Google
    
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▼レス(23) >>
★この記事にはショッキングな内容が含まれます。もし記事に問題がある場合は違反報告してください。

――華を愛でる獣は散るか?

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(595) - ●メイン記事(23) / サブ記事 (27) - いいね!(2)

群像劇 / 人×魔 / 契約 @syuginn ★HPzqP6MFXB_hqi

――――いつしか空は、あの日の夢の墓場になった。


 血が大地を湿らせている。
 刃のぶつかる音に怯えながら、夜明けを待つ者がいる。


「 ――――生涯で、最も腹立たしい夜だ 」


心優しき獣は、生まれて初めて牙を見せて吼えた。



( 契約だ。お前の力、喰らわせてもらう )


――されどそれは茨の道。


( それがどうした。切り裂けぬ茨などない )


――されどそれは袋小路。


( 愛の為に争い、愛の為に死ぬ。それは何も人間だけの専売特許ではない―― )



【閲覧ありがとうございます。
 王道ファンタジー好き! 異種族の愛おいしい! 人と魔の契約オーライカモンな方は、是非サブ記事へお越し下さい。まだメイン・サブ共にレス禁です。】

メモ2017/05/24 23:17 : 朱銀☆lXg/nRyFCsTU @syuginn★HPzqP6MFXB_eQU

※当スレは、同名の過去スレ[http://mb2.jp/_nro/15360.html]のリメイク版です。内容は一新されており、続き物ではありません。


  【 あらすじ 】


▽▲▽ 第一章・砂海の帝編 ▽▲▽


 魔の番人・砂塵のダタハを撃破した英雄は、死の砂海を前にサーヴァント達と再会を果たす。――否、“撃破”という言い方には語弊がある。ダタハを斃したのが英雄たちではないのは、誰の目にも明らかだった。

 

 そして、ダタハが今わの際に口にしたのは、英雄が一柱の女傑の名。どう考えても違和感の残る結末に釈然としない思いを抱えながらも、英雄一行は砂海船メルガへと乗り込む。

 

 砂海船の動力源は純度の高い魔力のみ。サーヴァント達は己の持つ魔力をガソリンの如くメルガへと注ぎ続け、メルガは膨大な魔力を吸い上げながらその巨体を死の砂海へ運び始めた。


 砂の波は思っていたよりも穏やかで、夜空には満天の星空。想像以上に優雅な船旅になるかと思われた。

 

 束の間の休息、団欒を楽しむ英雄一行へと、新たな脅威が忍び寄る――――。


  【 重要NPC 】……【 http://mb2.jp/_subnro/15566.html-12#a


  【 第一次募集 】


◆バキム・シャームス……【http://mb2.jp/_subnro/15566.html-16-17#a

 @耽溺のバキム

  [ 女性 / 砂漠都市サハァン出身 ]


◆ヒューゴ・グラディアス……【http://mb2.jp/_subnro/15566.html-18-19#a

 A痛哭のファティマ

  [ 男性 / 氷河都市グランシャ出身 ]

 

◆グローリア・ジャネット・ショーメイカー……【http://mb2.jp/_subnro/15566.html-20-21#a

 B暴虐のジェイド

…続きを読む(5行)

切替: メイン記事(23) サブ記事 (27) ページ: 1

 
 

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_hqi

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.1

エステル @captain1 ★SDED1rj6G1_dB9

【ヒューゴ・グラディアス/王都アルバロック 宿屋→ 灼熱の砂漠】

「もぉー、ジュールったらおっそいなぁ。すぐ帰ってくるって言ったくせに!もうすぐあれが来るのにさ」

宿屋の一室、一人の男が彼以外誰もいない部屋で愚痴をこぼしていた、というより叫んでいた。タートルネックにただのズボン、くすんだ色のファージャケット……おおよそ英雄と呼ぶ格好にふさわしくない軽装を身にまとった男は腕を組み、片頬を膨らませて怒りを露にしている。ヒューゴが帰りを待つ人物、それは双子の兄ジュールだった。どうしても一人で行かなければいけない場所があるといい、ジュールはヒューゴを残して出て行ってしまったのである。基本的に二人はいつも共に行動しているので、一人で行きたいと言い出したということは、よっぽど大事な用事があったのだろう。どんな要件か告げることなく出かけてしまったジュールに対し、ヒューゴはただでさえご立腹だが、このままではさらにヒューゴの怒りはたまりそうだ。なにせヒューゴには予感が、そろそろ”あれ”がくる予感がしていたのである。だからこそ、いつも通り腰にダガーナイフと鉤爪のロープを据えてせわしなく部屋のなかをうろうろしているのだ。

「ほら!やっぱり来ちゃったよ」

ヒューゴの視界に飛び込んできたのは白い蝶だった。それは自分達の使命の訪れを告げる使者、ヒューゴは白い蝶に近づくと顔を蝶へと差し出した。すると蝶はヒューゴの鼻先に止まる。小さな足がヒューゴの鼻をくすぐって、ヒューゴはくすりと笑みを浮かべた。目を閉じ蝶の柔らかな足の感触を楽しみながら、ヒューゴは白い蝶の言葉に耳を傾ける。砂漠都市サハァン……ヒューゴが故郷を出てから何度か行ったことのある場所だが、ヒューゴはあそこを自分の故郷である氷河都市グランシャと正反対の場所だと思っていた。一面同じ色の歩きにくい足場が限りなく広がる世界……その点は同じだが、一方は身を焼くほど熱く、一方は身を凍らせるほど寒い。あそこでヒューゴは初めてじりじりと身を焼く、という経験をした。あまり良いものではなかったが、それでもヒューゴにとっては未知の体験で、そろそろもう一度行ってみたいと思っていたところだった。白い蝶は次の使命を告げ終わるとヒューゴの鼻先から飛び立っていく。そして直後ヒューゴは浮遊感を覚えた。続いて閃光、酩酊がヒューゴを襲うがもとより目をつぶっていたヒューゴにはあまり影響はない。毎回身にふりかかるこの転移の感覚もそろそろ慣れてきた頃合いだった。

「ひゃー熱いねぇ」

目を開けるとそこに広がるのは限りなく続く砂漠、そして熱気。ヒューゴは開口一番、誰もが思っていることをわざわざ口にしたのだった。周囲に自分と同じように転移してきた英雄たちが並ぶ。各都市よりやってきた英雄達、容姿も性格も様々で癖のつよい人間ばかりだ。もっともヒューゴも例外なく癖の強い人間ではあるのだが。挨拶を交わす間もなく、英雄達のそばに魔法陣が現れる。そして召喚されたのはアヌビス神を模した魔、白い蝶によれば彼の名は砂塵のダタハというらしい。ダタハの後ろには砂海船メルガが静かに座していた。ヒューゴはダタハのほうを見るとおもちゃを見つけた子供のようににこりと笑う。

「わぉ!やることはとってもシンプルって感じだね!あいつを倒して船を手に入れる……僕、こういう単純な感じ、好きだよ!」

ヒューゴは腰にさすダガーナイフを両手でとると、くるりと回して構える。ジュールがいないのが少々気にかかるが、今は彼を待っている時間はなさそうだ。たまにはジュール抜きで敵を打倒するのも悪くないだろう。そして帰ってきたら来るのが遅い!と怒ってやるのだ。ヒューゴはダタハに向かって走り始める。通常ならば砂に足を取られうまく動けない場面だが、ヒューゴは自分の靴底にあたる部分の砂を凍らせ、足場を作りながら走っていた。熱波のせいで氷は瞬く間に溶けてしまうが、ヒューゴが通過する一瞬だけならばその形状は保たれたままだ。通常と変わらぬ速度でダタハに迫ったヒューゴは足元に氷の柱を発生させ、一気に体を宙へ飛ばす。そしてダタハの頭上にやってくると左手に持つダガーを突き出した。

「それじゃ、僕が一番のりだね!」

そう叫びながら重力のままヒューゴはダタハへと突っ込む。左手に持つダガーでダタハの黒槍を警戒しつつ、右のダガーでダタハの顔を切り裂かんとした。

>>周辺ALL



【メイン解禁おめでとうございます!シリアスな内容のスレに沿わぬ騒がしいやつかと思えば、その実わりと病んでいるヒューゴではありますが、どうぞよろしくお願いします!】
>>ALL本体様

1ヶ月前 No.2

マックス=シュトゥルム @sibamura ★o0W3VsenYO_t92

【マックス=シュトゥルム/王都アルバロック 下宿→ 灼熱の砂漠】

 人と魔族の争いが再開して幾日たったか、そのような中でも王都にして文化の中心であるアルバロックは人類の本拠として威容をたたえ、人々は活気に満ち溢れていた。いや、争いの渦中であるからこそ、人々はその日その日を懸命に生きているのかもしれない。
 そんなことを考えながら、男は大通りに面した2階建ての下宿の自室の窓から広場の喧騒を眺めていた。年のころは20代後半、背丈も顔立ちも取り立てて目を引くところのない黒髪の男、道ですれ違ったとしても数刻後にはその特徴を忘れてしまうようなごく普通の様相である。
 だが、その格好はいささか異様であった。動きやすそうな茶色のブーツに黒のスラックス、だが、その上、上半身に纏っているのはブルガリダインと呼ばれる胸甲の類だった。それも、騎士が好んで着るような装飾の入ったものではなく、地金の上に黒のさび止めの塗料を塗った非常に地味なもので、それが式典用ではないのが一目で分かる。いかに、人類と魔族の戦いが激しさを増そうとも町中でこのような武装をしているのはいささか違和感を覚える。そして極めつけは彼の持っている獲物である。刃渡り80センチほどの剣、いや、王都で一般的に流通している両刃の剣とは違い、片刃のそれは、彼の故郷で太刀といわれるものだった。

「……来たか」

 太刀の柄に巻く糸を閉めなおしながら彼、マックスが呟いた。見ればどこから入ってきたのか、白い蝶はいつの間にか彼の肩に止まっている。そして、その蝶から発せられたメッセージにマックスはやや顔を顰めた。

「砂海か。せめてもう少し早く場所が分かれば対策も練れるんだが。仕方ないか……くぅ」

 彼が十分な準備ができないことに不安を口にしていると、白い蝶から舞い降りる鱗粉が彼を目的地へと誘う。毎度のこととはいえ、方向感覚がおかしくなるような浮遊感には慣れないらしく、苦し気に呻きながら目を閉じた。
 だが、その違和感も一瞬のこと、刹那の後には足元に地面の感触を感じてマックスを目を見開いた。

