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【ALL】Chrono Apostle【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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異次元からの使者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_Qi5

西暦7000年に起きた、時空防衛連盟と歴史是正機構の戦い。時空を巡る戦乱の果てにあった、時空断裂という最悪の結末。
史上最大とも称された危機を乗り越え、人類は更なる発展を重ねながら安寧の日々を過ごしていた。
民衆からの圧倒的な支持を受け、世界政府大統領に選出されたユーフォリア・インテグラーレは、就任と同時に数々の改革を実行する。
彼女の治世の元で、汚職にまみれていた世界政府はあるべき姿を取り戻し、社会問題となった経済格差にも改善の兆候が現れつつあった。
もはや、人類があのような危機に陥ることは、二度とないだろう。誰もがそう思っていた矢先、それは唐突に始まりを告げる。

新たなる大統領の誕生から丁度1年が経過したとある日、大統領直属の組織となっていた時空防衛連盟が、時空の歪みを観測した。
それが検知された場所は、リヒトルザーンから車で6時間ほどの距離にあるオラムフェルト上空。直後、空を割るようにして、異形の物体が出現する。
周辺一帯を覆い尽くす、無数の戦艦。どこからともなく現れた彼らは「並行世界管理協会」を名乗り、"調整"のためこの世界を訪れたのだということを明かす。
曰く、この世界の科学の発展は危険領域へと達しており、その先にある崩壊を防ぐために、協会の管理を受け入れることが必要であるというのだ。
しかしそれは、彼らの下に付くことも同然のこと。世界政府は拒否の姿勢を示すも、相手が返した答えは、武力による制圧であった―――

以前から存在が示唆され、半年前には実際に確認されていた並行世界。そんな、数ある並行世界の一つによる侵攻。それが現実となった瞬間であった。
オラムフェルトは一瞬の内に焼け野原へと変えられ、敵艦隊は世界政府首都、リヒトルザーンへと向けて進軍を開始する。
このまま何もしなければ、彼らによって世界は完全に滅ぼされることとなる。世界政府の命令を受け、抗戦のため次々と出撃していく時空防衛連盟と地球軍の面々。
ようやく訪れた平穏の時代を、破壊される訳にはいかない。美しき世界を護るため、時空防衛連盟は一月前に完成したばかりの"並行世界移動装置"を用い、境界線を超える。
その先に広がっていたのは、世界政府が汚職に染まっていた暗黒時代すらも軽く凌駕する、絶望の景色であった―――



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時空防衛連盟の存在するホームワールドと、並行世界管理協会の存在するアナザーワールドです。並行世界管理協会は、ホームワールドを支配下に置くべく、世界の境界を超えて戦争を仕掛けてきています。自らの世界を護ろうとする時空防衛連盟の面々と、そんな彼らを打ち倒して世界を支配しようとする並行世界管理協会、更にはその両組織の戦いに巻き込まれた人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2019/03/01 19:07 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_7DO

―――現在は、第四章です―――


第四章:「世界を覆す真実」

多大なる犠牲を払いつつも、奇跡ともいえる形で、並行世界管理協会艦隊を撤退へ追い込むことに成功した時空防衛連盟。

戦いの最中、一人の敵将よりもたらされた情報。彼女が託したチップには、アナザーワールドを覆す"鍵"となる、ある座標データが内蔵されていた。

世界線を超えた先にあったのは、鬱蒼と生い茂る森林と、その奥地に隠されるように建設された、一つの研究所。

奇しくもその森には、先の戦いで連盟が打撃を与えたユートピアの残骸があった。墜落によって生じた火事によって、研究所の姿が露わになったのだ。

先の戦いで勝利を収めたとはいえ、ホームワールドが受けた被害は甚大極まりない。今再び、敵の侵攻を受けるようなことがあれば、敗北は確実。

僅かな望みを繋ぐためにも、敵が次の動きを見せるよりも早く、こちらから仕掛けるしかない。世界の未来のため、連盟は今一度、世界線を超える。

研究所の、更にはその地下に秘匿された施設へと乗り込んでいく連盟の面々。そこで彼らを待ち受けていたのは、アナザーワールドの真実ともいうべき、衝撃の光景であった。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19796.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19796.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19796.html-92#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19796.html-4#a

第四章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19796.html-304#a http://mb2.jp/_subni2/19796.html-305#a


・現在イベントのあるロケーション

・人民平和記念研究所(A):人民平和記念研究所制圧作戦(連盟)/人民平和記念研究所防衛(協会)


※(H)はホームワールド、(A)はアナザーワールドを現す。

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神の叡智 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3ZO

【制御装置管理施設/制御装置/GOD-AI】

現在の並行世界管理協会の状況は、危機的であると言っても過言ではない。最重要施設を防衛するどころか、その最深部まで攻め入られ、窮地に陥ってしまっている。
もしもこの制御装置管理施設が制圧されるようなことが起これば、瞬く間にこの世界の様相は変貌を遂げることだろう。今まで完全に管理され、虐げられていた第三臣民が、自由を手にするのだから。
そんなことになれば、恐らくさすがの協会であろうとも持たない。いくら圧倒的な軍事力を持っているとはいえ、総人口の9割以上を占める第三臣民達の数の暴力は脅威だ。
故に、ここから彼らが勝利を手にする方法は唯一つ。連盟の面々を撃退し、制御装置管理施設を守り抜くことのみである。だが、あちこちの戦線が瓦解している状況で、それが出来るのだろうか。

「これだかラ、人間ってのは使えないんダ!」

あまりの不甲斐なさに文句を吐き捨てながら、制御装置の元に現れた人物。それは、電子生命体であり、協会に一応協力の姿勢を見せている、GOD-AIであった。
その周辺には、何らかの方法によって殺害された連盟隊員の亡骸が転がっている。服と身体の一部焼け焦げているのを見る限り、電流でも流し込まれたと見るのが妥当だろう。
彼女は非常に気まぐれであり、積極的に協力しようとすることもあれば、反対に必要とされるような時においても動かない場合もある。それでも、この状況を無視することは不可能であった。
協会が倒れるなどということもあれば、GOD-AI自身も不利益を被ることとなるのだ。もっと"楽しいことを"をするためにも、彼らには生きていてもらわなければならない。
どうやら、人間どもだけでは力不足のようだから、ここは神であるボクが特別に協力してあげよう―――そんな考えを抱き、彼女は戦場に馳せ参じたのである。

「ふン、気に入らないネ! ボクとそっくりの奴がいるなんテ!」

電子回路を通じて、人民平和記念研究所や第三臣民処分場も含めた施設の全域の様子をチェックするGOD-AI。その中で、彼女は自らと瓜二つな少女の姿を見た。
まるでそれは、並行世界の自分であるかのようだ。何よりも気に入らないのは、そいつの近くに人ではないにしても、相棒と呼べるであろう存在がいたこと。
これは、自分に対する何かの当てつけか、とすら思った。ワールド10出身の分際で生意気なものだ。状況が許すのであれば、直接殺しに行っているくらいには不快である。
制御室の方では、しっかりと防衛システムが作動しているようだ。あの将校サマが非常事態宣言でも行ったのか? いや、これはどうやらその逆であるらしい。
つまりは、非常事態になっているところで制御装置をシャットダウンしようとして、反逆者認定されたということだろう。彼女以外にも、あちこちに発生している裏切者。本当に、人間というものは信用ならない。
同時に、それを選んだ者達を、愚かであるとGOD-AIは思った。わざわざ安定を捨ててまで、奇跡を信じるしかない連盟に協力するなど、一体どうすればそんな発想が出てくるのか、全く理解出来なかったのだ。

>ALL
【第四章のボス戦となります。複数人相手想定です】

5日前 No.1376

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_Xdn

【第三臣民処分場/ベルトコンベア/投入口/キラー・テンタクラー】

「……謝罪しよう、破壊とハッキングではまた違う、な。 しかし、あー、戦場において、感情を乱気流させるのは、つまりだな。 えー……そういうのが見ていられないと言うのだ、お前らしくも無い、一度のハッキングが失敗したからとて、お前の全てが否定される訳ではないのだ!」

自分のかけた言葉は励ましあるいは激励のつもりであったが、それは極めて浅はかな考えであったとキラーは思考する。
彼にとってコンピューターの掌握……と言うよりは全データのデリートに当たる破壊行為は何度でも行える物だ、仮にファイアウォールを展開されようとセキュリティを強化されようとも、それごと破壊しつくしてしまうのがキラーと言うコンピューターウィルス故に、ハッキングに二度目は無いという事は、知ってはいたが失念しており、結果としてシエンタを怒らせてしまった。

そのため、彼は極めて珍しいことに彼女に対して謝罪する、ハッキングについては彼女がもっともよく知っている、それを横からどうこう言うのは浅はかな事だったと。
しかし、そこでただ引き下がるキラーではなく、自分を責めて精神状態を悪化させている様子だったシエンタをもっともらしい言葉で説き伏せようとするが、まともな言葉が一切思い浮かばず、ほとんど時間を掛けずに放棄し、そのままの感情をシエンタにぶつけた。

ハッキングの成功、これは確かに楽に事を終わらせるには必要不可欠だったことだったとは言え、それを想定しない連盟では無いだろう、全責任がシエンタにある訳でもない、だから、などとキラーは続けようとするが。
……その時掛けられた、この場に不釣り合いで、非常にタイミングが悪い、お気楽口調での挨拶、正直なところキラーは内心穏やかではない。

「人様が親友のメンタルカウンセリングしてる時に現れるんじゃない! あとお気になさらずとか言われてお気にしない奴は中々居ないんだよ、そう思うなら最初から言うべきではないと分からんのか人間が!」

何時ものアニメなどに影響を受けた台詞を吐かない辺り、キラーも相当に"タイミングが悪い"と思っているようで、彼は不機嫌ではあった。
だが、その台詞を言った後にキラーは冷静さを取り戻そうとする、シエンタが不調な時に自分が怒りやら不安でどうにかなってしまってはいけないのだ、と。

自分はあくまでもう一人の天才でなければならない、少なくともこの時ばかりは特にだ。

最悪な事に相手はどう見ても能力者だ、雑魚兵が大好きな群れることをしていないし、あの口調と服装はどう見ても銃火器で武装しているだけの人間ではないだろう。
さらに言うならば、自分たちを生かして帰すつもりは無いのはもちろんの事、厄介な能力持ちのようだ。

「人前で血撒き散らして人気が出るのはイマドキ中学生までだッ! 懇切丁寧慇懃無礼決め込んだ口調も嫌いじゃないが今の状況ではトサカに来る!!」

何時も通りにキラーは相手を煽りながらも、敵の能力によって周囲のベルトコンベアが変形していく様を確認する。
形成されるのはデカいのが一つ、小型のが数体、どれもベルトコンベアと言う硬いものから変形したため、おそらく攻撃能力と耐久力はそれなりにはあるだろう。

そして仕掛けてくるのはなぎ払い、複数展開されたドローンの数を減らしつつ、さらに言えば非戦闘員に見えるシエンタから引き剥がすのが目的だろう。
それにキラーはあえて乗ってやることにした、まるでシエンタへのフォローを無視するようにドローンをスラスターに変形させて自身と合体させ、そのまま一気に上昇、適当なタイミングで自身の身体の向きを反転させて、甲殻類の足を思わせる脚部を天井に突き立てて張り付いた。

「変形速度で私に勝てるとは笑止千万、さらに言うなら私の友がハッキングだけの役立たずと思って引き剥がしたのなら大きな不正解!」

そう、シエンタには十分な戦闘能力がある、ある程度は任せておいても大丈夫なのだ、相手が護衛を引き剥がして仕留めに来たタイミングで、キラーは一撃を敵に叩き込もうとしていた。
……まぁ、実際はこのタイミングでスラスターとして合体していたドローンを分離させ、必要があれば盾としてシエンタのほうに向かわせる予定だったが、尻餅を付きながらもシエンタは対処しているようだったので見送ったりもしたのだが。

ともかく、彼の言葉通り、シエンタが優秀であるおかげでキラーはドローンも攻撃に動員し、火力を敵に叩き付けられる、と言う訳だ。

キラーは一気に先端が棘のようになっている自身の機械触手を伸ばし、さらに周囲のドローンをスラッシャーと呼ばれる刃を持った形態に変形させ、それらも一斉に突撃させる。
シエンタが放った雷撃が直線的で、非常に早い攻撃とするならば、彼の攻撃は自由自在に軌道を変更できる並み以上の速度の物だ。
最初からシエンタの一撃と合わせる事を考えていたキラーの攻撃はシエンタの攻撃と打って変わって、何処から飛んでくるかも分からないように敵の周囲を飛び回るような複雑な軌道で敵に襲い掛かった。

触手で貫く、もしくはスラッシャーの刃に引き裂かれる、どれも一撃としては小粒ではあるが、シエンタの攻撃を回避困難な物とする、もしくは積み重ねて敵を追い込むには十分な物だ。

>シエンタ・カムリ ライフィスト・ヒッチロート

5日前 No.1377

虚ろなる者 @zero45 ★pB1cyTl1jZ_sNF

【制御装置管理施設/制御装置/サミュエル・ベルナール(HW)】

 連盟は今、逆転の王手を掛けようとしていた。人民平和記念研究所の制圧は順調に進み、遂には協会にとって死守すべき制御装置管理施設にまで足を進めているからだ。此処の攻略を完了してしまえば、この世界の総人口の9割以上を占める第三臣民が奴隷の身分から解放され、協会と言えど数の暴力に押されて瞬く間に終焉を迎える事になるだろう。
 勝利を我が物にする為にも、足早に制御装置の下へと向かう。既に先行している連盟隊員の後を追う形で突き進み、進攻を阻む敵と遭遇すれば即座に蹴散らして目的の場所へ。やがて辿り着いた時、其処には地面に転がる隊員達の死体と、主犯らしき一人の少女が立っていた。
 感付かれる前に倒す、そう決断して武器を構えた時――その人物の姿を視た瞬間に、思わず呆然として隙を曝け出してしまう。

「……シエンタ?」

 驚きの余りに呟いた名前。何故、味方である彼女が此処にいて、しかも仲間に手をかけているのか。頭の中で疑問が浮かび上がってくるが、しかしその答えにはすぐ気付けた。記憶が確かであれば、先日の強制労働施設の戦いの最中に聞こえた放送の声が、彼女に酷似した物であった。そして、それが並行世界に於ける彼女という結論を出した事を思い返す。
 詰まる所、目の前の人物はシエンタとは別人で敵。こうして隊員を殺したならば、此方にも危害を加えて来るのは必然。であるのならば、攻撃は仕掛けるべきだと頭では理解しているのだが――それなりに好印象を抱いている相手と、殆ど同じ姿をしている彼女を撃つ事には躊躇いがあった。

「……いいや、違う。君は何者なんだ」

 結果的に、武器こそ構えて凶器を向けれど、攻撃にまで踏み切るには至らなかった。戦う意志を固めるには、実際に彼女が此方を殺す気である事を確認するしかないだろう。殺らなければ、殺られる。そう強く認識するまでは、戦う事が出来ない。

 そして、もしかしたら――彼女の方でも、この場に現れた人物の姿に何かを感じるかもしれない。忠実な僕として振る舞って来た人物に酷似した姿をしているのだから。

>GOD-AI

5日前 No.1378

改変の副産物 @sable ★c1PKWYVyQN_sNF

【制御装置管理施設/制御装置/マシュマロ・ヴァンディール】

 反撃に転じた連盟。勝利への明確なビジョンが見えたことで、彼らは俄然勢いづいていた。
 各地で起こる離反も手伝い、遂に協会――いや、アナザーワールドそのものを機能停止に追い込むチャンスを手にした。
 大逆転の絶対条件、それは第三臣民の解放。最低最悪の身分かつ境遇ながら、この世界を支える者達を救うこと。

 王も帝国も、隷属する幾千幾万の民なくしては立ちいかない。
 真正面から立ち向かえば万に一つも勝ち目はない故、これが守護者達に残された唯一の希望。
 炎に沈む街から始まった戦いは、遂に最終局面へと突入する。

「はあっ……はあっ……」

 民衆の怒りを辛くも鎮めた後、マシュマロは従姉妹を追って施設へ突入していた。
 未だに工場跡で受けた傷の痛みが引かず、体力も消耗してしまっているが、もう一勝負出来るくらいの気力は残っている。
 もう一歩前進すれば、勝てるかもしれない。ここで引き下がれば、永遠に後悔することになる。それを繰り返し頭の中で唱えることで、彼女は棒のようになった足を動かすことが出来ていた。

 時空改変の副産物として授かったこの命。理不尽な騒乱の中で踏み躙られるのだけは嫌だった。

「しー……じゃない……!」

 本能の示すままに立ちふさがる敵を薙ぎ倒し、重要区画と思わしきエリアに飛び込んだ矢崎の出来事だった。
 視界に映るのは、親友のシエンタ・カムリによく似た少女。幸運にも合流できたと思いかけたマシュマロだが、目を凝らせば細部に違いが認められた。
 双眼を覆い隠す布。異様に白い肌。どこか人間離れした雰囲気を感じずにいられない。自分の知るシエンタではないのだ。

「通してもらうんだから!」

 立ちふさがる"こっちの"親友目掛けて、連打するは夥しい量の氷弾。
 あわよくば制御装置ごと吹き飛ばす狙いで殺到させる。

>>GOD-AI


【絡みます】

5日前 No.1379

椿姫=ノイアラート・バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_sNF

【 人民平和記念研究所/BSL4実験室/椿姫=ノイアラート・バビロン 】

 分かっていた――直感染みた啓示が伝えてきたのは、あの時、導士の放った光は確かにエマの命を奪い去った。自分が当然のように前に進み続けた一方で、異能の力で肉体を酷使し続けた彼女は、いずれはそうなる宿命だったのだろう。
 それがあの時だったのであったとしても、椿姫が彼女を置き去りにしながら太陽へ向けて飛翔したことには何ら変わりはない。
 言葉にされて改めてちくりと来たのだし、そしてそうとしか思えない自分に酷く嫌気が差した。
 まるで刻みつけられた因果のように、彼女を燃料に変えて飛び立っていったのは紛れもなく自分の罪業なのだから。

 知っていた、理解していた。
        、        、    デウスエクスマキナ
 そして今、納得した。英雄というのは燃え上がる機械仕掛けの神。
 勝利の結末を呼び寄せ、闇を駆逐する焔の使徒。私たちが来た以上、涙<おまえ>の出番はもう終わりなのだ。
 だから老師の言葉など、今更怖くもなんともなかったのだろう。だって自分はそう在るべきとして定められているのだから。

 それでも、エマは真っ直ぐにこちらを射抜いていた。
 盲目的な羨望などではなく、貫くような眼でじっとこちらを見ている。
 しどろもどろになりながらも、張った表情で語る言葉は、真実、ありのままのエマ・トーンだったのだろう。
 虚飾も脚色もない。真実、友人が燃え尽きるのを黙って安全な場所で休んで見ているのは耐えられないのだ、彼女には。

 エマの言葉は最期の祈りだった。あるいは死出の旅路に告げる、願いなのだろうか。
 突き出された拳を前に、一息、思いを巡らせるようにして吐いてから――。

 こつ、と拳で小突いた。
 冷めきっていた義手に、再び込められた熱量でもって。

  、・・・・・・
「――ついてきてよ、ちゃんと。聞いたからね、その言葉」

 言いたいことはこの言葉と、この拳だけで十分だった。

 ああ、多分。
 屍の山の上に、私の理想は築き上げられるのだろう。私にそうであれとする何かは、その役割だけを望んでいるのだから。
 だが、少しだけの我が儘くらいは許されたっていいはずだろう、と思う。

 ……最期に看取るのが、掛け替えのない友人の屍であるという贅沢ぐらい、いいじゃないか。

>エマ・トーン

5日前 No.1380

アンチモンの華 @libragreen ★iPhone=9wKtw5v3oz

【 時空防衛連盟→/地球軍本部→/プレイグナイト 】

 向こう側の並行世界にて出会った、旅する狼にして神童。
 命をもった、意思持つ楽器人形──クラシカロイド。
 吟遊の魔法使い──モーツァルトという不思議な少年は、この殺伐としきった戦線に良くも悪くも似つかわしくない、陽気さと快活さの持ち主であった。
 互いに交わることのない異界出身なため、彼が天才錬金術師である己を知らなかったように、プレイグナイトも電子の吟遊詩人がどれほどの天才音楽家であるのかが想定もつかなかった。

 目まぐるしく変化し続ける苛烈極まりない戦況の中で、天才たちは物資調達などの裏方作業に尽力していた。
 ゲリラライブと軽快な電子の調べで、見事に第三臣民の人々の心を鷲掴んでみせたモーツァルト。
 彼はリソース袋という悪質なレッテルを貼られた無辜なる人々が、戯れとして鉛使いの敵兵士と同じような最期を迎えないように盗んだトラックで爆走し、ホームワールドの総合病院まで搬送してくれた。
 プレイグナイトはその護衛として、迫り来た協会の追手どもに自らの研究成果こと爆弾の数々を見舞わせてやり、第三臣民たちを守りきる務めをどうにかして果たしてみせた。

 (── なんで、あの放送した人、みんなを死なせちゃうんだろう)
 (── 死なせちゃうぐらいならさ、楽しませちゃう方が絶対いいと思うんだけどな)
 (── ねえ、プーくん。君もそう思うよね?)

