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【ALL】Euthanasia in the Asteroid U【冒険/戦闘】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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スレ主 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_3wf


 ――異星の錨は落ちた。楽園の光は地上に満ちた。

 それは突然の災害だった。
 瞬く間に失われていく自然の力、ヒトの営み。
 空の彼方より降り注いだ七つの光が大地を貫くと共に、世界は加速度的な終末の時を迎えた。
 惑星漂白。秩序は崩れ、生温い中庸は滅び、混沌すらも死に絶えた白の世界。

 宇宙からの星光は途絶え、地表は漂白され、地球はあらゆる関連から孤立した。
 ヒトの積み上げた歴史は見るも無残に棄却され、かつて未来と呼ばれた文明の灯は一つ残らず吹き消された。

 我々の宇宙は、未来は―――『礎』となった。
 歴史を見据える眼は既に無い、人を守護する英霊はもういない。
 すべては支配の檻に囚われ、進退も贖罪も赦されず枯死するのみ。

 だが、それを否定するなら、浅ましくも運命に抗い"生きたい"と願うのなら。
 旅立て、そして戦え。"まだ終わらない"と、"本当の闘いはこれからだ"と叫び続けろ。

 最期の希望は楽園の涯てに――――


【七つの"異聞星"を巡る、星を救う物語。詳しくはサブ記事まで。
 運営側役職『ドミネーター』のキャラクター以外はまだ本スレへのレスを禁止します】

メモ2019/06/14 23:27 : 鬼眼麗人☆SdjaOljKHtOm @aroundight★msJh1WzJ3A_keJ

改訂版ルール:http://mb2.jp/_subni2/19760.html-84#a

レイドイベント用ルール:http://mb2.jp/_subni2/19760.html-98#a


現行節あらすじ・概要:http://mb2.jp/_subni2/19760.html-213#a


◆アステロイド3 錆憑く狂愛 銘治禍津理想郷 ニライカナイ

 異聞深度:B+


        此の世で最も正しく強き感情とは、他者想う心である。


 其処は、本来の歴史とは異なる近代化の道を進んだ世界。

 遥か古代より存在する悪しき禍津と特異な製法で作られた剣とが、地の支配権を奪わんとする天の使いと勇気ある者達とが鬩ぎ合う。


 危うい部分で保たれていた均衡を破ったのは、本来秩序を守る側にある筈の巫剣・北谷菜切。

 内側から戦力を食い破られ、多くの同胞を喪った剣と勇者は本土を追われ、神の樹の加護が残る四国での篭城を余儀なくされた。

 一方突如として叛旗を掲げた菜切は、姉である二振りの剣と共に、本来ならば不倶戴天たる怪物を使役し一息に本土を掌握。

 築き上げられてきた文化と叡智は、瞬く間に荒廃していく。


 かくて、彼ら/彼女らが次に挑むは一振りの剣が引き起こした暴走が全てを塗り潰した星。


 果たして真に強き想いとは、"勇気"か"恋慕"か。

 最後に咲き誇るのは何れの花か。


        ────第三の異聞、根絶。その賛歌は『狂愛』。


関連用語:http://mb2.jp/_subni2/19760.html-191#a

ロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19760.html-213#a


キャラクター一覧(○=生存、●=死亡)


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乃木園子 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【神社/乃木園子】

     オリジナル
 どの星が真作であるのか───そんなものは、単に此方の目線から見た場合の主観でしかない。
 此方にしてみれば地球上に並立した七つ、今は五つの星はいずれも既存の秩序を薙ぎ払いながら現れた外様に過ぎないが、あちらにしてみればミラ達トリズナーは正義ヅラをして自分達の星を荒らしに現れた侵略者とそう変わらない。
 だからこそ、この戦いは生存競争であると誰かが言った。かつて隆盛を誇った生態系が新たに生じた時代のうねりに呑まれて消えていくように、強い者は勝ち弱い者は死ぬごくごく単純明快な仕組みが此処にはある。
 けれど。

「うん、そうだね〜。私もそこについては、るーるーと全く同じ気持ちだよ」

 否、これもまた、"だからこそ"……か。
 もうこれは、理屈ではないのだ。善悪を倫理の観点から述べて考えるなど時間の無駄であり、結論が出ないのは分かり切っているのだから。
 自分達の星が星間戦争という大きな運命の歯車にすり潰された時点で、消えぬ炎が如く、"戦う理由"が燃え盛った。
 異聞星は切除しなければならない。あの星に取り返したいものを抱える身として、そこのところは何があろうと揺るがない。
 異聞の星に存在する生命、記憶。すべてを承知した上で、切り捨てる。その決断こそが、自分達にとっては肝要なものとなってくる。

「私達は勝たなくちゃいけない。私達が勝たないと元の星は失われてしまうし、……もしかすると、それだけで済んだらマシな方かもしれない」

 そう───この星間戦争の根源にはまだ謎が残っている。
 異星の魔王を招来した、根源にて微睡み恋を謳う王女であったり。
 或いは、ミラ達には未だ伝えていない、昏い歯車の音色を響かせる【■】であったり。
 それらの謎は今も不気味な沈黙と共に、猫箱の中に閉じ込められたままだ。

「だから、お互い頑張ろうね、るーるー。勝ってみんなで、私達の星に帰ろう」

 そう言って、園子はにへら、と笑った。

>ミラ

【章移行も近いようですので、此処で絡みを切らせていただきますね。お相手ありがとうございました】

7日前 No.405

宇宙刑事ギャバン @genmwhite ★HGFSFqNdXl_ts3

【商店街/十文字撃】

「おうよ! 伊達に名乗っちゃいねえってところ、見せてやらねえとな」

 その正義がエゴだと罵られようと、善だの悪だの持ち込むのが間違いと言われようと。十文字撃という男は、宇宙刑事である誇りを貫き通していく。魂に宿した熱を拳に乗せて、人の幸せを奪う悪を倒す。
 今までもそうだったし、これからもそうだ。どんなことがあろうと絶対に諦めない。魂たるレーザーブレードが折れようとも、果敢に立ち向かっていく。
 男≠ニして、守るべきものを守り、倒すべき敵を倒す。そして奪われたものを全て奪い返す。支配者を名乗る者たちから全て。失ったものが大きすぎるから、彼は叛逆する道を選んだ。
 総力戦に等しい中で、敵陣に喰い込むために一人でも多くが死力を尽くして戦わなければならない。滾る闘志はこの星を覆い尽くす邪悪へと向いた。撃が戦う理由はそれで充分だった。

「……そのベルト、あんたもしかして……仮面ライダーなのか?」

 変身、という言葉と、握ったベルトのバックル。そして出会った時に握っていたアイテム。一つ目の星と二つ目の星にも現れていた仮面の戦士。撃も少しは知っている、人の幸せを守る戦士。
 呉島貴虎が握っているベルト自体は、撃が知っている指輪の魔法使いとは異なる。それでも、その言葉とベルトから直感のように仮面ライダーである、という事実を引き当てることとなる。
 最も、撃は知らないことだが呉島貴虎にとって仮面ライダーという単語は未知のものだろう。彼の星では、それらはアーマードライダーと呼称されているからだ。
 とある世界に現れた一人のアーマードライダーは、指輪の魔法使いと出会うことで仮面ライダーという単語を知ったが……彼もそうとは限らないだろう。
 撃にとってすれば、これまでの言葉がより深く情熱的なものに感じられた。彼もまた、人の幸せを守るために戦っているヒーローなのだと知って、どこか懐かしいような、親近感のようなものを感じた。その生真面目なところも含めて、だ。

「……ならお互い、守りてぇモンのために頑張らねえとな。
 宇宙刑事として……いや、一人の男としてあんたと肩を並べて戦えることを誇りに思うよ、俺は」

 にっと笑って「あばよ涙、よろしく勇気!……ってな」と、彼が先代ギャバンから受け継いだ言葉を口にした。これからの戦いは絶望的かもしれない。けれど、撃は負ける気がしないと、そう感じていた。

 >呉島貴虎
【節移行が近いようですのでこの辺で絡みを切らせていただきます。お相手ありがとうございましたー】

7日前 No.406

ミトス @antinomie☆yzl4MFL1dRLB ★AmPQPE9EE6_l7r

【訓練所/ミトス・ユグドラシル】

ふぅん、と。納得しているのかいないのか曖昧に、息を漏らす。
確かにその通りだ。自分の願いを間違える、というのは―――……そう、愚かな行為だから。
その論拠が勘だ、という部分にやはりちょっとした不思議を感じながら、視線を向ける。

「……まあ、覚えておいてあげるよ。納得、ね」

ひらひらと、空へ投げることなく握っていた側の木刀から手を放し、振る。
そのまま次に出る言葉に耳を傾ける。
自分のことを、冗談か他人事のように語る。空元気なのか、元々そういう気質なのか。それを読ませないようにしているのか。
分かったものではないが、彼女の語る言葉に凡そ否定的になる要素はなかった。
言ったように、時間というのは生きる者の特権である。故に、最期の時に辿り着いた場所が納得のいくようなものかどうかが重要になる。
そういう意味では、英雄ミトスの辿り着いた結末は納得の欠片もなかった。だからこうして今がある。
ハーフエルフは元々人間よりも長寿だ。それでも、今のミトスは生命倫理的には反則だと言っていいほど生きている。

「(そういう意味では、ボクだって大して変わらないか。
  ……―――まして、乃木園子やカイ=キスクと共に……<旅人>なんて、燃えカスみたいな生き残り方をしたんだ)」

空笑いと溜息、そして素のままの表情をコロコロと切り替える少女剣士に対して、また忙しい奴だな、と漏らす。

そうして。
自身が何の気なしに放った言葉が、励ましの意を持っていたことに、意外そうな視線と言葉で気付く。
否。気付くのではなく、気付かれてしまったことにミトスは心底嫌そうな表情を取った。
違う、と反射的に返しそうになる。が、此処で即座にそう返すことのリスクはそれなりに判っている。
だから―――……。

「そう思うなら、そう受け取っておいて。ボクが言うのも何だけど、自分でも珍しいと思ってるんだから。
 槍の代わりに光の雨でも降るかも。巻き込まれないようにすることだね」

しれっと開き直るようなことを言いながら、空中を舞わせることを止めた木刀を沖田へ向ける。
英霊。サーヴァント。死後でさえも英雄というくびきから解放されることのなかった―――あるいは、それを望んだ存在だからこそ、同情に近い感傷でも生じたのか?
それとも単に、彼ら二人の癖にでも影響を受けたか。何方にしても、相手は人間……劣悪種だ。面白いことではない。

「……ふぅん」

彼女が、この終わりの星で辿り着く先に待つのは、何だろう。
思考を切り替えながら、壁に刻まれた大穴へ足を掛ける。同時、ミトスの背には虹色の光る十二枚羽が出現した。

「まあ……何度も言うことじゃないね。死人に、死なないように頑張れなんて言うほど耄碌もしてないし。
 ……―――何か、ある?お前がそれに納得した後に、他の連中に遺しておきたいこと。今なら聞いてやれるよ」

>沖田総司

6日前 No.407

タスク @antinomie☆yzl4MFL1dRLB ★AmPQPE9EE6_l7r

【城下/居住区C/龍炎寺タスク】

銀の意図は、やはり亜耶に関連するものだ。
恐らく―――否、先ほどの雰囲気からほとんど確定で、銀たちと亜耶の間には確かな絆が存在している。
単なる勇者・巫女の関係ではない。場所が場所なら同じ学校で、同じように話していた可能性さえある……仲間、友人だ。
そんな相手に心配を掛けさせたくない、というのはある種、当然の心理と言える。
そこに巫女・勇者の立場まで加わるのであれば、猶更。

様子を見つつ、出現したジャック相手に漏れた声に思わずタスクは苦笑する。
思えば、そこそこに新鮮な反応だ。戦闘中であれば、敵も味方も『そういうものだ』としてジャックを見る。
召喚されるモンスター。所謂式神じみた存在。あながち間違いでもないが、相棒<バディ>の名を冠するモンスターとも、一味違う。

「あ、ははは……ジャックにも、そこまで畏まらなくても良いですよ。僕の家族ですから」

そう、ジャックナイフ・ドラゴンはタスクにとって家族だ。
親であり、兄弟でもある。天涯孤独の身であるタスクにとっての唯一の家族が、このドラゴンになる。
……彼との絆の力である《ドラゴンフォース》などがなければ、恐らく此処まで戦うことは出来ていない。如何に力を使えようとも、そもそもタスクの身体は中等部のソレだ。多少なり鍛えられているとはいえ、モンスター仕込みの対バディファイター技術では『本物』と相対した場合には通用しないというのは、此処までの星で何度となく経験してきた。

……ともかく。そんな詳細を省いて、端的に家族であるということを紹介し。

「……はい」

過度に心配しすぎるのも、良いとは言えないか。彼女に戦う力がないわけではないのだから。
今はハンディキャップを背負ってしまっているが、それを承知している三ノ輪銀が戦力分析を出来ないとは思えない。
そもそも、この地に関してはこの二人の方が知っているのだ。問題は、ない―――そのはずだ。

「ええ。……ええと、それじゃあ。ジャック!」

『承知している。……とはいえ、何処を巡るべきだ?』

ばさ、と翼をはためかせて飛翔の準備に入る相棒を見て頷きつつ、視線を二人へと移す。
彼女が地上を往くのであれば、此方が目指すべきは上からでもある程度見やすい場所―――と、なる、はずだ。
ただ、既に周知のようにタスクは辺りの地理には詳しくはない。本来であれば下調べをしておくべき立場だったのだが……なんとなく不甲斐なくなって申し訳なさそうな笑みが零れた。

「勘で、ってわけにもいかないからな……どうしましょう?」

>三ノ輪銀、国土亜耶

6日前 No.408

ミラ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ


【神社/ミラ=マクスウェル】

 善悪とは視点の問題だ。

 無辜の国を荒らす侵略者も、彼らが餓えと共に祖国を守ろうとしたのならば、
 それは悪とは言い切れぬものになるかも知れない。
 国を守るために戦う戦士も、その国が誰かから奪い勝手に居座っているならば、
 それは善とは言い切れぬものになるかも知れない。

 誰かがそう言ったように、異聞星にとっては侵略者は紛れもなくミラたちになるのだろう。
 トリズナーたちにとって、この星そのものが自分たちの世界を薙ぎ払った悪であるように。
 反逆の為進み続ける彼らは、少し視点をずらしてしまえば結局悪で、これに限らず世の中はだいたいそう言う風に出来ている。視点を少し変えてしまえば、どちらが善でどちらが悪なのか分かったものではない。

 ただそれでも。
 ミラにとってしてみれば、自分の使命がそうだから妥協をしないという話だ。
 善悪の二元論以前の問題として、彼女は彼女の識る“あるべきところ”に世界を戻すために此処にいる。

 あるべきものをあるべき場所へ。
 ミラがそうであるならば、他のだれかもまた、それぞれ違う信念があるのだろう。
 この少女も―――同じように。あるいは、消えると分かっていて戦うドリフターらも同じように。

「そうだな。
 勝てるか勝てないか、ではない」

 この旅人の一人が告げた再度の誓い、その確認に同意するようにして、ミラもまたそれを確かめた。
 尚の事だ。その“皆”と呼ぶには一人が失われた可能性を否定できなくなってきたが、
 ミラとて勝たねば元の星が失われてしまうことを理解している。………それだけで済めばマシ、という言葉に少し首を傾げたが、ここは追求するべきものではないだろうと、彼女は敢えて流した。

 なにしろ目的の詳細が違えど、その方向に関して言えば完全に一致することが分かったからだ。
 少なくともミラの視界に映る少女は、それ相応に信用に値する人物であると分かったからだ。

「私も、きみも。皆、そのために此処にいる。
 あるいはきっと、あの星で共に戦ってくれた者達も―――」

 ふと、出会ったドリフター等のことを想起した。あるいは彼らも、そうだったのだろう、と。
 それを継ぐなどというつもりも、そうした発想に至ったこともないが、
 しかし彼らは彼らの使命を果たしたのだ。自分たちも、そうあらねばならないとミラは思っている。

