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【完結】第9区画治安維持部隊レスパーダ

 ( オリジナルなりきり )
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監視システム @captain1 ★SDED1rj6G1_nas

「アドバースシティ」

それは周囲を高い壁に囲まれたこの世界一の科学力を誇る街

街並みは現代とあまり変わらずとも
その内部に存在するシステムは大きく発展を遂げている

そして…


それはアドバースシティ第9区画に存在する

アドバースシティ最強の治安部隊


「レスパーダ」


今日も彼らは街を駆け回る……

静かに影がうごめいていることなど知らず……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いつもと変わらない日常が流れていた中、突然その平穏は一気に切り崩された。アドバースシティ中に鳴り響くサイレン、続いてアナウンスが響く。ミッション開始の合図だ。男はアナウンスに耳を傾け、犯人とその居場所の情報を手に入れる。ここからそう遠くはない、走っていけばすぐに到着する距離だ。

「よし、俺達の出番だな。今日も気合いいれて行くか!」

男は周囲にいる自分と同じ立場の人間、レスパーダ隊員に向けて声をかけた。その男の言葉に、ある者は右手拳をあげ、ある者はにっこりと微笑み、ある者はぶつぶつと文句を言って、ある者は悪態をつく。しかし彼らが目指すべき場所、そしてなすべきことは同じ。彼らは一斉に同じ方向へと走り始めた。今日も彼らは街を駆け回る……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


男はモニターの光だけで照らされた薄暗い部屋で、椅子に全体重を預けて、ぼんやりと宙を眺めていた。モニターに次々流れていく生体データや分析データなど目もくれず、なにもない黒い空虚をぼんやりと眺めているだけだった。男の空っぽの頭の中に、過去の映像がフラッシュバックする。街へのあこがれ、決意、約束、空虚、そして絶望。次々と過去の記憶を思い出した男は強く目をつぶり、前のめりの姿勢になって背中を丸めた。先ほどまで空っぽだった男の頭には苦悩がいっぱいに詰め込まれ、男はその感情に支配さてその態勢から動くこともできない。男は自分の左手首につけられたシルバーのリングをちらりと見て、大きく息を吐いた。男が吐いた息が薄暗い部屋へ拡散していくのと同時に、男の足元では静かに影がうごめいていた…



【初めましてスレ主です。こちらは近未来+能力バトルのストーリー制スレとなります。
 興味を持たれましたら是非サブ記事へどうぞ】

1年前 No.0
メモ2017/04/26 23:39 : 監視システム @captain1★Android-UJhhnaQiDA

当スレは完結いたしました!

ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!

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監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ヘクター、リッキー・ショーター/第9区画 ネオレスパーダ本部前→ネオレスパーダ本部】

リッキーの変色した右腕はどうやらリッキーの意思では動かせないようで、ブラブラとまるで物体のようにリッキーの肩からぶら下がっていた。こちらを心配したのか声をかけてきた光一にリッキーは静かに首を降る。

「これが俺の仕事だ……」

愛犬のレオがリッキーを心配するように左足に前足をつき、顔をできるだけリッキーに近づけようと高くあげる。リッキーは黙ってレオの頭を撫でるのだった。

一方でヘクターは満足気に口をニヤつかせていた。これから戦う相手が誰か自覚しても退く気はないらしい。そうこなくては。そんな中、光一から宣戦布告ともとられる言葉を投げられた。面白いことを言うものだと秀作を見てみれば、今しがた笑いながらコーラを飲むのを終えたところのようで、相変わらずこの場に似合わぬ行動をする秀作に、今度はヘクターが笑いはじめてしまった。くつくつと喉を鳴らすような笑い声をあげ、最後にはハッ!と大きく叫び笑い声を発散する。

「能力開発研究所に不法侵入して治安維持部隊の隊員を力でねじ伏せた一般人が面白いこと言うじゃねぇか。俺とお前は今同じ立場なんだよ。始める前に聞いとくがお前は何のために戦う?こっからは義務でもなけりゃ戦う責任もない、ただ自分の譲れないもののために戦う場だ。秀作のコーヒータイムみたいにな。俺はタナトスのために戦う。お前はどうだ?正義とかいう抽象的なもののためか?大衆とかいう抽象的なもののためか?」

現在の光一は治安維持部隊でもない一般人、それは紛れもない事実だ。なんの権利ももたないこの状態で、今から挑むのはこの街を飲み込もうとするほどの悪意。これからの戦いでその身がどうなってしまうのか、想像するのは難しくない。はっきり言ってしまえば、逃げだしてしまう方が楽だろう。アドバースシティの外に出てしまえばフェリスの力は及ばないのだ。だが自身の保身をかなぐり捨ててでも守るものがあるのか、譲れないものがあるのか、ヘクターはそう問うているのだ。この先に待ち構えるのは強力な能力を携えたかつての仲間、その壁を越えてでも貫きたいものがあるか、それがヘクターの問いかけだった。最後の言葉のあとに秀作がタナトスに加入していること、霧月がタナトスと協力関係を結んだことが口をついてでそうになるが、ヘクターはこれ以上本部に突入するのに時間をかけたくないのか、余計なことは言わないようにしたのだった。

ヘクターは光一に言葉を投げつけるだけ投げた後、ゆっくりとした足取りでネオレスパーダ本部の正面扉の前に立った。現在その扉は閉ざされていて簡単には開きそうにない。ヘクターは正面扉を背にして側にいる面々の方へと振り返った。

「覚悟は決まったようだな。それならこれから突入するぞ。やることは単純、俺がこの扉を"壊したら"お前たちは中に入れ。で、フェリスを捕まえたら終わりだ。そんな単純にいくとは思えねぇけどな」

ヘクターは手短に恐ろしく簡潔な作戦を述べる。ようは正面突破して出たとこ勝負をしろと言っているのだ。中で待ち構えているのはフェリスと隊長だけとはいえ、無策にも程がある。だがここで作戦を練るなど無駄に時間を割くわけにもいかないのだ。フェリスが次の手を思い付く前にここで一気に畳み掛ける必要がある。

ヘクターは改めて扉の方を向いた。そして右足を一歩退き、顔の高さで右手で拳をつくる。すると、ヘクターの顔にあるひび割れから一斉に赤い光が強く漏れだした。同時に白い蒸気のようかものがひび割れから吹き出す。まるで噴火寸前の火山のようだった。

「楽しもうぜ?」

ちらりとだけ後ろを振り返り、光一、秀作、霧月にそう一言告げる。次の瞬間、振りかぶられたヘクターの右拳は思いっきりネオレスパーダ本部の正面扉に叩きつけられた。最初に響いたのは爆発音のような音、その後ガラガラと正面扉部分にあった壁が瓦礫となっていく音が響く。ヘクターが放ったパンチ一発で本部の扉は壁ごとぶっ飛んでしまったのだ。初めてタナトスがレスパーダ本部に侵入してきた時正面扉が爆破されたように破壊されていたが、おそらく今回と同じようにヘクターの能力「絶対破壊」の拳によって砕かれたものなのだろう。

「いけ!」

ヘクターは叫ぶ。もう後戻りはできない。瓦礫を越えネオレスパーダ本部へと入り込んだ先には全ての元凶フェリス・ヨーシャンクとネオレスパーダ隊長ロック・ランドルドが静かに佇んでいた。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.600

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部前】

ヘクターは再び大きく笑い飛ばすと、今一度こちらの覚悟を問うた。

「愚問だな、両方に決まってる」

凡夫ならば暫く沈黙するような内容の質問だが、自分は生憎そう簡単に揺らぐ価値観は持ち合わせていない。己の戦う理由、その根源は平和への望みと闘争への望みが同居した精神状態にある。レスパーダへ志願したのはこの矛盾する感情を二つとも満たすためだ。そこで働き争いを起こす者達を排除し続け、最終的には闘争心も忘れる程永い平穏を作るのが目的である。故に正義と大衆のために戦うことが自分の望みに繋がるのだ。

「もっとも、さっきまでは完全に玉砕覚悟だったがな」

リッキーがいてくれなければ、ロック辺りと心中していた可能性が高い。
また、今まで戦ってきた相手は全てこちらの説得を聞くような人物、状態ではなかった。無論白樫も例外ではない。よって街を守るという点に関しては(フェリスという元凶を認知できなかったとはいえ)一貫しているといえるだろう。それに比べてタナトスときたらどうだ、フェリスやその重要施設を直接狙うことは数える程しかなく、筋違いも甚だしい行動ばかりではないか。もしこの体たらくでダークヒーローでも気取っているとしたらとんだお笑いである。

「……………………そうだな、始めるか」

しかしこの手の連中に矛盾を突き付け出すとキリがないので思考を切り替える。
ブレードを軽く横薙ぎ気味に振り抜き、闘志を全身に入れ直す。そして疾風の如き速さで駆け出し――――




――――ヘクターの右腕にブレードを降り下ろした。

(首を狙ってもよかったんだがな)

それではいささか筋が通らない。確かに自分は彼らのやり方を認める気はないが、今彼から攻撃を仕掛けることはなかったし本部への侵入を手伝ってくれた(ブレードを使えば確実にどうにかなっただろうが)ので誠意を無下にする上『フェリス達の後はお前達タナトス』という自らの発言を覆すのは気が引けた。よって折衷案として今見せた能力の要であろう右腕を切り落とすだけに留めようという結論に至ったのだ。

(もしこれで『実は右腕だけじゃなく全身で使える』ってオチだったら締まらねえな……)

>>周辺all

3ヶ月前 No.601

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部前】

「ありがとうございます」

リッキーさんにお礼を言いつつ、何だかおかしなことになっててやっぱりいつも通りな浜田さんを見やる。
だが、ヘクターの言葉に表情を暗くする。

「身内殺しはもうやりたくありませんが、多分、狂錬の方は気にしないんでしょうね。止まらなくなった時は、よろしくお願いします」

万が一にも霧月が隊長を手にかける事があれば、今まで封じていたタガが外れるかも知れない。まさに凄惨な身内殺しがあったあの時の様に、市民を殺して回るかも知れない。そうなれば霧月は殺されなければならない存在となるし、よしんば生きていたとしてもこの街には居られないだろう。そうなれば故郷に帰ることも出来なくなる。そういった意味では霧月2のとっても大事な戦いとなる。

ヘクターの能力によって扉が破壊される。元々人数の少ない新旧レスパーダだ。短期決戦が予想される。それに合わせ、霧月は狂錬を発動した。

「楽しめるかどうかは━━━隊長のヤロウにかかってるわな、これは」

凶暴な微笑みで瓦礫の先に居るであろうフェリスとロックを睨みつける。

ちなみに、光一がヘクターに刀を振り下ろしたのは、元々ヘクターが気に入らなかったのもあって、無視しておいた。

≫all

3ヶ月前 No.602

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ヘクター、カル・ギラム、死賭、カイ/第9区画 ネオレスパーダ本部前】

崩壊したネオレスパーダ本部の壁の前に立つヘクターがまず感じたのは、昔馴染みの気配だった。そして狂人にポップ野郎、それぞれやるべきことを終えてヘクターのところへ来たというところか。そして次に感じたのは自分へと迫る殺気、ヘクターは呆れるようにため息を吐いた。殺気は感じているのに、ヘクターは何もしようとしない。右腕へと迫る刃をまるで意に介していない。なぜか。ヘクターは自分がその攻撃に対処する必要がないことを知っていたからだ。光一がヘクターの右腕に降り下ろした刃は、ヘクターの背後から飛んできた何かによって弾き飛ばされた。ガキンッという鈍い音と共に、光一のブレードを弾いた何かは宙を舞う。宙を舞っていたのはブレードシールド、カル・ギラムの武器だ。そして宙を舞うブレードシールドを同じく宙を舞う手首がキャッチし、その武器を持ち主の方へと投げる。ブレードシールドが飛んだ先、そこにいたのはカル・ギラム、死賭、カイの3人だった。ヘクターはニヤリと口を緩ませながら三人の方へ体を向ける。近くに光一がいるにも関わらず、だ。

「報告しろ」

ヘクターは手短にそう一言だけ口にする。今は時間がない、早めに終わらせろと言外で三人に伝えた。

「能力開発研究所地下に能力開発に失敗した人間が大量に眠っていた。データを八五郎とミシェルに渡して解析中だ」

「俺ちゃんの愛しのソニアちゃんを病院に送ってきた」

「リョウを八五郎のとこに運んだよ。フェリスとは違うやり方で目覚めさせれないかミシェルと調べてる」

カル、死賭、カイが次々とヘクターに伝えるべきことを伝える。死賭の報告はそれはそれとし、カルとカイの報告は興味深い。八五郎とミシェルの力を合わせればフェリスに成し得なかったことができるかもしれないということか。ヘクターは満足げに笑みを浮かべる。

「よし、よくやった。俺はこの中にいる隊長をねじ伏せてくる。カル!こいつはロック・ランドルドとの戦闘にだけ集中できると誓わせてから入れろ。それまでは通すな」

ヘクターは光一の方を一切見ないまま、カルに対して一方的に用件を投げつけると、そのままネオレスパーダ本部へと入っていった。用件を投げつけられたカルはというと、はぁ、とヘクターと同じようにため息を吐くと、瓦礫と化したネオレスパーダ本部入り口付近へと近づき、光一の前に立つ。

「君はここでヘクターと戦って、その間にフェリスがロックを使ってこの街を終わらせる結末を選択するのか?無駄な体力を使うな。ロックを倒し、フェリスを捕らえることだけに集中しろ」

カルは光一から目をそらさぬまま言う。このまま光一がヘクターへの攻撃を続けるならば、それはロックを打ち破るための戦力を浪費するだけになってしまう。それを避けるためにヘクターは光一に応戦しなかった。フェリスが次の手をうつまでのこの時間、今こそフェリスをとらえる絶好のチャンスだ。ここで戦力も時間も浪費している場合ではない。

>>光一、周辺ALL






【フェリス・ヨーシャンク、ロック・ランドルド、ヘクター/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

入り口が破壊され、外気が簡単に入り込むようになった入口ロビー。入口ロビーはつい最近と、具体的にはレスパーダ本部だったころと、寸分も変わらない様相を呈していた。いつもと変わらない、いつもの光景……その中でいつもと違う点をあげるならば、入り口が破壊されていることと、ロックがいつもだらけながら座っている来客用のソファにフェリス・ヨーシャンクが座っていること、そしてそのソファの側にまるで感情をなくしたような顔でロック・ランドルドが立っていることだろうか。来客用の椅子に足を組み、静かに壊された入り口を見据えるフェリスはどこか不気味な雰囲気を漂わせている。だが入口ロビーへと入ってきた霧月とヘクターを見ると、フェリスはクスリと小さく笑みをこぼした。

「やぁ、君は式見霧月君だったね、"元"レスパーダの。もうここは君たちの本部じゃないわけだけど何しに来たのかな?」

フェリスはあくまでもいつものように、人当たりの良い笑みと親しみ易い口調で霧月に語りかける。だが指先は一定のリズムでソファの縁を叩いていて、フェリスが内心苛立っているのが見てとれた。ソファを叩く指先が段々と早いリズムを刻み始める。まるでフェリスの感情の昂りと呼応しているようだった。

「ダン・ダルシア、白樫燐、バグ生産装置に結界装置……私が作った実験成果を次々と……ことごとく潰し……私の計画を台無しにしようとする君達が……何をしに来た!!」

目をつり上げ、犬歯をむき出しにしてフェリスは叫んだ。額には青筋が浮かび、拳は強く握られている。フェリスの叫びは入口ロビーの空気をビリビリと揺らした。ヘクターは分かりやすく怒りを露にするフェリスを鼻で笑うと武器であるパイプを手に持ち構える。ロック・ランドルドは未だ静かにフェリスの横で佇んでいる。さぁ、奴はいつ動く?