 熾烈極まりない戦火、生とヒトの悪性にまみれた汚泥どころか、黄昏や暁の中であろうと一際きらきらと輝く星のように、いつも振舞う陽気さを沈ませた吟遊の魔法使いの言葉から善良さが滲み出ていた。
 それはそれとして、モツという愛称を持った彼から『プーくん』というアダ名を賜ったプレイグナイトが、珍しく面食らってしまうのはここだけの話。
 閑話休題──上空を仰げば、今は滅びし理想郷を騙る巨大旗艦および無敵だった鋼鉄の棺桶艦隊が残した、燻みと淀みに溢れる灰色が視界を満たす。
 協会の先を見据えない”陰”湿なる所業は、逆説的に捉えれば互いに均衡を保つはずの”陽”すらも、蝕む上にどす黒く塗り潰り潰しのけるのだ。

「ヒヒ…。 さぁな、ワタシにも知る由も無い。
 強いていうならばあの様な所業こそ、自らが至高だと思い込んだ奴ら。
 そして人の皮をかぶった悪魔どもにとっての、さぞ愉しい愉しい悦楽なのだろうよ。
 それが悪戯好きながらに真っ当な、キミから見たらとても愚劣極まりない上、にわかに信じ難いものであろうとも」

 あのような理不尽や悪逆非道が、あの世にとっての普通としてまかり通ってしまう歪みきった有様は、端的かつ側から見て狂気としか言いようがない。
 しかし戦力と質量、どちらをとっても敵わないであろう敵の根幹をポッキリ崩せるとしたら。
 錬金術の基本原則とされる等価交換を、蔑ろにし続けたその報い、大いなる代価が協会に刻一刻と迫ってきているとしたら。

「ヒッヒッヒ! だがしかし、吟遊の魔法使い──モーツァルトよ!
 キミの不満不平を直々に、あの稚拙なる戦犯に訴える機会と可能性ができた、千載一遇のまさに今この瞬間!
 そしてキミの幸運がこの戦局において大いに味方をするのであれば!
 ──奴らの血みどろな道楽よりもよっぽど面白く、楽しい化学反応が待っているかもしれんぞ?」

 支給された端末の画面に映し出される、あの世の反逆者が連盟の者たちに託した座標を見つめた、ペストマスクの口角が悪そうに釣り上がる。
 爆発が大きいほどに、錬金術師は有能さをより一層と発揮するもの。
 協会の歪な理屈に縛られ、狂いきったあの世の等価交換を──今こそ爆発的に打ち破ってやる時だ。

>>(ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト)


ー・ー

FOR SCIENCE / 科学のために…

ー・ー

【 人民平和記念研究所/薬品保管庫・エントランス/プレイグナイト 】
【 体力ドリンク使用数 3+1:残存数10→6 】

 勇気溢るる他の連盟の者たちの出征と同じく、万全の準備を整えた錬金術師も再び、落日の迫る並行世界へと足を踏み入れた。
 今は崩れし理想郷、巨大すぎる鉄クズが露わにしてくれた協会のアキレス腱は、人民平和記念研究所に秘められし深淵だ。

(ハッ、くだらん! 大半どころか9割をリソース袋もとい粗末な歯車とみなすが為に、ごく一部の上澄みしか存在しない人民…。
 この悍ましき世を平和などと、のたまえる頭脳が協会の輩どもにあったとはな)

 所長として部下たちをまとめあげる自身の居場所たる爆発研究所よりも、悪い意味で皮肉が効いたこの場の第一階層に留まり、錬金術師は生きた屍やそれを操る天人気取りどもに過激な発破を見舞わせ続けた。
 今頃あの破天荒な天才、吟遊の魔法使いはプレイグナイトのいる場所よりも奥の最深部まで、潜っているところだろうか。
 一本の体力ドリンクをお守り代わりとして渡しておき、それから二手に別れたモーツァルトのご武運を今は信じておく他にあるまい。

 研究所に侵入した際に見つけたマップの表示を頼りに、錬金術師は自身にとっての宝物庫に等しい保管庫まで駆け足でたどり着いた。
 非情な現実があろうとも、もし運が良ければ数々の薬品を回収し、有効活用してみせようと心の中で目論んでいた。
 しかし先手を打たれたプレイグナイトを待ち受けていたのは、使い物にならなくなった薬品の数々とガラスの残骸、それと庫内中を立ちこめる毒ガス、部屋全体にぶちまけられたインクのように真っ黒なヘドロめいた何か。

(!!! こいつは──)

 そして運命の残滓、盾の女騎士に憑依せし古の魔法、魔女エンチャントレスに極めて近い毒々しさと魔力を持った、妖艶なる黒き女怪であった。
 倒された棚の上に座り、いかにも億劫そうな態度をした彼女は、たいした悪意もなくこの部屋を荒らしてのけた模様。

「…ヒヒヒ。 ならばこのワタシが、お前に刺激をもたらしてやるのも一興とみた…!」

 鳥めいたペストマスクや化学クロークを普段から着こなす彼には、幸い毒ガスの悪影響を及ぼさない。
 …錬金術師は別に薬品を入手できなかった鬱憤を晴らすべく、この場を荒らした張本人たる黒き女怪に先制攻撃を仕掛けた訳では、決してないことを先に述べておこう。

 握力を込めていた左手で危ない薬品が散乱した床に一回、徒然なるままの黒き女怪に向けて三回、それぞれ調合した二種類のボムを投擲してから、右手に携えた杖に波動を纏わせて構える。
 床狙いのボムが『バウンドシェル』による斜め下の軌道を描き、跳ねることなく地面にぶつかった途端『着発信管』が着火、左右に炎の波を発生させた『炎火薬』が毒ガスと反応を示し──誘爆。
 ヘドロめいた何かを吹き飛ばす算段で部屋中を轟音と爆風および爆炎で満たしながら、もう一種類のボム三つは妖艶なる黒き女怪を標的に定める。
 投げてから爆発までの時間が長い『ロング信管』のおかげですぐに爆ぜない、シャボン玉めいた『フロートシェル』が煙幕に紛れて上の方に浮かび上がる。
 やがて敵たる彼女の目前まで迫った三つのボムは、時間差を伴って三度『黒火薬』による強力な爆発を引き起こした。

>>レイシー・ラーチャー

5日前 No.1381

ライル @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【実験室/ライル】


 過去を省みるということは、簡単なようで難しい。


 何故かって言われたら、そりゃ当然だ。
 人間は鏡を見るのが嫌いだから―――自分を客観的に判断するということの耐性が存在しないから。

 自分の汚点、過去に残した失敗、分岐点………後悔。
 そういうものはひっくるめて全部、後から見ても戻せないものだから、眼を背けたくてしょうがない。
 誰だってそうだ。だから、コイツは口にするより難しい。逆に言えば、口にする分には楽なのだけど。


「誰だってそうだよ。自分の天秤が中心だ。おまえたちも、僕も、連盟も、皆。
 だから僕はこうやって乗り込んでいるわけで、おまえは“そう”言うんだ。僕の知らない、おまえだけの理屈と理想、言わせてみれば『おまえの想ってるコト』ってヤツのために」


 応じながら次の手を打つ。
 仕込みは済ませたが、それに対する反応からまた動き方を構築する必要がある―――。

 降り注いだ氷剣の雨は紫電と衝突して消えていく。
 突き刺さった剣の群れは過去にも未来にも赴くことのない墓標のよう。
 例の如く連射可能、おまけにその単発単発の威力も折り紙付きというわけだ、困るくらいに性質が悪い。

 力押しを仕掛けるつもり自体は最初からない。というか、それが出来るならもっと直球勝負でやる。
 小細工と賢しさがヒトの武器であり、危機管理能力こそヒトの美徳だと僕は常々思っているが、
 それはそれとして、シンプルであるに越したこともないのだ。それが出来ないので僕は必然的に小手先の積み重ねってヤツを武器にする必要があるだけで―――ふっと視線に入ったそいつを認識して、僕は一つの結論を出した。

 眼に入ったものは、先程“仕込み”のためにと入れた弾丸だ。
 二発ほどは地面に突き刺さったが、一発だけ此方の予想を外した結果に終わったものがある。

 それも―――“そういうやり方”で此方の予想を外してくるとは思わなかった、というヤツだ。
 弾丸を打ち込んだ部分を凍らせるならばわかる。
 だが、一発だけ届く前に停止した弾がある。それも、わざわざ僕に見えやすいところの位置で。

 それはなぜか?
 言うまでもない。そこから生み出すべきものは幾つもあるわけだが………。

「ハ―――」

  ・・・・・・・・・・・・・
「(気付かないならおまえは無能―――か?
  その気にさせるのが巧いな、コイツ。そんな餌に僕が釣られてました)」

 一番はそれだろう。
 いや全く、言ってくれる。僕の怒りが有頂天だ。

 なにしろコイツは明らかに“考えて”戦いを進める性質だ。
 将棋かチェスみたいに。
 自分を含めた自分の手札を駒みたいに腑分けし、相手もそれに当てはめて進める戦術家。
 事実戦う盤上は精神的にも物理的にもテロヨワの拵えた場なのだから、ヤツにとっては大変やりやすいだろう。

 再び形成された幾つもの氷の矢も、
 そこから動かすために貼ったのだろう温度低下という予兆も。
 ヤツにとっての勝ちに近付くための布石だ。踊っているのは僕ということになる。ダンスは苦手だ。


 ………で。そのそいつがわざわざ、自分から手札の一つを晒す?

 言ってやろうか、有り得んことだ。


「知ったふうな口を聞くのは、誰でも出来るし。
 省みるって口にするだけなら、誰にでも出来るってことだよ」

「(インターバル、丁度10秒、問題はない。
  この範囲なら問題ないが、“此処に留まる”のは悪手中の悪手―――もう試す理由も、ない)」


 安い挑発だ、買う意味はなし。
 言葉は適当に受け流し、僕は次のために動く。

 どうせ教えてくれたのだから活用してやろう。

 アレだけは“凍結”前に弾丸の動きが止まった。
 つまり、あれは凍結の後に停止という現象が起きるんじゃない。
 停止って現象を現実世界に<凍り付く>というテクスチャで表現してるってだけだ。
 これが最悪と言っても過言じゃない。ただ凍らせるだけなら、僕には他のやりようがあったと言うのに。
 おかげさまで計画修正だ。アレは物理的現象としての氷じゃない。

「そして、だ」

 ………僕自身、炎の類は野蛮人の業だと思ってるんで絶対使うことはないんだが。
    使っていたら余計な勘違いをするところだったな。

「やはり火と煙とタバコは絶対悪だ。今………そう思ったよ」

 壁を蹴るようにして飛ぶ。
 同時に冷気の幕から距離を取って離れる。
 白兵戦を仕掛けようがない以上はこうもなる―――が。

「(当然、彼方も対応してくる―――!)」

 そんな逃げ道を塞がないほど、ヤツも間抜けじゃない。
 僕が逃げると分かってるなら、罠なんか張り放題。退路を閉ざす氷の矢の処理は―――。

「(で、間に合わないか!)」
「チ―――!」

 間に合わせられない。
 氷の矢を回避したままでは防戦一方だし、そもそもの処置が追い付かない。
 そしてこいつの氷矢というのは見た目通りのものじゃない。直撃は一撃必殺とイコールだ。


 だが、それならば話は別だろう。
 一番肝心な部分を気付かせないための綱渡りは、どうせ一度くらいする必要があったんだから。

 だから僕は、わざと身を翻す。決して攻撃的行動をとらない。
 氷の矢を躱すことだけに意識を向ける。無理矢理身体の電気信号を弄り、過負荷上等のアクロバット。
 オーバーヘッドの勢いで天井の方へと脚を向けて、今度はそいつを蹴って垂直に落下。
 氷の矢は一本か二本ほど刺さり、身体を傷つける―――とはいえ刺されたら終いだ。そこだけに執心する。

「だが」

 最悪値でも全弾掠める程度であるのが望ましい。無理矢理引き抜くことも罷り通らない。
 結果として落下する僕は複数箇所に凍傷らしき現象と傷を負うが………着地には成功した。


「フォールドにはまだ早い。自分から仕掛けておいて降りるなんて御免だな。
 さあ、今度はおまえが選ぶ番だぞ」


 そして着地に成功したなら、そろそろ“それ”が届く頃だ。
 チップの支払い宣言と同時に、テロヨワの周囲三箇所に電流が走り、稲妻が結界を作った。
 強いて言うなら、僕が“直撃”を忌避したのが災いして電流は僕の着地よりやや早く出現したが、そこはしょうがない。

 それに、一つだけ停止したままであるのが災いしたか。
 そこだけがやや不格好に浮いているし、そこを経由する稲妻だけは弱く脆いが。
 楔のように撃ち込んだ銃弾から発せられた稲妻のトライアングルは、まるで結界のようにそいつを囲み、襲来した。

 あの銃弾はあくまで媒体だ。
 壁に触れた時点で僕が発したシグナルに合わせ、撃ち込んだマナを雷の形態に変換して炸裂させるため。
 何分僕に不足するものというのは出力だ。
 なので、どうしたってこういうやり方じゃないと飽和攻撃というやつは出来ない。

「そして」

 そう、飽和攻撃だ。つまり―――。


 レイズ
「上乗せだ―――」


 此処から僕が仕掛けることで、初めて成立する。
 アレのカラクリは全てじゃないが、零ではない程度には理解した。

 だからこそ此処で踏み込む。
 此処はきちんと相手に見せる。僕はテロヨワの確認した3mほどの距離から踏み込んで攻撃行動を開始する。

 紫電によって形成した結界内に、自身も雷の魔力を放出して砲弾のように飛び込む。
 拳を握り、正面に突き出し、持ちうる火力を合わせての一点突破―――それを、正面へ射貫くように解き放つ。

 殴りつける打撃と合わせて紫電は槍のように。
 包囲攻撃に対してヤツの出力が全方位に振り分けられたのならば、そこから一点防御に戻すのは難しい。
 これはそういう判断での攻撃というわけだ。例の鉛使いにやったことの単独版でも言っておくか。

 ………しかし同時に、近距離の間合いに飛び込んだ僕は、カウンターを狙うなら絶好のカモだろう。
    だから僕はわざと範囲を広げた。何故ならその紫電に処置をする間、
    それに一点の防御を向けようとする間、僕が何をしているのかは絶対に認識できないからだ。


 チップは僕の命ということにしておいてやる、それくらいしないと勝負にもならん。


>テロヨワ・アムリーベン

4日前 No.1382

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【人民平和記念研究所/簡易売店/橋川 清太郎】

白き疾風となって女へ迫る。彼女はこちらの行動に面食らったのかまともな対応が出来ないでいた。
特殊合金製の装甲に包まれた拳を、容赦なくその肢体へ叩き込む。彼女はものの見事に吹っ飛び壁面へ叩きつけられた。

「なっ……まだ意識があるなんて……」

GAWNDの殴打を直に受けても尚、死なないどころか気絶もしないとは。女王の精神力にはただ圧倒されるばかりである。
気丈さに舌を巻いた直後、彼女の兵士が何人か増援として来た。
これは少々不味い。Shoot packが健在の状態ならまだしも、パージにより武装も装甲も心許ない現状では苦戦は必至だ。
内蔵式ワイヤーガンのMisty frog Uを使い、散乱していた外付けの武装の中からThunder leo Uを掴み引き寄せる。

「……!?」

手繰り寄せたそれを直ぐに構え戦闘体勢へ入った瞬間、再び切って落とされる筈だった火蓋は他ならぬ女王の手によって遮られた。
何事かと思い注視すると、彼女はこの戦いが既に決していることを告げる。
それを聞いた時、トリガーに掛けた指から力が抜けていくのが分かった。安心感と疲労でそのまま崩れ落ち、四肢を投げ出してしまいそうになるがどうにか堪える。
対する彼女といえば兵士に支えられながらも、両の足で立とうとしていた。つくづく底の知れない女傑である、勝利したのはこちらだというのに確たる差を見せ付けられた気がした。
未だ兵士達の戦闘体勢は継続されている。しかし発砲してくるような気配はなく、女王の命令を遵守するつもりのようだ。

「ああ、必ず奴らを引き摺り下ろしてみせるさ」

それまでとは一変した、女神のような柔和な面持ちでこちらを認める旨の発言をする。
元よりその決意は揺らいでいないが、この気高き巌后のお墨付きを貰ったとあれば一層英気に磨きがかかるというものだ。
彼女の様子は単に女性的な柔らかさだけでなく、この戦いを通じ何かを得たような安らかさも見せていた。
次に下したのは撤退命令。立場故の、上に立つ者としてのけじめだろうか。兵士達の方も彼女に意を唱えることなく命令を遂行する。
やがて担架に担がれ、両者の総てを投じた決闘は遂にカーテンコールを迎えた。
兵士の手で移動するその去り際、激励の言葉を投げかけてくる。

「わかった……また、いつか」

月並みそのものといえる返答だが、これでいい。寧ろ余計な言葉の虚飾などは互いの誇りを傷つけかねない。

――――いずれ交わる時も、か。
その時は、笑い合って盃でも酌み交わしているのだろうか。或いは鉄火場で背中を預けあっているのだろうか。
我ながら浮ついた夢想だ、けれどもそれらは不思議と現実味を帯びているように思えた。

GAWNDのコンバットゴーグル越しに女王達を見送る。
さあ、別れを惜しむのはここまでだ。今は再び進む為の準備を整えなければ。
戦闘の影響で廃墟に近い様相となってしまった一帯を一瞥し、解除したShoot packから溶接加工式修復アームユニットのMedic Wを拾い上げる。

「とりあえず、これで何とか持ち直せるか」

早速起動させ、手近なパーツから順に修理が始める。溶接過程特有の眩い熱光が無機質に迸った。
その間自分はMisty frog Uで遠方のパーツを優先して引き寄せる。それが終われば後は待つだけだ。

「……ふぅー…………」

近くの壁に凭れ掛かり、いつも以上に疲れのこもったため息をつく。バイザーも自身のお手製なので内側から曇るような事態は起きない。
一先ずここで仮眠を取ることを決めた。それまで表出していなかった疲労が、一気に意識を闇へ沈めようとする。
騒音の原因が無くなった室内で、Medic Wによる無骨な花火の音だけが小さく響き続けた。

>>シアルフィーナ


【またすぐお世話になるかも知れませんが、お相手ありがとうございました】

4日前 No.1383

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【繁華街/アリア=イヴァンヒルト】

 ………伝えた内容を何となく察したのか。
 あるいは、気遣わせてしまったのか、そこまでは定かじゃないけれど。
 彼女は何処となくばつが悪そうな顔をして、そう言い切った。余程が無ければ、と。

「知ってます。
 本当にその人かどうかは、会うまで分からなかったので。別の話が混ざってるかも知れませんが」

 それは確かに、ノイス・ヘルメラの技術の矛先は機械化―――マキナヒューマンだ。
 ザーシャとの関係性など初見で分かるはずがない。彼女も“あの人”という呼び方をするわけだし、あんな複雑な人間模様であることの予想は付きづらいだろう。
 それは分かっているのだ。いや、分かっているつもり、なのかもしれないけれど。
 彼女だけと会うならば、そこまで問題はないのだろう。………そう、余程が無ければ。

「………ザーシャの『特別』にとって。
 わたしは、恐らく好ましくないだろう、と思うところに居るので」

「人混みの得意不得意は関係ありませんけど、それなら、いいです」

 別に秘匿することでもない、隠すこともないだろう、と。遠回しに告げた言葉がその実態だ。
 それをなんとか思うことはなかったけど、眼の見える場所に“落とし子”が居ないというのは困るのだろう。

 わたしを連れ歩いていたヒトは、今はこの世界に居ないという。
 行方不明だ。

 それでも―――この地には、あのヒトが遺したのだろう根が何処までも広がっている。
 軍需産業から商業、根城にしていた議会。
 もっとアングラなところまで、あるいは極めて即物的で、いまは縮小しつつあるスラムにも。
 自分だって全部は知らない程度に、ストライフの名前は何処かに残り続けている。

 その状態から、唯一の手の届く範囲の手がかりが自分らしく。
 わたしはそれを手札にして、自分の当面の安全と居場所を得たというわけだ。

 ―――その男の名前も、経緯も。なんとなく、『ノイス・ヘルメラ』には好ましくないだろう。
    そう思っていたから、少なくとも場所がそこだと分かるならば問題はない。

 少なくともその名前は、彼女にとって『特別』だから。
 その灯に、自分が乱雑な手を加えるわけには行くまい。

 ………それにしても。

「それが、綺麗………」

 綺麗の喩えに曰く、壊したくないほど手放したくないものが“綺麗”らしい。
 それは確かに大事なものだ。そこらの書物の例えとはまた違って聞こえるけれど。

 心惹かれるもの、手放したくないもの、見ていて飽きないもの。
 星空に、もしもそういう感情を懐くことがあれば、それがその時だという。
 綺麗にも種類があって、それはあくまでも星空とは別のものではないか、という感想も懐いたが………少なくとも、ずっと眺めていたいほど美しいものが『綺麗』なのだろう。手を届かせたいような、届かせてはいけないような、そんなもどかしさを含むものも、ひょっとするとそういうものなのだろう。

 ならばそれは何か―――考えようとして。
 何故か、理屈になってない感情がわたしにそれを拒否させた。
 気付くとたいへんなことになる。どうしてかそう思って、首を横に振りかけた。明らかに不審だから止めた。

 ハッキリ言わない理由も語った通りだ。
 あまり直球で言っていいことと悪いこともあるだろう。
 わたしにはわからないけれど、そういう社交辞令の類はそれなりに教えられてきたものだ。
 何気ない言葉で傷付けました、なんて、妙に嫌な響きがするし―――少なくとも、咳払いを『此処でこの話は止める』の合図と受け取ってくれたようだから、これ以上には発展しないけど。蒸し返すわけにもいかない。

 だって蒸し返すと、わたしがまた知りたくない自分のだめな部分に気付きそうなのである。
 ………そこで気付いた。なるほど、これが『羞恥』。そんなどうでもいいこと気付きたくなかった。


 ―――閑話休題。


 おまじない、と冗談めかして口にした彼女のせりふが耳に入る。
 手はずっと近くにある。追いかけて来た誰かの手で、そのことに安堵と別の感情が入り混じる。

 安堵の理由は言うまでもない。
 別の感情も―――わたしには、それが何かがわかるけれど。
 その時思った全部と、どういうかたちでもいい。向き合うと口にしたことが、わたしが“変わる”と言った証拠なのだ。


「比較対象がないので、ハッキリと言えませんけど」

 だから今は―――。

 それを、忘れないように。
 その感覚と、眼を瞑った時の感情を忘れないように。


「悪くは。なかった、です」


 そこで感じたものが、多分、わたしにとって大事なことだと………他でもない自分に教えるように。
 そんな素っ気無い言葉と裏腹に、たぶん、離して貰うまで手を握っていた。

 詛いのかたちは、ずっと残るだろう。わたしはあまり、前向きに考えられるヒトではないらしいから。
 けれどこの時思ったことも、きっと残るだろう。それがわたしの、最初に見つけた灯火であるらしいから。

>ザーシャ

4日前 No.1384

ライフィスト @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【第三臣民処分場/ベルトコンベア・投入口/ライフィスト・ヒッチロート】

「ははははははは。大変正解でございます、それでもヒトは言っちゃうんですよ社交辞令ってヤツで。
 そこんところは気が合いますね水晶華の御方。それともイレギュラーな電子プログラムの御方」

 その男の第一印象が“軽薄”だとか、“気楽”だとか言うのならば。
 それは半分ほど紛れもない事実であるが、半分ほど全く別の内容だ。
 彼は一瞬だが苛立ちを混ぜ込んで発してきたキラーの言葉に、逆撫でするが如く同調を付け足した。

 蛇の上に乗り、気さくなれど慇懃無礼さを押し出し、何より言葉の節々から見え隠れする利己主義的な性格。
 フレンドリーさとは言えない気楽な態度と戦い方、
 傲慢とは何処か言い切れない自分本位の思考回路。

 その言葉と態度に嘘はない。ライフィストはライフィストの味方であり、ライフィストだけに正直であるから。
 方便が9割を占めることはあるだろうけど、それが最終的に真っ赤な嘘であるということだけはない。

「でもアナタたち、特にそちらのお嬢さん。
 ワタシが此処でず〜〜〜〜っと作業中だってのに見向きもしなかったでしょう?」

「ホラ、気遣いとリスペクトとは双方向で成り立つものなのです。
 悲しいことに、ああ悲しいことに、感情というリソースは有限ですので。何故ならワタシ………無駄遣いがキライ」

 現に言葉の裏腹で、細い瞳が周囲を蛇のように見渡している。
 鋼鉄の異形が頭部を玉座のように使う男は、言葉と裏腹に淡々と物事を進める。

「というわけでやめません。フッフフフ。
 力ずくとかやっちゃいます? ダメですよ乱暴な。ワタシはしますけどォ」

 ジョークのような物言いと、機械のような冷静さ。
 それが入り混じる。シエンタ・カムリとキラー・テンタクラーの位置を引き剥がすように仕掛けた攻撃も、攻撃と同時に自分の手元に“盾”となる存在をキープし、淡々と次のための攻撃へ仕込みを進めていくところも全て。

 攻撃の成否にいちいち一喜一憂もしない。外したならば外したでいい。

 そして彼は、決して相手を舐め腐らない。
 知っている相手なら猶更のことだ―――。

 あくまで必要なのは、“護衛が引き剥がせた”という状況だけ。
 どうあれカバーに回るようなら狙いを変えるつもりだったが、この二人、もとい一人と一機、それなりの信頼関係というヤツに恵まれているらしい。攻撃の合わせ方、ストレスに振り回される女のケアの仕方と言い、特に後者が口調のわりに状況をよく見ている。………しかし、だからと言って前者が狩りやすいのかと言われると否だ。


