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【Fateオリ】廃神幻想時代『1984』【陣営戦闘】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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特異点『無名都市<1984>』 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_t5r



 無名の大地、ただ一つ在る白亜の近代都市。
 その誕生と共に、歴史の一端は歪み出す。
 本来存在しない時代、本来成立しない社会。
 かくて人類は、その弥終の罪を贖う。



 見よ、この末路を。これが、おまえたちの住もうた星の姿だ。
 遍く神々の系譜は途絶え、人々の自我は失われ、最果ての荒野にただ都市という生物だけが在る。
 本来実在しない筈の都市。一切の自由を奪い去り、ただ都市機能を維持し続けるためだけに運営される都市こそが、この特異点を作り上げた。

 何者も達しえぬ筈の特異点。誰の目に留まることなく消滅する剪定の星。
 呪われた者共が漂流し、悪意で繋ぎ止められる巨大な陥穽。
 おまえたちの喚び出された時代とは、そうした行き詰まりの未来のひとつであり。
 やがて泡沫の如く砕け散る運命にある。

 敢えてそこに名をつけるならば、この名前こそ相応しい。
 何者にも記録されず、故に何もかもが終末を迎える世界。
 称える神の名はなく、縋るべき神を見いだせず。
 一切の人間性を放棄させることで成り立つ時代。
 亜種特異点、<廃神幻想時代 1984>――と。


 だが気負う必要はない。嘆く必要もない。元より此処は行き詰まり、切り離されるだけの可能性に過ぎぬのだから。
 思慮など無用。自由など無用。
 ただ受け容れよ。ただ役割を果たし続けよ。
 受け継がれるものなどない。忘れてしまえば、何の意味もない。
 心は砕けて折れるもの。信仰はただ虚しい空想に過ぎず。
 なればこそ汝ら、ここに思慮は罪と識れ。


 しかし。
 人の理を受け持つものとして、そのイデオロギーに論駁するならば。
 受け継がれるものなどないと。
 忘れてしまえば何の意味などないと。
 敢えてそれを否定し、拒絶し、抗い続け。終幕する世の中でさえ新たな未来を勝ち取らんと欲するなら――
 その矜持を以て、明日の人理を証明してみせよ。滅びの泥濘に、生を掠め取ってみせよ。
 未だ見ぬ、人理の守護者たちよ――


【クリックありがとうございます。当スレはFateシリーズ(FGO要素強め)の二次創作スレとなります。興味のある方は是非、本記事をご閲覧戴きたく存じます】

【開始まで投稿はご遠慮ください】

メモ2018/03/01 00:37 : アサシン☆FYUOhnBVGmk @wakame3★2RykzmoSz4_t5r

【現在開催中のイベント】

『Prologue -明日の日は汝の為に非ず-』


 此処は路傍の特異点。

 此処は人理の行き詰まり。

 故に人理を守る最後のマスターは存在せず、故に千里眼の賢者からも見放され。

 故に、何者も知らぬ試みが水面下で進み続ける。

 発生した特異点1984、通称『都市』は徐々に勢力を拡大し、本来あった時代と大きく異なる展開を続けている。

 それに対抗するべくして結成されたレジスタンスの努力虚しく、都市の周辺には最早都市以外の文明圏は吸収され、残るはレジスタンスのみとなり果てる。

 しかし都市もレジスタンスも決定打を見いだせず、事態は硬直していた。


 そうした中で事態は急展する。

 都市攻略の情報を掴み、潜伏させていた斥候が帰還した際、前線拠点の一つの侵入経路が暴かれてしまったのだ。

 包囲するは廃神都市のサーヴァント、自由のキャスター麾下の十字軍騎士団、総勢五千の重装騎士。

 次々と破られる防衛ラインを前に、レジスタンス一同は補給線を守るために現前線基地を廃棄することを決定する。

 かくしてレジスタンスは撤退戦を展開。拠点の侵入経路に防御線を張り、撤退を試みる。


●組織方針

・レジスタンス・ブラザーフッド側

 主目的:別拠点へ撤退するため、前線拠点に侵入する都市の軍勢を足止めする。


・廃神都市側

 主目的:侵入する拠点を占拠し、一人でも多くのレジスタンス主力サーヴァント、ないしマスターを抹殺する。


【参加者現在位置】

〇都心部

・セントラルタワー


・真理省本部


…続きを読む(87行)

ページ: 1


 
 

断章・一 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_t5r

【断章】


 ――かつてそこには。天が二つあった。



 旧い記憶。モノクロの色彩。
 何度も同じ景色/世界を視る。
 黒い空。白い大地。ただ永劫の凪が広がる、黒白の天地。
 天の星空は渇き、既に亡い星の光に満ちており。
 地の星空は潤い、今に消える星の光に満ちており。
 その境界には、ただ何もない空漠が、延々と続いていた。


 その最果てが、己の生まれた故郷であり。
 恐らくは、それをただ求めているだけなのだろう。

9ヶ月前 No.1

序章開始 @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_t5r

【序章 Prologue -明日の日は汝の為に非ず-】

【前線拠点/管制室 / イマニュエル・ゴールドスタイン】

 反響する爆音が地下空洞に響き渡る。この拠点は地下を掘りぬいて作られたため、騒ぎが起きればすぐに随所で感知できる。
 既に拠点の一つ限りの正門は封鎖され、別の入口は破壊工作によって完全にふさがれた。元々隠れ潜むために築いた拠点であるが故、防衛設備は大したものが整っていない。
 よって門の場所が気付かれた時点で不利的状態となり、侵入を許した時点でもはや反撃に転じることは不可能となっていた。
 既に侵入の状況はのっぴきならないところまで差し迫っている。

 管制室から声が響く。それは機械音声でカモフラ―ジュされた男の声だ。
 彼の声は、このレジスタンスの人々に対してスピーカー越しに伝達される。

「狼狽えるな! 焦るな! ただ生き残ることを考えろ! こういう状況は、以前から想定されていたはずだ、思い出せ!
 我々の闘争は『生き残ること』だ! ただそこに在るだけで、敵に対する爪痕になる!」

 それは暗に、敵憎しと立ち向かうな、ということを意味していた。
 抵抗(レジスト)するとは、生き続けること。ただ抵抗する者がいる限り、それは必ず敵の傷となる。

「我々の敵は都市ではない! 我々は国家ではないからだ!
 我々の敵は圧政の構造である! 我々は個人であるからだ!
 ――我々は、『我々』という括りで纏めていい存在では断じてない! 己が己の願いを持ち、それを叶える手段としてここに集ったのだ!
 故に、己の命を何より尊べ!自己犠牲など考えるな!」

「今この時を以てこの前線拠点を廃棄する。全員の安全が確認できた時点で、この管制室を通じて爆破し、地下基地を崩落させる。非戦闘員は即刻退去、先導する戦闘員の支持に従い地上に脱出、第二拠点まで撤退せよ! 残った戦闘員はこの基地の備蓄をあるだけ使って迎え撃ち、時間を稼げ! どうせ棄てる基地だ、日頃の恨みをぶつけてやれ!
 安心しろ、殿には『英雄たち』がいる。彼らの強さはよく知っているだろう、非戦闘員の撤退が確認できた後には彼らに任せて順次撤退するように。間違っても玉砕なんぞと足しにもならない覚悟を決めるんじゃあないぞ!」

 そう檄を飛ばしながら、イマニュエルは手元の粗製のスイッチに目を落とす。この指一つでこの陣地は心臓部から爆破され、連鎖的にこの基地は地に沈む。
 戦闘さえ終われば、これを起動することで侵入した敵兵諸共、この基地で蓄えたすべての情報が消滅するという寸法だ。
 非戦闘員、戦闘員の撤退さえ終われば、後は霊体化できるサーヴァントたちが撤退するだけでいい。彼らなら土石流に飲まれることなく地上を目指すことができるだろう。
 問題は、敵の侵入をどの程度まで抑えられるかだ。牽制している以上、あまり深入りはすまいが……

「済まない、だが少しの間だけ持たせてくれよ――!」

 小さく、誰にも聞こえない声でそう呟き、イマニュエルも撤退のための準備を開始する。
 自分の役割は戦闘員が脱出に成功したのち、サーヴァントたちが撤退できるよう援護を回すこと。だが戦闘員が退去を開始できるまで、まだまだ時間がかかる。
 それまで耐えられるかは各サーヴァントたちの奮闘にかかっている。
 祈るように鉄兜越しに眼を閉じて、イマニュエルは己の仕事にとりかかった。
>ALL


【前線拠点/小渓谷 /アサシン(チェーザレ・ボルジア)】


「さて」

 都市側、十字軍の軍事的指揮を行うのは、都市のサーヴァントの一人、アサシン。男装の麗人は帽子の庇を軽くつまみながら、状況を俯瞰する。
 敵はもはや風前の灯火、内部に侵入を許した時点で敵陣の崩壊は秒読みであった。
 残る反撃の手といえば焦土作戦をとり、こちらの手勢を削りながら退路を守り撤退することだろう。
 彼らの退路を、こちらは完全に把握しているわけではない。追撃しきるのは難しく、下手に深く侵入すればこちらが包囲を受けかねない。
 最悪、拠点ごと爆破して軍団を地下に埋めることさえしてくるはずだ。そうなると、この五千の軍勢を諸共失うこととなる。
 だが……

「突撃隊百名、侵入口からの突撃を開始、敵を炙り出せ。
 前衛五百名は突撃隊の援護に回れ。
 残る後衛は鶴翼を組んで待機。サーヴァントが出てきた場合の対処は先に告げた通りだ。奴らは長期戦を厭う、魔力計で此方に連絡した後に足止めしろ。
 焦ることはない、既にこの方での趨勢は決している。真綿で首を締めるよう、時間をかけて殺していけ」

 深追いは禁物だ。されど攻めねば勝てぬ。敵が籠城したならば兵糧攻めが基本だが、退路を断てないのであれば待っていたとて意味がない。
 目的はあくまで拠点の制圧である。此処を抑えることで都市外周20キロの安全は確保される。他にこの近辺に基地があれば話は別だが、元々地底に繋がる場所はそう多くない。
 確実に安全を確保するには、相手からこの土地を放棄させるよう行動をとらせるのが一番だ。そのために最小限の犠牲で敵にこの土地を放棄させる。
 外征騎士五千のうち、使用するのはあくまで百騎。予備の四百を数えれば、五百まで。残る兵士は敵に対する威圧だ。補給線は確保できているため、五千程度なら十分に賄える。


「これは我ら局長、『猊下』の命である。
 『為すべきことを、為すがいい』」

 直後、響き渡る総勢五千もの騎士たちのウォークライ。人間を抑圧し、圧搾し、その摩擦をただ敵にだけ向けるよう『設計』された、ダブルシンクの兵士たち。
 魔女狩りの群衆のごとき暴力性と、近代軍隊のごとき統率力を兼ね備えた兵士だ。彼らは死兵もかくやとばかりの狂気的闘志を以て、敵陣を撃滅するだろう。
 この轟然と響くウォークライは、敵に対する威嚇であり、今にやってくる英霊たちに対する牽制でもある。
 この状況を打破するには、まさしく一騎当千の英雄が必要となろう。何者が出てくるか、彼らレジスタンスの秘蔵の兵器というモノを、ここで見極めさせてもらう。
>ALL

【では、これよりスレを開始いたします】

9ヶ月前 No.2

黄巾 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【開始おめでとうございます】

【前線拠点/入り口ハッチ/キャスター(張角)】

>all

「然り、この場は我らに任せるがいい」

 スピーカーを通して飛ばされる檄に次ぐように、撤退する構成員たちに代わるように、『英雄』の一角は顕れた。黄衣を翻し、跫は高々と。黄衣のキャスター、張角は最前線へ立つ。

「巨悪に叛く同志をここで果てさせはせん! 何としてでも撤退の時間を稼ぐぞ!」

 同時、宝具の限定開放に伴って数多の兵が召喚される。
 撤退する戦闘員と立ち代わり、その倍以上の数で陣形を展開。武装は弓に槍と旧時代的だが、それ自体が宝具の一部である兵たちのものだ。拮抗するには十分……と言いたいところだが、やはり数で勝って練度で劣るのか、入り口ハッチの状況は然して変わらない。
 今はどうにか押し留めているが、じりじりと焼けつくような緩やかさで騎士の侵攻は進んでいる。

「く……やはり足りないか」

 呟き、張角は間口の奥を睨んだ。兵力も魔力も不十分に過ぎる。かと言って真名解放するにはこの拠点は狭すぎ、此方から打って出られるような状況でもない。
 入り口も既に囲まれているようだ。やはり時間稼ぎが唯一策。しかし、今ここにいるのは雑兵だけではない。

「天の怒りを受けるがいい……!」

 張角が何言か唱えたのち手を振りかざす。すると轟風が現れ、騎士たちを押し返した。逆巻く風はそれだけに留まらず、牛刀のように首を刎ね、万力のように圧殺せしめる。
 これなるは天の法、太平要術が一。南華老仙より授かりし張角の天術が、今ひとときの追い風をレジスタンスに起こしていた。

9ヶ月前 No.3

林檎ぉ @lljin ★ujL4OEA3xp_8gk

【前線拠点/入り口ハッチ/劉秀】

「すいません!! ちょっと通りますよ!!」

流星のような速度で突如現れたそれは、瞬く間に十字軍の騎士たちを切り伏せた。
重厚な鎧で武装した騎士とは対照的に、肩や胸など必要最小限の青銅鎧を付けた少年。政をする役人のようなシンプルだが鮮やかな色合いの赤の衣を着た彼は、骨砕く騎士の剣戟をまるで水の中の魚のようにすり抜けて鎧の隙間に刃を通していく。