「ここが、砂海か」

 目を開けば焼けつくような暑さと照り付ける太陽、そしてどこまでも続いていそうな砂の海が広がっていた。いきなりの眩しさに目を慣らす意味でもあたりを注意深く見れば、他のメンバーも自分同様に転移しているらしい。だが、

「俺たちだけか」

 彼らと契約を結んでサーヴァントである魔族たちの姿が見えない。別のところで様子をうかがっているのは、それとも、

「何か事情があるのか……むっ」

 彼の思考を中断させるかのように、羽虫が群れるような音が徐々に大きくなっていく。そして、その音の中心へと砂が集まれば、瞬く間に犬の頭をもった魔物が形成されていく。その形成過程を見ながら相手の正体を彼が考えていると、

「って、おい。いきなり策もなく……って聞いてないな、あれは」

 不安定な砂の足元もなんのその、相も変わらずの健脚を、見せつけつつヒューゴが颯爽と敵に向かって疾駆したのだ。いきなり敵に突っ込んでいくその様子にやや呆れながらも、マックスもまた行動を開始する。体の各所に装着しているクナイを一つとると、それをダタハに向かって投擲したのだ、その狙いはヒューゴ同様に顔……ではなく、ダタハの持つその漆黒の槍。空中に浮いたヒューゴが迎撃されないよう槍の動きを阻害することが目的だった。

>>ALL様 ダタハ様 ヒューゴ様


【メイン解禁おめでとうございます。とりあえず書き込ませていただきました。みなさんこれからよろしくお願いいたします】

1ヶ月前 No.3

たわら @tawara529 ★Android=SuicAIZBc6

 とある宿屋の一室。床の上で胡座をかき薙刀の手入れをするのは、全世界胡座の似合わない女選手権トップ10入りしてそうな風貌の女――グローリアである。
 彼女は決して薙刀の手入れは怠らない。今日という日は戦闘の気配を強く感じたのでいつもよりも念入りに手入れをしているが、そういった特別な日を除いてもほとんど毎日、戦闘で使ったあと以外にもせっせと磨き、今やその刃の輝きは美術品のようになっていた。何せ鞘が無いものだから、頻繁に手入れをしないとその切れ味はすぐに鈍くなってしまう。本来グローリアの腕力をもってすれば、どんな鈍を使用しても人や人に近い構造の魔族程度なら無理矢理断ち切るという事も決して不可能では無い。しかし、相手に必要以上の苦痛を与えるのはグローリアの信念に反していた。例外はあるが出来る限り1発で仕留める事を心掛けている彼女にとって刃の切れ味が悪いというのは最早死活問題に等しいのだ。ある日突然切れ味が悪いからという理由で戦線離脱なんて洒落にならないし、そうならない為にも彼女はいつものように刃に打粉をたたき、満遍なく油を塗る。譲り受けたばかりの頃は良く打粉で噎せたり油を塗りすぎたりしていたが、今ではもう目を瞑ってでも手入れができるくらい慣れ親しんだ作業になっていた。

 あらかた作業が終わり、外の空気でも吸いに行こうと手入れをしたばかりの薙刀を杖のようにして立ち上がる。ついでにヴィヴィアンも誘って買い食いでもしようかと目線をうろつかせて特徴的なピンク髪を探したがその影すらも見当たらない。手入れを始める前は近くにいたような気がしていたがそれも気のせいだったらしい。マイペースな彼の事だからまたどこかを散歩しているのだろうと検討をつけて出かける支度を始めた。
 ナックルを指に嵌め、いつもより動きやすさ重視のシンプルな黒いカクテルドレスを身に纏い、現金の入ったクラッチバッグと手入れを終えたばかりの薙刀を手にして、最近購入した真っ赤なハイヒールを履こうとシンデレラの如く優雅に脚を伸ばす。ハイヒールに足をいれたまさにその時、グローリアの瞳は白い蝶を映した。

「あ……蝶々さん、今日もお疲れ様です。……とまるの、そこで良いんですか?」

 ひらりひらりと花弁のように舞っていた蝶は、グローリアの頭の上で翅を休める事にしたらしい。苦笑するグローリアを意に介す事もなく、今回の使命が告げられた。砂漠都市サハァン、砂海船メルダ、砂塵のダタハ。ある程度の情報を脳にインプットし、凄まじい速さでハイヒールを脱ぎ捨てる。代わりにシューズボックスの中からヒールが太く短いロングブーツを取り出し、急いで履き替えた。

 グローリアは特別な日の特別なお洒落が好きだ。好き過ぎて普段着をパーティードレスにしてしまう程度には大好きだ。高いヒールを好み、煌びやかな小物を愛する。故に、おろしたての靴をわざわざ砂まみれにするのは愚か者の行為だと認識していた。グローリアは時に馬鹿者であっても愚か者ではない。

「ハイヒールで買い食いしたかった……」

 飛び立った蝶の鱗粉を浴びながら悲しそうに呟いた頃には、彼女の体はもう部屋からは消えていた。

 閃光。暗転。
 浮遊感が消え、地面に立っている感覚を確認してから目を開く。女子の天敵紫外線がこれでもかと降り注ぐ中、グローリアは目を細めて空を見上げた。上下左右とにかく暑い。生まれ故郷も決して涼しいところではなかったが、それにしたってここは暑すぎる。1時間じっとしていたら中までじっくり焼かれてしまいそうだ。

「あれ、確かに私達だけですねぇ。ししょ――ヴィヴィアンもいないですし」

 マックスの言葉でふとサーヴァントの存在を思い出し、その姿を探すようにくるりと一回転してそう呟いた、その時。低く唸るような、虫の羽音にもファンが回る音にも聞こえる決して愉快ではない音が耳に入る。異変を感じ、薙刀を構えながら注意深く辺りを見回すと、砂上に魔法陣が描かれている。急速に砂が集まり、なにか明瞭な形を作ったかと思えば、そこには3mを優に超える魔の者――白銀の蝶がいうところのダタハが鎮座していた。

「大きいですねぇダタハさん……これは死人さんたちコンマ1秒でやられちゃいそうです」

 その姿を確認すると同時にヒューゴが突っ込み、マックスはそれを援護するかのように黒槍に向かってクナイを投擲した。それを認めたグローリアは、ダタハの死角になるであろう背後に接近し、普段よりも数十センチ大きい2メートル前後の死人を5体生成する。グロテスクなそれは砂に足をとられながらも緩慢な動きでダタハへと忍び寄り、毒の染み出た歯で噛み付かんと口を大きく広げた。

>>周辺all様


【書き込み遅くなってしまって申し訳ありません〜! メイン解禁おめでとうございます! これからよろしくお願い致します!】

1ヶ月前 No.4

キープ @keep10 ★B1vJ6I1z8y_8Yr

【バキム・シャームス/王都アルバロック 宿屋地下一階賭場→灼熱の砂漠】

「悪いね、ストレートフラッシュ。私の勝ちだ」

 他の参加者から一様にため息が漏れる。老齢のディーラーは静かに、しかし冷静に勝者を見ていた。一見すれば整った顔立ちをしている男性にも見えるが、体つきや仕草に女性らしさが伺える。しかし服の上からでもわかる背中の起こりや指に見受けられるタコの痕から、並みの鍛え方はされていないことが想像できる。いや、刮目すべきはこの女が持つギャンブルの才能か。ポーカーはルーレットやバカラよりも技術や経験がモノを言うギャンブルだ。運の良さもそうだが、相手へのブラフのかけかたや対戦者の心理を読み解く洞察術、逆に読まれないようにするポーカーフェイス。何より自分が思い描いたプランが正しいかどうか信じる胆力はここ数年でトップクラスである。よほどの修羅場、それも死線を潜ってこなければ得られない勘働きである。
 そんなディーラーと他の参加者の視線を集めながら、バキム・シャームスは文字通り悠々と勝利の美酒を味わっていた。ゴクリゴクリと喉を鳴らし一息にジョッキの中のビールを飲み干す。見ていた参加者も思わず喉を鳴らすほど豪快で美味そうな飲みっぷりだ。たまらず一人はボーイにビールとツマミを注文する。しかしバキムの頭はあくまで冷めていた。いくらアルコールが入ろうと、酩酊感を感じない。命のやり取りの前の、あの独特の感覚。朝方起きた直後からその胸騒ぎを覚えていたバキムはすでに旅立てる準備を整えていた。武器の手入れに矢の補充、携帯食料と水に酒、薬や戦闘で使う毒など。そしてもしかすれば最期になるかもしれない娯楽へと興じていた。

「やっぱり来たね、今度はもう少しましな場所に移しなよ?」

 呆れ顔のバキムが呟くと、いつの間に入り込んでいたのか白く美しい蝶が一匹、バキムの手の甲に止まっていた。そして蝶からの次なる魔窟の位置を聞いた時、バキムの顔がすっと真顔に変わる。場所は自分の生まれ故郷砂漠都市サハァン。しかしその西南の地は地元の人間ならまず訪れないまさに魔境なのだ。曰くあの砂海の中には魔獣が住み着いており、足を踏み入れた人間を食らっている。曰く、地獄の底から噴き出した漆黒の水がオアシスの代わりにあり、その周辺は炎に包まれている。曰く、砂海にはお宝が眠っておりそれを守るために化け物が潜んでいる。曰く、曰く曰く。あそこの怪談話や噂話は子供のころから嫌というほど聞かされてきた。しかしそんな出鱈目な話の中に一つだけ子供心に感動したものがあった。

――むかしむかし、魔族の王様とヒトのお姫様が共に恋をし、そして様々な問題を乗り越えついに結ばれました。古くから戦争をしていた魔族とヒトはそれから平和になりました。彼らの結婚を祝ってヒトと魔族は力を合わせて、砂の海を渡る魔法の船を造りました。でも、お姫様はそれに乗ることなく死んでしまいました。魔族の王様はせめてものと思い、船首像をお姫様そっくりに作らせ、夜の砂海をその船で渡りました。満月に照らされた砂海の景色は幻想的で魔族の王様は「君にも、見せてやりたかった」と呟きました。その時、今まで何の変哲もなかった星空が瞬き始め、数千の流星が王様の頭上を通過していきます。まるで王様の声に答えるように降り注ぐ星の雨をみて、王様は涙を流しながら喜びました。


