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Re:Goodbye My Buddies!!

 ( オリジナルなりきり )
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前世/探索/恋愛/殺伐 @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★mbjMynBHF3_OSy



×××



 ――――銃声。悲鳴。死体。嗚咽。血潮と薬莢があちこちに散らばる真夜中の路地裏。うっすらと月明りに照らされ、見知らぬ誰かが誰かの死に泣いているのが浮かび上がる。見知らぬ誰かが激昂して拳銃を突きつける様子が明らかになる。其処に居るのは、まったく知らない、赤の他人のはずなのに胸が痛くて苦しくて寂しいのは何故だろう。
 一度に大量の情報が頭の中に流れ込んできて、キャパオーバーを起こした脳がずきずきと悲鳴を上げ、ひゅうひゅうと喉が不可解な音を立てた。

 これは、なんだ。ふらつく視界の端に、やわらかく揺れる白衣が映り込む。その人影は、こちらの表情を覗き込むと酷く愉しそうに、笑った。


「――――いかがです? ひとさじのおくすりと、ちょっとした音波で過去の記憶など容易く呼び戻されてしまうのです。」


 まったく身に覚えのない、しかしひどく懐かしい記憶の奔流に意識が霞む。「かえして」と小さくかすれた言葉が口の端から零れ出た。
 その言葉が過去に向けられたものなのか、現在に向けられたものなのか。きっと誰にもわからない。






「まだ、まだですよ。あなたさまがたには、思い出してほしいことがたくさんあるのです。」


 ――――ひどくやさしい声で研究者は笑い、新たな薬剤を血管に差し入れた。



×××





【閲覧ありがとうございます。サブ記事へどうぞ。】

メモ2017/09/16 20:59 : スレ主☆d.mPOva7Vfg @yupihiko★mbjMynBHF3_OSy
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酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_OzI

【エドワード・ディルー/ランドリー→自室】

軽やかなアナウンスメロディがエドワードの眠気を少しだけ覚ます。そしてランドリーに据え付けられたモニターに映像が映し出される。モニターの中の空間にはマキナが随分と寂しい誕生日会の様な雰囲気の中、歌い始める。エドワードはその様子を見ながら顎が外れそうな程、あくびを出し呆れる。

「暇なら余計な事しないで欲しいんだけど。こっちは眠いって言うのにさ……」

そして自分で包装を巻いたであろうプレゼントを自分で破り、一台の黒いタブレット端末をモニターに見せる。そしてタブレット端末の画面を操作してモニターに見せたのは≪実験及び被験体の記録≫であった。タブレット端末は自分の部屋にあったのは気付いていたが操作は一切していない。そして聞いている内にどうやらプレゼントはパスワードの中に入っている前世の記憶に関連している事らしい。そしてマキナの説明によると、他人の記憶にずけずけと土足で踏み込むか他人に見られたらまずい記憶データに鍵をかけるか【覗く】か【護る】を選択しろとの事。正直言えば他人の記憶を見ても自分の記憶を見られてもどうでも良い。返事を出す必要も無いと考えるが、自分だけ返事を出していない為に他の十七人に迷惑をかけるのは御免だ。等と考え、面倒そうに真っ白なシーツを洗濯機から出し長い間座っていた為、身体をゆっくり動かしながら自室に戻る。自室に戻ったエドワードはタブレット端末を手に取りシーツを乱雑に広げベッドに潜り込む。横になると直ぐに眠ってしまう為、とりあえずパスワードを解除して選択だけ眠らない様に意識を行いながら操作を素早く始める。

「此処にはコインが無いんだよね……」

そう言って、起き上がりながらYシャツのボタンを引き千切りコイントスを行う。よく跳ねるボタンは思わぬ方向へ飛ぶが上手く手の甲に押さえ付ける。千切れた糸が穴から出ている裏なら【覗く】、千切れた糸が穴に入っている表なら【護る】。そして4の数字の上に乗っていたボタンは――

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.40

ナハシュ @september9☆l2RtaxPLX0X6 ★gXyGHSaxw7_M0e

【ナハシュ・トラウム/自室】

 扉を開けて駆け寄ってきてくれたアンジェリーナの姿を見たナハシュは、ほっと胸を撫で下ろした。屈んで目線を合わせ、背中をさすってくれるアンジェリーナの手の温かさを感じながら、彼女の「大丈夫だから」という言葉にそっと頷く。そのまま彼女の肩口に頭を預け、母に縋る子供のように背中を丸めた。ナハシュの感じていた形容し難い感情が、震えの現況であったその恐れが、徐々に小さくなっていくのを感じる。
 治療の道具を取ってくる間、一人で待っていられるかと尋ねられれば、少し考えた後にこくりと頷いた。

「アンが来てくれたから、だいじょうぶ。待っていられる」

 そうは言ったものの、まだ完全に不安が消え去ったわけではない。やや不安げに、ナハシュは笑った。先程まで頭の中を支配していたあの感覚が消えていくのと同時に、他の感覚が鮮明になってくる。ぶつけた肩の痛みが、徐々に強くなっていくのがわかる。こういった痛みや怪我には慣れてはいるものの、日常生活を送る上で不便なことに変わりはない。
 やってしまったなと思いながら、とりあえず床から身を起こそうと身体を動かした刹那、軽快なチャイムの音が耳に届いた。
 反射的に肩をびくりと震わせ、アンジェリーナの方へ再び身を寄せる。予期していなかった音と、突如電源のついたモニターの方を不安げに見つめながら、アンジェリーナの服をぎゅうと掴む。
 そこに映る、ナハシュを此処へ連れてきた張本人であるマキナの姿を見、ナハシュは思わず固く身構えた。彼が口ずさむハッピー・バースデイの歌と、画面の中で繰り広げられる愉快な、たったひとりの誕生日パーティ。ナハシュは自然と、まだ彼の家族が皆揃っていた頃の事を思い出していた。

「――あ」

 モニターの下の白い壁。其処に、ストロボが焚かれるようにかくかくと、黒髪を揺らす母と、そこに寄り添う父の姿が現れた。――ああ、今駆け寄ってきたのは妹のニアムだ。後ろ姿で顔が見えないけれど、あのおさげはきっとそう。ニアムの手をとった母が、父と共にゆっくりと歩き出すのがはっきりと見える。白い壁の中に、三人の姿が溶けて消えていく。ナハシュから遠ざかるように、段々と小さくなる背中の方へ、父と母と、妹のいるその壁の方へ。ナハシュは自然と身を乗り出す。

「――待って!」

 手を伸ばした刹那、右肩に痛みが走る。う、と声を漏らして思わず目を瞑り、再び開けたときにはもう、家族の幻影は完全に消えていた。そこにあるのは、ただの白い壁で。ぼんやりとするナハシュの耳に、マキナの声が聞こえる。「一度しか教えませんから」という言葉を聞けば、反射的に顔をモニターの方へと向けた。マキナの白い指が、踊るようにタブレットのテキストボックスをタップしている。「A」「D」「O」「L」「F」「O」の6つの記号が、ぼんやりとした脳内にやけにはっきりと飛び込んできた。
 あの薄い板みたいな道具はこう使うのか、とどこか他人事のように感心していると、続いてマキナの言葉が、半ば放心していたナハシュの脳内へ容赦なく洪水のように流れ込んでくる。
 他人の前世の記憶を覗き見るか、自分の記憶を護るか。二つの選択肢が今、ナハシュへと与えられた。
 ぷつり、とモニターの映像が終わるのと同時に、ナハシュはアンの方へと顔を向ける。困惑の表情を浮かべながら、彼は口を開いた。

「……アン、おれ、どうしよう……?」

>アンジェリーナ、おーる【お返事が遅れてすみません; イベントレスとさせて頂きます】

1ヶ月前 No.41

なかの @dolce0105☆EIJm993bXx5T ★Android=8lNXrRa8U4

【ハロー・ヴァッキーレミー/廊下】

 ティアの喉からは至極愉快そうな笑い声が零れてくる。しかし、相も変わらず彼の表情とは噛み合っていなかった。時折の瞬きでハローの視界はコンマ秒分遮断される。闇と表現することすらおこがましい、瞬くような闇が明けた後、眼前に写るのが無表情の青年だとはホワイト・セルに来る前のハローならば考えつきもしなかっただろう。その人形のような柔らかい髪も相まって、ティアからはどこか神秘的な……言うなればドールじみた印象を受ける。

「ええ、そうね。確かにあなたのセンスはかなり飛んでて常人には追いつかないかもしれない!……勿論良い意味でよ?」

 そう言ってハローはころころと笑っていた。その時、ティアが特に脈略無く首を傾げる。何か気にかかることでもあったのだろうかと彼女も連られて同じような動作をした。結果的に仕草を追いかけて真似するような形になってしまう。今、ティアとハローの世界は共通して僅かn度に傾いているのだろうか。
 述べるまでもないことだが、ティアの表情から何を考えているのかは読み取ることが出来ない。まあ、特に今詮索することでもないのだろう。一先ずそのように先程のちょっとした疑問を心に封じ込めてハローは気を取り直すように指を鳴らす。丁度ティア、彼も暇を持て余しているようではないか。正にあてのない冒険へ踏み出そうとしているティアにハローは同行の意志を示さんとする。

「そう。じゃあ一つ、私から提案させてもらってもいいかしら?」

 ティア、私と最高の時間を過ごす気は無い?
 悪戯っぽく、それでいて僅かな茶目っ気を含んだウインクを彼に投げる。


 その時だった。


 ――底抜けに明るいメロディ、色彩溢れる装飾セット、『とくべつ』で『しあわせ』を象徴するようなパーティーグッズ、おまけにマキナが運んできたのは……18本、丁度被験体の人数分のろうそく立てられたケーキ。視覚と聴覚が一気にモニターに引き寄せられたのも仕方の無いことだった。つらつらとマキナは言葉を並べていく。正直、その前説にすら苛立ちを覚えてしまう。だが、ハローは黙って耳を傾ける。箱から解放されるための術だった。生きるための術だった。
 マキナは『プレゼント』を取り出す。見覚えのある端末に彼女はやや目を見開いた。どうにかこうにかしようとも、ロックに阻まれ手掛かりを得ることが出来なかった機械。かの研究員の話を信じるならば今、その一部の機能が使用可能になるらしい。ADOLFO、ADOLFO……忘れないようにそう数度頭の中で唱える。
 マキナの説明を聞いている内に、いつの間にやらハローの苛立ちは消え失せていた。その代わりに言い様のない気持ち悪さ、言い換えるならば不快感がごぽりと泡のように浮かび上がってくる。覗く、もしくは護る。何をだ、前世か。前世なんて、本当にあるのか。二階を解放するという言葉が甘美なのは真実だ。もしかしたらそこに新たな手掛かりがあるかもしれない。しかしそこに辿り着くまでの手段に戸惑いを覚えないと言えば嘘だった。

 モニターの映像は途切れ、マキナの姿も見えなくなる。廊下にはティアとハローの二人が残された。ハローは後ろ手に持っていたタブレットをゆっくりと取り出す。妙に用意が良い自分に、自嘲じみた乾いた笑いが出た。生唾を飲み込む。強気な笑みを携えて、彼女はティアに向き直った。

「……Shit! 言い直すわ、ティア。どうも最悪な時間を過ごすことになりそうよ」

 自慢になるかはともかく、ハロー・ヴァッキーレミーは意志が強い。同時に自分がどうしたいかを判断する力、そして決断力は人並み以上にあるつもりである。今回も例に漏れず、彼女の腹は既に決まっていた。shit、思わず零れでる言葉と共にハローはそのタブレットをティアにかかげる。「あなたはどうするつもり?」そう言葉には出さなかったものの、彼女の仕草にはそんな意思が込められていた。スリープモードを解除していないタブレットの液晶は暗く塗られている。そこに、ティアの顔が反射していた。

>>ティア、All

1ヶ月前 No.42

詠琉 @clock☆VeghuuvPddk ★XtbO1Ncf0q_M0e

【カミーユ・ハルトマン/→エドワードの部屋】

 倉庫の物色も終わり、目的のものを腕に抱え自室へ戻ろうとする道中、“其れ”は何の前触れもなく始まった。

「――ほう?」

 黒から一転し白い部屋を映し出すモニター。不気味なほど賑やかな装飾にひどく御機嫌な一人の姿。愉快なラジオのように道化めかして仰々しく、しかし手際よく進行される“プレゼント”の説明を聞き、カミーユは静かに眉を上げた。
 再び画面が暗くなると、カミーユは心なしか急いた足取りで移動を再開した。足早に廊下を進み、両手が塞がっていたため肘で強引に扉を開いて、自室の中に入る。抱えていた物は一瞬迷ってから小さなテーブルの上に置いて、それらには目もくれずに棚の前へ向かった。どうやら完全に興味を別の物に吸い取られてしまったらしい。
 棚に置いてあった端末をおもむろに手に取り、その場で眺め始める。初日にも一通り機能を調べてはいたが、その時よりもずっと綿密で、骨董品を吟味する鑑定士のように熱心な様子である。やがて映像でマキナがタッチしていたのと同じアイコンに触れると、指示されたパスワードを入力した。瞬間、画面が切り替わり、表示された二つの選択肢に目を細める。暫し黙考し――しかしどちらも選ぶ事なくアプリを一旦終了させると、カミーユは端末を手に自室を出て行った。代わりに適当な個室の前で足を止めると、

「すまない、誰かいるかね? 聞きたい事があるんだが」

 扉越しに、居るかも分からない部屋の主に向けて声をかける。少し待って、応答が無いようであれば部屋に戻ろう。心の中で考えながら、カミーユは返事を待った。

>>エドワード様

【移動が遅れてしまい申し訳ございませんでした。エドワード様、よろしければ暫しお付き合いくださいませ】

1ヶ月前 No.43

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_FWA

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1ヶ月前 No.44

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【アンフィニー・ウロボロス/バスルーム】

結局、隅々を探したバスルームから出口に通じ得る手掛かりらしきものは見つからなかった。ただ、職業病ともいうべき賤しい手つきで片手間に施設を物色しながら、背中にシェリーの何処か諦めにも似た冷静な弁明を受けていた。手を組むというのは、守れということじゃない。……此方が煩わしいと思っていた責任感を見透かして重荷を払うように少女は言う。御荷物になった時は容赦なく自分を見捨てて構わない、なんて、如何してそんな寂しい事を言えるのだろう。普通の子供ならそんなことは言わない。
(良いだろう、その時は思いっきり見捨ててやる!)
アンフィニーはこれ以上良心が乗り移る前に、しっかりと心に決意した。そうでもしなければ揺らいでしまうに違いない。それは駄目だと思った。どんな非道な手を使おうと、自分だけでも自由を取り戻さなくてはならないのだから。

シャワーカーテンの裏表を調べてからレールの上に手を掛けていると、シェリーに提示していた選択肢に対する答えが返ってきた。やはり、研究にも比較的逆らわず協力的態度を取っていた彼女は大人しく『前世とやらを模索する』のが得策という考えなのか……予想はしていたが、論理的に諭すような年下の少女の言葉に「鼠で悪かったな。稼業なもんでね」と仏頂面で横槍を入れながら続きを待つ。するとシェリーの言葉の代わりに続いたのは天井からのアナウンス音だった。
待っていましたと言わんばかりの表情のシェリーとは対照的に、邪魔をされて不機嫌といった表情でモニターを睨み付けるように視線を映すアンフィニー。勿論此方の表情など当然のように無視して、モニターの中の科学者マキナは今日も楽しそうに小芝居をうっている。
(なんだ今回はバースデーか。バースデーソングなんて聞いたのはいつ以来だろう。そんなことより、あのタブレット……)
前座余興のような演出などまるで気にも留めない様子でそれよりも『プレゼント』という獲物に思考は食いついていく。モニターからマキナの姿が消えると、早速シェリーの方へ向き直り話の続きをしようとして、彼女が肩を震わせて笑っていることに気付く。思わず声を掛けるのを躊躇う。
「…………(今の何か面白かったか!?)」
アンフィニーが呆気に取られて黙っていると、バスルームになんとも言えない笑い声が反響した。一体何が彼女のツボに入ったのかさっぱり理解できないまま、無言で笑いの波が過ぎ去るのを待つ。
暫くして漸く波が引いたのか、いつもの淡々とした調子の物言いに戻って、先程のマキナの残した胡散臭いことこの上ない『プレゼント』を彼女なりに分析しはじめた。

「……おい大丈夫か? ……ADOLFO、ってのは? なんだ、狼? 人の名前か? 自分以外の人の前世の記憶……それを態々他人共に配って回るってんなら、此処に集められた18人の前世は繋がっている可能性が高いんじゃないか。護るという選択肢があるということはその繋がりは良い終わり方をした関係では無い可能性があるな。ADOLFOという人物に関係しているとか、或いはADOLFOという組織でもあって所属していたか。いや、或いはアナグラム……?」

ブツブツと推論を唱え始めたシェリーの隣でいつの間にかつられる様な形でアンフィニーも同じ顎に手を充てる体勢になってブツブツと思い付くままに呟きを零す。軈て右に倣って壁に背を預け、背の高いものと低いもの二つの影が奇妙にバスルームの壁に張り付く光景が出来上がる。考えたところでわからない。ただ、分かってきたこともある。手掛かりを多く集めればパズルのように自分の前世の立ち位置が見える可能性があること。しかしもしもその前世が例えば誰かの前世との間に対立関係や為害性があった場合、自分の前世が知れることで不利益を被る可能性があること。最もリスクが少なそうな方法とは……。
黒いマスクの上の冴えた瞳の上で、眉間に皺が刻まれていく。神経を尖らせて考え込んでいたアンフィニーは、不意に自分に向けられたシェリーの言葉で我に返る。『どうするつもりなんだい?』と。その頃には、彼の中での答えは出ていた。此方を見上げてくる少女の口元は何処か余裕すら感じられるほど静かな笑みが浮かんでいた。ふん、と鼻を鳴らすと張り詰めた緊張を解いて、背を壁から離してシェリーの前を通り過ぎ、先程自分がバスタオルを投げた廊下を盗み見るように指し示した。廊下には何人かの話し声が聞こえている。

「今の放送によれば一人一人に割り当てられたどのタブレットのパスワードは全て同じだ。ーーこれで、俺がどうするつもりか、わかったか?」

廊下からは見えないよう物陰に隠れるようにして様子を伺っていれば、先程のアナウンスを受けて自室にタブレットを操作しに出入りする人物が必ず現れる。真白い廊下に浮かび上がるように映えて、自分の部屋に戻っていく男の姿がある。被験者ナンバー5、カミーユ・ハルトマンだ。おそらくあのアナウンスを聞いてタブレットを操作しようと部屋に戻ったのだろう。
触ることさえできれば、共通のコードでどの端末からも【覗く】ができて元の持ち主が得たのと同じ情報を得られてしまう。【護る】を元の持ち主が先に選択していない限りは、であるが。パスワードは共通である……今の言葉で、シェリーにもその意図が伝わっただろうか。
得意技の要領で気配を圧し殺し、廊下を見張り続ける。シェリーにも状況を理解してもらうために廊下の様子を見せつつも、堅気の人間の子供であろう彼女がうっかり見つかってしまうほど前へ出ることが無いように、自分の身体の影に庇うように隠しながら、自らの唇の前に人差し指を立てる。
暫くして、カミーユの部屋の扉が再び開き、部屋の主は廊下へと出てくる。手にはタブレットを持っている。それを持って、別の部屋の扉を叩いている。アンフィニーは小さく舌打ちした。
見つからないように顔を引っ込めると、シェリーに向き直り、声を潜めて続きを囁く。

