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創り物の学園の中心で

 ( オリジナルなりきり )
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異能力学園群像劇 @isaribi10 ★0gkYBdXyN1_jWF

「この世界はジオラマ。皆、皆、騙されているのよ」
学園の隣の近未来的な実験施設の屋上で少女は空を見上げてポツリと呟く。誰かが呆れながら呟く。
「で?次はどんな陰謀説?」
少女は大げさな笑顔でどこか遠くへ見る。
「もう貴方は知っているはずよ」
少女は笑顔を創りながら、その場を去る。

――此処は九十九(つくも)学園。とある都市に構える豪華な学校。全寮制で家に帰れるのはお盆と正月だけ。制服では無く私服登校で髪型、髪の色も自由の為規則は厳しくは無い。学園の隣には学生、教師専用の研究施設のラボが建てられる等少なくとも金回りが良い私立高校と言うのが分かる。
そしてこの学園には大きな秘密が存在している。その秘密とはこの学園が国の政府により創られた異能力養成学校であった事。その為、九十九学園は普通科と異能力科と別れている。普通科の生徒達は校舎そのものが別れている為その事を知る事は無い。

そして九十九学園の異能力者達はとある事件をきっかけにまるで運命の様に一つの学園から一つの真実まで導かれていく。
【駄文失礼しました。スレ主は至らぬ点や返信が遅れる事がありますが宜しくお願いします】

1年前 No.0
メモ2018/02/05 19:03 : 酢橘☆TyGLtXpsS1g @karasu1010★0gkYBdXyN1_qTF

ルール

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-1


世界観・用語・募集・プロフィール

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-2


ロケーション

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-28

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-73

http://mb2.jp/_nro/15565.html-144


物語全体のあらすじ

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-56


第七章のイベント内容

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-279


〜キャラクター一覧〜


理事長(セヴェルト・スージオ)

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-31


序ノ舞浪曼

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-81


檜木真琴

http://mb2.jp/_subnro/15565.html-227


八城修

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酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【魁圭代子&漆舘若菜&元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】

全く持って罪の無いその場に居合わせただけの一般生徒を人質に取る。折り畳みナイフを突き立てて刺し違う覚悟を胸に相手を刺すべく一心不乱に走り出す。どれもとても学園に相応しく無い物騒な言葉や響きにしか聞こえてこないが実はどの行為も全てこの九十九学園の為に、正しい事だと考えて現在行われている行動であった。そしてそんな状況が此処、とてつもなく緊迫しており怪我人どころか死人が出そうな恐ろしい空気が通路いっぱいに充満する体育館前にて行われていた。
その中で人質を抑え付けているのはディザスターの元貞坂。人質として扱われているのは一般生徒の花丸山。ナイフを突き立てるのは生徒会の魁。後の人々は各自で様々な思考を巡らせながら、どの様な行動に出るか考えていた。
すると、この状況で大きな行動に出たのは先程まで花丸山と過ごしていた咲羅木華。

「……っ! おもちちゃん、ごめんっ! 絶対もどってくるからっ!!」

そう言い残すと彼女は一瞬にしてこの場から何処かへ消えてしまった。それが透明化なのか、瞬間移動なのか、はたまたまた別の能力かは分からないが今、この場に咲羅木華無花果と言う存在は確認する事は無かった。その他、魁を止める事が出来なかった漆舘は居場所を守るべく、自身の能力を発動しようとしたがこの非日常的な状況に怯えきってしまい、何もする事が出来ずただ恐怖に震えるしか無かった。それくらい彼女達の日常は脆かった。

(このままじゃ失っちゃいけない物が全部、全部……)

また金を撒き散らして一時的ながら強力な身体能力を手に入れたディザスターの日陰蝶は魁の攻撃を止めようと企んでいたが、同時に生徒会の亜門が自身の能力である糸を掌から大量に吐き出しそれを阻止していた。
そして必死に歯を食い縛って力強くナイフを握り締めながら元貞坂を刺すべく魁はゆっくりながら彼に近づいていた。一方で元貞坂の方は生徒会の思い通りにならないべく意地を張ってしまい人質を解放する気は無かった。

「………あなた、の居場っ…所、は……無花果がいるっ…から――“わたしごとさして”」

そんな状況下、人質として捕まっている花丸山から発されるその言葉に魁は一瞬戸惑ってしまう。そして自分が現在行おうとしていた事がいかに間違っていたのか気付き始める。

「違う……違う……さっきは私が貴方達守って貰ったんだから、今度は私が貴方をしっかり守らないと……駄目なのに……何で……いつも……間違えちゃうんだろ」

例えどんなに居場所が与えられようともそれがどんなに理想郷だとしても、その下に彼女の様な犠牲者が自分の様な犯罪者が埋められているのだとしたら――

それは随分と前からディザスターや生徒会、いずれは九十九学園全体に与えられた問題であった。犠牲の上に成り立つ理想は本当に理想なのか。それにディザスターはその道しか無いと真実に進み出し、生徒会もまたその道しか無いと秩序を守り出す。その中で一般生徒は名も知らぬ何かに怯えながら、或いは興味を示そうともせずにシラを切っていた。
だがその二つとは違う答えが今、無知であったはずの一般生徒によりこの九十九学園で導き出されていた。
しかしそれを切り裂く様に元貞坂は人質の首をしっかり握りながら、戸惑い突っ立っていた魁の手に持つナイフを奪い取ってしまう。

「ふう……駄目ッスよ。油断してちゃ」

そう忠告しながら逃亡する準備に入る元貞坂はナイフを花丸山の方向へ向けてしまう。まさしくこの状況は絶対絶命としか言い様が無かった。

>>花丸山望様、咲羅木華無花果様、(序ノ舞浪漫)様、周辺ALL

5ヶ月前 No.676

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_qTF

【桜木知佳/異能科・保健室】

 檜木の儚げながらも確かな笑顔を見た知佳は、もうすっかり気が済んだかのように満足気な表情をしていた。澄んだ瞳にほんのりと赤みを残して。気持ちが落ち着いたのか、ゆっくりと一息吐く。

「ふぅー……なんだか元気が出てきました! ありがとうございますっ。あたしには、何か忘れていたものがあったのかもしれません。此処にしかない異能力者たちの運動会なんですから、だからこそ争いとかに囚われていないで楽しまなきゃなんですよね! あっ、もちろん危ないのは駄目ですよ!」

 今までと違うから、常識が通用しないのは当然なのだ。それでも受け入れていくこと。逃げずに向き合うこと。そういうこの世界で生きていく必要な術が、未熟な自分にはまだ足りていなかった。約二年半の間、檜木真琴はどうしてきたの? ディザスター会長は何を見てきたの? 残間義景はどんなことを考えていたの?
 聞きたいことは山ほどあるけれど、まずは何より自分自身の生き方を見つけられたら……そしたら異能力事件に無関係だって、この場所に自らの足で立ち上がっていられるはず。いつか卒業する時は、この学園に来てよかったって思えるようになりたい。入学した頃になんとなく抱いていた意識を、こうして気持ちを吐き出したことで再認識できたのだ。檜木真琴には感謝しなければ。
 今こそ第一歩を踏み出す時。一般生徒は一般生徒らしく、思う存分抗っていこう。

「あたし、頑張ってみようと思います。あとこれも、ありがとうございま……って!? よく見たらボロボロじゃないですかぁ!? すぐ治しますからじっとしててください!」

 改めてリレーに対する意志を固める知佳。ハンカチを返そうとすると、よく注目してなかったせいで気がつかなかったが、檜木の体は全身治療の跡だらけだった。何かしら処置は施されている様だが、これだけあっては最早重傷レベルとなってもおかしくない。むしろ動くのもやっとなんじゃ……。
 その様子を確認した知佳は、夢中で彼女の体に飛びかかって「治れ治れ……」と念じ始める。幸い処置済みということもあり、怪我の修復のみで済ませられそうだ。檜木の両腕に触れた知佳の両手から伝えられる不思議な力が、檜木の全ての傷を徐々に再生させていく。

【確定避けのため、現在進行形で締めています。このまま受け入れた場合、最終的に外傷に当たる部位は全て完治します】

>檜木真琴

【また、続いていれば次レスで体育館前通路の騒動に参戦したいのですがよろしいでしょうか……?】

>関係する皆様

5ヶ月前 No.677

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【咲羅木華無花果 / 異能科・女子寮・浪漫の部屋】

助けてもらおうと――これから友達のために共に戦ってもらおうとしていた相手は、とても戦える状況ではなかった。だから立ち上がったときも無花果は「い、いたくないっ?」と未だにポロポロ涙を流しながら心配した。ベビードールを被っても、怪我は全然隠れていないし、とてもこれから戦いに行くという状態では無かった。なのに彼女は、恐れを知らない顔で、『助けてあげる』なんて言い出す。絶対に痛いのに。今だって身体中が痛いはずなのに。そんな怪我では、、そんな状態では、(今から戦ったら、おもちちゃんを助ける前に、浪漫ちゃんが死んじゃうよ……っ!)そう思わずにはいられなかった。だから「大丈夫、ごめん、あたしがひとりでなんとかする」と言って去ろうと知った。瞬間的に移動しようとした。なのに強気な彼女に見つめられ、それは言えなくなってしまった。助けてくれなくていい、なんて言ったら、怒られてしまいそうな――否、助けさせないなんて言わせない、絶対に助けてやる、というその目に、無花果も決心する。

「体育館前の通路だよ! そこでディザスターさんと生徒会さんのおいかけっこにまきこまれて、おもちちゃんは人質になっちゃったの!」

後から後から溢れてくる涙をぐしっと拭い、浪漫にそう告げる。浪漫は助けようとしてくれている。それならば、(それなら――あたしはたすけてもらう。浪漫ちゃんに、おもちちゃんをやすけてもらう!)一緒に戦う。浪漫がそう決めてくれたなら、自分もその意志を尊重して助けてもらう。泣いて助けてもらう無力な弱者は、一緒に戦うことしかできない。それですら、足を引っ張ってしまうかもしれないけれど。

「浪漫ちゃん、ちょっと失礼するよ」

怪我をした彼女は、恐らく体育館通路前までダッシュすることは難しいだろう。だから、浪漫をお姫様抱っこした。以前に能力で出てきたモンスターにお姫様抱っこしてもらっているところは見たことあるけれど、今このヘロヘロな状態で能力を使ったら、おもちちゃんを助けられないかもしれない。そう考えた無花果は、自分が浪漫をお姫様抱っこすることにした。運動神経にはかなり自信があるのだ。華奢な浪漫ぐらい軽々と持ち上げたまま飛べる。そうして無花果は、浪漫をお姫様抱っこしたまま寮を飛び出し、体育館前通路へ飛翔して向かった。

>>序ノ舞浪漫さま、allさま

【お姫様抱っこして空を飛ぶ、という逃げられない確ロルしていますごめんなさい!】

【私は構わないです!】
>>燃鈴さま

5ヶ月前 No.678

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_D9v

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5ヶ月前 No.679

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_qTF

【羽多野真郎(嵐城條)/トリガーラボ・談話室→エントランス】

 静脈認証が通されて、音と同時に談話室のドアが素早く横に開く。中から羽多野真郎と嵐城條が通路に出てくる。

「この後はどうするんだ? 競技が済んだので寮に帰るのか?」
『…………』

 話が終わり、嵐城を外へ見送るためにエントランスに向かいながらこの後の予定について尋ねるが、嵐城は答えない。部屋を出る直前から押し黙ったままだ。やはり彼にはショックの大きい話だったろうか。背後を歩く彼の様子は、此方からでは窺いにくい。ただ恐らく、何事も無かったかのような生意気に澄ました顔をしているのだろう。ならば、単に極力口を利きたくないだけなのか。少し話を聞いてくれたかと思えば、次の瞬間にはこうなってしまう。全く心を開いてくれる兆しが見られない。どうにも気まぐれで手のかかる……しかし、珍しいまでにタフな生徒だ。たまに戸惑いはするようだが、すぐに主軸を戻し自分を保っている。あのような状態でこうも平然としていられるとは本当に大したものだ。扱いが容易でない割に、適合出来る器は持ち合わせているらしい。まぁ、無意識に力をセーブしてしまっている要因でもありそうだが。
 エントランスに入り、正面ドアにやや接近してきた地点で、羽多野は歩みを止め声をかける。

「今日は突然付き合わせて悪かったな。また用が出来たら連絡する」
『……あんたってさ、ほんと懲りないね』

 このまま別れるかと思われたが、羽多野を通り越していく嵐城が急に発言した。彼は正面ドアの前に立ち、センサーが感知して自動で開かれても立ち止まったまま、手にしていた大鎌を包む布を取る。

『安心しなよ。もしこの戦いが終わったら、実験に協力してやる前に――』

 空中で腕を大きく横に振り刃を開いた。そして肘を引き、刃を自身の首にかかる寸での位置に留め、

『――死んでやる』

 そう告げながら半分振り向き、外から差し込む陽の光を背景にして、余裕に満ち溢れた笑みを此方に見せつけた。残念だったな、とでも言いたげな……それとも別の意味も含まれていたのか。微々たる謎を残しつつも、その宣言が本気だということはしかと伝わってくる。やけにあっさりしていて淀みの無い言い様だ。実は大分前からそのつもりだったのだろう。

「……そうか」

 尚も変わらぬ調子で返事を返すと、嵐城は大鎌を下ろしてトリガーラボを去っていった。
 彼はまた最低な教師だと、つくづく思っているだろうな。確かに自ら死に行こうとする未成年を説得するのが教師として、大人としての義務であり、当然のことではないのかと非難されても何らおかしくない。だが、今後も彼を止めることはないだろう。何故なら、彼を変えていくのは自分ではないからだ。
 それにしても、言われてみれば先程の騒動による荒れが目立って映る。放置しておいては、あまり良くない影響を与えてしまうかもしれない。ここらで一部片付けておこうか。
 ……と考えていたところで、丁度良く一人の生徒が通りかかる。彼も異能科の生徒だ。何をしに来ていたのかは、自分の知るところではないが。

「君。今、時間あるかね? 手伝ってもらいたいことがあるのだが」

 自分一人では不可能。という程でもなかったが、人手はあって損は無いため、とりあえず声をかけてみる。

>武浦風真、周辺all

【前回の話の続きについてを含めた嵐城條パートは後の投稿になります】

5ヶ月前 No.680

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

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5ヶ月前 No.681

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【魁圭代子&漆舘若菜&元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】

よく磨かれており常に100%の美しさを引き出し維持している高級感の代名詞である大理石が敷き詰められた天井に堂々と飾られた巨大な高級シャンデリアも天井同様、大理石で出来た床をわざわざ覆い隠す高級絨毯等の高級インテリアもこの学園ではお馴染みとも言える戦慄が駆け抜ける様に張り詰めた殺し合いとも言える壮絶な空気の前では全く持ってブランド力も高級感も金の価値観も無力としか言いようが無い程、体育館前通路全体にナイフの様に尖った雰囲気が凄まじい勢いで全てを巻き込みながら広がっていた。
そんな通路の中、この様な空気を醸し出している元凶とも言える白衣の少年、元貞坂は完全に慢心していた。此処から日陰蝶と逃げ出して存在しない三人の元無能力者におけるある特徴等の情報の詳細を行い、ある真実に辿り着ける事を伝えれば、彼のディザスター内での地位は八城以上に揺るぎない物とされるかもしれない。あわよくばディザスターの頂点に立ちこのままの勢いで残間を崩し、学園のトップに躍り出る事が出来るかもしれない。それ程の情報を彼は一人、握っていた。そんな普通科襲撃時とまるで成長していないながらも実際にその可能性を秘めてはいる期待を持ちながら、彼の中では学園の真実よりも価値が軽いと見られている人質、花丸山望に躊躇無くナイフを振りかざしていた。

「いた――アイツらね。ありがとう無花果ちゃん。ちょっと失礼するわね!」

しかしそんな絶対絶命な空気の中、その空気をそれぞれ体育館前通路で行動を起こしていたディザスターや生徒会に対して投げられた網状のスナック菓子と共に粉砕するが如く、菓子の匂いを漂わせながらも既に身体が傷だらけで明らかにスナック菓子を投げている様子から見て異能力を所持しているであろう女子高生が上空から落ちて来る。そして先程その女性が投げた網状のスナック菓子はまさしく漁に使用するネットの様に広がり始め、体育館前通路で色々揉めていた日陰蝶と亜門に一枚ずつ、そして人質を取っている元貞坂には三枚のネットを繰り出す等、逃げ場を失った魚の如く彼等は捕縛されてしまいそうであった。ただし、亜門のどんな怪力でも千切れない様な強力な念を込めた糸で既に拘束されており身動きが取れないでいた日陰蝶はそのままネットに引っ掛かり、拘束していた亜門もまたネットに対して自身の身体から飛び出した糸を駆使してネットを糸に結び付けて、自身を捕縛させない様に色々対処していた。
そして当の元貞坂はネットに対して花丸山を決して話さず、上手い具合に幽霊をプロターガイストの様に使役して見事に対処する。これには彼もドヤ顔が止まらない。しかしその隙に彼が持っていたナイフの刀身部分をネットを投げていた彼女に掴まれてしまい、いとも簡単にそのナイフを奪われてしまう。

「初めまして、豚野郎。よくもこの私のお友達を下らないことに巻き込んでくれたわね。――この私とおもちちゃんは一抜けるわ。後はこのクソつまらない遊びがしたいド変人どもだけで、好き勝手に遊んでなさい。興味ないもの、そっちは止めやしないわ」

突如として起こった元貞坂の計画を脅かす程のどんでん返しに動揺と混乱が止まらないが何とかナイフを奪われたと言うミスを取り戻すべく、とりあえず幽霊を総動員させて彼女を金縛りに遭わせようと企むが彼女の毒しか出ないのかと思われた口から勢い良く飛び出した謎のチョコレートによりそれは一貫の終わりを迎える。彼の頬に張り付いたチョコレートは大火傷を追う事は不可避な程の発熱を始め、思いもよらない熱さが元貞坂の顔面を躊躇無く襲って行く。本人も思わず、花丸山の事等どうでも良くなるほどに顔面を両手で抑え暴れながら絶叫。顔がチョコレートにより焼ける匂いを感じながら顔に付いたそのチョコを素手ながらもどうにか必死に外していく。そしてマグマの如く熱されたチョコレートと共に剥がされる皮膚や剥がしたチョコレートに触れた指の強烈な火傷にかなりの激痛を覚えながら、必ずディザスターを利用して復讐すべくチョコレートを吐き出した女子高生の顔をひたすら憎しみの目で見つめるしか出来なかった。

>>花丸山望様、咲羅木華無花果様、序ノ舞浪漫様、周辺ALL

5ヶ月前 No.682

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【武浦 風真/トリガーラボ 玄関】

 唐突に声を掛けられた風真は、くるりと振り返り、左手に持ったストローの挿さったトマトの中身を一口吸ってから返事を返した。

「はい?ああ、まぁ暇ではありますから別に構いませんが」

 風真は監視ロボットにぶら下げた (テープなどで強引にくくりつけてある) バケツの中からストローの挿さった玉ねぎを取り出しながらそう言った。このストローを突き挿された野菜たちは、水中で強力な衝撃波を当てられ形状を保ったまま中身を野菜ジュースにされたもので、息抜きでそれを作っていたラボの職員から分けてもらったものである。バケツの中には、かぶっていたカボチャと共にまだいくつかの100%野菜ジュースが入っていた。
 玉ねぎを一口飲んでから風真は思い出したかのように続ける。

「あ、でも内容にもよりますよ。あんまり酷いやつとかはちょっと」

 最早なんでもありなこの学園。なにせ人の首が晒されているのだから、こんな軽い口調で頼んできた手伝い事が人の生き死にに関わる物騒なものである可能性は否定できない。嫌ましてそちらの可能性の方が高い疑いまであるのだ。
 さてこの人は何をしたがっているのだろうと思いながら、風真はストローを吸った。

>>羽多野真郎

5ヶ月前 No.683

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_qTF

【桜木知佳/異能科・保健室→体育館前通路】

 ボロボロだった檜木の身体は、知佳の力によって回復に成功する。深手を負った詳しい経緯は分からないけれども、とにかくこれで一安心。

“貴方の能力は治癒能力なのね……。ありがと。でもその能力に対して何かリスク、副作用とかは無いのかしら……?”