 となれば、後は行くのみ。
 未だ霧のかかったように先の見えない道程を見つめながら、ミラは園子の言葉に応え。

 そうして、時は過ぎていく―――。

>乃木園子


【了解しました〜。お相手ありがとうございましたm(._.)m】

5日前 No.409

ソル @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【喫茶店/ソル=バッドガイ】

わからない、と答えるペコリーヌ。だがわからないのはペコリーヌがアホだからという意味を表すことではないだろう。実際ソルにもわからないし恐らくトリズナーの、ドリフターの誰にもわからないだろう。
本人を除けばいるとするなら直属の側近格ならもしかしたら、といったところ。

直接会ったことすらない相手の気持ちを理解するなど不可能だ。それに、菜切は自分たちトリズナーにとって絶対に倒さなければならない敵だ。だから和解の道など最初からない。
加えてドミネーターを倒すことはこの星の消滅、つまりは彼女たち御華見衆の消滅も意味するのだが――

「何だ、もう腹は括ってるのか」

ペコリーヌの言葉をソルはさして意外だとは思わなかった。そもそもそんな覚悟ができていないなら最初から彼女達はドミネーターに敵対する道など選んではいないだろうから。

「そうか、そいつを聞いて安心した」

そうソルは薄く笑って踵を返し、振り返りながら歩き出す。

「使えそうなモン掻き集めてくる。せめてお前らが戦い終わるまで餓え死にしないくらいのことはしてやるよ」

そうしてソルは喫茶店を去っていった。

>ペコリーヌ

【移行が近いとのことでこの辺りで絡みを切りますねー
お相手ありがとうございましたー】

5日前 No.410

沖田総司 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ


【訓練所/沖田総司】

「いや、光の雨はちょっと」

 さすがに死にますんで勘弁してもらえますか―――。

 なんて冗談めかした口調で言いながらも、沖田は意外なものでも見るようにミトスを見ていたが。
 それから、途中で見せた露骨に嫌そうな顔を見て、ああ年相応っぽいところもあるのだなと微笑んだ。

 それもそのはず。
 この少年、人を遠回しにでも励ますような言い方をするタイプではないと思っていたからだ。
 彼という人物が事あるごとに使う“ヒト”の呼び方と、感情への郷愁に悪意がないと頷けるほど沖田総司は頭がお花畑ではない。むしろ彼女はそれを分かっていて、敢えて触れないようにしたのだ。
   、    、   、 ・・・・・
 何故と言われても、彼もまたそういう者だとは、なんとなく想像がついているから。
 トリズナーと言う者達が前を向く人間ならば、彼はきっとそうではない人種だと分かっているから。

 そうでなかったら、納得の話なんてしない。
 そうだと分かっていなかったら、敢えて動機を言わないような真似もしない。
 この星が終わってからも次の道を歩み続ける少年の心に、どんな楔が刺さっているのかは分からないが………だからそれを口にした。要するにただのお節介に過ぎないことだし、道が交わることはもうないだろうと知っているから。

「? ああ、それなら………うーん」

「いや、いま、羽………ちょっとそっちに興味が行っちゃうんですが………こほん」

 だから。
 沖田総司は、他の連中に遺しておきたいことはあるのかと言われて、考え込むようにする。

 とはいえ、答えは決まっていた。
 なにか遺そうと思って戦うわけではない。
 少女剣士は自分の中にある未練を果たすために此処に居て、剣を手に取ったものだ。
 ならばそれを、生きている誰かに遺そうとすることほど滑稽なことはない。笑って彼女はこう言う。

 ・・・・・・・
「特にありません。
 強いて言うなら………私の死は背負わなくて結構です」

「あなたはたぶんやりたいことの決まっている人なのでしょうが、そうじゃない子もいると思うんですよね。
 そういう子を見かけたら、もうちょっと自分勝手に生きるように言ってください」


 自分で決めて、考えて、歩いて。
 そっちの方が、きっと死ぬ間際になって後悔を生むようなこと少なくなるだろう。
 ゼロじゃない。けれども、そうやって沖田は生きて来たから、自分の中の後悔は一つだけでカタが付いた。

 そのことだけは、彼女の真実だ。
 この道を選んで、仲間と共に生きたかつては、彼女の誇りだ。


「これも、何度も言う話じゃないですね。
 それじゃあ、また」


 またどこかで。
 そんな口約束は、ぜったいに果たされることがないだろう。
 けれどそれは、礼儀のようなものだ。彼女なりの、出会いと別れに対する礼儀。


>ミトス・ユグドラシル



【話の区切りもこの辺りで付けられそうなので、一旦区切りをつけます〜。
 お相手ありがとうございました!m(._.)m】

5日前 No.411

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★Android=2AWrmBu7z5

【城下/居住区C/国土亜耶】


>>408


 ・・
 家族━━友達、仲間、相方。
 そのどれでもなく、彼は供たる竜をそう呼んだ。
 タスクが亜耶と銀の関係に、勇者と巫女と言う立場以上に友人である繋がりの強さを感じたのと同じく、亜耶もまた、タスクとジャックと云う竜に絆の深さを感じ取った。


「素敵な御家族ですね」


 其処に確かな想いがあれば、人であろうと何であろうと、互いに結べる縁がある。
 亜耶は二度目の緊張を解きながら、あらためて無垢な笑顔を浮かべた。
 それは、タスクだけではなくその家族である彼とも距離を縮められたら━━
 そんな想いもあるのかもしれない。

 ……ところで、ジャックさんとタスクさんはどっちがお兄さんなんだろう?

 ふとそんな疑問を抱いたので、後で聞いてみようかなと思う。


「案内は私が務めます、任せてください。
 此処から空に上がるなら、最初は━━」


 ともあれ、その前に一緒に上がるにあたって自分に出来ることはしっかり果たさないと。
 巫女だから、ではなく。
 国土亜耶として、皆のために出来ることを。
 その意思をより一層強くしながら、少女は彼らと共に捜索に向かう━━━。


【節以降にあたって、一旦区切りとさせていただきますね。
 お相手、ありがとうございましたー!】

4日前 No.412

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★UH4NIh0UMH_Jty

 最後の休息期間/幕間は、あまりにも短く過ぎ去っていく。


 消息を絶った指揮官を探す者。

 崩壊した城下を駆ける者。

 奇跡のような再会を果たす者。

 果てがあるかわからない旅と巡る星とその支配者に考察を巡らす者。

 残された遺志をその手に託された者。

 自分では最早叶わぬ望みを、星を渡る者へと繋ぐ者。


 ━━━━進む時計の針を止めることは、支配者にも出来はしない。


     一人の少女の情念が生み出した星の戦いは、終章へと進んでいく。

4日前 No.413

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★Android=2AWrmBu7z5


 …………逆さ塔への襲撃?



 北谷菜切が、一度だけ目を大きく見開いた。
 焦燥や驚愕でと言った風ではない。
 意図が読めない、図れない━━
 例えるなら、そんな様子だ。
 逆さ塔は此方側の戦力の兵舎だ。
 元々凶悪な囚人を収監していた場所なだけあり、そう言った意味では平時に於いて、余計な行動を起こさせず、封じておく場所としては設備も充分に整っている。

 確かに、此処を抑える利点がないとは言わない。
 だが其れは、互いに戦力も充分であり、戦況も均衡が保たれているのならばだ。
 一度でも本拠を打たれ、乾坤一擲の策も失敗した状況。
 猶予を喪わせる程の痛手を与えた今、迷いなく逆さ塔への攻撃を行う理由は━━何か。
 戦力を削る為にとは考え難い。
 彼方も、此方の戦力が漂流者だけでない事は重々承知の筈。
 此処を取ったところで、趨勢を大きく揺るがせる事は出来はしない。

 となれば、とすれば━━


       ……味方の奪還?

 天照━━
 あの女の救出?




 無自覚の侭、両の奥歯が軋み合った。


 ……内側で沸々と燃える黒い焔を、どうにか一度抑え込みながら、可能性を考慮し、推察する。

 たった一人の為にそうまでするか、それも外側から来た者の為に。
 真っ当に考えれば有り得ないと結論を出すが、然し忌々しくもあの女は反逆者の一人だ。或いは━━零ではない。


 ……良いでしょう。


 思惑がどうあれ、逆さ塔へと攻め行って来るのは事実。
 彼処には戦力もある。
 ちが姉様もあの女の監視として残っている。
 攻め入るのならば、攻め行ってくればいい。
 向こうが戦力を割いたのならば、此方にとっても都合が良い事に変わりはない。

 第二波を送り込み、今度こそ徹底して潰すだけなのだから。


「…………とうとう、後一歩ですよ。お兄様」


 ぽつ、と呟く。
 たった一人、ただ一人。
 あなただけが側にいてくれれば、この理想郷は壊れない。
 この戦いが終われば、私達の星は何よりも磐石な物になるだろう。
 残るは星と星の争いだが━━━
 それも案ずる事ではない。異分子がないのであれば、何があろうと勝利するのは、天に陽の座すこの星以外にある筈がないのだから。

4日前 No.414

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★Android=2AWrmBu7z5

 その思考を、驕りと取るべきかは定かではない。

 だが、起死回生へと繋がる一本の糸は既に結ばれている。

 その事に北谷菜切は気付かない。

 いや━━気付きようがない。

 何故ならそれは、太陽ですら日射しを届かせる事の叶わない遥かな地下。
 光射し込まない地獄に均しき寝床に作られていた、支配者を脅かす為の一手だったのだから。


 ━━━━理想郷を巡る物語は、結びへと転じていく。

4日前 No.415

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★Android=2AWrmBu7z5

【逆さ塔/第七階層・南通路/治金丸】


「━━━……ん」


 ・・
 来た。

 人工の灯りだけが暗闇の中を照らす、この階の遥か上層から、塔へと攻め入って来る。
 アイツらが来た。
 此処からではその様子を目で確認する事なんて出来はしないが━━
 不思議と確信を持ってそう思えたし、その事に驚きを抱く事もなかった。
 もしかするとこの日が来るのを、アイツを逆さ塔に囚えてから待っていたのかもしれない。


「よ、っと」


 軽く跳ねるように、寄り掛かっていた壁から離れる。

 襲撃が行われた以上、各階層にある牢の中で退屈な時間を過ごしているであろう連中も防衛の為に駆り出される。
 そういう仕組みに為っている━━らしい。
 詳しいところはなーきーに聞かなければ分からないが、ともあれ。
 その機能はこの階層の檻にも当然、適応されている。
 然らば、アイツならこの状況で出てこない筈はない。
 此処を脱け出す為の機を逃す筈がない。

 だから━━上層には向かわず、ただ待つ。

 檻を抜けて、この階層を越えて、出口である上を目指そうと来るであろうアイツを━━。

4日前 No.416

童磨 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第七階層/牢A/童磨】


 ───神様の子と、人は彼のことをそう呼んだ。
 虹の瞳を持ち、慈愛に満ちた風貌をした男の子。
 彼はきっと万世に渡り人々を極楽へ導いて下さる、如来様に通ずる者であるのだと誰もが信じた。
 嗚呼、なんて私達は幸福なのだろうか。私達の救いは彼に祈ることで確立され、あらゆる罪は水に流されて、死後は誰もが蓮の花の咲き誇る極楽浄土の中で永久に暮らすことを許されるのだ。
 素晴らしきかな、素晴らしきかな。世界は斯くも美しい、福音という名の救いで満ちている。

 などと───人々がありもしない空想に酔い痴れて自己満足と自己弁護の祈りを捧げながら擦り寄ってくる光景が、この鬼の原風景であった。
 新興宗教の教祖の子として生まれた彼は、しかして神などという居るかどうかも判然としない朧気で不確かな存在に身を預けられるほどおめでたい脳味噌はしておらず、故に彼は幼心の内に人の弱さ・脆さを知り尽くすこととなる。
 けれど、いずれ鬼となる虹の瞳持つ子は優しかった。憐れみのままに彼らと触れ合い、その頭の悪さに心を痛めながら、日々彼らが欲する言葉を吐いては繊細で真綿のように柔らかい心を癒やしてやった。


 大丈夫、心配しないで極楽はあるし君はきっとそこへ辿り着ける。君が過去に何をしていたかなんて関係ないし、これから何をするかも関係ない。全部関係ないんだ安心していい。
 君はただ祈るだけでいい。そうしたら、俺は君のことを救ってあげよう。
 心地よい極楽に君は導かれて永遠に救われ、この世のあらゆる苦しみから解放されると決まっているのだから恐れることなんて何もないんだよ。分かったら笑おう、笑顔が一番だ。        .     .     .     . ・・・・・・・
 俺は、君達皆が等しく幸せになってくれることを心の底から願っている───そんな心にもない戯言を撒き散らしている内に、青年となった教祖はいつしか百年の時を生きていた。
 病には罹らないし錯乱した信者に刺されても瞬く間に癒える。それはまさしくかつて人々が彼に期待した奇跡の証明に他ならず、誰もが彼の言葉に自分なりの真実を見出し、その足元へと跪いて祈りを捧げた。

 人喰いの化け物をありがたがって、手を合わせて、己という供物を向こう百年に渡り捧げ続けた。
 いつまでも、いつまでも。この悪鬼を神であると信じたまま、その俎上にご馳走を並べ続けた。
 神など何処にも居ないし、万世に渡る極楽など存在しない。そんな子供でも分かる当たり前の現実に、ついぞ気付くことなく。

        .    . . 神
 そして、都合の悪いことに。"己"というものを持たずしてこの世に生まれ落ちた鬼に、人々が頼んでもいないのにこぞって祈りを捧げに現れ続ける境遇は、実に───本当に、呆れるくらいに都合のいいものであったのだ。


「うぅん。やっぱり美味しいねぇ、漂流者の肉は」

 第七階層。最終階層の真上に広がる獄の中で、虹の瞳を持ち、血を被ったような紋様の浮かんだ髪を持つ鬼は、当たり前のように本来共闘するべき逆さ塔の虜囚の肉を喰らいながら満足気にそう漏らしていた。
 彼の牢は牢という名でありながら、畳が敷かれ、花が活けられ、まさしく神の御座とでも呼ぶべき雰囲気を醸している。
 無論、これは彼が手ずから拵えた代物だ。何故ならば、己は皆の祈りを聞き届ける教祖であるのだから。寂れた檻の中で説法を説く教祖など、そこらの錯乱した浮浪者にも劣るというものであろう。
 肉を平らげ、口元の血を拭いながら嗤うその双眼には、それぞれ『上弦』『弐』の文字が刻まれている。

 ───上弦の弐。
 ───遙かなる千年の太古より連なる悪鬼の軍勢、その首魁である真祖が直接組織した十二体の悪鬼羅刹。
    すなわち『十二鬼月』の序列第二位を示すその数字が、この『童磨』という鬼の猛悪さの程を物語っていた。

「でも、やっぱり健気なあの子達のお肉の方が美味しいんだよねぇ。
 彼女達はいつだって健気で、いじらしくて、頭が悪くて……とても可哀想だ。
 菜切ちゃんには勝てないし、そもそも勝負することすら出来ないっていうのに。
 彼我の戦力差ってものが正しく認識出来ないんだねぇ、辛いだろうなぁ」

 心底から、憐れむように。童磨はそう独りごちて……その鉄扇子をぱっと広げ。

「あ、いや。認識出来ないのなら、そもそも辛いとすら思わないのかな? それはそれで可哀想だけど、知らぬが仏とも言うよなぁ」

 そんな───戯言としか形容のしようがない言葉を撒き散らす。
 これは、そういうものだから。空洞の中に悪意という毒を注ぎ、相対する者に依って形を変える鏡の如き鬼。
 文献に語られる閻魔宛らの風貌をしながら、彼は誰も裁かない。すべてを赦し、導き、救うのだ。


 その腹の中に取り込んで。己の血肉に変えて、共に永遠を生きることで。


「早く来ないかな……出来れば女の子がいいなぁ」


 ───神は、待っている。御座に座って、血と死と恐怖の臭いを帯びて。虹の瞳に、憐憫の色を載せて。


>ALL

4日前 No.417

アマテラス=姫 神琴 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 逆さ塔/→第七階層・南通路/アマテラス=姫 神琴 】

