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千年京とヘマトフィリア〜名無しのアヤカシ〜

 ( オリジナルなりきり )
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【陰陽師VS妖怪】 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★nk2Rea4pnP_4ff

「お願い、私を……此処から出して……?」
 宵闇の中で緑柱石の瞳が。何処までも甘美に、蠱惑的に揺らめいている。



 アヤカシ――それは、人とは異なる理に生きるモノ。
 アヤカシ――それは、気紛れに人の生活を脅かすモノ。
 アヤカシ――それは、滅されなければならないモノ……

 2013年、夏、京都。
 全国から集結した陰陽師達は、今日も今日とてアヤカシ退治に精を出す。
 古来より人間の生活を脅かしてきた人ならざるモノ――アヤカシに対抗できる力を持つ人間が現れたのは、最早千年以上前のこと。その血と共に、脈々と受け継がれる力でもって人々を守る彼等に対しては、今では時の政府すら一目置いている。
 陰陽師は仲間と共に、時として敵であるアヤカシの力さえ利用しながら、彼等なりの日常を過ごしていた。
 立籠める暗雲を、理性ではなく本能で知覚しながら。

 陰陽師――それは、人とは異なる理に生きるモノ。
 陰陽師――それは、意図的に我等の存在を脅かすモノ。
 陰陽師――それは、屠らなければならないモノ……

 同年、同刻、同地。
 呼び集められたアヤカシ達は、今日も今日とて本能のまま生きる。
 古来より自然の中に生き、人に恵みも災いも与えてきた彼等が認識されたのは、最早千年以上前のこと。彼等に仇なす存在――陰陽師が現れたのも、千年以上前のこと。気の遠くなるような時を生きるアヤカシは、実に様々な感情を抱いている。
 アヤカシは同胞と共に、時として敵である陰陽師を利用しながら、彼等なりの世界を守ってきた。
 立籠める暗雲に、本能的な愉悦を覚えながら。

 両者の思惑も、運命も、全てが交錯したいにしへの都で。
 世界の礎を作る闘いは、始まろうとしていた。

【意味不な駄文で済みません。興味を持って頂いた方、詳細はサブ記事へ】

3年前 No.0
メモ2017/01/19 11:11 : カイオプ★mEAuE8l5iq_qxX

当スレッドへのご意見等ありましたら、スレ主アカウントまでお願いします。文章の非表示等、参加者様・閲覧者様のご迷惑になる行為はお控えください。


【2015/12/31 本編完結】



完結スレッドにもかかわらずアクセス数が伸び続け、ついに2万アクセスを突破しました、有難うございました! スレ主がひっそりとお礼の企画を用意いたしますので、今しばらくお待ちくださいませ。


キャラクター一覧… http://mb2.jp/_subnro/13445.html#S1126 ミスがあった場合は、報告お願いします。


序章 :日常の狭間と非日常の隙間 >>1-148

第一章:昏い路地の物騙り >>149-380

第二章:イツワリノシジマ >>381-454

第三章:君はその眼に何を映すの…… >>455-648

第四章:Who is a betrayer? >>649-742

第五章:取捨選択 >>743-766

第六章:倒錯×交錯×ユーフォリア >>767-860

第七章:いにしへの 京の都に 弔いの 花は散るらん 秋の夕暮れ >>861-1480

終章 :千年京とヘマトフィリア〜After Dream〜 >>1482-1520(進行中)


【絡み状況】

・京都駅周辺…相澤薙&刃金丸、紅子、ヴェズ、芦屋勇

・京都駅・大階段…日下部阿藍&緑利VS滝夜叉姫、

・伏見稲荷大社周辺…芦屋巖児&唄女&戯


こっそりスレ主が外伝集作っちゃいました。「千年京異聞録」 http://mb2.jp/_shousetu/32177.html

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@mistydark☆NIljAHmRyhk ★sacQfGfpnA_Jjn

【とある雑居ビル→京都駅/鈴木紅子】

 大阪郊外のとある路地裏。大通りの喧騒から少しばかり離れたその場所には、一昔前の名残とも言うべき民家や商店が軒を連ねている。良く言えば静かな、悪く言えば寂れたその土地の片隅に、これまた置き去りにされたような鉄筋コンクリート造り四階建てのビルが建っていた。バブルの終わり頃に造られたそのビルは、当初こそ飲食店から少しばかり怪しいお店までラインナップが充実していたのだが、今となってはその面影は殆どない。辛うじて、一階部分に老夫婦の経営する喫茶店が地元民の愛着だけで生き残っている。老朽化も進み、喫茶店が閉まれば取り壊されるのみだろうと思われていたそのビルに、最近買い手がついたらしい。と言っても、一棟丸々買い上げたわけではなく完全に空き家状態の三階と四階の権利を35年ローンで買い取り、ワンフロアぶち抜いた事務所と自宅を自力で造り上げた変わり者だという。元々のビルのオーナーは買い手の無茶な要求に泣かされたらしいが、兎にも角にも時代に忘れ去られるばかりのビルは新たな住人を得た。
 従って今、そのビルの三階部分の窓には「鈴木探偵事務所〜アヤカシのご相談承ります〜」という、コピー用紙にマジックで書いたと思しき看板もどきが掲げられている。
 翡翠と芦屋漆蓮の引き起こした革命の直後、人民と現世に残ったアヤカシたちの混乱を草の根運動よろしく少しでも鎮めていこうという一人の女性とその知人、その場限りの協力者などによって開設された事務所である。現在は元陰陽省や政府の対応も多少はマシになり、類似の機関が全国に増えつつあるものの、彼女の事務所はそこそこの盛況を見せていた。開設者兼現所長曰く「やっぱあれやな、タイミング良かったのと元陰陽師、元影の輩言う肩書が効いたんとちゃうか? 安倍晴明有名やしな、うん。ウチはあの家嫌いやけど、商売となれば話は別やで? 使えるモンは使ったらな」とのことである。
 そう……ここは影の京都のチェイテ城崩壊からしれっと逃れた鈴木紅子の新天地なのだった。

 そして今日も、悩める人間とアヤカシは彼女の許を訪れる。
「……アヤカシにうちの子が攫われた……ねぇ」
 コンクリート打ちっぱなしの壁と床に似合わぬ無駄に豪奢なソファで紅子と対峙しているのは、悲嘆に暮れた一人の女性だった。なんでも、生後三ヶ月の息子が目を離した一瞬の隙に忽然と姿を消してしまったらしい。彼女が我が子の傍を離れたのはミルクを作りに行った数分のみで、しかも息子を寝かせていた部屋は台所の目と鼻の先だという。自宅のセキュリティは万全を期しておりそう簡単に不審者の侵入を許すはずはなく、仮に侵入できたとしても数分のうちに幼い子供を連れて逃げるなどただの人間には不可能だ。しかも息子が居た筈のベッドの枕元には、これみよがしに萎びた木片が残されていた……というのが彼女の主張の要約である。これだけの情報を引き出すのにたっぷり二時間はかかったが、淡々と話されても困りものかと紅子は早々に諦めている。しかし話を聞き終えても尚、紅子は苦虫を噛み潰したような表情を崩さなかった。子供を失って嘆く女性に同じ女としてどう言葉を紡ぐべきか……そんなこと、母になった経験のない紅子に分かるわけもなく。だから彼女は、アヤカシ寄りの元陰陽師の見解を、逡巡の後に告げることにした。
「あんなおねーさん。そういうことは、探偵事務所に駆け込むより先にまずは警察に言いや? こんなこと言うのも追い打ち掛けるようで悪いんやけどなぁ……最近人間の中にもアヤカシ騙って犯罪起こすような不届き者も居んねんで? セキュリティっつったって穴もあるし、おねーさんが社長夫人なら息子さんはぼんぼんや、よっぽど身代金目的の誘拐の方が現実味が……」
「ふーん、珍しいね。形式的にはチェンジリングなのに誤魔化そうという気概がどこにも無い。本当に人間の子供が目的だったのか……或いは取り替えるべき我が子が既にいなかったのか」
「……いきなり話に入ってくるなって何時も言うとるやろ緑利」
 紅子の肩越しから覗き込むようにして話に割って入ったのは、高く見積もっても十代半ばの一人の少女だった。室内とはいえまだ寒いこの季節に、ノースリーブのワンピース一枚で平然としている。その出で立ちだけでも異様と言えば異様だが、先ほどまで誰もいなかった場所に音もなく現れた少女を目の当たりにして、相談者の女性は若干引き気味である。
 しかしいちいち説明する気もない紅子は、依頼人を置き去りにして話を進めていく。
「んで? 何やって、チェンジリング?」
「そう、取り替え子と言えばいいかな。欧州に古くから伝わる伝承で、妖精が人間の子供と自分の子供を取り替えていくんだ。その動機は人間の子供を愛するためだとも奴隷にするためだとも言われている。洗礼前の美しい金髪の男の子辺りがよく狙われたそうだよ。置き去りにされる妖精の子供は賢しかったり発達が遅れていたりして割とすぐ露見するか死んでしまう。特に死んでしまう方の子は木片に魔法が掛けられているだけの場合が多い……今回のケースと似ているでしょう? まぁ、一般的にいえば奇形や発達障害を抱えて生まれてきた子供の個性を受け止めきれずにエルフの子だの何だの称されていたと考えるべきなのだろうけれど、実際に妖精やトロルの悪戯も無かったわけじゃない。それでまぁ話が逸れたけど、順番が逆なんだと思うよ。旦那様のお仕事、製薬会社でしょ、きっと」
 多大な講釈を横道であると言い切った少女は、わざと遠回しに一つの可能性を紅子に提示する。一分悩んで、紅子はその答えに辿り着いた。
「アヤカシの子供の方が先……この間のホシか!?」
「多分ね、彼等が無事に戻れば解放されるんじゃないかな」
「彼奴等……実力行使にはまだ早い言うたのに!」
「子供を想う親の気持ちはアヤカシも人間も変わらないよ、それに勝てる理論なんてなかなか此の世には存在しないさ」
 何故少女の方に親の気持ちを代弁されなければならないのか全く分からないが、とにかく結論に辿り着いてしまった以上、それが間違いであろうと何だろうと動くしかない。
「緑利、資料!」
 少女に向かって叫びながら、紅子も勢いよく立ちがった。上着を取り上げ、袖に手を通しかけてやっと、超展開についていけずおろおろしている女性の存在を思い出して、あわてて彼女に向き直る。
「おねー……高神さん、取り敢えず息子さんの居場所に心当たりが出来たから行ってくるわ。何にしても子供に罪はない、ウチが絶対無事に連れて来たる……けどな、ちょっと旦那がボコられる可能性大アリやけど、その辺は堪忍な。詳細は追って連絡するさかい……書類と契約書の記入よろしゅう」
 余りにも適当な説明をして頭を下げると、紅子は少女――緑利の持ってきた荷物の半分を占める書類を依頼人である高神芳野にスルーパスし、残り半分のファイル片手に事務所を飛び出した。呆気にとられている芳野に軽く補足説明をして、緑利もそれに続く。
「えーっと高神製薬の本社は京都か……難儀な土地やなぁ、あそこも」
 紅子はビルの出入り口でぼやいていた。声音も内容も心底面倒くさそうだが、その瞳は使命感のようなものとちょっとした悪意とで、悪戯を思いついた子供のように爛々と輝いている。その隣で呆れたように肩をすくめ……けれどどこか嬉しそうに微笑む男性の姿が、緑利には見えた。
「行くなら急がないと。感傷に浸っている暇はないよ、母さん」
 そんな“二人”の横を風のように駆け抜けると、追い越しざまに囁く。それを受けて、紅子もまた走り出すのだった。

__________

 そうして何やかんやと仕事を終えた二人は、数年ぶりに京都駅に立っていた。ゾンビ騒動の過程で崩落した硝子天井も今ではすっかり修理が終わり、多くの人――もしかするとアヤカシも――が行き交う普段と変わらない様子を呈している。
「さーてと、折角此処まで来たんやし、久々に本家でも突つきにいこか」
 大階段から雑踏を見下ろしながら、紅子はそっと呟いた。

【真ん中は以前とある御方と影の輩ネタで話していたものをアレンジしたものです、此処で全部書くと収集つかなくなるので止めました……でも書きたいことは書いたので満足です。もしこいつ等と絡んでやってもいいよ、という御方がいらっしゃいましたら見掛けたなりなんなり声を掛けて頂ければ返します。ちゃっかりキャラ増やしてますが、コイツの詳細はその時という事で←】

>ALL

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
11ヶ月前 No.1488

塚守來安 @iwing ★zme9TvaGqL_kyb

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11ヶ月前 No.1489

名前人 @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★0FSwcKTZvX_kyb

【伏見稲荷大社→千本鳥居/相澤薙】
「えっと…あちょっと、ここでそんな大声でお姉ちゃんの名前は…!」
慌てて薙は彼女の口を止めようとする。薙にとっては不本意なことであるが、咎女は確かにあの時の戦いで世紀の大悪人として人々の心に刻み込まれているのだ。ここで口に出せば大変なことになる!

とそこで

「あっ…そしてもう一人のお方は、あじゃら…さんですか…
 私が知らないわけですね…お姉ちゃんに使えていたものですか…私は長らく分かれていましたからね。」
そう言ってやはりちょっと寂しく顔を上げた。何年たっても姉たちの顔は忘れがたきものなのだ。

…だが、薙は思う。一体何のようがあって自分を探していたのかと。まさか今さら故郷への召喚でもあるともおもえない。だがありえなくはないし…万が一また戦いでもあったならば…

「にしてもおふたりとも中が良さそうで何よりですね〜。…ひとまずわかりました。お話を聞いてみますよ。」
そう言って後に続いていく。場所は千本鳥居。鮮やかな鳥居の道。ここで何かが語られるのかどうか…

>唄女・あじゃら

【遅くなって申し訳ありません。】

11ヶ月前 No.1490

唄女&戯 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【伏見稲荷大社・千本鳥居/唄女&戯】


 「『失礼致しました、ウチの子、ちょっとお頭(おつむ)がアレなものですから』 ちょっとぉ! 聞こえてるー、ばっちり本人に聞こえちゃってますよあじゃらさぁん! 『聞こえるように言ってんのよ、おマヌケさん』」

 無数に連なる真っ赤な千本鳥居の方へ向かいながら、唄女が咎女の名前を出しかけたせいで慌てた様子の薙に、戯はさばさばした口調で謝罪する。ただ謝るだけならまだしも、それは明らかに唄女を愚か者呼ばわりしているので、当然唄女は両手をブンブン振り回して後頭部のもう一つの口に抗議する訳であるが、戯はといえば含み笑いすら感じさせる余裕の一言でそれを簡単にあしらった。慣れたものである、だが裏を返せばこの二人はこんな軽口を叩きながら生きてこられる程の信頼関係で結ばれているのだろう。

 やがて三人、もとい二人とお喋りな一つの口は、千本鳥居に辿り着いた。観光客はそれなりに居るが、それぞれが思い思いの時間を過ごしている為、薙や唄女達の方へ意識を向ける者はどうやらいないようだ。

「さぁて薙様―、ここでならゆぅっくりお話できますねぇ! わたしは年号が江戸から明治に変わって暫くした頃に京都で咎女様と出逢ったのですー、咎女様はこーんな出来損ないでぽんこつなわたしをわざわざ拾ってくださった大事な大事な恩人さんなのですよぉ。だから薙様よりもずっと、ここ数百年の咎女様の事はわたしの方がよく知っているんですぅ。 『こぉんの大馬鹿娘! 妹君になんて失礼なクチ訊いてとんじゃワレ!』 ひぃ! あじゃらさん、怒り過ぎて口調が男の人に戻っちゃってますよー!」

 寂しげな顔付きの薙に対して、唄女は間の抜けた満面の笑みでずけずけと、薙よりも咎女の事はよく分かっているという趣旨の発言をしていく。全くの無自覚であり、ただ無邪気に咎女を慕うが故の発言なのだが、悪意が無いだけに余計にその発言は薙を挑発しているように聞こえる。すぐに戯が声を荒げて唄女を怒鳴り付けるも、その意図は頭が少し可哀想な唄女にはどうしても伝わらない様子だ。

「『……コホン、これではお話が進まないので、此処はワタシから。薙様、単刀直入にお尋ねしますが、薙様はかの『千年京事変』の後、咎女様がどうなったかご存じですか?』」

 このまま唄女の相手をしていてもらちが明かないので、戯が咳払いを一つして場の空気を改めると、急に真面目な声になって薙に問い掛ける。その内容は、あの数年前の大戦の際、咎女は生死さえ不明で行方不明として処理され、世間では翡翠か漆蓮に殺められたか【影の京都】に取り残されたかのどちらかだろうと噂されているが、その真相を知っているかというものだった。


>>薙


【いえいえ、こちらこそです。ゆっくりのんびり、楽しく続けていきましょう!】

11ヶ月前 No.1491

塚守來安 @iwing ★zme9TvaGqL_kyb

「レナお義姉様から閨にお誘い頂ける何て、ソフィア感激ですの!!」

 昴ことソフィアが、レナータから直に彼女自身の寝室に呼び出され、嬉々とした様子で扉を開いて中へと入って行く。
 一面が白い大理石張りの床を一歩踏み入れると、この部屋の主が顔を上げてソフィアを出迎えたのだがその頬はどこか上気してほんのりと赤く染まっているようにみえる、というのも片手にはウォッカの入ったグラスがあり、テーブルの上には既にボトルを何本も開けられた状態であったからだ。
 椅子に座ったままソフィアを出迎えたレナータが手招きして、呆れ気味に表情を歪ませる彼女にこっちに来るように促したのも束の間、彼女から、寝酒はいけないと叱責を喰らうがどこ吹く風。椅子が一人分しか用意してなかったのだが、しかし背の高さが頭二つ分低いソフィアを自身の両太腿に座らせ酒を勧めるのであった。


...
......
.........


最初に切り出したのはやはりレナータの方からであった。

「やっぱり今でも後悔してる? 義姉様を日本へ行かせてしまったことに」
「当然ですわ。私は今でも、お義姉様はロシアに留まっておくべきだと思っていますのよ。そうすればみんなが幸せになれましたのに……」
「うん、それは私も思ってるよ。だけどね、あの子――來夢――を束縛をするのはちょっと違うんじゃないかって思うんだ。もちろん、ソフィーが同じ過ちを繰り返したくないって気持ちは分かっているんだけどね。
 前に來夢が言ってたこと覚えてる? ソフィーがあの子に何でも欲しい物を与えるって言った時に、確かこう言い返したよね。『世界中を見て回りたい』って。ねえ? 本当はエジプトには行かせてないんじゃないの?」

 神妙な面持ちでレナータは眼下のソフィアを見下ろした。しかし、何を思ったのかソフィアが楽しげに忍び笑いをし始める。

「まあ、レナお義姉様ったら。探りを入れるような真似は止してくださらない? 私がそんなに意地の悪い女に見られていたとしたら心外ですの。心配なさらなくても、來夢はエジプトへ行かせましたわ。でも、少し語弊があるようですから言い直しますけれど。彼女は自発的にロシアを発ったんですのよ? あの娘との約束を果たすために。私が予め呼び出しておいたんですの」
「…………だからあの子は私との約束を破っちまったのかい……。奔放過ぎるとこだけ義姉様に似て……全く。
 でも、なんでまた? ソフィー、あなたはあの娘を來夢に会わせるのを、今の今まで渋っていたじゃない」
「確かにそうでしたけれど、あの人間に会わせるよりかはまだマシだと思ったからですのよ」
「あの人間……ああ來安さんのことね。でも、彼女も歴とした義姉様の娘なんだよ? 向こう見ずで無鉄砲なところとか義姉様にそっくりだからね」
「あ〜もう〜!! レナお義姉様、からかわないで下さらないかしら?! あの女のことはこれ以上考えたくありませんの!!」
「あははは、これは珍しい。ソフィーがこんなに取り乱してるのを見るのは義姉様が一緒だった時以来だ」


 二人の笑い声が室内に木霊する……


――――


【移動中/ 塚守來安】


「來安様。あなたは極力他人の力を借りずに物事を処理なさろうとしているようですが、困ったことがあれば助力を求めても構わないのですよ。ボスはあなたの前では仰っていませんでしたが、実の姉との失われた時間を取り戻して欲しいという思いから、今回の協力を申し出ているのです」
「失われた時間を取り戻す……そんな。私には贅沢過ぎるものだわ。だって、私はただ、姉にこれまでのことを謝罪すればいいだけなんだもの」
「そうですか……なら、そのためのお手伝いをさせて頂けませんか」
「……手伝ってくれるのは嬉しいのだけれど。でも、私の個人的な問題であなたたちの迷惑を掛けるのは何だか申し訳がないわ」
「いいえ、そんなことはありません。――ここだけの話ですが――。ボスはご姉妹が離れ離れになった遠因を作ってしまったことに責任を感じているからこそ、あなたのためになりたいと望んでいるのです。どうか彼女の気持ちを汲んで頂けませんか。何卒、再考のほどよろしくお願い致します」
「レナータさんが悪いなんて……私はそうは思わないわ。姉がロシアに渡ったことは、結果としては良かったと思うの。陰陽師とアヤカシの戦いに巻き込まれずに済んだから、私は姉が日本を離れていて良かったと思う。……本当に悪いのは姉の存在に気が付けなかった私の方なんだから」
「そうですか――それならば仕方がありませんね。私はボスから命を受けてここにいます。來安様。あなたが無事に日本へ帰国できるように見届けるのが私の任務です。あなたが拒絶したとしても、私は私の仕事を務めさせて頂きますのでそのつもりで。それに――……」

 交喙を連れて行くことに抵抗のあった來安であったが、実姉の行き先や旅費のことなどを考慮に入れなかったために結局は彼女の助力を受けることに決めたようであった。二人は今、機内に乗り込んでいた。二人を乗せた飛行機が現在、エジプトへ向かうためカイロ国際空港を目指して飛行していた。

「そういえば、交喙さん。前にどこかで会ったことがあるかしら? 私、あなたの顔に少し見覚えがあるのよね」
「…………私もあなたの顔に見覚えがあると思っていましたが。どうも記憶が曖昧で。ハッキリしない答えで申し訳ありませんが、どうもここ最近記憶が混濁しておりまして、ハッキリしたことを思い出せないでいるのです」
「えっと、あの、ごめんなさい。きっと私の記憶違いだと思うの」

 落ち込んだ様子を見せる交喙。それを見て來安は慌てたような調子で自身の言葉を訂正するのであった。
 何とも噛み合わない二人であった。


【現在≪2016年≫から数年前の、『千年京事変』が終結した後の設定で進めさせてもらっています。これまでマイペースに進ませて頂いてますが、何か問題がありましたらサブ記事かアカウントの方にご連絡頂けると助かりますm(_ _)m】

11ヶ月前 No.1492

セレスティア @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★0FSwcKTZvX_G6E

【伏見稲荷大社・千本鳥居/相澤薙】
「…あなた方はなんて言うか…ホントに賑やかですねー。こういう厳かな場所では結構目立ってしまうかもしれないです。」
厳かな無数の鳥居が立ち並ぶ、京都の中でも特に美しいと言われるこの千本鳥居の中では、彼女らの賑やかさはかえって目立ってしまうかもしれない。そう思いながらも、どこか微笑ましく二人のやり取りをニコニコとしながら眺め始める。

「江戸から明治にかけての時代に…おねえちゃんと出会ったのですか…ならば私が知らないはずですね。その時は私は…ヨーロッパの辺りで必死で駆けずり回っていた辺りですから…私がやってきたのは第二次世界大戦が終わってから、進駐軍の輸送機の中に紛れ込んでようやくこの国に潜り込むことが出来たくらいですから…」
そう言っていろいろとまた、何百年もかけて世界を回ってきた思い出を思い返す。思わずトマトのはいった樽を転がしたりしたせいで、病気の人の家にやってきて血をかけてくるなんていう噂が立ってしまったことやら、とにかく様々な都市伝説を生み出してしまったことを…

と、先程まで比較的落ち着いていた、あじゃらが怒った様子を確認すると。
「あ、えっと、大丈夫ですよ。私は確かにヘルハウンドの末女ですが、もうその肩書にもあまり意味はありませんし…この世にたった一人の妹なので…」
そう言ってまたちょっと落ち込んだ顔を見せた。
とはいえ、目の前の二人が楽しげに答えてくれるために思ったよりも寂しさを感じることはないのであった。

「…千年京事変…あの戦いのことは今でも思い出します…
 ですが…おねえちゃん、咎女おねえちゃんのことですか。」
さみしげな顔を二人に見せながら、彼女はゆっくりと口を開いた。

「私は…翡翠…お姉ちゃんから聞いたの…直接…
 自分の手で咎女を消し去ったと…
 一番つらい言葉だった。」
その時の戦いを思い出すように、少し辛そうな顔で答えた。最愛の姉たちが消えてしまったことは、やはりそれでも寂しい物だということなのだろう。

>>唄女・あじゃら

【どうもありがとうございます!】

11ヶ月前 No.1493

@mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_t4t

【影の京都・とある山中/Lucretia=Hellhound】

 世界中を巻き込んだ騒乱、人とアヤカシの運命を新たなる渦の中へと否応なしに放り込んだ革命からほんの少し。
 閉じた影の京都は、現世との決別を選んだアヤカシとほんの少しの奇特な人間とが、思い思いの日常を描き出しつつあった。元来その殆どが影に生きてきたアヤカシの生活は、たとえ元居た世界と袂を別とうとも、日の下ならぬ月の下を堂々と歩ける身分になろうとも、以前と変わらず静かで平穏なものだった。アヤカシには数える事すら能わぬほどの種族があり、彼等には彼ら独自のルールがある。その尊重さえ徹底しておけば、この世界の何と平和であることか。
 あの革命の首魁として、また全世界のアヤカシに影の京都への移住を呼びかけた者として、翡翠ことルークリーシア=ヘルハウンドは、今はこの影の京都の統治者としての顔を持つ。しかしそれとて象徴的なものに過ぎず、女王ではあっても独裁者ではない。というかそんな肩書すら要らぬほど、彼女は放任主義を貫いている。
 ただ、この世界に生きる者が迷えば導き。どうしようもない諍いが起こればその間に入り。この玻璃のような世界が壊されぬよう、あの硝子玉のような世界が二度と脅威に晒されぬ様、見護る。

 それだけが、遺された……否、この世界に生きる自分の宿命。ならば全うしてやろう、この命尽き果てて、何時か彼岸で、懐かしい誰かと再会する迄は。

__________

 影の京都の沈まない月に、ゆらゆらと山道を登っていく一つの影が照らし出されている。もしその後姿を目にする者がいれば、十二単を着崩したような奇妙なシルエットに首を傾げたに違いない。それもその筈、影――自分の立場を完全に無視し、供の一人もつけないルークリーシアは、山道にはおよそ似つかわしくないロココ様式の深紅のドレスの上に、まるで喪服のように黒い着流しを羽織っていた。両腕には、季節を無視して咲き誇るニゲラの花束を抱えて。
 もしかしたら彼女の身を案じる何者かが隠形して付いて来ているという可能性もなくはないが、それらしい気配は辺りにはなく、ただ閑散と木々だけが広がっている。隠れているなら別に良いが、その何者かを見つけた瞬間に邪魔するなと告げるより先に実力行使に出てしまいそうなほど、其処は月明かりと、微かに揺れる木の葉が美しい、ただ静かで落ち着ける場所。
 だだっ広い霊園でもなく、豪奢な菩提寺でもなく、薄暗い墓場でもなく……こうした場所にこそ、故人が眠るには相応しい。眠っている者など、誰も居ないが。