「お怪我はありませんか? キャスター殿」

少年、言うまでもなく彼もサーヴァントだ。名を劉秀といい中華屈指の名君にして軍神。通常の聖杯戦争ならば間違いなくトップサーヴァントと呼ばれる実力の持ち主だが、魔力が不十分な現在、本来の実力を振るえていない状況にいる。

「宝具さえ使えれば物の数ではないのですが…… どうも僕の宝具は燃費が良くないようで…… 魔力放出さえ躊躇させられてしまいます」

非戦闘員の退避を確認してから急いで前線に向かう途中。何回か魔力放出を使用してしまった。
現在の魔力では真名開放はとてもできない。

「その兵士……キャスター殿の使い魔の方たちでしょうか? 僕の指揮で動かす事が出来れば、押し返す事ぐらいなら出来るかもしれません」

レジスタンスの仲間と言えど、互いの真名や能力を全て把握しあっている訳では無い。
自分が寡兵で大軍を負かす事に特化している事も、味方の士気を高められるカリスマスキル持ちな事も相手は知っている事か解らない。
だが、説明している暇も無く簡潔に要件のみを伝える。

>張角、ALL

9ヶ月前 No.4

戦国ランサー @vtyjf ★GFYUJuZycW_t5r

【本スレ開始おめでとうございます】


【前線基地/通路/ランサー(本多忠勝)】

>>ALL

細く薄暗い通路の中を十数の足音が駆け抜ける。一糸乱れず、統率されたそれは足音の主達の練度の高さを如実に示している。あるいは、この群れを率いる主の統率力の高さに依るものか。

敵陣の只中を進んでいるというのに恐怖はなく、かと言って興奮に上せているというわけでもない。滞りなく通路を順次攻略していく様は絡繰りよりも絡繰りらしい。

そんなよく出来た兵士たちの足音が、不意に消える。

通路を、銀の蜻蛉が行き――ごとり、と人数分の重いものが落ちた音。遅れて、幾つかの人間が倒れる音が続く。否、それはもう既に人間だったモノが倒れる音だ。

「島津の馬鹿なら、正面突破で撤退するんだろうが……」

振り抜いた銀には赤の一滴も残してはいない。兵士たちに人間らしい心があったのがは不明だが、少なくとも自分の首が落ちたことには後から気づいただろう。弱者を嬲る趣味はないが、戦は戦。入り口のハッチ付近で始まった戦闘の音を遠くに聞きながら、既に入り込んでいる兵士たちの首を狩り落としていく。

「はてさて、こいつらだけなら俺たちで十分保つが――向こうの将が入り込んでるとなると厄介だな」

言葉とは裏腹に、その鎧武者の口元は半月を描く。撤退するものたちを守るため、この通路より奥に通さぬように殿を買って出たはいいが、雑兵相手では些か拍子抜けというものだ。

強者が来ないことに越したことはない、越したことはないが敵が奥を目指す以上この通路は避けては通れぬ道だ――ならば、ここで待てば誰かしらが来るかもしれない。

戦場を飛ぶは銀の蜻蛉、それを駆るは鹿角の鎧武者。彼が彼である限り、何者であろうともこの通路を容易く通り抜けることは出来ないだろう。

――手に蜻蛉、頭の角の凄まじき。鬼か人か、しかとわからぬ兜なり。

9ヶ月前 No.5

ジャック @class ★Android=42zyboh5vZ

【死骨の丘→小渓谷・崖上/ジャック・オ・ランタン】

何処を見ても骨、骨、骨。そう言いたくなるような骨ばかりが打ち捨てられた、その断崖に立っているのは一人のカボチャ頭。なんとも、この場に似つかわしくないとすら思えるほどのおかしな姿であるにも関わらず、その姿から感じ取れる気配というものは、その場によく似合う亡霊のようである。
亡霊が如し、黒き外套を纏ったカボチャ頭は嘲るように頭蓋骨ともおぼしきそれを蹴飛ばしてはつまらなそうに彫られただけの目を変形させて半目のように、口角だって、それに応じて自然と下がる。

「ったく……しけてんなぁ。新しい死体はねぇみたいだしよー?これじゃあ、お腹ぺこぺこだっての。今日も収穫祭じゃねーの?」

妖しい雰囲気を漂わせる彼の目の中に潜むそれと同じ蒼炎を宿らせたランタンを片手に、かつては人であったのであろうその亡骸の地面をガチャガチャと踏み鳴らしてあからさまに残念そうな表情をカボチャ頭で器用にも浮かべ、ため息まで吐いては、文句を一人言のように呟く。

貯蓄した魔力は既に半分程と、とてもじゃないが此処で何ヵ月も自由に魔力を使って暮らせる程は無い。というか、全力を出したら最後……といった感じですらある。ただ、悪戯好きなカボチャ頭には、それがどれだけ退屈を募らせるか、それを危惧してはため息をつく。なんとも、はた迷惑な危惧である。
と、そんな危惧をした所で突然どこかから、聞こえる膨大な声。……ああ、なんだってんだ、まーた戦争か何かですかい?あー、やだやだ。戦争なんてしてたら、収穫祭どころじゃねぇじゃねぇかよ!ったく。ただでさえ、収穫無くて萎えてんのによぉ?

「でもなぁ、俺の現界には死体。必要不可欠だしなぁ!?仕方ねぇよな!よし、野次馬だぁ!」

先程までの憂いは何処へやら、言葉の割りには高ぶったそのテンションのままに、黒い靄が彼を覆ってゆく。そして、それが晴れた頃には、彼は其処に居ない。要は霊体化しただけなのだが。万が一、これまでの姿を見ていた者が居たとしても彼の事は亡霊としてしか思い出せないだろう。……いや、事実そうなのだが。
余程の探知能力を持つ者が居なければ、誰にも気付かれる事の無い彼はサーヴァントの霊体化を活かしてあらゆる道をショートカットしながら、浮かれ足で戦場に赴く。そして音のする方へ、彼が辿り着いてみれば、始まっていた場合によっては世の地獄とも評される事があるらしい抗争の真っ只中らしい。……いや、俺自身は地獄には行けないんだけどな?どうやら、ここは小渓谷の奥のレジスタなんちゃらの基地って感じか?んで、俺の居る場所は……レジスタなんたらの基地の入り口のを崖上から見下ろしてるって感じか。

しかし、どうにも様子がおかしい。真っ当な抗争なら既にかち合っててもおかしくない……と言うか、そうだな。死人が少ない。そりゃ、微々たる魂の残滓は回収し始めてはいるが……ああ、なーるほど。攻められた方が早々に逃げる判断してるみたいだな。じゃなきゃ、この量はおかしい。

「まっ、新鮮な死なら50もありゃ、大丈夫だろ。とはいえ、長引いて貰わなきゃ困るんだよなー?」

徐々に彼の宝具へ入り始めた魂を感じれば、ニタリと口角を上げた。煌々と燃え盛る彼の瞳はどっちがどっちだとか、そういった区別を付ける訳もなく、ただ獲物を待望する獣に近いそれだった。
サーヴァントの気配は……攻め手に回ってる方には居ねぇな、俺と同類が居るかも知れねーけど。だとしたら、……既に内部に侵入してんだろ。いや、気配遮断能力が低いからって、後ろに居る可能性はあるけどよ?

そんで、防衛もとい逃走側には一騎。……いや、まだ居るな。ただ、分かりやすく力を発揮してんのが見える。風を操ってんのか……あるいは、気功だとかそう言うもんかもしれねぇけど。もしくは、剣圧だけで、とかもあり得るのか。サーヴァントっておっそろしー。……お、もう一騎出てきやがったか。ん?あれは……。

「子供!……へぇ、子供、子供なぁ……。」

子供好きな彼は一瞬の動揺を見せた後にニタリ、と笑う。だが、サーヴァントが相手に居ない以上、彼も手を出すつもりは無い。……まぁ、あの子供がどうにも雲行きが怪しくなったら、拐うけどな。複数のサーヴァント相手に勝ちかける相手とやれる訳ねーし。
霊体化を解いて、渓谷の崖上からちょっとした岩の影で見物がてらに休む事にした。ちょっと前のテンションは既に何処へやら。クールダウンしきった彼は既に戦意を失っていた。彼は、魔力が貯められれば、それで構わないという方針が基軸らしい。

>all

9ヶ月前 No.6

アサシン @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_t5r

【前線拠点/小渓谷/アサシン(チェーザレ・ボルジア)】
【前線基地/小渓谷→入口ハッチ/十字軍】

「――来たか」

 アサシンの凛々しい目つきが、剣の如く冴え渡る。その視線の先には、次々と現れる兵を集わせる黄巾の者と、次いで現れた軽装の少年がいる。
 レジスタンスとの交戦は幾度となく行われてきたが、彼らお抱えのサーヴァントと対峙するのはこれが初めてとなる。
 彼女はさながら複眼で獲物を観察する節足動物のように、具に相手の様子をうかがう。

「観たことのない術だ。西洋の体系とは異なる式……呪術の類か。
 片やキャスター、片やセイバーという布陣と見た」

 身なりからして双方共にアジア圏。己が枢機卿権限の通じるとは思えない。初めからアテにはしていないが、己自らが直接打って出るべき相手ではなかろう。
 雲霞のごとき騎士の総軍はいまだ尽きぬ。彼らが相手取る『十字軍(クルセイダー)』とは何も単なる雑魚というわけではない。
 ダブルシンクによる強靭な精神力はもちろん、遠征に参じた十字軍そのすべてに『自由のキャスター』の宝具の効力が働いている。
 剣、槍、弓、戦槌。それら手にした武具すべては洗礼を施され、宝具の影響を受けることで英霊に対しても十分有効打たりうる概念強度を有している。
 まさしく聖絶の軍団、嘗て聖地を求めて根絶やしにし続けた狂信の軍勢である。

 烈風の如く吹きすさぶ颶風に対しても。
 疾風の如く斬り抜ける剣戟に対しても。
 進撃は止まらず、滞ることなく進行する。
 首をはねられた騎士など顧みず踏み越え、切り伏せられた騎士は急所を割かれて尚動き続け。
 直接行動不能になったもの以外は、すばやく陣形を立て直している。
 さながら一個の生物、それを構築する細胞のように。
 いかな黄巾軍数十万の手勢といえど、この場においての趨勢ははっきりしていた。
 たとえ兵力で勝っても、地形が狭ければ意味がない。この場合においては装備と練度において上をいく十字軍が機先を制するのは、ごく当たり前のことであったろう。
 故、この場では合戦向けの物量戦より高度な指揮能力が必要となるだろう。

「突撃隊、前衛隊、突撃準備」

 下知と同時に、ズラリと城壁のように構えられる大盾の軍が、一直線に道を開けた。
 直後、その道から突撃(チャージ)するのは、馬まで重装備に身を包んだカタフラクティの重装騎兵たち。まるでバリスタが銃口を向けるように、それぞれ一本ずつ長槍(ランス)が矛先を向け突撃を開始する。
 同時に盾持ちに守られた後衛の騎士四百人が、道を開けるべくして一斉に大弓を射出。手槍と見まがう大柄な矢が、軽装備の黄巾軍を蹴散らして騎兵の進む道を作っていく。
 騎兵たちが狙うのは、もはや語るまでもなく英霊二騎。たとえ英霊を仕留められずとも、その勢いに任せて進撃すれば侵入を許すこととなる。いかに武勇に優れた英傑とて、単純な力と技量で対応できる域を超えている。
 故にそれは、彼らの隠し手を暴き出す一手に過ぎなかった。待ち受ける英雄二人が、如何なる技を隠し持つのかを揺さぶる為の、誘い手に他ならなかった。
>張角、劉秀

9ヶ月前 No.7

黄巾 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV


【前線拠点/入り口ハッチ/キャスター(張角)】

>劉秀、チェーザレ

「ええい何故止まらんッ! おぞましい悪鬼どもめ……!」

 悲鳴のように吐き捨て、再び風を撃ちつける。
 なおも騎士の進撃は止まらず、滞ることもない。仲間を討たれて奮起することもなければ、恐怖することもない。これでは屍のほうがまだしも生命的だ。

 既に瓦解の兆しを見せ始めている前線に、「彼」は突如として現れた。
 剣戟は流星の如く。翻る深紅は焔のように。不十分と不利を背負った上でなお剣技の冴えは変わらず、ともすれば見惚れるほどの手練で騎士を斬り伏せながら。
 頼もしい味方の到着に、しかし張角はじとりと眼差しを向ける。

「貴君、わざわざ愚痴を言いに来たわけではあるまいな」

 敵意さえ感じられる態度は、彼女にも理由がわからない。原因不明の感情に苛立ち、それを抑えきれない己により苛立ち、それらが募ってセイバーに向けられている。
 その敵意は本能からくるものといっていい。後漢の始まりを築いた男と、後漢の終わりを招いた女。相容れないのは当然の帰結で、たとえ互いに真名を明かしていなかったとしても、彼女はこうして何某かを嗅ぎ取っている。
 しかし運命とは異なもので、そんな二人が今は一つの志のもとに戦う仲間同士。邪険にはできても剣を向けるわけにはいかず、こうして共に戦っているのだが。

「失敬なっ! 我が同志をしもべ風情と同列に語るなど……! ましてどこの馬の骨とも知れぬ者に託すなど有り得――」

 まくし立てる張角の言葉は敵の侵攻によって遮られた。大槍の突撃連隊と大矢の一斉射出によって、黄巾兵たちが見る間に蹴散らされていく。ハッチを埋めんばかりだった兵士たちの列は崩れだし、中には命令を待たずして後方へ撤退しだす者も出てきている。

