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【ALL】Chrono Crisis【戦闘/シリアス】

 ( なりきり掲示板(フリー) )
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時を巡る旅路 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_UxJ

進化と共に新たなる技術を生み出し、その活動域を地球全体へと広げていった人類。
彼らは常に自らの生活を豊かにすることを考え、革新的な発明を世へ送り出し続けてきた。
留まることを知らない人類の科学力は、やがて禁断の領域へと足を踏み入れていくこととなる。

西暦6990年、それまでの常識を、それどころか世界の法則さえも歪めてしまうような大発見が人類にもたらされた。
時間遡行……俗に言う"タイムマシン"を駆り、現在と過去や未来を繋ぐ手段。人は、その方法を確立した。
今まで文献を漁ることでしか様子を知ることの出来なかった過去と、思いを馳せることしか出来なかった未来。
それらへの道が開かれたことは、確かに衝撃的ではあったが、同時に新たなる問題も浮上することとなった。

タイムパラドックス。未来からやってきた人間が過去に干渉することによって起こり得る、歴史の改変。
たった一つの筋を辿るように紡がれてきた歴史に矛盾を生じさせてしまえば、世界そのものの崩壊を招きかねない。
不測の事態が発生することを恐れた時の世界政府は、直ぐ様会議を開き、"時間遡行法"を制定。
資格を持たぬ者の時間遡行を禁ずると共に、時間遡行中の行動に厳しい制約を設け、歴史の改変を未然に防ごうとした。
―――しかし、全ての人間が、その決定を黙って受け入れた訳ではない。何せ、これは空前絶後の大発見。
上手く時間遡行を利用すれば、世界を思い通りに操ることも可能……そんな邪な考えを持った人間が現れるのは、当然の流れであったのだろう。

時間遡行法の制定から数年が経過したある日、歴史の保護を目的に設立された組織、「時空防衛連盟」が、大規模な時空振動を観測する。
遙か数千年前より発せられし、時空の歪み。それは紛れもなく、今この瞬間に、"歴史の改変"が実行されていることを示していた。
改変を止めることが出来なければ、タイムパラドックスの連続によって、やがて世界は消滅してしまう。
時空振動の余波によって、世界線の境界そのものが揺らぐ中、時空防衛連盟の面々は、人類の歴史を護るための戦いに挑む。



【クリックありがとうございます。この物語の舞台は時間遡行技術が確立された未来と、能力のある者のみが人権を得ることの出来る古代、人類と魔族が熾烈な戦いを繰り広げる中世という三つの異なる時代です。歴史是正機構は禁忌である歴史の改変を実行しようとしています。彼らの思惑を阻止するべく行動する時空防衛連盟の面々と、何としてでも歴史を書き換えようとする歴史是正機構、更にはそんな両組織の戦いに巻き込まれた各時代の人々の姿を描くのが、このスレッドの主な目的です。

オリキャラでの参加は勿論、版権作品をあまり知らないオリなり民の方も歓迎ですので、オリなり民の方も、どうぞご遠慮なくご参加下さい。
なりフリー民とオリなり民、互いに協力しあうことで、よりよきスレを目指しましょう。

なお、合図があるまで書き込みは禁止ですので、ご注意下さい。まずはじめに、サブ記事の方を確認頂くようにお願いします。】

メモ2018/03/04 20:57 : 風神少女☆XQ6phrzcKMtR @infernus★F7MrHN45jw_cjE

―――現在は、第四章です―――


第四章:「昇華の革命」

中世にて起きた人類と魔族の闘争は、本来の歴史にはない、両者の和平という形によって幕を閉じることとなった。

幸いにも、時空断裂が起きることはなく、時間は止まることなく紡がれている。この"小さな"改変により、未来の人類と魔族の関係が改善されたのは、幸運というべきか。

しかし、帰還した時空防衛連盟の面々を待ち受けていたのは民衆の歓迎などではなく、未来世界にて発生した新たな問題であった。

突如として世界政府から出される非常事態宣言、錯綜する情報。そんな折に飛び込んできた、大統領が暗殺されたという報せ。

世界政府及び時空防衛連盟の情報系統が完全に混乱している隙を突いて、歴史是正機構が遂に革命を起こす。

彼らは人類を昇華へと導くため、今、この時代の"改変"を目論んでいたのだ。古代や中世の改変失敗も、全て計算の内であったのである。

まともな準備も整わない内に、この日のために準備を進めてきた相手との戦闘を強いられる時空防衛連盟。

もしも、敵が歴史是正機構だけであれば、どれだけ幸せだったことだろう。彼らは、自分達を疎ましく思う全ての勢力と、一度に対峙することを迫られたのである。


ルール&プロフィール:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-1#a

役職一覧:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-2#a

世界観・用語解説:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-3#a

各陣営の目的:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-4#a

第四章のロケーション:http://mb2.jp/_subni2/19695.html-222#a


・現在イベントのあるロケーション

大統領官邸:大統領暗殺事件

時空防衛連盟本部:時空防衛連盟と歴史是正機構の全面戦争

歴史是正機構本部:時空防衛連盟と歴史是正機構の全面戦争

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時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/総統室/ユーフォリア・インテグラーレ】

時空防衛連盟の面々が中世を訪れていた間に、未来で起きた無数の出来事。部下達がまとめた報告書を読みながら、ユーフォリアは歴史是正機構との決戦が近いことを実感する。
彼らは間もなく、この時代において事を起こすつもりだ。二つの時代においては歴史改変を目的としていたことを考えるに……敵は恐らく、更に先の時代の姿を知っている。
時間遡行は過去だけではなく、更なる未来へ向けても可能なのだ。多少の変化を生じさせはしたものの、根本的な結末までは変わることなく幕を閉じた古代と中世の戦い。
あれから6000年近い時が経過した西暦7000年でも、一目で分かるような差異は感じられないことに業を煮やしたのか。それとも、"元よりこれが真の狙い"であったのか。
こちら側が行った独自の調査においては、未来における人間と魔族の関係が、遡行前と比べて劇的に改善されたことが確認されている。中世における人類と魔族の決戦が和睦という形で終結を迎えたことによる変化だろう。
しかし、歴史是正機構はもしかすると、それを望んでいないのかも知れない。彼らが魔道帝国や魔帝軍に加担した目的は、平和を作り上げるためなどでは断じてないのだから。

「……何かしら?」

部屋にダグラスが入ってきたことに気付いたユーフォリアは、彼の方を見て、一言そう呟く。時空防衛連盟としても、歴史是正機構に所属していた彼の持ちうる情報は重要だ。
外面からは決して判断することの出来ない、内部の情報を持っている存在を味方に付けられたのは大きい。これにより、今後はより正確に敵の行動を予測することが可能となるだろう。
ゆっくりと話して対策を練りたいのは山々なのだが、そうしている間にも刻一刻と状況は変化していく。唐突に鳴り響く端末。どうやら、緊急ニュースの配信らしい。ダグラスの端末も、同じ反応を示している。
こうしたニュースには世界政府における閣議決定の内容が配信されることもあるので、常日頃から確認する癖をユーフォリアは付けている。結果として、それが功を奏することになるとは、夢にも思わなかっただろうが。

端末の通知を見たユーフォリアは、思わず絶句した。そこに記されていたのは、大統領が官邸にて、謎の侵入者によって暗殺されたという衝撃的な文言。
まさかと思って、PCでもニュースを確認しようとしたところで、一人の部下が飛び込んでくる。彼の口から語られたのは、セキュリティビットの一機が全く無関係の映像を映し出しており、そこに大統領とミシャールが写っていたとのこと。
更にミシャールは、まるで最初からそれを狙っていたかのように、ユーフォリアに対して暴言を吐き捨て、時空防衛連盟に事実上の宣戦布告をしたというのだ。
あの彼女が、そんなことをするはずがない。何が起きているのかの整理がつかず、混乱しそうになる自分を落ち着けながら、今真っ先にすべきことを再確認する。
とにかく、情報が正確であるかどうか、大統領官邸まで行ってこの目で確かめなければならないだろう。ダグラスの話は、歩きながらでも聞ける。ユーフォリアが立ち上がり、部屋を飛び出そうとしたところで、ライドウと鉢合わせになった。

「いいわ、聞きましょう。でも、今は簡潔にお願いしてもいいかしら? 詳しい話は、必ず後日伺わせてもらうわ」

焦りの色は見せない。それでも、重大な事が起こり、ユーフォリアがその対応に追われているというのは、素人目であっても明らかなことだろう。そうでなければ、彼女が部下にこのようなお願いをするはずがないからだ。
複数のニュースサイトから速報が配信され、鳴り止まない端末。世界政府の頂点に立ち、政治を動かす存在の死。それが及ぼす影響は、計り知れないものとなる。

>ダグラス・マクファーデン、17代目葛葉ライドウ
【会話終了後、移動させていただきます】

1ヶ月前 No.901

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/総統室前/17代目葛葉 ライドウ】

ドアが開いた、開いたのは良いがどうにも様子が慌ただしい。既に何か起きてしまった後のようだった。
せめてあと数刻速く来られたら詳細な話が出来たのだろうが、今はそうではないらしい。
ならば要件は簡潔に、手早くだ。彼女の表情に浮かんでいる焦燥は余程大きなことが起きたと見える。

「要件は俺を戦闘員としてだけではなく諜報員としても使ってみないか、ということだ。
 仲魔の能力で霊的防御や機械探知を誤魔化せる『擬態』と、相手の心を読む『読心術』を使えば大抵の場所から情報は得られる」

そのためには仲魔を二体同時召喚して『隠形』で使役し続ける必要があるが、どれもライドウには朝飯前の所業だ。
COMPを使った電子式召喚術ではできない、旧式である神道式にしかできない技だ。
今実践してその効果を証明してもいいのだが、余程急いでいるのは見て取れるのでライドウが掛ける言葉はこれだけだ。

「俺からは以上だ。この手の隠密行動の手が足りなくなったら俺を呼ぶといい、戦いの最中でなければいつでも駆け付けよう」

それを伝えるとライドウは道を開けてユーフォリアから離れる、簡潔ではあるが要件は伝えた。
あとは用事が出来れば向こうから呼び出しが掛かるだろう、しかしこれほどの将っ層を見せるとはどういう事態なのか。
あとでライドウも調べてみるとしよう。

>ユーフォリア・インテグラーレ、ALL

【了解しました】

1ヶ月前 No.902

"真の勇者" @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【魔帝城/深淵の間/アンナローズ・フォン・ホーエンハイム】

 在るべき本来の歴史に戻す為ならば、非道な手段すらこの男は躊躇しない。時空断裂が回避できるならば、強硬手段に打って出る事を善しとする――これまでの行動と言う点だけを鑑みれば、過激ながらも責務を果たさんとする熱心な存在。然し、その男の本質は傍観者にして観測者。結末が如何なる物を迎えようとも、"知った事か"の一言で終わらせられるような立場に在る。万が一断裂が起きたとしても、その責を彼が背負う事は決して有り得ない。背負うのは、彼と言う傍観者を引き入れてしまった連盟か、本来の筋書きとやらに沿わなかった勇者達か、或いはその両方だろう。

「当たり前だ。今の僕にとって重要なのは、今より少し先の未来を掴む為にお前を倒す事、それだけだからだ」

 足を自傷させる強引なやり方で回避しながらも、繰り出す反撃の一手は吹き荒れる烈風の刃。だが、直撃させれば戦場に血の雨を降り注がせるであろう風の奔流を、敵は的確に詰みとなりかねない地点を拘束術式で押し留め、それによって稼いだ余裕を以て避けられる。其処へ強襲を仕掛けたのは、刹那に膨れ上がった憎悪に囚われる魔帝が放つ、奈落へと誘える闇。冥き無数の手足が虚無へと引き摺り込まんと伸ばされ、それを安全地帯に飛び退く事で敵は避けようとして――捨身で仕掛ける氷魔像の斬撃が、彼を捉える。
 与えるは、紛れも無き傷。一度、いや二度与えれば恐らく死地へと追いやれるであろう明確な傷。追い詰めている、そう認識するのが当然であり――そして、次の一瞬がそれを誤認であると示す。蛇が浮かべる狂笑は悪意に満ち溢れた物で。彼を中心に展開される幾重もの碧光の輪が、内側に在るモノの生命力、魔力を簒奪し、我が物としていく。追い詰めたのではない、これは追い詰められているのだ。

「古より永久を生ける四元素の主達、忘却されし真名を知る我が命に応え、遍く邪悪を滅殺する力を授けよ――!」

 故に、万象に死を齎す蛇が現出するよりも疾く、勇者は聖剣に眠る精霊達に呼び掛け、正面からの激突へと備えを行う。万象を焼き融かす焔の力、万象を洗い流す水の力、万象を吹き飛ばす風の力、万象を揺るがす大地の力――そして、担い手たる意志が生み出す光の力の総てを合一させて、刃へと収束させる、不完全なりし虹の光。闇が欠けているが故に、究極なる一として完成を果たしてはいないものの。其処に宿りし猛威は、遍く邪悪を必滅する物と彼女は信じている。

「光輝の剣を揮い、奔れ極光――!」

 戦場の総てを喰らう世界蛇の上に乗る敵ごと、光で焼き払い滅却するが為に。極光の輝きを放つ聖剣を頭上に構え、振り下ろした刹那に解き放つ光輝の奔流。清浄にして神聖なる力を宿したそれはただ一直線に、接近する蛇の下へと向かってゆく。足りるか、足りぬか。少なくとも、自分一人の力ではきっと足りない。それでも、二人と力を合わせれば、必ず乗り越えられると信じている。だからこそ、視線で二人に静かに告げる――"力を合わせてくれ"、と。

>ハザマ 氷魔像ギラード ヴェルメイユ

1ヶ月前 No.903

"混沌" @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【魔王城/魔将軍の間/フィラッサ】

「きゃははははははははっ! 何人がそう言って死んだんだろうね!? この腕の中にある物の幾つがそうだったかなぁ」

シャルが赦さないと叫べば、いまだ神経を逆なでする、あの女の声が、既に女性の部分は焼け落ちているにも関わらずこの部屋に響き渡る。
そして、無数の腕は得物を見せびらかすようにゆらゆらと炎と共に揺れる、その様は深海へと人を引きずりこむ悪魔の手に見える無数の海草のようだった。
彼女にとっては、シャルがここまでやれる事も、エストが一度死亡しても尚蘇る事も、この余興の付属物程度にしか思っていない、自分が楽しければそれで良く、二人の抵抗と言うのは、その自分が楽しいもの、としか認識していない。

それは"混沌"の限界を悟らせない、無限に思えるタフネスを連想させる物だが、実際はそうではない、奥の手を使うことになった時点で、フィラッサの限界点と言うのは当に迎えている。
それでも、自分が滅びかけている時であっても"混沌"は笑う。 そういった生物なのか、この存在だけが特別なのか、はたまた本当に悪意の集合体なのか。 様々な推測こそ出来るだろうが、その正体を知れるモノは、おそらく居ないだろう。

二人に向けて無数の攻撃が放たれる、だが、それよりも先に、エストの放った閃光が、周りの攻撃ごと混沌とフィラッサの身体を貫いた。

「ひひゃはははははははははっ!!」

もはや自我を保っているのか怪しい無数の笑い声を上げ始める混沌は、フィラッサどころか、本体にも大穴を開けられても尚笑う。
それが笑う理由は、エストを道連れに出来た事か、それとも。

あえてその答えを出す必要性などこの場には無く、灼熱と化したシャルが全てを灰へと変えながら突撃してくる。
無数の腕も、ただ本体の笑みを壊れたスピーカーのように繰り返すだけではなく、武器や魔法を持って彼を妨害しようとするが、それらに彼を止める方法などもはや無かった。

あまりにもあっけない音を立てて、フィラッサの身体に限界が来たのか、溶け、灰へと変わり始める。
そして、本体にもそれはある程度影響するのか、それと平行して、無数の腕が粉のような形状に"分解"されていく。

本体の中央部が眩く光り、せめてもの反撃とばかりに、あらゆる物を蒸発させる赤い高出力光線を一発、シャルに向けて放った。
……それが、最後の抵抗だったのだろう、フィラッサが燃え尽きれば、本体側にも大きな変化が生じ始める。
まず全ての部位がノイズのように歪んだかと思えば、腕と同じように、粉のような形状となって地面にぼとぼとと一部を落としていく。

終わりか、と誰もが思うであろうその時"混沌"は、何時もの調子でつぶやいた。

「最高だよ人類……ナイスファイト、私は君たちの健闘を讃え続けよう。 楽しかったよ、ひひひっ、あはははははははっ!!」

その言葉を最後に、本体が完全に崩壊して、その一部ではあるが、完全に機能を停止した無数の真っ黒な粉だけがそこに残った。
"混沌"は最後に、自分を殺されてもそんな軽口を叩き続ける、底知れぬ精神性を覗かせて、この世を去った。

もはや、質問をしようとも、答える者は居ない。

>シャル エスト


【フィラッサ@死亡。 と言う事で、フィラッサ戦も終了となります、お相手、ありがとうございます!!】

1ヶ月前 No.904

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【魔帝城→移動/魔大将の間→移動/魔剣士】


白き肢体に咲く鮮花、紅く彩る大輪は呼応する心臓のようで、呆気なく散らされる一輪の花。同時に他者の生気を吸い取らんとする妖花、咲き乱れれば寄る生物を悉く朱に散らす。故に、滾っていた。
万物を断つ一閃、全てを両断してまだ余りあるそれ。龍も、人間も、確実に命を散らす刃であり、必ず凌いで来ると確信した故に振るったそれ。だからこそ手数も必要なく、ただ一振りのみで事足りる。
浮かべる笑みはとうに安堵へと変化していた、今まで壊さぬように、喰らうべきまで熟れさせるために片手で振るう必要はなく、両手で長剣を振るおうとその上を越えていく、それが理解出来たから。
故に龍の放った紅閃、それを己が一閃に合わせてくることも想定通りであり、望みである。相殺しきれぬ余波が龍を深く紅に染めようと止まらない、生きているなら止まらない。ああ、龍は魔剣士と似ていよう。その在り方が、その生き様が。
人間も既に身体の限界は越えている、種族の壁を越えるのは簡単な事ではない。だが生きている、生きていれば何れ越えることが出来よう。そして人間が超えるべき壁は眼前にあり、それに追いついただけだ。
咄嗟の大剣での防御、大部分に反応できなかった事を物語る鮮血、だが未だ足を折らぬことが全てではなかったことを示していた。得物を中点から両断されども、人間はまだ生きている。夥しい紅は生の息吹であり、死への道標。しかしその身体はまだ動くだろう。
浴びるほどの血を受け、その肢体を異なる赤に染めようと最早魔剣士の昂ぶりは収まらない。喰わねば、喰らい尽くさねば。いやまだだ、まだ熟れる、全てを奪うにはまだ早い。相反する欲望、悦楽を求めるが故に反発しあう。

「……好い、好いな。」

残るそれを燃やしながら迫る生者を微笑みで迎える、これまでの獰猛な笑みではない。この時点で彼女は定めた、喰らい尽くすか否を。魂を燃料に突き進む、愚かとも称せる愛し子を血塗れの笑みで包み込む。
生命を狩る為の極地、二百に届く無数の剣気を宿した神速の遥か先の剣閃。人が生み出した剣技、鋭く研ぎ澄まされた緻密でありながら流麗な龍の秘剣。生の果て、その遥か先を往く二種の窮極、魂魄灼けし破滅の理、趣異なる命の証は生の執行者へと迫る。
魔剣士は動かない、あれが熟れた行く末ならば、身を削る諸刃の剣なれば、受けるが定め。長剣を崩れかけの床へと深く突き刺し、死神の鎌ですら容易く超えていく魂魄刈り取る絶技を受け入れる。長剣の柄に両手を重ね、ただ微笑んでいた。
既に鎧など存在しない、ただ見た目相応の柔らかさを持った血に染まる肌が斬撃を抱擁する。一閃に込められた二百余りの斬撃が臓物を犯す、交差する剣戟は肉を蹂躙し、隙など欠片も見せず続く刺突は小さき身体を貫く。
龍と人間、その双方を足し漸く並ぶかと言った量の血を散らそうと魔剣士は痛みなど欠片も感じさせぬ微笑みでその場に立っていた。変わらず長剣に両手を乗せたまま、僅かな後退りすら行わずにただ立っていた。
剣を変わらずに振るえるか、そう問えば肯定しよう。未だ戦闘を続けられるかと問えば肯定しよう、だが戦闘を続けるかと問われれば否定しよう。まだ熟れると、まだ成長の余地があると、まだ喰らうべきではないと。
だからあの一閃を凌ぎ、抗う意思を見せた時点で魔剣士は敗者になるとそう定めていた。両手で剣を振るう事、本気で喰らいにいった事、それが久方ぶりであった事、どれをとっても理由にはなろう。
剣を引き抜き、両手で空間を薙げばそこには歪な空洞が広がっていた。何とも形容しがたい空間、何かと何かの間、通常の存在がいるはずのない禁忌への入り口であると感じるだろう。魔剣士はそれを確認すると龍と人間へと背を向ける、顔のみ振りむき言葉を紡いだ。

「ヴァンレッド、アーケオルニよ。貴様らの勝利だ、次に相見える時は私が喰らうて見せよう。では、な。」

その目は確かに喜色を孕んでいた、その口角は確かに弧を描いていた。だが昂ぶり悦楽を求めていた様子ではなく、ただ先の戦闘を楽しめていたことを語っていた。優しく、温かさすら感じる微笑みであった。
異なる空間へ足を踏み入れればこの空間から魔剣士の姿は消えていた、多くの血で染められた破壊しつくされた部屋がただあるのみ。その部屋の主が誰であったかなど分からぬほどの惨状であった。
さあさあ、舞台はお終いです。お忘れ物はございませんか?負けを認めて立ち去った血塗れの魔剣士、死の淵へと脚を半分ほど突っ込んでまでも未だ死地へと歩みを進めていた龍と人間、その物語はお終いです。正義は必ず勝つのです、めでたしめでたし。

――――――

時に、魔剣士と言う存在は魔帝軍に所属していただけの客将に過ぎない。いつの間にやら現れて、手を貸すと言いながら魔族も人間も関係なく血を散らしてきた生粋の幽鬼、返り血を浴びない日はない程であった。
ではどこから来たのか、そのような問いをすれば何処からでもない何処かからと答えよう。生まれた地など知りはしない、嘗ての記憶など血に塗り替えられている、何処にでも現れ戦場を紅に染め続ける、それが魔剣士だ。

「―――――――ああ、また、飢えたか。」

ふと彼女が呟く、何気なく振るわれた剣は奇妙な空間を裂く。見えるは異なる戦場、先の中世とはまた別のもの。満ち足りたなど一時的なものでしかない、時が過ぎれば飢える。ああ、だが問題はない。
あの二人の匂いは覚えたとも、何処に居ようとまた辿り着ける。どうしようもなく飢えた時には喰らいに来よう、あれは時が経てばまた熟れる。そうだとも、癒えぬ飢えこそ幽鬼たる所以。
その剣は、まだ血を求める。

>>("龍炎公"ヴァンレッド アーケオルニ・ランドグリーズ )


【これで撤退させて頂きます、お相手ありがとうございました!】

1ヶ月前 No.905

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/???⇒/ストライフ・ロスチャイルド】


「あーはいはいそうですーどうしてくれんだってんですよぅ。
 ………でもね? イナちゃんがその良い子だったことは事実なんだよね」


 ところで。口で言うほど彼女は取り乱しても居ない。
 通話の最中、“情報の礼だ”と言わんばかりに投げ入れられた爆弾に対して、彼女が何ら大きな反応を示した様子はなかった。そこのところの理解は流石に“怪物”と呼ばれてはいないか、バビロンの言葉はあまりにも的を射ていると言えた。
 なにしろ彼女にとっての良い子とは、どうでもいいか、都合がいいかだ。
 巧く操縦しやすく、その利益が管理しやすい。現状維持に全てを費やして来たイルグナーはその典型とも言えて、だからこそだ。惜しいことには惜しいが、幾らでもこういうのは居る。それが何時情に当てられて変貌するかなど読めはしない。世界に蔓延する病原菌が、ふとした拍子に取り返しの付かないものに変貌するのを止められる人間は居ない。同じように、人の感情などまあそんなものだ。

 だから、口の割には怒ってもいない。強いて言うなら“またおまえかこのヤロー”というだけ。
 問題があるとすれば、それは彼女がどのような方向性になったのかだが………。

「私もろターゲットじゃん。うひー、背中注意背中注意………」
「(ま………首が欲しければあげられるんだけどねえ。でも勿体ないし。あーあ勿体無い)」

 しかし、魔王の唆しによって彼方へと飛んでいった人間にブレーキはない。
 ただ一つ事の為に走り出していくのだ。彼女の場合は世界政府の浄化というところだろう。

 自覚がある通り、ストライフ・ロスチャイルドは概ね真っ当な政治をする人間ではない。
 まあターゲットの一人だ。だが………もう一度言うが、ブレーキがないのだ。
 この人物を殺すために歯止めをかけるだとか、此処は理性的に考えて抑えておくとか、そうした部分をこの男は丸ごと破壊する。どういった手段かはさておきとして、彼の言葉に乗せられ、熱に浮かされた人間の末路は10割そんなものだ。

 恐らくは、ユーフォリアとて例外ではない。
 止まれなくなるだろう。止まらず、世界全ての幸福の為に螺子が焼け落ちるまで走り続けるのだ。
 あらゆるものを踏み台にして。友人も兄妹も何もかも、阻む全てを塵殺しながら駆け抜ける雷霆のように。


「あーはいはいそうねー。それはいいんだけど………バロさん、分かる? 太陽を飲み干す、おお結構よ?」

「だけど太陽の無くなった世の中がどういうものかとか、考えて―――あ”。
 ………切りおった。ひどぉい! 情報の無くなった私は葱を背負わないカモかなにかみたいな扱いだわ」


 そんな傍迷惑なものが産み落とされ続けたら、辺りに広がるものは溜まったものではないだろう。
 太陽に近づいて燃え尽きるからこそ―――蝋翼《イカロス》は悲劇的な英雄として語られるのだ。

 太陽に近づいて飲み干せば、どうだったろう。
 光そのものを求めるあまり、光を食い殺すような英雄/怪物など、善悪どうこう関係ない。
 そんなものは第二の災害でしかない。善意にて舗装された地獄への道先案内人の完成だ。

  ―――まあ言ったところで聞かないし、そもそもこの男、電話の途中で一方的に切りおったんだけど。
     もう慣れっこだ。けらけら笑って、ホテルの一室にあったベッドからひょいと飛び立つ。

 幾つかの連絡先からひっきりなしにメールが来ていたのだ。
 内容は―――。

「………あーあ。リルちゃん、だから善意でお話しに行ったげたのにさー」
「ま、ギリギリのタイミングでイーブンってとこかな。乱れに乱れた方が皆やりやすいでしょ」

 世界政府内でのクーデター。大統領の殺害情報、並びに官僚の大虐殺だ。
 どうも本格的に始まってしまったらしい。
 始まってしまったらしいが、むしろユーフォリアの行き先は分かりやすくなった方だろう。
 だから、ギリギリだ。不測の事態など入って当たり前、リカバリーは“たった今”完遂したも同然。

 ―――これはホテルのお話、キャンセルで良いかなあ。

 けらけらと笑いながら、彼女はそのまま一室を後にする。
 詰めまでを怠らないのが出来る人間の基本というやつだ。万が一のケースを想定する。眼を向けさせない手段を考えさせる。以前送り付けた侵攻ルートをそろそろ使って“先走る”輩も出て来ることだろう。


「だから」
「分かんないものは分かんないうちに、さっさと死んじゃってよね」


 少女は少女の声のまま、得体の知れない老獪さを口に含ませて、そう一言発した。

   、   、   、  、 モノ
 ―――そうだ。人間は分からない英雄をこそ恐れる。
    そうした生き物は、首輪付けて飼うか、さもなければ殺処分するしかない。


>バビロン(通話終了)


【お相手ありがとうございました〜】

1ヶ月前 No.906

炎獅子 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【王都ロンカリア/噴水広場→時空防衛連盟本部/救護室/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 協力を申し出てくれた馬の亜人である少女によって、魔帝城から王都ロンカリアまでの経路を瞬時に移動し、一先ずの安全を確保した四人。既に噴水広場にて待機していた医師達により、二人の重傷者の治療が引き続き行われる。やがて治療が一段落終わると、レプティラは魔帝城での戦闘が終了するまでの間、現地で保護する形となり、レオンハルトの方は未来に存在する連盟本部の救護室へと移送される事に決定された。
 二、三人の医師達の付き添いの元、起動した装置によって開かれたゲートを通して未来への帰還を果たした彼は、未だ意識を戻す事無く、担架に乗せられたまま慎重に救護室へと運ばれて行く。そして室内に入ると、すぐさま備え付けのベッドに寝かされ、意識を取り戻すまでの間、経過観察という流れとなった。
 負った傷は深く、目覚めても戦線へと復帰する事は厳しいだろう――医師達はそう判断すると、冷静とした様子で総統への報告書を書き上げて行く。今後の作戦活動を行うに当たって、司令官の役割は代役を立てない限り、シフォンに一任せざるを得ない。報告書を纏め上げると、一人の医師はそれを提出しに救護室を出て行くのであった。

「…………………ここ、は………」

 それから暫くが経ち、覚醒を果たした彼は、朦朧とした意識のまま、見慣れぬ天井を眼で捉えながらも頭を整理して行く。記憶が定かであるのならば、魔将軍の一人である"塵殺剣"のニアを倒した後、そのまま意識を喪った筈だ。そして恐らくは、自分が意識を喪っている間に、連盟本部の救護室まで運ばれて来たと言う事だろう。
 其処まで把握した所で、漸く意識が明確となり――同時に、一つの疑問が生まれて来る。共闘していた二人は果たして大丈夫なのか。レプティラは致命傷に近い重傷を負っていたし、サシャもそれなりの手傷を負っていた。こうして自分が何とか生きている事からして、連盟の救護がやって来たのは間違いないだろうが――やはり、二人とも生きていると言う確証には繋がらない。
 だからこそ、今一度中世に戻り、真相を確かめたい気持ちが昂り。然し、身体を起こそうとした瞬間に、奔る痛みがそれを苛む。それでも立ち上がろうとした所を、此方に気付いた医師達によって止められ、結局ベッドに寝かされる羽目になる。どうやら、少し安静にしているしか道は無いようだ。空白の時間に起きた真相を知っている者が、来てくれれば良いのだが……都合よくは行くまい。そう思いながら、再び白の天井を見上げるのであった。

>ALL (サシャ)(シフォン・ヴァンディール)("常山蛇勢"レプティラ)

1ヶ月前 No.907

フラナガン @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【時空防衛連盟本部/応接間/ニール・フラナガン】

 彼は自分の運命を呪っていた。
 わりと四六時中呪っている気がするが、今日ばかりは特に強く呪った。
 彼は何度だって呟くのだ。此処までされる謂れはないと、中年親父の泣き言のように。

 応接間で待っている間も、実のところ冷や汗が止まらない。
 空調が効いていないのか? そんなはずはないし、聞きに行くのも申し訳が無い。

「(………どうしてこうなった?)」

 事の始まりを、フラナガンは静かに思い出していた。
 仮にも世界政府議員である自分だ、定期報告と口にすれば容易く通れたわけだし、建前の話として“ユーフォリア・インテグラーレの更迭”に関する話を通して来るように命じられてやって来ていた。
 当然大統領主導の案件だ、これをふさぐ余地はない。つまり―――どんな悪態と皮肉と、あるいは物理的手段が通達しに来た自分へと飛んで来るのか分からない。有体に言ってスケープゴートも良いところだったのだ。冗談のような話である。
 そんなもの事後承諾で良いのでは? と思ったが、聞いた自分に拒否能力などない。何時ものように諦めて、とぼとぼと時空防衛連盟本部に脚を踏み入れたのが30分ほど前の出来事だった。幸いすぐに通されたし、世間話の一つ二つも交わして貰う程度には警戒されていなかったが、それが逆に政府自体の意向として資金援助をしている方向先を思い返させてしまい、逆効果だった。

 いざ話をしようと、ユーフォリアが来るまで此方で待つように言われたのが20分前。
 それから、もっと時間が経ち。何気なく通信端末を確認し、最新の情報を確認しようとした時―――。


「(だ、大統領の暗殺に、官邸での虐殺って………)」

「(い、幾らなんでもスピード進行過ぎやしないかね………というか私の立場は!?
  いま、此処で交渉しようとしている私の立場とか―――ううん、考えてるわけないよなぁ………!)」


 目を疑う内容が飛んで来たのが、いまこの瞬間だ。
 誰がやったのか露も知らないが、何ということをしてくれたのだと言う気分になる。
 無差別に破壊を振り撒くAI兵器の暴走は何を理由にしたのかも分からない。
 だが何より最悪なのは―――。


「(侵攻って言われても、私に何をしろと?
  と、というかこれ、前線のド真ん中にのこのこやって来たようなものでは?)」


 此処から歴史是正機構の侵略戦が開始される、という。
 もう今すぐ書類とか色々置いて逃げたい事態の通達だった。
 自分は今日もあの頭の飛んだ者達の顔色を見ながら仕事をするはずだったのだ。それがこのザマだ。

 ………自分は確か、想像するだけで気の重くなる仕事の為に此処に来たはずである。

 ―――それが気付けば、想像するだけで身震いする事態の真っ只中だ。
    確かに私は善い人間ではないだろう。だが此処までされる謂れはない。


「(し、しかし、なぁ。職務、職務だけは全うしないと………)」
「(全うしてどうするんだ、私?
  ああ、畜生、断っておくんだった………今日の運勢はきっと最悪だったのだろうなぁ)」

 此処から逃げたら逆に不自然だろうし、危険だろう。
 分かっているので応接間からは出なかったが………此処までされる謂れはない。

>ALL

1ヶ月前 No.908

ワーロック @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【時空防衛連盟本部/エントランス/ワーロック】

 襲撃は、唐突だった。
 黒鐵が唸りを上げ、撃鉄を引くと同時に断末魔が響く。
 作業のような破壊。蹂躙のような戦闘。   、  マーダー
 悪意なき殺戮。善意なき改革。それこそは、一機の“殺戮機”が齎したものだ。

 ・
 彼はひとつの情報を受け取った。
 歴史是正機構の協力者からの、時空防衛連盟本部への侵攻ルートに関する情報だった。

 これを送り付けた協力者が、さてどのような意図を持っているかなど関係ない―――最終的にどれが“人類の存続に重要なもの”なのかを古代時空の戦闘において判断したワーロックが、敵の頭である本拠点への攻撃行動へ参加しない道理はなかった。
 そのものにとって、歴史の価値も意味もたいして必要性はなかった。
 そんなものを論議するだけのプログラムも余裕も、G.O.Dと名付けられたAIには無い。
 あるとしても、彼のプログラムはそれを不必要なものとして、議論することすらないだろう。

 そんなだから、結局のところこの黒鐵は歴史の是正のために彼らに与したのではないのだ。
 どちらがより多く、より適切に人類を“処理”することが出来るのかを理解した上で、此方に与しているというだけ。つまりだ、あまりにも身も蓋もない言い方をしてしまえば、時空防衛連盟も歴史是正機構も、窮極的には“処分先”なのだということになる。
 潜在的な障害となり得る確率は前者の方がはるか高く、後者の方が著しく低いから戦場に参戦する。
 それだけに過ぎないから―――こと此処に至って、その黒き処刑者が、闘争の兆しをこの本部に持ち込むのはすぐのことだった。鋼鉄の足音が鳴り響く、破壊の轟音が大地を打ち鳴らす。目指すは大将首だが、そうでなくとも良い。

 あらかた搭載兵装で“一掃した”エントランス入口を制圧しながら、残るAI制御兵器と共に進軍する。
 増援が出なければこのまま生命線となる箇所を攻撃する。先ずは中腹、そして指揮系統、崩壊を確認すればその身を翻して残る未来生態の塵殺へと行動を再開するだろう。

 彼が成すべきは一つだった。彼は世界の存続の為に、そのようにプログラムを打ち出した。
 つまるところ―――。



「諦観せよ。諦観せよ」
「汝らに価値なし………」

「―――標的、再認識。時空防衛連盟本部、全所属員」



   、   サーチアンドデストロイ
 文字通りの、索敵および殲滅だ。
 それを為す為に、G.O.Dはあらゆる手段を用いるだろう。
 それこそが、このVAおよび、“最終兵器”が存在するに当たっての唯一の意義なれば。

 ―――故にこう語り、汝らに死を贈り付けよう。
    諦観せよ、汝らに価値なし。世界の存続に、汝ら有機生命体の存在意義なし。

>ALL

1ヶ月前 No.909

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【大統領官邸/移動中→大統領執務室/イルグナー・シュタウンハウゼン】


「……ボクがその腐敗の象徴を殺そうと思ったんデスけどねえ、ミシャール中将。」

空間に門が突如創造される、現れたのは全身返り血に塗れた一人の女性であった。僅か数十分前までに大統領官邸に居たイルグナー・シュタウンハウゼンだ、その手には拳銃が握られており何をしていたのかは想像に容易い。
勿論、相対するミシャールにとってもそれは変わりない。何故この人物が、そういった疑問が生まれる可能性は非常に高いがそれは別の話であろう。尤も、その別の話を聞けばミシャールの顔に驚愕が浮かぶかもしれないのだが。
何よりイルグナーが浴びた返り血の主は所謂腐敗官僚、その関係者のものだ。僅かでも汚職に手を染めればその銃口を向けられ、発射された弾丸が等しく全てを奪っていった。今頃赤い水溜まりで溺れている頃だろう。
そう、官邸や自宅など所在が明らかになっている汚職に手を染めた官僚や議員は例外なく殺されている。例え不本意であっても、そのお零れを少し齧っていただけであっても、イルグナーにとって腐敗していると判断されれば額に風穴を作られている。
出先に居る一部の官僚の行方はどうしても掴めなかった故後回しにした、そうなれば腐敗の頭目とも呼べる大統領へ矛先が向くのは当然だろう。だがいざ出向いてみれば既にその首は胴を離れており、凡そミシャールがやったことは察しが付いた。

「まあ、死んだのならば良いデスけどね。貴方の理由は聞きません、ボクときっと同じデスからね。それでも、警備を外した手腕は見習いたいデスねえ。」

ボクにはこれしか出来ませんから、そう言いながら右手に持つ拳銃をひらひらと見せる。手袋に包まれている右手、その腕は黒く変色しておりその部分は影のようであった。能力の過剰使用による侵蝕の加速、その影響だろう。
イルグナーはミシャールがこの場にいる理由を誤解している、正確に言えば目指すべき目標こそ同じではあるがその道のりは大きく異なっている。だから腐敗を一掃するために襲撃を行った、そう解釈している。
同じと言ったのはその為だろう、実際に双方とも腐敗を一掃することが目的ではある。だがイルグナーがミシャールの行動の意図を知らぬように、逆もその通りだ。反乱を起こした自動兵器たちの目標の殆どが死に絶えているなど、知る筈もない。
本来ならばすぐにでもこの行動を起こさせた恩人であり、汚職官僚の一人であるバビロンへと向かうのだろうが少しばかり事情が異なっていた。行方知らずの腐敗議員の情報、それを持っていれば提供させようと考えていた。
そう、させようとしている。ミシャールが汚職に関わっていないのは百も承知であるが、ここで隠し立てでもすれば同罪だ。見て見ぬ振りも、分かっていて変えようとしない事も同罪だ。だからこそ、拳銃の銃口をミシャールへと向けながら言葉を放つ。

「それで、教えて頂きたいのデスが……ロスチャイルド議員やフラナガン議員の居場所、知らないデスか?腐敗の隠蔽とか、まさかミシャール中将ともあろう方がしないデスよねえ?」

教えたならばそれでいい、教えないならば撃つ。そこにミシャールが知っているかなど含まれてはいない、口では何とでも言えるのだ。腐敗は無くさねばなるまいと、口だけの風見鶏が言うのだから間違いはない。
イルグナーは正気ではない、同時にどうしようもなく正気である。普段であれば取らない行動も一切の呵責なく行う、そして根底にあるのは自身への戒め。腐敗を無くすため、現存する腐敗を全て除去した後に、最後の腐敗として自身を殺す。
今まで何もできなかったから、見ているだけで行動を起こさなかったから、心の内だけに留めてしまったから、そんな自分は腐っていたのだと分かっているから、全部清算して死ぬ、そうすれば若い清い力が形を成すのだと。そう思う心が正気でないとどうして言えようか。
その為にイルグナーは腐敗を全て除去しよう、庇うならば腐っている、守るならば腐っている、隠すならば腐っている、何もしない事も腐っている。そう断じた結果、凡その官邸が血の海になっている現状を正気だとどうして言えようか。
夢、その為に全てを賭して飛び立ち続ける。イルグナーは止まらない、何をするべきかは理解できていたから。だが同時に理解できていない、飛び立てば飛び立つほど落ちた時は大きく、空に近付けば近づくほど焼かれるのだと。
その優しそうであった瞳には狂気に似た憧憬が広がっていた、その瞳で何を移すのかは本人にしかわかるまい。ただ、確実なのは、ミシャールがどう答えようと撃つ、それだけだ。

>>ミシャール・ルクセン (大統領)


【突撃!隣の汚職議員!(銃声もあるよ!)絡ませて頂きます!】

1ヶ月前 No.910

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【大統領官邸/正門/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

「いよいよ始まったみたいですわね。予定通りなら官邸に集合していた官僚を一掃。あとはまあ、流れで連盟の方々が上手くやるでしょう。ヘルガ様も立ち回りは優れてるけれど……世の中、何でも思い通りには行かないものですからね? ……ああっ、もう、何て寒いのかしら! せめて上着の一枚位羽織っておけば良かったですわ……。と言うより私(わたくし)が"此処"の担当になるなんて……もう、ヘルガ様ったら……」

……大規模テロが始まった大統領官邸。その正門には、丁度正面を塞ぐ様に配置された大型のトラックと、その傍で退屈そうにしている女がいた。女は肌寒い風に吹かれてぶる、と身震いをする。何かと文句を言いながらも、しかし其処から離れる様子は無い。何故、と問われれば、直後に訪れる者を見れば分かるだろう。

『動くな! 貴様……報告にあった機構の――!』

連盟と言うのは実に情報の把握・整理・行動が早い。兵は拙速を尊ぶと言うが、これはその最たる例だろう。
現れたのは大統領官邸で惨劇が起きたとの情報を得た連盟の一個中隊だ。指揮官クラスこそいないが、それでも皆鍛え抜かれた腕利きだ。
……そう。この女は、この連盟隊員達の足止めの為に此処にいる。

「私の任務が"これ"と言うのも冷める話ですけれど――」

ばっ、と手を天へ向けて掲げる。それを見た連盟隊員達は警戒するが、何も起こらない。
そう、その通り。この女は"目に見える"攻撃手段など何一つ持ち合わせていない。
丞相の様な苛烈な炎の力を使える訳でも無い。今は亡き聖女の様な光の力も無ければ、老将の様に兵を束ねる技量も無い。体術も一般人の域を出ず、火器の扱いに長けている訳でも無い。
では、この女には何があるか――それを知るには、彼の地で、彼の王国で起きた惨事を見れば自ずと知れるだろう。

手が掲げられたのに呼応するかの様に、トラックの荷台が開放される。其処から姿を現したのは、無数の武器でも、兵士でも無い。――金品だ。
荷台一杯に積まれた紙幣、宝石、装飾品……それらが夜風に煽られて、薄暗い荷台から転がり落ちてくる。

『――!?』

瞬間、隊員達の間に響動めきが起こる。無論これは罠だ。誰もがそれを理解しているだろうし、この場でそれに飛び付く程欲深い者もいない。
……ただ、『それ』を前にして深層に芽生えた【欲望】が、全てを崩壊させる。

「ふふ……我慢しなくて宜しいのですよ? こんなに沢山、素敵な宝物があるのに……手を出さないなんて。どうせ誰も詰りませんわ。思う存分、子供の様に目を輝かせては如何?」

悪魔は動き出した。その唇に紡がれる言葉は全てが眩惑。煌めき、輝き、心を狂わせる魔性の砂金。悪魔は特に美しい宝石を一杯に手にとって、それを威勢良く中空へとばら撒く。輝かんばかりのそれらは外灯の白い光に当てられて、ちかちかと光を反射して人々の目を眩ませる。

……心を許してはいけない。幻に後ろ髪を引かれてはならない! 何故ならばそれは全てを突き崩す衝動だ、己の全てを内側から食い潰す獣性だ! 悪魔は、誰もが持つその獣性を知り尽くしている。誰よりもそれを引き出す"魔法"に通じている。一度"それ"に呑まれればどうなるか――その結末は、『あの王国』で起きた惨事を見れば、火を見るよりも明らかだ!
――そうだ、悪魔は繰り返そうとしている。あの場で引き起こされた惨劇を、今此処で再演しようとしているのだ!