 今日彼女が訪れるのは、嘗ての主とその恋人の墓……そのレプリカ。本物の墓を詣でることはもう二度と叶わなくなってしまったが、此処には京都にあった物なら何であろうと揃っている。元より死者に声は届かない。墓は生者のためのものだ……ならば場所も、その下に何が有るかも無いかも関係ない。
 そうして歩いていると、不意に辺りの景色が開ける。樹木が避ける様に、樹木に守られるように、ぽっかりと開いた小さな空地には、苔むしかけた丸石が二つ。そしてその隣に、この景色にはそぐわない十字架が‘一つ’。
「……久し振りね」
 ぽつり、漏れた声は虚空に消える。答えるものなどありはしない……それでも、ルークリーシアは微笑んだ。そしてそっと、手にした花束を三つの墓の前に置く。僅かに草と花を包んだフィルムとが擦れる音がして、それっきり、辺りには再び沈黙が戻った。その静寂に身を委ねる様に、彼女もまた瞳を閉じる。

 確かに此処は、ルークリーシアにとって大切な、今となっては彼女の為だけの空間だった。此処に名が刻まれた者によって全てが始まって、此処に名が刻まれた者によって全てが終わり、此処に名が刻まれた者によってこの世界が生まれた。革命と終焉、そして創世を一つの輪の様に繋いだ彼等はもう居ない。しかしだからと言って、今日彼女は此処へ昔を懐かしみに来たのでも、空っぽの墓に向かって現状報告をしに来たわけでもない。

 それは、譬えるのなら訣別の儀式。要した時間は、ほんの刹那。
 緑柱石の瞳が空に浮かぶ月を捕える。立ち上がり様、ルークリーシアは羽織っていた着流しを脱ぎ捨てた。わざわざ地に落としたそれを、それでも慈しむように拾い上げ、目の前の十字架に掛ける。
 磔にされたような、両手を広げて立ち尽くしているような、それでいて凛と其処に在るような。
 その形に満足したのか、彼女はもう一度微笑んだ。
「やっぱり、貴方の方が似合うわ」
 囁くように告げて、踵を返す。あの革命の夜、最期の同志に形見として託された筈の着物を置き去りに、ルークリーシアは歩き出そうとしていた。

「左様なら。あたしが逝くまで、せいぜいゆっくりお休みなさいな。この永遠の都は、間違いなく貴方達の墓標……あたしが死ぬまでくらいなら、守ってあげるわ」
 振り返る事などない。過去の柵は、思い出に消えた。後はただ、振り向かず未来を描くだけ。

>宛先無し

【素敵な絡みをぶった切って乱文投げて済みません。スレ主が書きたいこと(描き切れているかどうかは別として)書いただけなので読み飛ばしてください。取り敢えず、以上を持ちまして翡翠ことルークリーシアは退場とさせて頂きます。此処まで本当に有難うございました!】

10ヶ月前 No.1494

唄女&戯 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【伏見稲荷大社・千本鳥居/唄女&戯】


「賑やか、ですかぁ? わたしぃ、生まれは悪いですけど今は大人な淑女を目指してるんですけどぉ。 『どの口がそんなバカげた事言うんだか』 この口ですー、というかあじゃらさんこそ口だけじゃないですかぁ。 『それは文字通りアタシが口の妖って意味で受け取っていいワケ? それともアタシが口先だけっていうアンタなりの皮肉? もしそうなら、――流石にちょっと許せないんだけど、どの口がそんな事言うんじゃコラ! この口か!?』 みゃあっ! 痛いー、いひゃいでふー! あじゃらさんごめんなさいですー! 薙様ぁ、目立たないようにちょっと静かにしますからあじゃらさんの暴走を止めて欲しいですぅ!」

 本来は厳かな空気に満たされている伏見稲荷の千本鳥居の下で、繰り広げられるはまるで漫才のような応酬。薙が心配するのも無理がない程賑やかに、唄女と戯はぴったりと息が合った掛け合いながら、まるで痴話喧嘩のようなやり取りを勝手に続けていく。
 ふざけたような発言をしつつ、自分の俗にアヒル口を呼ばれるような唇をひょいと指差してみせる唄女に対して、戯は遂に強硬手段に出た。急に唄女のボブカットな髪の一部が瞬時に伸びると、それが二匹の真っ白な蛇の形を模して。蛇達は左右から傷付かない程度に優しく唄女の頬に噛み付くと、ぐにぐにと引っ張って伸ばしたり、逆にぐっと押しておかしな顔にしたりを繰り返す。流石にこの奇妙な攻撃には唄女も涙目になると、必死に戯に謝りながら薙にまで助けを求めて。

「『ああもう、またやってしまった! 申し訳御座いません薙様、ついおふざけが過ぎました……その通りです、旧き時代が終わり、新しい時代が始まるちょうどその頃、ワタシ達は咎女様と初めてお会いしました。そうでしたか、薙様は大戦の混乱に乗じてこの国に……色々とお辛い事もあったでしょう、お察し致します』 …………あじゃらさぁん、その
優しさをたまにはちょっとだけわたしにも向けて下さいよぅ」

 ついつい大騒ぎをしてしまう事に自ら絶望しつつ、戯は薙に謝ってみせる。

 そして思い出すのは、自身とその宿主とも言える唄女――その真名は、絵空――が、初めて“あの御方”と出会った、あの夜。色とりどりの雪洞(ぼんぼり)が華やかな色町の片隅で、その薄暗い薄汚い路地裏で。長身の身体を無理やり縮めるように蹲って泣いている絵空と、彼女を必死で慰め元気づける戯。
何の前触れもなくふっと影が差し、今まで感じた事も無い程邪(よこしま)でありながら、高く香り立つような妖気を纏って現れたどす黒い気配。まるで腐り掛けの果実のような、その甘い甘い毒気。

『何故泣くの? 泣いて鳴くのは弱い狗の愚行だわ、ならば強く成ればいい、何者をも踏み越えて立ち上がれる程強く在ればいいのよ。願うならば望むならば、宜しければこのアタシが力を貸してあげても良くってよ……代償はその涙、確かに貰い受け、アタシがアナタ達を導いてア・ゲ・ル』

 涙目で顔を上げた絵空が聞く“それ”が史上最凶の悪魔の囁きであったと、戯が悟ったのは迂闊にももう少し後の話で。

 過去に思いを馳せながらも、戯は自分と同じように何やら思い出している薙に対して穏やかに、静かで優しい響きを帯びた声で語り掛ける。トマトの樽云々は流石に読み取れないものの、進駐軍の輸送機と聞けば彼女の苦労が並大抵のものではなかっただろう事は容易に察しがつく。
 普段より何割増しか優しげな戯に対して、引っ張られて赤くなってしまった左右の頬を両手で擦りながら、未だ涙目の唄女は小声でぶつぶつ言いつつも、薙と戯の会話を邪魔するつもりはないようだ。

「『いえ、薙様はご存じないかもしれませんけれど、ヘルハウンド一族の肩書は今でも伊達ではありません。諸外国では今も変わらず、ヘルハウンドと言えば欧州を支配する絶対的な権力者なのです。確かにかの『千年京事変』で翡翠様と咎女様は陰陽師に敗れはしましたが、それでヘルハウンドの名が失墜した訳ではないのです。それどころか、日本国でアヤカシに仇なしていた陰陽省を壊滅せた功績により、一族はますます勢力を広げている訳で。『千年京事変』から年月は経ちましたが、あの戦争によりヘルハウンド三姉妹の名はますます畏怖されるものとなりました。……確かにアヤカシ達の中には、薙様を人間に加担する裏切り者と呼ぶ不届きな輩が居るのも事実です。しかし反対に、人間とアヤカシの架け橋として新しい時代の為に尽力している薙様を称える者が多いのもまた事実。ワタシは後者なのですが……』 ……正直言わせていただきますとわたしは前者ですわー、人間にもアヤカシにも興味は無いけれど、わたしは咎女様の考えが絶対だと思いますのぉ。ですからぁ、咎女様の美しく輝ける素晴らしい計画を打ち砕いた陰陽師と裏切り者のアヤカシの勢力に薙様が協力していたという事実にー……わたしぃ、ふかーい深い悲しみと絶望を感じる訳なのですよぉ。 『…………』」

 謙遜、ではないようだ。ヘルハウンドの肩書にもう意味はない、と自嘲気味に述べる薙に対して、唄女は緩く首を横に振り、そして唄女の代わりに戯が世界各国の妖の認識について語っていく。人間とアヤカシの架け橋として、その象徴たるこの日本で奔走してきた薙は、恐らく世界の現状を知らないだろう。ヘルハウンドの名が未だに世界中で畏怖されるものだという事を、そしてその三姉妹が今でも様々な意味で語り継がれている事も。
 話の後半からは、先程まで滑らかに話していた戯も、流石に何処か遠慮がちになる。翡翠と咎女は、方法は間違っていたとしても妖の為に戦って敗れた。薙は現在、勝者として人類とアヤカシを結ぶ未来の希望そのものになった訳だが、一時はアヤカシと敵対する陰陽師側に味方していた訳で。薙を称える者がいるのも、よく思わない者がいるのも、また事実。口を濁した戯だったが、逆に唄女は己の本心を隠す事もなく滔々と述べていく。其処には悪意も敵意もない、ただあるのは咎女への狂信だけだ。
 こんな時に限って戯は、何も言えない。虐げられてきた唄女の気持ちが痛い程分かるからこそ、その間違いを正せずにいた。

『…千年京事変…あの戦いのことは今でも思い出します…
 ですが…おねえちゃん、咎女おねえちゃんのことですか。』
『私は…翡翠…お姉ちゃんから聞いたの…直接…
 自分の手で咎女を消し去ったと…
 一番つらい言葉だった。』

「――――本当に? 本当に本当に? 本当にそうかしら、ねえセレ?」

 ふいに、唄女がにたぁりと薄気味悪い微笑を浮かべた。それと同時に、その口調もほんの一瞬だけ変化する。その笑い方、その話し方。声は確かに唄女のものなのに、その顔も言葉も、まるで別人のようだ。そして薙なら知っている筈である、その“別人”が、一体“誰”なのか。その醜悪でありながら優雅な微笑み方と、高貴だが尊大で傲慢な物言いが、“誰”にそっくりなのか。

「……薙様ぁ、咎女様はほんとーに消えてしまわれたのでしょうかねぇ? あの咎女様ですよぉ? 不敵で無敵で血も涙も無いあの双頭の女王様がぁ、そーんな簡単にこの世から消えてなくなるものなんでしょうかぁ?」

 すぐに元に戻った唄女が、左手を薙の方へ差し出してみせる。いつの間にか其処には、真っ赤な硝子玉のようなものが一つ、日の光りを受けて異様に強くギラギラと輝いている。
 見覚えが無いだろうか、かの『千年京事変』の際、いやそれよりも前の『京都駅ゾンビ出現事件』の時に、“誰か”が持ち出したものだ。“電脳世界に渦巻く沢山の人間達の蔑み・嘲り・僻み・妬み・痛み・凶暴性・暴力・鬱憤・怒り・悲しみ・憎しみなどの全ての悪意が渦巻き、集まり、合わさり、分裂し、影が更に濃く深く影となって生まれた悪意そのものを喰う新種のアヤカシ”、名を『電脳蟲』というそのアヤカシを作り出したのは、果たして“誰”だったか。

 春だというのに、いやに冷たく生臭い風が吹き抜けて、不穏な空気が流れる。


>>薙


【薙本体様、二か月程もレスをお待たせしてしまい、本当に本当に申し訳御座いませんでした……! 今後はもう少し早くお返事出来るよう頑張ります。もし、もしお嫌でなければ、ゆっくりとですが引き続きお相手願います!】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
9ヶ月前 No.1495

セレスティア @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★0FSwcKTZvX_P0a

【伏見稲荷大社・千本鳥居/相澤薙】
「っと、おふたりとも喧嘩はそのへんでやめときましょう…
 まぁ、この辺はまだ人がいないみたいですし、問題ないかもですけど…
 怪我してしまいます。」
と言って辺りを見回した。現在は境内に人が集中する時間帯。千本鳥居には人が来る気配は一応無いようだ。
…もはや芸人コンビか夫婦漫才か…そんなふうに思えるほどに息がぴったりあったボケと突っ込みである。

「まぁ、それは確かに…どこもかしこもピリピリした雰囲気でしたからねー。なんたって戦争終結直後ですし…
 見知らぬ人間に対しては色々と警戒されたりしました。
 ……まぁ、見た目が日本人っぽかったので幸いこうしてれば普通に馴染めましたけど。」
懐かしいなーとつぶやきながらウンウンと頷く。色々大変な思い出も色々あったが、
それで人とのつながりを深めていったのもまた事実だったのだろう。彼女はその時間が無駄ではなかったと今でも考えている。

「お姉ちゃんとはかなり長い付き合いなんですねー……その熱の入り方でわかる…
 その時代の話も聞いてみたいもんですけど…メインはそこじゃない感じですね。」
彼女の涙目になりながらの言葉を聞いてのんきな表情で答える。
楽しい思い出が会ったのはどちらも一緒……なのかもと考える。

「私を慕う人が居るのも…同時に恨んでいる人がいるのも承知しています。
 …私が望んだのはともに暮らす世界だった。それを成してくれると信じて戦っていたから
 私はアヤカシの側についた。でもお姉ちゃんが望んだのは違う場所だった…
 …それだけの話。だったと思う…」
そう言って二人に改めて顔を向ける。あの時、ルークリーシアに向けて答えた誓いは必ず成し遂げてみせると思った。
きっと今を不満に思うアヤカシも、自分を恨むものも居る。自分は英雄扱いされることもあるが、同時に咎人でもあるということだ。

「あなたが咎女お姉ちゃんを慕っていたなら、そのような気持ちになることも理解できます。
 否定しようのない事実ですから…私は咎女お姉ちゃんと袂を分かち…翡翠お姉ちゃんとも決別した…
 だから私は、今の世界をより良くすることに長い時を…」
自分なりの覚悟を二人に向けて述べてみた。
随分と長い話に思えるが、それでも…と思って続けていた所で…

ふと
「…?」
突然唄女の口調が変わった……ような気がした。その声は尊大で、それでも美しくて……まるで……

「は…ぁ…ん?え?」
次に彼女が紡いだ言葉を聞いて、セレスティアはまたしても混乱してしまった。
どういうことなのか、頭の整理が追いつかない。
…だが、目の前に差し出された赤いガラス球のような物体を見て、冷静になる。

「電脳蟲…たしかこれは……咎女お姉ちゃんが持っていた……それが…」
まだこの世界に残っているなんて、と考えた。

「あの時…アヤカシの世界と人の世界を分かつ時に消えてしまったのかと……思ってたけど…」
だがこの光は、それ以上に、あの時以上に何かを感じる。

「…ここに何がある…と?」
ふと、電脳蟲に手を伸ばす。触れた時に何か…有るのだろうか?

>>唄女・あじゃら
【圧倒的ボリュームです!いえいえ、こちらも楽しみに待っておりましたので、これからもやっていきますよ!】

9ヶ月前 No.1496

唄女&戯→咎女 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【伏見稲荷大社・千本鳥居→電脳蟲の巣/唄女&戯→咎女】


「『……申し訳御座いません、薙様。どうにもこの子の相手をしているとこの様でして……お話を戻しましょう。薙様がこの国にいらした頃も大戦終結直後であり、この国はさぞや混乱していた事でしょう。そういう意味では現在も当時と同じだと思いますが、――いいえ、むしろ今の混乱は当時よりも更に根深いものかもしれません。人間とアヤカシ、いいえ、翡翠様と芦屋漆蓮がこの世の全ての生命に仕掛けた大戦争は、人の心にも、アヤカシの心にも、大きな爪痕を残しました。』 ……ひととあやかしが共存するなんてぇ、言葉にすればかーんたんですけれどぉ……今ぁ、この世界は表面だけがきれいな絵みたいなものだぁって、薙様は思いませんかー?」

 下らぬ痴話喧嘩を止めた唄女と戯。戯は声を潜めて薙に謝った後、また口調を改めて薙に話し始める。時間帯故か、珍しく千本鳥居の周りには薙と唄女以外の人影は見当たらない。それでも戯が慎重に、あえて声を小さくして語られるのは、現在の世界の状態について。
 人間と人間が憎み合い、殺め合った過去の戦争。それ以上に、種族の違うもの同士での確執は埋め難いのは当然の事だろう。『千年京事変』での一件以来、人とアヤカシは互いの違いを理解し合い、何とか上手く共存出来ているように見える。しかし水面に波が無くとも、その下では激しく悍ましい渦が逆巻いている事もある。差別、憎悪、反感、相違、それらはそう容易く消す事は出来ない。
 何処か悲痛な空気を感じさせる戯の声色と違い、急に沈んで何処か暗い病みを孕んだ唄女は、口元はへらへら笑っているのに目が笑っていない。細めた目の奥に怪しい輝きを宿しながら、唄女は薙に向けてこてんと首を傾げてみせる。

「わたしはですねぇ、薙様を責めるなんて大層な事をするつもりは一切無いのですよー、わたしみたいなごみでくずな下等生物がヘルハウンド様々に意見するなんて恐れおおくってぇ。…………でもでもですねー、アヤカシの中にも人間の中にも、二つの種族が共に暮らすなんて夢物語は望んでなんかいなかった者だっていたんですよぉ。だからこそ翡翠様と共に常夜の王国――元【影の京都】――を選んだアヤカシだってたくさんいた訳ですしぃ。未来はいくつも枝分かれしているって聞きましたー、それなら薙様の理想が壊した事で訪れなかった“希望や未来”だってあった筈ですー。“今の世界をより良くすること”、それは確かに大切なんでしょうけれどぉ……選ばれず存在すら許されなかった“未来”、たまーにでいいから思い出してあげて欲しいですぅ。 『…………唄女、その位にしておきなさい』」

 真っ直ぐにこちらを見る薙に、長身の唄女も視線を合わせる為に屈むような姿勢のまま滔々と語り始めた。薙と唄女の関係は、簡単に言えば上司と部下のようなものであろう。何せ薙は欧州全土どころか今や世界中に勢力を拡大している大妖、ヘルハウンド一族の直系。対して唄女は、元は人間であり、結局は何処の馬の骨とも知れぬと切り捨てられてもおかしくない低級なアヤカシといえる。しかし唄女はその性格上、物怖じせず己の意見を述べていく。咎女が唄女を気に入ったのは、愚直故のこうした“怖いもの知らずさ”と“真面目さ”だったのかもしれない。
 それを知っているからこそ、唄女のその真っ直ぐさが過度の長所でもあり極度の短所にもなりえる諸刃の剣とわかっているからこそ、戯はあえて口を挟まずにいたのだった。

「……ごめんなさい薙様ぁ、わたしみたいな者があなた様に意見してしまいましたー……お怒りになられたらー、わたくしなんかの首でよろしければぁ、切って落として四条河原に晒してくださいませぇ! ……それはそうとぉ……電脳蟲を覚えていてくださって良かったですー! この子たちは自分たちを生み出した“主様”が滅びない限りはぁ、消えたりしない強い子たちなんですよぉ! つぅまぁりぃ……!」

 語ってしまった事の無礼に、全て言ってしまった後で気付いた唄女は、今更ながらバッと両手で自分の口を押える。そしてすっかりしゅんとしてしまい、ぺこぺこと何度も頭を下げながら涙目で薙に謝る。
 しかし、薙の視線が真っ赤な硝子玉に似た“それ”に向けられた事に気付くと顔を上げ、ふいに満面に笑みを浮かべると興奮した様子で、早口でまくし立てた。

 そして、薙の小さく愛らしい手が、赤い硝子玉に触れた、その刹那。


『――――アタシは消え去ってなどいない、そ・う・い・うコ・ト』


 唐突に、何の前触れもなく、薙の見る世界が闇に閉ざされた。まだ夜が来るには早過ぎるし、此処は京都の伏見稲荷であった筈だ。しかし今、薙が見るであろう世界に広がるのは、何処までも続く真っ黒な空間だけだ。見上げれば空は燃えるような紅色であり。更によく見ればそれはただ紅いだけでなく、無数の何処の言葉とも知れぬ奇妙な文字が無限に流れ続けて、天を紅に染め上げているのだ。

 真っ黒な闇の地、その中に、ぽつんと輝く何かが聳えている。それはまるで塔のように空へと伸びる、銀色をした荘厳な玉座であった。その背もたれは天をも貫く銀の刃のように、何処までも何処までも高みを目指していた。
 そしてその現実にが在り得ぬ奇妙な玉座にちょこんと、しかし足を汲んで尊大な態度で座しているのは、鈍い金色をした豪奢なゴシック・アンド・ロリータなドレスを身に纏い、この世のあらゆる存在を見下しながら君臨する常闇の女王。

「アタシがこの世で二番目に愛する、我が妹セレスティア、――さあ、オカエリと言って、このアタシを抱き締める事を許可するわ」

 双頭の魔犬は今、不吉と不幸を二つの口に噛み締め引連れて、世界に帰還した。
 それは悲劇で、まるで喜劇だ。

 にたぁりと、その唇が三日月のごとき弧を描いた。


>>薙


【二か月お待たせした後は、三か月もお待たせしてしまいました。本当にお詫びのしようもない程ですけれど、幾ら謝罪の言葉を並べても非礼は償えないかもしれません……それでも謝らせて下さい、誠に申し訳御座いませんでした。 そして急展開を持ってきましたが、宜しければ引き続きお相手をお願い致します。 最後に、こんな私を待っていてくださって、本当に本当にどうも有り難う御座います……!! そして來安本体様、あなたがどのお子様でお相手下さるかわかりませんが、もし宜しければ是非いらしてくださいませ。勝手に場所を移動してしまいましたが、電脳蟲の妖力による強制転移に巻き込まれてしまった、などにしていただけますと助かります!】

6ヶ月前 No.1497

塚守來安 @iwing ★zme9TvaGqL_g5r

【京都府警察学校→伏見稲荷大社・千本鳥居→電脳蟲の巣/ 安倍主税】


――先生、今日もお疲れさまでした。

 仕事を全うし、精悍な体付きの署員に見送られながら警察学校を後にした。此処では、周囲の人間から尊敬の念を以て"先生"と呼ばれているらしい。
 アヤカシによる不可能犯罪が多発しており、捜査の難航のために頭を悩ませている全国の警察が、直接事件に関与させないかたちで、陰陽師の助力を得ることで事件の解決を図っていた。特に京都府下においてはアヤカシによる犯罪が集中しており、京都府警では陰陽師個人の権限を強化させた上で捜査に協力をさせているようだ。
 その一環として京都府警察学校では、アヤカシに対する知識を署内に広めるための講習会を開くにあたり、その講師として主税は招かれていたのだった。それも一度や二度のことではない。警察の捜査に度々参加していたりもする。

 警察の人間から大事にされていることを肌に感じ、自身の承認欲求が満たされてやや上機嫌気味の主税は今日も修行僧のようないで立ちをしている。
 主税は安倍氏直系の一人で、本来なら陰陽省上層部に一枚噛んでいたとしてもおかしくはなかったが、長らく本家とは疎遠だった。そのためか芦屋漆蓮と翡翠を首魁とする彼女らの粛清の手から、運よく逃れることができた。ここ十年弱の間はずっと僧侶として身を隠し続けてきた。だが、千年京事変のすぐ後に本家に復帰している。それでも今の自分のスタイルを崩そうとは思はなかったようだが。

 彼の懐中には、チェーンに繋がれた一本の鍵が首からぶら下がった状態で所持されてある。それは漆蓮から來安へと授けられたものであり、一度巖児の手に渡ってから巡りめっぐって彼の手元に落ち着いたものだっだ。その鍵には強力な呪いが付与されており、彼以外の人間やアヤカシが触れようものなら、その者の身体に重力が少しずつかかるよう術式が組み込んであり、簡単には持ち運べないように用心してある。

 錫杖を付きながら歩く主税を、観光客が気味悪がってか避けて通り過ぎようとする。京都ではここ最近、外国からの来客が増えており、彼のことを見慣れない外国人が増えたせいか、その界隈では京都の珍名物になっていたりする。しかし、そんなことは露も知らない主税は特に急ぐ様子もなく、独立不羈な態度を崩そうともせずに歩き続けていた。
 警察学校で用事を済ませた後、今日はとある男と伏見稲荷大社で落ち合う予定がある。

――――

「巖児の兄貴も物好きだねえ。で、こんな人気のないところに呼び出しておいて当の本人は何処にいるのやら」

 厳かな空気に満たされた伏見稲荷大社・千本鳥居。主税はここで芦屋巖児と会う約束をしていた。が、呼び出した本人の姿が見当たらない。奥へと進んでみる。少し先へ進んでみると人の気配がしたので近づいてみると、どうも期待していた人物ではないようだった。
 声が聞こえる。ただそれだけなら警戒することはなかっただろうが、会話の中にはっきりと"咎女"の名を耳にして、どうもキナ臭いものを感じる主税であった。そして、第六感がそうさせるのか二人(三人?)に気付かれないように、足音を殺しながら彼女たちの姿が見える位置まで歩を進める。この目で確かめた。どうやら一人はヘルハウンド三姉妹の末女、相沢薙のようだったが、もう一人の方は初顔だった。その女性が薙に差し出すようにして見せたものを、主税は見逃さなかった。

 音もせずに世界が暗転した。

 紅の空。真っ黒の地。目線の先に聳え立つは銀色の王座。そして、そこに座すのは――

 この世界の君主とでも言うべき不遜さで下界を見下ろす咎女の目線の先には、薙と唄女があり、そしてその背後の、少し離れたところに主税はいた。何らかの転移術に巻き込まれたようだった。

「状況が上手く呑み込めないのだが、ここは死後の世界か何かかな? 確か咎女は死んだんじゃなかったかな」

 あまりの急展開に動揺を隠せない。これが死に別れた恋人だったのなら感動の再開でハッピーエンドまで縺れ込むができたであろうが、それが陰陽師にとっての宿敵とあれば話はべつだ。咎女が齎すものは破壊と破滅。嘗て人類を滅ぼさんとして、この世ならざる邪神を召喚せしめようとしたことがある。彼女ならどんなことでもやりかねない。主税はそれを危惧していた。

 こちらにはまだ気付いていないのかもしれないが、薙と、とりわけその傍にいる女性のことを主税は考えていた。

「相沢氏を此処へ呼び込むためにあの女が遣わされたのだろうな。
 ……咎女の手の掛かったアヤカシがまだ日本にいたとはな」

 咎女一派は『千年京事変』後、主を失い組織が解体したものと思っていた。ここ二年間は残党がテロを引き起こすということもなく、犬神の支配下に置かれていない無頼のアヤカシの犯罪があるばかりで、そんな話は主税の耳にも届いていなかった。だが、目の前には咎女の手下か、少なくとも彼女の息の掛かった者がいることは事実だ。薙に注意を促すこともできただろうが、今は様子を見てみることに決めた。


>薙、唄女&戯、咎女

【ハンドルネームは塚守來安で統一することにしてますが、今動かしてるのは安倍主税という男ですのでお間違いなくm(_ _)m】

6ヶ月前 No.1498

セレスティア本体 @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★sqMH8Q2zCH_JpT

【伏見稲荷大社・千本鳥居→電脳蟲の巣/相澤薙】
「今の状況…たしかにそのとおりかもしれません…千年以上の禍根…そう簡単に失われるものでもないことは…わかっているつもり…ですけどね…そういえば……そんなニュースも何度か見たことがありますし…」
度々放映されるニュースの中にも、アヤカシと人間の共存を思わせる華やかな内容も存在すれば
「アヤカシ排斥すべし」を掲げる団体も度々、国会前で悪質なデモ活動を行っていると聞く。
表向きはアヤカシと人間、共に暮らしているように見えるが、内側では未だに反目しあう者たちがばかりなのだろうと感じる。