「彼奴はハズレだったが、俺ならこうする。ーー部屋にタブレットを置いたまま出掛けてる奴があれば、お邪魔させていただいて見て回ればいい」

それがシェリーの問いに対する無法者の答えだった。お邪魔させていただいて≠ニいうのは、当然、その日頃鍛えた解錠スキルと泥棒の手腕を活かしての不法侵入ということになるが。

「大体、今まで何のヒントにもならなかったあのタブレット端末を律儀に肌身離さず持って歩いた人間なんて限られている。尤も、今後は彼奴らも警戒するだろうから部屋に置き去りはまあ望めないが、今ならまだ」

例えば、そう言って、アンフィニーは廊下に並ぶ扉の一つを細長い器用な指で指し示した。その家に住む人間の習慣を日頃から観察するのは、悪趣味極まりない癖だ。誰が大体どんな生活リズムで過ごしているのか、よく行く場所や留守にする時間帯はいつか、部屋から出る際の目立った持ち物など。獲物を狙う鴉のように、無機質な白い廊下を見据えた。

>シェリー、all


【お返事が遅くなりすみません。アンフィニーのしている、皆様を面倒事に巻き込みそうな犯行予告について、長くなるのでサブ記事に書かせていただきます。御面倒をおかけしますが皆様お目通しいただければと思います。】

1ヶ月前 No.45

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 ティア・レーゲン / 廊下 】



 ころころと明るい笑みを浮かべるハローに満足そうなティア。それと同時によくそう表情を変えられるなあと不思議でもあった。自分の表情が変わらない故だろうか、人の表情の変化が不思議で仕方がなかったようだ。

「ハロー姉さんに褒められるなんて光栄の極みだねえ、なら今度僕と扇子で扇ぎながらセンスを語ろうか――――なんて」

 同じように首を傾けるハローの姿を見て、ふと思う。彼女はいったいどんな前世なのだろうか。彼女も自分のように不確かな、曖昧な記憶があるのだろうか。なんて、聞いても仕方がないことであり意味のないことだ。ただ、とても興味があるだけで。

「――――ふふっ、それはとてもとても素敵なお誘いだ」

 最高な時間にさあ行こう、そんな下らない駄洒落と笑い声を唇から零したとき、不意に流れた軽快なメロディー。

 まるで子供の部屋だ、それにあれはまるで――――そう、バースデイパーティだ。屈託のないマキナの笑顔、それをじいっとティアは見つめる。マキナが取り出した『プレゼント』それは先ほどティアが背を向けてきたあのタブレットだ。マキナが語る新たな誘惑、ティアは無表情のままにただ笑い声を零した。

「そう? もしかしたら最高に愉快なことが待っているかもしれないよ?」

 ポケットから取り出した煙草、一本に火をつけ咥えながらティアは愉快そうに笑い声と零しながら首を傾けた。目の前には強気な笑みを浮かべるハロー。彼女は既に出方を決めたようだ。そして勿論、ティアの意思は決まっていた。ふっと煙を吐き出しながらティアは唇を開く。

「――――とりあえず僕のタブレットを取ってこなきゃお話にならなさそうだね、最悪な愉快な時間を過ごすためにさ」

 ハローの持つ電源のついていない真っ暗なタブレット、そこにはただ無表情のままのティアが映っていた。


>> ハロー、おーる

1ヶ月前 No.46

アン @d0ap☆HthQlmP1e4w ★Android=oiMOxDsfGh

【アンジェリーナ・モリス/ナハシュ自室→倉庫】

 まるで幼い子供のようなナハシュの様子に、胸がぎゅっと締め付けられる。何か怖い夢を見てしまったのだろうか……。心配しながら背を撫でていると、体の震えが少しずつ治まっているのを感じられ、アンは安堵からか頬を緩ませた。

「なるべく、早く戻るようにするわ。痛いままも辛いから」

 少し不安げに笑って答えるナハシュに、また胸が締め付けられた。けれど、怪我をそのままにしておく訳にもいかず、アン一人でナハシュを支えて移動するのも現実的ではない。自分の気持ちと現実とを照らし合わせるように考えていると、不意にアナウンスが聞こえた。無機質なモニターに映像が写し出される。色とりどりの輪飾りや風船、突如響くバースデーソングに、ホワイト・セルに来る前日の出来事が思い出された。
 一人娘の誕生日の為に、たくさんの料理にケーキを作って、部屋の飾り付けやプレゼントは夫と相談して、それはそれは楽しみにしていた。それなのに、次に目を覚ました時には……。

 アンはナハシュに向けていた柔らかな表情を一変させ、冷めた表情でモニターを見つめる。マキナがタブレットを持って『プレゼント』と称したアプリが開かれるとパスワード欄に『ADOLFO』と入力した。そこには『覗く』『護る』のアイコン。ペラペラと軽い口調でアプリの説明をするマキナにアンは軽い怒りを覚えた。
 誰かの前世を覗く事に何の意味があるのか。不本意だとしても受け取った記憶はその人のものなのに。アンの胸の内で、じんわりと何かが熱を持ったような気がした。マキナの考えていることが分からない。そうして被験者達を惑わして、何をしようというのか。

「私達を何だと思っているの」

 モニターを見つめたまま、唇を奮わせて絞り出すようにして呟くが、その呟きに当然返事など返ってくるわけもなく。
 ぷつり、と映像が消えたモニターを暫く見つめていると、隣でナハシュが声を掛けてきた。ナハシュの困惑の表情に、アンもどう言えばいいか少し考えた後、ナハシュのタブレットを持ってくるために体を動かす。

「ナハシュ君が、どうしたいか、だと思うわ。自分の前世の記憶の為に、このアプリを起動させて誰かの記憶を覗くのも一つ。誰にも見られたくなければ、護るのも一つ。それは、自分で考えて選択しなければいけないの。でも、護るなら早い方が良いわね。誰かに見られる前に」

 タブレットを渡しつつそこまでナハシュに説明をして、ふと気付いた。アン自身のタブレットは今も部屋にある事を。倉庫に行った帰りに取りに行く手もあるけれど、すぐではない。けれどこうなった以上、すぐではないにしても取りに行かなければ……。

「私、倉庫に行って救急箱を取ってくるわね。大丈夫よ、すぐ戻るから」

 なるべく明るい口調で、少しでもナハシュの不安を和らげれたらという思いで声を掛けると、アンはナハシュの部屋を後にした。

>ナハシュ、周辺all

1ヶ月前 No.47

詠琉 @clock☆VeghuuvPddk ★CxGZ9q9dgG_P5K

【カミーユ・ハルトマン/エドワードの部屋】

 扉越しにドアノブを回したような音を聞き、灰緑の眼に刹那緊張が走る。キィと音がしそうな慎重さで扉が開かれ、生じた僅かな隙間から男の半身が顔を出す。狩人の如く鋭利な眼差しを一身に受け、カミーユは反射的に、懐かしい、と感じた。エドワード・ディルー。一定した存在感を放っているにも関わらず、一向に底の見えない男。だがカミーユは、金色(こんじき)の瞳に潜む危うげな光と同様のものを以前に見たことがあると直感していた。それもマキナが言うところの“前世”ではなく、言うなれば“現世”の何処かで。

「すまないね、エドワード。そこまで重大な用件でもないのだが」

 とは言え直感は直感に過ぎない。カミーユは扉が開く前から用意していた笑みをエドワードに向けると、軽く会釈をして告げた。そしてメニュー画面が映し出された端末を何の躊躇いもなく差し向け、続ける。

「先ほど研究員の者が言っていたパスワード……個人情報のアプリを起動するためのパスワードを教えてもらえないか? 恥ずかしい話だが、私ももう若くなくてね。廊下で例の映像を見てから大急ぎで部屋に戻るまでの間に、忘れてしまったよ」

 無論嘘である。全てはエドワードとの交流を図るための方便に過ぎない。それでも困った風に頭を掻き、眉を下げ、弱々しく溜息を零せば、忘却を“演出”することは可能だとカミーユは認識していた。
 いかにも「頼りない老人」といったようなこの主張。さて、金色の瞳にはどう映っただろうか。


>>エドワード様

【大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした。初っ端から至らないところをお見せしてしまいましたが、エドワード本体様さえよろしければ今後ともお付き合いいただけますと幸いです】

1ヶ月前 No.48

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_76W

【シェリー・アリストラスト/バスルーム】

 自分が発した笑い声がアンフィニーを少なからず動揺させていることが伝わり、どうにか笑いを噛み殺し冷静を装い、彼なりの考察に耳を傾ける。そしてその言葉ではっとする。そうか、護るという選択肢は明るみになると不利益が生じる前世を隠すためのものだったのか、と。ただの心象的な問題だけではなく、それを知られるとまずい前世、犯罪やら不倫やら、理由は様々だろうが、ここに居る人間と多少でも前世に関わりがあるのだとすれば、明かされるのは避けたい事案であると、独りでに納得する。

 自分と似たようにバスルームの壁に背を預けている彼に投げた質問にどんな反応が返ってくるものかと思っていたが、彼は迷いもなく私の前を通り過ぎ、バスルームと廊下を繋ぐ入り口に近寄り、その奥を指し示す。それにつられる様にその背中を追い、同じように廊下を覗き込む。廊下で談笑している施設内の人間も居るようで、僅かな話し声が遠くから聞こえてきた。それを横目で確認したアンフィニーが幾らか抑えられた声音で口を開く。その内容を聞いた瞬間、得も知らぬ興奮がどっと襲い掛かってきた。なかなかに頭が切れる方だと自負している私は、彼の言葉の意味を瞬時に理解した。マスクの下に隠されている如何にも悪そうな彼の顔を見上げ、一人ほくそ笑む。この人間は私を飽きさせないことをしてくれる、という期待を裏切らなかったことに、純粋な喜びが湧き上がった。一気に光を帯び、高揚を示す瞳と口元を隠すように自分の手からはみ出たニットの袖で覆う。気配を押し殺して廊下を盗み見るアンフィニーに倣うように、僅かな悪意と共にその背中にぴたりと張り付き、自分も顔を覗かせた。彼の挙動が私を影に庇うようにしているのが多少不本意ではあったが、それに抗議を申し立てる前に口元に宛がわれた人差し指で言葉を制される。一度顔をバスルームに戻し、続いて囁かれた彼の答えはとても非道徳的で、狡猾で、しかし酷く刺激的なものだった。彼にとってはその行動はお遊びでも嫌がらせでも何でもなく、ここから出て自由を取り戻したいと強く願うからこその、情をかなぐり捨てた行動なのは理解していた。それに遊び半分でついて行くものではないか、と一瞬の良心の呵責によって心が揺らぐが、久々の興味関心への刺激の甘美さに勝てる訳がなかった。私にとって人や物事に関しての関心は、血肉そのものなのだ。それがなくなってしまえば只の血の通わない人形になってしまう。自分が今此処で呼吸する意味さえも一々見つけなくてはいけないこの身体の厄介さにうんざりしてしまいそうだった。

「ほう……君の本領発揮、と言ったところだな。いやはやまったく、君という人間は実に面白い。予想だにしないようなことばかり思いついてくれるから、私は退屈しないで済むよ」

声を潜めながらも、弾む声色を押し殺せずにニットの袖で覆った下でくすくすと笑みを零す。アンフィニーは至極真面目に脱出方法を導くためにこの提案をしたのであり、決してシェリーを楽しませるために言ったのではないことを知っているはずなのに、まるで目の前でエンターテイメントショーが行われているかのように愉快だと宣う少女は他の目から見れば大層異常な人間に映るだろう。弧を描いた瞳に光るバイオレットは、狂気に中てられたかのようにくすんでいた。

「その計画、乗らせてもらおうじゃないか。生憎私は脱出する意欲が強い訳でもないが、君に協力する意欲は大いにある。途中で捨て置いても何の問題もない、便利な手駒だ。私の施設内での立場云々より、今君について行くことの方が私には重要なんだよ」

言葉の最後が、まるで自らに言い聞かせるようにほんの微かに震えた。崩れることなく笑みを象っている表情からは窺えるものなどないかもしれないが、不安げに彷徨う視線はこの瞬間だけの存在意義を欲しがって、怖がるように揺れていた。この行いが施設内の誰かに見つかってしまった場合、アンフィニー共々盗人のレッテルを張られるのはほぼ確実と言えるだろう。多少懇意にしている人々からも、軽蔑の視線を向けられるかもしれない。だがそんなものは些細なこと。私なんてどう思われようがどうでもいいのだ。そもそも必要になどされていない。そして、私も必要にしていない。それよりも、私にとって今この瞬間に人間として呼吸を続けることの方が何倍も大事なこと。余計な心配は薙ぎ払い、目の前の関心という名の酸素を取り込んで、放出されたアドレナリンが脳内を興奮の熱に染める。さすがに自重をしろと、咄嗟の衝動を抑えつけるように首に巻かれたベルトを絞めるように引っ張った。

「こんなに高揚した気分久々だよ。さぁ、情報収集と洒落込もうか」

 遊びではないと散々己に言い聞かせているにも関わらず、緊張感どころか高揚感を表すのはもう悪癖と言える性質である。機会を窺う獣のように神経を尖らせた彼の肩をポンポンとリラックスさせるように軽く叩き、彼の後ろをスッと通り抜ける。あろうことか、シェリーはそのまま気配を殺すことも息を潜めることもせず、そのまま堂々と廊下へ歩みを進めようとしていた。やけに重厚な造りのヒールを躊躇いもなく鳴らしながら、バスルームから廊下への境界線を、一歩踏み出した。その行動はやはり隠密行動のおの字も知らないような突飛なもので、これからの未来が少々思いやられるものでもあった。

アンフィニー様、周辺ALL様>>

【お返事大変遅くなり申し訳ありません!何とも突飛でおバカな行動をしようとしてるシェリーですが、どうぞ首根っこ引っ掴んで説教してやってください…!】

1ヶ月前 No.49

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_vDC

【エドワード・ディルー/自室】

年配の男性の用件は個人情報のアプリを起動するためのパスワードを忘れてしまったから教えてほしいと言うものだった。そんな事なら自分では無く今は見る影もない真っ暗な画面で先程プレゼントを寄こした科学者を呼べば良いだけ。だが彼は特別警戒する事無く面倒ながら半開きだった扉のドアノブに触れ男性を驚かせない様に扉が軋む音も鳴らずに全開に広げる。

「確か……ADOLFOだったかな……」

そう言って突如部屋に戻りテーブルの上、一枚も破られていないホテルに置いてありそうな新品のメモ帳にそのパスワードをメモ帳の近くにあったペン立てに置かれたインクがたっぷり詰まっているこまた新品同様のペンを持ち、素早くしかし丁寧に書き留める。そしてそのメモをテーブルに押さえ込み慎重に破り取る。この時男性はもしかしたらもう既に自分の何か動作や筆跡等を見ている可能性を示唆する。とはいえ、見られても別に害は無く例えこの動作で何か分かったとしても後で上手く対処すれば良いだけ。そう考え、頭を掻きながらADOLFOと言うパスワードをしっかり見せる様にメモを渡す。正直、覚える気は全くないのでこのパスワードが当たっているか少しだけ自信は無い。とはいえ此処で間違ったパスワードを渡してしまえば信頼どうのが一瞬で崩れてしまう。

「あー……でもパスワードが間違ってるかもしれないんで」

本来と言うより信頼を求めている、或いはこの男性が科学者の言っていた前世に関係するあの二択のどちらを選択するかを知りたいなら、自分が代わりにこの男性のタブレット端末でも操作してあげる事だろう。其処までこの男性がボケているとは思えないが。

とにもかくにも恐らくこれで男性の用件は済んだであろう。それでもまだ何かあるのならそれに応じていくつもり。だがこちらから一切の提案は出さない。適度に距離を保つために彼はどんな人物でさえ冷たい壁に似たカーテンを配置する。

>>カミーユ・ハルトマン様、周辺ALL

1ヶ月前 No.50

ナハシュ @september9☆l2RtaxPLX0X6 ★gXyGHSaxw7_M0e

【ナハシュ・トラウム/自室】

 アンジェリーナが持ってきてくれた、自室にあったタブレットを受け取りながら、彼女の話を聞く。自分の前世の記憶を護るか、それとも誰かの記憶を覗き見るか。どうするのが適しているだろう。
 両手に持ったタブレット。その重さが伝わってくる。この中に、此処に閉じ込められた18人の、前世の記憶が記録されている。もちろん、自分のものも。考え込みながら両の手の中のタブレットを睨んでいると、アンジェリーナの声が耳に届く。倉庫に救急箱を取りに行ってくる、と明るい口調で語りかける彼女の方を見上げれば、こくりと頷いて返事をした。

「……うん、わかった。気をつけていってきてね」

 ぎこちない笑顔で、アンジェリーナにそう返し、部屋を後にする彼女の背を見送った。
 アンジェリーナが出ていった後、ナハシュはゆっくりと身体を動かしてなんかとかベッドの縁まで這っていった。そのまま縁に手をかけ、動かない右足と負傷した右肩を痛めないよう、いつもより時間をかけてゆっくりと身をベッドの上に乗せた。そのままベッドに腰掛ける姿勢になれば、膝の上にタブレットを置く。ええと、とぶつぶつ独り言を漏らしながら、タブレットを持ち上げてみたり、顔を近づけてみたり、耳を近づけてみたりする。なにせ、こういった機器を扱うのは初めてなのだ。

「さっきみたいな、絵を出すのは……ええと」

 映像の中のマキナが、どのようにしてこれを扱っていたのかを思い出す。――確か、こうしていたはずだ。
 恐る恐る人差し指で、端末の下方中央にあるボタンを押した。すると、瞬時に画面が白く光る。思わず肩をびくつかせ、身を固めた。金色の、蛇のような目を数回ぱちくりとさせた後、デフォルメされたマキナのアイコンが特徴的な、先程の動画内で紹介されていたアプリへと指を伸ばす。そこを軽くタップしてみると、先程のマキナが説明していた「パスワード」の入力を促すテキストボックスが表示された。

 ナハシュの脳内に、踊るように文字を打ち込むマキナの白い指がフラッシュバックする。
 A、D、O……と打った所で、ナハシュの指が止まる。そこから先の文字が、どうも思い出せない。それもそのはず、彼は読み書きが得意でないのだ。

「なんだっけ、なんだっけ……」

 膝にタブレットを抱えたまま、腕を組んだ。そのまま、無意識のうちに指先を動かせば、白い腕の上に、赤い爪あとがどんどん増えていく。
 思い出さないと、思い出さないと。
 焦れば焦るほど、記憶はどんどん確かなものでなくなっていく。半ば泣きそうになりながら、必死に頭を働かせるのだが、ただ皮膚に血が滲むばかりだった。

>アンジェリーナ、ALL

1ヶ月前 No.51

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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30日前 No.52

なかの @dolce0105☆EIJm993bXx5T ★Android=8lNXrRa8U4

【ハロー・ヴァッキーレミー/廊下】

 今、自分が何らかの行動を起こすことで未来がどう転がるか。綿密に立てた予想と現実を限りなく近くまで摺り合わせることなら可能であろう。しかし、未来を完全に言い当てることなど到底出来やしない。仮に人の時間が一寸毎に区切られているとすれば、人はその一寸先で大口を開けている闇に進まねばならないのだ。
 もちろんかの青年も――どれだけティアが神秘的な雰囲気を醸し出していようと、彼が人間である以上、未来の出来事を丸っきり正しく把握することなど不可能な行為である。それでもティアは笑い声を零していた。最高な時間や、最高に愉快なこと。それらがあるかもしれないと彼は言う。青年がその双眸で見つめたものは単なる怪物の大口ではなく、その奥の輝きなのかもしれない。
 ハローもそんな彼の思考に賭けてみたくなったのだ。中毒とまではいかないが、賭博は娯楽程度には嗜んだことがある。それと同じだ。一歩進んだ先が必ずしも谷底という訳では無い。

