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サイシュウデンシャ

 ( オリジナルなりきり )
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友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_WcJ


 ――0時34分。
 ××線○○駅発の終電が発車した。

 八両編成の車両にぽつぽつと在る乗客の姿。
 一両に一人しか乗っていない車両もあれば、四人くらいが間隔を空けて座っている車両もあり、一人もいない車両もある。
 地下鉄ゆえに窓の外を流れる景色は変わり映えしない。

 車内アナウンスは響かない。誰もしゃべらない。誰も目を合わせない。
 そんなありふれた終電の風景が終わりを告げる切っ掛けは、突然の急ブレーキだった。


【短期&少人数スレ。要約すると「地下鉄のトンネルで急に終電がストップ。運転手は殺されてるし、次第に視界には化物がチラつきだすぞ。細かい事は分からないけどとにかく早くここから逃げよう」みたいなストーリー。詳しくはサブ記事にて。メイン記事はまだ未解禁】

メモ2018/01/04 23:38 : 友禅☆fXqsD0VZIxk @yuuzenn★iPhone-0hZNf28ngx

『ルール』

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-1


『スレの流れ・募集キャラ・注意事項』

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-2


『プロフィール』

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-3


〜キャラクター一覧〜


『与那国水路』

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-4


『フェレンゲルシュターデン三世』○

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-9


『御坂玲子』●

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-11


『黒縄竜牙』●

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-18


『梅塚了』

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-20


『冬城雪成』○

http://mb2.jp/_subnro/15648.html-21


『燕子花瑠璃子』

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たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/電車内・二両目→一両目】

 自分の問いに大丈夫だと答える彼に安堵する。小さくてもあと少しすれば成人の男の子なんだもんなあとか親戚のおばさんじみた事を考えるが、そういえば出会ったのも言葉を交わしたのも今日が初めてだった。小さいからか可愛らしい容姿をしているからか妙に親しみが湧いてしまう。お互いの名前すらまだ分からないというのに。瑠璃子自身客に情を持たれることが多いが、今ならその気持ちがわかる気がする。
 菓子パンとおでんの袋、ハンドバッグを回収すると、一両目への移動がてら先程返し損ねた友人へのメッセージを返そうとスマートフォンを起動する。しかし立っているアンテナは0本。そこでやっと現在地が地下だということを思い出す。電波が届かないという事はメッセージも返せないし、SNSで「電車緊急停車した(笑)」とも書き込めない。運転手がご臨終したというのに助けも呼べない。少し前にプレイしたクローズドシナリオのホラーゲームを思い出して身震いした。あのゲーム、結局クリア出来ずに放置したんだっけ。

 一両目に辿り着くと、目に飛び込んで来たのは割れた窓の破片と明らかに具合の悪そうな女の子。死体を見たのか、先程の青年の言葉を聞いて死体の想像をしてしまったのか、心を読める能力は持ち合わせていないのでそこは分からなかったが、か弱い女の子1人を無視して運転席に行くほど瑠璃子は冷たい女ではなかった。一緒に来ていた少年には「女の子やばそうだからお話してくんね。なんなら先お兄さんのとこ行ってて」と伝えて、少女の元に歩み寄る。

「大丈夫? どっか怪我しちゃった? それとも気持ち悪い?」

 少女の目線を合わせてしゃがみ心配そうに顔を覗き込む。相手が知人だったら背中でも撫でるところだが、このご時世知らない歳下の子に無闇にスキンシップをとると通報されかねないのでそっと自重した。


>>梨甘崎柊様、冬城雪成様、周辺ALL様

11ヶ月前 No.18

かしわぎ @kashiwa☆0JtkEMONf/hg ★AcwmdJQC8P_PHR

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11ヶ月前 No.19

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_WcJ

【 与那国水路 / 電車内・一両目 】

 呼びかけに応じてくれた何人かの手助けもあって、無事に体当たりで運転手席へ通じる扉をこじ開けることができた。何度も頑丈な扉にぶつけた左肩が地味に痛む。とはいえ代わる代わるでやったから、人にもよるが痣になるほどではないだろう。水路の場合、途中からは体当たりではなく脚で蹴り飛ばそうとしていたから尚更だ。
 蝶番が破壊される形で向こう側に倒れた扉。べちゃりと音をたてる血溜り。運転手の死体の一部が下敷きになって余計に潰れる。靴底を血で汚すのが嫌だから、という理由で死体の一部ごと扉を踏みつけにする形で運転手席へと侵入を果たす。協力してくれた乗客たちに許可もとらず勝手に一番手をやってしまったが、彼ら彼女らとてこんな視覚にも嗅覚にもダメージを及ぼす場所に好み勇んで入りたいとは思わないはず。
 鉄臭さに鼻がひん曲がらぬよう、手で口元を覆いながら視線を左右に動かす。お目当てだった備え付けの電話機は、残念ながら見るも無残に破壊されていた。可笑しいのはそれだけではない。運転手席の内部にある窓が割れている。それもガラスの散り方からして、内側から何かがぶつかったのではなく、外側から割られたものだ。もし錯乱した運転手が内側から割ったなら、その場合はガラス片のほとんどが車外に散らばる。しかし今回は窓の割れた範囲と散らばるガラス片の総量とがほとんど一致しているのだ。つまりガラスを割った犯人は、死体となってここにいる運転手ではなく、『走る電車の外側から窓を割れるような生物』ということ。

「……せっかっく手伝ってくれた皆、ごめんねぇ。備え付けの電話、壊れてたみたい。それともう一つ残念なお知らせ。運転手さんを殺した犯人、推理小説的なトリックとか使ったわけじゃないなら走ってる電車の外側から窓を割って侵入して来た何かっぽいぜ。中の窓ガラスが割れてて、破片が運転手席のほうに殆ど散らばってる。確認したい子は確認して」

 ペコちゃんみたいに舌を出した無駄に茶目っ気のある表情でまずは謝罪。その後すぐに元の表情に戻って、自分が手に入れた情報を皆に開示する。そそくさと運転手席から退出して出入り口の前からも退くが、わざわざこの中に入ってガラスを確認しようなんと物好きは数える程度に違いない。
 乗客たちの反応は様々。吐きそうなのか泣きそうなのか、肩を震わせて俯いている乗客。状況が理解できているのか怪しいへべれけの酔っ払いサラリーマン。まだ後部座席のほうにいる集団。体長の悪そうな乗客に声を掛ける女性。何かに耐えるように必死に手すりに縋りついている子。水路は身体に血の匂いが纏わりついている気がして、愛用しているラルフローレンの香水をシュッと自分に一吹きしていた。アメリカの国旗のような柄がプリントされた爽やかな青いボトル。そこから放たれる香りは普段なら水路好みのものなのに、これだけの鉄臭さと混じり合っては台無しだった。それでも血の匂い単品よりは幾分マシである。

「密かに地下鉄のトンネルに住み着く凶暴な動物かー、身体能力の半端ない殺人鬼かー、正体は分からないけど、ともかくオレ達は近くにそういうヤバい存在がいるトンネルでストップしちゃった電車の中に何の通信手段も無く取り残された事になるな! どうする? 落ち着くためにまずごはんでも食べる?」

 コンビニの袋をカサカサしながら小首を傾げる。本気の問いかけではない。いくらクズの水路でも、こんな食欲の失せる匂いの充満した場所でディナータイムなんぞ御免だ。ただの場を和ませるためのジョークとして口にしたもの。が、これで本当に場が和むかと聞かれれば全然である。

>ALL様

【体当たりに協力して下さった方々は指定しておりませんので、協力して下さった方々は協力して下さった、他の方は具合の悪そうな乗客に声を掛けるなり何なりしていたということでお願い致します! まだ一両目には来ていないという方もそれはそれで大丈夫です!
 あと酔っ払いのおじさんは次の私の書き込みで電車の外に飛び出して化物に襲われる予定です!】

11ヶ月前 No.20

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD

【 梅塚了/電車内・一両目 】

 窓の外はグレー、携帯の画面には1ミリたりとも興味の湧かないニュースの羅列。辺りを見回す必要も無く、車内の人間はこんな平凡なサラリーマンに視線なんぞ向けていない。彼__梅塚は、さも仕事疲れの公務員のように、ホッと溜息を吐いた。いや、一仕事済ませてきたのは事実なのだが。国内の出張にしては大きめの鞄を、素知らぬ顔で抱き締める。もし誰かがその中身を知ったのならば、悲鳴を上げ、あるいは嗚咽を漏らし、あるいは彼を取り押さえようとするだろう。
 どんよりと曇った瞳が、携帯から窓へ移る。窓に反射した自分は草臥れて、何の変哲も無かった。思わず笑みが零れそうになる。半開きになった締まりのない口を無理矢理閉じて、頭を軽く振る。この電車を降りて、家に着けば、ずっと彼女と一緒に居られるのだ。髪を梳いてあげようか、唇を手入れしてあげようか、それとも抜歯して、新しく歯を詰めてあげようか。次々と泉の如く湧き出るインスピレーションがとても愛おしい。作業の為に、少し仮眠を取ろう。いくつかの思考の反芻を経て、その行動に辿り着いた直後、彼の身体は慣性に従い揺れた。慌てて荷物を抱えなおす。閉じた筈の口からは、「ふへ、」という息が押し出された。
 思わず倒れ込んだ先には床があって、強かに顔面を打ち付けてしまったが、命に別状は無かった。エンジントラブルか何かだろうか。ぼうっとした頭でそんな事を考える。鼻からはどろりと粘り気のある血が流れ、嘔吐感によって口内は酸性へと変じ、歯のエナメルは少しばかり削られてしまった。だが彼女に怪我がなくて本当に良かった。断面はデリケートだから、出来るだけ大きな衝撃は与えたくない。そーっと元の座席へ鞄を置くと、自分は立ち上がった。ガタンゴトンという振動が無いので、完全に停車したのだろう。肩に蟠っていたネクタイの位置もそのままに、梅塚は背後からやって来る青年へ道を開けた。何とも軽そうな青年であるし、自分よりは数倍端正な顔立ちの男だった。
 男はあれよあれよという間に運転席へのドアを有志の客と協力して開けてしまうと、いきなりその向こうへ飛び出し、不穏な文言を口にした。何処までも一本調子で、まるで語り手のような態度に、梅塚は事の重大さがまだ理解できていなかった。青年があまりにも現実離れして異質だったからか、脳震盪でも起こしていたからなのか。定かではないが、梅塚は鼻血もそのままによろよろと運転席へ歩み寄ると、横たわる無惨な死体を目視した。

「……ん、うわっ」

 衝撃と恐怖、そして賛美と憤怒が同時に生じ、体内に渦巻いた。そのせいで、梅塚は普段から心がけている人間性すら、一瞬だけ忘れてしまった。割れ柘榴か、粉々に砕かれた菊人形か、または固まりかけのゼリーのような、陰惨たる血の海。その血泥に斃れる、人間か生ごみか区別がつかない程、引き潰された肢体。生々しい、甘苦い死臭。どんな力があって、こんな事が人間に出来るというのか。何の恨みがあって。石斧で力一杯叩いたか? それともキリキリと圧迫したのか? 勿体ない、好みの首なら持って行ったのに。
 ここまで考えて、唐突に、澱んだ瞳が潤んだ。麻痺していた、多大なる恐怖が訪れたのだ。冷や汗の冷たさで我に返ると、梅塚は香水を手にする青年をはじめ、その場の乗客たちに向け、ぽつりと呟いた。

「ど、動物にしても、人間にしても、と、とっても強い力ですよね……大きい肉叩きで潰したみたいだ……い、一撃でこれなら、です、けど……」

 喋っている内に、シーンとした車内で、好奇の視線を宛がわれている事に気づき、梅塚は尻すぼみに発言を終わらせた。何て軽率な行動を取ってしまったのだろうか。バツが悪そうに眉を下げ、彼は唇をもごもごと不明瞭に動かした。


>>周辺ALL様、水路様


【 遅ればせながら変態殺人鬼オジサン投入したいと思います! 】

11ヶ月前 No.21

雪ん子☆2PW2ryYB8o. ★NbQEF8QrNY_mgE


 【 冬城 雪成 / 電車内・一両目 】


 とりあえず落ち着け私、大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせるようにゆっくりと深呼吸を繰り返した。まだ自分自身死体を見てないだけマシか、なんて思ってしまうがその通りだと思った。こんな状況下で死体を見てしまえば間違いなく吐いてしまう。なるべく死体とは目を合わせないように俯いていた。心なしか深呼吸をしたお蔭で震えは若干治まった、気がする。
 目の前に影ができたかと思うと『 大丈夫? どっか怪我しちゃった? それとも気持ち悪い? 』と声がかかってきた。その声が自分に向けられていることに少し時間が経って気付いた雪成は口元に当てていた右手をゆっくり下ろして声の主に顔を上げた。今の私はなんてひどい顔をしているのだろう、自分でも分かる。アーモンド形の瞳に今にも滴り落ちそうな雫を溜めているのだから。はっとして急いで制服の裾で涙を拭き取る。こんな顔していたら見知らぬお姉さんに変な心配をかけてしまう。まだ震える肩や手をぐっと堪える。


 「 だ、大丈夫……です……。 」


 発せられた言葉は震えを生み顔を真っ白にさせながらこんなこと言っても全然説得力がないのだが、これ以上心配させまいという雪成の精一杯の言葉だった。初対面の人にどう返したらいいか分からなかったので無難そうな言葉を選んだが、少々間違いだったのかもしれない。続けて「 ……ありがとう、ございます……。 」となんとも消えかかりそうな声で礼を言う。
 目の前のお姉さんの隙間から見える後方で、先程の青年は運転席のドアを他の人たちと協力してドアをこじ開けた先には、なんと表現したらいいか訳の分からない場面になっていた。運転席がホラーゲームから切り取られたような悲惨なことになっている。むしろホラーゲームとは非にならないような場面が目の前に広がっている。ばっと顔を下に下げて運転席を見ないようにする。お姉さんから視線を逸らした感じになってしまったので「 あ……、す、すいません……。う、後ろが……。 」と謝りと逸らした理由の述べようとするが、余りにも生生しい惨劇が頭からこびりついて離れずまた泣きそうになってしまう。

 運転席を見てきたのだろう、青年は外に繋がるであろう備え付けの電話が壊れていると。そして、運転手を殺した犯人は外からの侵入者だという。侵入者って、此処は地下電車。人なんている訳ない。そんなこんなで電車に取り残された自分たちに『 ごはんでも食べる? 』と問いかける。よくもまあこんな状況下でそんなことが言える、と思考回路が停止しかけている中で思ったが、青年なりの場の和ませ方なのだろうと解決した。様々な殺した片が想像される中、動物や人間にしてもとても強い力だと、呟く声が聞えた。此処にいる人たちはそういう職場で働いたことのある経験者だろうか随分と詳しい素振りだな、と思ってしまった。


>燕子花 瑠璃子様、ALL様

11ヶ月前 No.22

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / 電車内・二両目→一両目】

一両目へ辿り着くと、一緒に来ていた女性は、調子を崩したと思われる少女に心配そうに声をかけにいった。この女の子さりげなく俺より背が高くないか!? おかしい! と、自分と同い年か年下と思われる少女の身長に嫉妬しながら、先に行っててと言われたので「わかりました」と言って遠慮なく先程の青年の元へ先に行く。
そして青年と他にも協力してくれた数人とともに、交代でドアに衝撃を与え、ぶっ壊す――ではなく、乱暴だが開けることに成功する。こんなちっちゃくて弱い奴の力なんてあんまり意味が無かったとは思うが、まぁ『おおきなかぶ』と鼠ぐらいには――否、それは自己評価が高過ぎる。自分がいなくてはできなかったようではないか。せめて猫ぐらいには役に立っていると嬉しい。

「うげっ…血の匂い……ほんとに死んでる………」

ドアが開いた瞬間、血の匂いが広がり、顔をしかめる。グロゲーが好きなので、とんでもない亡くなり方をしている死体の方には『マジで死んでるな』程度の感想を持って終わりだが、血の匂いはゲームでは感じられない。無惨な死体や大量の血はゲーム内でもっと凄いのを見慣れたけれど、こんなに凄い血の匂いは初めてだ。呼びかけを始めた青年が部屋に入って行ったが、柊はあまり入りたくない。血の匂いが今より濃くなるだろうから。

「……はぁ!? 壊れてる、って……じゃあ、どうやって此処から救助求めるっていうんだよ…!? ……クソッ…」

青年の軽い報告に、柊は目つきの悪い瞳を細めて頬を引きつらせて怒りを露わにする。ドスの効いた低い声で怒鳴り散らしたのであれば、うるさいとか怖いとか思われたかもしれないが、柊の少女のような高くて少しだけ大きいだけの声だと、なんの恐怖もない。「あぁ、この子怒ってるなぁ」程度だ。かわいらしい。本人はこんなところでグズグズしているつもりはないので、とってもお怒りだが。
凶暴な動物か殺人鬼か、わからないけどそういうヤバい奴がいるトンネルで電車に閉じ込められた。そんなことをさらっと明るく軽く青年は言う。そしてビニール袋を漁りながら、ごはんでも食べるかと言っている。さっきまでイライラしていた柊は、思わず呆れたようにジト目になる。本気で言っているのか? みんなを笑わせるために言った冗談だとしたら失敗だが、怒りを落ち着かせるための冗談だったなら成功している。少なくとも柊には。
それでも自分はそんな超強いチート謎生物にぶっ殺されるわけにはいかないのだ、と何とか逃げる方法を考えていると、サラリーマンと思われる男性が、ボソボソと呟くように言う。大きい肉叩きで潰したみたい。なるほど確かに、そう言われるとそう見える……けど。この状況で殺人方法を考察されても困る。他の乗客は知らないが、少なくとも柊は運転手を殺した犯人を探したいわけではないのだ。

「……! 貴方、鼻血出てるじゃないですかっ。これ使ってください」

考えを巡らしながら乗客を見渡すと、さっき発言したサラリーマンは、よく見ると鼻血を流していた。それを見て、柊は慌てて自身のズボンのポケットから、ポケットティッシュを取り出して差し出す。もしこの男性が人の首を持っているとわかればこんなに優しくはしなかったかもしれないが、柊から見ればこの人はただのサラリーマンなので、優しくしない理由はなかった。

>>燕子花瑠璃子さま、与那国水路さま、梅塚了さま、allさま

11ヶ月前 No.23

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_jG9

【狩峯和人/電車内・最後尾→電車内・一両目】

どこまでも乱れずに窓や扉に間接的に写される見慣れた閃光と共に途方も無く流れる造り物の暗闇を死に場所に選んだはずの狩峯は、本来ならばその死に場所にて無残に殺されるはずであった車輪に火花を散らす地下鉄にこれまた途方も無く揺られていた。だがそんな列車に突如して襲ったのは謎の衝撃。その衝撃は列車の一両目から最後尾まで限り無く列車の全身にナイフの様に鋭く、されどハンマーの様に鈍く、痛みを伴う警告が終電と言う事もあり若干節電されているが少し温かい電車内と冷たい壁しか見えない外の温度差により少し白く曇っている窓ガラスや自身が吐く少しだけ見える真っ白なため息でさえ明るくシルエットの様に照らす蛍光灯、そしてその中で当たり前の様に揺れている自身を含めた乗客達に淡々と伝えていく。
その一人でも狩峯は内臓の様に配置されたビルや神経の様に感じる電波、血液の様に動く線路が立ち並ぶ都会の下、日常の底辺にて内臓に潰れながら徐々に遭難時と同じ様な不穏で不安でこれから訪れるであろう恐怖に震える気持ちに駆られる。しかしだからこそ、死ぬべきだった自身の青二才な使命感がそんな彼を空しく締め付ける。

