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月下のアスール【T】-『The God Delusion』

 ( オリジナルなりきり )
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語り部 @yuzuriha16 ★6kAHKhaN27_EP8

にぎわう夜の酒場で、あるいは街灯に照らされた石畳の上で、

はたまた夜風にさらされた荒野で、それとも木の爆ぜる音が響く焚き火の周りで、

まことしやかに囁かれるある一つの国家が存在した。

かの国家の名はアスール。

魔導具と呼ばれる未知の技術を用い、急速に発展する新興国家。

世界から疎まれた狭間の者達が築きあげたその国は、5人の建国者により均衡が保たれていた。



アミル・カーランドが統轄する娯楽区画ウォーティア

ディノアギスバルガエンズルドが統轄する流通区画エイルス

ヒルカ・ルドナルが統轄する工業区画アーティー

出雲 鶴羽が統轄する自然区画ガイアル

そして、アスール国家隊の総本山である中心区画ルナ。

水と遊戯を求める者はウォーティアに

空と発見を求める者はエイルスに

魔導具と情報を求める者はアーティーに

大地と交流を求める者はガイアルに



今日も様々な目的を持つ者達がこの国を訪れる。

純粋に他種族との調和を志す者、己が国を富ませんと仮面を被る密偵、

帰路に迷い流れ着いた者、はたまた想像もしえない願いを抱いた愚者。

そんな各々思惑でさえ、まるで取るに足らぬものと言いたげに、

かの国家は飲み込み、最初からそこに存在していたかのように彼らは国へ同化していく。

その渦中にあなたが飛び込んだ―――それがこの物語の幕開け。



【サブ記事にてルール説明、キャラ募集を行います。本編開始の合図はサブ記事にて行い、
本編は本スレ運営主の最初の書き込みを持ってスタートとさせていただきますので、ご了承願います】

3年前 No.0
メモ2019/08/03 14:34 : 語り部(スレ主) @yuzuriha16★tpHackFNLf_3YG
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ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:急下水道後道】

クラウズさんとスターチさんの妨害もあったがなんとか手を取ることに成功し、セキアさんから流れてくるイメージに沿ってその姿を大鎌に変える。
だけど、姿を変えてすぐに違和感に気づいた。
なんだろう……セキアさんと波長が合わせられない……それに徐々に流れてくる妙な力、なんなのこれ

『今は目の前の戦闘に集中しないと。レイ、力を貸して』

というセキアさんの言葉に返事をする前にセキアさんは敵陣へと走っていった。でも、クラウズさんの方が優勢で、押されている。

セキアさんの魔力を自分の中に取り込み、刃の切れ味を良くしてもそれは変わらない。とうかセキアさんの魔力が取り込みづらくなってる…。どうして!?

そうこうしてると、セキアさんがクラウズさんの猛攻撃を受けてしまった

「セキアさん!!!」

心配そうな声を出してセキアさんを心配する。そしてセキアさんの足が瓦礫で埋もれ、セキアさんが動けなくなったのを見て、即座に武器化を解き、セキアさんの足の上から瓦礫を動かす。

「大丈夫ですか?!セキアさん!!……ごめんなさい。私、うまくセキアさんの魔力を引き出せなくて………でも次こそはうまくいかせますから……落ち着いてください」

再び大鎌に変身してセキアさんの手元にばたりと倒れるように落ちる。

「クラウズさん、スターチさん、
逃すわけに行かないのはこちらも同じです。特にスターチさんには個人的に聞きたいことが山ほどありますから」

大鎌のまま、二人を睨んでいるような鋭い声で告げる。
二人の目的についても、スターチさんたち魔道具たちの話も

≫クラウズ スターチ セキア レイニア ノイ エルト

6ヶ月前 No.542

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_Rb6

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

「…なるほどな…詳細は分らないが…後で調べる必要はありそうだな」
少なくとも、表面上は冷静な状態で自身の状態を説明するセキアに少しばかりの安堵をしつつ、そう返す。
(…何かしらの条件…トリガーを引いたようだが…単純なプラスと言うのは少し楽観過ぎるか)
本人の申告通り、あふれ出ていた光の方も今では大分落ち着いており、感情の方も落ち着いてはいるようだが…
今までのセキアとは明らかに魔力が違う…質も量も明らかに『人並み』などという枠には収まり切れない。
落ち着いた状態でそれだと言うのだから全力であればどれほどの物なのか推し量るのは少々難儀なほどだ。
(…それも…十全であれば、だが)
…しかしその評価もこの但し書き1つで覆る…魔力と言うのはあるだけでは意味がなく…自在に使えてこそだ。

あまり余裕がある状況ではないが、今はまだリスクが高すぎる…そう判断してしばらくは無理をさせないようくぎを刺そうとしたところで…
「ディノア管理官…?」
痺れを切らし、仕掛けようとしたクラウズの機先を制したのは…先刻別れたはずのディノアであり…状況を理解する間もなく、先ほど撃退した2種の魔物を従え、鋏と変化したスターチを手にしたクラウズといつの間にか控えていた部下を含めたディノアとの先頭の幕が切って落とされた。

「まったく…やることは変わらないとはいえ…」
状況を飲み込めぬままに、早々に乱戦状態になった戦場を見てため息交じりにそんな事を呟きつつも、ネズミ型の魔物を囲むディノアの部下たちの緩急に合わせてピンポイントでの魔力弾を撃ち込んでいく。
…相変わらず、同士討ちを恐れた消極的な援護ではあるが…彼らからは文句も要望も特に出てこないようだしそれなりの効果はあるだろう。
そうしている内に背後ではシスメがレイニアに詰め寄ったところで…当のレイニアから返された答えは…
(囮…か…なるほど…合理的な判断ではあるが…な)
と、ある程度の理解はしつつも…完全には納得は出来なかったが、この状況下で仕方のない事だと無理矢理に思考を打ち切る。

戦況は大まかに2つに分けられ…こちらはセキア共々魔物の方に対処していたが…流れがき始めた所でクラウズが強引に突破し、セキアに突撃した所でレイが合流…させじと放たれた炎弾もディノアが切り払い、事なきを得る。
(ちぃっ!!やはりそう来るか!!)
2体の魔物に効力射を加えつつも、合間でセキアらの方に意識を向ける。
(気圧されてるか…無理もないが…)
以前の接触時とは明らかに覚悟が違い…対するセキアは根本的には少女に過ぎず…かけられた意気込みは雲泥の差といえる。
それに加え、レイ共々先程の力の予兆に対応しきれておらず、振り回され気味で早々に危うい場面へと追い込まれていた…幸いにもレイニア、ノイに加え、ディノアがカバーに入った事で事なきを得たようだが…
(援護してやりたいが…まだだ…今は…こちらが優先だ)
逸る気持ちとは裏腹に、行動はよどみなく、的確にネズミ型とイカ型の些細な隙に法撃を加え続ける。
…もはやそれは消化試合じみた戦闘であったが…戦術的には最も確実な方針であった。
(確かにあいつらは…クラウズもスターチも強い…が、所詮個人だ…多数に攻め込まれ、捌き続けられる程出鱈目じゃあないはずだ)
冷静な判断をする思考にしたがい、気を引き締める…こちらの片がつけば、空いた人員で確実に詰めていけばそれで終わりだ。

>セキア ディノア クラウズ レイ ALL

6ヶ月前 No.543

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★CNdRBqQ1ft_IyU

【セキア&レイニア&ノイ
クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

何故か、どうしてか十分な力が出せない。さながら底のないぬかるみに足を取られているような感覚。
瓦礫をどかしてくれる傍ら、申し訳なく謝る彼女を見て、さらにその感覚は強まった。
頭は冷え切って冷静なはずなのに、どうしようもなく胸がもやもやとする。
いや、もう目をそらし続けるのはやめよう。
魔術は想像の投影。心が十全ではない今、どうしてそれが上手くいくというのか。
こうして自分の力をせき止めているのは、他ならぬ自分自身の意思だと気付いていて見ないフリをしていた。
ふっと目の前の喧騒が遠のいていくのを感じる。まだじくじくと痛む腹部を庇いながらも
セキアは立ち上がろうと鎌と化したレイを拾い上げると、その柄を顔に近づけた。

「聞いてほしいことがあるんだ、レイ」

それは痛みからか、思ったよりすっと言葉が出た。まるで腹部の熱が頭へと移ったかのようだった。
ふらふらと酩酊感を増す頭で何とか言葉を紡ぎだす。
本当はすぐにでも戦線に復帰しなければいけないことは分かっているのに言葉が口から溢れて止まらない。
セキアの見ている景色は既に苔むした旧下水道から
入隊試験のとき頭の中に流れ込んできた銃声と悲鳴とびかうレイの過去の映像へと移り変わっていた。

「前に一度レイの力をかりたとき……見ちゃったんだ。レイが昔、ひどい目にあったときのこと」

一度だけ頭の中をよぎった光景。
悲鳴と怒号。そして、彼女の想いさえも共有したかのようなやるせなさと悲しみ。
レイにしか聞こえないような小さな声で話す。
歪む視界で何とか鎌を持ち上げ、顔の正面にくるように持ち直す。

「それからあたしに何ができるだろうってずっと考えてた。
本当はレイの口から聞かなきゃいけないことを勝手に知っちゃったから。
知ってしまったからには、あたしがこの子の悲しみを和らげる存在にならないとって」

自分の英雄願望が行動の裏づけになっていることは知っていた。
彼女をそれを満たす対象としてしか見れていないことにもたぶん、心のどこかで気付いていた。
勇者になる、それだけが今まで生きてきた理由で、過去の記憶が曖昧な自分の唯一の存在理由だったから。
それしか縋るものがなかったから。ただ、最初はそうだと思いこんでいたそれが
徐々に自分の中で形を変え始めていることを知ったのは最近のことだ。
彼女が自分のことをないがしろにするようなことを言ったとき、
それに想像以上に怒りを感じてしまったことにも、それ以上に焦りを覚えてしまったことにも。

「でも、本当は違ったんだよ。本当は……不安だったんだ。
レイは優しいから…巻き込みたくないって思ってくれてるって自分を納得させてたけど、
レイ、何も話してくれないから。いつかふっといなくなっちゃうんじゃないかって」

振り続ける雨と、血まみれの誰か。
頭の中に蘇るのはいつだってあのときの光景だ。覚えのない孤独感が胸を支配していく。
あんな思いは二度と味わいたくない、そう思いながらも口をつぐんでいた思いを一気に吐き出した。

「だから、もうそういうのは嫌だからあたしは――さっきの言葉を取り消すよ。
これからは力を貸してって言わない。これからは、こう言うことにする」

いまだずきずきと痛みを訴えるあばらを押さえながら、鎌と化したレイを支点に勢いよく身体を持ち上げる。

「レイ、一緒に戦おう」

>レイ、ALL



【シスメ/区画本部内/旧下水道・後道】

ディノアの組織する隊のメンバーの包囲網の間を縫うように掃射される効力射は順調に効果を上げていた。
野生の本能か、はたまた無意識的な反撃か、イカの魔物の10本ある触椀による攻撃は
ディノアの隊員達の攻撃を器用に捌き切っていたからである。
しかし、それも今やエルトの攻撃によりキャパシティの限界を超えていた。
的確なショットによって跳ね上げられる触椀、その間を縫うようにして、的確な打撃がイカの魔物を襲う。

『GGY!?』

さすがのイカの魔物もこれには焦ったような鳴き声を上げるも、しかし、次の瞬間 状況は一変する。
イカの魔物が身を翻した途端、エルト達のいるあたり一面を黒い煙が覆い尽くした。
その姿の例に漏れず、先ほども逃走の際に見せたスミによるかく乱。
事前に敵の情報を手にしていたのか、すぐさま風の魔術を起動させるディノア隊の一人だったが、
一瞬の虚をついてその槍のような頭を捻りながら、エルトの前までイカの魔物が躍り出る。
一種の投げやりのような鋭さと速度を持ってエルトを串刺しにせんと迫るイカの魔物。
あと少しで彼のすぐ側まで接近するかというところで、
ガン!と人間の拳大ほどの石が魔物にヒットし、その速度を一瞬だけ鈍らせた。
恨ましげにイカの魔物の視線を送った先には、息を弾ませたシスメが立っていた。

「私……だって……! 第七候補隊の一員……なんです……! ぐすっ……
書記官だからって無視してるんじゃないですよ、こんちくしょーです!」

魔物から殺意ある視線を向けられ、半泣きになりながらもシスメは何とかそう言い切ると、
誰もが唖然と凍りつく空気の中、ようやく息を整えたらしくエルトに向かって声を張り上げた。

「エルトさん! 一番身体の右外側にある触腕についた黒い腕輪を狙って下さい!
そこから大量のレダール反応が検知されています!」

きっと、今回は戦力外であることをレイニアから告げられたときから、
自分にも何か出来ることはないかと考え続けていたのだろう。
書記官としての観察眼と魔導書ダンタリオンの機能を生かして、
人知れず正体不明の敵の情報をシスメは今まで探っていたのだ。
見ると彼女の言葉通り、ナットのような形の六角形型の
黒い腕輪のようなものがイカの魔物の触椀のひとつについているのが見えた。

>エルト、ALL

6ヶ月前 No.544

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:急下水道・後道】

セキアさんはその身を精一杯奮い立たせていた。レイは心の底から頑張れと応援していた。
その時、ふいに聞こえてきた、自分を呼ぶ声。セキアさんが私に話があると、かすかな声で言った。
私はその言葉に耳を傾けた。
いつ攻撃されてもおかしくない状況で、不思議と、今この場には私とセキアさんしかいないかのような錯覚に見舞われた。

そしてセキアさんの口から告げられたことに
私は、衝撃を受けた。
同時にセキアさんから、イメージが流れてきた。それはそう、あの日の光景…国家隊に里を焼かれ家族を殺された…忌まわしい光景が

嗚呼、本当に見られていた。
見せるつもりはなかった。見られたくなかった。だが、見せてしまったのは私の責任。こんないい人を巻き込んでしまうのかと、身体が…鎌と変化している身体がガタガタと震えた。

だけど、その考えはその後のセキアさんの言葉で吹っ飛ばされた。

「……ハハハ…本当はこの任務が終わった後、セキアさんに言うつもりだったんです……私に力を貸してくださいって……巻き込むかもしれない……それでも私一人では決して真実にたどり着くことも、その真実に向き合うことさえできないから……私の方がセキアさんを頼ろうと……利用しようとしていたのに…………」

鎌の剣先からポタポタと雫が落ちる。これはレイが流した涙だった。

「……セキアさん、私からもお願いします……私と一緒に戦ってください」

≫セキアさん

6ヶ月前 No.545

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_l7r

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

(また悪あがきを…っ!?)
終局へと進みつつあった攻防の最中、先刻と同様に煙幕を張ったイカ型に対し毒づきながらも、その姿を逃さぬように目を凝らす。
…そうした所で、イカ型は一瞬でこちらへと狙いを定めており…こちらの対処が追い付く前に、包囲を突破されていた。
(してやられたか…だが!!)
一瞬で回避は間に合わ無いと判断し、次なる手…迎撃へとシフトさせ、最適解を模索…刹那の時間で導き出した最適解は…
(安くは無いが…お釣りは十分出るな…何より時間が惜しい)
あえて受け止め、動きを制限した後に確実な反撃で仕留めるカウンター。
ここまでの大掛かりな仕掛けをした以上、救護要員はそう遠くはない場所に控えているだろうし、即死無いし致命傷さえ避ければどうにでもなる、という打算的な考えあっての事だが…見返りは確かに大きいと判断できた。
故に、淡々と相手の動きを観察し、反撃の手法をリアルタイムに修正していたのだが…

(…何…?どこをみて…シスメ!?)
突如動きを鈍らせ、視線をそらしたかと思えば…続く声から、彼女が何かしらの行動を起こしたと言う事と…同時に、触腕の一本に怪しげな腕輪が付いていると言う事に気が付く。
(まったく無茶をする!!…だが!!)
先の自身の方針を完全に棚上げしている感想を抱きながらも、千載一遇のこの好機を逃すまいと行動に移る。
踏み込むと同時、『瞬幻』を起動…正面から幻体を突っ込ませつつ、自身はその影で『アルカナイザー』を召還…イカ型の眼前に迫ったところで幻体を起爆させ、その隙に腕輪のついた触腕を切り落とさんと振り下ろす。

>シスメ 魔物 ALL

6ヶ月前 No.546

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★osLB3MWV3V_IyU

【セキア&レイニア&ノイ
クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

胸につっかえたものがふっとなくなっていくかのような感覚。
レイが恐怖し、今も彼女を悩ませ続けているものの正体を目の前にして、
セキアは何故か安堵したかのような気分になっていた。
思えば、今までどちらとも相手を気遣うばかりで、
こうして素直に心の内を打ち明けあう機会がなかったのかもしれない。

「うん。えへへ、やっとレイの本心からの言葉が聞けた。
友達なら、迷惑とか、巻き込むとか、利用するとか、そんなことどうだっていいよ。
あたしはレイのことが好きだから、自分のしたいって思うことをするんだ」

この戦場には似つかわしくない気の抜けたようなふにゃっとした顔でセキアは微笑むと、
急に背中越しに伝わった熱に驚いて、慌ててそれを取り出す。

「え、なに、熱っ!? なに、これ……!?」

魔導書ネムレスが、先ほどとは比べ物にならないほどの眩い光を放っていた。
そして、セキアが手にした途端、まるで待ちわびていたかのように
風もないのにひとりでにページが捲れたかと思えば、あるページを境に止まった。
白紙のページにまるで何者かの見えない手によって書き込まれたかのように、赤い文字が浮かび上がる。

――――Arcenciel Burst――――

その様を呆然と見守っていたセキアだが、やがてにっと
どこか挑戦的な笑顔を顔に浮かべると、遠くで大鋏を振り回す敵の姿を目に捉える。

「世界が、あたしに応えた」

確信するかのように呟いたセキアは、ページに浮かび上がった文字を目にしたと同時に
頭の中に流れ込んできた詠唱句を早口で口にしながら、次の瞬間には駆け出していた。




奮戦するクラウズだったが、それでも多勢に無勢であることには変わりなかった。
人間離れした豪腕と難攻不落な城砦のごとき堅牢さ、
いずれも一個人を超越した身体能力にレイニアたち国家隊側も決め手にかけるようだったが、
それでもクラウズの顔には目に見えて疲労の色が目立ち始めていた。

「ダーティーチェーン!」

「うぉっ!? ぐぉお…なんじゃこりゃ、拘束魔術ってやつか!?
スターチ!硬化解除! 今使ってる魔力、全部筋力の強化にあてろ!」

「ですが……それでは!」

「いいから! この鎖引きちぎったらすぐ硬化に切り替える!」

「ディーくん、ノイちゃん、挟撃!」

「もうやっている!」

「右に、同じ!!」

何もない空間から急に実体を持って現れ、身体に纏わりついた鎖を
力任せにむしりとったクラウズは背後からのノイによるスルトの狙撃と
正面からのディノアの剣撃を、要の部分から分裂させ二振りとなった鋏で受け止めようとした
――が、間に合わずその両方の攻撃をそれぞれの腕で受け止めた。
生々しい被弾の音。打ち込まれた熱線により、もうもうと黒い煙がクラウズを中心に立ちこめる。
だが、鋭く風を切る音がして煙もろとも閃く鋏の一撃がそれをなぎ払った。

「いっ…――てぇなぁ!!」

僅かに腕の薄皮が切れて血が滴って入るものの、ぎりぎりで硬化が間に合ったのか、
クラウズは右腕でディノアの白刃を受け止めながら、空いた左手に握り締めた
鋏の片割れを使って再びディノアを壁際まで弾き飛ばす。
その一瞬の隙を逃さず、クラウズは間髪いれず右手に握り締めた鋏の片割れを鋭くノイに向かって投擲した。
予想外のタフネスさを発揮するクラウズ。その一瞬の対応の遅れが明暗を分けた。
迫る黒鉄の裁断器。しかしその凶刃は―――

「うぉりゃああ!!」

気の抜けるような掛け声と共に白月と見まがうほどの眩い一閃が阻んだ。
視界に広がる炎の幕と、振り切られた白い刃にノイの赤い瞳が驚きに見開かれる。
それらの所有者は、悠々とした仕種でクラウズに刃の切っ先を突きつけると
不遜な、だがそれでいて迷いの晴れたような、
どちらかと言うと何も考えていなさそうな能天気な笑顔を浮かべると口上を口にし始める。

「あたしは、白月を纏いし猛き綺羅星! 有明月(ありあけづき)の勇者セキア・ルーブ!!」

その女は背中にたなびく炎のマントを翻し、

「窮地に覚醒する秘められし力!
そして、真の勇者は遅れてやってくる。まさしくセオリー通りってわけね!」

見る人によれば思わず手が出てしまいそうになるような
鬱陶しさ全開のドヤ顔で、瞬時にその場の空気を凍らせたのだった。

>レイ、ALL

【information:セキア・ルーブのプロフィールが更新されました】




【シスメ/区画本部内/旧下水道・後道】

シスメの妨害により僅かに軌道は逸れたものの、彼女の存在も、その攻撃も
イカの魔物にはさして脅威には映らなかったらしく、標的をエルトに絞ったイカの魔物は
そのまま勢いを殺すことなく宙をすべり、そして、
その鋭利な頭の先端は、狙いどおり正確にエルトの胸部を貫いた―――かに思えた。

『GGGYYYY……GY?』

今しがた刺し貫いたものにさして手ごたえがないことに気付いたのだろう。
一瞬だけその身体を固くするイカ型の魔物だったが、
それこそが彼の術中であったと気付く頃には何もかも遅かった。