「…私が壊した未来ですか…確かに、私は多くのアヤカシの理想を阻んできたでしょう…お姉ちゃんの理想も…
 だからこそ私は…」
だからこそ、自分の理想を必ず実現させる。
彼女はそんな覚悟を固めているつもりだった。難しいと思いながらもそれを全うしたいと考えている。

「…別にそんな無礼とか私気にしてない……」
と、赤いガラス球に触った瞬間に、自分の見ていた世界は黒に染まった。

「ん…ん!?これは…!?」
空は赤く染まり、周囲の世界は黒に染まっている。そんな地上ではまずありえない世界…だが、そのおぞましくも穏やかな世界に、彼女はどこか懐かしい気配を感じ始めていた。
巻き込まれ、近くにいる陰陽師の気配などは当然感じられず、見ることもない。

…どこまでも続くかと思えた闇の世界。その一角に厳かに立たず舞う人物…それは
「…咎女…お姉ちゃん?」
どうしてなのか、なんで存在しているのか。そんなことを考える前に体が動いた。

いまは
どうでもいい


「……!」
思わず咎女に抱きついた。
何故だろうか。
あんなにひどいことを言われたのに。
咎女お姉ちゃんの夢も理想も、何もかも潰してしまったのに。
こんな姉不孝者の自分が、
どうして目を合わせられようか。

……いまは、そんなこと
かんがえたくない

二度と会えないと思っていた
姉に会えたこと
その一点だけが

「お……かえ…り……」
彼女の冷静な判断力の全てを塗りつぶしていた。

>唄女&戯さん、咎女さん、主税さん

【どうも、久しぶりに書き込ませていただきます!
 復帰は嬉しい限りでございます。
 また出来る限り、こちらも話を続けてまいりますので
 お二人様、どうぞ宜しくお願いします!】

6ヶ月前 No.1499

不穏を齎す一本の電話 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【京都駅・大階段/正体不明の老女】


 ――――新たなる波乱の幕開けは、一本の電話から始まった。

 数年振りに京都の地へ舞い戻った、元陰陽師の紅子と特異な存在たる緑利。押し寄せる観光客に交じって、笑い合い、肩を組み、今や当然のように共に歩を進めるヒトとアヤカシという二つの種族。そんな二年前には考えられなかったろう雑踏の様子を見詰める紅子のスマートフォンが、ふいに鳴り始める。
 その電子音がまさか新たなる不穏と不吉を彼女達に齎そうとは、いくら幾つもの修羅場を潜り抜けてきた二人であろうと気付けなかっただろう。胸騒ぎに似た悪い予感は、あったかもしれないが。

 紅子が着信を受けたとしたら、その耳に聞こえてくるのは明らかにかなり高齢の、妙によく通る低く張りのある女性の声だ。

「安倍紅子さん、だね。電話を切らずにそのまま聞いておくれ、私立探偵であるおまえさんに依頼をしたいんだよ、最後まで聞いてくれるね?」

 鈴木ではなく、安倍と呼んだ。何処か試すような声色からして、紅子が捨てた筈の名をあえて呼んでいるのだろう。そしてそのまま有無を言わさぬ口調と畳み掛けるような言葉で続けていく様子からして、電話の主がこういった交渉事にかなり手慣れている事は、年齢以上に様々な経験をしてきた紅子になら容易に想像出来ただろう。

「探し物があるんだ、何を犠牲にしようとも絶対に見付けなければならないのに」

 季節は夏へと移り変わり、盆地である京都は焼かれるような暑さだというのに。
 騒々しいまでの蝉の鳴き声に混じって、凍えるような妙に冷たい風がさあっと、紅子と緑利の間を吹き抜けた。



「協力しておくれ、わたしだけでは見付けられないんだよ、――――芦屋漆蓮の心臓が」



>>紅子&緑利


【スレ主様、こちらでは大変お久し振り、ご無沙汰です。先日の三周年記念、とても楽しく、そして嬉しく拝読しました。このかけがえのない千年京の一員として、私が今も此処に在れること、心から幸せに思っています。
さて、サブ記事の追伸を拝見し、ふと、あと500レスを皆様と共に使いきれそうな物語を思い付いてしまいました……私の我儘ですけれど。勝手ながら唐突なる怒涛の新展開を突っ込んでみます、もしご迷惑でなければ是非、暫くの間お付き合いくださいませ……たぶん、500レスくらい?←
更に言うならば、是非是非他の参加者様方にも戻ってきていただきたいなぁと、我儘ついでに言わせていただきます。また此処で、皆様と熱く素晴らしい物語を紡いでみたいです。
そしてそして、セレちゃん本体様、來安本体様、お二方へのレスも近々必ずお返ししますので、申し訳御座いませんがもう少々お待ちいただけますと大変有り難いです。ごめんなさい……!】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
6ヶ月前 No.1500

紅子 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_cVl

【京都駅/鈴木紅子】

 それは、余りにも在り来たりな電子音で。
 雑踏の只中、ポケットの中の振動がなければ自身のスマートフォンに着信を報せるものであったなどとは夢にも思わなかっただろう。勿論、初期設定のまま放置しているのは紅子本人に他ならないので、とうに聞き慣れたものであるはずだった。それでも、その音は合わない。余りにも現実離れしている。
 一瞬吹き抜けた強い風から、周囲に漂った重苦しい空気から。
 時代が時代であるが故、また立場が立場であるが故アヤカシから文明の利器を使った連絡を受けることも少なくはない紅子だったが、電話を受けることに訳の分からない躊躇があった。
 今思えばそれは、幾度も修羅場を潜り抜けた彼女が持ち得た第六感……波乱の幕開けの予感と言う名の確信だったのだろうけれど。
 スローモーション映像のように、やけに鈍い動きで紅子はスマートフォンを耳に当てる。そこから聞こえてくる妙齢の女性の声ははっきりと聞き取れたが、意味が分からなかった。いきなり紅子が捨てた筈の名を呼ばれることも、こんな裏交渉めいた話をされる理由も。
 スピーカー、そんな声が明らかに電話口以外から聞こえた。目線だけをそちらにやると、緑利がいる。周囲に彼女以外の人影がないことを確認し、紅子は微かに震える指でスピーカーボタンを押した。刹那、周囲の空間を電話相手の声が震わせる。こうも容易く、今を生きる者達の耳に届いてはならぬ名前と共に。


『協力しておくれ、わたしだけでは見付けられないんだよ、――――芦屋漆蓮の心臓が』


「は、ぁ?」
 語尾が上がってこそいるものの、それは疑問でも怒りでも何でもない。ただ肺の中に留まって動けなかった空気を無理矢理押し出した音に過ぎなかった。事実紅子の中にそうした感情がないと言えば嘘になるが、それが行動に追い付かない程彼女は混乱していた。全く以て頭の中が整理できない。それほどまでに老女の言葉は紅子にとって狂気的な凶器なのである。
 しかし、何もない一点を見詰めて動けなくなってしまった紅子に対し、先に痺れを切らしたのは電話相手などではなくその横で話を――最後の一言のみとは言え――聞いていた緑利の方だった。小さく舌打ちをした彼女は、スマートフォンを手にして固まっている紅子の右手の袖を力任せに引っ張った。
「落ち着いてよ母さん。彼女の中で動いていた心臓は元々鬼のモノなんだよ。本人も言っていただろう……嗚呼母さんその場に居なかったかもしれないけど。兎に角、移植されたものが機能していた以上彼女自身の心臓は彼女の臓器としてはお役御免だった訳だ。他にどんな利用価値があったのか知らないけど、それでもソレは保存されていたんだろうね……ホルマリン漬けの瓶でも探せと言うご依頼かな。それとも何処の天使の心臓だい?」
 緑利の言葉は紅子に言い聞かせて何とか現実を呑み込ませようとしているようであり、それでいてはっきりと電話口に聞こえるようにして、相手に確認を取るようでもあった。
「エンジェルハートってお前世代……いやなんでも無い。あー……確かにウチは‘鈴木’紅子で探偵事務所の所長やらしてもらとりますけど、なんやけったいな依頼やな。けったいやない依頼のが少ないねんけど。取り敢えず詳しいお話聞かせて貰えます? ついでに名乗って頂けると此方としてもやりやすいですわ、おばーさん」
 変な方向に掛かった負荷と緑利の言葉に取り敢えず我に返った紅子は、胸の中で暴れ回る自身の心臓を押さえつけ、平静を装いながら続きを促すのだった。


【面白そうなお話には安直に乗っかるのがスレ主時代からの私のやり方です。と言う訳で改めてよろしくお願い致します。】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
6ヶ月前 No.1501

咎女 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【電脳蟲の巣/咎女】


 鮮血にも似た鮮やかな紅の空に、何処までも果てなく続く漆黒の世界。其処に聳えるような銀の玉座から悠然と立ち上がり、高みからこの世のあらゆる生命を見下すは、地獄の犬の名を冠する傲岸不遜の体現者。

「ええ、そう、その通り。他でもない、間違えようもない、このアタシこそが咎女、――――アタシは戻ってきた! 冥府魔道の彼方より帰ってきたわ、再びこの世界に!」

 薙が途切れ途切れに呼んだ己の名に、まるで世界の果てを見てきた者のような達観した、しかしこの世のものとは思えぬ高慢で邪悪な優雅さで頷いてみせ。よく通る甘ったるい声で名乗りを上げると、まるで舞台上の女優のように片腕を天に掲げて、高らかに世界に宣言するその様はまさに邪知暴虐の女王である。
 そんな己に抱き着いてきた最愛の妹を、咎女はそのまままるごと抱き留めた。片腕で包み込むようにして何の遠慮もなく強く優しく抱き寄せ、目いっぱいの愛情を表現する。

 恐らく薙はこの時点で初めて気付く事だろう、――――咎女の右腕が無い事に。ひらひらと所在無くドレスの右の袖が靡いて、其処に本来存在しなければいけない身体の大切な一部分――右の肩から下の全て――が失われている事を表していた。
 更に、その首元に残る深く醜い掻き傷の痕も、そしてドレスの胸元から覗く刺し貫かれたような刀傷も、その身体にはっきりと残る『千年京事変』の残り香である。

「…………ただいま、アタシの可愛い可愛い、世界でたったひとりの妹……アナタは沢山いけない事もしてくれたけど、すべて統べて全て何もかも赦してア・ゲ・ル。だから、お姉様の次で結構よ、――世界で二番目に愛していると、この耳元で囁いて頂戴」

 咎女の正体は双頭の魔犬である、故にまさに犬のような仕草で、咎女は薙の首の辺りに顔を埋めて頬を擦りつける。目を閉じたまま、姉妹以外の誰にも注がないであろう無条件の愛を語りながら、しかし抗う事を許さないような、命令するがごとき口調で薙に語り掛ける。

「そして、赦す代わりにもう一つ……アタシがアナタの元に唄女を遣わせて、こんな回りくどいマネをしてまで現れたのには、もう一つセレに協力してもらいたい事があるからよ。千年以上の禍根、それはセレの言う通り永久に払えはしない。そしてアナタ達が壊した未来もまた然り、我等の、いいえこのアタシの理想はアナタ達の手で一度は潰えた。しかし、けれど、それでも、アタシは欠片も諦めてはいない……!」

 先程薙が唄女の言葉に返した言葉を織り交ぜながら、咎女は少しだけ薙から身体を離し、彼女の顔を覗き込みながら話していく。彼女の目を真っ直ぐに見据える、濃く深く濁ったモスグリーン。爛々と輝くその瞳は、以前と少しも変わらない正気と狂気が入り混じった光を放っていた。

「セレ、今度こそアタシに力を貸して。アタシの今の望みはただ一つ、お姉様をもう一度この世に呼び戻すこと。つまり、【影の京都】改めお姉様が治めるアヤカシの国【常夜の王国】を、異空間から現世に引き戻すのよ……何を代償にしようとも、世界の表と裏を引っ繰り返す事になろうとも、アタシは絶対に、必ず、何が在ろうともお姉様と再会するわ! アナタだってお姉様にお逢いしたいでしょう? この世の誰よりも深く強く愛するお姉様……もう一度、三姉妹が共に暮らすという夢を現実のものにしましょう、ねぇセレ?」

 再度強く強く薙を抱き締めると、咎女はその耳元で滔々と己が新たなる野望を語り始める。それは恐らく姉、翡翠ことルークリーシアの意思に反する、大胆不敵にして悲愴を込めた恐るべき“計画”。強過ぎる決意と、文字通り全てを犠牲にする事すら厭わぬ狂信を秘めた強い眼差しを闇の彼方へ向けたまま、悪魔の誘惑のように甘く優しい声色で咎女は薙を誘惑する。まるであの時、二年前のチェイテ城の再来のような、場面。

 ふいに、常闇へと向けられていたその視線が、ギッと別の方向へと向けられた。

「鼠が一匹、紛れ込んでいるわね……唄女ったら、またうっかりして小さなミスを犯してくれたわ。あの子、ほんと良い子だけど、どうにもツメが甘いのがタマに傷なのよねぇ」

 浅い溜息を吐くと、やれやれとでも言いたげに咎女は緩やかに首を横に振ってみせる。薙を抱き寄せたままの姿勢で、咎女は隻腕を高く上げると、パチンと妙によく通る音を立てて指を鳴らした。と、同時に何処が光源なのかまったく分からないが、スポットライトの強い閃光が主税の姿を真っ直ぐに照らし出す。

「此処が死後の世界ならアンタも死んでいるという事でしょうけれど、だとしたらアタシ達とアンタが同じ場所に居るだなんておかしくって笑えてしまうわ。アタシ達はたとえ魔王ルチフェロを平らげてでも天国に登り詰める算段ですもの、嘆きの川(コーキュートス)で永久に凍り付くがサダメの陰陽師風情が、アタシ達と共に在ろうだなんて片腹痛いわ……さあ、こちらにおいで、安倍主税。さもないと炙り出して火にくべて、逆襲開始の狼煙(のろし)にして差し上げても宜しくってよ?」

 主税の言葉をある詩人の代表作に当て嵌めていきながら、咎女はにたぁりと悪意のみが込められた、目鼻立ちが整っているからこそより恐ろしい笑みを浮かべてみせる。察知した相手の微かな霊力だけで彼の名を記憶の彼方から引っ張り出し、憎悪を込めた低くよく響く声で名指しすると、人差し指を天の方向へ向けてちょいちょいと呼び付ける。

「それから、アタシの配下についてだけど。この極東の島国は無論のこと、ヘルハウンドの名は二年前の一件により、より高らかに響き渡り、そして更に畏怖される存在として語られるようになった……この意味が、愚鈍なアンタには理解出来て? つまり、故に故に、アタシに心酔する者どももあの頃などとは比べものにならない位増えたということ。二年間の間、あえて息を細め、戦力を蓄え、鍛練を積み重ねて待ち続けさせた、――新たなる“計画”の為に。…………確かにアタシは敗北した、完膚なきまでに……けれどアタシ達はアヤカシの宿敵たる陰陽省を滅ぼし、尚且つこのアタシはあらゆる存在をも支配する“世界を恐怖と力で捻じ伏せてでも支配する、君臨せし絶対悪の必要性”を世界中のアヤカシ達に知らしめた。この二年間で、アタシは更なる高みへと上り詰めつつある、――――二年前の死よりも悍ましき屈辱さえ、アタシの糧になったという事よ……!!」

 滔々と語りながら、しかしその表情から徐々に高慢で傲慢な笑みが消えていく。代わりにその表情を染めていくのは、憤怒と、憎悪と、嫌悪と、屈辱。思い出すのは、二年前のあの日、あの時、あの瞬間。


『簡単や……お前が、邪魔やっただけやろ』

『いや、アンタ、死ぬほどアカ、似合わんな』


『と言う訳で、大好きなおねーちゃんにも連れて行って貰えんかったアンタは……此処で無様に惨めに独りで死ね。この城を壊すのは翡翠やけど……お前は最愛の姉にも妹にも、此処に居る事すら気付かれずに死ね』


 ギリッと、あまりに強く噛み締めた牙から、一筋、溢れた鮮血がその唇を赤く、朱く、紅く、彩った。


>>薙、主税


【セレちゃん本体様、來安本体様、また長らくお待たせしました! こちらの咎女パート(ちなみに咎女と入れ替わりで、唄女&戯は今は姿を消しております)と、紅子ちゃんのパート、出来れば二つの物語を同時進行していけたらと。バラバラだった二つが、いずれ一つになった時、出来れば私と共に、皆様に少しでも楽しんでいただけたら嬉しいのですが……私、頑張りたいと思っております。ただ引き続き私情と元々の遅筆により、レスは遅れがちになってしまうと思います……ご迷惑をお掛けしてしまう事も多々あると思われますが、どうか緩やかにゆっくりとお付き合いいただけたら大変嬉しいですし、とてもとてもありがたいです。どうぞ宜しくお願い致します!】

6ヶ月前 No.1502

日下部阿藍 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【京都駅・大階段/正体不明の老女→日下部阿藍】


 時代は変わった。人間達はアヤカシの存在を認めざるおえず、人との共存を望むアヤカシ達は不器用ながらも種族としての距離を縮めていた。アヤカシ廃絶の動きは未だ根強いし、犬神の管理下から外れたアヤカシによる犯罪もまだまだ後をたたない。陰陽師、アヤカシ、そして政府による会談により、旧陰陽省は完全に解散し、陰陽師を束ねた御三家の権威すら今では風前の灯だ。
 それでも、そうであっても。二つの種族の橋渡しとなる為、そんな障害も乗り越えて走り続けている陰陽師達がいる。そして彼らと共に世の中を変えていこうとする、熱意あるアヤカシ達もいる。未来は決して閉ざされたものではないと信じて突き進む者達が、時代を切り開いていっているのは明白だ。

 だがしかし、そうであったとしても。
 二年もの間、この国は、そしてこの京の都は、大きな騒乱も無く穏やかな時の中で惰眠を貪り続けていたようなものだった。
 それが今から証明される、このたった一本の電話によって。

『は、ぁ?』

「ふむ、当然の反応だ。この名を告げられて、平常心でいられるお前さんではなかろうさ……なんせお前さんは“あの子”に遺髪を託された、この世でたった一人の墓守なんだものね」

 電話越しに大きく吐き出された息を聞いた電話の向こうの老女は、まるでその反応を予測していたかのように軽い調子で言い放つ。だが、言い放たれた言葉はまたも紅子の心を掻き乱すであろう内容である、それが分かっていて揺さぶりをかけたのであろう。それは二年前、あの『千年京事変』の真っただ中、【影の京都】での出来事。革命の首魁の一人である芦屋漆蓮と、彼女と共に在った紅子しか知らないだろう事実を、事もなげに老女は告げたのだ。一体、何処でそんな事を知ったのか。いや、どうやって調べ上げたのだろうか。
 そして、もう一つ。今では史上最悪の反逆者と恐れられ、天下の大罪人と忌み嫌われる漆蓮を、老女は簡単に“あの子”と呼んだ。まるで、ずっと昔から漆蓮の事を知っているような口ぶりで。

 その後、老女はあえて暫し沈黙した。緑利が老女にも聞こえるようにわざとはっきり言った言葉を聞きながら、肯定も否定もすぐにはせず、紅子の気持ちが少し落ち着くのを待っていた。
 やがて、ふいに電話口から聞こえたのは、小さく息を吐く音。それは、よく聞けば微かな笑い声だった。

「流石だよ、お嬢ちゃん。かのご高名な地獄の犬の再来というだけの事はある、話が早くて助かるねえ。そうとも、あの子の胸の中で動いていたのは人の心臓じゃない、鬼から掻っ攫ったものさ。そしてあの子自身の心臓は、旧陰陽省がある“実験”の為に保存していた……ホルマリン漬けならまだマシなんだが、事態はもっと、遥かに深刻なんだ」

 やれやれ、これだけの情報でもう其処まで察しているとはねぇ。そんな心の声が聞こえてきそうな、小さな笑い。だがその後に続いた言葉は、またも一部の関係者でなければ知る事の出来ないもので。緑利の正体についていとも容易く口にする老女は、どうやら二人の事を調べ上げてから電話をしてきたらしい。ただ調べるだけでは辿り着けないだろう内容まで知っているという事は。此処までくれば、経験豊富で尚且つ思慮深い紅子であれば気付くだろう、老女が旧陰陽省に関わりのある者であろうと。
 なにせ彼女が語るのは、陰陽省が千年の闇の中で蠢き、葬り続けてきた“暗部”なのだから。

「グラス・ハートってか? それはそれで遠からず当たっているかもしれないけれど、ただ“あれ”は人間兵器じゃない、そんなものよりもっと悍ましいものだよ……ああ、悪かったね、“鈴木紅子”さん。では詳しい話のその前に、わたしも名乗っておこうか……いつまでも“おばーさん”じゃあサマにならないからねえ」

 紅子と緑利の冗談に意外にも乗ってみせながら、相変わらず口調だけは軽く、内容は暗雲よりも重く。平然と言葉を続けていた老女だが、紅子にはふいに音が近付いたように聞こえたかもしれない。いや、実際に、電話口から聞こえた声が、もっと近くから聞こえた。二重になって、はっきりと。
 紅子と緑利が振り向けば、すぐに気付いただろう。大階段の上、その広い踊り場に車椅子に乗った老女が一人、スマートフォンを耳から放しつつ二人を見据えていた。

「我が名は日下部 阿藍(くさかべ あらん)、警察庁警備局特別顧問、今はアヤカシ絡みの犯罪を専門としている。ちなみに以前は芦屋と名乗っていた、――――元陰陽師だ、とっくの昔に引退しているがな」

 電話を切ると、老女は低いがよく通る、張りのある声で二人に名乗った。偶然か必然か、大階段の周囲のは人っ子一人おらず、まるで異空間に放り込まれてしまったかのようなこの世界に居るのは三人だけで。
 雪のように真っ白な髪、何処か冷たい感覚を与える高く通った鼻筋と薄い唇、一目みて分かる程上等な黒いスーツ上下、非常に高価そうな電動車椅子。そして非常に印象的なのが、その目だ。刃を思わせる鋭い吊り目に、めらめらと地獄の業火が燃えるような、鈍く輝く赤銅色。まるで“誰か”の生き写しのように。

 にいっと、唇を三日月のように歪めて、阿藍が笑った。何処か密林の豹を思わせるような、気高くも獰猛な笑い方だった。


>>紅子&緑利


【面白くなるように、私なりに頑張りたいものです。そして早速ですが恐らく意外であろう新キャラを突入させました、プロフィールは出来上がり次第、サブ記事へ投稿しますね】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
6ヶ月前 No.1503

塚守來安 @iwing ★zme9TvaGqL_g5r

【電脳蟲の巣/ 安倍主税】


「こりゃ魂消げたわ。厭らしさを通り越していっそ清々しくもある。つまりあれか? 俺たち死魂が同時に同じ場所に存在できないのなら、答えは簡単だ。俺こと安倍主税は確かに生きていて、そして咎女も同じ場所にこうして生きている。っていうか、アンタと禅問答をするつもりはなかったんだがな。どこで俺の名を知ったのか知らないが、俺はたった今決めたぜ。アンタのところには絶対に近付かないってな。こんな巫山戯たところで、それこそ本当に鬼籍に入ったのだとしたらとんだ笑い種だしな」

 冷静さが欠けているからこそ饒舌になる。主税はそうして時間を稼ぐことで乱れた思考を纏めようとしていた。目前には陰陽師最大の仇敵がいる。しかし、今は迂闊には手を出せない状況だ。相澤薙を巻き込んではいけないのと、そして、感動の姉妹の再開に水を差すのは何だか気が進まなかったからだ。
 それに主税は咎女に対して末恐ろしいものを感じていた。以前に彼が対峙したことのある滝夜叉姫ですら凌駕するような邪な負の気を、彼女からは感じ取ることができたからだ。これは一筋縄ではいかないかもしれない。迂闊に接近してしまえば何をされるのかわかったものではない。主税がそこまで咎女に対して警戒するのも無理のないことのように思われた。
 主税はまた咎女の雰囲気に、翡翠の面影を重ねてもいた。彼は一度『千年京事変』の折に翡翠と顔を合わせたことがある。姉妹なのだからその精魂が似通ったものになるのは当然のことであるのだが、咎女もまた彼女と同様に思考が読めない、筆舌に尽くし難し不可解なオーラを身に纏っていた。彼女がそこまで饒舌なのは恐らく、主税と違って心にゆとりがあるからであろう。それは何時でも相手を制圧できるだけの技量や、また度量があってはじめて為せる業に違いなく。

「俺にとっちゃそんなもの、眉唾物にしか思えないんだよな。第一、その満身創痍の身体で何ができるっていうんだよ? 確かに二年前はアンタ"たち"の思惑通りに事が運んだのかもしれないが、旧陰陽省が潰えてからここ二年間で陰陽師たちの結束はより強固なものになった。アンタがその"計画"とやらを練るのに腐心している間にも、人間とアヤカシが互いに共存するという気運が最高潮に達しようとしているんだ。ハッキリ言ってしまえば、今の世にアンタという存在は不要なんだよ。時代がそんなものを求めちゃいない。こんな世知辛い世の中だから寧ろポジティブに、前進していく力が現在の世界を動かしていくんだ。悪というネガティブな概念に囚われている内は道は開かれないぜ。そんなアンタに振り回される連中のことも考えてみな。一番気の毒なのはそいつらだよ。俺は職掌柄色んな立場の人間やアヤカシを見てきたから分かるが、アンタがなるべきなのは悪なんかじゃあないだろ。生きとし生けるものが全て正しく在ろうとして存在しているはずなんだ。それを否定するということは、もう端から矛盾してるんだぜ。アンタだって薄々気付いているんだろう? 自分自身と世界の間に立ちはだかる大きな壁に。いい加減、改心しな? こうみえても割と本気で言ってるんだぜ。アンタを支えてくれるアヤカシがいつまでもアンタについていてくれると思ったら大きな間違いだ。現にアンタの一番の側近だった交喙ってアヤカシはもう目を覚ますことは……。まあ、その話はいいや。そんなことより、ここが死後の世界でないのだとしたら一体何なんだっていうんだよ」

 咎女の長広舌を一蹴し、答えが返ってくることを期待したのではなかったものの主税はそう問い掛けずにはいられなかった。先程までは自分一人ででも咎女と対峙しようと決めていたのだが、寧ろ一刻も早く芦屋巖児と合流するべきなんだという結論に至っていた。
 だから、いち早くこの状況から脱しなければいけない。この世のモノとは思えない環境に放り込まれ、そしてこのまま咎女のペースに飲み込まれるであろうことは主税にとってあまり好ましい事とはいえまい。彼が今、彼自身が電脳蟲の世界(?)に入り込んでいるということに気付くはずもなく。
 さすがの主税でもこの周囲の環境に渦巻く人間の夥しい量の悪意に気付けなかったわけではなかったが、どうやら自身が放り込まれている世界の正体にまで感付けるだけの余裕がなかったようで、彼自身はこの世界を形作っているものが咎女自身にあり、それが彼女自身の心象風景なのだと思っている。現実にある世界ではなく、疑似的に造り出された【影の京都】に似た別世界なのだと。