>>霧月、周辺ALL

3ヶ月前 No.603

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【浜田 秀作/第2区画 ネオレスパーダ本部前】

 缶を揺らすようにし、中身が空っぽであることを確認する。その側をベコベコと凹ませたり戻したりしながらヘクター殿の小学生でも思いつく単純明快にして現状もっとも効果的であろう作戦を受け、鼻だけで笑った。勢いに乗っている時はそれが衰えるかそれに振り落とされるかするまで全力で突っ走った方がいいのは言うまでもなかろう。
 空になったはずの缶を口にもって行き、上に向ければ当然口には何も流れてこなかった。ワープ装置を応用すれば延々と飲み物が飲める缶類ができそうなもんだがどうなんだろうね。
 「楽しもうぜ」その言葉の後に入り口が気持ちがいいくらいに破壊され、隔たりの向こうにいた知っている一人と知らない一人を視界に捉えた。空き缶を放り上げ、ロビーのソファーに座る男を目掛け缶を吹き飛ばそうとした瞬間、光一君が討つべき者とは異なる相手を目掛け駆け出す。おいおい、そっちじゃ無かろうに。
 即座に能力の対象を自身へ。物理的に不可能な加速、そして光一君の視線と全身の動きから太刀筋を読む。速い動作だ、下手にフェイントを盛り込んだりするよりも相手が反応出来ない速度で狙った場所を正確に、威力の高い武器で斬り落とすのが道理。で、あるならば素直に邪魔をしよう。
 予想される刃の軌跡に潜り込み今度は物理的に不可能な急停止。能力で固定された耳の横まで上げられた右手の拳と右肩周りで光一君の刀を受け止める。物が切れるのは刃から外側への引っ張りの応力を受け、物理的な結合が千切れることによるものである。つまり、能力で固定された有機物たちはその外側への応力を受けず、切れない。

「……怪我はありませんかね?隊長さん」

 眼鏡を外し、右手の代わりに刀に添え立ち上がる。固めるのが遅かったかね、手の甲が深めに切れてしまっている。そして何より身体は移動させることは出来ても、肺の中の空気やさっき飲んだばかりのコカコーラまで動かすというわけにはいかない。内臓はある程度固定すれば問題ないのだが、止まった瞬間に暴れた内容物が喉的までこみ上げて来て嚥下するのが手間だった。

「前も似たようなことあったねぇ」

 レスパーダ本部にカル・ギラムが侵入した際、光一君は彼を切り捨てようとし、俺はそれの邪魔をした。そんな昔の出来事では無いのだが、今思えばもはや懐かしい。
 腰を引きながら白衣のポケットに手を突っ込んで後ずさりで入り口前まで移動する。

「光一君よぉ、タナトスは打倒フェリスの為の集団なんだからさぁ……フェリス倒しちゃえばいーじゃん!そうすりゃタナトスは取り敢えずは何もしないんだから!もーー、刀が壊されるにしても手が切り落とされるにしてもどっちしにろかなりの戦力ダウンよ?ましてや共倒れなんかされたら目も当てられないってのに……今は“内輪揉め”してる場合じゃないの、ほらこっちこっち。タナトスは後なんでしょ?じゃあもう中途半端に手出ししない。タスク管理はしっかりしないと、マルチタスクは効率が悪いってよく言うだろ?」

 あくまで軽く、なるべく感情的な理由は廃して効率と因果の話を主体にし、フェリスと戦うよう促すため、光一君を手招きした。

>>ヘクター、青崎 光一

3ヶ月前 No.604

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部前→入口ロビー】

「…………」

義理を通す為に放った一閃は、他でもない秀作の介入によって止められる。しかし僅かにタイミングが悪かったのか、手の甲から血が滲み出ていた。

「お前……」

流石に少し戸惑い、刃先を下げる。それと同時に脳裏によぎるのはいつかの襲撃、偽りの依頼で自分達が無様にも謀られた時だ。

「分かった、お前がそこまで言うのなら」

刀身を伝う小さな赤に負い目を感じ、矛を収める。『これから何もしない』ではなく『これまでに何をしたか』が重要なのだが、まあ今だけは目を瞑ってやろう。ここまで体を張った行動を示されて、無言で突っぱねるのはポリシーに反する。
いいだろう、執行猶予を与えてやる。神の名を騙るうつけ者共に仮初の安寧を恵むのも一興か。

「じゃ、いくか」

方針修正もそこそこに、今度こそ下郎共を討たんと駆け出す。もしタナトスの連中が足を引っ張るようなことがあれば、遠慮なく捨て駒として利用するまでだ。

>>周辺all

3ヶ月前 No.605

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ヘクター/第9区画 ネオレスパーダ本部前→入口ロビー】

ネオレスパーダ本部をぶち抜いた右腕を未だ真っ直ぐ伸ばしたままだったヘクターは背後に自身に迫る殺気を感知した。こんな状況で自分を狙う人物は一人しか思い浮かばない。先程正義と大衆のために戦うと言ってのけた光一がヘクターを狙ったのだろう。確かに能力を使用した直後のこの状態はヘクターが一番強い弱体化している瞬間だ。そこを狙うのは対ヘクター戦であれば正しい選択なのかもしれない。しかし今向かうべき相手は違う人物だ、そのことを分からせてやらなければならない。ヘクターは自身の武器を取ろうとした。しかし直後、その動作をやめる。光一とは違う人物がこちらに向かって、人間の域を越えたスピードで迫るのを感じた。ヘクターはレスパーダ全員の能力を把握している。監視カメラの映像をハッキングしてレスパーダの戦い方も熟知していた。こんなことをできるのは一人しかいない。

「よくやった、秀作」

光一とヘクターの間に入っている秀作に向かい、ヘクターは秀作にだけ聞こえる声量で小さく声をかける。そして口を楽しげに歪ませた。秀作は光一にまだタナトスの一員であることを明かす気はないようで、光一には勘づかれないように、しかしヘクターにはタナトスを裏切らぬことを示すように言葉を選ぶ。この一瞬で大したものだ。その頭の回転の早さがなければ、運動エネルギーを使った能力を使いこなすことなどできないだろうが。

「こいつの言う通り、俺達タナトスの目的はフェリスを潰すことだ。フェリスが潰れてあいつのしでかした事が世に知れれば、それを隠蔽してた政府ブレインにも非難の目がいく。あいつらは変わらざるを得なくなる、そうすりゃ俺達の目的は達成だ。そのために俺は今からこの中に入ってロックを倒し、フェリスを捕らえる。フェリスを捕まえるまでは……仲良くやろうぜ?」

ヘクターは秀作の補足をするように改めてタナトスの目的を話す。最終目的こそ異なるものの、フェリスを捕らえることは同じなのだ。フェリスの側にいるのは改造能力者、それもレスパーダ隊長を勤めた男だ。簡単に突破できるはずがない。ここで共倒れするよりも、共闘した方がはるかに良いというわけだ。

入口ロビーへ駆け出した光一を見やった後、ヘクターは隣にいる秀作に目を向ける。

「治癒してもらった直後にそれじゃ世話ねぇな。さて……いくぞ、秀作」

乱暴にかけられたヘクターの言葉は『ありがとう』の意味なのだが、その本心はなかなか相手には伝わらない。ヘクターは秀作に声をかけたあと、手に武器である鉄パイプを握る。そして本部内へと足を進めたのだった。

>>秀作、光一




【フェリス・ヨーシャンク、ロック・ランドルド、ヘクター/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

入り口が破壊され、外気が簡単に入り込むようになった入口ロビー。入口ロビーはつい最近と、具体的にはレスパーダ本部だったころと、まだ寸分も変わらない様相を呈していた。いつもと変わらない、いつもの光景……その中でいつもと違う点をあげるならば、入り口が破壊されていることと、ロックがいつもだらけながら座っている来客用のソファにフェリス・ヨーシャンクが座っていること、そしてそのソファの側にまるで感情をなくしたような顔でロック・ランドルドが立っていることだろうか。来客用の椅子に足を組み、静かに壊された入り口を見据えるフェリスはどこか不気味な雰囲気を漂わせている。だが入口ロビーへと入ってきた元レスパーダの面々とヘクターを見ると、フェリスはクスリと小さく笑みをこぼした。

「やぁ、"元"レスパーダ諸君。もうここは君たちの本部じゃないわけだけど何しに来たのかな?」

フェリスはあくまでもいつものように、人当たりの良い笑みと親しみ易い口調で霧月に語りかける。だが指先は一定のリズムでソファの縁を叩いていて、フェリスが内心苛立っているのが見てとれた。ソファを叩く指先が段々と早いリズムを刻み始める。まるでフェリスの感情の昂りと呼応しているようだった。

「ダン・ダルシア、白樫燐、バグ生産装置に結界装置……私が作った実験成果を次々と……ことごとく潰し……私の計画を台無しにしようとする君達が……何をしに来た!!」

目をつり上げ、犬歯をむき出しにしてフェリスは叫んだ。額には青筋が浮かび、拳は強く握られている。フェリスの叫びは入口ロビーの空気をビリビリと揺らした。ヘクターは分かりやすく怒りを露にするフェリスを鼻で笑うと武器であるパイプを手に持ち構える。ロック・ランドルドは未だ静かにフェリスの横で佇んでいた。

「まぁいい。君達はこのネオレスパーダ本部に強襲をかけている紛れもない犯罪者だ。そういう輩は取り締まらないと……隊長、やれ」

人びとを襲うバグを作り出し、能力開発に失敗した人間を使って強力な改造能力者を作り出して手駒にし、あげくにはこの街全員の能力情報を抜き取って市民全員を永遠の眠りにつかせようとした人間が『犯罪者』などという言葉を使う権利はとうてい持ち合わせていないのだが、フェリスは怒りの感情で支配された目で光一、秀作、霧月を睨みながらそう言いはなったのだった。命令をうけたロックはゆっくりとした動作でバスターソードを構える。通常両手でもつはずのそれを、ロックは片手で軽々ともって見せた。そして手のひらから炎が立ち上ぼり、刃を覆っていく。全てを焼き尽くす熱量を伴った刃を携え、ロックは床をけり駆け出した。そしてレスパーダの面々に向けバスターソードを薙ぐ。バスターソードの刃とそれに纏った炎がおそいかかってきた。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.606

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

ロックは巨大な炎を刃に纏わせ、こちらに向かって疾走する。火災現場でなければあり得ない程の火力だ、下手を打てばあっという間に丸焦げになってしまう。これだけ大規模な炎ならスプリンクラーが作動しそうなものだが……フェリスのことだ、事前に防災システムにも手を加えてあるんだろう。

「…………」

互いに走って近づくことによりほぼ一瞬で距離が詰まる。当然地獄の業火もすぐそこだ。しかし恐怖は感じない、むしろどこか憎しみにさえ呑まれている。自分が信頼している人物のガワを被った、眼前のクソ野郎をぶちのめせと魂が叫んでいた。無論こいつは正真正銘ロック・ランドルドだという事実は承知している。だが、否だからこそこの現状に我慢がならなかった。

「オオォオッ!!」

ブレードをかざし灼熱の剣を受け止める。轟音、衝撃、そして焦熱が刀身越しに襲ってきた。

「ち……っ!」

全身を使って運動エネルギーを殺しつつその場に踏みとどまる。ブレードの峰側の先端を左腕で押し込む形でバスターソードをいなし、床へ押さえ付けた。

「――セァアッ!!」

その際起こる体勢の変化を利用し、勢いが乗った回し蹴りでロックの顔面を狙う。

>>周辺all

3ヶ月前 No.607

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ロック・ランドルド、ヘクター、フェリス・ヨーシャンク/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

ロックが片手でソードを持つのに対して光一は両手を使用、競り合いで押しきれることはなく、バスターソードの切っ先は地面へと向いた。そして間髪入れず飛んでくる光一の蹴り、それに合わせヘクターはロックの左脇を駆け抜け、横っ腹に鉄パイプの一撃を加えた。しかし……

「……」

ロックはまるで石像の如く微動だにしなかった。感情のない目が光一を見据える。光一の足には硬質な何かの感触が伝わり、ヘクターが放った鉄パイプはキンッと固いもの同士がぶつかる音を響かせた。ヘクターは怪訝そうに眉を潜め、ロックの方を睨んだ。

「あ?なんだ今の?こいつの能力は炎じゃねぇのか?どうやって攻撃を弾きやがった」

ヘクターは思ったことがすぐ口に出る。誰もが疑問に思ったことを即座にまくしたてるように言った。元レスパーダの人間ならばロックの能力について知っているのではと思って口にした問いかけだったが、はたしてそれを答えることができる隊員がいるのだろか。

「いいね、いい攻撃だ。本気できてもらわないと困る。君達が本気でロックを殺そうとすればするほど、君達を捕まえる大義名分ができるからね」

フェリスはさも愉快だと言わんばかりにソファーに腰かけたまま一連のやり取りをみて笑みを浮かべた。だが瞳の中にはいまだ怒りが宿っている。自分の計画を邪魔する輩を早く消したいと願っているのだ。

ロックはバスターソードの切っ先をあげると、その場で大きくソードを薙いだ。大きく振るわれたソードは纏っていた炎を斬撃の如く打ち出し、近くにいる人間を焼き殺そうと襲いかかった。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.608

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

「分かってんじゃねぇか。オレはお前の計画やら研究成果やらを全部潰して、お前の邪魔をしに来たんだよ」

わざと、華の咲いた様な笑顔をフェリスに向け、つぎの瞬間には、再び凶悪に歪んだ笑みを作り、すぅ、と息を吸う。

中段に構え、柄を右腰にずらして据える。流れるような突き、手首を返した切り上げが瞬時に可能な構え。カウンターに重きを置いた構えはしかし、霧月の腕によって攻撃的に変貌する。

「修羅道七突、異型ノ歩『堕百合』」

そのまま身体を前に倒し、限界まで倒れた所で右足を踏み出す。がくん、と首が折れ、低い姿勢で身体が躍動する。これは先の戦い、八掛丈を出し抜き装置を破壊した時の霧月の動きから即席で編み出した霧月自身の業。

回避や奇襲の起点となるこの業は、眼を相手に見せないことで殺気を隠し、低い姿勢となることで気配を薄める。これは自分に意識を向けさせないように近づく術。肉薄する2人に集中したロックはこの霧月の動きを捉えることは出来ても、意識することは出来ない筈。

「炎とか危ねーな……ッらァ!」

炎を眼前に捉えるほど近づいた霧月は構えた刀を返し、空気を切り裂く切り上げを放つ。刀はロックを打つ訳でもなく、炎に届くわけでもなく、文字通り空気を切り裂いた。今まで通りに言うなら空気を弾いたのだ。

炎というものは温度、酸素、燃材が無ければ維持されない。そして、今回は酸素を奪った。ならば炎が消えるのは必然だろう。

ロックの炎が常識と物理的法則を逸脱したもので無ければの話だが。

≫周辺all

3ヶ月前 No.609

削除済み @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【記事主より削除】 ( 2017/03/24 01:17 )

3ヶ月前 No.610

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

回し蹴りは寸分の違いなく狙った箇所を捉え、ロックの頭蓋に多大な衝撃を与える……筈だった。

(馬鹿な!)

ところが彼はダメージを受けるどころか一切怯みもしない。それに脚の感触もおかしい、まるで金属にでもぶつけたような質感だ。生身の人体であればこんなことは絶対にあり得ない。

「悪いが、俺も隊長が直接戦闘を行うところは見たことがない」

自分と同時に攻撃を仕掛けたヘクターも、原因を掴みかねている。能力を複数持っているのか、或いは皮膚の表面に展開するタイプの防護フィールド発生装置でも携帯しているのか。

「!」

ゆっくり考える時間を与えてくれる筈もなく、ロックは反撃に出ようとした。

(なんて膂力だ!)

