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天喧騒京モノガタリ

 ( オリジナルなりきり )
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現代パロ / 人情 / バトル @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

『続いてのニュースです』

十一月二十六日。太陽が静かに顔をだした頃、街頭ビジョンから報道が流れる。

『今日未明、反社会的組織サングイスから爆破予告を受けた西上大学は全ての授業を休講にし、生徒に注意を呼びかけるとともに万が一に備えて厳戒体制を最高レベルに敷いています。爆破予定時刻まで残り三十五分。現場は緊張が高まっている模様です』
『怖いですねえ。真宿駅爆発事件から早四年。未だサングイスの首謀者も組織規模も不明のまま、国民の不安は募るばかりです』
『今回の爆破予告を受けて安野首相は記者会見を開くとともに、引き続き警戒を呼びかけており――……』

アナウンサーの声が空に響き渡る。
本日も大日本国は晴天である。



( 11月26日午前8時25分 / 西上大学構内 )

「やべえ、このままだとまた遅刻しちまう!」
パンを加えたまま校舎を走る青年が一人。
西上大学に通う彼は、昨日の夜遅くまでドラマを観ていたら寝坊してしまったらしい。呼吸を荒くし、必死に手足を動かすなかで、ふとある異変に気付く。男はその場に立ち止まった。
――何だかやけに、静かだな。
男は考える。大学は不気味なほどに沈黙していた。いつも聞こえるはずの学生たちの黄色い声やが全く聞こえてこない。それどころか校舎内には人っ子ひとり見当たらなかった。
「え、あれ、今日って学校休みだっけ?」
突然の孤独感に襲われた青年は、焦ったように頭を掻く。
彼は爆破予告による休講連絡に気付かず、いつも通り大学に登校していたのだ。



( 11月26日午後3時25分 / ??? )

「あと残り三十五分か。待ち遠しいな」
腕時計を眺め、貧乏ゆすりを始める。
男は西上大学が爆発するのその瞬間を静かに待っていた。
「本当に準備の方は万全なんだろうな?」
「もう、そう何度も確認しないでください。今のところ問題ありません、全て抜かりなく進んでいます」
隣にいた女がピシャリと言い放ち、冷たく遇らう。彼女もまた、双眼鏡から西上大学の行く末を見守っていた。
レンズの先に見えるのはW未だW長閑ないつも通りの景色。しかしそれが豹変した瞬間、彼女たちの計画成功が確定する。
一瞬、その覗いていた視界の中で何かが動いた気がした。
「あれ」女が異変に気付き、声を上げる。
「どうかしたのか?」男が尋ねる。
「いえ。校舎内に一瞬、人影が映ったような気がして――……」



( 11月26日午後3時25分 / 西上大学付近 )

「いいか皆、気を抜くなよ」
「はっ」
校舎内を囲むようにして警備を担う特別高等警察は、男の一言で一斉に背筋を正した。
現場にはかつてないほどの緊張感が走っている。爆発事件が多発している昨今、人を守るのも命懸けの仕事になっていた。
手に汗が滲む。隣にいる警官が生唾を飲み込む音までもが聞こえてくるほどに辺りは静まり返っていた。
男は腕時計に視線を落とす。まだ爆破予告の時間まで三十五分あった。
「サングイスめ、今日こそはその尻尾掴んでやるからな」
男は強い口調で呟く。
その瞳には、燃えるような正義感と確固たる決意が灯っていた。



本日も大日本国は晴天である。
――……さん、
――……に、
――……いち。
長針が丁度十二を指したとき、空に耳を劈くような爆音が響き渡った。



これは第二次世界大戦に勝戦し、天皇政治が続いている大日本国で反政府組織と特高警察とがドンパチする物語。

メモ2018/01/15 14:37 : 神崎りりか ☆TYRYeuBpk3k @else★iPad-MUiShf7G5m

▼第二章「 作戦開始 」※十ニ月十六日始動

http://mb2.jp/_subnro/15640.html-50

▼第一章「 空白時間 」

http://mb2.jp/_subnro/15640.html-34


▼参加者一覧

・反社会組織サングイス

→リーダー:朝比奈 藤司(ひなしろいと)

→副リーダー:玻璃崎 雪乃(芙愛)

→構成員:吾妻 純(かささぎ)

→構成員:是枝 正太(神崎りりか)

→構成員:天野 風香(忍者ぇ)

→構成員:十姫雨 桜(絡繰)


・特別高等警察第一課

→課長:黒瀬 新(Nero)

→課長補佐:生明 岬(ねこみやあか)

→参謀:夢月 叶羽(自由)

→警官:涼宮 衛 (弘樹)

→警官:大狼 椿(崎山)


・特別高等警察零課

→メンバー:速水 奏汰(sizuku)

→メンバー:鳳 嘉音(夕邑三日月)

→メンバー:深町 渚砂(ぽんぽこ)


おかげさまで役柄が全て埋まりました!よって各組織のメンバー枠を無制限に募集します。予約は不要ですのでプロフィールが完成し次第サブ記事に提出してください。

切替: メイン記事(34) サブ記事 (58) ページ: 1

 
 

本編開始 @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

【 是枝正太 / 喫茶店ローダンセ 】

 挽きたての珈琲豆をペーパーフィルターに入れ、ゆっくりと円を描くように湯を注ぐ。一度目は蒸らすため、二度目は旨味を抽出するため。このときペーパーは濡らしてはいけない。せっかくの脂分が逃げてしまうからだ。
 必要な分を淹れ終わったら素早くドリッパーを外して、雑味の強い最後の一滴を入れないように気をつける。あとは冷めないうちに珈琲をお客様にお出しすれば出来上がりだ。

 店長である村上に言われた通りに珈琲を淹れた是枝正太は、試しに一口啜ってみる。
「……ま、不味い」
 顰め面になりながら呟く。もう五度目だった。何度やってもこの液体は舌を丸ごと洗い出したくなるような味になってしまう。
「何でだろう。今回は自信あったんだけどなあ。やっぱり豆が悪いのかなあ」
 失敗作を睨みつけたまま正太は頭を抱える。喫茶店ローダンセは相も変わらず閑散としていて、昼時だというのに客が一人もいなかった。不味いレッテルを貼られた飲食店に客足を戻すのは難しい。しかし、そもそもの料理が改善されなければ根本的な解決には至らないのだ。
 店番を一人で任されていた正太は、度々こうして暇潰しも兼ねては喫茶店のメニュー改善に取り組んでいた。
 ーー料理は得意なほうだと思ってたんだけどなあ。
 正太は考える。ここまでやっても不味いとなると、珈琲そのものに呪いがかかっているとしか思えない。
 燻んだ濃褐色は依然として呑気に波打っては独特の香りを放っていた。

 十二月二十六日。
 おそらく今、大日本国で最も有名であろう犯罪組織のもとに居候をし始めてから一ヶ月が経とうとしている。
 初めの頃、通っていた大学が爆破され、気を失った隙に拉致されたときは本気で死をも覚悟していたが、どうやら彼等に悪意はないらしく、テロで負った怪我の治療が終わるとリーダーである朝比奈藤司は正太に自由を与えた。
『な、何だよ。俺を人質にするんじゃねえのか』
『くくっ、確かにそれも悪かねぇけど京香の弟さんにそんな手荒な真似は出来ねぇなあ』
『……!』
 その言葉に違和感を覚えた正太は、サングイスに留まることを決意した。別に国をどうこうしたい訳ではない。彼らに同調した訳でもない。ただ、こいつらと一緒にいれば姉のことを何か知れるのではないかと思ったのだ。
 未だ朝比奈は何も語らない。他の奴等も同様に、肝心なことは何も教えてくれない。
「はあ。俺は何やってんだか」
 人差し指をマグカップの縁に滑らしながら正太は呟く。しかし大学が閉鎖している今、何もすることがないのもまた事実であった。


>サングイスおーる
【皆さま長らくお待たせしました、本編開始です! イベント概要を読んだうえでの参加をお願いします。開始する場所は特に指定していませんので、自由にのんびりやっていきましょう。これからよろしくお願い致します。】

2ヶ月前 No.1

忍者ぇ ★iPhone=VYefmAfxtC

【天野風香/サングイス本拠地→喫茶店ローダンセ】




海外で作られたオーソドックスな柄のトランプが、パラパラと右手から左手に移って行く。右手から左手に、左手から右手に。
新品のバイシクルトランプが手に馴染むのを確認すると、作戦会議用のテーブルに敷かれたマジック用のテーブルマットに綺麗に一列に並べる。
スペード、ハート、クローバー、ダイヤの1から13までのトランプが規則正しく並んでいることを確認すると、あろうことかそのトランプを2つの山に分け一枚ずつリフルして噛み合わせて混ぜてしまう。しかも裏表めちゃくちゃなまま。
何度かテーブルの上でカットし、もう一度2つに分けて上下を逆さにして元に戻す。
そのデッキをもう一度広げると、順番どころか裏表すら綺麗に整ったままのトランプが姿を現した。

「やっぱり新品のバイシクルは触ってて心地がいいわ…、いい匂いもするし、あとはお客さんがいれば文句なしなんだけど…」

そう言いながら彼女…世界に名を馳せた元女性プロマジシャン。
現役の頃はステージの大小関係なく訪れ、観客を驚かせ魅了した経歴を持つ彼女。
天野風香が視線をトランプから目の前の座席に座らせたマネキン第一号、第ニ号(通称しょう子とみち男(仮名)に移した。
その瞬間彼女にとてつもない喪失感と虚しさが襲う。
練習ついでに腕が鈍ってないか確かめるために、観客の代わりとしてマネキンを置いたところ凄まじく逆効果。むしろいい感じに力が抜けてスラスラ手を動かせたのが悲しい。
なんだったら女性型のマネキン、しょう子の頭に乗せたカツラが、室外機の風に煽られてふわふわ揺れるのを見ると無性に腹が立って来る。

「…やめよ」

そう一言呟くといそいそとトランプを片付け、マットとマネキンを、その薄暗く少しばかり整理が必要な我らが拠点の物置に押し込んだ。
マジシャン生命を絶たれて、このサングイスに落ち着いてから四年ほどだった。
普段なら仲間や天文学的な…否。
虚数の彼方のような確率で訪れる客に手品を披露している彼女だが、今日に限っては皆どこへ行ってしまったのか姿が見えない。
仕方なくストレスをぶつけるかのごとくマネキンに手を出してみるもなんとも不幸な結果に終わった風香は、片付けが終わると喫茶店の方へと移動する。
あいも変わらずガラガラのテーブルに視線が向かう。

「今日もお客さんはゼロですか…」

そう呟く風香はポケットからトランプを取り出すと、暇つぶしにとリフルシャップルやカットを繰り返し遊ぶことにした。

>>喫茶店オール

【リフル〜カードを一枚づつ交互に噛み合わせてシャッフルする方法。】
【久しぶりのオリナリなので絡みには行かずに逃げてしまいました。
こんな雰囲気でよければ話しかけてやってください】

2ヶ月前 No.2

自由 @nanamaru☆43ke11mKtUk ★iPhone=dgcL1EDLvj

【 夢月 叶羽 / 天京都中心部付近喫茶店 】

 ふわりふわりと目の前に白い湯気が漂う。ピンク色の陶器に黒猫の顔があしらわれたマグカップは、彼のお気に入りだ。ココアの表面に自分の顔を映し、軽く微笑む。その姿には「おかしい」以外にぴったりはまる形容詞が見つからないが、各々が思い思いの時間を過ごすこの空間で、そんなことは人々の気には留められなかった。

 天京都中心部近くにある喫茶店。ここは彼の行きつけだった。特高からも歩けばちょうどいい距離。散歩気分で寄ってリラックスすることのできる、息の詰まる仕事の休憩にはうってつけの場所なのだ。コミュニケーション能力がそもそも高い叶羽だが、ここではもう店長と親子のように仲良くなっている。──店に入った瞬間に何も聞かれず彼のお気に入りのマグカップに注がれた温かいココアと、あたたかい色の照明を反射してキラキラと光る、今にもとろけ落ちてしまいそうな生プリンが運ばれてくるくらいに。

 そして彼が今座っている席は、マスターの目の前のカウンターから少し離れたテーブル席。二人掛けのテーブルを少し贅沢に一人で使う。ここも既に、彼の特等席になっていた。他人と近すぎることもなく、マスターの視界には入るような。一番落ち着く場所だった。

 パーカーの袖の中に手を引っ込め、萌え袖の要領で、まだまだ熱いマグカップを持ち上げ、ふーっ、ふぅーっ、と口を尖らせて息を吹きかける。表面にさざなみが立ち、彼の表情はぼやけて茶色い液体に同化し見えなくなった。この仕草をお洒落な女子高生がやればそこそこ可愛いのだろうが、あいにく叶羽は無駄にひょろっちい図体をした18の男である。中性的な顔立ちは綺麗というには綺麗だが、可愛いと呼ぶことはできない。

 陶器の淵に唇をつけ、ゆっくりと自分の方へ傾ける。熱い液体が舌先に触れ、一瞬びくりと肩を震わせたが、あとは慣れた動作でちょびちょびと器用に少しずつすすっていく。甘ったるくとろけるような味に、思わず顔を綻ばせ、元々だらしなく細めた目を更に猫のように細くした。

「……ふぅー」

 客に珈琲を淹れていたマスターがふとこちらを向く。白髪に丸い眼鏡を掛け、珈琲豆色の蝶ネクタイを結んだ紳士的な雰囲気の彼は、思わず漏れた叶羽の微かな溜息を聞いて、にっこりと青年に微笑みかけた。叶羽もふふ、と笑い声を零し、小さく会釈をする。マスターは頷くと、その表情のまま作業に戻る。叶羽もそれ以上は何も言わず、黙って続きを楽しむ。そう、このくらいの距離が一番いい。近いようでどこか遠い関係は、やはり心地いいものだ。