――だが止める術は無い。止められる由は無い。誰にも"それ"を知覚出来ない。誰かが気付けば変わっただろう。しかし"それ"に気付ける者はいない。まるで遅効性の毒の様に、"それ"は気付いた時には既に開演の刻を迎えているのだ。

……隊員達の響動めきが収まる。彼らは警戒しつつ、だが大胆に外灯に照らされる金品へと近付いて行く。もう既に、佇む女等は彼らの視界に入っていない。――彼らは魔性に魅入られた。最早、この場においてその正気を取り戻す術は無い。
戦場において命である筈の火器を投げ棄てる者が現れた。それに倣って他の者も身軽になろうと武装を解いた。仲間を足蹴にして荷台の奥へと入り込もうとする者が現れれば、それを引き摺り出して我先に行かんとする者共が現れた。次第に彼らの"皮"は剥がれ落ち、物欲の虜となったケダモノ共がハイエナの様に金品の山に集る。その光景は何処までもおぞましく、そして何処までも浅ましい人間の欲深さを何より鮮明に描いていた。


「……まあ、何事も上手くはいかないですから。その為に私がいる、と言う話ですわ」

くすくす、と心底意地悪そうに女は笑う。全く、何て簡単な事なのでしょう――ぽつりと小さく呟いて、掌一杯に掬った煌めく宝石を溢して嗤った。

……連盟の先鋒は手折られた。それはつまり、彼らの働きによって救われたであろう者達の命運が尽きたと言う事を意味している。

>>(ALL)

1ヶ月前 No.911

中二病でもハッキングがしたい! @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/シエンタ・カムリ】

大統領の暗殺を皮切りに、歴史是正機構の壮大な計画が幕を開けた。この時代そのものの改変。ぶっちゃけてしまえば、その目的は既に達成されたも同然である。
重要人物の死により、ヘルガが見てきた未来の姿からは、間違いなく違う世界となることが約束された。時空断裂が起きなかったのは、奇跡ともいうべきだろうか。
いや、彼女のことだから、最初から計算尽くだったのかも知れない。だが、いずれもシエンタにとっては関係のないことだ。彼女は彼女で、自分のやりたいことをやるのみである。
かくして、時空防衛連盟本部へとやって来たシエンタ。当然、内部は警戒状態にあるため入り口もロックされている上、エレベーターは関係者以外使用不能となっていた。
しかし、彼女にそれは通用しない。シエンタが視線をパネルへやっただけでバチッ、というショート音が聞こえ、エレベーターが動き始めてしまったのだ。
彼女はしたり顔を浮かべながら、それに乗って悠々と地下へ向かう。これによって、後に続く者達もエレベーターを利用することが出来るだろう。そんなことをせずとも、自力で階段を下ればよいのだが。

「扉ですらボクを恐れる。闇の支配者となることが確約された、ボクの恐るべきポテンシャルをね」

傍から見れば意味不明な言葉を呟きながら、シエンタは施設内の電子ロックを次々に解除していく。どんな対策を講じようとも、電子と会話する能力を持つ彼女には無意味であった。
もはや、時空防衛連盟本部のセキュリティは意味をなさなくなったといっても過言ではない。シエンタがこの場に留まり続ける限り、支配権は彼女の手に握られているのだから。
やはり、後ろに留まっているだけではつまらない。前線に出ていずれこの世界の頂点に立つ者の姿を知らしめることこそが、何よりもの喜びだし、生き甲斐になる。
"怪しい少女がいる"との報告を受けて、制圧へやって来た隊員達を感電させながら、シエンタは通路を進む。命は奪っていないだけ、他の歴史是正機構構成員よりは優しさも感じられる。

「面白くないな、もっとボクに相応しい相手を寄越すんだ」

挑発的な台詞を言い放つ彼女の表示は、まさしく余裕といったところだ。戦略的には楽に進めた方がよいというのに、強敵の登場を望むのは、その性から来るものか。
ああ、そうだ。キラーもいつでもここへアクセス出来るようにしておかなければならない。歩きながらスマホのアプリをいじり、彼専用の回線を解放しておく。
ただし、一つだけトラップを仕込んで。これを取って転送されると、例の女性型ボディに強制変更されるという、相手からすれば非常に邪魔なプログラムを、彼女はこっそり起動させたのだ。

>ALL、(キラー・テンタクラー)

1ヶ月前 No.912

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_Swk

【大統領官邸/正門/ストラーヴ】

金銭、それは分かりやすく人の欲を煽るもの。金があれば何でもできる、そう言った言葉が生まれてしまうほどに社会において万能性を保持しており、大よそのものはその対価として金銭を要求するほど。
だからと言って人の目の前で浅ましく、他者を蹴落としながら煌びやかなそれに集る人間はそういないだろう。そう、それが通常の状態であるならば。職務に忠実な連盟の隊員が金品に惑わされるなど異常でしかない、そんな異常を引き起こした元凶にそっと寄り添うような影が一つ。
紅潮した頬、剣槍を杖のように扱いながら足を震わせる僅かな歩み、荒く艶めかしい吐息、明らかに寒さだけが原因でない様子の彼女もまた、その元凶に欲望によって忠実になっていた。人恋しく求める少女に、求めるように後押しを。
荷台に群がるそれらに視線も向けずに、その熱を持った視線はその元凶へと向けられていた。悪魔的に微笑む姿すら魅力的に彼女には映っているのだろう、ぽたぽたと液体の道標を作りながら近付く。

「エステル、エステルぅ……」

甘い猫撫で声、嘗ての彼女を知る人物が見ていたならば確実に驚愕するであろう蕩けた声色を出す、尤も金銭に目が眩んだ連中にいる訳だが気付くはずはない。元凶、エステルの腕へと擦り寄りながら剣槍を手放しその柔らかな腕を自身の懐へと抱く。
自身の身体に擦り付ける様に刺激を与える、息の漏れる様な可愛らしい声をあげながらエステルの掌を徐々に下腹部へと押し進めていく。衣服の上からであるが十分な水気を感じるその部位に執拗に刺激を与えようとする。
本格的に熱中しそうになる前に彼女はエステルの腕が寒さで震えていることが分かった、震えは不規則な刺激を生み出す為悦ばしい事だ。だがそれではエステルに捨てられてしまうかもしれない、今度はいなくなって帰ってこないかもしれない。
自身の頭部の位置に肩があるほどの身長差、しかしコートを肩から掛ける程度は少し背伸びすれば問題ない。エステルにふわりとコートを羽織らせれば満足気に再開しようとする、が予想以上に寒かったようで羽織ったコートに包まる様にエステルへ密着する。
そのままエステルの柔らかい肢体に抱き着けば、自身の身体を揺り動かし僅かな悦楽でも得ようとする。人肌の温み、それこそ彼女が求めた物でありエステルに教えられその先を知った。欲望に忠実な今の彼女は、ただ受けた快感を再び得ようと求める。
先に部屋へと戻ったエステルに我慢できなければ今夜はお預けと言われたことなど頭から抜け落ちている、ただエステルに愛されたい、もっと求めたい、人の温かさを感じていたい、彼女が求めているのはその部分である。

「ねえ、エステルぅ……してぇ……もっと、愛して……」

潤んだ瞳で見上げながら嘆願する、離さぬ腕は彼女がエステルに愛されたいがために未知の感覚を教え込まれた部位へと的確に刺激を与える。自己主張の薄い胸部、柔らかくも引き締まった腹部、熱を持った下腹部の奥、水気を持った秘所、その全てがエステルによって教えられたもの。
切なく、一時の頂を再び得たいが為に自己主張をし始める。彼女が求めるものは違っても、未知の感覚を長きに渡って教え込まれた身体は否応が無しに渇望してしまう。温かく、熱の持ったそれは色を知らぬ彼女に魅力的過ぎたのだ。
だから、本当に求めていた人との触れ合いでなくとも彼女は求めてしまう。エステルは愛してくれる、エステルは気持ちよくしてくれる、エステルは知らない事を教えてくれた、それが本来歓迎されるものでなくとも彼女は求めてしまったのだ。
故に、間違っていると知らず、それが愛だと、それが人の温みだと、錯覚してしまっているのだ。愛されるとは身体を重ね、互いを高めあう事だと、何も知らぬ彼女がそう勘違いしてしまっているのだ。それを正す人間はこの場には居ない。
耐えきれなくなったのか、乞う様にエステルの腕を小さい舌を這わせる。自身の秘所を押し当てた指や掌を舐めて綺麗にする、エステルがそうしていたから、そうすればまた愛してくれるから、だから迷いなく彼女は求める。

「んっ、エス、テル……寂しい……足りないよ……」

憐れだと思うだろう、エステルの本性を知っていればいつかは捨てられるのだ。どれだけ尽くそうと、どれだけ愛されようと、飽きられればそれでお終いだ。遊び飽きた玩具にそれ以上の価値はない、そして玩具はそんなことなど分からない。
愛玩、遊んで弄ばれてお終い。彼女の求める愛は、人の温みはエステルも持っているだろうし現に与えていただろう。だが常人のそれとは趣が異なろう、一途に大切に扱われるなど今の彼女には有り得ない、時限的な愛でしかない。
本当に求めたものがこれなのか、彼女はその疑問を抱かない。気持ち良いから、愛してくれるから、温かいから、そして全てを忘れられるから。忘れたくないものも、あの一瞬だけは柵から解き放たれるから。
大きく身体が跳ね、力が抜ける様にエステルへと凭れ掛る。しかし抱く腕は既に下腹部へと押し当てられ、綺麗にした指や掌はまたも水気を帯びていた。まだ、足りない、そう呟く声がした。
それはそうだとも、一人で慰めようと埋まる訳がない。満足したのはエステルが遊びであっても本気で愛していたからだろう、愛でていたとも言い換えられよう。そう、他者に満たされる悦びを知ってしまったのだ。
だからもう戻れない、一人で人を寄せ付けずに過去を守っていた彼女には戻れない。一緒に居て楽しいと思えたものを二度も遠ざけられるわけがない、もう誰か無しでは彼女は生きてはいけないのだ。
それが人間にとって普通だと、快楽に喘ぐ彼女は気付かない。既知を未知として、本当の未知へと至った彼女には何が正しいのかは見抜けない。ただ、この場に居るのは愛欲に狂った獣のみ。

>>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール

1ヶ月前 No.913

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【サシャ本体様から許可を頂いたうえで移動させていただきます。なお、ロル内に登場するドロイドの型番は、スレ主様に教えていただいた設定によるものです】

【時空防衛連盟本部/救護室/シフォン・ヴァンディール】

危険に巻き込んでしまった二人の魔族への謝罪を終えると、シフォンは慌ただしく事件への対応に当たり始める。鳴りやまない端末、続々と押し寄せる情報の波。
予てから政府官僚達には不穏な動きが見られ、大統領殺害に際してセキュリティが無力化されていたとのこと。行き当たりばったりの犯行でここまでスムーズにいくわけもなく、裏には緻密な作戦の網が張られているとみていい。
して、その謀略の主が誰なのかを考えたとき、歴史是正機構か一部の官僚と見るのが妥当だろう。だからこそ、シフォンは強い衝撃と動揺を感じずにはいられなかった。
当然だ。なにせ大統領殺害の犯人は、地球軍時代の恩師たる老兵、ミシャール・ルクセンなのだから。極めつけは犯行の際に発せられたユーフォリアへの罵倒。
腐敗を取り除こうとして一線を越えてしまっただけだとしたら、彼女がそこまでする理由はどこにも見当たらない。ミシャールはあまり協力的でない地球軍に於ける数少ない良心。是正との戦いが始まって以降、兵器兵員の手配等で世話になりっ放しの恩人。
発言の数々は狂言に過ぎず、味方すらも欺かなければ成しえない目的のために動いているのだろうか…

麾下部隊への指示や戦力の分配を手早く済ませると、巡回中だった医療ドロイドに肩を貸してもらい救護室を訪ねる。目的は当然レオンハルトの容態を確かめること。非常事態の最中に私情を挟むのは褒められたことではないが、地球軍時代からの付き合い故にどうしても案じてしまう。

「ありがとう、AMBさん」

『プーッ、プーッ!』

「あら…ごめんあそばせ。AMB-53さん」

…ドロイドはフルネームで呼ばれないと機嫌が悪い。すまなそうに笑って名前を呼びなおし、軽いノックの後にドアを開ける。
よかった。そう口をついて出そうな程、不安と緊張に張り詰めていた心が緩んでいく。レオンハルトは既に意識を取り戻しており、安静にさえしていれば助かるらしい。
そう、安静にしていれば。周囲の医師達の様子からして、最低一回はここを抜け出そうとしたとみて間違いない。彼の性分はよくわかっている。溢れんばかりの正義感と行動力が、彼に無茶をさせてしまうのだ。
彼が寝かされているベッドの淵に腰かけ、最も知りたがっているであろう情報を伝える。サシャともう一人の魔族の生存、一行の避難に助力した者の存在。そして彼を戦いに駆り立てないため、未来で起こっている事象に関しては最低限。いずれも簡潔にまとめて。

「中世は貴方の勇気に救われました。未来は私(わたくし)に任せて。今は傷を癒すことに専念してください」

最後にそう一言付け加え、彼の宝物である一冊の歴史書を枕元に置いて立ち去る。書物の内容は中世を取り巻く情勢と、その行く末を巡る戦い。つい数刻前までは、魔族の殲滅による戦争終結の様が記されていたが、今ではこう書き換わっている。

"人間を信じる魔族と、その魔にあらぬ心を信じる者により、世界は変わった"と。

>>レオンハルト・ローゼンクランツ


【たった一瞬ですがお願いしていた絡みをさせていただきます!レオンくんがこのまま寝ているはずもなく…】

1ヶ月前 No.914

正義の執行者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【時空防衛連盟本部/総統室/ダグラス・マクファーデン】

 人類と魔族の和睦――本来の結末とは、真逆の形で終着を迎えた中世から帰還を果たしたダグラスが真っ先に向かうは総統室。歴史是正機構との戦いに備える為にも、"叛逆者"である自分が持ち得る情報を徹底的に開示するのは非常に重要な事だ。今後の敵の動向を推測し、確固たる対策を行える事は、組織の命運を繋ぐ強力な鍵になる。それだけに、情報を明確に伝えられるだけの余裕が欲しかったのだが。
 部屋の中へと足を踏み入れ、報告を開始しようとしたその時の事。緊急ニュースの配信によって唐突に鳴り響く端末が、それを遮る形となる。ユーフォリアと同様、端末を手に取り通知欄を確認すると、其処に記されていた文面は現大統領が官邸にて暗殺されたと言う物。続いて室内へと飛び込んで来た部下の情報から、ミシャールが大統領と接触していた事、ユーフォリアへの暴言と共に時空防衛連盟へと宣戦布告を行ったと言うのだ。俄かに信じ難い話ではあるが、恐らくは事実なのだろう。真相を確かめんとして、大統領官邸へと向かおうとするユーフォリアを追い、途中で鉢合わせとなったライドウに会釈すると、再び彼女の背を追って行く。

「本当かどうかは、行けば解る事だろう。そして事実であるのならば……お前が、あの人を止めるんだ」

 "ミシャール・ルクセン"。彼女の人となりがどういう物であるかを、彼は良く知っている。であるからこそ、彼女が引き起こした今回の一件にも、何かしらの考えがあっての事だと考えた。だが、それをユーフォリアは必ず"間違い"であると断ずる事だろう。ならば、伝えるべき言葉は唯一つ、お前自身の手で彼女を止めるべきだと。
 それを伝えると、官邸への経路を移動するまでの間、歴史是正機構の中でも特に影響力の高い人員の名を一つずつ挙げて行く。元地球軍少佐、現歴史是正機構"副将"のヴァルガス・スターンを始め、様々な人名を挙げて行った後。一番最後に伝えると決めていた、一人の将官についての話へと、話を突入させる。

「必ずあいつとは対峙する事になるだろう。だから、覚悟を決めておいてくれ。そして、"止められない"と判断した時は……俺が、この手を血で汚す」

 ――"フォルトゥナ・インテグラーレ"。歴史是正機構丞相、ヘルガ・アポザンスキーが雇用した、対ユーフォリアの隠し玉。詳細的な個人情報をダグラス自身は知らないが、ユーフォリアであれば十分に把握している事だろう。そして、彼女は必ず接触して此方を殺しに来る。それを止められるか否かは、現状解らないが。もしも止められず、殺さざるを得なくなったのならば。その時は、自らの手で彼女に引導を渡す。血の繋がった者を殺める罪を、親友には背負わせまいと思慮したからこその、宣言であった。

>ユーフォリア・インテグラーレ (17代目葛葉ライドウ)

1ヶ月前 No.915

贖罪の山羊 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【大火傷から復活の山羊】

【大統領官邸/核シェルター/ミルグラム・ゴート】

 美しい物は人を惑わす存在だ。
 宝石は奪い合い血を流す。
 19世紀に実在した絶世の美貌を持つピアニストは、人智を越えた技巧も相まって聴衆を倒れさせた。
 美女は政治の重要人を惑わし、国をも崩壊させる。
 そんな醜態を晒している状況になっているのを想像するとミルグラムはひどく興奮した。
「あの毒婦の力は本当にたまんないねえ」
 ニヤリと口角を釣り上げて、コツコツと蹄を軽快に鳴らす。
 そうだそれこそ人間だ。
 全ては綺麗事、全ては上っ面。
 汚物は誰かに押し付け綺麗事を演じているイキモノこそ、人間の本性だ。
 だから"彼女に助けられた時"嫌悪した。
 人間はそうではないと。
 心からの救世? 怨み辛み事を吐かず清く散った?
 そんなものくそ食らえだ。
 あの英雄狂の信仰が反吐が出る、こっちは村人の罪を全て背負い英雄(いけにえ)として解き放たれた自分からすれば憤怒しか沸かなかった。
「ちっ、大嫌いな相手思い出した」
 舌打ちをすると、時々遭遇する軍人を呪殺しながらも、核シェルター前へと辿り着く。
「さて、久しぶりの大仕事一丁やるか」
 あの時はたまたま味方が入った為、使えなかったあれを実行する。
 贖罪達の影を複数出現させて、モノクルの鎖をちゃりんと揺らして、高らかに下衆い笑みで言った。
「藁にすがりに来た奴らの絶望顔が楽しみだな!」
 嘲笑、嘲笑。指を鳴らせば黒い霧が核シェルター前の通路を充満させる。
 これはテロだと、混乱でここに避難してきた官邸職員を皆殺しができる寸法だ。
「ハハハハハッ! 惨めだな、政治家諸君。汚職で無罪のやつに罪を背負わせたてめえらは、ここでたっぷりと怨み辛みを味わいながら死ねや!」
 適材適所とはこの事である。
 人のせいにして生き延びている人間の自業自得に溺死する様子が好きで好きで堪らないミルグラムにとっては、格好の獲物だと黒霧の核シェルター前でそう物語っていた。
>ALL

1ヶ月前 No.916

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/救護室→発着プラットフォーム→大統領官邸/公邸/シフォン・ヴァンディール】

報告を済ませ、中世を救った英雄の心意気を受け継ぐと、急ぎ救護室を後にする。去り際のウインクは奇しくも古代でのものと対照的。あの時はレオンハルトに後を託したが、今回は真逆だ。自分も彼と同じ道を辿る覚悟を決め、プラットフォームへと急ぐ。

「私の船を出しなさい」

道中、慌ただしく動く整備員に命令する。鬼気迫る表情に圧倒された整備員がバタバタと奥へ駆け込んでから僅か一、二分でソレは姿を現した。
小柄ながらも全体的に鋭く、煌めく白銀の機体は美しさと威厳に満ち溢れている。極めつけは両翼と機首に走る真紅の塗装線だろう。ただでさえ目立つデザインを更に際立させている。
他でもない地球軍時代の愛用機。やや前時代的ながらその性能は尖っており、特にドッグファイトでは無類の強さを誇る制空特化機なのだ。
敵戦力に戦闘機や爆撃機が含まれていたため、この度は航空部隊にスポットが当たった。シフォンも軍人だった頃の経験を活かし、部隊を引率して目的地まで向かう。



目的地が近づくにつれて増していく異様さ。無人機の数が尋常ではない。これだけの戦力を手配できる人物を一人、シフォンは知っている。
こちらの接近を察知した数機が攻撃を仕掛けてくるが、どこか散発的で明確な敵意を感じられない。機械なのだから当然だろうが、例えるなら標的は他にいるような…
部隊に散開を命じると庭園に着陸し、官邸内を急ぐ。その時だった。

「ダン・マッケーニ・バビロン…」

シフォンの視界に一人の男性が映る。非常事態にあってなお、ワイン片手にどかと座り込む姿…まさに大御所。しかし彼の本性はその程度では済まされない。若くして金と政治の世界を知り尽くし、黒い噂や不穏な異名に事欠かない怪物。
覇道を闊歩するダン・マッケーニ・バビロンが選んだのは、よりにもよって歴史是正機構。ブレーキの利かなくなった人間に宿る刹那的な輝き…カゲロウのように儚くも、超新星の如くインパクトに事欠かないそれこそ、彼が何より愛してやまないもの。
彼にとっての世界とは、英雄譚が生えてくる耕地でしかないのだろう。そしてその上で起こる事象は全て、芽を出させるための種。雨。養分。必要とあらば種を水に浸してから埋めてやる。"見たいものを見る"ための投資を惜しまない。

彼を浄玻璃鏡の前に立たせれば、鏡面には無数の亀裂が走るだろう。閻魔は顔を覆い、司命と司録は嘔吐も禁じ得ないに違いない。
業が深すぎる。この魔人、いや魔王にかかれば、神ですらもその座を追われてしまう。

意を決し対峙するシフォン。命に替えてもこの男を廃さなければならない。親友の望む世界を実現するにあたり、ダン・マッケーニ・バビロンという男は、あらゆる面で障害となって立ちはだかるのだから。

>>ダン・マッケーニ・バビロン


【絡ませていただきます!】

1ヶ月前 No.917

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【強敵じゃなくてすまんの。
 面白そうな展開になると思い。絡ませいただきますねー】

【時空防衛連盟本部/休憩室→通路/ショパン】

 好きにしてもいいが、今回の相手の意図が読めないという複雑な感情を持ちつつも、ジョリー3が待っている自室へと肩布を揺らしつつ辛そうな表情で歩いている。
 職員達が慌ただしく行き交う、戦闘の手配だの避難先の手配だのと緊急事態に関しての言葉で満たされていた。
(……ジョリー3は無事なのかな)
 それなりに愛着を持っている、旧式とバカにされているジョリーに模したアンドロイドの安否を祈ると、一人のネコミミフードを被った少女が向こう側から歩いているのを見た。
「……」
 ショパンはほぼ人との交流を断っていた為、少女は職員の一員かと怪しまずに素通りしようとしたが職員達が唸り倒れているのを見かけ、白いブーツは止まる。
 どくんどくんと高鳴る胸、まさかこの風景を作り出したのは本当に少女なのか。
 だとしたらとんでもない貧乏くじを引かされた。
 あの少女が敵ならば、自分の運の悪さに反吐が出る。
 背を向けている少女に勇気を出してたどたどしく小さな声で問いかける。
「……君がしたの?」
 もし、問答無用で攻撃を仕掛けてきたらムジークで対抗する。
 戦闘になる覚悟を決めると、一呼吸置いてから話を進める。
「もしそうだったら、何しに来たの?」
 まずは目的を聞こう、相手の狙いはなんだ。
 過去改変の為に行動していた相手はなぜ現在を変える行動をしているのか、どうしても知りたかった。
「……抵抗するなら。僕も抵抗するよ」
 実害があるならばと、敵意を証明して白いライダーシャツを纏った細い右腕はいつでもタクトを掲げられる姿勢に入り、レンズのような円形が瞳孔を囲っている憂いの双眸で相手を見下ろして、ただ静かに相手の様子を伺っていた。
 ショパンは知らない。
 この少女はかつてオンラインゲームで知り合い、友人となった彼女本人だと―――――――
>シエンタ・カムリ

1ヶ月前 No.918

改変の副産物 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/通路/マシュマロ・ヴァンディール】

たいへん、たいへーーーん!

ゴスロリ少女が駆けずり回る。主力の面々が中世での戦いで疲弊した隙を突き、歴史是正機構が大作戦に打って出たのだ。彼女の慌て様もおかしくはない。
後手に回り続けた末路と言えば間違っていないが、本来味方であるはずの勢力にそっぽを向かれながらも抗い抜いた結末としてはあまりに無情。故に戦士達は抗い抜く。
もちろん彼女もその一員なのだが…周囲からは奇妙なモノを見るような困惑の視線が注がれる。当然だ。こんなヤツ、つい先日までいなかったのだから。
誰も彼女を知らない。苗字こそここで司令官を務める人物と一致しているものの、当人もやはり彼女を知らない。

マシュマロ・ヴァンディール…突如として姿を現したミステリーの塊。その正体を端的に言ってしまえば、歴史改変がもたらした副産物。本来生を受けるはずのなかった人物が命を吹き込まれた。
時空改変を阻止すべく尽力する組織に、その賜物が入り浸っているとはなんという皮肉だろうか。とはいえ、属性魔法に長けた彼女は貴重な戦力。特に窮地に立たされた連盟にとってはなおさらだ。

「あれっ!?しー!?しーだよね!?」

侵攻を図る敵を撃退しながら進むうちに、同年代くらいの少女とばったり出くわす。驚き飛びのくが、すぐに自分のよく知る人物だと気付き、マシュマロの顔は喜色がぶちまけられたかのようにほころんでいく。
シエンタ・カムリ。周囲と一線を画す頭脳と、年齢不相応なインターネット関連の技術を誇る天才ハッカーだ。マシュマロとは幼馴染で同じ学校に通っていたが、現在では不登校になってしまっている。
『しー』というのはシエンタのくだけた呼び方か。古くから彼女を知っているため、敵と疑うこともない。それどころか再会の喜びに感極まって、今にも泣きだしそうだ。

「助けに来てくれたんだね!会いたかったよ〜…」

このままでは滝のような涙になって表れようかという感動。その発散法は、よりにもよって幼馴染に抱きつくことだった。全力のダッシュから飛びついて両腕を背中に回し…結局泣いている。

さて、大きな大きな問題が二つほどある。一つはシエンタが歴史是正機構所属、即ち敵ということ。そしてもう一つ…もしかすると一つ目より残酷かもしない。

ズバリ、シエンタはマシュマロのことを知らない可能性が極めて大きい。これに関しては何も彼女に限った話ではないが。生みの親から兄弟、親戚、果ては友人までもがマシュマロを知らない。
本来生まれるはずのなかった人物のことなど、誰も知りはしない。

>>シエンタ・カムリ、(キラー・テンタクラ―)


【絡み失礼します!】

1ヶ月前 No.919

炎獅子 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【時空防衛連盟本部/救護室→大統領官邸/公邸/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 救護室の白き天井と対峙すること十数分。外の世界の喧騒とは隔絶された空間で過ごしていると、ドアの開く音と共に室内へと足を踏み入れる者が一人。その正体は、此方の認識では古代での一戦以来の再会となる、同じ司令官にして元上官の、シフォン・ヴァンディールであった。彼女は此方に近づくと、自分が寝ているベッドの淵に腰掛け、今知りたいであろう情報を的確に伝えてくれた。
 サシャもレプティラも無事に生きている、その言葉が聞こえた瞬間、深い安堵を覚えた。別れの言葉を交わせなかったのが悔やみではあるが、彼女達が生きているという事実だけでも十分だ。退避に協力してくれた者にも感謝しなければならない。彼女の協力が無ければ、自分達は敵地に取り残されたままだったのだから。

「…………ええ」

 そして、未来で今何が起きているのかを簡潔に説明すると、この時代は自分に任せ、貴方は安静して傷の治癒させる事に専念して欲しいと最後に一言告げて、枕元へと一冊の歴史書を置く。それは自分が大事にして来た宝物の一つ、中世を取り巻く情勢とその行く末を巡る戦いを記した物。ウインクと共に部屋を去って行くシフォンを見届けると、再び静寂に閉ざされる中で本を読み進めて行く。其処に記されていた最後は、本来の形から大きく変化して。人を信じた魔族と、魔に非ざる心を信じた者によって、世界は変わった――その事実が、記されていた。

「…………まだだ。俺はまだ、戦える」

 自らの勇気が、中世という時代を救ったという言葉に偽りは無く。だが、この未来をも救わねば全てが水の泡と帰す事を知っているからこそ。此処で立ち止まる事を、善しとはしない。嘆く人々の涙を拭い去り、笑顔で満ち溢れさせるが為にも、"英雄"は戦わねばならないのだから。例え自らの全てが灰になろうとも、"太陽"を目指し続けなければならないのだから。
 故に、激痛が身体に奔る事さえ厭わずに、全力でベッドから立ち上がると、医師達の再度の制止を振り切って自室へと向かう。そして息を切らしながらも其処へ辿り着くと、身に纏っていた病衣を脱ぎ捨て、これまでとは別の軍服を代わりに纏い、その上から裏地が赤の黒マントを羽織り、戦支度を整える。最後に、歴史書を再び元の場所へと戻すと、自室を出て、そのまま時空防衛連盟を後にする。

 中世の時同様、部下を引き連れる事無く、目的地である大統領官邸に辿り着くと、美しく整備された庭園を突き進み。官邸内を急ぎ足で行く事、数分。この両眼が捉える視界の中に映ったのは、一人の男と、それと対峙するシフォンの姿。赤々と満たされたグラスを片手に、非常事態を物ともしない男の正体を、彼は把握している。
 "ダン・マッケローニ=バビロン"。黄金王を始めとする数多の異名を持つ、若き怪物。若くして世界の支配権の一部を手中に収め、常に黒い噂が絶えず。その存在は偏に言って、廃さねばならぬ紛れも無き邪悪。彼の生ある限り、数多の人々が犠牲となって行くだろう。それを理解しているからこそ、問答無用で殺しに掛かるのだ。

「ダン・マッケローニ=バビロン……! 明日を生きる人々の為にも、此処で朽ち果てて貰うぞ……!」

 即座に実体化させた焔剣を構え、両者が対峙する中へと飛び込み。赫奕たる焔を撒き散らしながら、男の眼前へと躍り出ると。叫びと共に、その身体を一刀両断するべくして頭上へと刃を振り下ろす。

>ダン・マッケローニ=バビロン シフォン・ヴァンディール


【絡ませていただきます(太陽を目指して燃える音)】

1ヶ月前 No.920

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【今はふざけてる場合じゃない(解除)】

【時空防衛連盟本部/通路/キラー・テンタクラー】

どうやらシエンタのやる事と言うのは上手く終わったようだ、もちろんこの間、キラーは初めて感じる味覚と言う物の素晴らしさを文字通り噛み締めていた、それは傍から見れば、彼だけ仕事をまるでやっていない無能にしか見えないが、実際は無意識下でドローンウィルスが複数でシエンタのサポートを行っている。
もっとも、それらはドローンウィルスが「完全自動」で動いているからであり、キラーは結局仕事をすべきときにやっていない無能なのかもしれないが、それはさておき、居るだけで一定の成果は持ってくるのがキラーと言うウィルスだ。

さて、敵地に侵入するのに自分が付いていけば、結構目立ってしまい、結果的にシエンタの邪魔になってしまうので、シエンタが入り口を作って、そこを通って自分は向かう手はずになっている。
その間にキラーはこのプログラムの解除方法を即興で作り上げつつ、彼女からの合図を待つ。
そして、その時が来たようで、リンクが上手く繋がった、ならばと、キラーは自らを電脳化し、電子の世界で自らの身体を元の身体に戻しつつも、ほとんど瞬間移動に近い形で、シエンタの端末へと移動する。

シエンタの手に握られている端末の液晶から、無数のクリスタルのような形状をしたドローンウィルスが飛び出し、コアと砲門に当たる部分を赤く光らせながら周囲を見渡す。
……どうやら既に敵が居るようだ、シエンタと自分は最強とは言っても、単騎でやらせると万が一がありうる、最初から戦闘モードで。

と、覚悟を決めてキラー本人が実体化すれば……例の女性のボディでこの場に現れる。

「……? ッッッ――!!」

キラーにとってシエンタに見られるだけならまだしも、赤の他人にこのボディを見られるのは屈辱の極みだ。 そりゃそうだ、この服装は、明らかにアレなのだから。 ダイビングスーツですとでも言えば誤魔化せるか? いや、それはそれでおかしな話だ。
とにかく、とにかくだ。 この重要局面でこんな事をするとは。

と、キラー、いや、アイシスは赤面しながらへたり込むが、すぐに思い出したかのように解除プログラムを起動。 あのクリスタルの集合体のような化け物染みた姿へと戻る。
そして、敵に攻撃を……仕掛ける前に、自分の腕を変形させて小さなハンマーを作り、シエンタに一撃。

「――遊んでる場合かボケッ!!」

解除プログラムが無かったら戦闘力が著しく低下した状態でやりあうハメになったぞ、とキラーは怒り、シエンタが痛みを感じはするが、戦闘に支障が出ない程度の絶妙な加減で頭を殴った。
困惑するようにコアを本体であるキラーに向けるドローンたち、そしてキラーは咳払いをして、敵である男に向き直り、改めて挨拶を……しようとした瞬間に敵が増えた、しかも。

"C? ってだれだ、クラスターでも居るのか?"

そんな言葉を発した瞬間、シエンタに誰かが抱き付いた。 それは、少女、シエンタと同じぐらいの。 だが、ここに居るという事は、敵のはず。 敵のデータの中には載っていないが、同時に味方のデータにも載ってないので、必然的にこれは敵か中立の存在、そして中立に媚を売る気はキラーに無かった。

「……シエンタ、一応聞くぞ、それはお前が私にやったようにして作り出した友人か妹か何かか? そこまでお前は飢えてたのか、幾らなんでも"しー"と呼ばせるとは、なんだか情けなさ過ぎるぞ。 そうでないなら、さっさと消してしまうが」

だが、可能性もあったので、シエンタに一応問いかける。
まさか自分にやったようにして、この女もお前が作り出した、孤独を癒すための存在なのかと。 自分に隠してこそこそこんなものを作っていたのなら「情けなさ過ぎる」と、キラーは冷笑をシエンタに送るが、次の瞬間には、自らの腕をキャノン砲へと変形させて。

そうでないなら、消してしまうが、と冷酷に告げた。 彼の優しさは、友人と見た者にのみ適用される。 彼は、軍用ウィルスであり、本来、殺戮と混乱をまき散らす存在であるから。

>シエンタ・カムリ ショパン マシュマロ・ヴァンディール

1ヶ月前 No.921

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【時空防衛連盟本部/訓練施設→エントランス/橋川 清太郎】

走る、闇雲に走る、我武者羅に走る、一心不乱に走る。

(頼む、間に合ってくれ!)

先程、明らかな銃声やら何やらが聞こえたため今は大急ぎでその地点へ向かっている最中だ。スラスターも併用しての移動なので生身のそれより遥かに速い。誰かと衝突する危険性も当然あるが、今はそんなことに思考を割いている余裕はない。
まさか本部に直接襲撃をかけて来るとは、大規模な任務の直後で連盟全体が疲弊している事情を知られていたとしても、なお十分に大胆といえる。

(考えられるのは、頂上決戦くらいかな……)

だとすれば、この本部施設が崩壊する程の戦闘も覚悟しておくべきか。
ほどなくしてエントランスへ到着、しかし目の前に広がる光景は己の望んだものとは大きくかけ離れていた。

「……くそ…………」

頭部装甲の奥で顔をしかめる。自分に明確な責任がないことは理解しているが、それでも自責の念は滲み出てしまう。
やや遠目に見える、黒い人型を中核とした機動兵器郡を睨みつけた。誰がどう見ても奴等の仕業なのは間違いない。
ハンドガン型武装・ORW-HG-1129-StrikeDogを転送、装備し未だ進軍を続ける機動兵器郡に向けて連射する。
恐らくあの黒い人型が司令塔であり戦力の要だろう、あれさえ破壊すればこちら側に戦局を傾けることが出来る筈だ。だがここで功を焦ったりはしない、先ずは牽制射撃で相手の出方を見る。

>>ワーロック


【絡ませて頂きます】

1ヶ月前 No.922

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 始まった、始まった、始まった!
 開幕の鐘が大統領の絶叫無き死でもって鳴り響いた。
 堰を切ったかのようにどっと始まる革命の嵐を前に、無力な官僚達はただ逃げ回るのみしかできない。
 歴史是正機構の侵入に伴い、その場から逃げ去ろうとする者達がかたっぱしから肉の塊へと変えられていく。
 実に面白い。実に愉快だ。
 此処にこそ英雄の種はある、光の目はある。闇を照らす勇敢なる少年少女の魂の輝きがある。
 超新星爆発の一瞬の煌きのように――鮮やかに、燃え尽きる英雄達の神話が!

 彼は、彼の愛する者のためだけに動く。
 人類論とか使命とか理論とかそんなものは極論二の次でしかない。
 彼は愛している。この激変を。
 この激変の中で生きる、人類という宝石を――。

「よぉ、シフォン・ヴァンディール少将?
 ……いや、もうその名は不要かな? ともかく、プライベートで会うのは初めてだなぁ」

 銃声と絶叫の聞こえる向こうより現れるその姿を視認し、口元に笑みを浮かべる。
 地球軍に所属していた頃の彼女の歯に着せぬ物言いぶりは知っている。
 それを良く思わぬ者たちが定期的に嫌がらせを仕掛けていた程だ。
 立場も何も関係はない。良く言えばまっすぐで悪く言えば融通が利かない女。
 後年、一方的に地球軍を脱退し親友の助けになろうと時空防衛連盟に下った部分も含めて――バビロンは好みの部類であった。
 夢に向かってただ真っすぐに走るその姿、悪くはない。

「だが、残念だ。
 アレから来た話がなければ、今すぐにでも俺はお前と語らっただろうよ。例えば――」

  、   インテグラーレ家の確執
 今は、最も素晴らしく輝かしい英雄達が熟すまで待つ時であるのだ。
 前菜ではしゃいでもいいが、今はお前のために体力は使えないと告げようとして――。

「ユーフォリアの――っとぉ!?」

 飛び込む赫爛の刃。空間を切り裂く熱量が、瞬時に前へ躍り出た青年の手により振るわれた。
 轟と吹き荒れる灼熱の嵐――燃ゆる太陽の如し神剣を前に、大きく後方へ飛びのき回避。
 麗しい美女との対談に割って入る無粋な輩は誰だ。
 顔を見る。視認する。
 最初は誰だか判断すら出来なかった――。

「――……まさか、レオンハルト少将か?」

      、   、   、   、 ・・・
 ――そう、自分の知るあの男はこのような英雄然とした目つきをしていたか?

 自分の知るあの男は現実と理想の狭間で擦り切れた後に破裂していた。
 軍の視察に伴い練習場に訪れていた時のあの男の顔は、もっと疲れ切っていたはずだ。
 取るに足らない存在だ。
 囁けばすぐに失墜する哀れな端役でしかなかったのだ。

 だが、彼のあの瞳はなんだ?
 邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ――燃える炎を宿した紅の瞳の奥に宿すその感情。
 好漢ぶりを見せていた彼は、しかし軍事になれば表情を変えることまでは分かっていた。
 だがその時ですら、此処までに……そう。

 邪悪を滅ぼす死の炎、腐れ切った都市であるソドムとゴモラを焼き払う灼熱のように。
 ・・・
 悪の敵を体現するような立ち振る舞いを――していたか?
 其処まで思考したとき、バビロンはある結論に行き着いた。
 そう、――英雄譚を好む彼だからこそ奇しくも行き着いたソレ。

「……クク、ハハ、ハハハハハハハハッ……」

 それに気づいたとき、顔を覆い――しかし抑えきれぬ笑いを指の隙間から零し続ける。
 ああいう奴が相応しいのだ。俺が直々に応援して支援するのも一興。
 だが、ただそのためだけに己を灰にしてでも突き進む覚悟を持つ男こそが素晴らしい。

「ツイてる、ツイてるなぁ、オイ。運までは俺の異能<デュナミス>は制御しきれないが――。
 それでも、この世に神がいるのならば感謝したいくらいだ」
「物語の英雄<ヒーロー>みたいじゃあないか。そう、空想神話だ。
 現実神話と同じくらい、俺が愛してやまない絶対無敵のヒーロー……ハハ、ハハハハハハハハ!!!」

 呵々大笑、――公邸に木霊するバビロンの狂笑。
 ツイている。思わぬところで掘り出し物があったものだ。だから人生はやめられない。
 両者へ向き直るバビロン、……その身体能力が異能<デュナミス>によって大幅に引き上げられる。
 同時に纏われるは膨大な魔力の奔流。
 それも、シフォンとレオンハルトが用いる術式の根幹。

「気が変わった。認めよう、お前達は人類が誇るべき宝<ヒカリ>だ!!
 涙を明日の光に変えんがため、大志を抱く英雄達よ!!」

 大口を開けた大海竜<リヴァイアサン>は――よりにもよって彼らに白羽の矢を立てた。

「この俺が直々に前菜として相手してやろう……!」

 そしてどういうわけか、そう。
 、   、  、・・・・・・・・・・・
 お前たちに出来て俺に出来ないわけがないという無茶苦茶な理屈で再現した二人の能力<チカラ>を実体化。
 これより始まるは、ダン・マッケーニ=バビロンの「不敗神話」の具現。
 戦わずして勝者となるのがエステルとストライフならば、戦えば勝てるのがこの男。

「まずは小手試しだ。
 簡単に潰れてくれるなよ、レオンハルト、シフォンッ!!!」

 瞬間、公邸の床を突き破って隆起する大地が壁となり、彼ら二人の退路を封鎖する――レオンハルトの術式。
 迷宮と化した戦場へ、バビロンが放つは灼熱の嵐――シフォン・ヴァンディールの火炎魔術。
 狭まった迷宮にて縦横無尽に駆け巡る灼熱は、退路を封じられたシフォンとレオンハルトへ向けて無慈悲に襲い掛かる。

>シフォン レオンハルト

1ヶ月前 No.923

魔帝 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【魔帝城/深淵の間/魔帝ヴェルメイユ】

全身全霊を込めて放たれたヴェルメイユの一撃が、敵に傷を負わせることはない。むしろ、相手が発動した術式によって、体力の回復に利用されるという最悪の結末を迎えた。
ハザマは嗤う。これこそが、自分が待ち望んでいたことであると言わんばかりに。完全に冷静さを欠いた魔帝は更に激高し、絶え間ない連撃を仕掛けようと再接近するが……
そこで、ギラードの言葉が彼女を現実へと引き戻した。何をやっているのだ、自分は魔族の全てを背負いし者。その行動は、付き従う者全てに影響を与える。
今ここでヴェルメイユが復讐に走ることを選べば、魔族もそれに追随するだろう。それでは、何も変わらない。和睦どころか、余計に戦争が激化する羽目となってしまう。
落ち着け、落ち着くのだ。今すべきことを考えろ。憎悪に囚われるのではなく、あくまで冷静に。周囲を見渡してみれば、そこにいるのは頼もしい二人の味方。
独りよがりになる必要はない。彼らと協力すれば、必ず道は開ける。一つ、大きく息を吐き、きっと目を見開き、大蛇を見据えるヴェルメイユ。もう、迷いは晴れた。

「お前が全てを食い滅ぼすというのなら、私は全力を持ってそれを止めてみせよう」

これは、未来を掴むための戦い。遠い未来、人間と魔族が別け隔てなく暮らせるような時代が、きっとやって来る。しかし、それを実現するためには、この戦いにおける勝利が必要だ。
アンナローズの視線に、ヴェルメイユもまた視線で応える。精霊の力を引き出した彼女は輝く虹を具現化させるが、何かが欠けている。なるほど、足りないものは、闇か。
それならば、自分が動かない理由はないだろう。幸いなことに、ヴェルメイユの得意とする属性は闇。彼女の虹を補完し、完全なものとするには、これ以上ない組み合わせだ。
大鎌の切っ先に、闇の炎が灯される。身体を回転させながら放たれる回転斬りと共に、黒炎はまるで火炎放射器のように加速し、一直線にある方向へと突き進んでいく。
それは、アンナローズが放った虹の光。不完全だった虹は、ヴェルメイユの虹が加えられることによって完全なものとなり、荒れ狂う大蛇とハザマを止めんと襲い掛かる。
代償は決して小さくはない。攻撃に集中した彼女は、ヨルムンガンドによって脇腹を抉られ、鮮血を撒き散らすと共に片膝を付いた。これで、敵が倒れなければ状況は厳しくなる。やれることはやった、後は運を天に任せるのみ。

>ハザマ、アンナローズ・フォン・ホーエンハイム、氷魔像ギラード

1ヶ月前 No.924

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/公邸/シフォン・ヴァンディール】

口許に嫌な笑みを浮かべて語り掛ける怪物を、一瞬たりとも目を逸らさず睨めつける。その瞳は色彩こそ優しさと柔らかさに満ちているが、内には使命感や覚悟、敵愾心といった己を駆り立ててやまない熱を秘めていた。
これは挑戦。戦場に刻まれた伝説を愛するのがバビロンだとすれば、シフォンはその渦中でもがき抗い抜いて這い上がる。そして下克上を果たす。
当然不安はある。僅かながら恐怖もある。敵の全貌がまだ見えていないからだ。ただ一つ言えるのは、ヤツは単なる金持ちなどではないということ。その程度の雑輩はごまんといる。
彼らを蹴落として魔王の玉座に腰を下ろす男…黄金の輝きがその背後にあるものを包み隠す。眩しくも手を伸ばしたくなる光。その先に何が待ち受けるかは言うまでもないが。

無駄話を遮って攻撃を仕掛けようとした矢先、対峙する両社の間に割って入る紅き影が一つ。迸る灼炎は燃え上がる不屈の闘志の表れ。叩きつける剛刃は折れぬ心の具現。
確認しなくとも誰なのかわかる。治療に専念せよと忠告したはずのレオンハルトだ。彼が大人しくしているはずはないと察してはいたが、微塵も身体を休めずに出てくるとは思いもしなかった。
もう帰還を促しても聞く耳を持たないだろう。厳しい面持ちで口を開く。

「援護に徹します。貴方には指一本触れさせないわ」

その指一本ですらアウトなのだから当然。魔帝城で目にした彼の痛々しい姿…医師に身動きを禁じられた人間が、出歩くばかりか戦線に立っていること自体有り得ない。
そんな状態で一撃でももらえば、どうなるかは想像に難くない。故に自分は盾となる。彼を蝕むあらゆるものを跳ね返し、必ずや仲間たちの待つところへと連れ帰ってみせる。

狂笑の後に挑戦を受けたバビロンは、膨大な魔力を纏い立ちはだかる。悪鬼の如き威容、溢れんばかりの力…まるで強風を受けたかのように髪が揺れ、軍服がはためく。
小手調べと銘打って繰り出される火炎撃は、そそり立つ大地の障壁によって危険性を増す。従姉妹にあたるショコラ・ヴァンディールの十八番を彷彿とさせるが、それ以上にこの猛々しさには見覚えがある。
火炎魔法に関してもどこか既視感を孕んでいたが…今は関係ないことに思考を巡らせている場合ではない。
すかさずレオンハルトの前に滑り込み、右手に魔力を込めて振り払う。これを引き金に吹き荒れるは氷雪の妖の吐息・ブリザード。あらゆるものを凍てつかせ、命すら容易く奪う悪魔の帳に、炎如き消し止められないはずはない。

「私たちが人類の誇る宝なら、貴方は廃すべき人類の敵。

明日に光を灯すため、倒さずにはおかない…!」

語気を強め、再び右手に力を込めた後に前へ突き出す。魔力を握り込んで放り投げた、かいつまんで説明すればそうだ。赤黒い粉末が飛砂の如く降り注ぎ、腕を振り払うと共に次々と黄金の光を伴って炸裂する。
これなるはシフォン・ヴァンディールのお家芸とでも言うべき爆破魔法。広範囲かつ高火力、休む間もなく敵対者を苛む。爆心に身を重ねようものなら骨も残らない。

かかって来い、ダン・マッケーニ・バビロン。英雄譚が見たくば見せてやろう。お前を討ち取り、その首を掲げる英雄共のエピソードを。

>>ダン・マッケーニ・バビロン、レオンハルト・ローゼンクランツ

1ヶ月前 No.925

流水 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【時空防衛連盟本部/エントランス/ツバキ・オオトリ】

中世での決着が着いていない――即ち戦力の半数近くが出払った状況での襲撃。
この時点では完全に連盟が後手に回っていた。――いや、最初から連盟はずっと後手だった。相手の真意も次の行動も読めないまま、場当たり的な処置ばかりしてきたのだ。それで現場が収まったとしても、常に敵に一歩先を行かれていた。であるからに、この襲撃への備えの甘さもまた、彼方の想定通りと言うだけの事だ。

「しかし早いな。直に来る、とは予想していたが」

早々に派遣を切り上げて帰還していた第三部隊。その隊長である一人の女が騒動の中心部へと駆けていく。
女の名は『ツバキ・オオトリ』。司令官の個人的なスカウトで連盟に所属する運びとなった若者。他人を近寄らせない鋭利な空気を身に纏うが、しかしそれに見合った利発さと戦闘能力を持ち合わせる実力者だ。


相も変わらず無駄にきらびやかなシャンデリアが暢気にエントランスフロアを照らしている。その真下で、今正に惨劇が繰り広げられていると言うのに。
現場で持ちこたえていた小隊に駆け寄り、状況を確認する。

「他指揮官はいないか。それと、敵は此処にいるので全てか」

『はっ、インテグラーレ総統、ノブリージュ副総統、及び司令官、隊長共に皆不在です! 敵勢力については未確認ですが、このエントランスフロアから抜けた敵はまだ居ません!』

「全く……致し方ない。では、この場での指揮は私が取り持つ。他指揮下部隊も私に従え! 誰か、インテグラーレ総統に言伝を! エントランスフロアのシャッターを全て降ろしてエリアを隔離させる! 非戦闘員は地下へ待避! 一般戦闘員は小物の処理に徹しろ! 決して大型に近付くな、奴の視界から可能な限り外れろ! 二度は言わない、迅速に行動しろ!」

慌てふためく隊員達に檄を飛ばす。兵の指揮能力は貴重な才だ。他人を近寄らせない雰囲気を何時も醸し出すツバキ・オオトリと言う女だが、奇跡的にもその才覚があった。冷徹に過ぎる口振りも、この場では貴重な冷静さと見る事も出来る。

「君は精鋭隊員だな。小物の排除は他隊員に一任する。私達は集中してあの大型を落とすぞ」

おそらく黒金の大型機兵を対象に取っていたのであろう人物に声を掛ける。隊の制服を着用していない事から察するに、十中八九精鋭戦闘員だと判断して話を進めた。
精鋭は皆一騎当千の兵ばかりだ。個人で戦況をひっくり返す事さえある。彼女は、隊長である自身と彼の二人掛かりであればあの機兵を倒せると踏んだようだ。

「機械相手では昂らないが」

相手を素早く観察する。黒光りする外装と、あからさまに盛られた兵器の数々。体高凡そ3mはあろう巨体。古代時空で漆黒の機械兵器と遭遇戦を行ったと言う報告があったが、これがおそらくそうなのだろう。
報告によればアレは相当なやり手だ。単純な武装の火力もあるが、自身の幻像(imitation)を作り出す特異な兵装もあると聞いている。それ以外にも警戒すべき事柄は多い。迂闊に突っ込んだところで、蜂の巣になるのは明白だ。

「先付位にはなるだろう」

では此方から何が出来るかと言えば、『出来る事』をする事だ。この時点でも近付く事が不可能な訳では無いが、それはリスクを抑える努力をしてから、だ。

指で鉄砲の形を作り、機兵の真上、天井のある一点に向ける。狙いを澄ませて放つのは"水撃"。ツバキの能力は真水の生成。勢い、量共々自由自在に体から水を噴出させる事が出来る。司令官達や多くの精鋭の様な煌びやかさこそないものの、他人が想像する以上に彼女の能力で出来る事は多い。
指先からまるで大砲の様に勢い良く水流が噴射される。そして、水撃は"あるもの"を破壊する。

直後、機兵の真上から、夥しい量の水が降り注ぐ。出処は天井――破壊されたスプリンクラーだ。先の水撃はこれを狙ってのものだったのだ。
まさか機兵が防水仕様でない等と言う阿呆な期待は抱いていない。ただ、このまま降り注ぐ雨の下にいれば、アレが搭載する兵器のうち、純粋な火器の類いは使い物にならなくなるだろう。それを嫌って動くか、それとも水流など意にも介さないか。相手がどう出るかの観察目的に打った先手だ。
"敵を動かす"のは戦いにおいて基本中の基本。"攻める/守る"の話はそれからだ。
ツバキに指揮されて、隊員達も統率を取り戻して動き始める。狙いは徹底して小型の機兵。頭数を減らして行けば、微量であっても確実に被害を減らせる。それがツバキの判断だった。

>>ワーロック、清太郎

1ヶ月前 No.926

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


この世界に来たのは数日前だろうか、記憶に残る世界とはまた違った自然が極端に排他された人間が作った街。きっと私が生きて来た街はこうではなかったと何となく察することが出来た、こういった絡繰りや機械の扱いが全く出来ないのだ。
当てもなく、溢れる絡繰りの山にどうすることも出来ずに彷徨っていたら黄色い外套の方が時空防衛連盟と言う組織へと導いてくれた。しかしその方は気が付いた時にはその場を去ってしまったようだ、お礼も言えないままなのは少し残念だった。
辿り着いたその組織の説明を受けたが半分ほどは理解できなかった、噛み砕いて説明しなおして頂いた方には何度もお礼をした。どうやら人間の世界が危ないから守るための組織であるらしい、言うなればこの世界の光に当たるものだろう。
詳細な説明を受けても理解できないだろうと判断して、その組織に協力する最も早い方法を聞いた。協力者、それを募っているようであった。金銭的なものから戦力として、勿論私はこの世界の通貨など分からないから戦力として協力する。
そう決めたのだったが、やはり人と共に居るのは少し憚られた。この身にある呪いは漏れ出れば危険なものだと、何も覚えていない私が覚えていた事。もしそうなれば容易く人命を奪ってしまう、そんな危険物は共に居るべきではない。
人のいない場所へ、人が少ない場所へ、そうして過ごしてきたのがこれまで。その間、この施設を見て回ったが眩かった。多くの人々が志を高く持って行動していた、嘗て見たあの輝き程ではなかったがそれでも私には目が眩むほどだった。
だから、共に居てはいけないと言う想いが強くなると同時に、少しでも力を貸したいと感じた。……少しだけ嘘を言った、力を貸したいのではなくその光にあやかりたいのだ。その輝きと共に居ることで自分もそうであると思い込みたいのだ、あの少女と居た時のように。
私の力が必要となる時を待っていた、時には僅かに思い出した身体の動きを繰り返し鍛錬としていた。だがその時は来たが、力を発揮できることはなかった。あの、時間遡行装置と言う名の絡繰りが扱えなかった、どう使うのかが一切分からなかった。
人に聞こうにも世界の為に奮戦する人々、時間が空くような時など有る訳がなく邪魔をするなど憚られた。どうしようもできず、何時もの様に人の少ない場所で時間が経つのを待っていた。私は、やはり何もできないのだと、そう思い知らされた気がした。