ブレードで押さえ付けているにも関わらずソードを持ち上げ始める。筋力も明らかにおかしい、ドーピング程度では説明がつかないレベルだ。

「くっ!」

このままでは焼き切られてしまう。咄嗟にソードの上に乗り、靴裏が焦げ付く音を聞きながらその振り上げに合わせて跳躍。斬撃の範囲そのものから逃れると同時にロックの背後へ回り込む。

(デカい刀身が仇になったな)

好機。一度向かい合ってから相手の後ろを取ることは困難を極める、しかしその千載一遇に等しいチャンスがたった今巡ってきたのだ。ここで攻めない手はない。

「むん!!」

すかさずブレードを振りかぶり袈裟に斬りかかる。ロックを挟んだ向こう側では霧月が人外の域の剣技で炎を払わんとしていた。

>>周辺all

3ヶ月前 No.611

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ロック・ランドルド、フェリス・ヨーシャンク、ヘクター/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

空気を文字通り切り裂く霧月の一閃は、炎の塊周辺の空気を乱し、炎自身の形を乱して最後にはその形を消滅させた。それでもロックはその様を無表情に見つめているだけだった。それと同時、ロックが持つソードを足場に背後へと回った光一だったが、ロックは回避行動を取らないばかりか、光一を目で追おうともしない。その理由はすぐに判明する。光一がロックに放った一撃、それもまた硬い何かによって阻まれ、キンッという硬いもの同士が弾き合う音を発するだけだったのだ。攻撃が効かないのならロックが防御行動をする意味もない。だが、その光一の攻撃を冷静に見つめる人物がいた。ヘクターである。先程とは違いヘクターは光一の攻撃、そしてロックの防御方法を観察していたのだ。そのおかげで、ヘクターはロックの異変に気づくことができた。ヘクターは眉をひん曲げ、眉間にシワを寄せる。

「今のは……鱗か?」

呟くようにヘクターが言った。光一のブレードがロックの背中に接触しようとしたその時、確かにロックの背中に鱗が浮かび上がったように見えた。それは魚の鱗よりもより強固で、トゲのある形状をしているものだっだが、今はそれをロックの体に確認することはできない。

「……レスパーダからネオレスパーダにそのまま入隊したのは隊長とあの犬ッコロだったな。そしてあの犬の能力は『犬化』じゃなく『ケロベロス』だった。それなら……この隊長の能力も『炎』じゃねぇ……って可能性があるな」

ヘクターはロックの戦闘を見たことがないという光一の言葉に、自分の予想を口にする。レスパーダからたった二人ネオレスパーダに引き抜かれた人物。ダン・ダルシアは自分の能力を『犬化』と言っていたが実際には改造能力者で『ケロベロス』の能力を持っていた。そして目の前にいる隊長ロック・ランドルドは明らかにフェリスの催眠にかかっていて見たことのない力を使う。それならば、ロックもダン同様炎の能力ではなく、本来は別の能力を持っていたのではないだろうか。そのことをロック本人が知っているかはまた別の話だが。

「ようやく気づいたかい?彼の本当の能力に。さて、霧月君。君は私の計画を邪魔するとはっきり言ったね。それじゃあ僕は君達を全力で潰さないといけないな。僕はネオレスパーダの特別顧問、不法侵入し暴行を働く『犯罪者』を僕も全力で捕らえないと」

フェリスは未だ怒りに支配されているようだが、取り乱す様子はなく軽快な口調で語りかける。自分が必ず勝つと確信しているのだ。霧月の言葉をフェリスは反逆の証言と捉えたのか、『全力』を出すことを宣言した。特別顧問の地位を使って、レスパーダを根こそぎ消そうとしているのだ。

「ロック隊長、燃やせ」

フェリスがそう一言ロックに投げ掛けるとロックは一度目を閉じ、次の瞬間大きく見開いた。その瞳は蛇のように黒目部分が細くなっていて、白目部分は黄色に染まっている。次に変化が起こったのはロックの体だった。先程ヘクターが見た硬い爬虫類の鱗がロックの全身を覆っていく。それと同時に元々長身のロックの身長がゆっくりと伸び、3mほどの高さになった。手は爬虫類のそれと同じく細くなり、指先には長い爪が伸びる。顔の形は前に突きだすように伸びていき、口は大きく裂けていった。鋭い歯が口の中で見え隠れする。最後には背中から大きく骨ばった翼が広げられる。ロックは瞬く間に人型のドラゴンへと変化したのだ。

「どうだ?君達が知っている隊長の真の能力がこれだ。『炎』じゃない……炎を自在に操り人間を越えた力をもって他を蹂躙する……『ドラゴンナイト』こそがロックの真の能力だ!」

「グオオオオオオオオオオ」

ドラゴンへと変化したロックが雄叫びをあげる。それはまさに獲物を狩る動物の鳴き声だった。ロックが宙に向かって大口を開けてやれば、質量を伴った直径1m程の火球が次々入口ロビーに降り注いだ。それはまるで火球の雨のようだった。

>>周辺ALL

3ヶ月前 No.612

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

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3ヶ月前 No.613

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

飛燕もかくやといった速さで振り抜いた鋼刃は、何の障害もなくロックに食らいつかんとしていた。一切の反応を示さないことに違和感を抱えつつも、太刀筋を鈍らせることなく斬りつける――――が、耳をつんざく金属音と共に弾かれてしまった。

「これでもダメか!」

まさかブレードの一撃すら通用しないとは。鋼鉄も易々と切り裂く高周波の剣で傷一つつけられないとなると、打つ手はかなり限られてくる。

(それにしても、今のは……?)

切先が衝突する瞬間、確かに爬虫類の鱗のようなものが見えた。まさかあれで防いだとでもいうのか? 鱗はおろか、どんな動物の外皮、骨格だろうとブレードを受け止めるに足る硬度を有しているとは思えないが……

「少しばかり、メルヘンだな」

答えはロック自身が直ぐに示してくれた。既存のどの生物にも当てはまらない外見的特徴を見て一瞬呆れかえる。

(……しかし腑に落ちん)

他生物への変化能力は所詮人体の延長に過ぎない筈。いくら竜という存在が人々の『もしも』でできているからといってもあの硬度は明らかに不自然だ。

「!」

やはり思慮の時間は与えてくれない、今はこの紅蓮の驟雨をどうにかしなければ。
鎬受けの要領で刀身をかざし全身で衝撃を殺す。そして力の方向を変えることにより完全に火球を受け流した。続いて降ってくる火球も同じようにいなし、煉獄の雹を凌ぎきる。
秀作の方はフェリスへの襲撃と、人員飽和による戦力低下対策を兼ねて裏口に向かったようだ。

「…………さて、どうするかね」

まだ反撃には出ない、火球攻撃は兎も角あの原理不明の防御を突破する手段を確立しないことにはどうにもならないので一旦様子見に徹した。

>>周辺all

3ヶ月前 No.614

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部入口ロビー】

「だからさっきからそう言ってんだろ。理解力皆無かよテメェは。特別顧問はお飾りか?」

能力発動前の霧月なら言葉に気を配ったのかもしれないが、今の彼女は特にそのへんを気にしない。その為、大義名分を得ようとしているフェリスを要領を得ない人間だと呆れているのだ。もちろん、そんな事は霧月も分かっている。皮肉を込めた挑発を含んでいるのだ。

「幻想種とは、ここまで来ると本当に何でもありだな……に、しても随分とちんまいサイズだ。いや、オレ達からすれば十分でかいけどな」

まあ、人間が変異しているんだから、これ以上のサイズなら人間の状態でも異質な体つきになっていただろう。まあ、これ以上のサイズが出てくればどっかの龍を殺せる幻想大剣でも持ち出さなければならないのでそれはそれで助かるのだが。

そして、高周波ブレードでも攻撃が通じなかった理由も何となく分かった。

「光一。幻想種ってモンは文字通り空想上の怪物だよ。特に龍はその代表格とも言える存在。人間の上に位置する存在が人間の技術程度で歯が立つわけがないだろ?でも、オレ達は能力者だ。能力全開で行けばまあ、何とかなるだろ」

その不可解な硬さにも納得が行き、くつくつと愉しげに笑った。

「少し、踏み込むか」

まるでガスコンロの摘みを強火の方向へ回すように、キリキリと理性を削る。

能力とはいえ幻想種に成れる相手。常識など通じないだろう。なら、その相手をするのも常識外れである自分達でなければ。

そして、地面に置いた鞘を左手に取る。擬似的な二刀流。残打突一体だが、これは防御の構え。迫る烈火の弾雨へ向き、その両腕が霞む。

迫る火球を弾いた空気で消し去り、吹き飛ばし、その大気が戻る際の歪みで軌道を逸らす。まるで両手に扇を持っているかのように舞う。

そして、その優雅な動きから、奥義が放たれる。

「修羅道七突、壱ノ太刀『陽炎骸』」

薙刀の時は8つの刺突だったが、二刀なので数は倍。そして、半数は斬撃が、半数は打撃がロックの体へ殺到する。

≫周辺all

2ヶ月前 No.615

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ロック・ランドルド、フェリス・ヨーシャンク、ヘクター/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

ロックが吐いて撒いた火球は有効打にならなかったようだったが、ロックはそれをみてもやはり無機質な爬虫類の目を向けるだけだった。代わりにフェリスがイラつくようにコツコツとソファの手すりを叩く。続き霧月の放った斬撃と打撃が飛んでくるが、ロックは少し顔を反らしただけで、やはり攻撃を意に介していない。桁外れの防御と耐久だ。フェリスは忌々しげに息を吐き捨てるとゆっくりとソファから腰をあげた。

「あとの始末は頼むよ、隊長。私はそこの犯罪者が壊した機械を作り直さなきゃいけないからね。まずは、バグ生産装置からかな」

フェリスは霧月の強い言葉に言い返すこともなく、ロックに指示を出したあと背を向けた。この場をロックに任せ、自身は次の準備に取りかかろうと言うのだ。もしバグ生産装置が再びこの世に作り出され、稼働を始めればアドバースシティはまたバグの驚異にさらされる。おそらく、バグの混乱に乗じ改造能力者もまた増産されるだろう。そうなれば状況は以前に逆戻りしてしまう。なんとしてもフェリスを止めなければならないが、幸運なのはフェリスが向かった先が裏口であることだった。そう、そこは秀作が回り込んだ場所である。

一方ヘクターは火球をやり過ごした後、この状況を突破する方法を考えていた。パワーも技術もある相手にさらには防御まで与えられている。フェリスが勝つ自信を持ち合わせていたのは、ロックが絶対に負けないようにできているからだろう。ヘクターが思考を巡らせるなか、霧月の言葉がヘクターの耳に飛び込んできた。『オレ達は能力者だ』そう、その通りだ。そして、それはロック・ランドルドも同じ。あの見た目で幻想種であろうと、改造能力であろうと、所詮は能力なのだ。それならば、奴を破るのも能力であるはずだ。ヘクターはちらりと自分の右腕をみた。まだ次を撃つのには早い。だが、今この腕を振るわなければ、突破口は開けない。ヘクターはニヤリと笑うと右手に拳、左手は開いたままの状態にし、勢いよくその両手をぶつけた。パチンッと景気のよい音が響く。

「青崎光一、式見霧月、お前らあいつを抑えろ」

ヘクターが乱暴な口調で二人に語りかける。ヘクターの口は楽しげに歪んでいた。

「俺の能力の名前は、『絶対破壊』だ」

ヘクターの右腕、それはすべてを破壊する能力をもつ。むろん、能力で作られたものでさえも、だ。それならば能力によって得られたあの途方もなく硬い鱗だって、突破できるはずだ。ヘクターは手に持っていた鉄パイプを背中へと回し、腰をひくく構える。その時が来たとき、ヘクターはすぐに走り出せるよう体勢を整えた。

>>光一、霧月



【ミシェル、八五郎、フェリス/ネオレスパーダ本部 裏口】

秀作が裏口扉を開けたそのタイミングで、秀作がもつ通信機がノイズ音を発した。しばしブツブツと音が飛んだ後、聞こえてきたのは懐かしいいつもの声だった。

「よし、繋がったわ!ねぇ秀作ちゃん聞こえる?今私と八五郎でネオレスパーダの通信関連をハッキングして奪ったとこなの。はぁやっと通信機で連絡できるわ」

いつも通りのキンキン声、ミシェルが秀作に話しかけてきた。レスパーダが解体されてから通信機は使い物にならなくなっていたが、ここにきてようやく通信機能を取り戻したようだ。

「秀作ちゃん、時間がないからよく聞いて。今私達ネオレスパーダ本部の監視カメラをハッキングしようとしてるとこなの」

通信機に続いて今度は監視カメラの映像を手に入れようとしているようだ。ミシェルの後ろから『ネット接続関連もだろ!』という八五郎の声も聴こえてくる。

「そうそう、ネット接続もね。それでね、私達もうすぐネオレスパーダ本部内のカメラ映像をネットに生中継する環境を整えられそうなの。今秀作ちゃんがいる場所は監視カメラで映像が撮られていて、しかもそこにもうすぐフェリスが到着する。ねぇ、私達がやりたいこと分かる?」

ミシェルはイタズラっぽく秀作に問いかけた。何故かレスパーダの任務時に指示を出している時よりも悪事を働こうとしている今の方が生き生きとしている。AIなの生き生きもなにもないが。ミシェルが言うには秀作のいる場所はもうすぐネット生中継によりアドバースシティ全体に生放送ができる場所になるようだ。そしてそこに秀作とフェリスとがそろう。その場で放った一言一句が、ネットを通じてこの街全土に広がるのだ。

「秀作ちゃん!私達はすぐにでもその場所を生中継で配信できるよう整えるわ!だから秀作ちゃんはフェリスを煽って今までやったことやこれからやろうとしてることを吐かせてほしいのよ!そしたら、奴の考えがこの街の人達に伝わる!」

ミシェルの作戦、それはフェリスの本性を明るみに引きずり出してやろうというものだった。アドバースシティの全住民がバグを作り出したのがフェリスで、改造能力者を操り、あげくにはこの街全住人の能力情報を抜き取ろうとしていたと知ったとすればどうなるだろうか。フェリスの失脚は必須、政府ブレインも街の声を無視することはできなくなるだろう。つまりフェリスの悪事を政府のちからをもって止めることができるのだ。

「頼んだわ、秀作ちゃん!」

ミシェルは終始一方的に用件をのべると、すぐに通信を切ってしまう。それもそのはず、直後にフェリスが秀作の目の前に現れたのだ。フェリスは秀作を見つけると銃のようかものを秀作に向ける。その銃身には液体のようかものが入っていて、トリガーを引けばなんらかの効果を持った液体が出てくるといったところだろうか。

「悪いが私は研究所に戻らなければ」

フェリスは口だけに笑みを浮かべながら秀作へと容赦なく詰め寄っていく。フェリスはやがて近くの監視カメラに写る位置にまで移動してきたのだった。

>>秀作

2ヶ月前 No.616

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

なんてことはない、事実は極めて単純なものだ。純粋に硬度が高い、虫がいい程に固い、ただそれだけ。思考力の足りない子供が夢想するそれを、現実に持ち込んだかのような格の違い。それ故に無意識的に真実を認めようとしなかったのかもしれない。

「…………」

霧月の繰り出す羅刹がごとき剣術も大した手傷は与えられず、僅かに怯ませただけだ。生物なのか本当に疑わしい。

(所謂『ぼくのかんがえたさいきょうの〜』ってやつか)

そんな呑気な感想を抱く程、あの外殻は尋常じゃなく頑強だった。

「分かった」

ヘクターからの指示に呟くように答えると、力強く走り出す。一秒と経たないうちに間合いを詰め拳打での発勁を見舞う。だがそれは白樫に使ったものとは少し違った。
鑚勁(さんけい)。
徹(とお)しの発勁とも呼ばれる、衝撃を貫通させることに重きを置いた技である。
鋭利を極めた剣で通らぬならば、徹しを極めた拳で打ち込むまで。

>>周辺all

2ヶ月前 No.617

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

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2ヶ月前 No.618

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部 入口ロビー】


「おぉー」

自分が行くまでも無く、ロックは弱点をさらけ出した。その笑みが凶悪に歪む。まるで獲物を狙う猛禽類の様に、眼光を煌めかせる。

「さてと。これでオレも好きにやれる訳だ」

左手に握った鞘を放り捨てる。刺突の構えをとり、ロックへ走り出す。右手が陽炎の様に揺らめき、一閃。『荒草薙』が発動する。

今まさに狙われている青崎の事など視界に入ってすらいない。元々能力を発動した霧月はこんな感じなのだ。

狙うは左脇腹。身体をそこへ滑り込ませた霧月。

「修羅道七突、参ノ太刀『奈落貫』」

どこまでも突き抜けて行きそうな鋭い刺突がロックの左脇腹を襲う。

≫周辺all

2ヶ月前 No.619

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

繰り出した鑚勁は見事に直撃するも、まるで効いた様子はない。相手が人間であれば昏倒、或いは重傷ものだが、そう上手くはいかないようだ。

(どこまでも都合のいいガワだ!)