(いくら警察官と言っても彼等をこの状況から助けられるのでしょうか……)

そんな事を考えながら警察官であり自殺願望者である狩峯は、一両目から聞こえた僅かな声を頼りに様々な車両を丁寧に歩いていく。そして毎回、全ての車両に中くらいの声でパニック防止の為に、先程の衝撃に怯えてしまっている乗客や重傷では無いが怪我してしまった乗客等を落ち着かせる様に心掛ける。それに一時的ではあるが少しでも安心感を与えるべく、常に身分証明の為に自身のパンツのポケットに所持している自身の顔写真と名前等が入った警察手帳を一人一人の前に軽く見せていく。だが流石に狩峯も乗客の怪我による治療や手当て等は簡単には出来ず、彼に出来る事と言えば当然だが励ます程度。この電車内にたまたま乗り合わせた医者でもいてくれたらとても助かるのだが。とはいえ旅客機とは違い終電に居合わせた人数等を考えて可能性は薄いだろう。しかしそんな無力な自分を嘆く暇も無く僅かな叫び声が聞こえた一両目まで移動する。だが辿り着いたそんな一両目には吐き気を催しそうで苦しんでいる人物、それを心配して近寄る人物、青白い顔で手すりに捕まっている人物、運転席付近でコンビニの袋を漁っていたり、鼻血を流していたり、その鼻血に対してポケットティッシュを渡していたり等、様々な行動を見せる人物達、さらにその運転席から現在起こっているこの状況が思った以上に危険である事を知らせる黒紅色に流れ血塗られた床、何度か嗅いだ事のある死臭、それに壊れた運転席の扉等。今まで来た車両には無い異様な雰囲気に一両目は包まれていた。
それに狩峯は雰囲気に呑み込まれない様に一旦深呼吸してこの空気をガラリと変えるべく、一両目の乗客全員に既に手に持っていた警察手帳を見せて自己紹介を行う。

「どうも、警察官の狩峯です。とりあえず皆さん、まず深呼吸して落ち着いて下さい。それではいつでも構いませんので誰か話せるなら現在までに起こったこの状況を教えて下さると助かります」

そう言って一両目の乗客達に一人一人丁寧に接する事を考えながら、この一両目で最も異様と言うよりも危険な雰囲気を漂わせている運転席の様子を運転席の付近から確認する。

>>一両目ALL様

11ヶ月前 No.24

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/電車内・一両目】

 少女と会話をしている内にこじ開けられたらしい扉の方を見る勇気は出なかった。妄想か現実かここまで漂う血の臭いと甘くて苦くて酸っぱいような良くわからない臭いは瑠璃子には耐えられそうにもなくて、せり上がってきた胃液をなんとか喉元で抑えた。死体を見たら吐くと確信したので壊れているらしい電話の確認も出来ないが、もしかして先程の少年はあの死体を直視してしまったのだろうか。そうだとしたらあまりにも申し訳ないと思いつつ、嘔吐く声や叫び声が聞こえなくてほんの少し安堵した。こういう状況に耐性でも持っていたのかもしれない。瑠璃子自身はR−15の映画でもひいひい言うくらい元・人間、現・肉塊みたいなものが苦手なので、とにかくそういうものを視界に入れないようにするのに必死だった。実際に見た事ある死体も棺に入った祖父くらいなのだから仕方ないと言われれば仕方ない。
 瑠璃子が話し掛けた少女といえば愛らしい瞳いっぱいに溜めた涙を拭って「大丈夫です」なんて言ってみせるものだから、「無理すんなよ」くらいしか返せなかった。
 瑠璃子の後方にはそれはもう惨憺たる光景が広がっているに違いないが、それを見てしまったのか少女はまた顔を下げて、突然視線を逸らしたことを謝罪する。見たくないものが視界に入ってしまったら見ないように対処するのは当然の事で、謝るような事ではないのにと思うが素直に受け取っておいた。なによりまた泣き出しそうな少女を見てると色々と辛くなってくる。少しだけ迷って1度だけ頭を撫でた。

 と、そんな中。ヤバい奴がいるかもしれないトンネル内で青年が放ったジョークにそういえば昼から何も食べてないなあとか思いつつ、警察官を名乗る男性がよく通る声で1両目の乗客に呼び掛けていた。警察手帳を見せている辺り本物なのだろうが、警察官でも終電を使うことに驚く。激務なのだろうと勝手に納得して、彼の問いに答えることにした。

「警察のお兄さんいるならお任せしちゃっていい感じかなあ。ね、お兄さん……えっと、狩峯さん、か。この状況はあれよ、多分そこの綺麗な顔したお兄さんとか1両目にいた子とか詳しいんじゃないかな。私は寝てたからなんとも。――ところでさ、担当した事ある事件でこういうの無いの? 走行中の電車の窓付き破って運転手ぶち殺すような事件」

 自分で言ってて訳が分からなかった。普通に考えてあるわけないだろう。ここで「ああ、ありましたね」とか言われたら本当に今回の大惨事は彼にお任せして最後尾の車両で冷めきったおでんでも食べていたい。
 そもそもまだ「ヤバい奴」の詳細が何も分かってない現時点で、瑠璃子の直感的には今この瞬間で1番警察官のお世話になっていてほしいと感じた人物は冴えないサラリーマンの男だった。今の仕事に就く前からなんとなく備わっていた第六感的な何かが今までにないくらい警笛を鳴らしている。殺人方法の考察なんかも妙に細かくて嫌な感じだ。先程から端正な顔の青年に関しても「ちょっとやべえ世界のやつかな」とか思っていたがそれすら吹っ飛んだ。出来るだけ関わらないようにしないと駄目だと思いつつ、観察するように向けていた目をそっと逸らした。


>>冬城雪成様、狩峯和人様、周辺ALL様

11ヶ月前 No.25

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_WcJ

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11ヶ月前 No.26

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD

【 梅塚了/電車内・一両目 】

 何処かから突き刺さるような視線を感じて、一層身を縮こまらせた。殺害の直前と直後以外は、梅塚は至って普通の人間よりも、はるかに臆病で、愚鈍であった。鼻血を啜りながら、先程の発言を何百回も後悔していると、いきなり高く繊細な声で話しかけられ、びくりと背を震わせた。思わず凄い勢いでそちらに視線を向けると、赤い髪の少女……いや、少年がそこに立っていた。だぼだぼの制服を身に纏っている姿は、一見するととても可愛らしく微笑ましいが、目つきが悪く、不良女子中学生が何かかと思い、こんな場所でもオヤジ狩りの憂き目に遭うのかと絶望しかけたが、少年が発した言葉はとても優しいものだった。

「……! 貴方、鼻血出てるじゃないですかっ。これ使ってください」
「あ……ありがとうございます。や、優しいんですね……」

 遠慮がちにポケットティッシュを受け取り、ティッシュを一枚抜き出すと、鼻に押し当てた。白いそれがじんわりと紅く滲み、確かな質量の増加、そして生温い血液の感触を伝えて来る。垂れてはまずいと、急に顔を上向かせたからか、鼻の奥に血液が逆流し、刺さるような痛みを与えてきた。その衝撃で若干涙目になり、梅塚は薄目で少年に向き直った。

「う……これ、お礼に、もし良かったら」

 梅塚は、ポケットから、よれたスーツに似合わぬ高級そうな菓子の袋を取り出し、少年に差し出した。筆記体でイタリア語か何かがプリントされたそれは、確か有名なブランド物のクッキーだった気がする。殺害した女性のポケットから転がり出て、誤って指紋をつけてしまっただけの物なので、詳細は梅塚にもよく分かっていないけれど。そもそも、こんなグロテスクな現場で菓子を少年に差し出すサラリーマン、という構図が既に常軌を逸している光景なのだが、梅塚はまだ頭に霞がかかっているのか、その行為をただの「お礼」としてしか認知していなかった。とどのつまり、意図せずに空気の読めぬ行動を行ってしまったのである。
 そんな自分の愚行に気づかず、梅塚は先程の、現実から剥離した硝子さながらの青年の、緩いながらもはっきりとした応えに耳を傾けていた。落ち着き払っている、というより、実際に動揺していないのだろう。それはそれで、中々タフ__言い換えれば『異常』だ。ここでまだ議論を続けようとすれば、自分の化けの皮が剥がれてしまいそうなので、梅塚は臆病者の仮面を過剰に被った自身を維持する事に決めた。端からは、神経質で仕事に疲れたサラリーマンにしか感じられないだろう。
 殺人鬼よりも、獣に近い。先刻の意見が、胸中に澱を降らせた。デカンタでは取り除けそうも無い、こびりついた渋みだ。獣ならば、情け容赦なく、一切の嗜好も思考も無く殺してしまうのも頷ける。引き潰された屍を見下ろし、そう考える。
 そうやって固まっていると、どうやら乗り合わせていたらしい、何処か陰のありそうな警察官が、警察手帳を掲げてこちらに情報提示を訴えていた。梅塚が答える意思を自認する前に、かなり目のやり場に困る格好をした女性が最初の一声を上げ、青年が指名を丁重に受領して、充分な情報を伝えていた。つくづく自分の鈍臭さに呆れつつ、梅塚も一両目に乗っていた人間なので、一応警察官に向かって控えめに、オドオドと言った。

「……ほ、ほんとに急で。一両目に乗っていても、急ブレーキがかかっても……全然運転手さんが亡くなっているのに気づきませんでした」

 血腥いのも、粘ついた滑りも、全ては運転席を確認してからの事象だった。いや、鼻と口周りで局所的に巻き起こってはいた。貰ったティッシュで、出て来る鼻血を拭き取る。相当強く鼻を打ったのか、それとも折れているのがアドレナリンよって誤魔化されているのか、どちらにせよ貧血だ__嗚呼、血と言えば、置いてきた鞄の中の彼女は平気だろうか? 獣の餌になってしまったら、彼女に代わる彼女を捜さなければならないし、女性を蔑ろにするのは良くない。一応鞄を取って来ようと身動ぎしたのだが、それは圧倒的な不快感によってただの身動ぎで終わってしまった。

 屈強そうな男が、青年の忠告を無視して、用を足す為に無理矢理車外へと降りていた。青年の死体を見るより嫌悪感を露にした態度を、新鮮そうに、物珍しそうに梅塚は見やった。冷静な様子が、一気に不潔を嫌う繊細な人間に変化している。不潔に多少なりとも免疫があっても、どれだけ鈍くても、流石にこの光景はちょっとキツかった。視線を逸らしながら、「はあ」と溜息を吐く。ここで止められたり、注意出来たら格好良いかなあ、と夢想している内に__青年が、いきなり慌てふためき、男に何者か、何物かの到来を告げた。梅塚は、その大きく、切羽詰まった声に、思わず車外を見てしまった。

「う、うわあッ!」

 口から、意図せず悲鳴が漏れ、その化け物の姿を見、思い切り息を呑んだ。いつの間にかすっかり乾いて、上唇に張り付いた血液のカスが、冷や汗によって流れ去る。後退ろうとしても、身体が硬直して動けない。あれは一体何なんだ。獣でも人でも無いじゃないか。一体、どこまで進化論を冒涜したんだ。ちぐはぐで継ぎ接ぎの、赤子がマネキンをプールの中で掻き回して、万に一つの確率で生まれて来るような。手足が何本あった、とかのレベルではない。耳から垂れた管や、よたよたと猛スピードで襲い掛かる際の、人間を粘土にしたようなデタラメな造形。神がゲシュタルト崩壊を起こしたみたいだ。

「ひ、」

 化け物に襲われる、襲われる……そんな焦りから、梅塚は武骨な手で自分の口を覆った。転がった酔っ払いの死体には、泣き叫びたくなる恐怖もあまり抱かなかったが、嫌悪感、不快感は増した。彼女の断面はあんなにも美しいのに。現実逃避し始めた脳に喝を入れ、梅塚は出来るだけ死体から離れた座席に、ぽすん、とまるで糸の切れた人形のように座り込んだ。

>>柊様、水路様、和人様、周辺ALL

10ヶ月前 No.27

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / 電車内・一両目】

サラリーマンは怯えた様子だったがティッシュを受け取ってくれた。怖がられているのは、目つきが悪いせいだろうか。でもこれは生まれつきだし、俺だって目つきを悪くしたくて悪くしてるわけじゃないから、しょうがないのだ。双子の兄のアイツは、俺とは対照的に弱々しい目をしているが。……優しい、か。鼻血を出してる人にティッシュを渡すぐらい誰だってするだろ。そりゃ、こんなとんでもない一生のうちに体験することはもう二度と無さそうな状況だが、でもティッシュを差し出すさっきの女性が少女に声をかけていたのと同じで。なんの変哲も無い…と思うんだけどな。

「え、あ……ありがとうございます」

お礼に、と言ってクッキーを渡された。高そうだ。すごいおしゃれだ。何語かわからないアルファベットの筆記体がかっこいい。俺みたいな貧乏人は、たぶん一生こんなもの買えないし食べられない。これは家に帰ってアイツと一緒に食べて、学校でアイツに渡そう。ちょっぴり嬉しくなってから、血の匂いがする此処でお礼として菓子を渡す、という行為の異常さにワンテンポ遅れて気付く。普通こんなところでこんなもの渡すか…? 目つきを悪い目を思わず細めて相手を睨むような感じになってしまったが、今更返せないしクッキーはありがたくいただくことにして、鞄に入れる。

「…俺は、その女性と二両目にいたんですけど、えと…変な人影とかは見ませんでした」

狩峯、と名乗った警察官に、青年とサラリーマンに続いて柊も発言する。自分の持っていた情報は全部青年が話してしまったので、変な人影を見ていないということしか伝えられなかった。
うーん……いっそ、この警察の人――狩峯さんに、ヘリとか救助部隊とか呼んでもらうか? あ、地下だから電波繋がらないんだった。うわ、どうしよう――と、苦い顔で悩んでいると、柊とは真逆の物凄く強そうな男が、ドアを壊して外へ出て行った。用を足したいらしい。確かにあの酔っ払いはゴジラにもビビらなさそうだな、と思ってしまったので、青年の発言に苦笑する。そして外に出て行ったおじさんからは先に目を逸らして耳を塞いでおく。気分が悪くなりそうなものには早めに対処しておこう。ほら、おじさんに拒否られた青年もすみっこにいって嫌そうに顔をしかめてるし、俺のやっていることは別に特別悪いことではないだろ――と思っていたら、青年は耳を塞ぐのを辞めて真剣な顔で叫んだ。その必死な様子に思わず柊も手を離す。――なんか来てる? なんか来てるってなんだよ。さっきの殺人鬼か獣か、ってことか? 訝しげにその『なんか』が来ると思われる方に視線を移すと、酔っ払いは真っ二つに切り離された。

「い゛っ…!?」

人の体の上下がさようならするところなんて、ゲームでは何度も見たけど、本物なんて、当たり前だけど初めて見た。血の匂いが異常に強くなる。さっきですらゲームでは味わえない臭気に気持ち悪くなったのに、それが強くなって流石に顔をしかめる程度じゃあ済まなくなりそうで、片手で口を押さえる。気持ち悪い。頭がおかしくなりそうだ。喉元まで来た汚物を慌てて飲み込み、口の中に不快な味が広がる。
……それよりも。ゲーム内では見慣れた死体とゲーム内では感じられない異常な血の匂いよりも、頭からこびりついて離れないものがあった。酔っ払いを死体に変えた『それ』が異常過ぎた。どう説明すればいいかわからないけれど、何ていうか、その、人の体のパーツでリアル福笑いをしたみたいだった。全然福も来そうにないし笑えないしむしろ嘔吐モノだけれど、本当にそんな感じだ。待ってくれよ、マジでこれホラーアドベンチャーなのか? このままじゃ、あれに殺されてしまう。この酔っ払いのように。そんなのダメだ。嫌、じゃなくてダメ。あってはならない。俺はアイツとアイツを守らなきゃいけないんだ。こんなところで死んだら、守ってやる人がいなくなってしまう。そんなのダメなんだよ。

「……に、にげないと。にげないとっ、脱出しないと、はやく、じゃないと、俺たちも、あんなんにっ」

ギュッと自分の鞄の持ち手を強く握りしめながらそう言った。その様子は血の匂いに気分を悪くし化け物に怯えていたが、真剣だった。

>>梅塚了さま、狩峯和人さま、allさま

10ヶ月前 No.28

雪ん子☆2PW2ryYB8o. ★NbQEF8QrNY_mgE


 【 冬城 雪成 / 電車内・一両目 】


 必死に落ちる涙を堪えてずっと鼻を啜る。大丈夫、なんて強がりでもいい。今だけはそう言っておかないと後後大丈夫じゃなくなるから。そんなことを言ったら『 無理すんなよ 』と返してくれた。顔を下げたことにも何も言わず少し罪悪感が残ったが、頭を撫でてくれた。その行為にとうとう拭き取った涙がぶり返してとうとう一筋の雫が落ちる。その雫を堺にどんどん溢れてきて「 ……ひっ、っ。 」と小さな嗚咽を漏らしながら静かに泣き出してしまった。他人の前で泣くなんて初めてのことなのでどうしたらいいか分からずただただ泣くことしかできなかった。お姉さんの手が暖かくて思わずその温もりに浸ってしまいそうになる。

 泣いていても耳だけはきちんと周りの声を捕えていたようで、警察だと名乗る男の人の声が聞えた。落ちる涙を指で掬って警察の男性の方を見る。警察手帳を皆に見せて深呼吸をして状況を話してほしい、と。お姉さんが綺麗な顔したお兄さんとか一両目にいた子とか詳しいんじゃないかな、と警察の狩峯さんという方に言った。一両目にいた自分だが不可解な点はなかったし、お兄さんの言う通り大したことを話せるものなんて持ち合わせていない。肩や足が震えるのを落ち着かせ深呼吸をする。


 「 わ、私も一両目でしたが……っ、急ブレーキがかかって……。……運転手さんが亡くなっていたなんて……ひっ、知ら……なくて……。 」


 大したこと言えてないし嗚咽だらけだしちゃんと伝わったかな、なんて内心で思い「 ……なんか、すいません。 」と小さく頭を下げながら謝る。青年とサラリーマンが話した後、小さな女の子の様な男の子が『 変な人影とかは見ませんでした 』と発言したのに対して「 周りが暗いので……人影は見えませんでした。 」と返しておく。地下電車なので光と言ったら電車内の電気か電車のライトぐらいで、特に不審な影は見えなかったと答える。気付いてたらなにかしら声を上げている。一通り話してもう一度深呼吸をする。話したせいか、少し落ち着きを取り戻す。

 一人のごつい男性が酔っ払いながら用を足すために電車から降りる。おじさんから目を逸らして耳を塞ぐ男の子を見て自分も目を逸らし耳を塞ぐ。ゴジラにもビビんねーよ、と青年の発言に確かに、なんて同感してしまう。青年は普通の人より耳が良いらしく無理無理と連発して苦笑いを浮かべる。耳が良いなんて羨ましいと思ったが嫌なことの方が多そう、という概念がついてしまう。すると、何やら慌てた様子の青年が酔っ払いの男性を戻そうと急かす。その様子に危機を感じた雪成は耳を塞いでいた手を退けて男性を方を見る。『 なにか来てる 』とは先程言っていた殺人鬼か獣? 瞬きをすると目の前に広がるのは男性が真っ二つになっているもの。


