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月下のアスール【T】-『The God Delusion』

 ( オリジナルなりきり )
- アクセス(8276) - ●メイン記事(557) / サブ記事 (146) - いいね!(14)

語り部 @yuzuriha16 ★6kAHKhaN27_EP8

にぎわう夜の酒場で、あるいは街灯に照らされた石畳の上で、

はたまた夜風にさらされた荒野で、それとも木の爆ぜる音が響く焚き火の周りで、

まことしやかに囁かれるある一つの国家が存在した。

かの国家の名はアスール。

魔導具と呼ばれる未知の技術を用い、急速に発展する新興国家。

世界から疎まれた狭間の者達が築きあげたその国は、5人の建国者により均衡が保たれていた。



アミル・カーランドが統轄する娯楽区画ウォーティア

ディノアギスバルガエンズルドが統轄する流通区画エイルス

ヒルカ・ルドナルが統轄する工業区画アーティー

出雲 鶴羽が統轄する自然区画ガイアル

そして、アスール国家隊の総本山である中心区画ルナ。

水と遊戯を求める者はウォーティアに

空と発見を求める者はエイルスに

魔導具と情報を求める者はアーティーに

大地と交流を求める者はガイアルに



今日も様々な目的を持つ者達がこの国を訪れる。

純粋に他種族との調和を志す者、己が国を富ませんと仮面を被る密偵、

帰路に迷い流れ着いた者、はたまた想像もしえない願いを抱いた愚者。

そんな各々思惑でさえ、まるで取るに足らぬものと言いたげに、

かの国家は飲み込み、最初からそこに存在していたかのように彼らは国へ同化していく。

その渦中にあなたが飛び込んだ―――それがこの物語の幕開け。



【サブ記事にてルール説明、キャラ募集を行います。本編開始の合図はサブ記事にて行い、
本編は本スレ運営主の最初の書き込みを持ってスタートとさせていただきますので、ご了承願います】

3年前 No.0
メモ2019/05/26 23:27 : 語り部(スレ主) @yuzuriha16★osLB3MWV3V_IyU
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希石の皇子 @adrasteia ★qa9glxeVZq_Onj

【エイルス区画/第一浮遊島/区画本部内⇒旧下水道入口前/アシュレイ・ツィー】


「ん……ああ、いや――大丈夫だよ」

 袖を掴み、拙い公用語で男――アシュレイを慮るノイの頭を撫でて、「ありがとう」と一言謝意を述べる。
 察するに彼女の忖度は、何か良くない過去でも思い出したのか、という体での心配だろう。
 その憂色は、ともすれば的を射ているが……しかし今回のそれは決して悪性ではなかった。
 むしろその逆。愉快にさえ感じた現状に、旭日の騎士は二の句を紡ぐ。

「ただちょっと、彼の態度が初めてこの隊に来たときの僕と重なってね。それが可笑しくて」

 その面映ゆさに張り詰めた表情は幾分か和らぐ。第七候補隊の面々には、当時の僕もこんな風に見えていたのだろうか?
 人差し指で頬をポリポリと掻き、遅れて訪れた羞恥は苦笑を交じえて口外へと通過した。
 ……思えば入隊したのはつい数時間前だというのに、早くも順応してしまっている自分に軽い驚きを覚える。
 成る程、自治国家アスール。多種族異文化さんざめくこの国の最大の武器とは魔導技術などでは断じてなく、文字通りすべてを受け容れる懐の広さなのだろう。

 閑話休題。
 やがて滞りなく――とは些か言い難いが――一通り任務概要を把握したところで、一行は当初の目的地である旧下水道入口前へと到達していた。
 ベリオやエルトらと共にレディー三名の談話を尻目に待機していると、ややあってレイニアが参着する。

 言うが早いか、誰がケースを持つのかというレイニーの弁に逸早く反応したベリオの提案に、アッシュもまた頷きを以て回答する。

「それについては僕も賛同します。なにせ僕にとっても初陣ですから」

 ――というのも、彼もまたベリオ同様に正規の隊員ではない。
 つまりは今回の任務をクリアすることで漸く、正式な国家隊員として認められる……そういう契約だ。
 ゆえに彼の異能、不鮮明だったその真骨頂もこれにて明らかとなるのだろう。ならば――――。

「ああ、僕は―――、」
       .      ・・・・・・・・
 だが。否、当然の如く。そうなるべくして彼は言い淀む。
 よって、その質疑応答は燦然世界に相応しからず。
 星の塵芥は目覚めぬまま、白灰色の灯火は未だその蝋翼を融かさないでいた。

「……媒体なしに宝石魔術が使えるのと、あとは剣が多少使えるくらいかな」

 判定――――、不適格。
 顎に手を添えて、どこか誤魔化すような声色でアシュレイは言葉を結んだ。


>レイニア、ベリオ、エルト、ALL

【500レス突破&あけましておめでとうございますー!
 いやー、僕は筆を執り初めてまだ数レスの滞在ですが、早いことに随分長い間このスレで皆さんと関わっているような気分になっております。
 馳せる感情に反して語れる想いの丈、そして言葉は未だ少ないですが、アッシュくん共々本年度もよろしくお願いします……!!】

5ヶ月前 No.508

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_Tbw

【エイルス区画/第一浮遊島/区画本部内】

「おとっ!?…あー…いや、まぁ進んで交流を図ろうとすること自体は悪いとは言わないが…」
『お父さんっぽい』と、言う予想だにしない言葉に不意を突かれ、ペースを乱されつつも何とか持ち直し…別に不快だったという訳ではないようだが…
「…どこまで許容できるかというのをよく見極めるように…最初は難しいだろうがな」
ベリオからも『身体的特徴や文化』などを無遠慮に問い詰める事は遠慮して欲しい、というアドバイスを受けるセキアにそう助言する。
…幾多の種族が集うこのアスールと言う国において、彼女のように物怖じせず交流を図ることができる、というのは長所と言えるだろう。
これからの事を考えれば、その長所を伸ばしておく事は国家隊としての活動に役立てることができるはずだ。
(…まぁ…もう少し自制が聞けばとの但し書きは付くが)
故にあくまでもやんわりと…どちらかと言えば呆れ気味と言った様子でそう助言をするにとどめる事にしたようだ。

>セキア ALL

「何、大したことじゃない」
礼を言いつつ握手を交わしたベリオにそう言って、ひとまずの顔合わせを終える。
(…表面上は何もない…つもりなんだろうが)
だが、先のセキアとの会話の中でどこか違和感を感じ…実際に接してみるとその違和感の正体に思い当たる。
(何か後ろめたい物がある…という感じだな…)
何処となく、雰囲気に硬さのような物を感じ…それが緊張によるものだけではなく…隠し事をする子供などと言えば少々言葉が悪いが…によく似た物と感じ取れた。
(まぁ亜人種にはそう珍しい事でもない…らしいが…)
とは言え、その後ろめたい雰囲気も悪意から来るものではないようで…それを無理に聞き出すのは少々無遠慮に過ぎる。
「まぁ…ここの空気に馴染むのも結構骨が折れるだろうからな…何かあれば遠慮なく相談してくれ」
故に、他愛無い言葉としてそう締めくくる事にしたようだ。

>ベリオ ALL


【エイルス区画/旧下水道入口前】

任務に関しての説明が終わり、いざ移動…と言うところでレイニアがシスメに先導を促し隊員たちを移動させようとする。
(…ふむ…何かあるのか?)
先の任務の説明の最中、ヒヤリとするような部分があったが…それを蒸し返すような雰囲気はまるで無いため、大した事ではないと思うが…
…少し気になる所ではあるが…わざわざ人払いをする程なのだし、説明するつもりはないのだろう。
(間違いなく煙に巻かれるだろうしな…それも複数を巻き込んで茶化すように…)
…そう長くはない付き合いだが…多少はレイニアの事を学習したようで、何も言わず引き下がることにする。

「…親密と言うには少し違う気がするが…まぁ教官も上役同士でしかできない話と言うのもあるだろうさ」
レイニアとディノアの関係に対し、どうにも思うところがある様子の2人をなだめるようにそう言う。
(…親密…まぁ間違ってはないんだろうが…どちらかと言えば…『戦友』…と言った方がしっくりくるな)
あいさつ代わりに憎まれ口をたたき合うあの2人は死線をくぐり抜けた兵士のやり取りを想起させ…それが事実だとすれば先の考えも腑に落ちる。
(まぁ…有ってたとしてもだからどうしたと言う話ではあるが…)

…そんな事を考えていたところで、いつの間にかレイニアが戻ってきており…件の荷物を誰が運ぶかで立候補者を募り始めた。
(順当に考えれば後衛の俺が持つべきだろうが…)
と、考えて名乗りをあげようとしていた所で、ベリオから各員の戦力的な情報を共有すべきと言う意見が出た。
「…そうだな…俺は基本的な魔術での火力支援がメインだが…多少ならこいつで前に出れない事も無い」
そう言って、刃のない剣の柄…『アルカナイザー』を取り出し、一般的な長剣ほどの刃を出現させる。
「ただ…出来なくはないと言うレベルだからな…手練れと真っ向から撃ち合えるとは思わないでくれ」
他の候補官達同様、簡単にそう説明し役目は終わったとばかりにアルカナイザーの刃を消失させ、言葉を続ける。
「そういう訳だ…フリーな前衛は欲しい所だし、候補がいないなら俺が運ぼうと思うんだが…」
しかし、先ほどのベリオの話から、この環境において運搬役としては彼の方が有用ではある…が、同時に護衛としての戦力としても当てにできるだろうしどちらが良いかは悩みどころだ。

>ノイ シスメ ベリオ アシュレイ ALL

【あけましておめでとうございました…大変お待たせしましたが、500レス突破おめでとうございます!!これからも燃え尽きるまで付き合っていきたい所存なのでどうぞよろしくお願いします!!】

>ALL

5ヶ月前 No.509

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★cKuyENUdPP_lXe

【セキア&レイニア&シスメ&ノイ/区画本部内/旧下水道入口前】

「あはは、エルトすごい声。おとっ!?ってあはは!」

エルトの反応がよほどツボに入ったらしく、ケタケタと笑い出すセキア。
先ほどベリオに注意されたばかりなので、声量は抑え気味だったが、
とうとう耐え切れなくなったのか、ひぃひぃと過呼吸になりかけながらおなかを押さえ始める。
が、続くエルトの言葉で我に返ったセキアは目尻の涙を拭いつつ、ベリオへと向き直った。

「うん、分かった。気をつける」

時間がないというベリオの言葉に倣うかのように、
短い言葉とともに、いつものケタケタとした笑い声を潜めてベリオに静かに微笑を返す。
次いで、話題に上がった各々の能力の把握というベリオの提案に対し、
セキアはいのいちばんに嬉々として説明を開始する――かと思いきや、
手にした魔導書に視線を落としたままの姿勢で固まってしまっていた。

「?」

ふと襲い来る違和感。
セキア自身もその正体が判然としないようだったが、
空いているほうの手に視線を落とした瞬間、
その正体に気付いたのか、小さく息をのむ音が聞こえた。

「あたしは――」

ふと、隣を見る。だが、そこに彼女――レイの姿はない。
いつからそう錯覚していたのだろうか。これまでの勝利が、全て自分の力によるものだと。
傲慢にも、そう思いこんで、思いかけていた。あのときも、あのときも、あのときだって、
私はこの国に来てから自分自身の力で何かを切り開いてきたことなんか一度もない。
目の前に差し出された彼女の手に、その優しさに、ただ縋りついていただけだ。
至極当然の事実。当たり前を再認識する。ああ、なんだそういうことか。

(あたしって弱かったんだ)

ベリオ、アッシュ、エルトの口から語られていく明確な自分との力量差。
努力を怠ってきたわけではなかった。気持ちで負けたつもりもなかった。
それでも、この国に来るまでに嫌というほど体感した現実に、
ふっと自分の足元だけが崩れて落ちていくような喪失感を覚えた。
あたしは、弱い。使える魔術はお菓子を爆発に変えるシュガーバーストだけ。
身体能力は人間基準、加えてその人間の中でもズバ抜けているというわけではない。
何ということはない、元の自分に戻っただけ。なのに、なんで

(あれ、あたしの手ってこんなに冷たかったっけ……?)

どうしてこんなに不安になるのだろうか。
悟られないよう、ぐっとキャスケット帽のつばを掴んで深く被りなおしたセキアは
ベリオ、アッシュ、エルトに続いて自身の能力について説明を開始する。

「3人ともすごいね。あたしはこういうお菓子とかを爆発に変える
熱変換系の魔術が使える…というかこれしか使えないんだけど…。どっちかというと後方支援向きかな」

なんとか急ごしらえの笑顔を取り戻したセキアは、
水玉模様の包み紙にくるまれたキャンディーを
手の中でころころと転がしながら、簡潔に説明を締めくくった。

>ベリオ、エルト、ALL




ノイの憂慮はどうやら杞憂に終わりそうだった。
その証拠に、こちらを見返す旭日の騎士の青い瞳に陰りはない。
頭に感じる手の重みを目を細めて受け入れたノイは、
どこか照れくさそうに頬を掻くアッシュに微笑みを返した。

「その顔、好き。アシュ、いつも顔、変……変?
訂正、いつも笑顔、違和感、ある。今の顔、自然、良い。
……陳謝。言葉、下手、上手く、言えない」

こちらの拙い単語形成文をアッシュが上手く受け取ってくれたことに安心したのか、
いつもより多い言葉数で必死に言葉を紡ごうとしたものの、
上手く自身の心を表現する言葉が見つからないのか、しばし考え込むノイ。
やがて、先の言葉を弁明するかのように、ぽつりぽつりといつもより早口で言葉を紡いだ。
どうやら、ときどき無理に笑顔を作る人が常日頃から近くにいるせいか、
彼の笑顔は正しくその人と同じにノイの目には映ったらしい。
ほどなくしてアッシュの袖を離したノイは、今上がっている各隊員の能力についての話題へと加わる。

「最後の、ケース、立候補者、皆無、なら、私、挙手」

ベリオとエルトがケースの運搬に名乗りをあげ、残るケースは一つ。
はたして自分が名乗り出たところでケースを守りきれるかどうか、
自信喪失中だったことも手伝ってセキアがどうしようか悩んでいると、突然ノイが名乗りを上げる。

「え、ノイちゃんもこの任務に参加するの?」

思えば、ノイの戦闘シーンを今までほとんど見たことがなかったセキアは、急き込んで彼女に尋ねる。
どうもこのちんまい少女が前線に出るという光景を
想像できなかったというのもあるが、その心配はすぐに杞憂となった。

「肯定。能力、披露。私、これ」

そう言うが早いか、ノイはいつも持ち歩いている
ヴァイオリンケースの留め金を外すと、それを大きく空へと振り上げた。

「スルト」

ケース内からバラまかれる黒鉄の部品群。
それぞれが明らかな重量物と分かる速度でノイの頭上へと降りかかったその時、
彼女の言葉が合図となり、バラバラだった部品群は空中でより集り、一瞬で巨大な長銃へと姿を変える。

「長距離、精密射撃、可。広範囲、一定時間、掃射も、可能」

空から降ってきたそれを危なげなくキャッチしたノイは、
銃身を下に向けた姿勢で小脇に抱え、淡々と自分に出来ることを説明し終えると、
同じくケース担当に立候補したエルトとベリオにノイはつかつかと歩み寄る。

「ベリオ、エルト。これ、進呈」

そう言うと、フェリクスの入ったケースと一緒に、
両端に金属製のフックのついた黒い合成繊維製のバンドを二人に向けて差し出した。

「これなら、両手、使用、可。ただ、過信、禁物」

手本をしめすかのようにケースの両脇についたリングに
フックを通した後、バンドをたすきがけにした彼女は、
確かめるように何度かバンドを引っ張ってみせ、
強度はばっちりとばかりに二人に小さくサムズアップした。
ベリオとエルト、ノイが立候補し、それぞれケースの担当が決まったところで
唐突にレイニアがすすっとレイとの距離を詰めたかと思うと、その手を取る。

「レーイさん」

いきなり何事かと目を見開くシスメを尻目に、レイニアはマイペースに言葉を続ける。
その見えないはずのくすんだマリンブルーの瞳は、
なぜかこちらをちらちらと窺うセキアのほうを向いていた。

「レイさんレイさん。また手をお借りしてもいいですか?」

セキアから視線を外したレイニアはレイに小さく首をかしげてみせる。
普段はノイがすぐ傍についてこちらから催促せずとも手を貸してくれるのだが、
今回の任務に加わるため、補助は期待できない。
加えて、今回の任務はアッシュとベリオの入隊試験も兼ねているため
シスメも任務の記録に集中しなければならず、
ともなれば、レイニアはレイに頼るよりほかないわけなのである。
普段歩きなれている場所なら問題ないのだが、今回は極秘中の極秘ともされる旧地下水道のため
当然のようにレイニアも足を踏み入れたことはない。
まぁ、それを差し引いたとしても、以前レイの庭園を訪れた際の彼女の補助が初めてとは思えないほど
とても丁寧だったので、もう一度それに預かりたかったというのが正直なところだ。

「あはは、というわけでー、見学組同士、仲良くしましょうかレイさん。
今回は皆さんが慌てふためく様を面白おかしく観察しながら高みの見物と行きましょう〜」

「そういうことは思っていても口にしないものですよ、もう……」

なぜか始まる前から疲労困憊といった様子のシスメの声が低く旧下水道入口前の広場にこだました。

>アッシュ、レイ、ベリオ、エルト、ALL

5ヶ月前 No.510

希石の皇子 @adrasteia ★qa9glxeVZq_uLX

【エイルス区画/第一浮遊島/区画本部内・旧下水道入口前/アシュレイ・ツィー】


「ははは……参ったな。
 レディーにそのような心遣いをさせてしまったのは、エコー以来かな」

 絶星のエコー。詳細は割合するが、彼の幼馴染に当たる少女の名だ。加えて語るならば、彼の嘘を「壊滅的」と評した件の同僚も彼女である。そんなエコーと比肩したノイの言い分とはとどのつまり、贋物は不要という旨の顧慮であった。
 ……たしかに。ノイのその指摘に誤りは一切なく、真実アシュレイの浮かべる笑顔のほとんどは感情の模倣に過ぎないのだろう。
 無論アシュレイとて底抜けの愚者ではない。その行為が偽善であることは否定しないし、己がどうしようもない破綻者なのだとも自覚している。
      、     、     、     、     、      、      、      、      ・・・・・・
 しかし彼にとってそれは、誰もが笑って暮らせる世界を望んで奮い立った男の願いであり――――ああ、つまり。要はこの男、憑かれているのだ。

 閑話休題。
 作戦決行を前に苦虫を一ダースほど頬張ったかのような何とも言えない表情をしていた彼は、三人の言葉を受けて正当を切り出した。

「ならば僕が近衛を務めよう。……どうやらこの中で最も白兵に手馴れているのは僕みたいだしね、いざというときは壁くらいにはなれるさ。
 ――――それじゃあ、行こうか」

 真実は未だ霧の中。
 虎穴の底にて仄めく悪意が今、訪れる生贄を待っている。


>ノイ、エルト、ベリオ、セキア、ALL

5ヶ月前 No.511

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道入口前】

『それについては僕も賛同します。なにせ僕にとっても初陣ですから』

今回の任務の参加者らの能力を把握したいというベリオの提案に、アシュレイも頷いて賛同してくれた。そして、彼の言葉により、彼もまた、ベリオと同じく初めてアスール国家隊候補としての任務に携わるということが分かった。現地へ到着した日時や、経路が違うのもあるだろうが、アシュレイの雰囲気的に実戦が初めてではなさそうなのに__実際のところ、そうではないようだが、ベリオ自身、彼の出自を知らないのもあって__W初陣Wであるということは、ベリオにとって驚くべきことだった。
しかしそこは置いておくことにする。相手への偏見が相手を傷付けるということは、自身がよく分かっていることなのだ。幼少期に里を出て、一人冒険したあの頃、自分と違う出自の者と出会わなければ、あのような真実を突き付けられなければ、今頃は__。
閑話休題。そんなある意味ベリオと同期であるアシュレイの特技及び能力は、媒体無しで用いる宝石魔術、そして剣術であった。宝石魔術という魔術なんて聞いたことが無いが、W媒体無しWということは、本来はそれなりの対価を支払って発動させるものなのだろう。とはれば実は彼は凄い才能を持っているのではないか?説明の直前に何やら言いにくそうにしていたのが気になるが…。

「成程…把握した。説明、感謝する。その宝石魔術というのはよく分からないが、何だか強そう、ということは分かる。剣術も得意となれば前衛向けかな…」

アシュレイの能力について短い感想を述べる__後半はやや独り言のようだったが__。彼はケースの運搬役を買って出る様子は無かったことと、任務開始前に彼自身が語ったポジションにより、周囲や前衛で防衛に入って貰うことになりそうだ。高身長であるし、剣の腕も立ちそうなのが頼もしいところである。

>アシュレイ、ALL


自らの言葉によって短い動揺を見せる同僚の反応に、セキアは腹を抱えてケタケタと笑い出す。それでも先程言われたベリオからのツッコミによってか、その声は多少抑え気味であったが。
そんな姿を見て、自らの学生時代に先輩にからかわれて笑われた苦いエピソードを思い返し、心なしか苦い表情を浮かべながらそれを眺めていたベリオだが、彼女が漸く落ち着いてきたところで再び真面目な顔に戻った。
『どこまで許容できるかというのをよく見極めるように』という、ベリオの忠告に添えるように付け加えられたエルトの助言も併せて聞き受けたようで、『気をつける』と微笑みつつ返すセキアに対し、少しは安心したのか、ベリオも穏やかな笑みを浮かべ、こう返事をする。

「気をつけてくれるならいい。まぁ、余程気を遣えという訳でもないし、そうした上で仲良くしてくれるなら嬉しい」

その後、旧下水道前において、任務の参加者の能力を知りたいというベリオの提案に、皆が快く(一部実演もしてみせつつ)紹介してくれた。その中でも、エルトは彼と同じくケースの運搬役に立候補した上、更に『基本的な魔術での火力支援』及び『アルカナイザー』という特殊な武器を用いての援護ができるという。しかし『出来なくもない』というレベルの実力であるとも同時に語られた。

「そうか、説明感謝する。ならばお前は安全な立ち位置で運搬に専念しつつ、周囲が危険に晒された場合に魔法や武器で援護する…という方が向いているだろうな。……あ、こういうことを候補隊員が言うのはおかしいか?」

彼へ説明の感謝の言葉を口にしつつ、本任務での彼のポジションについても提案気味に語る。しかしそういうことは上司が言った方が良いのかと不安になり、チラリとレイニアたち監察官等の方を見る。機嫌を損ねていなければいいが、と持ち前の真面目さによる余計な心配をするベリオであった。
一方、セキアも意気揚々と能力の説明をしようとしてか、魔導書のようなものを取り出してみせ__彼女のみの時が止まったかのように一時停止した。

(セキア……?)

