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――evil.

 ( オリジナルなりきり )
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闇落魔法少女BEスレ @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_c1Z

 これは、輝かしい世界の裏側の、破滅に向かう物語。

「世界を救うための正義の味方になる」
 誰もが一度は憧れる夢物語。子供が何度も自分の姿を当てはめる幻想。
 もしも空が飛べたなら、もしも魔法が使えたら、もしも怪物と戦って勝てるだけの力があったなら。
 空を駆け、現実では有り得ない力を駆使して、敵を倒す。美しい姿に、綺麗な衣装、魔法の呪文のオマケつき。
 まさにそれは、世界を救う天使の卵。
 けれどそれは、絵空事だからこそ許される異端。
 一度現実になってしまえば、愚かで滑稽で残酷な御伽噺以下でしかない。

 正義の味方(私たち)は死ぬ。遅かれ早かれ、敵か味方の餌になって死ぬ。
 彼等の正体も目的も分からない。何故私たちが選ばれたのかも、何故こんな同士討ちのような真似をさせられているのかも。

 けれどもう、真実なんてどうでもいい。

 権利には義務が、そして犠牲が付きまとうもの。現実は理想通りに行かないことなんて、ずっと前から解りきっていたことじゃない。
 それなのに、死を前にして希望という甘い密にすがり付いてしまった私たちは、きっと最初から間違っていたのだ。
 やり直したいなんて浅はかなことは考えない。ここまで来たら、足掻いて藻掻いて、朽ち果てるまで生きてやるだけ。何を犠牲にしても、一度は守ろうとした世界を敵に回しても、最期まで生きてやるだけ。

 私たちの絶望が、この世界を赤く染め上げるまで。

メモ2018/06/15 00:50 : 夕邑三日月☆NIljAHmRyhk @mistydark★Android-GaTaMXF8bf

2017/12/15 本編始動しました!

2018/6/15 本編終了しました、ここまでお付き合い下さった皆様ありがとうございましたm(__)m

 残りのレスはシーン回収等々ご自由にお使いください!

 また、サブ記事にて当スレの設定を開示しました。お暇な方は良ければ覗いていって下さい。

 当スレへのご意見は夕邑三日月までお願いします。


キャラクター一覧→http://mb2.jp/_subnro/15661.html-199#RES


T evil〜闇の子供たち〜 >>1-49

U egghunt〜操られ人形〜 >>50-96 >>99,100

V yell〜忘却の邂逅〜>>97,98 >>101-120

W memory〜希望の残響〜 >>121-158 >>160

X mischief〜禁じられた遊び〜 >>159 >>161-185

Y eden〜箱庭の終演〜

0 empty〜虚飾の極彩〜

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灰祢・戒音 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【レディ・グレイ、ピュアネス/桔梗記念公園・裏門】

 なんで。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
 声ならぬ声と瞳で訴える灰祢、基レディ・グレイに、その姉の変身した姿たるピュアネスは壊れた機械のように謝罪の言葉を紡ぎ続ける。その手に握った細いレイピアを、最愛の存在である筈の弟の血で濡らしながらも、全身全霊からの謝罪と後悔と、固すぎる決意が秘められた言葉だった。
「ごめんなさい灰祢……私には、あなたの罪を共に背負える方法は……あなたを助ける方法は、これしか思い付かなかったの」
 深く突き刺したレイピアを引き抜き、間髪いれずに胸へも刺突を加える。腹部だけでなく肺と心臓まで傷つけられ、レディ・グレイの唇からはごぼりと血が溢れた。
 もう言葉を発することも出来ず、ただただ非難と驚愕の瞳を向けながら崩れ落ちる家族の体を、ピュアネスは優しく抱き止める。
「ごめんなさい……本当は私、こうしてあなたに触れる資格なんてない。私はきっと、あなたよりももうずっと汚れて穢れてしまった……あなたを取り戻したかったのは本当だけれど、真実なんて求めなければ良かったと思ってる……でも……でもね。知ってしまったから、あなたをこのままにしておくなんて出来なかった。最期にあなたを止められるのは、お姉ちゃんの私しか居ないから」
 レディ・グレイにとっては意味のわからない言葉を、言い訳のように、子守唄のようにピュアネスは告げる。ぼんやりと霞みゆく頭でも唯一理解出来たのは、彼女は本気で弟の為を思って彼を殺そうとしているということ。嘗てレディ・グレイ自信が仲間を殺めたときとは違い、ただ純粋に、弟を救うためにはそれしかないと盲信している。
 それはきっと、間違いではないのだろうけれど。

「大丈夫。あなたは誰にも渡さない。あなたを奴等の目的になんか使わせない……私がずっと、一緒にいるから」
 血塗れの手でレディ・グレイの髪を撫でながら、歌うようにピュアネスは呟く。彼女が辿り着いた真実もまた、一つの命と同じように闇に葬られようとしていた。
 嗚呼、あたしは、僕は、結局こうして終わるんだ。本当はもう少し、みんなと生きていたかったけれど……あの日死ぬ運命だった僕には、そんなの過ぎた願いだったんだ。
「……姉、さん……ぼく、は」
 今でもそれなりに幸せだったのに、一体何から救おうと言うの?

 問い掛ける代わりに伸ばした腕は、ピュアネスの髪に触れるより先に、幻のように掻き消えた。そこにはもう、レディ・グレイの姿も綾崎灰祢の姿もない。地面へと転がり落ちた彼の化身を、彼女は迷うこともなく飲み込んで。
「大丈夫……私も一緒に逝くから」
 ピュアネスもまた、自らの刃でその胸を貫いた。
 二人の人間が消えた惨劇の跡など微塵も残さず、只一つそこに輝いているのは、薄墨色の歪な宝石だけ。
 誰の目にも止まることなく、その姉弟は消えてしまった。

 それから、暫くして。
「灰のおにいさまも……おねえさまも、きえちゃった」
 公園に現れた一人の少女は、その遺物を大切に大切に、名残惜しそうに抱き締めた。

【これにて綾崎姉弟は退場となります。これまで灰祢と絡んで下さった皆様、ありがとうございましたm(__)m 戒音の台詞は基本的に捨てネタですのでお気になさらず。】

>all

4ヶ月前 No.155

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/高坂百貨店屋上】

「そう……じゃあ、殺していいよ」
美里の言葉に反応する優里。
『結界を破れなかった』ということは、自力では助けられなかったと言う事だ。
そうなれば、あたしを殺すしかない。そのことを優里はすでに悟っていた。

「……その前に」
倒れた足立優里を見つめ、歩み寄る美里。
しばらく黙った後、冷静にこう言い放った。

「私の勝ちだね……何か知ってるなら、早く教えてよ」
「……本当にいいの?」
「……いいよ」
美里の言葉に反応する優里。
優里はあくまで美里を絶望させないために、秘密を隠していた。
だから、本当にいいのかと念押しをした。
美里もそれに応え、うなずく。

「じゃあ、教えるよ」
「うん……」
よろよろと起き上がり、話そうとする優里。
しかし、その時だった。

『何をやっている!? 秘密を知るつもりなら両親も、お前も殺すぞ!』
「「!?」」
突如声が響いた。二人は驚いたが、周りはとくにざわついていなかった。
どうやらこの声はエンジェルエッグにしか聞こえないようだ。

「……!!」
それに反応した美里は斧を振り上げ、優里にとどめを刺そうとするも、

「――――やっぱり、できないよ」
斧を落とし、膝を突いた。
美里は両親も優里も殺したくなかった。だが、どちらかを取らなければいけないのだ。
美里の心はすでに、折れかけていた。

(……せめて、家族みんなで)
今の美里に秘密を教えてもいいのか迷う優里。
しばらくしてせめて家族と離れ離れにだけはさせまいと、真相を話すことにした。

「こんなときになんだけど、よく聞いて……」
「……そう、薄々気づいていたよ。なんか変だったもの」
うなだれている美里に耳打ちし、自分の知っていることを全て話す。
しかし美里はうすうす感づいていたようだった、そして美里はこう続ける

「でも絶望しないって決めたよ。みんな乗り越えられそうだもの……優里ちゃんも私も、一人じゃない」
「……!!」(そうか、あたしは……!)
美里の一言に驚いた優里。
『絶望は乗り越えられる』とも言わんばかりの言葉。あたしは仲間を信じていなかったのか。
自分の間違いを確信した優里の懐が赤く輝きだした。

「ん?」(……今なら、いける気がする)
『……秘密を知ってしまったか。ならば、死ね!!』
懐からもう一つのセレスコアを取り出し、それを見つめる。
そして変身できることを確信し、思い切り念じた。
両親を人質に取った存在(=レヴィア)が放った結界弾から美里を守りつつ。

「……!?」
「すごい……すごいよ、優里ちゃん! これなら……」
真っ赤に輝く自分の姿。優里は驚きつつそれを見つめた。
美里も無事で、優里をほめていた。そしてこれなら両親を助けられると確信していた。
赤と青の交差。奇跡の形態がここに誕生した。

「……紅蓮、爆速!」
そして強化された能力を用いて結界を叩き壊して両親を救出。
レヴィアも捕まったのであったが、変身を解除したときによろめき、左腕を地面についてしまったため、美里に魔力消費量が大きくなっていることを確信させた。
つまりこの形態を乱用すると優里は死ぬので、美里はふたたび苦悩する羽目になる(超駆け足)

>周辺all

【サブが絶望する結果に】

4ヶ月前 No.156

有香里 苑花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里 苑花・菫花/夕凪高等学校付近→朝霞駅】

ただ一人の自分になりたかった。
心は二つ、体は一つ。二人で一つは、幸せなんかじゃなかった。分かち合ったって、幸せになんかなれないでしょう。だって、この世界は、平等に半分こにしてなんかしてくれない。比べられ、秤にかけられ、贔屓され、姉が九でわたしは壱。持っている者は更に与えられ、持っていない者は持っているものまでも取り上げられる。弱肉強食かと思って努力をすれば判官贔屓に蹟かされる。
其れでも、あの日橙色のあの子が分け合ってくれた蝶々は、嬉しかった。なのに、あの子も同じステラ様の配下であると知った時、また今度はあの子と自分を比べ始めた苑花が居た。やっと双子の姉・菫花を黙らせその呪縛から解き放たれたのも束の間、今度は自分と似た立場にあるバニシングツインという魔法少女が気になって仕方が無くなった。最早これは、呪縛であり、病であり、人を狂わす毒だ。
姉の事だって片付いてはいない。自分の朽ちた顔の横に姉の美貌をぶら下げて、紫苑は当て所無き虚しい狩を続けた。

-

幾度この首を斬り捨てようとしたか知れない。干からびた左の首も、元は姉の顔であった瑞々しい右の首も、何方も苑花の意のままになる今、要らぬ左の首を切り落とし、力づくで唯の一人≠ノなることを何度も夢に見た。この頭さへ一つであれば、菫花を追い出し乗っ取った上で苑花の朽ちた顔を切り捨ててしまえば、苑花はシャム双生児の片割れでは無く普通の女の子になれるかも知れないと。しかしそうできないのは、彼女達のセレスコアが腐った左の頭部に義眼のように嵌まり込んでいるからだ。それを取り出すのは、本来の契約者である有香里菫花でなければ、奪われたのと同じ事になって、姉諸共に死んではしまわないか。第一、姉を肉体的に殺せば、即ち身体が繋がっている自分への自殺行為となるのではないだろうか。
「どこまでいっても、化け物」と誰かの揶揄する声が聞こえた気がした。或いは自分自身の心の声であったのかも知れない。
双子の片割れを殺したい。ただ一人の自分になりたい。

-

苑花にとっての決定打となったのは、偶然にも目撃してしまった、ステラとその妹の戦いだった。

「ス……テラ……様……」

立ち込める魔力と主君ステラの気配を辿り、魔法少女ヴィオレットの姿でそこに駆け付けた苑花は、其処から近付き二人の間に入ることなど出来ないことを悟った。逢う魔が時の高校の屋上。仄暗い宵闇の空の下ぶつかり合う二つの明星。上空に垂れ込める紫雲に混ざってふわりふわりと漂う紫の蝶に乗り、気取られぬ距離を保ちながら、ヴィオレットは二人の行く末をじっと見守った。
ステラには、妹がいた。その姉妹は純白な心と純粋な好意でステラを傷付け続けた。ステラも自分と同じく、血を分けた姉妹を憎んでいたのだった。
付き合いはまだ深くないといえど、あの「ステラ様」が、あんな顔をするなんて思ってもみなかった。妬(ねた)みが見える。嫉(そね)みが見える。あの「ステラ様」が、自分と同じ……。
様なんて付けなくて良い、と言われてもその呼称を止めなかった苑花だ。その気持ちは困惑し乱れた。
校舎の周りに植えられた桜の樹々が、一陣の風に吹き誘われて劇場の幕のように視界を閉ざす。
白桜色の幕が再び上がった時、舞台の真ん中では、黒く燃ゆる苑花の星が、純白の星を貫くところだった。
ヴィオレットはハッとしたように顔を上げる。覚悟を決めたように、その目付きが急に険しくなった。姉・菫花の壊し方に、気付いたのだ。
彼女を載せた蝶がくるりと旋回する。濃紫の蝶は夜空を舞い上がり、そのまま夜に溶け込んで見えなくなった。

-

朝霞駅。
すっかり日の暮れた夜のプラットホーム。ただでさえ寂しい小さな駅は、各駅電車が客を根刮ぎ乗せて走り去ったばかりで、他の人影は一つもない。
ホームからすぐに降りて行けそうな踏切は、遮断機を上げたまま黙り込んでいる。
その踏切の真ん中で、彼女達はぽつんと空を仰いでいた。線路の溝の上に小さな草履の足を並べ、立ち瞬く星を数えるように微動だにしない。頭から外套のような大きな布を被り、世界から身を隠すようにして彼女は月光と桜吹雪を浴びていた。変身を解いた彼女達は、年の頃十二の子供だった。世間では中学生。ヴィオレットの時に比べると随分と幼いが、相変わらずその様子は現代の小中学生に相応しくない。彼女達は其の姿の為に、中学校はおろか学校というものに行ったことが無かったのだ。妖しい出で立ちで月下に佇むその容貌、魔法少女に変身すらしていないのに人というよりも矢張り妖怪異形の類に近かった。

「ーーーー苑花」

紫の空に咲いた月の花。
春風に、駅舎横の枝垂桜が啜り哭く。

「久しぶりね。菫花姉さん」

桜舞う桃源郷のような夜、一つの身体に繋ぎとめられた二つの首が、ぽつりぽつりと…………会話をし始めた。

「苑花、会いたかった。わたしのかわいい、いもうと」

-

姉の菫花が目を覚ました。
苑花が克ち、閉じ込めていた本物のヴィオレット……有香里菫花の魂魄。それが醒めて、美しい顔と醜い顔、二人で一つの結合性双生児は、嘗てのように話し始めた。

「ああ……うれしい。うれしい。また苑花とおはなし、できるのね」

さっきまで苑花の意識が通っていた筈の、二人の右手が動いて、苑花の額に貼り付けられた奇怪な呪符をはらりと捲り上がる。苑花はまだ自分の自由になる左手を動かして、それを阻もうとする。幼い頃から、二人はそうだった。けれど菫花は構いもせず、苑花の乾からび果てた醜い顔を見ても愛おしそうに目を細めるばかりだった。「かわいい苑花」……そう言われて、やっぱり此奴の目は相変わらず狂っている、と苑花は思った。

「姉さん」
木乃伊の首から、苑花はもう右の首に呼びかけた。
「なぁに?」
少女の首から、菫花が左の首に答える。
苑花は左手を操って、右手を搦め取る。菫花は驚いた顔をしたが、袂を併せた両の手を苑花に委ねた。二人で動かす一組の両手が、苑花≠フ眼窩に嵌った紫のセレスコアに触れる。
刹那に、木乃伊の頬が嘔吐(えず)くように膨らみ、ぱかりと開いた顎門から、黒紫の蝶が迸るように無数に溢れ出た。煌めく金の鱗粉を振り撒き、胡蝶の群れは旋風に煽られた花弁のように彼女達を囲む渦を為す。花街の灯りを映す川瀬の、金銀を散りばめた紫の水鏡。艶な夜の色に染め上げられて、少女を取り囲んでいた蝶がその肌に溶けるように消えていく。弧を描く唇が、紅い三日月のように闇に灯った。
夜霧の如く晴れていく胡蝶の群れの中からは、遊女のような派手な和服に身を包んだ魔法少女・ヴィオレットの姿があった。しかし常時と異なるのは、肩の上に二つ生えている女の首が、乙女と死体ではなく、相似形の生きた双子の顔≠ノなっていた事である。今や、菫花も苑花も瓜二つで、何方も齢十八頃の美しい女の顔になっていた。それが却って、骸をぶら下げていた頃よりも更に悪趣味で蠱惑的で不気味な気配を呈していた。

「苑花、ヴィオレットを知っているの?」
右の首ーー姉の菫花は、大人の顔に変身しても無邪気な儘で、パッと嬉しげに顔を輝かせた。

「ええ。だって菫花が居ない間はわたしがヴィオレットをしていたんだもの」
左の首ーー妹の苑花は、今や見違えるように綺麗に蘇った顔から狐の面を外して慇懃に笑いかける。
苑花に言わせれば、姉の菫花は白痴に近い大莫迦である。菫花は苑花の意図にも気付かず、破顔した。

「うれしい! わたしね、ずっとずぅっと、まってたの。苑花といっしょに、こうやってまた生きられる日を」
「菫花……」
わたしも、ずっと待ってた。こうやって菫花を屠れる日を。だけど、そのやり方が今日まで思い付かなくて、そうしなかっただけだ。そう思いながら、苑花は冷めた目で菫花を見返す。菫花は御構い無しに無邪気な笑顔で続けた。こうしてみると、遊女めいたヴィオレットの姿は何方かといえば苑花の方に似合いのようだった。
「ヴィオレットはね、エンジェルエッグっていう正義の魔法少女なんだよ。悪い魔物をたおして、みんなを守るの」
菫花は胸を張る。一瞬の隙を突かれて苑花に取って代わられた菫花は、自分が妹に裏切られていた記憶も、知らぬ間にヴィオレットがevilに堕とされていた事も、全く知らないのだった。
「みんなって、誰」
莫迦な奴め、と苑花は内心でせせら嗤う。
事情も知らない菫花はまだ正義ごっこに真剣だった。

「ねえ、苑花。わたしたちは、外の世界を知らずにきたよ。だから、今度こそみんなの役に立ちたいの。あなたと、わたしは二人で一人の魔法少女ヴィオレット。いっしょに来てくれるでしょ? それからね、ヴィオレットには仲間もいるのよ。ヒーローみたいでしょ? でも同じ魔法少女でもね、evilって悪い魔法少女もいるの。それからね……」
「知ってる」

真紅に塗られた口角を上げ、話を遮った。
なんとまぁおめでたい頭だ。聞いているこっちが恥ずかしくなるような。

「ね、苑花。いっしょに居てくれるよね? これからは二人で、エンジェルエッグ・ヴィオレットだよ。新しい世界のために頑張ろうね? 」

……ねえ?
……くどい。

自分のものであった筈の右手が、自分の意に反して苑花の左頬に添えられる。そっぽを向いていた顔を無理に菫花の方を向くように仕向けられて、眉を顰める。苑花は返事の代わりに、未だ自由になる左手を姉の右頬に添えて強く引き寄せた。
「「…………」」
桜降りしきる夜の踏切。朝霞駅のホームには、まばらな人影が現れていた。
答えを口にする代わりに、相手を黙らせる代わりに、赤く紅に濡れた唇を触れさせた。
刹那に、枝垂桜の下で踏切の警報音がカンカンカンカンと高く騒ぎ出す。二人で一つの双子を囲う、縞模様の遮断機が降り始める。

「……そうね、姉さん……」

姉さん。ーー菫花姉さん。
貴女を、殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて殺したくて、殺してこの身体から引き剥がしたくて堪らなかった。だけど、幾ら考えても、貴女を殺してしまったら、わたしも死んでしまう事実に行き着くのです。二人で一つの因果な身の上、わたしまで死んでしまったら、わたしの自由は手に入らない。だからわたしは。

「ヴィオレットは良い魔法少女なのね。これからは姉さんとわたし、二人で一緒にしようね」
「ありがとう! 苑花!」

貴女の心を殺す事にした。
ただ一人の自分になりたい。

>宛先無し、ソロール


【音沙汰もなくすみません。サブ記事にキャラクター纏めを出したきり消えていましたが、イベント終了時刻が近い為、投稿させていただきます。本来主様の許可を待たずの投稿はまずいかな、と様子を見ておりましたので、もし法度に触れることがあれば、投稿諸共消していただければと思います。】

4ヶ月前 No.157

有香里 苑花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里 苑花&菫花/朝霞駅】


点滅する赤いランプ、高らかな警告音が早く退け早く退けと急かしてくる。春の月が誘う眠りはあんなにも穏やかでゆっくりなのに、その微睡みと夢見心地の逢瀬を叱りつけるように、踏切の音は忙しく耳障りだった。
苑花は言った。
これからは姉妹二人で一つの正義の魔法少女。
相変わらず片目だけは紫水晶(アメジスト)色の義眼のままだったが、それ以外鏡写しである双頭の少女。
菫花は胸がいっぱいになり、もっと妹とこうしていたかったけれど、名残惜しみながらも先ずは遮断機が降りきる前に踏切の外に出ようとした。しかし、身体が動かない。

