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白群奇譚幽霊録

 ( オリジナルなりきり )
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人間×幽霊×現代/戦闘 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

古来より、人と霊の境は曖昧であった。

人は生まれ落ちた瞬間から、死への旅路を歩いていく。
そして心の臓の鼓動が止めれば、思い思いを乗せその旅路に終着点を付ける。
しかし――その旅路の果てに立つ者は決して悔いなく往生した者ばかりではない。

未練。残滓。執着。後悔。憎悪。欲望。悲哀。
肉体が朽ちても――忘れたくない思いを、離しがたい名残りを現世に遺す者たちを人は『自縛霊』と呼ぶようになった。

物語は、その『自縛霊』が密かに生活に障害を与えるようになった世界にて。
『万屋:出づの目』に来た一人の少女から幕を開ける。

それが、国を絡めた大事件への一歩とはいざ知れず、雲は緩やかに空を流れていく。

切替: メイン記事(46) サブ記事 (28) ページ: 1

 
 

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

【万屋『出づの目』/日曜日のお昼過ぎ/淡海 潮】


『最近巷で噂になっているという白野区の『遠吠トンネル』からのリポートです』
『あ〜ヤバいって何か絶対いるっしょ!!』
『……確かに、禍々しい気配を感じます。皆さん、私がお渡しした御札を握り締めていて下さい』
『怖いこーわーいー、名川さん早く帰りましょうよ!!』
『まだ入って1分も立ってないじゃん。俺だって怖いけど行くしかないっしょ、霊見先生、厚木ちゃん!』


 素麺を啜りながら、32インチのテレビに映る番組を見る。
 夏の定番、心霊スポットに芸人+アイドル+自称霊能力者の3人による取材兼お払い。リアクション芸に秀でた名川さんが好きで番組を見ていたが、どうもこの霊見先生と呼ばれる人は明らかに『霊力』を宿していないことが分かる。だって『御札』から何も力を感じないから。

 取材場所は地元にある遠吠トンネル、正式名称『十彫トンネル』。全長1km半の老朽化に伴い現在通行禁止扱いになっているトンネルで、確かに地元民ならば知っている心霊スポットだ。入ると狼のような鳴き声が反響する事が多く報告されており、遠吠(とおぼえ)トンネルと呼ばれるようになって久しい。ただ鳴き声が聞こえるだけで被害が報告されていないから無視しているが、復旧費用無いからか通行止めの看板を置かれて早3年くらいだろうか。地味に長い。

 無論、使用しないことからトンネル内への電気の供給も出来ておらず中は黒が支配する。3人が持つ懐中電灯と赤外線カメラを用い、中へ中へと進んでいく。くだらない会話を聞きつつ、半ばまで来た辺りから例の狼の鳴き声が聞こえ始める。
 以前……と入っても2年前くらいに視察に行った時よりその鳴き声は大きくなっていた。啜りを止め、画面を見入る。焦る芸人やアイドルのアップや霊能力者がお誂え向きな除霊をしようとするシーンが流れる中、闇の奥に一人の影を見つけた。

4ヶ月前 No.1

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 万屋『出づの目』 / 日曜日のお昼過ぎ 】

 自分が嫌いなタイプの人間が出ている心霊ロケ番組を眉根を寄せながらも何故か凝視し、潮の斜め後ろくらいの位置でアイスボックスをボリボリと噛み砕いている帳。その足元には氷水を張ったタライに浸けられたいくつかのジュースやお酒の缶と他のアイスボックスがある。どうやら夏場にやる人の多い、アイスボックスに炭酸水やジュースなどを注いで食べるあれをやるつもりのようだ。部屋の片隅のゴミ箱の中には既に開けられた形跡のあるアイスボックスの空き器とレモンジーナの空きペットボトルが入っている。こんなに冷たいものばかり食べていると健康志向の強い人には内臓の働きが云々で不健康だと窘められそうだが、幸い、ここには健康志向の強そうな人がいない。いるのは偽物と承知の上で好きでもない心霊番組を見ながら夏っぽいものを飲み食いしている成人男女二人だけだ。

「……あれを御札と呼んで良いなら、お姉さんがコピー用紙に筆ペンで書きなぐった落書きも御札と呼べますねー」

 ぶどう味のアイスボックスにコカコーラを注いだものをざざっと喉に流し込み、勢いが良すぎて口の端から垂れそうになったコーラを暑いからと首にかけていたタオルで拭う。見た目こそ今時の女風なのに、さっきから仕草がやたらとガサツでおじさん臭い。普段はもう少しマシなのだが、どうやら自分が嫌いなタイプの人間が出ている番組のせいでテンションが下がっているようだ。そのくせチャンネルを変えようとしたり席を外そうとしたりはしていない。それは芸人が面白いからという理由もあるが、一番の理由は紹介されている心霊スポットが近所のものだからだ。普段は少しも見ていない番組でも、近所のスーパーや商店街にロケに行ったという記述があるとちょっと見てみようかな、という気分になる人間はそう少なく無い。帳もその手合いに当てはまったというだけのこと。
 スカートであぐらをかいて壁にもたれかかった体勢のまま、時折アイスボックスを喰う作業のためにだけ動いて、他は全てテレビ鑑賞。そうこうしている内にもテレビの中のロケはどんどん進んでゆく。二年前ならもう帳は万屋の従業員だったから、あのトンネルの視察にも着いて行った。その時よりいくらか狼の鳴き声が大きくなっているように思う。テレビの音量の影響か、それともあのトンネルに何らかの事態が起こっているのか。少しだけ興味が引かれて、両手にアイスボックスを持ったまま脚をずるずると引きずってテレビの近くまで移動する。ついでに素麺の鉢が乗っているちゃぶ台の上にアイスボックスの片方を置いておいた。パイン味のアイスボックスにオロナミンCがかかったものだ。味見はしてえいないが、ネットでおすすめしている人がいたので最悪な味ではないはず。デザートどうですか、という潮に対する無言のアピールだ。拒否されたらまた先程までのように自分で胃袋に収める。

>ALL様

【メイン解禁おめでとうございます】

4ヶ月前 No.2

唐紅 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE


【万屋『出づの目』/日曜日のお昼過ぎ/淡海 潮】


「まぁそれっぽく見えればそれっぽく思っちゃうから仕方ないね」

 顔を向けることも無く言葉を返す。もう長い間、歳月を共にしたからか社員というより家族というものに近い。だから、遠慮も何もしない。
 見ているのが見慣れて力を感じられる御札だからそう思ってしまうが、それがブランド物のバッグとかだったら自分の場合話は変わる。偽物と本物の違いなんて絶対に分からない。最近の外国の技術力の上昇は計り知れないし、下手したら外国産の御札とかもあるのかも知れない。……悪用しようとはしてないぞ。
 と、影の奥に何か見えたと思ったがそれを何か確認する前に場面が暗転する。引いた絵で3人が映る。

『ヤバいって! マジヤバイいって先生!』
『先生……私何か気分が……』
『2人とも私の傍を離れずに。ご安心を、霊見 得代(れいみ えるよ)がいる限り大丈夫です』

 人畜無害のトンネルだからねーと内心で思いつつ、これが見敵必殺のトンネルだったら最悪もいい所だろう。影が見えないことからカットを大分挟んだろうか、場所が異なることが分かった。そして暫く狼の鳴き声を聞きながら、トンネルを出た3人が映り感想を言い合う。これ以上は意味無いだろうとリモコンを持ちチャンネルを変える。いったい何処で視聴率を取っているのか分からないゴルフ中継が画面に映る。
 日曜日の昼間過ぎは微妙な番組かゴルフか競馬か再放送しかないのが辛い所だなーと残った素麺を啜り終え、茶碗とザルを重ね片付けの準備をしていれば。

「おっ帳(とば)ちゃん、サンキュー」

 アイスボックスに炭酸とは流石気が利いているなーと感謝の弁を述べ、飲み始める。キンキンに冷えてやがる。素麺で冷たくなった口内が更に冷たく、そして汁のしょっぱさが消えていく。
 オロナミンCを全部飲み干し、残ったアイスを噛み砕きながら、帳の方を向いて

「久しぶりに遠吠トンネル行ってみたい気分になってない? 帳ちゃん」

 影に映った謎の存在が気になるものの一人で行くのは気が引けて、冗談めいた口調で帳を誘う。

>帳

4ヶ月前 No.3

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 万屋『出づの目』 / 日曜日のお昼過ぎ 】

 画面の中の三人組は相変わらず恐る恐るといった様子で薄暗いトンネルの中を進んでいる。演技なのか素面でビビっているのかは判別がつかない。芸人さんはリアクションが大事だし、アイドルもよくドラマや映画に出るし、偽物の霊能者なんてそれこそ詐欺師並に演技派だろうから。こう考えると、世の中に嘘を吐くのが上手くなきゃやっていけない職業というのは案外多いのかもしれない。自分も彼ら彼女らのように嘘が上手ければ、もう少しマシな幼少期を送れたのだろうか。……なんて、この期に及んでは今更の話でしかない。

「そうですねー、水筒にスポーツドリンクでも入れて散歩がてら行っちまいますぅ? ちょっぴり気を引かれるものもありましたし」

 どこかで見たことあるようなないようなゴルファーが映る中継に切り替わる前、トンネルの奥に確かに何かが見えた気がした。気のせいだと捨て置くこともできるが、捨て置いたものが悪化した場合その尻拭いを務めるのは結局のところ自分達や同業者達だったりするのだ。例え取り越し苦労になるとしたって、ここで行っておいたほうが身のためである。口の中に残っていたアイスボックスを飲み込みきって、頭がキーンとする感覚を堪えながら風呂場の手前の脱衣所へと向かう。その片隅に置いてある『沢紫陽花』とマッキーで名前が書かれた衣類収納ボックスの中から、大量の除湿剤と一緒に仕舞われていた黒魔術師みたいなローブを取り出す。まだ自縛霊が出るとは限らないが、やはり戦うかもしれないとなるとこの服装のほうが精神的にビシッと決まる。この恰好の自分と一緒に歩くことで一括りにされて職務質問の対象となる潮には悪いが、彼との付き合いはなんだかんだ四年目だし今更謝罪するのも可笑しな話か。ともかく普通の女の子な衣装から闇属性っぽいファッションにさくっと着替えを済ませた帳は、脱いだ衣服を洗濯機に突っ込んで洗剤と一緒に回すと、元の部屋に戻って潮に向かって笑みを浮かべた。

「それじゃあ潮さん、さっそく行きましょうかぁ。用意するのが面倒臭いので、やっぱり飲み物は途中の自動販売機ででも買っちまいましょうー」

 愛用している杖と財布などが入ったカバンを両手に出入り口に手を掛け、潮に用意を急かす帳。女は用意が遅いというのが通例だが、こいつの場合はそういう意味でももうちょっと女らしくなったほうが良い。口調は間延びしているくせに行動が間延びしないから余計にせっかちが際立つ。

>淡海潮様&ALL様

4ヶ月前 No.4

唐紅 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

【万屋『出づの目』→街中/日曜日のお昼過ぎ/淡海 潮】


「あいさー準備を――って帳ちゃん行動はやーい」

 言葉を終える前に行動を起こす帳。腰が軽いなぁ、と思いつつ重ねた茶碗を持ち台所へ。ご飯みたいに水に浸して乾いたの取らなくていいのが素麺のメリット。蛇口を捻りスポンジに水を浸らせる。二、三度揉み少し泡立ったから洗剤残っていると認知し、そのまま皿を洗っていく。茶碗、皿、箸を洗い終わり、水切り皿に置いて居間に戻ったら丁度いいタイミングで帳の姿と声が。

「おっ、気合満タンだね。んー、100円の炭酸ジュース置いてる自販機途中にあったっけ……まぁいいや、多分あるだろ!」

 マジの依頼の時用の服装を着た相手にパンと手を叩き、胸に置く。ただ、その提案には少し渋る。
 けち臭い性分ゆえ、自販機でジュースを買う時は100円のジュースに限る。ある一種の矜持。だが、それほどまじめに考えておらず道中で我慢ならなくなったら130円でも喜んで払うだろうさ。
 藍色の作業衣を肌の上にそのまま着ており、前を締めていないせいでだらしない腹を覗かせる。これが女性ならばある程度目の保養だろうが、中年親父の三段腹とか誰得だろうか。だけど、気にしない。運動は嫌いだ。特に地味な腹筋とか腕立とか。
 端から見たら変質者×2だが、長い間この恰好を貫いたせいか黙認されている。たまに研修で来た新人警官にドナドナされかけた記憶があるが、そんな記憶もパンと手を叩き忘却の彼方に飛ばす。一々過去を思い出すのは人間の悪い癖に他ならない。

「じゃっ、行こかー」

 玄関の扉を一度軽く引き、戻し、そして思いっきり引く。これがオンボロ扉の正しい開け方。
 悲鳴を上げながらレールを通り、外の世界が開かれる。景色が目に入ってくると共に蒸し暑い空気が中へと押し流されていく。

「あっちぃ……、マジべー(やべー)わ。……超不謹慎だけど熱中症でころっと逝っちゃう人の気持ち、今なら分かりそう」

 一歩、外に出る。
 燦々と照りつく太陽を額に手を置き、視界に直射日光が入らないよう調整し顔を上げる。空は快晴、雲一つ無し。雨は嫌いだが、快晴はもっと嫌いだ。汗かくし、歳も歳だけに加齢臭は勿論体臭が気になるお歳。付き合いが長いし帳の性格上隠しはしないだろうが、それでも「潮さん臭うっす、私の半径1m以内に入らないで下さい」なんて言われた日には自身の身体に『封』の御札を貼って現世からさよならバイバイを考えてしまう。

