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大正浪漫心中

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(1295) - ●メイン記事(31) / サブ記事 (114) - いいね!(10)

大正/恋愛/心中/仄暗 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj


 ねえかみさま、この想いは許されますか?


 ***

 街に響く鐘の音。並木通りを歩きながら辺りを見渡す。右を向けば装飾豪華な洋館が立ち並び、左を向けば長屋や古い一軒家が肩を寄せ合うように建っている。この並木通りが、まるで境界線のようだ。あちらとこちらでは、まるで世界が違う、僕はただそう感じていた。

 これからも、ずっとこの街は二つに別れたままなのだろう。混じり合うこともなく、寄り添い合うこともない。住む世界が違うのだから。


 ***

 街に響く鐘の音。窓から見える風景を眺めながら息を吐く。此処はまるで牢獄だ。全てが決められた線路の上をただ歩かされているだけ。自分の意思なんてものは一切存在を許されない。窓の外、あの並木通りの向こう側は私の知らない風景が広がっているのだろうか。

 逃げることも出来ず、私は永遠に此処にいるのだろう。ただ無意味に、息を吐くように当たり前に。そこに希望も絶望も存在しない。ただそれだけなのだ。


 ***

「ようこそいらっしゃいました、貴方の安寧の地になれますことを神に祈っておりますわ」


 繋がる二つの世界、混ざり合うことの許されない二つの世界の末路はどのようなものなのだろうか。



 許されなくてもいい、それでも僕達はこの想いから逃れることなんか、できないのだから。




(閲覧ありがとうございます! 兎にも角にもサブ記事へどうぞ!)

メモ2017/09/24 22:16 : すれぬし☆e0aRNqDUyEM @sweetcatsx★iPhone-VHGaT7ZbKj

 概要 → http://mb2.jp/_subnro/15629.html-1,2#a

第一章【 其れは始まりの鐘の音 】→ http://mb2.jp/_subnro/15629.html-50#a

第ニ章【 音を立て廻り始める歯車 】→ http://mb2.jp/_subnro/15629.html-104#a


【 登場人物 】

 富裕層 →

* 貴族の令嬢 → 月ノ瀬鳴(絡操さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-68#a

* 呉服屋の娘 →露ヰ花子(螢さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-66#a

* 貴族出の蒐集家 → 綺堂(凛々さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-64#a

* 貴族の三男坊 → 御影院宵(ねこみやあかさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-83#a

* 皇族の三女 → 賢宮澪子内親王(夕邑三日月さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-75#a

* 将校 → 浅茅司(神崎りりかさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-36#a

* オランダ大使 → ティモテュース・オプステルテン(ふぁすねさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-82#a

* 軍人 → 礒山醍醐(七角羊さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-79#a

* 旅館の娘 → 朧塔子(真白蝶々さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-85#a


 貧困層 →

* 見世物小屋に売られた子 → 八十一八(独楽さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-84#a

* 書生 → 水原祐太郎(日向月。さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-37#a

* 文士 → 雨々蝶(スレ主)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-23#a

* 喫茶の店員 → 遊佐百合子(はいせりひとさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-48#a

* 女中 → 百瀬杏(になさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-76#a

* 没落貴族 → 篠宮暁千賀(ぽんぽこさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-51#a

* 探偵 → 神無颯一郎(芙愛さん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-25#a

* 家事手伝い → 彩河原雪(たわらさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-52#a

* 薬売り(ししくれさん)http://mb2.jp/_subnro/15629.html-70#a

切替: メイン記事(31) サブ記事 (114) ページ: 1


 
 

メイン記事解禁 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 シスター・ホワイト / 聖ホワイト教会 】

「神よ、祝福を与え給え」

 木々も色づく10月下旬の日曜日、桜路にある聖 ホワイト教会では日曜礼拝が行われていた。祭壇の前で言葉を紡ぎながら主の像へと首を垂れる黒の修道服姿の女性、真白な髪と赤い瞳が目立つ彼女がこの聖ホワイト教会の管理者、通称シスター・ホワイトだった。そして彼女の後ろで席に座る男女等。それは側から見ても異様に見える光景だった。

 煌びやかな装飾を纏う者とそうでない者の差が激しい。この桜路で月花町と陽花町と呼ばれる所謂格差、富裕層と貧困層の住人が同じようにその場にいるのだ。普段は暗黙のうちに別れて訪れていたのに本日はシスターたっての希望によりこのように揃うこととなったらしい。どこか張り詰めたような空気は教会には似つかわしくなかった。

「――――では、これにてお祈りは終了です。庭園でお食事を並べさせていただいておりますので皆さま是非、庭園へどうぞ」

 くるりと振り向けば微笑を浮かべる。本番はここからなのだ、どうか彼等が少しでも仲良くなれますように、そんなことをシスターはただ祈っていた。


【 雨々蝶 / 聖ホワイト教会庭園 】

 ぞろぞろと向かった教会の庭園。庭には長机が置かれ其処には様々な料理や飲み物が並べられていた。立食形式なのか椅子の類はなかった。

 そんな長机から少し離れた大樹の下に腕に紫色の唐傘を下げた、銀縁の眼鏡の女性が立っていた。彼女は月花町に住む売れない物書き、雨々蝶だった。蝶は辺りを見回し、そっと口元に笑みを浮かべる。

「おやおや、本当に面白い光景だねぇ…………」

 富裕層と位置される者達と貧困層と位置される者達。本来なら決して肩を並べることすら許されない二組が同じ場所に立っているのは非常に愉快なものだった。

 だがしかし誰が気付くであろうか、彼女の銀縁の眼鏡ごしの風景は煌びやかなものでも質素なものでもなく、白と黒だけのモノクロの世界だということに。

>> おーる



(少々手違いがあり遅れましたがこれよりメイン記事解禁させていただきます!素敵な最期を迎えることができるように全員で楽しめればと思います、是非! スレ主とともに死んでください、よろしくお願いします!)

19日前 No.1

御影院 宵 @xxsnowdrop☆6PqqtgEep4k ★DVZTe29d5v_yFt

( 御影院 宵 / 聖ホワイト教会の庭園 )


 10月下旬の日曜日、2ヶ月前の気温が嘘みたいに肌寒い午前11時。艶っぽい藍鉄色の髪と葡萄色の目を持った青年はミサに参加した後、教会の庭で催されているパーティーに参加していた。どうやら今日は貧困層の人間とミサも、パーティーも一緒らしい。なんとも見慣れぬ光景だなと心の内で呟きながら、その青年は庭園を一望する。その青年はというと富裕層の人間で、由緒正しい貴族の家柄の出。三男であるため、そこまで名の知れた青年というわけではないが、身に纏った衣服や仕草などから富裕層の人間であるということは一目瞭然であった。

「――もとは同じ人間、か」

 ぽつりっと呟いた言葉はその喧騒の中に消えてゆく。その青年、御影院宵は口元に薄らと笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩き出す。貧困層も富裕層も住んでる世界が違えども生物学上では同じ人間なのだということを感じながら。住む世界が違うとしても、こうして生きていることに変わりはないのだということを感じながら。



【 メイン解禁おめでとうございます! 久々のオリなりでだいぶ腕がなまってしまっておりますが、広い心で絡んでいただければ幸いです!
 これからよろしくお願いします(*´ω`*) 】

>>ALL、

18日前 No.2

暁千賀 @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=MNgMSKnMpI

【篠宮暁千賀/聖ホワイト教会庭園】

 秋の日の午前、暁千賀は教会の外壁に背を預け、少し冷たい風を受けながら佇んでいた。薄汚れた黒いコートの中には上等な衣服を身にまといながらも、その傷み具合から良い身分でないことは明白だ。教会内からは、シスターだろうかか、穏やかに話す声が僅かに漏れてくる。かつては暁千賀も習慣的に神への祈りを捧げていた。だが真面目に、高い志をもって日々暮らしていても、神は決して自分を救いはしない。神など存在しないのか、それとも神は救いなど与えないのか。いずれにせよ、暁千賀には神に祈る理由などなかった。ただ礼拝が開かれている――そのことが暁千賀にとっての曜日を知る数少ない情報だった。人との関わりをほとんど絶った彼にとって、日付けの概念は最早意味を持たない。ただ日毎に増す肌寒さが、季節の移ろいを感じさせる。
 しばらくして、教会から人々がでてくる。彼らは食事の用意された庭に向かっていった。暁千賀が教会にやってきたのも、それが目的だった。いつ死んでも悔いはない、むしろ早くこの無様な人生に幕を下ろしたい。そう思いながらも、空腹とは苦痛だった。自分でも笑えてくるほど惨めな話だ。
 教会内から列を成して出てくる人々を目で追っていた暁千賀は、被っていたコートのフードをより顔を隠すように引き下ろす。それは、知った人物の姿を捉えたためだった。上等で綺麗な衣服に身を包んだあの男は、御影院家の息子。名前までは知らないが、何年も昔にいわゆるパーティと呼ばれる場で顔を見たことはあった。かつては彼と同じ世界で生きていた自分が、自分だけが何故こうなってしまったのか。自分にしか聞こえない小さな息を吐き、フードの下で彼を睨む。何の恨みもないが、彼が憎かった。そして憎しみを覚えた自分自身にさらに嫌悪を抱く。
 教会からの列が途切れたのを確認し、顔を伏せたまま、可能な限り気配を消して庭園に混ざりこんだ。

>all

【本編開始おめでとうございます、没落貴族をさせていただくぽんぽこです。文章が至らない部分がありご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします!あと、宵さんの顔は知っている設定にしてしまいましたが、問題がありましたらおっしゃってくださいませ。】

14日前 No.3

澪子 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_Y9V

【賢宮澪子内親王/聖ホワイト教会】

 澪子は戸惑っていた。今目の前で起こっている全てのことが、彼女の過ごす日常とはかけ離れ過ぎていて戸惑っていた。
 神の御前では全てが平等……そんな謳い文句に釣られてふらふらと入ってきてしまった西洋建築も、知識の上で何かということは知っていたが、実際に訪れるのは初めてだった。その中で行われるミサとやらも、そこで修道女の語る説法も彼女の知る世界とは余りにも大きく異なるものだった。
 そして極めつけは、ミサの最中からどうしても視界に映る参列者たちの服装の違い。後ろから見るだけでも如実にわかるその質の差は、明らかに身分を越えた者達が此処に集っていることを示していた。
 普段からそうなのか、偶々今日がそうなのかは、偶々この地に滞在しているだけの澪子には分からない。それでもこれが、決して悪い事では無いことだけは分かる。ただ、慣れていないだけで。