「待ってーー悪者が居るわ。姉さん」

まるで、縛り付けられたように、ヴィオレットの身体は菫花の思うようには動かなかった。代わりに、苑花が、線路の彼方を眺めてにんまりと笑っている。
線路は桜の絨毯の上をまっすぐに伸び、果ては闇に呑まれている。まるで星空の彼方まで届く銀河特急の小説にでも出てきそうな夜の線路の向こうに、眩い光が二つ見えた。電車のライトが、初めは小さな点であったのが、ぐんぐんと大きくなる。パァァァァァア! と威嚇するように、危機を知らす警笛音が夜空を裂いた。
轢かれる……!! ーー菫花がぎゅっと目を瞑った時、ヴィオレットの身体はふわりと宙に浮いた。彼女達は、魔法の絨毯のように巨大な蝶々に掬い上げられていたのである。
「苑花、ありがとう! 助けてくれたのね!」
しかし、蝶を召喚し難を逃れても尚、苑花はまだ眼下の列車を見据えて袖を振りかざした。

「ふふっ…………」

和服の袂をはためかせ、袖口からは鴉のように黒く艶々と光る無数の蝶が放たれた。「えっ」と目を丸くする菫花の目の前で、彼女の意図ではなく妹の意図によって飛び出した蝶の群舞は、列車の運転席の窓を覆い尽くした。あの気狂いのような警笛が、さっきよりも酷く長鳴りする。視界を奪われパニックに陥った運転手は操作を誤ったのだろう、朝霞駅を通過する特急は、線路を脱して駅のホームへと突っ込み横転した。穏やかな日常風景は、一瞬にして阿鼻叫喚の事故現場へと早変わりした。

「そん、な……苑花……どうしてこんなこと……」
「あの電車には、悪者が乗っている」
「ひどいよ、なんで、どうして……」
「塾帰りの女子高生に痴漢する変質者、席を譲らない妊婦にキレるジジイ、あの電車に乗って浮気相手のもとに帰るサラリーマン」
「…………」
顔色ひとつ変えず淡々と説明する妹に、姉は絶句した。正義どころか、事故に見せかけたただの殺人犯だ。どうしてそんな酷いことを、信頼していた妹が。
困惑し嘆く姉をよそに、苑花は益々嬉々として御託を並べる。
「前の駅で誰かをホームに突き落としてきたキチガイ青年、酒に呑まれて殴り合ってる酔っ払いオヤジ、見て見ぬ振りをしていた車掌…………そんなもんの詰め合わせよ、どうせ」
「正義、は……」
たった今、一緒に正義の魔法少女になろうと誓ったばかりなのに。菫花が目に涙を溜めて咎めても、目の前の妹はへらりと妖艶な笑みをたたえるだけだ。

「ヴィオレットは、悪者を倒す正義の魔法少女なんでしょ? 悪を倒して何が悪いの?」
「でも、人間は駄目!」
暫く見ぬ間に双子の妹・苑花は狂ってしまった。そうは思っても、菫花は未だ、自分が長年の怨みを買っていることも、苑花が復讐のために自分を裏切っていることも、考えてもみなかった。
さっきから身体が、全く菫花の言うことを聞かない。
ここ暫く苑花によってevilとしての狩のために使われていたヴィオレットの身体は、苑花の魂のほうになじむようになっていたのかもしれない。
「忘れたの? 人間の方が怪物じゃない? さあ、いくわよ、魔法少女ヴィオレット」
「まって」
菫花の制止も聞かず、ヴィオレットは電車に張り付いていた蝶達を指差し、その指先をスッと混戦状態のホームへと動かす。
儚げな指先の描く軌跡に沿って、半透明の蝶達が宙を泳ぐ。電車から逃げ惑う人々に取り憑くように吸い込まれると、パタリ、パタリと人が倒れていく。
「どう? これだけ困った人がいたら貴女のヴィオレットに活躍の場があるわよ」
「やめて! 苑花! やめて!」
「困った人や苦しい人や悲しい人がいないと、正義の味方は活躍できないでしょ?」
本当は、魔力を節約している蝶に殺生能力なんてない。姉に復讐すること以外特に興味がない苑花に、大量殺戮の趣味は無いし、列車事故以外の人為的な事件として騒ぎになっても困るから命は取らない。しかし、それでも純粋で頭の弱い菫花への効果は覿面だった。
「やめて!」
菫花は自分の身体が、自分の手が、自分の魔法少女が悪役のように人に仇なす度、激しく喚き、叫び、涙した。
「いやだ! こんなこと、したくないよぉ!」
正義の魔法少女、エンジェルエッグへの理想もあったのだろう。この甘くて莫迦な姉には、真実など何も見えていないのだから。

「ヴィオレットに活躍の場があって満足なんじゃない? 貴女が正義で居られるのは、誰かが悲しい思いをしているからなのよ。正義は悪がいなくちゃ正義にならない」
ヴィオレットを動かそうとする菫花の意思を、精神力で抑えつける。殺したい。殺したいけれどそれが出来ないから、唯一別々の、心を殺したい。崇高な志を引き裂きたい。天使のような純朴さを汚したい。

また菫花の手から放たれた蝶が、罪なき人一人の意識を奪った。

「もういやだ……どうしちゃったのよ、ひどいよ苑花……ひどい、急に、苑花へんだよ…………」
互いの体を枷とした双子の魔法少女は、一つの頭は高く笑い、一つの頭は咽び泣いて、それは奇妙な有様だった。人から見えぬ上空の、蝶の羽の陰に隠れて。
菫花の打ちひしがれた様子が悦に入ったか、苑花は陰険な笑みを浮かべた。

「急にじゃない。わたしは、菫花が嫌い。ずっと前から嫌いだった。嫌い。嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。姉さんを見ているとねぇ、本当は殺したいけど……できないから我慢する。その代わり貴女が知らないような汚いものでその目を汚そうと思うの。菫花と苑花は二人で一つ、そうでしょ? そしたらあれは、貴女が殺した人達。ヴィオレットの正義が裁いた悪。良い子ぶってても菫花も同罪よ。ーーふふふっ正義の味方って、大変だこと」
「おねがい、もうやめて」

双子の片割れを殺したい。
肉体的に殺せないと言うのなら、其の心を完膚無きまでに引き裂きたい。
わたしが、姉と同じ正義の味方になどなるものか。
本当は、正義だって悪だって別にどっちだって良かった。けれど、片割れが必ず正義を選ぶと知っているから、対立したいがためだけに悪になっただけ。
貴女の賭けるヴィオレットの手を汚すためだけに、こんな悪事を働いただけ。
わたしはヴィオレットの腕で菫花の頭を乱暴に掴み、空を舞う蝶の上から乱暴に下を覗き込ませた。
素敵な景色は、仲良く共有したほうがいい。だってわたしたち双子だもの。目下の朝霞駅の凄惨な事故現場≠ヘ彼女に突きつける絵画に相応しかった。

「貴女の好きな、綺麗事のハリボテ。正義の味方らしいんじゃなぁい?」

菫花の首から、遂に壊れた精神の、断末魔のような絶叫が上がった。



>宛先無し、ソロール(〆)

4ヶ月前 No.158

フィフスイベント開始 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

X mischief〜禁じられた遊び〜【4/15〜5/14】

 これは、少女達が終わりを迎えるまでの、ほんの僅かな、穏やかな時間。
 空は青く澄み渡り、青葉が風にそよいでいる。街路樹から落ちる木漏れ日は、石畳に水面に似た模様を描く。
 世間はゴールデンウィークで、大型連休に羽を伸ばす家族や恋人達が、和気藹々と歩いていく。

「……今日は、何処へ行こうか?」
「何処へでも。貴方の好きなところへ」

 そんな、夕凪市のとある場所で、彼女達は囁き合う。秘密を共有するように、小さく、儚く、美しく。
 それはきっと、心の内に巣食い続ける絶望に、打ち克つ為の神聖な儀式。
 ただ、幸せを願うだけの終わりが、逃避行だと呼ばれたとしても。

【以上を持ちましてフィフスイベント開始となります。心中する人以外は最初で最後の日常編です、思う存分お楽しみ下さい! そして、フォースでは皆様素敵な絡みと絶望をありがとうございましたm(__)m】

4ヶ月前 No.159

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=8Gme4Rx1Re



【 翡翠 / 夕凪高等学校屋上 】


 目の前で繰り出される姉妹の愛憎劇。その唯一の観客となった翡翠の心情は驚くほど静かだった。際程まで胸の奥を犇めいていた醜い思いが彼女等の姿を見て萎んでいくのが分かる。実に見事な姉妹愛だと思う。が、称賛の声は聞こえない。客席にたった一人でとり残された翡翠色の少女は静かに舞台を見詰めることしか出来なかった。


 ステラ≠フことをみかる≠ニ呼ぶ白藍のエンジェル・エッグことるのんはステラへ必死の愛を叫ぶ。自らが伏してしまいそうな手前でもそれを止めようとしない彼女は、ある種とても強い人なのだろうと思った。ステラと対峙する柔らかで眩しい白藍は、翡翠達にはもう失いかけている『優しさ』を持っていて。それは、闇の世界には到底存在し得ないものだからこそ、その思いは理解が出来なかった。どれだけ分かろうとしても堕ちた瞬間から定められた運命に抗うことは叶わない。
 そんなことを淡々と思っていた最中、灰色の瞳がこちらを見ているのに気が付く。既にエンジェル・エッグとしての姿を保てずに人間の身なりに戻ったるのんの瞳が翡翠に何かを訴え掛けている。ステラの腕の中で時期に死を迎えようとしていた彼女の表情が微笑んでいるように見えた。何故そこまでして笑うのか。何故、わざわざ邪魔者である翡翠に向かって笑うことが出来るのか。さっぱり理解不能だ。だから無性に苛立ってしまう。


「……随分と、幸せそうね」


 凍てつくような冷たい声でぽつりと呟く。ステラの腕の中で死ねる貴女だからこそ、そんなに幸福そうなのでしょう? 歪みきった翡翠の心がそう叫びそうになるのを抑えつけた。馬鹿みたいな醜態を晒したくはなかったからだ。この醜く淀んだ心情を言葉にしない代わりに翡翠色の瞳が憧憬と憤怒を訴える。内心は大人しくなったとしてもそこにあるのは底無しの嫉妬だけだ。





 そして、『生きて』という声と共にるのんは消えた。エンジェル・エッグとしての役目を果たし終えた者は石に還る。その言葉通りにるのんは白藍のセレス・コアとなった。手の中に残されたそれを握り締めながらこちらを見たステラの表情がぐにゃりと歪んだ。何時もなら笑いかけるのに、今日に限ってそうしない。なぜ? どうして? 疑問ばかりが膨らんで頭が破裂してしまいそう。
 ――翡翠の救世主(ステラ)ならそうはならないはずなのに。心底腹を立てながら舌打ちを零した翡翠は何を言うこともなくステラの元へ近付いていき、泣きじゃくる彼女の傍にしゃがむ。両手で顔を隠してしまったステラの腕を掴む。とてもか細く、真っ白な肌に触れた時に翡翠の心臓が再び高鳴っていることに気が付く。ステラを見ているとドキドキと鼓動が鳴って、胸がキュッと苦しくなる。忘れてはいけない感覚が翡翠の中に舞い戻って来た。嗚呼、よかった! 心から嬉々として微笑みを浮かべながらも死んだ魚のような目は変わることがないまま掴んだ彼女の腕を優しく、傷付けないように引き剥がす。やっと涙に濡れたステラの顔が見えた。が、同時にあることが不思議で仕方がなくて笑むことをやめて首を傾げる。


「どうして泣くの? なにがそんなに悲しいの? 嗚呼、本当に可哀想……」


 宥めるような声音と共に、翡翠はステラに身を寄せた。泣いている子供をあやす親は何時も我が子を抱き締めていた。それを参考にして、翡翠もステラの小さな身体を包む。彼女との二度目の抱擁はなるべく優しくしてあげたい。一度目は無理やりだったもの、次はお互いの体温や体の柔らかさを味わうようにしなくちゃ。それから、ステラの手に自らの手を絡めてゆく。清らかで聖なるものを不純な邪気がじわりじわりと蝕むような感覚に思わず頬が緩みそうになるが必死に堪え、更に指を絡ませる。


 そして見つけた。許し難い悪の根源を。翡翠の救世主(ステラ)を壊そうとした、白藍の石塊を。


「……ふふふ、ねえステラ。貴女が泣く必要なんてどこにもないわ。ましてや悲しむことなんて、絶っ対に、あってはならない」


 ステラの持つ白藍のセレス・コアを左手で奪ったと思った束の間、翡翠はありったけの力を込めてそれを握り潰した。見た目は綺麗な宝石でも力を込めれば飴細工のように容易く壊れてしまうセレス・コアに構っている暇はない。立ち上がり、フェンスの側まで歩いていくと粉になったそれを適当な場所へ投げ捨て、その行方を見送ることもなくステラの元へ嬉しそうに帰っていく。腰を下ろし、甘やかな微笑みを顔に貼り付けた翡翠はステラへ手を伸ばす。


「もう暗いわ。はやく帰りましょう?」


 もし、ステラが翡翠の手を取らないのなら翡翠がその手を掴んであげる。頼まれなくても翡翠がそうしたいからするの。貴女の意見も勿論聞くわ。だって、翡翠は貴女の従順な下僕なんだから。貴女が望むことは何だって叶えてあげる。その代わり、翡翠の願いも叶えてくださいな。
 そう思いながら「ね?」と首を傾げて見せた。




 頭上に輝く星々が私達を見詰めている気がする。大きな月は二人を見張っているかのようで気味が悪い。でも、それが翡翠に罪の意識を抱かせる為だと言うのなら今はそれで構わない。寧ろそれが心地良くて、未だかつて無いほどの満面の笑みが溢れた。



 ねえ、ステラ。貴女は翡翠の救世主なの。それをどうか、忘れないで頂戴




>>るのん(ティアー・ドリーム)様、ステラ様(〆)


【滑り込みアウトなのは百も承知です、申し訳ありません……!
 るのんちゃんのセレス・コアを壊す行為、ステラちゃんへの決定ロルも使用してしまいました。お叱りは後ほど受けますのでお許しください……本当に申し訳ありません……!(土下座)
 最後となりましたが夜縋姉妹の本体様方、途中参加にも関わらずお付き合い下さり、本当にありがとうございました。】

4ヶ月前 No.160

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=JVhp0NNz0G

【神之門 朝音 / ムーン・ファントムランド】

かつて苦い経験を味わった場所、わざわざ金を使って目立たずここまで来たのにめぼしい収穫がゼロだったという悲しい出来事が過去にあったりもした。今回はそのリベンジで出現した侵略者を滅ぼしに、なんてワケが無かった。昨日までは第四段階を目指すために特訓していたが、途中からイメージが湧かなくなってしまった。というのも、第三段階の花崩しをさらに強力にした爆破攻撃なのか、それともまた別ベクトルの攻撃なのかは全く分からないのだ。過去に一度使ったが、あまりに身体へ負担をかけ過ぎたために記憶も朦朧としており、無茶苦茶な爆発を行なった記憶はあるが、大部分は虚空に消えてしまった。

一度頭をリセットするために、このテーマパークまで足を運んでみたが、これが1人でも楽しくに遊べるほどよくできている。はした金でスリルを味わえるのだから中々じゃないか、できるなら友達やら家族やらと来るのが理想なんだろうけど、まぁ私が誘っても警戒されたり無下にされたりするだけだしね。

「ヒャァァッホーーッ!」

猛烈な速度でレールを滑走するジェットコースターで、まるで男が発するような奇声を上げた。前後に座る客達も「キャーー!」と声になってないほどのボリュームで叫んでいるお陰で全く目立っていなかった。どこかにあったもしもの世界、両親がいてそこそこの生活を営み、友達や家族と休日に遊んでいる自分の姿が浮かび上がったが、似合わないなとすぐに捨てた。しかしたまにはこんな日常を謳歌するのも悪くはない、柄にもなく久々にそう思えた。



「次はどれにしようかな」

コースターを降りると、新しい目的となる遊具を探すべく彷徨い始めた。エンジェルになって目まぐるしく戦闘の日々を送っているせいか、流石に3回乗っても全く酔いを覚える気配はない。スリルがあって激しいのも感性を刺激して面白いが、ここらでメリーゴーランドみたいなメルヘンチックなヤツにも乗ってみたいなぁ。いやでも1人で乗るのは流石に気が引けるかな…。なんて考えつつ、遊園地を1人の女が駆け巡る。


≫all様

【フィフスイベント開始おめでとうございます!】

3ヶ月前 No.161

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【根木 紗來良/ムーン・ファントムランド】

 家族や友人、恋人たちの楽しそうな声が絶え間なく響く遊園地で、少女は何処か虚ろな瞳でフラフラと歩いていた。まるで迷子のように覚束無い足取りに心配そうな、或いは怪訝そうな視線を送る客も一人や二人ではなかったが、少なくとも少女の見てくれは高校生以上、迷子センターに連れていく程でもない。
 しかし、彼女は、アトラクションに並ぶこともショップやパレードに足を止めることもなく、ただ無為に、そうとしか形容できない足取りで歩き続けていた。実際には目的が無いわけではなく、ただ、目的地が動き回るタイプのそれだったので、虱潰しに歩を進めて居たわけだが。
「……みつけた」
 そうして、園内をたっぷり二周はした後、計三度目のエントランスで彼女――根木紗來良はその目的地に辿り着いた。

「……こんにちは、薔薇のおねえさま」
 紗來良の視線の先には、背の低い彼女より頭一つはゆうに大きな、茶髪の少女がいる。園内の何処かにいる彼女――朝音を探して彷徨っていた紗來良は、無事に目的の人物に辿り着くことができて、ほっと胸を撫で下ろし、後ろから小さく声を掛けた。
 尤も紗來良は、朝音と何か約束をしていた訳でも、ましてや一緒に遊んで居たわけでもない。朝音の方からしたら、一人でストレス発散していた所に突然声を掛けられたことになる。
 勿論紗來良とて、朝音の邪魔がしたくてわざわざ探していた訳ではないので、さっさと用件を済ませて立ち去ろうとは思っていた。
 それに、紗來良が約束していたのは寧ろ。
「今日は……薔薇のおねえさまにわたしたいものがあってきたの。これ、灰のおにいさまとおねえさまから、おれい」
 そうして、紗來良は、カーディガンのポケットから、ハンカチに包まれた何かを取り出す。一枚ずつ花弁を剥がすように解かれたその中心には、薄墨色に鈍い光を放つ石がある。
 灰祢と、そして戒音の遺したセレス・コアが。
「これをつかえば、薔薇のおねえさまはきっともっとつよくなれるよ」
 まるで朝音の悩みを見透かしているかのような言葉だったが、紗來良自身に他意はない。ただ、セレス・コアを摂取すればエンジェル・エッグが強くなるという、当たり前の事実を述べているだけに過ぎない。

 そうして朝音にセレス・コアを差し出すと、用は済んだとばかりに紗來良は踵を返す。
 何処に行くかは決まっていないが、最後の仕事を終えた以上、やるべきことは決まっていた。

【一瞬絡んで去っていきます、このコアはご自由にお使い下さいませ】

>朝音さま、all

3ヶ月前 No.162

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=vvYeOc8nPv



【 翡翠 / とある路地裏 】


 修羅と化した路地裏に断末魔が響く。
 目に涙を浮かべて赦しを乞うて執行人に縋り付いたエンジェル・エッグの行く末は既に決まっている。そう言わんばかりに黒色のエンジェル・エッグは最後の呪文を唱えた。
 同時に仄暗い路地裏の全貌を顕にするかのような夕陽が差し込む。燃えるようなオレンジ色の光によって見えてきた哀れな魂は美しい石塊へと変わり果てた。その石塊をぼんやりと眺めている黒色のエンジェル・エッグ――ステラの元に寄り添った翡翠は無表情のまま、ステラの頬に手を伸ばす。今や石塊となったエンジェル・エッグとの交戦の際に浴びた返り血か、もしくは相手の攻撃によってステラ自身が傷付いてしまったのか。どちらにせよ可哀想だと思ってやまなかった翡翠は自らの素手で拭ってあげなければ、と思ったのだ。これはあくまで翡翠がしてあげたいというだけのことだからステラが嫌だと思うのなら振りほどかれてしまうかもしれない。それならそれで構わない。それがステラの意思ならばどんなことだって従うのが当たり前なのだから。そう言い聞かせながらそっと、でも遠慮する気なんて更々ない翡翠の手がステラの方へ伸ばされた。




 ――この頃、ステラの様子が可笑しい。こう一言で言ってしまうのはあまりに淡白である気もするが、まさに言葉通りの意味である。あの日、白藍のエンジェル・エッグを殺めた時からステラは壊れてしまった。どう壊れてしまったかは上手く言えないのだけれどあの日を境にステラの外れてはならない螺のようなものが外れて、彼女は狂ってしまったのだと思う。その問題の日から数日後、ステラと再開を果たし、喜びに浮かれていた翡翠を他所に、淡々と「魔法少女狩りに行こう」と言ったステラ。勿論断る理由もないから二つ返事で了承した翡翠だったがその心中は得体の知れない不安感と胸いっぱいに膨らんだ嬉々とした気持ちによって支配される。ゆえに、何を咎めることもなく、ステラの心が赴くままに魔法少女を狩り続けた。時には残虐的に、別の時には跡形もなく、善も悪も見境なく駆除してゆく。今の彼女の目に留まったら最期。ステラの愛らしい唇から呪文が零れ落ちたらそれで終わり――ご愁傷様。心にもない台詞を音にすることもなく口を動し、せめてもの追悼の意を屍へ贈る。裏腹にこれっぽっちも貴女のことなんか知らないのだけれどね、なんて内心毒づくこともあるけれどそれ以上に羨ましいと思った。だって、貴女はステラの手によって死を迎えることが出来たんだから。それはきっと素敵なことなのだろう。これを思う度に白藍のエンジェル・エッグの顔が目に浮かぶ。それが堪らなく腹ただしくて、憎たらしくて仕方がなくて思い出す度に下唇を噛んでしまう。今だって、静かな外見に相反した内面は様々な感情が混在していて時折吐き気がする。
 気持ちが悪い。でも、気分はそこまで悪くはない。それもその筈だ。だって、愛する人が翡翠の傍に居てくれているのだから。愛しげな眼差しでステラの方を見遣る。