「んー。副作用はないですけど、あたしの体力次第で使えない時もあるんですよね……。今日は比較的調子が良いので、大きな怪我さえしなければ大丈夫です!」

 知佳の能力の使用条件とは、自身に十分な体力があること。つまり、元気な状態でなければならない。なので自己に対する回復は苦手である。それにどちらかというと健康的な体質ではないため、たまに体調の悪い日もあり、いつでも使えるという訳でもない。使用すること自体には特に害を及ぼすところは無い。強いて言うなら、相手が重体だと流石に力不足な場合もあるだろう。勿論、蘇生は出来ない。
 リスクや副作用を尋ねながら何故か心配そうにする檜木に対し、知佳は立ち上がって両手を腰に当て、明るく振舞う。これくらい大したことない、とでも言うように。
 とりあえず、これでもう何も思い残すことがなくなった。早速体育館へ向かおう。

「さてと……では、今度こそ行ってきますっ。――またいつか、会えるといいですね!」

 一度ガッツポーズして見せてからドアへと駆けて行き、開ける前に檜木に振り向いて笑顔で一言告げたのだった。そして、知佳は体育館を目指して小走りで廊下を進んで行く。
 ……やっぱり、夢を見ているみたい。人伝に聞いてばかりだけど、自分も彼女について何も知らない訳じゃなかった。本当は関わっちゃいけない人と関わってしまったのかも……。この事は、心の奥にそっとしまっておこう。互いが無事でいる限り、二人はまだちゃんと繋がっているはず。きっとそれで十分。
 召集の時間まであまり間がない。急がないと……と少し焦っていた知佳だったが、体育館を目前にした通路の途中でとんでもない光景を目撃してしまう。

「……!?」

 前方に確認できるのは、数人の男女生徒の集団。しかし、一人の男子は顔面を両手で押さえながら悶絶しており、対峙する女子は檜木よりも酷そうな傷だらけの身体をしているのに、その苦痛を感じさせない雰囲気が一瞬見ただけでも伝わる。包帯が巻かれている片手にはナイフの刃が握られ、床に血が飛び散った跡が見られる。男子のすぐ傍ではもう一人の女子が立ちすくんでいて、ここまでであの場の大まかな状況を察した。また、彼らの周囲には他に五人程生徒がおり、謎のネットに手を焼いている人もいる。
 知佳はその集団を目にした時、足を止めずに咄嗟にショートパンツのポケットに手を伸ばしていた。どんな理由があろうとも、目の前の争いを止めなくちゃ。その思いが何よりも先行して、知佳がとった手段は――。
 "例の道具"を手にした腕を集団に突きつけると、手の内から蔦が伸びて絶叫しながら暴れている男子の胴回りに、あっという間に何重にも巻きつけられた。そして、蔦が収縮する力で知佳の方へ強制的に2m程引きつけ、男子をあの場から引き離す。男子が余計に暴れたりしないよう蔦で拘束したまま、知佳は彼のもとに寄って行く。

「大丈夫!? ちょっとだけ止めておいてあげるから、すぐに水で冷やしに行って!!」

 男子に声をかけながら知佳は手の平の上に、何処から出てきたのか綺麗な赤い薔薇の花を一輪咲かせて、薔薇の花を男子の顔にそっと付ける。すると、触れた感触も与えずに薔薇が顔の内部へ溶け込んでいく。これで、たったの数分だけだけど痛みが落ち着いて、応急処置出来るくらいには動けるようになるだろう。時間がないせいで、自分は処置に付き合ってあげられないし……。拘束は一旦落ち着くまで解かないつもりでいた。

【確定ロルしてます……。すみません!】

>檜木真琴、元貞坂朱夏、序ノ舞浪漫、花丸山望、体育館前通路all

4ヶ月前 No.684

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【魁圭代子&漆舘若菜&元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】
【檜木真琴/異能科・保健室】
【矢野島/普通科・グラウンド→異能科・保健室】

「んー。副作用はないですけど、あたしの体力次第で使えない時もあるんですよね……。今日は比較的調子が良いので、大きな怪我さえしなければ大丈夫です!」

辺りで耳鳴りが鳴る程の悲鳴や苦し紛れの呻き声、ただでさえ少ない生存者達の断末魔が耳を澄まさなくとも耳元の付近で囁くように、或いは騒音に塗れたスピーカーの様に響いて聞こえてくるが、一切を遮断したシェルターの様な安心感が漂い、部屋中に囲まれた真っ白な壁に体育館日和の青空から真っ黒な影が差し込む保健室で現在、自身の怪我を桜木が能力で治療してくれる檜木は些細で単純に頭に浮かんだだけの何の意味の無い、即ち全く持って雑談にしか過ぎない質問を周りが大変な状況に陥っている中、呑気に行っていた。しかしそれに対してそれでも彼女はちゃんと丁寧に答えてくれる。

(本当に副作用自体は無くて良かった……。私の怪我なんかで……)

そんな事を思い目の前の桜木を心配していると、自分の大怪我により行っていた能力での治療を終えた彼女は檜木が心配していた能力の副作用やリスク、体力消耗についてを完全に消し飛ぶかの様に椅子から元気よく立ち上がっては勢いしか無いガッツポーズを見せていく。

「さてと……では、今度こそ行ってきますっ。――またいつか、会えるといいですね!」

そう言って桜木は相変わらずの笑顔を向けながら世にも恐ろしい戦場、或いは処刑場への扉を自ら開き、安全だと思われる保健室を後にする。そしてそれを見た檜木も彼女を笑顔を守るべく、また自身の熾烈な戦いに身を寄せようと固く決意する。
するとその直後、保健室の窓に見覚えのある人物が懸命に檜木の名前を叫んでいた。

「……矢野島?」

一方で悲鳴も呻き声も断末魔も全て不協和音ながら融合されてしまっており、豪華なシャンデリアを淡々と飾っていた幾つもの天井を這っていた清掃ロボットの様な見た目の近未来ロボットさえも空気を読んで見えない所で機能を停止してしまっている体育館前通路にて、一人の女性、檜木が滞在している保健室を出て一応体育祭を開催している体育館へ向かっていた桜木の姿が見えていた。そしてそんな彼女を捕える景色は一人の白衣を着た少年、元貞坂が顔を両手で押さえて見るからに辛そうな声を叫んでいる中、服装がかなりボロボロで傷だらけの女子、序ノ舞が目の前で立ち尽くしていたと言う異様な光景であった。
しかしその場に居合わせた桜木は能力の一つなのか掌から蔦を出し始め、喉が枯れる程の絶叫を見せる元貞坂を何度も巻き付け拘束するというもっと異様な光景を見せていく。さらに蔦は縮むらしく元貞坂を引きずりながらも序ノ舞の元から離していく。

「大丈夫!? ちょっとだけ止めておいてあげるから、すぐに水で冷やしに行って!!」

想像もつかない程の熱さに見舞われた火傷の痛みを顔全体で感じ、蔦でグルグル巻きにされて恐らく今までの人生で一番大混乱している元貞坂はその言葉にも反応する余裕は無かった。しかしそんな状況でも火傷塗れの指の間から見えたのは戦場と呼ばれた学園に咲き誇る美しい赤い薔薇であった。そしてその花は自身の火傷部分を優しく撫でる。すると顔に触れた途端にその薔薇の花びらは浸透するかの様に痛々しい火傷跡に溶けていき、その火傷跡は少しずつながらも修復を開始する。

「……いやいや、結構洒落にならないレベルでマジ死ぬかと思ったッス」

そう、死ぬほど息を荒げこの状況に理解出来ないながらも元貞坂はこの学園でまだ生きている事を実感していた。

>>桜木知佳様、序ノ舞浪漫様、花丸山望様、咲羅木華無花果様、周辺ALL

4ヶ月前 No.685

@purple3ru ★iPad=o1RdeKbLL2

【花丸山望 / 異能科・体育館前通路】
【咲羅木華無花果 /異能科・女子寮・自室→異能科・体育館前通路】

望ごと刺そうと――していたわけではないが、望を刺してもおかしくない状態でナイフをこちらへ向けていた圭代子は、望の発言に動きを止めた。決して彼女の行動を正すために発した言葉ではなく(望に物事の正しい正しくないを判断することは極端でないとできない。現在も圭代子の行動が間違いだったとは思っていない)、本当に刺して構わなかったから言った――承諾したことだったので、表情に出さないながらも驚いてしまった。きょとんとしているうちに、自分を捕らえている青年の手にナイフが渡った。刺されなくて良かったなんて思ってはいないけれど、刺される覚悟はできていたけれど、どうやら自分が刺される運命は変えられないようだ。

「いっけぇぇぇええっ、浪漫ちゃん!」

聞き慣れた声がした――降ってきた。声の持ち主は上にいる。わざわざ見上げなくてもわかった。無花果が戻ってきたのだと。浪漫を連れて戻ってきたのだと。それを理解するとほぼ同時に、上から網と満身創痍の際どい格好の少女が降ってきた。(ベビードールだし、手足はきずだらけ。そんななら、こなくてよかったのに)自分の身体と友人で、友人を選んだわけだ。それを正しいとか正しくないとか判断するのは、望には難しいし、きっと他の人にも容易ではなく、きっと色んな意見がある。けれど、こなくていいのに、なんて思いながらも、望は嬉しかった。自分を助けにきてくれたことが。ほんの少し目を細めてほんの少し口角が上がったところで、こちらにも(正確には青年に?)網が襲いかかってきた。しかしそれは目には見えない力で飛ばされた。(やっぱ一筋縄じゃあ無いよ……ねっ!?)半分諦めそうになっている途中で、傷を応急処置しただけの細い腕が伸びてきた。その腕はいとも簡単に、一筋縄でナイフを青年から奪い、手から血を飛ばした。
既にあった傷は勿論新たについた傷に目もくれず、望も微かに頬をひきつらせるような笑顔をした浪漫は、口から茶色いものを――焼きチョコレートベイクを吐き出して、白衣野郎の顔へつけた。(あんなのが入ってたのに、よくしゃべれたな…)助けられた安心感で少々間抜けなことを考えながら、顔に貼りついた高温度の物体に悶える、自分をさっきまで捕らえていた人を見る。

「へっ、ざまあみろだよ!」
「無花果」
「おもちちゃんごめんねっ、あたし、浪漫ちゃんをつれてくることしかできなくて」
「ううん、うれしい。ありがと。浪漫も、助けてくれてありがと」

無花果は望の隣に降り立ち謝罪したが、望はそれに対して感謝を返した。自分を救ってくれた友人にも。(あたし、やっぱりなにもできなかった――んん?)望を人質にするからバチが当たったんだ、と火傷に苦しむ青年を見ていたが、突然ツルに巻きつかれて、そのツルの持ち主に治療されていってしまった。その一連の流れに(ちぇえ、ずっとくるしんでればよかったのにっ!)なんて意地の悪いことを考えながら、無花果は治療系異能力の少女の背中を見つめ、望は「桜木さん」と、面識のある彼女を小さく呼んだ。

>>周辺allさま

【遅くなってすみません!! サブにも書きましたが、3月までこんな調子です……】

4ヶ月前 No.686

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_D9v

【 序ノ舞浪漫 / 異能科・体育館前通路 】

 相手の反射神経次第では避けられる懸念のあった焼きチョコレートの一撃。当たるか当たらないかは一種の賭けだったが、今回は賭けに勝つことができた。白衣の少年は顔を抑えて痛そうに叫ぶ。というか痛いだろう。だって火傷だ。浪漫でも顔面に焼石みたいなチョコレートが降って来たら喉を引きつらせて苦悶の声を漏らす。切り傷や打撲とは別種の痛みなのだ、アレは。耐えようにもどうにも耐え難い。
 相手が苦しんでいる隙に望たちを連れて逃げてしまおうと、手に握っているナイフを誰もいない遠い方向へぶん投げる。からんと乾いた音をたてて床に落ちたナイフ。刃物を手放したところで刃物にもたらされた裂傷までは手放せず、手の平は相変わらずじくじくとと痛みを訴えた。が、これをまたしても根性で無視する。肉体からのありとあらゆるSOSを袖にし続けてここまで来たのだ、今さら一つ二つ怪我が増えたところで我慢の難易度に影響はない。たぶん。

「あの子、敵か味方か無関係な善意の第三者か、一体どれかしら」

 いきなりやって来て手元から植物の蔓を伸ばした少女を見て、どう認識しどう対応すべきか僅かに悩む素振りを見せる浪漫。最初は白衣の少年に攻撃したのだと勘違いしたが、よくよく見ればそれは治療行為であった。蔓や薔薇から察するに、植物に関連する能力だろうと予測はできるが……詳細まではよく分からない。ひとまず敵意も殺意も向けられはしなかったので、前回の大蛇のような手合いではないとだけ結論付けておく。ひょっとしたら、あの少女だって自分がどういう立ち位置かは理解できていないかもしれないのだし。たまたま通りかかった場所で一番痛そうにしていた子を治療しただけ。なんてパターンも十分にあり得る。
 そんな風にぐるぐると少女について考えていたのは、少女が「桜木さん」と望に名前を呼ばれるまでの間だけ。その名を聞いて思い出した。――そうだ、桜木知佳だ。クラスメイトでは無くとも同学年ではある女子生徒。今まで廊下などではすれ違ったことがあっても、言葉を交わした思い出は無い相手。それでも浪漫は、彼女に悪いイメージを抱いたことがなかった。だって彼女は、苛烈な正義感も悪辣な優越感も持ち合わせていない、健全で善良な少女だから。長らく続く戦争じみた日常のせいで、そういったまともな生徒はかなり間引かれてしまった。そんな状況下において生き残ってくれた数少ないまともな生徒が知佳だ。とはいえ、こちらが向こうに好印象だからといって、向こうもこちらに好印象だとは限らない。浪漫のルックスに反した強気すぎる性格は、時たま尾ひれの付いた悪評として人に出回ることも多い。それを知佳が耳にしていたらと考えると、自分から話しかけて良いものか少し迷う。話しかけられたくない奴に話しかけられるというのは、もうそれだけでストレスだ。浪漫も自分の邪魔をする連中には逐一そういう感情を抱く。今だと目の前の白衣の少年とかがそうだ。

「礼には及ばないわ、おもちちゃん。この私は友の期待を裏切れない女なの。本当の所は、裏切りたくない女なのかもしれないけど……それはさて置いて。桜木知佳ちゃんって、おもちちゃんか無花果ちゃんのお友達? もしそうなら、この私、おもちちゃん達だけじゃなくあの子もこの場から命懸けで脱出させてみせるわ」

 ありがとうと言ってくれた望に気さくな様子でそう返した後、知佳に視線を移して彼女は望らの友人かと問いかける。命を懸けるという言葉に偽りは無い。敵対者に向ける表情や発言は苛烈ではっきり言って性格の悪い浪漫だが、その反動とばかりに大事なものを大事にするタイプでもあるのだ。だから知佳が望らの友人であれば、本当に彼女のことも必死こいてここから連れ出そうとするだろう。
 ぽたぽたと、手の平から流れる血が足元にちょっとした水溜りを作ってゆく。自分では手の平しか切っていないと思っていたが、この出血量を鑑みると手首までザックリいっていたのだろうか。確認してみたものの、巻いてある包帯は既に九割がた真っ赤になっていて視覚ではよく分からない。痛みで判別しようにも、なんかもう体中あちこち痛すぎて痛覚が馬鹿になっていた。とりあえず血を止めるため、望たちの返答を待っている間にベビードールの裾をびりびりに破いて透けた布地を包帯代わりに手に巻き付けていく。たよりない布きれだが無いよりはマシだ。軽く巻き終えると、改めてポーチに手を伸ばして新しいお菓子をこっそりと手に握り込んだ。さっきの一撃で懲りてくれれば良いが、またあの白衣の少年がこちらに敵意を向けてくる可能性もある。そうなったなら、彼をなんとかして撒くなり退けるなりした上で愛しの友人らを無事に逃がさねばならない。それまで体力が持てば、寮に帰ってからならもうぶっ倒れても構わない所存だ。

>咲羅木華無花果様&花丸山望様&元貞坂朱夏様&桜木知佳様&体育館ALL様

4ヶ月前 No.687

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_cJs

【羽多野真郎/トリガーラボ・玄関】

 幸い、彼は時間に余裕がありそうな様子だった。

「それはよかった。なに、大したことではない。この辺りが少し荒れてしまったので、片付けに手を貸して欲しいだけさ」

 いつもの優しげな笑みと起伏の少ない語り口で冷静に対応する。
 やはり、あの首晒しの一件以来生徒の気が立っているのか。……まぁ、仕方のないことだ。所詮我々も、度々向けられる疑り深い目の一つ一つに臆していられない立場なのだ。
 今居る玄関の周囲には、黒ずんだ銃痕が各所に点在しており、中にはその銃痕付きで故障している機械もあった。現場を目撃してはいないが、何が行われたのか大方想像がつく。恐らく、その最中に此処でレーザーガン等のようなものを使っていたのだろう。しかし、その一件自体はほとんどの人間に関係するものではない。不必要な痕跡は早めに取り除いておいた方がいい。
 「ちょっと待っていてくれ」と言って、一旦別の部屋で道具を用意してから彼のもとに戻る。複数の道具を入れた箱の中には、特殊な模様のステッカーが幾らか入っており、近くのテーブルにそれを取り出して置いた。

「君には、傷がある物や破損している物にこのステッカーを貼ってもらいたい。貼られた物を感知すると、ロボットが来て運んでくれる。機械は私が対処するので、無闇に手を触れないように。よろしく頼むな」

 トリガーラボの壁や床は、校舎と同様に外部から付けられた傷を即修復するように仕組まれている。だが、椅子など一部の設置物においては対応していない。そのため手っ取り早く撤去してもらって済ませるとしよう。
 自分は手袋をはめ、故障した機械の方の作業にあたる。ただ、機械修理は自分の専門でないので、簡単な対処と破損箇所を特定して報告するのみである。トリガーラボの大半の機械は、爆発等を防ぐために危険時は自動的に電源が落ちるシステムになっていて、こういったトラブルが発生しても基本的に落ち着いて作業を進められる。

「その野菜ジュース、美味いだろう? 私もたまに貰うことがあるのだが、よく出来たものだよな」

 この通り、気楽に会話しながらでも行えるのだ。
 彼が野菜から飲んでいるものは、とあるトリガーラボ職員が趣味感覚で作っている特製100%野菜ジュース。よくトリガーラボを訪れた生徒にあげたり、休憩中の職員達に分けたりしているらしい。これがなかなか美味で好評なのだ。

>武浦風真、トリガーラボall


【嵐城條/トリガーラボ→中庭】

 トリガーラボを後にして特に行く宛もなくふらついていると、そのまま中庭まで歩き着いていた。中庭の二人掛けベンチに腰を下ろす。時間的に午後の競技が始まっていく頃合か。人通りが少なく、普段より静かだ。……お陰で、どこか遠くの悲鳴ともつかない人の声や物音がよく届いてくる。嵐城は、食べかけだったメロンパンを取り出して再び喰らいつく。少し潰れているが、味は変わっていない。