『GYAAAAAAA!!?』

炸裂する空蝉の体。
頭を突き刺したのが仇となったのか、それが炸裂したのが目の近くだったということもあり、
完全に視界を奪われたイカの魔物は闇雲に触椀を振り回すも、
抵抗空しく腕輪のついた触腕は切り落れ、ぼとりと地に落ちた。

『■■■■■■■■■――――!!』

血走った目を激しく動かしながら、怒号とも悲鳴ともつかぬ叫び声を上げながら地を転がり回るイカ型の魔物。
しかし、急にゼンマイの切れたおもちゃのように、動き鈍くなったかと思えば、しばらくして静かになった。
やがて、魔物の全体が光に包まれたかと思うと、まるで映像を巻き戻すかのように
そのシルエットが魔物から人の形へと変化していく。固唾を飲んで見守る中、
やがて完全な人型となった元魔物の姿を目の当たりにして、最初に声を発したのはシスメだった。

「え……? これは………人樹(エント)族?
レダールの影響を受けていたとはいえ……なんで、人樹族がさっきみたいな水生生物型の魔物に?」

そこに倒れて気を失っていたのは、額から角のように
枝葉の突き出ているのが特徴的な人樹(エント)族の少女だった。
変化後とあまりにかけ離れた正体にしばらく言葉を失っていたシスメだったが、
思い直したようにずり落ちかけた眼鏡を指で持ち上げると、すぐさま人樹の少女へと駆け寄った。

「この子を安全な場所まで運びます。
レダール被害者の搬送はこちらは任せて、エルトさんは向こうの援護に向かってあげて下さい。
どうやらディノア管理官の隊員さん達の方もうまくいったみたいです」

人樹の少女の唯一の外傷ともいえる右手首から先が血塗れと
なっているところを包帯で止血しながらシスメはエルトに呼びかける。
見ると、シスメの言葉通り、彼女の言葉を聞いていたのか
ネズミ型の魔物の腕輪の破壊に成功したらしく、向こうの隊員も猫型亜人種の少女を背負っている姿が見えた。
こちらは大丈夫だと頷いてみせる傍ら、シスメはふと思い出したようにエルトを呼び止めた
その顔には心なしか不機嫌な感情が見え隠れしている。

「それとこれは個人的なことなんですけど」

唇を尖らせたシスメは片方の手を腰に当てながらエルトの眼前にひとさし指をつきつけた。

「さっき見てましたけど一か八かの賭けにでるのは最終手段にしてくださいね。
その…たぶん、勘ですけど、エルトさん、さっきなんかそういう危険なことをしようとしている顔をしてました。
私も人のことは言えないですけど、もっと危険な何かをエルトさんはしようとしてたように感じました。
相打ち狙い…とか、そんな感じの。いいですか、今度そんなことをしようとしたら
書記官権限を乱用してエルトさんの内心点を下げることもある……かもしれませんからね」

一息にそう言い切って満足したのだろうか
「まったくレイニアさんといい、今のエルトさんといい…どうしていつもいつも自分をないがしろに……」と
いまだ怒り収まらぬといった調子でぶつぶつと文句を口にしながらも
そのままシスメは人樹の少女を担いで、激戦区から遠のいていった。

>エルト、ALL

6ヶ月前 No.547

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_l7r

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

(…とった!!)
振り下ろした得物から伝わる確かな手ごたえと断末魔の如く発せられた聞きなれぬ奇声から、見事に目論見を達成したことを察する。
「あっちは…もう片付いたか」
続けてネズミ型の方に意識を向ければ…そちらも既に片が付いたようで、戦闘の気配は既に消息していた。
(…あっちは腕輪の破壊という形になったか…確かにそうすべきだったか…だが…収穫はあった…か)
咄嗟の事とは言え、切り落とすと言うのはいささかやりすぎだったかもしれない…そう考えつつも、切り落とされた触腕から転げ落ちた腕輪をひとまず回収し、簡易的な封印魔術を使ってから『ストレージ』へと仕舞い込んでおく。
(…ただのガラクタに成り下がってるかもしれないが…調べれば何かわかるかもしれないしな…後で教官に提出するべきか)
冷静にそんな事を考えていた所で、イカ型の方も元に戻ったようで、その様子を見ていたシスメの声に反応し、そちらに意識を戻す。

「樹人?…いくら何でも関連性が無さすぎるな…」
疑問の声にそう反応する…ネズミ型の方もなぜかネコ型亜人という、真逆と言える変化だったが…それでも大枠で区別すればわからない話ではなかったが…
(…今考えても仕方のない事か)
多少考えた所で結論にはたどり着かないと判断し、早々に思考を打ち切る。
その直後に援護に向かってやってほしいと、シスメの声が聞こえ、了解の意思を伝えようとしたところで…
(…ん?…なにかあったのか)
何やら不機嫌そうなシスメを見て、のんきな事を考えていたら…
「…な…何の事だろう…かな?」
突き付けられた指から逃げるように明後日の方角へと逃げていく視線…一応考えあっての事だと反論すればよかったのかもしれないが…残念ながら開き直れるほど図太い神経はしていなかった。
(確かに見てる方からすれば心臓に悪かった…かもしれないか…だが…)
…そんな此方の心情はさておき、ひとまずは言うべきことを言いきり満足したようで、樹人の少女を担いで戦線から離れていった…去り際にも何やら不満そうに呟いていた事から完全になったHしたわけではないようだが。

(…さて…後残るは)
思考を切り替え、クラウズを包囲している隊員たちの方を見やれば…どうやらセキアの方は何かを掴んだようで、その背に炎の魔術と思わしきマントをたなびかせ、対峙していたようだ。
(どうやら折り合いはついたようだな…なら、心配する事も無い)
完全に使いこなせるとまではいかないようだが…振り回されると言うような事はないだろう…それよりも気になるのは…
(ちょっと目を離した隙に妙な空気になっているな…)
全員がなんとも言えない空気の中、互いに牽制しあう…と言えば聞こえはいいが…実際は呆気に取られている中、セキアだけが張り切っている様子を見て、つい先日の出来事が思い起こされる。
(あー…これは…気にしたらロクな事にならないな?)
先日の出来事からちゃんと学習したようで…特にツッコミを入れるでもなくフォローするでもなく…ただ状況に即した行動を実行する事とする。

「…残るはあんた一人だけだ」
決して少なくはない負傷を負っているクラウズに対しそう告げる。
「勝敗はもう見えている…これ以上の戦闘は無意味だ」
当回しな降伏勧告を行うも…内心ではこの行為こそ無意味であると悟っていた…これで大人しくなるようではここまでの事態になどなるはずもない。
「だからこれで最後だ…大人しく縛につけ」
それでも、最後までそう問いかける避けられる争いなら避けれるに越した事はなく…何より…これ以上戦闘を続けると言うのであれば互いにただでは済まないだろう、という漠然とした予感があった。

>シスメ クラウズ ALL

6ヶ月前 No.548

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:旧下水道 後道】

本心を言い合ったあとセキアさんから力がみなぎっていた。それを感じ取ったレイは、セキアさんの力を最大限に引き出すことに専念した。自分の中にセキアさんの魔力を取り込み、その魔力に自分の魔力を上乗せし、鎌の刃に魔力を込める。すると鎌は白く輝き始め、それはまさに夜空に浮かぶ白い三日月のようになった。


セキアさんが炎のマントを身にまとい、颯爽と敵の前に立ち決めポーズをする。

その決め台詞にレイは素直に
「おー!!!」と感心していた。

「クラウズさんスターチさん、これは個人的な意見ですが、私は今でも……できればあなた達と戦いたくない、傷つけたくはない、話し合うことはできないのかと、思っています。
この状況ではきっとあなたたちに勝算は限りなく少ないと思います。お願いです!降参してください!」

鎌のまま、目の前の二人に語りかける。
この声はテレパシーのようにセキアさん、クラウズさん、スターチさんそれぞれの脳に直接聞こえているはず。

≫セキア スターチ クラウズ ノイ レイニア エルト

6ヶ月前 No.549

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★nSKXBIMJke_IyU

【セキア&レイニア&ノイ&クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

『…残るはあんた一人だけだ』

エルトの声が急に静寂を取り戻した戦場に響き渡った。
汗の変わりに、頬からぽたぽたと血を流すクラウズはそれを拭おうともせず、焦点のぶれかけた瞳で彼を見る。

「へっ……そう、だな……確かに後は俺とスターチだけだ。
よくやってるよ、あんたらは。さすがはアスールの国家隊様ってところだ」

『勝敗はもう見えている…これ以上の戦闘は無意味だ』

「ああ…全くもってそのとおりだな。いくら俺が強かったとしても体力が続かねぇ。
足の震えがさっきから止まらねぇし、右手の感覚だってもうねぇ。たぶん俺はもう詰んでるんだろうよ」

頭上から降りかかる彼の言葉に何度も同意するかのように頷いたクラウズは、
両手に握り締めた鋏を杖に、ぐいと体を持ち上げる。
しかし、今発した言葉とは裏腹に、クラウズは精一杯、口端を吊り上げて見せた。
ぜぇぜぇと荒い息を繰り返しながらも、その薄緑の瞳を睨み返す。
そして、

「なぁ、にいちゃん。あんた自分の命より大切な人っているか?」

そんなことを口走った。

「そいつがひとたび危機に陥ったなら、何をおいても一番に駆けつけ、
たとえ、あらゆる苦悩、世界中の悪意をこの身に受けることになったとしても守る。そんな存在だ」

たたらを踏みながらも何とか立ち上がったクラウズは、口の中の血溜まりをぺっと吐き出すと続ける。

「前に遺跡で会ったとき、俺がレヴァーンに仕えてる理由が聞きてぇとかって馬鹿なこと言ってたよな?」

クラウズは視線は今も黒鉄の銃器の照準ごしにこちらを見守る片言の従者の方を向く。
何故だか戦闘中の張り詰めた様子から一転、ふっと表情を柔らかくしたクラウズは
自分が吹き飛ばした手ごろな瓦礫の上にどっかりと腰を下ろした。
今は攻撃の意思はないと判断したのか、ノイはゆっくりと照準から目を離すと彼の言葉に無言で首肯して見せた。

「俺が戦う理由は、それだよ。妹を人質にとられてる。義理の妹だが……俺の命の恩人だ」

何を思ったか鋏を地に突き刺し、懐から煙草を取り出したクラウズは、それを咥えるとマッチで火をつけ始める。
白煙がゆっくりと天井に向かって伸びていくのを見ながら、彼は言葉を続けた。

「あんたらをここで全員始末すれば、妹は晴れて自由の身になるって寸法だ。
ま、あの仮面の嬢ちゃんのことだ。どうせ嘘だろうが、
どのみち俺に他の選択肢はねぇ。拒否すれば妹は死ぬ」

まるで最後の晩餐を楽しむかのように、しばらく煙草を燻らせていた彼だったが、
まだ半分以上残っているそれを携帯灰皿に押し付けて消すと、
地面に突き刺したままの鋏を引き抜いて肩へと担ぐ。
息が整う頃には、その表情は再びレヴァーンの異端審問官のそれへと戻っていた。

「同情したか? だったら、俺のために死んでくれ。俺が勝つか、あんたらが生き残るか、道は二つだ」

交渉の余地はない、とその瞳が語っていた。
既にその気配は察していたのか、ディノアもノイもセキアも、すぐに武器を構えなおす。
再び緊張感を増す戦場。そんな中、凛とした声が響いた。

「嘘ですね」

「ああ?」

「その顔は、自分を罰したがっている顔です」

くすんだ色の右目に白い魔法陣を浮かび上がらせたレイニアと同様に右目に白い魔法陣を浮かびあがらせたノイ。
五感共有魔術(センシティブリンク・マジック)。
ノイとの視界の共有によってレイニアはクラウズの表情を読み取ることが出来たのだ。
くすんだマリンブルーの視線がノイの瞳越しに彼を射抜く。
クラウズが痛いところを突かれたであろうことは誰の目にも明白だった。

「は……はは、何をいうかと思えば。狼の嬢ちゃんがそんなロマンチストとは思わなかっ―――」

明らかな動揺が見え隠れする表情を隠そうともせず
茶化すように肩をすくめたクラウズだったが、そんな彼の言葉を遮るようにレイの言葉が差し込まれる。

『クラウズさんスターチさん、これは個人的な意見ですが、
私は今でも……できればあなた達と戦いたくない、傷つけたくはない
話し合うことはできないのかと、思っています』

「なんだよ……ああ、うるせぇな……うるせぇ」

レイがこちらに注ぐ視線に耐え切れなくなったのか、目に見えてクラウズの狼狽はひどくなっていく。
片方の手で顔を覆ったクラウズは、レイの言葉を振り切るように何度も何度も首を振る。

『この状況ではきっとあなたたちに勝算は限りなく少ないと思います。お願いです!降参してください!』

「うるせぇ……うるせぇってんだよ!!
なんだんだよ、あんたらは。そんな目で俺を見てるんじゃねぇ!!
俺は敵だっつってんだろ。 今さら期待させてんじゃねぇ!
希望はもうねぇ! それを今から俺が証明してやる! スターチ!!」

完全に取り乱した様子のクラウズは鋏からあふれ出す濃度の高い余剰魔力の中に身を躍らせながら突っ込んでくる。
二人のやりとりをただ黙して聞いていたセキアは、
手の中にあるレイに語りかけるように、強く鎌の柄を握り締めた。

「レイ、絶対止めよう。
あたし達なら絶対出来る。レイもまだあの二人に言い足りないことあるでしょ。
あたしもなんか今の聞いててだんだん腹立ってきた」

>レイ、エルト、ALL

6ヶ月前 No.550

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:区画本部内:旧下水道・後道】

クラウズさんの妹さんが人質に取られている。
この戦いを拒否すれば、妹さんの命がない。
それはどうしようもない現実だった。
そしてレイは思ってしまった。
今、確実にクラウズさんには勝機はない。クラウズさんが負ける未来しか見ないこの状況で、もしクラウズさんが私たちに負けたら
きっとクラウズさんの妹さんは用済みとなって殺されてしまうかもしれない。
降参したとしても同じことかもしれない。

「…セキアさん。私は、クラウズさんもクラウズさんの妹さんも助けたいって思ってます。
この考えがいかに甘いのかも重々承知してます。正直、どうすれば二人を救えるのかまったく見当がつきません。
でも、目の前で助けを求めている人を見捨てることなんて私にはできません!」

静かに、セキアさんに語りかけた。
自分の魔力とセキアさんの魔力を最大限に引き上げ始め、鎌の刃は熱をおび、シュワーと蒸気のようなものが出始めた。

「セキアさん!私のワガママのために戦ってください!!」

≫セキア クラウズ スターチ エルト レイニア

6ヶ月前 No.551

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★PFwEaozfm2_IyU

【セキア&レイニア&ノイ&クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

響き渡る無数の剣戟が鼓膜を通して伝わってくる。力の入らない腕で鋏を振るい、それを弾き返す。
もちろん、そんな体でいつも通りに鋏を扱えるわけもなく、
ひとつ受ければ姿勢は崩れ、そこを狙うように剣戟と熱線が襲う。もうほとんど視界はぼやけて使い物にならない。
一瞬遅れて鋭い痛みが次々と襲い掛かり、皮膚を貫いて脳が揺さぶられた。

(いてぇし……熱いし、苦しい……ああくそ、ほんとなにやってんだ)

お前はもう十分やったよ、と心の中で怠惰な自分が微笑みかける。
確かに最良のコンディションとは言いがたい。
鋏を握りなおせばそれだけで腕が痛み、前転で攻撃を避けるたびに足と背骨が悲鳴を上げた。
さっきからずっと荒い息がとまらないのに、その音さえもノイズのようにかすんで聞こえない。
しかし、まだ動ける。動けるなら、まだ戦える。ならばここで止まる理由はない。

「ぐっ…ぅ…ああああああああああ!!!」

かすれた咆哮が下水道内に反響する。
あくまでこちらの拘束が目的なのか、致命傷はない。だが、確実に体力は底をつきはじめていた。
がむしゃらに突っ込み、切っ先を突き出してから、鋏を左右に分解して切り払う。
こちらを挟み込むように突っ込んできたレイニアとディノアをその攻撃によって
大きく後退させたクラウズはその奥で鎌を構える一人の少女に向かって駆けた。
これは一種の賭けだ。この隊の仲間内の結束が高いのは知っている。だからそれを利用することにした。
卑怯と罵られようと構わない。今までずっとそうしてきたのだ。痛む良心などとうに切り捨てている。
新たな力を発現したことによって力は未知数だが、まだ使い慣れてない今が好機だ。
確実に弱いところから狙う。腰を低く落としたクラウズはその手に握り締めた鋏に視線を落とした。

「スターチ……いま残ってる魔力、全部肉体強化に回せ」

驚きにかすかに鋏が震えた気がした。

「そんなことをしたら主様の体が……!」

「ああ、知ってる」

「………っ、勝機は、あるのでございますか?」

「ったりめぇだろ。
こいつら倒してミールの危機も救ったら今夜は酒盛りといこうや。簡単だろ、なぁ?」

血相を変えるスターチを説き伏せて走る。走る。走る。
いつもよりとても長く感じる助走を終えて、ようやく二人は彼女たちの元へとたどり着いた。

「やっぱり最後に立ちふさがるのはこの二人ってか。
花の嬢ちゃん、自称勇者の嬢ちゃん。悪ぃが、あんたらを人質にとらせてもらう」

呟いてから一閃。愚直にも、だが、今もてる最大の力をもってしての効果的な一撃。振り下ろしが二人を襲う。

「おにーさん、それ……すごい悪手」

しかし、落ち着いた表情で呟いたセキアは避ける素振りも見せず鎌を縦に構えると、
そのまま柄に沿わせるようにして、鋏による一撃を下へ受け流した。
振り下ろされた鋏はそのまま地面を穿ち、散弾のように瓦礫を撒き散らすも、
セキアは鎌を回してそれらを弾き飛ばすと、背中に出現したマントのような炎の幕に鎌の刃を巻きつける。
そのまま回転の勢いを利用して鎌を胴のまわりで一周させたセキアは、
大きく横なぎに刃の背をクラウズの右足に打ち付けた。

「ッ……!!」

炎のマントを巻きつけた刃が何度もフラッシュを焚いた様な光を撒き散らし炸裂する。
右足全体のバランスが大きく崩れ、クラウズはそのまま膝をついてしまう。
立ち上がろうと動かせば、つまづいて上手く立てない。
今の一撃で神経まで焼かれたかのように足に力が入らなくなった。
痛みはない。だが、動かせない。だが、それでもなお、
彼は無理やり動かない右足を突っ張り、左足で踏み切り、牽制するように大きく鋏を振るった。
もはや攻防は意味をなさなくなっていた。
攻撃するたびにこちらも怪我を負うが、もはやそんなことに構って入られない。
さっきから聞こえるこのノイズはさっき弾き飛ばした二人の足音だろうか、
だったらもうゆっくりはしていられない。動かなくなった右足を引きずりながらも、
クラウズは再び上段へ鋏を構えなおす。
そんな中

「ねぇ、おにーさん」

突然、だらりと無防備に構えをといた少女の姿に、クラウズはあっけにとられた様子でその目を見開いた。

「さっき、レイニー教官が言ってた嘘だって言葉。あれ、図星だったんだよね?」

セキアの言葉に嘲笑するかのような忍び笑いを漏らすクラウズ。
だが、その顔はいつもと比べて演技臭さを隠せていない。

「ああ? 今さら何を言うかと思えば……付き合いきれねぇなぁ。
俺が自分を罰したがってるって? おセンチなことだなぁ。
勝手に分かった気になってろよ、これだから世間を知らねぇ甘ちゃんは―――」

「おにーさんは最初から勝つ気なんてなかった。そうでしょ?」

「違う!!」

満身創痍の余裕のなさがそうさせるのか、吼えるような声でクラウズはセキアの言葉を否定する。
だが、セキアは構わず言葉を続けた。

「おにーさんは死に場所を求めてた、そんな気がするんだよ。そんな目をあたしは昔、見た気がするから」

言葉を失ったクラウズは無言のまま再び鋏を構えなおす。
それを決別だと理解したセキアは

「おにーさんも鋏のおねーさんも死なせない。
レイに聞きたいことがあるように、あたしも二人に聞きたいこと言いたいことがあるんだ。
だから、次で終わらせる」

クラウズが駆け出すのとほぼ同時に大きく一歩を踏み込んだ。

「ね、レイ。あたしが飛び上がったらこの下水道の中で振り回せるぎりぎりの大きさの、
出来るだけ大きな剣になってくれないかな。
もういいかげんあったまきた。ああいう分からず屋には一発キツいのをくらわせてやらないと」

そういうが早いか鎌の刃から背中へと戻った
炎のマントの一部が炸裂し、セキアは下水道の天井へ届くほど高く飛び上がった。

>レイ、エルト、ALL

5ヶ月前 No.552

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_l7r

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

(…なんだ?…こうもあっさり?)
こちらの勧告にある程度の理解はあったのか、一時的に抵抗を止め、満身創痍な身でありながらも無理矢理にその口角をあげ、こちらを見返してきた。
(…いや、これでいい…これでいいんだ…今なら誰も死なないで…誰も犠牲にならないで済む)
拍子抜けする結末ではあったが…クラウズも自身で分かっている通り、これ以上の抵抗する事は難しく…どう転がるにせよ、この状況を変えるならば一度刃を納めるのは選択肢としては十分にありだろう。