 色々な意味で息が詰まりかけた礼拝堂を抜けた先、庭園では最後に説法を行っていた女性が告げた通りに食事の用意がなされていた。
 後から来る人々に道を譲る様に一歩退き、そのまま壁際の木陰へとゆっくり移動する。
「来てしまったのは良いのですが……これからどうしましょう」
 何となく人混みから離れた所で、辺りの様子を観察しながら澪子は独り言つ。長机に用意された飲食物に向かう人々は、矢張り様々で……澪子と同じように様子見を決め込むものも居たようだった。大樹の下の唐傘にちらりと目線を送って、再び思案に戻る。
 黙って抜け出してきた訳でこそないものの、余り長い間澪子が一人で出歩くことを、家人たちは決して良しとはしない。というか、現状澪子は本当に一人で居られているのかどうかすら怪しい……この庭園の塀の外に、下男や女中や政治家たちが列をなして控えていても澪子自身は驚きもしないだろう。せいぜい辺りの人間の迷惑になるから止めろというくらいだ。
 幸か不幸か澪子がこの街に居ることはまだ公になっていないので、引き返すなら今のうちだろう。もしここに華族でもいようものなら、澪子の出自にも気付かれかねない。そうなれば今度こそ、教会の人間の迷惑になる。
 そう頭では理解していても、澪子の足はそこからまだ動き出そうとはしなかった。

「もう少しだけ……此処で眺めているくらいなら許されるでしょうか」
 それは内親王としてではなく、一人の少女の小さな興味だったのだから。

【本編解禁おめでとうございます、結局すみっこから眺めているだけの登場になってしまいましたが、これからよろしくお願いします!】

>ALL

14日前 No.4

神無 颯一郎 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【神無 颯一郎/聖ホワイト教会庭園】


『皆様お集まりになりましたね。皆様を此処にお呼びしたのは他でもない。解ってしまったのですよ…………この一連の凄惨たる連続殺人事件を起こした、真犯人がね』

なんて、そんな陳腐な探偵小説は序章すらも幕を開ける事はなく。長閑すぎるほど穏やかな秋の昼餉前。礼拝堂から出てきてぞろぞろと集まりだした人々を眺めながら、夢物語の名探偵の決め台詞はそっと心の中にだけしまって、神無颯一郎(いぬがみ そういちろう)は例の薄笑いを浮かべた。
シスター・ホワイトに招かれてこの教会に足を踏み入れたのは、今朝のこと。招待を受けたのは数日前の事だったが、彼女の寄越した手紙を、彼は依頼状と勘違いしたのだった。おそらく聖ホワイト教会は何者かに狙われていて、次の安息日にはこの教会が怪奇事件の現場となる、そのことに気付いて修道女は我が『かみかぜ探偵社』に依頼を寄越したのだ。……本当にそうであったなら、それはこの消えゆく灯火のような男にとって如何に愉快な冥土の土産となった事だろう。

礼拝の間じゅう注意深く周囲を観察しながら、説教の話もろくに耳に入らぬ状態で不謹慎な妄想をあれこれと巡らしていた神無であったが、ミサの間に連続殺人が起こることはついぞ無かったし、黙祷の間にマリア像が盗まれることも、照明の灯りが天井から落ちて説教者が下敷きになることも、オルガン奏楽席に死体がぶら下がり誰かが指差して絶叫することも、当然無かった。神の祝福に守られた安息の時がただ静かに平穏に流れていくのを、感謝ではなく虚しい気持ちで見送った。この人生に、やはり『物語』なんて無いのだ。

(修道女、なぜ私を呼んだ……?)

長机一杯に馳走を並べられても、神無は全くそそられなかった。今日はまだ体調が良い方だが、持病故の慢性的な怠さで食欲など殆ど湧かない。
人の群れの外れに立って、もう一度彼らをよく観察した。貧富の差が越えられぬ壁で区別されたこの街で、彼等が同じ教会に集められ昼餉を共にするなどというのは、やはり違和感を覚えずにはいられなかった。陽花町のやんごとなき人間達と神無が万一関わることがあるとすれば、それはせいぜい仕事である探偵業に関する時ぐらい。他の月花町の住民達も似たように戸惑っているといったところか、二つの色は混じり合うようで混ざることはなく、マーブル状に渦巻いている。不自然さだけが静かに横たわり、舞台ではまだ一つの事件も上演されない。
これはどういった、謎かけだろうか。
秋風に翻るコートの中で、和服の袖を絡ませるように腕組みをする。粗末な薄い布地は風通しが良すぎて、神無は自らを温めるように腕を擦り合わせた。近頃の秋風の冷たさは胸に障る。蝋のように青白い顔で今朝も訪れなかった浪漫を憂い、微かに震える掠れた溜息を零す。冬に向かい冴えていく空は無常の理を告げ知らせるようで忌々しく、怜悧な漆黒の目を更に細めて疎んだ。天の神に、彼は今日も唾棄する。
皆が平穏無事な幸せなど、腐りかけたこの身を食い殺す、化物だ。

>all様


【本編開始おめでとうございます。遅くなりましたが、投稿いたします。拙い文章ではございますが、どなた様からの絡みも歓迎です。どうぞ宜しくお願い致します。】

14日前 No.5

ししくれ @kmnkha☆/pH2qpQf7L2 ★ieluDUuGrE_scn

【 衣笠 十朱 / 聖ホワイト教会庭園 】


 十月下旬の日曜日、聖ホワイト教会の庭園の一角で、食事を堪能する男がいた。男の名は衣笠十朱。孤児として生まれた貧困層の薬売りである。そんな男が時折赴く教会へ、よりにもよって今日という日を選んだのはなんの気紛れであっただろうか。此処で開かれたのは富裕層と貧困層の交流会。食事にありつけると言うのでほいほいと付いてきたわけだが、身分を問わずに混じり合う人々は奇怪という他なく、まさかこんな状況の中に身を置くなど、今朝の十朱には思いもよらなかった。
 富裕層か否かは大方見れば分かる。品のある所作に、豪勢な衣服。彼ら彼女らと、十朱との差は“身分”。ただそれだけ。しかしその二文字によって生まれた溝は深く、それを美味しく調理できる日など到底やってこない。今更それをどうこう言って嘆いたところで徒労であって、その溝を埋めようとするなんてとんだ笑い話ではなかろうか。そうだというのに、シスターも乙なことをしてくれるものだ。そう、十朱は皮肉めいた言葉を心の中で垂れ流した。だが、結局のところ十朱は身分格差になどさして興味はない。勿論富裕層の生まれであった方が楽だったのだろうが、そんなものはとうの昔に諦めるということを知った。大切なのは今、目の前に並べられている食事だけだ。

「ああ、美味しい、美味しい」

 口に運んだ料理に舌鼓を鳴らしながら、改めて周りを見渡す。すると、ふと一人もの寂しげな出で立ちをした少女が目についた。その時、十朱に取るに足らないような些細な好奇心が生まれた。富裕層の人間と話す機会などそうないのだから、話して見る価値があると思った。それに、富裕層である少女と貧困層である自分が言葉を交わす場面を想像すると愉快だった。もしかしたら存在せぬものとして扱われたり、罵詈雑言が飛んでくるかもしれないが、十朱は自身が元来図太い質であるのは分かっているので、そのようなことは気に留めようとはしない。

「何か召し上がったらいかがです?」

 静かな足取りで黒髪の少女の前に立つと、穏やかな笑みを浮かべて、そう声をかけた。


 >>賢宮澪子内親王様

14日前 No.6

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【彩河原雪/聖ホワイト教会庭園】

 小さい頃は毎日のように名も知らぬ神様にお願いをしていた。どうかいつか美味しいものが沢山食べられますように。綺麗なお洋服が沢山着れますように。あたしのように貧しい人が出来るだけ減りますように。
 願いも虚しくその1つも満足に叶えられた試しなどない。毎日食べるのはほんの少しの残り物。お洋服はほぼ全て奥様のお古。貧富の差は拡がるばかり。神様なんていないと自分の中で確信したのは10歳の時だった。神なんて偶像だ。そんなものを崇拝したところでどうにもならない。望むものは手に入らず、願う事は尽く潰える。夢を叶える力も無ければ、力をつける金もない。雪にはもうなにも残ってはいなかった。
 ただ毎日お屋敷に通って業務をこなし、古びた部屋で泥のように眠る毎日。ぬるま湯に揺蕩うような生活には不満こそないにせよもちろん満足なんてできるはずがない。ごく身近に存在している心優しい富裕層に感謝しつつも心のどこかでは嫉妬を抱え、彼らの綺麗な手を見てため息を漏らすことすらあった。そんな自分を心の底から憎んでいた。

 肌寒い日曜日、例に漏れず奥様から頂いた丈の長いワンピースを翻しながら訪れたのは教会だった。祈りも懺悔も目的ではない。無料で食事が振る舞われると風の噂で聞いたからだ。周りの動作を真似しながらミサに参加し、形だけの祈りを捧げた。
 そんな時間も終わり庭園へ向かえば、雪にとって豪勢と言って差し支えないほどの食事がずらりと並んでいる。皆が思い思いに好きなものを口に運んでいた。懺悔し祈るためよりも無料の食事に釣られてやってきた悲しい貧困層の雪は、料理を前にして思わず目を輝かせる。久しぶりにゆっくりと食事を楽しんでいると、ふと1人の男に目が吸い寄せられた。美しい藍鉄色の髪、上等な服、ふとした仕草すらたおやかで品がある。見ずとも分かる。彼は富裕層の人間だと。

「あ……っ、あの」

 気が付いたらその後ろ姿に声を掛けていた。やってしまったと顔を青くしてもそれはもう後の祭り。罵倒を受けるか、殴られるか、そもそも言の葉1つも返しては貰えないかもしれないが、それでも口を噤むことが出来なかった。ここで見送ってしまってはもう2度と出会えないようなそんな気がしてならなかったのだ。

>>御影院宵様


【遅ればせながらメイン開始おめでとうございます……! 絡み(???)という感じですが宜しければ相手してやってください……!】

13日前 No.7

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 雨々蝶 / 聖ホワイト教会庭園 】

 ざわざわと賑わい始める庭園、蝶はゆるりと辺りを見渡す。まず最初に視界に入ったのは品の良さそうな青年、御影院宵だった。衣服の色は蝶には識別出来ないがその仕草や立ち振る舞いから見て、富裕層には違いないだろう。とはいえ蝶にその人物が誰なのかは分かっていなかった。そして自分と同じように彼を見ている青年、篠宮暁千賀も視界に映る。彼が深く被ったフードの下ではどんな表情をしているのだろうかと蝶はふっと笑みを零した。

「――――ふむ、面白いねぇ」

 御影院宵に声をかける少女、彩河原雪を見ながら蝶はそう呟く。容貌からして富裕層ではないということだけは分かった。貧困層が富裕層に声をかける、とても珍しく、興味深い光景だ、そんなことを思いながら。

 僅かだが、視線が絡む。蝶に見覚えはなくそっと首を傾ける。見るからに育ちの良さそうな少女だった。どこか戸惑ったようなその様子に声をかけるべきか、と思ったが蝶が声をかけるより先に澪子に声をかけた男性の姿に蝶が行動に移ることはなく、大樹にもたれかかったまま、また庭園の観察を続けることにした。

>> おーる


(た、たぶんぐるりと全員に触れられたかな、と!た、たぶんですが……メイン記事に来ていただきありがとうございます!よろしくお願いしますね!)