 ……羽多野曰く、本来何らかのミスによって失敗作を生み出してしまった場合は、可能な限り生かす措置をとるらしい。あの日は異能力の限界を調べるのが目的の、かなり無理矢理な実験を実施して失敗に終わったが、その後は学園内の施設で安置させながら方法を探っていた。すると、あらゆる記憶が失われているものの他の機能には異常が無いと突き止め、案外容易に復帰への見通しを立てられたと言う。異能力事件の影響で滞った時期もあったが、最近ようやく成功したとの報告があったそうだ。羽多野は管轄外であまり多くを語ることは出来ず、大抵は報告などから判明しただけの情報だそうだが。
 実は、以前から気になることがあった。こうなる予感はしていたのだ。この前偶然盗み見た3年D組のクラス名簿に、同級生に混じっているあいつの名前の欄を見つけてしまった。……まるでいつかD組に来ると示唆しているかのように。一応クラス担任でもある羽多野に問い質せただろうが、詮索されたくなくて自力で調べるつもりだった。生徒の監視が強化され、口には極力注意しないといけないし。
 だが、わざわざ明かさせるきっかけなんて作ったか? 何故話す必要があると判断した? まさか目的を知ってるはずはない……とすると、実際はもっと前から探られていた? 研究対象として目を付けられていたのだろうか。前に浮き彫りになった元無能力者の事例と同じことを企む標的は、自分自身だって決して例外ではないのだ。……気持ち悪い。学園の飼われ者なんて死んでもなってやるものか。
 羽多野の意図は相変わらずはっきりしないが、締め括りにある物を渡してきた。……間違いなく、あいつの私物の眼鏡ケースだ。女子キャラクターのシールが三枚貼られている水色のもので、中にはフレームが二色の紫でボーダー調に彩られたスクエア型眼鏡が入っている。安置する際にズボンのポケットに入っていたそうだが、その時本人は既に眼鏡をかけていたらしい。つまり、これはスペア用。うんざりするぐらい用心深い奴のことだから、有り得ない話ではない。
 ちなみに、当の本人は復帰自体は来週からだが、寝たきりで衰えた体力や遅れた勉強を取り戻す為に暫くの間トリガーラボの管理下に置かれる。トリガーラボに行かなければ、まだ対面することはない。なんだか酷く呆気ないものだ。次に会う時は、多分九十九学園の成れの果てを見せてやる時だと思っていたのに……珍しく計画が狂いそう。いっそ早い内に殺しておけばよかっただろうか。
 元はと言えば、あんなことにならなければ、こんな化け物は生まれず学園は馬鹿みたいに平和を取り繕ったままでいられたのだ。此処が血腥い戦場に変わることもなかった。希望が尽く奪われることもなかった。一部では醜くトップを争いだすこともなかった。本当はあいつが全ての元凶で、あいつさえいなければ誰も地獄を見ずに済んでいた……かもしれない。
 でも――あいつには罪は無い。罪が無ければ、恨みも無い。……ただの被害者だ。むしろ、学園を恨んでたっていいくらいだ。自身を死に損ないにさせられて、いくらあいつでも怒りを感じないはずがない。それが普通の行きつく先で。

「……ねぇ。あんたならどう考えんだよ?」

 メロンパンを齧りながら物思いにふける嵐城は、ふと隣に置いた眼鏡ケースに問いかけるように呟く。暫く沈黙が流れ、口の中の物を飲み込む。

「ま、どうせズレてる思考回路推理するだけ無駄なんだけど」

 こう口にして、嵐城は何かを決めたように動き始める。横の眼鏡ケースを掴み取り、中の眼鏡を取り出すと思いっきり目前の地面に叩き付けた。当然レンズはヒビ割れを越して砕け散り、フレームは曲がってしまう。
 これが形見のつもりなら、今更そんな物いらないのだ。だから、持ってるだけの物ならば邪魔になるだけ。さて、ただのゴミを送りつけてくるような無神経な奴かどうか……答えはすぐに出てくる。
 なす術が無いまでに破損した眼鏡。……しかし、辺りに散らばったレンズは徐々に元の位置に戻っていき、フレームも元の形へと勝手に動き、やがてレンズは一線のヒビも無い綺麗な仕上がりに変貌を遂げる。つい先程の状態ではとても信じ難いまでに、まさしく元通りになったのだった。
 それを見届けた嵐城は、ニヤリと口の端を吊り上げた。

「……上等だ。絶対、あんたの所に行くよ。ヒロ」

 足元の眼鏡を見下ろして挑発的に言い放てば、大鎌の刃先を突きつける。
 大体、経歴や異能力を考えればディザスターにとっちゃ恰好のターゲットになるのだ。あいつの記憶は、恐らく学園の真実に大きく近づける重要な手がかり。そして、それを奪う為の糸口を自ら寄越してきた。何も知らない癖にこんな真似しやがるとは、随分と舐められたものだ。……受けて立とうじゃないか。

>all

【嵐城條はこれで今回の章でやっておきたい部分が済みました。この後はフリーになるので、どなたとも絡めます。羽多野真郎も同様です】

4ヶ月前 No.688

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_D9v

【 巫女神楽片 / ???→普通科・広報委員会室 】

「急ピッチで進められた、この世のどこかでの普通科体育祭。それは敵の妨害さえなければスムーズに終わりを迎え、さあみんなで普通科に帰ろうということになった。けれどいきなり全員が帰ってしまうのは不安が残る。よって安全確認のため、自ら志願した生徒の何人かがこうして先に普通科の敷地へと帰還を果たすことになった。――頭の中で自分の状況をモノローグ調に語りながら、私は広報委員会室の扉を横にスライドさせる。どれだけ校舎の中身が近未来チックに改造されようとも、やはり学校の扉というものは横開きであって欲しい。そんな私の妙な拘りを、梅雨晴金鳥は快く承諾してくれた。だからここの扉は、SFじみた内装とアンバランスなありふれた扉なのである」

 地の文みたいな喋り方。そう揶揄される特徴的かつ冗長な独り言を淡々と廊下に響かせながら歩いて来た片は、口にした通りの動作でレトロな扉をくぐり抜けて広報委員会室への入室を果たした。ここに来るまでの間に中庭やらグラウンドやらを一通り巡ってきたが、ひとまずグラウンド以外がボロボロにされた様子は無さそうだ。そのグラウンドも、さっそく生徒会長たちが手配した業者がえんやこらえんやこらと忙しそうに整備している。誰がどこから手を回したのか、彼らの首には九十九学園の入構許可証がぶら下がっていた。コピーではなくちゃんとした正規の入構許可証だ。これで誰も、この業者たちを不法侵入者として妨害することは許されない。すればただのイチャモン付けだ。金鳥のロボットたちも手伝っていたことだし、あの分だとあと一時間ちょっともすればグラウンドは元通りになるだろう。地中の装置等の修理はまた今度個人でやっておくと金鳥が言っていたから、その時間は計算から省く。

「普通科の生徒たちの安全のためとはいえ、移動ばかりで彼らを疲れさせてしまったのは申し訳ない。今度は彼らを移動させずとも守ってやれる方法も考えていこう。ここに戻る前にそう口にしていた生徒会長の表情を思い出しながら、確かに私も少し疲れたかもしれない、と彼女の言葉に今さら頷いてみる。一般生徒の中にだって、さすがに片肺の無い私ほど虚弱な者はいないだろう。が、健全な肉体を所持していても疲れるものは疲れる。ゆえにこれからの私達の課題は、いかに生徒たちに精神的・肉体的な煩わしさを感じさせずに彼らを守るかだ。思案する傍ら、自動販売機で購入しておいた缶コーヒーのプルタブを開ける。ふわりと立ち昇る安っぽいコーヒーの香り。このチープな香りと味が、時たま、無性に恋しくなる。そんな人間はきっと珍しくないはずだ」

 一人きりにも関わらず、こいつのいる空間では静寂なんてものが空間を満たすことは殆ど無い。それだけ異様な独り言の多さだ。病気を疑われたこともあるが、カウンセリングを受けても特に問題は無かった。だからこれは、病的なだけでただの性格なのである。
 純白のシスター服を纏った彼女は飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に投擲。目線も向けずに適当に放り投げたソレが、ゴミ箱の中に入らなかった経験というのは一度も無い。だって巫女神楽片は強運なのだ。仮に殺す気で全部実弾が入ったリボルバーでロシアンルーレットをやらせれば、何故かいきなり新品のリボルバーが壊れて弾丸を吐き出さなくなるような女。ラッキーの申し子。異能力者でもなく、天才でもないが、『運も実力の内』という言葉に則るならば相当の実力者。
 そんな生き方をしてきたものだから、片は他の面々と違って九十九学園に対してもある種の呑気な考えを持っていた。破滅しか待っていない学園なら、そもそも幸運な私がここに入学する運命にはなっていない。だから途中でどのような地獄や戦争が繰り広げられようと、最終的には私の幸せになるようなことが起こるのだろうと。思い上がりでも慢心でもなく、今までずっとそうだったからこれからもずっとそうだ、程度の心持ちで。
 なんなら、もしこの思惑が外れて九十九学園が真に地獄の終わりを迎えたとしても、それは将来的には自分の幸福に繋がってしまうものだと直感している。この幸運は強力だ。けれど自分を幸せにはしてくれても、自分の周囲まで幸せにしてくれるかは五分五分だから。大好きな皆のためには幸運を期待するだけじゃなく自分も頑張らないと、と、片は改めてぐっと己の拳を無表情で握りしめた。――とりあえず、お金はあって困るものじゃないし宝くじを買いまくろう。大丈夫。片が買ったクジならどうせ全部当たる。そのお金で生徒たちに良い装備を配布する手はずなどを整えるくらいなら、自分にだってきっとできるから。

>対象者無し

【普通科での騒動が収まりだしたので、志願した普通科の一部生徒が様子見がてら普通科に戻りだしました。という描写だけ投下いたします。ロケーション大幅に移動しまくってすみません普通科の方々。次回からは守りの作戦の方向性を変えて大幅ロケーション移動は回避していこうと思います】

4ヶ月前 No.689

酢橘 @karasu1010 ★0gkYBdXyN1_qTF

【魁圭代子&漆舘若菜&元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】

先程、ひらりと赤い雪の様に舞った幾つもの血飛沫は体育館前通路におけるとても高級な絨毯に落下した後、みるみるうちに沁み込み始めていた。そんな治安がかなり悪い通路の中心で騒動を起こし巻きこまれていたのはたまたま付近に立っていたが為に花丸山を人質にして逃亡を考えていた白衣の少年に対して口からチョコレートを吐き出し人質を解放した序ノ舞、そして人質であった花丸山、また序ノ舞を呼び出した咲羅木華。さらに手からツタや薔薇を出して白衣の少年を拘束しながらも荒治療を開始する桜木。最後に全ての元凶とも呼べる白衣の少年こと、元貞坂。その他にも居場所を友の死と自身の罪で汚してしまう所だった事に放心状態の魁、目まぐるしく変化するこの状況に守るべき居場所が本当に脆く戦場と隣り合わせである事を知り、自身の考えが甘かった事を痛感する漆舘、亜門の糸や序ノ舞のネット状の菓子と二重に捕縛され、仲間であるはずの元貞坂も拘束されている状況ながらも直、余裕の表情を崩さない日陰蝶、憧れていたはずの生徒会も守るべきはずの学園も自身の正義や本来の形からかけ離れてしまい、自身はこれからどうすれば分からず迷ってしまい今行っているこの行動もこれで合っているのか、不安な表情を顔に出す亜門等がこの戦場の中でそれぞれの本音を見せていく。
そして自身の欲や本音をこれでもかと吐き出している元貞坂は引き千切れない蔦に包まれながらも、高温に熱しられたチョコレートによる火傷はもはや火傷跡さえ見えない程に完治していた。

「あの子、敵か味方か無関係な善意の第三者か、一体どれかしら」

そして火傷の痛みから運よく逃れた事により落ち着きを取り戻し始める彼は奇しくも序ノ舞と同じ疑問を考えていた。とはいえ、ディザスターのメンバーに治癒能力を持っている女性は余程の新人でも無い限り、いなかったはず。敵、即ち生徒会だとしても自身の傷を癒す理由は無い。そう考えると導き出される答えは一つ。つまり本当に元貞坂が運が良かったと言う事になる。

(それにしても本当にありがたいッスね。まあ、それでもこのままじゃオレっちが危険なのは変わりないッス。だからもう少し黙って人質になってオレっちの役に立ってくれれば、形勢逆転って奴が出来るッスよ……)

「それにしても本当にアンタと出会えて本当にラッキーだったッスよ。でももうオレっちは問題無いんでこの蔦を解いて貰えると助かるッス」

そう言いながら彼は蔦が解かれた途端に自身を助けた桜木を人質にするべく、花丸山と同じ様に力づくで捕まえようと企んでいた。

>>花丸山望様、咲羅木華無花果様、序ノ舞浪漫様、桜木知佳様、周辺ALL

4ヶ月前 No.690

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_cJs

【桜木知佳/異能科・体育館前通路】

 男子生徒は落ち着きを取り戻したみたいだ。……これくらいでいいかな。
 知佳は、この場にいる生徒の誰が生徒会で、ディザスターで、第三勢力で、無所属の一般生徒なのか、しっかり把握できていない。この男子生徒を標的にしようとしたのは、恐らく騒動の軸に立つ人物は彼だと咄嗟に判断したためだった。軸から崩せば、この争いはこれ以上エスカレートしないだろう。詳しい事情は分からないけど、彼が何か危険な行為をしたのかもしれない。そして、天罰のような苦しみを喰らってしまった。お互い納得していないと思うけど……それで十分のはずだ。ここではもう傷つかせないし、傷つけさせない。
 その時、“桜木さん”と名前を呼ばれた。よく相手を確認しなかったから気付かなかったけど、もしかして知り合いの人がこの中にいる? と予感して、知佳は振り向いた。

「おもちちゃん!?」

 花丸山望という名前の女の子で、知佳の友達だった。ということは、隣の傷だらけの女の子は……。

“礼には及ばないわ、おもちちゃん。この私は友の期待を裏切れない女なの。本当の所は、裏切りたくない女なのかもしれないけど……それはさて置いて。桜木知佳ちゃんって、おもちちゃんか無花果ちゃんのお友達? もしそうなら、この私、おもちちゃん達だけじゃなくあの子もこの場から命懸けで脱出させてみせるわ”

「そ、そんな……あなたも危ないじゃん!」

 もし助けられてしまったら、また怪我させてしまうかもしれない。彼女が良くても自分は駄目だ。もう、心配が無いようにしないと……。
 知佳は拘束したままの男子生徒を見やる。やっぱり此処から、ちゃんと逃がさなきゃダメなのかも……異能力の効果が解けない内に。

“それにしても本当にアンタと出会えて本当にラッキーだったッスよ。でももうオレっちは問題無いんでこの蔦を解いて貰えると助かるッス”

 すると、彼はこう発言した。思わず知佳はかぶりを振る。

「全然問題無くない! 痛みを止めたから治った気がするかもしれないけど、放っておいたらもっと酷くなる! そしたら、さっきよりも酷く痛むかもしれない! 今の力、五分くらいしか持たないんだから!」

 訳あって完治させるまで治療してあげられない知佳が男子生徒に行った処置は、ただ患部の"痛みを止める"のみであった。ついでに炎症を少し抑える効果も付けている。だが、火傷に油断は禁物だ。動けなくなる程の痛みが襲ってくるくらい酷いのだから、こんな処置だけでは未だ静かに進行し続けていてもおかしくない。火傷の原因になった物がまだ肌に残っている可能性もあるし。そんな状態の中で、『痛み』というのは重要なサインになる。だから、たった五分程度の短い効果時間で"痛み止め"をしてあげた。一旦冷静に判断出来る状態にして、応急処置を始めるタイミングで痛みが再発してくれたら丁度良いと考えて。
 痛みが治まったからと言って慢心してはいけない。もっと酷い目を見たくないなら、すぐに此処から離れた方がいい。……最善ではないけれど、どちらにとっても都合が良いと思う。

「また痛みがぶり返しても、水でじっくり冷やせば和らぐから。まだ動ける内に早く行って」

 こう告げると、男子生徒を拘束していた蔦を解いた。
 争いを止めたくて無鉄砲にも介入してしまった。やっと固めた決意を無駄にしたくなかった。しかし、知佳は自分に危害が及ぶリスクをほとんど意識していない。

>元貞坂朱夏、花丸山望、序ノ舞浪漫、体育館前通路all

4ヶ月前 No.691

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_UOT

【嵐城條/中庭】

 眼鏡をしまい、ケースを服のポケットに入れた後、メロンパンを食べ切る。近くにあったゴミ箱にメロンパンの袋を捨てようとベンチを立つ。最近設置されるようになったこのゴミ箱は、何を捨てても自動で分別してくれる。利用する側としては楽だ。
 残間義景とトリガーラボが手を組んでからというもの、管理体制がみるみる厳格化されても、こういう細かな待遇は日に日に良くなっていく。学園の支配が進んでいく有様を堂々と見せつけるように。生徒会なんて、最初から相手にする気はなかった。毎度ディザスターに対立しようとする生徒会の行動意思から、異能科の現状が大体読み取れる。自分にとってはそんな認識の存在。そして、何故奴等は頑なに学園の真実を守り続けようとしているのか。奴等はどこまで知っているのか。そもそもどうして知っているのか……それがいつも不思議でならない。今度の会合でようやく生徒会と、暴力を交えない接触を果たすことになる。生徒会と分裂しかけている残間が相手ではあまり期待出来そうにないけど、正直なところ一度生徒会も探ってみたかった。
 嵐城はゴミ箱に接近していく。その時、突然目の前に何かが飛び出した。

「……!」

 反射的に立ち止まり視界に捉えた姿は……白と黒の斑模様の猫だった。ゴミを入れる口の上に乗ってきたようだ。猫も此方をじっと見ているが、攻撃的な様子は感じられない。

「……あんた、野良か? ……そこ邪魔だから、どっかいけ」

 暫し疑惑の目を向けるも、とりあえず大鎌を猫の目の前で軽く振って追い払う。どんな猫なんだかすぐには判別つかないけど、野良だとしたら何処から入ってきたんだろうか。学園自体が閉鎖化しつつあるはずだが、実際はまだ漏れが存在しているのか……自分には関係ない話だけど。
 ともかくゴミを捨て、ベンチに戻る。まだ寮に戻る気にはなれず、これからどこに行く予定もない嵐城は、ベンチで大鎌をしまう作業を始めた。刃を折り畳み、グレーの布で包んでいく。仮装して歩くのにも飽きてしまった。
 すると、今度は隣に気配を感じて、視線を向ける。ベンチに足を組んで座る自分の隣に、さっきと同じ猫が上がってきてそのまま静かに座った。……一瞬追い払おうか迷ったが、猫は端の方に居て至近距離という程でもなく、異変があればすぐ分かると判断して、気にせず大鎌を包む手を動かす。

【改めてall文上げてみました。緩めに書いてみた(はず……)ので、よかったら絡んでください!】

>all


【羽多野真郎/トリガーラボ→異能科・校舎付近】

 トリガーラボにて騒動の処理が終わり、羽多野真郎は研究員側の仕事が一段落つこうとしていた。その時、仲間の研究員達が相談がしたいとのことで話しかけてきたため、話を聞くことに。実は、トリガーラボに保管されている兵器が幾つか無くなっているらしく、調べたところ無くなっている兵器全てに関して貸し出し等の証拠が見当たらないため、盗難と断定して犯人を調査したいとのことだった。研究員の中には残間義景にこの事態が伝わることを案じる者もいた。そして、話を聞いた羽多野は、

「なるほどな……。では、その調査、私が向かおう」

 とあっさり名乗りを上げ、一人で調査に出向くことになった。
 たとえ盗まれたとはいえ、紛失物の在り処は案外簡単に判明する。ビームサーベル等といった悪用されると危険な兵器には特に、酷く破壊されたりしない限り常に位置情報をトリガーラボに発信する機能が搭載されている。研究員のみ利用可能の専用の端末を用いてそれぞれの位置を把握でき、今回の場合は紛失物に指定された物のほとんどが一点に集中していた。つまり、これらを所持している者は一人と推測できる。映像や音声は取得できないため、これだけで人物の特定は困難だ。他の方法で確認する必要がある。
 羽多野は、トリガーラボ研究員と一目で分かる白衣に身を包んだ姿のまま、端末に示された位置情報に従って異能科校舎に近付いていく。