「……まさか、お伽噺の物だと思ってたけど本当にあったんだねぇ」

 蝶から砂海船メルガの話を聞き、かつて自分が子守歌代わりに聞いていたお伽噺を思い出し少しうっとりした表情を見せる。しかしその直後降り注いだ鱗粉に我に返ったのか慌てて荷支度を整える。

「あ、ディーラーさん。悪いけど今回の私の取り分、アンタに預かっててもらいたいんだけどいいかな?」

『え? 構いませんが、どちらに行かれるのです?』

 ディーラーの問いに少し考えた表情を取り、そして悪戯っぽく微笑む。

「ちょっと世界を救ってくるわ!」

 キョトンと目を丸くしたディーラー含めポーカーの参加者の前からバキムは姿を消した。一瞬眩い閃光が見えたと思ったら、影も形もなくなってしまったのだ。ただ彼女がいた証拠に、うず高く積まれたチップの山とビールの代金が残されていた。



「この景色も久しぶりねぇ。あれ? あ、本当あいつらどうしたのかしら」

 いつもの浮遊感が消え、地面に降り立った瞬間に感じる強い日差しと照り返る熱気。かつて日常と感じていた故郷の気候に懐かしさを感じながら、他の英雄の言葉にあたりを見渡す。確かにいつもは自分たちとともにいるサーヴァントが今日はどこにもいない。そういえば今朝からバラムの姿が見えなかったが、またいつもの酒場で手ごろな女を漁って朝帰りだろうと思い気にもしていなかった。
 そんなことを考えていると、砂上に大きな魔方陣が描かれていく。咄嗟に背中に担いでいたショートボウを構え、矢を番える。その魔方陣から浮き出してきたのはこの地方の神話に出てくる犬の頭を持った二足歩行の獣人によく似た魔族、砂塵のダタハ。ずいぶん罰当たりなと吹き出しそうになっていると、早速ヒューゴが突っ走り敵の頭上へと跳びはねる。相変わらず常人離れした脚力と跳躍力だ。彼が盗賊の一団に入っていたらそれこそ名の通った人物になりえただろうに。続く二人もダタハの攻撃を警戒しながらも各々攻撃を仕掛けていく。

「こう無鉄砲なのも若さゆえかねぇ……」

 一人ため息をつきながら、バキムはあたりを警戒する。あの蝶は砂塵のダタハの名を言っていた。現に今この場にはあの魔族しか姿を現してはいない。しかし、仲間もしくは眷属としている下等魔族が近くに潜んでいる可能性も十分にある。なによりダタハが単純な武力による攻撃しかしないという保証はどこにもない。自分たちと契約したサーヴァントにも特異な能力が一つずつ備わっている。ダタハにそれがないとは言い切れない。バキムはゆっくりと弦を引き搾りながら広大な砂漠を見渡した。

>>周辺ALL様


【本編開始おめでとうございます。出遅れましたこと本当に申し訳ございません。これからよろしくお願いします。それと砂海船メルガにちなんだお伽噺を作ってみましたがスレ主様的にはどうでしょうか。「いや余計なことすんなよカス」と言われましたらもうなかったことにしてくださいお願いします】

>>スレ主様

1ヶ月前 No.5

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_hqi

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.6

エステル @captain1 ★SDED1rj6G1_8Yr

〔ヒューゴ・グラディアス/灼熱の砂漠〕

ヒューゴが勢いのままに放った斬撃、ヒューゴの突発的な行動に合わせてマックスが投擲したクナイ、死角から迫る死人……三方向からの攻撃にダタハがどのような行動をとるかと思えば、答えはいたって単純だった。全方位に向けた同時攻撃、しかもそれを三連発。ヒューゴはゲッ、と顔をしかめると攻撃を中断し腕をクロスさせる。同時に自分の体を氷の球で覆った。一回、二回、三回、氷の球は砂の壁に突き上げられ、そのたびに球の中にいたヒューゴの体は揺さぶられた。ダタハの攻撃の波をなんとか耐えきり、地面へと戻ってきた氷の球は着地と同時にパキンッと音を立てて割れる。中から転がり出てきたヒューゴは砂の上を2・3回転するとようやく尻もちをついた体勢で止まり、頭の砂を払うようにぶんぶんと頭を振った。

「ちょっと!全方向なんて、そんな攻撃ずるいよ!もぉ、後ろの死人たちどころか僕のこと見てもなかったくせに……その目は飾りで全身が目にでもなってるんじゃないの?!」

氷の塊の中で振り回され軽くふらつく頭の八つ当たりをするように、ヒューゴはダタハに向かって叫ぶ。あの様子ではヒューゴの煽りは全く持って意味をなさないだろうが。そもそも氷の球で防御をすることを選んだのはヒューゴなのである。あれが球ではなく壁であったのなら、ヒューゴが氷の球のなかゴロゴロ転げまわることもなかっただろう。ヒューゴが叫んでいる間ダタハはバキムへと襲い掛かり、その強襲をテオが防いでいた。テオの魔獣化した手と尻尾がダタハ越しに見える。赤いものは見えないので怪我はしていないようだが、テオは押され気味、といったところか。ヒューゴは体に勢いをつけて立ち上がる。直後、この場に新たな乱入者が現れた。といってもそれは砂時計で、ヒューゴ達に危害を加えてくる様子はない。”まだ”危害を加えていないといったほうが正しいのだろうか。あれにももちろん対処しなければならないだろう。そしてヒューゴはそれを一手に対処する術をジュールの存在によって得ていた。ヒューゴは駆け足で砂時計へと近寄る。早くしなければ、ダタハがバキムとテオを再び襲うだろう。

「時間よ止まれ!なんてねっ」

ヒューゴは勢いよく両手を広がると片手は砂時計に、もう片手は地面へとかざした。ヒューゴの手から冷気が噴き出し凍結が広がっていく。ヒューゴは砂時計を凍らせ、砂が落ちるのを食い止めようとしたのだ。もちろん、砂時計に異能の耐性があれば意味のない行為だが。そして同時に、地面へと放たれた凍結はまっすぐとダタハへと向かう。そしてダタハの周辺にある砂とダタハの足元を凍らせたのだ。こちらは異能の耐性うんぬんの前に熱波でものの数秒も立たないうちに溶けてしまうだろう。だが一時でも砂を凍らせダタハの足を固められればいいのだ。その一時の間、ダタハの砂塊による攻撃を封じ、なおかつダタハの逃げ場をなくす。ヒューゴの位置からでは攻撃が届かないが、テオとバキムならどうだろうか。ダタハはあらゆる方向からの攻撃を防御し、回避してみせた。それならば、回避できない状態をつくるまで。ヒューゴはテオとバキムのほうを見やり、パチンとひとつウィンクを送った。その行為には『あとは任せたよっ』の意が込められていた。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.7

キープ @keep10 ★B1vJ6I1z8y_8Yr

【バキム・シャームス/灼熱の砂漠】

「……おかしい」

 今まさに死闘を繰り広げているテオの後ろで、バキムは呟いた。この地へ飛ばされ、砂塵のダタハの登場。ヒューゴを筆頭に仕掛けた先制攻撃とその対処。一連の動きを見ていたバキムはその違和感に苛まれていた。組み合っている二人から少し離れた場所に移動し、その場に胡坐をかいた。荷物の中から羊の内臓で作った水筒を取り出し、その中身を一口飲み干す。無論中身は酒であり、程よく冷えたアルコールが火照った体と脳をクールダウンさせる。酔っているためかトロンと据わった眼をしていたバキムが、すっと目を閉じた。深く物事を考える時の、バキムの癖である。頭の中に渦巻いている疑問に一つずつ向き合っていく。

 一つ目、砂塵のダタハについて。まず自分たちの前に姿を現した時から何かが引っかかっていた。あの蝶曰く、ダタハは砂海船メルガを守る番人としてこの地にいるらしい。しかしてその番人が放った一言とは『ここより先は何人たりとも通さぬ云々』でも『我が命を賭けて貴様らを葬る』でもなく『――――来たか、ヒトの英雄よ。さあ、私の渇きを癒しておくれ』。おいおい番人の癖に職務放棄ですか、仕事中にプライベートなお願いほざいてんじゃねぇよとツッコミたくなったものだ。
 登場の仕方にも不自然な箇所が見受けられた。ダタハの攻守そろった攻撃を見る限り、彼の能力は『砂を自在に操ることができる』と仮定する。なのになぜあの時、我々に奇襲を行わなかったのか。警戒していた自分を含め、比較的勘のいい前衛たちにもあの砂の攻撃は予想外だった。転移直後、警戒心の薄かった自分たちはまさに絶好の標的だったはず。そんな卑怯な戦法を嫌う者なのだろうか。登場の仕方はまさに堂々たるものだったし、あそこから『やぁやぁ我こそは〜』と名乗り口上を唱えても違和感はなかった。しかし出てきたのは無感動無感情無表情の三無い運動の権化。誇る自尊心もなければ闘気も殺気も感じられない。自分に向かって突き出した槍にすら、これといった感情が見受けられなかった。まるで、そう広場で行われる旅芸人のマリオネットのよう。砂に浮き出た魔方陣から出現したのも、転移魔法というより誰かが『召喚』したようにも見える。

 ここまではただの仮説にすぎない。『第三者』の影があるという想像はできるが断定はできない。そう思わせる敵方のミスリードの可能性だって否定できなかった。だが――バキムは目を開け、あるものを見やる。この砂漠に突如出現した砂時計。まるで年老いた職人が丹精込めて作り上げたような、美しく飾り付けられたその砂時計を見て、バキムは考え抜いた仮説を立証するまでに至った。『魔族は基本一つの能力しか持てない』。砂を操っていた目の前のダタハに、あの質量の物体を出現・具現・作成することは原則不可能なはず。それを今から確かめる。


 バキムはまず手に持った弓を置く。矢筒を置き、右腰に備え付けられていたナイフもその場に置いた。完全に無防備な状態で、バキムはあろうことかダタハへ近づいていく。自分へ危害を加えようとする者への対応は十分だった。正直隙というものが見受けられないほど、完璧だ。ならば、敵意を持たない者が近づいた場合の対応は。ヒューゴの能力だろう。ダタハの周辺に氷が張られていく。しかしそれもサハァン特有の熱波により出現した直後から溶け始め、砂を濡らしていく。空気の温度差だろうか、氷に足を踏み入れたバキムの姿が一瞬ゆらりと揺らいだ。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.8