13日前 No.8

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_HAD

【月ノ瀬 鳴/聖ホワイト教会庭園】

 ほう、と小さく息を吐いた。白に囲まれた教会。全てを包み込むように鎮座した神の姿を食い入るように見詰める。神秘的な美しさを感じさせるシスターから祈りの時間の終了を告げられ、それぞれに散らばって行く人々の中、何となく動けずにその場の椅子に座ったままでいた。続々と席を立つ人々は、今迄関わってきた人間とは少し違う人たちも混ざっている。富裕層と貧困層、幼い頃から口酸っぱく教えられた身分の違いとやらは知識としては理解していた。生まれながらにして隔てられた運命、それって何だか愛のない世界だと、漠然と切なく感じたのを覚えている。正装のように着させられた着物と袴に不安定な高低差のある靴、うっすらと化粧まで施された自分は、どうやらこの中ではよほど恵まれているらしいと他人事のように自覚した。

 ふと、久しぶりに見る屋敷ではない景色を物珍しそうにきょろきょろと見回す。ええと、最後に屋敷の敷地内を出た日から、ひー、ふー、みー……何日だったでしょうか? 椅子に座ったまま左手の指を1本ずつ折り曲げ、今日が何日ぶりの外出なのかを数えようとしたが、両手の指では足りないことにすぐ気が付いて数えるのは諦めた。でも、頭の中では昨日も一昨日もお出かけをしていたのだ。かふぇ、とやらで甘味を食べたり、お友達と素敵な花畑で談笑したり、例え空想でも楽しい思い出はいっぱいだ。それらを思い出して一人で口元を緩めていると、ふんわりと外からいい匂いが漂ってくる。

(そうだ、さっきシスターさまが言っていた。ごはんがあるんでした。わたしとしたことが、忘れるなんてうっかりです)

匂いによって触発され、掘り起こされた記憶のほんの数刻前に案内されていた庭園の存在を思い出し、慌ただしく小走りで教会を出る。早くしないと美味しいものがなくなってしまう。最近はあんまり甘い物も食べさせてもらえないから、ここらで補給しておきたい。それに、昨日のお稽古で失敗をしてしまってお夕飯をいただいていないのだ。失態を犯した自分が悪いのだけれど、人間は空腹には逆らえない。反省でお腹が膨れてくれればいいのに。それでも、幾らお腹が減っていてもお行儀よく、品良く食べることを忘れてはいけない。月ノ瀬家の令嬢として、恥ずかしくないように。恥だなんて思われたら、生きていけないですもの。

 もう少しで胃に収めることが出来るであろうご馳走へ意識を遣りながら、庭園へ向かっていたその時。ドンッと唐突な衝撃が走る。気配を潜めてゆっくりと動いていた其れと小走りだった自分が衝突した衝撃はそのまま跳ね返り、食事も禄に摂っていない軽い身体はいとも簡単に投げ出された。「へぶっ」と間抜けな声を上げながら地面へ尻餅を付いてしまう。座り込んだまま慌ててぶつかった先を確認すれば、そこにはロングコートのフードを深く被る自分よりもずっと大きい影が居た。

「も、申し訳ありません……。前方不注意でした。どうか非礼をお許しくださいませ」

衝突した対象が人間だと分かった瞬間、飛び起きるかのように尻餅を着いた姿勢から立ち上がり、深々と頭を下げる。その所作は幼き頃から叩き込まれた非礼を詫びるという基礎中の基礎のマナーであり、申し分なく整えられた御辞儀なのだが、慌てて立ち上がったせいで土に面していた袴の部分は薄汚れたままで、髪も僅かに乱れていた。それらには気付くことなく、貴族の令嬢として恥のないよう懸命に振る舞おうとしたその頭は、数秒経っても上がることがなかった。

暁千賀様、周辺All様>>

【メイン開始おめでとうございます!僭越ながら暁千賀さんに絡ませていただきます。落ち着きのない不注意令嬢ですがどうぞよろしくお願いいたします…!】

13日前 No.9

日向月。 @kafune☆01.vmkBoVYY ★iPhone=0TTPXNtID2



【 水原祐太郎 / 聖ホワイト教会庭園 】


 白に包まれたこの教会を訪れたのは、今日が初めてのことではない。この地に来てから何度か訪れたことのあるこの場所に、まさか招かれるとは思いもよらなかった。が、これも良い経験と知識に繋がるに違いないとこの少年が思ったのは言うまでもないであろう。学生帽を目深く被り、和と洋の入り交じった格好をした少年もまた、ミサに参加したのちにシスターの声掛けに応じて庭園へと移動する人々の合間に紛れていた。

 人の波に乗り、流れ着いたところにあった適当なテーブルの前に立ち止まると、目の前の食事を眺めながら周りの人々に目を配る。今日の集まりは富裕層と貧困層に特別な縛りはないものならしい、ということは端から知ってのことだが改めてひとりひとりを見るとなんとなく身なりでそれぞれの立場が見えてくるかのようだった。

「……もっとまともなものを着てくるべきだったか」

 自分以外を見ていた目線を己の元に戻しつつ、ぽつり、と言い残した言葉が辺りの騒がしさによって掻き消されていく。そんな気がした。



>>ALL


【メイン記事解禁おめでとうございます! 遅くなりましたが書生の水原はALL文で失礼致します。もし宜しければ絡んで頂けたら幸いです……! 宜しくお願いします!】

12日前 No.10

神崎りりか @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

【 浅茅司 / 聖ホワイト教会庭園 】

毎週訪れていたはずの聖ホワイト協会が、今日は異質な光景で浅茅を出迎えた。
煌びやかな着物と着古したスーツ。貧窮と裕福が入り混じった、混沌。
まるでこの国の縮図を表したかのような聖堂に、浅茅は足を踏み入れた瞬間たじろいだ。
嗚呼、今日は何か特別な日だったかと記憶を絞り出せば、そういえばシスター・ホワイトから招待状を受け取っていたことを思い出す。いつもなら礼拝のあとは電車を乗り継ぎ帝国図書館へ赴いていたが仕方がない。正直交流会には興味がなかったが、たまにはこういう例外があってもいいかもしれないと、浅茅は力を抜いた。書物ならまた次の休日にでも、読み漁ればいい。

奇妙な礼拝は意外にも通常通りに行われ、そのままシスターに言われるがまま教会の庭園に向かう。皆ごく普通にシスターの招宴を楽しんでいるようで、長机に並べられた色取り取りの料理を美味しそうに食べていた。あそこまで豪勢な食卓は霞会館に行った以来見たことがない。教会にそこまでの財力があったことにも驚きだが、貧困層にとっては最高の贈り物だろう。浅茅は水をコップに汲んだあと、その様子を一歩下がって傍観した。

……やはりこういった場所は苦手だな。

浅茅は思う。もともと華族同士の社交が苦手で陸軍士官学校に入ったような人間が交流の輪を広げるのは難しい。誰に話しかけるわけでもなく、浅茅は腰に掲げた刀を弄っていた。ここで俺が出来ることはせいぜい場の警備だろう。浅茅は考える。貧困層と富裕層が同じ場にいるのだ、窃盗の一つや二つが起きてもおかしくはない。
参列者一人一人の顔を観察しているなかで、一人見知った顔を見つけた。

あいつは、確か……――

かみかぜ探偵社の人間か。浅茅は記憶を掘り返す。男も浅茅と同様に人の群れから離れて眉間にしわを寄せていた。名前までは思い出せなかったが、礼拝の時から何やら挙動不審だったのことで少し気になっていた。
浅茅は男のほうに歩み寄り、コップを掲げる。

「お前みたいな男が礼拝に来るとはな、私立探偵。少し驚いたぞ」
からかうようにして話しかける。一度会ったことがあったことがあったよな、と確かめながら。


>神無 颯一郎さん【本編開始おめでとうございます。早速ですが絡ませていただきました!】

12日前 No.11

はいせりひと @bloodycat☆T3u8MhS.e3A ★iPhone=VP4MQKiD6u

【遊佐百合子/聖ホワイト教会庭園】


 群青色の何年も着続けた着物にくすみのない白いフリルのエプロン姿は、月花町に暮らす人からすれば見慣れたものかもしれない。信じる神がいなければ祈る神もいない遊佐百合子という貧相な人間は、聖ホワイト教会のミサが終わり開かれた食事会でも目立つことなくグラスを片手に立ち尽くしていた。何の目的があって、このような食事会が開かれたのだろう、と粗末な頭で考える。そしてあまりにも従属する立場であり、従属する形で長く過ごしてきた百合子はこの食事会において自身がゲストとして過ごしていることが未だに信じられなかった。信じる神も祈る神もいないのに、教会の食事会に参加しているのも心苦しいところがあった。

 テーブルに並んだ食事、手にしたグラスに注がれた透明な水は、今まで頼んだことがないほどに美味だと飲む前からわかる。長年勤める喫茶店なら、この水だけで名物となるだろう。

「……ほんま、場違いってこうゆうことやなぁ」

 はあ、とため息ひとつ。憂い顔で呟いては狭くて暗い自室が少しだけ恋しくなる。しかしこの場を楽しまなければせっかくの時間が無駄になってしまうだろうと、少しだけ水を口に含んではその喉越しの良さと味わったことのない感覚にわかりやすく目を瞬かせた。

>>all


【貧困層の遊佐百合子です。遅ればせながら本編でもよろしくおねがいします。気軽に声をかけてくだされば嬉しいです!】

10日前 No.12

神無 颯一郎 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【神無 颯一郎/聖ホワイト教会・庭園】

急に近づいてきた足音に、神無はハッと眉間の皺を解き伸ばした。あろうことか聖なる神の家でその神を呪おうともする勢いで沈んでいた。明るく平和な日常は此の身を必要としてくれない。昔から、幸せ色の景色を見ると、何故か置いていかれるような気がしていたのだ。
視界に入ったのは硝子洋杯の中に揺れる水。表面の美しい細工のお陰で水中に陽の光が優雅に躍る。思わず目を奪われた瞬間に、それは持ち主の手によって掲げられて、ぐんと近付いた。条件反射的に身を縮めてしまう。掲げられたものから、身を守るように体が動く。神無は、「水を掛けられる」と思ってしまったのだ。考えるよりも速く、染み付いた習性は露呈する。
しかし、身を縮め震わせても、記憶と本能が予期した危険は一向に降りかかってくることは無かった。またやってしまった、現実は其処まで攻撃的ではない、わかっている筈なのに。幼少期に染み付いた癖というものは、抜けない。なんて浅ましく恥ずかしい癖だろう。己の失態に恥じ入りながら、様子を伺うようにその持ち主を見上げる。

「ああ……」
見知った顔にそう声をあげたまま、濡れたように黒い目を僅かに細めて思案する。
……確か……ーー
その時脳裏に閃くものがあった。
「猫の人」
思いつくと同時にそれは自制など一分も受けることなく、既に言葉になっていた。子供でも分かるような言ってはいけない台詞を不用意に零してしまう、そういう迂闊さが神無の一面にはあった。