【まずワンクッション置く形にしましたが、これからそちらの方に絡んでみたいと思います!】

>(檜木真琴)、(矢野島)、周辺all

4ヶ月前 No.692

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【檜木真琴/異能科・保健室】
【矢野島/普通科・グラウンド→異能科・保健室】

首を曲げた蛇口から捻り出された水滴だけが銀色の歪んだ盤に弾いては響き、柔らかそうな高級椅子ばかりで其処には保健室の天使も桜木も誰も座っていない保健室の中、喉を潤す冷たい水を飲んでふかふかで寝心地が良さそうなベッドに座りながら小休憩を挟んでいたのは、つい先ほどまだ九十九学園にしては珍しく行事が行われているであろう異能科の体育祭へ向かう桜木を見送った檜木。そしてそんな彼女が気付いたのは、保健室の砂埃が少しだけ舞う窓に写る親友の姿であった。

「矢野島……!」

矢野島に再会出来た事に喜んだ彼女は真っ先にグラウンドからいつでも入れる様に保健室専用の扉を開けて矢野島を堂々と迎え入れる。

「良かった……。貴方にこれを渡せて……」

完治した自身への傷とポケットに隠し持っていたある一つの真実を見つめ出す矢野島の発言に頭を傾げ、唖然とする檜木。それに対して矢野島はある疑問を何も知らない素振りを見せる彼女へ素直にぶつけていく。

「あれ? メール見てない?」
「ごめん。スマホは学園潜入の時に壊れちゃって……。まあ、これのお陰で致命傷は避けられたんだけど」

そう言って胸ポケットにしまっていた形を成していないスマートフォンを何故か照れながら見せる。それに矢野島は本当はあの場所で寂しく死んで行くのだと考えていた為、もう二度と見れなかった変わる前の檜木を拝めた様な気がして思わず声を出して笑ってしまう。

「そうだ。はい、このデータ。……これにとんでもない真実が隠されていたわよ」

笑っていたはずの矢野島がいっきりに凍りついた様な顔付きへ変貌し、檜木もまた真実と聞いて再び緊迫した顔へ変わっていく中、彼女の小さな手に渡されたのはトリガ―ラボから盗まれたと思われる一つの近未来型USBメモリ。

「これが……?」
「ええ……この情報が正しければ今までの真実は全て嘘になるはず」
「どう言う事なの……」

それ程の情報を現在所持していたのは無関係だと思われていた知り合いの研究員から実は檜木に託されていたが、それを別の研究員に見られてしまった矢野島とそれを偶然聞いていた八城。さらに彼は完全なる予測ながらも元無能力者の調査から、謎のサイレン、そしてもう一つ起こっていたある出来事を元にある繋がりを感じており、学園の真実に確実に近づいていた。

>>(羽多野真郎)様、周辺ALL

4ヶ月前 No.693

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_UOT

【羽多野真郎/異能科校舎付近→異能科・保健室】

 歩きながら時折手元の端末を確認する。位置情報を示すマークは一点の場所……異能科側の保健室をほとんど動いていない。救護班か、もしくは怪我人の可能性も有り得るかもしれないが、あまり保健室に留まることの意味を推察しようとしても仕方がないため、まずは直接人物の確認をするべきであると考えていた。
 羽多野は保健室を目指して校舎の玄関へと迫っていく。だが玄関には入らず、横から校舎を回って外から保健室に近付いていった。そして、保健室の窓を通して見えた者は……女子生徒が二人。その中には意外な人物も居た。
 外と繋がっているドアからすぐには入室せず、先に窓の方に接近し開けようと試みる。すると、たまたま鍵が開いている窓ですんなりとスライドした。羽多野は、窓枠に両腕を置いて声をかけた。

「驚いた。まさかお前が生きていたとはな、檜木」

 保健室に居たのは、檜木真琴だった。檜木真琴は、かつて生徒会でよく活躍していたなかなか優秀な生徒であったが、ある時九十九学園にいない扱いとなってしまい、故に何処かで事切れてしまった可能性が高いと思われていた。

「羽多野だ。突然失礼するが、檜木に用がある。今から少しいいか?」

 檜木の傍には何故か矢野島の姿もあった。しかし、先ほどまで研究員と接触し追われて学園内を動いていたはずの矢野島が、トリガーラボの兵器を誰の目にも触れずに持ち出したとは考えにくいため、羽多野は兵器の持ち主は檜木真琴と推定していた。

>檜木真琴、矢野島、保健室all

4ヶ月前 No.694

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【檜木真琴&矢野島/異能科・保健室】

先程まで無駄に高級で最新科学により居心地を最大と化している恐らく九十九学園でしか味わえないであろう患者用の椅子が辺りに無残にばら撒かれたかの様に無人に近く、実際患者用ベッドには身体は完治していながらも今までの疲弊は残っている檜木が一人と言う状態の保健室であった。しかしそれは体育祭日和を見せる秋からの扉に手をかけた矢野島により保健室に再び完全とは言えないが活気が戻った様な気がした。
そしてそんな矢野島から手渡されたのは学園の真実に関する情報を書かれているUSBメモリ。それを一旦水が満ち満ちと張っている水が入ったコップを一気飲みした後、檜木は水滴が残っているコップを付近の患者用テーブルに乱雑置きながら、既に興味が向かっているUSBメモリを矢野島から奪う様に手に持ってひたすら眺める。この中にディザスターが秩序を犠牲にしてでも手に入れたかった情報が眠っていると考えると気分的にこのUSBメモリの重みが普通では無い気がする。やがては彼女は真実の重みを知る度、再び緊迫した顔へ豹変する。

「驚いた。まさかお前が生きていたとはな、檜木」

すると、予想外の来訪者が辺りが戦場だろうが処刑場だろうが圧倒的に平穏が保たれていたはずの保健室へ檜木と矢野島を訪ねる。それは九十九学園の関係者である羽多野真郎であった。その為、それを知っていた檜木からは九十九学園に無断で潜入した事が分かってしまったと考え込み、このまま彼に捕まってしまえば更生室行き、或いは晒し首と言った処刑対象になりかねない。しかし既に更生室は残間の意向により晒し首にする際に使っており、本当の処刑場と化としている。となると実質、彼女に待ち受けるのは処刑のみ。

「羽多野だ。突然失礼するが、檜木に用がある。今から少しいいか?」
「……はい。それで……どんな用なんですか?」

本来今すぐにでも逃亡しなければ、矢野島がやっとの思いで手に入れたこのデータが無駄になってしまう。しかし檜木は冷静になって、まだ羽田野自身がそうと決まった訳では無いのも事実。
しかし決して警戒は解かず、向こうが何か良からぬ事を行おうとするならば矢野島を連れて急いで此処から脱出するしかない。そんな事を檜木はUSBメモリとはまた違う視点で羽田野の様子を眺めながら考えていた。

>>羽多野真郎様、周辺ALL

4ヶ月前 No.695

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_UOT

【羽多野真郎/異能科・保健室(校舎外)】

 檜木は警戒こそしているものの、とりあえず用件を聞いてもらえそうな様子だ。

「お前、トリガーラボの兵器を持っているだろう? どんな理由があろうと、勝手な持ち出しは問題だからな。一度調べさせてほしいのだよ」

 人当たりの良さそうな表情と口調のままで単刀直入に切り込み、厳しい言葉もかけながら用件を伝えていく。しかし、相手がどれ程この言葉を信用するのか。今のところは何も嘘を喋っていない。ここで逃げても、無くなっている兵器の確認がとれるまでは必ず調べさせてもらう。

「素直に応じてくれたらあまり時間をかけずに済む。これからそちらに向かっても構わないか?」

 窓枠に両腕をかけた身を乗り出すような体勢を止め、少し体を引いて普通に真っ直ぐ立つ。窓枠に片手を置いて室内の檜木を見る。身長が高い部類のため、時々生徒と目線を合わせることが困難な場合がある。
 今、保健室の窓の外に居る羽多野は、たとえ拒否が返ってきても調査を諦める気は全くないにもかかわらず、保健室に入っていいかどうかを檜木達に尋ねる。一見他者からすれば意味の無い問いかけと思ってしまうだろうが、変に情をかけている訳ではない。自分の中にある礼儀を一々守ろうとする、生真面目な人間なのだ。相手がどのような悪人だろうとこの態度を一貫しているのが、羽多野真郎という異能科国語教師とトリガーラボ研究員を兼ねて仕事をこなす男である。もしかするとある種現在の九十九学園では珍しく、異能力事件勃発からもずっと自分のポリシーを持ち続けている教職員かもしれない。

>檜木真琴、矢野島、保健室all

4ヶ月前 No.696

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【檜木真琴&矢野島/異能科・保健室】

もしかしたら目の前の羽多野と言う相手はこの学園の平穏を乱す人物なのではないか、と檜木は警戒して感じているが、どちらかと言えば今までの経歴等を見ると明らかに檜木の方が裏切り者でディザスターや生徒会の事を考えると現在の九十九学園を乱しているとしか考えられない保健室にて、羽多野が檜木に聞いたのはトリガ―ラボの兵器についてであった。しかし彼女には特にトリガ―ラボの兵器を奪った覚えは無く、自身の手に持っている、矢野島から貰ったUSBメモリもトリガ―ラボから持ち込まれたかもしれないが、兵器なのかどうかは分からない。トリガ―ラボの最新科学ならばUSBメモリ一つで小型の無人戦闘機にトランスフォーム出来るかもしれないが。しかし特にトリガ―ラボから兵器を持ち出した気はさらさら無いので羽多野の指示には黙って言う事を聞く事にした。此処で無闇に逃げたら、普通でさえ怪しいのに余計に疑われてしまう。さらにもしかすると羽多野はトリガ―ラボの兵器の件については建前で本当は自身の捕縛、処刑が目的の可能性は無くは無い。即ち、これは罠である確率が示唆される。しかし彼女は警戒しながらも逃げる事は無かった。何故ならばどんな悪人だろうが正面から向き合う事に決めていたからと言う余りに秩序と真実から生じる屍に塗れた現実を見続けたはずの彼女にとっては随分と綺麗事で甘い考えを唱えていた。

「トリガ―ラボの兵器について? 特に問題は無いわ。ね? 矢野島」

一方で矢野島は立会人としてこの状況をただ見つめていた。いや、ひたすらにこの核シェルターに潜む平穏とコックピットに剥き出す戦場の狭間にある何とも言えない緊迫した空気に見つめる事しか出来なかった。
その様子を見ながら、羽多野がその領域に一歩踏み出す事に対して檜木はベッドから下り立ち、相手の瞳を真剣に見ながらゆっくりと静かに頷いた。

>>羽多野真郎様、周辺ALL

4ヶ月前 No.697

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_UOT

【羽多野真郎/異能科・保健室】

“トリガ―ラボの兵器について? 特に問題は無いわ。ね? 矢野島”

 檜木の発言と、ゆっくりで静かな頷きから同意の意思を受け取った。羽多野は元々緩く上がっていた口角を更に一瞬吊り上げる。

「……ご協力感謝する」

 一言礼を告げて窓を閉め、外から保健室へと通ずるドアを開ける。確認していなかったが、鍵は開いていたようだ。保健室に入ると、独特の薬品の匂いや温もりが鼻をくすぐった。最新科学によって付随した高級感故か、保健室らしい居心地の良さというものがまだ存在し続けていた。
 ベッド付近に立っている檜木達のもとに近付くと、羽多野は右耳の後ろ辺りに手をやる。すると、突如目の前に特殊なウィンドウが展開。これはトリガーラボ関係者のみが所有する専用コンピューターであり、主に書類の作成及び提出や、研究員同士の事務連絡等に使われる。勿論このウィンドウは使用者以外の人間でも視認可能だ。
 羽多野は慣れた手つきでウィンドウに手を触れ、操作しながらようやく口を開く。

「ではまず、此方が現在問題として浮上している所有者不明のトリガーラボの兵器のリストだ。この中にお前が持っている物があれば全て出しなさい」

 ウィンドウに手を添えて、檜木に向けて見せる。

「レーダーの反応によると、確かにこの保健室にあることが判明しているのだ。もし持っていないとしても、何か知っている事があれば教えて欲しい」

 圧倒的な科学技術力を誇るトリガーラボの機器が誤作動を起こしたとは考えにくいが、仮の可能性を考慮してこう付け加えた。
 檜木に確認を促しながらふと彼女の隣に視線を動かすと、矢野島がただこの状況を眺めるだけの立会人の如く、黙って此方のやりとりを見つめていた。そういえば、自分が保健室に入る前からこの様子だった。あの騒動の後で再び研究員を前にしているというのに、意外と大人しいものだ。

「……なんだ? どうかしたのか?」

 羽多野は矢野島に軽い調子で声をかけた。まるで日常会話のように、生徒に対するごく普通の教職員の振る舞いだ。

【ちなみにUSBメモリはリストに含まれていません】

>檜木真琴、矢野島、保健室all

4ヶ月前 No.698

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【檜木真琴&矢野島/異能科・保健室】

荒れ果て狂った九十九学園に限らず、特に普通の学園であっても何故だがかなりの安心感を得られる保健室で良き友人と共に過ごしていた為か、かなり安堵していた檜木と矢野島の前に突如、グラウンドの砂埃吹き荒れる外から保健室に現れたのは九十九学園教師、さらにトリガ―ラボと関わりがある羽多野であった。彼が何故、学園関係者では無い檜木の元を訪れたのはトリガ―ラボにおける兵器における件の為であった。それに対して、檜木達はトリガ―ラボの兵器については全く身に覚えが無かった為、兵器の事は嘘で自身を処刑する為の罠だと言う可能性を感じていた。しかし檜木は正面から羽多野と向き合う事を決意。そしてかなり警戒しながらも檜木と矢野島は羽多野を保健室に入室する事を許可。
そして異能科、普通科関係なくグラウンドで怪我人が出た場合、直ぐに治療が出来る様に直接保健室とグラウンドが通じている扉を開けてピカピカに磨かれた清潔さを感じられる真っ白な壁、名称の分からない薬品がズラリと並ぶ幾つもの棚、四つ程に並べられた患者用の高級ベッド、どれも一つ取っても他の教室には感じられない妙に温かみと落ち着きを感じる保健室に入室した羽多野は早速檜木達の元へ向かっていく。
すると彼は、眉を細めて緊迫している様子の檜木の前で突然、近未来を感じる特殊な画面を一瞬の動作で展開する。普通の人間ならば従来の科学よりも大きく発展したビームサーベルやロボット等と言ったトリガ―ラボの最新科学に驚愕しているだろうが、常に隣り合わせで触れ合っている檜木と矢野島にとっては特に驚く事は無く、トリガ―ラボの科学は相変わらず最先端である事を再確認する程度に留まっていた。そして全く持って表情を替える事無く羽多野の一つ一つの動きを細かく確認している檜木に対し、当の彼は最先端の科学を駆使したあのウィンドウに映り出しているトリガ―ラボにおける兵器リストを見せられ、所持している物がある場合は提出する様にと命じられる。それに檜木は少しだけ哀れむ様な顔を見せながら異能力者並に軍事で活躍しそうな兵器が載っている画面を見つめる。

「……兵器リストを見たけど、どの兵器も持った覚えどころか、見た事すら無いわ」

しかしトリガ―ラボにおける最新科学がミスを犯したとは思えない。それは檜木がトリガ―ラボと二年間、関与し続けていたからこそ分かる。それは矢野島も同じであった。しかし先程、身に覚えの無い檜木と違って彼女はUSBメモリに入ったデータを巡ってトリガ―ラボの研究員達に追われていた。だがそれにも関わらず、彼女が一番トリガ―ラボの最新科学がミスでは無い事を知りながら何故か妙に冷静であった。それは二度も無様に棄てたはずのこの命。もはや彼女に足掻く気は無く、今はどんな危機だろうが自分が檜木に出来る事を死ぬ気で執行するのみだと考えていた為である。つまり、自分自身の保身よりも檜木を優先していたのであった。

「……なんだ? どうかしたのか?」

そんな奇妙な覚悟に耐えられなかったのか、檜木を検査していたはずの羽多野はごく普通の教師と変わらない様な素振りを見せていく。普通の学園では当たり前だろうがこの学園では未だに教師の自覚がある方が珍しい。

「いえ、何でも有りませんが……?」

それに対して彼女もまた日常に住み着く女子高生を見事に演じ、全て何事も無かったかの様に返してみせる。

>>羽多野真郎様、周辺ALL

4ヶ月前 No.699

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_tZH

【羽多野真郎/異能科・保健室】

 やけに大人しい様子の矢野島が此方を眺めているので、声をかけてみた。対して矢野島は、

“いえ、何でも有りませんが……”

 と、平然とした態度で返してきた。その様子は、さながら普通の女子生徒。意外にも普段生徒と会話する時とほとんど変わらない感覚を覚えた。トリガーラボとトラブルがあったにもかかわらず、だ。単に彼女のそういった性格柄によるのか、もしくは意図的に合わせてきたのか……。

「お前も意外と元気そうじゃないか。あの時は瀕死だと聞いた気がしたのだが」

 あの時、とは騒動が発生した直後のことである。現場に居合わせはしなかったが、以前からの予感や周囲の研究員の声によって事態の大枠は把握していた。既に処理を済ませたトリガーラボの玄関前の荒れ模様からも、相当な惨状だったことくらいは当然理解できる。しかしながら、この場にいる彼女は全くもって無事に映っていた。……立場上、これまで矢野島の身に何が起きていたか、自分が知らないはずが無い。直接的な関わりは薄くとも、こうして顔を見ることは実は檜木以上に久しいことだった。

“……兵器リストを見たけど、どの兵器も持った覚えどころか、見た事すら無いわ”

 リストを確認させていた檜木から返答をもらう。羽多野は短く「そうか……」と顔色一つ変えずに言い、ウィンドウを自分の方に向けなおす。そして、今度は懐中電灯のような形状の道具を取り出した。

「それならば疑ってすまない。だが念のため、一度調べさせてもらうぞ」

 この道具の特殊な光で檜木の全身をスキャンすることによって、もしトリガーラボの物を檜木が所持していれば、それを感知することができる。結果は道具に内蔵されている小型モニターに映し出される。なお、これで感知する物は兵器のみならず、トリガーラボに所有権のある物が対象になる。科学の力を用いて、より正確な事実を明らかにする。檜木の発言が信用できないとは言わないが、これも必要な作業の一つだ。
 羽多野はその道具を使用して、檜木の全身をスキャンするように光を当てる。するとピッと電子音が一回鳴り、小型モニターに光を当てた範囲の特殊な画像が映し出される。さらに檜木の全身の内、手の中が赤い色で塗られていた。つまり、檜木が手に何かトリガーラボの物を持っていると、科学の力は示していた。その結果を羽多野は間違いなく確認する。

「ふむ……。檜木。お前の手に持ってる物、私に見せてくれるか?」

 判明した結果をもとに、檜木に手中に収めている何かを提示することを要求した。

>矢野島、檜木真琴、保健室all

3ヶ月前 No.700

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【檜木真琴&矢野島/異能科・保健室】

大分、最新科学で歪んだ形ではあるがこのタイミングで平穏が戻ってきた保健室にて、羽多野からトリガ―ラボにおける兵器を所持していないか検査を行われている矢野島と檜木はごく普通の女子高生にある意味羽多野のお陰で戻れていた。つい先ほどまで矢野島は死にかけ、檜木はこの学園へ不法侵入していたにも関わらず。

「お前も意外と元気そうじゃないか。あの時は瀕死だと聞いた気がしたのだが」
「あの時……?」

矢野島にとって瀕死と言われて一番に思い付くのは、先程の死にかけた状況では無い。彼女にとっては夏の暑い時期に病院から飛び降りた自殺未遂の事を指していた。その為、羽多野の発言とはあまり噛み合っておらず、現在の矢野島には疑問しか浮かんでいない。
すると、檜木にリストを見せていた肝心の羽多野は次に懐中電灯の様な道具を取り出したかと思えば、その懐中電灯を檜木の身体全体を当て始める。流石に突然、光を浴びられた檜木もこの言動に警戒してしまう。

「それならば疑ってすまない。だが念のため、一度調べさせてもらうぞ」
「……別に構わないわ」

そしてそのライトが手の部分に来た時、今まで反応が無かったはずの機械が電子音を立て一斉に反応を始める。

「ふむ……。檜木。お前の手に持ってる物、私に見せてくれるか?」
「それって……これ? まさか、貴方これを取り返す為に……!」

勿論、檜木の手に持っているのはある研究員が記した情報が入ったUSBメモリ。彼女は羽多野がそれを見せる様に指示した事に対して、狙いはこのUSBメモリを取り返す事だと考え込む。しかしそれを持ち逃げた本人である矢野島は決して動じる事無く、この状況を見守るだけであった。そして矢野島の様子を見た檜木もまた深呼吸を行い、冷静を取り戻し手に握り締めていたUSBメモリを堂々と羽多野に見せる。

「……これが……何か?」

>>羽多野真郎様、周辺ALL

3ヶ月前 No.701

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_tZH

【羽多野真郎/異能科・保健室】

“あの時……?”