 言わずもがなステラの言動が奇想天外なのは今に始まったことではない、のだけれど。ちらっとステラの表情を覗く。そこには飄々とした様子も、自信満々な笑顔もなくなっていた。そこにあるのは一体何なのか。正体不明の不安感と怖いもの見たさの気持ちが翡翠の中でせめぎ合う。
 お願い。もっと良く貴女のお顔を見せて。今、どんなことを思いながら、どんな顔で嘗ての同胞を殺めているの? 次は誰を葬るつもりなの? 明日は? 明後日は? これから、貴女は何をして、何を望み、何を手に入れようというの? 貴女は一体、どこに向かい、何になろうとしているのかしら?
 疑問は尽きることなく湧き続ける。だから全てをぶつけるような野暮な真似はしない。



「ねえ、ステラ。この翡翠に貴女のすべてを見せて頂戴?」


 たったひとつだけ。どうしても伝えておきたいことだけを口に出す。
 貼り付けた微笑みを浮かべ、物欲しそうでありながらも否定されることを恐れない真っ直ぐな視線をステラへ注いだ。

>>ステラ様、周囲おーる



【新イベント開始、おめでとうございます。
 事前打ち合わせの通り、ステラちゃんへの絡み文としてあげさせていただきます。ステラちゃん本体様は前回に引き続き、お相手を宜しくお願い致します。】

3ヶ月前 No.163

ふぁすね @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_iR4



【バニシング・ツイン/古びた教会】



 きらきらと割れたステンドグラス越しにカラフルな光が差し込む。そこでは凄惨な争いがあったのか、さまざまな物品が"はんぶんこ"に分断され、いたるところにぶつけられたかのような痕跡があった。シャンデリアは鎖の中心からはんぶんこにされて地に落ち、聖者を磔にした十字架はまっぷたつにされてそのシャンデリアに押しつぶされていた"なにか"に左右対称に突き刺さっていた。きらびやかなろうそくや宝石飾りに埋もれているためシャンデリアの下がどうなっているかうかがい知ることはできないが、足元に水溜りのように広がる血痕がすべてを物語っていた。

 一つの影がぱしゃん、と血だまりの中に足を踏み入れる。激闘の末に乱雑に散らばった聖書に手を伸ばし、ぺらぺらとめくったのちにつまらなさそうに放り棄てる。シャンデリアの上に慎重に上り、分断された十字架に器用に腰かけると、ぐじゅり、という音とともに血だまりがさらに広がった。


「いずもちゃん。ぼくの心臓はぼくのものよ。高鳴るのもそれをとめるのも、ぜんぶぼくがやることよ。もちろん右側だってあげない。もうぼくのものなんだから。」


 身をかがめて血だまりにそっと唇を寄せ、くすくすと小さな笑みをこぼしながらバニシング・ツインはそうつぶやく。彼女の左手にはバニシング・ツインと同じ、サンストーンのようなきらきらとした煌めきを持つセレス・コアが握られていた。バニシング・ツインはそれに口付けをし、先ほどの激闘を思い返す。

 ――いつものように暇を持て余し、いつものように殺戮を繰り返し、いつものようにあいする影を追い求めるバニシング・ツインの前に現れたその魔法少女は、自らを"ミッシング"――"行方不明者"と称した。黒と橙を基調とした衣装。ツインテールにまとめられた、橙のインナーカラーの入った白髪。オッドアイの左右の違い。纏うマスクがペストマスクではなくガスマスクであること。細かなディティールの違いを除けば、その魔法少女は生き写しのようにバニシング・ツインにそっくりだった。


「逢いに来てくれてうれしかったわ。だけど残念。ぼくはもういずもちゃんに興味がないの。ぼくが追いかけるのは昏さを喰らう星灯りだけ。」


 その襲撃者をバニシング・ツインは即座に自らの血を分けた姉・愛隔いずもだと理解した。理解して、殺した。あの火事から生き残っているとは思わなかったが、あの夜ちずむがいずもから奪った半分を取り返しに来たということは容易に想像ができた。愛がない、とバニシング・ツインは嘆息したのだ。どうして自分がいずもから半分を奪ったのか、まるで理解できていないのだ。ちずむがいずもから半分を奪ったのは、生き残りたかったからでも、いずもに恨みがあるからでもなく、ただあいしていたから。それだけだというのに。いずもにはどうやらそれが理解できなかったようだった。


「ステラのはんぶんがほしいな」


 ほこりがきらきらと妖精の粉のように舞う中、ぽつりと呟いてみた。ぼくのあいを理解できないこの肉の器に何の意味があるのだろうか。あの一等星を喰らい、自らの肉体の一部とすることがどんなに素晴らしいだろうか。きらきらと輝く星流≪ミルキィウェイ≫のように想像を巡らせ、バニシング・ツインはそっと目を閉じた。


>>ALL




【フォースイベントに参加できなかったのでなんとなくそれっぽい描写もはさんでおります。】

3ヶ月前 No.164

コア @koa11 ★Android=0qnlIoZILT

【朝香大和/コキュトス】

夕凪市の一角に佇む年季の入った骨董品屋コキュトス。おしゃれとは程遠いお店でありながら、近頃は女子高生グループが並んで列を作っているという光景が見られることである意味有名店となっている。時折、通りに響く黄色い声の元もここであり、端から見れば異様であることに反論する者は誰一人いない。
品揃えは安価な物から高価な物まで、著者が不明な本や何処から入手したか分からない宝石までも取り揃えており、掘り出し物も見つかるという。ただ、出元が分からない謎の物ばかりのためかお目当てが手に入ることはそう多くはなく、収益の半分が掘り出し物の売買である。では、残った収益の半分は何かと言われると併設されたカフェスペースに答えがある。

「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます。ご利用は……三名様ですね。では、ご案内いたします」

バイトにしては慣れすぎた流暢な言葉遣いと丁重な振る舞いで大和はお客を先導していく。その後を微笑んで付いていくのは順番待ちをしていた女子高生たち。耳を澄ませば小声であれこれ言っているのが聞こえる。「いつ見ても綺麗だよね」「いやいや、あれでメイド服なんだから可愛いじゃん」などという称賛の声はこのお店で唯一保証された“お目当て”の大和に向けられた物だった。
席まで着くとメニュー表を渡して、また接客、次は注文された物の調理と差し出し、と休む間もなく仕事が舞い込む。その一つ一つを手慣れたようにこなしていく大和を見ては満足そうに出されたコーヒーやデザートを嗜む女子たち。無料でありながらも完成されたサービスが存在していた。

客足も落ち着いてきた昼下がりになってようやく大和にも休む時間が確保できた。カウンター席に座ると忙しいせいでそのうち感じなくなった疲れがどっと押し寄せてきて溜め息が出る。着けていたカチューシャも外すと一人の顧客に元通りだ。

「……疲れました」

「いつも助かるよ。とは言っても君がいるから忙しいだけなんだがね。……骨董品売れないしな」

自虐気味に笑うマスターに「それは、すみません」と言いつつ、労いに出してくれた紅茶に手を伸ばす。鮮やかな色合いと引き立つ香りは見ているだけでも楽しめるものではあるが、ほのかな甘みと茶葉の風味を感じるために口を付けずにはいられない。

「美味しいです。落ち着く味」

「それは良かった。何度も淹れるような常連に褒められると嬉しいものだ」

おまけの軽食として出されたパンケーキも食すと疲れの溜め息はいつしか安堵の吐息へと変わりつつあった。
しばらくティータイム楽しんでいると爽やかな鈴の音が来店を知らせる。ふと時計を見ると四十分ほど過ぎていたようで、カチャーシャを着け直して服装を整えるとまた忙しない業務へ戻ることとした。

大和の存在を知ってか知らずかコキュトスに訪れる魔法少女やevilは一定数いる。中には大和がevilであることを知る者もいるが、経歴については黙って世間話や魔法関係の会話で適当に切り上げるため疑問こそ残るも恐れる者はおらず、認識としては少し噛んでいる程度のメイド止まりであった。

>>ALL様


【サードイベントではお世話になりました。今回からまた新しいキャラクターで参加しようと思いますので、よろしくお願い致します。】

3ヶ月前 No.165

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=cndAAajTeJ

【神之門 朝音 / ムーン・ファントムランド】

次の遊具を見つけるために園内をただただ歩き回った。人の数も着々と増え続け、途絶えることの無い賑やかさを独り身の彼女を差し置いて増していく。それが何だと言わんばかりに淡々と進む様は、喧騒を撒き散らす高校生とはまた違う印象を周りに与えているんじゃないのか、そもそも誰かと一緒にすら来ていないんだし。

そんなこんなでエントランスに差し掛かった辺りで、聞き覚えのない声がこちらにかけられた。ハッとして目の前に突如現れた少女に目を向ける。小さい声に見合う可愛げな容姿、一体私に何の用事なのか、そもそも彼女は誰なのか。

「アンタは…」

どこかで会ったのかと記憶を探ろうしたところで、彼女は薔薇のおねえさまなんて素敵な言葉と共にポケットから何かを取り出した。にしても薔薇ねぇ、似合わないなぁ。褒められたと勘違いして微笑が浮かび上がった。大抵は罵倒されるか相手にすらされないからこういうのには慣れていないのだろう。灰のおにいさまとおねえさま、誰かは分からないがそれが差出人のようだ。

一体何だろうと盛大に期待し胸を膨らませた。しかし、取り出した「何か」、それを包むハンカチを取り外し剥き出しになったその何かを見て、一瞬で微笑は消えた。そこには鈍く光るセレス・コアが2つ、ただあるだけだった。いや、それだけなら良い、なぜこれを彼女が持っているのか急に疑問が浮かび始めた。そもそも一般人が私を知るわけがない、やはり彼女はエンジェル、ならこのコアは誰の成れの果てなんだ。灰のおにいさま、まさか灰弥? ならおねえさまとやらはあの時の姉貴、確か戒音。なんで彼らがコアになっているんだ、あの時、私の目の前から消えた後に何が起こったんだ? まさか彼女が2人を、いや、わざわざコアをくれるんだからその線は無い、じゃあ侵略者に、それとも互いに殺しあったり、あるいは心中…あーもう!ワケがわかんねぇよ。

悩みを見透かしたかのように彼女は言葉を置いた、この2つを使えば確かに強くなれるかもしれない。だがなぜ渡すのか、灰弥達の意思なのか彼女の独断なのか。それを受け取り、数秒だけ眺め続ける。これが意味することが全く理解できない。

「ちょっと、アンタは…」

渡し終えて要件は済んだと言わんばかりに彼女は朝音から遠ざかっていく。止めようかとも考えたが、その足取りには何か確固たる決意が滲み出ており止めることさえ憚れるようだったし、人混みも激しくなりここから彼女に追いつこうとするのはかなりキツイということで、追いかけるのは断念した。


≫根木 紗來良様、all様

3ヶ月前 No.166

有香里菫花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里 菫花/ムーン・ファントムランド】

いつまでも一緒にいたかった。
わたしを、独りにしないで。

あの夜、あの桜吹雪の朝霞駅で特急列車の脱線事故が起きた夜。夢幻のように現れたわたしの双子の妹・苑花は、あれから二度と喋らなくなってしまった。

わたし、有香里菫花は、たった独りになってしまった。

_

常人なれば首は一つ。
されど奇形の双生児ならば、首は二つ。
鏡に映って、首が四つ。
鏡と鏡を合わせれば、首は八つに十六に。
三十二、六十四、百二十八……阿僧祇、那由多、不可思議の、気も遠くなるような首が、数多の首が、黄泉路辿るかの如く、無限迷宮の出口を探している。

万華鏡の中に入って、光の科学が織りなす奇妙な世界に遊ぶ。四面も床も天井も、傷ひとつない鏡張りにされてしまえば、点る豆電球もまるで銀河の星灯り。行方も果てもないような世界で、四方八方を向いた相似形の人間達が、皆一様に惚けたように彷徨い歩いている。
本来世界にたった一つのオリジナルであるはずの個体が、此処でだけは無限に増殖されている。大量生産された自らのコピーと向き合って、見えているのに何処にも無い出口を探し、首をひねるのだ。あるものは縦に細長く引き伸ばされ、あるものは横に平たく押し潰され、目ばかりが大きくなったり、梅干しのように皺寄ったり、逆さになったりしながら、光の悪戯によって宛ら百鬼夜行の様相を呈していた。
ココに入れば、だれもがみんな、かいぶつだ。ーーミラーハウスの檻の中、終着地点の内面銀鏡貼球体の中、訪れる客達はあまりの不気味さとそこはかとない悪趣味さに早々に逃げ出してしまう部屋で、少女は膝を抱えぼんやりと宙を仰いでいた。

夕凪市、ムーン・ファントムランド、ミラーハウス『無限Laboカガミジゴク』前。
連休で賑わう遊園地を、家族連れや仲良しグループ達の輪から外れて、一人の少女がぽつんと置き忘れられた人形のように佇んでいた。
「おじようちゃん、どうしたの? 迷子?」
「んーん」
「おじようちゃん、お父さんとお母さんは?」
「んーん」
「おじようちゃん、一緒に遊ぶ?」
「んーん」
小学生ぐらいの女の子が、それも、なんとなく時代錯誤な日本人形のような出で立ちの女の子が、ホラーハウスとミラーハウスのあるあたりのエリアをたった一人でうろうろと漂っていれば、それは目立つだろう。
道行く人々の中には、そのなんとなく危なっかしい様子である幼気な少女に向かって親切に声を掛けて通る者も少なくなかった。彼女は、その度にニコニコと愛想良く笑って首を横に振る。頭の悪そうな、けれど屈託の無いその純粋な笑顔に、声を掛けたほうも悪い気はせず、「そう」と笑って通り過ぎる。
少女ーー有香里菫花は、黒々とした丸い目をくりくりと瞠って、その様子を面白そうに眺めている。

此処に、もう一つの首があった頃には。
妹の苑花と二人で一つの奇形双生児であった頃には、隠れていなくてはいけなかった。誰もが気味悪がって見て見ぬ振りをし、困っていても誰一人話しかけてくれなかったものを。
みんなと同じ形をしていたほうが、優しくされる。
(人間って、ふしぎ)
苑花はスカーフに隠れた首の傷口に触れ、其処に埋め込まれた眼球のような形のセレスコアに触れる。これは、切り取られる前の苑花の頭の眼窩に義眼として埋め込まれていたものを移し植えたものだった。

_

あの桜吹雪の夜。苑花とやっと会えた夜。
苑花はひどいやりかたで、わたしの魔法少女ヴィオレットをめちゃくちゃに壊そうとした。
苑花といっしょに、ヴィオレットになって、悪いやつをたおして、みんなにありがとうって、言われたかったのに。……やっと出られた外の世界だから、良いことをすればみんなと仲良くなれると思ったのに。
なのに、苑花はわたしを裏切って、わたしの知らない間にヴィオレットを悪の魔法少女evilに変えていた。
わたしは、泣いて、怒って、初めて苑花をーー大好きだった妹を、憎いと思った。

それから後のことを、わたしはよく覚えていない。

気がついたら、わたしを消そうとしていた苑花は、返り討ちに遭って消えていた。文字通りの二人で一つだった双子の妹は、また元どおりの物言わぬマネキンのような首になってしまった。

それだけじゃない。次に目を覚ますとわたしは、苑花と一緒に手術を受けるはずだった市内の病院に居た。結合性双生児・有香里菫花と苑花は、此処で分離手術を受けることになっていた。まだ人間として生きていた頃、生まれ育った島から連れ出されて、夕凪市へ。二人のつながった体を分け合う手術と聞かされて来たけれど、道中でそうではないことを知った。姉であるわたし・有香里菫花の身体から、妹・有香里苑花の余分な人間の破片≠切除する手術だった。わたしたち姉妹は、それを知って絶望し、反抗した。わたしは、「苑花を殺してわたしだけ生き残るような手術なんてイヤ、くっついたままで良い」とごねた。妹も同じ気持ちなんだとずっとずっと思っていたけれど、今となってはもう、彼女は「菫花姉さんを殺し切り取って苑花が普通の女の子になる手術をしてほしい」とごねていたのかもしれない。今となってはもう、わからない。

せっかくまた会えたのに、わたしは愛する苑花を二度も殺してしまった。鏡写しの分身を、二度も壊してしまった。
苑花だった左の頭部は腐っている、そのままにしておけば君が危ない…………紫の夕闇空が映る白いベッドの上でお医者さんにそう言われた時、わたしはもう疲れて、今度は頷いてしまった。

わたしは、少なくとも人間のわたしは、唯の一人になってしまった。普通の女の子になってしまった。

_

遊園地の退場ゲートから、小さな菫花が出て来た。表情は乏しい。けれど、彼女はもう今迄のように被り布で異形の上身を隠す必要は無くなっていた。首に勿忘草色のスカーフを巻き、陽の光の下を歩いている。
ーー今度は、ドコへ行こう。
彼女の中に眠る双子の魔法少女ヴィオレットが悪の魔法少女に堕ちてしまったことに変わりはない。
けれど菫花自身は……ーー……あれだけ妹を返り討ちに合わせたことを嘆いておきながら、彼女を切り捨ててその犠牲の上に手に入れた普通の少女の体を、差別されることのなくなった自由の身の上を、悪いが嘗て無いほど心地良いと感じていたのだった。

ーーあのこがいないことが、こんなに幸せだったなんて。


>all様


【本当にやってしまった、紫inムーンファントムランドのミラーハウス……満足! この後は、絡んでくださる方がもしいらっしゃれば何処へでも出張します!】

3ヶ月前 No.167

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/コキュトス】

「ふぅ〜 やっぱりここはいいや〜」
骨董品を眺めながらゆっくりとくつろぐ優里。
その顔にはもうevilとして戦っていた頃の面影はなかった。
足立優里が正義に返り咲いてしばらく、彼女はつかの間の平和を満喫していた。

(いつぶりだろう、こんな清清しいのは)
店内の隅にたたずみ、今までの戦いを振り返る。
evilになっても人々の幸せのために戦ってきたこと。
自分が「知られるべきではない事実」を隠し通すため戦い続けてきたこと。
そのたびに美里とぶつかりあったこと。レヴィアが直接自分を殺しに行かなかったのは返り討ちにされる可能性が高かったからなのを知ったこと。
そして、自分の間違いに気づいたこと――――
そうして自分は今、ここにいる。優里はそう思った。

「さて、と……」
たたずむのをやめ、ゆっくりと歩き出す。
行き先はカウンター席。
おもむろに座りまた、くつろぎ始めた

>周辺all

3ヶ月前 No.168

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_iR4

【根津 紗來良/ムーン・ファントムランド エントランス→ミラーハウス付近】

「……ありがとう。最期にさくを、おねえさまたちのやくにたたせてくれて」
 訳が分からないと顔に書きながらも、セレス・コアを受け取ってくれた朝音に、紗來良はそう小さく微笑む。実のところ、紗來良の行動は彼女の独断だったが、少なくとも戒音の意には沿ったものだった。今となってはそれを確かめる術は何処にも無いが、紗來良としても、二人の形見ともいえるセレス・コアを、自分の道連れにするのは嫌だった。
だから、これで良い、と彼女は歩き出す。朝音に呼び止められたような気がしなくもないが、振り向いた時には紗來良の小さな体は人波に呑まれてしまっており、結局そのまま
彼女の所からは遠ざかってしまった。それはそれで、仕方のない事だったのだろう。紗來良にはもう、現世に何の柵もない。後はただ、墜ちるだけ。

 そうして再びフラフラと彷徨い始めた紗來良が辿り着いたのは、当然と言えば当然だが、ムーン・ファントムランドの出口だった。朝音を見付けた以上、その場に留まる理由もなくなり出て来た訳だが、そこでまた彼女は見知った顔――正確には、灰祢を通して一方的に紗來良が知っている顔――を見付けて立ち止まった。
 勿忘草色のスカーフを風に靡かせた、何処か浮世離れした雰囲気の少女。このまま一人にしておいたら危うい、いけないというような庇護欲を掻きたてつつも、確固とした足取りも感じさせるような少女だった。
「紫のおねえさま……? でも、すこし、ちがう……?」
 ぽつり、と呟いた紗來良の声が、少女・有香里 菫花に届いていたかは分からない。紗來良もまた、聞かせるつもりはなかったのかも知れない。
 ただ何となく、彼女なら少しくらい、自分の話し相手になってくれるのではないか。そんな期待が、紗來良にはあった。
 もうすぐ消え逝く自分の、最後の暇潰しの相手に。

【前回投稿がナチュラルに根木になってますが、根津が正解ですご免よ紗來良……
 という訳で、折角なので菫花ちゃんにちょっかいをかけに行きます!】

>朝音様、菫花様、周辺ALL

3ヶ月前 No.169

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_8aC

【ステラ/とある路地裏】

 ドスッ、と鈍い音が路地裏に響く。確実に相手の心臓を貫いた感触を魔力で受け取り、最期に止めの呪文を紡ぐ。徐にもうぴくりとも動かない人間の胸から槍のように先端が鋭く尖る”影”を引き抜いた。翡翠の植物の能力によって作り上げられた重厚な樹木に絡め取られ、路地裏の突き当りに磔にされた少女の左胸には大穴が空き、留まることなく体液が零れていく。やがてその身体を捕らえる植物に養分を吸い取られるようにボロボロになって肉体は消え去り、足元に小さなセレス・コアだけが残った。