「……っ、今はそうも言っていられないか」

 やはり数だけの雑兵では統率の取れた騎士たちを足止めすることも難しい。取り柄の人海戦術も今は地形に封じられている。だがこの紅いセイバーなら……彼の力があれば、今暫く戦線を維持できるだろう。
 拳を固め、唇を噛む。逡巡はほんの数瞬だった。何のために戦っているかを自問し、自答し、己に言い聞かせる。今度こそ世人を救うのだと決めたのなら、個人の好悪からくる迷いを持つべきではないと気付かないまま。

「……いいだろう、指揮は委ねた。私は後方で術式を組む。何としてでもこれ以上の侵入は止めなくては」

9ヶ月前 No.8

アサシン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【通路/アサシン(塚原卜伝)】

 城攻めには、凡そ3倍の戦力が要る。東洋西方問わぬ戦術の基本だ。
 押っ取り刀で駆けつけた軍勢より、万全の態勢で迎え撃つ軍の方が強い。
 慌てて直前で準備したヤツよりも、事前に準備を整えていた方が不測の事態が少ない―――とまあ、そんな話だ。
 そこに当て嵌めて数えてみるならばどうか、我らが廃神都市より引き摺り出された軍の偉容は凡そ抵抗勢力の3倍を越える。加えて城としての機能も果たさない前線拠点のうち一つなど、有り体に言って蟻を踏み潰すように容易い。

「と、行けば簡単なんだがね」

 そう上手くも行かない。勝ち戦であるが、瞬殺と行かないのには理由が存在した。
 血の臭いを辿る。戦いの音を辿りながら、そいつは薄く笑みを浮かべて歩いていく。

 さて。理由というが、答えはひとつだ。
 そんな常識で測れない存在がいる。幾千幾万の軍勢を消し飛ばし、万里を駆け、天上天下に無双を誇る超人どもがいる。それは廃神陣営、また抵抗勢力陣営の双方においてその姿を現した、『英霊』と呼ばれカテゴライズされた存在だ。
 人理の礎として座に召し上げられたその存在は、凡そ一般の兵士どもとは訳が違う。
 単純な数の格差など、先ずこの時点で役に立つまい。紙の兵を1万と並べたところで、紙の兵を動かすという荒唐無稽な真似は常人には出来はしない。英霊にとって只人とはこの紙兵、役に立たぬも同然の代物だ。


  ………もちろん、例外がある。
  、  、 ・・・・・・・・・・・・・・
     その紙の兵を動かす荒唐無稽な真似が出来るヤツもいるのが、英霊だ。


 セクタB、自由と隷属のダブルシンクを掲げるキャスターによって強化された十字軍。
 それを率いる暗殺者のサーヴァントは、さながら聖地への進軍を彷彿とさせる。
 もっとも実態はそんな生易しいものではない。
 戦線に出ることが出来ない/出る気がないキャスターの代わりとして指揮を振るうアサシンとサーヴァントとその軍勢は含めてすべて走狗だ。大戦力であるが、兵士など幾らでも補充できる。サーヴァントと数によって均衡できる神秘を備えた十字騎士たちは、常識で測れぬ英霊が居てなお、決定的な戦力差を作り出していたわけだ。


 ―――と、長々と語ったわけだが。

    じつを言うと、おれにとってそういう話は兎に角どうでもいい。

 所詮泡沫、所詮幻想。刀に意味など不要(あら)ず。
 余計な思考なんぞはこねくり回す意味がない。ただ、戦いに来たのだ。


「大将首かい?」


 そいつはけたけたと笑う悪童だった。
 傾奇者とも侍とも取れる少年は、紛れもなく一本の刀を手にした剣客だった。

 前線基地の迎撃に出ていた通路の中央に仁王立ちする、鹿角の鎧武者。
 凡そ戦場にて無双を誇るその男を、見定めるようなまなざしで、真っ向から相対していた。

 ………そも、この英霊―――ランサーと、その悪童の相性は悪い。
 あからさまに千日手となる相手だ。であるならば、わざわざ突っかける意味などない。
 避けて通れぬ道とはいえ。
 彼と戦うならばそれこそ、十字軍の指揮者のような輩こそが適任だろう。

 ただ。
 この英霊は最初から考えることの意味を放棄している。
 ・・・・・
 無知こそ力というわけだ。刀を振るう意味の先を考慮せず、ただ斬れるならばなんでも良かった。
 追い求めた先がなんだろうと別にどうでも良かった。他のことなど知らぬ。
 そんなものは、後で勝手に凡人どもが口喧しく喋るだろう。
 そこで虫が何匹死んでいようが、虫を何匹殺そうが、考えること自体が愚かしい。


「違ってもいいや。人生短いんだ、有意義な相手だけにしないと色々鈍っちまう」
「斬らせてくれよ、なあ」

     「―――おれにあんたを殺させてくれよ、鬼武者よ」


 つまり、それとなく斬り甲斐がありそうだから狙いを付けただけだ。
 語りもそこそこ、前口上の必要性などなし。
 お前はただの虫なのか、それとも見込み通りなのかと、剣鬼はその刃を躊躇うことなく振るう。
 相対の直後に煌いた刃は、その勇壮なる鎧武者の首へと狙いを定めた。
 刃を水平に寝かせ、疾駆と共に斬り込む突きと同時に振り払う一撃必殺狙いだ。最短距離と最短効率をすぐさま見抜いて放たれた刃は、その英霊の対処次第では真価さえも発揮させず首を飛ばしてみせるだろう。それを断言させるだけの、悍ましいほどの殺意が乗っている。
 けたけたと笑いながらも発露する殺意に、攻撃の意思が完全に隠蔽されている。その気があるのかないのかさえ分からぬが、容易く刃を見切らせない、純粋にして亜流の“宗和の心得”だ。

 この英霊が元から“そう”なのか、廃神都市の影響により成るものかは、さておき。

 ―――言葉を話しておきながら、その英霊には一切意思の疎通を取る気がない。
    彼の存在を例えるならば、陳腐であるが、人の皮を被った獣だ。

     これなるは無双にして一切完勝の塵殺剣豪。
     されども剣士の英霊に過ぎぬ。人を殺す道具を効率よく扱うもの。

  抵抗者たちを斬り殺す人斬り包丁。
  もう一人のアサシン。剣聖とうたわれた者の、在りし日のかたちである。

>ランサー


【遅れました! 本編開始おめでとうございます】

9ヶ月前 No.9

林檎ぉ @lljin ★ujL4OEA3xp_8gk

【前線拠点/入り口ハッチ/セイバー (劉秀)】

「あぁ! すいません! キャスター殿のお気持ちも考えず出過ぎた真似を――」

謝る為に敵に背を向けたその瞬間を見逃す程甘くない。しかしそれでいてなお、背後に目があるかのように身を躱し剣を打つ。

彼女の心も生前の境遇も知る由も無いが、自分に対して何故か敵意にも近い何かを向けている事は解る。
同じ中華の様相を身に纏っているが、黄色の衣を纏った導師もそれに集う民兵も聞いた事が無い。
自分以降の皇帝たちによって滅ぼされた存在か、或いは遠く先の未来で後漢を滅ぼす存在か知らないが、劉秀は彼女を嫌う事は無かった。
後漢が何かしたのなら全ての責任は漢を復興させた自分が背負おう。だが今はやるべきことがある。

「……いいのですか? ありがとうございます。それでは――」

黄巾の兵士の集まりの前に飛び出すと剣を敵陣に向け、魔力を放出させる。
光線のような大層な物は出せないが、空気が破裂したような衝撃の波が前面の盾持ち達を押し込み、矢の勢いを殺す。

「僕に続け! 黄巾の義賊たち!」
「僕の背から前に出ず、僕の事は塀か何かと考えて槍の間合いで戦うように!」
「余儀なく塀の無い所で戦う時は集を組み数の有利だけは死守する事!」
「死を恐れぬ事が奴らの武器なら、こちらの武器は死の恐怖を知っているという事!」
「一人と刺し違える事を厭わない程度の奴らに、一人で多数を押し返し生存する為に戦う皆の武を見せつけてやりましょう!!」

つい先ほどまで弱弱しく、頼りない声色だった剣士は通路の端々まで届くような檄を飛ばし兵を立ち直させる。
魔力放出を一回使用しただけに、それ以上の見返りは必要だ。
黄巾兵を指揮し、今まで押されていた前線を拮抗させる。

>張角、チェーザレ

9ヶ月前 No.10

戦国ランサー @vtyjf ★GFYUJuZycW_Swk

【前線基地/通路/ランサー(本多忠勝)】

>>アサシン(塚原卜伝)

通路が戦場へと変わる。空気が物理的な粘度を持ったかのように肌へ纏わり付く。喉がひりつき、すぐ背中に死の足音の気配がする――懐かしい、戦の気配だ。

「よう、坊主――殺気(そんなモン)向けられたら、俺も我慢できねぇじゃねぇか」

緩むのではなく、引き攣るように口角が上がる。円弧を描いたそれは、獣を思わせる笑みだ。相対の名乗りなど不要、出会えば斬り合う、剣士としての性。人を斬るという概念が具現化したような、剥き出しの刃の如き殺意。
そんなものを丸ごとぶつけられては、血が滾るのを抑えられるはずもない。

「――っと」

――疾い
最短、最速、最適効率、極限まで不必要な部分を削ぎ落とした一刀。人が到達し得るその極地、その一端。只人であれば何も知覚することすら出来なかっただろう。凡百の英霊であっても、その一撃で勝負は決まっていただろう。

だが、

「いきなり首とは、素直だねぇ」

どう避け、どう捌くか、そんな思考をしていてはこの一刀には間に合わない。だからこそ、忠勝は己の身体の思うがままに任せた。
死線を超える術は身体が知っている。考えるまでもなく、生き残るために、勝つために、最適な行動を身体が選び取る。

槍ではこの最速の一刀に間に合わない。故に、片手を槍の手から手放し、向かう刃の腹に対して拳で勝ちあげるように振り上げにいく。
いった、確かな手応え。鉄と鉄が噛み合うような耳障りな音と、火花が散る。
水平に振るわれる刃に対し、片手の篭手で弾くように受け長しながら身を屈めように全身を沈める。頭上を通り抜けていく銀閃を見送ることなく、そのまま後ろに跳ぶ。

生涯かけて磨かれた直感と見切り。近未来すら見通すほどに積み上げられた膨大な戦闘経験を以て可能とする絶技、白刃流し。

「ったく、怖いねぇ。俺じゃなかったら首が落ちてるぜ」

後方、通路の奥へと跳びながら、言葉とともに槍を振るう。銀閃が瞬き、都合五つの神速が人斬り包丁へと吸い込まれるように放たれる。狙いは違わず眉間、肝臓、腎臓、喉仏、心の臓、全てが一撃で致命へと届く急所狙い。

絶対切断の力を持つ五つの閃撃が、人斬り包丁の命をも落とさんと放たれる。

9ヶ月前 No.11

ジャック @class ★Android=42zyboh5vZ

【小渓谷・崖上→前線拠点・入り口ハッチ/ジャック・オ・ランタン】

さっきから、押したり押し返したり……長引きそうでおおいに結構。にしても、相手のあれは十字軍って奴か。初めて見たが、駄目だな。俺は大嫌いだ。別に聖なる物が苦手って訳ではない。むしろ、他の死霊どもに比べたら利用した逸話がある分、得意な方だ。それよりも、それよりも、それよりも、だ!なんだありゃ?死を恐れず!死を怖がらず!死を省みず!死を弔わねぇだ!?あぁ!腸が煮えくり返りそうだ!死があるからこその俺を無視してるも同然……否、俺を最初から無かった事にしてるみてぇじゃねぇか。それは実に、不愉快だ!