 外がやけに騒々しい。
 閉じていた目を開けば、錆び付いた音と共にガラガラと格子戸が開くのが見えた。気配だけでも、この場には魑魅魍魎が闊歩しているのが分かるが――扉前にいるはずの人物は、いつのまにか姿を消していた。
 そっと外へ出る。見れば他の格子戸も開いており、血生臭ささえ漂ってくる始末。
 凶悪犯罪者の収容施設であるということは明らかであり、差し込む光もそこにはない。
 人工の光だけが唯一の明かりである牢獄の最下層は、ちらつく不安定な暗闇に満ちていた。

 シフト
「 換装 ――《草薙剣》」

 逃げない道理はない。
 道中ヤバい奴に出くわさないことを祈りつつ、抜き差し差し足忍び足――静かに、駆けだした。

 ◇◆◇◆◇◆

 ひんやりと昏い通路を、ただ一人走っている。
 道はほとんど存在していなかった。
 複数本あるにはあったが、そのほとんどが閉ざされている。
 よって神琴が通っているのは一本道、それも特定の権限を持つ者のみが通ることの出来る通路だった。
 かなり古い時代から刑務所として使われているらしく、そのような工夫がなされていてもおかしくはないとは思っていたが。

 あまりにも都合が良すぎる。
 まるで、導かれでもしているかのようだった――だけど。

「……そう」

 ……その疑念はすぐに解消されることとなる。

 階段前にそいつはいた。黒い髪を揺らし、黒の装束を身に纏い、一振りの刃を手に人を待つ女だった。
 より一層研ぎ澄まされた剣気を身に纏い、ただ静かに其処にたたずんでいる。
 初めての邂逅の時よりも、明らかに本気の目つきをしている。
 近づけば斬る、通らば斬る、斬って斬って切り刻む、徹底的に――。

「――お誘いに応じて、約束通り越えに来たわ。ちがね」

 剣を向けた。刃の上で炎がちらついていた。
 やがて吹き出し、その刀身は焔そのものとなった。

>治金丸

4日前 No.418

鬼眼麗人 @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ


【第六階層/牢B/劉豪軍】


 その空間は、人の世界から切り離されたような静寂に包まれていた。


 否、此処は心底からの静寂と、光も差さぬ底なし沼のような闇に包まれた場所だった。
 嘗ては大罪人を収容するために使われた監獄は、その主の成り代わりが起きてなお、本質的には何も変わるところを見せていない。地上と比較してみればマシな程度に生命の息遣いを感じはするが、それも結局、僅かに波立つ微風の如き騒めきと何ら変わりはしない程度のものだ。この地は―――有り体に言って、死んでいる。もとより人間が生きるために作られたものではないのだから、それは当然とさえ言えたが、そうであっても度を越した“死”が充満している。
 地の底と呼ぶには閑古鳥が鳴くような静けさがあり、安らぎを得ようにも、行く先の一寸さえも見えない人工の帳に覆われた暗闇の中ではそれも適うまい。この地にて平常心を保ち続けていられるのは、それが“真っ当ではない”人間くらいのもの………ただの小悪党や凡人が閉じ込められようものなら、ものの数日と経たずに狂することが目に見えている。

 それがこの逆さ塔だ。世界と切り離された、人造の地獄。
 荒廃に対して雅などあるはずもない。ただただ、此処には希薄さと虚ろなものだけが漂っている、色彩のない無味乾燥とした世界の一部………時に置き去りにされ、何処へも向かうことのない、哀れな墓標。

 いいや………この土地そのものがそうだろう。
 時に置き去りにされたどころか、時に背を向けたのがこの世界だからだ。
 あるいはこの世界そのものがそうかもしれない。この逆さ塔は世界が変わり果ててなお、主が変わってなお、全く変わらずその役割を果たしている―――異常になったのは、とどのつまり地上であり星の側でしかない。

 牢の中、硬い床に身を寛がせ、灯のない鉄の廊下を男は眺めていた。
 嘗て然る世界にて鬼眼麗人の名を頂く男は、このような場所に居ながら、その瞳に微塵も昏い香りを漂わせない。むしろ牢の扉が開く音に合わせて、ゆるりと脚を動かし出ずるその瞬間まで、彼の気配には、隠しようのない傲岸さがにじみ出ている。おのれを阻むものは何もない。自らそう自負し、他者にもそう認めさせて憚らないという傲岸さだ。


「ほぉ………随分攻め込まれたものじゃないか。
 死に体の獣ほど恐ろしいというやつなのか、あるいは織り込み済みなのか」


 その扉が開くということの意味を、豪軍は良く知っている。
 それはこの逆さ塔に敵意を伴った誰かが乗り込んで来たことの証明。
 戦力比としてはお話にならないほど疲弊した者達が、破れかぶれで突撃して来たか、あるいは勝算を持った明確な奇襲として戦力を叩き潰しに来たか、というところだろうが………豪軍としては、どれでも良かった。

 足音一つ一つに、彼という人間の自信が。氷のように凍て付いた空気が乗り、また散逸する。
 艶やかな繭紬の布地に龍の刺繍をあしらった長衫を着こなすその姿は、華美な出で立ちに反して何のけれんさも感じさせないが、この逆さ塔においてその気品はむしろいびつなものでさえあった。

 そう―――。

「俺が捧ぐべき供物は全て、捧げたつもりだったのだがな………」

 涼やかな瞳も、鈴を響かせるような美しい声色も。
 その全てを持ちながら、鬼眼麗人の瞳は紛れもなく、この地に蔓延る虚無に似通う色を宿していた。
 彼にとって、およそこの争いに興味はない―――どころか、彼の闘いにはせ参じるためのモチベーションというものが、根底からしてこの地には存在し得ない。それ故に豪軍という男は、この逆さ塔にて嘗ての余韻に浸り続けていた。

 男には理想がある。
 他のだれかには、どうしたって触れることさえ敵わないような、悍ましいほど冷え切った理想。


「君がまだ地獄を望むというなら………嗚呼。
   、   、 ・・
 いいとも。もはや蛇足に過ぎないが、この地を新たな供物としよう―――」


 そのように表現せざるを得ないモノのことを。
 人は、狂気と呼ぶ。


>ALL

4日前 No.419

ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 第五階層/牢C/ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ 】

 少女が一人、そこにいた。
 狂気だけが、そこに満ちていた。

 吐く息は氷のように冷たかった。動かす手は幽鬼のように揺らめいていた。携えた刀は鮮血のような真紅に染まっていた。
 その表情は死体のように色が抜け落ちていた。たった一つだけ其処に詰め込まれていたものがあるのだとしたら、彼女が常に口から吐き出し続けている言葉だろうか。

「ああ、姉上、どこにいるのです。なぜ拙者を認めてくださらないのです。
 このムラマサ、悪鬼羅刹外道に堕ちてもなお、ここまで力を付けたというのに」

 死骸の寸前にまで堕ちようとも、その言葉だけはただひたすらに紡ぎ続けていた。
 禍憑となりて理性を蕩かされ、ただ盲目的に欲するものに忠実になっていたとしても人の形は保っていた。黒く染まった白眼、暗闇の中で際立つ鬼火のように揺れる眼、荒れた髪、凡そ美を穢す醜悪な血染め桜にでも見染められてしまったのではないかという外観。
 少女は既に八岐大蛇にその身を捧げていた。血と、驕りと、過信しすぎた己という酒に酔わされていた。

 だから斬るのだ。
 斬って斬って斬って斬って斬って斬り続けて――そうすれば認めてもらえると信じているから。

 扉が開く。錆び付いた音を立てて、がらがらと。血の底からも鳴り響くそれに静かに頭を上げた。
 ああ、菜切が命じたのだとすぐにわかった。
 外に出て殺戮を開始せよ。

 男を殺せ。
 女を殺せ。
 子供を殺せ。
 老人を殺せ。
 愛し合う男女を殺せ。
 慕い合う子弟を殺せ。

「わかっております」

 立ち上がった少女の顔には、歪み切った悍ましい笑みが浮かべられていた。
 狂おしいほどに死合いの中で血を欲し、挙げた首級だけが少女にとって最も親しいものへの愛を誓うというならば。

「――分かっておりますとも。八岐大蛇の名に懸けて、並みいる怨敵を鏖にしてさしあげましょう」

 ……掠れたような声は、ただ静かに牢に響く。

>ALL

4日前 No.420

古き竜狩り @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_l7r

【禍要柱/竜狩りの鎧】

 聳え立つ逆さ塔の傍らに伸びる、暗黒の禍要柱。
 その丁度手前に、古びた大柄の鎧がひっそりと打ち捨てられていた。

 その鎧はひたすらに巨きかった。その意匠も相まって、宛ら竜人の如き威容であった。
 その丈や2メートル……いや、3メートルは達しよう、途方もない大柄の鎧である。手にした得物を合わせればその総重量は重戦車のそれだ。
 もはや人間に扱える領域を遥かに超えており、装飾の類と見るのが妥当だろう。
 されどこの鎧からは、数え切れぬ地獄をかいくぐった者のみが持つ迫力が確かに垣間見える。諸侯貴族らが好むような華麗さなどない、ただ武骨で古色蒼然たる佇まいを誇っている。
 事実これは装飾(インテリア)などではない。神話とも呼べる古の時代、無敵とも呼べる古龍を相手に戦った、神々の伝説の名残である。

 遥か昔、時空の歪み始めた王国ロスリックは、数多の飛竜を相手取った。
 やがて飛竜はロスリックと共に生き、その息吹と精強なる騎士の手によりて世の果てに至るまで征したという。
 それは遠い遠い古の竜狩りの伝説である。
 神々の原始の火という雷を纏い、万夫不当たる最強の古竜を相手に戦った、ロスリックの伝説。これはその伝説の実在を傍証していた。

 打ち捨てられた鎧の様子からは、その鎧の主が潜った戦の過酷さを察して余りある。
 数多の祝福と結晶魔力によって練られ、鍛えられた鋼の鎧は、地獄の業火を思わせる竜の息吹によって随所が爛れている。
 その左手にある巨大な丸盾は、とりわけ高熱に熔けた痕跡が窺えた。
 右手に握りしめた三日月の刃を持つ大斧は、数え切れぬ程巌の如き竜の鱗を打ち据えて大きく欠けていた。
 そうした激闘の跡が色濃く残っているからであろうか。大斧を地面に突き刺し、跪いて首を垂れるような姿勢で佇んでいるそれが、今なおも静かに夢を見ているようにも見える。
 終わりなく、果てしなく、かつて己が駆けた竜狩りの戦場に思いを馳せるように、じっと佇んでいるようにも見えるのだ。

 それにしても、なぜこんなものが打ち捨てられているのかは甚だ疑問である。
 勘の鋭いものからは、今にも動き出しそうだ、などと考えるやもしれないが。怪談話でもなしに、一刻を有する今そんな危惧をする人間は少なかろう。
 ましてや、要柱を前にして余計なことを機にする余裕はない。これが霊脈を崩す起点となるのであれば、此処の制覇は地下へ向かう者たちの作戦成功にも大きく貢献できる。
 その柱を前にして敵らしき敵が窺えぬこの好機。果たして何者がその好機を我が物とするか――
>ALL

3日前 No.421

岡田以蔵 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第五階層/牢C/岡田以蔵】

 ───なんとも、けったいな場所じゃ。
 幕末にその人ありと恐れられた辻斬りは今、階層の第六を闊歩していた。
 傍から見れば獄に押し込められていないのが不思議なくらいに悪い人相と、佇まいから滲み出る凶の気。
 さりとて、彼の嫌悪は小動物のように群れて大勢を覆さんとする小癪な叛逆者達よりも、この逆さ塔を牛耳る側の存在……ひいては、逆さ塔という空間そのものにこそ向けられていた。

「嫌なものを、思い出すぜよ」

 岡田以蔵は人斬りである。
 かつて、天誅という大義名分を振り翳し、彼は数多の命を切り捨てた。
 斬って、斬って、斬って、斬って。殺して、殺して、殺して、殺して。
 誰もが己の機嫌を窺って生きるような、彼曰く実に清々しい景色が実現出来たのだったが、しかしそれも束の間のこと。
 いつの世も、武力を以って何かを成そうとする人間の末路はふたつだ。本懐を遂げて英雄になるか、志半ばで弾圧されて無様に死ぬか。そしてより強く気高い心根を持っていればいるほど、末路は前者の方へと近付いていく。
 その点、以蔵は落第だった。彼は英雄などではないし、その素養も一切ない。
 ただ殺し、斬ることしか出来ない……それしか取り柄のない山狗。故にそんな彼の辿った末路は、多分に漏れず後者であった。

「どいつもこいつもわしを馬鹿にし腐ってからに。
 わしは人斬りじゃ。わしが生かすと思えばそいつは生きる、殺すと思えばそいつは死ぬ。
 えいえい、天下の道理よ。それが一体何時から、こうも小難しい世の中になっちまったがじゃ」

 別に、それはいい。
 思うところもあるし、未だに己を切ったあの"英雄"には恨み骨髄だ。
 逆さ塔の空気はあの狭苦しい牢獄のそれを思い出させて反吐が出る。だが、それも些細だ。気分が悪い、程度のことでしかない。

 以蔵が真に許せないのは、己が己で在れないことだ。
 人を斬るしか能がない。頭も悪けりゃ要領も悪い、女を口説く気の利いた文句も思い付かない。
 そんな男が、ただひとつ。人を斬ることだけは、他の追随を許さなかった。
 剣術道場の師範が自分を見て口を開け広げ、何か大きなものに裏切られたみたいな顔で竹刀を投げ捨てる光景は何度見ても堪らなかったし、今まで自分を路傍の塵のように見下していた連中が腰を低くして愛想笑いを浮かべてきた時など、心底幸せを感じたものだった。

 ───己には剣しかない。それ以外に、何もない。人を斬って殺す以外に、この身体は何の役にも立たない。

 そう知っているが故に、岡田以蔵は認めない。己が斬り損ねた相手が、のうのうと生きているなど。
 何故ならそれは天誅に悖る。天が誅すると書くのだから、誰ひとりとして逃れられる者があってはならないのだ。
 そう、なればこそ。岡田以蔵が逆さ塔に潜った理由など、端からただひとつ。

「───のう、気狂い女。おまんもそう思うじゃろ?」

 雪辱? 復讐? 否、違う。
 酒を呑ませての怪物退治? 馬鹿げたことを抜かすな時代じゃないんだよ。
 では、何をするのか。天を僭称し誅を下す、幕末の鬼人が此処に至って成すべきこととは何なのか。


 決まっている。───人を、斬るのだ。


>ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ

3日前 No.422

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★UH4NIh0UMH_Jty

【逆さ塔/第七階層・南通路/治金丸】


>>418


 天を扇げど、陽は見えず。
 此処は地上とすら切り離された遥かな地底。
 語る者がいなければ、其処はあまりに静かな奈落。こんな場所に追い遣られると言う時点で、真っ当ならば気狂いを起こしてもおかしくはない。
 それは冷たい地獄。なのに今は、そんな空間とはまるで矛盾した熱と炎とが支配を逆転させている。

 来た。

 ソイツの声音は、閉じ込められてからも些かと変わらない生気を保ったまま。
 けれど調子外れでなく、ただ一つ、約束を口とする。
   ・・・・
 その頼もしさが口角を僅か持ち上げさせて、然し、嬉々を不敵へと変化させながら黒き刀は向かい合う。


「待ってた」


 ひりつくような剣気は、其の侭突きつけられる刃から炎として具現してする。


「待ってたよ、天照。でもって━━安心したさ。その炎。構え。どうやら、過不足なく万全みたいやっさ」


 初めて相対した時とは、まるで違う。
 蠍座との戦いで消耗した後の出力も目を見張るものがあったのは確かだが、だがこれは其れとは違っている。
 昂ぶる闘志が刃そのものを覆い尽くし、最早その下の刀身を窺う事も出来ない。
 限界寸前で発していた炎とは比較するのも過ちだ。

 ━━━熱い。
 そして、只管に滾っている。

 が、それは此方とて同じことだ。
 退かず、瞳の中に紅蓮を写したまま、離さない。
 戦いに横槍を入れる者がいないのならば、後はただ、何れが上回るか。


「あんたが約束を果たせる強さを持っているか、否(どう)か。全部よ、全部をぶつけて相手をする━━」


 腰を落としながら、片腕に鞘を。片腕に得物を構え。放たれる寸前の矢の如く。
 火蓋が切られるまで、あと。

3日前 No.423

ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 第五階層/牢C/ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ 】