目の前に広がるのは赤、赤、あか。滴る鮮血はストロベリージュースみたいに甘くておいしそう。少し前まではそんなこと思わなかったはずなのにな。あぁ、健気に生きる命を奪うのは、たのしい。入り乱れた感情を放置して、薄汚れた路地裏のコンクリートに晒されたセレス・コアを拾い上げ、いつもの小瓶にしまうこともせずそのまま口に運んだ。コロコロと楽し気に口の中で踊る感触に頬を綻ばせる。今殺した名前も知らないエンジェル・エッグの成分が、私に移植されるのを感じる。優しさ、謙虚さ、慈愛……知っている味のような? 覚えのある味に首を傾げ何処か覚束無い思考回路で目の前の光景を処理する。ついさっきまで確かな息吹を紡いでいた物体は、今やもの言わぬただの石塊に変わり果て、同じ生物だったはずの人間に捕食されている。何度体感してもこの感覚は謎が多い。そんなことを考えながらぼんやりと立ち尽くしていれば、ふと横から伸びてきた手に思考が遮られた。視界の横で揺れる翡翠色。そっと壊れ物を扱うかのように触れられた頬を染めていた血はその手に拭われ、ほぼ無意識的に擦り寄るように顔を寄せた。冷えた掌が沸騰しっぱなしの思考に丁度いい。その温度はあの日彼女から差し出された、握った手と同じだった。

 数日前、私は学校に居た、らしい。響き渡る耳障りなチャイム。包み込まれるような優しい抱擁。月を背負った翡翠が此方へ手を差し伸べ微笑んだ。その笑みは誘うように妖艶で、惹かれるままに手を取った。私の記憶は其処しか残っていない。翡翠はまるでいつもと同じように、遅いから家に帰ろうと自分の手を引いた。ならばその前後に何かがあった、ということはないはずなのに。あの日から胸にあった何かがぽっかりと消えてしまったような喪失感を覚える。瞼の裏にふとちらつく白藍色が何ものなのか見当もつかなくて、思い出そうとすれば頭が痛んだ。脳内にノイズがかかったように思考も記憶もハッキリしない。何故あの日私はあの場所に居たのか、あそこで何があったのか、抜け落ちるように全てあやふやになっていた。

 ただ胸に空いた穴が虚しくて、足りないならば補わなければと誰かが囁く。ふつふつと沸き起こる衝動を抑える術を知らなくて、気が付けば翡翠を連れて路地裏でひたすらに殺戮に明け暮れていた。でも其処には以前のような悦楽も高揚感もない。ただ無機質に目に留まった命を狩り取るだけの作業。あるのはまるで煙草のような気休めの充足感だけ。つまんない、そう音もなく唇が象られる。ごっそりと表情が抜け落ちた顔は、人の神経を常時逆撫でするような飄々とした笑みはもう浮かべられなかった。

 揺蕩う波のような意識に挿し込まれた翡翠の言葉にハッと目を見開く。正面の彼女の表情を窺い見れば、いつになく真っ直ぐで揺らぎの無い瞳が向けられていて驚いた。彼女はこんなにも恐れを知らない瞳をしていただろうか。何だか一気に彼女が遠くなるような錯覚を覚えて、咄嗟に囲うようにその首に腕をするりと回した。目の前にある彼女のきらきらとした瞳に吸い寄せられるかのように見詰める。ぽつりと胸の中に沸いた「欲しい」という感情に見ないふりをして、数秒経ってようやく普段通りに近い程度に口の端を吊り上げる。

「ふふ、翡翠ちゃん、『見る』ってことは直接理解には繋がらないよぉ? 理解っていうのは、こうやって触れて、嬲って、食べ尽くしてよぉやく辿り着くものなんだから」

その言葉の意図を強調するように口の中のセレス・コアを舌を出して見せつけた。何度も口内で歯にぶつかり、転がったその宝石は既に欠けてボロボロになって尚その光を失わずにいる。しかしその僅かな希望の如き光さえ、一瞬で自分の刃に噛み砕かれた。

「理解は破壊、ってね」

満足気に粉々になったセレス・コアを飲み込み、翡翠の耳に吹き込むように呟く。もし彼女が私を理解したがっているのだとしたら、私を壊してはくれないだろうか。そんな、突飛な思い付きだった。もう私は何を曝け出せば本当で、何を隠せば完璧で居られるのかも分からなくなっていた。抜け殻のような【ステラ】の残滓は箍の外れた収集欲と得体の知れない支配欲だけ。何者にもなれない自分を、終わらせることが出来るのなら、そう深くも考えずにその言葉は口を吐いた。

「ね、死んじゃおっか。一緒に。」

コンビニ行こうか、くらいのノリだった。思考の読めない笑みを張り付けて、まるで試すように、それでいて縋るように翡翠の首元へ手を伸ばす。首を掌で包み、僅かに力を入れる。相手の呼吸を阻害する感触に背筋が震えた。あまりにも突然の心中の誘いに乗るも乗らないも彼女次第。しかしこの【ステラ】というエンジェル・エッグは既に崩壊の一途を辿っていることは間違いないことを、焦点の合わない虚ろな瞳が雄弁に告げていた。






都合の悪いことは全部忘れてしまって、白藍色が遺した言葉など空の彼方へ置き去りに。星空が望んだ夢想は、もうすぐ終わりを告げる。

────スターリースカイ、どうかこの夢を覚まさないで。

流れ星に、願いは届かない。






翡翠様、周辺ALL様>>

【お返事遅くなってしまい申し訳ありません…!前章から引き続きよろしくお願い致します!】

3ヶ月前 No.170

コア @koa11 ★Android=0qnlIoZILT

【朝香 大和/コキュトス】

 骨董品屋の片手間に営んでいるとはいえ、コキュトスにはカフェを名乗るには相応のメニューがいくつも存在している。コーヒーを取って見てもブラック一点張り、といった頑固なことはなく、エスプレッソやらカプチーノやら果てはキャラメルマキアートなんてものも揃えているところから種類へのこだわりが伺える。食べるにしてもフレンチトーストやパンケーキ、上の世代には嬉しいあんみつやわらび餅までもカバーしているため、年齢層はそれほど選ばない。

「今度は何を作っているんだい?」

「チョコを練ったパンケーキでも作ろうかと思いまして」

 ボウルの中の生地をシャカシャカと混ぜながら大和は答えた。ダマを作らず、調理台を一切汚さずとその手付きは慣れたものである。実際にメニューの半分以上は大和が発案して載せており、その評判も上々。いつしか飲料はマスターへ、食べ物は大和へ注文が入るようにもなった。
 そんなに上手いのを何処で覚えたか、なんて野暮な事をマスターは尋ねない。大抵は「お菓子作りが趣味の女子で高校の時は……」などという程度で片付く話ではあるが、大和の背景を知っているマスターからすれば掘り下げるような話題とは思っていなかったのだ。ただ、褒める。それだけで良い。

「あ、試作のつもりが多く焼きすぎてしまいました」

 夢中で作っていると時間も個数も忘れてしまうのか、完成したのは六枚ほどのパンケーキ。甘いチョコレートの香りと大人な風味でカカオ多めの二種類ができたが、一人で食べられるかと言われればそうでもない。しかし、完成形ではない物を販売という形で出すのはどうも気が引けるものである。どうしたものかと一枚ずつ食べながら悩む大和の視界に入ったのは、カウンター席の見覚えのある顔だった。
 大和は彼女の存在を知っていた。自分の正体を隠して一方的に知るというのは申し訳ない気もするが、近寄れば相手が魔法を使える者であるかどうかなんてことはそれなりに分かる。それはコキュトスの骨董品の中に魔法で作られた物やセレス・コアのような物が紛れていても同様だ。

「あの、生地だけの試作品なのですが、いかがでしょうか? こちらが甘めで、こちらは少しビターです」

 くどくならない程度にチョコレートソースをかけて二種類のパンケーキを一枚ずつ差し出す。今回はあくまで生地だけであり、本来ならば苺やブルーベリー、ホイップクリームなどもトッピングとして加える予定ではある。

「なんだかいつもより楽しそうですね。表情が違います」

 ふと感じたことをカウンター席の彼女へとぶつけてみる。来店回数が多めのお客であればあるほど、それは印象に残りやすい。あの人はいつも疲れた顔をしている、この人はいつもほっとした表情を浮かべるなんてことも次第には気付きとして残るようになる。彼女に至っては以前と比べて余裕ができたように見えたのだった。

>>足立優里様、周辺ALL様

3ヶ月前 No.171

有香里菫花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里菫花/ムーンファントムランド(ミラーハウス前)】

むらさき、紫(ゆかり)は紫苑の花の色、紫菫(ヴィオレット)の花の色だ。
紫のおねえさま、そう呼び止められて菫花が自分のことだと気付くのは容易かった。賑わう遊園地の片隅で、一人ぼっちのはみ出し者を、別の一人ぼっちが呼び止める。まるで、迷い子同士の邂逅。

「あなた…………だぁれ?」

知らない人だ。けれど、悪い気はしなかった。
振り返るその先に佇む少女を、菫花は夜闇に塗りつぶされたような大きな目を瞬いて繁々と観察した。白いワンピースを着た、色の白い少女は、菫花よりも年上に見えた。けれど彼女は菫花を「おねえさま」と呼ぶ。なんだか不思議な感じがした。一つだけになった首を、小さく傾げる。もう一方の頭にぶつかる事はなく、首肩も軽く、些細な動作も軽快だった。初めのうちはいちいち感動したものだが、もう既に、慣れ始めている。
苑花の友達なのかな、と、菫花は想像した。僅かに怖いと思う気持ちが芽生えた。正当防衛とはいえ妹を消してしまった自分は、妹のふりをするべきなのか、暫し、考えを巡らせる。
困り果てて眉尻を下げた。首に巻いたスカーフに……以前は妹が居たその場所に、そっと触れる。
しかし、待っていても、相手が此方に害を為してくる気配は無かった。代わりに白く柔らかなフリルを纏うワンピースが、春風に踊っている。
彼女の正体、事情、詳しい事は何もわからない。けれどその様相に自分と通ずる何かを感じて、菫花のあどけない小さな唇はにこりと優しい弧を描いた。

「……あーそびましょう?」

歌うように言って笑うと、白く柔らかな頬の上で、例の黒塗の眼をきゅっと細めた。

>紗來良様


【絡みありがとうございます……! 】

3ヶ月前 No.172

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【根津 紗來良/ムーン・ファントムランド】

 菫花は、紗來良の言葉に振り返った。黒く大きな瞳が瞬いて、不思議そうな声が響く。
 あなただぁれ?
 そんな当然の問い掛けに、紗來良は一瞬言い淀んだ。答えられない理由は何もないのだが、早い話自分で話し掛けておいて怖じ気づいているのである。人見知りに近い何かを発動しているわけだが、そこは彼女自身の問題であり戦いだ。逡巡の末、紗來良は取り敢えず、自分の名前を名乗ることにした。
「……根津、紗來良です」
 絞り出すように告げたのは、間違いなく紗來良の本名だった。偽名でも、エンジェル・エッグとしての名前でもない、本物の。
 そしてその間、紗來良もまた菫花の様子を観察していた。彼女の今の様子は、灰祢が紗來良に話して聞かせた紫のエンジェル・エッグの様子と余りにも似ていて余りにも違う。彼が知っている紫のエンジェル・エッグというのは有香里苑花の、そのほんの一部なので違っていて当然なのだが、紗來良がそれを知る術は何処にもない。
 だからこそ彼女は、知りたいと思う。生来の好奇心の強さは、死を前にしても揺らがない。

「……おねえさま、さくとあそんでくれるの?」
 さてどうやって話を続けようか、そう思い悩んでいた紗來良にとって、菫花の提案は夢にも思っていないことで、また願ってもないことだった。
 ヘーゼル色の瞳が見開かれて、すぐに、ふにゃりと歪む。
「えへへ、うれしいな……だれかとあそべるのひさしぶり……」
 近頃の紗來良の遊びと言えば、能力を駆使した一人遊びが完全に板についてしまっていた。右を見ても左を見ても自分がいる。半分は左右が入れ替わった、半分は自分と全く同じ姿の。それでも一人ぼっちでいるよりはマシだと、鏡張りの世界に迷い込んで引き籠っていたような紗來良には、菫花からの、誰かからの遊びの誘いほど甘美な言葉はない。
「ねぇ、おねえさま何してあそぶ? おねえさまのしたいことをしましょう。二人だけじゃできないことでも、さくならできるよ」
 珍しく得意気で饒舌な紗來良は、分かりやすくはしゃいでいた。

【此方こそありがとうございます、残り少ないですが宜しくお願い致しますm(__)m】

>菫花さま、all

3ヶ月前 No.173

軽トラ @bondance☆.KYUGAZIaLG5 ★mde03ZFXMQ_XGK

【ドロシー/廃屋→古びた教会】

 地面に散らばった陶器のかけら、壁紙やはそこらじゅうが焦げ、まともに在るのはドロシーとその恋人、ビター・ドロップのほとんど事切れた姿だった。
 ドロシーは彼女の肉体に跨り、両手に抱えた顔に、髪にと口づけを落とす。棄てなければならない、壊さなければならない、と思いつつも、泡の様な恋情を肉塊になり果てた恋人へと差し出す。受け取り手のない愛は、与えるたびに転げ落ちていく。

「貴女の心を私は殺す、貴女の身体も私が殺す。貴女の、呪いも──」

 生ぬるい風のように低い声で静かに呟き、いつの間にか転がり落ちていたビター・ドロップのセレス・コアに気づいて立ち上がる。すっかり感情の抜け落ちた力ない顔で瞬間眺めるも、即座に紅いヒールの爪先で黒い塊が砕かれる。程なくして女の頭部も体も解けるように消えてなくなった。

「私が愛し、私以外のひとたちにも愛された貴女を殺すのは、私、だけ……」

 表情は変わらない、暗く、暗く、暗く、陰を落とす。腕はだらりと下がって、足の下、真っ白だったスカートの端から黒い滲みが拡がり、それに影響されたかのように、ぼそぼそと独り言をこぼし続ける。

 それが一時間ほど続いたところで、ゆらゆらと揺れていた視点が定まってきた。しかし落ち着いたわけでも正気を取り戻したわけでもなく──まだ、“正義たち”は大勢いる。という感情を原動力にして廃屋から抜け出すと、外壁を薙ぐように右手から光線を放つ。視線には迷いはなかったが、いつも真っ直ぐ伸びていた光線は歪み、赤いうねりが煉瓦の壁を削いで炎を上げる。そして音もなく真上へ跳び上がると、強い意志を持った動きをする魔力の残り香を辿って、屋根の上を駆け抜ける。

 少し外れまで来たところで、体中にひしひしと伝わる感触にスピードを落とす。ふわりと一瞬浮いたかと思えば、教会の屋根目掛け勢いよく左脚を踏み抜いて、天井に大きな穴を開けた。降り注ぐ光と瓦礫と共に、その右手にリボンがはためく小刀を顕現させながらバニシング・ツインの眼前へと落ちてくる。コンクリート片の上に足場を作り猫を彷彿させる器用さで着地すると、光のない、けれどぎらつく眼で見据える。

「貴女はエンジェル・エッグだ、その行いは──」

 断罪者でも気取るような口ぶりはぼんやりした正気と視界の中、きらりと目に入ったセレス・コアによって止められる。表情がやや硬直し、それから少しだけ申し訳なさそうに、

「ごめんなさい、早とちりしたみたいです。」

 完結に謝辞を述べて、その場から立ち去ると思いきや、セレス・コアの行方が気になるのか、はたまたバニシング・ツイン本人に興味がでたのか、棒立ちのまま薄暗い両目でじっ……と見つめ始める。

>バニシング・ツイン様、周辺ALL様

【大変ご迷惑をおかけしております。申し訳ありませんが前回のレスは無かったことにしていただきたく思います。】

3ヶ月前 No.174

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/コキュトス】

「おっ、美味そうね〜 もらうよっ!」
差し出されたそれを嬉々として食べ始める優里。
乱暴な食べ方ではあるが、かなり美味しそうに食べていた。

――――なんだかいつもより楽しそうですね。表情が違います

「……ん?」
不意にかけられた言葉。それに反応し手を止める。
そして、顔を向けた後口を開いた――――

「いやー、実はね……」
優里は以前(5thイベント)起こったことを話した。
友人が両親を人質に取られ、それで一戦交えたこと、その友人に真実を告げたこと、そして『自分は仲間を信じていなかった』と気づいたことを。

「要は頭の中のモヤモヤが抜けてすっきりした?って感じ」
そして先ほど言った事を簡潔にまとめた。

>大和および周辺all

3ヶ月前 No.175

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=6T8D04TNLW



【 翡翠 / とある路地裏 】


 頬に添えた手を拒まれることはなかった。それどころか触れた手に擦り寄って来たステラの姿を見て、自分の行為を肯定してくれたことに気付いて安堵の表情を浮かべた。


 ステラの変化と同時期に翡翠自身も僅かながら変わったことがあった。それに気が付いたのは最近だが、確かな確信もあるそれに、何とも言えない居心地の悪さを感じていた。どんな事があっても胸が踊らない。嘗てのようにときめきも、苦しさも、葛藤も、何もかもが鈍く感じる。目の前に居て、こうして直にステラという唯一無二の存在に触れているのに先程感じた安堵の他に思うことがない現状に対し、不思議そうにゆっくりと首を傾げる。
 その時にやっとステラと目が合った。翡翠の目を見詰め返す濃紺の瞳が一瞬危うく揺らいで見えてどうしたのだろうと思った束の間、ステラがさっきよりも間合いを詰めて来たことに驚いて冷たい空気を吸い込む。喉がヒュッと鳴り、心臓が何度も五月蝿く高鳴っている翡翠を他所に普段通りの目に戻ったステラが軽い口調で『理解するということ』を諭してきた。以前みたく愉快そうな笑みを浮かべながら舌を出すステラ。その上で踊らせていたセレス・コアはその意を翡翠に見せ付けているかのようだった。煌めく石塊は正に魂の石である。己の命に等しいそれを彼女は意図も容易く噛み砕き、尊い輝きを閉ざす。行為の意味が耳元で囁かれるも翡翠は反応することが出来ないまま、黙ってステラに身を任せた。


 ステラの言葉がまるで映画のワンシーンかのように流れる。軽口で、不変の微笑みを浮かべたステラの唇から零れ落ちた台詞は文字にすればとても重いはずなのに彼女から語られたのはあまりに軽々しくて、あっけらかんとしてしまう。けれどそんなことを気にしている暇はなかった。喉元に違和感を覚えた時にはもう既に遅過ぎる。ゆっくりと違和感の正体を確かめるべく、目線だけを下ろせば細くて白い、小さな掌で抑え付けているのは間違いなく翡翠の首で。それに気付くまで真っ白だった頭がやっとの思いで息苦しさを理解する。どうして、と唸る喉元を制御するかのように首が絞められているから声もあげられない。気管も次第に狭くなり、いつか息を吸うことだって難しくなる。このままだと本当に死んでしまうかもしれない。そう思いつつも脳裏ではステラがエンジェル・エッグの持つ能力を行使していない事からまだ本気で自分を殺しに掛かっているわけではないということも推測出来た。まだほんの序の口とも言える力で翡翠の首を絞め、急展開を繰り広げるステラは正に予測不能。だがそんな悠長なことも考えている余裕も無くなってしまいそうな程、朦朧としつつある意識の中で呼吸することをだけを幾度となく繰り返した。


 そんな中で虚ろな瞳を見た。そこには誰もいないような気がした。何もかもが彼女の目には映ってない。見えていてもそれを見ようとはしない。全てを拒絶しているかのような紺色の目を、翡翠色の瞳が嫌な程静かに見詰め返した。後に平静を保てなくなった翡翠の頭はぐにゃりと不気味に動き、刻一刻と迫り来るオレンジを帯びた夜空を仰いだ。









「ーーーー小賢しい」


 次第に自由を奪われてゆく体は人形の如く、全身の力が抜け落ちていた。けれど、死体さながらのそのもぬけの殻からは想像もつかないような低い声が血の滲む唇から漏れ出た。上を向いていたはずの頭が突然動き出して元の位置に戻ったと思えば光を失った翡翠色に憤怒の念が宿った瞳から放たれる冷酷な視線をステラへ注いだ。
 そして、翡翠はステラの血が付着した指先を静かに動かす。彼女に感づかれないよう細心の注意を払いながら空気中に極々小さな水の球を何百個と創り出し、それをステラの頭上で一塊にしたものを首から上まで包み込ませた。呑み込む、という表現にも近いのではないかと思われる翡翠の能力の一部を絶対に攻撃することはないと思っていた相手にぶつける。咄嗟の応急処置としては上出来と言えるが相手はあのステラである事を知っている翡翠は更に呪文を唱えた。地面から蔓を繁殖させ、それをステラの体に絡み付かせる。四肢の自由を奪ってしまえば此方のものだ。更に水の球体の中では人間ならば長くは持たないはず。そう思いながら暫く待っていると抵抗する力が弱まったのを感じ、すかさず喉を絞めていた手から逃れた。二、三歩よろけながら後退りしつつ、乱れた呼吸を整える。新鮮な空気を肺いっぱいに流し込み、二酸化炭素をゆったりと吐き出す。そうして少し落ち着いて来た頃に前方に居るステラにかけた能力を全解除した。蔓は粉の様になって消滅し、頭部の水も自然と然るべき場所に戻っていった。その様子を肩で息をしながらぼんやりと眺める。