「ああ、そうだったら最高。良い時間を過ごしたいわね、お互いに。これだけ身構えておいて何も無かったら腹を抱えて笑って頂戴な!」

 ティアはポケットから煙草を取り出し、火をつけた。アンバランスさが一層際立つような行為にグレイが燻る。ティアの提案にハローは一つ頷いた。ティアの言うことは至極もっともなことである。この状況で鍵を握っているのは間違いなくこのタブレットだ。

「オーケー分かったわ。それなら一旦あなたの部屋へ行く?プレゼント、頂いてしまったからには待ちきれないでしょうから」


 最悪で愉快な時間も待ち遠しいところかしらね、と付け足して女は軽く笑みを含む。
 ――――闇は必ずしも常に待ち構えているだけではない。闇が、不和が、男が、少女が。今正にその鍵へと……ただし、他人のそれへと忍び寄っていることなど、勿論ハローが気付いている筈もなかった。

>>ティア、ALL

29日前 No.53

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 ティア・レーゲン / 廊下→自室 】

 パンドラの箱にだって奥底には幸福がある、どれほど闇であったとしても希望はある、ということだ、と昔誰かが言っていたことをぼんやりとティアは思い出していた。唇から零れた煙とともにティアはけらけらと明るい笑い声をあげる。

「ふふふっ、その時はお酒でも飲みながら愉快なお話として語り継ごうじゃないか」

 愉快な酒の肴になるか、残酷な旅路になるか、さてさてどちらになるのだろうか。頷くハローにティアは笑い声とともに同じような頷いた。

「そうだね、プレゼントは早く開けたい派だからねぇ……とりあえず向かおうかな」

 かくり、と首を傾けながら笑い声を零す。ポケットから取り出した携帯灰皿に吸っていた煙草を放り込む。ふう、と息を吐けば足を自分の部屋の方へと向かわせる、真っ白な廊下を歩き始めた。その先に待ち受けているものを、まだ知らないまま。

>> ハローさん、アンフェニーくん、All



(アンフェニーくんいらっしゃいませ!笑 どきどきの展開に心が踊っております!とりあえずシェリーちゃんが部屋に入るのか否かがわからなかったため部屋に向かうまでで止めております〜〜)

26日前 No.54

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_76W

【シェリー・アリストラスト/廊下→11の部屋→9の部屋】

 勇ましく足を踏み出し進んで行こうとした瞬間、後ろの方向に首元を支点にして引っ張られる。仔猫よろしく文字通り首根っこを捕まえられ、ぐえ、と間抜けな声を出しながらその力に逆らえずつい先ほどまでいた場所に戻される。何をするんだと強く抗議してやろうとしたが、呆れかえったような彼の言葉に遮られる。そのままつらつらと述べられる説教のような其れは怒っている、というよりは叱るという言葉がぴったりのように思えた。馬鹿と思われたり餓鬼扱いされるのは少々癪に触ったが、諭す言葉があまりにも正論なので何も言い返せず若干唇を尖らせる。律儀に何が悪いのかどうするべきなのかと其処等の下手な教師よりもよっぽど建設的な叱り方をする彼にくすりと笑みを見えないように零す。しかしそんな彼が説いているのは数式の答えでも主人公の心情でもなく盗みのノウハウだ。その奇妙さがやけに面白く感じた。

「ふむ、一理あるな」

そう一言呟いたかと思えば自らの身長を数センチ底上げしていた靴のストラップを軽快に外し、何の躊躇いもなく脱ぎ捨てる。そのまま放置するのもどうかと辺りを見回し、丁度廊下を通りかかったロボットに半ば放り投げるように靴を預けた。有能なロボット様のことだから、勝手に自分の部屋の前にでも置いておいてくれるだろう。さぁこれで準備万端でしょう?とでも言いたげな表情でアンフィニーに視線を向け、得意気に微笑む。ヒールの補正がなくなったことでさらに目立つようになった身長差のせいで彼の顔を見上げる首が痛くなりそうだ、と場違いに呑気なことを考えながら移動するアンフィニーの背中に隠れるようにペタペタと随分静かになった足音と共に付いて行く。彼の口から告げられたターゲットの名前を聞きながらなるべく気配を消して滑り込むようにアンフィニーの部屋に入った。ティア・レーゲン、その名前を何とか記憶の片隅から引っ張り出し、特徴を思い出す。無表情の割には明るく剽軽で掴みどころのない男。……その見た目はどちらかというと少女のようであるが。かなり個性的な人間だった為、珍しく印象に残っていた。

 廊下の向こうの複数の気配を覗き見ながら、軽くタブレットを弄る彼の様子を無表情で眺める。情報は折半でいいな?と問う声に何処か上の空であぁ勿論、と答え、部屋の外に消えていった抑えきれていない感情の昂りを示す背中を見送る。本来ならばここですぐさま彼の背中に付いて行くべきなのではあるが、当の本人はその場から動かずに、ある一点へ視線を釘付けにしていた。一瞬弄っただけで乱雑に部屋に放置されたタブレット、間違いなくアンフィニーの物である。結局聞くことは叶わなかった彼の”選択”。それが今剥き出しに目の前に置いてある。捕らわれたように其れを見つめ、ゆっくりと手がタブレットに向かった。

「まさか盗人が逆に盗まれる、なんて思いもしないだろうなぁ。案外君も爪が甘いね。いや、それが君の優しさであり、悪人としての弱さなのかな」

何を考えているのか捉えることが出来ない飄々とした笑みで本人には決して届かない言葉を吐く。端末の電源を付け、ホーム画面から例のアプリのアイコンをタップすれば、すぐに阻むように現れたパスコード入力画面。それに何の滞りもなく「ADOLFO」と入力する。ロックが解除され、表示された画面をゆっくりと視線でなぞった。一通り眺めた後、ふぅん、と自分から探った割には興味なさげな声を上げ、そのアプリにアクセスした痕跡を消し、元の場所と寸分違わない所にタブレットを戻す。

 そのままアンフィニーの部屋を後にし、全神経を気配を殺すことに集中させながらティアの部屋へ向かう。靴を脱ぎ捨て身軽になった身体を生かすように足音も立てずに廊下を駆け抜ける。靡いた銀髪は興味という養分を与えられたことに歓喜するようにきらきらと輝いていた。ティアの部屋の前に辿り着き、アンフィニーによって開錠された扉に滑り込み、扉が閉まるのを見送ろうとしたその瞬間、丁度横目でティアの部屋に沿っている廊下の突き当りの角から二人の人間が曲がるか否か、といった姿だったのを確認する。僅かに目を見開き、急くように扉を閉める。後ろ手にしっかり閉め切り、すぐさま沸騰しそうな勢いで頭を回した。あの二人は確実にここに向かってくる。部屋の中で鉢合わせなんていう事態はまず一番避けたい。どうすれば、と視線を動かした先にとある物を見つけ、ピンと閃く。

 先に部屋に辿り着いたアンフィニーは粗方の調査は終わったのか、部屋に入ってきた自分に顔を向けようとした刹那、その身体の腕をとんでもない勢いで引っ張り、部屋の片隅にあったロッカーのような収納用の家具に突っ込む。突き飛ばすように入れた彼の反応など気にせず、そのまま急いで同じロッカーに自分も入り込んだ。ロッカーの扉を閉め、かなり近い距離に居るアンフィニーにしー、と人差し指を立て、沈黙を促す。火事場の馬鹿力で何とか自分よりかなり大きい図体の彼を引き摺り込めたことに素直に自分に感心した。
狭いロッカーの中は扉部分の小さな隙間からの僅かな光だけで、決して明瞭な視界ではない。交互に置かれた二人分の足を見つめ、自らを落ち着けるように細く息を吐く。流石に無理のある籠城作戦ではあるが、何処にも隠れずに見つかるよりはマシだろう。ほんの数刻後にこの部屋に訪れるであろう人間を想像し、らしくもなく緊張に表情を強張らせ、ドクドクと喧しい胸を抑える。自分の意思で彼に付いてきたのだからその責任は勿論自分で取るつもりだが、こうして見つかるかもしれないという恐怖が間近になると、流石に堪えるものがある。ティアの部屋のものか、目の前のアンフィニーのものか分からない煙草の匂いに鼻孔が侵食され、眩暈がしそうだと思った。久々に感じる刺激とも言えるスリルに歪む口元とは裏腹に心の奥底に潜んだ僅かな恐慌に縋る先を求めるように所在なさげな手が微かに震えた。

アンフィニー様、周辺ALL様>>

25日前 No.55

アン @d0ap☆HthQlmP1e4w ★Android=oiMOxDsfGh

【アンジェリーナ・モリス/倉庫→ナハシュ自室】

 足早に向かう先は倉庫。物が十分すぎる程に揃っているそこなら、きっとナハシュの手当てに必要なものがある。早くナハシュの痛みを和らげたい……その一心で倉庫に辿り着くと、目的の物は案外あっさりと見つけられた。

「湿布とテープ……あ、包帯もあるわね。これなら手当てには十分……」

 救急箱らしき箱を開けると、外傷の治療に使う物が一通り揃っていた。足りないものはないか、確認をするがそれは種類も量も十分だったため、箱ごと抱えて再び足早に部屋を後にする。
 次は自室へ……そう考えてはいたが、部屋に置いてきたナハシュの事がとても心配だった。こうしている間にも、彼が痛みに顔を歪ませているのではないか、あの赤くなった肩が酷くなっているんじゃないか……。

(タブレットは……後でもきっと大丈夫ね。ナハシュ君の怪我を最優先にしないと……)

 少しの不安は合ったけれど、それよりも先にしなければいけないことがある。それに何より少しでも早く戻って、ナハシュを安心させたいという気持ちが強かった。


「ナハシュ君、アンです。入るわね」

 扉の前で短く声を掛けると、そっと中に入る。見ると彼はタブレットを膝に置いたまま、何か考え込んでいるようにも見えたが、どこか泣きそうな表情、組まれた腕、その指先が白い皮膚を裂き赤く血が滲んでいるのが目に入るとアンはすぐに駆け寄った。

「ナハシュ君……一人で頑張っていたのね。ごめんなさい、一人にして……。手当てをしたら一緒に操作しましょう」

 タブレットにはパスワード入力の画面。それとナハシュの様子に状況を飲み込むと、アンはナハシュの正面に目線を合わせるように座る。組まれた腕、指先にそっと触れると、力の入った指をほどくようにナハシュの手を握った。穏やかな口調と申し訳なさそうな表情で、内心では一人にしたことを後悔しつつゆっくりと言葉一つ一つを繋げる。

「……頑張って操作したから、手当ての間は休憩しましょう。休むことも必要なのよ」

 少しでもナハシュの気持ちが落ち着けるようにと思い、アンは微笑みながら提案すると、救急箱の中から消毒液を取り出し、まずは血の滲む腕から手当てを始めた。
>ナハシュ、周辺all

25日前 No.56

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【アンフィニー/No9ティアの自室】


影に潜み闇に駆けて、陽光の下を歩けない日々を過ごしていれば、いつの間にか環境に身体の方が順応してくるらしい。黒一色に塗りつぶされた空間の中でアンフィニーの鮮やかな緑の片眼は瞬く間に桿体細胞の感度を上げ、他人の部屋の中から目的物のシルエットを浮かび上がらせた。人並み以上に夜目が利くというこの体質は、吸っている煙草がブルーベリー味である所為では無いし、まして特殊能力でも無い。足音も無く暗闇の中を蠢く黒は、その切り取られた夜の中から手探りでもなしに目的物だけを掬い上げた。
自分の隣人、No9のタブレットである。
点灯した液晶の明かりで、アンフィニーの顔の肌の見える左の目元の辺りだけが薄らぼんやりと照らし出される。その肌色すらも人より濃いものだから、闇の中に片目だけが浮かんでいるようだった。使用法通りにアイコンをタッチし、全員共通のパスワードを入力する。良心の呵責も、心躍る背徳感も、息を詰める緊張も、そこには無かった。扉がすっと閉まり、オートロックの錠がぎこちなく下りる音が遅れて静かに聞こえた。
開錠をした後に僅かに開けていた隙間からシェリーが入ってきたのだった。彼女に対して付いてくるも外で見張るも任せると言い残して部屋で別れてから、彼女が自分の後に付いて此処に来るまでに僅かな空白があった。傍に滑り込んできた少女にも足音が無い。あの賑やかだった厚底の靴音は、この舌が消してしまったのだ。これから盗みに入るのにその靴は履いてくるな、とだけのつもりで忠告したのだが、事もあろうにシェリーは潔く履いていた靴を脱いで清掃ロボットに破棄させてしまった。これにはアンフィニーも驚いた。止めようかとすら一瞬は思った。だが、一見気難しそうに見えた彼女の純粋さと潔さを気に入りもしたから止めなかった。
(案外、向いてるのかも知れねえな)
そのタイムラグの意味を、推測する事は容易い。殊に、罪無き少女に泥棒の極意すら説教する盗人であれば尚更のこと。だがしかしそれ以上は今は考えるのをやめて、問うこともやめて、液晶の光に照らされた眼は無事に辿り着けた共犯者を確認すると少し寂しそうに一寸笑っただで消えてしまった。

その表情が、暗転に掻き消されたのは、手にしたタブレットがその手房の持ち主ごと体勢を翻したからである。長い指が画面を撫でながら、素早く最後の一手を押そうとした瞬間に、瞬発的な強い力で絡め取られた。事態を察するより速く、突き飛ばされるようにして小さな箱の中に無理矢理押し込められる。反抗する間も無く、同じロッカーにシェリーも身体を潜り込ませてきたものだから眼を瞠り、戸が閉められたことで視界が奪われると、ようやく自分の身に何が起きたのかを理解するに至った。
廊下のほうから聞こえてきた声が、近づいてくる。ハロー・ヴァッキーレミーと、この部屋の主ティア・レーゲンだ。外の気配を気にしていた時にはもっと遠くに声が聞こえていたのに、このタイミングでぐんぐんと声が大きくなる。シェリーは二人がこの部屋に帰ってくるという事態に気付いて、盗人達をこの収納庫の中に隠そうとしたのだと理解した。
照明の無い留守宅よりも更に暗い、棺のような狭いロッカーの中でも次第に目が慣れてきた。靴がなくなったことで更に小さくなったシェリーは身を固くして息を殺している。其処まで親しくもない若い少女と、此方が望んだわけで無いにせよ身体を寄せ合うように押し込められて、居心地悪い事はこの上無かった。
「…………」
身体の小さい彼女とは違って、ロッカーには余る成人男性の背丈をもつアンフィニーはシェリーに覆い被さるようにして背を屈め、向かいの壁に腕を付いている。今は居心地などと言っている場合ではないのだが、少しでもこの未成年女子に空間を与えてやろうと、或いは向こうだって嫌であろう密着具合を下げてやろうと肩肘に力を入れてスペースを広げてやろうとしているが無駄な努力のようだ。全く身動きが取れない。しーっ、と先程の仕返しのように指を立てているシェリーに無言のまま、わかってるよ、と目配せする。……もしかしたらガンを飛ばしただけのように見えたかもしれない。

それにしても、不意打ちだからこそ可能であったにせよ、何という力だろう、とアンフィニーは感心した。それに、彼女が靴を脱ぎ捨てていて正解だった。あの靴底のままこの棚の中に入ったら床板を踏む音が高く鳴ったことだろう。こんな籠城作戦に恐らく先は無いだろう、絶望的な状況にあってもアンフィニーは冷静だった。何処と無く現実味を欠いているような、妙な気分だった。
どう壁を押し退けようとも、ぺたりと触れ合った衣服越しには相手の息遣いも微細な震えも感じ取れて、堂々としているように見えた彼女なりの恐怖が手に取るように伝わってきた。自分はともかく、彼女は未だ皆にとって『悪い子』ではないのだ。彼女にはまだ失う物がある。その人間らしさの片鱗があったことに、場違いにも養育者のようになんだかほっとした。
(何時迄もこうしちゃ居られねぇ。……考えろ、如何すれば……)
あと少しで情報窃盗に成功するはずだったタブレットは、覗き見るにはあと1タップ前画面のまま、今は光を失って、向こう壁についたこの左手の中にある。操るべき右手は身体の後ろで捻れていて、満員のロッカーの中では身じろぎもできず、操作を続行するのは不可能だ。タブレットは此方にある、だが欲しい情報はまだ奪えていない。見つかるのは時間の問題だ。それとも、天だか神だかそういう胡散臭い連中が味方してくれてやり過ごせるとでもいうのか。
アンフィニーは右の指先で後手に触れた扉の縁に第一関節を掛け、外から開けられそうな時の抵抗とばかりに内側に引く力を込めた。

>シェリー様、ティア様、ハロー様、all

24日前 No.57

なかの @dolce0105☆EIJm993bXx5T ★Android=8lNXrRa8U4

【ハロー・ヴァッキーレミー/廊下→ティアの個室】

 ホワイト・セルの名に恥じない真っ白な廊下が照明に照り返す。微弱な視力しか宿っていない右目にその照り返しは少し眩しく、ほんの少しだけハローは目を細めた。ここからティアの部屋まで、それ程距離はない。空を仰げば相変わらず浮遊しているロボットがしきりに行き交っていた。それらを一々気にしていてはキリがないと分かってはいても、ただでさえ常任より狭い視界にチラチラと入ってこられては羽虫のように気になってしょうがない。ハローはたわいもない話をティア
と交わしつつ、視線をその幾つもの人工物に注いでいた。そのとき、一風変わったロボットが彼女とティアの頭上を通り過ぎていった。一際目立つそれを気にしないでいられる筈もなく、ついハローはそれを目で追ってしまう。女がその一個体を気にした理由は明白である。それが女性のものらしきパンプスを運搬していたからであった。無機質な人工物には不釣り合いな靴を目にしたハローは思わず独りごちる。

「また随分とやんちゃな落とし物だこと……」

 そんな呟きを発している間にも、かのロボットは廊下を曲がっていってしまった。あれの行き先がどこなのかは少々興味深いところがあるが、間違いなくその行為の優先順位は低い。生憎、あの二足が誰の物なのかはハローには分からなかった。狭い視界というハンデに加えて、それなりに高い身長。出会って数日しか経っていない今、住人一人一人の靴にまで目は行き届いていなかったのである。誰がどのような目的で自身の靴を運ばせているのか真意は分かりかねるが、とにかくその奇妙な邂逅はハローの脳裏に色濃く刻まれていた。また愉快なこともあるものね。そんな意思を込めて、ティアに向かって肩を竦めてみせる。
 突き当りに差し掛かり、二人は廊下を曲がった。こうも同じ景色だが、目的地は確かにすぐそこである。ティアの自室、No9の部屋。その扉の前に立つと、ハローは半身で彼の方を振り返りつつ手を差し出した。「鍵、貸してちょうだいな」彼女がそう言えば、素直にティアから鍵が手渡される。女はそれを使用して青年の部屋の鍵を解錠し、再び彼の手の中にぽすんと鍵を戻して礼を言った。――と、そこで。今、違和感も覚えずに行ってしまった一連の行為がどこかおかしいことにハローは気付く。そして、今度はしっかりとティアに向き直って両手を合わせた。