 矢野島の反応は鈍かった。どうやら"あの時"がいつの話なのか、はっきり理解していない様子だ。

「先程トリガーラボで発生したトラブルについて、私は何も知らない訳ではないぞ?」

 しかし、無論意識不明の一件についても把握している。彼女が意識不明から回復したと知ったのは、あのトラブル発生時とほぼ同刻であった。だが、この場にいる矢野島を見ていると、それらの事実が冗談だったのではないかとさえ思える。そんな印象が感じられる。
 一方、手の中の物を見せるように頼んだところ、突然焦りを見せ始める檜木。

“それって……これ? まさか、貴方これを取り返す為に……!”
「…………」

 持っているのは余程それなりの物なのか、と此方の関心を煽る反応だが、羽多野はイエスもノーも告げず、指示に従ってくれるのを黙って待つ。するとすぐに、傍にいる矢野島の態度に同調したのか、檜木は一度冷静さを取り戻した様だ。

“……これが……何か?”

 そして、檜木は手に持っている物を羽多野に見せた。それは……近未来型USBメモリだった。羽多野はサングラスをずらして、USBメモリに触れずにただ注視する。

「……ほう。これは……間違いなさそうだな」

 と呟くと、サングラスを戻して向き直る。このUSBメモリは、勿論自分も存じているとある研究員が利用していたものだ。何故檜木が持っているのか……だが、そもそもあの矢野島が檜木と接触している訳を推理すると、考えられる目的は限られている。――トリガーラボの情報漏洩。
 他人の書いたものを覗く趣味はないため、具体的な中身は自分の知るところではない。しかし、このUSBメモリによってトリガーラボの情報を得ることは確かに可能だろう。さらに、あの研究員の記録となると……重要な機密情報も含まれていておかしくはない。
 実はトリガーラボに残間義景が介入して以来、研究員達の対立化が激しさを増し、分裂が進む一方だった。中でも強い不満を抱いていたらしいある研究員は、日頃から反発的な態度をとることが多くなっており、いつか裏切り行為を働く可能性が高いと危惧されている程であった。仮にこれが、その研究員から奪い取ったのではなく、彼自らの意思によって貰い受けたのだとすれば、トリガーラボや九十九学園にとって大きな損害をもたらすつもりで情報漏洩に加担しようとしていた恐れがある。所謂『学園の真実』というものか……。どうりで残間を恐れてあのように必死で追跡を行った訳だ。それがなんと、最終的には自分が発見してしまったが。

「どのようにして入手したか……その経緯に関しては深く聞きはしない。だが……お前達はそれを、どうする気なのだ?」

 尚も冷静な羽多野は、余裕のある微笑みを浮かべて二人に単純な問いを投げかけた。

【駄文続きですみません。羽多野先生の認識を一度整理すると、まず矢野島様の自殺未遂の件については、教員間の生徒の情報として知っている→しかし回復した頃は、既に矢野島様が学園にいない扱いをされている為知らせが届かず→トラブル発生と共に復活したことを知る。また情報漏洩の件については、矢野島様にUSBメモリを渡した研究員の不満な様子は、以前から目立っていた→トラブル発生時はトリガーラボ内の別の場所に居たが、物音や周囲の話で知る。研究員に対しては、とうとう何かやってしまったかという考え→その時は情報漏洩が成された事実だけで、具体的に何が行われたかは聞かされていなかったが、檜木様が持っていたUSBメモリを見て理解する。といったところになります】

>矢野島、檜木真琴、保健室all

3ヶ月前 No.702

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_qTF

【檜木真琴&矢野島/異能科・保健室】

「先程トリガーラボで発生したトラブルについて、私は何も知らない訳ではないぞ?」

保健室にて、檜木からトリガ―ラボにおける兵器所持の疑いで調査している羽多野から発されたその言葉を聞いてごく普通の女子高生を演じていたはずの矢野島は少しだけ、顔付きが変わってしまう。そして彼女は羽多野が此処にいる理由は、やはり一番最初に考えた、檜木の処刑とUSBメモリの回収だと考え直していた。ただそれでも彼女は今、自分が出来る使命を全うするのみ。
一方で、檜木は冷静さを装っていたがUSBメモリを指摘された途端に少し動揺してしまう。しかし矢野島の態度を見て、檜木もまた落ち着きを取り戻し普通に羽多野に恐る恐るUSBメモリを見せてみる。そしてそれを見た彼は着けていたサングラスを外し、じっくりと舐めるように眺め始める。

「……ほう。これは……間違いなさそうだな」

何やら、USBメモリを見て確信した様子を見せる羽多野。はっきり言ってしまえばトリガ―ラボで起こったあのトラブルを引き起こしたのが矢野島だと知っているのであれば、このUSBメモリとの関連は見えてしまう確率は高い。もはや急いで此処から逃げようかと矢野島は無表情のまま考えていたが、檜木は正面から羽多野に対応する事を改めて決断する。

「どのようにして入手したか……その経緯に関しては深く聞きはしない。だが……お前達はそれを、どうする気なのだ?」

そう言って冷静さを失う事無く彼はいつも通りに微笑む。それに檜木は覚悟を決めたのか、しっかりと対応する。

「それを聞いてどうするんですか?」

それでも少し荒っぽい口調できつくサングラス越しに見える羽多野の瞳を睨み付けてしまう。

「私達は学園を救う為にこれを使います。皆が笑える様な学園にする為に!」

>>羽多野真郎様、周辺ALL

3ヶ月前 No.703

@purple3ru ★iPad=1tE8MwuPts

【花丸山望・咲羅木華無花果 / 異能科・体育館前通路】

「桜木さん」と望が名を呼ぶことによって、浪漫はその少女が何者かを思い出すことができたが、無花果はその名に心当たりは無く首を傾げた。(さくらぎ? そんなお名前の人、いたっけ?)残念ながら、絵から生まれた少女は、自身のマスターと友人以外に本当に興味が無かった。
名を呼んだ望本人は、当たり前だがばっちり面識があった。球技大会ではあっちが一方的に望のことを知っていたが、今はこっちもちゃんと知っている。知っているとは言っても、望が知っている桜木知佳という少女は、優しくていいこでかわいいものが好きで治療系の異能力を使い足が速い、というだけだ。それでも数少なくなった生徒の中の同学年のメンバーの顔すら覚えていないマスター狂いと比べれば何倍もマシか。
「桜木知佳ちゃんって、おもちちゃんか無花果ちゃんのお友達?」という問いに、無花果は「あたしあのこしらない」と首を横に振り、望は「うん。わたしはそうおもってる」と言ってから、こちらを振り返った知佳に返答する。

「こんにちは、桜木さん。ひさしぶりだね。桜木さんのいうとおり、浪漫はあぶない状態だから、できれば治してほしいんだけど……その人のあとで」

知佳は治療系の異能力を持っていて、怪我にも詳しい。だから、この満身創痍な友人のことも治して欲しかった。今はディザスターの白衣青年の火傷でいっぱいいっぱいだろうから、勿論順番待ちはするけれど。
(ひどくいためばいいよ! おもちちゃんを人質にとった罰だもん!)マスター・友人主義の無花果は「さっきよりも酷く痛くむかもしれない!」という知佳の発言に、そんなことを考えていた。バチが当たるかもしれないが、知ったことか。望を人質にとる方がバチが当たるべきだ。なんて思っていたのだが、あろうことか、知佳は青年の拘束を解いてしまった。(は!? 馬鹿なの!? おもちちゃんが信頼してるから悪い子じゃないんだりうけれど――違う。悪い子じゃないからこそ、いい子だからこそ、いとも簡単にあんな野郎を解放しちゃうんだ!)あの男が動き出せば、望と浪漫が人質になってしまうかもしれない。

「ふたりともごめん! ゆるしてね!」
「!? 無花果!?」

青年が動けるようになった瞬間、無花果は、望と浪漫の腰に片腕ずつ絡ませ、ディザスターの彼の手が届かない位置まで飛んだ。

>>周辺allさま

【お久しぶりです遅くなってすみません…!!これからはちゃんと返信できますっ そして浪漫ちゃん確ロルすみません!】

3ヶ月前 No.704

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_cjE

【 序ノ舞浪漫 / 異能科・体育館前通路 】

 蔓を解いて欲しいとアピールする白衣の少年。アピール対象が浪漫であったなら、そんなもん通る訳が無いだろうと地面にツバを吐き捨てる。が、今回のアピール対象は浪漫ではなく桜木知佳。自他共に認める性格の悪さを発揮している浪漫と違って、彼女は善良なる少女であった。ゆえに言われるがままに蔓を解いてしまう。自分にリスクが及ぶことも覚悟の上で――というよりは、自分にリスクが及ぶという発想の無いままに。それが悪いこととは言わない。平和な世界で生きて来た者が平和ボケしているのは当然のこと。むしろ平和な世界で警戒心や猜疑心を鈍らせることがないのは、神経質だの妄想過多だのと詰られる行いだ。けれど、それでも。彼女の選択が、今の状況での最善とは言い難いのもまた事実。だって白衣の少年は、あきらかにまだ闘争心を燃やしている。絶対に何かやるはずだ。

(無関係な相手なら放っておくんだけど……おもちちゃんが『友達』と認識している以上は、この私にとっても庇護対象だわ)

 無花果と望の返答を勘定に入れ、浪漫の中での桜木知佳はこの場で二人に次いで『守るべき存在』として昇華された。だから白衣の少年が何かやらかそうとした瞬間、最悪、お菓子が間に合わないようなら自分の身体を肉盾として間に滑り込ませるくらいの心構えで向こうを睨み付けていたのだが……。

「!?」

 身体に回された無花果の腕に驚愕して固まり、踏み出そうとしていた一歩はあえなく空を切る。その隙に、気付けば浪漫は空中に浮いていた。一人で浮いているのではない。腰に手を回している無花果が浮いているから、結果として浪漫も浮かんでいるだけだ。もう片方の手の中には望の姿もある。どうやら無花果は、自分視点で友達ではない知佳よりも、自分視点で友達の望と浪漫を優先したらしい。
 腰を掴まれた瞬間、はっきり言って怪我が多すぎるあまり結構な痛みが走ったが、それを表情に出せば無花果が気にしてしまいそうなので根性と意地で我慢した。女は生まれながらに女優なのである。この言葉の初出が誰かは知らないし、誰だとしても、たぶんこういう状況を意図しての発言ではないだろうけれど。

「桜木知佳さん! とりあえず、これを使って頂戴!」

 無花果に抱かれて空に浮かんだまま、かろうじて白衣の少年に人質にとられていない知佳に向かって『パチパチパニック』と書かれたパッケージのお菓子をぶん投げる。これがお菓子を武器や使い魔に変える浪漫の能力に晒されると、スタンガンのような武器になるのは過去に検証済みだ。咄嗟に投げたのであまり良いものは選べなかったが、これでも無いよりはマシなはず。白衣の少年に思い切り電気ショックを浴びせてなんとか安全圏まで逃げおおせて欲しい。
 もしもそれが叶わず、白衣の少年に掴まってしまったら。……せかっく空中に避難させてくれた無花果には申し訳ないが、やはり身体を張って浪漫が助けに戻るしかないだろう。

>咲羅木華無花果様&花丸山望様&元貞坂朱夏様&桜木知佳様&体育館ALL様

【むしろこの確定ロルのおかげで返事が書きやすかったです! ありがとうございます!】

3ヶ月前 No.705

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_0Fn

【魁圭代子&漆舘若菜/異能科・体育館前通路】
【元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】

「それにしても本当にアンタと出会えて本当にラッキーだったッスよ。でももうオレっちは問題無いんでこの蔦を解いて貰えると助かるッス」
「全然問題無くない! 痛みを止めたから治った気がするかもしれないけど、放っておいたらもっと酷くなる! そしたら、さっきよりも酷く痛むかもしれない! 今の力、五分くらいしか持たないんだから!」

どこからか若々しい肌の表面や二つの肺の中における空気全体が一瞬にして凍り付きそうな真冬の匂いが僅かながら漂わせ、季節の境目に訪れると言う旋風と真っ赤に溶けだすマグマが張り付いたかのように熱せられた太陽から降り注ぐ光線が見事に混じり合い、最適な気温、即ちこの上ないスポーツ日和で始まったハロウィンパーティー兼体育祭。そして現在は午前の部が終了した後、昼休憩として各自、こんな状況ながら多くの資金を持つ九十九学園が用意した豪勢な食事等を嗜んでいた。
その中における、工業用に設置された清掃ロボットと言う近未来感と天井に飾られるシャンデリアと言う高級感が混じり合い不思議な空間を生み出している体育館前通路。以前は花丸山や咲羅木華、魁、漆舘の四人により脆くも儚い平穏な空間を創り出していたが、今は滅茶苦茶に壊されている体育館の扉からディザスターである元貞坂、日陰蝶。彼等を追いかける生徒会の亜門、その友人の来栖がその空間に割り込んできた事により状況は一変。その後は序ノ舞や桜木をも巻き込み、相変わらず混沌とした状態は続いていた。

「また痛みがぶり返しても、水でじっくり冷やせば和らぐから。まだ動ける内に早く行って」

焼けたチョコレートの香りを漂わせる戦場の様な状況で、そう言い放ち、序ノ舞の攻撃で顔に火傷を負った為、暴走していた元貞坂を蔦できつく縛っていた桜木は此処から自身の顔に付いた火傷を治す事に専念して逃亡する事を信じて、彼を蔦による呪縛からあっさり開放する。だが当然ながら、元貞坂は八城に檜木の手に持っているのと同じ情報を伝えるべく、慈悲を見せた桜木を人質にしようと企んでいた。その為、蔦から解放された瞬間、彼は体勢等お構いなしに仰向けの状態から飛び付くかの様に桜木の喉元を掴もうと腕を必死に懸命に伸ばす。
その時、解放された元貞坂を信用していない咲羅木華は傍にいた友人、序ノ舞と花丸山をそれぞれ担ぐ様に腕だけで運び出し、元貞坂が全く攻撃出来ない位置まで移動する。だが序ノ舞からの反撃を恐れていた元貞坂にとっては好都合。自身が彼女に攻撃出来ないならば恐らく彼女だって自身に対して攻撃等出来ないはず。これで誰にも邪魔される事無く桜木を人質に出来ると確信する。

「桜木知佳さん! とりあえず、これを使って頂戴!」

そう言って序ノ舞は桜木を助けようとしたのか、恐らく能力が発動されているであろう口の中がパチパチして刺激が強そうな駄菓子の袋を思いっきり投げ出す。それに対して元貞坂は幽霊を使役してその駄菓子をポルターガイストの様に操作する事が出来るが、それを幽霊達に伝える時間と余裕が無かった為、このままその駄菓子が桜木の元まで来る前に人質に取れば良いとこの場面でも結構楽観的に考えていた。

>>花丸山望様、咲羅木華無花果様、序ノ舞浪漫様、桜木知佳様、周辺ALL

3ヶ月前 No.706

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_6iE

【羽多野真郎/異能科・保健室】

「……ふむ」

 檜木真琴が突きつけてくる、力強い言葉と眼光。その全てを捉えて、羽多野は再び問いを放つ。

「"学園を救う"……それをお前達は、学園に笑顔を生むことと心得ているのだな?」

 それが数多に散らばっているゴールの中で、檜木真琴達が選んだものか。……なかなか面白い。

「確かに、現状の九十九学園では楽観的に過ごせる余裕が失われてきている様だ。絶望的だ、と言う者もいるかもしれないな。しかし、そんな人間でも心の奥底では、学園生活に平和が戻ることを望んでいたりするものだよ」

 だが果たしてそのような人間が、どのくらいの規模で存在しているか。異能力を持ってしても、推測するには困難を極めるだろう。そこには偏見も通用しない。生徒会にも、ディザスターにも、潜んでいる可能性は十分にあるのだから。

「お前達がその心の声をどれ程耳にしてきたのか、私の知ったところではないが……さて。その理想を追い求めることによって、本当にこの学園は救われるのかね? 元より、異能力事件が表面化するまでは、ずっと笑顔が見られていたはずだろう。お前達が目指すのは、その頃の学園なのか? それとも、新たに築き直すのか?」

 誰も『学園の真実』なんて気にも留めなかった以前の学園があって、今後の学園はどう成り代わるのだろうか。そして、生徒達はどのような舞台の上で笑い合っているのだろう。機密レベルの情報を求めてまで、彼女達が創りあげたいビジョンとは一体何なのか。

「仮に叶ったところで、結果誰が救われるのだろうな? その身勝手な行動が、知らずに誰かを苦しめることになるかもしれない。お前達が手にした情報は、その気になればいくらでも改竄できるぞ。しかも檜木、お前は反逆者の扱いを受けているらしいじゃないか。公開するつもりなのか知らないが、証拠があるとはいえ信用されるのか? そういったリスクを抱えてでも、お前達の理想の為に本当にそれが必要だと思っているのか?」

 一貫して全く余裕を乱さない羽多野。そして怒るでもなく、ただ単調に檜木真琴に向けて追求し続ける。生徒とは違う大人の気迫と共に、突きつけていく言葉に容赦はなかった。何が彼女の核心に触れるか、まるでおかまいなしだ。
 ここまで、羽多野はUSBメモリを返せ等とは一言も口にしていない。だが、間接的なニュアンス程度には含まれているかもしれない。返してもらうかどうかは、檜木真琴と矢野島の判断次第で左右されることとなる。

>檜木真琴、矢野島


【桜木知佳/異能科・体育館前通路】

 拘束を解くと、目の前の男子生徒はすぐに動き出す。しかし次の瞬間、なんと彼は此方に距離を詰めてきた。

「えっ……」

 真っ先に寄らんとする手先が、自分の喉元に近付いてくる。無警戒だった。何が起こったかも分からないまま、頭が一時停止して体が凍りついたように動かない。

“桜木知佳さん! とりあえず、これを使って頂戴!”
「っ!!」

 そこに鞭を叩いたのは、望の友人……序ノ舞浪漫の一声。名前を呼ばれた知佳は反射的に注意を向けると、空中から何かが飛んでくるのが見えた。そして、一度気が逸れたことで、男子生徒の腕を寸でのところでかわすことに成功。再び回りだした頭が、知佳に第一に緊急事態を告げる。……意図は何であれ、この男子生徒が自分に襲い掛かろうとしている。
 最初の手を逃れても、間髪入れずに迫り続けてくるだろう。距離を詰められた状態では普通に逃げるのも困難だ。なんとしても、あの救援を受け取らなければいけない。男子生徒も飛んでくる物に気付いているはず。知佳が獲得するのを阻止するべく、動きを封じてくるかもしれない。知佳の手が届く範囲に到達するまで間に合わない可能性も十分高かった。
 ……だが、桜木知佳はもう一つの手を持っている。