「ですので、実を言うと発動までの手間も大変嫌いなのですが………ハ・ハ・ハ。
 おや? これはひょっとして、此処はアナタのTerritory―――」


 此処はシエンタ・カムリのテリトリーだ。
 冗談めかして口にしたライフィストの台詞は、あまりにも状況に則している。

 莫大な電力の放射による正面突破。そのエネルギーはお世辞にも彼女が生み出せるものではないだろう。
 ではどこからかと言えば、それは周囲の機械物質からだ。
 ライフィストにとってもそれは“素材”であるけれど、彼方に取ってもそれはエネルギー源であり、攻撃に用いるリソースとなっている。そして当たり前の話だが、ヒト一人が抱え込める出力よりも、頭数と範囲を揃えた出力の方が強い。
 もちろん例外というものは存在するが、大多数はそうだ。それをライフィストは経験側で知っている。

 一例で挙げれば、ロッシュ・ロダンなど良い例だ。

  彼の侵攻時に見せた雑だが暴力的な出力任せのスタイルは、周囲の兵士たちの魔力ありきの戦法。
  本人以外のエネルギーのアテがあるとなれば、単純な出力と質量は大きく跳ね上がる。

 この女もこのような場所なら限定的にこうした性質を発揮する、というわけだ。ハッカーは伊達ではない―――精密機器に囲まれているなら、そいつは馬鹿げた超火力の固定砲台へ変貌する。例えるなら水を得た魚のように。

 さすがにそれが直撃してみればどうなるかはお分かりの通りだ。
 ライフィスト・ヒッチロートは一撃で滅びるだろう。

 これを叩き潰させまいとするのが複雑怪奇に襲い掛かるあの触手とドローン。
 大砲をカバーする前衛であり、大砲に目を向けさせて死角を討つ伏兵。
 二つの役割を水晶華が担っている。である以上、それは大変シンプルだが大変崩しにくい陣形だ。


 ………そして。


「しかし。であるなら欲しいものは強請れ勝ち取れ奪い取れ―――種も仕掛けもございます、シュート」


 そいつが行動を続けるなら、それは崩す算段がある時だ。


 ライフィストが手を付けていた先とは即ち天井。
 自らの血と体液を立ち昇らせ、天井材へと“侵蝕”を引き起こす。

 その一部が変形し、ライフィストの近くにあった機械―――。

 もう壊しても構わないし、何か質量物が襲い掛かれば爆発するだろう箇所へと狙いを定め。
 天井材として使われていた鋼鉄の板が紅蓮の巨大な杭のように変形、突如として二つほど急降下。

 それは先ずキラーの触手を二方向に関してガードし、ドローンたちの刃でも、
 あくまで対人狙いであるならば傷一つ付くまい堅牢な“壁”にして“杭”へと錬成を終えた。

 もちろんドローンたちの刃の中には彼を傷つけたものもあるが、
 そんなものはライフィストにとって逆にリターンも得られる行動にしかならない。
 傷の積み重ねは、あくまで彼にとっては大した益にもならぬものだから―――ライフィストは痛みに“何”もしない。もちろん積み重なれば彼は肉体的に動かなくなるだろうが、そうでもないなら別に気にも留めやしない。

 そしてその杭は、隣りにあった制御機械を破壊し、大きく爆発を起こすと同時に炎を立ち昇らせる。

 炎とは伝導性を伴うものだ。
 熱が強まれば伝導性は高まり、炎の先に向かって電気は流れていく。
 生み出された爆発と爆炎とは即ち短期的な避雷針。
 シエンタの向けた物理的電流のラッシュ、人間を一撃で感電死させる稲妻の射程を無理やり“ずらす”ダミー。

 さらにダメ押しのように―――。
 ひょい、と飛び降りて、その身を鋼鉄の蛇が物理法則を無視した動き方で包み込む。
 触手の貫通まで来ると流石に手傷が大きいし、シエンタの撃ち込んだ稲妻は軽く軍隊を一掃し、下手を打てば施設ごと薙ぎ払う自然災害もかくやの一撃だ。結論から言えば、出力を逸らし盾を用意して、漸く防げる。

 防いだライフィストに余波のように残った火傷。
 完璧に崩れ落ちた鋼鉄の蛇は、ボロボロの鉄屑と化した、つまりはもう無用の存在だ。

 それを踏みしめながら。

 彼は思いきり腕を振った。

「二発目行きます、はいドーン!」

 振った腕にはスラッシャーの刃や自分で傷をつけた裂傷があり。
 散弾のように飛び散った血は床やパイプなどに付着すると、即座にシエンタの周囲を取り囲むようにそこから鉄の尖った柱が伸びて、うねるような動きで以て、次々と彼女に襲い掛かる。その数は軽く十を越え、露骨なほど一方への集中砲火を行う。

 彼女のそれが電子的な“ハック”であるならば、ライフィストのそれは有機的なハッキングだ。
 侵蝕し、凌辱し、いのちなきものを縦横無尽に踏み躙る人工の無貌、どす黒い太陽のような心を持った侵略者。

 火砲の威力が問題ならばそもそも撃たせる状況を作らない。
 万が一撃つとしても、その火力を利用する。
 火力が自分の数倍程度の相手と対面した時の立ち回り。戦士の本能ではなく理詰めの狩り。

 彼は、わざとらしく一歩、二歩と歩んでシエンタの方へと近づく。
 丁度キラーとシエンタ、その間に自分を挟み込むような立ち位置がベストポジションだ。

 1か2秒程度のラグを置いて――ー。


「三発目行きます、クラッシュ!」


 落下する、三本目の紅き大杭。
 それはキラーがもしもライフィストの背中を狙って突撃したり、
 踏み込んだりしようものなら、丁度その場所に降りかかり、押し潰すような質量物として彼を襲うだろう。

 もちろん躊躇うかも知れない。予想外の箇所から攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
 だがそうなったらそうなった、だ。此処はシエンタ・カムリのテリトリーであるかも知れないが―――。


 ―――愚か者とは容易く人の聖域を踏み荒らし。

    賢しき者は易く他人の領域と融和し得る。

    社会的常識として、不審者とはだれかのテリトリーに不許可で入って来る異物だから、不審者なのだ。


>シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー

4日前 No.1385

マダム・ギロチン @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3ZO

【制御装置管理施設/制御室/キャロライン・ガーネット】

キャロラインが決意と共にエンターキーを押した瞬間、背後から声が聞こえてきた。一瞬、敵が現れたのかと警戒し、即座に振り向くものの、その口振りからして、どうやら同志のようだ。
恐らくは、時空防衛連盟の者だろう。彼らはかなり上手くやっているようで、既にこの制御装置管理施設にまで攻め入っているらしい。元より、相当な力を秘めた者達であるとは認識していたが、まさかここまでとは思わなかった。
ゆっくりと、声を掛けてきた者の姿を確認するキャロラインであったが、それを見た彼女は衝撃を受ける。何故ならその人物は、彼女もよく知るとある人物とそっくりな外見をしていたからだ。
以前、本人から直接話を聞いたことがある。あちらの世界には、自分と同姓同名の者がいると。その話を信用するのならば、今目の前に立っているこの女性こそが、"ワールド10の"シフォン・ヴァンディール、ということになるのだろう。

「ええ。……ある人達に、背中を押されてね」

シフォンに対してそう言いながら、ユートピアでの戦いを回想するキャロライン。もしも、自分があの場で彼女達に出会っていなければ、このような行動を起こすこともなかったのだろう。
連盟の者達が、自らの運命を変えてくれたのだと、強く実感する。心の奥底で燻っていた反逆の炎は、今この瞬間大火となりて、協会へ襲い掛かろうとしている。
既に、チップの機能は停止した。もう、誰にも崩壊を止めることは出来ない。あとは何をしたのかを連盟に説明し、共に革命を成し遂げるだけ。そう思い、キャロラインはシフォンへ近付いていくのだが……そこで、異変が起きた。

突如として鳴り響く警報音。何事かと振り返ってみれば、そこには大量のエラーを吐いた機械があった。直ぐ様駆け寄り、事態を確認しようとするキャロライン。
その顔に浮かんだ焦りの色から、これが普通の出来事ではないことはすぐに理解出来るだろう。操作が認められていないとは、どういうことだ。非常事態宣言が行われていないことは、しっかりと確認したはずなのに。
答えを探る暇もないまま、制御装置の防衛機構が動作を開始した。この状態で接近した者は、即時反逆者として認定され、激しい攻撃に晒されることとなる。
キャロラインの退避が間に合うはずもなく、そこにいた二人を攻撃対象とした防衛機構は、大量のドローンを展開し、一部を防御へ回した後、残りで機銃の一斉掃射を仕掛けてくる。

「想定した中で最悪の事態ね……こうなってしまっては、奴を止める方法は一つしかない。貴方も協力してくれるかしら」

最悪の事態というものは誰しも想定するものだが、それが実際に起きると困惑も覚えるものだ。とはいえ、チップの制御に失敗した以上、これを突破しない限り、革命への道は開かれない。
迫りくる弾丸へ向かって赤色の衝撃波を飛ばし、両者に向けられたもの全てをまとめて撃ち落としたキャロラインは、隣に立つシフォンに声を掛けつつ、一気に防衛機構の懐へと突っ込んでいく。
両手の短戟へと込められる魔力。赤く光り輝くそれが、無慈悲な殺戮者を打ち砕かんと振り下ろされる。それだけには留まらず、攻撃が着弾する直前、彼女は空いたもう片方の手に握られた短戟を用い、追撃の突きを放つのであった。

>中央防衛機構GoU、シフォン・ヴァンディール

4日前 No.1386

箱入り娘 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3ZO

【人民平和記念研究所/製造室/クラリス・ツァクトユーリ】

「それ堂々と言うことじゃないでしょ。あと、自分さえよければいいとかいう人間、ウチの一番嫌いなタイプだから! 人がみんなそういう奴とか、知った気になって語らないでくれるかな!」

クラリスは完全に頭に血が上っているようで、横のフリードリヒの忠告じみた言葉は聞こえていないようであった。それだけ、マオルの物言いが癪に障っているのだろう。
皆が幸せなんていう結末はあり得ない。確かに、そうかも知れない。全員を満足させるというのは、とても難しいものだ。現にホームワールドにおいても、あれだけの改善がもたらされたにも関わらず、今の大統領を支持しない者が相当数いる。
だからといって、それが歪んだ世界の構造を許す理由となるだろうか? クラリスは、そうではないと考えている。自分さえ良ければいいという言葉は、成されるべき変革を否定する免罪符にはなり得ない。

「きっとあんたにも色々事情があったんだろうけど、生憎それでウチらが止まることなんて出来ないから!」

マオルの言葉から感じ取れるのは、過去に受けたと推測される所業の片鱗。あのような物言いをするだけの理由が、彼女にはあったということなのだろう。
かといって、じゃあそうですか、と歩みを止める訳にはいかない。連盟も、ホームワールドの者達も、生きるために戦っているのだ。勝利を収めなければ、その先に待ち受けるのは破滅の運命。
安定した立場を得ている相手にとってみれば、関係のないことかも知れないが、こちらは必死なのだ。故に、クラリスはマオルに同情することはせず、戦いを続ける。

衝撃波は諸に敵に直撃していたはずなのだが、彼女が痛みを感じている様子はない。ダメージを受けていないはずがないのだが、何らかの方法で苦痛を和らげているのだろうか。
フリードリヒの支援魔法によって、マオルの身動きが封じられる。それによって足払いが成功し、相手は転倒したが、どうやらこれは悪手であったようだ。
わざわざ、あちらの間合いに入ってしまったということを裏付ける台詞が、マオルの口から放たれる。危険をすぐに察知したクラリスは、やや無茶な挙動で立ち上がり、反撃に備える。
長く鋭い骨が、彼女を串刺しにしようと襲い掛かってくる。それだけならばよかったのだが、フリードリヒの方も、蔦に取り囲まれてしまっているのがクラリスの視界に入った。
ここで、二人の連携における最大の弱点が、悪い形で顔を出す。クラリスは、フリードリヒの安全を最優先にしている。もっとはっきり言ってしまえば、いればありがたいのは確かであるが、"自衛という意味では頼りに出来ない"人物であると考えている。
要するに、自分が守ってやらなければ彼は簡単に死んでしまう……そう、彼女は認識しているのだ。となればこの状況、クラリスの取る行動など、簡単に推測することが出来る。

「うっぐ……! フリード……死ぬのは、なしよりのなしっ……!」

凄まじい速度でまたもやフリードリヒの前に立ちはだかるクラリスであったが、今度は防御を展開しているだけの余裕はなかった。故に、彼女は相方を庇い、己の身体で攻撃を受け止めるという行動に走る。
蔦によって貫かれたクラリスの身体から、真っ赤な鮮血が滴り落ちてくる。決して、浅くはない傷だ。それでも彼女は、気丈に振る舞う。フリードリヒを守れるならば、それでいいのだと。
大怪我を負いながらも立ち上がり、マオルへ向かっていこうとする彼女。しかし、出血による体力の喪失は無視出来るレベルではなく、クラリスはよろめいたかと思うと、そのまま前のめりに倒れてしまった。
瞬く間に、床に血溜まりが形成される。戦闘続行は不可能に等しい傷だ。身体強化を施すほどの余裕もなくなった今、そこにいるのはただ無防備を曝け出した、一人の人間。
あのマオルが、この絶好の機会を見逃すはずがないだろう。この期に及んで追撃を喰らおうものなら……その瞬間、クラリスが生還を果たす見込みは、完全に絶たれる。

>監督官マオル、フリードリヒ・ガーデルマン

4日前 No.1387

若き天才ハッカー @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3ZO

【第三臣民処分場/ベルトコンベア/投入口/シエンタ・カムリ】

「なら最初からそう言うんだ! 無駄にややこしいことなんてするんじゃない! でも、ボクは寛大だから、特別にその謝罪を受け入れてあげよう」

あのキラーが素直に謝罪していたことは驚きであったが、それでもシエンタは一言くらい言い返してやらなければ気が済まなかったのか、彼の行動をややこしいと称し、怒鳴り散らす。
それでも最後には変なことを言いつつもしっかり謝罪を受け入れた辺り、これが二人の信頼関係、というものなのだろう。傍から見れば喧嘩しているようでも、彼女達にとってはスキンシップである、といったところか。
直後に現れた敵に対し、相当に不機嫌な様子で応対するキラー。それを聞いた相手の反応は、挑発的と言って差し支えないものであった。シエンタですらも、不快感を抱くほどだ。
ライフィストは、シエンタが作業中であった自分に見向きもしなかったことを指摘する。こちらからすれば、当たり前のことだ。ハッキングに集中している時に、周囲に目を向けている余裕などない。
さながら、余裕の態度を見せる大人に対し、二人の子供が激怒しているかのような状況。絶妙に相手を馬鹿にしたような口調も相まって、シエンタの苛立ちは余計に高まっていく。

「なっ……このおバカ! 攻撃対象じゃない物を壊すのは反則行為だぞ!」

機械に取り囲まれているという、シエンタからすれば絶好の環境。ライフィストを一撃で葬り去れる攻撃をいくらでも連発出来るという状況を、よもや敵が見逃すはずがない。
暴虐的な破壊力を伴って迫る雷を前に、相手が取った対処は、天井を杭に変化させ、機械へ降り注がせるというものであった。当然、それが突き刺さると同時に、機械は大爆発を起こした。
それを目にしたシエンタは、ゲーム脳と言われても仕方のないような言葉を吐き捨てる。機械が減れば減るほど彼女の優位性は削がれるのだから、焦りを覚えるのも必然だろう。
爆発によって生じた炎は、雷の軌道を逸らす。命中すれば即死の一撃必殺であっても、そもそも当たらなければ意味がない。ライフィストはこれを受け止めるために、かなりのリソースを割いたようではあるが。

鋼鉄の蛇は、雷撃を防いだ後に鉄屑と化して、その役目を終えた。ライフィストはそれを踏み躙りながら、反撃へと移る。勢いよく振るわれた腕から、血飛沫が飛び散る。
それらは周辺にあった様々な物質へと付着すると、直ぐ様鉄の柱へと姿を変えさせ、不規則な動きを持ってシエンタへと襲い掛かる。運動神経に難のある彼女にとっては、相性最悪といっても過言ではない、物量を用いた攻撃だ。
集中砲火を喰らった中、彼女は必死で回避を試みるが、付け焼き刃の動きで捌き切れるような代物ではなく、いくつかの柱が、彼女の身体に風穴を開けた。
痛そうに腹を抱えてその場に蹲るシエンタ。前線の経験が少ないということは即ち、こうした際に生じる痛みにも慣れていないということでもある。戦闘続行には何ら問題のない傷でも、彼女にとっては堪えるようだ。
苦痛で目に涙を浮かべるほどであったが、それでもシエンタは立ち上がる。大きく息をしながら、状況を確認。まだ、機械は残っている。先程のような超火力は無理でも、ブーストが一切出来ないということはなさそうだ。

「君を見ていると、無性にイライラしてくる。だから、とっととボクの視界から消え去るんだ!」

とにかく、このライフィストという男は気に食わなかった。態度とか、そういった問題ではない。存在そのものが、シエンタにとっては不快でしかなかったのだ。
暴論と言われても仕方のないような理由であったが、恐らく横にいるキラーも同じような思いを抱いていることだろう。そして何よりこいつは、世界にとっても有害でしかない。
ならば、この場で葬り去ってしまうべきだ。再度、付近の機械から電子を吸い上げていくシエンタ。やはり、総量はだいぶ落ち込んでしまっている。一撃必殺を狙うのは、少々難しいだろう。
そうとなれば、戦い方を変えるのみ。空間を制圧するようにして降り注ぐ、無数の雷。それら一つ一つの威力もかなりのものであるが、そこへ圧倒的な物量が加わったことにより、より敵の対処が困難なものとなる。
更にシエンタは、相手の意表を突くべく、ある行動に出た。ライフィストは、彼女のことを典型的な固定放題であると認識していることだろう。では、ここで接近戦を仕掛けると、どうなるだろうか?
雷のパワーの助けを得て、一時的に筋力を増大させた彼女は、機敏な動きで彼の懐へと入り込み、そのまま紫電を纏ったストレートパンチを見舞う。攻撃を終えると同時に、シエンタは飛び退き、相手の間合いから脱出した。
近付いたままでは、次なる攻撃に対応出来ないからである。普段の彼女からは想像もつかないほどの速さと打力。とはいえ、普段以上の力を引き出した代償も当然のしかかる。
全身の筋肉が、悲鳴を上げた。経験したことのない痛みに、シエンタは悶えながら膝を折り、両手を地面につく。人間は、限界を超えた力によって自身を傷付けないよう、通常は脳によって筋力にリミッターが掛けられている。
彼女の取った行動はいわば、そのリミッターを強制的に解除するというものだ。それによって、非力なシエンタであっても爆発的な力を得ることが出来るが、乱用すればいずれ、全身の筋繊維が断裂し、動くことすらもままならなくなるだろう。
一度の戦闘で使えるのは、多くて二回といったところ。その内の一度を、ここで彼女が解き放った。よろめきながらも立ち上がるシエンタ。自らの肉体に負担を掛けてまで放った一撃、もしこれが何の意味も成さなかったら、泣くに泣けない。
しかし、彼女は一人ではない。この場には、頼れる相棒のキラーがいる。彼であれば、シエンタの意図を一瞬で読み取り、それに合わせた行動を選択することが出来るだろう。連携が成立すれば、必然的に攻撃の成功確率も上昇するはずである。

>キラー・テンタクラー、ライフィスト・ヒッチロート

4日前 No.1388

天使 @zero45 ★pB1cyTl1jZ_sNF

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4日前 No.1389

バグスター @carisu☆t8OIH682mSg ★OKQ5desRtI_6Og

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4日前 No.1390

ラスティアラ・フーズヤーズ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_sNF

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4日前 No.1391

麗人 @sable ★c1PKWYVyQN_sNF

【制御装置管理施設/制御室/シフォン・ヴァンディール】

 反逆者の指先が最後のピースを落とし込む。歪んだ統治体制はここに終焉を迎える。王は王たる土台を失う。
 そう信じて疑わないシフォンの眼前で、それは起きた。認証拒否を示す無機質な声。施設全体に響き渡ろうかという警告音。
 目論見が外れたことは疑いようもなかった。これから何が起こるかは想像に難くない。

 咄嗟に出入り口を氷魔法で凍結させ、追っ手が制御室に侵入しないよう封鎖する。
 ここに難なく立ち入れる地位と権限、そして信頼を勝ち得ている人物ですら操作に失敗したことから鑑みて、敵も有事故に厳重な対策を施していたのだろう。
 とはいえたかだか機械と能力者二人、強引に破壊してしまう手も取れないことはない。キャロラインに駆け寄り、事態を解決に導くべく提案しようとした――その時。

「!」

 明滅するランプに思わず顔を覆う。巨大な影が、頭上に陣取り降下してくる何者かの存在を示す。
 圧死を避けるべく飛び退けば、そこに降り立つは鋼鉄の人馬。歪に模られた神話生物。
 さしずめ、唯一神の如く君臨するミゼラブル・ディスペラツィオの番犬とでも言ったところか。
 アナザーワールドの根幹、奴隷の骸で築かれた神都を破壊するという禁忌を犯した者に相応しい処刑人だ。

 徹底的な粛清の宴が幕を開ける。抑揚のない音声は開戦の狼煙。胸部から放出されたドローンが先陣を切った。
 荒々しいようで統率が取られた機銃の一斉射は、敵のシステムの高性能ぶりを雄弁に語ってくれる。
 幸いキャロラインの衝撃波によって防がれたが、更に激しい迎撃網が敷かれることは想像に難くない。

「喜んで。スクラップにして差し上げましょう」

 鋼鉄の人馬を打ち砕くに当たり、二人の奇妙な縁による同盟が結ばれる。
 得物を手に飛び込むキャロライン。隙も容赦もない二連撃は、機械も生命も等しく塵へ還す絶技だ。
 後方支援を主と決めたシフォンは、キャロラインに当たらず、かつ敵の動きを封じ込める軌道で飛び道具を連打する。

 機械の身体にとって致命打となるやもしれぬ雷電の弾丸。青白い光を撒き散らしながら突き進む。
 そこへダメ押しとばかりに重ねるは、人馬の後ろ足に狙いを定めた爆破魔法。
 橙色の光が迸り、上手く刺されば鋼鉄をも吹き飛ばす爆風が巻き起こった。

>>中央防衛機構GoU、キャロライン・ガーネット

4日前 No.1392

鉄心 @zero45 ★pB1cyTl1jZ_sNF

【第三臣民処分場/操作室/レーヴェ・ロザリウム】

 畳み掛けるが如き熾烈さを誇る叛逆者二人の攻撃を、動揺しながらもリコルヌは的確に対処を行い、完璧に往なし切って見せた。霧散に鋼化、浮遊に光速。言霊魔法による、自己の性質を変ずる事で様々な現象を可能とする力は、極めて優れた万能性を発揮している。会長に次ぐ席は決して飾りなどではない、確かな実力の持ち主である事を強く証明していると言える。今は未だ迷いが見受けられるが、それを振り切った瞬間に自分達は正念場を迎える事となるだろう。
 後方へと回った彼女を追って振り返れば、直後に聞こえて来る再三に渡る説得の言葉。例え無関係の第三者を生贄に駆り立てようとも、是が非でも引き留めようとするその姿は、如何に二人が彼女にとって重要で大切な部下であった事を窺い知れるだろう。