「あーすっげぇ1が2になった位マシ。マックス100としてだけどー……帳ちゃん、慣れてると思うけどヤバかったから言ってね」

 どう好意的に見ても熱吸収率100%の帳の服装を上から下まで見て一応言っておき、トンネルまでの道を歩いていく。

>帳

4ヶ月前 No.5

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

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4ヶ月前 No.6

唐紅 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

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4ヶ月前 No.7

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

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4ヶ月前 No.8

唐紅 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/淡海 潮】


「確かに。あの芸人さん、この時来なくて正解やったね」

 まるでパーティーの様に次々と発生する現象。
 まぁ今起こっている範疇ならば、まだ狼の鳴き声と同等に実害は無いが――トンネルを駆け巡っていく禍々しい気配。これに眉を顰めた。明らかに敵意を発信している、まるでトンネルを去れと警告するように。だが、それで帰ります、そうは問屋が下ろさない。ここで元凶を断たねばマズいと判断した以上、対峙せざるを得ない。

 奥、気配の先を除く。姿は見えないが――感じた。『捉』の札を放つ。
 数秒後貼れた事が分かり、霊にマーカーは付いた。その情報を自身の他、帳にも分かるよう敵の位置情報をリンクする。

 ジリジリとゆっくりとした足取りで近づいてくる霊。手に持つ『撃』の札で照らされる先に映っていたものは。

 それは――それは、人ではなかった。
 否、人を織って出来た獣……それが正しいだろうか。人間より大きい大型四足霊。凡そ3m欠ける程度だろうか。その脚は人間の腕や脚が絡まった様で、胴体に至っては人間の胴体だけを鮨詰めした様に、そして頭部は乱切りされた人間の顔で形成されており、多数の目が蠢きこちらを見据える。
 下手なスプラッター映画より酷い絵面、悲鳴や腐臭がしないだけマシだが。数多の口が開き、咆哮を上げる。人間の口だが、それは狼の咆哮。

「あちゃ、こりゃ『自縛霊』ってレベルちゃうな……こんな人造的な幽霊さんて見た事無いんやが――」

 袖から『撃』の札を取り出す。片手の指と指の間に挟み、総数は4枚。
 余り攻撃用途の札は多用できる腕前は無いが、霊力を野球ボール程の弾丸としてカーブを描きながら霊へと放たれる。

「行っちゃれ!」

 あくまでこれは本命ではなく、帳が敵に接近するための目晦まし、あわよくばダメージを程度。

>帳


【大丈夫ですよー。また『撃』の札の攻撃を回避とかは勝手に霊動かしちゃって構いませんので】

4ヶ月前 No.9

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/朝凪 時雨】



「あ、誰かいる……?うう、何かすごい強そうなお化けもいるし……えっとえっと、どうしよう、話しても聞いてくれなさそうだし……でもこのまま逃げ出しても怒られそうだし……」



 それは今より遡る事、約2時間前。



 その時はちょうど、お昼ご飯は何にしようかと悩んでいる時だった。暑い日は冷やし中華に限る、いや素麺に決まっているだろう、なんて脳内であれこれ悩んでいる時、突然ポケットに入れていた時雨のスマートフォンが振動したのだ。学校の連絡事項を伝える時に便利だから、と一応入れてもらっているクラスのグループLINEで、いつものように仲の良い女子同士が『今日はどこいく?』『プールでいいでしょ暑いし』なんて送信したんだろうな、と思いスリープ状態を解除してみると、届いていたメールはそんな可愛らしい内容ではなかった。



(もしかしたら倒せたり……いやいやいや、あんな怖いの相手にしたことないし……いや、でもやっぱり無理無理無理、絶対無理だって!100回位死んでやり直しても倒せないって!)



 思い返せば、そもそもこんな『対超常現象対策部』なんて怪しげな所に入ってしまったのが運の尽きだったのかもしれない。断り切れなかった時雨側にも問題はあるのだが。

 だが、それにしたって行き成りこんな怪物相手とは対超常現象対策部とやらは国民を何だと思っているのか、メール一つでわざわざ遠く(特急電車で1時間半程度)から蒸し暑い電車に揺られてやってきたというのに、あわよくばお母さんがいないのを良いことにいつもは買えないようなちょっと高いパ〇ムとかハーゲン〇ッツを食べ比べしてみようと密かに計画していたのに!  と、ここまでパニックになった頭の中で叫んだあとで改めて突然現れた『自縛霊のような何か』を遠くから眺める。どこをどう見ても敵い剥き出しな体に蠢く四肢。もうどうしようもない。


 唯一の救いは時雨のほかにも『あの自縛霊っぽい何か』と戦闘をしているように見える人が二人も居ることだろうか。もしかしたらあの二人が時雨以外の対超常現象対策部の人なのかもしれない。もしそうならばこれ以上に心強いことはないだろう。



「あ、あの……あの!私もお手伝いした方が良いです……よね、そうですよね!すみません!良かった、わたし以外にも対超常現象……なんとかの人が居た……」



 最初の声は蚊が鳴くような声で、そして次に途切れ途切れの無駄に大きな声で二人に声を掛ける。既に頭はクラッシュ寸前、熱さで思考能力もかなり低下している。傍から見ればかなり危ない女子高校生だろう。




>>淡海 潮様 沢紫陽花帳様

4ヶ月前 No.10

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 遠吠トンネル / 日曜日のお昼過ぎ 】

 奥に進むにつれて濃くなってきていた瘴気が、いよいよ殺意を伴って肌に突き刺さって来た。自然と頭の中のスイッチが切り替わる。潮が飛ばした『捉』の札が帳にもその瘴気の発生源の位置を教えてくれた。かなり近い。ゆったりとした動きで近付いてくる“それ”を、こちらも腰を落として待ち構える。そしてついに、敵の全容が見えた。それは例えるならば、酷く鬱々しい、そして禍々しい、自殺寸前の絵描きが描いた呪いの絵画のような光景である。人間という生き物の形を徹底的に冒涜すればこのような生き物が出来上がるに違いない。あらぬところからあらぬものが生え、あるべきところにあるべきものが無い、吐き気を催す醜悪さ。このトンネルのどの幽霊よりもグロテスクの五文字が相応しい。ゾンビゲームに登場するクリーチャーと、TRPGに登場する神話生物を同じ鍋にぶち込んでかき混ぜたような異形。一般人なら悲鳴を上げて即座に逃げ帰るか腰を抜かしてへたりこむか、多感な者なら嘔吐は免れまい。しかしここにいるのは一般人ではない。もっとも、一般人ではないからこそここで逃げるという選択肢も許されないのだが。そう考えると、この立場は良いのやら悪いのやら悩み所だ。

「どっかのマッドサイエンティストが、ついに自縛霊の品種改良にでも乗り出しやがったんですかね?」

 潮が『撃』の札数枚を投擲すると同時、姿勢を低くしたまま地面を蹴り上げて異形目掛けて突進する。『封』の札があちらこちらに貼り付けられた札は、最初の内こそ持ちづらかったが今は手に馴染む。右手で中ほどを、左手で後端を持った杖を突進の勢いのみならず腰のひねりも加えて突き入れる。基本技の本手打だ。が、あっさりと避けられた。どうやらあんなにも動きがトロそうなナリをしていながら、意外と俊敏に動けるらしい。振るわれた腕の一閃をバックステップで回避。潮が投げた『撃』の札も帳に気をとられた一発目だけヒットしたようだが、他の三枚は全て躱されていた。
 こりゃあ強敵だと舌舐めずり。と同時、このトンネルには到底似つかわしくない若々しい少女の声が聞こえてきた。いや、自分も成人したとはいえまだ人によっては若々しい少女と思われる部類にあるのだろうが、そんな自分よりももっと幼げな声なのだ。まさか一般人が紛れ込んでいるのではないかと咄嗟に振り向く。が、次に少女が発した内容を聞いてその懸念は霧散していった。

「お姉さんも潮さんも、その対超常現象なんちゃらの一員ではありませんけどー、戦える人ではありますよぉ。よろしければ一緒に一体殺っていきません?」

 これから一杯飲(や)っていきません? くらいのテンションでそんな言葉を少女に投げかけつつ飛び上がり、今度は逆手打で異形の脳天目掛けて杖を振り下ろす。が、腕とも脚ともつかない四肢がガードに割って入ってそれも防がれた。横から襲い来るもう一本の四肢の一撃を今しがた杖で打ったばかりの四肢を足場として蹴り飛ばし移動することで回避し、ズザザザァッと足元の砂利を巻き上げ勢いを殺しながら潮の少し手前くらいまで一旦下がる。さて、次はどう攻めようか。

>淡海潮様&朝凪時雨様&ALL様

4ヶ月前 No.11

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/淡海 潮】


「最近、人間で人の顔を描く浮世絵見たんやけど、それより気持ち悪ぅ……」

 御札を既に5枚使用、25,000円分かーと考える暇も無い。元々自分で書いて自分で値段設定しているから損失自体はそれ程でも無いが。
 『撃』の一発は当たったが、肌が少し焼けた程度。僅かに煙も上がっているが、その俊敏性が衰えていないから大したダメージは入っていないことは理解できる。『纏』の札を使用した帳の攻撃を回避する所あたり、やはり普通の『自縛霊』では無い。
 と、背後から声が聞こえた。若い女の子。ここでは余り見たことが無い学生服。それに長い獲物。

「嬢ちゃん、ウチらはその部の人ちゃう。霊対峙も犬の散歩も何でもやる万屋や、んで死にとうなかったら抜刀するか逃げたほうがええ」

 対超常現象対策部、狐ちゃんから噂程度聞いたことがあるがこんな年端もいかない子もそうなのかと困惑してしまう。いや帳ちゃんも若い時から一緒だけどさ。それでも、だ。
 無理強いはしない。気概が無ければ、わざわざこんな化け物を相手することは無い。もっと一般的な幽霊から退治始めた方が妥当なのだ。その対超常現象対策部がどれほどのものか理解しきっていないが。

 突如、多数の人間の脚や腕を組んで出来た一本の脚が解き、その解かれた手が織っていた腕を脚を掴みそれを一瞬のうちに繰り返す。まるで野球のストレートの様に高速に迫った長い腕が自身の腹を蹴り付けた。

「――がっ!?」

 胃液を逆流させながら2人の横を横切り、トンネルの入り口方向へと吹っ飛ばされる。元々『纏』を使用していなかった故に、肉体は強化されていない。普通の霊ならば蹴られても耐えられるが、相手の一撃は容姿通りの威力だった。吹っ飛ばされながらも眼は鋭く霊を睨み付ける。僅かでも付け入る隙があれば――と。

 着地する前に、隙が見えた。
 奴は四肢の内の一本を解き、それを長い棒のように伸ばし遠くの対象捕捉し攻撃することが可能。しかし、その一本を伸ばす際身体が不安定になっていた。戦いの中でその攻撃が出来るという『成長』したからか、その攻撃は完成されていない。そして伸ばした腕を再び脚に戻す時間は、放つ際のスピードより遅い。帳ちゃんのスピードなら腕を戻す前に切断することも可能かもしれない。

 空中で『撃』の札を更に4枚取り出り、指に挟む。敵の反射神経は理解した。相手が後方に逃れないよう放物線を描くように霊力の弾丸を放つ。
 地面に身体を叩きつけられ、眩い外の光が目に染みる。すぐさま戻らなければ、と立ち上がる。腹に吐瀉物が付いているが気にもしない。

 奴は絶対に倒さなければならない。何より奴から攻撃を受けた瞬間、聞こえてしまった。恐らく奴に触れたら帳もあの少女(朝凪)も聞こえるだろう。霊の声を。

『タスケテ』『タ、スケテ』『タ……ケ…テ』『タスケ、テ』『……ケテ』『タスケテ』

 痛みに耐えながらも、顔は苦笑だった。

「……お決まりなセリフやな――」

>帳・朝凪

4ヶ月前 No.12

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/朝凪 時雨】



「え、いま、対超常現象なんとかじゃないって……え、え?」


 二人から告げられた言葉は全く持って想定の範囲外だった。それではこの二人は何故あの化け物を相手に戦っているのだろうか。まさかこの辺りの人は皆除霊ができるとかそんな訳ではあるまいに。軽いノリで声を掛けてきた女性があの化物に飛びかかっていったのをよくよく見てみると、どうやらお札のようなもので戦っているようだ。時雨はその様なものにあまり詳しくは無いのだがこの二人は陰陽師か何かなのだろうか、と思った。


 時雨も戦うべきなのかどうか、そもそも戦って勝ち目はあるのかどうか、男性の言う通りもし戦ったとして生きて帰れるのか。恐怖と緊張で体を震わせながら悩んでいると、男性があの化物の攻撃をもろに喰らって二人よりも入り口側に居る時雨の近くにぶっ飛んできた。男性の元に駆け寄り、何とか立ち上がった男性にあわあわしながら声を掛ける。


「だ、大丈夫ですか!?怪我は……きゅ、救急車呼んだ方が……いやでもこんなお化けに普通の人を近づけたら……えっと、えっと」


 あんなのが居る場所に一般人なんて呼ぼうものならどうなってしまうかは想像に難くない。そしてあんなものを放置して逃げ出してしまったら他に被害者が出てしまうかもしれない。だとするならば、今時雨がやるべきことはただ一つ。


「……あ、あの……力になれるかどうかはわからないんですが、えと、わたしも戦ってみるので……その、どう戦ったらいいのかの指示と『戦い終わった後のわたしの説得』を頼んでも良いですか?多分ですけど、『また戦う時に出てこれるから』みたいな事をわたしに言って頂けたら元に戻ると思いますので」


 傍から聞けば頭上にクエスチョンマークが浮かんでも仕方ない。けれども時雨の表情は今日一番真剣だった。
 下手したら肋骨が数本折れちゃってるかもしれない男性がしっかり聞き取れるように、ゆっくりと時雨なりにはっきりと頑張って伝えた後、竹刀袋から対霊真剣を取り出し、震える手で柄を握る。あと必要なのは鞘から抜刀する勇気と指示だけ。