「ありがとうっ!!」

 今まで男子生徒に使用する為に握りっぱなしだった手を、知佳は振り上げた。そこから伸びていく蔦が、まだ知佳達に届かない位置にあるそれを一瞬で掴み取る。知佳は座りこんだ体勢のまま少しずつ退くなどの回避行動をとりながら、蔦を縮めて自分のもとに持ってくる。それは、『パチパチパニック』と書かれたパッケージの、一見何の変哲もないお菓子。このままではとても武器とは思いにくいが、その力を信じる他ない。
 知佳は『パチパチパニック』を口元に寄せ、蔦で巻きつけたまま歯を使って少し開封する。そして、そのまま『パチパチパニック』を叩きつけるように、ある種電気鞭と化した蔦を男子生徒に向けて振った。

>元貞坂朱夏、序ノ舞浪漫、花丸山望、咲羅木華無花果、周辺all

3ヶ月前 No.707

@purple3ru ★iPad=1tE8MwuPts

【花丸山望・咲羅木華無花果 / 異能科・体育館前通路】

突然自身の腰に絡みついてきた腕に、望は珍しく驚きを隠せなかった。とはいっても、他人と比べれば乏しい変化だが。自分と浪漫はこうして無花果のお陰で安全圏にいる。けれど、知佳は? 一番危険な位置にいる知佳は、置いてけぼりだ。

「おろして無花果。桜木さんが……」
「ダメ。あたし、これ以上大切な人失いたく無いから」

知佳と友達でいるつもりの望は無花果に、親しい相手ならわかる真剣な顔で願う。しかし無花果は望を見もせずに、怒っているような悲しんでいるような暗い表情を浮かべた。無花果にとっては、知佳なんてどうでもいい存在だ。自分の大切な人の友人だからと言って、失ったところで無花果は何も思わない。望が悲しんでいたら悲しいけれど、望や浪漫を失う悲しみと比べたらちっぽけなものだ。マスターを失った時点で、もうこれ以上ないほど悲しみ怒り憎んでいるけれど。
蔦が離れた瞬間、白衣の青年は知佳に手を伸ばす。火傷を冷やす気なんぞさらさらない。

(ほーらやっぱり。先ににげてて正解だったよ。どんなに手をのばしたって、お空にはとどかないんだから)

無花果の腕の中で、浪漫が知佳に向かって菓子を取り出して投擲した。動いたことによって落ちてしまわぬようにバランスを上手くとる。普段は1人で飛んでいて、たまに誰かを運ぶことはあっても1人をお姫様抱っこかおんぶばかりなので、2人を持ち上げて飛ぶのは初めてだ。だから、正直慣れていないのでこの上空も危ないっちゃ危ない。命の危険がある。
このフィールド内の一般生徒の中で唯一地に足をつけている知佳は、蔦を器用に使って浪漫が投げた菓子を掴む。乾坤一擲の賭けのようなものだったが――菓子が無駄になったりディザスターの青年や他の誰かの手に渡り悪用される可能性もあったが、上手くいったようだ。その様子に、望も無花果も安心して息を吐く。無花果は知佳なんてどうでもいいけれど、できれば人質にとられないならばとられないほうがいいに決まっている。

「……おもちちゃんも浪漫ちゃんも、此処から飛び降りて桜木さんを助けようとなんてしないでね。片方がやったら、バランス崩れて全員落っこちちゃうから」

呟くように2人にそう告げ、高度を上げる。常人の視力でもギリギリ誰が何をしているかわかるであろう高さまで飛ぶ。無花果は元よりめちゃくちゃ視力が高いので、勘で「ここらへんかなぁ」という位置に上がったのだが。

>>序ノ舞浪漫さま、元貞坂朱夏さま、桜木知佳さま、周辺all

3ヶ月前 No.708

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_GwQ

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3ヶ月前 No.709

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_0Fn

【魁圭代子&漆舘若菜/異能科・体育館前通路】
【元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】

絶対絶命からの起死回生を狙うべく、その瞳には桜木しか映っていないであろう程にガンつけている元貞坂の足元には細かく刺繍が施されており、現在はディザスターに誘拐されている理事長が直接現地で見て購入を決めたらしいこだわりのペルシャ絨毯。下手すれば履いている靴がローラーブレードと言う事もあり飛び込む事による影響で絨毯があるべき位置とはズレてしまい余程のバランス感覚を保たなければ滑って転んでしまう可能性が示唆される。
それだけでは無い。現在、元貞坂は自身を救済してくれた桜木を人質に利用しようと企んでいるが、そんな彼女に対して顔面に焼けている小さな石の様に熱されたチョコレートを飛ばしたあの序ノ舞が口が刺激される駄菓子が入った袋を放り投げる。これが特に無能力者の人間ならば何も感じる事は無い。むしろ、この状況でお菓子を投げると言う行為に思う存分、馬鹿にしながら嘲笑うであろう。しかし焼けたチョコレートの案件を考えると、明らかにそのお菓子が何かしらの能力が発動していると考えざるを得ない。その為、もしもこのお菓子が桜木が手にしてしまった場合、どの様な効果があろうがこちらに火傷並それか、火傷以上の被害が受ける事は確か。
それ等に対して色々、自身の幽霊を使役して様々な対処も考えたがそんな事を考える時間はほぼ無く、今はペルシャ絨毯が滑るよりも彼女がお菓子を掴むよりも誰よりも何よりも速く、彼女の喉元に踏み込むしか無かった。
だが実質、絨毯とお菓子と幽霊に対して余りに気を取られ過ぎた為、一瞬の反応が遅れてしまい先程まで放心状態であったはずの桜木は元貞坂の攻撃を回避。それでも何とか身体の体勢を無理やり動かすと言う無理のある動きを行おうと考えるがその間に彼女は腕から蔦を再び伸ばし、序ノ舞が託したお菓子を掴み取ってしまう。そしてそのお菓子の袋を歯で使って開封すると、蔦を巻き込んで元貞坂に向かって振るってみせる。
しかし彼は未だ諦めておらず、蔦を上手く回避してカウンターパンチを喰らわせて一矢報いてやろうと瞬時に思い付く。だが行動を起こそうとして足を踏み出した瞬間に絨毯がずれてしまい思いっきり滑って転んでしまう。さらにすぐさま、パチパチと音を鳴らすお菓子が絡んだ蔦に叩き付けられるとお菓子による能力の影響か、身体に電撃が走ったかのような特有の激痛を感じられ、見事に筋肉が収縮して金縛りに遭ったかの様に身動きが取れなくなる。

「た、助け……」

身体全体が仰向けの状態で麻痺しながらも意識は何とか残っている。ただし、もはや形振り構う余裕は無くつい先ほど彼女の思いを裏切り人質に取ろうとして、身体が痺れるほどの返り撃ちにあったはずのいわば完全に敵対している桜木に寝言と間違える程に曖昧な口調ながらひたすら助けを求める。
しかしそれを遮るかのように、突然体育館前通路に出現したのはどちらも2mはあるであろう二体のジンジャーブレッドマン。恐らく序ノ舞の能力の影響を受けているお菓子の一つ。そしてそんなジンジャーブレッドマン達は元貞坂に一切の躊躇も許さずに近づいていく。

「……っ!」

この状況ながら彼は都合良く桜木に対してひたすら電気蔦の影響により全く持って声も出せずに口を必死にパクパクさせながら、もはや自身の瞳孔だけでひたすら助けを訴える。

>>桜木知佳様、花丸山望様、咲羅木華無花果様、序ノ舞浪漫様、周辺ALL

3ヶ月前 No.710

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_CLw

【桜木知佳/異能科・体育館前通路→体育館】

 男子生徒が転んだ隙を突いて、蔦が絡みついた『パチパチパニック』が彼の身体に接触した。知佳の目の前で全身が激しく痺れ上がり、失神したかと思われたが、目や口には未だ意思的な動きが見られるのでかろうじて意識は保てている様子だった。さしずめ、電気ショックというものだろう。しかし、失神寸前にするくらいの軽いスタンガン程度。それを可能にしたのは、このお菓子に与えられた序ノ舞浪漫の異能力の力か。
 球技大会の事件の時、自己紹介は交わせなかったけれど、出会ったことがある望の友人。同学年なのも功を奏してか、あの日以降ふと名前を知ることが出来て、ファンシーでロリィタなファッションが可愛い子だなと思っていた。今度は傷だらけで衝撃的な再会となってしまったが。
 傷だらけの人との再会と言えば、檜木真琴もそうだった。みんな……あんな風に身体をボロボロにしながら、力を惜しみなく振り絞って生き残ってきたのだろうか。満身創痍の中、こうして誰かを救うことさえ厭わないで。
 ……羨ましい。本当はそういう人になりたいんだ。突如として男子生徒の方を向いて立ちはだかった、二体のジンジャーブレッドマンを見上げながら心の中で呟く。知佳は、当てた直後にお菓子を手放して力なく廊下を這っている蔦をしまい、道具を服のポケットに入れる。その時男子生徒が助けを請う様子に気付くが、その姿をあまり見ていられなくてすぐに俯いてしまう。
 結局は自分も傷つけてしまった。ちょっと感電させただけで一応正当防衛だし、許されないことではないかもしれないけど。紛れもなく自分の無力さの下だ。誰も傷つけさせないと言っておいて、自分に害が及ぶリスクへの備え一つも出来ないなんて、無茶にも程がある。
 ジンジャーブレッドマン達が攻撃しようとじりじりと詰め寄っていくのを、感覚で察する。……嗚呼、そうだ。今すぐにでも行かなきゃいけない所があるんだった。自分のせいで傷ついてしまう人がいるなら尚更、もう此処に居てはいけない。

「……ごめんなさい」

 知佳は小声でこう零した。たぶん男子生徒辺りにしかはっきり聞こえていないだろう。続けてぽつりぽつりとジンジャーブレッドマン達に向かって懇願し始める。彼らは使い魔のようなもので、浪漫との距離が遠いこともあり、知佳の言葉が通るのか分からない状況であったが、少し夢中になっていた。

「もういいよ。あたし、もう行くから。守ってくれるだけで十分だから! その人には何もしないで。お願い!!」

 呼びかける声は次第に強くなっていく。すると、運良く言うことを聞いてくれたのか、ジンジャーブレッドマン達はピタリと静止する。それを見て、知佳はホッと安堵のため息を吐いた。そして立ち上がっては、コウモリ風のコスプレと動きやすさを兼ねた黒のショートパンツを軽くはたいて埃を払い、上空に避難している序ノ舞浪漫達の方を向く。
 かなり高い地点にいるようだけれど、明らかに酷く衰弱しているように見える。ギリギリまで体力を削ってまで助けてくれたことには、本当に感謝している。でも、これ以上己の無力さを突きつけられて、理想から遠ざかっていくのを見てるのはもう沢山だ。この学園から争いを無くす為に……次こそは、絶対に誰かを救う人間になってみせる。
 知佳は、パンッと両手の平を合わせて頭を下げながら叫ぶ。

「ごめんっ!! 治療してあげたいんだけど、これから出番なの!! 終わったらすぐ行くねっっ!!」

 こう言い残して、知佳は体育館の中へと駆けていく。こんな時でもサボれない体育祭のルールが恨めしいが、此方も精一杯やり遂げたいと思う。他人を治療することしか能が無くたって、リレーには関係ない。本来の実力を出し切りさえすれば、足手纏いになんてならないし、何より自分自身が満足できるはずだから。

【知佳になら従うということでしたので、ちょっとだけですが従う動きをさせました。また、一旦離脱しますが、次でまた序ノ舞浪漫様達の方に絡み直す予定です!】

>元貞坂朱夏、序ノ舞浪漫、花丸山望、咲羅木華無花果、周辺all

3ヶ月前 No.711

@purple3ru ★iPad=1tE8MwuPts

【花丸山望・咲羅木華無花果 / 異能科・体育館前通路・上空】

ふよふよとやや頼りなく浮遊していると、赤色が視界の端に現れた。咄嗟に勢いよくそっちへ振り向くと、浪漫の鼻から赤い粘液があふれている。それに気付いた望も無花果も「浪漫!?」「浪漫ちゃん!?」と叫んだ。サッと血の気が引いて、冷や汗が出てくる。満身創痍の浪漫と違って、自分達はどこも怪我をしいぇいないのに。見ているこっちが身体中が痛くなってくる気がする。このままじゃ、友人を失ってしまうかもしれない。無花果がそんな不安で頭がいっぱいになりかけたところで、浪漫は不敵に笑った。

「浪漫……?」
「浪漫ちゃんっ、一体何をいってるの!? 気絶だなんて……身体だけ避難、なんて……そんなっ……何言ってるかわかんないよっ!! やめてよ、ねえっ……」

足手纏いにならない? 怪我をしていない箇所を探す方が大変な身体で、彼女は何を言っているのだ? いま彼女に必要なのは、足手纏いになりたくないなんて思いじゃなくて、足手纏いにならないなんて覚悟じゃなくて、身体を安静にする休養である。理解できないまま叫び続ける無花果を他所に、浪漫はジンジャーブレッドマンを数枚投げた。ジンジャーブレッドマンは巨大化して敵の方へ向かっている。望はそのジンジャーブレッドマンの行く先を見ていたが、無花果はずっと浪漫だけを心配そうに(実際に心配しているのだが)見つめていた。何度も「もうやめて」と必死に叫びながら。血を吐き瞳を閉じかけ指を震わし唇を紫にした彼女を見ているこっちが発狂しそう。浪漫は小さな小さな声で、反対の腕で抱えている望にギリギリ聞こえるだろうかという大きさの声でジンジャーブレッドマン達に命令した。

「ねえ、浪漫ちゃんっ、浪漫ちゃんっ……!!」
「……無花果、おちついて。浪漫は死んだわけじゃない」
「……でもっ、でもぉっ……」

気絶寸前と思われる浪漫を前に、無花果はボロボロと涙を零す。それに対し、望は泣きじゃくる少女を宥める。望だって浪漫のことがすごくすごく心配だ。感情が表情に出ないから冷静に見えるだけで、内心は無花果と一緒でとても焦っている。浪漫を失うかもしれない。そんなの、絶対、絶対に嫌だ! ずっとずっと自分や自分の友人を守ってくれた――守ってくれている浪漫がいなくなるなんて、考えられない。だからこそ、今は戦況を把握しないと。頭が悪くて戦いに向いていない自分にできることをしなければ。白衣の少年は『パチパチパニック』の影響で、失神寸前の状態にあるようだ。それをやった知佳は、蔦を収めて道具をポケットへ。どこか辛そうそうに見える。そして、少女は懇願した。「その人には何もしないで。お願い!!」と。ジンジャーブレッドマンは静止する。そして知佳はこっちを振り向いて謝ったあと、体育館へ入っていった。

「……あ、そういえば、いま、体育祭……」

あまりに混沌としすぎていて、今が体育祭の最中であることをすっかり忘れていた。確かに、自分の頭には魔女の三角帽子がのっている。無花果の格好も魔法少女のコスプレだ。こんな愉快なコスプレ、今の状況にはあまりにも場違いだけれど。

>>序ノ舞浪漫さま、元貞坂朱夏さま、桜木知佳さま、周辺allさま

3ヶ月前 No.712

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_GwQ

【 序ノ舞浪漫 / 異能科・体育館前通路・上空 】

 体育祭に全然関係の無いことばかりやっている状況の馬鹿らしさに笑えてくる。笑みの次に湧いたのは――怒りだった。流血のせいで冷えた身体に、苛立ちで熱が戻って来る心地。でもきっと気のせいだ。身体の内側で血液が逆流するような感覚を味わいつつ、下方のあちらこちらに設置されている監視カメラをきっと睨み付ける。視界は気絶寸前の体調のせいでチカチカと星が弾けているが、それでも大体の場所くらいは覚えているものだ。

(生徒がこれだけ好き勝手に暴れてるっていうのに、残間の奴ほんとうに何で来ないのかしら……! 何のために監視カメラ増設して監視ロボットまで付けてんのよアイツ! そろそろトラブルが起こってから『用意が遅れた』って言い訳も通用しないような時間経過してるのよ? まさか最後まで放置する気? 偉そうな態度とるならそれに相応しい行動も取りなさいよ、口と態度ばっかりの男なら股に生えてるもの切り落としてしまえ……!!)

 残間に心を読む能力が備わっているとは聞いたことが無い。から、声に出さずにストレスをぶつけたところで彼には届かない。それでも良い。頭の中で文句を考えるだけでもそれなりのストレス発散になる。というか口に出して相手の耳に入ったところで、あの手合いは自分が間違っていることや自分の行動の非をテコでも認めないので意味が無いだろう。自分一人だけのせいで何かを失敗したら、それでも何とか屁理屈をこねくり回して世界だとか他の生徒だとかのせいにしたがるのだ。自分の失敗を自分で受け止めることさえ出来ない男。その上こちらには監視されるストレスだけ与えておいて、監視を受けることによって得られるべき安全の保障は微塵も果たさない男。嗚呼、全くもって忌々しい。学園の秘密も理事長の意思もクソ喰らえだ。それがあんなムカつく男に気を遣ってやらなきゃいけない理由になるというのであれば、そんなものは二つまとめて粉々に打ち砕かれてしまえば良い。序ノ舞浪漫はそんなものの傀儡や虜になぞ死んでもならない。裏でこそこそやっている奴らが何を考えていたって――その考えにとてつもない価値があるのだと信じ込んでいたって、それでも浪漫にとってはケツを拭く紙にもなりやしない思想で行動だ。だから苛立たざるを得ない。どうしてどうでも良いもののために、どうでも良くない自分や友人らが煩わされねばならないのか。

「それにアイツも、そもそも人に助けを求めるようならこんな真似しでかしてんじゃないわよ……」

 知佳に向かって命乞いをする白衣の少年を、視線に侮蔑と嫌悪を含ませて見下ろす。知佳のお願いで動きを止めたジンジャーブレッドマンたちに、そんなゴミはさっさと潰して廊下のダストボックスに突っ込んでおけと命令を重ねても良いが……それをすると知佳の精神に何かしらの傷が残るかもしれない。望の友人を泣かせるのは忍びない。白衣の少年の命に価値を見い出すのではなく、無価値なものでも勝手に処分したら悲しむ価値ある子がいるから、という理由でジンジャーブレッドマンたちを大人しくさせておく。

「治療とか良いから、体育館に入ったらそこの不審者どもが生徒会に捕獲されるまでは大人しくしてくれていると嬉しいわ……貴方が戻って来たら、またそいつ貴方を人質にとろうとか目論みそうですもの……」

 体育祭の出番だからと駆けて行く知佳の背中に小さな声をかける。あまりにも小さすぎてきっと相手の耳朶は打ていないだろう。これ以上腹筋に力を入れて声を張り上げればまだ吐血しかねない底辺の体調なので、それだけ言うと口を噤んで肩で息をしながらなんとか呼吸を整える。警鐘が頭の中でがんがん響く。視界が真っ赤に染まったり真っ白に染まったりと忙しい。けれど覚悟していた気絶までは行かなかった。視界の端に走るノイズも点滅も、とりあえずこれ以上の無茶をしなければしばらくはこのままで停滞してくれるはずだ。……負傷もこのレベルまでいくと、じっとしていても悪化を遅らせられるだけで好転はしない。残念ながら、人間の肉体はそこまで便利ではないのだ。

「縁日のひよこじゃないんだから、そう簡単に死なないわよ……。気絶するかもってだけで失血死だの過労死だのするって言ってる訳じゃないんだから、そんな大事(おおごと)みたいに扱ってくれなくて大丈夫……」