「――ああ、しまった!ここ、あなたの部屋なのに……。昔の癖が抜け切ってなかったみたい、本当にごめんなさいね」

 ただでさえ下がりがちな眉尻が、謝罪することで分かりやすく下がる。まだここに閉じ込められる以前、今のように鍵を渡されるシチュエーションがハローには幾度も用意されていた。相手は主に歳の近い弟である。大型原付に相乗りする際、愛車のキーや家の鍵を渡すやりとりは女にとっての日常だった。弟と過ごしていた時の癖が抜けていないことが改めて思い知らされ、ふとした脱力間に襲われる。


 開けるわよ、と断ってハローは扉を開いた。特に自分の部屋との目立った相違点は見られない。やはり個室は皆似たようなつくりなのか、とハローはまた新たな知識を一つ得た。ティアの部屋であるからか、またはまだこの個室を使うようになって日が浅いからか、部屋は綺麗に整頓されている。ぐるりとハローは部屋全体を一瞥した。ベッド、棚、ロッカー……それぞれに次々と目を配っていく。だが、今二人が求めている『プレゼント』がそこには見当たらなかった。ハローは首を傾げる。

「ねえティア。あなた、タブレットは?」

 きょろきょろとハローは部屋を見渡す。当然と言えば当然なのだが、タブレットは見つからなかった。しかし、まだその声色に疑念の感情はない。だってここは人様の部屋なのだ。ある特定の物を置いている場所が自分に分からないという事象などさして珍しいことでもない。何より、被験者達に伝えてはいない大きなハンデを抱えているというのがハローにとっては大きかった。自分が見つけられなくてもそれは不自然なことではない……そんな思いが部屋に燻る違和感を薄めてしまう。ハローは部屋の中がよく見えるように、と電気を付けた。部屋の主を彼の城の中へ迎える。今、四人の奇妙な邂逅がスポットライトで照らされようとしていた。

>>ティア、シェリー、アンフィニー、ALL


【ティアくんから鍵を受け取った、という描写については本体様から許可を頂いております!ありがとうございました!】

24日前 No.58

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 ティア・レーゲン / 廊下→自室 】

 ハローと共に真っ白な廊下を歩く。とはいえそれほど長くもない廊下。自分の部屋まではわりとすぐだ。途中途中くだらない駄洒落を混ぜながらもハローに釣られるように宙を走るロボットに視線を向ける。何故靴なんかを運んでいるのか、靴の落し物か、それとも「身長が伸びたから靴も新調したのかな、旧靴が窮屈――――ふふふっ」なんてくだらない駄洒落に一人笑い声を零す。異質な光景の中でもティアの駄洒落のくだらなさだけは全く変わらないようだ。

 突き当たりの曲がり角を曲がり、自分の部屋の前にこればこちらを振り返り鍵を求めるハローに「嗚呼、はいどうぞ」と言いながらポケットに入れていた鍵を渡す。違和感を感じることもなく、至極当然のように。だがしかしこちらを振り向き両手を合わすハローに疑問を感じたのか無表情ながらも瞬きを数度繰り出せば首を傾ける。

「――――? …………嗚呼! 僕は何にも気にしていないよ、開けてもらうことにも慣れているから気にしないで」

 育ての親である人形師はティアが動くことを良しとしなかった故かティアも疑問に思わなかったのだろう。ゆるゆると首を横に振る。昔の癖、それはここに来る前だろうか、それとも前世の記憶だろうか、そんな下世話な思考を消すように息を吐きながら続く言葉に頷く。ゆっくりと開かれていく扉、ハローに続きティアもまた自分の部屋に足を踏み入れる。

 ベッド脇に並ぶフランス人形、ロッカー、棚、それは間違いなく自分の部屋だ。自分の部屋に間違いない。だがしかしティアは違和感を感じていた。何かが違う、そう、何か。そんな違和感に首を傾けていればハローから問われた言葉に棚に視線を向ける。

「…………確かに棚にタブレットはあったはずなのに。おかしいねえ」

 自分が部屋を出るまでは確かにタブレットは棚にあった。だがしかし今棚にそれはない。ハローの手により付けられた電気が眩しかったのか僅かに目を細めながら首を傾け、息を吸う。

「――――――ふうん、煙草の匂い、ねえ?」

 感じた違和感の正体。嗅ぎ慣れた自分の煙草ではない匂いにティアは、もう一度ぐるりと辺りを見渡す。そうして笑い声を零す。ほらやっぱり、愉快な時間を迎えそうだ。

>> ハローさん、アンフェニーくん、シェリーちゃん、おーる



(とても胸の踊る展開をありがとうございます!たのしいです!)

24日前 No.59

詠琉 @clock☆VeghuuvPddk ★CxGZ9q9dgG_Y9V

【カミーユ・ハルトマン/エドワードの部屋前】

 初めて彼を目にした時、拒絶とも違う、他者を己から隔離せんとする空気を微かに、されど確かに感じた。露骨に冷ややかであるというわけでもないのに、ある地点まで接近すると、不可侵の冷たい壁が途端目の前に立ち塞がる。今もそうだ。エドワードと対峙しながら、カミーユは己と彼との間に構築された見えない壁の存在を直感的に感知していた。そして、一見気さくでありながら不敵さの滲む笑みを広げる一方で、内心ではいつ扉を閉められてもおかしくないと考えていた。
 しかしエドワードは扉を開ききると、部屋の中へ戻りテーブルの上で何か綴り始めた。その様子を興味深そうに眺めていると、すぐに戻って来て手にしていた紙切れを渡される。カミーユは無言でそれを受け取ると、胸の前までもってきて綴られた文字列に目を凝らした。『ADOLFO』。軽やかだが決して粗雑ではない、言わばおそろしく効率的な筆跡だ。
 その文字を視線でなぞる事数秒。メモ用紙から目を離したカミーユは、エドワードに向けて人懐っこい笑みを浮かべた。

「うん! 合っているね、間違いない。恩に着るよ、有難う」

 頭の良い者が聞けば、口を滑らせたようにもとれるだろうか。虚言を示唆する手がかりを敢えて残した。それから懐にメモ用紙を四つ折りにしてしまい込むと、相手の表情を確かめる前にタブレットを持ち上げ画面に視線を落とす。
 初めからカミーユの中で選択は決まっていた。人差し指で素早く操作し、例の六文字を入力してアプリを起動させる。そして表れた二つのアイコンのうち一つを、カミーユは迷いなくタップした。切り替わった画面をじっと見つめる。ややあってぱっと顔を上げると、

「……ああ、悪い。他人の前世の情報が興味深くて、つい夢中になってしまったよ」

 先ほどと変わらず目の前に立っていたエドワードに対して、いかにも何気ない調子で告げる。
 ちょうどその時、少し離れた部屋の方から複数人の声が聞こえてきた。何やら騒がしい様子である。どうやら不測の事態が起こったらしい。それは事故か、あるいは事件か。

「ところで……立ち話もいいが、良ければ少しお茶をしないかな? いい茶葉があるんだ。もちろん、コーヒーでも」

 声のする方に目を向けるわけでもなく、依然としてエドワードだけを見据えながらカミーユは問うた。何のことはない、絶対零度の壁を構築し、その向こうに自分だけの空間を持つエドワードに、漠然と興味を抱いたのだ。彼が隠す本性も、それをつまびらかにする攻略法も知りたいとは思わない。ただ単純に、興味のある人物とは交流を図りたい。無欲とも少し違う、あまりに素朴な願望を内に抱きながら、カミーユは相手の答えを待った。


>>エドワード様

【レスが目安日より大幅に遅れまして大変申し訳ございませんでした。この後エドワードさんが誘いを断った場合はそのまま解散、応じて下さった場合は食堂へ移動するところで締めくくる形で、次のターンで〆レスを回す予定です。まことに勝手で恐縮ですが、なにとぞよろしくお願いいたします】

23日前 No.60

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_76W

【シェリー・アリストラスト/No9の部屋】

 高い身長を窮屈そうに縮めながら覆い被さるように息を潜める彼は最初こそこの行動にひどく驚いた素振りを見せていたが、ここまで足音が近付けばその理由を理解したのだろう。静かに、という意味合いでしたジャスチャーに分かってるよとでも言うかのように鬱陶し気に睨みとも思える目配せをされた。扉の縁に指をかけた彼の片手には未だティアのタブレットがあり、どうやら情報を盗み取る一歩手前、といったところだったらしいということを理解する。そのタブレットをどうにかまだ身動きが出来る自分が操作して、見つかることになろうとも何も収穫がないよりは何かしらの情報を奪ってから見つかることに出来ないだろうかと、そのタブレット端末に手を伸ばそうとした瞬間、部屋のドアが開く音が響き、咄嗟に動きを止めて身を縮こませる。

聞こえてきたのは二人分の話し声。予想通り、この部屋の主のティアともう一人、先ほど曲がり角で一瞬だけ姿が見えたハローの二人だった。何処か賑やかで柔らかい雰囲気の普通の日常会話に乗せられたタブレットの在処を問うハローの言葉に身が固まる。その問いに答えたティアも訝しげにタブレットを探していた。タブレットは机でもベッドでもなく、ロッカーに詰め込まれた二人の盗人の手の中だ。見つかるはずがない。相手がどう出るのかすらも予測出来ない為、得も知れぬ緊張にごくりと唾を呑み込んだ。

『――――――ふうん、煙草の匂い、ねえ?』

愉快そうな口調で呟かれた言葉に思わず身が竦む。この部屋に充満した香りから、ティアが喫煙者であることは予測出来ていた。そこに違う銘柄を吸っているであろうアンフィニーの煙草の匂いが混ざっているのに気が付いたのだろうか。あまりにも鋭い洞察力に苦笑を零そうとしたが、口の端が引き攣るだけだった。

 このままでは見つかるのも時間の問題だ。まだ自分たちが室内に潜んでいることは二人にはバレていないかもしれないが、タブレットが無くなったからにはそう簡単に警戒は取れないだろう。二人が居なくなるまでいつまでもここで籠城するのも得策ではない。体力が尽きる方が圧倒的に早いだろう。タブレットを探すために部屋の中をくまなく捜索され出したら、それこそすぐに見つかってしまう。如何する、どうするべきだ、決して焦ることのないように自らを制し、冷静を装いながら必死に頭を回す。しかしその頭の片隅ではここまで何かに熱中し考える、ということ自体が久しぶりで、その感覚に僅かに興奮し酔いしれている自分も存在し、つくづくだなと呆れるような自分も居た。興奮なのか恐怖なのかさえも判断出来ない震えを背筋が駆け抜ける。少しでも脳の歯車を掛け違えば、狂ったように笑い出し、錯乱してしまいそうな極限状態だった。

 兎にも角にも情報を得られなければ、リスクを侵して侵入したことも、悪人のレッテルを貼られるのを覚悟したのも、意味がなくなってしまう。そう考え、一度アンフィニーと目を合わせタブレットを持った片手の方へ顎をしゃくる。大きな図体のせいで碌に身動きが取れない彼の代わりにその情報を確認するため、アンフィニーの手からタブレットを静かに抜き取るように奪った。極力音を立てないように細心の注意を払い、タブレットの電源を付ける。情報が開示される一歩手前まで操作されていることを確認し、タブレットの画面を見やすくするために崩れていた姿勢を立て直そうとしたその時、靴を脱いで直接ロッカーの床板についていた靴下の足裏が僅かに滑る。

「――――っ!!」

大きな音を立てて崩れ落ちるのは辛うじて回避したが、咄嗟に身体を支えるために出した手がロッカーの壁に勢いよく当たり、ガタン、と音が鳴る。さぁっと血の気が引いた。普通に生活していたら気にならない程度の物音かもしれないが、今は状況が別だ。情報の塊であるタブレットを盗まれたかもしれないという一つの異変も見逃せない現状で、今の音があの二人に聞き逃されるとは思えなかった。冷や汗が滴り落ちる音も、どんどん速度を速める心音も全て聞こえてくるような状況で、薄暗いせいで表情も窺えない目の前のアンフィニーの方へすまない、と唇の形だけで謝罪を告げる。

自らの失態で損失を出す訳にはいかない、瞬間的に動揺した心を立て直しタブレットの画面に向き直った。指を情報開示のボタンへ向かわせる。部屋の主たちに自分たちが見つかるが早いか、自分たちが情報を盗み出すのが早いか、それはもう一秒一秒の勝負であった。

アンフィニー様、ティア様、ハロー様>>

20日前 No.61

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_zI8

【エドワード・ディルー/自室】

「うん! 合っているね、間違いない。恩に着るよ、有難う」

そう言った彼に対してエドワードは覚えていないはずのパスワードを何故自身が書いたパスワードと合っている事が分かるのか、等と一瞬考えたが特に目の前の彼が嘘を付いた所でああ、そうか。と思うだけ。まるで、『そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな』等と言っていた「少年の日の思い出」と言う作品に出ていたエーミール少年と同じ感情をエドワードは見せる。同時にこれでエドワードはひたすらに冷たいカーテンに似た壁は陽の光さえ届かない様に何重にも壁を建ててしまい容易く心の扉を閉めてしまう。彼の中では目の前の人物は嘘を付く可能性がある人間。それだけの存在に変わってしまう。だがエドワードはそれでも対応を決して変えない。わざわざ嘘まで付いてまで自分と関わろうとしているのだから何か探っている可能性があると考えてはいるがだからと言って下手に相手に対して露骨に反応等を変えると勘付かれてしまい関係が険悪になるかもしれない。彼が今、求めているのはそんな事では無い。

そしてそんな事を考えていたら相手は目の前でタブレットの画面を操作し始める。恐らく自分の反応を見る為にあえてこんな事をしているのだろうと考え、とりあえず他人に見られたくなければ自室に帰った方が良い等と質問しようとしたが相手は既に選択を終えどちらかを選択したのかあからさまに分かる様な発言を行う。これも自分の反応を見たいのだろうと彼は判断。此処で、そう言うどちらかの選択が分かる様な事は言わない方が良い等と発言しようと考えたのだが余計な事は言わない方が吉と判断して適当に相槌を打っておく。
その後相手は一緒に茶でも飲もうと言ってきた。特に拒否する理由は無く探られても困る様な事も無い。流石に自身の過去等に触れられてしまえば面倒だが。

「まあこれも何かの縁だね。別に構わない。ただ俺は今、コーヒーを飲みたいから」

ただ何だか少し周りが何だが騒がしい。だがこう言ったトラブルは極力避けるに越した事は無い。そう咄嗟に感じて彼はまた周りに壁を創り始めてしまう。そんなエドワードの凍り付いた壁の裏側には黒紅色の血が塗られている。何度その壁を拭いても洗ってもその血は決して取れる事は無い。またその血は次々と壁にこびり付き剥がれる事を知らなかった。

>>カミーユ・ハルトマン様、周辺ALL

19日前 No.62

遊来 @157cm ★iPhone=y44SZZaVfW

【 キャンディー・バニーフィー / 廊下 → No9 ティアの自室 】

真っ新で白い清潔感の空間の中で冷たい床を素足でぺたぺたと叩く感覚が心地良くて慣れきってしまっているはずなのに新鮮味が欠けないのだから酷く面白い。皮を剥いてもらったニンジンを齧りながら被験者たちの部屋に通じる通路をふらふらと歩き、どこに行こうか、なんてふわふわと浮かぶような思考で延々ほっつき歩いていた。そうしてNo9の部屋の前まで来たとき、敏感な耳がぴくりと跳ねる。不審な音がしたのだ。何かを探り探り扱うような、息を殺すような弱い呼吸音が聞こえる。それも複数人分。勿論この部屋の持ち主であるティア、それにハローの声ははっきりと聞こえる。何ら不思議はないのだ。彼女らの日常会話に強行突破で無理に加わる気はなければ、盗み聞きしようというわけでもない。ただ自室にいても暇だからと外に出ただけで人とばったり遭遇すれば暇潰しにでも付き合って貰えばいいし、先約があるのならばそれはそれで仕方ないと割り切っていたところだ。
ただ、面白そうな不審な気配に釣られて思わずティアの部屋の戸を軽く叩いてしまった。

「ティアー?わたしちゃんだよー!!キャンディー!突然でごめんけど入ってもいーい?」

そう声を張り上げて呼びかけるや否や、返事も聞かずに戸を開けた。そこには部屋の主であるティアに加え声が聞こえていたハローの姿もあった。そうして双方の顔を見つめると、二人の気配に惑わされたかのように先程までははっきりと感じられていた謎の弱い呼吸音がふいに消えてしまった。人より敏感な鼻をくんくんとひくつかせて何とか追おうと努力してみるも、やはり二人分の気配しか感じられなかった。ただ若干の違和感は、未成年ということもあってそれほど詳しくはないものの、ティアの部屋からいつもとは違う煙草の匂いがした気がしたことだ。しかしまだまだ華の十七歳。煙草とは無縁に割と真面目に生きてきたため詳しくないのは当然。幾ら鼻がいいとは言え煙草の匂いは偏に煙草の匂いとしか認識できないのだ。

「あれ?いやー、さっきまでなんか変な気配がこの部屋からしてる気がしたんだけど。まさかのわたしちゃんの気のせい?」

首を傾げて見せたあとティアとハローに驚かせてしまったことに対する謝罪心のこもっていない謝罪をした。何となくいつもとは雰囲気が違う気がするもののやはり気のせいだという説が濃厚なのだろうか。

>ティア・レーゲン様、シェリー・アリストラスト様、ハロー・ヴァッキーレミー様、アンフィニー様

【初めまして!後入りというのはいつになっても慣れませんね。空気を乱すようなぐっちゃぐちゃロルで申し訳ございません。人数的に無理あるかなとか色々と考えてはみたものの気づいたら書いてました、、。宜しくお願い致します】
>各本体様

19日前 No.63

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【アンフィニー/No9の部屋】

密着した状態で箱の中に押し込められている共犯者の、緊張と高揚そして恐怖心が手に取るように伝わってくるのを、疎ましくさえ思った。いつの間にか日常となり麻痺していた感覚が、自分にも嘗てはあったものだと思い知らされるから。何をしてはいけないかという呵責、自分が正しくいたい善人でいたいという感情、所謂良心や畏れというもの。それらが、触れ合う少女の心音から感染(うつ)りそうな気がしたのだ。
(これだから、素人は)
その苛立ちは、巻き込んだ彼女をなんとかしてやらなくてはならないという義理の精神があってこそだということに、彼は気付かない。自分より遥かに小さな体躯の、微かな震えを感じながら、ただひたすらに息を殺した。

部屋の主の声が、室内へと入ってくる。扉の隙間から漏れる明かりが、目映くなる。盗人達を隠す暗闇の加護は消え、曇りなき光は罪人を追い詰めようと戸の向こうで顎(あぎと)を開いている。

『ねえティア。あなた、タブレットは?』
『…………確かに棚にタブレットはあったはずなのに。おかしいねえ』

部屋に入ってきたティアとハローはすぐにタブレットが無いことに気づく。

『――――――ふうん、煙草の匂い、ねえ?』

それを聞いた瞬間に、胸元でシェリーが身を竦ませたのがわかる。アンフィニーは顔色を変えない。タブレットが第三者に盗まれたと直ぐに気付いてもらえたのなら好都合だ。普通空巣が物を盗んだら、次に何をするか……いうまでもなく、逃走だ。物を盗んだのに盗んだ物を持ったままその現場に残留する泥棒なんて普通はいない。普通は、の話だが。ティア達がタブレットが第三者に盗まれたと気付き、煙草の残り香を頼りに犯人を捜しに出て行ってくれれば此方のもの。逆にタブレットをどこに置いたのかを忘れていて部屋を捜し始めでもしたら厄介だったが……。アンフィニーがそのように考えていた時、身動きを取れなかった左手が急に軽くなる。
シェリーがタブレットを抜き取ろうと手を添えたのだ。狭いロッカーの中でも小柄な彼女ならばまだ少しは身動きができる。彼女ならば、画面に触れて最後の一押しをすることが出来るはずなのだ。触れるか触れないか瀬戸際を揺蕩う指先から、タブレットを離してシェリーの手の中に操作しやすいように滑り込ませる。液晶画面が息を吹き返す。自分よりも小さな生き物が至近距離でもぞもぞと動くのは相変わらず居心地が悪かったが、そんな事を言っている場合ではない。シェリーに被さる形のまま、奇妙な形で為される共同作業を上方向から見守っている。