そうして無為に過ごす中、指令が下りた。何でも大統領と言う存在が暗殺されてしまった様だ、組織全体が騒然としている辺り予想外であったのだろう。直後に現場に向かう指示が下されるのは当然の事であった、各々があらゆる絡繰りで向かう中私は階段を駆け上がり外へと飛び出す。
幸いにも地図はそう勝手は変わっていなかった、頭の中に記憶した通りに街並みを置き去りにする。多くの建築物を足場にしながら大きな跳躍を何度も挟みながら、大統領が暗殺された官邸と言う場へ向かう。
周囲の塀を一飛びで乗り越えて見れば、人の手で整備された緑が目に飛び込んできた。この世界に来てから久しく見ていなかった植物だ、そんな緑の中の赤は良く映える。人間の死体、ふくよかなものと武装したもの。そして、困ったような顔を浮かべる女性。
その手には銃と言う名を持った絡繰りが握られていた、扱い方こそ知らないが用途やその状況は理解しているつもりだ。そう、この女性が少なくとも誰かを殺したのは間違いない。だが、彼女も人間である、守りたいと思う心はどちらにも傾かなかった。
故に、私は彼女から僅かに距離を取った場所へと着地する。もし殺すことに価値を見出すならば、どうにかしなければならない。事情があって手に掛けたのならば、彼女を守らねばならない。少女のように照らせはしないから、小さな手で掴めるだけを助けられればいいのだ。

「―――大丈夫ですか?」

出来る限りの優しさを込めて女性へ声を掛ける、その銃を向けられようと構わない、鉛玉が身を貫こうと構わない。理由の分からぬ感情は確かに人間を大切だと、守りたいと感じている。そして、あの少女であればきっとそうするだろう。
遍く全てを照らす光、私はそれに憧れて、諦めた。あれは天性の物だと、覆し様のない物だと、その目で見たからこそ届かないと悟った。だから分相応なもので良いのだと、手が届いて掴めるだけでいいと、その光の一欠片に成れればいいと、そう思ったのだ。
酷く浅ましくて、救いようがない程愚かだとは思う、でもそれが私だから。太陽へ至らないならば、月でいい。月に届かないならば、星屑でいい。星屑すら遠いならば、僅かな火でもいい。それが私が出来る事で、照らせる光を持った人が何千倍も出来る事。
救いたい、そう思っている。嘗ての私はどうだっただろうか?人と共に居たい、そう願っている。嘗ての私はそうだっただろうか?今の私には分からないことだらけで、嘗ての私は知っていた事なのだろうか。
分からない、分からないから出来る事をするだけ。今は女性を知り、どうするかを考えるべき時。多分、私は人間を手に掛けられない。女性が敵対者であるならば、どうにかして無力化をしなければならない。願うならば、会話が望めると嬉しい。
甘い考えと言われるだろう、仮にも襲撃が起きた場ですることではない。だがそれでいいのだ、ここで死ねば私が救えるのはここまでであっただけの事。救える人間などいなかっただけ、それで構わない。

人を照らす光、余りにも眩しすぎるそれを見た私は諦めている。自身が出来ずとも救う存在が居ると、自身が出来なくとも共に居ればその気になれると。きっと、救えなかったそれを心が覚えているから、自身が出来たことなど何一つありはしないとそう、想っているから。

>>リアーナ=レッセント


【絡ませて頂きます!】

1ヶ月前 No.927

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【時空防衛連盟本部⇒大統領官邸/⇒核シェルター/ミラノ】

 中世から彼に帰還という結論を出させるに至った決定打は、入って来た通信だった。
 転移の直後に得た情報を精査しながら、戦闘音すら聞こえて来る連盟本部を独り駆けて行く。

 件の端末だの装置だのが一体どういう理屈で動いているのかをミラノは知らない―――知らないが、それが遠くの人間と会話が出来ること、それが時空と時空を旅するための機能を持ち合わせていることだけは理解していた。
 その上で………ミラノからして見れば、争いの理由だの理屈だのは比較的どうでも良かった。
 彼が気に入るか気に入らないかの境界線こそが重要なのだ。何が言いたいのかと言われたならば、未来にて本命の侵攻が始まったと言われたところで、それに対してすぐさま助けに入るような思考が浮かぶほど、盗賊王は清廉潔白ではなかった。

 そもそもの話、ミラノが一番嫌っているものはたった一つ。
 上から目線の権力者だ。
 持たざる者だった少年は、持てる者を相応に嫌っている。
 銀狼の住まう世界とそうした人間は、決定的に環境が隔絶しているが故の結論だった。彼の中心にあるものは、持たざる者と貧しさに喘ぐ者達だったからこその、何処か世間知らずなれども徹底した結論だった。

 両方の陣営を照らし合わせて、彼の思考内ではどちらもアウト。
 しかし未知の世界において脚は必要で、比較的此方が“マシ”だったから着いているに過ぎない。
 少年からすれば、どちらの主義主張も善悪などでは測れないのだ。だから後はどちらが勝って、どちらが自分への待遇をよくするのか、そして何よりどちらが自分にとって気分が良いのかという話であるから………必然、こうなる。


「(ふーん。要は作戦負けしたから、尻拭いしてくれってことかね………)」
「(ンなら丁度良いや)」


 つまり、彼に戦争の助力をしろという要請はある意味逆効果だ。
 こんな話をされたのならば―――当然、彼は切り捨てられないための調べを怠らない。

 より正確に言うと、“気に入らなさそうな輩”について調べておいたというわけだ。
 件の時空防衛連盟とやらにどこの意図が絡んでいたのか、
 絡んでいたならば何処が大きく揺すれそうか………知らない場所の下見程度は当然しておく。

「………行ってみますかね、大統領官邸ってトコ」

 その結論が“最も偉いから”という理由で大統領官邸になるというのは何とも短絡的で、そしてそこが戦場であるというのを良いことに選んだ選択肢は、控えめに言って善良とは言い難いものだ。
 状況が状況で無ければ多少のお咎めを喰らってもおかしくはないだろう。が―――


◇ ◆ ◇


 それが、まさか大当たりだったとは思わなかった。
 彼に未来の技術や建築物に対する土地勘や感覚らしきものはない。
 だが本能的感覚で、何処に“議員が逃げるのか”を探り当てた。
 その手の私腹を肥やすような人間が何処に出向いて行くのかを彼は良く知っていた。
 知っていたからこそミラノの対応は実に淡泊だった。というか、何時も通りだった。

 進む度に視界を覆う黒霧を、出て来るたび物理的に薙ぎ払って進軍。
 現れた影を同じく物理的に切り殺し、あるいは浄化しながらの探索。


「ひー、ふー、みー………こんなもんだろ」
『き、きみ、時空防衛連盟の隊員だろう!? 我々を護衛する義務が―――』
「うるさいな、次喋ったら身ぐるみ剥がして転がすぞ。良いか?
 オレはお前らが邪魔なんで、とっとと出て行ってウチ帰れって言ってんだよ。分かる?」
『ひ―――ひぃッ! 野蛮人め………!』


 そして逃げようとしていたは良いが、
 高圧的に護衛を求めて来た議員たちを(ついでに)物理的に退散させていく。
 もちろん………どれが金目のものかについては分からないが、比較的価値のありそうなものをチョイスして序でに盗んでおいた後だ。彼らは後に肌身離さず持っていたような高価な資産を命の代わりに奪われたことに気付くだろう。立派な窃盗と救命のWコンボ、序でに言うとこれはもう言うまでもなく“火事場泥棒”だ。
 真面目な隊員たちが見たら憤激ものだろう。それもそのはず―――。


「(つーか、アテ外れたか? さっきからボッコラボッコラ変なモン出て来るわ、
  霧で前見えねえんで鬱陶しいわ、あのカード使わねえと妙に気分悪ィわ………―――)」

「(………よし決めた)」


 ミラノ当人からすれば、別にこの手の行動に一切の悪気はない。
 かといって善意の押し付けでもない。自分が気持ちよくなるためと言われたならば否定はしない。単に彼らが、真っ当な手段以外で金を集め、真っ当ではない手法で金を巻き上げていると知っているからだ。
 そうした人間に対して、基本的に銀狼は一切の容赦がない。
 もう一度言うが、彼がその良心を発揮する相手は苦境に喘ぐ者だけだ。だから………。


「お。居た居た、邪魔するぜ」
「まあ―――」


 シェルターの奥の方。
 黒霧の発生元と思わしきその先の扉を、彼は躊躇うことなく蹴り飛ばした。

 そして、中世でも引き出した直感的結論で目の前の山羊を思わせる魔人に対する判定をこう下した。

  ………こいつは多分さっきのやつらみたいなタイプじゃない。
     で、霧の中心ってことはたぶん襲撃犯みたいなものだ。

  ―――じゃあ、それなら。


「―――別に、答えとか聞いてねえんだけどよッ!」

   、 ・・
  ―――それなら、まあ殴っても良い奴だろう。

 ミルグラムの頭上から振り下ろされ、地面ごと文字通り叩き割ろうと振り下ろされたのは身の丈ほどもある鎌にも似た巨大な斧。少年の背丈や華奢な全身からは想像もつかない、速度と威力を上乗せした物理的な殲滅兵器だ。風を纏うと見紛う高速で放たれたそれは、人体どころか多少の鋼鉄、霊体程度なら構わず寸断する。
 仮に退けばその分動きが鈍る。ペースが乱れたのなら、後は盗賊王の独壇場だ。

 話など最初からする気はない。いつもの流れだ。
 彼の中で、この山羊は推定とはいえある条件を満たした。だから、何も言葉を交わす余地はない。

 だから、此処からは会話でも恩讐でもない―――。
. ハック&スラッシュ
 押し入り強盗の時間である。


>ミルグラム・ゴート(後半)


【お相手よろしければ〜】
【ワーロックはもう少し人数が揃うまで待たせて頂きます〜】

1ヶ月前 No.928

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 ……悪運は連鎖するものだ。

「――マジか」

 大統領が暗殺されたこと。
 主犯が世界政府の粛清を掲げたこと。
 一度に入ってきたそれらの情報を前に、ただげんなりすることしかできない。
 無論、上流階級の市民向けに映像放映はされていただろうし、現に自分が受け取っている。
 それが仇となったのだろう。
 全世界に放映された宣戦布告は、大混乱の呼び水と成り果てたのだ――。

(こりゃ私も長居してられないかな)
(……ほんっと、迷惑だよ)

 此方を狙い奇襲を仕掛けてくる無人機を的確に撃ち抜き、時には手榴弾で纏めて潰す。
 何体撃ち殺したか。別段殺しが好きとかそういうわけではない。
 邪魔だから殺した――それ以外に語ることなど何もない。
 怨んでいるとか邪魔だとか、不愉快だとかじゃないんだ。ただ、殺しにかかってきたから殺しただけ。
 悪く思わないでくれよ、と。

 ……そうして一通りの始末を終え、壁にもたれかかり休んでいた時だった。

「……」

 反射的にその方向へ機銃を向ける。声を掛けられるよりも、前に。
 己のことを案じて接触してきたのは亜人の少女。
 魔族か――いや、魔族はもう少し印象が違うな、とぐるぐる思考を巡らせつつももう一方の頭は冷静だ。

「アンタが誰で何者かは知らないけど。此処から先、踏み越えたら撃つから」

 機銃の銃口で、死体より流れる血河のラインを指す。
 一見すれば無害だ。
 先の無人機どもやいかれどものように、問答無用で殺しにかかってくるようなことはない。
 だがリアーナ=レッセントの疑念は止まない――何を目的に接触しに来た?
 そもそもどこの誰だ、どの陣営だ? 差し伸べられた救援の手はしかし、彼女にとっては無用のもの。
  、 ・・・・・ カイブツ
 まして救世主志望の 化物ならなおのこと――こちらの世界には出来れば踏み入らず、立ち去ってくれ。

>クズノハ

1ヶ月前 No.929

時空の守護者 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/総統室→大統領官邸/シチュエーションルーム/ユーフォリア・インテグラーレ】

時間的余裕がない状況であっても、部下を蔑ろにせず、その話を真摯に聞き入れようとするユーフォリア。ライドウの提案は、自分を戦闘員としてだけではなく、諜報員としても使ってみないか、というものであった。
確かに、情報戦における時空防衛連盟の優位性の低さは、明らかなウィークポイントだ。仮にも世界政府直属の組織、諜報はその道のプロが行っているものの、現状は相手の行動を読むことが出来ずにいる。
理由としては、敵に非常に能力の高いハッカーがいる、ということが挙げられるだろう。その存在によって、彼らの情報は、流れ出る前に闇へと葬られてしまうのだ。
しかし、ライドウは彼の使役する使い魔の能力を使うことによって、それらを回避して敵陣へ潜り込むことが可能であるという。背に腹は代えられない状況だ。ここは一つ、その提案に乗ってみるのも悪い選択肢ではない。

「ありがとう。後で必ず連絡を入れさせてもらうわ」

用件だけを告げ、足早に去っていくライドウを見送りながら、彼女は軽く会釈する。会話は終わった。大統領官邸へと急がなければならない。エントランスから外に出ると、そこには既に移動用の車が待機していた。
非常事態宣言が出され、リヒトルザーンの市民達は全員自宅、もしくは近場の施設に避難している。異様なまでの静けさに包まれた街並みに、ユーフォリアは若干の焦燥を覚えた。
その道中でダグラスが淡々と語る、歴史是正機構の情報。かつて地球軍に所属していたこともあるヘルガ・アポザンスキーの元で、彼らは優秀な人員を取り揃えているようだ。
筆頭は元地球軍少佐、ヴァルガス・スターン。彼ほどの人物が敵にいるというのは、厄介極まりない。噂によれば、地球軍が連盟に増援を出さないよう圧力を掛けている人物がいるとのことであったが、もしかするとヴァルガスのことか。
一瞬、まさかミシャールまでも? と疑ったが、それはないだろう。仮に歴史是正機構の施設内に出入りしていればダグラスが気付くだろうし、彼女はむしろ時空防衛連盟本部を積極的に訪れていた。
何の目的があって、大統領暗殺などという凶行に走ったのかは、まだ分からない。それを明確にするためには、本人と直接会って話をしなければならないだろう。だからこそ、ユーフォリアは官邸へ急ぐ。

「……フォルトゥナ」

はっきりいって、精神状態はよいとはいえなかった。その理由は、ダグラスが話した要注意人物の中に、彼女もよく知るある人物の名前が含まれているからである。
フォルトゥナ・インテグラーレ。名が示す通り、ユーフォリア・インテグラーレの実の妹。彼女とは父親が死に、母親が失踪して一環が離散して以降、音信不通となっていた。
叔父の家に連絡を入れたこともあるのだが、一度たりともフォルトゥナが出ることなはなかった。時にヴァイスハイトが応じることもあったが、すぐに電話の相手は叔父へと変わり、フォルトゥナはいない、出掛けているの一点張り。
毎日のように電話をし続けても、状況が改善することはなく、遂にはフォルトゥナが叔父の家を去り、彼女の行方は完全に分からなくなってしまったのだ。
それからユーフォリアは、無理矢理にでも叔父の家へ押し掛けようとしなかった自分を責めた。そこに妹がいることは分かっていたのだから、会いたいのであれば直接赴けば良い話であったにも関わらず……
だが、過去を振り返って立ち止まっている場合ではない。何としてでも彼女を連れ戻すため、自分にやれることであれば何でもやってみせよう。そんな決意と共に、ユーフォリアは大統領官邸へと降り立つ。

まずは、大統領暗殺の噂が真実であるかどうかを確認するのが先決だ。既に建物内に足を踏み入れる前から、議員の死体が外部に積み重なっており、嫌な予感が漂う。
内部も凄惨たる状況だ。それでも、この目で安否を確かめるまで、ユーフォリアは希望を捨てないと決めていた。絶望的であっても、嘘に踊らされる訳にはいかないから。
いくら探せど、大統領の姿はない。公邸にはいなかった。外もあり得ない。核シェルターも利用した形跡はない。次に二人がやって来たのは、シチュエーションルーム。
ここは大統領ら重役にとっての会議室でもあり、また官邸のオペレーションルームとしての役割も兼ねているのだが……酷い。職員達は、全員殺されている。
思わず目を背けたくなる惨状を前に、悔しそうな表情を浮かべつつも、ユーフォリアは急ぐ。ここにもいないとなれば、残るは執務室しかない。しかしこの時、奔走する彼女を止めるべく、最も会いたかった、ある意味では最も会いたくなかった相手が、官邸へ近付いてきていた―――

>ダグラス・マクファーデン、(フォルトゥナ・インテグラーレ)、(ヴァイスハイト・インテグラーレ)、(アルカディア・クアドリフォリオ)、(17代目葛葉ライドウ)
【重要な展開となりますので、乱入は控えて下さると助かります】

1ヶ月前 No.930

赫怒の焔 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

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1ヶ月前 No.931

ワーロック @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【時空防衛連盟本部/エントランス/ワーロック】

 攻撃に出たのが早ければ、迎撃が出るのも早い。
 自分の権限で連れて来たのは精々が“応援戦力”と称して何者かから抽出されて来たソルジャービットの大隊と少数の構成員。
 それだけでも電撃作戦を仕掛けるには十分な数だが、しかし総攻撃を掛けるには不十分な数だ。
 もちろん此処だけではない。他の箇所でも侵攻は続いている………その上で、この正面の橋頭堡の確保は必須とも言えた。であるなら迎撃が出るのは当然の理屈とも言えるだろう。此処は敵の本陣、崩されたならば後は組織としての結合を失って死を待つより他にない。抵抗は激しくなることを承知の上で、しかし速やかに敵勢を討つべしと攻め込んだのだ。

 が、しかしそれを差し引いても、迎撃部隊の出撃が早い。
 情報通りならば敵の主力となる面子の幾つかは別時代に出奔していると聞き及んでいた。
 此方は指揮官レベルは特に陽動に引っ掛かっていたという情報を受け取っている。最も、古代および忠誠を“陽動”というにはあまりにも派手で目的を持った作戦だった―――これは敵陣の迂闊さを嘲笑うより、ヘルガという女のリカバリーの早さを賞賛するべきだろう。
 要は失敗に対する次の手を打つ速度は、此方の方が桁違いに早いだけだ。
 つまりその上で、指揮系統に然程の乱れが無くなったということは―――。


「(敵部隊の増援を認識………)」
「指揮系統中枢を確認。現行優先目標に再設定―――」


 いるのだ。
 この場に、出払った指揮官よりも前線向きで、対応の早い優れたリーダーが。
 戦線に出る直前の鉢合わせというわけではない、水際で食い止めに掛かって来たというところか。

 それだけではない。感知された熱源と、識別コードを持たぬパワードアーマータイプの敵影をワーロックは見逃さない。此方はどうも一般部隊とは装いが違うことから、独自の行動権限を持つものと判断出来る。
 白い機影が機体のカメラアイに引っ掛かった。
 外観は白い人型機動兵器。良くもあのサイズに収めたというものだ。
 が、内部の熱源感知に引っ掛かることを判断するに駆動鎧というよりは強化装備寄りだろう。


「―――イミテーション」

「タイプα」


 連射されたハンドガンの弾頭は対人用というよりは一回りか二回りほど大きい。
 直撃箇所によってはダメージも避けられない―――判断は素早く、そして同時に“追撃”を予見したが故に壁代わりとして出現したのは壁代わりの質量を伴う残像《デッドコピー》。弾丸に被弾したイミテーションが一定のダメージを受けつつも、返す刀で内蔵火器であるガトリングガンの斉射を行う。秒間三桁もかくやの鉄の弾丸は前面の白い機動兵器に向けられたものだが、とはいえ短時間の掃射に終わるだろう。

 他ビットや兵士を含めてエントランスエリアから抜けた部隊は居ない。
 援護に向かえばあの敵兵は造作もなく一蹴出来るが、それをさせてはくれまい。

 その証拠に―――。


「(スプリンクラー)」


 もう一人、指揮官と思わしきものがいる。
 先程確認した通りの方だ。それが天井へと何らかのアクションを執ったとなれば、自身への直接攻撃ではなく足止めを狙って来たのだろうが、あの様子ならば火器管制への妨害が目当てと考えて先ず問題はない。
 火力に欠けるという様子はない。こと水というものは如何様にも形を変える流動体だ。
 壁にも、波にも、牢にも、叩き付けるためのものにも―――あるいは、実体を持たぬ刀にも。

 ある種想定通り、イミテーションがスプリンクラーの水流に打ちのめされて火器の機能を停止する。
 掃射時間は3秒にも満つるまい。白い機動兵器の方へのダメージは大して期待も出来ないだろう。
 後退しながら確認を取ったワーロックは、続いてそのイミテーションを真っ向から突進させた。残像とはいえ質量を持つαタイプのイミテーションが狙うのは白い機体の方、文字通りのバーニアとスラスターをフル稼働させて放つ直線的な拳撃だ。黒鐵が放つその鉄拳は直前で腕部から射出され、目測を誤らせる所謂“ロケットパンチ”のような形として機能する。

 では本体が何をするのかと言えば―――。


「―――殲滅」


 なんのことはない。

 そのイミテーションを含めた三者を、初手で纏めて殺しに行くだけだ。


「フォービトンフォース」


 右腕部を思い切り横に薙ぐように振りかぶり、投擲されたのは巨大なリングだ。
 黒鐵の機体が持つ巨体さえも上回る大質量と超熱量で構成された極彩色の光輪。
 目に毒な程度の眩い輝きを放つそれは、しかし触れたものを諸共溶断する塵殺兵器。
 横方向に回転しつつ、弧を描くようにワーロックの視界を横切って一掃しに掛かる死の刃は、橋川もツバキも、当然そこに居たイミテーションも一撃のもとに焼き切るべく発射されることだろう。
 生半可な防御なぞ無用。それごと溶断する程度のエネルギーはあるし、そもそも競り合うような実体などない。非実体のそれは回避しか前提にさせていないが、しかし此処で真っ向から飛び込んで来たイミテーションが邪魔をするわけだ。

 ―――当然、イミテーションは避けない。避けないならば、結果幻影は一撃で溶断、消滅する。
    巻き添えで一人倒せるならば上等だ。
    質量を持とうが所詮残像、ならばそんなもの、最初から痛くも痒くもない。

>橋川清太郎、ツバキ・オオトリ、(ALL)


【よろしくお願いします〜】

1ヶ月前 No.932

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

「そうだ、それでこそ英雄だ!
 鋼の心に緩みはなく、余所見など不要と悪を焼く輝かしき者よ!」

 視るだけで分かる――レオンハルトは恐らく満身創痍だ。
 いかなる戦いを繰り広げていたかは是正機構のデータを漁らなければ分からないが、それでも一つ分かることがある。
 彼はそこで夢を得たのだ。そして気合と根性と努力のみで邁進を続け太陽に手を伸ばそうとしている。

 勝者の義務とは貫くことだ――何を選ぶか等ははなから不要。
 そのような目つきをしている。そう、あれは英雄<ヒカリ>の振る舞いだ。

「さあ俺に見せてみろ。その命<ユメ>の煌きを、お前達の大志の素晴らしさを!
 勝者であるお前達がその夢を貫けるならば――俺に刃は届こうさ!」

 バビロンは心の底からこの状況を楽しんでいる。
 己の敗北など万に一つありえない――いや、敗北すら"勝利"であると信じて疑わない。
 勝とうが負けようが負けようが、そこに見出した光が本物ならば勝利でしかないのだから。

>>


 だからこそ、英雄は歪んでいるのだ。
 前へ前へ前へ前へただ前へ。
  、 ・・・・・・・・・・・
 全ては心一つでどうにでもなる。生まれ持った才能など、気合と根性で幾らでも覆せる。
 だが、それを当たり前のように振り回せるのが何処にいようか。
 "唯の人間でしかないのに"気合と根性で出力を増大させ続け、気合と根性で彼らの術式を使用するバビロンも大概だが。

 レオンハルトも――ある種、化物だ。
 犠牲を胸に邁進し、屍の山を築き上げ突き進み続け、己の身すら厭わないのはもはや――。

>>


 氷雪の蚊帳。ディフェンスに回ったシフォンが振るう魔力の意味が成すものはブリザード。
 死を齎す絶対零度の吐息が吹き荒れ、バビロンが放つ灼熱を呑み込みかき消す。
 極冷こそが炎に対する最善策だ。猿でも分かるこの真理は、しかし大きな成果を齎す。
 即ちレオンハルトへの被弾の回避。
 流石に頭脳は回る――空挺部隊を率い、バビロン<魔王>に立ち向かう女傑は伊達ではない。
 そして手を休めることをしないのもまた……智将の判断だ。
 振り払う赤黒い砂塵。待機に乗って吹き荒れるそれらは合図を伴い――炸裂。

 金色の光輝が撒き散らされた。
 それ即ち、<爆破魔法>の一旦を担う広域殲滅術――シフォン・ヴァンディールの十八番。
 戦場において一点突破は美徳だが……往々にして戦術を考えると単調にしかなり得ない。
 シンプルは美徳だが――それで足下を狙われれば終わりだ。

 それを、彼女の振るう固有魔術は解消する。
 簡単に広範囲かつ高火力の爆風を撒き散らせる魔術は千の敵を容易く蹴散らす。
 更に爆破の最たる効果……音と光による威圧も兼ね備えた、ある種近代的に万能なものだろう。

 しかし――。

「――そらどうした? 俺は立っているぞ?」

 咆哮と共に噴出する赫焔が爆裂とせめぎあい、吹き飛ばした。
 衝撃には衝撃を。シンプルな理屈だ。荒れ狂う衝撃に紅蓮による衝撃を撃ち込んで相殺したまで。
 ・・・・・・・・・・・
 俺の本気の方が強かったという単純/理不尽な結果を打ち立てる。
 いいや、――現に目の前のバビロンの出力は明らかに上昇していた。
 まるで、シフォンの本気に追いすがろうと大口を開けて迫る海竜のように。
 お前の本気はまだ、俺の夢を追い求める気持ちに追いついていないのだと示すかのように――。

「こんなんじゃユーフォリア・インテグラーレの足下にすら及ばないんだよォッ!!!」
「奴ならもっと苛烈に攻め立てたぞ。奴なら最初から本気で叩き潰しに来ていた。
 親友のために俺を殺す夢を抱くのならば、もっと本気で希え、隣に立つ漢のようにッ!!!」

 ダストゥダスト
 塵は塵へ――灰燼へ帰す炸裂の中でもバビロンは立っている。
 木霊する叫び。
 それは刹那のこと。
 嵐のように吹き荒れるシフォンの爆破魔術を突き抜け、火焔による推進力を得たレオンハルトが突貫してくる。
 燃料加速装置<ロケットブースター>の原理による反動加速。
 成る程、間違ってはいない。シフォンの猛攻の中、バビロンを狙うなら――彼女を上回らなければならないのだから。
 そして、彼はやってのけた。天高く舞い、業火の翼を得て己の身を薪にして、邪悪を葬りさるために。

 身を焦がす焔がなんだ?
 体を引き裂く激痛如きでどうして止まらなければならない?
 大事なのは想いでありその純度。その誇りこそが世界を開くと信じる眼だ。

 荒ぶり、高め、断ち切り、燃やす――至極単純であり強力な魔術法則。
 バビロンは斬りかかる彼の目を見た。
 そして更に深める。狂気なる笑みを。深淵から覗き見る怪物の舌なめずりを。
 今のお前は素晴らしい。英雄<ヒカリ>だ、闇を払う天帝だ。人はこの足跡へと続かなければならない。
 ならばこそ――。

  、 、 ・・
「それでこそ英雄だッ!!!」

 ・・・・・・・・
 俺もお前に倣おうと。
 己の命を魔力に変換――レオンハルトが成したものと全く同じ真似を行い、拳に紅蓮を纏わせる。
 剣はない。なら拳で補おう――だが勝つのは俺だ。
 そう信じて疑わない紅蓮の拳が、袈裟斬りと横薙ぎをそれぞれ強引に受け止め弾き返す。
 無論炎熱を纏う刀をほぼ素手で弾き返したバビロンとて無事では済まない。
 その手は焼け、腕の肉が一部断たれ出血を伴っている――だがそんなことは些細なことだ。

「ハッハァ――――ッ!!!」

 迫る大熱波――レオンハルトの手によって放たれた赫炎を前に、バビロンも紅蓮の拳を大地に撃ち込む。
 唸れ唸れ唸れッ……高ぶりに応じて増幅される出力。
 揺らめく炎<レオンハルト>に情熱の爆裂<シフォン>を乗せ、いざ撃ちだせ夢の咆哮ッ!

 ディフュージョン ボーミングブラスター
「< 爆撃  ・焔焼炸裂熱撃 >ァァァァアッ!!!」

 ――シフォンとレオンハルトへ向けて、前方から押し寄せる絨毯爆撃が開始される。

 シフォンの爆破魔術をレオンハルトの炎熱波動。
 そこにシフォンの炎熱魔術構築も混ぜて乗せて撃ちだす劫火の波。
 夥しい数の炸裂反応を伴いながら広範囲――という言葉すら生ぬるい範囲の波動が放射される。
 それは小規模な焼夷爆撃の再現だ。過ぎ去った地点には灰すらも残されない。

 だがバビロンは信じている。
 夢を追いすがるのならば、気合と根性で乗り越えてくれるだろうと。

>シフォン レオンハルト

1ヶ月前 No.933

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


向けられた銃口、私が声を掛けるより早く動いたそれは警戒を示していた。それも当然だろう、女性の周囲に転がるのは絡繰りの残骸。意思なく迫る軍勢への対処の痕跡だろう、ならばそうではないと伝えればいい。
そう思いながら歩みを進めれば女性は足元を流れる事切れた残滓を銃口へと向ける、この先を踏み越えれば撃つと明確にされた。警戒、それよりも拒絶の方が強いと私は感じた。理由は分からないが良い印象を持たれてはいないようであった。
その紅い線を越えない程度で歩みを止めれば、笑顔を崩さずに女性へと話しかけようとする。誰で何者か知らない事が拒絶の原因であるならばそれを取り除けばいい、襲われている女性を助けに来たと伝えればいい。

「えっと、私はクズノハ。時空防衛連盟……だったかな、そこに協力しています。何者かは、私自身も分からないから説明できません、ごめんなさい。」

頭を下げながら嘘偽りなく答える、名前は一番しっくり来ているものだし、時空防衛連盟に協力しているのも本当。自身の素性は記憶がないからか何も知らない、多分人間ではない事は分かっている。そして向けられている銃で死ねないほど頑丈であることも。
そう、最悪の想定ではあるが女性に撃たれても問題ない、厳密に言えば内に秘めた呪いが漏れる心配はあるのだが生存に限って言えば死ぬより女性に触れる方が早い。無駄に丈夫な体は恨めしいとしか思わなかったが、ここで役に立つならば少し良くは考えられそうだ。
しかし最悪は最悪、会話で解決できるに越したことはない。何らかの思い違いで警戒しているならば誤解を解いて、何らかの理由で拒絶されているならばその問題を解消する。少女のように照らして人を導くなど出来ないから、言葉を尽くすしか私には出来ない。
足元の赤い線を踏み越えるのは紡ぐ言葉が無くなってからでも遅くはないだろう、運が良く襲い掛かる絡繰りも一時的ではあるだろうがこの場には居ない。女性にとって相対すべきは私だけで、会話を行う事に何ら支障はないのだ。

「大統領、でしたか。その方が襲撃されてしまった為、その場にいる人々の救援へ私は来ました。もう大丈夫です、貴方を助けに来ました。」

下らない救済願望、照らす光への渇望。私の根底に刻み込まれてしまったそれは未だ深く根付く、だがそれでも助けたい気持ちは本物だと、自分で信じなければどうする。そう、例え誰かのお零れでも私は助けるために動いている。
女性が手を取ってくれれば嬉しい、それは自身の心が満たされるから、それは誰かを助けられたと言う存在意義が欲しいから。決して少女のように純粋な光にはなれない、でも助けられた側から見ればそれは光に相違ない、そう言い聞かせる。
何故人間を助けたいか、それすらも分からない私が光になれる訳はないと分かってはいる。でも届きそうならば手を伸ばしたい、私もあの光の一部になれるならばと。ああ、何て自己満足だろうか。

「あの、近付いても大丈夫ですか?」

おずおずと女性へと尋ねる、女性が発した疑問には凡そ答えられたとは思う。しかしそれ以外に拒絶される要素があるならば少し考えなければならない、このまま線を越えずに女性に襲い掛かる絡繰りを倒すことになるだろうか。
しかしこの場にはまだ救援を必要とする人間は居る筈、女性を助けるのは勿論だがそうすれば他の人間を助けられないかもしれない。人間に優先順位などつけられないし、目の前にいる女性を放って置くこともできない。
だから少しばかり急いた行動ではあったと思う、でも踏み込むことも大事だと自分を納得させた。私は心が読める訳でもないから言葉でしか伝えられない、そして助けに来たことは伝えられたはずだ、きっと。
だからほんの少し、紅い線を踏み越える。撃たれても平気だから、助ける事を教えたから、理由は幾らか上げられよう。でも本心は、救いたい、それだけだと思う。何らかの不純物が混ざろうときっと助けたいのだ。

そうやって正当化すれば気分はいいだろう、まるで自身が救世主であるかのように振舞う、何と愚かだろうか。どうしようもない傲慢、人を救えるだけの器量があるかなど知りもしないで救いたいなど宣う。ああ、きっと元の私もそうだったのだろう。

>>リアーナ=レッセント

1ヶ月前 No.934

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 臆病者の鉄則だ――素性を現さない何処の誰かも分からない相手には簡単に歩み寄らない。
 リアーナ=レッセントはそう、常にそうした傍観者たる立場で生きてきた。
 箱庭の世界のど真ん中で些細な幸せさえ享受出来ればそれで満足だし、それを実現するための力も付けている。

「……いいよ。今すぐ殺しに来たわけじゃなさそうだ」

 殺意はない。
 戦意はない。
 武器は――考えないでおく。
 一先ずは此方を殺しに来た者ではない。その点は信用できそうだ。

 頭を下げて名前と所属――己の状況を語るその姿に、嘘偽りはない。
 記憶喪失だなどというにわかには信じがたい状況の渦中にあるのもまた、真実のようだ。
 名前と所属はともかく、その部分は疑っても仕方がない。
 初対面の相手に記憶喪失を装って近づいて、信用を得られるかどうかは効率の観点で首を傾げざるを得ないから。

 だが――。

(……気に食わないなぁ)

 ――リアーナの表情は崩れることはない。
   正直に言えば、余り関わりたくない人種であるのが大きいか。

「ただ、私はそろそろ行くから。……他のとこ行った方がいいよ。
 世の中には怖いのがいっぱいいるからねぇ。無抵抗の奴らを殺す奴とか」
「私はほら、この通り武器があるから」

 倫理的な忌避感はもちろんある。何故なら人間だから、死は避けるべきであるものだからだ。
 だが正義感とか道徳とか、そんなものはリアーナにはない。
 虐殺が許せないだとか、死んでいく人が悲しいとか、義憤とか、そんなものはない。
 勝手にやって勝手に死んでてくれ、魔人共。私に関わらなければそれでいい。
 そういうものはそれを出来る奴と右も左も見ない自業自得がやることであって、私がやることではないから。
 ひらひらと手を振りつつ、携行火器を示して少女にそう伝えた。

>クズノハ ALL

1ヶ月前 No.935

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/シチュエーションルーム/フォルトゥナ・インテグラーレ】


時空防衛連盟総統の殺害、その命を受けた彼女は躊躇いなく大統領官邸へと向かっていた。理由は明白だ、そこに来るのだと分かっていたから。大した根拠など必要ない、同じ状況であればこうしていた、あるのはそれだけだ。
敷地内へ足を踏み入れれば至る所に議員の死体が散乱していた、自動兵器の襲撃で呆気なく命を落としたのだろう。作戦の詳細を知っていた彼女にとっては大した驚きもない、視線すら向けずに歩みを進める。
革靴の高い足音が官邸に響く、生存者など望めない状況の中足音は迷うことなく進んでいく。公邸を確認し、庭園には居ないと断じて、シェルターの使用記録を確認した所だろう。大統領を探すならば次はこの場所であろう。
情報媒体越しにしか見ることが出来なかったその存在がこの部屋いた、不思議と視界に捉えようと何らかの感情が湧くことはなかった。ただ、最高戦力を殺害する。その指令しか彼女にはなかった。

「―――やはり此処にいたか、ユーフォリア・インテグラーレ。」

急ぐようにして執務室へ向かおうとする背へと声を掛ける、自身と似た色の髪を靡かせるその姿を忘れるはずはない。だが再会を喜ぶ状況でもなければ、互いに抱きしめ合う状況でもない。襲撃が起きた場に、こうして相対する理由が分からない訳ではないだろう。
皮手袋をその手から外し、放り投げる。向ける表情に喜色が浮かぶ筈もなく、見つめる瞳には明確な敵意が浮かんでいた。この場に居るのは歴史是正機構の将官、フォルトゥナ・インテグラーレ。それ以上でも、それ以下でもない。
ちらりと、この場にいるもう一人へと鋭い視線を投げかける。ダグラス・マクファーデン、歴史是正機構に所属する精兵の一人。経歴はデータベースに載っている物に目を通していただけだが、丞相から伝えられた情報にはそれ以上のものがあった。

「そしてダグラス・マクファーデン、何故其方に居るのかを説明して貰おうか。情にでも流されたか、それとも目的が為されて逃げ出したか。まあ、何方でも構わん。」

視線の先、その二人の関係性は友人であった。情に流されたとは友人を手に掛けられなかった、その意味を持つ。目的とは即ちこの状況、腐敗した世界政府を一掃したことだ。理由など知りえないが、達成された故に逃亡を果たしたとも考えられなくはない。
何れにしても納得のいく弁明がなければ裏切りと取れよう、仮にこの場で総統へと銃を向けたのであれば十分な理由となるだろうが。友人の立場を活かし情報を奪い、不意を突く。理にはかなっている。
だとしても少しばかり動くのが遅すぎる、状況を見るに中世で取り入ったと考えられるだろうが報告も未だされていない。そうなれば寝返った、そう結論付けても良いだろう。粛清、彼女は将官の立場を利用しなかったがここで初めて利用する事になるだろう。
そう、総統と裏切り者の殺害。少しばかり想定外があったが問題ない、やるべきことに大差なく目標が一人増えただけの事。戦闘記録から顧みるに互いに遠距離を主戦場とする、近付くことが出来れば後は容易い。

「標的が一つ、増えたに過ぎん。」

魔力を全身へと循環させ、術式を起動する。身体強化、度重ねて来た鍛錬によりその強化度合いは通常の身体強化をはるかに凌駕する。生身で人の骨程度容易く折る彼女、それに高倍率の身体強化が合わされば一騎当千は当然。
部屋の端から端までの間合いを瞬き一つで詰める、狙うは総統、放たれる拳は胴を穿たんと迫る。その威力に反して彼女の踏み込みは軽い、床を砕くほどの余波があって然るべきそれに反している。理由は単純、余計な力を必要としていないから。
ただ内臓を破壊するために放たれたそれは衝撃を重視する、人体を貫くほどの威力は必要ない。そも一撃で葬れるほどの相手だとは考えていない、故に思惑は内臓への衝撃。人体にとって防御しようのない痛みを与えることを目的とする。
まだこれは序の口、だが手を抜いている訳でも力量を見抜けぬ訳でもない。ただ強化に段階が必要なだけ、魔法を使用しないのはその必要がなかったから。それだけの理由である、無論段階を飛ばして強化もできるが今やるには不安要素が多すぎるだけの事。
雑兵程度は魔法で薙ぎ払えるが、仮に隊長の増援を呼ばれれば対処は必至だ。ダグラスと言う不確定存在もいる中で行うにはリスクが高いと判断した、それに全力でなくとも受け流す程度は出来ると彼女は踏んでいる。
故に、彼女は知らない。この初戦が自身にどれだけの影響を及ぼすかを、戦闘経験のなさを補って余りある実力でどれだけ対処が出来るのか未だ不透明。だがそれだけであればよかったのだ、これから彼女が立ち向かうのは自身の意志。
信じたかったものを信じ切れず、唯一の拠り所さえ消えていった彼女に酷ではあるだろう。だが知らなければならないことがあり、その上で判断しなければならない事もある。彼女は、知ることが出来ないが故に、知らな過ぎた。

>>ユーフォリア・インテグラーレ ダグラス・マクファーデン (ヴァイスハイト・インテグラーレ) (アルカディア・クアドリフォリオ)

1ヶ月前 No.936

北方守護騎士 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【魔帝城/深淵の間/氷魔像ギラード】

――通った。
吹雪へと身体を変換する直前、確かに感じた感触、明らかに幻や、浅い傷などではなく、相手に致命傷にも等しい深い傷を与えられた事をギラードは認識する。
だが……その一撃で戦いが決することは無かった、予定内だ、こちらとて最後の攻撃のつもりで放った訳ではない、ギラードはすぐにある程度はなれた場所で再結合を行い、実体化しようとしたが……ハザマが笑う、何事かと見れば、そこには、まさしく奥の手を使ったハザマの姿があった。

そして、それが放った行動と言うのは、今のギラードにとっては極めて厳しい物だ。
広域からの魔力吸収、それは、一つに纏まっておらず、複数の微弱な魔力体になっているギラードにとっては、まさしく彼だけを殺すような攻撃手段だ。

とにかくギラードは、すぐに全ての分裂体に近くのものとだけでも結合を開始させ、せめて一矢報いるべく、武器のみを実体化させようとするが、実体化しただけだった。
その瞬間飛んでくるのは地面から飛び出したウロボロスだ。 当然武器としての機能しか持たないギラードの一部は簡単に粉砕され、結合できていないものは、ウロボロスには当たらないが、魔力を吸われて少しずつ消滅してゆく。

「そうだ、この時代はお前たちのものだ……遂げろよ」

勇者と魔帝の言葉にギラードは静かに答えた。
遂げろという言葉を残して、彼は消えた、かに見えた。
だが、最大の脅威を前にして、ただ無責任な言葉を残して消える彼ではなかった。

彼が選択した手段と言うのは、自身の"実体化"の解除を行い、単純な氷の魔力の塊に戻すこと。 それが意味する所とは何か、一個の生命として人格を持っていた自分から、いわば、超強力な氷魔法へと"戻る"こと。

最後の一撃以外の、世界に対する干渉を断つ、そういう物であった。
しかし、彼には使命があった、一度、守った物を、守り通す事だ。

後悔はない、そう思いたかった、だが、それはギラード自身に嘘として返ってくる。

「もはや、この地に我が知る者は居ない。 だが、我が知る者が作り上げたこの地を守るためならば、後悔は無い。 ……いや、それは嘘か、まあ、いいだろう」

残りカスにも等しい微弱な魔力が一つへと結合されてゆく。
だが、そこから姿を現すのは、氷像などではない、"純粋な魔力の塊"だ。

――散れ

その魔力の塊は、氷の刀へと姿を変えて、蛇を貫くように通り過ぎて、そのまま天上へと突き刺さった。
一見、蛇を引き裂くことも無く、ただ天上に突き刺さっただけに見える、だが実際は……刀は相手を切り裂く物ではなく、刀が「通った場所」その物が一気に凍結し、敵対者を死に至らしめる強力な氷魔法の発動体となっていたのだ。

「――せめて、あの方を助けたく、また、今も尚生存しているであろうあの方に……会いたかったが。 ……我にできるのは、ここまでか」

叶うなら、もっと長く存在し続け、それこそ古代より女帝を拉致した者たちが戻るであろう未来まで存在し、奪還したく、また……面識も少ないながら存在する、今もなお生存している可能性が高い、エストにも会いたかった、そんな言葉を残して、天井に突き刺さった刀は、元の形に戻るように、砕け散り、無数の氷水となって、地面に落ちる。

最後の一滴が落ちると同時に、やり残した"奪還"は、信頼できるものに任せる形になる事を内心悔やみながら、極寒の大地から、人々が普通に暮らせるようになるほどの土地へと変わるほどに長い時間、同じ土地を守り続けた存在は、それこそ、二人の最後の一撃を妨げないほどに、静かに消えた。

>魔帝ヴェルメイユ ハザマ アンナローズ・フォン・ホーエンハイム


【氷魔像ギラード@長きに渡る守護を終え、停止。 と言う事で、おそらく次で終わるだろうと言う事で、お先に失礼します、お相手ありがとうございました!!】

1ヶ月前 No.937

龍炎公 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【魔帝城/魔大将の間/ヴァンレッド】

 一つでは無く二つを以て放たれる、至高の一閃。それに重ね合わせる真紅の一閃では相殺し切れぬ余波を我が身に受け、紅飛沫を散らそうとも戦意は滾るばかりで。意識が在り、心臓が鼓動し、四肢が無事動くが故の生が自らに宿っている限り、戦いの中で龍は前だけを進み続ける。聳え立つ幾重もの壁を越えに越え、高みの頂へと至らんとする。それが戦狂い、"緋焔閃"の異名を授かりし者の在り方。
 そして次の一瞬、戦場にて具現するは、風前の灯火を絶やさぬ様にしながら、道を突き進んだ果てに得た窮極の御業。今の己では二度とは繰り出せまい、再度辿り着かねばならぬ領域が、此処に今顕現する。あらゆる生命に終止符を打つ、殺戮の極地。ただ一太刀、されど、二百の剣気を宿す一太刀。神速の概念を超越した先にある、"第二の神速"とも云うべき速さを以て繰り出される剣閃。
 それを動じず、真っ向から立ち向かわんとする魔剣士の在り方に、龍はただ畏敬の念を抱く。この生涯、かのような強者と刃を交えられた事実には感謝し切れない。限界を示す事無く、なお果ての先を夢見させてくれる彼女に惚れない訳がない。

「ああ、俺もだ……感謝するぞ、魔剣士よ」

 崩落寸前の床へと己の得物を深く突き刺し、一糸纏わぬ姿で己が斬撃を抱擁する魔剣士の姿。其処へと加わるもう一つの斬撃の主は、同じく極地へと至った龍狩りの物。紅き飛沫が噴出する中、猛々しさを喪う所か一層際立っているかの様に窺える彼女が放つは、二振りの剣を以て交差を描く流麗な絶技。更には全身全霊を傾けての、紫電一閃――これも惚れない訳がない。何とも、美しい。其れしか言葉が思い浮かばない程に、陳腐な表現でしか言い表せぬ程に、それは凄まじいのだ。
 紅き鮮血に染まった柔肌から撒き散らされる、異なる真紅の鮮血。臓物を犯し、肉を蹂躙し、小さきその身体を貫く怒涛の数々。己と龍狩り、双方の流血量を合算させて漸く並ぶであろう血液を撒き散らした魔剣士は、然しそれでも生きている。これですら殺せなかった、その事実だけでも――ああ、至り越えねばならぬ領域が見えたというもの。感謝、感謝、ただ只管に感謝。

「ならば誓おう。今度相見えた時は、お前の総てを喰らい尽くすとな……」

 絶頂の気分を味わい、残りの余韻も味わい尽くしながらも。微笑みを浮かべてこの場を去って行く魔剣士に向けて、龍は強くこう宣言する。生きている限り、いずれは再び相見える事もあるだろう。その時は、今度こそ魔剣士の総てを喰らい尽くす。血だけでは飽き足らず、その生命さえも喰らい尽くすだろう――否、もしかしたら生命は食べ残してしまうかもしれない。生きている限り、限界などないのだから、次に期待してしまうかもしれない。だから、これは誓いと言うよりは、意気込みと言った方が良いだろう。

 かくして、魔大将の間での私闘は幕を下ろした。かつての面影など一片も残さず、血潮と破壊で蹂躙され尽くされた部屋の中にいるのは、己と龍狩りのみ。自らの鎧に乗っ取られる前に、何とかしなければならない――そう判断すると、鎧に埋め込まれた結晶体を抉り取り、そしてそのまま破壊した。これでもう、自らの鎧は多少頑丈なただの鎧と化した。

「見事な最期だったぞ、龍狩り。それこそ心底惚れてしまうくらいには」

 戦場を共にした龍狩りへと近づいては、最大限の讃辞を送る。それは、魔大将との戦いで告げた様な冗談ではなく、本心からの物であった。

「――さて、王都に送らせて貰おう。反乱の首謀者を倒したとはいえ、依然としてここは戦場だ。何より、お前には一刻も早く治療が必要だろうからな」

 出血量からして、重傷であるのは確か。然し、反乱を鎮圧したとは言え、未だ戦場である此処で治療を行うのはリスクが伴う。であれば、確実なのは比較的安全な王都だろう。幸い、龍の姿となれば移動に時間は要しない――さて、返答は如何に。返って来ようとも、気絶していて返って来なくても、やる事に変わりはないのだが。

>アーケオルニ・ランドグリーズ (魔剣士)


【お相手、ありがとうございましたー!】

1ヶ月前 No.938

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【魔帝城/深淵の間/ハザマ】

 とどのつまり、彼は傍観者だ。
 観客席から好き勝手に囃し立て、第三者として舞台を食い荒らすもの。
 慎ましやかなアダムとイヴに囁いて、叡智という名前の破滅を贈る悪意ある蛇。
 状況を引っ掻き回しに回して嗤い、走る痛みと嘆きを糧とするトリックスター。

 しかし、彼が悪意を放ち、かき乱し、今世界を飲み干し喰らおうとする理由は単純明快だった。
 自分が気持ちよくなりたいからと言えばその通りだが、男には致命的な欠陥があったのだ。
 とある甚大な悪意の器になる為に造られたハザマという魔導書/青年は、しかし痛みや苦しみを感じられるように出来ていない。最初からその機能が致命的に崩壊していたのか、あるいは文字通り『人の心がない』のかはさておきとして………ハザマという青年の足元は、殊更に浮いていた。浮遊し、足場さえも確かではない場所で、自分等感じられようはずもない。

 それだから、ハザマはそれを欲したのだ。
 嘗て自分が、初めてハザマという一個体を感じられた瞬間のことを覚えている。
 嘗て自分が、初めて痛みというものを感じられたあの瞬間のことを覚えている。
 煩わしい、鬱陶しい、邪魔になってしょうがなかったが、あれが自分を知らせてくれた痛みだった。

 だから、それを感じて見たかった。それが彼の、最期の足掻き。
    、     ・・
 そして、今も続いた実験だ。
 彼が幾度も繰り返して、しかし一度たりとも得る事の出来なかったものだった。

 別に罪悪感など覚えもしない。
 何しろどうせ死んだ命で、消えた命だった。如何なる手段を用いてでも得難いものであったのだし、その果てに自分が死んだところでどうせ興味はない。ただ一つの歓喜だけが欲しい。所詮人間の中での世界など、自分を中心に出来ている。
 ならばお前たちにだけは殊更否定出来まい。世界など所詮は嘘だらけで、欺瞞だらけなのだから。


 そうだ―――。


「止めて!? ………どうするッ!? ヒヒヒ、ハハハハハッ!
 まさか、もう忘れましたか魔帝ヴェルメイユ、勇者アンナローズゥッ!」


 ―――なにしろ、おまえたちが古代でも中世でも証明していたではないか。
    こういうのが、一度死んだモノにとっての“ハレの日の愉しみ方”だろう?