いかにも不機嫌そうに口角を下げて目も若干の苛立ちを感じさせる程に鋭くなった。彼はその頭を外套のフードを目深に被って覆い隠して黒い靄が彼の顔を隠した。そして、ランタンを外套の中に仕舞う。少し前と同様に黒い靄が彼を覆うと、再びの霊体化を行う。

「よぉ、既に死に伏した俺が来たぜ!死を恐れねぇ、愚か者を笑いにな!」

とある十字軍の兵士の兜ごしの頭の上に突如として現れた仄かに青白く光を発する黒い外套に手先と足先以外を包まれた、やたらと頭でっかちなその男はそのまま、足に全体重を置きながら、後方へ向けて駆け出す。人一人の重さに加えて駆け出す時に加えられた力に耐えきれる筈もなく、力を込められた時点で当然へし折れてしまった。

突然の出現、兵士はそれに対応し始めたのか、彼へ向けて剣や槍を振りかざす。しかし、見た目にそぐわぬ程の彼の反応速度と俊敏さには及ばず、兵士の頭を次々と代わる代わる足場にして、時には大道芸のようにくるりと跳ねて着地と同時に再び跳ねる。その着地の衝撃たるや人の首には過ぎたる負荷だろう。ある時には、槍ですら足場に使い、剣や戦斧は味方へと誘導される。当たりさえすれば、威力を発揮するのであろう数多の武器も彼をまともに捉えられないのでは意味がない。

相手がただの雑兵でなくとも、元より彼の速さはサーヴァント内でも準トップクラス位ではある。……まぁ、速さを重視している分、先程の兵士のように体重を掛けられて首を折られた者は少ないが、それでも前線が若干の混乱を見せる事には違いない。前線でそんな事をしているので、レジスタンス側の黄巾軍もちらほら巻き込んでいた。殺してこそはいなかったが、敵味方の区別をはっきりと付ける様子は無いらしい。

「やっぱ、数が多いな。まだ全然マシだがなっ、と!」

大道芸の如く、馬鹿にするように他人の頭を器用にも跳び渡った彼も流石に数に圧されてきたか、あるいは勝手に頭を使った黄巾軍にも少し狙われているせいか、着地に手を使って足技で加えられた攻撃を解決するなどと、先程よりも動きに余裕が無くなり始めている。俺ってば、基本的に戦闘は専門外だもんなぁ……あー、魔力を消費する訳にもいかねぇってのに、なーんでうっかり感情任せに飛び込んだろ。この戦い方はあくまで逃げる時に敵の攻撃を回避する技術を応用してるだけだしな……せめて、ダガーでもありゃ良いんだが。と言うか、1対多だと、俺の宝具があんまり使えねーんだよなぁ。ん?あぁ……そろそろ貯まってきたか。ってーと、もう少し時間が経ったら使えるか。それまでは逃げ回らねーとな。

「あー、レジなんたらども!こいつらにムカついたから、ちょっとばかし付き合わせろ!要らねぇんだろうけど、諦めろや!なんせ、お前らの味方って訳でもねぇからな!」

怒りに任せてもそれが長続きしない彼は最後にレジスタンスの方面を向いて軽々と宙返りしながら、そう告げて再度、十字軍の頭に着地する。そして、はぁ、とクールダウンと共に深いため息をつきながら、黄巾軍も十字軍も区別せず、戦場にひしめく頭どもを渡りつつ、少しずつ捻り潰す。黒い外套をはためかせ、体重が無いかのような忙しない大道芸は遠目に見れば、まさしく幽霊と思えるだろう。しかし、それは直近の足場に使われている彼等が一番感じているのかもしれない。「いくら動いても顔が見えない」だとか、「体格の割に動きが軽すぎる」だとか、そんなちんけな理由ではない。たとえ、彼がただそこに存在していただけでも感じてしまうような、もっと本能的な部分。なにせ、彼はまさしくその幽霊であったのだから。
……そんな、本能的な部分に対する恐怖は「幽霊」という概念があって初めて成立する。つまり、十字軍はそのような事を感じないのだろう。―――だからこそ、収穫祭の王たる彼は憤りを感じる。なんと、哀れな人間だろうか!

>張角、劉秀、チェーザレ・ボルジア

9ヶ月前 No.12

アサシン @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_t5r

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9ヶ月前 No.13

戦国ランサー @vtyjf ★GFYUJuZycW_Swk

【前線拠点/入り口ハッチ/闘争のランサー】

>>張角、劉秀、チェーザレ・ボルジア、ジャック・オ・ランタン

ソレは、人々の願いから産まれた存在だった。
人の信ずるものとして、人に忘れられたもの達を取り込み、人の都合のいいものとして、人のために生まれ落ちた存在だった。

粗悪品にして劣化品、本当のソレには程遠い、ただの力の一欠片。人々の、国民の平和を望む願いが呼び出した幻想のカタチ。

平和を、平穏を、己のために、隣人のために、誰かのために。純粋な、尊い願いであったからこそ、無垢な、優しい願いであったからこそ、ソレは己を不完全な形へと貶めることさえ了承して彼らの呼びかけに応えた。

――その願いが、既に穢され、歪みきっているとも知らずに。



一歩、また一歩、山岳地帯を進む影があった。白の筒袖を着たソレは、一見ただの東洋人であった。だが、違う。纏う空気が、纏う気配が、あるいは生物としての格が、一目でソレの悍しさを本能に訴えかけてくる。

それどころか、ソレが一歩を踏み出すたびにソレの周囲が侵されて、捻じ曲げられていく。世界を侵し、自らの法で塗りつぶす。歪められた願いを基に、世界を歪んだ己の国へと変えていくモノ。

『都市』に呼び出され、『都市』を依代とするサーヴァント達は原則として都市を離れることは出来ない。一部、自由のキャスターに属する者たちを中継点として配置することにより、『都市』から離れた場所に限定的に展開出来るようにするのがせいぜいだろう。

だが、例外がここにある。ソレは『都市』そのもの。そこにあるだけで矛盾の呪いで周囲を侵す、狂い切った■■■の末路。ソレ単体で、『都市』として機能する、歩く災厄。

「――――」

言葉もなく、意志もなく、ただただ定められた使命にのみ従って行動する自立人形。伴う戦意と、研ぎ澄まされた冷えた殺意だけがソレが映し出す感情らしい艦上だった。

見下ろす戦場、今まさに新たな風が戦場を吹き抜け、二つの軍勢に波紋を広げようとしている。

圧倒的な数を前に、しかし一騎当千の英霊が四つ、一つは波紋、二つと一つがぶつかり合えばどれだけ大きな戦いになるか、そんなものは火を見るより明らかだ。

「――足りぬ」

だが、足りない。そんなものではこれっぽっちも足りはしないと、鋼鉄の意志を感じさせる冷たい声音が独りごちる。
        ・・・・・・・
許容できない、譲れない、許せない――この程度の戦いで終わるなど、とてもではないが見過ごせない。

闘争を、敵も味方も、友も仇も、全てが全てを投げ出し、全てを賭けた闘争を。
目的のための闘争ではない。闘争のための闘争を。
戦い続けるために、戦いを求めて――立ち尽くすソレの右手に矛が生まれる。

「――――!!」

戦場の中央、両軍が押し合うそこへとソレは矛を叩きつけた。

  ・・・・・・・
――天地が揺らいだ

運悪く、爆心地近くにいた者達は血煙一つ残らなかった。クモの巣状に罅割れ、大きく撓んだその中心地、矛を手にしたソレはグルリと周囲を見渡した。

運良く巻き込まれず、命を繋いだ者達の幸運はここまでだった。黄巾の兵も、十字軍の騎士も、ソレの一振りに巻き込まれた。

一直線、数百メートルに渡って余波だけで大地が掻きむしられ、抉られる。

敵も味方も関係ない、あるのはただ、闘争を行うものと行わない者だけ。ならば、定められた通り、ソレは闘争を強要する。

戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。戦え。
生きるためではなく、誰かのためではなく、勝つためではなく、戦うために戦い続けろ。

闘争を、闘争を、闘争を――そこに意味はなく、ただ責務としてソレは周囲へ強要する。
戦場を侵し、自らの法へと、闘争という命題を果たすために全てを投げ打つ狂った世界へと、塗り替えていく。

ただの人間が耐えられるはずもない、特殊な人間でも長くは保つまい。英霊であろうとも、この法を無効化することは難しい。ならば、呑まれた者から順に狂っていく――

戦場に産まれた波紋、それらをすべて飲み込む大津波。真理省局長が一人、個人にして大災厄、闘争のランサーが解き放たれた。

9ヶ月前 No.14

アサシン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_otL

【通路/アサシン(塚原卜伝)】

 誓って言うが。
 アサシンの刃は、紛れもなく一撃必殺を念頭に置いたものだった。

 剣を切り結ぶ場において、大味な一撃必殺を初動から狙う行為は余程の実力差が無いなら成立しない。
 ある程度実力の伯仲した者との戦いは、その戦力を微量でも削いでいくことが重要で、そうした積み重ねの上に勝利をもぎ取るのが当たり前の筋道だろう。戦場に立つ英霊であるならばあるほど、そうした思考に繋がっていく。
 ………しかし、その上でもう一度言うが―――戦国を生きた彼のランサーへ向けられた刃は、紛れもなく急所狙い、初手にて御首を頂戴せんと迫るものだ。最も短く、最も早く、最も適した形の、“人斬り包丁の振り方”に他ならない。

 そこに乗っているものは技術というより天性の才能だ。
 殺意を刃に乗せ、先手を打っての必勝を狙い続け。
 万事において“殺人”という機能に全てを集約する。
 余計な我など要らない。戦の常道など語ってくれるな興が削げる。

 所詮我は人斬り包丁、剣に善も悪もない。
 であるならば、後はどちらが“気持ちいい”のかで決めるだけ。
 だから彼は何も考えず剣を振るう。本能と才覚と度し難いほどの殺気だけを頼みにする―――剣士《セイバー》として呼ばれず、そのサガを“殺人”にのみ振り分け、あまつさえダブルシンクにて霊基を捻じ曲げた末の産物だ。
 事実、これが他なる英霊ならば一撃でその首をそぎ落とし。
 ………本当にその程度ならば、彼は興が醒めたように戦線から離脱しただろう。


「―――は!」


 さあ。それをこの槍兵は、防いだ。
 防いでしまった。あるいは、防ぐことが出来たのだ。

 余計な思考を交えることもない、先の先を制さんと振るわれた刃を凌ぐ籠手。
 向かう刃の腹を弾き飛ばす鉄拳―――真っ当な刀ならば一発でへし折るだろう剛力と判断の速さ、受け止める箇所を選ぶ暇もない。白刃取りならぬ白刃流し、緊急事態に対して、思考とその肉体の行動を脳で完全に切り離した最適行動。
 あるいは戦いの場における理屈のない本能のようなものか、それとも―――。


「はは! 詐欺みたいなもんだな、その速度………」
「だが良いね面白い、餓鬼の誘いには応えてくれないとよう。
 こんなもんに呼ばれたからにゃ、羽虫以外が斬りたかったのさ」


 積み上げた戦いの経験か。
 この程度の死線ならば別に苦にもならぬ驚きもせぬ、百戦錬磨の豪の者。

 舌が踊る。魂が昂る。殺し甲斐がある。
 これは“斬って良いもの”だと、彼の魂が認定する。
 人生は短いのだ。どれを斬り、どれを棄てるかの取捨選択は剣道の習熟において必須。つまらないものの首を斬る価値もない。であるに、何の時間差もなく放たれた五発の刃、五つの“死線”に彼は口元を歪めた。


「何匹斬って幾つ越えた? 何日積み上げて何代継いだ!
 我慢出来ないんだろォ、派手におれと遊ぼうやァァァァ―――ッ!!!」


 それは、おまえは合格点だとアサシンが示したことの証左だった。
 獣のように、鬼人のように吼え猛り、嗤って死線へと飛び込む。
 右の脚で渾身の力を以て地面を蹴り出し、その身を射出させる。
 考え無しと語るもむべなるかな、事実この暗殺者が槍撃に飛び込むに当たって何かを考えた素振りはない。抜き身の刀もかくやの殺気を振りまきながらの疾駆だったが―――その槍撃に飛び込む行為は、もはや自殺行為と断言しても支障はない。
 受け手に回る時間さえも惜しいと断じたのか、あるいはそれを考える能/脳さえないのか………真相は速やかに解明される。彼のアサシンの刀が閃いて、急所を狙う伸縮自在の大槍の五撃を片端からいなしていく。
 彼の槍が持つ射程と速度、その質量はアサシンのそれと比べればあまりにも膨大だ。そもそも東洋の刀は、敵対者を力任せに切断するためには出来ていない。ましてやあのような重槍を前に鍔競り合いなんぞ洒落込むのは阿呆の所業だろう。

 だから踏み込みつつ切り返す。剣の先と槍の先を弾き合わせて狙いを逸らさせ、
 その間に移動を兼業する。
 刃が分身したかのような剣術の全てはその剛槍を弾き、いなし、相手にしない。
   、   、    ・・・・・・・・
 万全の状態のアサシンに刀槍で傷を付けるなど、どんなものだろうが話にもならない。
 バケモノじみた高速の機動は、思考を挟まない神速の反射神経の為せる業だ。彼の槍兵が甚大な戦闘経験によってその技術を修めたとするならば、これは天性の才能、虫の知らせもかくやの第六感が源となる極意だった。

 そして。一度食らいついた剣士は、喉笛を裂くまで止まらない。
 距離を取り逃げを選んだ槍兵の意図なぞ特に考えず、構わず距離を詰めていく。
 狙いがあるならそれまでに殺せばいい。単純な理屈だ、死ねばどんな生き物も死体である。

 その上で、アサシン―――塚原卜伝は、こと攻め手に次ぐ攻め手を好んでいた。
 故に仕切り直しとは興じない。一度食らいついた戦いを手放さない。
 通路の奥へと逃げたランサーの槍撃を弾いた後に、彼は更にそれを追いかける。
 槍五撃を弾き、いなすまでの速度に一切の時間を掛けることなく、返す刀で居合抜きのように振り上げた一閃が、その槍を―――あるいは、槍を持つ腕を叩き落とすべく、都合二度の煌きとなって双方の腕へと襲い掛かる。
 剣に乗るものは隠しようのないほどの殺意であるが、その殺意が何処に向いているのかは読み取れもしない。
 つまるところそれが、攻撃を易々と見切らせない“宗和の心得”であるというのは以前説明もしたが―――二度目の攻撃でもなお、アサシンは彼の無双の槍兵が真骨頂を掴めずに居た。即ち、先程のアレは本当に只の心眼域なのかどうか、だ。

>ランサー

9ヶ月前 No.15

アサシン @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_t5r

【前線拠点/小渓谷→撤退/アサシン(チェーザレ・ボルジア)】
【前線基地/入口ハッチ/十字軍】

 戦場に一陣の風が吹く。
 それは瞬く間に暴風と成り、激震を伴い、周囲一帯を蹴散らす衝撃となって爆ぜ混ざる。
 戦車主砲に見まがう一撃は、しかし人の手から生み出されたモノだった。遠方からの擲槍……ただ槍を投げた、というだけで男は先の惨劇を引き起こしたのだ。

 アサシンの凛とした表情に、初めて曇りが見えた。悪い予想が当たったというような、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて遠方を睥睨する。
 視線の先にいたのは、予想した通りの面影。この時代においては、都市のBrotherに次いで現状最大規模の存在が、そこに立ち尽くしていた。