 「 いやぁ……!! 」


 男性が真っ二つになる瞬間を見てしまい足の指先から脳にかけて硬直したように動かない。せっかく落ち着きを取り戻した雪成だったがまた涙を浮かべて顔を歪ませる。異常な血の匂いに鼻と口を両手で塞ぐ。後ずさりたいけど体が動いてくれない。酸っぱい胃酸が喉元まで上がり反射で吐き出しそうになるが堪えた。衝撃的すぎて思考が完全に停止し目の前の惨劇から目が離せなくなってしまう。逸らしたいのに逸らせない。それよりも男性の下半身を口に咥えたあの生き物はなに。死体よりも男性を殺した生き物の方が異常だった。人間の身体のパーツをばらばらに□ぎあわせたみたいな、この世のものとは思えない化け物を見てしまった。悪い夢ならすぐに冷めてほしい。でも血の匂いや周りの声が現実だと語っているみたいで。


 「 ……も、もう……、い、や……です……。 」


 再び大量の雫が頬を伝い泣き出してしまう。何で自分がこんな目に。動かない腕を無理矢理動かして、頭を撫でてくれたお姉さんの腕にしがみついてしまう。無意識のことで自分でも気付かず、ただ何かにすがりつきたくて。この化け物が来てしまう前に逃げなきゃいけないのに――。


>燕子花 瑠璃子様、狩峯 和人様、ALL様

10ヶ月前 No.29

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_IZy

【狩峯和人/電車内・一両目】

被害に遭った運転手によって流し尽くしたであろう血だまりと、不気味加減をかなり上昇させているトンネルの暗闇に沈む運転席。其処には急停止による衝動とはまた別の痕跡が生々しく色濃く残る一両目には、アナウンスと避難勧告の待ち惚けを食らっている乗客が何も知らずに過ごす最後尾から事件の最先端が静かに進む一両目まで遥々訪れた狩峯が、まずその場で様々な対応を見せていた乗り合わせた一両目の乗客に警察官の職務、そして今度こそ正義感を貫くべく事故が起こった経緯等事情を事細かく聞いていた。勿論、彼の心に誰も辿り付けない程の高貴で綺麗事な正義感と言う信念の元、狩峯自身も活動しているが、これまで体感する事の無かった運転席からの圧倒的な恐怖もまた心の中に蝕むように潜んでいる。その為か、狩峯は乗客を落ち着かせながらも、様々な事件の現場で見た事は実際無いものの微かに嗅いだ事もある為、少しだけ慣れた血の匂いや例え慣れていて耐性があっても吐き気を催すレベルのグロテスクな死体と化した運転手が寝心地悪そうに眠っているのを見て知らず知らずの内に心の中で微かに怯えていた。狩峯自身はグロテスクに耐性はあるが、こういったホラーな雰囲気が大分苦手でありホラー映画もいくら駄作でも目を閉じて現実逃避や精神統一して一切の情報をシャットアウトしている。とはいえ、狩峯自身は余りホラーに気にしておらず、むしろ気になるのはストーリー関係無く自分の正義感に合わないキャラクターに不愉快を覚えてしまう事。

「警察のお兄さんいるならお任せしちゃっていい感じかなあ。ね、お兄さん……えっと、狩峯さん、か。この状況はあれよ、多分そこの綺麗な顔したお兄さんとか1両目にいた子とか詳しいんじゃないかな。私は寝てたからなんとも。――ところでさ、担当した事ある事件でこういうの無いの? 走行中の電車の窓付き破って運転手ぶち殺すような事件」
「捜査のご協力感謝します。……正直言ってしまえば、私もこんな奇怪な事件は見た事無いですよ。ええ……何か、申し訳ないです」

グロテスクとホラーが限り無く自然に混じり合ったこの状況による影響か、大分弱ってしまっている女性の期待に尋常ではないプレッシャーと理想の自分が見せる期待に圧倒的な使命感を抱える。しかしさらに正直言えば、狩峯は警察官とはいえ上司や同僚の衝突により出世街道から外され未だに交番勤務の身、パトロールや様々な駅周辺の事件の整備くらいしか行っておらずそもそも担当した事件はほとんど無い。これによりますます理想の自分と現実の自分との差に溝が出来てしまっていた。だが例え交番勤務でも警官は警官。この身を呈しても乗客の命は自分が守らなければならない。
それにしても乗客をパニック騒動と化しない様に落ち着かせ、様々な事情を一つ一つ聞いている狩峯でもこの緊急事態、異常な状況の元とも言える血生臭い運転席がどうしても気になっていた。そんな事を考えていると弱っていた女性との会話に反応した、先程コンビニの袋を漁っていた男性が情報提供してくれる。

「おまわりさんいるんだ、ラッキー。俺、『綺麗な顔したお兄さん』を勝手に自分のことだって判断して、ご指名貰ったから語っちゃうね! って言っても、俺だって大したこと話せるわけじゃないんだけどぉ。何て言えば良いのかなぁ。急ブレーキの後ー、なぁんか嫌な予感がして走って運転席の様子を見に行ったらー、その運転手さんがお亡くなりあそばしててー、中の窓ガラスは外側から割られてた上に備え付けの電話も木端微塵でしたー、って感じ? 犯人の後姿とかは残念ながら見えなかったかなー。知ってることってこれくらい」

予想よりも随分と軽い口調ではあったが、これであの運転席や運転手の情報を手に入れる事が出来た。そして出来れば嘘であってほしいが、運転手が死亡したのは決して事故では無く殺人の可能性を秘めていると言う事が判明。これにより、彼の中でただでさえ張り詰めていた緊迫感がグングンと上昇していき、狩峯が逆に落ち着かなくなってしまう。その時、先程鼻血を出していた男性からも情報を提供してくれる。

「……ほ、ほんとに急で。一両目に乗っていても、急ブレーキがかかっても……全然運転手さんが亡くなっているのに気づきませんでした」

提供してくれた情報に対して非常に感謝しているが、男性が狩峯を見る瞳について何だか自身の心の中に隠している恐怖や自己嫌悪、自殺等による陰の部分を見られている様な気がしていた。ただし、今は自分の事より乗客について対応しなければならないので他の乗客、先程その鼻血を出していた男性にティッシュを渡してた女子中学生らしき人物からも情報を手に入れる事が出来た。

「…俺は、その女性と二両目にいたんですけど、えと…変な人影とかは見ませんでした」

それにより、先程の男性達とこの中学生らしき人物から考えられるのは本当にこの様な異変が起こったのは一瞬の出来事であった事。つまり運転手を殺害した犯人は一瞬で鈍器でも一瞬では割れなさそうな窓ガラスをわざわざ素早くいとも簡単に叩き割り。そしてわざわざ備え付けの電話を壊すと言う余裕は見せたと言う事となる。もはや、何か余程のトリックでも無い限り通常として考えられるのは、犯人が人間以上の身体能力を持った何かとしか結論付ける事が出来ない。その為、狩峯は自身が思った以上に事態が大きい事を改めて感じてしまう。ただし、現場検証や何か他の証拠が見つかる可能性に託し、自分の知っている現実である事をひたすら祈る。すると、この状況に怯えている女性が涙を流しながらも懸命に情報を教えてくれる。

 「 わ、私も一両目でしたが……っ、急ブレーキがかかって……。……運転手さんが亡くなっていたなんて……ひっ、知ら……なくて……。 」
「無理しなくて良いんですよ。落ち着いてから……」

狩峯にとって情報を提供してくれるのは非常に有難いが、まずは落ち着いて深呼吸をして欲しい。それ程に彼から見ても彼女は落ち着きが一切無く本当にパニック状態に陥っていたと思われる。
この様に、一両目の乗客から大体の情報を入手出来たがその分警官と言うプレッシャーが大きく自分に伸し掛かる。今は無自覚な正義感に駆られて行動しているが、実際人間離れした犯人に出くわして時、結局いくら頑張っても理想の自分では無い為、絶対に守って乗客達を日常に帰してあげられるかどうかは一切分からない。

(やっぱり私はあの時、死んでおけば良かったのかもしれませんね……)

そんな無責任な事を暗闇に揺らぐ瞳の奥で、決して心構えを変えられなかった彼は少しずつ自然な路線変更を望んでいた。しかしそんな事を考えていると、この不穏な雰囲気に呑まれずに一切動じないある意味とんでもない酔っ払いの中年が列車の扉に何度も猪の如くタックルを始めていた。狩峯は酔っ払いの扱いについて過去の警官による経験から、よく慣れていた為パニックになりかねないと直ぐに優しく話しかける等の対応を始めようと試みるが既に扉を破壊した後、フラフラの足で列車を後にして線路をトイレにして呑気に排泄を行い汚物を垂れ流す。何ともシュールな光景に呆れながらとりあえず酔っ払いの為に列車の中ながら窓ガラス越しに周りを見渡しながら、汚物処理について真剣に考える。だがその前にもしかしたら運転手を殺害した犯人が近づいているかもしれないと、思い直しこの空気読めない酔っ払いだけでなく、一両目を含めた列車全体の乗客は自分が守らなければならない使命感に答えなければならない。しかしこの場の乗客全員を守る事を決めた直後にその内の一人である酔っ払いが上半身と下半身を裂かれたと言う無残な状態にて乗客の前でお披露目する。流石に警察官でも狩峯が予想していたどの行為よりも想像を絶する現実に息が荒れ怯えてしまう。とても気分が悪い。こんな殺人風景を間近で遭遇等、恐らく警察官の中でもほぼいないに等しいであろう。つまり、何が言いたいのかも分からず狩峯は混乱と動揺の淵へ瞬時に立たされる。しかし彼に染み付いた信念の塊と化した正義感はそれを許さず勇敢と言うよりも無謀とも言える死体と化した酔っ払いの方向に近づくと言う行為を他の乗客に見せる。

(私が守らなければ……私が守らなければ……)

だがそんな間も無く狩峯の目の前に現れたのは人と言うには余りに奇妙で、獣と言うには余りに生易しい何か。どのジャンルの生物にも絶対に当てはまる事の無い造形。むしろ、人が持つ負の部分を剥き出しにした様なフォルムながら実際には未知としか言いようの無いこれを人は怪物と呼ぶのだろう。
そしてその怪物に対して狩峯は、これまで感じた事の無い恐怖に決して変わる事の無かった彼の線路は少しずつ歪み始めていた。

>>一両目ALL様

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
10ヶ月前 No.30

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/電車内・一両目】

 頭を撫でた少女はまた泣き出してしまった。よしよし、と子供をあやす様に背中を撫でて、落ち着いてくれるのを待つ。先程の警察官に話をしている内に落ち着きを取り戻したらしく瑠璃子も安堵してその手を離した。まだ高校生だろう。こんなところでこんな怖い思いなんて本当はするべき存在ではないのに。
 一方瑠璃子がダメ元で聞いたこんな事件を見たことあるかについての問いは、当然の如くNOだった。

「だよね、見たことあるわけないよねー。いいのいいの。こっちこそなんかごめんね」

 申し訳なさそうに答えてくれた警察官にそう返す。そうなるといよいよヤバい動物説が有力になってきた。生憎瑠璃子は頭脳に自信が無いので推理なんかは出来ないが、確かに人間にこの芸当は難しい気がする。かといってヤバい動物というのも都市伝説に特別詳しい訳でもない彼女にとって思い当たる節は無く、只々首を捻るだけだった。
 そんな時、でかくてごつくて厳ついマッチョな酔いどれ赤面おじさんがベルトを外そうとしながら扉に体当たりするという奇行に走り始める。人体を電車の扉にぶつけても普通こんな音鳴らない。このおじさん強いなあと他人事のように考えていたら、人の身でありながら無事扉の破壊を完了したおじさんが電車の外へと出て行ってしまった。理由はそれはもう見た目に違わず厳つい声で発せられた呟きによって誰もが察知したであろうが、それを止めようとして弾き飛ばされていた青年を見て止めるのをやめた。そこそこの成人男性を何でもないように吹っ飛ばすおじさんに瑠璃子が太刀打ちできるわけもない。瑠璃子はともかく未成年や女の子もいるんだし、用を足すならどうか車内の面々に見えないところでお願いしたかった。
 しかし、そんな願いを知ってか知らずかおじさんはあろう事かこちらを向いて用を足し始める。瑠璃子的には普段から見慣れているブツであっても然るべき場所以外で見たら普通に嫌悪しか感じない。馬鹿でかい放屁に関してはもう何も感じなかった。もし大きい方を捻り出すような事があったらマジでどうにかしてやろう。

 今まで電車の端で耳を塞いでいた青年がぱっと耳から手を離しておじさんに戻ってこいと呼びかける。何かが来ている、と。平凡も平凡な瑠璃子の聴力にも視覚にもなにか特別なものは分からなかったが、彼が叫んだ数秒後に何者かの足音を聞く。なんだなんだと思った時にはおじさんが真っ二つになっていた。
 上半身と下半身がお別れしている。その時点で瑠璃子の脳は思考を停止し、思わず倒れそうになった。だというのに、追い打ちをかけるように目に飛び込んできたのはおじさんを真っ二つにしたモノの姿。R指定のB級ホラーでも見ないような、グロテスクを煮詰めて濃縮還元しましたと言わんばかりの元人間の集合体みたいな化け物。それがお魚くわえたどら猫ばりの気軽さでおじさんの下半身をくわえてトンネルを去っていった。

「……は?」

 意識せず気の抜けた声が漏れる。今まで気丈に振舞おうと努力してきた瑠璃子の精神強度とグロ耐性は人並どころかそれより低めである事を本人も暫し忘れていたのかもしれない。手足の末端からじんわりと痺れが襲い、視界に薄いヴェールがかかったと思ったら尻餅をついていた。眼前暗黒感とかなんとかだったか。正式名称なんて今は心底どうでも良くて、とにかく頭がくらくらするし瞳からは無意識にぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ちる。「あ、やべ」なんて軽い口調で乱暴に涙を拭う彼女は内心酷く動揺していて。そこそこ波乱万丈な人生を送ってきたと自負していたが、ホラー映画の登場人物になった覚えはなかった。

「え、私の末路もあんななの? あんな映画でしか見たことないような奴に殺されちゃうの? ――あ、むりだ。ごめ、ほんと、だめ」

 手に持っていた菓子パンの入ったコンビニ袋をひっくり返して中身をすべてばらまくと、空になった袋に口を当てて胃液を吐き出した。昼から何も食べてなかったせいで本当に胃液しか出てこない。
 流石に大勢の前で吐くのは恥ずかしくて、左手でビニール袋を持ちながら右手でもう出てくるなと言わんばかりに己の首を強めに抑える。SAN値チェックに失敗して一時的狂気に陥ったようにも見えるが、ただ落ち着きたいだけだった。
 1分程度で首から手を離して軽く咳き込む。首についた痣が更に鮮やかになった気がするがそんなことはどうでも良い。どうせここから出られたらこんなのに興奮する特殊な性癖持ちの方々にまた痕をつけられてしまうのだから。長く息をついて立ち上がると、少量の胃液が入ったビニール袋の口を慣れた手つきで結び、常備しているジップロックにいれて封をする。それをハンドバッグにいれて、更に除菌ジェルを手に擦り込むと何事も無かったかのように立ち上がった。プレイの一環としてこういうものもあるものだから、人よりも素早い処理ができたのは幸いだった。まだ少し頭がくらくらするけど大丈夫。話せるし動ける。

 もういやです、とまた泣き出して腕にしがみつく少女に「いやだよね。私もこんなんいやだよ」なんて返して、先程のように背中を撫でた。


>>冬城雪成様、狩峯和人様、一両目ALL様


【無駄に長い挙句に読みづらくて大変申し訳ないですごめんなさい!】

10ヶ月前 No.31

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_uKh

【 与那国水路 / 電車内・一両目 】

 目撃した化物へのあまりの衝撃から暫し呆ける。他の面々もそんな感じだ。叫ぶにしろ吐くにしろ、座り込むにしろ絶句するにしろ、泣くにしろ死体に近付こうとするにしろ。それらのリアクションの原因は全て先程の化物、あるいは真っ二つになった酔っ払いの死体であって。
 ……化物の足音が自分の聴力でも拾えないくらい遠くまで離れた時、やっと水路は今の今まで止めていた息を大きく吐き出した。とりあえず、酔っ払いに続いて電車の中の自分たちまで襲われるという事態は回避したらしい。けれどそれもひとまずの話。趣味の殺しか食事の殺しかは知らないが、わざわざ走る電車の窓を突き破ってまで運転手を殺しにかかった化け物だ。数分後の自分たちが襲われていないという保証は無い。つまるところ、あの化物に玩具にされない内に早くここから逃げ出さなくては。

「走る電車の窓をパリーンってやって運転手さん食い殺しちゃうくらいアクティブな化物なんだ、ここにこの人数で籠ってても無事に生き延びられるとは限らない。危険は危険で間違いないんだけど、それでも俺も早いとこ此処から逃げたほうが良いと思う。……それにしたって、武器が無いのが心もとない」

 逃げようと主張する子供に続いてこの場からの退避を主張。一両目の端から端までざっと目を通して武器になりそうなものが無いか探すが、残念ながら役立ちそうなものは見当たらない。ただの電車なのだから仕方が無いが、せめて誰かが置き忘れた頑丈そうな傘の一つでも欲しかった。なんなら振り回せそうな取っ手の付いた良い感じに重みのある荷物でも構わない。それはそれで投擲武器として使えるかもしれないし。
 そうは言ってもどちらも無い以上、こうなったら有事の際にはコンビニで買った漫画雑誌でもぶん投げるしかあるまい。唯一武器と呼べなくもないかもしれないメイドインチャイナなハサミも、リーチの短さを考えれば端から使うのは諦めたほうが良さそうだ。投擲して化物の目にでも突き刺されば僥倖ではあるが、ハンドボールを辞めてからそこそこの年数が経過しているため精密射撃ならぬ精密投擲を成功させる自信は低い。荷物の中から攻撃手段をなんとか捻出しつつ、未だバクバクとうるさい心臓を鎮めるために深呼吸。
 血の濃厚な香りに鼻が麻痺したのか、先程より不快感は湧いて来ない。それでもマイナスイオンという概念から百億光年かけ離れたクソみたいな空気であることに変わりは無くて、息を吸って吐いてと繰り返すたび、身体を構成する細胞の一つ一つが血で染まっていくような心地がした。

「あと警察官のお兄さん、お兄さんはちょっと待とうぜ! な! ホラー映画でも一人で行動した奴はだいたい死ぬから! 死体が気になるのは分かるけど、今は見なかったことにしよう! 人間には見たくないものから目を逸らす権利が備わってると思うんだよね!!」

 視界の端で警察官の男性が酔っ払いの死体に寄って行くのを発見し、電車から降りる前に慌てて駆け寄り彼の肩を掴む。この状況だとホラー映画と言うべきかパニック映画と言うべきか迷うが、どちらにせよ、一人で行動するのは良い手ではない。籠るにしろ積極的な脱出をはかるにしろ、相手が化物ならなおさら人数は固めておくべきだ。あの化物が一体だけなら上手くやれば倒すこともできるかもしれないのだし。……一体でなければ、残念ながら必死こいて逃げるしか無くなってしまうけれども。

>ALL様

10ヶ月前 No.32

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD

【 梅塚了/電車内一両目 】

 座り込んだ梅塚は、周囲の様子をまるで映画の観客のように見ていた。脳内の処理が追い付かないのだ。叫び、泣き、怒り、逃げようとする全員が、自分から切り離された世界に思えてならなかった。だって、有り得ないだろう。あんな、神様の悪戯みたいな化け物が、あ、現れて? そして、人を真っ二つにしてしまうなんて。主観的な認識からいえば、梅塚は良識のある一般人だ。趣味は人それぞれの中、自分の趣味はそこまで人に迷惑をかけていないと自負している__この場合、世間一般で言う被害者というのは、ヒトの数には含まれていない。何故なら、死んだ時点で既に彼の所有物だからだ__のに、どうして。一体全体、何の落ち度があって、こんな酷い目に遭わなければならないのだ。