 ココアを半分ほど味わったところでプリンに移る。興奮を抑えきれずに頬を紅潮させ、つやつやと光るそれにスプーンをゆっくりとさしこんだ。とろりとしていて今にも崩れそうなのに、ぷるぷると震えながら形を保っているプリンに尊敬の念を持ちながら、既に幸せそうな顔をして彼はこの世で一番好きな食べ物を口の中に放り込んだ。



>>All様



【 メイン解禁おめでとうございます〜! とりあえずテンション高いやつなのでベタベタに絡んでくださっても対応できる子です(?)、どんどん声掛けてやってくださいませ! これからよろしくお願いいたします! 】

2ヶ月前 No.3

朝比奈 藤司 @brillante ★iPhone=X7lSIldowa



【 朝比奈 藤司 / 喫茶店ローダンセ 】


 昨日終わらせておくべきだった仕事を、どうにも眠気に勝てず今日まで残してしまった。少し反省しつつも、最近はサングイスと仕事のどちらもを完璧に熟すことが難しくなっていることは事実で、致し方ないといえばそうに違いない。くあっと、涙を目に浮かべて欠伸をする。その行為にまた眠くなるがかろうじて二回目の欠伸はのみこんだ。飲み込んだその次はベットからでなくてはならない。ベットで眠ったのはいつぶりだっただろうか。家に帰ってきて机に向かいそのまま眠っていたり、最近でいちばんひどかったのは風呂場で眠っていたことだ。
 まだ眠っていたいという気持ちがない訳では無いが、いつもよりはだいぶ良く寝た。もそもそと布団から手足を出し、身体を起こす。眠りが深かったおかげか、手足を外へ出したあとはすぐにベットから出ることが出来た。そこからはもう簡単だ。洗面台まで向かい、顔をよく洗う。水がすごく冷たかった、おかげで増して目が覚めてくる。タオルで顔の水気を拭き取るとばしっと、両頬を叩いて喝を入れた。
 絵の具で塗りつぶしたような黒髪をアイロンとスプレー、またワックスを駆使してアップスタイルにしていく。髪の色に似つかわしくない暁色の瞳が鏡越しにこちらを見ていた。少し目を細めてからさっさと、身だしなみを整える。人前にいくのだから綺麗にしておきたいが出来るだけ早く仕事に手をつけたい。
 ご飯は食べなくてもいい。腹は空いているが、なにか飲み物を飲めれば腹は満たされる。それに、なぜだか固形物を食べる気分では無かった。それならばサングイス拠点でもある喫茶店、ロータンゼへ向かおう。パソコンも持っていって、美味しいとは言えないが、のみ慣れた味のコーヒーを飲みたい。そして、仕事も一緒にしてしまえばいい。おそらく、誰かしらサングイスメンバーもいるだろう。


 一度決めたら、行動は早い方で準備を颯爽に済ませて喫茶店に向かおうと、家の鍵を閉めた。今日の服装はなるべく質素なもの。仕事が終わったら喫茶店を手伝おうと思ったからだ。首にぶら下げた錆びた金色のネックレスを服の内側に入れると、喫茶店へ歩き出す。
 あまりぱっとしない天気だった、だが太陽はきちんと顔を出している。過ごしやすい気温ではあったと思う。俺はもう少し空の青さが際立つ方が好きだが。晴れとも言えない、曇りとも雨ともいえないそんな天気は気分さえも晴れなくなるからだ。曖昧なものにはいっそ、名前をつけてしまいたくなる。名前をつけて、片を付けて……。そう、あの爆破事件のことも。そんなことを考えながら歩くとすぐにロータンゼについてしまった。距離が近いから深く考え事をしたいときには向かないが、この身近な感じがたまらなくいい。
 ガラス張りの正面から店内の中を見てみると、やはり客はいなかったがよく知るふたりの影が見えた。少しだけ口角が上がった気がする。こんな世の中だ、見慣れた顔も見れるだげで安心するものだ。
 扉に手をかけると、是枝正太が憂いの声を漏らすのと天野風香の客がいないことに対するため息混じりの声が聞こえた。今日の天気のように重くたれこんでいては駄目だ。人間は自分の意思で曇りがかった空を青く出来るのだから。わざと、いつもよりも明るい声で店の中に入り込む。店の扉にかけられた鈴が心地よい音色を響かせた。
 「…くくっ、正太。風香。そんなくらい声で喋るんじゃねぇよ。ともかくおはよう。今日も客はいねぇようだし、そこの机で仕事をしてもいいか。そんなに時間はかからねぇからよ。…あー、それと正太コーヒーを一杯頼む。風香は、そうだな眠気覚ましの一発。あっと驚くような芸を見せてくれないか」
 綺麗に磨かれた床を靴がかつかつと音を立ててふたりに近寄るとほぼ、無意識に頭をぽんぽんと撫でた。



>>是枝正太、天野風香、周辺Allさま



 【 投稿遅くなってしまい申し訳ありません、そして本編の始動おめでとうございます…!これからどうかよろしくお願い致します。また、絡み文を出したのにも関わらず一人でいる描写が多くなってしまい申し訳ありません。次の投稿からは皆さまとの絡み文を中心にしていくのでどうかお願いします 】


2ヶ月前 No.4

玻璃崎 雪乃 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【玻璃崎 雪乃/自宅(電話)】


マンションには寝に帰っているだけの生活だというのに、この内装は果たして必要だったと言えるのだろうか、悩ましいところである。玻璃崎雪乃は久方振りに、タワーマンションの角部屋に降り注ぐ生まれたての陽光を眺めていた。タッセルに纏めたカーテンをクッション代わりに凭れ、シトラスミントの歯磨き粉を口の中に泡だてている。
陽が高く昇って行くにつれて表情を明るくしていく大都会の街並みは、玩具や箱庭のようで愛おしく見ていて飽きることが無い。
ーーこれが、自分達が守っている世界。自分が、あの方に守るよう信任されている世界だ。この箱庭を治める方が、私を必要としてくださっている。
湧き上がる笑みをとどめても、口角が上がるのを抑え切れなかった。
ともすれば零れそうな歯磨剤の泡を啜りあげると、鼻歌まじりの上機嫌で徐ろに首元のファスナーを下ろす。ふわふわもこもことした薄桃色の寝間着が何の前触れも無しにはらりとほどけ、足元に落ちる。レースもふんだんに乙女心をくすぐる白いベビードールの下着が露わになると、今度はそれすらも脱ぎ捨ててしまった。当然、先程まで悠然と大都会の朝を臨んでいた硝子戸はカーテンも開け放しである。此処が近く並ぶビルも無い高層階だからと知っていていつもこの調子なのだった。「雪乃」というその名に違わない、滝飛沫の白く透明な露が織り成したような絹の肌は微温く肉感的で、透けるように白いながらも不健康ではなく仄かな香り立ち上るような桜色が息づいている。脱ぎ捨てた羽衣を拾いあげるかの如く前屈みになれば、柔肌の豊かな双丘に栗色の巻き髪が落ち掛る。一縷と纒わぬ身体になればそれこそ絵画の一場面のよう…………であるかに見えたのだが。
上機嫌な鼻歌と共に、拾い上げたフワモコパジャマとヒラヒラ下着を、雪乃はひとまとめに丸めて無造作にソファーの上に放りなげた。そのまま平然として浴室へと向かうと、蛇口をひねる音と口を濯ぐ音に続いてシャワーの水音が響く。脱ぎっぱなしに放り投げられていたのがパジャマと下着だけならばまだ良い。高級タワーマンションの一室、豪勢なパノラマ景色を映す180度の窓から取り込まれた朝の陽光に照らされた部屋の、その悲惨な光景たるや。今しがた投げ捨てた寝間着一式の下には、ソファーの座面に届くまでの間にまだ死屍累々と、脱ぎ捨てられた形のままの衣類が積み重なっているのだった。全く、その見た目から溢れる女子力というものを見事に裏切っている。
女は嘘をつく。その事実を男性諸君は肝に銘じねばならない。
玻璃崎雪乃の弁明するにはこうだ。雪乃は自他共に認める頭脳明晰冷静沈着たるエリート特殊警察構成員であり、つまり、忙しすぎる。特殊警察零課通常業務の他にスパイとして警戒対象たるテロ集団・サングイスに送り込まれている。潜入している以上、テロ集団で何もしないという訳には勿論いかず、リーダーである朝比奈藤司に近付く為に大学時代の先輩だったというコネクションを使って副リーダーというポジションに潜り込んでいる。更にサングイスのメンバーの目を欺く為には、「警察」以外の「表向きの本業」を持たなくてはならない。父親の経営下にある医療ビルの美容外科で医療事務をしている。一階はネイルサロン、二階が痩身エステ、三階が矯正歯科、そして四階が美容外科、五階が結婚相談所という容姿コンプレックスの欲望と闇が階段式に垣間見える恐ろしい医療ビルだ。医療事務、テロリスト、そして特殊警察構成員という三つの顔と仕事を持つ身では確かにこの生活に対する言い訳も通用するのかもしれない。
バスルームでは雪乃が、浴槽に身を沈めるところだった。薄く曇る硝子張りの小部屋の中で、もっと寛いでいるかと思いきや、何故か彼女は真顔だった。やがて浴槽に悠々と手足を伸ばすと、漸くほっと息を吐いた。持ち込んでいた防水スマートフォンを操作するとハンズフリー状態で呼び出し音が控えめに響く。零課の人間への簡単な連絡。仕事前の雪乃の日常的な雑務の一つだ。

>(零課の御方)、all


【本編開始おめでとうございます。参加がなかなか遅れてしまいすみません。どなた様もどうぞ宜しくお願い致します。雪乃ですが、まず零課の方と絡むべく電話をさせていただいています。どなたでも取ってくださると大変嬉しいのですが、特になければ「繋がらなかった」で喫茶店へ向かおうかと思ってます。】

2ヶ月前 No.5

深町渚砂 @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=MNgMSKnMpI

【深町渚砂/自宅(電話)】

 陽が昇ったとはいうものの、南向きでないこの部屋は薄暗かった。洒落たインテリアなどとは無縁の、必要なものだけが雑多に置かれた室内。所々にはこの部屋に不似合いな少女趣味のぬいぐるみが飾られていた。その狭い部屋の中央に置かれた低い机で、深町渚砂はノートパソコンに向かっていた。少々派手な色のロングヘアに綺麗に化粧の施された顔。細く長い脚。胡座をかいているのが残念ではあるが。夜の街を歩けば男からの誘いが厄介でならないだろう。カタカタカタ、と文字を打ち込むその顔はひどくつまらなそうだ。これも仕事の一部とはいえ、報告書の作成などやはり性に合わない。画面を覗いたまま、半ば無意識に机の右端を手で探った。目当てのものはない。くしゃくしゃ、と長い髪を掻いた。煙草を止めてもう数年になるというのに、未だに癖が抜けない。気を取り直してしばらくキーボードを叩いてから、少々乱暴にエンターキーを叩いた。

「なぎさー、あれ、家でお仕事? 珍しいね」

 洗面所の方から未成年とおぼしき若い娘が姿を見せる。上下の下着に、ガウンを羽織っただけの出で立ちだ。髪は濡れ、十分に拭いていないのか滴が滴っていた。渚砂は彼女を一瞥すると、床に落ちていたタオルを掴んで軽く投げつける。

「拭いてから出てこい。あと服着ろ」

 女の姿をした渚砂から発せられた声は、男のそれそのものだった。だが渚砂と暮らす少女にとっては至極当然のことで、何とも思っていない様子だった。少女は投げつけられたタオルで髪を拭きつつも、もう一つの「服を着ろ」という命令は聞こえなかったかのように流し、渚砂の隣に座り込む。

「服着ろっつっただろ」
「あとで着るから大丈夫」
「ふざけた格好してると襲われるぞ」
「なぎさになら襲われてもいいもん」
「ガキに興味はねぇって言ってんだろ」
「ガキじゃないもん」

 そんな何にもならないやり取りをしているところに、突如スマートホンのバイブレーションが響いた。画面に表示された名前は、零課の同僚のものだった。先程まできゃいきゃいと騒いでいた少女はぴたりと黙り込んでいる。普段は空気を読むなどという発想がないように振る舞っているが、重要な場面では何も言わなくても察してくれる。渚砂はこほん、と咳払いをしてから画面の通話ボタンに触れた。

「はいはーい。姉さん、どうも」

 先程まで男の声だったはずの渚砂の口から発せられたのは、ハスキーでやや低めな女のものだった。通話口の相手、雪乃は自分が男であることは知っている。だが、仕事上は一応『女』として貫くのが今の渚砂のポリシーともいえるものだった。

>雪乃、all
【本編開始おめでとうございます。サングイスの皆様、一課の皆様、そして零課の皆様よろしくお願いします。雪乃さんの電話に勝手ながら出させていただきました。どうぞよろしくお願いします……!】

2ヶ月前 No.6

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU

【黒瀬 新/警視庁内】


 気付いた時には窓の外は穏やかな朝日に照らされて淡い光を纏っていた。

 ふと目線を寄越したブラインドから陽光が漏れている様を見て、黒瀬は漸く現時刻を知る事となる。先刻の爆破事件に関する新たな書類に向かい始めて凡そ八時間だろうか、照明の強さで陽の光など掻き消された室内に作業に区切りをつけるような一つの息が吐かれた。デスクの上に置かれた既に冷めきっている珈琲の残りを飲み干す。舌に残る独特な苦味が、澱んでいた意識を叩き起す感覚がする。