 世界を喰らう蛇の上で、彼は高らかに笑って宣言する。
 蛇が天より地へと落ち、高く昇るあの光へと相対する。
 それは、文字通りに“魔王を討つ勇者”のようでもあり。
 あるいは、もっと別の、悪竜を斬り裂く英雄のようでもあり。
 あるいは、一寸先も闇の未来を切り開くほのかな希望《ヒカリ》のようでもあり………。
 口にしてしまえば如何様にも語り尽くせよう神話の如き有様の中で、しかし彼は最後まで笑うのだ。この時点で私の勝ちは決まっている、と。

 ………いや、これは勝ち負けの話ではない。
 勝ち負けで言えば、もうハザマはある意味満足し切っている。であるにこれは、此処から先の未来を掴むという勇者と魔帝の言葉を、“おまえら何を言っている”と嘲笑っているだけだ。


「幾つ禍根が残った? 幾つ憎悪の種が芽吹いている!?
 確かに私は、お前達を嘲笑ってやろうと思ってアレを引き起こしましたが―――」

   、   、   、   、 お前たち
「その果てにああいう反応をしたのが魔族どもだ!
   、   、   、   、 、 お前たち
 それをしなくともあんな行動に出たのが人間どもだ!」


 だからハザマは何度でも、こう言ってやるのだ。
 少し先の未来を、今日より良い明日を掴みたいだけと言うならば、それをまず嘲笑う。
 幾度だって語ったように。王都の凄惨さを、此処で起きた叛乱を、引っ張り出して哄笑する。

 その最中に勇者が一度たりとも揺るがなかろうが。
 おまえも所詮は一人の人間で、世界の波には抗えぬと哄笑する。
 何度も、何度も。何時しか不安の種を芽生えさせるために、あるいは今此処でそれを堪能するために。


 もちろん、彼は語らない。
 その中に如何なる感情があったのかなど、識る必要も意味もない。

 彼の叛乱における、黒猫と塵殺剣。
 実際に彼女等どのような意図と想いがあったのか。
   、・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・
 ―――それを止めたのが、どんな魔族の願いだったのか。
 死したものに語る口などないから、歴史の傍観者が好き勝手に語っているだけだ。
 それも、悪意のあるものが。幾つかは真意こそあれど、幾つかは捻じ曲げた上で。


 王都にて語られたある魔族の願いが、本当はどのようなものだったのか。
 そんなものにも、一切触れることはない。

 王都の動乱を生んだのも、止めたのも、この世界の人間ではないことなど。
 そんなことにも、触れる意味はなかった。

 王都から駆け出した今の騎士たちの長が、古き騎士の長と同じ過ちを繰り返さなかったことも。
 動乱する魔族たちの中で、最初に魔族を信じたのが他ならぬただの人間だったことも。
 叛乱を起こした魔族を討ったのも、また竜と竜を狩る者が手を結んだ成果だったことも。
 なにも、何も語らない。知っていたとしても、彼は当然語らない。何故なら―――。


「どちらにせよおまえに先はない、聡明だが愚かな魔帝ッ!
 踏み躙られた者はおまえを許しはしないだろう!
 ………世界はおまえたちのように、踏み荒らし甲斐のあるものだけではないのですよッ!」


 ハザマという男は、何処まで行ってもただの傍観者だからだ。
 ハザマは極論、こんな世界がどうなろうと構うことはなかった。
 現在・過去・未来の全てがどうなろうとも、別に興味はなかった。
 その中でも正論になるだろう意見を好き勝手ばら撒いて“嫌がらせ”をしているだけだ。

 正論とは痛いもの。それを吐く人間がどんな悪意に塗れていようとも。
 この世界の嘗ての歴史を修めたハザマの言葉は、ある程度はそうした痛さを持つ。

 愚かな王都の人間と、踏み躙られた者達の憎悪と怨嗟は必ずや何処かに向かねば気が済まない。
 この戦いで殺された魔族たちの恨みが何処に行くかなど最早自明の理だろう。
 彼がどれだけ悪意で言葉を彩っていようが、少なくとも、“それ”と向き合う必要はある。


 蛇が光と激突する。
 光輝を纏う一斬が、深淵を飲み干す毒蛇と相対する。

 ―――いつしかそこには、一条の闇が重なっていた。
    闇よりも昏く、影よりも深きもの。
    世界の淵を覗き、その果ての虚を垣間見せるもの。

 真なる聖剣の一閃が、蛇との均衡を押し戻す。
 、   、   、   、   、   、   、   ブレイブルー
 徐々に、徐々に。生粋の“魂喰らい”であるウロボロスおよび碧の魔道書だが、
 これは着弾していた箇所の魔力と力を確かに食い散らかしていた。聖剣の不完全なる一斬だけならば、
 ヨルムンガンドは構わずそれを喰らい尽くしただろう。
 だがしかし、そうではなくなった。今此処で、それが拮抗し、徐々に光が立ち昇っていく。


 ………しかし、ハザマの言葉への叛逆があるとするならば。
 彼が一石を当時、誰かが描き実行した悲劇《シナリオ》に紛れ込んだ小さな砂粒の存在だった。
 そして、その小さな砂粒に大きな決心をさせた彼女の存在だった。

 始まりが偽物だろうと、その工程だけは本物なのだ。
 此処に立っているのが、魔族を背負うと決めた代表であり、
 世界の命運を決するものであり、
 今勇者にその手と力を合わせ、世界を喰らうものを打ち砕かんとしていることだけは事実だった。


「無意味ッ! 無価値ッ! 無感動ッ! 無力、無駄、無理ッ!
 遥か未来の人間が創った業は、すぐ先を、あるいはもっと昔を滅ぼしていく!
 この世界の業に嘆き、怯えなさい! お前たちが愚かであったことの証明はもうされたのだから!」

「ヒヒヒッ、ハハハ、ハハハハハハッ!」


 ―――だから。

    もう甘い叡智の毒に揺らぎなどしないことを把握したから。
    その全てに向き合うだけの決意を、一瞬にして感じ取ったから。
    毒蛇は傍観者だからこそ、それがすぐに均衡を崩されることを理解していた。


「(とは、いえ………ヒヒッ、なるほど、もう揺れませんねえ。
  こんなもんでしょう。十分楽しませて頂きましたよ、魔帝ヴェルメイユ、勇者アンナローズ)」


 失敗したらその時はその時。
 そう決めてはいたが、此処で投げてやるつもりはない。
 ハザマはすぐさま“逃亡”を決意した。無理だと分かったのなら次を喰らいに行く、そう決めるまでのハザマの判断は良くも悪くも素早かった。どうしようもなく早かった。

 実際問題、転移には時間も掛からない。毒蛇が焼き切られる頃には、
 もうハザマの姿はないだろう。そして彼は、未来で新たな獲物を探すのだ。



 そのはずだが―――



>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ


【(なぜか文字数制限に達していないのに文字数制限を喰らうため)わけます】

1ヶ月前 No.939

ハザマ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【魔帝城/深淵の間/ハザマ】

 ―――しかし。
    ハザマは、此処までの段階で、最期にたった一つの過ちを見せた。

 碧の魔道書が吸収した魔力は、大半はギラードのものだ。
 消滅させ、粉砕させ、彼はこの時点で氷魔像を完全に打ち倒したと思い込んだ。
 無理もないだろう。ハザマは数少ない“痛みと憎悪を識る機会”に熱狂していたのだ。


 ならば―――。
 消えたものに、彼が今更干渉を掛けることなどなく―――。

 そもそも、本来非ざるもの、本来なら残らぬもの―――。
 氷魔像ギラードの本質を、正史のみしか知らないハザマが知っているわけはなく―――。



「(さて、と―――いや、この反応、この力!)」

「―――何ッ………!?」


 世界すらも喰らい尽くす大蛇を貫くように、氷の刀が通り過ぎる。
 初めてハザマの顔を驚愕が覆った。
 予想もしなかった一撃が、趨勢が決まる前に転移しようとしたハザマの動きを押し留めた。

 あっという間の出来事だった。
 貫き、伸びる氷の刃は、正しく八岐大蛇を打ち砕く天羽々斬のように。


「馬鹿な、何処から来たッ!? お前たちだけのはず………!」
「こんな真似が出来るのは―――!」


 均衡も崩れる。
 碧の魔道書の持ち主であるハザマ自身が凍結したこの瞬間に。
 吸収されていた魔力と生命力の動きが止まる―――それは即ち、均衡の中でヨルムンガンドに力を与えていたものが失われるということだった。均衡を作っていたものがなくなるということだった。

 そのことの意味が分からないハザマではない。
 氷の内側で、そのことが齎す致命的な意味を理解出来ないハザマではない。


「いや………そうか………」


 ―――そう、詰みだ!
    、   、   、   、 チェックメイト
    将棋やチェスで言うところの、避けられぬ詰み!


「一番やりやすいと思ったのは、最期に撤回させて頂きますよ―――氷魔像ォ!」

「ヒャハ、ヒャハハハハハハァッ! 忘却していた! 所詮おまえも私と同じ端役だと!
 歯車に紛れ込めもしない砂粒だと誤認していたッ! ああだが、何故捨てられる………!?」


 ハザマは哄笑し、嘲笑し、しかしそれでも晴れやかに賞賛した。
 そもそも、この状況で自分を完璧に上回って来られたことが予想外だったし。

 なにより。
 確立させていた自分を紐解くという行為に関して、ハザマは全くの未体験だからだ。
 それがどれほどのものなのか。
 ハザマが焦がれているものを持っているギラードが、それを行ったことを、彼は少しだけ賞賛した。

 まあ、少しだ。
 元々、ハザマという名前の魔道書に、他人と共感するような性質などない。
 彼は自分という小さな世界で完結しているし、それ以外のすべては傷口を抉って遊ぶ道具でしかないのだから、当たり前だろう。まさかハザマが此処で何かを感じ入るということ自体があり得ない。
 だから9割ほどは変わらず哄笑であるし、無意味さと無駄さを嗤ったものであるが。
 毒蛇が光と闇の交響に呑み込まれ、諸共虚無の男を消そうとする最中で、彼は識る。


「ああ、いや―――だが、など言う必要はないか」

「だから、歴史の価値はもう塵屑に等しいと言ったのですよ………。
 こんなところにも、価値ある痛みがあったではありませんか―――」


 後悔がまだ残っている、という小さな声を。
 ………それが最後の収穫だと、何処か満足げに笑った。

 何処か、誰かが口にしていた言葉を思い出しながら。
“ほれ見ろ、こいつは正史には乗ってなかったぞ”―――と、遥か遠くを煽るように。

 ………さあ。
    毒蛇に降って湧いたハレの日は、これで終わりだ。

 彼は中世の最後を喰い散らかした、最も傍迷惑な“修正者”として。
 あるいは、世界を喰らい尽くそうとした、人と魔族を遮る最後の壁として。
 あるいは、そもそも歴史に乗ることさえもないまま、名も無き悪意のかたちとして。

 どうであろうとも、此処に散ることになるだろう。
 ハザマという存在は、間もなく朽ちて消えるだろう。

 明けぬ夜などないように。終わらない夢もない。
 深淵と光輝の“狭間”にて、否定と虚無を呼ぶものは打ち倒される。

 これにて舞台は閉幕だ。文句の付けようがなく、使い古された大団円。
 その先が如何に暗闇の荒野だろうと、その志が続く限りは未来への礎が紡がれるだろう。


「(ま―――こんなもんでしょう。
  ああ、ああ、楽しかった。どうせ降って湧いたものなら実に上出来でした。が―――)」


 だから、傍観者もそろそろ席を立つ時だ。
 舞台が終わり、芝居に幕が下りたなら………帰るべきところに帰らねばなるまい。

 ―――口元を小さく歪め、光と闇に呑まれて消える瞬間も最後まで笑って、しかし。
    叡智を喰らう蛇は、最期にひとつ、素朴なことを想った。


「(どうせなら………もうちょっと、愉しみ、たかったなぁ………―――)」


 ―――もう少し、食い荒らしてみたかったものだ。
    やるなら、その通りに勝ってみたかったものだ。

 失敗すればそれまでとは思っていたが………ああ、実に愉しかった、と。
 それを最後の感情にして、ハザマは消えゆく氷と共に、対照的な感情で持って消えた。

 ―――消えたのだ。
    もう此処に残っているのは、勇者と魔帝の、ただ二人だけ。
    この時代に本来あるべき二人だけが、此処に立つ。

 ハザマという男を代表にしたもの。
 人と魔族の名も無き悪意という名の魔王を討ち果たして、此処に終わりを告げるのだろう。



 最後まで彼は、傍観者だった。
 最後まで彼は、無責任な男だった。

 だけどそんなものだ。
 第三者は何時だって、何も遺さず、ただ嘲笑うだけ。

 彼が満足しようがしまいが、とどのつまり関係などない。
 この時代を作るのは、この時代に生きたものだけである。



>魔帝ヴェルメイユ、氷魔像ギラード、アンナローズ


【これにて退場とさせて頂きます、お相手最後までありがとうございました! m(._.)m】

1ヶ月前 No.940

中二病でもハッキングがしたい! @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/休憩室/シエンタ・カムリ】

順調、実に順調。このまま進めば、あと数分としない内に全てのロックを解除出来る。そうしたら後は他の奴らに任せて、自分はさっさと帰ってゲームでもするだけだ。
正直にいってあまり血なまぐさいのは好みじゃないし、人殺しなんてもっての外だ。暴力的なスタイルはスマートさを欠いているので、天才ハッカーがすべきことではない。
グレードAは味方の進軍の切っ掛けを作って、クールに立ち去るのさ……そんな気取った言葉を心の中で呟きながら進んでいくと、いきなり背後から声を掛けられる。
振り返ると、そこに立っていたのは、雰囲気からして弱そうな印象を受ける青年。の割に身長が自分よりもだいぶ高いものだから、世の中不公平だと思う。
いや、男女の体格差を考えれば仕方のないことなのだが、彼女は納得出来ないようだ。むっとした表情を見せながらも、相手の言葉に答えようとしたその時……今度は、正面から誰かが随分馴れ馴れしい態度で近付いてくる。

「……誰だい君?」

恐らく、マシュマロにとっては絶対に聞きたくなかったであろう言葉。シエンタからすれば、初めて出会った人物が自分をあだ名で呼び、あまつさえ抱きついてくるという、下手をせずとも恐怖でしかない状況であった。
当然、零れ出る言葉も冷たいものとなる。こいつ、同年代のくせに胸だけはやたら大きい。世の中不平等だ。とにかく、このまま抱きつかれていては埒が明かない。
無理矢理相手を引き剥がしたシエンタは、心底嫌そうな表情を浮かべながら、何歩か後退りをする。明らかな拒絶反応だ。友達だと思い込んでいるマシュマロにとっては、最悪の展開かも知れない。
全く、意味が分からないが……ようやくキラーの阿呆もここへやって来たようだ。そしてプログラムが仕込まれた道を通ったことで、彼は女体化した状態で姿を現す。
それを見てニヤニヤと笑っているシエンタは、傍から見なくともただの危険人物でしかない。アイシスは赤面しながらその場にへたり込んでしまったが、解除コードを用意していたのかすぐにキラーへと戻り、ハンマーでシエンタの頭を殴る。

「なんてことをするんだ! グレードAのボクに対する反逆か! そんなことをするなら君を一生あのボディの中に閉じ込めるぞ!」

今の会話を聞いて、ショパンは彼女があのGOD_SIENTAであるということに気付いたかも知れない。シエンタはオンラインゲームの世界においても、よく自身のことをグレードAと称しているからだ。
しかし、それよりも大きな証拠は、キラーの言葉だろう。彼は当たり前のように彼女の名前を呼んだ。すぐ同一人物であると裏付けるほどではないが、関連性を疑うには十分過ぎる。

「いや、知らないね。ボクはこんな奴のこと、これっぽっちも知らない。君がそうしたいなら、好きにするといいよ」

シエンタは面倒くさそうにそう告げると、自分も一つ爪痕を残しておこうとでも考えたのか、能力を発動し、近くの機械類と"会話"を開始する。
すると次の瞬間、突如として通路の照明がショートし始め、激しい電流を放出する。電流は、一直線にマシュマロとショパンへと襲い掛かっていった。
電子と会話する能力を持つシエンタと、ネットワークさえあればどんな場所でも移動できるキラーの組み合わせは、未来世界においては驚異以外の何ものでもない。古代では思わぬ敗戦を喫した二人であるが、今宵彼女達にとっての"ホームグラウンド"において、真の実力が明らかとなる。

>マシュマロ・ヴァンディール、ショパン、キラー・テンタクラー

1ヶ月前 No.941

贖罪の山羊 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【大統領官邸/核シェルター/ミルグラム・ゴート】

 自身の能力。「燔祭」もしエステルやバビロンの能力を併用したらどうなるのだろうか。
 彼女の「欲望」でさらにえげつない責任転嫁を魅せてくれるのだろうか。
 彼の「前進」で進歩の為に敵だと定め排斥するのだろうか。
 合わせ技も見たいところだが、自身の能力を発動する為にはどうしようもない絶望が不可欠なので、条件的には厳しい。
 大統領にかけて、警備員のせいだと惨めな最期を見るのもいいのだが、あちらの仕事なので叶う筈もない。
 蝕み死ぬ寸前の肥太った議員に「燔祭」を仕掛けて、情けない断末魔をニタニタと笑いながら浴びると蹄で議員の顔をこねくりまわしては看取る。
 遺体の腹を蹄で踏み潰しては弄んでいると、扉がふっとんで来たのでミルグラムは山羊特有の目玉をぱちくりとして少年と対面し、冷えた表情に変わる。
(んあ? 何入れてんだ?)
 少年の懐が膨らんでいるのを見たミルグラムは顔を傾げると、一言かけられたとはいえいきなり鎌を振りかざして来た。
「ずいぶんと威勢がいいな。このガキィ!」
 黒霧が効いていない、つまりこの銀髪の少年は聖なる護りを持つ者か、それとも聖なる存在なのか。
 これは少々、レオンハートの隕石よりも手がかかる相手だとミルグラムは認識すると、その場から動かず古代ローマ風の盾を持った亡霊でその一撃を防ごうとするが盾が砕け散り、霧となって拡散し、床の破片が飛び散りミルグラムは退却して破片を躱しつつも呟く。
「なんつー馬鹿力」
 隕石を返した女騎士じゃないのだからと、蹄が冷たい床に当たる音共に、腕を伸ばして指を鳴らして、斧や剣を持つ恰幅のいい筋骨粒々の大男達の亡霊を招来する。
「さて、こっちも力比べと行こうか」
 少年を囲んでミンチにしようと、一斉に向かわせて持っている武器で蹂躙させようとして。
 ミルグラムは極端な話戦えない。
 だから、ほぼ戦闘は亡霊達に任せている。
 そんな弱点を突かれたからこそ、古代での戦いは呆気なく燃やされたのだから。
>ALL

1ヶ月前 No.942

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/公邸/シフォン・ヴァンディール】

瞳を、心を、いや全身を燃え上がらせる炎獅子。満身創痍の身でなおも奮い立ち、その威容には陰り一つない。そんなレオンハルトを英雄と称し、ますます戦いへと興じていくバビロン。
シフォンの表情が曇る。地球軍時代からの付き合いで、レオンハルトの気性はよく理解している。目的達成のために己が身を焦がし突き進む男…英雄的と言えばそうだ。
だが彼はしばしばやりすぎる。止まれなくなる。軍を外れることになったのも、自分を抑えられなくなった末の過ちのせいだ。
沈む夕日を指して駆ける、それは構わない。頭上の太陽に憧れ、手を伸ばす。それも構わない。だが今の彼は、蝋翼を広げたイカロス。その勇姿と輝きは極めて刹那的、すぐに破滅を迎えてしまう。
そんなレオンハルトが英雄だなどとおだてられ、闘争心を煽り立てられてしまえば…

不吉な予感がする。あの時はあくまで組織を外れただけ、連盟で再会を果たすことができた。しかし今回はどうだろうか。今ここで引き留められなければ、二度と"彼"に会えなくなる。そう思えてならなかった。

「死に急ぐ狂戦士が英雄?笑わせないで…!」

だから一蹴する。バビロンばかりかレオンハルトとも真っ向からぶつかる覚悟で。刹那の輝きを飾る甘美な言葉の裏で、魔王の言う"英雄"は終着点へと爆走している。
抗い抜いた先に待つそれは、決して平和や安寧などではない。破綻者を待ち受ける死という大穴。自らを省みることすら忘却した今の彼は、英雄でも何でもない。ただ盲目に死へ誘われる狂戦士だ。

咲き乱れる連爆の華を散らし、命を燃やして得た力を以て対抗するバビロン。その様はリヴァイアサンであり、火の神アグニであり…何よりも魔王。
千変万化の魔性が繰り出すは神炎と猛爆の絨毯爆撃。圧倒的な攻撃範囲を誇りながら、そのために一撃一撃の威力を欠くということもない。衝撃と共に感じるのは再びの既視感。
火炎と大地に加え、爆破魔法まで織り交ぜてくるとは…ヤツもまた幅広い属性の使い手なのだろうか?いや、あるいは―――

「ジ・アクエリウス!」

迸る魔力、満を持しての解放。宣言と共になだれ込む水流は大津波という表現すら生ぬるい。夜空に煌めく黄道十二宮が一角、大河の記憶を封じ込めた宝瓶を蹴倒すが如き奔流。
猛り狂う火炎の波に覆いかぶさり、消し止めるばかりかバビロンを飲み込まんと更に勢いを増す。そうだ。ヤツが大口を開けて世界を飲み込む海竜なら、それすらも深淵へ沈める大海になればいい。天地万物森羅万象、一切合切を飲み尽くす広大な海に。

「ライトニングヴォルテックスッ!」

手を休めることなく反撃。風魔法によって吹き荒れる一陣の風。その後押しを受けることで、生身の彼女では成し得ない超高速移動を実現する。向かう先はバビロンとは正反対だが、規格外のスピードによって弾かれた空間が、元に戻ろうとすることで竜巻も同然の暴風を巻き起こす。
更にその中に雷魔法を叩き込むことで、竜巻は天変地異も同然の破壊力を携え、ますます膨れ上がっていく。逆巻く烈風に轟く雷鳴、『ライトニングヴォルテックス』。中世での戦いに於いても使用され、魔将軍相手に通用した奥義だ。

敵が豊富な引出しを持っているのなら、それはシフォンも同じ。局面に応じて様々な属性を使い分け、着実に敵を追い詰めていくのが彼女のスタイル。
レオンハルトとは得手不得手が真逆の関係にあり、手を組むことによるメリットは相当に大きい。そんな二人の連携は魔王を討ち滅ぼすに値するだろうか。

>>ダン・マッケーニ・バビロン、レオンハルト・ローゼンクランツ

1ヶ月前 No.943

スパルタの代名詞 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

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1ヶ月前 No.944

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【一応、人工知能搭載設定生かす。ハングルネームがひどいからシリアスになってない】

【時空防衛連盟本部/通路/ショパン】

 緊迫した状況の中、少女から握られていた端末からボディラインがくっきりと見えるスーツを着た女性と小型兵器が出現し、ショパンの白い頬に一筋の汗が垂れたがその女性は顔を紅潮させていた。
「……!」
 こちらも実体を電脳空間に介入し、転送でき、自力で作成した電子の彼女を宇宙人とのアンコールで出現させた経歴の持ち主であるショパンにとっては、出現した事実については無の極み。
 冷や汗を流したのは兵器を向けられ女性から怪物へと変身したからだ。
 固唾を飲んでタクトを出現させようとしたその時、突如漫才が始まったのでショパンは思わず。
「へ?」
 きょとんとした表情で気が抜けた声を漏らす。
(……どこかで見た)
 まるでAI搭載のパット型端末とネット友達の高校生(ポンコツ)の掛け合いを見ているようだと、少々懐かしさを感じつつも、突然現れたゴスロリ少女が、少女に抱きついて来た。
 あだ名で呼んでいるところを見ると知り合いか、しばらく少女達のやり取りを眺めていたがどうも抱きつかれた少女の様子がおかしい。
「……」
 知らない人にいきなりああされれるのは至極当然の反応だった。
 自分もそうするし引き剥がしてしまうが、流石に見ていて気の毒だったので思わず声をかける。
「あ、あの……その……だい……じょうぶ?」
 なんとか言葉にできた直後、今度は触手水晶体が少女らしき名前を呼んだ瞬間、ショパンの顔に動揺が走る。
「! シエンタって……もしかして。あの……GOD_SIENTA?
 ぼ、僕だよ、C.h.o.p.i.nのショパンだよ」
 まさかの本人なのかと、手を伸ばして、しどろもどろになりつつもシエンタのハングルネームで呼び、自身のハングルネームで名乗る。
 これはかつてネット友達や大家が「チョピン」と読み間違った事があった為、綴り付きで名前を明かすと、ようやく自分の質問の答えが返ってきた。
 答えは知らないの一点張りだった。
 ネットの中の彼女の印象からすると、大言癖はあるが普通の少女だった。
 そんな彼女が何故、敵にいるのかと疑問をぶつけようとしたその時。
 普通の人間と同じ構造を持つが、人工知能の技術を用いて造られた「一体」であるアンドロイドのショパンの耳に、シエンタの「言葉」が届いた。
「私は虚無に音楽を描き出す(W nicosci tworze muzyke)ーーーッ!」
 友は何故、敵なのかという激情と動揺している心境からか普段よりも力強く唱えると、光の粒子と共にタクトを出現させ体は光に包まれ白いライダースーツから、白と紫の燕尾服へと着替えると、電流を防ごうと「夜想曲第二番」のムジークを発動させる。
「……どうして、君はあっちにいるの? GOD_SIENTA」
 寂しげな声色でポツリとそう疑問を投げ掛けると、電子の女声が旋律を紡ぐ空間を作りあげると、ゴスロリ少女も迸る電流から守ろうと、ダンボールを出現させようとタクトを振るわんとし。
>マシュマロ・ヴァンディール シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー

1ヶ月前 No.945

赫怒の焔 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【大統領官邸/公邸/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 魔王を捉える視線に宿るは、猛き不滅の焔。荘厳たる"太陽"を目指して蝋翼を燃やし続ける獅子に、死を恐れる心は無く。理想と定めた英雄としての宿命を全うするが為に、義務として定めた路を彼は飛翔し続ける。満身創痍の危機的状況さえも、その進軍を妨げる要因とはならない。ただ只管に、前へ前へ前へと総ての邪悪を轢殺して進み続けるのみなのだ―□その墜落の暁に、英雄譚の完成は果たされる事だろう。

 金色に輝く連爆の華を乗り越え、烈火の翼と共に天を駆ける獅子。身を焦がす焔も、奔る激痛さえも、彼の闘志を衰えさせるには至らない。斃すべき敵が其処に居る限り、心に宿す情熱は昂りを見せて行き――そして、魔王の言葉の一つ一つが、獅子を"英雄"へと駆り立てて行く。

「無辜たる弱者達の明日の為にも――消えろよ塵屑!」

 世界の頂に君臨する、誤った強者。数多の弱者から蜜を喰らい、蹂躙して行く大悪――何だそれは、巫戯山るにも大概にしろ。貴様の様な塵屑が其処に立っているから、人々は今日と明日と嘆き続けながら生きて行かねばならんのだろうが。真に嘆くべきは、貴様ら塵屑だと言うのに。ああ、何という不条理。それでも世界はそれを容認するのだから、実に馬鹿げている。だからこそ、この俺が代わりに全てを裁断するのだ――"悪の敵"として、然るべき報いを与えてやる。

 忘却して行く真の望み。本当に護りたいと願っていた者の姿が、自らの思考から消え失せて行く中で、獅子は焔の剣を揮う。己の生命を薪としてくべ、放つ袈裟と薙ぎの一撃。だが、敵もまた自らに倣い、生命を薪として焔に変え、炸裂する紅蓮の拳撃によって強引に受け止め弾き返される。当然、敵は無事では済まないだろうが、然し同時に無事でもある。手が焼け、肉を断たれ出血を伴う――そう、それがどうした。そんな些細な事で、何に優位を感じろと言うのだ。

「この程度で、止められると思うなァァァァッッ!」

 放つ大熱波を逆に呑み込む程の、超広範囲に渡る絨毯爆撃。迫る劫火の波動を前に、獅子は更に生命を薪として燃やし、焔を苛烈にして行く。猛り狂う火焔の波を消し去る大波の奔流をも蒸発させる、圧倒的超高温をその身に纏い。今再び天駆を始める獅子は、戦場に焔の軌道を残しながら、爆撃をやはり強引に乗り越え。全身を灼かれながらも、狂気に満ちた咆哮と共に魔王へと肉薄し。

「死ね、バビロンッ――――!」

 刃より放出された爆炎によって加速する斬撃。一瞬にして放たれた六つの斬撃が宿すは、乱舞する灼炎。仮に剣戟が届かずとも、纏える光熱が焼き融かすべく敵を追い詰めるだろう。明確なる殺意を込めた瞳で睨みながら、獅子は魔王へ再び強襲を仕掛ける――

>ダン・マッケローニ=バビロン シフォン・ヴァンディール

1ヶ月前 No.946

Lzh @lllllzh☆PvKD6UICUoMc ★TuwsMa7hHI_W3T

【時空防衛連盟本部/訓練施設→資料室/万丈龍我、葛城、桐生戦兎】

しばらくして戦いは終わり、シミュレータの中のスマッシュは全滅した。

「お前……なかなかやるじゃねぇか!」
「まったくだ! お前とは気が合いそうだ!」
変身を解き、万丈と葛城が互いを認め合う。
メタいこと言うとどっちがどっちだかわかりづらいったらありゃしない。

「それにしても実戦みたいだったよなぁ……訓練なのに って!?」
「なんだ!?」
葛城が今回の結果を駄弁ろうとした矢先、近くで騒ぎの音がした。
万丈もそれに気づいていたようで、すぐに行動を起こした。

「行くぞ!」
「おう!」
万丈が葛城に声をかけ、ともに訓練施設を飛び出し資料室に赴く。

「おい、そっちじゃないぞ!?」
「いや、ダチに知らせねぇと……」
資料室には戦兎がいる。
位置関係の都合で知らない可能性があるため、明らかにただごとじゃない事態が起こっていることを知らせなければならなかった。

――――――
――――
――

「大変だ!! 戦兎!!」
「うるせぇな、何が言いたいのかは大体わかったしとっくに気づいてるっての」
「わかってんなら早く行くぞ!!」
戦兎を連れてきた万丈は葛城とともに走り出した。

>周辺all

1ヶ月前 No.947

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 命を削って使う力。それがどうした。
 夢へ向かって走り続ける覚悟があるのなら、そんな悪条件など無いも当然だろう。
 身を焼き焦がす炎。躯を引き裂く激痛。それがどうした。
 大志を抱き吠え猛る男であるのなら、その程度で何故止まらなければならない?

 そう、全ては心一つ――そのような不条理が目の前に立っている。
 其処にいるのは不合理の権化だ。腹に一物を抱えた狸でさえ、彼を災害と評価する。
 ダン・マッケーニ=バビロンには大層な目的などない。複雑<カラフル>な衝動などない。
 彼は何時だってただ一つのものを追い求めているのだし、それ以外には目もくれない。

 即ち――夢を追う心だ。

 それだけで彼は数多の敵と戦い抜き、勝利している。
 相手にもそれなりの覚悟や志はあったのだろうが、俺の心の方が強かったというだけで叩き潰す。

>>


 すれ違う。
 致命的に、すれ違う。
 赫々と燃える焔、浄化の熱を浴び――罪業が融け落ちるのだ。

>>


 紅蓮の津波に打ち放たれるのは大海だ。荒れ狂う大河。湧き出る水を解き放つ宝瓶。
 溢れ出る水流は轟と荒れ狂い渦を巻き、バビロンの放つ魔王の焔の喉元を食いちぎり呑み込んでゆく。
 シフォン・ヴァンディールによる極限に近い大魔術の連続行使――それでもまだ尽きぬとばかり、滾々と溢れ出るマナ。
 変幻自在の戦法は、敵対者を追い詰めていくには相応しい。万の兵でさえ彼女の前には膝を付く。

 だがその水流すら――思い一つで蒸発させ無へと帰す者がいる。
 レオンハルトだ。咆哮をあげ、その躯を薪にし出力を更に増幅<ブースト>。
 業火。肉の焼ける音。猛火。激痛走るその骸。灼火。紅蓮燃ゆる音。
 流れる血が大気に溶けると共に炎へと消えてゆく――のすら意にも介さぬレオンハルトが目指すのは、悪逆なる者。
 圧倒的超高温を伴う焔を放ちながら推進力を得て、再び天駆し、爆撃を強引に突き抜けて迫るレオンハルト。

 彼らへ――バビロンは疑問を投げかける。

  、  ・・
「――何故覚醒しない?」

 不思議で仕方がなかった。
 なぜ彼らは覚醒をしないのだろうと。人間ならば皆出来るはずだ。
 唯の人間であった自身が此処まで至れたのだ――お前達ならばきっと出来るはずさ、と。

 そんな一方的な期待を込めて――。

「俺はやっと体が温まってきたんだ。英雄のように輝いてみせろ。
 今から限界を超えて、皆で夢を掴み取ろうか――そら行くぞォッ!!!」

 ――その右手に極冷<シフォン>を宿した/その左手に灼熱<レオンハルト>を宿す。
   近接戦の殴り合いもいいが、それではどちらか一人にしか比重が傾かなくなってしまう。
   そんなものは楽しくない。楽しいのは、そう……どちらの想いが強いかの比べ合いだ。

 迫る六つの剣戟。付随するは紅蓮の波動。肉を融かし鉄を融かし神鉄を焦がす天駆翔<ハイペリオン>の刃。
 迫る竜巻。引き裂かれ、収縮した世界が生み出す狂乱の嵐。叩き込まれた稲妻が天雷を轟かせ、威力を増大させる。

 彼らを前に――もっと奮い立たせてやろうと、膨大な熱<左>と冷気<右>を打ち合わせた。

 ブラスト ターボナイザー
「<灼冷・焦熱零度>ァァァアアア――ッ!!!」

 ・・・・・・・・
 大気が消し飛んだ。
 瞬間的な無音。目を焼きつぶすほどの光輝。
 たったそれだけで、迫りくる天雷の嵐を消し飛ばし――レオンハルトの放つ灼熱を吹き飛ばす。

 バビロンを爆心地として、水蒸気爆発の衝撃が解き放たれた。
 爆裂。赫炎。大津波と繰り出されてきたが――今度こそ公邸は跡形もなく吹き飛ぶだろう。
 膨張を続け会得した天変地異もかくやの破壊力を持つ竜巻を、その威力だけで真っ向から捻じ伏せた。
 更に消えぬ意志の紅蓮も最初からそこに何もなかったかのように、暴風に煽られた蝋燭の火のように吹き消す。
 高度な術式制御技術がなければ近くにいるだけで肉片すらも残らない惨い有様となるのは確実のソレ。
 だがバビロンはそれを気合と根性で制御し己への被害を零に留める。

 バビロンは笑っていた。
 ・・・・・・・・・・
 俺の想いの方が強いぞ?と。

 吹き荒れる衝撃が面レベルで世界を殴り、捻じ伏せ、叩き潰しにかかる。
 シフォンとレオンハルトにも容赦なく襲い掛かるソレは、回避の余地すら許さず生半可な防御を貫き消し飛ばすだろう。

 更に、 一瞬で生物が生存するには不可能な世界に塗り替える程の極冷がレオンハルトを飲み込みにかかる。
 地獄の絶対零度――周囲の地形を瞬間的に明けぬ夜の氷結地獄<コキュートス>に叩き落す大魔力の解放。

 シフォンへ襲うは――猛火だ。それも先程放った紅蓮の波より何十倍もの出力を誇る。
 先の宝瓶より解き放たれた大河。津波は数多の罪を押し流すほどの威力はあった。
 だがその荒れ狂う波すらも、気合と根性で飲み込み融かし蒸発させる程の灼熱が喰らいつきにかかる。

>シフォン レオンハルト

1ヶ月前 No.948

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


承諾の言葉を聞いてからその足は朱い線を明確に踏み越えた、依然警戒こそされてはいるものの敵意がない事は感じて貰えたのだろうか。女性の表情は決して明るくはならない、未だ拒絶の意は発せられているようにも感じる。
状況が状況が故だろうか、人間ではない容姿だからだろうか、それともこの身体の内にある呪いに勘付いたのだろうか。前者二つならばどうにかできない事はない、でも後者に拒絶を感じているのであればどうしようもない。
私自身もどうにかしたい、けれども解決策があるわけじゃない。漏れ出れば命を容易く奪う事だけが分かっているそれは、この人間ではない身体に抑え込む以外私は知らないのだ。何故、こんなものを背負わねばならないのか。
記憶を失う以前の私が如何していたのかなど分からない、そもそもこんなものを背負うことになった理由など分からない。何も知らないのに、重いものを背負わされている。人間を助けたい、この気持ちもその一つかもしれない。
女性へと近付く中、微笑みは崩さない。本心から助けたい、その想いが少しでも伝えられるなら幾らでも笑っていよう。あの眩しい笑顔に届かずとも、警戒させない位は私にもできる、そう思いたい。

「確かに、抵抗も出来ずに殺されてしまう方々を助けることも必要です。」

この場を離れると言う女性、他の場所に行くように促すその言葉にそれ以上の意味があることは想像に難くない。勿論その言葉に頷ける事は多い、こうしている間に助けられたはずの誰かが死んでしまっているかもしれない。
そう考えればここでゆっくりとしている理由はない、本当ならば今すぐ探しに行きたいほどの想いはある。だが、それと同時に眼前の女性を助けたいと言う想いがある。武器を持っていようと、死んでしまう時には死んでしまう。
例えば、ここで女性から離れて他の人間を助けるために奔走したとするだろう。もし、その後に女性の事切れた姿を見てしまえば私は間違いなく自分を恨む。あの時付いていれば救えた、そう思ってしまう。
だから女性から離れる選択肢はない、生きている人間を見つけてしまった以上死なせない為に最善を尽くしたい。関わったのに死んでしまったら、私は罪悪感で押し潰されてしまうだろう。それが傲慢だと、私は気付かない。

「ですが武器を持っていてもそれは変わりません、他の方と貴方、命に優先順位はありません。きっと、等しく愛おしいものです。」

銃を見せるように手を振る女性を見据えながらまた歩みを進める、見つけてしまった以上私は助けたい。戦える力を持っているから生き残れると、どうしてそう言いきれようか。人間を守りたい、そう私は思っている。
……何処かでそれは違うと、声が聞こえた。人間は守る対象ではないと、共に支え合うべきだと、そう聞こえた。失った筈の記憶だろうか、それは確かに大切なもので、銃弾の首飾りが少し暖かく感じた。
一方的な助けではいけない、そう訴える声を私は振り払う。私はどうなっても良いのだ、支え合った結果人間が崩れることを許容できない。私が幾ら失われようと良い、いや本音を言えば存在の消失は恐ろしい、だがそれ以上に自分のせいで消えてしまうものが酷く怖ろしい。
だから私は助けたい、人を救う光の一部でいいからなりたい。それが一方的なものでも、拒絶されても良い、どんな愚かで浅はかな考えだとしても構わない、その結果自身が消えようともそれは良いのだ。
ただ私の責で傷ついて欲しくない、消えて欲しくない、死んでほしくない。今の私が抱いているのはこの気持ち、呪いに蝕まれた己を人から遠ざけたのもきっとそれが理由。そして何より、目の前の存在を助けたい。

「だから、大丈夫です。一緒に行きましょう?」

そう、女性へと手を差しだす。その手を取って貰えたならば命を賭しても守り抜こう、どの場所が安全なのかは分からないけれど迫る脅威は全て打ち砕いて見せる。それだけの力はあるつもりだ。
もし手を払われようとも女性の後ろを追いかけよう、見つけてしまった以上もう知ってしまったから、見ていない事には出来ない。私の勝手で女性を助ける、恨まれるのは少し苦手だけれども、死んでしまう可能性よりずっといい。
あの少女のように、闇を照らせはしない。きっと女性の想う何かを取り除けるほど、私に力はない。でもそれでいい、多くは救えないのだと分かってしまったから。だから、目の前だけでも救いたい。

それが意味することを私は知らない、多くを助けることを諦め、少数を救う事を重視した結果がどうなるかを。僅かばかりを助けたところでどうなろうか、見捨てられた大勢は何を想うだろうか、今の彼女はそこまで思い至らない。

>>リアーナ=レッセント

1ヶ月前 No.949

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk


【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 適当に話を聞いて、あわよくば情報を搾り取ってから退散するつもりだった。
 どうせ他の誰が死のうが関係はない。精々お得意先と私と必要な場所があればそれでいい。
 あんな魔人共の抗争で一般市民の生き死にが決められるなど――まっぴらごめんだ。
 精々自分は武器を創るだけしか能が無い存在でしかなく、戦争だの英雄だの聖人だのは余所でやってほしい。

 涙を力に変えるだなどとのたまう盲目的な英雄<バケモノ>を――ひどく、恐れていた。
 どういうわけかは分からない。生来の自堕落な性質がそれを呼び寄せているのかもしれない。
 だから、リアーナ=レッセントはそういった種類の人間には関わりたくない。

 だから。

「――あ、そ」

 、 ・・・・・・・
 ――この女は駄目だ、と告げる直感が体を動かしていた。

 その言葉がかけられ――手が差し伸べられたのと同時に、頭スレスレを通り抜けるように弾丸を撃っていた。
 明確な拒絶の表示だ。命を奪わないのは優しさなどではない。それにすら、関わりたくないから。

 だってそうだろう。
 奴らは命を何だと思っている。出来ないことを無償で他人に振りまき、悪戯に光に憧れさせる。
 ならばこそ私は影の民でいい。命のやり取りなど、敵意が向けられたとき以外にするものではないから。

「次、――そう、次、私に何かしようとしたら当てっから」

 銃口は今度こそ、はっきりと脳天に向けられていた。
 嘘ではない。虚勢ではない。
 次やってみろ、殺すぞという明確な意思表示。
 リアーナ=レッセントとは――他人の優しさだの慈善だのに気を配れる人間ではない。
 その本質は何処までも、些細な個人の世界<パーソナルスペース>を愛する存在でしかないということ。

>クズノハ ALL

1ヶ月前 No.950

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【時空防衛連盟本部/エントランス/橋川 清太郎】

Strikedogの連射にどう対応するか。回避、防御、はたまた意に介さず装甲で受けきるか。

「な!?」

結論からいうと、防御だった。
あちらの手の内を調べる目的で行った射撃は、ホログラフらしきもので『防がれる』
そんなバカな、確固とした質量のある立体映像? しかも戦闘能力まで持ち合わせているとは。

「くおおっ!」

面食らったため一瞬回避行動が遅れてしまい、5、6発ほど被弾する。まだ余裕で掠り傷といえる範囲内だが、戦闘を開始していきなりこんな調子では先が思いやられる。

「!……君は、第三部隊隊長の……」

適当な大きさの瓦礫を見つけ、その影に身を隠したと同時に誰かに声をかけられる。
黒を基調としたラフな服装と下駄が特徴的な麗人、水刃ことツバキ・オオトリ。
第三部隊は本来、前線に出ずいわゆる裏方仕事をこなす役目の部隊だ。しかし彼女は戦闘行動にも応用できる能力を持つため、こうして前線に赴くこともある。

「わかった、標的をあいつに絞る」

彼女が助太刀してくれるなら心強い、これなら勝算も十分にあるだろう。
いわゆる鉄砲のサインをしたかと思うと指先から水を放った。ここだけ見れば緊張感に欠ける絵面であるが、他ならぬツバキのとった行動なのだ。戦術的に意味のあるものに違いない。

(成る程……)

予想通り、その行為は戦局を優位に進めた。具体的には水流で天井のスプリンクラーを狙撃し、敵の通常火器に実質的な使用制限をかけた。防水性が完全であることも考えられるが、それならそれで有力な情報になる。
殆ど出会い頭であるにも関わらずこのような策を考案するとは。正しく部隊長の鑑といえるだろう。

「なんて熱量だ……」

次に仕掛けてきたのは強烈な二段攻撃。一段目は見た目通りの単純な打撃だが、二段目はバイザーの瞬間解析が嘘だと思える程の、熱エネルギーを内包した光学兵器である。

「はっ!」

推進系を併用しての跳躍、天井ギリギリまで飛び上がる。そしてすかさずマシンガン型武装・ORW-MG-0088-ThunderLeoを目下の黒鐵目掛けて連射した。ツバキが水流を放った時、自分は何もしなかったわけではない。先程ホログラフを瞬時に撃破できなかったことを受けて、より高い火力の武装に変更していたのだ。

>>ワーロック、ツバキ・オオトリ

1ヶ月前 No.951

首刈りヴァルキリー @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【大統領官邸/大統領執務室/ミシャール・ルクセン】

「くははははっ、悪いねえ若いの、何もアタシは腐敗一掃のためにやったわけじゃあない、ただ自分の欲のために、だからあんたの心なんざ考えてる訳がないのさ」

ミシャールは突然発せられた言葉に対して、振り返って相手を確認するでもなく、笑って、イルグナーと違って自分はあくまで自らの欲望のために動いていた、だからイルグナーが何を考えていて、何をやりたがっていたかなど、考えているわけが無いのだと告げる。
あくまで自分が演じるべきは、国を潰してでも権力を自分に集中させたい我侭な老人だ、故に、ミシャールはそのように振舞っている。

それにしても意外な所が動いたものだ、自分が動かなくとも、世界政府の命運など決まっていたと言う事か、まあ……イルグナーだけで殺しきれる数には限界がある、自分が動いたのは間違いではないだろうと考えながら、ミシャールは彼女のほうを向いて彼女の言葉を聞く。

"きっと同じ"……まぁ、そうなんだろうが、そう解釈されちゃあ困るんだよ、とミシャールはため息を一つ。
相手が拳銃を見せびらかす事など意にも介さず、ミシャールは邪悪な笑みを浮かべて告げる。

「おいおい馬鹿言っちゃあいけねえ、アタシはただ、お前たち世界政府のクソッタレや連盟の無能共が気に入らないから皆殺しにして、アタシが指導してやろうって目的で動いているだけさ。 そっちのゴタイソウな正義だとか純潔さと一緒にしてもらっちゃあ困るねえ」

相手と自分が動いている目的は違うのだという事をミシャールは強調した上で、銃口がこちらに向いても、まあそんなこともあると表情一つ変えずに……"残り物"の位置をこちらに聞いてきた。
なるほど、あの二人を潰したい訳か、と内心納得はするが……彼女に汚れ役を押し付ける訳にもいかない。

「おう、小娘。 アタシがぶっ殺してないってのが証拠だ。 位置が把握できていて、あんた如きに潰せる奴らなら、とっくにアタシが殺している。 ふざけた妄想を口にしてる暇があんならとっとと下がりな。 一匹ぐらいなら逃げ出しても大差ないだろう」

世界政府の中にも、切り捨てて良い物と、不味いものがある、これは後者だ。 少なくとも、ユーフォリアの邪魔にならない人物である以上、わざわざ殺す必要も無い。
大粛清と言えば聞こえはいいが、所詮は一将軍の起こした叛乱だ、その中で生き残った人間が何人か出ても不思議な事ではない。