その瞬間までは。
突然、暗い視界内にあった筈のシェリーのシルエットが歪む。ハッと息を飲んだ時にはすでに遅く、耳を覆いたくなるような、ガタン、という音が二人を囲む狭い空間を支配した。

「…………!」

流石にアンフィニーも凍りつかずにはいられなかった。背中を冷たい汗が流れる。
……シェリーは、と焦りながらも視線を動かせば、状況は把握できた。この狭い箱の中で隠密に身体を動かそうとしたがために体勢を崩し、転びそうになったのを止めようとした手が壁に触れてしまったのだ。この中に居るから、或いは気を張っているからあれほど大きく聞こえたのだろうか、外にいるもの達からはどの程度の音に聞こえるのかは分からないが、この状況ではなかなかに絶望的と思われる。
悪い事は続くもの。次の瞬間には、更に派手に扉の開く音を響かせて、予想外の来客はやってきた。
『まさかのわたしちゃんの気のせい?』
これには不意を突かれて、アンフィニーは顔を顰めた。顔を見るまでもない。
(キャンディー・バニーフィーか……どうなってやがる……)
泥棒という生き物は番犬や愛玩動物とはすこぶる相性が悪い。互いに相容れない生態、互いに利益相反の営業妨害な間柄だからだ。自らをウサギと自称する声の主の言い分を肯定するわけではないのだが、なんにせよ鼻の利く賢く従順な動物を泥棒や野良猫は嫌うものだ。

余裕の状況から最悪の危機へと急転落する。取り乱しそうであるのを必死に抑え、心を鎮め続ける。焦れば終わりだ。シェリーの気が動転しているのは、火を見るよりも明らかだった。籠城戦の同居人が体勢を変えたことにより少しは自由になった左手を、そろりそろりとぎこちなく動かし、ポンと脳天の上から被せた。前髪を湿す冷や汗も、破裂しそうな鼓動も、この閉ざされた箱詰めの空気の中では己の内に流れ込んできて、それで却って冷静になることができた。
気持ちを立て直したのか、それとも悪足掻きなのか、シェリーの細い指がタブレットの上で影絵となって滑っていく。ある一点に止まり、そのまま水滴のように落とされる、その波紋を見届けようとするように片方(かたえ)の目を細めた。落城までおそらくは秒読みの籠城戦。扉一枚隔てた外の白と喧騒が異世界であるかのように、箱の中は真っ黒く静寂だった。

>ティア様、ハロー様、シェリー様、キャンディー様

19日前 No.64

アンフィニー(再投稿) @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【アンフィニー/No9の部屋】

密着した状態で箱の中に押し込められている共犯者の、緊張と高揚そして恐怖心が手に取るように伝わってくるのを、疎ましくさえ思った。いつの間にか日常となり麻痺していた感覚が、自分にも嘗てはあったものだと思い知らされるから。何をしてはいけないかという呵責、自分が正しくいたい善人でいたいという感情、所謂良心や畏れというもの。それらが、触れ合う少女の心音から感染(うつ)りそうな気がしたのだ。
(これだから、素人は)
その苛立ちは、巻き込んだ彼女をなんとかしてやらなくてはならないという義理の精神があってこそだということに、彼は気付かない。自分より遥かに小さな体躯の、微かな震えを感じながら、ただひたすらに息を殺した。

部屋の主の声が、室内へと入ってくる。扉の隙間から漏れる明かりが、目映くなる。盗人達を隠す暗闇の加護は消え、曇りなき光は罪人を追い詰めようと戸の向こうで顎(あぎと)を開いている。

『ねえティア。あなた、タブレットは?』
『…………確かに棚にタブレットはあったはずなのに。おかしいねえ』

部屋に入ってきたティアとハローはすぐにタブレットが無いことに気づく。

『――――――ふうん、煙草の匂い、ねえ?』

それを聞いた瞬間に、胸元でシェリーが身を竦ませたのがわかる。アンフィニーは顔色を変えない。タブレットが第三者に盗まれたと直ぐに気付いてもらえたのなら好都合だ。普通空巣が物を盗んだら、次に何をするか……いうまでもなく、逃走だ。物を盗んだのに盗んだ物を持ったままその現場に残留する泥棒なんて普通はいない。普通は、の話だが。ティア達がタブレットが第三者に盗まれたと気付き、煙草の残り香を頼りに犯人を捜しに出て行ってくれれば此方のもの。逆にタブレットをどこに置いたのかを忘れていて部屋を捜し始めでもしたら厄介だったが……。アンフィニーがそのように考えていた時、身動きを取れなかった左手が急に軽くなる。
シェリーがタブレットを抜き取ろうと手を添えたのだ。狭いロッカーの中でも小柄な彼女ならばまだ少しは身動きができる。彼女ならば、画面に触れて最後の一押しをすることが出来るはずなのだ。触れるか触れないか瀬戸際を揺蕩う指先から、タブレットを離してシェリーの手の中に操作しやすいように滑り込ませる。液晶画面が息を吹き返す。自分よりも小さな生き物が至近距離でもぞもぞと動くのは相変わらず居心地が悪かったが、そんな事を言っている場合ではない。シェリーに被さる形のまま、奇妙な形で為される共同作業を上方向から見守っている。

その瞬間までは。
突然、暗い視界内にあった筈のシェリーのシルエットが歪む。ハッと息を飲んだ時にはすでに遅く、耳を覆いたくなるような、ガタン、という音が二人を囲む狭い空間を支配した。

「…………!」

流石にアンフィニーも凍りつかずにはいられなかった。背中を冷たい汗が流れる。
……シェリーは、と焦りながらも視線を動かせば、状況は把握できた。この狭い箱の中で隠密に身体を動かそうとしたがために体勢を崩し、転びそうになったのを止めようとした手が壁に触れてしまったのだ。この中に居るから、或いは気を張っているからあれほど大きく聞こえたのだろうか、外にいるもの達からはどの程度の音に聞こえるのかは分からないが、この状況ではなかなかに絶望的と思われる。
悪い事は続くもの。遠巻きにではあるが、この状況を指して言っているとわかる声が、聞こえたような気がした。
『ま……か、わ……ちゃ……せい?』
これには不意を突かれて、アンフィニーは顔を顰めた。この部屋ではない。もっと遠く、離れている。その距離のせいでなんと言っているかまでははっきりとは聞こえない。しかし特徴的なソプラノの声の主は顔を見るまでもなく分かった。
(キャンディー・バニーフィーか……どうなってやがる……)
泥棒という生き物は番犬や愛玩動物とはすこぶる相性が悪い。互いに相容れない生態、互いに利益相反の営業妨害な間柄だからだ。自らをウサギと自称する声の主の言い分を肯定するわけではないのだが、なんにせよ鼻の利く賢く従順な動物を泥棒や野良猫は嫌うものだ。近くはない。ティアやハローのように壁の向こうにすぐに居るという訳ではなさそうだ。だが、この状況がこれ以上広まって更に野次馬が増えるのは恐ろしい。早急に片をつけなければなるまい。

余裕の状況から最悪の危機へと急転落する。取り乱しそうであるのを必死に抑え、心を鎮め続ける。焦れば終わりだ。シェリーの気が動転しているのは、火を見るよりも明らかだった。籠城戦の同居人が体勢を変えたことにより少しは自由になった左手を、そろりそろりとぎこちなく動かし、ポンと脳天の上から被せた。前髪を湿す冷や汗も、破裂しそうな鼓動も、この閉ざされた箱詰めの空気の中では己の内に流れ込んできて、それで却って冷静になることができた。
気持ちを立て直したのか、それとも悪足掻きなのか、シェリーの細い指がタブレットの上で影絵となって滑っていく。ある一点に止まり、そのまま水滴のように落とされる、その波紋を見届けようとするように片方(かたえ)の目を細めた。落城までおそらくは秒読みの籠城戦。扉一枚隔てた外の白と喧騒が異世界であるかのように、箱の中は真っ黒く静寂だった。

>ティア様、ハロー様、シェリー様、(キャンディー様)

【ごめんなさい、サブ記事を読んでから急遽一部改変しました。遠巻きに通り過ぎた独り言という解釈で、書かせていただきました。】

17日前 No.65

なかの @dolce0105☆EIJm993bXx5T ★Android=8lNXrRa8U4

【ハロー・ヴァッキーレミー/ティアの個室】

 ハローは棚を注視深く見つめた。確かにタブレットはそこにあったのだとどこか語りかけるように男は言う。しかし、それらしき物体は前述した通り忽然と姿を消しているのだ。――件のタブレットに足が生えて部屋から逃げ出した、などと現実離れした思考を良しとするつもりは更々ない。ティアの口ぶりから考えつく事実はただ一つ、それが何者かによって奪われてしまったということだった。信じらんないわね、その言葉は紡がれずにハローの心の中にぽちゃんと落とされる。まるで現実と夢の間をさまよっているような、そんな狐につままれたような気持ちであった。
 ほんの少しだけ上の空になっていたハローの意識を引き戻したのはティアの呟きである。

「煙草……?」

 彼の後に続くようにハローも鼻を軽くひくつかせる。女がティアの個室の中へ訪れたのは今日が初めてだ。通常ならば非喫煙者である彼女がその違和感に気付くことはなかっただろう。しかし、ハローはつい先程廊下でティアの吸う煙草の匂いを嗅いだばかりであった。微かに部屋に漂う残り香は覚えのないものである。生活臭ではない。紛れもなく侵入者の匂いであった。相変わらず真顔で笑い声を零すティアからは余裕が見て取れる。……いや、余裕と言うには語弊があるかもしれない。対象の尻尾を掴んだような、そんなしたり顔を思い起こされるような態度だった。

「……そんなもの無いと思うけど、念の為に一応聞いておくわね。心当たりは?」

 タブレットの場所の心当たり、もしくはタブレットを盗んだ犯人の心当たり。どちらを問うているのかは口に出さなかったが、侵入者がいるという認識が二人の間で共有された今、ハローの質問が後者を指しているというのはある種明確なことであった。その問いへの答えに大きな期待を抱いている訳では無い。出会って数日の今、誰が善人で誰が悪人かなど分かる筈もないのだ。もしかしたら被験者全員が羊の皮を被った狼かもしれないし、その逆も有り得る。いわば、タブレットを盗もうと算段していた可能性は誰にでもあるのだ。こうなってしまった以上、犯人が逃走していた場合、彼ないし彼女を見つけるのはひどく難しいかもしれない。
 その時である。

 ガタン、とロッカーから何か物音が聞こえたような気がした。明らかに自然現象ではないその事象にハローはこれからどうするか相談しようと開きかけていた口を閉じる。ハローの視線は否応なしにステンレス製のロッカーへと吸い寄せられ、そしてそのままティアの瞳を見つめた。ロッカーの中に何かがあるというのか、まさか。

「(聞こえたでしょ)」

 声を出すのが何となくはばかられるような気がしたハローは、ロッカーを指差しながら口の動きだけでそうティアに伝える。一語一句正しく伝わっているかは怪しいところだが、ジェスチャーの効果もあって大体の意味は通じただろう。緊張により、五感が研ぎ澄まされていく。一気に張り詰めた空気が肌を切り裂くようだった。……正直なところ、侵入者はまだそこにいると豪語することはハローには出来なかった。もしかしたらただの考え過ぎかもしれない。しかし。しかし、この状況で考え過ぎて困ることはおそらく無いのだ。
 ハローは後ろ手に先程閉めたばかりのドアをそっと開いて固定した。廊下と部屋を遮断される壁が取り払われる。もしもロッカー内に侵入者がいたら、もしもその何者かが自分やティアに何か危害を加えようとしたらすぐに逃げられる様に。ハローなりに、そんな最悪のたらればを想定した行動であった。丁度その時、廊下の奥から少女の楽しげな呟きがころころと聞こえてくる。彼女が、キャンディーが部屋に近付いてくる様子は今の所見られない。しかし、奇しくもそんな少女の呟きがこれから行動を起こそうとしていたハローの背中を押すことになった。

「(気のせいじゃないかもしれないわよ、ウサギさん)」

 生唾を飲み込み、ハローは合図をするように一つティアに目配せをする。そしてゆっくりとロッカーの方に歩み寄り、ロッカーの扉に手をかける。軽く引っ張ってみたが、内側から逆方向に力が掛けられているせいか上手く扉が開かない。そういうことならば、とハローは手足に力を入れて勢いよく扉を開いた。
 光と闇を隔てていた安っぽいステンレスが取り払われる。――その向こうに異端者達はいた。ある程度予想出来ていたとはいえ、動揺を隠せない。声一つ出すことも出来ずにハローは息を飲んで目を軽く見開く。今、二人の侵入者と目が合ったような気がした。

>>ティア、シェリー、アンフィニー、(キャンディー)


【一章終了も目前ということでシェリーちゃんとアンフィニーくんのお二人を発見するところまでのレスを書かせて頂きました。自分たちの身を守るためという名目で個室の扉は開けっ放しにしてみましたので、展開によっては脱出口にでもして頂ければ、と思っております!】

16日前 No.66

詠琉 @clock☆VeghuuvPddk ★CxGZ9q9dgG_Y9V

【カミーユ・ハルトマン/エドワードの部屋前】

 目の前でこれほどしゃあしゃあと嘘を吐かれ、その上思わせぶりな言動までされれば、多くの人は相手に対して少なからず不信感を抱くだろう。しかしエドワードは、少なくとも表面のみを見る限りでは態度を変える様子はない。大したものだとカミーユは内心感心した。とにかく彼には隙が無い。研ぎ澄まされた隔絶。
 恐らく彼は孤独を守る事に長けているのだろう、とカミーユは想像した。思うに彼のそれは、極限状態におかれているがゆえの防衛行為ではなく、もっと昔から徹底されてきた孤独だ。しかし心の中でそう結論付け、信頼の獲得は不可能に近いと悟っても、カミーユは人当たりの良い笑みを絶やさなかった。一筋縄ではいかないとなれば尚の事興味がそそられる。彼が心の内側に隠し持つものを敢えて知りたいとは思わない。ただ、彼が纏う常温の拒絶に興味を抱いた。エドワードが孤高の人であるならば、カミーユは無類の人好きなのだ。

「では決まりかな? もちろんコーヒーでも構わない。確か倉庫に様々な産地の豆があったはずだ」

 エドワードの言葉にニッコリと笑みを深め、カミーユは意気揚々と告げた。その後で思い出したように端末の電源を切ると、「行こうか」と言って人の声がする方とは反対方向に廊下を歩き始めた。喧噪を離れ倉庫を目指す男の足取りは軽い。たまにはコーヒーも良いだろうと、浮かれた頭の隅で暢気な事を考えていた。

>>エドワード様(〆)

【予告通りこのレスをもちまして此方は撤退させていただきます。短い間でしたが、お相手下さり本当にありがとうございました!】

15日前 No.67

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 ティア・レーゲン / 廊下→自室 】

 鼻腔を擽る煙草の匂い。自分のものではないその香りにティアはくすくすと笑い声を零す。消えたタブレット、見慣れぬ香り。それらが示しているのは侵入者がいるという明確な証拠だった。

「うーん…………ないねぇ、ぼくはうまく生きているつもりだし、タブレットに足でも生えてかくれんぼでも楽しんでいるのかなあ? もーいいかい? もーいいよ、ってね」

 ハローに問われた言葉の意味を理解してだろうか、ティアの返答はタブレットの行方ではなく侵入者を示しているのは明確だった。侵入者となりうる者、残念ながらそこまではわからなかったのだろう、肩を竦める。その時だった。

 がたり、とひとりでに音を立てるロッカーにティアはゆっくりと瞬きを繰り出す。そしてゆるり、とハローに視線を向ける。口元が弧を描く。

「――――鬼さんこちら、手の鳴る方へ、ってね」

 ハローの声なき声にこくん、と首を縦に振る。中にいるのは確実だ。さてどうするか、脳内で思考を張り巡らせる。無表情の下で何を考えているか、なんて誰にも分からないものだ。ハローが開け放った扉、退路は出来た。彼女に危害が向くのは避けなければいけないなあ、なんて思いつつもこんな状況でもわくわくしているのは何故だろう。

「ふうん……まあ、動物の嗅覚は優秀だしねえ、まあ優秀賞をあげようにもまだ終章は迎えていないからね、遊戯(ゲーム)は序章を迎えたばかりだ」

 廊下から聞こえてくる聞き覚えのある声。それはキャンディーのものだ。つまらない駄洒落を混ぜながらハローに頷く。ハローの手により開かれていくステンレスの扉。その中に居た人物に、ティアはくすくすと笑い声を零しながらゆっくりと唇を開いた。

「やあ、君達だったんだね。了解無しにぼくの領海内に侵入してきたのは。――――嗚呼、でももしかしてお隣の君の部屋と間違えてしまった、とか言い訳をしちゃったりして?」

>> ハローさん、アンフェニーくん、シェリーちゃん(キャンディーさん)


(ギリギリでの返信となってしまい申し訳ありません…!)