マックス=シュトゥルム @sibamura ★o0W3VsenYO_AkG

【マックス=シュトゥルム/灼熱の砂漠】

 自分を含めて英雄たちによる三方からの攻撃、しかしそれは、ダタハの周りから出現した熱砂の防壁によってあっさりと阻まれてしまう。とはいえ、比較的離れた位置にいるマックスには攻撃の害は及んでおらず、むしろ攻撃を防ぐその挙動を観察しながら相手の正体を探ろうとしていた。

「私の渇きを癒しておくれ……か」

 彼が注目したのは、バキムと同じダタハの言葉。確かに職務放棄はなはだしい言葉ともとれるが、言葉の意味を意味を考えてみると多少違った見方もできる。
 この砂漠の中で得られる渇きを癒すもの、すなわち液体とは何か、である。オアシスも何もないこの辺りにある液体の一つは彼ら英雄の体液、すなわち血である。つまりダタハの言葉は彼らの血で自らをうるおせともとれる。それはいいのだが、問題はその声がどうもダタハから発せられたようには聞こえなかったことだ。どこか違うところから、

「試してみるか。」

 彼が脳裏に描いたのは自らのサーヴァントのこと。彼の契約相手であるシャッテンは普段は人の形を模っているが、その実、本体は漆黒の球体であり、人の形は影を操って纏っているにすぎない。つまり、魔族の本体は見た通りとは限らないということだ。ダタハは砂を操る能力を持っているらしい、だとすれば目の前の怪物もまた操られた砂で作られた人形である可能性もある。そこまで思考して一言呟くとマックスは岩場に隠れた。しかし次の瞬間、彼の姿はかき消えていた。
 その間にも事態は急転する。
 バキムに襲い掛かったダタハをテオが迎え撃つ。
 そして、突如として出現した謎の砂時計とダタハに向かってヒューゴの冷気が襲い掛かる。
 そして、ダタハの眼前には無防備に近づいていくバキム
 そして、それらを迎え撃つダタハ
 そして…………

「ここだ!」

 それらが邂逅している最中、マックスが何の前触れもなくダタハの背後から、否、3mを超す巨体の真下から現れた。

「でかいやつは影が大きくていい」

 そう、彼は岩場の影の中に潜り、影から影を渡ってダタハの影の中に移動していたのである。巨体の真下、通常は完全な視界の死角である。もっとも、ダタハの目が見た目通りの位置にあるならばであるが。
 突如として出現したマックスが狙うのは先ほどと同じく、その漆黒の槍、先ほどとの違いはそれが牽制のためのクナイではなく。

「しっっ!」

 刀による抜き打ちであるということだった。わずかに息を吐きながら、足を踏み込み、腰を回し、腕を振るい、全身の力をその一刀に宿す渾身の居合。必滅の意志を込めた一撃は、ダタハの体ではなく、その黒槍へと浴びせられた。

>> スレ主様 ALL様

1ヶ月前 No.9

たわら @tawara529 ★Android=SuicAIZBc6

【グローリア・ジャネット・ショーメイカー/灼熱の砂漠】

「いやちょっとくらい攻撃受けてくれても良くないです? 噛み付くなんて可愛いもんじゃないですかぁ。ばーかばーか!」

 頬を膨らませてダタハへと文句と野次を飛ばす25歳の姿は最早可哀想にも見えてくる。語彙が完全に小学生のそれだが本人は気がついていないらしい。
 叩き潰された程度では消滅しない不死身の軍は、砂の中から本物のゾンビのように起き上がって同じように攻撃をしようと各々口を広げたり手を振り上げたりしようとする。またダタハの砂によって潰されてしまうのは目に見えているが、1回でも攻撃が当たれば数分後動きを止めることが出来ると踏んでいる彼女は、1体でも死人が攻撃を加えられるように薙刀を構え、ダタハの背中を切りつけようとと構えた。
 しかしその動きもすぐに止め「待って」と死人も静止させる。その言葉に反応して死人は動きを止め、砂の中へと還るように消えた。
 彼女の視界に入ったのは、先程確実にダタハに狙われたバキムが武器を置いて彼の者に近づいている様子。

「バキムさん? なにしてるんですかまた襲われちゃいますよ!」

 身振り手振りを交えながら慌てた様子でそう叫ぶ。その間にも決して良くはない頭をフルに回転させながら彼女の行動の意図を探っていた。
 聡明な彼女の事だから、きっと武器を置いたのもあまつさえそんな無防備な状態で敵に近づくのも意味があるに違いない。その意味がなんなのかまではグローリアが考え付くには至らなかったが、意味があると分かっただけでも十分だ。

「……私そちらさんには手ぇ出しませんので! どうかご無事で!」

 そう叫んでから向かうのは突如出現した巨大な砂時計。砂の上に数秒で消える死人を生成しそれを踏んづけながら移動するというとんでもない絵面で目的の場所へと向かうと、砂時計が氷漬けになっている。元のデザインも相まってこの世のものでは無いと思えるほど美しい砂時計へと変貌していたが、それを鑑賞しているほどの余裕はない。

「……壊したらまずいやつですかね、これ」

 言うが早いか氷が薄い部分を薙刀で思い切り突いて様子を伺うようにこわごわと中身を覗き見た。

>>周辺all様



【ごめんなさい完全にうっかりミスですお恥ずかしい!!! 今回から気を付けます……!】

>>主様

1ヶ月前 No.10

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_hqi

[ 砂塵のダタハ / テオ・サファード / 灼熱の砂漠 ]


 乾燥と高熱を体現したようなこの砂漠に、金属と金属がぶつかり合うけたたましい音が一つ鳴り響き、一呼吸置いて、砂に何か質量のあるものが突き刺さる音がした。マックスが影から振り抜いた太刀が、ダタハの手から黒槍を弾き飛ばしたのだ。しかしそれでもなお、ダタハはマックスへと目もくれず、己の得物が手元からなくなったことに対して一片の動揺も見せない。まして、ヒューゴの氷が自分の足場を凍てつかせ、機動力を大幅に削られたことすら歯牙にもかけない。ダタハは、その場から一歩も動くことなく、ただ左手の指先をすっと地面に向ける。ただそれだけの挙動で、瞬く間に己の背後の地面――つまり、マックスが立っている直下の足元の砂が、激しい勢いで陥没した。さながら、マックスは元から落とし穴の上に立っていて、ダタハの指先の動きを合図にその落とし穴が起動したかのようだった。足場が悪いため、跳躍で落とし穴を回避するのは難しく、しかしもし落ちてしまえば、触れるだけで容易に崩れ落ちる砂の奈落から這い上がってくることもあたわず、砂に生き埋めにされてしまうだろう。
 ダタハは上記のようにしてマックスの追撃への対策を講じ、グローリアやヒューゴの野次っぽい罵声を涼しい顔で受け流しながら、眼前に迫りくるテオの魔獣の拳を、同じく砂塊の拳で相殺する。ふと、さきほどマックスに弾き飛ばされ、少し遠くの砂面に突き刺さった黒槍が文字通り砂に変質しサラサラと風に流され消えたかと思えば、再びダタハの手元に新たな黒槍が具現する。ダタハは己の手に取り戻した黒槍を、無防備な状態で近づいて来るバキムに対して突き付けた。逆に言えば、突き付けただけ。丸腰で歩み寄って来るバキムを殺す絶好のチャンスであるはずなのに、ダタハはバキムに対して直接的な攻撃行為は仕掛けず。ただその代わりに、バキムの足元の砂が、意思を持った蛇のように、質量を伴ってバキムの身体中を這い登り、大蛇が得物を絞め殺すかの如く圧力をかける。それはすぐに人体を殺傷たらしめるほどの強さではないが、満足に呼吸をするのは難しいほどの力で。仮にバキムがこの砂の呪縛を振りほどこうにも、この場に砂は無限にある。足掻けば足掻くほど、より大量の砂で動きを封じられるのが落ち。彼女は、それが分からぬほど馬鹿ではないはずだし、無防備な状態で敵の前へと進んだのだから、この程度のリスクは考慮したうえでの行動だったのだろう。テオは、バキムを解放せんと再びダタハへの攻撃を試みるが、大柄なテオを超える質量の砂塊を叩き付けられ、さきほどマックスがダタハの黒槍を弾き飛ばしたのと同じように、小気味良くふっ飛ばされ、ちょうど砂時計の周囲に集まったヒューゴとグローリアの近くに着地した。

「――――あいつ、殺す気ない。……たぶん」

 獣のようにぶんぶんと頭を振ってから、炎天下での戦闘に肌を滴り落ちる汗をぐいっと拭い、テオは呟く。それがヒューゴやグローリアに語り掛けた言葉なのか、自分に言い聞かせた独り言なのかは判断できないが。テオは、ちらりと砂時計を横目で一瞥する。ヒューゴが凍らせることに成功したのは砂時計の外面だけだったようで、内部の黒い砂は変わらずサラサラと時を刻み続けている。ただ、外部を凍らされたことで、少しだけ砂の落ちる速度が落ちているようにも見える。ふと、テオはヒューゴの肩にそっと手を添えた。

「これ、凍らせない方がいい。俺たちに悪いことしない。むしろ――、」

 ゆるゆるとかぶりを振りながら、ヒューゴに砂時計を凍らせた能力を解除することをふんわり勧める。この砂時計が自分たちに害を及ぼさないという根拠を発見したわけではなかった。しかし、テオの持つ野性的な勘は群を抜いていることは、英雄たちならば知っていることだろう。テオは、砂時計の持つ不思議な雰囲気を形容する言葉を見つけられずに、喉に言葉を詰まらせた。
 次の瞬間、砂が意思を持った怪物のように地面から立ち昇り、具体的な形を成さないまま、ヒューゴ、グローリア、テオの3人目掛けてなだれ込むように襲い掛かる。それは刃物のように触れるだけで人体を傷つけるものではないが、言うなれば土砂崩れのようなもの。呑み込まれれば命の保障がないことは、容易に判断できるだろう。

 ――砂時計に残された砂は、あと5割。


>>ALL



【『――――来たか、ヒトの英雄よ。さあ、私の渇きを癒しておくれ』の台詞は、ダタハが言ったものではないですよ!その直後に『響き渡ったその声は、目の前の魔が発したものではなかった。』と表記してあります。紛らわしい書き方ですみません/汗/それと、前レスでバキムさん個人宛ての攻撃行為を表記しているので、それへの対応ロルも回して頂ければと思います。次レスからで構いませんので、自分宛ての行為や言行へのレスポンスはきちんと心掛けて頂ければ幸いです……!/礼】