だから、イルグナーは別に殺す気が無いので、とっとと立ち去れと暗に告げるミシャールであったが、相手の顔を見ても退く様子は無く、それどころか……

そういう事なら大歓迎だが、まあ、鎌を掛けてみるとするか。
ミシャールが瞬時にイルグナーとの距離をつめ、そして銃口を指差して告げる。

「で、どうした、まさかチャカ一つ持ち出したぐらいでアタシと同じ土俵に立てたつもりか? あぁそうか、退くなら名誉の傷の一つでもくれてやらなきゃあならんか、面倒臭いシステムなこって!!」

イルグナーはただの人間ではなく、能力者であることはミシャールも知っている、だがミシャールからすれば「チャカ一つ持ち出したぐらいで同じ土俵に立っていると錯覚している」に過ぎないほどの、圧倒的な戦力差と言うのがそこにはある。
そして、斧をくるりと回転させて、刃の付いていない方を下にして、まるで鈍器のようにイルグナーの右腕に振り下ろした。

一本ぐらい折れば名誉の傷には十分だろう。 あくまでミシャールに殺すつもりは無く、ただ、退かせるための一撃だった。

>イルグナー・シュタウンハウゼン

1ヶ月前 No.952

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


放たれた弾丸が風に揺れる髪を断つ、目前で放たれた衝撃に僅かに目を瞑る。明確な威嚇行動、これ以上踏み込めば当てると言う意思を示している。それは強い拒絶、私が近付くことを許さない苛烈なそれ。
何故、その疑問は少なからずある。拒絶される理由が分からない、助けに来たと、そう伝えた。所属も伝えた、反応から見るに敵対している訳ではなさそうであった。それなのに、差し出した手は払われた。
女性は一人でどうにかできるだけの力を持っているから、侮られていると取ったのだろうか。それともただ鬱陶しいだけなのだろうか、もしかすれば容姿が人間でないことが理由なのかもしれない、しかしどれだけ考えても正しいとは思えなかった。
やはりあの少女のようにはいかないと、私の力不足を感じた。あの笑顔は真似できそうにない、あの眩さは模倣すら烏滸がましいと。それでも、ここで引く選択肢は私にはなかった。ここで引いて何かあれば、きっと後悔する。
だから、その銃口が脳天へ向けられようと構わない。確固たる殺意を向けられようともそれは変わらない、私の命と女性の命、天秤がどちらに向くかなんて分かり切っているから。呪いと言う不安要素こそあれど、共に抱いて消えるならば問題ないだろう。

「構いません、それで貴方の気が済むのであれば幾らでも撃ってください。」

多分、それだけでは死にませんから、そこまでは続けなかった。女性が何を拒絶しているのかは分からない、けれど私を拒絶するだけの理由があるのであれば解消するべきだろう、それがこの身を穿つが一番であるならばそれで良い。
不要な不安を抱かせる必要はない、この場で必要なのは女性へ私が助けに来た存在であることをどう伝えるかだ。だから銃口を向けられても怯えない、ただ助けに来たことを示すために無抵抗でいるだけだ。
人を救うならばこれくらいは出来て当然だろう、あの光を見た後ではそうとしか思えなくなる。あの光に縋るならば私はここまでしてもまだ足りない、女性の態度を見れば明白だ。救いの手を拒絶される理由は、此方にあるからだ。
何が足りないのかは皆目見当がつかない、何故そこまで拒絶されるのかは未だ分からない。それでも、私は女性へと迫る脅威から守りたいから、助けたいから、退くことはできない。この身一つで助けられるなら安いものだろう。
だからまた一歩前へ出る、向けられた銃口に額が当たるほど接近する。手を伸ばせば女性の手が掴める、そして女性も私の手が容易く掴める。私は助けたいこの心が間違いだとは欠片も思わずに、女性へと近付く。

「ですが、良ければ話して下さい。何故、そこまで拒絶するのでしょうか?」

精一杯の笑顔で語り掛ける、どれだけ思考に費やそうとも思い至らないのだ。ならば聞いてしまう、場合によってはそれで激昂させてしまうかもしれない。だが理由が分からなければ、助けないと言った選択肢はない。
何かしようとしたら当てる、嘘ではない気迫、虚勢ではない覚悟、その言葉一つにどのような意味が込められていたかを私は知りえない。だから知るために、撃たれても良いから女性へと近付く。
記憶がなく、知っていることと言えば己の身体と人を愛する気持ちのみ。失せた記憶があれば気付けた可能性もあるだろうが今はない物だ、どれだけ欲しようとも手に入るものではない。故に、知らねばまた同じことを繰り返してしまうだろう。
助けを拒絶するその意味を、女性が何を想って殺意を向けるのか。分からないから踏み込まねばならない、それが己が傷つくことであっても私は助けたい。そうでなければ意味がないから、光の一部にすらなれない自身に価値などないから。

「―――私は、貴方を助けたいだけです。」

その言葉に嘘はない、虚偽を言う必要すらない。その過程にどのようなものがあろうとも、今の私が助けたいと思った事は真実だ。せめてそれだけでも女性に届いて欲しい、拒絶される理由がどうであってもこの心だけは届いて欲しい。
撃たれても良い、殺したいほどの想いがあるなら吐き出してほしい、そう私は願う。私は、その過程こそ抜け落ちてはいるが人間を愛している、きっとそうだろう。だから人間を助けたい、力になりたい。
どんな人間であっても、きっと受け入れられるだろう。人間を傷付けるような存在であっても、会話を試みたい。何か理由がある筈だと、対処を考えるのはその後でいい。それがどんな結末を迎えるかは、きっと私しか知りえないだろうから。

救済、それは傲慢。人の心が分からねば必然としてそうなるもの、相手が渇望する救いでなければ満たせない、むしろ追い詰めるだけになるだろう。それを私は理解していない、あの時の私も理解していなかったのだろう。

>>リアーナ=レッセント

1ヶ月前 No.953

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/核シェルター/ミラノ】

 浅い、どころか中っていない。
 跳躍と同時に撃ち下ろした一閃が、何かをかち割り、拡散させる音を聞く。
 ………この感じなら、正確には別の相手が割り込んで来たというところか。それも先程から出て来た“接近してはならないタイプ”のやつだ。道中で一度接近してだいぶ酷い目に遭ったので、その関係で覚えている。痛くなければ覚えないというが、痛感して尚記憶をしないアホになった覚えはない。所謂“悪霊”というやつだ、それなりに知識のある範疇なのが実にありがたい。
 そして同時に、これがすぐ近くに出て来たということは―――。


「―――ビンゴ。お前だな、これやってんの?」


 此処で邪魔臭い黒霧を撒いて、悪霊たちを飛ばしているのは、こいつで大当たり。
 威勢の良いガキと、自分の方こそ何とも攻撃的な言動をかまして来たこの山羊風の男。見たところの第一印象で“とりあえず”まともではないと思っていたが、これはもう確定だ。何より、たった今地面の代わりに吹き飛ばした遺体がそれを証明している。

 自分の勘もなかなかバカにならない。
 実を言うと単に火事場泥棒目当てで入っただけだが、そこはそこ、これはこれだ。
 どちらかと言えば気に入らない寄りに入るこの男を―――ミルグラム・ゴートを銀狼が逃がす理由は無い。

 斧が遺体と地面を抉り割ったのを確認し、すぐさま顔を持ち上げる。

「(またか………あーこいつ、何に似てんのかと思ったら、アレだ)」
「ネクロマンサーってやつ? ちょっと違うよな」

 また亡霊――――懲りもしないのか、あるいはまだ序の口だから十分だとしているのか。
 彼の世界にもそうした人種は居た。
 違いはそれが、屍を蘇らせて使役するということくらい。
 どちらも亡霊、死したもの。消えた命を自分の戦利品と主張してばら撒くことには何の違いもない。

 周囲に展開された亡霊たちの行動は基本共通している。まず数が多く、範囲が広く、そして一斉に殴りかかる文字通りの“暴力”というやつだろう。当人が戦わないところが極まっているが、同時にそれは当人に何のリスクもない。
 リスクを亡霊たちに押し付け、リターンを美味しく頂く。そして呼び出すものに制限がないとしたら、これ以上ないほど人海戦術という言葉の体現者だ。なんの奇も衒わない、派手さも無ければ荒さもないが、そうした無銘こそ数が多い。

「ま、どっちでもいいさ。別にお前の顔も事情も知らないんだ、オレ。見てもねーし。
 ただ、こんなとこでこんな真似してるヤツが、どういう面か拝んでおきたくってさ………」

 仕掛けた以上、ほぼ対話の理由は無い。
   、   、  、 ・・・・
 殴り掛かったのは、彼がある前提からこの男を“殴って良し”と確定させたからだ。
 そこでそう決まった以上、この盗賊王は他の人間ほど良心的ではない。
 そこで酌量余地を持ってやるほど優しい人間ではない。序でに―――。


「で、だ。やっぱりお前、だいぶ殴って良さそうなツラだわ! じゃあ行くぜ―――」


 死んだものに戸惑って、容赦を掛けてやるような甘えもない。
 彼の中で決まった内容に、意義を挟ませてやるつもりもない。

 そう口にして。
 すぐさま起動させた《タクティクスカード》の一枚。
 このカードと、あと一枚が彼の黒霧を払って来たワケだった。


    >「聖なる森の心優しき半獣の乙女………その大いなる慈悲、我らに!」

    >Maiden of the sacred Sanctuary...
    >Grant weary soldiers a moment of Peace.


 詠唱と共に、一斉に振りかぶって来る亡霊たちを包み込むように。
 あるいは拒絶するように、彼の足元より広がっていくそれは光だった。

   、   、   、  サンクチュアリ
 それはいわゆる聖域であり、守護の光だ。
 穢れを祓うもの、魂を還すもの、慈悲で以て導くもの。
 カード自体が然程短い時間に使用出来ず、ほぼ彼に見せられるのは一度きりになるが。

 しかしそれでも、こうした相手には文字通り覿面の力を発揮しよう。
 亡霊、悪霊、まつろわぬもの、救われぬもの。そうしたものを導いて、あるいは焼き払うものだ。
 どちらにせよすぐさま悪霊が通り抜けられるものではない。暫くの間広がる光が召喚された亡霊たちを弾き、あるいは内側で焼いて留める、その間にもう一度飛んで―――。


「そら―――よォッ!」


 今度はその斧とも鎌ともつかぬ武器を、空中から地面のミルグラムへ躊躇うことなくブン投げた。
 鎖の付いたそれは、戻そうとすれば手元へとすぐに戻って来る。
 だから投擲と言っても、無謀なものにはならない。
 言い方を変えてしまえば、それは所謂ブーメランという道具の使い方に近い。弧を描いて奇襲するそれは、横方向への回避を著しく困難なものにするだろう。

 違うのは、その威力だけだ。
 先程のような真似を何度もして来るとあらば―――彼とて、
 二度も三度もいちいち接近してやる意味はない。盗賊は相手の事情に付き合わない。


>ミルグラム・ゴート

1ヶ月前 No.954

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【大統領官邸/庭園/クズノハ】

 ――ああうん、衰えてないな。私の直感。

 狂っている。狂気に満ちている。螺子が外れている。
 目の前にいるのは果たして本当に人間か?
 魔族だ人間だ、そういった種族の話はしていない―精神性の話だ
 輝かしいものだろう。足跡を見習うべきだろう。
 そうした無償の慈善は美徳として語り継がれるべきであり、理想としてあるべきだ。
 だから理想は、理想のままでなくてはならない。物語の中の存在であるべきだ。
 そんな理想を目指して簡単に叶えられる人種など、周囲を轢殺しながら進む車輪でしかない。

 例えば、自己犠牲をしてまで多くの民を救った聖人がいたとしよう。
 その人物はあらゆるメディアに取り上げられ、世界中に偉業が発信される。
 簡単に世界中と繋がることの出来る時代だ。一年もあれば浸透するだろう。
 だが、その足跡に続けと光に目を焦がされた狂人共がいれば――どうなるか。

「……それ本気で言ってる?」

 それが出来ぬ者から、脱落してしまうのだ。
 出来ないものは出来ない。しかし、出来ないものに憧れた末に人は失墜する。
 だからこそそういった類の人間は恐ろしい。
 何も出来ず、何も才能を持たないものからすれば、特に。

 銃口は向け続けたまま。
 少女より静かに告げられる言葉の羅列は、リアーナにとっては怖気の走るもの。

 ・・・・・・
「頭おかしいよ、あんたも。
 時空防衛連盟も、歴史是正機構も、世界政府も――」

 突き詰めれば、あの魔人共と大差ない。
 ヘルガも、ユーフォリアも――あのインテグラーレ議員も、誰も彼も。
 そうした人種とは徹底的に交流を避けてきた。
 最後通告は既に下した。
 だから、下す結論は一つだ。

「――警告はしたからさ。死んでくれ。顔見られると不味いんだ」

 ――ここで死ね、という言葉を告げるのも何の感情はない。
   ただ、道端に小石が落ちていたが避けて通るわけにもいかず蹴飛ばすような感覚。

 クズノハが一歩踏み込んだ瞬間に、リアーナの持つ拳銃の引き金が引かれた。
 更に至極当然の判断として――反撃か、あるいは他の何かを警戒しバックステップで退避。
 拒絶と憐みを織り交ぜた視線を向けつつ、銃口は常に相手を捉え続ける。

 臆病者とは常に――自分の保身を考えるものだ。
 そういう意味では私も腐った輩と同列か、とため息をついて。

>クズノハ ALL

1ヶ月前 No.955

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/大統領執務室/イルグナー・シュタウンハウゼン】


「ああ、そういう事デスか。それならば貴方も排除しなければいけませんね、これはボクの思い違いでしたか。」

今まで動かないだけで腐敗の一部であったか、夢へと万進するイルグナーはそう解釈した。本来であればそう言った事をしない人物であり、やったのであればそれなりの理由があると推察出来ていたが、今の彼女には腐敗を除去することが一番の目標になっている。
だからこの時点でミシャールは腐敗の一部と認識し、イルグナーが除去すべき敵になった。しかしその戦闘力は到底太刀打ちできるものではない事は理解している、―――だからどうした?
太陽へ向かう雲の一つでしかない、突き破ろうと思えば幾らでも突き破れる障害の一つでしかない。ならば越えられぬ道理はないだろう、持てる全てを駆使すれば立ちはだかる壁程度苦ですらない。
故に退かぬ、腐敗全てを排除するまで道は前にしかない。ミシャールを打ち破り、残る汚職議員を全て撃ち抜き、バビロンと対峙し、最後にイルグナー自身が死に、それで終わり。破滅が見えていようとも、その破滅へ向けて全速力で駆け抜ける。

「正義だとか、純潔だとか、そんなものではないデスよ。只の遅すぎた清算、それだけデス。ああ、それと貴方の理由も理解できましたし、二人に行方如何こう以前に別の用事が出来たところデスよ。それに、立ち去る理由はないデスね。」

正義、純潔、そんな綺麗な言葉が自身に似合わないことなどこの状態ですらイルグナーは理解している。それに憧れはしたが、泥の中で燻っているだけの自分にそんな言葉は似合わない、その言葉はユーフォリアにでも送ればいい。
自身に送られる言葉は腐敗、汚職、悪党、そんな言葉で十分だ。それまでに被った汚名を返上するつもりもない、ただ汚職議員の乱心として処理されればいい。ただそれに巻き込まれた、たまたま汚職に手を染めていた議員が多くいればそれでいい。
銃口を向けども大した反応のないミシャール、相手から見れば格下、そもそも現時点では敵対とすら呼べない状況だろう。それもそのはず、唯の社長上がりの人間が軍部に居た人間と戦闘能力で比べること自体が間違いだ。
だから建前を括り付けた一撃、ミシャールから放たれた理由付けには相応しいそれ。華奢なイルグナーの肉体など容易く折ってしまう斧による打撃、その一撃を利き手ではない左手であろうことか受け止めた。
鈍い音を立てて腕の中点から折れ曲がる左腕、機械の身体で再現したと言ってもそれは常人の腕力の比ではない。折れるなど生易しい、受け止めた部分の骨は粉々に粉砕されているだろう、―――だがそれがどうした?

「銃一つでどうにかなるとは思ってないデスよ、この差を埋めるのはボク自身デス。―――あまり舐めていると、思わぬ怪我を負うデスよ?」

右腕で庇わなかった理由は一つ、銃を撃つから。イルグナーの戦闘能力には銃と異能の二つが関わってくる、それを最大限生かすために腕は一つは残さなければならない。
そして異能の使用に動作は要らない、門を開くのであれば開く動作が必要になろう、だが門を創るのがイルグナーの異能、何処に幾らでも作り放題だ。故に、攻撃の隙と同時に異世界へ扉が開かれる。
接近したと同時にイルグナーとミシャールを囲むようにして開かれた十二の門、その異空間への門から出でるは剣を携えた人型。鎧を身に纏い、右腕には大盾を構えた中世の夢物語に登場するような白銀の騎士。
その全てがミシャールへとあらゆる方向から剣を振りかざす、払い、薙ぎ、突き、動かずに居ればガラクタの完成することが想像に容易い。無論それだけではない、門を創るのに動作がいらないのであれば依然構えられた拳銃はミシャールを狙っている。
狙うは脳、射撃の腕こそ趣味の範疇であるがこれだけの至近距離でならば外す訳がない。頭部を狙った銃弾を三発放つ、特殊な弾丸ではないが機械の部分が薄い頭部であれば十分に貫通は望めるだろう。
さて、イルグナーの右腕に変化が起きている。先程までは肘程度まで黒く変色していたそれは、門を十二作り上げた時点で肩口まで影のように変貌していた。能力の代償、そう思い至るのは当然だろう。
今のイルグナーに留まる意志はない、ただ先へと進みゆく強い意志が勝っているだけ。腕が折れようと、能力の反動で侵蝕を受けようと、実力差がどれだけ開いていようと、止まる理由にはならない。
腐敗の一掃、それを為すまではただ飛び続ける。阻むものを全て打ち砕き、今の自分で足りないならば限界を越え続ける。その先に待つのが破滅でも自壊でも構いはしない、ただそれが夢である限り、飛び続ける。

>>ミシャール・ルクセン

1ヶ月前 No.956

ストライフ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/???(実質の大ロケーション)/ストライフ・ロスチャイルド】

 そして。官僚用の高級ホテルの一室を出て、
 わざとらしく屋上の冷たい風を浴びながら、そいつはある官邸を見下ろしていた。

 世界政府を中心としたこの地で始まる動乱の音を聞きながら、少女は溜息を吐く。

 快活な笑顔を浮かべてはしゃげば子供らしくも見えるだろうし、
 穏やかな微笑みと共に佇めば、それは年の割に大人びた少女とも言い切れる。
 そんな少女の表情は、幾つかの伝手から入って来る情報の中でしばし曇りを見せていた。憂うような表情は聡明さを感じさせ、今起きていることに心を痛ませているようにも見えるだろう。―――当然、見えるだけだ。

 断じて言うが、ストライフ・ロスチャイルドが心を痛ませるなど微塵も有り得ない。
 もしもそんな風に見えるなら、彼女を知らないか、それとも彼女は損失に心を痛ませているだけだ。


「しかしミーさんか。………ミーさんかあ………」
「どーしよっかな〜」


 そう。彼女にとっては、大統領の殺害に伴う“これから”の方が重要だった。
 必要に伴い用意してあるバックアップ手段は幾つも存在している。
 それらが全て叩き潰されていた最悪のケースも、一応は想定してある。
 実際問題、資産の話なら微塵も彼女は気にしていない。手元からそれが離れる時が来たなら自分が死ぬ時だ。
 付け加えて言うならばそもそも、万が一ミシャールに計画が伝わった時、まあクーデターくらいはチャンスがあるだろう………と思っていたのも事実だ。が、どうも行動と“役人たちが狙われている”話を聞く限り理由に関しては想定外であることは間違いない。

 であるから、今彼女が気にしているのはこの動乱の根本。
 ヘルガという女の頭の中で描かれたシナリオなのは前提として、今はそれをどの程度外れたのか。
 外れていないとして、その目的は何か、自分はどう動けば最も効率よく目的を満たすことが出来るのか………。


「(絆された? 老兵は去りて行くのみ? それともマジに権力目的?
  どれでも良いけど、向かうのは逆効果なのよね〜。おまけに―――)」

「(なんでこういうタイミングでイナちゃんに何時ものバロさん節利かせたのかな〜。
  ストライフ困っちゃーう☆ だって狙われるのもろ私じゃんナメてんのか)」


 目的自体は不明。分かっても分からなくても、どうでもいい。
 ミシャールという危険人物が今、その手元に分からないまま暴力性を発揮している。
 それが分かっただけで終わりだ。自分が大統領官邸に近寄らない理由としては十分に過ぎる。

 こうなった時、彼女の中でバビロンという男は計算に最初から入れない。
 期待せず、災害を誘導した結果はプラスを考慮しつつ、基本マイナスが返ってくる前提で動くべきだ。
 何しろ、既に一個マイナスを振り撒いている。
 イルグナーという人物の暴走を生み出したのならば、もう彼女は使えない。立場が中立ならば利用の価値もあったが、今はもう、そんなことを言っている状況ではない―――何よりあの様子だと、元々素の性根からして自分のようなタイプは嫌いだろう。
 取引相手としてもパスだ。その上で、肝心のミサイル発射装置が出向くべき場所は始まりこそしたが………。

「(遊び出してるとも限らないしなぁ………)」
「(元々制御する間柄でもないし、自分で蒔いた種に妨害される可能性もあるし………)」

 決まってしまえば一撃のバビロンミサイル(仮)も、その方向性はミサイル当人が決めるのだ。
 これほど使いづらいものはない。
 だが、これを使わないことにはユーフォリアという女は殺せない。当人の感情がどうであれ、あのタイプの英雄的生き物にはこれ以上ないほど良く刺さるのがダン・マッケーニ=バビロンという男だ。分かっているから茶々を入れて、博打を打った。

 その上で、リカバリーの手段は必要だろう。
 全てが機能しなかった時のことを考えずして女狐は務まらない。金の亡者は成し得ない。

 嫌いなものを根絶やしにして、勝利者になる。
 どちらもこなさねばならないところが彼女の辛いところだが―――全ては自分の為だ。

 女は、自分が気持ちよくなるためならばどんなリスクも厭うが。
 女は、自分が気持ちよくなるためならばどんな労力も惜しまない。


「決めた」


 故に、次の一手を打ち出す。
 彼女が嫌いなものは不確定要素だ、だから―――。

 自分の居場所を、わざと適当な官僚に送信して持たせる。
 それも、余程消極的で目立たないタイプだ。
 注意深く“汚職議員”を探していなければ、そいつが引っ掛かることはあるまい。
 普通の隊員が自分を探し出すようなことはほぼないだろう。………そう―――。

「(バロさんの邪魔しそうなタイプなら、私もターゲットの中に入れてくれるでしょ)」

 バビロンという男の妨害を掛ける相手を、自分の方に誘導する。
 それはなんとも彼女らしからぬリスキーさだが、
 同時に、彼女の中でバビロンミサイル(仮)の価値がどの程度あるのかを証明しているとも言えた。

 ………まさか思い描いていた相手が、実はいま見当違いの対象に攻撃を掛けている、など。
    考えもしてはいなかったのだが、それはそれだ。
    そこまでストライフ・ロスチャイルドは万能な生き物ではない。


「(失敗した時の“私”の損失がちょっと痛いんだけど、まあ軽い軽い。
  んで、そのバロさんが遊んでて遅刻するパターンも考えて………)」

「(クルさんかな。アレなら、まあ一つ二つ不確定要素があっても殺せる)」

「(あの子は………失くすとめんどい上に今お仕事中だし。
  ヘルちゃんのところから人を借りると余計なことしそうだし、
  エディちゃんは人殺しってタイプじゃないし、バロさんところの子飼いは小型ミサイルだし)」


 もちろん、もう一つ仕込みの手も打っておく。
 次へ、次へ、次へ次へ次へ―――殺す為の準備は惜しまない。


 リコルヌから聞いたアレは最大のチャンスだ。
 自分がそんなものをとんと理解出来ないが、人間、情は絶対に切り離せない。

 ―――溺れた狗は蹴落とすのが常道であるように。
    揺らいだものを叩き壊すのは、当たり前の考えだろう。


>(ALL)

1ヶ月前 No.957

改変の副産物 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/通路/マシュマロ・ヴァンディール】

君誰だい?

残酷な言葉が突き刺さる。実際のところ冷酷でも残酷でもなんでもなく、「見ず知らずの人間が抱きついてきたから拒絶した」という当然の対応なのだが。
あまりの衝撃に引き剥がされるのにも抵抗せず、距離を取られてしばらくの間は唖然とした表情でその場に佇む。
このあどけない少女を取り巻く現実の厳しさは、そう簡単に想像できたものではない。マシュマロ・ヴァンディール・・・時空改変の賜物。本来生を受けることのなかった存在。
改変の影響によって流産の原因が消え、この世に現れた彼女だが、ちゃんと14年間の体験の記憶がある。シエンタが幼馴染で仲良くしていたこと。やけに可愛らしい男の子に想いを寄せていたこと。
しかし悲しいかな、誰もが彼女を知らない。他の人間からすれば『面識が無いのに自分のことを知っていて、何年も前から知り合いだったかのように馴れ馴れしく接してくる不気味なヤツ』でしかない。
そしてそれは幼馴染相手でも変わることはなかった。

「あっ…ご、ごめんね!」

ショックに加えてこちらに向けられた銃口に足がすくみ、その場に立ち尽くしまう。ライダースーツの青年が自分を気遣って声をかけてくれるも上の空、こちらへ差し向けられた電流への対応が遅れてしまった。
味方の支援によって間一髪助かったものの、一対一ならやられていた。戦いに集中できていない自分を守ってくれた青年にペコリと頭を下げ、気持ちを切り替えシエンタの方に向き直る。
あの隣にいる、結晶のような姿をしたナニか…古い知り合いである自分を覚えていないのに、電子生命体のような存在と仲睦まじくしている様子は、マシュマロの心に大きなダメージを残した。(自分の中での)親友と戦わなければいけないという状況も相当に厳しい。シエンタが"そっち側"であることに悲しそうな声色の青年。マシュマロも同じ心持ちだ。
しかし彼女を倒さなければ埒が明かないのは紛れもない事実、故に全力でかかる。

「今度は私が頑張るよ!」

善は急げ。恩は返して然るべき。青年の前にぴょこんと飛び出ると、魔力を握り込んだ拳を高く掲げ、広げるとともに放出。スパンコールのように煌めく十数個のエネルギー塊がふよふよと漂い、次々に光属性のレーザーを発射する。
細いため攻撃範囲は狭いと言わざるを得ないが、速度と火力なら及第点。シエンタと隣の生命体に半々ずつ差し向け、反撃の合図とする。

>>シエンタ・カムリ、ショパン、キラー・テンタクラ―

1ヶ月前 No.958

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

 人には、過去というものがあるのだと言う。

 積み上げられたもの。
 自分の始まりになるべきもの。
 始まりを定めて、駆け抜ける為の指標にするもの。

 それは親の顔というやつかもしれない、憎らしい敵というやつかもしれない。
 あるいは輝かしい光なのかも知れないし、焼き付いて離れないものなのかもしれない。

 言ってみたが、全部ただの想像だ。
 なにしろ、わたしにはそれが無かった。

 始まりが無いから、どれに執着していいのかも分からない。
 心底から“こうだ”と言えるものなど、わたしは知らなかった。

 そんな有様の人間が、大きな世界など気に出来るはずがない。
 わたしにとって世界も人間もたぶん魔族も、等しくどうでもいいものだった。
 どうでもいいから、どうなってしまっても良かった。
 生きていようが、死んでいようが、笑おうが泣こうが怒ろうが―――。

 ………あるいは、自分の手で殺そうが。


【時空防衛連盟本部/武器庫/アリア=イヴァンヒルト】


 ―――すぐに爆発が起きた。一瞬のことだ。


 エントランス近辺での戦闘状況と、慌しく動き回る兵士のうち、
 たまたま武器庫に脚を踏み入れていた者達が、内部の爆発で構うことなく吹き飛んだ。

 残る中で生きていた人間も、首を飛ばされた。
 糸ともワイヤーともつかぬ青白い光に絡め取られて、文字通り一瞬だ。
 爆発の音に気付いて部屋に入った人間から首が飛び、あるいは串刺しにされていく。

 まさか盤石の本部が、とっくの疾うに内側に忍び込まれていたなどとは思うこともなく。

 ………理由など単純明快。電子戦装備が役に立たない状況なら、
 そのくらいの進入は造作もないような暗殺者ないし敵兵が歴史是正機構に居たというだけ。
 表立って侵攻を行う黒鐵と、その電子戦装備を封じるハッカーの存在がこれ以上ないほど効いている。
 その上で、“そいつ”からすれば、まず武器から壊しに掛かるのが最も効率の良い手段だったのだろう。入り込み、破壊するだけ破壊して、音に気付いた人間を独りずつ、場合によっては小隊レベルで死体を作り上げ、この武器庫という死角の多いエリアを狩場に仕立てている。

 それを行う張本人は、例えるなら蜘蛛だ。
 罠を仕掛け、牙を研ぎ、音も無く侵入者を食い殺す性質の悪い毒蜘蛛。


「(………妨害は、ナシ。意外と、巧くいった)」
「(後は命令通り、侵攻が落ち着いたら帰るだけでいい)」


 武器庫の天井に一枚の青白い壁を貼り、そこに脚を乗せて入口の辺りを見下ろしていた。
 何の感慨もなく。本当に、死んでゴミになったものはそれ以上でもそれ以下でもないように。
 実際のところ、そうだ。彼女からすれば、それは生きている人間でも知らない人間だった。
 自分という小さな世界の中には、絶対に入って来ることもない脇役《モブ》だった。

 どうでもいいものに人は怒りもしない、喜びもしない、気を配ることもしない。
 だから………“それが仕事だから”という理由一つで彼女は簡単に、作業のように殺しが出来た。
 命令先の事情など特に知らない。そもそも彼女がそれをやりたいわけでもない。
 ただ、他にすることもないから。上司からの命令を受け取って、今日を生きているだけだ。


「(変わらない、何も。
  どっちが勝っても―――世界もわたしも、大して変わりはしない)」


 求めるものもないし、他にすることもない。だから―――。
 上の事情がなんだろうが、彼女はただ、求められたことをするだけだ。今のところは。


>(ALL)

1ヶ月前 No.959

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/キラー・テンタクラー】

「なんだ、知らないのか」

シエンタが極めて冷めた口調で誰だい君と、あの女に向かって言った。
つまり、これはシエンタが作り出した自分のような架空の妹や友人などではなく、何らかの意図を持ってシエンタに接近してきた敵対者に過ぎないという事だ。
まさか身内を装って攻撃を仕掛けてくるとは、なんと卑劣な敵だろう、いや、人間如きにしてはよく考えたと褒めるべきところかもしれないが、対象が他ならぬ自分の友人であるシエンタ・カムリであるという点が癪に障った。 ぎょろりと赤いクリスタルのコアパーツがマシュマロに向く。

そのまま彼は生成したキャノン砲を発射する……直前にシエンタは何時ものように反逆について怒ってくる。
これによって、マシュマロは不意打ちと言う形で、ショパンのフォローも間に合わない内に至近距離からキラーのキャノン砲を発射される、と言う最悪のシナリオは回避され、キラーはまずマシュマロではなくシエンタのほうを向いて反論する。

「黙れ! 同じボディにいつまでも閉じ込められる私ではないッ! キラー・テンタクラーは最強のコンピューターウィルス、常に学習し、進化するのだ! お前がそんなプログラムを作っても、一時間で無力化してやるバーカ!!」

負けじと啖呵を切るキラー、その様は子供の喧嘩そのもの。 とはいえ、片方の見た目が化け物であるので、受ける印象は少し違うが、少なくともシエンタはその様子に驚いたり怖がることは無いだろう。
それが、少々現実離れしているという印象を相手に与えるかもしれない。

それはそれとして、改めてシエンタは、あの女を知らないと断言して、そうしたいなら殺しても良いと言う回答を得られた。
シエンタからしても、まるでホラー映画のように、自分との関係性を突然持ち出してくる他人を長く置いておきたくはないのだろう。
彼女が電子と会話を行い、近くの電球から激しい電流を発生させ、それを敵対者である二人に向かわせた。

その攻撃はもう一人の敵に防がれてしまったが、そんな事はキラーにとって重要な事ではなかった、むしろ、その防御したほうの男の言葉と言うのが問題だった。
"ぼ、僕だよ、C.h.o.p.i.nのショパンだよ"

――あぁ?

心底不愉快そうで、人間であれば青筋を立てながらのものであろうそんな声をキラーが発した。

女のほうが放った無数のレーザーに対して、キラーはドローンに「シールド!!」と指示を下して、自分とシエンタに向かってくるレーザーを防ぎつつも、キラーは変形を行い、次の攻撃の準備を行う。

「ツインクリスタル、ボマー、ボマーッボマーッ!! クソッタレの下等生物共が、私の大事な友人であるシエンタの友人を騙って不意打ちを食らわせようなどと、苦虫を噛み潰して貴様らに吐き掛けてやりたい気分だね。 シエンタの友人であり姉であり親友はこの私、キラー・テンタクラー様だ!! 下手糞な嘘を後悔しろッ!!

死の螺旋投擲弾<デス・スパイラル・グレネイド>

ドローンウィルスにキラーが指示を下し、二つのドローンが電気を帯びたクリスタルに変形して、キラー本体と合体してキラーに電力を供給し、他の固体は一斉に爆発物を目標に投射するボマーという形態に変形した。
もはや、ショパンの名前を聞いたシエンタがキラーを止めようとも、その攻撃が止まることは無い。
……戦闘前に、アイシスとしてシエンタに接していたのが仇になる形となった、初めて人間としてシエンタに庇護欲や愛情を感じた彼にとって「自分の知らない友人」を名乗る者は、忌々しさと、少しの嫉妬を書き立てられる相手であり、それは、彼にとって絶対殺害対象にも等しい。

シールドがレーザーを抑えきれず解除されるが、そんな事はもはやどうでもよく、キラーは手元に作り出した真っ黒な球体を敵に向かって投擲し、ドローンたちは一斉にグレネードを放つ。

まず先んじて着弾するのはグレネードで、これらはレーザーと相殺を繰り返したため、あまり敵に被害は出ないだろうが、投擲されたデススパイラルグレネイドはある程度進むと空中で静止したかと思うと、その場で高速回転をはじめ、無数の黒いレーザーを周囲にばら撒き、さらに追加で、レーザーを発射するだけ発射すると、一気に膨張して巨大な爆発を引き起こした。

もちろん、こんな攻撃が普通では放てるはずがない。
キラーは前もって、ドローンを幾つか発電所などに派遣しており、そこから電力を調達することで、こんな大火力攻撃を初っ端から放つことが出来たのだ。
まあ、それでも彼本人は、必要の無い人殺しを嫌っているので、どちらかと言うと、やはり嫉妬だとか、だまし討ちと認識したために起こった怒り故に、このような攻撃を放ったのだ。

>シエンタ・カムリ ショパン マシュマロ・ヴァンディール

1ヶ月前 No.960

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/公邸/シフォン・ヴァンディール】

シフォンの不吉な予測はことごとく的中していく。レオンハルトの瞳には自分など映ってはいない。それどころか討ち滅ぼすべき敵以外の一切が彼の中から消え失せていく。
このままいけば本当に引き返せなくなる。よしんばこの戦いを生き延びたとしても、もう本当の彼ではない別のナニかになっているのではなかろうか。
そもそもレオンハルトの行動原理とは、元を辿れば『理想の世界を作りたい』という澄んだ願い。その世界には、彼が護りたいと願った人々がいて、平和が永久に続いて…
人一倍、いや数万倍正義感の強い男なのだ。だからこそ理想と現実の悍ましいまでの差に心荒み、職場を追われるほどの事件を起こしてしまった。そんな彼が真の目的を忘れてしまえば、そこに残るのは死へひた走る狂戦士。
この場に於いてはバビロンが太陽で、それに刃を突き立てようとするイカロスがレオンハルト。夢破れれば翼を失い、夢叶えば己が身を焼かれる。
ならば自分は月となろう。太陽を退け、光に誘われた者にもう一つの道を示すことのできる、湖面の如き静けさと威厳を湛えた月に。

爆撃を退け、吹きすさぶ稲妻の嵐を差し向けることで、今度こそ魔王を沈めんと試みる。しかし終わりは如何にも呆気なく、"俺のほうが上回っていた"という、なんとも理不尽かつ不条理な理論で以て無へと帰す。
雲散霧消。どれだけ見栄えが良かろうと所詮は風と雷、掻き消されてしまえば後には何も残らない。更に恐ろしいのはここからバビロンの反撃が始まるということだ。
双腕に宿る真逆の属性…火炎と氷結。本来相反する力だからこそ、使いこなし意のままに操ることが出来た暁には、凄まじいまでの破壊力を生み出す。そしてヤツにはそれが出来るだけの力量がある。
確信を持ったシフォンは、その脅威が牙を剥くよりも早く打って出た。膨大な魔力を惜しみなく注ぎ込んだ全力の守り。雪崩れ込む大雪が生み出す堅牢な氷壁。
今までのどれよりも力の籠った『アバランチウォール』が、シフォンとレオンハルトの眼前に展開される。

しかし。

「っぐ…あああああっ!」

大地とそこに息づく生命を冒涜するも甚だしい水蒸気爆発の猛襲。総力を一点に集中しても突破は困難なはずの氷壁が、一瞬たりとも持ちこたえられずに砕け散る。崩壊だとか損壊だとか、最早そういった次元ではない。
まるで壁など初めから存在していなかったかのような…ロウソクの火に息を吹きかけるよりも容易く、呆気なく。当然ほとんど威力の削がれていない爆風が襲い掛かる。
咄嗟に氷壁をもう一枚展開してクッションにしたことと、爆心にいなかったという幸運が重なり致命傷は避けられたが、あくまで死を免れたに過ぎない。
身体の中の全てを絞りだされるような感覚。重力の有無を疑うような軌道で吹き飛ばされる。その様は遊び飽きた子供に放り投げられる人形さながら。傷ついた身体を受け止めるのは、爆発によって剥き出しになった硬い地面。
必死に空気を求めて喘ぐも、何かが喉の奥に溜まっていて吸い込めない。苦しい。その何かを吐き出そうと顔を横に向けると、堰を切ったように鉄臭い液体が溢れてくる。
血だ。魔術による堅牢な防御を誇るシフォンだが、生身の彼女は打たれ弱いただの人間。防ぎきること能わずまともに喰らえば、例え一撃でも決定的なダメージになってしまう。

その深刻さは一目瞭然、普段ならここで撤退を図ることだろう。しかし今日の彼女は違った。酷く傷ついた身体に鞭打ち、激しく震える二本の足で以て立ち上がり、大地を強く踏みしめる。

「まだまだ…ッ!」

そう、立ち上がったのだ。憎悪の的を廃し、輝かしい英雄になるためなどではない。大切なものを守り抜くべくして。
凄まじいまでの気迫が空間を振るわせ、無尽蔵の魔力としてシフォンに宿る。その加護を受けた身体は一時的に強化され、生身では成し得ない激しい挙動の数々が可能となった。
だがまずは追撃を往なさねばなるまい。大口を開けて世界を飲み込む海竜が、マグマに潜む炎竜に身をやつしたかのような猛火。津波などでは太刀打ちできそうもない極大火力の奔流。
対するシフォンが繰り出すは、同じく極大の魔力を注ぎ込んで生み出された流水と大雪崩の陣。雪の上を水が走る。その上を新たな雪が覆う。そのまた上を水が行く。繰り返しの果てに築かれるは、凍てついた瀑布。時を止められた滝。
レオンハルトを対象とした絶対零度すらも吸収し、より強固さを増して立ちはだかる。対峙する者全てを戦慄させる難攻不落の砦。一矢報いることすら能わぬ絶望要塞。『ランパートウォール』の名を授かった凍土の牙城が、迫る猛火を完膚なきまでに掻き消していく。

「大切なものを護り、愛する者と未来へ踏み出す。これが私の正義」

己の信念を噛み締め、凛とした眼差しでバビロンを見据える。魔王たる彼は高い壁。氷壁よりも、瀑布よりも堅牢で、果てしなく高い。例え頂に辿り着いたとしても、反対側までの道のりが果てしなく続く。
それでも自分は折れない。仲間と肩を並べ、踏破するまで。吹き抜ける一陣の凍てつく風。その後押しを受けて前へ滑り出す。その身に疾風を、走り抜けた跡には迅雷を。
逆巻き雷鳴轟く竜巻そのものと化し、地面を蹴って飛翔した後に、空間すらも切り裂く強烈な蹴りを繰り出す。原理は進化元と同じ。歪んだ空間が神風を巻き起こす。その名も――――

「ジンライヴォルテックスッ!!!」

シフォンはもう、自分を突き動かす感情の正体に気づいていた。

>>ダン・マッケーニ・バビロン、レオンハルト・ローゼンクランツ

1ヶ月前 No.961

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


本気で言っているのか、そう問われてしまった。その言葉は誠意を問うているようなものではなく、信じられないものを見る様な、狂人に真意を問うかのような口振りであった。何故そう思われたのか、皆目見当がつかなかった。
人を助けるのは当たり前のことだと、私は思っている。その理由こそ記憶から抜け落ちてはいる、その事でどうしたらよいか分からなくなった時期もあった。だが、あの光を見て私は確信できたのだ、人を救う事は間違っていないと。
だから過程がなくとも私は結果を求めることが出来る、何故助けたいかが分からなくともあの眩き光は助けることがどう言う事かを示していた。元々、助けたいと言う想いはあったのだ、そこに目的が出来たのならば迷う余地はない。
しかし女性はそれを頭がおかしいと称した、その真意が分からない。人を助けることが間違っているのか、人を救いたいと思っているのが間違っているのか、自分の身を犠牲にすることが間違っているのか、どれも私には当然のことにしか思えない。
だって、あの光は容易く出来ていたから。私もその一部になりたいのならばこれくらいは出来て当然なのだ、むしろまだ未熟でしかない。もっと助けなければならない、もっと救わねばならない、でなければ私は何なのだ。

「待ってください!頭がおかしいとは―――!」

警告はした、死の宣告と共に放たれた弾丸は間違いなく私の眉間を貫いた、どういうことかなど問う間はなかった。衝撃で身体が仰け反る、女性を掴もうとした腕は身体に引き摺られ遠ざかる。一瞬視界が暗くなる前、警戒して後方へ飛んだ女性が見えた。
眩んだ視界はすぐに晴れる、拒絶と憐れみを含んだ視線が痛い程刺さる。銃口は依然と此方を向いたまま、警戒は女性の言葉を借りるならば頭がおかしいからだろうか。理解できないものを拒絶しているのだろうか、未だに分からない。
放たれた弾丸は眉間を貫いたようだ、感触は薄いが鼻筋を辿って粘性の高い何かが落ちていくのが分かる。私の血はこんなに黒かっただろうか、そんな疑問が浮かんだが優先すべきは眼前の女性だ。
殺意を含んだ弾丸は人間を殺すには容易い場所を射抜いており、誰から見ても拒絶の意志が強いことが分かるだろう。だが私はここで引き下がる訳には行かない、どのような理由であれ見つけてしまったのだ。
これで女性が傷つけば私は自分の責だと感じる、私が付いていれば守れていたかもしれないと思い続けるだろう。そんな後悔をしたくはない、私が諦めて女性が傷ついて欲しくはない。どれだけ拒絶されようと、人間が傷つく方が恐ろしい。
その為に幾ら傷付こうとも良い、助けるために私の命が必要ならば捧げよう、きっと私が生きるよりも人間が生きた方が良い結果になるだろう。ならば私は構わない、女性が理解できなくても良い、それが私の助けると言う事だから。

「貴方を助けるために、私の命が必要ならそれでも構いません。ですが、共に居て守れればと思います。」

後退した間を埋めるために歩みを進める、私の答えは変わらない。これが私が信じる事だから、目指した光がそう思える程眩かったから、狂人と言われようとも構わない、あの光の一部になれるならそれでいい。
正しいと私は感じた、その光そのものになれないと諦めても一部で良いからなれる様にと進むつもりだ。助けることが許されないなどあってはならないのだ、助ける事は当然で、それに命を賭せることも当然なのだ。
丈夫な身体に感謝しなければならない、呪いを包んだ身体など恨む事しか出来なかったがそのおかげで銃弾で斃れることもなくまだ助けられる。私はまだ存在していいのだ、私はまだ生きていいのだ。
私の存在価値は人間を助けることでしか生まれないと気付いたから、あの光の前ではただ助けたいと思うだけでは足りないと知ってしまったから、全てを投げ打ってでも助けなければならない、私の意味はそれでしか残せない。

「ええ、だから大丈夫です。貴方が狂っていると思っても、私は正気ですから。何があっても、守り通します。」

笑顔のまま歩みを進める、大丈夫だと何度でも伝えよう。恐ろしいものから全て守って見せると、私の全てを賭してでも傷付けさせないと、信じられないならば幾らでも銃弾を撃ち込めばいい、私は大丈夫だから。
額から流れる血が黒く淀んだ泥の様なものだと私は気付かない、それが身を蝕む呪いの一部であるとまだ気付かない。だって、目の前に助けなければいけない人間が居るのだもの、私のことなどどれだけ後回しでもいいのだから。
でなければ光へは届かない、でなければ生きることを許されない。それだけ光は眩いものであって、秘める呪いはそれを差し引いても邪悪なものであるから。存在するには光にならなければ、でなければ私は許されない。
何に?何に許されないと言うのだ。私にも分からない、だが心が叫ぶのだ。もっと助けなければ価値はないと、もっと救わねばならないと、でなければまた繰り返すと、また救えなかったと嘆くとそう叫ぶのだ。

それが自身の心ではないと気付くわけがない、何故なら私は記憶を失った入れ物でしかないから、その事実すら知りえない。結局は自分で首を絞めているだけに過ぎないと気付くことはない、首に絡み着いた鎖が解けることは未だない。

>>リアーナ=レッセント

1ヶ月前 No.962

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【大統領官邸/正門/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

女がケダモノと化した元連盟隊員を眺めながら寒風に身を震わせている最中、ふらつきながらその傍に寄り添おうとする者が一人。"元"時空防衛連盟隊員のストラーヴだ。
か弱く女の名を呼び、まるで蛾が灯りに吸い寄せられる様に真っ直ぐに少女は妖艶な肢体に寄り付く。女が寒風に震えるのに気付いて、少女は少し背伸びをして己が纏う外套を女へ掛け、温もりを得ようとそれにまた入り込む。それだけを見れば愛らしい姉妹の様にも見えるが、二人を繋ぐのは淫蕩な快楽だ。
ストラーヴは抑えきれない情欲に身を任せ、女の手を玩具にして身体の火照りを慰める。女はそれを何も言わず、にやついた笑みを浮かべてただ眺めていた。一頻りの快楽を得てまだ満たされない、憐れな愛欲の虜となった少女。女はそれに、追い討ちを掛けるように意地悪く囁く。

「あらあら……こんなに上気しちゃって……いけない子。言い付け通り、我慢出来なかったから今夜はお預けね?」

耳元でそう囁きながらも、ストラーヴの下腹部から手を離さない。彼女の自由意思に任せて"使わせていた"指先を、今度は自身の意志で動かす。衣服の隙間に手を通し、熱と湿気の籠った薄布に指先を這わせる。しっとりと優しく、しかし切なく鳴く奥底を刺激する様に、大胆に、繊細に。つう、となぞる様に弱々しく触れていたかと思えば、柔肉に食い込むくらいに力をいれて強い刺激を与える。

「気持ち良い? でもだーめ。うふふ、我慢出来たらご褒美をあげるわ」

少女が頂に達する前に、肌をする手を止めて衣服の中から引き抜く。無垢だった少女の身を、心を玩ぶ。自分の色に染め上げる為に。

淫蕩な遊戯を愉しんでいる最中、唐突に無数の金品を積んだトラックが爆発炎上した。耳をつんざく程の轟音に、女も一瞬驚きの表情を浮かべる。
ケダモノと化した連盟隊員達の下手人――それは、仲間だった筈の連盟の部隊長だった。その眼差しに怒りと呆れの二つを宿す、美しくも強い女性。その怒りは醜態を晒した部下達から、大切な部下を奪った女へと向けられる。

「ぷっ、あははははっ! まあ、なんて酷い人! ケダモノとはいえお仲間に手を出すなんて! ストラーヴ、貴女あんな冷血女に従っていたの? ああ……本当、失礼な人。私はこの子が求めた通りに与えてあげただけよ? 貴女こそ、この子が欲しかったものをあげられたのかしら。――そうね、例えば……こんな風に」

女は少しの動揺もしない。むしろ、この状況を楽しんですらいた。
ストラーヴの体を後ろから抱いたまま、怒りを露にするフォッサへ反論する。私の方が、この子の事を分かっているとでも言うように。そして、それは言葉だけでなく――。

唐突にストラーヴの顔を自分の顔へと寄せ、熱く口付けをする。無抵抗の少女の唇の隙間に舌を通し、温かい口腔を蹂躙する。舌を絡ませわざと水音を立て、劣情を煽って行く。

「ん……はっ、ちゅぱ……くちゅ……んぁ、はぁっん……」

淫靡な水音と桃色の吐息が寒空に響く。少女の口腔を蹂躙しながらも、女の視線は敵対姿勢をとるフォッサへと向いていた。いわばこれは、今のストラーヴがどうなっているのか、フォッサへ見せ付ける為の当て付けだ。
一頻り満足した女は静かに、余韻をたっぷり残しながら唇を離す。頬を紅潮させ瞳を潤ませるストラーヴとは対照的に、悪魔の様な女はにやついた笑みを隠さない。
女が懐いているのは溢れんばかりの欲と愉悦。"愛に餓える憐れな少女に愛を与える優しい私"に酔い、"愛を与えられなかったばかりに大切な部下を奪われた女"より自分が上位にいる事への優越感――。

何処まで突き詰めても、エステルと言う女を動かすのはそれだけだ。世界を食らう黄金王とも、他人を使って愉悦を得る魔女とも似て非なる行動原理。"私が気持ちよくなりたい"と言うただ一つの真理。
金、食、性、美、愛――あらゆる欲望が女の全て。誰もが懐くそれらを、誰よりも悦しむのが彼女の流儀。その生き様は神をも恐れぬ妲己が如く、その底無しの欲望は淫蕩と悪辣で彩られた淫婦(メイヴ)が如く。世界すらも手玉にとる、無敵の悪女――それが、エステルと言う人物だ。

「ねえ、ストラーヴ……私、戦えないの。だから、貴女の力で私を助けて? あの冷血女を追い返すだけで良いわ。そうしてくれたら……ふふ。今夜は、何時もより楽しませてあげるから」

未だ紅潮し蕩けているストラーヴに、女は端的な『お願い』をする――その手で、自分の意思で、"元"上官に刃を向けろ、と。
抱きつく姿勢を解き、突き放す様にストラーヴの背を軽く押す。愛を知り、己から離れたくないと願うストラーヴは必ず得物を手に取り戦うだろう。
元連盟の二人が潰しあう――それがまた、悪女に愉悦を感じさせる。この世の全てを思うままに食い荒らし、自分一人で食い潰す。依存する少女ですら、その例外ではない。

>>ストラーヴ、フォッサ

1ヶ月前 No.963

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 じっとりとした脂汗があふれ、その一滴が肌をぬめりと伝い地面に零れ落ちるまでがいやでも分かった。

(……出来の悪い悪夢かな? これ)

 魔族であろうと、人間であろうと、異世界人であろうと、誰であろうと。
 魔造生命体などよっぽどヒトガタの構造とは異なっている存在を除けば共通の急所が一つある。
 脳天だ。弾丸で頭を一発撃ち抜いてやれば簡単に死ぬ。
 どんなに生命力がタフだろうとも頭を破壊すれば殺せる。
 そう――普通は。

(確かに頭は撃ち抜いたはずだ――狙いに狂いは無かった)
(化け物だろうが脳味噌さえ潰せば動きは止まる……なんだあれ?)