「……まったく、その通りだよ。この探偵神無は此処の修道女から依頼を受けて、無神論者ながら基督教会に潜入した訳だが……おや」

何はともあれ、相手が知った人と分かり心を開いたらしい。急に神無は探偵の顔になり饒舌になった。彼の持つ二面性の「表」が人前と気づいた事で目を覚ましたのである。話の途中で目を見開く。泣いているわけでもないのに、微熱帯びたるその体では黒い双瞳は常時潤んでいるようだった。その目が捕らえたのは、相手の男が腰に帯びている立派な刀だった。刀を帯びる事が許されている人物、それは昔この国にまだ幕府というものがあった時代から「特別な地位の人間達」と決まっていた。その刀が意味するところ、彼の身綺麗な服装、強く逞しそうな容姿、月花町で会った時とは少し違う凛とした雰囲気……その答えは探偵が推理する迄もなかった。

「これは……失礼、致しました。もしや貴方もシスターにこの教会と彼女を守るように依頼された、のですか」

付け加えたような敬語を今更ながらに挟みながら、しかし神無は内心わくわくした心持ちで訊ねた。帝国の上位軍人までもが召喚されている、その先に待ち受けるこの教会の危機は何だ? どんな凄惨な怪事件が、この退屈な余生を彩ってくれるというのだろう? 不謹慎に逸る心を努めて抑えながら、できるだけ深刻そうに見える顔を作って貼り付ける。

>浅茅司様


【絡みありがとうございます! 楽しみましょうー】

10日前 No.13

御影院 宵 @xxsnowdrop☆6PqqtgEep4k ★DVZTe29d5v_yFt

( 御影院 宵 / 聖ホワイト教会の庭園 )


 パーティーの雰囲気を楽しみながら、宵は人混みの中に紛れてゆく。時折、顔見知りに出会っては軽く会釈をしたり、挨拶をしたりと普段の会合のようなその様に内心溜息をつきながら。確かに自分は御影院家の者ではあるが、実際にその家を継ぐわけではない。教会に来てまでわざわざ自分に挨拶に来るだなんてとんだ暇人なのだなと心の中で吐き捨てながら、それでも宵はひとりひとりに笑みを向け、会釈をする。
 ひとしきりして自分の周りを取り囲んでいた人々が去ってゆくと、のどが渇いていることに気がついた。宵は近くのテーブルにきれいに並べられた飲み物の中から無難に緑茶を選択し、ゆっくりと口に運ぶ。ふわりふわりっと湯気がたっているものの、10月下旬のこの気温によりやや温くなっている。それでも味に変わりはなく、宵は満足げに口元を緩ませた。

「……?」

 静かに緑茶を堪能していた宵だったが、ふっとなにかを感じた。これは視線だ。しかし、その視線がどこから発せられているものなのかまでは分からない。ただひとつ言えることは、日々の生活の中で向けられるそれとはまったく違ったものだということだけだ。宵は小さく首を傾げながらも、そんなに気にする必要はないだろうと頭の片隅へとそれを追いやる。今日のパーティーは貧困層と富裕層が入り混じったもの。いつもと違った視線のひとつやふたつあって当然だろうと。

 宵は緑茶の入っていたグラスをテーブルに置き、続いて料理へと手を伸ばす。しかし、その手はぴたりっと止まった。それは背後から弱々しい女性の声が聞こえたからだ。はて、このような場所で自分に声を掛けてくる女性なんていただろうか。親族を除いて自分と面識があるのは仕事の付き合いや関係により、男性ばかりのはず。宵は怪訝そうな表情を浮かべながらも、ゆっくりと振り返る。

「はい? ……私になにか御用でしょうか、お嬢さん?」

 そこにいたのは見覚えのない女性で、宵はさらに不思議そうに首を傾げる。もしかすると、遊び人の次男と間違えているのではないだろうか。そんなことまで考えながら。


>>彩河原 雪様、(篠宮 暁千賀様)、ALL、




【 顔知ってる設定、万々歳です! 本文、一応()で宛先つけさせていただきました、よろしくお願いします! 】
>>篠宮 暁千賀様、



【 絡み、ありがとうございます! 男っぽい要素少なめな宵ですが、どうぞよろしくお願いします! 】
>>彩河原 雪様

10日前 No.14

独楽 @sbluexxx☆rx3sEFPR6z6 ★rqRPsSgCf7_PHR

【 八十一八 / 聖ホワイト教会庭園 】

 何もかもが、珍しいものだった。一体何が普通で、異常なのかすら、判断が出来ない。わかるとすれば、やはり自身の容姿は異常で、奇怪なものであるのだなあ、という呑気な答えだけだった。真白なシスターは、もしかすると自分と同じなのかもしれない、と八十はぼんやり考える。不思議で、神秘的で、よくわからない雰囲気を纏う女性だった。

 そんなシスターが招いたこの場所で、八十は、やはりどうしたら良いのかわからずただひたすら周りのものを観察する。好奇心は留まることを知らない。ふらりと立ち上がろうとして、ぐっと足に力を入れた瞬間、動きがそこで止まった。首輪の存在を思い出したからだ。
 首につけられた首輪は、文字通り犬や猫につけるようなものと同じ、逃げないようにするための、誰かの所有物だと周りに示すための枷だ。発信機なる、高度でよくわからない何かが取り付けられているのだという。つまり、居場所も何もかも把握されているのだと、そう思っていいのだ、というのは、同じ小屋にいる蛇女の言う言葉である。
 否、けれども、この場所にいる時点で、その存在すらもどうでも良いのだった。八十は一度力を抜いて、他の人達が庭園に出て行く中、ぼんやりと礼拝堂のステンドグラスを見上げる。綺麗だ。透き通って、色がたくさんあって、――己とは何もかもが違う。

 ああ、どうだっていい。この場所にいることが不釣り合いだなんていう話は、シスターに失礼な気がした。せっかく招いてくれたのだから、何か。何か、しないと。
 自分を見せることでしか他人を喜ばせたり他人の興味を引いたりすることが出来ない八十は、此処に集う良くも悪くも様々な人々にどう接したら良いのかわからなかった。普通のコミュニケーションなんてとれるはずもない。そうだ、人形である自分は、とにかく、真似をするしかないのだ。そう思って、ゆっくりと立ち上がっては庭園の方に向かう。けれど踏み出した足は、明るい陽の光に怖気づいて、思わず礼拝堂を出る扉のところで止まる。

「…………眩しい」

 思わず零れた声は、小さく透明で。きっと誰にも聞かれないまま、消えていくのだろう。


>>ALL様

( 初めまして、メイン開始おめでとうございます〜! 庭園なのかあやしいところで加えてこの絡みにくさ……本当にすみません、もしよろしければお相手願います;; これからよろしくお願いいたします! )

9日前 No.15

@anzu00☆Z8uplvJ.Fz2 ★iPhone=KGhEBc25IF


【 露ヰ 花子 / 聖ホワイト教会 】


10月も終わりに近づいてきたこの頃、かなりの寒がりな花子には少し辛い季節。それなのに日曜礼拝に参加したのは、ほんの少しの気まぐれと、そして、シスターの希望で集まった富裕層と貧困層の面々を見たかったからといういわば興味本位である。
同じ人間、なんなら自分より美しい所作のものだっている。しかしそれはあくまでも仕草。身につけたものの違いは明らかであり、花子は自分の纏っている着物がひどく滑稽なものに思えた。むしろ、わざわざこんなものを用意するなど悪趣味にもほどがある。長すぎる丈に、重い袖。確かに暖かいが、動きやすくは決してない。母親の用意した、淡い紺色に赤い花が大きく刺繍された着物。所々に小さく蜻蛉も描かれている。これを用意してくれたことはありがたいが正直ありがた迷惑だ、と花子はため息を漏らす。
彼女は、知っている。自分の家族にとって、自分の価値など呉服屋の歩く看板としての大切な商売道具くらいにしか考えられていない、ということを。それを思うと少なからず苦しくもなるが、こうして外出の許可を得られるのだからまだ自由の身だろう。そう、自分は幸せ者だと心の中で言い聞かせる。かといって、他人が自分より不幸だなんて思うつもりはないけれど。

「せっかくたくさんの人とお話しできる機会なのに、こんなくらい顔はするものではありませんわ.......」

ポツリと小さく呟いて、両手で抑えるようにしながら、頬をペチペチ叩く。笑え、花子。
先ほどシスターに案内されたばかりの庭園には、豪華な料理と飲み物が並べられていた。椅子がないのですね、と呟いて、花子は微笑んだ。立食形式、だろうか。それもまた、嫌いではない。と、いうよりも、花子にとって、食事の際に腰掛けるか立っているかなど非常に些細な問題に過ぎないのだ。
しかし、どうにも食事しづらい雰囲気だ。周りは楽しそうに話しているし、.......。こんなにも美味しそうなたくさんの食事に手を伸ばす気になれない、別に理由はないけれど、お腹があまり空いていないのと、あまり慣れない場に少し戸惑っているからだろうか。どうすることもできずにぼんやりと周りを見渡すと、明るいとは言えない顔でため息をつく少女を見つけた。自分より少し年下だろうか。グラスに口をつけると、少し驚いたような表情。花子は少し心配になって、そしてそれよりも彼女へ興味を持って、思わず声をかけた。

「そちらのお飲物、そんなに珍味なのですか? そして......あ、ええと、その、浮かない顔みたいですが、ご気分が優れないのです? もしそうなら、私、今すぐシスターを呼んできますよ」



>>遊佐 百合子様、オール様



【 遅ればせながらメイン解禁おめでとうございます! なんか独り言とか二十面相とかしてるような女の子ですが、どうぞこれからよろしくお願いいたしますー! 】

8日前 No.16

神崎りりか @else☆TYRYeuBpk3k ★iPad=MUiShf7G5m

【 浅茅司 / 聖ホワイト教会庭園 】

『猫の人』

そう目の前の男に呼ばれ、浅茅は一瞬目をぱちくりさせるものの大声で笑い飛ばした。
確かに数週間前、この男には野良猫探しで世話になっていた。しかし桜路で随分と名の知れている将校が自身の名前以外で呼ばれることは珍しい。それがとてつもなく新鮮だった。
「ははは。お前は随分と面白いことを言う。だが俺の名は浅茅だ、顧客の名前くらい覚えておくんだな」
目に溜まった涙を拭いながら挨拶をする。ここまで笑ったのは実に久しかった。

どうやらこの神無という男は神に懺悔しに来たわけでも交流会に参加しに来たわけでもなく、新たな事件の香りに誘われて聖堂に訪れたらしい。その引き金となるものを血眼になって探しているようだった。探偵としての性なのか、こうして浅茅と対峙している今も神無はあちらこちらに視線を移している。その瞳は爛々と、無邪気な少年のように輝いていた。