「一嵐来るか、と考えていた矢先にこれか……
 流石お上は加減を知らん。援軍だと? 莫迦め、それは危険物処理というのだ。
 常軌を逸した武威を放り込んで毒を出しているだけであろうに」

 実のところ、こんな予感はしていた。
 別部署から援軍が来る手筈であるとは上から聞いていたが、よりによってこんな爆弾を放り込むとは。
 アサシンは彼を知っている。否、都市に住むものならば誰もがそれを知っている。
 闘争を司り、戦のみを振りまく戦闘機械。狂気に染まったこの特異点において、尚理解しがたき武の狂奔の体現者。
 嵐が来る、と彼女は言った。そして嵐とは古来、人の手には克服し難い事物の譬えとして言い習わされてたように、これは元来どうにもならないモノだ。

 なぜならこれは人の身に収まる存在ではない。何かの手違いに手違いが重なったのか、それとももっと上の意思が何かしら影響したのか、それによって呼び寄せられた極大の武の化身。
 故にそれは己が国土を垂れ流し、その法理をばら撒く。

 軍戦闘などもはや望むべくもない。一撃目の槍撃による衝撃が全域を打ちのめすばかりか、同時に彼の有する法理を広げ始めた。
 十字軍は一人、二人と同士討ちをはじめ、或いはより狂気的に敵陣へと突っ込んでいく。
 それは黄巾賊とて例外ではない。いや、ともすれば彼らが最も被害を受けたと言っていいだろう。ようやっと統率が取れ始めた大軍は、しかしその武の降臨を前にして一挙に瓦解し始める。
 ダブルシンクによる精神汚染。恐怖、怯懦、蛮勇、憎悪。そのすべてが臨界点に達した黄巾賊が、今。暴徒の群れと変じたのだ。
 無論、黄巾賊とて信仰を基に動く戦士であり、汚染の影響を比較的抑えられる立場にある。だが……それほどの信心を裡に秘めているのは、ごく一部の人間だけだ。そのほとんどが飢えや渇きから集ったに過ぎない。
 故に飢えるように殺す。渇くままに殺す。黄巾賊があくまで宝具的再現でしかないとしても、そうした背景で成り立つ以上影響は避けられない。
 戦争は、今暴走へと変じたのだ。

「……、早々に切り上げる他あるまい。
 全軍、撤退。正確には"この命令がまだ理解できる者は"撤退せよ、という所だが」

 下知をあてられ、正確に命令通りに動けたのはほんの数百程。残りは既に汚染を食らい、或いは汚染を食らった友軍に足止めされて逃げ遅れたのだろう。
 残ったのは作戦も秩序もへったくれもない混沌と……今は静かに佇んでいる、槍を持てる武の化身のみだ。
 レジスタンスにとって、この変化が何を及ぼすかは未知数だ。確かに、じりじりと敵を追い込むように包囲する敵の軍勢はもはやない。ないが……代わりに顕現したのは、極大の混沌である。
 十字軍は野放しにしていても、闘争に巻き込むために無秩序に基地へ突撃するし、そうでなくとも戦意を見せないものから『闘争のランサー』の標的となる。故にここから先は英霊一人一人の個の戦闘力がモノを言う局面だ。闘争のランサー、その暴威を如何にして抑えるかが彼らの課題点となるだろうが……
 どうあれ、最早アサシンとその手勢がここにいる理由はなかった。三十六計逃げるに如かず、まして嵐に合うたならば猶更だ。後は闘争のランサーの暴れるままに任せ、事後報告を行うだけのことである。
>小渓谷、入口ハッチALL

9ヶ月前 No.16

黄巾 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【前線拠点/入り口ハッチ/キャスター(張角)】

>劉秀、チェーザレ、ジャック、闘争のランサー


 鼓舞激励が兵たちを奮い立たせた。逃走者が出るほど瓦解していた黄巾軍は一瞬にして拮抗状態に迫るほど士気を取り戻していた。
 張角が同志と信じてやまない兵たちを、彼女よりも上手く扱ってやれる者がいる。その事実は、彼女の内にあるありふれた部分に火を点けた。

(……否。偶々この戦況が奴の得手だっただけのこと。地の利と綿密に練られた策さえあれば我も……)

 負け惜しみじみた思考は、彼女がそうと自覚するよりも先に塗り潰された。突如として現れた南瓜頭によって。

「な――」

 張角は絶句した。レジスタンスと都市側どちらにも属さない放浪のサーヴァントがわざわざ撤退戦に乱入する意図が分からないから、ではなく。闖入者の巫山戯た容姿が彼女の動揺を誘った。
 南瓜、としか言いようがないだろう。刳り抜かれた穴が顔の代わりを果たしている南瓜の頭。
 どうやら死をも恐れぬ――というより死の恐怖を感じてすらいない――十字軍の騎士たちが気に入らなかったから加勢するとのことだが、あくまで「敵の敵は味方」というスタンスのようだ。殺さないまでも、被害はレジスタンス側にも及んでいる。

「場を乱す愚か者とはいえ使い物にはなるか……セイバー、我は一度下がり撤退の助力に――」

 言葉は動乱を前に易く途絶えた。爆発じみた轟音は、事実、力の迸発に他ならなかった。
 天が鳴動し、地は割裂する。ただの一振りで地形を変えてしまうほどの規格外、天災を超えた厄災が、人型という実像を伴って現れた。
 それはもはや闖入者の枠に収まらない。アレはただそこに君臨するだけで、その場をアレ自身の摂理で支配する。掌握なのか汚染なのか、そこまでは定かではないが、どうあれ地獄には変わりないだろうことは現状が示していた。
 敵味方の区別なく殺し合う……否、戦いに暮れている。死など結果論で、あるいは度外視しているのか。死を恐れていたはずの者たちまで狂ったように斬りつけ、射かけ合っている。

「莫迦な……やめろお前たち! 何のために剣を執ったのか忘れてしまったのか!」

 必死の呼びかけは、しかし届かない。黄巾の兵たちは互いの血を浴び、肉を削ぎ、ただただ闘いのための戦いを続けている。教祖の諭しなど、とうに狂わされてしまった彼らには聞こえてすらいないのか。

「やめろォッ――――!!」

 絶叫は悲鳴じみて、腕の払いと共に強制的な退去が実行される。夥しい量の血痕を残して何百何千という黄巾軍の兵たちが姿を消した。
 後に残されたのは既に撤退を始めている騎士たちと、黄巾兵同様に何らかの手段によって精神汚染を受けた敵兵、劉秀と張角、放浪者のサーヴァント、そして――

「貴様か……」

 ぎり、と軋む音。砕けんばかりに奥歯を噛み締めた張角が、嚇怒の眼差しをそれに向けた。
 一見すると精悍な青年だが、無論人に非ず。サーヴァントにおいても常ならざる膂力と能力を持ち、ただの一振りで地面を掻き毟り、兵士たちを狂わせた「それ」。

「貴様が我が同胞を穢したのかッ!!」

 怒号と同時、魔力が迸る。張角の周囲を回転していた霊符が一斉に爆ぜ、込められていた力を解放した。氾濫する河のような瀑布が、樹々を薙ぎ払う暴嵐が、天の怒りが如き剛雷が、一斉に槍持ちの男へと襲いかかる。
 それらは紛うことなき天災そのもの。魔力を起爆剤に持つ物理現象。故に対魔力の防護も受けず、大儀式かそれ以上に匹敵する威力を持つ。

9ヶ月前 No.17

林檎ぉ @lljin ★ujL4OEA3xp_8gk

【前線拠点/入り口ハッチ/セイバー (劉秀)】

押し込むのではなく、拮抗するにとどめた事には訳がある。
戦とは静と動、王道と邪道を何度も転換させながら行うもの。規模が大きくなればなるほど転換した際に生まれる影響は大きく、流れを自ら作る事や生まれた流れに上手く乗る見切りの能力が肝要になる。
黄巾党は武装と練度で劣るが数で勝り、正面衝突を続けるには分が悪いが策や邪道を使い流れを変えるには十分な戦力は有している。
自分を含む一部の部隊に兵の関心を集め、別動隊を迂回させて挟撃。隊列を乱し十字軍と黄巾党が一時的にでも互角に戦える状況を作れれば、その間に自分が敵陣を抜け敵将であるサーヴァントを一騎打ちで下し士気を上げ一気に敵を仕留める。
これがセイバーの思い描く勝ち筋。味方の消耗を減らし、接敵も交戦も最低限に抑えて勝利を目指す。

「――!? 負傷兵を退かせて一部後続と交代! あとそのまま後ろの人たちに伝令をお願いします!」

奇天烈な格好をした突然の来訪者に一瞬視線を奪われるもそれに適性が無いと瞬時に判断し作戦を実行に移す為の伝令を出す。兵は神速を貴ぶ。考えなくてもよい事を考えないのも素質の一つである。
判断速度を武器に平押しの十字軍を策にはめる準備は順調に進んでいる。
そこに淀みや無駄は一切なく、生前の通り戦力で勝る相手だろうと勝つべくして勝つ良将の戦い方。

――――の、はずだった。
何かが爆ぜたような轟音。そして地面を何か波のようなものが進むのが見えた。
そして、そこに居た筈の作戦の要である別動隊が跡形も無く消えている。
兵を二分していたのは不幸中の幸運であったかもしれない。

「これでは敵将に刃を通せない! 一体誰が……!?」
「皆さん落ち着いて!! 指揮下を外れないで下さい!!」

遠くに見える、謎の槍兵。彼の前に地割れの波が出来ている事から彼の仕業である事はすぐに解った。
そして突如として始まる十字軍同士の同士討ち。
何らかの精神汚染と見た。セイバーの求心力の下にある程度の纏まりを保たれているのか、黄巾党にも似た現象が起きているが十字軍ほど激しくは無い。
理解できない事が続くがその中でこそ良将の実力というものは発揮される。
十字軍の一部が撤退する動きを見せている事をセイバーは見逃さない。
指揮下から外れた兵士。混沌と化した戦場。撤退を始めた敵将。これらからセイバーが導き出す答えとは――

「正気のある者は総力でキャスター殿を連れて撤退の準備をお願いします! これ以上の交戦は無意味 我々の勝利条件は既に満たしています!!」

統率を失った十字軍に追走は無い。あれは目の前の敵を打ち倒し、打ち倒される為だけの存在だ。
レジスタンス本隊に十字軍が攻め込む事は無い。ならばこの場での戦闘は黄巾党を悪戯に損耗するだけ、借り物の軍でそのような判断は出来ない。

「キャスター殿ぉ!! 兵の皆さまはお返し致します故、お先に撤退して下さい! 僕はまだ少し、やるべきことが残っております!!」

キャスターの生む大災害の中を駆け抜け、セイバーがランサーに剣を突き立てようと跳躍する。
今現在最大の脅威、この男の攻撃によって自分達が壊滅する事が最悪の展開。
ランサーを引き付ける役目が必要だ。
直接戦闘で彼に応戦できる可能性があるのは自分しかいない。

「良く解りませんが、大きな戦火がお望みでしたらその他大勢は無用です。それしか能の無い僕がお気に召すまでお相手しましょう」

中華屈指の大英雄の武と、未知の槍兵の衝突。果たしてどうなる――

>小渓谷、入口ハッチALL

9ヶ月前 No.18

ジャック @class ★Android=42zyboh5vZ

【前線拠点・入り口ハッチ→???/ジャック・オ・ランタン】

ケタケタ、不気味に笑いながらも頭を次々と渡り歩いた彼は咄嗟に殺気……いや、そんなものではない何かに気付いた。足をうっかりと一瞬、止めてはいたが、その殺気以上の何かを感知する事に重点を置いて大きく上へ跳躍した。
そして、見てしまった。あぁ、やべぇな。これは、不味い。アレはサーヴァント以上……くそが!あんなの、俺なんて瞬殺されかねねーじゃねぇか!
その上、矛を創製してやがる。此処に居るのは不味い、か。

その判断後に着地を急ぐ。空中なんか、格好の標的過ぎるんだ。時間にして……あと何秒だ!?多分、五秒もねーな。威力は……まともに食らったら俺、消滅するんじゃねぇかな。

「チッ……せーのっ!!」

レジスタンスと十字軍が対立してる地点の混乱に乗じる事にした。彼は、着地の瞬間に足元に黒い渦を出現させた。それに彼は飲み込まれていく。たった2秒の出来事であったが故に、気付けた者は殆ど居ないだろう。そして、その場所に彼と殆ど同じ姿をしたゴーストが一体発生する。
天地が揺れた。つまり、奴の持ってた矛が叩き付けられた。そこには彼と全く同じカボチャ頭が粉砕された姿で転がっていた。そして、ゴーストはダメージに耐えきれず、スッと消失した。ここで、彼が戦線を離脱した事により『情報抹消』が発動する。

これにより、彼の行動及び言動はこの場に居たサーヴァントや兵士は勿論の事、俯瞰していただけの者の記憶からも消失し、亡霊であったような誤認をしてしまうだろう。これは、精神に関与する物では無く記憶に関する物である為に、これを回避する方法は『対戦者』でもなく『目撃者』でもない必要がある。今回は恐らく居ないだろう。彼は死亡した―――そんな風に思ってもなんら不自然はない。「生存」に長けた彼らしい作戦ではある。

「あー……くっそ。せめて、あの日なら殺れるんだがな。」

本物の彼は小渓谷から既に脱した。あんな化け物が居なけりゃ、もうちょっとばかし居ても構わなかったんだがな。こればっかりは仕方ないだろう。……アイツは駄目だ。俺は英雄じゃねぇ、まして、あいつらに復讐しようだなんて思わねぇ。どうせ、ここは特異点ってやつだろう。なら、俺の事を信じる奴はどっかに居るだろうさ。……悔しい、だが、そんな思いもいずれは消えてしまう。俺の感情は長く持たない。1日もすれば、こんな感情すら抱いていないのだろうな。