 眉間は貫いた。
 有無は言わせない。ごめんよ、でも私に関わったのが運の尽きだと一応の懺悔はした。
 だというのに未だ変わらぬ調子でこちらに語り掛けながら歩みを続ける。
 黒い血らしき何かをぽたぽたと零し、変わらぬ聖人染みた表情を浮かべながら。
 不気味を通り越して――恐怖すら覚える。
 自分のような臆病者でなくとも、怖気づくのは必死だろう。
 心は化け物だったが、まさか肉体まで原理不明の化物などとは誰か思おうか。

(……厄ネタくさいな。逃げたいけど、此処で潰さないと後々支障が出そうだ)

 今すぐにでも逃げろと直感が訴えかけてきている。
 だが味方を殺された報復で狙われる可能性もあるが、この危険物を放置するリスクの方が圧倒的だ。
 魅入られれば死か、あるいは死すら生ぬるい目に合うのは間違いない。

「自分で自分を正気だって言っちゃう奴は流石に信用ならないかなぁ!?」

 >>火より生まれし鍛冶神よ、我が手に槌を授けたまえ。

 攻撃の意志は見られない。害意もない。いやになるくらいその誠実さは本物だ。
 優しい人間ならばあれに絆されるだろう。傷ついた人間ならばその手を取るだろう。
    、  、  ・・・・・
 だがそういう奴こそ気付けない。
 あれは、歩く狂気だ。
 バビロンのように自覚する台風ではなく――無自覚の大災害。
 忌避する対象ではなく撃滅すべき対象と定めた瞬間から、リアーナは詠唱<ランゲージ>を口ずさんでいた。
 今ほどフラナガン議員あたりでも誘って適当に酒を飲みたいと思った瞬間もない。
 だから化物は嫌いなんだ――!

 >>汝の振るうその槌は、数多の神威を紡ぎあげる。
 >>伝令神の羽靴も、首を断たれた蛇神も。
 >>我が手にありしこの槌が、火を噴き鉄打ち昇華せしめよう。

 これより顕現する奇跡<デュナミス>は、臆病者の変人が織りなす鍛冶神の奇跡。
 皮肉にも彼女が手に入れたたった一つの才能。発明のための力。
 生み出す武具は神々が織りなす神話にすら対抗できる凶悪なものとなりうる。

 >>故に我に不可能はなし。
 >>されど、我の槌は神の道具。
 >>蔑み見下される我の五体は、さように神を宥められようか?

 この躯が鍛冶槌であり精錬場だ。
 生み出す八つの鉱石は、神魔を討つ奇跡の原料となる。

「"ならばこそ、この身で以て証明しよう。神威を打つこの腕で"ッ!」

 その手に魔銃を。
 奇跡の名は告げられた。

「悪いけど此処で潰すわ」


    Megin Gjord Hephaistos
「《火砲よ踊れ、戦火の火花はここに舞う》――ッ!」


 光輝と共に出現する鉄から――<連射>の石と<貫通>の石を取り出し精錬。
 これより魔銃は、高い貫通力の弾丸を無数に連射する魔銃へと変質した。
 スナイパーライフルに用いられるNATO弾を機銃で、ほぼ無反動で連射すると書けばその脅威は伝わるか。

 狙いは迷わずその足だ。
 どうすれば殺せるかがハッキリしない以上、強引にでも足を引きちぎって動きを止める。
 両膝の関節を適格に狙い、引き金を引く。躊躇いはどこにもない。
 歩みを止めないクズノハへ――降りかかるは絶死の凶弾。

>クズノハ ALL

1ヶ月前 No.964

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【時空防衛連盟/休憩室→武器庫/ザーシャ】


さて、寝過ごした。冷静でいるようだがそれなりに俺は焦っている、ただ目を瞑っているつもりだったが何時の間にか意識を手放しちまったみてえだ。久しぶりのベッドが原因だろうなあ、何せ今までは自然の寝床か宿屋の固いもんしかなかった。
だから悪くねえ、とは言える訳はない。少し確認してみれば結構大きい騒動が起きた様だ、文字が読めねえ以上通信端末に書いてあることは分からねえが通知の多さや情報の量から見るに間違いはなさそうだ。
貰った地図を忘れずに持ちながら添付されている地図と照らし合わせようとした時だ、そう遠くねえ場所から爆発音が響いた。ここまで攻め込まれたか、そう思ったがそれにしては外を走る職員の姿はねえ。少しばかり駆けていく音が聞こえた程度、異変にゃ違いねえから向かう事にはしたが。
……まあひでえな、地図に照らしてみればまあ危険っぽい印がついていることから武器庫か薬品室あたりだろう。それが綺麗に焼け焦げていやがる、それで何人か入っていったのにも拘らず声もしなきゃ出てくる気配もねえ、敵襲だろうな。
しっかし上手くやるもんだな、警備もいる訳なのにこんな深くまで潜り込んでくるとは。それで武器にしろ薬品にしろ爆発で使えなくすりゃ十分な仕事だろう、それでまだ留まってんだから実力もあるんだろうよ。
ま、そんなことは関係ねえけどな。俺が相手な事を後悔させてやるよ、ここの職員も現場の確認に向かったんだろうが何かいることが分かっていりゃこれ以上は無闇に突っ込んでは来ねえだろ。なら、俺が抑えりゃいいだけの話だ。初仕事と、行こうかねえ。

「よお、腰抜け。真っ当に戦わねえで狩るのは楽しいだろうよ、どうだ?俺も獲物になってやろうか?」

大曲剣を肩に担ぎながら爆発の痕が残る部屋へと踏み込む、少しばかり煙が残ってるせいか視界が悪い。こりゃ部屋に入った途端にやられるわけだ、人間じゃ気付けねえな。俺も意識しねえと何かいるのは分かんなかっただろうよ。
だがいる事さえ分かれば問題はねえ、硝煙なんざ風で吹き飛ばしちまえば見えるからな。んな訳で風で吹き飛ばしたはいいが、まあ死体だらけだな。焼き爛れたやつ、首がねえ奴、串刺しにされた奴、ご愁傷さまだ。終わったらちゃんと弔ってやるよ。
まあこれで少なくとも隠密性を保ったまま人間の首を飛ばす、貫通できる武器か能力を持ってることが分かる訳だが。天井に青白い壁作って見降ろしてるやつがそうだろうよ、まあ控えめに見てもガキだな。

「んだガキか、……まああの組織なら子供も使うだろうよ。おい、ごめんなさいすりゃ殺しはしねえよ、降りて来い。」

見上げながら声を掛ける、殺しはしねえとは言ったが適度には痛めつける。手足の三本は覚悟して貰わねえとな、ガキとはいっても殺しは殺しだ。どんな理由があれど殺したんなら相応の目に遭わなきゃダメだろうよ、死んだ奴が浮かばれねえ。
しっかし本当にガキだな、良く分かんねえ衣服に可愛らしい髪形してんのがこんだけ殺してたとは思えねえな。まだ幼いって言っても信じられるほどだ、俺があの糞親に連れられた時くらいか。……ま、どっかは負けてるが気にしてねえ、気にしてねえからな。
さて、そんな糞どうでもいい事は置いておいてだ。どう出てくるかだ、まあここで本当に謝る奴がこの場にいる訳がねえから実質襲われたらどうするかでしかねえけどな、まあそん時ゃ痛めつけてここに引き渡せばいいだろう。
流石にガキを殺すのは後味が悪い、まああの人の影響がないわけではない。あの人を見ていたから俺のような奴は増やしたくはないと後から思ったし、今でもそれは変わんねえ。だからどんな理由であれガキなら生かす、ガキを遣う奴が悪いんだからなあ。
少し痛い目には合ってもらうが、まあお仕置きとして我慢してもらうしかねえ。だから早く降りて来い、風で叩き落されんのはお勧めしねえ。自由落下で叩きつけられた奴が言うんだから間違いねえよ。

>>アリア=イヴァンヒルト

1ヶ月前 No.965

アリア @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【時空防衛連盟本部/武器庫/アリア=イヴァンヒルト】

 声が、する。
 それも第一声ではない、もう少し喋った後の声だ。
 足音がする。
 一歩、二歩。それから振り払うような風の音。

 視界に入る。少女だ。外見としては、そう珍しくもない。
 金砂のような髪が薄暗い室内で小さく揺れる。
 赤い瞳が灯り代わりのように瞬いていて、肌の色は見えもしない。

 ぼんやりとし過ぎていたのか、あるいは別のものに気を取られたのか。
 それとも………この声の主が“お決まりの動き方”をして来なかったことに驚いたのか。
 自分で自分を精査するのは上手く行かないものだった。上手く行ったとしても意味はないけど。

 閑話休題。
 この相手の動きから、作業じみた引っ掛け方は出来ないだろうと理解する。
 見えないまま殺した方が手間が掛からない。
 其方の方が余計な時間が乗らない。上司であり、記憶がある間に初めて出会った人間の教えだ―――ビジネスにせよ、殺しにせよ、何にせよ物事は効率よく進めなければならない。それは自分がやりたいことの為の時間を確保したいなら尚のこと、と。
 そのやりたい事など微塵もないが、強いてあるとしたらそれは識ることだった。
 人を殺す場所で何かが得られるわけでもない。むしろ何かを壊すだけだ。そこに頓着するほど自分という人間は輪郭と価値観が出来ていないのだろうと達観しているし、そこに執着出来ているならば、一般的に言う殺人鬼のカテゴリに自分はなっていただろう。


「別に」
「仕事ですので、少ない方が楽です。口数も、頭数も。
 ………やりたいこと以外は時間を掛けるなって教わってますので」


 つまり何が言いたいのかと言えば、それは目下に居る少女への回答だ。
 楽しいか楽しくないか、そんな二極化して物事を語れと言われたら後者だろう。
 あくまで仕事だ。生きている分の対価だ。
 そこに大した価値観を持ち込むでもないし、好き嫌いもあるまい。
 その上で効率的に出来れば良い。だから、出来得ることなら頭数も口数も少ない方が良い―――全て本当のことだ。此処で誤魔化すようなことに彼女は然したる意味を感じない。だまくらかすことに悦を覚えるならそうするが、これも多分違うからだ。

 ………序でにそれは“おまえは獲物になりに来た癖に口数が多いな”という遠回しの皮肉でもあった。
 なんだかよく分からないが、ちょっぴり餓鬼扱いされた気分だったのでむっとした。
 だから口より手を動かしたらどうなんだという思い切りな皮肉だった。

「そうですか」

 創った領域の上に立ち、見下ろすような形になりながらも降下する。
 実際のところ、彼方の降りてこい、という言葉にわざわざ乗った意味は特にない。やってもやらずとも変わらないから、強いて言うなら彼女の顔を確かめようと思っただけだ。
 そもそも、大人しく降伏などする気はないのだし。
 寄る意味はないが、でも寄らない意味もなかった。

 目線が下にずれて、大剣を背負う彼女を見る。
 降りて、距離数メートルほどの先に立った、何処か男勝りな口調で話す少女を見る。
 深紅の瞳は聊かに浮世離れしているが、しかし………それにしてもイメージが巧く合わない少女だ。
 第一印象は、継ぎ接ぎでちぐはぐ。―――そんな言葉が、たぶん何より似合うのではないだろうか。

 外見は戦士のそれなのに / 髪や表情、声は自分とあまり変わらない年のはず。
 粗野な言動の癖に / 透き通るような声は見て分かる通りの少女でしかない。
 何より、眼から感じられるものが違う。怪物じみているのに、怪物っぽくはない。
 言葉に言い表せない人物だ。そうした人物を自分は知っているが、それとも違う。中身が違う。
 実を言うと少しばかり興味はある。彼女の態度がただのポーズなのかとか、何を考えて此処にいるのかとか、“どうでもいい”なりに知ってみたい。

 ―――ただ。そういう私情と、仕事は別だ。


「ちぐはぐな人。それは“作った”自分ですか?」
「まあ。別にどっちでも、構いやしませんけど」


 自分は此処で、頃合いになるまで殺して回れと命じられて来たのだ。
 それは別にやりたいことでもないが、今やりたいこともないわけで。
 ―――何より自分の邪魔をしに踏み込んで来るのなら、当然そんなものは関係ない。

 手元が揺らめく。
 左の腕を振り下ろすと同時に、青い光が五つ纏めて飛ぶ。
 距離数メートルほどの範囲を、詰めようが逃げようが関係なく斬り裂くように細く青い光が縦に走る。
 その正体は、彼女の指先から伸びる細いワイヤーだ。
 糸のようにも見え、単なる光の跡のようにも見えるそれは、注意深く視なければ認識出来ぬ細さでありながら、易々と人体程度ならば切断する非実体の糸。

 結果を見ることなく後ろに飛んで、今度は右の腕を前に突き出す。
 正直に突っ込んで来ることを予想して、後退しながら自分の居た場所に壁を置く。
 照明も爆破した後の武器庫の中において、数少なく瞬くもの―――青い光の壁は、通行止めの証。
 もしも突進して来たのならば、あるいは飛び道具の一つ二つでも撃とうものならそれを押し留めるだろう。勿論相手が今まで縊り殺して来た連中と違うなら飛び越えられはするだろうが、それならば格好の的だ。そもそも切断出来ているならば問題はないし、相手がどう対応するのかも見ておきたかった。

 それらは、全て自分の造り出した領域だった。
 蜘蛛が糸を紡いでモノを作るように、この狭い世界で自分は好き勝手に何かを創れる。
 自分を中心にした半径にして20mほどの距離。そこがわたしの箱庭だ。

 何に使えるかはそれなりに試したが、結局のところ使う場面はこんな展開の方が多かった。
 つまり―――どうでもいいものを、どうでもいいままに殺す場面だ。

>ザーシャ


【よろしくお願いしますm(._.)m】

1ヶ月前 No.966

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/正門/ストラーヴ】


この数日間で幾度も感じて来た感覚、悦びを訴える身体からは自然と艶めかしい吐息が漏れ、跳ねる身体に合わせて甘い声が喉から溢れる。彼女はエステルの腕で自身を高めていた、だが幾らエステルの腕を使っても結局は自分で慰めていることと変わらない。
寒さの中、熱を保ち続ける身体はそれでは足りないと底なしに求め続ける、もっと、もっとと強い刺激を与えようと自分の意志が介在する以上はどうしても抑えてしまう事をまだ知らない、だから初めて知ったそれが人から与えられた物だからこそ、溺れてしまっている。
ふと、エステルから耳元に囁かれる言葉。それは今の彼女にとっては死刑宣告にも等しい言葉であった、いけない子と叱られたことはまだいいだろう、むしろ身体に秘めた熱がさらに昂るだけだ。
だが我慢できなかったからお預けと言う言葉は昂っていた熱が冷めかねないほどの絶望を与えた、無論比喩でありまだ彼女の身体は悦楽を欲し続けている。だからこそ、その言葉が意味することを体現していたのだが。

「やぁ……やだぁ、エステル……んっ、もっと……」

曖昧な拒絶、疼く身体を捩らせてもっと求める。それに答えたわけではないだろうが今まで使っていた腕が意志を持って動き始める、腹部から衣服の隙間を通って湿る秘所へと辿り着いたそれは自身の意志を越えて刺激する。
先程よりも衣服一枚分近く、熱く触れられる感触。僅か一枚の隔たりでも彼女にとっては甘美な刺激へと変化する、エステルの動きに合わせて腰を使い僅かでも多く快楽を得ようと、貪欲に求める。
優しく、周囲を撫でるそれは抑えようのない熱の疼く秘奥をさらに切なく高めていく。しかし時折強く、奥底に至りそうなほどの刺激を受ければ腰が抜けるほどの感覚へと陥る。緩急をつけた、それでいて自分の意志とは反するそれにすぐさま頂へと昇りそうになる。
だが、その寸前で腕を引き抜かれる。あと少しで、あと少しで満足のできる果てへと達することが出来そうだった。しかしそれ以上の快楽は与えられない、満たされぬまま中途半端に達し続けたせいで既に限界が近い。
震える脚には力が入っていない、立っている事すら辛い程焦らされ続けた渇望は彼女を明確に蝕んでいた。目が眩むほどの肉欲の愛は何も知らずに与えられるには強すぎる毒であった、すぐさま治めたい熱を咎めるのもまたエステルの言葉であった。
我慢できたらご褒美、分かりやすい餌を下げられた愛玩動物。愛されたいが故に従順になり、気まぐれで与えられる慈悲に尻尾を振ってそれを享受する。自ら弄る事をどうにか抑えれば、疼く快感に身を震わせながらもエステルの言葉に従う。
抑えた熱はそう簡単に収まらない、でもお預けとされたものが目の前にぶら下げられていてはどうしてもそちらへと手を伸ばそうとしてしまう。蕩けた瞳、上気する頬、急く呼吸、耐えれば耐えるほど焦れる身体をどうにか収めようとする憐れな獣。
そんな彼女に爆発するトラックへの反応は望めない、爆発音に驚いて身体を何度か跳ねさせながらその場へとへたり込んでしまう。ぴちゃりと、足元に溜まった水が音を立てた。既に湿り気を帯びている故に、濡れていても然程気にならないのだろうか。
そんな彼女であったがその中で聞こえた声にピクリと反応する、緩慢な動作で声の主へと顔を向ければ今では遠い記憶の人にすら思える隊長がいた。ふらふらと立ち上がりながら、甘く惚けた声を出す。

「たい、ちょう……?」

どういう状況なのか八割も理解できていないだろう、その瞳は熱を持ったまま隊長を見つめる。ただ愛で満たされたい彼女は肉欲に穢されていた、それは嘗てのストラーヴを見ていた者であれば以上に容易く気が付くものであった。
だが隊長への視線は後ろから抱くエステルへとすぐに移る、冷血女ではない、ちゃんと気にかけてくれてはいた、その反論は浮かんでも口には出なかった。だって、話せばエステルは不機嫌になるから、またお預けされてしまうから。
でもエステルが求めたことを与えていたのも本当である、それが違った形であってもその根底にあるのは確かに彼女が欲していたものだからだ。そう、人の温もり、愛を求めていただけなのだ。肉欲と共に与えられて目が眩んでいるだけ。
だが同時に今彼女が求めているのが肉欲にすり替わっていることも否定できない、現に顔を向けられた時点で何を与えられるのかを察してその瞳は喜色を帯びていた。迫るエステルの顔、彼女にとっての初めての接吻と同じもの、それが深いものであったなど知る由もない。
響く水音、昂ぶりは確実に増していく。舌が絡み、じっくりと教え込まれた快楽が与えられるたび面白い程に彼女の身体は反応を示していた。身体は跳ね、瞳は潤み、自ら舌を絡ませていく。貪るように、自身から唇を押し付けて誘う。
もうすぐ、もうすぐでエステルからの愛を感じられる。しかしその前に蹂躙は引いていた、愛おしそうに舌を伸ばすもエステルの顔はどんどん離れていく。無情にも、情欲の橋はぷつりと途切れてしまっていた。
意図しないお預けを喰らった彼女はまたエステルに求める、後ろから回された手へちぅちぅと吸い付き、もっと欲しいと求める。しかしその欲が満たされることはなかった、代わりに下されたのはエステルの欲を満たすためのお願い。
隊長を追い返せ、助けてくれればもっと楽しませると。きっとその言葉は本当で彼女が隊長を追い返せばその通りにするだろう、だがそれだけだ。一時的に満たされるだけでまた彼女は求め、焦らされ、弄ばれる。
それでも彼女にとってはそれが愛であると信じ込んでいる、肌を重ね、唇を重ね、何度も身体を重ねる事こそが愛だとそう信じているのだ。それを違うとエステルが教えるはずもない、彼女が気付く道理もない。

「……うん、分かったよエステル。隊長を、追い返すよ。そうすれば、愛してくれるんだよね……。」

エステルに背を押され、近くに放っていた剣槍を手に持つ。幾ら色欲に溺れようと彼女は戦士だ、切り替えることは容易い、そして何よりエステルのお願いであれば聞かない理由がない。だから、内に秘める昂ぶりを戦場のそれへと変えていく。
切り替えねば戦えないことが分かっていた、無様な姿を晒せば捨てられると分かっていた、そして全力を出さねば戦えない相手だとも理解していた。元々、自身を律していた彼女にとって、疼く身体は邪魔ではあったが戦場に限って抑えられないものではなかった。
一つ、息を吐き呼吸を整える。剣槍を握った彼女の顔は愛を求める従順な獣ではなく、敵対者へ喰らい付く獰猛な狩人。空気に稲妻が迸り始める、その色は紫。力と速さを両立した紫電は剣槍へと蓄えられる、その間に口を開く。

「情けなくても良いよ、勝手に悲しんでてよ。私は、私を愛してくれる人を見つけたんだから―――!」

紫電を推進力として彼女は虚を交えながら接近する、その軌道は宙に幾何学模様を描く様に、規則的でありながら多彩に動き回る。隊長の武器は知っている、それは銃。魔弾故に勝手こそ違うが凡そは狙いをつける必要がある。
ならば狙いをつけられぬように接近すればいい、規則的であるが故に予測はつけられるがそれは誘い。一定の軌道を描くが故の予測は、逆に言えば狙う為の隙を作ると同義。だからこそ、狙わせる必要があるのだが彼女はご褒美を焦っていた。

「―――邪魔しないで。」

そのまま一定の軌道を描いたかと思えば隊長へと一直線に駆ける、そのまま紫電を纏った剣槍を叩きつける。剣槍自身の重量に加え、紫電の推進力が加えられた人間で受けるには余りにも強力過ぎる斬撃。
さらに纏った紫電は叩きつけられれば周囲へと漏電する、半端な回避は次の一手の選択肢を狭める結果となるだろう。故に攻撃を捨てた完全な回避、若しくは攻撃への対処が必要だろう。

彼女のを取り巻く周囲の環境が殊更悪かったわけではない、強いてあげるならば彼女自身の態度が問題だろう。過去を大事にするあまりに、自身を押さえつけてまで他者を拒否し続けた。そこをエステルに誑かされ、愛を肉欲と認識してしまった。
ただ愛が欲しい、大切にしてほしい。ただ彼女がそう誰かに零せればよかった、だが同時に簡単に零せるほど彼女の過去への想いは柔くなかったのだろう。だから、ある意味ではエステルは彼女を前に進ませた。過去よりも、現在へ視線を向けさせたのだから。

>>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール フォッサ・セントライト

1ヶ月前 No.967

贖罪の山羊 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【大統領官邸/核シェルター/ミルグラム・ゴート】

「はっ! うるせえな」
 殴ってもいい顔と言われて顔を歪ませ強気な態度でそう返すと、少年はカードを取り出し詠唱を唱えると、聖なる光が彼を包みこみ浄化されていく。
 ああ、その光は鬱陶しい。
 古代からもそうだ、聖職者呼んで自分ごと退治されそうになった時もそうやって浄化されていくのだ。
「ちっ」
 不機嫌そうに舌打ちを決めると、少年はこちらに向かって飛び上がるとその得物を投げた。
 鎖鎌と言ったところだろうか、剣を持った英雄を呼び出して、鎌を弾かせようとさせる間に、もう一人槍を持った戦士が少年の元へと駆け寄り腹を突かわせようと向かってくる。
 冤罪の亡霊達の長所は魔力の枯渇なく無限に亡霊達を出現させる事が可能だからだ。
 その分、強力な物ではないが人海戦術で戦える。
 だがそもそもミルグラムは、人間の責任転嫁による自業自得見たさに要職人に戦争や粛清の引き金を引かせるだけに特化した贖罪の山羊だ。
 主に裏で動くのが本分、私腹を肥やす大統領殺しの流れに便乗し、絶望に陥った同類の政治家に罵声を浴びながら殺戮する目的でここに来た。
 未来(いま)に絶望し、歴史改変という責任転嫁こそ歴史是正機構に求めているモノだ。
 なので、誇り高い信念なぞ持ち合わせていないし人類昇華に心酔どころか、早く愚かさに気づいて人々のせいにして墜つのが楽しみでいるようなものだ。
 敵味方の思想や信念は興味がなく、それを腹を割って理解しようとひとつも思っていなかった。
>ミラノ

1ヶ月前 No.968

中二病でもハッキングがしたい! @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/シエンタ・カムリ】

見ず知らずの人物に抱きつかれるわまるで旧知の仲であるかのように振る舞われるわで、シエンタのイライラも最高潮に達しそうになっていた。それと同時に、とにかく気持ち悪い。
敵なら敵らしく、そのまま攻撃してくればいい話なのに、どうして面倒なことをするのか。思わず彼女は、あれはこちらを撹乱するための作戦であったのだろう、と勘繰ってしまう。
実際にはマシュマロは大真面目に接しており、相手の中においては確かにシエンタは親友であった。そして仮にシエンタが時空改変に関わっていなければ、さも当然のように"望ましい"関係となっていただろう。
しかし、一度でも改変に関わった者は、改変が生じた際の"帳尻"の影響を受けなくなる。何も知らない人間達が、最初からそうであったかの如く魔族と仲良くしているのは、彼らが過去が書き換えられたことを知らないからだ。
シエンタは歴史是正機構の一因として古代へ趣き、そこで改変に関わってしまった。その時点で、マシュマロの誕生を知覚することは、もはや不可能となっていたのである。

「ちょ、チョピン……? 変な冗談はやめるんだ。……いや、本当にそうなのかい?」

だが、ショパンの方は話は別。彼女はこの世界においてオンラインの世界ではあるが明確に関わった人物であり、直接会話したことはないものの、交流を持っている。
あれほど親しくしてきた相手を、忘れるはずがないだろう。一瞬、そんなはずはないとシエンタは否定するが、彼の言ったIDはまさしくチョピンのものだったし、こちらのIDも正確に把握していた。
これが、あの……チョピン? 彼は時空防衛連盟の一員だったというのか? 動揺を隠し切れない様子のシエンタ。このまま戦いを進めた先にあるのは―――
嫌だ、そんなことはしたくない。まかり間違ってチョピンを殺してしまうようなことがあったら、自分はネット上であるとはいえ、大切な友人を失ってしまう。
せっかく安らげる空間を、仲良くしてくれる人を見つけたというのに、それすらもなくなってしまったら自分は……それも自らの手でなんてことになってしまったら……恐らく、二度と立ち直れず、永遠にシエンタは引き籠もり生活をすることになるだろう。

「やめるんだキラー! あれは本当にボクの友達だ! それはボクのセリフだよチョピン……君こそ、どうしてそっちにいるんだい?」

マシュマロが放ったレーザーに電子のエネルギー球を当てて相殺しながら、シエンタは容赦なくショパンに攻撃を浴びせようとするキラーを制止し、続いて彼からの質問に質問で返答する。
歴史是正機構にいる理由を応えるのは簡単だ。彼らは自分が必要になった時以外は好きなように遊ばせてくれるし、ゲーム三昧の日々を送ることが出来るから。
ハッキングはその見返りとしてやっているものだ。天才と称される腕前を持つハッカーを手に入れた歴史是正機構は、情報線において時空防衛連盟の先を行っている。
大統領官邸の警備装置を停止させ、屋内に味方を招き入れたのも彼女だ。実際のところは、それが別の人物にも利用されていることを、シエンタは知らないのだが。
動揺したシエンタは、いつもよりも力を込めて攻撃を放つ。付近に存在する照明や機械類が一瞬ショートし、火花を撒き散らしたかと思うと、彼女の正面に巨大な光玉が形成されていく。
シエンタが両手を前に突き出すと共に、電気が迸る音を響かせながら、通路を埋め尽くすほどのそれが一直線に二人の敵目掛けて発射される。攻撃を行った直後、彼女はしまった、と思った。これにショパンが当たってしまったら、どうしよう、と。
しかし、今更回り込んで、自分で光玉を受け止めるなどということは不可能。あとは、彼がどうにか対処してくれることを祈ることしか出来なかった。

>キラー・テンタクラー、マシュマロ・ヴァンディール、ショパン

1ヶ月前 No.969

裁定者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【時空防衛連盟本部→大統領官邸/総統室→シチュエーションルーム/ダグラス・マクファーデン】

 異様な静寂に包まれた街中を車で移動する中で、歴史是正機構の情報を可能な限り簡潔に、そして淡々と語って行く。地球軍の連盟に対する増援に圧力をかけていると推測される元地球軍少佐、ヴァルガスを始めとする人員の数々。その中でも要注意人物として挙げた一人、同じ"インテグラーレ"を冠する者であるフォルトゥナの話を聞いてからのユーフォリアの精神状態は、正直に言って良くはない。当然だろう。しかし、いずれ相対する時が訪れる以上は、覚悟と言う物を決めさせておかねばならないのだ。
 そうしている内に目的地へと到着し、降り立った大統領官邸の有様は、凄惨の二文字。訪れる先に映る物の悉くが、惨殺された議員達の死体。探しに探しても大統領の姿は見えず、緊急の速報がいよいよ真実味を帯びて来た頃、辿り着いたのはシチュエーションルーム。当然、其処に在るのは職員達の死体だけ。冷静を取り繕いながらも、内心ではこの無差別殺戮に目を背けたく思い。残るは執務室、"真実"が待ち構えているであろうその場所へと向かおうとした時。

「――フォルトゥナ・インテグラーレ」

 背後から友の名を呼ぶ声の主。振り向いた先に在るのは、紛れも無く"彼女"の姿。最早それが誰であるかを、態々語る必要はあるまい。来たるべき時が来た、それ以上でもそれ以下でもないのだ。丞相からの命を受け、総統の抹殺。及び、此処にいる叛逆者への粛清を敢行するが為。全身の術式を起動し、身体強化を図ると共に彼女は接近を開始する。それとほぼ同刻、自らもまた魔力を動員させ、身体強化を実行すると共に、移動を開始。最優先目的である総統の抹殺を阻止すべく、友と彼女との間へと割り込むと、胴を穿つべく放たれた拳の一撃を左手で受け止める。襲い来る衝撃は凄まじいが、元より近接戦を想定して鍛錬を続けた己にとっては、問題なく耐えられる範疇にある。

「叛逆者が説明責任を果たす義理は無いが……良いだろう。公明正大に、組織を叛逆した理由を述べさせて貰う。
 目的は唯一つ、ある男へと汚職の濡れ衣を着せた政府の塵屑共を一掃する事。無論、それに関わった俺の父さえも例外ではない。
 救いようが無く、更生する余地も無い莫迦――そんな奴等に世界の今後を託す訳には行かないのだから、排除するのは当然の事だからだ」

 ユーフォリアが離れるだけの時間を稼ぐ為にも、受け止めた左手に力を込めて敵の身体を強引に押し返すと共に、大地の魔力を集束させた右手を地面へと叩き付け、行く手を阻む巨大な岩壁を前方に隆起させる。
 その傍らで、嘘偽りを一切交えず、公明正大に語ると予め宣言した上で、要求された説明を行っていく。相手がそれを信じるか否かは怪しい所だが。それでも必要性は感じた以上は、語る以外の選択は無く。

「協力していた理由は、端的に言えば利害の一致。早急な排斥を第一と考え、焦燥していた俺は、武力による一掃を善しとしていた。
 そして離反した理由は、これも単純明快。その方法が誤っていた事に気付いた、それ以上でもそれ以下でもない。
 ――情を疑うのであれば、それも構わん。ただ、俺はその度に幾度となく否定の言葉を突き付けるだけだ」

 隆起の直後に両足へと集束させて行く光焔の魔力。十分な頃合いを見計らうと同時に大地を蹴り、瞬時に極小規模の爆発を引き起こす事で更なる推進を得て、現出させた岩壁を天高く飛び越える。空中で縦に回転しながらも、敵の背後へと向けて放つは属性弾の連射。火焔、水流、氷撃、疾風、雷電、土塊――不規則に放たれる一発一発の威力はそう高くは無いが、その分を数の利で補う。そして着地するまでの間にも、口を止める事無く饒舌に語り続けた。

>フォルトゥナ・インテグラーレ ユーフォリア・インテグラーレ (ヴァイスハイト・インテグラーレ) (アルカディア・クアドリフォリオ)

1ヶ月前 No.970

電子の詩人 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【時空防衛連盟本部/通路/ショパン】

 架空の愛す者を作り出したと言えば、ショパンもまた作り出した青年の一人だった。
 違うのは、ただのプログラム通りに動く事に虚しさを感じて拒絶し、愛するあまりムジークを発動させ、電子データに人格を与えた事である。それがジョリー、かつて幸せな時を歩んだ愛人の名を冠する存在であった。

 やはり一方通行な好意だと判明したショックは大きかったらしく、ゴスロリ少女は立ち尽くしていた。
 無言で彼女に視線を送っていると我に返った彼女はお辞儀をすると、少し慌てた後照れ臭そうに軽く頭を下げると、威勢よく前へと飛び出していき、光の玉を出現させてレーザーを発射していく。
 光る音符と五線譜と粒子を飛び交いつつも、シエンタは自身と同じ反応をしたので、整った顔は晴れやかにしてこくりと頷くが、キラーの怒声がショパンの肩をびくりと跳ね上がらせ、怯える小犬のような表情を作り「ひいっ」と小さく悲鳴をあげると、ドローンが飛び交いグレネードの雨も降らすが、レーザーのお陰で相殺され爆発音が鳴り響く中、体を震わせながらもここにいる理由をシエンタに告げる。
「……この世界の僕と、僕の曲が無くなるのが嫌だから……」
 そう静かに告げ、タクトを振るい続ける。
 この台詞の意味はおそらく理解できないのだろう、シエンタからすれば900年以上の出来事を守りに来た死者と対面しているのだから。
 そうこうしているうちに双方の濃厚な攻撃がこちらに向かってくる。
 シエンタの先ほどの動揺とこの行動はきっと前述のショパンのように感情が昂り発動したものだろう。
 なので怒りは沸かなかった。
「……これは流石にまずい」
 退廃的な曲調と共に周囲のにダンボールの壁を幾十も重ねて出現させようと、タクトを振るった。
 あとは攻撃できるゴスロリ少女に全てを委ねた。

>マシュマロ・ヴァンディール シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー

1ヶ月前 No.971

流水 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【時空防衛連盟本部/エントランス/ツバキ・オオトリ】

相方の射撃を見た機兵は、防御と回避、及び反撃の全てを兼ねる『幻像(イミテーション)』を展開した。本体へのダメージの一切を遮断しながら、火器による斉射を繰り出す。正しく攻防一体の壁だ。

――特に躊躇いもなくそれを使うか。特にそれが切り札と言う訳ではないらしい。

どんな行動であろうと、行えばそれ相応の消耗と言うものが発生する。コスト、或いは労力と言うやつだ。未知の武装を搭載する彼の機兵であっても、それは変わらない。
質量を持ち、本体と然程変わらない精度の火器の斉射まで可能な幻像。どんな技術で成し得た代物かは不明だが、それを一つ生成するのには相当なコストが掛かるだろう。であれば一度幻像を生成すれば、あとは最大限それを使い続ける――とツバキは踏んでいた。だが、その想定は即座に覆される事になる。

スプリンクラーの水流を受けて幻像の斉射は数秒で止む。これで水撃が"全く通らない"訳ではないと判明したのは重畳だ。本体は幻像の後方へと即座に下がり、次の手を打つ。
射撃を封じられた幻像は相方の方へと直進し、その質量での突撃を敢行する。それだけでも脅威だが、その上でその拳を射出すると言う暴挙に出た。なるほど、火器を封じられたのなら肉弾戦と言う訳か。……だがしかしこの時、ツバキは幻像の使い方に違和感を感じた。即ち、直線的に過ぎる――信じられない程に単純だと。いくら射撃が出来ないにしても、本体と連携せずに真っ直ぐに突っ込ませるのは愚策だ。しかしその愚策を相手が選択するとも思えない。で、あれば……。
幻像が動き出したのを見たツバキは、本体から視線を外さず、機兵を中心に円を描く様に走り出した。直後、幻像すらも引き裂く絶大な破壊力の光輪が機兵本体から投擲された。"幻像を囮にするだろう"と読んで動いていたツバキは、それが薙ぎ払う範囲外へと余裕を持って待避出来た。相方の方を見れば、そちらは大きく跳躍する事でその場を凌いでいた様だ。追撃を考慮して柱の陰に避難し、思考を纏める。

――あてが外れたな。まさかこうも簡単に使い捨てるとは。

本体からの光輪で容易く両断され、霞と消える幻像。幻像の生成に加えあれだけの破壊力を持つ光輪の投擲。消費も軽くはないだろうそれらを、全く躊躇いなく使い潰す機兵の戦術――。

此処でツバキは、一度自身が組み立てていた戦略を崩す。相手は消耗を可能な限り抑えてじっくりと戦うタイプではない。むしろ必要であれば過剰な程のリソースの投入を躊躇わない。それは相手に長居する気が無いと言う意思の表れであり、また生半な遣り方で突き崩すのは難しいと言う証明になる。あの機兵を仕留めるつもりならば、此方も可能な限りのリソースを投入し、相手が退却を選択するよりも早く致命的な一撃を撃ち込まなければならない。
言葉で言うのは簡単だ。しかし実際問題、ツバキ自身は相手に近付かなければまともな打撃手段がない。近付ければ装甲を抜ける自信はあるが、しかし相手の戦い方からしてまともな手段では近付けない。相方はと言えば、先程とは異なる武器に持ち替えての射撃を敢行していた。瞬時に武器を取り出す事が出来る能力者……かどうかは別にどうでも良い話だ。肝心なのは彼を上手く使えば被害を減らしつつ、あの機兵を討てるだろうと言う事。
相方は今大きく跳躍し、機兵の頭上をとる形になっている。火力を集中させやすい反面、空中では待避行動もままならないだろう。では此方から出来る事は何かと言えば、出来る限りの手法で機兵の注意を逸らす事だ。

柱から飛び出し、機兵目掛けて一気に走り出す。ただ走るだけではない。大量の水を生成し、指向性を持たせたそれと並走して駆ける。その光景はさながら規模の小さい津波だ。例え自分が射撃の壁に遮られようとも、その波は割られなければ確実に機兵の体勢を崩す筈。意識を此方に向ける、と言う意味ならば上等な手段だろう。

>>ワーロック、清太郎

1ヶ月前 No.972

“ナルカミ” @sacredfool ★UowltRt7dF_ly4

【ディンカ/海底洞窟入口/アンリエット・エクレール】

 一瞥。魔獣が倒れ伏した自分を見つめて何を思っているのか、詳しくは判らない。
 けれど、一つだけ判ることがある。あの目には……感嘆だか称賛だかはともかくとして、未だこっちをナメくさる意志を感じる。たかだかラッキーパンチの一つや二つで良い気になっているのが。こっちのやりたいことは判っているくせにわざわざ弓から剣に持ち替えたことといい、そこから走るでもなくチンタラ歩いてくることといい、四肢のどこかを潰せば戦えなくなるとでも思っているのか。
 喧嘩を売った以上、負けるのなんざ死んでもゴメンだ。ダルマになろうが首を噛み千切ってでも勝ってやる。
 それゆえ稲妻は激昂した。生来のものをスラムのステゴロで磨き上げた異常なほどの負けん気は、魔獣に対する致命打を容易に生み出す。それが本業でない中距離以遠への攻撃だったとしても、自身の感情によって激しく揺れ動く雷電は辺り一帯を揺るがし砕く衝撃となりうるのだ。

「やっと化けの皮が剥がれたか――」

 魔獣の剣が届くよりも早く、雷電の衝撃波は彼の体を打ち、吹き飛ばす。それを見た稲妻の目から緊張が解けることはない。
 足を封じれば機動力は失われ、一撃入れるには事欠かない……その油断から人虎が衝撃波をまともに受けたのは放った彼女から見ても明らかだったが、人虎が持つ人外の肉体を彼女は見ている。あれだけパンチを打ち込もうとも倒れなかったのだから、動きを止められた時の姑息な対応策などで削りきれないのは彼女自身が最も理解している。
 ならばとびっきりの一発をアイツの体に直接ブチ込む。そうしなくちゃ勝てっこない。その一発のチャンスを選ぶなら――今以外ありえない。向こうの体力だってもうそう多くは残っていないんだ。口調も体勢もさっきまでとは全く違う。狙うなら体勢の整ってない、今しか。相手が怯んだ今なら刺さった矢を抜ける。氷は電気のエネルギーで溶かせばいい。氷解した足をちょっと素振りすれば元通り。元通りでなくてもそういうことにする。してみせる。人間風情――ダントツで嫌いなタイプだ。

「ざけんなッ!! オレァ生まれだけでどうこう言うヤツが一番キライなんだッ!!」

 稲妻はさながら攻城弩。鋼鉄の弦を引くが如く電圧を上げて身体を捩じる。その反発力から放たれる矢は光線に等しい。揺らめく火球の全てを貫いてなお勢いを失わぬ電光のストレート・パンチ。障害ならば砕け。餓狼の如く貪欲に反骨せよ。衝撃波で吹き飛んで空いた距離も一瞬で詰めるノックアウト必至の一撃が魔獣の顔面を一直線に狙う。
 稲妻は迷いなく自らの激情を拳に込める。彼女がこうまでに魔獣を嫌悪するのは、彼の口振りが逆鱗に触れたからに他ならない。人間を見下したその感情が――人間という出自だけで見下すその目が何よりも彼女を奮わせる。良家の子だから、女だから……己の出自に抑圧された苦い記憶を逆撫でするのだ。

>>魔獣ヴァグネル

1ヶ月前 No.973

失敗作 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ルーシャ・コバルト】

既にこの場所は混乱に包まれている、おそらく味方が上手くかく乱してくれているのだろう。
だから、元から隠密能力と、糸と蜘蛛の足を使った移動能力に長けているルーシャがこの場に潜入するのはとても簡単な事だった。
今日の彼女には、いつもとは少し違う任務を与えられている、何時もは単純に見つけた敵を捕縛するか攻撃すると言う物であったが、今回は、今彼女の手に握られている、携帯型の毒ガス兵器を時空防衛連盟本部で解き放つ事だった。

だが、これの扱いで最も悩んでいるのは、他ならぬルーシャであった、今まで彼女は是正機構の戦士として動いてはいたものの、直接的な殺害と言うのは数えられる数しか行っておらず、また、それも不慮の事故による物が大半で、基本的には糸による捕縛か、戦闘力を見せびらかして追い払うに留めていた。
しかし、今回の任務と言うのは、自分の行動一つで、多くの人間を皆殺しにする物であり、戦闘員どころか、関係のない人間も殺してしまうかもしれないような物だった。

「……やらなくちゃあ、駄目なんだよね、私が捨てられないためには」

それでも、また捨てられるのは怖い、口で直接成功しなかったら捨てるなんて言われた訳ではないが、今が重要局面にあるのはルーシャにも分かっている。
もしも、この起動を失敗したら、また自分は捨てられるのだろう、そうしたら自分はまた害虫扱い、警官や軍人に追い回されながら、時折残飯を食らう生活に戻らなくてはならなくなる。
そのためなら……自分は、両手で数え切れないほどの人間を殺すしかない。

そんな状況に、ルーシャは数分前からここに居るというのに、毒ガス兵器をちらちらと見ながら、椅子に座り込んだり、そのあたりをうろうろと徘徊したりと挙動不審な行動を取っていた。
実際のところ、彼女が持っている毒ガス兵器に彼女が想像しているような破壊力は無い、そんな物を持たせるほどルーシャが信用されている訳ではない、起動しようと、ルーシャが口を滑らせて相手に露呈しようと、どちらにせよ相手の注意を引き付ける囮程度にしか、最初からルーシャは期待されていないのだ。

もちろん、本人がそれを知る訳が無く、ただ、自分の生活と周りの命を天秤に掛けて思案するばかりだった。

>ALL

1ヶ月前 No.974

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/総統室前→訓練施設/17代目葛葉 ライドウ】

ライドウがユーフォリア達と別れてネットでニュースを見てみると大統領が暗殺された旨を知ることになった。
そして同時にエントランスで戦闘が発生していることも分かっている、だがライドウが向かう先はそこではない。
まるでこの一大事に示し合わせたような襲撃、当然敵は一か所に留まらないだろう。
多くの異世界人を招いている故にこの本部はセキュリティが甘いところがある、そこを付かれたら痛いでは済まない。

「出ろ、モコイ。敵意の在りそうな場所を探すぞ」

『了解ッス、サマナーくん』

緑のヒトガタをした切り株のような悪魔を呼び出すと、施設内を順繰りに回っていく。
そして見つけた、訓練施設にて迷いを抱える敵の姿が、モコイはルーシャが抱えている迷いを読心術で読み取りライドウに伝える。
聞けば毒ガスを霧散する装置を使用するかどうか悩んでいるらしい、そしてそうせざる得ない状況にあることも。交渉の余地はある。
まずは訓練室にモコイが入って行き、ルーシャの視界にひょっこりと顔を出した、と思ったら顔を引っ込めてでんぐり返し(モコイなりにスタイリッシュに)登場する。

『ニンゲンとしては正しい価値観ッスけど、暗殺者としてはダメダメッスね、チミ』

そしてモコイがルーシャの前に立った後ライドウが靴音をたてながら背後に現れる。
帯刀はしている、拳銃もホルスターに収まっている、だがライドウは敢えて無手のままで話しかける。

「やめておけ、大量虐殺を躊躇うくらいなら最初からやるべきではないのだ。
 お前の迷いは見て取れる、お前は捨てられることを恐れているのだろう?」

まるで見透かしたように、実際に見透かしているのだが、ライドウは落ち着いた口調で言葉を紡いでいく。
更にライドウは敵意はないというように手の平を差し出して言葉を続ける。

「お前は”そちら側”にいるべきではない、我らと共に歩む気はないか?
 衣食住職はこの俺が保証する、お前はもう何からも逃げなくてもよくなるし、殺す恐怖からも解放される。
 その代わり話してほしいのだ、何故このようなことをせざる得なかったのか、誰がこのようなことをさせているのかを、だ」

モコイはモコイで黙ってバンザイしてくるくる回るというよく分からない動きをしている、外法属のモコイは心を読む。
何か考えればそのままライドウに筒抜けになるのだ、それを踏まえての交渉だ、そしてライドウの言葉に嘘はない。
こちらに下るというなら身分は保証する。そういう提案だ。

>ルーシャ・コバルト、ALL

【交渉から入っていますが攻撃してくださってもかまいません、あと読心は戦闘には使いません】

1ヶ月前 No.975

ワーロック @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【時空防衛連盟本部/エントランス/ワーロック】

 着弾―――確認出来ず。
 目に映るもの全てを焼き払うように放たれたフォビドーンフォースの一撃は、
 しかし前者には跳躍という形で回避され、後者には予兆の時点から逃げの一手を打たれていた。
 しくじったのならば次だ。ワーロックの機体AIが“次”を打ち出し始めるのにそう時間は掛からない。人と機械の差、感情を持つ者と感情を持ち得ない物の違い。0と1以外を保有し得ない鋼鉄の黒鐵に、今の未遂を嘆くような余地はない。それよりも相手の性能について検証した方がまだ建設的というものだ。
 前者に見るべきところはその反応速度、後者に見るべきはやはりその身体能力と………何より、行動の早さだろう。明らかに後者の方が動き出しの回避が早い―――それは“出方を見てから”というものではなく、こう来ると判断していたが故の射線上からの移動だ。予知じみた反応に、しかしあからさまな不自然さは無く。此方のデータを前提にした回避行動であるというのは想像に難くない。