彼女の異変に怪訝そうに眉を顰め、何か声を掛けてやるべきかと思案していると、突然彼女の時が再び動き出したように、そこにはいつも通りの彼女の姿が。……否、その笑顔と口調には少しだけ違和感があった。

『3人ともすごいね。あたしはこういうお菓子とかを爆発に変える
熱変換系の魔術が使える…というかこれしか使えないんだけど…。どっちかというと後方支援向きかな』

そう短い説明で締めくくる。先程分かった彼女の人柄上、ベリオとしてはもっと長い説明が彼女の口から語られると思っていたのだが、そんなことは無かった。故に、彼女から感じた違和感が強くなる。

(気のせい?だが、さっきの彼女の行動は……。能力は割と優れている方だと思うのだが……)

セキアの顔と魔導書を交互に見つめ、思案する中で、ベリオは一つの結論に至る。

(……まさかこいつ、自分の実力に自信が無いのか?それとも、今までは平気だったのに、それを今勘付いたとか…)

自らの推測力のみで導いた解釈。自信が無いのは彼自身も同様なのだが、彼女の場合は彼のそれとは違うように感じた。初対面から振り回される程の明るさを持つ彼女からは底抜けの自信のようなものを感じていたし、自身の能力についても、欠点こそあれ、十分強いと考えていたからこその態度だったのではないか__と、今更ながらに思った。
この解釈は違うかもしれない。しかし、今の彼女は無理をしていそうな節がある。そう考え、それを表に出さないようにしつつ、彼女を少しでも安心させようと、自らの素直な感想を交えた言葉を口にする。

「凄いじゃないか。熱変換の魔法というのは、並の魔法使いでも制御が難しいと聞く。まあ、それはお前が持っている魔導書のおかげかもしれないが……糖分を瞬時に熱に変える、のか?体内における消化過程でも時間が掛かることが出来るのは、十分強力な技だと思う。後方支援向けとは言え、使い方次第では周囲に現れた敵への牽制や直接攻撃にも使えるだろう。その技を使いつつ、援護の方も頼むぞ」

彼女が見せた手のひらの上のキャンディを見ての感想も交え、そう言い終えた後で「…少し喋り過ぎたな」と付け加え、苦笑する。これでは露骨に励ましているとバレてしまうのではないか?彼女は少し明る過ぎるところがあるが察しは良い方だと思うので、そういう意図を読まれてしまいそうではあるが。
それでも、何も言わずに相手を傷付けてしまうくらいなら、何か言って励ましてやる方が性に合っている、とベリオは思うのだ。

>エルト、セキア、ALL


自分とエルトが立候補した後、最後の一つを運搬する役を担おうと名乗り出る人物はなかなか出てこない。そう思った瞬間、メンバーの中から上がる手が一つ。それはレイニアの補佐役であるノイのものだった。

「の、ノイ教官補佐殿が…!?あ、いや、自分は構わないのですが、我々候補官が担うべき任務に上官殿まで巻き込んでしまうのは…」

候補官メンバーではない人物が立候補したことに驚き、思わずそんなことを口走ってしまう。決して彼女の実力を侮っているとか、背丈からして戦いにくそうとか、そういったことを考えている訳ではなく__現に、ベリオの友人の一人の小柄な青年は強かった__、純粋に上司に危険を冒すようなポジションに立たせてしまうようなことをさせまいとしているだけだ。
しかし彼女はセキアの質問に肯定すると同時に、持っていたヴァイオリンケースの中身から何かの部品のようなものをばら撒き、『スルト』と唱える。瞬間、ばら撒かれた武器は瞬く間に集結し、一つの巨大な長銃へと姿を変えた。どう見ても特殊な構造の銃__性能が違えど、似たようなものなら、ベリオにも何処か心当たりがある。現に身に付けている武器のうち二つが、そういう物理的法則には当てはまらない能力を持っているからだ。

「…その銃…もしかして、自分が持っているものと似たようなものかもしれませんね…。ですが、大きな銃をケースを持ったままで使用するのは些か厳しいのでは?」

形成された長銃を危なげなく抱えるノイに対し、先程とは別の意味で驚いた表情を見せつつも自らの懸念を述べる。しかしそれを質問するより早く、ノイから金属フック付きの黒いバンドを手渡される。彼女の説明及び実演してみせる姿によれば、両手が塞がるのを防ぐ程度には役立つ道具のようだ。過信は禁物ということなので、いつまでもバンド頼りにする訳にはいかないだろう。
早速ノイがやってみせた通りにフックをケース両脇のリングに通してたすき掛けすれば、此方に向かい親指を立てる彼女に小さく苦笑し、「ありがとうございます、これな武器を持つのに便利ですね」と返した。
__ふと、ある重要なことに気づく。メンバーの殆どが武器のことも説明しているにも関わらず、ベリオ自身はケースの運搬という大役にばかり気を取られてか、武器については一切説明していない。やってしまった、とばかりに片手で帽子ごと頭を抱え、俯いてみせると、一応の挙手をしてから再び自身について説明する。

「…皆の能力や武器について大体把握できた、感謝する。だがすまない、俺としたことが、武器について説明していなかったな。…まだ扱いには慣れていないのだが、魔力を糧に銃弾に熱を付与させる拳銃二丁と、護身用程度だがナイフを持っている。拳銃については、理由は不明だが、俺が通っていた学校の教官から譲り受けた。有事の際には、これで援護することもできるだろう」

そこまで言うと、ケースを背負ったまま腰のホルスターから二丁の拳銃__真紅の『ディーテ』と氷青の『コキュートス』を両手で一丁ずつ抜き、全員に見えるように持ち説明を続ける。

「こっちの赤いのがディーテ。安全装置を外し、体内の魔力を供給することで最高でも触れた物が熔ける程の熱を銃弾に付与させることができる。で、こっちの青いのがコキュートス。性能はディーテと真逆だな…。最低で触れた物を凍結させたり凍傷にしたりする程の冷気を銃弾に付与させられる。つまり、熱いのか冷たいのかで判断してくれればいい」

その後引き金の部分を指に引っ掛け、クルクルと回すと素早くホルスターに戻した。実演はしない。できるだけ魔力は温存しておきたかったし、スタート地点から進んでいない時点で思いがけない事故を起こすことは避けたいことが理由である。

「……と、また話が長くなってしまったな…。皆の準備が整っているなら、すぐにでも出発しよう。長居は禁物な気もするしな…」

未だ、仲間も自分も大なり小なり秘密を抱えている中、ベリオは下水道の向こうの暗闇をじっと見つめる。
これから一体何が起こるのか、自分にもわからない。教官が自分に拳銃を授けた理由も、レダールを使った香水を、誰がどんな目的で製造したのかも、まだ知らない。しかし、きっとこれから知っていくのだ。それがどんな結果を生もうとも。
きっとそれこそ、生まれてからW業の深い行為Wに及んでいた(と本人は思い込んでいる)ベリオに与えられた使命なのだ。

>ノイ、ALL

5ヶ月前 No.512

ますたぁ @usagishi59 ★iPhone=oVdQpL6VUk

【白月レイ:第1浮遊島/旧下水道入り口前】

今回の任務、私は何もできない。そう思っていると不意にレイニアさんに話しかけられた。
私に補助を頼みたいとのことだった。この前の庭園のこともあるし、頼りにされている、そう考えていいのかな


「わかりました。私でお役に立つなら……面白おかしく…は見ることはできませんが……」

苦笑いをしながら、相手の申し出を受け入れる。
そんな時とても不安そうにみんなのことを褒めるセキアさんが目に入り、すぐに真面目そうな顔になり

「セキアさん……忘れているかもしれませんが、私は魔武器です。誰かがいないと戦えない、誰かが私を武器として使ってくれないと何もできないんです。
入隊試験のとき、セキアさんが私に声をかけてくれなかったら…武器として手にとってくれなかったら、私はいまここにいないんですよ。
それにあの時にあれだけの力を出せたのは、セキアさんの力が強かったからなんですよ?」


その言葉に偽りはなく、レイは全て事実だった。あの時、確実に役に立たない状態だったレイの手を真っ先にとってくれたのは、セキアさんだった。それは、否定しようもない事実。
そして、魔武器は所有者の魔力を吸収しそれを増幅させることができる。
第一次実技試験であれほどの風を起こすことができたのは、セキアさんの魔力がもとから強かったからに他ならない。

「セキアさんは弱くなんかないです……」

レイニアさんの手を握りながら、
少し微笑み、セキアさんを落ち着かせようとする。
そもそも、今回に至ってはなんの役にも立たないのは、私の方だ。レダールを使ったとされるフェリクスに近づくことさえできない。
魔武器の昔からある掟……というか言い伝え。
何かきっと良くないことがある。念入りにお母様やお父様に言われていたことを思い出す。

元は魔道具だったからだろうか。
他の魔道具との共鳴反応とかも起きやすい体質だし、魔武器がレダールに触れたら……どうなるのかな


>>レイニア セキア ノイ エルト ベリオ アシュレイ

5ヶ月前 No.513

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★qTj8aF9SFW_lXe

【セキア&レイニア&シスメ&ノイ/区画本部内/旧下水道入口前】

顔は帽子で隠したはずなのに、いや、それがかえって仇となったのか、俯くこちらに声がかかる。
やっぱりエルトと似たところがある、と感じるのは少し失礼なのだろうが、
声をかけてくれたのは、どことなくぶっきらぼうな第一印象だったベリオと、
いざというときは力を貸すから声をかけて欲しいと、去り際に言ってくれたレイだった。

『凄いじゃないか。熱変換の魔法というのは、並の魔法使いでも制御が難しいと聞く。
使い方次第では周囲に現れた敵への牽制や直接攻撃にも使えるだろう。その技を使いつつ、援護の方も頼むぞ』

『セキアさんは弱くなんかないです……』

ぽかんというオノマトペがこうもマッチする表情というのも珍しい。
セキアは開きっぱなしの口を隠そうともせず、二人を交互に見やる。
やがて驚きの感情は、瞬く間に真っ赤な羞恥へと変わった。

「えっ、あ、え…あ、ありがと、二人とも…うえへへ。
なんかベリオもレイもエスパーみたい。そんなに顔に出やすいかな、あたし」

驚いた、なんてものではない。なんせ自分の考えがほぼ相手に筒抜けとなっているのだから。
人よりも感情が表に出がちだという自覚はある。だが、こうも自身の内情をはっきり見抜かれるとは思っていなかった。
二人が読心術の異能持ちだと今言ったら、セキアは疑いもなく信じただろう。
そして、雨あられと降り注ぐ励ましの言葉。無論、黙して受け取れるほどこの少女は器用ではなかった。
要するにこのセキアという少女、褒められ慣れていないのだ。
行き場を失った感情は、ぽりぽりと後頭部をかくことで霧散させる。
しばし言いようのない感情に視線を彷徨わせていたセキアだったが、
やがて羞恥を飲み込んだセキアはレイをまっすぐに見つめたかと思うと、彼女の正面へと距離を詰めた。

「レイがそう言ってくれるのは嬉しいけど、あたしは弱いよ。
どれだけみんながあたしのことを認めてくれたとしても、
これは自分自身が納得しないと意味がないことだと思うから。だから…」

まっすぐに向けられたセキアの赤褐色の瞳がレイの深緑の瞳をその中に映す。
そこに普段の陽気さは微塵も感じられない。
瞬きもせずにレイへ視線を送り続けるセキアは一度言葉を切り、さらに一歩レイへと距離を縮めた。

「あたしのこと見てて。
助けてもらうばかりじゃなくて、ちゃんとあたしもレイの助けになりたい。
今回の任務で証明する、私とレイは対等なんだってことを。そしたらレイに言いたいことがあるんだ」

あの言葉を聞いてからずっと考えていたこと。
いや、これは入隊試験で彼女と出会ってからずっと考えていたことだ。
殺してほしい、なんて並大抵の覚悟で言えるような言葉ではないのだろう。
その言葉はなによりも彼女の諦観というか、この世界への絶望に満ちていて、
あのときのあたしには受け止めきれるものじゃなかったというもあるけど。
それでも、あたしはそれを拒絶した。理由も分からないまま。
でも、こうして励ましてくれる彼女の顔を見て、ようやく少し分かったような気がする。あたしは、ただ―――

レイ、ベリオ、ALL



「エコー? アシュ、友達? 親友、会う、ない、寂しい。気持ち、分かる」

どこかもう戻れない昔を懐かしむかのように、声に素の感情が混ざるアッシュ。
いや、これはどちらかといえば苦い思い出を思い出しているときの顔だ。
こちらの言動がアッシュの記憶にある誰かと重なったのだろうか。
いまだ会って間もないノイには、彼の内情の全てを推し量ることはできない。
だが、零れ出た感情の断片だけは何とか拾うことが出来た。
そんな彼に何を思ったのか、ノイは懐から小さな銀紙包まれた
何かを取り出し、パキンと二つに折るとその片方を彼へ向けて差し出した。

「レイニー、言ってた。お菓子、分け合ったら、友達。これで、少し、寂しさ、和らぐ?」

いつもどおりの足りない言葉で、何とかノイは言葉を紡ぐ。
要するに、このアスールで友達が出来れば
少しはアッシュの寂しさも和らぐかもしれないと思っての行動らしい。
何とも気遣いの方向が大いにズレているというか、
清々しいまでの持論の展開に、はたして彼はどう反応するのだろうか。

「エコー、私、代わり、なれない。でも、新しい、友達、なれる。
楽しい、は、寂しい、忘れる、唯一、特効薬」

一生懸命言葉を紡ぐあまり相手への忖度を
うっかり失念していることに気付いたノイは、大慌てで言葉を付け足した。

>アッシュ、ALL



ノイのいきなりの参入に驚愕を露にするベリオ。
そんな彼にノイは大丈夫だといわんばかりにサムズアップを続ける。

「ときどき、最高の、実力、発揮、必要。時間、経過、ともに、腕、鈍る、必至」

要するにノイが言わんとしていることは、
「どんな達人でも何もしなければ時間とともに腕が鈍っていくもの」ということらしい。
実のところ、この教官補佐という役職についてから、
遠方からの狙撃による援護や、隠密行動もどきな情報収集など裏方に回ることのほうが多くなった。
そのことに対して別に不満はない。
ただ、唯一の長所ともいうべき射撃の腕が鈍るのはノイとしても好ましくないところだ。
そこへ舞い込んできたのが、今回のフェリクス移送任務。
ちょうど見学者が一人出たので、ノイ自ら今回の任務への参加を
駄目もとでレイニアに進言してみたのだが、今回それが通ったというわけである。
だが、思わぬ戦力の増強に息をつくセキアの姿を目にしたノイは候補官全員に向かって静かな声で諭すように呟く。

「主役、そっち。私、あくまで、補助」

今回の任務はアッシュとベリオの入隊試験を兼ねていることを
忘れないように、とでも言いたげにぽすぽすと自身の胸を軽く叩くノイ。
そんな諸々の事情をベリオに話す傍ら、ふと彼の視線がこちらの長銃へと向けられていることに気付く。
ノイの視線も自然と彼の手の中にある銃へと吸い寄せられた。

「良い、銃。大事に、されてる、分かる。
二丁、拳銃、難易度、高。でも、格好良い。できる、ベリオ、すごい。尊敬の、極み」

うむうむと玄人っぽく頷くノイ。
そう、二丁拳銃は浪漫なのである。かくいうノイもその魅力に取り付かれた一人で、
そのスタイルを自分の戦闘技術に取り入れようとしたのだが、まぁ、その、結果的に言うとダメだった。
どうも照準を合わせる対象が増えると、集中力が続かず、弾がバラけてしまう。
まぁ、有体にいうなら不器用だったのである。
その結果、今の狙撃スタイルに落ち着いたというわけなのだが、
かといって二丁拳銃への憧れが全くなくなったというわけではない。
ディーテとコキュートスでくるくるとガンスピンを披露するベリオを見るノイの目は、
完全におもちゃ屋のショーウィンドウに張り付く子供そのものだった。

>ベリオ、ALL



レイとセキアのやりとりに、どこか怪しげな微笑みを向けながらただ黙して聞いていたレイニアは、
急にいつもの笑顔を取り戻し、空いていたもう片方の手で
横で無防備に佇んでいたシスメの手をむんずと掴んだかと思うと、二人を手をゆっくりと引きながら歩き出した。

「ではではー、お手てつないでいくとしましょうか〜。皆さんも送れずついてきてくださいねぇ
あ、シスメちゃんそういえば、ちょうどこういう暗くてじめっとしたところにおあつらえむきの怪談が―――」

「おばかですか! おばかなんですね!? やめてくださいよ、本当に!
ここも前の遺跡に負けず劣らず何か出そうな雰囲気だなぁとか思いかけてたのを必死に忘れようとしていたのに!」

「えー、レイさんは聞きたいですよねぇ?」

「馬鹿なこと言ってないで任務に集中して下さい、もうっ! 不快です…ああ……」

床にぽっかりと空いた旧下水道の入り口を目の前にしてうなだれるシスメ。
そんな彼女のことなどお構いなしに、こっちこっちとばかりに微笑みながら候補官の皆を手招きするレイニア。
任務前にしては緊張感のないそんな空気を纏いながら第七候補隊は闇の中へと身を投じるのだった。



【セキア&レイニア&シスメ&ノイ/エイルス区画/旧下水道・前道】

したたる水の音はなく、かといってそんな下水道特有の悪臭が全くしないかといえばそうでもなく、
つんと鼻の先をくすぐるような水道の内側にびっしりとしげった苔の臭いと、
乾いた土の臭いがそこには充満していた。
混ざった汚物が乾いて固まった土くれか、それとも原型をなくした小動物の死骸にも見える
細かな破片を踏みつけながら、第七候補隊はそこへと降り立った。
周囲を窺うかのようにレイニアは頭頂の狼の耳を動かし、異変がないのを確認すると、小さな声で唱えた。

「永久の灯の持ち手よ、ここに……フェアリーライト」

途端にレイニアの手のひらから数匹の光の蝶が飛び出し、闇一色の世界を照らしていく。
そこでシスメようやく安心したかのように小さく息を吐き出した。

「すごいところですね。その…なんというかいろいろな意味で。特に臭いというか…うぅ」

早くも臭いに慣れてきたのか鼻から手を離し、きょろきょろと興味深げに辺りを見回すセキアを筆頭に、
レイニア、シスメと順番に若干顔をしかめつつも周りに気を配るだけの余裕が出てきた見学組一行。
そんな中、一人だけノイが何もないはずの下水道の奥に広がる闇に目を凝らしていた。

「………?」

「おや、どうしました?」

そんなノイの様子の変化にいちはやく気付いたレイニアは、彼女に問いかける。だが、

「何か、視認……陳謝、気のせい」

ノイは疑問符を浮かべた後、ふるふると首を振ったのだった。
そんな思わせぶりな彼女の言葉に、当然のごとくというか、電光石火の勢いで真っ先にシスメが反応する。

「ななななななにが見えたんですかぁっ!? 嘘ですよね、嘘っ、嘘……ですよね。
ああもうやだなにこれ有り得ない有り得ない有り得ない…もうやだぁ、おうち帰る……」

サァーっと顔から血の気の引いていくシスメ。対して、

「あはは。このまま立ち止まっててもしょうがないですし、
シスメちゃんの精神が崩壊する前に、さくさくと歩いていきましょうか〜」

輝きを増した笑顔でずるずるとシスメを引っ張りながらレイと連れ立って歩くレイニア。
こうして、ざくざくと乾いた土くれを踏みしめる音に
半べそのシスメの鼻をすする音を加えて第七候補隊の新たな任務は幕を開けるのだった。

>ALL

4ヶ月前 No.514

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

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4ヶ月前 No.515

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_Tbw

【エイルス区画/旧下水道入口前】

「…ほっといてくれ」
先の反応に笑い転げ…は流石にしていないようだが…受け具合に、ぶっきらぼうに答える。
…流石に腹を立てる程ではないが…ここまで笑われる当人としては面白いわけがない。
(確かにこちらの落ち度ではあるが…むむむ…)
と、どこか釈然としない気持ちを抱いていた所で、隊員たちが互いの戦闘力を説明しあっている中、セキアから何処か沈んだような雰囲気を感じ取る。

何事かと思った所で、すぐにその原因はセキアの申告によりすぐに思い至る。
(…確かに…戦力と言う点ではどうにも言えないか)
そうではない、と否定してやりたい反面…それは気休めでしかないと、本人に思われてしまっては逆効果であるし…なればせめて具体礼を上げ、そこからフォローするしかあるまい。
…だが、そんな事を考える最中、周囲のメンバーらが既に各々の視点からの意見を出しており、セキアの方もすっかり持ち直していたようで…
(なんだ…そう、深く考えるまでも無かったか…)
一周回ってドツボに嵌りかけていた自身にため息をつきつつ、再開された各員との会話に意識を向ける事にした。

>セキア ALL

「なるほど…ひとまずの戦力はこれで出そろったか」
宝石魔術と剣が使えるアシュレイ…本人は多少と言っているがおそらくは結構な腕前だろう。
熱に関し相反した性能を持つ双銃とナイフに通常の拳銃のベリオ…エコーロケーションを利用しての状況の把握もできるとあって頼りになりそうだ。
魔術による法撃とアルカナイザーによる剣戟のエルト…とは言え上記の2人よりも接近戦での総合力は劣るだろう。
ここにレイとノイの2人が後方支援に入る形での5人パーティーが今回の任務になるようだ。

っと、改めて戦力を分析した所で…こちらに歩み寄ってきたノイから何かベルトのような物を手渡された。
…直後ノイ自身がそれを身に着けて説明したことにより、こちらも意図を察する。
「ああ、そういう事なら有難く使わせてもらうとしよう」
そうして自身もそのバンドを身に着け、運ぶべき荷物を固定し、地下水道へと入っていくのであった。

【非常に遅くなって申し訳ねぇ…場面的にも上記のレス群は蹴っちゃってくだせえ!!】

>ノイ アシュレイ ベリオ レイ ALL

【エイルス区画/旧下水道・前道】

地下水道に入ってすぐ…独特の悪臭やら死骸らしきものの小さなオブジェ群と言った洗礼を受けながらさらに歩を進めていた所で、レイニアが魔術により周囲を照らし出した。
(…むぅ…分けってはいたが…あまり環境は良くないな)
無視できる程度とは言え…それなりに感じる不快感に思わず眉を寄せつつも、周囲に異常がないか軽く見渡してみる。
…特に変わったものは見えなかったが…ノイが何か見つけたのか、レイニアが声をかけていた。
「そっちには何か…」
と、問いかけようとした所でノイの肩をがくがくと揺らしに行きかねないようなシスメが、次の瞬間には一瞬で真っ青になり…そのままずるずるとレイニアに引っ張られていく。
(流石にあのまま…と言うのは気の毒だな)
そう思い、シスメに声をかける事にする。

「ベリオもああいってるし…仮に何かしらの霊が出ても対策はあるからそう怖がらなくても大丈夫だ」
と、声をかけてベリオらの後に続く…今の所、なんら変わり映えのない通路が続くが…

>ノイ シスメ アシュレイ ALL

4ヶ月前 No.516

ますたぁ @usagishi59 ★iPhone=oVdQpL6VUk

【白月レイ:エイルス区画/旧下水道入り口】

エスパー?という言葉にレイは、ハッとした。
あれ?なぜ私は、セキアさんが自分の弱さを責めているなんて思ったのか。セキアさんは一言もそんなこと言っていないのに。
きっと、セキアさんの中に私と同じなにかを感じたから。
それともこの前の試験で、一時的にシンクロしたことによって、共鳴でも起きているのかな。

といろいろ考えていると、セキアさんは私の目をまっすぐ見て、自分を見ていてほしい、
と、お互いの立場は対等だと証明する、と言った。

対等…その言葉がレイにとってどれだけ大きな影響を与えたか、きっとセキアさんにはわからないかもしれない。
魔武器の私が、それ以外の種族と対等だと言われたことがこれほどまでに心を潤わせたことか。

「はい、レイはセキアさんを信じています。」

ニッコリと微笑んだ。

≫セキア ベリオ

レイニアさんは私の手を取り歩きながら、いかにも何か出そうな道に御誂え向きだと、怪談を話したそうだった。
聞きたいですよね?という質問にレイは

「え、えっと……き、聞きたいのは山々なのですが、シスメさんが気の毒ですし……また今度ということでいいですか?」

実際はレイも怖いものは怖いので、聞きたくないというのが本音なのだが、だからといって上司の話に「聞きたくない」なんて言えるわけもなく、シスメさんへの配慮ということで断ることにした。