14日前 No.68

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【アンフィニー/No9ティアの部屋→廊下】


前触れを告げ知らせる音すら無く、その瞬間は来た。ロッカーの扉を虚しい抵抗とばかりに内に引いていた右手に突発的な力が加わる。相反するベクトルは外向きの力が圧倒的に大きく、このままでは手指の第一関節から先が根こそぎ持っていかれそうで、アンフィニーは観念した。男の指先の力と、女子のものとはいえ手足の力とでは、比べて考えるまでもない当然の結果だった。

派手な音を立てて、部屋中の光が流れ込んでくる。二人して暁の陽光に焼かれる吸血鬼にでもなった気分だった。すっかり暗闇に順応していたところを眩しさに貫かれ、焦点がが一瞬揺らぐ。僅かなズレを修正し定まった視界の中では、四つの目が此方を見つめている。
ーーああ、そうか。
置かれている状況はロッカーの中では想像していたものの通りだったようだ。自分と、シェリーと、ティアと、ハロー。アンフィニーは窮屈そうに身を隠していたロッカーからさっと飛び降りると、自由になった両手をパーカーのポケットに押し込んでニヤリと人の悪い人相で笑った。

「……ハロー、愛すべき隣人=v

この文脈での「ハロー」は固有名詞ではなく、挨拶。『隣人を自分のように愛しなさい』とかなんとか、確かそんな風に教える宗教が何処かにあった筈だ。自分のことだって愛せないのに、嫌なこった。

「もしかしなくても、他の奴らと同じく=Aこのふざけた施設から脱けだす手掛かりを盗みに来ただけだぜ」

アンフィニーは全くもって悪びれた風もなく、凝り固まった身体をくぐもった吐息と供に気持ち良さそうに大きく伸ばした。仕事をして何か問題でも? とでも言いたげに隙まみれの状態を晒している間に、前髪の隙間から薄く開いた右目は脱出経路を探した。

探すまでもなく、それは目の前にあった。わざわざ、ハロー・ヴァッキーレミーが部屋の扉を開け放ってくれたのだ。好機なのか罠なのか、疑う暇はない。仮に罠だと考えたとして、此処に残ったとしたらそれこそ隣人達と武力を交えなくてはならない可能性も出てくる。殺人や無駄な暴力はしない。それはアンフィニーの泥棒としてのポリシーだった。まして女や子供であれば尚更。悪事の暴露た空巣が強盗に豹変する可能性をハローは考えているのかもしれない。賢明な判断だ、もっとも強盗なんてする気もねぇが……と思いながら、そうと分かればありがたくさっさと引き上げの体勢に入った。盗むべきものさえ盗めば、あとはどうということはない。自分一人であれば事後に悪しき所業が露見しようとしなかろうと、今更。
「…………」
だが、そうでない道連れのことが頭から離れず、ちらりと横目でシェリーを窺った。

ーー『仮に私が本当に君の御荷物になった時、私が命の危険に晒された時、容赦なく捨て置いてくれて構わないよ。そこに君が躊躇を感じる必要性は無い』

たった数十分前に交わした約定が蘇る。
彼女がまごついて逃げそびれることがないように、手を取って駆け出す……。……その考えもあった。彼女が手にしたままのタブレットをもぎ取ってティアに返し、追いかける意味を無くさせた上で一緒に逃げる……そんな優しい考えもあった。しかし彼はそのどちらも選ばなかった。

「欲しいものは手に入ったからもう用はねえ。まあ気にするな、あんたが盗まれたのはあんたの情報じゃない。前世であんたの隣人だったかもしれない赤の他人の情報だ」

他人事のようにそう言って笑う。そういう問題ではなく、人のテリトリーに勝手に入り人様から物を盗むという行為が問題なのだろうに。まるで倫理観の破綻したかのような利己主義の悪役のテンプレートのようなセリフを吐き散らすと、傍のシェリーの事などまるで知らんふりをして彼女の望み通り躊躇の欠片すらも呉れてやらずに素通りした。言葉通りに捨て置いて、単身真っ先に扉の外へと飛び出して瞬く間に行方を眩ませてしまった。

>ハロー様、ティア様、シェリー様、all



【急な申し出だったにもかかわらず、御相手いただき本当にありがとうございました! とても楽しかったです。一章は本日までということで、これにてティアさん自室編からは退散させていただきますね。】

14日前 No.69

スレ主/2章開始 @yupihiko☆d.mPOva7Vfg ★mbjMynBHF3_OSy

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14日前 No.70

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_HAD

【シェリー・アリストラスト/No9の部屋→廊下】

 凍りついた背中に不快な汗が伝うのを感じていると、外から壁何枚かに挟まれたくぐもった声が聞こえてきた。抑えるという言葉を知らないように大きな高めの声は、確かキャンディー、という被検体のものだった。何に引き寄せられたのかは知らないが、これ以上この現場を目撃する人物が増えるのも相場が悪いな、と僅かに顔を顰める。そんなことを頭の片隅で考えながら、今すぐにでもオーバーヒートを起こしてしまいそうな思考回路を存分に働かせていたその時、ふと暴れる脳内を鎮めるような柔らかく触れる感覚が頭に降ってきた。思わず目を見開くが、今この状況でこんなことが出来るのはただ一人しかいない。両親にさえ触れられたことなどなかった初めての感覚に戸惑うと共に、その掌から伝わる彼の不器用な優しさや、冷静に努めようとする静かな空気が昂ぶった気持ちを少しばかり落ち着かせる。彼のぎこちない仕草に口元だけで薄く笑み、タブレットに早急に指を走らせた。

 情報を開示させるボタンを指で押し込み粗方の情報に瞬時に目を走らせた瞬間、光と闇の境界が崩壊した。暗闇に慣れた瞳に突如流れ込んできた光に目を細める。慌てているとも気まずいとも取れないような無表情で、たった今その境界線を破った人物を見詰めた。先ほどティアと部屋に入ってきた人物、ハロー・ヴァッキーレミーだ。その端正な美しい顔に驚愕の色を乗せて息を飲む姿に何も答えず、只固唾を飲んで一秒ずつ時が進むのを待っていた。その僅か後方に佇んでいたティアの愉快な笑い声が不気味に部屋に反響する。面白いのかも理解出来ないような洒落を交えながら落とされた言葉はすぐ近くに居たアンフィニーによって答えられた。さっさとロッカーから飛び降り、まさに悪人と言った表情で皮肉っぽく言い訳にもならないような軽口を叩く。何処かまだ呆然として一枚幕を隔てた先を見ているかのようにアンフィニーの言葉を聞いていたが、ふと横目で向けられた視線に我に返る。彼は一瞬だけの逡巡を見せたかと思えば、いっそ清々しい台詞と笑いを残し、部屋の外へ消えて行った。

 残されたのは泥棒の立派な共犯者とその被害者たち。頭から冷水をかけられたように一気に冷えた頭で状況を整理し、ふはと乾いた笑い声を上げる。くつくつと喉を鳴らし、そうだ、それでいいんだよ、と届くはずもない肯定をとうに見えなくなった背中に送りながらもティアに負けず劣らずの笑い声を零した。彼が自分が忠告した通り、きちんと自分を捨て置いてくれたことに感謝する。此処で自分を助けたりなんかしたら、本当に只の善人じゃないか。私はそんな君には興味はない。絶対的な悪であるはずなのに、捨て切れていない暖かさ、それを自分で気付いていながら見て見ぬ振りを続けている不器用さ、そんな人間味溢れる君がまるで私とは正反対だったからこそ、興味を持ったのだから。やっぱり私を飽きさせない。それでも、歓喜に歪んだ表情にほんの僅かに混じった寂しさは、頭に添えられたあの温もりを思い出し懐かしむような切なさからのものだった。しかし目の前のティアとハローに向けるその表情に罪悪感だとかこの状況に対する緊張感だとかは一切抜け落ちていて、彼女もまたあの小悪党と同じ部類の人間であることを十分に表していた。

「ははっ!どうやら置いてかれてしまったようだ。いや、これはすまないね。ロッカーからの不躾な訪問で失礼したよ。どうやらシンデレラよろしく靴を落としてしまったようでね、其れを探していたらこんな別の素敵な落とし物と出会ってしまったよ」

靴が脱げた足元に目を遣りながら手に持っていたタブレットを掲げる。既に情報を抜き取ったタブレットを無造作に近場のテーブルに戻し、まるで悪いとも思っていないような薄ら笑みだけを浮かべていた。

「誰しもプライバシーの侵害は気分が良くないだろうが、私もこんなつまらない檻の中で飼い殺されるのは御免でな。モルモット同士の小競り合いを楽しむのもまた一興じゃないか? 安心したまえ、私は脱出に興味もなければ君たちの前世にも興味はない。ここで得た情報を口外するつもりもよっぽど気が変わらなければ無いだろう。それとも、不安要素になるのならば此処で私を殺しておこうか? 私が此処で命を落とそうが、このことを君たちが口外して他の収容者に辟易されようが、すべては結局それまでのものだったということさ。好きにしてくれて構わないよ」

蔑称のように自らも含めた被検体たちをモルモットと銘打つその声は震えてもいなければ掠れてもおらず、僅かに物憂げな雰囲気を滲ませた落ち着いた声音だった。決して人として良しとされない行為を働くことも、見つかるかもしれないという恐怖からのスリルも、過ぎてしまえばそれまでで。既に私の心を擽るものでは無くなっていた。あぁまた飽きてしまった、と胸の片隅で小さな落胆を抱える。興味も関心も失せてしまえば、もうこの場に留まる意味もなければ、苦し紛れの弁明をする意味もなくなった、と早々に部屋から退散しようと足を出口に向けた。

「まぁ今すぐに死ぬのは少々惜しいから、殺したければもう少し後に是非殺しに来てくれたまえ。丁度、此処には面白い玩具が沢山あるんだ。私の探求の時間を、どうか邪魔しないでおくれよ」

靴を履いていない足を優雅に滑らせて、ステップを踏むようにティアの部屋の入り口まで進む。出て行く間際、顔だけで振り返り、目の前に広げられた新しい玩具に純粋に目を輝かせる無邪気な子供のような笑みを浮かべ、至極楽し気な口調で二人へ語りかけた。孵化せずに殻の中で成熟してしまった少女は、またもや自らの人間としての存在意義を探すため静かに廊下へ駆け出し消えていった。

アンフィニー様、ティア様、ハロー様、周辺ALL様>>〆

【イベント終了ギリギリアウトで申し訳ありません…!これにて〆レスとさせていただきます。シェリーの突飛な行動にも沢山お付き合いいただき、とても楽しかったです!二章からもよろしくお願いいたします。】

14日前 No.71

なかの @dolce0105☆EIJm993bXx5T ★Android=8lNXrRa8U4

【ハロー・ヴァッキーレミー/中庭】

 ――ああ。落ち着かない、落ち着かない、落ち着かない!!
 春の陽気を具現化したような麗らかな風景、燦々と降り注ぐ久しぶりに浴びた日光はまるで自身を柔らかく包み込んでくれるように温かい。そんな優しい空間に足を踏み入れたハローは、その場にそぐわない顰め面を一人浮かべていた。眉間に皺が寄る。ああ、『あの日』から、数日前から。女の頭を悩ませる陰りが払拭される気配は微塵も感じられなかった。ハア、と一つ溜息をついてハローはこめかみを抑える。こんなにも頭が痛むのはあの二人のせいか、――……それとも、投薬を行われたことでじわじわと掘り出された前世とやらの影響のせいなのか。おそらく両方に違いない。
 逸る気持ちを落ちつかせるように、ハローはじっくりと中庭を歩き回る。固い床ではなく土を踏みしめる感覚はもはや新鮮なものであった。目の前には色種類共に多岐に渡る花が咲いている。その中には見覚えのあるものもあれば、初めて目にしたような異国の花も混ざっていた。どうやら、これらの植物からホワイト・セルがどこに位置するかを知るのは不可能なようである。この花々もまた科学者達の手で人工的に産み出された、という可能性もあるのだろうか。目を細めながら天井を見上げてみる。高い高い天井の向こうにある空では、ここまでは届くまいとでも言うように太陽が嗤っていた。あのガラスをぶち破ってさえすればここから出られるのだろうか。無論、物理的に無理な話である。

 数日前から、アンフィニーとシェリーの二人とは口を交わしていない。寧ろ真面に顔を合わせたことすら少ないだろう。そして、この靄掛かった気持ちを誰に吐き出すこともハローは未だしていなかった。それをするということは、事の顛末を話さなければならないということに等しい。その行為は容易いように見えて、やや躊躇われるものだった。彼等の行動を暴露することによって、再び同じ行為を誘発してしまう可能性が無い訳ではない。勿論必要に迫られたと判断した時には打ち明けるつもりではあるが、今はその時ではないとハローは判断していた。女はじわじわと、しかし着実に疑念の意に蝕まれつつあった。

『……ハロー、愛すべき隣人=x
『私の探求の時間を、どうか邪魔しないでおくれよ』
 二人の声がそれぞれに反響してくる。侵入者をみすみす逃がす結果となったのはハローが扉を開けたからなのだと、それを彼女は痛いほど自覚していた。ティアには本当に申し訳が立たない。きっと、それを謝罪してもかの青年は飄々とした調子で返事をしてくれるのだろうけれど。後の祭りと言われようが何と言われようが、アンフィニーが一足先に出ていった時点で自分はきっと彼を追いかけるなりシェリーから話を聞き出すべく扉を塞ぐなりするべきだったのである。自責の念、そんなものに気道が塞がれるようだった。

 ああ、落ち着かない。それはやはり先日の出来事のせいだけではない。――記憶がまた新たに蘇ったその日から、中庭のような穏やかで優しい空間はハローにとって心做しか居心地の悪いものだった。

>>ALL


【一章ではとても楽しい絡みを本当にありがとうございました!この出来事がこれからどう影響していくか楽しみで仕方がありません。そして、二章開始おめでとうございます。中庭にALL文を投下させて頂きましたので、これからもよろしくお願いします!】

14日前 No.72

遊来 @157cm ★iPhone=y44SZZaVfW

【 キャンディー・バニーフィー / 中庭 】

「へぇ」

思わず感嘆の声を漏らす。なんとなく、ふらふらと歩き回った先に行き着いたのはこの研究所のような科学染みた世界とは程遠いくらいに暖かく自然の溢れる一室だった――この場所を一室と呼んでいいのかは微妙なところだが――。上部はガラス張りであるもののそれが陽の光を遮断しているかと言えばそうではなく、キャンディーのようななんの知識もない素人からすれば単純に外にいるような錯覚を覚えるには十分すぎるほどだ。足元には色とりどりな花々が咲き誇っているが、残念なことにこちらもそれをじっくりと愛でることができるほどの知識をキャンディーは持ち合わせていない。
研究所内より少しばかり気温が高いように感じるが、それも日光のせいだと思えばなんてことない、むしろ久々に浴びるそれには汗ばむ余地もないほどの不思議な感覚を覚えていた。

ふと、長時間足元を見ていたことによる首の痛みを解消するために伸びをしようと顔を上げると、そこには揺れるシルバーブロンドの柔らかな髪が映った。ちらりと見え隠れする鮮やかなピンク色が相まってより美しいそれの持ち主をキャンディーは知っている。ふわりと振り返ったのはやはりハロー・ヴァッキーレミーだ。その顔は何処か上の空、というよりは顰め面に近いだろうか。何かを考え込んでいるような、落ち着かないような、しかしそれを解消する術を知らないような。
うろうろと中庭内を歩き回る彼女にゆっくりと音を立てずに、しかし着実に近づいていくも、当人は気づいていないようだった。何か他のことに意識が向いているのだろうか。一番気が抜けたと見抜いた瞬間、自慢の脚で一気に距離を詰め、そのまま音もなく10cmはあろうかという身長差のハローの肩に手をかけて飛びつく。

「ねぇ、どうしちゃったの?そんなに落ち着かない顔で。ハローらしくないですよ。もしかして、前世の記憶?」

飛びついたままの――まるでおぶってもらっているかのような、肩車に近いような、微妙な――体勢のまま、肩口から顔を乗り出して彼女の顔を覗き込む。
前世の記憶、それは薬の投与が効いているのかキャンディーにもじわじわと迫ってきていた。ふわりと脳裏に浮かぶそれは曖昧なままで、何かの暗示のように余計に被験者たちの不安を煽る。しかしキャンディーは違った。そもそもここに来たことに喜びを感じているまさに異色の彼女にとってはあまり気に留めていないことだった。

「せぇーっかくこーんないい天気なのにそんな顔してちゃ勿体ないよー?」

そう声をかけて左手でハローの顔に向かってぶんぶんと手を振るのだった。

>ハロー・ヴァッキーレミー様、ALL様
【今度こそ絡み方合ってますでしょうか(震え)。第二幕からの参加とお聞きしておりましたので絡ませていただきましたがまた何か不備がありましたらお声掛けいただければと思います】

13日前 No.73

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

【アンフィニー/No8の自室→図書館】

照明を落とした薄暗い自室の寝台の上、彼は半身を起こし壁に凭れて煙草をふかしていた。燻る想いを溶かして紫煙は濛々と上がり、辺りを薄雲に染める。蜃気楼のように掴むこと許されぬ紗(うすぎぬ)の向こうに、疲れた肌はさらに深い夜霧を吐いて自ら身を隠した。

「…………」
片膝を抱えるようにして立てたまま、アンフィニーは紫煙が燻る向こうをぼんやりと眺めていた。
(あれは……俺は、誰、だったんだ……?)
ティアとハローの一件の後も慎重になったとはいえ懲りることもなく、相変わらずこそこそと他人の情報の周りを付け狙っていた泥棒であったが、この数日は大した収穫はなかった。それよりも、またあの科学者が皆の前に現れてからというもの、この脳には身に覚えのない記憶が流れ込んでくるようになった。これまでの煙そのもののようにぼんやりとした感覚とは違う、煙の向こうにその実体があるかのようなリアルさで。身体の中に不可解な何かが流れ込んでくるような、知らない記憶が忍び寄ってくる気配は不快なもので、その感覚が押し寄せると、今のように暫く何もする気が起きなくなった。
そんな時に限って思い出したのは、あの時ティアの部屋で自分が見捨てて逃げた、一時の共犯者の事だった。

「……あの馬鹿……」
あの時、二人の盗人の姿がティアとハローの前に晒されたあの時、自分には共犯者を連れて逃げるという選択肢もあった。それなのにそうしなかったのは、
(……あんたなら、もっと上手い嘘を吐けると思ったからなのに)
独り険しい顔をして、アンフィニーは深い溜息と共に煙を吐き出した。
あの瞬間、彼女にはまだ好機があったはずだ。泥棒の共犯者だったことを否定し、自分自身はそんなつもりは無かったとティアとハローに弁明するチャンスが。無理矢理協力させられてたことにもできたし、自分も被害者で盗人を追っていたら気付かれて巻き込まれた、とか、自分がタブレットを取り返した、とか、物は試しと二人に「助けてくれてありがとう」なんて言ってみるとか。危機が迫れば自分を置いて逃げだすような薄情な男に騙されていただけなんだと被害者面で売り飛ばすとか……事実的にはそれで間違いはないわけだし。
なのに、彼女は知らんふりをした共犯者を裏切り返して売ることもせず、あっさりとしでかしたことを認めた。事態の顛末を知って、落胆とも苛立ちともつかない何ともいえぬ苦さに人知れず舌打ちをしたのだった。

思い出すだけ、馬鹿馬鹿しい。
首を横に振って再び吐いた重い溜息からあの白い煙がゆったりと立ち登り、慣れ切った香りと共に綿雲の如くその視界を取り巻いた。朦朧と霞む視野の向こうに、鏡に映る自分が見える。ヴェール越しに向き合う自分の姿に、不意にハッと目を開く。鏡の此方側と彼方側から、二人の自分が煙草の火を突きつけ合う。
「……おまえは、だれだ」
先端に湛えた溢れそうなほどの灰が幽かに震え、アンフィニーはそっと指先を下ろした。鏡の中のアンフィニーも、勿論指先から煙を上げながら其れに倣う。

そのまま急に何か思いついたように身体を起こすと、短くなった煙草の火を揉み消し、忙しく服を着、身支度をして二階へと駆け上がった。向かう先は図書館だった。埃っぽい何処か懐かしい香りが出迎える。盗人の男は急に来て、図書館のあらゆる本棚を物色し始めた。今回は別に本を盗もうとしているわけではなくて、もう少し知的で穏やかな脱出法を今更思い付きでもしたようだ。子供の頃は両親に連れられてよく来たものだが、大人になってこんなところに来たのは初めてかもしれない。今となってはもう本棚の配列やラベルのルールが全く分からず手当たり次第に鼠か烏のように本棚を覗き込む。その場違いな無作法さからは、そんな残念な教養の退行が窺える。

>all様


【二章開始ということで、回想+仕切り直しall文で投稿させていただきます。絡み大歓迎で募集中です。】

13日前 No.74

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 ティア・レーゲン / ロボット保管庫 】

 鼻腔を擽るのは煙草の匂いではなく、なんだっただろうか。あの硝煙と、嗅ぎ覚えのあるあの香り。そして胸の奥から湧き上がってくる感情の名前、そう、それは――――。

「――――絶好調とは言えないねえ……公聴会で語ることも出来ないや、こんなもの」

 ふらふらとホワイトセル内を歩いていたティア・レーゲンが向かったのは新たに解放された二階にあるロボット保管庫だった。何故この場所に足を運んだのか、それはティア自身にも分かっていなかった。

 辺りに散らばるロボット達。まるでゴミ捨て場のようだ、なんてことをティアはぼんやりと思った。壊れたロボットを拾いあげては元に戻す、そんな行動を続けながらティアがふと思い出すのは先日のことだった。

『ハロー、愛すべき隣人=x

 思い返されるのは探究心を求めるあの少女のことよりも隣の部屋の男のことだった。無論逃してしまったことも、マキナより与えられたあの情報を知られてしまったこともティアにはあまり意味などないものだった。そう、言わばティアにとってはどうでも良いのだ。ならば何故ティアはそんなことを思い出したのか、その理由はただ一つだった。

「愛すべき隣人=c………僕としたことが一本取られたねえ……ふふふっ、本当に愉快だ。此処は本当に愉快で、飽きないねえ」

 嗚呼、もし飽きてしまったら、全てがつまらなく感じたら、僕のこの胸のゼンマイが止まってしまったら、此処にあるロボットのように捨てられてしまうのだろうか。なんて、静寂に包まれたロボット保管庫の中で無表情のティアの笑い声が響き渡った。

>> ALL


(二章開始おめでとうございます! 一章ではとても楽しくどきどきする絡みをありがとうございます! これからもよろしくお願いします…!)