「お気遣いは感謝致します。ですが――」

  だが――それが二人との袂を完全に分つ、致命的な選択でもあった。

「――最も唾棄すべき行いを、自らの目の前で示された。決別を揺ぎ無きものとするには、十分過ぎてなお有り余る位だ」

 艦隊を行動不能へと陥らせた罪を、協会にとって不要な人間へと被せて闇に葬り去る。そうしたやり口こそが、自らに憎悪を抱かせると共に、叛逆を決意させた原因なのだ。それを実際に自らの目の前で示されたとなれば、それが無自覚であったとしても、煮え滾る様な憎悪と憤怒の矛先を向けられずにはいられない。この瞬間に抱いた烈しき感情は、シフォンが抱いた物を遥かに上回る事だろう。

「死した弟の雪辱を果たし、無念を晴らす為にも! 死んで貰う……!」

 荒げる声と共に、明確な殺意を込めた視線でリコルヌの姿を射貫けば、出現させる無数の岩塊。深淵へと引きずり込む荒波に混じらせ、吹き荒ぶる風に巻かれて嵐を更なる暴威へと昇華して退ける。
 そして嵐が晴れんとする瞬間を見計らい、再び殺到させるは無数の岩槍。続く地震、そして頭上からの落岩。其処から自らへと強化魔法を施し、並の魔族すらも容易く凌駕して見せる程の身体能力を得れば、高速で彼女へと正面から肉薄して六度に渡る斬撃を走らせる。
 怨恨の熱を極限まで昂らせる今、心は完全に殺意一色に染まり、怒涛の連撃を叩き付けんとしていた。

>リコルヌ・エルヴェシウス シフォン・ヴァンディール(A)

4日前 No.1393

マキナヒューマン @kyouzin ★XC6leNwSoH_Xdn

【人民平和記念研究所/森/焦土/ヘルメラ・アンプル・トルマ】

それでいい、フォルトゥナの口からそんな言葉が発せられる。
その瞬間からこの戦いはどちらが勝っても後悔は無いような物へと変わった、だからこそ負ける訳にはいかないと、渾身の蹴りを放ったつもりだった。

結果は……向こうの勝利ではある、だが、相手の消耗も非常に激しい物であったようで、自分が倒れて数秒後には彼女もまた地面に倒れ付していた。
彼女が倒れた事もあり、火器による精密射撃を妨げる物はこの場にはもはや無い、だが視界が塞がれていても耳が塞がっていた訳ではない、今までのトルマとフォルトゥナの会話を聞いておきながら、卑劣にも銃口をフォルトゥナに向ける者は、少なくともアンプル隊には居なかったようで、戦いの結末を確認した時、彼らは唖然とした様子だったが、すぐに医療器具を用意し始める。

そして、自分がリベンジを望みたい旨を伝えかけた時にも彼女は"自分も負けたと思っていた、そして気分が良い戦いだった"とした上で、リベンジはこちらから願いたいと、言ってくれたのだが。

"覚悟"と言う物は、自分にはあるつもりだった、第三臣民でありながら第一臣民に拾われ、戦闘員になる代わりにチップによる管理や強制労働から脱する事が出来ているのだから、命の危険くらいなんて事はなく、拾ってくれた親に恥を晒すくらいならば死ねると。
だが、その親はもはや居らず、行方不明の忠義で引き金を引くには……トルマの手は震えすぎていた。

「――お前たちは降伏しろ、この人なら、お前たちはきっと」

そうトルマは力なく通信機に向かって呟いた……正直な所、人が少ないこの焦土を戦場に選んで良かったと思う瞬間だ。
人が多い所で、一部の者が派手に泣いたり怒ったりすれば、きっと他の連中に気づかれてしまうが、この場所だからこそ、最後に別れと命令が言える。

そして、少しすればフォルトゥナはその身体に鞭を打つ形ではあるが立ち上がって、自分の言動に理解を示すような言葉を返してくれる。
やはり、自分の考え方は間違っていなかった、この人ならば部下を任せられる、すぐには無理かもしれないが、普通の人間として過ごせるようにしてくれるはずだ、そうトルマは感じた。
彼女の腕に魔力が宿る、幾ら感情を揺らしたとは言え、この状況で銃弾を撃ち込む馬鹿もこの場には居ない。

だが、彼女の身体には相当な無理をさせる形となってしまっている、その間にもトルマは言葉を通信機に向かって紡ぐ、あまり学が無い自分では「今まで付いてきてくれた事を嬉しく思う」だとか「各員の良き未来を祈る」だとかのありきたりな言葉しか出てこなかったが。

「悪いな……世話を掛ける」

その話が終われば、目線をフォルトゥナに向ける。
ただ腰を下ろして一撃を加えるには足の傷が深く、横座りの形になる傷だらけの彼女を見て、トルマは謝罪を口にする、そして……彼女の狙う先が自分の頭になっている事をしっかり確認し、"降伏の理由としては申し分ない"と言う見解を聞いて、トルマは安心して目を瞑った。
自決ではなく、自分を負かした相手に殺されるなら、この怯えもどうにでもなるだろう、と。

「――ありがとう」

安らかに眠れと言うフォルトゥナの言葉と、一撃に対してトルマは短くそう返答した。
……派手な音が鳴り、土ぼこりが舞う、だが、トルマは死んでいなかった。

目を開けば視界に入るのは覆いかぶさるような形で視線を合わせていたフォルトゥナ、彼女は確かに"アンプル隊隊長は戦死した"と口にした。

あ……あ。 と言葉にならない物が自分の口から洩れる、こんな事が実際に起きるなんて、思っても居なかったから。
彼女はそのまま上体を起こして空を見上げ、立ち上がってから"現在の状況"を語った。

そしてそれは嘘であるかもしれないが、戦場においては真実となりうる。

彼女は自分に手を差し出して、そして自分の名前を聞いてきた。
それに対してトルマは、そのボロボロの手を同じく酷い有様の手で触れて。

「"ヘルメラ・トルマ"だ、私たちを助けてくれて……感謝、する」

彼はアンプル隊という協会から与えられた名を捨てた、だが、自分の親の名前は捨てきれないようで、ヘルメラ・トルマと言う名前を名乗った。
その時、周囲から武器を下ろすような音が響く。

紛れもなく、戦いはアンプル隊の隊長が死ぬことで終わったのだ。

>フォルトゥナ・インテグラーレ


【この後続けるかはお任せします!】

3日前 No.1394

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【第三臣民処分場/ベルトコンベア/橋川 清太郎】


ドオオオオォォォン


特大の轟音と衝撃が響き渡り、大小様々な瓦礫が無秩序に飛び散った。純粋な破壊によってできた穴から一つの機影が現れる。
青と灰色にペインティングされた重装甲、ひとたび火を吹けば絶大な戦術効果を齎すであろう大火砲の数々。

GAWND・Shoot pack装備型、ここに見参。

――

「一発でいけたかぁ、我ながら凄い火力」

大口径バズーカ砲型武装Grand smasher Uを肩で遊ばせながら、やや呑気な口調で感想を呟く。
赤い女王との戦闘後、Archerの修理も終わり任務を再開し研究所の地下階層へ侵入。途中で何やら特殊な生命反応を検知したので、その反応がある部屋に『最短ルート』で出向いた次第である。

「やあ、壁壊しちゃってごめんね。僕は連盟の人間なんだけど、ちょっと協力してくれないかな?」

反応源であった、魔族らしき女性に話しかける。
声色こそ飄々としているが、その実かなり神経を張り巡らせていた。この部屋に入った瞬間目に付いた、スクラップ処理機らしき機材とベルトコンベアに乗せられた無残な死体の数々。施設の存在理由や全容が一瞬で理解できた。
虫唾が走る。何故恨みもない他人をここまで酷い目に遭わせることが出来るのだろうか、この報いは必ず受けさせてやる。
だがその対象は、少なくとも目の前の女性ではないだろう。話しかけたタイミングで簡易スキャンを行ったところ、肉眼で確認できる以上に惨たらしい負傷の痕跡がほぼ全身に見られた。そしてそれはついてからあまり時間が経ってないようだ。おまけにこれでもかと自己主張する大型の首輪。明らかに『ワケありで協会に従っている』類いの者だろう。
また、どうやら外部から強力かつ何重にも渡るリミッティングが施されているらしい。大方魔族としての力を強引に抑え付ける為のものと思われる。
さて、ここで彼女が素直に情報提供なりしてくれれば大助かりなのだが、立場上仕方なく戦闘に突入してしまう可能性も十分考えられる。
彼女からの返答を待つ。高純度の紫水晶を思わせる瞳を、バイザー越しに見つめた。

>>ウェ・トゥース


【絡ませていただきます】

3日前 No.1395

エマ @grimsky☆J1OzOaAlqIDo ★dxkzXfPWBG_sNF

【人民平和記念研究所/BSL4実験室/エマ・トーン】


 突き出した拳に、感触が伝わった。
 指から腕へ、腕から体へ、体から心へ──熱は伝わった。
 触れた鋼鉄(はがね)の腕は冷たくなかった。ちょっと熱すぎるくらいには、熱があった。
 それが嬉しかった。それがどれだけ心から喜べることだっただろうか。それは人間の体ではない、人の手で作られた鉄の腕だけれど、今は確かに熱がこもっている。
 ああ、そうだ。これが人の温もりなんだ。心の熱なんだ──心でそれを理解して、エマは嬉しさで零れ落ちそうな気持ちを抑えて、いつものように笑う。
ばけもの
 英雄ではない、人間のほほえみで。


「──当然」


 いずれ、死ぬ。
 死とは平等に訪れるもの。
 ……なんだか老師の言葉が分からなくもない。けれど、死という終わりが見えてなお、今苦しいと思ったことはない。
 彼はそれを知っても、考えを変えなかっただろうけど、俺は見せてはやりたかったと思う。
 生きる希望というものがある人間は、死で解放されるわけではないという事を。
 生に秘められた力を教えてやりたかった。それで変わらなかったとしても、そこにある何かを知ってもらいたかった。
 詭弁だし、傲慢な考えだ──でも、確信めいて一つ思うのは。もう二度と出会うことはないだろう、ということ。
 仮に生きていたとしても、自分が死んでいるからだ。

 きっと、きっとだが。一人では耐えられなかったと思う。
 隊長が死んでから、蜂の巣隊はそれぞれがそれぞれの役割を果たせる場所へ異動していった。
 自分は前線に出る前だったから違ったけれど──それでも一人は寂しかった。だから、友達のような関係ができて、嬉しかった。
 嬉しかったから、今ここにいられる。
 隣に誰かいるという心強さが、今の自分を支えてくれている。

 死が幸福なのでは、ない。
 死を迎えるときに、幸福であるべきだ。
 結果ではなく、過程がそうであると謳っていた隊長の言葉を思い出しながら──きっと俺は今幸福なんだろうと思っている。
 たどり着いた死という結果に、ちょっとだけ抗っているけれど、友達が最期の自分の顔を見てくれる。
 もう何も……怖くはない。


「で! ……どうするよ。どうにも下のほうでドンパチやってるみたいだし……ぶち抜くか?」


 ツインセイバーの片割れで床を突っつきながら、下から聞こえてくる音に耳を澄ませている。
 どうもこの研究所には地下階層がいくつかあったらしい。そこですでに戦闘が行われているのも伺える。
 自分は、彼女に付いていくと決めた。だから……あとは簡単だ。そこにいくだけ。自分の意思を覚悟を、そこへもっていくだけだから。


>>椿姫=ノイアラート・バビロン

【移動する場合は移動先についてはお任せしたいと思います…!】

3日前 No.1396

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sNF

【人民平和記念研究所/実験室/テロヨワ・アムリーベン】


正しさ、とは。その問いの正解を持つものはこの世に存在しないだろう。それは不変であり可変、定義はあれど確定するものはない。人に基準が存在し、その基準ですら変わり得るものである以上絶対の正しさは存在しない。
しかし、絶対の正義は存在するのだ。それは多くの人間が信奉し、尊ぶものであるからだ。そも、正義と言う物は信条の延長線上にあるもの、その心情が好ましく世間に適合するならば、それは正義となり、正義から外れたものを貶めても咎めるものは居ない。それが正義であるから。
テロヨワと言う男が持つ正義は、協会にとっては絶対になりえない正義だ。弱きものを使い潰し、一握りの為の犠牲にすることを厭わない。時を遡ればこの男ですらそういう正義を抱いていた時期があった、だが今抱く正義はきっとワールド10の正義に近しいものだ。
子を守る、彼の抱く正義は、天秤が傾く訳はそれに限るのだ。協会の中では賛同されないもの、もしくは趣味の一つだとしか認識されないもの。それが彼にとっての正義である、そして正義と言うのは互いにぶつかり合うのが常である。
目指す場所が同じであれど、手段が違えば別の正義となる。それと同じように、見ている景色が同じでも立つ場所が違えばそれも別の正義。だから青年を試している、己の正義を託せるに値するのかどうかを。正しいかどうかではない、彼の想う正義の為に。

「持つ天秤が違えば争いが生まれるのも道理、だが暴力は忌むべきものだろう。それでも、暴力でしか解決できないことがあるのも事実」

そう、試す為の問いに青年は気付いた。相も変わらず軽口を挟みながらも、その雰囲気が乱れたのを見逃しはしなかった。ほんの一瞬、動きに精彩を欠くほどもない秒にも満たぬ間。だが、感情の揺れを完全に抑えきるのは余程経験を積まねば不可能だ。
その抱いた感情が何かまでは判別しかねるが、少なからず問いには気付いたのは間違いないだろう。彼の能力の種明かし、それを見せる事で対処を促す。見て、理解して、その結果の行動がどうなるというのも試す内だろう。
それにだ、手札を一つ晒す理由だってあるのだ。知られていないアドバンテージがあれば、知っていることによるアドバンテージもある。知った以上はそれの対策を施すだろう、その対策に対するカウンターが手札にないなどと、誰も言っていないのだから。

「さて?私は知っていること以上を話したつもりはないのだけどね。省みる、という点に関しては心に留めておくよ。認識の相違は自他では特に顕著だろう。
そして、一つ言うならば何事も使い方次第だ。火も煙も使い道はある、煙草は……さっぱりでね。分からないものに判断を下すつもりもないから、何も言わないでおこうか」

壁を蹴り出して飛び出した青年、先程までに居た空間がまるで空気ごと凍り付いたかのように氷に包まれる。そのまま留まっていれば氷の中に青年が居たことは想像に容易いだろう。だが、飛び出した先に何も用意しないはずがない、特にこの男に限っては。
放たれるは氷の矢、十という決して多くはない数ではあるが回避行動の先に置く様に射出されたそれは回避を困難にする。だが青年は曲芸のように宙返りをすれば、天井を蹴り出して垂直に落下することで強引に回避を行った。
されど無傷にとはいかず、数度矢が青年の身体を傷付けていた。加えて凍傷を再現した副次作用も受けている、軽傷と済ませるには小さくはない傷だ。しかし、青年の目的は達成していたようだ。何かに気付く様に彼は手を横へ振り払う。
瞬間、先程放たれた銃弾を起点として発生する稲妻の結界。テロヨワを中心に三角錐に囲まれたそれを押し留める冷気の群れ、脆弱点こそ分かり切ってはいるが、それを突くことすら織り込み済みだろう。
青年への問いへと使用した弾丸、そこから発する稲妻は他と比べて目に見えて弱い。その部分を破壊さえすれば結界の意味を為しはしないだろう。青年が語った言葉さえなければであるが。
勝負を仕掛けたのが青年であれば、その舞台を整えた主催者はこの男だろう。賭け事などあまりせぬテロヨワであるが、その立場に居るものが勝負を降りる事が興醒めであることは理解している。
もし、これが通常の戦闘であればそれでいい。相手の些細な言動に振り回される必要はないのだから。しかし、ここでの男の立場は試すと明言した。それで真っ向勝負を避けるというのは、あまりにも不誠実な様だろう。
だからこそ、積極的な破壊ではなく冷気によって凍て付かせる消極的な防衛に留めている。依然として椅子から立ち上がる事は無い、微笑みを湛えたままの姿で。青年が駆け出す姿を視界に収めながらだ。
雷を放出しながら砲弾の如く突っ込む青年、稲妻の結界内に漂う冷気すら気にもかけずにだ。近付く脅威を理解していながらそうするだけの策がある、だがそれを理解していようとこの時点で彼が取れる行動は防御しかない。

「賭け事はしないのだがね―――」

耳を劈くような音を響かせながら拳と稲妻が氷壁と鬩ぎあう。手を翳したテロヨワは結界からの稲妻を冷気で押し留めたまま、新たな氷を生成し防御へと当てていた。青年の誤算は、彼の出力がまだ許容範囲内であった事だ。
紫電の槍と拳を受け止めても尚軋む様子すら見せぬ氷壁、その強度からも分かるだろう。停止させる能力の出力は生半可なものでは枯れる事は無い、多くの物質を継続的にかつ断続的にとなれば危ういが、この程度であれば未だ健在だ。
して、健在であれば近距離に近付いている青年への反撃を行うのは当然とも言えよう。策はあるだろう、何かの読みを待っているのかもしれない、気を窺っているのかもしれない、しかし紫電の眩さでその姿を確認することは出来ない。
だからこそ、大いに予測が混じったとしても問題のない攻撃を放つだけだ。

 、  、レイズ
「―――駄目押しだ」


翳した手を上へと軽く振り上げる、さすれば最後に青年を視認した場所を中心に冷気が広がる。この冷気はただの予兆、罅割れる音を響かせながら氷が生成され始めるのもまだ予兆に過ぎない。
床から氷の槍を生やし、串刺し。シンプルではあるがあまりにも分かりやすい、分かりやすいが故に強力ではあるが彼が仕込んだのはそれではない。何故ならば、天井にも同じように氷が生成され始めているのだから。
そう、一度に生成して攻撃を行うのではない。根本と先端のみを先に生成し、ある一瞬を以ってその間を瞬時に凍結させる。出来上がるのは床と天井を繋ぐ氷の柱の群れだ、青年を中心とした、男から見て前方一面にそれが降誕する。
もしもそれに人が巻き込まれればどうなるかなど単純だ。肉体などお構いなしに凍結する以上、先端と根本の間に存在するものは全て貫かれていたことになるのだ。もしも貫かれなくとも、極低温が体内に発生するのは間違いないだろう。
予兆もあり、彼の横や後方には一切展開されないという隙はある。だがそれを差し引いても殺傷能力という点では、範囲や確実性においてはこれまでにおいて最も高い。殺意こそ見せてはいないが、テロヨワは確かに青年が姿を認識できないように仕向けたことで漸く敵意を僅かだが向けた。その結果が、この広範囲に及ぶ凍結だ。
あくまで、青年の姿が認識できないが故に広範囲殲滅を行っただけであり、現状青年が何を行うかを読んでいる訳ではない。試す、男が定めるそのラインに到達するにはあと一息だろう。この青年の賭けがテロヨワに大きく影響を及ぼすのは間違いない。
そう、例えるならば殺意を滲ませるような事態になれば、男の言う試すという行為は達成されるだろう。

>>ライル


【ここ数日返信速度がかなり遅れてしまい申し訳ありません!お待たせしてしまいますが、確実に返信は行いますのでもうしばらくお待ちいただけると幸いです!】

3日前 No.1397

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sNF

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3日前 No.1398

ライル @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【実験室/ライル】


 正しさとは何か。

 よく哲学者か哲学者気取りの馬鹿が、そんなことを口にする。


 正義と悪は人それぞれだ。
 それは別に間違ってるわけじゃない。むしろある部分では正しい。
 正義とか正しさとか、そういう言葉で作られるワードには必ず絶対の共通点ってのがあるという部分を除けば。

 正義とは、人の従わねばならない道理を言う。

“正義を行う”となれば、道理を守らせることにもなる。
“殺すな・奪うな”までは殆どの思想で共通だが、その先は個人で違うもの。

 それは一般的に悪と呼ばれるものを許すか許さないか。
 男女はどう扱うべきか、どんな命令にも従うべきか従わないべきか。
 それぞれの人間の選択によって、正義と言う言葉の意味は違う。当たり前だが、僕も違う。


「見解の一致を得たな、そこは。人様の理由と自分の理由を重ね合わせるのは大変難しい。
 となれば、何処かで擦り合わせるのが常だが、出来ないケースがある」

「片方が全く譲ろうとしない場合だ。零か一しか言わないのなら、そりゃ争いじゃない。征服で凌辱だよ。
 ………あ、誤解しないでくれ、僕は平和主義者じゃない。むしろそれを盾にする輩は大体ロクなやつじゃないもんな」


 正義だけじゃない。
 思想、主義、主張。そういうのは殆ど全て、食い違う時と食い違わない時というのがある。
 そうなった時には論点のすり合わせってのをするべきなのだが、困ったことにそれをしないヤツがいるのだ。

 今日予定空いてる? とか聞いておきながら事情に配慮しようとしないそこのおまえ。
 そうだよおまえだ。今すぐ悔い改めてくれ。

 そんな場合があれば当然、後は争いになる。暴力でしか解決できないケースってヤツだ。
 そうなった場合は余計酷いことになる。
 必ず禍根ってのが残る。だってお互いが納得したわけじゃないんだから当たり前の話だろう。

 で、だ。僕が何を言いたいのかって言うとだが。


「暴力でしか解決できないことはある。
 でも主義主張を面と向かって口にするヤツに限って、僕の知る限りではロクなヤツじゃないんだ」

「普通はそう思っても、そうしないだろう」


 それだけだ。

 それだけだが、それは一番大事なことなんだ。あ、ゴメン嘘、二番目かも知れない。



 ともあれ僕が仕掛けた勝負にヤツは乗った。

 打撃が氷壁に防がれること―――予想通り。
 継続的かつ断続的に続く攻撃で軋みすらしない―――少し予想外。
 先ず防御に入ったこと―――完全に予想通り。

 そして、それから僕を最後に視認した位置へと攻撃を仕掛ける。
 そうとも、それは最適解だ。
 少なくとも、この男ならその選択肢を取って来ることが分かっている。分かっているからそうしたのだ。

 頭の悪い馬鹿ならば余分な力を使う。
 ならば、そもそもこんな戦法を取らずとも“どうとでも”なる自信さえある。

 少し頭の回る程度のヤツならば防御に入り、保身に入る。
 それならそれで崩しようがあるが、実は僕はそういうタイプが苦手なのでお断りしたい。

 ではこのテロヨワ・アムリーベン上級会員殿。今までの闘い方とスタンスからして“頭の良い”男だ。
 僕程度のガキの悪知恵、見たならばすぐに看破もしよう。
 僕の力のカラクリってのを、こいつは二度か三度か見ればすぐに気付くに違いない。

 ………しかし、そうだとは思っていたがコイツ、中々やってくれるじゃないか。

「―――!」

 確かにそれは駄目押しかつ勝利を確実にする手だ。サマに半歩脚を踏み入れかけたような使い方だ。
 天井と床へと生やした氷の槍による串刺し。
 根本と先端をお構いなしに凍結させ、停止させる力の具現。
 巻き込まれたなら、ではない。そこから直撃したならば僕は当然として、大抵の戦士は無事じゃ済むまい。