胸中で呪詛を吐きつつも反撃への警戒は怠らない。そして次の瞬間、ロックが選んだ反撃手段は火球だった。

(よし!)

愚直にも口腔を開けて予備動作に入るのを見て小さくほくそえむ。この瞬間こそ好機、如何に外殻が堅牢であろうと眼球や口内までがそうとは限らない。見たところ爬虫類のそれと変わらないように思える。

「!」

しかし渾身の刺突を放とうとした所で、ヘクターの一撃が入った。
馬鹿が、自分に任せておけば一手間で勝負がついたものを。仮に文字通り食い止められとしても、火球を無理矢理中断する形になるので有利な状況へ持ち込めた筈だ。

(…………)

下卑た神の、薄ら寒い出来レースに付き合わされているような感覚が拭えないが、今はそんなことを気にしている暇はない。それに、手間が少し増えただけで別段不利になったわけでもないし、連携に合意した手前横槍を入れるのは憚られた。

「ふっ!」

いよいよ火がついたロックの一閃を、流水の動きで回避。
非常に大振りな攻撃だ、その体躯も相まって予備動作がとても分かりやすい。
紙一重で巨剣をかわすと同時に腰だめに構え、間髪置かず灼熱の口内目掛け強烈な突きを繰り出した。間合いからして腕で防ぐのは至難の業だろう。

>>周辺all

2ヶ月前 No.620

削除済み @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【記事主より削除】 ( 2017/04/01 21:58 )

2ヶ月前 No.621

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ロック・ランドルド、ヘクター/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

自身の光一への攻撃が外れ、ロックは爬虫類の目をきつくつり上げる。唸るように喉を鳴らしてその怒りを表した。そして間髪いれず叩き込まれる光一の突き。ロックにはその突きを避ける時間はなかった。故に、攻撃を強行しようとしたのだ。光一の腕は突きを進めるのに比例してロックの口で渦巻く火球に近づいていき、炎は光一の腕を焼こうとする。それに加え火球は次第に大きくなっていて、光一の攻撃が届く前に火球が光一の腕を焼こうとしていた。このままでは光一の腕はただですまないだろう。だが、ロックの顎が閉じる前に、別の勢力がロックへと迫った。それは疾風のごとく光一の脇を駆け抜け、一瞬でロックのもとへとたどり着く。それは霧月だった。霧月が駆け寄る流れのまま突きを放つ。光一に目を取られていたロックは霧月を視認するのが遅かった。

「ガアアアアアアアアア!」

再びロックの叫びがロビーにこだまする。光一の腕を焼ききろうとした口は大きくのけぞり、光一への攻撃は中断された。光一のブレードはロックが顔を反らした際に口内壁をかすめ、ロックの口内に赤い線が走る。他の生物に比べ強固な口内ではあるが、さすがに口内にまであらゆる攻撃を通さない鱗は備わってないようだ。霧月が放った刺突はロックの体をえぐり、その周辺にある鱗を弾き飛ばした。どうやら障子のごとく、鱗が剥がれた部分に隣接する鱗は剥がれやすくなるようで、攻撃を一切通さぬ鱗はまた少し減ったようだ。

ロックは剣を構えると、その大きさでは考えられないほど素早く、剣を大きく薙ぎ、霧月と光一とを狙う。だがその一閃でロックの攻撃は終わらない。ロックはバスターソードを薙いだ勢いを殺さず、その場でソードを回転させ始めた。そうしてやれば炎の渦がロックを中心に立ち上ぼり、一気にその規模を拡大させる。炎の渦は上昇気流を作り出していて、もしこれに巻き込まれれば体を炎で焼かれながら宙に体を投げ出されてしまうだろう。

>>光一、霧月


【ご指摘の部分を修正させていただきました。レスパーダは解体されましたが、レスパーダ隊員はあくまでも治安維持部隊の隊員であり、あらゆる人物を殺さないという点を再度ご確認願います】

2ヶ月前 No.622

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【浜田 秀作/第9区画 ネオレスパーダ本部】

 音を発し始めた通信機に一瞬気を取られるが、今のところ意味を持たない雑音のみであることに気がつき、そのまま扉をキィ……と更に開け、裏口扉の向こうを覗いて見る。取り敢えずは誰もいなさそうだな。
 安全を確認し本部内へそっと一歩目を踏み入れたその時、ノイズを吐いていた通信機が完全に息を吹き返した。そして今度は金切り声、とはまた違うのだが、マイクと鼓膜、いや、もはや蝸牛を響かせるほどの勢いのある例の声……いやもう声と錯覚できる音だな。

「あーはいはい聞こえてますよぉ〜……はいー、はーい、はーーーーい、アハトにミシェル有能」

 物理的に乗っ取られた本部の機器系統を外部からハックした二人を心の底から有能認定する。あ、アハトは八五郎のあだ名だ、今思いついた。別にはっつんとかでも良かったんだがな、命名した自分とは別の自分が流石にダサ過ぎ警報を鳴らしてきたのでやめた。で、返事はあれかな?「そいつは素敵だ、大好きだ」いやわかっててもそれはないか。

「はいカメラ、ほん、そんで……はい……コマネ……んー、わかんね」

 ミシェルは何かをやらかそうとしているらしいが、こう……皆目見当がつかない。そんなことより監視カメラに向かってポーズを決める事に勤しむべきだろう。というかフェリスこっちに来てんのか。

「あーはいはい聞いてる聞いてる…………ほーん」

 名前を呼ばれて慌てて返事をする。要するにミシェルはフェリスに「ドッキリ!フェリス君全街民へ恥ずかしい秘密の大暴露!」を仕掛けようとしているわけだ。で実行するのは当然のようにこの私。これじゃあディレクターにこき使われるアシスタントディレクター……みたいなもんでしたねぇ!私は!
 煽るのは好きじゃ無いんだよなぁと、現れたフェリスから視線を逸らして頭を掻く。ぶっつけ本番かーー、まあ敵意を見せ無いようにして、抜けた態度で接して隙を見せれば向こうも喋るっていう隙を見せやすいでしょ。

「いやまぁ、行きたいなら行っても構わんのだが、一つ教えてくれないかな?」

 本部の中へ全身を入れ、扉からある程度離れた場所の壁へ寄りかかる。道を譲り、視線は下へ、首は垂れる。傍目には服従しているようにも見えるかもしれない。

「バグを作ってみたりこの街の人間全員を永眠させようとしたり、それってそんなに大事なことか?何かの価値があったようには俺には思えない。なぁ思い返してもみてくれよ、今までやって来たことをさぁ。結局何がしたかったんだ、あんたは」

 まあこんなものでいいか。
 気の抜けた弱そうな他人から自身の価値観を否定されるのは中々に中々だぞ。

>>フェリス

2ヶ月前 No.623

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【フェリス・ヨーシャンク/ネオレスパーダ本部 裏口】

通信が終了した後、ミシェルは自分が早口で説明をする間秀作は生返事だったことに少々不満だったようだ。だがその一方で八五郎は秀作が口にしたアハトという名前が大変気に入ったらしく、『アハト!アハトって俺のことだよな!いいなそれ!エイトよりずっといい!今度からは俺のことアハトって呼べよ!』とタナトスの隠れ家で騒いでいたという。秀作が知るよしもないことだが、次出会ったときに八五郎は秀作にありったけの感謝の気持ちを述べるだろう。

さて秀作と対峙しているフェリスはというと、秀作があっさり道を譲ったことに、懐疑的な目を向けていた。あまりに簡単に敵を逃がすものだと思ったが、フェリスはひとつの可能性にいきつき秀作の行動に納得する。

「君はダンとの戦闘で能力を酷使していたようだからね。もうまともに戦闘はできないわけか。どうりでロビーにいないはずだ」

フェリスは秀作とダンとの戦闘を監視カメラ越しに見ていたようで、秀作が疲労困憊状態にあることを知っているようだ。だがその後リッキーによって治癒を受けていることは知らないらしく、フェリスはもう秀作が能力を使えないほど疲労していると思っているらしい。だがフェリスはそれを知ったとしても手にもつ銃を下ろすことはなかっただろう。万が一、を考え行動しているのだ。不用意に秀作には近づこうとせず、フェリスはある程度距離を取ったまま口を開く。

「何かの価値があったか、か。科学者ではない君には分からないかもしれないね」

フェリスは薄く笑みを浮かべながら、楽しげな口調で話す。秀作の言葉に分かりやすくプライドを刺激されたのか、フェリスはすました顔を浮かべながらもどこか得意気な声で返事をした。それはフェリスがいつも隠している本性、自分が高みにいる人間だと信じて疑わない、そんな態度だった。

「いいかい、我々科学者にとってもっとも大切なのは実験だ。新たな発見をするにせよ、不具合を修正するにせよ、実験をし、その結果を吟味しててまた実験する……その繰返しだ。私はね、人々がもつ能力というものにとても興味があったんだ……新たな能力を発見したい、能力開発がなぜ失敗するのか知りたい……探求心が止まらなくてね」

フェリスの口調がだんだんと流暢になっていく。それに伴って口の薄ら笑いはより歪んだものに変化し、目はキラキラと輝き始めた。まるで自分の研究を話すことが嬉しくて仕方がないといった感じだ。

「私はもっと能力について研究したい。だけどね……サンプルが足りないんだ。能力をもつ個体である人間が、足りないんだよ。街の外から来た人間が能力開発を受けにはくるけど、それだけじゃ足りないんだよ!だから私はまずこの街にいる人間の能力情報を全て抜き取って見直してみることにしたんだ。基礎に立ち返ることは大事だからね」

フェリスが口にする言葉は限りなく自己中心的だった。自分の欲求を満たすそのためだけにフェリスはこの街の人間全員を眠りにつかせようとしたのだ。そのことを実験の一環と称し、命を奪うに等しい行為をしている自覚など一切ないようだ。

「そしてバグはね、私が研究のすえ発明したひとつの成果だよ。そして……これから行うさらなる躍進のために私が作り出した兵なのさ」

フェリスは手を広げまるで演説かのように言葉を紡ぐ。どうやらフェリスの計画はこの街の人間から能力情報を抜き取るだけでは終わらないらしい。フェリスの行動はどこまでもフェリス自身のためにあるようだった。

>>秀作

2ヶ月前 No.624

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

刺突は思うように上手く決まらず、中途半端な切傷を与えるに留まった。そのまま手を口に突っ込んでいれば、腕の表面は焼かれただろうが致命傷を負わせることは出来た筈。なかなか訪れない決着に歯噛みが隠しきれない。

「くっ!?」

直後、恐ろしく速い剣撃が迫る。この質量で振るわれた一発を食らえばひとたまりもないだろう。
辛うじてブレードで防ぐも、衝撃を殆ど吸収できず大きく後ずさってしまう。そしてその隙にロックは炎の竜巻を作り出し、こちらを巻き込まんとしていた。

「見覚えのある攻撃だな」

異形の熱波が強く頬を撫でる。
脳裏によぎるのはいつかのボスバグ、あれは数多の爪による波状攻撃だったが、これは剣と炎の二重奏だ。

「それでも、そこまで違いがあるわけでもねえ」

炎が近付いてくる、出力の強すぎるドライヤーを浴びている気分だ。しかしこちらもただ指をくわえて見ていたわけではない。前回の経験を踏まえ、冷静に回転を見切っていた。半端な技が何度も通用するほど武術家は甘くない。

「能力を使うまでもないな…………ハァッ!!」

飛刀術でブレードを投擲、特に障害がなければ眼球に直撃するタイミングだ。無論角度も炎の勢いや上昇気流を計算に入れてある。

(クリーンヒットしても……まあ死にはしないだろ)

瞼にまであの剛性があるとは思えない上、そもそも高速回転しながら飛来物をはっきり視認するという器用な真似は難しいだろう。

>>周辺all

2ヶ月前 No.625

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部入口ロビー】

「お、通った」

さほど難易度の高くない賭けに勝った程度の呟きと共に身体は素早く次への対策に移る。そう例えば、

身に迫る炎を纏ったロングソード辺りとかだろう。

着物に対して火というのはやたらと相性が悪い。端に簡単に点火されてしまうし、袖や裾が広く避けるのも一苦労だ。

「二撃目に移りづらいのが面倒なところだなっと!」

ロングソードに刀の刃を合わせ、後ろへ大きく跳ぶ。ロングソードの勢いを利用して距離を取ったのだ。

そして、ロックは高速回転。炎が立ち上り、小火災の如き様相となる。「独楽みたいだな」と、率直な感想を述べ、霧月は刀を左手に持ち替える。

「愚策だな。その場凌ぎでも普通はそんなことやらないぞ。で、大体そういうのは飛び道具に弱いんだよ」

袖の中から現れる白布。それを解くと中から折れた短い柄が申し訳程度に付いている薙刀の刃が現れた。

要はあのボスバグにやった事と同じなのだ。今回は防壁が炎な分、難易度は高くない。狙いは先程崩れた鱗の部位。放たれた刃は寸分違わずロックの脇腹めがけ飛んでいく。

≫周辺all

2ヶ月前 No.626

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ロック・ランドルド/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

炎の渦が立ち上り、その中心にはロック。光一と霧月は武器の投擲を選択した。ロックに近づけないこの状況、遠距離からの攻撃は最善の策と言えよう。しかしロックの回りに渦巻くのは炎だ。激しい上昇気流を伴ったそれは、投擲された武器の軌道をわずかに反らした。結果光一のブレードは眼球よりわずかに上に反れ鱗にその攻撃は阻まれてしまう。霧月の薙刀も同様に軌道が反れ、脇腹の傷口から外れた位置に薙刀は到達し、傷口周辺の鱗を弾き飛ばすだけに終わってしまった。

さて、ロックはただ単に炎の渦を巻き起こしていたわけではない。これは予備動作にすぎなかった。ロックはやがてバスターソードを回転させるのをやめる。そして両手を広げ、炎の渦へと突っ込んだのだ。だがこの炎はロックが作り出したもの、当然ロックにダメージは入らない。ロックがまた爬虫類の口を大きくあけ、雄叫びをあげる。それを合図に炎の渦はロックの体へと収縮していった。

「ガアアアアアアアアアアア!!」

ロックの体が全身炎に覆われる。そしてロックは今まで背中にあるだけだった翼を大きく広げた。力強くその翼を羽ばたかせれば、軽々とロックの体は宙へと浮く。ここは室内、高く飛び上がることはできないが、代わりに大きく翼を広げて攻撃を行えば相手の逃げ道を塞ぎつつ広範囲の攻撃を加えることができる。全身に炎を纏ったロックはバスターソードを構え、翼を大きく広げたまま、低空飛行で一気に距離を取っている光一と霧月の方へと飛んだ。ロックがバスターソードを一閃し攻撃を加えようとしているが、それ以上に、大きな質量を持った炎の塊が迫っていることの方が問題だろう。攻撃を受ければ体が焼け、脇をすり抜けることはできない。後方に逃げるのにも限界がある。そんな状況のなかで、ロックは無慈悲に二人の命を狙っていたのだった。

>>光一、霧月

2ヶ月前 No.627

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

(……バカな)

ブレードを投擲する際、確かに炎と上昇気流の存在を計算に入れた筈だ。しかし現にロックは『炎と上昇気流のおかげで』事なきを得ている。言い様のない違和感が頭を支配しかけるが、気力でそれを押さえ込み平静を保つ。

(単に計算が甘かったんだろう)