そんなとき、ノイさんが何か気配を感じるという言葉にシスメさんが悲鳴をあげる。

と、ほぼ同時にレイも「ひっ!?」と控えめな悲鳴をあげる。
そんなレイに御構い無しにズンズンと前へ進むレイニアさんに引きずられながら、涙目のレイは渋々歩く。

あ、そういえば…
いざという時はこれ……使えるかな

と、自分のポシェットの中に手を入れ、ガサゴソと探り、アル物を手に取った。
本当ならコレの存在は忘れていたいところだった。レイにとってこれは悪魔のブツだから

これを使わないですむことを祈る


≫レイニア ノイ シスメ エルト All

4ヶ月前 No.517

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★i5EXnS27tc_lXe

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4ヶ月前 No.518

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:旧下水道・中道】

レイニアさんの怪談を回避したと思ったレイだったが、後日恐怖映像なるものを見せる約束をされてしまった。 失敗したと思った時にはすでに遅くシスメさんが涙目でぐずっていた。

「ごめんなさい。レイニアさんもなんだか話したそうでしたし、無下にするのもどうかと思って……」

苦笑いしながら、ぐずっているシスメさんを宥めるレイは、レイニアさんと歩幅を合わせ奥へと進んでいく。
その間も二人の会話を苦笑いしながら聞くのであった。
そうこうしていると、セキアさんが何やら謎の紙、本の切れ端を見つけかけ戻ってきた。その紙には、とある小説の一節が書かれていた。
レイはその紙を見て、あることを思い出していた。それはソエリス遺跡の調査に行った時、スターチさんと見たあの壁画…。
でもあの壁画に描かれていた魔導兵器は九つ、ここに書かれている八つの武具は関係ない……のかな。一つ足りないし…。

と考えを巡らせていると、奥から異様な気配がしたと思えば、目の前には、イカのような魔物とネズミのような魔物が待ち構えていた。

「な!なんで空中都市の下水道にこんな魔物がいるんですか?!」

巨大イカのような魔物をみて、困惑しながら声を上げる。どうしよう。とにかく今は、レイニアさんを守らないと…。
緊急事態だし、いざとなれば戦闘もやむおえない……。護身用に持ってきた「アノ」アイテムも使えるかもしれない。

レイニアさんを守るように前へ立ち、自分の服のポケットに手を入れ、とある紙に手をかけるのだった

≫レイニア セキア シスメ ベリオ アッシュ

【イザヨイ:ガイアル区画 中央本部 出雲鶴羽の部屋】

イザヨイ「鶴ちゃんの部屋久々に来たなー」
鶴羽の部屋に図々しく入ってくる、黒猫のように真っ黒な女性が入っていた。
セキュリティなどほぼほぼ無視して、まるで関係者のように入ってきたが、立派な侵入者である。
どうしてここに来るまで誰にも見つからないのかといえば、目くらましの魔法をかけているからである。これをかけていれば、誰かにぶつからない限り、見つかることはない。

イザヨイ「鶴ちゃーんお邪魔しまーす」

≫鶴羽
(時を同じくして、みたいな感じで絡みます)

4ヶ月前 No.519

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

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4ヶ月前 No.520

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★FuF2nnuMyn_o01

【鶴羽/ガイアル区画/中央本部/出雲鶴羽の部屋】

そこは中央に囲炉裏の設けられた和室だった。
壁に墨絵の掛け軸がかけられている以外には、木製の平机に座布団の敷かれたひざ掛け椅子があるだけの
質素な部屋だが、やたらとだだっ広く感じるのは、しかれている畳の枚数が原因だろう。
その数30畳。畳も消耗品だ。取り替える作業を考えるだけでも気が遠くなりそうな枚数である。
その中央にどこからともなくふわりと舞い降りる一つの影があった。

『鶴ちゃんの部屋久々に来たなー』

それは黒装束の女だった。
障子をあける音すらなく、まるで半紙に一つ墨を落としたかのごとく突然現れた彼女は、我が物顔で部屋の中を練り歩く。
和室の中に待ち人はいない。やたらだだっ広い和室の中心。人によってはまるで世界に自分ひとりが取り残されたかと錯覚するほどの静けさ。
だが、その静寂も長くは続かなかった。突然、彼女の背中ポンと叩く音がしてあたりに声が響き渡る。

「カカカ、こりゃまた随分といたずら好きな猫が来たもんじゃ。
我が物顔で入ってきおって、一応ここは重鎮の部屋じゃぞ。
今回のは自信作だったのじゃが…七重に張った結界がまるで役に立っておらんし、なんなんじゃほんとにお主は。
まぁ、良い。ようきたのぅ、好きにくつろいでくれ」

黒装束の女に手をかけた彼女は不思議な風体をしていた。
和室にいるというのに、重そうな車椅子の上に腰掛け、その頭頂には人ならざるものの証、狐の耳がある。
見た目は30代ほどだが、老体のようにしわがれた声でその狐耳の女は彼女に声をかけた。
彼女こそ出雲 鶴羽(いずも つるは)。このガイアル区画の統括管理官である。
車椅子の肘掛に頬杖をついた彼女は、どこからか取り出した煙管に口をつけるとぽつぽつと言葉を続ける。

「まぁ、なんじゃ。せっかく来てくれたのじゃから茶くらい出そう。
えすぷれっそと れもんてぃ、ほうじ茶とあるがどれが良い?」

そう言うが早いか、がしゃがしゃと音がしたかと思うと
一体の鎧武者が急須と茶菓子の乗った盆を手に障子を開けて入ってくる。
鶴羽は器用にそのデカイ手を動かして茶の準備をし始める鎧を一瞥すると、黒装束の女に声をかけた。

「――して、こんなところまで何用じゃ? ただ茶飲み話をしにきたわけでもあるまい。
今、ワシらが手を焼いておるレヴァーンのことで何か話しか? それとも…愛娘(レイ)のことでも気になったか?」

【突発的なイベントということで当方の把握不足な点もあり、
ますたぁ様の望む返レスになっているか不安ですが、こんな感じで問題ないでしょうか?
レスを見る限り鶴羽とイザヨイ様は旧知の仲のようですが、対応を間違えておりましたら申し訳ございません。
せっかく素敵な設定ですので、
次回からこういったイベントを起こす際は一声かけてくださると助かります^^】>イザヨイ



【セキア&レイニア&シスメ&ノイ/
イカの魔物? & ネズミの魔物?/区画本部内/旧下水道・中道】

『な!なんで空中都市の下水道にこんな魔物がいるんですか?!』

『っ!?敵襲か!?』

「いったいどこから……ああ、なるほど上ですか」

魔物の突然の襲撃に色めきたつ、候補官一向。しかし、レイニアは我関せずといった様子で、その見えない瞳を上に向けた。
一口に下水道と言っても、各家庭の排水の流れ道で支流となる排水管と、
そんな各所から流れ込んだ排水を集めて流す本流となる本管、構造的には大まかにその二つに分けられる。
第七候補隊が今通路として使用しているここが本管。ならば魔物侵入経路など自然と一つに絞られる。
誰も魔物の接近に気付かなかったところから察するに、あらかじめ排水管に潜んでいたと考えるのが妥当だろう。
彼女の視線の先には今しがた現れた魔物の胴ほどの直径のある大きさの菅がぽっかりと空いていた。
小さく息をついたレイニアは、何を思ったか今まさに服のポケットに手を入れかけたレイを
突然抱きしめたかと思うと、シスメを伴ってそのまま大きく後ろへと跳躍する。

「あはは、駄目ですよー。まだ、まだです。レイさん。
今、貴方から何かよくないものを感じました。もちろん根拠はありませんがー、
何かレイさん自身に重い代償を要求するか、身体に大きな負担を強いるものを今、使おうとしませんでしたか?」

「レイニアさん今は――」

「非常事態、ですか? もちろん知ってます」

「では、何故―――」

「何故? おかしなことを聞きますねぇ。見学者に自ら立候補したのはあなた達じゃないですか〜。
まぁまぁ、少し見守ろうではありませんかー。大丈夫ですよ、あの子達なら、ほら」

レイの耳元で小さく囁いたレイニアは、おどけるように彼女の背中に回した手をぱっと横に広げて拘束を解く。
意図しない魔物との遭遇。明らかに非常事態と分かりそうなものなのに、何故かレイニアはレイの行く手を阻み、シスメの言葉を制した。
この後、疑問符を浮かべるであろう彼女に、レイニアはちょいちょいと手で前を示したかと思えば、そのとなりを一筋の熱線が通り抜けていった。

「GGYI!?」

今まさに振り上げようとしていた触腕からもうもうと煙を立ちのぼらせたイカの魔物から苦しげな悲鳴が上がる。
その魔物の感情のない瞳は、はるか後方で黒鉄の銃器を構える一人の少女を捕らえていた。

「心配、無用。冷静、対処、すれば、勝利、確実」

腹ばいになりながら黒鉄の銃器を支えるノイが淡々と告げる。
その赤熱した銃身からは一筋の白い煙が天へ向かって伸びていた。
何をしたかは明瞭。彼女は単純に振り上げられた触腕の先へ向けて、ピンポイントでスルトの熱線を撃ち込んだのだ。
次いで、ベリオが放った氷弾が地面にヒットしたかと思えば、
勢い余って突撃したネズミの魔物が凍りついた地面に足を取られて体を横たえながら激しく転倒した。
それを見たセキアが、この機を逃さんとばかりに指の間に挟みこんだ棒付キャンディを素早く投擲する。

「チャーンス! こんにゃろ喰らえ! ビクトリーファイヤーボム!」

相変わらずなネーミングセンスを遺憾なく発揮しながらも、
威力は申し分なかったようで、彼女が放った4本の棒付キャンディは瞬く間に光に包まれ爆裂する。
もうもうと立ち込める煙から目を離さず、サムズアップした手だけを後ろに向けながら、
セキアは嬉々として次弾を指の間に装填し始める、が―――

「よっし! ナイス連携、ベリオ! ノイちゃん! これならなんとかなりそ―――」

「……ィ…CHAAA…GA…タィ…」

「………? 今、何か聞こえ―――っ! うぉう!?」

何故か動きを止めたその瞬間、煙を割いて飛び出した鉤爪のついた尾に驚いて尻餅をつく。
彼女の動きに遅れた髪が数本切り裂かれて宙を舞った。
だが、一向に彼女は立ち上がろうとせず晴れていく煙の中の魔物2体を見つめたまま、微動だにしない。
やがて、魔物の体から立ち上った硫黄色にも似た濃黄のオーラに小さく息を呑む音が聞こえた。

「まさか……そんな……え? うそ…だよね……?
あれって…レダール反応………まさか、あれも………レダールを投与された……亜人種だっていうの…?」

>ベリオ、レイ、エルト、ALL

4ヶ月前 No.521

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【イザヨイ:ガイアル区画:中央本部:出雲鶴羽の部屋】

意外と早く鶴ちゃんは部屋に戻ってきて、イザヨイの肩に手を置いた。いろいろと小言を言われたが、ほとんどを流し

「あんな結界、私からすれば知恵の輪を解くよりも簡単だったよー。
にしてもこの部屋はいいねー、落ち着くよ。私の家もこんな風にしようかなー…なーんてね、アハハハ」

畳に大の字で寝転がり、思いっきりくつろぐ。
イザヨイの髪は畳に広がった。くつろげとは言われたが、ここまで大胆にくつろぐものはそうそういないだろう。

「あーじゃあ、レモンティーちょうだーい。
…まあ、なんの問題もなければ、ただここでお茶を飲んで帰るだけで済んだし、私も世間じゃ死んだことになってるしゆっくりと老後を楽しむこともできたんだけどねぇ。
国家隊がわざとレイをレヴァーンに近づけさせてるんじゃないかと思ってね。」

さっきまでおちゃらけていた魔女は急に真剣な声のトーンで話し出し、起き上がる。

「お化け調査だとかいって遺跡に行かせたり、今回もレダールの入った香水の護送について行かせたり……。
私の勘違いならいいんだけど……まさかアンタたちも、私らが苦労して封印したあの化け物を復活させようとしてるんじゃないだろうねえ……」

そういうと魔女はその手に炎球を三つほど魔法で作り出し、その火の玉でお手玉をし始めた。
答えによっちゃこの中央本部を破壊してもいいんだぞ?という意味である。

≫鶴羽
(ありがとうございます。
そうですね、旧知の仲という設定で大丈夫です。)

【白月レイ:区画本部内:旧下水道・中道】

ポケットに入っているものを使おうとしたその時、突然背後から抱きしめられ、体を後ろへと持っていかれた。レイを抱き後ろに飛んだのはレイニアさんだった。

「レ、レイニアさん?」

突然の出来事に困惑していると、それを使うのはよくないと言われた。ポケットから出そうとしたのは、遺跡の調査のときに配布された、あの恐ろしいお札だった。たしかに他の人が使う場合はそこまで代償も高くは無いのだが、レイが使う場合はそうも行かないのは事実だった。

それでももしもの時は使う覚悟はできていた。

レイニアさんの言葉に、セキアさんたちの戦闘を見守ることにした。ベリオさん、ノイさん、セキアさん、それぞれの力で魔物を牽制していた。
しかし、その攻撃を受けた魔物が意思のある悲鳴をあげた。

「あれが……レダール反応……。じゃああの魔物は……人?!どうにかして助けないと……
でも、どうすれば……あ……」

レイは、出発直前に渡されたアンチレダールのことを思い出した。レダールの解毒薬。
あれを使えばこの二人を助けることができるかもしれない。レイは自分が持っているアンチレダールを取り出して

「セキアさん!これを!!」

アンチレダールをセキアさんがいる方向へと思いっきり投げた。貴重なものだということだが、助けるにはこれを使うしかない。そう思ったのだ。

>レイニア シスメ ノイ ベリオ セキア

4ヶ月前 No.522

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・中道】


突然現れた魔物二体。そんな奴らから先制攻撃を食らいかけた一行が黙っている訳が無く。
再び振り上げられたイカ魔物(?)の触腕はノイの寸分の狂いも無い狙撃によって撃ち抜かれ、ネズミ魔物(?)もベリオの放った氷弾によって凍り付いた地面に体勢を崩された。そこをすかさずセキアがまんまなネーミングの技と共に棒付きキャンディを彼らに向かって投げ付け、爆撃する。
こんな空間に少数で待ち構えていたのだ、これくらいでくたばるような相手ではないだろうが、一定のダメージは与えられただろう。

「お前も良くやった、セキア。…さて……被害が出る前に、ディーテの熱でBBQにでもしてやろうか__」

安全な地点に着地し、此方に『ナイス連携』と言ってくれたセキアにも褒め言葉を返すと、濛々と立ち込める煙の向こうにいるであろう魔物共を追撃せんと、『コキュートス』を持つ手もは反対の手で未だホルスターに収まっている『ディーテ』を引き抜き、ゆっくりとその安全装置を手の親指で下げながら物騒な言葉を呟く。その最中、異変らしき出来事は起こった。

『……ィ…CHAAA…GA…タィ…』
「……は?痛い…?」

煙の中から、先程の鳴き声とは違う、意味を持つ人的な言葉が聞こえ、ベリオは安全装置を下げる親指をピタリと停止させる。
不意打ちでセキアが攻撃されかけた直後、晴れた煙の中から現れた魔物二体の身体から黄色のオーラが立ち上る。
ベリオはこの現象を聞いたことがある。__Wレダール反応W。

「……おいおい……なら、この魔物共は亜人種だと…?ぐっ……これは嫌がらせか何かか?」

周囲の仲間たちが衝撃的な可能性に慄く中、ベリオも同様の反応を見せ、更に、悔しげに奥歯を噛みしめる。
目の前に立ち塞がる敵は撃破しなくてはならない。しかし、もしその連中が自分の意志に反して暴走させられているのだとしたら?しかもそれが、自分と同じ亜人種で、自分がその無理矢理戦わされている亜人種を討たされる状況にあるなら……それはお互いにとって屈辱的なことだと彼は考えている。それ故の悔しさだった。
その時、レイがセキアに向けて何か筒状のものを投げた。あれが恐らく、魔物(?)を鎮めるためのアイテムか何かなのだろう。だとすれば、あれを敵に奪わせる訳にはいかない。
ベリオは両手に蒼紅の拳銃を握ると、敵の妨害を更に妨害すべく、あくまでW思わず手を引っ込める冷たさ/熱さWに設定した銃口を、目の前に立ちはだかる二体に向け、構える。

>魔物(?)×2、セキア、レイ、ALL

4ヶ月前 No.523

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_8Ou

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4ヶ月前 No.524

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★mk4kBp3pI6_HkS

【鶴羽/ガイアル区画/中央本部/出雲鶴羽の部屋】

まるで躊躇いもなく畳の上にごろんと寝転がる
大胆不敵な珍客もとい、ぬらりひょんの形態模倣者もとい、魔女のイザヨイ。
こちらがいくら作法について話しても彼女が聞く耳を持たないのは
いつものことなので、鶴羽は仕方がないのぅとでも言いたげに小さく息をつくだけに留めた。
彼女のリラックスモードから一見、和やかに見えた二人の会話だが、徐々に暗雲が立ち込め始めた。
だが、彼女の反応に反して、鶴羽はというと何故だか車椅子の上で体を折り曲げたかと思うと小刻みに震えだす。
そして、それは数秒を数える間もなく炸裂した。

「っ……ぬははははは! 否…っ…すまぬ…くふふ……お主を馬鹿にしておるわけではないのじゃ。
子煩悩、か……よもやこうした形で自覚させられるとはのぅ。
否々、こちらの話じゃ、すまんすまん。
何故だか鏡を見せられておる気分になってのぅ。類は友を呼ぶとはよく言ったものじゃ」

袖先に口元を隠した鶴羽は笑い出す。
一食触発といったイザヨイの姿の中にいったい何を見たのか、
自分にしか分からないような言葉で鶴羽は勝手に自己完結した言葉を並べ立てたかと思いきや、
重い体を揺らしながら戻ってきた鎧武者の手の中にある紅茶の入ったカップをイザヨイに向けて差し出し、
自分は湯のみに注がれたほうじ茶に口をつけると、
ようやく笑いが引っ込んだのか再びゆっくりとした口調で話しだした。

「分かった分かった。ヨミちゃんだけ仲間はずれにしておったことは謝るから、その物騒なものをしまえ。
ちゃんと事情を話すから。しかしのぅ、お主にも非はあるのじゃぞ?
お主にはこちらから会おうと思っても会えぬことがほとんどじゃろう。
今回は報告が遅れただけ、ということで大目にみてはくれぬか?」

ガシャガシャと鎧武者の歩く音が下かと思えば、
まるでお詫びとでも言うようにケーキスタンドに乗った洋菓子の塔がイザヨイの前に置かれる。
次いで鶴羽は自分の前に置かれた和菓子の中から金平糖を一つつまむと
自分の口の中に放り込み、しばしその甘みを堪能するかのように瞳を伏せる。
イザヨイが洋菓子に口をつけるのを待って、鶴羽は意を決したようにその重い口を開いた。

「さて、さっきの質問への答えじゃが……半分正解で半分不正解といったところかのぅ。
先に断っておくが、ワシや他の区画統括管理官、ひいてはこの国の総意としては
誰もお主が言うところの“化け物”の復活など望んでおらんよ。
加えて申すならレヴァーンの尖兵どもとの遭遇率が高いのも偶然じゃ。
否、むしろ向こうから意図して近づいてきておるといったほうが良いか」

ふむふむと自身の考察も交えて話しだす鶴羽。
やがて彼女は手の中に数粒の金平糖を握りこんだかと思うとそれを弄びながら、
片方の眉を上げてイザヨイの方を向く。

「こほん。話を戻すが、半分正解と言ったのはのぅ。“わざと”の部分じゃ。
わざと過酷な任務に向かわせておる理由じゃな。
これは別にレイだけではなく他の候補官にも当てはまることなのじゃが………ふむ。
唐突じゃが、イザヨイや。この国に足りぬものはいったいなんじゃと思う?」

>イザヨイ



【セキア&レイニア&シスメ&ノイ/
イカの魔物? & ネズミの魔物?/区画本部内/旧下水道・中道】

この隙を逃さないとばかりに指の間にキャンディを挟みこんだセキアよろしく
他の第七候補隊の面々もすぐに第二撃を放とうと次の動作へ入ろうとしていた。

『お前も良くやった、セキア。…さて……被害が出る前に、ディーテの熱でBBQにでもしてやろうか__』

彼の言葉にいつもなら「見た目イカっぽいけど、魔物って食べられるのかな?」などと見当違いな
発言をしていただろうが、凍りついた思考の中ではもはや、そんなことを考える余裕はなかった。
一度生じた躊躇いは、後悔の念へと変わってセキアの指の感覚を鈍らせる。
だが、そんな彼女の停止した思考を指先に当たる固い感触が僅かに現実へと引き戻した。

『セキアさん!これを!!』

見覚えのある筒状の物体。中が赤い液体で満たされたソレは
今朝、寮内にある食堂でのミーティング中に配られたものだった。
アンチレダール。レダールを受け理性を失い暴走した者の体と心を正常に戻す解毒剤のようなものである。
混乱の最中にあったセキアの意識はレイの声で完全に現実へと戻った。

「レイ………よっし! 逆境タイム終了! 見てて、レイ! ここからが逆転タイムだぁ!」

強烈な平手を自身の両頬に食らわせる。
なにをしているのだろうか、自分は。これならいつもと同じ弱いままの自分ではないか。
あたしはレイになんていった? 見ててって言ったのに。これ以上、無様な姿は見せられない。
だったら、やることは一つ。セキアは手の中にある自動注射型のソレを握り締めると、すぐさま立ち上がった。

『下がれ!!そのままだと的にされるぞ!!』

「下がらない! 援護して! ベリオ、エルト、ノイちゃん! あとで何か奢るから!
なんとかあたしが間合いに入って、二人とも元の“人”に戻す!」

すでにイカの魔物とネズミの魔物は先ほどのダメージから回復し、体勢を整え始めていた。
セキアは今レイから受け取った一本と、事前に自分にも配られていた
もう一本のアンチレダールを右手の指の間に挟みこむと迫り来る触腕と鉤爪のついた尻尾に目を凝らした。

(大丈夫。ちゃんと目を凝らしてれば、人間のあたしにもちゃんと見える。
目の前のイカの足とネズミの尻尾の動きにだけ集中してれば、あとはみんながなんとかしてくれる)

前傾姿勢からエルトの静止の声を振り切って全速力で走り出す。

「GGGGGGUYI!!!!」「GYYYYAAALLLL!!!」

「……っ」

だが、そこは人間の動体視力。
雨あられと降り注ぐ鉤爪の嵐の中、避け損ねた鉤爪の一つがセキアの頬を浅く切り裂いた。
それでも構わずセキアは指先の動きだけで手の中の甘味を弾き爆撃に変えて牽制しつつ、前へ前へと進んでいく。
だが、彼女は知らない。積もった地面の土の中を通って
彼女の背後へと移動した一本の触腕が彼女を串刺しにしようと迫っている事実に。

>レイ、ベリオ、エルト、ALL


【仲之人さんのマイページプロフ欄を見てあっ…となった本体です。
ご自分のペースで投稿いただければ大丈夫ですので、
無理だけはなさらないよう、くれぐれもご自愛ください】>仲之人 様

4ヶ月前 No.525

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・中道】


突然旧下水道に現れた、W亜人かもしれないW二体の魔物。自分含め、殆どの候補官メンバーは目の前の敵を打ち破る決心が付かないでいた。しかしその中で、エルトだけは武器を構え、敵を制圧する覚悟を固める姿勢で前線に立つ。

(…やはりそうする方が、軍人として正しい姿なのだろうな…。しかし…)