13日前 No.75

れい @rachel24☆hFhGEuhNfdUw ★iPhone=D9TkIkJjjt

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12日前 No.76

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_zI8

【エドワード・ディルー/娯楽室】

この小さな世界に来てから、エドワードは殺人衝動に駆られる事は少なくなった。殺人衝動を抑え付ける度に欲望に忠実な自分が殺されていく様な感覚をエドワードは得るが彼にとってはこの世界に閉じ込めた前世に感謝を称したいくらい本当に喜ばしい事だった。そしてこの世界において一番の悩みであった娯楽やギャンブルの様な刺激の無さが今、現在、彼が居座っている娯楽室の解放により綺麗さっぱり解消されている。中でもエドワードが好きな娯楽、ギャンブルはトランプを使用したポーカー。そして娯楽に飢えていたエドワードは相手もいないのにたった一人でダーツやビリヤードを大いに楽しむ。ただし孤独が好きなエドワードも流石に対戦相手を欲していた。

「確かロボット保管庫が同じ階にあるはずだからもしかして娯楽の相手になってくれるロボットもあるかもしれないね。ロボット相手なら色々考えなくて気も楽だし」

そう言っていたが娯楽を楽しみ過ぎたのか、椅子に座り少しばかり休憩を始める。そしてエドワードはポーカーの際に使うのであろうコインをいつのまにか手に持ちコイントスで遊び始める。そして指で弾かれたコインを握り締めてみてはエドワードは裏か表かの二択を選択しギャンブルを行い始める。
とはいえ、今のこの状況からしてギャンブルを行っても個人的に何も失う物は無い為、賭けを利用したギャンブルは出来無さそうであるとエドワードは少し寂しそうな表情して考える。唯一現状で賭けられるのは自身の命だが流石に其処まで狂ってはいない。だが賭けが無いギャンブルも彼にとって十分な刺激。これでもエドワードは飽く迄もギャンブル好きでありギャンブル依存症では無い。
ちなみに、彼のダーツやビリヤードの腕は意外と調子の波が激しく成績にも差が出てしまう。またギャンブルについてはトランプ等で自作のゲームを作ってしまう程、趣味としてかなり楽しんでいる。此処に来る前は自作のゲーム専用のカードを制作する事もあったらしい。ただし実際に相手と自作のゲームを利用してギャンブルを行った事は無いと言う。
そんな事を考えていると、エドワードはかつての恋人や友達を思い出す。彼がこの場所を過ごすにはあまりに快適であったがあまりに静かであった。

「……」

>>周辺ALL

12日前 No.77

独楽 @sbluexxx☆rx3sEFPR6z6 ★rqRPsSgCf7_PHR


【 ジーノ・レイフィールド / 自室→娯楽室 】


 何かに追われるかのような錯覚の中、目を覚ました。
 どんな夢を見ていたのか、はっきりとしたイメージは既に記憶の中にはない。あるのは曖昧で痛烈な香り。それから鮮烈な色。紛う事なき、戦いの記憶だ。

 鏡で見た己の顔はげっそりと血の気が引いて、少なくともこの状況に参っているのだとわかるには十分だった。冷たい水で顔を洗い、出掛ける支度をする。昨日重要な他人の秘密をもたらしたタブレットは、肌身離さず持ち歩くことにした。同じように、己の記憶も何者かに覗かれているのだろうか。無論、記憶を覗かれたところで、それが己のものだと勘付く者はそういないのだろうけれど。
 着替えを済ませ、目を閉じ、すう、と息を吸う。ゆっくりと吐き出して、得体の知れない記憶のことを一旦脳の片隅に押しやった。けれどもそうしようとして、誰かの面影が脳を掠める。それは相棒であって、パートナーであって、きっと、仲間であった、誰か。背中を預けていたのであろうその人物を、少し、ほんの少しだけ思い出したいと願ってしまって、ああどうしようもないな、と目を開けた。真白な部屋の中でひとり、その面影すら、思い出せないでいる。
 暫くしてジーノは、ようやくいつもの仮面を身に着ける。他人の気分を害さず、突き放さず、それでいて一線をはっきりと引くことの出来る、当たり障りのない笑顔の形をしたそれ。あまり良くない顔色は表情で誤魔化す。いつもやってきたことで、何ら難しいことではない。

 部屋を出て、その場所に自然と足が赴いてしまうのは仕方のないことだった。きな臭いだとか、怪しいだとか。そんな頭を使った理由があるわけではない。ただ、色のないこの生活に、ちょっとしたスパイスが欲しかった。常に緊張感と隣り合わせの生活も悪くないが、たまには少し違う色が見たい。昔の――前世なんていう不透明でもっとずっと遠くのものではなく、ついこの間まで謳歌していたはずの生活を、思い出したかったのだ。

 娯楽室の扉を開けると、ジーノはまずそこに置かれた物の数々に目を奪われた。
 既にダーツボードには数本の矢が刺さり、ビリヤード台の上にはキューが置きっぱなしにされている。誰かが遊んだ痕跡をしっかりと捉えたところで、ジーノの視界の隅で、何かがきらりと輝いた。やはり、先客がいたようだ。

「……おや、これはこれは。御機嫌よう、ミスター」

 すぐに人当たりの良い笑顔を顔面に貼り付け、僅かに首を傾けては挨拶を。後ろ手に娯楽室のドアを閉めれば、見る限り、此処は彼と己の二人きりだ。
 金色の髪に、金色の瞳。体格は己よりもわずかに良いくらいだろうか。一度顔を合わせただけで、彼のなにもかもを知っているわけではないジーノは、警戒心を持って彼の方に近付いていく。彼の手の中で弄ばれているのがコインであるのだと気付いて、ジーノはそこで口を開いた。

「賭け事がお好きですか。実は私も、少し嗜んでおりまして、……」

 彼の座る椅子の前に立ち、彼の口元や表情がよく見えるようにしてから。ジーノは、ふふ、と小さく笑って見せる。

「どうでしょう、せっかく此処でお会いしたのです。お相手願えますか? 生憎賭けるチップはありませんが」

 後ろで手を組み、すうと細めた目で彼を見つめる。これも一種の賭けだった。
 ジーノは、彼――エドワード・ディルーのことをもっとよく知るべきだと思った。どことなく一般人とは違う、ぴりぴりとした何かを本能で感じ取っていたからだ。それならば、ギャンブルという手段はあながち間違ってはいない。ギャンブルとは言ってしまえば心理戦で、腹の探り合い。それからほんの少しの運と、確かな技術があれば勝つことの出来るゲームである。わざわざ此処に来るくらいならば、きっと彼にも経験はあるのだろう。それならばお互いハンデはなしだ。それでいて、堂々と探り合いが出来るというわけである。もしかすると、彼の何かを知ることが出来るのかもしれない。その場合、チップは己の情報だ。ジーノは、そこまで踏まえて彼にギャンブルの誘いを持ち掛けたのである。
 ダーツにビリヤード、コイントス。彼が相手を欲していることは明確で、ジーノの瞳に好戦的な色が混じっていることすら真実だ。此処には、ただギャンブル好きの二人の男がいるだけなのである。


>>エドワード・ディル―さん、周辺ALL様

( 初めまして、ギャンブル経験がおありとのことで同じくギャンブルをしていたジーノで絡ませていただこうと思います! よろしくお願いいたします^^ )

9日前 No.78

なかの @dolce0105☆EIJm993bXx5T ★Android=8lNXrRa8U4

【 ハロー・ヴァッキーレミー/ 中庭 】

 特に行くあてもないままにハローのスニーカーが土を踏みしめて行く。それでもやはり悶々とした気持ちは晴れない。ウロウロと動き回る度に視界に飛び込んでくる花達の中には派手なものも多く、まるで全ての色彩がそこに揃っているのではないかと思えるようだった。左目だけが主張の強い極彩色を捉えていく。殆どが白で構成されている件の建物との随分とした差が脳を痺れさせる。――その瞬間。本当に何の前触れもなかったその一瞬の内に、ハローの肩に衝撃が加わった。気を抜いていたせいか重心がぶれてそのまま前に倒れそうになる。一歩前に踏み出した時、彼女が見たのは地面ではなく青空だった。……正確に言えば、“雲一つ無い青空をそのまま吸い取ったような小さな花”だ。全くの偶然で見つけたその花は小ぶりな植木鉢で育っており、決して目立つそれではない。目立ちやすさで言えば先程の極彩色の花々の方が軽く上を超えていくだろう。しかし、その花はハローの視線を捕まえて離さなかった。どことなく懐かしさを覚える不可思議な感覚がハローを襲う。この花を見たことは間違いなくある、それに加えてもの懐かしさすら感じるというのに、生憎それの名前は分からなかった。花の知識を持ち合わせていない自分に軽く恨みを覚える。後から図書館にでも行って調べてみるべきか、と新たな目標をハローは胸にした。
 何とか体勢を立て直そうとした時、女は気付く。予想だにしていなかった想定外の奇襲にハローの身体は思いの外強ばっていたのだ。筋肉が緊張を切に訴え掛けていた。その緊張状態は先程とはまた違った意味で安定した呼吸を邪魔しに掛かる。――『ねぇ、どうしちゃったの?そんなに落ち着かない顔で』その声に応えるようにハローはぐりんと左後方を振り返った。陽に眩しく光るシルバーブロンドが翻る。

 女の目が映したのはまたもや“白”だった。白と一概に表現しても、それは実験施設のような無機質な色ではない。生気のある若々としたホワイトである。ウサギのように軽く揺れるそれが髪であると気付くのにそう時間は掛からなかった。ふわりと甘い香りがハローの鼻腔を擽る。花の蜜の匂いとはまた違うそれと同時に、女は奇襲者の正体を理解した。No12、キャンディー・バニーフィーである。
 肩口から聞こえるキャンディーの声はハローの意識を取り戻すには十分すぎた。ハローらしくないですよ、と続ける彼女の可愛らしくも大きな目を見つめる。少女の瞳の奥に自分の姿が見えた。そこに映る表情はお世辞にも柔らかいとは言えない。どうにも焦燥が隠しきれていなかったようだった。

「――ッ、あ、驚かされたわね、キャンディー」

 喉から出た声は、動揺を押し出す様に軽く掠れていた。緊張していた筋肉はようやく徐々に緩んでいく。ハローは赤子をおぶってあやす様に、ゆらゆらと優しくキャンディーを揺する。「お転婆も程々にしてちょうだいな」と物申す声は厳しさを孕んでいない。しかし、次のキャンディーの言葉に女は表情を曇らせた。前世、とオウムのようにハローは言葉を繰り返す。

「そんな所かも、しれないわ。だけど私、そんなもの信じちゃいないし信じたくもないの」

 一転、少し棘が見え隠れする語調。キャンディーへの返事というよりは自分へ言い聞かせているようにも見えるその呟きはハローの心情を表しているも同然だった。実際、薬品投与が行われてから以前と変わったことが無いという訳ではない。――背中を取られるという行為への嫌悪感が何処か酷くなっている気がするのだ。右目が不自由故に元々背中を取られることは苦手だったが、この感覚はそれを上回っている、気がする。迂闊に背後に回られることが死に繋がると、本能がそう言っていた。しかし女はそんな惨劇の中に身を落としたことなど勿論ただの一度も無い。それならば一体何なのだ。眼の裏に焼き付くような屍の数々は。

 ちり、と脳が焼け付く。ハローが見たその有りもしない景色を、キャンディーは左手一振りでかき消した。自分とは違う細く白い手。彼女の言葉に釣られるようにハローは空を見上げる。かの可愛らしい花と同じような空だった。きゅっとハローの目が細められる。太陽が眩しいような、何かを懐かしむような、そんな顔だった。

「……キャンディー、あんたの言う通り!そうね、久しぶりに太陽を浴びれただけでも儲けものじゃない」

 自分の芯が揺らがない限り、気丈に振る舞うことに関してハローは一級であった。それが積もり積もった結果今後どんな事象をもたらすかは誰にも分からない。しかしそれでも、“今”を生きることに関して女は長けていたのだ。そうだ、キャンディーも言うように今の自分はハロー・ヴァッキーレミー以外の何者でもない。自分らしくないという少女の言葉にグッと引き摺り戻されるようだった。昔いたかもしれない自分を否定し、今を生きている自分を守り抜く。それこそが“ハロー・ヴァッキーレミー”を生かす術であった。その危うさに気付くこともなく、女は前へ進もうとする。

「ああそうだウサギさん。一つ聞きたいんだけどあなた。花に詳しかったりするかしら?」

 そう言ってハローは肩口から顔を覗かせる少女の鼻を一つ、軽くピンと押した。

>>キャンディー、ALL


【絡みありがとうございます!これからよろしくお願いします〜!】

9日前 No.79

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_zI8

【エドワード・ディルー/娯楽室】

エドワードは暫し、頭に巡っていたもう一つの記憶が自身を呼び掛けている事に気付く。それは、今此処でコイントスを行う自分と同じ様にその記憶はひたすら脳裏で殺意或いは、居場所を求め続けていた。そしてその記憶から頭に思い浮かぶは硝煙、血、鉛弾、銀刃。さらにその奥で釈然として現れる殺人衝動。やがてエドワードの表も裏も指で弾かれ、宙に舞うコインの様に其処に殺人衝動がベッタリと血の様に張り付いていた。それでも親愛も恋愛も友情も捨てた彼はその居場所に自分には無いモノがあるかもしれないと密かに感じていた。しかし、同時に湧き上がる人殺しの性。肉の裂く音、骨が砕かれる音、どうしようもなく無力に倒れ、マネキンの様に動かなくなる死体、この時だけ彼は自分は無力ではないと思い出せる。自分が何も出来ない訳ではないと思い出せる。ギャンブルでは味わえない刺激をこの上無く楽しみながら――

「……おや、これはこれは。御機嫌よう、ミスター」

突如として孤独な時間は終わりを告げた。いや、これは当然な事である。誰しも人は真っ白な部屋ではまともに生きるなんて事は出来ない。どこに存在しようが娯楽や刺激が無ければ、退屈に違いない。そしてこの娯楽室の扉を開いたのは八頭身で金髪碧眼の白人、ジーノ・レイフィールド。ジーノの発言によるとギャンブルを嗜んでいるらしくエドワードにギャンブルの相手を持ちかけられる。それに対してエドワードは賭ける対象が無い事もありギャンブルの相手に乗る事にした。彼がギャンブルに乗ったのは、賭けるモノが無いギャンブルならば、関係が悪化する事も良くなる事も無いと判断しての事。だが向こうは何か探ろうとしているかもしれないが。そしてギャンブルは駆け引きが重要な心理戦。ギャンブルでの言動が相手の性格だけで手に取る様に分かる。様々な仕草や視線、癖一つで通常のギャンブルなら命取り。

「まあ、僕は別に構わないよ。ただ、何のゲームで遊ぶのかな……」

そしてエドワードはダーツやビリヤード、手に持つコイン、娯楽室のカジノでよく見るテーブルらしき所でひっそりと眠るトランプを眺めていく。すると、ある一つのチェス盤に目が行く。エドワードはチェス等のボードゲームについては一通りルールを知っている程度で実際に経験した事はあまり無いのだが頭の中でチェスの駒がばら撒かれ、落ちていく音と共にどこか遠い残響にて何かが渦巻いていく。

「……」

>>ジーノ・レイフィールド様、周辺ALL


【初めまして、こちらこそ是非とも宜しくお願い致します!】

8日前 No.80

ししくれ @kmnkha☆/pH2qpQf7L2 ★ieluDUuGrE_scn

【 イリス・ダヴィエド / 自室→キッチン 】


 ふと目が覚めた。何を考えるでもなく壁を見つめて暫く時間を過ごしていたら、いつの間にか眠っていたらしい。
 妙な夢を見た気がするが、もう何も思い出せやしないし、さして興味もわかない。夢はあくまで夢だ。後味の悪さを取り払いながらゆっくりと目を開き、部屋の光に目を慣らすと、半ば習慣的にイリスは手元にあった煙草へ火をつけた。

 何の変哲も無ければ面白みもない壁を見ながら眠りについたのはどうしてか。それは昨日のイリスには何かをするやる気が削り落ちていたためだ。ホワイト・セルなるこの場所へ来る以前にも、イリスの原動力が尽きることは時折あった。好奇心の泉が枯れ、心に潜む興味がどこかへと身を散らした時、彼の気力は彼の意思とは無関係に彼の元から旅立つ。これまではそれに原因などなかった。強いて言えばイリス自身にもどうにもならない心の気紛れだろうか。しかし今回はどこか今までと違う。そう感じる大きな要因は、イリスの心に押し寄せている不可解な感情のせいだろう。此処での日々を過ごすうちに生まれた名の知れぬ感情。それが自分の気力を奪っていったように思えてならない。不安にも似たその感情は、見慣れたものが何一つない部屋、或いは見知った顔のいない空間へ対する焦りのようなものだ。此処へ来る以前は、目を覚ました時其処に何があろうと気にすることなどなかった。例え其処にあるものが漠然とした白い景色だけだろうと、寝起きできる場所があれば困ることなどなかった。そうだというのに、今では目を覚ます度、若しくは誰かと接し何かと触れ合う度、無意識のうちに焦燥感が増す。自分の意思とは無関係に心が荒らぶるようで、気味が悪い。しかしそれは同時に、何だか無性にくだらなくも面白く、仕方ない。口の端だけを持ち上げて満足そうな笑みを浮かべて、いつしかイリスは笑っていた。

「噫、こんな小さな世界でも面白いことは尽きないものだな」

 その言葉はイリスの手元に好奇心や探究心が戻って来たことを示していた。眠ったことによるものか、それとも自分の中に居座る奇妙な感情に慣れてしまったからか。気紛れな自分の心など知る由もないが、好奇心や探究心といったものは今後暫く困らない程度にはあるような気がする。どうやら煙草から溢れる煙は、空気を澱ませると共に心の騒めきも霞ませてくれたらしい。

 短くなった煙草を灰皿へ押し付け、火を消す。特別目新しいわけでもないが、悲しいくらいあっけなく消えた火のことを無意味に嘲っていると、ふいに腹の虫が鳴った。自分が昨日から何も食べていないことを思い出す。取り敢えず自室を出たイリスだったが、残念ながらイリスは料理をほとんどしないし、此処には料理を作ってくれる家政婦もいない。どうしたものかと少し思案した末に、パンや果物など調理をせずとも食べられるものが何かしらあることに期待して、一先ずキッチンへと向かう。
 歩きながら、ポケットに押し込んだせいで角の取れてしまった箱から煙草を一本取り出して、火をつける。口から吐き出され行き場なく彷徨う煙を見ながら、先ずは目覚めのモーニング珈琲ーー時間を確認せずに部屋を出たため今が朝なのか否かは不確定だがまあその辺りはいいだろうーーを飲むことを決めつつ、キッチンへと足を踏み入れた。