 一ヶ月前、サングイスによって再三なる爆破事件が起こった。幸いにも迅速な対応、避難により死傷者はいない。だが又してもテロリストの足取りを掴むことは叶わなかった。眼下に報告書に並べられた無機質な文字列に眉間の皺が深くなっていくのが分かる。今でも犯罪者共がのうのうと息をして、武勇を讃えあっていると思うと腸が煮えくり返って仕方が無い。目の前が赤黒く染まっていく。ぶつ、と耳に籠る音が聞こえ、金属を舐めたような味を確認したところで漸く思考が冷えてきた。どうやら無意識に力んだ影響で口内を噛み切ったようだった。
 滲む血が垂れないように軽く舐め取りながら、眉間を人差し指と親指で抑える。夜通しディスプレイを眺めていた目が突然の急速に驚いたのか薄ら水分が滲み、乾いた眼球に浸透する。そういえば何時から自宅に帰っていないだろうか。荷物を取るために戻る事はあるだろうが、休息を取るためにソファに腰を下ろしたのは遥か彼方の記憶である。根気を詰めすぎるとパンクするぞと口煩い忠告を入れてきたのが誰だったのかとそれさえ忘れてしまうくらいには、周囲も諦めがついて口を挟むことはしなくなった。此方からすれば従う気もない為に好都合ではあったが。
 若干伏せられた目に手を近づけ、人差し指の第二関節で睡眠不足により浮かんだ隈を拭うようになぞる。疲労を感じないといえば嘘になるが、休む気にもなれない。奴等の事が脳裏に浮かんで、寝るに寝られない。徐にデスクに両手を付いて立ち上がり珈琲の入っていたプラスチック製のコップを掴んで部屋を出る。

 珈琲が足りないのだ。


>警視庁内ALL



【メイン開始おめでとうございます! 同時に皆様よろしくお願いします。私事により遅れました申し訳ないです。黒瀬は警視庁に置いておきます】

2ヶ月前 No.7

参加希望 @sibamura ★o0W3VsenYO_zRM

【涼宮 衛/通勤中→警視庁内】

 大勢のスーツ姿の人々が闊歩する歩道を、一人の男が歩いている。
 白いワイシャツに、ストライプの入ったダークグレーのスーツ、黒字にシルバーのラインが入ったネクタイ。道行く人々と比べてもそう変わらない彼の服装で唯一違和感を抱くものがあるとすれば、その足元だろう。彼が履いているのは、一般的な革靴でなく堅牢な作りの黒のワークブーツである。身長は180センチ前後で一見標準的な体系をしているが、見るものが見れば彼の四肢についている無駄のない筋肉から彼が何らかのスポーツ、あるいは武道をやりこんでいることが分かるだろう。頭髪はこの国で一般的な黒髪で、短かめにカットされ、セットされている。目鼻立ちは特に秀でているというわけではないが、若さから来る活力というべきか、あるいは意志の体現化というべきか、きびきびと動くその姿は快活な印象を人に与えるだろう。
 彼、涼宮衛はそういう類の男だった。
 そんな彼が向かうのは大手企業のオフィス街、ではない。彼が向かうのは官庁街。その中でも、門と壕にほど近い建物へと彼は迷わず進んで行く。建物に入る数歩前、この国を統べるお方がましめす建物に一礼し、入口に立っている警備に声を掛けて中に入る。いつものようにIDをゲートに通せば、そこはこの国の治安を守る者たちがひしめき合う場所。

「おはようございます。」

 毎朝顔を合わせる受付嬢に挨拶をしてからエレベーターに乗り込むと、自分と同じように出勤してきたであろう幾人かの男たちも我先にと狭い空間に押し入って来る。
 こんなことなら階段を使えば良かった。そう考えながらエレベーターに揺られることしばし、目的の階に到着した衛は自分の部署のオフィスに颯爽と歩いていく。
 今日も上司は徹夜で仕事をしていたのだろうか。目の下にクマがないこと姿を見たことがない上司の姿を思い浮かべながら、ドアを開けると、調度その上司が空のコーヒーカップを片手に課長室から出てきたところだった。

「おはようございます、課長。また、徹夜ですか?」

 見事な敬礼と挨拶を行った後、衛は気づかわし気に尋ねると同時に右手を差し出した。珈琲をいれましょうか、ということなのだろう。この上司が超過勤務はするのは今に始まったことではないし、今のところ仕事も正確、指示も的確だ。だとすれば、若造の自分がどうこういうよりも、自分より数倍有能な上司の自己管理に任せて、自分はせいぜい彼を支えよう。
 彼、涼宮衛はそういう考えの出来る男だった。

>> ALL様 黒瀬様


【メイン解禁おめでとうございます。なかなか書き込めませんでしたが、これからよろしくお願いいたします。】

2ヶ月前 No.8

自由 @nanamaru☆43ke11mKtUk ★iPhone=dgcL1EDLvj

【 夢月 叶羽 / 移動→警視庁 】

 ごちそうさまでした。小さくマスターに声を掛け、その若い容姿には不相応な分厚い財布から代金を取り出す。18歳になってクレジットカードなんてものも視野に入って来た頃だが、何せ手続きが面倒くさい。何をすればいいのか調べたわけでもないが、調べるのも面倒くさい。それに一応未成年なのだからどうせ親の承諾なんかも必要になってくるだろう、自分の場合誰に頼めば良いと言うのか。それならまあ数年の間くらい現金を持ち歩いていたって苦にはならない。お金をおろすのさえ面倒なせいで、いつも叶羽の財布は、はちきれそうになりながらパーカーのポケットに窮屈そうに押し込まれていた。

 そういえば、黒瀬さんは今日も徹夜だろうか。

 ふとそんな考えが頭をよぎる。自分たちが粛清すべき敵、サングイスが暴れまわっているにも関わらずそれを打破出来ていないこの状況で、仕事場にも行かず喫茶店でのんびりしていた無神経にも程がある叶羽が言うのもなんだが、あの人はやっぱり根を詰めすぎているように思う。それが彼の性格なら仕方ないだろうが、身体を壊されては元も子もない。

「 ……ねえマスター、いつものプリンをいくつか貰える? あ、うん、センパイにね、食べさせてあげようと思って。ここのとっても美味しいし! えっ、まけてくれるの? 本当に? わああ嬉しいっ! うん、感想聞いてくるよ。うんうん、また今度センパイ連れてくる。ありがとう、またねっ。 」

 センパイ、なんて濁した言葉を使ってみる。もし学校に行っているならば、こんなところで朝っぱらから悠々としている暇はないだろう。しかしそれでいてマスターは何も聞いてこない。いつもの微笑みでただ頷き、包装してくれている。やっぱり「このくらいの距離」が一番楽だ。

 マスターには何も言っていない。自分が特別高等警察第一課参謀、夢月叶羽であることも、四年前のあの日まで世間を騒がせていたテロ集団、アノニムの組織員であったことも。この関係は心地良くて、でもほんの少しだけ心の片隅に残った良心が、ほんの少しだけちくり、と痛む。

 僕の全てを知ったときに、ここの人たちはそれでも自分を受け入れてくれるのだろうかと思ったことは一度や二度ではない。でも、そんなことを考えたって仕方がないといつも途中で思考を止める。答えにはまだ、行き着いてない。答えに辿り着くのが怖いのだ。

 店のロゴが入った綺麗な紙袋を受け取り、やっと店をあとにする。時刻は通勤時間帯より少し遅め。喫茶店に入って行く頃にはスーツ姿のサラリーマンで賑わっていた街道には、石段の上で寝そべる一匹の黒猫と、ベンチに座る老人しか残されていなかった。


 もう廊下にすら誰もいない警察庁にふらりと入りこむ。パーカーにジーンズを合わせた彼のラフな服装と仕事に今からかかるとは思えない気怠げな表情は、職員というよりは、はるばる警察庁まで道を訪ねに来た子供か迷い込んで来た浮浪者にしか見えない。目にかかる前髪を鬱陶しそうに払いのけ、鼻歌を歌いながらリズミカルにエレベーターのボタンをパパンッ、と押し、自分の部署へと向かう。ドアをバタンと音を立てて開けるなり、叫んだと言っても良いような音量で口を開いた。

「 おっはよーうございまあす! 」

 溢れんばかりの笑顔とどこからか現れる謎の可愛らしい花のエフェクトを無差別に辺りに撒き散らし、自分に与えられたデスクに向かおうとする。が、そこでひとりの男が目に入った。そう、先程叶羽の頭によぎった黒瀬 新である。やはり今日もその明らかに不健康そうな顔には、長年の付き合いであろう隈が居座っていた。珈琲を飲もうと出てきた、といったところか。睡眠も食事も十分にとらずによく生きているなあ、なんて純粋になんだか圧倒されながら思う。それから、その隣で珈琲を淹れようと佇んでいるのであろう涼宮。二人に同時に声を掛けられる、これはラッキーだ。

「 おはよう、黒瀬さん、涼宮くん。ね、僕さっきそこの喫茶店行ってきたんだけどね、そこのプリンがほんっとうに美味しいの。買ってきたからね、もしお口に合わなかったら申し訳ないんだけど、良かったら食べてよ、ねっ。甘いのとかあんまり好きじゃないかもしれないけど……。多分大丈夫、あんまり甘すぎることもないから 」

 ここに自分のことを本当に味方だと思ってくれている人がどれだけいるのかは知らない。こいつは良いやつだと思ってくれている人なんて、いないかもしれない。そう思われて仕方のないことを自分はやってきた。今まで何人の命を犠牲にして、その上で何を手に入れたのかなんてよく分からない。ただ必死に生きようともがいた結果だ。まあ正義なんて立場や価値観によってすぐコロコロ変わるのだから、後悔やら反省やらそんなことはしてないし、今更そんなことをするつもりもない。けれど、そんなことは関係なしに、一方的な気持ちでも、仲間には健康でいて欲しいのだ。

 それとも、この人ならば、健康よりも、自分が生きることよりも、サングイスへの粛清が大事だと言うだろうか。でも死んでしまえば粛清どころではない。いや、それも分かった上で、だろうか。

 息抜きも大切だよ、なんて黒瀬に言っても無駄なのは分かっている。だから少しの時間でも良い、少しだけゆっくりしてもらえるように、ゆるりと自然に見えるであろう人工的な笑みを浮かべ、プリンと付いていたプラスチック製の使い捨てのスプーンを二人に差し出した。



 >> 黒瀬様 、涼宮様 、周辺All様

2ヶ月前 No.9

玻璃崎 雪乃 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【玻璃崎 雪乃/自宅(電話)】

浴室に反響する機械的な呼び出し音。それは比較的短い間に途切れ、中性的な声が何処か気怠げに返ってくる。声の主は深町渚砂。同じ零課に勤める同僚だ。

「おはよう、渚砂。今日はこれから私、出掛けてくるから、みんなにもよろしくね」

浴槽の壁に背を預けた体勢から、縁に両腕を重ね顎を置く姿勢に移る。肌が湯面を切れば受話器の向こうにもチャプチャプとした浮かれた音は伝播し、浴室には甘く青いローズの濃密な香りが立ち込めた。
サングイスのメンバーの会議に出席する時には、零課の誰かの元に一報を入れることになっていた。履歴が偏ることのないように、日替わりにしていたが、今のところ女性の携帯を覗こうとするなどとせせこましい事をしそうな輩には会っていない。

「なんだか、また新しい事をしようとしているみたいよ」
うふふ、と湯気に上気した血色の良い唇が笑う。また水温が響く。重ねた両腕に左頬を寄せる様はさも眠たげであるが、もうとっくのとうに目は覚めて思考はクリアだった。ぽてりとした口唇を舌で濡らして、トリートメントを漬けおいている髪を弄んだ。
仕事の為の建て前とはいえ、自分の「同志」ということになっている朝比奈藤司のことを、雪乃は心から憎からず思っていた。直向きで健気で悲運にある年下の男というのは、なんと蠱惑的なものだろう。二つの顔の何方でも「可愛い」と口癖のように嘯く彼女の言葉は、却って本気めいた現実味を伴わない。事実、「敵味方の恋」だなんて甘美な悲劇は考えてもいないのだ。愛しい者達は、可哀想だからこそ愛しいのだから。
このところ、サングイスによるテロ犯行計画はことごとく上手くいっている。去る真宿駅爆発テロ事件の犯人を血眼になっておっている一課の面々もそろそろ気付いても良い頃合ではないかと思っていた。これまで順風満帆にやってきた若者達の勢いが、たとえば誰かのミスで挫かれて、足がついてしまうことになったとしたら。その時、掻き乱すべき標的衆には一体どんな波紋が投じられるのだろう。

再び水面が大きく揺れる。一人分の体積が湯船から抜け出す無遠慮な水音が立つ。薄紅真珠のヴェールを脱ぎ捨てて洗い場に降り立つ桜色に上気した素肌を、柔らかなシャワーの雨が打つ。ガラス張りの浴室に立ち込めた春霞のような湯煙が、濛々として香のように舞い上がった。コンディショナーを洗い流し、独特のぬめりが首筋から背筋、腰から下へと伝ってゆく。無用な生活音を暫く垂れ流してからようやく、雪乃はさっきから渚砂との通話状態が切れずにそのままになっていたという事に気付いた。

「……あら……ごめんなさいねえ。何かお土産のリクエストはあるかしら?」
渚砂は女と見紛うばかりの容姿を繕いそれに似つかわしいように喋るが、本性は男である。雪乃もその事実を当然知っていたが、だからどうという事もなく、涼しい声音を上げる。