彼の後ろ姿を視界に収め、ベリオは心の中でそう呟き、自身の今の情けなさを恥じる。しかし、今後のリスクを考えれば、可能性を捨てられない相手を撃ち捨てる覚悟を固められないことも事実である。
もしも相手の行動が過激になってくるであろう事態になったら、そうなる前に妨害する手立てくらいは考えておいた方が良いだろう、もし、コレが役に立つのなら__と、ベリオは自らが羽織っているコートの懐部分にチラリと目をやる。
コレさえ敵にぶつければ、きっと目潰し程度にはなるだろう。本当にやるとすれば、今後が賭けとなる訳だが…。
今はとにかく、牽制と防衛のみに集中すべき、と考え直した矢先、セキアが前へ駆け出した。
エルトの制止の声を振り切り、此方側へ援護を要請し、ただ真っ直ぐに、W救うWべき二体の生物を目指して突っ走る。
当然、魔物はその鉤爪を雨霰の如く彼女に伸ばしてゆく。例え傷を負っても止まらない彼女のその姿は、無謀にも、勇敢にも見えた。

「…ったく、本っ当に世話の焼ける奴だな、お前は!…仕方ないな、俺も援護する」

徐々に遠くなってゆくセキアの後ろ姿に、多少の呆れの色を含んだ言葉を呟くと、両手の拳銃に注ぐ魔力を上げ、エルトの隣に並ぶ。
そして、セキアが捌き切れていない鉤爪や触腕等に照準を合わせ、次々と発砲して弾き、弾切れになっては空のマガジンを捨て、ストックしてあるマガジンを再装填し、再び発砲し、リロード、発砲を繰り返してゆく。
…だが、流石は魔物と言うべきか、セキアが到達するまでの道のりでの怒涛の攻撃は治まることをしらない。予め持っていたマガジンの数や自身の魔力の残量も、なんとか持ち堪えてくれるかどうか不安なところまで、既にきていた。

(速く撃ち過ぎたか…?だが、まだ敵の攻撃が止む様子は無いし……止めるためには、やはり……)
「……って、クソッ!また弾切れか…!」

セキアを援護する中で、敵への妨害策を講じんとする時、『コキュートス』が何度目かの弾切れを起こす。『ディーテ』の方も、恐らく二発くらいしか残っていないだろう。
リロードしようと『コキュートス』の空のマガジンを捨てた時、異変に気付いた。

「!?っ、セキア!!伏せろ!!」

セキアの背後に位置する地面から生えている一本の細長い物体。ベリオが気付く頃には、その物体基イカ魔物の触腕は、彼女を背中から串刺しにせんとばかりに迫ってきていた。
思わず彼女に大声で叫んだ後は、もう迷ってはいられなかった。『ディーテ』の銃弾を一発、仲間を狙う触腕へ撃ち込まんと発砲。その直後に『コキュートス』を地面に置き、空いた手で懐からWあるものWを掴み出すと、野球の球を遠くへ投げ付けるように、魔物の頭上目掛け、全力でぶん投げた。

「オラァッ!!!」

ベリオが思い切り投げたもの__赤い液体の詰まった透明の点滴容器に似た袋は、放物線を描いて魔物のいる場所へ飛んでいく。
そして魔物の頭上近くまできた瞬間、魔物の攻撃がくる前に、高熱を帯びた銃弾がその袋を貫いた。

>セキア、エルト、魔物×2、ALL


【イカっぽい魔物の触腕が既に地表に出ているつもりで書きました(>_<;)意図と違っておりましたらすみません…】
>スレ主様

3ヶ月前 No.526

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★2ZwUguvzCb_inN

【セキア&レイニア&シスメ&ノイ/
イカの魔物? & ネズミの魔物?/区画本部内/旧下水道・中道】

『!?っ、セキア!!伏せろ!!』

「伏せろって―――うわっ!?」

ベリオの言葉に条件反射的に伏せたセキアの頭上を何か赤くてぶよぶよとした物体が
すごい速さで通り過ぎたかと思いきや、次いで炸裂した銃声が彼女の声を掻き消した。
まずは背後で一つ、そして、今まさに向かわんとしている魔物の頭上で一つ。
彼女が気付いたときにはもう魔物の頭上に赤い花が咲いていた。
そのまま重力に逆らわず落下したその赤い液体はバシャリと魔物2体の視界を覆う。

『GLUY!?』『GYYUO!?』

突然視界を奪われた魔物2体は、ひるんだ様子を見せながらも滅茶苦茶に触腕をふりまわす。
だが、狙って繰り出されたものでないそれらは
人間のセキアにも容易にくぐりぬけることができるものへと変わっていた。

「ナーイス! ベリオ! これだけ近づければ―――っ!」

頭上に向けて振るわれた触腕を屈んでかわし、次いで胴を貫こうとした尾を
くるりとターンして受け流したセキアは待っていましたとばかりに
白い歯をむき出しにして微笑みながら地を蹴って駆ける。
足元へ向けて放たれた触腕の一本を大きく跳躍しながら避けつつ、一気に魔物の本体へと距離を詰めた彼女は
その両手に1本ずつ握りしめられた赤い液体の満たされた筒を大きく振りかぶり―――

「おりゃあ!!」

二体の獣の表皮へと押し当てた。
セキアは筒の中の赤い液体がこぽこぽと音を立てて流し込まれていくのを見届ける。
――――が、次の瞬間、彼女の視界は唐突に黒一色に染まった。

「やった! 手ごたえあ―――のおっ!?
えっほ! けほっ!? なにこれ煙幕……っていうか墨ぃ!?」

苦しげに暴れだした魔物の力に抗えず、放り出されたセキアは、
今度は何とか尻餅をつかずにたたらを踏みながらも着地に成功する。
イカっぽい外見のとおりというか、その身体構造も見た目のそれに準じるらしい。
イカの魔物が吐き出した墨が晴れる頃には、二体の魔物は姿かたちもなくその場から消えうせていた。

「逃げられちゃった。どうしよう…追ったほうがいいよね?」

唐突に旧下水道が元の静けさを取り戻す。
ネズミの魔物が残したと思わしき点々と奥に続く足跡を指差しながら、
セキアは右頬から流れ出す血を手の甲で拭い、ベリオが投げはなち炸裂させた
血液パックの中身とおぼしき赤い飛沫と墨の飛び散った
服の汚れを気にするように確認した後、小さく首をかしげてみせた。

【大丈夫ですよー】>ベリオ、ALL

【Information:イベント終了条件クリア! これにて戦闘イベントを終了します。
お付き合いいただき、ありがとうございました^^】

3ヶ月前 No.527

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【イザヨイ:ガイアル区画:中央本部:出雲鶴羽の部屋】

この建物ごとを燃やしかねない火力の火の玉を前にして、イザヨイの質問に対し、半分肯定半分否定の答えを出した鶴羽。
その答えにため息を一つはくと、火の玉を消して、立ち上がった。

「そーかい、まあ本当にそうならいいんだけどねー……。魔武器が完全に全滅することと、あの化け物共が復活することだけは避けたいからねえ……。レイが生き残ってくれたのは不幸中の幸としか言えない」

鶴羽が言っていることは本当だろう。少なくとも鶴羽の中では…。
この国の国家隊の奥はもっと闇が深いのかも知れない。イザヨイはその考えを顔には出さず、出されたお茶を一口飲んだ。

「この国に足りないもの……か……それを私が答えたところで国が変わるかい?
言っておくが私はすでに存在しないことになっている人間だ。存在しないものに意見を聞こうとするのは間違っているよ。
でもまあこれはあくまで私の独り言だけど…この国は…平和だと錯覚して暮らしている民が多すぎる……徐々に近づきつつある危険に気づくことなく明日のことを考えている民を見ると虚しくなるよ。」

最初はケラケラと笑いながら相手の揚げ足をとるような発言をしたかと思えば、窓の方へ歩いていくと、ボソリと呟いた。
レヴァーンの脅威を民は知らなすぎる。

≫鶴羽

【白月レイ:区画本部内:旧下水道中道】

私が投げたアンチレダールを上手くイカの魔物に指すことに成功したセキアさんをみてレイはやった!と思わずガッツポーズをして喜んだ。だが次の瞬間セキアさんはイカの魔物に黒い墨をかけられ、真っ黒になってしまった。

イカはその隙にどこかへ行ってしまったようだった。跡を追ったほうがいいというセキアさん。

「セキアさん、あの……今回の任務はあくまでアレを届けることなので……無闇に追いかける必要はないかと……。
それより、急いでこの道を抜けることが最優先では……」

レイニアさんを守るような形で前に立ちながら、フェニクスを指差し自信なさげに意見を言ってみるレイ。
今回見学者としてこの場にいるレイはその発言をする権利はないのかも知れないが、セキアさんが深追いをして怪我でもしたら大変、その思いで発言をした。

≫セキア レイニア シスメ ノイ ベリオ エルト

3ヶ月前 No.528

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・中道】


ベリオの渾身の一発が見事に容器に命中し、中の真っ赤な液体は標的である魔物二体の顔に降りかかった。
液体によって視界を奪われた二体はがむしゃらに自らの触腕や尾を振り回す。しかし先程のような精密さは無く、大きくなった隙を掻い潜るようにセキアがダッシュで前進していく。
魔物たちの塞がれた視界、そしてセキアの大胆不敵とも言える突撃により、勝負は決した。セキアの持つアンチ・フェリクスは魔物二体の体に突き立てられたのである。
しかしその直後、セキアや一行の目前を覆い隠すように、ドス黒い煙幕…ではなく墨が放たれた。

「なっ……まだ戦う気か!?」

墨を攻撃と受け取り、背に回したケースを庇いつつコキュートスを拾い上げ、(弾切れのため)威嚇のつもりで双銃の銃口を魔物たちのいた方向へ向ける。
しかし、それ以上の動きは見られず、墨が晴れる頃には、服を墨や赤い液体の飛沫で汚したセキア以外、そこには誰もいなかった。

『逃げられちゃった。どうしよう…追ったほうがいいよね?』
『今回の任務はあくまでアレを届けることなので……無闇に追いかける必要はないかと……。それより、急いでこの道を抜けることが最優先では……』
「…確かに、レイの言う通りだ。奴らを追跡するのは任務を遂行してからでもできる。進路次第では、再び相見える可能性もあるからな」

逃亡したらしい魔物二体を追跡したい様子のセキアに、自分たちが優先すべきはフェリクスの護送であるとレイが嗜める。それに続く形でベリオも任務を優先させる意見を言う。

「…それと…」

拳銃を二丁ともホルスターに収め、頭に被ったパナマ帽の鍔で顔を隠すように押さえると、やや早足でセキアに近寄る。
そして彼女の顔を見下ろせる距離で立ち止まると、スッ…と片手を軽く挙げ、そして__

「お前はもう少し慎重になれ、馬鹿者!」

彼女の頭上目掛けて手刀を振り下ろした。

>セキア、レイ、ALL


【今回は此処までで…。
手刀確定ロルになっていたらすみません…】

3ヶ月前 No.529

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_sNF

【エイルス区画/旧下水道・中道】

(見た目通りとは限らんが…多少の耐性が有ろうと!!)
ネズミの方はともかくとして…イカ風の魔物の方は如何にも、といった風貌で…電撃の耐性はあまり高くなさそうだ。
(…表面は何らかの対策があるだろうが…それを抜ければ十二分に効果はあるはずだ)
故に狙うは一点突破…そう考え駆けだそうとしたところで…
「なっ!?…無茶な!?」
当のセキアからの返答は強行するとの一点張りで…持ち前の思い切りの良さを生かし、ある程度の迎撃を成功させながらも、肉薄する事に成功している。
(っ…ええい、今からではやらせた方がマシか!!)
そう判断し、数発の魔力弾を撃ち込みながら接近して注意を引き、こちらに向けられた触腕などを切り払いつつ援護する。

「セキアッ!?」
そうして、ベリオ達の援護を受けつつ、2体の魔物に件のアンチレダールを撃ち込むことに成功した所で…イカ風の魔物が煙幕代わりに黒い気体…墨を吐き出し、周囲を覆ってしまう。
…幸いにもセキアはすぐにその範囲から放り出されたが…それが晴れるころには既に魔物の姿はなく…足跡が点在するにとどまっていた。
「…逃げられたか」
そう呟き、足跡が続く方角を見やる。
(…いや…してやられた…か?)
同時に、会敵時からの疑問に対してそう推測する…確証とまではいかないのが残念な所ではあるが…ともあれ、今は先にすべきことが有るのでそちらを先にかたずけてしまうべきだろう。

「…ベリオの言うとおりだ…援護が間に合わなかったらどうするつもりだったんだ」
小言を言われているセキアにこちらも近づきながらそう言い、ストレージからガーゼと消毒液を取り出しつつ、手当の前に頬に走った傷を注意深く観察する。
(…傷自体はそう深くは無いようだが…この環境は不衛生にも程がある)
などと考えながら、小言を言われているセキアに簡単な手当てを施す…本来であれば無茶を窘めるのだが…
(この状態から更にから小言を言うのも…な…あながち間違った判断とも断言はできんしな…)
…実際の所、最初に小言を言っているのだが…それ以上の言及はひとまずは保留にしておくことにしたようだ。

「…奴らがどうなったのかは気になる所だが…生憎と任務を疎かにするわけにもいかないだろう?」
セキアの意見に対し、レイやベリオ同様の意見を返す。
確かに気になる部分はあるのではあるが…今は任務が最優先だ…優先順位を違えてしまっては本末転倒だろう。
(…もう少し人数が居れば…無いものをねだっても仕方ないか)
奥へと消えた足跡に、一度だけ視線をやりながらもすぐにそれを元に戻し…未練を振り切るかのように進むべき方角の通路の法衣向き直る。

>セキア ベリオ レイ ALL

【申し訳ねぇ…そう言っていただけるとありがたいです…ひとまず失踪だけはしないように努力させてもらいます】
>スレ主様

3ヶ月前 No.530

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★WfIyPon05B_sE3

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3ヶ月前 No.531

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【イザヨイ:ガイアル区画:中央本部:出雲鶴羽の部屋】

鶴羽から帰ってきたのは、次代を担う者という答えだった。イザヨイは少し不機嫌そうに振り返り

「次代を担う者……ねえ。まあ私から言えることは、国家隊はこれ以上自分たちで使える手駒を減らさないようにしろよってことだけかなー……ただでさへ、魔武器がほぼ壊滅したおかげで……いやこれ以上はよしておこう……。」

魔武器が壊滅したのはイザヨイにとっても誤算だった。いずれくる厄災のために作った魔武器、皆が知らぬ歴史の真実、それを明かすのはまだ早すぎるか……。
無論、この鶴羽ですら知り得ぬことを


「次代を担うものを育てたいなら、任務をやたらむやみに与えるより、訓練場で特訓なり修行なりさせたほうがいいんじゃないの?
あの子達は、まだ未熟だ、未熟のまま任務に行かせて死なれたら、それこそただの無駄骨ってやつじゃないか。
私も、レイのことで気になることがあるから確かめたいところでもあるしねえ……」

魔法で水晶玉を取り出し、今現在任務に赴いているレイやセキアたちの動向を映し出し、鶴羽に水晶を見せつけ、不満そうな顔をする。
そして裏切り者がいるということに関して

「裏切り者なんて国家隊には何十人といるだろ……何を今更……」

呆れた顔でため息を吐いた。

・>>出雲鶴羽

【白月レイ:区画本部:旧下水道□中道】

任務最優先という提案に、セキアさんは落ち着きを取り戻し、受け入れてくれた。
だが次の瞬間、セキアさんの頭にベリオさんのチョップが炸裂した。

「セ、セキアさん大丈夫ですか?!」

慌てた顔で、セキアさんの心配をする。
ああ痛そうだな、何か湿布薬とかなかったかな、ガサゴソと鞄の中を探るがそれらしいものはなかったのでしょんぼりする。

「ご、ごめんなさい、私何もできなくて……」

もどかしい、見学者という立場に自分でなったというのに、セキアさんたちの役に立てないなんて、もどかしくて、自分にイラつきを覚える。

「………」
セキアさんたちが亜人たちの話をしている間、レイはさっき落ちていた紙のことや、レダールが使われ完全に獣化してしまった亜人たち、もしこれにスターチさんたちレヴァーンが関わっているなら、もしかしてあの人たちの目的は……
と自分の中で考えながら、レイニアの手を取りセキアたちの後に続き歩いていくのだった。

「あの遺跡に書かれていたことと関係があるのかももしれませんね」

ボソリと小さな声で呟いた。

≫セキア シスメ レイニア ベリオ エルト

3ヶ月前 No.532

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・中道】


任務を優先すべき、という皆の意見を聞き入れ、素直に考えを変えた様子のセキア。
しかし、彼女に与えられた苦難(?)はまだ終わっていないようで。

『ふぐぁ!?』

此方に近付いてきたベリオの振り上げられた片手をハイタッチの合図と考え、明るい笑顔でそれに応えようと挙げられた彼女の手は、しかし合わさることは無く。
それどころか、ベリオの掌は手刀と化し、鉄槌の如く彼女の頭に一撃を喰らわせたのだから。

『セ、セキアさん大丈夫ですか?!』
『うぐぐ……未来の勇者の頭脳がぁ……』

手加減をしたとはいえ、突然の痛みと衝撃によってか、そのまま他に倒れ臥すセキア。
慌てた様子でそんな彼女に駆け寄るレイを横目に、ベリオは自らの精悍な顔がただの強面と化す程眉間に皺を寄せ、痛そうに頭を押さえるセキアを見下ろす。
打った際に痛くなったのか、今し方セキアの頭に振り下ろした方の手を前後左右に振りながら。
しかしそんな強面も、彼女の口から謝罪の言葉が漏れてからは幾分か緩み、心底呆れたように腹の底からの深い溜息を吐く。

「はぁ〜……全く。次無茶したら、拳骨だからな?」

そう言うと、痛みの引いた片手で軽く握り拳を作り、軽く下に振る動作をして見せる。
だが彼女の突撃が一先ずの決着を生んだことも事実、流石に強くやり過ぎただろうか、と考え始めたところで、後からやって来て手当用のガーゼや消毒液を手にセキアに近付くエルトも一言、セキアを嗜める。
セキアもセキアで反省しているようであるが、後から自身を擁護するような言葉を口に出し…あ、やっぱり足りなかったかもしれない、とベリオの僅かな罪悪感を霧散させてしまうのだった。

『でもでも、そんなに言うほど無茶はしてないと思うけどなぁ
ほら、ほっぺちょっと切っただけだし、服汚れただけだし――』
「どうやらもう一発食らいたいようだな?」

低い声でそう言うや、片手を固く握り締めるベリオ。帽子の鍔で影になった目元からは冷たい眼光がギラリと覗く。
確かに大怪我も不意打ちによる致命傷も受けていないし、思い切って突っ切らなければ撃退に時間が掛かっていただろう。だがそうじゃない、俺が言いたいのはそう言うことじゃない。
お前からすれば今の一言は理不尽に聞こえるかもしれないが、こっちは怒っているんだ。こっちの肝が冷えるからもうあんな特攻じみた行動を単独で行うんじゃない!
__と、再び説教をしてやろうかと考えたところで、セキアが思い出したように此方に視線を向けてくる。

『さっきは助けてくれてありがと。この赤いのってベリオの私物だよね?
これってなに? なんかどっかで嗅いだことがある匂いのような…』
「…は?あ、あぁ…別に、お前が気にすることでは……俺がああするべきだと考えたからそうしただけで…。
……そ、それは……」

セキアがベリオに聞いたこと。それは先程彼が懐から取り出し、魔物の頭上まで投げて炸裂させた物体についてだった。
それを聞いた途端、先程までの厳しい態度から一転、しどろもどろな態度となるベリオ。あれは何だったのか、という問いには視線を泳がせ、頬に一筋の汗を垂らしつつ、どう答えるべきかと悩み始める。
不味い。WアレWは自分に必要なもので、自分や自分のW体質Wを知る者以外には絶対に知られてはいけないものだ。
今までだって人目に触れないようにしてきたのに、あの時は任務中に補給できるようにと半分解凍して人肌で保温するために懐に忍ばせていたWアレWを、俺は、つい居ても立っても居られなくて…。
__言えない。絶対に悟らせる訳にはいかない。
考えろ、考えるんだ俺…!!

『これって……弁償したほうがいいよね?』
「__へっ?!あ、いや、えーと……」

何か上手い誤魔化し方は無いものかと、帽子を益々下に押さえ込みながら、一瞬の内に必死に自らの頭脳をフル回転させていると、目の前の彼女の別の一言が耳に入り、目の前のことに集中できていなかったことが原因で、思わず間の抜けた声を上げてしまった。
そのことに一抹の羞恥を覚えつつ、例の物体について弁償した方がいいか、と問うセキアへの答えを先のことより慎重に頭の中で構築する。

「……いや、別にいいよ。あれ、一つで1万以上するからな。子ども一人で用意できるような額じゃないだろ?」

押さえていた帽子から手を離し、WアレWの金額について教えつつ弁償はいいと断りを入れる。
アルバイトでもしていれば苦労することなく用意できる額ではあるが、何しろ単価が高い。目の前にいる年若い仲間(とはいえ、候補隊員の殆どが若いのだが)に1万以上もする金額を弁償させることはどうにも気が引けた。
その後、セキアの服に付いた赤いシミや、背後の魔物たちがいた地点に散乱している大きな赤い痕跡、そして所々に散らばる大小様々な透明容器の破片を見遣り、嗚呼、勿体ない、と密かに思う。

__直後、視界が僅かに揺れたような気がした。

(…っ!)