「あーあ、どっかに安全な場所ねーかな。どっちに付いても面倒じゃねぇか。」

カボチャ頭を掻きながら、ふらふらと先程の戦場から正反対の場所へ歩いていく。……さてさて、今回のこれが聖杯戦争と呼んで良いものなのか、分かりゃしねぇが、それでも何かしらの気が変わるかねぇ……とかく、俺が召喚された理由はよーく分かった。だが、だからと言って!俺が誰かの味方をするような事は、あっていいわけねぇよな。正義に荷担できるほど、綺麗じゃねぇし。あの東洋人どもに任せるかね……俺って享年も爺だしな。

ケタケタと笑う声を放つ。何かを嘲るような笑い声は、果たして誰に向けられた物なのか。それを知る由は誰にも在るわけがない。なにせ、彼すら正しく理解出来た訳ではないのだから。

>張角、劉秀、チェーザレ・ボルジア、闘争のランサー

9ヶ月前 No.19

戦国ランサー @vtyjf ★GFYUJuZycW_Swk

【前線基地/通路/ランサー(本多忠勝)】

>>アサシン(塚原卜伝)

怖気が走るほどの純粋な殺気、獣よりもなお密な人の形を取った人を斬るためのモノ。極限と刹那の狭間で、猛者と刃を交わらせられる興奮に想いが加熱する一方、頭の芯は冷たく冷え切っていく。

もはや物理的な圧さえ伴わんとするその殺意の前に、下手に気当たりで先読みするのはむしろ悪手。綿密に組み上げられたのではなく、天性の輝きのままに振るわれる刃は天剣と呼んでも差し支えない。

「さてな、途中から数えるのなんてやめちまったぜ――来いよ、遊んでやる」

天賦の才をもつ人斬り包丁に目を付けられ、しかし獰猛に笑う忠勝の頭には打算と欲がある。この場にこの人斬りを釘付けに出来たという殿の役目を果たさんとする想いと、武の道を歩む者であれば誰しもが願う強き者と武を競わせたいという欲求だ。

迫る五条の銀閃、しかしそれは届かない。槍の穂先を刃によって逸し、流し、弾く。
忠勝の白刃流しが、防御のたに作られた篭手を用い、刃に対して面で弾いた芸当ならば――本来防御のためにあるのではない刀を用いて、質量差のある槍の点攻撃を弾くなど、文字通り人間業ではない。

その神業じみた剣を、都合五回。もはや神域にまで踏み込んだ剣士なのは考えるまでもない。

体勢を立て直そうと、下がる忠勝を追いかけるは人斬り包丁。絶技を以て難なく槍を凌いで距離を詰められれば、そこは再び人斬り包丁の死域だ。

「冗談、そっちのが詐欺じゃねぇか――!!」

閃く二振りの鈍い光。振り下ろされるは両の腕。間に合わない、須臾にまで濃縮された体感時間の中、必中の二撃を回避するために万策を尽くす。

  ・・・・・
――槍が伸びる

石突きを床に叩きつけるように、射出された槍は、忠勝の身体を後方へと弾き飛ばす。しかし、完全に回避には程遠い。両の腕とまではいかずとも、片腕の犠牲は覚悟しなければならない。通常であればそうなるはずだった。

忠勝の腕、振り下ろされた刃がその腕を切り落とすその瞬間。現実が捻じ曲がる。
無傷で回避したという結末、因子の結果が先になるのならば――世界は結末に向けて過程を捻じ曲げる。
落とされ、宙を舞う腕は幻想に。腕を振るえば、銀閃の範囲から忠勝の腕は不自然な加速を以て離脱する。薄皮一枚分の空間を刃が空を切り、通り抜けていくのを感じながら、しかし忠勝はその手の槍を限界まで縮めた。

・・・・・・
天井を足場に、槍に射出された勢いそのままに反転する。

突進だ。

槍の利点、間合いの長さと一撃の重さを捨て、速さのみを追求したその形。後退ではなく、前進の速度も乗せて放たれるそれは、先の五撃を容易く上回る神速の一撃だ。

よしんば槍を凌いだとしても、己の身体すらも砲弾とした体当たりを回避するすべはない。全身を甲冑で包んだ者が、全霊を以てぶちかましを敢行すれば、それは容易に凶器となりうる。

これこそ槍の真骨頂、突進(チャージ)に於ける必殺の形。

蹴った天井が音を立てて砕け、その音が届くより疾く忠勝が人斬り包丁へと迫る。乾坤一擲の一撃は果たして――

9ヶ月前 No.20

戦国ランサー @vtyjf ★GFYUJuZycW_Swk

【前線拠点/入り口ハッチ/闘争のランサー】

>>張角、劉秀、(チェーザレ・ボルジア)、(ジャック・オ・ランタン)

騒乱が、闘争が、世界を侵していく。味方同士で殺し合い、あるいは無謀な敵への狂奔に支配されて突撃していく。拮抗状態にあった二つの力が、爆心地を中心に混沌へと落とし込まれる。

闘争を求めるソレ。呼吸をする理由を普段は意識しないように、そうあるがために闘争を広げていく。

故に、己に向いた敵意の二つに対しても、何の感情も抱かずに適切な処理を行う。自ずと闘争を求める者を歓迎する理由こそあれ、拒むことなどするわけがない。

まず殺到するのは三つの天災。魔力を呼び水として、物理的な現象として発現したそれは単一個人に向けるには過剰過ぎるものだった。

人は洪水に抗えるか、否である。
人は嵐に抗えるか、否である。
人は雷槌に抗えるか、否である。

そのどれもが必殺、そのどれもが厄災級。大自然の脅威は、例え英霊であろうとも脅かすことは想像に難くない。

「――足りぬ」

天災を天災が踏み潰す。

数百、数千を束ねた矛が。数万、数百万を塗り固めた祟りが。赤黒い壁となって大地から現れる。あるいは、天災の原因ともされるほどの、極大の祟りの矛。赤黒く汚染されたその矛を束ねれば、天災すらも犯し喰らう絶死の盾となる。

天を突くほどの巨大な盾を一息に創生し、しかしソレは息が切れる素振りすら見せない。『都市』そのものであり、常に『都市』と繋がっているソレにとって、魔力不足を心配する必要がない。結局のところ、リソースの影響が大きいのだ。
同じ魔力総量で競えば、あるいはキャスターに分があったのかもしれない。力任せに振るわれる武と、適切に運用される知略――しかし生まれるはずの差を埋めて、なお有り余るほどのリソースの差があった、ただそれだけの話。

だからこそ、それも順当な結果だった。
跳躍し、飛びかかるセイバーに対し、ソレは一瞥だけして右手を振るう。

迎撃するように大地から現れるは、数十メートルを超える巨大な矛――それが数十。対空砲のようにセイバーめがけて大地から伸びる矛は、そのどれもが祟りをコメられた絶死の一撃。ただ人であれば見ただけで気が触れるほどの絶大な呪い、英雄であろうとも容易く侵し尽くす呪怨の矛。
数十を超える全てが必殺、その全てが音を超え、空を裂き、ただ一人に向けて殺到する。
一撃でもまともに喰らえば、どうなるかは言うまでもないだろう。

大きな器があろうとも、その器を満たすリソースが少なければ同じこと。だからこそソレは結末を見届けることなく黄衣のキャスターへと歩を進める。

数瞬前に天災を凌いだ盾を、数多の矛を束ねた盾を、更に束ねて一つにする。産まれ落ちるは一つの長大な矛。

・・・・・・
神すらも倒す、ソレがかつて持っていた矛、その再現。

密度が違う。そこにあるだけで周囲が捻じ曲がるほどの矛。それを黄衣のキャスターに向けて、ソレが無造作に振るう。

奇しくも、それは天災だった。人が及ばぬ、神の裁きにすら例えられる天災、その具現。矛を振るうその余波で、黄衣のキャスターと闘争のランサーの射線上にあったものが全て吹き飛んだ。

吹き飛んだ、という表現よりは、粉微塵に掻き消えたといった方が適切かもしれない。

ただ、圧倒的な力の奔流が、大地を、空間を、全てを削り取ろうと黄衣のキャスターへと放たれた。

9ヶ月前 No.21

セイバー @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_Swk

【前線拠点/入り口ハッチ/ゴッドフリート・フォン・ベルリッヒンゲン】

 俺、ゲッツことゴッドフリート・フォン・ベルリッヒンゲン様は英雄様である。少なくともそんな自覚も背負う気もさらさらないが、少なくともこの土地で俺はそういう役で、そういう仕事(ビズ)に就いていた。
 基本スタイルはラクに生きたい。気分よく腕っぷしでむかつく諸侯をぶちのめし、金をせしめて野郎どもと酒をかっくらう。そんな日々を所望してやまない、ごく一般的な感性の凡人だ。
 それはもちろんここでも変わっていない。いないのだが、状況は御覧の通り生前の百倍程は過酷な状態が続いている。
 負け戦。ジリ貧。まるでオスマンの大群が迫るウィーンのそれだ。というか今まさに包囲を受けている。
 どうにも優等生二人がさっさと前衛に出てくれたおかげで、俺は安全な場所で戦闘員の避難の補助という、実にやりやすい仕事に回ってきたのだが。

「ああ、まあ、そらそうなるわな」

 戦場でイレギュラーなど日常茶飯事。一秒ごとに理不尽と厄介ごとがダース単位で押し寄せてくる。例えばさっきのランサーの襲撃なんかがそうだ。
 遠目で見てもわかる。アレは無理だ。どうにもならん。少なくとも手持ちの装備、兵力では何したって足止めすらできるかどうか。見てわかる負け戦だ。
 まずい。普通なら俺一人さっさと逃げる所だが、こいつら揃って重要戦力だ。囮にして逃げでもしたら、かえってこっちの身が危うくなる。

「あー、くそ。クソクソ、ありゃ流石に見て見ぬふりするわけにはいかんわなァ」

 確かに喧嘩っ早く、割と無謀な戦もポンポン首突っ込んできたが、こういうのはやはり慣れない。だってほれ、まるでこれから身代わりになりに行くようで、実にあほくさいと思うのよ。
 しかし四の五の言っていられる状況じゃない。意を決して、俺は一歩踏み出し超速度で戦場へ赴いた。

 折悪く。或いは折よくか。俺が到着した瞬間の状況は、今まさにそのキャスターが死の淵に立っているような状況だった。魔的にとんと疎い俺ですら分かる超質量の怨念が、壁のようにそり立って接近してくる。
 迷っている時間はない。俺はキャスターの服を、まるで悪がきをしょっぴくようにむんず、と掴み上げ、そのまま大きく跳躍した。
 ご生憎、防ぐ手段なんぞ持ってはいない。あれを相殺できるような、御大層な聖剣も魔剣も持ってねえ。あるのは、クソのような経験に裏打ちされた逃げ足だけだ。
 今回はどうやらそいつが功を奏したようだ。一見派手なその一撃だが、意外と上方向にまで効力が及んでない。十数メートルの大跳躍は、敵ランサーの一撃をすんでのところで回避するにはギリギリ間に合う。
 本当に運がいい。左右に避ければ余波が直撃、出てきて早々莫迦二人の死体が並ぶところだった。

「あっっっっっぶねぇ! クソが、こんな一銭にもならねぇ場所で勝手にくたばりかけてんじゃねぇっての!
 早まってんじゃねぇよ、弾(まりょく)だってロハじゃねえんだぞ、バカスカ撃って勝手に疲弊してんな」

 などと、お小言を垂らしながら着地、ひっつかんだキャスターを地に下ろす。
 実際問題、この局面で駒増やせるキャスターをお釈迦にするわけにはいかねぇ。勝率はもちろん、生存率が落ちる。
 国家レベルの用兵ができる逸材をコロっと死なせてたまるかって。
 次に、まさに猛攻を受けているセイバーへ大音声で呼びかける。

「おーい、生きてっか坊主ー! いっちょ前に啖呵切った手前あっさりくたばってねぇだろうなァ!
 ケツまくっちまうのが最善だろうが、こっちの戦闘員どもが退避するまであと一分は持たなきゃなんねぇ! 気張れ!」

 我ながら酷なことを言ってるが、元々勝手に手前が受け持つなんぞと啖呵を切った男だ。今更ブルって退くようなことさせるか、前衛で頑張ってもらう。
 で、俺が何をするかって? そんなもん……後方援護に決まっているだろうが! 直接切り込むとか、流石にそんな勇気ねえっての!
 ガコン、と右腕の特殊機構を開閉する。右腕の手首を折った先には、フス派由来の火砲が仕込まれていた。人間相手なら派手にぶっ飛ぶ必殺の一撃だが、こんな神域に片足突っ込んでそうな魔人に通じるとは思っちゃいない。
 寧ろ役目は、直接的なダメージではなく煙幕だ。轟音と共に発射された火砲は、着弾寸前で敵の目の前で激しい光と轟音を鳴らした。
 いわゆる閃光弾というやつだ。直感の優れた奴じゃねえなら、初見だと意外にコイツが効く。視界と聴覚を一時でも封じれば、まあ多少は攻撃も単調になるだろう。詰めの一手は、そこなセイバーの餓鬼に任せよう。

>張角、劉秀、闘争のランサー

9ヶ月前 No.22

黄巾 @ask2 ★iPhone=P9oxZSYDmV

【前線拠点/入り口ハッチ/キャスター(張角)】

>劉秀(、チェーザレ、ジャック、)闘争のランサー、ゲッツ

 混乱極めた戦況は最悪の方向へ転がっていく。南瓜頭の無残な砕けようを認識していた者は、恐らく数える程しかいまい。なにせ誰もがあの絶大な力を持ったランサーから目を離せないのだ。ただの余波ですら津波同然の厄を前に、どうして他に意識を向けることなどできよう。

 回避の余地など与えず、圧殺せんと放った三つの天術。水、風、雷。人には抗えぬ天の災いを防ぎきる者がいるとしたら、それは天に属する者か、天を滅ぼしうる者に相違あるまい。
 ……そして、ランサーはそのいずれかだった。

「な……に」

 キャスターの術式とランサーの間に赤黒い防壁が顕現し、三つの天災すべてを貪り潰したのだ。防御というにはあまりに苛烈。防ぐのでも、弾くのでもない。より強大な厄をもって厄を蹂躙(はら)う。
 悍ましく恐ろしい――触れずとも分かるほどの呪詛の塊で。

(壁……いや、あれは矛か?)