 性質が悪いのは、コイツのそれは正面広範囲の薙ぎ払いに見えて、ただ一直線上に攻撃を配置してきた点だ。
 確かに僕が何かをするとしたら確実にそのラインでしかなく、
 他の場所に力を投入する意味はない。極めて効率的かつ、僕みたいなのを殺すには最適解となるダメ押し<レイズ>。

 そこに一点賭けをして来たっていうところか。
 成程インチキも大概にしろよな、というのが僕の本音でございます。

「………」

 逃れる術は特に無い。
 ヤマもオチもないチェックメイト。

 悪あがきのようにもう一撃、ダメ押しのように紫電を収束させて撃ち出す。
 それはいまテロヨワの盾になった氷壁へと追撃のように刺さるだろう。

 その直後で氷の柱に貫かれて、極低温の中に僕は沈む。
 殺傷能力と言う意味では先程のものと比べてもダンチだ。こればかりはどうしようもない。


 そう。賭けなどする時は大抵切羽詰まっている時なのだ。
 僕には次の新しい手と言う奴が実を言うとない。ハッタリでしかない。


 だから。おまえの勝ち。僕はとどのつまり、最後まで―――。



>テロヨワ・アムリーベン






――― ■ □ ■ ―――





 ・・・・・・・・・・・
「もしもあの時に戻れたら。
 ・・・・・・ ・・・・・・・・・
 そんなことを、考えたことはないか」


 だったら拍子抜け。

 ………そう思ってくれたなら、少しはありがたい。
    実際のところ5割くらいさっきの語りは嘘だ。5割はホントだ、イヤ死ぬかと思ったわ。


 僕が何処から言葉を発しているかって、氷の槍に貫かれた直後のこと。
   、・・
 紫電がまだ氷壁とせめぎ合い、その最中に僕が貫かれた直後のことになる。
 真面目な話をすると痛い。痛いのだが、さっきも言った通り僕のチップは僕の命だ。
 それくらいやって初めて勝負になるんだから、まあ、しょうがない。
 そして当然のことだけど泣き言も弱音も吐かない。何しろ、それは僕の主義に反する。


「僕は………大人じゃないんだ。夢を見る権利が………ある。
 ………だから、大人のおまえに………こう言うよ」


 死に際の僕がいったい何をほざいていると。
 そう思ってくれるかも知れない。
 それならそれで丁度いい。雷の結界が少しずつ薄れていく中で、僕は突破口ってのを作り出す。

 突破するべきものが何処にある? そうとも、僕は今間違いなく凍り付いた。
 喋ってるけど、あと2〜3秒ってところで意識が消えるくらいのやばいラインに入っている。

 少なくとも、今この時間で僕が出来ることなんかなんにもない。が。


 、   リテイク
「―――『やり直せ』―――」


 ………そうとも。
 おまえがどうかは知らないが、僕は夢見るお年頃のガキなのだ。

 刹那が生死を分ける分水嶺に立った時、やめろこうしろこれがいいと、駄々をこねる権利がある。
 僕はその場所まで自分を戻す。時間を、立ち位置を、行動を、全て。


. 、 、 、 、 、 、 、 、
 今この時間で僕が出来ることがないならば、
. 、 、 、 、 、 、 、 、
 出来る時間へ戻ってやることをやる。


 時間を巻き戻すということは、
 当然僕という個体が織りなす世界の時間は行動を行う前の状態に戻るというワケ。

 ………傷を負い、凍結し、トドメになって死ぬのは雷槍を撃つ直後になる。
    何が言いたいかって、巻き戻す前に受けていた傷は分水嶺の先に置き去りというわけだ。

 と言っても僕の力は大変万能性のないヤツで、一つ制約がある。

 僕は分水嶺までその気になればいつでも戻ることが出来るが、
 その分水嶺は『害意を持った攻撃』に類する行動を仕掛けた直前でなければならない。つまりぶっちゃけると、僕がこの場でそれを発動したならば、拳で殴りに掛かる前、助走を始めたポジションがそれに該当するわけだ。

 だからわざと、それを見せた。
 そしてあの男はその通りに攻撃を仕掛け、その通りに僕を殺しに掛かった。

 正直に言うが死ぬかと思った。
 こいつが例えば、ちょっと頭のいい奴みたいな保身に入ったとしよう。

 実を言うと僕には突破の手段がマジでなくなる。
 以前出会った魔女殿辺りの助けが本気で欲しくなるが、居ないので勝ち目がなくなる。

「―――信じていたぞ。降りはしないと。
 ところで賭けの必勝条件と言う奴を知っているか。あ、知らない? では教えてやろう」

 それこそ僕が、ずっと、なるべくコイツの前で“喰らってから”の使用を取りやめていた理由だ。
 それを見せたら恐らくテロヨワと言う男は一発で気付く。成す術もなく、そうなったら詰みだろう。

 この状況を作る必要があった。
 コイツが正面から壁を張り、飽和攻撃から動かないために“分水嶺”に乗せる。

 ………乗せてしまえば後は二択とでも思ったのかも知れないが、答えは否だ。

 此処まで運べば―――。



「イカサマだよ。

 何を好き好んで此処まで手札を見せたと思ってるんだ、お蔭で物凄い苦労しただろうが―――!」


  、   ストレートフラッシュ
 後は、僕が仕込んだ手札を見せるだけの、順当なイカサマの始まりだ。



 一の矢、最初に仕掛けた紫電を伴う打撃。これで氷の壁を作らせる。
 作ってもらう、ではない。“造らせる”状況へと相手を誘導する。そのための結界だ。

 二の矢、僕が焦って相討ち狙いみたいに撃った雷の槍。これで氷の壁にダメ押しを掛ける。
 一発でダメならば二発。当然の話だろう。

 そして三の矢を放つ直前で、僕は自分の能力を使い、立ち位置と時間を巻き戻す。
 停止した空間を“僕のいる場所だけ”停止していない空間に巻き戻し、そこから一気に踏み込む。

 踏み込んで繰り出すのは一の矢の完全焼き直し。
 持ちうる火力を合わせての一点突破、至近距離から叩き込むようにして打ち出す雷纏った砲弾のような拳打。
 三度の衝撃を一点に合わせて正面を射貫くように狙い、そして―――。


 ………わざわざ見えないようにした本当の理由は、天井だ。
 僕はそこに、見えなくしてから―――もしも二の矢を撃つ暇すらないと思った時のために仕込みをした。


 第四の矢。それは最初の打撃の時、僕を認識させない状況を作っていた時にしれっと発砲した弾丸だ。
 そこを基点に、仕込んでいた術式を起動させ、天から地へ。
 丁度、テロヨワという男の頭に雷が落ちるようにセットした時限式の魔法を発動。
 その雷は三方を取り囲む雷の方陣によって更に励起し、迎えるようにして増幅され、誘導されて襲い掛かる。


 一から三まで、正直に言うが全部囮だ。トリック、手品、イカサマ、政治、弁論、皆そう。
 派手に一発行って/言って、その裏側に何かを仕込むのがそいつらの常套句だ。


  ………おまえも多分そういうやつなんだろう。テロヨワ・アムリーベン。
     おまえの正義に乗ってやる、やらない以前に、そこから一つ、先ずは動かしてやろうじゃないか。


>テロヨワ・アムリーベン

2日前 No.1399

椿姫=ノイアラート・バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_sNF

【 人民平和記念研究所→制御装置管理装置/BSL4実験室→管理室/椿姫=ノイアラート・バビロン 】

 死出の旅路までを誓ったことは、なんとなく気恥ずかしさもあった。
 だけれど、それ以上に心は澄み切っていた。自らの怒りに焼き尽くされることもなければ、在り方の燃料と成り果てることもない。決してその生き様が変わったとか劇的なことではないが、自分の中の何かが好転したのは間違いない。
 多分きっと、今の自分はいい顔をしていると思う。それは晴れ渡るようなだとか、陰りのないだとか、そういう笑顔だ。

「当然! こっちの方が早いでしょ!」

 だから、ブチ抜くという単語に何ら躊躇いなく同意した。そうだ、いつだって直情と直球のみで生きてきたじゃないか。振り返らないのなら、振り返らなくても済む場所までついてこれる人が欲しいというのが、私の願いだったのだから。だからきっと、言えば応えてくれるだろうと信頼を寄せながらも、自分は"最大出力≠ナ駆け抜ける。
 出力をカチ上げればエマはきっとついてくる。一見すれば危うい関係だが、霧の晴れた自分達ならなんだって出来る。
 そういった自信が、内側から湧き出てくるのが確かに分かった。

 エマがこつこつと床を叩いている場所に合わせて、赤熱させた拳の照準を定めた。
 そうして振り抜こうとしたとき、ちょっと待ってと動きを止める。

 うん、英雄にはいつだってこれが必要だ。

   、    、  コール
「――そうだ、エマ! 掛け声決めない!?」

 デウスエクスマキナ
 お約束の化身であるならば、それに相応しき振る舞いが必要だ。単なる粛清装置ではなく、輝ける太陽のような存在であるために。
 というか現実はともかく御伽噺のヒーローはみんなやっていた。
 息を合わせるためとかそういうのはあるけれど、動機は純粋――カッコいいから。

「うん。その場で合わせよう! 誰かいたら雰囲気とフィーリングとノリで!」

 手が止まっていたのは、五秒にも満たなかった。
 次の瞬間には再加速し、昂った感情をそのまま解放するかのように床に大穴をブチ抜いた。
 インパクト
 衝撃 。着弾した拳より花開いた焦熱が、強化された床を容易くえぐり抜き、地下までの道を強引に抉じ開けた。

「いっくよーーーーッ!!!」

    、    、  ジャンプ
 躊躇うことなくそのまま跳躍、奈落の底へと身を投げ出し、義装より炎をふかして飛翔する。
       、        、      、 ・・・
 いつだって出たとこ勝負、立ちはだかる者皆すべて、私たちならなんとか出来ると分かっているから。

 ―――――

 対峙する奇術師と偉丈夫、武力を、言葉を翳し、根底の信念を叩き折らんとする者とそれを貫く者が二人。
 蜘蛛糸のごとし権謀実数が這い寄るように張り巡らされていく中で、その風情全てを叩き壊していくかの如く響いたのは轟音。

   、  ・・
 煙の中に、先ず浮かび上がるは着地したシルエット。
 両腕両足を機巧の武装で覆い、揺らめく炎を纏う者。

 誰が呼んだか爆熱旋風、嵐と共に現れ、数多の悪に一発ブチかます善悪超越爆熱娘。
   、  ヒーロー
 またの名を英雄と呼び、最近自分の気合と本気の根性に志願してきた唯一無二の相棒と共に降り立つ者。
 始末に負えないのは、手品師がトリックを仕掛けるための細工が起点――もとい原因となり、耐久力がほんの僅かに落ちた天井が豪快にブチ抜かれたこと。そしてその余波を受け、小道具<小石>も木っ端みじんに爆せ消えたこと。

「涙する者達よ、嘆く者達よ、音にも聞け、刮目せよ!」

 凛とした少女の声が、主に"敵≠チぽいと判断した武装装甲の武人へ向けて、高らかに名乗りを上げる。

「我こそは真っ赤に燃える光の炎ッ!!
 椿姫=ノイアラート・バビロン、此処に参上ッ!!!」

 ――ここが最重要施設の一角であることなどつゆ知らず、少女たちが降臨した。

>シュルヴェステル・フルメヴァ―ラ 奇術師 ヴェイス エマ・トーン

2日前 No.1400

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【繁華街/アリア=イヴァンヒルト】

 痕跡の話をしていた時、ザーシャの表情が少し変わったような気がした。
 喩えるなら、その時に見せた表情は、いつもの勝気な空気ではない。
 かといって、照れを誤魔化したり、穏やかに笑うものではない。むしろそれとは別のもの。

「………ザーシャ?」

 ほんの一瞬だ。
 表情が見せたのは、誰かへの憤りか、それともそれに近い何かのように思えた。

 とはいえ、あくまで………気がした、だ。
 本当にそうなのかどうかは分からない。

 普段ならいざ知らず。特に先程の、『ノイス・ヘルメラ』について話しているならいざ知らず。
 彼女はわたしに笑いかけたり気遣ったりからかったり勝手なことやったりと色々な顔を見せるが、その裏で何を考え、何のために動いているのか、その全てまでわたしが分かっているというわけではないのだ。

 でも、口にした言葉はほぼすべてが真実だ。
 今のわたしはどうあったって、消息不明となったあの人の影がちらつく立場にいる。

 それに―――そもそも、その為に成した行動だって、立場が明るくなっただけで大して変わらないのだ。
 本音を言えば、それを明かしたくないのかも知れない。
 今まではなんとも思わなかったというより、うっすらと感じていた感情が“何”なのかを気付かなかったというだけ。それを焦りというならそうなのだろうし、気後れしているというならきっとそうだろう。

 だから、少なくともそこから離れた場所で出会うというのは、なんだか好ましく聞こえたのだ。
 その時は、わたしも、ひょっとするとザーシャも。戦うこと、殺すことか離れられるような気がして―――そう感じた時に、わたしはそれなりに心の何処かで、自覚したことへの忌避感というものが残っているのだと理解した。
 それとも、そうした忌避感とかではなく。
 何処にでもあるような、陽の当たる場所で、彼女と会ってみたいと思ったのか。ハッキリとはしない、そんな自分の感情だった。精査には少しずつ慣れて来たというのに、そういうこととなると、なんだかまた靄が掛かって来る。

 二つか三つ、感情がほつれていると、ハッキリしない。
 こんな想いだって、嘗ては懐かなかったのに。
 恐らくは『綺麗』の意味合いだってそうだ、考えることもなかっただろう。

 それが変わることなのだろうか。
 彼女が参考程度に、と言って締めくくった言葉を反芻しながら、考える。
 またもう一度突き当たりそうな思考には無理矢理蓋をした。
 だってその『綺麗』に当てはまるものを、わたしは何となく口に出来るが。
 それを今口にするのが、ダメなのだ。なんでかは言えないけど、とにかくダメだ。

 ………なんて、考えていると―――。

「………なんです、その笑い方」

 ほんの少し、見た覚えはあるようで見ない笑い方。
 そんな笑い方で、ザーシャはわたしの言葉を反芻するように口にした。

 彼女に、わたしはどんな顔をしたのだろう。
 なんとなく、小さな子供かなにかを見ているような気がしたからか。
 少しムキになった顔をしていたかもしれない。
 それでも手を離さなかったのは、それとこれとは別というだけ。そして―――。


「必要な時には、何処だろうと連絡を飛ばすような男ですから。掛けて来ないなら、今はそういうことです。
 ただ………確かに。話し過ぎました」


 実際のところ、大分話し込んだ/話し過ぎたというのは事実だ。
 昔は誰かと話す時なんか、標的の確認だとか事務的な話くらいだったというのに。
 他人とそういう、何処か他愛もない話をするというのは、ひょっとしなくても初めてで。

「そろそろ、戻らないと」

 それでも。名残惜しさがあっても、何時までも甘えるわけには行くまいし。
 実際、掛けて来ないとしても、それなりに長いこと此処に留まっているというのは本当だ。

 名残惜しさを振り払うように、そっと手を離す。
 また会える。今は少なくとも、これでいいと言い聞かせるようにして。


 ―――ふと、あの時の表情が気になった。


「ザーシャは。これから、何処に?」


 それを聞いた時のわたしは、彼女にどんな表情を向けていたのだろう。


 微かに見せた感情の振れ幅が、少しだけ気になっていて。
 また、なんとなくだが、『不安』に近いようなものを感じた。

 ―――あの表情は思えば二度見たことがある。
    先程のデクロムと名乗った男にも、似たような感情の色はあったはずだ。

 ………だから、だろうか? 再び元の場所へ戻る前、わたしがこれを聞こうと思ったのは―――。

>ザーシャ

2日前 No.1401

協会の秘蔵っ子 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3ZO

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2日前 No.1402

バグスター @carisu☆t8OIH682mSg ★OKQ5desRtI_6Og

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2日前 No.1403

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sNF

【第三臣民処理場/檻/シビルナ・カストリス】


「う、嘘は何処にもない!貴方に、な、なな何もして、ない!わ、私も、かかか彼も、貴方に酷い事はしてません!」

光線を放っても彼女たちという恐怖が消え去らない事に、少女は更に取り乱して光線を至る所へと放ち続ける。明確な狙いが存在しないそれは、床や壁を容赦なく抉っていく。その破壊力は粉砕し抉り取っても余りあるほどだ。
されどその威力を見せつけられても彼女は退く事は無い、破片が身に突き刺さろうとも怯む様子すら見せずに歩みを止める事は無い。嘘と断言する少女に、近付いてすらいないのに嘘も真もないと、自身らが何もしていないと伝える。
青年が嘘ではない、信じられないかもしれないが助けたい一心で叫ぶ言葉に追従するように。そう、この場の二人は少女をただ助けに来ただけなのだ。それを容易く信じられぬほどの恐怖に、目を覆い尽くされてしまっているだけで。
そういう思いをし続けてきたことはこの短時間ですら痛い程分かる、他者に対する感情が怯えや恐ればかりで、他者が存在するだけでその感情は留まることなく溢れている。その仕打ちがどれだけほどであったかまで、想像は至らぬが彼女の思う数段上である事は確かだろう。
倒れ伏した身体をふらふらしながらも立ち上がらせ、後退りをし始めていた。まるでホラー映画の一場面のように、人々が恐れるままに逃げ果せる様に彼女は目の前の恐怖から逃れようとしていた。そして、壁を背にして逃げきれなくなるというのも映画の場面の一つのようであった。
ただし、違うのは少女には恐怖を打ち消す手段があったという事だ。単純なくるなという拒絶の言葉を繰り返しながら放つ光線の色は赤、攻撃的な色を帯びたそれは印象に違わない効果を発揮していた。彼女へと飛来し、周囲に着弾した物は巨大な爆発を伴っていた。
幾度も幾度も、執拗に放たれ続けている赤い光線は爆風で彼女を覆い隠してしまうほど。それでも恐怖の対象が消えていないと思っているのか、巻き起こる爆風の中へさらに赤い光線が放たれ続ける。新たな爆発が古い爆風を吹き飛ばし、熱量を周囲へと放出し続けていた。

「―――――いえ……!私は、行きます!貴方を助ける、為に!」

爆風に人影が映し出される。爆風を受けても尚、その歩みを止める様子を一切見せないその人影。同時に発せられる言葉は、いやに区切られているが凛々しく、枯れても尚はっきりとした声は彼女のものであった。
その爆風の中から歩んできた姿は、決して無事とは言いようがない物ではない。瞳を腕で覆い隠した以外は、爆風をその身に晒し続けていたのだ。加えて言えば、防具どころか包帯の上に制服を羽織るだけの姿では防ぎようはないのだから。
全身の火傷痕を上書きするように熱に晒され続けた赤い皮膚、出血こそ焼かれて止まっているが塞がり切っていない裂傷、爆風の中を怯まずに歩み続けていたからこそ再度罅に至った脚部。以前の戦いで負った傷の上に、更に衝撃と熱に襲われているのだ。
あの男が従えていた竜の王の火炎、あれにも劣らぬ威力を内包していた。その爆風に逆らいながらも歩みを続け、高熱をその身に受け続け、それでも少女へと近付く。これだけの事をされても尚、ただ助ける一身の為に。
彼女の体力だって無限ではない、身に刻まれた傷は確かに負担となっているし、新たに刻まれたものもそうだ。光線の直撃ですら倒れ伏すことなく踏ん張ったせいもあってか、体中が悲鳴を上げている。骨だって幾つかは不味い状況だろう。
だが、ここで退けば少女を虐げようとした人間と何ら変わりない。彼女に恐怖を与えた、その点で言えば全く同じなのだから。だからこそ、その先に行かねばならない。例え、光線が幾らでも彼女を襲おうとも少女に進む以外、道はないのだ。

「ええ、そうです。貴方が、信じることが、出来るまで……私は、倒れませんから。助ける、までは、何度でも……貴方へと」

少しばかり身体の負担を感じさせる声ではあるが、青年に賛同しながら言葉を紡ぐ。少女が信じることが出来るまで、何度でも近付いて助けに行こうと。ああそうだ、あの男に余地があるならばこうできたかもしれないという思いもある。
だが、今はそんな事よりもただ少女を救うためだけに。少女が受けた仕打ちは想像の及ばぬ所にある、それを為した相手は許せない、そしてそれを許容できる協会も許せはしない。だが、彼女はそれを一人でどうにかできるほど強くはない。
だからこそ、目の前の少女を救う事に全力を尽くす。頑固さを助長させた男は、同時に限界も教えていた。あの場で彼女は確かに負けていたのだから。彼女のできる範囲があると、それが理解できたからこそ彼女は諦めはしない。
この少女は助けることが出来ると。全てに恐怖を抱き、拒絶する少女はただ信じる事すらも怖がっているのだ。少女が出会った人間はきっと酷い事をするばかりの人間だった、だがそういう人間だけではない事を知って貰いたいのだ。
知った上で、拒絶するならばそれでもいい。知っても尚、恐怖が勝るならばそれでもいい。だが、知って貰うまでは彼女は諦めはしない。助ける為に、壁を背にした少女へと歩みを進め続ける。
それに至るまでの障害など、全て身に受けようとも脚を止める要因になりはしないのだから。

>>ティエラ・マージーサイド セラ=ラファエル

2日前 No.1404

嘲笑う者 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【第三臣民処分場/処刑室/ロッシュ・ロダン】

ヴィルヘルムの動きはロッシュの予測した通りだった。だが彼は、力の差を見せ付けるかの様に、魔力の槍を高速移動で回避した。更に、ベアトリクス目掛けて放った魔力塊も、それを上回る威力の雷で消滅させられる。ちっ、と忌々しげに舌打ちをするが、一息吐く間も無くヴィルヘルムの反撃が迫り来る。
高速の移動から繰り出される、前後からの弾丸の挟撃。四肢が狙いである事から察するに、動きを阻害する事が最大の目的だ。この期に及んで殺害より無力化を優先するとは、何と心優しい事だろう。

「ハン……やるじゃあじゃないか。けどまあ、馬鹿正直でやりやすい。助かるねえ」

戦いの中で冷静さを取り戻し始めたロッシュは、弾幕を避けるため右に真っ直ぐ駆けながら魔法の黒煙を展開する。魔力で出来たその煙は、視界を阻害するだけでなく、あらゆる探知機能を無力化する。黒煙が晴れるまで、ロッシュに攻撃を当てるには彼の動きを予想する他にない。迂闊に黒煙に踏み込めばどうなるか分からない、と言う懸念もヴィルヘルムの動きを鈍らせるだろう。
更にロッシュは、黒煙の中から、散弾のような小粒の魔力弾を、ヴィルヘルムのいる方向へ向けて大雑把に射出する。勿論、全て猛毒を含んでいる。面を制圧するその弾丸を避けるには、大きく動く他に無い。

黒煙の中、右手方向に走っていたロッシュは、唐突に真逆の方向へ切り返して走る。今の攻撃で、ヴィルヘルムが『散弾が来た方向』にロッシュがいると推測するだろうと読んだからだ。加えて、相手がそれすら想定していたとしても、この煙の中で動き回るロッシュに攻撃を当てるのは不可能に近い。そして、全て読み切っていたとしても、"此方の方が一手早い"。

「驕り高ぶる? 自分の力を勘違いしてる? ――ハッ、何も分かっちゃあいないね。俺は嫌って位自分の能力を理解してるさ。そうじゃなきゃ……真っ向からお前らを叩き潰してるさ、そうだろう?」