 武士の誇りと言われたことはあった。だけどその誠を理解することはついぞ無かった。
 人はそのように高尚に生きることなど出来やしない。心に御旗を掲げ、陽はまた昇ると信じて動き続けられる者がいれば、それは英雄の類いだ。決して人間などでもなければ、獣でもない。
 その道から転げ落ちれば衆人は皆侮蔑する。落伍者め。恥曝しめ。
 何故生きている、何故息をしている、こんなところでぐずぐずと腐っている奴は鼠に食わせる価値も無し。
 理解出来ぬなら小刀をくれてやる、それで腹を捌き血を流し臓腑を撒き散らして忠を示せ。

 そして、少女は闇に堕ちた。無辜の怪物たる呪いの逸話を押しつけられ、輝かしき刀の影に置き忘れられた。
 それでも彼女はひたむきに生きた。それを続けている内に、その血肉に八岐大蛇を刻まれて修羅と化した。

 冷えた空気に、生ぬるいものが混じった。
 打ち捨てられた墓地のような、情景だった。
 女は、笑って言った。

「そうか、来たのか」

 その黒い眼の先には殺すべき敵がいる。

「否、否、そうでなくては。感謝いたそう。
 言われる筋合いはないであろうが言わせてくれ」

 和服に黒いコートと、時代の推移を感じさせる近代的な衣装の男。
 腰に携えた一本の刀と昏い光を宿す餓狼の如し瞳は、紛うことなき人斬りのそれだった。

「血を流したことで、拙者が何をしたかったかを思い出せたのだ――そして」

 鬼火が灯り、青白い光が陰鬱な牢内を照らす。

「分かっているならば何も言うことはない」

 ただ純粋に認めてほしいと願ってやまず、ただ鍛錬のみを続けた末に至った修羅の言葉。
 たとえその情念と執念、そして愛情は星の全てを喰らい尽くしたとしても止むことはないだろう。
 しかし実姉以外に向けられることのない狂人の微笑みは、今だけは目の前の何者かを映していた。

「拙者は挙げた首級と流した血でもって、己の証を打ち立てる。
 そこに失敗はあってはならない。そもそもそれが、道理だから」

 一つ、二つ、三つ、――飛んで六つ。
 刀が握られる。その両の手に二振り、鬼火に六振り、都合八つ振りでもって此処に魔龍が降臨する。

「今度は逃がさぬ、気まぐれも無し。
    、    、  プラント
 屍を晒せ――ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ、参る」

 疾駆。絶風を纏い雄々しき轟音をあげ、弾け爆せるような動きでもって駆け出した。
 電光石火、距離を詰めるその勢いは縮地の如し。
 以蔵に肉迫してみせる頃には既に次の動作が行われている――両手の刃を背を向けるほどに振りかぶった。
 腰の動きとその反動、ひいては全身を最大限に利用した横薙ぎ二閃がその胴を切り裂くべく放たれる。

 そこに追随するように、六刀による乱撃が繰り出された。
 右袈裟、左袈裟、上段斬り、一刀両断、突き、下段払い――。

>岡田以蔵

2日前 No.424

アマテラス=姫 神琴 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 逆さ塔/第七階層・南通路/アマテラス=姫 神琴 】

 冶金は目を逸らさなかった。
  、    、・・
 煮え滾るような源泉から滾々と溢れ出し、剣を伝って流れる炎から、一歩も退かずに向かい合っている。最初の邂逅よりも更に研がれ磨き上げられた剣気を余すことなくぶつけてきている。
 眼が眩みそうだ。黒一色という出で立ちでいるにも拘わらず、まばゆいばかりに輝いている生き様を目の当たりにしているのだ。
 だから、笑うんだ。口角を釣りあげて、喜一色の表情を見せるんだ。
 そういう相手に恥じない生き方をしようって、決めた時からずっと。

「あったりまえよ。あんなとこに閉じ込められたくらいで鈍らせてたまるかっての。
 ま、久々の焼き鳥とビール堪能できたおかげってのもあるけどね!」

 動かない。
 お互いに分かっていた。この言葉のやり取りは、どちらにとっても最期のやり取りになることを。
 冶金丸が腰を落とした。片腕を鞘に沿え、もう片方は得物へと。
 抜刀術の構えが、引き絞られた弓のように張り詰めた気迫を放っている。

  、  おわる
 動けば、始まる。

 一抹の寂しさ、名残惜しさはある。だが――。

「ミコト、神に琴って書くんだけどさ」

 これで終わりにしようと決めて、口を開いた。

「ちゃんと名乗ってなかったでしょ、結局さ。
 姫 神琴。コードネームってか大事な名前は"アマテラス"」

 炎が揺らめく、火の粉が大気を焦がす、炎が壁を焦がす。
 最後の、絶対やっておかなくちゃいけない心残りだけは解消するんだと決めていた。
 それも、これでちゃんとやれた。だから、後は。
 ああ、そうだ。こういうんだったっけか。ええと、確か……。

「んじゃ、いざ、尋常に」

 腰を落とした。前のめりになりながら、左足を引いた。
 瞳の中に乗り越えるべき相手をしっかりととらえたまま、魂を焼いて炎を熾す――更に、強く。
 覚悟を決めた時が出立の合図だ。滑り込むような爆炎は、一度放たれれば止まることを知らない。

 極端にまで削ぎ落した余計な思考の中に、あった小さな想い。
 口が、自然と紡いでいた。

「――勝負!」

 やや強引な超加速からの疾駆――足裏に炎を熾して起爆し、ほぼ直線に飛んでいくような形での肉迫。
 空中で真上に直剣を振り上げれば、動作に合わせ焔の波が追随する。

「でやァッ!」

 そのまま思いっきり、頭頂へと向けて振り下ろす――豪快なまでの一刀両断。
 剣より噴き出した炎が灼熱の滝のように冶金丸へと降り注ぎながら、本命たる《草薙剣》の一閃でもって切り裂かんとする。

>治金丸

2日前 No.425

魂魄妖夢☆4H2CCC.TU8ct ★Android=zbCXnRRWFb

【第七階層/牢A/魂魄妖夢】

>童魔

 …これが最後の戦いになるかもしれない。
 そんな思いを胸に──半人半霊の剣士、魂魄妖夢は逆さ塔の中を進んでいた。
 丸亀城が破壊された今、敵も味方もそれぞれ別な意味で大詰めの状況のはず。

「(もし此処で負ければ…もう私たちには止められない)」

 追い詰められているのはこっちだ。
 しかし──逆転の目はまだある。
 あと一回の敗北も許されない状況ではあるものの、裏を返せばずっと勝ち続ければ耐えられる。
 そう考えると自然に気も引き締まった。
 そして…探索しながら足を踏み入れた牢の中は──異質な空間が広がっていた。

「…趣味の悪い檻ですね。性の悪さが滲んでいるようだ」

 牢というには広すぎる空間。
 そこに入った妖夢は、空間の主である虹色の目を持った男を睨めつける。
 …油断するな。
 この男は──危険だ。
 妖夢の直感がそう告げていた。

2日前 No.426

岡田以蔵 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第五階層/牢C/岡田以蔵】

「あたぼうじゃ。一度剣を向けた人間が生きているほど気分の悪いことはないきのう」

 岡田以蔵は、剣士などではない。
 彼はただ、それが自分にとって一番扱いやすい代物であるから剣を振るっているだけだ。
 それを使えば周りの人間が自分を天才と褒めそやし、畏怖の目を向けてくるから使っているだけだ。
 故にこそ、彼にとって尋常な立ち会いだの何だの、そういう諸々は至極どうでもよい些事でしかない。
 自分を神話に語られる龍神と称するような気の触れた女になど食指は動かないし、第一この女はそれ以前にどうしようもなく虫が好かない。
 けれど、ああけれど。人斬りを名乗り、天誅を謳う以上は───獲物を取り逃すなんて無様だけは、捨て置けぬのだ。

「わしはおまんになど興味はない。
 おまんらの大将が一体何を思ってこんな陰気な星を創ろうとしてるのかも、正直心底どうでもいいがじゃ。
 じゃがのう、おまんらはわしにとって不快なんじゃ。耳元で蚊が飛び回っちょるような気がしてならん」

 電光石火───そう形容するに足る絶速での接近は、あの"天然理心流"にも劣るまい。
 所詮はたかが人を斬るのが上手い程度の英霊でしかない以蔵に、このレベルの速度はまず出せない。
 目では追えるものの、それだけだ。負けじと全速力で接敵して鍔迫り合うような真似は無理であるし、あの速度が乗った剣戟と真っ向勝負をした日には最悪腕の方が逝かれかねない。
 神の名を騙るのは、あながち大言壮語というわけでもないようだ。業腹ながら以蔵は心中にてそんな評を下す。
 その一方で、しかし。それらの彼にとって絶望的なまでの性能差は、既に一度その目で見、身体で感じ取ったものである。

「阿呆が。わしに同じ手は二度と通じんと、おまんには言うた筈じゃがのォ!!」

        .     .     .     .     . ・・・・
 そう。岡田以蔵は剣の天才である故に───他者よりも抜きん出て目が良い。

 六刀に依る剣戟は宛ら嵐。神の災禍と呼ぶにも相応しい、まさしく暴力的なまでの猛威。
 確かにこれと真っ向勝負をするのはまず不可能であろう。だがそれぞれが全く、寸分の狂いもなく同時に振るわれている訳ではないのだから、見切ること自体は───少なくとも以蔵にとっては───然程難しくない。
 その粗暴で知性を感じない言動とは裏腹の、熟練の忍びか踊り子を想起させる足取りで以蔵は先ず横薙ぎの二閃を回避。
 続いて両袈裟の斬波を後ろに一歩退くことで避け、上段を刀の柄で受け切り、手に残った痺れにやや顔を顰めながらも刀身を半回転させて両断目的の重打の軌道を反らしていなす。
 突きには横に倒した刀身の"面"の部分を充てがって縦とし、最後の払いはそもそも相手にしない。
 下段を斬らんとした六閃の最終を掻い潜るように身を低めて吶喊した以蔵は、その勢いの儘に疾風が吹いたのかと錯覚するような高速の一刀を放って、ムラマサの胸を横一文字に切り裂かんとする。

「天然理心流。知り合いに脚の速い剣士がおってのう、目障りな蚯蚓を斬るにはちょうどえいじゃろ?」

 八岐大蛇、何するものぞ。
 蓋を開けてみれば人の形をし、人の声で喋る童女、何ということもない。
 これなら斬れる。人の形をしているならば、人斬りに斬れない訳はない。

>ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ

2日前 No.427

血祭ドウコク @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【逆さ塔/入り口/血祭ドウコク】

その男は、まず端的に言えば決して菜切に忠実と言えるような存在ではなかった。そんな男がなぜこのようか戦端の真っ只中に現れたかと言えば理由は単純だ。

『騒がしくてイライラするから』

身長2mを超す巨体。長身痩躯だがその身体は血塗られたかのような赤い甲冑を身に纏ったかのような悍ましい姿をしており表情は憤怒に歪んでいるようだ。

「この星も騒がしくなってきやがったな…例のトリズナー共のせいで御華見衆の奴ら…逆上せてやがるのか」

異形の名は血祭ドウコク。
元の世界では異形の妖怪集団たるアヤカシ『外道衆』の大将として、そしてこの世界では禍憑として悪名を轟かせるあらゆる意味で文字通りの怪物だ。
ドウコクは菜切が互いに無関心なのを良いことにこの世界にて好きに過ごしていた。

好きに、というがドウコクは来る日を怠惰に過ごしていたわけではない。常に尽きることのない苛立ちと破壊衝動を抱えており、その性格は極めて凶暴。
そしてそれがぶつけられる相手は決まって御華見衆だ。ドウコクにとって御華見衆は元の世界にて敵対した侍戦隊シンケンジャーと同じようなものだ。だから潰す、徹底的にだ。

ドウコクは愛刀である昇竜抜山刀を逆さ塔に向かう。
その名の通り、御華見衆を血祭に上げて慟哭させるがために。

>ALL

2日前 No.428

童磨 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第七階層/牢A/童磨】

 不思議な匂いがした。
 数百年も生きてきて、一度も嗅いだことのない奇妙な香り。
 はてさてどんな子が遊びに来てくれたのだろうと、佇む教祖は虹眸を向ける。

「わあ。可愛い女の子だね! 俺は女の子が大好きなんだ。ささ、そこに座って。お菓子もお茶もないけれど、存分に寛いでいってくれよ」

 彼の口から飛び出た言葉は───魂魄妖夢という侵入者に対する、歓迎。
 北谷菜切の敵である以上、彼に求められているのは即時の迎撃であるのだが、彼にはその手の常識的な視点は適用出来ないらしい。
 まるで童子のように喜色を浮かべて見目麗しい来客の到来を喜びながら、鉄の扇子で口元を隠す。
 しかして。妖魔の蠢く秘境からこの地へ招来された妖夢であれば、感じ取ることも出来よう。
 この男から漂う、夥しいまでの死の臭い、血の臭い。そして、醜悪にして猛悪なる魔性の臭いを。

「ところで君、すごく不思議な匂いがするんだけれど、もしかして純粋な人間ではないのかな?
 なんていうんだろう、少し複雑な香りだ。こんな匂いをした人間は見たことがなくてね、俺は今結構興味津々だよ」

 この人懐っこい喋り方と柔和な笑顔は、決して友好を意味などしていない。
 本人はあくまでもそのつもりなのであろうが、本質的には彼の言葉など戯言以外の何物でもないのだ。
 童磨は人の祈りや願いを写し出し、応える鏡。救いを求める衆生の弱い心を慰めて憐れむ偽りの聖人。

「ひょっとして勇者の子かな? それとも菜切ちゃんと同じ剣の子?
 俺と同じく漂流者ではあるみたいだけれど、どんな味がするのか気になるな。
 大丈夫だよ、怖がらないで。俺は悪人なんかじゃないんだ。現に俺は、これまで可哀想な人々を何百人も救っているから」

 ───故に相互理解など不可能。
 鬼とは、人ならざるもの。文字通りの"人でなし"。
 出会したならば喰われるか、その前に殺すか。そのどちらかを選択するしかない。

 それ以外には───ないのだ。

>妖夢

2日前 No.429

ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 第五階層/牢C/ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ 】

 ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチは誰がどう見ても愚かである――だが戦闘に関しては、少なくとも愚鈍ではない。
 この時代、既に滅びかかり詰んだ星の中で、禍魂に憑つかれ狂い果ててもなお生き抜くことの出来る剣術は納めており、立ちはだかる漂流者を斬り殺してきただけの実力はある。理は持っている。
 だから二度同じ轍を踏むつもりはない。それをやれば、最も愛している者に蔑まれることは彼女自身がよく知っていたから。
 勝てないならば勝てぬ理由を探し、潰す。
 そうして勝てたならば次へ、負けたならば同じことを繰り返す――トライアンドエラー。
 だが報われないのは、女が既に人間としての何かを捨てたからか。それを知る者は、この星にはもういない。

 目の前の餓狼は、狙った獲物の喉元にたとえ死んでも噛みつきにかかって食い破らんとすることを。
 犬神伝説にもあるように――狗呼ばわりは怒髪天を突くだろうが、少なくとも何かに飢え切っている人間は強い。
 ヤマタノオロチを刻まれ思考が過激に、傲慢になったとしてもムラマサはそれを理解することが出来る。
 そして理解出来たからこそ――、

「――考えていたのだ。どうすれば確実に首を刎ねられるかを」

 少女はぽつりとつぶやいた――姉上に認められなければ、いかに優れていようが自分の全ては塵屑同然なのだから。
 確かに、嵐のような剣技は魔龍の膂力を掛け合わせたことにより、絶技へと昇華されていた。
 速度の乗った剣閃はただ受け止めただけですら腕に悲鳴をあげさせ、絶え間なく繰り出される二振りに加えて六爪六閃、合計八度の剣撃は一手の間違い突いて確実に致命傷に持ち込む。