この場はそう結論付けることにした。そういうことにしておけば、矛盾は一切なくなる。たとえそれが真実でなくとも。

「やっぱ呑気に考えてる暇はねえか」

ブレードはロックが無駄に仰々しい動作をしている間に回収済みだ。
紅き灼熱を纏い、大翼を広げながら斬りかかってくる。

「オオオッ!!」

容赦なく肌を焼く炎を無視し、ブレードでソードの衝撃と質量を完全に受け流すと、そのまま再び眼球目掛けて突きを放った。
月波剣(げっぱけん)。
相手が激しく切り込んで来るのを滑らかに受け返す技。荒磯に激しく打ち掛かって飛散する月影を、波は静かに押し戻す所からこの名が付いた。かの新撰組、天然理心流に属する剣客が使用していたといわれる。

>>周辺all

2ヶ月前 No.628

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【浜田 秀作/第9区画 ネオレスパーダ本部】

「立ち返るにしてもやり過ぎなんだよなぁ……」

 なるほど、ただの普通の実験狂。実験しているだけで楽しいし、そこからまた新しい実験を考え出し、そして識る。手段が目的に、というよりは目的もなく手段を振りかざしていたってこった。問題は振り回したそれらが隣の誰かさんにとって迷惑極まりなかったところか。

「科学、つまりScience。その語源はラテン語にあり、意味は[識ること]……だったかな。要はあんた、科学者(識る者)としての本分をただ全うしていただけってことか」

 こいつも多分周りにいる人間を人だとは思っていないのだろう。道具か実験材料、そんなところか。誰かと話す時は価値観を合わせるべきだ。価値観の相違は争いの火種になるからな。ここから先は人権の尊重だの尊い命だの言ってはならない。多分向こうには理解できないだろう。実のところ、俺もその辺はよくわからない。

「んー、あんたに悪意なんてのが存在しないのはよく分かった。バグ云々はちょっと置いておくとしてよ、話の腰を折るようで悪いが……もうちょっと実験を行うことによる周囲への影響。んでその影響からくる反応を気にしてみないか?あんまりにどでかい事をやろうとすると……そう、こんな風に『実験を進めるのに』支障が出ちまう、それじゃあ本末転倒だ。もう少し賢しく、なぁ?」

 説教でも説得でもなんでもない、ただ気になっただけの質問だ。実験体からの反乱を受けてその後実験が打ち止めになったり、実験のために資料を枯らしてしまっては本末転倒だ。そして何より彼の知力には目を見張るものがある。生命体の能力を操ってみたり、この街を覆える結界装置を作ってみたりと、生体と工学、分野の違う学問に精通している彼の知能は、もはやそれだけを能力として扱ってもいいだろう。
 悪意があるならそんな風にしか使われなかったであろう能力は、純粋な知的好奇心によって高められ振るわれている。バグは軍や警官などの戦闘相手として、能力開発は利便性の高い能力を生み出したりと、それらはもしかしたらもっと都合のいい方向に生かされていたかもしれない。
 実験に夢中で周りが見えていないだけなのか、それとも実験のためなら周りがどうなろうと関係無いのか。世の中に都合良く能力を働かせることができたのか、その可能性すらなかったのか。それが妙に気がかりだった。
 煙草を一本取り出し火を点け一度吹かす。

「んで、あの狐もどきは一体何に使うんだい?今度はどんな実験を?」

>>フェリス・ヨーシャンク

2ヶ月前 No.629

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【フェリス・ヨーシャンク、ミシェル/ネオレスパーダ本部 裏口】

「そうだ!君の言う通り。僕はただ知りたいだけなんだ……人が持つ奇跡のような神秘的ともいえる『能力』そのものを、隅から隅まで研究したいんだ。基礎研究と言ってしまうのは簡単だが、物事の根源を辿り解明するのは科学者にとって大いなる挑戦であり、探求心を満たすものであり……多くのサンプルが必要なものなんだよ」

どうやらフェリスは『能力』そのものに、つまりメカニズムや成り立ちに興味があるらしく、自分の研究を使った応用にはあまり興味がないらしい。自分の技術を産業に還元する気はないようだ。フェリスは自分の知的好奇心が満たされればそれで満足なのだ。周囲がどれほど迷惑を被ろうとも……そして秀作の話は周りへの影響と反響の話に及ぶ。フェリスは秀作の言葉に同意するように何度か頷いていた。

「もちろん反乱の可能性は考えた。だから必要戦力としてバグを作ったんだよ。こそこそやっていてはいつまでも実験は進まない。だがおおっぴらにやれば科学に理解のない者から反乱の意志が芽生える。私はその反乱の意志を、力でねじ伏せることにしたんだ。バグという無尽蔵の兵器によってね」

フェリスは両手を広げ、口を楽しげに歪ませている。フェリスの瞳は小刻みに揺れていて、彼が常人とは違う精神状態であることを物語っていた。

「アドバースシティは世界一の技術力を持つと言われている。世界一の技術力とはすなわち世界一の兵力を持つことを意味している。それに加えてここは能力者だらけだからね、兵力という意味で圧倒的だ。だが逆にいえば、この街さえ抑えてしまえば、この街の外の世界での反乱なんてどうにでもなる。能力のない人間がバグに勝てるはずもないからね、簡単だ。兵器を用いたとしても無尽蔵のバグがやがて世界を圧倒していく。そうして私は……この世界を手にいれる。この世界の全ての人間を自由にモルモットにできる権利を得られる!」

世界を手にいれ、世界中の人間を自在に実験に使用する……なんとも現実味がなく、途方もない話だが、フェリスは実際にそれを可能にする力を持っていた。

「この街の全ての人間の能力情報を抜きとったのはバグを作るためでもある。私の研究にも使わせてもらうが、これだけの人間の能力情報があれば様々な種類のバグを無尽蔵に作り出すことができる。街の人間の能力情報を得ることで私の研究は進みさらには世界をねじ伏せるためのバグを生み出す……まさに一石二鳥だ」

そこまで楽しげに話していたフェリスだったが急に口をつぐんで静かになる。そして感情のない冷酷な目で秀作の方を見た。液体の入った銃を再び秀作の方に向ける。

「そう君たちの邪魔さえなければ……私は世界中のモルモットで実験ができた。わざわざトールをそそのかして強力な改造能力者まで作ったのに、それすらも……君達は壊してしまった。まったく恐れ入ったよ、力でねじ伏せようとしたのに、その力を越えてくるんだから……でも残念だがここで打ち止めだ。ロビーの二人は隊長には勝てないし、体がボロボロの君は今から僕に消される。その後で僕はまたバグ生産装置を作り強力な力を整えればいい。では……さよならだ、浜田秀作」

フェリスが手にする銃に装填されている液体は強力な筋弛緩剤だ。これを体に打ち込むと筋肉の動きが徐々に弱まり最終的には体が静止する、安楽死で使われる薬品だ。フェリスは秀作に近づき薬品を打ち込もうとした。だがその前に裏口にあるスピーカーから、音が漏れだす。そのスピーカーからはいつものキンキン声が鳴り響いたのだった。

「はい、オッケー!ナイスな独白だったわねフェリス・ヨーシャンク!あなたが今話したことはこの私とタナトスのアハトがこの街全土に知らしめてあげたわ!ネット中継を使ってね!」

どうやらミシェルと八五郎の企みは見事成功していたようだ。フェリスはスピーカーから聞こえてきた声にしばし呆然とする。しかし、その直後フェリスの携帯端末がけたたましく音をあげた。メールと電話、その通信端末がもつ連絡手段全ての通知音が絶え間なく鳴り響いていた。多くの人間がフェリスの独白生中継を聞き、真偽を確かめようとしているのだらう。もちろんそこには政府ブレインの名もあるはずだ。そこでフェリスはようやくミシェルの言うことが事実であること、秀作がわざとフェリスに企みを喋らせるように誘導していたことに気がつき、フェリスは一気に顔を怒りで歪ませた。

「まだ私に抵抗する気かっ!!」

怒鳴り声をあげフェリスは大股で秀作に近づき手にもつ銃を振りかざす。銃の銃口部分には小さな針がついていてあそこから薬品が注入されるのだろう。フェリスは秀作のもとにたどり着くと同時、薬品を投与しようと銃を秀作の左腹へとつきだしたのだった。

>>秀作



【ロックのレスは春宮様よりレスがあったあとお返事させていただきます。もし明日までに春宮様のレスがなかった場合も、明後日にロックのレスを投稿させていただきます。申し訳ありませんが、今しばらくお待ち下さい】
>>青崎光一本体様

2ヶ月前 No.630

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部入口ロビー】

「チッ、大層な炎だこと」

彼方へ飛んで行った薙刀の刃を眺めながら舌打ちをする。ふと見ると、ロックは炎を纏ってこちらへ突撃してくる。

一瞬、翼の空気を奪って回避することを考えた。だが、狂錬のタイムリミットも考え、早々に決着を付ける必要がある。能力が切れた時は、彼女があの炎の薪になるのだ。

「ま、どの道負けりゃ結果は変わらない。だから、勝たなきゃな」

右を引いて、半身になる。柄を顔の位置まで上げ、刀の先端を下げる。そして、左手を添える。

「こっちも即席だが……まあ、手札は温存しないとな」

既に参ノ太刀まで使っている。あまりに手を晒しすぎると後々どんな面倒事があるか分からない。その為、秘匿できるものはしておきたいのだ。彼女の剣が日々進化するのはそれが一因とも言えるだろう。

「修羅道七突、壱ノ太刀『陽炎骸・改式』」

通常なら7つの刺突が飛ぶこの技だが、その刺突を1点、刀の先端に集約する。それにより刺突を中心に豪風が吹き荒れ、こちらを巻く炎を吹き飛ばす。そして、狙ったのはバスターソードの側面。返す刀での防御や切り返しを防ぐ為だ。

≫周辺all

2ヶ月前 No.631

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ロック・ランドルド/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

炎を纏ったドラゴンナイト、ロック・ランドルドは微塵の慈悲もなく、元同僚の光一と霧月にバスターソードを振るう。だが光一と霧月はそれに臆することはない。感情に左右されてその腕を止めることはなく、自分達がやるべきことを自覚し見据え、それを実行する。目の前の相手がロック・ランドルドであろうとも。

ロックの攻撃に対し、光一はソードをすり抜けロックに近づき、一方霧月はブレードの前で突きの構えを見せる。光一が再度眼に対して攻撃を仕掛けたのを見て、ロックは反射的に目を閉じる。そうしてやれば眼球は硬い鱗に覆われて、やはり光一の攻撃を弾いた。しかしそれは意味のない攻撃ではない。ロックが光一の攻撃によって目を閉じたその刹那、その時間は剣士にとっては無限ともとれる隙となったのだろう。霧月の放った突きが局所的な暴風を引き起こし、ロックが纏った炎を吹き飛ばす。そうすることで光一を未だ焼き付くそうとしていた炎までもが消し飛ばされる。さらに霧月の剣技はロックのバスターソードを弾き、ロックの腕はソードに引っ張られた。結果、ロックは光一と霧月を目前にしながら両手を広げ、体を開けるような体勢になってしまう。絶対的な隙、そしてこの戦いを終わらせる絶好のチャンスだった。

「グオオオオアオアオオオオアオオアオアオ!」

声を震わせてロックが雄叫びをあげる。そして口を開けると火炎が渦巻き、直ぐ様それを発射させる。ロックは口から火炎放射を放ったのだ。バスターソードは投げ出され体を守るものは己の鱗のみ。どんな攻撃も通さない鱗だが、ヘクターの攻撃と、そして霧月の攻撃によってロックの左脇腹は鱗を多く失っていた。ロックは体勢を立て直す時間を稼ぐため光一と霧月を遠ざけようと火炎放射を放ったのだった。

>>光一、霧月


【次に投稿するロックのレスでロック戦は終了とさせていただきます。最後に渾身の攻撃を鱗のない左脇腹にお願いします。ただ死なない程度でお願いします】

2ヶ月前 No.632

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【浜田 秀作/第9区画 ネオレスパーダ本部 裏口】

 そこそこやっていては、か。
 今までのこいつの態度からして予想出来ない言葉ではなかったが、実際に言われてしまうとやはり残念だ。自力で社会復帰できる見込みはこれで完全に潰えてしまった。
 楽しげな独白を聞きながら煙(けむ)を口内へ流し込み、少し転がしてそっと吐き出す。煙草の熱を逃がすために30秒ほどあけて、熱くなりすぎないように優しく二口目を吸う。その煙を吐き出す頃にはフェリスの独白の内容は逆恨みのようなものになっていた。
 まあ、気持ちはわからないでもない。でも本当の最強の無敵ってのは敵が恐れる強さじゃなく、みんな味方だから敵がいないってことなのになぁ。力でねじ伏せようとするから跳ね返ってくるんだ。
 さて、そろそろいい頃合いかな、と携帯灰皿を取り出そうとしていると、ミシェルのいつもの喧しいアナウンスが丁度のタイミングでネタばらしをしてくれた。八五郎兄貴がいなければこのアナウンスも今はなかったのだろう、彼には感謝してもしきれない。にしても、アハト、とは……気に入ったのかな?

「ドッキリだーい成功〜」

 本当はあんまりやりたくなかったんだよなぁ。何てことを考えながら、面白い事を言いながらこっちに向かってくるフェリスにピースサインをした右手を指すように向ける。

「まだ?そりゃこっちの台詞だ」

 右手の甲にはブレードに裂かれた跡があり、そこから指先に向けて赤い筋が出来ていた。

「王手掛けてんのはこっちだぜ」

 せいぜい詰まないように頑張れよ王様。
 そう言って、針を避けるように床へ倒れこみながら、指先から滴る血液をフェリスの両眼目掛けてかなりの勢い、それこそ痛いくらいに飛ばしてやった。血が目に入ると大変なんだなこれが、なかなか取れなくて視界が戻るまでに時間がかかるし、何より粘ついて気持ち悪い。ピースサインにしたのは指先が丁度の目の幅と同じくらいだからだな。

>>フェリス・ヨーシャンク

2ヶ月前 No.633

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

(くそ……っ)

まただ、また弾かれた。しかも剛性に欠けると踏んでいた瞼で。つくづく運に恵まれているらしい。結果的に霧月との連携で好機を作り出せたとはいえ、苛立ちは抑えられない。
ロックは苦し紛れに炎を吐き出す。さっきまでの火球と違って通常の火と変わらない……つまりブレードを使っての防御はほぼ不可能だ。

(だったら)

迷う必要はない、一気にケリを付ける!
何の躊躇いもせず、皮膚が焼けつくのも構わず炎の中を突っ切り、口腔に狙いを定めブレードで神速の突きを見舞う。
無明剣。
仏教用語で仏の無い世界を無明と称する事から名付けられた天然理心流奥義。本来は篭手、胴、面と三回に渡って素早い突きを繰り返し、引く度に横へ払う技である。沖田総司が得意としていた。しかし今回は純粋な一突きとして使用、流石に三度も抉るような真似をする気にはなれなかった。

(……わかってるさ、これが非効率的なやり方だってのは)

この場合は文字通りヘクターの手によって破壊されている部分を攻めるのが最適であるが、それでは駄目だ。できるだけ自分達の、レスパーダの手で解決しなければならない。タナトスの力を借りるなど尺に触る。無論、極端に絶望的な状況になったら形振り構わず彼らとも手を組むつもりだが。

>>周辺all

2ヶ月前 No.634

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【フェリス・ヨーシャンク、、ミシェル護送隊員/ネオレスパーダ本部 裏口】

秀作がピースサインを掲げ、こちらを煽る言葉を言えばフェリスはさらに機嫌の悪そうな顔になる。独白を経て昂ったままの気持ちがもう自身で制御できないようになっているらしい。その気持ちの昂りのまま、秀作への攻撃をしかけたフェリスだったが、フェリスはただの科学者。臨機応変に素早く回避する、などという芸当はできない。秀作の手から放たれた血液はフェリスの目の中へと飛び込んでいく。