>>淡海 潮様 沢紫陽花帳様

4ヶ月前 No.13

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 遠吠トンネル / 日曜日のお昼過ぎ 】

 潮の言葉に、そういえばこのあいだ仕事で散歩させた土佐犬は『纏』の札を使用するか悩んだくらい凄いパワーだったな、なんて関係のない考えが一瞬脳裏をチラつく。あの異形のパワーは土佐犬よりも確実に上だ。それでも前向きに考えれば、あの異形を散歩させろと言われるよりは倒せと言われた方がだいぶマシな気がするし、今の状況は最悪ではないのではないか。うん、無理やりだろうとポジティブなスイッチを入れていくのは大事なことだ。このテンションのまま頑張ろう。
 向かってくる敵の脚を打ち据えようと杖を振るうも、けれどそれは帳を狙ってのものではなかったようで、帳ではなく後方の潮がまともに喰らって吹き飛ばされた。咄嗟にそちらに視線を動かしそうになる。が、敵に一番近い位置にいて後方に目を向けるなどこの状況では愚の骨頂でしかない。振り向こうとした己を瞬間で律して再び低く構える。音の響き方からして、どうやら潮は結構な距離を飛ばされたらしい。無事でいてくれれば良いのだが。

「君、二重人格なんですかー? まあいいや。わかりました、その役目お姉さんにお任せあれ。これ終わったら一緒にアイス食べに行きましょうねぇ」

 背後の少女に顔を向けないままそうへらっと笑って、ローブの内側からあまり使用することのない『撃』の札を一枚だけ取り出す。それを敵に向かってではなく、自分のすぐ傍で炸裂させたことで、帳の姿は一瞬眩い光に掻き消された。相手の目が強烈な発光で眩んだ隙を突いて再度の肉薄。そしてこれは意図したことではないが、どうやら潮が投げていたらしい新たな『撃』の札四枚も光に紛れて上手いタイミングで異形の身体にダメージを与えていた。そのダメージで怯んだ隙を狙い、『纏』の札によって強化されている身体能力と光の撹乱を活かし異形の背後に回り込む帳。尻に目ん玉でも付いていない限り、ここは完全に死角。けれど帳が立っている場所を死角にしないためには、今度は潮や少女たちがいる方向を死角に変える必要がある。後ろの敵を前にすれば、前にいた敵が後ろになってしまうのは仕方のないこと。異形にしてみれば、同じ方向から三人の敵が攻撃してくるよりは一人の敵と二人の敵が異なる方向から攻撃を加えてくるほうがずっとやり辛いはず。
 ひゅっと短く息を吐いて、力強く踏み込む。返突。右手は杖の後端、左手は杖の先端を持った状態で左脚を踏み出しながら左手を後端寄りにすべらせつつ杖を突きだし、くるりと持ち手と軸足を入れ替えた後、今度は左半身から右半身の状態になってまた同じ動きを繰り返すというものだ。玄人は距離を取るためにいったん下がろうとする相手に対し、殆ど無駄のない動きでこの二つを繋ぎ合わせ続け流れるような素早い連撃を続けつつ追いすがることが可能だ。『纏』の札によって身体能力を強化した帳は、一応その域に足を踏み込んでいる。もちろん、素の状態ではまだまだ杖術道場の師匠に遠く及ばない。大体90歳にもなって五人の弟子を相手に無双する老人はもう魑魅魍魎の類だ。杖術お化けだ。

「少女ー、挟み撃ちの片割れお願いしますー! あと潮さんは大丈夫ですかー?」

 向かい来る敵の脚による攻撃を杖の殴打で迎撃する形でかろうじて捌きつつ、向こうにいる少女にそう指示を出す。指示というよりお願いなのだが、彼女が欲しがっているものは指示っぽかったのでまあ指示と表現しても怒られはしないはず。口調こそ緩いままだが、とんでもない反射神経の化物と一人で接近戦というのは短時間でもかなりの集中力を要する。額には暑さだけが理由ではない汗が確かに伝っていた。それにしてもなんてパワーだ。打ち返し打ち込みを繰り返す都度に手にビリビリと強烈な痺れが走る。

>淡海潮様&朝凪時雨様&ALL様

4ヶ月前 No.14

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/朝凪 時雨】



 震える自分を鼓舞しているともう一人の方の女性から声を掛けられた。よく分からない化物と戦闘しながら時雨が『二重人格っぽい』状態になる事も理解しているとは、ある意味あの人も化け物なのではと思ったが、何がともあれその気さくな声に励まされ時雨も決心した。


「わ、わかりました!挟み撃ちですね!わかりましたよ!それと潮さん……?は大丈夫です!……た、多分!」


 あまりに頼りない声だがトンネルの中で声が反響したので一応聞き取れただろう。そんなことを言っている間にも彼女はあれと戦闘を続けている。怪物にほぼほぼ互角に戦えている彼女の映画やアニメで見たような動きに驚いたり感心したりしながらも時雨も怪物に走って近づく。あの女性が上手い事死角を作ってくれた瞬間に意を決してさらに速度を上げる。

 怪物まであと3歩、2歩、そして残り1歩の距離まで近づいた瞬間に、時雨が手にしていたその刀は、まるで今か今かとこの時を待っていたかのように鞘からその刀身を露にする。
 そしてそれとほぼ同時に眼前の化物の体の一部が宙を舞う。


「……あははは!おいおい、近くで見ると俺が思ってた以上に気持ち悪いなこいつ!おっ、なんだこれ?『タスケテ』とかこいつが喋ってんのか?どっから声出てんだ、ここか?」


 時代劇や映画で見るような流れるような剣劇とは程遠い、滅茶苦茶で力任せに肉を引き千切り、奥深くまで抉り取るような戦い方。普段では絶対に口にしないような口調も合わさり宛ら男性のようにも見える。瞳も深紅に染まり、最早どっちが化け物なのか分からなくなるレベルの変わりよう。
 一人で立ち回っていた女性に集中して意表を突かれた化物が、煩わしそうに脚にも腕にも見える部位で攻撃してくる。それを飛び上がって避け、そのまま全体重を乗せて強引に切り裂く。脚は完全には引き千切れなかったが、そこそこの深手は与えることができたはず。流石に化物も無視できなくなったのか時雨の方を向く。明らかに殺す気満々な相手に時雨は率直な感想を述べる。危険ではあるがこうやってどちらかが注意を引くことができれば、もう片方の方が死角になる。あの女性も今までずっと戦い続けていたのだから、疲労もそこそこ溜まっているはずだが、この機を逃さず何らかの手を打ってくれれば勝利も夢ではない。


「うっわ、やっぱり正面も気持ち悪いなこいつ……おい、ここからどうすんだ!!指示が無いならぶっ殺すぞ!!ほら、早く指示出せ!」


 華奢な時雨の体を押し潰そうとする敵の脚や腕の攻撃を、紙一重で躱したり力任せに刀を振るって迎え撃ったりしながら一応指示を待つ。よく見ると敵の攻撃が掠ったりして所々負傷しているが、まるで時間が巻き戻るようにたちどころに治ってゆく。指示を仰ぎながら敵の下腹部(っぽいところ)を蹴り上げる。


>>淡海 潮様 沢紫陽花帳様

4ヶ月前 No.15

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ】


 人間の目は二つ。

 しかし目の前の霊はその目を何個も持っている。それに対して帳の『発光』は効果覿面だった。のたうつ様に地団駄を踏む霊へ穿たれた突きは肉を抉っていく。霊とはいえ存在を確立している以上、生物と同じように傷は出来る。更に激しく痛みを訴え、トンネルに衝突する霊。唯でさえ老朽化が進み、改善も何もされていないトンネル。この肥大な霊が暴れたら崩壊もあり得なくない故に決着も早々に付ける必要がある。

 そんな暴れ馬と化した霊の腕が一本、空中へ飛びトンネル天井へ衝突する。地面に落ちれば無数の人間の腕や脚が点在する形となる。その原因は日本刀の刃、既に四肢の一本は斬り飛ばされ、一本は連続の攻撃で今だ完全に脚としての形状に戻っていない。

 前のめりに倒れ、頭を垂れる霊。その顔に当たる部位の無数の目から涙が溢れている。形の揃っていない唇は苦痛を訴える。脚の痛みを誤魔化す様に地面に擦り付ける。

『イタイ』『イタイ』『イた、イ」
『ナン……デ…』『ワタシが』『オれガ……』『ィ……ヤダ』
『死ニたク、な、』『あ、あ、あアあぁァあ』

 それは。
 呪いの様に、祝いの様に。嘆きの様な懺悔の様な。人であり人ならざる者の言葉。

 行動が止まる。
 一瞬だが攻撃の意志が、3人に対する敵意が薄れ、空白の意思が脳内を支配している。
 今止めを刺さねば、またその存分な身体を駆使し攻撃を開始するだろう。例え四肢の半分が不随だとしてもだ。


>帳・朝凪

4ヶ月前 No.16

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 遠吠トンネル / 日曜日のお昼過ぎ 】

 どうやら本当に二重人格だったらしい少女が悪役じみたテンションで刀身を振るうのに釣られ、こちらも脳内にモヒカンマッチョでトゲトゲの肩パットを付けた世紀末の雑魚を召喚してみる。しかも杖術のイメージと上手いこと噛み合わなかったのですぐにどこかに消えて貰った。いつか火炎放射器でも使う機会があればまた召喚させて貰おう。それまで彼はお休みだ。
 異形の化物の肉体の一部が空を舞い、それが地面に落下するまでの数瞬の間にまたいくつもの太刀筋が閃く。視界をチラつく血飛沫。こちらも負けじと杖による殴打を繰り出すも、やはり刃物と鈍器なら刃物のほうが当たった時の攻撃力は高い。しかし杖術の利点は単純な攻撃力よりも杖というシンプルな形を活かした技の多彩さにある。突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀、杖はかくにも外れざりけり。かの平野国臣が残した道歌に恥じぬよう、帳も負けじと頑張らねば。
 そう意気込んでの渾身の一撃が決まった瞬間と、向こう側で少女の一閃が奔った瞬間とがたまたま合致してしまった。両方向からの激しい痛みに耐えかねた化物はトンネルに衝突しだし、老朽化したそこから粉塵のようなものがパラパラと落ちてくる。これは早急に化物を動けない状態にまで弱らせなくては、下手をすればトンネルが倒壊して生き埋めの危機である。まさかただのフィールドとしか認識していなかったトンネルが伏兵のポジションに着いて来ようとは。

「その『ぶっ殺す』の対象がお姉さんじゃなければ大歓迎ですけどぉ、お姉さん相手なら嫌ですー。指示は『ガンガンいこうぜ』にしましょうー」

 前のめりに倒れ伏した化物相手にも躊躇いなく杖を叩き込む。逆手突。両手で先端と後端を持った状態で片手をすべらせつつ上段から下方へと打ち込む形で相手を突いた後、今度は最初にすべらせたほうの手を後端に固定したまま逆側の手を杖の半ばまですべらせつつ相手に振り下ろす、という技だ。先程の返突がほとんどまっすぐの突きの連続だとすれば、この逆手突は上方から下方への突きと振り降ろしの連続だ。傍から見れば泣いている化物を容赦なく折檻する調教師のごとき姿である。タチの悪い幽霊なんてちょっと弱ったかと思えば復活してきて厄介なパワーアップを迎えているのが珍しくないし、泣き言を漏らしながら止まってくれている隙にできるだけダメージを蓄積させておかねば。贅沢を言うならこのタイミングで完全に仕留めてしまいたいけれど、長年の経験値からこの類の敵がそこまであっさり逝ってくれないことは理解してしまっている。息を吸いながらでは力が出ないという理由から最低限の呼吸さえも排し、無呼吸で、まさしく息つく暇もない強烈な殴打を浴びせ続ける帳。正確には最初に大めに吸った息を徐々に吐き出しながら吸うという行為だけを排して動き続けている。人間、息を吸うより息を止めている時のほうが力が出るが、息を止めている時よりも息を吐いている時のほうが力が出るように身体が出来ているのだ。ゆえに帳は、この短時間に少しでも化物を弱らせるべくあえてそのような呼吸法に切り替えた。こういうのは杖術よりも鹿島神傳直心影流あたりが得意とすることだが、元を辿れば剣術も杖術もやっている人間は同じだったのだ。応用できないことはない。

>淡海潮様&朝凪時雨様&ALL様

4ヶ月前 No.17

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/朝凪 時雨】


 散々暴れまわった異形の怪物にも痛覚は存在するのか、それとも助けを求めた者達の感情なのか、そのどちらが今のアレの感情なのかは分からないが怪物が痛みに耐えかねて前のめりに倒れる。『普段の時雨』であればここで攻撃を躊躇しただろうが、『今の時雨』はそんな事お構いなしに、寧ろボーナスタイムだと言わんばかりに何度も何度も力任せで乱雑な、全力の斬撃を繰り返す。既に怪物の体は、あちこちが杖を持っている女性の攻撃と時雨の滅茶苦茶な斬撃によって、ズタボロになっていた。普通の生物ならばもう三桁くらい人生コンティニューする程には攻撃を叩き込んだのだが、怪物はまだ完全には仕留めきれない。


「あ?なんで手前を殺さなきゃいけねえんだよ、刀が汚れるだろが。それよりもさっさとこいつを仕留めないとここも崩れるぞ。お前、札みてえなのが使えるなら、止めをさせるやつはねえのかよ!」


 他人から聞けば「お前の語彙力の問題だろ」とツッコみを入れられそうだが、今の時雨は能力使用時の代償として理性とか知性が若干欠如してしまっているので、本人は自分に非があるとは思いもせずに至って真面目に返答する。勿論その間にも攻撃の手は緩めず、これでもかと言う程に斬撃を叩き込む。細い手足や刀身とは裏腹に、時雨の剣術とも言い難いその力任せな戦い方は、刀を振るごとに相手の肉が切り落とされたり、千切れたりして四散していく。それでも未だに仕留めきれない。