一瞬、全身が強張るのを感じる。
嗚呼、こんなに運の悪いことがあるだろうか。仲間の前では自分を保っていたいと思った直後にこれだ。だがこれは、迎撃のために魔力を多用したことと、少しだけ香る液体の匂いを嗅いだことが、Wあの状態Wに陥るまでのカウントダウンを早めたのだろう。
否、まだ不味い状態ではない、まだ大丈夫、とベリオは内心で自己暗示をする。あの感覚については何度も体験済みであり、どの段階が一番不味いのかも知っていることもあるが、何よりこの不測の事態にいち早く心を落ち着けたいことが最たる理由であった。

『では〜、時間もおしてますので行きましょうか〜。できるだけ早く、警戒は怠らないよう慎重に』

ふいに、レイニアが前進の言葉を全員に掛けるのが聞こえ、再び我に帰る。
そうだ、今は任務の真っ最中。これから例の感覚が深刻化しないよう、自分はケースの防衛に専念すれば良い。魔力の消費を抑えるためには拳銃も使えないが…足手まといにならぬように動けば良い。
前へ歩き出す一行に続いて、身に付けている黒ケースを改めて視界に入れ、気合いを入れ直して歩き出すのだった。

>セキア、レイ、エルト、レイニア、ALL

3ヶ月前 No.533

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★mwztM38SH1_I0j

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3ヶ月前 No.534

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

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2ヶ月前 No.535

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★HvVqqixXGG_pXV

【セキア&レイニア&シスメ&ノイ&クラウズ&スターチ/区画本部内/旧下水道・後道】

その声が聞こえたのは、ベリオが自身の技能を使った索敵を提案したすぐ後だった。

『失礼ながら、数回の反響定位の使用許可を頂けませんか?
発した超音波が跳ね返ってくれば、そこに何かが―――――』

「その必要はねーよ、新入りさん」

第七候補隊の進行方向から一つの影がゆっくりと姿を現す。
それはまるで敵意はないとばかりに大仰に手を大きく振り上げながら、気さくな態度で話しかけてきた。

「よぉ、久しぶりだな。あの遺跡ぶりか?」

それは一人の男だった。
この下水道という場所にはミスマッチなカソックに茶皮のロングコート。
その出で立ちだけでも十分に目を引くが、なによりもそのクセの強い銀髪とサングラスに目が行く。
一目見れば神父の出で立ちなのだが、神父というには荒々しく、
その言葉遣いひとつとっても胡散臭さにさらに拍車をかけているといっていい。
ゆっくりとレイニアの光の蝶が照らし出していく彼の姿に真っ先に反応したのはシスメだった。

「クラウズ・フォルマーカー……レヴァーンの異端審問官」

まるで自身を守るかのように手元の魔導書を胸に抱え、ゆっくりと後ずさるシスメ。
そんな彼女のあからさまな警戒の態度にもめげることなく、
クラウズと呼ばれた男は、額に手をやりながらオーバーなリアクションで嘆いてみせる。

「いけねぇなぁ、いけねぇよ 眼鏡の嬢ちゃん。
自己紹介の手間をはぶいてくれたのはありがたいけどよ、
紹介するなら、ちゃんと素敵な神父さんってのを最初につけてもらわねぇと。
唯一神フォルなんちゃらも言ってるだろ。名は魂を表すってな」

「フォルラーンでございます、主様」

彼の言葉に反応するかのように、彼の背後からゆらりと新たな影が姿を現した。
まず、目に付くのが背中に背負った大人の背丈を軽く越えるほど大きな鋏だ。
次いで、それを支えるにはやけに小柄な彼女の体躯に視線がいく。
一目で修道女のそれと分かるアコナイトヴァイオレットのトゥニカ(ローブ)と同色のウィンプル(頭巾)。
いわゆる修道服を彼女は身に纏っていた。
背中の重量物などまるで重荷にならないといった風に彼女は
つかつかとクラウズの前に回ると「スタルチアと申します。以後よしなに」とベリオに軽く会釈した後、
レイニアの隣に位置するレイを一瞥して呟くように言った。

「……………出会ってしまいましたわね。残念に思います」

覚悟を決めるかのように目を伏せたその直後、背中から大鋏が引き抜かれる。
それに反応するかのようにノイも瞬時に手の中の黒鉄の魔導具の引き金に指をかけた、が――

「まぁ、待てって。
話が早ぇ奴ぁ嫌いじゃねぇが……どうやらそっちはまだ話し足りねぇみたいだぜ、なぁ?」

鋏を振り上げかけた修道女をいさめるように
それを手で押し返したクラウズは促すようにこちらの一人を見た。

「どこまで知っているんです?」

地を這うような重い声が響く。
一瞬、誰がその声を発しているのかすら分からなかった。
声の主は、くすんだマリンブルーの瞳で、身も凍りつくような鋭い視線を送る
少女とも見紛うほどの見た目をした狼の亜人種の国家隊員―――レイニアだった。

「何も知らねぇよ、重要なことはいつも、いつもだ。
あんたのことを知ってるとしたら、それは仮面の嬢ちゃんだけだ。
俺はただそいつをバラまいとくよう仮面の嬢ちゃんに言われただけだぜ」

レイニアの言葉に深いため息をついたクラウズは小さく首を振ってみせた。
誰も口を挟めないほど切迫した雰囲気。
この膠着状態が永遠に続くかと思いきや、それを破ったのは意外な人物だった。

「ねぇ」

あまりに冷え切った声に、思わずシスメもノイも
クラウズから視線を外してその声の主に視線を向ける。
その視線の先にはキャスケット帽を目深に被ったセキアがいた。

「ああ、あんたは確か遺跡で俺の顔面にドロップキックを食らわせてくれた嬢ちゃんじゃねぇか。
どーしたよ、前に会ったときと随分と印象が違うじゃねぇか、そんな怖い顔してどうし―――」

「おにーさんが今回の主犯?」

クラウズの軽口にまともに付き合う気もないのか、淡々とセキアは続ける。
普段の陽気さは鳴りを潜め、帽子のつばから覗く赤褐色の目が鋭くクラウズを睨みつけていた。
手のひらに自身の爪が食い込むほど強く握り締めているのか、
ぎりぎりと指と手のひらの皮膚同士がこすれあう音が人間のシスメの耳にも容易に聞き取れるほどだった。
セキアの脳裏に浮かんでいるのは、レダールに苦しむ人ならざる人の姿。
そう、あのときもあのときも、苦しんでいたんだ。レダールの影響を受けた亜人種の人たちは全員。
現に今だって苦しんでいる。レダールの影響がなくなったとしても、
あれの力で我を失って誰かを傷つけてしまった悲しみはずっと尾を引いているのだ。
体中が熱かった。怒りで体が熱くなるという表現をいつだったか小説の一節で目にしたときは
半信半疑だったが、こういう状態のことをいうのだろうか。いや、ちょっと違う。
気付いたときにはそこに触れてしまっていた。
それはまるで自身の魂という殻にヒビを入れて、その中から漏れでた力に身を浸す感覚と表現すればいいだろうか。
自分の中の何かが警鐘を鳴らす。この力は不可逆だと。時計の針と同じで決して反対方向には進まないのだと。
自分の中で何かがごっそりと減る感覚を味わったときにはもう遅かった。
セキアの手の中、閉じた状態の魔導書ネムレスからセキアの感情に呼応するかのように光が漏れ出す。
あまりの変わりようにシスメやノイはもちろん、レイニアさえも黙って成り行きを見守る中、
彼女の疑問を受けたクラウズがゆっくりと口を開く。

「……………そうだよ。フェリクスをこの国に密輸してばら撒こうと画策したのも、
亜人二人にレダールを投与して怪物に変えたのも、そいつらにあんたらを襲うよう命じたのも俺だ」

実にあっけらかんとクラウズは己が罪を認めた。
すかさず隣のスターチが血相を変えて口を挟もうとする。

「主様……!」

「で? そんなことを聞いて天下の国家隊員様はどうなさるおつもりなんだ?」

まるで被らなくいい罪を進んで被ろうとする彼を庇おうとする彼女の言葉を遮るように
手でスターチを制したクラウズは、歯をむき出した獰猛な微笑を浮かべて、
やけに分かりやすい挑発をセキアに向けて放つ。
彼が言葉言い終わるより早く、セキアはまるで洪水のように光のあふれ出させる魔導書に手をかけていた。

>ベリオ、レイ、エルト、ALL

2ヶ月前 No.536

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【イザヨイ:ガイアル区画:中央本部:出雲鶴羽の部屋】

「私が見えていることより、見えていないことを探す方が難しい……」

鶴羽にも聞こえるか聞こえないか微妙な音量でボソリと呟き、水晶玉を覗き込む。
ああ、またあの魔道具と接触してしまった。それも今度は衝突は避けられない。本来はそうあるべきではないのに


「せっかく私が遺跡での戦闘を回避させてもこれだ………。
まあ今回は国家隊が管理している旧下水道の中でのことだ…。壊れたとしても私には関係ないことだ」

鶴羽の話をちゃんと聞いていたのか、と言いたくなるほどに、見事にスルーして水晶玉の中を覗き込む。
そして何か思い出したように顔を上げる。

「そうそう、あの遺跡には私が結界を張って封印しておいた……今後国家隊があの遺跡にちょっかいをかけることもなくなるよ。
言う必要はないと思うけど、一応報告しておくねー……」

水晶玉を覗きながら、にゃはははと笑う。
国家隊はあの遺跡をどう利用しようとしていたのかは知らないが、これ以上好き勝手されてはたまらない。そう思い周りに断りもなく遺跡をしたイザヨイなのであった。

≫出雲鶴羽

【白月レイ:区画本部:旧下水道 中道】

自分が遺跡のことを呟いたのを、セキアさんには聞こえてしまったらしく、それに気づいたレイニアさんが、新しく入ったベリオさんたちに説明するようにこの前の遺跡でのことを話し始めた。

「その9つの武器の一つがあの時遺跡であったスターチさん……だった……んですよね……」

あれ、ということは他に8人の魔道具がどこかにいるってことかな。
と考えていると、聞き覚えのある声が下水道内に響いた。遺跡でいっときは味方かもしれないと思って、友達だと思い込んでしまった。レイは今初めて、『その人に会いたくはなかった』と心の底から思った。

「……」

さっきまでせめてレイニアさんの護衛に努めようと、レイニアさんの前に立っていたはずのレイは、いつのまにか後ろに下がっていた。
そして、クラウズさんとレイニアさんと会話を聞いて少し困惑をし始める。レイニアさんは何かを知っている?どう言うことだろう。

そしてセキアさんは今までの所業がクラウズさんたちが起こしたことなのかと問い詰め、クラウズさんはそれを認めた。
さっき会った亜人たちにレダールを使ったのも、フェリクスを国にばら撒こうとしたのも自分たちだと。
そう言い放つクラウズさんをスターチさんは何故か止めようとしてたのが何か引っかかったが、レイはただこれからの行く末を見守ることしかできないのだった。

≧セキア レイニア シスメ クラウズ スタルチア
(返事遅れて申し訳ない。)

2ヶ月前 No.537

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_Hhd

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

一連の騒動から一段落し、少々進んだところで…再び先程のような紙片を発見したセキアが、それを拾い上げて読み上げる。
読み上げた内容から、レイニアとシスメがまたしても追記されたと思わしき文章に疑問の声をあげていた。
「…またこんな所にか…いったい何のつもりなんだ?」
と、疑問の声を上げた所で、ベリオが先の経験から周囲を探るためにも自身の能力の使用を提案してきたが…レイニア達が答える前に状況は動き出した。

「あんたらは…」
聞き覚えのある声に意識を向ければ…そこに居たのは以前、遺跡で対峙した2人組であり…少々のやり取りが終わったところで臨戦体制に移行したスターチやノイ等に応じ、こちらも臨戦体制に移行した所で、クラウズからは意外な言葉が発せられた。
「…教官?」
今まで聞いたことのない声色で、静かに問いを返すレイニアに対し、思わずそんな声をかけてしまうが…その答えは帰るまもなく、セキアもまた普段からはかけ離れた声音でクラウズに問いかけていた。
(どうしたっていうんだ?…らしくない…いや、それ以前に…本当にこれがセキアなのか?)
まるで別人のようなその佇まいに、ついそんな疑問を抱いてしまう。
ここまで同行していた故に間違いなどあるはずはないと分かっているのだが…そんな彼女に気を取られている間に、クラウズの方はあっさりと今回の件における酒販だと明言し、口を挟もうとするスターチを制した上で挑発するかのようにセキアに『どうするつもり』なのかと問いかければ…
(っ!!…何だ…これは…何かの封印か…!?)
これまで見た事も無い様な光をあふれさせたセキアの手元を見れば…『ネムレス』が明らかに異常な光を放っており…『抑え込まれていた何か』が解放されたのだと容易に連想させるものであった。

「…気持ちはわからんでもない…だが少し落ち着け」
その様子に少し気圧されていたが…このまま放置しているのは危険だと、冷静だった思考がそれを良しとせず…セキアの前に出て、軽く遮るかのように手をかざし、制する。
「奴らの目的は分らないが…わざわざ乗ってやることはない…それよりも今自分に何が起こっているか、わかるか?」
そう言ってセキアをクールダウンさせようと声をかける。
…今のセキアは張り詰めた弓に番えられた矢と言っても過言ではなく…何の目算も無しにそれをやらせるのはあまりに危険すぎる。

>ALL

【遅くなってしまい申し訳ない…年号が変わってしまいましたが今後とも何卒よろしくお願いします】

1ヶ月前 No.538

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★iEaLnXoyMd_pXV

【セキア&レイニア&シスメ&ノイ
クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

もはやこの暗い下水道でも明かりが必要がなくなるほど光は大きくなっていた。
強さを増した光の洪水は、それでも尽きることなくあふれ出してくる。
だが、その光も徐々にだが魔導書ネムレスを覆うように収束しつつあった。
その変化を見届けたセキアは、この異常な状態を危険視したエルトの制止の声に小さく首を振って応じる。

「大丈夫だよ、エルト。なんだか今のあたしならすごく冷静に動けそうな感じがするんだ。
驚いた。こんな風に怒りで頭が冷たくなるってこともあるんだね」

にこりともせずセキアは言葉を口にする。別段何が変わったという感覚はない。
魔導書ネムレスをペラペラと捲ってみるも新しい魔術が追加された様子もない。
ただ、身体の底から尽きることなく力があふれ出してくる感覚、とでも言えばいいだろうか。
何がきっかけになったかは分からない。
それでもこの得たいの知れない感覚に、不思議と恐怖や焦りを感じることはなかった。

「よく分からないけど、何かの“力”を無意識に使ったんだと思う。
でも……まだ完全じゃない。これはまだ何かの予兆というか、準備段階な気がするんだ」

いまだにこちらの変化に懸念を隠せない様子のエルトにセキアは小さく笑いかける。
根拠はまるでないが、今ならこの当然降って湧いた力を使いこなせる自信があった。
最初はまだ暴走気味だったこの力も、こうして話をしたことで落ち着いてきたのかもしれない。
魔術は行使する者の精神状態に左右されるものだ。
心に残っていたドス黒い感情も、エルトの言葉のおかげか幾分か薄まっていく気がした。
だが、その短いやりとりが隙となった。
素早くホルスターに収まった拳銃を引き抜くクラウズがセキアの肩越しにエルトの視界の端へと映りこむ。

「おいおい、敵を目前にして作戦会議たぁ随分余裕だな。来なきゃこっちから―――うぉ!?」

あわや引き金が引ききられるといったところで、
金属同士がぶつかりあうようなキン――と澄んだ音が響き渡った。
暗闇を掻き分けるように現れた光を反射する白い鉄片が彼の行動を遮ったのだと遅れて理解が追いつく。
いきなり自分に向けて振り下ろされたそれをなんとか銃底で受け止めたらしいクラウズは驚愕に目を見開いていた。
ここには存在しえないはずの人物。その存在に気圧されたのかクラウズの額から汗が頬を伝い落ちる。

「貴様も敵に背中を見せるとは随分余裕だな、とでも言っておこう」

「あんたは……!」

「ディノア管理官!」

シスメとクラウズの驚愕の声が重なる。
ガキン!と返す刀でそのまま押し切られたクラウズは後方へ跳び、たたらを踏む。
ちょうど下水道の出口のあるほうから悠然と歩み出たのは、
ここエイルス区画の統括管理官であるディノアギスバルガエンズルドその人だった。

「貴様なら必ず出張ってくると思ったよ、クラウズ・フォルマーカー。俺の統括する区画でこれ以上の好き勝手は許さん」

「ディーくん、一人称」とからかうようなレイニアの声に
ごほんと咳払いを一つして居住まいを正したディノアは
「私の統括する区画でこれ以上の好き勝手は許さん」といいなおして、再び刀を正面に構える。
よく見れば、彼の後方には彼の部下と思わしき数名の国家隊員が各々武器を手に待機しているのが見えた。
息もつかせず、再びクラウズへと距離をつめたディノアは二の太刀をあびせようと大きく刀を振り上げる。
それが開戦の合図となった。

「ちっ、スターチ!」「出番だ、フィンブル―――起動せよ、零原の冬」

溶けるように鎌へと自身の身体の形状を変化させたスターチを手にしたクラウズと
魔導具と思わしきディノアの刀がぶつかり、けたたましい金属音を鳴り響かせる。
突然始まった空気を震わせるような剣戟の応酬に理解が追いつかないのか、
シスメは魔導書ベガを開こうとしかけたレイニアへ詰め寄った。

「どういうことなんですか、いったいこれは!?」

何が何だか分らないといった風に血相を変えるシスメに対し、
レイニアはそんな彼女の反応などどこ吹く風で悠々と種明かしを始める。

「あは。この任務自体が敵を欺くフェイクだったということです。
レヴァーンの異端審問官をあぶりだすための。ただの偶然かもしれませんがー、
今回の獣化騒動は何故だか第七候補隊の周りでばかり起こっていましたからねぇ。それにかけてみたというわけです」

良心の呵責というものがないのか、それともわざとこういった態度をとっているのか、
笑顔の中に全ての感情を溶かし込んだレイニアは続ける。

「そして、見事目論見どおり、レヴァーンの異端審問官はおびきだされてくれました。
言うなれば私たちはこの追い込み漁を成功させるための生き餌だったというわけです」

わざとこちらに不信感を与えるような言葉選びを彼女がしていることは
長い付き合いからシスメは理解することができた。しかし、それでも言わずにはいられない。
力なくレイニアの服の襟を掴んだシスメは呟く。

「私たちを……だましたんですか?」

「はい、そういうことです。言い訳は後でさせてもらいますので、今は」

「目前、敵、撃破、優先」

既にその手にしたライフル型の魔導具で標的に狙いを定めたノイがシスメを諭すように呟く。
唇を噛んだシスメは「分かりました」と小さく呟いてからレヴァーンの二人から素早く距離をとった。

「おとなしく投降しろ、レヴァーンの異端審問官。もはや貴様に勝ち目はない」

つばぜりあった二人は至近距離で言葉を交わす。
相手の虚を突いた攻撃が功を奏したのか、一見してディノアの方が優勢に見えた。
お互いの腕力が拮抗しているのか、ときおりギシギシと両者の得物が軋む音はすれど、
クラウズは膝を突いた状態で刀を受け止めた姿勢のまま、
ディノアは刀を振り下ろした姿勢のまま、二人は膠着状態にある。
しかし、何を思ったか突然クラウズは小さく笑いを漏らした。

「………はは」

「なにがおかしい?」

「勝ち目がねぇって? なんであんたにそんなことが分かるんだよ。
そっちこそ分かってんのか? 消耗しきってた遺跡のときとは違う。今の俺は―――」

そこから一転。途端、土煙が舞い上がる。
気付いたときには鋏と化したスターチを振りぬいた姿勢のクラウズと
弾き飛ばされ、下水道の壁面に大きな亀裂を作るディノアの姿が目に映った。

「“万全”だぜ?」

ずるりと左右の水道管から何かが這い出るような音がして、鉤爪のついた触椀を持つイカのような魔物と、
尻尾の先に鋭利な爪を持つネズミの魔物がのっそりと姿を現す。
自分の背中の形にへこんだ壁から身体を起こしたディノアが小さく目配せすると、
後方に控えていた彼の部下がいっせいに魔物を拘束せんとその周りを取り囲んだ。
一気に騒然となる下水道内。その様子をただ黙して聞いていたレイニアは唐突に握っていたレイの手を離した。

「どうしますか? レイさん。これは明らかな異常事態です。
見学者だからといって、この状況です。加勢したところで誰も咎めたりはしません。
それとも、このまま見守るというのでも私は全然構いません。
私の側にいる限りレイさんの身の安全は保証しますよ。さて、どうします?」

どうやらセキアも前線に加わったらしく、
離れた場所から手にした甘味を鋭くイカの魔物へ向かって投擲する姿が見えた。
そんな彼女が起こす爆発音を聞きながら、レイニアは静かな口調でレイに問いかけた。

【こちらこそ投稿ペースが落ちてしまい申しわけございません;
年号が変わっても、今後も当スレをよろしくお願いいたします^^
また、文字数が多いため、文章を二つにわけて投稿しますので、
返レスができていない方はもうしばらくお待ちくださいませ】>レイ、エルト、ベリオ、ALL

【Information:戦闘イベントを開始します。終了条件、詳細はメモ欄をご確認ください】

1ヶ月前 No.539

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内/旧下水道・後道】

レヴァーンの異端審問官クラウズさんとスターチさんの登場で一気に緊張感に包まれていたところに、そこへディノア総括管理官が加勢に来た。

今回の任務はレヴァーンを誘き出すためのおとりだったらしい。なるほど…
それでさっき任務を始める前のディノア総括管理官は少し様子が変だったのか。と思い出していた。

だが向こうもそれで大人しく捕まるつもりはないらしく、鋏へと姿を変えたスターチさんを手にクラウズさんはディノア総括管理官と対峙し始めた。そして先ほどの魔物……もといレダールの影響を受けたであろう亜人の人たちが現れた。
まださっきのアンチレダールは効いていないのか……

するとレイニアさんは、見学者の立場とはいえこれは緊急事態、加勢しても誰もとがめはしない。と言った。
レイはそのレイニアさんの言葉を最後まで聞く前に走り出していた。

「セキアさん!!」

セキアさんんへと手を伸ばして走り出していた。自然と今ここにいる者の中で、パートナーの選ぶならセキアだと思ったのだ。

・>>セキア エルと ベリオ セキア レイニア シスメ ノイ クラウズ スターチ ディノア
(何の武器に変身するかはセキアさんにお任せします)

1ヶ月前 No.540

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★ys4VkMdBE4_Lib

【セキア&レイニア&シスメ&ノイ&クラウズ&スターチ/区画本部内/旧下水道・後道】

数の有利もあってか、思いの他容易く魔物たちはその動きを鈍らせていく。
だが、そうはさせじと攻撃の網をかいくぐったクラウズがこちらに切り込んできた。

『セキアさん!!』

大きな声に振り返ると、こちらに向かって駆けてくるレイの姿が見えた。
迷わずその手をとろうとして手を伸ばし、
指先同士が触れるか触れないかという距離でクラウズが鋭く声を張り上げる。

「スターチ、炎弾! 武器化させるな!!」

どこからともなくクラウズの周囲に炎弾が現れたかと思えば、
数秒と断たず、それは砲弾のような速度で至近距離まで迫ってくる。
思わず腕で顔を覆うも

「私がいることを忘れてもらっては困るな!」

その炎弾はディノアの刀で振り払われた。表面化した焦りがじわりと汗となって頬を伝う。
下手に間合いに入るのはまずい。
先ほどの交戦での失態が記憶として蘇ったというのもそうだが、直感でそう悟った。
そして、何より

(完全にこっちを殺す気で来てる……!)