>>キープ様

1ヶ月前 No.11

エステル @captain1 ★SDED1rj6G1_8Yr

〔ヒューゴ・グラディアス/灼熱の砂漠〕

「むぅ……」

ヒューゴは砂時計に手をかざしながら、5人の英雄の誰もダタハに有効打を与えられていないこの状況にやきもきしていた。かといってダタハのほうも決定打を打って誰かを殺そうというそぶりも見せない。先ほどの状況であれば首でもつけば簡単にバキムの生命は終わったのに、なぜか急所を攻撃していない。白い蝶によればダタハは砂海船を守る番人、であれば船を奪おうとしている自分達を殺そうとするのが筋なのではないだろうか。これではまるで……。そうやって思考を巡らせていると、テオがヒューゴの近くに落ちてくる。犬のように頭をふるテオにヒューゴはくすりと笑うも、直後テオから漏れた呟きに顔を真剣なものにさせる。『殺す気はない』テオの勘はずば抜けている。それはこれまで数回ともに行動したなかで十分わかっていた。それにテオの言葉通りであれば、ダタハの妙な行動も辻褄はあってくる。問題は『なぜ殺す気がないのか』にたどり着くわけだが。だがヒューゴの中でひとつ思い当たる節があった。テオがヒューゴの肩に手をかけ、つづけた言葉からもその可能性はあり得るものになってくる。ヒューゴは砂時計にかざしていた手を下した。同時に砂時計をまとっていた氷は解けていく。

「君の勘は文字通り獣の勘だもんね。僕は君の勘を信じることにするよ。あの砂時計は僕たちに悪いことをしないんだよね?でもさ、君が言い淀んでるってことは単純に僕達に良いことをするものでもない。ちょーっと僕思ってたんだけどさ、砂の波にお手玉みたいにはじかれて、殺す気はないのに戦闘させられて……これじゃまるでここにいない誰かに遊ばれてるみたいじゃない?」

ヒューゴはこの場に似つかわしくない軽い口調でテオとグローリアに自分の考えをペラペラとしゃべった。ダタハは砂の番人であるはずだ、にもかかわらず自分達を殺そうとしない。そもそもダタハが召喚された際にダタハではない誰かが自分達に話しかけてきているのだ、誰かがこの場所を見ていると考えたほうがいい。誰かが高みの見物を決めて5人の英雄と番人ダタハが戦闘する様を見ている……それは英雄を試しているのか、それとも血沸き肉躍る戦闘がみたいだけなのか、それはわからない。だが、ダタハを召喚した主が何かを渇望していることは確かで、それに英雄達は必要な存在なのだ。だからこそ、自分達を殺さないでいる。

ヒューゴがテオとグローリアからの返事をもらう前に、次の攻撃の波が3人を襲い掛かった。それはまさしく砂の波で、三人を飲み込もうとせまる。しかしやはりというべきかその砂の波はその一撃で英雄を葬り去ろうとするものではなく、ただ砂の波に飲み込もうとしているだけの攻撃だ。といっても身動きがとれなくなるのは困る。ヒューゴはとっさに右手を地面に置くとそこから氷の柱を高々と発生させた。ヒューゴの体だけでなく、テオ、グローリアの体もともに押し上げる。そうして砂の波から逃れたが、氷の柱は氷でしかない。そう、氷の柱は発生したと同時に溶けだし刻一刻と崩れていっているのだ。

「それじゃ、あとは自己責任で」

ヒューゴはひらりと手をふりテオとグローリアにむちゃくちゃな言葉をなげる。ようは崩壊する氷の柱から飛び降りる点は手助けしないということだ。ヒューゴはというと、まだ高い位置にある氷の柱の上に残り、ダタハのほうに体を向けた。ダタハの体も砂、黒槍も砂、そして攻撃手段も砂だ。少し凍らせるだけではダタハの行動手段を食い止めることはできなかった。だがいくら凍らせたところで氷は熱せられ水となってしまう。それならば、この状況を逆に利用してやろうではないか。砂漠を漂う熱気、そこに向かってヒューゴは手を伸ばし、細かい氷を吹雪のように発生させた。手から極少の氷の粒が飛び出るが、すぐにそれは熱せられ水とかし、最後には水蒸気となる。だがそれが積もり積もればどうなるだろうか。熱い空気のなかにねじ込まれた局所的な湿気、少量ならば拡散して終わりだが、次々と水蒸気はヒューゴによってねじ込まれていく。そうやってしばらく吹雪を発生させていると雲ができ、やがてその雲は十分な湿気を伴った。雨雲の完成だ。

「えー、本日の天気は晴れですが、局所的に雨となるでしょう!」

そんなふざけた言葉を発していると、雨雲から雨が降り始めた。雨はダタハとその周辺の砂とを濡らしていく。砂はさらさらと流れるもの、だが水を含めばとたんに動きは鈍る。雨降って地固まる、というわけだ。ヒューゴは氷の足場が崩れていくのを感じながらもギリギリまで雨雲に氷を、否水蒸気を送り続けていた。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.12

たわら @tawara529 ★Android=SuicAIZBc6

【グローリア・ジャネット・ショーメイカー/灼熱の砂漠】

 様々な角度からまじまじと砂時計を見ていると、その中までは凍っていないことが確認できた。なにかのタイムリミットだろうかさらさらと流れ落ちる黒い砂はその流れを止めることは無い。落ちきったらなにが起きるのか。恩恵があるのならば良いが、もし落ちきった事によってなにか厄災が降り掛かったとしたら。フィールド的な意味でも現在不利な状況下にあるというのに、これ以上不利になる要素が増えたらたまったものではなかった。
 いつもならピンチになるとすぐにかけつけてくれるヴィヴィアンも、今日はまだその姿さえも見ていない。どこほっつき歩いてんですか師匠、と小さく唇を動かした。
 元々考える事が得意ではない彼女は、この状況をどう打破すべきか中々思い浮かばない。挙句にこの暑さでは尚更頭も回らず、ダタハと交戦していないことを良い事に思考に靄がかかり始めたそんな頃。重量のある物体が落ちるような音を聞いて、思わずびくりと肩を震わす。

「え、…………っえ、テオさん。どこから」

 どこから現れたんですか、と問おうとするも口を噤む。そういえばテオはダタハとまさに交戦中だったはずだ。それが急にこんなところにいるということはなにかのはずみで吹っ飛ばされるなどしたのだろう。獣のように頭を振る彼を見て実家の犬を思い出していたら、その口から思いもよらぬ言葉を聞いてグローリアは目を丸くした。

「殺す気は無い? ……遊ばれてる、とか嫌な響きですね。その誰かとやら、もし存在してお目見えする機会があるのならば全力でぶん殴ってやりたいです」

 次いでヒューゴの言葉に顔を顰め、嫌悪感を露わにする。真剣勝負は嫌いではないし、むしろ好きな方の部類に入るだろう。全力で命のやり取りをする緊迫感は彼女にとって快感の一種であった。しかし遊ばれているとなると話は別で、ただひたすらに腹が立つだけだった。
 そんな淑女らしからぬ言葉を乱暴に吐いてから秒も経たずに、こちらまでくるとは思ってもいなかった砂の波が襲いかかる。避けられるか分からない微妙なラインではあったが、脱出を試みようと脚に力を込める。しかしその必要は無かったようで、体が宙に浮く感覚がしたと思ったら氷に押し上げられていた。その後は自己責任で、と手を振る彼の言葉にマジですか、と返しつつ、氷が崩れ落ちるその一瞬前、まだ土台がしっかりとしている時にほんの少し強度の高い1体の死人を生成する。そして、それを踏み台として高々と飛び上がった。

「貴方に殺す気が無くてもその自我が無かったとしても、倒さない事にはなにも始まらないんですよね」

 唐突に降った雨を好機と見て、グローリアは落下の勢いを利用してダタハの脳天に薙刀を突き刺そうと刃を下に向けた。


>>周辺ALL様

1ヶ月前 No.13

キープ @keep10 ★B1vJ6I1z8y_AkG

【バキム・シャームス/灼熱の砂漠】

「ッグ!? ……っく」

 砂が体に纏わりつく。次第にその重量のため進んでいた歩が止まり、密度の高い砂の牢は横隔膜の動きを制限した。一応の抵抗を試みるも、流動する砂を振り払う術はなく、動けば動くほど体力を消耗する。無駄な足掻きは早々に蹴りをつけると、バキムはそっと目を閉じた。
 今の攻撃で確信できた。今目の前にいるコイツに自由意志は無い。防人である使命感もなければ、我々英雄たちに対する憎悪も興味もない。ただそこに立ち、向かってくる敵を迎撃するだけの傀儡だ。そこまでわかっていても、バキムには次の一手が思いつかない。この傀儡の倒し方、そもそも倒して終了なのかどうか、急に出てきた砂時計の存在。あまりにも情報が少なすぎる。

「うっ……くそ……」

 バキムの体から汗が流れ落ちる。この砂の捕縛からは明確な殺意というものは感じられない。しかしサハァンの太陽に長時間熱せられた砂は、素肌に触れると火傷をするほどの高温になっている。かつて盗賊を生業としていた時、仲間を殺したり傷つけたり、仲間から物を奪ったりした者への制裁として砂の中に生き埋めにするというリンチがあった。砂に首だけ出すように埋められた罪人の命運は族長の裁量次第だった。喧嘩程度ならば軽度の熱中症で許されたが、仲間殺しや仲間を売った裏切り者はそのまま命尽きるまで放置された。まさか自分もその刑罰を体験しようとは夢にも思わなかったが。
 視界がグラリと歪む。眩暈に耐え切れずバキムはその場に倒れた。殺意の無い者には非殺傷性の対応とでもいうのか。しかしそれを行ったすえに相手がどうなろうと知ったこっちゃないのだ。まったくある意味で番人としては合格だとバキムは弱弱しく笑う。土砂が隆起し津波のように三人に襲い掛かっている光景が遠く感じる。


――風が吹いた

 ハッと意識を取り戻す。見上げた空にいつの間にか暗雲が立ち込めている。そこからポツリポツリと雨粒が降り注いだ。年間を通じてほとんど雨など降らないサハァンの地。見ればヒューゴの能力により氷を蒸発させその水蒸気を利用したようだ。テオに似てやんちゃな野生児と思っていたが、なかなかどうして冴えている。乾燥した大地に天の恵み、さらに上昇気流が織りなす風が火照った体を冷やしていく。そして冷えた頭はふとあの言葉を思い出す。