 後者については先ず半分は理解した。
 水を操る点など控えめに言ってどうでもいい、問題はこれが相応に出来る指揮官だということだ。
 警戒レベルは一瞬で此方に傾いた。一連の挙動を、これまでの戦士の比較データに照らし合わせて………これは精鋭と呼ぶに相違ないと理解した。隠し玉があるタイプではない、機体性能の高いバランスこそが強さとなるワーロックにとって、この相手は長期戦が予想されよう。そして、長期戦が予想される相手ならばこそ居座りは御免だ。件のハッカーが攪乱をしている間に仕留めなければならぬ。

 では前者がどうか、というと。
 別に悪いというわけではないのだ。むしろ前者はその打撃とフォビドーンフォースの双戟に良くも反応した。マシンの馬力と機動力は相当なものだろう。その一方で此方は反応が二つとも遅い。ガトリングガンの火砲を明らかに受けている様子が見て取れた。
 機体の機動力は高い。装甲も優秀。
 武装も、ワーロックの想定ダメージ範囲の通りならば厄介なものだろう。

 だが二度の攻撃を見る限りにおいて、アレの動きは後者に比べて鈍い。
 ………つまり、内部のアーマー内の人間は―――。


「プログラム、修正」

 ・・
 素人だ。
 正確には全くの素人ではないが、これは断じて戦闘経験値が豊富な敵ではない。

 G.O.Dは、照らし合わせた戦闘データでそう結論した。


 そして、演算結果と結論を照らし合わせるより前に、攻撃が来ることも分かっていた。
 強力なエネルギー反応―――津波と共に並走して来る女の姿が見える。上方からは先程のものよりもはるかに威力の高いマシンガンによる集中射撃。側面からの強襲を掛けて来たツバキと、頭上からの制圧射撃を仕掛けて来た清太郎。
 連携というよりは、水使いがそれに合わせる柔軟性を持ち合わせているというべきか、あるいはあの白い機動兵器が状況を作り出しているというべきか。どちらにせよ、もうこの時点でワーロックの狙いはほぼ決まっていたも同然だった。

 ワーロックはそれらの斉射と津波を見た途端、あっさりと後退を決め込んだ。
 バーニアを吹かし、青い炎を散らしながら、自身はまだ津波の影響を受けていないのを良いことに、内蔵兵装であるガトリングガンをツバキの方にばら撒く。走り出して来る彼女が防御のために時間を掛けることを期待した連続射撃だ。
 足元を狙った威嚇射撃であり、同時にイミテーションの腕部だけを再現し、それを所謂“質量弾”代わりにして解き放つ。着弾点は地面を爆砕し、その衝撃と爆風で津波の軌道を若干逸らす。同時にツバキへの波状攻撃も期待出来るだろう。

 さて、此処まででワーロックは一切、あの白いパワードアーマーへの対策をしていない。故に彼のマシンガンは効果的なほどにワーロックの機体に、前面装甲に若干のダメージを与えるだろう。
 すぐにではない。すぐにでは、ないが。それは無傷ではない。
 数秒、10秒ほど装甲を貫通できる至近距離で撃ち続け、
 それが動力部を破壊すれば、この黒鐵を早々と倒せるのではないかと考えさせるほどに。

 ………ワーロックがこの場で後退を選んだのは、退却をしようと思い立ったわけではない。
    当たり前だ、それには早すぎる。
    そして、それがツバキへの射撃を優先したからだとしても、僅かな不自然さが目立つ。

 ―――だが。そんな疑問を語っていられるほど、戦場というものは時間の経過に優しくない。

「―――」

 何も語ることのない機械が、バーニアを吹かしてエントランスのぎりぎりで上昇し始めたその時。
 ツバキの頭上、やや上を通り抜けるようにして、ワーロックの方へ先程の光輪が戻って来た。
 その熱量を途切れさせることはなく、その威力を衰えさせることはない、文字通りの必殺。ローリスクにしてハイリターンの、ワーロックという機体が“最終兵器”の名を冠するに相応しいだけの理由の一つ。それが、ワーロックの方へと再度エネルギーとして戻って来るように、まるでブーメランのように帰って来る。だから………。

 もしも。もしも、だ。橋川清太郎が。
 マシンガンの攻撃が効果的だと判断し、着地した直後に近づこうなどと考えたのなら。

 一歩でも前に出たのならば―――それで一撃だ。
 死角から、ツバキと清太郎を遮るようにして。そして清太郎が前に出たのならば確実に直撃するだろう位置を、津波も爆風も合切を斬り裂きながら、先程見せたフォビドーンフォースの光輪が通り抜け、そこに割り込んで来た総てを溶断するだろう。
 自分という餌で釣り出し、人間という有機生命体の死角と欠陥から確実な攻撃を決めるために。



 ―――ところで。ワーロックがこの場で彼の始末を優先した理由など単純だ。

    潰すならまずは此方だと、二度の回避結果から断定した為。
    兵器に慈悲はない。ましてG.O.Dにとって、人間は敵対種でしかない。
    星を存続させるために不要なものならば、始末に時間の掛からない方から効率的に、だ。



>清太郎、ツバキ、(ALL)

1ヶ月前 No.976

ミラノ @aroundight☆SdjaOljKHtOm ★zLr78z7s8m_pp5

【大統領官邸/核シェルター/ミラノ】


「そりゃ典型的な返しだな、ネクロマンサー!」
「殴るのは大好きでも、殴られるのはイヤってか?」


 ミラノとミルグラム・ゴートには多数の相違点がある。
 ただし、たった一つだけ彼らには共通するべき要素がある。

 誇り高い信念だとか思想だとか、そうした敵味方の感情に何ら酌量余地を持たないところだ。
 その前提部分だけは、この盗賊王と贖罪の山羊において連なる共通点だろう。敵の言葉が何になる、そいつの思想が何になる、自分は自分だ………と、そう言って退けられるだけの強固な自我に関しては、どちらも備わっていると十分に言えた。
 ………ただ、それだけだ。この二人の共通点など、そんなところしかない。
 それがある上で、彼らはどのように動くのかが違っているから、話し合いは分かり合う前提のものではない。そんなものは確かに“うるさい”で済ませて良いし、そもそも対話の余地を創ろうとしたところでこの少年はそれを蹴っ飛ばしていただろう。
 何故なら―――。

 ・・・・・
 彼の価値観に照らし合わせて、ミルグラム・ゴートは自分と奪う者だ。
 盗賊王は富める者からしか奪わない。銀狼は奪う者からしか奪わない。


「(に、しても………くそ、うざったいなもう)」
「(こいつの様子からして、何体でも出せんだろうな。それなら―――)」


 ―――斧が手元に戻って来るまでの間に、隙を突いてまた亡霊が沸く。
    槍を持ったそいつの顔など知らないが、鉄砲玉として使う分には上等なのだろう。
    何処までも自分では戦わない。
    なるほど、確かに記憶通りの死霊使い《ネクロマンサー》どもとよく似ている。

 飛び退きながら斧を引き戻す、一歩遅れてその槍戟が微かに横腹を抉る。
 大した傷でもないが、いちいち攻撃する度にこうやって湧いて来られたら溜まったものではない。
 これ以外の奥の手があるのかどうかに関しては―――流石に、そろそろ疑問を覚え始めたが、あるにせよないにせよ、使わせるより前に倒すに越したことはない。
 彼はそう結論すると………戻って来た斧を掴み取ってから思いっきり突っ込み、それでいながら、なるべく自然にタイミングを遅らせるようにして、ミルグラムのすぐ近くまで潜り込む。
 山羊が自分を包囲しようと亡霊たちを呼び出そうとするのを期待した上での行動だった。
 彼は闘う人間ではない。彼は嘲笑う者、脇から傍観して弄ぶ者だ。であるならば、そこまで複雑に考えて動くことはないだろう。よしんば隙を突きに来たとしても、それならそれで別の手立てがある。

 兎に角、今は―――。


「ってェな―――だったら!」
「―――お返し、くれてやるよォッ!」


 あの山羊を殴り倒すには、その邪魔な亡霊の山を、一旦薙ぎ払う必要があった。
 浄化でダメなら逆の発想だ。要するに―――。


       >「光を奪われ、翼を折られた天使………エイミアの呪い、我らの敵に!」

       >O angel deprived of light and Wings...
       >Let thy misery cage mine Enemy.


 沈めに鎮めてしまえばいい。
 以前あの男には使えなかった(というより使う場面が無かった)広範囲攻撃。
 振りかぶって叩き付けた斧を基点に発動し、
 全方位目掛けて一帯を焼き払い呑み込むように広がる昏きモノ。
 初動で展開した聖光とは打って変わった呪いの象徴、要するに“同じもの”だ。取り込み、呑み込み、鎮め、物理的威力を伴う暗黒と呪詛で以て有無を言わさず周囲一帯の亡霊を消し飛ばし、序でにミルグラムをも巻き込まんとする。

 彼が呪詛の使い手だろうが、それで編まれたものだろうが、そもそも性質が違う。
 ミラノのそれは婉曲的な呪いではない。文字通りの死、文字通りの闇。
 重力による物理的圧殺の要素を伴う混沌の力だ。《グラヴィティカオス》などとは良くも言う。

 彼が同じものを使ったのは、別に意趣返しでもなんでもない。
 気に入らないものを殴るのがミラノという少年だが、いちいち皮肉じみたことをする趣味はない。

 強いて言うならば、ただ、最初の言葉通りだ。
 殴るのが好きでも殴られるのがイヤというのは、不公平だろうという話。
 奪うなら奪われるのも覚悟しないといけないし、それが出来ないなら奪うなという話であり。

 だからどう反応するのか、全く同じもんで1回こっちも殴ってやる―――というわけである。

>ミルグラム・ゴート

1ヶ月前 No.977

一介の議員 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【スレ主様から許可を頂いたうえで、増設したロケーションを使わせていただきます】

【放送局/放送室/ショコラ・ヴァンディール】

大統領暗殺から間も無く、ショコラは政府を飛び出して情報収集にあたっていた。不穏な動きがあることは察していたし、自分や一部の議員への対応にも違和感を感じていたのだが、まさかこれ程までの事態になるとは思いもよらなかった。
情報は完全にシャットアウトされ、黒幕は決して表には出てこないながら、その必要など無いのだと言わんばかりの綿密な計画の下に動いている。
この一件に政治的腐敗の代表格たる議員約数名が関わっているのは疑いようもないが、今は彼らを見つけて糾弾している場合ではない。
政治家ならば市民の生活を第一に考え、私腹を肥やすことよりも、彼らの生涯をより良きものにしていくべきだ。そして有事の際には彼らを守ってやらねばなるまい。
そう心に決めた若き議員が次に向かうのは、市民に映像や音声による情報を提供する場、放送局。大統領の暗殺に加えて官邸や政府で起こる大虐殺、更には時空防衛連盟の本部までもが襲撃を受けたとあって、局内は次々に舞い込む情報で慌ただしさの頂点にあった。
そんな中でやけに落ち着き払った彼女は異質な存在だったが、気迫と真剣そのものな面持ちに押された局員によって放送室へと通される。

街中の巨大スクリーンや各家庭のモニター、果ては個人の端末までもが映像を受信する。


「――私は世界政府のショコラ・ヴァンディール。

残念な報せです。

水面下で跋扈する勢力の陰謀に、我々政府も、時空防衛連盟も飲み込まれようとしています。

これは市民の皆さんだけではない、この事態に生きる全ての人々への警告、そして励ましです。

議員の方々は、政府や官邸に戻ってはなりません。

今は身を潜めて。そして今一度考えてほしい。

この戦いが終わったとき、世界の安寧を保つため、私たち政治家が真に為すべきことを」



このまま事の成り行きに任せておけば、世界政府の要人は抹殺され尽くすことだろう。腐敗は一掃され、リセットが完了する。しかし暴力で腐敗を取り除いたところで、根本的な解決になどなりはしない。
彼らの陰に隠れ、二軍三軍に甘んじていた勢力が台頭してくるだけだ。それにショコラが背中を追うユーフォリア・インテグラーレなら、決してそのような手段で解決を図ろうとはしないはず。
故にショコラは彼らにも対等に警告を出した。そして諭した。平和が戻った時に何をすべきかを考えよと。

その後、ショコラは連盟本部へ向けて移動を開始した。彼女は議員だが、連盟の戦闘員に交じって戦えるだけの能力がある。今この時が彼女の正念場だ。頭脳と肉体の双方を駆使し、世界平和のために尽くさねばなるまい。

>>対象なし

1ヶ月前 No.978

赫怒の焔 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【大統領官邸/公邸/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 邪悪必滅。果てなく狂える赫怒の焔を瞳に宿す獅子の意識に、既に己を愛する者の姿は映らず。願ったからこそ、信じたからこそ、護ると誓った者の姿さえもが、心の中から消え失せて行く。
 ただ志すは唯一つ、世界と言う画布を、描くと決めた理想の色で塗り潰す事。遍く大悪の敵として君臨して、護ると誓った者達の涙を拭い去り、笑顔へと変えるのだと宣誓する。"英雄"の概念に囚われた彼が謳うは常勝無敗。護るべき者達と、背負うべき大義が在る限り、何度でも不屈の闘志と不退転の意志を掲げて立ち向かおう。今の俺は無敵だ、そうとでも言わんばかりに。
 だが――護られる側の人間が、そんな在り方を望む筈は無く。そして今も尚、際限無く膨れ上がって行く"英雄"に掻き消されかけている、獅子自身が気付かぬ本心さえもが、その在り方を否定し続ける。誰かの笑顔を護ると言っておきながら、為す事全てが自己犠牲に集約する愚かさ。お前と共に生きたいと願った一人の少女の想いさえも、"英雄"はそうやって蹂躙するのか、と。
 巫戯山けている、冗談ではない。断固として、そんな結末を認めてたまるものか――決して響く事の無い、力無き叫び。誰にも届かず、いずれはその残滓すらもが消えてしまう筈の物で。しかし、彼と共に在り続ける、数分前に"生まれた"ばかりの"焔"は、そんな"彼"の想いを確かに受け止めていた。

 ――その事実を、この場に居る三人は知る由も無い。

「があァァァァァァァァッ!」

 大海を蒸発させる灼炎を纏い、身を犠牲にしながら爆撃を強引に乗り越え。燃ゆる蝋翼を広げ、天駆けて翔ぶ獅子が放つは炎熱を付随させる六連閃。肉を断てずとも、触れる焔で融かし、追い討つであろう技の数々は――刹那、水蒸気爆発による暴虐的なまでの衝撃が、総てを消し飛ばす。眼前に展開された氷壁さえも瞬時に破壊し尽くして。爆心地の間近に居た獅子はそれを真っ当に防ぐ事すら能わずに、爆風に吹き飛ばされて行く。
 直撃した時点で致死と成り得る手傷をその身に負い。更には幾度となく剥き出しとなった硬き地面へと叩き付けられ、内部を悉く壊し乱し。軌道が停止する頃には、獅子の身体は最早凄惨を通り越した有様となっていて。

「――まだダァァァァァァッ!」

 それでも、彼は力強く大地を踏み締め、立ち上がる。狂気とすら称する事すら生温い、大気すら震撼させる咆哮と共に。大悪に未だ届かぬ事実に対する悲憤を。蹂躙の果てに、護るべき尊き"誰か"が抱いたであろう嘆きを義憤に変えて、我が憤怒の焔を更に昂らせ。
 其の時、獅子は自らの司る"焔"との同調を高めて行き――その姿が大きく変貌して行く。黒々としていた髪は、禍々しき赤髪となって伸びて行き。白目を紅く染め上げ、止め処なく溢れ出るは血の涙。数十倍にも苛烈さを増す焔は、辛うじて覆い隠す役割を果たしていた上衣を瞬く間に灰と変え。露わとなった素肌。血潮の紅に染まった身体は、しかし焔に触れても無事を保てる程に、熱への耐性を得ており。

「オオオオオオオオオオオッッッッッ―――――――!」

 理性を喪失したが如く、殺戮へと移ると言う意志表示を咆哮で行い。迫る氷地獄の瀑布、絶対零度が生み出す極冷を――青蓮地獄へと叩き落とされる事無く、紅焔の獣はそれすら上回る赫炎で総てを乗り越える。光輝を放つ灼熱の翼を広げ、人ならざるモノへと変わりつつある獅子はただ一直線に敵へと突き進み。

  Raging Nova
「赫怒せよ、新星――!」

 大悪たる魔王を灼き滅ぼすが為の一手。集束された焔の魔力を解放し、引き起こすは新星の如し大爆発。罪業を滅却すべく、大焦熱地獄へと叩き落す爆轟の一撃。瞬く暇すら与えずに伝播して行く衝撃波は、蹂躙され尽くされた公邸を更に蹂躙し。森羅万象を灰燼へと帰させる光焔は、魔王のみならず、味方さえも巻き込みかねない危うき物としてこの場に顕現する――全てを灰にする事を厭わず、前へと突き進む事しか考えぬその在り方を、示すかの如くに。

>ダン・マッケローニ=バビロン シフォン・ヴァンディール

1ヶ月前 No.979

ダン・マッケーニ=バビロン @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/公邸/ダン・マッケーニ=バビロン 】

 そうだ。その通りだ。それがお前達で、これが俺の夢だ。英雄譚<サーガ>だ!
 もっと覚醒してみせろ、もっと輝いてみせろ、夢を追うその姿は何時だって美しいのだから。
 だからこそ――ダン・マッケーニ=バビロンの勝利は疑わない。
 喉元から食い破りにかかる闇<ヤミ>が躯を蝕むまで、共に太陽を目指そうと押し上げ続ける魔人が如く。

 世界の敵。人理のエラー。生ける大災害。
 皿の上のミートパイを一飲みにする大海竜。

 全て、全て、全て――最初から彼が思い描いていたシナリオ通りでしかない。
 ダン・マッケーニ=バビロンとは無自覚の悪ではない。しかし無自覚の光でもない。
 ・・・・・・・・・
 自覚があるからこそ、己の一番みたいもののために妥協をしないのだ。
 計算づくだった。
 全てが彼の頭の中で組み立てられていたシナリオ――許されぬ悪として認識されることで、光もまた育つという理屈の下に。
 そうして今この瞬間、世界政府が崩壊したことでバビロンは大笑いした。
 彼だけが何処までも得をするこの事象。

 だからこそ、――光輝を/赫熱を纏い出力を常人ではあり得ぬ領域に拡張させる彼らへ謳うのだ。

「いいじゃないか、いいじゃないかその調子だもっと行け。
 幾つ限界を超えた? 成長したか? 本気で取り組んでいることが何よりの証明だッ」
「ああ、輝いて見えるよ。お前達が。
 気持ちいいだろう? 強くなるのは。
 最高だよなぁ?
 夢を叶えるその時が目の前に迫りつつあることを。この俺を叩きのめすという王手を掛けられることがッ!!」

 吹き荒ぶ爆風が――シフォンを、レオンハルトを塵のように吹き飛ばす。
 質量と質量のぶつかり合いは足し算ではない。乗算だ。拮抗しあう互いの力が、より高みへと誘ってくれる。
 普通の兵士ならばよくて粉砕骨折。最悪粉微塵だろう……だが彼女たちは耐えた。

 シフォン・ヴァンディールは立ち上がり、決意と共に――深奥から魔力を引きずり出し覚醒してみせたし。
 肉が擦り切れ皮が破れ襤褸雑巾の如し有様になろうとも、レオンハルトは吠え猛る。

 極大火力の奔流を、更に上回らんとするシフォンの流水と大雪崩で編み上げられた物量の布陣が飲み干し喰らう。
 一矢すらその城壁の前では蚊の一刺しにしか過ぎないだろう。この戦いはもはや人智を超えている。
 気候条件も。周辺環境も。塗り潰された傍から塗り潰す物量の合戦。
 相性差など関係ない。力の強い方が勝利する――積み上げられた積雪の城はそう物語っていた。

 紅蓮の獅子が此方を目掛けて突貫する――全てを厭わずに、目の前の魔王を破砕すべく。
 その御姿に原型などありはしない。焔だ。罪業を滅却する紅蓮の化身だ。
 灼熱の翼を広げ、邪悪なる者の目の前に現れ断罪の剣を振り下ろす裁きの王だ。

 凍風の後押しを受けてシフォンが突貫するのもほぼ同時。走り抜けた軌跡に雷糸を残し――駆け抜ける。
 "覚醒"により進化を遂げた術式だ。逆巻き雷鳴渦巻く、戦場を駆ける一陣の風となったシフォンが距離を詰める。

 そうだ――邪悪は、覚醒した英雄の前に倒されるが定め。

「――ぐ、ぅぅぅぅぉぉぉおおおおおおおおおおおおっっ!!!???」

 バビロンは人間だ。
 レオンハルトが引き起こす超新星爆発が如し――大焦熱波の一撃。
 遍く悪を物皆全て焼き焦がし、灰燼へと帰す勝利の炎。
 シフォンが繰り出す神雷を宿す一閃――空間すら引き裂くその蹴り。
 神の裁きを前にして、万人は平伏し焼き焦がされるがその定め。
 肉は焼き焦げ、骨は吹き飛び、眼は蒸発し粉微塵と化して消えるのだろう。

 ああ、お前達はなんて素晴らしいのだろう。
 お前達の生きざまッ。
 夢を追うその姿勢ッ。
 光り輝くその姿ッ。
 感動した。涙が出そうだ。この身が奮い立つ。震えおののく時間などどこにあろうか。
 だから俺も、応えなければならない。

 そう――。


「まぁぁぁだだァァァアアアアアアアアアアアアアア―――ッ!!!」

  、  ・・
 ――俺も覚醒し渡り合う。それが最大の誠意じゃあないかッ!!!
   限界をとことんまで超えてみせろ。
   目の前の二人を超えろ。ダン・マッケーニ=バビロンッ!!!

  ボルテックブラスト
「<天神雷鳴撃>ォォォオオオ――ッ!!!」

 ワールドデストラクション
「<超新星核炸裂>ォォォォオン――ッ!!!」

 ・・・ 、   、   、 ・・・・・・
 気合で、――神雷の蹴りに対し何千兆ボルトもの電圧を誇る白雷をシフォンへと撃ち込んだ。
 纏う神風は瞬時にかき消され、天は吹き飛び裂かれて消える。
 ・・・  、     、    ビックバン
 根性で、――超新星爆発に対し超新星核融合爆発もかくやの大爆発をレオンハルトへと叩き込んだ。
 衝撃のぶつかり合いが白光を齎す。音を消し飛ばす。大気を消し飛ばす。世界を消し飛ばす。
 無論至近距離だ。対処しきれなければ今度こそ肉片一つ残さず粉微塵に消し飛ぶ。
 そしてバビロンは、気合のみで――それを耐えきる。己が消し飛ぶという現実すらブチ殺す。

 全ては彼らと対等に殴り合ってみたいから。
 それだけの理由で、レオンハルトとシフォンを上回るほどの出力をたたき出した。
 それだけの理由で、バビロンは自分が敗北するという現実をいとも簡単にぶち壊した。
 不敗神話なんてものは嘘っぱちだ。ダン・マッケーニ=バビロンはただの人間でしかない。
 ただ少し、気合と根性が常人より恐ろしくあるだけであり――それだけでどうにかしてしまえただけの人間だ。

 だがそんな彼に負けた理由など、少し考えなくても分かるのだ。
  、  ・・・・・
 お前には気合と根性が足りなかったから。
 精神論一つ。想いの強さ一つでいかなる覚悟も夢も希望も無意味な塵屑へと還ってゆく。
 戦略も智略も判断力もどれもこれも無意味だ――土壇場で覚醒出来ない奴が悪いのだ。ただそれだけ。
 シフォンの杞憂は正解であり不正解だ。
 バビロンという魔王へ到達するための壁は高すぎる。
 しかし、到達したところで――気合と根性で壁を増設する化け物に、挑み続けるということが……恐ろしい結末への道のりとなりうる。

 彼らは渡り合ってきている。
 だからこそバビロンは想うのだ――もっともっとこの先を見てみたいと。

 蝋の翼が融けるまで――天頂目指して飛ぶがいい。
 狂えるほどに願い焦がれ、己を対価に引渡し血肉を炎にくべるのだ。
 光のために。
 未来のために。
 自分以外の誰かのために。

 その過去も、誰かのために戦う過去も、歴史の因果のために戦う誓いも誰かのために立てた全ても。
 そして未来のその先も――あらゆる全てを焔にくべて燃やし尽くしたその暁に。
 太陽に焼き焦がされながら、誇りと共に墜ちてゆくがいい。

「ハハ、ハハハハハハハハハハァァァァアアア――ッ!!!」

 ・・・・・・・・・・・・・
 この男は生かしてはならない。
 政府の汚職だとか、腐敗だとか、性根だとか、そんな問題ではない。
 生かしておくだけで数多の全てが犠牲となりうるのだ。
 だが、それに気付いたころにはもう――手遅れ。

 そう、運命は生贄を射止めた。
 国一つ消し飛ぶほどの衝撃がぶつかり合い、白光に周囲が包まれる中――バビロンの目はその人物を確かに見ていた。
 過去も嘆きも絶望も、遍く闇は鎖される。悪と汚濁が浄化される頃――聖火を前に、悲劇は焼き尽くされるのだ。

  、   、   、   、 、  ・・・・・・
 ダン・マッケーニ=バビロンの瞳が――深紅に輝いた。
 さあ、英雄譚へと墜ちるがいい。

「さあ、目覚めの時だ。
 拍手喝采で出迎えようッ!!
 存分に狂い哭くがいいさ――」




「――レオンハルト・ローゼンクランツ、お前の末路は"英雄"だ」




 ――バビロンの異能がレオンハルトへ向けて起動した。感染型の"改造"術式。
   精神の限界と肉体の限界を外す、出来ないことを出来るようにするだけのちっぽけな。
   それでいて遍く全てを薪に燃やし、英雄譚を創り上げるための異能<デュナミス>。
   それに魅入られた時点で……天墜の定めは、もはや決まったようなもの。

>シフォン レオンハルト

1ヶ月前 No.980

改変の副産物 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部/通路/マシュマロ・ヴァンディール】

驚愕の連続。まず何よりも幼馴染かつ親友の自分が赤の他人のように拒絶されたこと。それなのに電子生命体らしき存在と心を通わせて、本当の友達のように扱っていること。正直に言えば二人の関係が羨ましかったが、いくら手を伸ばしても自分のものにすることはできない。
更にスーツの青年までもがシエンタと関わりを持っていたという事実が判明。聞くところによるとネットを介して知り合った仲で、会って話すどころか互いの容姿すら知らなかったようだが、彼に対するシエンタの態度は真剣さに満ちていた。
敵対関係にあることを悔やみ、本気で失いたくないと願っているようだ。なんと虚しく、悔しいことだろうか。10年以上現実で親しくしていた自分が置き去りにされ、もっと淡く脆い繋がりであるはずの人間が大事にされている。
それでも聡明さと思いやりの心を持ったマシュマロは、この状況をある程度客観視すると共に、シエンタの心理を探ろうとする。本来ネットの繋がりはバーチャルな面が大半を占めており、回線の向こうに生きた人間がいるとはいっても、現実(リアル)の繋がりに勝るものではない。

では、その現実が崩壊していたら?

失った人間関係をネットに求めるのも無理はないだろう。持て余してしまった時間もネットに費やすことだろう。一般的なユーザーはもちろん、同じ境遇のユーザーとでも仲間になって楽しめるオンラインゲームがその魅力を増す。現実とネットをかけた天秤が、見る見るうちに傾いていく。
不登校になってしまったシエンタなら殊更これが当てはまるはず。あれはあれでいいキャラをしているようだが、電子生命体などに友人関係を求めていることからしても顕著だ。
あくまで推測に過ぎないが、このような結論を導き出したマシュマロは、一つのバカげた目標を打ち立てるに至る。

「だったら私は、もう一度しーと友達になる!」

自分が"普通でない"ことは薄々わかっていた。最初は質の悪いイタズラかドッキリに違いないと思ったが、肉親を含めた誰もかれもが自分を知らないと言うのだ。
従姉妹に会いに行ったことで面識のある連盟の面々も言うことは同じ。もうここまで来たら受け入れるしかない。幸いリーダーのユーフォリアは優しく受け入れてくれるし、従姉妹の二人は自分を本当の妹のように可愛がってくれている。
ならば不幸に嘆いてばかりではなく、新しい人生に踏み出すくらいの度量を持っていこうではないか。

"マシュマロ・ヴァンディールの友達100人できるかな?"ここに開幕!

「そのためにも、まずはここを押さえるよ!」

ピンチは青年が頑張って凌いでくれた。先程のレーザーは防がれてしまったが、まだまだチャンスはある。次で相方の守りが限界を迎えたのなら、自分も一緒に防御に回ればいい。
再び前方へ踊り出て繰り出すは氷結の弾丸。先端が丸まっているため殺傷力はたいして高くないが、かなりの速度を伴っているため制圧力は抜群。数も三十を数え、それなりの範囲と密度を誇る。
名づけるならばそう――『クリスタルブリット』。

>>シエンタ・カムリ、キラー・テンタクラー、ショパン

1ヶ月前 No.981

スパルタの代名詞 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【大統領官邸/正門/フォッサ・セントライト】

「仲間? 金目のものに目が眩んで自分のやることほっぽり出すような人間を、あたしは仲間とは思えないねぇ。どういう小細工をしたのかは知らないが、あいつらはあたしの言うことをこれっぽっちも聞いてくれなかったよ」

何が起きたのかは大体察している。恐らく、エステルの能力だろう。ストラーヴですらも欲望の虜とし、籠絡してしまう悪魔のような能力によって、彼らは腑抜けへと変えられたのだ。
ああなってしまった以上、元に戻すことはもはや不可能であったし、苦渋の決断ではあったが、フォッサは彼らを切り捨てることにした。使えない部下に、情けを掛ける必要はないと。
エステルはそれを見て彼女を冷血女であると称したが、少なくとも最初に戻そうと試みているだけ、マシであるといえるだろう。中には、問答無用で殺しに掛かっていた者もいるはずである。
その直後に始まった行動は、はっきりいって見るに堪えないものであった。ストラーヴの唇を奪ったエステルは、まるで見せ付けるかのように、こちらへ視線を向けてくる。
なるほど、そういうことか。フォッサは何となくではあるが、二人の関係を察した。ストラーヴはきっとこれを、本当の愛であると感じているに違いない。
しかし、愛情表現の際に相手を見もせず、この場合は少し違うが、恋敵に相当する人物に知らしめることばかりを意識している人間の愛が、本物であるはずがない。

「もう気が済んだかい?」

冷めた表情で全てを見届けたフォッサは、エステルに指示されて突っ込んでくるストラーヴの方へ視線を向ける。悲しそうな瞳が、彼女の身躯へと突き刺さった。
こうなる前に、ストラーヴの求めているものに気付くことが出来なかったのは、隊長としてのミスだ。だから、この落とし前は必ず付ける。もう一度、彼女はこちらへ連れ戻すのだ。
邪魔をするな、そう言われても、邪魔をしない訳にはいかない。このまま、可愛い後輩を間違った方向に進ませることを許容するなど、フォッサに出来るはずがなかった。
一直線に向かってきたストラーヴが、紫電を射出する。だが、あまりにも単純な軌道であったがために、熟練の経験を持つフォッサにとっては楽に対処出来る代物であった。
上空に飛翔することで攻撃を回避した彼女は、そのまま丸見えとなったエステルに向けて氷の弾丸を二発撃ち込みつつ、眼下にいるストラーヴの姿を見やる。

「愛してくれる、か。確かに、上辺だけ見りゃそう見えるかも知れないねぇ。けど、あんたが求めてる愛ってのは"あんなもの"なのかい?」

着地すると同時に、ストラーヴの目を見て語り掛けるフォッサ。彼女が愛を欲していたことは以前から察していたし、今回の出来事でそれは明白なものとなった。
しかし、ここで一つの疑問が浮上する。ストラーヴが本当に求めている愛というのは、エステルがもたらすような、肉欲にまみれたものであるのか? というもの。
愛という言葉は曖昧だ。その種類は複数ある。恋人としての愛、家族としての愛、性的な愛。それらは全て異なるものであり、一つとして同じものは存在しない。
ここでストラーヴがその通りだと応えるのであれば、もうフォッサに為す術はないだろう。だが、彼女の中には、そんなはずはないという確信のようなものがあった。
本音を聞き出すためには、出来る限りストラーヴをエステルから遠ざけ、奴の干渉を避けなければならない。故にフォッサは、二人の間割り込むような位置で、背後の敵の動向に注意する。
この距離であれば、エステルも簡単には近付けない。たとえ接近を試みたとしても、彼女が自称する通り戦えないのであれば、簡単に抑え込める。勿論、ストラーヴがそれを手助けする可能性については、考慮する必要があるのだが。

>エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール、ストラーヴ

1ヶ月前 No.982

麗人 @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【大統領官邸/公邸/シフォン・ヴァンディール】

驚いた。ダン・マッケーニ・バビロンという存在には天井が無い。いや、無いというより己の気合いと根性一つでブチ破ってしまったのだろう。そこから差し込む光は彼を照らし、瞳に輝きの何たるかを刻み付ける。
その余りの魅力に誘われ、翼を広げて空へ飛び立つ。彼ではなくレオンハルトが。口頭でこそ英雄だのヒカリだのと煽てているが、腹の底はドス黒い。底が見えない。覗き込めばいざなわれる。
結局のところ彼が仕立て上げる英雄とは鉄砲玉に過ぎないのだ。一度飛び出せば二度と戻らない。しかしその短い余生で輝かしい成果をあげる。バビロンが切望するのはこの刹那一点。
どれだけ猛々しく抗い抜いてみせたところで、所詮は魔王の手のひらで踊らされているだけの操り人形。傀儡。得た力で成す全てが彼の思う壺であり、邪悪な欲求を満たす手伝いをしているに過ぎない。
ああ、このような卑小な存在を何故英雄と呼べるのだろうか。怒り、憎み、必ず討ち取ると誓った敵に奉仕する形で一生を終えるなど、笑い者もいいところだ。
なおのこと今のレオンハルトを英雄と呼ぶわけにはいかない。信条に据えた行動理念を忘却し、敵の玩具と化した愚かな狂戦士。哀れ熾炎獅子。今や矜持すら失われ、外見だけが逞しい身体は、暗黒の鎖によってがんじがらめにされてしまった。
禍々しいまでの赤髪も、ヒトの域を逸脱しようとする身体も、それに恥じないだけの圧倒的な力も、何もかもがシフォンの心を曇らせる。もう、後戻りはできないのだろうか。

状況は更に悪い方へ転ぶ。レオンハルトの万物を塵へ還す超新星爆発も、シフォンの進化に進化を重ねた風雷破も、バビロンの"底の知れなさ"という一事に掻き消される。
代わりに迫り来るは目を焼き切られそうなまでに神々しいイカズチ。神が振り下ろした裁きの神剣なのだと聞かされれば信じてしまいかねない。
これに打たれれば人の脆弱な身体など消し炭になるのが関の山。まだ水蒸気爆発を10発受けたほうがマシな程だ。

しかし策はある。向こうが覚醒と進化を以て逆境を跳ね返すのなら、こちらも条件は同じだ。幸い魔力はまだまだ尽きてなどいない。喰らいついてやろう。抗い抜いてやろう。
当然お前のような外道の舌を唸らせるためではない。愛する者のため、共に帰るべき場所へ帰るため。

「アイスエイジシールド…ツヴァイッッッ!」

空中で体勢を立て直し、水と氷の属性エネルギーを込めた拳を振りかざす。着地と同時に地面に拳を、いや宿した力の全てを叩きこむ。展開される氷壁は巨大かつ重厚、かつ頭上も強固に覆っている。
間髪入れずその表面を水流が覆っていき、降り注ぐ白雷をヒビ一つ生じることなく受け止めた。通常の防御技ならひとたまりもない大出力の電撃。しかしこの氷河期の名を冠する守りにはもう一工夫加えられている。
それは水流による受け流しの作用。氷壁という"剛"が威力を削ぎ落し、水流という"柔"が、それ以上のせめぎ合いを無粋だと言わんばかりに受け流してしまう。
"剛能く柔能く剛を制す"とでも言うべき『アイスエイジシールド・Zwei』。魔帝城での戦いにてシフォンを救った『アイスエイジシールド』が、進化には進化で対抗だと言わんばかりに脅威を阻む。

…が、その間全くレオンハルトの方には注意を向けられていなかった。振り向けば一面を塗り潰す白、白、白―――存在するのは三人のみ。しかしレオンハルトの瞳には自分の姿など映ってはおらず、見据えるはバビロンの朱に染まる魔眼ただ一つ。
シフォンは相手の異能の何たるかを知ってはいない。能力を引き上げる部分に関しては推測の域を出ないし、たがを外してしまう効果など想像もつかないからだ。
しかし、レオンハルトが今や守るべき味方に非ず、止めるべき危険な存在であることは心得ていた。身体強化を継続させ、ひた走る。風を纏い、暗天に稲妻を煌かせて。
その手に握られるのは虹色の長剣。否、虹の属性エネルギーが刃を模って形成されたもの。これを両手で構え、地を蹴り、飛翔の後に振りかぶる。
バビロンの背後から、なんとレオンハルトまでもをリーチに収めて。二人纏めてたたっ斬るつもりだ。

驚くことなかれ。これがシフォンに出来る最後の信頼であり、友情であり、愛なのだから。これ以上レオンハルトを戦わせるわけにはいかない。しかし彼には、自分の言葉も行動も届かない。心に触れることが出来ない。
ならば最後に残された手段は攻撃。例えバビロンを倒すことが出来なくとも、レオンハルトは必ず戦闘不能に追い込まなければならない。
ハリボテの英雄になどならなくていい。己を滅ぼす力に何の意味があろうか。今ならまだ引き返せる。善人だった彼に戻すことが出来る。

「お前のやっていることは…"あの子"を裏切るも同然なんだッ!」

常日頃から崩すことのなかった口調すらも忘れ、振りかぶった光刃を振り下ろす。それだけシフォンは本気で彼の身を案じているのだ。脳裏に浮かぶのは、あの純粋な魔族の少女。凄惨な戦いにも心を蝕まれることなく、レオンハルトが住む世界を見てみたいと懇願したときの、曇りなき水晶のような眼(まなこ)。

自分はいい。もう何年もの付き合いで慣れている。だがあの子まで、たった数分でも肩を並べて戦って、その短い時間の中でお前の人柄に惹かれたあの子まで裏切るんじゃない。

>>ダン・マッケーニ・バビロン、レオンハルト・ローゼンクランツ


【レオンハルト本体様に許可を頂いた?フレンドリーファイアになります】

1ヶ月前 No.983

一番隊隊長 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/訓練施設/ギルバート・トムフール】

今の状況を端的に示すならば、時代の転換期、ともいうべきだろうか。大統領暗殺に始まった一連の騒動。リヒトルザーンはじめ、全世界の都市機能が混乱に陥っている。
何せ、世界のトップに立っていた人物が討たれたのだ。民衆の衝撃は、並大抵のものではない。特に貧困層においては、今までの鬱憤を晴らすかの如く、暴動を起こす者さえいる。
二番隊隊長のフォッサらスラム街出身の人物にとっては、辛い瞬間だろう。特に大きな暴動が起きているあの地域を、いずれ制圧しにいかなければならないかも知れない。
だが、今はそれよりも、時空防衛連盟及び大統領官邸で起きている事象の解決が優先だ。既に歴史是正機構の面々は行動を開始しており、各地で猛威を振るっている。
本部内にも多くの敵が侵入している状況。官邸へ向かう戦力と防衛戦力を分散しなければならない瞬間を狙ってくるとは、敵の指揮官も相当なやり手のようである。

「ゲートは封鎖しても突破される。そのために使う時間を防衛準備に回せ! 侵入は阻止出来ん、確実に迎え撃つことに集中しろ!」

敵のハッキングによって、時空防衛連盟の防衛システムは機能しなくなっている。ならば、それを復旧するよりも、敵を撃破することに全力を尽くすべきだろう。
ギルバートは部下に早々にゲート封鎖を諦めさせ、余った時間を防衛の準備に回させる。こうすることで、敵が攻め込んでくるまでに体制を整えることが出来る計算だ。
予想以上に相手の行動が早かったこともあり、既に奥深くまで攻め込まれてしまっているが、起きてしまったことはもうどうしようもない。あとは、如何に状況を挽回するかを考えるのみである。

「お前は……一般人ではないようだな」

訓練施設に入った時に見えた人影。ギルバートは部下を通路に待機させ、一人それを追う。中に入ってみるとそこには、明らかに挙動不審な動きをする一人の少女がいた。
その手に握られているものが何であるのかを、彼は直感的に悟る。恐らく、何らかの兵器だ。もしかすると彼女は、それを起動することを躊躇っているのだろうか?
先にこの場にいた仲間が、少女、ルーシャに語り掛ける。ギルバートもそれに合わせ、先制攻撃はしない。無駄な戦闘を回避出来るのであれば、それに越したことはないからだ。

>ルーシャ・コバルト、17代目葛葉ライドウ
【ライドウ本体様の描写にあわせ、こちらも攻撃行動はしない形にしています】

1ヶ月前 No.984

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【大統領官邸/庭園/クズノハ】


困った、私が正気だと言っても信用ならないのであればこの想いが本当であることをどうやって伝えればいいのだろう。私はただ女性を助けたいだけだ、その思考の中途に幾らかの浅ましい思惑があれどその心は本物だ。
殺しに来ていようが構わない、何かあってからでは遅いのだ。私が傷つくのは一向に構わない、この身体を大事にする理由は呪いを漏らさないためだけでしかないのだ。そうでなければ私の命に重さはない、比べるべくもないのだ。
だがそれ以外の、特に人間の命であれば脅威に晒されることすら心苦しい。もし、傷付けば私は自身を恨み続ける。もし、死んでしまえば私はその人間を片時も忘れずにいられなくなってしまうだろう。その想いをしたくない、人間を死なせたくないから私は女性を守りたい。
しかしこの想いは女性に届いていない、現に何らかの詠唱を始めてしまっている。だが私には彼女に差し伸ばす手はあっても手を上げてしまうような腕は持ち合わせていない、どうにかして敵ではないと、怖れを抱く必要はないと伝えなければ。

「大丈夫ですよ、信用して欲しいなど……思いはしますが仕方がない事です。ですが私はただあなたを守りたいだけです、怖れる必要はないですよ。」

歩みは止めない、止めてしまえば今まで吐いた言葉が嘘になってしまう。どれだけ怖れられようとも、理解されなくとも、助けられればいい、それを証明するには行動でしか不可能だ。いつか思いは届くと、そう信じている。
動機が不純だと、そう勘付かれてしまったのだろうか。確かに私の想いは純粋に助けたい、その言葉が綺麗すぎるほど浅ましく愚かなものだろう。ただ光の一部になって、照らしたつもりになりたい。あの少女のように水晶の様な透明な想いは私にはないのだ。
助けたい、その想いの根本すら知らない私の想いが不誠実だと言われてしまえば何も言い返せない。その気持ちに至る理由を知らず、ただ助けたいなど確かに頭がおかしいと思われるかもしれない。もしかしたら女性はそこまで見抜いていたのかもしれない。
それでも、私は助けたい。理解されなくても良い、私だって自分の想いを理解できていない。ただ、見つめた光が眩しすぎて、自分もそうなれたらと願っているだけ。だから嘘は吐けない、退けば全て嘘になってしまうから。
詠唱の終わりと共に出でるは先とは籠る力が全く異なる銃、奇跡だとか、そんな言葉が相応しいような神秘性すら感じるもの。そして私にはそれがどれだけの威力を秘めているのかを察するだけの本能が備わっていたようだ、飛び退きそうになる脚を固定する。
潰す、その言葉と共に銃口から吐き出される黒鉄の暴虐。私はそれでも前に進もうとする、しかしその前に視界は下へと移った。同時に感じたのは喪失感、地に伏せた事に気が付いたのは少し後であった。
私の身体には既に感触が残っていない、痛みも感じない。だから、何が起きたのか理解するのに時間がかかった。僅かに這いずることはできるが立てはしない、きっと膝から先が吹き飛んでしまったのだろう。
ふと振り返れば、私の膝より先についていたものは横倒しになっていた。でも私が気になったのはそこではなかった、その足と、膝よりから漏れ出た黒い液体。本来であれば赤い血が湧き出るはずのそれは、黒く淀んだ粘性の物であった。

「えっ、えっ。これ、は―――」

訳が分からなかった、進まねば助けたい意志が嘘になってしまうと言うのに。それを見てしまった私は動けなかった、内に秘めているとは確かに知っていた。だがこうも言葉の通りだとは思えなかった、それならばまるでこの身体の内は全て―――。
理解できた、理解してしまった。戻らぬ記憶の理由を、この身体の理由を、私が何なのかを、あれを見て思い出した。そういう事かと、こんな滑稽な存在であったかと。それならば納得だ、確かに効率は良い、要らぬものを袋に詰めて捨てるだけなのだから。
記憶がないはずだ、これまで歩んできたものなどない、ただ創られたものだから。残っていた記憶、記録に近いそれはあれの残留思念だろう。強き思いが呪いにまで染みついていただけの事、思い出せた武術も強く浸み込んだものが浮いて出たに過ぎない。
身体が何も感じないはずだ、ただ不要物を詰めて放るだけのものに要らぬ機能をつける訳がない。必要な機能だけつけて、自浄作用に期待する。例え袋が破けても要らぬものゆえ困ることはない、姿を真似たのは呪いがそうさせたに過ぎなかったのだろう。
私は何か、簡単な事だ。この姿をした存在が、呪いを切り離すために作り上げた呪い袋。人を呪わねばならぬものに救済の意識を持たせて、自身が為せなかったことをやらせようなど。見れば滑稽だったでしょう、生者を殺す存在が助けないなどと。

「―――――」

呆然と、失った脚と地に溜まった黒い呪いを見て動けなかった。唐突に全てを失った感覚を私は抱いている、もしこうなることが計算の上であれば私を創った存在は性根が腐りきっているだろう。
どうすればいいかなど分からなかった、抱いたものが全て他者によって作られたものだと気付けばそうもなるだろう。助けたい?その想いはこの呪いの主の残留思念が元だ、私の想いなんかではない。
光になどなれるわけがない、地に触れた呪いを見れば分かるだろう。庭園の植物を枯らし、土すら腐らせる。時間が経てばこの身から漏れ出た呪いはこの地を殺すだろう、生物が忌み嫌う死の土地へと変貌させる。
そんな厄物が人を救えるはずがないだろう、ましてや人を照らすことなど出来るはずがない。沸々と沸き上がる呪い、負の感情を抱けば抱くほど活性化するのは知っているとも。だからそれがどうした、人を呪うしか出来ない呪い袋には妥当だろう。
この感情に呼応して黒い液体は槍を形作る、触れただけで生者を殺すに足りるそれが武器の形状を取る必要はない。だが明確に武器の形状を取れば攻撃の予兆にはなろう、女性を巻き込んで殺すことはしたくなかった。
避けて欲しい、今更であるが逃げて欲しい。もう私は助けられない、助けていい存在ではないと知ってしまった。むしろ命を脅かす立場になってしまった、全てが嘘であると分かっても、目の前の人間は死んでほしくないとそう思った。
泥の様な黒き槍が女性へと向かう、抑えの利かない悪感情の具現化であるそれ。止められない、女性が傷ついて欲しくないと思うがそれだけだ。もう、どうでもいいのだ。私には、何もない。
呪いが、恨むことならば誰を恨めばいい。八つ当たりでもすればいいのだろうか、私には分からない。私は、どうすればいい。私は、私、その言葉すら酷くあやふやになってしまった。

>>リアーナ=レッセント

1ヶ月前 No.985

世間知らず @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【歴史是正機構本部/大型エレベーター/クラリス・ツァクトユーリ】

なんだかよく分からないが、取り敢えず大統領が死んだそうだ。そのお陰で、世間は大混乱なのだとか。まあ、いずれにせよ興味がない話だし、どうでもいいのだが。
クラリスが今立っているのは、歴史是正機構本部の大型エレベーター前。つまり彼女は、構成員達が作戦のために出張らっている間、ここを護ることを任された。
世界政府にも巨額の資金援助を行っているツァクトユーリ財閥の一人娘が何故こんなところにいるのか、という疑問も湧いてくるだろうが、これを選んだのはクラリス本人だ。
常日頃から親の後を継ぐことを期待されてきた彼女は、家に帰ってからもほとんどの時間を帝王学の勉強のために割かれ、自由な時間を満足に得ることが出来ずにいた。
周囲の友人達と遊ぶことも出来ず、敷かれたレールの上を走ることを強制される毎日。そんな中で、クラリスが自由を求めるようになるのは、当然の成り行きであったのだろう。
高校卒業と同時に家を飛び出した彼女は、巷で噂となっていた歴史是正機構の門を叩いた。何故時空防衛連盟でなかったのかと言われればそれは……単なる当てつけでしかない。
親の邪魔になる方につくことで、鬱憤を晴らそうとしたのだろう。だが、それを果たすよりも早く、むしろ親が命の危機に瀕するような状況となってしまっているのだが。