――俺の部下だったら注意散漫だと喝を入れてやりたいところだな。
浅茅は思う。士官たるもの、いつだって万事に備え冷静でなければならない。心が宙にある神無とは対照的に、浅茅はいたって落ち着いていた。

すると神無の方から奇妙な話を持ち出された。教会と修道女が誰かに狙われているかもしれないらしい。
「依頼? いや、俺はただ単にシスター・ホワイトに招待されて来ただけだが……」
そこまで言って言葉を切る。神無のあまりに深刻な表情に、浅茅は続ける言葉を見失った。
確かに富裕層と貧困層が入り混じるこの場所で何も起こらないとは限らない。それは主催者であるシスター・ホワイトも見越した上だろう。そもそもシスターと直接関わりがない自分が、何故このような催し物に誘われたのか疑問に思っていた。浅茅は神無の言葉から一つの可能性を導き出す。
「もしかして俺が呼ばれたのは事件を未然に防ぐためだったのものだったのか」
考え込むようにして軍帽をさらに深くかぶる。隠れた髪と瞳は更に闇に包まれた。浅茅は受け取った招待状を開封していない。手紙の中身を確認してないからには真意の確かめようがなかった。
「ならばシスター・ホワイトに何か心当たりがないか直接聞いてみるか?」
神無に尋ねる。
あとその取って付けたかのような敬語をやめろ、気持ち悪い。と、付け足した。


> 神無 颯一郎さん【 もう神無さんのノリが好き過ぎて……!】

7日前 No.17

にな @xxx39☆FTXhV/eLYAw ★kX8qVUjM91_mgE

【百瀬杏/聖ホワイト教会庭園】


 きれい。ほかにこの衝動を表す言葉を、杏は知らない。楽園だと思った。
 妹たちも連れてきてあげたかった。幼いあの子たちは来られないけれど、そう思わずにはいられない。こんなに満たされているのは、今日だけと分かっていた。明日の分も、明後日の分も明々後日の分も食べておきたいけど、胃袋は小さくて、すぐに腹は膨れてしまう。それでもここにいたいのは、足が動かないのはどうしてだろう。帰ったら夕餉の仕度をしなくちゃいけない。妹も弟も腹を空かせて待っている。母さんだって杏がついていないと。明日はお勤めだ。やらなきゃいけないことなんて山のようにある。逃げ場なんてない。
 あたりは綺麗だった。杏のように着物の裾の解(ほつ)れた人も、明後日の食事を心配する人もいない。ここだって、逃げ場なんかじゃないのだ。満たされてなお、自分がみじめだった。こうなると目も合わせられなくなって、ただ襤褸のような鼻緒を見つめた。やっぱり妹も弟も、いなくてよかったと思うことは。尊厳のある姉でいたいことは、いけないことでしょうか、神様。
 ――ふ、と。目についたのは、紫の鼻緒の下駄。顔を上げると、冷たい顔した女の人。蝶々の。

 「あの」

 理由が欲しかったのかもしれない。ここにいることを、誰かに許されたかったのだ。
 ひどく利己的な動機だった。女が悪人であろうと、、杏にはどうだってよかった。彼女が富裕層なのか、あるいは貧困層なのか、その判断さえ杏にはつかない。彼女を形作る黒は、杏の茶色の髪とも青い瞳とも違った。妹と弟、それから母さんと同じ色だ。声をかけはしたけれど、選ぼうにも選べるような言葉は知らなくて、杏は右の手のひらに強く爪を食い込ませた。誤魔化すように目尻を下げて頬を緩めて笑ったのは、多分保身で。

 「食べ……えっと、お食事は、されないんですか?」



 >>蝶さん、all
 (遅ればせながらメイン開始おめでとうございます…!恐れ多くも蝶さんに絡ませていただきました;_;よろしくおねがいします!)

7日前 No.18

澪子 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_Y9V

【賢宮澪子内親王/聖ホワイト教会】

 ただぼーっと辺りを眺めていただけの澪子は、近くに人がやって来ようが来まいがお構いなしだった。正確に言えば、直ぐ近くに人がやってきていることに気付いてはおらず、剰え自分に声がかかるなどとは夢にも思っていなかった。
「ふゎい?」」
 だから、何か食べないのかと問われた澪子の口から漏れたのは、変な所から空気を押し出したかのような気の抜けた声だった。

 慌てて声のした方向に顔を向けると、そこには穏やかな笑みを浮かべた痩躯の男性が立っていた。手には食器と庭園に並べられているのであろう食事の残りがある。それを見て、澪子はやっと問われた言葉の意味を理解した。
「あ、その、お気遣いどうもありがとうございます……恥ずかしながらわたくしはまだこのような場に慣れておりませんで……何か、美味しそうなものはございましたか……? ああ、いえその、きっとみんな美味しいのでしょうけれど……お勧め、とか?」
 しどろもどろになっているのは、相手の服装が明らかに質素なものだったからとかそう言う訳ではなく、ただ他人から何気なく声をかけられたことの驚きが未だに尾を引いているだけに過ぎない。相手がどう捉えるかは彼女に知る術はないが、身分違いの者に話しかけられたことを不快に思う様子はない。
 そして、澪子にしてみればこの場に慣れていないと言うのもまた事実。それは富裕層と貧困層が一堂に会していると言う現状だけではなく、そもそも立食パーティと言う形式に不慣れだった。澪子にとって会食と言えば、和洋問わず基本的に座っているもので、辺りを眺めていたのもそうした物珍しさがあったからかも知れなかった。

>衣笠 十朱様

【お返事遅くなりましてすみません、絡み有難うございましたm(__)m】

7日前 No.19

篠宮暁千賀 @poko10☆sMzkA8RPRfw ★Android=MNgMSKnMpI

【篠宮暁千賀/聖ホワイト教会庭園】

 誰とも話さず、顔すら見ることなく、暁千賀は黙って皿に料理を取り始めていた。その最中、不意に背後から何かがぶつかってくる。 その衝撃で皿の端から野菜が一欠片転がり落ちるが、それだけだった。その衝突の主は、不健康に痩せた暁千賀の体幹すら揺るがさないほどに軽く、小さな少女だった。皿を手にしたまま、暁千賀は少女に視線を向けた。上等な着物に身を包んだ、小柄な少女。一目見れば、良家の娘であることを認識するには充分だった。少女は反動で尻餅をついた様子だったが、慌てた様子で立ちあがり、謝罪の弁とともに深々と頭を下げた。

「…………」

 少しだけ乱暴に、暁千賀は皿とトングをテーブルに置く。がちゃん、と陶製の皿が音を立てた。少女の方へと向き直ると、暁千賀はおもむろに屈み、土の付いた少女の袴を軽くはたき始める。しかしそれは優しさなどではない。かつての自分を思い出すような良い身分の人間は嫌いだった。舌打ちをしてその場から立ち去ってやりたいのが本心だった。だが女性に、しかもまだ二十歳にも満たない少女にこの場でそんなことをしようものなら、却って悪目立ちするだけだ。あくまでも、自分の体裁を保つため、それだけだ。
 手で払える土をおおよそ落とし終えると、暁千賀は立ち上がった。少女を再び見下ろして初めて、彼女が未だ頭を下げたままであることに気づく。

「……いつまでそうしている。易々と人に頭を下げるとは、誉められたものではないな」

 他人に簡単に頭を下げるな――暁千賀はそう教育されてきた。むやみやたらに頭を下げることは、品格を落とすだけだと、そう教えられてきた。男だからという理由ではなく、二人の妹も同じだった。だが、彼女は深々と頭を下げ続ける。それも自分のような見窄らしい身なりの人間に。暁千賀は深く被ったフードを脱ぎながら、少し呆れたようにため息をこぼした。

>月ノ瀬鳴様、all
【絡みありがとうございますー!性格悪いやつで申し訳ないですが、よろしくお願いします(*^^*)】


【顔見知り設定許可ありがとうございます!改めて絡めるのを楽しみにしています】
>御影院宵本体様

7日前 No.20

凛々 @petrichor☆KdizKBUyxLI ★Tablet=ho55TfXwUY

【 綺堂 / 聖ホワイト教会庭園 】

招待状が届いた時は、単純に驚いた。
陽花と月花、じわじわと、けれど確実に、どうしようもないほど隔てられたふたつの世界。同じ地に住んでいながら、お互いがお互いを違う世界の人間として扱うことが、まるで義務であるかのように教え込まれてきた。かくいう俺だって例外ではないし、俺の弟のように暗黙の義務教育を信じきっている者はごまんといる。そんな世界の人間達を交わらせようとするシスターの意図は読めないままだ。

教会が気が向いたら足を運ぶ程度の存在でしかない俺は、到底敬虔なクリスチャンとは言えないが、あの家の中ではまだマシな方なのだろうとは思う。両親や弟は、ろくに読みもしない内から顔をしかめて招待状を放り投げてしまった。自分の世界にいない人間には興味がない質なのである。ともすれば神でさえも興味の範疇には入らないかもしれない。
そんな調子だったから、俺がミサに行きたいと話しても、勝手にしろと言い捨てられるのみであった。あの人達にとっては、腹を痛めて産んだ子でさえも外界の人間になるようだった。

「祝福……ねえ」

シスターの白く小さい後ろ姿を思い出して、呟く。
久方ぶりに訪れたミサは退屈で退屈で、寝てしまわないように気を張っていたら、いつの間にかお祈りもお説教も終わっていた。最後にシスターが放った一言だけが、耳の奥で少し燻ってから消えた。
庭園へと導くやわらかい笑みにつられ、参加者たちに続いて席を立つ。着物を翻す直前、虚空を見上げる白い人影が妙に焼き付いた。ステンドグラスで漉して何色にも色づいた光を浴びていても、真っ赤な着物を羽織っていても、何にも染められないような白さ。

庭園へと続く道を歩く途中、振り返ると先刻の白い影が扉の奥で佇んでいた。薄暗い中でも白さがはっきりと際立つ。
しかしふと思う。あれだけ目立つ存在でありながら、俺はミサを終えるまでは存在に気付かなかった。あんな特異な存在、他の誰も、何も思わなかったのだろうか? シスターと似た容姿をしているから? どうして?
だって、こんなにも――珍しいというのに。

「どうしたね。何か珍しいもんでもあったかい」



>八十くん、おーる

【おはようございます〜!遅ればせながらイベント参加&八十くんに絡ませていただきます(((o(*゚▽゚*)o)))
ただの変人ですがよろしくお願いいたします〜!!】

7日前 No.21

朧塔子 @papillon☆0uO5mlUpCUns ★sAbT0rwP1n_mgE

【朧塔子/聖ホワイト教会・庭園】


 神はいない。縋ったところで人生に救いなどない事は、貧富の差で分かたれたこの街を見渡せばわかりきった事だ。どう足掻こうと所詮現世は地獄の別名。富んでいようが貧しかろうが、生まれ落ちたら目指す先は遥かな彼岸しかないのに。誰であろうと最後は哀れただの屍、朽ちて果てるは肉と骨。
 神は信じない。知らないのか、異国のお偉い哲学者様だって言っていた。