>渚砂、all


【絡みありがとうございます! お返事遅くなってしまいごめんなさいー!!(汗)】

2ヶ月前 No.10

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU


【黒瀬 新/警視庁内】



 ドアノブから伝染った金属特有の冷たさを掌に感じつつ後ろ手に扉を閉める。目線を寄越した室外の窓からは先のブラインド越しのものとは比に為らない程の朝日が差し込んでおり、目覚ましには丁度いいとも言えるだろうが腹の底から出てくる本音は鬱陶しいの一言だった。というより疲弊した眼にとっては少々照度が強すぎるのだ。過ぎた光でじわりと浮かぶ痛みによって自然に寄せられた眉根を隠すこともせず、容赦無く双眸に刺さる日差しを片手で軽く遮りながら歩みを進め始めたところで、タイミングが良いのか悪いのか部署と廊下に隔てられた扉が開いた。その先から姿を現した男────自身の部下の一人である涼宮 衛は、此方の姿を確認してすぐに若者らしい快活とした表情で敬礼と挨拶を述べた。
 言動から見て取れるように彼は市民の理想的な警察のそれと言おうが過言ではない人物だ。内部から見ても時折眉を潜める程の、権威を振りかざすしか脳の無い輩も少ないとは言えぬ環境では稀有な存在である。しかし視点を変えれば、サングイス辺りの独善的な正義に唆され易い部類でもあろう。狡猾な手にかからなければいいが。
 そんな一課の中でも特に明確な正義感を持つ涼宮は流れるような慣れた手付きで自身へと手を差し出していた。恐らくコップを持っている様子を見て己が珈琲を注ぎに行くと察したのだろう。気の回る部下だとは思うが、好意を素直に受け取るような姿勢が黒瀬にあるかといえば答えは明らかに否であり、その意思を読み取った黒瀬はやはり表情を変えること無く少しだけ伏せられた双眸を彼の視線と合わせて口を開いた。

「ああ、お早う。処理しておかなければならない書類があったからな。……これは息抜きも兼ねている、気を使う必要は無い」

 断りと共に一言ありがとう、とでも言えば感じは良いだろう。しかし生憎そんな配慮が出来るような上司で無い事は周知の事実だ。話を切り上げる形で「荷物を置いてくるといい」と彼の横を通り過ぎようとしたその時、あまり間も置かずに再び扉が開かれる。涼宮の時よりもやや力強く、言い方を悪くすれば乱暴に開けられた戸の先から分かりやすく元気の良い挨拶が響いた。異色な未成年の一課所属であり、警視庁内では嫌でも目立つパーカーにジーンズというラフな格好。見間違える事も無い、このような特徴的な存在はこの青年────夢月 叶羽くらいだ。
 元テロ組織の一員という経歴さえ普通では無い彼は一見すれば年齢通り明朗で少し抜けた部分のある青年としか思えないが、その腹の中は不明瞭の一言。反逆するような素振りを見せることがない故に、未だに元組織の象徴であるブレスレットを身に付けている事を疑問視やら問題視する意見もちらほら上がってはいるらしい。単純に過去の仲間への思慮の表れなのか、真相を知る術は無いがどうにしろ役割を果たした上で裏切らないという確証さえ得られれば特に重要視する事柄では無いだろう。
 そんな周囲の反応などお構い無しな青年から繰り出されるプラスチックに収められた甘味と、無邪気で止まることのない言葉へ「いや」やら「俺は別に」やらの断りを挟もうとするが結局は念を押されるような笑顔に負け、最後には薄い口を紡ぎ小さい溜息をついた。

「……分かった、貰おう。俺のデスクに置いておけ」

 若人の力とは恐ろしいものだ。この数分で何故か若干増えたような気がする疲労を感じつつ、夢月へと自身の職務室である部屋の方向を示して珈琲を入れ直す為に二人へ背を向けた。

>涼宮、夢月



【返信が遅くなってしまい申し訳ない。絡みありがとうございます】

2ヶ月前 No.11

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_zRM

【鳳嘉音/東雲宮・自室】

 帰る家など疾うに失した男にとって、仕事をするのに朝も昼も夜もない。
 その日も、鳳嘉音が目覚めたのは書類上の住まいとして荷物置き場にしているマンションの三階の部屋ではなく、特別高等警察零課の仕事場だった。零課の人間には各自部屋が与えられているのを良いことに、嘉音は自分の仕事部屋に立派なベッドを持ち込んでいる。それでも十分すぎる広さを持つ部屋は、和室としての景観が若干可笑しなことになっていること以外、仕事に支障をきたすようなことはなかった。
 気怠そうに起き上がり、サイドテーブルに置いてある眼鏡を手探りで掛ける。ぼやけまくっていた視界がクリアになると同時に、夢の中にあった意識も覚醒させる。
 懐かしい夢だった。まだそこに母の笑顔があった。それがもう二度と戻らないものだと思い出させてくれた。自分のやるべきことを、生きる理由を、朝から思い知らせてくれた。

 何処か温かく、そして暗く口元をほころばせた嘉音は、適当に身支度を整え始める。今日は塾講師の仕事も、零課の方で急ぐ用事もない筈だった。その辺にあったシャツに着替え、自家焙煎のブラックコーヒーで朝食を流し込む。急ぐ理由もないがのんびり一息つく理由もないので、そのままパソコンを立ち上げインターネットをを開く。
 大義名分は一切なくとも、嘉音も零課の人間であることとは変わらない。つい一月ほど前にも爆破事件があったばかりなので、世間の動き――ついでに、安野首相のスキャンダルに繋がりそうな事象――には気を配っておくに越したことはないだろう。尤も、特別高等警察によって取り締まりが強化されているこのご時世、おおっぴらにネットで情報発信がされている訳がないのだが。
 天王陛下への賛辞やサングイスへの罵倒が並ぶ画面にはさっさと見切りをつけて、メールを開く。特に誰からも連絡は入っていない。仕事の催促も、現在どこぞの組織に潜入中の仲間からの定期便もない。後者に至っては他の二人のどちらかに行っている場合もあるが、それならそれでそのうち此方にも情報が流れてくるだろう。
 キャスター付きの椅子が転がりそうな勢いで、後ろに仰け反った嘉音は大きく伸びをする。どうやら現時点で嘉音は手持ち無沙汰になってしまったようだ。
――もう暫く此処で連絡を待って、何もなければ久々に一課でも冷やかしに行こうか……。
 そんな取り留めもないことを考えながら、嘉音は規則的なリズムを刻む時計を見上げていた。

>零課ALL

【大遅刻ぶちかましてしまい申し訳ありません、しかも誰ともまともに絡めていなくて重ね重ね申し訳ありません。
 遅くなりましたが、本編開始おめでとうございます。改めて皆様よろしくお願いいたします】

2ヶ月前 No.12

崎山 @caim ★Vxqs1Pnm4y_mgE

【大狼 椿/警視庁内】


 シャワーの蛇口を捻る瞬間も、頭から湯を被るその瞬間も、まるで他人事であった。ただ今は、水を弾く壁のタイルだけが認識できる現実であった。

 点だらけの記憶を、目印もないままに探っていく。件の事件について資料を纏めていた矢先、気が付くと時刻が明け方に迫っていたことは確かに記憶にある。それから、集中が切れたことをきっかけに仮眠でも取ろうとデスクを離れたは良いが、――例のフラッシュバックに見舞われて、気付けば一時間ほど警視庁内の道場にて一人稽古をつけていた、らしい。らしい、というのは、身体を動かしていたという記憶がないのだ、全く。脱ぎ捨てられたジャケットに、額から流れる汗に、ただそう結論付けただけであった。当時ほどよく身体の疲労を感じはいたが、不思議と息は上がってはいなかった。
 その覚醒しきっていない意識のままで両の足を無理矢理に引きずって、眩む視界のままシャワールームへとたどり着き、そして今に至る。

 息を止める。できるものならば、溺れてしまいたかった。
 右手で、前髪をかき上げる。細かな水滴が跳ね上がり、不意に下ろした右手甲の“それ”に、思わず視線が縫い付けられた。否、見惚れた。そのまま視線を二の腕、そして左の腰へと流していく。自身の身体を取り囲むように伸びるそのケロイドに、口角が吊り上る。見る度に、俺はケロイドに抱かれているのだと思い知ることができた。当時、傷を残しておいてと懇願したのは幼い俺であった。不審がる周囲を騙し切るだけの出まかせを、俺はもう習得していた。成長し皮膚が伸びきった先、それが両の腕のような形であると気付いた時は、俺は言い知れぬ恍惚を覚えた。そう、これは加護だ。
 シャワーの水圧を強める。この引き攣った笑い声を、シャワーの水音で掻き消してしまいたかったのだ。

 どれだけそこにそうしていたのか。足りない酸素を補おうと、早々に着替えの衣服に身を通し外へ出る。袖に、小さく冷たさを感じた。薄緑色の石のカフスリンクス。去年の誕生日にこれを俺へ贈った相手とは、二週間ほど会えていなかった。とても、会える状態ではなかった。勿論、仕事だけの話ではない。ジャケットを羽織り、――部署を目指し人気のない階段を上がっていく。
 脳裏に浮かぶのは、件の爆破事件のことであった。果たして、四年前の真宿駅爆破事件と一か月前の西上大学爆破事件につながりがあるとして、なぜ被害に差があったのか。メッセージ性があるとすれば、犯人らの思惑はどこへ向いているのか。――いや、そんなものはどうでもいい。ただ、その中の矛先の一つが俺に向けさえすれば良いのだ。

 微かな甘いにおいに鼻先を上げ、思わず足を止める。少し先で、一課の課長、参謀、部下の涼宮の三人がなにやら会話をしているようであった。参謀の姿に無意識に部署内の時計を見遣る。どうやら、デスクを離れてかなり経っていたらしい。

「……おはようございます」

 デスクへ向かう間、三人へと頭を下げた。ここに居る一課全員と、俺の目的は同じである。しかし、真の目的を果たすことにおいては、己へ向く評価を欺かなければならない。通り過ぎる中、握りしめた右手の革のグローブがみしりと鈍い音を上げていた。そう、“悲劇”に浸り切るには満ち足りた日常を守り続ける必要があるのだ。


>黒瀬、涼宮、夢月、ALL
【遅くなりましたが、本記事解禁おめでとうございます! 皆さんよろしくお願いします!】

2ヶ月前 No.13

涼宮 衛 @sibamura ★o0W3VsenYO_zRM

【涼宮 衛/警視庁内】

「はい、了解です。」

 珈琲をいれるという彼の提案を断った黒瀬の言葉を、衛は特に感情の動きもなくそのまま受け取った。黒瀬という男の元に配属されて数か月が過ぎたが、この男の行動には、少なくとも部下に対しては悪意はない。ただ彼が不要だと考えたから断った、それだけのことなのだろう、その程度に彼の態度を解釈できるほどにはこの上司に慣れてきていた。
 黒瀬の言葉に従って荷物を自分のデスクに置こうとすると、

『おっはよーうございまあす!』

 黒瀬のそれとはまったく逆の元気な声量が一課に響き渡る。声の主を見やれば、予想と違わず夢月叶羽だった。一見すると華奢な少年にしか見えない彼がどうして精鋭である一課に在籍しているのか、衛はその理由を知らないし、知る必要もないと思っていた。夢月の作戦立案能力は確かなものだし、情報処理能力も衛とは比較にならない。だとすれば、彼を疎外する理由など衛にはなかった。

「ありがとう、いただくよ」

 こちらにプリンとスプーンを差し出してくる夢月の手からそれらを受け取ると、衛は笑みを浮かべた。正直甘いものが好きなのである。と、

「大狼さん、おはようございます。」

 こちらへと声を掛けたもう一人の同僚に返事を返す。右手に革製のグローブをはめた大狼は、こちらへの挨拶もそこそこに自分のデスクへと向かっていく。
 そんな三者三様の上司と同僚の行動を見つつ、衛は給湯室へ向かった。
 ティーポットとカップへと湯を注ぎ、十分に温まるのを待つ間に戸棚から私物である紅茶の葉の入った缶を取り出して蓋を開ける。そのころにはティーポットとカップも温まっているので一度湯を捨てて、ティーポットに3人分の新しい湯と紅茶の葉を入れる。ほのかな香りが給湯室に漂い、彼の鼻腔をくすぐる。
 一課では黒瀬を始めとして珈琲党が多いようだが、衛はどちらかというと紅茶党であった。そのためにわざわざ私物の紅茶を持ち込み、朝にはコーヒーの代わりに紅茶を飲むことにしているのである。
 十分蒸れたことを確認すると、三人分のカップに茶こしを使いながら丁寧に緋色の液体を注いでいく。最後の一滴まで注いだことを確認すると、衛は三つのカップを盆に乗せてオフィスへと戻っていった。

「はい、夢月くん。プリンのお礼にしては安いけど、どうぞ。大狼さんもよかったら。」

 そういって、二人へと紅茶をすすめるのだった。

>> 一課ALL様

2ヶ月前 No.14

自由 @nanamaru☆43ke11mKtUk ★iPhone=dgcL1EDLvj

【 夢月 叶羽 / 警視庁内 】

「 いえいえ、ふふ、なんだか嬉しそうな顔してくれて良かったあ。」

 警察官の鑑のような性格をした涼宮が、明らかに甘そうなものを笑顔で受け取ってくれるとは意外だった。

 いやよく考えてもみろ、こんな大人の男ばかり集まった職場に誰がプリンなんて持っていくのだ。自分が好きだからと思わず買ってしまったが、冷静に考えればちょっと不適切だったかもしれない。まあ自分が好きなものを他人にあげるわけだから、こちらとしても悪意があるわけではないわけで、もうやってしまったことは仕方ない。少数派かもしれないが、こうして喜んでくれた人もいることだし。