「それは…」
だがしかし…やはりと言うべきか、こちらのそんな甘い考え通りにはいかず…クラウズの口から語られたのは、思いもよらぬ問い掛けと、決して引けぬ理由であった。
(くそっ!!…なんで…なんでそんな事が平然と…っ!!)
前途の問いに関する答えは…確かに居た…確かにかつては居たのだ…だからこそまだ間に合うと言うのであれば…それを助ける方法があると言うのであれば…何とか力になりたいと思ってしまう。
「…そうだとしても…やらせるわけには…いかない」
しかし、それでもこの場の全員の命と天秤にかける訳にはいかない…それを望むと言うのは…あまりにも…あまりにも対価が大きすぎる。
不意の問い掛けに呼び覚まされたかつての慟哭…人質という手段で死地に駆り出す黒幕への怒り…そしてそれに対し有効な手段を持ちえない自身の不甲斐なさ。
その他多数の感情が渦巻き、混ざり合い…それでも決してまとまりきれないその坩堝のような感情に無意識のうち、右手が自身の胸を伸び…
「やるしか…ないというのなら!!」
渦巻く感情に軋む心を無理矢理に繋ぎ止めるように自身の胸を一度強く握り込み、理性と使命感で無理矢理に理屈をひねり出し、縛り付ける。
もはや問答の余地はない…覚悟を決めた所で…思わぬ指摘に、流れが変わる。

(…嘘…だと?)
ノイを通じ、クラウズを観察していたレイニアからもたらされた指摘…それを受け、クラウズは明らかに狼狽していた。
(…なら…一体何があいつを駆り立てているんだ?…命を捨てるような…そんな覚悟が)
考える間にも状況は進み…再度の戦闘が始まったところで、出遅れながらも戦闘に参加しようとしたところで、クラウズが賭けに出た。

「やらせると…っ!?」
包囲を抜き、セキアに迫るクラウズに慌てて迎撃を試みようとするも…その動きは今までの比ではなく…一気に肉薄したクラウズは既にその刃を振り始めていた。
(間に合わ…ない…!?)
このタイミングでは間違いなくセキアを巻き込む…そう判断してしまったが故に完全にその動きは止まってしまう。
…それは1秒にも満たない物ではあったが…戦闘においては致命的な時間であった…しかし
(っ!!…何が…)
突如発生した閃光によって…セキアの迎撃のために取られた行動によって引き起こされたものであったが…麻痺した視覚が戻った時に見えたのは…もはや死に体とも言って差支えのない状態のクラウズと構えすら解いてそんな彼に言葉をかけるセキアの姿であった。
…おそらくは次が最後の打ち合いになるのだろう…そんな事を漠然と感じ取りながら、援護する事も忘れて、共に構えに入った両者に視線を釘付けにされる。
(セキア…レイ…お前たちならば…この男を止められるか?)
瀕死のクラウズはもはや何が致命傷になってもおかしくはなく…ただ見守るしかない状況で固唾を飲んで見守る。

>クラウズ セキア レイ ALL

5ヶ月前 No.553

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ/エイルス区画本部/急下水道・後道】

クラウズさんは、最後の力を振り絞ってこちらへと突撃してきて、私とセキアさんを人質にしようとした。
だけど、その作戦はセキアさんが冷静に対処したことにより、失敗する。そしてセキアさんはさっきレイニアさんがクラウズさんに言った言葉が図星だったのでは?と言及する。

私もそう思う。クラウズさんは背負わなくていい罪を背負い、その罪に対して自分を罰しようとしている。

セキアさんが私に大きな大剣に変身してくれと言ってきた。私はコクリと鎌の中でうなづいた。
セキアさんが高く飛び上がった瞬間、レイの体は光り輝き、その姿を大剣へと変えた。鏡のようピカピカの銀色に青紫色の宝石が散りばめられた柄、刃は空気すらも切れそうなほど鋭い大剣。さぞかし重いのかと思われるかもしれないが、恐らく心の波長が合わせられたセキアには、竹刀くらいの軽さに感じていることだろう。

「私、これを使うの少し怖かったんです。……でも、セキアさんが一緒なら怖くない……今なら……」

そういうと大剣の刃の峰の部分に一枚のお札が現れた。それはあの遺跡の調査前に配られた「対象のトラウマを120%凝縮し引き出して精神的攻撃を与える恐怖のお札」だった。
あれほど自分に貼って使うことを拒んでいたレイは、自らにその札を刃に貼った。

「っ……」

脳裏に、次々にやられていく同胞、お母様の悲鳴、一面焼け野原になった村、村を襲った国家隊の軍服をきた男、いつ殺されるかわからない恐怖を抑え、街の隅で隠れ住んでいたこと、とある盗賊団に捕まり奴隷のように使われ捨てられたことなど、今まで味わった悲しい過去、辛い過去が鮮明に流れてくる…。正直悲鳴をあげたいくらいだった。でも……今の私にはセキアさんもいる大丈夫、耐えられる。

「この大剣でクラウズさんに一撃でも当てることができれば………戦闘不能にすることはできるはずです。
本当は何かあった時の護身用だったのですが、こんな形でお役に立てるなんて……」

≫セキアさん エルトさん レイニアさん クラウズさん スターチさん

5ヶ月前 No.554

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・後道】


ベリオの言葉を遮るようにして現れたのは、聖職者然とした格好の見知らぬ男女だった。男が発した台詞と他のメンバーの反応を見るに、二人は第七部隊と対峙したことがあるらしい。
『クラウズ』と名乗る男はその服装に似合わずフランク過ぎる言動を取っており、聖職者らしくないサングラス男、という第一印象をベリオに与えた。それとは対照的に、彼の後に『スタルチア』と名乗った女性は、短い自己紹介と共に此方に軽く会釈をしてきたため、ベリオも思わず「あっ、ど、どうも…」と会釈を返してしまう。敵に頭を下げるとは何事か、と自らの理性が叱ってくる気がするが、ベリオの性格上、仕方の無いことだ。それはさておき、彼女は丁寧で冷静な女性、という第一印象が彼に与えられる。尤も、彼女は主人のことになると修羅と化す場合もあることを知らないのもあるが…。
そして語られる、聖職者(?)二人が例の魔物二体にレダールを投与したという事実(それを聞いたスタルチアの反応が少々怪しいが…)。そして、その事実に対し、初対面の頃には想像もしなかった、怒りの感情と、その手に持つ魔道書の光を溢れさせるセキアの姿。
怒りを見せるな、それでは敵の思う壺だ。そう窘めようとベリオは空いた片手を彼女に伸ばしかけたが、再び歪みかける視界に阻まれ、その手の指先は自らの眉間に当てられた。
その間にレイとエルトがセキアの怒りを鎮めようとしてくれたらしく、気が付けばセキアの溢れんばかりの感情と光は鳴りを潜めていた。その直後、クラウズらとの戦闘が始まろうとした瞬間、彼を背後から攻撃する者が現れた。此処には本任務のメンバーが全員いる。ならば一体何者が…?そう思いつつ、先程の下水道全体を照らさんばかりの膨大な光によって闇に慣れきっていない両目を凝らして見れば、その人物の姿が確認できた。それは。

「なっ……ディノア管理官殿!?何故貴殿が此処に…!?」

目を見開き、多少シスメやエルトたちと似たような言葉を口にしながら驚く。何故?何故この場に居ないはずの管理官殿が?__その答えはすぐに、レイニアの口から語られた。どうやらこの任務、目の前の二人を誘き出すための囮だったらしい。そんなこととはつゆ知らず、馬鹿正直に任務を果たそうとしていたベリオは、「え?…は?…!?」と一人間抜けな声しか出なかったものの、すぐに気を取り直し、冷静に現場を見据え、蒼紅の拳銃を構える。
これが囮ということは、恐らく自身が護送しているフェリクスも囮ということになりそうだが、任務前に中身を見せて頂いた以上、本物の可能性もある。正規の任務とは言い難いが、途中でこれを放り出す程、自分は無責任ではない__と思う。
改めて、クラウズたちとの戦闘が始まり、すぐに中道辺りで逃した(そしてベリオの大切な物資を台無しにさせられた)魔物二体までもが現れる。
あの時に身体の異変を感じた今、無駄に魔力を消費する訳にはいかないため、付与する魔力を最小限に抑えた状態で(どういう訳か、彼の拳銃は魔力無しでは役立たずの模型同然なのである)、且つ負担をかけ過ぎないように気を付けつつ、クラウズらよりも魔物たちを優先的に相手取り、弾丸で牽制していく。
__そして、そうするにつれて視界が歪んで見える感覚も徐々に増えつつあった。

「っ…!…まただ……くそっ」

『コキュートス』の弾倉を交換しつつ、誰にも聞かれないよう小声で悪態を吐くベリオ。一度不調を感じてしまった所為か、それとも慣れない実戦によるストレスの所為か、過去のWそれWよりも早くWそれWは進行しているように感じる。気になれば気になる程、段々戦闘に集中することが困難になってくる。故に、周りで起きている多少の状況に意識を向ける余裕も無くなりつつあった。
丁度その時。

『■■■■■■■■■――――!!』

如何とも形容し難い叫び声が辺りに響き渡る。それはベリオの耳にも嫌という程入ってくる訳で、ハッと周囲に気を戻せば、エルトがイカ型魔物の腕輪付きの触腕を切り落としたところだった。
その魔物は一頻り大きくのたうち回った後、そのままグッタリと動かなくなった。
まだ余力がある可能性も考え、その後も拳銃を下向きに構えつつ警戒していたが、どうやら今の一撃でトドメだったらしく、魔物の身体が光り輝き、徐々に人型の何者かの姿へと変化していく。
但し__光から出てきたのはイカどころか魚介類とも属さない種族(人樹)の少女であったが。
その姿と、少し離れた所でも元に戻ったらしい、元・ネズミ型魔物の猫型亜人種の少女の姿を見て、一抹の不可解さを覚えつつもホッと胸をなで下ろすベリオ。しかし__。

「何故、元の姿と腕輪によって変えられた姿が似つかない程の変わり様だったのかは謎だが……これでひとまずは一つの課題は片付いたな。後は____っ!!」

シスメに手当てされようとしている人樹の少女に再び視線を送ったことが仇となった。
少女の、ちょうどシスメが包帯を巻こうとしている部位。その右手首の傷口と周囲を染める赤。それを目の当たりにした瞬間、ベリオの心臓が一際強い鼓動を打った。
赤。赤、赤。違う、アレはそうじゃない。でも赤い。赤い傷から流れている。間違いない違う違わなくても駄目だ今はそんな場合じゃない。吸いたい一口でも舐めても問題ない否駄目だそんなこと許されない今までの努力が無駄になるそれに今敵が仲間を、守らないといけないでも魔力が足りない足りない足りないタリナイタリ内足りないタリナイ

「っっ……ハッ…ハァッ!ハァ、ハァ、ハァ……」

脳内を駆け巡る衝動と理性の思考を鎮めようと、『コキュートス』を握ったままの右手で頭を押さえ、とうに弾切れとなっていた『ディーテ』をホルスターに戻し、空いた左手で胸を押さえながら、何度も荒く息を吐く。人樹の少女の外傷はそんな大したものじゃない。しかしその傷から流れているものが、まだ抑えられる方であった感情を加速させてしまったらしい。
顔から血の気が引いていくのを感じる。駄目だ、こんなところでW落ちてWしまう訳にも、逃げる訳にもいかない。今も仲間が戦っているのだ。魔物に変えられていた少女たちも救助された。後は自分たちも援護に回らなければならない。
そう無理矢理自身を奮い立たせ、少女から無理矢理視線を逸らしてみせると、セキアらが奮戦している敵に目を向ける。向けたのは良いが、同然敵も味方も負傷している訳で、多少の赤色を見てしまったがために、またもや動悸が激しくなってしまう。

(あーもう、あ゛ーーーもう!!何でこんな時に!もう少しで、もう少しで終わるかもしれないのによぉ…!ここで終わる訳には…いかな__)
『あたしは、白月を纏いし猛き綺羅星! 有明月(ありあけづき)の勇者セキア・ルーブ!!
窮地に覚醒する秘められし力!
そして、真の勇者は遅れてやってくる。まさしくセオリー通りってわけね!』

先程も聞いたことがあるような、無いような。そんな芝居掛かった口上を声高に言い放つ人物がいた。セキアだ。ベリオは気付かなかったが、いつの間にか彼女の背には煌々と光り輝く炎で出来たマントが翻り、彼女の表情そのものも底抜けに明るく、そしてやけに張り切っているのが見て取れた。

「…………ふっ」

いつもの彼ならこの場で彼女に突っ込み(物理)を入れていただろうが…この時の彼の口元には笑みが溢れ、今まで彼を蝕もうとしていた衝動も鳴りを潜めていた。赤色をしたそれさえも、気にならなくなっていた。
そして、此方側のメンバーらの台詞に徐々に感情を乱されてきているらしいクラウズと、そんな彼を止めようと立ち向かうセキアと(武器と化した)レイ。
最後に一撃くらい援護してやろうと一瞬思ったが、それぱ今は無粋だと思い直し、彼と彼女らの行く末を、未だ僅かに青白さの残る顔で見守る。

>クラウズ、スタルチア、セキア、エルト、ALL


【お久し振りでございます…。年号が変わって一か月経つまでの間、随分と間が空いてしまったことを此処でお詫び申し上げます。どうでもいいですが、私も先々月社会人となりまして、その後も程々に投稿ペースを保ちつつ働きたいなと思っていたのですが、思っていた以上にモチベーションが下がってしまいまして…。仕事は早めに終わるのですが、一人暮らしになったこともあり、やることが増えて精神的に創作意欲が湧きにくい事態が続き、どういった返し文にしようか考えようにも上手く思いつかず、ズルズルとこんなことになってしまいました…。レスも大分省略して目も当てられない出来となっております、申し訳ないです…。
失踪紛いの真似をし、スレ主様や皆さまへ心配とご迷惑をお掛けしたことを、改めて深くお詫びしたいと思います。すみませんでした…!
まだモチベーション回復まで時間が掛かってしまうと思いますが、まだまだこのスレのメンバーとして参加する気は断然あるので、遅筆ながらもしっかりレスを返していきたいと考えております…!】

>スレ主様、ALL参加者様

5ヶ月前 No.555

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★Nu2TxyWDvo_zwh

【セキア&レイニア&ノイ&クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

高く飛び上がった瞬間、セキアのその手には大剣が握られていた。
鏡のようにいっぺんの曇りもない白銀の刀身。
青紫色の宝石が散りばめられた柄、その刃は空気すらも両断できそうなほど鋭く研ぎ澄まされている。
見た目に反して木片のように軽いその剣を目前に掲げたセキアは、満足げに何度も頷く。

「うんうん! やっぱり勇者には鎌じゃなくて剣じゃないとね!」

今まで感じたことがないような高揚感が胸を満たし始めるも、
突然、それを塗りつぶすような強烈な不快感を覚えてセキアは剣と化したレイに視線を落とす。
見るとその刀身には、いつかの任務で渡されたあのおどろおどろしい色の転写札が貼り付けられていた。

「レイ!?」

思わず声が裏返る。だが、すぐに思いなおしたセキアは剣を握る指にさらに力を込めた。
信じてもいいんだよね。
物言わぬ剣となった今、彼女の表情までは読みきれない。
ただ、こちらの無言の問いかけに彼女が力強く頷き返してくれるのを、なんとなくセキアは感じた。
剣を振り下ろす瞬間、背中の炎のマントをその大きくなった刀身へと巻きつける。

「ひぃっさぁつ! ラストぉ! ファイナルぅ! フィニッシュエンドぉ! スラァァァァァッシュ!!」

赤い炎のオーラを纏った巨大な剣。黒いオーラを纏い、その刃の大きさを立ち上るオーラによって増大させた鋏。
空気を震わせるような轟音を伴って赤と黒が激突する。最初は拮抗しているように見えたその二つも、
やがて黒いオーラに幾重にもひび割れ始めることで、徐々に両者の形勢に大きな開きがみえ始める。
このまま鋏とともに果てるとつもりかと思われたクラウズはしかし、何を思ったか手にしていた鋏を壁際へと投げ捨てた。

――――主様!?――――

両者がぶつかる音によって声さえも満足に耳には届かない。
スターチの驚愕を心で感じ取るも、クラウズは鋏に纏わせていた黒いオーラを自身の右腕に集中させると、
その拳で頭上から振り下ろされる赤い剣の一撃を迎え撃った。
目が一瞬ばかになったのかと思った。視界は白一色となる。その刹那、視界を埋め尽くす光の中に彼女の姿を見た気がした。




そこは四方をぐるりと石壁に囲まれた円筒形の部屋だった。
かろうじて指一本がとおるくらいの細い空気穴が空いているばかりで、唯一、光と呼べるものは天井から差し込む月光のみだった。
その箱庭の中心に白があった。
大切な、妹。昔、兄妹の誓いをかわし、家族と呼び合えることを許しあった存在。
自分の異能の力で俺の足の怪我を肩代わりをして満足に走れなくなったどうしようもなくお人よしで馬鹿な女。
任務の後は成功を報告に、そこへ通うのが日課だった。
「こんなところ、すぐに出してやる」なんて、そんな言葉をもう何度口にしたか分からない。
ただ、彼女は寂しげに微笑むばかりだ。どうして彼女がそんな顔をするようになったのか、
そんな考えにいきつかないほどに、俺はどうしようもなく馬鹿だった。
彼女を助け出すためならなんでもした。人の不幸に目を瞑り、怨嗟の声に耳を塞いで、
妹のためだ妹のためだと、利己的な免罪符をかかげて、人の幸せを踏みにじって踏みにじって踏みにじり続けた。
だが、やがて理解する。任務の成功を報告する度、彼女の顔が曇っていくのを。
彼女はある日、俺だけでも逃げるようにと言い、それきり口を閉ざした。そんなときだ、この任務の話が飛び込んできたのは。
任務の内容はフェリクスをエサに目標を誘き出し殲滅すること。
しかし、驚くべきことに任務の達成条件には“俺の死が含まれていた”
とかげのしっぽきりか、カモフラージュのためかは分からない。だが、見事任務を達成した暁には、妹の解放が約束された。
どのみち俺に拒否権も、選択権はない。命じたままを果たせなければ妹は死ぬのだ。
そうして疑問だけが残る。彼女のあの悲しげな顔。その意味を。
しかし、今、ようやく理解できた。そう、それは

「……………自分のために誰かが傷つくのが嫌だったんだよな、ミール」

視界があけると彼の目にはひび割れた下水道の天井が映っていた。
泥のような疲労に頭はぼんやりと熱を持ち、呼吸するだけで体中がずきずきとひっきりなしに痛みを訴えてくる。
はっきり言って死ぬほど痛い。それこそ比喩でもなんでもなく、体がバラバラになりそうな痛みだった。
それがここが天国ではないことの何よりの証明だった。
巨大な剣を手にしたまま微笑む少女に、呆れたような声でクラウズは呟く。

「どーいうつもりだよ……花の嬢ちゃん、自称勇者の嬢ちゃん……
いけねぇなぁ……いけねぇよ……ちゃんと……始末してくれねぇと……駄目じゃねぇかよ」

「主様!!」

鋏の状態から人の姿へと戻ったスターチは、すぐさま駆け寄って彼を抱きしめる。
その肩越しにクラウズはぼんやりと第七候補隊の面々を見やる。
今しがた彼が口にした言葉に憤慨するような面持ちで
腰に手を当てたセキアが前へ進み出ると、かがんで視線をクラウズに合わせる。

「あたしたち国家隊員は無法者の寄せ集めでも、殺戮者でもない。
あたしたちがするのは、あくまで捕縛。秩序の維持だけ。
レイもあたしも聞きたいことがあるってさっき言ったよね? そうだよね、レイ」

いつだったかヒルカが入隊試験のときに口にしたセリフを覚えていたのか、
彼女のセリフをそのまま引っ張りだしてクラウズに言い聞かせるセキアに、
レイニアは小さく微笑むと彼女の隣に同じように屈んでクラウズに視線を合わせる。

「まだ続けますか?」

レイニアの問いかけに静かに首を振るクラウズ。
その答えに満足したのか、レイニアはディノアに小さく目配せすると、
ディノアの隊員たちが手早く手錠やら、特別な拘束具を用いて彼らを拘束していく。
無抵抗に自由を奪われていく音を聞いていたレイニアだったが、
やがて第七候補隊の面々へを向きなおると、気を取り直してとばかりに顔に貼り付けた笑みを深くした。

「では〜、私たちは私たちの目的を果たしましょうか〜。この任務の最終目的はなんでしたっけ?」

問いかけるレイニア。
はて、と首を傾げるセキアだったが、はっと思う出したかのように声を上げた。

「あっ! フェリクスの護送!」

すっかり忘れていたとばかりに声を上げるセキアに対し、
レイニアはくすくすと甘い笑い声を漏らすと、急かすように前を歩いていく。

「あはは。正解です。面倒ごとはさっさと終わらせてしまいましょうか〜」

「勇者の凱旋といこうぜぃ! レイ、エルト、ベリオ、ノイちゃん、シスメおねーさんも!」

ずっとこちらを見守っていてくれたエルト。若干呆れながらも
いつもより柔らかい笑いを口元にたたえたベリオ。そして、信じて一緒に戦ってくれたレイ。
第七候補隊の面々に、それぞれに笑顔とVサインを向けたセキアは彼らの元へと駆け寄るのだった。

>レイ、エルト、ベリオ、ALL

【Infomation:イベント終了条件クリア!
これにて戦闘イベントを終了いたします。最後までお付き合い頂きありがとうございました!】


【おかえりなさい。ようこそ再びアスールへ!
アスールの門扉はいつでも開いておりますので、無理だけはなさらないよう
くれぐれもご自愛ください。再び貴方と物語が紡げることを嬉しく思います】>レーリン様