「あらゆる全てをくだく重打がうてるわけでもなし。一切合切決着をつける一撃を放てるわけでもなし」

 しかし眼前の人斬りにとっては鴨が葱背負って歩いているようなものだろう。
   、       、   、・・・・
 これが初邂逅ならばともかく――目のいい彼は一度この剣技を見ていて、なおかつその身で浴びて覚えている。
 ならば彼、人斬り以蔵に捌けぬ道理はない。
 金属を弾く音が連なり響く。嵐のように降りかかる剣閃を、以蔵は回避し、受け、いなし、正確に縫い留めて――視界から消えた。

「しかし光を超える速度で動けるわけでもなし――。――ッ、ぐぅ!」

 懐にて以蔵が右手を閃かせた瞬間に体を反らすものの、そのころには一陣の風を思わせる剣閃は既に走った後だった。
 胸部を深く断ち切られたことで、夥しい量の血飛沫が飛び散る、激痛が走る。だが後ろには退かない。
 最低限の回避動作のみで、致命傷には至らずとも決して無視できない手傷を負った。しかしこれでいい。

 暖簾を殴り続けるなどという虚しい真似は、阿呆のやることだ。
    、        、    、    、 ・・・・・・・・・・・
 今までの自分と違うことをしなければ、勝つどころか斬り合いにすらならない。

「考えて、答えは出なかった。だから――」

 両手の刀を指の隙間に挟み、更に手繰り寄せた鬼火から奪った刀を二本、更に空いている隙間に挟みこんだ。
 事実上の四刀流だ。不安定極まりない構え方は、押し上げられた魔龍の膂力が成せる業だった。

 これまでのムラマサがやったことのない剣術だ。そして彼女自身、今その場で考え付いたものだ。
 しくじれば切り裂かれるだろうし、これまでの剣術より断じて優れているわけでもない。
 だが互いの距離は依然、互いの剣がその首に届く範囲内にある。今はただ、これでいい。

 右足で踏み込んでそれを軸足とし、その場で大きく独楽のように旋回しながら両手の刀を振るった。
 いわば刃で構築された竜巻だ。通り過ぎる道を蹂躙し、触れたものをかたっぱしから飲み込む災禍。
 自身は以蔵の全身を切り刻まんとしながらも、鬼火に命じ斜め四方から交差するように突きを放たせる。

「――恐怖を捨てた」

 どうせ斬られるならば、それに対する頓着を捨て去ってしまえばいい。
 失血による意識の朦朧、激痛による感覚の鈍麻、そして、死だった。

>岡田以蔵

2日前 No.430

呉島貴虎 @antinomie☆yzl4MFL1dRLB ★AmPQPE9EE6_l7r

【逆さ塔/入り口/呉島貴虎(→仮面ライダー斬月・真)】

かくして、戦が始まる。
はじまりは自分が知るよりも前。膠着状態が解かれたのは、つい最近のことだ。
叛逆者―――トリズナーと呼ばれる彼らが齎した風が、良くも悪くも星を回転させた。
その過程で起こった大敗北。それを払拭し……我々に、勝利の風を齎すために。

呉島貴虎は、一人の青年を思い出していた。
真っ直ぐな瞳と、秘められた熱い心。“正義”を体現するかのような青年だった。
彼の熱さに胸を打たれた、という可能性も否定は出来ない。それほどまでに、見えた一筋の希望は賭けるに値するものだった。

そして、一人の老人のこともまた、想起する。
結局のところ、彼に与えられた情報は未だ活かすことが出来ていない。チクタクと時を刻む、時計の音。
探ろうにも城があの惨状だ、其方にまで手が回るはずもなく。……だが、ある意味では今は好機だ。
何処にいるとも知れない、時計の音を伴う何某か。敵か味方か分からぬのなら、隠匿されている場所にこそ目を向かわせるべきだ。

呉島貴虎が立つのは、地の底に向かって伸びる逆さの塔。その入り口。
視線を向けたのは、2mを超える巨躯を持つ、血濡れ色の甲冑に身を包んだ怪物。

「―――そう。彼らこそが鍵だ。お前たちを仕留め、星の在り方を正すための。そして……」

左手に握られた、赤いバックルを腰に押し当てることでベルトを形成し。
右手に握られた、青みがかった錠前のトリガーを押すことで、その施錠を解除。ベルトの中心のコアへとそれをセットする。

「どうあっても、彼らの邪魔をさせるわけにはいかない。……変身!」

<メロン・エナジー……ロック・オン!>

貴虎の頭上の空間が、ジッパーで切り取られ異空へとつながる。中から現れた果実は、マスクメロンのような色をしている。
一歩踏みしめ、武者の元へ駆ける。同時に、バックルの横に付けられたレバーを押し込んで。

<ソーダァ……メロンエナジー・アームズ!>

「はッ……!」

果実から果汁を絞るように、ベルトにセットされ開かれたエナジーロックシードから全身へと力が伝わる。
上部へ出現した果実は貴虎を頭上から覆い、展開されることで鎧と化す。
文字通りの変身を果たした白い武者が、対を為すような朱の武者へ飛び込んだ。

その手にあるのは遠・近両用の弓「ソニックアロー」。
通常の弓矢であればリムに当たる部分に存在する刃が閃き、ドウコクへの先制攻撃を成立させんと振り抜かれる。

>血祭ドウコク

2日前 No.431

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★Android=2AWrmBu7z5

【逆さ塔/第七階層・南通路/治金丸】


>>425


 ━━━こいつは、本当に、まあ。


 泣こうと笑おうと、此れが正真正銘最後になるだろうって云うのに。
 雰囲気がまるで台無しだ。
 ……けど、其れで良いんだろう。
 締めの占めに勝敗を別ったのは良いものを食べたかそうでなかったか、ぐらい言って貰わないと。
 ああ、でないとらしくないだろ。
 そう━━思ってたってのに。


「━━━」


 どうしてそう━━いや。

 そうか、そうなんだな。

   ・・・
 今の名乗りで、お前は全てを解消したんだな。
 最後だからこそ、何もかもが終わった後に消化不良の侭な事がないように。
 自分の内側にある焔を一点の燻りなく燃やし猛らせる為に。


「律儀な奴ね、あんた。やっぱ━━」


 嫌いになれんね。

 これ以上、振るう手にも刃にも濁りは生じさせない為に、その言葉だけは呑み込んだ。
 後は━━━往くだけ。


「━━━参る!」


 合図を皮切りとし、跳ねた。
 内側に燃え盛る炎を推進剤に変えて、突撃の速度は人知の外。
 速い━━が、速いだけじゃない。
 加えて炎波が付随する。
 剣が媒介となり、渦巻く闘志と言う名の火薬は比類ない焔と形を変える。

 ━━其れは分かっている。

 まともな勝負ではなかったが、然し、基本的な動きは一度見た。
 然らば治金丸の取るのは、蛇行だ。
 右往左往と、得手とする身のこなしに付け足して、自らの機能を最大に活かし、抗ずる。
 正面、波と剣とが注がれんとする寸で━━曲がる。
 掠めてなお、肌を焦がすような熱は、なるほど確かに故郷を照らす日射しの其れと変わりなく。
 文字通り、身を以て確認しつつ。
 曲がり、避ければそのままほぼ密着した状態で天照の傍から背後に廻り、


「そ━━━こ、!」


 肘鉄を打ち込む為に、左腕を槌とする。
 此方と彼方の距離がこうも狭ければ、
 天照の剣が此方を追うよりも、先に叩き込める……

 ━━筈だ。予測の、上では。

1日前 No.432

アマテラス=姫 神琴 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 逆さ塔/第七階層・南通路/アマテラス=姫 神琴 】

 重打だ。これまでの戦いで、私が得意とするものは何よりも重い一撃を叩きこめるという点にあると知った。
 鎧、あるいは鋼のように硬い肌へ刃を押し込んで切り裂くのみならず、自在に操る炎は生半可な敵の反撃を許さない。
 いわば歩く戦車だ。何もかもを蹂躙しながら突き進むことの出来る力を秘めた、熱量の暴力性。

 対する冶金はとにかく速い。一撃が軽い代わりに、身のこなしに全てを割り振ったような動作の機敏性が特徴だった。漆黒の出で立ちから連想させる鴉のように、精緻かつ素早い動きで以て敵対者を翻弄させてきたのだろう。
 前回の戦いでは詰めるに詰め切れないまま星屑を呼びだされたが――今度は、簡単に不覚はとらない。

 捉えられまいと、冶金は蛇行しながらかける。
 右に左に、狙いを付けさせない動きは疾風の如く。

 、   、   、  、・・・・
 そして肉迫した時、冶金が曲がった。
 移ろう影は一点にとどまらぬように、炎幕と剣閃に覆われる寸前でひらりと身を躱す。
 足運びは精密に、思考は冷静にしかし迅速に――波立つ炎を衣に浴びせかけられながら此方を走り抜けた。
 決して遅いわけではないが、こっちは冶金よりも取り回しは悪い。
 だからといって搦め手に訴えるわけでもなし、両手で剣を持ったまま右足を軸に此方も思いっきり回転した。

「――ッ!」

 こっちが切り返すよりも早く、左腕の槌が突き刺さった。だが絶対に動じないし、退かない。
 体内に伝わる衝撃に顔を顰める。だけど痩せ我慢ならこれまで幾らだってやってきた。
 腹筋に思いっきり力を入れて放たれた肘鉄の衝撃を内部に通さずに表面で食い止めながら、剣より再び発するのは炎だ。全力フルスイング、思いっきり振り回したことにより出来た黄金の尾をたなびかせながら、咆哮した。

「らァァァァアッ!!!」

 横薙ぎ一閃、焦熱一斬。逃すまいと至近距離で、爆焔を伴う炎の一太刀を見舞わんとする。

>冶金丸

1日前 No.433

魂魄妖夢☆4H2CCC.TU8ct ★Android=zbCXnRRWFb

【第七階層/牢A/魂魄妖夢】

>童魔

 …妖夢は幻想郷の出身だ。
 幻想郷には様々な怪物や妖怪がいるし、中には当然人間を襲うものもいる。
 しかし──それでもこいつはダメだと妖夢は感じざるを得なかった。

「食べたんですね、私の仲間を」

 匂いが──濃すぎる。
 まるで地獄が人の形をしているみたいだ。
 妖夢は目を細めて刀を握る手に力を込め──きっと鬼を睨みつける。

「ならば問答無用。貴方という「敵」の存在を、私は絶対に許しません──!」

 そして次の瞬間には、妖夢は目の前の敵を切り捨てるために駆け出した。
 目にも止まらぬ早さの突進から放つ斬撃。
 幽霊の迷いを断ち切る白楼剣でまずは一撃だ。
 白楼剣は利き目が強い。
 みだりに使うと閻魔にお叱りを食らうため、いつもの妖夢なら躊躇ったかもしれないが──今はそんなことを言っている場合ではないだろう。

1日前 No.434

静謐のハサン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【第一層・武器置き場/静謐のハサン】


 闇が、蠢いた。

 鋼鉄の塔の一室に存在した、かつての倉庫を改装した武器置き場。
 靴の音を鳴らしながら、それらの黒より更に昏い闇が歩いていた。
 闇は第一層から先へと突き進むだろう者達の行く手を阻むように。
 あるいは、その武器庫をこそ相対する際の“仕掛け場”とするように。
 そこに広がる暗闇と鉄鋼を、自らという存在で満たしていたのが、その闇だった。

 闇の名前は、女だ。
 瑞々しく、しなやかな姿。
 褐色の、均整の取れた肢体。
 上質の香水のような色香を漂わせ。階段を昇る仕草でさえ気品がある。
 ぴったりとした薄い黒衣に身を包んだその姿は、意図的な女らしさに彩られていた。

 闇の名前は、戦士だ。
 闘うために鍛え抜かれていた。
 黒い薄衣も肢体も、みな武器だ。
 あどけなさと蠱惑的な彩りを同じ枠組みに置くその貌付きは、骸の如き仮面に覆われている。
 それの武器は剣でもなく。槍でもなく。弓でもなく。ましてや、女でもない。

 闇の名前は、死だ。
 麗しき肌と髪の全てが毒だった。
 吐息も爪も退役も、すべてが刃。
 遥か、インドの神話における“毒の娘”の体現者とも言うべき暗殺の華。
 女は死だ。暗がりの中で、命じられるがままに全てを奪い去った。奪い去り続けて来た。


 生前<かつて>も。

 そして、死後<イマ>も。


 自分が。自分としての意識を宿した上で、彼女は此処に降り立っている。
 有り得るはずのない事象の中で、壊れた女を前にした。
 壊れた女に懐いた感情は二つあり、表に出したのは一つだけだった。

 同情と■■―――この期に及んで懐くものが、それだった。
 なんて浅ましい。だがそれが、自分という存在が懐き続けた願いだった。
 その望みがあるから、仮初の命を振るい、仮初の肉体を刃とし続ける。今もなお。


「けれど」


 嗚呼。けれど。
 自分がそうであるように。
 自分が縁を持つことが出来るように。


「彼女にとっては。
 私は、この刃と、なんら変わりないのですね」


 手に取った短刀を、仮面越しに憂うような瞳の色を宿しながら、撫でた。

 そう、彼女にとっては。
 自分など、それなりに便利な刃の一振りとしか変わらない。

 嗚呼、だがそれでも―――。


>ALL

1日前 No.435

ミラ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【第一層・禍要柱/ミラ=マクスウェル】

 善悪とは視点の問題だ。

 無辜の国を荒らす侵略者も、彼らが餓えと共に祖国を守ろうとしたのならば、
 それは悪とは言い切れぬものになるかも知れない。
 国を守るために戦う戦士も、その国が誰かから奪い勝手に居座っているならば、
 それは善とは言い切れぬものになるかも知れない。

 要は視点の問題であるから、この争いに善悪などない。
 ならば後は、どちらがどちらの信念を貫くのかという話になり。
 その点においては、凡そミラ=マクスウェルという女は良くも悪くも愚直だった。
 使命を果たすという点においては、彼女は極めて明快な行動を取った。
 逆さ塔が拠点であることは確かだから、そこを潰し、あわよくばめいじ館へと踏み込む準備を整えようと、打って出続ける攻撃をミラが選んだことに何の理由も違和感もなかった。

 そこにアマテラスというトリズナーがいるかも知れない、ではなく。
 そこが敵の要所であり、もはや背水となった以上進むしかないから、逆さ塔へと足を踏み入れた。

 そして、ミラが足を踏み入れた先にあったものは―――。


「………これが要柱というやつか?
 話には聞いていたが、それよりも少し巨きいな」


 半分正解で、半分外れ。

 敵方の戦力の中核となる存在は、禍憑とバーテックス、およびドリフターだ。
 その点において逆さ塔に存在した要柱は、禍憑の存在と力の要という点において、
 菜切本人と比較すれば大したことはなくとも、野放しにしておいてはならないモノだった。

 とはいえ、それの切除を目的としたのが先の侵攻だ。
 一手遅れていると言えばその通り―――しかし、此処を破壊せず捨て置けば、
 同じく奇襲のために足を踏み入れた者達に支障が出かねないというのも、また同じ。

「(周囲に敵はいない。あるとすれば)」

 一歩前に進む。
 そしてそこで、彼女は“それ”に眼をやった。


「(………鎧。か?)」

 鎧だ。
 一言で語るならば、大型の斧と盾を有した無骨な鎧。


 優美な装飾、展示される美術品のような彩りとは無縁。
 ただ、只管に、戦うためのものとして作られた勇壮な外観は、人間が扱う大きさを遥かに越している。
 二メートルを軽く超え、ミラの背丈の倍近くはあるだろう外見は“巨人”とでも言うに相応しき姿だ。

 そこには幾つもの戦いの残滓が残っている。
 過酷な戦いを切り抜け、何らかの念を宿して生き抜いてきた騎士の武具は。
 その有様だけでも、この巨人さえも砂粒のようにしかならぬ大いなるものとの争いを彷彿とさせた。

 だからこそ。
 これが確実に、嘗て役割を終えたものであるということだけは、ミラには理解出来た。

 つまり、これは明確に使命を終えたものだ。
 この星か、この星ならざる何処かで戦い抜いたもの―――。
 明らかに、このニライカナイの星には似つかわしくなくとも、その想像し得る在り方だけは理解の及ぶもの。