『――――来たか、ヒトの英雄よ。さあ、私の渇きを癒しておくれ』

 まるで自分たちが来ることを知っていたような、待ちわびていたような口ぶり。どこか敵としてではないような、違和感。穿った視線で見れば、我々は奴の欲を満たすための餌か玩具であると言っているようにも取れる。しかしバキムには『助けを求めている』ようにも聞こえるのだ。人が苦しむ姿を見て悦に浸るような者なら、わざわざ自分たちでなくともよい。英雄にしかできないこと。バキムは雨に打たれながら必死に思考を続けた。

>>周辺ALL様




【あわわ、度重なる失態申し訳ございません。以後気を付けます】

>>スレ主様

1ヶ月前 No.14

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_hqi

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.15

マックス=シュトゥルム @sibamura ★o0W3VsenYO_AkG

【マックス=シュトゥルム/灼熱の砂漠】

「っチ! 外れたか……とっ」

 抜き打ちの一撃で黒槍を弾き飛ばしたマックスは小さく舌打ちをする。槍がその手から離れても番人の動きによどみはなく、むしろ、マックスの足元の砂を陥没させる攻撃に出たのだ。
 底も知れぬ流砂の下に入れば末路がどうなるのかは、自明の理、マックスは手元のクナイを手近な岩肌に投擲する。そのクナイには丈夫なワイヤーが括り付けられており、ワイヤーを引きながら飛来したクナイは岩肌にしっかりと突き刺さる。

「ふんっ」

 クナイがしっかりと刺さったことを確認したマックスを流砂の側面を蹴ると同時に腕に力を入れ、己の体を引き上げる。さらそれだけにとどまらず、近場の岩を蹴って加速をつけるとクナイを起点にしてワイヤを使った立体的な機動を始める。そんな彼の頬を冷たい水滴を伝う。どうやらヒューゴの魔術で雨雲が発生したらしい。そして、それと同時に一瞬ダタハの体がゆがむ。しかし、

「だめか。斬撃も効かず、水も効果はない……さて、どうするか。」

 ヒューゴの呼び出した雨に打たれ、グローリアの刃に貫かれてなお、ダタハは痛痒を感じたようには見えなかった。その様子を苦々しく感じると同時に最初から感じていた違和感もより大きくなっていく。テオの相手がこちらを倒す気はないという発言、ダタハの行動、そして、ヒューゴの推測。

「倒す気はなく、しかし、手も抜かない。さらに怪しげな砂時計ときたもんだ。これはどうやら、俺たちは試されているってとこか。」

 何者が彼らを試しているのかまでは推測することはできないが、恐らくそういうことだろうと彼はあたりをつける。大方、この場にいないサーヴァントたちは、あるいはもっと異質の何かか。

「どちらにしろ、今は目の前のことに集中するしかないか。」

 そちらに関してはいったん考えを保留すると、マックスは岩肌を蹴って加速した。突如として意気軒昂となったダタハは他の英雄たちに攻撃加え、今はテオと組み合っている。彼が目指すのはダタハのその腕、

「はぁっ!」

 十分な加速を得た後にクナイを手放すと、抜剣したままの刀を振りかざしたままバキムを未だ取られている砂の腕へと切りかかる。先ほどのグローリアの攻撃の結果から考えてダメージを与えられないまでも切断は可能だと判断したのだ。

>>ダタハ様 バキム様 ALL様

1ヶ月前 No.16

エステル @captain1 ★SDED1rj6G1_AkG

〔ヒューゴ・グラディアス/灼熱の砂漠〕

「うわぁっ!?ちょっと、危ないよ!」

両手から氷の微粒子を繰り出すことに集中していたヒューゴは突然自分の足場が大きく揺れたことに驚き、声を上げながら体勢を崩す。当然能力を使う集中力は切れ、湿気を供給していた手は止まった。相変わらずの攻撃、砂の塊をぶつけ、操るその手法は最初から変わらぬ攻撃だ。意志を持った砂はヒューゴが立つ氷の柱を攻撃し、氷柱には続々とヒビが入っていく。崩壊するのも時間の問題だろう。大きく揺らされる氷柱の上でヒューゴはうまく体勢を整えることができず、崩れゆくのを待つ氷の柱の上でしばらくふらふらと体を揺らされていた。だがそんな中で、ヒューゴは自身が生み出した雨雲の効果を目にした。雨によって黒槍の強度が、ダタハの体が、そしてバキムを縛る砂の硬度が低下している。グローリアの体を貫こうとしていた黒槍は泥となってグローリアの華やかな服へと付着していた。

「あー、あれ僕のせいじゃないよね」

いまだ氷柱の上でふらふらと千鳥足になりながらもヒューゴは相変わらず自分のペースを崩さなかった。だがこれで、ヒューゴが次にやるべきことは決まった。ヒューゴの能力をもってすれば、正確に言えばヒューゴの能力とこの天候をもってすれば、ダタハの動きを止めることができる。ヒューゴはこのダタハとの戦闘を誰かのお遊びだと考えている、一方でマックスは試練だと考えているようだ。どちらにせよこの戦闘を高みの見物している人物がいる、という考えは同じだろう。そして、あの砂時計はこの戦闘終了までのカウントダウン……なのだろうか。いまだ体のバランスをとれないヒューゴに追い打ちをかけるように熱を帯びた砂嵐が吹き込んだ。ヒューゴのパルクールで鍛えられた筋肉の前ではその砂嵐もヒューゴを氷柱から落とすまでにはいたらなかった。しかし、雨雲は砂嵐が運んできた”渇き”によって完全に離散してしまう。雨雲が風で吹き飛ばされてしまうならば、もっと単純な手を使おうではないか。

ヒューゴが立つ氷柱の強度も限界がくるのは時間の問題だった。次にタイミングを見計らってグローリアのようにダタハのもとへ向かおうとしたその時、突然ダタハの瞳に感情が宿った。そしてまるで生き物であるかのような咆哮、寝起きの一声といった感じだ。

「ちょっと、今起きるの!?」

思わずヒューゴが突っ込みに近い言葉を投げた。だがそんな悠長なことをしている間にダタハは素早く攻撃に転じていた。氷柱の上でふらふらとしているヒューゴに向かって投擲される黒槍、視認はできたものの、それをよけるとなるとまた話は別だ。ましてやヒューゴは今まさに崩れようとしている不安定な氷柱の上だ、ろくにバランスもとれない。そんな状態で黒槍を完全に避けきることができるはずもない。黒槍が放たれた直後、ヒューゴはなんとか体をひねってその黒槍の軌道から逃れようとしたが、完全に避けきることはできずに、左わき腹に黒槍がかすって飛んで行った。

「いっ……!!」

声にならない悲鳴をヒューゴが上げる。左わき腹に焼けるような痛みが走り、周辺に赤色がじわりと広がった。タイムリミットが迫って本気を出した、ということだろうか。どちらにせよ、もうおふざけをやっている場合ではない。ダタハのほうを見ると、テオと組合いになっており、その動きが止まっている。チャンスだ。ヒューゴは痛む脇腹を抑えながら走り出す、そしてバランスを崩しながらも氷柱を蹴って宙へと飛び出した。同時に氷柱が崩れる。少々無理な体勢だったが、柔軟な体を持つヒューゴであればなんということはない。宙へと飛び出すと同時、ヒューゴは右手に半径30cmほどの氷の柱を作り出した。先端は尖っており、その目的はもちろん『貫く』こと。テオと拮抗したまま動きを止めていたダタハの背中に向かって、ヒューゴは氷の柱を突き刺そうとしたのだった。だが、それだけでヒューゴは終わらない。もし氷柱がダタハの体を貫いてもその熱によって氷柱は瞬く間に溶けてしまうだろう。よってヒューゴは氷柱がダタハの体を貫いたあと、氷柱が溶ければ即座にその形を取り戻すようまた氷の柱を作り出すつもりだった。ダタハを貫いた氷柱が溶ける、ヒューゴが氷柱を作り直す、また溶ける……そのサイクルを繰り返し、今度は直接ダタハの体に湿気を与えその体を泥へと化そうとしていたのだ。ヒューゴの攻撃はダタハを倒す攻撃ではない。だがダタハを無力化することができる攻撃だった。マックスとヒューゴの予想が当たっているならば、そしてあの砂時計がタイムリミットを示すならば、砂時計の砂がすべて落ち切ったときに新たな展開を迎えるはずだ。そのためにも、今はダタハとの戦闘を凌ぐことをヒューゴは選択したのだった。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.17

キープ @keep10 ★B1vJ6I1z8y_VuR

この投稿はフィルタされています。表示するにはアカウントにログインして下さい。

1ヶ月前 No.18

たわら @tawara529 ★Android=SuicAIZBc6

【グローリア・ジャネット・ショーメイカー/灼熱の砂漠】

 グローリアの攻撃は、結論から言えばほとんど意味を成さなかった。確かに薙刀は脳髄に突き刺さったはずなのに、その手応えは皆無。血潮の代わりに吹き出るのはただの泥だった。
 己の血液含め何かしらの汚れを覚悟しての特攻ではあったが、まさかここまで盛大に汚されるとは思っていなかった。血液ならばまだ慣れているものだから良かったかもしれない。だがドレスに前衛的な模様を描いているのは血液ではなく、砂と水が入り混じった、有り体にいえば泥だ。
 笑っているのか怒っているのか分からない様々な表情が入り交じったような顔をして、頬に付着した泥を乱雑に拭う。黒のドレスにして良かったとか、皮膚なら水で落ちるから許容範囲かなとか、相手がこのダタハでなければ思っていたかもしれない。しかしこの話の通じなさそうな敵にはどうしても腹が立つ。謝罪どころかなにか言葉を発する事すらしないところが憎らしい。ふつふつと湧き上がる怒りを抑えられるものなら抑えたいが、その術を知らないグローリアは小さな声で捲し立てるように言葉を吐く。

「ああ、ああ、汚すなっつったのに、盛大に汚してくれやがったなこのデカブツ。いつ死ぬんだよなんで死なないんだよ。さっさとご逝去あそばせってんですよホントに」

 一息。息継ぎなのか溜息なのか判断がつきかねるような息を吐き抜かれた薙刀を拾おうとした時、ざわりと肌が粟立つ。
 咆哮。今まで言葉どころか息遣いの1つも聞こえなかった番人から、空気を震わすような音が発せられた。本能が危険信号をがんがんと鳴らす。