 外部との連絡がとれない今――主税が所持している携帯通信機器の画面上には圏外が示し出されている――現状、自分一人でこの状況を打破しなければいけない。彼が今持てるだけの手段を講じて。
 自身の得手物である錫杖と、陰陽道の中でもとりわけ安倍氏が好んで用いる式神――戦闘で用いられるとすればこれだけであった。それ以外にも芦屋氏に伝わる半永久的に閉ざされた倉庫を解錠するための鍵が、チェーンに繋がれた状態で首から下げられていたのだが、今の状況で役に立つとは思えない。
 そもそもこの鍵の所有者は芦屋漆蓮だったのだが『千年京事変』の折に所有権を塚守來安に譲渡されている。その後、彼女の住まう家に転がり込んで――否、塚守來夢のある思惑で強制的に連行されたかたちで敷居を跨いだ――現在進行形で同棲をしている芦屋巖児の元に移り、そしてあの戦争の後に、嘗て彼と行動を共にしていたアヤカシで、真名を【鳳蝶(アゲハ)】という蝶々の羽を背中に持つ、『千年京事変』の際に凰華と主従関係にあった喪服姿の少女にかすめ取られてしまっている。
 現在は主税の手元に落ち着いているが、そこに至るまでは凄絶なドラマがあったのだ。主税はこの鍵を所有こそすれ芦屋氏所有の倉庫に立ち入ったことがない。倉庫が何処にあるのかも知らされていないのである。実際にその倉庫に立ち入ったことがあるのは來安と巖児、そして最後に鳳蝶だ。來安は鍵の譲渡に漆蓮の遺志を感じ彼女の志のままに倉庫に赴いた。巖児は芦屋氏に伝わる秘伝の奥義の探求のためだけに倉庫に足を踏み入れた。そして、最後に残った鳳蝶の目的とは……。ともかく、現時点で倉庫の在り処を知っているのはこの三人を置いて他にはいない。そして、その在り処を指し示した地図を所有しているのが巖児だ。

 咎女が過去の忌まわしき思い出に苦渋の表情を浮かべている内にも主税はありとあらゆる方策を考え続けていた。彼ができうる選択枠は限りなく少ない。まさに籠の中に囚われた鳥の如し。『千年京事変』から一年後に起きた古の陰陽師との死闘に比べれば大した窮境ではないのだが。
 実はこの一年前に犬神によるアヤカシの支配の根本的な基盤が崩れる大きな事件が起きていた。犬神一派と対を為す、嘗て咎女一派に次ぐ最大派閥を誇っていた『ぬらりひょん』を長とする『百鬼夜行』が、とある陰陽師の手によって滅ぼされたことに端を発する。結果的にそれが統制の取れないアヤカシを生み出し、アヤカシによる犯罪が全国的に広がっていった原因となったのだ。
 高齢に達し衰えたとはいえ大妖たるぬらりひょんを死に追いやり、彼の配下のアヤカシたちを扇動して犯罪に駆り立てた首魁の名は『塚守貞篤』といい、塚守家二代目頭首『雪影』の実兄にして彼と争うかたちで起こった家督騒動に敗れ、その後当家に対する謀叛を起して歴史上からその存在を抹消された男だ。千年以上もの間表舞台から姿を晦まし、一度は肉体が滅びるも新たな力を得て再びこの世に顕現したのである。
 塚守貞篤はアヤカシと手を組んでこの日の本を蹂躙し自らの理想郷に作り替えようと千年以上もの間ずっとその機会を伺っていた。全ては復讐のため。それは憎悪に囚われた悪鬼にも似て。彼の腹心のアヤカシには嘗て凰華と主従関係にあった鳳蝶がいた。彼女は巖児からくすね盗った鍵で秘蔵の倉庫を開け、その中に保管されてある、歴代の芦屋氏頭首や漆蓮の父聖蘭などが集めた陰陽師やアヤカシに関する膨大な書物を利用して貞篤が完全な姿でこの世に存在させるための力添えをしていた。簡単に言えば、彼はぬらりひょんの心臓を、現世に留まり続ける礎とするために、自らの肉体の一部としたのだ。
 ぬらりひょんの心臓を自身の身体に埋め込んで【破戒僧】と化した貞篤の野望を阻んだのは芦屋巖児であったが、この戦いで彼自身も大きな深手を負っていたのであった。初めて敵と対峙した時はその比類を絶する圧倒的な力差の前に半死の状態にまで追い込まれるも、一人のアヤカシの手により難を逃れ、後に彼女の手引きにより再び貞篤と相対することができた。その真名を【雫(アヤメ)】といい、彼女は貞篤の手の者であったはずだったが、彼を裏切って巖児たちの側についたのである。しかし、後に貞篤との戦闘で命を落としている。しかし、二度目の最終決戦の際には主税との共闘体制で戦いに挑み、そして自身の持ち前の洞察力で相手の弱点を見抜き、また【芦屋光闇流奥義『通り雨』(未完)】を体得し、一瞬の隙をも見逃さずに一撃の一手を加えることで辛くも貞篤から勝利を収めたのだ。
 この戦いで貞篤の肉体は完全に死滅しその魂も散り散りになって消え失せたはずだった。しかし、彼の霊魂がバラバラになる際にその一部が鍵に取り憑いてしまったのだ。主税が本来芦屋氏に所有権のある鍵を芦屋の人間に譲渡しないのにはそういう理由があったのだった。今のところ特殊な封印が施されているために周囲への影響は殆ど皆無といってもいい。嘗て貞篤に忠誠を誓いながら彼を裏切ったあのアヤカシが、式神として生をもうけ、彼の怨念が再び御世に姿を現さないように監視しているのだ。だがそれでも目の届く範囲に置いておかなければ安心はできなかろう。
 という次第で、倉庫の内部資料を外部に漏れださないためと、塚守貞篤の怨念をその場で抑止しておくという目的で、鍵と地図は別々に巖児と主税が所有しているのである。

(相澤氏がいる手前、ここまで事を荒げないように注意していたが、やっぱりああいう手合いにはキツく注意しておいた方が好かったか……? でもまあ、もう少しだけ様子をみてみるか)

 今頃、主税が約束の時間になっても来ないことについて巖児が異変を感じている頃合いであろうが、彼は現在、貞篤の残党の行方を追っており、とりわけ今日の京都で発生している若い女性ばかりを狙った誘拐事件に直接関わっていると睨んでいる絡新婦のアヤカシの消息を調査中だ。


>> 薙、咎女

6ヶ月前 No.1504

紅子 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_cVl

【京都駅大階段/鈴木紅子】

 スマートフォン越しに聞こえる老女の声は、これまた何処をとっても紅子と緑利を唖然とさせるのに十分すぎるものだった。ただ二人が揃いも揃って、驚嘆すると言う行為を放棄しているだけで。紅子は四人目だか五人目だかの自分にとって大切な人間の名前が出てきた時点でそれを使い果たしただけなのだが、緑利に至っては自分の素性をいとも簡単に明かされてなお、余裕の表情を崩さない。幾ら内密に“造られた”とはいえ、彼女自身に自らの正体も目的も隠そうという気概が何処にも無いのだから、それも仕方ないと言えるのだが。
「えーっと、私を欧州まで拾いに行ったのは誰だっけ?」
「りく経由で翡翠の元部下」
「なるほど、その辺りから漏れていてくれたら有難いのだけれど、本家を漁った方が早いのかも知れないね、彼女の場合。まぁ、そこまで知れてるなら此方としても話が早いのは同じだね。えーっと、日下部阿藍さん。警察如きに置いとくには勿体ないね、うちの事務所に来ないかい?」
「お前のちゃうわ緑利、あと勝手に勧誘せんといてんか。あちらさんにもあちらさんの事情があるやろうし、あんなん事務所に居ったら乗っ取られんのがオチやて。まだローン33年ちょい残っとんねんで、あのビル」
 依頼主とも言える人間を無視して――それどころか時として貶しながら――掛け合いを繰り広げるのは、この二人の悪い癖であり日常茶飯事である。そして、わざわざそんな事をやってみせた二人の意図は、打ち合わせなどしなくとも共通している。

 まるで芝居か何かのように階段の上に現れる、日下部阿藍と名乗る女性のペースに飲まれてなるものか。最終的に彼女の思惑に乗らざるを得ないことが、この時点で既に決まっているのだとしても。

 階段の上と下で、見上げるものと見下ろすものの視線が交錯する。前者は警戒と興味、後者は未だ窺い知れず。それでも、この三者の視線が交わることは、世が世なら決してあり得なかったことは間違いない。
「えらい手の込んだ自己紹介をどうも。お陰で此方の喋ることは残っとりませんわ。強いて言えばばー……日下部さん、アニメとか漫画とか見るんやな」
 電話越しではなく改めて口を開いた紅子に、紡ぐべき言葉は大して残されてはいなかった。天使の心臓の件に乗っかってこられたことは、ツッコまないという選択肢なかったようだが。
「私の方は一応名乗っておこうかな。今は芦屋緑利という名前で活動してるけど、まぁ好きに呼んでくれて構わない。流石にお母様の名前はお勧めしないけれど……ところで、あたしは以前貴方にお会いしたかしら? それともあたしが会ったのは、此方の勘違いならそれはそれで構わないんだけど……旦那様か息子さんかお孫さんて所?」
 名乗るついでに行った緑利の問いかけは、言葉だけ聞けば意味の分からないものである。間違いなくこの三人は初対面、そんなもの記憶を手繰るまでも無い。しかし、そこには声音と表情がある。わざわざ一人称まで変えて見せた緑利のそれは、先程までの少女然として居ながら少年じみたものとは違う。彼女が顔面に張り付けた微笑みもまた、今までとよく似ていながらほんの僅かに違うものだった。

「まったく、後始末係を作った母さんの判断は正しかったよ。なんでこうあっちにもこっちにも面倒事が転がっているんだろうね」
 勿論それは、隣で紅子があきれ顔をするより先に消え去っていたのだが。
「あーはいはいそうですね。日下部さん、ウチの緑利がすんませんなぁ。そんで、どないしましょ。何時までも階段の上と下ってのも変な話や、場所変えます?」

>日下部阿藍様

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
6ヶ月前 No.1505

セレスティア本体 @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★sqMH8Q2zCH_7GJ

【電脳蟲の巣/相澤薙】
「このまま…この時が続いたら…」
抱きしめられたまま、相沢薙……セレスティアはつぶやいた。平和な時が続き、もう二度と会えないと思っていたところに大好きな姉、エリザベートとまた出会うことができた。心が満たされそうな気分を感じる。

そして…
「…ひどい怪我…ずっと一緒に要られたらきっと…」
姉の身体の欠損、そして大きな怪我。彼女にはとても心配なことだ。
自分に傷を治す術があるならばそれをすぐに治そうと考えただろう。
それが出来ないと思うのが何だか悲しくもある。

「う…ん、時代が変わっても…どんな世界になっても…私にとっては…お姉ちゃんは、世界で二番目に大好きなお姉ちゃん…だよ。」
それは本当の言葉だった。自分を利用していたということはわかっていた。
あの時のことはとても悲しく感じたが、それでも彼女のことを心配する気持ちのほうが大きかった。
大事な姉であることには変わりない。今でも。

「…そんな方法…あるの?」
そしてもう一つ、素晴らしい言葉を聞いた気がした。
更に最愛の姉とも出会うことができるというのだ。
まるで夢の様な話だ。本当に夢なのだろうか?いや、現実だったら其の方がいい。

「…私は…」
どんな方法を使うのか、それだけが気がかりになっていたが
それすらも吹き飛びそうになる。

(そうだ…私がこの世界をさまよっていたのは…そもそも…また三人で一緒に暮らすためじゃないか…この世界はもう大丈夫…私がいなくなってもきっと…暮らしていける…)
三人一緒に暮らせる世界ならば、それもいいかもしれない…そんな心に、咎女の言葉を聞いて飲み込まれそうになったが…

「…だれか…いる?」
一気に心は現実へと引き戻された。
其の空間にもう一人誰かが混じっているのだという。
振り向けばそこには…

「あなたは…陰陽師の…?」
見覚えはあった。以前あった…だろうか…

「…今の世界で…暮らせたら…
 私にはとても良いことだけど…
 ……」
安倍主税の言葉を聞き、どうにか引き戻されたらしい。
また彼女は、悩み始める。

今の世界がとても良い場所なのだと感じるが
また姉妹と一緒に暮らせる…と思うと…

「…翡翠お姉ちゃんは……これを知っている…のかな…」

>安倍さん&咎女さん

6ヶ月前 No.1506

咎女 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【電脳蟲の巣/咎女】


「アンタに拒否権は無いの、ココはアタシの領域で、もうすぐ総てはアタシの領地となる……天国も、地獄も、現世も、来世も。つ・ま・り、生も死も最早意味を持たない、全てはアタシの思うがまま、――気分爽快だわ」

 余裕に見える、しかし内心は絶対に穏やかではなかろう。だからこそ、面白い。
 世界を蝕みそうな程に不敵な微笑を浮かべた咎女は、しかしまったく笑ってはいない目を主税に向け、凍て付きそうに冷たい視線を送る。動揺しているであろう主税が紡ぐ言葉は冷静なようだが、しかし其処から透けて見える彼の本質は実に聡明そうであり、この問答にも彼なりの理由がある事は明白だ。
 ならば、それを覆してやろう。

 ゆっくりと咎女の左手が天へと翳されると、パチンといやによく響く音で指が鳴らされた。次の瞬間、あまりにも不可思議な事が起こった。主税の目の前、ほんの数歩先に、忽然と咎女が現れたのだ。手を伸ばせば触れられる、彼女の粋から薔薇に似た甘い香りがするのが感じられる、そんな距離。瞬きもしていないというのに、だが玉座を見上げれば、未だに咎女は薙を抱き締めたままである。では、主税の目の前で世界の女王のごとき不遜な微笑を浮かべる“これ”は、一体何なのだろうか。

 だがその後、主税が咎女に語った言葉の内容に、その笑みがすうっと消えた。残ったのは、眉間に微かに皺を寄せ、困ったように小首を傾げる姿。

「アナタが何を言っているのか、アタシにはまるで理解出来ないわ」

 咎女は主税の言葉に、大いに困惑していた。

「眉唾物? 満身創痍? アタシの存在が不要? 時代が求めていない? ネガティブ? 振り回される連中? 大きな壁? 改心? ――――ああ、そうかそうか、なーるほどねぇ」

 パン、と、咎女が手を叩くと、にっこりと優しげに微笑んだ。


「バッカじゃないの、アンタ」


 がくりと首を傾けて、あまりにも楽しげにその口から飛び出したのは、子どもじみた暴言だった。

「アンタは知らないの? 御伽噺、読んだ事ないワケ? 強く信じて行動し続ければ、“夢”は必ず叶うものなの! 二年前だろうが今だろうが、アタシはアタシの“希望”をほんの欠片も諦めた事はない。陰陽師の結束? だからなぁに? それが何だっていうの? 矮小で脆弱な虫ケラが集まったところで、強大なる地獄の犬に踏み付けられて無事でいられるとでも? ナンセンス! アンタ達なんか、というよりニンゲンも、アタシに逆らう愚劣なアヤカシも、今や障壁にすらならない。すでにアタシの眼中に無いのよ……アタシの存在が不要? アタシからすればアタシに従わない時代こそが不要だから、――滅ぼしてアゲル、即刻、いとも容易く、完膚なきまでに。時代が求めるものなんてまったくもって知ったこっちゃない、アタシの求めるものこそがこの世で最も尊く、最も高貴で、最も重大で重要なのだもの。アタシがネガティブ? いいえいいえ、最高にポジティブだわ! アタシは常にアタシの思うがままに生きるだけ、最っ高に前向きでしょ? しかもアタシに振り回される連中なんて皆無よ、だってミンナ、アタシを愛し、アタシに尽くしたいから勝手に付いてくるんだもの。アタシの為に果てる事が出来るなら、どいつもこいつも泣いて喜ぶような狂信者ばかりなんだから。だいたいさ、アンタ自分の価値観だけで語るの、頭が悪く見えるから止めたほうが良くってよ? あら、アタシの何が間違っていると? 【正義に対する勢力は、悪ではなく別の正義】って聞いた事ないかしらん? アタシはアタシが正しいと思う事を成すだけ、その為に正しく在ろうとしているだけ。何を悔いて改心すればいいのか、全く意味が分からなくってよ……ああ、交喙? あの子が今どうなっているか、何もかもアタシは知っているわ。あの子はアタシのお気に入りだから、別に何だっていいの、どうせ最後は世界まるごとアタシのモノになるんだもん、死のうが生きようがあの子はア・タ・シ・の・モ・ノ」

 あまりにも無邪気な笑みを浮かべながら、咎女は隻腕を舞台上の女優のように大仰に振り翳し、さも楽しげに滔々と言葉を続けていく。熱っぽく、あまりにも膨大な狂気に潤んだその瞳に、一切の惑いも迷いもありはしない。
 そう、つまり。つまり咎女には、主税の言っている事がまったくわからなかったのだ。咎女は己の行動を悪だとは欠片も思っていない、己の成す事だけが正しく、己の在り方こそが正義であり、それに仇なす“大きな壁”こそが間違いなのである。世界は自分の為に回っている、本気で、疑いもせずそう思っているのだ。二年前の大戦以来、その盲信とも言える恐るべき“夢と希望”は、更に肥大して揺るがぬものとなってしまった。
 主税と咎女は根本的に、考え方や価値観があまりに違い過ぎる。主税の語る正論は、咎女にとっては奇想天外な妄言にしか聞こえない。それ故に、主税の言葉は咎女には響かず、彼の言葉は咎女にとって別世界の言葉のように聞こえるのだろう。そう、異国の言葉が理解出来ないのと同じ原理である。
 咎女は自分だけを信じている。そして、愛しているのが姉妹だけだ。その外にあるものなど、全て“餌”であり、全て“贄”でしかない。

「此処は死後の世界ではない、じゃあ何か? 『アハハッ、見ての通り此処は“コンナトコロ”よ』 そしてそして、先程アンタはアタシを満身創痍と言ったわね……本当に、『本当に本当に本当に』、果たしてそうかしら?」

 主税の主張は、まるで水と油のように咎女に届く事無く、闇の中へ滑り落ちていった。芦屋巖児との合流の為、思案を巡らせる主税の目前で、咎女は再度かくりと首を傾ける。と、ふいにその頭がぐにゃりと歪んだように見え、気付けば咎女の身体から日本の首が生え、二つの頭が傲岸不遜な笑みを浮かべて微かに揺れている。双頭の犬オルトロスの化身である咎女だ、この位の変化は息をするのと同じ位容易い。
 再び咎女が片手を天に向け、異様に響き渡る音で指を鳴らした。と、赤と黒に彩られた世界が、ざわざわと高まり始める。渦巻く悪意が更に高まると、ごおっと強い風が吹き、焼けるような空に白銀の亀裂が走る。ミシミシと何かが軋む音がしていたが、それが止んだ途端、いきなり亀裂がぱっくりと開いて天を覆い尽くすように巨大な一つ目が出現した。ぎょろりぎょろりと蠢きながら、その邪悪な太陽のごとき真紅の瞳が主税を捉える。それはまるで、画家オディロン・ルドンの描いた奇怪な絵画のような、異界の光景。

 二つの頭、二つの唇、二重の響き。嘲笑うように、歌うように。軽妙に、軽薄に。咎女は語り、笑う。
 それと共に、少しずつ、少しずつとはあるが咎女の身体から妖力とは異なる、膨れが上がりそうに強く異常な“邪気”が高まり、失われた筈の右腕の辺りにぞっとする程悍ましい“気”が集まっていく。それが何を意味するのかは、今はまだ咎女しか知らない。

 一方、薙を優しく、そして強く抱き締めるもう一人の咎女はと言えば、寵愛する妹の言葉に静かな微笑を浮かべていた。主税に向けている笑みとは異なる、深い愛情が込められた微笑みだ、何処か満足げでもある。

「願いなさい、望みなさいセレ。アナタがアタシに祈るのならば、この時も、そしてまた以前のように三人で過ごす時間さえも、永遠に変えてみせるわ」

 アタシに祈るならば。それは何と冒涜的な一言であろう。まさに神を気取る不心得者の戯言。しかし咎女にとってその言葉に一切の他意はない、絶対的な自信に満ち溢れた彼女にとって、世界は如何ようにでも改変可能な箱庭のようなもの。己を信じる者のならば、そして相手がこの世で二番目に愛する妹ならば、あらゆる言葉を現実にする確信も覚悟もある。たとえ世界の全てを敵に回したとしても。

「ああ、この傷のこと? 大丈夫、平気よ、今はもう痛みもないから。それにやろうと思えばこの程度の傷、何時だって消せるし、腕位なら造作なく取り戻せるだけの力、今のアタシは手に入れている。それでも、尚この傷を残しているのは……、――過去の屈辱を忘れない為。この傷はアタシがアタシに科した枷、最早二度と敗北はしないと、アタシがアタシに誓った証」

 何処か悲しげな、心配そうな薙の声色。抱き締めている力を緩め、妹の顔を覗き込みながら咎女はひどく優しげな柔らかい声で告げる。それは何処か自分自身に言い聞かせているようにも聞こえるが、薙の心配を取り払おうとしているようにも聞こえる。史上最悪の妖女と恐れられ、稀代の悪女と世間から忌み嫌われる咎女だが、姉妹に対して見せる顔だけは他と異なる。大いに歪んではいるが、それも咎女なりの愛情なのだ。
 しかし聞く者が聞けば、咎女の発言には危険なキーワードが幾つも含まれている。そして声は穏やかでも、最後に放たれた言葉は、悍ましさを孕んだ強固な決意を感じさせた。

「アタシも、時代や世界なんかに左右されず、アナタを永久に永久に愛し続けるわ、アタシのセレ……アナタはアタシに裏切られた、利用されたと、もしかしたら今でも思っているのかもしれないわね。けれどけれどそれは間違い、思考の擦れ違いが生んだ誤解だとアタシが否定してあげる。アタシが常に求めるのは三姉妹が未来永劫、共に生き、共に幸福であること。その為の方法はアナタのお気に召さなかったかもしれないけれど……セレ、アタシは今でも間違っていないと信じているの。手段を選べば目的は永久にこの手から遠退いてしまう、ならば目的の為に手段を選ぶ事こそ間違いだと、アナタそう思わない? ――――だから今、アタシは“方法”を駆使して取り戻す、アタシ達の欠けてはならない絶対の存在を……アタシ達の神に等しき、お姉様を」

 薙は昔から素直で真っ直ぐな子どもだった。姉二人には似ず、いいや、欧州全土を総べる悪逆たるヘルハウンド一族としてはひどく珍しく、薙ことセレスティアは汚れなき純白の体現者であり、誰よりも無垢で純粋であった。そんな彼女だからこそ、世界のあらゆる穢れの化身とも言える咎女から見れば、己を偽れない薙の思考はある程度読み取れた。故に、甘やかで優しい口調で彼女を“利用”した訳ではないと、耳元で密やかに囁く。
 実際、咎女にしてみれば、薙を利用した気などさらさら無い。“利用”したのではなく、己が思い描く三姉妹の幸福の為、真実を告げず同意を得ないまま“協力”してもらったというのが咎女の認識なのである。先程の主税との会話もそうだったが、咎女の価値観を理解出来るものはこの世にはほとんどいない。ある意味世界で一番自己中心的なのである、咎女という女は。

 そして身勝手な理論を語りながら、そのままさりげなく続けたのは、二人の最愛の姉たるルークリーシアこと翡翠を取り戻す為の“方法”の正当性。甘い毒のような柔らかな響きで、薙を誘惑するその言葉はあくまで優しげで。煌めく闇のように、深く深く堕としてしまう、その声色。薙も、まるで催眠術にでもかけられたように、その言葉に乗ってしまいそうな様子だ。

 だが、たまたまその場に居合わせた一人の陰陽師の言葉が、彼女に正気を取り戻させた。それも運命か、これが宿命か。

「…………翡翠お姉様は、何も知らないわ。アタシがアタシの判断で動いているのよ、つまりこれは世に言う独断という事になるのかしらねえ? でもいいじゃない、さっきも言った通り、手段を選んでいては目的に手が届かない。ならばどんな手を使ってでも、あらゆる方法を駆使してでも、アタシは、アタシ達はお姉様を取り返さなければならない……その為に、アタシは“アレ”と手を組む事にしたのだから。“黒の心臓”をその胸に抱く、――“闇の末裔”と」

 一瞬だけ、薙を抱く咎女の表情に影が差す。忌々しげで、それでいて冷めきった、激情。



 主税、薙、そして咎女。三人が奇怪な空間で奇妙な駆け引きを繰り広げている、その頃。咎女が語った“アレ”は、誰にも覚られる事なく動き始めていた。

「……っくし! ……あれ、僕またどっかで噂されてる?」

 小さなくしゃみをした後で呑気に鼻の先を指で掻きながら、その人物は気だるげに天を仰いだ。まるきり何気ない日常の一コマである。
 だが、しかし。

「やれやれ、目立つのは苦手だし、――――“まだ”早いんだけどな、まあ仕方ないか」

 一瞬、その瞳が燃え盛る業火のような、狂おしい赤銅色に輝いた事に気付いた者は誰もいない。

 まだ誰も知りはしまい、その闇の濃さも、底知れぬ深さも。



>>主税、薙


【毎回、長い時間をお待たせしてしまい、本当に申し訳御座いません】

5ヶ月前 No.1507

日下部阿藍 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【京都駅・大階段/日下部阿藍】


 広大な京都駅、その大階段の上に現れた異様な威圧感を放つ老女、日下部阿藍は何気ない仕草で上を見る。今日も空が高い、まるで平和という偽りを塗り固めたような、嘘くさい青空。目を細めながら、口角の片側だけをフッと吊り上げた阿藍は、再び階段の下の二人の女性へと視線を戻す。

「そうさね、疑うならあのちっこい鬼の童(わらし)よりも、本家筋の連中を虱潰しに引っ叩いていけば直に出処は割れるだろうさ。あとはお前さん達が思う以上にわたしはアヤカシ界隈に顔が利くんでね、そちらの出処を探し当てるのは案外難しいかもしれないよ、口が軽い奴は何処にでもいるもんだから。おや、スカウトしてくれるのかい? 民間に雇われるのも悪くないかな、心配しなくても乗っ取りゃしないよ、33年のローン程度ならわたしが一括で払っても構わないしね。ただ、もしそっちに行くとしたら今回の一件が片付いてからだから……わたし達三人のうち、誰が生き残っているかね、全部終わった時に」

 二人があえて繰り広げているだろう漫才を、こちらもわざとらしく目を細め、にこにこしながら見守る阿藍。こうしていればある程度普通の高齢者に見えるかと思いきや、纏う雰囲気が刃のように鋭いのと、その穏やかな表情が妙にアンバランスで、見る者が見ればミスマッチな空気が拭い去れないだろう。
 二人の心中はだいたい読み取れる、表情や声色、その動作の全てから。何十年とも知れぬ長い月日の中で、数えきれない程の人間やアヤカシを見てきた阿藍だから。だからこそ、阿藍は二人の軽口に付き合って、こちらも何気ない口調で冗談を続ける。最後に付け加えた言葉の不穏さと、目だけが笑っていない何処か冷ややかな顔付きが、全てを台無しにする訳だが。

「アニメだろうが漫画だろうが、小説だろうがドラマだろうが、ニュースだろうが都市伝説だろうが、あらゆる情報がわたしには流れ込んでくる。膨大で、聳え立つ程の、馬鹿げた与太話に見せかけたって、わたしの目は誤魔化せない。其処から選別し、精査し、見落としがちな真相と悪意を掬い取るのがわたしの仕事であり使命なんだよ」

 紅子のつっこみに、口調だけは静かで穏やかだが、底に流れるのはあまりにも冷徹な響きを帯びた淡々とした口調で、阿藍は答えていく。相手は冗談のつもりだったのかもしれないが、こちらはあえて大真面目に返す。そうかと思えば、相手が本当に知りたいだろう質問は、ふざけた言葉遊びで煙に巻く。それが日下部阿藍という女である、一言で言い表すなら、とんだ食わせ者だ。