どうしてそんな風に感じるのか分からない。
ただ、失われた記憶にこびりついた何かが全力で警鐘を鳴らしていた。
間合いに入らず、遠距離からというのが理想だが、かといって自分の魔術では
有効打が期待できないことは実証済みだし、例えレイの力を借りて彼女を銃器に変化させたとしても、
銃など生まれてこのかた触ったことすらない素人の腕前で、どこまで通用するか怪しい。
だったら付かず離れず、あの鋏の間合いに入らない中距離から叩くしか選択肢は残されていない。
頭の中でイメージを固めると、それを自身の魔力に乗せて手のひらからレイへと送り込む様子をイメージする。
やがて、彼女はその姿を変えた。

「おいおい…自称勇者様が扱うにしては随分似合わねぇもんを使うんだな」

こちらが手にした武器を見て、思わずクラウズは呟く。
銀月のようにゆるやかに弧を描く片刃の刀身。セキアの身長を軽く越すような細く長い柄。
黒々とした本体には血管のような毒々しい紋様がセキアの手を中心に波紋のように広がっている。
セキアが手にしたのは、禍々しい大鎌だった。
クラウズの感想を聞いて驚いたのはむしろこちらの方だ。
確かに長い武器をイメージしたが、ここまで毒々しいものを想像したわけではなかったはずなのに。
向こうの殺気に当てられたせいだろうか。いや、それよりも驚くべきは

「なんだろう……いつもより上手くレイの力を引き出せてない気がする」

心にひっかっかる何か。それが自分の力をせき止めていることは分かっている。
それがなんなのか、すぐに頭によぎるものがあった。それは―――

―――セキアさん、お願いがあります。いろんな武器に姿を変えられる私が、レダールの影響で理性を失った時は―――

「………今は目の前の戦闘に集中しないと。レイ、力を貸して」

頭を振って雑念を追い出すと、正面を見据える。
もうとっくに割り切ったと思った確執。それが思考の表面まで浮き上がってくる。
拭っても拭っても消えない汚れのようにこびりついた思考を振り払うように駆け出すと
セキアは鎌と化したレイを身体に密着させるように構える。
押し返され、地を滑る様に後退するディノアと入れ替わる形でセキアは前に出ると鎌を振るった。

「自称勇者の嬢ちゃんには顔を蹴られた恨みがあるからなぁ。
それにスターチの手の火傷もそうだしよぉ……それを差し引いても俺にはもう後がねぇんだ。本気でいかせてもらうぜ」

以前とは比較にならないほどの速度も威力も大きく増した攻撃。
鎌の刃と長い柄を使い攻撃を受け流すもすぐに限界は訪れた。
これ以上の打ち合いは不利と判断して後ろに下がるも、相手もこちらの動きに合わせるように前進してくる。
そしてつばぜりに合いに持ち込むも、圧倒的な腕力差にセキアはたまらず膝をついた。

「ぐぐ……! こっ…の……うぶっ!?」

目前にじりじりと迫る大鋏を何とか押し返そうとするも、間髪いれずクラウズの放った蹴りがセキアの腹部を穿った。
転がるというよりは地面を滑るように壁へと叩きつけられ、一瞬だけ呼吸が止まる。

「下がれ! ルーブ候補官! 貴官の手に負える相手ではない!」

「…っ……っ……ッ げほげほっ!」

そんなことはないと二の句を告げる前に、クラウズの第二撃が二人を襲う。
地面へと振り下ろされた大鋏の余波と飛礫の波が二人を飲み込み、セキアはまたしても地面の上を滑ることになった。
鎌を杖代わりに立ち上がろうとして気付く。先ほど飛来した瓦礫がセキアの右足を覆っていることに。

「まず―――っ!」

幸いにして骨が折れていないようだが、押せども引けども瓦礫から足を引き抜くことができない。
ふと、顔を上げたところで視界いっぱいを埋め尽くす炎弾の群れが見えた。
顔を覆うも突如割り込んだ熱線と透明な板のような防御壁が展開し、その攻撃を打ち消した。
飛んできた方向を見ると魔導書を開き何事か呟くレイニアと、ライフル型魔導具のスルトを構えたノイと目があった。
その隙を見逃さず、ディノアも負けじとこちらの間に割って入り、セキアからクラウズを遠ざける。
3人を相手取りながらも、あぶなげなくその攻撃を捌きながらクラウズは歯をむき出した獰猛な笑みを顔に浮かべた。

「遺跡で花の嬢ちゃんと勇者の嬢ちゃんの力を見せ付けられたときは焦ったが……拍子抜けだな。
この程度ならすぐに片付けられそうだ。悪いが一人たりとも逃がす気はねぇ。
恨んでくれていいぜ、神父らしく祈りくらいは捧げといてやるよ」

>レイ、エルト、ALL

1ヶ月前 No.541

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:急下水道後道】

クラウズさんとスターチさんの妨害もあったがなんとか手を取ることに成功し、セキアさんから流れてくるイメージに沿ってその姿を大鎌に変える。
だけど、姿を変えてすぐに違和感に気づいた。
なんだろう……セキアさんと波長が合わせられない……それに徐々に流れてくる妙な力、なんなのこれ

『今は目の前の戦闘に集中しないと。レイ、力を貸して』

というセキアさんの言葉に返事をする前にセキアさんは敵陣へと走っていった。でも、クラウズさんの方が優勢で、押されている。

セキアさんの魔力を自分の中に取り込み、刃の切れ味を良くしてもそれは変わらない。とうかセキアさんの魔力が取り込みづらくなってる…。どうして!?

そうこうしてると、セキアさんがクラウズさんの猛攻撃を受けてしまった

「セキアさん!!!」

心配そうな声を出してセキアさんを心配する。そしてセキアさんの足が瓦礫で埋もれ、セキアさんが動けなくなったのを見て、即座に武器化を解き、セキアさんの足の上から瓦礫を動かす。

「大丈夫ですか?!セキアさん!!……ごめんなさい。私、うまくセキアさんの魔力を引き出せなくて………でも次こそはうまくいかせますから……落ち着いてください」

再び大鎌に変身してセキアさんの手元にばたりと倒れるように落ちる。

「クラウズさん、スターチさん、
逃すわけに行かないのはこちらも同じです。特にスターチさんには個人的に聞きたいことが山ほどありますから」

大鎌のまま、二人を睨んでいるような鋭い声で告げる。
二人の目的についても、スターチさんたち魔道具たちの話も

≫クラウズ スターチ セキア レイニア ノイ エルト

1ヶ月前 No.542

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_Rb6

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

「…なるほどな…詳細は分らないが…後で調べる必要はありそうだな」
少なくとも、表面上は冷静な状態で自身の状態を説明するセキアに少しばかりの安堵をしつつ、そう返す。
(…何かしらの条件…トリガーを引いたようだが…単純なプラスと言うのは少し楽観過ぎるか)
本人の申告通り、あふれ出ていた光の方も今では大分落ち着いており、感情の方も落ち着いてはいるようだが…
今までのセキアとは明らかに魔力が違う…質も量も明らかに『人並み』などという枠には収まり切れない。
落ち着いた状態でそれだと言うのだから全力であればどれほどの物なのか推し量るのは少々難儀なほどだ。
(…それも…十全であれば、だが)
…しかしその評価もこの但し書き1つで覆る…魔力と言うのはあるだけでは意味がなく…自在に使えてこそだ。

あまり余裕がある状況ではないが、今はまだリスクが高すぎる…そう判断してしばらくは無理をさせないようくぎを刺そうとしたところで…
「ディノア管理官…?」
痺れを切らし、仕掛けようとしたクラウズの機先を制したのは…先刻別れたはずのディノアであり…状況を理解する間もなく、先ほど撃退した2種の魔物を従え、鋏と変化したスターチを手にしたクラウズといつの間にか控えていた部下を含めたディノアとの先頭の幕が切って落とされた。

「まったく…やることは変わらないとはいえ…」
状況を飲み込めぬままに、早々に乱戦状態になった戦場を見てため息交じりにそんな事を呟きつつも、ネズミ型の魔物を囲むディノアの部下たちの緩急に合わせてピンポイントでの魔力弾を撃ち込んでいく。
…相変わらず、同士討ちを恐れた消極的な援護ではあるが…彼らからは文句も要望も特に出てこないようだしそれなりの効果はあるだろう。
そうしている内に背後ではシスメがレイニアに詰め寄ったところで…当のレイニアから返された答えは…
(囮…か…なるほど…合理的な判断ではあるが…な)
と、ある程度の理解はしつつも…完全には納得は出来なかったが、この状況下で仕方のない事だと無理矢理に思考を打ち切る。

戦況は大まかに2つに分けられ…こちらはセキア共々魔物の方に対処していたが…流れがき始めた所でクラウズが強引に突破し、セキアに突撃した所でレイが合流…させじと放たれた炎弾もディノアが切り払い、事なきを得る。
(ちぃっ!!やはりそう来るか!!)
2体の魔物に効力射を加えつつも、合間でセキアらの方に意識を向ける。
(気圧されてるか…無理もないが…)
以前の接触時とは明らかに覚悟が違い…対するセキアは根本的には少女に過ぎず…かけられた意気込みは雲泥の差といえる。
それに加え、レイ共々先程の力の予兆に対応しきれておらず、振り回され気味で早々に危うい場面へと追い込まれていた…幸いにもレイニア、ノイに加え、ディノアがカバーに入った事で事なきを得たようだが…
(援護してやりたいが…まだだ…今は…こちらが優先だ)
逸る気持ちとは裏腹に、行動はよどみなく、的確にネズミ型とイカ型の些細な隙に法撃を加え続ける。
…もはやそれは消化試合じみた戦闘であったが…戦術的には最も確実な方針であった。
(確かにあいつらは…クラウズもスターチも強い…が、所詮個人だ…多数に攻め込まれ、捌き続けられる程出鱈目じゃあないはずだ)
冷静な判断をする思考にしたがい、気を引き締める…こちらの片がつけば、空いた人員で確実に詰めていけばそれで終わりだ。

>セキア ディノア クラウズ レイ ALL

1ヶ月前 No.543

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★CNdRBqQ1ft_IyU

【セキア&レイニア&ノイ
クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

何故か、どうしてか十分な力が出せない。さながら底のないぬかるみに足を取られているような感覚。
瓦礫をどかしてくれる傍ら、申し訳なく謝る彼女を見て、さらにその感覚は強まった。
頭は冷え切って冷静なはずなのに、どうしようもなく胸がもやもやとする。
いや、もう目をそらし続けるのはやめよう。
魔術は想像の投影。心が十全ではない今、どうしてそれが上手くいくというのか。
こうして自分の力をせき止めているのは、他ならぬ自分自身の意思だと気付いていて見ないフリをしていた。
ふっと目の前の喧騒が遠のいていくのを感じる。まだじくじくと痛む腹部を庇いながらも
セキアは立ち上がろうと鎌と化したレイを拾い上げると、その柄を顔に近づけた。

「聞いてほしいことがあるんだ、レイ」

それは痛みからか、思ったよりすっと言葉が出た。まるで腹部の熱が頭へと移ったかのようだった。
ふらふらと酩酊感を増す頭で何とか言葉を紡ぎだす。
本当はすぐにでも戦線に復帰しなければいけないことは分かっているのに言葉が口から溢れて止まらない。
セキアの見ている景色は既に苔むした旧下水道から
入隊試験のとき頭の中に流れ込んできた銃声と悲鳴とびかうレイの過去の映像へと移り変わっていた。

「前に一度レイの力をかりたとき……見ちゃったんだ。レイが昔、ひどい目にあったときのこと」

一度だけ頭の中をよぎった光景。
悲鳴と怒号。そして、彼女の想いさえも共有したかのようなやるせなさと悲しみ。
レイにしか聞こえないような小さな声で話す。
歪む視界で何とか鎌を持ち上げ、顔の正面にくるように持ち直す。

「それからあたしに何ができるだろうってずっと考えてた。
本当はレイの口から聞かなきゃいけないことを勝手に知っちゃったから。
知ってしまったからには、あたしがこの子の悲しみを和らげる存在にならないとって」

自分の英雄願望が行動の裏づけになっていることは知っていた。
彼女をそれを満たす対象としてしか見れていないことにもたぶん、心のどこかで気付いていた。
勇者になる、それだけが今まで生きてきた理由で、過去の記憶が曖昧な自分の唯一の存在理由だったから。
それしか縋るものがなかったから。ただ、最初はそうだと思いこんでいたそれが
徐々に自分の中で形を変え始めていることを知ったのは最近のことだ。
彼女が自分のことをないがしろにするようなことを言ったとき、
それに想像以上に怒りを感じてしまったことにも、それ以上に焦りを覚えてしまったことにも。

「でも、本当は違ったんだよ。本当は……不安だったんだ。
レイは優しいから…巻き込みたくないって思ってくれてるって自分を納得させてたけど、
レイ、何も話してくれないから。いつかふっといなくなっちゃうんじゃないかって」

振り続ける雨と、血まみれの誰か。
頭の中に蘇るのはいつだってあのときの光景だ。覚えのない孤独感が胸を支配していく。
あんな思いは二度と味わいたくない、そう思いながらも口をつぐんでいた思いを一気に吐き出した。

「だから、もうそういうのは嫌だからあたしは――さっきの言葉を取り消すよ。
これからは力を貸してって言わない。これからは、こう言うことにする」

いまだずきずきと痛みを訴えるあばらを押さえながら、鎌と化したレイを支点に勢いよく身体を持ち上げる。

「レイ、一緒に戦おう」

>レイ、ALL



【シスメ/区画本部内/旧下水道・後道】

ディノアの組織する隊のメンバーの包囲網の間を縫うように掃射される効力射は順調に効果を上げていた。
野生の本能か、はたまた無意識的な反撃か、イカの魔物の10本ある触椀による攻撃は
ディノアの隊員達の攻撃を器用に捌き切っていたからである。
しかし、それも今やエルトの攻撃によりキャパシティの限界を超えていた。
的確なショットによって跳ね上げられる触椀、その間を縫うようにして、的確な打撃がイカの魔物を襲う。

『GGY!?』

さすがのイカの魔物もこれには焦ったような鳴き声を上げるも、しかし、次の瞬間 状況は一変する。
イカの魔物が身を翻した途端、エルト達のいるあたり一面を黒い煙が覆い尽くした。
その姿の例に漏れず、先ほども逃走の際に見せたスミによるかく乱。
事前に敵の情報を手にしていたのか、すぐさま風の魔術を起動させるディノア隊の一人だったが、
一瞬の虚をついてその槍のような頭を捻りながら、エルトの前までイカの魔物が躍り出る。
一種の投げやりのような鋭さと速度を持ってエルトを串刺しにせんと迫るイカの魔物。
あと少しで彼のすぐ側まで接近するかというところで、
ガン!と人間の拳大ほどの石が魔物にヒットし、その速度を一瞬だけ鈍らせた。
恨ましげにイカの魔物の視線を送った先には、息を弾ませたシスメが立っていた。

「私……だって……! 第七候補隊の一員……なんです……! ぐすっ……
書記官だからって無視してるんじゃないですよ、こんちくしょーです!」

魔物から殺意ある視線を向けられ、半泣きになりながらもシスメは何とかそう言い切ると、
誰もが唖然と凍りつく空気の中、ようやく息を整えたらしくエルトに向かって声を張り上げた。

「エルトさん! 一番身体の右外側にある触腕についた黒い腕輪を狙って下さい!
そこから大量のレダール反応が検知されています!」

きっと、今回は戦力外であることをレイニアから告げられたときから、
自分にも何か出来ることはないかと考え続けていたのだろう。
書記官としての観察眼と魔導書ダンタリオンの機能を生かして、
人知れず正体不明の敵の情報をシスメは今まで探っていたのだ。
見ると彼女の言葉通り、ナットのような形の六角形型の
黒い腕輪のようなものがイカの魔物の触椀のひとつについているのが見えた。

>エルト、ALL

1ヶ月前 No.544

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:急下水道・後道】

セキアさんはその身を精一杯奮い立たせていた。レイは心の底から頑張れと応援していた。
その時、ふいに聞こえてきた、自分を呼ぶ声。セキアさんが私に話があると、かすかな声で言った。
私はその言葉に耳を傾けた。
いつ攻撃されてもおかしくない状況で、不思議と、今この場には私とセキアさんしかいないかのような錯覚に見舞われた。

そしてセキアさんの口から告げられたことに
私は、衝撃を受けた。
同時にセキアさんから、イメージが流れてきた。それはそう、あの日の光景…国家隊に里を焼かれ家族を殺された…忌まわしい光景が

嗚呼、本当に見られていた。
見せるつもりはなかった。見られたくなかった。だが、見せてしまったのは私の責任。こんないい人を巻き込んでしまうのかと、身体が…鎌と変化している身体がガタガタと震えた。

だけど、その考えはその後のセキアさんの言葉で吹っ飛ばされた。

「……ハハハ…本当はこの任務が終わった後、セキアさんに言うつもりだったんです……私に力を貸してくださいって……巻き込むかもしれない……それでも私一人では決して真実にたどり着くことも、その真実に向き合うことさえできないから……私の方がセキアさんを頼ろうと……利用しようとしていたのに…………」

鎌の剣先からポタポタと雫が落ちる。これはレイが流した涙だった。

「……セキアさん、私からもお願いします……私と一緒に戦ってください」

≫セキアさん

1ヶ月前 No.545

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_l7r

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

(また悪あがきを…っ!?)
終局へと進みつつあった攻防の最中、先刻と同様に煙幕を張ったイカ型に対し毒づきながらも、その姿を逃さぬように目を凝らす。
…そうした所で、イカ型は一瞬でこちらへと狙いを定めており…こちらの対処が追い付く前に、包囲を突破されていた。
(してやられたか…だが!!)
一瞬で回避は間に合わ無いと判断し、次なる手…迎撃へとシフトさせ、最適解を模索…刹那の時間で導き出した最適解は…
(安くは無いが…お釣りは十分出るな…何より時間が惜しい)
あえて受け止め、動きを制限した後に確実な反撃で仕留めるカウンター。
ここまでの大掛かりな仕掛けをした以上、救護要員はそう遠くはない場所に控えているだろうし、即死無いし致命傷さえ避ければどうにでもなる、という打算的な考えあっての事だが…見返りは確かに大きいと判断できた。
故に、淡々と相手の動きを観察し、反撃の手法をリアルタイムに修正していたのだが…

(…何…?どこをみて…シスメ!?)
突如動きを鈍らせ、視線をそらしたかと思えば…続く声から、彼女が何かしらの行動を起こしたと言う事と…同時に、触腕の一本に怪しげな腕輪が付いていると言う事に気が付く。
(まったく無茶をする!!…だが!!)
先の自身の方針を完全に棚上げしている感想を抱きながらも、千載一遇のこの好機を逃すまいと行動に移る。
踏み込むと同時、『瞬幻』を起動…正面から幻体を突っ込ませつつ、自身はその影で『アルカナイザー』を召還…イカ型の眼前に迫ったところで幻体を起爆させ、その隙に腕輪のついた触腕を切り落とさんと振り下ろす。

>シスメ 魔物 ALL

1ヶ月前 No.546

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★osLB3MWV3V_IyU

【セキア&レイニア&ノイ
クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

胸につっかえたものがふっとなくなっていくかのような感覚。
レイが恐怖し、今も彼女を悩ませ続けているものの正体を目の前にして、
セキアは何故か安堵したかのような気分になっていた。
思えば、今までどちらとも相手を気遣うばかりで、
こうして素直に心の内を打ち明けあう機会がなかったのかもしれない。

「うん。えへへ、やっとレイの本心からの言葉が聞けた。
友達なら、迷惑とか、巻き込むとか、利用するとか、そんなことどうだっていいよ。
あたしはレイのことが好きだから、自分のしたいって思うことをするんだ」

この戦場には似つかわしくない気の抜けたようなふにゃっとした顔でセキアは微笑むと、
急に背中越しに伝わった熱に驚いて、慌ててそれを取り出す。

「え、なに、熱っ!? なに、これ……!?」

魔導書ネムレスが、先ほどとは比べ物にならないほどの眩い光を放っていた。
そして、セキアが手にした途端、まるで待ちわびていたかのように
風もないのにひとりでにページが捲れたかと思えば、あるページを境に止まった。
白紙のページにまるで何者かの見えない手によって書き込まれたかのように、赤い文字が浮かび上がる。

――――Arcenciel Burst――――

その様を呆然と見守っていたセキアだが、やがてにっと
どこか挑戦的な笑顔を顔に浮かべると、遠くで大鋏を振り回す敵の姿を目に捉える。

「世界が、あたしに応えた」

確信するかのように呟いたセキアは、ページに浮かび上がった文字を目にしたと同時に
頭の中に流れ込んできた詠唱句を早口で口にしながら、次の瞬間には駆け出していた。




奮戦するクラウズだったが、それでも多勢に無勢であることには変わりなかった。
人間離れした豪腕と難攻不落な城砦のごとき堅牢さ、
いずれも一個人を超越した身体能力にレイニアたち国家隊側も決め手にかけるようだったが、
それでもクラウズの顔には目に見えて疲労の色が目立ち始めていた。

「ダーティーチェーン!」

「うぉっ!? ぐぉお…なんじゃこりゃ、拘束魔術ってやつか!?
スターチ!硬化解除! 今使ってる魔力、全部筋力の強化にあてろ!」

「ですが……それでは!」

「いいから! この鎖引きちぎったらすぐ硬化に切り替える!」

「ディーくん、ノイちゃん、挟撃!」

「もうやっている!」

「右に、同じ!!」

何もない空間から急に実体を持って現れ、身体に纏わりついた鎖を
力任せにむしりとったクラウズは背後からのノイによるスルトの狙撃と
正面からのディノアの剣撃を、要の部分から分裂させ二振りとなった鋏で受け止めようとした
――が、間に合わずその両方の攻撃をそれぞれの腕で受け止めた。
生々しい被弾の音。打ち込まれた熱線により、もうもうと黒い煙がクラウズを中心に立ちこめる。
だが、鋭く風を切る音がして煙もろとも閃く鋏の一撃がそれをなぎ払った。

「いっ…――てぇなぁ!!」

僅かに腕の薄皮が切れて血が滴って入るものの、ぎりぎりで硬化が間に合ったのか、
クラウズは右腕でディノアの白刃を受け止めながら、空いた左手に握り締めた
鋏の片割れを使って再びディノアを壁際まで弾き飛ばす。
その一瞬の隙を逃さず、クラウズは間髪いれず右手に握り締めた鋏の片割れを鋭くノイに向かって投擲した。
予想外のタフネスさを発揮するクラウズ。その一瞬の対応の遅れが明暗を分けた。
迫る黒鉄の裁断器。しかしその凶刃は―――

「うぉりゃああ!!」

気の抜けるような掛け声と共に白月と見まがうほどの眩い一閃が阻んだ。
視界に広がる炎の幕と、振り切られた白い刃にノイの赤い瞳が驚きに見開かれる。
それらの所有者は、悠々とした仕種でクラウズに刃の切っ先を突きつけると
不遜な、だがそれでいて迷いの晴れたような、
どちらかと言うと何も考えていなさそうな能天気な笑顔を浮かべると口上を口にし始める。

「あたしは、白月を纏いし猛き綺羅星! 有明月(ありあけづき)の勇者セキア・ルーブ!!」

その女は背中にたなびく炎のマントを翻し、

「窮地に覚醒する秘められし力!
そして、真の勇者は遅れてやってくる。まさしくセオリー通りってわけね!」

見る人によれば思わず手が出てしまいそうになるような
鬱陶しさ全開のドヤ顔で、瞬時にその場の空気を凍らせたのだった。

>レイ、ALL

【information:セキア・ルーブのプロフィールが更新されました】




【シスメ/区画本部内/旧下水道・後道】

シスメの妨害により僅かに軌道は逸れたものの、彼女の存在も、その攻撃も
イカの魔物にはさして脅威には映らなかったらしく、標的をエルトに絞ったイカの魔物は
そのまま勢いを殺すことなく宙をすべり、そして、
その鋭利な頭の先端は、狙いどおり正確にエルトの胸部を貫いた―――かに思えた。

『GGGYYYY……GY?』

今しがた刺し貫いたものにさして手ごたえがないことに気付いたのだろう。
一瞬だけその身体を固くするイカ型の魔物だったが、
それこそが彼の術中であったと気付く頃には何もかも遅かった。

『GYAAAAAAA!!?』

炸裂する空蝉の体。
頭を突き刺したのが仇となったのか、それが炸裂したのが目の近くだったということもあり、
完全に視界を奪われたイカの魔物は闇雲に触椀を振り回すも、
抵抗空しく腕輪のついた触腕は切り落れ、ぼとりと地に落ちた。

『■■■■■■■■■――――!!』

血走った目を激しく動かしながら、怒号とも悲鳴ともつかぬ叫び声を上げながら地を転がり回るイカ型の魔物。
しかし、急にゼンマイの切れたおもちゃのように、動き鈍くなったかと思えば、しばらくして静かになった。
やがて、魔物の全体が光に包まれたかと思うと、まるで映像を巻き戻すかのように
そのシルエットが魔物から人の形へと変化していく。固唾を飲んで見守る中、
やがて完全な人型となった元魔物の姿を目の当たりにして、最初に声を発したのはシスメだった。

「え……? これは………人樹(エント)族?
レダールの影響を受けていたとはいえ……なんで、人樹族がさっきみたいな水生生物型の魔物に?」

そこに倒れて気を失っていたのは、額から角のように
枝葉の突き出ているのが特徴的な人樹(エント)族の少女だった。
変化後とあまりにかけ離れた正体にしばらく言葉を失っていたシスメだったが、
思い直したようにずり落ちかけた眼鏡を指で持ち上げると、すぐさま人樹の少女へと駆け寄った。

「この子を安全な場所まで運びます。
レダール被害者の搬送はこちらは任せて、エルトさんは向こうの援護に向かってあげて下さい。
どうやらディノア管理官の隊員さん達の方もうまくいったみたいです」