 少しだけ息が整ったところで、望と無花果を落ち着かせるべく言葉をかける。ああ、くそ、瞼が重い。でもまだ意識を放り出すわけにはいかない。あの様子だと、たぶん知佳はまた体育館からこっちに帰って来てしまうだろうから。せめて彼女を安全圏まで逃がしてから気絶しないと。――それにつけても。彼女の様子を鑑みれば、その逃がすという行為がかなり難しそうだ。だからといって白衣の少年を手荒くぶちのめすのも、恐らく彼女は反対する。説得しようにも白衣の少年はなんかもうロクな性格をしていなさそうだし、こちらも厳しい道のりとなるだろう。考えれば考えるほど、この事態を収拾するより浪漫が気絶するほうが絶対に早い。
 ……やっぱり知佳の心の問題は無視して、彼女の身体だけを守る方向に切り替えたほうが良いかもしれない。そうすれば手荒な手段で白衣の少年を排除するという選択肢が実行可能だ。

>咲羅木華無花果様&花丸山望様&元貞坂朱夏様&桜木知佳様&体育館ALL様

3ヶ月前 No.713

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_0Fn

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3ヶ月前 No.714

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_CLw

【嵐城條/中庭】

 ディザスターは、ひたすら学園の真実を追い求めてきた。そして、求めれば求める程、多くの謎が掘り起こされた。更正室の内情。不可解な洗脳の変動。元無能力者の存在。普通科に潜んだ力。英文が流された意図。マッドハッターという新組織。異能力開発計画の真実……。細かく数えあげればきりがないくらい、情報や疑問をこの手で掴み取り続けた。
 そこで加えて嵐城に降りかかったのは、廃人生徒からの贈り物。調べたいことは山ほどあるが、なにはともあれ、当然のように次の狙いが定まった。此方も手にしてしまえば、もしかするとあの中のどれかを埋めることが出来るだろう。早速今日から計画を立てねばならない。
 行事日和の青空の下、両方の科の喧騒から離れて、中庭で一人。周りに謎の猫が一匹佇んでいながらも、嵐城は静かに時が流れるのを待っていた。すると、嵐城の携帯電話がメールの受信を知らせる。ロックを解除して確認してみると、送り主はディザスターのメンバーのようだ。『報告』というシンプルな件名が当てられた新着メールを開く。

『"現在、体育館前通路にて元貞坂朱夏、日陰蝶瑞穂が生徒会に追われている模様。元貞坂朱夏に至っては、一般生徒からの襲撃に遭っていました。どうしますか"』

 という文面の後に、四枚の画像が添付されている。午前の部の競技でしか体育館に赴いていなかったため、嵐城は校舎内で起こっている騒動に関しては気付けなかった。しかし、このメールを送ってきた奴はたまたま現場の付近に居て、野次馬に紛れて撮影していたのだろう。最初は、元貞坂が一般生徒の女子を人質にとり、その彼に向かって生徒会の女子がナイフを突きつけている写真。二枚目は、人質にされていた女子は解放されていて、体のあちこちに怪我を負っている一般生徒の女子の下で元貞坂が顔を抑えながら暴れている、という構図で撮られた写真。三枚目は、現場の集団からやや離れた距離で、元貞坂がまたもや別の一般生徒の女子に大人しく拘束されている写真。最後は、元貞坂は拘束は解かれているが、何か物理的ショックを与えられたような顔つきをしており、彼の周りを二体の巨大ジンジャーブレッドマンが取り囲んでいる、という写真である。
 嵐城は一通り確認すると、即行で送り主の電話番号に電話をかけた。3コール程度で繋がった。

「嵐城だ。今のメールの件だけど……ああ。二人まだそこに居んの? なら、至急つまみ出せ。日陰蝶もだ。ディザスターなら何人でかかってもいい。生徒会とか関係無い奴は付いてこさせるな。校舎裏の花壇がある辺りまで連れて来い。俺もそこに行く」

 生徒会らを制止させつつ、元貞坂と日陰蝶を外の校舎裏へ連れてくるよう指示し、相手からの了承の返事を聞いてそのまま電話を切る。それから、布で包み上げた大鎌を普段の通りに背負って立ち上がった。ベンチの上でくつろぐ猫は、微塵も動く気配が見られない。嵐城は、指定した校舎裏へと向かい始めた。

【唐突な横槍ですみません!ディザスターからの一応救出につながるような行動を起こしてみました。また、知佳の絡み直しはもしかすると展開次第で次の次になるかもしれません】

>(元貞坂朱夏)、(日陰蝶瑞穂)

2ヶ月前 No.715

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_xGQ

【桜木知佳/体育館】

 知佳が広大な体育館の中、選抜リレーの召集場所に向かうと、丁度点呼を行おうとしているところだった。遅れかけたにもかかわらず、体育館前通路で発生した事件が既に知れ渡っているらしく、逆にクラスメイト達に心配されてしまった。

「ごめーん!! あたしは大丈夫! ……あのさ、あたしと一緒に走る人知ってる?」
『知ってる知ってる! えっと、A組はね……』

 謝りながら自分のクラス、1年D組の列に近付く。並び方が走順なのか、先頭だけまだポッカリとスペースが空いていた。知佳はそこに入る前に、同じく第一走者である生徒の情報を聞き込もうと試みる。すると、日頃から学園の内情に敏感で物知りなクラスメイトが、一人一人の異能力や派閥等について教えてくれた。

『でも、あそこのクラス、ガラの悪い奴多いから気をつけて。あいつとかめっちゃ邪魔してくるかも』
「う……やっぱりそういうのやられるんだ……。あたし避けられる自信なくて、迷惑かけちゃわないかな……」
『なーに言ってんの! 妨害する奴がクソうざいに決まってんじゃない! 変な虫がいたら私追い払うからさ、知佳は一生懸命走ってきて!』
「……うんっ。ありがとう!」

 そう言ってくれた彼女の他にも、知佳をサポートするという発言がD組の列から続々と挙がった。そしていつの間にか、午前の部の競技で自分のクラスがどんな妨害をされたのかを話題に、愚痴が飛び交い始める。知佳は救護班の仕事で、午前の部の様子はほとんど把握出来ていなかったけれど、異能科の体育祭とはいえ異能力でやりたい放題の状況に、意外と辟易している人は多いのかもしれない。
 少し驚いたことは、まだ団結して頑張ろうと思える余裕がある人はいるのだ。派閥の対立が激化してきて、最早誰を信じたらいいのか分からない。そんな状態でもおかしくないのに、少なくともこの選抜リレーの仲間達は、互いを理解し支え合い、共感し、励まし合っているのである。本当は異能科だから特別……なんてことはなくて、こうして当たり前のように語らいながら、クラスメイトと一緒に挑むことが出来るのだ。そう思い知らされて、どこか胸の奥が安らいでいく。
 学園はきっと強く生きようとしているのだと思う。非日常に根深く在り続けるこの日常を、どうやって守っていけばいいのだろう。そんなことを考えながら、選抜リレーに臨んだ。

 ――そして、知佳のクラスは一学年の部で見事優勝を勝ち取ったのだった。

***

 一方、体育館前通路では変わらず空気が張り詰めている。そこへ、またも波乱を起こそうとする者達が接近していた。突如駆ける足音が響き始めたのも束の間、五人のディザスターが現れる。
 一人はジンジャーブレッドマンの横の隙間を抜けて元貞坂朱夏に近付く。その行動は命令事項に触れていないため、ジンジャーブレッドマンはピクリとも動かず、あっさり元貞坂を担ぎ上げようとしていた。また一人は、手で触れている物と対象物の位置を交換する異能力を持っており、所持していた人形を床に置いて手を触れ、人形と日陰蝶の位置を交換すべく能力をかける。もうまた一人は、異能力を用いて強化ガラス並の強度の透明な結界を張り、一時的に生徒会などが介入できないようにし、残りの二人は補助と、あっという間に的確な連携プレイを実行していた。

【主様と相談して許諾を得ましたので、ディザスターの行動を加えました。時間がかかってしまいすみません】

>元貞坂朱夏、日陰蝶瑞穂、体育館all、体育館前通路all

2ヶ月前 No.716

@purple3ru ★iPad=1tE8MwuPts

【花丸山望・咲羅木華無花果 / 異能科・体育館前通路・上空】

「……ほんとにっ、死なない? ほんとのほんと? だって、だってだって、あたし、こんな大ケガみたことないしっ……浪漫ちゃんだって、したことないでしょ? こ……こんなにいっぱいケガしたら、死んじゃうかもしれないじゃん……!!」

そう簡単に死なないから、大事のように扱わなくていい。そんなことを告げてくる、明らかに弱りきった様子の浪漫に、無花果は未だに泣き□りながら、自分の心のうちの不安をぶちまける。絵から生まれて空間を操ることのできる彼女には、怪我をしても割とすぐ自分の能力で治すことができる彼女には、初めて見た『死』がいちばん大切な人で、しかも一瞬でバラバラのぐちゃぐちゃになる『死』しか見ていない彼女には、人が――人間がどの程度の怪我で死ぬのかなんてわからない。わからないから、浪漫が本当に死なないかもわからない。嘘を言ってるかもしれない、なんて思ってしまう。浪漫のことを信じていないわけではないが……。

「……無花果、なんかきた……きがする。ここからじゃよくみえない」
「……ひくっ……えっと……」

一方、望はずっと下を見続けていた。浪漫をはやく休養させるには、さっさと此処を抜け出さないと。解決しないと。しかし、体育館前通路の様子が見えるか見えないかぐらいの高さにいる。わかるのは、状況が変わったか変わってないかぐらいだ。なので、詳しいことは、この距離でもしっかりはっきり見ることができる視力がないとわからない。無花果の視力がないとわからない。だから、助けを求めた。無花果もやっと落ち着いたのか、何度か深呼吸をしてから、下を見る。

「? 5人増えてる? ……あっ!? 1人があの白衣の人持ってった!! なんであのクッキーさんたちうごかないの!? もう!!! ん? 一緒にいたおねーさんもどっかいっちゃったよ!? 誰かが結界みたいなのつくっちゃったから入れなくなっちゃった……どういうことなの……?」

>>周辺allさま

【思ったよりはやく用が片付いたので返信できました!!】

2ヶ月前 No.717

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_YD6

【 序ノ舞浪漫 / 異能科・体育館前通路・上空 】

 乞うほどの命でもないのだから、命乞いなどしなければ良いのに。白衣の少年に微塵の行為も抱いていなければ価値も見出していない浪漫は、そんな冷めた気持ちを込めて上空から彼のことを見下ろしていた。まったく、こうして嫌な奴を視界に入れていると、友人らと密着しているこの状況の楽しさも吹き飛んでしまう。さっきまで友人らの安否のことで頭が一杯だったのに。最近こんな風に、ちょっとしたことがきっかけで心の中が急に荒んで仕方なくなる時がある。悪影響を受けていないと思い込んでいるだけで、やはり自分も九十九学園のイかれた空気に中(あ)てられているのだろうか。自分で自分がよく分からない。失礼な奴にだけ失礼な内は別に構わないが、この性格の悪さが全方位を向かないようくれぐれも自制しておかねば。……とはいえ今回は友人を人質にとった少年が相手なので、虫けらを見る目を向けたからといって心の奥にもやもやと重たいものが蟠ったりはしない。よって今回ばかりは浪漫も敵意と侮蔑を抑える気は無かった。

「そうね。死ぬかもしれないわ。けど、生きるかもしれないじゃない。だったら大丈夫よ」

 眼球からぼたぼたと透明な涙をこぼす無花果を慰めるべく紡いだ言葉は、けれど何の根拠も無い運任せのものである。なのに浪漫の口から出たものだと妙な説得力がある。普段なら効果を発揮するその説得力も、まあこのボロ雑巾みたいな状態だとどれほど効き目があるか怪しいものだが……まったく無いよりはちょろっとでも有ったほうがマシなのは確か。ゆえに最低限の強気の姿勢は崩さない。
 そうそう、強気の姿勢と言えば。ここまで一般生徒である自分達が危害を加えられているというのに、それでもニートみたいに何処かに引きこもって姿を現そうとしない“彼”にも改めて文句を言わねば。今度は頭で考えるだけでなく、ちゃんと口に出そう。今のうちに言っておかないとそろそろ本気で気絶してしまいそうだし。血の残量がたぶんヤバい。感覚的には1000mlくらい、下手をすればそれ以上は失っている。
 息を吸って、吐いて。霞む視界の中、監視カメラを睥睨しながら渾身の大声を絞り出す。

「――残間義景! 貴方、両方の仕事を十全に果たすだけの有能さが無いなら、やるべきことの多い肩書を二つも名乗ってんじゃないわよ! ただの生徒会役員だった時でさえ周りに気味悪がられてるだけで底の浅いポンコツだったくせに、偉そうな役職について自分が無能じゃなくなったって勘違いしていない!? 残念ながらそうじゃないわよ! 貴方は依然として、生徒に有害なだけで有益にはなれない、なろうともしない『肩書きだけ男』! いいえ、『肩書き負け男』だわ! こんなにディザスターの暴れ回っている場を放置するしかないって時点で、貴方の物事に対する処理能力の低さが露呈している! 仮に何か大事な仕事を別でやっている真っ最中だとしても、この学園の惨状続きを思えばイベント=何かやらかす奴が出て来るって分かりきってるでしょう!? だったらその仕事が始まる前に、どんなアクシデントが発生しても対処できるように役員たちに仕事の割り振りしておきなさいよ! それを怠ったんだから、やっぱり貴方は生徒会長や理事長の代理やる器じゃない! できないならやるな! やったならできるようになれ! 馬鹿の罪は馬鹿であることじゃなく、馬鹿の分際で自分は優秀だと思い込んだまま進化しないことだわ! 貴方はそれ! 最も醜悪な勘違い男! 自分だけが幻視している虚像に敗北した中身の無い実像! ――負け犬就任おめでとう! 今度ドックフードでもプレゼントしてあげる! それをお断りしたいってんなら、ちゃんと肩書きに見合うだけの中身と実績を引っ提げた男になりなさい!」

 憤りを監視カメラ越しに残間にぶつける。叫び終わった瞬間、ぜーはーと肩で息をするしかなくなるほどの疲労感が湧いて来た。やっぱり今にも気絶しそうな体調不良の身体で怒りの感情を思い切り言葉にするのは、いささか負担が大きすぎたらしい。これで残間が監視カメラや監視ロボットの映像をチェックしていなければただの怒り損だ。自分はスッキリしたので後悔はないけれど。
 そんなこんなで無茶をした結果、叫んでから十秒くらい軽く意識がトんでいた。その十秒の間に変化が起こっている地上の光景。目がぼやけすぎていて誰が何人くらい増えたのかもイマイチ断言できない。が、ひとまずなんだか人数が増えていることくらいは察せる。ジンジャーブレッドマンたちが迎撃していないということは、イコール攻撃されていない。つまり敵とは判定できない。かといって味方かと問われればそれも難しい現状。

「……ねえ、この私達もう帰って良いかしら? 友達がちょっかいかけられてるから来ただけで、それさえ開豁すればその白衣のクソ豚野郎のことなんかどうでも良いの。貴方たちがソレを回収して退くつもりなら、この私達もそうするつもり。喧嘩は売られない限り買わないわ」

 さっきの叫びで本当に限界まで体力を振り絞ったので、もはや腹に力を込めて声を張り上げる気力は残っていない。こんな遥か上空でボソボソと喋ったところで、地上のニュー登場人物たちに届くはずも無し。それでも口に出したのは、もうその程度のことを理解する思考回路も失いかけているほどの貧血に見舞われているからだ。本格的な気絶まで三、二、一、零――気絶した。それと同時に、地上のジンジャーブレッドマンたちが空を見上げてオロオロしだす。死んでいないから顕現は解かれていないが、雇い主ならぬ命の与え主が一時ダウンしたのだから無理も無い話だ。
 序ノ舞浪漫、これにて精神のみ一時的にこのカオスから撤退する。

>咲羅木華無花果様&花丸山望様&元貞坂朱夏様&桜木知佳様&体育館ALL様

【言いたいことだけ最後に言い残して気絶する性悪マン】

2ヶ月前 No.718

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_xGQ

【桜木知佳/異能科・体育館→体育館前通路】

 一分一秒が長く感じられた。仲間の助けもあって順調にリレーは進行し、アンカーの子が一着でゴールを駆け抜けた時は飛び上がるくらい嬉しかった。けど、決して忘れてはいけないことが次に待っている。全クラスの走りが終わり、最終順位が発表されると退場になる。知佳は余韻に浸るのもそこそこに、一目散に体育館を抜け出そうとした。

「……あれっ!?」

 しかし、さっきの場所には五人ほど人が増えていて、何やら状況が変わっている様だった。さらに、体育館から通路へ抜ける出入り口を通ろうとすると、異能力のせいと思われる透明な障壁に阻まれてしまい、出ることが出来なくなっていた。すぐに知佳は引き返し、体育館横の非常口から外に飛び出して、望達がいる場所へ急いで回り込んだ。ジンジャーブレッドマン達は、オロオロしながらも知佳と男子生徒(元貞坂朱夏)の間を阻むように、知佳が移動する度にちょこちょこと動く。
 見上げると日の光が眩しい空。目を凝らすと、ようやく視認できるくらいの位置に、彼女達はいた。知佳も視力は良い方だけれど、流石に一人一人がどんな様子なのかを判別するにはあの高度では難しい。出来るだけお腹いっぱいに息を吸い込み、両手を大きく振りながら大きな声を上げた。

「おーーい!!安全な所に下ろしてあげてー!!序ノ舞さんの治療するからー!!」

 呼びかけて自分の存在を示した後、両手をスピーカーのように口の横に当てて、望と序ノ舞浪漫を連れて上空を飛んでいる、友人らしき女の子にこう指示を出した。

「気絶までで済んでるといいな……」

 知佳は小声で呟く。姿が小さいけれど、あまり動いていないように見える。ジンジャーブレッドマン達の様子がどこかおかしいのも、ちょっと胸騒ぎがしてしまう……。知佳が治療可能なボーダーラインを超えていないことを願う。

>咲羅木華無花果、花丸山望、序ノ舞浪漫、元貞坂朱夏、体育館前通路all

2ヶ月前 No.719

@purple3ru ★iPad=1tE8MwuPts

【花丸山望・咲羅木華無花果 / 異能科・体育館前通路・上空→体育館前通路】

死ぬかもしれないけど、生きるかもしれない。何の証拠もない、不安要素しかないようなそんな理論に、無花果は何故だか安心した。強気な浪漫が語ったから、かもしれない。こんなボロボロでも、まだ気の強いままだなんて、その強さを保ち続けられるなんて。感心するというか、尊敬するというか……。

「……っ!?」
「みゃっ!? ろ、浪漫ちゃんっ!? ちょっと!? 浪漫ちゃんってば!!」

浪漫の怒鳴り声に、望はビクッと体を震わせた。珍しく表情どころか体にまで感情が出ている。浪漫ががなりたてたのと望が動いたのとで二重に吃驚した無花果は、崩れかけたバランスを戻しながら、気が遠のいた様子の浪漫を必死に呼ぶ。さっきまでのかなり焦っていたときからだいぶ落ち着いたので、もう泣いたりはしないが、それでも満身創痍な人間の意識がはっきりしなくなれば、呼号ぐらいしてしまう。
少々焦りはしたが、ほんの十秒程で浪漫は目覚めた。よかった、と安心する。浪漫は望にも聞こえないほど、無花果ぐらいにしか聞こえなさそうな小さな声で、下界の人間達にメッセージをつぶやいた浪漫は――気絶した。気が絶した。失神した。昏倒した。意識不明になった。どんだけ言い換えたところで、浪漫が自分の意識を投げ出した事実は変わらない。