「 ん、わかった。 」

 黒瀬の指の動きに合わせて頭をそちらへ向けていき、その指が彼の部屋を指し示していると途中で理解すると、また笑顔で相槌を打つ。安堵の笑みと、嬉しさの笑み。くるりと爪先立ちでターンして、珈琲を淹れ始めた彼に背を向け、彼と丁度背中合わせになり、彼の部屋に向かうことにした。

 なんだかんだ言っても叶羽は参謀でしかない、果たして課長室に入っても良いものか。そんな思考が頭を過らないことはなかったが、一秒と経たないうちに、まあ許可あるんだしいっか、と考えることを放棄する。気楽な頭は無意識のうちに鼻歌を歌うようにと命令を下した。

 もう片方のプリンは誰かの席に置かせてもらい、黒瀬の分のプリンの蓋に、使い捨てのスプーンを人差し指でくっつけ、スキップしながら彼の部屋へと向かう。課長室なのだからマイスプーンとかそういうのもあるかもしれないが、まあ好意として付けておくに越したことはないだろう。

 ガチャリ、無機質な音がしてドアが開く。立派な部屋だ。ここで彼はずっとずっと過ごしているのか。眠ることも少ないだろう、せいぜいさっきのように珈琲を淹れにそこに出るくらいで、外出なんてここ最近ずっとしていないのではないだろうか。これはいけない、今度是非あの喫茶店に連れて行かねば。謎の使命感に駆られながら、珍しく緊張した面持ちで一歩、足を踏み入れる。支えをなくしたドアがパタンと閉まり、辺りには静寂が立ち込めた。なんとも言えない気まずさを独りで感じ、黙って指定されたデスクにプリンを置くと足早に部屋をあとにする。静けさは、嫌いだ。

「 おお、大狼さんおっはよーう! ね、ね、今ふたりには渡したんだけどね、プリンどーう? お口に合わなかったら申し訳ないんだけど、甘すぎることもないから、良ければ一口だけでも食べてみて。もしアレだったら捨ててもいいから、ね! 」

 大狼の姿を見つけるなり、彼の大人しめの挨拶を半ば遮るようにして弾んだ声を上げる。先ほどと同じような宣伝文句を口にしながら、お洒落な紙袋から出したプラスチック容器を頬の横で軽く振って見せた。

 自分のデスクに座ると、ううーと小さな呻き声を上げながら伸びをする。今日もまた相棒──要するにパソコンだ──と一緒に過ごすことになるのか。流石に目が痛い肩が凝るしんどい。黒瀬の前では死んでも言えないような言葉が頭を巡る。本当にあの人はどうやって生きているのだろうか。純粋に疑問だ。

 キィ、またオフィスの扉が開く。くるりと椅子を回してドアの方を振り向くと、涼宮が紅茶の入ったカップを運んできているのを見てガタン、と音を立てて立ち上がった。

「 わあ、涼宮くんおかえりなさーい! わわっ、すっすごい、これ自分で淹れたの……? お返しなんて気にしなくて良いのに。でも、ありがとね。 」

 満面の笑みで台詞を並び立てお礼の言葉を述べると、カップに手を伸ばし、立ったままそろりと口をつけた。猫舌だから、ちょっと待ってね、と困ったように眉を下げて笑みを浮かべると、ふうふうと表面に息を吹きかける。

 正直に言えば紅茶は苦手だった。

 口に入れたときに広がるあの苦味だ。紅茶好き諸君はきっとそれが美味しいのだと言うに違いないが、苦いものが苦手な甘党にとってそれは風味でもうまみでもなんでもない、ただの苦痛である。牛乳に紅茶を少し混ぜたレベルのものなら絶対に美味しいとは思うのだが。

 それでも、せっかくの好意を無駄にするわけにはいかない。僕だってプリンいらないって言われたらちょっと悲しいもの。まあ好きじゃないのならしょうがないけれど。

 美味しい。涼宮くん紅茶淹れるの上手いね、プロみたい。そんな言葉を相手に掛け、少しずつ紅茶をすする。

 ブレスレットと鎖が擦れて、ジャラリと濁った音がした。


 >> 涼宮様 、黒瀬様 、大狼様 、周辺All様

2ヶ月前 No.15

神崎りりか @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

【 是枝正太 / 喫茶店ローダンセ 】

いつの間にか喫茶店に現れていた天野を遠巻きで眺めつつ、突然鳴ったドアベルの音に反射して顔を上げる。
「あ、おはようございます。朝比奈さん」
そう言葉を零す正太の視線の先には大悪党の頭領、朝比奈藤司の悪そうな笑顔があった。いつもより彼の顔がスッキリしているように見えるのはゆっくり睡眠を確保出来た証拠だろう。西上大学爆破の後始末を終え、サングイスはようやく平穏無事な生活に戻ったようだった。というのは他の仲間から聞いたことであって正太の知るところではないのだが。

「ええ、この不味い珈琲を飲みたいんですか?」

久しぶりの注文に、朝比奈に頭を撫でられることに一切の抵抗を見せないまま正太は顔を顰める。
決して良いとは言えない独特な香りを発し続けるそれを眺めながら「まあ朝比奈さんがそれでいいならいいですけど」とぼやきつつ、正太は新しいものを用意し始めた。
しかし頼まれたとはいえ、不味いと知りながらそれを出すのは少々気が引ける。今度こそ失敗しないように、そう心の中で念じながら再び淹れるもやはり結果は同じことで、また生み出してしまった未知なる濃褐色を申し訳なさそうに朝比奈に手渡した。正太は彼の反応を見まいと視線を落とした。

「そういえば僕が居候を始めてから今日でちょうど一カ月が経ったんですよ」
空気を変えようと正太は壁掛けのカレンダーを指しながら話題を変える。
「本当に、特高の人たち追ってきませんでしたね」
そう呟く正太の目は感心の色に染まっていた。
目の前の男は大悪人であるはずなのに、この奇妙な共同生活は人の感性を捻じ曲げる力でもあるのだろうか。今では朝比奈をどこにでもいる、頼れるお兄さんのようにしか捉えられない自分がいた。
結局あの世にも恐ろしい特高警察を物ともせずに犯行をやり遂げたサングイス。やはり「国家一級」の名は伊達ではないようで、最初に抱いていた疑念や不信はいつのまにかどこかへ消え去っていた。


>風香さん、朝比奈さん、周辺おーる様

2ヶ月前 No.16

かささぎ @september9☆l2RtaxPLX0X6 ★gXyGHSaxw7_M0e

【 吾妻 純 / 屋外→喫茶店ローダンセ 】

 十二月の空気は日中といえど冷たい。吾妻純は首に巻いた藍色のマフラーに顔半分をうずめ、細い両手をコートのポケットに突っ込みながら足早に歩道を歩く。クリスマスからまだ一日しか経っていないにもかかわらず、街に昨晩までの喧騒や、あの特別な雰囲気は微塵も残っていなかった。目前に迫った年末の空気が、ただただ人々を急かしているようで。せかせかと歩く人々の合間を縫って、純は一人うつむき加減で脚を進めていた。
 吾妻純は、天京都の私立大学に在籍する学生であり、テロ組織、サングイスのメンバーでもある。そして、その二つの顔以外に、彼にしか知り得ないもう一つの別の顔があった。
 殺人鬼。それも、残忍な方法で人の命を奪う、通称「特高狩り」の犯人。それが彼の三つ目の顔だった。
 その細い指は幾度も引き金を引き、その耳は幾度も悲鳴と銃声を聞いた。その瞳は何度も飛び散る花弁の如き赤と、事切れた被害者の青白い顔を見た。そしてその口で、彼は嘲笑う。行き場のない憎悪を復讐心を標的に向け、叶わぬ恋慕にも似た羨望を自身に向け、ひとを殺しては自己満足に浸るのだ。その狂気の果にあるものが何なのか、最早彼自身にもわからないだろう。
 しかし、これを続けることが、彼が彼であるために、必要なことなのだ。

「――くしゅんっ」

 ふと、立ち止まれば、彼の口から小さなくしゃみが溢れた。だんだんと風が強くなってきているのがわかる。数度頭を振れば、長めの前髪がふるふると揺れた。早いところ風が防げる場所へ行かなければ。純は先程よりも歩く速度を早める。
 数分してたどり着いた其処は、サングイスの隠れ家である喫茶店「ローダンセ」だった。実家を出て暮らしている純にとって、最早実家の様な場所である。客は、他のメンバーはいるだろうか? かじかむ指先を伸ばし、喫茶店の扉を開ける。

「――しつれい、します」

 おずおずと頭を下げ、マフラーでやや籠った声で挨拶をしながら、純は店内へ脚を踏み入れた。其処には、つい一ヶ月前の大学爆破事件の際に保護した是枝と、同じメンバーでありマジシャンの天野、そしてサングイスのリーダー、朝比奈の姿があった。きっと誰もいないだろうと半ばあきらめていただけに、純は数度目をぱちぱちとまばたきさせた後、三人よりもやや離れた位置にある四人がけの椅子にゆっくりと腰をおろした。

「誰も居ないかと思ってたので、ちょっとびっくりしました」

 ふわりとした笑みを浮かべながら、首に巻いていたマフラーを取り、コートを脱ぐ。店の暖房が心地よく、純は日に当たる猫のように一度、大きく伸びをした。

>正太くん、風香さん、藤司さん、おーる 【大遅刻も甚だしい……顔出すのがめちゃくちゃ遅くなってしまって本当にすみません……。これから宜しくお願い致します……】

1ヶ月前 No.17

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU

【黒瀬 新/警視庁内】


 続々と現れる部下達から踵を返して、大狼の挨拶に対して、顔は向けずとも此方も短くおはよう、と返答を投げながら和気藹々と飛び交う声を背後にコーヒーメーカーのスイッチを押した。少しずつ独特な、どこか落ち着く匂いが鼻を掠め始める。
 即座に出来るものでもなく、手持ち無沙汰になるだろうがコップを台の上に置けばプラスチック特有の軽い接触音が耳に入る。後ろでは涼宮が、入れた紅茶を菓子の礼だと夢月に渡しているであろう会話が聞こえて、何時だったか何処かの喫茶店で試しとして飲んだ紅茶の甘さに眉を顰めた記憶がぼんやりと思い返された。元来甘味がそれ程得意で無いのに同僚の勧めだったそれを一度だけだからと特に考えもせず頼んだのだ。今から思えば彼奴は相当の甘党であって、そこから想定すれば招かずとも予測できる結果だったというのに。今でも容易に思い返す事が出来るあの舌に残るようなざらついた甘さは、己にとっては十分すぎるくらい苦い思い出になっている。
 そんな内に籠っていた意識はカチ、とコーヒーメーカーのスイッチが戻る音で漸く戻された。慣れた手つきで置いていたコップへと定量注ぎ、冷ます為にほんの少しだけ息をかけて口に含む。独特な苦味が染み込むように喉の奥へと流れ落ちていく。
 背後を振り返れば先程まで雑談に興じていた者達が少しずつ職務へと戻って行く姿が見えた。先の光景だけを見れば朗らかと称する事が出来るであろう彼等は、一度切り替えが入れば他の人材とは一線を画すと言っても過言では無い有能揃いである。

 豹変して真面目な様相でディスプレイへと向かう彼等の姿を眺め、自身も既に飲み終わったコップをぐしゃりと握り潰して職務の続きに戻る為に課長室へと戻る歩を進めながら手近なゴミ箱に落とした。

 さあ、卑劣で憎むべき犯罪者を引き摺りださなければ。


>警視庁内ALL


【大遅刻した挙句すごい絡みにくい文を落としてしまったのですが、そろそろシーンが変わるかな? という甘い考えの上のレスです。申し訳ない】

1ヶ月前 No.18

崎山 @caim ★Vxqs1Pnm4y_mgE


【大狼 椿/警視庁内】

 遠ざかる課長である黒瀬の背を見ながら、少しだけ長く目を閉じる。あの目の向かう先を想像しては、皮膚が小さく震えるようであった。ただ現時点においては、この正体が畏怖に似た武者震いであるとそう勝手に結論付けるほかない。俺の抱く全てを知りたいという思いは、最早職務などを超えた場所にまで到達していた。
 ふと、弾むような声が自分の名を呼び止める。小さく肩を浮かせるように声に反応しては、夢月が此方を見ながらプラスチック容器を手にしていた。――プリン? あまりにもこの場の空気からかけ離れたその単語に、思わず小さく復唱をしていた。それでも夢月の気遣いにやっと気が付いては、ぎこちなくとも口元が自然に緩む。

「甘いものは苦手ではないのですが、あまり好んで買う機会がなくて。ありがとうございます、頂きます」

 夢月からプリンを受け取りながら、一瞬紙袋へと視線を落とす。洒落たデザインに、見覚えがあった。確か、前に一度彼女がこの紙袋を手に持っていたことがあったはずだ。それにしても、昨夜からは何も口にしていない。どうも口に何かを運び入れることすら億劫で、ついに朝を迎えるまで食事については何も意識を向けずにいた訳だが、こう差し入れを貰うというのは嫌いではなかった。いつも夢月にはこうした部分でも世話になっている。自分にはお返しとなるような物は今は生憎持ち合わせていない。今度外に出た時にでも食事を奢ろうか。そう脳内で独りやり取りをしながらデスクへと向かう途中、室内を漂う花に似た香りに涼宮の姿を連想した。よく涼宮が給湯室で紅茶を蒸らしているのを見かけたことがある。が、今回はどうやら俺にも淹れてくれたらしい。