5ヶ月前 No.556

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・後道】


クラウズへ会心の一撃を繰り出さんと、自らのマントの欠片による爆風に乗って高く飛び上がったセキアの手には、先程まで握っていた禍々しい意匠の施された鎌から、鏡のように磨き上げられた刀身と青紫色の宝石で彩られた柄を持つ大剣へと変貌を遂げたレイが握られていた。彼女の姿に満足げに頷くセキアだったが、その笑みは驚愕の色に変わる。ベリオがアスールに到着する以前、レイたちが貰った悍ましい効果を持つ札が、レイの刀身に貼り付けられていた故に。
しかしその驚愕も一瞬のことで、セキアは一層彼女を持つ手に力を込めると、目下その鋭利な刃を振り下ろすべき相手目掛け、自らの炎のマントを刃に巻き付け、彼女のオリジナルらしい必殺技を叫びながら、二人の覚悟を載せた一撃を繰り出す。
それを黙って喰らう訳が無いクラウズも、黒々としたオーラを纏う巨大鋏も以って受け止める。赤と黒の相反するオーラがぶつかり合い、やがてクラウズの劣勢が目に見えて分かる頃__どういう訳なのか、彼は自らの持つ鋏を投げ捨てたのである。

「!?突然得物を投げ捨てた?一体何の__」

つもりだ、と独り言を言い終えない内に、セキアの大剣とクラウズの拳がぶつかり合い、両者の間に白い閃光が生まれる。
ベリオは、目も開けられない程の眩しさに思わず片腕で両目を覆い、閃光が収まった時に腕を退けて見れば__二人がいた場所の真上の天井は衝撃でひび割れ、地面に足を付け、真っ直ぐ立つセキアと、対照的に地面に背を付けて仰向けに倒れるクラウズの姿が視界に映った。

「…奴は、どうなったんだ…?」

一瞬、クラウズは命を落としたのかと思った。しかし、直後にそれは大きな勘違いであったことに気付く。
彼は目を覚まし、壁際に投げられた鋏はスタルチア(人型)としての姿に戻り、彼に駆け寄って抱きしめた。
そして、自らに微笑みかけるセキアと一言二言言葉を交わした後、その一部始終を皆と共に見ていたレイニアからの問い掛けに首を横に振る形で、事実上、負けを認めたのだった。
すぐさまディノア管理官の隊に拘束されてゆくクラウズとスタルチア。カシャリカシャリと次々に拘束具を取り付けられてゆく二人を無言で見守るベリオであったが、ふと、何かを思い付いたように二人のいる場所へ歩み寄ると、大人しく拘束されているクラウズの前で立ち止まり、そのまま彼と同じ目線になる姿勢になり、口を開く。

「……ポッと出の新人である俺がお前に言う義理は無いかもしれないが…。
正直、俺はお前と、お前のパートナーのことは良く知らない。何せ初対面だからな、仕方ない。だが…初対面で敵対したお前に気を遣うことなら出来る。
…まず、これを見てくれるか?」

そう言って、自らのコートのポケットから取り出して見せたのは、一枚の清楚な名刺だった。
アスールから少し離れた国の名が付いた病院名と肩書きの書かれたそれは、ある人物の名前と顔写真が載っていた。
白衣に身を包んだその人物は、薄桃色の桜の花弁を思わせる色彩を持つ白髪と、鮮やかなローズピンクの瞳が目を惹く外見をしている。
何故彼がこのような名刺を持っているかと言えば、この写真の中の人物が「そのうち役に立つから」と、彼に持たせたことが理由であった。そして今これが役立つ時だと、ベリオは直感したのである。
正直なところ、ベリオはクラウズの事情はあまり知らない。彼が大切な義妹について話していた時、ある衝動的な感情に苛まれていたことが原因だが……何だか、彼のことをW彼女Wならば助けてくれるかもしれないと思ったのだ。

「見せるだけですまないな。本来なら名刺ごと渡しておくべきなのだろうが…お前たちは既に拘束されているからな、名刺なんてまともに持てないだろう?
…とにかくだ、この写真の人物に面会がしたければ、国家隊の看守殿か上官方にでも頼んでみるといい。恐らく、彼女ならば…お前の助けになるだろう」

クラウズが名刺を見つめている間にそう語ると、最後に「あ、でも脱獄とかは無理だからな」と付け足し、彼が名刺の人物の顔と名前を覚えたであろう頃合になってから名刺を再びポケットにしまい、「出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」と二人の周りにいるディノア管理官の隊員たちに頭を下げ、仲間たちのいる場所まで戻る。
その直後、レイニアとセキアが今回の任務のことについての話をしているのが耳に入る。そうだ、任務は最後まで遂行しなくては。
……さっきは架空扱いしていた?…人聞きの悪いことを言うな。確かに囮だとか、フェリクスが偽物かもしれないとか思ったりはしたが…何も断定した訳ではない。それに任務は最後まで放棄しないとも考えていたではないか。ほら、まだケースだって手放していない。
閑話休題、『勇者の凱旋といこうぜぃ!』と底抜けに明るい笑顔で駆け寄るセキアに、いつも無茶をする等と思いつつも、ベリオはいつもより穏やかな微笑を浮かべつつ、彼女が此方まで駆け寄ってくるのを仲間たちと共に見つめるのだった。

>セキア、レイ、エルト、クラウズ、スタルチア、レイニア、ALL


【ただいまです!!((( そして早速投稿ペースを上げる阿保のような私である((殴
まだ私の参加を受け入れて下さり、嬉しい限りです…!また書き込みが遅くなる日もあると思いますが、無理の無いペースでレスを書いていく所存です。
そして例のサブ記事にプロフを投下した某キャラクターを(名刺のみの登場ですが)勝手ながら出させて頂きました。すみません(>_<)クラウズさんの事情を考えると、完全にとはいかなくても妹さん含め彼の問題を何とかしてくれるとしたら、彼女がいるんじゃないかなー、と思いまして…(オイ ベリオと同じことを申しますが、出過ぎた真似をしてしまいすみません(>_<)
さてさて、任務完了までもう一息ですね!私の持ちキャラことベリオも、最後までお付き合いさせて頂きます!】
>スレ主様

5ヶ月前 No.557

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:エイルス区画本部/旧下水道・後道】

クラウズさんを戦闘不能にさせることに成功し、二人が拘束されていく様子を剣の姿のまま眺めていた。
そして静かに人の姿に戻り、札の後遺症かレイはその場にドサリと座り込んで頭を抱えた。
レイの顔には先程使った札があり、レイはその札を自分で剥がした。剥がした札から炎が出て消滅した。

「………………」

そして何故かレイはゆっくりとディノアを見上げ、険しい顔をした後、クラウズとスターチの方を見る。

「……札を使ったのは……私の独断です…。少し卑怯かと思ったのですが……
貴方達を傷つけずに捕らえるにはこれしかないとも思いました」

冷や汗を流しながら、ゆっくりと立ち上がる。それでも少しふらついた。それにしても恐ろしい札だ。思い出したくなかったことまで思い出されてしまった。

「セキアさんは大丈夫でした?……ごめんなさい、セキアさんへ負担もあるかもしれないと思ったのですが……」

申し訳なさそうにセキアさんの方へ振り返り、首をかしげる。同調していたセキアさん札の効果プラス私の記憶まで流れたのではないかと、心配していた。


「……そうだ……スターチさん……先日はありがとうございました。」

と、いつかのサンドイッチのことにお礼を、スターチさんの方を見ずに、ボソッと呟くように言った。


≫セキア スターチ クラウズ レイニア ディノア ベリオ エルト

5ヶ月前 No.558

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_TnX

【エイルス区画本部内/旧下水道・後道】

ディノア率いる国家隊やレイニア、ベリオ等が見守る中、最後の1合が今交わされようとしていた。
(あの札は…なるほど…確かにあれだけ弱った相手には十分に効果はあるだろうが…)
剣と化した状態のまま、自らの刀身に件の『トラウマ札』を装着したレイと、それに戸惑いながらも覚悟を決め、躊躇わず振りかざすセキア。
そのままクラウズの得物と激突するかに思われたが…突如得物である鋏と化したスターチを投げ捨て、己の拳にオーラを纏わせ、迎撃する。
(な…無茶な!?)
控え目に見積もっても分が悪いと思われたクラウズだったが…ここで得物を捨てるのは正気の沙汰ではない。
(…いや…『そういう』つもりか!?)
沙汰ではない…が、直前の会話から死を覚悟…どころか進んで命を投げ捨てるような気概であったのを今更ながらに思い出し…しかし今更動いたところで何もできず…最悪の事態を覚悟した所で結果がついに現れる。

「何とか無事…みたいだな」
何事かを呟いたクラウズに安堵の息を吐きつつも、駆け寄って抱きしめたスターチを見送る。
「そうだな…少なくとも今回はそういう任務じゃない…ただの護送任務だ」
『無法者でも殺戮者でもない』…そう返したレイに同意してそう告げる。
(そうだな…それでいい…これでいいんだ)
レイニアの問いに首を振り、大人しく拘束されるクラウズたちを見送りながら、内心で犠牲者が出なかったことにひっそりと安堵する。

そうしていた所で、レイニアから候補隊の面々に任務の継続を促され、激戦を制した直後たと言うのに未だ元気が有り余る様子のセキアに苦笑しつつも自身も先へと歩を進める。
「ああ、そうだな…考える事はあるがまずは目先の仕事を済ませてしまおうか」
今回の任務ではフェリクスの元につながりえる重要な手掛かりを得る事が出来た…だけではなく…思わぬ状況から自身の目的に関しても収穫があった。
(…断言するには早計だが…いや、いかんな…まずは任務を終えてからだな)
考え事をしながら歩いていたせいか、数歩分遅れていた事に気が付き、軽く頭振って余計な考えを追い出し…整理するのは一段落がついてからゆっくりやればいいと自らに言い聞かせ候補隊の面々の後に続くのであった。

>セキア クラウズ レイ ベリオ ALL

【リアルが優先!!無理せず程々に今後ともよろしくですよー】

>レーリン様

5ヶ月前 No.559

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★mLzZbkpUJe_zwh

【セキア&レイニア&ノイ&シスメ&
クラウズ&スターチ&ディノア/区画本部内/旧下水道・後道】

完全に抵抗を諦め、為すがままうなだれるクラウズの頭上から声がかかった。
痛みと疲労に凝り固まった首を何とか上に上げ、クラウズは声の主であるベリオに視線を合わせる。
その視線の先には一枚の名刺が見えた。

「本当に……変わってるよな、あんたら」

驚いた、なんてものではない。
一瞬なにを言われたのか分からないといった風に目を丸くするクラウズ。
最初は名刺とベリオの顔とを交互に見比べるだけのクラウズであったが、
やがて苦笑とも呆れともつかない笑いが口から漏らし、小さく肩を震わせるとぼそりとこぼした。

「いや、この場合は………類が友を呼んでるってやつか。ありがとよ、にいちゃん」

少し意地の悪そうな口調でそう言ったクラウズは、いまだ興奮させめやらぬといった調子で
けたけたと笑うセキアの方に視線をスライドさせ、片眉を上げてみせるも、最後には彼に小さく頭を下げたのだった。
そうこうしているうちにも拘束が完了したのか、クラウズの隊員達に両脇を支えられ、
立たされたクラウズは彼らと連れだって先に進んでいく。
そんな中、寄り添うように彼に付き添うスターチにその声は届いた。

『……そうだ……スターチさん……先日はありがとうございました』

彼女の言葉にスターチは一瞬だけ考え込むも、
それがつい先日のサンドイッチに対する礼の言葉であるとすぐに思い至った。
まさかこのタイミングで礼を言われると思ってもいなかったスターチは、そんなレイに小さく微笑みを見せる。

「“近いうちに”また作りますわ。よろしければ、また味見してくださいます?」

それだけを口にしたスターチはレイの返事を待たずして再び前を向いてしまう。
そうこうしている間にも、二人の姿は下水道の闇に紛れて見えなくなった。

「レイニー教官。二人は……その、大丈夫なんだよね?
確かに二人は悪いことしたけど、尋問……とかで、ひどいめにはあったりしないよね?」

不安げなセキアの言葉に顔から笑みを消したレイニアは、
しばらく二人が消えた暗闇に顔を向け沈黙を保っていたが、急にセキアに視線を合わせると、

「罪を犯した者は許されなければならない」

そう言って顔に微笑みを取り戻す。

「――――とまぁ、それがこの国の理念でして。
あはは。見ての通りあの状態では落ち着いて話もできませんからねぇ。
まずは治療に専念して、話はそれから、ということになりますねぇ。そうですよね、ディーくん」

「ああ、約束しよう」

レイニアの言葉を受け、短い返事を返すディノア。
その言葉にほっと息をついたセキアは、二人が消えた先の暗闇を見つめるレイの側に駆け寄る。

「これで良かったんだよね、レイ」

レイの隣に移動したセキアは、二人を見送る彼女の視線に自分も視線を合わせながら尋ねる。
しばらく心許なげにレイの隣を歩くセキアだったが、今の今まで考えていたのか、
先にレイに口にしたこちらを気遣う言葉に対する返答を口にした。

「お札をレイが使ったときのことだけどさ、あたしは全然平気。
正直に言うけど、アレをレイが使ったとき、本当に、本当にほんの少しだけだけどレイの心の痛みは伝わってきてたよ」

レイの視線から彼女の心のうちをある程度察したセキアは、正直に戦闘中に自分の身に起きたことを話す。
彼女の背負うものの大きさに軽い気持ちで、気にしないで、とはさすがに言えなかった。
だから、せめて言葉の代わりに所在なげに揺れているレイの手を握る。

「大丈夫だよ、レイ。あたしの言葉じゃ全然安心できないと思うけど、
不安が消えないなら、あたしが側でずっと大丈夫だって言い続けるから。
だから、もしあたしが不安になってたらレイもあたしに大丈夫だって言ってほしいかな」

その言葉は紛れもない本心だったのだが、口にした直後に少しくさすぎたかもしれないと頬をかく。
照れを誤魔化すように、セキアはちょうど近くにいたエルトの手を空いているもう片方の手でつかみ、
まるで小さな子供がそうするように、ぶんぶんと繋いだ手を振って、楽しくて仕方がないという風にけたけたと微笑んだ。

「エルトも手ぇつないでいこーぜぃ!
援護手伝ってくれたら何かおごるって言っちゃったから、このまま任務成功祝いといこーよ。
あ、ベリオも手ぇつなぐ? え、繋がない? そんなこと言わずにベリオも手ぇ繋いでいこうよ!
あ、そういえば新入隊員入隊祝いとかもまだだったよね?
それも兼ねてということで、このあと寮の食堂でベリオの歓迎会とかどうかな?」

ベリオに至ってはロクに返答も聞いていないのに、そう矢継ぎ早に捲くし立てるセキア。
それを苦笑しながら見送るシスメとディノア。
その後方に陣取り、ノイに手を引かれながら、にこにこと微笑んで見守るレイニア。
一瞬にして騒がしさを取り戻した第七候補隊は、下水道の出口に向かいながらも、
こうして、新たな謎を残したまま波乱のフェリクス護送任務は幕を閉じたのだった。

【これにて旧下水道のイベントは終了となります。
この後、幕間の物語を1レス挟んだ後、フリータイムに入ります。
以前にお話にありました ますたあ様の「カザス・グレブスリーとの面会イベント」と
レーリン様の「テキーラ様 来訪イベント」をフリータイムのイベントに組み込ませていただきます。
上記に関連することか他に何かございましたらサブ記事にてご相談くださいませ】>レイ、ベリオ、エルト、ALL

5ヶ月前 No.560

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★g8vpoDLToS_zwh

【ルナ区画/国家隊本部/簡易会議室】

とある一室。そこには椅子に腰掛けて向かい合う一組の男女がいた。
さて、ここで一つの疑問が浮かび上がる。この二人の関係やいかに?
一般的に考えれば、いくつか推測が成り立つだろう。
上司部下、齢の離れた交友関係、それとも交際関係? しかし、どれも正解ではない。
狭い一室に男女が二人きりという極めて会合理由の限定される状況にある二人だが、
間にあるのは親密な空気ではなく、胃が痛くなるような緊張感だった。
故に二人は交際関係にあらず、ましてや今が談笑の時ではないとご理解いただけたはずだ。
いや、語弊があった。厳密に言うと緊張感を滲ませているのは男の方だけだった。
女の方は余裕綽々といった様子でそんな男の顔色を楽しんでいる。
では、いま一度問おう。そんな二人の関係やいかに?
その答えは、二人に挟まれる形で机に置かれたモノクロマス目の盤上ゲームだった。

「53です」

奪った敵側のポーンを手の中で弄びながら、彼女は言った。
眉間に深い皺を刻んだ男がその声に反応して顔を上げる。

「…?」

「建国してから今までにこの国で天寿を全うせずに死亡した人の数です」

しかめた顔のせいで眉間に皺を寄せながら、うんざりとした様子で男――ディノアは応じる。

「事故死者数と自殺者数を引き忘れているぞ」

「いいえ、含みますよ。対策はいくらでもとれたはずですから」

にっこりと笑いながらも微笑みの中に影を潜ませた女に、
すげなく自分の言葉をバッサリと切り捨てられたディノアのため息の量が増えた。

「すべての人の死に自分が関与しているなどという傲慢な考えは捨てるべきだ。
たらればの話がどれほど意味のないものか、知らぬ貴様でもあるまい?」

「あはは、さてどうでしょう。でも、誰かが記憶に留めておかないといけませんから。
まして、私が忘れるなんてことが許されるはずありませんし……
もう私には失敗は許されないんですよ。だからこそ、今回の件には慎重に慎重を期す必要がありました」

珍しく顔を陰らせる彼女に違和感を覚えたディノアは素早く相槌を打つ。

「裏切り者のあぶり出し、か?」

盤の横に置かれた一枚の入隊志願書。
そこに添付された顔写真に視線を移しながらディノアは地の底を這うような重い口調で言葉を吐き出す。

「いまだに信じられんな。彼女が本当にレヴァーンの密偵だと?」

いぶかしむディノアにレイニアは続ける。

「今回のフェリクス護送任務。第七候補隊が旧下水道を使用することは、
一部の区画統括管理官と、第七候補隊の隊員にしか知らされていませんでした。
ですが、敵は見事にこちらの行動に合わせるように動いてきた。
“旧下水道の使用が任務開始の直前に決まったにも関わらず”です」

「………だとしても、いくらなんでも迂闊すぎやしないか?
これではまるで自分がレヴァーンの密偵ですと暗に言っているのと変わらないと思うが」

「あくまでまだ可能性がある、というだけですよ。
彼女が密偵だというのも、今はまだ状況証拠からくる推測の域を出ません。もう少し様子を見ます。
まぁ、でも迂闊すぎるというディーくんの意見には同意します。
いえ、向こうはむしろ、まるでこちらに“見つけてほしがっている”ような気さえしてきますねぇ…なんて。
あ、ディーくん、チェックです」

神妙な顔つきから一転、カツンと自軍のキングの前に置かれた敵軍のルークにディノアの顔色が変わる。

「何っ!?」

「何局か戻しますか?」

「ぐ…必要ない…」

「はーい、ではチェックメイトで♪」

「ぐっ、先手をとったというのに…何故勝てない!?」

「やー、だからあれほど、こちらはキング、ビショップ、ポーンの手駒だけでいいって
言ったんですけどねぇ。それに、ディーくんには捨て駒という概念がないんですよ」

人とはここまで鬱陶しくなれるものなのだろうか。
がっくりと肩を落としたディノアに、レイニアは揚々と相手方の敗因を突きつける。

「もう一戦頼む」

「あはは、はいはい分かりました」

でも、チェスの世界では当たり前の戦法でも、本当はそんな悪手使わないにこしたことはない、
と本当はそう後に続けるはずだった言葉をレイニアは飲み込み、再び自軍の駒を並びなおし始めたのだった。

【こちらの文章は参加者様のキャラに向けたものでない
単体完結文となりますので、さらっと読み流していただければと思います。
次レスよりフリータイム用の冒頭文を投稿いたしますので、いましばらくお待ち下さいませ】

5ヶ月前 No.561

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:ルナ区画国家隊本部:正門前】

とうとうこの日がきた。
グレブスリー処断官との対談。魔武器の村殲滅を指揮したと言われるその人に、レイニアさん立ち会いのもと対談することになった。
魔武器の村を殲滅した本当の理由、私たちはなぜ虐げられたのか…。
それがこの国の意思なのだとしたら……私はここにいてはいけないのだろうか。

私は、一抹の不安と過去の悲しい出来事についての疑問を抱きながら、国家隊本部の建物を見上げた。

スターチさんやクラウズさんたちのことも気になるが…
今はこちらに集中しなければ……

>>All

(とりあえず、正門前で待ち合わせみたいな感じで初めて見ました。)

4ヶ月前 No.562

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【ベリオ/区画本部内/旧下水道・後道】


ベリオから名刺を見せられた上、敵であった自らに助け船を提供するような発言をされたクラウズは、目に見えて面食らった様子で暫く名刺とベリオの顔を交互に見つめる。しかしそれも束の間、彼は苦笑とも呆れとも取れない笑いを漏らし、ベリオら第七候補隊のことを『変わってる』と評価しつつ、お礼のつもりかベリオに対して小さく頭を下げたのだった。

「…まぁ、そうかもしれないな。だが、あの無鉄砲と一緒にされるのも困る。
…とはいえ、お前たちの処遇が悪くないものになることを祈っているよ」

クラウズが頭を下げる直前、彼が先程とは打って変わりいつものようにはしゃぐセキアを一瞥したのを見、ベリオも彼女に視線を一瞬向ければ、同じく彼が口にした『類が友を呼んでる』という言葉に一人合点が行き、冗談とセキアに向けたほんの僅かな皮肉を込めた返答を送る。
その後、クラウズとスタルチアが連行されてゆく後ろ姿を見送りつつ、彼らの今後を案じる一言を彼らに聞こえるか聞こえないかの声量で呟くのだった。