「がぁっ!何をする!」

反射的に目を閉じるももう遅い。秀作の血はフェリスの瞳にべっとりとついたのだった。必死に目をこするフェリスだが血液は簡単にフェリスの視界からどいてはくれない。フェリスはある意味その言葉通り血眼になって秀作を探すが、未だはっきりしない視界では銃の先端を秀作に突き刺すなどできない状態だった。

そして直後、裏口からドタドタと複数の人間が入り込んでくる音が聞こえる。それは護送隊員の2人で、秀作の少し前へと躍り出ると一斉に手に持つ電撃銃を構えた。

「フェリス・ヨーシャンク!お前を違法な人体実験、バグの生成による軍の形成などの罪で犯罪者として確保する!これは政府ブレインの決定だ!」

隊員の一人が声高にそう宣言する。今まで能力開発研究所所長、さらには政府ブレインに意見を申し入れるほどの権力者だったフェリスは、一瞬にして犯罪者へと成り下がった。ミシェルと八五郎が生中継をつなぎ、秀作が独白をしゃべらせたおかげだ。フェリスは激しく歯軋りをし、叫び声を挙げた。長年時間をかけて積み上げた計画、それはこの街の治安維持部隊によって砕かれたのである。

「レスパーダァァァァァァァァァァァ!!!」

フェリスは最後の足掻きと銃を構えて秀作と護送隊員の方へと走ってきた。だが黙ってみている隊員ではない。構えていた電撃銃の引き金をひく。輝く弾が銃口から発射されると、それは見事にフェリスに命中した。フェリスの体に軽く電撃が走る。といっても、一般人を気絶させるには十分な力だった。

「ガッ!……そ……わた………し……」

フェリスは言葉にならない音を発すると、意識を手放したのだった。

「やったぁ!」


通信機からミシェルの感嘆の声が聞こえる。さらに後ろでは八五郎が発する勝利の雄叫びが聞こえてきた。

「やったわ秀作ちゃん!フェリスを止めたわ!あいつの手から……この街を守ったわよ!!」

ミシェルはAIだ、実体はない。だがもしミシェルに実体があったなら拳を高々と振り上げ満面の笑みを見せていたことだろう。

>>秀作






【ロック・ランドルド、ヘクター、リッキー・ショーター、ミシェル/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

時間は少し前に戻る。ロックの炎が吹き荒れるなか、ヘクターは入口ロビーの壁にもたれ掛かり、戦況を見守っていた。右腕が潰れている以上ヘクターが戦闘する術はない。ヘクターはただ黙って行く末を見ていたのだった。そんな時崩壊した壁の向こうから一人の人間が入口ロビーに入ってきた。護送隊隊長リッキー・ショーターだ。リッキーは入口ロビーの状況を確認したあと、ヘクターへと目をむける。護送隊のトップ、タナトスのトップ、顔も性格も立場もまるで違うが、二人が共通しているのは右腕が使い物にならなくなっていることだった。

「何しにきた。てめぇ、その腕じゃ何もできねぇだろうが」

ヘクターが冷たい言葉をリッキーに投げる。リッキーはというといつものとおり、口を真一文字に結んだままの顔でヘクターを見ていた。

「それはお前も同じだ……」

次にリッキーはロックの方をみる。仕事柄よく顔を合わせていた相手のはずだが、ドラゴンナイトのあの姿では面影など一切ない。リッキーはしばしロックを観察する。そして背中にある電撃銃を左手のみで持った。

「おい、それは両手じゃねえと扱えないんじゃねぇのか?」

見かねたヘクターが問う。だがリッキーの目に迷いはなかった。

「ハンドガードに支えがあれば撃てる」

「それじゃあ聞くがその支えってのはどこに……」

そこでヘクターはリッキーの考えを理解し、不機嫌に眉をひそめ、唇をひん曲げた。それでもリッキーの表情は変わらない。

「てめぇ、覚えてろよ」

「察しがよくて助かる」

チッと舌打ちしながらヘクターは壁から体を離すとロックをありったけ睨み付けたのだった。

時間は現在に戻る。体を大きく開かされたロック。敵を遠ざけるために放った火炎放射だっだか、光一は体が焼けるのも構わず突っ込んできた。ロックはまた火炎放射を中断し首をもたげて光一の突きを回避する。口内が切れ、口の端もいくらか裂けたようだ。痛みに唸り声をあげていたロックだったが、今のロックはとても無防備だった。体を開き、光一の攻撃を回避するために首をもたげた状態。脇腹の傷口は完全に無防備だった。その気を逃さない男が二人。ヘクターとリッキーだった。

「てめぇは後で殺す」

「今度こそ監獄送りだな」

そんな物騒な会話をしながら、二人の男は奇妙な立ち位置にあった。ロックの正面から少しずれたところにヘクターが仁王立ちし、そのすぐ後ろにリッキーが立っている。リッキーの左手には電撃銃が握られていた。電撃銃はライフルに形がにており片手で扱うのは至難の技。だがリッキーはそれを片手で撃つ方法を見いだしていた。ハンドガード部をヘクターの肩にのせ、支えにしたのである。リッキーの視界を邪魔しないようにヘクターは首を傾げていて、なぜこんなことをしなければならないのかと、顔は不満で溢れていた。リッキーはロックの傷口を見据える。護送隊とはいえ歴然の男だ、リッキーは土壇場で成すべきことを成せる男だった。

「詰みだ」

リッキーは呟くように言う。そして引き金を引いた。輝きを放つ弾丸は無防備なロックの傷口にまっすぐ飛んでいき体へと突き刺さる。

「グァァァァァァァァ!」

ロックは苦しみの声をあげ、体に走るその電撃を感じていた。体が痙攣したようにガクガクと震えたあと、ロックの3mほどある巨体はその場にゆっくりと倒れたのだった。軽い地響きがおこる。そして、ロックの体はゆっくりと萎んでいき、元の、人間の姿のロックへと戻ったのだった。倒れたままのロックは脇腹と口から血が出ていたが、息はあるようで、やがてうっすらと目をあける。そして周囲にいる人間が誰であるか、確認したあとに小さく笑顔を浮かべるとそのままゆっくりと目を閉じた。ロックの体が青紫色に光る。そしてその光は宙へと解き放たれ、やがて消えてしまった。そこには能力情報を抜かれた直後と同じ状態、永遠に眠り続けるだけの体になったロックが横たわっていた。

「いやったぁぁぁ!!」

光一と霧月の通信端末、そして入口ロビーに設置されたスピーカーから聞きなれたキンキン声が聞こえてきた。ミシェルである。

「やったわ!ロックも止まったのね!フェリスに操られてどうなることかと思ったけど……あ、そうそう。言うの忘れたわね!私と八五郎でネオレスパーダの通信システムを奪い返したの!通信良好って感じよね!」

明らかに伝える順番が逆だったが、ミシェルは相変わらず自分のペースを崩さないようだ。かくして、ロック・ランドルドはフェリスの操りの糸から解き放たれたのだった。だが、その体は永遠の眠りについていた。

>>光一、霧月



【もう1レス投稿します】

2ヶ月前 No.635

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ミシェル/ネオレスパーダ本部全域】

「よし!これでフェリスも捕まえたし、ロックの暴走も止まったし、一件落着!レスパーダの勝利的な?治安維持部隊として役目を果たしました的な?とにかく、レスパーダの勝ちよ!!!」

ミシェルはネオレスパーダ、もといレスパーダ本部にあるスピーカーから甲高い声を響かせていた。晴れやかな声で勝利宣言をする。出入口が崩壊し、入口ロビーでは炎が未だ残り、フェリスが無惨な姿で運び出されようとしているという散々な状態の本部だが、それでも勝利したことには変わりなかった。

「それとね、もうひとつ朗報があるの!」

ミシェルが興奮気味に切り出す。その後ろで八五郎が「おい、それ見つけたのは俺だぞ!」と叫んでいる。だかミシェルは八五郎に構わず話を続けたのだった。

「ロックとかリョウとか、能力情報を抜かれて永遠に眠る人をね、助ける方法が分かったわ!」

八五郎が後ろで「おいっ!」と相変わらず叫んでいる。だが興奮しきっているミシェルを止められるものは誰もいない。

「それはね、『能力を消去する』の!正確には能力開発と逆の手順を踏めばいいってことなの!それで能力開発する前の状態に戻せばきっとみんな目が覚めるわ!」

そこまで興奮ぎみにしゃべっていたミシェルだったが、突然スピーカーからため息が漏れる。

「でもね、肝心の『能力を消去する』方法が分からないの。ねぇ、誰か知らない?ってか知ってる人知らない??」

ミシェルは光一、秀作、霧月に問いかける。眠りについたロックを目覚めさせるには誰かの力が必要だった。

>>光一、秀作、霧月



【これが最後の問いかけです。NPC一覧より該当人物を探し、ミシェルに伝えて下さい。NPC一覧の情報はレスパーダ隊員ならば誰でもアクセスできるデータですので、どなたが答えていただいても構いません】
>>ALL本体様

2ヶ月前 No.636

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 ネオレスパーダ本部入口ロビー】

「チッ、その距離の火炎放射は卑怯だろ……」

思わず身を引く霧月。だが、その直後、青崎が割り込み、霧月は炎から逃れる。

そして、生じたロックの隙を見逃さず、霧月が次の一刀を振るおうとした瞬間、

「うおっ!?」

何かが霧月の横を通った。それはロックの傷へしっかりと命中し、身体中に電流が走ったようだ。ロックは倒れ、元へ戻る。そして、他のネオレスパーダの連中と同じように眠りについた。

「これは……人間が食らうもんじゃねーよ……」

電撃銃の威力に眼を向く霧月。だが、こちらの勝利に終わった戦闘に安堵し、刀を肩に乗せる。

そして、ミシェルの言葉に「お疲れさん」と声をかける。だが、その疑問には答えることが出来ない。

確かに、霧月は一度能力開発研究所へ行ったことはあるが、その時はトールに色々秘匿され詳しくを知ることは出来なかった。

「オレは知らん。そういう能力は無いだろうな。そんな能力に存在する意味は無い。何故ならここはアドバースシティだからだ。能力のない人間の居場所はないからな。だが、『能力を消す研究』をしてる人間なら能力開発研究所辺りに1人は居るんじゃないか?フェリスレベルの物好きがいるんだ、そんな奴も居ておかしくはないだろ」

だが、その可能性も低い上に、よしんばその研究があったとしても、それが実用段階にあるかどうかは不明だ。むしろまだ完成していない可能性が高い。完成しているなら自分達を無能力化すれば容易く制圧できるはずだからだ。

「まあ、『制約なくなんでも創れる』なんて都合のいい能力でもあれば話は違うけどな」

どうやら、まだやるべき事はある様で、霧月もリミットまでは頑張って起きていよう。そう思った。

≫all

【検討はついたのですが、霧月とその方の面識が全くと言っていいほど無いので、今回は『例えばの話』で誘導します。】

2ヶ月前 No.637

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

決死の覚悟で繰り出した刺突をもののあっさりいなされ、表情を歪める。

(どういう反射神経だ!)

防御や回避度外視の突撃を敢行したにも関わらず、申し訳程度のよろめきと掠り傷に留まってしまう。だが、それこそが決め手となった。

「!」

後方から響き渡る銃声。何事かと思い視線だけを向けると、リッキー(とヘクター)がライフルタイプの電撃銃による狙撃を成功させていたのだ。ロックはやや間を置いて、呻き声と共に地に伏した。

「終わり、か」

ミシェルの金切声が勝利を告げる。アドバースシティはフェリスの呪縛から解放されたのだ。だがロックは起き上がる気配を見せず、床に四肢を投げ出したままである。ミシェルの言葉を聞く限り、どうやら能力を消し去る手段があれば彼を救うことができるらしい。

(…………)

『能力を消す』と聞いて思い浮かんだのは、能力開発研究所で会った女性だ。確か彼女を最後に見たとき、連れの男が『能力者を普通の人間に戻す研究をしている』という旨の情報を話していた筈。

「ああ、霧月の言う通り研究所にそんな人間がいた」

「名前は……春谷都と名乗っていた筈だ」

それだけ話すと、突如としてヘクターに向かって走り出す。
フェリスが捕まり、ロックが助かる目処もたった以上、もうタナトスと協力関係を保つ理由はない。もし奴らがこのままおめおめと帰ろうなどと、甘い考えでいるのなら豚箱に叩き込むことでその目を覚まさせてやる。

「セイッ!!」

火傷による激痛を堪えつつ、ブレードを振りかぶり再び無明剣を放った。しかし先程とは違い今度は籠手、胴、面の三ヶ所を突き抉る形である……つまり本来の形だった。

>>周辺all

2ヶ月前 No.638

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ミシェル/ネオレスパーダ本部全域】

ミシェルが『能力を消去する』良い方法がないか思案していると、霧月が該当人物を予想していく。ミシェルはそれをふんふんと相槌をうちながら聞いていた。

「確かに、能力を消去する能力って聞いたことないし、そんな奴がいたらアドバースシティから出ていかなきゃならない人が大量発生しちゃいますよ的な?だから研究ならあり得そうよね……そんな人いないのかしら。制約なくなんでも創れるってエミリー・ギラムの能力のことよね?確かにできそうだけど……今はエミリー自身も能力情報を抜き取られて眠ってるから、まずは彼女を起こさないとダメだし……」

ミシェルはスピーカー越しに唸りごえをあげる。霧月の言うことはおそらく正しいのだが、やはり肝心の『能力を消去する』方法が分からない。ミシェルが必死に能力開発研究所のデータを検索していたところ、光一から一人の人間の名前が挙がった。『春谷都』能力開発研究所の所員でフェリスや他の同僚から研究を馬鹿にされていた女性。この女性こそ、ロック達を目覚めさせる鍵だった。

「春谷都……春谷都……ほんとだ!ナイスよ、光一ちゃん!そして霧月ちゃんもナイス推理!春谷都、能力開発研究所所員。研究内容は『能力の消去法の確立』!完璧じゃないですか的な?ドンピシャじゃないですか的な?さっそく連絡をとってみるわ!!」

ミシェルは春谷の情報を探し当ててからまたしてもテンションがうなぎ登りに上昇し、もとのキンキン声を発していた。春谷都のことに夢中になっていたミシェルは、その後入口ロビーでどんなことが起こっていたのか、知るよしもなかった。

>>レスパーダ隊員ALL



【ヘクター、リッキー・ショーター/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

ヘクターはこちらに向かって走ってくる光一を見て楽しげに口を歪ませる。全身に火傷を負いながら、そしてレスパーダという地位を失いながら、なおも光一は自分を捕らえようとしている。その信念を貫き通すという点だけは、ヘクターも気に入ったようだ。

「てめぇならそう来ると思ってたぜ」

規則正しく並んだ歯をニカリと笑って見せつけつつ、ヘクターは左手を動かし、武器である鉄パイプを取ろうとした。だがヘクターの背後に構えるのはリッキーである。彼もまたアドバースシティの治安を守る存在、ヘクターをこのまま見逃すわけにはいかなかった。リッキーはヘクターの肩に乗せていた電撃銃のハンドガード部を掴むと電撃銃をヘクターの首に引っ掻けるようにして手前に引きよせ、ヘクターが逃げるのを阻止しようとする。だがヘクターは焦っていなかった。なぜならば、ヘクターの足元からどこからともなく水が沸き上がっていたからだ。

「……っ!!」

直後リッキーが小さく声を漏らす。それは痛みによって漏れだした声だった。リッキーが電撃銃を持っていた手にあるものが直撃したからである。それはブレードシールド、カル・ギラムの武器だった。リッキーの拘束がなくなった直後、ヘクターの足元から水柱が立ち上がり、ヘクターの体を宙へと飛ばす。その水柱は同時に光一が放った無明剣の勢いを和らげ、ヘクターの真後ろにいたリッキーに攻撃が当たらないように壁をつくる。宙へ体を投げ出したヘクターのもとには、奇妙なものが近づいていた。人間の腕が2本、宙に浮いた腕がヘクターの体をキャッチしたのだ。そして宙に浮いた腕、死賭の両腕はヘクターの体を引っ張り、外へとつながる崩壊した壁の近くへとヘクターを下ろす。