「行かなくちゃ」


 左脚の太腿に嵌められたパールチェーンに飾られた色鮮やかなセレス・コアの中から淡い黄色と深い藍色のものを選んで手に取り、それを口に含むと噛み砕くことなく丸呑みする。ほんのりと口内に残る魔力に思わず下舐めずりしてステラの様子を伺う。そこで特に抵抗がない事を確認出来たら能力から解放されたステラの腕を掴み、自らの腕の中に手繰り寄せた翡翠はステラの体を所謂お姫様抱っこして抱きかかえた。


 翡翠は夜に染まり出した空を再び仰ぎ、今度は祈りに近く、まるで聖歌を奏でるかのように呪文を唱えると翡翠の周辺に強い魔力が大量に放出された。それに呼応するかの如く、足元により膨大な魔力で生成された植物達がみるみるうちに育っていく。留まることを知らない植物達は翡翠とステラのことを空中へと誘う。翡翠が一歩を踏み出すと空中には新たな植物の足場が出現し、反して翡翠の後には何も残らない。現れては消える、不可思議な現象に構うことなく足を進めた。目指す先はもう既に決まっている。翡翠は何の躊躇いもなくその場所に着実な一歩を刻む。


「見るだけでは理解出来ない。……確かにそう、ただ見るのでは分からないことは沢山ある。そんなことで貴女の全てを理解した気になっているだけで実は細部まで知ることは出来ないのでしょう。よぉく分かるわ。…………でもね、」


 道中で先程ステラから言われた言葉が頭を過ぎり、今更な気がしなくもないがポツリポツリと口を開いて自分なりの答えを述べる。それが例えステラの理解と言う概念や定義に基づかなくても構わない。けれど、まだ本人を目の前にして素面のまま自分の意見を言うのは気が引けたからいまの状況のままなら都合が良いと思ったのだっだ。


「――貴女は私に何か一つだって貴女自身を見せてくれたことがあったかしら」


 翡翠はステラのことが知りたくてevilへ堕ちて、ずっと傍に居たのに。完璧過ぎた彼女は何もかもを笑顔の裏に隠してしまう。しかもその笑顔はあまりにも強靭過ぎる。破ろうとしても歯が立たず、ならば近辺から攻めていこうとしても何の情報も宛にはならなそうなものばかりで正直ウンザリしていた節もあったせいで余計に言葉に棘が出てしまう。だけど分からないことばかりではなかった。きっと、翡翠だけが知り得ることだってあったはずなのだ。まやかしのような希望論にさえ喜んでしまいそうな自分に叱咤の意味を込め、強く植物の地面を踏みしめた。






 そうして辿り着いたのは、あの日のままになっている夕凪高等学校の屋上だった。白藍のエンジェル・エッグが死んだ日と何にも変わっていない光景に返って気味の悪さを覚えながら抱きかかえたステラの額に静かな口ずけを落とした。


「さあ、目を覚まして。翡翠の救世主(ステラ)」


 甘ったるいほど優しい声音でステラに呼び掛ける。
 単に興味本位ではあるが、どうせ死ぬのなら此処がいいと思った。が、あくまで翡翠の独断と偏見に過ぎない。全てを見て見ぬ振りをしているステラは目を開けて、初めて見るものがどんな風景なのか。それを見て、何を思うのか。どう動くのか。とても、気になったのだ。

>>ステラ様、周囲おーる




【お待たせ致しました! 強制的にゴリゴリ進めてしまいましたが宜しくお願いします……!】

3ヶ月前 No.176

有香里菫花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里 菫花/ムーン・ファントムランド】

「さくら、ちゃん」

指先だけを覗かせて持て余した和服の袖を、ちょんと口元に当てて、わくわくと笑った。初めこそは、相手が妹の友達だったら、自分が双子の偽者≠セと気付かれたら、人違いだと知られたらどうしようかという怖れが先立っていた。けれど相手の中にも何処か心許なげな、言い澱むような気配が見えて、それで却って菫花は安堵した。相手の名前をゆっくりと噛み締めるように反復する。その様は妹・苑花のそれと比べれば随分と舌ったらずで幼げで、甘ったれた匂いがした。今は居ない妹・苑花は姉のそういうところを嫌ったものであるが、当の本人は終ぞ気付くことはなかった。

「……うん! 菫花はね、おともだちと遊ぶのはじめてなの! うれしいな!」

自分と似たような気配を察した菫花はすぐに紗來良に心を開き、日陰を生きた生白き頬をほんのりと薄紅に染めて破顔する。春の終わりというには少し暑いほどの陽光に、おかっぱの黒髪がきらきらと揺れ、屈託のない笑顔が咲いた。
菫花の言葉は誇張でも卑下でも無く、事実であった。加療の為に夕凪市に連れて来られるまで、半生以上を生まれた孤島の奥深くの座敷牢に閉じ込められて過ごしてきたのだから。世界は自分と、自分に繋ぎとめられた半身・双子の妹の苑花だけでできていた。幼い頃は双子で戯れることもあったにしても、すぐに苑花は相手にしてくれなくなった。本でしか知ることのできない外の世界の遊びは、体の繋がった二人には殆ど実行することが出来なかったものだから、一層悲しくなった事もあった。島の外に出ても、それは変わらなかった。人々は双子に優しくしてはくれたが、一定以上は近寄れない好奇の目で遠巻きに見るばかり。その上同じ年頃の女の子はぐっと大人びていて、半身であるはずの苑花でさえも姉を置いて成熟していた。菫花と同じ次元で遊んでくれる友達は居なかった。なのに目の前の可憐な少女は如何だろう、見た目こそは随分とお姉さんに見えるが、小娘の菫花を「おねえさま」と呼び、遊びに誘ったらあんなにも無邪気に喜んでくれるなんて。菫花の嬉しさと興奮も、本心からのものだった。

言い出したものの、果たして何をして遊んだら良いのだろう。憧れていた初めての外遊び。友達との遊び。しかも、紗來良は二人では出来ない遊び≠熄o来ると豪語する。本の中でしか見たことのなかった、様々な子供の遊びが頭の中を色とりどりに駆け巡る。菫花はもう、今から何をして遊ぶか考えるだけでも胸いっぱいに楽しかった。

「鬼ごっこ、かくれんぼ、かごめかごめ……遊園地で大っきい双六もいいな。菫花はさっきね、鏡地獄で遊んでいたの。さくらちゃんはもう入った? ……そうだ、鏡の国のね、西洋将棋(ちぇす・げぇむ)=B御伽噺で読んだことがあるの。あれをやりたいな!」

着物の袖からそれまで不鮮明だった小さな紅葉の手がにょきにょきと這い出てきて、憧れていた幾つもの遊戯の名を挙げ列ねていく。何の変哲もない、誰もが遊んだことのあるような子供の遊びが菫花にとっては憧れで、しかし次第にそれは本の世界の夢想と区別がつかなくなり夢現の世界に紛れ込んでうっとりと膨らんでいく。菫花が読んだのは、小さな女の子が鏡の世界に迷い込んで、そこで自分が歩(ポーン)の駒になり世界を盤にしたリアルなチェスゲームに参加するという話だ。ミラーハウスに入った時その趣向で床がチェス盤城の模様になっている部屋がありふと思い至ったのであった。
本当は全部やりたいけれど……さくらちゃんはどう? と、付け足しながら、今までは艶消しの夜を纏っていたその目を、普通の女の子のように輝かせた。

>紗來良様


【遅くなり申し訳ありません……! ここからは頑張ります!】

3ヶ月前 No.177

ふぁすね @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_zRF



【バニシング・ツイン/古びた教会】



 ――――以前から、考えていたことがあった。成功するかどうかもわからない賭け。セレス・コアを補給し続けることさえできれば半永久的に生きることができる魔法少女にとっては本来必要ないこと。だから実行には移さなかった。しかしバニシング・ツインを含めたevilたちは先日知ってしまった。セレス・コアを過剰に摂取した魔法少女は人の器を失い彼女らに駆逐されるべき侵略者となり果ててしまうことに。だからバニシング・ツインはかねてから考えていたことを実行する。愛を解剖するためには人間の寿命も魔法少女の寿命も短すぎる。光年の距離を超え一等星まではしごをかける時間がない。

 サンストーンのごとくきらめく姉のセレス・コアをきゅっと握りしめ、孤児院での教えを反芻する。"他者と分かち合うことが何よりも幸せ"。バニシング・ツインはそれをかけらも疑うことなく信じて生きてきた。だから今度もその信条に従いすべてを執り行う。さて、と準備に取り掛かろうとしたところで、突如天井を破壊して現れた紅の影にバニシング・ツインはあべこべの色の瞳を焦がれるような殺意に煌めかせた。素早く周囲を確認し、武器として使えそうなものを探して念動力でぶわりと浮かび上がらせる。しかし、相手の魔法少女に敵意がないことを知り、バニシング・ツインは魔法を解除した。周囲に浮かび上がっていた教会の残骸はまるで糸が切れたかのように重力に従い落下する。

 目の前の紅の魔法少女が何もしてこないことを知ると、バニシング・ツインは何事もなかったかのように居住まいを正し、ひしゃげたシャンデリアの玉座に腰かけてふらふらと足を揺らす。


「魔法少女って不思議ですね。心臓や頭を器用に避けてあげると、こんなになってもコアが無事だからまだ生きてるんです。」


 シャンデリアと十字架によってつぶれた何かをヒールでつつき、バニシング・ツインはころころと笑った。生きているとはいえ、体をずたずたに引き裂かれ、弱点であるセレス・コアを奪われた状況ではほとんど死んだも同然だ。これね、ぼくのおねえちゃんなんです。紅の魔法少女に向けて呟くようにそう言うと、バニシング・ツインは玉座からすとんと降りる。


「そうだ。紅い魔法少女さん、よろしければ見届けてくださいませんか? ぼくの、ぼくによる、ぼくのための、ここから新たなる一歩を踏み出す実験を」


 バニシング・ツインは自身の其れとそっくりな、わずかに柘榴のような赤の光を帯びるセレス・コアを掲げ、目の前の魔法少女ににこりと笑いかけた。


>>ドロシー、ALL

3ヶ月前 No.178

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【根津 紗來良/ムーン・ファントムランド】

 菫花が連ねた沢山の遊びの名前。それを、紗來良も同じように指折り数えていく。
「それだけたくさんあれば、日がくれるまであそべるね!」
 本当は、明日も明後日もずーっと遊ぼう、そう言えたら良かったのかもしれない。そうすれば、誰かと遊ぶのは初めてと心から笑う菫花を、もっと喜ばせてあげることが出来たのかもしれない。
 けれど、紗來良は決めていた。今日の夜には、自分はひっそりと、この世界から消えてしまおうと。
 だから、明日はもう遊べない。だから、今日は日が暮れるまで、菫花と一緒に遊ぶのだ。
「うーん、チェス……? おとぎばなし……?」
 と、密かにほの暗い決意を新たにした紗來良だが、菫花の告げた最後の遊戯は、実はよく分からなかった。しかし、やりたいと言うのだからきっと菫花はそのルールを知っているのだろうと勝手に解釈する。
「まぁいいや、ちょっとまってね、じゅんびするから……ゲームはおおぜいでやった方がたのしいもんね……あ、でも、このことはナイショだよ」

 小さく笑うと、紗來良は右手首のブレスレットを太陽に翳す。その中の一際大きな宝石が、薄墨桜に似た色の光を放っていた。それは太陽の透明な光を収束し、増幅し、染め替える。きらきらと輝いているのに何処か暗い灰色の光に包まれた紗來良の体は、次の瞬間全く異なる姿に――自身がマジカル・チェリーと名付けた、エンジェル・エッグの一人へと変わっていた。
 それだけではない。赤と緑のオッドアイをもつ少女の姿は、一人から二人へ、二人から四人へ、四人から八人へと無限に増えていく。鏡写し、互い違いの幻は、確かな肉体を伴って増殖していく。そこには鏡など存在しないのに、まるでミラーハウスの中にいるかのように。
「さくはね、じつはまほーつかいなんだよ! これは、さびしがりやのさくのために、ねこさんがくれたまほーなの。本当はわるいやつをたおすためにつかわないといけないんだけど、それはもういいって灰のおにいさまがいってたの。だからね、今日はこれをつかっていーっぱいあそぼうね!」

 遠くでは、賑やかな音楽が鳴り始めている。ムーン・ファントムランドの名物の一つである華やかなパレードが、今まさに始まろうとしていた。遊園地に集まった人々の多くは、そちらに注目している。
 そして二人の少女の奇妙な遊戯も、奇跡的に誰の目に触れることもなく始まろうとしていた。

【夢のみんなにはナイショだよが出来た……ありがとうございます】

>菫花さま、all

3ヶ月前 No.179

有香里菫花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里菫花/ムーン・ファントムランド】

「うん!」

菫花は紗來良の「日がくれるまであそべる」という言葉の真意も、その深くに埋められた彼女の決意も理解できないままのようで、声高く満面の笑みで答えたのだった。
友達なんてできた験しが無かった菫花には、その代わりに片時も双子の片割れと離れたことが無かった菫花には、会者定離の理なんて諭そうとも徒労に終わることだろう。道理ある世に生まれながらその道を知らなぬ児子の心にとっては此れは始まりでしかなく、楽しい時間にいつか終わりが来ることなんて想像すらしな位に違いない。

ちょっと待ってね、と言われるままに、菫花は聞き分け良く、草履の爪先で地面を弄びながら待っていた。すると、目の前の紗來良が柔らかな光に包まれた。暖かな花曇りの春風を感じて、目を細める。その瞬く間に、既に紗來良は別の姿にーー白と薄紅色の、ふんわりと可愛らしい魔法少女に早変わりしていた。
……ああ、知っている。
取って置きの秘密を教えてくれるように笑う紗來良の言葉に、あまり驚けなかったのが後から少し悔やまれた。何故なら、菫花自身も「ねこさん」から「まほー」を貰った「まほーつかい」の一人だからだ。紗來良の変身を見ながら、菫花の脳裏には紫の魔法少女ヴィオレットの姿が過ぎった。

ーー『ヴィオレットはね、エンジェルエッグっていう正義の魔法少女なんだよ。悪い魔物をたおして、みんなを守るの』
ーー『ヴィオレットは良い魔法少女なのね。これからは姉さんとわたし、二人で一緒にしようね』

二つの首を持つ双子の魔法少女ヴィオレット。妹・苑花に裏切られ、ヴィオレットは菫花の志とは裏腹に、悪の魔法少女に堕ちてしまった。その手は、汚れてしまった。
ーー『あれは、貴女が殺した人達。ヴィオレットの正義が裁いた悪。良い子ぶってても菫花も同罪よ。……ふふふっ正義の味方って、大変だこと』
汚れてしまったヴィオレットの事はもう思い出したくない。菫花は紗來良の目を盗んで悲しそうに目を伏せた。
あの子は、まだ良き魔法少女の正義を踏み躙られていない。羨望したが、嫉み僻みはしなかった。ただ、苦い記憶を目の前の遊興に溶かし澱に沈めてしまった。

「すごいね! さくらちゃん! さくらちゃんがいっぱいだよ。ほんとに、これならみんなで西洋将棋(ちぇす・げぇむ)できるね」

パチパチと紅葉の手を叩きあわせ、惜しげの無い拍手を送った。彼女が魔法少女であることには驚きはしなかったが、その能力には目を見張った。紗來良は自らを倍々に複製し、目の前にはずらりと沢山の紗來良が並んだのである。右を見ても左を見ても、菫花なのは自分一人だけで、残りは全部紗來良の顔だった。菫花は物怖じせず寧ろ好奇心に輝く目で、オリジナルの紗來良と反転した目の色のコピーだけを集めると、「右目が緑のさくらちゃんはわたしの軍ね」と声を掛けた。

「とまった桝目(マス目)にあるものや居た人は、貰って良いんだよ。相手の軍の王将(きんぐ)を討ち取ったら勝ち」

言いながら、袂から千代紙を出すとそれを兜の形に折って近くにいた紗來良のコピーの頭上に載せた。お手軽過ぎる戴冠式を済ませると、もう一枚千代紙を取り出し手早く兜を折り上げて紗來良にもニコニコと差し出した。

>紗來良様


【みんなにはナイショだよ、は心躍りますね……!】

3ヶ月前 No.180

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【根津 紗來良/ムーン・ファントムランド】

「ふーん……おねえさまはものしりなんだね。さくはちぇすってはじめてだよ」
 自身の能力を誉め称えてくれる菫花に照れ笑いを浮かべながらも、紗來良もまた彼女のことを褒める。今この瞬間、紗來良にとって菫花は間違いなく自分の知らない遊びを教えてくれて、一緒に遊んでもくれる優しいおねえさまだった。それが、自分や灰祢の知る“紫の”おねえさまとは似て非なる存在であることなど、もうどうでも良くなっていた。
 菫花の作った千代紙の兜を受取り、手近なコピーの頭に被せる。きんぐをとったほうがかち、というこのゲームで、それぞれ兜を被ったコピーがそのきんぐなのだろう。
 右目が赤いのは紗來良のコマ、右目が緑なのが菫花のコマ。ずらりと並んだ沢山のエンジェル・エッグは今、少女達の無邪気で無慈悲な遊戯の為だけに存在している。
「そうだ! マスにあるものはもらえるんだよね? じゃあ、おかしとかたからものもおいておこうよ! たからさがしみたいでおもしろいとおもうなぁー」
 チェスのルールも勝手に解釈した紗來良は、併せて新ルールを付け加えた。そうして菫花の返事も待たず、何処から取り出したのか飴やらチョコやらビー玉やら、その中に一つだけ混じったセレス・コアさえも、その辺りに点々と落とし始める。
 そして、さあ準備は出来たと微笑んだ。

「この子たちはみんながみんなさくと同じじゃないの。つよい子もいればよわい子もいるから……きっと、たのしいよ」
 たとえ、お菓子や宝物の取り合いになったとしても、どちらもそれなりに戦える。単純な追い掛けっ子でもなんでも、コピーにはそれなりに優劣がつく。もう、どれが何番目かは紗來良にも分からないので単なる運試しだが。
「さぁ、あそびましょうおねえさま。ちぇすだけじゃなくて、おにごっこも、かくれんぼも、かごめもすごろくもみんなでやりましょう」
 日が暮れるまで、今日が終わるまで、紗來良の命が尽きるまで。

【最終日ですが駆け込みます……m(__)m】

>菫花さま、all

3ヶ月前 No.181

軽トラ @bondance☆.KYUGAZIaLG5 ★mde03ZFXMQ_XGK

【ドロシー/古びた教会】

 ペストマスクの少女の魔法だろうか、建材の破片が一瞬見えない手にでも持ち上げられたかのようにふわりと浮かぶ、しかし少女がドロシーの殺意の失せたのに気がついてか、ぱっと手放されたように落ち、静かだった教会の中に轟音が響く。

 グレナデンシロップの海に浮かぶ、落ちてひしゃげた果実の様な“それ”が正義のエンジェル・エッグで、まだ生きているというのなら、今すぐにでも頭と心臓もろとも烏有に帰していそうなものだが。そこは弁えているのか、他人の取り分を奪い尽くすような真似はせずに大人しく突っ立っている。

「邪魔を、してしまったようですね。」

 先ほどの謝罪より少しだけ申し訳なさげに、そして丁寧に謝ると、少女がシャンデリアの下敷きになっているエンジェル・エッグとの関係を呟いた。
 おねえちゃん──あね、かぞく。ドロシーが少女の呟きの意味を完全に理解するまでに、瞬き三つほどの時間を要した。久しく耳にしなかった言葉に、何故だろうと首を捻るも、ああ、全員殺されてしまったからだとあっさり納得して少女に向き直る。

「はい、わたしでよろしければ。」

 少女の要求に対して、無愛想なままにこくんと頷く。鮮やかに降り注ぐ極彩色の光に彩られた儀式的で神聖な空気を纏った場所に、昔見た“さいだん”と“きょうそさま”を思い浮かべながら、対面する少女の次の挙動を待っていた。

>バニシング・ツイン様、周辺ALL様

【返信が最終日ギリギリとなってしまい申し訳ありません……!】

3ヶ月前 No.182

コア @koa11 ★Android=0qnlIoZILT

【朝香 大和/コキュトス】

 差し出されたパンケーキを足立は勢いよく口へ放り込んでいく。お腹を空かせていたのか、単に食べる方の人なのかは分からないが、止まる様子の無いフォークを見れば、売れ行きは問題なさそうだ。大和は、ほっと胸を撫で下ろした。

 足立の話を聞く大和は、ただ頷くだけだった。トレーを胸に抱えて、うん、うん、と小さな声を返す。やがて、話を終えた足立の隣に座ると、先ほどの休憩と同様にカチューシャを外して脇に置いた。しかし、彼女の方に目を向けることはなく、正面という概念すらない空中に口を開く。

「とはいえ他者のコアを自分に取り込むというのは、禁忌です。どんな理由があれ、犯してはならない罪。いつかは罰となり、相応の報いを受ける。決して逆らえない」

 接客していた時とは別の酷く冷たい口調で大和は話した。淡々と口から出た言葉は、何処に刺さることもなく投げられたまま。誰に向けられたのか定かではない独り言は、次第に店内の空気に溶け込んで消えていく。
 あっ、と不意に声を挙げると、大和は苦笑しながらカチューシャを付け直して髪を整えて立ち上がる。

「今のは、ただの戯れ言です。気にしないで貰えると助かります。試食ありがとうございました。おかげで良い物が作れそうです」

 完食された皿を下げると何か取り繕うようにパンケーキの話題を出しつつ、大和は仕事へと戻っていった。

>>足立優里様、周辺ALL


【最終日で申し訳ありません。切り替わりのタイミングでもありますので、このまま続けていくかはお任せしたいと思います。このレスは適当に回想程度で回収してもらっても構いません。】