人樹の少女の唯一の外傷ともいえる右手首から先が血塗れと
なっているところを包帯で止血しながらシスメはエルトに呼びかける。
見ると、シスメの言葉通り、彼女の言葉を聞いていたのか
ネズミ型の魔物の腕輪の破壊に成功したらしく、向こうの隊員も猫型亜人種の少女を背負っている姿が見えた。
こちらは大丈夫だと頷いてみせる傍ら、シスメはふと思い出したようにエルトを呼び止めた
その顔には心なしか不機嫌な感情が見え隠れしている。

「それとこれは個人的なことなんですけど」

唇を尖らせたシスメは片方の手を腰に当てながらエルトの眼前にひとさし指をつきつけた。

「さっき見てましたけど一か八かの賭けにでるのは最終手段にしてくださいね。
その…たぶん、勘ですけど、エルトさん、さっきなんかそういう危険なことをしようとしている顔をしてました。
私も人のことは言えないですけど、もっと危険な何かをエルトさんはしようとしてたように感じました。
相打ち狙い…とか、そんな感じの。いいですか、今度そんなことをしようとしたら
書記官権限を乱用してエルトさんの内心点を下げることもある……かもしれませんからね」

一息にそう言い切って満足したのだろうか
「まったくレイニアさんといい、今のエルトさんといい…どうしていつもいつも自分をないがしろに……」と
いまだ怒り収まらぬといった調子でぶつぶつと文句を口にしながらも
そのままシスメは人樹の少女を担いで、激戦区から遠のいていった。

>エルト、ALL

1ヶ月前 No.547

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_l7r

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

(…とった!!)
振り下ろした得物から伝わる確かな手ごたえと断末魔の如く発せられた聞きなれぬ奇声から、見事に目論見を達成したことを察する。
「あっちは…もう片付いたか」
続けてネズミ型の方に意識を向ければ…そちらも既に片が付いたようで、戦闘の気配は既に消息していた。
(…あっちは腕輪の破壊という形になったか…確かにそうすべきだったか…だが…収穫はあった…か)
咄嗟の事とは言え、切り落とすと言うのはいささかやりすぎだったかもしれない…そう考えつつも、切り落とされた触腕から転げ落ちた腕輪をひとまず回収し、簡易的な封印魔術を使ってから『ストレージ』へと仕舞い込んでおく。
(…ただのガラクタに成り下がってるかもしれないが…調べれば何かわかるかもしれないしな…後で教官に提出するべきか)
冷静にそんな事を考えていた所で、イカ型の方も元に戻ったようで、その様子を見ていたシスメの声に反応し、そちらに意識を戻す。

「樹人?…いくら何でも関連性が無さすぎるな…」
疑問の声にそう反応する…ネズミ型の方もなぜかネコ型亜人という、真逆と言える変化だったが…それでも大枠で区別すればわからない話ではなかったが…
(…今考えても仕方のない事か)
多少考えた所で結論にはたどり着かないと判断し、早々に思考を打ち切る。
その直後に援護に向かってやってほしいと、シスメの声が聞こえ、了解の意思を伝えようとしたところで…
(…ん?…なにかあったのか)
何やら不機嫌そうなシスメを見て、のんきな事を考えていたら…
「…な…何の事だろう…かな?」
突き付けられた指から逃げるように明後日の方角へと逃げていく視線…一応考えあっての事だと反論すればよかったのかもしれないが…残念ながら開き直れるほど図太い神経はしていなかった。
(確かに見てる方からすれば心臓に悪かった…かもしれないか…だが…)
…そんな此方の心情はさておき、ひとまずは言うべきことを言いきり満足したようで、樹人の少女を担いで戦線から離れていった…去り際にも何やら不満そうに呟いていた事から完全になったHしたわけではないようだが。

(…さて…後残るは)
思考を切り替え、クラウズを包囲している隊員たちの方を見やれば…どうやらセキアの方は何かを掴んだようで、その背に炎の魔術と思わしきマントをたなびかせ、対峙していたようだ。
(どうやら折り合いはついたようだな…なら、心配する事も無い)
完全に使いこなせるとまではいかないようだが…振り回されると言うような事はないだろう…それよりも気になるのは…
(ちょっと目を離した隙に妙な空気になっているな…)
全員がなんとも言えない空気の中、互いに牽制しあう…と言えば聞こえはいいが…実際は呆気に取られている中、セキアだけが張り切っている様子を見て、つい先日の出来事が思い起こされる。
(あー…これは…気にしたらロクな事にならないな?)
先日の出来事からちゃんと学習したようで…特にツッコミを入れるでもなくフォローするでもなく…ただ状況に即した行動を実行する事とする。

「…残るはあんた一人だけだ」
決して少なくはない負傷を負っているクラウズに対しそう告げる。
「勝敗はもう見えている…これ以上の戦闘は無意味だ」
当回しな降伏勧告を行うも…内心ではこの行為こそ無意味であると悟っていた…これで大人しくなるようではここまでの事態になどなるはずもない。
「だからこれで最後だ…大人しく縛につけ」
それでも、最後までそう問いかける避けられる争いなら避けれるに越した事はなく…何より…これ以上戦闘を続けると言うのであれば互いにただでは済まないだろう、という漠然とした予感があった。

>シスメ クラウズ ALL

1ヶ月前 No.548

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:旧下水道 後道】

本心を言い合ったあとセキアさんから力がみなぎっていた。それを感じ取ったレイは、セキアさんの力を最大限に引き出すことに専念した。自分の中にセキアさんの魔力を取り込み、その魔力に自分の魔力を上乗せし、鎌の刃に魔力を込める。すると鎌は白く輝き始め、それはまさに夜空に浮かぶ白い三日月のようになった。


セキアさんが炎のマントを身にまとい、颯爽と敵の前に立ち決めポーズをする。

その決め台詞にレイは素直に
「おー!!!」と感心していた。

「クラウズさんスターチさん、これは個人的な意見ですが、私は今でも……できればあなた達と戦いたくない、傷つけたくはない、話し合うことはできないのかと、思っています。
この状況ではきっとあなたたちに勝算は限りなく少ないと思います。お願いです!降参してください!」

鎌のまま、目の前の二人に語りかける。
この声はテレパシーのようにセキアさん、クラウズさん、スターチさんそれぞれの脳に直接聞こえているはず。

≫セキア スターチ クラウズ ノイ レイニア エルト

30日前 No.549

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★nSKXBIMJke_IyU

【セキア&レイニア&ノイ&クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

『…残るはあんた一人だけだ』

エルトの声が急に静寂を取り戻した戦場に響き渡った。
汗の変わりに、頬からぽたぽたと血を流すクラウズはそれを拭おうともせず、焦点のぶれかけた瞳で彼を見る。

「へっ……そう、だな……確かに後は俺とスターチだけだ。
よくやってるよ、あんたらは。さすがはアスールの国家隊様ってところだ」

『勝敗はもう見えている…これ以上の戦闘は無意味だ』

「ああ…全くもってそのとおりだな。いくら俺が強かったとしても体力が続かねぇ。
足の震えがさっきから止まらねぇし、右手の感覚だってもうねぇ。たぶん俺はもう詰んでるんだろうよ」

頭上から降りかかる彼の言葉に何度も同意するかのように頷いたクラウズは、
両手に握り締めた鋏を杖に、ぐいと体を持ち上げる。
しかし、今発した言葉とは裏腹に、クラウズは精一杯、口端を吊り上げて見せた。
ぜぇぜぇと荒い息を繰り返しながらも、その薄緑の瞳を睨み返す。
そして、

「なぁ、にいちゃん。あんた自分の命より大切な人っているか?」

そんなことを口走った。

「そいつがひとたび危機に陥ったなら、何をおいても一番に駆けつけ、
たとえ、あらゆる苦悩、世界中の悪意をこの身に受けることになったとしても守る。そんな存在だ」

たたらを踏みながらも何とか立ち上がったクラウズは、口の中の血溜まりをぺっと吐き出すと続ける。

「前に遺跡で会ったとき、俺がレヴァーンに仕えてる理由が聞きてぇとかって馬鹿なこと言ってたよな?」

クラウズは視線は今も黒鉄の銃器の照準ごしにこちらを見守る片言の従者の方を向く。
何故だか戦闘中の張り詰めた様子から一転、ふっと表情を柔らかくしたクラウズは
自分が吹き飛ばした手ごろな瓦礫の上にどっかりと腰を下ろした。
今は攻撃の意思はないと判断したのか、ノイはゆっくりと照準から目を離すと彼の言葉に無言で首肯して見せた。

「俺が戦う理由は、それだよ。妹を人質にとられてる。義理の妹だが……俺の命の恩人だ」

何を思ったか鋏を地に突き刺し、懐から煙草を取り出したクラウズは、それを咥えるとマッチで火をつけ始める。
白煙がゆっくりと天井に向かって伸びていくのを見ながら、彼は言葉を続けた。

「あんたらをここで全員始末すれば、妹は晴れて自由の身になるって寸法だ。
ま、あの仮面の嬢ちゃんのことだ。どうせ嘘だろうが、
どのみち俺に他の選択肢はねぇ。拒否すれば妹は死ぬ」

まるで最後の晩餐を楽しむかのように、しばらく煙草を燻らせていた彼だったが、
まだ半分以上残っているそれを携帯灰皿に押し付けて消すと、
地面に突き刺したままの鋏を引き抜いて肩へと担ぐ。
息が整う頃には、その表情は再びレヴァーンの異端審問官のそれへと戻っていた。

「同情したか? だったら、俺のために死んでくれ。俺が勝つか、あんたらが生き残るか、道は二つだ」

交渉の余地はない、とその瞳が語っていた。
既にその気配は察していたのか、ディノアもノイもセキアも、すぐに武器を構えなおす。
再び緊張感を増す戦場。そんな中、凛とした声が響いた。

「嘘ですね」

「ああ?」

「その顔は、自分を罰したがっている顔です」

くすんだ色の右目に白い魔法陣を浮かび上がらせたレイニアと同様に右目に白い魔法陣を浮かびあがらせたノイ。
五感共有魔術(センシティブリンク・マジック)。
ノイとの視界の共有によってレイニアはクラウズの表情を読み取ることが出来たのだ。
くすんだマリンブルーの視線がノイの瞳越しに彼を射抜く。
クラウズが痛いところを突かれたであろうことは誰の目にも明白だった。

「は……はは、何をいうかと思えば。狼の嬢ちゃんがそんなロマンチストとは思わなかっ―――」

明らかな動揺が見え隠れする表情を隠そうともせず
茶化すように肩をすくめたクラウズだったが、そんな彼の言葉を遮るようにレイの言葉が差し込まれる。

『クラウズさんスターチさん、これは個人的な意見ですが、
私は今でも……できればあなた達と戦いたくない、傷つけたくはない
話し合うことはできないのかと、思っています』

「なんだよ……ああ、うるせぇな……うるせぇ」

レイがこちらに注ぐ視線に耐え切れなくなったのか、目に見えてクラウズの狼狽はひどくなっていく。
片方の手で顔を覆ったクラウズは、レイの言葉を振り切るように何度も何度も首を振る。

『この状況ではきっとあなたたちに勝算は限りなく少ないと思います。お願いです!降参してください!』

「うるせぇ……うるせぇってんだよ!!
なんだんだよ、あんたらは。そんな目で俺を見てるんじゃねぇ!!
俺は敵だっつってんだろ。 今さら期待させてんじゃねぇ!
希望はもうねぇ! それを今から俺が証明してやる! スターチ!!」

完全に取り乱した様子のクラウズは鋏からあふれ出す濃度の高い余剰魔力の中に身を躍らせながら突っ込んでくる。
二人のやりとりをただ黙して聞いていたセキアは、
手の中にあるレイに語りかけるように、強く鎌の柄を握り締めた。

「レイ、絶対止めよう。
あたし達なら絶対出来る。レイもまだあの二人に言い足りないことあるでしょ。
あたしもなんか今の聞いててだんだん腹立ってきた」

>レイ、エルト、ALL

22日前 No.550

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:旧下水道・後道】

クラウズさんの妹さんが人質に取られている。
この戦いを拒否すれば、妹さんの命がない。
それはどうしようもない現実だった。
そしてレイは思ってしまった。
今、確実にクラウズさんには勝機はない。クラウズさんが負ける未来しか見ないこの状況で、もしクラウズさんが私たちに負けたら
きっとクラウズさんの妹さんは用済みとなって殺されてしまうかもしれない。
降参したとしても同じことかもしれない。

「…セキアさん。私は、クラウズさんもクラウズさんの妹さんも助けたいって思ってます。
この考えがいかに甘いのかも重々承知してます。正直、どうすれば二人を救えるのかまったく見当がつきません。
でも、目の前で助けを求めている人を見捨てることなんて私にはできません!」

静かに、セキアさんに語りかけた。
自分の魔力とセキアさんの魔力を最大限に引き上げ始め、鎌の刃は熱をおび、シュワーと蒸気のようなものが出始めた。

「セキアさん!私のワガママのために戦ってください!!」

≫セキア クラウズ スターチ エルト レイニア

21日前 No.551

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★PFwEaozfm2_IyU

【セキア&レイニア&ノイ&クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

響き渡る無数の剣戟が鼓膜を通して伝わってくる。力の入らない腕で鋏を振るい、それを弾き返す。
もちろん、そんな体でいつも通りに鋏を扱えるわけもなく、
ひとつ受ければ姿勢は崩れ、そこを狙うように剣戟と熱線が襲う。もうほとんど視界はぼやけて使い物にならない。
一瞬遅れて鋭い痛みが次々と襲い掛かり、皮膚を貫いて脳が揺さぶられた。

(いてぇし……熱いし、苦しい……ああくそ、ほんとなにやってんだ)

お前はもう十分やったよ、と心の中で怠惰な自分が微笑みかける。
確かに最良のコンディションとは言いがたい。
鋏を握りなおせばそれだけで腕が痛み、前転で攻撃を避けるたびに足と背骨が悲鳴を上げた。
さっきからずっと荒い息がとまらないのに、その音さえもノイズのようにかすんで聞こえない。
しかし、まだ動ける。動けるなら、まだ戦える。ならばここで止まる理由はない。

「ぐっ…ぅ…ああああああああああ!!!」

かすれた咆哮が下水道内に反響する。
あくまでこちらの拘束が目的なのか、致命傷はない。だが、確実に体力は底をつきはじめていた。
がむしゃらに突っ込み、切っ先を突き出してから、鋏を左右に分解して切り払う。
こちらを挟み込むように突っ込んできたレイニアとディノアをその攻撃によって
大きく後退させたクラウズはその奥で鎌を構える一人の少女に向かって駆けた。
これは一種の賭けだ。この隊の仲間内の結束が高いのは知っている。だからそれを利用することにした。
卑怯と罵られようと構わない。今までずっとそうしてきたのだ。痛む良心などとうに切り捨てている。
新たな力を発現したことによって力は未知数だが、まだ使い慣れてない今が好機だ。
確実に弱いところから狙う。腰を低く落としたクラウズはその手に握り締めた鋏に視線を落とした。

「スターチ……いま残ってる魔力、全部肉体強化に回せ」

驚きにかすかに鋏が震えた気がした。

「そんなことをしたら主様の体が……!」

「ああ、知ってる」

「………っ、勝機は、あるのでございますか?」

「ったりめぇだろ。
こいつら倒してミールの危機も救ったら今夜は酒盛りといこうや。簡単だろ、なぁ?」

血相を変えるスターチを説き伏せて走る。走る。走る。
いつもよりとても長く感じる助走を終えて、ようやく二人は彼女たちの元へとたどり着いた。

「やっぱり最後に立ちふさがるのはこの二人ってか。
花の嬢ちゃん、自称勇者の嬢ちゃん。悪ぃが、あんたらを人質にとらせてもらう」

呟いてから一閃。愚直にも、だが、今もてる最大の力をもってしての効果的な一撃。振り下ろしが二人を襲う。

「おにーさん、それ……すごい悪手」

しかし、落ち着いた表情で呟いたセキアは避ける素振りも見せず鎌を縦に構えると、
そのまま柄に沿わせるようにして、鋏による一撃を下へ受け流した。
振り下ろされた鋏はそのまま地面を穿ち、散弾のように瓦礫を撒き散らすも、
セキアは鎌を回してそれらを弾き飛ばすと、背中に出現したマントのような炎の幕に鎌の刃を巻きつける。
そのまま回転の勢いを利用して鎌を胴のまわりで一周させたセキアは、
大きく横なぎに刃の背をクラウズの右足に打ち付けた。

「ッ……!!」

炎のマントを巻きつけた刃が何度もフラッシュを焚いた様な光を撒き散らし炸裂する。
右足全体のバランスが大きく崩れ、クラウズはそのまま膝をついてしまう。
立ち上がろうと動かせば、つまづいて上手く立てない。
今の一撃で神経まで焼かれたかのように足に力が入らなくなった。
痛みはない。だが、動かせない。だが、それでもなお、
彼は無理やり動かない右足を突っ張り、左足で踏み切り、牽制するように大きく鋏を振るった。
もはや攻防は意味をなさなくなっていた。
攻撃するたびにこちらも怪我を負うが、もはやそんなことに構って入られない。
さっきから聞こえるこのノイズはさっき弾き飛ばした二人の足音だろうか、
だったらもうゆっくりはしていられない。動かなくなった右足を引きずりながらも、
クラウズは再び上段へ鋏を構えなおす。
そんな中

「ねぇ、おにーさん」

突然、だらりと無防備に構えをといた少女の姿に、クラウズはあっけにとられた様子でその目を見開いた。

「さっき、レイニー教官が言ってた嘘だって言葉。あれ、図星だったんだよね?」

セキアの言葉に嘲笑するかのような忍び笑いを漏らすクラウズ。
だが、その顔はいつもと比べて演技臭さを隠せていない。

「ああ? 今さら何を言うかと思えば……付き合いきれねぇなぁ。
俺が自分を罰したがってるって? おセンチなことだなぁ。
勝手に分かった気になってろよ、これだから世間を知らねぇ甘ちゃんは―――」

「おにーさんは最初から勝つ気なんてなかった。そうでしょ?」

「違う!!」

満身創痍の余裕のなさがそうさせるのか、吼えるような声でクラウズはセキアの言葉を否定する。
だが、セキアは構わず言葉を続けた。

「おにーさんは死に場所を求めてた、そんな気がするんだよ。そんな目をあたしは昔、見た気がするから」

言葉を失ったクラウズは無言のまま再び鋏を構えなおす。
それを決別だと理解したセキアは

「おにーさんも鋏のおねーさんも死なせない。
レイに聞きたいことがあるように、あたしも二人に聞きたいこと言いたいことがあるんだ。
だから、次で終わらせる」

クラウズが駆け出すのとほぼ同時に大きく一歩を踏み込んだ。

「ね、レイ。あたしが飛び上がったらこの下水道の中で振り回せるぎりぎりの大きさの、
出来るだけ大きな剣になってくれないかな。
もういいかげんあったまきた。ああいう分からず屋には一発キツいのをくらわせてやらないと」

そういうが早いか鎌の刃から背中へと戻った
炎のマントの一部が炸裂し、セキアは下水道の天井へ届くほど高く飛び上がった。

>レイ、エルト、ALL

11日前 No.552

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_l7r

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

(…なんだ?…こうもあっさり?)
こちらの勧告にある程度の理解はあったのか、一時的に抵抗を止め、満身創痍な身でありながらも無理矢理にその口角をあげ、こちらを見返してきた。
(…いや、これでいい…これでいいんだ…今なら誰も死なないで…誰も犠牲にならないで済む)
拍子抜けする結末ではあったが…クラウズも自身で分かっている通り、これ以上の抵抗する事は難しく…どう転がるにせよ、この状況を変えるならば一度刃を納めるのは選択肢としては十分にありだろう。

「それは…」
だがしかし…やはりと言うべきか、こちらのそんな甘い考え通りにはいかず…クラウズの口から語られたのは、思いもよらぬ問い掛けと、決して引けぬ理由であった。
(くそっ!!…なんで…なんでそんな事が平然と…っ!!)
前途の問いに関する答えは…確かに居た…確かにかつては居たのだ…だからこそまだ間に合うと言うのであれば…それを助ける方法があると言うのであれば…何とか力になりたいと思ってしまう。
「…そうだとしても…やらせるわけには…いかない」
しかし、それでもこの場の全員の命と天秤にかける訳にはいかない…それを望むと言うのは…あまりにも…あまりにも対価が大きすぎる。
不意の問い掛けに呼び覚まされたかつての慟哭…人質という手段で死地に駆り出す黒幕への怒り…そしてそれに対し有効な手段を持ちえない自身の不甲斐なさ。
その他多数の感情が渦巻き、混ざり合い…それでも決してまとまりきれないその坩堝のような感情に無意識のうち、右手が自身の胸を伸び…
「やるしか…ないというのなら!!」
渦巻く感情に軋む心を無理矢理に繋ぎ止めるように自身の胸を一度強く握り込み、理性と使命感で無理矢理に理屈をひねり出し、縛り付ける。
もはや問答の余地はない…覚悟を決めた所で…思わぬ指摘に、流れが変わる。

(…嘘…だと?)
ノイを通じ、クラウズを観察していたレイニアからもたらされた指摘…それを受け、クラウズは明らかに狼狽していた。
(…なら…一体何があいつを駆り立てているんだ?…命を捨てるような…そんな覚悟が)
考える間にも状況は進み…再度の戦闘が始まったところで、出遅れながらも戦闘に参加しようとしたところで、クラウズが賭けに出た。

「やらせると…っ!?」
包囲を抜き、セキアに迫るクラウズに慌てて迎撃を試みようとするも…その動きは今までの比ではなく…一気に肉薄したクラウズは既にその刃を振り始めていた。
(間に合わ…ない…!?)
このタイミングでは間違いなくセキアを巻き込む…そう判断してしまったが故に完全にその動きは止まってしまう。
…それは1秒にも満たない物ではあったが…戦闘においては致命的な時間であった…しかし
(っ!!…何が…)
突如発生した閃光によって…セキアの迎撃のために取られた行動によって引き起こされたものであったが…麻痺した視覚が戻った時に見えたのは…もはや死に体とも言って差支えのない状態のクラウズと構えすら解いてそんな彼に言葉をかけるセキアの姿であった。
…おそらくは次が最後の打ち合いになるのだろう…そんな事を漠然と感じ取りながら、援護する事も忘れて、共に構えに入った両者に視線を釘付けにされる。
(セキア…レイ…お前たちならば…この男を止められるか?)
瀕死のクラウズはもはや何が致命傷になってもおかしくはなく…ただ見守るしかない状況で固唾を飲んで見守る。

>クラウズ セキア レイ ALL

11日前 No.553

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ/エイルス区画本部/急下水道・後道】

クラウズさんは、最後の力を振り絞ってこちらへと突撃してきて、私とセキアさんを人質にしようとした。
だけど、その作戦はセキアさんが冷静に対処したことにより、失敗する。そしてセキアさんはさっきレイニアさんがクラウズさんに言った言葉が図星だったのでは?と言及する。

私もそう思う。クラウズさんは背負わなくていい罪を背負い、その罪に対して自分を罰しようとしている。

セキアさんが私に大きな大剣に変身してくれと言ってきた。私はコクリと鎌の中でうなづいた。
セキアさんが高く飛び上がった瞬間、レイの体は光り輝き、その姿を大剣へと変えた。鏡のようピカピカの銀色に青紫色の宝石が散りばめられた柄、刃は空気すらも切れそうなほど鋭い大剣。さぞかし重いのかと思われるかもしれないが、恐らく心の波長が合わせられたセキアには、竹刀くらいの軽さに感じていることだろう。