「良い子だ」

ヘクターが友を、仲間を誉める彼なりの言葉を口にする。ヘクターの両隣にはカル・ギラム、カイ、死賭が並んでいた。

「また無茶な能力の使い方をしたな、ヘクター……僕たちは治療を受けるだけでも大変なことを忘れたのか?」

「あっるぇ?俺ちゃんのダーリンは?ダーリンはどこぉ??」

「でもヘクターのピンチを僕ら三人で救うなんて最高にポップじゃない?」

「ちょっとぉ!ダーリンはっ!?!?俺ちゃんダーリンに会いに来たんですけどぉ!もう!俺ちゃんルージュの伝言残しちゃうぞっ!!」

カル、カイ、死賭が思い思いに言葉を口にする。死賭に至ってはこの場とは一切関係ない言葉だったが。

「レスパーダ!俺達タナトスの目的、フェリスをぶっ潰すことは達成した。政府ブレインのクソ野郎共もこれで変わるだろうよ。俺達は一旦闇に紛れてやる。まぁ追いかけたきゃ、精々頑張れよ。無駄骨になるけどな!」

ヘクターは自信に満ちた笑みを浮かべながら、光一へと、端的に言えば『逃げおおせる』宣言をする。これまでのように能力を使った荒事は起こさないだろうが、かといって大人しく罪を償う気はないようだ。ヘクターは次に霧月の方を見る。まだ能力を使った状態だが言っておかなければいけないことがあった。

「式見霧月!今のてめぇに言って伝わるのかは知らねぇが……秀作に気が向いた時には来いと伝えておけ。勝手に来るかも知れねぇけどな」

ヘクターは霧月に伝言を託す。能力を発動した状態なので、はたして秀作に伝わるのかは分からないが。ネオレスパーダが崩壊した以上レスパーダが再び日の目を見るのは自然な流れだろう。そうなれば、おそらく秀作はレスパーダに戻ることになる。一時的にでもタナトスの一員になった秀作のことをヘクターは気にかけたのだった。ヘクターの後ろでは死賭がまだダーリン、と秀作を呼んでいる。秀作とタナトスの誰かが会うとなった日には光一が黙っていないだろうが。

「それじゃあな、レスパーダ。二度と会わないことを祈ってるぜ」

ヘクターは最後の言葉と共に左手をひらりと挙げた。同時に、タナトスの4人は走り出す。日が照らすアドバースシティへと飛び出していき、そのまま4人は闇へと紛れて溶けて、どこかへ行ってしまったのだった。

>>光一、霧月



【こちらのレスをもって一日の区切りとさせていただきます。13日にこの日から1週間経った後のエピローグを始めさせていただきますので、このレスへの返答(この日の出来事)は13日のエピローグを投稿するまでとさせていただきます。残り少ない時間ですが、どうぞよろしくお願いします】
>>ALL本体様

2ヶ月前 No.639

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/ネオレスパーダ本部 入口ロビー】

無明剣はカイ達の妨害により防がれ、ヘクターはそのまま逃亡してしまった。
今追跡すれば捕まえることはできるかも知れない、一網打尽も十分狙えるだろう。しかし……

「……フン」

気が変わった。奴らの一目散に逃げる姿が余りにも不恰好で、余りにも惨めで、余りにもみっともなく、まるでゴキブリが物陰に隠れようとする様子そっくりだったので、この場で直接潰そうという感情が薄れてしまった。

「今は、休むか」

深いため息をつき、軽く肩を回す。
体感的にはまだまだ動けるが、何せ体のあちこちを火傷しているのだ。重傷となる前に治療に専念するのも一つの手だろう。
すっかり焦げくさくなったコートを脱いで片手に持ち、事後処理など面倒だとばかりに医務室へ向かって歩き出す。

(あいつらは少しづつ追い詰めて潰すかな)

街に巣食う悪意の根はレスパーダによって枯らされた。だがそれが氷山の一角でないという保証はどこにもない。またいつどで邪念にかられた者が現れるか、それを知る術は皆無に等しい。しかし、それでも、今は寸刻の安寧に身を任せよう。

>>周辺all

【高周波ブレード弱すぎィ!】

2ヶ月前 No.640

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【トール・オルガヌス、リッキー・ショーター/レスパーダ本部 入口ロビー】

フェリス・ヨーシャンクの企みが暴かれ、フェリスが能力開発研究所所長から、犯罪者へと転落したあの日……レスパーダ隊員が身体と精神を刷り削って勝利を手にしたあの日から、一週間が経過していた。フェリスの逮捕はアドバースシティ中に大々的に取り上げられ、あのままネオレスパーダとフェリスに能力情報を抜かれていたら……と多くの市民は背筋に寒気を感じていた。一方でフェリスを止めたのはレスパーダ隊員であることも大々的に取り上げられ、市民はレスパーダ隊員に称賛の声を挙げていた。その声に押されるようにレスパーダは再建され、組織上元の姿へと戻った。元に戻ったのはレスパーダという組織だけでなく、本部の建物も同じだった。戦いの傷が多く残った本部だったが、修理の能力を売りにした業者が瞬く間に本部を元の形に戻したのだ。当然本部の名前は「レスパーダ本部」へと戻され、レスパーダ隊員の個室も荷物も全て元通りである。レスパーダは以前と変わらぬ姿を取り戻したのだった。

しかし、そのレスパーダ本部にはひとつ重要なものが欠けていた。主を失ったままの来客用ソファがポツンと寂しげに置かれている。静寂に包まれていたレスパーダ本部入口ロビーだったが、出入口から二人の人影が姿を現した。まずはリッキー・ショーターだ。紫色に毒されていたリッキーの右腕はすっかり元の色に戻り、今は仏頂面を浮かべている。いつも通りということだ。リッキーの本来の仕事は護送だが、今回は罪人の付き添いの仕事を請け負っていた。その罪人とは、リッキーに続いて入口ロビーに入ってきたトール・オルガヌスのことだった。

トールはフェリスが捕まった後、自ら出頭した。脅されていたとはいえバグの生産、ネオレスパーダの作成、アドバースシティ全市民の能力情報抜き出し計画と、フェリスのほとんどの計画にトールは加担していた。フェリスもトール抜きでは計画を実行することはできなかっただろう。執行猶予がつく見通しだが、トールは自分の行為のつけを払うことになりそうだ。だがトールはすでにそのつけを一部払っていた。ミシェルが春谷都と連絡をとったあの日、春谷は『能力情報の専門家がいなければ自分の研究を完成させられない』とミシェルに伝えた。そこでミシェルはトールと春谷を引き合わせたのである。二人の能力研究のスペシャリストが揃い、春谷の研究は一気に進化を遂げた。そしてあれよあれよという間に『能力を消去する方法』を確立したのである。最初に永遠の眠りから目覚めさせたのはエミリー・ギラムだった。その後事情を説明し、エミリーの能力である『想像したものを創造する能力』によって『能力消去装置』を産み出したのだ。これで研究所の地下に眠っていた多くの『隠された被験者』、すなわち能力開発に失敗した人間を目覚めさせることができたのである。

そして今、トールは自分と春谷の力によって目覚めさせた人物と会うために、レスパーダ本部に来ていた。トールはリッキーと同様、仏頂面を浮かべながら来客用ソファの近くまで歩いた。その後をゆっくりとリッキーがついていく。トールは大きく息を吸い込み、そしてまたゆっくりと吐き出した。

「……緊張しているのか?親友なんだろう?」

大体の経緯を聞いていたリッキーは珍しく自ら他人に話しかける。それくらいにトールの顔には緊張の色が浮かんでいたのだろう。

「私とあいつでは8年時間がずれている。私のことも……覚えている保証はない」

能力開発に失敗した人間を目覚めさせる方法は確立した。しかし、その目覚めた人物がきちんと記憶を保持しているのか、まだ確信をもつ答えをトールは得ていなかった。ずっと眠っていたエミリーは記憶が眠る前と同じできちんと兄であるカル・ギラムを覚えていたが、トールがこれから会おうとしている人物は8年間記憶喪失者としてねじ曲がった記憶のもと生活していた人間である。その8年間がどのような影響を与えるか分からない。トールは左手につけているシルバーのリングを眺めた。それは親友の証、二人で故郷を出たときに手にした思い出の品だった。トールはぼんやりと宙を眺めながら、彼の帰還を待ったのだった。

>>周辺ALL



【それではエピローグを始めさせていただきます。残り2レス投稿でこのスレは終了となります。最後までどうぞよろしくお願いします】
>>ALL本体様

2ヶ月前 No.641

春宮 @12122404 ★Tablet=4fg2rbSSgp

【式見霧月/第9区画 レスパーダ本部 自室】

『お父さん!お父さん!ねぇ、なんで寝てるの?私が斬っちゃったから?ねぇ、起きてよ……』

ああ、これは夢だ。そう霧月は判断した。恐らく、あの日の光景を、彼女は客観的に見ているのだ。断片的な記憶から、そう判断した。

右手に刀を持った、幼い自分と、見惚れる程に綺麗な切り口と、薔薇のような花弁を広げた血の花を湛えた彼女の父親だったモノ。目は大きく見開かれ、小さな霧月を見下ろすかのように下に瞳は向いている。口は「あ」という声を発しようとしたまま動くことは無い。

ガタン、と背後で音がした。霧月は意識の中で後ろを向く。幼い霧月もまた、後ろを向いた。そこには、形の整った、和服の美少年。幼い頃彼女が兄と慕ったその少年は、まるで他人事のようにその光景を呆然と見ていた。

『お兄、ちゃん……?』

幼い霧月は自然な足取りで少年へと向かい、違和感の存在しない程の早さと疾さ、自然な動作で少年へと斬りかかった。

金属同士がぶつかる音。少年と幼い霧月との間に刀を持った男が割り込んだのだ。彼の顔は覚えていないが、男は式見家の家臣だった気がする。

『鍛冶のとこの坊!はよ逃げぇ!』

少年は男の声に驚いて頷き、廊下を走った。男は大人の膂力で霧月を押し返す。部屋の中心まで飛ばされた霧月。刹那、部屋の襖が開いて刀を持った男達がぞろぞろと入ってくる。

『霧月様だと思うな……あれは修羅そのものだ』

幼い霧月が周りを見渡す。

『井島おじさん、永山おじさん、中尾おじさん……今日はみんな揃ってお稽古なの?』

幼い霧月の背後から紅いオーラが噴出する。それは巨大な1人の剣士の形を作った。これが、全力の狂錬である。

『やれ!』

男達が刀を構え、幼い霧月に突撃する。幼い霧月が刀を振ると、紅い剣士も刀を振るった。

『うっ……ぐすっ、ぐすっ……』

部屋には1人、嗚咽を堪える幼い霧月がいた。その部屋には、家臣だったモノがいくつも転がっている。首の数は確かに、この部屋に突入した人数と一致していた。

不意に、襖が開く。そこには、あの少年がいた。

『霧ちゃん』

ああ、そうか。昔の自分は霧ちゃんと、そう呼ばれていたのか。などと懐かしい思いに浸る。

『なんで、人を殺すの?』

少年は、恐怖も悲愴も感じさせない、ただの疑問としてそれを聞いた。

『わかんない……わかんないよぉ……』

幼い霧月は畳に刺さった刀をそのままに少年へと駆け寄り抱きついた。そして、声を上げて泣いた。

『ダメじゃないか。そんなに人を切ったら折角の刀が刃こぼれするよ?お父さんに言って直してもらわなきゃ』

幼い霧月の頭を撫でながら少年は刀を見て優しい目をする。まるで「しょうがないな」と言うように。

それが、霧月が今まで断片的にしか覚えていなかったあの日の全容だった。

(何故、人を殺すのか……私は未だに……)

霧月が刀を取る理由。それはレスパーダとして街の平和を守る為だ。だが、狂錬を使う理由は、霧月自身が死を求めているのではないのか。その答えは、未だに。

「……泣いてましたね」

顔を伝う水分に気づいて霧月の目は覚める。それが、過去との決別なのか、未練なのかは分からないが、それでも霧月は、忘れかけていたあの少年の顔を思い出せた、それだけで満足していたのだった。

浜田さんに「ヘクターがたまにはタナトスに顔を出すようにと言っていました」とメッセージを送り、ベッドから這い出す。

「とりあえず……鍛錬を……」

狂錬を現状の全力で連続使用したツケは大きく、未だに霧月は頭痛に悩まされている。

身支度を済ませ、体調の悪そうな顔で自室をでた。

≫浜田さん、all

2ヶ月前 No.642

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/レスパーダ本部 自室】

(取りあえずはこんなとこか)

デスクワーク用に宛がわれたPCの前で、自ら作成した張り紙の整理に勤しむ。

『ペット探しお断り! 愛する家族は自分で探そう!』

ネギトロを口の端にくわえたまま、改めて誤字などがないか確認。既に何枚かは本部の入り口前などに張ってある、よほどの馬鹿でない限り雑用じみた依頼を持ってくる奴はいないだろう。
ついでに他の張り紙も一瞥しておく。

『ビーズのようなものが付いた扉を見たら即通報!』

『あなたの知人、もしかしたら偽者かも!? 日頃からお互いの能力確認、忘れずに』

タナトスを捕まえるため、一部の職員達に協力を仰ぎ全区画にこのような張り紙と、各メンバーの手配書を張って貰っている。流石に隈無くびっしりと、というのは不可能なので特に人通りが多い箇所のみに限定しているが。
更に自分も積極的に空き家、廃棄施設、下水道の類を調査し、アジトの候補ポイントとなる場所を着実に潰して回っている。

(それでもこれといった成果はなし……あと二週間程続けて状況が変わらなかったら、アドバースシティの外にも手を広げてみるか)

その時は各地の警察とも連携しての調査になるだろう。何せこちらは歴史的犯罪者を捕まえた英雄なのだ、否とは言わせん。尤も、情報の共有などが中心になり、人員の貸出は殆どないだろうが。

(奴らのことだ、下手したら地球の裏側にいるかもな)

八五郎の能力を考えれば、あり得ない話ではない。一応そのことも頭の片隅に留めておこう。

(しかしまあ……)

意外だったな、まさかトールがあんな殊勝な面を持っていたとは。
正直どさくさに紛れて雲隠れすると思っていたのだが、素直に出頭したと聞いたときは度肝を抜かれた。彼は人格面で見直さねばなるまい。どこかの誰かも見習って欲しいものだ。

「ふう……」

ネギトロを飲みこむと次はおはぎに手をつけようとする。願わくばこの太平が永く続かんことを。

>>周辺all

2ヶ月前 No.643

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【浜田 秀作/第9区画 レスパーダ本部 自室→入り口ロビー】

「遊びに来い、か」

 陽光が差し込みほんのりと暖まる部屋の中、霧月ちゃんからのメッセージを読みそう呟いた。齧りかけの板チョコを机に置き、白衣のポケットをゴソゴソと漁ってビーズのような物を取り出してはニヤリと笑む。

「やー、間に合ってよかったよかった……ん」

 湯が沸く瞬間のあの独特な音の変化を聞き付ける。意味もなく全速力で準備を整えようかとも思ったが、今は少しだらけることにした。ビーズをポケットに戻す。
 板チョコの最後の一欠片を口に放り込んで温くなったカップの底に残るコーヒーを一気に口に注ぎ込み、口の中のチョコレートを溶かしながら空になったカップを中指に引っ掛けて立ち上がり台所へ向かう。
 コーヒーを淹れた時の残り湯でカップを濯ぎ、加熱器を止める。細口ケトルから立ち昇る水蒸気はすぐに大人しくなった。

「うむ」

 一つ頷いて四つ折りにした布をワゴンの一番上の台に敷き、そこに細口のケトルを置く。どっちも金属製だからそのままだとすぐに冷めっちまうからな。

「……んんっ」

 キッチン台が少し低く腰を曲げたままの作業で体が固まったものだから、伸びをしてほぐせば背骨からベキベキと音がする。ほぐしたついでに適当な柔軟を。
 そういえば入念過ぎるストレッチは運動パフォーマンスを十何パーセントくらい低下させるらしい。ま何にせよやりすぎはよくないってことだ。