「緑利さんだね、お名前は重々承知の上だが、ご丁寧にどうも。ふむ、そうさねえ……わたしがまだ耄碌していないなら、直接の面識はあるかもしれないし、旦那とも息子とも孫娘とも、顔位は合わせているかも。さて、わたしもそろそろガタがきて、あれこれ忘れてきちまう歳だもんで……それぞれと、どの程度の因縁かは、昔のお前さんが一番よく知っているのではないのかい? 例えば殺めたり、例えば同志だったり、――――だとしたわたしの仇だし、ともすればわたしの恩人かもねえ」

 謎掛けめいた緑利の問い掛けに、阿藍は片手を口の辺りに持っていく。そして親指と人差し指で何かを摘まむような形を作ると、それを唇の前に添え、スッと左から右へ動かした。子どもがよくする「お口にチャック」というやつだ。緑利がまるで“誰かさん”のような顔で、“誰かさん”のような事を言うものだから、「それ以上は口にしないのが身の為さ」と、ちょっとした仕草で示してみせたのだろう。
 それでも煙に巻くような形ながらも、こちらもほとんどの者には意味不明ながら意味のある返し方をしてみせたのは、紛いなりにも依頼人として、暗に二人の事を信頼しているという証なのかもしれない。

「面倒事ばかりだからこそ、わたしみたいな“老兵(ロートル)”や、お前さん達みたいな“正義の味方”が、この世界には必要なのさ。そうだね、場所を変えてゆっくり話をしたいのだけど……ちょっと遅かったみたいだ、あちらさんに“気付かれた”」

 完全な皮肉にしか聞こえない、ふんだんに嫌味を込めた口調で“老兵(ロートル)”、そして“正義の味方”と告げた。自分で言っておいて、自分を嘲笑うような冷めた微笑を浮かべながら、阿藍は大仰に肩を竦めてみせる。
 紅子の言葉に軽く頷いて、阿藍が電動車椅子を操作しようとした、その時。彼女の目付きが一瞬で変化した、まるで獲物の影を察知した豹のように。


 ざわり、と、空気そのものが重く揺れた。
 紅子達にとっては懐かしい、そして忌まわしい感覚かもしれない。それは約二年前の、あの頃を思い出す感覚だろうから。そう、これは。


『見ツケタ?』
「「見付ケタゾ」」
《見ツケタ見ツケタ》
【見―ッケタァ!】


 戦場の、死の匂いだ。


 ざわざわと、あちらこちらから。囁くような声が、さざ波のように、そして少しずつ範囲を狭めながら津波のように、押し寄せてくる、近付いてくる。一つ一つの妖力は大した事のないものだが、数が尋常ではない。
 やがてひょこり、ひょこりと壁の隙間、生垣の影、硝子天上の上から顔を出したのは、小さな赤子のようなもの達。どれもよく似た顔をしているが、どす黒かったり、青白かったり、赤らんでいたり、明らかに病的な肌の色をしている。皿のように見開かれた、異様に大きな目はどれもこれも真っ白に濁っていた。そして皆それぞれ、額や頭に大きさや数の違う小さな角を生やしている。更にてらてらと唾液で濡れたその歪んだ口元からは、鋭い乱杭歯が覗いていて、いや、あれは歯というより牙だ。

「……“彼奴”も随分下等な者どもを寄越したもんだ、舐めやがって、――『餓鬼』とは、ね」

 ざっと百は超えるだろう、わらわらと湧いて出てきたのは、飢えた餓鬼の群れだった。最底辺とはいえ、“鬼”だ。こんな場所に、こんなにも大量のアヤカシが出現するなど、この二年の間に一度たりとも起こらなかった筈である。たまたまなのか、それとも餓鬼を寄越した“彼奴”とやらの手筈通りなのか、大階段周辺に観光客どころか人っ子一人見当たらないのだけが唯一の救いであろう。

『オ腹減ッター』
「「“コレ”、食ベチャオウ」」
《食ベチャエ食ベチャエ!》
【喰イ潰セ! 歌イ出セ! ホラ!】


「そうだ哀れな子どもたち、継ぎ接ぎ狂ったこの世界の、綺麗事は剥いで捨てちゃおう、――僕と一緒にね」


何処か遠く、しかし近い場所で、“彼”が囁いた。紅子達に聞こえる筈も無かったが、その妙に冷めた感情の欠片位は、緑利になら届いたかもしれない。


「さてお嬢様方、どうしようか?」

 腹を空かせた餓鬼どもに“コレ”呼ばわりされ、今にも跳び掛かられそうになりながら、一切の焦りも動揺も無く。阿藍は片手を顔の横まで持っていって、人差し指の先で額の横辺りをとんとんと軽く叩きながら、おどけたように口元を歪めてみせた。ひょうきんな顔をするつもりだったようだが、肉食獣が牙を剥く直前のようにしか見えず、彼女の老いてなお枯れぬ獰猛さが露わになっただけだった。

 どうしようか、と聞かれても、恐らく紅子と緑利に残された道は、そう多くは無い筈だ。


>>紅子&緑利


【いつもお待たせして申し訳ありません。急展開ですが、少し流れを動かさせて下さいね】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
4ヶ月前 No.1508

塚守來安 @iwing ★1hguPJXUDx_kfn

【電脳蟲の巣/ 安倍主税】


 今の咎女には主税の言葉は届きはしない。
 ただ、その言葉が相沢薙の心境に影響を与えたことは確かなようだった。

「そうか。なら咎女、アンタとは相容れねえな。ただ、これだけは言わしてくれ。正義だとか悪だとか、俺はそういう月並みな一般論を口に出しているんじゃない。そして、お前の事を悪呼ばわりしたつもりもないしな。お前には俺の言葉が全部、綺麗事か世迷言かに聞こえたかもしれないが。何が正しくて、何が正しくないかなんて正直、俺でも分からないね。ただし、生きていく事ってそういうことなんじゃねえの? 誰もが暗闇の中を手探りで進んでんだよ。今の世相の中では特にな。人間とアヤカシの共存が正しいかなんて結局は、誰にも分からない。それでも前に進みださなければいけない。一人ひとりが為すべきことを為しているんだ。翡翠が何を思って、この世の中の在り方を変えたのかは分からないが、今となっては知る術もない。それでも、お前はそれを否定する。つまりそれは翡翠の遺志を拒絶するにも等しいことだ。理解してるか? アンタはまた自己矛盾に陥っているんだよ。口先だけでは姉の事を想いながらも、その腹の中では権謀術数、如何に他者を出し抜くことしか考えていやしねえ。だが、俺は別にお前のことを責めているわけでも、ましてや否定しているわけでもない。アンタはアンタ自身が言うように、自分の正しいと思うことを為せばそれでいいじゃねえか。相澤薙、聞いてるか? アンタもアンタ自身の姉に倣うように、自分が正しいと思う道を選択すればいいんだ。俺の事はあまり気にしてくれるな。アンタは人一倍優しいようだから、ちと難しいことなのかもしれないが」

 主税はそこで、ここに来て初めて微笑(わら)った。
 その理由は彼にも分からなかったに違いない。ただし、相沢薙が世界を天秤に掛けてでも、結局は姉である咎女の方を取ってしまうだろうという事だけは分かっていた。


 その時、何もない空間に、その場には似つかわしくないであろう穏やかな響きが広がった。

「やっと話が終わったようだね。お前はいつもムダに話が長くてイケない」

 物腰がゆったりとしていながら、どこか棘を含ませた口吻で声の持ち主がその姿を現した。
 まず最初に、人型の式神がどこからともなく表れ。それが瞬く間に、人間の女性の姿を模し始めたのである。前時代的、いや、それよりももっと古いかもしれない。天の羽衣のような衣装を身に纏った、気品に溢れた女の妖であった。清楚な外見とは裏腹に、その表情は気の強いサディスティックな雰囲気を湛えているものだった。長髪を一つに結って、それを後ろに流している様はまるで清流の如く。髪の一つ一つが繊細でまるで絹のようであった。体は雲のように軽やかな様子で、主税の背後を浮遊していた。着ている着物や髪は風も起きていないのにゆらゆらと揺れていて、どこか幻想的ですらあった。その腰に、一振りの日本刀が帯びられている。ハナズオウの花弁が散りばめられた豪奢な拵には似つかわしくない、反りの深い豪剣で、彼女自身の華奢な腕で振るうには些か大き過ぎるようにも思われる。陰陽のマークが描かれた柄頭には、彼女のちょっとした遊び心であろうか、可憐な二つの紅い房が取り付けられてあった。

「それでアタシは何をすればいい……?」
「先ず、お前にはこの場を脱してもらい、御三家や巖児の兄貴に、咎女が生きていること、そして奴が何か良からぬ事を企てているようだかから警戒するようにとの趣旨の、伝書を送って欲しい。俺が咎女の目を欺いて隙を作るから、お前はその内に京都へ飛んでくれ。お前の能力があれば、たとえ結界に放り込まれようが、異次元に送り込まれていようが問題はないはずだ……って。嘘だろ……冗談じゃねえ。咎女が二人に増えたばかりか、首がそれぞれ一つずつ増えただと……ッ!! 咎女一人を騙くらかすだけでも大変な荒業だってのに、全部合わせて四人もの咎女を相手にするなんて無茶だ。不可能だ……な、何だ、空の様子が……あ、あれはッ!! 巨大な目だと……ッ!! この世のものとは思えねえ、一体あれは何なんだよ!? そもそも此処は何処だ!? それに……クソッ!! あんな気持ち悪いものに見張られてたんじゃあ迂闊に動けられないじゃねえか。四人の咎女たちとあの巨大な目を相手にして、本当に隙なんて作れるのか? どうする、考えろ。なけなしの頭脳で考えろ。今までもそうしてきたじゃねえか。雫(アヤメ)、お前も何かいいアイデアがあったら教えろ……って、えっ?」

 気付けば主税は斬られていた。背中をパックリと袈裟懸けにされ、地に伏す。背中から夥しい量の血が流れていた。真っ黒の暗黒の地に紅の液体が広がる。血腥い鉄の香りが一面に広がるが、それを感じている余裕は主税にはない。血を流し過ぎている。頭が朦朧としていて何も考えることができない。体中を巡れる血液が外へと漏れ出し、全身から熱が奪い取られるような感じを覚える。手足の感覚が既になくなっている。やがて胸が苦しくなり呼吸困難に陥る。死に近づくとはそういうことなのかもしれない。そんな中、彼が辛うじて背後を振り返るとそこには、血で塗れた、反りの深い豪刀を片手に浮遊する雫の姿があった。彼女は一振りで、その血を振り飛ばして刀を鞘に納めた。

「その目は知ってるよ……信頼していたものに裏切られた時の目をしている。アタシは何度もそのような目を見てきた。あぁ、そうさ。たった今、アタシがお前を斬ってやったのさ」

 目を細めながら主税を見下ろす雫の表情には、冷徹な色が帯びていた。たった今、人を斬ったというのにやけに涼しい顔をしているのは、この女が日常的に人を斬っていたということの証左だろうが、彼女の言葉を信じるなら、雫という妖は何人もの人間やアヤカシを裏切ってきたということになる。

「……どうしてアタシが裏切ったのか疑問に思うだろう? 何故アタシがこのような蛮行に及んだのか、お前は不思議に思っているはずさ。しかし、そもそもどうして、神の眷属たるこのアタシが、人様の言いなりになると思ったんだい? ましてや人間の小間使いなどと……ッ!!」

 主税を嘲笑うかのようにカッと目を見開くと雫は、更に口から舌を出して相手を挑発した。
 雫は端整のとれた美しい大人の女性なのだが、ああいった子供じみた行為をとることを考えると何だかちぐはぐな感じがする。彼女はそういう性質の妖なのだ。左を向けと言われれば右を向く。白を黒と言い、空を海だと嘯く。二本の足があるのに中空を歩き、途中の道程をすっ飛ばして瞬時に目的の場所へ飛び立つ。上に従うものがあるのならばそれに従わず、己の指針に則って行動する。つまり真名で縛り付けられていようがおかまいなしに反抗することができるのだ。アヤカシの中では異例中の存在。それは式神という型に押し嵌められていても変わらなかったのである。

「アタシはそういった星の下に産まれたのさ。神にもアヤカシにもなりきれない、中途半端な存在として。それがアタシの本質さ。お前を一思いに殺さなかったのは、アタシの力を元通りにしてくれた、ほんの恩返しに過ぎない。今から死にに至るまで、自分の人生をたっぷりと思い起こすといいだろう。お前が生きた僅かな時間が何であったのかを。そして、後悔してゆきながら逝ね」

 雫の手には、主税から奪い取った鍵があった。芦屋氏秘蔵の倉庫を開くための鍵である。

「お前を殺した後は巖児(あの男)を殺すつもりだったけど。乖環(ヒナワ)の楽しみを奪ってしまうのも難だし、さて、これからどうしよう」

その目がゆっくりと、咎女の方へ向けられた。


>> 咎女、相沢薙


【私の方は楽しんでやっておりますが、咎女本体様にはご自身のペースで続けてもらいたいです。レスはいつでもお待ちしておりますのでご心配なく】

4ヶ月前 No.1509

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_1zu

【京都駅大階段/鈴木紅子】

 阿藍の言葉を聞いて、紅子の背中に一瞬薄ら寒いものが走ったが……よく考えたら緑利のことで彼女が焦る必要など何処にも無いのだった。何度も言うが、紅子の目の前の歩く機密事項は、本人に全く以て隠す気のない公然の秘密でしかないのだから。その証拠に、緑利はもう、自分の正体が陰陽師経由でバレようがアヤカシ経由で知られようが関係は無いという顔をしていた。
「……ほな、生き残った時の報酬はあのビルの土地代ってことで。将来的にはあそこも手狭になるやろし」
 現在は事務所兼自宅、物置として使っているビルを、紅子は更に改造してとあるものに利用する計画を立てているのだが、それはまた別のお話というやつである。詰まる所これは、忠告――自分で巻き込んでおいてそれも無いだろうが――とも警告ともとれる阿藍の言葉に、自分は死んでやるつもりはないと言っているに過ぎない。そもそもこれまでだって、幾度となくとんでもない死線を潜り抜けてきたからこそ、阿藍も緑利も亀の甲より年の劫を実践できているのだろうし……閑話休題。

「ふむ、ならば私は私の認識は間違っていなかったと捉えておくことにするよ。あなたもあなたで面白いことを言ってくれるね……世が世なら魔女として告発されてもおかしくない。まぁ、今の日本で魔女裁判なんざ起こそうものなら母さんも私も……と言うか陰陽省関係者は全員火炙りは免れないだろうけれど、火炙りごときで私達は殺せないだろうから絶望……いいや、安心すると良い」
 緑利の言い回しも相変わらず長ったらしく回りくどいものではあったが、紅子と同じく阿藍の言葉を受けた上で紅子と同じ答えを返しているに過ぎない。何だかんだ言って擬似母娘のこの二人も似ている所はあるようである。
 しかし似非三世代が揃ったからと言って優雅に午後のお茶会など、そもそもこの面子で叶う訳がなく。
 普段は大阪に居る紅子と、何処にいるかも分からない緑利が偶々京都に居るタイミングで少なからず因縁のありそうな老女が現れ、彼女と多大な因縁を抱えるのであろう事物の話を聞かされ、予定調和のように大量の敵が現れた。しかも周囲に一般人の気配はないと来ている。
 そうなれば問われるまでも無い、紅子の選ぶ道は一つ。

「じゃかぁしいわクソガキ! こちとら小難しい話の途中やねん、邪魔するんやったら纏めて焼き」
「メメント・モリ」

 刹那、辺り一面を覆い尽さんばかりの餓鬼の群れが‘消えた’。
 すぐさま応戦することを決めた紅子が、自らの得物である鉄線に炎を点し、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすかのように叫んだ直後、というかその台詞すら最後まで言い切らぬうちに起こった出来事である。
 紅子の影に隠れながら、その罵声に掻き消されながら呟き、小さく指を鳴らして見せた緑利の手によって。
「さっきも言ったよね母さん、落ち着いてって。餓鬼なんて八割方年から年中燃えてるよ、下手したら火だってあの子達は食い潰すさ。それに本当に此処に人が‘近付けない’とは限らない。火の手をあげるなら先に結界くらい張っておいた方が良いし、余り過激なことも言うものではない思うよ……また硝子天井落とすつもりかい?」
 小鬼とはいえ百を超える敵を一掃しておきながら、涼しい顔で緑利は言う。対照的に顔を引き攣らせる紅子の様子などお構いなしで、更にその言葉は続くのだった。
「一応晩餐会の記憶でお持て成ししてるけどどうなるかな……まぁ数が数だからね、呪符を見付けるのも早いだろうけど3分くらいは保つと思うよ。それでどうする? 母さんが施餓鬼供養とか出来れば良いけどそうもいかないもんね……日下部さんはこの子達纏めて追い返せたりする? 因みに私のお勧めとしては、この子達は適当な陰陽師かお寺に放り投げて元凶を引き摺りだしてぶっ潰すことだよ。ねぇ日下部さん? 私達にこんな無礼を働いた彼奴、って誰のことなのかな……何処に、居るのかな?」
 そうして緑利は、モスグリーンの瞳をただ静かに阿藍に向ける。

 彼女の能力……基、行使出来る術式の一つ、メメント・モリ。それは対象を何重にも貼った結界に放り込み、相手が術の媒介となる呪符を見付けるまで延々ととある記憶を映像として再生し続けるものである。その力を利用し、緑利は現れた餓鬼の群れを隔離することを選んだ。それは紛うことなき時間稼ぎで実際は何の解決にもなっていないのだが、彼女にとってはこのまま話を続けることの方が重要なのである。勿論、応戦するなら周囲への被害は最小限に留めるべきだし、敵の情報も欲しい、何より百以上もの敵を相手取るなら一纏めにしてしまった方が楽だという打算もあったが。
 そんな緑利の考えが読めてしまう紅子は、今度は彼女が背後から緑利を見守りながら、取り敢えず人避けの結界を展開したのだった。

【折角出て来て下さった鬼さん一時強制退場と言う暴挙に出ました、済みません。次レスで戻して頂いてもそのまま放り出しても何でも大丈夫です。】

>日下部阿藍様

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4ヶ月前 No.1510

咎女 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【電脳蟲の巣→(回収)/咎女】


 ふいにけたたましい高笑いが、現実味の無い煉獄のような世界に響き渡った。

「アハハハハッ! ナンセンス! 安倍主税、オマエはまったくもってどうしようもないわねぇ! 相容れないどころか、アタシはオマエの存在を絶対に、完全に許容出来なくってよ。どんな形にしろこのアタシに意見した罪は重いわ、万死に値する。正義も悪も関係ない、この世で常に正しいのはこのアタシだけ。お姉様の遺志を拒絶する? いいえいいえ、アンタは何も分かっていないのねー……アタシはお姉様を拒絶した事など一度たりともありませんわ、ただ少し認識にズレがあ・る・だ・け。アタシがどんな時でも考えているのは、我等ヘルハウンド三姉妹の絶対的栄光と、未来永劫共に在れる幸福のみ! 世界中のあらゆる者どもがどうなろうが、みんな纏めて地獄に堕ちようとも、我等三姉妹こそがこの世の女王なのだから、その配下たる者どもはアタシ達の為に死ねるのは当然の幸福なのよ! 翡翠お姉様や薙もいずれ分かってくれる、アタシがどれ程姉妹の事を愛しているかを。そして、アタシが完璧に正しいという事も、ねぇ」

 主税の言葉に、咎女は口元を片手で隠しながら笑い続け、彼を存分に嘲笑い続ける。咎女には最早誰の言葉も届かないのだ、恐らく薙の言葉も、そして翡翠の言葉も。『千年京事変』で最愛の姉翡翠を失うだけでなく彼女に捨てられたと思い込み、鈴木紅子の手で永い人生で初めての完全なる敗北と最大の屈辱を味わい、咎女はこの約二年の間に更に狂気を深めていった。自分が狂っていると気付いていないままに正常を語る者程、恐ろしい者はいない。今や咎女は狂いの化身と言っても過言ではなかろう。

 その時、主税の背後に忽然と一人の女が姿を現した。その現実味の無い天女のような装い、人間とはかけ離れた作り物じみた美しさ、そして高飛車ながら高貴さを感じさせる言動。人間ではない、守手のアヤカシであろう。咎女は高笑いを止めるも、特に驚く様子も警戒する素振りも見せず、何処か冷めたように目を細めて彼女と主税を見つめる。双頭になっていた首も瞬く間に一つに戻り、これから起こる事をある程度予測出来ている様子だ。
 そして、ふいに巻き起こる惨劇。主税の背から噴き出す血飛沫は、まるで鮮やかに燃える焔のようだ。地に倒れ伏した主税の背中からおびただしい血が流れ、彼が朦朧とした力無い動きで振り返る。その背後で艶やかに笑う女の姿は、何処か咎女に似ているようだった。

「――――つまんない」

 血腥い事態を何より嫌う薙に目前の真っ赤な悲劇が見えないように、咎女は薙の両目をそっと片方しかない手で覆う。そして、先程までの高揚が嘘のように、凍てついた無表情でぽつりと、一言吐き捨てる。
 その顔は、まるで玩具を壊してしまった幼い少女のようだった。

 この偽りの世界を支配するように、天空を覆い見開いていた巨大な一つ目が、静かに閉じていく。

「ま、いいわ。アタシはアタシの好きなようにさせてもらうし、アナタもアナタの好きなようにすればいい、雫とやら。誰を殺めようが、誰に殺められようが。誰を死なそうが、誰に死なされようが。そんな事は些細な結果に過ぎない、我等は本能のまま、思うがままに生きる事を許された神の獣。存分に遊び、存分に喰らい、そして満足したら果てるがいい」

 咎女の言葉が終わるか終らないかのうちに、気付けば倒れたままの主税と、彼の守手“だった”雫は気付けば何処かの竹林の中にいた。咎女が二人を【電脳蟲の巣】から解放したのだ。
 ざわざわと竹の葉が風に揺れ、悍ましい不穏に泣くように聞こえる。まるで、これから始まる恐るべき事態を恐れるかのように。

「さて、そろそろお時間ね……薙、また近々お逢いしましょう。アタシももうすぐソチラに着くから……そう、アタシはもうすぐ、再び日本(ひのもと)に舞い戻る。その時、先程の問い掛けの答え、直接聴かせて頂戴、――アタシの愛しい、たったひとりの妹」

 ふいに空間そのものがゆらりと揺らいで、それに合わせて咎女の姿も幻のように歪む。薙が気付いた時には、彼女は京都駅から程近い雑踏の中に立ち尽くしている事だろう。多くのヒトやアヤカシが笑い、手を繋ぎ、生きる喜びを噛み締めて歩くその中に、ふいに置いていかれる薙の気落ちはどんなものだろうか。


「さあ、来たれ、黒き死よ」

 たった一人、異形の空間に君臨し。咎女は、まるで少女のように、小さく囁いた。


>>主税、薙


【お待たせしました、いつも時間ばかり掛かって申し訳ありません。主税さんの急展開にはらはらどきどきですかが、一旦咎女は回収させていただきたいと思います。薙ちゃん本体様、主税さん本体様、お相手下さってどうも有り難う御座いました! 久々に咎女を動かせて、可愛い妹ちゃんと手強い陰陽師さんとお話出来て嬉しかったです。またお時間と場所が合いましたら、お相手頂けたら有難いです】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
3ヶ月前 No.1511

日下部阿藍 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【京都駅・大階段/日下部阿藍+唄女&戯、正体不明の女】


「……冗談だから心配しないでおくれ。お前さん方の周りには、そんなに口の軽い輩は居やしないさ。ただ、わたしはこれでも日本(ひのもと)の暗部を管理しなければいけない立場に居るものだからね、幾つか強引な手を使って調べさせてもらっただけだよ」

 紅子の顔を見て、阿藍は少しだけ口元を緩めると、片目だけを閉じて軽く頷いてみせる。確かに緑利の正体については調べ上げているが、それは紅子や緑利の周囲の人間からの情報ではない。彼女達の周りに、彼女達の情報を売るような輩は存在しない。それだけは明言しておこうと、阿藍は穏やかな口調で告げる。

「はは、抜け目ないお嬢さんだねえ。でも、土地代だけでいいのかい? ビルの改修費や周りの駐車場の整備費辺りも上乗せしておこうか? 何せ命を懸けてもらうんだ、その位の代償を支払う覚悟は出来ているよ」

 乾いた笑い声が阿藍の口から漏れる。土地代とはなかなか大きな話だが、阿藍は更にそれに幾つかの条件を上乗せした。ただの依頼と考えるにはあまりに多過ぎる費用だが、話次第ではもしかすると少ないのかもしれない。“自分は死んでやるつもりはない”、揺るぎない彼女達の意思を受け取ったからこそ、阿藍は何処か満足そうに口角の片側のみを吊り上げた。

「血の匂いで分かるんじゃないのかい、お前さんならば。わたしの身体には、確かに燃え盛る業火のごとき“修羅”の血が流れている。それは受け継がれ、今もこの世界に影響を与え続けているという訳だ……わたしがそれを望むにしろ、望まぬにしろ、ね。魔女、か。本当に、お互いに面白い事ばかり言っているねえ。ま、火炙りになるのならわたし一人で十分さ……誰一人、救えなかったわたしだから。全て片が付いた後なら、それも悪くない」

 緑利の言葉に返される答えは、明白な回答として彼女に返されるだろう、それを聞く紅子に対しても。内容だけ聞けば自虐的にすら聞こえるだろうが、底知れぬ不敵な笑みを浮かべたままの顔も、強く真っ直ぐで硬質な響きを帯びたままの声も、その一切が後ろ向きな意思など孕んではいない。ある意味で暴走気味に己の信念に突き進む事こそが、この“修羅”の一族の生き様なのだろう。

 そして、まるで必然のように出現した敵。それは尋常な数ではない、あらゆる存在を貪り尽くす餓鬼の群れ。どうやら敵は無益な殺生を避けたい、ある種の“平和主義者”らしい。不自然に一般人の姿が見受けられない辺り、安らかの超自然的な力が働いている様子である。
 ざっと見積もっても百体はいるだろう餓鬼の群れが一切に紅子達に飛び掛かろうとした刹那、その姿は纏めて忽然と消えた。まるで元から存在などしていなかったかのように。

「――いやはや、誠に恐れ入ったよ。まさかここまでとは思わなかった」

 ぱん、ぱん、と、緩やかな拍手の音が空々しく響く。おどけたように一度肩を竦めてみせた後、緩々と手を叩く阿藍の姿は、まるでかの日の最終決戦前、“千人斬りの修羅”が対峙した者達の贈った拍手の再来のようだ。

「餓鬼とはいえ、あれだけ数は居るとどんな怪異を齎すか予測出来ないからね、お嬢さんの判断は実に聡明だ。それに硝子天上を落とすのはもう勘弁しておくれ、あれ、直すのが意外に手間らしいんでね……じゃあこの住所に纏めて送り届けてくれるかい? わたし“達”の“研究機関”があるんだ、其処なら上手く事を収められる」

 阿藍は拍手を止めると、懐から一枚の名刺を取り出し、すっと流すように緑利に放った。まるで術でも掛けられているかのように、ごく自然に名刺は緑利の手元に落ちる。特に趣向が凝らしてある訳でも無い、ごく当たり前の名刺。其処には細かい字で京都市内のとある住所が書かれている。更にそこに刻まれているのは、『警察庁警備局特別顧問 兼 国家安全保障局妖・陰陽道対策課局長 日下部阿藍』という肩書と名前。
 元々一般人が寄り付かないようにされている上に、紅子によって人払いの結界も張られた。緑利からもっともな質問――大量の餓鬼を使わしたのが一体誰なのか、そしてその者は何処にいるのか――に、阿藍が答えようと口を開き掛けた、その時。