「は、まって――」

 胴は不味い。いくらそれなりに鍛えているとはいえ、3メートルを超える巨体から繰り出されるとてつもない勢いの蹴りだなんてまともに食らったら内臓が全損してもおかしくない。臓器の1つが潰れたくらいで死に至るようなか弱い種族に属するグローリアがとれる行動は、その攻撃をできる限り胴体から逸らし、被害を小さく収めるということだった。
 避ける事だけを考え、とんできた脚をハードルの背面跳びの如く飛び躱す。その重い蹴りを胴に食らうことはなんとか避けることが出来たが、なんの考えもなしの背面跳び。背中を打ち付けるような形での着地となった。

「……っ、! あー、無様無様。地面が砂でよかったけどさすがに腹立ちますよねぇ。ははは」

 乾いた笑いを漏らしながら、薙刀を杖がわりに立ち上がった。
今は、もう誰かの指示を仰いだ方が早いのかもしれない。

>>ALL様

1ヶ月前 No.19

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_hqi

【 砂塵のダタハ / テオ・サファード / 灼熱の砂漠 】


「――――っ!」

 バキムの忠告を聞くや否や、テオは咄嗟に目をぎゅっと瞑った。その辺りの雑魚ならば射殺せそうなほどの凄まじい圧を放つ彼女の殺気、しかしそれすらも結果としてはあまり意味をなさなかった。なぜなら、ダタハはマックスやヒューゴの攻撃を躱す必要がないからである。マックスの振るった刃は、易々とダタハの腕を切り裂き――否、通過した。それに伴って飛び散ったのはわずかな砂であり、刃に切り裂かれたことで一度は分断されたものの、分断された部分が一瞬にしてくっついたのである。ヒューゴの氷柱による目論見も、ダタハの足元から次々に補充される渇いた砂によって失敗に終わっている。ヒューゴが生成する氷では、この場にある途方もない量の砂の全てを湿らせることは不可能。
 次の瞬間、どぱんっ、という破裂音とともに、文字通りダタハの全身が爆散し、無数の砂と帰す。ダタハを羽交い絞めにしていたテオも、対象を失って数歩後方によろける。そして、英雄たちから10mほど離れた場所に、再び砂が集結し、ダタハがその姿を成す。ダタハは両足を肩幅よりやや広めに開き、腰を少し落としてどっしりと構える。そして両手を高々と天へ掲げる。たちまち、浴槽の栓が抜かれたかのように、凄まじい勢いで大量の砂がダタハの頭上へと集まってゆく。それはみるみる肥大化してゆき、ここら一帯を陰らせるほど。ダタハの頭上に生成されたのは、ただただシンプルな巨大な砂の塊。大きさが一辺100mを超える四角形のそれは、推定1トンを超える。そんなものを頭上から落とされれば、人間の身体など容易に潰され、絶命してしまう。走ってこの塊の範囲外へ逃げようにも、時間が足りない。

「……これが……、お前の、本気か」

 この砂塊が異常に巨大なせいで、一時的にそれが日傘のような役割を果たし、英雄たちの肌を焼く日光を遮る。テオはおぞましいほどの絶望感を顕現する砂塊を見上げ、独り呟く。ここまで圧倒的な力を見せつけられては、恐怖や焦りよりも、この状況を客観視する冷静さの方が逆に大きく表れる。この巨大砂塊による攻撃を凌ぐには、ダタハ本体へ急接近し、巨大砂塊の完成を邪魔する以外に方法が見当たらない。しかし、例え完成を邪魔できたとしても、ダタハの手を離れたあの巨大砂塊が、膨大な質量をそのままに英雄たちに降り注ぐだけだろう。だが、賭けないわけにはいかなかった。
 テオの両足が、チーターを彷彿とさせる筋肉質な脚へと変貌してゆく。両脚を変化させながら、片手の指先を地面へ添えつつ、ぐぐっと体勢を低く構える。その姿は、今まさに獲物へ飛び掛からんとする猛獣を彷彿とさせる。一蹴りでダタハの下へ距離を詰めれるほど十分に筋肉を収縮させる。今にもテオが地を蹴らんと、少し重心を動かしかけた瞬間――――、

「キャンッ」

 ――短く、甲高い鳴き声と共に、ダタハの全身が先ほどのように爆散する。続いて、今にも落ちてきそうな巨大砂塊が、瞬く間に霧散し、ただの砂の雨となって辺り一帯に降り注いだ。テオは、目を丸くしてその一部始終を見ている他なかった。ダタハを爆散させたのは、英雄たちによる攻撃ではない。かといって、ダタハに目視できる攻撃が命中した様子もない。

「――――グルルル」

 先ほどダタハが爆散した位置に、またしても砂が集結し、ダタハがその姿を現さんとする。獰猛な低い唸り声をあげながら。しかし、右半身が顕現した段階で、もう一度ダタハが短い悲鳴と共に爆散する。数秒後、またダタハが顕現しようと試みる。まるで何かに抗うかのように、右手でガリガリと地面を引っ掻きながら、そうしてまた、爆散。
 …………砂時計が、一割を切った。

「グァオオオオオ――――」

 苦しみに悶える悲鳴とも、反撃の狼煙となる遠吠えともつかない、濁った咆哮が再度砂漠へと響き渡る。今までにないほど急速なスピードでダタハの身体が砂によって形成され、その右手に握られているのは、優に10mは超えているであろう大鉈。例に漏れず砂によって形作られた重量感のあるその得物を手に、ダタハは英雄たちへと襲い掛かる――かと思いきや、彼は素早く踵を返し、彼らとは反対の方向へと駆け出してゆく。その先にあるのは、砂海船メルガ。
 ダタハは跳躍し、両手で握った大鉈を上段に構える。もしこの一太刀がまともにメルガへ直撃すれば、全壊とはいかないものの、故障は絶対に免れないことは火を見るよりも明らかで。ダタハが大鉈をメルガに振り下ろしたまさにその瞬間。大鉈は先ほどの巨大砂塊のように無数の砂となって風に舞い、ダタハはまるで見えない手に弾かれるように、空中から地面へと叩き落されるような形で落下して。
 そして、砂時計の砂は、タイムリミットを告げた。

「……バ……キ……ム、……様……」

 ダタハは、英雄たちに背を向ける形でよろよろと上体を起こしながら、途切れ途切れに何かを呟く。全身を砂にまみれさせながら、文字通り必死に、何かに向かって跪き、頭を垂れる。死の砂海を超えた遥か向こうにいる、己の主君へと。

「我が……忠誠、を…………」

 低いノイズが幾重にも折り重なったような、決して人の肉声ではない不気味な声が、ダタハの喉から絞り出される。そうしている間にも、ダタハの全身が少しずつ、砂になって消えてゆく。しかし今までのような普通の砂ではなく、砂時計の中に入っていた黒い砂に酷似した砂へと帰してゆく。

「御赦し、下さい……」

 言い終わるや否や、ダタハの全身は黒い砂になって完全に消え去り、いつの間にか砂時計も消えていた。


>>ALL



【砂塵のダタハ戦終了です、お疲れ様でした。本当に予定通りの戦闘や描写が展開できました、ありがとうございます。次レスでは、ダタハの最期に関する考察を落としつつ、まだメルガには触れずに戦闘終了ロルを回してくだされば幸いです。主の次レスから、メルガへと乗り込みますので、しばしお待ちください】

1ヶ月前 No.20

エステル @captain1 ★SDED1rj6G1_VuR

【ヒューゴ・グラディアス/灼熱の砂漠】

ヒューゴが放った攻撃はバキムのサポートもあり狙い通りダタハの体を貫いた。だがダタハの足元から無限に湧き出る渇きにはヒューゴの急ごしらえの潤いでは勝てないらしい。だがこれでもいいのだ、砂時計さえ落ち切ってしまえば、次の展開を迎えるだろう。だがその前にダタハは最後の攻撃と言わんばかりに巨大な砂塊を作り出していた。巨大な物体で、圧倒的な物量で相手をつぶす。なかなかにシンプルだ、などと考えている場合ではない。ヒューゴの頭はすぐに回転を始めた。なにせヒューゴに諦めるという言葉はない。とにかくここから全力で離れなければいけない。氷の道を前に作りつつ背後に氷を噴射、スピードスケートのごとくダタハからの距離を稼ぎ、最後には自分の周りを氷で覆って砂の波を凌ぐ、そんなことを考えたがそれでは助かるのは自分一人しかいない。そもそも自分自身さえ助けられるかもわからなかった。こんな時にジュールがいてくれれば、もっとマシな意見を言ってくれるかもしれない。そもそもジュールがいてくれれば能力をつかう幅が広がって対抗手段も考えられたかもしれないのに。全くジュールはどこへ行ったのか……そう、どこへ……

「あれ……?」

その時、ヒューゴの視界はノイズが入ったような感覚に襲われた。ジュールはどこだ?どこへ行っているんだったか。どこ?それはこの世のどこかという意味?この世界のどこかにジュールはいるのか?本当に?ヒューゴの瞳から光が失われていきぐらぐらと魂の存在がゆらぐ。ヒューゴの視界に移るのは砂嵐で、その砂嵐の先には、誰かが倒れているように見えた。

「あ、れ……は……ジュ……ル」

ヒューゴが呟いたその直後、ダタハの悲鳴が響く。その悲鳴でヒューゴは一気に現実へと引き戻された。気が付いた時にはダタハの頭上にあった砂塊は消え、代わりに大蛇を手にしている。そしてメルガをたたき潰さんと跳躍していた。だがその巨体は何かの力によってはじかれ、次いでさらさらとその形を失っていく。

「あー……メルガはギリギリセーフって感じだね。砂時計もなくなってるし。一応形式上聞いとくけどさ、君ってダタハの知り合い?」

ヒューゴはあたりを見回しながら砂時計がないことに気が付き、やはりダタハの存在と砂時計には意味があったのかなど考える。ダタハから名前が出た以上は真偽を聞いておこうとバキムにダタハに名前を呼ばれる覚えがあるか聞いてみるのだった。

>>周辺ALL

1ヶ月前 No.21

朱銀 @syuginn☆lXg/nRyFCsTU ★HPzqP6MFXB_eQU

[ サーヴァント / 灼熱の砂漠 ]