「はいじゃあ行きますかね」

 ごそごそと手近な菓子と茶葉類を真ん中の台に詰めてゆき、隙間がなくなったところでワゴンを押し出してそのまま部屋を出た。

=============

 台座に足を引っ掛け重心を前に持って行きスケートボードの要領で前に進む。

「てぃーらったとぅりら、とぅーるらったった」

 歌いながら廊下を滑り行く姿はまさに……まさに、なんだ。わからん。
 二度三度と地面を蹴り飛ばして加速をすれば、あっという間に入り口ロビーに到着する。件のお二方を視認しながらもなおも歌い続け、ワゴンを二人と対面するソファーのすぐ横に寄せる。
 左手を持ち手に引っ掛けたままワゴンから降りつつソファーに腰掛け、中段の物にも手が届くように引っ掛けた手で、ぐいと押しやった。

「はい、お客さん座って座って」

 右手のリングを机に置いてそっと差し出した。

>>トール・オルガヌス、リッキー・ショーター

2ヶ月前 No.644

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ミシェル/光一と霧月の通信端末】

「ちょっとぉ!なにやってんのよ、光一!霧月!今日がなんの日か忘れたの!」

朝一番、突如二人の通信端末から鳴り響いたのはいつも通りのキンキン声だった。この時間にしては刺激の強すぎるその声は容赦なく二人を捲し立てる。どうやらミシェルは二人が大事な用事を忘れていることにご立腹の様子だ。

「大事な人が帰ってくる日じゃん的な?ていうかもうすぐ到着予定時刻ですよ的な?だから今すぐ二人とも入口ロビーに集合!一応病みあがりなんだから、労ってあげちゃって!」

ミシェルは光一と霧月に入口ロビーへ移動するよう促す。そこには秀作、リッキー、トールがいて、やがてもう一人の人物が加わる予定だ。その人物こそが、レスパーダが迎えるべき人物なのだった。

>>光一、霧月



【トール・オルガヌス、リッキー・ヨーシャンク、ロック・ランドルド/レスパーダ本部 入口ロビー】

トールとリッキーが入口ロビーに入ってきてから最初にロビーにやってきたのは秀作だった。よく分からない歌を歌いながらワゴンに体を乗せロビーへとやってくるその姿は奇妙で仕方がない。もちろんレスパーダにとっては日常の光景だが、部会者の二人にしてみれば秀作の様子はただ事ではない。それでも二人は同じような仏頂面を並べていたのだった。真正面に秀作がきても二人の表情は変わらない。しかし秀作があるものを取り出した瞬間、トールの目が大きく見開かれた。動揺のためか黒目がふらふらと揺れている。ハッと息を飲む音を発したかと思えば、暫くそのまま停止し、だいぶと間を開けてから息を大きく吐き出した。トールはテーブルの上にあるもうひとつの親友の証、トールと同じシルバーリングを見つめたまま動かないでいた。だがやがて、シルバーリングと秀作とを交互に見ながらやっと口を開けた。

「ちゃんとあったのか……ダンが死んだ時に壊されたのかと……」

トールの声は震えていて、声も弱々しい。それほどにトールはまだこの世に二つの親友の証があることに、動揺していたのだ。

トールが呆然とシルバーリングを眺めていると、今一度レスパーダ本部の入口扉が開いた。建物の外からの光が入ってきた人物を照らす。その人物は本来このレスパーダ本部にいるべき人間だった。

「帰ったぞ、秀作。なんだ光一と霧月はいないのか?外に行ってるんじゃないだろうな」

レスパーダ本部に今しがた入ってきた人物、それはロック・ランドルドだった。レスパーダ隊長、マンゴースムージー片手に来客用のソファに座って堂々とサボる男。その人物が、レスパーダ本部へと帰ってきたのだ。能力開発に失敗し永遠に眠るだけの運命だったロックを、トールは見事目覚めさせたのだった。そしてロックはいつも通りにレスパーダ本部に現れたのである。ロックは秀作がワゴンを持っていることに早々に気がつき、早くも茶菓子はなにかとワゴンを覗き見ようとする。だがその時に、ロックは視界にシルバーリングをとらえたのだった。それは親友の証、トールとロックの親友の証だった。ロックはどこか恥ずかしげに頬を掻いている。あの様子ならば、ロックはおそらくシルバーリングの意味を理解しているのだろう。シルバーリングは今まさに主人のもとへと帰ろうとしていた。

>>周辺ALL




【ヘクター、カル・ギラム、八五郎/アドバースシティの何処か】

「ギャハハハハハハ!」

人々が行き交うある通り、そこに甲高い笑い声をあげる男がいた。タナトスのリーダー、ヘクターである。

「笑い事じゃない」

隣にいたカルが呆れたようにいう。タナトスの三人の目の前にあるのは光一が作った自分達の手配書だった。そこには全員の顔に加え八五郎とカルの能力についても記されている。光一は言葉通り、本気でタナトスを捕まえようとしているようだ。

「カルの言う通りだって!俺たち二人の能力は潜入にぴったりなのにこれじゃあ簡単には使えない!それにこんなに手配書が貼られりゃ秀作も俺たちのところに来にくいだろ」

車椅子からヘクターを見上げるようにしながら八五郎は叫ぶが、ヘクターは表情を崩さない。

「その点は安心しろ。秀作ならどっかのタイミングで八五郎のビーズ玉を回収してんだろ。あいつは抜け目ない。そのうちふらっと俺たちの新しい隠れ家にくるだろうよ」

ヘクターは楽しげに唇を曲げながら言う。いつも通りヘクターの顔には自信が溢れていた。

「さて、それじゃあ鬼ごっこを続けようぜ青崎光一。まぁ勝つのは……俺たちだけどな」

ヘクターは呟くようにそういうと光一が張り付けた張り紙に背を向けそのまま歩き出す。ヘクター率いるタナトスは、まだまだ闇に溶けたまま、これからも生きていくだろう。

>>対象なし



【光一の張り紙の下りが面白かったのでこちらで反映させていただきました。エピローグでタナトスが出せてよかったです】
>>青崎光一本体様

2ヶ月前 No.645

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/レスパーダ本部 自室】

唐突に、ミシェルの金切声によって集中力を削がれた。どうやらロックが帰ってくることを伝えたいらしい。作業を中断されたので少々面食らうが、直ぐに何事もなかったかのように表情を戻す。

「知ったことか、後遺症とかがないならそれでいい」

黒ずんだ和菓子をつまみながら無愛想に返す。彼のことだ、地獄に突き落としても気力だけで帰ってくるに違いない。ああいうのは寿命意外では決して死なないだろう。
一拍置いて、軽く伸びをする。いつものミッション程ではないが、こういったデスクワークも小一時間続けていると中々しんどいものだ。

「それより、全ての監視カメラを使っての捜査はできるか? 」

まろやかさとしたたかさの含まれた甘味に舌筒を打ち、質問を投げかける。最近の映像解析技術ならマスクなどを着けていても顔を特定できるし、重厚に覆い隠すような装いでもそれはそれで目立つ。もし全区画の監視カメラが使用できるなら、タナトスの行動範囲は更に縮小できるだろう。なるだけ隈無く捜索してから捜査範囲を広げたい。後になって灯台もと暗しでした、なんてオチは御免被る。

(カメラそのものの大量増設も視野にいれるか)

>>ミシェル

2ヶ月前 No.646

監視システム @captain1 ★Android=UJhhnaQiDA

【ミシェル/光一の通信端末】

「えー光一ちゃん行かないの?!あとでロックに怒られても知らないからねーだ」

せっかくの帰還だというのに自室を出ない光一にミシェルはまた甲高い声をあげた。自分のペースを崩さない光一らしい選択と言えよう。

「もぉーほんと光一ちゃんは仕事人間ね!もちろん全監視カメラを使った捜査なんて簡単にできちゃうわ!そーねぇ、例えば今なんて……あぁっ?!」

あくまでもいつも通り仕事をしようとする光一に文句を言いながらもミシェルは楽しげに受け答えしている。そして光一に言われるがままに監視カメラの映像をチェックしていると、ミシェルはなにかを見つけたのか声をあげたのだった。

>>光一



【ロック・ランドルド、トール・オルガヌス/レスパーダ本部 入口ロビー】

ロックとトールが言葉どころか視線も交わさない時間がしばし続いた後、ロックが痺れを切らしたのかふいに動き出した。そして秀作がテーブルに置いたシルバーリングを手に取る。トールは体を小さく震わせながら深呼吸していた。ロックはシルバーリングを懐かしげにしばらく眺めた後、それを左腕にはめる。シルバーリングはついに主人のもとへと帰ったのだ。

「久々にすると照れるな」

ロックは右手で頭をかきながら左腕に収まったリングを見つめている。その顔には笑顔が浮かんでいた。そしてロックは漸くトールと視線を合わせる。トールが息を飲んだのが分かった。ロックとトール、二人の左腕には同じシルバーリングがはめられていた。

「あー……そうだな……」

ロックが気まずそうに言葉を濁しながら笑みを浮かべる。反対にトールは口をきつく結んでロックを黙ってみていた。しかし目は大きく見開かれていて、その瞳は涙で濡れているように見える。

「待たせたな、トール」

ロックはやっと、トールへと言葉をかけた。何年もの間、同じ街にいたのに会うことが叶わなかった二人、親友であれなかった二人、その二人は長い時を経てようやくもとの姿を取り戻したのだった。ロックはどこか恥ずかしそうに左手を顔の横にあげる。それはかつて交わしていたいつもの挨拶をするためだった。

「…………遅い……」

トールがゆっくりと言葉を捻りだし、ロックへと一歩、また一歩近づく。この一歩がどれ程遠かったことか。

「………………おかえり」

トールは唇を震わせながら、小さくロックに言葉をかけた。そしてトールも左手をあげる。

「あぁ、ただいま!」

ロックは嬉しそうに満面の笑みでそういうと、トールが挙げた手に自分の手を勢いよく伸ばし、ハイタッチをした。ロックとトールの左手が軽やかな音を放つ。そして同時に二人のシルバーリングがぶつかって、キンッと心地よい音を出す。二人の親友はようやくまた巡りあったのだった。



【ミシェル、ロック・ランドルド、リッキー・ショーター/レスパーダ本部 全体】

「大変大変たいへーーーーーん!!!!」

ロックとトールが再会を果たしたその直後、その雰囲気をぶち壊すようにミシェルの声がレスパーダ本部に響き渡る。そうそれは、いつも通りの光景だ。

「あれ!あいつら!あいつらがいたわ!タナトスの奴等がいたのよ!!第5区画の大通りにあいつらふつーにいるわ!しかも自分達の手配書の前で!余裕ですか的な?怖いもの知らずですか的な?せっかく前は見逃してやったのに、のこのこ出てくるなんていい度胸じゃない!レスパーダも舐められたもんだわ!あいつら捕まえちゃいましょ!」

どうやら監視カメラがタナトスの姿を捉えたらしい。人通りの多い場所に顔を出すとは、なんとも大胆な行動だ。それだけ自分達が捕まらない自信があるのだろう。リッキーはミシェルの通信をきいて護送隊のメンバーに連絡をとっている。いつも通り、レスパーダのバックアップを行うらしい。そしてロックはいつも過ごしていた日常の光景に感慨深さを覚えながら自分の通信端末に手を伸ばす。

「あいつらには世話になったが、犯罪者なのは変わらない。俺たちの手で捕まえるぞ」

ロックはレスパーダ隊員を鼓舞するようにいう。そうこれも、いつも通りだ。

「それじゃ、いくわよ!3……2……1……ミッションスタート!!」

ミシェルの合図と同時にレスパーダ隊員の前にテレポートゲートが開かれる。この光景はいつまでたっても変わらない日常として紡がれていくことだろう。

ここはアドバースシティ、能力者が集う街だ。その街を守る治安維持部隊が存在する。彼らレスパーダは今日も街を駆け回る……


《fin》


【こちらのレスを持ちまして、スレ主からの投稿は最後とさせていただきます!皆様最後まで本当にありがとうございました!本日より1週間を最後のレス投稿期間とし、27日22時をもってこのスレは完結とさせていただきます】

2ヶ月前 No.647

青崎 光一 @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【青崎 光一/レスパーダ本部 自室】

こちらの問いに対してミシェルは快い返答をした。それでは早速といわんばかりに捜査を始めるが、直後に再び金切声をこだまさせる。

「ハァ……少しは静かに出来ないのか、矢継ぎ早に喚くんじゃ……」

そこまでぼやいたところで、口が止まる。
今なんと言った? タナトスがいただと? それもほぼ公衆の面前で?

「…………………フ」

自分でも意識しない内に、自然と口角がつり上がる。
面白い。こそこそ動き回るのに飽きたか知らないが、そっちから出てきてくれるなんて願ってもない。先日の戦いでメンバー全員の能力は把握できた、情報面に関してはイーブンだ。その思い上がりと傲慢さ、遠慮なくへし折ってやろう。

「退屈させてくれるなよ」

椅子から立ちあがり、視界をディスプレイから外す。思えば暫く振りのミッションだ、鈍り始めた体をほぐすのにも丁度いい。

「さて……」

近くの壁に立て掛けてある相棒を持ち出そうと視線を向ける。心なしか、長らく仕留め損ねた獲物へ牙を突き立てられる機会が巡ってきたことに、悦んでいるようだ。
特に待たせる理由もないので、慣れた手つきでさっさと背中に掛ける。いつまでも与太者共をのさばらせておくわけにはいかない。

「裁くか」

何時ものごとくゲートへ向かい、白銀の刃を煌めかせんと柄に手をかけた。
自分達の手で切り拓いた道を見据えるために。

2ヶ月前 No.648

ディリム @dilem ★iPhone=HSR9qzDFft

【浜田 秀作/第9区画 レスパーダ本部 入り口ロビー】

 動揺するトールにおちゃらけるように片眉を釣り上げ、肩を一瞬だけ持ち上げて直ぐにすくめる。さぁね、知らんよ。と言わんばかりに。

「はい、おかえんなさい。あの二人は各々何かあるんじゃないですかね」

 うむ、やはりロビーには隊長が居なければね。マンゴー関連の商品が傍にあれば言うことなしだ。だいぶこっ酷くやられたらしいが、この分なら問題はなさそうだ。
 ワゴン中段を覗き込む隊長殿をスルーし、急須に茶葉を撒き入れて、程よく温度の下がった湯を注ぐ。急須の蓋をして茶葉が開くのを待つ。暇だから目の前の友情物語を観賞させてもらうとしよう。

ああ、いい、いいぞ。
んん、良い。
永き時を経ても尚固く結ばれた絆。
嗚呼素晴らしきかな。

「よしっ!」

 二人がハイタッチをし、金属音が響けば思わず小さくガッツポーズをしてしまう。これ見れないなんて霧月ちゃんと光一君、ちょっと勿体なかったんじゃないか。
 続けざまにグッグッ、とガッツポーズを繰り返し、もういいだろうと思い出したかのように急須を手に取りくるくると回す。一度テーブルに急須を置いてワゴンから湯呑みを取り、ゴンゴンゴンゴン、と四つの湯呑みを少し乱暴にテーブルへ。濃さにムラが出ないよう、いつも通り順繰りに注ぐ。このルーチンを崩す訳にはいかない。そう、いくらミシェルのアナウンスが煩くてもこの手の動きを止めるわけにはいかないのだ。

「ん、よし」

 最後の一滴が急須から落とされる。
 ずっ、と一口。うん、悪くない。
 ワゴン中段を漁り、ドライマンゴーを二欠片ほど手に取って、湯呑みも持ったまま立ち上がる。
 どうやらあんな出来事が無かった事のように今日の日常は進んで行くらしい。ワープゲートに向かいながらマンゴーを一つ口に放り込み、噛み砕き、緑茶を啜って一緒に飲み下す。

「やっぱ合わないや」

 それだけ言ってゲートに飛び込んだ。

>>おわり

2ヶ月前 No.649
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