「あらぁーんっ、あらあらあらあらー、うっそみたいですぅー! いっくら何でもこんな簡単に餓鬼ちゃんたちを消しちゃうなんて反則ですぅ! 『……アンタって本当に時と場所を選らばず、空気を読まない女よね』 あはっ、それって褒め言葉ですかぁ?」

 場違いに明るい、間延びした女の声。大階段には紅子と緑利が居て、その少し上の段に阿藍が居る訳だが、更にその最上段のあたる広場に、やたらと背の高い黒尽くめの女の姿が見える。その隣には、黒い生地に散る真紅の紅葉が舞う被衣(かつぎ。頭からすっぽりと衣を被って、懸帯(かけおび)で結んで止めるという高貴な女性の外出時の出で立ち)で全身を覆う、恐らく女と思われる人物の姿も見えた。

「……次から次へと、邪魔臭いね。ではこれ以上邪魔される前に簡単明瞭に言っておこう、あれらを操っているのはかの悪名高き鬼、茨木童子の息子さ。そして奴には、――――“世界の敵”芦屋漆蓮の心臓が移植されている。あれらを潰せば、恐らく奴も顔を出さずにはいられなくなるだろうさ」

「やだぁ、潰すだなんてこわーいっ! でもでもぉ、わたしはとが『もうそれ以上何も喋るな! ……お邪魔致します、安倍紅子様とそのお連れ様、そして芦屋阿藍様とお見受け致します。ワタシは戯(あじゃら)、この子は唄女(うため)と申します。ある御方の命により鬼の軍勢たる“闇の末裔”と与して、貴方方を懐柔する為に参りました』 ……またわたしの台詞ぅ、いっこも残してもらえませんでしたぁ!」

 餓鬼が消えたと思えば次の邪魔者が現れ、阿藍はうんざりした様子で溜息を吐く。そしてその疲れたような口調のまま、単刀直入にとんでもない言葉を口にした。あまりに自然な流れ過ぎて、聞き逃してしまいそうだが。
 一方その更に上では、馬鹿馬鹿しい程甘ったるい声で、恐ろしく長身な女、唄女はいやいやと首を横に振りながら子供じみた様子で声を上げる。だがその後ろ、後頭部にぱっくりと開いた牙の並んだ大きな口が唄女の代わりに話を進めていく。凶暴そうな口にも関わらず、その終えは聞き惚れそうに美しく澄んだテノール。しかし語る内容は、これ以上ない程に物騒なものである。

 ふいに阿藍が車椅子の背もたれに取り付けられている、蓮の花を模った銀の持ち手が特徴的な黒檀の杖を後ろ手で引き抜いた。そしてその先端をぴたりと唄女の胸に向けると、片目だけを器用に歪めて、深い溜息を一つ。

「…………その姓は当の昔に捨てた、わたしは日下部阿藍だ、――その名で私を呼ぶんじゃねえ」

 怒気と、殺気。声を荒げている訳ではないが、確かに伝わる強い気配。
 相変わらずニヤニヤと締まりのない顔で笑う唄女と、一切の言葉も発しないままでいる正体不明の女。二つの影、奥底知れぬ敵を前にして、今や否が応にも火蓋は切って落とされてしまいそうだ。


>>紅子&緑利


【大変お待たせしました。餓鬼についてはどちらに転んでも大丈夫なように考えておりましたので、お気になさらず、です。この後は戦闘に持っていっても、会話で片を付けて頂いても。紅子ちゃん達にお任せ致します】

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3ヶ月前 No.1512

セレスティア本体 @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★sqMH8Q2zCH_wZ2

【電脳蟲の巣→京都駅近く・雑踏/セレスティア】
咎女の言葉はとても甘美で優しい。だからこそ、アヤカシと人間が共に暮らす場所でありたいという思いを持つセレスティアさえも
その言葉に惹かれかけているのだろう。
そして、主税の声がなければそのまま引き込まれていた可能性は高かった。

「私……私は…」
薙は姉とともに暮らしたいという思いと、しかし人とともにある世界も素晴らしいという思い。
その狭間で限りなく揺れ動いていた。
天秤にかけられない。この思いはどちらも重すぎ、彼女の天秤そのものを壊しかねないほど重い選択だろう。

答えが出せない。
彼女は結局咎女の言葉にずっと口を閉じる。

自分の正しいと思った道…
主税の解いた言葉によって、ひとまずこころは落ち着いて、改めて両者の顔を見ようとした…

だが、不意に現れた闖入者に、意識は一気に現実へと引き戻される。

「……あっ…!!」
主税が、裏切りの一撃を受けたようだと感じる。
目の前でまた、あのときのような悲劇が起こっている用に感じ、
一気に恐れに変わっていく

「お、お姉ちゃん…私やっぱり…」
何かを口に出そうとして、突然幻のように歪んでいく咎女をみて…

「待って…!!」
手を伸ばしたときには、その姿は霞のごとく消え失せてしまっていた。
気がつけばそこは慣れ親しんだ、ヒトとアヤカシが仲良く歩く場所。

だが、途方もなく寂しさが溢れ出してきそうになった。
「…一人でも生きていくって…そう決めてたのに…」
突然現れた姉は、自分の心を激しく乱したように感じた。
何か不安を感じて、京都駅の方に足を運んでいく。

「やっぱり…歩いてないと落ち着かない…気がする…」
そうつぶやいて京都駅の中へと足を運んでいく。
そこにいる陰陽師、あるいはアヤカシは彼女の存在をどう見るのだろうか。

>>ALL

【大変遅れてしまい申し訳ございません!こちらとしても別の場所に移動という形にさせていただいたようですので、
 ひとまずは京都駅に居る皆様に顔を出してみようと思います。時期があってるかは不安ですが、そこはなんとかお願いします。】
【咎女さんとまた会話ができたこと、こちらこそ嬉しく思います。主税さんとも言葉少なではありましたが心動かされる形になったこと、嬉しく思います。新しい展開がありそうな様子ですので、これからも応援をしていきたいと思います!】
>>咎女さんと 塚守來安さん

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3ヶ月前 No.1513

塚守來安 @iwing ★1hguPJXUDx_GbW

【伏見稲荷大社(移動)→伏見稲荷大社周辺/ 芦屋巖児】


「無理だな」

 芦屋巖児は塚守火照命からの提案を一蹴した。
 昼下がりの市中。二人の男女が偶然にも邂逅を果たし、恋人の如く肩を並べながら歩いていた。いや、実際には二人はカップルではないのだが。嘗ての姉貴分だった女性と出会い、すっかり気を許していたのである。
 彼女から芦屋家に戻る気はないかと問われていた。巖児が断りもなく芦屋の家を去ってから十数年の年月が経つ。芦屋の人間に疎まれるような所業も数多く行った。

「大体、どの面下げて芦屋の敷居を跨げりゃいいんだよ。第一、あそこにはもう俺の居場所は無え」

 そっけないように答える。芦屋氏とは完全に縁を切ったつもりでいるので、考えるまでもないことだった。

『はっ、柄にもなくセンチメンタルなんだね』

 相手の表情を見定めるかのように、キツネのように吊り上がった目を細める。もともと感情の起伏が少なく氷のような眼をしているために、ガンを飛ばしているように見えてしまっているが、そこはかとなく相手に対する気遣いも感じられた。

「別に、僻んでいるわけでも回りくどく比喩を使ってるわけでもないんだぜ? そのまんまの意味だ。今の芦屋は【政治屋】ばかりが蔓延っていて俺たちのような【武闘派】の陰陽師は買い殺されてるんだよ」
『……』

 火照命は黙ったまま相手の二の句があ継がれるのを待っていた。

「……ハッキリ言って今の芦屋は死に体だ。身内同士で固まって引き籠ってる安倍氏の方が、却って節操があって好感が持てるんだが。しかし(明治新政府が東京に起こってからできた)政府とのパイプを利用して政治家共に媚びを売ってる芦屋氏の連中には、正直言って反吐が出るぜ。その両氏の中立にいて塚守氏は静観を決め込んでいるようだがなあ……で、そういうお前は塚守家には戻るつもりはねえのかよ?」
『安倍氏と芦屋氏の間を取り持つために、塚守氏はいるようなものだからね。まあ、今のところは均衡を保っているようだしそれでいいんじゃない? アヤカシ――というより犬神一派――との双方不可侵の協定が守られているからこその怠慢、っていうのも確かにあるにはあるけどね』

 自身の意見を述べるも質問をはぐらかす意図も汲み取れるものだった。しかし、巖児はそんな些末なことなど気にならなかったようだった。

「それを言うならアヤカシも変わったぜ。今の犬神が何を考えているのかまでは知らんが、昔と違って偉く大人しくなりやがった。過激派と名の知れる咎女一派は忽然と姿を晦ますわ、人間の事を良く思わない連中は翡翠んとこに付いて行くわで、結局残ったのは平和を愛するような頭がお花畑の奴等だもんな。挙句の果てには、おべっかを使ってまで政界のお偉い共を取り込もうと考えてやがる。そういう点では今の芦屋氏と差ほど変わらねえがな」
『フフ……何だかそれが悪いみたいな言い方ね。やはり芦屋の血は争えないっていうか。これじゃあまるで今の世の中に不満があるような言い方じゃない』

 話が弾んで昔の義姉弟だった頃の記憶が思い起こされたのか巖児をまるで、屁理屈を捏ねる子どものように扱ってしまっていた。もちろん本人にその自覚はなかったのだが。

「……誰だってそう思うだろ、こんな偽りだらけの善で塗りたくられた世の中じゃあな」
『はいはい、またそれね。その、須らく物事を見下すようなクダラナい厭世観、いい加減に直した方がいいと思うよ。巖児、あなたが來安と未だに関係を持っているのが不思議でならないわ。まぁ、あの子はあなたの考えを全て肯定するような"イエスマン"だから問題はないんだろうけれど』

 そして、こんな風に冗談を飛ばすようにもなっていた。

「はぁ? アイツはそんなんじゃねえよ。それに、アイツも今の世の中がオカシいと感じてるからこそ、それを実際に行動に移してんだろ」
『ごめん、それは素直に否定させて。あなた、本気であの子の事が分かってないようだから』
「ちょっと待て……あ? なんだこれ?」

 そうして暫くの間、火照命と雑談に花を咲かせていると突如、巖児の元に一枚の紙切れが空から降りて来た。しかも同じような走り書きが、安倍本家、芦屋本家、塚守本家の元にも届いていたのだ。その紙には流れるような草書体でこう書かれていた。


《無常の敵 未だ野に現れず》


 書かれてある内容の意味が読み取れず、天から舞い降りてきた例の一切れの紙切れを、火照命に差し出して読ませてみようとするも、どうやら彼女自身もこの文章を送り付けてきた意図すら推し量ることができなかったようだ。


―――――


『あー、またこんなところで道草食ってるーッ!! それに知らない女の人も一緒に、サイテー!!』

 一人の女子高生が遠くの方で、巖児たちの方を指さしながら黄色い声を張り上げる。すると、巖児がばつが悪そうな表情をして火照命に別れの挨拶を告げ、早々にその場からの離脱を図ったのだ。どうやら二人はお互いのことをよく知っている間柄のようである。
 人混みに紛れ込んで追っ手からの追跡を阻むことには成功したが、先ほどの紙切れを火照命に預けたままだったのを思い出す。が、今さら取りに戻るわけにもいかず、巖児は街の中を当てもなく歩いていったのだった。


―――――


「――――でだ。つまり、事実上、被害者は"ゼロ"ってことだ。後の事はそっちに任せた」

 約束の場所で安倍主税と落ち合うことができなかったため、彼の事務所に直接電話を掛け、例の事件を調べ上げて得た情報及び私見を受話器の向こう側の相手に伝えていたのであった。巖児は携帯通信機を所持していないので公衆電話から電話を掛けている。

『もちろん今回の神隠しの件についても、ワタクシたち安倍の者たちに任せておけばいいのだけれど、こればかりは……はぁ、困るのよ。だって被害者がいないのでは、そもそも事件なんて起こってないのと同然でしょう?』
「そんなこと俺が知るか。俺は事実だけを伝えたんだ、それをどう解釈するかは安倍本家の人間が決めることだろ」

 相手の嘆息が受話口から漏れ出るのを再び耳にする。どうやら相当難儀な案件を持ち込んでいるのだと、巖児は今更ながら相手の心情を慮っていた。

『実際にそれをどうこうするのを決めるのは京都府警のお偉い様なのだけれど、分かったわ……一度これを本家の人間に通してみて相談してみる。身内の者だけで処理するのが理想的なのだけれどそうも言ってられないご時世だし』
 千年京事変以来、陰陽師やアヤカシの存在が明るみになり、陰陽省が健在だった頃とは比べ物にならないくらい安倍氏は秘密主義に走っている。神秘の保護を名目に、安倍氏が千年以上培ってきた秘術を一部、半永久的に封印したのもそれが公になるのを恐れたためだ。そして、神秘保護の一環として、全国のありとあらゆる情報を収集するために、内閣官房の内閣情報調査室を模範及び発展させた独自の情報調査機関を発足させてもいた。その多くは実態を公にせず、質屋や探偵事務所などでカモフラージュ(擬態)し世間一般に上手く溶け込んでいる。一部の情報は警察内部と共有し、また現在の警視総監とも深い関係を持っている機関なのだ。

「他所の家のややこしい事情に首を突っ込むつもりはねえ。後はお宅らの勝手にすればいいさ」

 電話を切り公衆電話ボックスから出た。既に日は傾きかけている。今日の空はやけに沈んでいるようにみえたのは、それが嵐の前の静けさだったのかもしれなかったが今の巖児には知る由もなかった。


>> ALL

3ヶ月前 No.1514

紅子 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_jVC

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3ヶ月前 No.1515

日下部阿藍&滝夜叉姫 @papillon ★hl3oQC7qkm_mgE

【京都駅大階段/日下部阿藍+正体不明の女改め、滝夜叉姫(唄女&戯→(回収))】


「そうかい、欲張りなようで欲の無い子だねえ……関西でのやり方というのに疎いわたしだが、そういうのならまあ無理にとは言わないさ。その信頼と実績をこの先も積み重ねて頂く為に、わたしもお前さん方に最大限協力するし、わたしにも協力してもらえたらと思っているよ」

 可愛らしいウインクを見せてくれた紅子ではあるが、確かに依頼料としてはすでに破格である、阿藍も彼女の様子にふっと小さく笑うと片目を閉じて答えてみせる。彼女ならば、いいや彼女達なら信頼出来ると、阿藍は直観していた。情報だけでしか知らなかった彼女達ではあるが、こうして話をしてみればその本質はある程度見て取れる。長い間、人間の暗部に触れてきた阿藍だからこそ、其処を見誤るつもりはなかった。
 芦屋漆蓮。現在、この世で最も恐るべき忌み名となったその存在。それを口にした時点で、彼女達を巻き込んでしまった事は阿藍とて重々承知の事だろう、故に紅子と同じく、その表情は最初から今まで、ずっと落ち着いたものである。

「末妹……おや、相澤薙の事かい? いよいよもって物騒な話になってきたじゃないか、まったく。ああ、今度そちらでゆっくり話をしようじゃないか、外だとこういう厄介事が起こりやすいから。わたしも最近は自由に外出も出来やしないんだ……どうにも、あいつらに監視されていて、狙われちまっているようでね」

 こちらが渡した名刺はそのまま紅子へ、そしてそれに加えて現れた呪符の存在に、阿藍は特に何も言わなかった。それよりも緑利の言葉で引っ掛かった事があるようで、阿藍は眉間に深い皺を刻んで一瞬考え込んだのは、相澤薙ことセレスティアの存在は近付いているという事実。恐らく偶然ではなかろう、何者かの見えざる力が働いているに違いないと、阿藍は顎の下に手を当てて目を伏せる。

 そんな中、均衡を破ろうとしたのは、唄女でも戯でも無く、彼女らの側に立つ正体不明の女であった。

「きゃあー! 熱い熱いー! こーれだから血の気の多い方々は苦手なんですぅ! わたしぃ、低血圧で朝も苦手だしぃ! 『ソレ、今、何の関係があるワケ!? バカ言ってる暇があったら下がりなさいよ!』」
『あちらもこちらも何をごちゃごちゃ申しておるのか存ぜぬが、――まずは妾(わらわ)の可愛い童(わらし)ども、返してくりゃれ』

 突如階段の上に燃え上がった悪魔の舌のごとき赤黒い業火、その壁を前に悲鳴を上げながらあたふたと逃げ惑う唄女を一切顧みる事なく、女は悠然と片手を前に差し伸べる。と、その手の前にぼおっと血の色をした六芒星の光の印が浮かび上がり、女はその手を緑利と阿藍の後方で転移の術式を組み立てる紅子の方へと向ける。同時に、緑利が紅子へ渡した一枚の呪符に、凍り付いたようにびしりと亀裂が走った。紙である筈の札に、である。それは氷の固まりが今にも砕けそうになる様に似て、何らかの外部からの強い力が掛かっているのは明白だった。

『悪いがそなたらの〈結界の出口〉、妾が貰い受ける』

 女が片手を上に向けていくと、魔法陣もそれに合わせて上へと移動する。やがて六芒星の中から騒々しい喚き声が聞こえ始めたかと思うと、ざあっと強い風が吹くと共に陣の中から先程の大量の餓鬼どもが次々に飛び出していく。とはいえ陣の効力なのだろう、餓鬼は地面には降りて来ず、そのまま六芒星の上空をふわふわと漂っており、まるで特撮映画か何かのようだ。百体程の餓鬼が浮遊している様など、あまりに現実味がない。しかも先程まであれだけ暴悪に騒いでいた餓鬼の群れが、餓鬼とは思えぬ静けさで眼下の様子を伺って黙り込んでいる。餓鬼にとって女の存在は、余程大きいらしい。

『さてさて、〈メンドーな術式〉とやらを組み上げずに済んで良かったの、感謝してたもれ……久方ぶりよのぉ、鈴木紅子。よもや妾を忘れたとは言わせぬぞ、影の京都≠ナ度々顔を合わせたであろう? そして……誰じゃ、その翡翠そっくりな女子(おなご)は』

 はらりと、女が顔を隠す被衣を自ら落とした。同時に、引き摺る程長い艶やかな黒髪がさらりと流れた。玉虫色に爛々と輝く瞳、近寄りがたい程に高貴な顔立ち、赤と紫を基調とした絢爛豪華な十二単。そして被衣を脱ぎ捨てると同時に漂い始める、悍ましい程に邪な妖気。
 悪意の塊のような、――――何処となく咎女に似たその女は、艶やかに、そして妖しく微笑んだ。

「……こいつは驚いた、まさかこの表舞台にあんな醜悪なのが出てくるとはね……滝夜叉姫、元咎女一派の重鎮だよ。紅子さん、知り合いかい? 唄女ははっきり言って大した事ないが、あの鬼女は一筋縄じゃあいかないこと、奴を知っているなら分かるね?」

 流石に笑みを消して、杖を構えたままの阿藍が小声で紅子達に語り掛ける。大量の餓鬼を引き連れて悠然と笑う女、その正体は平将門の娘である伝説の妖術使いだ。千年京事変≠ナは咎女の右腕として多くの陰陽師を屠った、恐るべき逆賊である。その鬼女が今、再び京都駅に現れ、何事かを告げようとした、その刹那。

「あっれー? 安倍紅子さんじゃないんですかぁ? 鈴木さぁんっ? もしかしてわたし、また人違いしちゃってますぅ? あちゃー……まぁたやってしまいましたー! 咎女様に怒られてしまいますぅ! どうしよぉ、ほんとどーしよぉー! 『ちょっと! あんまり頭振らないで! 酔う! 酔っちゃうから!』」

 凍り付いたような場の空気をぶち破る、悲劇的なまでに能天気な声。唄女は先程の紅子の発言を今頃になってすっかり真に受け、文字通り両手で頭を抱えて珍妙な様子で苦悩し始める。
 暫く黙って、無表情なままそれを見ていた滝夜叉姫だったが、ふいに片手を彼女らの方に向けると、にっこりと微笑む。

『五月蠅い』

 そのまま、翳した手ですうっと二人を空間ごと撫でる様に、ゆっくりと手を動かしていく。

「あぁ! 姫様ぁ!? ちょ、待っ……!!」

 と、まるで黒板に書かれたチョークの文字を黒板消しで擦るように、唄女の姿が忽然と掻き消えた。どうやら無理矢理転移させられてしまったらしい。
 それにしても、高度な転移術を印を結ぶ事もせずに駆使したり、呪文の詠唱も無く簡単に術で唄女を何処かへ飛ばしたり。ただでさえ高い妖力を持つ滝夜叉姫であるが、この二年で更に厄介な能力を手に入れた様子である。恐らく千年京事変′繧焉A何らかの〈目的〉の為に力を磨き続けたのであろう。

『さあ、これでようやく静かに話が出来るようになったわ。確かに懐柔、という言葉はあまり相応しいものではなかったかもしれぬ……服従せよ、我等〈鬼〉の一族に。今後我等は、人間ごときに傅き擦り寄る腑抜けた犬神どもを駆逐し、この平和に澱み腐れた世界に再び乱世を齎す。その障壁となる者を、我等は欠片も許しはしない……其処に居る日下部阿藍も、我等にとって目障りな狗っころなのじゃ。きゃんきゃんと騒ぎ立て、我等を嗅ぎ回り、この手に噛み付こうとする駄犬めが』
「随分言いたい放題してくれるねえ、ま、それだけわたしの存在が邪魔という訳か……要は怖いんだろ、このわたしが。わたしに調べ尽くされて、負ける事が恐ろしいんだろう
?」
『……貴様……』

 紅子と緑利を放ったまま、阿藍と滝夜叉姫は階段の上と下とで対峙する。二人の視線が交わる空間では、今にも火花が散りそうだ。それ程の殺気と殺意が交差している、アヤカシである滝夜叉姫はまだしも、人間である阿藍の気迫も相当なものだ。血を啜る悍ましき鬼女を前にして、一歩も退くつもりはない様子だ。

『そこな女子、何故かは知らぬが、そなたからはかの地獄の犬が長女、翡翠の気配を感じる。そなたも我等アヤカシの為に生きるが本望であろうて……その手で、日下部阿藍の息の根を止めよ。さすれば、鈴木紅子の命位は見逃してやらん訳でもない。さ、どうする? 妾は別にどちらでも良いのじゃ、そなたが断ればこの京都駅がそなたらの墓標となるだけじゃからな』

 急に滝夜叉姫がその涼やかだが狂気を孕んだ視線を緑利への向け、小首を傾げて語り掛けた。どうやら同士討ちが望みらしい、まるで観劇のように、仲間同士の殺し合いを楽しもうというのだからこの女の醜悪さが如実に分かる発言である。そして先程からの発言を聞くと、どうやら滝夜叉姫は緑利の正体を知らないようだ。
 阿藍はといえば、まずは緑利、次に紅子の方を見て、やれやれとでも言いたげに薄く笑って肩を竦めて見せた。回答は決まっているだろう、とでも言いたげに。


>>紅子&緑利(、セレスティア)


【レスをお待たせしました、引き続きお相手下さりありがとうございます! キャラは増えましたが、実はスレ主様お気に入りのこの子だったのですよ……! そしてセレスティア本体様、微妙な絡み方となりましたが、是非とも京都駅の大階段へいらして下さいませ!】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
3ヶ月前 No.1516

鎧の付喪神 @kaizelkai ★jMAPUVVmIc_mgE

【→京都駅近く・雑踏/刃金丸】


 世界的に変化が起きても、彼はゆっくりとその時の中で巡る。例え平和だろうが、争いになってようが関係無い。それが生きる者としての、誠意である。


濃い黒髪は変わらず、背中に【鎧】という文字と様々な刀剣や火縄銃が刺繍された派手な黒い陣羽織を羽織っている青年は手にあるスマートフォンを見ながら、歩いていた。目の前よりも画面だけを凝視している。周囲の人の流れを戦闘によって鍛え上げてきた勘や匂い、感覚による動きで交わしながら、進んでいく。一歩一歩と何かを探すようにして動き回っている。
そして、とある地点で止まり、指で何回かタップする。そして、やり終えた顔を見せて一息をついた。画面にはデフォルメされた鎧武者の付喪神とGETという文字が表示されていた。


「 ついに、ついに手に入れたでござる……!ふむ、何だか拙者に似てて親近感があったござるが、やっと手に入れたでござる。その地点で向かわなければ、げっと出来ないとは大変な遊戯でござるな。最近のすまほの遊戯も変わったでござるな……えーあーるもばいるげぇむといったか、面白いでござるなぁ。」


彼がやってたのはとあるARモバイルゲームの一つであった。鎧の付喪神っぽいそのキャラクターを手に入れるため、歩いていた。人が集まる場所が捕まえやすいという情報を得て、実行に移していた。結果はこの通り、成功した。こういうゲームは通行人にぶつかりやすいというが、常人離れした感覚を使って、避けてみたのだ。最初は不慣れだったが、画面に集中しながら周囲の人間を避けて歩くのも慣れると簡単なものである。念願のキャラを捕まえたので、休憩しようと思った視線の先に久しい姿が見えた。その者に大きな声と手を振って、近づきながら呼びかけた。


「 おーい、なーぎーどーのー。こっちでござるよー!」


スマホをいつもの巾着袋にしまい、かつて共に戦った少女を呼ぶ。あれから数年は経ったか、同じアヤカシだから外見的には変化はないが、雰囲気は違っていた。元気そうだと思ったが、その表情は曇っていた。一体何があったのだろうか。



>>薙、京都駅周辺ALL


【お久しぶりです。ずっと何処にうちのを投下すればいいのか、スタンばってました。急な絡みですが、もし宜しければお相手よろしくお願い致します。】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
3ヶ月前 No.1517

セレスティア @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★sqMH8Q2zCH_wZ2

【京都駅近く・雑踏/セレスティア】
「…どうしたら…いいのか…」
はぁ、とため息を付きながら彼女は、京都駅へと向けて
ゆっくりと歩いていた。突然のことがあまりにも多すぎたのだ。
それはあの時…京都駅で姉たちと再開した時を越えるような、脅威の光景である。

「はぁ…お姉ちゃんは…ああいう性格と…わかってたつもりでも…」
確かに姉とともに行けばまた三姉妹仲良く暮らせる可能性があるのだろう。
彼女の言葉はそれを感じさせるほどの優しさを感じさせるものだった。
信じてみたい。と思えるほど。

「だとしても…」
しかし、彼女の…姉で有る咎女の決意は鋼のように硬い。
おそらくまた恐ろしい手段でつなげようと考えるのかもしれない。
それに…一度断絶した世界だ。
色々問題はあっても、この世界は比較的平和に過ぎていっている。
おそらく、分たれたあの世界でも平和な日々を過ごすアヤカシ達がいるだろう。
…その平穏を再び乱してまで、自分は会いたいのだろうか?
この世界を愛しているのに……今やっと、共存の道へと迎えたこの世界が
またあの時と同じようになってしまってもいいのか?