「私、これを使うの少し怖かったんです。……でも、セキアさんが一緒なら怖くない……今なら……」

そういうと大剣の刃の峰の部分に一枚のお札が現れた。それはあの遺跡の調査前に配られた「対象のトラウマを120%凝縮し引き出して精神的攻撃を与える恐怖のお札」だった。
あれほど自分に貼って使うことを拒んでいたレイは、自らにその札を刃に貼った。

「っ……」

脳裏に、次々にやられていく同胞、お母様の悲鳴、一面焼け野原になった村、村を襲った国家隊の軍服をきた男、いつ殺されるかわからない恐怖を抑え、街の隅で隠れ住んでいたこと、とある盗賊団に捕まり奴隷のように使われ捨てられたことなど、今まで味わった悲しい過去、辛い過去が鮮明に流れてくる…。正直悲鳴をあげたいくらいだった。でも……今の私にはセキアさんもいる大丈夫、耐えられる。

「この大剣でクラウズさんに一撃でも当てることができれば………戦闘不能にすることはできるはずです。
本当は何かあった時の護身用だったのですが、こんな形でお役に立てるなんて……」

≫セキアさん エルトさん レイニアさん クラウズさん スターチさん

9日前 No.554

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・後道】


ベリオの言葉を遮るようにして現れたのは、聖職者然とした格好の見知らぬ男女だった。男が発した台詞と他のメンバーの反応を見るに、二人は第七部隊と対峙したことがあるらしい。
『クラウズ』と名乗る男はその服装に似合わずフランク過ぎる言動を取っており、聖職者らしくないサングラス男、という第一印象をベリオに与えた。それとは対照的に、彼の後に『スタルチア』と名乗った女性は、短い自己紹介と共に此方に軽く会釈をしてきたため、ベリオも思わず「あっ、ど、どうも…」と会釈を返してしまう。敵に頭を下げるとは何事か、と自らの理性が叱ってくる気がするが、ベリオの性格上、仕方の無いことだ。それはさておき、彼女は丁寧で冷静な女性、という第一印象が彼に与えられる。尤も、彼女は主人のことになると修羅と化す場合もあることを知らないのもあるが…。
そして語られる、聖職者(?)二人が例の魔物二体にレダールを投与したという事実(それを聞いたスタルチアの反応が少々怪しいが…)。そして、その事実に対し、初対面の頃には想像もしなかった、怒りの感情と、その手に持つ魔道書の光を溢れさせるセキアの姿。
怒りを見せるな、それでは敵の思う壺だ。そう窘めようとベリオは空いた片手を彼女に伸ばしかけたが、再び歪みかける視界に阻まれ、その手の指先は自らの眉間に当てられた。
その間にレイとエルトがセキアの怒りを鎮めようとしてくれたらしく、気が付けばセキアの溢れんばかりの感情と光は鳴りを潜めていた。その直後、クラウズらとの戦闘が始まろうとした瞬間、彼を背後から攻撃する者が現れた。此処には本任務のメンバーが全員いる。ならば一体何者が…?そう思いつつ、先程の下水道全体を照らさんばかりの膨大な光によって闇に慣れきっていない両目を凝らして見れば、その人物の姿が確認できた。それは。

「なっ……ディノア管理官殿!?何故貴殿が此処に…!?」

目を見開き、多少シスメやエルトたちと似たような言葉を口にしながら驚く。何故?何故この場に居ないはずの管理官殿が?__その答えはすぐに、レイニアの口から語られた。どうやらこの任務、目の前の二人を誘き出すための囮だったらしい。そんなこととはつゆ知らず、馬鹿正直に任務を果たそうとしていたベリオは、「え?…は?…!?」と一人間抜けな声しか出なかったものの、すぐに気を取り直し、冷静に現場を見据え、蒼紅の拳銃を構える。
これが囮ということは、恐らく自身が護送しているフェリクスも囮ということになりそうだが、任務前に中身を見せて頂いた以上、本物の可能性もある。正規の任務とは言い難いが、途中でこれを放り出す程、自分は無責任ではない__と思う。
改めて、クラウズたちとの戦闘が始まり、すぐに中道辺りで逃した(そしてベリオの大切な物資を台無しにさせられた)魔物二体までもが現れる。
あの時に身体の異変を感じた今、無駄に魔力を消費する訳にはいかないため、付与する魔力を最小限に抑えた状態で(どういう訳か、彼の拳銃は魔力無しでは役立たずの模型同然なのである)、且つ負担をかけ過ぎないように気を付けつつ、クラウズらよりも魔物たちを優先的に相手取り、弾丸で牽制していく。
__そして、そうするにつれて視界が歪んで見える感覚も徐々に増えつつあった。

「っ…!…まただ……くそっ」

『コキュートス』の弾倉を交換しつつ、誰にも聞かれないよう小声で悪態を吐くベリオ。一度不調を感じてしまった所為か、それとも慣れない実戦によるストレスの所為か、過去のWそれWよりも早くWそれWは進行しているように感じる。気になれば気になる程、段々戦闘に集中することが困難になってくる。故に、周りで起きている多少の状況に意識を向ける余裕も無くなりつつあった。
丁度その時。

『■■■■■■■■■――――!!』

如何とも形容し難い叫び声が辺りに響き渡る。それはベリオの耳にも嫌という程入ってくる訳で、ハッと周囲に気を戻せば、エルトがイカ型魔物の腕輪付きの触腕を切り落としたところだった。
その魔物は一頻り大きくのたうち回った後、そのままグッタリと動かなくなった。
まだ余力がある可能性も考え、その後も拳銃を下向きに構えつつ警戒していたが、どうやら今の一撃でトドメだったらしく、魔物の身体が光り輝き、徐々に人型の何者かの姿へと変化していく。
但し__光から出てきたのはイカどころか魚介類とも属さない種族(人樹)の少女であったが。
その姿と、少し離れた所でも元に戻ったらしい、元・ネズミ型魔物の猫型亜人種の少女の姿を見て、一抹の不可解さを覚えつつもホッと胸をなで下ろすベリオ。しかし__。

「何故、元の姿と腕輪によって変えられた姿が似つかない程の変わり様だったのかは謎だが……これでひとまずは一つの課題は片付いたな。後は____っ!!」

シスメに手当てされようとしている人樹の少女に再び視線を送ったことが仇となった。
少女の、ちょうどシスメが包帯を巻こうとしている部位。その右手首の傷口と周囲を染める赤。それを目の当たりにした瞬間、ベリオの心臓が一際強い鼓動を打った。
赤。赤、赤。違う、アレはそうじゃない。でも赤い。赤い傷から流れている。間違いない違う違わなくても駄目だ今はそんな場合じゃない。吸いたい一口でも舐めても問題ない否駄目だそんなこと許されない今までの努力が無駄になるそれに今敵が仲間を、守らないといけないでも魔力が足りない足りない足りないタリナイタリ内足りないタリナイ

「っっ……ハッ…ハァッ!ハァ、ハァ、ハァ……」

脳内を駆け巡る衝動と理性の思考を鎮めようと、『コキュートス』を握ったままの右手で頭を押さえ、とうに弾切れとなっていた『ディーテ』をホルスターに戻し、空いた左手で胸を押さえながら、何度も荒く息を吐く。人樹の少女の外傷はそんな大したものじゃない。しかしその傷から流れているものが、まだ抑えられる方であった感情を加速させてしまったらしい。
顔から血の気が引いていくのを感じる。駄目だ、こんなところでW落ちてWしまう訳にも、逃げる訳にもいかない。今も仲間が戦っているのだ。魔物に変えられていた少女たちも救助された。後は自分たちも援護に回らなければならない。
そう無理矢理自身を奮い立たせ、少女から無理矢理視線を逸らしてみせると、セキアらが奮戦している敵に目を向ける。向けたのは良いが、同然敵も味方も負傷している訳で、多少の赤色を見てしまったがために、またもや動悸が激しくなってしまう。

(あーもう、あ゛ーーーもう!!何でこんな時に!もう少しで、もう少しで終わるかもしれないのによぉ…!ここで終わる訳には…いかな__)
『あたしは、白月を纏いし猛き綺羅星! 有明月(ありあけづき)の勇者セキア・ルーブ!!
窮地に覚醒する秘められし力!
そして、真の勇者は遅れてやってくる。まさしくセオリー通りってわけね!』

先程も聞いたことがあるような、無いような。そんな芝居掛かった口上を声高に言い放つ人物がいた。セキアだ。ベリオは気付かなかったが、いつの間にか彼女の背には煌々と光り輝く炎で出来たマントが翻り、彼女の表情そのものも底抜けに明るく、そしてやけに張り切っているのが見て取れた。

「…………ふっ」

いつもの彼ならこの場で彼女に突っ込み(物理)を入れていただろうが…この時の彼の口元には笑みが溢れ、今まで彼を蝕もうとしていた衝動も鳴りを潜めていた。赤色をしたそれさえも、気にならなくなっていた。
そして、此方側のメンバーらの台詞に徐々に感情を乱されてきているらしいクラウズと、そんな彼を止めようと立ち向かうセキアと(武器と化した)レイ。
最後に一撃くらい援護してやろうと一瞬思ったが、それぱ今は無粋だと思い直し、彼と彼女らの行く末を、未だ僅かに青白さの残る顔で見守る。

>クラウズ、スタルチア、セキア、エルト、ALL


【お久し振りでございます…。年号が変わって一か月経つまでの間、随分と間が空いてしまったことを此処でお詫び申し上げます。どうでもいいですが、私も先々月社会人となりまして、その後も程々に投稿ペースを保ちつつ働きたいなと思っていたのですが、思っていた以上にモチベーションが下がってしまいまして…。仕事は早めに終わるのですが、一人暮らしになったこともあり、やることが増えて精神的に創作意欲が湧きにくい事態が続き、どういった返し文にしようか考えようにも上手く思いつかず、ズルズルとこんなことになってしまいました…。レスも大分省略して目も当てられない出来となっております、申し訳ないです…。
失踪紛いの真似をし、スレ主様や皆さまへ心配とご迷惑をお掛けしたことを、改めて深くお詫びしたいと思います。すみませんでした…!
まだモチベーション回復まで時間が掛かってしまうと思いますが、まだまだこのスレのメンバーとして参加する気は断然あるので、遅筆ながらもしっかりレスを返していきたいと考えております…!】

>スレ主様、ALL参加者様

6日前 No.555

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★Nu2TxyWDvo_zwh

【セキア&レイニア&ノイ&クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

高く飛び上がった瞬間、セキアのその手には大剣が握られていた。
鏡のようにいっぺんの曇りもない白銀の刀身。
青紫色の宝石が散りばめられた柄、その刃は空気すらも両断できそうなほど鋭く研ぎ澄まされている。
見た目に反して木片のように軽いその剣を目前に掲げたセキアは、満足げに何度も頷く。

「うんうん! やっぱり勇者には鎌じゃなくて剣じゃないとね!」

今まで感じたことがないような高揚感が胸を満たし始めるも、
突然、それを塗りつぶすような強烈な不快感を覚えてセキアは剣と化したレイに視線を落とす。
見るとその刀身には、いつかの任務で渡されたあのおどろおどろしい色の転写札が貼り付けられていた。

「レイ!?」

思わず声が裏返る。だが、すぐに思いなおしたセキアは剣を握る指にさらに力を込めた。
信じてもいいんだよね。
物言わぬ剣となった今、彼女の表情までは読みきれない。
ただ、こちらの無言の問いかけに彼女が力強く頷き返してくれるのを、なんとなくセキアは感じた。
剣を振り下ろす瞬間、背中の炎のマントをその大きくなった刀身へと巻きつける。

「ひぃっさぁつ! ラストぉ! ファイナルぅ! フィニッシュエンドぉ! スラァァァァァッシュ!!」

赤い炎のオーラを纏った巨大な剣。黒いオーラを纏い、その刃の大きさを立ち上るオーラによって増大させた鋏。
空気を震わせるような轟音を伴って赤と黒が激突する。最初は拮抗しているように見えたその二つも、
やがて黒いオーラに幾重にもひび割れ始めることで、徐々に両者の形勢に大きな開きがみえ始める。
このまま鋏とともに果てるとつもりかと思われたクラウズはしかし、何を思ったか手にしていた鋏を壁際へと投げ捨てた。

――――主様!?――――

両者がぶつかる音によって声さえも満足に耳には届かない。
スターチの驚愕を心で感じ取るも、クラウズは鋏に纏わせていた黒いオーラを自身の右腕に集中させると、
その拳で頭上から振り下ろされる赤い剣の一撃を迎え撃った。
目が一瞬ばかになったのかと思った。視界は白一色となる。その刹那、視界を埋め尽くす光の中に彼女の姿を見た気がした。




そこは四方をぐるりと石壁に囲まれた円筒形の部屋だった。
かろうじて指一本がとおるくらいの細い空気穴が空いているばかりで、唯一、光と呼べるものは天井から差し込む月光のみだった。
その箱庭の中心に白があった。
大切な、妹。昔、兄妹の誓いをかわし、家族と呼び合えることを許しあった存在。
自分の異能の力で俺の足の怪我を肩代わりをして満足に走れなくなったどうしようもなくお人よしで馬鹿な女。
任務の後は成功を報告に、そこへ通うのが日課だった。
「こんなところ、すぐに出してやる」なんて、そんな言葉をもう何度口にしたか分からない。
ただ、彼女は寂しげに微笑むばかりだ。どうして彼女がそんな顔をするようになったのか、
そんな考えにいきつかないほどに、俺はどうしようもなく馬鹿だった。
彼女を助け出すためならなんでもした。人の不幸に目を瞑り、怨嗟の声に耳を塞いで、
妹のためだ妹のためだと、利己的な免罪符をかかげて、人の幸せを踏みにじって踏みにじって踏みにじり続けた。
だが、やがて理解する。任務の成功を報告する度、彼女の顔が曇っていくのを。
彼女はある日、俺だけでも逃げるようにと言い、それきり口を閉ざした。そんなときだ、この任務の話が飛び込んできたのは。
任務の内容はフェリクスをエサに目標を誘き出し殲滅すること。
しかし、驚くべきことに任務の達成条件には“俺の死が含まれていた”
とかげのしっぽきりか、カモフラージュのためかは分からない。だが、見事任務を達成した暁には、妹の解放が約束された。
どのみち俺に拒否権も、選択権はない。命じたままを果たせなければ妹は死ぬのだ。
そうして疑問だけが残る。彼女のあの悲しげな顔。その意味を。
しかし、今、ようやく理解できた。そう、それは

「……………自分のために誰かが傷つくのが嫌だったんだよな、ミール」

視界があけると彼の目にはひび割れた下水道の天井が映っていた。
泥のような疲労に頭はぼんやりと熱を持ち、呼吸するだけで体中がずきずきとひっきりなしに痛みを訴えてくる。
はっきり言って死ぬほど痛い。それこそ比喩でもなんでもなく、体がバラバラになりそうな痛みだった。
それがここが天国ではないことの何よりの証明だった。
巨大な剣を手にしたまま微笑む少女に、呆れたような声でクラウズは呟く。

「どーいうつもりだよ……花の嬢ちゃん、自称勇者の嬢ちゃん……
いけねぇなぁ……いけねぇよ……ちゃんと……始末してくれねぇと……駄目じゃねぇかよ」

「主様!!」

鋏の状態から人の姿へと戻ったスターチは、すぐさま駆け寄って彼を抱きしめる。
その肩越しにクラウズはぼんやりと第七候補隊の面々を見やる。
今しがた彼が口にした言葉に憤慨するような面持ちで
腰に手を当てたセキアが前へ進み出ると、かがんで視線をクラウズに合わせる。

「あたしたち国家隊員は無法者の寄せ集めでも、殺戮者でもない。
あたしたちがするのは、あくまで捕縛。秩序の維持だけ。
レイもあたしも聞きたいことがあるってさっき言ったよね? そうだよね、レイ」

いつだったかヒルカが入隊試験のときに口にしたセリフを覚えていたのか、
彼女のセリフをそのまま引っ張りだしてクラウズに言い聞かせるセキアに、
レイニアは小さく微笑むと彼女の隣に同じように屈んでクラウズに視線を合わせる。

「まだ続けますか?」

レイニアの問いかけに静かに首を振るクラウズ。
その答えに満足したのか、レイニアはディノアに小さく目配せすると、
ディノアの隊員たちが手早く手錠やら、特別な拘束具を用いて彼らを拘束していく。
無抵抗に自由を奪われていく音を聞いていたレイニアだったが、
やがて第七候補隊の面々へを向きなおると、気を取り直してとばかりに顔に貼り付けた笑みを深くした。

「では〜、私たちは私たちの目的を果たしましょうか〜。この任務の最終目的はなんでしたっけ?」

問いかけるレイニア。
はて、と首を傾げるセキアだったが、はっと思う出したかのように声を上げた。

「あっ! フェリクスの護送!」

すっかり忘れていたとばかりに声を上げるセキアに対し、
レイニアはくすくすと甘い笑い声を漏らすと、急かすように前を歩いていく。

「あはは。正解です。面倒ごとはさっさと終わらせてしまいましょうか〜」

「勇者の凱旋といこうぜぃ! レイ、エルト、ベリオ、ノイちゃん、シスメおねーさんも!」

ずっとこちらを見守っていてくれたエルト。若干呆れながらも
いつもより柔らかい笑いを口元にたたえたベリオ。そして、信じて一緒に戦ってくれたレイ。
第七候補隊の面々に、それぞれに笑顔とVサインを向けたセキアは彼らの元へと駆け寄るのだった。

>レイ、エルト、ベリオ、ALL

【Infomation:イベント終了条件クリア!
これにて戦闘イベントを終了いたします。最後までお付き合い頂きありがとうございました!】


【おかえりなさい。ようこそ再びアスールへ!
アスールの門扉はいつでも開いておりますので、無理だけはなさらないよう
くれぐれもご自愛ください。再び貴方と物語が紡げることを嬉しく思います】>レーリン様

3日前 No.556

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・後道】


クラウズへ会心の一撃を繰り出さんと、自らのマントの欠片による爆風に乗って高く飛び上がったセキアの手には、先程まで握っていた禍々しい意匠の施された鎌から、鏡のように磨き上げられた刀身と青紫色の宝石で彩られた柄を持つ大剣へと変貌を遂げたレイが握られていた。彼女の姿に満足げに頷くセキアだったが、その笑みは驚愕の色に変わる。ベリオがアスールに到着する以前、レイたちが貰った悍ましい効果を持つ札が、レイの刀身に貼り付けられていた故に。
しかしその驚愕も一瞬のことで、セキアは一層彼女を持つ手に力を込めると、目下その鋭利な刃を振り下ろすべき相手目掛け、自らの炎のマントを刃に巻き付け、彼女のオリジナルらしい必殺技を叫びながら、二人の覚悟を載せた一撃を繰り出す。
それを黙って喰らう訳が無いクラウズも、黒々としたオーラを纏う巨大鋏も以って受け止める。赤と黒の相反するオーラがぶつかり合い、やがてクラウズの劣勢が目に見えて分かる頃__どういう訳なのか、彼は自らの持つ鋏を投げ捨てたのである。

「!?突然得物を投げ捨てた?一体何の__」

つもりだ、と独り言を言い終えない内に、セキアの大剣とクラウズの拳がぶつかり合い、両者の間に白い閃光が生まれる。
ベリオは、目も開けられない程の眩しさに思わず片腕で両目を覆い、閃光が収まった時に腕を退けて見れば__二人がいた場所の真上の天井は衝撃でひび割れ、地面に足を付け、真っ直ぐ立つセキアと、対照的に地面に背を付けて仰向けに倒れるクラウズの姿が視界に映った。

「…奴は、どうなったんだ…?」

一瞬、クラウズは命を落としたのかと思った。しかし、直後にそれは大きな勘違いであったことに気付く。
彼は目を覚まし、壁際に投げられた鋏はスタルチア(人型)としての姿に戻り、彼に駆け寄って抱きしめた。
そして、自らに微笑みかけるセキアと一言二言言葉を交わした後、その一部始終を皆と共に見ていたレイニアからの問い掛けに首を横に振る形で、事実上、負けを認めたのだった。
すぐさまディノア管理官の隊に拘束されてゆくクラウズとスタルチア。カシャリカシャリと次々に拘束具を取り付けられてゆく二人を無言で見守るベリオであったが、ふと、何かを思い付いたように二人のいる場所へ歩み寄ると、大人しく拘束されているクラウズの前で立ち止まり、そのまま彼と同じ目線になる姿勢になり、口を開く。

「……ポッと出の新人である俺がお前に言う義理は無いかもしれないが…。
正直、俺はお前と、お前のパートナーのことは良く知らない。何せ初対面だからな、仕方ない。だが…初対面で敵対したお前に気を遣うことなら出来る。
…まず、これを見てくれるか?」

そう言って、自らのコートのポケットから取り出して見せたのは、一枚の清楚な名刺だった。
アスールから少し離れた国の名が付いた病院名と肩書きの書かれたそれは、ある人物の名前と顔写真が載っていた。
白衣に身を包んだその人物は、薄桃色の桜の花弁を思わせる色彩を持つ白髪と、鮮やかなローズピンクの瞳が目を惹く外見をしている。
何故彼がこのような名刺を持っているかと言えば、この写真の中の人物が「そのうち役に立つから」と、彼に持たせたことが理由であった。そして今これが役立つ時だと、ベリオは直感したのである。
正直なところ、ベリオはクラウズの事情はあまり知らない。彼が大切な義妹について話していた時、ある衝動的な感情に苛まれていたことが原因だが……何だか、彼のことをW彼女Wならば助けてくれるかもしれないと思ったのだ。

「見せるだけですまないな。本来なら名刺ごと渡しておくべきなのだろうが…お前たちは既に拘束されているからな、名刺なんてまともに持てないだろう?
…とにかくだ、この写真の人物に面会がしたければ、国家隊の看守殿か上官方にでも頼んでみるといい。恐らく、彼女ならば…お前の助けになるだろう」

クラウズが名刺を見つめている間にそう語ると、最後に「あ、でも脱獄とかは無理だからな」と付け足し、彼が名刺の人物の顔と名前を覚えたであろう頃合になってから名刺を再びポケットにしまい、「出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」と二人の周りにいるディノア管理官の隊員たちに頭を下げ、仲間たちのいる場所まで戻る。
その直後、レイニアとセキアが今回の任務のことについての話をしているのが耳に入る。そうだ、任務は最後まで遂行しなくては。
……さっきは架空扱いしていた?…人聞きの悪いことを言うな。確かに囮だとか、フェリクスが偽物かもしれないとか思ったりはしたが…何も断定した訳ではない。それに任務は最後まで放棄しないとも考えていたではないか。ほら、まだケースだって手放していない。
閑話休題、『勇者の凱旋といこうぜぃ!』と底抜けに明るい笑顔で駆け寄るセキアに、いつも無茶をする等と思いつつも、ベリオはいつもより穏やかな微笑を浮かべつつ、彼女が此方まで駆け寄ってくるのを仲間たちと共に見つめるのだった。

>セキア、レイ、エルト、クラウズ、スタルチア、レイニア、ALL


【ただいまです!!((( そして早速投稿ペースを上げる阿保のような私である((殴
まだ私の参加を受け入れて下さり、嬉しい限りです…!また書き込みが遅くなる日もあると思いますが、無理の無いペースでレスを書いていく所存です。
そして例のサブ記事にプロフを投下した某キャラクターを(名刺のみの登場ですが)勝手ながら出させて頂きました。すみません(>_<)クラウズさんの事情を考えると、完全にとはいかなくても妹さん含め彼の問題を何とかしてくれるとしたら、彼女がいるんじゃないかなー、と思いまして…(オイ ベリオと同じことを申しますが、出過ぎた真似をしてしまいすみません(>_<)
さてさて、任務完了までもう一息ですね!私の持ちキャラことベリオも、最後までお付き合いさせて頂きます!】
>スレ主様

1日前 No.557
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