「いや………まごついている暇はないな。
 気取られる前というのは幸いだ、すぐにでも破壊するべきか―――」

 とはいえ、だ。
 逆さ塔の要柱の傍らに置かれた鎧自体は、ただの置物という結論しか下しようがない。

 それ自体が敵意や殺意の類を発しているようには思えないし、
 周囲に何者かが潜んでいるような気配を、ミラは感知することはなかった。
 彼女はこの状態を極めて文面通りに受け取ったが故に、鎧から一時的に目を離した。

 しかし幸いだったのは、彼女には手元の剣以外の手段があったことだ。

「 “ ―――業火よ爆ぜろ!――― ” 」

 掌を翳す。
 十分に蓄えられたマナが、彼女の詠唱/号令とともにすぐさま放たれる。

 遠距離―――丁度部屋の入口から、要柱を破壊し得る位置での精霊術の行使だ。

 拳より一回り大きい程度の塊になった炎が都合四発。
 初級精霊術の類であるが、十分な詠唱とマナという要素を伴うそれは、威力だけなら十分なものがある。

 鎧を素通りし、要柱を破壊するべく放たれたそれは、何事もなければ通過し。
 着弾と共に広がる業火で柱を焼き払うだろう。もちろん………何事もなければ、だ。

>竜狩りの鎧

1日前 No.436

血祭ドウコク @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【逆さ塔/入り口/血祭ドウコク】

「ああん?」

向かってくる戦士の姿を捉えたドウコクは忌々しげに唸った。向かってくる男性はその姿を戦闘に適した装甲を纏った形態へと変えてドウコクに向かってくる。
手に持ってる得物は弓のようだが鋭利な刃が装着されており近接戦にも対応が出来るのであろう。
振り抜かれる刃をドウコクは大刀『昇竜抜山刀』を振り上げ受け止める。

「侍…じゃあなさげだなてめえ。
まあいいさ、御華見衆かトリズナーならどいつだろうがかまいやしねえ」

ここで一つ。ドウコクは恐らく菜切に属するドリフターの中では単純な剣技で言えばさほど特筆するほどのものではない。ドウコクの武器は剣技、つまりテクニックではない。ドウコクの武器は圧倒的な力、パワーである。現に斬月のソニックアローはドウコクの昇竜抜山刀に阻まれこれ以上進む事を許されない。

「彼らって口ぶりから察するにてめえは御華見衆か。
いいぜ、来いよ。絶望ってモンを教えてやる」

それまで受けの姿勢のままだったドウコクが動いた。大刀を振るいソニックアローの刃を叩いて逸らす。返す刃でドウコクは大刀を高く掲げてそのまま振り下ろす。技術を二の次にした暴力、豪腕に任せた外道の一撃。考え無しに直撃すればまさに果実のように割られるのは自明の理である。

>貴虎

1日前 No.437

加頭順 @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【第一層・土産売り場/加頭順】

「ふむ」

菜切に属するドリフターの中でも真っ当に菜切に協力姿勢を示すドリフターである加頭順、彼は今土産売り場――の跡地にいた。
土産売り場と言っても誰が特に整備しているわけでもない寂れた場所だ。当然加頭も手入れなどしておらず加頭自身この場所に思い入れもない。

「全く誰も彼もが度し難いですね」

加頭は菜切の作る理想郷を素晴らしいと考えている。彼も愛した者がいた故に菜切の想いもわかる(と思い込んでいる)。加えて彼の持つ力の名前はあろうことか理想郷(ユートピア)だ。だからある意味でもっとも救えない男であるとも言える言わば理想郷の奴隷とも言える。
そんな加頭がこんな場所になぜ現れたかと言えばそれはもちろん敵を探してだ。
逆さ塔が騒がしくなっているのは既に周知済み、既にドリフターと御華見衆が既に侵入しているのであろう。

加頭はひとまず意外性がありそうな場所を探ってみることにしたのだ。ここから侵入してくる敵がいるかもしれないから。いない時はまた場所を変えて敵を見つけて排除するだけのこと。
そう考えている加頭は練り歩く。

>ALL

1日前 No.438

呉島貴虎 @antinomie☆yzl4MFL1dRLB ★AmPQPE9EE6_l7r

【逆さ塔/入り口/呉島貴虎(仮面ライダー斬月・真)】

金属音が響く。
結果は火を見るより明らかだった。目の前の化け物が持つ武器が、ソニックアローの刃を受け止めている。
装甲の下で貴虎は分析をする。戦闘を行うための方法には、ある程度の種別がある。
……最も、あくまで貴虎の知っている範囲でのことだ。自分たちのような人間が脅威に立ち向かうには、今の自分のように変身するしかない。
そうでなければ、この星で見たように……初めから、そういう力を持った存在であることが、戦うための手段であると言える。
この存在は、自分や加頭のようにツールを用いるタイプではない。それだけは、分かる。

「侍?いや―――……違う。
 だが、敢えて名乗るならば。アーマードライダー……いや。仮面ライダーと、名乗らせてもらう……!」

一触即発だ。
初見の雰囲気から分かっていたことだが、この存在は恐らく防衛に対する意識はない。
であるに、闘争を求めている―――危険な類だ。此処で縫い留めておくことに、意味は大いにあるだろう。
返す刀で振るわれた太刀が、受け止められたソニックアローをいなす。高く掲げられたその刀は、間違いなく落ちてくる。
そして、それをこのソニックアローで防御するという選択をするほど、戦闘に関して愚かではなかった。

斬月・真。ゲネシスドライバーを用いた次世代のライダーシステムによって変身した姿。
斬月との大きな差異は、そのシステムの違いによる攻め方の変化だ。
斬月は、大盾『メロンディフェンダー』と『無双セイバー』による攻防一体の戦術を主とする。それであれば、防ぎ切るという選択肢もあっただろう。
だが、斬月・真はそれを持たない。純粋なスペックの向上による、攻撃への特化。それこそが、斬月・真の戦い方。

「残念だったな。生憎、私はもう絶望などという悪意には屈するつもりはない」

全力で地を蹴り、バックステップ。振り下ろされる大太刀が地を砕き、暴威を発揮する。
その光景を目の当たりにしながら、滑らかな動作でソニックアローを血祭ドウコクの頭部へと向け、引き絞る。

「喰らえ……!」

そうして、放つ。エナジーロックシードから充填された橙色のエネルギーが、矢の形となって三発、撃ち出された。
狙いは両目と首元。正体不明の怪物に、人間と同じ急所があるとしても通じるとは思い難いが―――そもそも、あの甲冑だ。
貫けぬのなら、隙間を狙うのみだ。
ドウコクの振り下ろしが引き起こした破壊の嵐、舞う地面だったものを隠れ蓑にしながら、撃ち出した攻撃の行方を見ぬまま背後を取るべく駆け抜ける。

>血祭ドウコク

1日前 No.439

岡田以蔵 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第五階層/牢C/岡田以蔵】

 ───入った、だが浅い。
 以蔵は拘泥たる想いと共に、チッと舌を打ち鳴らす。
 彼は己を剣士だなどとは思っていないし、作法も礼儀も糞食らえと心の底からそう思っている。
 だからこそ、"殺した"という事実以外は総じてどうでもいいのだ。仕損じたという時点で、それが如何程の戦果であろうが実質的には無に等しい。まして敵がこのムラサメのような強者であるなら尚更である。
 生かしてしまった、その時点で返しが来るからだ。敵が武器を持っているなら、取り逃した時点で只では済まない。
 そんな鉄火場の道理とでも呼ぶべきものを改めてなぞり直すかのように、眼前の蛇は以蔵へ反撃という名の凶気を剥き出した。

「なん、じゃあ……!?」

 岡田以蔵からのムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチという少女に対する評価は、非常に癪だが"一筋縄では行かない獲物"という、自信家の彼にしては非常に高いそれである。
 一度は敗走させられてしまった苦い記憶も手伝って、以蔵はムラマサを前にしている間は一瞬たりとも油断の相を見せていない。
 だがその一方で以蔵は、少なくとも剣の腕でならば自分が上だと踏んでいた。ムラマサの剣技は多刀という変則性に基づいた暴威であり、剣の一本一本をひとりの剣士として見たならば、技量は決して天衣無縫と呼ぶべきそれではないと視ている。
 油断さえしなければ。そしてあの憎たらしい手数に崩されさえしなければ───斬り伏せるのはそう難しいことではないと。
 そう確信した上で、二度目の果たし合いに望んだのだ。しかし以蔵はこの瞬間、自分が相手取っているのは本当に化生の類なのではないかと、確かにそう錯覚した。それほどの光景が、彼へと襲い掛かったからだ。

「チッ、まっこと気色の悪い女じゃ……!!」

 回避不能。
 以蔵は即座にそう理解する。
 彼は痛みには強くない。だがそれはあくまでも斬り合いの外、拷問の領分にまで至ったなら、の話だ。
 人間に当て嵌めるならアドレナリンが過剰に分泌された殺陣の中であれば、彼は肉を斬らせて骨を断つ振る舞いを苦もなく行うことが出来る。
 全身に押し寄せる刃を取捨選択し、喰らっていいものと良からぬものとを見分け、歯を食い縛って激痛に耐える。
 その一方で、四方から来る突きは喰らえない。これを一発でも受ければそれこそ以蔵の殺陣は総崩れ、敗亡の未来が見え始めよう。
 故に以蔵は心の眼を、心眼を研ぎ澄まし、勝利に繋がる手をその立ち振る舞いとは似ても似つかない正確無比なる剣戟で災いを遠ざける。そのまま、血に塗れた羽織をはためかせ、鉄の匂いを撒き散らしながら再度踏み込む。

「往生せぇやァ───!!」

 多刀の突きならいざ知らず。
 一刀の突きならば───これだ。
 そう吐き捨てるように以蔵は、ムラマサの喉笛を目掛けて餓狼の牙が如き一撃を迸らせる。

>ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ

23時間前 No.440

童磨 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

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23時間前 No.441

ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 第五階層/牢C/ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ 】

 生ける竜巻と化する乱撃は、指に刀を挟んで斬りかかるという腕にかかる負担を度外視した構えで以て成立する。
 常人ならばまず挟むという行為に一苦労し、たとえ出来たとしてもそれを自在に振り回すという段階で挫折する。

 安定はしない。だが簡単に捌き切らせるものでもない。
 同時に、この場で思いつき初めて行使した技で決め切れるだなどとは露ほども思っていなかった。
 まして目の前にいるのは剣豪の類だ。本人は頑なに認めないだろうが、目すら向けてもらえない塵屑たる己でも分かる。
 超人的な目の良さで以て己の剣技をどこまでも昇華させることの出来る貪欲さは、名だたる剣士達が歯噛みさせられてきたであろう。

 だからこそ、普通のやり方では絶対に相手にならないと確信していた。
 二度目の邂逅という事実は、それだけでこちらにとっては絶望的な差を生み出しうる。
 如何なる剣士であっても人間に出来ることならば彼にとっては容易い話だ。
 見た剣の構えを骨子まで分解し、解析し、そして取り入れる男――それが岡田以蔵。

 彼を前に今のムラマサに出来ることは一つだ。
 彼に見せていない戦法を、存在しない持ち札から選び取って行使する。
 ・・・
 これを気の遠くなるまで繰り返し続ける――集中力が切れれば、自分は負ける。たちまち、首を刎ねられる。

 四刀を手に繰り出した斬撃の竜巻。
 二刀とは軌道も威力も重みも何もかもが異なってくる。
 だが彼は捌ききった。決して無事とは言えない手傷を負ったが、致命傷となりうる部分だけは的確に避けている。
 走る激痛と迸る激情に顰め面をしながらも、彼の動きは止まらない。
 その手、その足、その胴、その顔――まだそのすべてが、戦意に満ちている。

 血飛沫が散る、花のように。
 鉄錆が散る、既に多くの血が流れた屍の戦場に。
 以蔵を射抜かんと襲来する、刺突の十字砲火――振るわれるその手の刀でもって正確無比に弾き軌道を逸らしながら踏み込んできた。

 血濡れた羽織が閃いた。その躰より鮮血を散らしながら、闇夜に舞う鴉のように彼は襲来する。
 突きとは放たれた矢のように、敵の一点を穿ち破壊するもの。
 限界まで引き絞られた以蔵の腕より、突風の如し突きが炸裂する。

 鋭い銀閃が走った跡に、ぱっと激しい紅が散った。
 激痛に呻く。顔をゆがめるも、歯を食いしばってそれに耐える。

「ぐぅぅぅぅッ――!」

  、    、   、ツケ
 攻撃に全てを割り振った代償が来た。この構えから防御に移行することは不可能に近い。
 咄嗟に躰を僅かに横に逸らしたはいいが、それだけで完全に回避できるはずも無し。
 結果として喉笛を射ぬかれはしなかったものの、首を大きく断たれた。
 当然出血の量は夥しいものであり、ただの斬ル姫だった頃の自分であればこの一斬でケリがついていただろう。

 だが命が奪われたわけではない。
 皮肉にも今の自分に刻まれた呪いは八岐大蛇、八頭八尾でもって神々のおわす山を破壊し尽くす神話の魔龍。
 出血が長引けば何れは敗北するだろうが、少なくとも今はまだ動ける。剣を振れる――ならばまだ、殺せる。

 鬼火の内の一体が、ムラマサと以蔵の間に刃を突き刺した。両者を二分するように配置された一本の刀。
 その柄に足を掛けた。そしてそれをバネにして宙高く飛んだ。
 血染めの華が真紅を散らしながら舞い、やがて頂点に達する。
  、 ・・
 そして天井を踏みしめ、地面にいる敵へ向けて急加速した。

「ずぇぁあああァ――ッ!!!」

 強襲、眼下の以蔵へと。全体重に加え重力を乗せた四刀による斬撃を炸裂させる。
 続けて、着地と同時に再び回転。放つ切り払いは、下半身全てを切り刻まんとする暴風のように襲い掛かった。

>岡田以蔵

14時間前 No.442

@genmwhite ★HGFSFqNdXl_ts3

【第二階層/通路(北)/燕結芽】

 薄暗い道の中で獲物を探していた。肉食獣のように捕食対象を見定める目が闇の中で揺らめいていた。
 肉体の許容を超える不純物が体を癒しながら体を蝕んでいる。燕結芽という少女の人生を奪った病を、これまた病に等しい負の神性を帯びたモノで抑え込んでいる。
 当然、人体に対して全くの影響がないなどという夢物語があるわけがない。それでも燕結芽という少女は、その不純物が齎す力を吐き出していた。純粋な剣士としての力量に固執する彼女にとって、そんな偽りの力は求めていないからだ。
 禍憑と人の中間のような状態に位置する今の彼女は、もうあと一度、二度戦えるか戦えないかだった。蝕むモノに体を委ねればそうではないのかもしれないが、それはプライドが許すことではなかった。
 目を細めながら、手にした御刀の鞘を握りしめる。そうでもしなければ戦えない自分が不甲斐なく、そして無価値のように感じられていたからだった。

 この星がどういう信念の元に存在しているかなど結芽にとってはどうでもいい。彼女にとっては都合のいい舞台だ。自分の存在価値を証明できるのであればなんだって構わない。
 隠世に残留していた不純物の影響故に支配者の元へと召喚されたが、それもまたどうでもいい。陣営の違いすら関係ない。ただ自分という存在を記憶させ、刻ませ、自分がそこにいたという事実さえ作れればいい。
 最も───その事実を作りうることができる相手はトリズナーだけだ。だが結芽はそれを知らないし、知ることもない。知ろうともしない。知っている余裕がないからだ。

「……ッ」

 視界が霞む。腕が痺れる。けれど、それを気迫で乗り越える。自分ではない自分が自分を侵食しているような感覚が、全身におぞましく走っている。
 要らない、必要ない。必要なのは自分の力だ。それだけへの執念がこの身を成り立たせている。来るであろう敵の到来を、今か今かと待ち望みながらだ。
 神薙ぎの巫女たる刀使と、彼女たちが倒すべき敵の力。相反する二つの要素をあわせもちながら、しかし純粋な強さを求め続けている。その強さがあれば、名を残せると言うあまりにも俗物的な願いがあったから。
 その願いも、自分のこれまでの人生が生み出してきた本能のようなもので。そこへの執念と、それまでの執念が形となったのが彼女だ。
 一層極まったその獣の目が獲物を捕らえた時、争いは始まる。猛禽のように鋭く研ぎ澄まされた殺意が、空気を震わせていた。

 >ALL

6時間前 No.443

「あなた」と「わたし」の理想郷 @recruit ★UH4NIh0UMH_Jty

【逆さ塔/第七階層・南通路/治金丸】


>>433


 前提として、この女とまともに真正面から打ち合う事程の愚策はない━━

 それはこの戦いがはじまる前。
 引いては禍要柱での戦いで、既に己に銘じていた。
 尽きる事なき火焔。
 小細工を一蹴する剣術。
 それらを支える重戦車も斯くやの耐久(タフ)さ。

 そんな物と馬鹿正直に斬り合う選択肢はちがねにはない。
 そう云うのはちよ姉の領分だ、故に━━詰める。
 機動力を活かしての一撃離脱戦術も手としては考慮した。
 だがその場合、離脱した瞬間から炎が第二波として此方目掛けて怒濤と成って視界を覆う━━それは、悪手だ。そうなれば、いよいよ近付く事も侭成らなくなる。

 だから━━詰める。

 大剣は、取り回しという点では決して優れている得物ではない。
 こいつ程の使い手ならそれは当然理解しているだろうが、然し目に見えるその点を突かない理由も存在しない。
 ましてこの距離なら、存分な配分を以て剣を振るう事は望めまい。
 そして此処まで詰めきれたのなら、小回りに長けた此方は速度と手数で叩き込む。

 故に、此処でいい。
 この距離で、いい。


(筈だったんだけど、な━━━!)