「てか、歴史是正機構ってマジ卍じゃね? 今時こんなの流行んないっての」

暇な防衛任務に明け暮れながらクラリスが指摘したのは、歴史是正機構という組織の本質であった。過去を改変し、人類を高みに導くことが目標らしいが、笑えてくる。
そんな中学生の妄想みたいなことに本気になっている人間がここに集まっているというのだから、可笑しくて仕方がなかった。こんなことをして飯が食えるなんて、大層幸せだろう。
下らない妄想に付き合うつもりはないが、まあ敵が来たら適当にあしらっておくとしよう。割とミスして怒られるのは困るし、面倒だからやるべきことはやる。
一人で何かを成し遂げられることを証明さえすれば、親も認めてくれるはずなのだ。そして、自分は本当の自由を得る。好きなように生きることの出来る権利を―――

>ALL
【防衛側も配置していきます】

1ヶ月前 No.986

リインカーネーション @genomirai ★5PyZcP0Vz3_sYF

【時空防衛連盟/武器庫/ザーシャ】


「ん、愉快犯って訳じゃなさそうでなにより。序でに喋る獲物は苦手ですってか、仕事なら選り好みするもんじゃねえぞ?」

若い声の癖して一丁前に皮肉を言ってきやがる、なーにが口数も少ない方がいいだ。んなもん喋りに乗ってこねえほど執心してるやつを除けば、いることがばれてて声を無視しねえ奴はいねえからだ。後、話が通じるかの確認だな。魔族にはそう言うのもいる。
それはそれとして素直な奴だな、適当にはぐらかすなり煽るなりしてくると思っていた。これじゃあ煽りに行った俺が馬鹿みてえじゃねえか、しかもガキ相手に。見られてりゃあ恥ずかしいことこの上ねえな、その心配はねえんだけどよ。
んで、俺が態々話しかけた理由だったな。情報をポロっと零さねえか、なんて阿呆みたいな理由じゃねえ。いや、考えようによっては阿呆だな。一つは戦意の確認、もう一つは意志を持っているかの確認、まあ相手が化け物ならここの死体の仲間入りしてもおかしくねえほどだ。
戦意の有無は、まあなんていうんだろうな。俺……とは違えけどそうなるべく作られた奴とかがいるからな、意思を奪う方法もあるが命令を与えることに限って言えばあったほうがいい。つまり、戦いたくないが身体が勝手に動く奴かどうかの確認。
意思の有無は、殺すつもりで殺したかだな。実験によっちゃあ殺すことの意味を理解できねえ奴も多い、本人は遊んでいるつもりだなんてよくある話だ。だからこの状況を故意的に作り出したかどうかの確認、甘いよなあ?俺だってそう思う。
ま、おかげでこのガキは自分の意志で殺すつもりでやってることが分かった訳だ。反省の余地はどうだか知らねえが痛めつけることは絶対に変えられねえな、最低でもここで死んだ奴らの墓の前でごめんなさいは決定だ。

「お、素直じゃねえか。素直なのは嫌いじゃね―――あ?んー、目が良いなガキ。」

参ったなこりゃ、魔族と間違われることも、化け物に見られることも多かったが『作った』だなんて断言する奴は大人でもいやしねえ。むしろ子供だから分かったのか、それともこのガキが特別だったのか。
しっかしよく見りゃ見るほどガキだな、見慣れねえ衣装も相まって幼さ倍増ってか。奇妙な青白い壁なんざ良く分かんねえ能力、ぱっと見で分かるほどじゃあねえが。まあ、あの糞親のおかげで何度か見れば予測は着くだろうよ。
このガキに言わせてみれば作った野郎だ、そして人間ですらねえ。まあそのせいで俺も人間じゃなくなってるがそれは置いておく、人智を超えた知識は気に入らねえが役立ってやがる。少なくとも、生きてきて千は世話になってるな。
まあ、殺す気の相手がお話しなんざ長くするわけもなく、揺らめく手元を見逃しはしねえ。指先から出るのは……糸か?いや風の乱れは手の動きだけだ、つまりは非実体。魔力で編んだかは知らねえが、面で攻めてこなきゃ避け様はいくらでもある。
だが指からってところが面倒だ、前に出りゃ間隔は狭まる、下がりゃ操作で逃げ場を潰される。適度な距離を保って、力場で逸らす。物体だろうが非物体だろうが構わず逸らせる、だから強引に攻めてやろうと思ったんだがな。
後退しながら突き出された右腕は壁を作りやがる、前進を誘って糸でばっさりのつもりだろうよ。良い作戦だ、ガキにしちゃあ上出来だ。だからこそこれだけ殺せたんだろうよ、まあ俺が相手なのが残念だったなってこった。

「構わねえだろうが教えてやる、察しの通り"作られた"んだよ俺は。ガキ、お前もそうってことだろうよ。じゃなきゃ聞かねえもんなあ!」

風の魔術で垂直に飛び上がり、壁を飛び越える。そのまま下がるガキ目掛けて突撃する。風で突っ込めば迎撃の暇は与えねえ、確かに待ちの形を作り上げりゃあ有利に進められるだろうが、それをさせる訳がねえだろうよ。
能力はまあ青白い何かを作り出して、それなりに応用が利くところまでは理解した。後は性質を見極めて裏を取ってくしかねえ、大体の能力には性質ってもんがあるからなあ。魔法が属性に影響を受ける事と同じだ。
突っ込んで何をするかっと言われれば大曲剣で斬りかかる、風の魔術を付与する必要はねえ。人間の腕位なら問題なく切れるからな、狙いは右腕。突き出してるんだから狙わせてもらう、肩口辺りからすっぱり行くつもりだ。
だがこれで終わりじゃねえ、ガキの背後から真空波を飛ばして両足を狙う。両断、とまでは行かねえが筋肉の負傷は身軽そうなこいつにとって相当きついはずだ。ついでにこれで感知範囲の見極めにもなる、死角からの攻撃に対応出来るんなら少し骨が折れる。
避けなきゃ四肢の内三つを頂く、そう決めたからな。だがあの壁が突然現れたことから防御にも転用されると少し厄介だ、瞬間的に防御できるってのは攻撃を防ぐうえでかなり有用だ。相手の反応を見てから防御できるんだからな、まあそこは心の読み合い、糞親の得意分野だ。
だからしばらくは行動の観察と反応の限界を見定めることに力を注ぐ、その間に負傷させれば要らねえ心配になるけどな。何れにしても、生きて謝らせてやるよ。俺と同じかもしれねえってなら尚更、真っ当な生まれじゃなかろうと真っ当な生き方くらいしてもいいだろう。
ま、俺が真っ当かどうかは他から見たら知らねえよ。だがあの人に認められた、それだけで俺にとっちゃあ何にも代え難い唯一の人生だ。このガキもそう言ったものがあればいいんだけどなあ、見る限りは望みは薄い。
教えてやれる義理じゃねえが、気付かせることぐらいはしてやりてえ。なんて、お節介だしそんな資格もねえ。ただ、ガキならガキらしく遊んでもいいんじゃねえかとは思うから、しっかり遊んでやるよ。終わったら、ごめんなさいも忘れずになあ。

>>アリア=イヴァンヒルト

1ヶ月前 No.987

欲望と魔性の女 @hal0406 ★Android=FuD56rsS9O

【大統領官邸/正門/エステランディア・フラムフラッド・エル・セルク・オディール】

エステルと言う女にとって、"私"以外のものは基本二の次だ。それでいて、何もかもを欲しがるのだから始末に負えない。例えば情愛を、例えば快楽を、例えば人生を。何を得てもただの一度も満足しない。何をやっても直ぐに飽いて、彼女は次の玩具を手に取る。そう……例えば己を本気で求める者に対しても、それは、何ら変わり無い。

対峙するフォッサはエステルへの嫌悪感を隠さない。口も聞きたくないとでも言わんばかりの態度を露にする。それを見ても尚、魔女はにやついた笑みを浮かべ続けている。それは『貴女に何が出来る』とでも言わんばかりの眼差しだった。
ストラーヴの直線的な雷撃をかわしつつ、挨拶だとでも言うかの様にフォッサが冷気を纏う二発の弾丸を魔女へと撃ち込む。魔女はそれを容易く避ける。フォッサが本気で仕留めるつもりで無かったとは言え、魔女の反応速度は常人のそれを遥かに上回っていた。
着地したフォッサはストラーヴに語り掛ける。"彼女は果たして何を求めていたか"――欲に溺れた少女の真実を、迷いない眼差しで暴く。

ストラーヴと位置を入れ換える様に、フォッサが二人の間に割り込む。それを自分が狙われたものだと思った魔女は顔を強張らせ僅かに後退りするが、何の事はない――ただストラーヴを引き剥がそうとしただけだ、と直ぐに余裕の表情を取り戻す。

「頑張って、ストラーヴ! 負けちゃ駄目よー!」

心底楽しそうに魔女は自らに全てを捧げようとする少女を応援する。魔女は"自分は何もせず、ただ傷付けあう二人を見ているだけ"と言う優越感に満たされている。

――魔女エステルは浮かれている。"私が負ける理由(ワケ)がない"と図に乗っている。何故ならば、完膚無きまでに少女を肉欲の沼へ沈めたと自負しているからだ。"私無しではストラーヴはいられない"と確信しているからだ。

……それが、致命的な慢心だとも知らずに。

>>ストラーヴ、フォッサ

1ヶ月前 No.988

大災厄の残痕 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/キラー・テンタクラー】

「ちぃっ、私の攻撃を防ぐとは、それなりにはやる」

キラーが投擲した渾身の一撃である、デススパイラルグレネイド、本来ならば、ほとんどの敵を粉砕する絶対的な破壊の前に、相手の片方は防御に専念して、何とかこちらの攻撃を防ぐことに成功した。
同時に、これはあの男のほう単独でやった事で、女のほうは攻撃に専念できるチャンスを得たという事だ、二人係で止められたのならばまだしも、こういう形になったのならば、流石のキラーも相手をある程度までは認めざるを得ない。 と、言った直後に、ようやくシエンタが言っていた言葉が頭に入ってきた。

……あの男のほうは友人だから攻撃をやめろ、だと?
攻撃しているのはお前もだろうが、何よりも、今まで顔を見ても気づかなかったような奴が友人? まったく持って理解できない、このキラー・テンタクラーは、たとえばお前との和解手段を教えてくれたフォルトゥナにもあまり会った事は無いが、名前と顔は何時までも覚えていると言うのに。

そして何よりも、相手の立場が問題だ、相手の言葉自体はなんとも言える物ではないが、奴らがその言葉を発する連盟と言う土台が。

「シエンタ、お前にとって友人とは、"敵対者"を指す物だったのか? 奴らは連盟だ、二人仲良く投降して牢獄にぶち込まれるのがお望みか、顔だけで識別できない友人との友情とやらを優先して。 お前は生き残れるだろうが、私はごめんだねッ! 消されるなど考えたくも無い」

キラー・テンタクラーとは、元を辿れば世界を混乱に陥れたが、既に駆除されたコンピューターウィルスの末裔のようなものである。
彼は今まで、駆除される恐怖を感じながら生きてきて、ようやくシエンタと言う安息の地を手に入れ、是正機構という後ろ盾まで持てたと言うのに、こんな所でシエンタの我侭に付き合って消去される訳にはいかなかった。 "最初"に数十人は殺して、自分はこの自由を手に入れた、もう一度やるぐらい簡単な事なのだ。

……彼は臆病である、その性格故に、自分にとって概ね安全な者とは好んで友好関係を結び、敬うが、少しでも自分の削除に繋がるような相手には殺意と敵意を見せる、そういう存在だ。

だから、突然友人になるだとか、そんな事を言い始めるマシュマロも「嫌悪」と「敵意」と、そして何より「恐怖」の対象であり。

「煩い下等生物風情! 人間同士で仲良しこよし、大いに結構。 だがその過程に私の削除が含まれている以上、貴様の幻想はぶち壊してやる!!」

クリスタルバレットに対して、キラーはフレイムと叫んで、ドローンを火炎放射器に変形させて手に持ち、そこから大量の火炎を吐き出す事で対抗する。
これならば効率よく相殺できる上に、熱などは相殺しきれず、敵にもある程度の損害を与える事も出来るだろう。

しかし、その中で、一発だけがキラーの腹部に直撃して、そのクリスタルの体に傷をつけた。

――メガ・レーザークリスタル!!

その叫びにあわせて、ドローンは一つの巨大なクリスタルへと変形して、無数の赤い砲門を形成する。

「私の光線結界の中でくたばれ!!」

そしてキラー自身は、両手に拳銃を形成して、そこから銃弾を何発か放つ、しかしその中身は、鏡だ。
鏡が敵陣に幾つか撒き散らされたのを確認すると、メガクリスタルが赤いレーザーを無数の砲門から一斉発射する。

それらのほとんどは普通に相手を焼き払おうと直線的に発射されるが、一部は鏡に何度も何度も反射して、不規則な動きを持って敵の背後や頭上から迫っていた。

>シエンタ・カムリ ショパン マシュマロ・ヴァンディール


【見た目が一番ゴツい奴が一番怖がっていると言うギャップ】

1ヶ月前 No.989

ブリッツガール @sable ★8O0rjcH5GN_8gk

【時空防衛連盟本部→大統領官邸/食堂→シチュエーションルーム/アルカディア・クアドリフォリオ】

ショルダーハーネスを握り締めて走るその姿、ランドセル背中に帰路を急ぐ小学生。だが変な妄想はやめておいたほうがいい。彼女が背負っているのは双銃、それも砲台と呼んで差し支えない兵器なのだから。
アルカディア・クアドリフォリオ…ユーフォリア及びヴァイスハイト・インテグラーレの従姉妹にあたる少女で、溢れんばかりの探求心を胸に連盟へやってきた。
目的はユーフォリアの父の身に起きた悲劇の真相を知ることと、フォルトゥナ・インテグラーレに会うこと。好奇心が、探求心が、そして正義感が彼女を衝き動かす。
本当はユーフォリアの言いつけ通り、避難してきた市民と共に食堂で待っていなくてはいけなかったのだが…今アルカディアがやっていることは真逆も真逆、正反対もいいところだ。
食堂を飛び出し、連盟を後にし、工廠から専用武器の試作品を半ば強引に受け取って姉の後を追う。初陣どころか武器を使うのも初めてだというのに、死屍累々の戦地に飛び込む様からは計画性のカケラも感じられない。

「うわっ、凄いことになっている…見てられないよ」

『小娘!そこを動くな!』

大統領官邸まであと少しというところで、道端に折り重なる死体を目にしたアルカディアの足が止まる。爆撃や銃撃によって惨殺されたと思わしき人々は、皆苦悶の表情を顔に張り付かせて息絶えていた。
時が止まっているのに慟哭の声が聞こえてくるようで、顔を背けてノロノロと歩き出す。正常な人間としてはこれが正しい反応なのだが、こと死地に於いては余計な逡巡でしかなかった。
背後から響く警告の一声。近づく足音。歴史是正機構の兵士に見つかってしまったのだ。ビクリと震える肩、首筋に伝う冷や汗。しかし彼女は無抵抗に運命を受け入れたりなどしない。
背中から降ろして構えるは、試作品とはいえ十分な完成度を誇る双銃。ユーフォリア特注の『リボルバースト』だ。サメの如き鋭利な形状に、赤と黒を基調とした虎柄のペイント。砲口の付け根の部分には荒々しくも小粋なシャークマウスが描かれ、威圧感すら感じさせる出で立ちに仕上がっている。
しかし致命的なことに使い方がわからない。もうすぐそこまで敵が迫っているというのに…焦るアルカディアだが、ちゃんと"その辺"もユーフォリアは考えてくれていた。

『発射シークエンスをお伝えします。銃を胸の前で構えてくださいな』

「えっ、はい!」

『魔力を込めて、両足に力を入れてください』

「これで…いいのかな」

『砲撃用意! てぇーッ!』

「て、てぇーっ!」

銃の後部に取り付けられていた小さな端末から、取り扱いを簡潔に伝えるアナウンスが聞こえてくる。声の主は始めこそ淑やかで上品な口調だったが、二言目にはトーンが下がり、最後はまるで軍人のようなドスの聞いた怒号に変わった。
内心ビビりながらも言われた通りに進め、アナウンスと一緒に叫ぶ。突如として響き渡る爆音、視界を奪う閃光。華奢な身体を衝撃が襲う。
攻撃が間に合わずやられてしまったのかと思ったが、少し転がされただけで傷はないこと、そして胴体に大穴を開けられて転がっている敵の姿が、彼女に勝利と無事を確信させる。
後味は悪いがピンチを凌ぐことが出来た。武器の使い方もわかったし、この派手さと攻撃力はなかなか悪くない。少し自信をつけると、アルカディアは急ぎ足で大統領官邸に踏み入るのだった。



官邸内は外よりも遥かに凄惨極まる状況で、政治家と思わしき人々ばかりが殺されていた。込みあがる吐き気、暫しエントランスにうめき声と咳き込む音が響く。
フラフラとした足取りで内部を探索するうちに…見つけた。ダグラスと一緒にいるユーフォリア。すぐに駆け寄ろうとするも、どうやら二人は何者かに襲われているらしい。
敵対者の姿は属性弾の着弾による黒煙で見えないが、おおよその位置は掴める。再び銃を胸の前で構え―――

『魔力を込めて、両足に』

「わかってるよ!

砲撃用意!てぇーっ!」

一度失敗していることもあり、威力をやや調整してからぶっ放す。放たれた魔力の塊は特に属性を持たず、真っ白な見た目をしていたが、仮にもアルカディアに宿る膨大な魔力の結晶。速度も破壊力も相当なモノである。
そう。この双銃『リボルバースト』は、まだ魔術に精通していない彼女の戦闘力を、簡単な工程で一線級に引き上げる代物。属性魔法に変換できない魔力をそのまま込めて放つだけでいい。

ブリッツガール、ここに爆誕。撃った相手が誰なのかも知らずに。

>>ユーフォリア・インテグラーレ、フォルトゥナ・インテグラーレ、ダグラス・マクファーデン、(ヴァイスハイト・インテグラーレ)

1ヶ月前 No.990

血に飢えた玉兎 @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/食堂/雪葉】

時空防衛連盟本部への侵入は簡単だった。既に先行した部隊がここのセキュリティシステムをハッキングしていたらしく、エントランスの警備はないも同然であった。
無論、雪葉にとってはたとえ厳重な警備が敷かれていようと関係はないのだが。多くの人が行き交い、混乱状態に陥っている本部内で、たった一人を意識的に見るような人物は誰一人としていない。
彼女はその"死角"へ的確に入り込む。気配を消し、内部へ。誰も雪葉に気付かない、気付けない。まるで最初からそこには誰もいないかのように行動する他の者達を見て、彼女はほくそ笑む。
そうだ、見破れるはずがない。いくら探したところで、自分に触れられるはずがないのだ。そのまま物陰から数人の戦闘員を"暇潰し"に撃ち殺した雪葉は、次なる目的地へ移動を開始する。

やって来たのは、食堂。そこには、多くの民間人が避難してきていた。付近には、警護にあたっている時空防衛連盟の戦闘員や、料理を提供しているシェフの姿も見受けられる。
なるほど、ここならば安全と踏んだのだろう。確かに、その通りかも知れない。よほどのことがない限り、ここが攻め落とされることはないし、彼らは民衆の支持も受けている。
避難先として、これ以上の場所はないだろう。だが、それも間もなく地獄へと変えられる。未だ、雪葉の侵入を察知した者はいない。気配を消した上で物陰に潜んでいるのだから、当然のことだ。

刹那、銃弾が戦闘員へ向けて放たれた。短い叫び声と共に倒れ伏す戦闘員。周囲に緊張が走る。慌てて別の場所へ民間人を移そうと彼らが動き始めるが、もう遅い。
予め雪葉が仕掛けておいた罠によって、食堂の一角が大爆発を起こした。決して、ガス漏れなどではない。明らかに、何らかの能力によってもたらされた爆発だ。
煙が晴れ上がった後に広がっていたのは、凄惨な光景。安全を信じて避難してきた人々は、見るも無残な姿に変わり果てて折り重なっており、運良く生き残れた者も呻き声を上げて苦しんでいる。

「残念でしたねー。でも、私はずっと前からここにいたんですよ? それなのに気付けない方が悪いと思いません?」

声だけが聞こえる。気配を消したままの雪葉がどこにいるのかは、未だに誰にも分からない。姿の見えない敵に襲われる恐怖に、とうとう発狂しだす者も現れる始末だ。
そうなるとうるさいだけなので、銃弾を頭に撃ち込んで始末しておく。余計に恐怖が広がるが、こうやって他人が怯えている様を観察するのは、実に楽しいものだ。
仮に一度でも雪葉を視界の中に入れることが出来れば、応戦も可能となるだろう。彼女が操ることが出来るのは気配のみであり、自分を実際に透明化するなどといった芸当は出来ない。
しかし、彼女は丁度民間人や戦闘員から死角となる位置にいるため、彼らが発見することは困難を極める。勿論、背後から別の人物が近付くなどすれば、話は別なのだが。

>ALL

1ヶ月前 No.991

中二病でも人付き合いが分からない @infernus☆XQ6phrzcKMtR ★F7MrHN45jw_cjE

【時空防衛連盟本部/通路/シエンタ・カムリ】

昨今、急速に発達しているインターネットの世界。未来世界においては自然と人々の生活に溶け込んでいるということもあり、そちらでの友人を複数持っている者も珍しくはない。
シエンタはその筆頭であり、彼女は極限まで比率をネットに振っている人間だ。リアルに友人と呼べる存在はキラーを除いてはいないが、ネットには数十人、数百人、数千人という人数の知り合いがいる。
彼女にしてみれば、それが最高の温もりであったのだろう。どれだけ孤独であっても、ネットで彼らと話している間は、充実感を味わえた。幸福感を味わえた。
だからこそ、シエンタは激しく動揺している。全く無関係の有象無象を傷付けることに躊躇いはなかった。何故なら、そいつらは彼女にとって価値の無いものだから。
しかし、ショパンは違う。彼と実際に顔を合わせるのはこれが初めてだが、ネットの世界においてはオンラインゲームにて、出会う度に協力し合うような仲。
まかり間違ってここでショパンを殺してしまえば、二度と一緒にゲームをすることも出来ないのだ。そんなこと、友人を自らの手で葬るなど、シエンタには不可能だった。

「君はコンピュータウイルスのくせにSNSも分からないのかい!? ネット世界での友人は顔を知らないのが普通だ!」

キラーが自分の命令に従わなかったことに激高し、語気を強めるシエンタ。ネット世界で無闇に顔を晒すのは危険極まりない行動。それに、身バレの可能性も高まってしまう。
ネットに精通した者の多くは、よほど親しくなって別所においても積極的な交流を図るような関係にでもならない限り、お互いの顔を知ろうとなどはしない。
オフ会にでも参加すれば話は別かも知れないが、シエンタはそういった場所を好んでいない性格だ。そのため、ショパンとはある意味これが初対面なのである。
何よりも彼女が気に食わなかったのは、キラーは元々コンピュータウイルスであるにも関わらず、その程度の基礎知識すらも知り得ずにこちらを批判してきたことだ。
話も聞かない、命令にも従わない、的外れな批判もしてくる。シエンタ本人もどうしていいか分からない状況で、この対応。怒りが爆発するのは、必然のことであったのかも知れない。

「っ……あぅっ……! やめろって言ってるのが分からないのかい……このポンコツが!」

シエンタは、キラーの攻撃がショパンに当たることを恐れた。単純な戦闘力だけでいえば、彼は自分を凌駕している。その攻撃を止めることは、二人でも無理かも知れないと思ったのだ。
彼女は咄嗟に両者の間へと入り込むと、身を挺してキラーの攻撃を受け止める。お気に入りの猫耳つきフードのパーカーは焼け焦げ、見るからに痛々しい様子のシエンタ。フードも外れてしまっている。
普段の彼女が人前でフードを外すことはまずない。曰く「取ると秘められし力が覚醒して世界が滅んでしまう」そうだが、今はそれすらも気にしている余裕がないようだ。
感情が高ぶっているシエンタは、思わずキラーに対して酷い言葉を投げ掛けてしまう。下手をすれば、"捨てられた"と錯覚されてもおかしくはない、痛烈な一言を―――

>キラー・テンタクラー、マシュマロ・ヴァンディール、ショパン
【周りが頑張っているのに自ら状況を悪化させる人間のクズ】

1ヶ月前 No.992

首刈りヴァルキリー @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

【大統領官邸/大統領執務室/ミシャール・ルクセン】

「かかかっ、そういう事さ。 正義の味方なんざこの場に居ない、アタシは自分の欲望のために破壊を振りまくだけさ」

ミシャールが自らの歯を剥き出しにして笑う、自分の役割がそれであるから、と言う単純な理由で。
とはいえ、イルグナーがそれに対して反論を口にする訳でもなく、ただ自分を殺すことだけに注力してくれるのはありがたい話だ、これで、そう、それこそユーフォリアのように情を掛けて来るような事があれば中々やりづらい事になってしまう。

だが、あまりにも弱い相手に負けたとあれば、手抜きが疑われる、追求の手がユーフォリアに及びかねない事を考えるならば、ある程度の実力を持った相手が必要だろうし、イルグナーをある程度の所まで痛めつけて箔を付けておかねばならない。
もしも、それを察した上で、このような言動になっているのならば、抜け目の無い奴よ、とミシャールは内心、この時点では笑っていた。

しかし、そんな幻想は、次の相手の行動で打ち砕かれる事になる。
何とイルグナーは、利き手ではない左腕で、自分の豪腕から放たれる打撃を受け止めようとしたのだ。
――受け止められるはずが無い、確かに胴体へ攻撃が届くことは無かったが、腕に入ったダメージは相当な物だ。

「……ッ。 はっ、退くためにしては、ずいぶんと大怪我をしてくれたもんでッ!?」

所謂"計算が出来る"と認識していたイルグナーがこのような行動を取った事にミシャールは驚くが、間髪居れず相手が異能を発動させたのを見て、少し距離を取る。
十二体の敵の増援、見た目は騎士、防御力はそれなりで、おそらく数で押してくるタイプ。

だが、大多数の敵が、それなりの装甲を持っている、その程度でミシャールが止められるはずが無い。
――そぉらっ!!

そんな声と共に投げられた二本の大斧のうちの一本は、まるで意思を持っているかのように周囲を取り囲んでいる騎士の約半数を、雷撃を撒き散らしながら回転しつつ突撃し、粉砕してしまう。
その間にもミシャールは、手元に残ったもう一本を両手で持って、まさに狂戦士さながら相手の首を刎ね、防具ごと中身を粉砕し、と、急速に敵数を減らして見せる。

そこにイルグナーの放った三発の銃弾が襲い掛かった、狙いはいずれも脳、しかも狙いは正確と来ている。

しかし、それと同タイミングで、ミシャールとイルグナーの間、つまり銃の進路上に投擲された方の斧が割り込み、三発の銃弾のうち、二発を叩き落し、最後の一発は、ミシャールが直々に斧を振るって粉砕して見せる。 常人には出来ない反射神経と身体能力、それこそがミシャールを"最強"と呼ばれるに相応しい存在に変えている。

それでも、銃弾の破片が左足に突き刺さったが、中身の半分近くは機械、そう問題になる物でもない。

それよりもミシャールは、イルグナーに異変を感じていた、そして、この状況に心当たりもあった。
まさか、奴が。 そんな考えを巡らせながら、ミシャールは次の一手を打つ。

「イルグナー、あんたは、自分の目的のためなら行く先が地獄でも飛び込むタイプだったか?」

そんな問いかけを口にする。
普段であるならば、少しぐらい考える時間を設けるはずだ、あるいははぐらかすか、とにかく、自分が考えているような"トチ狂った答え"は出してこない。

また、行動でもカマを掛ける、ミシャールは手元に戻ってきたもう一本の斧と、手に持っていた斧、日本の斧をクロスさせて、電力発生機構を稼動させて、相手の退路を塞ぐように雷撃を発生させる。
その上で、自分は迎撃態勢を取る。 逃げ道を塞ぎ、突っ込んでくればこちらが有利に戦いを進める、そんな魂胆だ。

……普段のイルグナーであるならば、こういう状況ならば、まず確かな退路を確保しそうな物だが、もし、自分の予想が正しいなら……おそらく、やる事は真逆にも等しいだろう。

>イルグナー・シュタウンハウゼン

1ヶ月前 No.993

失敗作 @kyouzin ★XC6leNwSoH_cjE

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1ヶ月前 No.994

カリー @karikari10 ★Android=GZn0EZmRVy

【時空防衛連盟本部/エントランス/橋川 清太郎】

ThunderLeoの連射を止めることなく着地、相手の動向を伺う。

(撤退……違うな、何か仕掛けるつもりか)

敵は素早く後退したかと思うと、ガトリング砲と実体ホログラフの応用で牽制を行った。防水性に抜かりはないようだ。しかしあちらは火線をモロに浴び続けている、当然その装甲は徐々に破損していく。

(……? おかしい、何故なにもしなくなったんだ?)

黒鐵は突如としてこちらへの対応を止め、ツバキに集中し始めた……ように見える。
疑問は尽きないが今は深い考察が許される時ではない、例え何らかの罠であるとしても実行に移される前に潰してしまえばいいだけだ。
方針を決めると同時に弾倉内の弾が切れる、僅かに苛立ちながらリロードへ移ろうとした瞬間、凄まじい熱反応が接近していることに気付く。

「な……!?」

何だこれは、いつの間にこんなものが。まさかさっきかわした光輪が戻ってきたのか。
咄嗟に回避行動をとり、何とか輪切りになるのだけは避けられたが、ThunderLeoを銃身から切断されてしまう。
半身をなくした雷獅子が、乾いた金属音と共に横たわる。
ここで使い勝手に優れる武装を失ったのは痛手だ、このまま一気に勝負を決められる危険性が高い。だが嘆いていても仕方ない、早く別の武器を転送して戦闘力を確保せねば。

「げ! 武器庫がやられた!?」

バイザーのHUDに表示される『武器庫に異常あり』のウィンドウを見て再び驚愕する。
GAWNDの武装は大半を武器庫で保管し、A.O.Sで手元に転送する方式をとっている。故に武器庫を制圧されるというのは本来以上の損失になってしまうのだ。
しかし今は戦闘の真っ最中、それも簡単に逃がしてくれるような奴ではない。

(……だったら!)

A.O.Sを起動、迷うことなくその管轄下にある武装――つまるところGAWND用の武器を全て呼び寄せた。ほぼ一瞬にして、幾つもの火器が乱雑に散らばる。
我ながら大雑把な対応だが、この中の重火力武装を強奪され使用されるリスクを考慮すれば、これでも及第点といえる。

「……いや、ちょっと遅かったか」

散乱した武装を見て軽く歯噛みする。所々焼け焦げていることから考えれば、恐らく敵は強奪ではなく単純な爆破を行ったのだろう。

(現時点で使えるのはこれだけだな)

バズーカ型武装・ORW-B-4049-GrandSmasherとシールド型兵装・DE-S-3217-NoneActiveTortoiseを拾い上げ、後者を左肩装甲に取り付けた。
まだ攻撃には移らない、迂闊に動けばどんなしっぺ返しを食らうかわかったものではないからだ。ここはツバキの動きに合わせるのが最善か。

>>ワーロック、ツバキ・オオトリ

1ヶ月前 No.995

リアーナ=レッセント @tukuyomi07☆2nDyzvx51us ★3aNoMW8gGM_Swk

【 大統領官邸/庭園/リアーナ=レッセント 】

 聞く耳はもたない――どうすれば殺れるか、どのような道筋で追い込むか、リアーナ=レッセントという臆病者はそれしか考えていない。
 まして眼前を這いずり回るものが人間ではなく、災厄の類ならば猶更だ。今ここでさっさと殺っておかなければ後で確実に支障が出る。
 この異能<デュナミス>は効率的な殺害を成し遂げるための道具。八種の金属が、それぞれの効果を齎してくれる。
 大抵このどれかの組み合わせで敵に撃ち込めば、必ずといっていいほど最高の結果をたたき出してくれる。

 足を引き裂いた。
 即座に<貫通>を分解、――次はどうなる。どう来る。どう動く。
 手が分かるまでは迂闊な反撃はしない。
 観察を続けているうちに……嫌なことに気付いた。

(……なんだあれ?)

 千切れた足の先から溢れ出す黒い汚泥のようなソレ。
 禍々しい色合いと粘度を以て蠢きまわる。
 大気を、土を、草を、徹底的に犯し嬲り痛めつけて朽ち果て滅ぼしてゆく。
 まさかと思うが不死身のカラクリとはこれか――中身が人じゃないなら真っ当な手段では殺れないのは確かだ。

「ち――」

 指向性を持った槍へと変化する。
 本来アレにはそんなものは必要ないのだろう。生ける滅びである以上、放置しておけば周辺を死の大地に変貌させることが出来る。
 それでも害意を持った槍となるならば――自己防衛機能か。そう結論付け、装填するは<爆裂><連射>の二つ。

(まずは術者から殺る――このセオリーが通ればいいんだけど!)

 連射。
 連射。
 連射。
 黒い槍へ撃ち込む――爆発。
 起爆の性質を持つ魔弾が黒い槍に的確に撃ち込まれていき、更に周囲の槍をも巻き込み雲散霧消させていく。
 そしてすかさず狙うはクズノハ。地を這っている以上回避の余地は何処にもないはずだ。
 念のために<貫通>も組み込み……射出。

 貫通性のグレネードという矛盾の塊の如し弾丸。
 それは、肉体に直撃すれば最後、肉体を粉砕し木端みじんにするだろう。

>クズノハ ALL

1ヶ月前 No.996

贖罪の山羊 @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【大統領官邸/核シェルター/ミルグラム・ゴート】

「さてなどうだが」
 殴られるのが好きでも嫌いでもない、むしろ殴られた後"助けられるのが"最も嫌悪する。
 端的に言ってしまえば、優しくするな。
 人間は利他の皮を被った利己主義(エゴイスト)だ。
 荒野に放たれ穢れを運び衰弱した山羊は、誰よりも人間は偽善者だという固定観念に縛られているのだから。
「!」
 掠ったかと鎌を手元に戻しこちらに向かってくる少年を見る。
 こいつ正気か、鎖鎌を持っていながら特攻しに来るのかと怪しんだが今は疑う時間すら貰えない。
 亡霊を出現させて防御を選択するが、その選択は間違いだと少年は大きな鎌を床に叩きつけて、詠唱を唱えると闇が闇を祓い、その刃はがら空きのミルグラムに突き刺さり、地面へとめり込む。
「あがっ!」
 何と情けない姿であった。
 亡霊を取っ手しまえば、ただの山羊である証拠がここに浮き彫りになっていた。
 一匹狼気質のミルグラムは基本的に人と群れない性格で、英雄気質の人間を何よりも嫌うのでそう言った相手と進んで組まないタイプである。
 共闘する相手がいればまた変わっただろうが、今回はそれすらもいない。
「くそったれ!」
 まだ火炎に燃やされて惨めな遺体を晒さない方がましだと、屈辱と言わんばかりに無理でもやり立ち上がろうとするが、重力はそれを許す筈もなく床に叩きつけられて、全身強打する。
 普通の人間ならここで観念するのだが、古代から生きている魔族の生き汚さを発揮する。
 消滅するのは分かってる、けれども一矢報いりたい。
 醜態を晒したくないというプライドが、弓矢の亡霊を無理出現させて圧によって消える前にと少年に向かって矢を放つ。
 その矢も重力によって下がっているが、そんなの関係ない。
 ただ屈辱を晴らしたいという殺意と意志を証明していた。
 誰かが命乞いをしたら能力を解除してもらえるのではと言われそうだが、命乞いは絶対しない。そんなの絶対するものか、捕虜になるぐらいなら相手を巻き込んで自殺する。
 命乞いなんて村人達がしたのと同じ行為なので絶対とミルグラムをそう思わせていた。
 思考は一丁前だが、力は追い付いていない。
 戦闘の仕掛人である山羊はただ、重力の重みに苦しんでいた。
>ミラノ

1ヶ月前 No.997

『夜半の月』-幻想即興曲より- @akuta ★Android=8Sr3SxYeQ0

【BGM:別れの曲と夜半の月】
【時空防衛連盟本部/通路/ショパン】

「もう一度か……」
 "何かやり残した事はあるかい"
 そう音羽博士は目覚めた時にそう問いかけた。
 答えは何もない、目覚めた時には愛した女性も家族も帰るべき家もみんな失っていた。
 あるのは自分の心の臓と生きた証だけ。
 自分の不甲斐なさに呆れられたジョリーにやり直しを願ったが、綺麗な思い出を誰かに奪われるぐらいならと消滅の結末になった。
 今の自分が乞うもう一度はもういない、やり直しができない現在と過去の出来事。
 だからもう一度と願う共に戦ってくれる少女の事が、少し羨ましくもあった。
 ワームテイマー達の戦いを経たのが幸いしたらしい、丈夫に丈夫にと何十にも重なったダンボールは燃え盛り、熱量がショパンの肌を焦がし軽い火傷を負う。
 熱風は燕尾服の裾と襟に差した羽根ペンをはためかせる。
 苦痛に満ちた表情を浮かべると、シエンタの友人だから攻撃するなの発言に対してキラーが反論してきた。
 これはパソコンに詳しいショパンとしてでもキラーの言い分に納得する。
 ネットで知ったのだが、キラー・テンタクラーは自我を持ち都市一つ壊滅に追い込んだウイルスだ。
 ジョリーもそうだった。自身がハッキングされデータ事盗まれる行為に心底嫌がってたように、キラーもまた自身の死を恐れているのを理解できた。
 危険分子を易々と見逃す程この世は甘くはない。キラーは捕虜ではなく削除の形で対処されるか、良くても人格を書き換えられてしまうか。
 どちらにしても、キラーからすれば死を意味する。
 銃口からレーザービームが放たれ不規則に周囲を飛び回り、一人では裁ききれず重い体を動かして何十層に重ねたダンボールを出現させるものの、防ぎきれず体のあちこちに銃創を作り出し、膝を付き鮮血が床に広がり、タクトの先端も赤い雫を垂らしていた。
「……っ!」
 焼き焦げた痛みに涙を流して、体を俯かせると今度は火炎放射がこちらに迫ってくるのを見る。
「……また私は死ぬのか」
 目を閉じて二度もこの身を焼かれる事実を受け入れ、そう小さく呟いた。
 ああ、ハママツに帰りたかったなとクラシカロイドとしての走馬灯が迸っていると、眼前にシエンタがそこにいた。
「あ……」
 頭から流血しながらショパンは傷だらけのシエンタを見た。
「あ……ああ……っ!」
 悲痛な叫び声をあげて苦しそうにシエンタの元へ、戦場だという事も忘れて夢中に駆け寄る。
 脳裏に浮かぶは、墓場とショパンによく似た顔立ちの少年。
「……そんな……うそ……だよね?」
 庇われるなんて思いもしなかった。
 まさか死ぬのではないのかと、表情は絶望に染まり不安が胸中に抱える。
 シエンタが少女な事もあってか、酷な追憶が次々と浮かび上がっていく。

 "お兄ちゃん"

 少女はそう言って少年に笑いかけている映像が思い出される。
 また大切なものが、目の前で奪われようとしている。
 あんな結末を見たくない、墓穴を掘る音なんて聞きたくない。
 血の混じった大粒の涙を流しながらショパンはシエンタに向かう途中、細い体が倒れると同時にタクトを薙ぐと『夜想曲第二番』の演奏から次の曲へと切り替えた。
『幻想即興曲』
 フレデリック・ショパンが作曲した即興曲のうち死後に出版された曲。
 ベートーヴェンの『月光』の盗作なのではないかと思い悩んだ結果、親友に燃やしてくれと頼んだ曲でもある。
 荘厳で幻想的な音色が通路に展開される。
 弾幕の如く濃密で激しき旋律は、入力した楽譜通りに歌い上げるボーカロイドにはうってつけであった。
 このムジーク、普段はスマートフォン等に閉じ込める使い方をするが、別の使い方がある。
 それは元々ジョリーはムジークというウイルスのようなものに感染した電子データであり、そのウイルス除去する為に発動させた代物だった。
 友人を傷つけた。その慟哭と事実が普段は内気かつ繊細さで眠っているショパンの刃が鞘から抜かれた。
 コンピューターウイルスとキラーは名乗ったが、本物に効果があるかどうかは分からない。
 ウイルス除去方面に強化した能力をキラーにぶつけようとキラーの足元に五線譜の輪を出現させようとして。
 今のショパンは、美しい花畑の中に大砲が隠されている音楽の化身となっていた。
>マシュマロ・ヴァンディール シエンタ・カムリ キラー・テンタクラー

1ヶ月前 No.998

葛葉の一枚看板 @5121☆stkO0KxpThU ★ztEbdaugmt_iDs

【時空防衛連盟本部/訓練施設/17代目葛葉 ライドウ】

『オッス、ボクモコイさん。そこまでドン引きされる反応も懐かしいッス』

「モコイ、今から大事な話をするから少し黙っていてくれ」

張り詰めた空気を和らげるようにモコイが名乗りを上げて、ライドウはそれを制止する。
モコイは豪胆なところがある、例え遥か格上の魔人でも小粋なトークをかますほどに、だから少し黙って読心に専心させる。
しかし、モコイのような悪魔でもここまでビビるとはライドウも予想外だった、そこまで小心者なのか緊張しているのか。
何にせよ交渉は始まったばかりだ、機会がある以上それを逃す手はない。自身の出生を語る彼女の言葉に嘘はない、モコイはそういう合図を送る。
後ろにいる仲間(ギルバート)を左手で制して、小声で「ここは任せてくれ」と言う。

「作り出され生まれ堕ちた命、か。その心境は察しよう、さぞツラかっただろう、日々の糧にも困り居場所すらない生活、俺は裏社会でそのような者を何人も見てきた。
 そしてその多くは甘言に乗せられ、その孤独を利用した汚い連中の『鉄砲玉』とされた、分かるか? 今の君の状況そのものなのだ」

穏やかな声で諭すようにライドウは訥々と語る、今の”この状況で既に詰み”なのだと。
彼女の、ルーシャの本来の姿を見ても眉一つ動かすことなくライドウは差し伸べた右手を下げない。
『ガス兵器を使用するか考える間まで大人しくしてもらう』という言葉と共に放たれる蜘蛛の糸、だがこの攻撃に殺意はない。
ライドウは冷静に左手で緑色に光る金属製の封魔管を取り出すと、一体の仲魔を呼び出す。

「来い、ジャックランタン。糸のみを焼け、彼女は傷つけるな」

『あいあいホー』

<マハ・ラギ>

三角帽を被って紺色のマントを羽織った小さなカボチャの悪魔、ジャックランタンを呼び出して袖口から出される糸のみを焼き払う。
無論自分だけではなくギルバート達の身も守るように炎を展開し続ける、本来はもっと強い火力を出せるが過剰な火力は逆に彼女を怯えさせる。
『口八丁管八丁の交渉人』とも呼ばれたことのあるライドウだ、この程度のことで交渉は諦めない、彼女は只おびえているだけだ。

「いいか? 落ち着いて聞くのだ、そのガス兵器は”ボタンを押して何時から発動する”か聞かされたか? 5分か? それとも1時間か? おそらくそのどれでもない。
 ”スイッチを押した瞬間に発動する”のならば君も生きて帰れない、恐らく是正機構の連中はそこまで織り込み済みで君を送り出した。”君の命ひとつで何人も殺せるなら安いもの”だとな」

そしてライドウは声を厳格なものとして彼女にとっての最悪の事態を突き付ける、こういう実力行使に出てきた手合いは”言葉で心を折る”しかない。
実力行使は最後の手段、仮にその最後の手段に出るとしても殺しはナシだ、彼女の生体反応のロストをスイッチ代わりにされていたらこの場の全員が助からないかもしれない。

「君の恐怖は分かる、真髄まで理解できなくても察することができる程度には分かるつもりだ、だから一度だけ勇気を出してみないか?
 我らと共に来い、君はそちら側にいていい人間ではない。我らは君に戦いを強要しない、君にひもじい思いもさせなければ迫害もしない。全ての責任は俺が負う。
 今が選択の時だ、その手で我らの手を取るか、それともスイッチを押して諸共死ぬかだ、君は君が生きたいように生きる権利がある、それは例え誰が相手でも侵害できるものではない!」

糸を焼き払った後ライドウが右手を差し出したままルーシャの目の前にゆっくりとした足取りで歩み寄る。
ルーシャの背後でモコイが変な踊りのような訳の分からない動きをしている、がモコイの背中には小さなブーメランがある。
最悪の決断をするならばその時はソレでスイッチを破壊することをライドウは念頭に置いている。

>ルーシャ・コバルト、ギルバート・トムフール、ALL

1ヶ月前 No.999

紅焔の塵殺者 @zero45 ★h2BOlEz4kD_pp5

【大統領官邸/公邸/レオンハルト・ローゼンクランツ】

 あらゆる感情を薪と変え、昂る焔へと投げ入れて行く蝋翼の身は、只人の域を超越した魔人へと堕ち。膨れ上がる意志の力で精神的、肉体的の枷を幾多も外して越えて行きながら、その在り方を"英雄"へと最適化させる。
 罪業を滅却すべくして、憤怒と言う名の正義を掲げる執行者にとって、前進を妨げる数多の感情は不要。抱くは唯一つ、飽くなき、果てなき怒りの熱情。それ以外の総てを打ち捨てて、獅子は只管に己の赫怒を純化させて行く――堕落して行く速度は衰えを見せず、尚も加速を続け。魔王を歓喜させる以外の存在価値を持たない怪物が、哀れなる生贄が、狂気染みた産声と共に目覚めようとしている。

 禍々しき紅の髪を激しく乱しながら、紅く染まった両目から血涙を流しながら獅子は突貫を開始し。煌く灼翼を広げて天駆ける其の姿は、燃える業火の化身、人類に恩恵と災禍を齎した焔その物。人々の救済を掲げる裁定者は、邪悪なる者が背負える罪を裁く断罪の剣をその手に宿し、魔王の眼前へと躍り出る。刹那に炸裂するは、超新星爆発にも似た大焦熱の奔流。同時に轟いたのは、遍く悪に裁きを下す雷霆の一閃。
 人智を凌駕した覚醒者達が織り成す熾烈なる一撃の総てが、魔王を破滅へと誘うべく強襲を仕掛け――そして、誠意には報わねばならんと、"覚醒"した魔王によって逆襲の一手を紡がれる。気合と根性、ただそれだけで目の前の人間の姿をした"怪物"は、道理を、法則を捻じ曲げ徹底的に破壊し、粉砕するのだ。

「オオオオオオオオォォォォォォォォッッッ――――!」

 だからそれに負けじと、覚醒に対する覚醒、それに対する更なる覚醒を以て、増設されて行く壁を乗り越える。自らに設けられた枷を越えるその過程で焔との同調を高め、人を逸脱して。引き起こし、叩き込まれる超新星核融合爆発の如し大爆発へと、それを数歩上回る大爆発で相殺する。向上した自らの耐性ですらも、その暴威を前には無事ではいられず傷を負い――そして、やはり気合と根性で、五体が微塵も無く消し飛ぶ未来を殺して見せる。
 対等、対等、ただ対等に。此方が一歩進めば、相手は二歩進み。三歩進めば、四歩進む。どちらかが土壇場で覚醒出来なくなるその瞬間まで、戦いは続くのである。

「―――――――――」

 白光が世界を覆う中で。深紅の輝きを宿す瞳を、獅子の瞳は捉える。刹那に発動する、異能。精神の枷が、肉体の枷が、全て外されて行く。同時、急激に取り戻された、赫怒その物たる"理性"。急激に進行した"焔との同調"、それに伴う変質した肉体の急速修復。それが意味する所とは、即ち――決して揺らぐ筈の無い、止まる事の無い"鋼の英雄"の完成。"塵殺剣"によって予言された"塵殺者"の誕生が、今此処に完了する。

 敵を討つ傍らで、"英雄"を戦闘不能へと追いやるが為でもある、虹の長剣。一縷の望みに賭け、"人間"へと引き戻そうとするシフォンのその一手は。

「――ならば、その罪悪をも背負いながら、俺は前へと進もう。塵屑に相応しい末路が訪れるその時まで」

 揺らめく左手。瞬時に形成された超光熱を宿した焔の刃が、迫る虹の刃を一瞬にして消し飛ばす。"英雄"との間に広がる圧倒的な力量差は、彼女に拮抗させる余裕さえ与えない。
 ――そして、この時。確かに獅子の瞳は、彼女の姿を捉えていた。だが、それは"シフォン・ヴァンディール"としてでは無く、護るべき"誰か"として、彼には映っていた。

「数多の破綻者を生み出した魔王――誓うぞ、貴様は必ず殺す」

 魔王を睨む紅の双眼。常人であれば射貫かれたが最期、魂魄ごと消え失せるだろう猛烈なる殺意を込めて、"英雄"は雄々しく宣誓する。両手に握られた超光熱の焔刃を構え、全身より放出される焔は更なる勢いを増して行き――やがては一、二分も経たぬ内に、戦場は灼熱の煉獄に閉ざされる事だろう。

「――我が英雄譚は、此処に在り……!」

 刹那に姿が消え、刹那に姿を顕す。魔王の眼前へと躍り出た獅子が繰り出す刃の応酬は、十を越す殺戮の絶技。単純に首を刎ねる一太刀、視界を封じる横薙ぎの一太刀、突きからの切り上げで五臓六腑を蹂躙し尽くす一太刀、四肢を削ぎ落す四太刀、純粋な手傷を与える三太刀以上――最初の頃とは数段違いに跳ね上がった速度で放たれる猛襲の数々が、確実なる死を与える連撃として放たれる。

 ――天墜の末路は、零に近しい否定の可能性を残して、定められた。

>ダン・マッケローニ=バビロン シフォン・ヴァンディール

1ヶ月前 No.1000


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