激闘を交わした二人が闇に消えていった後、ふとセキアがとある心配事をレイニア教官に告げる。無論、クラウズとスタルチアの今後の処遇についてである。敵であったとはいえ、優しい彼女は複雑な事情のある二人に酷い目に遭って欲しくないのだろう。まして自分の所属している国家の中でならば尚更だ。
少しの沈黙の後、レイニア教官から告げられた返答は__『罪を犯した者は許されなければならない』というこの国__アスールの理念と、重傷を負っているクラウズの治療にまずは専念する、ということであった。ディノア管理官も、二人の処遇については保証すると言ってくれている。取り敢えず拷問は心配しなくて良いようだが…ふと、ベリオは少し余計な考えを一緒脳裏に過ぎらせてしまう。

(…治療…か。治療はあの人も得意だったが、まさかそこに参加するなんてこと無いよな…別の国にいるし……って、何でこんなこと考えているんだ?俺は…)

本当に余計なことを考えてしまったとばかりに頭をブンブンと数回振り、その思考を捨てると、フェリクスの護送のためにメンバーと共に歩き出す。
暫く歩いていると、セキアとレイが先程の戦闘での行動に関して何か会話しているのが目に留まる。そう言えば、クラウズに会心の一撃を食らわせる前後でも共に行動を__レイは武器として使われていたが__していた。余程波長が合うのだろうか、二人にしか分からない強い絆でもあるのだろうな、と心の中で思い馳せつつ、少し前までよくつるんでいた友人たちのことも思い出す。彼らは、元気にやっているだろうか。

「…ん?いや、俺は別に__って相手の答え聞く前に完結させるな……聞いてないな…」

レイとの会話を終えたらしいタイミングで、急にレイやエルトの手を掴み、夕方の帰り道を親と手を繋いではしゃぐ子どものようにブンブンと振りながら歩き出すセキア。ベリオにも質問を投げかけるも、彼が応える前に話を進めていってしまい、ベリオは思わず窘めようとするのだが…案の定彼が入れる間も無く話は進んでゆく(元より仲間と手を繋ぐなんて照れ臭いことはしないつもりであったため、結果オーライではあるのだが)。
これ以上無意味そうな突っ込みを入れることは諦め、手を繋いで歩く三人の背後を、ケースを慎重に背負いながらついて行く。その時の彼の表情は、心無しか楽しそうに見えた。

「さて、祝勝会だの歓迎会だのはともかく、まずは任務完了が最優先だ。話はその後だぞ__くぁ……あっ」

わざと声量を普段より上げ、メンバーに緊張感を促すように促す。しかし途中で自らに眠気を誘うような欠伸が出てしまい、思わず目を丸くし、口元に片手を当てる。
初任務の中での初戦闘における緊張がベリオ自身も解けつつあるのだろうか、急に眠気のような怠さが頭の中から全身にゆっくりと染み渡る。というか実際、凄く眠い。
緊張もそうだが、魔力の消費効率が良くなかった所為もあるだろう、戻ったらコーヒーを飲んで一息入れよう、と思案すると同時に、欠伸の照れ隠しに帽子を抑え、目元を隠す。…そう言えば、例の感情をやり過ごした後の感覚としてはこの事例は初めてだ。不快感が無いどころか、何処か心地良い。ただ、油断すればすぐ気を失ってしまいそうなのは変わらないが…。

こうして、ベリオの初任務は激闘を挟みつつも幕を閉じた。その後、次の任務までの休息と、他国にいる知り合いにとある依頼をするために、第七候補隊の寮だという施設に向かうのだが…出入口を潜った直後、突然意識を失って倒れてしまうのだが__それはまだ先のことである。

>クラウズ&スタルチア、セキア、レイ、エルト、レイニア、ディノア、ALL


【???/某国立病院/診察室内】

「…ふぅ〜!これで今日の診察は終わりかしら?お疲れ様、私〜」

ある病院の診察室内で、医師用の回転椅子に座ったまま、彼女は大きく伸びをする。
時計の針は午後の17時と30分を過ぎており、その時刻は診察予定時刻の終わりを意味していた。そして現在、彼女の仕事は(何もなければ)定時を迎えてもいるのである。

「ふっふっふ〜、こういうお仕事終わりの一杯は格別なのよねん!ベリちゃんには怒られるけど」

室内には自分以外の誰もいないことを良いことに、何処に保管していたのか、洋酒の入った色付きのガラス瓶と、中の洋酒を注ぎ入れるためのグラスを診察用デスクに並べ始める。彼女の知り合いが見ていたら、すぐさま叱ってきていただろう。尤も、その知り合いも少し離れた場所に行ってしまい、直接は会いにくくなってしまっているのだが。
それはさておき、早速洋酒をグラスに注ぎ、清潔さを保つ白衣を羽織ったまま一人で一足早い晩酌を始める彼女。彼女にとって、このひと時が至福の時なのだ。此処が職場でなければ世間的にもっと良いのだが。

「……っぶはーっ!やっぱこのメーカーのお酒はいいわねー!アルコール度数はちょっと高めだけど、フルーティな味わいは殺されてないし、水のように飲めるのが何よりイイっ!こりゃ何杯でも飲めちゃうわぁ〜」

まるで酒飲みの中年男性のような飲みっぷりでガラス瓶の中身を減らしてゆく。本来、それは常人が一気に飲み進めればすぐ酔っ払ってしまいそうな酒なのだが、彼女は顔色一つ変ていない。そして短時間でガラス瓶の中身は空っぽになってしまった。
取って置きの酒を飲み終えて漸く一息ついたのか、空になったグラスをデスクに置くと、回転椅子の背もたれに寄りかかり、深く息を吐きつつ落ち着いた独り言をこぼし始める。

「ふぅー…。そう言えば…ベリちゃん、あの国の国家隊に行ったのよね?確か国名は…アスール。あそこには私の仲良しな顔見知りもいるから、心配は無いと思うけど……体質の克服の一助には…なってくれるのかしらねぇ。
何より、ベリちゃんが持っていったアレ、意外と早く無くなってたらどうしましょ?彼は今まで学校の中で程よく生活してたから、消費頻度も少なかったみたいだけど…。実戦だと無茶しそうなのよね。あの子、無意識のうちに無茶するタイプだから」

その後いくつか、どれも一人の人物に関する心配事を言い連ねていた頃、デスクに置いていた通信石が反応を見せる。どうやら着信が入ったようだ。
この国ではあまり普及の波が来ていない代物なのだが、彼女が何故これを持っているのかは、彼女の人脈が関係しているのだが…それは後程。

「あら?誰かしら?__はいはぁい、どなたー?…あら、貴方__」

この時に彼女と会話した人物。彼こそが、彼女がW久々にWアスールの地を踏む切っ掛けとなろうことは、この時は誰も知る由も無い。


【改めて、任務達成おめでとうございます!折角なので、フリータイムへ移行する前の二人の様子を投下させて頂きます。ベリオが倒れた後の様子はご想像にお任せ致します(エ
サブイベント中の二人の動向についてはもう暫くお待ち下さい…!】

4ヶ月前 No.563

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

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4ヶ月前 No.564

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★PTzyjR9l6A_zwh

【セキア&シスメ&???/ルナ区画/第七候補隊専用寮アレスタ/屋上庭園】

空は間もなく赤から夜の闇に染まろうとしていた。
僅かに空の差し色となった茜に目を細めながら、頭に被ったキャスケット帽が特徴的な少女は懐から一枚の札を取り出す。
おどろおどろしい色と、表面に巨大な魔を封じたようなこれまたおどろおどろしいフォントで文字が描かれたそれを
僅かに残る日にかざしたセキアは、決意を固めるかのように小さく頷いた。
思えば、なんでずっとこうしなかったのか今更ながら疑問に思う、なんて口にするのは少々寒々しい。
この札を受け取ったときから、ちゃんと考えとして頭の中にはあったものだ。
いわゆるショック療法。強烈な刺激ないし外的要因によって記憶を蘇らせる方法。
これを使えばあるいは、今もぽっかりと空いている記憶の空白を蘇らせることが出来るかもしれない。
今も欠けている記憶の一つである命の恩人の記憶。そう、自分は単に過去を知るのが怖かっただけだ。
今までずっと逃げ続けてきたこと。
思い出されるのはいつだって、血まみれの誰かを抱きしめる自分と、耳朶に残る雨の音だ。
旧下水道でレイの反応を見た後だからなおのこと、危険であることは先刻承知している。
ただ、それでも、それでもあたしは―――

(あたしは…あたしの過去が知りたい。あたしを救ってくれたキミが誰なのか知りたい)

そう思い、覚悟も新たに胸に札を貼り付けた次の瞬間、体全体が大きく縦に揺さぶられたような衝撃を受けた。

「…っ…っ…ぁ……がっ!? がぁ……っぐ、ぎっ!?」

流れ込む怨嗟の声。泥を煮詰めたような粘度の高い悔恨の念。
それらを一気に流し込まれた頭は耐え切れず何度もフラッシュバックを起こし、感情がごちゃ混ぜとなる。
熱した鉄の棒で頭の中をかき回されているかのような痛みに、自分の意思とは関係なく涙があふれ出てくる。
レイはこんな感覚を必死に耐えていたのかと今更ながら感じてしまうも、もう後戻りなど出来ない。
胃を裏表逆にされたかのような嘔吐感と、前後不覚の感覚に陥り、たまらずセキアは地面に蹲ってしまう。
自分がいま立っている場所がどこなのか、それすらも曖昧に感じてしまう中、
体が意識を手放そうとする寸前、セキアには聞き覚えのない声が耳に飛び込んできた。

「相変わらず……陰気な花……」

しわがれた老婆のような声、ただ、舌足らずな印象を受けるそれは年端もいかない少女の声だと分かる。
夕闇に咲いた黒に視線が釘付けとなる。先ほどの声の正体である仮面の少女は、
庭園の一角に咲いている季節外れの向日葵を見つめながら、その海色の瞳を細めていた。

「!? 誰っ」

少女の存在を一言で表すなら、それは影だった。
羊皮紙に落としたインクの染みのように、あるいはあぶりだしの手紙の文字のように、
少女は何もない空間から突然染み出したかのように、この場所に現れた。
こちらの問いかけに、鏡の仮面をつけた少女は
まるで最初からその問いを待っていたかのように、仮面の下で小さく笑みを浮かべたように感じた。

「誰? ……私は……私。でも…キミは……キミじゃない……」

そこでようやく記憶が繋がる。
鏡の仮面、肌の一切を見せないようにあつらえられた衣服。
しわがれた老婆のような声に、海色の瞳。遺跡での任務の後、見せてもらった報告書に書いてあった内容と一致する。
自分の記憶が正しければ、あれはアスールの仇敵といって差し支えない存在ではなかったか。
ぼやける意識の中、立ち上がる理由を見つけたセキアは、笑い出す足を懸命に突っ張りながら、ゆっくりと体を起こす。

「その仮面……たしか報告書で…………あたしに何か用かな?」

「私はただ……教えてあげに……来ただけ……」

その言葉に周囲に空気の温度が何度か下がったように錯覚した。
知らず、頬を冷たい汗が流れ落ちる。

「あたしに、教える? いったい何を言って―――」

「消えるよ……もうすぐ……」

彼女の言葉にひときわ大きく心臓が早鐘を打った。
不安が表面化していくのを感じる。振り払ったはずの気持ち悪さが蘇ってくる。
それだというのに、彼女から視線を外すことができない。

「……キミという存在がもうすぐ消える……
消失するんだよ……この世から……セキア・ルーブという存在自体が……」

言ってしまえば彼女とは赤の他人だ。加えて今まで接点らしい接点もない。
遺跡調査任務の報告書で彼女の存在について知ってはいたが、
こうして顔を合わせるのは今回がまったくの初めてである。
そんな彼女に言葉に、どうしてここまで心が揺さぶられるのか分からない。
ただ

「いつまで分からないフリを……続けているの……?」

これ以上口を開かせてはいけないと、覚えのない焦燥感が胸いっぱいに満ちていくのを感じていた。

「うるさい!」

吼えるように口にした言葉は彼女の言葉を遮るためものだったか、
自分の心の中に漂う覚えのない不安を振り払うためのものだったかは知らない。
ともかく今は目の前の彼女を何とかしなければと
気がつけば、背中に現れた炎のマントを右手に巻きつけて走り出していた。

「いったいどれだけ人がおねーさんのせいで悲しい目にあったか知ってるの!?
仮面のおねーさんが全ての元凶なんでしょ? だったら!
存在の消失だか何だか知らないけど、今あたしがここで倒す!」

言うが早いか、振りかぶった拳を突き出そうとした。
しかし、その攻撃が彼女に届くことはなく、こちらの拳が触れる寸前に
いずこからか現れたしなる錆びの浮いた黒い鎖の一撃がセキアの頬を打った。

「うっ!?」

短い悲鳴を残してセキアは屋上の床を転がる。
こちらの焦りを形にしたかのように、頬に広がる痛みがじんじんとセキアに警告してくるようだった。
このままではマズイ。
そう思いかけた瞬間、小さな足音が背後から近づくるのを感じた。

「セキアさん? 何をしているんですか?」

今、仇敵と相対しているこの場に似合わないリラックスしきった声。
まるで危機感を感じさせないこの声は、第七候補隊の書記官シスメのものだとすぐにセキアは思い至る。

「何って……!」

シスメの暢気な反応に、珍しく苛立ちを含んだ表情で彼女のいる方を振り返るセキア。
だがしかし、その苛立ちも、まるで不思議なものを見るかのような表情で放たれた彼女の言葉にかき消された。

「“さっきから一人でなにをしているんですか?”」

「え……?」

その言葉で我に返る。いや、正確には夢から覚めた、と表現した方が今の感覚的には近いかもしれない。
さっきまであたしの目の前にいた仮面の少女は、まるで最初からそこにいなかったように跡形もなく消えていて、
その少女から受けたはずの頬の傷もなく、それどころか痛みすらさっぱりと消えうせている。
まるで最初から悪い夢でも見ていたかのような、冗談にしては笑えない光景。
そのことを自覚した途端、目の前の視界が歪み始めた。

「え……あ……あ…れ…? おか……しいな……あた…しは……」

眠りに落ちる直前のような奇妙な酩酊感と、
言葉ではあらわせられない体の芯から沸きあがるような気持ち悪さが頭を支配する。
それを感じた瞬間、セキアの意識は急速に深い闇の底へと落ちていった。

「セ、セキアさん!? わ、わ、ちょっと!? どうしたんですか急に! セキアさん!? セ、セキアさん…!」

こちらに倒れ掛かってくるセキアをあわあわしながらも受け止めたシスメは、
彼女の無事を確認するように何度も声をかけるが、セキアから返事が返ってくることはなかった。

>ALL





【鶴羽/ガイアル区画/甘味処 角天堂前通り】

出雲 鶴羽はガイアル区画の統括管理官である。
ガイアル区画。人口比率ウォーティアに次いで二位。食料自給率、生産数文句なしに全区画中の一位。
種族的な偏りがなく、自然区画の名の通り、多くの自然に囲まれた区画である。
そんな区画の統括管理官に選ばれたことは何より誇らしいことであるし、
事実、鶴羽はこの区画とそこに住む者たちのことを誰よりも愛していると自負するくらいには気に入っていた。
だが、しかし、そんな気持ちとは裏腹にどうにもならないことというものが世の中には存在する。
それは自然の摂理であったり、災害であったり、人の身にはどうしようもない運命とかそういったものに分類される事象だ。
とどのつまり何が言いたいのかというと…

「やってしまうたのぅ。調子にのって買いすぎるからじゃ、馬鹿者め」

過ぎたるは及ばざるが如し、とそういうことだ。
鶴羽は見事にぬかるみにとらわれてしまった自分の足であるところの車椅子の右輪を横目に小さく息を吐く。
ここにぬかるみがあることは承知していた。
ただ、今回こんな結果になった原因は間違いなくこの膝の上に乗せた食材の数々だ。
鶴羽は区画統括管理官としての顔の他に、孤児院の院長としての顔も持っている。
ちょうど本日の業務を終え、3日前から子供達にリクエストされていた肉じゃがの材料を買いに走ったわけだが、
まさかこんな落とし穴が待っていようとは、鶴羽は微塵も思っていなかった。
久しぶりの肉ということで、子供達の喜ぶ顔を想像しながら上機嫌で買い物は進み、ポケットマネーからもいくらか散財したあげくがこれだ。
明らかに買いすぎ。ええ、それはもう食材を選ぶ手が止まりませんでしたとも。
そういうわけで今に至る。

「エフィニアを待たせておるしのぅ。これ以上遅れるのもまずいやもしれぬなぁ」

今は寮で寮長兼、専属の料理人として雇われている機械人形(オートマタ)の彼女の横顔が脳裏によぎる。
鶴羽が忙しくて手が回らないときは、臨時で孤児院を彼女にまかせることもあった。
その縁というか、それなりに彼女とも長い付き合いである。
というかむしろ今の第七候補隊が入寮するまで長らく入寮者のいない候補官寮で
彼女はその腕をふえるえないことを嘆いていた節があり、
むしろ願ったり叶ったりといった様子で押しかけてきたのが、つい昨日の事のように思える。
今回の食事会はそんな彼女とのしばらくのお別れということでの会の意味も持っている。
その食事会に彼女を誘った側としてはそんなところに遅れていくのは、なんとも格好がつかない。

「是非も無し、か。どれ、少々強引じゃがこやつの力を借りるか。幸いにして誰も見ておらんようじゃし」

ちょうど日ごろから贔屓にしている甘味処の前だったため助けを呼んでも良かったのだが、鶴羽の数少ない遠慮心がそれを押し留めた。
小さく呟いた鶴羽は、おもむろに着物の袖の中から煙管型の魔導具 告之嘶鬼を取り出したかと思うと、それを口に咥えた。

>ALL

【文字数が多いため、レスを二つに分けます。他のサブイベント、返レスに関しましては、もう少々お待ちくださいませ】

4ヶ月前 No.565

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★XCMzXZIPiR_zwh

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4ヶ月前 No.566

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:ルナ区画:国家隊本部:正門前≫処断官執務室前】

これから会う相手のことを考えていると
後ろ方肩を叩かれ、振り返るとレイニアさんが立っていた。
期待の……

「……何に対する期待ですかそれ……」

と苦笑いをする。
嫌味とかではなく、謙遜と言う意味でもなく
自分に期待できるほどの何かがあるとは思えないから、心の底から出た言葉であった。
そしてレイニア さんに連れられて国家隊本部の中へと入っていく。入試試験の時も緊張したけど、あの時より……あの時とは違う緊張がレイを襲う。


「……わかりました。その条件を飲みます。」

この対談を持ち出した時点でこの条件を言われていたら、一対一の対談は正直厳しいことだったかもしれない。あの時はまだ自分の過去と向き合う覚悟は仕切れていなかった。

でも今なら怖くない。
どんな過去だろうと受け入れる。

「青い……月?」

レイニアさんの言葉に一瞬疑問を浮かべたが、すぐに考えるのをやめ、扉をノックした。

「…失礼します。第七候補隊 白月レイです」

と中にいるであろう人物に声をかける。

≫レイニア グレフスリー

4ヶ月前 No.567

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

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4ヶ月前 No.568

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_TnX

【ガイアル区画/甘味処 角天堂 店内】

オリエンタルでゆったりとした雰囲気の中、独特な食事が楽しめる知る人ぞ知る名店『角天堂』。
そのテーブル席の一角で数十センチほどに平積みされた皿に囲まれながらも、満足そうな雰囲気で食後の緑茶をすする男が一人。
「…うむ」
それだけでは何が良かったのかは余人には理解できないだろうが…勘のいい物であれば、平らげられたその皿と数枚に分けられた伝票を見て察するのはたやすいだろう。
(やはりここは当たりだな…小手先の調味料や香料などに頼らず、素材独自の自然な風味と味わいをいかんなく発揮し…それでいてバランスを崩すような雑味がまるでない!!)
内心でそんな称賛をしつつも食後の一服も済ませた所で、何やら魔術を発動させる独特の気配を感じてそちらに目をやれば。
(…こんな大通りで魔術を使うのがまかり通る…と言うのもこの国の特色か…国によっては衛視が飛んで来るものだがな)
危険な気配は感じられ無かったと言う事もあってそのままぼうっと様子を見ていたのだが…
(…ん…これは…いや、まさか…?)
ふと、その魔術に覚えがあるような気がして軽く思い返した所で…術者が車椅子らしきもののに乗っている事に気がつけば…瞬時に何者であるかを察し…その人影が周囲を見渡すかのようにその視線を動かそうとしたのに気が付き、思わず皿の陰に伏せる。
(…鶴羽管理官!?…なんでこんなところに!?)
咄嗟に隠れるような形になってしまい、店内の数名が何事かと意識を向けるも…当の本人はそれどころではなく…
(お…落ち着け…目が合った気がしたが気のせいだし他人の空似ということも…)
…無論そんな事は無く…紛れもなくその人物は鶴羽本人であるし目こそ会わなかったものの、その奇怪な行動から一瞬とは言え注目を集めてしまっており…管理官がそんな彼を見逃す事があるかと言えば…