「ダメだ……頭がごちゃごちゃだよ…」
いくら問うても答えは出ない。
頭を抱えて何気なしに歩いていた彼女だったが…

「…ん、その声は…」
ふと顔を上げて、声のした方に顔を向けると…
そこには数年前から変わらぬ姿を見ることが出来た。

「あなたは…刃金丸さん…!」
懐かしい顔との再びの出会いに彼女は笑顔になった。
薙は、高校を卒業したためもう制服は来ていない。
ジーンズなどのややラフな格好だ。だがあのマフラーは変わらない。

「こんな所で会えるなんて奇遇ですね。
 しかも京都駅…色々あったここで会えるのは運命かも…ですねー。」
と言って少し微笑みかけた。

「あ、それ…最新のゲームじゃないですか?
 そういうのにも興味があるんですねー…
 私も一応…持ってるんですけどねー」
と、何気なく会話を交わしてみる。
少しは気が紛れるだろうと考えながら、彼がプレイしていたARゲームに興味を示した。

…しかし、少し気になる感覚を彼女は覚える。
(あれ…?この気配は…?)
妙な気配を感じたのだ。アヤカシ?あるいは陰陽師の気配…
アヤカシはあちこちにいるのだから、そのような気配など別に気にする必要もないはずだが…

(異常な気配だ…
 敵意のような…)
気になってしょうがない。会話をしながらもその意識は少し、
京都駅の中へと向けられていた。

>>刃金丸さん&京都駅内ALL
【どうもお久しぶりです!
 戻ってきてくださったのがとても嬉しいので、レスを変えさせていただきます!

 後、京都駅内のみなさんも絡みをありがとうございます。
 こちらも少しですがロールをお返しさせていただきます。このような感じでよろしければ、ぜひお願いします。】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
3ヶ月前 No.1518

紅子・緑利 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★TY0LnyDKkC_mgE

【京都駅大階段→京都駅付近/鈴木紅子・芦屋緑利】

 きぃぃん、と。
 音叉のような、ガラスをはじいた様な高く澄んだ音が一つ、紅子や阿蘭の耳には届いただろう。そしてそれだけで、いとも容易く世界は隔てられる。

「私の答えか……確かにそれは、もう決まっているね。因みに母さんはちゃんとあなたのことを覚えているから安心していいよ。それから日下部さん……お茶会の約束、私が行くまで忘れないでいてくれると嬉しいな」
 遥か高みから見下ろす滝夜叉姫にも届くように、緑利は告げる。両者の間に立ち塞がるように、或いは何かから決別するように一歩前に進み出たその姿だって、高低差を利用すれば頭のてっぺんからつま先までつぶさに見えているに違いない。
 緑利の背後でごとりと音を立てて落ちた先程まで日下部阿蘭だったモノの一部も、グロテスクな切断面からスプリンクラーのように飛び散る赤も、彼女の右手の中で赤黒く光るサバイバルナイフも、いつの間にかまだら模様になった白いワンピースも、薄く弧を描く唇も、すべて。その、一瞬のうちに起った悪夢の――滝夜叉姫からしてみれば、望んだとおりの喜劇だろうが――何もかもが。
 緑利の名を叫ぶ紅子の声も、何処か遠くて。
「久し振りねお姫様。日下部阿蘭の命一つなんて、貴方にしては随分とお手軽なお土産だこと……あたしはてっきり、また京都タワーでも叩き折れと言われるんじゃないかと思っていたのよ。嗚呼、でも貴方は昔から小さい女の子には優しいものね……あの時はうちのローリィが迷惑をかけてご免なさい。でも貴方のお蔭で、あの子は着物が大好きになったのよ。見ていて楽しかったわ」
 一瞬で階段の上から煙のように掻き消えた緑利の姿は、今は大階段の頂上にあった。ふわりと空から舞い降りるように現れて、背後から滝夜叉姫の耳元で囁くのは遠い日の思い出。翡翠と咎女、そしてその側近と言っても差し支えないアヤカシたちしか知らないはずの、とある邂逅。
 それを、芦屋緑利という彼女の関係者の寄せ集め様な姿をした少女が語る。緑利でしかない声で、顔で、けれど決して彼女のものではない口調で、彼女が本当に芦屋緑利という個体であれば、知り得る筈のない事実を語る。
 人であれアヤカシであれ、これほど不気味なことはないだろう。緑利という存在の正体を知らない者が相手であれば、特に。
 だからこれはきっと、こけおどしの時間稼ぎに位はなる……頼むからなってくれというのが緑利の本音だった。

「おいこら緑利! お前また勝手に!」
 一方、結界の内側で叫ぶ紅子の非難は、当然緑利には聞き流され、滝夜叉姫の耳には届くことすらなかった。五体満足の阿蘭の鼓膜は、五月蠅い位に震えているだろうが。
 紅子たちの目には、一人結界の外に立つ緑利が滝夜叉姫を相手に一人芝居をしているようにしか見えない。だが、付き合いの長い紅子には分かる……緑利は自分が時間を稼いでいる間に形勢を立て直せと言っているのだ。恐らく近くにいるのであろう即戦力を掻っ攫って来いと。だからわざわざ目くらましの結界の中に自分と阿蘭を押し込めるような真似をした。翡翠の妖力を一部とはいえ陰陽術に転用してみた結果がこのザマだ、陰陽師なんて滅びればいい。
「……これでも元影の輩なもんで。一時期同盟組んどったんですわ、ウチらと咎女……ってか犬神。せやからまぁアレも知っては……良い噂は聞かんかったけど。ってか他人様の呪符横取りするわ餓鬼共黙らせるわやもんな、普通じゃないわな」
 諦めた紅子は阿蘭の質問にやっと答え、改めて彼女の様子を見やる。実際の年齢は知らないが、聞く限り漆連の祖母レベル……しかも車椅子ときている。多分、老人扱いしようものなら殺されるだろうが、此処は未だ階段の上、ならば自分が駆け下りた方がきっと早い。と言うかきっと阿蘭は、戦略的撤退よりも徹底抗戦で無理矢理に道を開くタイプだ。そう紅子は判断して走り出す……その前に、何を思ったか自分の得物であるワイヤーの先端を手首にあてがい、正真正銘本物の深紅をまき散らす。
「ちょいと下行って使えそうな人材ヘッドハンティングしてきますわ、悪いんやけど、その間緑利のことよろしゅう。ついでになんかあったら使えって伝言しといてんか」

 足元に少量の血痕を落として、今度こそ紅子は階下の京都駅に向かって駆け出した。手首の傷を止血しつつ、無駄に長い階段を飛び下りるように下って、まだ人影の見える駅の外を目指す。緑利の言葉を信じるなら、この辺りに居るはずなのだ。紅子が言葉を交わしたことはほんの数えるほどしかない。けれど、今この世界で彼女のことを知らぬ人間もアヤカシも存在しない、一人の少女が。
 そして数分もしないうちに、紅子は目的の姿を見咎める。雑踏の片隅でスマホ片手に雑談に興じているらしいヘルハウンド三姉妹の末妹こと相澤薙……と、その昔焔御前が猛攻を仕掛けたアヤカシ。
「ちょっとそこのお二人さん! 人助けしてみる気あらへん!?」
 一体何の怪しい宗教だと思われるような文言だが、詳しいことを説明している暇は恐らくないし、多分見せたほうが早い。どうか二人が自分のことを覚えていて、事態の切迫性に気付いてくれますようにと祈りながら、紅子は叫んだ。

【天下の滝夜叉姫様にこんな猿芝居が通用するのだろうか……しかも若干確定ロルっぽくて済みません。
そして刃金丸様、ご帰還ありがとうございます、お待ちしておりました! というわけで早速お二人を巻き込みに行ってしまいましたが、面倒でしたら「誰お前」と切り捨ててください。】
>京都駅周辺ALL

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3ヶ月前 No.1519

鎧の付喪神 @kaizelkai ★jMAPUVVmIc_mgE

【京都駅近く・雑踏/刃金丸】

 そいえば京都駅が最初の彼女の出会いだった覚えがある。数年前という長命なアヤカシにとっては短い時間だが、何故か懐かしく思える。あの事変から此処もすっかり元通りになっている。人が流れ歩くのも日常の光景の一つである。当たり前のような景色が、平和と思わせてくれる。目の前にいる少女に、笑顔を浮かべる。


「 うむ、久しぶりでござる。確か、薙殿と初めて会ったのもこの京都駅でござったな。あの頃はまあ色々あったでござる。」


 あの時が全ての始まりであったような気がする。最初の出会いの記憶を思い出しながら、うんうんと頷き、懐かしんでいる。そして、彼女が自分のやっていた遊戯に興味を示す。世界的に話題となったゲームの一種なので、彼女も流石に知っていた。色んな大人や子供が楽しんでいるらしいので、アヤカシが知っててもおかしくはない。自身のスマホを彼女に見せる、さっきゲットしたばかりの鎧の付喪神っぽいSDキャラが映っていた。


「 拙者っぽいきゃらがいるげぇむなので、興味本位でやってみたのでござる。歩いて遊ぶ遊戯は、昔万歩計の原理を利用したのがあったでござるが、これは面白いでござる。薙殿もやっているのでござるか?」


 様々な妖怪っぽい可愛い系やカッコいい系や、不思議系なキャラクターを画面をスクロールさせながら、見せる。目的のキャラをゲットする前に至るまで捕まえてたようだ。元気がなく、様子がおかしく見えた彼女だが、少しは元気が出たのだろうか。何かに悩んでるかもしれない、様子を伺って、尋ねて見ることにする。
周囲の人の流れの中にアヤカシの気配を感じる。まあいても違和感がないのだが、普通の感じではない。何か強い力を持つアヤカシがいるのだろうか、薙も強い力を持つアヤカシだが、発生源は彼女ではない。感じる力に敵意、のようなものがある。どちらにせよ、あまり良いものではない。
場所を変えて話そうかと思ってた時に、いきなり誰かに声をかけられる。その声の主に振り向くと、身長が低い女性がいた。


「 ……拙者、怪しいきゃっちせーるすというのは何度かあったでござるが、こういうのは初めてでござる。ふむ……拙者達にどうすればいいのでござる?」


 怪しくも小さな女性を不審者を見る目を向ける。歩いていて、たまに知らない人間から声をかけられる事があるのは知っている。内容が怪しすぎて、全て断ってきたが、人助けをして欲しいというのは初めてである。いつもなら不審で断っている所だが、とりあえず内容を聞いてみる事にした。


>>薙、紅子


【ありがとうございます。あの頃のように、レスさせて頂きます。】

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3ヶ月前 No.1520

唄女&戯 @papillon ★6ycWB2hnsK_mgE

【→伏見稲荷大社周辺/唄女&戯】


 相変わらず何処か不穏な空気に満たされた伏見稲荷大社、その側の公衆電話。今まさに其処から出てきた、明らかに常人とは異なる雰囲気を纏った男、芦屋巌児。彼の感じている不吉な気配は確かなものである。今まさに京都駅では騒乱の火種が大きく燃え上がろうとしており、それどころかほんの数時間前には、この伏見稲荷で彼を待っていた主税が予想も出来ない悲劇に見舞われた訳だが、巌児はまだ恐らくそれを知らないだろう。

 彼の見上げた空は少しずつ暮れており、夜が勢力を広げ始めている。明るい太陽に守られた昼は死に絶え、悍ましい闇を引き連れて、夜が来る。
 ますます鉄錆めいた血の匂いがしそうな、影の気配が濃くなってきた時だった。唐突に、何処か遠くから声が聞こえた。女の叫び声である、しかしそれは何処か緊迫感の無い、全身の力がへなへなと抜けそうに間の抜けた悲鳴だ。それがどんどん近付いてくる、それも加速して。

「ひぃいぃーやあぁーっ! たぁーすぅけぇてぇーっ!!」

 逆に発音が難しそうなおかしな声を上げながら、上空から降ってくる人影。黒衣に身を包んだ、随分と長身な女だ。顔をぐしゃぐしゃにして泣き喚きながらじたばたと空中でもがきつつ、巌児の頭上から、真っ直ぐ巌児目掛けて落ちてくるのである。

 さあ、空から降りてくる――いや、落ちてくる――、可憐とは程遠い正体不明の少女――いやいや、成人女性――を見上げて、果たして巌児は次の瞬間どのように行動するのだろうか。


>> 巖児


【巌児本体様、大変お待たせ致しました! あれやこれやと登場を考え、悩んでいたのですが、結局唄女らしい登場の仕方というとこのようなものしか思い浮かびませんでした……恐らく此処からはギャグパートとなりそうですが、クールな巌児さんがどのようにこの空気の読めない子をあしらうのか、実は楽しみです。宜しければお相手をお願いします!】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
2ヶ月前 No.1521

塚守來安 @iwing ★1hguPJXUDx_GbW

【伏見稲荷大社周辺/ 芦屋巖児】


「今度は魔女が空から降ってきやがったか」

 彼の周囲にいる人間にも、恐らくこの事態に気付いた者がいたに違いない。
 中には素知らぬ振りをして通り過ぎようとする者がいたが、それでも空を仰ぎ見る者、またはスマートフォンを片手にカメラ撮影をする者まで現れた。みな共通して言えることは、誰もが間の抜けたような大音声の主に好奇の目を向けたということだ。ただ、一人だけが心穏やかでない心境で、夕暮の空から墜落する影を見守る人間が居た。

「……アレ、こっちに向かって落ちてきやしないか?」

 そう、何を隠そう彼である。

 しかし、暫くあっけにとられていたために初動が遅れてしまった。
 落ちてきた唄女の身体を受け止めこそしたものの、その落下速度を殺し切れずに地面へと叩き付けられたのだ。幸い彼女の身体を強く抱き締めながら、彼女を庇うように彼自身の背中から倒れたために、彼女自身には怪我は見られないようだが……。
 彼が叩き付けられた地面がひどく陥没し、蜘蛛の巣状の罅割れが起きている。それが落下の衝撃を物語っていた。常人ならば重体は必須。だが、彼は人から外れた陰陽師という存在。更に彼の持つ能力が落下の衝撃から彼自身を守っていたらしかった。

「……ってーなコノヤロー。明らかに俺を殺す気だったろ、テメー」

 何時までも引っ付いたままでは話もできないだろう。唄女の体から両腕を放して彼女を自由にした後に、その額にデコピンを喰らわせた。後半の部分は単なる悪ふざけのつもりであった。


>>唄女&戯


【唄女ちゃんの破天荒振りに巖児がどこまでついて来られるのか、私自身も実は興味があります。こちらこそよろしくお願い致しますねッ!!】

2ヶ月前 No.1522

咎女 @papillon ★6ycWB2hnsK_mgE

【京都駅大階段/日下部阿藍+滝夜叉姫】


 酷く奇妙な感覚、まるで五感の全てがぐにゃりと歪み、一瞬だけ曲げられたような。滝夜叉姫は一度瞬きをし、はて、と小首を傾げてみせる。

「……ふむ、結構結構。紅く麗しいその答えも、あの元陰陽師が妾を覚えている事も。少しは妾を満足させる術を心得ているようじゃな」

 大階段の高みから下界を見下すように、何処からか取り出した檜扇で口元を隠しながら滝夜叉姫は両目を剃刀のように細く鋭く吊り上げる。言葉とは裏腹に、その表情は何処か硬く冷たい。
 切断された日下部阿藍だった〈もの〉も、吹き上がる生温かく鉄の匂いを放つ飛沫も、それで美しく染まっていく彼女の姿も、何処となく咎女を連想させるその冷酷な微笑も。本来であれば、全て好ましい筈だ。
 だがこの違和感はなんだ、この歪な空気はなんだ。まるでよく出来た作り物のようだ、古の覗きからくりを観るがごとく、滝夜叉姫は先程までの笑みを消して眼前の光景を見据える。

「…………まさか、そなた……、――――そうか、やはりそなたは〈女王の残り香〉か。誰だだか知らぬが、よくもまあこのような空蝉じみた存在を作り上げたものよ。まるでまやかしの残響、まさに玉響のかりそめじゃ……まあ良い。久しいの、誰だかよく知って存じておるが、今は名も知らぬ麗しの君。そなたはまるで異国の童話の主人公のようじゃな、ほれ、白兎を追って穴に落ちたり、縮んだり伸びたり、気難しい芋虫やにやにや笑いの猫と戯れるあの少女のことよ」

 その存在そのものが幻であるかのように、何時の間にかすぐ側に現れた緑利。彼女の方を振り返らないまま、滝夜叉姫はそっと檜扇を閉じた。そしてそのまま、肩越しに片手を伸ばし、まるで見えているかのように緑利の頬に触れ、繊細な指先の動きでそのまま撫でる。魔術、呪術、妖術に精通している滝夜叉姫である、緑利の肌に少し触れただけで全てを理解したようだ。一瞬目を見開き、その後苦笑しながら緩く首を横に振り、大仰な仕草で肩を竦める。

「あの塔程度、そなたの手を借りるまでもなくへし折れるとも。成程、昔話も懐かしいものだが……それよりそなたは一体、〈何処まで記録されている〉? そして、それ以上に……」

 その顔に笑みが戻る、しかしそれは楽しそうというより、何か強い感情を押し殺す為に仮面を被っているかのような表情。少女の名も知らぬままではあるが、彼女が一体〈何なのか〉はわかっている。ならばその存在の奥底知れなさも重々理解している筈だ、だがだからこそ滝夜叉姫は無防備に背後を取られたまま、先程までの余裕を取り戻して滔々と語っていく。
 そして、その時はいきなり訪れた。ふいにぐるり、と滝夜叉姫の首が捩じれて顔だけが緑利の方を向いたではないか。同時に額の真ん中で、縦に裂けたような金との銀ともつかぬ月のような色の目が見開かれると、ぐりんと動いて緑利とその周囲を見渡す。

「刹那とはいえこの滝夜叉姫を惑わしたこと、褒めてつかわす」

 滝夜叉姫の額に現れた第三の目は、普段は隠されている妖力を一点に集めて今、生み出されたものだ。その強い眼光が緑利の能力が作り出した〈幻想空間〉を見透かし、媒介となる呪符の存在も見抜いたようだ。
 だが、しかし。何故か滝夜叉姫は術を打ち破ろうとは動かなかった、顔と身体の向きを正しく合わせると、そのまま両手を伸ばして緑利の頬を柔らかく包み込む。その顔に浮かぶ笑みは先程までのものとはまた異なり、こってりと甘く、そして真意が読み取りにくい。

「やはり姉妹よの、咎女によう似ておるわ、――そなた、名は? そなたの言う通り妾は女子に優しいつもりでの、折角じゃ、少しゆるりと話そうではないか」

 にぃっと唇を歪め吊り上げるその顔さえ、妙に完成されていて妖しい。滝夜叉姫は片手を緑利の頬に添えたまま、片手で彼女の艶やかな髪を緩い手付きで撫でる。
 何を企てているのか、その言動からは計りにくく、ある意味互いに不気味な存在たる二人は異空間で対峙した。

 一方、結界の内部では。
 恐ろしい剣幕で叫ぶ紅子の、鼓膜が貼り裂けそうなその声に、やれやれと何度も首を横に振りながら阿藍が両耳を塞いでいた。結界の外で起きている事は手に取るようによく見える、だからこそ紅子にも阿藍にも緑利の思惑がすぐに読み取れた。時間稼ぎ、それ以外になかろう。阿藍は先程聞いた言葉を思い出していた、京都駅の側には今や革命の申し子として、人間とアヤカシの架け橋として名高いヘルハウンド一族の三女が居るらしい。確かに彼女の力ならば、この事態を容易に動かす事が出来るだろう。

「ま、そうだろうね。とはいえ性格上、お前さんとあの鬼女が仲良く出来る筈もないだろうし、事態は悪化していると思った方が良い訳だねぇ……はいよ、それが一番良いだろうね。助っ人探しは任せたから、あのお嬢ちゃんの事はわたしに任せておくれ。もしあの子に何かあったら、結界を破ってでもわたしが飛び込んで、――――あの鬼女の首から上、吹き飛ばしてやるさ」

 こちらの質問に答えつつ、機敏に動き始めた紅子に、阿藍は軽く頷いて答えてみせる。確かに今の自分では足手纏いだろう、彼女の判断は実に正しい。自らの肌を傷付けて赤い飛沫を散らした紅子に一瞬顔を顰めるも、駈け出した彼女の背中にひらりと手を振ってみせる。
 阿藍の顔に浮かんだ、敵の喉笛を噛み裂きそうな獰猛な笑みを、もしも紅子が見たら懐かしさを感じるかもしれない。そう、密林の女王たる豹を連想させるその笑みは、どこぞの誰かによく似ているのだから。


>>紅子&緑利(、セレスティア、刃金丸)


【……こそこそと、遅ればせながらレスをさせて頂きます……遅くなってしまってごめんなさい……! セレちゃん戻って来られるかしら、是非お戻りになって下さると嬉しいのだけれど……あともし可能であれば、勇さん達も戻ってきてくれたらとても嬉しいです……!
申し訳ないです、巌児さんへのレスも出来るだけ早めにしますので、もう暫くお待ちを……!】

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2ヶ月前 No.1523

セレスティア @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★sqMH8Q2zCH_odF

【京都駅近く・雑踏/セレスティア】
「全くです…何ていうか、京都でいろいろなことが始まったって気がしますから…
 私も、あの時から色々と変わっていった…と思います」
刃金丸の言葉を聞いて、少し気を良くしたのか、ある程度冷静になることが出来た。
かつて姉に向けた言葉を思い返しながら、少し考える。

「まぁ、そうですね…私も最近やり始めたところですけど…
 なかなかうまくいかないですねー…
 ゲームの方はまだ初心者みたいなものですから…
 できればコツを教えてくださると嬉しいかなーと…」
と、軽く世間話のようなものを続けている中でも、京都駅の方の気配が気になってしょうがない。

そんな中、突如やってきたのは
「おや…あなたは…」
あの戦いの時に少しだが話をしたことがある少女の姿を確認した。

「えーっと…紅子…さん…でしたっけ?
 もしかしたら間違えてるかもしれないですけど…」
少し心配そうに答える。
ちゃんと覚えているのか不安になったような感じがする。

「人助けですか?
 …私は別にかまわないんですけどねー…
 その人助けの内容については一応…聴いておきたいと思いますが」
そう言って軽く京都駅の方角を見る。

「うーん…どんな内容なんです?」
彼女が気にしているのは京都駅の方。
尋常ではないアヤカシの気配を彼女は感じているに違いない。


>>刃金丸さん&紅子さん&京都駅内ALL

【ちょっと咎女様を待っていたもので、おまたせしてしまい申し訳ありません!】
【今後の展開にどんどんついていく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします!】

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2ヶ月前 No.1524

紅子 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_Qc5

【京都駅付近/鈴木紅子】

 どうやら二人は、紅子の存在を認知してくれたらしい。宗教勧誘まがいの事をしてのけたのだから当然と言えば当然だが、更に僥倖なことに薙は一応は彼女の事を覚えていてくれた様子である。
「ご名答、ウチは鈴木紅子で正解や……そっちのおにーさんもよろしゅう」
 肩で息をしながら全力で階段を駆け下りてきた分の呼吸を整え、ついでに名乗り上げておく。アヤカシの方は完全に不審者を見る視線なのでその程度で紅子への懸念が薄れるとは思えないが、大事の中に小事無しというやつである。
 全力疾走で上がった心拍も何とか抑え込み、二人からの問いかけに答える前に紅子は辺りを見渡した。此方に注意を向ける人間が居ないことを確認し、やっとのことで口を開く。
「……京都駅の大階段な、今滝夜叉姫が陣取っとる。影の京都に居ったんなら分かるやろ、あのおっかない鬼の姫さんや。ご丁寧に餓鬼どもわらわら連れて沸いとんねん。このまま放置しとったら面倒なことになるんは請け合いや。今ウチの連れが時間稼ぎしとるさかい、ちょいと助太刀頼まれてんか」
 緊急事態とはいえ、流石に内容が内容なので詳細を口に出すのは憚られたらしい。だからこそ紅子は言うより先に見せたかったのだが、あんな文句ですんなりついて来てくれるほど二人は愚かではなかったようだ。
 しかし告げたところで事態が好転するのかどうかも怪しい所である。滝夜叉姫と言えば咎女――薙の姉の側近であり、しかも偽物とは言え京都タワーを叩き折った強力なアヤカシである。ヘッドハンティングしてくると豪語はしたものの、はいそうですかと簡単に加担できる相手ではないだろう。

 だから紅子は、言うだけ言ってくるりと踵を返す。
「無理にとは言わんけど、オッケーなら付いて来てくれはると助かる!」
 そして来た道を、また全力で駆け抜けていった。嵐のように現れ嵐のように去っていく様は声を掛けられた二人からすれば堪ったものではないだろうが、それでも紅子からすれば、残してきた二人のこともあるのである。
せめて一人くらいは付いてきてくれることを祈りながら、紅子は眼前に聳え立つ、数えるのも嫌になる階段を諦め、エスカレーターを駆け上った。

【レスが遅くなって申し訳ありません、良ければ合流お願いしますm(__)m】

>刃金丸様、セレスティア様、周辺ALL

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1ヶ月前 No.1525

緑利 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_Qc5

【京都駅大階段/芦屋緑利】

「……嗚呼、アリスだね。でも、仮称とは言えその名は昔お母様が纏っていたものだからね、私はきっと名乗らない方が良い」
 自分と、恐らくその背後の偽りの光景を睨め付ける滝夜叉姫の視線に動じることも無く、涼しい顔で緑利は、彼女自身の口調で言う。先程完璧に演じ切った存在を、紅子とは別にまた“母”と形容する辺り傍から聞いているともう訳が分からないが、これに関しては滝夜叉姫を混乱させる意図は何処にも無い。ただ普段から緑利自身がそうしているだけだ。
 そんな彼女には、一つの勝算があった。元来有機の器に宿った存在ですらない緑利は、たとえ四肢をもがれようが首を落とされようが死ぬことは無い。滝夜叉姫に術の絡繰りを暴かれ、偽りを示した報復にと緑利があの光景通りの姿にされようとも、彼女は首だけで喰らい付くことも出来る。
 だから、正直滝夜叉姫の腕が肩越しに伸ばされてきた時は緊張と後ろ暗い期待が綯い交ぜになっていたのだが、幸か不幸かそんな光景が現実になることは無く。

 やはりあっさりと暴かれた。彼女に偽物を見せたことも、あろうことか緑利自身の正体さえも。其れでも尚……或いはだからこそ、滝夜叉姫は何もしかけては来なかった。
 最初は首だけ、そして全身が相対することになった滝夜叉姫の姿を見上げ、緑利はゆっくりと口角をあげていく。

 嗚呼、もう。いい加減誰か一人くらい、「翡翠の隠し子!?」とか言って騒いで欲しい。

「ふふ、首だけで振り返るなんて素敵な演出だね。私の身体は所詮人形だし、今度真似させて貰う事にするよ。それからお褒めに預かり光栄です、貴女に褒められた術なら、此の世の何処でも通じるさ。
 さて、お姫様のご質問にお答えしよう、ここで野点でもしながらのんびりと、と言う訳にもいかないのが残念だけれどね。空蝉と言うのは言い得て妙だ、確かに私はお母様の抜け殻に過ぎない、けれど私の記録……何処まで、と言うのは定義が難しいけれど、少なくとも貴女や私の叔母様よりは克明な記録じゃないかな。それから私の名前だっけ……そうだな、今の名前は陰陽師嫌いのお姫様に名乗るのも呼ばれるのも憚られるし、でもカタカナ言わせるのも雰囲気壊しそうで申し訳ないし……取り敢えず若紫なんてどうかな。日本で空蝉と言えば源氏物語でしょう? それとも、若緑とか若葉とかの方が分かりやすいかな……まぁ、私達にとっては呼び方なんて些末なものだからね。芦屋緑利、母さんの付けた名を嫌うなら、貴女が便宜上の区分を与えてくれて構わないよ」
 長々と喋っている割には、答えになっているのかなっていないのかよく分からない台詞である。

 そしてひとしきり喋り倒せば、ふわりと斑の消えたスカートを翻し、宙に並んだ餓鬼を見遣る。
 折角向こうが話そうと言ってくれたのだ、この機会は有難く頂戴しよう。
「別に答えたくなかったら黙っていてくれれば良いけれど、私からも良いかな。貴方達鬼の一族と日下部阿藍、一体どんな因縁があるんだい? 粗方陰陽省の闇に葬られた研究が原因だろうとは思うけれどさ……それとこの件、叔母様は何処まで関わってる? あと最後に、私が地獄の犬の末裔の娘ですって言ったら、何人騙せると思う?」
 恐らく、国家機密レベルの重要事項の後に非常にどうでも良いことをとても楽しそうにぶっ込んでくるくらいなのだから、何処で何をして誰を相手にしようとも、緑利のペースは乱れることを知らないのだろう。
 その様子はまるで結界の中の阿藍に対し、自分の心配などしてくれるなと告げているかのようだった。

>滝夜叉姫・日下部阿藍様

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1ヶ月前 No.1526

サムライ @samurai07 ★iPhone=QCAUNJ3bTK

【京都駅入り口前/ヴェズ・ルング】

「ほーう、これは面白い。ヘルハウンド三姉妹の1人の咎女と芦屋漆蓮の過去か。これを見れば千年京事変の全てがわかるよ。咎女の過去も面白いけど、芦屋漆蓮がぶっちぎりで面白いね。」

京都駅入り口前、壁にもたれかかり独り言をつぶやくジャージの痩せ型の男がいた。彼の手には辞書のような分厚い本。どうやらその男は夢中でその本を読み更けっているようだ。やがて、次のページをめくりフッとため息を吐くと本を閉じた。

「残念ながら芦屋漆蓮の項目は終戦以降は更新されていないみたいだね。D・Aの書は消息不明の人物の項目は二度と追記されないからねえ。その先は白紙だ。まあいいか。さてと…僕は例の戦争の「英雄」に会いに行かなくちゃ。僕が遊び半分で復活させた蚩尤を倒したんだ。きっとすごいお宝を隠し持ってるに違いないだろうしね〜。」

ジャージの男は本を閉じる。そしてなんと頭上に異空間を召喚し、本を放り込む。この行動から彼がただの人間ではないことがわかるであろう。ジャージの男は京都駅の付近をぶらぶら歩くが、突如歩みを止めた。そして、2人の人影をじっと見る。

(おやおや…日本はアヤカシに寛容な国と聞いたが、まさか歩いてるだけで会えるなんてね。しかも、一方は僕とタイプは違うけど神、もう1人は…かなり有力なアヤカシだね。ここからでも只者じゃない霊力を感じるよ。)

ジャージ男の視線の先には相澤薙ことセレスティアと刃金丸がいた。どうやら彼はしばらく様子を見るつもりのようだ。

(とりあえず、気になるからあの子達を尾行してみようか。あと、あの人間も面白い人だね。ただ、わずかに霊力も感じる。ふふ、まさか陰陽師ってことはないよね?)