「嗚呼、すまないね、ありがとう。……たまには紅茶も良いですね」

 左手にプリンを手にしたままで、右手で涼宮からカップを受け取る。そして、そのまま顔へ近付けて熱とともに濃く漂う香りを静かに吸い込んだ。普段は缶珈琲で済ませてしまう自分にとって紅茶は、ましてや淹れたての紅茶を飲む機会などほとんど無いに等しかった。それでも、このどこか荒む心を撫で付けるようなこの香りには涼宮らしさが表れているような気がした。捜査のスタイルにしても自分とは正反対と言っても過言ではないが、それは身の回りのこうした一つ一つに対しても同様であるようであった。

 デスクにプリンと紅茶を置き、静かに腰を下ろす。それから、視線を動かすことなく一課所属の一人一人の動向を探るように神経を張り巡らせた。キーボードを叩く音、書類を捲る音、椅子を引く音、小さな雑談、混ざり合っていたそれらの音が、段々と位置の把握とともに音が個々でまとまっていく。自分もパソコン内で記録をまとめるふりをしつつ、今この瞬間に爆破事件を起こした犯人たちが何処で何をしているのか、脳内にある過去のデータからそのような妄想の展開を開始していた。


>警視庁内一課ALL

1ヶ月前 No.19

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU



【黒瀬新/国会議事堂付近】



 大日本国、嘗て勃発した大戦の勝国。その行く末を示す為に生まれた白の大厦は今、普段ならば考えられない静寂に包まれていた。広大に範囲を取った規制線の周囲では警察と思しき人影が足早に歩を進め声を交わす姿や、部外者が規制された内部に入り込まぬように目を光らせた様子が伺える。誰も彼もが貼り付けている強ばった表情は、緊迫と現状の重大さを体現するかのようだ。

 ────昨日、特別高等警察第一課の本拠地である警察庁に一通の手紙が送り付けられてきた。送り手は、記憶に新しい西上大学爆発事件の首謀組織である『サングイス』。内容は明日、十二月二十九日に国会議事堂を爆破するとの事だった。様々な主要施設への破壊行動を実行してきたテロ組織からの、幾度目の挑戦状だ。
 警察庁内に駆け巡った騒然とした声の中無機質に並べられた爆破予告の文字列に、落とした視界が、滴る血涙のように赤く染まっていく錯覚を覚える。今度は、今度はと、まるで追いかける事を楽しむ子供のような、追い手をおちょくる脱兎のような。奴等は国家転覆の為と称した犯罪行為を容易く重ねられるのだ。
 表面上は堅く閉ざされて変化のない口内で、ギチリと上下の歯が激しく擦れる。正義と定めれば、見えぬ死はやむを得ない犠牲と宣うか!

 ダン! と予告状と共に掌をデスクに叩きつけ、その音に一瞬だけ静寂を下ろした第一科のオフィスへと視線を上げる。その目は獲物を前にした獣のように、しかし理性を持して官憲らを見据えた。

「……至急、対策本部を設置。対策内容の立案と企画を」

 ────────、

 現在特高により、付近含めて国会議事堂の全閉鎖、立ち入り管理とテロ組織の人員捜索が行われている。遠隔からの爆破だろうが、操作範囲は限られているだろう。周囲に潜伏が可能でありそうな場の候補を事前に数件上げておき、人数配置を分けて捜索に当たっている状態だ。緊張が流れた昨日の、あの瞬間と同じ様に、張り詰めた表情を浮かべて黒瀬へと向かう一課の者らを、影の落ちた双眸で捉える。
 これは戦争だ。何の利さえ齎さない、唯只管に空虚な戦。だが分かってはいても歩みを止める事は出来ない。例え精根尽き果てようが、泉の如く湧き上がる憎悪が、ガラクタと化した身体さえ引き摺って進むだろう。

 仇敵の喉笛を、引き裂くまでは。

「次の機会などという甘い考えは捨てろ。此処でサングイスを捕らえ、確実に息の根を止める。────これ以上の奴等の暴挙を許すな」

 各々異なる思惑と決意を孕んだ視線を前に、特別高等警察第一課長の、灯台に目を潰された憐れな男の鋭い声が火蓋と共に落ちた。


>>特高ALL


【遅ればせながら第二章の開始文を落とさせていただきます黒瀬です。サングイス、一課、零課の皆様よろしくお願いします】

1ヶ月前 No.20

朝比奈 藤司 @brillante ★iPhone=gVxn3hDnp0

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1ヶ月前 No.21

神崎りりか @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

【 是枝正太 / 喫茶店ローダンセ(回想) → 公園 】

 いつもとリーダーの様子が違う、と周りは言うが正太にとっては何のことだかさっぱり分からなかった。
 確かに朝比奈は自身が注いだ珈琲を口に入れた瞬間、顔色を変えた(ような気がした)が、それが理由だとはとても思えないし、何より珈琲の味はーー残念なことにーー今日も今日とて変わらず不味かった。

「な、なあ。爆破って簡単に言いのけたけど、具体的には何をするんだよ?」
 朝比奈が突然に宣言したあの日、戸惑う正太は近くにいたメンバーに小声で聞いてみた。
「なあに、簡単だよ。リーダーと副リーダーがちょいと魔法≠使って標的(ターゲット)に細工をするのさ。そしたらあっという間にボンッ、どんなもんでも一瞬で木っ端微塵だ」
 そう言って男の人は楽観的に両腕を大きく広げて爆発を再現した。それを苦々しい顔で受け止めると、正太は小さな溜め息をついた。なるほど、この人たちは朝比奈という人物をとても信頼しているものの、詳しいことは正太同様、何も知らされていないらしい。いくら何度となく国家反逆行為を成功させてきたテロ組織サングイスでも、結局は素人の集まりなのかもしれない、と正太は心の中で思った。やっぱりすごいのはリーダーの朝比奈とその参謀である雪乃なのだろうか。
「まあそう気負うなって」
 楽観的な男は正太の肩に腕を回した。
「百戦練磨の俺たちが負けるわけないから。新人ちゃんは大人しく見てな」
「はあ」
 正太は不安だった。いくら一ヶ月前に彼等のテロ行為を身を以て体験したとはいえ、そう何度も上手くいくとは到底思えなかった。

 実はサングイスに身を置くようになったあとも、正太は皆に隠れて特高警察を訪れていた。まったく音沙汰のない姉の行方を尋ねてはお茶を濁され門前払いをくらう。いつもその繰り返しだったが、正太は諦めずに何度も何度も警察庁に足を運んでいた。
「……なんなんだよ、ちくしょう」
 十数回目のある日、正太は飲み干した缶ジュースを地面に叩きつけた。カラン、と鳴り響く乾いた音に虚しさを覚え、正太は黙ってそれを拾い上げる。姉が心配だった。それだけなのに、今回も特高警察は何も教えてくれなかった。帰ってこなくてもいい、ただどこかで元気にやっているのだと分かればそれで十分だった。それだけなのに、この国の警察はそれさえも教えてくれないのか。
 缶の凹んだ部分をそっと指でなぞりながら正太は考える。あまりの理不尽さに、腹の中ではふつふつと怒りが込み上げていた。
 正太が歯ぎしりしている間にも、サングイスは着々と次の国会議事堂爆破に向けて準備を進めていた。朝比奈も、雪乃も、皆が忙しなく「何か」をしていた。それを遠巻きに見ながら、正太だけはいつも通り喫茶店でぼうっと突っ立ってるだけだった。
 ーーみんな自分のため、仲間のため、未来のために一生懸命頑張っている。
 正太は思う。
 ーーそれなのに俺は一人、呑気に喫茶店で珈琲を注いでいるだけでいいのか。
 正太は手に持ったポットを強く握りしめた。そんなわけがない。これでいいはずがない。顔を上げた彼の瞳には固い決意の色が浮かび上がっていた。

「朝比奈さん。俺にも何かやらせてください」
 国会議事堂を爆破させる前日、正太は思い切って朝比奈に懇願した。ついさっきまでただの大学生だった自分が何か役立てるとは到底思えない。しかし姉を探し出すためには自分も動かなければいけないのだと強く思ったのだ。


>朝比奈さん、サングイスALL

29日前 No.22

涼宮 衛 @sibamura ★o0W3VsenYO_xmq

【涼宮 衛/議事堂付近】

 サングイスから予告がなされた議事堂付近、普段は観光客などが行きかうことが多いこの付近も本日ばかりは制服や私服の警官が随所に配置されて凛然とした空気に満ちていた。
 そんな中に涼宮衛もいた。いつものジャケットを着ているが、その表情はいつもの穏やかなものとは違う張り詰めたものであった。それはそうだろう、ほとんど形骸化しているとはいえ民意の象徴たるここを破壊しようなどという予告があったのだ。それに対して彼の胸の中は憤りと緊張とで満たされていた。

「こんなことをしてどうしようというんだ、連中は。」

 思わず言葉が口をついて出る。彼らの意図など彼には推測するしかないが、今回の行動にどんな意図があるのかは彼には測りかねた。彼にわかるのは、もし彼らの計画が実行されればこの国が大きな混乱の渦に巻き込まれるということだけ。そしてそれは、多くの罪のない民が被害を被むるということを意味していた。

『「次の機会などという甘い考えは捨てろ。此処でサングイスを捕らえ、確実に息の根を止める。────これ以上の奴等の暴挙を許すな」』

 黒瀬の激が飛ぶと同時にそれぞれの捜査員は敬礼をして持ち場に散っていく。そんな中、一人残った衛は黒瀬に自分の疑問を投げかけてみた。

「課長、課長にお尋ねしても答えが出るかどうかわかりませんが。やつらは何が狙いでこんな予告を出したのでしょうか?」

>>黒瀬 1課ALL様

27日前 No.23

自由 @nanamaru☆43ke11mKtUk ★iPhone=dgcL1EDLvj

【 夢月 叶羽 / 国会議事堂付近 】

「 あーあ、また始まっちゃったあ 」

 緊迫した空気の中で、間の抜けた軽い声を発する。
嫌でも無口になってしまうか、鋭い声が飛んでしまうようなこの状況で、叶羽のそれは日常的に出している声質となんら変わらないものであった。もちろん死に物狂いで捜索にあたっている特高一課の警官たちに、その呟きが拾われることもなかったのだけれど。

 ため息をつくと、それは白く変わる。寒いのはあまり好きじゃない。職場の空気に押し出されるようにしてふらふらと現場まで来てしまったが、やっぱり十二月の東京の冷気は愛用している極暖のヒートテックとパーカーだけで凌げるほど甘くはなかった。ポケットに片手をつっこみ、マフラーを耳が隠れるくらいまで上げる。そうしてもう一回ため息をつくと、今度はマフラーに遮られて息は白くならない。代わりに、冷たくなった肌を自分の吐いた湿っぽい暖かな空気が包む。
 ふう。三回目のため息で、叶羽は警官たちが走り回る現場の輪から少し離れて、警備はされているものの特別警戒はされていないのだろう、警官の少ない場所の外階段に腰を下ろした。

 自分のことを参謀として疑っている人がいるのは事実だ。それもあって、そこそこ成果を発揮しないと立場的にまずいのだが、しかし特にこれといってサングイスの壊滅を死ぬ気で目指す目的が叶羽にはない。ただ、一課に拾ってもらわなければ自分はもう自由に生きることなんて出来なかっただろうから、その恩義に乗じているだけで。

 サングイスから送りつけられてきた挑発状をデスクに叩きつけた上司の姿が目に浮かぶ。あの獲物を捉えようとする獣のような血走った瞳。
 本来ならば、参謀である自分は一課長に助言し、導いていくといえば烏滸がましいが、何せ隣で助けなければならない立場だ。参謀はそういう仕事。昔もそうだった。リーダーは、何かあるたびに自分を頼った。完璧なあの人は、頼る必要なんてないのに、必ず叶羽の意見を問うた。聞き終えれば、必ずその意見を採用した。失敗することはなかった。失敗したのは、「最後」のあのときだけだった。自分の立案がよかったのか、実行するメンバーがよかったのか、リーダーの統率力がよかったのか、それともリーダーが責任転嫁を求めて参謀に作戦を一任していたのか、それはもう確認のしようがないけれど。
 でも黒瀬は、助言さえ必要としていない気がするのだ。「 必ず自分がサングイスを潰す 」、そんなかたい意志が、じっとこちらを冷たい瞳で見つめている。
 少し不器用なところもあるが良い人だ。少なくとも叶羽はそう思っている。でも、声を掛けることはできない。自分みたいなただ環境や他人に流されてきた甘っちょろい奴が、こんなに強い意志を持った人に助言なんかしちゃいけない。そう思って、出かけた言葉を呑み込んでしまう。
 出来る限り情報収集はしているし、作戦立案だってきちんとやっている。でも、現場での判断は任せっきりだ。指揮官は黒瀬なのだから当たり前だと言えば当たり前なのだが、それでも現場の状況を把握し最高の作戦を導き出し、黒瀬に伝えるのは自分の仕事。もちろん最終的な判断を下すのは一課長だけれど、叶羽にも大日本国特別高等警察第一課参謀としての自負はある。それでもやっぱり、思ったことを口に出すことはできない。

 今日何度目のため息をつく。自分が情けないとか思いつつ、でもそんなの当たり前じゃんとか妥協したくて、でもそれが癪。独りで勝手に苛立ちながらポケットにつっこんだ片手をスマートフォンと共に引っ張り出し、かじかんだ指先で画面を操作する。何の変哲もないニュース紙だ。 見たところで特に意味はない。ただこのみんなが慌ただしく動き回っている中で独りだけ何もしていないのが気まずくて、ニュースでも見ていればそれっぽいんじゃないかという叶羽なりの結論に達したわけだ。周りからすれば、どこからどう見ても緊迫した空気の中スマートフォンをいじるKYな最近の若者、になってしまうのだが。