「あ!」

 小さく声を上げて、偶然にもすぐそばにあった自分の鞄に手を伸ばし、力いっぱい抱き締める。恐怖で歯がガチガチと鳴り、視界は涙の膜でうっすらと濁っていた。それでも、段々とその膜は薄れていき、物体の輪郭をしっかりと捉えられるようになった頃、青年が出て行こうとする警官を引き留めているのが視認出来た。無謀だ。正義感があり過ぎるのだろうか。梅塚には理解出来ない、何かを原動力にして、今の状況を打破しようと考えているのだろうか。鼻血の混じった鼻水を啜りながら、梅塚は鞄を漁った。

「ふ、」

 大きな土産箱に鼻を近づけ、誰にも見られないようにこっそりと、箱の隙間から微かに漂う死臭を嗅ぐ。運転手の死体とも、酔っ払いの死体とも異なる、甘くて、少し酸味の効いた芳香。梅塚の脳内に、その全てが満ちていく。不思議と、安心した。そうだ、キミがいるじゃないか。唇だけを使って、声にもならない声で、そっと確認する。端からすれば、自分の荷物にしがみつく情けない50男だろう。
 彼は微動だにせず、赤ん坊のように蹲っていたが、数十秒も経つと落ち着いたのか、鞄を丁寧に閉じて、小脇に抱え立ち上がった。肩口に乗っていたネクタイを直し、ケホ、と咳をしてから、辺りを見回した。

「い、今の内に逃げた方が良いんじゃないでしょうか……ば、ば、化け物も、いないみたいですし。あ、アレと反対側の道を通れば……、武器は、しょ、消火器とか……?」

 少年と青年に続いて、混乱した車内では小さすぎる声量で意見を言う。半ば自分の世界に入った状態だった。

>>ALL様

10ヶ月前 No.33

雪ん子☆2PW2ryYB8o. ★NbQEF8QrNY_mgE


 【 冬城 雪成 / 電車内・一両目 】


 何が何だかパニック状態に陥っていた雪成はゆっくりと深呼吸をする。たまに嗚咽で上手く息が吸えずに小さく咳き込んでしまうが、何とか息を整えることができた。視界が白くぼやけていた涙を拭って周囲を様子を見やる。叫んだり、吐いたり、座り込んだり、絶句したり、死体に近づいたりしたり。今までの平和な日常がまるで嘘のような感覚に襲われる。化物が死体を持ち去って数秒のことなのに何分、いや何十分のような長い時間が過ぎているのではないかと思えたりもした。とりあえず化物は自分達を襲ったりしなかったが、また現れたら襲われないという保証はない。次、出会ったら最期になってしまうだろう。
 ふと頭の上から『 いやだよね。私もこんなんいやだよ』とお姉さんの声が聞えたかと思うと背中を撫でる手。何か距離が近くないか? と自分の手に視線を移すと腕にしがみついている? はっとして見ると頭を撫でてもらっていたお姉さんの腕にしがみついているではないか。あまりにも恥ずかしくてばっと手を離した。


 「 す、すいません……! わ、私、無意識で……! 」


 やってしまった。腕にしがみついてしまうなんて。それも赤の他人の人に。頭を下げて謝った。本当に無意識だったので失礼なことをしてしまった、と内心でも反省し大人しくなる。いつまでもめそめそしていられなくて、また涙が落ちそうなのを寸止めにする。先程以上に深く深呼吸をして震える体を抑える。心臓がこれでもかというぐらいうるさいのを鎮めようと息を吐いた。こんな場所で落ち着けと言う方が無理な話で。鼻を掠める血の匂いに顔を歪ませたくなる。
 男子学生も綺麗なお兄さんも荷物の抱えたおじさんも今の内に逃げた方がよいとの意見が出た。確かに化物がいない今ならチャンスだと思う。此処に居たら襲われるのは時間の問題だから。


 「 ……私も……今の内に逃げた方がいい、と思います……。 」


 深呼吸のお蔭で声が震えずに意見を言うことができた。逃げるのはいいが武器が無いのは心もとない。自分の鞄を見るなり武器らしきものははっきり言ってない。参考書に筆箱の中のハサミとかシャーペン、水筒ぐらいだ。いずれも化物に対して効くはずもないが、無いよりは断然マシだ。左手で鞄の持ち手を持って「 武器って言っても、この鞄ぐらいしか……。 」と独り言の様に呟く。警察官のお兄さんが電車から降りるのを見かねた綺麗なお兄さんが止めた。その光景を見るなり「 そ、そうですよ……! 一人での行動は危険……ですし……。 」と綺麗なお兄さんに続くように口走ってしまった。さっきまで泣いていた自分が言うのはあれだったので「 っ、え、偉そうなこと、言って……すいません……。 」と小さく頭を下げて謝ったが、最後になるにつれて声が小さくなってしまった。


>ALL様

10ヶ月前 No.34

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_IZy

【狩峯和人/電車内・一両目】

何にも変わらない事、変われない事を嘆きながら自殺すると決めて駅のホームから飛び越えようとしたその日の数十分後、その自殺志願者は何もかもが変わり果て、一直線に敷かれた何の変哲の無い線路の上に

ゆっくりと近づき歩き出す。残念ながら其処に飛び越える勇気はない。だが身体に現れる恐怖は在り来たりな自殺を超えてやがては無謀を呼び寄せ、無駄、そして履き違えた勇気を懸命に奮い立たす。それを無情にもスポットライトの如く照らす、壊れかけだが歪んだ空間との境界線と化した窓ガラスと月光りの代わりである蛍光灯。そしてその二つは他の様々な反応を見せる乗客もそのままに映していく。其処に見えるは本性。
そう言えば、乗客の一人がこの様な事件に遭遇した事があるか警官である狩峯に聞いていた。彼は当然ながらこの様な事件に遭遇する訳が無いが、例えこの様な怪物が犯行した事件に遭遇した事があったとしてもこの同じ様な状況でもどうする事も出来ないであろう。それ程、この状態は異常であると言う事が物語っている。ちなみに彼が現在、持っている武器は死ぬ前に持っているのも変だが非番の際にも警察手帳と共に持ち歩いている護身用の三段警棒。また拳銃は交番勤務時には常に所持しているが、流石に私服である現在は残念ながら所持していない。そんな状況で警官は慎重且つ確実に先程、便意を催していた酔っ払いの中年とその中年の上半身を咥えた怪物に怯えた様子を見せながらも乗客を守る為に行動を見せる、しかしもはや頭は先程現れた怪物と助ける事の出来なかった酔っ払いによって混乱してしまいあの怪物からどうやって乗客を守るのかも分からずに少しずつ遺体に近づいていてしまう。血の滲む匂いも肉が散る景色も強烈に狩峯を襲うが彼は単純に恐怖と正義感を選べずに既におかしくなっていた。

「あと警察官のお兄さん、お兄さんはちょっと待とうぜ! な! ホラー映画でも一人で行動した奴はだいたい死ぬから! 死体が気になるのは分かるけど、今は見なかったことにしよう! 人間には見たくないものから目を逸らす権利が備わってると思うんだよね!!」

そう言われ、先程コンビニ袋を漁っていた口調が軽い男性により一人で線路に降りる事を引き止められる。流石の狩峯も少しだけ我に返って、今起こしている自身の言動が逆に他の乗客を不安にさせていると気付き、一旦深呼吸をちゃんと行う。何度行っても深呼吸だけではこの恐れ慄く状況は変わりはしないが次第に落ち着き始め、狩峯はまず用意すらしていなかった武器である伸縮可能な三段警棒を下に振るって展開させ、未知なる怪物に微力ながらも対処しようと決めてしまう。だが、その瞳にはこの様な異様な状況で無いと見る事の出来ない正義感とは真逆の感情に苛まれていた。さらに今になってようやく分かる自身の行為がいかに無謀だと言う事を再確認出来る乗客達の瞳。また守らなければならない乗客によって狩峯は守られてしまう。

「 そ、そうですよ……! 一人での行動は危険……ですし……。 」

そんな全ての当たり前を通さない悪夢に限りなく近い現実は狩峯を徐々に極限状態へと追い詰め、真っ直ぐな信念と化していた正義感によって麻痺していた死への恐怖と生への癒着は自身があまりに理想とは違い現実の自分はが全くの無力だと言う事を改めて確認してしまう。

「……大丈夫ですよ。私が皆さんをお救いしますから」

>>一両目ALL

10ヶ月前 No.35

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_uKh

【 与那国水路 / 電車内・一両目 】

 肩を掴んだおまわりさんはなんとか正気を取り戻し、逃げるべきだという子供や自分の意見に賛成してくれる者も次々と現れた。となれば、これはもうさっさと逃げるしかあるまい。消火器はどうだろうかというサラリーマンの発言に、「それだ!」と言わんばかりに手を叩き再び視線を巡らせる。先程はざっと見渡して武器になりそうなものは何も無いと判断したが、普通こういう電車には一両に一つないしは二つの消火器が設置されているもの。雑に探してないならば、隠す形でこの一両目にも置いてあるはずだ。そして座席の下に視線をやった時、やっと在処に気付くことができた。本体の姿は見えないが、取っ手の付いた金属のプレートに消火器と書かれたシールが貼ってある。あそこを開ければ中に消火器が入っているに違いない。

「良いね、消火器すっごく良い案だと思う! あんまり持ちすぎると身動きとれなくなるけど、とりあえず一人一つは持って電車を出よう!」

 言うが早いか一両目の消火器を座席の下から引きずり出してサラリーマンの足元によっこらせと放置し、他の車両の消火器も回収するべく駆け出す。さっきホラー映画だと一人で行動した奴が死ぬと言ったが、自分は耳が良いので、電車が走っているわけでなければ外から化物が近付いて来てもギリギリ聞き分けられる。それにしてもサラリーマンの男性は本当に良い案を出してくれた。消火器の存在を水路はすっかり見落としていたから、彼がああ言ってくれなければ殆ど装備無しの状態で電車から出てしまっていたはず。なんとなくヤバい匂いのする男性だが、それでもいてくれて助かった。むしろあんなヤバい化物から逃げなければいけない場面なのだから、ちょっとくらいヤバい人間のほうが頼りになるかもしれない。

「消火器、集めて来たからみんな持って持って! よっし、それじゃあ逃げよう! あー……ところで皆、あの化物の視力事情ってどうなってると思う? ライト付けたほうが良いかな?」

 消火器をかき集めて一両目まで運んできた後、その中の一つを手に持っていそいそと扉に近付く。が、途中で皆のほうを振り向いてわりと真剣な表情で小首を傾げた。もしあの化物の視力が人間以下ならライトを付けずに暗闇の中を手さぐりで進んだほうがまだ安全かもしれないし、逆に人間以上ならライトを消していたってバレるだろうから自分たちが足早に避難するために付けたほうが良いだろう。それなりに重要な問題だ。水路の鋭敏な聴覚を活かしたエコーロケーションとて、そう長時間使っていられる特技ではない。
 消火器の有無なんぞ関係無しとばかりに座席の上で丸くなってくつろぐ猫の「にゃー」という鳴き声に混じって、警察官のお兄さんの真摯な言葉が聞こえてくる。私が皆さんをお救いしますから、か。この状況でその言葉を口にできる根性は素晴らしい。けれどあの警棒で先程の醜悪な化物に勝てるかとなると、はっきり言って勝率はさほど宜しくない。申し出は有り難いが、やはり自分の身は自分で守る気で行かなければ。高校生くらいに見える男女二人も同じ気持ちなのか、視界の片隅で消火器を手に取って使い方の書かれた箇所を鋭い眼差しで読み込んでいた。そういえば今さらだが、この終電やけに学生が多いな。

>ALL様

10ヶ月前 No.36

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/電車内・一両目】

 腕にしがみついていた少女に本日何度目か分からない謝罪を貰う。別に良いのにと言ってもきっと優しくて礼儀正しい彼女は何度でも謝ってしまうのだろう。

「おー、良いよ良いよ。こんな状況だもんね。別に恥ずかしい事じゃないと思う」

 私なんてみんなの前で吐いたし。口から出そうになった言葉をぐっと飲み込んだ。職業柄羞恥心は捨てたつもりでいたが、客でもなんでもない人達と学生組の前ではさすがに捨てきれていなかった。自ら傷口を抉ってどうするんだ。化け物を見た時は自分の身体の拒否反応を抑えるのに必死だったが、今となっては割と大勢の前で吐いてしまったことに対しての羞恥が込み上がってきている。お昼を食べていたらもっと悲惨な量と見た目の吐瀉物が生まれていただろうし、今回ばかりはお昼の自分にひたすら感謝だった。
 目の前で繰り広げられた話し合いの結果、兎に角ここから逃げるという結論に落ち着いたらしい。その結果に特に否定的な思いは浮かばなかったが、その後の周りの行動がそれはもう早かった。

「じっとしてて食われるよか最後まで逃げ回った方がマシかぁ…………え、お兄さん消火器持ってくんのめっちゃ早いな」

 瑠璃子曰くヤバめの中年男性の一声によりこの場に集められた多数の消化器の内の1つを手に取り使用方法を熟読する。生まれてこの方持った事すら無かったそれは思ったよりも簡単に扱えそうだった。人間なら目とかに入ったら死ぬほど痛そうだが、化け物相手でも目くらまし程度には使えるだろうか。いざという時の鈍器として中身が空になっても持ち歩いていた方が良いかもしれない。
 説明をひと通り読み終わったあと、綺麗な顔の青年が乗客に向けてライトをつけるか否かについてそこそこ真剣に聞いていたので、瑠璃子もそこそこ真剣な表情をして言葉を返す。

「あんな化け物いつこっち来るかも分からんし、それなら自分らの行動速度を上げるためにライト付けた方が良い気がするなぁ。暗い中転んで足捻って動けなくなったらそれこそ命取りだし。いうても私スマホのライトくらいしかないけど」

 生憎懐中電灯やポケットライトを常時持ち歩いているほど防災意識は高くなかった。スマートフォンのライトは充電の減りが心配だが、一応モバイルバッテリーはあるのでしばらくはもつだろう。画面に映る電池残量は80パーセントを超えていた。ほんの少しの希望を抱いて確認した電波は当たり前のように1つも立っていなかったけれど。


>>ALL様

10ヶ月前 No.37

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD


【 梅塚了/電車内一両目 】

 自分の意見が場の雰囲気を変えた事、そして軽薄に見える青年の、当然ともいえるフットワークの軽さ、意外な程の行動力と分析力に呆気に取られた。そもそもそういう人間なんだろうか。どんな状況でも、すぐさま対応できるタイプ。梅塚は青年に羨望を抱きつつ、自分の荷物の多さに困り果ててしまった。逃げようと言ったはいいものの、消火器と大きな荷物を抱えてでは、梅塚の鈍足では決して逃げ切れないだろう。けれど、彼女を置いてゆくなどもっての外だし、発言者である自分が持って行かないのもおかしい。それに自衛手段は持っておきたい。結果、脳内で何百歩も譲歩した後に、大きな鞄だけ持つ事に決め、持ち手を両肩に掛けて、野球少年のように背中に鞄を背負うと、自由になった手で消火器を持った。

「ライト……私もスマートフォンの懐中電灯しかありません……あ、残量20%……」

 真剣な表情を浮かべ、梅塚よりも数百倍凛々しく、堂々と自分の考えを述べた女性に続き、彼もやや控えめに応えた。ついでにマイペースな心配もしたが、もともとの言動がズレているだけで、表情には茶化しも無く、真剣だった。だが、その面には真剣さ以上に、怯えや湿った恐怖がへばり付いていて、浅く呼吸と震えを繰り返していた。下手をすれば、蒼白どころか蒼そのものの顔色の中で、瞳だけが爛々と輝いている。それは生への執着だった。彼女との甘い生活を夢見ての、人生への未練をエンジンとした瞳が、そこにはあった。
 背中に伝わる感触で、度を越した恐怖独特の浮遊感を誤魔化しながら、梅塚は深く溜息を吐いた。溜息を吐くごとに10000円貰っていたら、今頃自分はとてつもない大金持ちになっているだろう。

「こういうのって、走って逃げた方が良いんでしょうか……」

 誰に言うでもなく呟き、車内から窓の外を窺う。闇だ。先程の場面の鮮烈さとは打って変わって、車外は重苦しい闇の帳が降り、それ故にあの化け物の影を隠している。あれが首を擡げて自分たちを待っているかと思うと、身震いを起こしてしまう。もしあれが視覚、嗅覚に依存していないならば、この消火器がどこまで効果を発揮するのか、梅塚自身よく分かっていない。
__何もしてないのに、害を与えるなんて最悪だ。これまでの自身の所業を棚に上げ、梅塚は不安げに眉を顰めた。

>>ALL様

10ヶ月前 No.38

雪ん子☆2PW2ryYB8o. ★NbQEF8QrNY_mgE


 【 冬城 雪成 / 電車内・一両目 】


 腕にしがみつくという失態を犯してしまい、謝り倒しになったにもかかわらず目の前のお姉さんは優しかった。多分、今私は間抜けな顔をしているだろう。逆に違う意味で恥ずかしくなってしまい、「 そ、そうですね……。 」なんて苦笑いで返してしまう。

 話し合いの結果、全員一致で此処から逃げ出すということになった。どうやら消火器を武器に逃げるということで、近くの消火器を取り使用方法を読む。一度も消火器を扱ったことがなかったのでしっかりと読んでおく。意外と使い方は簡単なのだとすぐに理解できた。ふぅと小さく息を吐いてゆっくり立ち上がる。通学鞄を左肩にかけて両手で消火器を軽く持ち上げてみる。この重さならなんとか持って行けるだろう、なんて内心で思う。


 「 私もスマホのライトしかありません……。 」


 ライトをつけるか否かという問題に対してはお姉さんと中年男性と同意見だった。通学鞄からスマホを取り出して電源を入れると残量85%と映った。それを見るなり「 85%あります。……あ、一応充電器もあるのでしばらくは行けそう……だと思います。 」と一応残量と充電器があることを述べる。此処を出るまでに充電器と合わせて充電がもつか正直分からないが、ないよりはマシだ。スマホをスカートのポケットに入れる。すると『 こういうのって、走って逃げた方が良いんでしょうか…… 』と呟く中年男性。


 「 走っている足音とかで気付かれるってことも有り得ますよね……。かといって、ゆっくり歩いてるといざという時に動けませんし……。 」


 消火器をもう一度手に取ろうとしながら呟くように言う。綺麗なお兄さんが扉に近づくので、もう逃げるんだ、と思うと同時にあの化物から逃げ切れるのかとか逃げている際皆さんを引っ張ってしまわないだろうか、とどうしようもない不安が押し寄せて落ち着きを取り戻した心臓がまたバクバクと波打っている。消火器を取ろうとする手が震える。この消火器が命綱みたいなものだから先程軽いと感じた消火器がやけに重く思えた。


>ALL様

10ヶ月前 No.39

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_uKh

【 与那国水路 / 電車内・一両目→トンネル内部 】

 満場一致でライトは付けたほうが良いという結論に達した。水路もその話に乗る方向でズボンのポケットからスマホを取り出し、ついでに腕時計のライト機能のスイッチも入れておく。どちらも光源としては心もとない。それでも無いよりはマシだ。こんなことなら光るスニーカーを履くとか、身体中にクリスマス用の電飾を巻きつけるとかしてくれば良かった。なお水路のスマホの充電残量は61%である。微妙な数値だ。
 腕にレジ袋を通して片手にスマートフォン、片手に消火器を持つ。スマートフォンをトンネルの暗闇に向けても、やはり足元が照らせるくらいで奥のほうまでは見えない。ここにいる全員のスマートフォンの力を合わせたってそれは同じことだろう。ゲームなら誰か一人が都合良く懐中電灯を持ち合わせているけれど、これはホラーゲームじゃなくホラーなだけのリアルなので、残念ながら誰も持っちゃいない。これで行くしか、ない。