「……はっ、耐久力だけは本当に化け物だなこいつ!そらっ、もう一発!さっさと成仏しやがれってんだよ『お前ら』は!!」


 あの女性の『ガンガンいこうぜ』の指示を忠実に守りながら、仕舞いには攻撃の種類に斬撃だけではなく蹴りも交じる。それでもまだ怪物は死なず、助けを求めるような虚しい声も止まない。なんとかならないのか、と杖を持った女性の方を見る。彼女も相当手慣れのように見えるが、このままもう一度この怪物に暴れられたらこのトンネルが崩れてしまう可能性だってなくはないのだ。



>>淡海 潮様 沢紫陽花帳様

4ヶ月前 No.18

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

 当たり前の話をしよう。

 人間が死んだ時、強い名残を残した人物はその魂を現世に遺し『自縛霊』となる。無論、人間の身一つに宿る魂は一つ。故に『自縛霊』を払う時、その強さには上限がある。幾ら強い残滓を抱いた魂でも元は人の身である限り、人に払えぬ『自縛霊』は存在しない。そして風貌も異形化するなどありえない。これが淡海が父から教わり、従業員にも教えたことだ。

 しかし――今、現実でその言葉に泥をぶちまける様な霊が存在する。
 淡海は考えた。敵(霊)の正体を。そして、思い出す。封印されていた半分に分かれた古本の1ページを。

 命を繋ぐ。一つの人間の霊の魂を糸で縫い付けるように、1人の魂と1人の魂を。2人分の大きさになった魂をまた次の魂へと縫い結ぶ。魂の結合、人ならざるモノ、霊を霊以上へとする昇華術式。それは禁じられた――いや、誰も試すこともしなかった。その本の著者すらその一度で禁じた術式に他ならない。その著者の名は――。

 トンネルの上、森の中に佇む人がいた。
 長い白髪に同色の瞳、長く大きい身体はフランケンシュタインを彷彿させる。黒色のスーツを身に纏い、左手には御札が右手には半分に裂かれた本が握られていた。その本に視線を落としながら、まるで下のトンネルで何が起こっているか理解しているかのように呟き始める。

「残念。残念。非常に残念」

 人差し指と中指に挟んだ御札が燃え上がる。

「君は破棄しよう。そうしよう。破棄しよう」

 中指と薬指に挟んだ御札が燃え上がる。

「暴れ。悶え。落ちろ」

 霊が急速に跳ね上がる。まるで第三者が下から持ち上げたように、何の前動作も無く攻撃を続ける2人を跳ね除け、その巨躯をトンネル天井へとぶつける。その暴れ様は先ほどの比じゃない。もっと、もっとと上限を壊すようにトンネルへの衝突を繰り返す。粉塵が舞い散り、トンネル全体が悲鳴を上げる。

「帳ちゃん! お嬢ちゃん! すぐそっから逃げろ、落盤するぞ!!」

 淡海の声がトンネルを貫くように響き渡る。それを皮切りにするように、トンネル出口の外壁が落ち始める。それは瞬く間に入り口側に迫り、天井も連鎖する。雪崩のように、一度起きたものの崩壊は止められない。ポツポツと小さな破片が落ちる中、それでも衝突を止めない霊は叫んだ。霊の体内から出す一つの言葉を。

『ミィチャャャャァアァアアッアァァアアァアアアッアァァアアァアアアアアッアァァアアアアアアンンンンンッッ!!!』

3ヶ月前 No.19

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 遠吠トンネル / 日曜日のお昼過ぎ 】

 散々に叩いたり突いたり払ったりしているのにそれでもまだ蠢き続ける異形に呆れと感心の入り混じった笑みをこぼす。制服の少女が殺すの告げた相手はどうやら自分ではないようで一安心だ。二重人格だとヤバい場合は裏の人格が無差別に周りを襲いまくるバーサーカーというパターンもあるかと思ったので、とりあえず比較的まともなやりとりが成立したことに感謝しておこう。札は杖にも身体にも巻きつけて使っているからある意味この一撃一撃で札を使っているのと同じようなものなのだが、少女は帳が身体や杖に札を巻きつけるシーンを見ていないのだからそれを知らないのも無理はない。弁解したくとも今は息を吐き出しながら攻撃し続けている最中だから、口を開くとこのハイペースな攻撃に乱れが生じてしまう。よって答えるのは後回しだ。
 異形の血と肉が舞い散り乱れ飛ぶ空間。絶え間ない連撃。響く苦痛の呻き声と、鋭い息遣い。それらに終止符を打ったのは、何の前触れも無くいきなり興奮状態に入った霊の暴走だった。今までとは比べ物にならない恐るべき勢いで振るわれる手足と自分の肉体との間になんとか杖を滑り込ませ、けれどそれだけでは緩和しきれなかったダメージに骨が軋むのを自覚しながら後方へと大きく吹き飛ばされる。あの攻撃を喰らっていたなら、少女は立ち位置的に前方に吹き飛ばされただろうか。地面にぶつかる前になんとか空中で体勢を整え、二本の足と片腕を地面に擦りながらの停止。中腰に近い体勢のまま顔を上げれば、化物は狂ったように天井への体当たりを繰り返していた。

「わかりましたぁ! 指示変更『いのちだいじに』! お姉さんこっちから逃げちまいますから、潮さんとそっちの女の子は逆側に向かって走って下さいー!」

 潮の叫びに答えるが早いか、潮と少女とは逆方向のトンネルの出入り口に向かい全速力でスタートダッシュを切る。わざわざ化物を飛び越えて二人と同じ方向に逃げようとするよりは、吹き飛ばされたこちら側の出口に向かってしまったほうが圧倒的に時間短縮だ。背後から異形の鼓膜を劈くような叫び声が聞こえてくる。ミィチャンとは誰だろうか。近所にそんな名前の猫を飼っているおばあさんもいるし、そんなあだ名で呼ばれている女児もいるし、みぃちゃんという響き自体はさして珍しいものでもない。しかしそれがこの化物の口からこぼれたものとなると、何かしらの大きな意味を持っている気がした。
 破片を避けながら短距離走選手並の正しいフォームで突っ走って無事にトンネルから脱出しきる。自分が外に出たことを認識した瞬間、呼吸を整えるのも後回しにしてバッと後方を振り向いた。まだ崩壊はしていないようだが、潮と少女は無事に逃げきれているだろうか。

>淡海潮様&朝凪時雨様&ALL様

3ヶ月前 No.20

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/朝凪 時雨】


 馬鹿みたいにあちこちに斬撃を加えたのにまだ化物は倒れない。悲痛な叫びは止まないばかりか、なお一層激しくなっていくようにも感じる。いい加減死んでくれないと本格的にトンネルの崩壊が始まりそうなので更に刀を握る手に力を入れ、深くまで霊を抉り取るように力いっぱい踏み込む。しかし、もう一息か、と奥まで刀を差し込んだところで突然、霊がまるで見えない力に引っ張られるように跳ね上がった為に弾き飛ばされてしまう。いくら身体能力が強化されているとは言え至近距離で暴れられては回避はできない。反射的に腕を前に構えて防御の姿勢を取ったものの、衝撃は殺しきれずに数メートル程度吹っ飛ばされる。


「クソが……手前、まだそんな元気あったのかよ!いいぜ、二度と動けない様にその四肢噛み千切ってやる!」


 口の中が切れて流れてきた血を袖で拭いながら暴れまわる霊に吠える。腕も恐らく骨折とまではいかなかったがヒビは入っているかもしれない。それでもアドレナリン放出度MAXの今の時雨には痛みはかなり緩和されており、激情に駆られていることも合わさって気にも留めないどころかきっと気付いても居ない。
 早速反撃に出ようとしたとき、化物を挟んだ反対側からあの女性の声がトンネル内に響き渡る。霊が暴れまわっているせいで完全には聞き取れなかったが、要約すると『早く逃げろ』という事だった。


「はあ!?ここまでやっといて逃げんのかよ、もう殺した方が早いだろが!」


 今までの弱弱しい動きとは打って変わって、壊れた機械のように暴れまわる霊を睨みつけながら声を張り上げる。ここまでやったのだ、今ここで逃げかえっても、またこの霊が暴れ出さないとは限らない。今日はたまたまこの場所に居ただけで、いつトンネルを抜けて町に現れるのか分かったもんじゃないのだ。今の時雨がそこまで考えて発言したのかは不明だが、兎にも角にも今の時雨に逃げ帰るという選択肢はほぼない。


「……ああ、うるせえな!よっぽどの事がなけりゃ俺らは死なねえよ!そうやってすぐ逃げるから弱っちいんだろが!じゃあいいぜ、俺一人でもぶっ殺してやるよ」



 他人から聞けば全くもって意味が分からない発言だったに違いない。この発言は他でもない『他人のような時雨』に向けて言ったものであり、『はやく逃げようよ』と脳内に言ってきた時雨に対しての反論である。
 未だに暴走を続ける霊の意味不明な叫びを耳にしながらもう一度刀をしっかりと構え体勢を整える。その間にも普段の時雨は勧告を続けてきたが全て他人事のように聞き流した。暴れまわる霊に今にも噛みつきそうな視線を送りながら脚部をもぎ取れる瞬間を虎視眈々と狙う。



>>淡海 潮様 沢紫陽花帳様

【さっさと逃げろと言って頂ければ元に戻ってさっさと逃げます()】

3ヶ月前 No.21

hati @sirusiru ★1hiL9KOZkm_UHY

【好口 棗 / 遠吠トンネル / 日曜昼過ぎ】

『白野区の十彫トンネル(通称:遠吠トンネル)へ向かえ』

 簡潔に書かれたメールに目を通したのがほんの数時間前で(着信していたことにどうも気が付かなかった)、いつも通り布に包まれた刀を片手にポケットにスマートフォンを突っ込む。そろそろ買い替え時期なのかと手にしたのは何年前だったかと志向を巡らせながら見えてきたのは万屋で、あれ、この山道突き進むの?絶対蚊に刺される。……まぁ、刺されたらそれはそれでしょうがないか。潰すか吸われるかの戦いだ。
 よっこいしょと再度肩に刀を背負いなおすと獣道を突き進んでいく。この判断が吉と出たか凶と出たか。


「暑いからもう帰りたい……いやでも一応ここまで来た手前帰るのも同じ労力か……」

 凶だったか〜と額を伝う汗をぐい、とぬぐう。兎にも角にも、指定された場所へはたどり着いたのだから良いだろう。といつものように散策しようと姿を現したトンネルへ足を向ける。そして、聞こえてきたのは非日常的なガァン、だとかドォンだとか、何かがあからさまに壊れていくような音だった。
 これは来るのが遅すぎたかと内心焦りを珍しく抱えつつ駆け出す。あと数メートル、3、2、1、

「到着と共にうわっ……」

 するりと手慣れたように背負っていた刀へ手を伸ばしつつ嫌そうに眉を顰める。いや、この仕事がいやになったとかでなく、嫌悪感で。
 視覚よりも先に聴覚が人の声を聞きつけ、まずは加勢して下手に二次災害を起こすよりかは現状把握かと目線を好口が滑らせるとようやく人影を見つけそちらへ顔を向けた。

【遅ればせながら好口参上です笑
戦闘中なのにぼ〜っとしたやつがすみません!ちょっとどっち側にいるのか把握しきれなかったのでトンネル口のどちらかの方が拾って下さるとうれしいです…!】

>>遠吠トンネルALL

3ヶ月前 No.22

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ】


 帳ちゃんは逸早く反応した。流石の長い付き合いと経験、彼女は大丈夫だろうが――問題は戦闘の継続を訴える女の子だ。『対超常現象対策部』は国の統括だが、その所属者に教育はしてないのだろうか。いや、彼女の言葉を思い出すならばこの行動は彼女の性格自体が起因している。

 ヨロヨロと覚束無い足取りで入り口に佇む。
 地鳴りの様に響く音。もう崩落は免れない。このままだと彼女はこのトンネルに埋め殺されてしまう。

(『戦い終わった後のわたしの説得』を頼んでも良いですか?多分ですけど、『また戦う時に出てこれるから』みたいな事をわたしに言って頂けたら元に戻ると思いますので)

 彼女はこう言った。推測するに多重人格ゆえのスイッチのON/OFF。一刻も待てない、腹の奥から声を出す。この地響きにすら消せない大音量を

「お嬢ちゃん! また戦えるから今はそのトンネルから出て来い! ここで埋もれたら次はねぇんだから!!」

 暗闇がまだ佇むトンネルへ『撃』を放つ。高速で朝凪の前へ行けばそこで急停止、緩やかな速度でUターンし始めるこの光を追って来いと言わんばかりに。
 そんな中、瓦礫に埋もれ始めた霊の場所の捕捉が急に出来なくなる。まるでその存在に幕を下ろし消える、手品の様に。

――――

【トンネルの奥/荒れ果てた田園】

 霊を覆い隠すように落盤していくトンネル。1分も経たない内にトンネルの奥の光が消えるように、トンネルの中腹は瓦礫によって埋められた。

 そしてトンネルを抜けた先は、荒れ果てた田園でした。ついでに蚊の海でした。
 ブブブと羽音が耳に滞る事無く入ってくる。万屋から遠吠トンネルに続く獣道にいる蚊の比じゃない量である。

 なぜか? それは手付かずの田園ゆえに雑草は生い茂り、だが自然に出来た側溝に所々水が流れているため、そこから漏れた水で出来た水溜りは少なからず存在する。そして、この高気温。条件が整い発生しない方がおかしいのだ。

 まるでマングローブである。3年も誰も手付かずな田園は既に『園』なんて生易しい表現で許容できるものでは無い。いや、それ以上の表現が思いつかないが。
 ただ言える事は一つ。一瞬でも早くこの場から撤退しなければ、蚊に対する献血が行われる。