3ヶ月前 No.183

有香里菫花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【有香里菫花/ムーン・ファントムランド】

「わぁぁ、お菓子や玻璃玉(びーだま)、宝物がいっぱいだね。わたしの宝物も隠しましょうねー」

まさかその中に大切な大切なセレスコアが含まれているとは夢にも知らない菫花は、きゃっきゃと無邪気にはしゃいで、自らもおやつのお菓子やおもちゃの指輪、小さなマスコットのキーホルダーなどを隠し始めた。
かくして、遊園地のエリア一帯を巻き込んだ菫花と沢山の紗來良による巨大なちぇす・げぇむが始まった。それは、菫花にとって、今日まで十二年余りの人生の中で一番楽しかった一日と言っても間違い無かったかも知れない。
煌びやかなパレードに夢中だった他の客達も、それが終われば一人、また一人とその異様な光景に気付くだろう。同じ影形をした鏡写しのような少女の群れが、あたりを埋め尽くし、無邪気に笑いながら影踏みするように遊んでいる。右も左も同じ顔が、時に押し合い時に行進し、時にアゲハマのように動線上の少女を抱え上げて、皆一様に甲高い笑い声を上げている。ミラーハウスの摩訶不思議な夢の光景が、そのまま現世にまで流れ出してしまったかのような。歪な遊戯に一般人達はたじろいだ。

夢のような現の時間を、二人は存分に遊んだ。
ちぇすが終われば鬼ごっこ、鬼ごっこが終われば隠れんぼ、かくれんぼが終わると今度は巨大双六が始まった。
午後の陽が織り成す夢色の煌めきは刹那に萎んでしまう。遊ぶ二人の沢山の影はどれも次第に伸びてきて、やがて二人よりもはるかに長く、お化けのようになってから、黄昏の陽が遂に落ちると形の判別もつかぬ程に朧げになってしまった。
夕日の残火がまだ西の空に燻って、空は菫の紫色に移り変わっていく。逢魔ヶ刻だ。
ムーン・ファンとムランドに、今日の閉園時間を報せる音楽が流れる。
菫花は魔法少女の姿をしている紗來良と顔を見合わせた。

鴉が山に帰っていくように、人々は大小の影を連ねて、ぱらぱらと遊園地を後にする。ぽつぽつと次第に辺りは寂しくなり、とうとう客は菫花と紗來良たちだけになってしまった。

「……ああ、終わっちゃった。……さくらちゃん、また明日も、あそぼうね?」

まだ双六の途中だった菫花は、閉園のチャイムさえ鳴り終わってしまうと、観念して名残惜しそうに紗來良に近づいて来きた。小さな期待を、けれど叶わないと何処かで知っている期待を込めて、絡まる対を待つ小指を差し出しながらはじめての友達≠見上げた。

>紗來良様


【ごめんなさい、こんなギリギリに……! 色々端折りましたが、紗來良ちゃんとの絡みとっても楽しかったです。どのように〆ていただいても私は満足であります……! ありがとうございました!】

3ヶ月前 No.184

紗來良 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【根津 紗來良(マジカル・チェリー)/ムーン・ファントムランド】

 紗來良は人の目など全く気にせず、菫花との遊戯を続けた。宝探しに成り果てたチェスも、沢山の自分と菫花の鬼ごっこも、双六も。心底から楽しんだ。
 それは最期だからと思ってか、それとも菫花の為を思ってか。それはもう、紗來良自身にも分からない。
 そうして何時間も飽きずに遊び続けたのは、二人にとって幸福であり不幸だった。
 ムーン・ファントムランドの閉園を知らせる音楽に、ふと紗來良は足を止める。
 空の色が変わっていた。青と赤が混じった紫、もう、日が暮れようとしていた。
 菫花が紗來良を見ている。差し出された小指は、指切りげんまん……約束の印だろう。
「……ごめんね……あしたはダメなの……さくは……あした、おにいさまたちのところにいくの」
 本当は、その手を握り返したかったけれど。もう、紗來良には、明日を迎えられるだけの力がないから。

「だから、あしたはあそべないの……ごめんね。でも、来世(つぎ)のあしたは、きっとまたいっしょにあそぼうね!」

 寂しさを隠して笑う。菫花が一緒に来てくれたらどんなに良いだろうと、そんな夢想を紗來良がしなかった訳ではないが、それはそっと頭を振って打ち払った。

 駄目、それは駄目。折角できたお友だちを、自分の都合で連れてなんていけない。

「だから……つぎはまた、さくをみつけてね」
 紗來良は、差し出された菫花の小指ごとその紅葉のような小さな手を握り締める。小指を絡める代わりに、菫花の手にビー玉と飴玉と、ありったけの宝物を今日の思い出ごと握らせる。
「じゃあ、またね!」
 そうして、紗來良は菫花に背を向けて走り出した。
 振り返ることはもうない。行く先は、決まっていた。

【最後押し込みます間に合え……!(間に合ってない) 此方こそ菫花ちゃんと色々遊べて楽しかったです、ありがとうございました!】

>菫花様

3ヶ月前 No.185

ファイナルイベント開始 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

Y eden〜箱庭の終演〜【5/15〜6/14】

 遊園地での愉快で奇妙な遊戯の後で、紗來良はひっそりと、闇夜に紛れてビルから翔んだ。正確には、翔べずに墜ちた。
 エンジェル・エッグでないただの人間の体は落下の衝撃で粉々に砕かれ、地面に一際大きな赤い花を咲かせた。
 彼女の遺体は、消えていなかった。エンジェル・エッグの生きた証の宝石は残らず、ただ、投身自殺した17歳の少女の遺体がそこにはあった。
 ビルの屋上には彼女が自ら柵を乗り越えた痕跡もあった。遺書も何もない代わりに、事件性もない。ただの思春期の少女の突発的な自殺として片付けられたそれは、すぐに世間から忘れ去られた。
 彼女の秘密を知る、何人かを除いては。


 それは、崩壊へのプレリュード。

 一人の少女は、死を選んだ。二人の少女は、滅びを選んだ。少年は現状維持を、青年は破壊を、また別の少女は終わらぬ遊戯を、憎い仇への復讐を、破滅を、永久を、それぞれ望んだ。
 世界は回る、回り続ける。誰が生きても、誰が死んでも。無慈悲に平等に朝日は昇る。
 けれどそれも、もう終わり。
 翼を持たぬ天使たちは、ただ墜落する定めなら、落ちる地面ごと堕としてしまおう。卵はきっと割れてしまうけれど、私達には、それが出来るから。殻を破った血塗れの雛は、産み落とされたこの場所を、全力を賭して呪うから。

 さぁ、ご覧なさい、世界。
 私達の絶望は、何度でもあなたを赤く紅く染め上げてあげるから。

【いよいよラスト一ヶ月です、さぁ、皆様好きにやっちゃって下さい! フィフスの回収もアリです!】

3ヶ月前 No.186

ばにらあいす @kodai4370 ★iPhone=cndAAajTeJ

【神之門 朝音/第三赤生ビルディング】

少し前に起きた飛び降り自殺のニュース、世間はそれほど騒つくこともなくやがて忘れ去られていったその事件。いや、私だって、何の変哲もない思春期の子供にありがちの唐突な行動だと思っていた。その自殺した彼女が、あの時ファントムランドで偶然出会い、灰袮とその姉のコアを渡して来たあの少女本人だと知るまでは。なぜ死んだのか私には計りかねるが、あの時彼女と遭遇してなかったら、まだ私は答えを出せずに修練を積み続けていた。もしもあの時に追いかけていれば、もしかしたら結果が変わってたりするのかな。

あの後に灰袮姉弟のコア、そして幻燈館で真白から貰っていたコアの計3つを摂取したことで、今まであった違和感がどこかへと消え去り、別の新しい感覚が自分の中で芽生えたのを感じた、多分。今まで無茶という他にないほど行い、貯め続けてきた戦闘経験値のせいか、はたまた何か自分でも気づかない内に心境の変化でもあったのかは知らないが、今まで一番充実している、とても清々しい気持ちだった。やることも無くなったし、これからはレベル3でも目指してみようかな、なんならそれよりもずっと先ってのも目標としては面白いかもね。ま、そこまで行くと世界征服でもするのかってなっちゃうけど。

「…やっとここまで来れたんだ…」

不意に口から出てきたそんな言葉を、自分でもらしくないとは思ったが、気に留めることもしなかった。赤生ビルの三階、かつて探偵事務所が置かれていたと思わしき場所、そこの床に仰向けになって寝転んでいるだけだが、ひんやり冷たい感触が肌に伝わってきて、まだ生きてんのか、なんて考えてしまう。


絶望を目の前にして私は死を選べるほど度胸があるわけじゃない。戦ってる最中に死ぬこともいとわないのに、なんて言われたら言い返す言葉もないけど。でもそんな戦いを楽しみたいって言う意味を含めて、単純だけど私は生きていくことにした、ここで消えるのは使途の言葉を鵜呑みにして命を繋ぎ止めた自分と、喰らってきたコアに申し訳ない。もっともっと強さを求めて、ちょっとリスキーだけどたまにはエンジェルや使途なんかも襲って。今度はハハッと小さな笑い声を出した、相変わらず身体は床とくっついていたが。


≫all様
【ファイナルイベント開始おめでとうございます!】

3ヶ月前 No.187

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_8aC

【ステラ/夕凪第一高等学校屋上】

 自らの手に呼吸を抑えられた翡翠の瞳は恐ろしいほどに静かで揺らぎのない水面のように動きがなかった。自分がしていることも眼中になく、他人事のようにどうしたのだろうかと様子を窺おうとした時、ぐるりと覗いた瞳に寒気がした。地を這うような声に首元に添えた手から思わず力が抜ける。向けられたことのない氷のような目線に注意力が完全に奪われていたことは、言い訳にもならないだろう。頭上に蔓延る異様な魔力の気配に勘付いた時には、既に水塊によって呼吸を奪われ、なけなしの抵抗を示そうとする四肢さえも蔦で絡めとられていた。何故こんなことを、そんなことを思考するよりも早く、酸素を取り込めない状況に脳が警鐘を鳴らす。ゴボ、と吐き出された気泡が目の前に広がるのをぼんやりと眺めながら輪郭を失っていく意識を見送った。







 ゆらゆら、ふわふわ、心地いい揺れはまるで揺り籠のようだと思った。このまま、温もりだけを抱えて永遠に眠り続けてしまいたい。何もかもを投げ捨てたくて仕方がなかった。もう、疲れてしまったんだ。

 額に感じた柔らかな感触と、融け落ちてしまいそうなほど甘ったるい声音に意識が浮上する。目の前にある顔は確かに自分の知る翡翠で。ぼんやりとした意識の狭間で自分は今彼女に抱きかかえられているということだけが理解出来た。ほぼ反射的に現状を知るための情報を得ようと辺りを見回す。落ちかけた陽に照らされる黄昏のこの場所は、ひどく見覚えがあった。



 どくり、とやけに鼓動の音が鮮明に響く。フラッシュバックするノイズ混じりの光景が脳裏を駆け巡る。白、しろ、あか。あの子は泣いていた。わたしと正反対の白を背負ったあの子は私を嘲るように純粋に、泣いていた。驚いていた。救いたがっていた。何を?わたしを。でももう白藍は光り輝くことはない。私が奪ってしまったから。希望も夢も、全てを闇で貫いた。彼女は闇に屈しなかった。ただひたすらに救済を求めていた。私は最期にあの子を夢想の中へ連れ込んだ。偽りとも知らず、残酷な運命から目を背けたまま、彼女は息絶えた。最期まで私を”姉”と呼んだ。

私は何が欲しかった?妹を、るのんをどうしたかった?両親にどう在ってほしかった?どう成りたかった?
ただ私は【完璧】になりたかった。スポットライトなんてなくても、月の光も太陽の光もなくても、輝いていられる星になりたかった。誰か一人にでもいい、一番に愛されてみたかった。

 夜空から星が降ったあの日、いくつもの命の灯が消えたあの日、何の感情も見えない、無慈悲で無気力な瞳をした侵略者が背負った星空は驚くほどに綺麗で、もっと其れを見ていたいと願った。見て、感じて、知って、自分もより同質なものになりたいと願ってしまった。私を一度殺したあの化け物は、皮肉にも私の理想そのものだったのだ。だから仮面を被った。最初は”みかる”として、家族の仇を取る為に。それはもう長年の内に植え付けられた本能のようなもので。私の身体は無条件に”理想の夜縋みかる”を演じていた。けれど、エンジェル・エッグの真実を知った時、呆然とセレス・コアに成り果てた同胞を眺め、ふと何の意味があったのだろうと思った。死にもの狂いで理想を求め続けた先が、こんな石ころなんて。結局自分が掌で踊らされ、朽ちていく運命なのだと知り、今まで自分を抑え込んでいた箍が外れた音がした。どうせちっぽけな石ころになって滅ぶのならば、理想の自分で居たかった。畏れられる完璧な支配者。誰かの唯一でさえも奪えるような人格者。成りたい自分になるために、光り輝くものを集めた。足りないパーツを集めるが如く、エンジェル・エッグを次々と屠り”ステラ”を形成した。

 そんな日々の中で出会ったのが翡翠だった。拠り所を失くし、今にも崩れ落ちてしまいそうな危うい少女は、いつの間にか誰よりも私の近くに居た。私が殺せと言ったら殺し、生かせと言えば生かす。そんな忠犬とも言わんばかりの行動に忽ち私は魅了された。これが自分が求めたものだと、歓喜に震えたのを覚えている。でも違ったのだ。彼女が見ているのは”救世主であるステラ”であり、”私”では無かった。さらに”救世主”のその向こう、ずっともっと遠くに居る、別の人間。彼女の心を支配していたのはその二人であったことを私は知った。何だかそれがひどく悔しくて、虚しくて、でもそんなことを想うのはきっと”ステラ”ではない、と。ならば、”わたし”とは何だったのだろうか。るのんを殺したのは”みかる”だったのか”ステラ”だったのか。翡翠を手放したくないと思ったのは?自らに敬愛を向ける同胞を守りたいと願ったのは?滅びを選んだ仲間に胸が痛んだのは?恋慕を向けられた時、ひどい罪悪感を覚えたのは?


私は、わたし、は、”ステラ”は────


現実から剥離しかけた思考を呼び戻すように流れるあの日の光景。ぱきりと、白藍の宝石は砕かれた。いとも容易く、あの翡翠の手によって。そして微笑んだ。『翡翠の救世主(ステラ)』と。その呼名は呪いのように、私の首に巻き付いて離れない。


『────生きて。』


 目の前に閃光が迸った。脳の混濁を処理し切れなかった身体が勝手に反応し、気が付けば翡翠を突き飛ばし、彼女から距離を取っていた。呼吸がままならない。両手で覆われた顔は、きっと酷いものだろう。逃げようにも足から力が抜け、その場に座り込んだまま動けない。肩でする息はあまりにも覚束なく、過度に酸素を取り込んでは小刻みに喉が嫌な音を出して震えた。

「あ、あぁ……ちが、ちがうの。私は”ステラ”で、るのんを殺めたのは、間違いなんかじゃ、だって、私は”ステラ”を失いたくなくて。唯一に、翡翠ちゃんにとっての、【理想】になりたくて……」

ぼろぼろと零れるように呟かれる言葉はもう既に会話として意味を成していなかった。流れ出るのは後悔と懺悔の残滓たち。小さく蹲り頭を抱えるその姿は既に”ステラ”ではない。それを表すかのように、精神の揺らぎに耐えきれなかった魔力が僅かに綻びを見せ、変身していたはずの衣装がメッキが剥がれ落ちるように消えかけていた。それに気が付き、呆然とその状態を見詰める。ついにここまで崩れてしまったかと、まるで他人事のように諦念が頭を支配するのを感じた。

「あ、はは……ごめん、ごめんね。翡翠ちゃん。私、救世主でも何でもない。”わたし”は……こんなにもちっぽけで、愚かで、星にすら成れなかった、出来損ない、なんだよ」

自嘲するように描かれた笑みは引き攣っていて、剥がれる魔法から自らを守るように抱き締めた両腕は情けなく震えていた。辛うじて涙が零れることを防いでいる瞳はもう闇も光もない混ぜになった、ただの【人間】の瞳をしていた。胸に蔓延るのは拒絶され、失望されることへの恐怖。思い返されるのはいつかの両親からの視線。何よりも屈辱的で、愛されないことを証明するその視線は、私にとっての絶望そのものだった。

「翡翠ちゃんは、こんな”わたし(ステラ)”、知りたかった……?」

彼女はいつだってステラを知りたがっていた。理解しようとしていた。その先に辿り着いたのがこんなものだったとしたら、一体どれほどの失望に繋がってしまうのだろうか。きっと待ち受けるのは今まで以上の絶望、そして残るのは果て無しの孤独。それならばもういっそ、私をここまで壊した責任を取って、今翡翠の手で葬って欲しかった。

俯いたままの自分を叱咤して、少しばかり顔を上げる。せめて最後の一瞬だけでも【理想】のままで、と象られたのは”みかる”とも”ステラ”とも言えない表情で、断罪を待つかのように翡翠へそっと笑い掛けた。

翡翠様>>

【激遅回収で申し訳ありません!しかしまだもう少し続きます……確実に死亡予定ではありますので、フィフスイベント終了時点で二人は死亡したとファイナルイベントでは扱っていただけると幸いです…!】

3ヶ月前 No.188

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/コキュトス】

――――とはいえ他者のコアを自分に取り込むというのは、禁忌です。
「……!!」
突如放たれた言葉に戸惑う優里。
言葉が出ず、終始無言のままだった。

「……そっか、こっちこそありがと! 美味しかったよ!」
その後『気にするな』と言われたのでこちらも考えるのをやめ、席を立つ。
そしてその後、声をかけながら、走って店を出ていった。

(……食べてないんだけどなぁ。強くなったのだって、多分……)
優里の先ほどの戸惑いの正体はこれだった。
パワーアップしているのは間違いないが、本人が言うように優里はセレスコアを食べて『いない』。
そして彼女はあのパワーアップの秘密は『二つのコアが持つ魔力が合わさった』からだと考えた。
100%そう言い切れなかったのは、ハッキリしているのが『友人のものだけとはいえ、自分が他者のコアを行使できる存在になったこと』と『それゆえに通常形態への変身も今までどおり可能なこと』だけだったからだ。

(……よく考えたらあたし以外にああいうの見たことないじゃん! いいにしよっと!)
セレス・コアは『変身アイテム』である。
しかし他のevilの間では『セレス・コアは食う物』だと認識されている。
おそらくそれは『使うには何らかの条件が必要で、簡単に他者のコアを使うことはできない』からだと推測される。
実際、優里は自分以外に『他者のコアを行使できるエンジェル・エッグ』を見たことがなかった。
そんな状況では『他者のコアを行使できるエンジェル・エッグ』の話など、にわかには信じがたいだろう
そう確信した優里はこれ以上このことを考えるのをやめ、走り出していった。

【次からファイナルに移行するため、ここで切らせていただきます】

2ヶ月前 No.189

ふぁすね @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★0LsZL7CDei_BXv



【バニシング・ツイン/古びた教会】



 見届けることを了承してくれた名も知らない紅い魔法少女に「ありがとうございます」と短く礼を言い、バニシング・ツインは自身の薔薇のレースのチョーカーからぶらさげていたセレス・コアを外して手のひらに収めた。ちいさな手に収まる、4つのしずく型。違いといえばわずかに赤い光を帯びているか、黄色い光を帯びているか程度で、其れさえ除けば複製品のように見えるほど似通ったセレス・コアだった。


「――バニシング・ツインの意味を知っていますか。どこかへと消えてしまうかわいそうな双子だとままは言っていました。」


 バニシング・ツインの手の中で橙の光が一瞬閃いた。それだけだった。それだけだったが、バニシング・ツインにとってそれは大きなものだったらしい。ぱちぱちとちぐはぐの目を瞬かせて、ぐーぱーと自身の手を握ったり開いたりする。そしてふ、と微笑むと、握っていたセレス・コアのうち二つのしずくを選び取ってチョーカーに戻した。黒薔薇のチョーカーに赤の光と黄の光を帯びたセレス・コアが揺れる。バニシング・ツインはシャンデリアの下敷きとなっている自らの姉の頭を容赦なく瓦礫でつぶすと、残った二つのしずく型のセレス・コアをどうでもよさそうに地面に放り棄てる。


「実験は成功しました。みっともない延命方法だけど、愛のためですから。それではぼくは愛を追いかけます。よい殺戮を。お互い愛のために長生きしましょ?」


 バニシング・ツインは紅の魔法少女にぺこりと一礼して、教会をあとにした。チョーカーのセレス・コアに触れる。他人のセレス・コアをはんぶんこ切り分けて強引に自らのセレス・コアに融合させる。他者のセレス・コアの過剰摂取が侵略者化を招くのであれば、摂取という形に頼るのをやめればいい。成功するか失敗するかもわからない賭けだったがなんとか成功したようだった。今こうして動き、考えているのが本当に愛隔ちずむなのかどうかすらよくわからない。いつこのセレス・コアが稼働を止めるかわからない。同じことをもう一度して成功するかもわからない。それでもバニシング・ツインには生きなければいけない理由があった。星屑に焦がれたひとりの少女の愛がほしい。だからバニシング・ツインはそれに向けて進むのをやめない。まるでそれは、光年を超え宇宙を目指すために一枚の紙をひたすらに折り続けるように。バニシング・ツインの手の中の紙は、無限に届こうとしていた。



 ――――It's like Ship of Theseus


>>(ドロシー)





【とりあえずバニシング・ツインのソロールにしておきますが、ほかの方の動きを見てなにか追加でまたソロールを回すかもしれません。】

2ヶ月前 No.190

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/夕凪市中心部】

――――その日、空は曇っていた。
夕凪市に上空に突如現れた巨大な黒い竜巻。正確にはそれに似た侵略者か。
『ディザスター』とでもいうべきそれは、無数の手下を射出し、人々を襲う。

「絶対に、させない……変身!」
それを見つめ、懐からおもむろに『もう一つのコア』を取り出す。
銃を向けるような所作をとったのち、コアに向かって念じ、もう一つの形態に変身した

「おおりゃあああああ!!!」
走りながら二丁拳銃を取り出し、無数の侵略者の部下めがけて乱射する。
なぎ払われていくが、まだ全滅したわけではなかった――――

「はっ! てやっ!」
同じ頃、斧を取り出し戦う一人のエンジェルエッグの姿があった。
『夜桜美里』は自らも省みず無数の手下を迎え撃ち、倒していく。
よく見ると、倒した侵略者から魔力を回収してはいるようだが、それを使っている痕跡は全くなかった。
それは、この思いがあったからだ――――

(絶対に……死なせない!)