「……とりあえず、俺は忍び足気味の早歩きで行くね。走るとほら、いざって場面で体力消費しちゃって全力疾走できないかもだし。――うぅ、さすがに緊張するなぁ」

 ごくり。生唾を飲み込み、静かな足取りで電車からトンネル内へと降りる。今はまだ、電車から漏れてくる光で多少は視界が明るい。が、先に進めば進むほどに電車の光は届かなくなり、より濃度の高い暗闇に包み込まれる。今までの人生でこんなに真剣になったことがあっただろうか、というレベルで神経を尖らせて耳を澄まし、その状態でひとまず3メートルほど電車から離れてみる。大丈夫。さっきの化物が迫ってくる時と同じ音はまだ聞こえない。知らず額を伝っていた冷や汗を服の袖口で拭い、肩越しに電車を振り返っては、中の面々にちょいちょいと手招きをする。その後、唇に人差し指を当てるジェスチャーも加えた。静かに降りよう、ということだろう。もちろんそんなこと、この場の面々は水路に言われるまでもなく分かっている。それでも念押ししたくなる程度には、クズの水路とてこの状況に心臓をバクバク鳴らしているのだ。
 嗚呼、嗚呼、嗚呼。手に汗握るどころか、握りしめすぎた手に爪が喰い込んで流血沙汰にでもなりそうだ。膝が震えていないのは、恐怖に負けていないからではなく、きっと震えた膝では奴らから逃げきれないと身体が判断したから。恐怖のあまり逆に震えていない。人生で初めて女との痴情の縺れで包丁を向けられた時だって、ここまでビビリやしなかった。知らないチンピラが知っているヤクザにリンチされているのを見た時だって、ここまでの衝撃は受けなかった。はっきり言って今すぐ誰かに泣きつきたい気分だ。でも、泣きついてどうにかしてくれる相手なんてこの場にはいなくて、自分の人生は自分が頑張らなきゃどうにもならないことだと、クズはクズなりに理解しているから。

(――気張るしかない、か)

 自然と浅くなる呼吸をなんとか深呼吸に切り替え、ゆっくりと、音をたてぬように息を吐き出す。足元には知らず知らずの内に猫がすり寄って、にゃあと小さく鳴いていた。さっき電車の中にいた猫の同一人物、いや、同一猫物である。こんなピリピリとした緊張感に包まれた状態でも気ままでいられるのは、個性豊かな終電の面々の中でも正真正銘の人外たる彼(彼女?)くらいだろう。あんな化物を見ては、水路の知り合いのサイコパス共でも表情を崩さすにはいられまい。

>ALL様

10ヶ月前 No.40

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_IZy

【狩峯和人/電車内・一両目→トンネル内部】

永眠済みの運転手が滴る血と共に醸し出していた不穏な空気は存在だけで圧倒的な吐き気を催しそうな怪物の出現により、線路の上に切断された死体が転がる別世界に揺られる電車の中全体を絶望と言う言葉が相応しい空気へと徐々にであったが変わっていく。そしてその中でこの今までに無い状況で変わり始めている狩峯は本来あるべき正気に戻りながらも、頭の中で必死に考えている事と心の中で直感的に思っている事は全く真逆と言える程に違うと言った正気とはかけ離れた状況に立つ。さらに心の中、即ち現実の自分を認めたくないが為に頭の指令が身体全体を何度も踏切の音を鳴らすが如く綺麗にそれでいて喧しく淡々と響いていく。しかし、いくら自身の思いに嘘をついてまでも自身の信念を貫き通しても、この車両がこれまでで恐らく圧倒的にトップ1で恐ろしく危険なのは変わりない。もしかしたら、現時点にて世界で一番怖いのが此処だったりするかもしれない。
するとそんな事をこの状況で考えていると、周りの乗客はいつのまにか消火器について話し込んでおり、既に一部の乗客等は車両から消火器を取り出していた。ほとんどの乗客は当初は泣いていたり、嘔吐していたが今の状況を見ると案外ちゃんと自分の事は自分で対処出来ていたのを狩峯は確認する。それはそれで本来喜ばしいはずなのだが、狩峯は少し寂しそうな顔を見せる。それでも、表面上は乗客全員を助ける優しい警察官として余裕が無いながらもしっかりと乗客全員を守るべく対応を行う。今の所は現実を見ない綺麗事を口に言っているだけであり、むしろ他の乗客に助けて貰っているが。
ちなみに武器として重要な役割を持つ消火器についてだが、武器は多い方が良いと彼も中年男性の意見を採用して消火器を取り出し始める。そして消火器を構えて、怪物討伐に備えているといつの間にか乗客の話は永遠に続いていそうな程、全く先が見えないトンネルを照らすライト、光の方向へ向かっていた。ちなみに狩峯が持つスマートフォンの充電残量は一ケタ。本来ならば既に死んでいる予定だった為、あまりスマートフォンの充電は全く気にしていなかった。

「次の駅までに全員のスマートフォンの電源が切れるとは思いませんが私のスマートフォンのライトは一応、予備として用意しておきますね」

そう言って、ポケットに入っていたスマートフォンの充電が無い事を隠して狩峯は嘘を付いてしまう。
すると先程、消火器について提案していた中年男性が脱出までの歩く速度について不安げに呟いていた。歩く速度と言えば慎重且つ迅速が一番だが怪物相手にどれだけ通用するかは分からない。それに次の駅までの距離はどれくらいなのかという問題もある。案外、次の駅が近くである事を祈るしかない。そう考え、消火器を片手で持ちながらもう一方の肩手で三段警棒を構える。そして自ら唯一明るさを誇っている電車から暗闇に続くトンネルへ慎重に足を踏み入れる。

>>周辺ALL

10ヶ月前 No.41

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / 電車内・一両目→トンネル内部】

化け物に対して全員絶句したり吐いたりしていたが、柊の意見に同調する者が多く、逃げることになった。サラリーマンの意見で青年が消火器を持ってきて、それを武器にライトをつけていよいよ逃げることになった。
残念ながら、柊のつけている腕時計にはライト機能が無い。役立たずだ。スマホは充電残量が46%でなんとも微妙だ。みんながつけるならつけない方がいいかもしれない。下手に使って電池が切れて俺だけ逃げなくちゃいけないのに光が無い、ってなったら困るし。冷たいかもしれないが、柊は1人だけでも逃げ切って脱出するつもりだ。こんなところで死んでいられない。もし誰かが怪我をしたら、その人を放っておいて逃げる。命がかかってるんだから仕方がない。別に積極的に囮にするわけでもないしそこまで酷くないだろ、多分。
スマホは先にポケットに移動させておいて、スクールバッグの持ち手部分を両方とも肩に回してリュックのように背負う。そして空いた両手で消火器を持つ。思ってたよりは軽い。女子中学生並みの柊の腕でも持ち運べそうだ、

「……ゲームなら常時ダッシュもできるのに…」

青年のジェスチャーを見て、ボソッとゲーム脳な呟きをしてから口を閉じて、警察の後について電車を降りてトンネル内へ。冷静かビビリかで言うとグロ耐性は有りなだけのビビリな柊の心臓は、もうほぼ限界状態だ。バクバクうるさい。意識してないのに呼吸が上手くできない。意識したら意識したでもっと呼吸が下手になる。トンネル内が異常に静かなので、自分の呼吸音がとてもうるさく感じる。心臓の音もトンネルに響いてる気がする。こんなにうるさくしては、耳の良い青年の邪魔をしているかもしれない。そう思っても、意識すればするほど呼吸は浅くなって、これ以上うるさくならないと思われた心臓ももっとはやく大きく鳴る。汗も止まらないので手とか髪とか服がベトベトして気持ち悪い。こわい。普通に、ただただこわい。死にたくない。死ぬわけにはいかない。その決意を強く持って、絶対に落とさないように消火器をしっかりより強く持ってみるも、呼吸も鼓動も変わらない。やだ。

「……っ」

後ろの人と少し距離があるのを確認してから、一度止まる。このままじゃ駄目だ。逃げられない。異常なまでにゆっくり深く息を吸い、吸った息をゆっくり全部吐く。それを3回繰り返すと、まだなんだか泣きそうだけれど、呼吸と鼓動は落ち着いた。よし。これならさっきよりは大丈夫。良くなった。意識してゆっくり静かに呼吸をしながら、再び暗闇を歩みだした。

>>all

【柊くん今日から復活です…!】

10ヶ月前 No.42

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/電車内・一両目】

 ほぼ全員の総意でライトをつけた方が良いという結論に至り、比較的充電残量に余裕のある瑠璃子はまずスマートフォンのライト機能を探すところから始める事になった。SNSに写真を上げたりしているわりにはスマートフォンに特別詳しいわけでもなく、結局良く分からないままカメラを起動してその中の照明機能を使うことにしたらしい。光源としては頼りないがないよりはマシだろう。
 先に降りた恐ろしく勇気のある青年が手招きをしたのを合図に、各々が静かに車内から足を踏み出していった。
 電車から離れていくうちに視界も徐々に暗くなる。手汗がひどい。心臓は先程から「BPM150のEDMかな?」と思うくらいには早鐘を打ちまくっているし、今なら心音でバスドラムの代わりも務まる気がした。
 左手に持った消火器の持ち手を握りしめる。当然ながらまだ安全栓がされている状態なので中身が飛び散る事は無いが、もし栓が無かったとしてもきっと瑠璃子は握りしめてしまっていた。今の瑠璃子には心の拠り所が消火器で、頼りになる無機物に縋るしか平静を保てない。化け物相手には効果がないかもしれないなんて考えたくも無かった。

「めっちゃこわ……怖いな……。馬鹿みたいなサド野郎共が恋しい……。帰りたい……」

 ほぼ吐息みたいな声にすらなっているか分からないくらいの声量で弱音を漏らし、痛くて汚い日々が今となっては懐かしいと目を細める。痛いのは嫌だ。怖いのも嫌だ。正直喚き散らしながらあらぬ方向に走り出してしまいたいが、そんな事したら瞬く間に化け物のお口の中だという事は嫌でも理解していた。せざるを得ない状況だった。いっそ気が狂ってしまえばどれだけか楽なのかもしれないが、今は苦楽よりも生きる事を最優先にするしかない。数分後には呼吸をしていないかもしれないと考えるだけで脊髄にアイスバーを突っ込まれたような悪寒に襲われた。
 弱気になればなるだけ暗闇が濃度を増す気がして小さく頭を振る。例え四肢をもがれようとも生きて帰らなきゃいけない。両親の為に、なにより自分自身の為に。


>>ALL様

10ヶ月前 No.43

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_uKh

【 与那国水路 / トンネル内部 】

 緊張しているのは自分だけではない。老いも若きも男も女も、この状況に動揺を覚えていない者など一人もおらず。ただ悠然と歩を勧める足元の猫だけが優雅さを誇るグループは、それでも決して足を止めることなく、なんとか歩数を稼ぎ続けていた。嗚呼、次の駅まであと何百メートルあるのだろう。普段は一瞬に感じる距離がこうも長い。喉が渇いた。なのに水を飲みたいと思わないのは、心のどこにもそんな余裕が無いから。頼りないライトが足元を照らす。生唾を飲み込む音がやたらと大きく聞こえる。これは自分のもの? それとも人のもの? 耳に自信はあるはずなのに、もうそれすら判別がつかない。自分は確かにどこに出してもある程度恥ずかしいクズだが、ここまでの目に遭わなければならないようなことはしていないのに。何がどうしてこうなったのだ。世界とはかくも理不尽なものか!

「――っ! みんな、ちょっとだけ静かにして! なんか聞こえた!」

 小声で叫ぶという妙な器用さで周囲にのみ聞こえるよう声を張り上げ、沈黙を要求する。そう言う自分も叫んだきり、口を噤んで冷や汗を垂らしながら耳を澄ませた。今、確かに音を拾い上げた。極小さな、それこそ遠く離れた場所で一円玉を落とすほどの音だったが。それでも確かに響いて来たのだ。そう、獣のものでしか有り得ない、聴覚でさえ生臭さを感じるような息遣いが。
 こちらに『気付かれたこと』に相手も気付いたのか。水路が身体を強張らせるあまり息を止めたその瞬間、微かな息遣いは隠す気もない足音へと変わってトンネル中に響き渡り……暗闇の中をこの集団目掛けて疾駆してきた。ぎりっ、と、消火器を握り締める手に力が入る。わななく唇を無理やり開いて、腹の底から大きな声を絞り出した。同時に強く足元を蹴り上げ、誰より先に駆け出す。

「――走れ! 後方15メートル辺りの位置まで来てる!」

 脇目も振らずに走りながら、その反響した靴音を利用してエコーロケーションを試みる。冷静になりきれていない状況だ。さすがに普段よりも精度は落ちるが、それでもどっちが行き止まりでどっちが通路くらいかは感じ間違えない。後方の彼ら彼女らの目印になるよう、スマートフォンのライトは付けたままでの全力疾走。依然として化物の足音は追いかけてきている。……おかしい。先程の化物よりも少し速く感じる。これが取り越し苦労や勘違いなら良い。が、もしも悪い想定の通りに二体も三体もアレがいたなら……。

(――地獄かっつーの! 勘弁してくれよ神様、俺への罰としちゃちょっと行きすぎじゃありませんか!?)

 心の中で信じても居ない神様に文句を垂れる。当然、返事など来やしなかった。

>ALL様

10ヶ月前 No.44

雪ん子☆2PW2ryYB8o. ★NbQEF8QrNY_mgE


 【 冬城 雪成 / 電車内・一両目→トンネル内部 】


 次々に電車内から降りる他の乗客に混じって慌てて鞄をかけ直して消火器を右手に持ち、後を追う様に駆け出す。丁度先頭と後尾の真ん中ぐらいの位置にいる雪成は今にも泣き出しそうな顔で消火器を持つ手が震え、背中を伝う冷や汗に気持ち悪さを覚えつつ一歩一歩慎重に歩く。慎重にだがやや早歩きで。皆、ライトは疎らにつけているようで自分はつけなくていいだろうと判断する。他のライトが消えたら使えばいい、充電器もあるのだから。


 「 ……帰りたい……。 」


 小さく、本当に小さな声で今の心境を呟いた。先は真っ暗で今どこを歩いているのかさえ分からない状況でどうかなってしまいそうだ。心臓が煩い。息は上手く吸えなくて所々詰まってしまう。鞄が下がってきたのであまり音を出さずに肩まであげる。もし化物が追いかけて来たら鞄が邪魔で逃げ遅れになってしまうだろう、と働かない頭で考え左手で鞄の中を探り充電器が入ったポーチだけを取りポケットに突っ込む。背に腹は代えられない。後方の人に邪魔にならないよう、列を離れて鞄を置く。鞄を置いたあとすぐに列に戻る。

 どこまで歩いたのだろうか、恐らく先頭を歩いていたお兄さんが『 みんな、ちょっとだけ静かにして! なんか聞こえた! 』と小声で叫ぶのが聞えた。それを聞き思わず体が硬直すると同時にひゅっと喉が鳴る。自分には聞こえなかった音がお兄さんには聞こえたのだろう。駆け出す足音がしてはっとすると『 走れ! 後方15メートル辺りの位置まで来てる! 』と大きな声を出して走っていた。


 「 ――っ! 」


 硬直していた体を無理やり奮い立たせるように大きく足を踏み出して同じように駆け出す。真っ白な頭では追いつかないことに反射的に体が反応してしまう。ただ逃げることだけを意識し足を動かす。自然に頬に涙が伝い呼吸が乱れながらも逃げる。運動はあまりしない方なので体力に自信はない。息が吸えないせいで早くも息切れするが足は止めなかった。


>ALL様

10ヶ月前 No.45

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_QaP

【狩峯和人/トンネル内部】

殺意を秘めた暗闇が隣にずっと潜む悪夢の様に、ただ光に見える影しか揺れる事の無いコンクリート色の空模様だけがどこまでも乗客が怪物によって寝心地が悪そうに永眠するまでピッタリと離れずに付いていく。そんなトンネルの中、その暗闇に浮かび上がるスマートフォンから発される光は唯一の希望として何かに怯えながらも慎重に歩き出していた。そしてその薄暗い光に照らされながらも、消火器と警棒で怪物に対抗すると言う決して砕かれる事の無い正義感がこの場で今問われている狩峯が何も点けずに歩行していた。
しかしそんな狩峯は一歩踏み外せば怪物によっていとも簡単に死ねるかもしれないと言った自殺志願者には何とも言いようが無い状況ながらも、流石にあまりに長い単調なコンクリートの情景と怪物が聞き取ってこちらに向かって来る事を考えれば、会話すら出来る訳が無いこの異様な雰囲気により、狩峯は退屈と言う感情を正直に露わにしていた。しかし、逃亡劇を退屈だと思う程余裕は全く持って無く、そんな事は死亡者に対する冒涜として自身の正義感が絶対に許すはずが無かった。それでも彼は綺麗な線路と称した自身の人生について考え始めてしまう。

それはまるでパンツのポケットに入っていながらも充電の無いスマートフォンの様に役立たずであり、いつも彼は綺麗事に近い正義感を語っていながらも、その歪んだ正義感のせいでまるで活躍した事は一度も無い。これが狩峯の自己評価。
それ程に彼は、かつて所属していた警察にも必死に狩峯が言葉だけで変えようとしていた世界にもましてやこの状況でさえ要らない存在なのではないか等と考え悩んでいた。その例として自身が守らなくとも、自分の身は自分で守れる乗客。また自身が無謀な行動を取った事により、守るべき乗客に救われてしまった等、その対応に彼は現実と理想、決して満足する事の無い正義感とあまりに無力な自分に苦悩し続ける。一度は死を決意したが、それでも生きてしまっている自分を嘆きながらも、結局は変わる事の無い正義感に自身の行方を頼らせている。

(……私はどうすればいいんでしょうかね)

すると、無音が続いていたと思っていた狩峯に突如、口調が軽い男性が小さな声ながらも乗客全員に聞こえる様な声で乗客達を静まる様に指示する。どうやら彼曰く何か物音が聞こえてきたらしい。この発言が本当かどうかは分からないが狩峯はそれに従って懸命に消火器と警棒を厄介な正義感の如く抱えたまま情けなく走るしか無かった。ただし日頃から身体や身体機能が鍛えていた事もあり、足の速さには自信があった。そして途方も無いトンネルを全力疾走で駆け抜けていく。そしてやがてこのトンネルにおいて誰も見た事の無い感情が狩峯に芽生え始めていた。そしてそれを彼は受け止めようと考えていた。だがそれは同時に生まれた時から一緒に過ごして来た正義感を捨てる事を意味していた。

>>周辺ALL

10ヶ月前 No.46

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / トンネル内部】

口の中をカラッカラにしながら必死に消火器を抱きしめて歩みを進めていると、耳の良い青年が小さな声を張り上げた。突然の行為だったため、柊は「っ!」と息を呑み、足音を立てそうになるが、踏みとどまってゆっくりゆっくり音を立てぬように足を下ろす。彼の邪魔にならぬよう、無意識に息も止めている。なんだ? いったい、なにが聞こえたっていうんだ? どうしてか迷い込んでしまった犬が遠くで吠える声だったらいいのに。餌を持って帰る途中の親鳥の羽音だったらいいのに。此処に住み着いている鼠の鳴き声だったらいいのに。さっきの化け物の足音じゃ無ければいいのに。

「…………っ! くそっ…っ!」

さっきとは打って変わって最大限の声を出して駆け出した青年の言葉に、絶句して文句を言いながらも柊も全速力で駆け出す。これが学校の体力測定の100m走だとか運動会のリレーだとかだったら必死にならなくても良かったけれど、これは違う。かかっているのは体育の成績でもチームの勝敗でもなく自分の命だ。これ以上必死にならないことはない。少しでも止まったら、躓いたら、スピードを落としたら、走ることをやめたら、待っているのは死だ。何度も言うけれど、俺は此処で死ぬわけにはいかないんだよ!