――――
【万屋前】

 万屋の玄関の前に一人の少女が佇んでいた。
 麦藁帽子を被った恐らく小学生の高学年くらいだろうか。艶のある黒髪は肩まであり、同色の瞳。まるで帳の様な上から下までの黒い服を着ているものの、下の裾が横に広く伸びているからかテルテル坊主を髣髴させる。手には『霊見先生直伝 幽霊の見方!』という表紙にデカデカと『霊見得代』がプリントされた分厚い本を握り脇に挟み抱えている。

 暑い中、その様な服を着ているからか顔は汗だくで頬も朱に染まっている。因みに万屋にインターホンなど便利なものは無い。故に、その少女は手で扉を叩き叫んでいた。

「たのもーたのもーたのもぅ……」

 何回もやっているか精魂が若干尽き始めてる。


【好口君がいる場所が友禅様の帳ちゃんが出た方とさせていただきます。またログも読んでロルを回していただきありがとうございます。友禅様さえ宜しければ、好口君連れて先に万屋帰っても大丈夫ですよ】

3ヶ月前 No.23

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 遠吠トンネル / 日曜日のお昼過ぎ 】

 背後から聞こえてきた足音に咄嗟に視線を向ける。正確には木の枝を踏んだり草が揺れたりする音だ。少し前から聞こえていたが野生動物か人間か分からないのでスルーしていた。が、急にスピードアップしたのでこれは人間っぽいと判断を下し意識に入れることにしたのだ。現れるや否や背負っている刀らしきものに手を伸ばした男は、端的に言えばそれなりにモテるお洒落な大学生みたいなルックスをしていた。不細工なら寝癖と判断される天然パーマが、整った顔立ちのおかげで垢抜けている風に見えるような、そういう損得の天秤に乗せれば確実に得に傾く扱いを受けてきたであろう人並より恵まれた容姿の持ち主。年は同じくらいだろうか。離れているとしてもプラスマイナス二歳以内に収まりそうだ。目が合ったので、とりあえずひらりと片手を振っておく。

「こんにちはー。お姉さん沢紫陽花帳って言うんですけどぉ、ひょっとして刀を持った二重人格の女子高生ちゃんとか知り合いにいたりしますかー?」

 さすがにこの山奥に刀を持って来ているという共通点を持つ二人が、まさか全く関係の無い間柄ということはないはず。問いかけながらも頭の中では完全に知り合いと決めつけていた。相手から質問の返事を聞くよりも早く、ついに本格的なトンネルの倒壊が始まったのを見てそちらへ視線を戻した。同時に今まで札の力のおかげで確かに感じ取れていたはずの霊の存在がいきなり掻き消える。消滅したのか、あるいは札でも補足しきれないほど遠い場所に何者かの手によって飛ばされたのか。……そんな『何者か』が現れる厄介なパターンより、できれば前者のほうであって欲しいというのが本音だ。
 薄暗いトンネルの中でも眩しい陽光の下でも、どちらにせよ相変わらず黒魔術師にしか見えないローブの内側からスマートフォンを取り出し、LINEで潮に「生きてますかぁ?」というシンプルなメッセージを飛ばしておく。返す余裕が無くても、とりあえず既読さえ付けてくれればそれで生存確認になる。もっとも、彼があの程度で死ぬタマではないのは長年の付き合いで分かっているから、あまり心配はしていない。彼はよく無茶をする人ではあるが、その無茶が意外と死には直結しない男だ。

「……とりあえず、ここにいても蚊に噛まれるだけですからぁ。ひとまず移動しましょうかぁ」

 続けざまにLINEに「お客さん連れて万屋に帰りますねぇ」とメッセージを送りスマートフォンを仕舞うと、相手について来るかついて来ないかを問うこともなく鼻歌混じりに移動を開始する。真夏の炎天下。いきなり山を登らされたと思ったら目の前でトンネルが崩壊し、かと思えば見知らぬ謎の女と共に休む間もなく下山するはめになる男の気持ちとはどのようなものなのか。

>淡海潮様&朝凪時雨様&好口棗様&ALL様

【承知いたしました! 万屋には次か次の次あたりのロルで戻りますね】

3ヶ月前 No.24

hati @sirusiru ★1hiL9KOZkm_UHY

【好口 棗 / 遠吠トンネル / 日曜昼過ぎ】

 切迫した雰囲気を感じ取っていた好口がありゃま、と思わず口走ってしまうほどにはこの場にはふさわしくないようなほんわかした雰囲気でその人影は挨拶をしてきた。もとい、美女だ。身長はおそらく女子の平均身長よりは低いような気がする(あまり関心がないため好口には判断しかねる)が、こう、何とも良い体型なのである。男性なら必ずしも、いや、多少はそういった方面の想像をしてしまいそうなものではあるが好口は一言「え?」と首をかしげるだけに留まった。(これが他人に深くかかわらなかった性である)。
 えーと、と刀にかけていた手を後頭部に回し、先ほどの張りつめていた緊張感はどこへやら。彼女の質問に答えるように首をかしげると数度瞬きをし、二重人格の女子高生……? と呟く。

「いやー、……そんなキャラ濃いようなお嬢ちゃんに会ったら俺も流石に忘れないだろうけど知り合いにいたっけな〜……」

 刀を持っているなら同業者、だろうが何せすべての事が適当に流れていく好口だ。一二回会ったところで覚えられないのが道理というものか。
 直後にトンネルの内部から先ほどよりもひどい音が聞こえ、反射的に手のひらで両耳をふさぐ。

「お兄さん完全に出遅れだったか〜。いやー、残念」

 半分諦め、半分よっしゃと内心ガッツポーズを決めながらも好口が耳から手を離すころには、もうトンネルとは名のばかりの瓦礫の山が出来上がっていた。任務に間に合わなかったのは仕方ないが電話でよこすかしない方が悪い。死者が出ていないならセーフ。うん。
 とやかく、直後に移動しようと歩き出してしまった彼女を一人で下山するわけにも、ましてや蚊の餌食にみすみすなるのも気が引けたため好口は大人しく彼女の後を小走りに追う。

「……あー、俺好口棗。初めまして……?」

 疑問形なのは記憶力のせいである。初対面でなかったら申し訳ないなぁ、とどこか上の空で好口は彼女にへら、と笑いかけるのであった。

>>沢紫陽花帳様、周辺ALL


【拾っていただきありがとうございます〜!
好口これにて何をするわけでもなく美女と山を下りる役得ポジションいただきます笑】

3ヶ月前 No.25

水没王子 @umeboshi ★chfNVTLIUI_Vx8

【遠吠トンネル/日曜日のお昼過ぎ/朝凪 時雨】


 怪物染みた霊が暴れまる為に、トンネルは崩壊と言う形で悲鳴を上げる。時雨の体とほぼ同じ大きさの瓦礫が霊の上に落ちたとき、一瞬だが霊の動きが鈍る。そのほんの一瞬を見逃さず、一気に彼我の距離を詰めようと踏み込む……はずだっただが、それは後方から響き渡る声によって遮られた。


「ああ!?手前も俺の邪魔をすんのかよ!いいぜ、だったらそこで見て……は?」


 それはなんの前触れもなく、唐突に。それを分かりやすく表すならば、『さっきまでそこにいたはずの霊が消えた』と言うこと。その姿は勿論の事、気配まで完全に感じ取れなくなってしまった。普通あのような類のものは見えなくなることはあっても、何となく気配は察知できるものだ。まして身体能力や五感も向上している今の時雨ならばそう易々と相手を逃すことはないはず。まるで手品のように、最初からそこに霊だけがいなかったかのように忽然と姿を消してしまった。


「……ああ、クソが!手前も『俺』と同じ事言うんだな、わかったよ!そっちに戻ればいいんだろ!今度会ったら絶対俺がぶっ殺してやるからな!」


 既に崩壊は始まっているトンネルであれこれ考えている暇はない。霊に対して罵詈雑言を吐き捨てながら声の主が放った札のようなものに追従するように走って入り口に向かう。途中で何度か瓦礫が目の前に落ちてきたりすることもあったが、その全て切り捨てたり殴り飛ばしたりして、特に大きな怪我をすることもなく男性の元へ辿り着く。

 トンネルから抜け出せたことで少し緊張も解け、休憩のために男性の隣の壁にもたれ掛かる。ずっと蒸し暑いトンネルの中で戦闘をしていたこともあってか、服や髪は汗と血でまるで夕立にでも降られたかのように濡れており、呼吸は荒々しく肩で息をしている。普段なら服が透けたりしないか心配しただろうが、今はそんな事気にするそぶりも見せず、少しでも自分の体を冷やそうと制服の襟をもってパタパタと仰ぐ。


「はあ……あっつ……。おっさんさあ、まあ、そのなんだ……あれだ、とりあえずは感謝しとく。ありがとな。あの姉さんの方にも言っといてくれると助かる。……弱っちい方の俺に代わって、だからな!勘違いすんじゃねえよ」


 男性には全く目線を合わせないが一応は感謝の言葉を告げ、同時に刀を鞘に納める。そしてそれを合図に瞳の色も普段のそれに戻り始め、糸が切れたようにぐったりとし始める。大きく息を吐いた後にその場に座り込む。その目つきはいかにも弱弱しい、まるで借りてきた子猫のようであり、いつもの時雨に戻ったことを表していた。


「あ、えっと……あ、ありがとうございました!この子を抜刀するとわたしは傷も直ぐに治るようになるから強気になるみたいなんですけど、いつも無茶しちゃうので……そ、それじゃあ今日は……」


 他にも聞きたい事などはあったのだが、おどおどしながらこの場を去ろうとする。すぐ安全地帯(家)に戻ろうとするのはある意味悪い癖だ。できることならばこの人達が一体何者なのか、あの霊について何か知っているか尋ねた方が『対超常現象対策部』とやらに貢献できるのだろうが、人見知りでコミュ障な今の時雨に自分からそんな事を言い出せる勇気はない。



>>淡海 潮様

【本人も聞きたい事はいっぱいあるので誘って下されば絶対ついて行きます】

3ヶ月前 No.26

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE


【遠吠トンネル→万屋『出づの目』/日曜日の夕方/淡海 潮】


「…………ツンデレ?」

 相手の言葉に何となくその言葉が零れる。が、直後先ほど打って変わってへたれている少女。多重人格で十中八九当たりだろうと思いつつ、座り込んだ相手の肩を軽く掌で叩き。

「お疲れさん。奴(やっこ)さんにもお疲れって伝えておいて」

 労いの言葉を述べていれば、スマホの音が鳴る。ティウンという初期設定の音で無く自分の声を録音しmp3化し、それを着信音としている。なぜか? 誰からかすぐ分かるため。元々そんなに登録者はいないのにわざわざ設定した。因みに帳ちゃんからは「帳ちゃんからだよー」という。電車内ではマナー不可避。

 こちらも『生きてます。こっちも嬢ちゃん連れて戻ります。先に着いたらお茶かカルピス出しておいて』と打って送信。
  雪崩の後の様に木々と地盤が倒れ、トンネルの跡はもう無い。外れのトンネルとはいえ、あれほどの轟音が鳴っていたから遅かれ早かれ警察か消防が来るだろう。関わりたくないし、

 この様な事態は今まで1回も無かった。が、それはあの異形の自縛霊も同等。人が進化するように霊も進化する可能性も無きにしも非ず。もしかしたら、消えたと思える霊もその身を極限まで気配を消す能力を持っているかも知れない。

「一応封じておくか」

 袖の中から『封』の御札を取り出し、トンネル跡地に放つ。まるで液体に浸透するように、その御札は土の中へと消えていった。本来ならば霊に貼るものだが、緊急処置だ。その場所自体を霊などが悪さできないよう結界の様な役割を担うが、効力は弱い。気休めの様なものに他ならない。
 一応の後処理を終え、後はこっち(少女)だ。帰ろうとする少女の手を握る。

「ちょい待ち、お嬢ちゃん。ちょーちばかしおじさんに付き合ぃや、茶くらい出す」

 有無を言わさず手を握ったまま、万屋方向へ歩いていく。無論街中経由。服に吐瀉物の残りが付いた腹を出した中年男性が高校生程度の少女の手を引きドナドナしていく。……誰か見て事案報告しない事を祈る。警察案件マジ勘弁。

 暫く歩くと見慣れたボロボロの家が見える。そして、その玄関でしゃがんでいる影が見えた。

「あら、お客さん?」

 少女が振り返る。涙目になった瞳で立ち上がり、こっちへ駆けてくる。

「うーじーおーざーん!! 母ちゃんを……母ちゃんを助けてくだざぁい!!」

 この少女の名は――霊見 鯛子(れいみ たいこ)。
 そしてこの少女との出会いが、物語の幕開けを告げる事になるとは――この時、夢にも思わなかっただろう。



【End/第一話『糾いの魂』→

→第二話『諧謔の言葉は望まない』/Start】



【勝手ながら潮&朝凪ちゃんが先に万屋着いた形でお願いします。水没王子様、お言葉に甘えて強制的にドナドナさせていただきます】

3ヶ月前 No.27

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 遠吠トンネル→万屋『出づの目』 / 日曜日のお昼過ぎ 】

 どうせ知り合いだろうとタカを括っての質問だったのに、どうやら青年はあの女子高生と知り合いではないらしい。驚いた。まさかこの広い日本にそういないであろう『日常的に刀を持ち歩く人間』がたまたま同じ日の同じ時刻に同じ山に来ているだなんて。まさか潮と帳が把握していなかっただけで、今日はこの山でそういうオフ会でもあったのだろうか。インターネット社会の進んだ昨今、やっている子は小学生でもオフ会をやっていると聞くし。