 神は死んだ、と。


『神よ、祝福を与え給え』

 教会の白い壁に微かに反響しながら、厳かに響いたシスターの声を塔子はぼんやりと聞いていた。その声はただ右から左に抜けただけで、ミサの最初から最後まで塔子の視線を奪い続けていたのは美しい神々の彫刻や、色とりどりに煌めくステンドグラスだけだ。一切の信仰を持たない塔子にとって、それらはただの美術品。部屋に置くならあの小さな天使の彫像がいいかな、などと不遜な事を考える塔子の目は罪深き欲にのみ奇妙な熱を孕んで輝いていた。黒いベールで隠された上に、片方の目は前髪に覆われたままであったが。
 飢えも渇きも苦しみも悲しみも、今まで生きてきてついぞ味わった事のない塔子にとって、神に祈る意味を見出す事はあまりに難しかった。信じるものなど何もない、無論自身の事さえ信じてはいない。信じる価値のあるものなどこの世に存在しないのだ、今のところは。

 教会の一番後ろの席に座る塔子は彫像から視線を移し、シスターの声に促された人々が庭園に向かうその様を席から立とうともせずにじっと見ていた。富む者も貧しき者も、皆誰もがどこか居心地悪そうに萎縮している。まだ珍しい洋装で普段から悪目立ちする塔子の、遠慮の欠片さえない視線にも今日の異様な空気にのまれているせいか誰も気付かない。
 シスターからの招待状を読んだ時からこうなるだろうと塔子は予想していた、二つの世界が交わる事などなかろうと。だからこそそれを自分の目で確認しに来たのだ。塔子の行動は気紛れなようで、しかし実は悲劇な喜劇を嘲笑するような底意地の悪い感情が原動力である。貧富の差が埋まる事はないとわかっている、そしてこれが現実だ、分かたれたものは一つにはなれない。人間の本質は創世の時より何も変わらないのだ。
 あなたと私は違う、それが揺るがぬ根底。

「無意味、なんて空虚」

 誰もいなくなった教会の中、誰にも聞こえない程小さな声で。ぽつり、塔子は呟く。


 シスター、あなたの志は浄く尊く素晴らしい。この集いが偽善とは決して思わない。
 されどだからこそあなたさまの善意は実りはしない、悪徳に栄えしこの人の世では。


 独特な形をしたドレスの裾を風に靡かせながら、塔子は人々よりずっと遅れて庭園にやって来た。すでに食事を始めた者もいれば、未だこの雰囲気に馴染めず立ち尽くしている者もいる。ぎこちなく言葉を交わす者達もいるようだが、果たしていつまで続く事やらと、塔子の唇は歪な弧を形作る。
 陽花町と月花町、住人達の差別意識により誕生したこの二つの街を遮るものは物理的にはただの大きな通りしかない訳だが、彼ら彼女らの心に根付いた差異こそが深く暗い河のように二つの街をくっきりと隔てていた。それが今如実に、眼前にて形になっている事が、塔子は何だか愉快で仕方なかった。神など存在せず、人間の本性は悪であるという捻くれた持論が今まさに証明されているようで。
 けれどふと視線を移した先に見えた貴き紫の着物を纏う少女の姿に、塔子は思わず髪に隠されていない方の片目を大きく見開いた。驚きを隠せぬまま自然とその足は彼女と、彼女に声に声を掛けたと思わしき男性の方へ向かう。

「――ご歓談のところ失礼致します。これはこれは澪子さま、ご機嫌麗しゅう……まさか、お一人で此処まで?」

 塔子は華族や皇族御用達の高級旅館として陽花町でも有名な饗月亭(きょうげつてい)の一人娘である。そして今、最上の客をもてなす時にのみ開かれる奥座敷には非常に高貴な客人が宿泊しており、塔子も先日挨拶に伺ったばかりだった。賢宮澪子内親王、今上天皇の直系の血筋にあたる皇族である。
 その御方がまさかこんな場所にと思ったが、どうやら間違いではなかったらしい。本来であれば跪かねばならない立場だが、澪子自身が皇族の身分を明かしたがらない性格だと聞いていたので、軽く膝を折って一礼する程度で済ませた。顔を覆うベールを片手で避けると、塔子は片目を細めて声も潜め、咎めるような表情と声にならぬよう努めつつ澪子に囁く。護衛の姿も見えないので恐らく一人で抜け出してきたのだろう。もし澪子の身に何かあれば饗月亭の主人である父だけでなく、この街のお偉方の首が全て飛ぶ可能性だってあるのだ。流石の塔子も普段のようにふざけてはいられなかった。
 澪子に囁き掛けながら、塔子はちらりと横目で側の男性を見る。澪子に声を掛けていたが、果たして彼は澪子の身分を知っているのか、それともこの会の趣向に乗っ取ってたまたま彼女に声を掛けたのか。ひどく痩せた風体や身に付けている衣類の布地などから計れば決して裕福な身分ではなさそうだが、丸眼鏡の奥に見える理性的な水色の瞳や、彼自身が纏う雰囲気には不思議な知性が感じられる。
 そしてもう一つ、一瞬ではあるが何か独特な香りがして塔子は目を閉じると、ほんの微かに鼻を鳴らした。

「……苦く、甘く、辛い……枯れた花の匂い、乾いた草の匂い。随分不思議な匂いを纏っているのねぇあなたさまは」

 冷えた秋の風が吹き抜けた時、ふわりと彼の身体から香ったのは様々な植物を思わせる香り。観月の為に秋の野を歩いた幼き頃を思い出させるような、どこか懐かしい匂い。
 自分より背の高い彼に対して小首を傾げるように見上げると、塔子は品定めでもするかのように無遠慮な視線を十朱へと向ける。物怖じもせず、ひどく真っ直ぐに。

>>澪子、十朱


【今更ですが本編開始おめでとうございます、遅ればせながら参加させていただきます。ちなみに塔子が華族や皇族御用達の旅館の娘という事で、三日月様とお話して塔子は澪子様の正体(?)を知っているという事にさせてもらいました。早速絡ませていただきますので、三日月様、ししくれ様、どうぞ宜しくお願い致します】

6日前 No.22

たわら @tawara529☆OfI7utBYH1Y ★Android=7J0aOKrluH

【彩河原 雪/聖ホワイト教会庭園】

「あの、大した用があるわけじゃないんです。でも、あの……き、綺麗だなって、思って…………」

 どんどん尻すぼみになっていく己の声に嫌悪感を覚える。自分から声をかけたくせになんだこの体たらくは、と脳内では自分を叱咤しているがそれが外見に出ることはない。
 目の前の青年は流麗な仕草で雪を見やる。首を傾げる動作すら気品に満ちていて自分との違いに恥ずかしくなった。雪が全く同じ仕草をしたとしても出せて犬猫鳥のような愛嬌程度だ。

「っ、ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ほんとにどうでも良いことで引き止めちゃってごめんなさい! 忘れてください! ごめんなさい!」

 あまりの失態に半ば叫ぶようにしながら名も知らぬ目の前の富裕層に向かって物凄い勢いで頭を下げる。
 気が付いたら声を掛けていたとはいえそもそも返事が返ってくるとは思っていなかった。それどころか見るからに富裕層ではない雪に対してこんなに丁寧な言葉遣いで返してくれるなんて夢どころか頭の片隅にすら思い浮かべていなかった。
 恥ずかしいやら恐ろしいやらでもう顔は真っ赤とか真っ青とか通り越して真っ白になっていた。ミモザ色の瞳にはうっすら涙すら浮かんでいる。猫だったら尻尾がぶわりと膨らんでいただろうし、犬だったら甘えとも威嚇ともとれる声できゃんきゃん鳴くような表情だ。
 初対面だ。しかも同じ身分の同年代ならまだしも富裕層だ。どうして話しかけてしまったんだろうという自責と後悔の念が脳内を渦巻く。
 奥様や旦那様以外の富裕層をこんな至近距離で見たのは初めてだったから、更に中性的な美貌というものを初めて視界に入れてしまったから、もしかしたら無駄に気分が高揚していたのかもしれない。学も教養も大して無い雪でも美醜くらいの見分けはつく。
 土下座せんばかりの勢いで頭を下げながら、それでも上目遣いに顔を覗き見ている辺り度胸だけはあるのかもしれない。


>>御影院 宵様


【あまりにも遅筆で大変申し訳ないです……;】

6日前 No.23

神無 颯一郎 @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【神無 颯一郎/聖ホワイト教会 庭園】


「……わかった。それじゃ、浅茅さん=v

猫の人、ではなく、その名を浅茅と云った男を、神無はそう呼び直した。依頼人の中には貴人も貧民も入り交じっているが、亡き先代所長も彼自身も仕事に於いて其れを区別することは殆ど無かった。だからなのか、かくも奇妙な再会を果たした際に一度はその差を意識してぎくりとはしたものの、敬語を崩せと言われればそれはありがたく容易い事であった。驚くほど呆気なく『それじゃ』の一言で即座に敬語を中止する。日本人らしい謙遜や奥ゆかしさといった美徳はこの男の奥底には備わっていないらしい。
「私はいぬがみ≠セ。神は無い≠ニ書いて、いぬがみ」
そう言って神無は、この教会に週毎通っていると推測される浅茅にニヤリと笑った。

「さて。浅茅さんもそう思ったのなら話は早いね」

浅茅が何か一つの可能性を閃いた瞬間を察知して神無の名探偵ごっこには拍車がかかる。すっかり元の口調に戻って、爛々と不謹慎に光る眼をもはや隠そうともしていない。薄っぺらい和服に通した腕はもう隙間風に凍える事もなく、彼は興奮気味にコートの中で落ち着きなく腕を組み替えた。
帝国上級士官と、名探偵。そして美しいシスターからの依頼書と難事件ーーなんと、浪漫溢れる捜査タッグではあるまいか!
自分がおおよそ名探偵とは呼べない小物であることと、そもそも難事件など存在していないこと、そしてシスターの手紙が依頼書ではなく招待状であること、その他凡ゆる現実を無視して、神無は夢想の中で浅茅を探偵小説に欠かせない相棒≠フように呼んだ。

「浅茅くんの言う通りだ! 猫と違って人間は喋れるんだから。事件関係者が今回はありがたくも人間であることを活用しなくてはいけないね」

これでは日頃担当している依頼がそもそも人間相手ですら無いような小物ばかりであることを自ら露呈してしまっているようなものだが、本人は全く意に介した風もない。普段ならばまともに取り合われない寂しさの反動か酷く嬉しそうで、いつの間にか浅茅さん≠ヘ浅茅くん≠ノ変わっている。言うが早いか、皆を見守るように会場に佇んでいた修道服の淑女に手を掲げて探偵のそれらしく近寄っていく。草臥れた袴姿の上でふわりと丈の短い外套が翻り、白い肌にひんやりと浮かぶ細い両眼を何か嗅ぎ付けるように凛と開く。楽しい会食場の中からただならぬ様子で此方に向かってくる将校と探偵の二人組を、真白き修道女はいったい如何思う事だろう。