>>allさま

【短文すみません;;】

10ヶ月前 No.47

司徒 @nobunaga10 ★Android=i1xkkAkC0o

【 梅塚了/トンネル内部 】

 年端もいかぬ少女をはじめ、逃げる速度については皆それぞれ考えがあるようで、自分が極限状態でダッシュするのをとりあえず想像してみることにした。成る程、実に危険で愚かだ。ここは運動神経が皆無な自分が砂利に足を取られて、あの化け物に物理的に足を取られることのないようにしなくては。
 そんな考えから、消火器と鞄を抱え込むように持ち、列の中央より少し前を歩いていた。暗いトンネル内部はじめじめとしていて、音の響きやすい半円形もあって雰囲気が不気味だし、乗客の携帯のライトが不規則に彼方此方を飛び交う様は、合間に怪物の影を見てしまいそうで、目を覆いたくなった。彼女の眼窩より闇が深く、吐き気を催すような緊張感が胃袋を締め付ける。その痛みに無意識に腹を押さえて「いたい」と呟くと、青年が真剣な形相で小さく叫んでいた。
 何か来ている、と聴いた瞬間、梅塚は酷くうろたえた。何か、って、あれしかないじゃないか。脂汗がだらりと垂れた。そして、近づいてくると分かって、更にほんの少ししか距離があけていないことを青年が言うと、彼は逃げ出した。皆もそれに進んでおり、状況把握が下手な梅塚はワンテンポ遅れて、駆け出した。

「嫌だ……いやだ!」

 恐怖でもつれる足が憎らしい。息苦しさにネクタイを緩めて、梅塚は皆を追った。

>>all様

10ヶ月前 No.48

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_UxJ

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9ヶ月前 No.49

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_QaP

【狩峯和人/トンネル内部】

何も変わらない、変えられない世界や自分に嫌気が刺しこの世から死にたがっていたはずの狩峯は何もかも日常から変わってしまった世界の下で、これから生きていく為に、全てを屍に変えていく怪物が後ろから迫って来る中、今まで歩んできた自分の信念を捨ててまでも今こそ自身の全てを変えて見せようとしていた。
そして彼は、今まで一時も忘れた事の無い正義感も気にせずに、全力で息を切らして此処まで信念を僅かながらも積み上げて来たつもりの信頼や信用を躊躇無く砕くが如く、先程まで乗客を守る事に全力を注いできた線路を誰よりも素早く逆走して乗客を一切気にせずにどこまでも駆けて行く。もはや信念や警察が行うべき仕事や義務、自殺願望を次々と棄てていきながら。ついでに正義感と抱いた消火器と警棒も走るのに邪魔なので後ろの乗客も気にせずどこか、適当に投げ捨ててしまう。
死ぬ事でしか変えられないはずの信念を持つ彼を其処まで変えるきっかけとなったのは怪物に対する絶望感。奇しくも怪物の接触により、狩峯は本当に望んでいた本当の自分に変われる事が出来てしまった。
そして全ての綺麗事と理想を剥がされ、触れられる悪夢に足を着けた正常な思考を見せる狩峯が今考える事は、誰かを犠牲にしても死にたくない。ただそれだけであった。当たり前かもしれないが、かつて正義感に満ちていた彼には自分の事だけを考える事等、あり得なかった。だが今までと違って圧倒的に死に近い状況ながら気持ちは清々しい。何だか生まれ変わった様な気分であった。これから死ぬかもしれないのに。そんなある意味、別の方向で狂い、走り出した狩峯。
すると、守るべき対象であった乗客の一人、女子高生が豪快に何かに引っ掛かって転んでしまった。もしかして、自身が捨てた消火器や警棒に足を取られてしまったかもしれない。だがそんな事はどうでも良い。むしろ、良い時間稼ぎだと醜い考えを咄嗟に頭に次々とタガが外れたかの様に浮かぶ。そして一度も彼女の方向を振り向かずに彼は足取りを止めずに逃げ続ける。そして彼女を無視し続ける直後、鈍い転倒音がトンネルに響いていく。恐らく、彼女とはまた別の人物が倒れてしまったらしい。そしてこの状況で見るのは当然醜い人間の本性。互いに死を譲り合い、何としても生きようとする姿。勿論、それが当たり前の反応なのは分かっている。ただ、人間らしささえ感じてしまうこの状況に、今までの自分が醜い姿を持つ怪物と大差ない程に狂った精神を持っていた事に動揺さえ感じてしまう。
だがそう考えるのもつかの間、今度は悲鳴にならない叫び声、何かが崩れ落ちる音、ポタポタと死が滴り落ちる音、脳天が砕け散る音、激痛がトンネル越しに伝わる断末魔。等が狩峯の耳に入り何が起こったかを直ぐに物語って来る。そして当の狩峯は後ろから掴んでくる正義感や助けを求める声を振り解いて、独りで何も見えない線路をひたすらに走って行く。

>>周辺ALL

9ヶ月前 No.50

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/トンネル内部】

 自分たちの足音1つすら恨めしい。かつかつ、こつこつ、そんなような音で化け物に気づかれるかもしれないのだ。靴底が肉球になってしまえば良いのに。歩きながらトンネルの隅にコンビニで買った食料をそっと置いていく。覚めたおでんも潰れた菓子パンも邪魔なだけだ。もしかしたら誰かに怒られてしまうかもしれないが、生きる為なら多少の叱咤は痒くもない。
 理不尽な目に遭うのは人より幾許か慣れていた。何せ生まれた時から共にいる両親があれだ。「コップに水を注ぐ音がうるさい」と言って殴られた日すらあった。殺されそうになったことなんて数えきれない。己の境遇を嘆きいっそ心中してしまおうかと悩んだ時も今や遠い思い出だ。この世に生を受けてからありとあらゆる理不尽に耐えてきた瑠璃子だが、しかし今回ばかりはどうしても解せない。確かに特別良いことをしてきたわけではないが、こんな仕打ちをされるほど悪いことをしてきたつもりもないのだ。何が悲しくて訳が分からない人間がゲシュタルト崩壊を起こしたみたいな化け物に怯えていなきゃいけないのだろうか。こんな10億人に1人が体験するかも怪しい状況に出会すなら宝くじでも当たって欲しかった。
 考えれば考えるほど自分が惨めに思えてきて、その目尻にうっすら涙すら浮かんできた時、青年の「静かに」という声にばっと口を抑える。呼吸すら止めて彼が口を開くのを待っていると、考えたくもなかった言葉が耳に飛び込んだ。

 真っ先に走り出した青年の後を追うように瑠璃子も走る。消化器を握る手だけは緩めない。ショートブーツのヒールが邪魔だがピンヒールじゃなかっただけマシだろうが、学生ぶりの全力疾走は思っていたよりもずっと辛かった。
 命懸け、文字通り必死になって走っていると、後方で誰かが誰かを巻き込んで転倒したらしく小さな口論が聞こえた。振り返る余裕も気遣う心も今の瑠璃子にはない。だから、水っぽいなにかをぶちまけるような音も少女らしい呻き声も脆くて硬いなにかが砕かれる音もなにも聞こえなかった。聞こえない、ふりをした。

(ごめんなさい。ごめんなさい。――ごめんなさい。私も、死にたくない)

 呼吸に雑音が混じる。眼前が狭まるように錯覚に陥るが、その脚を止めるわけにはいかなかった。


>>ALL様

9ヶ月前 No.51

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD

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9ヶ月前 No.52

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_UxJ

【 与那国水路 / トンネル内部 】

 名前も知らない。素性も分からない。それでも確かに生きていた。ついさっきまで動いて、喋って、息をしていた二人の少年少女が。花を散らすようにあっけなく、その命の終わりを迎えた。嘘みたいに潔く、死んでしまった。
 それでも皆、止まらない。止まれない。だって止まれば同じ目に遭う。誰だって死にたくなんかない。自殺志願者だって死に方くらいは選ぶ。痛みの少ない死、苦しみの少ない死、汚らしさの少ない死、そういったものを最後まで望む。まして自分たちはその自殺志願者ですらないのだ。あんな化物に食い殺される、あるいは踏み潰されるなんて絶対に嫌だ。そのためなら人としての尊厳や気位くらい捨ててみせよう。元より皆無に等しいそれらを、さらにさらにと路線へぶん投げる。身体の荷物も精神の荷物も、できるだけ軽いほうが良い。いや、消火器はまだ使い道があるから捨てないけれども。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 運動神経は悪くないにせよ、全力疾走が続けば息くらいは切れてくる。永遠に続くかと思われた追いかけっこ。命懸けの鬼ごっこ。デスゲームならぬデスラン。それが途切れたのは、三人目の犠牲者になるかと思われたサラリーマン風の男……彼の行動のおかげだ。暗かったから、他の人間たちに見えたかは分からない。足音や叫び声がうるさかったから、他の人間たちに聞こえたかは分からない。それでも。水路には見えたし、水路には聞こえた。足音を利用したエコーロケーションは、図らずもサラリーマン風の男性が鞄に詰めていたものが何であるかという情報を水路に与えてしまったのだ。綺麗な髪をたっぷりと流した女性の生首。転がったそれを、恋人と読んだ彼。なんてことだ。直観でなんとなくヤバそうな男と感じ取ってはいたが、まさかこのトンネル内には化物だけでなく本当に殺人鬼までいたなんて。しかもただの殺人鬼ではない。挙動からして、恐らくは殺した女の生首を収集して愛玩するタイプの輪を掛けてやべー殺人鬼だ。走りながら思わず顔が引き攣る。水路にサイコパスの友人はたくさんいたし、その中には前科持ちだっていた。けれど。それでも。このサラリーマンほどのサイコパスはさすがに友人にだっていない。
 予想外の所から現れた生首に気を引かれたのか、その後サラリーマンが涙ながらに繰り出した消火器攻撃に不意を突かれたのか。気付けば化物が自分たちを追いかけて来る足音は遅くなり、止まり、ついには途切れ、水路の耳にも聞こえなくなった。……どうやら引いてくれたらしい。ひょっとして、消火器の粉があの身体中にいっぱい付いていた目ん玉のいずれかに入ってしまったのかもしれない。人間だって目をやられれば思わずたたらを踏む。多少は人の要素が入ったあの化物とて、痛覚や触覚は健在ということか。

「はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ。みんな、全力疾走から歩きに切り替えて大丈夫だぜ。ひとまず第一アタックは回避したっぽい。三め……ごほん、二名の尊い命を犠牲にね」

 咄嗟に生首もカウントしそうになって、慌てて二名と言い換える。自分以外にあの生首に気付いた者がいなかった場合、自分もあれを見なかったことにしたほうが場がスムーズに運ぶと判断した。
 普段利用している電車のトンネルが何メートルかなんて、残念ながら正確には把握していない。それでも、先のほうにほんの少しだけ光が漏れて見えるから、絶望的な距離が残っていることもなさそうだ。数百メートル先。あそこまで行って、駅のホームに乗り上がってしまえば。それで自分たちの勝ちだ。いくら終電は終わっているとはいえ、それでも監視カメラくらいは作動しているはず。それに向かって助けを求めるなりすれば、この命懸けの追いかけっこからも逃げ出せる。
 ――そこに辿り着くまでに何人を犠牲にしようと、なんとか自分だけは生き残らなくては。

>ALL様

【短期スレなので、まだ距離はあるとはいえもうゴールが見えかけています。化物は一時的にひっこみました】

9ヶ月前 No.53

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_QaP

【狩峯和人/トンネル内部】

乗客を救うはずだった自分が生きようと走り抜く姿、そして乗客である誰かが無残に死にゆく姿さえ、ほとんど拝めない程に次々とスマートフォンが見せる僅かに色付く光は死んで行く人数分だけ、無残に流れ出す血液と共に地に落ち散っていく。そんな死を呼ぶマラソンの如く走り続けているトンネルの中で、狩峯は息が乱れようが吐き気を催しようが、決して足取りを止めずに必死に先頭なのかどうかも分からぬままとにかく駆け抜けていた。一度は錆び付いた線路に捨てたはずの命であったが、今や警官として人間として自身の正義感として、とても大事であったはずの乗客が無残に人生の終着点へ辿り着いても何も感じなくなっていた。もはや、絶望を前にすれば綺麗事も理想も正義感も無い。ただひたすら、この普遍的な現実を絶望的な悪夢に次々変えている元凶である世にも恐ろしい怪物に分解されない様に走るしかない。
しかし普通のマラソンであればまだまだペースを配分すれば余裕なのだが、常に全力疾走、しかもこんな異常な状況で疾走と言うのは日頃から鍛えていてもどうしても少し身体に疲れが出てしまう。だが、彼はまだまだ走れる様な気はしていた。何故ならば、自殺していた自分とてゃ違い明日を普通に生きていたであろう者達が次々と殺されていくと言うあまりに悲しい現実ながらもその中で彼は不謹慎ながらも現実の自分で一歩を足をちゃんと踏み込む事に成功した為、その喜びを疾走する事により身体全体に浴びる風で感じていた。
しかし彼がそんな事を考えていると、どうも後ろの様子が少しおかしい事に気付く。犠牲とはまた違う。足掻きでも無い。諦めでも無い。あまりに一瞬歪んだ背後に気になってしまったのか、彼は少しだけだが、後ろを振り向いてみる。
其処には、勘の良い普通の男性だと思っていた人物から零れ落ちる明らかにマネキンの様な似非では無い本物で出来た生首。そんな非道徳な光景を見た瞬間にぐるりと頭に振りほどいたはずの正義感、理想だった自分が見事なまでに蘇る。やがては同じく蘇るのは目の前の恐怖感では無く強烈な罪悪感。少なくとも自身は救うべき二人の乗客を見捨ててしまっていた。その事に彼はこれまでに無い強い後悔を覚えていく。さらに理想と現実で様々な思考が渦巻きもはや身体は震えて動かない。
だが運が良く、その生首が功を奏したのか分からないが怪物はこちらを追うのを一旦止め、一命を取り留める。

(これからどうすれば……)

そして思わずトンネルに手を置いて休憩する狩峯は自身の死に様生き様が、まだ見ぬ終点へ一切歪みも路線変更も無い一直線に進む真っ暗な線路の中で試されていた。

>>周辺ALL

9ヶ月前 No.54

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / トンネル内部】

梨甘崎柊は女子中学生のような見た目をしている。じゃあその体力や運動神経は女子中学生並なのかと言われると、決してそうではない。見た目の割に体力はあるし運動神経も良い。でもそれは“見た目の割に”というだけだ。一般的な男子高生の比べると、その体力も運動神経も平均の一回りも二回りも下回る。つまりどういうことかというと、彼の体力は限界が来ていた。自分がティッシュをあげたサラリーマンと比べれば十分先を行っていたが、先頭からは距離ができ始めていた。脚が痛い。ふらふらする。疲れた。走るのをやめたい。でもそんなことできない。走るのをやめるのは生きるのをやめることなのだ。
必死に前へ前へ死に物狂いで進んでいると、後方で男女の言い争いが聞こえて、しばらくして悲鳴を最後にそれは途絶えた。何かが空を切る音。水風船が爆発したときみたいな水音。あれはゲームでよくある状況で、それはゲームでよく聞く音で、これはゲームではなくて現実だった。空想と現実の区別がつかないと、ネットとリアルの区別がつかないと、立派な大人になれない。なんて教師は言うけれど、全くもってその通りだ。というか、これは嫌でも区別がついてしまう。いくらこれをゲームだと思い込もうとしたって、現実逃避を決め込もうとしたって、これはどう頑張ったって現実だ。逃げさせてくれない。ゲームで慣れてるからグロ耐性がある? そりゃあグロテスクなものが苦手なやつよりはかなりあるだろう。でも、こんな、あまりに、リアリティがあるもの、はじめてで。というか、血みどろな展開が立て続けに積み重なりすぎて、体力同様限界がきていて。さっきの際どい女性のように胃の中のものを吐き出しそうになるが、そんなことをしてる暇はない。グッと堪えて飲み込んで足を止めずに駆ける。

「こいびっ……に゛ゃ゛っ!?」

自分より後ろを走っていたサラリーマン。彼が転んだのはすぐにわかった。だから(また犠牲者――死にイベント。俺は主人公陣じゃないっぽいし、このままだと次は俺かな。絶対死ねないけど)なんて考えていた。また血の飛び散る音を聞くんだ、また誰かの最期の悲鳴を聞くんだ、なんて覚悟をしていた。だから、彼の口から発されたのが意味のある言葉で、しかもそれが「助けて」だとか「死にたくない」だとかではなく、何かを指して「こいびと」と言うものだから、声を出したらそのまま吐きそうなのに、つい反応してしまった。しかし、柊はゲームで見慣れた生首を見ずに済んだ。「こいびとっ!?」と驚いた声を出そうと顔だけ振り返った瞬間――振り返ってしまった瞬間、後ろは消火器から四方八方に放出された白い煙でいっぱいになっていた。だから、先頭を走る猫の鳴き声のような驚き方をしてしまった。驚きはしたが、何も吐かなかったし、生首を――彼の『こいびと』を見なかったのだから、幸せ者だ。こんな状況下にいる時点で全く幸せではないけれど。地球上でも有数の不幸者だけれど。

「……っ…はっ……はぁぁぁ…」

『走れ』と命令した青年に『歩きに切り替えて大丈夫』と言われ、柊は思わず疲れ切った足を止め、そのままへなへなと座り込んでしまった。消火器も地面に置いて肘掛け代わりにしている。やや前のめりに俯いて。長めのため息のあと、ゆっくり息を吸いて、ゆっくり吐いて、深呼吸した。吐き気もほとんど無くなった。脚が痛いのは相変わらずだが、そんなの気にしてられない。逃げ切るまではきっとこの脚の痛みとは一緒だ。諦めよう。
息が整ったので、再び立ち上がり、消火器も持ち上げて抱きしめる。そして、足が遅かったり座り込んでしまったりで開いてしまった距離をせかせかと早歩きで詰める。
(あとすこし――あとすこしできっと終わる。絶対、絶対に、帰るんだ。俺には守らなくちゃいけない人がいる。死ねない。死ぬわけにはいかない)

>>allさま

【なんとか時間とれました…が、次いつ書けるかわからないので、引き続きキャラキープおねがいしますm(_ _)m】

9ヶ月前 No.55

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_UxJ

【 与那国水路 / トンネル内部 】

 仲間内から死人も出れば殺人鬼まで出てしまったが、それでもこの逃避行を辞めるわけにはいかない。なにせ諦めた瞬間にジ・エンド。瞬く間に化物の餌食だ。同じ『殺される』にしても、どうせそうなるならもっと男として箔の付く死に方をしたい。三股の果てに痴情の縺れで刺されるとか、寝取った女の元カレから突き落とされるとか。……こっちの死に方も世間的にはクズ扱いが免れない気がするが、でも化物の餌ルートよりはよっぽどイけている。
 全力疾走から急停止すると心臓に悪いので、とりあえず止まることはせず早歩きに切り替えてトンネルを進み続けた。心臓は現在進行形でミュージックステーションの真っ最中。静かになる気配を見せない。視界の最奥にチラつく駅の光が無ければ、最低限の心の落ち着きも取り戻せずここで胃袋の内容物をリバースしていたかもしれない。そういえば電車の中で既に吐いている女性がいたが、彼女はあの段階で吐いておいて正解だったな、と今になって思う。吐き気は原因が何であれ、一度嘔吐してしまえばマシになるもの。このトンネル内で走りながら吐き気に襲われるよりは、あの電車の中であらかじめオエッとしておいたほうが死亡率は格段に下がる。彼女がそこまで考えてあそこで吐くことを選んだのかは疑問だが、いずれにせよラッキーだ。