「 ああ、そうか 」

 翠色の瞳がきゅっと猫のように細められる。冷たい風が頬をよぎり、マフラーがたなびく。階段から立ち上がる。何をどうするわけでもない、こんなどうでもいい情報なんか誰にも伝えなくていい、というか気付いている人だって多いはずなのだ、ニュースなんかになる前にわかっている人だって少なくはないだろう。どうでもいい情報とはつまり、希少性の低い情報のことだ、当然すぎてみんな気付いているようなこと。

「 ……自己顕示欲? やだなあ、子供じゃあるまいし 」

 ぼそりと吐き出した言葉は、風に拾われて冬の空へ消えた。


 >> 周辺ALL様


【 めちゃくちゃ絡みにくい文章になってしまいました、すみません…! 】

27日前 No.24

玻璃崎雪乃 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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19日前 No.25

崎山 @caim ★Vxqs1Pnm4y_mgE


【大狼 椿/国会議事堂付近】

 昨日のあの時より、何一つとして己の喉を通るものはなかった。生命活動を維持するための水分摂取すら、この身は拒んだのだ。眠りに落ちることすらも拒んだ鏡に映るこの姿は、まるで病人のようであった。それでも落ち窪んだ眼孔は、高鳴る心臓に呼応するように揺れているのだ。そう、未だ彼らから送られたあの記号の羅列のような冷たい文字列に尚も意識が引力のように持って行かれるのだ。無意識に、人差し指を唇に当てる。呼吸すら上手くできない程に、焦がれていたのだ。あの予告状は招待状であったのだと、即ち彼らに呼ばれているのだと、そう独り結論付けていた。


 現場には、既に大勢の警察官達が配置場所へと就いているようだった。視界の端を見慣れた制服の数人が駆けていくのが見える。仮に爆弾の起動を遠隔操作で行うとして、彼らは今此処に居るのだろうか。この何処かで、自分たちを見ているというのか。寒さではないその感情により、ぶるりと肩が震えた。周囲には一課の面々が、そして目の前には課長の黒瀬の普段と変わることのない姿が移る。この上司の両の目には、近しいものを感じていた。乾燥でひび割れた下唇を舌でなめる。今はまだ同じ場所に立っているが、いつか意志がたがうようになる日が訪れるのだろうか。いや、案外それは遠くない出来事になるやもしれない。どうも先程から、自分の中の第六感のようなものが静かに騒ぎたてている。本日になにかが変わるのだと、そう告げているようなのだ。

『次の機会などという甘い考えは捨てろ。此処でサングイスを捕らえ、確実に息の根を止める。────これ以上の奴等の暴挙を許すな』

 無言のまま黒瀬を見据え、敬礼を行う。その後は踵を返し、指定された持ち場へとその足で向かった。此処に来て漸く、外気の寒さを自覚し始めた。両手を組んで、関節を伸ばしていく。いつか訪れるだろうその時に向けて、常に準備を行っておかなければならない。サングイス。未だ見ぬその組織の名を、喉の奥へと隠した。
 黒瀬からは彼らの息の根を止めるとは言われたが、もし此方で一瞬でも身柄を確保するのならば、その前に語る口は奪わないようにしなければならない。歯向うために必要な四肢と精神も残しておいてやらねばならない。どこまで痛めつけ、どこまで痛めつけられようか。持ち場の到着と共に足を止める。それから深く息を吐き、周囲を視線のみを動かして見渡した。危険となりうる身内の存在を先に把握しておかなければならない。
 ふいに、腰のポーチにぶら下げた小型無線機が小さく呻るような音を出し始めた。

「こちら大狼、指定の場所へ着きました。これより周囲の警備を開始します」

 所詮、申し訳程度の連絡である。これから起こる全ての事象を逃さないようにしなければならない。――今この瞬間は、一課所属の一警察官として。


>ALL
【第二章の開始おめでとうございます! 一課の方々は引き続き、零課・サングイスの方々は改めてよろしくお願いします!】

19日前 No.26

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★Android=GaTaMXF8bf

【鳳嘉音/東雲宮・自室→国会議事堂前(移動中)】

 年の瀬だというのに、今日も今日とて嘉音は零課の仕事場にいた。しかも、ただ無為にパソコンの画面を眺めるでも、持ち込んだコーヒーメーカーを弄くり回すでもなく、至って真剣な面持ちで図面を睨み付けていた。平たく言えば、珍しく本気の仕事をしていた。
 彼が今目の前にしているのは、そうそう世間には出回っていない代物――詳細な国会議事堂の設計図である。勿論コピーだが、国家転覆を狙うテロリストなら垂涎の品だろう。それと赤ペンを手に、ブツブツ呟きながら書き込みを行う嘉音の様子は、爆破テロの計画を入念に練っているテロリストそのものだが。
「……まぁ、こんなもんだろうな」
 設計図に幾つ目かの丸をつけながら、嘉音は独り言つ。
 彼が行っているのは一つのシミュレーション、即ち『自分が国会議事堂を爆破するなら何処を狙うか』を真剣に考えていたのである。目の敵にしている首相を巻き込む前提のお遊び要素もあったが、建物の構造に関しては膨大な知識を持つ嘉音の考えは、強ち役に立つ……と思いたい。少なくとも立たないことはない。
 サングイスによる国会議事堂の爆破予告が発表される少し前から、嘉音は嬉々としてこの仕事に取り組んでいた。現在争いの渦中に居るであろう組織に居候中の同僚から爆破計画がリークされると、嘉音は直ぐ様図面を取り寄せさせた。それから今までにらめっこを続けていたのである。
 嘉音本人としては、学生時代に思い描いていた夢――安野首相の晴れ舞台を目茶苦茶にするという、夢と呼ぶには些か後ろ暗い代物――が現実になったようで少し嬉しかったのは、当然秘密である。

「おい、終わったぞ」
 部屋の外へと嘉音が声を掛けると、扉の前に控えていた男が入ってくる。彼が自分付きの使用人だったか政府高官の誰かだったかその使い走りかを、嘉音はもう覚えていない。兎に角彼は、入室してきた黒服の男性に、自分が書き込みを加えた設計図のコピーを放り投げた。
「派手に行くなら正面入口だな。まぁ、警備が固すぎて設置しようと考える馬鹿も居なさそうなもんだが、相手は国家転覆を狙うテロ組織だ。ド直球過ぎて逆にトリッキーな手も打たんとは限らん。比較的侵入が容易なのは見学ルート上、ここも警備はそれなりだから、爆弾が出てきたら何人か首が飛ぶな。単純に象徴としての建物を壊したいなら二階の階段を落とせばいい。ちょっと建築かじった奴が中に居れば直ぐ分かる。あとは立ち入り禁止区域……七階より上のホールか展望室、あそこは入れさえすれば何を仕掛けても滅多なことじゃ見付からない。ついでに塔が壊せるから宣伝効果も抜群だ……が、飛散物を考えると威力は上がるからどうだかな。何を考えてるか知らんが、わざわざ予告まで出して人払いをしてるんだ。人死には出したくないんだろうよ。そうだ、人を殺したいなら会議中の議事堂でも予告なしに爆破すればいい。それをしないということは、建物裏手や吹き抜け広間も狙い目……以上」
 コピーの方には事細かに書かれている内容をつらつらと話して、用は済んだとばかりに嘉音は手を振った。そんな彼の態度に男は余り良い顔はしなかったが、天王直属の零課が相手だからか、礼だけ述べて去っていった。何処ぞに報告に言ったのだろう。
 現場の一課も馬鹿ではない。このくらい考えて警備や捜索にあたっているだろうから、この報告も蛇足になるに違いない。
 だからそう、これで少しでも警備の配置が動いたら御の字だ。

「さて、頼もしい上司と後輩の活躍でも拝みに行くか」
 呟いて、嘉音はコートとステッキを手に取り、わざとらしく足を引摺りながら、国会議事堂へと、テロ事件の渦中へと歩き出したのだった。

>all

【新年あけましておめでとうございます、今年も宜しくお願いします。年が変わっても投稿が遅くて申し訳ありません……
 文中で鳳が喋っていることは現物に沿っていたりいなかったりしますので宛にはしないで下さい。】

14日前 No.27

深町渚砂 @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=MNgMSKnMpI

【深町渚砂/国会議事堂付近】

 国会議事堂の周囲には、既に多数の警察官が配備されていた。物々しい雰囲気で任務にあたる彼らを横目で見ながら、渚砂は人混みを縫って歩く。コツコツと響くハイヒールの音も、野次馬らの声に掻き消されていく。

「……懲りもせず舐めた真似しやがって」

 渚砂が小声で吐き捨てると、ちょうどすれ違った少女が一人、目を丸くして振り返った。女の姿をした人間から男の声が発せられる。そんな普通でないものを目にするのは、少女にとって初めてのことだったのだろう。その様子に気付きながらも、渚砂は脇目もふらず足を進める。一般人の一人や二人に多少の違和感を覚えられたところで何かが起こることはない。
 渚砂が示した不快感は、サングイスに対するものだった。国政の転覆を目論むことを否定するつもりはない。国の意思に最も近い任務を担ってきた立場にいればわかる――この国は狂っている。それを承知の上で、その狂気に骨を埋めるつもりで俺は特高零課にいるのだ。それなのに、彼らは「死人を出さずに」などと抜かし、挙げ句にはご丁寧に警察に爆破予告まで叩き付けてきた。そんな舐め腐った奴らが警察に敵うなど、あり得ない。あってはいけない。

 リズミカルに響いていた渚砂の靴音が、少しテンポを落とす。渚砂の視線は二人の男に向けられていた。特別高等警察一課長、黒瀬新。そしてその部下である警察官、涼宮衛。特高の人間の顔と名前はあらかた記憶している。それだけでなく、彼らの家族構成から経歴、趣味嗜好に至る私生活まで探るのは容易だ。だから二人のことはよく知っていた。涼宮衛、この世に表裏のない善人などいないと思って他人を観察しているが、今までに彼のそういった部分を見つけられたことがない。頼りないとも言えるかもしれないが、その汚れのなさは多くの臣民の目に警察官の鑑として映るだろう。黒瀬新は無骨な外面に反して愛情深い男だ。彼が寝る間も惜しんで役務にあたるのは、サングイスへの復讐心がそうさせるのだろう。もし彼に真実を告げたら、どうなるのだろうか。
 渚砂は黒瀬から視線を背けると、顎を引いて歩調をあげた。一般人とは違う。彼らを不必要に見続けるのは危険だ。渚砂はそのまま悠々と、国会議事堂を包囲する警察官の後方でひしめく野次馬たちの中に姿を消した。

>all

【あけましておめでとうございます!久しぶりの投稿になってしまいすみません!二章もどうぞよろしくお願いします!黒瀬さんと涼宮さんを観察させていただきましたが、気付かれない距離から眺めているだけなので、特に反応はいただかなくて大丈夫ですm(__)m】

13日前 No.28

Nero @nerokichi ★Android=ibuMTFvydU

【黒瀬新/国会議事堂付近】


 己の言葉の終わりと共に、緊張の面持ちを浮かべた一課の者達が自身の持ち場へと移動を開始する。命令を下せば後は執拗く付け加えることもない。此処に居る官憲らは皆一様に優秀な人材ばかりなのだから。彼等を部下として束ねる黒瀬がそれを最も理解しているのは当たり前だろう。口に出す事は恐らく無いのだろうが。

 その規律されたかのような彼らの姿の片隅で、自由気ままな参謀がふらりと何処かへ歩を進める姿が目に入った。普通ならば咎めるような場面なのかもしれないが、彼は少々特別と言える。行動こそ官憲とは思えないだろうがこれまで仕事に支障が出ている様子も無く、そもそも元テロ集団からの引き抜きという異例の経歴を持つ夢月だからこそのルーティンがあるのかもしれない。正直な所規律というのは公私を隔て職務を全うする為の道具でしかない。どのような形であれこの場での立ち回りを問題無く熟すのならば語ることもなかろう。

 ふと夢月の背に視線を向けていたその後方から声が掛かる。若干目線を遅れさせながら其方へと顔を向ければ、難しい顔をした涼宮が問いを零していた。問うた本人も分かっているだろうがテロ組織の思想の真相など奴等自身に直接問い質す位しか確実な答えは導けないし、逆に自身らはそれに理解を示してはならない。どんな事情があろうとも奴等は紛れもない犯罪者で、罪の無い者まで手をかけた侮蔑すべき存在なのだから。

「……私には分からん、理解も出来ないだろう。だが理解しようともするな。ああいう手前の信念を語って誑し込む能力は馬鹿に出来ない」

 固定概念というのはその者の思考に存在する選択肢を切り捨てる行為になってはしまうが、犯罪組織、特に思想犯罪を相手取るならば多少の思考断絶は致し方ないと言える。それ程に厄介極まりない案件だからだ。その根張りと吸収の範疇は想定できるようなものではなく、少しでも理解の欠片を示してしまえば忽ち端から喰い尽くされるだろう。
 若干忠告じみた発言となってしまったが、涼宮のような正義感の強い者程"正義"の看板を掲げた違背行為に対しても同情の余地を残してしまう可能性は十二分にある。そもそも自身の部下が盲信の底に堕ちてしまう姿を見たい輩など居ない筈だ。

 会話を切り上げて、ノイズの混じった小型無線機から大狼のいつも通りの無機質な声で並べられた連絡に短く了解の意を返して機器のスイッチを切る。続け様に届けられた零課からの資料を受け取り、顎に手を当てて考え込むような仕草をした後に夢月筆頭に配置案に関わった全員へ確認させるように伝え、場合によっての再考の指示を出した。目を通す限り盲点だったと言えるような点は無い筈ではあるが、助言を受け取った身で穴を残す愚かな状況は晒すわけにはいかない。