「貴女からの依頼書を受け取りました。……この教会で、何かが起ころうとしている。何か心当たりがあるのなら、我々に任せて、どうかまず全て話していただきたい」

すっかりシスター・ホワイトの前に来てしまうと、探偵は紳士然として言った。けれども心の中は、複雑怪奇にして猟奇的に美しく凄惨な事件の幕開けを待ち望んでいる。勿論そんなものは存在せず、探偵事務所に届けられた手紙だって普通の招待状であるのだが、この男はそういう平和な文章すら捻じ曲げて楽しいように解釈する寂しい悪習癖があった。それが今、どうやら余生短き自分の物語≠ノ巻き込めそうな、素直で仕事に真面目そうな将校の登場により益々拍車を掛けて加速度を増している。

>浅茅様、シスター様


【浅茅さんと三人絡み出来たら楽しそうだなぁ! と思い、シスターさんに話しかけさせていただきました。相当な勘違いをしていますので、是非此処で誤解を解いて現実に打ちのめしていただけたら嬉しいです。】

5日前 No.24

すれぬし @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 雨々蝶 / 聖ホワイト教会庭園 】

 ただ富裕層と貧困層というこのどうしようもない違い抱えた二つの人種を眺めながらぼんやりとしていたところだった。脳内は新たな物語の構想で渦巻いている。交わることのない二つの世界、否、もうあの純白のシスターによって交わってしまった世界。この後この世界がどうなってしまうのか、その渦中に私は居るのだろうか。

「――――この色のない世界が、輝くことはあるのかねえ」

 緩やかに口元に弧を描かせる。嗚呼楽しみだ。楽しみで仕方がない。この世は道楽だ。富も名声も全てどうだっていい。富裕層も貧困層もどうだっていい。ただ道楽のために生きて死ぬ。それが雨々蝶の生き方だった。

 そんな独白を心の中でしていた時だった。唐突に自分に投げかけられた言葉。それが自分に向けられたものだと気づくのに少し時間がかかった。ゆるり、と視線を動かせば眼鏡越しに映る貧相な身なりの少女。とは失礼だっただろうか。富裕層には到底見えないその少女は確かにこちらを向いていた。まるで悩むように戸惑うように、そして笑う。まじまじと観察してしまうのは職業柄だろうか。

「――――食べ物、そういえばすっかり忘れていたねえ……何か美味しいものはあった?」

 目を細めながら首を傾ける。色のないこの視界に映る彼女はどのような色を持った少女なのだろうか、と少々興味が湧いたのは、この少女の表情からだろうか。

>> 杏ちゃん、all

(絡みありがとうございます! こちらこそよろしくお願いしますねー!)


【 シスター・ホワイト / 聖ホワイト教会庭園 】

 扉付近に佇み辺りを見回し、純白の修道女は思考に耽っていた。今回のことは一種の賭けでもあった。

 富裕層と貧困層、貧富の差で分かたれてしまった同じ人間達。ただ金を持つか持たざるかで人は此処まで別れてしまうというのはとても悲しいことだった。だからこそシスターは今日のような場を設けたのだ。

 神の前では皆平等。同じ人間なのだから壁を作りお互いを分けるべきではないのだ。

「――――あら、神無様に浅茅様」

 自分の思考に耽っていた時だった。唐突に鼓膜を震わせた声にシスターは緩やかに目を瞬かせた。神無に掛けられた言葉にきょとり、としたように首を傾ける。

「…………今回神無様方をお誘いしたのはただただ、皆様にお食事を楽しんでいただきたく思った、のですが……?」

>> 神無さん、浅茅さん、all

(シスターも混ぜていただけるなんて光栄です!ありがとうございます…!勘違いにきょとん顔で返答してしまいましたがよろしくお願いします!)

5日前 No.25

独楽 @sbluexxx☆rx3sEFPR6z6 ★rqRPsSgCf7_PHR

【 八十一八 / 聖ホワイト教会庭園 】

 外出用にと拵えられた下駄が、この場には不釣り合いな音を立てているような気がして、今すぐにでもそれを脱ぎ捨ててしまいたかった。幸いそれを見咎めるような視線はなく、ただそこには真っ白なシスターの持つ慈愛の心ばかりが満ちているばかり。の、ような気がしただけだ。きっと。人の心など、誰にもわからない。あの場で静かに座っていた者の中にさえ、神を憎んでいる人間がいるかもしれないのだから。
 けれど、告白しても。ゆるされるだろうか。誰しもが求めるはずの日光が、苦手、だなんてことを。

「……、……」

 地上を明るく照らす柔らかな光に怯えて足が止まっていたら、此方に声が投げかけられた。床付近を彷徨っていた色の違う二つの瞳が、目の前の誰かを射抜く。ぱちり、一度瞬きをして、どういらえたら良いのかと逡巡してしまうのは、おかしいことなのだろうか。普通の、例えば、こんなにも自然に人に声をかけることの出来る目の前の男のようなお人ならば、すぐさま表情を変えて流れるように言葉を紡げるのだろうか。――それが出来ない己は、やはり人間には遠いのだろうか。
 関係のない問いに、当然答えは浮かび上がらない。探す方法すらもわからないのだから仕方のない話だった。

「……いえ、……ん、珍しい、と言えば……陽の光が、多少。ですが、珍しいからというよりは、……その、苦手なのです」

 目を伏せ、足元に差す光を見る。あたたかい。経験のないぬくみだ。
 目の前の男の人は、己と違って色がたくさんあった。色素の薄い髪は、それでも金色のように輝いて、色の違う部分が点在している。くるりと巻かれた癖のあるそれは、生まれたころからそうなのだろうか。見慣れない服装だ。綺麗で、恰好良くて、今どきに言うのなら、はいから、というものなのかもしれない。特に目を惹くのは、肩にかけられた紅色の着物だった。なんて派手で、なんて美しいのだろう。好奇心がむくりと顔を出す。それを抑え込むのは、得意というわけではない。初対面で失礼だとわかってはいても、身分差があって無礼だということもわかってはいても――どうしても、気になるものは気になるのだ。それは少年特有の好奇心。知識欲。知りたいと、思ってしまう気持ち。

「それに……珍しいと言えば、あなたのその恰好も、おれ……ぼくには、見慣れないものです。あなただけではなく、この空間にはそういったものがたくさんあります」

 おれ、と言ってしまったのを失言と捉えて、言い直した。何とか言葉を選んで紡ぎ終わった後、ひとつの疑問が浮かび上がる。何故このお人は、おれに話しかけてこられたのだろう。こんな得体の知れない見目をしているのに、まるで挨拶を交わすような気軽さで。どうして?
 よくわからなくて、鮮やかな双眸がじっと目の前の男性を見つめる。見れば見るほど珍しくて、思わず観察するようなそれになってしまうことが無礼だということには、八十の頭は追いつかなかった。


>>綺堂さん

( こんばんは、絡んでくださりありがとうございます〜! 此方こそ、人間らしくなくて絡み難いかもしれませんが頑張りますのでよろしくお願いします;;笑 )

4日前 No.26

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_HAD

【月ノ瀬鳴/聖ホワイト教会庭園】

 下げたままの頭では無言の相手の反応を窺うことは出来ない。どうなってしまうのだろうと僅かな不安を抱えながら相手の反応を待つ。そんな意識に突然差し込んできた陶器の大きめの音に思わず肩を震わせるが、それは何てことない食器が重なり合って響いた音だと遅れて認識した。相手の行動が読めず暫く頭に疑問符を浮かべていた時、静かに此方へ手が伸ばされた。ほぼ反射的にぎゅっと怯えるように目を瞑る。しかしその手は優しく、さっき転んだ時に付いたであろう土埃を丁寧に払ってくれていた。予想外の出来事に視線は地面に向けたままぱちくりと目を瞬かせる。そのまま動けないで居ると、大方払い終わったらしい目の前の男性の声と呆れたようなため息が頭上から降ってきた。そうか下げ過ぎも良くなかったのか、とその言葉に慌てて顔を上げる。勿論上流階級の人間として無闇に頭を下げるべきではないということは教養として身に付いていたが、我が家や自分の性質上、誰かに対して下手に出てしまう癖が治らなかったのだ。そんなしおらしい様子を見て、父様は満足気にしていたから間違っていなかったのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。前を向いたことで、フードを外し露わになった彼の瞳の深淵に僅かに気を取られながらも努めて令嬢らしい落ち着いた声音で口を開いた。

「あ、ありがとうございます……! そうですよね、では頭は下げないことにします。改めてすみませんでした……ええと、お名前をお伺いしてもよろしいですか? わたしは月ノ瀬鳴と申します。以後お見知りおきを」

 まず服の汚れを払ってくれたことに素直に礼を述べる。その後に自分に言い聞かせるように呟いた言葉は少々的外れであるが、本人はそれに気が付いていない。指摘を聞き入れ、宣言通り頭を下げずに彼を真っ直ぐに見据え、控えめながらも柔らかな笑みで謝罪を告げた。そこで彼の名前を知らないことに気が付き、おずおずと名前を尋ねる。忘れてはいけないと自らの名を小さなお辞儀と共に名乗った。その一連の言動に彼の容貌などに対する嫌悪感や偏見を携えた悪意などは全く存在せず、ただ純粋に目の前の一人の人間に礼儀正しく振る舞おうとすることに必死な様子だけが露呈していた。そこでふと下げた視線の先に一欠片の野菜が地面に転がっているのが映る。それを見留めたと同時に優雅な所作で静かにしゃがみ込む。何処からともなく純白のハンカチを取り出し、落ちていた野菜を拾い上げ、そのまま其れに包んだ。

(食べ物は粗末にしてはいけませんからね。父様や母様はお食事は残されることも多いけれど、わたしはいつ食事を摂れるかも二人の気紛れになってしまう時もありますから、その時出されたものはきちんと食べなければ。捨てるなんてもっての外です)

食物にも平等に愛を。そう心の中で得意気に呟く。しかし、掃除された床ならまだしも、野外の地面に落ちてしまえば流石に衛生的に食べるのは諦めた方がいいだろう。もう食べ物としての役目を失くしてしまったハンカチの中身に切なげな視線を寄せて、テーブルの端にそっと置いた。その瞬間、ぐぅと何とも間抜けな音が響く。ハッとしてお腹を抑えるが既に手遅れである。昨日の夜から食べ物を摂取していない胃は間近に迫った料理の匂いに限界を訴えていた。令嬢にあるまじき失態に頬を赤く染めながらちらりと目の前の男性を覗き見る。

「何度もお恥ずかしい所を……申し訳ありません……」

消え入りそうな声でうぅ、と唸りながら朱に染まった頬を俯かせる。久々の外出で気が緩んでいるのか、どうにも今日は調子が狂うことばかりだと羞恥で埋まった頭の片隅でぼやいていた。