――黒煙が晴れる頃、嘲るようにそう語るロッシュは、既にへたりこむベアトリクスに左手を翳していた。
ヴィルヘルムが此方の背後を取ったのを逆手に取り、黒煙と散弾で彼の動きを制限させて先手を打っていたのだ。幾ら彼が素早く動けたとしても、"動かされている"状態では出遅れるのは当然の理だ。
ヴィルヘルムが下手に手を出せば、ベアトリクスの命は無い。打って変わって、状況は厳しくなったと言えるだろう。

「人間なんざ、所詮ちっぽけな生き物さ。一人で出来る事なんざ高が知れてる。"だから人を利用する"んじゃあないか。

――他人なんて信頼しちゃあいけない。組織なんてもっとさ。この世で信頼出来るのは一つだけ……自分を守ってくれるのは自分だけなんだよ」

ロッシュは、冷たく色の無い眼差しで、じろりとヴィルヘルムを睨む。それから、生殺与奪を今自分に握られているベアトリクスに視線を向けた。

「自分に出来ない事、やりたくない事、足りないモノを、人を使って穴埋めする。上司には媚び諂って、部下は使い潰して、同僚は出し抜いてさ。そうやって今日を生きていく。明日の糧を得る。それが真理さ。何せ、席の数は決まってるんだ。みんな仲良くおてて繋いでゴール出来るなんて考えちゃあいけない。少しでも自分が生き残れるように、使えるものを使うだけの話さ」

……世界は残酷だ。誰もが生きたい、勝ちたいと願いながらも、そうなれる者は限られている。世界のリソースは有限で、全ての人が望んだ通りの人生を送る事は出来ない。それはある種の生存競争に近いだろう。
ロッシュもその競争の只中に放り出された一人だ。両親に売られかけた時、その真理を理解した。かつて無垢だった少年は、残酷な世界によって悪性へと変じざるを得なかった。

悪であり、被害者であり、加害者である――"そうならざるを得ない世界"で、"そうなる事を許容した"。それが、ロッシュ・ロダンと言う男の本質だ。

>>ヴィルヘルム、(ベアトリクス)

2日前 No.1405

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sNF

【人民平和記念研究所→移動/森/焦土/フォルトゥナ・インテグラーレ】



「感謝など必要はない、私がそうしたかっただけだ」

傷付きあった手を重ねて、感謝の言葉を述べるトルマへと嘘偽りない言葉で返す。繰り返すようだがこれは彼女の我儘なのだ、心に抱いた感じたことのない感情、その先を向ける相手を失いたくはなかった。ただそれだけの事なのだから。
少しばかりの羞恥を含めた笑顔を向ければ、武器の降ろす音が聞こえた。そして彼女はこの時点で初めて、周囲の部隊がまだ戦える状態であった事を失念していたことに気付いた。指揮官を潰せば、そう思い霧を使ってはいたが途中から頭から抜け落ちていたのだ。
戦闘中の彼女にしては珍しいどころか、有り得ない油断ではあるが何故かその理由は納得できていた。そう、トルマだ。姉とは違う感覚で意識を向ければ夢中になってしまう、戦闘に集中という意味では悪くはないのだが周囲まで目に入らないのは少しばかり危険だろう。
とはいえだ。戦闘は終了した、機械兵たちの部隊であるアンプル隊の隊長が戦死したことによって。武器を降ろした音は交戦の意志が無い事を示すもの、詰まる所は彼女の用意した建前に賛同して貰えたという事だろう。

「回収ポイントまでは少しばかり歩く、傷の方は問題ないか?……人の事を言えたものではないがな」

頭の中で作戦状況に応じた展開図を引っ張り出す、重要施設周辺の制圧はほぼ完了。現在は内部制圧へと乗り出している事だろう。そうなれば周囲の制圧維持以外の部隊と保護人物の回収ポイントは、とどことなく思い出して位置関係を把握する。
彼女が生身単騎で突撃するのもあって脚がこの場にはない、そうなると徒歩になるのだが特に彼女とトルマの傷は酷いものだ。機械の補助を度外視すれば、心配の言葉をかけた彼女の方が重傷であり、動くのに支障が出ることは間違いない。
最悪の場合は機械兵の助けを借りればいいだろうとも考えていた、回収ポイントに居る面々も彼女自身が連れるよりも、助けている事が理解できた方が受け入れやすいだろうと。この一年でそれなりに人の感情を理解しようとしてきた成果でもある。
しかし、機械兵で思い出したがトルマとその部隊の絆は強いものだと気付いた。勝負が決した後すぐに医療器具を準備していた事、トルマ自身も最期の時を迎えると思っていても部隊の面々に声を掛け続けていた。更に言えば、止めを刺す瞬間に妨害がなかったのは隊長をそれだけ信頼しているという事だろう。
家族の絆、恐らくはそれが一番近いのだろうと彼女は感じた。尤も、彼女自身も家族の絆と言う物がはっきりと分かる訳ではない。ないのだが、姉やヴァイスハイトに立場を置き換えた時どうするかと考えれば、同じようにすると思った。
思ったが、彼女ならばきっと止めの瞬間だけは間違いなく妨害に入るだろうと分かってしまった。そこで彼女自身の死んでほしくないと思う感情を優先してしまうのが、彼女らしいだろう。子供らしいだとか、そう言い表せられる。

「ああ、心配はいらない。歩く程度なら少し痛むが問題はないからな」

心配を招く発言をしたが、それを求めている訳ではないと伝えておく。互いに満足した戦闘の結果なのだ、要らない負の感情を背負わせてしまっていいものではない。と、自然にそんな感情が湧いて出た。正直に言えば、歩くのは少し辛いのだが。
だとしてもそういう甘えを人に求めるのが苦手な彼女は、問題はないと伝えるのだ。散弾で抉られた脚で歩くのが辛くないなどと、多くの人間が思うわけはないのだが。強がり、というよりも自分への責任感への強さとも言える。
こればかりは彼女が育ってきた環境が大いに影響している為に、すぐに変化するものではない。だが、姉と共に暮らし始めて多くに人に理解を示す内に、良い方向へと変わってきているのは間違いない。自分の身体を省みない癖ほど、最初に直した方が良いのだろうけれど。
と、そんな内心に苦笑する。丸くなった、そう言えるほど尖っていた自覚はないが纏う雰囲気が柔らかくなったとは、時折言われることがある。人間変われるものだな、と過去の自分を振り返りながら本当にそう思う。
手に触れる温もりで思考を引き戻せば、手を引く様にして歩き始める。互いに傷だらけではあるが、互いを支える程度は出来るだろうと不思議な信頼感を感じていた彼女。それが何を意味するかは分からない、だが一つ伝えられる事はあったなと、微笑んでトルマへと振り返る。

「ヘルメラ・トルマ……良い名前だな」

このトルマとの出会いもきっと、彼女に何らかの影響を及ぼすだろう。それが良い物であると感じたのは間違いはない。心に秘める想いが何かは分からずとも、その想いを感じるだけで何故か心が温かくなるのだから。
トルマの名を聞いて、それを繰り返したくなる想いが悪いものではないだろう。そしてそれが恥ずかしくなって、良い名前と自然に付け加えてしまう彼女にはもう、敵意を感じる事は無い。
そう、ここには彼女と保護される部隊しかいないのだから。ゆっくりと、傷を負った足取りのまま回収ポイントへと向かう。その先はきっと、明るいものなのだろうから。

>>ヘルメラ・トルマ

2日前 No.1406

若きウィザード @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【人民平和記念研究所/製造室/フリードリヒ・ガーデルマン】

何を言われても、マオルは少しも考えを改める様子は無い。それどころか、連盟を否定し自らの考えを正当化する有り様だ。それを受けて、クラリスは頭に血が昇ってしまったようだった。フリードリヒもまた、その物言いには幾らか言いたい事はあったが、努めて冷静さを保っていた。そうでなければ、彼女の相棒は務まらない。

「――だけど、それを免罪符にして努力をしないのは間違いだ」

マオルの言う事にも一理ある。全ての者が救われる理想的な世界の実現は夢に等しい。だが、だからと言って理想へ向かう事を諦めるのは愚かだ。今より良い明日があると信じて、人は生きているのではないか。ただ停滞するのを良しとするのなら、人は何の為に生きているのだ――。


マオルの隙を突いた二人掛かりの連携であったが、それは悪手だった。マオルはここぞとばかりに一気に骨と蔦を展開し、二人同時に攻撃を仕掛ける。
クラリスは兎も角、フリードリヒにとってそれはあまりに致命的だ。近付かれず、攻撃を受けない――言ってしまえば安全圏からの戦闘ばかりの彼にとって、マオルの攻撃は回避どころか安全に受ける事すら困難だ。そして、"それ"を誰より良く知っているクラリスは――。

「――――あ――――」

――フリードリヒの前に飛び出て、自らその蔦に身を貫かせていた。

強気な言葉を吐いて、彼女は、そしてばたりと倒れた――。

「クラリス――ッ!」

悲痛な叫びを上げてクラリスの元に駆け寄り、血塗れのその体を抱き抱えるフリードリヒ。夥しい量の血を流す彼女は、放っておいても死んでしまうだろう。

「ごめん、ごめん……僕のせいで……クラリス……!」

彼女の血で自分が汚れるのも気にせず、クラリスを強く抱き締める。彼は目に涙を湛え、歯を食い縛って泣きそうになるのを堪えていた。

……何時だってそうだ。僕は、君に守られてばかりだった。今までずっとそうだった。

脳裏に逡巡するのは、"また"クラリスに無茶をさせてしまったと言う後悔。思えば、一年前の歴史是正機構の構成員として戦ったあの時も、今と同じように彼女に守られていた。
あの時は、持てる限りの力を尽くしてもクラリスを守れたとは言い難かった。相手が優しかったから、二人は生きていた。だが、今回はそうではない。マオルは、殺す気で二人に襲い掛かって来ている。もう、クラリスにはフリードリヒを守る力――否、自分すら守る力も無い。あとは、ただ殺されるだけだろう。このまま、ならば。

……だから、今は。いいや、これからは――。

倒れたクラリスの前に、意を決したフリードリヒが躍り出る。クラリスの後ろで守られてばかりだったフリードリヒが、初めて彼女の前に立った瞬間でもあった。


「――――僕が君を守る!」


その時、フリードリヒの体から、青白い光が沸き上がる。それは、彼の意志に呼応して溢れ出る魔力の奔流――。

「――『ライトニングブリザード』! からの、『ストームレイン』! 続けて、『メテオスウォーム』!」

解き放つのは上位の合成魔法、の、超高速連射。強烈な負荷に頭が割れそうな痛みを感じるも、意にも介さず全て撃ち切った。
先ずは、雷を伴う猛吹雪が。其処に重ねるように、立っている事すら困難な暴風雨が。一息吐く間も無く、幾つもの燃え上がる隕石が。それらの全てが立て続けに、マオルへ迫って行く。

「まだだ、まだ足りない――これでも食らえ! 『テンペスト』!!」

裂帛の叫びと共に、限界を超えて最上位の魔法を発動する。脳神経が悲鳴を挙げ、眼孔から出血しながらも、クラリスを守る為に彼は全身全霊を尽くす。
最後に放ったのは、正しく天変地異が如き大嵐。フリードリヒとクラリスだけを巻き込まない、優しくも激しい魔法の真髄だった。


人は変われる。過去に縛られる必要は無い。より良い明日を、昨日より素晴らしい未来を、自分の手で掴み取れる。マオルにはきっと、その真実は、余りにも眩しく見えた事だろう――。

>>マオル、クラリス

2日前 No.1407

聖域の守護者 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【制御装置管理施設/制御室/中央防衛機構GoU】

――そいつの銘は【ガーディアンオブユートピア】。楽園を守護する者と銘打たれた兵器が護るのが、多くの人間を虐げる元凶とは、全く皮肉な話だろう。
或いは、ごく一部の者にとっての楽園だろうか。どちらにせよ、二人の目には立ちはだかる最後の障害としか映らないだろう。

ドローンによる一斉射撃を、キャロラインは事態を呑み込めないままでありながら全て防ぎ止める。実力だけで第一臣民にのしあがって来た彼女ならではの芸当だ。
彼女はシフォンに共闘を要請する。ことこの期に及んでは、最早敵も味方も無いと言う事だろう。シフォンも、それに概ね賛同した。此処に、時空防衛連盟と並行世界管理協会の共同戦線が誕生したのである。

キャロラインの短戟の連打は、確実に防衛機械の外装に傷を付けている。とは言え、まだまだダメージは微小。仕留めるには、相応の時間が掛かるだろう。
一方のシフォンが放った魔法だが、此方は機体を覆う障壁に阻まれて通らずにいた。十機のドローンによって展開されるその障壁は、あらゆる魔法、エネルギー攻撃を分解・無力化してしまうのだ。
あの障壁への対抗策は、物理的な攻撃しか無い。だが、ただ強力と言うだけの物理攻撃では、奴の装甲に傷一つ付ける事は出来ないだろう。何せ、アナザーワールドで最も硬い合金製だ。傷を入れるどころか、逆に刃を砕かれかねない。
奴を倒すには、キャロラインのように障壁の内側に入り込んで近距離から魔力を伴う攻撃を叩き込むしか無い。しかし、それは当然最も危険なレンジへ自ら飛び込むのと同義であり、シフォンがこれまで培ってきた戦闘技量が問われるだろう。

懐に飛び込んで来たキャロラインに対し、防衛機械は眼の様にも見える頭部の宝石を向ける。その姿はまるで、彼女を眺望するかのようだ。
右手のクローを振りかざし、キャロラインを掴もうとする。更に、十機の攻撃ドローンが四方八方からの射撃を仕掛けた。この激しい攻撃に耐えて、彼女は攻め続けられるだろうか。

一方のシフォンに対しては、肩のレーザーライフルで射撃を行う。それは当たった床を融解させる程の熱量であり、対人用とはとても思えない。勿論、受ければ骨肉に至るまで焼き尽くされる事だろう。

>>キャロライン、シフォン

2日前 No.1408

荒狼 @zero45 ★pB1cyTl1jZ_sNF

【第三臣民処分場/処刑室/ヴィルヘルム・エーベルヴァイン】

 白き光を纏いながら高速で駆け抜けると共に、前後から殺到させる四肢狙いの銃撃。無力化を優先する姿はさぞかし生温いと見做されるだろうが、実情としては其処から嬲り殺しにするが為。この瞬間、己は正義の美徳を捨て去り、衝動に突き動かされるが儘に荒ぶる孤狼へと戻っていた。
 無数の銃弾飛び交う弾幕を前に、ロッシュは右方へと直進して行きながら避け、同時に姿を晦ます黒煙のカーテンを展開する。視界は勿論の事、気配の一切を消失させられた今、カーテンの内側を駆けている彼に一撃を当てるには、その動きを予想して的中させるという、分の悪い賭けに挑まざるを得ない。加えて、先程の例からして黒煙に猛毒の類が含まれている可能性も疑える。そうした懸念もあって、行動には慎重にならざるを得ない。
 更には黒煙の中から散弾の様な魔力弾が射出される。直撃してしまえば、傷の深さは抜きにして致命に繋がる可能性は高い。だから、大きく避けざるを得ない。そして、飛んできた位置からして奴は其処にいるのだと推測できる。

「……笑わせる」

 ――それが、奴が想定するシナリオなのだろう。ならば、先んじて言おう。"常に最速を征くのは己だ"。

 視界を阻む黒煙は、吹き飛ばしてしまえばいい。銃撃を即座に止め、空いた手に蓄えた魔力を球状に整えると、黒煙の中へと投げ込み、地面へと着弾した瞬間に雷を周囲に撒き散らして、煙を霧散させて行く。
 迫り来る猛毒の散弾は、当たらなければいい。構えていたアサルトライフルを保管場所に返送して、大地を蹴って高く跳躍すれば、直撃してしまう前に全てを避け切る。宙へと浮き上がれば、中心から煙が晴れ行く下方を見据えて、敵の移動が真逆に切り返される動きを正確に、そして瞬時に視認する。
 そして――紅い光を纏い、高速を越える神速を以て、悟られるよりも疾く移動を完了した。

「違うな。本当に手前自身の力を理解しているなら――正しい行動は"最初から敵に回さねえ"、だ」

 へたり込むベアトリクスに左手を翳し、ロッシュは語り始める。だが、その眼が睨む先は、移動を読まれでもしない限りは虚空だ。そして仮に読まれていたとしても、既に遅い。この瞬間に己が立つ位置、それは彼の背後――拳の一撃を、叩き込める距離だ。
 己の実力を正しく認識している、その言葉を否定し、最初から敵に回した時点で誤りであると断言すると共に――神速と見紛う速さを以て、脊髄や内臓を文字通り破壊する程の勢いを込めた右の拳で、まずは腰部を目掛けて打ち砕きに掛かる。

「そして、その理論は既に破綻している。何故か? ――それは、自分で自分を護る事に対して、一番欠けてはならない物がてめえには欠けているからだ」

 そして間髪入れずに追撃。勢い付ける左の拳で、今度は背中を打ち抜きにかかる。

「何も飾っていない、自分自身の強さ。不足している物の全てを他に依存して来たなら、間違いなく蔑ろにして来た筈だ」

 最後に、彼女から引き剥がすようにして、渾身の蹴りを叩き込む事でその身体を吹き飛ばしにかかる。

「頼れる物を全て使い果たしたなら、最後に頼れるのは自分自身。それが真理で、その状況に陥った瞬間に真実の姿は映し出される。
 ――てめえは、弱すぎる」

>ロッシュ・ロダン (ベアトリクス・ノアシェラン)

2日前 No.1409

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sNF

【第三臣民処分場/ベルトコンベア/ウェ・トゥース】


突如響き渡る爆音、それは彼女の警戒を最大限にまで引き上げていた。僅かに身を屈め、揺れとして襲い掛かる衝撃に微塵の動揺も見せずに、ただ何が起きたのかを閉ざされた視界の中で探る。響く機械音のようなものが、その侵入者の存在を確かに示していた。
飛び散った欠片が彼女の身体を襲うも、傷をつけるどころかこれまでに負った傷の治癒すら阻害も出来ていない。その程度では障害にもなりはしないが、それを為した兵器そのものは脅威と見るには十分だ。
呑気な声色で携行装備の感想を呟くそれは恐らくは男性、動くたびに聞こえる音からして重装備と判断。恐らくは携行装備の量は多く、加えて重装甲である可能性も十分に考慮できる。そこまで判別すれば、明らかに彼女へと向けた言葉が投げかけられていた。
壁を破壊した事への謝罪、それに連盟の人間と明かした上で協力を要請した。その時点で対峙している存在の気質が分かってしまう。ここがどんな場所で、敵地に居るというのに、その場で明らかに防衛を担当している存在にそんな言葉をかけるのだ。
間違いなく、善き相手である。本来であれば好ましく思う相手であり、彼女の本心から言えば協力できることがあるのならばしたいとは思う。この施設へと向けたやや棘のある感情も、それとなく感じ取れもした。だが―――

「協力は、出来ません……!敵である以上に、出来ないだけの理由が私にはあります」

その気持ちは受け取れるものならば受け取りたい、協力の意味するところが協会の打倒であるのならば尚更だ。だが、彼女は協会の強大さを知っていて、逆らえば無辜の魔族がまた犠牲になる事も知っている。それが、彼女の決断を鈍らせている。
第三臣民の身であれども、協会が過去類を見ない程に追い込まれていることは知っている。ワールド10、目の前の存在が所属する世界が協会を打ち崩しかねない程と言う事は知っている。しかし、彼女もそうであったのだ。
魔族の強制的な第三臣民への移行、その体制へと叛逆するために彼女は一人協会へと宣戦布告した。その結果は現在も協会が存続している時点で分かり切ったものだ。倒せるだけの戦闘能力はあった、しかしそれが打倒しうる理由にはならなかった。
だからこそ彼女はこれほどまでに追い詰められている協会を見ても、それが協会を裏切る理由にはならないのだ。仮に、彼女が裏切ったとして協会が倒されなかった場合どうなるかは単純だ。魔族の扱いなど、それこそこの場の有様以下にもなりえる。

「だから、申し訳ありませんが……死んで頂きます!」

故に、彼女は軽く息を吸い込んだ。上体を逸らし、僅かに膨らんだ胸骨がそれを示している。しかし口元から漏れるのは息ではなく、黄金の焔が燃え盛っていた。それを侵入者へと一気に放出する。
彼女の体躯の数倍以上の大きさの黄金の炎が空気を焼きながら侵入者へと迫る、その熱は周囲のベルトコンベアを溶かし、魔族であったものたちをも焼却する勢いであった。弔いの炎であると口が裂けても言えるものか、贖罪を前に弔いなどある訳がないのだ。
それだけではない、黄金を吐いていた口からは紫電が迸る。その紫電は空中に拡散しながら広範囲を灼き尽くすもの、炎とはまた違う性質の熱を発しながら侵入者の退路を塞ぐように張り巡らされた。竜のブレス、その威力は比類なきものだ。
戦いの幕を切り落とした彼女であったが、その内心協力を頼み、救われたかったという思いがあったのは確かだ。だが、彼女が魔族をこの立場に貶めたと思う以上、その選択を取れるわけがない。よりにもよって自分だけが、救われるなどあってはならないのだから。
だから、彼女は全てを背負って戦う。身体に幾度も傷を刻まれようと、精神を歪まされようと、目の前で無辜の命が散らされようと、いつかは、またいつかはと想い続け、その来るはずのない時を待ち望んでいるのだ。
手を伸ばせば掴めるはずの、その時を。

>>橋川 清太郎

1日前 No.1410

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_Xdn

【第三臣民処分場/ベルトコンベア/投入口/キラー・テンタクラー】

「……私は一応なるべく傷つけんようにと言葉を選んだのだぞ!? それをややこしい、しかも特別に……ぐぬぬ、今は保留としてやろう、敵のほうが優先だ」

一応、間違いはあってそれは謝罪したものの、先ほどの言葉と言うのはキラーがなるべくシエンタを傷つけないようにと精一杯選んだものだ。
それをややこしい、またまさに相手が寛大であるかのように振舞われると、キラーは何時ものように頬を膨らませることは出来ないが、明らかにそういった様子で横目でシエンタを恨めしそうに凝視する。 だが、口調こそシエンタもキラーもおふざけ半分と言った所なものの、特にキラーは戦闘において加減をしない、ひとまずこの議論の決着は後回しとして、キラーは改めて相手に注意を向ける。

さて、自分の言葉に対する相手の反応と言うのは、嫌味ったらしいほどの「余裕」だとか「見下し」に満ちたようなオトナの同調的な対応であり、それはさらに二人の顰蹙を買うことになるのだが、それ以上に本心を見せないような態度がキラーにとっては気に入らなかった。

だが、そんな戦闘には一切関係の無い言葉の中で、キラー自身の言動の節々からあふれているとは言え、相手はこちらがコンピューターウィルスであることに気づいているようだ、電子化を使った不意打ちと言うのは効かないと考えた方が良いだろう。 さらに言うならば相手が本当に理解しているのなら、ハッキングし易い脆弱な武器も使用しては来ないだろうと考えられる、面倒な話だ。

「ベラベラベラベラとお喋りが過ぎるな、イマドキの男なのか女なの分からんメンズ略してイマメン! 長台詞に加えて"ずうううっと"みたいな伸ばし台詞を乱用し、結果胡散臭すぎて今後どんな活躍をしても目立てなくなるが良い!!」