 一課の者達が散開し疎らになった国会議事堂前。野次馬の方向から受けたような気がした視線を何故か杞憂と切り捨てられずに、口を一文字に結んだまま相も変わらず鋭い瞳で、黒瀬は規制線に集る人影の群を見据えた。

 予告時刻は近い。

13日前 No.29

朝比奈 藤司 @brillante ★iPhone=gVxn3hDnp0



【 朝比奈 藤司 / 公園 】





 もぞもぞと何かを隠しているようには感じていたが、あまりにも必死でわざわざ聞き出さなかった。予想通り、そわそわしだしてから何分かもせずに正太は開口する。
 W俺にもなにかやらせてくださいW
 そう来たか。思わず目を見開いた。その瞳に少しだけ姉の色を宿している。正太の顔をまじまじと見るのははじめてだった。やはり、面影があるように思う。
 正太をサングイス組織に率いれてから幾分か時間は過ぎていた。何か目的を持って側に置いている訳でもなければ、いままで正太本人からのアクションもなかったのでこのまま平行線を辿るのだろうと思っていたのだが見当違いだったようだ。こんなにもまっすぐな瞳をしているのに、見くびっていたのかもしれない。
 巫山戯ての言葉でないことは声色、態度が全力で訴えてきていて人間の本能というやつでぞわりと鳥肌が立つのも感じた。その裏で信頼していない訳では無いが首を縦に振り切らない自分もいる。
 勿論、正太が復讐をしたいというなら身内である分の憎しみを晴らすために行動するのは筋だろう。ただそのために手を汚すのか。悶々と考えているうちに眉間に皺が寄っていくのを感じた。目が細くなっていることが容易に想像できる。初対面の人間が見たら睨まれてると感じるであろう形相は俺の深い思案に耽っている印だった。

 どうするのが、一番正しい選択か。国会議事堂の計画はかなり規模が大きい。失敗したらお縄では済まない。そのときふいに耳に入り込む聞きなれた女の声に顔を上げた。女性の声は耳に響くことがあるので得意ではないが、この声は平気だった。大学時代から知るひとつ上の、副リーダー。
 正面で無意識に俺がかけてしまっていたのか、圧力に強ばらせていた正太の身体は雪乃の手が触れたとき少しだけ緩んだ気がした。
 待たせたわね、という声に
 「いいや、俺と正太しかまだ来てねぇ」
 と、返す。正太とはまた違うのだろうが雪乃の視線も真っ直ぐで、どこか遠く何かを見据えているように感じる。俺の目の中にあるものをすべて知っている、すべて探っているような感じもした。副リーダーとしてよく働いてくれる雪乃のことを信頼している。勿論、相手の腹の中を曝け出すような観察眼も。
 他のメンバーの中にはおそらくこの作戦に正太を使うことを反対するやつもいるだろうと思う。ただし、優しさだとかリーダーとしての務めというものは庇護欲に身を任せて可愛がるのは違うと理解していた。
 自分に命を任せてくれた奴らを守るのは勿論。そいつらが描く理想と野望を、それを追いかける姿の盾になるのが役目だ。
 理想を描くには、現実を知らなければならない。夢の中で生きているならば理想は不必要だからだ。綺麗事だとせせら笑われても貫きたい何かを自分で見つけられるように、支える。
 考えると、仲間の反発は可愛いものだと思えるようになった。いままでも無茶はしてきたため、ついて来たいやつだけが今回の作戦に参加すればいい。もう1度腹を括り直した。

 「正太ぁ、……くくっ、お前に仕事をやるよ。一番大事で一番危ねぇ仕事だ。いいか、俺たちはお前の身に何かあっても助けに行かねぇからな。自分で決めて、自分でいけ。決めたなら命をかけろ、俺たちもお前に命かけてんだ」

 何かがあったらもちろん全力で助けに行く。ただし、緊張感を持ち自分で切り拓いて欲しかったから敢えて冷たい言葉をかけた。心の蟠りを取り除くのはいつだって、自分本人しかいないから。




>>雪乃、正太、サングイスallさま



【 あけましておめでとうございます…!どうか本年度もよろしくお願い致します。サングイスの皆さまもお忙しいかとは思うのですが警察の方々との時系列を揃えて行くためにも絡みに来ていただけたら嬉しいです…!!よろしくお願いします;; 】




10日前 No.30

涼宮 衛 @sibamura ★o0W3VsenYO_xmq

【涼宮 衛/議事堂付近】

「はっ! 失礼しました。以後気を付けます。」

 サングイスの意図を問うた彼の質問に対して直属の上司たる黒瀬が返した返事は、いつもの通り端的で乾いていて、そして正しかった。彼の言葉に対して涼宮は敬礼をすると、自分の持ち場に移動し始める。その挙動には一片のよどみもない。
 だが、

(課長の言うことは正しい。しかし……)

 黒瀬の言葉に対する反論を涼宮はもたない。どのような理由があろうとサングイスが罪もない一般人を巻き込むような悪行を行っているのは明白だ。たとえ、今まで一件の例外を除いて人的被害が出ていないとしてもそんなことは言い訳にもならない。彼らの行為そのものが、善良な市民の生活に暗い影を落としているのだから。だから、涼宮はサングイスの行為について理解や同情を、ましてや共感を覚えることは決してないだろう。
 けれど同時に考えてしまうのだ。彼らの行動はともかくとしてその理念や考えについて自分はよく知りもしないと。もし、それを知ることができれば、あるいは彼らの正体に近づけるのではないか。黒瀬の心配する盲信とはまた別に考えが涼宮の脳裏に頭をもたげる。もしその心の中の考えを黒瀬が聞けば、それこそ彼の考えを諭してくれるだろうが、いかに上司といえど心の声まで聴きとるほど地獄耳ではない。
 そんなことを考えながら歩いていたからか、涼宮の背筋に寒いものが走る。何か、心を見透かすようん冷たい視線を感じて振り返ればそこには野次馬の山があるだけで一捜査員にすぎない彼を注視しているものなどいようはずもない。

「……いけないな。今は目の前のことに集中、集中」

 若干後ろめたいことを考えていたために被害妄想でも起こしたのだろうと自分を納得させるように自分の頬を軽くたたくと、涼宮は自分の配置先へと足を速めた。

>> 黒瀬様 深町様 一課ALL様 サングイスALL様


【あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。深町様のレスに対しては、ちょっとぞくっと来たくらいに触っておきました。若干、サングイスの人がどんなことを考えているか知りたいな考え中の涼宮はとりあえず周囲を警備いたします。】

9日前 No.31

吾妻 純 @september9☆l2RtaxPLX0X6 ★gXyGHSaxw7_M0e

【吾妻 純 / 移動中→公園】

 今日は特別な日だ。僕にとっても、私にとっても。

 リーダーが指定した、国会議事堂からやや離れた寂れた公園。集合場所であるそこに向かう道中、吾妻純は珍しく上機嫌な様子だった。彼はステップを踏むように軽やかな足取りで歩みを進め、時折うっとりするように目を細め、年の瀬の寒空を見上げる。マスクで顔を覆っているせいで口元は見えないが、控えめに、それでいて艶やかに赤いリップが塗られたその唇は、大きく弧を描いていた。か細い歌声が、マスクの下から溢れている。
 腰に取り付けたポシェットを、細い指先が踊るようになぞった。今日は彼にとって、いっとう特別な日なのだ。いつもと違う、身体のラインに沿うようなデザインのタイトな黒いコートを着込んだ彼は、恍惚とした表情を見せる。
 なんて言ったって今日は特別な日。いつもの格好、いつもの武器(やつ)じゃ駄目なのだ。警察にも、サングイスにも、誰にもバレてはいけない。
 コートの内に潜ませた折りたたみ式のナイフの重みが心地よかった。あの子を殺したやつらをあの子と同じように殺すのがいつもだけれど、たまには切り裂くのも悪くはないだろう。拳銃の銃声は、今日は目立ちすぎるだろうから。
 公園の手前まで彼が到着したその時、ポケットの中に入れていたスマートフォンが、数回振動した。立ち止まり、画面を開く。
 そこに表示されたメールに目を通し、純は溢れそうになる笑い声を抑えて、すっと目を細める。

「――――楽しみだわ」

 いつもの彼と違う、ぞくりとするような殺気を孕んだ声で、純はそう独り言ちた。

 彼は今日も特高狩りを行い、サングイスの意思に反する。最早誰もこの感情を止めることはできないだろう。
 僕が僕であるために、私が私であるために。僕(私)は今日も悲鳴を聞き、血を浴び、そして命を奪う。彼が狩るべき命がすべて無くなるまで、彼は繰り返すだろう。狂いだした感情は、最早止まるところを知らないのだ。
 いや、もう、とうの昔に彼は壊れてしまったのかもしれない。彼を、幼馴染のあの子を失ったその日から。

「――遅くなりました、すみません」

 公園の端の、仲間たちの姿が見える其処まで、純はおずおずと頭を下げながら足早に向かう。リーダーである朝比奈と、副リーダーの玻璃崎、そして、是枝の三人を順番に目で捉えれば、「いつもと違う、緊張した面持ちの吾妻純」を演じる。あとは様子を伺って、サングイスの任務と同時並行で、自身の「目的」を遂行するのみ。

「今日は僕も精一杯頑張ります。よろしくおねがいします」

 背筋を伸ばし、朝比奈に向かって一礼をする。コートの内で、またスマートフォンが振動した様な、気がした。

>藤司、雪乃、正太、サングイスALL 【遅くなりましてすみません…… 二章開始おめでとうございます。純は企みまくりですが何卒宜しくお願い致します。イベント楽しみです!】

9日前 No.32

神崎りりか @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

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8日前 No.33

玻璃崎雪乃 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【玻璃崎 雪乃/公園】

正太がこのタイミングでサングイスの犯行に積極的にかかわろうとする姿勢を見せた事、それを朝比奈藤司が許した事、その何方もが雪乃にとっては想定外の出来事だった。反政府組織を名乗るサングイスを、初めは噛み付きたくても怯えて出来ない弱い仔犬のような目で見ていた若き青年。それが朝比奈の人格やその理想に燃える姿にいつしか感化されて自らの生き方を模索し始めるであろうことは予想しないではなかった。そうなった場合には、朝比奈のことだからきっとそれを肯定してやるであろうことも。しかしそれが決行の刻を目前にして展開されるとは思ってもみなかった。

「……リーダー……」
雪乃は瞠目し声を上げた。普段は「朝比奈君」と大学時代から変わらず後輩を呼ぶような気安さで声を掛けるのだが、サングイスの仲間の手前では「リーダー」と呼ぶようにしていた。それは他の面子に示しをつける為である以前に、組織を取り纏める朝比奈に対する暗示のようなものでもある。
「本気なの? まさか、正太君に行かせるの……」
北風に晒されかじかんだ指先を温めるようにしてそっと胸の前で摺り合わす。さっきまで笑みを浮かべていた表情に、少し不安の雲が翳す。僅かに眉を顰めたものの、リーダーの決定に何か異議申し立てするような柄では無かった。言葉を飲み込みそっと被りを振ってから、今度はそっと後押しするように首肯する。正太君の身に何かあったら、そう言いかけたのを抑えたのを、二人は汲んでくれただろうか。汲んでくれたのだとしたら、いずれ此処に小さな綻びが生まれることを期待しよう。特高警察零課のスパイである玻璃崎雪乃に、サングイス殲滅の指示はまだ出ていない。本格的に彼等が屠られる準備が整う前に、その組織が内部から崩壊すれば良いと思っている。それが自らを買ってくれた国の為であり、そして何より、愛する朝比奈藤司の為だ。この作戦の間は彼等に溶け込んでサングイスの人間として動き、あわよくば内部から綻びでも見つけることができれば充分だろう。是枝京香の弟は、使える材料となり得るか否か……実のところ目を瞠った直後に湧き上がった思考は、そんな打算だった。予想外の計画変更に幾許かは驚かされたが彼等の考えることはやはり眩しいまでに真っ直ぐだ。あんなことを言いながら朝比奈は、仲間に何かあればきっと助けに行ってしまうに決まっている。

正太の足が僅かに震えている。彼は今恐怖と懸命に戦っているのだろうか。可愛らしい。慈しむ視線を落としていた雪乃は顔を上げ、正太の目へと視線を向けた。
「正太君。……リーダーは貴方を信じているわ。それを裏切らないで頂戴。仕事のこともそうだけど、命を奪うのだけはいけない。他人のも、自分のも」

強い光を宿した目を殆ど正面の高さから見据え、念を推した内容のは、決して嘘や演技では無かった。真っ赤な嘘よりも時として有効なのは、その殆どを純白の真実に包み込んだ口当たり優しい糖衣錠なのである。
人の気配に続いて聞き慣れた声が背後から耳朶に触れ、雪乃は言葉を切って振り返る。緊張の面持ちで佇んでいる吾妻純の姿があった。

「あら、私も来たばかりなのよ。ーー純くん、後ろから聞こえていたと思うけれど、作戦と配置の変更があるわ」

軽く微笑みかけてから、朝比奈の右腕としての冷静沈着な真顔に戻り、言外に正太の存在を指し示す。雪乃のその様は先程の驚きや懸念の表情を洗い流し、努め冷静に振る舞おうとしているかのようだった。

>朝比奈君、正太君、純君、サングイスall


【ごめんなさい、遅くなりました上に珍しく結構苦労しまして、文章がお粗末です……】

14時間前 No.34
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