「……無花果」
「……なに? また増えた?」
「そうじゃなくって……桜木さん」
「へっ?」

動かなくなった浪漫に、鼓動がうるさくなっていた。静かに、また、焦燥し始めていたけれど。望に名を呼ばれて、切り替える。桜木さん、と言われて、無花果は再び俗界――此処が死人の世界ってわけじゃないから、この言い方は正しくないか――に目を落とす。いつの間にか知佳が戻ってきていて、両の腕をぶんぶんと振り回している。目が合うと(とは言っても、あっちにはこっちの目なんて何処にあるか見えないと思うけど)手のひらを口角に添えて、叫んだ。無花果は目も良ければ耳も良いので、知佳の言葉は簡単に聞きとれた。
安全なところに下ろしてあげて、序ノ舞さんの治療するから。
『序ノ舞さんの治療』という単語が耳に入った瞬間、無花果は自由落下の要領で、一気に高度を落としていった。感覚としてはスカイダイビングのようなものだろう。突然の急降下に「い、いちじくっ、待っ」と望が怯えて自分に爪を立てるぐらいしがみついているが、待ってはあげられない。はやく浪漫を治してもらわないといけないのだから。能力を使って2人とも落ちないように固定しているが(どうやって? って言われるとこまるよ。能力なんても感覚でつかってるんだから)、そうやって自分に縋って少しでも安心するなら、その方が良い。(おもちちゃんの力ってそんなにつよくないから、そこまでいたくないしね)あんまり喋ると舌噛むけど。

「桜木さんっ!! おねがい!!」

地面から30cmほど浮いたあたりで、知佳の目の前で、無花果は急停止した。その反動に望が「うえっ」と呻き声をあげたが、最優先は浪漫の治療だ。

>>序ノ舞浪漫さま、桜木知佳さま、周辺all

2ヶ月前 No.720

酢橘 @karasu1010☆TyGLtXpsS1g ★0gkYBdXyN1_xGQ

【魁圭代子&漆舘若菜/異能科・体育館前通路】
【元貞坂朱夏&日陰蝶瑞穂&亜門・ギネルーク・龍牙&来栖寛治/異能科・体育館前通路】

眩しい程に焼け付く体育祭日和における真昼の空が頗る反転して、落ちて行くバレーボールが時間を戻していく様に不自然な動きを見せながら楽しげに浮遊する。それはまるで夢心地に浮かぶ気分。
其処に助けを求め、手を必死に伸ばすのは隣の恐ろしげな戦場の中心でぐっすり横たわる一般的な男子高校生兼ディザスターに所属している、元貞坂。いつ死んでもおかしくない戦場と言うのに呑気に横たわる精神からして彼は普通では無かった。例えば、偶然、九十九学園の普通科に侵入した最初の人物であり、偶然、理事長を誘拐する役割を担った人物であり、偶然、学園の真実に関わる情報を矢野島と研究員が行っていた取引を自身の幽霊における能力で目視しており、あらかじめ理解していた人物。ただし、もはや巨大な体育館程の広さを誇る別空間とも言えるそれはいくらこの戦場で名を馳せてもほとんど意味は無かった。

「……」

元貞坂から見える景色が鮮血とスイーツの匂いがする眩しいはずの青空がくすんで歪んだ黒にしか見えなくなる。勿論、他人から見える景色は相変わらずの澄んだ青空が神様ごっこの被害に遭ったグラウンドや保健室を反射させている。そんな青空が暗くなったと言うあまりに不自然な怪奇現象に彼は漠然とした理由も考えられずにひたすら身が震える恐怖に陥っていた。
ただ瞼が閉じただけだと言うのに、この世の終わりの様に寂しい。
しかし暗い景色の中に見つけたのは大量の死人達。それは普段から見慣れた最愛とも言える人々の死。中には腐乱死体として発見され、自身の幽霊として使役してきた『ちー兄さま』も其処に立っていた。その姿は決して腐っていない生きていた頃に見る事の出来た生身の人間の様。
その時、彼は静かに悟る。
死んでも君が離れないが為に今まで考えて来なかった事。永遠に続くと思っていた事。そんな日が訪れるのはずっと後だと考えていた事。

だがその時、突如夢から覚める様に体育館前通路に元貞坂の意識を戻される。残念ながら夢から覚めても夢以上に有り得ない様な景色が飛び交っていたが。

「……オレっち、た、助かったッスかね?」

そして此処から少しだけもはやクズであった彼の気持ちが変わる事となる。

>>周辺ALL


【最近、パソコンの調子がかなり悪く修理に出しており、投稿出来ない状態でした。申し訳ありません。これから少しずつですが参加出来ればと思います】

2ヶ月前 No.721

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★ThLUcHlK34_xGQ

【桜木知佳(別視点:ディザスター達)/体育館前通路】

 五人のディザスター達の圧倒的な連携プレイの末、元貞坂朱夏と日陰蝶瑞穂を呆気なく確保。この行為への反撃や反抗も大して発生しそうに無く、元貞坂朱夏と日陰蝶瑞穂についたそれぞれのディザスターから先に、この小競り合いの舞台から退散しようとしていた。意識が不安定な様子の元貞坂朱夏を担ぎ上げたディザスターは、ジンジャーブレッドマン達のバリケードから抜け出す前に、

『会長のご命令だ。お前と日陰蝶を指定の場所に連行する』

 と、これがディザスター会長からの指令による行動であることを明かした。日陰蝶瑞穂の方でも、同様の旨が伝えられたようだ。
 そして、ディザスター達はその指令通り、異能科校舎の校舎裏へと移動を開始する。

***

 知佳の言葉がちゃんと届いたのか、言い切るか切らないか位の時点で彼女達は下降を開始した。ただ、まるで普通に落下するかの如く物凄いスピードなので、違う意味で心配になってくるけれど……一応この状況として、早急な行動はありがたい。

「――わっ!」

 知佳が彼女達の降りる地点を追う必要はなく、やがて自分の目の前に現れた。そのスピードのまま上方向から急に来たものだから、知佳は一瞬驚いてつい声を上げてしまう。
 当然だが……ここまで重症の人を相手に治療を行うのは、流石に初めてだ。普通の学校生活の中であれば、異能力者とはいえただの生徒が満身創痍で意識も混濁な人と対峙する機会など、そうそう無いはずなのだ。ましてや死体なんて……。だから、自分の能力の限界をあまり正確に把握しきれていない。でもその分、本当の力が光ってくれるのだ。大丈夫。落ち着いて……。自分も人を救う力をちゃんと持っている。

“桜木さんっ!! おねがい!!”

「うんっ!!」

 強く相槌を打ち、序ノ舞浪漫の体に手をかける。まずは、彼女の体を受け取り丁寧に床に寝かせる。幸い床には高級絨毯が敷かれているために、より身体への負担が軽減されるだろう。

(目立つ外傷は切り傷、刺し傷、打撲……。あと、口元に血が付いてるってことは、もし吐血したとしたら、多分どこかの内蔵もやられてるのかも……)

 目視で分かる段階の状態を素早く確認すると、知佳は付近のジンジャーブレッドマン達を手招きして、此方に近付かせる。「今だけこの辺りに立っててほしいの。――うん。ありがとうっ」と頼み、外部から知佳達の姿が見えにくいように立たせ、仕切り壁代わりにする。

「ごめん、序ノ舞さん。ちょっとめくるね……」

 そうした上で知佳は、気を失っている序ノ舞浪漫に声をかけながら、ベビードールを捲り上げる。ジンジャーブレッドマン達への指示は、気休め程度かもしれないが、女の子の半裸姿がなるべく見られないようにする為の計らいだ。そして、腹や胸を調べてみると、他の患部と同様に応急的な治療の跡が見られた。その下の内蔵が、損傷を受けている可能性も考えられる。さらに、胸の部分を軽く圧迫してみると、ほんの少し軋む音がする……肋骨にも損傷箇所がありそうだ。

(一番の問題は大量出血からの貧血……。なら、大きいところだけ先に治して、貧血の治療を優先しよう)

 知佳はベビードールを元に戻しながら、大まかな治療工程を決める。一度に対処する患部が多ければ多いほど、僅かな差ではあるが時間がかかってしまうので、患部の治療は特に重症な肋骨、内蔵、厳重に処置されている(縫合が必要な)傷に、一旦絞ることに。一刻も早く危険な状態から回避させて、それからゆっくり残りの怪我の手当に取り掛かればいい。
 序ノ舞浪漫の腹の辺りに両手を添え、知佳はマークをつけた患部のみに意識を注ぐ。加速のかかった患部の自己治癒力が、細胞を高速で再生していく光景が眼の奥で展開する。およそ30秒くらいじっとそうしたところで手を外し、肋骨と今治療した傷を、包帯など保護している物も取り払って直接確認。……どうやら、どこも修復出来ているみたいだ。
 これで準備は整った。知佳は輸血とほぼ同等の効果を具現化したアネモネの花を両手の上に顕現し、序ノ舞浪漫の体へ。吸い込まれるようにアネモネの花が消失すれば、非科学的な力で急速に彼女の体の血液量を増やしていき、今まで減少した分を着々と補っていく。これで貧血状態は改善して、意識もすぐに回復するはず。

「序ノ舞さん! 聞こえる? 序ノ舞さんっ!」

 とりあえず意識の確認のため、知佳は彼女の肩を叩きながら呼びかけてみる。

>元貞坂朱夏、日陰蝶瑞穂、咲羅木華無花果、花丸山望、序ノ舞浪漫、体育館前通路all


【お待たせしました! 先日も口走りましたが、治療のパートになりましたので、確定ロル多発してしまっているため、その点についてまずは大変失礼致します……。もし何か不都合等ございましたら仰ってください】

>友禅様


【すみません。一気に進めてしまいました汗 もしやり残したこと等ございましたら、合間に挟んだりしても構いませんので! このレスの流れで宜しければ、異能科の校舎裏への移動となり、次で嵐城條が絡む形になります。ちなみに、体育館前通路に残した結界担当や補助のディザスターは、自由に扱って頂いて構いません】

>主様

2ヶ月前 No.722

友禅 @yuuzenn☆fXqsD0VZIxk ★DoaFJQIlTR_YD6

【 序ノ舞浪漫 / 異能科・体育館前通路・上空→体育館前通路 】

 気の強さに国家検定があれば一級は間違いない女こと序ノ舞浪漫と言えども、人間である以上は血を流しすぎれば弱るし気も失う。身体はぐったりと力が抜けたまま。意識は泥濘の底をゆらゆらと彷徨う。気絶の原因が原因だからだろう、普段は悪夢など殆ど見ないというのに、現在の浪漫はとてもじゃないが最高とは表現できない幻影の中に身を置いていた。人がいる気配を全く感じさせない、奥深い山の静かな谷間。そこで地面から生えてくるスライムと崖上から降ってくるスライムのダブルスライムによって押し流され、無言で無表情のままファラオのミイラみたいなポーズをとった自分が無音でどこかに運搬されていくという訳の分からない光景。夢占い師を呼んで欲しい。一体自分の深層心理はどういった意図を込めてこんな夢を上映したのか。まだ誰かに殺される夢とか落ちる夢とかなら分かりやすいものを、谷とかスライムとか本当にどう解釈すれば良いのか分からないにも程がある。

(ちょっと、この夢の監督したの誰? あれだけボロボロになって気絶したんだから、もっとこう、血の池で溺れる夢とか自分の死体の山の上で目が覚める夢とか、そういうおどろおどろしいのを作りなさいよ。それが無理ならせめてこの私好みのファンシーさで仕上げなさい。別に山にも谷にも流動体生物にも思い入れとか無いのよ。よくも満身創痍のこの私にクソ夢を見せてくれたわね?)

 放映開始から五秒で失笑もののZ級映画みたいな夢を見せて来た、自分の脳内にひょっとしたらいるかもしれない夢の担当者に文句を付けた。夢というだけあって便利なもので、崖上に脂ぎったバーコードハゲのおっさんが現れては谷底をスライムに運ばれてゆく浪漫に向かってしきりに頭を下げてくる。どうやらあれが浪漫の夢の担当という役職にある存在らしい。夢というのは不便と便利が混在した空間だ。願えばいもしない夢担当のおっさんが出て来てくれるのに、そもそもこんなクソつまんねー夢を見せてんじゃねぇよという想いは成就しない。

(けどまぁ、観ているのが走馬灯じゃなくクソ夢ってことは死にはしないみたいね。……それは素直に喜んでおきましょう。おもちちゃんと無花果ちゃんの前で死んじゃったら、あの二人のトラウマになりそうですもの。それが回避できたなら良いことだわ)

 己が境遇をそう結論付け、夢の中で目を閉じるなんて器用なことをしてみせる。夢のくせにやたらとリアルに伝わって来たスライムのヌメヌメとした感覚が徐々に薄らいでゆく。目覚めが近いのだ。自然回復でここまで迅速に意識を取り戻せる訳が無いから、誰かが異能を用いて手当してくれたに違いない。誰か、というかきっと桜木知佳だ。望や無花果の異能は回復系統のソレに属さないのだし。

 ――序ノ舞さん!

 瞼を開く。覚醒に向かう意識の中、外界より響いてくる少女の声。耳が拾ったそれに向かって、薄くなったスライムを振り切りロッククライミングの要領で近付いて行く。あの声の元に辿り着けば夢の世界からおさらばできる確信があった。もっとわかりやすくそこだけ光っているとかになれば尚良かったのだが、相変わらず妙なところで不親切な設計の夢は声を届けてくれるばかりで視覚からの情報は与えてくれない。
 崖を昇って、昇って、昇って、昇って、昇って。普段なら決して達成しえない崖昇りをものの数十秒で完了させた浪漫は、無事に声の聞こえてくる場所に到着した。刹那、行ったことも無い山の風景がぽろぽろと端から崩れていき、夢の世界の崩壊が始まる。ぐっばいクソ夢、かもん現実世界。また気絶することがあったら、夢の担当官はもう少しマシな夢を作れ。このクソ夢のフィルムはキャンプファイヤーの材料にでも使い二度と表に出すな。唯一の視聴者様からの命令だ。

「――……っ」

 何の余韻も情緒も無く、気付けば開いた瞼の向こう側には現実世界が広がっていた。クソ夢の名残は視界のどこにもありはしない。あって欲しいとも思わないのでそれは良い。首を僅かに動かして周囲を見遣れば、ジンジャーブレッドマンたちがオロオロしながら浪漫を見下ろしていた。最も近くにいるのは桜木知佳。自分の身体を確認すれば、目に付く大きな傷の幾つかが修復されている。心無し、血液も増えているような気がした。だってあの異様な寒気と頭痛がかなり和らいでいる。

「……正式なお礼は後日、菓子折りを添えて送るわ。今はひとまず言葉だけ受け取って頂戴。治療ありがとう。助かったわ」

 地面に寝そべった状態から上半身を起こしつつ、視線はしっかり知佳に合わせて礼を述べた。さすがに全快してはいなくとも、気絶する前より体調はだいぶと改善されている。今ならあの白衣の男に襲われてもまた友人らを守れそうだ……と考えながら眼球を動かせば、彼はとうにいなくなっていた。ふむ。戦いたいわけではないし、いなくなってくれたならそれが一番だ。もうここに居る理由も無い。安心して友人らを寮に送り届けよう。

>咲羅木華無花果様&花丸山望様&元貞坂朱夏様&桜木知佳様&体育館ALL様

【確定ロル問題ありません、ご丁寧にありがとうございます!】

1ヶ月前 No.723

@purple3ru ★iPad=1tE8MwuPts

【花丸山望・咲羅木華無花果 / 異能科・体育館前通路】

浪漫を知佳に預けた無花果は、久し振りに地に足をつける。と、同時に望も地面に下ろす。さっきの急降下がショックだったのか、へなへなと尻もちをついた。(し、しぬかとおもった……そこらへんの絶叫マシーンより、ぜったいさけぶ、これ……)乗り物酔いをよくするタイプでは無い望だが、そんな望でも、吐き気がする。三半規管が弱い子がやったら胃液を吐ききってしまいそうだ。
視診したり、ジンジャーブレッドマンに命令を下したり、手をかざして力を使うのを、ジッとただ見つめる。治癒する能力っていいよな、と。やっぱりいいな、と無花果は思う。どんな次元の壁も越えどんな空間も操る能力。これがあれば、傷だって治せなくはないような気も、する。するけれど、人間の体の構造がわかっていない自分が「元どおりになれー!」と能力を使って、本当に元通りになるだろうか? わからない。わからないから、失うかもしれない。失うかもしれないなら、やらないほうがいい。だから、もし失いかけても、それを治す能力が、欲しい。なんて考えていると、回復が完了したようだ。おわったの、と、口を開く前に、花が姿をあらわす。(何のお花かな?)花に詳しい人ならわかったのかもしれないが、自分が普段つけている髪飾りの花の種類も知らない無花果には判別できなかった。

「……浪漫ちゃんっ!」
「浪漫!」

知佳が浪漫を呼ぶ。浪漫が目を開く。体を起こす。強気に礼を言う。その一定動作を確認した望と無花果は、咄嗟に浪漫に抱きついた。望は相変わらず無表情だが、きっと、浪漫(と無花果)には、安心しきった笑みを浮かべているのだとわかるだろう。無花果は、誰がどう見ても泣いていた。ボロボロ涙をこぼしている。ボロ泣きだ。「よかった、よかったよぉ、しななくて、ほんと、よかったあ……」とうわ言みたいに、口から漏らした。

>>周辺all

【遅くなってすみませんでした…!】

1ヶ月前 No.724

燐鈴 @linnvo☆eQLF5/fJvizN ★TTZpoLeQQj_DZn

【桜木知佳/異能科・体育館前通路】

 ……反応は思った以上に早かった。すんなりと瞼が開き、僅かに首が動く。

「……。はぁ……」

 意識が戻った。それを確認すると、知佳は安堵のような、峠を越えた後のどっと押し寄せる疲労感を漏らしたような勢いで、一瞬大きく息を吐いた。
 すると、序ノ舞浪漫は自力で上半身を起こし始めたので、つい「あっ、む、無理はしないで!」と慌てる様子で労わる声をかけてしまう。勿論見くびってはいないのだけど、意識が回復したばかりで急に動かれたら落ち着いていられない……。

“……正式なお礼は後日、菓子折りを添えて送るわ。今はひとまず言葉だけ受け取って頂戴。治療ありがとう。助かったわ”

 序ノ舞浪漫は上半身を起こしながら、視線を合わせて礼の言葉を告げる。知佳は、しっかりと頷き返して朗らかな微笑みを浮かべた。一方、ここまで見ていた望達は、咄嗟に序ノ舞浪漫に抱きついて、それぞれ反応を見せる。

(可愛いなぁ……)

 そんな三人の様子を見て、知佳の中で密かに胸をくすぐられる思いを覚えていた。不意に心がほっこりと、温められる。

「どういたしまして! 本当に、助かってよかった。残りはお部屋に戻ってから治療するね。……でも、後で病院には行っておいてほしいな。気付かなかった怪我とか、後遺症がないかどうかも、一応調べてもらった方がいいかも。申し訳ないけど……あたし、そういうの見つける力までは持ってないの」

 知佳はこう声をかけ、此処よりは安全かつ安静にできる寮の部屋で治療を続けようと考えた。そして、病院での検査を勧めつつ、バツの悪そうな顔をして言った。実は、治療するための力なら使いこなせるものの、検査の類にあたる能力は扱えないのである。これも知佳の異能力の弱点になり得る部分だ。
 人間の力で見抜ける範囲までしか、怪我や病気を見抜くことが出来ない。無論多少学んではいるが、さすがに医学生ほどの医学知識や技術は無いから、その識別能力は一般人レベル。体内の組織修復は出来ても、それはあくまでイメージと感覚で操っているのであって、本当に見えている訳ではない。だから、成功しているか否かを判断するには、患者の様子から判断するしかないのである。序ノ舞浪漫のような怪我の負い方の場合、どこかの臓器に後遺症が残る可能性も捨てきれない。何事も無くいてほしいが、一度は専門の所にも頼ってほしいと考えていた。

【お待たせ致しました!】

>序ノ舞浪漫、花丸山望、咲羅木華無花果、体育館前通路all

1ヶ月前 No.725
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