 護り、区切るものではないだろう。巨大さ故にそうと分かりにくいだけで、紛れもなく武器の類だ。あれほどの死と呪いを纏ったものが奪い傷つけるモノでないはずがない……!

 並大抵の英霊ではない劉秀を、ランサーは赤子の手を捻るようにいなす。大気を犯し、大地を穢す呪念の槍衾も、彼にとっては耳元の羽虫を払う動作に過ぎないのだろう。
 故に歩みは淀みなく。
 盾と化すほどの矛の束が、更に重なり集って一つの矛となる。厄と呪いを煮詰めた怨念の坩堝は、ただそこに在るだけで空間を陽炎のように歪めていた。耳朶を犯す異音は汚染された空間のあげる悲鳴か、はたまた呪怨の呻きか。
 呪わしき穂先が向く先には黄衣のキャスター、張角。彼女はその場に縫いとめられたように動かない。

「――――」

 逃げるべきだろう。防ぐべきだろう。すべきことは明白で迷う理由などないのに、張角は動けなかった。
 硬直はほんの一瞬。しかしこの局面において一瞬たりとも浪費できる時間などなく、その瞬時が彼女の命運を分けた。
 死と敗北。張角の悲願はここで絶たれ、何も残らない。……第三者の介入がなければ、確実にそうなっていた。
 横合いから駆けつけたゲッツに首根っこを掴まれるまま、ランサーの間合いから脱出する。立ち尽くしていた張角からすれば一連の流れは天変地異も同然で、退避先で下ろされてやっと状況を理解した。

「ッ、セイバー!? 貴様何を――」

 反射的に掴みかかろうとする挙措は、その前に彼のお説教により封殺された。一言一句すべてが正論、反論の余地など当然なく。ぎりと歯噛みして、張角は小さく深呼吸した。
 いかに人ならざる身とはいえ、呼吸が整えば心持ちも同様に。猛る心魂をどうにか腹の底へ押しこんで、ゲッツへガンをくれる。

「あ……侮るな。これしきの消耗、蚊に血をくれてやったようなものだ」

 ありがとう――礼の一言は発される寸でのところで形を変え、まるで違う言葉になって口を出た。
 くだらない強がりだが、張角が自らを奮い立たせるのにはそれで十分だった。
 ……為すべきを思い出す。全霊をもってレジスタンスの同胞を生かしきること。自らも斃れないこと。
 そのための最善手は既にゲッツが打っていた。黒のセイバー、紅のセイバー、黄のキャスター。あの魔人じみたランサーに最も肉薄しうるサーヴァントを支援し、入り口ハッチに残る戦闘員が撤退する時間を稼ぐ。

「露払いだ、行け……!」

 張角の放った天術は再び風災となって逆巻き、唸りをあげて奔った。目標はランサーに非ず。呪矛の攻撃に幾度となく巻き込まれ、その都度数を減らしながらも同士討ちを続ける十字軍だ。
 暴風が騎士たちを小石のように薙ぎ、払い、ランサーとセイバーの間から――劉秀の動線上から弾き飛ばしていく。

9ヶ月前 No.23

アサシン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【通路/アサシン(塚原卜伝)】


「―――上等ォ」


 歯と生の感情をむき出しにして嗤う剣士と、獰猛に笑う無双の男。
 剣戟と槍戟が十全の殺意と最大の技巧、必殺の威力を込めて交差する殺戮舞台においてなお、
 嘘のような冷徹さと、全うな感性ならば悍ましささえ感じさせる熱狂した感情がそこにある。

 接点こそ皆無なれども、ほぼほぼ同じ時代に生きた剣士と武士にはひとつの共通点と、ひとつの相違点があった。
 共通点は闘うことへの感情だ。剣を交え、矛を向け、鎬を削って殺し合う。
 闘争本能、というやつだった。どんな生き物にも等しく備わっているそれは、こと闘争に長く身を置くものであればあるほど、大抵は勘や本能、感覚というかたちでより深く鋭く研ぎ澄まされる傾向にある。何しろ人間がそういう生き物でなければ、武道というのは発展しなかったろう。それらひっくるめて戦士の才能というものだ。

 発揮の仕方が決定的なほど違うだけ、暗殺者と槍兵はどちらもそうした性質がある。
 戦うもの。殺すもの。戦場で笑い、戦場で生きて、戦場を駆け、戦場で死するもの。生きることと殺すこと、死なせることと死なないことに適性を割り振っているという点において、両者は等しい特徴性があった。

 その、ただ戦場における無双と呼ぶべき性質が昇華された点まで共通していたのだ。
 暗殺者が初手にてこれを殺したいと思い、狂喜しながら剣を振るうのもむべなるかな。

 ………であるに、もう一つの相違点とは何か。打算の有無だ。
 最初からこの悪童が何某を考えて戦場に望み、通路に飛び込んで来たわけではない。
 敵の所在など考えていなければ、いちいち常道がどうの策がどうのとまだるっこしいことを考えるほど彼の頭は回転しない。正しくは回転させることも出来たはずだが、それをする必要が無い。
 何故なら剣は殺すもの。それ以外の用途などないから、そのように使うだけ。
 極めるための手法など、要はより強い相手を切り殺し続けるのが手っ取り早い………彼の中ではそうなっているから、その行動と一連の手法は有り体に言って考え無しだ。万が一自分が敵陣の奥深くまで引き込まれているという可能性すら考えない。仮にそうだとしても、自分の剣はそれに劣らないと狂信的感情で以て突き進むだけだった。

 そして、隊同士の連携も最初から考えていない。
 此処に踏み込んだのはお上の十字軍《クルセイド》どもを引き連れた暗殺者だが、彼女がどのような策を練っていようが―――例えば、戦略と状況の関係から九割方無いとは思うが、包囲持久戦を念頭に置いていたとしても彼はそれを無視しただろう。
 ただ強いものを殺したい。出来ることなら、それは羽虫ではなく英霊《ヒト》がいい。
 ただそれだけで飛び込んできているから、彼が槍兵以外に目を向けることは今はあり得ない。


 ―――しかし。

 打算の有無と、戦いの中での思考はまた違う。
 殺す為の思考という意味においては、塚原卜伝は極めて鋭利だ。


「(獲れて………ねえな)」
「(おれの目測が誤った? いや違うか、
  あの加速がハナから出来んなら最初からやってる。そもそも、この武者の兄さんに遊びはねえ)」


 明確に殺しに行った剣閃一刀が、しかし不自然な加速で曲げられた。
 最初から確定した結末のために、無理矢理帳尻を合わせたような超速度だ。
 そこまでの過程に伸縮自在の槍が舞ったことは先程のそれで確認済み―――こと射程距離という意味において、自分の刀の何倍もヤツの槍が優れていることは理解の範疇。しかし、“それ”とこの回避は微塵も関係が無いもののはずだ。

 天地がひっくり返ったように、空から鉄塊が降って来る。
 鉄塊と評するより他にないそれは、さながら振り落ちる星のように鮮麗であるが、同時に苛烈な一撃と言うより他にない。幾度も語り通したが、奴の攻撃が齎す射程距離と質量は日本刀のそれを軽々と上回る。序でに冗談と評した通り、一連の動きは速い。切り詰めに切り詰めた最短効率であるのも然ることながら、単純な体捌きの質が段違いだ。

 まさしく、無双だろう。
 戦いの場で呼吸をすることなど日常の一種であるかのようなそれを、
 まず尋常な手段で切り伏せることは適うまい。感覚的に、暗殺者はそれを見抜いた。


「なるほど」
「切れないもんが切れるなら、おれもそれなりにゃあ至ってるわけだ………」

   、   、・・・・・・
 見抜いた上で、じゃあやるか、と決めた。


 全霊を以て放たれた突進《チャージ》の一撃。
 落下と同時に生み出された速度と重量の加算は、人間に向けるものではない。
 文字通りの質量兵器、城塞の一つならば構わず叩き崩すに違いない。
 ではこれを切り伏せるには如何なる手を使えばいいか。
 先ず尋常なる手段での殺害は不可能。あの回避は規格外の見切りと身体性能から成るものだからだ。

 前提を如何にして崩す。
 だがそれよりも、まずはあれを凌げねば話にならない。されど―――。

 ・
 槍の方ならば、どうにでもなるのだ。


 空中の態勢から急激に着地、刹那の刻さえ不要と彼は飛んだ。
 空虚なソラを踏みしめるように身体を捻って飛び上がり、乾坤の一撃の上へ飛び込む。

 槍兵と同様の理屈だ。
 刀槍に対してこの男は無双なりとあがめられ、一切に完勝せよと祝福されて来た。
 であるに、塚原卜伝に対しての剣槍による攻撃はどのようなものだろうが“無傷”という結果が優先される。その結果がどのようなものになるにせよ、万全の彼にそれで傷を付けることだけは能わない。唯一問題があるとすれば、それは“突進”という性質だけは槍とは微塵も関係がないということで………彼が真っ向からの切り合いをそこで望まなかった最大の理由がそれだ。

 口の割に、先ず避けから選んだ理由でもある。
 理想はあの男の加護を自分の刀で切り伏せることであるが、彼は打算が無くとも欲はあるのだ。
 殺したいという欲はあるのだ―――だから、獣のように。殺人鬼という生き物は適切に最善手を選ぶ。

 飛び込みと同時に放たれた必殺の一突を紙一重で避ける。
 突進と同時に吹き荒れる暴風と衝撃へ直に晒されながら、上を執った彼は軽く身を翻しつつ一刀を振った。
 半月でも描くように首を狙った慈悲なき一刀は、しかし恐らくは命中しない。
 そしてその突進が生み出した威力はもはや巨体の範囲を逃れようとも削減できるものではない―――ならば、これは痛み分けにさえもならないが、彼はそのまま刀を振る。むしろ、そこを回避して貰った方が楽だった。
 縦に回転させるように刀を振りながら身を動かし、失墜する天井の瓦礫へと、
 天井を抉り取るように刃を切り込ませて振り払う。

 どんな結果になるのかと言われたのならば、当然“両断”だ。
 瓦礫は一刀を以て刹那のうちに無数に斬り裂かれ、殺意と剣風を伴って抜き放たれた神速の一斬は、無数の瓦礫をその剣風が放つ勢いに乗せ、散弾もかくやの範囲と速度を与えるだろう。
 地上に突撃し、降り立つ槍兵へと、それらは降り注いで牽制の意図となる。

 なんの意味があるかと言われたのなら、当然それはあくまで牽制に見えただろう。
 崩落した天井の一部に手を掛け、降り立った彼は、走り抜けていくだろう槍兵へと、その胴を斬り裂くべく突進し、同時に再び、鎧の隙間を狙って貫き、そこから切り上げを狙うように研ぎ澄ました一撃を見舞った。

 ………彼の攻撃はそのどれもが、殺意の嵐に呑まれて判断しにくい。
 必然、どれが本命の攻撃であるかを判断しにくい。

 つまりは―――あくまでも、試しだ。
 単に刀だからその攻撃を通さなかったのか、そうではないのか。
 第一の斬撃は攻撃の最中に対処が出来るのかどうか。
 第二の瓦礫は“自分の意思を介在させない不規則な弾”に反応をするのかどうか。
 第三の斬撃は―――やはり、それでも自分の手で殺そうとして、あの男の無双を越えられるかどうか。

 どれが通るのが望みなのかと言えば、やはり最後だ。
 不可能と言われたのならば、それを捻じ曲げたくなる。悪童のサガというものだった。

>ランサー

9ヶ月前 No.24

林檎ぉ @lljin ★ujL4OEA3xp_8gk

【前線拠点/入り口ハッチ/セイバー(劉秀)】

「ッ……! このままでは……」

竹林の如く地面から湧き出る矛の一つ一つを蹴り、受け止め、受け流す。
しかし圧倒的物量を全てそれだけでさばき切れる訳もなく、魔力放出を用いて自らの軌道を強引に90度曲げて退避する。
起死回生の奇襲実らず、両者の間には同士討ちを続ける十字軍の厚い壁。
近づく事もままならない圧倒的戦闘力の差。逃げ続ける事も魔力の量からして敵わない。

『おーい、生きてっか坊主ー! いっちょ前に啖呵切った手前あっさりくたばってねぇだろうなァ!ケツまくっちまうのが最善だろうが、こっちの戦闘員どもが退避するまであと一分は持たなきゃなんねぇ! 気張れ!』