>周辺all

【言いだしっぺとしてそろそろ書いておかねば。プロフは後ほど】

2ヶ月前 No.191

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_QAg

【御柱 建/夕凪市とある廃屋】

「…………曇りか。 まぁいいさ、何時かは晴れるだろう。」

 夕凪市に巨大な侵略者が現れたのと同時刻、御柱建は普段から住み着いている放棄されたマンションの窓から空を見上げていた。市街に出現している侵略者の気配には気づいてはいたが彼がそれに対処しようとする様子はない。なぜなら、

「もはや侵略者を屠ることもエンジェル・エッグを狩ることも、僕には必要ない。」

 そういって彼が手のひらに乗せて掲げたのは一つのセレスコア。だが、ただのコアではない。その色は一つにとどまらず時にガーネットのごとく赤く輝き、時に青く淡く光り、かと思えばほのかに緑色になる。
 そう、これこそ彼が今まで他のエンジェル・エッグを、ブレッディスノーやセイブルなど数えきれない同族たちを狩って集めたセレスコアの集合体なのだ。
 曇る空から降り注ぐ僅かな月光を浴びるたびにその色を千差万別に変える健の手のひらの上のセレスコア。これ一つができあがるまでに一体どれだけのエンジェル・エッグが彼の刃の餌食になったのか考えるだに恐ろしい。その考えを振り払うように建は首にぶら下げたネックレスのロケットを開ける。そこに入っていたのは在りし日の彼と彼の仲間たち、三人が揃って撮った唯一にして最後の写真。

「さよなら」

 呟くてネックレスを引きちぎって窓から空へと投げ捨てると、そのまま能力によって空中で燃やした。熱と金属の化学反応によって飛び跳ねる火花はまるで彼の最後の人間性のようで。
 その火花が散った直後、彼は手のひらのセレスコアを躊躇することなく飲み込んだ。

「ぁぁ、あぁぁっぁあっぁぁっぁ!」

 それと同時に彼は全身を震わせて絶叫を上げる。比喩ではなく体中の細胞が作り変えられ、彼の存在そのものが生まれ変わる。対組織が入れ替えられ、骨格が補強され、そして精神もまた侵略者のもつ破壊衝動のみのものへと、

「ふっざげるなぁっぁぁ 俺はぁ 俺だぁぁっぁ! 」

 だが、体だけでなく魂をも作り変えるその禁断の儀式に建は抗う。
 歯を食いしばり口から血を滴らせ、瞳からとめどない涙を鼻腔からは鼻水を垂らしながら狂人のようになって部屋で暴れまわりながら喚く。はたから見れば見苦しく無様な彼の抵抗は1時間ほど続いて。そして、

「はぁはぁ……」

 およそ家具と言えるものは破壊しつくされ、それどころか壁といわず床といわず彼が暴れた時の傷跡だらけの部屋で『御柱建』は立っていた。その姿形は今までとさほど変わりはない、だが、見るものが見れば彼が内包する魔力そのものが以前とはまったく違うことに気づくだろう。
 そう、彼はエンジェル・エッグの意志を持ちながら侵略者の身体をもつことに成功したのだ。かつてのイヴ・ホワイトのように。その彼の姿を照らすように月光が窓から差し込む。曇りの空の合間から月が顔を出したのだ。その日は見事な満月だった。

「時は来た。」

 月を見上げて建はそう呟くと軽く床を蹴る。すると、彼の身体は窓から空へと出てそのまま宙に停止した。

「なるほどある程度は物理法則を無視できるみたいだが、さすがにすべてを捻じ曲げるのは無理そうだ。」

 新しい自分の身体の性能を確かめるように言うと、建は空中で手のひらを地面へと向ける。

「あまり魔力を消耗したくはないが……仕方ない。」

 そしてそのまま手のひらから反物質を生成すると、次の瞬間に発生した対消滅の反作用によってそのまま上空へと飛翔した。当然、対消滅のエネルギーによって地上にあったマンションは消し飛んでしまうが、彼はそんなことには頓着しない。彼にはもはや、あのマンションへ、いやこの地上へと帰る気はないのだから。

>>該当者なし


【遅ればせながらラストイベント開始おめでとうございます。御柱建も最後へ向け動かせてもらいます。といってもおそらくほとんど他の人と絡めない自己中心的な終わり方をしてしまいますが、どうぞ、みなさん最後までよろしくお願いいたします。】

2ヶ月前 No.192

御柱 建 @sibamura ★o0W3VsenYO_QAg

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2ヶ月前 No.193

御柱 建本体 @sibamura ★o0W3VsenYO_QAg

【某国観測員/某国宇宙観測所】

「でたらめだっ! 月が地球に向かって加速してやがる、しかも信じられない速度でだ。」

「月面でのエネルギーの放出は依然止まらず、むしろ増加しているぞ。どこのあほうだ、月に超巨大なロケットエンジンみたいなもの詰込みやがって!」

「地上への影響は!?」

「今は大したことない、だがこの速度では数時間後には潮の満ち引きやら磁場の乱れやらで世界中がパニックだ」

「地球重力圏へ到達されたらもう手の施しようがないぞ! 急いで報告を……」

「報告? 報告だって! 手の施しよう? 報告したらどうにかなるってか? 大統領があの巨大な鉱物の塊を打ち砕くためにウィリスとスペシャルチームを揃えてくれるとでもいうのか!」

「理論上はロッシュの限界で崩壊する。そうすれば……」

「地球の19000キロ手前で月が弾けるんだぞっ! 破片はすべて地球に降りそそぐ。月の質量を考えたら、一つ一つの破片はチクシュルーブ衝突体以上だ。それが複数落ちてくるんだ。どうなるか想像したくもない」

 普段は数字と冷静な報告とほんの少しのユーモアに満ちたこの空間は、今や阿鼻叫喚の坩堝になっていた。ここに集まった彼らはこの分野においては専門家だ。しかし、いま彼らが口にしているのは専門家らしからぬ浅はかな考えとそれを否定する罵声ばかり、だからといって彼らを責められるものなのだれもいない。
 動かないと思っていたものが動いたのだ、それも最悪の方向へと。それは破滅への秒読みだった。彼らは専門家であるがゆえにそれが分かってしまう。だからこそ諦めを心のどこかに抱きつつも専門家としての誇りをかけてこの状況をどうにかしようと侃々諤々としているのだ、
 その混沌たるオフィスを眺めながら、コーヒーカップを片手に静かに座る二人の男性がいた。どちらも初老の男性でその瞳には知性の光と同時に諦観の闇が浮かんでた。

「君は彼らと議論しないのかね? 激論交わされる討論の場は君の十八番だと思っていたが。」

 男性のうち、白髪のほっそりした男性がコーヒーの香りを楽しむように嗅ぎながらもう一人の男性に声を掛ける。その声はひどく小さなものだったが周りの喧噪の中でも隣の男性には届いたようで、

「やめておこう。結論が出ている問題を議論するのは労力と時間の無駄だ。」

 応じるのは禿頭のがっしりした体格の男性だった。彼はコーヒーにシュガースティックを何本も入れるとうまそうに甘いコーヒーを啜る。

「ほう、ではその結論を聞かせてもらいたいね。……それはそれとして君とは20年来の付き合いだが君がブラックコーヒー以外を飲むのは初めて見たよ。砂糖の取りすぎは健康を損なうといつも言っていたじゃないか。」

 ほっそりした男性は再び問いかけるが、その表情からはもう答えが分かっているのが知れた。

「結論として、月は止められん。今のエネルギー放出がどれだけ続くかは分らんが、たとえ今この瞬間に止まろうが関係ない。あそこまで地球へ向けて加速された月は運動エネルギーが消えようとも慣性に従って地球へ向かって突き進む。そして、地球の重力圏に入ればそれによってふたたび加速する。その結果は下で若者どもが議論してる通りさ。地球と月は再び一つに、原始地球へと先祖がえりを起こす。マグマとガス、無機物のみの惑星の誕生だな。まぁ、何億年かすればまた生命が誕生するんじゃないか? そして後半の質問だが……」

 そういってカップのコーヒーをぐいと飲み干すと禿頭の男は言った。

「そう遠くないところに確実な終わりが見えているというのに、数年後の健康を気にするほどワシは間抜けではない。正直言えば、わしが苦いコーヒーを啜る横で貴様がミルクと砂糖たっぷりのコーヒーをがぶ飲みするのが気に障ってしかたなかったんだ。」

 禿頭の男の言葉にほっそりした男性は穏やかに頷いた。

「なるほど、つまりは君と私の結論は一致したということか。君との付き合いは長いが、結論が一致したのはもしかしたらはじめてじゃないかな? 喜ばしいことだ。
 喜ばしいついでにどうだね、久々にうちに来て夕食でも。妻に今日はお客を連れてくるから早く帰ると連絡したんだ。きっと、健康には悪いこと請け合いの美味しい夕食を張り切って作ってくれてるだろうよ。こどもたちも、お客さんがお土産に持ってきてくれる健康に悪いおいしいケーキを待ち焦がれているさ。」

 その言葉に、禿頭の男性は戸惑うような表情を浮かべた。

「それは……いいのか? 最後の晩餐になるかもしれんのに、ワシのような偏屈な他人が混じって?」

 だが、ほっそりした男性は笑顔を浮かべたまま席を立つとコーヒーカップをダストボックスへと放って言った。

「もうすぐ私たちは全て消失し、すべて等しく地球という一つの巨大な生命体へと帰るのさ。今更家族も他人もあるもんかね。君との友情は愉快なことばかりではなかったが、しかし、楽しいことも多かった。最後の晩餐を共にする資格なんてのは、それで十分じゃないかね?」

 そう言って後を見ずにオフィスを出ていく白髪の男。それに続くように立ち上がって後を追う直前、禿頭の男はモニターに映し出された月と光の柱を一瞥した。

「どこのどいつがこんなことをやったのかは知らん。全能者気取りのクソ野郎か、世界全てを憎むひねくれ野郎か、きっとそのどちらも混ぜた最低野郎なんだろうさ。覚えておけ、おまえを最後の晩餐に招くほどの善人は間もなく終わる人類の歴史中を探してもいないだろう。だがワシには最低でも一人はいる。ワシの勝ちだ! ざまぁみろ」

 そしてモニターに向かって中指を立てると、足早に友人を追っていった。

>>該当者なし

2ヶ月前 No.194

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【足立優里/夕凪市中心部】

「やあああああっ!!」
手下を蹴散らし、敵本体に接近した優里。
青い通常形態にフォームチェンジし、ビルの壁づたいに上空の侵略者に斬りかかる。

「ちっ!」
しかし相手のレベルは3を越えている。3.5と言ったところか。
だからか、簡単に刃が通る相手ではなかった。
すぐに敵を反撃を喰らい、吹き飛ばされてしまった。

「うっ……!」
勢いよくたたきつけられ、転がる。
立ち上がる間もなく、敵の次の攻撃が来る。
無数の弾丸が優里めがけて乱射された。

「爆……速!!」
(これじゃ近寄れない……)
一気に加速し、それを避けるがまるで近寄ることが出来なかった。

(だったら!!)
紅のセレス・コアを再度取り出し、紅蓮へと変身する。
消耗は早くなるが、今はこれ以外に手はなかった。
強化された加速能力を使い、侵略者に立ち向かってゆく――――――

「だ、だめか……」
しばらくの戦いののち、地面に横たわる優里。
紅蓮の力をもってしても、あれを倒すには至らなかった。
攻撃こそ通っていたのだが……
侵略者はその優里にトドメを刺そうと、上空から弾丸を放った―――――

「……!!」
「大丈夫?」
これにはさすがに覚悟を決めた優里。
そこに乱入者があらわれ、弾丸を斧で叩き斬った。
その乱入者の名は『夜桜美里』

「待ってて。今、あげるから……」
美里はそう言って侵略者の手下から得た魔力を差し出す。
優里はすぐに力を取り戻した。

「だいぶ楽になったよ……ありがとね……ん?」
力を取り戻した優里は起き上がり、美里に感謝する。
その少し後、ある異変を感じた。
月が地球に接近しているというのだ。どちらも止めなければ地球はただでは済まない。

「ごめん。せっかくくれたのに、全部使いそう」
優里は美里に告げる。
そして、侵略者のほうに目を向け一呼吸を入れる。そして――――

「はっ!! はああああああああっ!!」
加速能力で一気に突っ込み、大空へと侵略者を運び上げていく。
行き先は月面。どうやら接近している月を押し返すつもりのようだ。

>御柱建および周辺all

2ヶ月前 No.195

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=Ht37eDoIdS

【 翡翠 / 夕凪第一高校屋上 】


 まるで童話のお姫様みたいにゆっくりと瞼を開いたステラ。状況を理解すべく辺りを見渡して、何かに気付いたらしい。先程までの穏やかさを失い、気が付いた時には翡翠の手の内から逃れてしまっていた。何もなくなってしまった空っぽな手元を眺める。何度か手を握ってみてもそこには何もなくて。数秒間の沈黙の後、ふと顔を上げると少し離れた所でステラが泣いているのが見える。
 こうなるだろうとは、とうの昔から予想していた。此処を選んだ理由はステラの記憶を呼び戻すため。それは叶えられた。予想と期待通りに事が進み、翡翠の目的は満たされてしまった。本来ならもっと難しいことを望んだつもりだったのだけれど案外簡単にいってしまって、その中で翡翠は何処かへ取り残されたかのような孤独感に襲われる。掌から徐々に温もりが失われていく感覚とよく似ていたそれに虚しさを覚えながら拳を強く握り締めた。


 そんな中で翡翠の耳に届いたステラの声に目を丸くする。まさか、そんな――そう思いながらステラを見るとそこに居たのは魔法少女としての姿を保つことすら危うくなっていた、少女だった。緑のエンジェル・エッグ、翡翠の理想になりたいと囁いた少女の体は震えていた。まるで人間みたいだと思った。見た目は人間であっても、真っ当な道を外れた人間未満の存在である魔法少女の中でも最悪を極めた私達――evilのリーダー。濃厚の夜空を支配した一等星が自分は星にすら成れなかった出来損ないだと自嘲していて、救世主ではないと言うものだからその姿はあまりにも人間らしくて呆気に取られてしまう。


 確かに此処に居るのは少女は、翡翠が慕っていた嘗てのような貫禄も威力も見る影もない。今の彼女を一等星とは、とても言い難い。翡翠の付き従っていたステラは消え失せてしまったのかもしれない。きっと、どれだけこの世を探し回ってもステラとはもう二度と会えない気がした。お終いだと誰かが翡翠に囁き掛ける。間違いなく幻聴だけれど、あながち同調せざるを得ない状況下に寂しさを感じた。徐々にステラから遠ざけていた視線を再び戻すと、心臓がばくんと音を鳴らす。こんな私を知りたかった? と、訊いたステラの目が何よりも彼女の本音を物語っていて。その目に見られた翡翠は思わずたじろいでしまう。――動揺しているのだと思う。自分のことすらも他人事かのように感じてしまうのは翡翠の中で何かが腑に落ちたからかもしれない。でもそれが一体何なのかは分からないまま、胸に当てた手を強く握り締める。一呼吸ついてから翡翠色の瞳を重たそうな瞼で覆った。


 刹那、瞼を見開いた時に翡翠は変身を解除した。誰にも明かす事はないと思っていた翡翠ならざる少女の姿を晒して。氷毬翠晶は真っ黒な髪を揺らしながら情けなく笑おうとするステラに身を寄せ、優しく抱き締めた。


「やっと、貴女に逢えた」


 翠晶は泣きそうになるのを堪えながら声を震わせた。ずっと知りたくて知りたくて仕方がなかったステラという少女の素性を、ありのままの姿を、ひとつ残らず取りこぼさないように腕に収める。今度は嫌がられたって離さないと言わんばかりに腕に力を込めて、がむしゃらに抱き寄せた。ステラに涙は必要ない。無理に笑う必要だってない。だから、泣き止ませてあげたくて、笑うのをやめて欲しくて有無を言わさぬ行為を繰り返す。


「違うわ、ステラ。貴女はちゃんと翡翠の一等星で救世主だよ。誰が何と言おうとも、貴女自身にだって、それを決める権利はない。けれど……」


 翡翠の救世主であり、一等星のステラ。それが翡翠がステラへ見出した価値であり意味だった。それは高嶺の花で、私なんかでは触れることができないものだと勝手に決めつけていた。けれど、それももう終わりにしなくては。貴女がもし、堪えきれないくらいに辛い思いをしているというのなら――。
 翠晶はステラから身を引き、今度は真っ直ぐにステラを見詰める。彼女の手を取って、切なそうでありながらも懇願するかのように微笑みながら。


「もう、無理にステラ(貴女)になろうとしないで」


 魔法少女であることが貴女自身を苦しませる原因になるのならそんなものは早く手放して欲しい。それがそう簡単にいく話ではない、そんなことは誰に言われずとも分かっている。でも翠晶の中にいる、一等星に救われた翡翠がステラを救いたいと泣き叫んでいる。それを無視出来るほど私は私自身を捨て切れてはいなかったのだ。だけど、ステラを失うのはもっと嫌だなんて我儘を言っている翡翠が気がしたがそれこそただの甘えなのだから、その言葉には耳を貸さないでおいた。
 嗚呼私もまだまだ子供だなぁ。そんな事を思うと滑稽過ぎて自嘲してしまう。それと同時に懐かしい気分になった。とうの昔に失いかけたものが再び戻ってきた。あの子の笑顔も、たった一度の叱責も。全部が懐かしくて愛おしく、憎らしいあの頃の記憶を呼び戻す。感覚に身を任せ、穏やかな気持ちを取り戻してから翠晶はステラの手を離し、ゆったりとフェンスの方へ歩み寄っていく。フェンスのすぐ側まで近付くと制服のスカートを翻しながら、かつてないほどの幸せそうな顔で唇を開く。


「私はもう、翡翠を棄てる」


 魔法少女の名を棄てる行為の意味。それは、死そのものであるのではないかと思った翠晶は、ある日からひっそりと自殺を考えていた。でも、今になって思えばステラを巻き込むのはやっぱり気が引けるから自分一人で絶つのが最善だ。我ながら無責任な事をしている自覚はある。それでもステラを苦しませる原因が翡翠にあるのだとしたら、翡翠に存在意義はない。知りたかった事も教えて貰えて、沢山ステラに助けられた。もうこれ以上ステラを壊したくはない。
 泣かせたくないんだ。ステラのことも、みかるのことも。


 がしゃがしゃと音を立てながらフェンスのドアを開く。此処は不用心なことに鍵がかかっていない。それを知ることになるきっかけのあの日のことを鮮明に思い出す。まさか私がこちら側に立つ日が来るなんて思いもよらなかった。けれど、少しだけあの子の気持ちが分かったような気もした。ふと見上げた所には立ち入り禁止の文字が並ぶ。『早く逝かなくては』と迫る気持ちを急かしているみたいで不快だ。冷ややかな視線でそれを横目にする。言われなくても私は逝くよ。掛け看板に向かってそう小さく囁きながら翠晶は、ドアを潜り抜ける。
 もう時効なのだ。翡翠にとっても、翠晶にとっても。





「ステラ――ううん、夜縋みかるさん。貴女にお願いしたいことがあるの。貴女にしか、頼めない大事なことをお願いしてもいい?」


 ゆったりと振り返りながら翠晶は初めて彼女を真の名を丁寧に呼ぶ。ずっと呼んでみたかったけれど呼ぶことを恐れてもいたその名を口に出したこの日は、私の一生の思い出になるのだろうと確信した。最初で最後の素敵な日に、たったひとつの我儘を聞いて欲しかった。


「私のことを……翠晶と、呼んでほしいの」


 だめかしら? なんて寂しそうに首を傾げる。たったそれだけの事を貴女がしてくれたのならもうこの世に未練なんてない。ましてやこの場所で、息絶えることが出来るのならば翡翠だって満足なはず。だから断られたらどうしようと狼狽えてしまう。そんな弱々しい気持ちを隠すかのように横髪を耳に掛け直し、目を細めて笑いかけた。

>>ステラ(夜縋みかる)様



【随分お待たせしてしまい、申し訳ありません……! 残り僅かではありますがあとすこし、お付き合い頂けたら嬉しいです!】

2ヶ月前 No.196

軽トラ @bondance☆.KYUGAZIaLG5 ★mde03ZFXMQ_GOx

【ドロシー/古びた教会→?】

 棄てられたもう一つのセレス・コアを紋様を使って腰を折ることなく拾い上げた。橙の少女が何をしたのか、何がしたかったのかは理解できなかった。ただ、少しだけ得をしたな、などと考えていた。
「全てはあるべき姿に戻すため。全て戻れば私も死ぬ、戻らば死んでも死にきれぬ。」
 昔読んだ経典(ほん)の一節をなぞらえ呟くと、自分が壊した穴へと飛び上がって教会から立ち去った。