「初めましてだと思いますよぉ。お姉さん前世の記憶とかありませんから、そっちのほうで面識あるかはちょっと分かんないですけどー」

 好口棗と名乗った青年は素直に下山する帳に着いて来てくれた。初めまして、の最後が疑問形な辺り、知り合いに自分と似たような雰囲気の女でもいるのだろうか。記憶力に自信が無いだけという可能性もある。ひょっとしたら幼稚園が同じだったりする可能性くらいは残っているが、少なくとも小学校と中学校に青年と似たような雰囲気の知り合いはいなかったのでひとまず初めましての可能性が高いことを断言しておく。
 まだ飲みきっていなかったスポーツドリンクを時折傾けて喉を潤したり適当な雑談を繰り広げたりしつつ、テクテク数十分ほど歩いて辿り着いた先は帳にとっては見慣れた、けれど棗にとっては物珍しいであろう古びた外観の万屋。そこにはどうやら先に辿り着いていたらしい潮と先程の女子高生と、何故か小学生くらいにしか見えない背丈の少女がいた。こんな暑い日に上から下まで真っ黒な服装に身を包んだ少女に、どことなくシンパシーを感じる。彼女も有事の際は黒を身に纏ったほうが気が引き締まるタイプなのだろうか。単純にゴシック趣味ということも考えられるが、それだと麦わら帽子というチョイスが浮くのでたぶん違う。真正ゴスは真夏だろうとシルクハットだのヴェールだのを装着するものである。ちなみにこれはただの偏見だ。

「ただいま戻りましたー。その子って潮さんの隠し子ですかぁ?」

 まだ距離のある内から冗談半分にそんなことを口にしつつひらひらと手を振る。女子高生と女子小学生に囲まれている潮さんの絵面はなんだか犯罪臭いな、と感じたことはさすがに口にしなかった。ここに黒ローブの女とラフなファッションのイケメンが混じることで、犯罪臭は薄れても混沌度は増し増しの集団になりそうだ。

>淡海潮様&朝凪時雨様&好口棗様&ALL様

【こちらもイケメンを侍らせつつ万屋まで合流させて頂きまする】

3ヶ月前 No.28

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【遠吠トンネル→万屋『出づの目』/日曜日の夕方/朝凪 時雨】



 抜刀時の時雨が散々暴れまわってくれたおかげで、酷使された足に乳酸が異常なほど溜まり、ふらふらと今にもぶっ倒れそうな時雨がやっと数十歩進めたその時、半ば強引にあの男性に手を引かれて何処かにドナドナされる。


「!?あ、あのちょっと待ってくださ……そんないきなり、あの、あっ、うう……」


 驚きと男性の歩みに付いて行けず足が上げる悲鳴、そして突然男性に手を引かれるという恥ずかしさに、顔を俯かせたり、どうしたものかときょろきょろしたり。たまに足の痛みから下手したら喘ぎ声のようにも聞こえる悲鳴を上げながらも、気弱な性格が災いして断ることも出来ずドナドナされていく。

 (ある晴れた 昼さがり 何処かへ 続く道
 おじさんが トコトコ 少女を 乗せてゆく
 かわいい(?)少女 連れられて行くよ
 道行く人が 怪訝なひとみで 見ているよ)


 そんな歌を『自分と全く同じ声で』誰かが囁きかけてきた気がする。犯人は時雨が一番よく分かっているのだが。(今度また戦闘になったら、トンネルの出口で隣の男の人に言った事を同じように言ってやろう)、と決意した時雨なのであった。


 しばらく男性のされるがままに付いて行くと、ボロボロで空き家のようにも見える木造の平屋が見えてきた。当然スルーすると思っていたのだが、男性の足が止まったので目的地はこの場所のようだ。よく見ると『万屋』と達筆に書かれた看板があったり、『超常現象・浮気・身辺調査諸々承ります』と書かれた白い暖簾が垂れ下がっていた。どうやらこの男性はこの万屋に関係する人の様だ。道理であんな化け物相手に立ち回れるわけだ、と一人納得した。あの一緒に戦った女性も恐らくはここの人なのだろう。なんて事を思った矢先の出来事だった。


「ええ!?いや、違います、違います!誤解……?です、はい!わ、わたしのお父さんは別にいます!」


 また会ったあの女性は冗談っぽく「その子って潮さんの隠し子ですかぁ?」と言われたが状況が状況故にネタとして流せない。慌てて男性の手を振り払って後ろに回す。彼女の隣には見知らぬ男性が居たが今はそれどころではなかった。


「えっとえっと、その……どうしたんですか……?」


 少し戸惑った後に先ほどの発言がネタだと理解できた所で、泣きそうになりながら駆け寄ってきた女の子の隣に移動する。一人っ子なので自分より幼い子の扱いには慣れていない上に、この女の子はこの万屋に用があるようなのだが、困った人を見ると手を貸さずにはいられないのは性格なので仕方がない。
 こんな時は頭を撫でたりするべきか、とあたふたと悩みながら、取りあえず涙を拭くようにハンカチを女の子に差し出す。





>>淡海 潮様 好口 棗様 沢紫陽花 帳様 ALL様

3ヶ月前 No.29

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3ヶ月前 No.30

雪鹿 @salt9140 ★Android=42zyboh5vZ

【条繕寺 蓮/日曜日の夕方/遠吠トンネル→万屋】

「……既に祓われた後でしたか。」

元の姿を鑑みる事は出来ても、元の姿とは程遠くなってしまったその崩落した後のトンネルの前に和装の青年が一人、微笑みをそのままに佇んでいた。そして、少々安心しながらも、ここまでになったという事は、誰かが血を流してしまったのではないか、と彼らしく心配する複雑な心境で手に持っていた竹刀袋に入っている刀を手近な所に立て掛けてもう一度トンネルを眺めた。

―――此処に縛られた憐れなる者にも仏の加護があらんことを。

自己満足でしか無かったとしても、彼は心内でその言葉と共に祈りを捧げる。本来なら、経の一つや二つ読み上げても構わない所ではありますが、同僚である仲間が心配です。いえ、彼等もお強い方々なのですから、心配するだけ無駄なのかもしれないのですが……。

少々時代に取り残されてしまった何の装飾もないごくごく一般的な藍色のガラパゴス携帯を懐から取り出して、GPSとやらを起動してみるとここからそう遠くは無い場所へと二つの点が向かっている事が分かった。おかしいですね、移動なんて指令には無かったはずですよね。
一応、指令を見てみるがそんな事は何一つ書いていなかった。つまりは、想定外の何かが起こって、此処にいた二人が其処に行く理由が出来た……そう思うべきでしょうか?
そのような場所ならば、私も行ってみましょうか。何にせよ、これまで同僚の方々とお会いする機会は中々無かったですし、三人も会せれば十分に親睦を深めるための挨拶にもなるでしょう。
彼は崩れたトンネルに向かって手を合わせて再度見知らぬ霊魂の安寧を祈れば、立て掛けていた刀を手に取り、踵を返して次の目的地へと歩いていった。


GPSを頼りに山道を順調に下って指し示された麓へ歩いていたが、少々横道にそれては、美味しそうな鯛焼きを売っている鯛焼き屋を見付けては種類は適当に十個ほど見繕う。三人の予定だと言うのに、この量はおかしいのかもしれないが、彼なりに「若い子も居ると聞いたことがありますし……多目に買っていった方がいいでしょう」と考えての事だった。
山道に関してを言うなら、下手な登山家よりも修験によって慣れている彼は一人だと言うのに困ることも迷うことも無く麓へ降りてきた。しかし、人目をひくような和装と竹刀袋に紙袋という少々妙な格好に対して、トンネルが崩落した事が原因なのか、その辺を通りかかった若い警官らしき人に声をかけられたが、「私、僧侶のはしくれでして、山で少々修験をしておりました。よろしければ、説法でもいかがでしょう?」と相変わらずのマイペースで微笑んでは相手の返答を待つ。当然、説法なんていう日が暮れるまで続きそうな話を警官が聞きたがる筈もなく、「そうですか。急いでるので聞けませんが頑張って下さいね。」と返してはどこかへ行ってしまう。当然の事ではあったが、それでも蓮は相手が残念だと心から思ってると信じてそうですか、貴方も頑張って下さいね、とほんの少し笑みを浮かべて警官を見送っていった。相変わらずのお人好しだ。

そのまま麓を歩いていくと、一つの木造平屋が目に入る。そこそこの年季を感じさせるその平屋には、釘が抜けてしまっているらしく斜めになってしまっていふが、偉く達筆に『万屋』と書かれた看板がある事からそういう事なのだろう。右の暖簾には、探偵の看板に似たような文言が連なった中に超常現象の4文字。私達と同じ事を為さっている方々なのでしょうか?

そんな中、メールが再び送られてくる。聞き覚えのないいくつかの名称と名前と捕縛命令……困りましたね。さっぱり分かりません。他の方々は何か知っているでしょうか?
そう思えば、行動に移る。その万屋の門扉の前へ行き、器用に片手で刀と鯛焼きの入った袋を持って律儀にも数回ノックをする。女児の声が聞こえない訳ではなかったが、盗み聞きは良くないとしてあまり気にする事はなかった。

「すみません、誰かいらっしゃいますか。私、対超常現象対策部の数珠丸こと条繕寺と申します。」

女児の声に普通に押し負けそうな程に慎ましい声量の割によく通る声で、中にいるであろう人へ呼び掛ける。既にGPSで中に二人が居ることは分かっていたので身分も明かしてしまう。相変わらずの正直さだった。

>万屋店内all

【タイミングを伺っていたら、なんとも妙なタイミングになってしまいましたが、よろしくお願いいたします!】

3ヶ月前 No.31

鈴音 @fallere825☆IZFOZv6wWeA ★Android=G6d1bqo4B5

【遠吠えトンネル→万屋『出づの目』/日曜日の夕方/常平 凡人】

 旅費が経費で落ちるのをいいことに、高い緑車両のいい席を予約しつつ電車を駆使してたどり着いた場所でこれまた経費が落ちるのをいいことにタクシーへ乗り込む。そろそろ蝉が鳴き始める季節。幽霊よりも熱中症の方が怖いなぁ、そうボヤきながら凡人は襟を伸ばしパタパタと胸元からクーラーの冷たい空気を服の中へ呼び込み、緩慢な動きでのんびりとギターケースの手前についた小さなポケットからスマホを取り出す。りー姉ぇの好みに会わせて薄水色のブックカバー型ケースに収まった支給品だ。スマホの地図アプリを開き指定の場所へ向かう。
 タクシーを降りてからの道中、お巡りさんに呼び止められバックを開くこと二回。ボランティアのおじさんに要約すると「生きてればいいことあるよ」と慰められ電話相談の名刺を貰うこと四回の道程を経て、そりゃもう到着予定時刻を大幅オーバーして到着した十彫トンネルを前にむしろこっちが吠えたくなる。

「ええー……?」

 盛大に崩落したトンネル。土砂崩れでもあったのだろうか。通行止めの看板が無惨にひしゃげて潰れていた。
 まさかこれを掘り返して幽霊退治とか言い出すのでは無かろうな、と頬が思わずひきつる。

「これも霊障だとしたら、ちょっとおれの手には負えないなあ……もうちょい、りー姉ぇみたいに慎まやかでいてほしい。って、りー姉ぇも結構なもんだったけど」

 木々の隙間の向こう側から覗く異形へ小さく冗談混じりに笑いかける。りー姉ぇの同意とも反論とも分からない聞くものを不快にさせるうめきが凡人の耳にだけ届いた。虫の音と、鳥の囀ずり、風が草を揺らす音だけがその場を満たしている。
 そのなかで、手の中にあるスマホからパシャリ、と無粋な音を発しつつ、崩落したトンネルの角度や位置を変えつつ何枚か写真をとり、上司へのメールへ添付し、送信。簡単に言えば『現場が崩落してたけどおれは無実です。後始末頑張って!』である。
 封鎖されてるとはいえトンネルひとつ盛大に崩落してるのだ。放置は、まずい。
 はー、と溜め息を吐き出しながら次は別のアプリを開く。GPSを開き同じく仕事に着いているらしい同僚の位置を確認。まさか潰れていないだろうな?という不安は杞憂だったらしい。二人は別の場所へ移動していた。そしてもう一人はトンネルの反対側だ。集合する方向を間違えていたことに漸く気付いてとてもいい天気の空を仰ぐ。あちゃー、である。

「あー、街を迂回しようか。悪いけどりー姉ぇ、歩くぞ。はぐれないでくれよ」

 雑草や木々をすり抜けてのっそりと這いずる異形を確認してから、凡人は再び来た道を戻る。目指すべきは反対側の山の麓。そんなに遠くないことがせめてもの救いだったが、やっぱり徒歩はきついから近場までタクシー呼ぼうとスマホの電話帳を開くのだった。

 そうして、反対の山の麓までタクシーに運んでもらったあと、徒歩で進むも日本特有の湿度が高い不快な暑さに耐えかね途中で購入したスポーツドリンクで喉を潤し歩くこと暫く。日が落ち始めていても暑さは相変わらずだ。歩きスマホで行儀が悪いと自覚しつつGPSの位置を確認して漸く目的地付近だ。自分を含めて四つの点が記されている場所。
 ギターケースを担ぎ直しつつ、空になったペットボトル片手に視線を上げる。数メートル先に竹刀袋を担いだ和服の男性がいた。スマホ画面を見て、もう一度顔を上げる。

「すげー、それっぽいやついたわ……りー姉ぇ、あの人だと思うか? 俺はそうだと思うけど違ったらめっちゃはずい」

 視界の端を這いずる彼女へ問い掛けつつ、気付かれないように足音を殺して彼のあとについていく。GPSが示す残り二人の場所へ確実に近付いていた。
 そうしてたどり着いたのは『万屋』の看板が目を引く木造平屋。とりあえず第一印象は胡散臭い。
 もしかして仕事終わって打ち上げでもしてるのだろうかと思ったがそんなことはなかった。
 開いた扉から溢れた悲痛な少女の叫びと、同時に響くスマホのメール着信音。慌てて開いたメールの文章に少しだけ目を見開いた。更に続いた青年の控えめな言葉に顔をあげた。