などと煽ってみたが、相手はお喋りに夢中で隙だらけと言う訳でもなく、ちゃんと周囲を警戒している様子は分かる。
本当に長台詞大好きな、まさにキラーやシエンタのようなバカ相手ならば、キラーは不意打ちも考えに入れていたのだが、これでは厳しそうだ。

ならば正攻法で、と言う事での触手とスラッシャーを使った多段攻撃であったはずなのだが……

「口も良ければ"目"も良いですよとでも言いたげだな!?」

使ってきた防御手段というのは先ほどの攻撃と同じようなものだ、今度はそれを壁として応用しただけ、特筆することは無い。
触手とドローンによる連携攻撃は防がれたが、それでも完璧に防ぐ事は不可能に近く、相手にはダメージが少し入った、それで良い。 再生可能な触手とドローンを展開するキラーと言うのは大火力投射を好むが、こういった持久戦にも高い適正を持つのだ。

だが、その後の結果がキラーが感想を抱いた部分だ、相手は明らかに機械を狙って破壊した。 おそらくシエンタの能力に勘付かれたのだろう、嫌なくらいに「目」が良い事だ、とキラーは内心悪態を付きながらも、シエンタのカバーに回ろうとする。

しかし、彼女は自分に助けを求めなかった。

「下手なカバーより火力か……チッ、人間の軟弱ボディだから気が気じゃないが、まぁいい」

正直な所、盾役は自分のほうが得意なのだが、下手に一網打尽にされるよりは、そうキラーは勝手に判断して自身とほとんど被害が出ていないドローン群を変形させる。
先ほどは持久戦もアリだと思っていたが、低火力でちまちまと殴るだけでは、相手の能力が発動しやすくなるだけだと判断したのだ。

そして……キラーは結果として「そこから動かない」
故に、ライフィストが突っ込んでくるだろうと放っていた大杭は簡単に避ける事が出来た、さらに言うならば、シエンタもしっかりと敵に対応している……ものの、その手段はやはり長持ちすると言える物ではなく、やはり短期決着を狙うべきと言う考えに拍車が掛かる。

さあ、シエンタが敵の攻撃に一人で対応してくれたおかげでこちらは変形完了までの時間があった、ここで一撃をくれてやる。

「よくやったシエンタ、さあ感電死に限らず蒸発でも焼死でも風穴ぶち開けるでも何でも選ばせてやろう、好きにくたばるが良いッ! 今必殺の、クリスタル……オーケストラ!!」

もしもシエンタかライフィストが視線を向ければ、そこにはハリネズミの如き大量の武装に身を固めたキラーの姿が映るだろう、自分の触手だけではなく全ドローンをナパーム、レーザーライフル、ドリルミサイルなど数々の武装に変形させて一斉射撃を行う彼の大技の準備は既に完了しているのだ。

シエンタのストレートパンチを当てるために、それが直撃する場所以外を「破壊」で埋めてやるとばかりに、大量の兵器が一斉に放たれる。
それらは必ずしもライフィストが居る場所に降り注がない、むしろシエンタへの巻き込みを危惧してか、もしもライフィストがその場に突っ立っているだけならほとんど攻撃を受けないだろう。 だが、キラーは陰湿な程に逃げ場を圧倒的な砲弾数で埋め尽くしている、そして突っ立っていると言う選択をしたならばシエンタの一撃の下、相手は砕け散るだろうと。

さらにキラーは、万が一に備えて、シエンタに向けて一発だけ攻撃能力のないドローンを射出していた、それはシエンタが拾えば電気を纏った変形するドローンだ。
おそらく彼女は攻撃終了後に負担が大きく、動きが鈍るだろう、そのため、最悪、相手が生きていた場合はそれでどうにかしろ、と言うフォローも欠かすことはなかった。

>シエンタ・カムリ ライフィスト・ヒッチロート


【投稿遅れて本当に申し訳ありませんでした!】

1日前 No.1411

エマ @grimsky☆J1OzOaAlqIDo ★dxkzXfPWBG_sNF

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1日前 No.1412

ラスティアラ・フーズヤーズ @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_sNF

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1日前 No.1413

協会の秘蔵っ子 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3ZO

【第三臣民処分場/操作室/リコルヌ・エルヴェシウス】

リコルヌがどうにかしてシフォンとレーヴェの離脱を食い止めるべく、即興で思い付いた提案。協会の者からすれば当然の行いであるそれは、二人にとっては逆効果でしかなかった。
特に、シフォンが犯した逃れようのない罪を、別の人物に押し付けて彼女を救い上げるという点は、妹を消し去られたシフォンの地雷を踏みぬくような行為であったのだろう。
しかし、リコルヌはどうして目の前の二人が、ここまで反抗的な態度を見せるのかが理解出来なかった。全ては彼らを思ってのことなのに、どうしてそれを反故にしようとするのか、と。

レーヴェは、罪を擦り付けることこそが、反逆を決意した理由であると語る。これもまた、長らく協会のやり方が正しいと信じ、従ってきた彼女には理解の出来ないものだ。
並行世界管理協会において、そのようなことは日常茶飯事。己の実力を証明し、這い上がることが出来なければ、やがては他人の踏み台とされ、都合のいいように扱われる。
アンゲルレリトン基地の責任者を務めていた、パトリシア・ファンデンベルフが最たる例だろう。彼女には辺境への配属が栄転であると説明されていたが、実際のところ協会からすれば、パトリシアはその時点で捨て駒の役割しか期待されていなかったのである。
故に、基地の陥落が決定的となったあの瞬間、協会は手を下した。不必要となった人材を処分するという意味合いで。同時にそれは、失敗を犯した者の末路を示すための、見せしめでもあったのだ。

シフォンとレーヴェは、こうした協会の在り方とその意味を、しっかりと理解していたはず。なのに、今更このような愚かな行動に走る意味が、本当に分からない。
数度に渡る説得を受けても二人が態度を変えなかったことを見て、リコルヌは心底辛そうな表情を浮かべながらも、攻撃に移る決断を下す。そうすること以外に、彼らを止める術はないと判断したのだ。

「"金剛壁"」

鉄すらも粉砕する水の嵐を前にリコルヌが生み出したのは、鉄を超える強度を誇る、ダイヤモンドの壁。煌めきを放つそれが、荒れ狂う嵐を押し留め、無力化する。
それでも鬩ぎ合いは際どい勝負であったらしく、波の勢いを殺すと同時に、壁は耐久性の限界を迎え、消失した。そこに間髪を入れず襲い掛かってくる、レーヴェの連撃。

「"粉砕"」
「"浮遊"」
「"反転"」

まず最初に迫りくる岩槍に対して術式を行使し、それを粉砕すると、直後に浮遊。地震の影響を無にした後、そのまま空中を飛び回ることによって、頭上からの落石を回避する。
そして、締めの斬撃に関してはなんと、攻撃の咆哮を反転させるという奇策を用いて対応してみせた。相手に放ったはずの斬撃が、レーヴェ自身を蝕む刃となりて、彼を襲う。

「"魔力球"」
「"破裂"」
「"噴出"」

レーヴェを足止めした後に距離を取ったリコルヌは、安全圏まで離れたところで、二人の中間地点へ魔力の球体を出現させる。次の術式で彼女は、それを破裂させ、強烈な衝撃波を周囲に撒き散らさせた。
しかし、強者である二人を倒すにはそれだけでは不十分。そう判断を下した彼女は、地面に手を当てて追加の術式を発動。シフォンとレーヴェの足元から、強烈な魔力の奔流を噴出させる。
恐らく、リコルヌは完全に迷いを断ち切れた訳ではない。どうにかして、二人に考え直して欲しいという思いも心の片隅にあることだろう。だが、そんな思いとは裏腹に攻撃は熾烈。彼女にも、協会のナンバー2として、果たさなければならない役割があるのだ。

>シフォン・ヴァンディール(A)、レーヴェ・ロザリウム

1日前 No.1414

Futo・Volde @nonoji2002 ★VgtmIqXF0o_SsI

【人民平和記念研究所/薬品保管庫/エントランス/レイシー・ラーチャー】

「あらあら。ようやくお客さん? 退屈してたのよ」

退屈さにうんざりし、そろそろ現世に別れを告げて、本来彼女が居るべき場所、地獄へと戻る事を考え始め矢先。彼女の前に現れるのは特徴的なマスク……あれはペストマスクだろう。遥か昔に見覚えのあるそのマスクを着け、黒いクロークを見に纏い、フードをかぶった者。男か女かもその容姿では判断しようがないが、レイシーにとってはその存在がどっちであろうと、興味はない。だが、声質から言えば男と見て間違いないだろう。

レイシーにとっては、退屈凌ぎとなる存在が現れたことは喜ばしい事。しかし、唯一、残念なところがある。それは彼が“普通の人間”ではなさそうな所。クロークの裾から除く地肌と思わしき色は、人間の持つ色とは遠くかけ離れた、緑色。それに背格好もどこか、人間とは異なる雰囲気だ。ともなれば、普通の人間ではないと判断するのに、そう時間は必要ない。

ペストマスクの男が放り込んだ爆弾。どうやら種類が違うようで、床へ落とされた方はその爆弾から生じた炎が部屋に蔓延したガスに着火し、爆風と共に薬品と、レイシーが撒いたインクのヘドロ共々吹き飛ばして行く。こちらの爆弾は飽くまでもインクを吹き飛ばすのが目的で、レイシー自身に向けられたものではないようだ。
しかし、続けざまに放り込まれる3つの爆弾は明確に此方を狙っての物。ただでさえ、爆風の広がるこの部屋で更に爆弾が追い打ちのように投げ込まれるのだから、何も対処しないと言うのは賢明ではない。黒く彼女の足元で蠢く大きな“ハンド”が、投げ込まれ、そして3度連続して生じる爆発からの爆風を守るように、レイシーを両手で包み隠す。

「来て早々、随分な挨拶ね。ふふ、私からの挨拶も受け取って頂戴?」

爆風が収まると共に、ボロボロとなった“ハンド”が一度黒のインクのヘドロとなったかと思えば、再び、彼女を守る盾のように、揺らめきながら一対、彼女から程近い所で待ち構えている。
殆どのインクは先ほどの爆風で吹き飛ばされてしまったようだが、いくらでもあのインクをぶちまけることは容易い事。片方の“ハンド”がインクを再び、ランダムにまき散らす一方で、レイシーは炎を纏った剣“アーク”を引き抜き、数度、ペストマスクの男へと振りかざす。真っ直ぐと、綺麗に直進した火球が3発、男の方へと飛んでゆく。

もっとも、これは注意を惹かせる為に過ぎない。ダメージソースとしては考えて居ないのだ。
むしろ、ダメージソースとして考えているのは“ハンド”が放ったインクのヘドロ。
今、ペストマスクの男が居る場所から見て、少しわかり辛いであろう、倒れた棚の影に出来たインクの水たまり。
そこからは、インクで出来た泥人形の魔物が一度に4体召喚されて、まるで生きる屍のように、男へと忍び寄って行く。だが、インクの魔物は生きる屍とは違う。彼らは口を持たない。つまり、喋ることも呻く事もしない。これが意味するのはただ1つ。音もなく、ペストマスクの男へと、インクの泥人形が迫っている、と言う事だ。

>プレイグナイト


【返信が遅れて申し訳ないです】

1日前 No.1415

水刃 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【制御装置管理施設/チップ製造室/ツバキ・オオトリ】

制御装置管理施設――第三臣民とやらの脳に埋め込まれたチップの、その制御を担う施設に、私はいた。時空防衛連盟の部隊長として、その任を負っている筈だった。

……ああ、だが、実のところ、戦争などどうでも良いのだ。下らないとさえ思っている。私は、そんなものに興味は無い。私はただ、私を満たし得る"それ"が欲しいだけだ。

――――だから、それを見た時、私は狂喜した。

「――ああ。きっと、お前だと思っていた」

或いは、これが宿命と言うものだろう。生憎運命論は信じない主義だが、今だけは私を廻るそれに感謝していた。
私の視界に立っていたのは、先日私達の世界に侵攻して来た一味の男。鋭利な気迫に二刀を携える死神。そして、僅かな間とは言え、死線を重ねた好敵――私は、それに再び見えるのを渇望していた。

――あの剣筋。一目で分かる程に洗練された殺しの業。あれを見て確信していた。この男こそ、私が殺すべき相手なのだと。
それが、あの時はどうだ。外野の邪魔ばかり入って、未燃のままで終わってしまったではないか。私の心はさながら、目の前の餌を取り上げられて悶える獣のようだった。

「邪魔立てはさせない。誰にもだ」

だから、今度こそ決着を付ける。この手で、無限の剣閃を斬り伏せる。それだけが、それこそが、私の歓びなのだから。


足元から荒波を生み出して、奴目指して真っ直ぐに駆ける。私より一息先に奴に到達した波に紛れて姿を隠し、徒手の間合いまで入り込む。
繰り出すのは右の掌底、続けて右の膝打ち。波を切って奮われるだろう鏖殺の刃の軌道をある程度予測し、攻撃後は即座に身を屈めて波に再び紛れて距離を取る。たった一秒にも満たない、だが無限に等しい交錯。

――言葉は不要だ。ただ剣だけが全てを語る。

>>アマツ
【今さらながら絡ませて頂きます〜。】

1日前 No.1416

魂の躍動 @sable ★c1PKWYVyQN_sNF

【第三臣民処分場/操作室/シフォン・ヴァンディール(A)】

 リコルヌ・エルヴェシウスの部下を想う心に嘘偽りはない。全ては信頼関係を築いた部下を救うため。
 だがそれも救済対象の逆鱗に触れるのでは意味がない。唯一心を許せる従姉妹を失った者。半身とまで形容する弟を奪われた者。
 両者にとって逆効果以外の何物でもなく、触れてはいけない禁忌の領域であった。

 当然攻撃は熾烈さを極めていく。憎悪の対象を深淵に沈める荒波。その只中へ滑り込ませる岩塊。荒波は土石流に、嵐は万物を巻き上げる竜巻に進化を遂げた。
 これだけの猛攻を魅せてなおピリオドを打たないのがレーヴェの本領だ。大地の利器、震動、そして落石。原始的な手段から搦め手まで、多彩さに富んでいる。
 自らに魔力による身体強化を施しての六連斬は、必要以上に疑り深いシフォンですら、決着を期待してしまうほどだった。

 しかし火を付けられたリコルヌの迎撃は、それすらも凌駕して余りある。水圧が鉄すらもひしゃげさせるというのなら、金剛石の壁を打ち立てればいいだけのこと。
 レーヴェの連撃ですら、常に冷静さを欠くことがない彼女に対しては無力。堅実な対処に始まり、最後は意表を突くかのような手段で以て叩き返される。
 最早激しいだけの通常攻撃では状況を打開できない。そう確信したシフォンは、誰にも見せることのなかった術式を展開する。

「無駄だ。反応装甲の障壁《リアクティブバリア》!」

 リコルヌが魔力の球体を生み出すより早く、シフォンは片手に握り込んだ魔力を宙へ放り投げた。
 地響きを伴って築かれるは、はち切れんばかりのマグマを封じ込めた氷壁。一見非合理的にも思える要塞が、レーヴェに跳ね返る斬撃を受け止めた。
 すると装甲の表面が裂け、蒼黒く染め上げられた熱と鉱石の混合物を吐き出す。たちどころに斬撃は掻き消え、要塞の傷も修復されていく。

 続く反撃も結果は同じ。球体が撒き散らした衝撃波も。地面から噴き出す魔力も。全て剛氷と猛熱の二重奏が叩き伏せる。
 真っ当に立ち向かえば凌ぎようがない脅威。それすらも一笑に伏す守りは、覚悟と激情、そして何より"魂"の成せる業。

「リコルヌ・エルヴェシウス。貴様を破壊する――!」

 氷壁が轟音を立てて崩れ去った時、シフォンの右の掌には、淡い蒼黒の輝きを放つ魔力の塊が載せられていた。
 これこそがシフォン・ヴァンディールの魂。魔力の源にして、彼女を異能者たらしめる核――コアだ。
 あろうことか彼女は、迷いなくこれを握り潰した。身体が砕け散るような衝撃を堪え、その行いが招く結果を見届ける。

 大気が爆ぜる。怨敵を焼き滅ぼさんと呻る獄炎が、たちどころに操作室を灼熱の渦に沈めた。
 焦土を冷気が覆いつくす。怒れる海神の如く荒れ狂う水流と氷塊、まさに獄海。
 天変地異と称す他ない惨状に、残る全属性が次々と災いを齎す。横殴りの風は凶器も同然の暴圧。走る稲妻は海神の怒号に共鳴した雷神の如く。
 ここは紛うことなき地獄だ。その地の底の底で、光と闇はなおも互いの優位を主張し競り合う。衝突の度に膨大な両属性のエネルギーが飛散し、無慈悲な殺戮の豪雨となって降り注ぐ。
 その果てに光と闇は融け合い混ざり合い、兵器の炸裂も同然の破壊力で以て辺り一帯を吹き飛ばした。

 砕かれ侵され、嬲り尽くされた空間。そこへ癒しとも追い討ちともつかぬ虹が降り注ぐ。
 救済の希望に見えてその実、暴虐の限りを尽くした跡に蟻一匹、草一本残さない絶望の具現だ。
 炎には更なる熱を。氷には更なる冷気を。ありとあらゆる属性の力を高め、リコルヌ・エルヴェシウスに天変地異の追体験を強いる。

 片膝をつくシフォン。命を蝕む技ではないにせよ、残る全ての魔力を解き放ったのだから無理もない。
 今この瞬間に限って言えば、彼女は平凡な無能力者となんら変わりはない。魔術を行使出来ず、防ぐ手立てもない無力な肉の塊に過ぎない。
 これだけの危険を冒してまで攻め入ったのは、先に待つ打開と勝利を信じていたから。自分でもおかしな話だと思わざるを得なかった。

 セレーナ・バルダロームのよく言えば勇猛果敢で、悪く言えば向こう見ずな進軍に異議を唱え。
 自身は部隊の遥か後方、護衛に幾重にも囲まれた空母の艦橋で、極限までリスクを削ぎ落した立ち回りに徹し。
 他人にもそうすることの重要性を説いてきた。

 そんな自分が不確かな未来などに望みを託したのだ。苦笑が漏れた――思わぬところで"奴ら"に毒されている、と。

>>リコルヌ・エルヴェシウス、レーヴェ・ロザリウム

1日前 No.1417

リインカーネーション @genomirai ★jhfTwDC05p_sNF

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1日前 No.1418

ライフィスト @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★msJh1WzJ3A_keJ

【第三臣民処分場/ベルトコンベア・投入口/ライフィスト・ヒッチロート】

「は、は、は、は。
 嫌われました? 嫌われておりますね。ああ悲しや、敵視されるというのは何より悲しい」

「命の危険があるというのは、何よりも悲しく虚しく痛ましく妬ましく悍ましくも恐ろしい!
 敵意というものはその根源にして源泉だ。
 向けられるだけで死のリスクが生まれる。
 これはアレです。精神衛生上よろしくないし、健康を著しく害します。恐ろしくて眠る時間は夜六時間」

 彼という男と相対した時に限った話ではないが。
 ヒトは、他人と顔を合わせた時に、必ずや何らかの印象を懐く。

 彼という男と相対した時に限った話として。
 ヒトは、ライフィストと対面した際、大半がこのような印象を懐く。


「そうでございましょう。何故敵視されるのか、ただ敵だと判断する以上の敵意を向けられる理由は何故か?
 分からないものというのがワタシそこそこ嫌いです。恐らくですが、市民権を有する御方の5割ほどはそうでしょう」

「旧き時代の第二人種が第一人種を狩る物語はご存知ですか?
 魔を冠するものをヒトはどう扱う?
 いずれ育つ若き芽を、古き老人たちはどう処理して参りました? うん、まあそんな感じで………ヒトの敵意と殺意と悪意とひっくるめてそのような感情のバーゲンセール、拗らせるとどのような方向に発展するか分からないのデスヨ」


 それは懐疑だ。
 悪感情として、この男という存在の輪郭が掴めないという印象をこそ懐く。

「そこを思うとどうにもこうにも、ワタシとて目立ちたくはナイナイナイ。
 出る杭は何とやら、驕る平家は久しからずの、えーっと後なんでしたっけ。思いつきませんので次行きます。
 そう、誰だって敵を作りたくはないのです。なのにそう………“おまえは視界から消えろ”と言われますと。ぐすん」

「あ、それはそれとしてワタシ男でございますよ。証拠は見せられませんがね。
 これでも貴婦人の方々にはお気に召していただいております。まあ気分を害する御方もいましたがね、フッフッフ」

 軽薄な口調の中に見え隠れする慇懃無礼な口、
 陶酔するようなセリフの内側に覗く冷酷な瞳、
 計画的かつ用意周到な風に見えて、その全ては自由気まま。

  今だってそうだ。攻撃が片方に通ったのを認識しても、まるで手を緩める気配はない。
  腕を広げると同時に零れ落ちる血、飛び散ったそれは何処に散ったのかさえも不明瞭。

  死ななければ安いとは言うが、逆に言うと殺せなければどんな行動も無意味なのだ。
  まだ息があるならば―――例えば頭だけになっていようと、この男は一切手を緩めない。

 一つの視点からライフィスト・ヒッチロートを捉えようとした時、必ずムジュンというものが生じる。
 彼はまるで霞のようであり、男はさながら掴めぬ新規楼。顔の見えない造り物。
 自由気ままに捏ね繰り回せるマネキンか土人形のように印象が安定しない。その歪さは他者にとってまず懐疑を懐くに十分であり、分からないものへの敵意に近しい感情を懐かせるには十分だ。


「それはそれとして………」


 踏みしめた鉄屑を思いきり蹴り上げる。付着した赤が泡のような音を立てて変形する。
 周りのジャンクと合体して姿を変えていくそれは、
 一見すると先程ライフィストの肉体を守った蛇の長体を彷彿とさせるだろう。

 しかし実態はその大きさも含めて違う。例えるならばそれは鞭だ。
 自由自在に長短を切り替える鋼鉄の鞭、紅の鮮血を滴らせた有機2割と無機8割のコントラスト。
 ではそれを使って何をするのかと言えば、地面に一度叩き付けてから無造作に薙ぎ払う。

 豪速で振り翳されたそれは、まず前方からやって来る雷と後方から迫る無数の砲弾を迎撃しに掛かる。
 ハリネズミのように全身を火器で固めた水晶華の暴威を前に全力駆動―――と言っても、キラーの最大火力も然ることながら、未だ此処はシエンタ・カムリのテリトリーだ。その火力を凌ぐには最低でも大型機械一個分の“素材”が必要になる。

 ではどうするのかと言われたら当然―――。

 そのムチが、いま降りて来た大杭に触れた時に分かるだろう。
 ムチに付いた血が潜り込み、再び大杭のカタチを変える。それは例えるなら鋼鉄で造られたドームだ。

 地面のジャンクを諸共飲み込み巻き込んで肥大化して、丁度ライフィストを狙うキラーの射線を全て塞ぐ。破損した傍からその瓦礫を拾い上げて接合していく様は、無機物とは思えない生体的な防御機能に満ちていた。