――夜、高層ビル屋上、強風の吹き荒ぶ中で。

「わたしの、質問に、答えて。」

「うるさい! 吾輩を離したまえ! 吾輩をどうするつもりだ!」

 喚くのはカエルの姿をした星の使徒。ドロシーはそれの頭を握りしめ、先ほどから何かを問いかけている。対する使徒はミントブルーの体を左右に揺らしながら必死にもがくも、魔法少女であるドロシーの握力には敵わない。
 ドロシーは呆れや諦めを含めた溜め息を落とすと、手の平に力は籠めずまぶたの少し動いただけで、辺りに深紅の閃光が走り、飛沫が上がる。ぱ、っとドロシーが手を開けば、そのまま重力に従い蜂の巣になった頭を下に、ビルの隙間の暗がりへと吸い込まれていった。

 ここ数日、何の進展もない。ドロシーは停滞を感じていた。魔法少女を殺し、侵略者を屠っても、運よく星の使徒と遭遇しても。そのさきがない、終わりがない。
 それに自身の体がいつまで持つかわからない。けれど侵略者になってまで、街を人を巻き込むリスクを負ってまで、無垢なエンジェル・エッグを殺して回るのだけは避けていた。
 だから探した、星の使徒を操る何かを。探し回って使徒から情報を聞き出そうとしても、先のように口を割らず、ただ死んでいく数が増えるだけだった。
 さて次はどこへ行こうかと顔を上げた、そんなとき。ぴたりと背後から囁き声が聞こえた。

「あなたののぞみを かなえてあげる。」

 振り向くと、そこにいたのは羽の生えた小さな双角獣(バイコーン)。ピンク色の塊はふわりと宙に浮きながら、にんまりと無垢そうな笑みをたたえていた。
 ドロシーが行動をとるより先に、周囲にくすくす、と笑い声が響き渡る。音も立てずに街並みが歪み、黒い空はビルの明かりと混ぜられてマーブル模様の綿あめが紡がれて、ネオンサインがかき混ぜられてカラフルな金平糖の様な形がぽんぽんと生まれる。殺伐としたビルの屋上は、あっという間にメルヘンなふわふわとした謎空間へと入れ替わった。
 ドロシーは警戒を強固に、手に持つ短剣より鋭く周囲を見定める。

「――ここは。」

 低い唸りに似た声、右で短剣を構え、左で紋様を展開する。双角獣は手負いの獣めいたドロシーを横目に、ついてきて、と言い、それから揚々と語り始める。

「ここはぼくたちのばしょだよ。ほんとならヒトははいってこられないようなばしょなんだ。」

「でもね! ぼくがいるから、きみはへいきなんだ――あ、ついたよ!」

 着いた先に居たのは小さい一角獣(ユニコーン)。水色の体を目いっぱいふんぞり返らせて、偉そうに佇んでいる。
 この姿を、この声を顔を匂いを、ドロシーは鮮烈なまでに覚えている。8年前のあの日、薄れゆく意識の中で観たこの星の使徒を。声にならない叫びを上げて、構えていた紋様から一角獣めがけ一直線、パチパチと弾けて赤い光が伸びる。

が、
「ハハハ! ボクはキミのパートナーだったんだよ? キミのクセは一から十までぜーんぶ知ってる!」
すんでのところで届かない――息つく間もなく、一角獣の背後から短剣を出現させても、真上から真っ直ぐ、正面から複雑に五本の光を放つも、全てあえなく交わされる。
「それにキミがさいきん、どんどん変わっていっていることも!」
ひらりと合間を縫って飛ぶ獣一匹を、撃ち落とすことさえできない。よれた照準は虚空を切り裂いて、反動でドロシーはその場にへたり込む。魔力の消耗が激しいのか、肩で息をする。
「だからキミにボクがころせるわけがない。」
その瞳は笑っていない、ドロシーはどうしようもない恐怖を感じていた。敵わないものに対する本能的で、絶対的な。

「ボクはキミにていあんしたいのさ!」
「てい、あん……?」

 声が震える――だって、こんなの提案じゃない、一方的な、命令だ。力無きものの、支配だ。

「こんどはね、キミにね“こっちの世界”を守ってほしいんだ!」

 そう言って前肢で綿あめの隙間をかき分けると、そこにはどこか夕凪市に似ていて、でも全く違う街が映し出されていた。
「こっちのエンジェル・エッグはあんまり言うことをきいてくれなくてね? キミにおあつらえ向きだなあって!」
「でも、私は、まだ……」
まだ殺してないエンジェル・エッグが沢山いるのに、と言いかけるも、
「だって、いいじゃない。キミはもう、とっくに“ここの世界”のお邪魔虫なんだし!」

有無を言わせず、二匹の星の使徒が仲良くドロシーの背中を押す。
綿あめに巻き込まれて、深紅は消えた。ひしゃげて消えた。

終りのない殺戮の中へと消えた。

>(ソロール)

【最終日滑り込みでとんでも展開を繰り広げましたすみません……
ドロシーは一足お先に退場させて頂きます。ありがとうございました!】

2ヶ月前 No.197

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

0 empty〜虚飾の極彩〜

 さぁ、皆様。哀れな正義の味方の成れの果ての、トラジコメディはお楽しみ頂けたかしら?
 ここから先は、幕間にして幕後。開演前の喧騒にして終演後の静寂。カーテンコールのアンコール。夢とも現ともつかぬ“if”の物語。何処かにあったかも知れない現実で、きっと何処にもない幻想。
 私達の行き着く先は、絶望と決まっていた。けれど、そこに辿り着くまでの道筋はいくつもあったし、引き返せば希望に帰り着く抜け道もあったのかも知れない。
 希望の残香と絶望の反響、或いはもっと別の何か。
 真っ黒で真っ白なキャンヴァスの残りに、貴方はあと何を描くの?

【以上を持ちましてevil本編は終了となります……が、残りのレスは回収しきれなかったシーンや後日談、前日譚、外伝の投稿等にどうぞご自由にお使いくださいませ】

2ヶ月前 No.198

御柱 建本体 @sibamura ★o0W3VsenYO_08J

【御柱 建/月面】

 月面では、死と再生が繰り返されていた。
 莫大なエネルギーを生み出す代償として建の肉体は瞬時に削られ、そして魔力によって強制的に再生されていた。それはまさに誕生と終焉が繰り返される終わりなき輪舞、それを踊るは光の柱の中心に座す道化。

「ぉぉあああ!」

 自らの血肉が消失するのと生み出されるのを同時に味わうこの循環が始まってから何時間が経過したのだろう。建の精神はとうに摩耗し、もはや意味ある言葉を話す余地などありはしなかった。だが、

「すべては……間違った……僕たちも……僕たちも前もそのまた前を……」

 途切れ途切れに聞こえる彼の独白、人が存在するはずもない月面で誰に伝えようというのか、あるいは途切れそうになる自分の意識をつなぎとめるために自らの目的を言い聞かせているのかもしれない。

「星の……使徒……僕たちを利用するもの……僕たちがいるからやつらは来る……幾度となく繰り返される、終わりのない絶望」

 彼が語る言葉は取り留めなく訥々としている、だがその一言一言に彼の絶望と呪詛と諦観の念が込められているようだった。そして、ひときわ強い感情をこめて彼は吠えた。

「僕は嫌だ! 認めない、認めないぞ! こんなものを認めるもんかぁ! 全ては間違いだ。これはあるべき姿じゃない、やり直すんだ、全てを世界を……原初の炎のなかからもう一度、何百億年何兆年掛かろうと……最初から、そして、また会うんだ」

 しかし、その咆哮が最後の気力だったのか、力は使い果たしように光の柱は小さくなっていく。建の身体もまた、体の表面はもはやごっそり削り取られ、骨はむき出し皮膚がただれる無残な姿となっていた。
 もはや骨とわずかな筋肉だけになった腕を上空に伸ばす建、彼には何が見えているのだろう。家族か、友か、あるいは愛する人か、だが悲しいかな彼の腕をいくら伸ばしてそれに届くことはない。
 哀れな道化は忘れたのだろうか? 彼が求める過去との絆を彼自身が先ほど地球で破壊したことを。やがて、光は完全に途絶え、伸ばす指先も徐々に消失していく。そして、

「僕は……嫌だ……」

 その呟きを最後に、御柱建だったものはこの世からその痕跡を完全に消失させたのである。
 彼が為したことがどれほどの意味をもつのか、その答えを出せるものはいないだろう。ただ一つ確かなことは、彼が消えた後も月は止まらないということである。

        FIN

2ヶ月前 No.199

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【夜桜美里/夕凪市中心部】

「――――えっ?」
優里の突然の発言。
それに対して驚きを隠せない美里。しかしそのすぐ後に全てを悟った。
美里は、飛び立つ優里を黙って見ていた。

「優里ちゃん……」
見ていることしか、できなかった。

【足立優里/月面】

「うっ……うぅ……」
月を迎え撃つため月面にディザスターを押しつけ、押し返そうとする。
しかし押し返せない。まだまだ力が足りなかった。

――――すべては……間違った……僕たちも……僕たちも前もそのまた前を……
――――星の……使徒……僕たちを利用するもの……僕たちがいるからやつらは来る……幾度となく繰り返される、終わりのない絶望
――――僕は嫌だ! 認めない、認めないぞ! こんなものを認めるもんかぁ! 全ては間違いだ。これはあるべき姿じゃない、やり直すんだ、全てを世界を……原初の炎のなかからもう一度、何百億年何兆年掛かろうと……最初から、そして、また会うんだ

「!」
向こう側から不意に声が聞こえた。この声は優里もよく知っていた。
これはあんたのせいだったんだね、と思いつつ黙って相手の話を聞いていた。

「そう……わかったよ。はっ!」
全てを聞いた優里はそう言うと、いっそう力を強めた。
月に押し付けられたディザスターもそろそろ限界のようだ。全身にヒビが入っている。
しかしまだまだだ、まだ押し返すには至らない。

やがて、しばらくの時が流れる――――

「……はあああああああっ!!」
月の勢いが弱まった。御柱建が死んだ事で推進力がなくなったからだ。しかし『弱まった』だけだ。
まだまだ地球に向けて進み続ける。
しかし優里はそれを見逃さなかった。さらに力を強めていく。
ゆっくりとだが、月は少しずつ元の位置に戻っていった。

「はぁ……はぁ……」
月を元に戻した優里は、地球に戻るため降下し始める。
相当力を出したようで、息も絶え絶えだ。

「安心して。星の使途は、あたしたちが――――」
御柱建に向けて一言つぶやきかけ、気を失った。
重力圏内で力尽きた足立優里は、地球に向かって落ちてゆく――――

>御柱建

【月は好きにしてもいいことをTwitterで確認したため、月を元の軌道に戻しています(スレ主さん限定でしたらごめんなさい)】
【「evil -finale-」というのをやりたいのでサブで草案をまとめました。いかがでしょうか? >evil参加者の皆様】

1ヶ月前 No.200

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

ある日突然現れた怪物『侵略者』それを狩る者『エンジェル・エッグ』
私達もあの人たちもそれは一緒。それでも交わることはなかった。
私達は『悪』で、あの人たちは『正義』だったから。

それがまさか交わることになろうとは――――

――――『正義』と『悪』が交わる時、物語はフィナーレを迎える

【夜桜美里、???/夕凪市中心部】

「……」
上空に消えた優里を見守る少女がひとり。
その女の名を『夜桜美里』という。今の彼女にはこれしかできることがないのだった。
そんな彼女はあるものを目撃した。

上空から降りてきた光り輝くエンジェル・エッグとそれにお姫様抱っこされている優里だ。
そのエンジェルエッグはゆっくりと美里の方へ降りてゆく。

「ん? あたし、確か……」
「優里ちゃん! よかったぁ……」
謎のエンジェル・エッグが地面に降り立ってしばらくすると、優里が目を覚ます。
どうやら彼女が回復させたらしい。
美里もそれに気づき安堵した。

「……いきなりだけど、頼みがあるわ」
「うん、いいよ。でもその前にあなたの名前を教えて」
「自己紹介がまだだったわね。私はセレネ、あなたたちの味方よ」
「セレネ……いい名だね!」
「それで、頼みたいことは『死んでいった大切な人のセレス・コアを私に差し出してほしい』と皆に伝えてほしいのよ、そうすればそのコアから生き返らせることができる」
「生き返る……!? いいよ、伝えるくらいなら私にもできる」
美里と『セレネ』と名乗る白髪のエンジェル・エッグが話す。
事の真偽はともかく、『死人が生き返る』という話には美里にとっては衝撃的だったのだろう、彼女は快諾した。

「『今日の夕方5時、あのビルの屋上で待ってる』ともね」
それに対して『セレネ』は向かいのビルを指差しつつ軽く補足した。

こうして、『今日の夕方5時、ビルの屋上にいる白いエンジェルエッグに死者のコアを差し出せばその者を生き返らせることができる』という話がエンジェル・エッグの間に広まっていった――――

【finale冒頭文投下+finale開始宣言】

1ヶ月前 No.201

有香里 菫花 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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1ヶ月前 No.202

ヴィオレット @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【ヴィオレット(菫花)/夕凪市民公園】

鏡写しの双子の月が二つ、宵闇に浮かんでいる。
一つは高い空の満月の窓。もう一つは深い水底に沈む春の月。
風はしきりに鳴いて、湖を囲う桜の樹々が一斉に花を落とした。辺りは一面の吹雪のようになって、軈てそれは湖上の月を遮る叢雲となる。瞬時の間にして、池の畔は賑やかな花見会場から殺伐の戦地たる雪原へと変貌を遂げた。人々が泡を食って逃げ去り伽藍堂となった夜の大公園。
彼女達は、刹那に降りた静寂の中で張り詰めた神経を更に研ぎ澄ます。LED投光器の強い光に照らされて、真っ白な桜木がまた大軍の虫の羽音のように鳴き始めた。

表と裏、二つの世界を遮る湖面が、ガラスが破裂するように高く飛沫を上げて砕け散った。観音菩薩かマリア像のような巨大な人間の上半身と、夜闇に畝る真っ黒な大蛇の下半身を併せた侵略者が、水面の月から天上の月に向かって伸び上がり聳え立った。
石仏のような彩りも光もない真っ白な冷作り物の目から、真っ赤なレーザー光線がサーチライトのような動きで五人の魔法少女を追い詰める。

「ーーーーいくわよ」

声を低めたその言葉に、他の面子が首肯いた。
四人の魔法少女は慣れた足取りで軽やかにステップを踏んでレーザー光線を掻い潜る。鳴らす下駄の踵の脇を、旋回する振袖の間を、ひらり舞う帯の下を、凶器の糸が通り抜ける。魔法少女達は、全員が奇抜にして鮮やかな和装姿だった。侵略者の魔の手は、今度は別の攻撃を繰り出そうと、掌に月色の光を集める。少女達はアイコンタクトを交わして陣形を開くと、怪物の手を一筋の破魔矢が射止めた。巫女装束の魔法少女が一人、凛と弓を構えてしたり顔をしている。
破壊の光が消え、悪鬼の絶叫が響く。凶暴に振り回された蛇の尾が水面を叩き、水と光の礫と、桜花の残骸が弾け飛ぶ。無差別に辺りのものを薙ぎ倒そうとする尾に、今度は蔦葉が伸びて絡みつき、驚くばかりの怪力がその動きを食い止める。小柄な魔法少女がクイと手首を起こすだけで、大蛇はいとも簡単に横倒しになった。
もがき暴れる侵略者が反撃に出る。石造の長い長い髪を触手のように伸ばし、少女達を捉え貫こうとする。蛸の足のように躍りうねる無数の触手を網のように被せて、魔法少女は止まぬ桜吹雪の中で一人また一人と宙吊りになる。

そのとき、月明かりの中を、蝶がひらひらと横切った。
蝿を落とすように触手が小さな命をはたき落とそうとした瞬間、蝶は奇術のようにはじけて、無数の蝶の大群に変わった。夥しい数の夢見鳥の群れが、桜吹雪と混ざり合い回り合い、小さな嵐を成して敵の目を惑わし翻弄する。紫色の大軍は黒い霧のような不吉の風を纏い、気の狂いそうな羽音を立てる。禍々しい大蛇の化物すら、悪食蝶の剣幕にひくりと触手を縮めた。
「ーーっーーーーっ」
人語ではない呻きをあげて、飛び交う蝶を振り払い、やっと身を起こした侵略者の声は、瞬時に断末魔へと変わった。

濃紫の暗雲が急に晴れたかと思うと、眩い月光と桜吹雪が吹き込んでくる。追い風に煽られるようにして、巨大な満月を背負い、絢爛豪華な遊女の形(なり)をした紫の魔法少女が敵の懐に飛び込んでくる。艶やかに肩を出して崩した着物、風に舞う黄金のだらり帯。肌蹴た襟から覗く肩も胸元も、月光を受けて白く濡れたように煌めいていた。禍々しいまでに鮮やかな緋色の紅をさした唇が、繊月のように吊り上がる。華奢な体を猫のように柔らかく捻り、宙空で二振りの巨大な鉄扇を胡蝶の翅のようにバッと開く。そのまま春の嵐に乗って観音菩薩の胸を斬り裂いた。
傷口に、少女の従える無数の蝶が一気に雪崩れ込む。侵略者を人喰い蝶によって内側から破壊する間に、紫の魔法少女は石像のような胸を蹴って方向転換し、仲間の一人を捉えている触手を仕込み扇子でぶった斬る。また触手を足蹴に跳躍し、別の仲間の捕まった触手も次々に切り裂いていく。仲間の最後の一人を解放した瞬間、侵略者の蛇腹が膨れ上がり、内部から食い破るようにしてどす黒い胡蝶の群れが噴水と化して飛び出した。
パチンと、扇子を閉じる音が鳴る。


「ヴィオレット様、助けてくださって……ありがとうございます!」
夜の公園を純白に染めた桜吹雪は、細雪ぐらいに変わっていた。狩り終えた侵略者の骸を前に仲間達と並んでいると、紫の魔法少女をおずおずと呼び止める声がある。
「わ…………わたしに……?」
見れば、藤色の旅芸人のような衣装を纏った魔法少女が深々と頭を下げている。さっき他の三人の仲間と助けた、例の侵略者に劣勢を取っていた魔法少女だ。雰囲気から、まだ不慣れな感じが見て取れる。
「あの、あ、あたしを仲間にしてくれませんか、ヴィオレット様!」
武器であるらしき三味線を地に置きその場で正座する少女に、ヴィオレットは苦笑した。
「……いいよ、様づけなんかしなくて……」

有香里菫花が星の使徒に唆されて夕凪市に戻ってきてから、二年が経過しようとしていた。夕凪市の夜に、菫の花≪Violet≫はすっかり返り咲いて、妹・苑花が操っていた時よりも積極的に侵略者を狩っていた。格段に強くなった。孤立している魔法少女を助け、希望するものは手元に置き、小さな組織めいたものを作るようにさえなっていた。その中には、嘗てevilのリーダー格を為していたステラという魔法少女の元にいた魔法少女もいた。
菫花は、ヴィオレットは変わった。

誰もいない公園の桜の絨毯の上で、五人の少女達は円陣に座って自販機のジュースを飲んだ。
「ヴィオレット、ステラさんみたいだね」
仲間の一人、蔦の植物を操っていた小柄な少女が言った。
だが懐かしいはずのその名前を聞いても、ヴィオレットは不思議そうに首をかしげるばかりだった。

「ステラって、だぁれ?」

仲間の魔法少女達は驚いたように顔を見合わせる。冷風のような違和感に、場の空気が固まっていく。
もしもこの時、ヴィオレットの中身が苑花のままだったなら、「妾(あたし)など滅相もございません、妾なンかステラ様の足元にも及びやしませんよ」と容姿に似つかわしい妖艶な仕草で言ったに違いなかった。菫花は、ヴィオレットの恩人の名前すら、主君と仰いだ人物の名前すら知らないままでヴィオレットになってしまったのだ。
姉の方が、妹の方が、その堂々巡りは片方が死しても尚、呪いのようにいつまでも解ける事が無い。

(きっと、苑花のお友達なんだ……)
もう何年も経つのに。胸の内にもやもやとした気持ちを抱えながら、ヴィオレットはーー菫花は席を立った。
「変なこと言ってごめんね、また、あしたね」
片割れの居場所を手に入れても、片割れが知らない輪を自分で築いても、結局は。二人で一つの。

和服の袖を翻し、月光の道を歩いて帰る。
食べ残した蝶の残りがひらひらと付き従った。
仲間達が心配そうに見送る背中には、頭が二つ。
人間の姿ーー有香里菫花の姿では分離手術で苑花の頭をなくしたのに、魔法少女ヴィオレットの苑花の骸の頭部は消えなかった。呪いの人面瘡のように首の左側に居座り続け、しかしものは言わないまま。眼窩に紫のセレスコアを宿し、乾涸びたミイラの額に呪符を貼り狐の面で顔を隠したまま。敵に斬りかかる時は、双頭の化物が扇子で切りかかってくる。今や物も言わない、カラカラと音がなりそうな乾いた死体の首をぶら提げて。菫花の時は普通の女の子になれても、変身すれば元のシャム双生児の姿に戻った。
いつからだろう、嘗ての苑花がそうだったように、菫花の心の中にも仄暗い願いが、本当はずっと前から芽生えていた。

ーーどうにかして双子の片割れを抹消し、ただの一人になりたい。と。


>(ソロール/もうちょっとで終わりますんで、お付き合い下さい、おねがい!)

1ヶ月前 No.203

ヴィオレット @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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1ヶ月前 No.204
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