「ほら、向こうに光が見える。もうちょいだ。脳味噌も心臓もグッチャグッチャのバックバックで訳わかんねぇだろうけど、それでもなんとか頑張って、足だけは動かそうぜ。……まあ、ぶっちゃけここで立ち止まって全員が囮になってくれるっていうんなら、俺的にはそっちのほうが有り難いんだけど……」

 最後の本音はごくごく小さな声でぼそりと付けた足した。正直なのは美徳だが、こいつの性格は悪徳だ。
 さっきの逃走から学んだことは、とりあえず消火器は持って逃げるよりも相手が襲って来たと察知した瞬間に中身を浴びせかけるくらいしたほうが良いという事。これ、ただ持って歩くだけならまだしも、持って走るとなると意外に邪魔になる。緊張しすぎて手汗がべちゃべちゃだから尚更。さっきもうっかり手が滑って地面に無意味に落としそうになった。
 いがいがする喉を飲み下した生唾で無理やり潤しながら、スマホで足元を照らし歩き続ける水路。頬を伝っていた冷や汗が服の襟元に染み込んで、しっとりと仄かに嫌な湿り気を帯びていた。鼻が麻痺していて今はちょっと分からないが、きっと血の匂いを物凄いことになっているに違いない。これ、帰ったら切り刻んでゴミ袋に詰めて、近所のアウトドアが趣味のおっさんにキャンプファイヤーの材料としてプレゼントしよう。ぶっちゃけもう二度と袖を通したくない。

(――次にあの化物が襲って来た時のために、誰かと手ぇ組んだほうが良いかもな。俺、耳は良いけど腕っぷしとかそこまで強くないから、他に『協調してアイツを化物の餌にしようぜ、そしてその隙に逃げよう』って奴らが発生してターゲットにされた場合、ちょっと切り抜けるの無理っぽいし……)

 クズらしい発想を抱きながら、声を掛ける候補者を見繕うべくさっと視線を走らせる。薄暗くて顔とかほとんど見えないので、別に目を向ける意味はあまり無い。が、敏い者ならなんとなく値踏みされているような眼差しを受けていることに気付くかもしれない。それくらいにはあからさまな視線だった。

>ALL様

【承知いたしました!】

9ヶ月前 No.56

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/トンネル内部】

 必死になって走った。何も見ないふりをして、何も知らないふりをして。喰われた? 死んでしまった? 知ったものか。ぼろぼろと瞳が涙を零すのは苦しさのせいか、それ以外か。
 もう消化器を握る手の力も入らない。何度か落としてしまいそうになったそれを離そうとしなかったのはそれにしか縋れなかったからだ。消化器を必死に抱えて走っていた瑠璃子ではあったが、その時確かに聞こえた男性――あの冴えないサラリーマンの声が耳に届いた。「こいびと」と。別車両に愛する人でもたまたまいたのだろうか。酸欠のせいで纏まらない思考ではもう先ほど自分が何を思っていたかも滅茶苦茶だ。恋人という言葉もなにかの聞き間違い。勝手に結論をつければ、もうなにも気にならなくなった。

 とにかく走ってそろそろ過呼吸突入待ったなし領域に足を突っ込みかけた頃、漸く青年の声があがり、足を止めることが出来た。後ろを見ないでただひたすらに走っていたせいで何が起こったかは全く分からないが、兎に角化け物はどこかに去ったらしい。誰に向けるでもない感謝と安堵が湧き上がる。心臓はうるさいし呼吸もなんだか要領を得ないけれど、生きているその事実だけで良かった。先程中身を出しておいたお陰か息苦しくても吐き気まではこないし、ある意味で幸運だったかもしれない。痴態と引き換えに命を守れるならば安いものだ。
 呼吸を整える為に大きく深呼吸をして、ふと脳に走ってる最中の記憶が蘇る。

「……結局こいびとってなんなの」

 口をするつもりはなかったのに、何故かぽろりと疑問が零れ落ちた。その声量は小さなものだったが、誰も触れなかったその疑問に触れてしまった事への罪悪感やら焦燥感やらで変な汗が出てきたし、顔の綺麗な例の青年からもめちゃめちゃ見られている気がする。
 そんな瑠璃子の考えは強ち間違いという訳でもなく、確かに青年はここにいる人物に目を走らせていた。それは瑠璃子に対する軽蔑ではなく値踏みの意を含む視線。そんな視線に気付いた瑠璃子は眉根を寄せて嫌悪を示す。人をあからさまに値踏みするんじゃない、とでも言いたげだったが、それが言葉にされることは無かった。


>>ALL様


【お返事が遅くなってしまって申し訳ありません……。遅ればせながらあけましておめでとうございます。最後までよろしくお願い致します〜!】

9ヶ月前 No.57

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD


【 梅塚了/トンネル内部 】

 死とは、死んだ時点で人に訪れるものであると梅塚は考えている。いや、分かりやすく言ってしまえば、彼は自分以外の人間が考えた「輪廻転生」とか、「人から忘れられたら、それが本当の死だ」とかの思想を、惹かれはするが、信じてはいないのだ。彼にとって、死の世界では自分が圧倒的な王者なのだから。死後を妄想するのは自分の勝手だし、何なら蘇らせる事だって出来てしまう__そう、生前は口汚く人を罵り嘲っていた口汚い唇を、ぽってりとして肉感的な、きわめて美しい、しかも煩くならないよう結わえたものに変えられるし、人を品定めする下賤な目も、瞼ごと好みの色に染め上げる事が出来るのだ。一度、胴体という基盤から、取り除いてしまえば、どんなうつくしいひとも全部僕の思い通り。
 __梅塚了はこういう風に、とても野蛮で、下劣で、それに気が付いているのかいないのかよく分からない、愚鈍な男だった。だからこそ、自分が「生き返らせた」と確信する生首(こいびと)が奪われてしまったのが相当に悔しかった。それに恐ろしかった。犯行時の己が異常だとしたら、あの怪物の存在は異質だ。ある常が無く、質がそもそも此の世とは異なる。生まれた時から、きっと忌々しいもの。人の後ろの窓際に立って、ただ一瞬、人を襲う為だけにあるような、奇怪なモンスター。
 梅塚は酷い嗚咽を漏らしながら、うわあ、と子供のように泣きじゃくって、地べたにしゃがみこんだ。周囲の人らが歩く速度を緩めていたので、どうにかこうにか、ようやっと人間の輪の中に戻る事が出来た。安心感と絶望感、継続する緊張感とで、青年が言う通り、脳味噌も心臓もグッチャグチャのバックバクだ。ヒステリックに呼吸を繰り返し、梅塚はその壊れた呼吸機能を修繕した。手に擦り傷が出来たが、余程アドレナリンが出ているのか、痛みも何も感じなかった。地面からのそりと立ち上がり、荒く息を吐き、涙と鼻水を一緒くたにスーツの袖で拭き取る。その様はさながら迷子の子供だ。実際は五十代の大人で、見た目の物事を積み重ねてきた雰囲気に似合わず、とてもアンバランスで気味が悪い。

「ふ、ふー……、ふー。良かったです、ぼ、ぼく……私も、殺されてしまうかも、しれなかったのに、生き残れて」

 スーツの袖口で覆っていた顔を、もう一度露にした時には、彼の表情はもうただの陰気臭い野暮に戻っていた。傷ついた手で乱雑に顔面を拭ったせいで、頬には真新しい血がこびり付いていた。目だけは冷静で、でも静謐とは程遠く、言うなれば牢獄の壁のように、嫌悪を集める視線を放っていた。
 そこまで頭を冷やしたところで、先程の青年の言葉を思い出す。確か、尊い犠牲が〜、と喋って、その後犠牲者の数を言い直していた気がする。彼は発端の怪物登場からも、その存在を誰よりもはやく感知していた、とても聡い青年だ。自分とは何歳も歳が離れているが、おそらく__否、確実に、彼の方が賢く、明らかで、朗らかに行動を成すのだろう。そんな彼に殺人がバレたなら、これが日常生活であれば、自分の人生は何等かの形で激変するか、即座に終了するだろう。だが、今はこの危機的状況。あえて触れなければ、そこまで問題は無いのではないか。
 そんな楽観的な考えのもと、梅塚は、独特の毒舌を吐き、周囲にちらりと視線を寄越す青年に対して、ふ、と微笑んだ。特に何の意図も無く、ともすれば青年の意図にも全く気付いていなかっただろう。それくらい、梅塚は愚鈍なのだから。
 そんな彼が、唯一狡猾になるのは、自分の犯行に関わる時だけだ。だからこそ、梅塚は女性の発言を聞き逃さなかった。さ、と人間に戻りかけていた瞳の温度が上がり、顔色は緊張で蒼褪め、頬の血だけが一個ボタンの外れたシャツに向かって垂れ落ちた。女性をゆらりと見る。暗いのでしっかりと確認できないが、微かにグラデーションの入った髪色で、薄いメイクと大小様々な傷の目立つ、どこか庇護を掻き立てられるような__いや、むしろ交番に保護を願いたくなるような__容姿だった。その姿に、出張先で恋人にした女性を重ねようとしても、全く重ならない。怪物に奪われた首(こいびと)は、どちらかと言えば気が強く……いや、首になったのだから無口で、人としての自己性なんて無かったか。

『……結局こいびとってなんなの』

 その言葉を口にし、汗を流す女性。ああ、彼女に全て打ち明けてしまえば、ここの全員が敵になるだろうか。そうしたら、全員を首(こいびと)にする事になる。それはさすがに手が余る。警官もいては勝てる見込みは無いし、今はそれ程の余裕も防腐剤も無い。梅塚は、彼女が人並み外れた見識眼を持っているのも知らないで、にこ、と笑顔を浮かべ、陰鬱なトンネルには不釣り合いな程、爽やかな雰囲気を醸し出した。

「こいびと? 何ですか、それ? ああ、ぼくも必死だったので分からないですよお、怖いですねえ、こんな時に恋人、だなんて」

 やけに明るく、梅塚了は言い放った。よくよく考えてみれば、あの警官も、そして自分にティッシュをくれた少年も、自分の失言を耳にしているのだろう。彼等に目の敵にされてしまっては、もう怪物の餌になったも同然だ。いくら加害者、捕食者とはいえ、独りでは生き残れない。自分があの怪物のように能動的で、衝動的で、異質であったならば別だが、自分は鈍足で貧弱だ。女子供1人にだって、不意打ちしなくては勝てないのだから。

>>ALL様


【 新年あけましておめでとうございます!
 「何かいっぱい投稿できますゥ〜」とか嘯いてた割には亀投稿で誠に、誠に申し訳ありません。しかも一発目で何かおかしいすみません! 】

9ヶ月前 No.58

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_QaP

【狩峯和人/トンネル内部】

頭の中で次々とフラッシュバックされるのは鬼の如く全力で追って来る怪物。そしてその怪物により玩具の様に散らかされた死体。正直、このトンネルから出られて生き残った後にも後遺症として脳の潜在意識まで刻まれてしまいそうな程の衝撃的な光景であり、この場に遭遇している人物であるのならば余程精神が図太くなければ、それは当然とも言える状態だと個人的にだが考えられる。しかしそんな中でも一番に衝撃を受けたのはスマートフォンのライトに浮かぶ怪物でもトンネルに眠る死体でも無く、トンネルの中で鞄からボトリと転がった死ぬ直前の表情が暗闇ながらも容易に見て取れる生首であった。それは圧倒的な非道徳感。倫理の欠片も無いその姿に怪物に殺された崇高な正義心は殺人鬼により蘇る。
そのフラッシュバックはまるでたまに見る吐き気を催す程の悪い夢の様な、趣味の悪いグロテスクな漫画の様な身震いが止まらないトラウマがパンクしそうな頭に残り続ける。誰が怪物以外に生首所持している人間の皮を被った悪魔が同じトンネルで過ごしていた予測出来ていたのだろうか。正直言えば、もはや誰が何者だろうと驚く事は出来ないと彼は思ってしまう。
それはともかく、あの生首を見たせいで一度は振り解いた感情を呼び覚ましてしまったのは確か。残念ながら彼は次々と揺れ動く路線変更に情緒が不安定な状態と化していた。

(美しく死ぬか、醜く生きるか……)

決してどちらも間違っておらず、正しい訳では無い。ただ彼に残された線路はその二つしか通じていなかった。理想としての自分を貫けば恐らく、全員の乗客を救う為に自身が犠牲になるであろう。先程、二人を見捨てた罰も兼ねて。そして少なからず、乗客だけには理想の自分を見せた事に満足して死んで行くに違いない。また現実としての自分を通せば恐らく、全員の乗客を犠牲にしても自身を救うであろう。先程、振り解いた正義感と共に。そして少なからず、もう二度と理想の自分に戻る事無く生きる事となるに違いない。
すると、僅かながら途方も無いトンネルの向こう側に駅のホームと思われる光が見え始める。要するにあそこまで行けばどうにか外に脱出する事が可能と言う事になる。そんな自分に関しての事しか考える余裕しか無かった彼には、怪物でも殺人鬼でも無いもう一人の視線に気づく事は無かった。

「……結局こいびとってなんなの」

もはや自分の在り方しか考えておらず、本来の意味での警官としての考えが完全に消え去っていたはずの狩り峯でさえ、乗客が発したその言葉に少し反応してしまう。警官としてはどんな状況であれ生首を所持している男性を見逃す事等出来ない。しかし人間としては正直、接する事さえ怪物並に恐ろしい。

「こいびと? 何ですか、それ? ああ、ぼくも必死だったので分からないですよお、怖いですねえ、こんな時に恋人、だなんて」

それを聞いた狩峯の頭には、かつての美しく何も変わらない昨日ともしもの醜く全てが変わった明日が金属が軋む様な騒音を立てて、素敵なそして歪んだ交差を行っていた。

>>周辺ALL様


【遅ればせながら新年あけましておめでとうございます。これからも宜しくお願い致します】

9ヶ月前 No.59

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / トンネル内部】

「向こうに光が見える」「足だけは動かそうぜ。」という青年の言葉に、暗くて見えないだろうがコクコクと頷きながら早歩きする。さっき開いてしまった距離はすっかり縮まった。また全員が全速力で走り出せばあっという間に開くだろうが。
さっきの休憩で走っている最中よりは落ち着いたものの、やっぱり心臓はうるさいし汗は気持ち悪いし頭はぐるぐるするしで正常な状態とは言い難い。最良な状態とは言い難い。でも、また襲われたらるかもしれないし何より(俺は、ぜったい、ぜったい、帰らなきゃいけないんだ。守らなきゃいけない人がいるんだ。ぜったい、死ねない)言葉を頭の中で復唱し、再度強く決心した。
耳の良い青年がこちらを――共に逃げる者たちを見たのはわかった。柊は鈍い方ではない(つもり)だが、特別敏い方でもないので、視線を向けられたことにただただ首を傾げた。
初めに電車が緊急停車したとき――正確にはあの終電に乗ったときから同じ車両にいたDV彼氏から逃げてきたような風貌の女性が呟いた言葉に(それ!俺も思ってた!)と心の中で激しく同意しながら会話を聞いていた。際どい服装の女性の疑問に対してのサラリーマンの返答に、ぞっ、と背筋に冷たい物が走った。顔を向けていないからわからないが――その明るい声色からして、やけに明るい声色からして、異常に明るい声色からして、場違いなほどに明るい声色からして、彼はにこやかに笑顔を浮かべているのだろう。

(必死だったからわからないって…逃げることより、『こいびと』のことに必死になってたように聞こえたんだが)

彼の怪物からの逃亡劇をぱっと思い返してみたが余計に怖くなってしまった。あの化け物と比べたら、命を奪われるわけではない――柊は彼の『こいびと』を見ていないのだ――から、あの化け物の方が恐怖対象だ。でも、それでも、彼は怖い。上手く言い表せない不気味さがある。

「……怖いのは今のお前だろ…こほん、無事でよかったですね。恋人さんのためにも、がんばって帰らないと」

その怖さ故か思わず無意識にぼそっと呟いてしまった。自分にすら微かにしか聞こえないほどの細い声だったが(やべっ)と内心焦り、咳払いしてから誤魔化すようにサラリーマンに怯えの抜けない作り笑いを向け、言葉をかけた。きっとこの状況なら怯えている対象は彼の発言ではなく怪物だと思われるだろう。実際にどっちへの恐怖が勝っているかといえば怪物に対してだから間違いではない。でも柊は怖い物への――怖い者への表情をしていた。彼が利発で無いことを願う。

>>allさま

9ヶ月前 No.60

反物 @tannmono☆LYOo5Bp9JJY ★4vPZUtl7Aa_D9v

【 与那国水路 / トンネル内部 】

 ジロジロと。不躾な視線を周囲にめぐらせ観察を続ける。気付いて嫌そうな顔をする者もいれば気付かず息を整えるのに集中している者もいて、むしろ注目を集めているのは、水路よりも恋人発言を取り沙汰されているサラリーマン風の男性のほうだ。気付いたのが自分だけなら聞かなかったことにして先に進もうと思っていたのに、他にいたならそうもいかない。いやでも、生首を見たのが自分だけならなんとかごまかしは効くだろうか。サラリーマン風の男性も当然だが真実を明かすつもりは無さそうだし。これに乗じて、こっちも白々しい発言でもしておこう。

「恋人とか愛人とか、今はそういうエロティックな話は置いておこうぜ! な! グロテスクな状況なんだし、グロテスクな話でもしてよう!」

 訳のわからない理由によるわけのわからない発言。話を逸らしたいだけで、端から筋を通すつもりも無い。笑顔が軽薄なのも当然だ。なにせそこに込められた思想も軽くて薄っぺらい。
 立ち止まる面々に行動を促すように、手にしたスマートフォンの光を先に向けて「ほーら、しゅっぱつしんこーう!」と大げさに歩き出す。見ようによっては恐怖が振り切れて頭がおかしくなり始めた男の図だ。実際のコイツはそこまで可愛らしい神経はしていないけれど。
 無駄に性能の良い耳は各々の発言をしっかりと聞き取れてしまう。だから何人かはそりゃあもうあからさまにサラリーマン風の男性を警戒していることは理解している。それでも、今の状況で内輪揉めなんぞしている場合ではないのだ。だからできるなら見なかったこと、聞かなかったことにして欲しい。それを抜きにしたって、ぱっと観察してみた感じ、あのサラリーマン風の男性が一番イかれていそうで組む相手として密かに目を付けているのだ。だからここで軽率に切り捨てたく無い。イかれた場所ではイかれた奴とつるむのが水路の流儀だ。

(他人を自分の都合で犠牲にすることに刹那も迷わないサイコパス。そういうのとつるみたいんだよね。あっちのおまわりさんも一種のやべー匂いはするんだけど、でもどういう方向にやべーかがイマイチ嗅ぎ取れない。だから組むなら、第一候補はあのサラリーマン。そんで切り捨てるなら心身共に弱くて御しやすそうなの)

 クズをフルオープンにした思考を頭の中で展開させながら、鼻歌さえ混じりそうなご機嫌な足取りでトンネル内をスキップしてゆく。もちろん虚勢だ。水路はクズだがイカレポンチではないので、こんな状況で本気でテンションを上げられるほどに斜め上の精神は保持していない。こうしている間も、心臓は伝説のロックンローラーの生演奏みたいなボリュームで特大の音を奏でている。そろそろ鼓膜からうるせぇとクレームが入りそうだ。家主にもどうしようもない問題なのでしばらくは我慢してくれ。