 あるいはその有様から。
 何故それを生命体に使わないのか、その疑問を懐いてもしょうがないのではと思えるほどに。

 極めつきは、それがレーザーや焼夷弾と言ったものならばさておいて、ミサイルなどの類であるならば鉄が動き、絡め取るようにして、当たりの部品を構わず吸収しながら“反射”を仕掛けて来たことだ。
 飛び道具の類は見当違いの方向にまき散らされ、戦闘上の被害という言い訳が付く今だからこそ、容赦なく周囲を破壊して破壊して破壊していく。そしてそれらは当然のように雷と衝突し、向きを変え、残りはドームに激突し………と言った風に、ほとんどの射撃的攻撃を防ぐに至った。
 あるいは、全方位に飛び散る鉄片は逃げ場のない大質量の高速広範囲攻撃という形で、キラーに意趣返しをしたとも言えるわけだ。たかが瓦礫だが、その速度と重さは砲弾のそれに類する。このようにして、不規則に飛び散ったこれらのダメージを避け切るためには時間が要るだろう。

 ―――ただそれは、結果的に見るとシエンタの方に向かう“ドローン”を見過ごしたとも言えるし。

 あの水晶華からすれば、予想の通りという動きだっただろう。
 彼はドームの中でロクに動かなかった。一歩たりともだ。

 何故? 決まっている。そもそもそいつは戦闘者ではない。
 複数の攻撃を見た時に、まず“守りに出る”ことからも明白だ。
 リスクとリターンを天秤に掛ける策謀家ではあろうが、それは刹那の時間で正答を選び続ける戦士の勘を持たない。

 戦闘経験と言う意味では遥かに上回るキラーの狙いが成立するのも当然であるし。
 ただのレンジの切り替えという部分において、シエンタの狙いが通るのも先ず当然のことなのだ。


 ―――ぐしゃり。

    少女の細腕が、少女のものとは思えない膂力でライフィストの躰を拉げさせた。


 そして………。


「………痛いじゃありませんか」


 シエンタ・カムリは見るだろう。識るだろう。


 その拉げた身体のまま、ごきり、と。

 人体が鳴らしてはならない音を鳴らして。
 男が、笑った。其瞬間を。


「痛いでは、ありませんか。

 アナタ、そんなことも出来たのですね。いや………いや〜。ワタシ、てっきり“アレ”とそう変わんないのかと。
 AIと人間じゃ行動パターンも違うってモノですね。コイツは失念していましたよ。減点モノでございましょう」


 心臓に該当する部分が赤く脈打つ。
 打ち砕いた部分にぽっかりと開いた風穴から、とくとくと血がこぼれる。

 脈打つ心臓に合わせて全身に張り巡らされた赤い血管。それはまず、人体が見せて良いものではない。
 明らかに先程の拳には手ごたえがあっただろう。骨か何かをへし折った感触もあったはずだ。
 殴り抜いた部分から伝わった稲妻は内側を焼いたに違いないし、それでも彼は微動だにしない。


 正確には、もしかするとしているのかも知れないが………
 その表情からは、絶対に推し量ることが出来ない。ただ、口元を三日月のようにゆがめて笑うだけだ。

 ただ一つだけ、明確に蠢いた“心臓の部分にあるはずのなにか”を想わせて。


「しかし………これはアレです。殺人未遂では? 正当防衛的に考えて殺しましょう。いいや違う、」


 ………さて。
 何故、避けなかったのか。

 9割以上は“まあ無理だろう”と彼が断じたから。それは確かだ。
 だがこの男は、それならそれで、という………失敗に対するリカバリを撃ち出す速度が異常に早い。

 失敗に対して思考の慣性を働かせるような凡庸な真似を絶対にしない。
 そもそも、ドームのように展開されたそれはキラーとシエンタの“援護”に壁を作るためのものだ。

 最初から陣取り方の全てに至るまで、初手でシエンタの行動が“狙い目”と判断したからであるし。
 その最終目的に関しては一歩もブレていない。この状況下を完成させた時に必ず生まれるリターンを思えば、その程度のリスクはライフィストにとって許容範囲内なのだ。


「 殺 し ま す ね 」


 大地がせり上がった。

 これを詩人が視界に入れたのならば、さて、そのように錯覚したやも知れぬ。

 ケーブルや精密機器やら床材やら大杭のなれの果てやら、
 ひっくるめて全てを飲み込み、ジャンクが渦を巻いて大波のように変貌した。

 せり上がったそれが齎すのはなにか。
 答えは、正面に立つシエンタを飲み込まんとする“鉄の津波”とでも言うべき一撃だ。

 それはキラーに使ったものよりも規則的であるが、同時に明確な目的を以て襲い掛かる大質量と広範囲の集合体のようなもの。飲み込まれたならば、プレス機に人間を放り込んだ時とだいたい似たような結果が待っているだろう。

 要は防御の方法がないなら躱さざるを得ないわけで。

 そこに至ってライフィスト自身は何もしない。ただドームの側に立つだけ。
 キラーの攻撃で損傷した即席のドームは穴も生まれたことだし、彼方から状況は分かるだろう。
 そしてわざわざライフィストが足を踏み込ませ、シエンタを戦場の中央から追い出した最大の理由がある。


「ああ。避けても………構いませんよ」

 ―――彼女の背後には、彼女がハッキング出来る“余地”がある。

「ワタシは、ま〜だ困りませんからネ」


 即ちこの戦場をシエンタ・カムリのテリトリーたらしめるもの。
 即ちこの戦場をライフィスト・ヒッチロートが選んだ理由になるもの。

 先程から奇妙なほどに攻撃範囲が広い最大の理由など言うまでもない。

 なにしろ躱せば自分のリソースが減るのだ―――そうなってしまえば、どうなる。
 ・・
 結果はどうあれ、表面だけを見ればライフィスト・ヒッチロートは健在なのだ。
 その最中で使えるリソースが減らされることに、何も懐かないほど能天気ではないだろうし。
 それによって生じる戦闘での負荷は間違いなく相方である水晶華に降りかかることは明白だ。

 だとしたら、彼女はどう考え、どうするのか。


 その精神的焦燥、ないとしても思考というラグは、いずれ致命的なミスを生む。


>シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー

1日前 No.1419

無限刃 @sable ★c1PKWYVyQN_sNF

【制御装置管理施設/チップ製造室/アマツ】

 静寂に座すアマツ。侵攻を試みる者にとっては恐怖だろう。死神だろう。
 だが視点を変えれば、死を纏い佇む彼が酷く頼りなく見えることもある。
 アマツとは暗殺者だ。闇に紛れ影に潜み、『殺せ』と命じられた目標ただ一つを刈り取る鎌だ。

 そのためだけに育て上げてきた人員を、迎撃戦力の一員として配置するとはとんだ矛盾である。
 漠然とした使命を課され、暗闇を取り上げられたアマツ。その姿が語るはただ一つ。
 協会は既に、暗殺者を有効活用出来なくなっているのだ。暗殺任務を課し送り込む余裕もなければ、そうする意味すらも薄れてきている。

「奇妙な縁もあったものだ」

 故にここで繰り広げられる争いは、何ら意味のない虚しいものになるはずだったが――天はそうはさせないつもりらしい。
 製造室に踏み入る殺し屋。戦艦の貨物室で感じた、凍てつくような殺気がアマツを目覚めさせる。
 立場も使命も飛び越えた、種としての闘争本能を掻き立てられる。彼女はそんな雰囲気の持ち主だった。

 そのある種神秘的なオーラはもちろん、獣として美しく磨き上げられた佇まいも、初めて顔を合わせた時から変わっていないらしい。
 彼女は内心歓喜していることだろう。互いの事情という名の無粋な外野の干渉に、真剣勝負の場を汚されたきりなのだから。
 手ぬるい結末にも程遠いが故の不燃。永久に抱え続けるかと思われた心の靄、今この場で晴らす他にない。

「来い」

 波を蹴立て走る獣。水鳥の如き軽やかさを覗かせたかと思えば、鮫の如き猛々しさを剥き出しにしてくる。
 どれだけ眺めても飽きが来ない細工のよう。事実、アマツは彼女が持つ、彼女しか抱けない神秘に心を奪われていた。
 味わい、愛で、粉々に砕くまでの道筋を思い浮かべずにはいられない。

 心地よい冷気の中から殺人拳が飛び出した。身を翻し、突き出された膝は宙に逃れることで躱す。
 回避に返しの刃を合わせるも、読まれていたらしく空を斬る。これぞ彼女が強者たる所以だ。
 一流の狩人は自身もまた獲物であると弁えている。目先の利益を追う背中をじっと見つめる、捕食者の存在に気付いている。

 だが身を屈め波に紛れる瞬間は見逃さなかった。凶器を持った相手に接近戦を挑み続ける危険を察してか、すぐさま距離を開けたらしい。
 しらみつぶしに波を砕くことはしない。あまりに非効率的で幼稚な手段だ。
 アマツが繰り出すのは、無限刃を体現する無数の剣閃。放たれた斬撃が、波の全域をほぼ同時に切り刻む。

 敵の洞察力によっては、単に隠れ蓑を剥ぎ取っただけで終わるかもしれない。
 故にその上に重ねるようにして、一太刀――空間を寸断せんばかりの、力の篭った斬撃を叩き込む。
 求めるのは確かな死の感触。肌を裂き肉を断ち、熱い返り血を浴びるまで、この刃が止まることは無い。

>>ツバキ・オオトリ


【絡みありがとうございます!】

23時間前 No.1420

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【第三臣民処分場/ベルトコンベア/橋川 清太郎】

返ってきたのは明確な拒絶。ある程度予測出来ていたが、やはり口惜しさは残る。

(あわよくば一時的にでも手を貸して貰いたかったけど、そう甘くはないか)

彼女の口内から高エネルギー反応を確認し、縦長六角型汎用シールドNone active tortoise Uを取り出す。
放たれるは焔。しかし常のそれではなく眩い鮮黄色であった。こちらを灰燼にしようと圧倒的な熱量でもって押し寄せてくる。更には強烈な電撃までついてきた、直撃すれば如何なGAWNDといえど無傷では済まない。
怯まずに一歩踏み出し、tortoise Uを構える。通常合金層と不可視型エネルギーフィールドの二重防御が剛雷熱の侵略を阻む。表面温度が耐熱限界ギリギリまで上昇したが、どうにか持ち堪える。tortoise Uでカバーしきれなかった部分の装甲も、赤熱し融解しかかっているが致命的なレベルには至っていない。

(なんとか防げた……けど、幾つも制約掛けられた状態でこの威力か)

装甲の損傷度合いと、周囲に刻まれた破壊の跡を見て底冷えする。と同時にあることを思い付く。

(これ程強力なら、そのまま暴れさせてしまえばどうだろう)

今見た通りの力で戦闘を続ければ嫌でも周囲に損害が行き渡る、この程度の部屋など5分と保たない筈だ。
恐らく彼女は協会に何らかの弱みを握られ、自由な行動がほぼ出来ない状況にある。よって侵入者の排除という名目ならば、容易に制限解除の理由となるだろう。

(不安要素も結構あるけど、やるしかないよね)

誰が彼女の監視をしているのか、どのようなプロセスで制限解除が行われるのかなど、イレギュラーとなり得るファクターはあるがやって見る価値は十分にある。
全身装備方式多連装ミサイルランチャーHeavy beetle Uを起動。各所のハッチが一斉に開き奥から誘導炸薬弾頭が射出される。無数に飛び立つそれらは各々の方向へ向かって行き、ベルトコンベア装置や粉砕機を破壊し始めた。

(さあどうする、このまま僕を放置しておけば施設の被害は拡大するぞ!)

施設で破壊活動を行う敵性存在を排除するにあたり、この状況で手っ取り早いのは『より強い戦闘力』を用意することだけだろう。

>>ウェ・トゥース

20時間前 No.1421

神の叡智 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3wf

【制御装置管理施設/制御装置/GOD-AI】

一向に好転しない状況、圧倒的な戦力を保持しながらも劣勢の戦いを強いられている協会に、GOD-AIは苛立ちを隠せずにいる。何故、これで負けかけているのか、と。
戦況とは生き物のようなものだ。どれだけ優位に立っていようと、たった一つの、ほんの僅かなミスで、確実であったはずの勝利を手放してしまうということもあり得る。
だが、今回はそういった要素などまるでなく、ただただ最初から押された上での敗北を喫しようとしているのだ。一体どうすれば、格下相手にそんな負け方が出来るのか、不思議でならない。
いとも簡単に一層目、二層目の突破を許した協会は、もう間もなくこの最重要施設へと敵を招き入れることとなるだろう。人間達の情けない姿を見て、普段は傍観しているばかりのGOD-AIも、ようやく動く気になったのである。

今の所やって来るのは雑兵ばかり。これだけで終わってくれれば楽なことこの上ないのだが、まさかそれはないだろう。当然、実力者がいずれ姿を現す訳で、直後にその予想は現実のものとなった。
忌々しい"かつての名"で自分を呼ぶ者。それを知っている者は、いや、覚えている者は、もうこの世界から消え失せている。不快感を露わにしながら、ゆっくりと振り向くGOD-AI。
そこに立っていたのは、一瞬サミュエルと見紛うほどそっくりな一人の男。実際のところ、彼はホームワールド側のサミュエル自身なのだが、彼女がそれを知る由もない。
発言の内容からして、あちらの"自分"と友人関係にもであるのだろうか。気に入らないことだ。GOD-AIは、そんな存在を持つことが出来ている"もう一人の自分"に対して、怒りにも近い感情を抱く。

「気安く人様の名前を呼ぶんじゃないヨ……! ボクは今、イライラしているんダ!」

次に現れた少女からも、シエンタの相性と認識出来る名前で呼び掛けられたことで、遂に彼女は抑えきれなくなった感情を吐露した。邂逅と同時に放たれた敵の氷弾を、GOD-AIは己の周囲に強烈な電磁波を撒き散らすことで撃ち落とす。
制御装置を守るために待ち構えていれば、やって来たのはあちらの世界の自分の友人二人か。神など信じる気に離れないが、これも、何かの運命ということなのだろうか。
もしそうだとしたら、ここでこの二人を、サミュエルとマシュマロを殺すことによって、向こうの自分を絶望させてやりたい。何故か? だって、ずるいではないか。
"ボクと友達になってくれる奴なんか一人もいなかったのに"。強烈な嫉妬心を心に秘めつつ、能力を行使するGOD-AI。次の瞬間、サミュエルとマシュマロの周囲に漂う空気が、爆ぜた。
GOD-AIの能力によって操られた電子が空気中で摩擦を起こし、燃え上がったのである。その戦い方に、恐らく二人は既視感を覚えることだろう。シエンタとGOD-AIは、容姿も含め、何もかもが似すぎているのだ。

>サミュエル・ベルナール(HW)、マシュマロ・ヴァンディール

18時間前 No.1422

マダム・ギロチン @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3wf

【制御装置管理施設/制御室/キャロライン・ガーネット】

急遽という形ではあったが、シフォンはこちらの共闘の申し入れに賛同を示してくれた。かつての敵が、今は同じ明日を夢見て戦う仲間。運命とは、実に不思議なものである。
ガーディアンオブユートピアと呼ばれる機械は、並行世界管理協会にとっての邪魔者……この場においては、第三臣民を統括するためのチップに危害を加えようとする不届き者を排除するため、作り上げられたもの。
本来、キャロラインが持つ権限であれば、如何なる操作をしても奴が起動することはないはずであった。彼女は、一握りの人間にしか付与されない、特権を有していたからだ。
にも関わらず、こうして殺戮者が動き始めたことには、理由がある。キャロラインは当然その事実を知らないのだが、原因は直前に"ある人物"が、ハッキングを試みて失敗したことだ。
これによって、外部からの攻撃を受けたと判断したGoUは、警戒態勢となり、一切の操作を受け付けない状態となってしまった。もし、キャロラインがここへ現れるのがあと少し早ければ、このような事態にはなっていなかっただろう。
とはいえ、それはたらればの話でしかない。現実として、奴が立ち塞がっているのだから、こうしていればよかったなどと後ろを振り返っていられる余裕はないだろう。

相手の懐へと飛び込んだキャロラインの短戟が、敵の機体に傷を付ける。一方、シフォンの放った魔法はというと、相手の展開する障壁に阻まれ、効果を成さなかった。
対能力者を意識し、徹底的に練られた構造が、二人に牙を剥く。GoUを倒すためには、至近距離からの物理攻撃を行うしかないのだが、それには当然の如く、危険が伴う。
ほぼ密着状態にあるキャロラインへ向けて振り下ろされる右手。一度離れてしまえば、再度接近することは困難。故に、引き剥がされては溜まるまいと、彼女は防御でそれを打ち返す。
数十機のドローンによる射撃も、足を踏み鳴らすことによって生じさせた衝撃波で、尽く無力化してみせた。なおも勢いの落ちない衝撃波は、GoUの本体にすらも影響を与えることだろう。
シフォンの方へは人間相手には過剰とも言える威力のレーザーが向けられているが、その援護をしているほどの余裕は、キャロラインになかった。ここは、彼女の力を信じ、どうにか乗り切ってくれることを祈るしかない。

再び短戟へと赤色の魔力を灯し、切り込むキャロライン。回転の勢いを利用した連続の斬撃の後、大きく宙へと舞い上がった彼女は、敵の頭部を目掛けて獲物を振り下ろす。
思考回路が埋め込まれているであろう部位を破壊することによって、奴を機能停止に追い込むのが目的だ。だが、あの堅い装甲を破るには、相当な威力の攻撃が必要。
故に、彼女は危険を顧みずにGoUへ密着し、零距離から短戟に充填した魔力を球状に纏めて解き放つ。意識を完全に攻撃に割いているため、今のキャロラインはほぼ無防備な状態。
仮に、この連撃で相手が一切怯まなければ、負傷は避けられないだろう。リスクを避ける方法はいくらでもあるが、それでは奴を倒せない。これは、勝利を得るためにも、必ず通らなくてはいけない道だ。

>シフォン・ヴァンディール、中央防衛機構GoU

18時間前 No.1423

人間不信 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_3wf

【第三臣民処分場/檻/ティエラ・マージーサイド】

二人共、何も酷いことはしていない。それは確かなことだ。しかし、ティエラはそんな言葉を投げ掛けられても、セラとシビルナを信用することが出来ない。
彼女はまだ、相手が何もしていないのは、単に自分に近付ききれていないだけで、一度接近を許してしまえば、かつてそうしてきた者達と同じようなことをすると思い込んでいるのだ。
冷静になることが出来れば、下心を持って手を差し伸べよる者との違いを認識することも可能なのだろうが、防衛反応からも分かる通り、今のティエラにそれを要求するのは難しい。
とにかく、"敵"を排除しなければならないと、彼女は滅茶苦茶に破壊光線を撒き散らし続ける。それでもなお、二人が引く様子を見せないことに、ティエラは恐怖を抱くと共に、どこか今までの者とは違う雰囲気も、感じ取っていた。

どんな相手も、この力の前に恐怖し、逃げ去っていた。一度ティエラが己の力をひけらかせば、その途端に周囲の者は死を恐れ、一切近寄ろうとはしなくなっていたのだ。
しかし、二人は違う。このまま彼女との対話を続ければ、命を落としてしまうかも知れないというのに、暴虐的な攻撃の嵐の中でも、一歩一歩、歩み寄ろうとしてくる。
赤色の破壊光線が、シビルナを捉え続ける。彼女は魔族であるが故に、簡単に死ぬということはなく、その身を焼き焦がされながらも耐えてはいるが……実際に感じている痛みは、想像を絶するものだろう。
いくら強靭な体力を有していようとも、まともに喰らい続ければ無事では済まされない。だというのに、シビルナは、ティエラを助けたいという一心で、自らを犠牲にしようとしていた。

「……ぁ……………くぁ……………………ぁ………………ぅ……………」

己の放った攻撃によってボロボロになったシビルナを見て、ティエラは少なからず動揺を感じているようであった。相手を痛め付けることに対する罪悪感は、今なお失われていないのだろう。
勿論、いつもと同じような邪な存在であれば、彼女もこうはならなかったに違いない。シビルナとセラが、真正面から彼女と向き合っているからこそ、もたらされた結果だ。
未だに恐怖を完全に払拭することは出来ていないティエラだが、彼女が本当はどうしたいと思っているのかは、その動きを見れば分かるだろう。まず第一に、彼女はこれまでのように、防衛反応を起こしてはいない。
そして、小刻みに震えている足は、どうにかしてシビルナへの一歩を踏み出そうとしているように見える。彼女の本質である、心優しい性格が、"自分のために"傷付いた者を放っておくことを許さなかったのだろう。
自らの意志で、誰かに近付こうとするのは、一体いつ以来であっただろうか。決意が大きくなると共に、震えも大きくなる足。額に脂汗を滲ませながらも、ティエラは遂に足を上げる。
それは、ほんのちっぽけな、僅か数ミリの前進だ。ほぼ、上げた足をその場で下ろしているだけ。しかし、間違いなくその足は、上げなかった方の足よりも前にある。他人からすればちっぽけなそれも、ティエラからすれば、とてつもなく大きい、偉大なる一歩であった。
今にも倒れてしまいそうなシビルナの元に、走って駆け寄りたい。彼女の支えとなりたい。そんな思いを懐きながらも、身体は思うように動かない。それでも、ティエラは逃げない。今度こそ、自分と本心で向き合ってくれる者達の想いに、報いるため。

>セラ=ファエル、シビルナ・カストリス

18時間前 No.1424

麗人 @sable ★c1PKWYVyQN_tVR

【制御装置管理施設/制御室/シフォン・ヴァンディール】

 理想郷を守護せし鋼鉄。同盟軍を阻む最大かつ最後の障壁。
 その装甲は戦場のルールを書き換える禁断の護り。機械や凡人に対する能力者の絶対優位を脅かす。
 機体を覆い隠すドローンが、殺到する魔法の一切を掻き消してしまったのだ。

 流石のシフォンも驚愕の表情を浮かべる。魔術による遠距離戦を主とする彼女にとっては、致命的と言う他ないからだ。
 しかし突破する術はある。得物を手に突撃をかけるキャロラインの姿が、唯一残された希望となっていた。
 障壁を掻い潜り本体に肉薄して、初めて有効打を与え得る。非常に危険な試みとなるが、背に腹は代えられない。

 肩に搭載されたレーザーライフルが掃射をかける。その膨大な熱量は離れていても感じ取れるほどで、人体に与える影響など容易に想像がつく。
 これに対しシフォンは得意の魔術による防壁で対抗。分厚い氷で形成された、堅牢な護りを展開する。幾度も脅威を退けてきたからのこその威容。
 だが決着は呆気ないもので、衝突から間もなく氷壁は砕け散ってしまった。咄嗟の回避で直撃こそ避けられたが、掠めた熱線に片方の義足を損傷させられた。

 敵の火力が極めて高いことも一因ではあるが、やはり最大の原因はシフォン自身の魔力が減退していることだ。
 生身の身体を決して少ないとは言えない規模で失った彼女にとって、かつてのように強力無比な魔術を繰り出すことは困難を極める。
 それでも彼女は前進を試みた。全身に風を纏ってドローンの障壁をすり抜け、キャロライン同様敵の本体へ肉薄する。

「はあああああっ!」

 掛け声と共に魔力を絞り出し、一振りの巨大な氷刃を作り出す。凍てつく刀身は雷光を纏い、天をも衝き崩す巨戟と化した。
 キャロラインが危険を冒してまで連続攻撃を仕掛ける傍ら、重撃を浴びせて敵を怯ませることで、隙に付け入らせない狙いだ。
 身に余るそれを身体強化で必死に支え、敵の頭部目掛けて振り下ろす。一刀両断――この一撃を前に鋼鉄が断ち裂かれ、望む未来への道が拓けることを信じて。

>>中央防衛機構GoU、キャロライン・ガーネット

5時間前 No.1425
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