暁千賀様、周辺ALL様>>

3日前 No.27

御影院 宵 @xxsnowdrop☆6PqqtgEep4k ★haMS8afjvX_mgE

( 御影院 宵 / 聖ホワイト教会の庭園 )


 自分に声をかけてきた女性はキャラメル色の髪がとても印象的で、ワンピースがよく似合う身体つきをしていた。母親がお見合いにと持ってくる写真の女性たちとはこれまた違った雰囲気を感じ、宵はじーっと彼女を見つめる。こうやってじっくり観察してみると、彼女はどうやら富裕層の人間ではないようだった。しかし、だからといって態度を急変させるのは失礼にあたる。宵はこれまでと変わらぬ態度を彼女に示しながら、次の言葉を待った。

「……私が綺麗? 面白いご冗談を」

 彼女の口から紡がれた言葉に宵は首を傾げながら、くすっと薄い笑みを浮かべる。男である自分に綺麗だなんて。それとも自分の容姿がそんなにも女性に似ているのだろうか。確かに御影院家の三兄弟の中で母親の遺伝子を一番に受け継いでいるといっても過言ではない容姿だが。近くに鏡があったなら、自分の容姿を凝視したいものだと宵は思う。

「え……っ! いえそんな! どうか頭をお上げください! ……ここで会ったのもなにかの縁です。償いの代わりにとは言いたくありませんが、謝罪の代わりだと思って、貴方のお名前を教えては頂けませんか?」

 自分の容姿について様々な思考を巡らせていると目の前の女性が勢い良く頭を下げてきた。そのことに驚いたためか、宵の言葉にも勢いがつく。見ず知らずの女性に必死の謝罪をされるだなんて思ってもみなかった。宵は一度深呼吸をし、そっと彼女の左肩に触れながら、ふわっと微笑む。貧困層、富裕層と言うけれど人間であることはみな同じ。確かに生きる世界は違うのかもしれないが、こんな時くらい無礼講だろうと。宵は彼女の言葉を待ったが、ふっとあることに気がついた。

「おっと。女性から名乗らせるのはマナー違反ですね」

 宵は変わらぬ笑みを彼女に向けたまま、恭しく会釈をすると頭を上げるのと同じタイミングで「御影院宵と申します。どうぞよろしく」と新入社員を迎えるときと同じように挨拶をする。ただひとつ違うのは名刺を差し出すか、差し出さないかだけだ。


>>彩河原 雪様、ALL、



【 いえいえ、ぼくもむらがあるのでお気になさらず。のんびりやっていきましょう! 】
>>彩河原 雪様

3日前 No.28

ししくれ @kmnkha☆/pH2qpQf7L2 ★ieluDUuGrE_scn

【 衣笠 十朱 / 聖ホワイト教会庭園 】


 気の抜けた珍妙な声かの後にたどたどしく紡がれる言葉。強張った声は緊張によるものか。

「驚かせてしまってすみませんね。」

 十朱はそうやって社交辞令的な謝罪の言葉を述べた。
 お勧めは何か、という少女の質問に少し考えるそぶりを見せて、口を開く。

「あの洋菓子なんて如何です? 絶品でしたよ」

 十朱は十分その味に満足していたが、彼女がそれに満足するのかは分からない。それを伝えるべきか一瞬悩んだけれど、今回はやめておいた。皮肉が過ぎると悪意を持っていると勘違いされてしまう。それに考えてみたらこの会はそういうものを持ち出さないのが方針だったじゃないか。危ないところだった、と心の中でこぼしながら、洋菓子のある方を指差す。
 その時、ハイカラなドレスを着た女が此方へ向かって来るのが視界の隅に入った。案の定目の前までやって来た女は、日本人ではあるのだろうが、まるで海の向こうの血が混ざっているかのようなはっきりとした顔をしている。見たところ、女性というにも少女というにも中途半端な年頃といった感じだ。最初は長髪の少女の友人か何かかと思った十朱だったが、ハイカラな少女の口から出た言葉は気を張り巡らしているといった調子で、友人であるという考えが見当外れであったことはすぐに分かった。彼女の声色は、少女がここにいるという事実にさえ驚いているように思える。彼女自身も随分とご立派な身分なのだろうに、そんな彼女がこのような対応を取るほどに高貴なお人とは。いやはや、如何様な地位にいるのだろうか。
 そんなことに思いを巡らせていると、すでに挨拶は一段落しており、少女に向けられていた視線は自分へと移っていた。
 ハイカラな彼女はふいに目を閉じ、そして枯れた花、乾いた草と確かにそう言う。それらは明らかに薬草のことを指している。匂い移りには相当に気をつけているから、微弱な匂いしかしないはずなのに、まさかそれをこの短時間で察知されるとは思いもよらなかった。気を遣っても尚体に残る、身に染み込んで離れない香り。それに気づくだなんてーー。

「おや、随分と鋭いですね。匂いは出来るだけ絶っているつもりなのですが。……きっと貴方の感じた匂いは薬草のものでしょう。職業柄、そういったものをよく扱うのです」

 十朱は心内の驚きよりも小さな反応を表に出して、感心したという風に言葉を並べる。
 好奇心によるものなのか。女の視線が先程までより、ずっともっと無遠慮なものへと変わる。彼女たちの目に自分はどのように写っているのかなんて知る由もないけれど、彼女たちが何を思おうとも、そんなものは放っておけばいい。一々気に留めておけばどんな人間だろうと疲弊してしまうのだから。なんて、そんなことを頭の片隅で考えている途中、ふと自分が名乗り忘れていることを思い出した。

「嗚呼、申し遅れてしまいましたね。私は衣笠。薬売りをしています。お嬢様方、どうぞ良しなに。」

 この場を出たら再び会うことなどないとわかっていながら、自分に持ち得る有りっ丈の善意を練り混ぜてへらりと顔に笑みを浮かべた。


 >>賢宮澪子内親王、朧塔子様

2日前 No.29

にな @xxx39☆FTXhV/eLYAw ★kX8qVUjM91_mgE

【百瀬杏/聖ホワイト教会庭園】


 ゆるりと向けられた視線。眼鏡のレンズ一枚挟んで、もの言わぬ黒い瞳に息を呑む。母さんや妹たちと同じ色をした、だけどやっぱり違う色の。わたしのような貧乏人に声をかけられたって。柄にもなく後ろ向きな杏に、彼女は目を細めてみせた。その敵意のない表情に、杏の張り詰めた糸が解れるように肩の力が抜ける。悪い人じゃないみたい、とそっと息をついた。小首を傾げる彼女に、杏はぱあと青い瞳を煌かせる。

 「あ……はい! ショートケーキという西洋の菓子が、それはそれはおいしいのです! 果物なんて、こんなに色鮮やかなの初めて。あっちのオムレツライスというのも、やわらかくて、あたたかくて……」

 糸口が見つかったのが嬉しくて、思わず頬がとろけるように緩んでしまう。ふわふわの甘いデザートも、キラキラの色鮮やかなフルーツたちも、妹たちに分け与えなくていい食事も、杏は生まれて初めてのことだった。調子に乗って一頻り口走ってから、ようやく杏は我に返った。どうにもお節介でいけない。そういえば、自己紹介さえしていないのに。

 「……って、いきなりごめんなさい。はじめましてなのに……。わたし、百瀬杏っていいます」


 >>蝶さん、周辺all
 (遅くなってごめんなさい;_;)

1日前 No.30

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_Y9V

【賢宮澪子内親王/聖ホワイト教会】

 他人から話し掛けられたという事実にいちいち驚くのが澪子という人間ならば、その驚嘆はまだ終わらない。
 二度彼女に近付いてきたのは、豪奢なドレスを身にまとった少女。今度は誰だと言うのが澪子の正直な感想だったが、彼女が澪子の名を呼んだことで、その疑問は霧散した。
 単純に知識の問題として、今この場所で澪子の名を呼ぶことのできる人間はそう多くない。それが此処まで目鼻立ちのはっきりした、印象に残りやすい存在が相手であれば、答えを導き出すのは何ら難しい事ではない。
「朧様もいらしていたのですね。わたくしが一人かどうかは……恐らくそうではないという程度しかお答え出来ませんが……ご安心下さい、貴方や貴方のお父様にご迷惑がかかるようなことにはなりませんから」
 澪子に話しかけてきたのは朧塔子――今現在澪子が宿泊している旅館の一人娘である。先日澪子の所に挨拶に来た時は着物を着ていたので一瞬戸惑ったが、その顔立ちや話しぶりは間違いなく彼女のものだ。塔子の立場上、澪子が此処に居ることは余り喜ばしい事ではないのだろうが、その言葉に非難の響きは無い。それが本意なのか敢えてそうしているだけなのかは、澪子は考えるのを放棄した。
 後半だけは塔子にしか聞こえないように、隣にいる男性には聞こえないように小声で呟く。此処で彼に不必要な情報を与えることは、澪子自身にとっても面倒事に繋がる可能性があるし、塔子の気遣い――そう受け取っておくのが最も無難であろう態度――に報いることが出来なくなる。
 兎に角塔子に気遣いも心配も無用であることを告げ、最初に自分の方に声をかけてきた男性の方に向き直る。
「いえ、わたくしが勝手に驚いただけですから、どうぞお気になさらないで下さい……そうですか、洋菓子も置いてあるのですね」
 苦し紛れの澪子の質問にも、彼は少し考えた末に応えてくれた。きっと根が真面目な人なのだろう、誰かに取り入ろうと言う魂胆は無いように……見える。
 塔子は彼に対して興味を持ったようで、彼もまた塔子の発言に感心したようにうなずいている。澪子は薬草のことなど詳しくは無かったので、そのまま場を離れることにした。会おうと思えば塔子とは幾らでも会える、男性の方も、話が合うのは彼女の方だろう。そして澪子も、どうせ話すなら自分のことを絶対に知らないと確信できる相手の方が楽だ。
「折角だから何か頂いて参りますね。わたくしは澪子と申します……朧様、衣笠様、ご縁があればまたいずれ」
 二人に一礼して、澪子は先程衣笠と名乗った男性が指差したテーブルへと向かう。

 和洋折衷の軽食が並んだテーブルには、一人の先客が居た。後姿は如何にも書生然としており、歳はそう澪子と変わらないくらいだろう。彼もまた、先程まで宛もなく周囲を眺めていた澪子と同じく、料理に手をつけることも無く様子を伺っているようだった。
「……こんにちは、あの……そこにあるお菓子を取らせて頂いても宜しいでしょうか?」
 そんな少年に澪子が声をかけたのは、自分が二度もそうされた気紛れでもあり、偶々彼が目的の洋菓子の目の前に陣取っていたからでもあった。

【折角心中ペアのお二人がお話して居るので、邪魔者は退散させて頂きます。絡んで頂き有難うございました。
 そしてその勢いで祐太郎くんに突撃します、良かったら絡んでやってください。】

>塔子様、十朱様、祐太郎様

12時間前 No.31
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