>ALL様

【今回短くてすみません、訳あってアカウント変わってますけど友禅です。二日後には元のアカウントに戻ります!】

9ヶ月前 No.61

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【燕子花 瑠璃子/トンネル内部】

 ほんの数ミリ開いた口から漏れ出た言葉は確かに男にも届いていた。恐怖と絶望が立ち籠めるトンネルの中で1人、子供のような無垢な口調で不釣り合いな笑顔を浮かべる彼の事をここから出た時にきちんと忘れられるだろうか。瑠璃子には男が何をこいびとと呼んだのかは分からないが、その正体を知ったときに儚い命の灯火は彼によって雑に吹き消されてしまうのではないかと考えて小さく頭を振る。今は疑心暗鬼とかに陥ってる暇なんて無い。死なないように生き残らなくちゃいけないのだから、いつどこで化け物が現れるかに神経を集中させた方が余程有意義だ。

「多分疲れた私の脳が聞かせた幻聴とかそんな類かなぁ。あはは、変な事言っちゃってごめんなさぁい。気にしないでね、スーツのお兄さん」

 瑠璃子曰くスーツのお兄さん、即ち件の中年男性に曖昧な笑顔を浮かべてそう答えつつ、雑に話を逸らしてくれた青年に心の中で感謝する。先程は嫌な顔をしてしまって申し訳ない。
 立ち止まってしまった面々も青年の妙に明るい声掛けで動き始め、ばらばらに足音を響かせる。この状況下でスキップをかましているとんでもない精神の持ち主もいるが、生憎瑠璃子の精神力、おまけに体力もごりごり削れているせいでそれをぼんやり「すごーい」と見る事しか出来なかった。学生ぶりの全力疾走がヒール付きのブーツだったせいで足が鈍い痛みを訴えている。申し訳ないが休ませてはあげられない。普段は化け物みたいな性癖をお持ちの輩にもっと痛い事されてるんだから我慢して欲しい。
 一周まわって落ち着いてきた心臓に安堵する。もう寿命が10年削れた気持ちだが、未来をどうにか繋げるためには遠くの小さな光に縋って小さな1歩をひたすら重ねていくしかなかった。

(生き残ったら美味しいもの食べよう。あと新しい服とかバッグとかいつもより高めの化粧品とか買って、――なんかもうとりあえずめちゃめちゃ贅沢しよう。頑張れ私)

 じゅうじゅうと音を立てて焼ける肉の姿と大好きなブランドの服やコスメを想像して自分を鼓舞する事にした。精神を支える柱は出来るだけ多い方が良い。そこはかとなく1歩が軽くなった気がして、単純な女だなと1人苦笑いをした。


>>ALL様

9ヶ月前 No.62

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【狩峯和人/トンネル内部】

これまで確かに自身が歩んでいく線路もこれまで確かに自身に通っていた信念もこれまで確かに自身が存在していた正義感も丸ごと無関係に貪り食らい尽くす怪物に巣食われたトンネルにて、警官であるはずの狩峯は何度も自答自答する。何度も足並みをそろえていく。何度も自分の意識を確かめていく。何度も少しだけ見えたターミナルに漏れ出す光を確かめながら。
それでも浮かび上がるのは死に様、生き様、昨日、明日、生首。本来ならば一番に考えなければならないのは生首を所有していた男性を逮捕するかどうか。しかしそれについて触れる事は無かった。即ち、彼は警官として、人間として、完全なるクズに路線変更を施したと言う事となる。もしかしたらあの時捨てておいた方がマシだったのかもしれない程にそれは既に汚れており、傍から見たらそれは化け物で最も人間らしかった。
一方で生首愛人問題で色々と気まずい空気がそれぞれの乗客に流れていたが、警官としての彼ならば最も関係ある位置に滞っていたにも拘らず、今や真逆のクズと化した彼にとっては最も関係無い位置にいた。そしていずれその気まずい空気はエロティックだのグロテスクだの話す青年によって上手く遮ってくれる。しかしどんな内容にしろ全く持って会話を行う余裕は狩峯に無いが。何故ならば、怪物によってこの薄暗いトンネルが自分の墓標と化してもおかしく無い為。実際にこの様な不可思議な状況と今まで散々走り続けて来た故に本当に余裕は無くもはや自分の事以外はどうでも良い。逆にこの状況で周りを見渡せる他の乗客が凄いとしか思えない。

(……俺は絶対に生き残りますよ。例え、彼等を利用してでも……)

たったひとつの命を懸命に全力で動かす狩峯は何処までも途方も無く続く一筋の錆び付いた線路に歪みながら、ターミナルが木漏れ日の如く見え隠れ始めた暗闇の中を全く不規則な速度で進んでいく。

>>周辺ALL

9ヶ月前 No.63

司徒 @nobunaga10 ★2rB1db7muK_yoD



【 梅塚了/トンネル内部 】

 トンネル内の湿った空気に、誰かが息を呑んだり、唾を飲んだり、言葉をのんだりする度に、その音が、梅塚という愚かな殺人鬼の空虚な胸に響いた。人の恐怖心や猜疑心が伝染するものだと彼は知らない。なぜなら彼が彼に恐怖を抱いていないからである。自分を誤魔化し切れたと思っている、人とはそんな風だと思っている、彼はおそらく軽々しくおかしかった。

 恋人の為に頑張らないと、と言ってきた少年に、梅塚はにこりと躊躇いがちに微笑んだ。少年はとても穏やかで心優しい気風のようだった。平時の臆病な自分でも、普通に話せる位の親切心。今の状況でも少年がそれを働かせている事に、梅塚は少し安堵した。けれど、ありがとう、とは返し辛い。こいびと、の姿は見られただろうか。学生には少し刺激が強過ぎる恋人だ、見ていたら少し処置をしなければいけない。だが、少年は曖昧に表情を浮かべているだけで、特に変わった部分は無かった__いや、微細な違和感はあった。恐怖がちらついているのか、少し顔が引きつっている。まあ、化け物に対してのものだろうと一人合点して、梅塚は少年から質問主の女性へ視線を移した。
 どうやら彼女は、早々に話題を切り上げたらしい。幻聴か何かだと弁解する女性に、梅塚は「ああ、そうですか。この状況ですもんね……気にしないでください」と失礼をした取引先に平謝りするサラリーマンの如く、低姿勢でペコペコと、懇切丁寧に返した。状況が状況なら、プークスクスと笑われても仕方が無い情けない態度で、それを助長するように梅塚の額には球粒のような汗が流々と流れていた。
__先程から、警官の男性が一言も喋っていないのだ。いや、もともと無口な性質なのかもしれないが、こちらを不審がっているのだろうか。警官という役職を持つ人間に疑われてしまっては、もしここから無事に出られたとして、とても面倒な事になる。それを考えると、更に身体の奥から汗が湧き出てくるのを感じた。
 そんな中、数の少なくなった客の中で、1人のとても明るい声が聴こえた。先程の、取り繕った自分のような。それよりも尚、違和感を煽るような声色だった。内容も何というか、意味がよく分からなかった。恋人の話はエロティックなのだろうか。確かに梅塚の自宅で人を呼んで宅飲みとかは出来ないだろうが、そんないかがわしいライトは点けていないし、『付け根』だって螺旋状とかにしているだけだ。嗚呼、自宅の事を考えるだけで早く帰りたくなってきた。梅塚はフウ、と溜息を吐いて、「そうですね」と軽く呟いた。

「……グロテスクな話……私は苦手だなあ」

 自身の犯行を棚に上げて、梅塚はのたまった。そして、自身の身体を点検し始めた。落ち着いてみると、身体の節々が痛んだ。骨折や脱臼をしていないのがせめてもの幸いだが、先程転んだせいでスーツは薄汚れていたし、消火器の栓を無理矢理引いたからか右手の指先には血が滲み、親指の爪が欠けていた。膝も肘も擦りむいて、布の裏側で血が流れているのを感じた。武器ももう無いも同然だし、列の最後尾にいるのは少し不安だ。

「と、ととっ」

 そう考えついて、梅塚は慌てて先頭近くに歩を進めた。一度逃げおおせる事が出来たが、二度は体験したくないし、もう逃げられる気もしない。前を軽やかに歩く青年が、異常者を品定めする鑑定者だと知らずに、梅塚はその後ろをてくてくと歩いた。

≫ALL

【 本当にすみません本当にすみません……! ロル返しがとても遅くなってしまいました! いっつも遅くなって本当に申し訳ございません。 】

8ヶ月前 No.64

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【梨甘埼柊 / トンネル内部】

柊の言葉に、サラリーマンは曖昧に笑った。何か言葉を発することはなく、ただただ微笑した。それをどう受け取るかは人それぞれだろうが、柊は(目つきわっりいから、ビビらせちまったか……?)と、自分に非があるな、という捉え方をした。目つきが悪いのは他人から――双子の兄、柊の想い人、バイト先の先輩や教師によく言われる。言われたところで生まれつきのそれは、ただ見ているだけで「睨まれた」と言われるそれは、どうしようもない。だからできるだけ温厚でいるように気を付けているのだが、さっきからビクビクしているサラリーマンには、それも伝わらなかっただろうか? と、柊は少々残念に思ったけれど、それも慣れてしまっていた。ため息をついて、また前へ向き直るだけである。柊の考えとは真逆に、サラリーマンの男性には柊の穏やかでいようという努力がばっちり伝わっているが。
際どい女性は、『こいびと』の話を、幻聴だと言った。柊はそれに対して(幻聴じゃない! 俺も、はっきり聞いた! 『こいびと』って! 『僕のこいびとが!!』って!)と、否定して話を広げたかったが、耳の良い青年が、さっきのサラリーマンの笑顔のように場違いな明るさで話を逸らしてしまい、それはできなくなった。彼の白々しさに、底抜けの明るさに、異常に頭の悪そうな態度に、柊は柊なりに感じとった。触れちゃ駄目だと、『こいびと』に関しては探っちゃいけないのだと。立ち入り禁止だと。禁じられているなら仕方がない。年齢制限がかかって買えないグロゲーを前にぶら下げられたような気分だが、諦めるしかない。

「そうなんですか? 俺は、グロい話、割と好きですよ」

グロテスクな話は苦手、と言うサラリーマンの発言に、柊は前を向いたままそんな風に返す。返すとは言っても、決して自分にかけられた言葉では無いのだろうけれど、話す相手がいないのだ。拾える言葉は拾って投げ返させてもらおう。できる限り、ゆっくりと、丁寧に、冷静に、気さくに、声を出した。そう意識しないと、声が震えそうだった。心臓は相変わらず破裂しそうだし、消火器を握る手も踏み出す足も小刻みに震えていて、身体中汗でびっしょりで、どうしようもなく怯えているのだ。それで声までビクビクさせるなんて、柊のそこまで高くないプライドを持ってしても傷ついてしまいそうだ。一言で言えば、ダサい。ダサいのは普通に嫌だ。格好良い方がいいに決まっている。

>>allさま

【めっっっっちゃくちゃ遅くて本当にすみません!!!】

8ヶ月前 No.65

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_0D6

【 与那国水路 / トンネル内部 】

 今更ながら、あの化物の正体は何なのだろうか。妖怪? 悪魔? 怨霊? 旧日本軍だとかナチスだとかが秘密裏に進めていた研究の産物が蘇った? それとも知らない内に電車の中に厄介な薬が充満していて、自分たちは現実ではなくリアリティのある幻覚症状に陥っているだけなのかもしれない。それならどれだけ良いだろう。いきなり国の高官を名乗る胡散臭い男が現れて「いやぁ、良い研究結果が取れましたよ! モルモットの皆様、お疲れ様です! もう十分ですので幻覚症状を緩和する薬を投与しましょう!」とか言って来ても今なら怒らない。怒らないから出て来て欲しい、黒幕風の男。……スキップの裏側で念じてみるも、まあそんな男が都合良く出て来るはずも無く。トンネルの中に響くのは、相も変わらず自分たちの足音だけだった。
 化物と、あとは明らかにヤバい秘密を抱えているサラリーマンのおかげでやたらと張りつめた空気の中、少しでもそれを霧散させるべく馬耳東風のおちゃらけた馬鹿を装いスキップを続ける。元からそんなに頭の良さそうな行動をしないタイプなので、そんな男が意図的に馬鹿として振る舞えば本当に馬鹿っぽい。スキップの足取りなんて見ているだけでIQの下がりそうな完成度だ。逆に凄い。極限まで酔っ払ったおっさんでもここまで知能を感じさせないスキップはまず出来ないだろう。このスキップを映画のオーディションで披露すれば、主役は無理でも映画の中の酔っ払った通行人役としてなら120%採用されること請け合いである。

「まあ、どんだけグロテスクな話の持ちネタあったって、今この状況よりグロいってことは早々ないだろうけどねー。俺の中だと近所のマンションを通りかかった時に飛び降り自殺した人の身体が真横に降って来て肉片とかが顔にかかった、っていうのが人生最大のグロネタだったんだけど、それも今日で更新されちゃったし」

 まだ今よりはクズじゃなかった小学生の頃のエピソードを振り返ってみる。いや、でもあの時だって降って来た死体をこどもケータイでこっそり撮影して「これテレビ局とかに売ったらお金になるかなー?」とか考えていたので、思い出が美化されているだけでやっぱり当時からクズだったかもしれない。ちなみに死体の写真は売れなかった。テレビにも雑誌にもそんなもん掲載できるわけがないから当たり前だ。今ならグロ写真の愛好家にネット経由で売りつけるという発想も湧くが、当時はまだそんなにインターネットが普及していなかった。
 死体を気持ち悪いと思うくせに、その気持ち悪いものにも利益になるかもしれないなら自ら歩み寄るのがこいつのクズとしての方向性だ。まともな神経とまともじゃない神経、普通の感性と普通じゃない感性の同居。今でこそ化物に心底ブルっているが、仮にこの化物との邂逅が金になるのであれば、ここを出た後にその話を聞かれた際、もう思い出したくないと口を噤むのではなく嬉々として喋りまくるはずだ。小悪党は精神的にタフであることが条件。水路も例には漏れず。

「あ、そうそう。本当は俺だってこんな話したくないんだけど、でも、言っておきたいことがあってね。――あの化物、後ろじゃなくて俺らが進んでる方向にもいるっぽいんだぁ。しかも複数。こうなってくると、通り抜ける時に最低でも一人か二人は確実に手傷負うなり死ぬなりすると思うんだけど。どうする? このまま突き進む? それとも近くには一匹しかいなさそうな後ろに頑張って引き返して通り抜けて、逆方向の駅付近には化物が複数待ち構えてないことを祈りながらまた長距離歩く? さすがにそっちに化物がいるかいないかまでは、俺の耳でもここからだとちょっと判別つかないや」

 馬鹿みたいなスキップを不意に辞めて、彼にしては珍しい真剣なトーンで後方の人々に問いかける。そして振り返った。頬を伝う冷や汗と、苦さを帯びた笑みを刷く唇。表情からは彼も彼でこの状況に危機感を抱いていることがよく分かる。なまじ耳が良いだけに、ここから数十メートルの位置に複数の化物が屯している事実に気付いてしまった。それらの息遣いと足音から。
 幸い、近くにいる人間にだけギリギリ聞こえる程度の声量しか出していないので、前方の化物たちには『こちらが化物に気付いている事実』に気付かれていない。が、この言葉を聞いた彼らがあまりに狼狽えたりすれば、その空気の揺らぎを感じ取って前方の複数匹も後方の一匹もいきなり迫って来るかもしれない。そうなるともう、突き進むも引き返すもクソも無い。死なないために死ぬ気で走るしかない、最後のデッドランが始まるだけだ。

>ALL様

8ヶ月前 No.66

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【狩峯和人/トンネル内部】

今の今まで何もかもが当たり前で特に何も思う事も無かったはず、むしろ自身の最期を一番に願った場所だと考えていたはずのターミナルのホームから僅かながら逃亡劇を続ける乗客達に放たれるその光筋は自分と違って迷う事無く、当たり前の事実として誰が生きようが、死のうがただ一直線に堂々と伸びているその儚い日常の名残、残り香に少しだけ救われる薄暗い地下トンネルの中、誰かが何かの話を行っているがそんな事はどうでも良くなっていた。等と考えていた狩峯は軽やかなステップを刻む少年達の行進から少しだけ後ろの方へ離れ、今更ながら激痛が走る重い足取りを懸命に動かしながらひたすら前を見つめあのターミナルへ辿り着く事だけを考えていた。かつてそれは死ぬべき場所だと考えていたはずが、今は生き残るべき場所だと無意識に考え、いかにあの怪物と生首を恋人と称する殺人鬼による影響が大きいのかが良く分かる。だがその影響が決して良い物では無いのは怪物と殺人鬼を見れば分かる事で狩峯は既に怪物とも変わらぬ程に心が醜く汚れていた。それはもはや自身の正義感に耐えられなくなり駅のホームで自殺を考えていた狩峯とは全く持って別人であった。勿論、生首のトラウマからたまに正義感や罪悪感は蘇り自身を苦しめるが決して囚われる事は無い。今の狩峯に重要なのはどう自分が生き残り、どう誰かを利用するかだけ。これは自分が自分に下した最初で最後の選択。どれだけ綺麗事や正義感を並べ立ててもこの奇妙で悪夢の様な恐ろしい現実は帰ってくれない。
それゆえに絶対的にあの恐ろしく自然な生命体とは絶対言えない異形な怪物に対する警戒は絶対に怠らない。今でも狩峯の頭の中に危険を知らせる甲高い汽笛の様なクラクションが鳴り響いている。
すると、この生死を境にまだ見ぬ線路をパレードの如く、進み続ける中でこのいつ怪物が現れるか分からない緊迫した空気を何故か和ませようとしたのか、前で空気も読まずスキップしていた怖いもの知らずな少年が急にグロテスクな話を始める。正直、この状況では一切和む訳が無いのと、和ませる必要が全く持って無い。それとも余程、自分が狂っているのをアピールしたいのか。確かにこんな状況下、狂っていなければある意味ではあるが正常でいられないのは事実。

「あ、そうそう。本当は俺だってこんな話したくないんだけど、でも、言っておきたいことがあってね。――あの化物、後ろじゃなくて俺らが進んでる方向にもいるっぽいんだぁ。しかも複数。こうなってくると、通り抜ける時に最低でも一人か二人は確実に手傷負うなり死ぬなりすると思うんだけど。どうする? このまま突き進む? それとも近くには一匹しかいなさそうな後ろに頑張って引き返して通り抜けて、逆方向の駅付近には化物が複数待ち構えてないことを祈りながらまた長距離歩く? さすがにそっちに化物がいるかいないかまでは、俺の耳でもここからだとちょっと判別つかないや」

怪物が一匹では無く複数存在している可能性については事前に予測しており、怪物がトンネルに滞在しているのだから、駅のホーム付近にも不良の溜まり場の様に滞在している事があるかもしれないとちゃんと頭で何度も言い聞かせていた。だがそれでも実際に怪物がいると言われてしまうと心臓が苦しい程に落ち着かなくなり、今までの思考も全て乱れ崩れパニックに陥ってしまいそうになる。
しかしスキップの少年は耳が良いのは分かっているが、それでも怪物について予測している彼の姿を見て思わずこの怪物に関しての関係者なのではないか、そしてこの事態は事前に仕組まれていた事なのではないかと疑ってしまう。
だが少年がどのような人物だろうが、こちらは利用するだけ。せいぜい自身を怪物から守る肉の壁にでも化してくれれば有難い。そう考えながら、生き残った乗客の誰を生贄にして捧げるか本格的に考え始める。

>>周辺ALL

8ヶ月前 No.67
切替: メイン記事(67) サブ記事 (55) ページ: 1 2

 
 
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