「騎士殿! ……はい! 心得ました!」

セイバーにとって幸いだった事は、彼我に圧倒的な戦力差があるが故に相手が純粋な力押しの攻撃だけでセイバーを仕留めようとした事。直感ともとれる決断の冴えと高い機動力を武器に「柔よく剛を制す」を体現するセイバーにとって苦しいながらも対処自体は可能な攻撃に違いなかった。
そして、相手が標的をキャスターに変えた事。初撃を辛うじて回避したセイバーには着地した後すぐに相手の下へ駆ける時間的猶予が与えられた。

そして、これは幸運などでは無く仲間の存在による必然。竜巻によって切り開かれたランサーとの間の道。仲間による援護射撃。直感、記憶、敵との位置情報等を頼りに槍の有効な間合いを突破する。

「この一撃で決めるには、色々と不足がある事は承知の上です」
「ですが! この一撃の為に! 貴方の命! それが無理でもその槍一つの為に! 僕の命を投げ打つ価値は十二分にあると判断します!!」

ただの一撃がこの男に通用するとも思えない。宝具の使用には魔力が圧倒的に不足している。しかしそれは現界に必要な魔力を回せば足りる事。

「僕の名は劉秀! 漢の復興を成し遂げた者なり!! 僕の全霊の宝具を持ってお相手致します!!」
「『天子の剣は万軍穿つ(クンヤン・シュンリー)』」

セイバー、劉秀の宝具『天子の剣は万軍穿つ』。昆陽の戦いの圧倒的戦力差を覆した偉業を再現する宝具。
筋力・耐久・敏捷・魔力・魔力放出といったセイバー個人の武力に関連するランクを大幅に上昇させ、劉秀そのもの武を『最強の幻想』へと昇華させる。
セイバーの肉体そのものが神代の英雄たちの持つ神装兵器に匹敵する戦闘能力を有するという事と同義であり、セイバーの身体を押し出すだけだった魔力放出は指向性を持った熱と暴風の暴力へと姿を変える。
拓かれた道を一瞬で詰め寄り、槍の間合いの内側に潜り込む。

「これが! 武の極致というものです!!」

当っても外れても、捨て身の一撃である事は違いない。
命を捨てるような真似は、騎士ことゴッドフリートの性格上叱責されても仕方のない真似で、実際自分でも部下がこのような真似をするなら全力で止めるに違いない。
しかし、仲間が命からがら紡いだ好機を自分が命を惜しんだ結果無駄にしてしまうというのは、劉秀の性格上どうしても無視できない展開だった。
天を突く赤い光の柱が振り下ろされ周囲を巻き込む爆発が生まれる。

>闘争のランサー、ゲッツ、張角、ジャック、チェーザレ

9ヶ月前 No.25

戦国ランサー @vtyjf ★GFYUJuZycW_Swk

【前線拠点/入り口ハッチ/闘争のランサー】

>>張角、劉秀、ゴッドフリート・フォン・ベルリッヒンゲン

キャスターを屠るはずだった暴力の顕現は、しかし横合いから現れた新たな英雄によって阻まれる。だが、ソレは妨害事態を是とする。

終わらなければ、戦い続けられる。

闘争とは、一人では行えない。ならば、終わらぬことはむしろソレにとって好都合だ。
新たに現れたセイバー、そして難を逃れたキャスター、二人に対し指向性を持った災厄が向き直る。

放たれる弾丸、しかしキャスターの行使する災厄に比べれば数段落ちるそれを、難なく右手の矛で撃ち落とそうとし――視界が白く染め上げられる。ソレがいた時代には無かった、知識としては知り得ていても経験としては実感していなかったそれ。

視界が潰れ、完全に視覚を失う。光を失うのは長くとも数秒、瞬き三つの間には視界も戻り始めるだろう。
ソレに、驚愕や混乱という感情/機能は存在しない。視界が潰され、しかしソレが行うことは変わらない。求めるは闘争、進めるは一歩、ソレの光を奪った程度で、ソレは歩みを止めることはない。

ならば

ならば、ここに、ソレに届きうる武の体現があったのならば。
仮令視覚がなくとも、肌で観、耳で捉え、鼻で探ることもできただろう。あくまでも、相手が並であったのならば。

ここに瞬間的に両者の持つ絶対的な差が埋められる。片や視界を失うという致命的な隙で、片や己の存在を賭した全力の一撃で。キャスターのお膳立て通り、狂乱する戦場に一瞬現れた道が、ソレへと繋がる。

ソレが感知したときには、もはや間に合わない。セイバーとランサーの間に割り込むように現れる矛の壁――それもろとも武の具現の最強の幻想がソレを押し潰す。矛を止めるという想念の具現が、矛の具現とするソレを捉えたのは、あるいは必然だったのかも知れない。

衝撃、熱波、一瞬遅れて轟音と振動。熱と爆風が撒き散らされ、周囲の十字軍を巻き込み魔力が爆ぜる。

赤熱化した大地、転がる炭化した死体、爆心地であるそこは大地が部分的にガラス化するほどの焦熱地獄の様相を呈している。その中心、未だ人型を保つ影がある。
否、人型と呼ぶには五体のうち二つが足りない。右半身が焼けただれ、その右腕は肘から先が消し飛んでいる。その左足も足首を辛うじて遺すだけであり、未だ生きているのが不思議なほどだ。

――惜しむらくは

後一手、後一手だけレジスタンス側に切る札があったならば。中華屈指の大英雄の一撃は、しかし霊核には届かず。そしてソレの箍を抑える理由はここに消えた。

「我が大地、我が国、我が民――」

槍を手に、ともすれば後一撃で倒れそうな程に満身創痍で立ち上がるソレは、しかし先よりも脅威を増している。

「――我が名に応えよ」

立ち昇る魔力は、もはや悍しさすら感じる域に到達している。ソレが単独にして軍を統べる自由のキャスターと並びうるその理由。

それは単に、ソレ一つで多数の英雄を要する軍一つに匹敵するという、単純明快な理由によるものだ。

ヤ チ ホ コ ノ カ ミ
『 八 千 矛 神 』

宝具が展開する。地獄が顕現する。
無作為に林立する天を突く矛は、それ一つ一つがソレの治めた国の、島国の、大地に染み込んだ呪いそのものである。数千、数万、そんなものを遥かに超えた極大の呪い。国すら滅ぼす神々の祟と、大地に染みた血と呪いの具現。

同時に、闘争の理に侵された者達の手に、同じく赤黒い呪いの槍が現れる。

戦場が、より純粋な形へと昇華していく。槍を手にした者は、十字軍であろうと黄巾の兵であろうと、唯一つの事に己の全てを傾ける。
理性、思考、感情、そんな些末なものは全てがその手の槍に塗りつぶされる。闘争、ただただ闘争本能のみが肥大化し、もはや相手が誰であろうと襲いかかる闘争の具現と化す。

混迷が加速し、もはや戦の体すら崩れ始める。槍を手にした者は、無作為に目にとまる者へと襲いかかり、そして襲いかかられた者も容赦なく応戦する。先までの光景と違う部分があるとすれば、槍を手にする者達の動きが明らかに人間を大きく逸していることだろう。

能力を無理やり極限まで引き出し、己の身体が壊れることすら厭わず槍を振るい続ける狂戦士。ありとあらゆる者が、あらゆる者を敵と認識する闘争の坩堝。

全てはこの宝具より零れ落ちた欠片の過ぎず。故にソレが振るう矛は先とは比べ物にならない。

無造作に矛を振るえば、天まで届く呪いの矛が大地を埋め尽くす。黄巾のキャスター、中華の大英雄、ローマのセイバー、誰一人として関係なく、そこに存在するだけでこの槍は自動的に彼らを巻き込むだろう。

雨を避けろという無理難題に等しい、もはや回避すら許さない呪殺の矛の領域がゆっくりとこの戦場を呑み込んでいく――

【宝具を使用したので、更新プロフィールを後日投下します】

9ヶ月前 No.26

セイバー @wakame3☆FYUOhnBVGmk ★2RykzmoSz4_zuX

【前線拠点/入り口ハッチ/ゴットフリート・フォン・ベルリッヒンゲン】

 さて。こちらが巧いこと立ち回ったおかげで連携は成功、首尾は上々、敵の隙を突いた反撃は確かにあのバケモノに直撃した。
 その手段については、ちょっと大問題だったが。

「あっ! テメェこの莫迦ッ何のために体張ったと思ってんだ!」

 このガキ、放っておいたら勝手に突っ込みやがって! 大陸最高クラスの名将だか何だか知らねぇが、さぞ勝ち戦に恵まれてきたに違いない。
 天運もねぇ、作戦もねぇ、そもそも手元に言うこと聞くような駒もねぇような時の対処をわかっちゃいねぇ。いや意外にあの餓鬼の方が頭いいのかも知らんが、とにかく俺が生き残るのに今死なれては大問題だ。
 しかし止めようにも時すでに遅く……
 続けざまに、敵の様子がガラリと変化した。

 今度はなんだ、と問うまでもない。こちらが乾坤一擲の賭けに出たのに合わせて、奴は鬼札を切りやがった。
 武装した十字軍、その手に奴の無数の鉾が手渡され、一層狂ったように闘争に明け暮れる。最早それは、一体一体が疑似英霊に変じたも同然だった。
 ダン違いに動きのキレが増し、一発一発の重みが比較にならない程跳ね上がっている。

 しかし宝具の開放は、当然真名に直結する。奴の宝具名は、とくに奇を衒うこともねぇような直球なソレだ。何せソイツは自分の二つ名、というより別名そのものであったのだから。
 たとえ文明が違えど、生きた時代が違えど、聖杯がもたらした知識は英霊の座と間接的に繋がっている。コイツが名乗りを上げた時点で、その正体に当たりがついた。
 ――だからといって、何かが変わるわけじゃあないんだが。というより、余計に士気を殺がれた気分ですらあるのだが。

 昔の話。
 マルコなんたらとかいう奇矯者がしたためた『東方見聞録』に、ジパングという国がある。
 ここは俺に縁もゆかりもない場所だが、どうにもそこは黄金の国でなくとも銀の国ではあったようで、丁度俺の時代からすぐあとにウチの生業をぶっつぶし物価に革命的変化を及ぼしたとかいう有難迷惑な国だという。
 で、その有難迷惑な連中が有難そうに拝んでるのが、この妙ちくりんなおっさんというわけだ。
 名をオークニヌシ。
 日本語は分らんが、どういう意味かというと『でけえ国の主』で。
 まあウチの文化圏で分かりやすく言うなら、ギリシャの旧神(タイタン)のソレ。色々背景は違うが、要するにコイツは神性を持つ何某か、というより殆ど神性そのものに近く。

「――いや人間じゃねェじゃねえか!
 テメェ! 階級詐欺もいい加減にしやがれ! 百姓の小競り合いに皇帝が出張るようなもんじゃねえか!」

 ツッコミを入れながら、脇から襲い掛かってくる十字軍兵を鋼の裏拳で粉砕する。さらに一方から吶喊する騎士の槍を紙一重で躱して別の騎士にぶつけ、返す刀で背負ったツヴァイヘンダを抜刀。
 懐に突っ込んできた莫迦一人を、剣の柄でぶん殴り、大きく踏み込んで豪快に大剣を振り回して敵陣を吹き飛ばす。
 この通り、雑魚ども相手にするなら然して苦労はしないが、こいつらに囲まれる中であの神様相手にするのは俺には無理だ。誰にだって無理だ。作戦がどうこう、じゃない。こりゃ一分も持ちやしねえよ。
 だって神様なんだぜ? 対策だのなんだのと、小細工張って迎え撃つならまだしも、行き当たりばったりの勢いで勝てる相手じゃねえんだ。

「これでわかったろ、今の武装じゃ、何したって意味なんかねェ!
 『36計逃げるに如かず』とか何とかオタクらの言葉じゃ言うんだろ!? 最後に一発かましたら、さっさと逃げンぞ!」

 戦ってて分かったが、コイツは本当は俺らになんぞ意思を向けちゃいない。手あたり次第に殺し合わせているだけだ。
 幸い俺には仕切り直しのスキルが備わっている。コイツでどさくさに紛れてさっさと逃げる。
 相手に宝具を切らせて、その真名を割り出した。戦果としてはもう十分すぎる。逃げ遅れた戦闘員はもう知らん。願わくばさっきの数十秒のうちに全員避難出来てたら幸いってとこか。
 もう閃光弾は通じねえ。ならば、自ら火中の栗を拾うまで。俺は、敢えて十字軍らが密集する激戦区へ突撃していった。何度も言うように、コイツは多分何某かを屠ろうと戦闘をしているわけじゃあない。理不尽な私闘(フェーデ)を吹っかけて金をせびるように、殺し合わせることそのものが目的なんだ。だから、ガンガン殺し手に訴えてくることもない。この鉾の雨だってそうだ、範囲こそ広く、威力も高いが、密集して狙って撃たれてるわけじゃない。雨を避けるのは難しいが、雨宿りぐらいならできなくもない。
 人の肉ってのは意外と固く、それも聖別済みの鎧を着てるんなら猶更だ。肉壁になってこっちの被弾を削ってもらう他はない。

「ぐ、ガァ……ッ、オラァ!
 どけや雑魚共! 古臭ぇ装備で固めやがって、大人しく壁になってろアホンダラァ!」

 飛んでくる鉾を何発か貰いながらも、奮い立たせるように罵詈雑言をぶつけながら大剣を振り回す。時には兜越しに頭をたたき割り、時には突進で鎧越しに敵の内臓をぶち抜き、ずいずいと先に進んでいく。
 こうやって戦場をかき乱していれば、まだ何とか逃げ切れる筈だ。それまでの間に、他の連中も逃げられるよう祈るしかない。
>闘争のランサー、劉秀、張角

8ヶ月前 No.27
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