「え、ちょ……うちの組織非公表だから普通に名乗るの不味くないか数珠丸所持者さん……?」

 驚きのあまりちょっと震えた声で突っ込みを入れる。この胡散臭い響きを前にして真っ当な相手なら信じないだろうが、変な誤解を受けても困る。しかし吐いた唾は飲み込めない。
 仕方ないかなー、と諦念を胸に、そろっと条繕寺なる彼の後ろから凡人自身も自身のスマホを片手に顔を覗かせた。

「話の途中すいません。今メール受信した方に少々用があるんですが、皆さんお知り合いで?」

 うっすら聞こえた少女の話とメールのタイミングがあまりにも良くできていたのでもしかしてここにいる全員関係者か? なんて考えを抱きつつ、条繕寺と
同じく凡人もまた控え目に声を上げた。
>万屋all

【いい感じの入り方が浮かばず無理矢理感があって申し訳ありません。これからよろしくお願いします!】

3ヶ月前 No.32

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

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3ヶ月前 No.33

hati @sirusiru ★1hiL9KOZkm_UHY

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3ヶ月前 No.34

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

【万屋『出づの目』/日曜日の夕方/朝凪 時雨】



 差し出したハンカチで鼻水をかまれたのにはいささか驚いたが、嫌な思いはしていない。ハンカチではなくティッシュを出せばよかったかな、と思いながら今度は反対側のポケットからティッシュを取り出して渡す。
 それと同時に、冷静に考えれば例の隠し子発言はこっちの女の子に向けて言ったのではないか、と思い始める。時雨の見た目はどう若く見ても女子中学生かその程度だし、そんな年齢の隠し子が居たらこの男性は一体いつ結婚したのだろうか、ということになる。『いや、隠し子だから結婚しなくても良いのかな……あれ、だとしたら赤ちゃんってどこから来るんだろう、結婚したらできるんじゃないのかな』と今まで考えたこともない問題に直面したが今の状況には関係ないので忘れることにした。

 そんなことをしていたら、時雨をドナドナした方の男性が時雨たちを万屋に招待してくれた。この暑い中外で話をするのは今の時雨の体力では数十分後に倒れるのが目に見えているので男性の気遣いは物凄く助かった。とは言ってもいきなりお邪魔するのは、何と言うか申し訳ないと感じたので「す、すみません……お言葉に甘えてお邪魔します……」と謝ってから借りてきた子猫のように慎重に入った。


 それから数分後。和室に案内され、ご丁寧にカルピスまで出された(勿論何度もお礼を言った)時雨は、霊見鯛子と名乗った女の子の話を聞いて絶句していた。『先日遠吠トンネル行った後から母ちゃんの様子がおかしい』、『白野区に行ってきますと書いた置手紙』。もし本当ならば警察沙汰ではないか。それに『遠吠トンネル』と言う単語をこの女の子は確かに言った。遠吠トンネル、時雨の記憶が正しければあの崩落したトンネルではないか。


「け、警察に言った方が良いのでは……?もし何か事件に巻き込まれたりしてたら……その、なんて言うか、危ないと思うし……」


 周りの人達に目線を向けながら心配そうに提案する。あのトンネルに女の子のお母さんらしき女性はいなかった。そこに居たのは異形の霊のみ。失礼ではあるが、この万屋に相談しに来るよりはずっと信頼できるような気もする。いや、もしかしたら既に警察に頼ったものの手も足も出ないからこの万屋に来たのかもしれない。
 どうしたものかと視線を泳がせていると静寂を打ち破るように、時雨のスマホが通知音と共に振動する。まるでこの瞬間を待っていたかのようなタイミングだったが時雨はその音と振動にびっくりして体を少し跳ね上がらせた。何事かと内容を確認してみれば

 【霊見得代を捕縛せよ。奴は白野区に潜伏しており、霊に悪影響を及ぼす術式妖具『塵塚怪王』を所持している疑惑がある。対超常現象対策部の5人、総動員し事を成せ】

との事。意味も読みもよく分からない単語が多数表示されているので正直に言って意味は前半と後半しか理解できなかった。それでも事の重大さは何となく把握できた。なんていったってわざわざ個人の名前を載せて『捕縛せよ』、である。


「あ、あの……今こんなのが届いたんですけど……これって、さっき言ってた鯛子ちゃんのお母さんだよね?『じゅじゅつようぐ』『ちりづかかいおう』……?ってなんの事なんでしょうか」

 画面を見やすいように明るくしてから周囲に見せる。何も知らない他人にこれを見せるのもどうかと思うが、なんせあの怪物と戦闘した人達だ。時雨なんかよりも、よっぽど頼りになるだろう。

「……あ、そうだえっと、私は朝凪時雨って言います。その、実はこの『対超常現象対策部』ってところの人なんですけど……えっとですね、何か、偉い人から鯛子ちゃんのお母さんをほば……じゃなくて、えっと、見つけてくるように言われたっぽいです、はい」



 たどたどしく自己紹介と状況確認を兼ねて話すが、「実は」でも何でもなく最初に会った時に二人に聞こえるくらいの声量で言ってしまっているし、「捕縛」なんて言うと傷つくかと思って少し言葉を濁したが、その前に画面を見せてしまっているのでその意味は全く無い。
 一応自己紹介と言えるのか怪しい紹介を済ますと玄関からノックする音が聞こえてきた。来客だろうか、と思っていたら女性が応対しにいった。これからどうするかは大人の意見を窺った方が良いだろう、そう思い時雨は取りあえずスマホをテーブルの真ん中に置いた。



>>万屋ALL様

【メールの内容を見せて良いのか分かりませんが状況を確認するために一応見せました】

3ヶ月前 No.35

参加者募集中 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE


【万屋『出づの目』/日曜日の夕方/淡海 潮・霊見鯛子】


「今日は千客万来やなー。おじさんは廊下の方で陣取りするとすっか」

 よっこらせ、と膝に手を付けながら立ち上がる。新たに帳ちゃんが連れて来た来訪者2人分の湯呑みを持ってこようと台所へ歩を進める。その中で、鯛子は警察に相談という言葉にバンバンとテーブルを叩き反論する。

「けーさつはダメなんです! お母ちゃんはけーさつが大っ嫌いなんです!! もし何かあったら此処(万屋)を頼れって前言ってましたし!!」

 台所で湯飲みを更に2つ取り戻る最中に、鯛子の大きな声は聞こえた。
 “そういう生業”をしているから正義を謳う国家権力には関わりたくないのは分かる。しかし何でウチなのかな、と。マジで父ちゃん絡んでいるんじゃねーかと思いつつ、和室に戻る。
 持って来た湯飲みにカルピスと水を注ぎ2人に座るように促す。おじさん1人退いても六畳に6人か、結構一杯一杯やな。クーラー買う気は無かったが、こん状況が続くならば必要かも知れない。財源が無いが。
 自分は立ちっぱなしで再度席を離れる。廊下を通って、ある場所へ行き数分後――

「そぉい!!」

 大声と共に勢いよく障子を開ける。
 物事を整理し、理知的に考えるには人によりけりだが幾つかルールが存在する。
 潮の場合、情報を視覚化し書き連ねないと整理ができない。故にホワイトボードを押入れから引っ張り出し、更に服装を皺の付いた焦げ茶色のスーツに赤色の白色のストライプネクタイ、黒縁のメガネを掛け手には指示棒を持つ。まるで教師の風貌になる。アフロの教師など聞いたことも見たことも無いが。だが、既に額には汗が滲んでいる。雰囲気を出すのには体力が必要だ。
 廊下に佇むホワイトボードにキュッキュと音を鳴らしながらペンを奔らせて行く。

「ちょっち事情を纏めるぞい。ちゅうか、おじさんの自己紹介も済んでへんかったな」

 自身と帳の名を書いた後、丸く曲げた人差し指で軽くホワイトボードを叩く。

「おじさんの名前は淡海 潮。33歳独身。こん万屋の『出づの目』の店主やっとる、まぁ父ちゃんから受け継いだだけやがな。んで、説明あったか知らんが、そん子は従業員の帳ちゃん。花も花咲く20代のキャピキャピなお嬢ちゃんだ」

 語彙が古いような気がしたが知らない。イレーサーで文字を消して、また再度書いていく。

「えーまず鯛子ちゃん、鯛はおめでたいとかの鯛でいいのかな? 魚の奴」
「はい、そうです!」

 元気に頷く鯛子。興奮しているものの先ほどの泣き顔は見えない、カルピスも全部飲んでるしいい事だ。
 霊見鯛子と霊見得代の名前を書いていく中、提示されたスマホの画面を怪訝そうな表情を浮かべ覗く。鯛子には見せないよう、その内容を反芻し書き連ねていく。

「鯛子ちゃんのお母さん『霊見得代』さんがこの白野区にいるかも知れません。『霊見得代』さんを知らない方に説明ですが、テレビに良く出る霊能力者です。今日の昼ごろ、遠吠トンネルに行っている霊見先生が番組としてやってました」

 自称、を付けたくなったが自分のお母さんがペテン師だったと明言するのは忍びない。そして、彼女が母を信頼しきっているならば癇癪を起こしかねない。故に、間違いない言い方を行う。

「で、確認だけど4人は対超常現象対策部の方々……で合ってるよね? 朝凪ちゃん以外、出来れば自己紹介をお願いしたいな。一人は分からんが、他は分かり易く獲物を持っているみたいだ――」


『話は聞かせて貰った! 地球は滅亡する!!』

 突如、和室の天井内から響く女性の声。言葉の終わりと共に照明の横の天井が抜け、そこから見えるは逆さの女性の顔。
 ブロンドヘアーを下へ棚引かせ、碧い目に白い肌は外国人を髣髴させるが純潔の日本人。20歳を越えている容貌で、どことなく顔は狐に似ている。淡海改め万屋ご用達の探偵『狐ちゃん』である。本名不明。

 よっと一度顔を引っ込ませ、再度脚から降りようとする。その中で「飲み物持っててねー」と一言注意を促し、テーブル上に着地。

 スリーサイズはキュッキュッキュである。某農家兼アイドルグループがいたら「まな板にしようぜ!」と言われても過言では無い平たさである。全体的に薄い。総量的に軽い。そして小さい。白いYシャツの上に真っ黒のジャケットに同色のストレートパンツ、言うなればレディーススーツのセレクションの一種を着ているものの、身長145pきっかりなので余り映えはしない。

 伊達メガネをくいっと上げて、淡海は狐ちゃんに話す。

「そんなMMR読んだ人にしか分からないセリフ止めてくれる? んでそういう登場は実写版GINTAMAでやってくれないですかね狐ちゃん。アナタ狐でしょ、ゴリラじゃないよね?」

「映画化した少年漫画の万屋さんに感(かま)けて大々的に宣伝したい云々相談した貴方が言うかね。まぁ、いい。情報提供だ、虎振トンネルで怪異が起こってる。つい3日前から。大学の連中がヤンチャ出来なくて憤っている」

「虎振…………対超常現象対策部の方々、虎振トンネルの話は聞いたことある?」


>帳、朝凪、好口、条繕寺、常平


【勝手ながら条繕寺君と常平君も部屋の中に着いた体で話を進めさせていただきます。ご了承ください。虎振トンネルの事は知っていても知らなくても大丈夫です。また逆流王子様、大丈夫ですのでお気になさらず】

3ヶ月前 No.36

鈴音 @fallere825☆IZFOZv6wWeA ★Android=G6d1bqo4B5

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3ヶ月前 No.37

hati @sirusiru ★1hiL9KOZkm_UHY

【好口 棗 / 万屋『出づの目』 / 日曜夕方】

 カルピスを飲み終わるころに先ほどからその髪型はいったいどうなっているのだろう。あわよくば触ってみたいとぼんやり見ていた男性がホワイトボードを持ち出し今回の物事を整理しにかかっていた(出で立ちが教師風になったのは形から入るタイプなのだろうか)。好口もあまり物事を頭の中で順序だてるのは得意な方ではないためありがたい。
 アフロの潮さんに今回の依頼主になるのであろう鯛子ちゃん。……と天上から飛び出てきた女性。そんな忍者のような登場……。そして後から来た凡人くん。と、あと数名。まあ今回名前を果たして全員分覚えられるかなと首をひねりながら好口も流れにあやかり手を伸ばすと自己紹介をする。

「えーと、はーい。『対超常現象対策部』から『三日月』貰ってる好口棗(こうくち なつめ)でーす。そこの可愛い女の子に連れられて来ましたー。気軽に棗って呼んでねー。カルピス美味しかったです!」

 なんたる適当な自己紹介か。いや、対超常現象対策部所属なのと刀の種別を述べているためセーフか。
 やはり各々の名前を覚える気力がなさそうなゆるりとした所作で全員の顔を見渡す。

「虎振トンネル……俺は知らないかなぁ。……なんだなんだ、常平さん。自分だけ仲間外れになるかと気にしてるのかー? 【対超常現象対策部の5人、総動員し事を成せ】。なんだから俺らが乗らない事はないよー」

 ね、そうでしょ? と淡海へにんまりと笑いながら首をかしげて見せる。
 いや、その前に年上とも年下とも分からない相手に敬語もなしにいつもの調子でからむのも如何なものかと思うがそれが好口。ご了承願いたい。
 その後もじっとしていられないのかと、ゆらゆらと体を左右に揺らしては会話の続きを待つように口は閉じたまま各々を見る。その間も刀には触れているあたり、今回は少しいつもと状況が違う分浮足立っているのかもしれない。

>>万屋ALL

3ヶ月前 No.38

雪鹿 @salt9140 ★Android=42zyboh5vZ

【万屋『出づの目』/日曜日夕方/条繕寺 蓮】

不意に話し掛けられては、釣られてそちらを向くと見上げるような形になる男性が居た。不摂生をしていないか心配になってしまう程の肌色や隈が気になってしまったが、これは後でさりげに聞いておきましょう。なにせ、それよりも優先しなければならない話がありますから。