あの人間とはおそらく紅子のことであろう。しかし、彼はまだ知らなかった。鈴木紅子…彼女もまた斬騎と戦った、そして彼が接触を狙う「英雄」の1人であることを…

>セレスティア様、刃金丸様、紅子様、周辺ALL


【皆様お久しぶりでございます。斬騎やってましたサムライです。今回は斬騎を詳しく知り、さらにこの物語を引っ掻きまわすポジションなヴェズを投下してみました。もちろん絡んでも構いませんし、しばらく気づかないことにして放置してもOKです】

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1ヶ月前 No.1527

鎧の付喪神 @kaizelkai ★jMAPUVVmIc_mgE

【京都駅近く・雑踏/刃金丸】


 京都駅の奥から感じるアヤカシの気配は気づいていた。それも強力で複数の存在がおり、更にそれに引き寄せるかのように徐々に気配の色は濃くなる。薙もそれが気になるのか、京都駅の方に気になるように、視線を向けている。薙とはゆっくりと近況報告をしてみたかったが、どうもそういう訳にはいかないようだ。紅子と名乗った妙な関西弁で喋る人間の女性のいう人助けと関係があるのは明白である。またこの駅で騒動が起きるのは偶然か、必然かとただ思うが、彼女の言葉に嘘はないと感じた。自分より小さな紅子に少し見下ろす形になってしまうが、彼女の言葉を信じてる事にした。


「 紅子殿。拙者は刃金丸、鎧の付喪神でござる。この京都駅でまた騒動が起きてしまうのは、拙者としても喜ばしくない事でござる。故に、お主の言葉に信じてみようと思うのでござる。困った時はお互い様、まあ、拙者の事はぼらんてぃあと思えば――む? 」


自分が言い終える直前に彼女はすぐさま駅の方へ走り去ってしまった。疾風のように現れて、疾風のように去っていくのが最後に見た彼女の姿であった。助けるか否かはついてくれば良いそうらしい。自分は行くと決めたが、隣にいる薙はどうなのか、どうなのか聞いてみた。


「 すまぬ、薙殿。ゆっくりと話をしておきたかったが、拙者は紅子殿の助けに行く事にするでござる。しかしあの滝夜叉姫か……あの影の京都にいたのは初耳でござるが、何故今になって現れたのか、気になるでござる。それで薙殿はどうするでござるか?」


京都全体を写した偽の京都の舞台を思い出す。確か自分は清水の舞台で、りくというアヤカシと戦っていた事を。平将門の娘として有名なアヤカシもまたそこにいたとは知らず、自分もそのアヤカシには会ってはいない。名前ばかりは有名であり、知識としてそれは知ってはいたが、何故表立って京都駅に現れたのはかは気になる所である。


>>薙、紅子、(ヴェズ)

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1ヶ月前 No.1528

咎女 @papillon ★6ycWB2hnsK_mgE

【伏見稲荷大社周辺/唄女&戯】


 珍妙な悲鳴と、というよりけたたましく泣き叫びながら、天の彼方から落ちてくる黒衣の女。誰もが関わりたくないような、それでいて好奇心を揺さぶられるような、そんな奇妙な心持ちで空を見上げる中、落下速度を増しながら女は真っ逆様に落ち続ける。 それはもう、凄まじい速度で。
 黒い女の落下地点で、何やら呟きながら天を仰ぐは、壮絶な雰囲気を漂わせる、凄い位の良い男。

「だぁあーめぇえーっ! よぉーけぇーてぇーっ!」

 その姿が一瞬、目に入ったのだろう。先程まで助けを求めてバタバタともがいていた長身の女――唄女――は、真下に人間が居る事に気付いて、元々悪い顔色を更に悪くした。どうやら自分のせいで犠牲者が出るのは断固として阻止したいらしい、手脚を更にばたつかせ、まるで空中を泳ぐかのようにするものの、悲しい事にほんの僅かにさえ位置は変わりはしない。

 次の瞬間、唄女の大柄な身体は下界で待ち受けていた男――巌児――に、直撃した。

 鈍く、大きな音が周囲に響き渡る。唄女を受け止めて地面に倒れ伏した巌児の周囲は、地面がべっこりと陥没しており、まるで不発弾が爆発してしまったようだ。
 そんな巌児の上で涙目をぱちくりさせている唄女は、一瞬巌児を見失ったようできょときょとと辺りを見回す。そしてふいに、自分が彼を下敷きにしている事に気が付くと、盛大に眉間に皺を寄せて普段眠たげな目は見開き、小さな悲鳴を上げた。

「ぎゃあっ! わたしったら遂にやってしまったですー! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめぇ……ってぇ、ひぎゃあっ!」

 驚き過ぎて一度泣き止んだというのに、その目からはまた滝のような涙が流れ始める。倒れている巌児が自分を抱き締めている手をぎゅっと握って、顔をぎしゃぐしゃにしながら、壊れた人形のように謝り始めた唄女だったが、いきなり額にデコピンをされれば一瞬で泣き止んで。起き上がる巌児をきょとんとして見詰めていたが、ふいにその顔がにぱぁっと満面の笑みにだらしなく歪んだ。

「…………わぁあっ! 良かったぁ、生きていてくれたんですねーっ! 人聞きが悪いですぅ、殺す気なぁんて皆無ですわー! わたし、命の恩人を押し潰しちゃったらどうしようかとぉ……ありがとーございまーすぅ!」

 巌児が陰陽師で、霊力により先程の危機から脱した事などつゆ知らず、というよりあれこれの不思議に気付きもせずに。
 巌児がその身体を解放してくれたというのに、唄女はいきなり彼の鍛え上げた身体に飛びつくと彼をぎゅっと抱き締め、その胸に顔を埋めてわんわん泣き始める。今度は嬉し泣きで、笑いながら泣き始めるのだから忙しいものである。子どものように体温が高くなったその身体は、二メートルを超える長身とはいえ一応若い女性であるが故に柔らかく、ミルクのような甘い匂いがした。

 彼らの周りにはいつの間にか人だかりが出来ており、周囲の人間やアヤカシ達は恐々と、しかし興味津々で二人の様子を見ていた。やがて唄女が何度も何度もお礼を言いながら泣き始めると、あちこちからパチパチと拍手が聞こえ始め、口笛を鳴らす者もいたりで、口々にまるで巌児がヒーローであるかのように褒め称え始めた。
 まるで映画の一場面のような、何処か和やかな光景である。

 ちなみに誰もが忘れているが、此処は伏見稲荷のすぐ側である。お稲荷様はこの珍妙な事態を、溜息を吐きながら観ているのだろうか。


>> 巖児


【また一か月以上経ってしまった……お返事が大幅に遅れ、大変申し訳ありません。なかなか思うように創作を出来ない、浮き沈みの激しい精神状態が続いておりご迷惑をお掛けしております。スレ主様、巌児本体様を始め、セレスティア本体様方、本当に申し訳ないです。ゆっくりとしたペースとなってしまいますが、これからも物語を進めたい気持ちが御座いますので、どうか温かい目で見守って頂けますと大変有難いです。滝夜叉姫を近いうちに動かします……いつもごめんなさい】

1ヶ月前 No.1529

セレスティア @mostbeto☆MNLE1Yk.EMQ ★sqMH8Q2zCH_JdE

【京都駅付近/セレスティア】
「ええ、あのときは色々とあったので…
 印象は強く残ってる…つもりです」
軽く笑いながら彼女の返答に答えた。
そして、彼女の急ぎの用の話も僅かも漏らさずに聞いていく。

「滝夜叉姫…」
其の名前を聞いて、セレスティアは少し厄介そうだと考えた。
顔を合わせたことはないものの、彼女の実力は理解できている。
そしてまた、平和になりかけた京都で乱を引き起こしかねないということだということも、
彼女…紅子の話を聞いてよくわかった。

「…いろいろとまだ、わかんないことが一杯で
 正直混乱しているけど…」
と言って顔を上げる。

「少なくとも…
 せっかくともに暮らせるようになった世界を
 まためちゃくちゃにする訳にはいかないね」
騒ぎが起こるのであれば止めるまで。
この世界を守るという意思は、彼女は強く持っていることが伺える。

「えっと…刃金丸さん。
 問題ないですよ」
そう言って視線を彼の方に向けた。

「色々あってちょっと…いま頭がごちゃごちゃしてますけどねー。
 あれですよ。また平和じゃなくなるのだけはたくさんですから。
 私も一緒に行きますよ。」
そう言ってちょっと凛々しい顔で答えた。
先程の陰鬱そうな雰囲気はかなり緩和されたようにみえる。

「とりあえず…紅子さんの後をついていけば大丈夫ですよね。
 ちょっと言ってみましょう。」
と言って、彼女は紅子のあとを、やや急ぎ足でついていく。

(…なんだか…別の誰かにずっと見られてる気配がするような…)
何処かから向けられる視線に、少し神経質になりながらも
彼女は、京都駅へと向かっていくのであった。

>紅子さん、刃金丸さん、ヴェズ・ルングさん&京都駅の人
【ちょっとまっていようかと思えば、こちらもだいぶ遅くなってしまいました。申し訳ありません!
 サムライさんもお久しぶりです!ぜひともまた絡ませていただきたいと思います!】

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1ヶ月前 No.1530

芦屋 勇 本体 @sibamura ★kKKGFRDHgi_Q1n

【府警内 警備部特別機動2課出向所 /芦屋勇】

『アヤカシ』 超自然的な生き物の総称である。
高次の存在は古来から神として祭り上げられ、身近な存在は伝承の中で妖怪や都市伝説として語り継がれてきた。
翡翠と芦屋漆蓮、そして咎女によって引き起こされた「陰陽省壊滅事件」そして、それに続く「影の京都事件」によってその存在は白日の下に晒され、彼らが存在することが公式に認められるようになった。
しかし、それと同時にアヤカシによる事件や逆にアヤカシが被害者となる事件も急増した。
警視庁は、本庁警備部内にアヤカシ対策用の部隊、特別機動2課を新設してこれに対抗した、通称「陰陽機動隊」の誕生である。

 そして、府警にある特別機動2課の出向オフィス内、

「えっと、ここの表現がこうで…………だー! お役所ってのはなんでこう書類の形式にこだわるんだよ。」

 一人の青年が、本を片手にPCを打ちながらわめいていた。ちなみに、彼が持っている本のタイトルは『丸わかり!正しい公用文の表記』である。本の読みながらPCのキーボードをタイピングをする青年が着ているのはダークグレーのシャツにネイビーのスーツ、ワインレッドのネクタイとその装いはあまり場所にふさわしいとはいえないが、タイピングする姿は真剣そのものである。
 そんな彼に、同じように書類仕事をしていた同僚と思しき人物が声をかける、

「しょうが無いでしょ、勇さん。陰陽省とちがって今の我々は公的な機関なんですから。なんでもツーカーで通じたあの頃とは違いますよ。」

 そう、青年の名は芦屋勇。かつて「影の京都事件」で闘った陰陽師の一人にして、現在は「陰陽機動隊」の府警出向所の室長に収まっている人物である。
 勇たちが書類相手に悪戦苦闘するその時、オフィスに電話のベルが鳴り響く、

「はい、こちら、特別機動2課府警出向所。あぁ、いつもどうも、どうしましたか?」

 勇は3コール目で受話器を取ると、落ち着いた声で対応する。電話の相手は警邏中の警官である、何か事件かと耳を傾けると

「えぇと、ですね。いや、アヤカシを見たって訳じゃ無いんですけど。変なんです。京都駅に……入れないんです。いや、出入り口が使えないってことでは無くてですね……なんていうかなぁ」

 途中まで言って、電話相手の警官は言い淀む、どう表現して良いのか分からないというように。

「京都駅の中に入ろうとすると……行く気がなるなるんですよ。えぇ、そうです、別に明確な理由はないんですけど。京都駅にとまった電車の乗客も同じような理由で京都駅で降りていないそうです。」

 相手の言葉を静かに聞く勇。そして相手から必要な情報を聴くと、返事を返す。

「恐らく、人払いの結界ですね。しかし……その規模となると相当な術者。分かりました。うちが動きます。……はい、はい、上には私から連絡を……はい、いつもありがとうございます。」

 そうして電話を切ると、オフィスの部下に呼びかける。

「京都駅で人払いの結界が張られてると思われる。相当強力な結界らしい、俺たちの出番だ。各員、関係各所に連絡と応援の要請を………」

 指示を飛ばしながらも自分はPCをシャットダウンして机上の書類をデスクに仕舞い、飲みかけの紅茶を一息に飲み干す。

「勇さんはどうするんですか?」

 先ほどの同僚、否、部下が半分答えが分かっている質問を投げかける、その表情とどこか楽しそうだ

「俺は?」

 その問いに、勇もどこか楽しそうな表情で、最後にデスクの引き出しの一番奥から何かを取り出しなら答えた。

「俺は、現場さ!」

机から取り出したアクセサリー、男物としてはやや似つかわしくない大きなルビーを冠した金細工のネックレスと上着の内ポケットにしまうと、ドアをくぐり、書けだしていた。

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23日前 No.1531

芦屋 勇 本体 @sibamura ★kKKGFRDHgi_Q1n

【京都駅/芦屋勇】

 京都駅で異変を知らされてから数十分後、勇は数人の部下と共に京都駅の入り口に到着していた。辺りを見回すと、駅前通りや駅ビルには多くの人々が行き交っているのに対して京都駅内には人っ子一人見当たらない。その様は、まるでそこだけが周囲から切り離されているようだった。

「なるほど。連絡にあった通り、人払いの結界が張られてるな……それも相当協力なのが。」

 勇は目を眇めて駅の周辺を見回し、駅に張られた結界の構成を解析する。その規模・構成から、かなりの手練れの仕業と言うことは容易に想像がつくが、


「さて……最近は元犬神派の過激なアヤカシもなりを潜めてたんだがな。」

 そういいながら、勇は駅の入り口へと一歩踏み出す。当然、人払いの結界の効果で入ろうとする意欲が減衰するが、一応陰陽師の端くれである勇にはさほど効果は無い。
 何人かの部下が制止しようとするが、勇は手を上げてそれに応えた。

「とりあえず、内部を調査しなきゃならんだろ? この結界を解こうにも、解いた瞬間、あらゆる出入り口から魑魅魍魎が吹き出すなんかになったら目を当てられんし。」

 そして、勇は数年前にも闘いの舞台となったその場所へと再び足を踏み入れた。そして、しばらく進むと首をかしげる

「ん、なんだ? なんというか、覚えのある霊力やら妖気が……」

 駅の構内には強力な妖気や霊気が渦巻いていた。しかし、それは予想通りであり訝るには値しない。だが、彼が首をかしげたのはその質である。いくつかの妖気に知っている特徴、気配を感じたのだ……が

「……気のせいだな。特に、あいつがこっちに来てるなんてあり得ないんだから」

 内ポケットにあるネックレスをスーツの上から触るように胸に手を置くと、勇は自分を落ち着かせるように深呼吸する。と、

「あ、あれは!」

 眼前にあったエスカレーター、それに乗るラフな格好をした少女(実際は少女という年ではないが、少なくとも勇にはそう見える)を見て勇は目を丸くする

「確か……安……いや、鈴木紅子か?」

 かつて、この京都駅で勇と拳を交え、影の京都では曲がりなりにとはいえ、協力関係にあった陰陽師がそこにいた。

>>京都駅ALL様 鈴木紅子様

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23日前 No.1532

夕邑三日月 @mistydark☆NIljAHmRyhk ★R3lMq2ye0U_qxX

【京都駅付近/鈴木紅子】

 京都駅の二階部分まで上がった辺りで、紅子は一度足を止める。まだ少し、件の滝夜叉姫や緑利達とは距離が有る。遠目なので絶対とは言い切れないが、これと言って戦局が動いた様子はない。どうやら紅子は間に合ったようだ。
 振り返ると、僥倖なことに刃金丸と薙の両方がついて来てくれているのが見える。
「こっち! この上や!」
 どうせ敵方も分かっているだろうと、躊躇いもせずに叫ぶ。そうして視線をずらした瞬間……紅子の瞳は見てはいけないものを捉えてしまった。いや、この場に居ると言うのはある意味で有難いのだが、別の意味で面倒な存在を見付けてしまった。
「芦屋……勇……」

 グレーのスーツに身を包んだ元芦屋家頭首――その肩書が正しいのかどうかはさておき――がそこには居た。向こうも紅子に気が付いているらしく、瞠目して此方を見ている。
 確か彼は……というか、陰陽省の残党は今警察に居るはずだ。ということは、誰かが京都駅の異変を察知して通報したのか。少なくとも階段上の大惨事は人には見られていないはずだが……まぁ、来てしまったものは仕方ない。天の助けと思って使わせて頂こう。
「……アラサーに何往復もさせんなっ」
 自分でやっているのだから言われた方が困る悪態をつきながら、エスカレーターの上で反転した紅子は地を蹴った。もういちいち階段など使ってやるものかと心に決めた彼女は、普段と同じように結界を足場にして宙を掛ける。殆ど飛び降りる様にして、紅子は勇の眼前に着地した。

「どうもお久し振りです公僕、陰陽省の次は公の犬とはご苦労なことで! そんでお仕事中申し訳ないんですけれど! 雑魚は今直ぐ帰せ、上に居るんは滝夜叉姫や。んでもって出来ればアンタはこっち来てんか!」
 悪態と忠告と現状説明と救援要請を一息に済ませた紅子は、本日三回目の京都駅大階段に挑みをかけるのだった。

>刃金丸様、薙様、勇様、京都駅ALL

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22日前 No.1533

芦屋 勇 本体 @sibamura ★kKKGFRDHgi_Q1n

【京都駅付近/芦屋勇】

 勇同様に紅子にとってもこの邂逅は不意の出来事だったらしい。暫し戸惑っていたようだが、やがて意を決したように跳び上がると、結界を足場にしてこちらに向かって跳躍し、やけくそのような叫びを上げて彼の眼前に着地して……

「そうは見えないが……って、そんなことはどうでもいい。滝夜叉姫って、あの滝夜叉姫か? なんであいつがここに……っおい!」

 前半は彼女の叫び声に、そして後半は彼女の悪態と忠告と現状説明と救援要請の入り交じった台詞への呼びかけである。しかし、そんな彼を振り向きもせず、紅子は再び踵を返して駆けだしてしまう。
 そんな彼女の様子に、暫し迷った後、勇は無線機を取り出すと、部下に連絡を送る

「こちら勇だ。各員は京都駅の出入り口を封鎖、府警の警邏に協力を要請してもいいが、どの出入り口にも最低一人は陰陽師を配置するように。 ん? いや、今のところ援護は不要だ……何しろ、頼りになる『ぼらんてぃあ』もいるようだしな。以上、通信終わり」

 そういって通信を終える勇が見ていたのは、紅子の後を追うようにしてこちらに駆けてくる二つの影。見覚えのある二人のアヤカシにどこか懐かしさを感じながら、誰にともなく勇は呟いた。

「ま、国民に愛されるお巡りさんとしては、納税者のお願いを放置はできないか」

 そして自らも走り出すと、懐かしい二人、刃金丸とセレスティアに並走しつつ、声を掛ける

「やぁ、しばらくですね。お二人ともご壮健でなにより。二人もさっきの跳ねっ返りに呼ばれたクチですか?」

>>京都駅ALL様 刃金丸さま セレスティア様

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22日前 No.1534

鎧の付喪神 @kaizelkai ★kdFzi0ED3j_mgE

【京都駅付近/刃金丸】


 様々な妖気の流れを感じる方へ紅子が行く。行った視線を薙へと視線を向ける。自分は行くと宣言した後、彼女も行くことに決めたようだ。大きく頷き、自分も紅子の後を追うために駆け足で移動を開始する。先ほどの陰鬱とした雰囲気が少し緩和されたようだ。色々とあったようでまだ解決された訳ではないようだ。それはまるで10代の人間にある多感なお年頃を持ったような、そんな感じなのだと捉えていた。内面はそうでもないなとふと思う。


「 うむ、では行くでござる。それにしても薙殿、何か悩み事でもあるのでござるか?拙者で良ければ、話ぐらい聞く事ぐらいは出来るでござる。 」


 紅子の足は結構速い、見失わないように自分達も追いかける。追いかけながら、何か思い悩む薙を見て、自分には何か出来ないかと考え込む。頭にパッと閃めくと、こういう時は誰かに話したほうが良いという言葉を思い出す。なので、早速彼女に問いただしてみた。あまり悩んだ事がなく、誰かに相談する事もそんなにないが、話せば気持ちが楽になるかもしれない。心持つ生き物にはそういう事が付いてくる、自分はそう思っていた。


 紅子が行く方向へ向かえば向かう程、その者達の力をより感じる事が出来る。久しぶりのようなそんな感覚に襲われる。これほどまでの力を感じる事になるのはいつ以来か。あの時の事件以来かもしれない。すると紅子に急かされると、彼女自身の様子がおかしくなった。その視線の先が固定されており、何かあるのかと自分も振り向くと、懐かしい若者の姿がいた。


「 ほう、あれは勇殿か……少し、背が大きくなったでござるか? 」


 陰陽師の彼が此処に来たのは、やはりこの異変に気づいたからだろう。あの時と違って、灰色の紳士服に身を包んでいる。それに少しだけ、大きく見えるような気がする。紅子が彼に向かって何か言い、そしてそのまま結界を使用し、駆け始める。自分も向かうかと再び移動を開始する。そして改めて、勇と再開を果たした。


「 久しぶりでござる、勇殿。少し見ない内に、立派になったでござるなぁ。うむ、紅子殿に助けを求められて一緒にいるのでござる。勇殿は紅子殿と知り合いでござるか? 」


>>薙、紅子、勇


【あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。】

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17日前 No.1535

塚守來安 @iwing ★1hguPJXUDx_NBk

【伏見稲荷大社周辺→(移動中)/ 芦屋巖児】

 巖児は辟易としていたに違いない。目の前の名も知らぬアヤカシに対してではなく。
 “千年京事変”から数年が経過し、非日常と日常の境界線が曖昧なりつつある中、世界中の人間―とりわけ日本人が――がアヤカシを受け入れることができたのは驚くべきことであろう。だが――……。

「あいつら、俺のことを大道芸人か何かと勘違いしてやしないか……?」

 巖児の言うように、現に、今この場で、映画のワンシーンから飛び出してきたような、光景に出くわしても、人々がそれを受容するだけの余裕が生まれてしまっている。

「……お前も、好奇の目に晒されていることには変わりねえから、さっさと離れろ。つーか、俺より目立ち過ぎだな。速めにこっから移動すっぞ」

 巖児は唄女の首根っこを強引に掴む掛かると、片手で彼女を持ち上げ、母猫が子猫を咥え運ぶような要領で移動を開始する。どうやら唄女に拒否権はないらしい。人混みを力任せに突っ切る中、巖児は唄女に話しかけた。

「事務所までちょっと付き合えや、そこで話がある」

>>唄女&戯


【今回は短めで申し訳ありません。これからのことについてですが、唄女ちゃん&戯さんを主税の事務所まで連行して、彼女達から、あれよこれよと事情を伺うシーンを設けようかと計画中ですが如何ですか。唄女ちゃんに拒否権はないとありましたけれど、全然自由にして頂いて構いませんのでよろしくお願い致します】

17日前 No.1536

サムライ @samurai07 ★iPhone=QCAUNJ3bTK

【京都駅付近/ヴェズ・ルング】

「すごいなぁ。こんなにだだっ広い結界を作れるなんて只者じゃないな。」

勇や紅子、滝夜叉姫や刃金丸が思い思いに結界内で行動する中、ちゃっかりと結界に侵入し、傍観を決め込む男が1人。その男はジャージ姿からこの場では明らかに浮いている燕尾服に変わっていた。

「こりゃすごいお宝がありそうだ。例えばここにヘルハウンド三姉妹の1人とか、劉斬騎を倒した陰陽師とか居そうな気がするんだよねえ。僕の勘だけど。」

さすが邪神ロキの分霊。その勘はだいたい当たっている。しかし、そんなことを知ってか知らずかいつの間にか京都駅大階段まで足を踏み入れ、ヴェズは宙に浮いた。眼下には紅子と勇、刃金丸にセレスティア、足だけだが滝夜叉姫の存在も確認できる。

「さーて、とりあえず僕は様子見かな。やっぱり怪盗たるものここぞって時に登場しなきゃね。」

ヴェズは皆の頭上に浮き、皆を見下げている。果たして気づく者はいるのだろうか。仮に気づかれなくてもヴェズが面白そうな展開と判断すれば勝手に介入するだろうが。


>>勇様、紅子様、刃金丸様、セレスティア様、京都駅周辺ALL


【あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!ヴェズは高みの見物を決め込んでいますが、気づくのも無視するのも撃ち落とすのも自由です。】

※警告に同意して書きこまれました (個人情報)
10日前 No.1537
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