>鶴羽 ALL

【屋上庭園と大分迷いましたがこちらにエントリー…勝手に動かしたら食べ歩きに行っちゃったでござるの巻】

4ヶ月前 No.569

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★b6VdN2RCRY_usZ

【ルナ区画/国家隊本部/処断官執務室前 ⇒ 処断官執務室】

レイニアの見送りの後、いよいよその扉が開かれる。
彼女が扉を開けると、まず目に飛び込んできたのは暗闇と僅かな明かりだった。
室内はわざと日の光を入らないようにしているのか、窓は全て分厚い遮光カーテンに遮られ、
頼りになるのは点在するランプの光のみという部屋の奥にその男は鎮座していた。
その性格を反映するかのような、時代錯誤の軍服に身を包み、
真一文字に引き結ばれた口と、苦悩する哲学者のような眉間に刻まれた皺が特徴的なその男は、
能面のように変わらない表情を顔に貼り付け、
書類に目を落とした姿勢のまま、顔も上げず彼女に部屋に入るよう促した。

「入りたまえ」

ギシ…と椅子を軋ませる音をさせて、軍服姿の男は先ほどまで書類に走らせていたペンを置いて立ち上がる。
彼は制帽を脱いで会釈すると、カツカツと規則正しい靴音を響かせながら
レイの前まで来ると、ちょうど歩幅一歩分くらいの感覚を空けて止まる。
並ぶとグレブスリーのほうが背が高いため、ちょうど彼女が見上げるような格好となった。

「アスール国家隊所属、階級壱位、処断官のカザス・グレブスリーだ」

先ほどの会釈で社交辞令は十分足りたと判断したのか、制帽を胸にあて、
もう片方の手を腰の後ろに回した姿勢で簡潔な自己紹介をした後、
ちょうど執務机の前に置かれた木製の肘掛椅子を手で指し示し、彼女に着席を促す。
彼も執務机の椅子へと座りなおし、そのがっしりとした大柄な体躯が
椅子に沈み込むのを確認した後、机に肘を突き、両手の指を組んだ姿勢で、
しばし値踏みするような視線をレイに向けると、たっぷりと間を置いてから切り出した。

「さて、単刀直入に聞くとしよう、白月レイ候補官……生憎と私も忙しい身でな、手短に願いたい」

短い前置きの後、グレブスリーは顔色一つ変えずレイに尋ねる。
嫌味はないが、あくまで事務的な態度は崩さないつもりらしい。
公私混同、賄賂や懐柔をなによりも危険視する処断官という役職ゆえか、
それとも彼の心情ゆえか、大きく距離を置くような淡々とした声音で彼は続ける。

「何故、私との面会を申し出た? “貴官とは初対面のはずだが?”」

レイにとっては悪い冗談だと思うだろう。
ただグレブスリーは、とぼけた様子もなく、あくまで自然な様子で今回の面会の理由を静かにレイに問うた。

>レイ




【鶴羽/ガイアル区画/甘味処 角天堂前通り ⇒ 角天堂 店内】

煙管から黒い折鶴を数羽出現させた鶴羽は、その折鶴に背中を押され、苦もなくぬかるみから脱出することに成功した。
ほっと一息つく傍ら、妙におかしな気配を感じて、ふといきつけの店の方を向くと、
そこに見覚えのある特徴的な髪色の頭が、ひょっこり机の端から顔を出していることに気付く。

「なんじゃ?」

机の下に何か落としたのかとも思ったが、妙に潜伏時間が長いことを
不審に思った鶴羽は、カラカラと車輪の音を響かせて店に近づく。
やはり、というべきか。そこにいたのは愛娘の隊に所属する候補官エルトその人であるとすぐに分かった。
彼についてはもう少し自身の特異さを自覚すべきだと思うが、
恐らくこちらから指摘でもしない限り気付くことはないのだろう。
自分では上手く隠れたつもりでも、こちらかは丸見えである。頭隠してなんとやらだ。
彼は本当にときどき妙な幼さを見せるというか、焦ったときほど行動が一々少年じみているというか。
だからこそ、ついつい意地の悪いことをしてしまいたくなるのだが、今はそれよりも疑問の解決が先だ。
鶴羽は彼の奇行が照れ隠しであることを理解していたが、何やらまた良からぬ事でも思いついたのか、
意地の悪い笑顔を浮かべると、じりじりと彼のいる卓へ距離を詰めていく。

「それなりの欲は見つかったようじゃな、エルトや。
じゃが……顔を見るなりそういう反応をされてしまうとワシとしてはいささか傷ついてしまうのぅ」

いつぞやの医務室での会話を思い出したのか、
エルトのちょうど対面まで車椅子を滑らせた鶴羽は、彼の頭の上から呼びかける。
そして、唐突に着物の袖先で顔を覆い隠したかと思えば、
車椅子の肘掛に寄りかかり、よよよと泣き崩れるフリをしてみせた。
区画統括管理官という立場ゆえに、彼女がそんな反応をすれば
周りがどういう反応を示すか分かりそうなものなのに、鶴羽の寸劇に騙された何人かの客が
あまり歓迎できない感情をのせた視線をエルトの頭へ集中させ始める。
しかし、その後すぐに発せられた鶴羽の「冗談じゃ」の一声によって、
なんとも言えない脱力感とともに、ようやく店内に穏やかな空気が戻った。
かと思いきや

「これ、店主」

「しゅ、主席!? ああああどどどうも、ひ、日ごろからご贔屓いただき―――」

盆にお茶をのせて卓に向かう途中だった壮年の狐の亜人の男性は、
鶴羽の急な呼びかけに驚き、卓の上の茶をこぼしそうになりながらも、なんとか言葉を返す。
鶴羽はそんな男性の態度を気に留めた様子もなく、
まるで隣人と世間話に興じるかのような口調で話しかけながら、がま口の財布を懐から取り出した。

「カカカ、そうかしこまらずとも良い。それに今は非番じゃ。
鶴羽で良いと何度も言っておるじゃろうに。それよりこやつの食い分じゃが、ワシがもとう、いくらじゃ?」

エルトが口を挟む暇も与えず、店主にお札数枚を握らせた鶴羽は、
再びエルトに向き直ると、車椅子の肘掛に頬杖をつき、穏やかに微笑みながら片眉を上げてみせる。

「押し付けがましかったかのぅ?
まぁ、あれじゃ、入隊祝いというやつじゃよ。何も言わず受け取っておけ。
それよりいつまでそうしておるんじゃ。心配せずとも他言はせぬから、そろそろ顔を見せてくれぬか?」

そう言うが早いか、鶴羽はエルトの対面に陣取った。どうやらこのまま彼が食べ終わるのを待つらしい。
最初から彼に用事があってこの辺をたむろしていたのか、
それともその場の気紛れか、彼が最後の一口を食べ終わるのを待って鶴羽は口を開く。

「ところでエルトや。お主、まだ腹に空きはあるかのぅ?
この後、ちょっとした食事会があるんじゃ。
お主さえよければなのじゃが、お主も来んか? 栗羊羹も出るぞ」

どうやら理由は後者らしい。
幸いなことにと言っていいかは微妙なところだが、食材は有り余っているのだ。
彼とて男子だ。それなりの健啖さは持ち合わせていると踏んだ上での提案だった。

>エルト




【ヒルカ&???/アーティー区画/国営図書館ベニト前通り】

親方気質と言うか、その口調と態度から初対面の人に誤解されがちなところが、
この兎の少女にあることを知っていた羊の少女は、不穏な空気を察知してか、
いまだどこの不良だと言わんばかりに顔をしかめている彼女に対し、フォローにならないフォローを入れた。

「白衣と見ると、すぐに敵意むき出しにする癖はどうにしたほうがよいのでは。
いくら歯医者が嫌いだからって―――もがもが」

ようやく羊の少女の腕から解放されたヒルカは、
器用にその長い垂耳(ロップイヤー)を動かして、何か言いかけた少女の口に蓋をした。

「変な言いがかりをつけるのはやめやがれですよ。
私はただ、昔こいつのことをどこかで見たことがあるような気がしただけですよ」

奥歯にものがはさまっているかのような据わりの悪さを感じながらも、
ヒルカは結局、考えても何も思い出せなかったのか、しぶしぶ疑問の解消を後回しにする。
しかし、羊の少女はというとヒルカの言葉に触発されたのか、
何度か目を瞬かせると、爪先立ちになりながらテキーラの顔をじっと覗き込み始めた。

「昔? 昔……じぃー……」

何か思い当たる節でもあるのか、寝ぼけ眼を最大限見開いてテキーラの顔を見上げる羊の少女。

「じぃー」

気まずさを相手に覚えさせるほど、たっぷり時間を使って
まじまじとテキーラの顔を観察した羊の少女は、やがて満足したのか距離をとってその瞳を伏せる。

「何か思い当たることはあったか、ですよ?」

「はぁ…美人さんですね、とは思いました」

そう真顔で答える羊の少女に、ヒルカは魂まで吐き出すような深いため息をついた。

「…………こいつに期待した私が馬鹿だったですよ」

心底時間を無駄にしたとばかりに額に手を当てたヒルカは、
今度は探し人について話し始めたテキーラの言葉に耳を傾ける。

「ベリちゃん…ベリオ・アルスター……ちっ、よりにもよってアイツの隊か、ですよ」

腕を組んだヒルカは、あからさまに不機嫌な様子で、
それでいてどこか喜びが混ざったような弾んだ声で、そう吐き捨てるように言って腕を組んだ。
ヒルカのこの態度は、ベリオなる候補官に対してというよりも、
それを纏める元締めに対して、あからさまに思うところがあると、暗に言っているようなものであるが、
それを指摘するととても面倒な事態に発展することを長年の付き合いから知っていたいた羊の少女は、
テキーラが何か口にする前にそっと彼女に耳打ちする。

「ただの照れ隠しで他意はないので、スルー推奨でよいかと思われ」

「なにヒソヒソ話してやがる、ですよ」

「とにかくそういうことなら国家隊本部まで参りましょう。
任務の後、ベルベルからそのベリオの顔色が優れない様子だったと聞いております」

いつの間にか、まるでそうするのが自然であるかのように、
テキーラを真ん中に挟む形で二人の少女は歩き出していた。
未だに疑念が拭いきれないのか、本部に向かう道すがらヒルカが尋ねる。

「見たところ研究員のようにも、医者のようにも見えるが、
本当にただそのベリオとかいうやつに会いにきただけか、ですよ?」

先ほどから顔にばかり注視していたため、服装まで気が回らなかったが、
その白衣は、この黒鉄区画と呼ばれるこの区画ではことさら目立っていた。
いや、服装のこともそうだが、一種異様な雰囲気をこの白衣の女性からは感じる。
例を挙げるなら、なんとなく鶴羽が漂わせる雰囲気に似ているというか、
ヒルカがいまだにテキーラのことを微妙に量りかねている原因だった。

>テキーラ

4ヶ月前 No.570

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:ルナ区画:国家隊本部:処断官執務室】

執務室の扉を開けると、ほとんど陽の光がささない薄暗い部屋が目の前にあった。まるで何か大きな生き物が大口を開けて獲物が口の中に入るのを待っているかのような、そんな感覚がレイを襲う。

「失礼します……」

ゆっくりとその部屋に入り扉を閉める。
井の中の蛙とはよく言ったものだと思う。
この男が、私の故郷を襲撃した、襲撃を促した男。昔の記憶がまるでついさっきのことのように蘇る。あの日、私がみた軍服を着た男。

「お忙しい中時間を作っていただきありがとうございます。」

そういい、促されるまま、席へと座った。
私はここから生きては出られないのではないか、という不安にも狩られるが、外にはレイニアさんも待機している。外に見張りがいる状態で不穏なことなど、この男はしないだろうと、そう思った。
処断官はなぜこの面会を申し出たのかを尋ねてきた。初対面だと。
そう私はまだ、この人が主犯だという確信を得たわけではない…だからこそ

「今回この場を設けていただいたのは、聞きたいことが二つあったからです。」

まっすぐと相手の目を見たまま、意を決して言葉を放つ。

「一つ目は確認のために聞きますが…………あなたは魔武器の村の殲滅を命令した指揮官だというのは本当でしょうか」

≫グレブスリー処断官

4ヶ月前 No.571

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【テキーラ・D=フランベ/アーティー区画:国営図書館ベニト前通り】


テキーラのように馬鹿に肝の座った人物でなければすぐに怖気付いてしまいそうな顰め面を見せ付ける兎の少女。その空気を察してかしてまいか、いつの間に彼女を解放したらしい羊の少女が何かを言いかけたところで、彼女の長い垂れ耳によってその口を塞がれてしまった。「あら器用」とその光景を目にしたテキーラは一言呟き、ニコニコとしつつ小さな拍手を送る。しかしその様は、見る者によってはからかい半分の行為のように見える…。
そして自らの耳によって口封じを行った兎の少女は、テキーラのことを昔何処かで見た気がするだけだと説明した。すると羊の少女もテキーラの顔を爪先立ち&両目見開きでまじまじと見つめるが……特に思い当たる節は無さそうだった。
勿論少女に見覚えがあるのはテキーラとて同じである。しかしいつ出会ったのかはイマイチ思い出せない。此処まで思い出せないとは、過去にあまり関わったことが無い所為なのだろうか、後でまた記憶を掘り起こしてみよう、とテキーラは思った。
そしてテキーラが自らの探し人について話すと、兎の少女はまるで不機嫌そうな、逆に嬉しそうな言動を以って一言呟いた。ベリオの名を出した途端に舌打ちをされ、それがうちの後輩に対する気持ちかと一瞬勘違いするところだった(もし事実であれば彼女は黙っちゃいなかった)が、よく聞けば『あいつの隊』というワードが聞こえ、更に羊の少女からは『ただの照れ隠し』というフォローが耳打ちで入る。その隊の『あいつ』とは、ひょっとすると隊長のことか、とテキーラは確信する。それと同時に、目の前の少女のことが可愛い生き物のように見えてくる。
成程、この兎ちゃんはベリちゃんの所属の隊長に多少の気があるのね?もしかしてイケメンなのかしらん?…と脳内だけで呟くことにする。もしニヨニヨしながら口に出したとしたら、すぐさま案内が打ち切りになってしまいそうだったから。ただ、その隊長が誰なのかは気になるが。

『とにかくそういうことなら国家隊本部まで参りましょう。
任務の後、ベルベルからそのベリオの顔色が優れない様子だったと聞いております』
「やっぱりそうなのねん?ベリちゃんは消耗するとなかなか元気が出ないから。…実は彼からさっき連絡があってね、私にしか頼めないことだから早く来て欲しいって言われたの。手っ取り早く助けなきゃ、先輩としての面目が潰れちゃうもの!」

二人の亜人少女に挟まれる形で国家隊本部までの道を進み出した時、羊の少女から『ベルベル』とやらに聞いたらしいベリオの様子について聞き、テキーラは一瞬考え込むような仕草を見せるが、すぐににこやかな表情となり、冗談半分の台詞を付け加える。
ベリオが何故顔色が悪いのかの理由は敢えて言わない。余程察しが良く無い限り、そうした方が彼の体質について知られずに済むからだ。そしてそれは、可愛い後輩たっての望みでもある。出来るだけ、彼の風評を悪くさせる訳にはいかない。
道を歩いている最中、兎の少女から更なる疑問を呈される。それはテキーラが、本当にベリオに会うためだけにアスールの地を踏んだのかという内容であった。無論、彼女はそのために来たのだ。怪しまれるような言動をする部分など一つも無い。故にテキーラはその問いに素直に(一つ今後の希望も付け加えつて)答える。

「もっちろん、私はそのつもりで来たわよん?彼に会った後、時間とお偉いさんが許せば、多少の観光をしてから帰るつもりでもあるけどねん?明日はちょうどお休みだし…。
__あ、そうそう。自己紹介が遅れちゃったわねん。私の名前はテキーラ・D・フランベ。ベリちゃんと同じ士官学校出身で、現在はアスールから少しだけ離れた国の病院で医者をしているわん♪此処ではツルちゃんやシィちゃん、あと私の武器『ビロニディ』の整備やら何やらでお世話になってまーす♪」

兎の少女への返答と共に、ちょっとした騒動によりタイミングの遅れた自己紹介を行う。自身が士官学校出身であることや、アスールの者との関わりを表明するようなことは別に言わなくても良かったのだが、彼女は敢えて付け加えた。お互いに微妙に見覚えがあるという、兎の少女の反応を確かめることと、願わくば自身の埋もれた記憶も掘り起こすことが主な目的である。

>ヒルカ、???、ALL


【ベリオ/ルナ区画:第七候補隊専用寮アレスタ2階→1階】


テキーラがアーティー区画において道案内をされている時、同時刻。

「…はぁ…はぁ…」

照明に照らされた通路を独り歩く影があった。それは酷く疲弊し、乱れた前髪により消耗した瞳は隠れ、足取りも覚束ず、彼を見ている者がいればいつ倒れてしまうかとハラハラしそうな程である。服装も整ったものとは言えず、上着を羽織っていないために力無く折り畳まれた翼が剥き出しになり、シャツ胸元のボタンも半分ほど外れっぱなしで、頭部の耳は現在の彼の心情を表しているかのように垂れ下がっていた。

「…何で、俺……部屋から出てるんだろう…」

その影、基ベリオは僅かに荒い呼吸をしながら掠れた声で呟く。
あの後、暫くベッドの上で必死に吸血衝動を抑えていると、頭痛や動悸、そして衝動の半ばほどがスッと引いていく心地がした。そして同時に、自らの胃袋が空腹を訴え始めたのである。
勘弁してくれ、俺は今食欲が無いんだ、と心の中で自らの胃袋に訴えかけるが、自らの空腹中枢は正直のようで、なりふり構わず他者に襲い掛かるレベルではない今この瞬間をチャンスと思ったのか、いつの間にかベリオの体はフラフラと食事を求めて部屋を出ていたのである。血が欲しい、だがまともな食事も出来るだけ摂っておきたいと感じているのだろう。
仲間から事前に聞いていた食堂は確か1階だったな、と考えつつ、1階へ続く階段へたどり着く。テキーラからの助けがあるまではなるべく外に出たくないが、未だに空腹を訴えている腹の虫を治めるためにも何か食べておく必要があると判断し、ベリオは衝動の波が振り返す前にWまともなW食事を摂っておこうと、食堂へ向かうべく階段の一段目に片足を置く。

「…だが、食堂にはきっと誰かいるだろうし…こんな姿を見られたらと思うと…。
…やっぱ止めとこうかな…」

一段降りたところで余計な不安が込み上がってしまい、やはり引き返そうと振り返った時だった。
積み重なった疲労のためか、突然膝がガクンと折れ曲り、やっとのところでバランスを保っていた身体が傾いていく。高度の低い階段で自らの翼を広げるタイミングが掴める訳もなく、ベリオの身体は背中から落ちてゆく。

「!?しまっ__」

後悔先に立たず。ゴロゴロゴロ…と、ベリオは勢い良く階段を転げ落ち、踊り場すら勢いでスルーし、更に下の階段も転がり、1階の床で強かに頭を打ち付けてしまったのだった…。

「……っ〜〜〜!!」

声にならない呻き声を上げながら独り悶絶するベリオ。今この瞬間を誰かに目撃されていようものなら、穴があったら入りたいとばかりに、衝動など関係なしに暫く個室に引きこもってしまうだろう。

「……マジ、どうしよう…」

頭痛とは別に未だにズキズキと痛む後頭部を両手で押さえつつ、仰向けに倒れながら、ベリオは今自分の置かれている現状について整理しつつ、大きな溜息を吐くのだった…。

>ALL

4ヶ月前 No.572

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_n3h

【ガイアル区画/甘味処 角天堂 店内】

「えー…これはその…ですね…」
当然のように…というか必然的に鶴羽に発見され、ばつが悪そうに釈明…と言う名の言い訳を試みて顔をあげれば…
「へ…ちょ…ちょっと待ってください!!そういう訳では!?」
それらを考える間もなく、鶴羽が突如泣き崩れる仕草を見せた事でそれどころではなくなってしまう。
(そ…そりゃあちょっと…いやそれなりに…だ…大分…失礼と言えば失礼ではあったかもしれないけど!?)
思いもよらぬ鶴羽の行動と周囲から向けられる剣呑な視線にしどろもどろになっているこちらを他所に…『冗談じゃ』と、あっさりと演技である事を明かす鶴羽。
「…管理官…流石に勘弁してほしいのですが…」
精神的に疲れ果ててしまい、先とは別の理由でテーブルに再び突っ伏しながらそんな事を言う…原因を作ったのは自分であると言う自覚は有るため強くは出れないようだが。

気を取り直そうと半分ほど残されたお茶に手を伸ばした所で鶴羽が店主らしき人物を呼び止め、お代を持つと言った所で慌てて口をはさむ。
「い…いえ、管理官!!そういう訳には…」
目上の物に奢らせるなどと言語道断との思い…だけではなく、実際には支払いの時に伝票を見られたら何を頼んだのかが詳細にばれてしまう…との危機感から慌ててそう言いはしたものの…
(む…むう…そう言われて断るのは…まずい…のか…)
『入隊祝い』と言われた上で、それを断ると言うのは…失礼どころの話ではなく、絶縁状を叩きつけるが如き所業であると聞いたことがある。
それはとても…とてもとても気まずい…だけではなく、国家隊と言う組織に所属する以上あらぬ場所まで波及しかねないという懸念もあり…受けないと言う選択肢はありえないと言えよう。
(…何より今は伝票も見ずにおおよその代金を渡しただけだ…バレてない…そう、まだ誤魔化せる!!)
そう思い直し、静かに気分を落ち着けて冷静さを装う事に決めた…なお、今回頼んだ伝票の内容は『甘味類・メニューの端まで』である。