「――知り合いなわけないじゃないですかァ」

 不意に聞こえてきたその声は、決して英雄たちに敵意を起こさせることのない、聞き慣れたものだった。
 いつの間にか陽は傾き、夕暮れ時を迎えていた。熱線で英雄たちの水分を搾り取った太陽は、地平線の向こうへと沈んでゆき、砂漠全体が徐々に濃いオレンジに染まる。ふと、白い蝶がひらひらと空を舞い、例によって白銀の鱗粉を振り撒く。散布された鱗粉は美麗な魔法陣を描き、その魔法陣からサーヴァントたちが出現した。誰よりも早く口を開いたのは、バキムの契約相手であるバラム。灼熱の砂漠への転送が完了する少し前からヒューゴたちの声が聴こえていたのだろう、バキムがそれを否定するよりも早く、バラムが横槍を挟んだ。

「――んぁ? っかしーな、もうこんな時間かよ」
「…………位相空間にズレが生じたのでしょう。マリアとて万能ではありませんから」

 ヴィヴィアンが茜色に染まった空を仰ぎ、怪訝そうに眉をひそめる。シャッテンは一呼吸置いてから相も変わらない冷静な考察を落とし、迷いなく砂海船メルガに向けてすたすたと歩みを進める。自分たちが今までどこで何をしていたのか、英雄たちに説明する必要などないと言わんばかりに。それに加えて、自分の契約相手であるマックスの安否を気にかけることもしないのは、シャッテンが彼を信頼しているからなのか、それとも興味がないのか。

「悪ぃヒューゴ、遅くなった。あーあー、ケガしてんじゃねえかよ。来い、治療すっから」
「マドモアゼル、お怪我は? ……うーん、それにしても酷いお姿だ。一刻も早く船で湯浴みしなければなりませんねぇ。グローリア、貴女のドレスもよぉく洗わなくては」

 ジュールはヒューゴへと駆け寄り、苦笑しながら頭を掻く。そして、脇腹に切り傷を発見し、怒ったような困ったような、けれどどこか悲しそうな表情を浮かべ、ついて来いと言わんばかりにずんずんとメルガへと向かう。バキムの元へ歩み寄ったバラムは、いつも通りの慇懃な振る舞いでバキムに手を差し伸べる。彼女の全身をまじまじと眺め、外傷がないことを確認するや否や、泥にまみれた姿態を苦笑に付す。近くにいたグローリアの泥まみれのドレスも一瞥し、肩をすくめて踵を返し、目と鼻の先にあるメルガを目指して歩を進めた。
 サーヴァントが船壁に手を当てて魔力を流し込めば、古い扉が軋むような音を立てて、船内に乗り込むためのタラップが姿を現した。豪華客船のような巨大さを誇るメルガの内部へ、サーヴァントと英雄一行はようやく足を踏み入れた。


[ サーヴァント / →砂海船メルガ ]


 船内は、意外なほどに綺麗だった。本当に長らく誰にも使われていなかったのか疑いたくなるほど、掃除も行き届いていて埃一つない。そう、不自然なほどに。キョロキョロと船内を見回しながら、テオが「何か変だな」と呟くが、すぐにその後頭部がテオの契約相手であるレナによってはたかれた。

「変じゃないわよっ。メルガが今でもこんなに綺麗なのは、イェルノーグさまがタイムコーティングを施してくださったからなんだから!」

 レナがぷりぷりと怒りながら、しかししたり顔で、船内のからくりを明かす。その顔に浮かぶ満足げな表情は、まるで父の自慢をする少女のように誇らしげで。先代魔王の魔力は、亡き後もヒトに恩恵をもたらしている。彼が施した魔術のおかげで、巨大な船内に備蓄された水、酒、食糧の類は、全て腐らず適切な状態で保管されており。さらに言えば、船内の温度さえ、灼熱の砂漠のど真ん中にあるにも関わらず、人の肌に快適なように保たれている。そこはある意味不気味なほど、ヒトにとっては快適な空間だろう。
 やがて廊下を進み終わり、船の中心に位置するホールのような場所に出れば、レナが数歩前に出て口を開いた。

「知ってるやつもいると思うけど、メルガの動力源は魔力なの。イェルノーグさまが少し蓄えていて下さったけれど、それだけでは砂海は渡り切れない。だから私たちが交代で動力炉に魔力を注ぎ続けるわ。あんたたちはとりあえずよく食べなさい。食べなきゃさっき使った魔力が回復しないわよ」

 本来、メルガを動かすには少なくとも十体ほどの魔族が必要だが、先代魔王の遺した魔力と、精鋭であるサーヴァントたちの魔力があれば、何とか死の砂海を渡り切れるだろう。砂海の果てへ着く頃にはサーヴァントたちはほとんど魔力を使い果たしているだろうが、それも仕方のないこと。メルガを動かすことが出来るのは、純魔族の純粋な魔力だけ。ちなみに、操舵も魔力によって行われるため、舵取りは必要ない。バラム以外のサーヴァントは、動力炉に魔力を注ぐべく、ホールの奥へと姿を消した。

「さぁて! とりあえず皆さんお風呂に入った方がよさそうですねぇ。気の利く僕が既にお湯を沸かしておきましたから、さぁ入った入った。食事の用意はしておきますから、とにかく汚れを落としてきてください。ちなみに、この船内の水にはイェルノーグ様による治癒術式が組み込まれていますから、風呂に入れば傷も癒えますよ」

 バラムが手を叩き、ぱん、と乾いた音がホールに響く。彼は後ろ手にエプロンの紐を結びながら、ニコニコした顔で英雄たちに入浴を勧める。そして半ば強制的に彼らを浴場へと押し込めば、ひらひらと手を振った。そして三ツ星ミシュランのシェフも顔負けの超人的な勢いで、5人分の料理にとりかかった。驚異的なスピードで完成され、せかせかと食卓へ運ばれる料理から漂う食欲を誘う香りは、きっと浴場へも届いているだろう。風呂上りの英雄たちがホールに戻ってきて目にしたのは、豪華ではないが決して質素でもない料理の数々で。

「あぁ、ちょうどよかった。うんうん、皆さん服も体も綺麗になりましたねぇ。それじゃあ、冷めないうちに食べてください。さぁ、手を合わせて……?」

 晩餐の開始を意味する号令が英雄たちの口から放たれるのは、その1秒後のことだった。


>>ALL



【流れが滞りそうなので、少し強引ですが船内へ場面を移します。次レスは「お風呂上りでワイワイお食事タイム」という設定で書いていただければ問題ありません。メモ記事も更新しておきましたので、ご参照ください。主のレスで数えて3〜4レス後にまた一悶着起きる予定ですので、そのおつもりで団欒していただければ。ホールにはバラムをNPCとして設置しておきます。】

1ヶ月前 No.22

マックス=シュトゥルム @sibamura ★o0W3VsenYO_VuR

【マックス=シュトゥルム/灼熱の砂漠→砂漠船メルガ】


 マックスの剣筋はバキムの肌に触れる手前、ほんの僅かな隙間を開けて砂の剛腕を切り裂いた。剣を振り抜き、勢いを止めるように砂の上に着地したマックスにバキムの当然の怒号が襲い掛かる。

「あ、あぁ、すまん。その……次からは気を付ける」

 至極まっとうなことを言われて、たじろぎながらダタハの方を見る、すると今までの鉄面皮が嘘のように、いや、表情は変わってはいないが、その様子が変わったのは明白である。その体は形成しては四散し、また形成しては四散する。それを繰り返しながら、砂の魔人の力が弱まっているのははた目にも明白であった。
 そして、その命運も砂時計の砂とともに尽きることとなる。残されたのは、5人の英雄と砂時計のみ。
 否、ダタハの消滅に呼応するかのように黒い砂で満たされた砂時計は消え、それと入れ替わりに5人の魔族が現れた。

「ずいぶん遅い到着だな…………一つ聞くが、ダタハが言っていた『バキム』という名前、シャームス嬢とは別の『バキム』という名前について心あたりはあるのか?」

 各々の主に声を掛けるサーヴァントたちをしり目に、いつも通りするべきことを淡々と行っている自身のサーヴァントの後を歩きながらマックスは声を掛ける。シャッテンのこういった態度は出会った頃のことなので特に腹が立ったりはしないが、それはそれとして疑問は片付けておきたい。
 そうこう会話をしているうちに一行はメルガの船内に招き入れられる。その船内は何年も放置されていたとは思えないほどきれいで、驚くべきことに置いてある酒の類の香りを嗅げば芳醇な香りさえ漂ってきていた。さらに、これも魔術の恩恵か、外とは打って変わって快適な温度や湿度が保たれている。

「タイムコーティング……いまさら、魔族と我々の力の差を言うまでもないが、空間ごと時間を固定したということか? まさにでたらめな力だな」

 レナの言葉に独り言のように呟きながら中を見回していると、バラムが入浴と食事の提案をする。
 戦の戦塵をかぶり、汗をかき、空腹を抱えている身としては実にありがたい提案だったのでマックスは素直に従うことにした。男湯に入ると、体を丁寧に洗った後、浴槽にゆったりと身を沈める。水の水温はやや温めだが、太陽にさんざん焙られた体には心地よかった。
 しばらく体の疲れと心の疲れをとるようにゆっくりと浸かると、彼は浴槽を出て剃刀を取り出した。湯に濡れ、温まって柔らかくなった肌の上に剃刀を滑らせ、すこし、生えてきている髭を丁寧に剃っていく。
 武人として戦に出れば髭を剃るような余裕もないときもあるが、余裕があるときにはなるべく身だしなみに気を遣うのが彼のポリシーだった。彼曰く、

「武人とは畢竟、見栄をはる仕事である。自分こそ弱き人を守るための最後の盾だと見栄を張ってその身を削り、最後は果てる。ならば生きているうちはせいぜい見栄を張っているさ」

 とのことである。
 さて、髭を剃り終わると再び湯船に使ってから、体を拭き風呂を上がる。服を来てホールに戻るころにはバラムが作ったらしい食事が並んでいた。

「あぁ、ありがとう。できれば、食前酒を付けてもらえるうれしいな」

 マックスはそういって椅子に腰を下ろすと、他の4人が揃うのを待つことにした。

>>バキム様 スレ主様 ALL様

26日前 No.23
切替: メイン記事(23) サブ記事 (27) ページ: 1

 
 
<< TOPページ 掲示板TOP 記事データ お知らせメール ▲ページ上 >>
★必ず ローカルルールメビウスリングのルール をご覧ください。
 ▼スタンプ▲スタンプ
※スタンプはいちどに 3個 まで使えます  ×閉じる
注…進行相談・設定はサブ記事をご利用ください(テスト中)。