫のように想像を巡らせ、バニシング・ツインはそっと目を閉じた。


>>ALL




【フォースイベントに参加できなかったのでなんとなくそれっぽい描写もはさんでおります。】

18時間前 No.164

コア @koa11 ★Android=0qnlIoZILT

【朝香大和/コキュトス】

夕凪市の一角に佇む年季の入った骨董品屋コキュトス。おしゃれとは程遠いお店でありながら、近頃は女子高生グループが並んで列を作っているという光景が見られることである意味有名店となっている。時折、通りに響く黄色い声の元もここであり、端から見れば異様であることに反論する者は誰一人いない。
品揃えは安価な物から高価な物まで、著者が不明な本や何処から入手したか分からない宝石までも取り揃えており、掘り出し物も見つかるという。ただ、出元が分からない謎の物ばかりのためかお目当てが手に入ることはそう多くはなく、収益の半分が掘り出し物の売買である。では、残った収益の半分は何かと言われると併設されたカフェスペースに答えがある。

「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。ご利用は……三名様ですね。では、ご案内いたします」

バイトにしては慣れすぎた流暢な言葉遣いと丁重な振る舞いで大和はお客を先導していく。その後を微笑んで付いていくのは順番待ちをしていた女子高生たち。耳を澄ませば小声であれこれ言っているのが聞こえる。「いつ見ても綺麗だよね」「いやいや、あれでメイド服なんだから可愛いじゃん」などという称賛の声はこのお店で唯一保証された“お目当て”の大和に向けられた物だった。
席まで着くとメニュー表を渡して、また接客、次は注文された物の調理と差し出し、と休む間もなく仕事が舞い込む。その一つ一つを手慣れたようにこなしていく大和を見ては満足そうに出されたコーヒーやデザートを嗜む女子たち。無料でありながらも完成されたサービスが存在していた。

客足も落ち着いてきた昼下がりになってようやく大和にも休む時間が確保できた。カウンター席に座ると忙しいせいでそのうち感じなくなった疲れがどっと押し寄せてきて溜め息が出る。着けていたカチューシャも外すと一人の顧客に元通りだ。

「……疲れました」

「いつも助かるよ。とは言っても君がいるから忙しいだけなんだがね。……骨董品売れないしな」

自虐気味に笑うマスターに「それは、すみません」と言いつつ、労いに出してくれた紅茶に手を伸ばす。鮮やかな色合いと引き立つ香りは見ているだけでも楽しめるものではあるが、ほのかな甘みと茶葉の風味を感じるために口を付けずにはいられない。

「美味しいです。落ち着く味」

「それは良かった。何度も淹れるような常連に褒められると嬉しいものだ」

おまけの軽食として出されたパンケーキも食すと疲れの溜め息はいつしか安堵の吐息へと変わりつつあった。
しばらくティータイム楽しんでいると爽やかな鈴の音が来店を知らせる。ふと時計を見ると四十分ほど過ぎていたようで、カチャーシャを着け直して服装を整えるとまた忙しない業務へ戻ることとした。

大和の存在を知ってか知らずかコキュトスに訪れる魔法少女やevilは一定数いる。中には大和がevilであることを知る者もいるが、経歴については黙って世間話や魔法関係の会話で適当に切り上げるため疑問こそ残るも恐れる者はおらず、認識としては少し噛んでいる程度のメイド止まりであった。

>>ALL様


【サードイベントではお世話になりました。今回からまた新しいキャラクターで参加しようと思いますので、よろしくお願い致します。】

8時間前 No.165
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