「…そういう事であれば…ご馳走になります」
他言はせぬとの言質も取れ、ようやく体勢を整えながらもそう言いつつ再び頭を下げる…当然ながら今度は突っ伏すような角度ではない。
そうして残っていた茶も平らげた所で鶴羽の方から食事会へと誘われる事となる。
「そういう事であれば、特に予定があったわけでも無いですし構いませんよ」
恐らくこの誘いが本命であったのだろうと推測し、即座に了承する。
(見るからに量が有りそうだし…ひょっとしたら人手が必要なのかもしれないしな)
誘われた真意など知る由も無いが…恩を受けてそのまま放置出来るほど図太くも勘が悪いわけでも無く…どこからともなく風呂敷らしきものを取り出し、鶴羽の持っていた食材の大半をあっという間に包んでしまう。
「決まったのですし早速行くとしましょうか」
そうして食材入りの風呂敷を持ちながらも立ち上がり出立を促す…やや急いでるように見えるのは気のせいであり、伝票の発覚を恐れていたりとか栗羊羹につられたとか言う訳ではない、決して。

>鶴羽 ALL

4ヶ月前 No.573

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★Wl7KvMsHM1_usZ

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4ヶ月前 No.574

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:ルナ区画:国家隊本部/処断官執務室】

グレブスリー処断官は、威圧的な空気を放ちながら「事実だ」と答えた。その言葉に俯きそうになったが、その後のグレブスリー処断官の言葉にハッと顔を上げた。

「奪った……?私たちが?」

レイはただただ困惑するだけだった。
私たち魔武器が、この人の何かを奪った?
この人の目に映るのは、魔武器への憎悪。その憎悪に嘘偽りがないかのようにも見えた。
この人は知っている。“私が知らない魔武器”のことを。
私は、薄々感じていた。
魔武器でありながら魔武器のことについて知らないことが多すぎることを

「……ごめんなさい」

ポツリと謝罪の言葉を口にした。

「私は当時幼かった。魔武器の闇を知らずに育ち、知らないうちに村を失った。
ただ訳もわからず村を滅ぼされたことだけが真実なんだと思っていました。」

俯いたまま、ポツリポツリとあの日からのことを思い出しながら、話した。脳裏に浮かぶのはお母様の悲鳴、燃える村、そしてあの日グレブスリー処断官が放った言葉。『異端の魔女が作った魔武器を全て殺せ!!』
レイは顔を上げてグレブスリー処断官の目をまっすぐに見て

「だからこそ、知りたい。私が知っている過去に偽りがあるのなら、その真実を!貴方が知っている本当のことを……どうか教えてください」

過去の真実を知るのはもちろん怖い。
だが、いつまでも逃げているわけにもいかない。

>>グレブスリー処断官

4ヶ月前 No.575

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【テキーラ・D=フランベ/アーティー区画:国営図書館ベニト前通り】


国家隊本部への道を進む中、テキーラが自らの紹介をすると、兎の少女の様子が一変した。
テキーラが武器『 ビロニディ』の名を口にした途端、彼女は一瞬驚いた顔を見せると同時に大仰に自らの額に手を当てると、突然テキーラの正面に回り込んで革手袋を外した右手を差し出してきたのである。

『このアスールに何度か足を運んでいたのは耳にしていたが、
こうして直に会うのは初めてですよ “伝説の傭兵”
会えて光栄ですよ。ここアーティー区画の統括しているヒルカ・ルドナルですよ』

今までの怪訝そうな表情から一変、何処かスッキリとした微笑を浮かべ、テキーラを “伝説の傭兵”と呼ぶ兎の少女__基アーティー区画統括管理官ヒルカ・ルドナル。
彼女がこういうことをすることは滅多に無いのか、それを側で見た羊の少女は目を丸く見開き、『明日は槍でも降るのではありませんか?』と彼女に皮肉のような言葉を掛けるも、完全にテキーラを憧れの存在のように見ている彼女は然程も気にしてない様子だ。
そんなヒルカの変化と自らに向けられた称号を前に、テキーラは数秒ポカンとした表情で目を丸くすると……突然大笑いし始める。

「…………ぷっ!あははははは!成程ねぇ、あなたがあんな顔で私を見続けてたのはそういう…あははは!ごめんなさいね、ルドナル管理官。私、別にそんな立派な存在じゃないわよん?伝説って…!うふふっ、何か見た目と武器の名前が似てるとかで前からよく勘違いされるけど、きっと勘違いよ、ひ・と・ち・が・い♪」

すぐそばを通りがかった人々が何事かと二度見する程の笑い声を高らかに上げ終えると、テキーラは「無い無い」とばかりに片手を正面で横に振り続け、ヒルカの考えを敢えて否認する。
どうやら、自分とヒルカは直接顔を合わせたことがある間柄ではなかったらしい。しかし、『ビロニディ』の整備や重要機関の修繕等はアーティー区画の職人たちに任せることが多いのも確かで。よく考えれば、初めて修繕の依頼をした際に知り合いから彼女の顔写真や簡単な情報を見せて貰ったり、遠目に彼女が仕事をしているのをたまに見かける程度だったかもしれない(それでも欠片ほどは覚えている記憶力は凄いが)。

「……私はただ、色んな国の色んな軍に加勢して、ただ戦場で暴れ回ってただけ。それくらいで伝説なんて呼ばれても、イマイチ実感湧かないし、他に相応しい人物がいると思うのよねん。まぁ…国家レベルの危機回避に貢献したことはあるけど。
…言ってる意味分かるかしらん?」

散々笑い飛ばして否認したというのに、直後にテキーラはヒルカに近付き、彼女の耳元で囁くようにそう言うと、片瞼をそっと閉じてウインクし、自らの口元に人差し指を立てるジェスチャーをする。「このことは内緒にしててね」という意味らしい。
このままはぐらかして終わっても良かったのだが、彼女が『ビロニディ』を知っているかもしれず、武器を使わざるを得ない状況になった時にバレるかもしれないという懸念と、こうして笑顔で右手を差し出してきている彼女を心底ガッカリさせてしまうであろうことが何だか忍びなかったためである。

テキーラ= “伝説の傭兵”なのかどうか、それは端的に言えば____事実である。
最初はとある小国の国家隊の小隊から物資護送中の護衛の依頼を受けたことが始まりだった。山中で山賊に出会したが、自らの体質もあってすぐに撃退することに成功し、護送任務も成功した。その時の姿がその小隊から徐々に広まっていったのか、行く先々でテキーラに依頼をする軍隊や貴族が殺到し、その度に敵の殲滅や国の護衛等をこなしていった(彼女の正義に反する依頼は断っていたが)。その中で、アスールからの仕事の依頼が舞い込んでくることもあった。
…気付けば、自身のことが外見や愛用する武器の名と共に噂として実しやかに囁かれていたのである。 “伝説の傭兵”として。

(伝説って…何だか皮肉に聞こえるものねぇ?確かにアスールのことも手伝ってたけど、そこまで凄いことしたかしら?私…)

ニコニコとした笑顔を貼り付けながら、テキーラは心の中で怪訝そうに呟く。目の前にいる統括管理官にとって自分はW前人未到の偉業を成し遂げた偉大な人物Wらしいが、彼女は自らのことをそんな風に考えたことは無い。これが価値観の違い、というものだろうか?
閑話休題、ヒルカと話し終えたタイミングで、次は羊の少女が自らの身分と名前を口にし、腰が直角に曲がる程深々と頭を下げる。テキーラはそれに笑顔とウインクで応えた。

『アミル・カーランドです。ウォーティアの区画統括管理官などやっております。
一分の一です。等身大のモノホンです。以後よしなに』
「あらまぁ、あなたも管理官なのね!改めて、私はテキーラ・D=フランベ__ただのテキーラよん!宜しくね、ガーランド統括管理官」

その後、羊の少女基アミルからテキーラの観光先として自らが管理しているウォーティア区画を紹介され、最近名物だというパンケーキの早食いに是非参加してくれという旨の話も聞いた。テキーラ自身は酒豪であるものの食欲は平均的な程度である(本人談)ため、遠慮しておこうと思いながらも試しに参加してみようかとも思うのだった。

『ところで、そのベリオ……ベリの助は本当に大丈夫なのですか?
ベリの助の危機は恐らく体質によるものと推察しますが。何かのご病気なのですか?』
「ベリの助…ねぇ?うん、いいと思うわ!彼は嫌がると思うけど、今度会ったら是非呼んであげてねん?
……と、言って終わっても良かったんだけど__あなた、意外に鋭いのねん?確かにベリちゃんのWアレWは体質によるものよ。病気ではないから、別に後遺症も無いの。でも、危機の最中がとても厄介でねぇ……それが何かは言えないわ。彼の事情は絶対に口外しないって約束しちゃったもの」

“伝説の傭兵”に夢中であるためか、抵抗の一つもせずアミルに抱き抱えられ、彼女によって何故かおめかしをさせられているヒルカを横目に、彼女からのベリオに関する問いを投げかけられる。テキーラはまず彼女が口にした『ベリの助』というあだ名に反応し、数秒黙り込むも、このまま質問に答えないのも大人気ないと思い直し、ベリオの吸血衝動に関しては隠したまま簡単に答える。
可愛い我が後輩は、幼少期に自らの故郷の文化の所為で理不尽な言葉を掛けられた。そして少し前までは、仲の良い友人たちから自らの体質を隠すために辛い思いをしてきた。そんな彼を、これ以上不幸に堕としたくない。一人にでも話せばいずれ噂となり、彼の幸せが瓦解してしまうことは目に見えていた。

>ヒルカ、アミル、ALL


【ベリオ/ルナ区画:第七候補隊専用寮アレスタ1階】


『ベリオ、ここ、滑り台、違う。遊ぶ、あぶない』

それは予想外の声だった。階段を転げ落ち、後頭部を強打し、ズキズキとした痛みに耐えていると、パタパタと此方に駆け寄る足音が聞こえ、何者かがベリオの額を指でつつきながら、そう予想外な心配の言葉を掛けてきたのである。

(!?み、見られた…?!)

いまこの恥ずかしい瞬間を見られたのかと思うと、羞恥心で頬の辺りがほんのりと赤くなっていくのを感じる(しかし顔は青白いためかそれほど赤くは見えない色になりかけているが)。
その言葉遣いに意識が向かない思考のまま一体誰が自らを見つけたのかと視線だけを動かそうとした時、壁や天井しか見えなかったそこに見覚えのある黒髪と赤い瞳が飛び込んできたのである。

「…の、ノイ教官…補佐殿…。申し訳ござい、ません……みっともない…ところを…」

衝動を抑え込むことに体力を削った所為か、疲労により掠れた声で途切れ途切れに此方を覗き込む相手の名前と謝罪の言葉を口にする。
よく見れば、ノイの格好が何処か違う気がする。いつも被っているキャスケット帽は彼女の頭に存在せず、向日葵の描かれた黄色のエプロンと同色の三角巾が彼女を彩っている。掃除か何かの途中だったのだろうか?だとしたら申し訳ないことを__。
しかし途中で、彼女の血のように赤い瞳に衝動が再び自らの中で暴れ出しそうだと感じたために、仰向けのまま片手で口を塞ぎ、バッと顔を背けてしまう。

「…申し訳ございません……今、少し、気分が悪くて…」

素早く相手から視線を逸らす真似をしてしまうことが忍びなく、しかし理由は言えず、ついそう言い訳してしまう。
いつ衝動のままに襲ってしまうか分からない今、出来るだけ人には会いたくない。しかしこうして出会ってしまったことは避けられない事実。上官でもあり大切な仲間であるノイに対して失礼に値する行動をしたくないという思いと、衝動が治るまでは危険だから早く何処かに行って欲しいという思いがベリオの中でぶつかり合う。
ベリオが葛藤している最中、ノイは何を言うでもなく彼の額や首筋等を触診し、彼に平気かどうかのみを問い掛けると、特に重そうな様子もなく長身の彼の身体を支え上げた。
腕を引っ張られ、突然身体が浮く感覚にベリオは内心で慌てるが、振り払う体力も度胸も無いためにされるがままに彼女の肩を借りる形となる。

『一端、食堂、運ぶ。痛い、苦しい、申告、必須』
「…………」

いつもと様子が大きく違うベリオを食堂に運ぶべく廊下を歩き出すノイと、彼女の言葉に返すべき言葉が見つからず、ただ項垂れるだけのベリオ。今の彼にとって、確信の持てない無責任な返答は憚られることであった。
彼女に肩を貸されているものの覚束ない足取りで彼女に連れられている、沈黙の廊下の道中で、彼は一瞬頭に浮かんだ言葉が口を継いで出てくるのを感じる。

「……ノイ教官補佐、殿…。もし…自分に…何か、あったら……迷わず…撃ってくだ…さい…」

何故こんな言葉が浮かんだのかは分からない。ただ、彼女にはそうできるだけの技量があることと、他者を傷付けるだけの化け物に成り下がるよりは死んだ方がマシだということを考えていたのは事実だった。

>ノイ、ALL

4ヶ月前 No.576

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_n3h

【ガイアル区画/角天堂前通り】

幸いにも細かい部分を突っ込まれず、内心で安堵しながらも通りへと出て、歩を進めていた所で鶴羽から話しかけられる。
…気に入った相手にこそ悪だくみをしてしまうとのことだが…実際にからかわれる事になれていないがために無用に反応してしまってはいるものの、気に入られてると言われてそう悪い気はするはずもなく…
「…程々でお願いしますよ」
さりとてやはり少々こそばゆいものはあるのでため息交じりにそう短く返す事にしたようで…そうやってとりとめのない会話をしていた所で思いもよらぬ提案がなされる事となる。

「秘密…ですか…?」
一方的に秘密を握っていると言う鶴羽の言う事には一理ある。
あるのだが…失敗談と言うのは少なからず当事者にとって苦い物であり、気軽にそれを口にさせるのは気が引けると思っていたのだが…
「…いえ、特にそういった物はありませんが」
…当の本人にしてみればとうに乗り越えた事であるが故か…むしろ話したくて仕方がない様な様子で…聞かないという選択をしても根に持たれるような事はないだろうが、わざわざ断るような事でも無いのでややあいまいながらもそう答え、鶴羽の話を聞くことにした。

>鶴羽 ALL

4ヶ月前 No.577

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★99LNv7q2EA_3YG

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4ヶ月前 No.578

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★99LNv7q2EA_3YG

【ノイ/ルナ区画/第七候補隊専用寮アレスタ1階】

どうやらいつにも増して体調が悪いと睨んだノイの判断は間違ってはいないようだった。
意識が朦朧としている、というよりも気絶する一歩手前のような
断続した意識状態のような危うさのなかに彼はいるように感じた。
こんなときに普段の経験が生きるとは思わなかったと内心つぶやきながらも、彼を支えたまま、ノイは一歩ずつ着実に歩を進める。
そんなとき

『…の、ノイ教官…補佐殿…。申し訳ござい、ません……みっともない…ところを…』

ノイの耳元に、か細い声が届いた。彼はいったい何を言っているのだろうか。
自分が重篤な状態にあるとも知らず、あろうことか自分の体面を気遣うような言葉を口にしている。
こういうとき、助けに入った人物がこんなことを言われれば、どういう感情を抱くか分かりそうなものなのに。
ため息を飲み込んだノイは折り曲げた中指を親指で留めて引き絞ると、それを前かがみ気味のベリオの額へとあてがう。

「てい」

短い言葉とともに、しかし、彼の体調を鑑みてか、
普段主人におみまいしているものよりマイルドな威力のデコピンがぺしっとベリオの額を襲った。

「みっともない、申し訳ない、違う。困ったとき、お互い様。
レイニーも、体調、崩す、多い。だから、慣れてる、平気」

ふるふると首を振ったノイはそのままベリオの腰に腕を回すと、歩を進めていく。
いつもより長く感じる廊下をぬけると、ようやく食堂へ通じる扉が見えた。
そうして扉の前までたどり着き、器用にベリオを支えたまま姿勢でノイは扉を開けると食堂へと足を踏み入れた。


【ノイ/ルナ区画/第七候補隊専用寮アレスタ1階 ⇒ 食堂】

彼を手ごろな椅子まで誘導し腰を下ろさせると、そのままゆっくり机に彼をもたれかけさせる。
自室に彼がいたのは知っていたが、こうしてベッドを抜け出し出てきたところを見ると
横になっているよりこうして座らせた方が楽なのではないか、と思った故のこの姿勢だ。
ノイはもう一度ベリオの額に手をやった後、ふんふんと小さく鼻をひくつかせたと思えば厨房の奥へと走っていき、
すぐに白いトレー上に小さなポットと二人分のティーカップを乗せて帰って来る。

「タイミング、完璧。ちょうど、作ってた。これ、進呈。嚥下、推奨」

そういってノイはポットの中身をティーカップに注いでいく。
すぐにティーカップの中は淡い紫色の液体で満たされた。

「ベリオ、今、貧血、症状、似てる。だから、プルーン、ティー。鉄分、たっぷり」

フレーバーティーの一種だろうか。プルーン独特の甘い香りが湯気となって立ち上る。
ノイはベリオの隣に腰を下ろすと、机に突っ伏した彼の顔と机の隙間からを覗き込むようにして彼の顔色を窺う。
体調を見る限り、やはり医者に見てもらうしかこの症状は完治しないであろうことは明白だった。
しかし、その前に少し確かめておきたいことがある。ようやく一息ついた様子で息を吐き出すノイだったが、
先ほど廊下で彼がうわごとのように口にしていた言葉を思い出して、彼に問いかける。

「撃つ、何故? ベリオ、隊の一員、仲間。仲間、撃たない、当然」

詳しい事情を聞かなくても、その一言で何か彼が重いものを抱え込んでいることはなんとなく想像がついた。
撃ってほしいなんて、よほどの覚悟ないと言えない言葉だ。
そんな言葉を口にするのは、他人を巻き込むことを危惧しているからなのだろう。
あいにく、今この寮にいるのは自分とベリオの二人のみ、とにかく助けを呼ばないとノイが腰を浮かしかけたそのときだった。


チリン――…チリン―――…

「来客? ベリオ、ここ、待つ。動く、ダメ」

来客をしらせる澄んだ金属の鐘の音が響き渡る。
どちらにせよ僥倖、渡り船だだ、とノイは寮の玄関へと急いだ。

>ベリオ




【グレブスリー/ルナ区画/国家隊本部/処断官執務室】

グレブスリーの放った言葉に俯くレイだったが、途中、驚いた様子でその顔を上げた。
彼女の瞳の中に渦巻く感情に今度はグレブスリー驚かされる番だった。
困惑と驚愕がないまぜになったかのような感情の色。
しかし、そんな彼女の反応を演技に騙されるなと心の中で一蹴したグレブスリーは再び眉根に皺を寄せる。

「やめろ。心にも無いことを口にするな。
知らぬといったな。そんな貴官がどうして私の心の痛みを理解できる?
そんな軽い謝罪にいったいどれほどの価値がある?
そんなものはなんの罪滅ぼしにもならない。それはむしろこちらに対する侮辱に等しい行いと知れ」

表情こそ落ち着きはらってはいたが、グレブスリーの心境は混迷を極めていた。
本当に、これが、あの日の惨状を引き起こした一族の見せる表情か、と。
彼がまともな精神状態ならそう思えた可能性もあったに違いない。
だが、それを塗りつぶしてあまりある悔恨の念がその疑問を取り下げた。
吐き捨てるようにレイの謝罪をさえぎったグレブスリーは怒りに歯をむき出しにして捲くし立てた。

「私は口汚く罵る相手には同様の悪罵をもって接し、
害を及ぼすような輩には、それ相応の敵意をもって応じる。
知らぬというならば是非もない。貴官には私が受けた痛みと記憶を、直接己が心で体感してもらうとしよう」

言うが早いか、屈んでレイと視線を合わせた姿勢から立ち上がったグレブスリーは、
日焼けした無骨な印象の右手をレイに向かって差し出した。

「武器化したまえ、白月レイ候補官」

何を思ってか、彼は静かな口調でレイに武器化を命じた。
もはや一刻の猶予も与えないとばかりに
彼女の疑問を封殺していくかのように、彼はこの言葉の真意を彼女に語って聞かせる。

「魔武器は武器化した際、深い心の繋がりを持つ者同士であれば、
己が心象を記憶の断片として一方に映し出すことができると聞いた。
何も良い感情だけが心どうしを繋げる足がかりとなるわけではない、強い憎しみによって繋がる心もある」

レイとの距離を詰めたグレブスリーは、
それでもまだ思うところがあるのか、レイのほうから手を掴むのを待っていた。

「記憶の旅にご招待しよう。
場所はかつてこの大陸の最北端に存在していた私の故郷、城砦都市グランベルクだ」

その皮肉めいた言葉にはどこまでも乾いた感情が詰まっているように感じた。
既に彼の目にはここではない別の風景が映りこんでいるのか、
グレブスリーの瞳の中で炎が静かに、ゆらりと燃え上がる様子が幻視できた。

>レイ



【information:サブ記事にて「アミル・カーランド」のプロフが追加されました!】

4ヶ月前 No.579

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ/ルナ区画/国家隊本部/処断官執務室】

私の謝罪は逆に相手の神経を逆撫でしてしまったようで、今にも首を締め上げられてしまうのではないかと思ってしまうところだったが
グレブスリー処断官は、何を思ったのか私の目の前に来て手を差し出し「武器化しろ」といってきた。
そしてその後の説明で納得した。
セキアさんと記憶を共有した時と同じことを
今からしようということらしい。
私は恐る恐る、グレブスリー処断官の手を掴み、小さなナイフへと姿を変えた。

この人がその目に写す私への……魔武器への憎悪の理由を、あの日、魔武器が滅ぼされたほんとうの理由をこれで知ることができるのなら……

武器に変身した瞬間、グレブスリー処断官の記憶が流れ込んできた。

≫グレブスリー処断官

4ヶ月前 No.580

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

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4ヶ月前 No.581

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【テキーラ・D=フランベ/アーティー区画:国営図書館ベニト前通り→ルナ区画:第七候補隊専用寮アレスタ入口前】