 ああ、もう。
 こいつはこっちの見積もりをそうやって越えて来る。
 ダメージがない訳じゃない、確かに顔を顰めたのをこの目にしている。
 だって言うのに、防御もなしに減り込んだ筈の肘打ちの痛みを、徹り切る前に根性論で押し留めて来るとか━━━



   ・・   ・・・・・
 ああけど━━━分かってたんだよ、心のどこかで! そう言う事をして来るって事ぐらい!


「ぐ、ぬ……っ!?
 こ、の━━馬鹿、ぢから、が━━━!」


 そう評するしかないだろう、こんなもの。
 金色の軌跡を描きながら、噴出された火炎による増幅も得た全開の薙ぎ払いが━━━━来る、来る。


 衝撃が━━奔る。


 だが誤解はするなよ━━
 逃げるつもりはない、最初から。
 この距離が善いと判断したのは他でもない私(ちがね)なのだから、離れるなんて事誰がするものか。


 ━━奔ったのは、ほんの僅かな間だけ。


 零距離での戦いを維持するにあたって、決めている事が幾つか。
 その内一つが、例え攻撃に移ったとしても足を止めないという事である。
 天照の放つ一振りは、どれ一つ取っても一撃決殺の威力を誇る、だからこそ完璧に捉えられない為に、常に動き続ける。
 だから、剣が直撃する寸前に治金丸は再び移動を開始していた。離れずを心がけたこの死線の中を、縦横無尽に跳ねる事を選択した。
 目指したのは、上だ。弧を描くように宙を舞いながら、灼熱を紙一重で擦り抜けていく。

 無論体力の消耗は激しい。
 噴出し続ける炎はそれとは別に此方を蝕む。
 今の一撃だけ取っても、ほんの僅か激突した刀を持っている側の腕は痺れているんだが━━

 構わない。もう片方が残っている。

 袈裟掛け気味に、相手の頸目掛けて振り下ろすのは━━鞘持つ片腕だ。

 空に足がある以上、地を踏み抜くような一撃は期待出来ないが━━そもそも、手数で往くと決めたのだ。問題はない。何一つ。

5時間前 No.444

古き竜狩り @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_l7r

【禍要柱/竜狩りの鎧】

 そうして女剣士ミラは、距離を置くという用心を払ったうえでも、その鎧に対して特に警戒心を割くことなく柱に対して攻撃を開始した。
 これまでの激戦を鑑みれば、極めて楽な仕事だった。そのはずだった。
 しかし――御柱が霊脈を乱す起点であり、そこを寝床に暮らす怨念が存在するならば。
 たとえそこに姿なくとも、防衛本能を基に動き出すのが道理である。
 禍要柱の有する防衛機構……それが、敵意を前にした剣士を前に発露する。
 彼女は図らずも、その柱自身が持つ防衛機構に触れてしまったのだ。

 深く、昏い人間性の湿りが、じわりと、その地を覆う。
 それは人の怨念であり、禍憑、禍魂の根幹をなすという暗い思念であり、或いは人の本質であろう闇。何処かの世界では、その暗闇を"人間性"と呼んだという。
 如何なる清純なものとて、それこそ神々と言われ畏れられし存在とて、その湿りには抗えぬ。
 そしてその故に、その場に鎮座する古き時代の名残に、強く影響を及ぼした。

 黙してただ佇み続ける、物言わぬ鎧。その手に、己が一部のように確りと握られた斧に。
 斧の刃先に、雷が迸る。神々の威光を思わせる、天の火が斧に灯る。
 ひとりでに、鎧の腕が動き始める。ゆっくりと、それは巨大な斧を持ち上げ……そのまま思い切り地面へ突き刺した。

 それだけだ。ただ地面に突き刺した、それだけだ。
 だがそれは人が手にする限界を遥か超えた超重量の神器。重量に任せて自由落下するだけでも途方もない破壊力を発揮する。
 結果、斧を中心にドーム状に衝撃を巻き起こし、放たれる業火を弾き飛ばした。



 ――それは竜狩りの戦神の残滓であり。



 それは突然のことだった。その鎧は、確かに今自律して動き始めたのだ。
 深く暗い、深みの湿りを身に宿して。禍憑の怨念を頼りに、鎧に眠れる神の残滓が今一度狩りの記憶を呼び覚ます。
 ギシ、ギシ、と。重々しい鉄の擦れる音を響かせながら、鋼の塊が動き出す。




 ――それは竜狩りの伝説の名残であり。




 宛ら黒鉄の巌と見まがう強靭な体が、ゆっくりと重い腰を上げる。
 全長にして3mはあろう巨人の巨躯が、威風堂々たる風格を放ちながら立ち上がる。
 竜の鱗を想起させる鎧の意匠は、まさしく龍人のそれだ。竜と共に歩き、時として竜を葬ったロスリックに眠れる伝説が、ここに復活する。




 ――それは竜狩りの神話の再現である。




 武神の化身は今一度、葬るべき竜を探す。
 否、竜にあらざるとも、我が前に立つ遍くすべては敵に外ならず。
 目に付く一切万象を、神の火にて焼き尽くすべく鋼の戦神は稼働する。
 この神の化身に『意志』はなく、ただ死闘に生きて死んだ『遺志』のみがあった。
 即ち――御柱に迫るミラを標的に定めるのは、目覚めてすぐのことだった。
 意思なく理性なく、ただ狩りの記憶の儘に人外の武勇を振るう。それは生ける天災として、女剣士に猛威を振るう。

 間髪入れず、跳躍。何十トンはあろう体にも関わらず、それは軽快な動きで天を舞い……わずか一足でミラとの距離をゼロに縮めた。
 そして刃圏に捉えたとあらば、その右手に携えたる竜殺しの大斧は血を求めて振り下ろされる。
 圧倒的膂力、圧倒的暴力を以て振り下ろされる大斧の一振り。
 常軌を逸した筋力によって振り下ろされるそれは、遍く妖魔を只の一振りでねじ伏せ、蹂躙し、痕跡も残さず圧殺する。
 初撃にして一撃必殺。それは一切の容赦なく、トリズナーの剣士に襲い掛かった。

>ミラ=マクスウェル

5時間前 No.445

五十鈴れん☆4H2CCC.TU8ct ★Android=zbCXnRRWFb

【第二階層/通路(北)/五十鈴れん】

>燕結芽

 …急がないと。
 れんは、走っていた。
 あまり悠長にやってはいられない。
 もしそんなことをしていたら──なくせないものをなくしてしまうかもしれない。

 ──そうやって急いでいる最中のことだった。

「…あ」

 見覚えのある顔。
 それを見つけて、思わず立ち止まる。
 無視して通りすぎることはできなかったし──してはいけない、とも思った。

「…」

 黙って武器を構える。
 その子は。
 れんが初めて会ったときよりも危機迫っている風に見えた。

5時間前 No.446

魂魄妖夢☆4H2CCC.TU8ct ★Android=zbCXnRRWFb

【第七階層/牢A/魂魄妖夢】

>童魔

「──っ」

 白楼剣で刺したのに、消えない。
 それは目の前の鬼が本当の化物ではないことを示していた。
 妖夢は一瞬驚くが…すぐに思考を切り換える。

「…何を馬鹿げたことを。貴方の理屈は、ヘドが出るほど狂っている」

 いつもみんなのために戦っていた仲間たち。
 妖夢は彼女たちとそこまで深く関わっては確かにいなかった。
 でもだからといって何も感じないほど、妖夢は薄情になった覚えはない。

「それはご丁寧にありがとうございます。なら──」

 妖夢は童磨の扇子をステップでかわしつつ、踏み込む。
 首が弱点らしいことは今教えてくれた。
 なら──やるべきことは一つだ。

「──お望み通りにしてあげます。覚悟しろ、悪鬼め…!!」

 飢王剣──「餓鬼十王の報い」。
 真横に放つ鋭い剣技と、それとまったく同じタイミングで撒き散らされる小さな斬撃。
 小粒の攻撃で妨害しつつ首を跳ねる。
 その魂胆で妖夢は再び切りかかった。

4時間前 No.447

アマテラス=姫 神琴 @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 逆さ塔/第七階層・南通路/アマテラス=姫 神琴 】

 ・・・・
 舐めんなッ――!

 左肘の鉄槌が痛くないわけがない。だがそれを生業としているわけでないのは、両者確認済みのことだ。
 武術家が放ったものでもなければ、良くて昏倒、精々が動きを止める程度の威力だろう。
 躱して打ち込むのが最善手だが――冶金の得意とする距離は零距離で、その戦法は手数重視のものだ。
 こっちが何らかの防御策に打った時点で、忍ばせていた本命の二の太刀を打ち込むことぐらい容易いだろう。

 そう、信頼しているからそれに乗った――踏ん張って耐えて、強引にこっちの剣を叩きこむために。

 物凄く痛いし、何かがせり上がってきた気もするけれど、我慢した。
 死にかけた時の痛みに比べれば、この程度など屁でもない。死ななきゃやすいもんだこっちは!

 そして、剛剣が振るわれる。
 弾く音が高らかに鳴り響く。
 その頃には、その場に冶金丸はいない。

 動きを目で捉えられない。
 少なくとも速度に関する面では、その全てにおいてこっちが劣っている。
 これに追いつくには奥の手を切らなければならないが、あれに頼り切れば窮地に立たされるのはこっちだ。

 相手も愚鈍じゃない。技量なんぞ知ったことかと完全に力任せで扱い、付属する炎で畳みかけるこっちのやり方を一度見ているのだから、来ると分かっている剣を馬鹿正直に受け止めるわけがない。折れるのはこちら側だと理解しているのだから。
 ミッドレンジ
 中距離の戦い方とはそういうものだ。
 相手の間合いで絶対に好き勝手させず、逆にこっちの間合いに引きずりこんで好き放題に荒らしまわる。
 だが荒らされると分かっている相手が何の策も講じないわけがない。

 塔の廊下を、黒が支配した。縦横無尽に、駆け巡る。
   、   、 はし
 黒がなびく、黒が疾風る、黒が蠢く、黒が淀む。

 神琴は追うのを諦めた。だが戦意は捨てていない。剣の柄を目線の位置に持ち、ただその場で待つことを選んだ。
 呼吸を聞く、疾駆を聞く、風を聞く、辛抱強く聞く――仕掛けてくるタイミングを見極める。

 ――黒が翔んだ。目の前から、消えた。同時に神琴も剣を振り抜いた。


「そ、こ、だァッ!!!」


 上空より降って来る冶金丸へ向けて、灼熱の波を伴う剣閃が迸った。

 カウンター
 反撃だ。
 どんな攻撃でも、必ずといっていいほどこっちの体のどこかを穿たんとするのは自明の理。
 ならばわざわざ動く理由もない――そっちが翻弄しにかかるなら、そっちの信頼した通りに無敵の要塞のように振舞ってやろう。

>冶金丸

4時間前 No.448

カイ @phile☆fFByNj5QP5A ★Android=jnRPVqvIPa

【第六階層/牢B/カイ=キスク】

 その空間は、光を通さぬ深い暗闇の中に在った。
 地下へ地下へ掘り進められかつての影を担った監獄は、いまや狂った剣によって作られた地獄となっている。
 北谷菜切のもとへ身を寄せたドリフターたちのねぐら──そして、いまは自分たちに開かれた唯一の突破口がここだ。希望へ上り詰めるために地下へ潜れというのは、なんとも気の利いたことだと思う。
 そこかしこから声がした。金属音と魔力のひらめく音も。
 もはやこの場は敵の腹の中だ、油断はできない。その中でも臆すことなく歩みながら、カイ=キスクは静かに周囲に視線をめぐらせていた。

 麗人と呼んでもいい男だ。
 整った顔立ちに乗った涼やかな瞳。それであっても弱者の気配を感じさせないのは、その佇まいに滲むわずかな傲岸さか。
 獲物と思わしきものを握っている様子はない。その服装から察するに、カイの知る少女と同じ徒手空拳を武器とするものか?
 薄暗闇の中で、その男の細かな佇まいを観察はできない。それらはすべて、これから打ち合う中で判断してゆくしかないだろう。

 ひとつ息を吸う。
 あとのない状況、絶望的な戦力差──それらは、刃を下ろす理由にはならない。カイは、旅人は、これよりも恐ろしい『絶望』が、この先に待っていることを知っている。
 だが、ここが正念場だ。トリズナーとドリフターが、押し寄せる禍をはねのけ前へ進むための。
 自分はその礎となろう。その剣をもってして──静かに決意を改め、カイは愛剣マグノリアエクレールを抜き放つ。

「──禍憑の、ドリフターとお見受けした。手合わせ願おう」

 白刃が、暗闇にぬらりと光る。
 刀身に這った蒼い雷が、騎士の静かな敵意に濡れた顔を照らし出していた。

>劉豪軍

3時間前 No.449

ミラ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【第一層・禍要柱/ミラ=マクスウェル】

 駆ける業火。
 詠唱を伴い、マナを変換して放たれた灼熱の弾丸は都合四発に及ぶ葬送の矢。
 それ一つの着弾で要柱を破壊し得るかはさておき、直撃したならば相応の威力を約束する『ファイアボール』の灼熱は、ミラの精霊術の制御能力も相俟って、寸分狂わずに要柱の方へと向かっていった。
 この行動自体に責めるべき要素も、ましてや謂れも何もない。
 此処が敵の拠点である以上、敵手の増援の危険性は常に含まれている―――ならばこその速攻であり、同時にミラが感知し得ない敵手の不意打ちを想定出来る程度には、彼女は戦いの経験を積み始めていた。視覚と五感で判断し得ない範囲であろうが、此処は敵の巣窟なれば、如何なる後出しも視野に入れて然るべきだろう。


 ゆえに遠距離から、尚且つ詠唱を伴う術にて破壊を試みることに、何の間違いもない。
 その上でミラの失敗を、唯一と前置きして挙げるとするならば。


「何………ッ!?」


 否、それは想定外と呼ぶべきなのかもしれないが。
 その焔の弾丸を食い止める要素<ファクター>が最初からこの場所に居たことだ。

 それをミラは、まず嵐と誤認した。
 暗く滾るような何かの流出を違和感と受け取るより前に、視界に強く奔る雷電を見た。

 迸るような火花<スパーク>を伴って落ちる稲妻を武骨な斧に灯らせて。
 嵐は叩きのめした逆さ塔の床を塵芥のように薙ぎ払い吹き荒れさせながら、その衝撃で火球を弾き飛ばした。
 否、これを弾き飛ばしたという表現にしていいものか。“消し飛んだ”と言った方がはるかに的確な表現だ。