 >>ALL様
【今回途中参加させていただきます、ししくれです。イリス共々仲良くしていただければと思っておりますので、よろしくお願いします。】

8日前 No.81

遊来 @157cm ★iPhone=y44SZZaVfW

【 キャンディー・バニーフィー / 中庭 】

一つ、驚いたことによるものなのか、掠れたような声をあげたハローは背後からの衝撃が見慣れたキャンディーによるものだと気付いた途端、少しだけ表情を緩めた。「あ、脅かしちゃった?ごめんなさーい」と謝る気なんて更々感じられない謝罪を零しながらもゆらりゆらりと揺籠のようにあやされ、久しぶりに燦々と暖かく降り注ぐ日の光も相まってか少女は楽しげにきゃっきゃと歓声をあげる。自らが囚われの身である事も、最早何もかもを投げ出してしまった上で今の状況を楽しんでいるかのようなキャンディーの落ち着いた物腰は何処か大人びて見られがちな部分があるのだが、こうして見ると年相応、またはそれ以下の無邪気な一面も感じられて掴み所がないとはまさにこのことだろう、というくらいに不思議な人物だと認識されていることは本人の耳にも届いているのだがそれすらも気にすることが面倒になるほどの大雑把な性分であるのだ。それでも、幾ら飄々としていて大雑把だとは言ってもやはり花の女子高生であるわけで、この施設の平均年齢よりは幾分か下である。こうして他の被験者たちに構ってもらうことも遊んでもらうことも、――勿論あやしてもらうことだって口には出さないだけで楽しみにしていることなのだ。天高く腕を伸ばして太陽を掴むような動作をしてみるも、その手は虚しく宙へ伸ばされたままだった。手のひらが透けて血液の流れが見える、なんて童謡のようなこともなく、幾らここが外と繋がっているような雰囲気でも、そこまで忠実には再現してくれていないらしい。


キャンディーに答えるようで、自分に言い聞かせるようなトーンの低い悩み混じりな声色を響かせるハローにキャンディーは不安げにきゅっと眼を細める。勿論のこと、あやされているような体勢の少女の顔色は背中に目なんてついていないハローには見えるはずも無く――仮についていたとしても背中に腹を張り付けている状態のキャンディーの表情が見えるわけではないのだが――その事実がより一層少女の顔を歪めていく。――前世の記憶、そんな薄っすらと見え隠れするだけのもどかしいものを考え込むよりキャンディーの人生の中で今までも、恐らくこれからも無いであろうこの一時だけ、柔らかい日差しの側で微睡むようなゆるりと時間が流れていくホワイト・セルでの日常を存分に楽しんでやろう、と、それが彼女の持論なのだがやはり誰もがそうであるとは限らない。むしろそうで無い人物の方が多いのではないだろうか。脳の髄からまるで昔からそこに居座っていたかのようにじわじわと記憶が染み渡り広がっていく感覚は少なくとも心地よいとは思えないものだ。だからこそこうして誰かにひたりとくっついていなければ気が済まないのかもしれない。――いや、それだけではない。確かに誰かと密接に触れ合っていた記憶が侵略してくることにすら影響されているのかもしれない。と、やはり前世の記憶なんて深く考えれば考えるほど損なだけなのだ。それに気づいてからというもの、利得主義者であるキャンディーは考えることをきっぱりとやめていた。久しぶりに思い返してみたものだ。

しかし、背中に直接触れ合うような姿勢を取っていたキャンディーにはハローがぐっと力を入れ直すのがよく感じられた。やがて訪れるであろう衝撃に備えてキャンディーも体の力を入れ直すも、背中の少女に配慮してくれたのか突然ビシッと姿勢を整えるでもなく、今度こそまるで独り言のように『……キャンディー、あんたの言う通り!そうね、久しぶりに太陽を浴びれただけでも儲けものじゃない』と先ほどより張りのある、いつものようなハローのよく通る声色で放った。

「そーですよっ!それがいつものハローでしょ?やーっぱり、ハローは悲しい顔なんてしちゃダメ!」

そう付け加えると、すぐ側にあるハローの滑らかな頬にちゅっとキスを落とした。そのあとで、挨拶代わりに頬にキスするのも何処かの文化だったような気がして引っかかったが、それがほとんど本能に基づくものだったため結局のところはどうなのか分からなかった。もしかしたら、ウサギの文化なのかもしれない。
気を抜いていると突然振り返った美しいシルバーブロンドからピンッと鼻を弾かれるように押され、「ぴィっ」と何かの鳴き声のような可笑しな声を上げてしまう。痛みを感じたわけではないが本能的に鼻を押さえると、微笑を含んだ透き通った声で花について詳しいか、と問われ、それだけで単純極まりない少女は鼻のことなんて記憶から消し飛んでしまう。

「んー、わたしちゃんの故郷にある花、とか、あとは花屋さんでバイトしてた友達から教えてもらったのが少しだけ。でもでも、ここにある花をゆっくり愛でられるほどの知識は生憎持ち合わせてません――何か気になる花があるなら、調べに行く?」

そうして軽く肩をすくめたあと、思いついたようにピンと人差し指を立てた。

>ハロー・ヴァッキーレミー様、ALL様

【こちらこそありがとうございます、宜しくお願い致します。返信遅くなってしまい申し訳ございません。当方の方はこれからここに留まる流れでも、花について調べに行く流れでも、どちらでも構いませんよ!】
>なかの様

6日前 No.82

アンフィニー @fue☆dTW3Rdrh5/. ★iPhone=uYwUDyqtCB

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5日前 No.83

独楽 @sbluexxx☆rx3sEFPR6z6 ★rqRPsSgCf7_PHR

【 ジーノ・レイフィールド / 娯楽室 】

 エドワード・ディルー。今ジーノの目の前にいるその男とジーノが共有しているのは、この部屋の空間、それから数回顔を合わせ、互いに名前を知っているというごく僅かな情報だけだ。当然、信頼に足るようなことはひとつもありはしない。同じ白色人種だということは見た目ですぐに判断できるけれども、彼がそんなことで此方に歩み寄ってきてくれるとはにわかに考えにくかった。無論、己だってそうだと、ジーノは改めて情報量の少なさに溜息を吐き出したくなった。
 けれども、今からその信頼を得る、もしくは別の何かを得ようとしているジーノは、エドワードが賭けに乗ってきてくれたことに一先ず感謝した。そもそも勝負が始まらないのでは、コミュニケーションも駆け引きもあったものではない。そうこなくては、と調子付いて、先程の溜息が肺で霧散する。

「ありがとうございます。そうですね、この場にあるものでしたら、私は経験がありますが……」

 にこりと人当たりの良いであろう笑顔を顔面に張り付けて、僅かに首を傾けて見せる。女性相手ならば多少はやりやすかったかもしれないな、と無粋なことを考えるのは、今はよしておこう。
 エドワードの移り変わる視線に釣られて、ジーノの目もその部屋の中にある遊戯の数々を捉えていく。既に遊ばれた形跡のあるダーツ盤とビリヤード台を通り過ぎて、未だ使われていない様子のトランプに目が留まった。そこで一度エドワードに視線を戻し、動向をチェックする。彼の方も何をするか決めあぐねているのか、目立ったサインは出してこない。
 ギャンブル――もとい、イカサマは、得意な方だ。手先が器用なのと、表情で嘘を吐くことに長けているのが功を奏して。そうやって生活資金を荒稼ぎしていた頃の記憶は、未だ煤を被ってはいない。当然腕が鈍っていることもないだろうと思うが、彼との勝負にわざわざズルをしてまで勝つ必要があるのかどうか。彼が今見ているトランプでは、イカサマがあまりに容易過ぎる。だからこそ、思考が一度其方に反れた。
 その場に沈黙が降りる。それからようやく、ジーノはエドワードの視線が別の何かに向いていることに気が付いた。その方向にあるのはチェス盤。白と黒に分かれた、見慣れたそれだ。

「……チェス、お好きですか?」

 抑えておきたい好奇心は、まるで少年のように。自らが好むそのゲームがそこに横たわっているのだと気付いて、ジーノは細めた目でエドワードを見て、僅かに上がるトーンでそう問いかけた。

>>エドワードさん、周辺ALL

4日前 No.84

ネリッサ @konronka ★iPhone=F5h0fHFTyr

【マリア・ヤーコヴレヴナ・アイトマートフ/1F階段前→ロボット保管室】

2階へ続く階段を、マーシャはじっと見つめる。先程から1段目に足をかけては戻し、かけては戻しを繰り返すばかり。新しい場所を探索して情報を集めよう。恐怖を振り切り飛び込まなければ何も始まらない。勇気ある自分の高らかな演説に、心には決意の光が灯る。しかしいざ踏み出すと、見知らぬ果実に触れるのは不安でしょう。悪くなっているかも知れない、毒が入っているかも知れない。弱虫な自分がそう囁いて、じゃあね、と決意さんは引っ込んでしまうのだ。

(だって、仕方がないじゃない……)

脳裏に浮かぶのは、見知らぬ誰かの見知らぬ記憶。自分とはかけ離れた境遇、かけ離れた感情、けれど無視はできない。マーシャにとってもはや、前世の記憶は親しみ深い同居人になっていた。

「マーシャにはマーシャがいちばんです。だけどマーシャが安全な限りは、あなたの未練を晴らしてあげたい」

マーシャの声に応じるかのように、足が軽くなっていた。ぎゅっと拳を握りしめ、2階へと駆け上がっていく。
傷んだ果実をかじるくらい、してあげたっていいよ。哀れで気高くて愛に溢れた、名も知れぬあなたのために。

コンコンコンとノックをして、2階の一室に入る。その部屋は異様だった。ホワイト・セルのその辺を飛んで回ってる白い塊。あのロボットたちが、所狭しと転がっている。ことさら異質なのは、見渡す限りの無機質のなかに、眩しいほど鮮やかな黄色がぽつんと存在すること。というか、先客だ。

「こんにちはティアさん。マーシャも、えっと、探索に来ました。何か手がかりは見つかりましたか? 」

いつ見ても子どものような彼。多分ティア・レーゲンさん。マーシャより少しだけ高い身長が、目線を合わせやすいし威圧感もないし、親しみやすい人。同時に、掴めない人でもあった。

>>ティアさん


【遅ればせながら二章参戦いたします。突然ですが絡ませていただきました、よろしくお願いします! 】
>>ティアさんご本体様

4日前 No.85

絡繰 @ne9rodoll☆V4.8X.AnvuQ ★wgm3NQbNwV_HAD

【シェリー・アリストラスト/自室→廊下】

 知らない場所に佇む自分、見慣れない景色、知らない人間、脳内に駆け巡る本当に自らの記憶なのかさえも分らないビジョン。本来の私を侵食するように覆ってくる其れらはあまりにも受け入れ難い内容だった。喧騒の中の遠くに佇む背中、それはあいつのものなのか、そうでないのかすらも今の私には検討が付かない。瞬間、耳を劈くように放たれた音は、日常を切り裂く予兆のような、不吉なものでしかなかった。

 ハッと目を開く。視界に入ったのは見知った我が家の天井でもなければよく分からない記憶の中の世界でもない。自分たちが閉じ込められた謎の研究施設の自室の天井だった。整わない息で肩が揺れたままその天井を見上げ静止する。言わずもがな、最悪の目覚めだった。意識が混濁し、動けないままに幾度か瞬きをすればその振動に額から汗の雫が零れ落ちる。今はその僅かな動きでさえも煩わしかった。整理の出来ないゴチャゴチャの頭は鉛より重く感じて、起き上がることさえも億劫だ。それでもこの最悪な気分からどうにか抜け出したいと、酷くゆっくりと起き上がる。ベッドから上半身だけを起こした状態で深く息を吐いた。自身を通り抜けるように吐き出された呼吸は少しばかり頭の中を換気する。

「勘弁、してくれ……」

頭を抱えながら弱々しく訴えるように呟かれた言葉は独りの部屋に吸い込まれていった。喉元に蟠る不快感を吐き出したがるかのように咳が出る。

 先日の至極愉快な盗人ごっこから既に数日経過していた。あれからあの部屋の主のティアとも、その場に居合わせたハローとも、ましてや共犯者であったアンフィニーとでさえも会話どころか顔も交わしていない。手に入れた情報と初めての経験への暫しの夢見心地はすぐに目覚め、再び退屈な実験体生活に戻っていこうとしていた。しかし、そんな退屈は許さないとばかりに、ついにあの毎日の投薬やら実験の効果の結果がまた出てしまったのだ。退屈でない、何かに興味関心を支配される状態は自分とっては願ってもいない状況なのだが、今回に限ってはとても歓迎出来ない変化だった。見覚えのない光景に会ったこともない人間の記憶。ただ単にそれだけだったらここまで疲弊する必要も無かっただろう。だけど、この頭に映し出される記憶は、余りにも今の自分には毒だった。其れは確かに過去に存在した事実だったかのように頭を流れるが、それが過去の自分が経験した事象なのだという確信は未だ得られない。自分の人生など、いつ何処に捨て置いたって構わないと思っていたが、また別の人生に支配されるのは話が別だ。自分が自分で無くなっていくような感覚は好奇を掻き立てられる奇妙なものでも、それと同時に抑えきれない恐怖心までも煽っていた。さらに、前世の記憶とやらは何故か余計な現世の記憶も引っ張り出して来る。例えその意図が向こうに無くても、それらは心に巣食っている余計なものを次々と私に思い出させていた。もう興味も無くなっていたはずの、あいつの背中が夢にまで出てきた前世の光景と被る気がして、必死に頭を振る。違う。あれはあいつじゃない。どうにも言うことを聞かない思考回路に苛立つ様に乱雑に髪を掻き乱す。痛みを訴える全身に異常な汗、明らかに身体は不調を訴えていた。

「そこまで弱くなったつもりはないのだがなぁ……。まったく、いつの間に私はこんな紙切れのような脆弱なメンタルになったんだか」

 自分を嘲笑うように笑みを貼り付け、苦し紛れの冗談を口にしながら何とかベットを抜け出す。二階が新しく開放されたことは勿論知っていた。何時もの自分なら喜んで真っ先に新地開拓をしようとする所だが、今はそんな気力もない。今まで自分の中でも滅多に訪れないと自負していた気分の落ち込みが纏めてのしかかって来るようで憂鬱さに引き摺り出されるようにまたため息が出た。重りを乗せられているかのような体を運び、最低限の身支度だけをして部屋を出る。少しでも気分を変えたかった。考え事を始めてしまえば、途端に訳の分からないビジョンの残骸に溺れて動けなくなりそうだ。幾ら虚勢を張っても、異常な感性を持っていても、大人のふりをしていても、結局はまだただの子供。与えられた問題へのキャパオーバーを起こしてしまえば、殻の中で燻るように悶えるだけだ。大人になろうにも過去の呪縛によってそれは許されない。永遠に殻の中で、燻った炎に焼き尽くされるのを待つだけ。

特に何処かに行く当てもないまま、ふらふらと覇気のない様子で廊下をほっつき歩くその表情は普段見せる自信溢れた自由な態度の時よりもかなり幼く見えるだろう。

ALL様>>
【かなり遅れてのスタートになってしまいましたが、二章参加させていただきます!どうぞよろしくお願いします。】

4日前 No.86

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_37U

【エドワード・ディルー/娯楽室】

娯楽室の椅子に余裕を持って腰かけるエドワードは今までこの真っ白な小さな箱にて恋焦がれていたギャンブルをついに身を寄せる事が出来、このまま一日中遊んでいられる程に彼は娯楽から泉の様に湧き出る程良い刺激を目一杯楽しんでいた。そして今、一番足りないと思っていたギャンブルの相手まで非常にありがたい事にこちらから現れてくれた。相手の名前はジーノ・レイフィールド。そんな彼とは今、最善な距離を取れていると言えよう。むしろエドワードはこの距離でしか人に会いたくはない。もしも、ジーノが自分との距離を縮めようと考えているのなら出来れば思い止まって欲しいと彼は切実に考え、心の中で寄りかかる事さえ許されない壁を非情に建てていく。
すると、ジーノからかつて自分が元の世界で見せた様な笑顔を振り撒いてエドワードに話しかける。どうやら、ジーノはこの場に在る娯楽ならば全て経験があるらしい。エドワードも大体の娯楽は経験済みであるがチェスの様なボードゲームは一試合にかなり時間がかかってしまうイメージがある為、ルール等は知っているが経験はあまり無い。ただし、現在時間に追われる事も無いこの空間ならばゆっくりボードゲームも楽しめるかもしれないと彼はかなり楽観的に考えていた。
直、ギャンブルについてのイカサマだが見破る事は積極的に行うが自ら行う事は少ない。イカサマをあまり行わない理由としてはなるべく他者とのトラブルを起こしたくないが故である。

「……チェス、お好きですか?」

すると、長い間チェスのボードを見ていたのもあるがダーツやビリヤード、トランプとはまた違う反応をジーノはチェスに見せてみる。恐らく彼の得意分野がチェスなのだろうとエドワードは軽く予想する。

「チェスはルールを一通り知ってる程度なんだけどね。それでも良いなら相手をして貰っても良いかな?」

そう言ってエドワードは落ち着いた様子ではあったが自ら進んで立ち上がり随分と綺麗なチェスボードの方へ歩き出す。見た目では全く分からないがエドワードは娯楽に飢えていた分、自分でも気づいていないくらいに娯楽に対してのみ積極的であった。

「まあ真っ白な部屋で前世の事を考えるよりこの娯楽室でギャンブルした方が自分の時間を有効活用出来るでしょ」

>>ジーノ・レイフィールド様、周辺ALL

3日前 No.87

リサ・リラ @papillon☆0uO5mlUpCUns ★sAbT0rwP1n_mgE

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2日前 No.88

冬野 @sweetcatsx☆e0aRNqDUyEM ★iPhone=VHGaT7ZbKj

【 ティア・レーゲン / ロボット保管庫 】

 沢山のロボットを眺めながら保管庫をあてもなく歩き回る。変わったものは何もない。ただロボットがあるだけだった。手がかりも何もなさそうだ。他の場所を探そうか、そんなことを思った時だった。

 僅か、鉄の匂いが鼻腔を擽ったような気がした。

「――――……あ」

 山積みにされた壊れたロボット。廃棄処分するものだろうか。その中にあるロボット、それを見たティアの目が僅かに大きく開かれる。唇から零れた声音。

 血がこびり付いたロボット。血、血、血、血。そうだ、そうだった。ぐるぐると脳内を駆け巡るような抑えきれない感情。

「そう、僕はあいつを――――――」

 がちゃん、と開かれた扉。その音にティアの思考が引き戻される。今のは一体、あれは自分の記憶ではない。違和感を抱きつつもゆっくりとティアは振り返る。ティアの表情はいつもと変わらぬ無表情だった。

「やあやあ、マーシャ。残念ながら何も。廃棄されるロボットばっかりでハイ気分にはなれそうもないねえ、……ふふふっ」

 唇から零れる通常運転な駄洒落と笑い声。手がかりを聞くマーシャにあの血で汚れたロボットの話は出来なかった。

>> マーシャちゃん、周辺おーる


(絡みありがとうございます!よろしくお願いします〜〜!)
>> マーシャちゃん本体さん

11時間前 No.89
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