「何方か存じませんが、確かに迂闊でしたね。てっきり、中に居るのは彼の御二人と少女だけかと思っていましたものですから……指摘して頂いてありがとうございます。」

相変わらず笑みを浮かべる時と同じような風に目を細めたまま、正にうっかりしていた、といった顔をしたかと思えば、軽く頭を下げて相手にきっちりと指摘の礼を告げる。規範を忘れていた訳ではないが、確かにこのような年季の入った木造平屋だとしても、人が居ないとは限りませんものね。次からは気を付けるように致しましょう。 職務質問された時の嘘は教えて頂いたので誤魔化せるようにはなりましたが、まだ細かいところは未熟者ということですね。
とはいえ、仏に仕える者であるがゆえに、嘘が苦手な彼は言及されればついぞ答えてしまう危なっかしさがあることに全くもって違いがないが、それはまた別の話だろうか。

そして、その男性が門扉の向こう側へ呼び掛ける言葉を聞いて成る程、と感心していると、足音が一つ聞こえてきて扉が開いて一人の華奢で肌の色素こそ薄いものの、健康そうな女性が現れた。爪などを見る限り、女性らしいと言うべきでしょうか?俗世間に疎い私では、こういう時に何と言い表したら良いのか分かりませんが……少なくとも、そうは感じました。

「ええ、そのために此処に来たのですから。では、失礼させて頂きますね。沢紫陽花さん。」

細めた目をそのままにして右手に錫杖のようにして持った竹刀袋と数珠の巻いてある左手に鯛焼き屋の袋を持った彼は、玄関で鯛焼き屋の袋を置いてから、やたら丁寧な所作で音一つ立てずに靴を脱いで白い足袋の状態で失礼した。無論、袋は持ち直した。
寺では靴を脱ぎ捨てれば叱られたものであったために、どうにもそれが身に付いてしまっているらしく、どんなに急いでいてもこれだけはしっかりとしている。尤も、彼が急いだところで、普段と大差ないかもしれないが。

そのまま沢紫陽花と背の高い男性に着いて行くと、数名の方が居た。竹刀袋を手近に置いているお二方がそうなのでしょうが、残りの男性と少女は一体何者でしょうか?三人家族にしては歳が合いませんし、顔立ちも違うように見受けられます。そんな中、一人の男性が立ち上がっては湯呑みにカルピスを淹れて持ってきてくださった。

「ありがとうございます。よろしければこれ、皆さんで食べてください。私は道中で食べましたのでご心配なく。」

軽くやんわりと頭を下げて慎ましやかに礼を告げれば、今の今まで持っていた色々な味の鯛焼きの入った紙袋を机の上に乗せた。此処に来る途中で買ったものなので流石に多少は冷めてしまっているが、ある程度は温度が残っているだろう。一応、十個ほど買っておいて良かったですね……人数分買っていたら、自分で食べるしか無かったですものね。

既にこの場に四人の方がいらっしゃいますが、残り一人はまだ着いていないのでしょうね。とすると、私達四人で霊見さんを捕縛する事になりますが……如何せん気が進みません。他の方を傷付けるなんて、私にはとても……和解の道を模索出来たらいいのですが。

「私は、条繕寺 蓮と申します。五条大橋の条に繕う寺と書いて条繕寺、蓮は睡蓮の方です。虎振トンネルは知りませんね……お力になれず、申し訳ありません。」

相変わらず微笑んだ表情のままに自己紹介をする方々に続くようにして名前だけは告げておいて、議題の一つである虎振トンネルについての返答もしておく。未だに携帯の使い方がよく分かっていない彼なので、目的地の情報は中々調べたりしない。尤も、時間さえあるのなら本でも買って調べればいいのかもしれないが、そんな事をしている暇があれば、霊を早く救ってあげたい。そういう気持ちがついぞ先走ってしまう。

「私達と鯛子さんの御母様を探すという目的は同じようですね……彼の言うとおり、私達も是非協力させてくださいませんか?」

微笑んだままにも関わらず、言葉は真剣みを帯びていた。困ってる少女を前にしては、人を傷付けない事も信念の一つだとする彼としてもやむなしと考え直したようだ。だとしても、最初は説得から入るのであろうが。

>淡海 潮様、霊見 鯛子様、沢紫陽花 帳様、常平 凡人様、朝凪 時雨様、好口 棗様

3ヶ月前 No.39

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

【 沢紫陽花帳 / 万屋『出づの目』 / 日曜日のお昼過ぎ 】

 常平凡人と名乗った男性と条繕寺蓮と名乗った美青年を特に何事も無く室内へと送り届け、元いた場所に座るとカルピスで喉を潤す。部屋が暑いのにカルピスが冷たいから、コップが結露で凄まじい量の水滴を纏っている。びしょびしょの濡れ濡れだ。鯛子の主張が白熱するのを見守りながら、手の平で無駄にコップの水滴をきゅきゅっと拭ってみる。拭いた傍からその上の水滴が下方に伝ってくるだけで、大して意味の無い行動だ。帳とて何かしらの結果を求めてこの行為をしているのではなく、単なる暇潰しでしかない。
 数分席を空けたかと思えばエセ教師風のコスプレで戻ってきた潮。それなりの年数彼と共に暮らしてきた帳には慣れた奇行だが、傍目にはどう映るのだろうか。偏見で申し訳ないがここにいる面子は多かれ少なかれ全員変人の匂いがするし、案外一人として気にしていない可能性もある。ホワイトボードに書き込まれていく情報にざっと目を通してみた。潮に20代のキャピキャピなお嬢ちゃんと紹介されたシーンでは、緩い笑顔のままダブルピースをして「いえーい」なんて言っておく。淡々としたいえーいだ。キャピキャピ感をアピールするならもうちょっとテンションを上げておいたほうが良かった。まあ、済んだことは仕方がない。テンションの高いいえーいはまたの機会に取っておくとしよう。

「わー、お久しぶりですー」

 和室の天井からいきなり現れた馴染の女性にまたしても緩い笑顔でひらひらと手を振る。狐ちゃんと呼ばれた彼女との付き合いの長さは、潮ほどではないとはいえ帳もそれなりだ。今更天井から現れられたくらいで驚きはしない。前回お会いした時は床下収納から飛び出してきたし。飲み物は自分の分だけでなく手の届く範囲にいる人の分も押さえておいた。ちなみに帳は実写版のシルバーでソウルな作品をまだ観に行っていない。近場のイオンは毎週水曜日と毎月1日に安くなるので、来月辺りに観に行く予定だ。

「とりあえずー、皆で行く感じで決定ですかー? タクシーとか呼びますー?」

 さっき外から帰ってきたばかりだというのに、この暑さの中で再び外出してさらにトンネルまで足を運ぶというのは中々気疲れしそうだ。それならせめて、道中の足くらいは用意しておきたい。帳はバイクの免許なら持っているが車も車の免許も持っていないので運転して行くことはできないし、この怪しい集団で電車やバスに乗り込んで周りからヒソヒソされたりツイッターに目撃談をアップされたりするくらいなら、タクシーのほうが精神的にも肉体的にも随分と楽なはず。お財布には優しくないが、そこはまあ、背に腹は代えられない。こんなに暑ければ財布の紐は嫌でも緩む。
 けれどさすがに全員分の代金をタクシーの運転手に払って「お姉さんの奢りですよー」とできるほどの金銭的余裕は無いので、できればお財布の温かい方にはタクシー代を自腹で払って頂きたいところだ。というか本音を言うと、彼らの所属する組織みたいなものに経費があるなら自分と潮の分のタクシー代もついでに出して欲しいとさえ思っている。こちとら部屋にクーラーも買えないほど金銭的に困窮しているのだ。帳の場合はいつもの変わったバイトシリーズを網羅して稼げばどうにかなるが、いつの世も人は他人の金でタクシーに乗りたいし他人の金で焼肉が喰いたい。

>淡海潮様&朝凪時雨様&好口棗様&霊見鯛子様&条繕寺蓮様&常平凡人様&ALL様

3ヶ月前 No.40

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3ヶ月前 No.41

雪鹿 @salt9140 ★Android=42zyboh5vZ

【万屋『出づの目』/日曜日夕方/条繕寺 蓮】

話を粛々と聞いていると話は粗方ではあったが、理解は出来る……なにやら、本当に良からぬ事が起きているようですね。私は若輩者ではありますから、そこまで経験があるわけではありませんが、霊によってそこまで強く生身の人間が動かされてしまうだなんて、そうそうある話ではありません。御母様がそのような事態に巻き込まれては……さぞ、辛かったでしょうね。

「人工的な霊……ですか。」

淡海の話を聞けば、 苦々しそうにそれだけを口に出す。死者への冒涜でしかないそれに対して憤りを覚えてはいたものの、それでも怒りに捕らわれる事は無い彼はそれよりも強い苦痛を感じるのみであった。もっと自分に力があれば、救えたかも知れないというのに。そう思っては、ついぞ自責の念を背負い、ただ引き摺ってしまう。無意味だと知りながら、無茶な事だと分かりながら。
何にせよ、普段は仕事に少し消極的な彼のモチベーションには丁度良かったのかもしれない。傷付けたくはないが、そうしなければならないという事が無いわけではない。綺麗事だけで衆生救済だなんて出来るわけがないのだから、こうして嫌な出来事もすべからく受け止めていかなくてはならないのだ。

「らっきぃすけべとやらはよく分かりませんが、そうした方がいいのであれば、そうしましょうか。地縛霊でも無さそうですし、反対側から逃げられても困りますから……ただ、御二人はそれで構いませんか?」

提案を聞いては、目を細めたままにきょとんとした表情で小首を僅かに傾けて「らっきぃすけべ」という未知の単語に疑問符を浮かべてはいたが、取り敢えずは賛同したものの、人数的に少なくなるであろう女性陣の方を向けば確認を取るようにそう言った。なにせ、五人が揃って召集されたのだ。そう簡単な相手ではない、と言うことだろう。
自分にしたって強くはないが、少なくとも戦えるであろう二人が居るのだから、そこまでの恐怖感があるわけではない。かといって油断は大敵ですから、注意はしないといけないですね。

「確かに援助こそされていますが、国民の皆様から承ったお金です。必要な時以外は決して無駄遣いはしていませんよ……しかし、今回は急務ですから。仕方ありません、私は先に出てタクシーを待っていますね。」

相変わらず頭のお堅い彼は目を細めたままに微笑みながら、一種の釈明のような言葉を述べて納得したようにやたらと御守りの付いている藍色のがま口財布から五千円札を二枚取り出して竹刀袋を手に取り、タクシーを待ち構える事にした。
彼の場合、給料として本来得るべきお金まで仏閣などに寄付してしまうので、無駄遣い以前の問題ではあるが、人助けにはお金なんて惜しまないのだろう。 だからといって、他人の借金を肩代わりだけをしたりだなんてしないが。

「御母様をきっと、救ってみせます。なので、いい子にして待っていてくださいね。」

霊見 鯛子と呼ばれた少女に目線を合わせて優しげに微笑んでそう告げては、立ち上がって玄関へと踵を返した。そうして彼は、刀の入った竹刀袋を持って外へ出るために歩いていった。

> 淡海 潮様、霊見 鯛子様、沢紫陽花 帳様、常平 凡人様、朝凪 時雨様、好口 棗様

3ヶ月前 No.42

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★Ywte4t2Nfq_m8y

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※警告に同意して書きこまれました (性的な表現)
3ヶ月前 No.43

逆流王子 @mischief ★cjMytOmAWm_yFt

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3ヶ月前 No.44

唐紅 @karakure ★WfkdFvXBLL_mgE

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2ヶ月前 No.45

雪鹿 @salt9140 ★Android=42zyboh5vZ

【条繕寺 蓮/夕暮れ/虎振トンネル東側】

かくかくしかじか、あれより時間が少し経過して虎振トンネルへとやって来た。事前の打ち合わせ通りに男女で別れて東と西の両方から入ることになったのですが―――

「確かに、妙ですね。何かあったのでしょうか?」

一向に女性陣と巡り会わない。むしろ、足が早ければ、あるいは走っていれば既に通り抜けていても可笑しくない時間が経過しているというのに、それでも会わないとなれば、近くにいた淡海さんの言うとおりと言えましょうか。
周りに歩幅も歩調も合わせて居るとはいえ、そこまで遅くはない。怪奇現象が起きたわけでもない。なのに、こうも長い時間会わないことになるとは……。懐中電灯に照らされたその道は暗くなってしまっていかにも怪談が似合いそうであった。
その思考を切り裂くように響く女性のものとおぼしき悲鳴。彼は開いていない目の色を変えて、懐中電灯を持って先頭を歩いているであろう淡海の隣へと歩みを進めてひょこっと顔を出す。

「もしや、お二人に何かあったのかもしれません。一刻も早く向かいましょう。」

冷静を保ち直した彼であったが、確認を取るように淡海へそう声を荒げるでもなく粛々と告げると悲鳴の方へと早速向かおうとしていた。彼の中では、幽霊ですら救いの対象だと言うのだから、仮にこれが霊の罠だったとしても甘んじて受けるつもりなのだろう。それくらいに見境のない上に躊躇いのない行動であった。
内心では、淡海に声を掛ける手間も惜しかったが、それでも懐中電灯が無ければ歩くのが厳しくなってきた日の頃合いであったためにこうして声を掛けた。これだから、毎度毎度怪我を負うのだ。罠と知っていながら、それを信じるのだから、怪我を負っても当然だろう。この心配が杞憂だと良いのですが……どうか、悲鳴の君よ。御無事でいてくださいね。

>淡海 潮様、男性陣all

2ヶ月前 No.46
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