 やがてその嵐が、振り下ろされた鉄鋼を軸にしたものだと気付いた。
.   、    リビングアーマー
 モノも言わぬ、骸に等しき鎧が、その手元に携えた斧が破壊の奔流を巻き起こしたのだと理解した。
 まるで動く気配さえも見せなかったそれは、この地を覆っている何かに呼応したのだが―――そこに見当がついたのは、ミラが状況の全てを飲み込んでから数刻のことであり、既に後の祭りとさえ言ってよかった。

 そも、禍憑という存在の根底は、人間の負の感情に起因するものだ。
 恨み、妬み、憎しみ、苦しみ、ひっくるめて怨念であり、総じて夜の黒より昏き思念。
 逆さ塔の要柱は、その怨念を束ねるビーコンのようなもの。
 そこに存在する鎧が、その怨念を糧とし、薪とし、起爆するように動き出したというわけだ。
 その鎧の傷と姿を見れば一目瞭然、なんらおかしなことではない。何故なら………。

「………守り人代わりか!
 ならば尚更、手間は掛けていられん―――」

 中に収めるべきものもないだろう、伽藍洞の鎧には。
 しかし、その傷を見れば明快かつ鮮明に浮かび上がるだろう、戦いの記憶が詰め込まれている。
 嘗てその巨躯よりもはるか大きなものと相見えたことを察させるような、戦いの記憶、その残滓が。


 鎧が―――鉄の嵐が動き出す。
 大地を踏み鳴らすごとに空気が震え、竜鱗の如き鋼の塊に覆われた巨人が目を覚ます。

 それなるはこの要柱を守るための防衛機構。かつて天を舞うものへ刃を向け、葬った鎧の記憶。
 此処ではない何処かに眠る伝承のかたちがうなりを上げる。

 それこそが竜狩りの鎧―――意思なくとも遺志を持つもの。
 己が信念を伴って戦い抜いた名残が、この瞬間ミラに牙を剥いた。


「(とは、言うが!)」


 そしてその跳躍から見出せる技のキレ、鎧のみとなっても存分に振るわれる剛力無双。
 時間を掛けてはいられないとミラも断言したが、これは易々と手を付けられるものではない。

 その武練の断片にすぐに嘗ての騎士アーロンを彷彿としたミラであるが、それとも断じて違う。
 アレには争いに狂する念があり、人間の技とでも言うべきものがあった。
 これもそれは似通うが、だが初動の動きが違う。これは人の姿をしているが、所業が人のそれではない。
 嵐と見紛う程の暴力の大渦を、もはや人間技と形容することは出来まい。

 暴力的なまでの武勇という点においては、以前応戦した魔剣の騎士を思い浮かべたが、これとも違う。
 想定し得る敵が違う。敵に対して向けるものが違う。
 これなる鎧は記憶の残滓を動力としているのだから、目前に立つ相手に我欲の類を向けることはない。
 ましてや、そもそもミラの方を『敵』以外として認識しているかも怪しいものだ。

 だが唯一合致する部分はその“力”。
 彼の魔剣遣いナイトメアも同様に持っていた比類なき力にある。

 ゆえに―――。


「チ………!」

 ・・
 躱せ。


 ミラの全神経が警鐘を鳴らした。


 大きく振り下ろされる斧の一撃とまともに撃ち合うなど論外だ。
 同じ剛力を誇るものでも御免被ると思えるのがあの鎧の振るう大斧………まして、初撃必殺、先手必勝の心意気で放たれたものを易々と防げるほどミラは、剛と剛の力比べが出来る類の流法<スタイル>を取ってはいない。

 ゆえに全霊で躱す。
 大きく左方に飛び、側面へと陣取るように回り込む。
 斧が叩き付けられた時の衝撃波が空気を引き裂くのを感じながら、ミラは片手へ再びマナを凝縮させた。

「 “ ―――穿て旋風!――― ” 」

 回避動作と共に詠唱から放たれるのは、先程と同じ精霊術の一つ『ウィンドランス』。
 凝縮された風の槍は僅かな距離を進んだ後に急加速し、斧を振り下ろした直後の鎧を穿たんと空を駆ける。
 火球を易々と消し飛ばす斧の剛力を見た以上生半可な火力には意味もなく。
 斧に宿る稲妻は推測だが同種のマナによる精霊術の行使を無力化するだろうという懸念がある。
 となれば、必要なのはあの鎧を穿つに足るだけの貫通力だ―――そう考えての初手と共に、そこから、しかし踏み込もうなどともまず思わない。むしろここで一気呵成と踏み込んで、返し手を貰えば窮するのはミラだ。
 あの大斧の振り下ろしから次手に至るまでの速度と反射神経を見誤り、主導権を再度彼方に握らせてしまったのならば、そのままこのヒトの器が粉砕されるのではないかという予感がミラにはあったからだ。

 さりとてこれに牽制を重ね続けるなど愚の骨頂。
 故にもう一撃―――出方を見るにしても、主導権を赦さぬ程度に攻撃を掛ける必要がある。


「研ぎ合え、風刃―――ッ!」


 飛ばした風の槍を狙うように、素早く魔技のかたちとして放った風の刃が二の矢として迫る。
 一撃目の槍は貫通を狙ったものであるが、この鎧が万が一、己の想定よりも上の速度を以て縦横無尽に跳ね回るならば―――その想定を踏まえた上で、槍が竜狩りの鎧を貫く前後、衝突するようにもう一振りの風刃が槍に着弾する。

 その結果、竜狩りの鎧がもしも最初の『ウィンドランス』を回避したならば、という前提になるが―――。
 丁度立っていた場所を中心として、共鳴を起こした風のマナは不規則な軌道を取りながら、かまいたちのようになって回避した先をも構わず切り裂くだろう。

>竜狩りの鎧

2時間前 No.450

血祭ドウコク @evil☆wlNTvj.bQ62 ★Android=c1E0DIQTEq

【逆さ塔/入り口/血祭ドウコク】

ドウコクと相対する戦士、呉島貴虎は自らを『仮面ライダー』であると誇るように豪語する。実を言えばドウコクにとって仮面ライダーとは全く聞いたことがない単語というわけでもない。

「仮面ライダー…?
ああ、ほんのちょいとだけ侍共と肩を並べて戦ってた奴らの同類かよてめえ」

ドウコクの敵は侍戦隊シンケンジャーだが文字通り少しだけ彼の世界を通りすがった戦士がいた。それが仮面ライダーだ。戦い方も武器もまるで違うがただ一つ共通する事はシンケンジャーも仮面ライダーも自分達外道衆に仇為す者であるという事だ。
最も今のドウコクは外道衆の大将ではなく禍憑の一角に過ぎないがそれでドウコクの根幹が揺るぐわけもない。人間に悲しみや苦しみといった負の感情を味合わせる。それが外道衆の、アヤカシの生き甲斐であるが故に。だからそれを阻む御華見衆をドウコクは決して許しはしない。

ドウコクが振り下ろした大刀は大地を文字通り粉砕する。しかしながら粉砕したかったのは大地ではなく斬月の頭蓋だ。つまりは空振りという事に他ならない。

反撃とばかりに飛んでくるエネルギーの弓矢をドウコクは大刀の腹で防ぐ。

「面白え。そんなてめえがいつ泣き叫ぶまで、一体どれだけかかるだろうな」

斬月が動く。こちらの背後をとる気であろうか。だがドウコクはわざわざ追い掛けるような事はしなかった。

「次はこっちの番だぜェ!!」

地にどっしりと足を付けたまま大刀を斬月目掛けて豪快に振るった。灼熱の斬撃が斬撃目掛けて飛来した。直撃すれば爆発を巻き起こす言わば斬撃の形をした爆弾だ。それを意趣返しのように計三発、ドウコクは斬撃目掛けて見舞う。

>貴虎

2時間前 No.451

ゲンジ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_l7r

【 第一層・土産売り場/ゲンジ 】

 逆さ塔侵攻作戦――敵の要である犯罪者を収容した禍々しき巨塔を制圧すべく、御華見衆が行動を起こした。
 手持ちが少ない以上、強襲を兼ねた電撃作戦になるのは承知の上でのことだった。
 だが今回は違う。此方が情報においては優位を握った上での攻撃だ。
 よって、現場で動くこちら側が成功を収めれば、ほぼ確実にこちら側の勝利へと持ち込むことが出来る。

 ゲンジは最奥部に辿り着くために、塔の周辺と外縁部を探っていた。
 敵がいればそれを散らし、いなければ探りを入れる。
 自分は忍だ。敵の内側に潜り込み、静かに蹂躙し、そして影と共に立ち去る者。
 その彼は今、土産売り場の棚の陰に身を潜め、様子を伺っている。

 ――周到だな。やはり、確認は欠かさないか。……それに、死の匂いがする。

 視線の先にいるのは白い詰襟の服を着た男。後ろ姿、髪色からして同郷の人種であることは推測されるが――ゲンジ自身、あの白き悪性が祖国にいたとは考えたくはなかった。
 ゲンジは闇の者だ。同胞といえど、敵対者であるならば、まして立ちふさがるならば斬り捨てるくらいの気概はある。
 だがそれでも、本能から斬り捨てなければならないと感じたのはこれで、何人目だったか。

 機械籠手より、仕込まれていた手裏剣を装填。
 その無防備な背中に狙いを定め、射出機構による援助を受けながら投擲する。

 ――気取られぬ今こそ、好機。何かする前に決着をつけてくれる!

 更に影から飛び出し、突風のように疾駆。
 弓のように引き絞られた小太刀を抜き、その背中に突き立てんと放った。

>加頭順

1時間前 No.452

岡田以蔵 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第五階層/牢C/岡田以蔵】

「……なんじゃあ、おまんは」

 心底おかしなモノを見るような目で、以蔵は眼前の女にそう言った。
 相手が純粋な人間でないことは最初から承知の上だ。以蔵も似たようなものだし、そこを恐れては死合など出来る訳もない。
 だが、それにしたって道理が通らない。幕末の人斬りをして戦慄するより他にない光景が、そこにはあった。
 確かに首を斬り裂いた。喉笛を貫いて気道を潰す算段こそ結果的に通らなかったものの、それでも出血量は十二分。普通なら、自分の死を悟って剣を捨てるべき容態である。

 なのに───衰えるどころか、血気をより漲らせて。宛ら鬼神のように向かってくるこの女は、一体何だというのか?
 気味が悪い。斬ったなら死ね、斬られたなら死ね。それが天下の道理というもので、覆ることなどあってはならぬ。
 もしもそれを覆すような存在が居るとするならば、それは人間ではなく化生の類であると言う他あるまい。

 ……八岐大蛇。再三に渡って少女が連呼した古の神の名が、以蔵の頭を過ぎる。が、すぐに振り払った。天地神明の存在を否定出来る身分ではないが、そんなものが居て堪るかと蹴り飛ばす。

 その上で、一か八か以蔵は踏み込んだ。
 これは喰らえない、直撃したら確実に御陀仏だ。
 だが脱兎の如くに飛び退けば次の一手も許す羽目になり、いつかは肉体の性能で劣る此方が押し切られる。
 飢えた野良犬とまで揶揄された出来の悪い脳を必死に回転させながら、以蔵の打った一手は大博打。敢えて鞭のように撓りながら、己の下半身を泣き別れにせんと猛り狂う暴風へ自ら飛び込んで、薩摩示現流を下地にした豪快且つ強引な剣術を振るって刃風の流れを堰き止める。
 その上で先にも披露した天然理心流に倣った隙と初動時間のなるだけ少ない剣術を繰り出し、今度こそ勝負を決める。そういう腹積もりだった。

 だが───博打とは、外れるから"博打"というのだ。そして以蔵は、決して博打運のいい方ではない。

「があああぁああああッ………!!」

 堰き止めに掛かったはいいものの、頭の中で思い描いたほど完璧な形で止めることは叶わなかった。
 止め損ねた分の斬撃は以蔵の胴と左脚に裂傷を刻み込み、夥しいまでの出血を齎して現時点でも既に血みどろの牢を更に己の血液で上塗りしていく。発狂しそうなまでの激痛が走るも、此処で止まれば確実に死ぬと、以蔵の本能が吠えていた。
 切り抜けるならば、今しかない。それに、改めて今の一合で実感することが出来た。
 この女は、イカれている。狂っている。まともに戦えば戦うだけ馬鹿を見る、物の怪の類と見立てた方が早いような怪物だ……と。

「早う死ねやイカれ女がァ! チェストォォォォォォ─────ッ!!!」

 そこで以蔵は、当初予定していた速度と隙の無さに秀でた斬撃の使用を取り止める。
 そのまま、今しがた起死回生の手として用いた薩摩示現流の極意を己の記憶の海から引用。
 怪力乱神の巨人が如くに力強く振り上げた刀を、そのまま唐竹割りに振り下ろす。
 ……少なくともこれならば、当たりさえすれば確実に死ぬだろう。そう踏んでの、選択だった。

>ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ

32分前 No.453

童磨 @artemish☆8cfl5/j3VDw ★utloP7NDPP_cBi

【第七階層/牢A/童磨】

「そう怒らない。可愛い顔が台無しだよ」

 扇子の一斬を防がれることまでは予想の通りであったのか、童磨はくすくすと上品に嗤う。
 注目すべきは、妖夢が扇子を刀で止めるのではなく、完全に身体を逸らして回避する道を選んだことであろう。
 鬼である童磨の膂力は当然一介の人間とは比べ物にならぬものであり、半人半霊の妖夢と比べてもまず間違いなく押し勝つことの出来る領域だ。
 頭がいいし、剣術の腕もいい。すごい子だなあと、童磨は胸中にてそう思考する。
 きっとさぞかし頑張って剣の訓練に励んだのだろう。そう思うと、何だか無性に彼女のことが愛おしくすら思えてくる。

 ……そして、彼はより強くこう思うのだ。


 ───やはり、俺が救ってやらなければならない。こんなにも可愛くて頑張り屋で、鬼の俺を前にしても怖がらずに向かってくる健気な子が、恐怖に怯えて苦しみながら死んでいくなんて可哀想過ぎるだろう、と。


 しみじみ頷いてひとり傍迷惑な決心を深める童磨へ次に襲い掛かるのは、頸を横一文字に斬り飛ばさんと放たれた鋭撃だった。
 これ自体はそれほど非凡な技ではないが、童磨が感心したのは、刃を一閃するのと同時にばら撒かれた小斬撃の数々。
 成る程、よく出来ている。確かに余人であればこれに動きを縫い留められて、本命の横一文字にまんまと直撃してしまうことだろう。
 事実鬼としての不死性が弱体化し、日輪刀を用いずとも頸が斬れる程度にまで落ちさらばえている童磨にとっては、十分にこれも直撃してはならない危険度を誇る攻撃だ。
 感心しつつ、童磨はさてどう防ごうかな、と頭を巡らせる。そして彼が切った手札は、こんな"異能"だった。

「血鬼術───枯園垂り」

 鉄扇を数度振るえば、虚空に描かれるのみに留まる筈のその軌跡が、おぞましいまでの冷気を含んだ氷の斬撃となって実体化した。
 更に斬撃はそのまま形を保って妖夢の方へと殺到し、本命の横一文字も含めて丸々喰らい尽くす。
 "餓鬼十王の報い"と銘された技を完全に無効化した童磨であったが、流石に無茶な迎撃を試みた代償は大きく、枯園垂りによって放った無数の斬撃は一発残らず瓦解。虚空へ氷の粒子となって溶け込み、本来の役割を果たせなくなってしまった。

 故に今こそが、妖夢にとっては格好の攻め時。
 童磨が迎撃に一手を丸ごと費やした今、彼はただの多少腕の立つ怪物でしかない。
 今ならば、攻め込める。戯言ばかりを吐き散らすその口を、強制的に黙らせてやることが出来る。

 ───が、しかし。妖夢は、気付いているだろうか。
 極低温の氷の破片が溶け込んだ冷たい空気が、疎らに広がって童磨の牢の中を満たしていることに。
 もしも気付いていないのであれば、彼女は知らずの内に断崖の淵へと追い込まれることとなるだろう。


 人体を凍て付かせるほどの冷気。
 そんなものを何の備えもなく深々と吸い込んでしまったなら、人間の肺は果たしてどうなるか───改めて語るまでもあるまい。


>妖夢

14分前 No.454
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