当の本人から人違いだと笑い飛ばされ、彼女こそが本物だと考えている(実際、本物なのだが)ヒルカは案の定頭を両手で押さえながら当惑する表情を見せた。それはそうだ、自身の憧れの存在にやっと出会えたと確信したのに、それを目の前の本人から否定されれば誰だってこうなる。
そんな彼女を見てしまえば、流石のテキーラでも罪悪感を感じずにはいられない。年齢に似合わずしっかり者の印象を与える彼女であっても、幼い少女であることに変わりはない。年下にこんな顔をされると、甘くなってしまうのだ。
故に、「我こそは本物のW伝説の傭兵Wです」と言っているような言葉をヒルカに耳打ちしたのである。そうしたテキーラに閉口する彼女だったが、テキーラの意志を汲み取ったのか無言で頷くと、自ら距離を取り、『一流の魔導具の使い手は魔導具の使い方さえ一流』という、一つの格言らしき言葉と共にそれを受け入れたらしい言葉を紡いだ。

『使い手の心はその手足たる魔導具にも表れる。私は魔導具を大事に使う奴がなによりも大好きですよ。
今はその言葉で納得してやるが、何かの拍子に私の目の前で魔導具を見せやがったら、そのときは、しつけぇくらいサインをねだってやるですよ』
「ふふっ。あらあら、それは私も覚悟しなきゃいけないわねん♪確かにアレを大事にしてるのは事実だけど。折角だし、サインはフルネームで筆記体にしてあげるから、楽しみにしておくのよん?」

先程のはしゃいだ様子とは打って変わり姿勢を正すと、此方の事情を納得しつつも来たるべき時が来たら自身の憧れの存在として扱ってやるから覚悟しておけ、と言わんばかりの色を乗せた台詞に、テキーラもいつにも増して笑顔を深め、緩くにこやかな口調で返す。私ったら随分と甘くなったものね、歳の所為かしら?と、彼女の見た目に似合わないことを考えつつ…サインなんて初めて書くわねぇ、こういうのも悪くないかも?とも考えるのだった。
そんな一連の出来事が一区切りしたところで、側から大きな欠伸の音色が聞こえてくる。欠伸の主は勿論アミルだ。

『カッコつけても頭がリボンだらけでは格好がつきませんね。
ヒルヒルさえよろしければ、ついでにそのメイクにあわせたドレスなどもしたてますが』

その言葉と差し出された手鏡によって、ヒルカは我に帰り、同時に固まる。その様子を見ながらテキーラはニコニコと笑顔を浮かべるのだった。
そう、テキーラが笑顔を深めたのはこの姿をずっと視界に入れていたためである。アミルの悪戯を嗜めることも出来たが、ヒルカを納得させることが最優先であり、そして彼女がいつ気付くかが気になったためでもある。「似合ってるわよん」と声を掛けたかったが、そうすると彼女から痛い目に遭わされるか、暫く彼女をショックで再起不能にしてしまうかという懸念もあり、その言葉は飲み込んだが。
案の定ヒルカは怒り狂い、リボンとメイクで可愛らしくなった頭部と無骨な服装の身体というアンバランスな姿で脅迫のような言葉を吐きながらアミルを追いかけ回し、当の犯人であるアミルも悪びれる様子もなく逃げ回る。

「あらあら〜、二人とも、喧嘩はだめよーん?」

自分の周りでぐるぐると追いかけっこを展開する二人を、テキーラは特に止めようともせず、笑いながら眺めるのだった。
その光景に気を取られていたからだろうか、テキーラの目的地に着いたことはアミルの一言で気付くのだった。長くなりそうだった道のりも、こうして誰かとお喋りしながらだと案外早いものである。
チューダー様式風の緑屋根と漆喰の真っ白な壁が特徴的な寮は、綺麗だが一種の過ぎた潔癖さをもテキーラには感じさせた。
アミルが扉の呼び鈴を鳴らす中、ベリオは無事なのだろうか、という心配が再び胸の内に浮上する。連絡が入ってから随分経った心地だが、特に何かが暴れるような音は聞こえないため、無事なのだろうと信じたい。
そして閉ざされていた扉が開くと、目の前にはまだ幼い亜人の少女の姿があった。今日はよく亜人に会うなと思いつつ、ヒルカやアミルにもしたように、彼女と同じくらいの目線になるようしゃがみ込む。

「こんばんは、可愛いお嬢ちゃん♪此処の寮の子?だったら、ちょっと聞きたいことが__」

本題に入る直前のことだった。内部で何かがぶつかったり倒れたりするような物音がした後に窓硝子が思い切り破られるような音が僅かだがはっきりと聞こえたのだ。

__ドンッ、ガターンッ!バタン!……
__パリーン!

「っ!?何…?」

その不穏な物音に嫌な予感が走り、思わず身を強張らせる。まさか、遅かったのか?この場で考えられる最悪の想定をし、油断なく窓硝子の割れた音がした方角に視線を向け、その周囲にも視線を巡らせる。しかしそこらには何もいなかった____上空以外は。

「皆伏せて!!何も見ちゃ駄目よ!!」

その姿を視界に入れた瞬間、大きく鋭い声がテキーラから発せられる。
それと同時に、向こう側から宵闇の迫りつつある空に陰を落とす、彼女のよく知る、そして今一番見たくはなかった顔が、金色の眼光をギラつかせながら背中から大きく広げられた翼を大きく羽ばたかせると、彼女ら目掛けて急降下してくるのだった。

>ヒルカ、アミル、ノイ、ALL


【長々と申し訳ございません…!多分戦闘には移行させないと思います!(何】

4ヶ月前 No.582

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_n3h

【ガイアル区画/角天堂前通り】

鶴羽の僅かな懸念…と言う程でも無いが…を知ってか知らずか…自身の秘密を淡々と語りだすのを静かに聞き続ける。
(恋愛感情…か…縁なんてないんだろうが…)
その内容は幼い頃を発端とし、抱き続けた淡い思いであり…自身が身を引くという形で終わった切ない思い出の一つであった。
(引きずっている…か…確かに…そうなんだろうな)
…ただ静かに聞き入っていただけであったが…それでも鶴羽が平静を装って、語り続けていたのだと感じ取るのはたやすい事であった。
(こちらとは状況が違う…それでも…もしも…)
確かに色恋沙汰とは縁が無いが…かつての自身の状況にいろいろと置き換えてみれば…それは空想に過ぎない物だと言うのに鋭い痛みを感じさせるに余りあるものであった。

「…わかりました…ですが1つ質問が」
念を押すかのようにこちらに『他言無用』と言う鶴羽に頷きつつも口を開く。
「その…妹さんたちは今…」
…ひょっとしたら聞いてはまずい事だったのかもしれない…と今更ながら思い直し、口調が自信なさげな物になるものの…出てしまった言葉は今更呑み込めず、十分に推察できるところまで口にしてしまっていた。

>鶴羽

4ヶ月前 No.583

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★5S1iwZIcbx_8cp

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3ヶ月前 No.584

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【テキーラ&ベリオ/ルナ区画:第七候補隊専用寮アレスタ入口前】


目の前の黒髪の少女が放った(TPO的に)ズレた言葉に突っ込む余裕も無く、テキーラは上空に現れた者の姿と今の状況に苦虫を噛み潰したような心地で呟く。

「……遅かったか」

その重く沈んだ声音で放たれた言葉は、二重の意味を含んでいた。
一つは、此方が物資を渡す前にベリオが衝動を耐え忍び切ることが出来なかったこと。もう一つは、此方が「見るな」と言った直前、周囲の少女3名がベリオの姿を見てしまったことだ。
特に、今この場で最も新しく出会った黒髪の少女の驚きと困惑に染まった一言が、テキーラに自身の警告が無意味であった事実を突き付ける。
その間にも、猫のように細くなった瞳孔がはっきりと見える程に輝く金色の双眸を見開いたベリオが地上の4人を目掛けて急降下してくる。テキーラ、ヒルカ、アミルは反射的に地面に伏せ、少女基ノイもヒルカに無理矢理地面に転がされる形で倒れ込む。その瞬間、彼女らのすぐ頭上を猛スピードで通過するものがあり、直後に彼女らをすれ違いによる風が襲った。
すぐさま立ち上がり背後へ自らの身体ごと振り返ってみれば、視線の先には翼を広げた状態で低い姿勢を取り、鋭い視線で此方を見据える後輩の姿があった。その右手には鋭利な刃物を握っており、時折その刀身を鈍く輝かせている。
フゥー、フゥー、とくぐもった呼吸音を漏らす彼の目は、確かに衝動と本能のままに動く狂気の色を秘めている。しかしその目付きとある種の冷静さを保った瞳の奥、そして現在の彼の姿勢と得物の構え方は、その道を行く者ならば誰でも分かる、今正に目の前の獲物を仕留めんとするハンターそのものであった。
しかし、彼のにとって最も重要な得物である筈の牙を秘めた口元はキツく巻かれた深緑色のバンダナによって覆われ、その表情を伺い知ることが出来るのは目元と深いシワの刻まれた眉間のみであった。

『あれが知り合いか、ですよ? うちも多様な種族が暮らしてやがるからだいたいの想像はつくが………いったいなにがどうなってやがるですよ?』
『随分と遠まわしなのですね、ヒルヒルは。ここは気を遣う場面ではないと思われます。
たぶんあの人は生命の維持に吸血を必要とするコウモリの亜人種なのでしょう?』

ベリオの行動に似合わないバンダナを視認した時、地に伏せていたヒルカとアミルから耳に痛い質問を投げかけられる。あまり深くは触れようとしていないかの如き言葉を紡ぐヒルカとは対照的に、文字通りの単刀直入に核心に切り込むが如き問いをアミルは齎した。
次のベリオの動向を探らんと彼を見据えていたテキーラは、その問いと今までのアミルらしからぬ冷たさを感じさせる程冷静な口調にピクリと一瞬動きを止める。

「……詳しいのね」

顔を3人から背けたまま、神妙な声音で一言発する。
しかしそれ以上のことを答えることはなく、アミルら3人に首から上のみ振り向き、何処か威圧感を感じさせる笑顔を向け、口を開けば、ポケットから取り出したデリンジャーの銃口をベリオに向けつつ再び視線を彼に戻す。

「……まっ!詳しい話は後々!取り敢えず、このことは他言無用ってことで宜しくねんっ♪」

瞬間、翼を水平に広げて力強く地面を蹴り出し、獣の如き咆哮を上げながら、ベリオは勢いよく突っ込むように此方へ襲い掛かかる。

「……再会早々悪いけど、此処で一発撃ち込ませて貰うわよ。ベリちゃん」

そこを狙うように、銃弾の届くギリギリの飛距離に来るのを見計らい、テキーラはデリンジャーの引き金に指を置いた。

>ノイ、ヒルカ、アミル、ALL

3ヶ月前 No.585

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_Bka

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3ヶ月前 No.586

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:ルナ区画:国家隊本部:処断官執務室】


グレブスリー処断官の記憶が思念となって私の中に流れ込んできた。
真っ白な白銀の世界、凍えるという言葉では足りないほど寒い。そんな白い世界で見えてきたのは



「こ…これは……!!」

あまりの惨状に驚いていると、一人の少女にグレブスリー処断官が駆け寄っているのに気づいた。
少女は虚ろな表情で大きな鎌を持っている。あの刀身の色……なんて禍々しいの。少女は鎌を振り下ろしグレブスリー処断官を切り裂いた。
どうして……この子はどう見てもグレブスリー処断官の娘さん。娘が親を……
と驚いていると、鎌が人の姿へと変わった。その姿を見てレイはまたもや驚愕する

「……なんで……貴方が……!!」

レイがその人物に呆気にとられる間にも、その人は今度は、少女を斬り殺した。
白銀の世界でグレブスリー処断官の泣き叫ぶ声がこだまする。

「……なぜです……兄様……」

そして、レイの意識は執務室へと帰ってきた。ナイフから元の姿に戻り、しばらく放心状態になり、涙を流した。


「あれだけのことを……たった一人の魔武器が……?………確かにあの力は魔武器そのもの……それに…………」

自身に知らされた真実を、どう受け止めればいいのかわからなくなっていた。本当にあの人が、あれだけのことを……魔武器がこの人の大事なものを奪ったのだとすれば、私は……

「グレブスリー処断官……こんな言葉では貴方の心は浮かばれないのは承知していますが、言わせてください。……」

レイは涙を流しながら立ち上がりグレブスリー処断官の方を見つめて、もう何をされても、何が起こったとしても、全てを受け入れる覚悟で

「……ごめんなさい……」

深々と頭を下げた。

「……確かの貴方の大事なものを奪い去ったあの男は、紛れもなく魔武器の人間だった。私は今の今まで貴方を村を理由もなく破壊したただ憎い相手だとしてしか思っていなかった。
ですが、それは間違いでした。本当にごめんなさい!私たち魔武器は貴方に……貴方達に、どれだけ償っても償いきれない罪を犯しました。」

頭を深々と下げながら、今までの恨み憎しみが間違いであったこと、そしてあの人が犯した罪を全て謝罪した。
セキアさん……ごめんなさい、私に貴方の力になる資格はないのかもしれません。


>>グレブスリー処断官

3ヶ月前 No.587

語り部(スレ主) @yuzuriha16 ★JVjFpIdrgV_Bka

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3ヶ月前 No.588

ますたぁ @usagi59 ★iPhone=yO2Kb2AguU

【白月レイ:ルナ区画:国家隊本部:処断官執務室】

グレブスリー処断官は静かに低い声で、その後も経緯を話してくれた。高い地位まで上り詰めて調べ魔武器の存在を知ったと
レイはその話を聞いて、少しいたたまれない気持ちになった。

「そして……私たち魔武器を根絶やしにした…んですね。」


と俯いていた顔を上げ、静かにグレブスリー処断官の目を見つめる、頬はまだ涙で濡れているが、レイはすでに泣くのをやめていた。


「…私の兄に……あなたが味わったのと同じ苦しみを与えるために……絶望を与えるために……」

レイがどうしてもいたたまれない気持ちになった理由はそこにあった。グレブスリー処断官の望みを叶えてあげられないということに

「……ですが……あの人は、自分の家族が焼き殺されようが涙を流して絶望するどころか……逆に笑顔で……あの状況を喜んでいましたよ……」

私は、覚えている。
あの焼けて何もかもがなくなった村に、戻ってきた兄が、父の骨を踏みつけ笑って喜んでいた時のことを。私はそんな兄に恐怖を覚えその場から逃げ出し、二度とあの村へ帰ることはできなくなった。

「……私は当時幼かったので、詳しい事情はわかりませんが、兄は何か村で問題を起こし、追放されたと、父が教えてくれたのを覚えています……。なので兄の現在の消息については残念ながら………」

グレブスリー処断官の目をまっすぐ見つめ、最後に首を横に数回振り、少し俯く。
しかし全ての責任はおそらく兄を野放しにしてしまった魔武器にあるのだろう。となれば、私は何が何でも兄を見つけて……この手で…

……殺さなければならないだろうか

>>グレブスリー処断官

3ヶ月前 No.589

エルト @absoryut ★lbN0U8PuMJ_khR

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2ヶ月前 No.590

レーリン @reirin16☆iFOiR2juBrUr ★iPhone=t2Gdx8uNU5

【テキーラ&ベリオ/ルナ区画:第七候補隊専用寮アレスタ入口前】


テキーラが今にも襲い掛かろうとしているベリオにデリンジャーの銃口を向けた直後、此処を中心とする一帯の上空一面に花火のような光が広がり、そこらを覆い隠すようにドーム状の透明の壁が現れる。
その直後、目の前に闇が広がった。否、目の前には漆黒の刀身を持つ巨大な大剣を構えたアミルがテキーラの前に出てきたのである。そして、これらの現象を齎した二人が此方に向かって叫び、または語り掛ける。

『他言無用だったな、ですよ?
こいつを閉じ込めるのと、噂好きな奴らの認識を阻害するための壁をはったですよ。
身内ならてめぇの手でとっとと止めやがれですよ!』
『はー、これは完全に正気を失ってますね。
もう一度こちらに飛んできたところを、これで受け止めます。あとはなんなりと』

通常の弾丸ではなし得ない効力を齎す銃、常人ならばまず持ち上げることすら不可能に近い自らの身長の倍はある剣__成程、これがW此処Wの主力いうことか、とテキーラは察した。自らの武器も魔道具という分類ではあるが、これ程強力な性能を持つ訳ではない。武器の利便性は、あくまで使用者の能力や癖に依るものが大きい__そしてそれは二人の武器も同じとしても、だ__。
それでも、今自身が出来ることは二つ。二人からの援護への礼を言うことと、ベリオを止めることである。

「助かったわ、二人とも!これなら一人で何とかしなくても楽に終わらせそう……あ、そうだ」

二人への礼を口にしている途中、思い出した風にクルリと首から上のみを振り返らせ、今まで戸惑い、為す術も無い様子であった少女が立っているであろう方向へ視線を動かし、言う。

「あなたはどうする?さっきから怖がっているようだけど…もしアレなら、離れた場所に避難しても____」

言っている途中で、気付く。彼女は、そこにいなかったのだ。まさか、と思い、その地点から自らのすぐそばまで視線を動かすと、そこに彼女は、いた。
銃は構えていない。しかしその右手はある決意と勇気に満ちた形をしており、その視線はベリオの方へと真っ直ぐに向いている。

『ベリオ、助ける、手伝う!』
「あらあらぁ〜……本っ当に皆良い子ねん。お姉さん、感動で思わず涙が出ちゃう!」

そうして3人目の援護者が出てきたところで、テキーラは目を伏せ、眉を八の字にし、片手で銃を構えたまま、大げさにもう片手の人差し指で涙を拭う仕草をする。実は彼女がノイに向けて言いかけた台詞は、恐らくヒルカやアミルと同じかそれ以上の実力者であることを見抜いていた彼女が、仲間を攻撃することを戸惑っているであろう__当然、自分や周囲の仲間の命を危険に晒す状況では褒められた行為とは言えない__ノイをわざと煽り、半ば無理にでも立ち向かわせようとしたのだが……どうやら、そうする必要は元から無かったようだ。
そういう理由もあってか大げさな仕草をしている時に、ベリオの力任せ翼任せな突進が行われる。そのコンマ2秒後、テキーラの片目がチラリとそれを捉える。

「……なぁんちゃって♪」

発砲。掌に収まるほどの小型拳銃故に狭い射程距離を利用し、ベリオの飛ぶ速度を計算し、彼がアミルの剣を先頭とする一行に届くギリギリの距離で放たれたその弾丸は、見事に彼の片手に収まるナイフの柄に命中し、空中へと放り出した。
柔らかな皮膚をいとも簡単に切り裂く、鋭利なナイフ。例え攻撃を避けたとしても、投げて此方を傷付けに掛かる可能性もある。それを考慮すれば、まずは武器を手放させる必要がある。それに、わざわざ可愛い後輩の手を傷付ける必要は無いのだからそうした、とテキーラは後に語る。

「っ!?」

そして当然、小型とはいえ至近距離ならば暗殺に使える程度には威力のある弾丸で得物を弾き飛ばされたこととその衝撃に、暴走しているとはいえベリオもそちらに注意が一瞬向いてしまう。
そしてそれが仇となり、自らのスピードも災いしてか、目の前には真っ黒な壁が。咄嗟に受け身を取ろうとし、アミルの剣の刀身の腹部分に激突してしまう。直後、ナイフは背後の離れた場所で地面に突き刺さった。

「ぐっ…う゛ぅっ…!!」

受け身に失敗したのか、地面に転がり、痛む身体を無理矢理奮い立たせ、尚も唸り声を上げ、ギラついた双眸で一行を睨み付けるベリオ。
アミル、テキーラ、ノイ、ヒルカ……と次々と視界に入れたところで、再びノイの顔を視界に入れ、目を見開く。そして。

「ぐ……ああ゛ァアうっっ!!」

まるで誰にも食らいつかせないように誰かに塞がれたような、口に固く巻き付けられたバンダナの下で、ベリオは鋭い牙を剥き出しにし、ノイ目掛けて突っ込む。しかしそれは真正面からの特攻故か、アミルが構えている剣によって阻まれてしまうも、その左手で剣の刀身を掴み、反対の右手を伸ばして彼女に掴み掛かろうとする__が、それもテキーラに片手で手首を掴まれることで防がれてしまう。

「ぐゥ!?ガぁア!あぉアア!!」
「おーっと、そ・こ・ま・で♪…もしかしてソレ、簡易の束縛魔術でも掛けてるのん?散々暴れても解けないし…。確かベリちゃんでも使える奴だったわよねー?全く、ギリギリでも真面目って言うか……」
「??……!?」

掴まれた右手を振り払おうと暴れるベリオに、テキーラは余裕の笑みを浮かべながら一つの推測を口にする。その言葉に一瞬呆気に取られ、刀身を掴んでいた左手を口元に持っていき、そこに巻かれたバンダナに触れた途端__愕然とした様子で、まるで今更気付いたかの如くそれを引き剥がそうと躍起になりだす。しかしバンダナが解けるどころか、口元からずり落ちる気配すら見せない。
一瞬、バンダナに薄っすらと光る文様のようなものが見えた気がした。

「__今よ!」

目の前の獲物よりも自らの牙を覆う布切れに夢中になりだした後輩をニコニコとして見つめること1秒、自らのすぐ前に控えているノイに向け、テキーラは短い言葉を叫んだ。

>ノイ、ヒルカ、アミル、周囲ALL

2ヶ月前 No.591
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